住宅事業者向けクラウド型住宅ローン業務支援システムのiYellが35億円のシリーズD調達

住宅事業者向けクラウド型住宅ローン業務支援システムのiYellが35億円のシリーズD調達

iYellは2月9日、シリーズDラウンドとして、第三者割当増資による合計35億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、フィデリティ・インターナショナル、ソフトバンク、三井住友信託銀行(CVCファンド「Sumi Trustイノベーションファンド」)、SREホールディングスなど合計15社。累計調達額は約76億円となった。

調達した資金により、テレビCMなどのマス広告を活用したマーケティング活動への投資を行い、住宅ローンプラットフォームをマーケットに浸透を図る。また、住宅ローンの効率化にとどまらず、住宅購入や住宅関連分野の課題解決へと広げていくために、事業の拡大を狙ったM&Aを実施するという。

さらに、社会課題解決にも着手し、昨今問題となっている、住宅ローンの不正を未然に防ぐために、不正の疑いのある情報を検知するシステムや個人情報漏洩事故を防止するデータ送信クラウドシステムの開発に対しても投資を行う。住宅事業者向けクラウド型住宅ローン業務支援システムのiYellが35億円のシリーズD調達

日本では、住宅事業者が住宅購入相談とともに住宅ローン相談・手続きサポートを行っており、本業ではない住宅ローン手続きで業務が逼迫しているという。また、住宅事業者は住宅ローンの専門家ではないため、ユーザーと金融機関の最適なマッチングを行うのが難しいことも課題となっている。

これに対してiYellは、住宅事業者向けクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を提供。いえーる ダンドリは、住宅・不動産会社のアナログかつ煩雑な業務の多さやブラックボックス化された住宅ローン審査による住宅販売機会の損失などの課題に対して、(住宅・不動産会社の)業務削減・売上増加といった事業成長を支援するという。

住宅・不動産会社に対する住宅販売の増加につながる住宅ローン業務支援を通じ、エンドユーザーの希望に沿った最適な住宅ローン提案や手続きのサポートを行う。住宅ローンの知識と金融機関などのネットワークを保有する「専門家」がクラウド化された独自テクノロジーを活用して、シームレスで安心・健全な借入プロセスを実現するとしている。

2016年5月設立のiYellは、金融機関・住宅事業者・エンドユーザーが抱える住宅ローンの課題を同時に解決するため、「国内最大の住宅ローンテックベンチャー」を標榜。住宅ローンのマーケットプレイスを軸としたiYell住宅ローンプラットフォームを構築している。現在では、全国数百行の金融機関、数千社以上の住宅事業者が参画するプラットフォームへと成長しているという。

EC・SaaS企業に収益ベース融資で資金を提供する仏SilvrがシリーズAで約171.5円調達

フランスのスタートアップ「Silvr」は、シリーズAラウンドで1800万ユーロ(約23億7500万円)の資金を調達するとともに、同社の活動のために1億1200万ユーロ(約147億8000万円)のデット調達も実施した。Silvrは、eコマース企業やSaaS企業に新たなクレジット機会を提供したいと考えている。基本的にSilvrが目指しているのは、米国のPipe(パイプ)やカナダのClearco(クリアコ)のような経験をヨーロッパに導入することだ。

中央ヨーロッパ時間2月8日の資金調達ラウンドには、XAnge、Otium、Bpifrance、Eurazeo、ISAIが参加した。また、Alexandre Prot(アレクサンドル・プロット)氏、Steve Anavi(スティーブ・アナビ)氏、Raphaël Vullierme(ラファエル・ヴァルリエム)氏、Louis Chatriot(ルイ・シャトリオ)氏、Pierre Dutaret(ピエール・デュタレ)氏などのビジネスエンジェルも出資している。

2020年にスタートしたSilvrは、Cuure、French Bandit、Almé Paris、Emma&Chloéなど、すでに100社に出資している。VCファンドとは異なり、Silvrは資本を提供するが、株式は取得しない。また、従来の銀行とは異なり、Silvrは資産を持たないリスクの高いビジネスにも融資することができる。

企業がSilvrにクレジットを申請すると、企業は銀行口座、Google Analytics、Shopify(ショッピファイ)などのECプラットフォーム、Stripeなどの決済に使用しているプラットフォームなど、さまざまなデータソースへのアクセスを許可する。

Silvrは独自のスコアリングアルゴリズムを開発しており、これらのデータに基づいて意思決定を行う。同社は今のところ、主にeコマース企業とSaaSスタートアップに焦点を当てている。そうすることで、過去の売上をもとに将来の収益を予測しやすくなるからだ。

平均して、クライアントはSilvrから何らかの融資を受けた2カ月後には、収益が64%増加している。また、Silvrのクライアントの35%がVCファンドから資金を調達していることからわかるように、Silvrは必ずしもVC資金に取って代わるものではない。

Silvrは、さまざまな資金の受け取り方を提供している。従来の電信送金に加えて、このスタートアップはバーチャルカードを提供したり、パートナーに直接支払うこともできる。たとえば、新しい広告キャンペーンのためにSilvrを利用したい場合、Silvrが直接請求書を支払うことも可能だ。

返済に関しては、クライアントは従来の月払いプランで返済することもできれば、収益の一部を返済に充てることもできる。

欧州でCapital-as-a-Service(CaaS、キャピタル・アズ・ア・サービス)に取り組んでいるのはSirvrだけではない。Karmenはフランスで、Uncappedは英国で、それぞれ同様の製品に取り組んでいる。

画像クレジット:Image Source / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

米アメックス、初の消費者向けフルデジタル当座預金口座を発表

American Express(アメリカン・エキスプレス)は、同社初の全デジタル消費者向けチェッキング口座サービスをローンチしたと、米国時間2月8日に発表した。この新しいサービス「American Express Rewards Checking」は、現在、対象となる米国のコンシューマーカード会員が利用可能だ。この動きは、デジタルバンキングサービスの出現により、伝統的な銀行はデジタル戦略を強化し、より競争力のあるバンキングサービスを提供することが求められている中でのことだ。

American Expressによると、この新口座は、対象となるデビットカードの購入でメンバーシップ・リワードのポイントが付与されるほか、年率利回りが全米平均の10倍となっており、対象となる購入品には購入保護が付く。また、毎月の維持費や最低残高の設定もない。American Express Rewards Checkingの年利率は0.50%で、対象商品の購入代金2ドル(約231円)につき1ポイントのメンバーシップ・リワード・ポイントが貯まるデビットカードが付属しており、このポイントは同チェッキング口座への入金に交換できる。また、会員はAmerican Expressアプリでチェッキング口座にアクセスして管理することができ、小切手をアプリで入金することも可能だ。

American Expressのコンシューマーバンキング部門の取締役副社長兼ゼネラルマネージャーであるEva Reda(エヴァ・レダ)氏は、声明の中で次のように述べている。「(カード)会員のみなさまは、当社からより多くの銀行商品やサービスを求めています。お客様は、自分にとって重要な特典を諦めることなく、当座預金にさらなる価値を求めています。そのようなことから、American Expressの強力で信頼性の高い後ろ盾のもと、会員のみなさまにさらなる価値をお届けするため、Amex Rewards Checkingを開発しました。妥協のないデジタルチェッキング口座です」。

また、この口座には、詐欺行為の防止と監視、電話やチャットによるカスタマーサービスへのアクセスが付いている。American Expressはこれまでにも、American Express High Yield Savings Account(HYSA、高利率預金口座)やCertificate of Deposits(CD、定期預金証書)などの消費者向け預金商品を提供してきたが、今回の新しい当座預金口座サービスは、これらの商品ラインアップに加えての提供となる。

画像クレジット:American Express

デジタルバンキングは、デジタルサービスへの需要の高まりと、新しいスタートアップやネオバンクの人気の高まりにより、従来の銀行セクターを進化させている。Varo BankChimeCurrentなどのスタートアップは、伝統的な銀行セクターを破壊し、American Expressのような金融企業が会員を惹きつけ、維持するために、より多くのサービスを打ち出す原因となっている。

8日の発表は、オーストラリアのフィンテック企業Openpayの米国子会社Opyとの提携計画に続くもの。この提携により米国のすべてのカード会員は、ヘルスケアと自動車の分野で対象となる購入をした際に、分割払いができるようになる。American Expressはすでに、2017年に開始した100ドル(約1万1560円)以上の購入を対象とした「Pay it Plan it」プログラムで独自のBNPL(後払い決済)オプションを提供しており、固定金利も提供している。今回のOpyとの提携により、Amexは、大きな買い物を長期間にわたって支払うオプションの需要に応えることができる。

2021年7月、American Expressは、スタートアップのBodesWellと提携し、ファイナンシャルプランニングにも進出した。クレジットカードの巨人である同社は「My Financial Plan(MFP)」と名づけられた初のセルフサービス型デジタルファイナンシャルプランニングツールの試験運用を開始した。この製品は、ユーザーが自分の財務状況を完全に把握し、住宅購入やリタイアなどの人生の大きなゴールを立てて達成できるよう支援することを目的としている。

画像クレジット:American Express

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(文:Aisha Malik、翻訳:Aya Nakazato)

