【コラム】テック系ワーカーの大多数が反トラスト法の施行を支持

米連邦取引委員会のLina Khan(リナ・カーン)委員長の登場で、ビッグテックの解体が再びワシントンの主要政策論議に浮上した。この問題は超党派的な様相を呈しており、共和党も民主党も同様に、テック業界における独占的な行動を止めることに賛成している。もちろん、立脚点の状況はもっと微妙だ。

Amazon、Apple、Microsoft、Facebook、Googleに事業分割や中核事業からの撤退を迫る5つの超党派法案を米下院司法委員会が可決してから1カ月後、共和党の委員会メンバーらは、ビッグテック企業によるオンライン検閲を阻止する法的手段を米国民に与える新たな法案を提出した。より保守的な政策措置は、ビッグテックによるコンテンツモデレーションの慣行の透明性を高めることも提案している。

ビッグテックの規制方法をめぐる議員同士の争いは、すぐには終わらないだろう。しかし、パンデミックによって加速されたデジタルトランスフォーメーションの新時代を米国が先導する中、連邦議会は、自由市場を維持するにはビッグテックの力が抑制されなければならないという信念で強固な結束を築いている。

現状では、小規模な競合企業も消費者も、今日の近代的な経済エンジンに参加するにあたってはビッグテックに縛られる以外に選択肢はほとんどない。そしてパンデミックを経て、テック最大手5社は、資本主義の歴史ではこれまで見られなかったような驚異的なスピードで成長を続けている

大手テック企業は、事業を分割することになりかねない規制に対して強い反対の意思を示しており、規制改革は研究開発の損失、非現実的な市場の細分化、消費者へのサービスコストの上昇をもたらすことを示唆している。

AppleやFacebook、Amazonなどのビッグテック企業が出資するテック業界団体が委託した調査によると、米国人はテック関連の規制を議会にとって優先度が低いものだと考えている。米国人の最優先事項として挙げられたのは、経済、公衆衛生、気候変動、インフラであった。この調査ではまた、Amazon Primeプロダクトの無料配信のようなオファリングに影響を与える規制には、米国人が反対する可能性が高いことも明らかになった。

おそらく今回の世論調査と、選挙で選ばれた指導者たちの超党派的なセンチメントは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生後、社会が良くも悪くもテック大手への依存を認識し始めたことを示しているのだろう。過去18カ月間、米国の労働者はリモートワークに適応してきた。彼らは、他の従業員とのコミュニケーション、企業の経営、食料品や必需品の購入などに対してビッグテック企業が展開するプログラムを利用している。多くの企業が完全なリモートまたはハイブリッドのワークモデルへの移行を公表しており、この動的な状況が変わる可能性は低い。

この話題に対して、プロフェッショナル、特にテック業界やスタートアップ、スモールビジネスで仕事をする人々の間で関心が高まっている。私たちFishbowlは、その多くがテック業界で働くプロフェッショナルたちに、テック大企業の分割について聞いてみようと考えた。Fishbowlはプロフェッショナルのためのソーシャルネットワークであるため、このような職場の話題について調査を行うのは自然な流れだ。

この調査は2021年7月26日から30日にかけて実施され、この分野の従業員が反トラスト法についてどのように感じているかが調査された。調査ではプロフェッショナルたちに次のように問いかけた。「AmazonやGoogleのような大手テック企業を解体させるために、反トラスト法が使われるべきだとだと思いますか?」。

Fishbowlアプリ上で11579人の認証プロフェッショナルが調査に参加し、イエスかノーのどちらかを回答するオプションを与えられた。調査は、法律、コンサルティング、ファイナンス、テクノロジー、マーケティング、アカウンティング、ヒューマンリソース、教師などを対象に、州および専門業界に分類して行われた。

調査結果は以下の通りである。

画像クレジット:Fishbowl

1万1579人のプロフェッショナルのうち、6920人(59.76%)が回答に応じた。

回答に基づくと、調査に肯定的な回答が最も多かったのは法律のプロフェッショナルで、66.67%であった。コンサルティングのプロフェッショナルは61.97%で、次いでファイナンス(60.64%)がテクノロジー(60.03%)をわずかに上回った。一方、教師の割合は53.49%と最も低かった。ヒューマンリソース(55.65%)、アカウンティング(58.51%)、その他の専門職(58.83%)と続いている。

この調査のデータは、米国25州のプロフェッショナルから集めたものである。イエスと答えた割合が最も高かったのはコロラド州で、76.83%だった。2位は73.17%のワシントン州、3位は69.70%のミシガン州となった。大手テック企業の分割に「イエス」と答えた従業員の割合が最も低かったのはミズーリ州(51.35%)であった。インディアナ州(52.59%)、マサチューセッツ州(52.83%)と続いている。全体的に見て、調査に参加した州の大半は、反トラスト法がビッグテック企業を事実上解体すべきだと考えている。

テクノロジーのプロフェッショナルは、大手テック企業が解体されるべきだと回答した割合が4番目に高かった。ビッグテック企業を解体することで得られるメリットの一部として、スモールビジネスにより多くの機会がもたらされることが挙げられる。テクノロジーのプロフェッショナルや起業家にとっては、新たなプロダクトやプログラム、サービスを立ち上げる好機となるかもしれない。また、高度なスキルを持つプロフェッショナルの雇用を増やす可能性もある。第2のメリットは、データのプライバシーと国家的なセキュリティに関する懸念を軽減できることだ。しかし、大企業を解体することのデメリットとして、研究開発の損失が考えられる。大企業は人工知能、自動運転車、ウェアラブル、ロボットなどに多額の資金を提供している。最終的には、ビッグテック企業の解体は、プロフェッショナルそして一般の人々にとってもサービスコストを増加させる可能性がある。

政策立案者たちがビッグテックの解体方法について交渉を続ける中、ホワイトハウスも動き始めている。Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領は最近、コロンビア大学ロースクール教授のカーン氏をFTC委員長に任命した。カーン氏はビッグテックを強く批判しており、企業の濫用から一般市民を保護し、合併のガイドラインに経済の現実と実証的な学習・執行を反映させることを最優先課題としている。端的に言えば、同氏は合併について懐疑的な見方をしている。

そして7月、バイデン大統領はJonathan Kanter(ジョナサン・カンター)氏を司法省反トラスト局長に指名する意向を表明した。カンター氏は、反トラスト法を専門とする20年以上の経験を持つ弁護士で、強力かつ有意義な反トラスト法の執行と競争政策を推進する取り組みの第1人者であり、専門家でもある。

こうしたメンバーの追加により、業界全体で反トラスト法を施行するための積極的なアプローチが行われることが期待される。今後の動きに確実に違いをもたらすことが議会に委ねられよう。

編集部注:Matt Sunbulli(マット・サンブリ)氏は、リモートワークの新時代にプロフェッショナルを結びつけるワークプレイスソーシャルネットワークFishbowlの共同設立者兼CEO。

画像クレジット:Peter Dazeley / Getty Images

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(文:Matt Sunbulli、翻訳:Dragonfly)

【コラム】9.11から20年、制限のないデータ収集がもたらす米国の新たな悲劇

2001年9月11日朝。米国の成人のほとんどは、自分がその時どこにいたかを鮮明に覚えているだろう。筆者はホワイトハウスのウェストウィング2階で、米国国家経済会議のスタッフ会議に出席していた。シークレットサービスが突然部屋に入ってきて「すぐに部屋を出てください。ご婦人方はハイヒールを脱いで!」と叫んだことは忘れられない。

そのちょうど1時間前、私は全米経済会議のホワイトハウス技術顧問として、9月13日にオーバルオフィスで予定されている大統領との会談に向けて最終的な詳細を副参謀長に説明していた。そして、米国政府のプライバシー保護法案を議会に提出するために、大統領のサインを得る準備が整った。カリフォルニア州のプライバシー保護法の国家版ともいえるこの法案は、それよりも強力で、情報を共有する際には対象となる市民の選択による同意を得て市民のデータを保護するなど、データの収集方法や使用方法を規定するものだった。

しかし、その日の朝、世界は一変した。私たちはホワイトハウスから避難し、その日は悲劇に次ぐ悲劇が発生した。米国、そして世界中に衝撃が走った。あの日、ワシントンD.C.にいた私たちは、悲しみ、連帯感、不信感、力強さ、決意、緊迫、そして希望など、人間の感情のすべてを目の当たりにし、自ら体験することとなった。

当日については多くのことが語られているが、筆者はその翌日のことを少し振り返ってみようと思う。

9月12日、オフィスに国家経済会議のスタッフが集まったとき、当時の上司であるLarry Lindsey(ラリー・リンゼイ、Lawrence Lindsey)が私たちに言った言葉を今でも覚えている。「今ここにいることを不安に思う人がいるかもしれません。私たちは全員が標的なのだから。愛国心や信仰心をアピールするつもりはありません。しかし、この部屋にいる皆が経済学者である以上、私はみなさんの合理的な自己利益に訴えます。今、私たちが逃げ出してしまえば、他の人たちも同じように逃げ出すでしょう。誰が私たちの社会の要を守ることができるでしょうか?私たちは国を守ります。この国の誇りとなるように行動してください。そして、安全と安心という自由への献身を放棄しないでください」。

9.11の悲劇に対して、国が一丸となったこと、そして米国政府の対応については多くのことを誇りに思っている。しかし、私はサイバーセキュリティとデータプライバシーの専門家として、まず、ラリーが言ったこと、その後の数年間で学んだ多くの重要な教訓、特に社会の要を守るということについて振り返りたい。

あの日の記憶は未だに鮮明だが、20年が経過し、9.11同時多発テロに至るまでの数カ月間にデータが果たした(果たさなかった)致命的ともいえる役割が解明されている。不幸なことに、すぐそばにあったはずの情報データはバラバラに保管されており、何千人もの命を救うことができたかもしれない点と点をつなぐことはできなかった。データのサイロ化によって、情報を安全に共有する仕組みがあれば見つけられたはずのパターンが見えなくなっていたのだ。

