今、スマホを抗菌ハンドワイプで拭いていない者たちへ!

COVID-19危機が広がる中のわずかな慰めは、我ら適度な細菌恐怖症の者たちは、自分がささやかなスーパーパワーの持ち主であるかのように感じ始めていることだ。先週国を横断するフライトをした私は、ハンドワイプを取り出してスクリーン、トレイテーブル、アームリストなどあらゆるものを拭ったが、誰からも好奇の目で見られることはなかった。

私は数多くのカンファレンスやトレードショーに出かけて、たくさんの人と握手をしなくてはならない(最近では肘をぶつけ合うようにしているが)。その後スマホをいじる。何年か前に私はPurell(消毒薬)のボトルをやめてウェットティッシュに切り替えた。理由は2つある。

  1. 手指消毒剤は汚れを塗りつけているように感じる。おそらくこれも奇行だと思われるだろうから、各自思った通りに行動して欲しい。
  2. 私はスマートフォン(パソコンも)にしょっちゅう触る。バッグの中にWet Onesなどの抗菌ハンドワイプを入れずに家を出ることはまずない。そうそう、2019年のトラベルギフト10選にも入れておいた。

端末を損傷することを恐れている人は、心配無用だ。この手のことには厳しいAppleはMac、iPad、iPhone、iPodなどを対象とした 「How to clean your Apple products(Apple製品のクリーニング方法)」のページで、抗菌ワイプを使ってもよいと言っている。

【日本語版中:Appleの日本語ページには現時点で以下の記載はない】

70%イソプロピルアルコールワイプまたはClorox Disinfecting Wipesを使ってディプレイ、キーボード、その他のApple製品の硬い表面を優しく拭うことができます。漂白剤は使わないでください。開口部に湿気が入らないように、またいかなるApple製品も洗浄液に浸さないでください。布地や革の表面には使用しないでください。

最近のiPhoneにはIP67またはIP68等級の防水防塵性能がある。Lightningポートに湿気を検出すると「充電できません」と表示される。ポートを濡らすことは避けるのが一番だが、ありがたい警告だ。

というわけで、拭いて、拭いて、拭きまくろう。もちろんまだ買えればの話だが。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

スキルシェアのビザスクが東証マザーズ上場、公開価格1500円で初値1310円、時価総額100億円超

ビザスクは3月10日、東京証券取引所マザーズ市場へ上場した。主幹事証券会社はみずほ証券で、公開株数は34万7000株。公開株の内訳は、公募50万株、売り出し172万1000株、オーバーアロットメント33万3000株。

同社株の公開価格は1500円。初値は公開価格よりも190円安い1310円で、3月10日11時15分現在では1140円前後で推移しており、時価総額は約109億200万円。現時点での最高値は3月10日10時45分に付けた1470円。なお上場によって調達した資金は、借入金の返済、広告宣伝費、採用費および人件費などに使われる。新型コロナウイルスの影響で、米国株式市場では初のサーキットブレーカーが発動して取引が一時停止されたほか、日経平均株価が大幅に下がっている中では堅調な値動きと言える。

上場前の株主構成は、同社CEOの端羽英子氏が59.33%、DCMベンチャーズが運営するA-Fund IIが13.34%、ベンチャーユナイテッドが運営するDACベンチャーユナイテッド・ファンド1号投資事業有限責任組合が11.13%、サイバーエージェント・ベンチャーズが運営するCA Startups Internet Fund1号投資事業有限責任組合が4.88%などとなっている。

同社は、知識や情報を必要としている企業と適切なアドバイザーとのマッチングサービスを提供する、2012年3月設立のスタートアップだ。共同創業者で代表取締役CEOの端羽英子氏は、大学卒業後にゴールドマンサックスで投資業務、日本ロレアルで予算立案・管理業務、ユニゾンキャピタルでPE(プライベート・エクイティ)投資などに携わっていた人物。

同サービスの登録者数は、2020年1月時点で10万人を超えており500以上の業界・職域を網羅しているという。マッチング実績は30カ国超に及ぶそうだ。具体的な提供サービスは、スポットコンサルの「ビザスク interview」、BtoBウェブアンケート調査の「ビザスク expert survey」、新規事業創出支援・組織開発支援の「ビザスク project」、保有製品・技術のニーズ探索の「ビザスク web展示会」、業務委託サービスの「ビザスク 業務委託」、セルフマッチング方式のスポットコンサルの「ビザスク lite」がある。

2020年2月を決算とする第8期の業績予想は、営業収益が前年比232%増の9億6000万円、経常利益が6000万円、当期純利益が4500万円。2019年2月を決算とする第7期は、営業収益が前年比232%増の6億1420万円、経常利益が2407万円、当期純利益が2748万8000円。2018年2月を決算とする第6期は、営業収益が2億6400万円、経常損失がマイナス5804万9000円、当期純損失5857万9000円。それ以前の期も赤字が続いてたが、第7期で黒字化を達成、第8期も黒字予想というタイミングで株式上場したかたちだ。

私は暗号解読バックドア法案に反対する

これからお話したいのは、選りすぐりであるはずの公人たちの救いがたい無能さについてだ。なおパンデミックについての話題ではない。そうではなく、お話ししたいのは、米国、オーストラリア、カナダ、英国、ニュージーランド、いわゆる「Five Eyes」(ファイブアイズ)たちによる、エンドツーエンドの暗号化に対する、見事に見当違いで逆効果で高価で、そして高圧的なアプローチについてだ。

TSAロックプログラムのことを思い出してほしい。そして、重要な話なので少しだけ我慢して読んでほしい。これは、TSAやその他の航空保安機関が所有するマスターキーを使って、すべてのトランクのロックを開け、トランクをいつでも検査できるようにしようという取り組みだ。主張されているその目的は、テロリズムを防ぐことであり、もちろんその目的自身は誰もが望んでいる。だが残念なことに、TSAマスターキーは公に漏洩してしまっていて、誰でもコピーできるようになってしまっている。さらに、TSA代理機関の数は多く誤りを犯しやすく、そして自らの権限を悪用する可能性がある。

まあそれでも、テロを防ぐことは私たち全員が望んでいる「良いこと」だ、そうだろう?TSAロックは、個人の自由への容認できない侵害であると感じる人もいるようだが、大多数の人は基本的にTSAロックを受け容れているようだ。それらは、私たちが、多かれ少なかれ大筋を合意した、社会安全と個人のプライバシーとの間のトレードオフなのだ。

だが、ここで状況が少しばかり変化したと想像してほしい。例えば、ちょっとした不便さを我慢することで、いかなる鍵や、スキャンや、あらゆる外部からのアクセスに対抗できる、開封不能のトランクを、本当に望むなら誰でもTSAの代わりに無料で使えるようになったとしよう…しかも飛行機会社はそのトランクをとにかく運ぶことが要求されるとする。そしてその状況を「TSAロックを使うのは、荷造りに余分な30分を費やすことを望まない人たちだけ」と表現してみよう。

そう呼ぶと、TSAロックプログラム全体が突然完全におかしなものに聞こえないだろうか?急にこれはトレードオフとは呼べないものになる。当然ながら、テロリストや麻薬密輸業者といった、隠すべきものを持っている連中は、すぐにその開封不能のトランクのほうを使用するようになり、TSAロックに残された任務は、個人のプライバシーに対する不必要な侵害になってしまう。

突然、漏洩したマスターキー、不正なTSAエージェント、そして独裁政府による悪用などの、重大かつ不必要なリスクが、開封不能のトランクを使う(荷造りに余計な30分かかるという)不便さを受け容れたくない一般市民に、押し付けられる形で現れることになる。そして、突然このTSAロックプログラムには何のメリットも存在しないことになる。突然これは悪意ある政府の、行き過ぎと怠慢、そして権威主義を象徴するものとなるのだ。

そう「TSAロックを使うのは、荷造りに余分な30分を費やすことを望まない人たちだけ」というのは、ファイブアイズがエンドツーエンド暗号化に対して何を望んでいるかに対する、完璧で正確で、ぞっとする比喩なのだ。破ることのできない暗号システム(つまり開封不能のトランク)が、ずっと昔から誰にも自由に使える形でオープンソースとして存在しているという事実があるにも関わらず、現在TSAロックが使われているような、「黄金の鍵」のかかったバックドアを、WhatsApp、Facebook Messenger、iMessageなどのすべてのメッセージングシステムに組み込むことを、ファイブアイズは望んでいるのだ。

あなたが仮にその魔法使い(破ることのできないオープンな暗号システム)を、壺に押し戻そうと思ったとしても今ではもう遅すぎるのだ。そして実際私たちはそれを押し戻すべきではない、なぜならすでに私たちを守るために、多くの願いを聞き届けてくれているからだ。実際にそうすべきではないが、もし強力な暗号化を施されたメッセージが送られないようにしたいとしても、それはできない相談だ。メッセージをほかのメッセージとして偽装する方法はたくさんありすぎるからだ。例えば、画像の中にメッセージを入れ込むことだってできる。開封不能のトランクの存在はれっきとした事実であり、何十年にもわたって存在してきた。

にもかかわらず各国の政府は、漏洩した鍵、不正な政府職員、およびどこにでもある強権政府を排除できない事実に目をつむり、(比喩としての)TSAロックを使う人たちだけに害が及ぶ法律を制定しようと努力を続けている。最新の動きは、超党派連合によって3月5日に提案されたされたEARN IT法だ。Stanford Center for Internet and Societyの、監視ならびにサイバーセキュリティ担当アソシエイトディレクターであるRiana Pfefferkorn(リアナ・フェファーコーン)氏は、以前この法案の、最も深刻な欠陥を、「実際には絶対に禁止できないエンドツーエンドの暗号化を、禁止するための方法」だと表現した。

法案の目的は「児童性的虐待コンテンツ」(CSAM、Child Sexual Abuse Material)と戦うこととされている。もちろん、これは極めて称賛に値する目標であり私たち全員が望んでいる。飛行機に対するテロ攻撃を防ぐという目標と同様だ。しかし、TSAロックの比喩と同様に、この法律を制定しても悪い人々は単に独自の暗号(独自の開封不能のトランク)を使うようになるだけだ。

一方で強権的な政府、漏洩した鍵を入手した人、そして悪意のある機関が、おそらく世界中の無数のこれまでは安全に送られていたプライベートメッセージにアクセスできるようになってしまう。それは、自分が何をしているのか理解していない人々によって作られた、壊滅的で愚かなアイデアだ。パンデミックと同様に、現実を彼らに納得させるための十分な時間が残されていることに期待しよう。