アップル、iPhoneで非接触型決済を可能にする「Tap to Pay」機能を発表

Apple(アップル)は、iPhoneを非接触型決済端末にする新機能「Tap to Pay」の導入計画を発表した。同社によると、2022年後半に米国の事業者はiPhoneとパートナーが対応したiOSアプリを使ってApple Payやクレジットカード、デビットカードといったその他の非接触型決済を受け付けられるようになる。

この機能は、iPhone XS以降のモデルで利用できる。iPhoneを使ったTap to Payは、決済プラットフォームやアプリの開発者が、顧客の決済オプションとして自社のiOSアプリに組み込むことができる。Stripeは、新しいShopifyアプリでTap to Payを顧客に提供する最初の決済プラットフォームとなる。Appleによると、別の決済プラットフォームやアプリは2022年後半に加わる予定だ。

Tap to Payの提供が始まれば、事業者は対応するiOSアプリを通じて非接触型決済を利用できるようになる。会計時に、顧客にiPhoneまたはApple Watchを事業者のiPhoneに近づけてもらうと、NFC技術を使用して支払いが安全に完了する。非接触型決済を受け入れるために追加のハードウェアは必要ない。Appleはまた、iPhoneでのTap to Payでは顧客の決済データは保護され、この機能を通じて行われる取引はすべて暗号化されるとしている。

同社は、Apple Payはすでに米国の小売店の90%以上で利用されており、この新機能を使って顧客はよりシームレスに精算できるようになるとしている。Tap to Payは2022年後半に米国内のApple Storeの店舗でも導入される。Appleは、決済プラットフォームやアプリ開発者と緊密に連携し、米国内のより多くの事業者にTap to Payを提供する。Tap to Payは、American Express、Discover、Mastercard、Visaなど多くの決済ネットワークによる非接触クレジット / デビットカードで利用できる。

Apple PayおよびApple Wallet担当副社長のJennifer Bailey(ジェニファー・ベイリー)氏は「デジタルウォレットやクレジットカードで支払いをする消費者が増えている中、iPhoneでのTap to Payは、安全かつプライベート、そして簡単に非接触型決済を受け入れ、iPhoneのパワー、セキュリティ、便利さを活かした新しい精算体験を企業に提供します」と声明で述べた。

Appleによると、Tap to Payは今後リリースされるiOSソフトウェアのベータ版で、参加する決済プラットフォームとそのアプリ開発者パートナーが利用できるようになる。

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

ドイツの金融スーパーアプリVivid Moneyが評価額約1020億円で130億円調達、欧州全域で展開へ

50万人の顧客を持つベルリン発のチャレンジャーバンクVivid Money(ビビッドマネー)は、基本的な当座預金と資金管理のサービスに加え、株式や暗号資産投資も扱う金融ワンストップショップの「スーパーアプリ」として有名になった。そしていま、同社はプラットフォームにサービスを追加し、欧州全域で事業を展開しようと、1億ユーロ(約130億円)を調達した。同ラウンドはGreenoaks Capitalがリードし、Ribbit Capitalと新規投資家のソフトバンク・ビジョンファンド2が参加した。

今回の資金調達でのVividの評価額は7億7500万ユーロ(約1020億円)だ。参考までに、この数字は同社が6000万ユーロ(約79億円)を調達した2021年4月の前ラウンド時の評価額(約473億円)の2倍以上だ。また、この間にユーザー数は5倍、売上は25倍になったという。Vividはプラットフォームへの預け入れ総額や取引件数など詳細については公表していないが、Vividの共同創業者であるAlexander Emeshev(アレクサンダー・エメシェフ)氏は、2022年中にユーザー100万人達成を目標としている、と述べた。

Vividは現在、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアの4つの市場で事業を展開しており、2022年中に新たに5つの市場に進出し、2023年末までに欧州全域で利用できるようにする計画だ。新商品としては、保険商品の展開が初期段階にあり、エメシェフ氏によれば、2022年後半に初のクレジット商品を導入する予定だ(Vividは現在、ユーザーにVisaデビットカードを提供している)。

2020年にスタートしたVividは「COVIDネイティブ」のスタートアップと言えるかもしれない。モバイルファーストのサービスは、従来の銀行や投資サービスからすでに遠ざかっていただけでなく、パンデミックのために自宅で過ごす時間が増え、金融面の管理方法を再考していた30代のユーザーに訴えるものだった。

他の多くのネオバンクと同様、Vividの基本となるフリーバンキングは、他のプロバイダー(Vividの場合は、ドイツの組み込み型金融の大手Solarisbank)のインフラの上に構築されている。顧客が目的に応じて資金を最大15個の「ポケット」に分けることができ、ポケット間の移動も簡単にできるなど、よりカスタマイズされた資金管理サービスやその他のパーソナリゼーションサービスを加えている。

こうした基幹サービスとともに、暗号資産やETF(上場投資信託)などの新しい取引形態の金融サービスの波も押し寄せてきており、Vividはこれらも取り込むつもりだ。

Vivid Moneyのもう1人の共同創業者であるArtem Iamanov(アルテム・アイアムノフ)氏はインタビューで「当社のビジョンは、投資と貯蓄の巨大市場であるヨーロッパ大陸をターゲットにすることでした」と語った。「我々は、分散型金融や他の種類の代替投資アプローチがブームとなっていて、それらが従来型の銀行の世界とあまりよくつながっていないことを知っていました」。

そのつながりのなさは、理解という点でだけでなく、消費者の金融生活全体が伝統的なプラットフォームに基づいているときに、新しいサービスに足を踏み入れる方法という点でもそうだった。

Vividのソリューションは、ユーザーが既存のフィアット口座を使って簡単に株式や通貨について学び、その後投資できるような一連のサービスを作ることだった。例えば、同社は現在50の暗号資産と3000の株式やETFを選択できるポータルを提供し、分散型金融の分野に慣れておらず、さまざまなことを試しているかもしれないユーザーにアピールするように設計されている(これらの新しい投資ビークルの中にはSPACもあり、Vividは欧州で一般消費者がこれらのビークルに投資できる数少ないプラットフォームの1つだ)。

「古いものと新しいものの間に大きなギャップがあることがわかったので、この2つの世界の間で交わる商品にユーザーがアクセスできるようなスーパーアプリを作ることにチャンスを見出しました」とアイアムノフ氏は話した。

Vividのプラットフォームでの投資は無料で、ユーザーが米国株に投資する場合など、為替レートやその他の手数料でVividは利益を得る仕組みになっている。また「Prime」(Amazonはどう思っているのだろう)として販売するサブスクリプションを設け、月額9.90ユーロ(約1300円)を払えば、ユーザーはそうした手数料を払わなくてもいいようになっている。

チャレンジャーバンクがひしめく市場で、Sequoiaの支援を受けたネオブローカーのTrade Republicなど、Vividと非常に近い競合相手もいるが、Vividの出資者は同社の牽引力と、新しい消費者投資家にアピールするオールインワンで簡単なアプローチにより、同社が事業を拡大するにつれ、ユーザーと利用が増えるだろうと考えている。

「Vivid Moneyはわずか1年余りで、すでに欧州で最も愛されている消費者向けバンキングプラットフォームの1つを構築し、ユーザーは金融生活全体を1つのアプリで管理できるようになりました。2021年投資して以来、Vivid Moneyの新製品開発のペースの速さを目にして感激しており、Vivid Moneyは既存ユーザーを喜ばせ、新規顧客を引き付け、プラットフォームの価値提案を深化させています」とGreenoaksのパートナー、Patrick Backhouse(パトリック・バックハウス)氏は声明文で述べた。「我々は消費者金融における革命のまだ初期段階にいると考えており、事業を拡大し続けるVividとのパートナーシップをさらに深化させることをうれしく思っています」。

画像クレジット:Vivid Money

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

手持ちのモノを売り支払いに充てられる決済プラットフォームTwigが約40.3億円調達、「グリーン」を謳うがそのサステナビリティにはほころびが見える

Z世代と若いミレニアル世代の消費者をターゲットとし、電子マネーアカウントで衣類や電子機器を売って即座に換金できるロンドン本拠のフィンテックTwig(トゥイグ)が3500万ドル(約40億3000万円)のシリーズAラウンドをクローズした。

今回のラウンドを率いたのは、フィンテック投資専門のFasanara Capital(ファサナラキャピタル)で、Twigによると、LVMH、Valentino(バレンチーノ)、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の現幹部や旧幹部など、他にも数多くの匿名の戦略投資家たちが参加したという。

Twigは2020年創業の新興スタートアップで2021年7月に英国でサービスを開始したばかりだが、英国内で急速に成長しており(Twigのアプリのダウンロード回数は月間10万回を超えており、iOSのApp Storeでファイナンス関連アプリの第6位にランキングされた)、すでに海外進出に向けて準備を開始している。

Twigは、シリーズAで獲得した資金で、米国(2022年第1四半期)およびEU(第2四半期。まずはイタリア、フランス、ドイツを予定)に進出すると目されている。また、Web3とデジタル収集品の流行に注目して製品の機能拡張も予定している。

現時点では、Twigのアカウントは英国内でのみ使用できる。創業者兼CEOのGeri Cupi(ゲリー・クピ)氏によると、現段階で約25万人のユーザーを確保しているという。

同氏によると、典型的なユーザーは大学を卒業したばかりの22歳の働く女性だ。こうした女性は、おそらくワードローブに着れなくなった衣類が山のようにあり、いつでも売りたいと考えているからだ。

