フランスでは1月だけで5社のユニコーン誕生、その5社目は企業支出管理プラットフォームSpendesk

フィンテックのスタートアップSpendeskがシリーズCラウンドのエクステンションを発表した。Tiger Globalが1億1400万ドル(約130億8800万円)を投資する。今回の資金調達ラウンドを受けて、同社は評価額が11億4000万ドル(約1308億7200万円)に達したと述べた。

つまり、Spendeskはフランスのテックエコシステムにおけるユニコーンの仲間入りをしたわけだ。フランスではここ数カ月、資金調達のニュースが加速している。2022年1月だけで、スタートアップ5社がユニコーンのステータスに到達したと発表した。PayFitAnkorstoreQontoExotec、そしてこのSpendeskだ。

整備品のスマートフォンや電子機器を販売するeコマースマーケットプレイスのBack Marketも大型の資金調達ラウンドを実施し、評価額は57億ドル(約6540億円)となった。

Spendeskに話を戻そう。同社はオールインワンの企業支出管理プラットフォームをヨーロッパの中規模企業向けに提供している。もともとはオンライン決済用のバーチャルカードを手がけていたが、企業の支出に関するあらゆる事柄を扱えるようにプロダクトを拡張した。

Spendeskを利用している顧客は従業員用の物理カードを注文できる。従業員はこのプラットフォームで未処理の請求書の支払い、経費報告書の提出、予算管理、支出報告書の作成ができる。Spendeskは1つのサービスであらゆることをできるようにすることで、会計や承認全般をシンプルにし、自由にお金を動かせるようにしたいと考えている。

Spendeskは同社プラットフォームを「7in1の支出管理ソリューション」と定義している。つまりSpendeskは従業員用のデビットカードを注文するだけのプロダクトではないということだ。

共同創業者でCEOのRodolphe Ardant(ロドルフ・アルダン)氏は筆者に対し「我々は最初からこのゴールを考えていました。このプラットフォーム、この運用システムで、支出を管理できるようにしたかったのです。プロダクトに取り組み始めた時点で、それぞれのユースケースを考えてそれに合うワークフローを設計しました」と述べた。

特に、Spendeskはきちんとした社内プロセスの確立に役立つ。チームの予算を決め、高額支出の際の複雑な承認ワークフローを構築し、VAT差し引きのような面倒なタスクを自動化できる。

「我々は中規模のクライアントをターゲットにしています。従業員数が50〜1000人の企業です。これより大規模な企業も小規模な企業も、少数ながらクライアントになっています」とアルダン氏はいう。

現在、同社には3500社のクライアントがいる。そのおよそ半数はフランスの企業で、それ以外の大半はドイツと英国の企業だ。2021年だけで、クライアントはSpendeskを通じて30億ユーロ(約3930億円)の支払いを処理した。

Spendeskは財務スタックの中心となる位置づけであるため、一方では銀行、もう一方ではERPプロダクトというように、他の財務ツールと完全に連携する必要がある。

同社は現在、XeroやDatevなどヨーロッパの企業でよく使われている会計ツールの多くに対応している。取引のバッチを書き出して、SageやCegidなどの会計ソフトウェアソリューションに読み込むこともできる。

Spendeskは銀行口座との統合の自動化にも取り組んでいる。これは複数の銀行口座がある企業には特に便利だ。例えばドイツの業者に支払いをする際に、ドイツの銀行口座とSpendeskアカウントの間の振替を自動で実行するルールを設定するといったことが考えられる。

画像クレジット:Spendesk

ヨーロッパにおける支出管理

ヨーロッパにおける支出管理ソリューションはSpendeskだけではない。最近47億ドル(約5381億5000万円)の評価額に達したPleoや、2021年に1億8000万ドル(約206億1000万円)を調達して豊富な資金を有するSoldoなどの競合がある、

米国でも同様に、BrexRampなどの企業が高い評価額に達している。ただしSpendeskは自社が米国のスタートアップと同じ位置づけであるとは考えていない。

アルダン氏は筆者に対し「米国市場では支出管理業界と呼ぶようなものではありません。コーポレートカード業界です。BrexやRampなどのプレイヤーは自社を決済手段と位置づけています。ヨーロッパの企業文化はクレジットではなく引き落としの文化です。我々は決済手段ではなくプロセスを提供しています」と述べた。

プロダクトの位置づけに若干の違いがあるため、ヨーロッパの支出管理スアートアップが米国に進出して成功するか、その逆はどうか、興味を持って見ていきたい。

ビジネスモデルについても、Spendeskは自社を継続サブスクリプションのSaaS企業であると考えている。同社は売上の具体的な数字を共有していない。アルダン氏はSpendeskの売上について「毎年、2倍以上になっている」とだけ述べた。

今回の資金調達ラウンドで、Spendeskは今後2年間で従業員数を3倍にする計画だ。2023年末までに従業員数を1000人にすることを予定している。

画像クレジット:Spendesk

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

資金調達でひとり勝ちを続けるアフリカのフィンテック事情

2021年、アフリカではかつてないほど多くの投資案件が成立し、同大陸のテックスタートアップは50億ドル(約5800億円)近くの調達を達成した。これは前年の投資額の2倍、5年前の調達額の9倍の額であり、ここ数年でスタートアップシーンがいかに変貌したかを露わにしている。

なかでもフィンテックが圧倒的で、アフリカのスタートアップが2021年実現した全投資額の3分の2にあたる30億ドル(約3500億円)近くを占めていることが、市場洞察会社Briter Bridges(ブライター・ブリッジズ)の報告書で明らかになっている。この金額はアフリカのフィンテックが2020年に調達した13億5000万ドル(約1566億円)の2倍以上、2019年の3倍の額である。

その中でも特に利益を得たのが、シリーズCで4億ドル(約464億円)を調達したOpay(オーペイ)、シリーズCラウンドで1億7000万ドル(約197億円)を調達したFlutterwave(フラターウェイブ)、シリーズBで1億8000万ドル(約209億円)を調達したTymeBank(タイムバンク)だ。Jumo(ジュモ)とMNT Halan(MNTハラン)は1億2000万ドル(約139億円)のラウンドを調達し、デジタル決済ゲートウェイのMFS Africa(MFSアフリカ)は1億ドル(約116億円)を獲得している。その他にもZepz(旧WorldRemit)がシリーズEで2億9200万ドル(約338億5000万円)を調達し、Chipper Cash(チッパーキャッシュ)が2億5000万ドル(約289億8000万円)、Tala(タラ)が1億4500万ドル(約168億円)、Wave(ウェーブ)が2億ドル(約231億8000万円)の資金を集めている。

また、アフリカのフィンテックに対する資金調達がここ数年増加傾向にあることから、携帯電話の利用やインターネットの普及が深まるにつれ、これらのスタートアップに注入される資本は増加する一方であると考えられている。

GSM Association(GSMアソシエーション)によると、アフリカ大陸における携帯電話加入者数は2025年までに4%増加し、大陸の総人口の半数にあたる6億1500万人に達すると予測されている。また、融資、デジタル決済、銀行、保険サービスの導入が進むことで、さらなる成長が見込まれている。

フィンテックに特化した投資銀行、Financial Technology Partners(ファイナンシャル・テクノロジー・パートナーズ)がアフリカについて過去に行ったレビューによると、アフリカ大陸では人口が急速に増加しており、経済が急激に成長中の上、金融サービスのエコシステムが未開発のため、フィンテックにとって非常に魅力的な市場になっているという。

「決済分野ではFlutterwave、Chipper、MFS Africa、Cellulant、Jumoといったスケールアップ企業が、Visa、Mastercard、Stripeといった世界的な大手プロバイダーと肩を並べて活躍し始めていますが、今後数年は(実際はもう始まっているのですが)融資からKYC、中小企業管理ソフトウェア、分散型金融まで、他のフィンテック分野でも動きが強まっていくことでしょう。また、エコシステムの成熟と統合が進むにつれ、M&Aの動きも活発化していきます」と、Briter BridgesのDario Giuliani(ダリオ・ジュリアーニ)氏はTechCrunchに対して話している。

過去数年のアフリカにおけるステージ別案件(画像クレジット:Briter Bridges)

デジタル / モバイル決済に特化したスタートアップがここ数年、最も多額の融資を受けており、次いで銀行 / 融資スタートアップ、インシュアテックのスタートアップが続いている。

最新のデータによると、アフリカのデジタル決済分野はフィンテック分野内の他のサブセクターと比較して、過去10年間で資金調達額と総取引量において著しい成長を遂げていることがわかっている。フィンテックの成長の背景には、携帯電話所有率の上昇、モバイルマネー技術やインターネットの普及があり、これらは時に制約の多すぎる従来の銀行インフラの回避を可能にしたのである。

モバイルマネーやデジタル決済の革新により、USSDやSTKコマンド、アプリ、NFC技術を使って、オンラインでもオフラインでも決済ができるようになった。

Financial Technology Partnersは次のように話している。「アフリカには銀行口座を持たない膨大な人口が存在しますが、中間層の増加、モバイルの普及率向上、通信インフラの改善により、フィンテックイノベーションとモバイル金融サービスを実現するためのユニークな環境が整いつつあります」。

新興のフィンテックサービスによって金融包摂が推進され、これまで銀行口座を持てなかった人々が口座を持てるようになり、送受金や決済など企業や個人にとっての最大のペインポイントが解決した。例えばWari(ワリ)、SureRemit(シュアレミット)、Paga(パガ)といった送金分野のスタートアップによって、海外からアフリカへの送金が簡単かつ安価に受け取れるようになったのである。

画像クレジット:Getty Images

成長機会

McKinsey(マッキンゼー)の調査によると、アフリカはラテンアメリカに次いで急成長中の、収益性の極めて高い決済&銀行市場とされており、つまりフィンテック分野は、この成長機会に目をつけた投資家らを今後も惹きつけ続けていくに違いない。

