人事ソフトのRipplingとGustoが広告看板をめぐり「どちらもどっち」な言葉のバトル

企業向け人事サービスを提供するZenefits(ゼネフィッツ)が問題を起こし、CEOのParker Conrad(パーカー・コンラッド)氏が追放されたときのことを憶えておいでだろうか。そのコンラッド氏が、Rippling(リップリング)という従業員の新人研修スタートアップを立ち上げたが、「Gustoを超えた? なら今すぐ変わろう」という別の人事サービス企業Gusto(ガスト)との比較広告を出している。

問題は、Gustoがこの広告を取り下ろすよう、Ripplingと広告看板の管理会社Clear Channel Outdoor(クリア・チャンネル・アウトドア)に停止命令を出したことだ。通常、比較広告は内容が正しい限り法的に許されるため、これは異例だ。Gustoは人事、福利厚生、給与計算のソフトウェアを販売している。Ripplingも同様のソフトウェアを販売しているが、それにIT管理を加えて従業員識別プラットフォームと統合している。

Ripplingが私に伝えたところによれば、同社に乗り換える顧客がその最大の理由に挙げているのが、企業の成長にGustoが追いつかなくなったことだという。Gustoの顧客事例には、61人以上の顧客は記されていない。Enlyftの調査では、同社の顧客は社員数10人から50人の企業が中心となっている。「2019年、Gustoのプラットフォームを去ったとき、我々がGustoにとって最大の顧客でした。彼らの製品は我々の事業規模には適していないと、正直に事実を話してくれました。昨年の秋にRipplingに乗り換えて、大変に満足しています」と、Compass Coffeeの共同創設者Michael Haft(マイケル・ハフト)氏は語っている。

それらの話を総合すると、広告におけるRipplingの主張は妥当に思える。しかし、停止命令では「Gustoの顧客には従業員数が100名を超える企業が複数あり、特定規模の事業がそのプラットフォームの許容度を超えるとは言っていない」と述べられている。

TechCrunchに提供された社員向けの電子メールに、RipplingのCMO、Matt Epstein(マット・エプスタイン)氏は「法的要求は真摯に受け止めますが、失笑を禁じ得ません。Gustoはそのウェブサイト全体で、スモールビジネスにフォーカスすると言っているのです」と書いていた。

そこで、Gustoを法廷に引っ張り出したり、Clear Channel Outdoorに広告看板を取り下げるようつげる代わりに、コンラッド氏とRipplingは小洒落た手に出た。停止命令にシェークスピア張りの弱強五歩格の韻文で返答したのだ。

Our billboard struck a nerve, it seems. And so you phoned your legal teams,
(我らが広告が気に触り、あなたは弁護士に電話した)
who started shouting, “Cease!” “Desist!” and other threats too long to list.
(彼らは叫んだ。停止だ! 差し止めだ! その他おびただしい脅しの言葉を)

Your brand is known for being chill. So this just seems like overkill.
(あなたのブランドは穏やかさが定評。なればこれは少しやりすぎ)
But since you think we’ve been unfair, we’d really like to clear the air.
(だが我らを不当とお考えのようなので、誤解を解きたく存じます)

Ripplingの顧問弁護士Vanessa Wo(バネッサ・ウー)氏は書簡をしたため、「Gustoが規模の拡大を目指していたとき、私たちはあなたがたが既製品に頼るのを見ていました。あなたがたのソフトウェアは力不足だった。そこでWorkdayに助けを求めざるを得なかった」と、Gustoの人事ツールでは100人を超える従業員には対応できず、大きな業務用ソフトウェア企業に頼ることになったことを示唆した。この書簡は、Gustoに停止命令を取り下げ、意味のある競争をしようと暗に提案して締めくくっている。

So Gusto, do not fear our sign. Our mission and our goals align.
(さすればGustoよ、我らが広告に恐れることなかれ。我らが使命と目標は同じ)
Let’s keep this conflict dignified—and let the customers decide.
(不毛な争いは止めて、消費者の選択に任せよう)

RipplingのCMOマット・エプスタイン氏は「あちら側の人たちは競争を不快なものと考えているようですが、企業が切磋琢磨すれば消費者が得をするのです。この愉快な詩が、言い争いを土に戻し、市場に競争が起きることを期待しています」と私に話している。

Gustoの停止命令に返したRipplingの韻文Josh Constine提供。

Ripplingは、この顛末はすべてが滑稽な笑い種だと思っているかもしれないが、これは少々時代錯誤の受け狙いに見える。エミネムの「8マイル」での気迫に満ちたライムとはほど遠い。本当に消費者の選択に任せたいのなら、停止命令を受け入れて次に進むか、広告を一切取りやめる方法もあったはずだ。広告看板は他にもまだ4つあり、それらは競争相手を非難する内容にはなっていない。とはいえ、その広告看板を下ろさせようとするGustoも狭量だ。それに、大規模なチームに対応する準備ができていないことを隠している。

我々は、先週末と17日、停止命令を取り下げる気はないか、Ripplingによるバスの広告も停止させるのか、本当に内部でWorkdayを使っているのかについてGustoにコメントを求めた。

Gustoの広報担当Paul Loeffler(ポール・ローフラー)氏は、「これはブランドを維持するための通常の業務」だと語った。そしてGustoについては「中心はスモールビジネスですが、そこに特化しているわけではありません」と話した。そして「Gusto自身が大企業に成長するに従い、私たちの多くの顧客とは別のニーズが生まれ、Workdayに移行したのです」と認めた。

最後に彼は「私たちは、より多くの企業が新しいソリューションを生み出し、企業による従業員のケアと支援がより簡単になることをとてもうれしく思っています」と明言した。そのひとつを訴えたにも関わらずだ。もしGusto自身がGustoを超えて成長したのなら、広告が顧客に訴えている内容も、まったく事実だと言える。

Gustoは5億1600万ドル(約566億円)を調達している。Ripplingの調達額の10倍だ。ならば、Ripplingよりも多くの広告費を使えるし、どんなに顧客企業の従業員が増えても対応できる人事ツールを開発できるのではないかと思われるだろう。GustoもRipplingもYコンビネーターの出身で、クレイナー・パーキンスがメインの投資企業になっている(利益相反か?)。そのため、彼らにはまだ矛を収めるチャンスがある。

少なくともこの2つの企業は、先週末の間、人事業界を楽しませてくれた。

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(翻訳:金井哲夫)

チームの生産性を高めるツール開発のRangeが6.6億円調達

ご存知だろうか。このところベンチャー投資家は職場を支えるソフトウェアに熱を上げている。中でもチームの協調を強める生産性ツールに投資先としての人気が沸騰しているようだ。General Catalyst、First Round Capital、Bloomberg Beta、Biz Stone、Ellen Paoといった一流投資会社とエンジェルのグループも、新しい生産性スタートアップであるRange(レンジ)の支援に自信を抱いている。

このツールは、小さなチームの協調を支援し、親密感を高め、互いの仕事を確認し合えるようにする。まさに、これを売りにするスタートアップは非常に多いが、Rangeの強みは、元Mediumのエンジニアリング責任者のDan Pupius(ダン・パピウス)氏、Mediumでピープルオペレーションを担当していたJennifer Dennard(ジェニファー・デナード)氏、GVのデザインパートナーだったBraden Kowitz(ブラデン・コウィッツ)氏という創設者チームにあるようだ。同社は彼らの人脈から、最初に顧客ネットワークを構築した。そこには、Twitter、Carta、Mozillaのチームや、彼らの取り組みに資金援助をしているベンチャー投資家たちが含まれている。

サンフランシスコを拠点とする彼らは、顧客ベース拡大のための、General Catalyst主導のシードラウンド600万ドル(約6億6000万円)を獲得したと私に話してくれた。私はZoomで、このじつに好意的な共同創設者チームの話を聞き、その製品を彼らが内部でどのように使っていたかを知ることができた。

「私はGoogleを辞めて(エヴァン・ウィリアムズ、ビズ・ストーンとともに)Mediumに移りました。そこで、さまざまな組織的慣行を検証し、なぜ企業は規模が大きくなると業績が悪くなるのか、その問題を防ぐためにMediumで新しい管理手法を実践できないか、その答を必死に探りました」とパピウス氏はTechCrunchに話した。「その過程で、私たちは社内用のツールを開発し始めました。そのときこのソフトウェアは、組織の数多くのプロセスや価値の解読を専門に行うツールになり得ると、薄々感じたのです。そして、Mediumでの私の在職期間が近づくのに合わせて、ブラデンとジェニファーに再び連絡をとり、一緒にこの問題に取り組むことを決めました」。

この製品の核となるのは、スタンドアップ・ミーティングに少しだけ置き換わるものだ。各ユーザーに毎朝何をしているかを記入させる。それを現在の大きなプロジェクトにタグ付けすることで、すべてが互いに関連付けされ、設定されたRangeチームのメンバー間で閲覧が可能になる。こうした製品が求められる裏で、Slackの大きな欠点が浮かびあがる。Slackでは、スレッドを使ったとしても、コミュニケーションを要約した形で整理するのがとても難しい。Slackを更新するごとに、重要な内容はどんどん上に押しやられ、履歴の中に埋もれてしまう。とくにリモートワークを行う人間にとっては致命的だ。

登録を行えば、Rangeはチームの目的やミーティング、さらにチームの構成まで管理してくれる。この製品は、Google Docs、Google Calendar、Slack、Asana、Jira、GitHub、Trello、Quip、Figmaなどさまざまなツールと統合でき、この混合システムの中に新しい生産性ソフトウェアを追加しても、情報がひとつのソフトウェアの中で孤立してしまわないようにできる。 価格はスタートアップに優しい設定になっていて、10人以下のチームなら無料で利用でき、月14ドルで1人追加できる。大きな組織になれば料金設定はさらに柔軟になる。