Twigでは、他の金融機関のアカウントに送金すると1ユーロの手数料を請求されるが、Twigアカウント同士の送金では手数料はかからないため、口コミで広がり成長したことが初期段階での急成長を加速させたようだ。

また「your bank of things(モノの銀行)」というマーケティングスローガンを掲げているものの、Twigは実際には銀行ではないことも指摘しておく必要がある。Twigのアカウントは「電子マネーアカウント」だ。このため適用される規制に関して銀行とは大きな違いがある(例えばTwigのアカウントは英国の預金保証制度の対象にはならない)。

正式な銀行ではないため、Twigは新市場でいち早く成長することができる。銀行業務ライセンスを取得する必要がある場合に比べて、提供サービスに適用される規制が軽減されるからだ。クピ氏によると、現時点では性急に正式な銀行になるつもりはないという。

数十年前、インターネットおよびオープンバンキングを背景とするフィンテックブームなど存在しない時代の昔ながらの銀行は、バッグ、文房具、音楽などの無料のおまけをつけることで学校を出たばかりの新社会人に営業して口座を作ってもらっていた。最近のフィンテックスタートアップは、最も魅力的な機能セットを競って提供することで若い年齢層の顧客を捕まえようとしている。

ただし、お金を口座に入れてもらうことが依然として主たる目的であることは間違いない。

とは言え、TwigはB Corp認証を取得申請中だ。B Corp認証は社会的目的と環境への配慮、透明性、説明責任を重視していると認められる企業に与えられる。クピ氏によると、同社は、申請の最終段階にあり、現時点では保留状態だが、第一四半期には完全な認証を受けられる見込みであるといい、ユーザーにブランド品を捨てる代わりに売るよう勧めることでサステナビリティと経済循環性を実現していることを強くPRしている。

Twigのウェブサイトでも、環境への影響を抑えるためにカーボンオフセットの取り組みを行っており、その他のイニシアチブにも参加していることが掲載されている。

要するに、人類が気候災害を回避するには、世界レベルでのCO2排出量、つまりは全体的な消費の削減が必要となる。そこで疑問視されるのが「サステナビリティ」を再販売というコンセプトに無理矢理結びつける主張の信憑性だ。再販売には、すぐに査定してもらって現金が手に入るため、逆に消費量が増すリスクがあるからだ。

現在所有しているモノを売って現金が手に入るなら、一度購入したアイテムを手放さずに長く使う場合に比べて、消費者はお金をどんどん使って新しいモノを買うよう仕向けられる可能性がある。別の言い方をすれば、消費を削減してCO2排出量を削減するつもりなら、循環経済とモノの寿命をセットで考える必要があるということだ。再販売に必要な面倒な手続きが削減されることで消費者がモノを買わなくなるかどうかはわからない。逆にもっとモノを買うようになる可能性もある。

これがTwigの謳うサステナビリティにほころびが見える点の1つだ。

この難題をクピ氏にぶつけたところ、同氏は次のような議論(いくらか循環論法的ではあるが)を展開して巧妙に解決して見せた。「中古品の流動性を高めるというTwigの目的はサステナビリティの向上と消費量削減の推進を実現します。というのは、より多くの中古品が買えるようになるからです。その結果新しいモノに対する需要が減り、より多くのアイテムがこの(より活発な)中古品経済を介して循環するようになる。

「基本的に、当社のビジネスは、消費者が自分が持っている古いアイテムをお金に変えられるようにすることで、その古いアイテムに新しい命を与えるというものです。これによって、少なくとも中古市場の供給が増大します」と同氏はいう。「中古市場の需要はずっと増え続けています。当社が中古市場の供給側だけでやっていけるのは、現在、中古市場には供給の追加を求める大きなニーズがあるからです。消費者が手持ちの中古品を売ってお金を得たとしても、そのお金で別のモノを購入するとは限りません」。

「これは当社のユーザーの行動からわかることですが、Twigに送られてくる資金のうち約42%は新しい経験、つまり旅行や経験主導の活動に使われています。ですから、流動性が向上したからといって、必ずしもモノの消費が増大して環境に悪影響を与えるとは限りません。それがこれまでのユーザーの行動から分かっていることです」。

クピ氏はTwigのビジネスを非常にシンプルな次の宣伝文句に集約させている。「当社は資産をトークン化します」。

「Twigでは、例えばGucci Marmont(グッチ・マーモント)のハンドバッグをプラットフォーム上にアップロードします。そして、アップロードされた資産をトークン化して、その価格を提示します」と同氏は説明する。

「当社の目標はこの仕組を外部でも使えるようにすることです。そこで役に立つのが、ブロックチェーンです。当社は資産の流動性を向上させて、消費者が物理的なモノを売って仮想的なモノを入手し、その仮想的なモノを使って物理的なモノや体験を購入するという行為を簡単に行えるようにします」。

「基本的に、ユーザーが簡単に取引できるようにすることが目的です」。

クピ氏にはブロックチェーンと循環経済に関するバックグラウンドがある。例えば、2018年には、デニムのアップサイクルビジネスをLevi’s Albania(リーバイス・アルバニア)に売却している

Twigのホワイトペーパーによると、よく売れる物理的なモノとしては、Nike(ナイキ)、Gucci(グッチ)Chanel(シャネル)、Hermes(エルメス)、その他の高級品メーカーのブランド品などがあるという。このペーパーには「所有の未来の再定義」と「 循環型ライフスタイルで生活を送るためのパワーをZ世代に付与」という内容が記載されている。

クピ氏によると、Appleの電子機器も中古市場で高値がついているという。同氏は、購入対象中古品に、不要になった衣類だけでなく電子機器も追加したところ、それまで女性が9割以上だったTwigの利用者構成が、女性7割男性3割くらいに変化したと指摘する。

Twigは中古品の再販売に関する手続きを代行する。具体的には、中古品を即座に査定して、Twigがその中古品の購入を承諾するとすぐに現金が手に入るので何でも好きなものを買える(Twigでは極めて詳細な購入対象品リストを用意している)。

Twigまでの配送料は無料なので、Twigのサービスを利用することで、Vinted(ヴィンテッド)Depop(ディポップ)といった中古品マーケットプレイスにアイテムを自分で直接販売する場合に発生する面倒な手続きやリスクは基本的に排除される(ただし、自分で直接販売した場合よりも売値は低くなる)。

Twigの倉庫に到着したアイテムが品質チェックに引っかかると、ユーザーは返送料を請求される(そして、おそらく即金で支払われた代金も全額Twigに返金される)。アイテムが売れなかった場合は、アップサイクルとリサイクルが適切に行われているかどうかが確認され、どちらの方法でも対処できない場合は、慈善団体に寄付される。環境に悪いため、ごみ廃棄場送りにはしない。

クピ氏によると、Twigは現在成長重視フェーズであるため、再販ビジネスで大きな利益を出すことは考えていないという。

提示する買取価格は、動的に変化するさまざまな要因によって変わる。前述のホワイトペーパーによると、Twigは「市場ベースの価格設定アルゴリズム」を使用して、中古市場の100万点を超える商品を分析し「ブランド、アイテムのカテゴリー、市場セグメントに応じた適切な再販価格を提示している」という。

その前提の中核をなすのは、消費者にとっての総所有コストという概念を再販価値の変化に織り込むという考え方だ。これは購入パターンをシフトさせるパワーを秘めている可能性がある(例えば消費者は、環境的なダメージを与える低再販価値のファストファッションではなく、高級ファッションを選択してその価値を長期間に渡って楽しむ選択をするようになるかもしれない)。

Twigは銀行のような機能(Twigの口座を作るとTwigVisaデビットカードが発行され、国内および国際送金を行うことができる)と本業の中古品再販サービスを組み合わせたものというが、ターゲットであるZ世代と若いミレニアル世代向けの宣伝文句だ。こうした世代の若者たちは中古品市場の倹約性とサステナビリティの両方にますます強い関心を寄せている。

Twigがターゲットとする年齢層を見れば、同社のマーケティングが循環経済による環境への配慮に重きを置いている理由がわかる(「Twigは循環経済を簡単に実現し、サステナビリティの高いライフスタイルを選択できるようにします」とグラフィックを多用したレトロ風のウェブサイトは謳っている)。

特にZ世代はサステナビリティ世代と呼ばれ、この世代の若い消費者は「モノを所有することよりも使うことを優先する」とTwigのホワイトペーパーに書かれている。

こうしてみると、銀行の機能を、文字どおり経済的価値を保存する場所ではなく、再販価値の交換所および仲介者として捉え直すことが非常におもしろく見えてくる。消費者は、あらゆるモノを擬似通貨に変えて、所有したいモノややりたいことの支払いに充てることができる(ハイテクによるバーター取引の再発明と言ってもよいだろう)。

しかし、Twigのビジネスにブロックチェーンが深く組み込まれていることを考えると、同社の主張するサステナビリティには別のほころびが見えてくる。

Twigのテクノロジーは最初からブロックチェーンを基盤として構築されているが、同社のウェブサイトのユーザー対面型の説明からそのことに気づくのは難しい。TwigのシリーズAで公開されたプランでは、Z世代向けの環境配慮型マーケティングがまったくうまくいかない危険がある。というのは、PRでは、Twigを「世界初のWeb3対応グリーン・ペイメント・インフラストラクチャー」と称し、その立ち上げに、最近のWeb3ハイプをうまく利用しようとしているからだ。