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(翻訳:sako)

病理解析AIで病気を瞬時に判定へ、“病理医不足”の解決目指すメドメインが海外向けにサービス開始

“がん”など大きな病気の疑いがあった際に実施される「病理診断」は医療において非常に重要な役割を担っている。その検査数が増加傾向にあるとされている一方で、課題となっているのが診断を担当する病理医不足だ。

2019年8月時点で日本における病理専門医の数は2500名強。医師全体の0.7〜0.8%ほど(2018年12月31日時点で日本には約32.7万人の医師がいる)にすぎない。病理医が1人で診断を行なっている医療機関に加えて、病理診断を他院や検査センターに依頼せざるを得ない現場も少なくないのが現状だ。

結果として病理医の労働負荷が大きくなっているだけでなく、診断結果が出るまでの期間が長くなり患者に負担がかかってしまう場合もある。

そんな病理診断の現状を、AIを含むテクノロジーの活用で変えていこうとしているのが福岡発医療ITスタートアップのメドメインだ。同社ではAIによる病理画像解析機能を搭載した「PidPort」のα版を2018年10月にリリースし、国内外の大学・医療機関など約50施設と協力してテスト運用・実証実験を重ねてきた。

そのPidPortがいよいよ正式版としてスタートする。まずは本日3月10日より海外の医療機関向けにAI解析機能を含むサービスを展開。将来的には日本国内でも同機能の提供を目指していく。

病理標本のデジタル化からAI解析、遠隔診断までトータルで支援

現在メドメインでは病理診断に関連する4つのサービス(機能)を手がけている。

1つ目が病理診断用の標本プレパラートをデジタル化するイメージングセンター、2つ目がデジタル化した病理画像データを保管するためのクラウドストレージ、3つ目が病理画像データをAIがスクリーニングするAI画像解析、そして4つ目がオンライン上で病理医に診断を依頼できる遠隔病理診断だ。

詳しくは後述するが国内でもAI解析以外のサービスは利用できる。

4つのサービスの内、ストレージとAI解析、遠隔病理診断についてはすべてPidPort内に機能として搭載されているものだ。ただしAIで解析するにしろ、遠隔から病理医に診断してもらうにしろ、従来プレパラートで管理されていたものをデジタルデータに変えなければ何も始まらない。

メドメイン代表取締役の飯塚統氏の話ではこの「デジタルデータ化」が1つのネックになっているそう。専用のスキャナーは通常1000万円以上するため導入ハードルが高く、外部に依頼する場合でも1枚あたり2000〜3000円するのが平均的な相場で簡単には手を出せない。

だからこそメドメインではオフラインのイメージングセンターを自社で開設し、医療機関などから送られてきたプレパラートを1枚あたり数百円でデジタル病理画像データへ変換するサービスを合わせて提供しているわけだ。

デジタル化した病理画像データをPidPortに取り込むと、AIが瞬時に画像を解析し腫瘍の有無などを見分ける。AIによる診断はあくまでも“病理医の診断支援ツール”という位置付け。最終的には病理医が判断を下す必要はあるものの、AIのスクリーニングを挟むことで画像1枚あたりにかかる診断工数を削減できる。

最終診断は自院に病理医がいればその人にお願いしてもいいし、それが難しい場合にはPidPortの遠隔診断機能を使ってもいい。同サービスでは離れた場所にいる病理医にオンライン上で診断を依頼できる機能を搭載。そうすることでAIによるスクリーニングで病理医の負担を減らしつつ、病理医が不足しているエリアでもオンライン診断を通じて迅速な診断を受けられる環境を整えた。

「ディープラーニングで開発している病理AIが現場ではもっとも魅力的に映る部分だとは思うが、データをデジタル化する部分もしっかりサポートするし、それを保管するストレージや適切にデータを引き出して活用できるようにするUI、迅速な診断を支える遠隔病理診断も備える。病理業界にある課題感をトータルで解決するようなソリューションを提供しているのがPidPortの大きな特徴だ」(飯塚氏)

利用料金は月額のシステム利用料を基本に、遠隔診断、AI診断、イメージングセンターについてはそれぞれ利用回数に応じて料金が発生する仕組みになっている。

まずは海外から、将来的には日本でもAI解析機能の提供目指す

メドメインは2018年1月の創業。同社は九州大学医学部に在学中の医学部生でエンジニアでもある飯塚氏が中心となって立ち上げた九大発スタートアップで、同年8月にはDEEPCOREとドーガン・ベータから1億円の資金調達も実施している。

近年は病理に限らず「AIを活用した医療画像診断」に関するサービスが国内外で少しずつ増えてきているが、デジタル化された画像データのあるX線などの放射線の分野とは違い、病理の場合はプレパラートで保存されていることが多く、デジタルデータに変換する工程からやらなければならない。

教師データの元となるデータを用意するのに時間がかかり、難易度も高いことが病理の領域ではまだAI解析ソリューションの実用化があまり進んでいない理由の1つだと飯塚氏は話す。

メドメインでは連携する国内外の約50施設から複数の臓器・疾患に関するデータの提供を受け、自社で契約する外部の病理医の力も借りながら教師データを作成(アノテーションを実施)。これらを深層学習させることでAIモデルを磨いてきた。

飯塚氏の話では精度も上がってきているそうで、その成果についての論文がNature Publishing Group刊行の「Scientific Reports」より出版されている。

現時点でPidPortのAI診断は症例数の多い胃・大腸・乳腺(悪性上皮性腫瘍と良性上皮性腫瘍と非腫瘍 性病変)および肺(悪性上皮性腫瘍と非腫瘍性病変)の組織判定、子宮頸部および尿の細胞判定(腫瘍性判定の有無)に対応。今後は膵臓など他の臓器や、より細かい病理学的分類を判定できるように開発を進めていく計画だという。

病理医不足の課題は程度の違いはあれど海外でも共通するもので、それだけにPidPort自体もグローバルでニーズが見込める。今回海外向けにサービス提供を始める背景も、国内にとどまらず広く事業展開していくことを目指しているからこそだ。

日本では国内法に合わせる形でプロダクトの調整が必要になるためまずはAI解析機能以外からの提供になるが、ゆくゆくはAI解析の提供も予定している。

「色々な医療機関にトライアル利用をしてもらったり実証実験をさせてもらう中で、AI解析の精度も含めて正式リリースできるものが仕上がってきた。病理AIの正式な実運用は世界的に見ても新規性がある試み。この仕組みを通じて診断結果を待つ患者さんのストレスを世界中から無くすとともに、深刻な人手不足による病理医や医療従事者の方の負担を減らすことにチャレンジしていきたい」(飯塚氏)

IT活用で“運転代行業界”の適正化へ、沖縄のAlpaca.Labが7000万円を調達

運転代行のマッチングプラットフォーム「AIRCLE」を開発するAlpaca.Labは3月9日、シードラウンドでXTech Ventures、すこやかホールディングス、BORベンチャーファンド1号投資事業有限責任組合、沖縄振興開発金融公庫を引受先とした第三者割当増資により総額約7000万円を調達したことを明らかにした。

同社は2018年2月設立の沖縄発スタートアップ。県内で必要不可欠の交通インフラとなっている「運転代行」の課題解決に向けて、調達した資金を基にエンジニアを始めとした人材採用の強化を進めていく計画だ。

運転代行を効率化するマッチングプラットフォーム

Alpaca.Labが手がけるAIRCLEは、わかりやすく言えば「タクシー配車サービスの運転代行版」だ。

運転代行とは代行業者がドライバーの代わりに車を運転して目的地まで送り届けるサービスのことで、飲食店でお酒を飲んだ後などに使われる。マイカーを運転して飲食店まで行き、食後は代行業者を呼んで車と自分を家まで送ってもらうようなイメージだ。代行業者は予約が入ったら自社の随伴車で現地へ向かい、到着後は1人が顧客の車を運転し、もう1人が随伴車で目的地まで一緒に行く。

都市部など公共交通網が発達している地域ではあまり馴染みがないかもしれないが、地方では日常的に利用される交通サービスだ。全国的には約8850ほどの代行業者が存在し、中でも沖縄は約737業者と全都道府県でも最多。この業界はアナログな要素が多くITの活用で改善できる余地は大きい。

運転代行は飲食店を通じて手配されることも多いため、Alpaca.Labでは2020年1月より独自のオペレータAI(配車最適化アルゴリズム)を基に飲食店と代行業者を効率よくマッチングするサービスから始めた。

飲食店向けにはデジタル端末から「テーブル番号、車両数、顧客の行き先」を入力するだけで代行業者を発注できる仕組みを提供。従来電話で行っていた発注作業をラクにするだけでなく、位置情報を基に近くにいる業者を優先的にマッチングするため顧客の待ち時間も短縮できる。

一方の代行業者向けには随伴車の管理や受発注の仕組みをIT化することによって、配車効率を上げるための基盤を開発。日報・運行管理や車両管理など日常業務をサポートする業務支援システムも合わせて提供する。

「飲食店にとっては発注作業が大きな負担になっている。忙しい時間帯だと電話がつながらない業者も多く何件も電話をかけ続けなければならないし、到着までに時間がかかるとなればそれだけお店の回転率も悪くなる。そもそも飲食店にとっては本業ではないため、ここにリソースを割きたくはない」

「代行業者としては受発注を最適化して少しでも多くの顧客を獲得したい。ITを活用することで随伴車の位置情報をリアルタイムに確認しながら効率よく配車手配を行えるだけでなく、ミスマッチの解消も見込める。たとえばこれまでは現地に着くまで顧客の情報がわからず、行ってみたら担当者が運転できない車だったり(左ハンドルの外車など)、目的地が遠すぎて自社の方針に合わなかったりすることも度々あった」(Alpaca.Lab代表取締役の棚原⽣磨氏)

今夏を目処に個人向けアプリのローンチも控えていて、個人が自らのスマホから簡単に代行業者を呼べるようにする計画。その際には「左ハンドルの車を運転できる人」などユーザーが条件を設定できる機能や相互評価の仕組みも搭載し、スムーズかつ安心して運転代行を使える環境を整備していくという。