その後、私たちは「こんなことは二度とごめんだ」と自らに言い聞かせ、当局は、市民の自由だけでなくデータのセキュリティにも重大な影響を与えることを考慮せずに、収集できる情報の量を増やすことに邁進した。そして、CIAや法執行機関による20年間の監視要請が詰め込まれた愛国者法が施行された。司法省とともに愛国者法を交渉する場にいた私がはっきりと言えるのは、次のテロ攻撃を防ぎ、私たちの人々を保護するという意図は理解できるものの、その結果として広範囲に及んだ悪影響は明白であった、ということだ。

国内での盗聴や大規模な監視が当たり前になり、個人のプライバシーやデータの安全性、国民の信頼が少しずつ損なわれていった。これはデータプライバシーに対する危険な前例となったが、その一方で、このレベルの監視ではテロとの戦いにおいてわずかな成果しか得られなかった。

残念なことに、個人のプライバシー保護を強固にするはずであった、まさに9月11日の週に議会に提出する予定だった米国政府のプライバシー法案は、頓挫してしまった。

その後数年が経ち、大量の監視データを安価かつ簡単に収集・保管できるようになり、テクノロジー関連やクラウド関連の大手企業が急速に規模を拡大し、インターネットを支配するようになった。官民を問わずより多くのデータが収集されるようになり、個人の機密データが公に晒されるようになったが、このようなアクセスの拡大に対処できる、有効性のあるプライバシー保護措置は講じられなかった。

巨大なテクノロジー企業やIoTデバイスが、私たちの行動、会話、友人、家族、身体に関するデータポイントを集める20年後の現在、私たちは過剰なまでに野放図なデータ収集とアクセスに翻弄されている。原因がランサムウェアであろうとクラウドバケットの設定ミスであろうと、大規模で代償が大きいデータ漏えいでさえも新聞の一面で取り上げられないほど頻繁に発生している。この結果は社会の信頼の喪失だ。人権であるはずのプライバシーだが、それが守られていないことは誰もが知っている。

このことは、アフガニスタンでの人道的危機を見れば明らかだ。一例を挙げてみよう。連合軍を支援したアフガニスタン市民の生体情報データが入った米軍のデバイスがタリバンに奪われてしまった。このデータがあれば、タリバンは対象となる個人や家族を容易に特定し、追跡できる。機密性の高い個人情報が悪人の手に渡るという最悪のシナリオであり、私たちはそれを防ぐための十分な努力をしてこなかった。

決して許されることではない。20年経った今、私たちは再び「こんなことは二度とごめんだ」とつぶやいている。私たちは9.11の経験を、情報データをどのように管理、共有、保護したらいいかを再認識する機会とするべきだったが、未だにそれを正しく理解していない。20年前も現在も、データの管理方法は生死を決する。

進歩がないわけではない。2021年、ホワイトハウスと米国国防総省は、サイバーセキュリティとゼロトラスト(すべてが完全には信頼できないことを前提とする考え方)のデータ保護にスポットライトを当て、米国政府のデータシステムを強化する行動を促す大統領令を出した。私たちには、このような機密データを保護しながら共有もできるようにするために必要な技術がある、というのは良いニュースだろう。データが本来データを持つべきではない人の手に渡ることを防ぐ緊急時対応策も用意されている。しかし、残念なことに、私たちのアクションはまだ十分ではない。データの安全な管理という問題の解決が遅れれば遅れるほど、罪のない人々の命が失われていく。

私たちには、次の20年を見据えて信頼を回復し、データプライバシーの管理方法を変革する機会がある。何よりもまず、私たちは何らかのガードを設置することが必要だ。そのためには、個人に自分自身のデータ管理の自律性をデフォルトで持たせることのできるプライバシー保護の枠組みを構築しなければならない。

つまり、各個人による自らのデータの所有と管理を可能にするためには、公的機関や民間企業がIDとデータを結びつけ、データの所有権を各個人に戻すという技術的な裏方の作業を行う必要がある。簡単にできることではない……しかし、不可能なことではなく、米国市民、米国居住者、世界中の同盟国の人々を守るために必要なことだ。

このようなデータ保護の導入を促進するためには、相互運用性と柔軟性を備えた、無料でアクセスできるオープンソースソリューションのエコシステムが必要である。既存のプロセスやソリューションにデータ保護とプライバシーを重ね合わせることで、政府機関は、個人のプライバシーを損なうことなく、データを安全に収集・集計して全体像を明らかにすることができる。今の私たちはこのような技術がある。今こそそれを活用するときだ。

大量のデータが収集・保管されている現在、米国のデータが悪用される機会は格段に増えている。タリバンに奪われたデバイスは、現在危険に直面しているデータのごく一部に過ぎない。2021年に入ってからも、国家レベルのサイバー攻撃は増加の一途をたどっている。人命を脅かすこのサイバー攻撃は、決してなくなることはない。

2001年9月12日のラリーの言葉は、今でも心に残っている。今、私たちが手を引いたら、誰が社会の要を守れるだろうか。人々の自由を損なうことなく、プライバシーを守り抜くことができるかどうかは、官民のテクノロジーリーダーである私たちにかかっている。

まずはデータに対する国民の信頼を回復しよう。今からでも遅くはない。20年後、私たちはこの10年間を、個人のプライバシー権を保護・支持する上でのターニングポイントとして振り返ることになるだろうか。それとも、またしても「こんなことは二度とごめんだ」と思っているのだろうか。

編集部注:本稿の執筆者John Ackerly(ジョン・アッカーリー)氏はVirtru Corporationの共同創立者兼CEO。以前は、Lindsay Goldberg LLCの投資家、ホワイトハウスの技術政策アドバイザー、米国商務省の政策・戦略計画ディレクターを務めていた。

画像クレジット:Mark Rainwater/Eye Em / Getty Images

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(文:John Ackerly、翻訳:Dragonfly)

アップルは社内メモでテキサス州の妊娠中絶法に対する法的な異議申し立てを監視していると発表

米国時間9月16日、Apple(アップル)は社員専用のメッセージボードで、同社が最近テキサス州で成立した、同社のいう「特異な制限のある妊娠中絶法」に対する法的異議申し立てを監視していると述べた。AppleはTechCrunchに対して、そのメッセージは本物だと認めている。

「我々は、テキサス州独特の制限がある中絶法に異議を唱える法的手続きを積極的に監視しています。その間、Appleの福利厚生は包括的であり、従業員が自分の州で医療を受けられない場合は州外に出て医療を受けることができることを思い出してほしい」と、署名のないメモには書かれている。

この新法は、州内で行われる大部分の中絶を実質的に禁止するもので、現在、様々な方法で法的に争われている。ここ数日、テクノロジー業界内外の企業が相次いでこの法律に反対する姿勢を見せている。Salesforceは、テキサス州でのリプロダクティブケア(性と生殖に関するケア)へのアクセスに懸念を抱く従業員に対し、同法施行後の移動を提案している。また、テキサス州を拠点とするMatch GroupとBumbleは、州外でのケアを必要とする従業員の旅費を負担するという申し出を行っている。

このメッセージでは、法案に積極的に反対するためにAppleのさらなる行動については詳しく述べられていないが、Appleは「従業員がリプロダクティブヘルスに関して自分で決断する権利」を支持していると述べている。

Appleはテキサス州オースチンの数千人規模のキャンパスを持ち、その他にも州内にさまざまな製造工場やApple Storeを展開している。

メッセージの全文は以下のとおりだ。

女性のリプロダクティブヘルスケアについてのメッセージ

Appleでは、従業員がリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)について自ら決定する権利を支持しています。

私たちは、テキサス州の独特な制限のある人工妊娠中絶法に異議を唱える法的手続きを積極的に監視しています。一方で、Appleの福利厚生は包括的であり、従業員が自分の州で医療を受けられない場合は州外に出て医療を受けることができることをお伝えしたいと思います。あなた自身やあなたの扶養家族のケアについてサポートが必要な場合は、医療保険会社が秘密裏に支援してくれます。

みなさんの健康と幸福はAppleの最優先事項です。みなさんとみなさんの家族がAppleが提供する医療サービスを受けられるよう、今後もできる限りの努力を続けていきます。

画像クレジット:Olly Curtis/Future/Getty Images

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Hiroshi Iwatani)

EUが半導体の自給体制の構築を目指す法律を制定へ

欧州連合(EU)は域内の半導体サプライチェーンを自給の強固なものにすべく、法制化という手段に出る。

欧州委員会の委員長は現地時間9月15日、来たる「European Chips Act(欧州半導体法)」を連合演説で予告した。委員長の​​Ursula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)氏は、半導体製造の自主権を得ることはEUの包括的デジタル戦略の鍵を握ると訴えた。

フォン・デア・ライエン氏は、クルマから電車、スマートフォン、他の家電に至るまで、データ処理を半導体に頼っているさまざまな種の製品の生産抑制につながった世界的な半導体不足について警鐘を鳴らした。半導体が不足する事態となって、この分野における欧州の能力に対する議員の懸念は募っている。

「半導体なしではデジタルは成り立ちません」と同氏は指摘した。「こうして話している間、増大する需要にもかかわらず、全生産ラインはすでに減速しています」。

「しかし世界需要が爆発的に高まった一方で、デザインから製造能力に至るまでバリューチェーン全体での欧州のシェアは縮小してきました。我々はアジアで生産される最先端の半導体に頼っています。ですので、これは我々の競争力の問題にとどまるものではありません。テックの自主権の問題なのです。そこに注力しましょう」。

欧州半導体法は欧州の半導体研究、デザイン、テスト能力をリンクさせるのが目的だとフォン・デア・ライエン氏は話し、EUの自給能力を高めるためにこの分野へのEUと国家による投資の「協調」を求めている。