この来たるべき機能により、ユーザーは、実世界の資産を「トークン化」して「数秒で取引可能にできる」と、リリースノートには書かれており、さらに次のように続く。「Twigを使用すると、デジタルアイテムと物理アイテムをマネタイズして新しい方法で取引できます。このアプローチにより、ユーザーはチェックアウトページで手持ちのアイテムを売って、暗号資産を購入したり、衣類や電子機器を売ってNFTを購入したりできます」。

暗号資産とNFTの取引が「グリーン」に行われることが本当に希望のあることなのかどうかはよく考えてみる必要がある。

結局、暗号資産に使われるエネルギーコストそれ自体、地球に壊滅的な悪影響を与える要因のように見えなくもない。

例えばケンブリッジ大学が2021年行った研究は、1つの暗号資産(ビットコインなど)だけで、アルゼンチン全体の年間エネルギー消費量を超えていることを示している。

2021年3月に実施された別の研究によると、ビットコインはノルウェーと同じ量のエネルギーを消費したとし、ビットコインのCO2排出量はまもなくロンドンの大都市圏全体で生成される排出量に匹敵するようになると予測している。

要するに、ブロックチェーンベースの暗号資産(もちろんトランザクションを承認するためにプルーフ・オブ・ワークを必要とするもの)の悪名高い非効率性は、サステナブルとは程遠いものに思えるということだ。

しかもブロックチェーンはもっとひどいエネルギーの浪費に関わっている。すなわち、NFT(代替不可能なトークン)の台頭である。NFTでは、ブロックチェーンの上にデジタル収集品を取引するレイヤーを追加することで、エネルギー集約的なトランザクションが必要となり、そうしたトランザクションが促進される。

(ファッションやステータスシンボルとしての)NFTをめぐる現在の騒動と そうしたデジタル資産の小売取引、およびエネルギーを燃やして収集品ピクセルをシフトさせることで非常に手っ取り早くお金を作り出すことができるという提案によって、このエネルギーの焚き火にさらなる燃料が注入されている。

2021年、あるデジタルアーティストの分析によって、1つの平均的なNFTは、EUに住んでいる1人の人間の1カ月分の電力消費量に相当するCO2を排出することが示された。以前と同様、ユーザーにトークン化とモノ(または、デジタル収集品)の取引で忙しくするように促す機能を、どのような形であれ「グリーン」に稼働させる方法を思いつくのは難しい。

しかし、クピ氏はこの反論にもひるまない。

第一に、Twigが基盤としているブロックチェーンインフラストラクチャーは他のブロックチェーンよりもエネルギー効率が高いと同氏はいう。

「ブロックチェーン自体はテクノロジーとして環境に悪いわけではありません。ブロックチェーンにはさまざまな応用事例があります」と同氏はいう。「当社の基盤となっているHyperledger Sawtooth(ハイパーレッヂャーソートゥース)というブロックチェーンは、他のソリューションに比べてエネルギー消費量が極めて小さいという特長があります」。

「つまり、当社はエネルギーを大量に消費するソリューションの使用を最小限に抑えたいと考えています」。

また、Twigは内部のエネルギー消費量を計算して、環境への影響を数量化しており、対抗策としてカーボンオフセットの取り組みも行っているという。

さらには、大気圏からCO2を排除するプロジェクトも支援している。

ただし、個々のプロジェクトがどの程度実行可能で信頼できるものかは、まったく別の問題だ。

Twigは自社のエネルギー消費を最小化し、CO2排出量をオフセットしようとしているかもしれないが、それより大きな環境への影響が、二次使用つまり、TwigのユーザーとサプライヤーがTwigを利用した結果として発生する消費、エネルギー使用、CO2排出量によって起こる可能性がある。

こうした関連のある間接的な影響(サステナビリティレポートの用語でScope 3排出量と呼ばれる)を計算することは、企業の直接的なエネルギー使用を内部的に監査するよりもはるかに難しい。とはいえ、Scope 3排出量は企業のCO2排出量の大きな部分を占める傾向があることも確かだ。このため、そうした間接的な取引、排出量、影響をなきものとして片付けてしまうことはできない。

Twigは、カーボンオフセットによって商品の配送にともなうCO2排出量を相殺するなど、明確な姿勢でScope 3排出量対策に取り組んでいる。また、B Corp認証を取得しようという野心も称賛に値する。

しかし、Twigによって拡大も縮小もするかもしれない消費者需要やトレンドに基づいて、最終的に発生するエネルギーコストを予測するのは非常に難しい。

ユーザーに暗号資産を購入し、NFT取引を始めるよう促すことによってエネルギーコストが発生することは間違いない。そして、たとえTwigが中古品の流動性を高めることで、消費者が新品を購入する需要が低下し、新製品の実質生産量を削減することができるとしても、このような大量のエネルギー消費にともなうコストによって環境へのプラスの影響が相殺されてしまう危険がある。

とはいえ、支払いに使用できるものがこのように根本的に見直されると(あらゆるモノで支払いができる。トークン化された価値の世界では、理論上、消費者は実際のお金を使う必要がない)、消費活動の大きなシフトにつながり、循環経済に実際に目立った変化をもたらすことができる。その結果、数十年に渡る資本主義を特徴づける使い捨て消費の悪循環から抜け出すことができる。

別の言い方をすれば、(認証をサポートすることで偽物に対抗できる)ブロックチェーンベースのトークン化と(分散台帳インフラストラクチャによって完全な所有履歴を把握することで実現される)安定度の高い査定のおかげで、モノの再販時の価値をもっと確実に予測できるなら、消費者は、持っているモノを丁寧に扱う気持ちになるかもしれない。モノの寿命が維持されれば高い売値がつくからだ。そうなれば、世界の産業はそもそも現在の半分だけモノを作れば足りるようになり、資源の枯渇によって地球が機能不全に陥る重圧から解放される。

これには確かに一理ある。

あらゆるモノを売って極めて簡単に支払いができるようにすることでお金の価値が重要視されなくなることは、価値、所有、富に対する考え方を修正するために必要な最初の一歩になるかもしれない。

クピ氏は次のように説明する。「現金を使う代わりに、自宅にある不要になったモノを使ってNFTを買うことができます。例えば使わなくなった古いiPhone(アイフォーン)を売ってNFTや暗号資産を買ったり、体験を買うことができます。ニューヨークまでの旅行費用に充てたり、次回の職業教育コースの支払いに充てたりできます。つまり、Twigの目的は、市場の流動性を高めることです。人々が使わなくなった資産を売ることでその資産に新たな第二の命を与えることなのです」。

「当社の信念は、財布にも地球にもやさしい結果をもたらすことです」。

Twigのビジョンは自身を支払いプラットフォームに変えることです。ユーザーや顧客の代わりに物理的なモノを支払い代金に変えるプラットフォームです。

「現時点では、Twigは単なるB2Cプラットフォームに過ぎませんが、ゆくゆくはB2B2Cプラットフォームにしたいと考えています。将来的には、さまざまなプロバイダーの決済ゲートウェイとして接続する予定です」とクピ氏はいい「いくつかの大手小売業者」とTwigのインフラストラクチャへの接続を許可する契約を結んでいると話した(小売業者の名前は明かしていない)。

「当社がやろうとしているのは、要するに、富の定義の再発明です」とクピ氏は付け加え、お金の概念が大きく様変わりしていると説明する。「自分が所有しているものがすべてお金として扱えるとなると、富の見方も変わってきます」。

「富とは、従来の定義では、家や車など、大きな資産の価値です。しかし、たとえばワードローブの価値は通常資産の一部とはみなされません。我々はこれを変えたいのです。すべてのモノに即時の流動性があれば、モノを現金とみなすことができます。現金だろうとGGマーモントのハンドバッグだろうと違いはないのです。ポンドで何かを買いたい場合、現金でもハンドバッグでも使えるのです」。

Twigが普及すれば、決済の未来は今よりずっとビジュアルで物質的なものになる可能性があります。例えばeコマース決済ウインドウに鋳造しておいたNFTをドラッグアンドドロップして中古のiPhoneを購入する。

あるいは、限定版のナイキのシューズを売って、ずっと楽しみにしていた都市滞在型の春休みを取る。

ダイヤモンドで覆われたすばらしい宝石を売って高級不動産を買うといった具合だ。

若い消費者たちはコモディティ化された価値交換可能なモノの世界をすでに違和感なく受け入れているようだが、年配の消費者たちはどうだろう。クピ氏は、ブーマー世代やX世代が大枚をはたいて買ったモノを手放して支払いに充てるという新しいやり方に納得できると考えているのだろうか。

サイン入りの初版本や貴重なビニールのレコードが将来の決済方法の一部に取り込まれることになるだろうか。

「正直、その答えは私にもわかりません」とクピ氏はいう。「現時点では、Twigに対するZ世代の反応は極めて良好です。また、英国のミレニアル世代、我々がターゲットとしている20代の若者たちの反応も上々です。英国外の市場に進出した際には状況は変わるかもしれません」。

画像クレジット:Twig

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

銀行口座のマイクロサービス化を目指すフランスのフィンテックNumeral

企業の銀行口座のアップグレードを目指すフランスのスタートアップ、Numeral(ニューメラル)を紹介する。クライアントが最新のアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を使ってNumeralとデータをやり取りする一方で、このスタートアップは銀行のサーバーに直接接続して決済ファイルをアップロードし、時代遅れの情報システムとデータをやり取りする。その複雑なレイヤーを抽象化することで、銀行口座をアーキテクチャの中の別のマイクロサービスのように扱うことができる。