現在は随伴車約60台(数十業者)、飲食店約150店舗を対象にサービスを展開。ビジネスモデルは代行業者から売上の10%をシステム利用料として受け取る形だ。

沖縄の課題解決を全国に課題解決へ

Alpaca.Lab創業者の棚原氏は沖縄県の出身。北陸先端科学技術大学院大学を経て教育系のコンサルティング会社に務めた後、沖縄に戻り沖縄科学技術振興センターで産学連携プロジェクトの推進を担当した。

具体的には大学の先生が持つ技術と県内外の企業をマッチングすることで新しい事業を生み出す支援をしていたそう。現在Alpaca.LabではAIRCLEのキモとなるオペレータAIを琉球大学の研究室と共同で研究開発しているが、その研究室とも前職で出会ったそうだ。

「産学連携のプロジェクトをいくつもやる中で、これは面白い技術だなと。沖縄で起業するなら沖縄の課題解決をしたい、地域の課題解決が全国の課題解決にも繋がる事例を作りたいという思いがあり、その観点でも運転代行はやりがいのある領域だと考えた」(棚原氏)

運転代行の概念自体は数十年前から存在し、2002年に「自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律」が施行されてからも20年近くになる。過去にはITを活用して業界の課題を解決しようとしたプレイヤーもいたが、どれも大きな成果を出すまでには至らなかった。

棚原氏がその原因にあげるのが業界内で「4/5の課題」と呼ばれる課題だ。これはざっくり言うと4/5の業者が表示義務違反や保険未加入、無許可の運行などによって「適切に運行することが困難」な状態にあることを指す。運転代行業界をアップデートするためには、そもそもこの状況を変えていく必要があるというのが棚原氏の考えだ。

「代行業者も必ずしも好きこのんでそうしているのではなく、金銭的に入る余裕がないことも多い。それは勘や経験に頼った非効率な配車オペレーションなど業務形態の課題だけでなく、行政側が実態をほとんど把握できていない状態や過度な価格競争により業界全体が疲弊してしまっていることなど、様々な要因が絡み合っている」(棚原氏)

そこでAlpaca.LabではオペレータAIを軸としたマッチングプラットフォームによって業務形態の効率化をサポートしつつ、全国運転代行協会とタッグを組みながら安全基準の策定や代行業者へのレクチャーなど業界全体を適正化する取り組みも進めてきた。

その上でゆくゆくは相互評価の仕組みを取り入れた個人向けアプリで、個人と代行業者を直接繋いでいく。これによってユーザーは安心して運転代行を手配でき、質の高い代行業者はきちんと評価され適正な価格で受注できる環境を整えていくのが目標だ。

運転代行の余剰リソース活かした新たなビジネス創出目指す

今回の資金調達はその動きを加速させるためのもので、エンジニアを中心とした人材採用に投資をする計画。今後は他業界のプレイヤーなどとも協業しながら「酔客に依存しないビジネスモデルの確立」に向けたプロジェクトにも取り組んでいきたいという。

「たとえば飲食店以外にも観光客や病院などを中心に新しい利用者の獲得や、日中使っていない随伴車の貸出(カーシェアリング)、配送業者とのコラボによる夜間・深夜帯の貨物輸送など、運転代行の余剰リソースを上手く活用することで人やモノの移動に関わる課題を解決できるチャンスもある。運転代行業界を良くしていくには酔客だけに依存しない仕組みが必要だ」(棚原氏)

上述したように運転代行業者は過疎地域を含め全国の市町村にすでに存在する上、日中はそのリソースが余っていることも多い。使い方次第では地域の課題解決インフラの1つとして強力なツールになりうるかもしれない。

棚原氏はMaaSならぬ「DaaS(代行 as a Service)」なんて表現もしていたけれど、テクノロジーを取り入れることで運転代行業界がどのように進化していくのか、今後の動向が気になるところだ。

スマホ用ショートコンテンツ配信のQuibiで4月6日から50番組がスタート

ショートフォームビデオサービスのQuibiは米国時間3月7日、ローンチ番組の全ラインアップを発表した。QuibiとはQuick Bites(軽食)という意味で、スマートフォンで視聴できる短い動画にフォーカスしている。その内容は「チャプター区切りの映画」(7〜10分の長さのチャプターに区切られた長い動画)、台本なしの番組、ドキュメンタリー、毎日のニュース、エンターテイメント、インスピレーションを含む。

  • Most Dangerous Game:Liam Hemsworth(リアム・ヘムズワース)氏とChristoph Waltz(クリストフ・ワルツ)氏主演のディストピア的アクションスリラー
  • Survive:Alex Morel(アレックス・モレル)氏の小説をもとにした、飛行機事故の影響を描いたSophie Turner(ソフィー・ターナー)氏主演のドラマ
  • Chrissy’s Court:少額訴訟裁判所を主宰するChrissy Teigen(クリシー・テイゲン)氏のドラマ
  • Murder House Flip:殺人事件で悪名高い家を家主が改修しようとする
  • Thanks a Million:エグゼクティブ・プロデューサーのJennifer Lopez8ジェニファー・ロペス氏を含む有名人が一般人に10万ドルを寄付し、お金を払わせるリアリティー番組
  • Last Night’s Last Night:Entertainment Weeklyによる深夜番組のまとめ
  • The Replay by ESPN:スポーツニュースを毎日放送する

Quibiによると、全175番組から合計8500話を最初の年にリリースするという。同社の「Turnstyle」技術を使えば、視聴者は縦向きと横向きをシームレスに切り替えられる。実際に一部の番組は視聴モードによって異なる、補完的な視聴体験を提供するよう特別に設計されている。

サービスの料金は広告付きで月額4.99ドル(約530円)、広告なしで月額7.99ドル(約840円)だ。またQuibiは、90日間の無料トライアルを提供することも発表した。ただし、これには4月6日までに同社のウェブサイトにて登録をすませる必要がある。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

大手テック企業が新型コロナの影響を受ける時間給従業員に賃金支払いを約束

Microsoft(マイクロソフト)の35日夜の動きに続き、米国の複数の大手テック企業が、新型コロナウイルスの感染拡大への企業の対応に影響を受ける時間給従業員の賃金を支払うことに同意した。

健康と安全の両方の観点から行動する企業の対応は正しい。一方で、作業の中断や短縮の影響を最も受ける時間給労働者が、自分たちにはどうしようもない事象に悪影響を受けないよう企業側が配慮することも正しい。

3月6日にTechCrunchが報じたように、Facebook(フェイスブック)は臨時労働者への支払いを約束した。Axiosのレポートによると、Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)、Twitter(ツイッター)が追随する見込みだ。Apple(アップル)に問い合わせたが、コメントは返ってきていない。

Axiosへの声明の中で、Amazonは従業員に対して同様の取り組みを約束した。「従業員が在宅勤務を求められている間、シアトルとベルビューのキャンパスをサポートするすべての時間給従業員、例えばフードサービスや警備員、清掃スタッフなどに給与支払いを続ける。さらに、当社所有ビルに入居している地域の中小企業を支援するため、1カ月分の家賃を助成する」とのことだ。

GoogleとTwitterも同様の約束をしたと報じられている。

テック企業はこの問題をリードしており、その姿勢が労働団体から称賛の的となった。だが、ベイエリアに限らずさまざまな地域の権利擁護団体は、オフィス閉鎖によって賃金を失う時間給労働者が直面する打撃を緩和するよう企業に促している。

バージニア州の民主党上院議員であるMark Warner(マーク・ワーナー)氏がこの問題に注目した。ギグエコノミー企業のUber(ウーバー)、Lyft(リフト)、Postmates(ポストメイツ)、DoorDash(ドアダッシュ)に対し、コロナウイルスの影響を受ける労働者に補償を提供するよう圧力をかけている。

「この問題が起きている間に労働者が病気になったり出勤を控えたりすることによって生ずる財政的困難に対処するよう強く求める」とワーナー氏は書いている。「新型コロナウイルスの拡散を抑制するために、プラットフォーム企業が模範となることが重要だ。公衆衛生ガイダンスに従った労働者に対し、経済の不確実性が彼らの重荷にならないよう約束すべきだ」と続ける。

画像クレジット:TechCrunch

参考:米マイクロソフトは在宅勤務で仕事のない時給制現場労働者にも通常賃金を払い続ける

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(翻訳:Mizoguchi

E-inkを搭載したAndroidタブレット「BOOX Max3」の実力は?

E-inkディスプレイを搭載した13.3インチAndroidタブレット

BOOX Max3は13.3インチのE-inkディスプレイを搭載したAndroid 9.0タブレットだ。開発しているのは中国広州に本社を置く文石で、日本ではFOXが正規代理店として販売している。

プロセッサーはミドルクラスの「Snapdragon 625」(8コア、2.0GHz)、メモリーは4GB、ストレージは64GB。13.3インチE-inkディスプレイの解像度は2200×1650ドットで、階調は16色グレースケールとなっている。また、4096段階で筆圧感知可能なワコム規格のスタイラスが付属しており、メモやイラストなどを描くことが可能だ。

BOOX Max3(9万8,80円、FOXの直販価格)

背面、前面ともにカメラは搭載されていない

底面にはUSB Type-C、Micro HDMI端子が用意されている

同製品は、BOOXシリーズの中で最大のディスプレイ、最速のプロセッサーを搭載した最上位モデルだが、それでもプロセッサー、メモリー、ストレージのスペックは他社フラッグシップタブレットと比べると見劣りする。E-inkディスプレイとスタイラスにそれを覆すだけの魅力・必要性を感じられるかどうかで、本製品に対する評価が変わってくるはずだ。

ディスプレイを高速設定にすれば動画も視聴可能

まず処理性能だが、決して高くないということは間違いない。たとえばベンチマークソフト「AnTuTu Benchmark」で計測した本製品の総合スコアは「96636」。記事執筆時点でAndroid最速とされている「ROG Phone 2」が「507051」なので、BOOX Max3はその19%のパフォーマンスということになる。ただ、この差は正直気にしなくていい。むしろ「ROG Phone 2」が速すぎるだけ。BOOX Max3は3Dゲームなどを除いた一般的な用途なら十分な処理能力を備えている。

「AnTuTu Benchmark」で計測した総合スコアは「96636」

さて肝心なのはディスプレイだ。BOOX Max3には第4世代のE-inkディスプレイ「Carta」が採用されており、一般的な液晶ディスプレイとは特性が異なる。そこで重要になってくるのが、画質と表示スピードのどちらを優先させるかということ。