組織の観点からするとRangeはNotionと比較されやすいだろう。しかし、自由度に制限があるぶん、ずっとスムーズに使える感じがする。Rangeのユニークな特徴のひとつに、ホーム画面の上部にOKRや分析結果が表示される代わりに、毎日チームの結束を強めるための質問が現れ、今の気分を絵文字で示すよう求められるというものがある。くだらないことのように見えるが、Rangeではちょっとした自己観察によって、雰囲気的にチームがより親密になることを期待している。これは、通常の協調ソフトウェアにはできないことだ。

「人々は本当にすごい仕事をしていながら、互いにそれを語り合っていないことに、私たちは気付きました」と、デナード氏はTechCrunchに話した。「そのため、人々のコミュニティー作りに実際に貢献できることが、私たちの企業としての強みなのです」。

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(翻訳:金井哲夫)

社員向けメッセージングアプリで急成長を狙うドイツのFlipが4.3億円を調達

私たちは複数の人とのグループメッセージに慣れている。自分がWhatsAppTelegram、Facebook Messengerでいくつのグループに参加しているか、もうわからなくなってしまった。Threemaなどのアプリはビジネスの現場で使われ始めているし、Staffbaseなどのスタートアップは本格的な「社員向けメッセージング」プラットフォームになろうとしている。投資家たちは、メッセージングはあらゆる分野で爆発的に伸びつつあり、大きなチャンスがあると考えている。

こうした状況の中、ドイツのシュツットガルトを拠点とする社員向けメッセージングアプリのFlipが、360万ユーロ(約4億3000万円)を調達した。投資したのはLEA PartnersとCavalry Venturesで、Plug and Play Venturesも参加した。また、BASFの監査役会会長であるJürgen Hambrecht(ユルゲン・ハンブレヒト)氏、Magna Internationalの監査役会会長であるKurt Lauk(クルト・ラウク)博士、Starface創業者のFlorian Buzin(フロリアン・ブジン)氏、HRビジネスエンジェルのAndreas Burike(アンドレアス・ブリケ)氏などのビジネスエンジェルも投資した。この資金でチームの拡大とさらなる市場の開拓を加速させる。

Flipは2018年に創業し、あらゆるレベルの社員を結んで情報を知らせるプラットフォームを法律に準拠したかたちで提供している。

「法律に準拠したかたちで」というところが重要だ。同社のアプリはGDPRに準拠したデータおよび従業員保護の概念に基づいている。この概念は、専門家やドイツの株価の主要30銘柄の数社で構成された協議会で認められたものだ。また、既存の多くの企業ITインフラとも統合されている。

Flipは、ポルシェ(自動車)、バウハウス(教育機関)、エデカ(スーパーマーケット)、ユンゲIGメタル(金属系労組)、ヴュステンロート&ヴュルテンベルギッシュ(金融グループ)などの顧客をすでに獲得している。金融機関では、シュパーカッセ銀行やフォルクスバンク銀行で一部利用している。通信大手のドイツテレコムもFlipのパートナーだ。

Flipの創業者でCEOのBenedikt Ilg(ベネディクト・イルク)氏は発表の中で「Flipはあらゆる規模の企業で社内コミュニケーションをとるための最も簡単なソリューションだ」と述べている。

LEA PartnersのBernhard Janke(ベルンハルト・ヤンケ)氏は次のように述べている。「Flipは創業したばかりだが、すでに一流のクライアントを獲得している。リーンなソリューションで、大きな組織でも既存のITシステムやコミュニケーションのプロセスと統合できる。我々は今回の資金調達でチームとプロダクトをさらに拡大してほしいと考えており、あらゆる企業の従業員がデジタルを利用できるようにするというビジョンを持つ創業者を支援している」。

Cavalry VenturesのClaude Ritter(クロード・リッター)氏は次のように述べている。「Flipはこの若い市場において安全で軽量で驚くほどパワフルな製品を提供し、新しいスタンダードを確立しつつあると、我々は確信している」。

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(翻訳:Kaori Koyama)

シムシティを手本に新しい都市開発ツールを目指すUrbanFootprint

何十年間にもわたって、最高の都市計画シミュレーションは、都市計画の専門家にはまったくシミュレーションとして役に立たないものだった。しかし、幅広い人気を誇る街作りゲーム「シムシティ」は違うと、この分野の専門家でありUrbanFootprint(アーバンフットプリント)の共同創業者でもあるPeter Calthorpe(ピーター・カルソープ)氏は言う。

カルソープ氏は、都市プランナー、都市デザイナーとしてのキャリアを1970年代後半からスタートさせ、80年代中ごろには、著名な建築家でデザイナーのSim Van der Ryn(シム・バン・デル・リン)氏とともに持続可能なコミュニティーに関する本を著している。

ポートランド、ソルトレークシティー、ロサンゼルス、そして(私の故郷)ルイジアナ南部のデザインと開発計画に携わったカルソープ氏は、気候の影響からの回復力と持続性というレンズを通して都市デザインを考えてきた。その間ずっと、後にUrbanFootprintとなるツール群を開発していた。

「活動する中で、私たちはすべてのデータをひとまとめにでき、知的な質問ができるツールのことを考えるようになりました」。

【中略】

「質問ができてシナリオを構築できるものです」とカルソープ氏はインタビューの中で話している。

そのツールがUrbanFootprintのベースになった。これを使えば、特定の開発計画を視覚化でき、ひとつのデザイン上の決断を実行した場合に何が起きるかをソフトウェアでモデル化できると同氏は言う。

「都市は非常に複雑で、あらゆる次元で相互関係があるため、複数の結果を同時に見ることが、起こりうる結果を考えるうえで最も健全で最良の方法となるのです」と同氏。突き詰めれば、シムシティとそう変わらない。

このプロジェクトでカルソープ氏のパートナーを務めるのはJoe DiStefano(ジョー・ディステファーノ)氏。同社の最高責任者であり、自身の名前を冠した都市計画会社のCalthorpe(昨年5月にインフラ開発の大手 HDRに売却)でカルソープ氏とともに長年働いてきた同僚だ。

UrbanFootprintは、3年ほど前にCalthorpeから独立した会社であり、現在はベンチャー投資会社からの1150万ドル(約12億6000万円)という資金のおかげで拡大を計画している。この投資には、以前の投資会社Social Capitalと、新しくValo VenturesRadicle Impactが加わっている。

「すべての主要産業の企業は、都市で成功するためには都市を理解しなければならないと気づき始めています」とディステファーノ氏は声明の中で述べている。「基本計画のデータや分析結果の利用を簡便化することで、UrbanFootprintは、街や都市の市場に集中して効率性と持続性を高めたいと考えているすべての企業に、新しいソリューションを提供します」。

同社のソフトウェアは、行政機関の公開データや商業的に集められたデータセットなどを含むデータセットのクレンジングとキュレートを行い、アメリカ全体の土地活用のスーパー・スキーマを生成すると、ディステファーノ氏は言う。そして、UrbanFootprintがデータを持つすべての土地のあらゆる区画の現状を、クエリに基づいて提示する。

都市のインフラと、気候やその他の災害がインフラに与える潜在的リスクの分析結果を提示するUrbanFootprintのデータとツールセット

現在、都市には地球人口のおよそ半数が暮らしていて、その数は、数十年後には世界の男性、女性、子どもの70%に達すると言われている。「私たちは大きな問題にすべて対処しなければなりません」。

【中略】

「それらすべてが、私たちが都市を形作るときに関わってきますが、それをひとつにまとめて検討させてくれるツールがありません」とカルソープ氏。「私たちは、人々に都市そのものを理解してもらうためのプラットフォームなのです」。

都市を理解することは、都市計画や建築だけに留まらず、製造業から医療関係まで幅広い企業にとっても大きな価値がある。

米国結核予防会は、都市の密度と大気汚染が呼吸器系疾患と健康全般に与える影響を理解するために、UrbanFootprintのツールを利用している。

これはほんの一例に過ぎない。グローバル戦略と都市デザインのコンサルタント企業Gahlは、UrbanFootprintのソフトウェアを使って、マイクロモビリティー企業が街の中の自転車や電動キックボードの最適な配置場所と、それが通勤や地域の快適さにどう影響するかをを分析している。

また、北カリフォルニアに電気とガスを供給するパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー(PG&E)は、何かと評判を落としているが、熱波がそのインフラとガス電気の供給網にどのように影響を与えるかをUrbanFootprintで研究していると声明で述べている。

「PG&Eのクライメート・レジリエンス(気候変動による影響からの回復)チームは、気候変動のリスクが高まる中で、利用者への安全で安価で信頼性の高いエネルギーの供給を維持する回復システムが構築できるよう努力しています」と、PG&Eクライメート・レジリエンス責任者のHeather Rock(ヘザー・ロック)氏は話す。「その実現のために私たちは、どのように計画を立て、どのようにインフラ、従業員、顧客、私たちが奉仕するコミュニティーを守るかに関する適切な情報を、将来を見通したデータから得ています。UrbanFootprintは、そうしたリスクを慎重に見極め軽減するためのデータとツールを求める私たちにとって、大切なパートナーです」。

Social Capitalの長年のパートナーであるJay Zaveri(ジェイ・ザベリ)氏など投資家は、UrbanFootprintを、数を増しつつある、都市環境のための開発ツールに取り組む技術系企業のひとつと見ている。