Numeralは1月にBalderton Capitalがリードする1300万ユーロ(約17億円)の資金調達ラウンドを発表した。Alexandre Prot(アレクサンドル・プロット)氏、Tom Blomfield(トム・ブロムフィールド)氏、Guillaume Princenn(ギヨーム・プリンセン)氏、Kima Venturesも参加した。Numeralのチームはもともと、eFoundersが創設したスタートアップスタジオ「Logic Founders」内でプロジェクトに取り組み始めた。

Numeralを説明する最も良い方法は、同社が何でないかを説明することだ。Numeralは、消費者向けアプリのためのオープン・バンキング・アグリゲーターではない。TinkTrueLayerYapilyとは競合しない。

また「banking-as-a-service(バンキング・アズ・ア・サービス)のプロバイダーでもない。同社は銀行口座を提供せず、IBAN(国際銀行口座番号)を生成せず、カードも発行しない。

「我々は、テック企業のための決済自動化プラットフォームです」と共同創業者でCEOのÉdouard Mandon(エドゥアール・マンドン)氏は話す。「テック企業が銀行口座に接続し、決済業務を自動化できるようにします」。

リテールバンクはAPIを提供し始めたばかりだが、コーポレートバンクは何年も前から銀行プラットフォームをオープンにしている。しかし、ドキュメント・ページがあるREST APIだと思わないで欲しい。多くの銀行は、ユーザーがSFTPサーバーにテキストファイルをアップロードすることを想定している。そのファイルは、非常に特殊な方法でフォーマットされることになっている。

Numeralは、銀行送金に大きく依存しているフィンテック、インシュアテック、不動産会社などに製品を販売している。例えば、同社の最初の顧客はSpendeskSwileだ。Numeralは、同社の最初の顧客となったSpendeskとSwileのために統合機能を作成し、2社がAPIを使って銀行口座とデータをやり取りできるようにした。

2022年末までに、Numeralは12の銀行に対しサービスを提供する予定だ。「今のところ、私たちの顧客の半分は、フランスの銀行を通じて私たちのサービスを発見しています。その銀行はNumeralのことを、彼らが提供していないAPIだと説明しています」とマンドン氏は話す。

統合が完了すると、Numeralの顧客は決済機能やアプリの機能を統合できる。同社は、技術者でないスタッフ向けにウェブアプリも提供している。この方法では、銀行が提供するレガシーなウェブアプリを使わずに、決済と口座を照合できる。

Numeralでは、APIの上にいくつかの機能を追加できる。例えば、承認ワークフローや通知システムなどの設定を想像して欲しい。

このスタートアップは、オーケストレーション機能についても考えている。顧客が複数の銀行口座を持っている場合、いくつかのルールに従って、適切な口座に決済を回すことができる。また、Numeralは、複数の口座の現金残高を積極的に管理する目的でも利用可能だ。

複数の国に口座を持つグローバルな顧客には、特に有効だろう。マンドン氏は、Numeralを立ち上げる前にiBanFirstに勤務していたため、複数の国にまたがる複数の提携銀行を持つことについては、よく理解している。

今回の資金調達で、Numeralは30〜40人のチームに成長する予定だ。フランスの銀行との新たな提携に加え、ドイツ、英国、スペイン、イタリアなど、他のヨーロッパ諸国にもサービスと顧客基盤を拡大する。

画像クレジット:Luke Shaffer / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

レストランでQRコードとスマホを使った会計できるシンプルな決済ソリューションを提供するQlub

我々のレストランやイベント会場における行動は、新型コロナウイルスの影響からこの2年間で大きく変わったが、テーブルからスマートフォンで注文できたり、クレジットカードを出さずとも支払いさえできるようになったことの大きなメリットに気づいた人も多いだろう。2020年には存在すらしていなかったフランスのスタートアップ企業であるSunday(サンデイ)は、多額の資金を調達して、人々が簡単に支払いを済ませたり会計を共有できるようにすることで、店員を解放し、レストランの回転率を高めた。

この種のトレンドには、Toast(トースト)やGoodEats(グッドイーツ)など、他にも多くのスタートアップが飛びついている。

今回、ステルスを脱したQlub(クラブ)も、同様の分野に取り組んでいるが、しかし同社は米国以外の市場に目を向けている。この消費者向けレストラン決済ソリューションを提供する会社は、ベルリンのCherry Ventures(チェリー・ベンチャーズ)とドイツのPoint Nine Capital(ポイント・ナイン・キャピタル)が共同で主導したラウンドで、1700万ドル(約19億5000万円)のシード資金を調達した。このラウンドには、STV、Raed Ventures(レード・ベンチャーズ)、Heartcore(ヒートコア)、Shorooq Partners(ショルーク・パートナーズ)、FinTech Collective(フィンテック・コレクティブ)などの他のVCや、多くの起業家から転身したエンジェル投資家たちも参加した。

Qlubは、Sundayと同様に、携帯電話でQRコードをスキャンすることによって、レストランですばやく会計を済ませることができる。アプリや登録は不要だ。顧客は友人と一緒に請求額を割り勘にして、Apple Pay、クレジットカード、あるいはBNPLと同様に分割払いで支払うこともできる。

レストランにとってのメリットは、テーブルの潜在的な回転率が上がること、店員に対するチップの可能性が高まること、そしてシンプルな支払い体験を気に入ったリピーター客が増えることだ。また、Qlubによれば、その使い勝手の良さから、Qlubを導入したレストランが、口コミサイトで高い評価を受ける傾向もあるという。もちろん、店員との接触が減るので、ウイルスの感染予防や一般公衆衛生にも有効だ。

共同創業者のEyad Alkassar(アイアド・アルカッサー)氏は、次のように述べている。「複数のフードデリバリー企業を立ち上げた経験から、私は過去20年の間に、テクノロジーの進歩によって、外食体験がいかに改善されていなかったかということに当惑しました。クレジットカードが登場してから、ほとんど何も変わっていません。新型コロナウイルス感染流行がもたらした2つのメガトレンド、すなわちレストランのQRコードとキャッシュレス決済を組み合わせ、私たちは未来の決済機能を作り上げます」。アルカッサー氏は現在、Rocket Internet Middle East(ロケット・インターネット・ミドル・イースト)の共同創業者兼マネージングディレクターを務めているが、関与を段階的に減らしている最中である。

Qlubの創業チームは、アルカッサー氏の他、Arun Sharma(アルン・シャルマ)氏、Filiberto Pavan(フィリベルト・パヴァン)氏、Gizem Bodur(ギゼム・ボドゥル)氏、Jeff Matsuda(ジェフ・マツダ)氏、Jianggan Li(ジャンガン・リー)氏、John Mady(ジョン・マディ)氏、Mahmoud Fouz(マフムード。フーズ)氏、Oscar Bedoya(オスカー・ベドヤ)氏、Ramy Omar(ラミー・オマー)氏で構成されている。このチームは、Lazadaa(ラザダ)、Namshi(ナムシ)、Snapp(スナップ)など、さまざまな企業を設立し、規模を拡大してきた。

Cherry Venturesの創業パートナーであるFilip Dames(フィリップ・デイムス)氏は、次のように述べている。「オフラインでの支払いが回転率の障害となっているレストランにとって、セルフチェックアウト・ソリューションの採用は考えるまでもないことです」。

Point NineのパートナーであるRicardo Sequerra Amram(リカルド・セクエラ・アムラン)氏は、次のように述べている。「Qlubは、キャッシュレス決済の自由度とセルフチェックアウトの利便性を求める消費者と、新型コロナウイルス流行後の世界で、固定費を圧縮し、収益を生み出す仕事にスタッフを割り当てることを一層心掛けているレストランのオーナーの双方にとって、ウィンウィンのサービスを構築しています」。

QlubはこれまでにUAE、KSA、インドでサービスを開始しているが、今後数週間から数カ月の間に他の国際市場にも拡大していく予定だ。

画像クレジット:Eyad Alkassar

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スタートアップが表計算ソフトを使わない財務モデルの構築を支援するFinmark

Finmark(フィンマーク)の創業者であるRami Essaid(ラミ・エサイード)氏は、以前のスタートアップを設立した際に、正確な財務モデルを構築することがいかに難しいかを身をもって体験した。2019年にそのスタートアップであるDistil Networks(ディスティル・ネットワークス)をImperva(インパーバ)に売却したとき、彼はその助けとなる新会社を作ることに決めた。

2020年7月に創業したFinmarkは、企業がExcel(エクセル)を使わずに高度な財務モデルを構築するための手助けを行う。「私たちには、収益化前からIPO前までのスタートアップ企業が財務モデルを構築し、Excelから脱却することを支援するという命題がありました」と、エサイード氏は説明する。

エサイード氏によれば、彼らは当初、まだ資金調達をしていない、あるいはシードラウンド資金を獲得したばかりの、本当にアーリーステージの企業に集中していたという。このような企業を標的市場にしていたことには理由があった。財務モデルがそれほど高度でないため、Finmarkが最初の製品をより早く構築することができたからだ。

このアプローチはうまくいった。エサイード氏によると、1000社以上の企業がこの製品を使用しており、そのうち約3分の1が有料顧客だという。この初期の成功を受けて、彼らはより複雑なモデリングを必要とする収益が500万ドル(約5億8000万円)から7500万ドル(約87億円)の中規模企業へと市場を拡大していった。

「このようにして、我々はいくつかの取引を成立させることができ、より大規模な企業も何社か引き入れることができました。より高度な機能を製品に組み込む作業も続けています。企業の創業者が、誰の助けも借りずに、社内に優秀な財務担当者がいなくても、財務管理を簡単に行えるようにすることに、引き続き取り組んでいます」と、エサイード氏は語る。

Finmarkは2021年、Y Combinator(ワイコンビネーター)を卒業し、同社のサービスを必要とする多くのスタートアップ企業にアクセスできるようになったため、彼らの意見を取り入れて製品を改良することが可能になった。

現在、同社は他のインキュベーターやベンチャーキャピタルと協力して、3カ月から12カ月の間、プログラムを無料または割引価格で提供している。これが利用者の増加と製品の認知度向上に貢献している。

同社はまた、初期段階の企業が資金不足に陥らないように、より正確な財務モデルを構築する方法を理解するために役立つコンテンツの作成にも多くの資金を投入した。エサイード氏は、スタートアップ企業が失敗する主な理由を次のように指摘する。

「スタートアップ企業が失敗する一番の理由は、資金が尽きてしまうことです。しかし、実際に活動を停止するスタートアップはほとんどありませんよね?残された時間がわかれば、より多くの選択肢を得ることができます。このようなことを理解し、資金不足に陥らないように戦略的に計画することが、スタートアップを成功させるための重要な要素だと、私は思います」。

Finmarkはすでに35人ほどの従業員を擁しており、エサイード氏は急速にチームを強化している。同氏には他のスタートアップ企業での経験があったため、そのネットワークを活用して、知り合いや信頼できる人を見つけることができたが、さらに多様性を持たせたいとも考えている。

「前回お話した後、(多様性について)よく考えてみました。現在この会社にとってすばらしいことの1つは、リモートで会社を設立していることです。そのため、以前サンフランシスコに本社を置いていたときよりも、全国の多様な人材にアクセスすることができます」と、エサイード氏は語った。

同社は今回、シード資金の一部として650万ドル(約7億5000万円)を調達した。このラウンドは、American Express(アメリカン・エキスプレス)が主導し、既存投資家のDraper and Associates(ドレイパー・アンド・アソシエイツ)、Bessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)、IDEAfund(アイデアファンド)が参加した。以前、同社は最初のシード投資ラウンドで、500万ドル(約5億8000万円)を調達している。

画像クレジット:Rudzhan Nagiev / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

自社の株式や暗号資産などを持つテック企業従業員が自分の財務管理を行うためのオールインワンプラットフォーム「Compound」

Jordan Gonen(ジョーダン・ゴネン)氏とJacob Schein(ジェイコブ・シャイン)氏は、テック業界で働いていた数年の間に、自分たちの財務状況を明確に把握していないことに気づいた。他の多くのテック系社員と同様、2人のソフトウェアエンジニアは、自分たちが働いていたスタートアップ企業の株式や、暗号資産への投資など、流動性の低い資産を保有していた。彼らは自分たちの資産を把握し、投資や納税のサポートを受けたいと思った。しかし、従来の金融機関やロボアドバイザーは、このような資産を持つ人々に合ったシンプルで包括的なソリューションを提供していないと、彼らは感じた。

そこで2人は、約3年ほど前にCompound(コンパウンド)という会社を起ち上げた。Y Combinator(ワイコンビネータ)の2019年夏クラスに参加したCompoundは、現金、証券、暗号資産、不動産、ベンチャー投資など、流動資産および非流動資産の財務状況の全体像をユーザーに示す、オールインワンのウェルスマネジメント・プラットフォームを自称している。

筆者は、CompoundのCEOであるゴネン氏(偶然にも筆者の元同級生)にインタビューを行い、彼が構築しているものについて話を聞いた。Compoundを起ち上げる前に、ゴネン氏とシャイン氏は、テック系企業の従業員や創業者、投資家からファイナンシャルプランニングのニーズを把握するために、個人的に1300件以上のコンサルティングを行ったという。

「私たちがこの会社を設立したきっかけは、自分たち自身の問題を解決しようとしたことでした。私たちが書いた株式報酬に関するエッセイが、テック業界で大きな注目を集めたことから、(私たちに相談してきた)人々を支援するようになったのです」と、ゴネン氏は語る。

ゴネン氏とシャイン氏は、ストックオプションを行使すべきかどうか、遺産計画の立て方、IPO後の分散投資など、さまざまなテーマで各人に助言を行った。

このようなテック業界の人々との会話が功を奏し、彼らは数多くのテック系企業の幹部を惹き付けることができた。今回発表されたシリーズBラウンドには、Coinbase(コインベース)、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)、Plaid(プレイド)など、数多くの企業の幹部が参加した。

Compoundが2500万ドル(約29億円)を調達したこのラウンドは、Greenoaks(グリーンオークス)と元Stripe(ストライプ)のプロダクトマネージャーであるLachy Groom(ラッシー・グルーム)氏が主導し、Y Combinator、XYZ、SciFi(サイファイ)、Day One Ventures(デイ・ワン・ベンチャーズ)、Silver Lake(シルバー・レイク)のEgon Durban(エゴン・ダーバン)氏、FTXのCEOであるSam Bankman-Fried(サム・バンクマン・フライド)氏、および前述のエンジェル投資家たちが参加した。このシリーズBにより、同社の資金調達総額は3700万ドル(約42億6000万円)に達した。

ゴネン氏によると、同社には「数百人」のユーザーがいるという。明らかに特定の富裕層をターゲットにしているわけではなく、キャリアの段階ごとにさまざまな顧客に対応していると、同氏は付け加えた。

Compoundは、自らをユーザーが個人のバランスシートを見るためのワンストップショップであると考えていると、ゴネン氏は語る。同社では、株式、暗号資産、その他の非流動資産のためのさまざまな投資プラットフォームにリンクする統合機能を使用しているが、このような形でCompoundと提携しているプラットフォームの数については、ゴネン氏は明らかにしなかった。

提携プラットフォームになっていない取引所に関しては、既製の統合機能も使用しており、特に複雑な構造で保有されているユーザーの資産については、手動で追跡していると、ゴネン氏は述べている。納税申告サービスについては、プラットフォームとの提携に加え、Compoundが所有する税理士事務所を通じて自社でも提供している。

ゴネン氏は新たに調達した資金で、現在約50名のチームを「かなり大きく」したいと考えている。

「人々は、財務を特定の状況に合わせてローカルに最適化するのではなく、グローバルに最適化するべきです」と、ゴネン氏はいう。

「そうは言っても、お客様の多くはカタリスト・イベントの前後に当社を訪れます」と、ゴネン氏は続けた。「彼らは、ストックオプションを行使するかどうかを決めたり、オプションを行使するためにローンを組むべきかどうかを考えたりしています。州を移すべきか、流動性イベントの後にどうやって分散させるか、エンジェル投資できる余裕がどれだけあるのか。Compoundは、これらの質問に答えるためのオールインワンのプラットフォームを提供しているのです」。

画像クレジット:Teera Konakan / Getty Images

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

家賃支払いなどでクレジットスコアを構築し「人種間の貧富の差を埋める」フィンテックEsusuが150億円調達しユニコーンに

1億人超の米国人が、毎月の家計で最も大きな支出である家賃に月平均1100ドル(約13万円)、合計で年1兆4000億ドル(約161兆円)以上を費やしている。しかし、報告によると、そのうちの9割の人は家賃を期限どおりに支払ってもクレジット(信用)を得られていない。

さらに踏み込んで見ると、消費者金融保護局の2020年のレポートによると、米国では4500万人超がクレジットスコアを持っていない。この層の多くは、経歴や人種によって経済的に疎外されている。

移民やマイノリティにクレジット構築のための家賃支払い報告やデータソリューションを提供するフィンテックのEsusu(エスス)は米国時間1月27日、シリーズBラウンドで1億3000万ドル(約150億円)を調達したと発表した。

このラウンドで創業4年のEsusuの評価額は10億ドル(約1150億円)に達し、米国で、そして世界的にも数少ない黒人経営ユニコーンの1社になった。ソフトバンク・ビジョン・ファンド2が同ラウンドをリードし、Jones Feliciano Family Office、Lauder Zinterhofer Family Office、シュスターマン財団、ソフトバンク・オポチュニティ・ファンド、Related Companies、Wilshire Lane Capitalが参加した。

移民やアフリカ系米国人は、他の人に比べてクレジットスコアが低いか、そもそもクレジットスコアを持っていない。また、彼らは高利貸しに直面する機会が多く、これにより経済的不安の連鎖に陥っていることが多い。そのため、富を築くのに強力なクレジットスコアを必要としながらも、クレジットを築くための足がかりを持っていない。

Esusuの共同創業者で共同CEOであるナイジェリア生まれの米国人Abbey Wemimo(アビー・ウェミモ)氏とインド系米国人のSamir Goel(サミール・ゴエル)氏は移民家庭で育ち、この金融的排除を身をもって体験した。2人はこの疎外されたグループのクレジットスコアを構築し、家賃支払いを通じて「データ活用による人種間の貧富の差を埋める」ために2018年にEsusuを立ち上げた。