画質を優先させればコマ落ちして見えるし、表示スピードを優先させれば前の画像が残る「ゴースト」現象が発生したり、表示が不鮮明になる。私が試行錯誤したかぎりでは、電子書籍を読むなら「通常モード」、ウェブを見るなら「高速モード」、動画を視聴するなら「Xモード」がいいと感じた。

ディスプレイのスペックでもうひとつ注意してほしいことがある。実はBOOX Max3にはライトが内蔵されていない。Carta世代のE-inkディスプレイは前世代よりコントラスト比で50%、反射率で20%向上しているので、ある程度の明るさがあれば画面をはっきりと視認できるが、暗闇で見ることはさすがに不可能。もし消灯した寝室などで寝る前に読書を楽しみたいのなら、BOOX Max3は選択肢からはずれることになる。

画面設定で、画質を優先する「通常モード」、高速描画を優先させる「高速モード」、そのほか「A2モード」「Xモード」が選べる

BOOX Max3のディスプレイは16色グレースケールだが、カラーページでも意外と綺麗に表示される。右は「12.9インチiPad Pro」(画像提供:鈴木みそ、※鈴木みそ先生の許諾を得て「ナナのリテラシー」のページを掲載している)

画面モードを「高速モード」に設定すると、余白に前のページのゴーストが残る(画像提供:鈴木みそ)

左が「通常モード」、右が「Xモード」。画質の差は歴然としている(画像提供:鈴木みそ)

電子書籍リーダー以外の売りの機能が「ノート」だが、サードパーティー製メモアプリを利用することはオススメしない。というのも本製品標準の「ノート」アプリでは、ペン先に描線がリアルタイムに追従するが、サードパーティー製メモアプリでは1秒前後遅れて描線が表示される。メモ書きには標準の「ノート」を使って、Evernote、Dropbox、OneNoteで管理するというのが現実的な使い方だ。

標準の「ノート」アプリでは、ディスプレイの「標準モード」でも描線が遅れない。おそらくディスプレイ全体をリフレッシュせずに、線を描いた場所だけ描画するような特殊な機能を利用しているのだと思われる

「ノート」アプリをEvernote、Dropbox、OneNoteと連携しておけば、サムネイルの右上のアイコンをタップするだけで、いつでもアップロード可能だ

個人的に使いづらく感じたのがホームアプリ。BOOX Max3にはホームアプリとしてオリジナルの「コンテンツブラウザー」が搭載されているが、これを起動すると必ず「書棚」が表示されてしまう。「コンテンツブラウザー」に戻った際に表示するタブを「ノート」または「アプリ」に設定できる機能がほしいところだ。

直線に「ノート」や「アプリ」のタブを開いていても、再度「コンテンツブラウザー」に戻ると「書棚」のタブが開かれてしまう

左が「コンテンツブラウザー」の「アプリ」タブ、右がサードパーティー製ホームアプリ「Microsoft Launcher」。「Microsoft Launcher」ではアイコンがつぶれて表示されてしまうので、BOOX Max3で非常に使いづらい

メモ書きと電子書籍用途に特化したAndroidタブレット

BOOX Max3をiPadなどと比べると、処理性能はそこそこで、カラー表示には対応しておらず、カメラも搭載していないと見劣りするのは確かだ。しかし、E-inkディスプレイを搭載することによって、スタンバイモードで最大4週間のバッテリー駆動時間、目の疲労の少なさなどの美点がある。

膨大なアプリがリリースされているiPadのようになんでもこなせる汎用性の高さはないが、メモ書きと電子書籍と用途を限定すれば、BOOX Max3はiPadと評価が逆転するだけの個性を持ったタブレット端末と言える。

機種を問わずデュアルディスプレイ環境を実現できる「セカンダリーモニター」は、ほかのタブレット端末にもぜひ搭載してほしい機能だ

毎年40万人が参加するテック・音楽イベントSXSWが新型コロナの影響で中止

SXSWは、3月13日から22日にかけて米国テキサス州オースティンで開催される予定だったテックと音楽の祭典を新型コロナウイルス懸念のため中止すると正式に発表した。ただ、日程を変更しての開催を模索している。「先立って緊急事態を宣言したが、公衆衛生当局そして我々の衛生担当責任者の勧めに従ってSXSWを中止する命令を発出した」とオースティン市長Steve Adler(スティーブ・アドラー)氏は3月6日の記者会見で述べた。

SXSWは「市長の命令に従い、カンファレンスをキャンセルする」と説明している。「我々はイベントの日程変更を模索しており、SXSW EDUで始まる2020年のイベント参加者になるだけ早くバーチャルSXSWをオンラインで提供できるように努めている。登録済みの人、クライアント、参加者に可能な限り早く連絡を取り、FAQを公開する」。出席者やスポンサーが払い戻しを受けられるのかどうかは不明だ。

オースティン暫定保健局(Interim health authority)のMark Escott (マーク・エスコット)氏は、トラヴィス郡で新型コロナウイルス(COVID-19)感染のケースは確認されていないが、今回の中止は「嵐に見舞われるのに備えた、先を見越した措置」と話した。「SXSWに参加する人々はパネルやコンサートで互いに近い位置で長時間を過ごし、また登録している出席者は新型コロナウイルスにさらされている国内外から参加するため、SXSWの中止は正しい動きだ」エスコット氏は説明した。

SXSWでTexas Tribuneエディターのエヴァン・スミス氏と話すバラク・オバマ米大統領(2016年3月11日 / AFP / MANDEL NGAN)

今回のニュースの3日前には、アドラー氏が「現時点でSXSWの中止が安全確保につながるか、証拠はない」と発表するために記者会見を開いた。3月3日の時点でトラヴィス郡は新型コロナウイルス感染のケースはゼロだとしていた。

SXSWはテック、音楽、そしてテキサスの天候とビール、バーベキューを楽しみながら知り合いを増やすメディア業界が集まる場所として知られる。10年前は新しいソーシャルアプリを立ち上げるのにホットな場所だった。過去数年間はオタクっぽくも主流でもなくなり、SXSWは資金潤沢な企業が“クール”であることを示す場になっていた。

今年のカンファレンス中止を求める請願は5万4000人もの署名を集めた。起業家インフルエンサーのTim Ferris(ティム・フェリス)氏はアドラー氏にイベントの中止を求めた。SXSWは展示ブース購入者や出席者への払い戻しを拒んでいた。カンファレンスにフルにアクセスできるプラチナバッジは1550ドル(約16万円)する。

2019年のSXSWのステージで語る筆者と、インスタグラムの共同創業者Kevin Systrom氏、Mike Krieger氏(2019年3月11日、写真:Chris Saucedo/Getty Images for SXSW)

中止決定に先立ち、著名なスポンサーやスピーカー、パーティーオーガナイザーの多くが不参加を決め、カンファレンスは難しい状況に置かれていた。NetflixやApple、Amazon、Twitter、Facebook、LinkedIn、Google、Vevo、TikTok、Warner/HBO、そしてCNNなどはすべてイベントや製品発表、映画試写会、従業員による登壇をキャンセルしていた。

Google I/O、Facebook F8、GDC、Collisionトロント、MWC(モバイル・ワールド・コングレス)など、ほかの主要なテックカンファレンスの多くもすでに開催を中止したか、オンラインに移行した。マイアミのウルトラ・ミュージック・フェスティバル、そしてベルギーのトゥモローランドもキャンセルされた。Limeの会長、Joe Kraus(ジョー・クラウス)氏と筆者はSXSWでトークイオベントに出席する予定だったが、それもキャンセルとなった。

オースティンが受ける影響はかなり大きなものになりそうだ。SXSWは広大な敷地で開催される伝統的なフェスティバルではない。市内の何百もの場所でパネルやパーティー、コンサートなどが同時に開催される。特にミュージシャンにとっては日程調整による旅費はかなり高額で、またツアーのスケジュールはタイトだ。今回のキャンセルは収益面での負荷が大きく、日程再調整は難しい。何十万もの出席者の恩恵を受ける市内のバー、レストラン、小売店も売上に大きな打撃を受けることになりそうだ。

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(翻訳:Mizoguchi

Facebookが価格釣り上げ防止のため医療用マスクの広告を全面禁止に

米国時間3月6日の金曜日にFacebookは、同プラットホーム上での新型コロナウイルス関連の混乱を制限するための新たな試みとして、マスクの商取引と広告を禁じると発表した。

Facebookのプロダクト・マネジメント担当ディレクターであるRob Leathern(ロブ・レザーン)氏は、Twitterで「弊社はCOVID-19を注意深く監視しており、人びとがこの公衆衛生上の危機感を悪用していることを目にしたら、ポリシーを適宜アップデートする。今後、この変更を展開していく」と述べた。

Rob Leathern:マスクを売る広告と商用リスティングを禁ずる。(以下、上記と同じ)

またFacebookのスポークスパーソンも「マスク販売の広告と商用広告を一時的に禁じている。弊社のチームはCOVID-19の状況を注意深く監視しており、人びとがこの公衆衛生の緊急事態を悪用しようとしていることを目撃したら、ポリシーに必要な更新を行う」とTechCrunchに説明している。

Facebookは、品不足や早い者勝ちであるかのように人々を促す医療品の広告を今後すべて制限する。また、COVID-19の「治療」や予防を保証している広告も同様だ。さらにFacebookは近日中に、広告の制限だけでなく新型コロナウイルスをテーマとするグループやページを、同社のアルゴリズムによるレコメンドからブロックし始める。

新型コロナウイルスへの恐れが世界を席巻する中、オンラインのプラットフォームは不当な価格の釣り上げや間違った健康情報の防止に奔走している。Amazonは消毒剤やマスクなどの非常に高い定価を根絶しようとしているし、EbayはN95とN100のマスク、手の消毒剤、そしてアルコール拭きの出品をすべて禁じた。このオンラインオークションサイトは「COVID-19」や「新型コロナウイルス」などの言葉を悪用している出品も拒否している。

米国時間3月4日に、民主党のEd Markey(エド・マーキー)上院議員はAmazonのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏に公開書簡を送り、同サイト上で「価格の不当な釣り上げや透明性の欠如の報告が絶えない」ことに対する懸念を表明した。

マーキー氏は「何人(なんぴと)たりとも、恐怖や人間の苦しみを自己の利益機会にしてはならない。特にオンラインの小売業者には、新型コロナウイルスの急激な発生のさなかにおいても消費者を保護する特定の責任がある」としている。