「都市は、文化、ライフスタイル、願望、幸福の上部構造物であり、私たちの生活の中の現実版ソーシャルネットワークです」とザベリ氏は声明の中で述べている。「2018年以来、UrbanFootprintは民間と行政の都市計画立案者、交通とエネルギーの企業に協力して、米国の700都市超で4000近いプロジェクトを実施し、時間単位の複雑なシナリオへの答を提供してきました。都市住民が70億人に達すると言われる2050年に向けて、この10年のうちに都市システムの回復力と備えを緊急に整える必要がある中で、これは非常に重要な取り組みです」

画像クレジット:Ratnakorn Piyasirisorost / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

GoogleのGboardキーボードのEmoji Kitchenで絵文字のマッシュアップができる

自分の気持ちを正しく表す絵文字がない、とお嘆きのあなた、米国時間2月12日からニューバージョンが使えるGoogleのGboardキーボードはどうかな。Android用の新しいGboardには「絵文字キッチン」(Emoji Kitchen)という機能があって、ユーザーはいろんな絵文字をマッシュアップしてメッセージのステッカーとして使える。

ステッカーは、Gmail、GoogleのMessages、Messenger、Snapchat、Telegram、WhatsAppなど、いろんなアプリで使える。

例えば、さまざまなスマイルの絵文字に眼鏡をつけたり、ゴーストにカウボーイハットをかぶせたり、ロボットが涙を流したり、サボテンを猿の顔にしたり(でもこれはどうかな)、ハッピープープ(おもしろウンチ)にハートをつけて愛を表現したりなど、何でもできる。

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  6. ASL_Emoji_2

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ただし、できるのはGoogleがサポートしている絵文字のみで、その多くはスマイリー系だ。つまり絵文字のマッシュアップは、どんな絵文字でもAIがリアルタイムでマッシュアップするのではなくて、Gboardがあらかじめ用意しているものだけなのだ。

使い方は、どれかのスマイリー絵文字をタップするとEmoji Kitchenが、使えるマッシュアップを教えてくれる。

GoogleのGboardは、新しい自己表現の方法を探求する実験的なアプリで、かなり前からある。たとえば、自分用の絵文字を自作できるEmoji Minisがあり、落書き絵文字モールス信号絵文字の提案やGIF画像などもある。

その結果このアプリは、何年も前からあるのに今だにAndroidユーザーの評判が良い。今でもツールカテゴリーの上位50位内にいるし、世界中で10億回以上ダウンロードされている。GoogleのPixelスマートフォンなど、一部のAndroidデバイスではデフォルトのキーボードだ。

でもGoogleのGboardに関するより大きな目標は、Googleの検索などと同じく、すべてのユーザーの常駐アプリになることだ。今や検索はデスクトップよりもモバイルの方が多いから、当然、キーボードの使用頻度も高い。そこを、完全にGoogle化したい。でも、モバイルの検索はGoogleにとって高くつく。モバイルデバイスのメーカー、たとえばApple(アップル)などと、デフォルトの検索エンジンにしてもらうことを契約しなければならないからだ。

GboardはGoogleにとって、その契約のための戦略になる。ユーザーはブラウザーアプリからGoogleを使わなくても、いきなりキーボードだけを使えばいい。

Googleによると、Emoji Kitchenは本日からAndroidユーザーに提供される。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

マイクロソフトがWindows 10Xのデュアルスクリーン向け開発ツールを提供開始

米国時間2月11日、Microsoftは同社主催の365 Developer Dayで、デュアルスクリーン端末向けのWindowsであるWindows 10Xのアプリケーション開発者向けのツール群を発表した

中でも注目に値するのがWindows 10Xエミュレーターだ。これを使うとデベロッパーは自分のアプリケーションがデュアルスクリーン端末でどう見えるのかを事前確認することができる。現時点でWindows 10Xのハードウェアは市場に存在しない。Microsoft自身のSurface Neoを始め、いくつかのメーカーが休日(ワシントン誕生日)前の発売を予定しているが、Microsoftはデベロッパーにこの新しいユーザー体験の準備を進めて欲しいようだ。

Microsoftは、現在のWindowsアプリケーションはデュアルスクリーンでもそのまま動作すると発言している。ただし、2画面を有効に活かすためには、アプリケーションが対応する必要がある。現在Microsoftはアプリケーションを3つのパターンに分けている。実質的にアプリを2画面に広げるexpansive workspace(ワークスペースの拡大)、片方にアプリの主画面を、もう一方にツールを配置するfocused screens(専用画面)、および2つのアプリを並べてマルチタスクを容易にするconnected apps(アプリ連携)だ。

新しいエミュレーターとプレビューSDKを使って、デベロッパーは最適な動作を検討できる。

また同社は、新しいJavaScript APIおよびCSSメディアクエリーを提案し、HTML、CSS、およびJavaScriptを使ってPWA(プログレッシブ・ウエブアプリ)やWebViewsとしてアプリを制作するデベロッパーを支援する。同社はW3C(WWWコンソーシアム)と協力して標準化を進めたいと言っている。「目標は、ブラウザーやオペレーティングシステムを超えたインターオペラブルなデュアルスクリーン体験を作れるようにすること」とMicrosoftは語った。

Microsoftのクロスプラットフォーム開発プラットフォームであるXamarinも、UIツールキットのXamarin.Formsでデュアルスクリーンをサポートする。さらに、React Native(Facebookが開発したフレームワーク)向けにもデュアルスクリーンモジュールを提供する予定だ。

目的は明白で、新しく出てくるデバイスを活用する方法を見出すためのツールをデベロッパーに与えることだ。同社は最高のユーザー体験について一定の考えをもっていることは間違いないが、デベロッパーのどんな使い方をするかも見てみたいと思っている。デュアルスクリーンWindows端末は、まだ始まったばかりであり、Microsoftがエコシステムから学び、それを取り入れるための時間は十分ある。

さらに同社は、新しいSurface端末とWindows 10Xを休暇前に発売する可能性は今もあると私に言った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

低価格ながら柔軟に使える移動ルート最適化のOptimoRouteが7.1億円を調達

移動ルートの計画というと、AmazonやFedEx、UPSといった物流大手の問題だと思うかもしれない。しかし実際は、動き回っている従業員が数人いる小さい会社はどこもこの問題を抱えている。米国時間2月6日、まさにこの問題に取り組んでいるOptimoRouteが、シリーズAで650万ドル(約7億1000万円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのは、Prelude Ventures。ルート計画のサービスを構築しているのはGoogleやYelpにいたエンジニアたちで、条件を設定すると配達やプールの清掃などのためにクルマで回る1日のルートが自動で作成される。

画像:Alan Thornton / Getty Images

OptimiRouteが競合となる同様のサービスと異なる点は、大幅に低価格でありながらドライバーと顧客にライブ追跡や到着時刻の予想、さらに必要に応じてリアルタイムでルートを変更する機能といったモバイルエクスペリエンスを提供しているところだ。OptimoRouteを利用する企業は、特定の曜日の計画を立てたり、最大5週間前に計画を立てたりできる。さらに同社は現在、人とモノの両方のピックアップと移動、そして2日以上にまたがる長距離ルートのサポートもテストしている。

OptimoRouteの共同創業者でCEOのMarin Šarić(マリン・サリッチ氏)は筆者に対し、ルートの最適化はよくとりあげられる学術的問題だと述べた。「ルートの最適化はきわめて実証的でミニマリズム的な学術テーマだ。しかしその一方で、商用では前世紀によく知られていたアルゴリズムを使ったソフトウェアが今も動いている。文字通り、1980年代のアルゴリズムも使われている。OptimoRouteは、効率の良いスケジュールを立てる上での現実的な制限を真剣に考えている」

OptimoRouteは多くの変数(クルマに積める道具の量、時給、特定の修理に必要なスキルなど)を考慮し、ルートを最適化する際に企業が優先順位を選べるようにしている。

サリッチ氏は「我々はこのテクノロジーを誰もが利用できるようにしようとしている。この取り組みは、経験豊富な物流管理者にも高く評価されている。管理者はソフトウェアトラブルの回避ではなく、解決しようとしている問題に集中できるからだ」と説明する。

OptimoRouteは現在、中小企業からSouthern Star Central Gas Pipelineのような大手エネルギー企業まで約800社の顧客を獲得している。Southern Star Central Gas Pipelineは、300人以上のメンテナンス技術者のルートをOptimoRouteのサービスを利用して管理している。従業員が運転する移動距離を減らせば、生産性が上がるだけでなく、サリッチ氏が指摘するように全体の二酸化炭素排出量も減らせる。

OptimoRouteは時間をかけてサービスのための基本的なアルゴリズムを開発してきた。同社は、サービスの利用者は高度な物流の管理者と想定していたが、実際には中小企業からも大きな需要があった。

Prelude Venturesのパートナー、Victoria Beasley(ビクトリア・ビーズリー)氏は「Preludeは、OptimoRouteが事業を拡大し、また多数の従業員の移動もサポートできるようにさらに開発を進めるための力になれることをとても喜んでいる。さまざまなクライアントが時間と費用とリソースを節約し、さらに二酸化炭素排出量も減少することで、OptimoRouteはルート最適化の市場にきわめて大きな影響を与える、と我々は確信している」と語った。

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(翻訳:Kaori Koyama)

DevOpsポリシーエンジンのDatreeがY Combinatorに入学

DevOpsのポリシーエンジンをGitHubで作っているアーリーステージのスタートアップであるDatreeは米国時間2月6日、シリーズAラウンドで800万ドル(約8億7864億円)を調達した。同社はまた、Y Combinatorの2020年冬季に参加したことも発表した。