すでにモバイルマネー導入の世界的リーダーとなっているアフリカ大陸。2020年に行われたモバイルマネー取引の大部分をアフリカが占め、その年モバイルマネーの口座数は43%増加している。通信技術の進歩がもたらしたアクセスのしやすさこそが、同大陸におけるモバイルマネーの成功の秘訣だろう。

例えば、東アフリカ最大の通信事業者Safaricom(サファリコム)のモバイルマネーサービスM-Pesaは、送受金や公共料金の支払いにインターネット接続を必要とせず、加入者の電話番号を一種の銀行口座の代理として使用できるウォレットである。このサービスは、2021年3月期の売上高が7億4500万ドル(約863億円)に達し、音声通話を抜いて同社最高の稼ぎ頭になっている。

M-Pesaは地域全体(特にケニア)で、オンライン化されているあらゆる新サービスを支える役割を担ってきた。例えばSafaricomは2012年、モバイルベースの貯蓄・融資商品であるM-Shwariを発売して融資アプリ採用の基礎を築いたが、その後、シリコンバレーが支援するTalaやBranchなど多くの融資アプリが市場に登場した。これらの融資アプリは顧客のモバイルマネーの取引履歴を利用して借り手への即時融資額を決定し、その金額を顧客のモバイルマネーのウォレットに入金するというもので、現在人気を集めている。

こういった融資や銀行業のスタートアップは、信用度のない人々や、銀行取引履歴のデータがないために正式な金融機関から切り捨てられていた人々への信用供与を可能にした。

さらにここ数年はインシュアテックも盛んになっており、手頃な価格でマイクロペイメントを可能にし、気候変動によるものなどの増大し続けているリスクを補償する革新的な商品が誕生している。サハラ以南のアフリカでは(南アフリカを除いて)他の地域に比べて普及率が低いものの、インシュアテック関連の革新的な商品が保険商品の普及を促している。

投資の拡大が顕著となった2021年だが、資金の大部分は少数のスタートアップのみが獲得している。公開・未公開案件の両データを含むBriterの分析によると、700社以上のスタートアップが20億ドル(約232億円)近くを調達したのに対し、推定総額30億ドル(約348億円)がそれ以外の20社に渡ったことが明らかになっている。

画像クレジット:Busakorn Pongparnit / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Dragonfly)

スペインの給与前払いスタートアップPayflowが約10.4億円獲得、スーパーアプリの成長戦略を促進

バルセロナを拠点とし、ネオバンクへの進化を目指すYC出資の給与前払いフィンテック企業Payflow(ペイフロー)が、シリーズA資金調達ラウンドで910万ドル(約10億4200万円)を調達した。それにより、事業設立の2020年1月からの調達額は1360万ドル(約15億5800万円)に達した。

このラウンドの投資家には、Payflowの新たな支援者であるスペインのSeaya Ventures(シーヤ・ベンチャーズ)や、C. Entrepreneurs Fund(C. アントレプレナーズ・ファンド)を通じたCathay Innovation(キャセイ・イノベーション)が共同リードを務め、Force Over Mass Capital(フォース・オーバー・マスキャピタル)、Y Combinator(Yコンビネーター)、Rebel Fund(リベル・ファンド)が参加するなど、国内外のファンドが混ざり合っている。

このスタートアップは、雇用主が従業員に提供するための給与前払いサービスを販売している。(他の給与系スタートアップが行っているように)給与の一部を早期に引き出すために利用者に手数料を課すのではなく、技術に対して雇用主に手数料を課しているのである。

Payflowによれば、このモデルは労働者評議会や労働組合の支持を得ているという。

また、同社は、このモデルは他の給与前払い系のスタートアップとの差別化要因であるとアピールしている。

共同創業者のAvinash Sukhwani(アビナッシュ・スクワニ)氏は「我々が他のオンデマンド型企業と異なるのは、従業員にサービス利用料を請求したことがないことです(我々のサービスは、全額会社負担の、初の真の従業員福利厚生です)」と語る。

また、共同創業者のBenoît Menardo(ブノワ・メナルド)氏は「(Payflowは)ユーザーにとって無料であり、今後もそうあり続けるでしょう。私たちのビジョンは、ブルーカラー労働者のための初の真の福利厚生を提供することであり、従業員がそれを支払わなければならないのであれば、それは本当の特典とは言えないと考えています」と述べている。

ユーザーの間ではダウンロード率が平均40%、一部のクライアントでは90%と、高い普及率を示しており、他のオンデマンド給与プラットフォームや他の社会福利厚生に比べて5〜10倍高いとしている。

また、同社のアプローチは、雇用主にとっても適切な条件を満たしているようで、すでに175以上のクライアントが契約している(10万人のユーザーをカバー)。

本製品はSaaS型のビジネスモデルで、利用する従業員の数に応じて段階的に料金を徴収する。

Payflowは大企業をターゲットにしている。同社によれば、顧客はあらゆる業界にわたるが、予想通り、ブルーカラー労働者の間で最も利用が多いとのことだ。

「レストランからスタートアップ、病院まで、あらゆる業種に対応していますが、ブルーカラーの人たちが一番利用しています」とスクワニ氏はいう。

給与前払い制度は、低所得者にとっては、急な出費に備えて月に何度も給与を受け取ることができるため、借金をする必要がなくなる。しかし、給料をすぐに受け取れるということは、例えば、給料をすぐに使ってしまい、月末にお金がないといった負のスパイラルに陥る可能性がある。

この点についてPayflowは「利用を制限したい場合に備えて」雇用主のダッシュボードに「安全限度額」を設けているという。

「ほとんどの企業はこの上限を50%程度に設定し、従業員が毎月の給与で少なくとも残りの50%を常に受け取れるようにしています」とメナルド氏はいい「そうすれば、家賃など毎月の必要経費を十分に確保することができます」と付け加えた。

同社のシリーズAの資金調達は、Payflowの海外展開に充てられる。

また、ネオバンクへの進化という目標を達成するために、製品開発にも費やす予定だ。

もちろん、ネオバンクの中には、給与前払いを追加機能として提供する企業もある(例えば、Revolutなど)。

フィンテックの場合、スタートアップの勝負は、顧客の取り込みを最大化するためのさまざまな戦略やアプローチに集約される。その後、十分な牽引力があれば、人気のある機能のユーザーを、先の機能の成功によって資金を得た、より本格的な銀行サービスにアップセルするチャンスがあるのだ。

つまり、フィンテックの競争は非常にダイナミックであるということだ。

特定のユーザー層は、他のユーザーよりも忠実で乗り換えが少ないかもしれない。もし、そのような層に、同社のサービスを知ってもらい、忠誠心を高めるような粘着性の高い機能を通じて銀行サービスを売り込むことができれば、今後何年にもわたって一連のサービスをクロスセルできる、解約の少ない銀行顧客基盤ができるかもしれない。もしくは、それがフィンテックの夢というものだろう。

製品開発の面では、Payflowは「スーパーアプリ」を開発し、機能セットの拡張を始めている。

「2022年には、ブルーカラーの従業員にファイナンシャルウェルネスをもたらすことを通じて、B2Bの価値提案を強化する2つの機能が追加されます。その後、多くのB2C機能を開発することで、(アプリの計画は)本質的にネオバンクに変わります」とメナルド氏はいう。

Payflowは、給与前払いSaaS事業を消費者直結のネオバンクに進化させるスケジュールを明らかにしていないが、メナルド氏は、顧客ベースを10倍以上に拡大したいと示唆し「このコンセプトは、数百万人のユーザーを獲得したときに、特に威力を発揮します」と述べた。

「2022年中に最初のD2C機能を開始する予定です」と彼は付け加えた。

スペインで顧客基盤を5倍に拡大することを目標に、市場統合のために新たな資金調達のうち300万ドル(約3億4300万円)を費やす計画である自国市場から、かなり大きな成長を期待している。

市場拡大の面では、Payflowは、すでにサービスを提供しているチリとコロンビアに加え、スペイン以外の2つの市場に進出することを計画している。

拡大は欧州と中南米が中心になる予定だ。

現在、イタリアとポルトガルで試験運用を行っている。また、ラテンアメリカでも2022年中にもう1市場開設する予定というから、2022年中に(現在の)3市場から合計5市場に拡大することになりそうである。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

米フィンテック企業Currentが実効年利率4.00%の高利回り預金商品を導入

デジタルバンク同士の競争が激化する中、米国のフィンテック企業であるCurrent(カレント)が、同社のバンキングサービスをより魅力的なものにする新商品を導入する。米国時間1月13日朝に発表された「Interest(インタレスト)」と呼ばれる高利回りの新商品は、Currentの口座保有者なら誰でも、4.00%の実効年利率(APY)を得ることができるという。これは全米平均の60倍に相当する。

このInterestは、有料のPremium(プレミアム)ユーザーと無料のBasic(ベーシック)プランを含むCurrentの全ユーザーに提供される(実際、Currentの拡張サービスを利用するために月額4.99ドル[約570円]を支払っているプレミアムの加入者は、同社がAPYを引き上げるためにも貢献しているのだろう)。

ネオバンクが伝統的な銀行よりも高いAPYを提供するのは普通のことだが、多くのバンキングサービスでは、ユーザーが高いレートを得るためには面倒な手順を踏まなければならない。例えば、One Finance(ワン・ファイナンス)の「Save(セーブ)」という商品は、5000ドル(約57万円)までの預金に対して1.00%のAPYを提供しているが、より高い3.00%の金利を得るためには、自動貯蓄機能を設定する必要がある。Aspiration(アスピレーション)とVaro(ヴァロ)も3.00%のAPYを提供しているが、支出、残高、ダイレクト・デポジットの合計額など、それぞれ満たさなければならない独自の条件がある