関連記事: 政治的利益を狙いネット上で新型コロナウイルスに便乗する動き

今週初めにFacebookは、同社のプラットフォーム上の新型コロナウイルス関連の検索には、世界保健機構(WHO)と国内の保健機関からの情報を含むポップアップが自動で表示されると発表した

Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、Facebookの企業努力に関する最新情報で次のように述べている。「状況が流動的なので、我々は保健医療に関する国の機関とWHO、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)そしてUNICEFのような機関と協力して、新型コロナウイルスに関するタイムリーで正確な情報を入手していく。WHOに対して新型コロナウイルス対策に必要な数の無料広告とその他の現物支援を提供している」

同社はまた、生命に危険が及ぶような新型コロナウイルスに関する間違った情報の削減に向けて、広告や陰謀説、科学的根拠のない治療法などを削除することにも力を入れている。Facebookがマスクの広告停止を決めたまさにこの時期に、国の保健機関は、人びとにマスクの購入を控えるよう促している。健康な人は着用の必要がないことと、マスクの需要がそれを最も必要とする医療従事者への供給を圧迫しているからだ。

画像クレジット: hris Ratcliffe/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

国防省の仕事を請け負う大手電子機器メーカーCPIがランサムウェア攻撃によって業務に支障

防衛ならびに通信市場向けの大手電子機器メーカーであるCPI(Communications & Power Industries)が、ランサムウェア攻撃を受けて業務に支障が生じている状態に置かれているというニュースをTechCrunchはつかんだ。事件を知る情報筋によれば、CPIは事件直後の1月中旬に約50万ドル(5300万円)の身代金を支払ったものの、業務はまだ完全には復旧していないとのことだ。

米国カリフォルニアに本拠を置くCPIは、レーダー、ミサイルシーカー、そして電子戦技術といった軍事用デバイスおよび機器に向けたコンポーネントを製造している。同社の顧客には、米国国防総省とその最先端研究組織DARPAも名前を連ねている。

同社はランサムウェア攻撃を受けたことを認めた。

「私たちは事件を調査するために、第三者であるフォレンジック調査企業と協力しています。調査は継続中です」と語るのはCPIの広報担当者であるAmanda Mogin(アマンダ・モギン)氏だ。「私たちは弁護士と協力して、法執行機関や政府当局はもちろん、お客様にもタイムリーに通知してきました」。

情報筋によれば、(ネットワーク上で最高レベルの権限を持つユーザーである)ドメイン管理者が、ログイン中に悪意のあるリンクをクリックしたために、ファイル暗号化マルウェアが起動されたのだという。数千台のコンピューターがセグメント化されていないネットワーク上の同じドメイン上にあったために、ランサムウェアはオンサイトのバックアップを含め、すべてのCPIオフィスに急速に広がったのだと情報筋は明かす。

また2月末の時点では、全社のコンピューターの約4分の1だけが、復旧し稼働しているに過ぎないため、同社は「パニックモード」であるとも伝えている。

人員不足が業務を妨げていると情報筋は語る。機密の軍事データを保持していたコンピューターの一部は、同社が身代金を支払って手に入れた復号キーを用いて回復することができた。そのうちの1つのシステムには、ロッキードマーチンが開発したイージス海軍兵器システムに関連するファイルも置かれていたと言われている。

ロッキードの広報担当者は「私たちはCPIの状況を知っていますし、サプライチェーンに関連した潜在的サイバー事故に対する弊社の標準的な対応プロセスに従っています」と説明する。

情報筋は、残りのコンピューターの多くはオペレーティングシステムをゼロからインストールし直していると語る。なおCPIのシステムの一部(約150台のコンピューター)は、いまでもWindows XPを運用している(XPは2014年にセキュリティパッチの配信が終了している)。

しかし、今回の攻撃にどのようなランサムウェアが使用されたかはわかっていない。CPIのスポークスマンは、私たちの質問には一切答えず、簡単な声明以上のコメントを拒否した。同社は、先月大企業を標的として相次いで行われた攻撃の最新の被害者となった。今週だけでも、法律サービスの巨人Epiq Globalがランサムウェアの攻撃によって業務に支障が出ており、またTeslaとSpaceXに部品を供給するVisserが、データを盗むDoppelPaymerと呼ばれる新しい種類のランサムウェアの攻撃に見舞われた。このマルウェアはファイルを暗号化するだけでなく、ハッカーのサーバーへ企業データを流出させるのだ。

DoppelPaymer攻撃を行ったハッカーたちは、会社が身代金を支払わなかったために、先週Visserの 内部ファイルの公開を始めた。セキュリティ会社のEmsisoftで脅威アナリストを務めるBrett Callow(ブレット・キャロウ氏)は、旧来のファイル暗号化ランサムウェアの戦術が変更されてきたと語る。

「これらの事件は、最初の段階から漏洩として考えられるべきであり、そのように開示され報告されるべきなのです」とキャロウ氏は語った。「企業や人びとが何も知らされないうちに、犯罪者たちはデータを悪用するための時間をたっぷりと手に入れつつあるのです」。

画像クレジット: Audrey Connolly (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:sako)

米マイクロソフトは在宅勤務で仕事のない時給制現場労働者にも通常賃金を払い続ける

米国で新型コロナウイルス(COVID-19)の患者が増えるに伴い、一部の企業は社員にできる限り在宅勤務を求めている。しかしそれでは困るのが現場業務、とりわけ時間給で働いているスタッフだ。米国時間3月5日、Microsoft(マイクロソフト)は「ワシントン州ピュージェット湾と北カリフォルニアのすべてのベンダーの時給制サービスプロバイダーに通常の賃金を継続的に支払う。労務時間の減少は賃金の計算に勘案しない」と発表した

この発表はマイクロソフトの両地域の労働者だけを指しているが、同社は「新型コロナウイルスの影響下にあるこの国と世界のそのほかの部分についても同様の方式を前向きに検討する」と説明している。同社社長のBrad Smith(ブラッド・スミス)氏はブログで「「在宅勤務が可能な地域の従業員に同様の対応を求めている」とコメントしている。

同氏はさらに「その結果、該当地域ではマイクロソフトの日常業務に欠かせない時間給労働者の現場常駐ニーズを減らしている。例えば、マイクロソフトのベンダーのために働いている個人や、カフェのスタッフ、シャトルの運転手、および現場の技術やオーディオビジュアルのニーズをサポートしている人々だ。時間給の従業員が仕事を失うことの苦難は十分に承知している。その結果マイクロソフトは、すべてのベンダーの時給制サービスプロバイダーにサービスのニーズを減らしたこの期間中、通常の賃金を継続的に支払うことを決定した」とブログに書いている。

スミス氏はさらに「国民の健康を守る仕事は現状ではもっとスピードアップが必要だが、経済は減速が許されない。弊社は健康を最優先している企業ではあるが、同時に新型コロナウイルスが経済と社会に及ぼす影響にも対処していくつもりだ。大企業にできることが小企業にはできないこともありうると承知しているが、このようなやり方を採ることの可能な大企業は、それをぜひ検討していただきたい」と続ける。

新型コロナウイルスの患者が見つかった地域で従業員の在宅勤務を求めているワシントン州とカリフォルニア州のテクノロジー企業は同社のほかに、GoogleLyftSquareなどがある。また新型コロナウイルスの懸念により、MWC(Mobile World Congress)やGoogleのデベロッパーカンファレンスであるGoogle I/Oなど、大きなイベントも中止となった

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

マーケットプレイスの作り方(3):サプライを増やす12のグロース戦略集

編集部注:本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するPodcast「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。当シリーズ第1弾「Airbnb、Uberから学ぶマーケットプレイスの作り方(1)マーケットプレイスを制限する」第2弾「マーケットプレイスの作り方(2)サプライかデマンド、どちらにまず集中するべきか?」も合わせてぜひチェックしてみてもらいたい。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。普段は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。今回も前回に引き続き、Lenny Rachitskyさんから許可を頂き、翻訳した「マーケットプレイスの作り方」シリーズをお送りします。過去回を読まれていない方はこちらから読むことができます。

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Off Topicでは、UberやPinterestなどの創業ストーリーや最新ニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください (Apple / Spotify
ーーーーーーーーーーー

本シリーズは、大きく3つのフェーズに分けての構成になります。

1) フェーズ1:ニワトリとタマゴ問題について
マーケットプレイスを拘束・制限すること
 ・サプライ側かデマンド側、どちらにまず集中するべきか?
初期サプライの伸ばし方(←今回)
・エンドユーザーの伸ばし方
2) フェーズ2:マーケットプレイスのスケールの仕方
・サプライ側とデマンド側のどちらが伸び悩んでいるかをどう判断するべき?
・スケール時のグロース戦略
・クオリティー担保戦略
・学び・やり直すと何を変える?
3) フェーズ3:マーケットプレイスの進化させる方法
・「Managed」(管理された)マーケットプレイスへの進化する方法とは?
・新規事業の追加方法 ・新規事業の追加方法

多くのマーケットプレイスはサプライ側を伸ばす課題を持ち続けている

過去にa16zパートナー Li Jinさんのツイートを翻訳しました、C向けのマーケットプレイスのほとんどはデマンドが多すぎて、サプライを伸ばすのが常に課題になっているのがわかります。

AirbnbやUberなど有名マーケットプレイスの初期

サプライ側がそれだけ大事とわかったところ、今の大手マーケットプレイスはどうやって初期サプライは獲得したのか。以下のチートシートは、成功したマーケットプレイスのグロース戦略を分けた表だ。

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サプライのグロース戦略をまとめると:

1) ダイレクト営業
2) リファラー
3) 既存ネットワークの活用
4) 口コミ
5) 助成金
6) 従業員がサプライヤーになる
7) シングルプレイヤーモード
8) 広告
9) ループを見つける
10) イベント
11) SEOとコンテンツマーケティング
12) コミュニティー

面白いことに、成功した企業のほとんどが戦略を絞って実行していた。平均で2.5戦略を使って、中央値が2個のグロース戦略。ここで学びは、一つの戦略にフォーカスすること。何が成功する戦略か探したタイミングでそこにひたすら投資すること。
ここから成功しやすかった戦略から順にご紹介したいと思う。