BlumbergとTLV Partnersがラウンドをリードし、Y Combinatorが参加した。2018年に発表した300万ドル(約3億2949億円)のシードラウンドを合わせると、同社は今や1100万ドルを調達している。

共同創業者でCEOのShimon Tolts(シモン・トルツ)氏によると、コードを調べて問題を見つけることもDevOpsのチームにとって必要なことだが、彼らはルールの定義でヘルプを求めている。そこでDatreeは一連のルールパッケージを作ってコードをそれらと照合し、コードを動かして乖離や問題点を見つけられるようにした。

トルツ氏は「Datreeは開発のベストプラクティスとコーディングのスタンダードと、セキュリティおよびコンプライアンスのポリシーを提供する。今ではユーザーがDatreeに接続するとDatreeがソースコードを参照してコードベースの全体をスキャンし、ユーザーのテクノロジースタックに基づいて開発のベストプラクティスを推奨する」と説明する。

これらのルールパッケージは同社自身の専門的能力をベースに作るほかに、コミュニティからの支援もあり、また外部エキスパートとのパートナーシップもある。同社のDockerセキュリティパッケージでは、Aqua Securityとチームを組んだ。

デベロッパーはGitHubで仕事をしているので、これらのルールはGitHubで適用される。彼らはコードをコミットする前に適切なルールパッケージをそれに対して動かし、ベストプラクティスに適合していることを確認する。

Datreeのルールパッケージ(スクリーンショット提供:Datree)

トルツ氏によると、シードラウンドの後でY Combinatorに着目したのは、ビジネスの構築にガイダンスが欲しかったからだ。彼は「Y CombinatorがDatreeの助けになることはわかっていた。DatreeのプロダクトはYC企業の95%にふさわしいからだ。もっと勉強すれば、より成熟したYC企業との6桁の契約も獲得できるようになるだろう」と語る。

DatreeはY CombinatorのCEOであるMichael Seibel(マイケル・ザイベル)氏直属で仕事をしており、2020年冬季の一員になったことによってマーケティングと営業力の強化が期待される。2017年から操業していて既存のプロダクトもあり、「社員が12名いる同社は典型的なYC企業とは言えないが、長期的には今回の参加が経営に大きく貢献する」とトルツ氏は感じている。

関連記事:Datree gets $3M seed round to build DevOps policy engine in GitHub(300万ドルのシード資金を得たDatreeがGitHubでDevOpsのポリシーエンジンをを作る、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

米信用組合のCUNAがランサムウェア感染の疑いでシステムダウン

主要なロビイストであり、米国における信用組合のための組織であるクレジット・ユニオン全国協会(CUNA)は、今週初めに「サイバー攻撃」の後にシステムがダウンし、現在復帰を目指している。ワシントンDCに本社を置くCUNAは、全米の州および連邦公認の信用組合を代表し、ロビー活動、アドボカシー(政策提言)、その他の業界団体サービスを提供している。

しかし、報道機関との接触を禁じられていた事件に詳しい情報筋によると、2月3日のシステムダウンの原因はランサムウェアの影響だったという。使用されたランサムウェアの種類は現時点では不明だが、CUNAは主にMicrosoft(マイクロソフト)のソフトウェアを採用しており、これはランサムウェアの標的になることが多いと考えられている。同社のウェブサイトに掲載された報告では、システムダウンは「技術的な問題」とのみ説明されていた。

CUNAの広報担当者のVicky Christner(ヴィッキー・クリスナー)氏は、ランサムウェアがシステムダウンの原因であるとは認めず、「ビジネス停止の問題」について「サイバー事件への対応を進めている」とのみ説明した。

「CUNAは会員の社会保障番号やクレジットカード番号を保存していない」と、クリスナー氏は伝えている「これまでの調査によると、名前や会社の住所、メールアドレスなど、システム内のデータにアクセスされたことを示す証拠はない」。「我々の調査は現在も続いている」と同氏は伝えている。

今回の事件は、ランサムウェアからの防御を支援することを目的とした、模擬ランサムウェア攻撃をCUNAが実施した数か月後に発生した。CUNAへの攻撃は、ここ数カ月の間にランサムウェアの被害を受けた企業の中でも最新のケースだ。昨年はアルミニウムメーカーのAebi Schmidt、郵便・運送会社のPitney Bowes、飲料メーカーのArizona Beveragesがランサムウェアの被害を受け、それぞれ数日間システムがダウンした。

記事執筆時点では、CUNAのウェブサイトはシステムを「早急に」復帰にすると表明している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ワークフロープラットフォームのMonday.comが新バージョンを発表

米国時間2月4日、Monday.comは同社の柔軟なワークフロープラットフォームのバージョン2を発表した。このバージョンで、顧客はMonday上でもっと簡単にカスタムアプリを作ることができる。

画像:GettyImages

共同創業者でCEOのRoy Mann(ロイ・マン)氏は、同社の製品はさまざまな目的に使えるきわめて柔軟なワークフローツールで、主に中規模の企業をターゲットにしていると語る。同氏は「プロセス管理、ポートフォリオ管理、プロジェクト管理、CRMの管理、ホテル運営、R&Dの管理と、やりたいことは何でもこのツールでできる。やりたいことを組み立てるブロックを我々が提供しているからだ」と述べている。

バージョン2.0では、ブロックを組み立ててあらゆる組織やチームのニーズに合うカスタムアプリを作れるコード不要の環境を提供している。ワークフローのエレメントを使って、Monday内のプロセスを組み立てることも、ほかのアプリやサービスと統合することもできる。

実際に、新バージョンには100を超える自動化のレシピとコード不要のカスタムオートメーションがあらかじめ作られている。ほかのアプリとの統合も50種類以上用意されている。これらを使ってプロジェクトマネージャーはコーディングをしなくてもかなり高度なワークフローを作成できる。

企業がホテルを運営するカスタムアプリを構築する例。スクリーンショット:Monday.com

また、同社はMondayのプラットフォームを、このプラットフォーム上で動作するアプリを作りたい開発者に公開している。マン氏によれば、これはまだ始まったばかりで、ゆくゆくは開発者が作ったアプリのマーケットプレイスを開設する計画だという。

マン氏は「まず(プラットフォームを開発者に対して)ベータとして公開する。(当初は)開発者自身と開発者の顧客が使用するが、その後ほどなくしてアプリを(マーケットプレイスに)公開する計画だ。これは明確な方向性だ」と語る。

同社の年間経常収益は1億2000万ドル(約132億円)、顧客数は10万。これまでひっそりと事業を進めてきた。マン氏によると、従業員は370人で拠点は主にイスラエル、これまでに2億7300万ドル(約300億円)を調達した。直近の投資は昨年7月の1億5000万ドル(約165億円)で、評価額は19億ドル(約2090億円)と非常に高かった。

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(翻訳:Kaori Koyama)

グラフデータベースNeo4jのバージョン4.0はサイズ制限のないスケーリングが可能に

グラフデータベースのメジャーであるつNeo4jが今日(米国時間2/4)、バージョン4.0のリリースを発表した。最大の目玉は、スケーリングのサイズに制限がなくなったことだ。

グラフデータベースは複数のデータ間の結びつきを表現し調べることができるので、近年ますます人気がある。たとえばeコマースのサイトなら互いに関連するアイテムを表現したいし、ソーシャルサイトでは自分の友だちと、友だちのそのまた友だちなど、複雑な友だち関係を知りたいだろう。主に企業で人気が増していて、特にデータサイエンティストたちが好んでいる。大量のデータの中の関係を表現し見つけられるからだ。

Neo4jの創業者でCEOのEmil Eifrem(エミル・アイフレム)氏によると、グラフデータベースというコンセプトを開発したのは同社だが、その後大きく成長し、多様な展開を見せてきた。「2019年は一般的にも良い年だったが、グラフデータベースにとってはさらに良かった。我々がグラフという言葉とデータベースという言葉をくっつけたときには、そういう新しいカテゴリーを作ることと、その市場開拓に力を入れてきた。そしてそれを、新しいコンセプトとして布教してきた」と語る。

「今度のニューバージョンはかなりのメジャーリリースであり、彼がフォーカスしたいこともいろいろある。まず最初は、大きさ制限のないスケーリングだ。バージョン4.0では高度な水平スケーリングを導入したので、それが可能になった。これまでのバージョンではデータベース全体にわたってデータを複製してきた。それはデータ処理でよく使われる方法だが、データ量がスケールすると遅くなる。ニューバージョンでは、それを変えたかった」と同氏。

同氏によると「4.0ではパーティショニングを導入した。それは、データベースの世界では『シャーディング』と呼ばれている技法だ。リードライトとサイズの両方をスケールできるから超強力な機能だ。限界があるとすれば予算、つまりどれだけ多くのマシンを加えられるかだ」とのこと。

ニューバージョンには、ロール(役割)ベースのアクセスが加わった。グラフデータベースが個々の部門やチームから全社に広がると、各人のロールに基づいて特定のデータへのアクセスを制限することが極めて重要になる。

これについても同氏は「今日では、Neo4jのグラフデータベースは全社的に広くデプロイされている。すると、セキュリティやプライバシーの問題も生じる。そこで、ロールベースのアクセスによりデータを保護するのだ」と説明する。

ニューバージョンにはほかにも多くの機能がある。例えば、単一のNeo4jクラスターで複数のデータベースを動かしたり、また「リアクティブシステム」のサポートもある。後者によりデベロッパーはデータベースとアプリケーションのやり取りを完全にコントロールでき、頑強性のあるデータパイプラインの確保と、データのストリーミング、機械学習などにもそれが応用できる。