しかし、Currentの新商品は、年間合計6000ドル(約69万円)までの預金に対して利息が支払われる。また、最低残高は必要なく、ダイレクトデポジットや支出の最低額などの条件も要求されないという。しかし、この商品が他の商品と違うのは、すべての会員が日割りで預金に利息をつけることができる点だ(一般的に、銀行は利息を月ごとに支払う)。

ただし、このCurrentの商品には、総額6000ドルまでの預金をSavings Pod(貯金ポッド)に分散して貯めなければならないという難点がある。APYは1つのポッドにつき2000ドル(約23万円)までしか得られない。そのため、大きな残高を貯めたい人よりも、貯金を始めたばかりで、お金をいろいろなグループに分けたいと考えている顧客にとって、より有効な選択肢となる。なお、この貯金ポッドは、無料ユーザーは1つしか作成できないが、有料ユーザーは3つ作成できる。

画像クレジット:Current

CurrentがTechCrunch語った話によると、この高利回り商品は高い利率で導入して後から時間をかけて下げていくことを目指しているものではないという。

「私たちはこれを宣伝用の利率として扱っているわけではありません」と、Currentの商品担当VPであるJosh Stephens(ジョシュ・スティーブンス)氏は説明する。「私たちはこれを予測可能な将来にわたって、すべての人が利用できるものとして考えています。【略】確かに、他の会社のプロモーション・レートには、余計なものがたくさん付いているものがありますね。しかし、当社のこの商品は誰でも利用でき、最低残高も手数料も必要ありません」と、同氏は語った。

同社はこの利率設定を、激しい競争の中で自社のバンキングサービスをより良く売り込むための手段としても捉えている。Currentは、10代向けのバンキングサービスとしてスタートしたが、事業を年々拡大し、今では大人(子どものいない大人も含め)向けに、より競争力のある商品を提供している。多くのデジタルバンキングサービスと同様、Currentは手数料無料の当座貸越、キャッシュバック、手数料無料のATM、迅速な口座振替、自動積立、資金管理ツールなどの会員特典を提供しているが、Interestの発売により、より良い貯蓄商品を求める顧客の要望にも応えることができるようになった。

「ここ数カ月、インフレ率は過去40年間で最も高い水準で上昇しています。(消費者物価指数は)80年代初頭以来、最も速いペースで上昇しています」と、スティーブンス氏は語る。「私たちの会員、そして多くの米国人にとって、これは必要なだけのお金が行き渡らないことを意味します。つまり、同じ商品やサービスに対して、より多くのお金を支払うことになっており、お金を貯めることが難しくなっているのです」。

その一方でCurrentは、市場にある既存の選択肢では、銀行の顧客がお金を有意義に増やすことは難しいと確信している。

今回の新商品導入によって、他の銀行で普通預金をしている顧客が、その代替としてCurrentのサービスに移行する可能性がある。さらに時が経てば、そのような顧客がCurrentのプレミアムな商品やサービスにアップグレードしていく可能性もあることも考えると、事業の観点から高いAPYは価値がある。

現在、Currentの会員数は、無料・有料合わせて300万人を超えている。会員の平均年齢は27歳と、多くの競合他社よりも若い。

長期的には、これらの顧客がさらに資金を増やせるようなサービスを展開していくことも計画している。また、2021年発表したAcala(アカラ)との提携を通じて、従来の銀行業務と分散型金融の利点を組み合わせた「ハイブリッド金融」という新しいカテゴリーを生み出すことで、暗号資産の領域への参入も計画中だ。消費者金融も同社のロードマップに含まれている。

Currentの新製品であるInterestは、米国時間1月13日よりiOSとAndroidで展開されている。

TechCrunchは、NerdWallet(ナードウォレット)のバンキング・スペシャリストであるChanelle Bessette(シャネル・べセット)氏に、この新商品についての意見を求めた。

「Currentは、平均よりはるかに高い金利を提供する方針を採っていますが、それには条件が付いています。消費者は、3つの異なるSavings Podと呼ばれるサブアカウントで、最大2000ドルに対して4%の金利を得ることができます。つまり、すべて残高の上限を満たした場合、年間で最大240ドル(約2万7500円)の利子を得ることができるのです」と、べセット氏は述べている。「ただし、Savings Podを追加するためのPremium Account(プレミアム・アカウント)には、月額4.99ドルの会費を支払わなければならないことに注意する必要があります。この会費は年間で60ドル(約6900円)近くになるので、会費と利息の収支をプラスにするためには、支払う会費よりも多くの利息を得ることが必要です。私たちは通常、月々の会費がかかる口座をお勧めしたくありませんが、Currentの場合、消費者は口座の残高を高く維持していれば、会費を相殺以上の現金を得ることができるようです」と、彼女は続けた。

画像クレジット:Current

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

暗号資産でB2B決済の高速化、手数料の抑制も目指すPaysailが4.4億円調達

企業は、材料費から外注費に至る主要なコストの多くを、請求書に基づき支払っている。依然として大多数の企業は、国境を越える支払いの際、銀行振込やクレジットカードを基盤とするソリューションに依存している。完了するまでに通常2~5日かかる、この国境を越える支払いは、世界で130兆ドル(約1京5000兆円)の市場を形成している

法人向け決済のスタートアップであるPaysail(ペイセイル)が、シード資金を調達した。同社は、国境を越える決済のプロセスを5秒未満に短縮するツールを開発する。同社のソリューションはステーブルコインを活用している。ステーブルコインについて同社は「商品または法定通貨にペッグ(連動)し、価格が安定するよう設計された暗号資産」と説明している。

Paysailによると、請求書の支払いにステーブルコインを使うことで、第三者の仲介を排除し、企業の取引手数料を削減することもできるという。Paysailの共同創業者であるNicole Alonso(ニコル・アロンソ)氏はTechCrunchのインタビューに対し、従来の銀行インフラを前提として決済を効率化するこの分野の他のスタートアップは、速くて安い決済手段を提供する点で限界に達していると語った。仲介業者が課す手数料が原因であり、特に定期的に決済が発生しない国同士の間ではそうだという。

Paysailの共同創業者であるニコル・アロンソ氏とLiam Brennan-Burke(リアム・ブレナン・バーク)氏(画像クレジット:Paysail)

「例えば米国・カナダ間の決済を大幅に安く、早くする大きな進歩がありました。しかし、米国からアフリカの国々への送金はまだ本当に難しく、法外な手数料がかかることもあります」とアロンソ氏は話す。

国境を越える決済にBill.comのようなレガシーシステムを使う場合のコストには通常、仲介業者が請求する取引手数料と為替手数料が含まれる。これに対し、Paysailによる送金では、ブロックチェーン上で取引を検証するためにかかる「ガソリン代」だけがかかり、現在のところ1セントの10分の1以下だとアロンソ氏はいう。

Paysailは現在、米ドル価格に連動するCeloのCUSDステーブルコインを使用して決済を行うが、将来同社が成長していけば、各国の不換通貨を裏付けとする他のステーブルコインにも拡大する予定だ。また、事業の収益を上げるために0.9%程度の取引手数料を検討している。アロンソ氏は、取引手数料が各企業の取引量に応じた段階的な設定となる可能性があり、価格面で「非暗号資産の既存の競合他社を大幅に下回る」ことが理想だと述べた。

同社は米国1月13日、Uncork Capitalがリードし、Tribe Capital、Pear VC、Mischief Capitalが参加した、400万ドル(約4億4800万円)のシードラウンドを発表した。このラウンドには、Google Payの事業開発・戦略責任者であるNik Milanović(ニック・ミラノビッチ)氏と、Eburyの創業者でCEOのJuan Manuel Fernández Lobato(フアン・マヌエル・フェルナンデス・ロバト)氏もエンジェル投資家として参加した。

Paysailの現在のユーザーは「少数」の企業で構成され、そのほとんどはすでに暗号資産で取引しているか、この分野に精通していると、共同創業者であるLiam Brennan-Burke(リアム・ブレナン・バーク)氏はTechCrunchに語った。同社は、暗号資産を使用したことのない顧客にも拡大する前に、暗号資産の利用に慣れている顧客向けのソリューションを微調整したいと考えていると同氏は付け加えた。

アロンソ氏とブレナン・バーク氏は2021年、クレアモント・マッケナ大学の学生として出会い、その後Paysailを立ち上げた。現在、Paysailの正社員は彼らのみだ。今回の資金をもとに、フルタイムのエンジニアリングチーム、法律顧問、そして最終的には営業チームを雇用する計画だ。

Paysailは、既存の暗号資産ウォレットを持たないユーザーが、サードパーティのウォレットプロバイダを通じ、同社のプラットフォームで取引を開始できるような技術を構築している。同社がユーザーに代わってノンカストディアルウォレットを用意する。ブレナン・バーク氏によると、最終的にはこの機能をプラットフォームに導入したり新機能を追加したりして、ユーザーが、保有するステーブルコインからPaysailウォレット内で利回りが得られるようにすることを目指している。ナイジェリアのように、現地通貨の下落が大きなリスクとなる国では、企業は変動の少ない通貨にペッグされたステーブルコインで資産を保有し、好きなときに現地通貨に移すことを好むかもしれないと、同氏は付け加えた。

ブレナン・バーク氏は「このプラットフォームの最終的な目標は、暗号資産決済を、暗号資産の経験がない企業や個人にとって、本当に消化しやすく、また使いやすくし、比較的やさしいものにすることです」と語った。

画像クレジット:Olena Poliakevych / Getty Images

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

Venmoがギフトラッピング機能を導入、お金の受取時に楽しいアニメーションを表示

Venmo(ベンモ)は、友人や家族にお金を贈る新たな方法として、ギフトラッピング機能を導入した。米国時間1月13日に展開が開始されたこの新機能により、ユーザーは送金時に8種類のアニメーション付きギフトラップのデザインを支払いメモに追加できるようになる。