「目的は、最先端の欧州の半導体エコシステムを共同でつくることで、ここには生産も含まれています。供給を保証し、画期的な欧州テックのための新しいマーケットを掘り起こします」と同氏は付け加えた。

同氏は、欧州の半導体保有量を補強するという試みは「困難な仕事」との考えを表しつつ、20年前のガリレオ衛星測位システムで成し遂げたミッションになぞらえた。

「今日、欧州の衛星は世界で20億台超のスマホに測位システムを提供しています。我々は世界のリーダーなのです。今回は半導体ですが、再び大胆に取り組みましょう」。

その後、EU地域政策委員会のThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏が法制化計画の詳細を補強し、欧州委員会は加盟国の取り組みを「理解しやすい」汎EU半導体戦略に統合し「単一市場を細分化する国の助成金に走ることを回避するための」フレームワークを構築したいと考えている、と述べた。

目的は「欧州の利益を守り、グローバルで地政学的に欧州の地位を確固たるものにする環境をつくること」だ、と付け加えた。

ブルトン氏によると、半導体法は3つの要素で構成される。まず、ベルギーのIMEC、フランスのLETI/CEA、ドイツのフラウンホーファー研究機構といった機関による取り組みをベースに構築する半導体研究戦略だ。

「既存の研究パートナーシップをもとに、技術を強化し、我々の戦略的利益を維持しつつ、研究の野心を次のレベルにもっていく戦略をデザインする必要があります」とブルトン氏は説明する。

2つめの要素は欧州の半導体生産能力を高めるための集合的な計画で構成される。

計画されている法制化は半導体サプライチェーンの監視と、デザイン、生産、梱包、設備、サプライヤー(ウェーハ製造者など)のレジリエンスのサポートを目的とする。

最終目標は、最も高度でエネルギー効率の高い半導体を大量生産できる欧州の「メガファブ(大規模工場)」の開発を支えることだ。

しかしながら、EUが必要とするすべての半導体を生産できる未来を想定しているわけではない。

欧州半導体法の3つめの要素は、国際協力・提携のためのフレームワークを提示することだ。

「欧州だけですべてを生産するという考えではありません。欧州での生産を盛んなものにするのに加えて、我々は1つの国や地域への過度な依存を減らすためにサプライチェーンを多様化する戦略を描く必要があります」とブルトン氏は続けた。「そしてEUがグローバルでトップの外国投資先であり続けることを目指し、特にハイエンドなテクノロジーの生産能力を高めるのに役立つ外国投資を歓迎する一方で、欧州半導体法を通じて我々は欧州の供給保証を保つために適切な条件を整えます」。

「米国は現在、特定の研究センターに資金を提供し、高度な生産工場を開所するのをサポートするための米国半導体法のもとで巨額の投資を議論しています。目的は明確で、米国の半導体サプライチェーンのレジリエンスを強化することです」と同氏は付け加えた。

「台湾は半導体製造における優位性を確保するという立場です。中国もまた、技術移転を回避するための輸出規制によって制約を受けている中で、テクノロジーギャップを埋めようとしています。欧州は遅れを取ることはできず、またそのつもりもありません」。

9月15日に発表された文書に加えて、半導体法はフォン・デア・ライエン氏率いる欧州委員会がすでに提示している他のデジタル面での取り組みをベースとする、とEUは述べた。その取り組みとは、インターネット大企業「監視」の力を持つようにし、プラットフォームの説明責任を増やすこと(デジタルマーケット法とデジタルサービス法)、ハイリスクのAI応用を規制すること(人工知能法)、オンラインの誤情報を取り締まること(行動規範の強化を通じて)、地域のデジタルインフラとスキルへの投資を増やすことなどだ。

関連記事:欧州がリスクベースのAI規制を提案、AIに対する信頼と理解の醸成を目指す

画像クレジット:Torsak Thammachote / Shutterstock

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

Twitchがボットを使ったハラスメントでユーザー2人を提訴

Twitch(ツイッチ)は米国時間9月6日の週に、同社のプラットフォーム上で自動化されたヘイト・ハラスメントキャンペーンを展開していたとして、2人の人物を提訴した。

往々にして黒人とLGBTQのストリーマーをターゲットにしているハラスメントはTwitchでは「ヘイトレイド」という独特の現象として現れる。Twitchではクリエイターは自身のストリームでオーディエンスを楽しませた後に他のフレンドリーなアカウントへとオーディエンスをよく誘導する。これは「レイド」として知られている慣行だ。ヘイトレイドはこの図式が逆向きになっているもので、嫌がらせの流入を阻止するために自由に使える十分なツールを持っているストリーマーを悩ませるためにボットを送り込む。

ヘイトレイドはTwitchの新しいタグ付けシステムを活用している。このシステムは簡単にコミュニティを構築したり、共感を呼ぶコンテンツを発見できるよう、多くのトランスジェンダーが要望してきたものだ。5月にTwitchは視聴者がストリームを「ジェンダー、性的指向、人種、国籍、能力、メタルヘルスなど」で区分けできるよう、350以上の新しいタグを加えた。嫌がらせを拡散しているアカウントは現在、人種的・性的差別、トランスジェンダーや同性愛に対する差別をストリーマーに送るためにそれらのタグを使っていて、明らかにクリエイターを支援するためのツールの不幸な誤った使用例だ。

訴状でTwitchはヘイトレイドを行う人のことを、プラットフォームの利用規約を回避する新しい方法を行き当たりばったりで試す「かなり強く動機付けられている」悪意ある個人、と表現した。同社は訴状でユーザー2人の名前「CruzzControl」と「CreatineOverdose」を挙げたが、本名を入手することはできなかった。このユーザー2人はオランダとオーストリアを拠点としていて、8月から行為は始まった。CruzzControlだけでヘイトレイドに関わっている3000ものボットアカウントにつながっていた、とTwitchは主張する。

Twitchが最近のハラスメントキャンペーンを影で操る個人の身元を特定することはできないかもしれない一方で、訴訟はTwitchで嫌がらせを送りつけている他のアカウントに対する抑止力となるかもしれない。

「我々はここ数週間で何千というアカウントを特定して禁止措置にしてきましたが、こうした悪意ある人たちは引き続き、当社の改善を回避するためのクリエイティブな方法に懸命に取り組んでいて、やめる気配はみられません」と訴状にはある。「この提訴がこうした攻撃と、他のユーザーを食い物にするツールの背後にいる個人の身元を明るみ出し、当社のコミュニティのメンバーに対する卑劣な攻撃に終止符を打つことにつながることを望みます」。

「この提訴は標的型攻撃を解決するために取られる唯一のアクションでは決してなく、また今回が最後になるわけでもありません」とTwitchの広報担当はTechCrunchに語った。「先回りした感知システムをアップデートしつつ出てくる新しい動きを解決し、また開発に何カ月も費やしてきた先回りの新しいチャンネルレベルの安全ツールを仕上げるために、当社のチームは休むことなく懸命に取り組んできました」。

Twitchの提訴に先立ち、一部のTwitchクリエイターはヘイトレイドの標的となったユーザーのためにソリューションを示さなかったと同社に抗議するために#ADayOffTwitchを組織した。この抗議に参加している人々は、ヘイトレイドからのストリーマー保護のために、クリエイターが流入してくるレイドを拒否したり、新しく作られたアカウントでのチャット参加者をスクリーンから追いしたりできるようにするなど、Twitchに決定的な措置を取ることを要求していた。抗議参加者はまた、1つの電子メールアドレスにリンクできるアカウントの数に制限を設けていないTwitchの規則にも注目した。これは抜け穴となっていて、簡単にボットアカウント軍団をつくって展開できる。

関連記事:動画配信サービスTwitchがプラットフォーム外でのユーザーの悪質な行為にルール適用へ

画像クレジット:Gabby Jones/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラはテキサス州の中絶禁止法に対して声を上げるべきだ

9月第1週目の週末、ある読者が編集部に宛てて、テキサス州が先週可決した中絶禁止法について、なぜテック企業が声を上げるべきなのかを礼儀正しく尋ねてきた。

この読者は「アメリカン航空が中絶と何の関係があるのか」と述べ、企業が中絶賛成派と中絶反対派の両方に対応することは不可能であり、自分たちのビジネスとは無関係な問題に立ち向かうことを求めれば、米国の政治化を助長するだけだとの見方を示した。

この見方は広く受け入れられている。米司法省は米国時間9月10日、この法律に異議を唱える決定を下し、Merrick Garland(メリック・ガーランド)司法長官が「明らかに違憲である」と表現したことは、その見方を補強するものだ。結局のところ、ローンスター・ステート(テキサス州)で起こったことに反発すべきなのは、企業ではなく議員なのではないか、ということだ。

だが、テック企業、特にTesla(テスラ)が陰から現れ、この法律を打破すべき理由は他にもある。

妊娠中絶の制限が雇用側の医療費増加につながることは事実だが、テキサス州の法律がテック企業に特に大きな影響を与えるとすれば、雇用へのインパクトだ。社会的企業であるRhia Venturesの調査によると、女性の60%が、中絶へのアクセス制限を試みる州で職につくことを躊躇すると答えている。男性は、かろうじて過半数が同じ回答だった。

テキサス州の中絶禁止法はまた、テック企業に警鐘を鳴らす超法規的な執行メカニズムを生み出す。新法は、中絶手術を行った人だけでなく、故意か否かを問わず、女性が中絶をするのを手助けした人を、その中絶と直接の関わりをもつかどうかにかかわらず、私人が訴えることができる。さらに、原告が勝訴した場合、多額の金銭的な見返りを得る。各被告は1万ドル(約1億1000万円)に加え、関連費用や原告の弁護士報酬を負担することになる。