グロース戦略1ーダイレクト営業

インタビューの中での一番の驚きは、「ダイレクト営業」がいかに重要だったかということ。約60%の会社は、ダイレクト営業がかなり重要なグロース戦略になっていた。

事例1:Airbnb
「ダイレクト営業は最初のリスティング時に重要だった。ユーザーもまだ集まってない未熟な市場では特に重要。それによってサプライの選別をしてどういう家が良いのか選べた。各ローカルチームが街中でどの地域、値段、リスティングの大きさを判断できるようにしたよ。」— Georg Bauser氏

事例2:OpenTable
「レストラン側では簡単なグロース戦略はなかったよ。営業チームを採用して、直接ドアノックしてソフトウェアをデモしていた。」— Mike Xenakis氏

事例3:Etsy
「一番成功したのはクラフト系のイベントなどで売手側を見つけてリクルートすることだった。そのうち、どこかのタイミングで売手が勝手に自分をプロモーションしてくれるようになった。」— Dan McKinley氏

事例4:Caviar
「私達のサプライ側の成長戦略はダイレクト営業だった。」— Gokul Rajaram氏

事例5:Uber
「Uber Blackは最初電話営業だった。リムジン事業者にひたすら電話し、ピッチしていた。リムジン事業者の多くは個人事業主だったので、そこでピッチしたのはUber Blackアプリを使うとミニマムの収入ギャランティーを約束していた。」— Andrew Chen氏

事例6:DoorDash
「一番のレストラン数を伸ばす戦略は電話営業とドアノック営業。ピッチで話すことは、集客を増やすこと。大手チェーンのマクドナルドは、デリバリー事業で70〜80%の売上増加が見込めると発言しているが、小さい店舗だと集客を増やすオプションが限られている。パートの採用、マーケティング、バックオフィスの仕事で追われているので、私たちがマーケティングを代わりにして上げることをピッチした。」— Micah Moreau氏

事例7:AngelList
「初期サプライを増やすためにいろんな投資先にウェブフォームにて名前、地域、好きな領域、年間投資社数、平均投資額などを記載してもらった。」— Babk Nivi氏

グロース戦略2ーリファラー

2番目に使われていたグロース戦略が「リファラー」だ。これは既存サプライに新しいサプライを紹介してもらう仕組みづくりのこと。インタビューしたマーケットプレイスの3分の1が、これで成功した。

事例1:Lyft
「リファラーやアンバサダープログラムはかなり重要だった。何十%の新規サプライはその仕組みから来ていたよ。コアユーザーが若かったので、初期ターゲットは学生。学生へのピッチ内容は仕事の経験とお金儲け。報酬はレベル分けをしていて、トップレベルはアルバイトと同等の報酬。しかも、トップレベルになると、Lyft COOから推薦状をもらえたので、多くの学生がリファラーになった。ネットからのリファラーも影響はあったが、現場のアンバサダーは各都市では欠かせない存在だった。それで初期プロモーションも出来てたし、コスト削減もできた。」— Benjamin Lauzier氏

事例2:Uber
「サプライ側では3分の1がリファラー経由だった。そこからのドライバーが一番良かった。その他だと口コミが3分の1、広告からが3分の1。」— Andrew Chen氏

事例3:Caviar
「リファラーは、どのマーケットでも最初の大きな成長戦略。これは初期もそうだし、成長してからでも重要。」— Gokul Rajaram氏

事例4:DoorDash
「リファーラルはDasher側ではかなり大きかった。エンドユーザー側でも効果的だったが、サプライ側の方がリファーラル経由での獲得が多かった。」— Micah Moreau氏

グロース戦略3ー既存ネットワークの活用

3分の1の事例は、既存ネットワークをうまく活用して伸びた(ほとんどのケースはCraigslist)。うまくいったケースでは一二を争う成長戦略となった。

事例1:Uber
「Launcherチームが新しい市場に入り込む時は、まずサプライ側の囲い込みを行う。その際にはまずCraigslistを使った。」— Andrew Chen氏

グロース戦略4ー口コミ

成長戦略ではないかもしれないが、口コミは初期サプライ側の獲得にかなり役立っていた。

事例1:OpenTable
「レストラン業界はかなり親密だ。レストランオーナーはお互い知っていて、何か新しいことを試すとバイラルに広がる。それを上手く活用できたと思う。さらにレストランの従業員は転職の頻度が高いので、新しいオーナーにOpen Tableを使うように言ってくれるんだ。」— Mike Xenakis氏

事例2:Eventbrite
「IPO申請資料を見てもわかるが、サプライ側の36%は口コミから来ている。」— Brian Rothenberg氏

事例3:Patreon
「クリエイターは、知り合いのクリエイターすでに使っていると、来てくれる。」— Tal Raviv氏

グロース戦略5ー助成金

4分の1の成功事例は、初期サプライは自社で払ったり、ディスカウントする「助成金」の戦略を使っていた。

事例1:Uber
「お金を使って課題解決した。Uberを使って運転してくれたら、1時間$40払うギャランティーをして、その代わりに常にアプリを稼働させて70%の配車リクエストを承認すること。」— Andrew Chen氏

事例2:Lyft
「ドライバーに対して最低収入を設けた。このおかげでマーケットプレイスのサプライを獲得できた。」— Benjamin Lauzier氏

事例3:Breather
「どっち側を補助するかを決めなければいけない。Breatherの場合は、サプライ側だった。家具、金庫、鍵を提供してサプライ側のクオリティを上げた。1取引が小さいため、悪いクオリティにすると致命的。」— Julien Smith氏

事例4:Zillow
「初期リード獲得は、ほぼ全て補助をしていた。新しいユーザーにマーケットプレイス上のコネクションをリスクフリーで見せるためにはそうするしかなかった。後々バリューを見せつけられたタイミングで課金し始めたりした。これで初期のサプライを増やしたよ。」— Nate Moch氏

グロース戦略6ー従業員がサプライヤーになる

数社では流動性と課題周りをより理解するために、従業員が初期サプライ側となった。

事例1:Rover
「初期サプライは全て従業員だった。」— David Rosenthal氏

事例2:DoorDash
社内の全従業員が月一でDashをするポリシーがある。初期の時はDasherが足りてなかったのでCEOのTonyさんとチームがほぼ毎日Dasherとして勤務していた。しかもTonyさんの奥さんも一緒にDasherとして勤務していた時もあった。」— Micah Moreau氏

事例3:TaskRabbit
初期はCEOのLeahさんとチームがTaskerだった。本社から従業員を現場へ送り込んだのを覚えている。初めはエンドユーザーの体験を最高にするため、呼ばれた時に何をしててもエンドユーザーの元へ行った。初期にクオリティー担保を保てたのはそのおかげ。」— Jamie Viggiano氏

グロース戦略7ーシングルプレイヤーモード

サプライ側にデマンドを必要としない良いツールを提供することでサプライの数を伸ばす戦略は、意外と使われてなかったが、うまく行ったケースでは一番重要な成長戦略となった。

事例1:OpenTable
「オンライン予約が人気なかった時代に、レストランにオンライン予約の話をしても無駄だった。なのでまずは、デマンドを必要としないソフトウェアの開発への投資を行った。具体的にはレストラン側のマニュアルの予約システムのリプレイス。最初のピッチの9割はソフトウェアを使ってより効率よくレストランを回すことで、1割ぐらいオンライン予約の話しかしてなかった。」— Mike Xenakis氏

事例2:Eventbrite
「サプライ側にはプロダクトを早めにセルフサービス型にした。」— Tamara Mendelsohn氏

グロース戦略8ー広告

初期段階でサプライ側を広告で増やすのはLyftとUberぐらいだった。

事例1:Lyft
「SEM、ディスプレイ広告、Facebook広告は初期のサプライとデマンド獲得に役立った。そこのCACをベンチマークとして他の成長戦略を試した。」— Benjamin Lauzier氏

事例2:Uber
広告チャネルからは半分の登録があったが、合計Trip数の3分の1しかなかったので、一番効率悪いチャネルだった。」— Andrew Chen氏

グロース戦略9ーループを見つける

EventbriteとAirbnbはサプライ側のグロースサイクルを見つけたことで成長できた。

事例1:Eventbrite
イベント参加者(デマンド側)がイベント作成者(サプライ側)になるようなバイラルループをプロダクトに埋め込んでいた。さらに、無償イベントだと無償で使えるfree-to-paidループのおかげで初回の利用ハードルを下げた。後ほど初回で無償イベントのイベント作成者は有料イベントを作成して課金してくれた。そのループは34%のサプライ側の獲得となり、無償イベントを作ったイベント作成者の17%は12ヶ月以内に有料イベントを作成している。」— Tamara Mendelsohn氏、Brian Rothenberg氏

事例2:Airbnb
「エンドユーザーが旅行をブッキングする → 体験に満足している旅行中に自分の家をゲスト用に空けて旅行費の一部を負担しないかとオファーを出す → エンドユーザーがホストになる。」— Casey Winters氏

グロース戦略10ーイベント

AirbnbやLyftは初期サプライを増やすためにイベントやミートアップを開催していた。

事例1:Airbnb
「新しい都市でローンチする時にはそこでミートアップを開催していた。SFだとサービスの創業者に会うのはあまり大したことではないが、他の地域だと貴重な体験と思われる。私達に会ったことを友達に言ってくれる。」— Brian Chesky氏

事例2:Lyft
「初期の基盤となったのがドライバー用のオンボーディング授業。教育動画やチャットを用意して、ドライバーに来てもらって、ベーグルや食べ物も提供していた。」— Benjamin Lauzier氏

グロース戦略11ーSEOとコンテンツマーケティング

SEOはほとんどの会社では成長戦略として使われていなかった。

事例1:Eventbrite
「初期にイベントマーケティングのノウハウ記事を書いてSEOトラフィックを稼いでいた。SEOループは:
1) イベント作成者が自社コンテンツでイベントページを作成
2) 自社サイトにEventbriteページのURLを貼る
3) そのEventbriteページのSEOランクは高くなり、さらに自社の「サンフランシスコイベント」ページのコンテンツ作りとなって、さらにSEO効果があった
4) デマンドだけではなく、サプライ側の獲得にも繋がった」

— Tamara Mendelsohn氏、Brian Rothenberg氏

グロース戦略12ーコミュニティー

一番ユニークな成長戦略はEtsyかもしれない。

事例1:Etsy
「オフラインでEtsyコミュニティーを作るのが初期で一番の成長戦略となった。『Etsy street teams』と言う熱意の高いコミュニティーメンバーの組織を作り、現場のアンバサダーとなった。各地域のチームリーダーにはツールやお金を渡し、売手のコミュニティーを作れるようにした。いくつかのチームは未だに存在している。初期は広告も全く使わず、売手側が自分のショップやブランドをプロモーションして成長した。しかも金銭的なインセンティブがなく、単純にEtsyに対する愛情でやってくれていた。」— Nickey Skarstad氏

次の記事では、「12のデマンド成長戦略」をご紹介します!