Neo4jは2007年の創業。Crunchbaseによると、これまで1億6000万ドル(約176億円)あまりの資金を調達している。

関連記事:Neo4j nabs $80M Series E as graph database tech flourishes(グラフデータベースが大人気でNeo4jはシリーズEで8000万ドルを調達、未訳)

画像クレジット:Neo4j

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Z世代お気に入りの写真共有アプリ「VSCO」が動画投稿可能に

Z世代のミームになった写真共有アプリVSCOに、動画投稿機能が加わる。同社はすでにアプリでの動画編集はサポートしていたが、ユーザーが編集した動画コンテンツを、直接VSCOフィードに投稿することはできなかった。まずはiOS版のVSCOユーザーから、この状況が変わることになる。

動画投稿機能はアプリのユーザー間で、長い間待たれていた機能であり、同社によれば、VSCOプラットフォーム上での動画編集が盛んになってきた時期をみて実現されることになったという。

過去1年間で、VSCO上での動画編集数は倍増した。さらに、同社のGIF作成ツールであるDSCOは、引き続き最も利用されている機能の1つだと同社は主張している。12月にVSCOは、動画テクノロジー企業であるRyloを買収することで、動画市場により深く入り込む意向を示した。

かつてのRyloはコンパクトカメラの製造で有名だったが、最近では一連のモバイルビデオ編集ツールに注力していた。VSCOは、これらのツールを2020年中にコミュニティに展開する予定だと述べている。VSCOはどのツールを含めるかについては言及していないが、Ryloモバイルアプリは既に、動画安定化技術や、360度ショットの任意のセクションから完全にフレーム化されたクリップを作成する機能など、たくさんのものを提供している。全体的な考え方は、まずはより気楽な方法で撮影して、あとからシーンを構成できるようにしようというものだ。

現在、VSCOの動画編集ツールは、プリセットの使用や、露出やコントラストなどの調整といった、写真編集的機能により焦点を当てている。動画投稿の開始にあたってVSCOは、Ryloによるより高度な動画機能がまもなく登場することを約束している。

2011年にローンチされたVSCOは、盛り髷、派手な水筒、金属ストロー、そして貝殻ネックレスなどを身につけたある種のZ世代ガールのパロディといったVSCOガールミームや、VSCOのフィルターによって慎重に加工されたInstagramの写真などのおかげで、最近メインストリームになってきていた。

ただし、VSCOはビジネスを後押しするためのミームを特に必要としていたわけではない。このアプリには現在、1週間あたり2000万人以上のアクティブユーザーがおり、200万人以上の有料顧客を抱えている。

さらに、VSCOは12月の時点で、2020年のどこかの時点で有料顧客が400万人を超えるペースだという発表を行っている。また同時に年額19.99ドル(約2200円)のサブスクリプションのおかげで、年間収益が8000万ドル(約88億円)に近付いていることも発表した。

VSCOは、ブランドを成長させるために11月にSnapと提携して、写真と動画に適用できるSnapchatレンズを初めて提供している。おそらく同社は現在、短い動画形式の投稿に先立って行われる編集機能の第1の選択肢となることで、TikTok世代の関心を集めたいと考えているのだろう。

iOSのVSCOユーザーが新しい動画投稿機能を使用するには、アプリの右上にあるプラスアイコンをタップしてから、動画タブに切り替えればいい。その後、ユーザーは動画を編集して、これまで写真で行っていたように投稿することができる。VSCOによれば、Android版も今後数週間のうちに登場し、動画のお気に入り追加や再公開もサポートされるということだ。

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(翻訳:sako)

「安くてもこれだと使わない」現場を見つめ改良した「TANOMU」が発注ユーザー1万店舗を突破

いまだに主な通信手段としてFAXと電話が生き残り、レガシーな業界と言われてきた飲食業界。だが、デジタル化の波は着実に裾野へ向かって広がりつつあるようだ。

例えば、先日、FAX受注の自動化機能を搭載した「クロスオーダー」は、飲食店と卸売業者間の受発注をLINE経由で行えるサービスで、大手チェーンではなく、個店や小規模チェーンをターゲットとしている。同じく、飲食業界向けの受発注システム「TANOMU(タノム)」も、卸業者と個人経営の飲食店とのやり取りを重視したサービスを提供している。

そのTANOMUが、1月30日に発注ユーザー数1万店舗突破を発表した。2018年11月のトライアル版提供開始から約1年3カ月のことだ。運営のタノムは、実は2018年3月まではシェフ監修のミールキット「Chefy」を運営していたスタートアップだ。

タノム代表取締役の川野秀哉氏に、事業ピボットのわけ、飲食業界の課題とタノムの目指すところについて、話を聞いた。

タノム代表取締役 川野秀哉氏

ミールキット「Chefy」クローズを決意した理由

2017年6月にリリースされたChefyは、プロのシェフが選んだ食材とレシピが届く、ミールキットサービスだった。リリースのきっかけは、川野氏自身が「週末だけでも家族にごちそうを食べさせてあげたい」と思ったこと。「子どもができたばかりで妻が大変そうにしている中で、せめて週末の料理ぐらいは、と取り組んだが、食材やレシピを選ぶのはこれほど難しいものかと思った。事業を探すというより、自分が料理がしやすいサービスがほしいと考えた」(川野氏)

ちょうど欧米では、ミールキットを扱うBlue ApronHelloFreshといったスタートアップが順調に資金調達を行い、上場を目前に事業を拡大していたころ。川野氏は「日本でもミールキット市場は広がるのではないか」と予測して、この分野に進出した。

サービス開始当初は環境も良く、資金調達もスムーズだったChefy。しかし“プチごちそう”のミールキットデリバリー領域にはその後、オイシックスやセブン・ミールサービスといった大手も進出し、「価格や物流面で競争することは難しく、スタートアップができることはなくなっていった」(川野氏)という。

外部環境の変化とともに、サービスの内容そのものにも川野氏は疑問を感じ始めた。「人を喜ばせたいと始めたサービスなのに、星付きのレストランのシェフによるプロのレシピは難しく、毎週これをやっていたら苦痛でしかないのではないか、と自分でも感じるようになった。また本来はエンジニアであるCTO(共同創業者の福岡一樹氏)も、オリーブオイルだとか食材だとかを毎週パッキングするのに必死になっている。俯瞰で見た時に『本当に我々が役に立てて、社会に求められていることをやっているんだろうか』と考えるようになっていた」(川野氏)

テクノロジーという強みが生かせない一方で、物流や食材の目利きには特別秀でているわけでもない自分たちは、ユーザーにとっても必要ないサービスをやっているのではないか。そう感じて川野氏は、投資家や創業メンバーとも話し合った結果、Chefy終了を決断した。サービスクローズは2018年3月のことだった。

現場に寄り添い改良を続けた「TANOMU」

Chefyをクローズした川野氏は「『あったらいいな』でChefyを始めたことがいけなかった。『ないと困る』ことをやらなくてはいけない」と考え、事業のピボットを数カ月にわたって試行錯誤していた。三井物産に在籍していた時代も、その後ワイズテーブルコーポレーションで海外のレストラン立ち上げを担当した際も、「食とテクノロジー」がテーマとしてあった川野氏。その領域で身近な人に解消したい課題を聞こうと、Chefyで取引先だった食材卸業者10〜20社ほどにヒアリングを行ったそうだ。

しかし「IT屋としてヒアリングをすると、本当に困っていることは話してくれない。聞いても本音が出てこなくて、『音声入力で注文できたら』といった『あったらいいな』系の要望ばかりだった」(川野氏)という。

そこで、川野氏は卸業者の働く現場に朝から晩まで張り付いてみることにした。最初に現場に入ったのは青果卸で、初日の集合時間は午前2時。雨漏りする築地市場で、電話・FAXの受注を処理したり、仕入れ、ピッキングなどさまざまな業務を行った。

「慌ただしく、いろんな仕事をしなければならない現場では、新しいツールを入れること自体が(学習の手間が発生して)コストになると分かった。日々の受注だけでなく、配送や売上の回収、請求書起こしなど、ほかにもやらなければならないことはたくさんある。何から手を付ければよいか、考えた」(川野氏)

八百屋だけでなく魚屋やイタリアン、中華食材など、何軒かの卸業者に入らせてもらう中で、川野氏は「『受注の効率化』と『売上を上げたい』という課題は、どこでも共通だと分かった」という。とはいえ、どの業者も効率化のためにFAXから受注方法を変えるという発想はないし、新たなツールへの学習アレルギーも強い。また既存のウェブ受発注システムが卸業者に浸透している理由を聞くと「取引先の大手チェーン店から導入してくれと言われて、仕方なく入れた」というところが多く、「ITシステムは外圧的に入れるもの」という意識も根強かったそうだ。

川野氏は、配送や納品書を書く作業、請求書のフォーマットや作り方など、実際に現場で見聞きすることで卸売業の懐に入り込むよう心がけた。そのうち、ある1社から「じゃあ、今できるところだけでもやってみてよ」と言われるようになる。最初はしかし、受発注の仕組みではなく、紙のチラシや電話・店頭など口頭での営業で行ってきた販促をデジタルチラシに置き換え、そのチラシから発注ができるシステムを用意してみたそうだ。

できあがったシステムは試してもらえたものの、3日で使われなくなった。チラシの内容は、常に訴求したい新しい商品に入れ替えなければ見られなくなってしまうが、入力の手間がかかる。また顧客に習慣的に見られるような工夫も必要だった。