この判例が、消費者のプライバシーなど、テック企業が関わる問題に適用された場合を想像して欲しい。ヒューストン大学法律センターのSeth Chandler(セス・チャンドラー)教授は、米ABCニュースで今週次のように話した。「SB8(中絶禁止法)が開発したレシピは、妊娠中絶に限られるものではありません。人々が好まないあらゆる憲法上の権利に利用することができるのです」。

テック企業は、テキサス州の妊娠中絶の議論に横槍を入れることは、政治的には電線に触れるのと同じことだと主張するかもしれないし、その見方に共感するのは簡単だ。Pew Research(ピューリサーチ)によると、米国の約10人に6人が「すべての場合、またはほとんどの場合、中絶は合法であるべきだ」と答えているそうだが、どちらの側も感情が高まっている。

それでも、企業はこれまでも物議を醸すような問題に対し、自社の価値観を守るために安全を確保しつつも立ち上がってきたし、企業の圧力が有効であることも示してきた。2016年には、Apple(アップル)やCisco(シスコ)、そしてアメリカン航空を含む約70社の大手企業が、トランスジェンダーの人々が自分の性自認に合った公共トイレの使用を禁止するノースカロライナ州の法律を阻止する法的活動に参加した。この法律は「不当な差別」を容認するものであり、企業の多様な労働力を確保する能力を損なうと主張したのだ。厳しい経済的影響に直面し、2017年までにこの禁止法案は撤回された

Lyft(リフト)、Uber(ウーバー)、Yelp、(イェルプ)Bumble(バンブル)などのひと握りのCEOらは、すでにテキサス州の新法に反対する、公的にはっきりとした立場をとっている。一方、Salesforce(セールスフォース)は9月10日、Slackメッセージで従業員に、もし自分自身やその家族が今、リプロダクティブ・ケア(妊娠・出産・避妊などに関するケア)にアクセスできるかどうかを心配しているのであれば、会社は引っ越しを支援すると伝えた。

Teslaのような企業は、同州の政治にさらに大きな影響を与える可能性がある。Elon Musk(イーロン・マスク)氏による同州への移転は、当地のテックシーンにおける関心に火をつけた。テキサス州のGreg Abbott(グレッグ・アボット)知事は、マスク氏の影響力を強く認識しており、新法が成立した翌日には、マスク氏が同州の「社会政策」を支持していると述べた。

スターベースと呼ばれる新都市を建設する計画や、Tesraが地域の電力会社になる計画など、テキサス州で多くの金銭的な利害関係があるマスク氏は、これまでのところ、この法律についての見解を明らかにしていない。この問題について聞かれ「一般的に、政府は国民に自分の意志を押し付けることはまずすべきではなく、そうする場合には国民の累積的な幸福を最大化することを目指すべきだと考えています」と答えた。また「政治には関わりたくない」とも述べた。

その考えは間違っている可能性がある。フロリダ州やサウスダコタ州など、少なくとも7州の議員や幹部が、テキサス州の新法をクローズアップして検討しており、同様の法令を検討していると述べているからだ。

2019年5月には、Twitter(ツイッター)のJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏やBloomberg(ブルームバーグ)のPeter Grauer(ピーター・グラウアー)氏を含む200人近くのCEOが、中絶禁止はビジネスに悪影響を及ぼすと宣言するニューヨーク・タイムズ紙の全面広告に署名した。広告には「中絶を含む包括的なリプロダクティブ・ケアへのアクセスを制限することは、従業員や顧客の健康、自立、経済的安定を脅かす」とある。

もしマスク氏が、政府は「国民に自分の意思を押し付けることはない」と本当に信じているのなら、連邦政府が長期にわたる苦しい戦いをしている間に、テキサス州でも公の場に立つべきだ。そうすることで同氏が失うものはほとんどなく、得るものは大きい。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフトが米国内オフィス再開の無期限延期を発表、リモートワークやハイブリッドワークの可能性と課題を提示

マイクロソフトが米国内オフィス再開を無期限延期と発表、リモートワークやハイブリッドワークの可能性と課題を提示

Stephen Brashear via Getty Images

米Microsoftは9月9日(現地時間)、従業員の米国内オフィスへの出社再開を無期限に延期すると発表しました。もともとは10月4日からの再開を予定していましたが、感染力の強いデルタ株の出現など、新型コロナウイルスの不確実性が増しているため、新しい日付は設定せず、公衆衛生上の指針に基づき安全に再開できるようになった時点で再開するとのこと。

再開を決定した際は、30日間の移行期間を設け、従業員が準備できるようにするとともに、データを確認しつつ、引き続き機敏で柔軟な対応ができるようするとしています。The New York Timesによると、米Microsoftはすべての従業員、ベンダー、ゲストがオフィスに入る際には、ワクチン接種証明書の提示が必要になります。

Microsoftによると、今年は世界中でMicrosoft社員16万人が自宅で仕事をし、2万5000人の新入社員がリモートで入社しましたが、Microsoftに仲間がいると感じるとアンケートに答えた人は過去最高の90%を記録。一緒にいると感じるために、物理的に一緒にいる必要はないことを示していると、リモートワークやハイブリッドワークの可能性を感じている様子。ただし、この前向きな傾向が継続するという保証はないともしています。従業員アンケートによると、ワークライフバランスやチームのつながりに対する満足度は、引き続き課題となっているとのことです。

なお、オフィス再開を延期したのはMicrosoftだけではなく、GoogleAmazonは2022年1月まで延期、Twitterは再開時期を未定としています。

(Source:MicrosoftEngadget日本版より転載)

渋谷区がKDDIと連携しデジタルデバイド解消目的に65歳以上の高齢者1700人にスマホ無償付与、通信料も負担

渋谷区がKDDIと連携しデジタルデバイド解消目的に65歳以上の高齢者1700人にスマホ無償付与、通信料も負担

東京都渋谷区は、コロナ禍による新しい生活様式や防災対策における高齢者のデジタルデバイド(情報格差)解消を目的に、65歳以上でスマートフォンを保有していない約1700人を対象にスマートフォンを無料配布する実証実験を開始しました。

この実験では、KDDIのスマートフォン(Galaxy A21)を、公募した高齢者約1700人に2年間無償で貸与します。その際の通信料も区が負担します。

あわせて、高齢者がスマートフォンをスムーズに使いこなせるように勉強会を適宜開催します。また、参加者専用のコールセンターを設け、遠隔操作でのサポートも実施します。

加えて、アプリの利用ログや勉強会でのアンケート情報を収集し、スマートフォンの利用状況を個人を特定できない形で可視化することで、高齢者のスマートフォン利用の活性化に関する課題を収集します。

渋谷区によると、区内の高齢者約4万3000人のうち、約25%はスマートフォンを保有してらず、渋谷区が実施しているLINEでの情報発信や防災アプリを用いたデジタルサービスの提供が十分に活用できていない状況だといいます。こうした「情報格差」の解消に本実証実験を役立てる狙いがあります。

(Source:KDDIEngadget日本版より転載)

【コラム】アクセシビリティを最初からスタートアップのプロダクトと文化の一部にする

アクセシビリティの世界は転換点を迎えている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で、あらゆる能力・特性の人々がタスクやショッピングをオンラインでするようになったからだ。

この1年間、企業が顧客とつながることのできる場所はデジタルの世界だけだった。Forresterの調査によれば、8割の企業がデジタルのアクセシビリティへの第一歩を踏み出している。

こうした変化が進む背景には、デジタルでのやりとりが増えていること以外に何があるのだろうか。Fortune 500の企業は、障がいのある人が世界の市場に10億人いることをついに認識し始めている。調査会社Return on Disabilityの「The Global Economics of Disability」によると、障がいのある人とその家族の可処分所得は13兆ドル(約1427兆4000億円)を超えるという。

ただしForresterの調査対象の企業のうち、アクセシブルなデジタルエクスペリエンスを構築することに完全にコミットしているのはわずか36%だ。

デジタルのアクセシビリティは何十年も前からあるが、企業は最近までその利点をとらえていなかった。最新の調査では、WebAIM Millionが100万のホームページを分析したところ、評価したウェブサイトの97.4%にアクセシビリティのエラーが見つかった。

このことはスタートアップを手がけるあなたにとってどんな意味があるだろうか?なぜあなたはこのことに関心を持つべきなのだろうか?それは、あなたの会社が競合よりも先行しアーリーアダプターであることの報酬を得るチャンスだからだ。

デジタルのアクセシビリティにはどんな利点があるか

正しく行動することからさらに先へ進んでアクセシブルなプロダクトや資産を作ることの利点に、企業は気づきつつある。まず、人々の寿命が伸びている。世界保健機関(WHO)によると、60歳以上の人口は5歳未満の子どもの人口を上回っている。しかも世界の60歳以上の人口は、2015年の9億人から2050年には20億人に達すると予測されている。

W3C Web Accessibility Initiativeでは高齢者向けのウェブアクセシビリティについて概要を示し、以下のように紹介している。

  • 61〜80歳の47%に聴覚の問題が発生する
  • 65〜74歳の16%は視覚が低下する
  • 70歳以上の20%に軽度な認知機能障害が発生する
  • 65歳以上の50%以上に関節炎が発生する

つまり、アクセシブルなデジタルプロダクトを作れば、ずっと幅広い対象者にリーチできる。対象者にはあなた自身や同僚、家族もいずれ含まれるだろう。誰もが生活のある時点において、状況によって、あるいは一時的だったり散発的に、機能が低下する状態になる。暗いところやうるさい場所へ行けば見たり聞いたりしづらくなる。ケガや病気で一時的にインターネットの使い方が変わることもある。関節炎、偏頭痛、めまいで痛みや不快感を感じ、デジタルデバイスやアプリ、ツールを操作する能力に影響することもある。

しかも、より多くの人に適したアクセシブルなプロダクトやウェブサイトを作ることを否定する人はいない。それにもかかわらず、アクセシビリティを備えることが原則であるという比較的普遍性のある発言をしても、簡単にそのニーズを説明し組織の大きな変革に周囲を巻き込めるわけではない。こうした変革が必要な理由とその進め方について、周囲の人々の認識を高め教育をするためにすべきことはたくさんある。

あなたには変革する理由がある。あなたの会社を変え、アクセシビリティを事業の重要な部分として統合するのに役立つヒントを5つお伝えしよう。

1. アクセシブルなエクスペリエンスの構築に適した人に参加してもらう

毎年発行される「State of Accessibility Report」の2回目のレポートによると、Alexa Top 100のウェブサイトのうち完全にアクセシブルなのものはわずか40%だ。ウェブエクスペリエンスを構築する際に、障がいのある人のニーズはしばしば見過ごされている。

設計する際に、障がいのある人はあなたのプロダクトやウェブ資産をどう使うかを理解することが重要だ。障がいのある人が目的の結果を得るにはどういうツールがあればいいのかも知りたいはずだ。これらは、適任者に参加してもらうことから始まる。

アクセシビリティの専門家に依頼して開発チームに助言をしてもらうことで、早い段階で潜在的な問題を特定し、デザインのアクセシビリティを最初から考慮し、より良いプロダクトを作ることができる。さらに障がい者を雇用すればプロダクトについてより深く理解できる。

2. アクセシビリティに情熱を持つデザイナーを雇用する

チームに助言や指導をするアクセシビリティの専門家に依頼するのは、スタートとしては良い。しかしアクセシビリティに熱心でない人がチームにいると、それが妨げとなってしまう恐れがある。新しく雇うデザイナーと面接をする際に、アクセシビリティについて質問してみよう。そうすればアクセシビリティに関する候補者の知識と情熱を測ることができるだろう。同時に、あなたの会社ではアクセシビリティを重視していると期待値を設定する。

採用の段階で検討し、新たに雇用した人がアクセシビリティとインクルージョンの文化に貢献できるようにすれば、大きな頭痛の種を減らせる。アクセシビリティは設計とUXの段階から始まる。チームがその段階で導入していなければ後から修正する必要があり、どうしてもプロジェクトは遅れて企業としてはコストを要する。最初からアクセシブルに作るよりも、後から修正する方がコストがかかる。

3. すべての人のためのアクセシビリティであることを忘れない

アクセシビリティに投資するかどうかを決める人は、どれぐらいの人がこの機能を使うのだろうかと考えがちだ。こうした疑問が出てくるのは、ビジネスの観点からすれば理解できる。アクセシビリティにはお金がかかることがあり、お金の使い方に責任を持ちたいと考えるのは当然のことだ。

しかしこの疑問はアクセシビリティにおける最大の誤解に基づいている。その誤解とは、アクセシビリティは視覚や聴覚に障がいがある人にのみメリットがあるというものだ。このように思われていることには、本当にがっかりする。障がいのある人の数をあまりにも過小評価しているし、社会における障がい者のあり方を最小化しているからだ。しかもアクセシビリティ機能は障がいがない人にとっても大いにメリットがあることが見落とされている。

障がいの程度はさまざまで、私たち誰もが遅かれ早かれ何らかの障がいを自覚する。ケガをして一時的に動きが制限され、銀行の用事や買い物といった基本的なタスクがオンラインでしかできないこともあるだろう。年齢とともに視覚や聴覚も変化し、オンラインを使う能力に影響を及ぼす。

アクセシビリティとはできるだけ多くの人を対象とする設計だということを理解すれば、投資する価値があるかどうかに関する議論の枠組みを変えることができる。このアプローチは明確なメッセージの発信となる。急速に増える母集団を無視する余裕のある企業はない、というメッセージだ。

こんなふうに考えてみよう。エレベーターか階段のどちらかを使うとしたら、あなたはどちらを使うだろうか。多くの人がエレベーターを使う。交差点では歩道のへりから車道にかけてスロープになっていて「カーブカット」と呼ばれている。あのスロープはもともと、車椅子で交差点を横断できるように作られたものだ。

しかし多くの人がこのスロープを使っている。ベビーカーを押す保護者、スーツケースを転がす旅行者、スケートボーダー、台車で荷物を運ぶ人。もともとアクセシビリティのために設計されたものが、当初のターゲットよりもずっと幅広い人たちの役に立っている。これがカーブカット効果だ。

4. デフォルトでアクセシブルな開発をしているエージェンシーを選ぶ

小規模のチームだったり社内でアクセシビリティの実践を拡大したりしている場合でも、エージェンシーの協力を求めるとアクセシビリティの実践を効果的に取り入れられることがある。連携を成功させるための秘訣は、アクセシビリティの実践に向けてあなたのチームの成長を支援するエージェンシーを選ぶことだ。

適切なエージェンシーを見つけるには、デフォルトでアクセシブルな開発をしているところを選ぶことが重要だ。あなたの会社の価値観を共有するエージェンシーと連携すれば、アクセシビリティを向上させるミッションにおける信頼できるパートナーとなる。当てずっぽうで進めたり、やり直したりすることもなくなる。障がいのあるユーザーのエクスペリエンスの成否を左右する細部を見落としてしまうデザイナーが多いので、こうした連携には大きな意味がある。

アクセシブルなエクスペリエンスの提供を得意とするエージェンシーと連携すれば、気づかずに放置してしまうエラーの減少につながり、オーディエンス全体に対して優れたエクスペリエンスを提供していると自信を持てる。

5. サプライチェーンにアクセシビリティを統合する

大企業や大きな組織では多くのステークホルダーが関わることがよくある。ベンダーからエージェンシー、フリーランス、社内スタッフなど、現在のビジネスは広範囲にわたり共同作業が多いものだ。このことはアイデアを交換する上では有用だが、関係者が多いためアクセシビリティは見失われがちになってしまう。

見失われてしまうことを避けるには、ビジネスの全段階でアクセシビリティに注目するサプライチェーンとして関係者の意識を合わせることが重要だ。全員が十分に関与すれば、アクセシブルでなく将来的に問題を引き起こしてしまうコンポーネントのリスクを避けられる。

スタートアップの強み

繰り返し発生する大きな課題は、現状を変える難しさだ。アクセシブルでないプロセスやプロダクトがいったん発生して組織の文化に根づいてしまうと、意味のある変化を起こすのは難しい。変化させたいと全員が思っているとしても、それまでのビジネスのやり方を変えるのは決して簡単ではない。

スタートアップの強みはここだ。スタートアップはアクセシブルでない荷物を長年背負っているわけではない。スタートアップのプロダクトにアクセシブルでないコードは書かれていない。アクセシブルでないことは、企業の文化に織り込まれていない。いろいろな意味でスタートアップは白紙であり、既存の同業者が試行してきたことから学ぶ必要がある。

スタートアップの創業者には、アクセシブルな組織をゼロから作るチャンスがある。アクセシビリティへの情熱を持ち、プロダクトやウェブ資産のためにアクセシブルなコードを書き、アクセシビリティを取り入れている外部企業のみをパートナーとして選び、障がいのある人々の権利を支持する、そのような多様な人材を雇用することにより、今から10年、20年、30年後まで変える必要のないアクセシブルファーストの文化を作ることができる。

ここまで述べてきた考えには共通点がある。それは文化だ。テック業界にいる多くの人が、アクセシビリティは仕事の根拠として重要で価値があると同意するだろうが、認識に大きな問題がある。

アクセシビリティは、要件から始まりマーケティングやセールスといったテック以外のチームまで、ソフトウェア開発のどの部分においても必要だ。サイロ化されたチームが扱うニッチな事柄では決してない。もし業界や社会がアクセシビリティは「全員の」仕事であると認識すれば、我々は疑問の余地なくアクセシビリティを優先する文化を作っていくだろう。

こうした文化を作れば「これをアクセシブルにする必要があるだろうか?」とは考えなくなる。そうではなく「どうすればこれをアクセシブルにできるだろう?」と考えるはずだ。これは障がいのある10億人の人々、そして今後障がい者となったり、オンラインやデジタルプロダクトを使う能力に影響を及ぼすような一時的あるいは散発的、状況的に不便な場面に置かれる人々の生活を明らかに変える、考え方の大きな転換だ。

アクセシビリティの支持は困難な闘いのように思えることがあるかもしれないが、難しいことではない。最も必要なのは教育と認識だ。

アクセシブルなプロダクトを誰のために作るか、その人たちにはなぜそのプロダクトが必要かを理解すれば、あなたの会社のどの部署の人たちからも受け入れられやすくなる。このような文化を作ることが、アクセシビリティへの長い探究の旅の第一歩だ。そして幸いなことに、ここから先はもっと楽になる。

編集部注:本記事の筆者のJoe Devon(ジョー・デボン)氏は、アクセシブルなエクスペリエンスを構築するデジタルエージェンシー「Diamond」の共同創業者。GAAD(Global Accessibility Awareness Day)の創設者の1人で、GAAD Foundationの代表を務める。

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(文:Joe Devon、翻訳:Kaori Koyama)

フェイスブックが顔認識AIの有色人種バイアス問題で謝罪、黒人が登場する動画に「霊長類」とタグ付け

フェイスブックが顔認識AIの有色人種バイアス問題で謝罪、黒人が登場する動画に「霊長類」とタグ付け

Sundry Photography via Getty Images

FacebookのAIが、黒人男性が映っている動画に「霊長類」とラベル付けし、ユーザーに「さらに霊長類の動画を視聴しますか?」といった内容の定型メッセージを表示していたことがことがNew York Timesによって報道されています。Daily Mailが6月に投稿したこの動画には、警察官を含む白人が黒人男性と向き合って話しているという構図でしたが、霊長類(動物分類学上での霊長目)はそこには映っては居ません。

FacebookはすぐにAIによる投稿推薦機能をすべて無効にし、New York TimesにはAIの行動を「受け入れがたいエラー」と表現する謝罪の声明を出しました。「当社はAIを改善してきましたが、いまだ完璧ではない」としついつ、当面はこの機能を停止し「このようなことが二度と起こらないようにする」ため「さらに進歩させる」ための方法を研究する必要があるとしました。そして「このような不快なリコメンドをご覧になった方にお詫び申し上げます」と述べました。

AIによる顔認識は、しばしば有色人種においてその認識精度が低くなることが伝えられています。2015年にはGoogleのAIが黒人の写真の認識において「ゴリラが写っている」と答えを返し、Googleは後に謝罪しました。

米国では4月、米連邦取引委員会(FTC)が人種や性別の認識精度に偏りのあるAIツールがクレジットカードや雇用、住居ローン審査などに関する意思決定に使われれば、それは費者保護法に違反する可能性があると警告しています。

(Source:New York TimesEngadget日本版より転載)

マサチューセッツ州司法長官がUber、Lyftらが支持するギグワーカー法案にゴーサイン

マサチューセッツ州のMaura Healey(マウラ・ヒーリー)司法長官は、Uber(ウーバー)、Lyft(リフト)らが率いるアプリ利用サービス提供者の連合が、ドライバーを従業員ではなく個人事業主として分類する投票法案を提出するために必要な署名活動を開始することを了承した。

マサチューセッツ州版Proposition 22ともいうべき法案の支持者らは、2022年11月の投票に法案を提出するために万単位の署名を集める必要がある。ヒーリー氏は2020年、ドライバーは個人事業主であり、病気休暇や時間外手当、最低賃金などの対象にならないとするUberとLyftの主張に異を唱える訴訟を提起したにもかかわらず、米国時間9月1日、司法長官として同法案が憲法の要求を満たしていることを認定した。

このニュースの2週間ほど前、最高裁判所は2020年に採択されたカリフォルニア州のProposion 22を違憲とする裁定を下した。労働組合が支持しているCoalition to Protect Workers’ Rights(労働者の権利保護連盟)は、同じ理由で同法案に反対する訴訟を検討しているとReuters(ロイター)に伝えた。

関連記事:ギグワーカーを非従業員とするカリフォルニアの条例Prop 22を高裁が憲法違反と判決

Uber、Lyft,DoorDash(ドアダッシュ)、Instacart(インスタカート)らが所属する団体、Massachusetts Coalition for Independent Work(マサチューセッツ州独立労働連合)は、2021年8月この住民投票を申請した。Uber CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏はこれを「正しい行動」であると主張している。この提案では、2023年にドライバーの最低時給を18ドル(チップを含まない)とし、週15時間以上働いた人には健康保険を提供する。さらにドライバーは車両の維持と燃料のために1マイル当たり26セント(約29円)以上の経費が保証される。

連合は12月1日までに有権者から8万239名分の署名を集める必要がある。期日に間に合わなかった場合は、2022年7月6日までにさらに1万3374名の署名を集めることができる。

関連記事:ギグカンパニーが労働者の身分をめぐりマサチューセッツ州でも住民投票を画策
画像クレジット:Al Seib / Los Angeles Times / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

マップ型リアルタイム空き情報配信サービス「VACAN Maps」が導入避難所数1万件達成、災害時の混雑状況を可視化

マップ型リアルタイム空き情報配信サービス「VACAN Maps」が導入避難所数1万件達成、災害時の混雑状況を可視化

AIとIoTを活用してあらゆる空き情報を配信するスタートアップ「バカン」は9月2日、マップ型リアルタイム空き情報配信サービス「VACAN Maps」(バカン マップス)において、2021年8月に国内人口15%をカバーするとともに(「導入自治体の人口合計÷国内の総人口」で算出)、全国で170超の自治体への導入を達成したと発表した。これにより、災害時には1万件以上の避難所の混雑情報をリアルタイムに可視化可能となった。

現在コロナ禍により、感染拡大防止のため人と人との間に距離を確保する社会的距離(ソーシャルディスタンス)や密の回避などが求められている。これら感染対策は災害時に開設される避難所も例外ではなく、距離の確保や体調不良者のゾーニングなどが重要となる。

一方で、そうした状況下では各避難所の収容可能人数が従来と比べ少なくなる可能性があり、一部の避難所に人が集中することを避け、分散して避難をすることが必要になる。

この課題を解決するため、多くの自治体において、マップ上で各種施設の空き・混雑状況を一覧表示できるVACAN Mapsの避難所への活用が進んでいるという。2020年8月の東京都多摩市導入以降、11カ月で1万件、170超の自治体が導入しており、2021年内には導入先が200自治体に増える見通しとしている。マップ型リアルタイム空き情報配信サービス「VACAN Maps」が導入避難所数1万件達成、災害時の混雑状況を可視化

VACAN Mapsでは、PCやスマートフォンなどでアクセスすることで、アプリなどをダウンロードすることなく各避難所の位置や混み具合を確認できるようになっており、ユーザー情報の登録なども必要ない。地図上のアイコンと表示される文言から、「空いています(青)」「やや混雑(黄色)」「混雑(赤)」「満(赤)」の4段階で避難所の混み具合を確認できる。マップ型リアルタイム空き情報配信サービス「VACAN Maps」が導入避難所数1万件達成、災害時の混雑状況を可視化

ヤフーが当日キャンセルによる余剰ワクチン情報をLINEで通知するサービスを東京の医療機関に導入開始

ヤフーが当日キャンセルによる余剰ワクチン情報をLINEで通知するサービスを東京の医療機関に導入開始

ヤフーは9月2日から「ワクチン接種キャンセル枠お知らせサービス」を東京都内6つの医療機関で導入開始しました。

ヤフーが当日キャンセルによる余剰ワクチン情報をLINEで通知するサービスを東京の医療機関に導入開始これは当日キャンセルによる余剰ワクチン情報を、LINEで通知するサービスです(サービスの対象年齢は18歳以上)。利用方法は、下記のとおりです。

LINE機能での登録の手順

  1. ヤフーが当日キャンセルによる余剰ワクチン情報をLINEで通知するサービスを東京の医療機関に導入開始

  1. サービスページに記載されているLINEのQRコードから、「ワクチン接種キャンセル枠お知らせサービス」の友達追加します。
  2. 「キャンセル枠情報部分」をタップし、LINEでログインし、「生月日」と「接種希望地域」の登録をします。最新の対象接種会場は「会場一覧」から確認可能です。

通知受信から予約完了までの手順

  1. ヤフーが当日キャンセルによる余剰ワクチン情報をLINEで通知するサービスを東京の医療機関に導入開始

  1. LINEでログインし、「キャンセル枠情報」をタップ。
  2. 当日のキャンセル枠がある場合のみ、空き情報が記載され、画面上で詳細事項を確認し「予約する」ボタンをタップする。
  3. 日時と会場、受付終了時間、ワクチンメーカーなどの詳細を確認し、「予約する」ボタンをタップすると、予約が完了。
  4. LINEで「予約完了」のお知らせが送付され、会場で「接種予約確認」画面を見せると接種可能。

現在、ワクチン接種のキャンセルなどによるワクチン廃棄が課題となっています。厚生労働省によると、新型コロナウイルス感染症に係る予防接種における職域接種のワクチン廃棄は、7月末時点で全国48会場において総廃棄数量8090回分であると発表されました。

このサービスでは、当日キャンセルされたワクチンの有効活用を目的に7月20日より提供を開始し、これまでに港区乃木坂会場、仙台会場、札幌会場で先行導入された結果、廃棄されるはずだったワクチンの有効活用が実現しました。この度、港区虎ノ門、港区六本木、港区赤坂、渋谷区東、新宿区西新宿、台東区上野にある6つの医療機関でも導入され合計9会場での対応が可能になりました。

ヤフーは引き続き、やむを得ず当日キャンセルされたワクチンをワクチン接種を希望している方々に活用してもらうべく、同サービスの提供会場を順次拡大していく予定とのことです。

(Source:ワクチン接種キャンセル枠お知らせサービスEngadget日本版より転載)

アップルが「デジタル免許証」をサポートする最初の2州を確保するも、プライバシーに関する疑問は残る

人々のお財布をデジタル化するというApple(アップル)の計画は、徐々に形になってきている。最初は飛行機の搭乗券や会場のチケットだったものが、後にクレジットカード地下鉄の乗車券学生証などに広がった。同社が次にデジタル化することを目指しているのは運転免許証や州発行の身分証明書で、年内に予定されているiOS 15のアップデートでサポートする予定だ。

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しかし、そのためには州政府の協力が必要だ。というのも、米国で運転免許証やその他の身分証明書を発行しているのは州政府であり、州ごとに身分証明書の発行方法は異なるからだ。Appleは米国時間9月1日、デジタル運転免許証や州発行の身分証明書を導入するために、これまでにアリゾナ州とジョージア州の2つの州との提携を確保したと発表した。

コネチカット州、アイオワ州、ケンタッキー州、メリーランド州、オクラホマ州、ユタ州がこれに続く見込みだが、展開のスケジュールは明かされていない。

Appleは2021年6月に、デジタル免許証とデジタルIDのサポートを開始すると発表した。また、米国内を飛行機で移動する際に必要なのは州発行のIDのみであることから、運輸保安局(TSA)はいくつかの空港でiPhoneからのデジタル免許証の受付を開始する最初の機関となる、とも述べた。TSAのチェックポイントでは、デジタルウォレットをIDリーダーにタップして提示することができるようになる。Appleによれば、この機能は安全で、携帯電話を係員に渡したりロックを解除する必要はないという。

デジタル免許証とIDのデータはiPhoneに保存されるが、運転免許証は参加州による照合が必要だ。何百万人ものドライバーや旅行者をサポートしつつ、偽IDの混入を防ぐためには、それが大規模かつ迅速に行われなければならない。

免許証や身分証明書のデジタル化の目的は、特定の問題を解決することではなく、利便性だ。しかし、この動きはプライバシー専門家からは信頼を得られていない。彼らは、Appleがこの技術をどのように構築し、それにより最終的に何を得るのかについて、透明性に欠けていると嘆いている。

Appleは、デジタルID技術がどのように機能するのか、また、iPhoneにデジタル免許証を登録するプロセスの一環として州政府がどのようなデータを取得するのかについて、まだ多くを語っていない。また、同社は自撮り写真を撮影してユーザーを認証するという、未発表の新しいセキュリティ認証機能にも取り組んでいるが、これは他人が勝手に免許証を使用するのを防ぐためらしい。これらのシステムに本質的な問題や欠陥があるというわけではないが、Appleが今後答えるべき、プライバシーに関する疑問が多くある。

しかし、米国内のデジタル免許証やIDの断片的な状況は、Appleの参入をもってしても、一夜にして見通しが良くなるということはないだろう。MuckRockによる最近の公文書開示請求では、Appleは2019年の時点で、カリフォルニア州やイリノイ州を含むいくつかの州とiPhoneにデジタル免許証やIDを導入することについて接触していたことがわかったが、現在はどちらの州もAppleから発表されていない。

ウィスコンシン州サウスカロライナ州ロードアイランド州は、WWDCで発表されたまさにその日にAppleのデジタル免許証計画を知ったため、導入はさらに遅れると思われる。

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画像クレジット:Apple / supplied

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato

中国政府が推奨アルゴリズムの厳格な管理を提案、アリババとテンセントの株価わずかに下落

中国は、世界最大の人口を擁する市場である同国において、地元のインターネットサービスが持つ影響力にさらに歯止めをかけようとしている。ここ数カ月の間に拡大した一連の規制強化に続き、同国は中国時間8月27日、企業がユーザーにレコメンデーションを提示するために実行するアルゴリズムを規制するガイドライン案を発表した。

中国サイバースペース管理局(CAC)は、27日に発表した30項目のガイドライン案の中で、企業が「中毒や大量消費を助長する」アルゴリズムを展開し、国家安全保障を危険にさらしたり、公共秩序を乱したりすることを禁止することを提案している。

習近平国家主席が議長を務める中央指導部に直属するインターネット監視当局のガイドラインによると、サービス各社はビジネス倫理と公平性の原則を遵守しなければならず、そのアルゴリズムが偽のユーザーアカウントの作成やその他の誤った印象を与えるために使用されてはならないとある。同監視局は、新ガイドラインに対する一般からのフィードバックを1カ月間(9月26日まで)受け付けるとしている。

また、このガイドラインでは、アルゴリズムのレコメンデーションを簡単にオフにできる機能をユーザーに提供することを提案している。世論に影響を与えたり、市民を動員する力を持つアルゴリズム提供者は、CACの承認を得る必要がある。

27日の提案は、同国政府が消費者データの扱い方や国内での独占的な立場を理由に、企業を標的とする傾向がますます強まっている中で行われた。

2021年初め、政府が支援する中国消費者協会は、現地のインターネット企業がユーザーを購入やプロモーションに「追い込み」、プライバシー権を蝕んでいると指摘した。

中国政府による最近のデータセキュリティの取り締まりや家庭教師サービスに対する規制強化は、投資家を不安に陥れ、数千億ドル(数十兆円)の損失につながった。

今回のガイドラインは、ByteDance(バイトダンス)、Alibaba Group(アリババグループ)、Tencent(テンセント)、Didi(ディディ、滴滴出行)など、独自アルゴリズムを基盤としてサービスを構築している企業を対象としているようだ。このニュースを受けて、AlibabaとTencentの株価はわずかに下落した。

近年、米国やインドをはじめとする数カ国の政府が、これらの大手テック企業のアルゴリズムがどのように機能しているかをより明確にし、悪用を防ぐためのチェック体制を整えようと試みてきたが、成果はほとんど上がっていない

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画像クレジット:George / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

グラミン日本・SAPジャパン・MAIAがシングルマザーなど女性対象の就労支援・デジタル人材育成プログラムを提供開始

グラミン日本・SAPジャパン・MAIAがシングルマザーなど女性の就労支援・デジタル人材育成プログラム「でじたる女子」を提供開始

グラミン日本SAPジャパンMAIAは8月25日、生活困窮者への経済的自立支援を目的として、デジタルプラットフォームを活用し雇用機会をマッチングさせる就労支援およびデジタル人材育成のためのプログラム「でじたる女子」を開始した。

コロナ禍において、職を失った非正規雇用労働者は2021年7月時点で5万人を超え2020年12月時点より約35%増加(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」)。その中でもシングルマザーの7割が雇用や収入へのマイナス影響を経験しているという(新型コロナウイルス 深刻化する母子世帯の暮らし―1800人の実態調査・速報)。また、就労機会の減少に伴い、実務を通じたスキルアップやキャリアアップのチャンスが失われつつある。

このような社会的な背景のもと、2021年4月より運用を始めた「ソーシャル・リクルーティング・プラットフォーム「SAP Fieldglass」(エスエーピー・フィールドグラス)を活用し、女性のITスキル向上に特化したMAIAのデジタル人材育成プログラム「でじたる女子」を新たに提供することとなった。

同プログラムは、シングルマザーを含む女性を対象に、MAIAが提供するeラーニングを通じて「RPA」「AI-OCR」「CAD」「デジタルマーケティング」などIT関連スキルの習得機会を提供する。その後、グラミン日本とSAPジャパンが提供するSAP Fieldglassを活用し、対象となる女性と提携企業との雇用機会のマッチングを実施する。グラミン日本は、同プログラムを利用する女性向けに、無担保での少額融資、金融教育を提供する。

グラミン日本・SAPジャパン・MAIAがシングルマザーなど女性の就労支援・デジタル人材育成プログラム「でじたる女子」を提供開始

グラミン日本は、バングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス博士が設立した、貧困層に無担保で小口融資を行うグラミン銀行の日本版として2018年設立。「貧困のない、誰もが活き活きと生きられる社会へ」をビジョンに掲げ、貧困や生活困窮の状態にある方に低利・無担保で少額の融資を行い、こうした方が起業・就労によって貧困や生活困窮から脱却し自立するのを支援するマイクロファイナンス機関となっている。

これまでの金融ではカバーされなかった人、例えば働く意欲はあっても今は生活が苦しい母子家庭や若者に、生活資金ではなく、「起業や就労の準備のためのお金」を融資するとしている。

MAIAは、「人生100年時代に、『自分らしく生きる』未来を、共に創造する」をビジョンに掲げ、RPAなどIT人材教育や女性の働き方改革に尽力。ITツールの専門スキルを持つ女性が、様々なIT導入から開発・運用、最終的には企業内での自走化までをトータルでサポートするという。

地方創生事業では、地産地消モデルとしてDX化の推進を図り、地域における女性の雇用創出、地域企業の生産性向上の実現を目指している。

アップルが2019年からiCloudメールに児童虐待画像が添付されていないかスキャンしていると認める

アップルが2019年からiCloudメールに児童虐待画像が添付されていないかスキャンしていたと認める

Apple

アップルは児童虐待(いわゆる児童ポルノ)対策のためにiCloudにアップロードされる画像をスキャンする方針を発表し、様々な方面から批判を集めています

そんななか、アップルがCSAM(子供を巻き込んだ性的に露骨な活動を描くコンテンツ)を検出するため、2019年からiCloudメールの添付ファイルをスキャンしていることを認めたと伝えられています。その一方で、iCloud画像やiCloudバックアップはスキャンしていないとのことです。

この声明はアップルの不正防止責任者Eric Friedman氏が、自社サービスが「児童ポルノ写真を配布するための最大の温床になっている」と述べる社内メールが発覚した(Epic Gamesとの訴訟で提出された証拠から発掘)件を受けて、米9to5Macが問い合わせたことに対して回答されたものです。すなわちiCloudの写真をスキャンしていないのであれば、どうやって温床になっていると分かったんだ?というわけです。

9to5Macいわく、他にもアップルがiCloudメールのスキャンを行っているらしき手がかりはいくつもあったとのことです。たとえば「子供の安全」ページ(Webアーカイブ)には、「アップルは画像照合技術を使って児童搾取の発見と報告を支援しています。電子メールのスパムフィルターのように、Appleのシステムは電子署名を使って児童搾取の疑いがあるものを見つけ出します」との一節が確認できます。

さらにアップルの最高プライバシー責任者であるJane Horvath氏は、2020年1月に「アップルはスクリーニング(集団をふるいにかけて目的物を探す)技術を使って違法画像を探している」と述べたとの報道もあったとのことです。

これらにつきアップルは、Friedman氏の発言にノーコメントの一方で、iCloud画像をスキャンしたことはないと回答。しかし2019年以降、iCloudメールの送受信をCSAM画像を探すためスキャンしていると確認したとのことです。iCloudメールは暗号化されていないので、アップルのサーバーを通る際に添付ファイルをスキャンするのは容易だと思われます。

さらにアップルは他のデータを限定的にスキャンしていることを示唆しつつ、ごく小さな規模に留まる以外は、具体的なことを教えてくれなかったそうです。ただし「その他のデータ」にはiCloudのバックアップは含まれていないとのことです。

アップルのこうした回答を、9to5Macは責めているわけではありません。逆に上記のFriedman氏による「アップルが児童ポルノの温床」発言は確かなデータに基づいているわけではなく、ただの推論である可能性が出てきたと指摘しています。アップルが毎年CSAMに関して行っている報告は数百件にすぎず、電子メールのスキャンでは大規模な問題の証拠を捉えられていないことを意味している、とのことです。

かたや、Friedman氏の発言全文は「Facebookなどは信頼と安全性(偽アカウント)に注目しています。プライバシーに関しては、彼らは最悪です。私たちの優先順位は逆です。私たちが児童の(ポルノ)写真を配布するための最大の温床になっている理由です」というものです。