スーパーチューズデーの結果を受け、投資家はコロナウィルスの苦痛からバイデン氏の勝利へシフト

米国大統領予備選挙であるスーパーチューズデーの結果は民主党をリベラルと穏健派に分断したが、投資家は昨夜の結果を企業と市場の勝利と受け取った。

新型コロナウィルス(COVID-19)の米国内蔓延に伴う悪いニュースが続く中、米国時間3月4日のジョー・バイデン氏がスーパーチューズデーの民主党候補争いで先頭に立った知らせに、主要株式市場は急騰した。

ダウ平均株価は1173.45ドル、4.5%と大きく上昇して2万7090.86ドルに、Nasdaq総合指数は334ポイント、3.85%高の9018.09ポイント、S&P 500種株価指数は126.75ポイント、4.22%高の3130.12ポイントとなった。

バイデン氏の穏健な立ち位置は、バーモント州選出の上院議員であるバーニー・サンダース氏が推進するリベラル色の強い政策とは対照的だ。サンダース氏の、どうやって気候変動と戦い、医療業界を再建するかという立場は、バイデン氏が副大統領としても今年の大統領選遊説でも推している漸進主義(インクリメンタリズム)とは大きく異なっている。

このところ主要株価指標には苦難の日々が続いているが、ここ数日間、コロナウィルスの経済への影響に対する投資家の恐怖心は、米国政府が決然とした行動を起こし始めたことで収まりつつあるように見える。

米国時間2月28日に底をついて以来、ダウは1681.50ドル上昇し、Nasdaqは748.35ポイント、S&P 500は265.20ポイントそれぞれ上昇した。本日のニュースが上昇要因のひとつだ。

テック界の巨人である、Alphabet(アルファベット)、Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック)、Microsoft(マイクロソフト)の各社は、市場が跳ね上がったその日にそろって株価を上げた。医療保険会社と薬品会社は、バイデン氏の勝利と、新型コロナウィルスの検査、治療、およびワクチンの可能性を含めた開発に対して米国政府が支出する新たな予算の両方を追い風に、この日特に目立った勝ち組だった。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

インテル元社長が創業したAmpereがクラウドのワークロードを最適化する新チップを発表

Intel(インテル)元社長のRenee James(レネイ・ジェームズ)氏が経営するチップスタートアップであるAmpere(アンペア)は3月3日、クラウドのワークロード最適化のために特別に設計された新しいチップを発表した。

Ampereの製品担当副社長であるJeff Wittich(ジェフ・ウィッチ)氏によると、新チップ「Ampere Altra」(アンペア・アルトラ)は、クラウドプロバイダーにとって魅力的な機能を備える設計となっている。注力したのは高性能、スケーラビリティ、電力効率の3点。大規模クラウドを運用するベンダーにとってすべてが重要なポイントだ。

Altraはいくつかの大きな特徴を備えたARMチップだ。「64ビットARMコアまたは2ソケットプラットフォームの160コアだ。当社は1ソケットと2ソケット構成の両方をサポートする。3GHzターボで動く。クラウドが提供する計算方法のため、すべてのコアで3GHzであり、すべてのコアを最大限利用できる。そのため当社のターボ性能は、すべてのコアが常に性能を維持できるよう最適化されている」とウィッチ氏は説明した。

同社は、このチップがクラウドの強力な推進力の1つになると考えている。「当社はクラウド環境向けに開発された汎用CPUを設計しているため、チップについては熟知している。このチップはクラウドが利用しているのと同じように使える。そのため、クラウドのワークロードのあらゆる局面をサポートできる」とウィッチ氏は説明した。

創業者兼CEOのジェームズ氏は「当社はクラウドの顧客に対し、個々のワークロード向けにチップを最適化するため、必要な種類の情報をきめ細かな構成レベルで提供している。これは特にハイパースケーラーが本当に必要としているものだ」と語った。

「純粋にパワーとパフォーマンスを提供するプラットフォーム、それこそが求められているが、そうしたものを構築するために当社ができることをしてみたい。そして、デザインアプローチを採用し、顧客と協力して重要事項、すなわちどんなコントロールや独自の機能が必要なのかを決める。なぜなら顧客によってソフトウェア環境が1つ1つ異なるからだ」とジェームズ氏は説明した。

Ampereと以前から協業している企業には、Oracle(オラクル、CrunchbaseによるとAmpereの投資家)やMicrosoft(マイクロソフト)などがある。

ジェームズ氏は「このチップを顧客に届けるにあたり予想外の挑戦となったのが新型コロナウイルスによるサプライチェーンの混乱だ。多くの部品が製造されチップが組み立てられるアジアでコロナウイルスが影響を及ぼしている。当社はこの状況を踏まえ、世界にまたがるサプライチェーンを構築しつつある。これによりサプライチェーンのスローダウンによるトラブルが緩和されることを願っている」と語る。

画像クレジット:Jordan Lye / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

ザッカーバーグ氏がFacebookによる新型コロナウイルス感染症への取り組みを詳しく説明

マーク・ザッカーバーグ氏は、Facebookならびに彼が家族で運営する非営利団体のチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブが、COVID-19として知られる新型コロナウイルス感染症と、病気に関する誤ったウイルス情報の広がりに対応するために行っていることの概要を、米国時間3月3日夜の早い時間に投稿した声明の中で説明した。

Facebookの対応は、3つの分野に焦点を当てている。正確な情報の提供、誤まった情報報をくい止めること、そして研究のためのデータ(これはFacebookが提供する普通のデータだ)提供である。

Facebookは、正確な情報を提供するために、そのプラットフォームで新型コロナウイルスに関する情報を検索するユーザーに対して、自動ポップアップを介して世界保健機関(WHO)または地元の保健当局サイトへの訪問を提案する。また、情報に関するそうした通知は、世界保健機関が人から人への感染の事例を報告した国にいる、すべての人のニュースフィードに自動的に挿入される。

「進行中の状況を考慮して、私たちは保健省やWHO、CDC、そしてユニセフなどの組織と協力して、新型コロナウイルスに関するタイムリーで正確な情報を入手できるよう協力しています」とザッカーバーグ氏は述べている。「私たちはWHOに対して、新型コロナウイルス対応に必要とされる無料広告枠と、それに相当する支援も提供しています。また、他の組織に対しても、広告クレジットのかたちで多大な支援を提供していますし、必要に応じて追加の支援を提供するために、グローバルな健康の専門家たちとも緊密に協力します」

Facebook上での誤った情報の拡散を止めるために、ザッカーバーグ氏は、グローバルな健康機関によって疑義のある虚偽情報と陰謀説をFacebookから排除し、怪しげな治療法を売り込むことで大衆の不安を煽るような広告を出すアカウントをブロックする、と書いている。

最後にそしておそらく最も議論になる内容として「人々が私たちのサービスを使って、アウトブレイクを封じ込めるためのより広範な努力に、どのように貢献できるかにも目を向けています」とザッカーバーグ氏は書いている。「研究者たちは、ウイルスがどのように拡散しているかをよりよく理解するために、モビリティデータや人口密度マップを含む、集計され匿名化されたFacebookデータをすでに利用しています」という。

匿名化されたデータに誰がアクセスできるのか、ユーザーがそのデータを使用して何を行えるのか、またはウイルスからの脅威が和らいだあとに、どれくらいの期間アクセスが可能なのかという点について、Facebookがどのようにコントロールしていくのかについての疑問は残されている。Facebookは、この記事公開に間に合うタイミングではコメントを返していない。

チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブも、病気の拡大を食い止めるための医学的努力を支援している。ゲイツ財団と協力することで、2つの組織から資金提供を受けた研究者たちは、数日でCOVID-19を引き起こすウイルスのゲノム配列を完全に特定することに成功し、ウイルスに感染した人々の特定が容易になった。

また同じチームは、他の科学者たちがまた別の病原体の場合でも全ゲノムを研究できるようにするIDSeqツールの公開バージョンを作成した、とザッカーバーグ氏はいう。

チャン・ザッカーバーク・イニシアチブが設立資金を提供した医学研究センターのBiohubは、体内のさまざまな細胞タイプをマッピングする細胞アトラス(地図)の開発にも取り組んでいる。一部の研究者は、このアトラスを使用して、新型コロナウイルスが肺をどのように損傷させるかを研究し、ウイルスによって引き起こされる肺の損傷を抑える可能性がある治療法を、特定し評価しようとしている。

「人々の孤独感を和らげ、助け合うためにできることはまだまだあります。そして今後数週間でみなさんと共有できるアイデアにも取り組んでいますが、現時点ではアウトブレイク自体の広がりを遅らせることに焦点を当てています」とザッカーバーグ氏は述べている。「多くの人が困難に向き合っています。私は、病気の人も隔離された人も、そうした人たちの友人たちや家族も、そしてもちろん、いつでも流行の最前線にいる医療従事者のみなさんのことも気にかけています。近いうちに、より多くの進捗情報をお知らせします」

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(翻訳:sako)

FRBの緊急利下げでテック株は再び暴落

連邦準備制度理事会(FRB)が投資家の信頼を取り戻すための唯一のスイッチを入れた日、投資家たちは米国および世界経済の短期的財政見通しにまだ確信を持つことができなかった。

3月2日、月曜日の急速な回復が、直前の歴史的低調な週をある程度消し去ったあと、火曜日の主要三インデックスは揃って赤信号を灯らせた。

わずかな明るいニュースが急上昇をもたらした3月3日とは対照的に、3月4日の暴落はFRBが0.5%の緊急利下げを行った驚きの中にやってきた。このような突然の利下げは2008年の財政危機以来のことだ。https://twitter.com/levie/status/1234922251570429953?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1234922251570429953&ref_url=https%3A%2F%2Ftechcrunchjp.wordpress.com%2F%3Fp%3D332044%26preview_id%3D332044%26preview_nonce%3D00c8980f1e%26_thumbnail_id%3D332049%26preview%3Dtrue