「どんなに安くてもこれだと使わない」と卸業者に言われ続けたシステム。だが、どこの業者でも「売りたいおすすめ品は載せたい」「毎日発注されるものは掲載したい」ということが分かっていく。そこで、受発注のコストを下げるだけでなく、おすすめ品を案内できて売上の向上にもつながるよう、両方をセットで実現するシステムとして、TANOMUを改良していったところ、使ってくれる業者が増えていったと川野氏は話す。

「問屋さんが飲食店に広めてくれた」

TANOMUでは、卸業者は店舗への商品案内、注文受け付け、受注数の集計といった業務を、スマートフォンやPC、タブレットで行うことができる。飲食店の側も隙間時間にスマホで業者おすすめの商品をチェックでき、簡単に食材の発注が可能だ。

TANOMU発注画面イメージ

TANOMUは発注側の飲食店は無料、受注側の卸売業者は初期費用10万円、月額3万円から(商品数・取引数により変動)で利用できる。川野氏は「受注サイドの問屋さんの方を徹底的に向くようにしている」という。

川野氏は「IT的な効率化だけでは現場は受け入れられない」といい、「我々は、競合他社というよりは、今ある商習慣と戦っていて、学習コストを超えて価値を生むものを作ろうとしている」と述べている。「競合が見せ方をまねてくることもあるが、TANOMUは卸業者が必要なものだけを搭載し、機能を入れすぎずにシンプルに使えるようにしている。問屋さんの話を聞いて、本当に必要な機能だけを追加・開放していっている」(川野氏)

こうした姿勢がユーザー企業に評価されて、TANOMUはサービス開始から1年3カ月で飲食店側の利用が1万店を超えるところまできた。「問屋さんが取引先の飲食店に広めてくれている」(川野氏)という。

「問屋は紙をなくしたいだけでなく、デジタル化した上で、基幹システムと連携するなど、受注後のフローも含めて効率化したいと考えている。ある程度以上の規模の問屋は、既にRPAもFAX-OCRも取り組んでいるが、取引相手の飲食店がフォーマットに合った形で発注してくれないと始まらないので悩んでいる。真に商習慣を変えなければ、本当の効率化からはズレてしまう。そこを一緒に変えていきたい」(川野氏)

現場でもスマホで操作が完結する

卸売業者の方を向くようにしている、と川野氏は言うものの、実は飲食店側でも、デジタル化を求めている傾向があるとのこと。「飲食店の人も、個人的なやり取りや経理作業ではスマホやPCを使い始めている。食材の発注で使っていないのは今までがFAXと電話の世界だったから、というだけのこと。問屋も『飲食店は変えてくれないだろう』と思い込んでいる」(川野氏)

固定電話やフィーチャーフォンしか使えない、というような店ならともかく、若い店主や海外で修行してきたような飲食店経営者なら、少なくともスマホ、LINEは違和感のないツールだ、と川野氏。「導入してみると、思った以上に早く使いこなしてもらえる」という。

「店の方でも、閉店後に発注書をFAXするところが多く、みんなが同じような時間で送信することによる『FAX渋滞』に悩んでいる。朝来てみたらエラーで送信できていなかった、となると結局もう一度送信するとか、電話で問い合わせるといった面倒なことになる。『終電で帰るときにスマホで発注できたら、その方が助かる』と思っている人は多い」(川野氏)

「飲食は古い業界ではあるが、変えたいという現場のニーズは感じる」と川野氏。今後について「大手の卸売業者にもTANOMUの導入を広げていきたい」と語る。

「はじめは既存サービスのインフォマートなどが入らないような、年商5億円までの小さな問屋の需要を想定していた。仮説が当たって、小規模の問屋で導入が広がり、それが1万店舗ユーザーの利用につながっている。ただ、問い合わせを聞いていると、FAX受注から数の確認、ピッキング、配送、提案といった一連の業務で大変に感じる課題は、規模にかかわらず共通している。リードタイムの管理やユーザー権限設定といったエンタープライズに特有の機能を整備するなどして、より大規模の業者にも利用を広げたい」(川野氏)

そのほか、ニーズとしては、飲食店と卸売業者間だけでなく、店舗間、支社間の社内受発注に利用したいという声や、移動販売やデパート出店などが多く、FAXが置けない店で使いたいという声もあるそうだ。

「軽減税率の導入や働き方改革の推進、オリンピック・パラリンピックに向けた商流などの背景もあって、卸売業の現場の人は疲弊している。単純作業が多いが、業務時間帯が独特なため、人が雇いにくく、やるべきことは増えている。この状況に対して『新しいことを覚えるのは無理』というのを何とか解決して、人の疲弊を解消したい。また人の効率化だけでなく、社会問題化している食材廃棄の問題解決にもつなげていきたい」(川野氏)

また「食以外の美容やアパレルなどの分野にも進出したい」と川野氏。「商売のあるところでは必ず役に立てることがある」として、飲食業界でのバーティカル展開が一段落した暁には、いずれホリゾンタルにもサービスを展開していきたいということだった。

アップルはユニバーサル購入オプションをMacに広げ、App Storeを統合

Apple(アップル)は米国時間2月5日、macOS用アプリも含むクロスプラットフォームのアプリを、間もなく1つのユニバーサル購入のかたちで販売できるようにすると公式に発表し、アプリ開発者を驚かせた。消費者の側では、ユニバーサル購入オプションとは、ひとつのアプリを一度購入すれば、iPhone、iPad、Apple TV、Macなど、異なるデバイスでも使えるようになるというもの。開発者の側では、MacとiOSのアプリ、またはその他の組み合わせを同時に購入するよう顧客に促すことができる。さらに、顧客のアプリ内購入とサブスクリプションのプラットフォーム間での同期も容易になる。

同社によると、ユニバーサル購入は2020年3月から開始されるとのこと。この変更に備え、iOSとMacのApp Storeのカテゴリーを統一し、アプリをより探しやすくすると同社は話している。

アップルのApp Storeのカテゴリーは、滅多に更新されることがないため、それだけでも、ユニバーサルなアプリのバンドルを行わない業者も含め、開発者に衝撃を与える大転換となる。新しいカテゴリーにアプリを載せれば、アプリの数が多い既存のカテゴリーで競うよりも、トップアプリの上位にランキングされる可能性が高くなる。

iOSでは、開発者は2つの新しいカテゴリーにアプリを登録できる。「開発ツール」と「グラフィック&デザイン」だ。

Mac向けのApp Storeには、iOSにある「ブック」[フード/ドリンク」「雑誌/新聞」「ナビゲーション」「ショッピング」が新たに追加される。

さらに、MacのApp Storeにある「写真」と「ビデオ」のカテゴリーは、「写真/ビデオ」に統合されて、iOSのApp Storeとの同期性が高められる。また、MacのApp Storeでは、「子ども向け」は「ゲーム」のサブカテゴリーではなくなる。

アップルによれば、開発者は新しいアプリを、App Store Connectで1つのAppレコードを使って開発する方法と、既存のAppレコードにプラットフォームを追加して新しいユニバーサル購入オプションを利用する方法のいずれかが選べるという。この機能は、macOS Catalyst対応アプリではデフォルトで有効となるが、それ以外のアプリでも使用できる。

2月5日から、開発者は「Xcode 11.4 beta」アップデートリリースをダウンロードして開発作業を始められるが、このオプションが一般に利用可能になるのは3月にローンチされてからとなる。

誤解のないように言えば、一度の購入で複数のアプリを提供できるようになるのは、これが初めてではない。例えば、iPadやApple Watchのアプリも同時に付いてくるiPhoneアプリを買ったことがある人なら、すでにユニバーサル購入オプションを経験済みということだ。新しいのは、それと同じ機能をMac用アプリに初めて導入するという点だ。

もちろん、ユニバーサル購入はすべてのアプリに恩恵をもたらすわけではない。なので開発者は、ビジネス展開の方針に基づいて、その長所と短所を自分で見極めてバランスをとる必要がある。だがこのオプションは、これまでアップルが別々に提供していたアプリのエコシステムを統一し、今後のMac用アプリの開発に拍車をかけるという点で大きな前進となる。

ベータ版Xcodeは2月5日、macOSとiOSのベータ版とともに公開された。これらを組み合わせることで、Macでのスクリーンタイムの通信制限、Mac用のヘッドポインター技術、絵文字ステッカー、CarPlayの更新とiCloudのフォルダ共有といった新機能が利用可能になる。

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(翻訳:金井哲夫)

オンラインからオフラインの橋渡しプラットフォーム「Sendoso」が44億円調達

電子メールはゴミだ。我々は常にその中に埋もれている。デジタルな書簡があふれる中で、人目を引くのは容易ではない。このインターネット時代の主要コミュニケーションチャンネルが大混乱している状態で、いかにしたら人々の注目を集められるのか?