ニューヨークに本社を置く同社は、不動産オーナーや住宅プロバイダーと提携し、全米集合住宅協会(NHMC)のリストにある大手家主の35%と連携している。パートナーには、Goldman Sachs、Related Companies、Starwood Capital Group、Winn Residentialなどがいる。

Esusuは賃借人のクレジットスコアを強化するために、プラットフォームに登録した賃借人の期日までの支払データを取得し、3大信用情報機関(Equifax、TransUnion、Experian)に報告する。これにより、賃借人は時間をかけてクレジットスコアを向上させることができ、不動産オーナーは退去勧告を軽減できる。

Esusuは、不動産管理者とオーナーに3500ドル(約40万円)のセットアップ料と1住居あたり毎月2ドル(約230円)を請求する。一方、賃借人は、年間契約料として50ドル(約5760円)を支払い、家賃支払いデータを信用情報機関に報告する。

Esusuは前年比600%で成長していると創業者2人はTechCrunchに語った。現在、250万戸超の住宅が同社のサービスを利用していて、総リース量(GLV)は米全体で30億ドル(約3460億円)以上だ。同社が半年前に報告した200万戸、総リース量24億ドル(約2765億円)超から増加している。

Esusuが2020年4月に自社プラットフォームで調査を実施したところ、パンデミックの影響により62%のユーザーが家賃を期限内に支払えないことが判明し、同社は家賃救済ファンドを立ち上げた。クラウドファンディングや非営利のインパクト投資ファンドを通じて50万ドル(約5800万円)近くを調達した。

それから2年経った現在もこのプログラムは続いていて、Esusuはその規模を拡大し、何千人もの賃借人を自宅にとどめている。このプログラムには、貸借対照表に17億ドル以上(約1960億円)を計上するほどのパートナーが集まっていると創業者らは語った。

ウェミモ氏とゴエル氏は声明で「私たちは、データを使って人種間の貧富の差を埋め、この国の低・中所得世帯により公平な金融機会を創出するというビジョンを持ってEsusuを設立しました」と述べた。「クレジットスコアを取得し向上させることで、個人、家族、コミュニティが長期的な経済的目標を達成できるようにしつつ、経済的アイデンティティを強化しています」。

Esusuは、チームの拡大(正確には従業員を3倍に増やす)「製品イノベーションによる成長の加速、市場で最も包括的な金融ヘルスプラットフォームの構築」のために調達した資金を使用する計画だ。

2021年7月の1000万ドル(約11億円)のシリーズAラウンドのリードインベスターであるMotley Fool Venturesは今回の新ラウンドで再投資した。その他の既存投資家であるConcrete Rose Capital、The Equity Alliance、Impact America Fund、Next Play Ventures、Serena Ventures、Sinai Ventures、TypeOne Venturesも参加した。Esusuの累計調達額は1億4400万ドル(約165億円)超となった。

今回の資金調達でEsusuは、ユニコーンのステータスを獲得している世界900社超の中で、黒人が主導・所有するスタートアップという切望されている小さなグループに加わる。このグループには、評価額30億ドル(約3460億円)の米国のスケジュールアプリCalendly、英国拠点のフィンテックで50億ドル(約5760億円)と評価されたZepz、評価額12億ドル(約1380億円)のデジタル保険スタートアップMarshmallow、そしてアフリカのフィンテックFlutterwave(評価額10億ドル、1150億円)、Chipper Cash(同20億ドル、2300億円)、Interswitch(同10億ドル)などが含まれる。

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nariko Mizoguchi

暗号化のスタートアップSyndicateは「Web3投資クラブ」サービスでDAOの神秘を解く

この1年、暗号信奉者たちはトークンとNFT(非代替性トークン)によって変容させられたインターネットの上で世界を売ろうとしている。一方、一部の人々は、民主主義を変えて古臭い組織をオンライン時代に合わせて変容する方法としてDAO、即ち分散型自立組織を推し進めてきた。どちらのグループもメッセージの発信と国の法的ガイドラインを相手に戦ってきたが、新規ユーザーを獲得するための技術的課題は、自らDAOを作ろうとする人々が乗り越えなくてはならない大きな壁だ。

Syndicate(シンジケート)は昨年Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)から2000万ドルを調達したDAOサービスのスタートアップだ。このほど同社は、DAO設立プロセスを(法的に可能な限り)簡易化することを目指して、新規プロダクトのWeb3 Investment Clubs(ウェブスリー・インベストメント・クラブ)を公開した。このツールを使って、ユーザーは最大99人の参加者を募り、資産を蓄積してその資金をどこに投資するかをグループ内で投票する。

Syndicateの共同ファウンダー、Ian Lee(イアン・リー)氏は、同製品は「コンプライアンスに則り、メンバーのために正しく行動する平安な心」でDAOを作るしくみをユーザーに提供する、とTechCrunchに話した。スタートアップの大きな目標は、こうしたグループを作ることで、トークンやNFTへの投資を「グループ・チャットのように簡単」にすることだ。

“Investment Club”というブランディングは、より多くの人たち(ここでは投資家)のためにDAOの謎を取り除き、従来からの非暗号化金融サービスのような投資手段を考えている人たちに代替手段を提供する取り組みの一環だ。同スタートアップのDAO設定のためのステップ・バイ・ステップのガイドは、暗号資産のベストプラクティスに親しみのない人たちにとって一連のサービスがいかに複雑に絡み合っているかを示しているが、テクニカルな手段の波に乗れさえすればグループを簡単に作れることも表している。

設定のガイドラインに加えて、Syndicateはダッシュボードも提供していて、ユーザーは自分たちの投資クラブの保有資産や過去の活動を閲覧できる。

画像クレジット:Syndicate


Syndicateはこれらクラブを、個々の状況や法的猶予にあわせてユーザーにとって柔軟なものにすることを目指している。適格ユーザーと非適格ユーザー向け、さらには米国内にメンバーをもつDAOについてもそれぞれガイドラインがある。Syndicatehaは、クラブ管理者になる人が知っておくべき基本ガイドライン(たとえば米国内の非適格投資家からなるクラブでは全メンバーが全決議に投票しなくてはならない)を提供するが、実施はエンドユーザーにまかせている。Syndicateのスマート契約書は、クラブを法的組織として登録する手続きを紹介しと、すべてが公正かつ確実に行われるように、銀行口座の設定や納税書類の作成を扱う。

Syndicateは自分たちをDAOインフラストラクチャー・エコシステムの中心として位置づけ、興味をもつユーザーのできるだけ多くにサービスを知ってもらいたいと考えている。このため、この新サービスは無料で、Syndicateは設定にも保守にも、一切費用を請求していない。

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Hundreds of Y Combinator alumni join crypto collective to back web3 startups

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nob Takahashi / facebook

みんなの銀行、トンガ王国支援の取り組みとして「みんなのCheer Box」と「みんなのCheerコード」を開始

スマートフォンで完結するデジタルバンク「みんなの銀行」(Android版iOS版)は、火山噴火の被害を受けたトンガ王国を応援する「トンガにつなげよう、Cheer Box」と「トンガにつなげよう、Cheerコード」という2つの取り組みを1月25日に開始した。みんなの銀行、トンガ王国支援の取り組みとして「みんなのCheer Box」と「みんなのCheerコード」を開始

「トンガにつなげよう、Cheer Box」は、誰か応援したい人を、「みんなの銀行」アプリの目的別貯蓄機能である「Box」を利用して支援できるシステム「みんなのCheer Box」の特別版。自分で口座にBoxを作り、それに「トンガにつなげよう」の9文字を含む名前を付けると、そこから日ごとの末残平均の1%が寄付される(1円未満切り捨て。顧客の口座からお金が引き落とされることはない)。計算期間は2022年1月25日~3月31日。寄付先は、日本財団「トンガ救援基金」。

「トンガにつなげよう、Cheerコード」は、「お友だち紹介プログラム」を応用したもの。みんなの銀行に口座を開くときに、対象コード「PjWTNkfZ」を入力すると、トンガ王国に1500円が寄付され、利用者の口座にも応援特典として1500円が入金されるというものだ。

こちらも計算期間は3月31日まで。寄付先は、日本財団「トンガ救援基金」となる。

みんなの銀行は、1月18日に利用者から寄せられた「口座からスグに義援金を振りだせる仕組みがあったらスゴい」との意見に「奮い立たされ」てこれを開始した。「みんなに価値あるつながりを。」とのミッションを掲げるみんなの銀行は、その思いをトンガ王国に「つなぐ」取り組みとして形にしたとのことだ。

お金の相談マッチングプラットフォーム「お金の健康診断」の400Fが3.6億円調達、金融サービス仲介事業の展開などを加速

お金の相談マッチングプラットフォーム「お金の健康診断」の400Fが3.6億円調達、金融サービス仲介事業の展開などを加速お金の相談マッチングプラットフォーム「お金の健康診断」を運営する400F(フォーハンドレッド・エフ)は1月26日、第三者割当増資による総額3億6000万円の資金調達を完了したと発表した。引受先は、リードインベスターのSkyland Ventures(SV)、新規投資家のSBIインベストメント、楽天証券、ミンカブ・ジ・インフォノイド、既存投資家のDIMENSION投資事業有限責任組合(DIMENSION)の計5社。