私は専門家ではないが、利下げは意図された効果を生んでいないように見える

不確実な時期にFRBが何らかの緩和措置をしてくれるのは良いことだが、現実には、市場の予期したタイミング「前」のこれほど急な利下げは、事態を悪化させかねない。

投資家が悲観的になる理由はいくらでもある。航空機による旅とそれに伴う接客ビジネスの出費は、COVID-19感染の脅威によって、急速に削減されている。第1四半期に中国で起きたサプライチェーンの崩壊が、第2四半期にどこまで影響を与えるのか誰にもわからない。しかも米国は、新型コロナウイルスの伝播状況の把握もそれへの対策もまだできていない。

真の原因は定かではないが、株価が下落したことは事実だ。数字は以下の通り。

  • Dow Jones Industrial Average(ダウ平均株価): -789.37ドル、 2.96%
  • S&P 500:-86.86ドル、 -2.81%
  • Nasdaq Composite(ナスダック総合指数):-268.08ドル、 -2.99%

逆風はテック業界の巨人たちも襲った。Appleは3%以上下げ、Microsoftは4.8%、Amazonはやや少なく2.3%、そしてFacebookは5.4%と最大の暴落を記録した。

SaaS関連株へのあたりは特に厳しく、取引終了前の数時間に4%近く下落した。BessemerのクラウドおよびSaaS指数も2.9%減で終えた。さほど影響を受けていない会社もある。Slackは約1ポイント下げただけで、Uberは下げた分をすべて取り戻した。

何がこの乱高下を止めるのか、誰にもわからない。

最近のこうした市場の混乱をよそに、建築ソフトウェアのProcoreベンチャーキャピタルの支援を受けているAccoladeのように上場申請している会社もある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

女性向けサプリメントD2Cのnatural tech、卵子凍結・不妊治療の福利厚生プラットフォーム「Stokk」、ほか

【2/10-2/16 FemTech & BeautyTech】

2月10日から2月16日の1週間に発表された、FemTechやBeautyTechを中心とした領域における、特に注目すべきニュースをまとめて紹介する。

女性向けサプリメントD2Cのnatural tech

サプリメントD2Cを展開するnatural techは、ライフステージごとの悩みに特化した女性向けサプリメントの開発や販売を行っており、2019年4月9日に第一弾製品として、妊活・妊娠中の人向けの葉酸サプリ「mitas–ミタス」を発売開始した。同社は2月14日にオフィシャルサイトをオープン。今後は第2弾、第3弾と製品を発売していく予定で、オフィシャルサイトを通じ、製品情報だけでなく、ライフステージごとに訪れる変化やそれにともなう悩みについてなどの情報を発信していく。

代表の竹内太郎氏は、「世の中にあるサプリメント会社は怪しいものが多かった」と言う。同氏は、そのような状況を克服するために、「産地・製造・配合量など、全て公開することにした。オフィシャルサイトで順次更新していく」と説明する。

卵子凍結・不妊治療の福利厚生プラットフォーム「Stokk」

卵子凍結・不妊治療の福利厚生プラットフォームや女性向けヘルスケアメディアを運営するステルラは、将来のために卵子凍結を希望する女性社員に対して、卵子凍結に関する情報の提供からコンシェルジュによるケア、提携クリニックのマッチングなどを対応するサービスの「Stokk(ストック)」を開発する。

ステルラは2月10日、スカイマークにStokkの試験導入を開始したことを発表した。今回の試験導入により、スカイマークの従業員は卵子凍結・不妊治療に関わる複数のメリットを受けることが可能になる。同社では今後、ベータ版を構築し、導入企業の従業員が安心して仕事と治療を両立できるサービスの充実を目指す。また、関東圏、九州にある提携クリニックも拡大する予定だ。

店舗で利用するiPadアプリ「MAKEUP RECORDER」提供開始、プロのメイクアップテクニックの持ち帰りが可能に

ビューティテック事業を展開するテック・パワーは、化粧品売り場などの店舗で行ったメイクアップを動画で録画し、顧客のスマートフォンへ転送できるiPad専用アプリ「MAKEUP RECORDER」の提供を開始した。

「MAKEUP RECORDER」はiPadをスマートミラー(鏡型のデバイス)のように使用し、メイクアップ中の映像を録画できる。その映像しスマートフォンへ転送するにより、ユーザーはメイクアイテムの使用方法やプロのメイクアップテクニックの確認が可能に。メイクの再現性を高めることができるようになる。また、動画ファイルとして保存できるためSNSへ投稿することもできる。

Uberがインドのフードデリバリー事業を地元Zomatoに約221億円で売却

Uberインドで展開してきたフードデリバリー事業を地元のライバル企業Zomatoに2億600万ドル(約221億円)で売却した。Uberにとって主要海外マーケットの1つであるインドの当局に提出した書類で明らかになった。

2020年1月にUberはUber Eatsのインド事業を、赤字のフードデリバリースタートアップZomatoの株式9.99%と引き換えにZomatoに売却したと発表した。両社は買収額などの詳細は明らかにしなかった。インドの一部のメディアは3億5000万ドル(約376億円)規模だと報じた。TechCrunchは、Uber Eatsのインド事業とZomatoの株式9.99%は1億8000万ドル(約193億円)と評価された、とレポートした。

書類の中でUberは「Uber Eatsのインド事業についてZomatoから示された『考慮した適正価格』は2億600万ドル(約221億円)だった。ここにはZomatoから支払われる商品・サービス税の還付金3500万ドル(約38億円)も含まれている」としている。

この買収は創業11年となるZomatoのバリュエーションの大幅減を如実に物語っている。2020年初めに1億5000万ドル(約160億円)の資金調達を明らかにしたとき、同社の価値は30億ドル(約3220億円)と報じられた。

2019年12月のインドの報道機関PTIからのインタビューで、Zomatoの共同創業者でCEOのDeepinder Goyal(ディーピンダー・ゴヤル)氏は、同社は2020年1月末までに最大6億ドル(約645億円)を調達する見込みで、今はその最中だと話した。同社はまだ資金の大半を確保していない。Zomatoの広報はコメントを避けた。

Uber Eatsの撤退で、インドのフードデリバリーマーケットはZomatoと、Prosus Venturesが支援するSwiggyの2強体制となった。Swiggyは現在も進行中のラウンドで2020年2月に1億1300万ドル(約121億円)を調達した。業界の予測ではSwiggyがインドのフードデリバリー業界でトップだ。

両社とも新規顧客を獲得したり、既存客の満足度を維持したりしようと、毎月1500万ドル(約16億円)超のフードデリバリーを行っているが、依然として黒字化に苦戦している。

米国のような発展したマーケットと違い、インドでは黒字化は特に難しい。バンガロール拠点の調査会社RedSeerの推計によると、各デリバリーアイテムの価値は米国では33ドル(約3500円)だが、インドでは同じようなものが4ドル(約430円)だ。

India QuotientのVC、Anand Lunia(アナンド・ルニア)氏は最近のポッドキャストの中で「フードデリバリー企業はプラットフォームでフードアイテムのコストを補い続けるしか方法はない。でなければ顧客のほとんどはサービスを利用できない」と話した。

それだけでも大変だが、この2社は新たな競争相手にも直面している。TechCrunchは先週、Amazonが早ければ3月末にもインドのフードデリバリー業界に参入する計画だと報じた。

画像クレジット: CHANDAN KHANNA / AFP / Getty Images

参考:アマゾンがインドのフードデリバリー市場にまもなく参入か

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(翻訳:Mizoguchi

マーケターのための顧客データ統一プラットホーム「mParticle」が約48.6億円を調達

SpotifyやPaypal、Starbucksといった企業での顧客データ管理を支援しているmParticleが、シリーズDで4500万ドル(約48億6000万円)を調達した。同社の総調達額は、これで1億2000万ドル(約129億5500万円)になる。

共同創業者でCEOのMichael Katz(マイケル・カッツ)氏によると、時代の変化が同社にとって追い風になっている。すなわち、より厳しくなったプライバシーに関する規制やクッキーを使った顧客追跡技術の陳腐化と廃棄などのために、モダンなデータインフラを使った、どんな規制に抵触せずにパーソナライズされた体験を顧客に提供できるmParticleのようなプラットホームが、ますます企業に必要になっているのだ。

彼によるとその結果、mParticleは2017年にシリーズCで3500万ドル(約37億8000万円)を調達して以来、売上が5倍に増えた。

カッツ氏は「我々が解決する問題は普遍的で、企業の大小を問わない。データのフラグメンテーションやクォリティ、プライバシーをめぐる諸状況の頻繁な変化、テクノロジーそのものの絶えざる変化、これらはどの企業も直面している問題だ」と言う。

まさにそんな問題があるからこそ、mParticleが創業した2013年ごろから顧客データプラットホーム(customer-data-platforms、CDP)と呼ばれるサービスが次々と登場し、さまざまなソースからのデータを一元化して、マーケターが顧客の状況を一望できるためのツールを提供するようになった。今ではAdobeSalesforceのような大手企業も、彼らの大きなマーケティングクラウドの一環として内製のCDPsを提供している。

競合について問われたカッツ氏は「マーケットが望んでいるのは、一社支配ではない業界だ。たった1つのスイートだけあって、そこに2000年代の初期に作られたようなツールがすべて詰め込まれているなんて状態を誰も望まない」と言う。

彼によると、むしろ同社の顧客が望むのは目的やタイプごとに各分野の最高のソリューションがあって、それらをシームレスに組み合わせて利用できることだ。

さてシリーズDに話を戻すと、ラウンドをリードしたのはArrowroot Capitalで、同社のマネージングパートナーであるMatthew Safaii(マシュー・サファイ)氏がmParticleの取締役会に加わった。既存の投資家各社もラウンドに参加している。

カッツ氏の展望では、資金は主に3つの領域、新製品開発と同社のグローバルなデータインフラストラクチャのスケール拡大、そして新たなパートナーの獲得に充てられる。同社はすでにLiveRampとのパートナーシップを発表しており、これによってmParticleの顧客は、自分のファーストパーティのデータとLiveRampからのサードパーティのデータを結合できる。

「LiveRampとのパートナーシップでサービスの表面積を広げ、顧客企業が高度にパーソナライズされており、しかもプライバシーのコンプライアンスが高いUXを自らの顧客に提供できるようにしたい」とカッツ氏は言う。

関連記事: Amperity acquires Custora to improve its customer data platform…顧客データ活用プラットホームのAmperityが同業のCustoraを買収(未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa