Facebookリールが全世界で公開、新たな広告主・クリエイター向けツールも

2021年9月に米国で正式提供されたのに続き、米国時間2月22日、Facebook Reels(フェイスブック・リール)が世界150カ国以上で公開された。これはMeta(メタ)のTikTok(ティックトック)の脅威に対抗する主要部分をなす機能であり、クリエイターは短編動画コンテンツをFacebookでシェアしたり、Instagram(インスタグラム)のリールをクロスポストすることで、幅広い視聴者に届けることができる。この日の世界展開に合わせて、Facebookは新たなクリエイティブツールやクリエイターが広告やStars(スター)を通じてリールで収益をあげる新しい方法を導入した。

リールは当初、TikTokに直接対抗するためにInstagramアプリ内の一機能として登場したが、Metaはすぐに、Facebookを巻き込むことでより強力な反撃手段になることに気づいた。その結果同社は、2021年第4四半期の決算報告で、リールは「他を引き離して急成長しているコンテンツ」であると喧伝した。さらに、リールはInstagramの成長の最大の立役者であり、Facebookでも「非常に成長著しい」と同社は語った。

しかし、現在リールの収益化状況は、Instagramのフィードやストーリーなどのコンテンツ・フォーマットと比べて低い。それでもMetaは、時間とともに変わっていくと信じている。

それに関連して、同社はこの日、Facebook Reels Overlay Ads(フェイスブック・リール・オーバーレイ広告)のテストを米国、カナダ、およびメキシコの全リール・クリエイターへと拡大する。3月中旬までには、ストリーム内広告が利用可能な50か国以上のほぼ全域にテストを拡大する、とMetaはTechCrunchに語った。

ちなみに、ストリーム内ビデオ広告は現在Facebookビデオでのみ利用可能でリールでは使えない。これは、新しいオーバーレイ広告がリールに広告収益を直接もたらすFacebook初の試みであることを意味している。

画像クレジット:Meta

ストリーム内広告のテストに参加しているクリエイターは、2種類の広告フォーマットを試すことができる。バナーとスタンプ(stickers)だ。これらは非妨害的広告であり、ビデオを止めて広告を表示する代わりに、再生中のコンテンツに半透明に重ね合わせられる。バナー広告はリールの下部に半透明のオーバーレイとして表示され、スタンプは固定画像をリール画面内のどこにでも、ふつうのスタンプと同様に配置できる。Facebookは、視聴者に最も合うフレームに表示する広告を選択する。

テスト期間中、Metaは現在ストリーム内広告プログラムで実施しているのと同じ方式でクリエイターと収益分配するという。クリエイターが55%、Facebookが45%だ。しかし、これはテストの進行にあわせて変わる可能性がある。

すでにストリーム内広告プログラムに参加しているクリエイターは、デフォルトで自動的に新しいオーバーレイ広告テストにオプトインされる(過去数カ月間のオーバーレイ広告テストにはごくわずかな人数だけが招待された)。それ以外のクリエイターは資格を確認の上ここで参加できる。

さらにFacebookは、リール間の全画面広告と没入型広告を全世界で数カ月以内に開始する。これらのフォーマットは2021年10月からテストされていた。

ただしすべてのリールに広告が入るわけではない。Metaの説明によると、リールに広告が入るかどうかは、広告主のターゲット設定から視聴者にとっての広告の価値までさまざまな要素によって決まる。クリエーターは、個別のリールにバナー広告が入らないようにCreator Studio(クリエイター・スタジオ)で指定することもできる。

一方広告主も、Publiser Lists(パブリッシャー・リスト)、Blocklists(ブロックリスト)、Inventory Filters(インベント・フィルター)、Delivery Reports(デリバリー・レポート)などのブランド適合ツールを使ってバナーやスタンプ広告を選ぶことができる。

広告に加えて、クリエイターは近々Starsによるリールの収益化が可能になる。StarsはFacebook Live(ライブ)ですでに提供されているバーチャル投げ銭システムだ。さらに、成功しているクリエイターは直接的支払いも受けている。Metaの10億ドル(約1150億円)クリエイター・ファンドの一環であるボーナスプログラムのReels Play(リールズ・プレイ)は、巨額のボーナスを生むことがあり、毎月最大3万5000ドル(約402万円)受け取っているクリエイターもいる、と会社は言っている。しかし、クリエイター・ファンドの長期的な有効性についてはまだ議論の余地がある

ファンドが発表された2021年6月以来、リール・クリエイターに支払った金額について、Metaは公表を拒んでいる。

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収益化機構以外にもFacebookは、2021年発表したクリエイティブツールRemix(リミックス)、60-second Reels(シックスティ・セカンド・リール)、Draft(ドラフト)、およびVideo Clipping(ビデオ・クリッピング)を公開する。

リミックスはInstagramですでに提供中のツールで、TikTokのDuets(デュエット)に似ている。クリエイターは、Facebookで公開されている別のリール(あるいはその一部)と並べて自分のリールを作ることができる。今回この機能をFacebookのクリエイターも使えるようになった。

リールは、TikTokが動画の長さを最長60秒から3分に拡大して以来、遅れを取り戻そうと躍起になっている。Instagram Reels(インスタグラム・リール)は2021年、動画の最長時間を30秒から60秒に拡大しており、今回Facebookのリールも同じことをする。

DraftとVideo Clippingも近々追加される。Draftでは、クリエイターが作業中のコンテンツを保存して後に公開することができる。Video Clipping機能は数カ月後に公開予定で、通常ライブや長時間コンテンツを扱っているビデオ・クリエイターもリールを試しやすくなる。

Facebook Reelsへの大がかりな投資の一環として、同社はショートビデオをFacebook体験全体におけるより重要な位置づけにしようとしている。米国だけでなく、対象地域のクリエイターは、Instagram ReelsをFacebook上でおすすめとしてシェアできるようになる。

画像クレジット:Meta

今から数週間のうちに、FacebookはユーザーがリールをStories(ストーリー)でシェアできるようにし、FacebookのWatch(ウォッチ)タブでリールを見られるようにする他、リールとクリエイション・ツールをユーザーのニュースフィード(同社は最近の変更でニュースフィードを単に「フィード」と呼ぶようになった)上部に目立った位置に置く。一部の国では、フィードをスクロールしている途中で、ユーザーが気にいるかも知れないリールをおすすめすることもある。

リールはMetaにとって最大級の製品投資であり、同社はTikTokがもたらす脅威について公開の場で発言してる。MetaのCEO Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏はTikTokについて「非常に大きなユーザー基盤を生かしてかなりの速さで」成長している強大なライバルであると評している

しかし、Metaの課題はTikTokばかりではない。Facebookは史上初のデイリーアクティブユーザー数の減少を第4四半期に発表した。これは人々が以前ほどFacebookを使っていないことを示すわかりやすい指標だ。それと同時に、Appleのプライバシー方針変更によって広告ビジネスが制約を受け、2022年のMetaの売上は100億ドル(約1兆1500億円)減少する見込みだ。Metaは、Facebookが成功を続けるためにはクリエイターを巻き込んで、ユーザーにソーシャル・ネットワーキング以外の行動を促す必要があることを認識している。それは動画を見たり音楽を聴いたりショッピングをしたりすることであり、いずれもここ数年投資している領域だ。

画像クレジット:Meta

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Snapchatがクリエイターのストーリーにミッドロール広告を導入する計画を発表

刹那的なメッセージングアプリだったSnapchat(スナップチャット)は、クリエイターが利益を上げられるプラットフォームとしての地位を確立しようとしている。米国時間2月14日、同社はSnapStar(スナップスター)と呼ばれる(そのためには申請して資格を得る必要がある)最大のクリエイターたちを対象に、Snapchatのストーリーの中にミッドロール広告を導入する計画を発表した。

Snapchatの広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、この機能は、米国を拠点とする少数のクリエイターに向けてごく初期のベータ版がすでに導入されているが、今後数カ月のうちに、Snap Starsを対象にもっと広く展開していく予定だという。これらの広告は、ストーリーの中にミッドロール広告として表示され、クリエイターは広告収入の一部を得ることができる。その報酬は、投稿頻度や視聴者のエンゲージメントなどの要素を加味した支払い計算式によって決定される。Snapchatはこれらの支払いの仕組みなどについて、それ以上の詳細なコメントを控えている。

Snapchatは、TikTok(ティックトック)の類似品的なSpotlight(スポットライト)だけで、2021年に2億5000万ドル(約289億円)をクリエイターに支払っている。クリエイターは、アプリ内のギフト機能や、企業がAR開発者やインフルエンサーとより簡単に提携できるクリエイターマーケットプレイスを通じて、Spotlightでも利益を得ることができる。

関連記事:Snapはこの1年間でTikTok風動画のクリエイターに約284.5億円を支払っている

今回のテストは、クリエイターファンドの支払いとレベニューシェアの違いについて、クリエイターの間で継続的に行われている議論を受けて、実施されるものだ。長年YouTuber(ユーチューバー)として活躍し、Vidcon(ビドコン)の共同設立者であるHank Green(ハンク・グリーン)氏は先月、TikTokのクリエイターファンドの規模がユーザー数と同じペースで成長していないことを指摘した。つまり、TikTokのクリエイターがプラットフォームへの貢献に対して得られる収入は、時間の経過とともに少なくなっているということだ。しかも、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)が、1年で580億ドル(約6兆7000億円)もの利益を上げていることを考えれば、2億ドル(約231億円)のクリエイターファンドの規模は(それがたとえ10億ドル[1154億円]に成長することになっていたとしても)わずかなものに感じられる。一方、YouTubeは過去3年間に広告収入から100億ドル(約1兆1540億円)の分配を支払っている。しかしそれと同時に、TikTokやSnapchat Spotlightのような短い動画形式のプラットフォームに、YouTubeと同じくらい多くの広告が入ったら、とても使っていられないと感じるだろう。

関連記事:「クリエイターファンド」はそれほど褒められたものじゃない

Snapchatはこのテストで、クリエイターファンドとレベニューシェアの両方のモデルを組み合わせようとしている。しかし、この機能がクリエイターにとってどれほど有益なものになるかは、支払いの仕組みが謎のままでは何とも言えない。

画像クレジット:Snapchat

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

YouTubeがNFTやライブショッピングなどクリエイターツールを拡充へ、TikTokやInstagramに対抗

YouTube(ユーチューブ)のCEOであるSusan Wojcicki(スーザン・ウォジスキ)氏は2022年初め、クリエイターがファンと異なる方法でつながるためのNFT(非代替性トークン)の導入を検討していることを強く示唆するなど、動画界の巨人である同社が今後1年間に計画していることの概要を明らかにした。そして米国時間2月10日、同社の最高製品責任者Neal Mohan(ニール・モナハン)氏は、このアイデアに賭けることをブログに投稿し、2022年全体としてクリエイターのためのツールをより多く構築するというYouTubeの大きな目標について詳細に説明している。

このブログ投稿は多くの項目からなる本当に長いリストだが、YouTubeがいかに大企業になったか、そしてYouTubeの最大の競合他社がビデオによる広告事業を補完するものとしてNFTに独自に取り組んでいるという事実を考えたとき、NFTがおそらくリストの最も興味深い部分であるように思われる。

「NFTは、共通の趣味を持つコミュニティの運営に利用されたり、クリエイターのためのより良い資金調達を可能にしたり、アーティストが自分の作品を検証可能な方法で作って販売し、将来の売上に対するレベニューシェアを獲得できるようにするなど、多くの興味深い応用例を目にしています」と広報担当者は語った。「当社は、この分野で人々がすでに行っていることに、YouTubeが多くのユニークな価値を加えることができると考えています」。

他の新機能には、買い物ができるビデオLive Shopping(ライブショッピング)と「アプリ全体で」多くのショッピングの機会を導入するなど、ショッピングに関するより多くの機能が含まれる、とモナハン氏は書いている。YouTubeの動きを注視している人は驚かないだろう。同社はここ数カ月、こうした機能をテストしている。Walmart(ウォルマート)などとのテストでは、200万回以上の再生と140万件のLive ChatメッセージがあったとYouTubeは説明した。

ライブストリーミングは、新しいひねりが加えられるもう1つの分野だ。そのひねりとは、コラボレーションだ。クリエイターがインタラクティブなストリームで一緒にライブすることができるようになり、これは、非常に型通りのビデオフォーマットになったものを一新したり、新鮮味を加えるための1つの方法だ。

また、クリエイターにとって重要なアップデートとなるのが、ビデオエフェクトとアナリティクスの分野で、ビデオエフェクトは自分の作品をより良いものにするため、そしてアナリティクスは人々が見ているものが好きかどうかを知るためのものだ。モナハン氏は、2022年の新しいツールには、より多くのビデオエフェクトや編集ツールが含まれると話した。これらのツールの多くはすでにYouTubeで構築されているため驚くものではなく、クリエイターがコンテンツを別のところに投稿するもう1つの口実を与えている。YouTubeのネットワークにクリエイターを確実に留めておく興味深い工夫の1つは、近々Shorts(TikTok、Snapchat、Instagramに対抗するYouTubeの短編動画)において動画上でコメントに返信できるようになることだ。

クリエイター経済、そしてより一般的なユーザー生成コンテンツは、今日すべてのアクションがある場所であり、ますますお金がともなうようになっている。YouTubeがこれを追求し、クリエイターを魅了し続けるツールを構築する明確な理由がある。有名なクリエイターだけでなく、より大衆的なユーザー生成ビデオの拠点として非常に人気があるTikTok(ティクトック)は、eコマース企業と緊密に連携しているあるフィンテック企業によると、リファラル数ですでにPinterest(ピンタレスト)やSnapchat(スナップチャット)を上回っていて、そこにYouTubeとMetaのアプリ軍団が続くようだ。

YouTubeにとって、今はまさに板挟み状態だ。というのも、競争の反対側では、Instagram(インスタグラム)とその親会社のMeta(メタ)が、NFTを中心とした大きなビジネスの構築と、それをサポートするための通貨について本腰を入れているとされている(ファイナンシャル・タイムズは1月にこの取り組みが進行中だと報じたが、TechCrunchはこの報道が氷山の一角だと聞いている。いずれにせよ、Metaは問題を抱えたNoviプロジェクトのためにすでに行ってきたすべての仕事にホームを与える)。

広報担当者によると、Google(グーグル)は「クリエイターと視聴者のための最高の場所であるという使命を深めるのに役立つ」NFTやWeb3のような新しい技術を模索しているのだという。「YouTubeの特徴は、クリエイターとファンの関係であり、これらの新しい技術は、それを補強する役割を果たすことができると考えています」。

広報担当者は、Googleがパートナーと協力するか、またはゼロからマーケットプレイスを構築しようとしているかどうかについての「現時点の」コメントを却下した。しかし、アイコン的なYouTubeのコンテンツがすでにNFTの波に乗って、YouTube広告以外でのさらなる収益化に成功している例は非常に多いため、Googleが既存のマーケットプレイスなどと組むのはおもしろいかもしれない。

「我々のクリエイターはすでにNFTと関わっているので、この分野を理解し、クリエイターと視聴者にとって良い方向に導く手助けをすることが重要だと考えています」と広報担当者は述べた。「当社はすでに代替の収益化製品でこれを行いました。人々がアイテムを販売しているのを見て、製品を作りました。クリエイターはすでにNFTと関わっており、我々はそれをより簡単に、より良くする手助けをしたいのです」。

導入されればNFTは、Super ChatやSuper Stickerなど、YouTubeの有料デジタルグッズを含む、広告の代替としてすでに存在する収益化ツールの小さな下支えの輪に加わる。「これらはクリエイターやファンの間で非常に人気があることがわかりました」と広報担当者は話した。「そして、この多くは、支援と、お気に入りのクリエイターを財政的にサポートしたいと考えているファンのためのものです。ですので当社は、クリエイターにお金を稼ぐ新しい方法を提供しつつ、クリエイターとファンとのつながりを深めるもう1つの方法として、NFTを検討しています」。

画像クレジット:Olly Curtis/Future / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

Spotify CEOがこれまで歴史的に阻害されてきたクリエイターのコンテンツに約115億円を投資すると発言

Spotify(スポティファイ)とJoe Rogan(ジョー・ローガン)氏の問題に関する最新情報が報じられた。SpotifyのDaniel Ek(ダニエル・エク)CEOは米国時間2月6日、ローガン氏が自身のポッドキャストで配信した過去のエピソードで有害な人種的中傷となる発言をしていたことについて、スタッフに社内書簡を送付した。現在は、これらの過去のエピソードのうち70本以上がSpotifyから削除されている。The Hollywood Reporter(ハリウッド・レポーター)に掲載されたこの社内書簡の中でエク氏は、歴史的に疎外されてきたグループの音楽やオーディオコンテンツの使用許諾、開発、マーケティングに、Spotifyが1億ドル(約115億円)を投資すると宣言している。これは、同社がジョー・ローガン氏との独占コンテンツ契約に支払った金額と同じだ。

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「1つの点を明確にしておきたい。私はジョーを黙らせることが解決策だとは思っていません」と、エク氏はSpotifyのスタッフに向けて書いている。「我々はコンテンツに関する明確な境界線を持ち、それを越えた場合には行動を起こすべきですが、声を消してしまうのは滑りやすい坂道です。この問題をもっと広く考えると、批判的な思考とオープンな議論こそが、本物の必要な進歩の原動力となるのです」。

Spotifyは2020年5月、ローガン氏のポッドキャスト「The Joe Rogan Experience(ザ・ジョー・ローガン・エクスペリエンス)」と1億ドル規模の複数年にわたる独占契約を締結、11年分のコンテンツが同プラットフォームでのみ配信されることになった。だが、すでに物議を醸しているローガン氏が、新型コロナウイルスに関する誤った情報を広めている極右陰謀論者のAlex Jones(アレックス・ジョーンズ)氏などのゲストを番組に登場させ、Spotifyユーザーの懸念をさらに募らせることになるまで、それほど時間はかからなかった。

最近では、業界で最も聴取されているポッドキャスターの1人であるローガン氏が、新型コロナウイルスに関する誤情報を広めたことでTwittert(ツイッター)から締め出されたウイルス学者Robert Malone(ロバート・マローン)博士をゲストに招いたことで、270人の医療関係者がSpotifyに誤報に関するルールを導入するよう求める公開書簡に署名するなど、緊張感が高まっている。

ローガン氏による誤った公衆衛生情報を流布する役割を果たしたことに対するSpotifyの不作為に抗議して、Neil Young(ニール・ヤング)氏、Joni Mitchell(ジョニ・ミッチェル)氏、作家のRoxane Gay(ロクサーヌ・ゲイ)氏などの著名人が、Spotifyからコンテンツを引き上げた。

「私が考えていることの1つは、クリエイターの表現力とユーザーの安全性をさらに両立させるために、どのような追加措置を講じることができるかということです」と、エク氏は書いている。「これらの取り組みについて相談する外部の専門家の数を増やすように、私はチームに依頼しています。詳細を発表できる時を楽しみにしています」。

今までのところ、Spotifyは、新型コロナウイルスが実在しないと主張するような「危険で欺瞞的な医療情報」を促進するコンテンツを禁止するプラットフォームルールを掲げている(以前はなかった)。また、新型コロナウイルスに関する話題を含むポッドキャストには、コンテンツアドバイザリーを追加することも確約している。

このような広報面での悪夢のような出来事があったにもかかわらず、Spotifyは他のストリーミングサービスと比較して、その市場シェアを大きく失っていない。

画像クレジット:composite:Vivian Zink/Syfy/NBCU Photo Bank/NBCUniversal and TORU YAMANAKA/AFP via Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

人気クリエイターがファンに素に近いリアルな姿の写真を有料で公開するアプリ「Roll」

米国時間1月18日、新アプリRoll(ロール)が発売された。このアプリはクリエイターがファンに対して、より素に近いありのままの姿を公開し、それにより簡単にお金を稼げるようにするというものだ。すでに、Instagram (インスタグラム)の親しい友達向けストーリーやSnapchat(スナップチャット)のプライベートアカウント、Discord (ディスコード)の秘密サーバーへのアクセスを通し、メインのページに載せるほど作り込まれてはいないものの、やはりそれなりに外向けでブランド力のあるものを公開することで一部のクリエイターは課金を行っている。こういったものではクリエイターのPatreon(パトレオン)が介されているが、Rollはこの戦術を合理化し、すべてをRollアプリで完結できるようにしている。同アプリはiOSとAndroidで利用可能だ。

「お気に入りのクリエイターのカメラロールにアクセスできる、というのが弊社の謳い文句です」と創業者兼CEOのErik Zamudio(エリック・ザムディオ)氏はいう。「購読したファンは他では決して見ることのできないクリエイターのコンテンツを見ることができるのです。クリエイターはこれにより、最もリアルな自分自身を表現できるのではないでしょうか」。

もちろん、実際にクリエイターのカメラロールにアクセスできるようになるわけではない。そんなことが起きたらそれこそ大問題である。Rollはクリエイターがよりカジュアルな方法でファンとつながりながら、お金を稼ぐ機会を提供しようとしているのである。ソーシャルメディアへの投稿が仕事だとしても、カメラロールにあるものすべてをアップロードしているわけではない。上手くできたオムレツの写真、失敗した自撮り、気に入ったミームのスクリーンショット、散歩中に見かけた変なものなどさまざまな写真が存在し、こういった写真は慎重に計画されたInstagramのグリッドにはフィットしなくとも、Rollのようなプラットフォームではその魅力を発揮するかもしれない。本物のカメラロールと同様、Rollの投稿に「いいね!」を付けたりコメントを付けたりすることはできない。

クリエイターはRollで月額5ドル(約570円)から50ドル(約5700円)の間で課金することができ、収益の80%を受けとれる仕組みだ。ザムディオ氏によるとほとんどのクリエイターが5ドル程度の課金を選んでいるが、より専門性の高いコンテンツを作っているクリエイターなら高めの価格設定でもいけるだろう。例えばTikTok(ティックトック)のシェフが特別なレシピを動画で紹介すれば、月に数枚の舞台裏写真を投稿する人よりもより高い料金を請求することができるはずだ。OnlyFans(オンリーファンズ)のような競合他社とは異なり、Rollはアダルトコンテンツを許可していない。

携帯電話でRollのアカウントを開いている人気クリエイターのタナ・モジョ氏(画像クレジット:Roll)

ローンチ時には約20名のクリエイターが登録されているが、クリエイター向けポータルを一般公開するまでの間、毎週10〜15名のスターを追加していく予定だという。現在、ミュージシャンのDillon Francis(ディロン・フランシス)氏「Stranger Things(ストレンジャー・シングス)」の俳優Noah Schnapp(ノア・シュナップ)氏の他、Tana Mongeau(タナ・モジョ)氏、Sommer Ray(ソマー・レイ)氏、Stassie Karanikolaou(スタッシー・カラニコラウ)氏などのソーシャルメディアパーソナリティ、そしてユーチューバーのDavid Dobrik(デビッド・ドブリック)氏などが登録されている。

ドブリック氏が写真ベースのソーシャルスタートアップに関わるのは今回が初めてではない。ドブリック氏は後にDispo(ディスポ)となったアプリDavid’s Disposable(デビッズ・ディスポーザブル)を共同設立したことがある。ザムディオ氏をはじめとするRollのスタッフ3人もDavid’s Disposableの構築に貢献したのだが、ザムディオ氏はアプリがDispoにリブランドされる直前の2020年半ばに退社しており、また同氏や同僚が去った理由については回答を避けている。

2021年3月に発売され、大きな話題となったアプリDispoだが、そのわずか1週間後、Insider(インサイダー)がドブリック氏のYouTubeいたずらグループ「Vlog Squad」のメンバーに関する性的暴行疑惑を報じた。ドブリック氏のチャンネル用にグループセックスに関するビデオを撮影しているときに起きたこの暴行疑惑。Vlog Squadの元メンバーで黒人のSeth Francois(セス・フランソワ)氏はドブリック氏のビデオで経験した人種差別についてまとめたYouTubeビデオを投稿し、ドブリック氏のセットで性的暴行を受けたとも話している。Insiderの記事が掲載された直後、ドブリック氏はDispoの役員を退任している。

このような論争の中、Dispoの初期の投資家であるSpark Capital(スパーク・キャピタル)、Seven Seven Six(セブンセブンシックス)、Unshackled(アンシャックルド)などは、アプリへの投資から得られるであろう利益を全額、性的暴行の被害者のために取り組む団体に寄付することを約束した。ドブリック氏はさまざまなブランドとの契約を失ったものの、YouTubeの登録者数は1880万人から1830万人に減少しただけで、今でも週に3本の動画を投稿し、それぞれ約600万から1000万回の再生回数を記録し続けている。そして今回再びドブリック氏が消費者向けテクノロジーに舞い戻るわけだが、この物議を醸したユーチューバーは、Dispoの共同創業者には違いないものの、RollにとってはRollアプリを利用するクリエイターの1人に過ぎないとザムディオ氏は伝えている(同社の宣伝コンテンツにも登場する)。

「Rollをサポートしてくれた大物クリエイターは、デビッドが初めてではありません」とザムディオ氏はTechCrunchに話している。「これは絶対に誤解されたくないことですが、デビッドがDispoを辞めて今ここで別のことをやっている、というようなことではないのです。彼は創業メンバーの1人ではありません」。

後に、ザムディオ氏はさらにメールで詳しく説明してくれた。「デビッドはクリエイティブで賢い人物です。他のすばらしいクリエイターとともに、彼を起用できることをうれしく思います。私たちは全メンバーを対等な立場で見ており、彼らの意見を大切にしています。デビッドはDispoに関わっていたので、Dispoと関連付けられるのは当然かと思いますが、前にも伝えたように彼は(創設者やチームメンバーではなく)単にRollのクリエイターです」。

DispoとRollはありのままの投稿を促すという点で似たDNAを持っている。Dispoでは使い捨てカメラの性質を真似て、翌朝まで撮った写真を見ることができない。ただしDispoがソーシャルネットワークであるのに対し、Rollはクリエイターのマネタイズプラットフォームである。

「David’s Disposableが大成功した後、私たちはクリエイターエコノミーの世界を掘り下げるようになりました」とザムディオ氏はTechCrunchに話している。「そして多くのクリエイターと親しくなり、彼らが経験していることをより深く知るようになるにつれ、みんながコンテンツを有料化したいと考えていることがわかったのです」。

これまでRollは、Airwing Ventures(エアウィング・ベンチャーズ)のDan Beldy(ダン・ベルディ)氏が率いるエンジェル投資家ラウンドで50万ドル(約5700万円)を調達している。

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

「クリエイターファンド」はそれほど褒められたものじゃない

2020年の夏、TikTok(ティックトック)は「クリエイターファンド」と称して、米国内のクリエイターに贈与するための2億ドル(約229億3500万円)を用意した。これは当時としてはまだ珍しい手法である。より成熟したプラットフォームのYouTube(ユーチューブ)は、クリエイターの投稿動画で再生される広告の収益をシェアできるようにする、2007年に設立されたパートナープログラムを通じて資金を分配することでクリエイターに報酬を支払ってきた。しかしここ数年、TikTokの人気上昇に対抗するため、各ソーシャルメディア企業が独自のクリエイタープログラムを立ち上げている。YouTubeはショートのために1億ドル(約114億6500万円)のクリエイターファンドを設立し、Snapchat(スナップチャット)はSpotlight(スポットライト)チャレンジへの投稿に賞金を提供、Instagram(インスタグラム)はReels(リール)のクリエイターにゲーム化されたキャッシュボーナスを配布している。

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客観的に見て、大手テック企業が大金を放出しているというのはクリエイターにとって良いことのはずだ。しかし、長年ユーチューバーとして活躍し、最近ではTikTokのスターとなったVidCon(ビッドコン)の創設者であるHank Green(ハンク・グリーン)氏が最近のビデオエッセイで指摘しているように、クリエイターファンドは特段称賛されるべきものではないのかもしれない。こういったファンドはクリエイターの収益を配慮してのものではなく、「独立系アーティストにお金を払っています!」という企業のアピールに過ぎないという可能性もある。

TikTokのようなクリエイターファンドでは決まった一定の資金から支払いが行われているのに対し、YouTubeパートナープログラムでは広告収入のパーセンテージがクリエイターに分配される仕組みとなっている。つまりYouTubeが成長すればするほど、クリエイターに支払われるお金の総額も増えていくということになり、過去3年間でYouTubeはクリエイターに300億ドル(約3兆4374億円)を支払っている(YouTubeのパートナープログラムを通じて、クリエイターは自分の動画に掲載された広告から得られる収益の55%を得ることができる)。一方で、TikTokが成長してもクリエイターファンドの規模が変わることはない。

TikTokのプラットフォームは急速に成長しているのにも関わらず、その結果としてTikTokのクリエイターの収入はむしろ減っているとグリーン氏は主張している。ユーザーが良いコンテンツを投稿しているからこそ、このプラットフォームは成長できているのだという人もいるだろう。こういった巨大なテック企業にユーザーがもたらした価値に対して、これらのユーザーは適切な報酬を得ていないのである。

TikTokの広報担当者はTechCrunchの取材に対し「クリエイターファンドは、クリエイターがTikTokでお金を稼ぐための方法の1つに過ぎません」と答えている。

ブランドとコンテンツ制作者が簡単につながることができる「TikTok Creator Marketplace」(ティックトック・クリエイター・マーケットプレイス)や、ライブ配信中だけでなくいつでもクリエイターがチップを受け取れるようにした機能が2021年1月から開始するなど、新たな取り組みを数多く進めていると同社は主張しているが、当然このようなマネタイズ機能はYouTubeにもある。

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「クリエイターコミュニティの声に耳を傾け、フィードバックを得て、プログラムに参加している方々の体験を向上させるために機能を進化させ続けていきます」と同社はTechCrunchの取材に対して答えている。

TikTokの収益を1年以上にわたって綿密に追跡してきたグリーン氏によると、以前は1000回の再生で5セント(約5.7円)を稼いでいたものの、ここ数カ月は1000回の再生で2セント(約2.3円)になっているという。これはTikTokが成長しているために再生回数が増え、それにともないクリエイターへの報酬が減っているからだと同氏は主張している。

確かにTikTokは、フルタイムのクリエイタービジネス全体に資金を提供するためにこれらのプログラムを作ったわけではない。しかしこの支払い額は、ソーシャルプラットフォームへのクリエイターの貢献度を過小評価しすぎているのではないだろうか。クリエイターファンドがTikTokの長期的なクリエイター向け収益化計画であるかどうかは不明であり、またInstagram、YouTube、Snapchatの場合、これらの報酬はクリエイターに自分たちのプラットフォームを使ってもらうためのインセンティブに過ぎないが、クリエイターは短編動画をめぐる競争において少々疲弊気味のようだ。

他のフルタイムクリエイターもグリーン氏の意見に同意している。英国のテック系ユーチューバーであるSafwan AhmedMia(サフワン・アメッドミア)氏は、2021年4月からTikTokで2500万回以上の再生回数を集めたにも関わらず、112.04ポンド(約1万7000円)しか稼げなかったとツイートしている。YouTubeの米国トップクリエイターであるMrBeast(ミスター・ビースト)もこのツイートに返答し「10億回以上の再生回数」で1万4910.92ドル(約171万円)稼いだと答えている。TikTokは総再生回数を表示しないため、手動で数えない限りわからないようになっており、彼らの計算はグリーン氏の計算よりも正確ではないが、それでも彼らの試算によると、ミスター・ビーストとアメッドミア氏の2人は、再生回数1000回につき2セント(約2.3円)以下の収入しか得ていないことになる。

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クリエイターにとっては一般的に、YouTube、TikTok、Snapchatなどの動画のインプレッション数よりも、ブランドとの契約による収益の方が大きいといわれているが、それでもクリエイターは自分がプラットフォームにもたらす価値に見合った対価を支払って欲しいと願っている。

「TikTokの収益が上がれば、クリエイターの収益は下がる、というスローガンが作れるほどです。あらかじめ決まった額からの捻出ではなく、収益の一定割合を報酬として支払うというのはTikTokにとっては非常に悪いことですが、クリエイターにとっては非常に良いことです。TikTokはPRNewswireなんかで『今後3年間で10億ドル(約1155億円)をクリエイターに支払います』などと発表し、あたかもこれが莫大な金額かのようにして話していますが、実際のところ支払い額は完全にコントロールされており、参加するクリエイターが増えてアプリが成功すればするほどクリエイターの1ビューあたりの収入は減っていくのです」。

TikTokアプリ自体がどれだけの収益を上げているのかは不明だが、親会社のByteDance(バイトダンス)は2021年580億ドル(約6兆6500億円)の収益を上げており、この数字を見ると約2年前に開始した2億ドル(約229億3500万円)のクリエイターファンドがあまりにも小さな数字に感じてしまう。

それでもTikTokとYouTubeを比較するというのは、リンゴとオレンジを比較するようなものである。30秒のTikTokが、20分のYouTube動画の支払い額よりも少ないのは当然だ。YouTubeにはプレロール、ミッドロール、エンドロール広告があるが、TikTokの広告は動画と動画の間に表示される(広告主も日に日に賢くなっており、人気トレンドをみんなと同じように繰り返して普通のTikTok動画のように見せてくるため、ユーザーはしばらくして突然動画が洗顔料か何かを売ろうとしていることに気づくのである)。TikTokの途中で広告が再生されることはなく、あまり煩わしくないユーザー体験を提供している。これに対してYouTubeは広告なしのYouTube Premiumプランを月額11.99ドル(1180円)で提供している。

TikTokもYouTubeに倣ってより多くの広告を挿入して収益を上げ、クリエイターへの報酬を増やすことができるだろう。しかしそれはかなり迷惑な話であり、またTikTokがお金に困っているとも思えない。もう一度いうが、ByteDanceは2021年に580億ドル(約6兆6500億円)を稼いだのである。TikTokのクリエイターファンドは2億ドル。これはTikTokの親会社の収益の0.3%にあたり、その0.3%が複数年にまたがってクリエイターファンドに費やされているのである。

TikTokがクリエイター経済に革命を起こしているというが、実際はクリエイターたちがプラットフォーム上で寄せ集めたオーディエンスを構築し、活用しているというところが正確だ。ただし数字を見ると、TikTokは実際にクリエイターを支援するために十分な資金を一切投入していないのである。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

Fanicon、ファンサービスとITを結びつける新サービス・動きをまとめた「エンタメ ファンテック カオスマップ 2022」公開

  1. Fanicon、ファンサービスとITを結びつける新サービス・動きをまとめた「エンタメ ファンテック カオスマップ 2022」公開

会員制ファンコミュニティプラットフォーム「Fanicon」(ファニコン。Android版iOS版)を運営するTHECOOは1月24日、「エンタメ ファンテック カオスマップ 2022」を公開した。

ファンテックは、「ファン」と「テクノロジー」を組み合わせた造語。THECOOは、ファンテックについて、ファンサービスとIT技術などを結びつけた新しいサービスや動きと位置付けている。またファンテックは、クリエイターがファンや消費者と直接つながり、収益を得られるようになった「クリエイターエコノミー」の中に属すものとしている。

クリエイターと、ファン・消費者のつながりが多様化し複雑に

昨今クリエイターエコノミー界隈では、サブスクリプションをはじめ課金型コンテンツを提供するプラットフォームが台頭しており、限定コンテンツにすることでファンとの強いコネクションのコミュニティを持つ傾向にあるという。

さらに、「バズる」といった短期的な収益ではなく「根付く」という長期的な応援・収益化を重視する流れによって、ファンを増やすSNS発信からファンにエンゲージメントするコミュニティを持つ思想へ移り変わっている。しかし急速に普及した結果、ファンに対してプラットフォームを使ったエンゲージメント方法が多様化し、各ツールの特徴を活かし連動させることが難しくなったそうだ。

同社は、(Faniconを開設している)インフルエンサー・俳優・アーティスト・タレントや消費者が、自身に合う機能やサービスでつながってほしいという思いから、オンライン上でファンが「体験」や「応援」できるプラットフォームを分類するカオスマップを作成した。

エンタメ業界の動向―長く応援してもらうための「熱量」にニーズ

コロナ禍により政府が発表した活動自粛規定により、エンタメ業界においても、ファンとのイベントやライブがオンライン上で開催されることが増え、チケット制ライブ配信など急速なデジタル化・DX化が進んだ。

また、ファンと直接会えないことが続き「ファン離れ」という懸念からファンベースの指向が強くなり、ファンにエンゲージメントする上で長く応援してもらうための「熱量の深さ」にニーズが置かれコミュニティ化しているという。

ファンテックの動向

コロナ禍による生活様式の変化をきっかけに、クリエイターの活躍の場も多様化。消費者が様々なコンテンツを楽しめるようになり、ファンとの交流機会も増えているという。しかし、それに伴い発信するコンテンツに対して唯一無二を感じられる付加価値が重要視されるようになった。例えばNFTの活用により、デジタルコンテンツに対して新たな価値を提供できるようにしている。

「認知→応援」フェーズでの傾向

ウィズコロナ:「体験」における新しい楽しみ方

オンライン上のコミュニティなどを通して誰かとつながることへの需要が高まり、SNSだけでなく配信ライブ(配信専用スタジオも含む)やメタバースなどの「体験」できるコンテンツが注目を集めているという。

現在、オンラインライブは、オフラインライブをカバーするには至らないものの、活動資金となる収益基盤の構築やファンとのつながりを維持する方法として必要とされている。

また、メタバースやVR配信ライブなど、オフラインでは難しい表現が可能な場の強みを活かすことで、エンターテインメントの可能性はさらに広がっていると指摘。プラットフォームサービスを提供する企業もオンラインにおいての幅広い取り組みを行っており、これまでに人気ゲームやアニメ、人、空間とのコラボライブなど、人気の高いコンテンツも増えているという。

アフターコロナ:推測される「リベンジ消費」

オフラインでのイベントやライブなどの開催は、これまでの開催自粛の反動から、コロナ禍前を上回る水準に復活すると予測されている。これを受けて、コロナ禍前の課題であった会場不足を解決するべく、アリーナや劇場などの新たな商業施設がオープンしているという。

リアルライブへの移行が見込まれつつも、コロナ禍の影響で急速に進んだデジタル化が後戻りすることはなく、エンターテインメントの楽しみ方が一層多様化していくと期待されている。デジタルとリアルの共存が今後も進んでいき、アフターコロナで新たに生まれるニーズに対して、デジタル化・DX化は引き続き加速していくと推測されるとしている。

TikTokがTwitter、Instagramに続き有料サブスク導入を限定テスト、クリエイターの収益化の道を探る

TikTok(ティクトック)は米国時間1月20日、有料サブスクリプションの導入をテストしていることをTechCrunchに認めた。The Informationが最初に報じたように、人気の短編ビデオアプリTikTokは、クリエイターが自身のコンテンツのサブスクリプションに課金するオプションを模索している。この機能は当面の間、限定的なテストの一環であり、広くは提供されない。TikTokは、この機能についての詳しい説明や、追加の詳細の提供は却下した。

「当社は常に我々のコミュニティに価値をもたらし、TikTokのエクスペリエンスを豊かにする新しい方法を考えています」と、コメントを求められたTikTokの広報担当者は電子メールでTechCrunchに語った。

有料サブスクモデルがアプリにどのように実装されるかは不明だ。ちなみに、TikTokの人気アルゴリズム「For You」ページには、ユーザーがフォローしていないクリエイターの動画が表示される。もしクリエイターがコンテンツにサブスク料を課金することを選択した場合、その動画はおそらくユーザーの「For You」ページに表示されなくなる。ただ、クリエイターのアカウント全体にサブスクが適用されるのではなく、有料ユーザー限定の追加コンテンツに適用される可能性もある。

Instagram(インスタグラム)が米国でサブスクを開始した翌日に、今回のテストのニュースが飛び込んできた。Instagramのこの機能は現在、フォロワーにInstagram Liveの限定ビデオやStoriesへの有料アクセスを提供できる、少数のクリエイターグループで初期テスト中だ。クリエイターは、限定コンテンツにアクセスするための価格帯を自分で選ぶことができる。有料会員には特別なバッジが表示され、かなりの数のコメントがある中で無料ユーザーと差別化される。

TikTokの有料サブスクテストは、クリエイターがTikTok LIVEストリーム以外でもファンからお金を受け取ることができるアプリ内チップ機能をプラットフォーム上でテストしていることが最近明らかになったことに続くもので、すでに「ギフト」はサポートされている。この限定テストに参加しているクリエイターは、フォロワー10万人以上を抱え、活動に問題がなければ、この機能を申請することができる。承認されたクリエイターには、プロフィールにTipsボタンが表示され、フォロワーはこのボタンを使って直接チップをあげることができる。

関連記事:TikTok、クリエイターがフォロワーから直接チップをもらえる方法をテスト中

今回のテストは、クリエイターがプラットフォームを通じて生活費を稼げるようにすることに向けた最新の取り組みだ。TikTokは2021年、米国のクリエイターの収入を補えるようにすることを目的とした2億ドル(約227億円)のファンドを設立した。また、クリエイターがブランドとの提携やスポンサー契約を結ぶのを支援し、ライブストリームの収益化も提供している。収益化の取り組みに力を入れていることを考えると、同社がクリエイターのコンテンツに有料サブスクを提供する方法を実験していることは、驚くにはあたらない。

関連記事:TikTokが約214億円の米国のクリエイター向けファンドを発表

TikTokとInstagramのテストは、2021年9月に始まったTwitter(ツイッター)の有料サブスク「Super Follows」に続くものだ。この機能は、ユーザーが気に入ったアカウントに月額料金を支払うことで、特別コンテンツを購読することができるというものだ。対象となるアカウントは、Super Followサブスク料を設定することができ、月額2.99ドル(約340円)、4.99ドル(約560円)、9.99ドル(約1100円)から選択できる。Instagramのモデルと同様に、購読者には特別なSuper Followerバッジが付けられ、無料フォロワーと区別される。

TikTok、Instagram、Twitterの有料サブスク制度は、クリエイターコミュニティを引き付けるための取り組みだ。また、クリエイターに儲ける方法を提供するYouTubeのようなデジタルプラットフォームと競うための手段でもある。

画像クレジット:Nur Photo / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

ネットフリックス「ハイプハウス」が見せるクリエイターエコノミーの闇

私たちはこれまでキム・カーダシアンやパリス・ヒルトンのような有名人を「有名であることで有名」と表現していた。しかし、Netflix(ネットフリックス)のドキュソープ(ドキュメンタリー形式のリアリティ番組)「Hype House(ハイプハウス 〜TikTokスターのリアルライフ〜)」に登場するTikTok(ティックトック)のメガスターたちは「普通であることで有名」だ。このクラスのスーパースターは、有名人の裕福な子弟とは違い、神秘的なアルゴリズムによって、一見すると恣意的な理由で実質的に一夜にしてスターダムにのし上がった。

「20歳で大富豪だよ、何を落ち込む必要があるんだと思うだろ?」と語るのは、1470万人のフォロワーを持つTikTokのスターAlex Warren(アレックス・ウォーレン)氏だ。「とても馬鹿げたことに聞こえるのはわかっているさ、でも、それが苦しいんだよ、落ち込むことが許されていないように感じるんだ」。

「ハイプハウス」では、平凡な10代の若者が、有名人になったチャンスの本質について苦悩し、その名声が登場したときと同様にすぐに消えてしまうのではないかと心配している。「ハイプハウス」は、TikTokで最も長く続いている同名のコンテンツハウスの1つで、ソーシャルメディアのスターたちが一緒に暮らし動画を撮影している。このコンセプトは新しいものではない。YouTube(ユーチューブ)やTwitch(トゥッチ)、Vine(バイン)のスターたちは、何年も前からこのような共同生活のプロジェクトを実験してきた。

Thomas Petrou(トーマス・ペトルー)氏(フォロワー数800万人)が事実上のマネージャーだが、彼は利益の分配は受けていないという。彼は自分のことを「この家のお父さん」と呼んでいるが、それに加えて全員がちゃんと皿洗いをするのを確認するだけでなく、「ハイプハウス」ブランドが維持できるように、毎月少なくとも8万ドル(約923万円)のネット収入を得られるようにしている。彼のインフルエンサーの友人であるVinnie Hacker(ビニー・ハッカー)氏(フォロワー数1290万人)、Jack Wright(ジャック・ライト)氏(フォロワー数880万人)、アレックス・ウォーレン氏(フォロワー数1470万人)といった面々が、500万ドル(約5億8000万円)の豪邸に家賃なしで住んでいる。彼らがすることは、月に一度、「ハイプハウス」の公式TikTokアカウントに投稿することだけで、継続的なブランドコンテンツ契約によって収益を生み出している。さらにTikTokは、クリエイターたちがプラットフォーム上で誘導したトラフィックに対して直接報酬を支払うようになった。

このNetflixのシリーズは、「ハイプハウス」の一時代の終わりを告げるもので、若きミリオネアたちのおどけた姿よりも、インフルエンサーたちが直面する課題に焦点を当てている。

考えてみれば、このTikToker(ティックトッカー)たちが投稿している動画は、平均的なティーンエイジャーが投稿するものとさほど違ってはいない(大邸宅から投稿していることを除いて)。約2000万人のフォロワーを持つ「ハイプハウス」の公式TikTokアカウントでは、スターたちが新しいフィルターを試したり、次々に最新のトレンドを取り入れたり、そしてもちろん踊ったりしている。

全8話のシリーズを通して、風光明媚なサンタローザバレーの家には不穏な空気が漂っている。「ハイプハウス」のメンバーの中には、刺激を得られず幻滅を感じているせいで、ペトルー氏が望んでいるほどには頻繁にグループのためのコンテンツを作らない人もいる。あるシーンでは、「ハイプハウス」のメンバーが巨大なビーンクッションに寝そべってコンテンツのアイデアを考えようとしていたのだが、結局思いついた最高のアイデアは「手の込んだ握手方法」を編みだすことだった。きれいな大邸宅に家賃なしで住んでいても、楽しそうには見えない。

一方、アレックス・ウォーレン氏は、ワラにもすがるように、ネット上で思うようには反響を得られていない演出をしている。問題のある家庭環境や足の怪我を抱えながらも、心の休息を取ることに恐怖を感じているのだ。

「この仕事では、投稿をやめるとエンゲージメントが失われるんだ」とウォーレン氏は告白するように説明する。「この仕事には病欠はないんだ。病欠したらフォロワーが減り、つまり収入が減り、それはつまり、自分の仕事を失うことなんだ」。

インフルエンサーのゴールドラッシュ

TikTokのスターダムは、インターネット上のキャリアとして理解されつつあり、突然有名になった子どもたちのブランドとの契約やパートナーシップを支援することを目的とした、何十ものスタートアップ企業が生まれている(もちろん彼らの収益の一部を手にするためだ)。YouTubeでは、初期のクリエイターのほとんどが広告収入で利益を得ていたが、少なくとも初期の頃は、現在のようにマネタイズに注目が集まっていなかった。他のプラットフォームも、TikTokとその最大のスターたちの成功に乗じようと躍起になっている。Instagram(インスタグラム)、Snapchat(スナップチャット)、YouTube(ユーチューブ)は、クリエイターたちがTikTokではなく自分たちのプラットフォームに投稿するようにインセンティブを与えるために、数億ドル(約数百億円)を投じている。

Nikita Dragun(ニキータ・ドラガン)氏(フォロワー数1420万人)は「インフルエンサーとして、私たちの生活全体が、従来の有名人よりも奇妙な台座に置かれています」と番組で説明している。「スポークスマン、活動家、モデル、時事評論家、マネージャー……一度にたくさんのことをしなければなりません」。

クリエイターの収益化が進んでいることは、ほとんどの場合良いことだと思われる。クリエイティブな人びとが好きなことをして生計を立てるのに役立つツールがこれまでになく増えている。LinkedInでさえ、40人のスタッフがクリエイターとの仕事を専門に担当している。しかし一方で、生活のあらゆる面をマネタイズしなければならないというプレッシャーを感じるクリエイターもいる。ウォーレン氏の人気の一部は、同じくTikTokのスターで1360万人のフォロワーを持つガールフレンドのKouvr Annon(コーバー・アノン)氏との関係についての投稿から来ている。しかしウォーレン氏は、2人のプライベートな生活とコンテンツを切り離すのに苦労していて、カメラのないところ(滅多にないが)での2人の関係にも影響を与えている。

TikTokの成長によって加速されたインターネットの時代では、ただ動画を投稿していれば良いというわけではない。それは、自分のプラットフォームが明日死んでしまっても(以前にもあったことだが、Vine[バイン]がそうだった)、自分のキャリアを維持できるように、できるだけ多くの異なる収益源を組み合わせることなのだ。結局のところ、TikTokのスターたちは、TikTok自体から収入の大部分を得ているわけではない。ブランドとの契約、スポンサーシップ、商品の販売、ポッドキャスト、リアリティショー、音楽演技への思いがけない進出など、さまざまな形で幸運を手にしている。

「ハイプハウス」では、登場するクリエイターが自らの凡庸さを自覚していることが強調されている。彼らは、カリスマ性があり、おもしろく、大衆を楽しませるだけの魅力を持っているものの、自分の名声は才能よりも運に左右されていることを知っていて、いつその幸運が奪われるかわからないと心配している。彼らは、家族が離散した故郷に帰らなければならなくなったらどうしようとストレスを感じたり「キャンセルカルチャー」のターゲットになるのではと心配したりしている。

「ソーシャルメディアは数字のゲームだよ。お金はその数字にかかっているんだ」とウォーレン氏は説明する。「もし、僕が出しているものをみんなが見なくなったら、それは僕が何か間違ったことをしているということなんだ、だとしたら何が間違っているのか、どうすればその人たちを取り戻せるのか?」。

TikTokのアルゴリズムの変更のような恣意的な何かが、彼の成長を妨げる可能性があるのだから、ウォーレン氏の不安は杞憂ではない。ソーシャルメディアの爆発的な成長に慣れていたのに、その数字が停滞したり、最悪の場合は急落したりし始めたときには、どのように対処すればよいのだろう?

TikTokのアルゴリズムに対する心配に加えて、コンテンツハウスのビジネスモデルも同様に不安定だ。冒険を始めて以来、「ハイプハウス」は、インフルエンサー仲間で元メンバーだったDaisy Keech(デイジー・キーチ)氏との論争など、数々の訴訟に直面してきた。最近のYouTube動画で、ペトルー氏は訴訟に何十万ドル(何千万円)も費やしたと語っている。「ハイプハウス」では法的な問題には触れられていないが、ペトルー氏は共同体運営のストレスで目が覚めたり、嘔吐したりしたと語っている。このようなコンテンツハウスは、理論的には個々のクリエイターの負担を軽減してくれるはずだ。集団の一員となることで、アイデアのワークショップやビデオの共同制作を行うチームが周囲に生まれ、共有アカウントからの追加収入が得られる。しかしそうなる代わりに「ハイプハウス」では、明確な金銭的合意がないままお互いに頼り合うことが、ストレスをためてしまうことになったように見える。

「私もはしゃいでいるわけじゃないし」

「ハイプハウス」のソーシャルサークルの中には、TikTokで最も多くのフォロワー(1億3300万人)を持つCharli D’Amelio(チャーリー・ダミリオ)氏がいる。Forbes(フォーブス)の推計によると、彼女は同プラットフォームで最も高額の報酬を得ているクリエイターでもあり、2021年は1750万ドル(約20億2000万円)を稼いでいる。

Hulu(フールー)が制作した、突然有名になった彼女の家族についてのリアリティ番組で、ダミリオ氏は「私はただ、世界の他のティーンエイジャーと同じように投稿してるだけ」と語っている。「ただSNSに投稿していただけなので……何も」。かつてダミリオ氏がTikTokのバイオグラフィーに冗談で書いたように「大丈夫、私もはしゃいでいるわけじゃないし」というわけだ。

しかし、クリエイターエコノミーの最大のスターである彼女も、そのスター性が持続するかどうかについては疑問を持っている。「The D’Amelio Show」のパイロット版で、彼女は、もし自分が何百万ドル(何億円)も稼ぎ続けられなかったり、自分のライフスタイルのプレッシャーが大きくなりすぎたりしたら、どうしようかと考えていたことを明かしている。

「企業のCEOと電話で話すのは……ちょっと楽しいかな?という感じ」とダミリオ氏はいう。「だから、ソーシャルメディアで何が起こっても、その仕組みを知っているからこそ、マーケティングに進むことができるのです。私はすべてのバックエンドを知っているけど、それはクールなこと」。

1年でほとんどの人が一生かけて稼ぐ金額よりも多くのお金を稼いでいるのに(さらにその子どもが一生で、孫が一生で稼ぐよりも…少なくとも孫の1人がTikTokで大成功しない限り)ダミリオ氏がバックアッププランを持っているのは奇妙なことだ。しかし視聴者にとっては「ハイプハウス」や「The D’Amelio Show」のような番組の目的は、ソーシャルメディアのスターたちを人間として見ることにある。制作チームにとっては、NetflixやHuluを儲けさせることが目的であり、スター自身にとっては、余分な収入を得て、名声を維持・向上させることが目的である……と、ひどくメタ的な話になってしまった。彼らは、その半製品的な弱さを利用して、自分をより大きなスターにするのだ。

おそらくここでの最大の勝者はTikTokかもしれない。それが、このアプリの魅力なのだ。アレックス・ウォーレン氏のように、車の中で生活していた人が豪邸に住むようになれるかもしれない。すべては、あなたの短いビデオクリップが人々に好まれた結果だ。しかし、インターネット上で最も有名な10人の人たちと一緒に暮らしていても、トップは孤独なのだ。

画像クレジット:Netflix

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(文:Amanda Silberling、翻訳:sako)

クリエイターの収益化を支援するPatreon、「2022年に規模倍増」と同社CPOは語る

テクノロジーの世界が急速に成長するクリエイターエコノミーを受け入れる中、クリエイターの収益化を支援するスタートアップがあちこち出現している。しかし、2013年に設立されたPatreon(パトレオン)は「インフルエンサー」という言葉が私たちのボキャブラリーに入る以前から存在していた。「Tik Tok(ティックトック)」が誰も真似ようしているソーシャルプラットフォームではなく、Kesha(ケシャ)の歌だった頃のことである。

Patreonは2021年初めに評価額を3倍増の40億ドル(約4400億円)とした後、岐路に立っている。クリエイターのための構築という点で、同社は今後も勝ち続けるのだろうか。同時にPatreonは、クリエイターたちに自社のプロダクトが彼らの最善の利益を追求していると感じさせながら、その競争に先んじることができるのだろうか?