この新機能を利用するには、まず「Pay or Request(支払いまたは請求)」ボタンをタップし、受取人を追加する。そこから、ギフトラップのアイコンをタップして、支払いと一緒に送りたいギフトラップを選択する。ギフトラップを選ぶと、支払いを確定して送信する前に、アニメーションをプレビューするオプションが用意されている。

受け取った人には、アプリ内でギフトが届いたことが通知され、ギフトを開封してアニメーションを見ることができる。Venmoによると、送信者と受信者の両方が、支払いの詳細画面からいつでもアニメーションを見返すことができるとのこと。Venmoの新しいギフトラッピング機能は、米国時間1月13日より一部の顧客から展開が始まっており、今後数週間のうちにすべてのユーザーが利用可能になる。

画像クレジット:Venmo

「プレゼントの絵文字は、2021年にお客様が支払いメモに使用した絵文字のトップ10に入っていました」と、Venmoのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのDarrell Esch(ダレル・エシュ)氏は声明で述べている。「私たちは、この体験を強化するために新しいギフトラッピング機能を導入し、お客様が金額の大小に関わらず、その瞬間を大切な人と一緒にお祝いできるようになったことをうれしく思います」。

Venmoによると、過去1年間にVenmoやその他の個人間(P2P)決済サービスを利用して、ギフトとして送金したことがあると回答したユーザーは78%に上るという。ユーザーはホリデーや特別な時だけでなく、相手を思っていることを示す手段として、Venmoを使って相手にお金を贈ることが増えているとのこと。特に新型コロナウイルス感染拡大時には、Venmoを利用してお金を贈った顧客の半数以上が「感謝」や「単なるお礼」の印として送金していたことから、このような行動が増加したと同社では考えている。

今回の新機能導入に先立ち、Venmoは2021年、大規模なデザイン変更を行っている。アプリのプライバシー管理機能を拡張し、新機能の一部をより明確にすることに重点を置いた大幅なデザイン変更の一環として、同社はユーザーの取引がグローバルに公開されるフィードの提供を廃止した。現在はユーザーに「フレンドフィード」のみが表示されるようになっている。これはアプリのソーシャルフィードのことで、友達の取引だけを見ることができる。

画像クレジット:Venmo

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テンセントが中国人留学生の授業料支払いに特化したクロスボーダー送金スタートアップに出資

Easy Transferのチーム(画像クレジット:Easy Transfer)

Tencent(テンセント)は、国外にいる何十万人もの中国人学生の学費支払いのストレスを軽減することを目的としているスタートアップEasy Transfer(イージートランスファー)に出資した。

Tencentはこの件についてのコメントを却下したが、Easy Transferの創業者でCEOのTony Gao(トニー・ガオ)氏はTechCrunchに、Tencentは現在Easy Transferの株式約5%を所有していると語った。この投資は2021年12月にクローズし、Easy Transferが現在行っているシリーズCラウンドの第1弾となった。IDGキャピタルとZhenFundがEasy Transferの初期投資家だ。

Easy Transferは取引を直接扱うのではなく、中国でのクロスボーダー決済ライセンスを持つ金融機関と連携している。ガオ氏は以前のインタビューで、同社の付加価値は、送金の手間を省くことだと語っている。従来のやり方では、親や学生は銀行を訪れ、たくさんの書類に記入し、送金先情報が正しいかどうかダブルチェックし、大学の口座に授業料が振り込まれるまで気を揉みながら待たなければならなかった。

Easy Transferでは、ユーザーはオンラインで簡単なフォームに記入するだけで、あとは同社が最大200元(約3600円)の手数料ですべてを処理する。

Tencentの戦略的投資により、Easy Transferはユーザー体験をさらに合理化するつもりだ。両社はWeChatベースの学費送金サービス「WeRemit」を共同開発した。WeChatのエコシステム内にある何百万ものサードパーティのライトアプリとは異なり、WeRemitはWeChatからの手厚いサポートを受け、WeChatが一部運営を行っている。

「マネーロンダリング防止、本人確認、情報のセキュリティなど、WeChatはクロスボーダー決済取引をより安全なものにします」とガオ氏はいう。「WeChatは膨大な量のユーザーデータを保有しているため、銀行でも対応できないような強固なリスク管理システムを構築することができるのです」。

お金を動かす前に、WeRemitはユーザーの顔をスキャンして本人確認を行い、WeChatにすでに保存されている個人情報を収集する。中国のインターネットプラットフォームは、モバイル決済やコンテンツ投稿などのコアな機能を有効にする前に、人々の真の身元を確認することが義務づけられている。

WeChatのAIを使った金融コンプライアンスシステムも活躍している。授業料の請求書、内定通知書、ビザ情報など、WeRemitに提出された書類を特定し、理解するために機械学習が使用されている。また、このシステムではリスクの高い取引にフラグを立ててマニュアルで確認したり、請求額と支払額の数字を比較して過払いを回避したりすることもできる。

WeRemitのサービスを支えているのは、Tencentのオンライン決済部門であり、WeChatのデジタルウォレットであるWeChat Payも運営しているTenpayだ。ユーザーから依頼を受けると、クロスボーダー取引ライセンスを持つTenpayが、Easy Transferを受け入れている大学2000校のいずれかに送金する。

中国で広く普及しているWeChatと提携することで、Easy Transferのリーチが大幅に拡大する可能性がある。ガオ氏によると、Easy Transferは2021年に学生12万人にサービスを提供し、20億ドル(約2280億円)以上の取引を処理したという。現在は、WeChatが「海外留学生」と呼ぶ50万人のユーザーをターゲットにしている。教育省によると、2019年には全体で約70万人の中国人学生が海外に留学していた。

Tencentにとって、Easy Transferとの提携は、海外に旅行する観光客をターゲットにしたクロスボーダーフィンテックサービスの幅を広げることにつながるかもしれない。ガオ氏は、Easy Transferのモデルをアジアの他の地域、特に南アジアや東南アジアで再現したいと考えている。インド、ネパール、ベトナムといった国々で増加している海外留学生を取り込む計画だ。これらの国々の家庭は、学費の送金に関して同じような悩みを抱えており、さらに手数料に敏感だと、ガオ氏はいう。

Tencentにとって海外展開は困難で、海外での影響力を拡大するために主に戦略的投資に頼ってきた。例えば、ビデオゲーム会社の膨大なポートフォリオがその例だ。Tencentは、Grab(グラブ)を含むアジア全域の複数のフィンテックサービスプロバイダーを支援してきた。Tencentは、海外送金に必要なライセンスを持つ適切な現地パートナーとEasy Transferを結びつけることができるとガオ氏は述べ、Easy Transferは現地チームの構築とWeRemitのような使いやすいプロダクトに注力するとしている。

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

Checkout.comが4兆6000億円の評価額で1145億円のラウンドを実施

決済サービスを提供するCheckout.com(チェックアウト・ドットコム)は、並のユニコーンではない。今回同社は10億ドル(約1145億4000万円)のシリーズD資金調達ラウンドをクローズした。本日のラウンドの結果、同社の評価額は400億ドル(約4兆6000億円)に達した。

これは、2021年の評価額からの大幅な増加だ。前回のシリーズCラウンドでは、150億ドル(約1兆7000億円)の評価額で4億5000万ドル(約515億4000万円)を調達していたので、12カ月間で評価額が167%上昇したことになる。決して悪い数字ではない。

Checkout.comは、ゲートウェイ、アクワイアラー、リスクエンジン、ペイメントプロセッサーとしての役割を果たす、フルスタックのペイメント企業を構成している。同社のサービスを使えば、事業者は自社のサイトやアプリで直接支払いを処理することができるが、一方ホスティングされた支払いページに頼ったり、支払いリンクを作成したりすることなども可能だ。

カード決済、Apple Pay(アップルペイ)、Google Pay(グーグルペイ)、PayPal(ペイパル)、Alipay(アリペイ)、銀行振込、SEPA口座振替、さらにはさまざまなローカルネットワークを通じた現金決済にも対応している。

2021年にはペイアウトを行う機能も追加された。Checkout.comの顧客は、銀行口座への送金が可能だ。また、Mastercard(マスターカード)またはVisa(ビザ)ネットワーク上のカードへのペイアウトにも対応している。例えばTikTok(ティックトック)やMoneyGram(マネーグラム)は、Checkout.comのペイアウト機能を利用している。

Stripeと違い、Checkout.comは取引量の多い大規模なグローバル企業の商取引に特化している。同社の顧客には、Netflix(ネットフリックス)、Farfetch(ファーフェッチ)、Grab(グラブ)、NetEase(ネットイース)、Pizza Hut(ピザハット)、Shein(シーイン)などがいる。また、Klarna(クラーナ)、Qonto(クォント)、Revolut(レボリュート)、WorldRemit(ワールドレミット)など、複数のフィンテックユニコーンの決済スタックにも寄与している。

今回の資金調達ラウンドに関しては、投資家のリストが非常に長いので、シートベルトを締めて読んで欲しい。今回のラウンドに参加した投資家には、Altimeter、Dragoneer、Franklin Templeton、GIC、Insight Partners、Qatar Investment Authority、Tiger Global、Oxford Endowment Fund、そして「西海岸の大規模な投資信託運用会社」が含まれていると、同社は発表文に記している。

また、Blossom Capital、Coatue Management、DST Global、Endeavor Catalyst、Ribbit Capitalなどの、同社の既存の投資家にも参加者がいる。

なぜCheckout.comはこれほどまでに資金を集めたのだろうか?それができるから、というのが理由だ。同社によると、ここ数年は利益が出ているので、投資家は長期的な成長のためにバランスシートに資金を追加しているだけだ。Checkout.comは、調達した10億ドル(約1145億4000万円)と引き換えに、同社の株式の2.5%を渡すだけで済んだ。