ひとつには、受信ボックスを丸ごと忘れて物理的にやるという方法がある。そこに目を付けたのが、Sendoso(センドーソー)というスタートアップだ。Sendosoは米国時間2月4日、4000万ドル(約43億8000万円)の新たな資本投資を受けた。これは、Oak HC/FT Partners(HC/FTはヘルスケアとフィンテックの略)主導のシリーズB投資だ。同社はこれにより、重要な知らせであることを送り主が相手に気付かせる、彼らが「発送プラットフォーム」と呼ぶシステムの開発スピードを加速させる。

TechCrunchでは、2019年の初めに同社が1070万ドル(約11億7000万円)のシリーズA投資を獲得したときの話を掲載している。Sendosoはこれまで、非公開会社のまま5400万ドル(約59億円)を超える資金を調達した。

TechCrunchのインタビューに応えて、SendosoのCEO、Kris Rudeegraap(クリス・ルーディーグラープ)氏は、1500万ドル(約1億6400万円)に満たない投資を受けた後、「製品と市場が合致した」ために、次はひとつのラウンドで4000万ドルを調達できたと述べている。そのためシリーズBは「とても人気のラウンド」になったとルーディーグラープ氏。この投資ラウンドは「関心という点では定員超過でした」と彼は言い足した。

またこのスタートアップは、2019年の総収益が、2018年と比較して330%に成長したとのことだ。驚異的な成長ぶりだが、いったいSendosoとは何をする会社なのだろう? Sendosoは、現実世界に大きな足場を持つハイテク企業だ。だから、ちょっと説明が難しい。具体的には、同社のソフトウェアは、顧客の「デジタルとフィジカル(物理的)の発送戦略を合体」させて注目度を高めるのだと、ルーディーグラープ氏は説明していた。

シリーズAの時期にTechCrunchで詳しく伝えたが、CEOはセールス畑の人間だ。彼はそこでコミュニケーション戦略を発展させ、見込み客にグッズや手書きメモなどを送るようにした。その作戦は大成功だったのだが、時間のかかる作業だった。

Sendosoは、そのルーディーグラープ氏のセールス方式の製品版だ。同社はこのサービスを「Sending Platform」(発送プラットフォーム)と呼び、ウェブサイトには日持ちのしないものでも何でも送れると書かれている。今朝発表された広報資料によれば、Sendosoは市場での立ち位置を「顧客の市場進出計画にデジタルとフィジカルの発送戦略を合体させる」ことに置いている。

同社が構築するソフトウェアは、顧客とSendoso独自のサービス、サービスと顧客の顧客関係管理ツール、そしてその両方と倉庫を結びつけて、名前入りのアイテムをチームや見込み客に送る手伝いをする。

この会社が、やがてはいろいろな分野に枝を広げるであろうことは容易に想像がつく。あらゆる分野の企業との関係を深めており、出荷経験があり、倉庫もどんどん拡張しているからだ。今後は何を発送するようになるのだろう?

だが今は、企業が他の企業に贈り物や商品を、ときどき名前入りで送るという業務に専念しているようだ。セールスの世界は広い。セールスを促進させるための市場も巨大だ。Sendosoが2020年も3桁の成長を遂げるかどうか、注目しよう。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

米国アイオワ州党員集会の投票結果を報告するスマホアプリがクラッシュ

米国アイオワ州党員集会の結果を報告するためのスマートフォンアプリがクラッシュし、米国大統領に出馬する民衆党候補を推薦する最初の投票結果の通知を遅らせた。

同州党員集会の投票結果は、州全体にいる代表者からスマートフォンアプリを通じて送られてくることになっていたが、結果が判明する直前に「品質管理」の問題が発覚した。

「3組の集計結果に不一致が見つかった」と同州民主党広報員のMandy McClure(マンディ・マクルーア)氏が語った。

「集計には、ITシステムだけではなく、結果の写真と文書記録も使い、すべての結果が一致することを確認して報告する数値の信頼性と正確性を確保する」と同氏は語り、「ハッキングや侵入ではない」と説明した。

「根拠となるデータと文書記録は確かなものであり、結果を報告するために時間がかかっているだけである」と広報担当者は語った。

一部報道によると、結果は米国時間2月4日になるまで確定しないという。

関連記事:Homeland Security hasn’t done enough to protect election infrastructure, says watchdog

1月にNPRは、このスマートフォンアプリは結果報告の時間を短縮するために作られたことを報じたが、電子投票機やその他のシステム基盤のハッキングに対する脆弱性の懸念が渦巻く中、投票にスマートフォンを使用する方法を批判していた。アプリのセキュリティーに関する懸念は問題になったが、開発者の名前もセキュリティー慣行もハッカーの侵入に利用されることを恐れて公開されていない。

しかし、このアプリにバグが多く問題があることは、最終結果が出る何時間も前に当局者が指摘していた。

現在は削除されているツイートのスクリーンショットには、現地時間の午後6時時点でアプリに問題があることが示されていたことをTechCrunchは確認している。

シェルビー郡のある投票区責任者は、アプリの代わりに自分の計数結果を使うと言っていた。

アイオワ州は民主党大統領候補指名にとって重要な最初の投票が行われる場所だ。最終候補は今年中に選ばれて、共和党候補になるであろうドナルド・トランプ大統領と戦う。

画像クレジット:Brendan Hoffman / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

業務管理プラットフォームのAsanaが直接上場へ

職場の生産性を高めるツールを展開しているAsana(アサナ)は2月3日、Form S-1(フォームS-1)を提出したことを発表した。そして声明文で、直接上場を通じて株式を公開する計画を明らかにした。

直接上場では、企業は新株を発行せずに上場することができる。既存の株主が保有株を任意の価格で売ることはできない。直接上場は上場に伴う手続きの煩わしさや費用を抑制する手段として、このところかなり話題になっている。Slackは2019年に直接上場し、 Spotifyもその前年に同様の手段をとった。Airbnbも直接上場に関心があると報道されている

Facebookの共同創業者であるDustin Moskovitz(ダスティン・モスコヴィッツ)氏とJustin Rosenstein(ジャスティン・ローゼンスタイン)氏が共同で設立したAsanaは、チームがタスクを割り当てたり、進捗状況を管理したり、プロジェクトの締切を設定したりできる、生産性を高めるためのソフトウェアを手がけている。

引受銀行に払う多額の手数料や長ったらしいロードショー(機関投資家への説明)、手続きに伴う当局とのやりとりをなくす手段として、直接上場はシリコンバレーの多くの人から称賛されてきた。昨年、ベンチャーキャピタリストのBill Gurley(ビル・ガーリー)氏は直接上場を勧めるカンファレンスを開催した。また、ニューヨーク証券取引所(NYSE)は昨年11月に米証券取引委員会に直接上場での資金調達を可能にする提案申請を提出した。提案は数週間後に却下されたが、NYSEは直接上場プロセスを展開する意向を固めたようだ。

興味深いことに、AsanaはSlackやSpotifyよりもずいぶん小さな会社で、これまでに調達した資金も2社に比べるとかなり少ない。Crunchbaseによると、調達した資金は2億1300万ドル(約230億円)だ。2018年後半にAsanaはシリーズEで5000万ドル(約54億円)を調達し、バリュエーションは15億ドル(約1630億円)になった。直接上場によるデビューは、同社がおそらく持ち合わせの現金に満足していることを示している。

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(翻訳:Mizoguchi

アップルの新しいマップアプリはまず米国全土から展開開始

アップルは、機能を向上させ、より詳しい情報を表示可能なマップアプリを米国全土を対象に展開したと、米国時間1月30日に発表した。再設計されたアプリは、全体的に情報の精度が高くなり、道路、建物、公園、空港、モール、その他の公共の場所の包括的なビューを含むものとなっている。さらに、Look Around(ルックアラウンド)機能を、より多くの都市で利用できるようにし、マイアミでもリアルタイムの乗り継ぎ情報を提供できるようになった。

アップルは2012年に、iOS用のGoogleマップを自社製のマップアプリに置き換えた。それ以来、Googleマップに対する競争力を高めるため、マップのユーザー体験の向上に何年も費やしてきた。控えめに言っても、最初はうまくいかなかった。アップルのCEO、ティム・クック(Tim Cook)氏は、マップが顧客の期待に応えることができなかったことを謝罪し、アップルとして改善に取り組むことを約束する必要さえあったほどだ。

これまでアップルは、マップのデータの内容を改善し、さらに2018年にはマップを実現するプラットフォームそのものをゼロから作り直すことを表明することで、そうした約束を果たそうとしてきた。また昨年には、iOS 13で新たに「Look Around」と呼ばれる機能も導入した。これは、グーグルのストリートビューのアップル版のようなものだが、より詳細な情報を表示できる高解像度の3Dビューを提供し、表示の遷移もスムーズだ。

またiOS 13では、リアルタイムの乗り継ぎスケジュール機能、コレクションと呼ばれるリスト作成機能、お気に入りなど、マップの機能も充実した。

ただし、こうしたマップのアップデートの中には、展開に時間がかかっているものもある。例えばLook Aroundは、ニューヨーク、サンフランシスコのベイエリア、ロス、ラスベガス、ヒューストン、それにオアフ島など、主要都市でしか使えなかった。全国的な展開にあたって、より多くの主要都市で使えるようになるはずだが、アップルはまずどこを追加するのか、名前を明らかにしていない。またリアルタイムの乗り継ぎ情報も、サンフランシスコのベイエリア、ワシントンDC、ニューヨーク、LAなど、ごく一部の都市でしか使えなかった。

現在アップルは、ちょうどスーパーボウルが開催される週末に間に合うよう、リアルタイムの乗り継ぎ情報が提供可能な都市のリストの中にマイアミを加えている。

機能が向上して表示内容も充実したアップルのマップアプリ自体は、2019年の間に米国全土に着実に拡大し、最終的に秋には北東部まで到達した。

そして今、新しいマップアプリは米国全土で利用可能になりつつある。とはいえ、今マップを起動したからといって、すぐに新バージョンが開くとは限らない。ロールアウトは段階的に行われるからだ。