「私たちは(クリエイターエコノミーの)最初の8年間を定義した企業の1つになるのではなく、次の8年間を定義する企業になるつもりです」とPatreonのチーフプロダクトオフィサーであるJulian Gutman(ジュリアン・ガットマン)氏はTechCrunchに語った。

2022年のプラットフォーム計画についてTechCrunchに語ってくれたガットマン氏によると、Patreonは特にプロダクトとエンジニアリングの分野で積極的な採用を行い、時代を先取りしたいと考えている。ガットマン氏自身は2021年1月にPatreonに加わったばかりで、以前はInstagram(インスタグラム)でホームフィードエクスペリエンス向けプロダクトの責任者を務めていた。Patreonは2021年8月に、Google(グーグル)やTwitter(ツイッター)のチームを率いていたUtkarsh Srivastava(ウトカルシュ・スリヴァスタヴァ)氏をエンジニアリング担当シニアVPに迎えている。

「2021年前四半期にプロダクト、エンジニアリング、デザイン部門で60名を採用しており、このペースは2022年も続く見込みです」とガットマン氏。「Instagram、Uber(ウーバー)、Square(スクエア)の出身者を仲間に迎えています。これらの企業はいずれもクリエイターエコノミーの第一世代と言えるでしょう」。

Patreonは新しい会社ではないが、創業当初からクリエイティブな人たちの収益化を助けることをミッションとしていたことから、ガットマン氏は、かつての雇い主であるInstagramのようなソーシャルメディアプラットフォームよりも、同社はこの「第二世代」をリードする準備ができていると考えている。いずれにせよ、ソーシャルプラットフォームはクリエイターへの直接支払い多額の投資をしている。しかしPatreonのモデルでは、クリエイターは一時的なサプライズボーナスではなく、持続性のある月ごとの支払いを受けることができる。

Patreonは現在400人の従業員を擁しているが、2022年末までに1000人近くになることを目指しているとガットマン氏は語っている。Patreonは、特にプロダクト、エンジニアリング、デザインの分野の従業員を、現在の150人(最近採用した60人を含む)から2022年内に400人まで増やしたいと考えている。

「それは私たちが構築したいもの、そして構築する上でのペースと品質を反映していると思います」とガットマン氏。「私たちは今、潜在的なクリエイターたちに大きな期待を寄せており、彼らを支援するためにできる限り多くのツールを、できる限り早く提供したいと考えています」。

Patreonはすでに2022年に向けて取り組んでいるプロジェクトのいくつかの精査を始めており、その中には、ネイティブのビデオプラットフォーム(独占的なビデオコンテンツを限定公開のYouTubeリンクではなくプラットフォーム上で配信できるようにする)、より多くのフォーマットオプションによる投稿エクスペリエンスの向上、Patreonのページ上でコンテンツを整理するさまざまな方法、より多くのデータとアナリティクス、よりクリーンなアプリ設計、よりシンプルなマルチメディア再生エクスペリエンスなどが含まれている。Patreonによると、多くのクリエイターにとって「混乱とフラストレーションの源」であった課金システムの刷新も計画しているという。

しかし、Patreonにとってもう1つの大きな問いは、同社が暗号資産技術をプラットフォームに持ち込むかどうかである。2021年の秋、ガットマン氏は創業者でCEOのJackConte(ジャック・コンテ)氏とともに、クリエイターたちが収益を上げる方法としてPatreonが暗号資産を検討していることを明らかにした。Patreonは同社の秋のCreator Policy Engagement Program(クリエイターポリシーエンゲージメントプログラム)のアップデートで暗号資産クリエイターコインのアイデアを提案したが、その後のライブストリームでクリエイターたちは、Patreonが暗号資産に手を出すことでパトロンとの関係にどのようなインパクトを及ぼすかについて懸念を表明した。

Patreonが企業として取る行動は、プラットフォームで生計を立てているクリエイターの生活にインパクトを与える。このライブストリームに参加したクリエイターの中には、Patreonがクリエイターコインをローンチすれば、自分たちがそのツールを使っていなくても、暗号資産を好まないパトロンが購読をやめるかもしれないと心配する人もいた。

「(暗号資産)技術の中には実に興味深い基本的な要素がいくつか存在します。私たちのミッション、そして誰もがクリエイターエコノミーのために長い間求めていたもの、つまり権利の所有権、独立性、コンテンツの所有、ビジネスの所有、オーディエンスの所有、分散化、これらすべてのテーマに実質的に整合する要素です」とガットマン氏はTechCrunchに語った。「ただし、私たちは特定のアプリケーションやバンドワゴンに飛び乗る準備ができていないと思います」。

Patreonには暗号資産に取り組む専任チームは置かれていないが、暗号資産に情熱を持ち、ガットマン氏がいうところの「空き時間を利用した社内ポッド」を形成した従業員たちがいる。Patreonは2022年の早い時期に、暗号資産を活用してクリエイターをサポートする方法の可能性を調査する目的で、少人数のチームを立ち上げることを検討するかもしれないと同氏は語っている。

「『さあ、今すぐNFTプラットフォームを構築しよう』というものではありませんが、何人かの従業員がこの課題に専任で取り組むことになります」とガットマン氏。「ところで、彼らはこう結論付けるかもしれません。『今すぐここで構築すべきものは何もない』。それも十分理に適った結論です」。

Patreonは、暗号資産に足を踏み入れるかどうかという問題を軽く扱っていない。この選択は、自らのコミュニティを分断し、クリエイターに会社の決定の代弁者として行動することを強制することにもなり、個々のクリエイターのパトロンを遠ざける可能性もある。

2021年12月初旬、Kickstarter(キックスターター)はクラウドファンディングプラットフォームをブロックチェーンに移行すると発表し、特に一部のブロックチェーン技術に環境上の懸念を持つユーザーからの反発を巻き起こした。また2021年11月には、Discord(ディスコード)のCEOであるJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏が、チャットプラットフォームのインターフェイスに組み込まれた暗号資産ウォレットMetaMask(メタマスク)の画像をツイートした。しかし、暗号資産に詳しいユーザーでさえ、暗号資産ウォレットをDiscordアカウントと連携させることで、プラットフォーム上で不正行為や詐欺を実行しやすくなるのではないかと懸念していた。ユーザーの間では、暗号化に向けた同社の動きに抗議して、有料のDiscord Nitro(ナイトロ)サブスクリプションを解約するよう互いに促す声も上がった。その後シトロン氏は、Discordは現時点でこの技術を追求する計画はないとする声明を発した。

「私たちにとってもう1つ重要なことは、今後数年間で、クリエイターたちが別々に大きなものを作り上げることのできるツールセットを提供したいということです」とガットマン氏。「クリエイターがそこで使うことを選ぶ可能性のあるものを考慮した場合、そのツールセットの中には暗号資産の要素が含まれるかもしれません」。

しかし、より即時的には、コミュニティがPatreonの2022年の焦点になることをガットマン氏は強調した。

「クリエイターというと、人々はコンテンツを考えます。ですが、クリエイターが大きく従事しているのは、今日のコミュニティです」とガットマン氏は語る。「彼らは実のところコミュニティのリーダーです。関心のある共通のトピックや共通の情熱を中心にコミュニティが集うことに貢献しています。このことは、クリエイターが世界に提供しているものの中で、特に今の時代において極めて過小評価されている部分だと思います」。

現在、クリエイターがファンに提供する一般的な特典は、利用者専用のプライベートなDiscordサーバーへのアクセスである。ガットマン氏によると、PatreonはDiscordのようなプラットフォームとの統合スイートに加えて、コミュニティを構築するためのプラットフォーム上のプロダクトを作りたいと考えているという。

「私たちはクリエイターファーストです。クリエイターが統合を利用したいと思い、統合の方を望むなら、私たちはそのことに大きな喜びを感じます」とガットマン氏。「プラットフォーム上対プラットフォーム外という種類の戦いほどにはなりませんが、より多くのファーストパーティコミュニティツールの構築を考察することに大きな期待を寄せています。私たちの期待の一端は、コンテンツとコミュニティが出会う接点にあります」。

Patreonのような会社における変革は、プラットフォームに依存して生計を立てているクリエイターに不安をもたらす可能性がある。2022年にPatreonは、同社のプロダクトプランの大きなシフトに最も影響を受ける人々との直接的なコミュニケーションを維持するために、クリエイター調査を実施する予定である。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

【コラム】Web3こそが関心や大きな注目が価値を生むアテンションエコノミーの欠陥を修復できる

不均衡なクリエイターエコノミーや貧弱なセキュリティ、一元的な管理や不満を持つコミュニティなど、Web 2.0の欠陥はここ数カ月間で明らかになった。

まず、Facebookの元プロダクトマネージャーであるFrances Haugen(フランシス・ハウゲン)は2021年10月に、当ソーシャルメディアの巨人は「安全性よりも利益を優先している」と議会で証言した。そしてそれを合図にしたかのように、Facebookの中央集権的なサービスが世界中でダウンした。この障害は非常に広範囲におよび、Facebook自身がサーバーにアクセスすることさえできなかった。

そんな中、不満を抱いた匿名のハッカーが、Amazonが運営する人気ストリーミングサービス「Twitch」の膨大な内部データを公開した。このハッカーは、ソースコードやトップクリエイターの報酬情報とともに、Twitchコミュニティを「オンライン動画ストリーミングの分野におけるさらなる破壊と競争の促進」を企てる「嫌な毒の巣窟」と呼び、改善を呼びかけた。

これらのプラットフォームが成長し、普及し、収益を上げているにもかかわらず、旧態依然とした人々が多くのことを取り違えたことは明らかだ。ネットワーク効果、大規模なスケール、勝者総取りの経済性を重視した中央集権型のWeb 2.0は、もはや社会のためにはならない。

今こそ変化を起こす時だろう。Web3の起業家として、より協調的・創造的でユーザー中心のインターネットを育むオープンなインフラを構築するにあたって、前世代のテクノロジーの根本的な欠陥を解決するのは私たちの役目だ。

Web3がどのように現在のデジタルエコノミーの最も顕著な問題点を解決できるのかを説明しよう。

セキュリティやデータ管理の不備

Twitchは、背景をAmazonの創業者である億万長者Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)の写真に置き換えるなどのいたずらに悩まされ続けている。これらのセキュリティ問題は元従業員からの報告にもあったように、常在していたようだ。

中央集権的な組織と共有しているデータはすべて危険にさらされていることがわかってきた。銀行、小売業者、SNSプラットフォームからの個人情報の流出が何年も続いていることからも、インターネット上のものは何であれ、真の意味でのプライバシーを保てるとは考えられない。

Web3は暗号プリミティブに基づいて構築されており、多くの場合オープンソースコードを採用しているため、誰でもコードをレビューすることでプロジェクトに貢献することができる。これによりユーザーのセキュリティが向上し、透明性が競争力につながる。これは、単にプライバシーに基づいているだけではなく、実際にユーザーの価値を守ることにつながる。セキュリティ研究者の@samczsunは、0x、Livepeer、Kyber、Nexus Mutual、Aragon、Curveなどのプロトコルに潜在するエクスプロイトを特定し、失われた可能性のあった価値を数十億ドル(数千億円)分救済した。

相互運用可能な規格の意味するところは、ERC-721ベースのNFTは多数の異なるフロントエンドアプリケーションで取引や閲覧ができ、ERC-20トークンは注目と価値を得るために競い合う金融商品のエコシステム全体にアクセスできるということだ。これにより、プラットフォームにとってはリスクが上がり、セキュリティ侵害があった場合にユーザーの流出につながる可能性がある。

有害性とプラットフォームの説明責任

Twitchのハッカーたちは、違法で不道徳な行為を行ったが、ある点では正しかったと言える。ストリーミングプラットフォームの有害性は増しており、大規模なハイテク企業は問題の大きさに見合った対応をするのに苦労している。だがWeb 2.0の世界では、ストリーマーには実行可能な代替手段がない。YouTubeやFacebook Liveに移行することはできても、それはまた別の有害なアテンション・エコノミーのプラットフォームに置き換えるだけのことになる。

これらの現実は、クリエイターがこれまで以上に力を持つ環境を受けた結果だ。ファンは好きなクリエイターを好きなプラットフォームでフォローし、それがクリエイターに大きな影響力を与える。有害性から逃れるためには、クリエーターはクローズド・プラットフォームから出て、コミュニティとの直接的な関係を通じて自分の運命をコントロールするためのWeb3ツールが必要だ。

またWeb3は、ユーザーとプラットフォーム間の力関係を再調整し、ユーザーは自分のデータをコントロールできるようになる。Spruceのようなデータ管理プラットフォームが提供する相互運用性とポータビリティのおかげで、Web3プラットフォームによってユーザーは簡単に「退場による意思表示」を行い、別のプラットフォームに移行できるようになる。

ConfluxやMoralisのような企業によって、ブロックチェーンや規格を超えた規模拡大が容易になったため、競合他社は機会があればいつでも迅速に行動を起こすことができる。例えば、NFTの取引プラットフォームであるOpenSeaが、どのNFTが取り上げられるかを知った上でインサイダー取引を行っていた可能性があることがユーザーに発覚した際には、Artionのような代替プラットフォームが登場し、NFT市場で認識されている不満の一部を解消した。このような市場の動きに対する迅速な反応は、規模の大きさと閉鎖的なアクセスに依存して新規参入を阻む従来のWeb2.0のエコシステムには存在しないものだ。

しかし、Web3.0はユーザーとの直接的な関係をはるかに超えている。これらのプラットフォームはユーザーが所有し、コミュニティが主体となっているため、コミュニティが自ら節度ある行動をとるような動機付けがなされている。動画配信のケースでは、大切なメンバーを他所に追いやるようなヘイト・レイドを望むコミュニティはないだろう。

Web2.0の世界では、ユーザーはプラットフォームが行動を起こすのを待たなくてはならない。Web3では、ユーザーは内蔵されたガバナンスとモデレーションのメカニズムを通じて行動することができる。Mirrorのブログプラットフォームでは、毎週誰が記事を書いて公開するかをユーザーが投票で決めている。Web3 indexでは、掲載されているプロジェクトが後続のプロジェクトの追加や削除を管理し、エコシステムの健全な成長を確実にしている。

Facebookの内部告発者は、Facebookには2層構造の司法制度があり、有名人は一般ユーザーとは異なる扱いを受けていることも明らかにした。一般のアカウントが利用規約に違反するとペナルティを受けることがあるが、多くのフォロワーを持つアカウントは同じ行為をしても逃げられる可能性がある。

Web3ではこの点も修正され、ブロックチェーンの不変性のおかげで透明性が高まり、検閲にも耐えられるようになった。意思決定はSnapshotのようなツールを使ってオープンに行われ、より広範なコミュニティによって推進される。ガバナンスはブロックチェーン上で行われ、誰もが見ることができる。裏取引や二層構造の司法制度はない(もちろん、投票でそう決められた場合は別だが)。すべてコミュニティ主導で行われるため、方向性や透明性のレベルに納得がいかない場合は、参加者は簡単に去ることができる。

不均衡なクリエイターエコノミー

Twitchのリークにより、トップパフォーマーと一般のクリエイターの支払い額に大きな格差があることが明らかになった。このようなダイナミクスは、プラットフォームと一部のクリエイターのみの間でインセンティブの合意を形成する。少数のクリエイターが収益の大半を占めるようになると、プラットフォームは最も重要なインフルエンサーに注目を集めるようになる。

Web3のパラダイムは、アクセスを民主化し、クリエイターとファンの間のサイロを解消することで、このようなインセンティブのズレを解消する。NFT、デジタルペイメント、トークン、クラウドファンディングといったWeb3のクリエイター向けマネタイズメカニズムは、クリエイターに優しいやり方で条件を平等にする。glass.xyzのようなプラットフォームを利用しているアーティストたちは、魅力的なライブストリームとともにNFTによって、Web 2.0モデルで販売するよりもはるかに優れた方法でコンテンツを収益化できることを発見した。

Web3では、ユーザーは自分のプラットフォームを所有することができ、多くの場合トークンによって調整される。ユーザーはプラットフォームの成長によって直接利益を得られるため、例えばモデレーションのような重要なサービスを提供する動機にもなる。

また、ユーザーはファントークンを購入することで、お気に入りのクリエイターにさらにコミットし、情熱を共有することで、健全なファンコミュニティを育むポジティブなフィードバックループを構築することができる。Rally、Socios(Chiliz上に構築)、Rollなどのプラットフォームは、クリエイターが自分の評判、権威、創造性を仲介者なしで直接収益化できるツールを提供する。これによりクリエーターがプラットフォームとなることで、インセンティブがさらに合致に近づく。クリエイターは関与のルールを定義することができ、利害関係のない第三者に干渉されずに、健全なコミュニティの維持に必要なことを行うことができる。

インターネットのアップグレードは、社会にとって良いこと

社会構造や経済構造の多くが民間企業数社が管理するインフラに依存していることは、間違いなく有害である。また、そのような企業が説明責任を果たさず、変革を約束しても注目が集まらなければ道半ばで終わってしまうようでは、ダメージはさらに大きくなる。

しかしWeb 2.0を完全に排除することはそれほど重要ではなく、社会が切実に必要としているインターネットのアップグレードを行うことが重要なのだ。Web 2.0のツール自体は非常に大きなポジティブなインパクトを持っているが、そこにはトレードオフもある。Web 2.0の構造的な誘引により、責任を負わない柔軟性に欠けるビッグテックによる独占が起こった。Web3は、先行するWeb 2.0の良い点を取り入れ、すべてのユーザーの間でエコノミーとインセンティブを調整することで、インターネットを進化させ、広告モデルの悪影響を回避できる。

文化とコントロールという点では、中央集権的なクローズド・プラットフォームよりも分散型サービスの方が圧倒的に有利だ。Web3は、データのポータビリティと相互運用性によってユーザーに力を与え、自己管理型のコミュニティをサポートするような動機を中心に置き直すことで、コミュニティを育成するためのまったく新しい方法を提案している。

ハウゲンは正しい。「Facebookを解体することが重要なのではありません。進むべき道は、透明性とガバナンスです」。私たちは皆、より良いものを得られるべきだ。そして、透明性とコミュニティのガバナンスを優先するサービス、プラットフォーム、製品こそが、次のデジタル経済の時代に繁栄するだろう。

画像クレジット:Peter Dazeley / Getty Images

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(文:Doug Petkanics、翻訳:Dragonfly)

【コラム】クリエイターエコノミーとクリエイターテックが実現する大きなビジネス

クリエイターエコノミーという言葉を聞いたことがある人は少なくないはずだ。もはや新しい概念ではないし、それが何かをよく知っている人もいるだろう。しかし、その名が示す通り、クリエイターエコノミーにはクリエイターが必要だ。

私たちがクリエイターエコノミーと呼んでいるものは、本質として2つのグループを内包している。1つは、主に独立したクリエイターで構成された、大規模で分散化された非定形のグループで、何らかの方法でデジタル空間に接続されているものだ。ミュージシャン、ビジュアルアーティスト、映像クリエイター、グラフィックデザイナー、ブロガー、インフルエンサーなどがこれに含まれる。そしてもう1つは、こうしたクリエイション(創造)を可能にするツールを提供する企業やプラットフォーム(クリエイターテック)で、その延長線上には、配信や収益化も含まれる。

当然のことながら、クリエイターエコノミーのビジネスは基本的にデジタル上で行われ、ハイテクの領域にある。これにより、組織に属さないクリエイターが従前よりも簡単に自分の作品で収益を上げることができるようになった。

これが、長期にわたり栄華を極めてきたスーパースターモデルの崩壊のきっかけにもなっている、というのは驚くべきことだろうか。スーパースターモデルとは、一部の著名なスター集団によるコンテンツをユーザーが視聴するという、昔ながらのエンターテインメントビジネスの手法である。何十年にも及ぶスーパースターモデルのもとで、サブカルチャーが繁栄していなかったわけではない……実際繁栄していたのだが、大きな収益を上げることは難しかった。

クリエイターエコノミーとクリエイターテックは、どちらかというと自然に発生したものだ。当初はバイラリティ(SNSなどであっという間に人気が爆発すること)や新しいソーシャルメディアチャネルを通じたオーディエンスのアクセスで実現したシフト(変化)だったが、今やクリエイターテック自体が独自の世界を構築している。そのため、スーパースターモデルからのシフトを継続できるかどうかが、クリエイターテックの存続の鍵となっている。

スーパースターモデルに風穴を開ける

Netflix(ネットフリックス)は、7月16日の株主総会で「TikTokは『驚異的な』成長を遂げている」として、真のライバルであることを認めた。NetflixがTikTokの競争力を最初に認めたのは、2020年、TikTokに対応すべく「Fast Laughs(ファストラフス、短いおもしろ動画)」を立ち上げたときだったと考える人もいるかもしれない。Fast LaughsはTikTokのコンセプトを借用して、Netflixのコメディーラインナップから抜粋した短いクリップを提供する動画フィードである。

Netflixが長い間スーパースターを利用してきたのは紛うことなき事実である。Zac Efron(ザック・エフロン)は世界中を旅し、Paris Hilton(パリス・ヒルトン)は料理をし、有名なコメディアンは1つ以上のスペシャル番組を持ち、オリジナルの映画やシリーズでは、ほんの数例挙げるだけでもTimothée Chalamet(ティモシー・シャラメ)、Jane Fonda(ジェーン・フォンダ)、Sandra Oh(サンドラ・オー)、Anthony Hopkins(アンソニー・ホプキンス)などが活躍している。古き良き時代の姿だ。

一方、TikTokにおける最大のスターは、いわゆる「スター」ではなく、たまたまおもしろくて、賢くて、痛烈で、アルゴリズムの運と自分の創造性だけで視聴者を集めたごく一般の人々である。たとえ有名でなくても、多くのクリエイターがニッチなフィールドを見つけ、熱心なファンを獲得している。彼らは(オーディエンスの)貴重な注目と視聴率を奪う新しいプレイヤーだ。

クリエイターエコノミーには「テントポール」の作品が存在しない。テントポールとは、そのスタジオ自体の経営を左右するほどの大ヒットを記録する作品を意味する用語である。ほとんどのアルバムは制作費を回収できない(メジャーレーベルでも同様だ)。そこにAdele(アデル)が現れてレコードを発表し、回収できなかったレコードの代金を支払い、多少の収益をもたらす。

これはクリエイターエコノミーには当てはまらない。確かにTikTokでもKhaby Lame(カベンネ・ラメ)のようなタイプのスターが生まれている。彼は、複雑すぎるライフハックに対しておもしろおかしく苛立ちを表現することで世界的に有名となり、今ではMeta(メタ)の宣伝をしている

しかし、カベンネ・ラメのフォロワーが、彼の最新の動画を観るためだけにアプリを開く(そして視聴後はアプリを閉じる)ことはない(そうさせないようにアルゴリズムが設計されているのだが、それはまた別の話だ)。フォロワーたちはこれらの有名人だけでなく、小規模なクリエイターも数多くフォローしており、彼らが鑑賞する動画の大半は、世界的に有名ではないクリエイターが作ったものであることが統計的に明らかになっている。

小規模クリエイターがニッチなフィールドで成功を収め、熱心なファンを獲得し、すべてが変わりつつある現在、クリエイターテックもリアルタイムでそのニーズに応えるために進化している。クリエイターの幸福(ウェルフェア)を重視し、その維持を最優先すべき時が来た。

良い倫理観=良いビジネス

クリエイターの報酬を単に倫理的な問題としてとらえるのは簡単だが、すでに語りつくされた議論である。もちろんアーティストは自分の作品にふさわしい報酬を得るべきだ。では、別の視点から考えてみよう。

クリエイターエコノミーにおけるテックプラットフォームや企業が活動を存続するためには、小規模クリエイターへの公正な報酬をビジネスモデルの中核とすることが重要である。クリエイターをプラットフォームに呼び込み、定着させて、プラットフォームへの需要を喚起するのである。

これは現実的な解法でもある。今は90年代ではないし、大きなイベントも存在しない。クリエイターテックにとってはクリエイターの数こそが重要である。プラットフォームの需要を支えているのは多くの小さなクリエイターたちだ。

クリエイターテックは、小規模クリエイターの支援に全力で取り組むべきである。彼らを支援し、適正な報酬を提供し、クリエイターをスポンサーやパトロンと結びつけるプラットフォームを継続的に改良していかなければ、スーパースターモデルに対する(クリエイターエコノミーの)進化はすべて無駄になってしまい、クリエイターテックは自らの首を絞めてしまうことになる。

クリエイターの利益よりも(プラットフォームを提供する企業の)株主の利益の方が大きいというビジネスモデルは、特に視聴者の需要と支払い意欲が高い状況において、望ましいものではなく、持続可能性も損なっている。コンテンツクリエイターが更新を中断すると罰せられるようなアルゴリズムは馬鹿げており、廃止すべきだ。クリエイターエコノミーモデルとそれを利用する企業は、根底から見直しを行うべき時である。

クリエイターテックは、クリエイターのパトロネージュ(支援者)としての役割を受け入れ、革新し続けなければならない。すでに特定のクリエイターのニーズに対応して、場合によってはブランドとクリエイターを結びつけて収益性の高いパートナーシップを実現する、競争の激しいパトロンサービスの市場を作り出そうとしているクリエイターテックも存在する。

Substack(サブスタック)は、フリーランスライターのためのプラットフォームを進化させようとしている。Patreon(パトレオン)はあらゆるタイプのコンテンツクリエイターに使ってもらえると自称しているが、公式な手段ではない。今後は最も多くの報酬、知名度、チャンス、そして最も使いやすいサービスを提供するプラットフォームが勝利することになるだろう。

ライセンス、配信、ブロックチェーン認証などの面で進化を続けることは、クリエイターのウェルフェアにとっても、これらの進化を実現する企業にとってもメリットがある。アートオークションのプラットフォームが従来型のギャラリーの枠を超えてユーザーに利用してもらうにはどうするべきだろうか。デジタル音楽、映像、画像のライセンシング(ライセンスを供与して利益を得る行為)は加速し、映像コンテンツクリエイター、フォトグラファー、ソングライターなどのクリエイターエコノミーの中で重要な役割を果たしている。

冷静に考えれば、収益を上げる過程で誰かが搾取される必要はないのだ。

小規模クリエイターへの投資は経済的にもメリットがある

個人がクリエイターになる時代、クリエイターテックが負うクリエイターに対する責任は、自己保身のためだけでなく、倫理的にも重要である(繰り返しになるが、クリエイターテックは小規模クリエイターのエコシステムが充実していなければ成立しない)。スーパースターエコノミーは、プラットフォームやメディアに散在する熱心なファンを持つ独立したクリエイターが支えるエコノミーに道を譲ろうとしている。

活発なクリエイターエコノミーには、まずクリエイター自身の健全な成長が必要である。熱心なファンは意外なところからボトムアップで生まれるので、オーディエンスがコンテンツに簡単にアクセスできることが必要だ。クリエイターテックの成功は、クリエイター自身の成功と切り離せない関係にあるのだから、クリエイターテックはクリエイターを搾取してはならない。

テック産業は、自分たちの命運をユーザー(クリエイター)の命運と結びつけて考えない悪い癖がある。純粋なビジネスの観点からも、倫理的な観点からも、クリエイターテックはこの間違いを犯してはならない。

編集部注:Ira Belsky(イラ・ベルスキー)氏は、Artlistの共同設立者兼共同CEO。

画像クレジット:Stephen Zeigler / Getty Images

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(文:Ira Belsky、翻訳:Dragonfly)

ストリーミングに対する公正な支払い実現のために、Tidalがミュージシャンへの直接支払いシステムを構築

先に、Tidal(タイダル)と人気の独立系音楽ディストリビューターであるDistroKid(ディストロキッド)連携し、アーティストへの直接支払いシステムを発表した。Tidalによる今後のより大規模なシフトを予感させる今回のパートナーシップは、1日に何百万ものストリームを得ることのできない世のミュージシャン(要はテイラー・スウィフトやリル・ナズ・Xではない全ミュージシャンである)に資金をより公平に分配できるとされるストリーミングの支払いモデルを実験するためのものである。

Tidalの月額19.99ドル(約2300円)のHiFi Plusプランに加入している場合、月額利用料の最大10%、約2ドル(約230円)が最もよく聴いているアーティストに分配されるシステムで(そのアーティストがDistroKidを利用している場合に限定される)、Apple(アップル)やGoogle(グーグル)のアプリストアのように、仲介金を取るサービスを通じてサブスクリプション料を支払っている場合この割合は減少する。CD Baby(シーディー・ベイビー)、Equity Distribution(エクイティ・ディストリビューション)、Stem(ステム)、Symphonic(シンフォニック)、Tunecore(チューンコア)、Vydia(ヴィディア)などの独立系ディストリビューターとも同様の契約を結んだとTidalはTechCrunchに対して話している。

このモデルは、一般的にアーティストに支持されているユーザー中心型決済システム(UCPS)の一例だ。UCPSを採用しているストリーミングサービスDeezer(ディーザー)によると、このシステムではファンのストリーミングに基づいてアーティストにサブスクリプション料金が分配されるため、個々のファンが好きなアーティストをより直接的かつ透明性をもってサポートすることができるという。Apple Music(アップルミュージック)のような1ストリームあたり約1セント(約1.1円)が支払われるプラットフォームで10曲入りのアルバムを1回聴いたとすると、そのアーティストは10セント(約11 .4円)の収入を得ることになる(ただしこれはディストリビューターやパブリッシャーが取り分を得る前の価格である)。しかし、DeezerやSoundCloud(サウンドクラウド)のようにUCPSを採用したプラットフォームでは、あるユーザーが1カ月に10人のアーティストの10枚のアルバムを聴いたとすると、そのユーザーの月額利用料の一部がその10人のアーティストに分配されることになり、各アーティストは10セント以上の報酬を得ることができる。つまりCDを買うのと同じ原理で、そのCDをどれだけ頻繁に聴くかではなく、そもそも買ったという事実が考慮されるということだ。

TidalがTechCrunchに話してくれたところによると、独立系ディストリビューターとの契約に加え、2022年1月からはHiFi Plusのレイヤーにもある種のUCPSが導入されるという。Tidalはメジャーレーベルとインディーズレーベルを含む100以上のレーベルと協力して、同社が「ファン中心型ロイヤリティプログラム」と呼ぶシステムを開発したと話している。

画像クレジット:Deezer

現在、Apple MusicやSpotify(スポティファイ)などの主要ストリーミングプラットフォームは、総ストリーミング数に応じて金額を分割するプロラタ方式で支払われている。しかし、音楽著作権侵害の危機に対する答えとして始まった音楽ストリーミングサービスの成長は、全体的に見るとミュージシャンにとってあまり有益なものではなかった。現代ミュージシャンの主な収入源はツアーのため、パンデミックの影響で多くのコンサートが中止になった今、ストリーミング配信の支払いの不公平さがより顕著になったのである。

Union of Musicians and Allied Workers(UMAW)は2020年「Justice at Spotify」というキャンペーンを開始した。このキャンペーンではストリーミング大手のSpotifyに対し、UCPSの採用、支払いに関する透明性の向上、1ストリームあたり最低0.01ドル(約1円)の支払いを要求している。UMAWによると、現状では同プラットフォームは1ストリームあたり平均0.0038ドル(約0.4円)を支払っていると推定されているが、Spotify自身はストリームあたりの支払いが意味のある分析値ではないとして、この値を開示していない。

Joey DeFrancesco(ジョーイ・デフランセスコ)氏はUMAWを代表して、TechCrunchに次のように伝えている。「Tidalのユーザー中心型決済システム採用に向けた取り組みは称賛すべきものです。これは2020年に「Justice at Spotify」キャンペーンを開始して以来、私たちが要求してきたシフトであり、DeezerやSoundCloud(サウンドクラウド)ではすでに採用されています。ユーザー中心型は特効薬ではなく、ストリーミングロイヤルティにはより根本的な変化が必要ですが、それでも正しい方向への一歩と言えるでしょう」。

一方Apple Musicは、2021年初めに流出した社内メモによると、1ストリームあたり平均0.01ドル(約1円)を支払っている。Tidalも同様の額を支払っているといわれているが、同社自身は正確な数字を明かしていない。そしてストリーミングリーダー3社の中で最も多くの加入者を抱えるSpotifyは、最も低い金額を支払っている。

Spotifyのユーザーは競合他社のプラットフォームのユーザーよりも多くの音楽をストリーミングしているため、競合他社と比較して1ストリームあたりの支払額が少ないように見えるだけだとSpotifyは指摘している。また、Apple MusicやTidalとは違い、Spotifyは広告で補助された無料版を提供しており、これがストリームあたりの支払額の指標を歪めている可能性があるとしている。

ストリーミング配信の収益はアーティストに直接届くわけではなく、まずアーティストの所属するレコードレーベルやパブリッシャーに分配される。アーティストが1ストリーミングあたりに得られる金額は業界内の契約によって異なるが、UMAWによると、独立系アーティストが米国の国民中央値である1078ドル(約12万3000円)の月額家賃を支払うためには、毎月28万3684回のSpotifyストリームを達成する必要がある。

Spotifyは2018年にDistroKidの少数株を取得しているが、つい数週間前発表された四半期ごとのSECファイリングによると、DistroKidの持分の3分の2を約1億6300万ドル(約185億4000円)で売却したことが明らかになっている。このタイミングでDistroKidが、よりミュージシャンに優しいサービスであるTidalとすぐに契約を結び、UMAWがSpotifyに要求しているポリシーを実行に移したというのは実に興味深い。

しかしSpotifyは、ユーザー中心型決済システムが実際にどれだけアーティストの利益になるのか懐疑的だ。フランスの国立音楽センターの調査によると、上位1万以外のアーティストの場合、年間の支払い額は「せいぜい数ユーロ」しか変わらないという。

Spotifyのウェブサイトには次のように記載されている。「アーティスト、ソングライター、権利者が望むのであれば、我々はユーザー中心モデルへの転換を喜んで行います。しかし、Spotifyが単独でこの決定を下すことはできません。この変更を実行するには、業界の幅広い連携が必要不可欠です」。

UCPSの1バリエーションであるTidalの独立系ディストリビューターとの取引モデルは、確かにアーティストにとってはより有益なものになる可能性があり、最も多くストリーミングされたアーティストに対してユーザー1人あたり毎月2ドルのボーナスを支給すれば、それなりの効果が期待できる。しかし、どのようにしたらストリーミングプラットフォームがビジネスを運営しながらミュージシャンに対して正当な対価を支払うことができ、業界全体に変化をもたらすことができるかは、試行錯誤を繰り返さなければ見極めることができないだろう。

「ストリーミングのサブスクリプションコストが、実際に配信されているアーティストを直接サポートするというのは、正しい方向性への第一歩であり、私自身もTidalユーザーとしてうれしく感じています。とはいえ、月2ドルのボーナスは、1ユーザーにつき1アーティストにしか与えられず、独立したディストリビューター経由で契約したアーティストに対してのみのため、多くのミュージシャンにとって納得できるものではなく、形式的にも感じられます」とUMAWのメンバーであるSadie Dupuis(セイディー・デュピュイ)氏はTechCrunchに話している。デュピュイ氏はSpeedy Ortiz(スピーディ・オーティス)やSad13(サッドサーティーン)といったバンドのフロントを務めている。「一般的に、どの程度の自己配信型アーティストが、月間最もストリーミングされたアーティストの1位になれるのか知りたいところです。また、レーベルから配信されているアーティストは除外されています。彼らも公正なストリーミングロイヤルティを必要としていますし、特にそのロイヤルティの50%以上をレーベルと分割している場合はなおさらです。彼らの楽曲がどう配信されているかに関わらず、このサブスクリプションコスがより多くの音楽関係者に比例して分配されるようになればどんなにすばらしいかと思います」。

画像クレジット:DistroKid

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

アンドリーセン・ホロウィッツのケイティ・ハウン氏、暗号資産で同社が成功した道のりを語る

Katie Haun(ケイティ・ハウン)氏がNFT(非代替性トークン)の支持者であるということは驚きではない。元連邦検察官で、現在はAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ / a16z)で強力な暗号化の実践を共同で先導しているこの人物は、少なくとも2018年にa16zがDapper Labs(ダッパー・ラブズ)を最初に支援したときからこの技術についてを学んでおり、今ではかなり貴重な存在となっている。

バンクーバーに拠点を置くDapper Labsは当時、CryptoKitties(クリプトキティ)と呼ばれる収集可能なデジタル猫ゲームで知られており、暗号コミュニティ外の人々を困惑させていた。2021年Dapperはブロックチェーン上でNBA Top Shot(NBAトップショット)という、スポーツファンがコレクション性の高いハイライトクリップを売買できるサービスを提供したことでブレイクしたが、むしろこれも全体の構想から見ればマイナーなユースケースであると、先に筆者が主催したサンフランシスコのイベントでハウン氏は話している。

広範囲をカバーした今回のインタビューで、ハウン氏は、現在集中しているNFTのユーザー層がこれから爆発的に増えると同氏が考えている理由を説明し、またNFTを収入源にしている比較的少数のクリエイターのみがNFTの恩恵を受けているという考えを否定した。また、a16zが導入した技術革新により、同社の暗号化投資の75%を占めるトークンを20%割引で購入できるようになった仕組みを説明し、さらには2019年にa16zが行ったように、すべてのベンチャー企業が登録投資顧問になるべきか否かというトピックについても話してくれた。以下では長さを調整するために編集を行っている。また、以下にフルインタビューを掲載している。

TC:a16zがNFTへのさまざまな期待について投資家に伝えていること、そして今後の筋道について。

根本的にNFTは、消費者やコンテンツ制作者にとって、インターネットのビジネスモデルを劇的に変えるものだと思っています。なぜ消費者にとって重要なのか?例えば今「Fortnite(フォートナイト)」のスキンを買ったとして、それなのに後にこのゲームがなくなったらどうでしょう。……しかしそれでは、自分のアイテムなどを別のプラットフォームに持っていくことができ、どこでも使うことができたとしたらどうでしょうか。これは消費者にとって非常に大きな力となります。消費者の手に直接パワーが戻るのですから。

また、コンテンツ制作者にとってもすばらしいことです。デジタル上の希少な商品であるトークンをプログラムすることで、今後のすべての取引において金銭的利点を得ることができるからです(そしてその過程で30%を取る中間業者を排除することができます)。これがクリエイターの経済にどんな影響を与えるか想像してみてください。今はデジタルアートに注目が集まっていますが、2022年の今頃は音楽の世界でどのような障壁が取り除かれるのかという話になっていると思います。

ハウン氏は現在、音楽関連のNFTに注目しており、シンガーソングライターのBillie Eilish(ビリー・アイリッシュ)を例にミュージシャンとNFTの間にどんな可能性があるか(場合によっては、すでに起こっているか)を話した。

ビリー・アイリッシュは当初インターネット上で一部のファンによって発掘されました。しかし、彼女を有名にした初期のファンたち、つまり彼女の本当のファンたちは、彼女のスターダムを共有できたでしょうか?まったくできていません。実際、彼女のスターダムを共有できなかっただけでなく、彼女がブレイクしたことで彼らの状況は悪化したと言えるでしょう。チケットの値段が上がり、スタジアムには長蛇の列ができ、コンサートは完売です。ところがもし、彼女を発見し、初期の彼女の成功に寄与した人々が、NFTやスマートコントラクトを通じて、ビリー・アイリッシュの成功に関連する何かを保有していたとしたらどうでしょうか。例えば、彼女がSpotifyに曲を録音した後に、関連するスマートコントラクトNFTを作成し、そういったファンにライブへの永久アクセス権を与えたり、彼女と一緒にツアーに参加したり、あるいは将来的に彼女のロイヤリティの一部を受け取れる権利を与えたりすることが考えられます。これで突然、レコード会社や弁護士、中間業者だけでなく、ファンも経済的な利益を共有することになります。

Twitch(ツイッチ)ではわずか1%のストリーマーが収益の半分を占めているというデータが流出したが、少数の人のみが経済的な利益を得ることができるようになっており、クリエイターにとっては、結局は現在と同じような経済状況になるのかというトピックについて。

2021年11月11日に開催されたStrictlyVCのイベントに登壇したケイティ・ハウン氏(画像クレジット:Dani Padgett)

これらのビジネスモデルは、まだ非常に初期の段階にあります。しかし、暗号化アーキテクチャの分散型システムについては、これで生計を立てられることがわかっており、このことはNFTですでに見られています。Beeple(ビープル)になって大金持ちにならなくても、生計を立てることは可能です。私はNFTをいくつか所有していますが、その中には、OpenSea(オープンシー)で買った、仕事を辞めてデジタルアートをプログラミングしている女性アーティストのものも含まれています。彼女はスマートコントラクトをプログラムしていて、私がこれらのNFTをあなたに販売したら、彼女はその販売額の一部を受け取ることができます。そしてあなたがそれを別の人に販売して、高い価格で評価されたら、彼女はその販売額からロイヤリティを受け取ることができるのです。

米国人の多くが生活費の支払いに苦しんでいる中、NFTは一部のお金に余裕のある購買層を中心に普及しているという認識を我々は持っている。この点についてハウン氏は、NFTが金持ちの道楽だと思われているのはもっともだが、この技術はまだ始まったばかりだと説明する。

NFTに関して言えばイノベーションの現状を、最終状態として判断しないことがとても重要だと思っています。おっしゃることはよくわかりますし、私自身もそういった現状を目にしています。しかしそれは物理的な世界でも同様で、ステータスシンボルという点では多くの米国人が苦労している一方で、高級車やロレックスを買える人がいるという状況が起きています。そのためデジタル界も大差ないでしょう。物理的な高級品があるように、現実の世界にも人々が所有したいと思う一般的な商品があり、そうしたより一般的な商品がデジタルの世界でも増えていくようになるのではないでしょうか。

ある時点から、話はa16zのディールフローに転換した。Coinbase(コインベース)とOpenSeaの2つの取締役会に在籍しているハウン氏は、そのおかげで暗号の世界で何が、誰が盛り上がっているのかをよく見ることができると説明する。

この世界の中心にいることができ、とても恵まれていると思います。私たちはエコシステムの最前列に座っていますが、それはChris Dixon(クリス・ディクソン)氏と私の2人が、長年にわたってCoinbaseの取締役を務めてきたからです【略】Coinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)も運営されていますが、【略】Coinbase Venturesに売り込みにこない暗号化プロジェクトはほとんどありません。私はOpenSeaでも現在役員を務めていますが、彼らは記録的な取引量を達成し、世界最大のNFTマーケットプレイスになった他、ベンチャー投資も行っています。このようにこの分野の大物たちとのつながりがあるだけで、彼らが取引をすることで、我々にも取引の流れが作られているのです。

当然暗号は非常にグローバルなものであり、現時点で我々はまさにグローバルな存在になっています。直近の暗号化ファンドでの投資のうち、少なくとも50%は海外からの投資だと思います。しかしだからこそ「CoinbaseやOpenSeaの役員を務めているから大丈夫」などと安心していてはいけないのです。多くの創業者がAndreessen Horowitzの名前を聞いたことがないような、さまざまな国の、さまざまなプロジェクトに対してオープンマインドでいなければなりません. . .私たちはここにいることが当たり前だと思っていますが、世界の他の地域の人々は私たちのことを聞いたことがないのです。私たちの価値を知らないのです。

場合によっては飛行機に乗らなければならないこともあります。Kiva(キヴァ)やMercy Corps(メルシー・コープス)のようなNGO、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)のような企業、Stanford(スタンフォード)やBerkeley(バークレー)のような大学やイスラエルのTechnion(テクニオン)大学をはじめとする世界中の多くの大学など、世界中の参加者に当社のプルーフオブステークシステムを委ねるデリゲートプログラムも開拓してきました. . . これまですばらしい取引が行われてきたからといって、それが今後も続くと期待して甘んじているわけではありません。暗号化投資家の市場は確実に拡大しています。

同社が店頭での直接取引を含むトークンへの投資を多く行っている理由についても話が出た。そのような取引において、a16zが何らかの優先的な地位を得ているのかどうか、またCoinbaseやOpenSeaのような従来の株式取引から会社がシフトしていった理由は何なのか、そして、こうした取り決めに反発し始めたのは、暗号化の創業者たち自身なのかどうかについても質問した。以下はそれに対するハウン氏の答えである(ハウン氏は株式取引が完全になくなったわけではなく、より多くのVCが株式取引を求めて競争を始めたために価格が高騰したのだと指摘している)。

もし優先的なレートを提供してくれる店頭窓口を知っているなら教えて欲しいものです。店頭の場合我々はその場で買っているだけで、特別な扱いは受けていません。どちらかというと. . .すべて店頭取引になってプロトコルの創設者は我々が投資家であることさえ知らないというような市場にはしたくないという意識が強いですね。

また、プロトコルが特定のベンチャーキャピタルの投資家を希望する場合もありますが、これは急速に変化しているので機敏に対応する必要があります。プロトコルの創設者が私たちの参加を強く望んでいた場合、実際に3年前、トークン環境の初期段階で私たちに割引をしてくれました。しかしこれは暗号化のエコシステムでは非常に不評でした。なぜVCの投資家がコミュニティよりも割安にならなければならないのか、と。

その懸念を払拭するために「それならロックアップをしてください。私たちは7年〜10年を見据えられる忍耐強い投資家であり、暗号化ヘッジファンドを運営しているわけではありません」と提案したわけです。例えばもし20%の割引を欲しいとしたら、その代わりに4年間、場合によってはそれ以上、それ以下の間ロックアップされることになるかもしれません。これは、私たちがさまざまなトークンディールにもたらした1つのイノベーションです。しかしロックアップと引き換えに割引を受けたプロトコルのため、私たちはたくさんの仕事をしてきたのです. .

この質問は重複するが、同氏がOpenSeaとCoinbaseの両方の取締役に就任していることについても質問が投げられた。その意図は、OpenSeaはNFTマーケットプレイスであり、暗号資産取引所のCoinbaseも最近NFTマーケットプレイスのようなものを作る計画を発表しているため、この2社が衝突しかねないのではないだろうか、というものだ。実際、CoinbaseのCEOであるBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏は先週の決算説明会で、NFTの市場は同社の暗号資産事業に匹敵するか、それ以上の規模になる可能性があると考えていると述べている。

ハウン氏はどのようにしてこの複雑な状況をやりのけているのか、さらにはCoinbaseがOpenSeaを買収するのではないかと質問すると、2つ目の質問に対しては首を横に振り、2社の衝突について次のように説明した。

それは悲観的な見方ですね。私は両者が衝突しているとは思っていません。まず第一に、Coinbaseがどのような計画を立てているかはまだ発表されていません。NFT分野で何かをすることを検討していると発表しただけで、それが何になるのかはまだわかりません。

ブライアン・アームストロングが数年前に言っていたことを覚えていますが、取引スペースに競合他社が参入し始めたとき、彼は「これはすばらしい」と言っていました。私は自分が何を見逃しているのか疑問に思ったところ彼は「これはパイが大きくなっている証拠です。大きなチャンスであり、他の人もそれに気づいているんです」と言ったのです。

同様にNFTの領域は非常に巨大なので、多くのプレイヤーが活躍できる余地があると思っています。私はこの領域で活躍する最先端の企業2社の役員を務められることを大変幸運に思っています。両社が衝突しかねないなどとは思いません。もちろん、もしそのような展開になったり、エコシステムがそのように進化したりした場合、元連邦検察官として私が対処しなければならないことになるでしょう。

暗号の創始者たちに注目されたければ、ベンチャー企業は登録投資顧問になる必要があるかどうかという質問についてハウン氏は明言を避けたものの、理に適っているのではとほのめかす。

暗号化専用ファンドはすべてRIAとして登録されています。今では多くのファンドが存在していますが、すべてRIAとして登録されているのです。規制状況が非常に不確実な今、トークンを保有したいのなら賢明なことでしょう。

画像クレジット:Dani Padgett

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

性的コンテンツの禁止で揺れたアダルト系SNS「OnlyFans」創業者兼CEOが退任、後任は広報担当者

OnlyFans(オンリーファンズ)の創業者でCEOを務めてきたTim Stokely(ティム・ストークリー)氏が退任することになったと、Bloombergが報じている。後任には、同社の元コミュニケーションマーケティング部長だったAmi Gan(アミ・ガン)氏が就任する。この動きは、OnlyFansにとって不安定な1年の終わりに行われたものだ。同社は8月にそのプラットフォーム上で繁栄しているセックスワーカーを禁止すると発表したが、この決定は1週間後に保留にされた

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広報担当者を会社のCEOに任命することが奇妙に思えたとしても、それは当然だろう。しかし、報道によると、これはストークリー氏自身の判断だったとのこと。同氏はアドバイザーとして会社に残ることになっている。

「私たちは、このクリエイターエコノミーに対する情熱を共有しながら、机を並べて仕事をしてきました」と、新CEOのガン氏は語る。「私たちの優先事項は、世界で最も安全なソーシャルメディアプラットフォームであるために引き続き全力を注いでいくことです」。

また、ガン氏は同社のsafe-for-work(職場で閲覧しても大丈夫)なストリーミングアプリであるOFTVに投資し、クリエイター向けの新しいツールを構築していくとも述べている。ストークリー氏自身のビジネスバックグラウンドがオンラインポルノであるのに対し、ガン氏はRed Bull(レッドブル)、Quest Nutrition(クエスト・ニュートリション)などのブランドや大麻カフェで働いた経験がある。

TechCrunchはOnlyFansに、このリーダーシップの変化がプラットフォーム上のセックスワーカーに影響を与えるかどうかを尋ねたが、OnlyFansはコメントを辞退した。

OnlyFansは、NSFW(not safe for work、職場での閲覧には不適切な)クリエイターのおかげで繁栄しており、8月には2021年の売上高が、2020年の12億ドル(約1370億円)から大きく増加し、25億ドル(約2860億円)に達する見込みであると発表していた(OnlyFansはクリエイターの収益の20%を徴収する)。しかし同時に、OnlyFansは同社を10億ドル(約1140億円)規模の企業にしたセックスワーカーたちの生活を脅かすような爆弾発言をした。それは、OnlyFansがNSFWコンテンツ(つまり、露骨に性的なコンテンツ)を禁止するというものだった。それが急速に反発を招いた後、OnlyFansはこの決定を保留し、銀行プロバイダーとの問題を解決したと発表している。

それでも、セックスワーカーたちは、プラットフォームから追い出されることを懸念しているようだ。結局、OnlyFansは禁止措置を撤回するのではなく「保留」すると言っているのだ。

OnlyFansのようなプラットフォームがセックスワーカーを排除すると脅すことは、彼(女)らが生活の糧を失うことを意味するだけでなく、彼(女)らをより危険なオフラインの労働環境に追いやることにもなりかねない。

米国議会は2019年に「Safe Sex Workers Study Act(性労働者安全調査法)」を導入し「Fight Online Sex Trafficking Act(FOSTA 、インターネット上の性的人身取引対策法)」など、オンラインでのセックスワークを困難にする法律の影響を調査した。この研究では、セックスワーカーが「オンラインプラットフォームへのアクセスによってもたらされる経済的安定性」を失った後「コミュニティ組織は、セックスワーカーのホームレス化が進んでいると報告していた(いる)」ことが判明した。

OnlyFansにおける変化の可能性は、プラットフォームからプラットフォームへと移ることがどれほど大変なことかを知っているセックスワーカーにとっても恐怖である。Patreon(パトレオン)でさえ、2018年にセックスワーカーをプラットフォームから排除した。同社はポルノを決して許可しないと言っていたが、何年もの間、このガイドラインは厳格に施行されていなかったため、セックスワーカーは同プラットフォームを利用して生計を立てることができていた。

Patreonでは、少なくともクリエイターはサブスクリプション会員のメールアドレスにアクセスできるので、プラットフォームの仲介がなくてもファンベースと連絡を取ることが可能だ。しかし、OnlyFansは、Instagram(インスタグラム)やTwitter(ツイッター)と同様に、たとえ誰かにフォローされても、その人と直接コミュニケーションを取る手段がない。顧客と連絡を取る手段がなかったら、どうやって別のプラットフォームで新しいビジネスを構築すればいいのだろうか?

OnlyFansは、このリーダーシップの変化がセックスワーカーを危険に陥れると暗示してはいないが、NSFWクリエイターの信頼をすでに翻弄してきたプラットフォームにとって、これは重大な変化である。

画像クレジット:NurPhoto / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグルのArea 120、デジタルクリエイター向けウェブストアフロントを提供するサービス「Qaya」を開始

米国時間12月15日、GoogleのチームがQayaという名前の新しいサービスを立ち上げた。クリエイターはこのサービスを使ってウェブ上に店舗をオープンし、自分のプロダクトやサービスをオーディエンスに直接販売することができる。Area 120は、初期のプロジェクトの多くがGoogleのCloud、Search、Shopping、Commerceなどの部門に移管されたことを受け、地位を昇格させた会社の大規模な再編成の一環となる。

関連記事:「Google Labs」の名が復活、AR&VR、Starline、Area 120が新設された「Labs」チームに移動

新プロジェクトQayaは、Area 120の社内創業者であるNathaniel Naddaff-Hafrey(ナサニエル・ナダフ-ハフリー)氏らが共同で創業した。ナダフ-ハフリー氏は以前、求人のマーケットプレイスKormoに在籍し、インドやインドネシア、バングラデシュなどのいわゆる「次の10億人の」インターネットユーザーを狙っていた。

彼は何十人ものクリエイターから話を聞き、デジタルビジネスの構築は時間ばかりかかってたいへんであることを理解し、そこから、彼らがファンに直接販売できるサービスとしてQayaを考えた。Qayaのチームにも数名のクリエイターが在籍しており、既存のクリエイターツールを使った体験を貴重なものとしてQayaに持ち込んだ。彼らは自分の体験と他のクリエイターたちの話から、クリエイターが自分の作品でお金を稼ぎ、自分のファンともっと良好な関係を築ける、ワンストップショップのような、柔軟性に富んだノーコードのプロダクトへの需要があることを知った。

Qayaのソリューションでは、クリエイターが自らの店をウェブ上に開き、プロダクトやサービス、その他のダウンロード可能なデジタル作品を並べて販売する。そこには、彼らのYouTube Merch Shelfのリンクがあってもよいし、Google検索やGoogleショッピングを統合することができる。写真やファイル、eブック、デジタルアート、写真のフィルターやプリセット、各種の仕事の生産性を高めるためのテンプレート、編み物のパターン、フィットネスのビデオなど、扱える作品にはほぼ制限はない。Googleによると、1つの店で最大1000のプロダクトを取り扱うことができる。

画像クレジット:Google

また、デジタル作品ではないリアルのグッズや他のプラットフォーム上のサービスを売りたいクリエイターは、それらをQayaのページ上にフィーチャーでき、それらを自分のブランドにすることもできる。

各ストアは「qaya.store/●●●」という形の独自のカスタムURLを持つ。そしてそれを、LinktreeBeaconsなどが提供しているソーシャルメディア上のいわゆる「リンクインバイオ(プロフィール上のリンク)」の代わりに使ってもよい。

そうしたストアのサービスを利用するとクリエイターは、自分のさまざまなオンラインプレゼンスを指すマイクロウェブサイトを作ることができる。そこで、ソーシャルメディアのチャンネルとかショップ、ブログ、音楽やポッドキャストなどを紹介し、リンクを張ればよい。

この種のサービスの慣行に倣って、Qayaのストアでもページ最上部にある名前と自己紹介の下に、クリエイターは他のオンラインプロフィールのリンクも置ける。しかし、ストアの本来の目的は、クリエイターが販売したいと思うコンテンツにファンを直接コネクトすることだ。ファンをクリエイターのプロフィールやその他のサービスにコネクトする、単なるランディングページではない。

QayaにはGoogle Payが組み込まれており、サブスクリプションやチップ、都度払いなど、いろいろなタイプの収益化方法をサポートしている。また、Qayaはクリエイターの商品の売れ行きに関するインサイトや分析も提供する。

現在、このプロダクトは無料で使用でき、マネタイズはトランザクションベースで管理されている。つまり、クリエイターはQayaにアップロードして販売した商品から得られる収益の「大部分」は、クリエイターの手元に残るとGoogleはいう。

画像クレジット:Google

Googleは現在、Qayaのベータに参加した一部のYouTubeクリエイターに、YouTube Merch Shelfの統合を進めている。同社によると、そのうちQaya でも、もっと広い範囲のプロダクトを販売できるようにするという。「その他のタイプのデジタルグッズ」も含まれるとのことで、おそらくそれはNFTのことだろう。Googleは、この話題について無視しているが。

画像クレジット:Google

Googleによると、この新しいサービスは米国では本日からローンチし、他の国のユーザーはこれからとなる。Qayaのベータにアクセスしたいクリエイターは、Qayaのウェブサイトで招待状をリクエストできる。

画像クレジット:Google

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ユーチューバーがリアルで「イカゲーム」を再現、ハリウッド並予算で作られたYouTube動画がクリエイターに与える影響

韓国のサイコスリラー「Squid Game(イカゲーム)」が話題になった。「イカゲーム」は1億4200万人の視聴者を獲得し、Netflix(ネットフリックス)のシリーズ史上最大のヒット作となった。そして今、ユーチューバーのMrBeast(ミスター・ビースト)が、ドラマのタイトルになった死闘を再現し、8日間で1億4200万回の再生回数を記録したことが話題になっている(誰も殺されていないのでご安心を)。

関連記事:Netflix配信の韓国ドラマ「イカゲーム」、全世界で1億4200万世帯が視聴

先日、YouTubeの米国トップクリエイターに2年連続で選ばれた23歳のJimmy Donaldson(ジミー・ドナルドソン、MrBeast)氏は、セットを用意し、456人の参加者の衣装を作り、Netflixのドラマに限りなく近い動画を制作した。そして、Netflixの人気シリーズ同様、最後まで勝ち残ったプレイヤーは、人生を変えるような賞金を手にする。ドナルドソン氏の動画では、参加者は45万6000ドル(約5150万円)を獲得するチャンスが与えられた。

ドナルドソン氏の「イカゲーム」が、少なくとも再生回数では元祖「イカゲーム」と同じくらい人気を呼んだのには、いくつか理由がある。1つには、YouTubeは無料で、Netflixはそうではないからだ。

だが、動画がバイラルにする(拡散する)ためには、コストがかかる。同氏は、25分の動画に、なんと350万ドル(約4億円)もかかったとツイートした。ちなみに、Netflixの全9話のシリーズにかかったコストは、合計2140万ドル(約24億円)。シリーズ1時間あたり平均240万ドル(約2億7000万円)だ。

ドナルドソン氏のような人気ユーチューバーであっても、Netflixのような上場グローバル企業が持つ経営資源にはかなわない。そのため、ドナルドソン氏のように、衝撃的なスタント(人目を引くための馬鹿げた行為)を内容とする動画を作るクリエイターにとって「イカゲーム」の再現のような、前例のないことをするのは難しくなっている。

「イカゲーム」リリース後、9時間を割けなかった人のために、背景を説明しよう。「借金まみれから一生抜け出せないなら、途方も無い富を手に入れるために死闘を繰り広げてみてはどうか」。これが、韓国の債務危機に対するHwang Dong-hyuk(ファン・ドンヒョク)監督の答えだが、海外の視聴者にも共感してもらえるだろう。米国では学生の借金が1兆7300億ドル(約195兆円)に達し、過去10年間で91%以上増加した。もしあなたが、たった一度、歯医者に行っただけで、これまでの貯金を使い果たしてしまうのではないかと心配しているのであれば、登場人物たちが手っ取り早く金を手に入れようと必死になる姿に共感するのは難しくないだろう。

「イカゲーム」の中で、そのゲームは、裕福なエリートたちが自らの娯楽のために作ったものであることが明かされる。貧しい人々がゲームの条件に同意するなら、死闘を演じさせてはどうだろう、ということだ。

そこまで極端でなくても、MrBeastの動画が行っていることも同じだ。同氏は、普通の人々に大金を渡し、自らのブランドであるパフォーマンス的な慈善活動で、何百万人もの視聴者を楽しませ、注目を集めることで金銭的な利益を得ている。

予想どおり、MrBeastの「イカゲーム」動画には、Netflixのドラマをあれほど魅力的にした、感情的な共鳴やサスペンスが欠けていた。参加者は何のリスクも負わないため、昼間の「Wheel of Fortune(米国のゲーム番組)」の再放送と同じ程度に、懸けられたものが小さく感じられる。だがドナルドソン氏は、このスタイルのYouTubeコンテンツを開拓しただけでなく、完成させた。とんでもなく馬鹿げたことをすれば、みんながそれを見てくれる。YouTubeでは視聴時間が金になる。ただ、このモデルを追求していくと、ユーザーの注目を集めるための投資コストが時間を追うごとに膨らんでいく。

クリエイターエコノミーの拡大に伴い、一部のユーチューバーの予算も増えている。しかし、不安定な性質を持つこの仕事で、赤字に陥ることは危険だ。Netflixの「イカゲーム」は、これまでに少なくとも予算の約42倍の8億9110万ドル(約1007億円)を稼いだが、ドナルドソン氏は自身の「イカゲーム」への投資を回収できないかもしれない。

「これ以上できない」というところまでエスカレート

動画「How I Gave Away $1,000,000(僕が100万ドル[約1億1300万円]を誰かにあげるまで)」でドナルドソン氏は、こうしたコンテンツを作り始めたきっかけは、デジタルアイテム収集アプリのQuidd(クイッド)から、1万ドル(約113万円)の動画ブランド契約を持ちかけられたことだと説明している。同氏は、その1万ドルをホームレスの人に渡す動画を撮った。その後もQuiddからの資金で動画を作り続け、その数は雪だるま式に増えていった。

現在、最も人気のある動画の中には「I Ate A $70,000 Golden Pizza(7万ドル[約800万円]のゴールデンピザを食べてみた)」「Last To Leave Circle Wins $500,000(円の中に最後まで残ったら50万ドル[約5650万円]」「Donating $100,000 To Streamers With 0 Viewers(視聴者ゼロのストリーマーに10万ドル[約1130万円]を寄付してみる)」など、投資額がもっと大きなものもある。

MrBeastは9月、クリエイター向けのYouTubeチャンネル「Colin and Samir」で「動画制作に毎月400万ドル(約4億5200万円)を使っているが、自分の期待を上回る動画もあれば、そうでない動画もある」と語っていた。同氏によると「I Sold My House For $1(自宅を1ドル[約113円]で売ってみた)」という動画の制作費は100万ドル(約1億1300万円)を超えたが、広告収入で回収できたのは50万ドル(約5650万円)にも満たず、スポンサー料ではその差を埋められなかった。だが、いくつかの動画が予想以上に良い結果を出している限り、あまりバイラルではない(拡散しない)動画が多少あっても、痛くも痒くもない。

「動画をバイラルにする方法がわかれば、あとはいかに多くの動画を配信するかということになります」と同氏は2020年、Bloombergに語った。「稼ぐことができる金額は実質的に無限です」。

Forbes(フォーブス)は、ドナルドソン氏が2019年6月から2020年6月の間に、YouTubeで2400万ドル(約27億円)を稼いだと推定した(YouTubeだけが同氏の収入源ではなく、MrBeast Burgerというゴーストキッチンを経営したり、Twitch(ツイッチ)でストリーミングしたり、多くのブランドとコラボレーションしたりしている)。しかし同氏は、同じバイラルスターのLogan Paul(ローガン・ポール)氏とのインタビューで、収入のほとんどをそのまま動画に使っていると語っている。

「月に300万ドル(約3億3900万円)とか400万ドル(約4億5200万円)稼いだら、次の月には動画に使ってしまいます」とドナルドソン氏は話す。「私たちが得る、文字どおり『カミソリのように』薄い利益は、すべて単純に再投資しています」。

このようなクリックベイトモデルの問題点は、視聴者が高予算のYouTube動画に鈍感になってしまうことだ。クリエイターはさらにレベルアップする必要に迫られる。

コメディアンのDemi Adejuyigbe(デミ・アデジュイグベ)氏も、Earth, Wind, & Fire(アース・ウインド&ファイアー)の「September」に合わせて踊る動画を毎年公開するなかで、この問題に直面した。

2016年の最初のバイラル動画では、表に「SEPT 21(9月21日)」、裏に「THAT’S TODAY(それは今日だ)」と書かれた自作のシャツを着て、寝室で踊っただけだった。翌年は派手に風船を使い、2018年には子ども合唱団を登場させ、2019年にはマリアッチバンド(メキシコの大衆的な楽団)を雇った。その後の展開はおわかりだろう。2021年、同氏はもうビデオを作らないと決めた。毎年、より大きく、より良いものを作り続けるのは、時間がかかりすぎるし、困難だからだ。そこで、同氏は最後にもう一度、全力で取り組み、ファンから100万ドル(約1億1300万円)以上の寄付を集めた。だが、一連の「September」動画は、同氏の生業にはならなかった。動画が話題になったことで、ハリウッドで注目されるようにはなった。毎年の「September」動画の企画の合間に「The Good Place」や「The Late Late Show with James Corden」などの番組で脚本を担当した

美容・ファッションクリエイターのSafiya Nygaard(サフィヤ・ナイガード)氏も、クリックベイトモデルの問題に直面した1人だ。同氏は最初、BuzzFeed(バズフィード)のビデオプロデューサーとしてファンを獲得したが、退職して自身のチャンネルに投資し、独立することにした。同氏は、美容分野で差別化を図るために「Melting All My Nude Lipsticks Together(私が持っているヌードカラーの口紅を全部溶かしてみる)」「Mixing All My Foundations Together(私が持っているファンデーションを全部混ぜてみる)」など「悪いメイクの実験」をしてきた。1年後には「Melting Every Candle From Bath & Body Works Together(Bath & Body Worksのすべてのキャンドルを一緒に溶かしてみる)」「Melting Every Lipstick From Sephora Together(Sephoraのすべての口紅を一緒に溶かしてみる)」とエスカレートしていった。後者の動画では、600本以上の口紅を使用した。Sephoraの口紅の価格は約10〜50ドル(約1130〜5650円)。同氏の支払額があまりに高額だったため、Sephoraのレジ係が確認のために銀行に電話した。同氏はその様子を撮影した。

しかし、Sephoraであらゆる口紅を買ってしまったら、それ以上のことをするのは無理だろう。ナイガード氏は目下、約1000万人の登録者がいるYouTubeチャンネルを月に1~2回しか更新していないが、Instagram Reels(インスタグラム・リール)やTikTok(ティクトック)には数日に1度のペースで投稿するようになった。TikTokでも高価な買い物をすることがある。ある人気のTikTokで、同氏がBalenciaga(バレンシアガ)の1350ドル(約15万3000円)のピンヒールをデザインした。しかし、117本のBath and Body Worksのキャンドルや、600本のSephoraの口紅に比べれば、小さな買い物だ。

ナイガード氏やアデジュイグベ氏のようなクリエーターは、このように高額で、時に低報酬となるコンテンツから離れることができた。だが、ドナルドソン氏にとって、高予算の動画を作ることは活力の源となっている。自分のチャンネルがYouTubeの食物連鎖の頂点に立ち続けるために、より過激なコンテンツの制作をやめるわけにはいかないのだ。

クリエイター経済への資金供給

スタートアップは事業の成長のために資金を必要とするとき、ベンチャーキャピタルを利用する。動画制作コストが増大する昨今、バイラルクリエイターに投資機会を見出すベンチャーキャピタル企業が出てきている。ベンチャーキャピタルのSignalFireは、クリエイターは最も急成長している中小企業であると述べている。Sam Lessin(サム・レッシン)氏のSlow Venturesのように、その考えを次のレベルにまで高めている企業もある。Slow Venturesは最近、Silicon Valley Girlというチャンネルを持つユーチューバーのMarina Mogilko(マリアナ・モジルコ)氏の将来に170万ドル(約1億9200万円)を投資した。今後30年間、同氏のクリエイターとしての収益の5%を受け取る。

「人」に投資するというのは薄っぺらく聞こえるかもしれない。だが、関係者全員が善意であると仮定した場合、アーティストに金銭的な余裕を与えることは、本当に最悪なことなのだろうか。これは、すでにハリウッドで起こっていることだ。制作会社が脚本を購入し、人材を雇い、映画を売り込んでも、興行的には大失敗に終わることがある。

しかし、クリエイター、つまり「人」はスタートアップではない。そして、自分を超えようとし続けるとどうなるか。燃え尽きてしまうのだ。

ベンチャー企業からの資金調達という緩衝材が、クリエイターの経済的負担を軽減する可能性はある。だが、利害関係者へのアピールというプレッシャーが、さらなるストレスとなることも考えられる。

YouTubeのCEO、Susan Wojcicki(スーザン・ウォジスキ)氏は、2019年にクリエイターに宛てた手紙の中で、燃え尽き症候群の問題が大きくなっていることを認めている。

「自分のチャンネルが上手くいかなくなるのではと心配して、撮影を休めないという気持ちになる、というクリエイターの声を聞いたことがあります」とウォジスキ氏は述べた。「もし、あなたがしばらく休みたいと思っても、ファンは理解してくれるでしょう。結局のところ、あなたが作っているからこそ、ファンはそのチャンネルを選ぶのですから」。

YouTubeのプロダクトチームは、クリエイターが休みから戻ってくると、より多くの再生回数が得られることに気づいた。しかし、Drake McWhorter(ドレイク・マックウォーター)氏は、それは真実ではないと思う、と当時CNNに語った。

「YouTubeはトレッドミルのようなものです」と同氏はいう。「一瞬でも止まったら死んでしまいます」。

ネットでバイラルになるのはこれまでになく簡単になったが、だからといって長期的に視聴者の注目を集めるのが簡単だとは限らない。ネットで生計を立てるには、視聴者が必要となる。MrBeastがハリウッド級の予算でYouTube動画を制作し、なおかつ「カミソリのように薄い」利益しか上げていない今、私たちは「クリエイター経済で勝っているのは誰か」と問わなければならない。結局のところ「Real Life Squid Game」の成功は、ドナルドソン氏にとってよりも、YouTubeにとって、あるいはNetflixにとってさえも、朗報なのかもしれない。

画像クレジット:MrBeast/YouTube

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

クリエイター主導のマーケットプレイス「LTK」が約345億円調達、130人以上のインフルエンサーが億万長者に

LTKを立ち上げた2011年当時、「インフルエンサーマーケティング」や「クリエイターエコノミー」といった言葉はまだ一般的ではなかったが、ファッションブロガーのAmber Venz Box(アンバー・ヴェンツ・ボックス)氏は、今日のインターネットパーソナリティが直面しているのと同じような、無給で記事を書き、写真を撮り、動画を編集し、フォロワーを増やすことを、どうやって仕事にするかという苦悩に直面していた。

アンバー・ヴェンズ・ボックス氏がLTKを立ち上げたのは、自分が薦めた商品を読者が購入した場合に手数料を得る方法を模索していたときだった。それから10年経った現在、このブロガーから転身した彼女の企業は、20億ドル(約2303億円)規模に成長している。以前は。RewardStyleやLIKEtoKNOW.itという名前だったLTKは、ソーシャルメディアのインフルエンサーが自分のショッパブルなポストを、ウェブとアプリの両方で中央のマーケットプレイスに掲載できるようにする。また、ブランドはこのプラットフォームを利用して、今後のマーケティングキャンペーンのためのクリエイターパートナーとつながることができる。LTKは、Softbank Vision Fundから3億ドル(約345億円)を調達し、この評価額に達した。

LTKは、Instagramで年間30億ドル(約3454億円)以上を消費するクリエイター、ブランド、買い物客を対象としている。LTKのインターフェイスは、Instagram Shopを彷彿とさせるもので、クリエイターがお気に入りの商品を選んで投稿し、それをスクロールして共有する。LTKは、Instagramのeコマースへの転身を先取りしていた。LTKは、長年にわたって利益を上げてきたが、今回の資金調達により、テキサス州を拠点とする同社を国際的に成長させるために、組織全体での採用を計画している。現在、LTKには350名の国際的なスタッフがおり、5000の小売業者と100万以上のブランドと取引をしている。

この投資にともなってLTKの取締役会に加わることになるSoftBank Investment Advisersの投資ディレクターであるAngela Du(アンジェラ・デュ)氏は次のように述べている。「LTKは、人々が自分の趣味や情熱で生計を立てられるようにすることで、起業の概念を再構築する手助けをしていると信じています。LTKの革新的なマーケティングプラットフォームは、これらのクリエイターがソーシャルユニバース上でパーソナルブランドを構築し、フォロワーと長期的かつ真正な関係を築くことを可能にします」。

LTKの成功と成長は、自分がフォローしている人からのオススメで買い物をしたいという消費者の関心が高まっていることを改めて示している。ヴェンツ・ボックス氏がForbesに語ったところによると、130人以上のインフルエンサーがLTKを通じ、自らの力で億万長者になったという。女性を中心としたこれらのクリエイターは、売上の10〜25%を得ることができる。プラットフォームに参加しているブランドや小売業者は、独自に手数料率を設定している。ブランドはクリエイターが販売を促進することで売上を得て、クリエイターはそれに加えてコミッションを得る。LTKはこれらの売上から取引手数料を得ています。

画像クレジット:LTK

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Spotifyのポッドキャストサブスクが米国以外のクリエイターに拡大、ただし日本は含まれず

Spotify(スポティファイ)は2021年8月に米国のクリエイターを対象にポッドキャストのサブスクリプションを公開したが、米国時間11月17日から対象を米国以外のクリエイターにも拡大する。同社によれば、クリエイターが「サブスク利用者限定」コンテンツを作れるこのサービスは、新たに33のマーケットで利用できるようになる。

ポッドキャストのサブスクが米国で正式に公開された際、Spotifyはサービスに関していくつか重要な変更を実施した。それ以前は、クリエイターは有料番組の価格を3通りからしか選べなかった。しかし同社はクリエイターがもっと柔軟な価格設定を望んでいることを把握し、0.49ドルから150ドル(約55円から1万7000円)まで20通りの価格を用意した。

また、同社はクリエイターが自分の番組をサブスクで利用しているリスナーの連絡先情報をダウンロードできるようにした。これを活用してクリエイターはリスナーと直接的な関係をさらに深めることができる。

今回のグローバル展開にあたり、Spotifyは新機能の追加はしていない。同社は今回の拡大について、ポッドキャストのサブスクをより多くの人に利用してもらうためとしている。

ポッドキャストのサブスクプラットフォームはSpotifyだけではない。Appleもサブスクを提供しているが、Appleはクリエイターの売上30%を徴収し、2年目には15%になる。これは他のサブスクアプリと同様だ。一方のSpotifyは、最初の2年間は売上からの徴収をしないことにより、サービスを成長させようとしている。徴収なしの期間が終了すると、Appleよりずっと少なく、たった5%を徴収する計画だ。

Spotifyのサブスクポッドキャストサービスは、同社のポッドキャスト制作プラットフォームであるAnchorを通じて提供される。AnchorではiOSとAndroidの両方ですでに29のマーケットでサブスクを利用でき、残る4つのマーケットでは来週(11月22日の週)から利用できるようになる。

すでに提供開始しているマーケットは、オーストラリア、ニュージーランド、香港、シンガポール、ベルギー、ブルガリア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国。来週にはカナダ、ドイツ、オーストリア、フランスでも開始する。

 

他にポッドキャスト関連のニュースとして、SpotifyはBad Robot Audioとの複数年の独占契約を発表した。Bad Robot Audioは、プロデューサーのJ.J. Abrams(J・J・エイブラムス)氏が2001年に創業した制作会社であるBad Robotの新しいオーディオ部門だ。

Bad Robotは「LOST」「エイリアス」「FRINGE / フリンジ」「パーソン・オブ・インタレスト 犯罪予知ユニット」「キャッスルロック」「ウエストワールド」などのテレビ番組や「SUPER8 / スーパーエイト」「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」「スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け」などの映画を制作し「スター・トレック」「ミッション:インポッシブル」「クローバーフィールド」の共同制作もしている。

新しい部門を率いるのはAudibleやSpotifyで著名なエグゼクティブだったChristina Choi(クリスティーナ・チョイ)氏で、同氏はBad Robotのポッドキャスト責任者に就任する。Bad RobotはSpotifyで提供する番組について詳細をまだ明らかにしていないが「ノンフィクションとフィクションのポッドキャスト作品」の両方を含むだろうと述べている。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

【コラム】美的Vlogの大統一理論

まだパンデミックが始まったばかりの頃のこと。5人のルームメイトとともに薄暗いブルックリンのアパートで暮らしていたRian Phin(リアン・フィン)氏は、ストレスの多い仕事から一時解雇され、コンテンツの制作も思うように捗らず悩んでいた。やがて、天井が高く大きな窓が配された美的感覚が優れたアーティストロフトに引っ越したことで、同氏はようやく自分の生活を美しく演出したライフスタイルコンテンツを作ることに成功した。