つまりFacebookやその他のクラウドサービスはプライバシー保護を棚上げしてまで児童ポルノ写真を取り締まっているが、アップルは逆にプライバシーを厳守しているために十分に取り締まれていない……と推測しているだけではないか、というわけです。

たしかにGoogleドライブの利用規約には「Google は、コンテンツが違法か否か、または Google のプログラム ポリシーに違反しているか否かを判断するために、コンテンツを審査することができます」とあり、少なくともスキャンが可能であるとは述べています(「Google によるコンテンツの審査が行われていることを前提としないでください」とも但し書きしていますが)。

またメールについても、他社は少なくとも児童ポルノ取締りについてはスキャンしていることは珍しくありません。やはりGoogleのGmailが違法な画像を見つけて、当局に通報したこともありました

アップルは、他のハイテク大手が以前からやっている「児童ポルノ取締りはプライバシー保護よりも優先する」という方針を大がかりに発表したことで、想定以上の注目や批判を集めてしまった面もあるのかもしれません。とはいえ、常々アップルは「プライバシーは基本的人権の1つ」と標榜しているだけに、他社よりも厳しい基準を求められるのも当然とは言えそうです。

(Source:9to5MacEngadget日本版より転載)

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

Citizen Lab

アップルはAirPodsやiPadなどを公式ストアで注文したユーザーに対して、無料で刻印サービスを提供しています。このサービスに付き、中国や香港、台湾で政治的検閲を行っていると指摘するレポートが発表されています

この報告書は、カナダにあるトロント大学のインターネット監視団体Citizen Labが調査に基づき公表したものです。Citizen Labは中国生まれのTikTokが悪質な行為を行っている証拠はないと述べるなど、特に反中国というわけではありません。

アップルの無料刻印サービスはどの地域でも攻撃的な言葉やフレーズを禁止しており、米国でも170の単語を入力することができません。しかし中国では、禁止されている単語やフレーズの数は1000以上にのぼり、その中には政治的な言及も多く含まれているとのことです。

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

Citizen Lab

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

Citizen Lab

Citizen Labが行ったのも、どの単語が拒否されるかを調べるテストでした。これができたのは、アップルの刻印サイトが入力されたテキストを一文字ずつ分析し、受付できない内容に即座にフラグを立てるためです。

このテストは6つの地域で実施され、その結果アップルが国ごとに異なるAPIを使ってテキストを検証していると明らかになったそうです。さらに中国では政治的な検閲が行われていると分かり、その一部は香港や台湾にも及んでいました。

まず中国本土では、中国の指導者や政治システムに関する広範な言及、反体制派や独立系報道機関の名前、宗教や民主主義、人権に関する一般的な用語などが検閲されていると分かったとのことです。たとえば政治関係としては「政治、抵制、民主潮、人权(人権)」など、チベットやチベット宗教に関しては「正法、達賴(ダライ・ラマ)、达兰萨拉」といったところです。

かたや香港では、市民の集団行動に関するキーワードが広範囲に検閲されています。たとえば「雨伞革命」や「香港民运」「雙普選」、「新聞自由」など。はてはノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏の妻で詩人の劉霞氏や、アーティストの艾未未氏の名前までも禁止されていることは「香港の国家安全法に基づくアップルの検閲義務をはるかに超えている」と評されています。

さらに台湾に対しても、中国に配慮したかのような政治的検閲が行われている模様です。こちらでは中国共産党の最高幹部らや歴史上の人物(毛主席など)、「外交部」などの国家機関、およびFALUNDAFAやFalun Gongなども禁止されているとのこと。台湾にはそうした言葉を取り締まる法律もなく、アップルが検閲を行う法的義務もありません。

それに加えてCitizen Labは、「8964」という数字まで検閲されていると突き止めています。この数字は中国では天安門事件の「1989年6月4日」という日付にちなんだものとして認識されているため、と推測されています。

アップルもいち民間企業に過ぎず、現地の法律には従う義務があり、Citizen Labも法律で禁止されている言葉の検閲を批判しているわけではありません。特に問題視されているのは、アップルが法的に要求されている以上を行っており、現地企業が自粛しているキーワードを検討せずに流用しているように見えることです。

今回の一件と関係あるかどうかは不明ですが、かつてiOS 11.4.1では“Taiwan”とタイプしたときに特定の言語や地域設定のiPhoneがクラッシュする問題や、日本語のiPhoneでも“たいわん”と入力して台湾の旗に変換できなかったことがあります(記事執筆時点では、どちらも修正済み)。

ちょうどアップルは、児童虐待対策として「iCloud上に保存された写真が自動スキャンされ、当局に通報されることもある」しくみの導入に対して、政府の検閲に利用されるのではないかとの懸念が寄せられているところです。アップルは「政府の要求を拒み続ける」と回答していますが、その言葉に信ぴょう性を与える行動が望まれそうです。

(Source:Citizen Lab。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

中国で企業の個人情報の扱い定める「個人情報保護法」が可決、EUのGDPR相当・個人情報の国外持ち出しを規制

中国で企業の個人情報の扱い定める「個人情報保護法」が可決、EUのGDPR相当・個人情報の国外持ち出しを規制

AerialPerspective Works via Getty Images

中国が、ユーザーデータ保護法(PIPL)案を可決したと新華社が伝えています。PIPLは、企業がユーザーデータをどのように収集、処理、保護するかについての包括的なルールを定めるもので、欧州のGDPR(一般データ保護規則)に相当する法律です。

この法律では、データの最小化(データ収集を特定の目的に必要な情報のみに限定すること)が規定されています。また、個人情報の使用方法をユーザーがコントロールできるようにすることも義務付けられており、例えばユーザーにはターゲティング広告を拒否する選択肢などが得られるとのこと。Reutersによると、PIPLでは「企業は明確かつ合理的な目的のもとで個人情報を取り扱わなければならず、取得する情報は目的のために必要最小限な範囲に限定される」とのこと。

また、この法律には第三国へのデータ転送に関しても規定があり、GDPRに定められるデータ保護責任者 (DPO) 的ポストを設置して、プライバシー保護の堅牢性について定期的な監査が行われるとされます。

中国ではPIPLの他にもデータセキュリティ関連の法律(DSL)が可決され9月1日から施行されることになっており、これらは企業が持つ経済的価値と「国家安全保障との関連性」に応じてデータを管理するための明確な枠組みを定めようという動きで、この点においてPIPLは欧州市民の情報を扱うあらゆる企業に適用されるGDPRとは異なっているようです。

中国がこうした法律を用意するのは、巨大化してきた国内テクノロジー企業への規制を強めるためと考えられます。中国最大のEC企業アリババは今年4月に、その支配的立場を乱用した廉で、182億2,800万元(2916億4800万円:当時)の行政処罰を科せられました。またネット配車サービスのDiDiも7月、ニューヨーク証券取引所への新規株式公開(IPO)をおこなった直後に、中国サイバースペース管理局(CAC)がユーザーのプライバシーを侵害した疑いがあるとして調査に入ったことが伝えられ、その出足を大きくくじかれています。また8月7日にはWeChatの”Youth Mode”が児童保護法に違反しているとして、テンセントが提訴されています。

PIPLは2021年11月1日に発効するため、企業がこの法律に対応するための猶予は2か月ほどしか余裕がありません。

(Source:Xinhua。Via CNBCEngadget日本版より転載)

ギグワーカーを非従業員とするカリフォルニアの条例Prop 22を高裁が憲法違反と判決

UberやLyftなどギグワーカーを軸とする企業に米国時間8月20日の夜遅くショックが訪れた。高等裁判所の判事が、2020年に成立してギグワーカーの雇用ステータスに対する論争の多かったAB-5法を、否定する目的で成立させたカリフォルニア州第22条令(Prop 22)は州の憲法に違反していると裁定した。

関連記事:ギグワーカーの権利を護る法案がカリフォルニア州上院を通過

オークランドやバークリーなどイーストベイの多くをカバーするアラミダ郡の高裁判事Frank Roesch(フランク・ローシュ)氏は「その法(Prop 22)が、将来の議会がギグワーカーの雇用ステータスを定義する力を制限する」と裁定した。この訴訟は2021年1月にService Employees International Union(SEIU)(サービス業被雇用者国際組合)が起こし、同様の訴訟がフォルニア州最高裁で却下されてから下級審へ回されたものだ。

この法廷の決定はほぼ確実に控訴されるであろうし、今後の法的議論が当然あるだろう。

しかしSEIUのカリフォルニア州評議会の議長Bob Schoonover(ボブ・スクーノーバー)氏は、声明で次のように述べている。「ローシュ判事によるProp 22を無効とする本日の裁定は極めて明確である。ギグ業界が金で買った住民投票は憲法違反であり、したがって施行不可能である。2年にわたりドライバーたちは、民主主義は金で買えないと言い続けてきた。そして本日の判決は、彼らが正しかったことを示している」。

高裁の判決は、UberやDoorDashのようにギグワーカーに大きく依存している企業と、労働者を代表する組合や活動家との間の戦いの、勝ちと敗けの長い々々列の最新のひとコマにすぎない。その議論の中心にあるのは、フリーランサーと従業員との法的な区別であり、それぞれのワーカーに対して企業はどの程度の福利厚生の責任を負うか、という点だ。

その区別がビッグビジネスになっている。UberやLyftなどの企業は2020年Prop 22を勝ち取るために、総額で2億ドル(約220億円)あまりを費消した。カリフォルニアの有権者はその条例を、ほぼ59%対41%で通過させたが、それはギグワーカープラットフォームの大勝利と多くの人びとが受け止めている。

しかしこのような戦いはシリコンバレーの本拠地である州だけの現象ではない。2021年初めに英国では、Uberが従業員の位置づけをめぐる法廷闘争で負けて、その数万人のドライバーが労働者と見なされた。そしてその判決により彼らには、それまで保証されなかった多様な福利厚生が提供された。

画像クレジット:ejs9 / Getty Images / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Hiroshi Iwatani)