創業者でCEOのGuillaume Pousaz(ギヨーム・プザン)氏は声明文の中で「過去10年間、洗練された技術スタックと業界の専門知識、そして 『エクストラマイル』アプローチ(かゆいところに手が届くアプローチ)を組み合わせることで、当社は世界で最も革新的な企業と深いパートナーシップを築いてきました」という。「今回のシリーズDはその成果を証明するものですが、私たちはまだ旅の『第0章』の段階にあるので、資金は今後の膨大な手つかずの機会を引き出すために役立つことでしょう」と述べている。

同社は2021年だけで数千億ドル(数十兆円)の決済を処理している。3年連続で取引量が3倍になり、現在は19カ国に1700人の従業員を擁している。

Checkout.comは次に米国市場に焦点を当てたいと考えている。ロンドンに本社を置く同社は、当初はEMEA(欧州、中東、アフリカ)地域を中心に活動を行っていた。しかし、グローバルな企業のマーチャントと協力していく中で、すべての市場で通用するソリューションを持つことは、将来の顧客にとって大きなセールスポイントになるだろう。

Checkout.comのCFOであるCéline Dufétel(セリーヌ・デュフェテル)氏は声明の中で「EMEAでのアプローチと同様に、当社は企業、特にフィンテック、ソフトウェア、フードデリバリー、旅行、eコマース、暗号資産マーチャントへのフォーカスを続けていく予定です。弊社は、米国のお客様が国内外で成長し、米国以外のお客様が米国に進出することを支援したいと考えています」と語っている。

Web3のチャンス

今回の資金調達によって、Checkout.comはより多くの人材を雇用し、新たな顧客と契約することになるだろう。しかし、同社は立ち止まることなく、新製品を投入していきたいと考えている。

ペイアウトが可能になったことで、新たなチャンスが生まれた。特に、Checkout.comは2022年後半に、マーケットプレイスとペイメントファシリテーターをサポートする予定だ。それはマーケットプレイスの運営者がそれぞれの取引から手数料を徴収できるようにする完全なエンド・ツー・エンドのソリューションとなるだろう。その中では身分証明書の確認や支払いの分割機能も提供される。

また、マーケットプレイスの利用者は、新しいTreasury-as-a-Service(サービスとしての財務)機能により、マーケットプレイス上で直接資金をプールできるようになる。マーケットプレイスが金融サービスをその製品に直接組み込むことができることで、可能性が大きく広がる。

2021年、Stripe(ストライプ)は、Stripe Treasury(ストライプ・トレジャリー)を発表した。Shopify(ショッピファイ)はこの機能をShopify Balance(ショッピファイ・バランス)に採用している。こうしたことは、StripeとCheckout.comの両社がペイメントチェーンのより大きな部分をカバーしたいと考えていることを改めて証明している。

Checkout.comは、新製品に加えて、Web3が市場機会を提供することを認識している。同社はすでに、Coinbase(コインベース)、Crypto.com(クリプト・ドットコム)、FTX、MoonPay(ムーンペイ)、Meta(メタ)のNovi(ノビ)など、複数の暗号資産企業の決済機能の一部を提供している。

しかし、フィアット通貨(中央銀行券など)と暗号資産の橋渡しをすることは、Web3の方程式の一側面に過ぎない。Checkout.comは、顧客がデジタル通貨を使って商品取引を決済できるようにするためのソリューションの、ベータテストを行っている。つまり、Web3版のCheckout.comこそが本当の意味でのCheckout.comになる可能性が高いということだ。

画像クレジット:Checkout.com

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

JR東日本が新たなICカード「Suica Light」を地方自治体や法人向けに販売、デポジット不要&残高期限付き

JR東日本が新たなICカード「Suica Light」を地方自治体や法人向けに販売、デポジット不要&残高期限付き

JR東日本が新たなICカード「Suica Light」を発表しました。

「Suica Light」は、地方自治体の交通費補助事業での利用を想定したICカードです。

500円の預り金(デポジット)なしで最大6か月間利用可能。チャージ残高の払い戻しや再発行には応じません。

通常のSuicaと同様、全国の相互利用対象エリアの鉄道・バス等で利用できるほか、店舗やタクシー、観光施設等で電子マネーとしても利用できます。

販路については、前述のとおり地方自治体の交通費補助事業や、修学旅行など短期の団体旅行での利用を想定しているため、一般向けの販売は行わず、自治体や旅行代理店等、法人向けのみとなります。

この「Suica Light」は、千葉県四街道市の「四街道ふるさとの味お届け便支援事業」に採用が決定済。

同事業では、新型コロナウイルス感染症の影響で、帰省が困難となっている四街道市出身で千葉県外に居住している18歳から25歳の学生を対象に、「Suica Light」と市の特産品等を1月下旬より配布します。

(Source:JR東日本Engadget日本版より転載)

法人向け後払いサービスのPayment Technologyが4億円調達、売掛金早期回収サービスや個人向け後払いサービスを公開予定

法人向け後払いサービスのPayment Technologyが4億円調達、売掛金早期回収サービスや個人向け後払いサービスをリリース予定

立替式給与前払いサービス「前払いできるくん」や法人向け後払いサービス「1 month delay payment」などを提供するPayment Technologyは1月6日、第三者割当増資・株式譲渡による総額約4億円の資金調達を行なったことを発表した。引受先は、Branding Engineer、ヤマノビューティメイトグループ、ほか法人および個人投資家。調達した資金は、ウェブマーケティングの強化、システム構築・拡充、営業体制の構築に充当し、上場に向けた多チャンネルでの収益体制の構築を目指す。

調達した資金の用途

  • 法人向け後払いサービス「1 month delay payment」のウェブマーケティングの強化
  • 売掛金早期回収サービス(2022年1月リリース予定)のシステム拡充、営業体制構築
  • 個人向け後払いサービス(2022年3月リリース予定)のシステム構築、アプリ開発、ウェブマーケティングの実施
  • 給料前払いサービス「前払いできるくんLITE」のウェブマーケティングの強化

前払いできるくんは、前払いのための資金をPayment Technologyが直に立て替える給与前払い福利厚生サービス。中・大規模企業向けの通常のプランのほか、従業員1名から利用できる小規模・個人事業主向けの「前払いできるくんLITE」も用意されており、LITEは財務審査なしで利用が可能。社員の前払申請に対し、Payment Technologyが直接立替払いを行なうため、企業のキャッシュフローを圧迫することなく給与の前払い手続きが完了する。

1 month delay paymentは、振込代行サービスとクレジットカード決済を組み合わせることで、BtoBにおける取引先への経費支払いを最大53日まで延長するサービス。Payment Technologyが立替払いを代行し、契約者は後日クレジットカードで同社に立替金と利用料を支払う仕組みとなっている。

オンライン貸付投資のFunds、三菱UFJ銀行に年利1%で間接的にお金を貸せる融資型クラウドファンディング公開

個人が1円からの貸付投資を行える「Funds」(ファンズ)を運営するファンズは12月24日、三菱UFJ銀行を借り手とする「Money Canvasファンド#1」を公開した。

Money Canvasファンド#1は、予定利回り1%(年率、税引前)、予定運用期間11カ月としており、借り手が三菱UFJ銀行になる。貸付けは直接にはファンズ子会社であるファンズ・レンディングが行い、投資家は同社に対して当該貸付けの原資を匿名組合契約に基づき出資する。複数ファンドの出資金が同一の借り手企業に1つの金銭消費貸借契約でまとめて貸し付けられるシリーズファンドとして、2022年2月上旬まで総額3億円の募集を予定している。

また同ファンドは、三菱UFJ銀行の総合サービス「Money Canvas」第1弾商品にあたる。Money Canvasは、超高齢化社会において老後の生活資金としての備えや、将来に向けた計画的な資産形成のサポートを目的としたサービスという。Money Canvasファンド#1は、双方のプラットフォームの価値向上を目的として、Funds上での募集に加えてMoney Canvas上でも詳細情報が提供される。

今後ファンズと三菱UFJ銀行は、Money Canvasユーザーのみに向けた投資家限定ファンドや、三菱UFJ銀行以外が借り手となるファンドの共同販売を実施するなど、ユーザーがメリットを享受できる取り組みを検討しているという。

2016年11月設立のファンズは、個人が1円から・1円単位で企業に対する貸付投資を行えるオンラインプラットフォームFundsを提供。これまで上場企業を中心とした48社が組成する147のファンドを募集し、分配遅延・貸し倒れは0件(2021年11月末日現在)となっているそうだ。

ラインナップしているファンドの利回りは1~3%台が中心。参加企業は、ファンズが定める財務状況や事業計画などの選定基準をクリアした企業に限定している。

中小ビジネス向け融資プラットフォームのAmplaがシリーズAで約45.7億円調達

Amplaの創業チーム。(左から)Jim Cummings(ジム・カミングス)氏、Anthony Santomo(アンソニー・サントモ)氏、Jie Zhou(ジー・ゾウ)氏(画像クレジット:Ampla)

中小規模の消費者向け事業者に融資を行うAmpla Technologies(アンプラ・テクノロジーズ)は米国時間12月22日、4000万ドル(約45億7000万円)のシリーズAラウンドをVMG Partners(VMGパートナーズ)とForerunner Ventures(フォアランナー・ベンチャーズ)のリードで完了したことを発表した。

既存出資者のCore Innovation Capital(コア・イノベーション・キャピタル)もラウンドに参加した。Amplaはこの少し前、今回の株式投資とは別に2億5000万ドル(約285億4000万円)の負債融資を受けて事業を強化している。今回の資本投入によって、ニューヨーク拠点スタートアップの2019年創業以来の総調達額は、株式が5000万ドル(約57億9000万億円)、負債融資が3億3000万ドル(約376億8000万円)となった。

中小事業者やeコマース事業者に融資しているスタートアップは他にも数多くあるが、Amplaは自社の差別化要因を「オムニチャンネル」収益ストリームを考慮した融資限度枠を提供していることだと説明している。目標は、ファウンダーが低コストでより多くの資本を手に入れられるようにすることだとAmplaのCEOでファウンダーのAnthony Santomo(アンソニー・サントモ)氏はいう。

たとえばAmplaの主力プロダクトは、企業に(収益を上げる前でも)運転資金を貸し出すことで、在庫確保やマーケティングなどに出費できるようにすることが目的だ。現在Amplaは、eコマースと小売店舗チャンネル両方の消費者ブランド業界にいる中小企業を扱っている。同社「独自の」のデータに基づく保証ツールは、ビジネス全体を評価し「完全に透明」な利息と高い貸し出し限度で融資を行い隠れコストはない、とサントモ氏はいう。

ベンチャー資金の調達とは異なり、運転資金の調達は非希釈的(既存株主の持分比率が減らない)だ。最近、Clearco(クリアコ)やSettle(セトル)など、代替融資を行うスタートアップがいくつもでてきている。

Amplaはその一歩先を行き「新興企業がより効率的に成長する」ための周辺金融ツールを提供しているとサントモ氏はいう。

現在同スタートアップには、Partake Foods(パーテイク・フーズ)、Bev(ベヴ)、Good Planet Foods(グッド・プラネット・フーズ)、およびSerenity Kids(セレニティ・キッズ)など200社以上の顧客がいる。Amplaの顧客企業のファウンダーは、30%近くが白人以外で、40%以上が女性だと同社幹部は語った。

同社は具体的な売上数値は明らかにしなかったが、月間取引量は直近12カ月に300%以上伸びたと言った。同じ期間に社員数は4倍の40名になった。

Amplaは新たな資金を使って、プロダクト、テクノロジー、営業、および運用各部門の追加雇用を行う計画だ。

「チームを拡大することによって、新たなプロダクトの提供と既存プロダクトの改善を迅速に行えるようになります」とサントモ氏がTechCrunchに話した。「すべてのプロダクトは顧客からのフィードバックと要望に基づいています」。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックはeコマース利用に変革を起こした。パンデミック到来時「Amplaはすぐに、顧客基盤の大部分でEコマース販売が急増していることに気づきました」とサントモ氏は言った。「こうしたeコマース販売の大幅な増加によって、商業レベルの本格的運転資金ソリューションの需要が世界中で生まれました」。

Forerunner Venturesの代表、Jason Bornstein(ジェイソン・ボーンスタイン)氏は、Bonobos(ボノボス、Walmart[ウォルマート]のeコマース主導アパレル小会社)の創成期に顧客獲得・需要計画の責任者を務め、1億ドル(約114億4000万円)以上の資金を調達した。

同氏はこう回想した「当時オンラインでブランドを構築するのは簡単でしたが、オンラインでビジネスを構築するのはとても困難でした」。

「それでもこの10年で、デジタルブランドを立ち上げる手法が確立されました。プロダクトやサービスの実施レイヤーが成熟し、今はデジタルブランドの活気あふれるエコシステムができ上がっています」と同氏がメールで言った。「しかし、こと融資となると選択肢はまったく明確ではありません。有名ブランドがVCエコシステムを通じてベンチャー資金を得ている一方で、ほとんどのブランドは規模拡大のための適切な資本を利用できません。どのブランドにも、自分たちのビジネスモデルや資金需要、そして熱意を正しく認識し理解してくれる融資プラットフォームがあるべきです」。

Forerunnerはデジタルブランドの早期からの支持者としてで知られているが、ボーンスタイン氏は、同社が「常に」、ブランドの販売戦略と市場でのプレゼンス確立において、店舗と卸(おろし)が重要な役割を果たし続けると信じてきたことを強調した。

「Amplaはこの信念を共有していて、融資引き受けにあたってオムニチャンネルによる収益を考慮してくれる稀有な存在です」と同氏は言った。

VMG CatalystのパートナーであるBrooke Kiley(ブルック・カイリー)氏は、VMGには消費者プロダクトに投資してきた長い歴史があり、新興ブランドには有効な運転資金の選択肢がないことを直に見てきたことを指摘した。

「既存の選択肢は、起業家に混乱とイライラを与えるだけです。Amplaを使えば、見た通りのものが手に入ります」とカイリー氏がメールに書いた。「隠れコストや意図的に混乱させる仕組みはありません。会社は1つの収益チャンネルだけでなくビジネス全体で評価されます。そして、顧客を念頭においた柔軟な条件で融資を受けられます」。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

財務データのフローを自動化するフィンテック「LiveFlow」がYCやKlarna創業者からシードで約4億円調達

CTOのエバン・オブライエン氏、CEOのラッセ・カルカー氏、COOのアニータ・コイミュール氏(画像クレジット:LiveFlow)

フィンテックのスタートアップ「LiveFlow(ライブフロー)」は、Moonfire Venturesがリードし、Y Combinator(YC、Yコンビネータ)、Seedcamp、WndrCoが出資したシードラウンドで、350万ドル(約4億円)を調達した。また今ラウンドには、Klarna(クラーナ)の共同創業者であるVictor Jacobsson(ビクター・ヤコブソン)氏、元Google(グーグル)の製品担当VPであるBradley Horowitz(ブラッドリー・ホロウィッツ)氏、元Airbnb国際展開担当VPのOliver Jung(オリバー・ユング)氏、Peakonの創業者兼CEOのPhillip Chambers(フィリップ・チェンバース)氏などが参加した。

LiveFlowは、会計サービス、銀行、決済プラットフォームからのリアルタイムデータをカスタムレポートに同期させることで、ワークフローの自動化、企業アカウントの統合、全社的なコラボレーションを可能にする。

CEOのLasse Kalkar(ラッセ・カルカー)氏、Anita Koimur(アニータ・コイミュール)COO(元Revolut)、Evan O’Brien(エバン・オブライエン)CTO(元Web Summit)によって約1年前に設立されたLiveFlowは、Ascent CFO、CFO Minded、TinyCFOなどの会計事務所や、Y Combinator発のスタートアップ企業など、ほとんどの顧客を米国内に抱えている。

LiveFlowの共同設立者兼CEOであるカルカー氏はこう語る。「以前、勤めていた会社では、財務報告書を手作業でまとめることにフラストレーションを感じていました。LiveFlowのアイデアはそこから生まれたのです」。

Moonfire Venturesの創設者兼マネージングパートナーのMattias Ljungman(マティアス・リュングマン)氏は次のように述べている。「LiveFlowは、レポート作成プロセスを自動化・合理化することで重要なサービスを提供し、企業がビジネスをよりよく管理するために必要な可視性とリアルタイムの情報を提供します」。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

インド最大のフィンテック「Razorpay」が約426億円調達、評価額約8511億円

インド最大のフィンテック巨人であるRazorpay(レーザーペイ)は、企業価値を4月の30億ドル(約3404億円)から75億ドル(約8511億円)へと2倍以上に増やし、急成長を見せつけるとともに積極的に提供サービスを拡大している。

現地時間12月19日夜、インドの決済サービスで市場をリードするベンガルール拠点のスタートアップは、シリーズFラウンドで3億7500万ドル(約426億円)調達したと発表した。今回のラウンドは、同社がこれまでに調達した総額を超える資金をもたらすもので、Lone Pine Capital、Alkeon Capital、およびTCVの3社がリードした。

最新ラウンドには既存投資社のTiger Global、Sequoia Capital India、GIC、およびY Combinatorも参加した。これまでの7年間で総額7億4000万ドル(約840億円)を調達したとRazorpayは述べている。

Razorpayは、中小企業や大企業の決済受付、処理、支払いを行うサービスを提供している。同社はネオバンキングプラットフォームも運営しており、そこでは企業向けにクレジットカードの発行や運転資金の貸付を行っている。他に90以上の通貨に対応した海外決済ゲートウェイも提供している。

その他同社が企業に提供しているサービスには、納税手続き支援、メールやインスタントメッセージで送付できる決済リンクの生成、さまざまな支払い方法に対応した自動更新サブスクリプションプラン、バーチャルアカウントとUPI IDを使った取引の自動照合などがある。

Razorpayが提供しているサービスは、インドではほぼ無名の国際決済の巨人Stripeと類似している。ここ数年同社は東南アジアのいくつかの国にも進出している。

Razorpayの取扱高は年間600億ドル(約6兆8084億円)に上り(2019年は50億ドル[約5674億円]だった)、800万社を超える顧客企業の中には、Facebook(フェイスブック)、Swiggy(スウィッギー)、Cred(クレド)、National Pension System(国家年金機構)、Indian Oil(インド石油)らがいる。2021年インドでユニコーンになったスタートアップ42社中、34社がRazorpayを利用している。

「当社の決済事業は伸び続けています。過去1年半に、ネオバンキングと融資に関する命題も達成しました」とRazorpayの共同ファウンダーでCEOのHarshil Mathur(ハーシル・マトゥール)氏はインタビューで語った。

「私たちの願いは、会社を始めた人がRazorpayに登録すれば、銀行口座開設から支払い、入金、給与支払いまで財務面のすべてを当社に任せられることです。他を探していろいろなツールを使う必要はありません」と同氏は付け加えた。顧客のビジネスが成長すれば、Razorpayも一緒に成長する、と彼は言った。

マトゥール氏とShashank Kumar(シャシャンク・クマール)氏(もう1人の共同ファウンダー)の2人(上の写真)はIIT Roorkee college(インド工科大学ルールキー校)で出会った。当時インドの中小企業はネット経由で送金を受けるために多くの困難に直面しており、既存の決済処理会社は彼らのニーズに対応することに目を向けていなかった。

企業価値を2020年の10億ドル(約1135億円)強から75億ドルへと引き上げたRazorpayは、今やインドで最も価値の高いフィンテックスタートアップだ。しかし、ここまでの道のりは容易ではなかった。