若い頃からTumblr(タンブラー)で有名なファッションブロガーとして活躍し、現在はYouTube(ユーチューブ)で7万人以上のフォロワーを持つフィン氏。自身を「審美眼の持ち主」と名乗る彼女や多くの人々にとって、美的Vlog(ビデオブログ)とは、膨大な量の情報をすばやく処理して「美的な」ものへとまとめ上げる能力を披露する場である。美的Vlogのタイトルで最も人気があるのは、ライフスタイルそのものに沿った内容のもので、例えば「一緒にお出かけの準備を」「私が今日食べたもの」「お部屋を大公開」「私の朝の習慣」「おうち時間の朝の習慣」などがある。バンライフ本の紹介勉強、ウェルネス、ファッションなどジャンルが何であれ、これらのVlogの中核にあるのは、商業化されたメインストリームのインフルエンサーたちによって作り上げられてきた憧れの存在というものを拒絶する美学なのである(戦略や目的は同じようなものなのだが)。

しかしファッションサイトのSsense(エッセンス)で購入したルックやブラックを多く用いたフィン氏のスタイルは、他の美的ブイロガーたちとは一線を画している。同氏がメールで筆者に教えてくれたところによると、同氏の感性は他のプレイヤーたちと重なる部分はあるものの、かわいいものやガーリーなものは本質的に「市場性」が高く「売れるもの」であるため、そういったものは意識的に避けるようにしているという。「そうすることでブランドがビデオのスタイルに合わせて、商品やデジタルなどの広告キャンペーンを展開してくれるようになります」。

情報や映像の見せ方に注意を払うことはあっても、大抵の人は美的価値よりも機能を優先させる傾向にある。しかし美的ブイロガーは違う。彼らはインターネットを美的対象として捉えて評価し、いかに見た目が美しいか、またはかわいいかを最も重要な要素としている。

無限にカスタマイズできる時代(Myspace、Tumblr、Neopets、Live Journal)は終わり、現代の美意識の高い人たちには、中期から後期にかけてのファッションブロガー(Lookbook.nu、The Sartorialist、Style Bubbleなど)や、2010年代のビューティーグルたちが残したコンテンツの空白を創造的に埋めるというタスクが課されている。

ファストファッションとデジタルショッピングがもたらしたトレンドサイクルの短縮化によって大量発生した無限コンテンツの世界では、もはやファッションブロガーが公共の場の壁の前でその日のルックを記録したり、ビューティーブイロガーがメイクアップについて議論したりする必要がない。突然変異的な形態である美的ブイロギングでは、High Fashion Twitter(ハイファッション・ツイッター)のようなサブカルチャーからEtsy(エッツィー)やDEPOP(ディポップ)のような販売プラットフォームまで、インターネット上のファッションに焦点を当てたさまざまなエリアが重なり合いながら、これらすべてを組み合わせているのだ。

世に出た新しくて美しいものをうまくコラージュするというのが基本の考え方であり、その根底には統一された美学が存在する。手書き風の筆記体のカラフルなサムネイル用フォントにポップな雰囲気のカラーパレット、かわいい洋服にすてきインテリアというところか。

フレンチガールのクールさや、なりたい自分を演出した理想の女性像を崇拝する美的ブイロガーも少なくない(参照:「That Girl」トレンドNotionアプリのチュートリアル)。

女性らしい身繕いに精を出し、食事や用事、社交、化粧、エクササイズなどの日常的な作業をカメラに収めて理想的かつ共感を持たれる「影響力」を振りまいて、あらゆるセルフケアが生産性や仕事と区別できない状況にあるにもかかわらず、頑張るという行為には不満を持っている(「I Don’t Dream of Labor(労働は目指さない)」のトレンド)。美的ブイロガーが、より明確な労力を必要とする他の種のインフルエンサーと異なるのは、彼らの放つ気楽さと、実際には収入という同じ結果をもたらす労働の一形態である労働を否定していることにある。

Elena Taber(エレナ・テイバー)、Jenny Welbourn(ジェニー・ウェルボーン)、Orion Carloto(オロオン・カルロト)などの最も有名な美的ブイロガーたちは、年齢や文化的環境の違いを超えて、ものや興味の集合体として自分自身を表現し、スプレッツァトゥーラ(「計算され尽くした無頓着さ」)とかわいらしさを融合させているのだ。古着、デザイナーズ、アップサイクル、コーチからのギフト(例えば個性的な小物やDetroit Floydのベッド)などのアイテムや、ヨガ、読書、映画写真などの興味にまつわる個性や歴史すべてが彼らを作り上げている。

スプレッツァトゥーラはこんな感じで小馬鹿にするのである。「15世紀の宮廷人とAlexa Chung(アレクサ・チャン)と最先端のデザイン会社が一緒になって努力しているように見える、意図的なデザインとキュレーションね。一体どうしてこんなことになるのかな。ははは」。努力の証は失敗であり、何も気にしていないように見えることが重要なのである。

これを見事に演出してくれるのが、ミニマルな白い壁とダークウッドのトリムとのコントラスト、むき出しのレンガ、質感、ダウンタウンクールな雰囲気、合わせガラスのテーブル、ラッカー仕上げのフローリング、パイン材の床に広げられ積み重ねられた本、1960年代から1980年代のパリやイタリアのモダニズムデザイン、ミッドセンチュリーモダンの家具や小物、アシンメトリー、高い天井、適当に投稿したように見せかけたエフォートレスなInstagram(インスタグラム)の「フォトダンプ」、レイヤリング、手描きやハンドメイドのもの、フィルム関連、アートコレクション、レコードコレクション、編み込みスローピロー、計算され尽くした散らかり方、フィルターなしの低解像度の自撮り写真、ブラウンやベージュの世界、自然光、植物や花など自然界への感謝、ハイパーリアルな個人主義、流行への雑食性、古着によるカウンターシグナリングなどである。

かわいらしさというのは、遊び心のあるガーリーな身振り、親密な雰囲気やアイテムの他、決してキャンプでもキッチュでもない、マキシマリズムなピンクや緑、黄色など、遠慮のないカラーパレットによって演出されている。

B21によるKOYAのぬいぐるみやキノコのランプなどのキュートなインテリアが、ボヘミアンデザインの個性と目新しさの中に入り混じっている。それは、さりげなく美しい生活品の中に生きる彼らの生活の記録であり、美的センスを厳選してコラージュすることであり「Instagramを再びカジュアルに」というムーブメントであり、大人になったオルタナ系女子の必死の自己表現なのである(ライフスタイルよりも教育的な観点からチャンネルを運営している美的ブイロガーたちは、既存のオルタナ系女子の持つべき美意識を事細かに描写し、執拗にカタログ化している)。

ヨーロッパで育ったMadelynn De La Rosa(マデリン・デ・ラ・ローザ)氏29歳は、ハイクオリティな映像コンテンツで人気の美的ブイロガーの1人である。3年ごとに軍事基地を転々とするという幼少期を過ごしたこともあり、美に対して幅広い視野を持つようになった同氏は、メイクアップ、映画、ファッション、アートなど、どの土地や文化でも適応できるあらゆることに興味を持つようになった。

彼女のYouTubeチャンネルでは、彼女の人生をアーティスティックかつロマンチックに表現した、手の込んだ美意識の高いVlogが公開されている。映像の中では美しく装飾されたスペイン風のアパートや、友人とビーチに出かける様子、持続可能なファッションやビーガニズムなどのテーマについての談話が繰り広げられている。

デ・ラ・ローザ氏は女性としての平凡さやスリルを記録し、それを美化する方法として自分の映像を記録し始め、芸術的に実体化しているのである。

10万人のフォロワーを獲得した後、Michelle Phan(ミシェル・ファン)氏が経営するIpsy(イプシー)から3年間の美容コンテンツ制作の契約を与えられたデ・ラ・ローザ氏。ロサンゼルスに引っ越すことになり、それから6年間をその地で過ごした。

しかし2020年のロックダウン中、デ・ラ・ローザ氏はフィン氏と同様、美しいコンテンツを制作することができず頭を抱えていた。人生の中の美しいものに対して、ここに来てもやはり真面目に取り組んではいけないのだろうか。しかしデ・ラ・ローザはこの前例のない時期こそ、成長のチャンスだと考えた。セルフケアを重視し、健康に配慮し、社会的にも距離を置いた、美しいライフスタイルを推進するVlogのあり方を考えたのである。

彼女の作った美しいコンテンツを見て褒め称えてくれる人々を、デ・ラ・ローザ氏は筆者との電話での会話の中でお茶目に真似てみせる。「どうしたらこんな素敵な生活ができるの?LAに生まれた時から住んでいるけど、こんなLA見たことない!」。

2019年、美的VlogはTikTok(ティックトック)やInstagramに移行し、世界的パンデミックの開始とともに注目を集めた。特に日常生活をロマンチックに描写した「主人公のエネルギー」的動画が人気を博すようになる。

主にZ世代の若者に浸透している美的Vlogコンテンツは、Emma Chamberlain(エマ・チェンバレン)氏をトップに押し上げたよりカジュアルなスタイルのライフスタイル・Vlogから発展したものだ。「エマ・チェンバレンは『That girl』の定義に近いものがありますが、彼女はあたかもそうなることを望んでもいないのになってしまった、という感じを演出しています」とメディアおよびYouTubeの専門家であるTiffany Ferg(ティファニー・ファーグ)氏はいう。

また、Z世代が作り上げてきた美学のほとんどには、彼らが生み出して普及させた用語が使用されている。Cringe-yやCringe(「イタい」や「ドン引き」)がCringeworthyに変わり、Aesthetic (美学や美的)は、かつては誤用だったものの今では「美しい」や「かわいい」という意味として使われている。もし何かが「Aesthetic」であれば、それは醜くなく、意図的にそうしているものなのである。また、Gaby Rasson(ギャビー・ラッソン)氏の造語である「Cheugy」という言葉はがんばりすぎているスタイルを指す。これらの用語はすべて美学に関連しており、態度や人々を表現するものなのである(「スターターパック」のミームが画像に一般的な記述を付け加えたのと同じように)。

新しいスラングの使い方に初めはとまどうが、やがて文化を牽引する若者たちのコンセンサスリアリティに誰でも適応できるようになる。自分の主観を、Z世代の思考、感情、関心事、不安、嗜好に合わせて再構成することを学んでいけば、長い間続いていた世代間の溝をなくすことができるだろう。

90年代半ばから2000年代初頭に生まれた人々が支配する市場トレンドを観察するミレニアル世代は、文化的に言えば、はるかに若い世代と大差ない存在となっている。その結果、若者がミレニアル世代に影響を与えるということを前提とした思い込みが人口統計学の崩壊をもたらし、後期資本主義下での女性性の過剰な優先順位付けが生じている。

若さを重要視する文化の中で、若者の文化的生産への固執は、女性性と美しさを若さと結びつけるという悲しい性質を悪化させるばかりである。キュートなスプレッツァトゥーラ精神は基本的には見ていて楽しいものだが、それを少しだけ崩し、通常女性らしさとは結びつかない被作用性を特権化している。ソーシャルメディアのフィードの一番下までスクロールした後に、かっこ悪くてダサい過去の自分に遭遇することによってもたらされる疲労感というどうしようもない現代の危機を、努力したという形跡、つまり失敗したという感覚を取り除くことによって軽減するのである。

くすんだピンクのアートプリントや大理石風デザインなど、ミレニアム世代の美意識に関連した大量生産のデザインや、洗練された贅沢で派手な消費は必然的に逆効果となる。

しかし本質的には、特に「かわいらしさ」が押し出されていると売れやすいというのは間違いない。リアン・フィン氏が自分の美学を市場に同化させないために、かわいらしさを取り除きたいという考え方は正しいのだろう。

しかし、かわいらしさとは見た目だけの話ではなく、非常に複雑なものである。理論家のSianne Ngai(シアナ・ガイ)氏は著書「Our Aesthetic Categories:Cute, Zany and Interesting」の中で「かわいらしさ」とは、消費性が高く、コピー可能で、女性特有の美的カテゴリーであり、無力感を「美化」して「エロティック」にすると主張している。私たちが老人をかわいいと思うのは、そのもろさのためであり、少女や女性にかわいらしさを押し付けるのと同じ理由なのである。そして少女や女性は意識的または無意識的に、自分自身をそのようにパッケージ化するのである。

例えばAudrey Tautou(オードリー・トトゥ)氏が演じるアメリや、Hello Giggles(ハローギグルス)の生みの親であるZooey Deschanel(ズーイー・デシャネル)氏、サンリオのハローキティなどのキャラクターは、非常に親しみやすく「かわいい」ものを見事に表現してみせている良い例だ。事実、彼らのように誰でもかわいくなれるのだ。美容と違って誰にでも手の届くものであり、飽和状態のクリエイター経済の中で、なんとか自分の居場所を確保しようとしているコンテンツクリエイターにとっては魅力的な領域なのである。

ジェニー・ウェルボーン氏 (YouTubeのスクリーンショット)

前述した、架空および実在の正統派キュートガールズは、現代のインターネット上で生まれた「it girl」やインフルエンサーたちと多少の摩擦をともないながらも共存している。ユーチューバーのAshley(アシュリー)こと@Bestdressedもその1人だ。倹約家の母親からサステイナブルなファッションを教わったという移民の少女によるコンテンツなのだが、彼女がAmazon(アマゾン)とのブランド契約を結んだことにより、それを理解できないZ世代の怒りを買っている。

情報密度の高い文化における市場ニーズと、Z世代が最も賢明な消費者であるという現実によって、思慮深く多才であるということが一種の前提条件のようなものになっている。インフルエンサーになる若者たちは、もはや影響を与えるというだけでは不十分なのである。

さらに彼らは、私は「おもしろい」のだということを証明しなければならない。これは「情報の美学」というもう1つの美的カテゴリーであり、ガイ氏は「Our Aesthetic Categories」の中で「個人とシステムの間のテンションがおもしろいという価値を補強している」と述べている。

こうした若い女性たちのモデルとなりうる存在なのがTavi Gevinson(タヴィ・ゲヴィンソン)氏だ。

文才に恵まれ、文化的にも鋭敏なゲヴィンソン氏は、当初ファッションブロガーとして登場し、やがてRookie Magazine(ルーキーマガジン)の編集長として活躍するようになる。彼女はYara Shahidi(ヤラ・シャヒディ)氏、Amandla Stenberg(アマンドラ・ステンバーグ)氏、Zendaya(ゼンデイヤ)、Willow Smith(ウィロー・スミス)氏など、同様にスマートで早熟なスターたちに影響を与えている(Tumblrで知り合ったスミス氏とステンバーグ氏は、ルーキーと類似しつつもより中心的ではない自分たちのためのスペースを作りたいと考え、強いビジュアル・アイデンティティを持つ若い女性アーティスト集団The Art Hoe Collectiveのメンバーとなった)。またこれは、人々の社会問題への意識が高まっていた時期と重なっており、この頃若い少女や女性の多くが、主流メディアでは見られない左派的な政治意識を展開し始めていた。新たなタイプの「it girl」の出現を象徴するゲヴィンソン氏は、これまでの「it girl」の前提条件(パッケージとして考えられた彼女の外見)を備えているだけでなく、パッケージの中にあらゆる種類の情報を忍ばせていたのである。

生まれつきのおもしろさに恵まれていない人にも、これが実現できるようだ。影響力にまつわるさまざまな領域の中で、この事実は映画「Ingrid Goes West(イングリッド -ネットストーカーの女)」のような偽者たちの基準を作り出しており、私はこれをTastefishing(テイスト・フィッシング)と呼んでいるのだが、彼らは俗物的な自分を暗号化して模倣というレイヤーをまとい、すでに起こっているミメーシスの引力を強めているのである。まるで半袖シャツの下に長袖シャツを着ることで、自分の個性を演出するかのように。

その例を挙げてみよう。Kendall Jenner(ケンダル・ジェンナー)氏は最近、テイストメーカーと呼ばれる、「高い神聖さ」や「高いステータス」を象徴するようなテイストを持つとされる人物となった。同氏のマネージャーであるAshleah Gonzales(アシュリア・ゴンザレス)氏が選んだ流行のフィクション小説や詩集と一緒にポーズをとり、男性の注意を引き、アートバーゼルから持ち帰った芸術品を自宅に飾り、自身のApple Radio(アップルラジオ)番組「Zaza World(ザザ・ワールド)」で古い曲を流す。5年前のVogue 73 Questions(ヴォーグの73の質問)で好きな映画に「Marley and Me(マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと)」と「The Notebook(きみに読む物語)」を挙げ、Tupac(2パック)をスピリットアニマルとして答えていた時とは大違いである。

しかし誰が彼女を責められようか。美人で金持ちであるだけではもはや十分ではないという状況下、ブックチューバーや美的ブイロガー、ゲヴィンソン氏の他、Kaia Gerber(カイア・ガーバー)氏、Emily Ratajkowski(エミリー・ラタコウスキー)氏、Emma Roberts(エマ・ロバーツ)氏など、スタイリッシュで文才があり、本好きで若い数え切れないほどの女性たちに遅れをとらぬよう、興味深い人物でなければならないというプレッシャーがあるのだ。

知的でおもしろい人物を演じる必要性、大きなアイデアに満ちた無限で漫然としたインターネットの世界をスタイリッシュに切り抜ける能力を示すことへの必要性は果てしない。この必要性によって彼らは圧倒的な情報量を、手に負えないものではなく、むしろ生成的なものに変えてしまい、ピクセルや16進コード、フォント、静止画、動画などの細かなディテールが私たちに美的感覚を与えるのである。

特に少女や女性などの美意識の高い人たちにとっては、イメージを重要視する文化の中で、YouTubeやTikTok、Snapchat、Instagramなどのパフォーマンス型のプラットフォームを介して自分のアイデンティティを演じることがより明白に求められている。そのため、視覚や聴覚、記憶、はかない感覚や印象の蓄積が生成的なものとなるのだ。

ライフスタイル系のインフルエンサーが憧れられるのは、それをマネタイズする能力があるからだ。ファンが彼らを尊敬するのは、自分も同じように生きたいと思うからだけでなく、自分の人生をマネタイズしたいと思うからなのである。

美的Vlogへの憧れは、美しいものに囲まれて優雅に生活したいという願望だけではなく、すべての静的なものを切り取り、溢れかえるものの中から美しくかつ売れるものを作り出す能力への願望なのである。オンライン上で美意識や経験を変化させたり、厳選したりするのに女性や少女ほど適した存在はいないだろう。結局のところ、彼らは「他人が自分を見る」のを見るという想像力を持っており、別の身体や経験の中にいるかのように自分自身を見つめる不思議な能力を持っているのだ。女たちの視線は、最先端のテクノロジーや男性の視線よりも優れた観察能力を持っているのである。

編集部注:本稿の執筆者Safy-Hallan Farah(セイフティ-ハラン・ファラ)氏は、TechCrunchの特別寄稿評論家。「Vanity Fair」「The New York Times」「Pitchfork」「NY Mag’s The Cut」などに寄稿している。

画像クレジット:Madelynn De La Rosa / YouTube

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(文:Safy-Hallan Farah、翻訳:Dragonfly)