「私たちは、地球上で最も優れ、最もプライベートな地図アプリの作成に乗り出しました。現代の人々に世界を探索する方法を提供するものです」と、アップルのインターネットソフトウェアおよびサービス担当上級副社長、エディ・キュー(Eddy Cue)氏は、今回のリリースに伴う声明で述べている。さらに、「それを実現するため、私たちは深くコミットしています。マップが人々の生活をどのように向上させるのかを再想像するためには、ゼロから再構築する必要がありました。ナビゲーション機能から、仕事や学校での利用、大切な休暇の計画まで、その中核にあるのはプライバシーです。新しいマップを、まず米国向けに完成させ、Look Aroundやコレクションといった新機能を提供することは、そうしたビジョンを実現するための重要なステップです。この新しいマップを、今年の後半にまずヨーロッパから始めて、全世界に提供できるようにすることを楽しみにしています」と付け加えた。

今回アップデートされたマップには、いくつかの場所のLook Aroundと、リアルタイムの乗り継ぎ情報、コレクション、お気に入り、Share ETA(到着予想時刻の共有)、今後の旅程のフライト情報、モールや空港内のインドアマップ、Siriによる自然言語のガイダンス、上の図にあるような没入型の3Dビューを提供する主要都市のFlyover(フライオーバー)機能などが含まれる。Flyoverについては、350以上の都市で利用可能となった。

今後アップルは、これまでに収集した画像を使用して、米国内のより多くの場所でLook Aroundを利用できるようにし、ヨーロッパでもマップのプラットフォームをアップグレードする予定だ。

ただし、現在のアップル製マップの最大のセールスポイントは、そうした豊富な機能にあるわけではない。マップの傑出した特長は、むしろプライバシーを重視していることにある。

グーグルは、Googleマップから収集したデータを、たとえば店がいちばん混む時間帯の表示など、いろいろ便利な機能のために利用している。つまり、プライベートなアプリではないのだ。実際、まったくプライベートではないため、グーグルは「シークレットモード」を用意して、個人的なデータの収集を嫌うユーザーに対応する必要があったわけだ。

それに対してアップルは、アプリにサインインすることは不要で、Apple IDにひも付けされることもなく、パーソナライズ機能もデバイス上で処理されるだけで、クラウドサーバーにデータを送信することはないという点を明確にしている。それに加えて、検索した場所、ナビゲーションの経路、交通情報といった、マップを利用する際に収集されたすべてのデータは、ランダムに生成された識別子と関連付けられるだけ、それも継続的にリセットすることでユーザーのプライバシーを守るとしている。

またアップルは、「ファジィング(fuzzing=ぼかし)」と呼ばれるプロセスを使用して、マップで検索に使われた正確な位置情報を、24時間後にはあまり正確でない位置情報に変換している。さらに、ユーザーがどこを検索したか、あるいは実際にどこに行ったかといった履歴は保存しない。

現在は、アプリを起動するだけでユーザーのデータを収集することに同意したとみなされる時代であることを、人々は正しく認識している。ただしアップルが、ユーザーのプライバシーを重視する姿勢を、ますます強調するようになっているのは歓迎すべきことであり、再びアップル製のマップを試してみる理由としても十分だ。このアプリが登場したてのころの不安定さは、もはや過去のものとなっている。

アップルのマップは、現在200カ国以上で使われていて、iPhone、iPad、Mac、Apple Watchの各デバイス上で、さらにCarPlayを搭載した車でも利用できる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ハイブリッドITのオペレーションを助けるOpsRampが40億円超を調達

企業のITチームによる、ハイブリッド環境の理解と監視、管理、そして最も重要な項目である自動化を支援するOpsRampが米国時間1月30日、Morgan Stanley Expansion Capitalがリードする3750万ドル(約40億9100万円)の資金調達ラウンドの完了を発表した。これには、前からの投資家であるSapphire Venturesと新たな投資家Hewlett Packard Enterpriseが参加した。

OpsRampのこの前の資金調達は2017年で、そのときはSapphireが2000万ドルのシリーズAをリードした。

OpsRampのサービスの中核は、そのAIOpsプラットホームだ。このサービスは機械学習とそのほかの技術を利用して、近年ますます複雑性を増しているインフラストラクチャのデプロイとその管理を支援し、インテリジェントなアラートを提供するとともに、最終的にはチームのタスクの多くを自動化する。同社のプロダクトにはさらに、クラウドのモニタリングやインシデント管理のツールも含まれている。

同社によると、その年商は2019年に前年比で300%増加した(ただしその額は非公表)。顧客は1400社あり、またAWSやServiceNow、Google Cloud Platform、およびMicrosoft Azureなどのクラウドベンダーをパートナーにしている。

OpsRampの共同創業者でCEOのバルマ・クナパラジュ氏

共同創業者でCEOのVarma Kunaparaju(バルマ・クナパラジュ)氏によると、顧客企業の多くは大企業と中規模企業だ。同氏によると「これらの企業のITチームは大きくて複雑なハイブリッド環境を抱えていて、その単純化と一元化に苦労している。しかも、そういう思いとは裏腹にシステムとインフラストラクチャはますます分断化し、バラバラになっている。それでもなお、彼らは弊社のパートナーであるクラウドベンダーたちの成功に倣って、自分もFortune 5000社のグローバル企業の一員を目指したいと願っている」。

クナパラジュ氏によると、同社は今回の資金をマーケティングと製品開発の拡充に充てたいと考えている。「資金は主に、ヨーロッパ、中東、アフリカ、アジア太平洋などへの市場拡大に使いたい。ただしもちろん、北米におけるプレゼンスの拡張も重要だ。また、さまざまな方向性の製品開発にも力を入れたい」と続ける。

ハイブリッドクラウドは企業のITの負荷を増大し、利用するツールも増えるから、それを助けるOpsRampのようなスタートアップに投資家が着目するのも当然だ。今後このような投資案件は、さらに増えるだろう。

Hewlett Packard Pathfinderのトップで副社長のPaul Glaser(ポール・グレイザー)氏は 「我々も顧客企業のハイブリッドインフラストラクチャへの移行が増えている。そういう傾向に合わせて、OpsRampはITのオペレーションを管理するサービスとして差別化を図っており、それは弊社HPEの中核的戦略にもよく沿うものだ。OpsRampのプロダクトのビジョンと顧客企業からの支持を見ると、今は彼らの成長と拡大に投資すべき絶好のタイミングだ」と語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

NASAは天文学とエンジニアリングでのVRとARの本当の使い道を発見

実用的なVRハードウェアが登場して数年が経つが、ゲームや見世物以外で、この技術を用いた、これでなければといった利用法はまだわずかしかない。だがNASAでは、あるチームが、科学やエンジニアリングに利便性をもたらすリ方法の研究を続けており、有望でユニークな結果を生み出している。

我々の銀河系に存在する天文学的数の恒星の研究は、一般に古くさい道具や拡散したデータベースに頼っている。紙と鉛筆が活躍している場合すらある。それでは非常に優れた汎用パターン認識エンジン、つまり人間の脳の効率を最大化して情報処理に当たらせるのは難しい。

NASAゴダード宇宙航空センターのTom Grubb(トム・グラブ)氏は、この種のデータの調査や処理にはVRとARが有用なツールになると何年も前から感じていたのだが、彼のチームは、これらの技術を使って直接得られた結果に関する最初の論文を発表した。

彼は、同僚たちとVR環境を使い、アニメーション化した近隣の恒星の調査を行ったところ、他の天文学者が存在を否定していた新しい恒星グループの特定に成功した。恒星の軌跡と位置を三次元空間で直感的に観察できるため、決定的な洞察力が得られるのだ。

PointCloudsVRの恒星データの表示例

「プラネタリウムでは、入手可能なあらゆるデータベースから情報をアップロードでき、人々を宇宙の中に案内できるようになります」と天文学者Marc Kuchner(マーク・クチナー)氏はNASAのニュース記事に書いていた。「私のオフィスの中にプラネタリウムを作るわけではありません。でも、ヘッドセットを装着すれば、もうそこがプラネタリウムです」

グラブ氏とそのチームは、天文学用データベースのみならず、エンジニアリングの作業をVRで行うためのソフトウェアをいくつも開発した。重工業界は、安全対策、メンテナンス、訓練といった日常的作業にVRとARを活用する方法を研究しているところでもあり、NASAはエンジニアリングでの活用とクロスサイト・コラボレーションの可能性を探っている。

彼らの研究には、データの閲覧と操作のための基本ツールの確立も含まれている。

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「ハードウェアはすでにあります。サポートもあります。ソフトウェアは、仮想世界とのインタラクションの統一と同様に遅れています」とグラブ氏は説明する。「ピンチやズームのような操作方法、マウスの右クリックや左クリックがみな同じ動作をするといった、簡単な決まりすらありません」と続ける。

しかし、三次元の星図や探査船の内部を再現した仮想環境に人を送り込みさえすれば、新たな発見の機会が開かれる。

「私たちはみな同じ環境の中にいます。そこで誰かが何かを指さしたり、動かしたりすると、みんなでそれを見ることができます」とグラブ氏。そして「モックアップの製作はまだ必要ですが、実際に作る前の段階で何度も練り直しができます。ケーブルの取り回しなんていう話は一般の人は興味を示さないでしょうが、エンジニアにとって、仮想環境でそれができて、どれだけのケーブルが必要で、配線がどのように見えるかを事前に把握できるのは、とっても有り難いことです」とのことだ。

研究は今も続けられている。彼らの最初の天文学的成果を解説した論文は間もなく出版される。もちろん、彼らが作ったものは、折に触れて一般公開もされている。例えば、彼らが恒星やライダーのデータを見るのに使用しているPointCloudsVRツールは、GitHubですべてダウンロードできる。

画像クレジット:Chris Gunn / NASA

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(翻訳:金井哲夫)