ファウンダーたちはスタートアップ設立後の数年間、銀行と一緒に仕事をするための説得に苦闘した。交渉は遅々として進まず、彼らは投資家たちに何度も同じ説明を繰り返しては絶望を感じたと以前のインタビューで回想していた。

「この7年間、Razorpayを顧客第一のテクノロジーサービス会社にするために休まず働いてきました。Razorpayチームが2014年以来捧げ続けているものがあるとすれば、それは再発明を止めないことです」とクマール氏は言った。

同社は提供サービスの拡充に焦点を絞るとともに、インドと東南アジアでの成長を加速するために600名以上を雇用する計画だ。

最近Razorpayは、パスワード、カード情報、住所など買い物客の個人情報を初めての購入時に保存し、次回その情報を同じ店だけでなく、Razorpayで決済している他の店で決済する時にも予備入力される機能を導入した。しかし消費者向けのネオバンキングサービスを提供するつもりはないとマトゥール氏は言った。

「消費者に焦点を当てた何かを提供する可能性はありますが、純粋な消費者向け機能からは2つの理由で距離を置いています。1つはその分野で他の会社が提供していないような大きな付加価値を与えらるものを持っていないこと、もう1つは、消費者向けビジネスに参入することで得られる大きなものが見えないからです」と同氏は語った。

RazorpayはIPOの準備も進めているが、少なくともあと2年半は上場するつもりはないと語った。

「急速に加速するインドのデジタル決済市場でオンライン決済をリードしているRazorpayは、常に新しい道を開拓しています」とAlkeon CapitalのゼネラルパートナーであるDeepak Ravichandran(ディーパク・ラビチャンドラン)氏が声明で言った。

「Razorpayが決済、バンキング、ソフトウェアのさまざまな製品通じてオンラインの売り手(既存の決済プロバイダーから長年虐げられきた)にシームレスなエンド・ツー・エンド体験を提供し、地理的な拡大も視野に入れている今、ビジョンの実現に向かって進み続けるマトゥール氏、クマール氏と彼らのチームと提携を結べることを大いに喜んでいます。これからの旅が楽しみでなりません」。

画像クレジット:Razorpay

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

認知症による資産凍結を防ぐ家族信託サービス運営のファミトラが総額約14億円のシリーズA調達

認知症による資産凍結を防ぐ家族信託サービス運営のファミトラが約14億円のシリーズA調達、サービス開発と採用・組織体制強化

家族信託(民事信託)サービスの「ファミトラ」を運営するファミトラは12月15日、シリーズAラウンドにおいて総額約14億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、Eight Roads Ventures Japan、Coral Capital、DG Daiwa Ventures、Aflac Ventures LLC(アフラック・イノベーション・パートナーズが支援)、東京海上日動火災保険、みずほ銀行など。累計資金調達額は約17億円となった。

家族信託は「大切な家族の資産を家族で守る」ための仕組み。家族信託では、資産の所有者(委託者)と、家族など信頼できる人(受託者)との間で、資産の管理を委託する契約を交わす。契約締結後は、受託者が信託財産の形式的な所有者となり、信託契約書の定める通りに資産の管理・運用・処分を行うことになるため、たとえ委託者が契約締結後に認知症を発症しても、資産が凍結されることはない。信託する資産の種類や、どのように資産を管理するかを、委託者の意向に沿って柔軟に設定できるという点が、家族信託の特徴となっている。

ファミトラは、高齢化が進む日本で、認知症者の資産凍結がより深刻な社会問題になると予測されることを背景に「簡単に・早く・安く」家族信託を始められるサービスを提供。ITによるオペレーションで効率化と低価格化を実現し、家族信託の組成に必要な信託契約書の作成、専用の銀行口座の開設、不動産登記手続きなどをサポートする。認知症発症前に家族間で資産の管理を委託する契約を交わすことで、本人の意向に沿った柔軟な財産管理を可能にする「家族信託」が、より身近な選択肢になるためのサービスを展開している。

今回調達した資金は、採用・組織体制の強化とサービス開発に充当される。家族間の資産管理を行ないたい方との接点となる、保険会社や銀行、介護事業者、証券会社などとの連携に取り組み、家族信託のDXを加速させることで「家族信託があたりまえの選択肢になる世界」を目指す。認知症による資産凍結の事前対策としての家族信託の周知、家族信託関連サービスやビジネスの創出、さらなるマーケットの拡大を図りたいという。

 

WhatsApp、米国の一部ユーザーにNovi送金機能提供開始

10月にMetaとなったFacebookが、同社の暗号資産のウォレットNoviの小規模なパイロットテストを、米国とグアテマラで行った。それ以降テスターたちは、お互いの間の個人的な決済をそのサービスでできるようになっている。そして今回、同社は米国の少数の人たちがWhatsAppの中でNoviによる決済の送受をできるようになると発表した。

この展開は意外なものではない。Noviの共同創業者のDavid Marcus(デビット・マークス)氏は以前、MetaはNoviの決済を同社のすべての子会社、すなわちFacebookとInstagramとWhatsAppに展開すると語った。WhatsAppの場合は、送金はメッセージを送ることと同じぐらい簡単で、送金のためにアプリケーションを出る必要もない。手数料が発生しない単純な送金方法でもある。まずユーザーは、WhatsAppの中に送金相手の連絡先を見つけ、テキストバーの中の、Androidならクリップのアイコン、iOSなら+のアイコンをタップし、Paymentをセレクトして、Noviのアカウントへの入り方のインストラクションに従う。

NoviのトップであるStephane Kasriel(ステファン・カスリエル)氏がTwitterで次のように述べている。「家族などへの送金に関する話をWhatsAppでしているという話をよく聞きます。Noviならそれが安全かつ無料で瞬時に行えます。決済がチャットの中に、直接表示されるのです」。

Facebookは長年にわたり、同社のデジタルウォレットと、同社がサポートする予定だった暗号資産Diem(以前はLibra)をときどきちらつかせてきた。しかし世界中の規制当局から反発にあったため、Diem Associationは方針を変え、そしてNoviは最終的に米ドルに支えられたPax Dollar(USDP)と呼ばれるステーブルコインを使うことになった。「1USDP=1米ドル」である。Noviを使うとき暗号資産を買う必要はなく、それは単純に、ステーブルコインを手段とする送金行為にすぎない。WhatsAppの上でNoviを使ってUSDPを送ることはまだその可利用性が極端に限られているが、カスリエル氏によると、その体験に関するユーザーからのフィードバックがあり次第、利用域をもっと拡張するという。

編集者注:本記事の初出はEngadget。執筆者のMariella MoonはEngadgetのアソシエイト・エディター。

画像クレジット:Meta

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(文:Mariella Moon、翻訳:Hiroshi Iwatani)

後払い決済「クラーナ」がブラウザー機能拡張を公開、支払いとクーポン利用が可能

フィンテックスタートアップKlarna(クラーナ)は、同社のモバイルアプリが提供するさまざまな機能をデスクトップPCでも使えるようにするブラウザー機能拡張を公開した。Klarnaの決済を管理する以外に、チェックアウトページに進むと自動的にクーポンコードを適用することができる。

Klarnaはこの自動クーポン機能のためにPiggy(ピギー)を買収した。Piggyが最初に作ったのは、何かを買った時にクーポンやキャッシュバックの存在を知らせるブラウザー機能拡張で、FinancerFWDが最初にこの買収を報じた。Klarnaは契約条件を公表していない。

Klaranaのこの動きは興味深い、なぜならつい最近PayPal(ペイパル)がHoney(ハニー)を買収したばかりだからだ。Honeyもチェックアウトページでクーポンコードを使うためのブラウザー機能拡張を作った会社だ。言い換えると、PalPalとKlarnaは、ショッピング用ブラウザー機能拡張を支配するための開発競争をしている。

既存のPiggyユーザーは新しいKlarna機能拡張に移行される。Klarnaのアカウントを新規作成する際、既存のPiggyのデータを移行するか、1から始めるかを選ぶことができる。現在Piggyでは70人の従業員が働いていて、買収前時点で120万人のユーザーがいた。チームはKlarnaに加わり、現在Piggyのクーポン機能を他のKlarna製品に統合する作業に取り組んでいる。

Klarnaではクーポン集約機能の他に、ユーザーはキャッシュバックやギフトカードを貯めることもできる。対象は国によって異なり、米国とドイツでは報酬をキャッシュバックの形で受け取り、英国とフランスではギフトカードを受け取る。

画像クレジット:Klarna

画像クレジット:Klarna

しかしKlarnaの新製品は、単なるHoneyライクな機能拡張ではない。Karnaの後払い決済(BNPL)を使うためにも使える(そもそもKlarnaは分割払いでよく知られている)。現在、高額の買い物の支払いを分割するためにKlarnaの機能を利用するにはいくつかの方法がある。

Klarnaボタンの付いているチェックアウトページにいる時は、Klarnaアカウントでログインして、後払いを選ぶことができる(Klarnaアカウントを使って今すぐ払うこともできる)。

Klarnaは、店舗内購入でもBNPLを使えるオプションも提供している。一部の地域では、最大30日後に支払えるカードも提供していて、オンラインでも店舗内でも使える。

しかし、元々Klarnaをサポートしていないオンラインストアで後払いしたいときはどうすればいいか?Klarnaのモバイルアプリを開いてチェックアウトページ内でワンタイムカードを作成することができる。カードは普通のVisaカードのように使えるが、分割払いでカードに請求される。

Klarnaの新しい機能拡張を使うと、ワンタイムカードをデスクトップブラウザーで作ることができる。支払いの段階でカード情報を決済画面にコピー&ペーストすればよい。

モバイルアプリとブラウザー機能拡張は同期されている。例えばデスクトップで保存した項目をモバイルアプリで追跡することができる。現在この機能拡張はGoogle ChromeとMicrosoft Edgeで利用できる。

同社はFirefoxとSafariでも機能拡張を提供する予定だ。米国、英国、ドイツ、およびフランスのユーザーが同機能拡張をダウンロードできる。他の国々にもいずれ展開する予定だ。

この新製品によって、KlarnaはB2B決済ビジネスだけでなく、消費者向け商品も作りたいことを改めて示した。PayPalはデジタルウォレット業界の明らかなリーダーだ。果たしてKlarnaがPayPalに挑んで、消費者がオンラインで支払うときの習慣になれるのだろうか、その成り行きは興味深い。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アメリカン・エキスプレスがOpyと提携、米国で初めてサードパーティー製BNPL(後払い販売)サービス提供へ

クレジットカード会社はこぞって「後払い販売(BNPL、buy now, pay later)」への参入を進めようとしている。American Express(アメリカン・エクスプレス、mAmex)は米国時間12月2日、オーストラリアのフィンテックOpenpay(オープンペイ)の米国法人であるOpy(オパイ)と提携して、米国の全カードメンバーがヘルスケアおよび自動車関連の指定商品を分割払いで購入できるようにする。

この提携は、American Expressにとって米国で初めてのサードパーティーBNPL契約だと、同社広報担当者がTechCruncにメールで伝えた。Amexは、対象セクターの売り手開拓を支援する。

Opyはこのソリューションを、従来型BNPLモデルの改善バージョンだと説明し、「buy now, pay smarter(今買って、賢く支払う)」と称している。Opyは利用者に最大2万ドル(約226万円)を一度に貸し出し、最大24カ月の支払いプランを固定金利で提供する。これはAffirm(アファーム)やKlarna(クラーナ)などの企業が提供する短期分割払いとは異なっている。

American Expressは、独自のBNPLサービスを「Pay it Plan it」プログラムの名称で2017年から100ドル(約1万1300円)以上の買い物を対象にすでに提供中で、金利はやはり固定だ。Opyとの提携によって、Amexは高額の買い物を長期にわたって支払う選択肢を望む顧客に答えることができるだろうと、Opy U.S.のCEOであるBrian Shniderman(ブライアン・シュナイダーマン)氏がTechCrunchに話した。

「大きい買い物、すなわちこれは当社が特化している1000ドル(約11万3100円)から2万ドル(226万2700円)のモノを買う時、60日というのは十分な支払期間ではありません」と同氏は語った。

9.99%以下の低い金利を可能にしているのは、ターゲットが財務に明るい顧客からなる非常に特別な層だからだ、とシュナイダーマン氏はいう。顧客の平均年齢は40歳で、ちなみに他のBMPLプロバイダーの平均的顧客は20代だと彼は付け加えた。ヘルスケアと自動車部門だけでなく、Opyは住宅修繕と教育的資格獲得のための融資も行っているが、これらはAmexとの提携には含まれていない。

「当社のサービスは予測可能で透明性があります。他の後払い決済サービスを見ると、延べ払い利息や、支払いできなかった時の未払い利息があります。0%利息のはずが、融資期間全体に非常に高い利息がかかっているかのように再計算されます」と話すスナイダーマン氏は、元の職場であるDeloitte(デロイット)でAmexと密に協力した経験がある。

Amexの主要なライバルたちも最近BNPLに進出を果たし、Stripe(ストライプ)やSquare(スクエア)などの決済会社に対抗しようとしている。Mastercard(マスターカード)は、独自のMastercard Installmentsサービスをこの秋に提供開始し、その後すぐに、Visa(ビザ)もKlarna(クラーナ)とのブランド提携を発表した。

編集部注:Mary Ann Azevedo(メリー・アン・アゼベド)氏が本稿に協力した。

画像クレジット:Omar Marques/SOPA Images/LightRocket / Getty Images(Image has been modified)

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nob Takahashi / facebook

元Twitter CEOドーシー氏のSquareが「Block」に社名変更

フィンテック大手Squareは、12月10日より社名を「Block」に変更する。1年以上前から計画されていたこの名称変更は、音楽ストリーミングサービス「Tidal」「Cash App」「TBD」、そして「Square」など、同社のさまざまなプロダクトを1つのブランドに収めることを目的としている。

今回の発表は、Squareの創業者兼CEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)が、自身が共同創業者でもあるTwitterのCEOを退任した数日後のものになる。

関連記事:ツイッターのジャック・ドーシーCEOが退任

プレスリリースの中でドーシー氏は「Squareブランドは、セラービジネスのために構築したものであり、それが本来の姿です。Blockは新たな名前ですが、経済的エンパワーメントという我々の目的は変わりません。私たちがどのように成長し、変化しても、経済へのアクセスを増やすためのツールを作り続けます」と述べた。

Blockという名称は、ブロックチェーン技術と暗号資産に対する同社の関心の高まりを表している。既存のSquare Crypto製品も「Spiral」に名称変更される。

「Blockという言葉は、売り手がいる『近所のブロック』『ブロックチェーン』『音楽でいっぱいのブロックパーティ』『克服すべき障害』『コードのセクション』『ビルディングブロック』そしてもちろん『タングステンキューブ』も参照しています」と同社はツイートしている。

2021年に入ってブランド変更を行った大手ハイテク企業は、Squareが初めてではない。Facebookは、報道機関議会での監視が強化されたことを受けて、わずか1カ月前にコーポレートブランドを「Meta」に変更した。しかし、Squareと同様に、MetaのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、Instagram、WhatsApp、Horizon、Questなどのプロダクトがある同社の成長を、Facebookブランドでは表現できないと感じていた。

Squareは、今回のブランド変更のタイミングについて「あなたにメタ的なことをいうつもりはありませんが……でも、そうするつもりです」と発表の中で言及している。

2021年の初め、AfterpayはSquareとの合併に合意した。また最近、同社のキャッシュアプリは13歳から17歳までの青少年が保護者の監視下で口座を開設できるようになり、Tidalは、2022年にアーティストへの直接のロイヤリティ支払いに移行する準備を進めている。

Blockのニューヨーク証券取引所のティッカーシンボルSQは変わらない。また、現時点では組織の変更は行わないという。

関連記事:【コラム】次世代グローバル決済を生み出すAfterpayとSquareの融合

画像クレジット:Joe Raedle / Staff / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Katsuyuki Yasui)

マイクロソフトがEdgeに後払い・BNPLサービスを標準で組み込むと予告、「ブラウザーが重くなる」など批判が相次ぐ

マイクロソフトがEdgeに後払い・BNPLサービスを標準で組み込むと予告、「ブラウザが重くなる」など批判が相次ぐ

Microsoft

マイクロソフトが自社のEdgeブラウザに「Buy Now, Pay Later」(今すぐ買って、後で支払う/以下BNPL)サービスを標準機能として組み込むと発表した件で、海外ユーザーから批判の声が上がっています。

このBNPLとは、海外や国内でも急速に成長しているデジタル後払い決済サービスのこと。すなわち商品を受け取ってから2週間~1か月程度のうちに、商品に同梱されたり、後日郵送で送られてくる(ないしスマホでペーパーレスの場合もあり)請求書により分割払いができる決済方法です。クレジットカードや銀行口座がなくてもネットショッピングできる手軽さのため、クレカを持たない若者層・クレカを作りたくない高齢者などに利用が広がっています。

さてテックメディアArs Techncaによると、MSは2週間前に「Zip」というアプリをEdgeに直接組み込む予定だと発表。本アプリは旧名がQuadpay(Zipが同業者のQuadpayを買収)で、BNPLサービスが利用できるもの。11月初めに拡張機能として導入され、Edgeのバージョン96以降ではブラウザに標準で組み込まれると公式にアナウンスされています

具体的な挙動としては、ネットショッピングで商品をチェックアウト(決済)する際に、クレジットカード番号を入力するのと同じ欄にオプションとして表示されるかっこうです。Edgeが購入価格を35ドル~1000ドル(Zipサービスがカバーできる価格帯)であると検出すると、Zipがポップアップするしくみ。

Zip支払いオプションは、ストアが望むと望まざるとに関わらず表示されることになります。もしも販売店がZipサービスを利用したくないなら、MSに連絡しなければならない(わざわざオプトアウトする必要がある)と通告されています

ほとんど一方的ともいえるZip導入に対して、MSの公式コミュニティでも批判が相次いで寄せられています。たとえば「ブラウジングをする上で、まったくもって不必要だと思います(中略)こういったものは拡張機能に分けるべきだ。それよりも最低限のリソースしか使わず、安全性も高い、高速なブラウザに興味がある。MacのEdgeはどんどん重くなっていますよ」といった声もあり。

また別のレビュアーは「サードパーティアプリの統合やサービスをやりすぎている(中略)不必要な金儲けのために、せっかくの素晴らしいブラウザを台無しにしないでください。Edgeがアドウェアのゴミとして知られるようになる前に、こういうことを止めましょう」と簡素なあり方から遠ざかる動きに釘を刺しています。

さらにZipは無金利ではあるものの、1回の分割払いごとに1ドルが上乗せされるため、4回払いであれば手数料は4ドルに上ります。これは最大額の1000ドルであれば大した問題ではありませんが、最少額の35ドルであれば実質の金利は11%以上となってしまいます。

より重大な問題としては、ユーザーと加盟店などセキュリティを管理すべき(=攻撃対象にできる)関係者が多くなり、ハッカーが悪用できる潜在的な脆弱性を抱えたコードが増えるという危険も指摘されています。ほかBNPLはクレジットスコア(個人のお金に関わる信用度を数値化したもの)をチェックしないため、犯罪者のターゲットになりやすいとの報道もありました

記事執筆時点ではZipサービスは日本では提供されていないため(米メルカリでは提供開始していますが)国内ユーザーには縁が薄そうな感もあります。が、不要な拡張機能が標準で組み込まれてしまうと、ブラウザの動作が重くなり、非力なPCであれば仕事に支障をきたしかねません。今後のMSの対応を注視していきたいところです。

(Source:Ars Technica。Via The VergeEngadget日本版より転載)