調達した資金により、お金の健康診断に関連するプロダクト開発・マーケティング・人材採用などの強化と、2021年11月より開始した金融サービス仲介事業「オンラインアドバイザー」の展開を加速させる。

また同社は、SBIグループ、楽天証券、ミンカブ・ジ・インフォノイドとの資本業務提携を実施。これにより提携先企業の利用ユーザーも、お金の健康診断を利用しより気軽にIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)とお金の相談を開始できるようになる。お金の相談マッチングプラットフォーム「お金の健康診断」の400Fが3.6億円調達、金融サービス仲介事業の展開などを加速

2017年11月設立の400Fは、お金の健康診断を2018年11月に正式リリース。2020年7月、MBOにより株式会社お金のデザインから独立し事業運営を開始した。お金の健康診断は、2021年12月31日時点で登録プランナー数700名超、登録ユーザー数5万人超の「お金の悩みを出会いによって解決する」マッチングプラットフォームとなっており、MBO実施後から登録プランナー数約4.5倍、登録ユーザー数約3倍に成長しているという。

また同社は、2021年11月に⾦融サービス仲介業の登録を完了。これに伴い、ユーザー向けにチャットやビデオ会議システムなどを通して資産形成アドバイスを行う「オンラインアドバイザー」サービスの提供を開始している。ユーザーは、オンライン上で手軽に、ネット証券と同水準の取引手数料で、外務員ライセンスを持つ営業担当者から直接資産形成アドバイスを受けられる。

freee会計が楽天銀行とのAPI連携を終了、口座明細の自動取り込みを2月24日17時頃に停止

freee会計が楽天銀行とのAPI連携を終了、口座明細の自動取り込みを2月24日17時頃に停止

freeeは、楽天銀行との間で行っている参照系のAPIを活用した法人口座・個人ビジネス・個人口座の利用明細の自動取り込みを、2月24日17時頃をもって停止すると発表しました。

楽天銀行との口座連携は2020年3月から実施していましたが、2月24日17時頃をもって契約期間が満了することに伴いAPI連携を終了します。

24日以降に楽天銀行の明細をfreeeに反映させるには、楽天銀行のインターネットバンキングから口座明細データのCSVファイルを手動でダウンロードし、freee会計にアップロードする必要があります。

本件で影響を受けるfreee会計ユーザーの方に対してはfreeeより個別連絡を行うといいます。

なお、楽天カード・楽天Edy・楽天市場・楽天Pay(実店舗決済)の自動取り込み機能は従来どおり利用できます。

(Source:freeeEngadget日本版より転載)

ケニア政府、デジタル金融機関のデータプライバシー問題で厳重な取り締まり

2021年10月下旬、ケニアの国会で新しい法律が可決された。同法は、顧客の守秘義務に違反した事業者の許可を取り消す権限を金融規制当局に与える条項を追加している。これにともない、デジタル金融機関は、融資不履行者の個人データを第三者と共有することで、同国において免許取り消しのリスクを負うことになる。

典型的に融資アプリは、連絡先を含む借り手の電話データを収集し、メッセージへのアクセスを要求してモバイルマネー取引の履歴をチェックする。クレジットスコアリングやローン支払いの要件として参照されるものだ。悪質な金融機関はその後、借り手が債務不履行に陥った際に、実行された融資を回収する目的で、収集された連絡先情報の一部を使用する。複数の報道によると、デジタル金融機関は、友人や家族に電話をするなどして借り手に借金の返済を強要するような、デット・シェイミング(debt-shaming、債務の状態をさらしあげることによって、はずかしめたり、非難するような行為)手法に訴えているという。

今回の法改正は、高額の無担保ローンを提供する悪質なデジタル金融機関から市民を保護するためにケニアの議員が講じている多数の対策に追加されることになる。これにより、規制当局であるCentral Bank of Kenya(ケニア中央銀行)は、一定の自主規制期間の後、独立したデジタル金融機関(銀行と提携していない)の業務を監督する権限が付与される。今後は、ケニアで事業を行うにはライセンスを取得する必要が出てくる。これまでは登録するだけだったが、それが悪質なアプリの急増を招くことになった。

このケニア中央銀行に関する2021年改正法案では、規制当局に対し、金利に上限を設けたり「データ保護法または消費者保護法の条件」に違反したデジタル金融機関のライセンスを一時停止または取り消す権限も与えている。

ケニアのデータ保護法では、企業はデータを収集する理由を顧客に開示するよう義務付けられている。また、借り手の機密情報が不正な第三者によって侵害されないよう保証する。この動きの背景には、消費者向けロビー活動が、顧客情報をデータやマーケティング企業と共有しているとしてローンアプリを非難していることがある。

デジタル金融機関はまた、プロダクトに関するすべての情報を開示することが求められ、これには価格設定の詳細、債務不履行者に対する罰則、債務回復の手段などが含まれる。これは、プロダクトやサービスの購入に関するすべての条件を消費者に開示することを販売者に義務付けている消費者保護法に沿ったものだ。ほぼすべての融資アプリが、ケニアでの借金を回収するためにデット・シェイミング手法を用いていることが明らかになっている。

ケニアにはおよそ100ものモバイル融資アプリがあり、その中には中国の大手ブラウジング企業Opera(オペラ)が所有するOkashやOpesaも含まれている。両社ともケニアで略奪的な融資戦術を用いているとの主張に直面している。OkashやOpesaをはじめとする数十のローンアプリが、法外な金利と搾取的な条件を設定していたことが判明した。例えば、Google Play Storeのポリシーでは60日ローンと規定されていながら、OkashやOpesaは30日ローンとなっていた。中国の2つのローンアプリの金利は法外で、年間876%に達している。銀行の年間金利にしても20%は滅多に超えない。サンフランシスコに拠点を置くBranch International Ltd.(ブランチ・インターナショナル)やPayPal(ペイパル)が支援するTalaなどの他のアプリでも、年利がそれぞれ156~348%、84~152.4%と、恐喝的なレートが使われていることが判明した。

月額約4000万ドル(約45億円)を支出する25のデジタル金融機関を代表する金融機関ロビー団体がTechCrunchに語ったところによると、メンバーは金利の上限設定について懸念を表明したが、特に彼らのフィードバックが受け入れられたことを受けて、新しい法律には満足しているという。同団体は、最低資本金規制や預金割り当ての撤廃、新技術や新プロダクトの規制権限の委譲を求めてロビー活動を行ってきた。

Digital Lenders Association of Kenya(ケニアデジタル金融業協会)の会長であるKevin Mutiso(ケビン・ムティソ)氏は次のように述べている。「この分野が規制され、中央銀行(規制当局)へのアクセスが可能になり、紛争規制の仕組みも導入されることを喜ばしく思っています。しかし、私たちが懸念しているのは価格統制であり、これにはあまり感心していません。金利の上限を設定した瞬間に融資は行われなくなります。私たちは神経質になっていますが、それは公正なことです」。

しかしムティソ氏によると、規制が整備されれば、金融機関は規制当局をはじめとするパートナーと協力して融資をより強固なものにすることができ、同国の融資市場の拡大に役立つという。

「規制の欠如は市場を予測不能にしていました。今なら私たちに何ができ、何ができないかがわかります。また、私たちはより良い債務回収慣行を持つことになります」とムティソ氏は語る。

「この法律により、ケニアは世界でナンバーワンのフィンテック市場になると私たちは考えています。なぜなら金融機関や借入者から期待されることなど、今はすべてが明らかだからです。私たちはまた、顧客、特にMSME(零細・中小企業)にとってより良いプロダクトを目にすることになるでしょう」と同氏は続けた。

これらのアプリは無担保ローンを提供しているため、当座の現金を求めている借り手や、口座履歴などの前提条件により銀行から締め出されることが多い借り手にとって魅力的なものとなっている。

デジタルクレジットは簡単に利用できるが、保有期間が短いために高額である。また、アクセスが容易なために複数のアプリからの借り入れが発生し、債務の逼迫やクレジットスコアの低下につながり、将来的に銀行からクレジットを取得する借り手の能力に影響を与える。

Kenya Bankers Association(ケニア銀行協会)の調査によると、利便性とアクセスの容易さが、クレジットにアクセスするプラットフォームを決定する際に顧客が考慮する主な理由であることが示されている。

この調査では、自営業者は通常のクレジットよりもデジタルを好むことが明らかになった。これは、彼らが業務を行っている間に経験する流動性の変化に起因するものであり、緊急時にもローンアプリが好まれることが指摘されている。

新しい法律では、規制当局に対し、クレジットコストを設定する際にデジタル金融機関が準拠する価格パラメータを決定する権限が与えられている。

法外な金利はケニアに限ったことではない。インドでは、融資アプリに週当たり60%もの高い金利が設定されていることが判明した。南アジアの国では、融資回収業者による嫌がらせの後に自殺した人々の報告があった。

西アフリカ諸国でも、地域最大の市場の1つであるナイジェリアを含め、融資アプリが急増している。

調査と政策提言を行うConsultative Group to Assist the Poor(CGAP、貧困層支援協議グループ)の報告書でも、タンザニアの2000万人もの借り手のデジタルローンのデフォルト率と延滞率が高いことが明らかになった。ほとんどの借り手は緊急事態や投資のためではなく、日々の必要性のために融資を利用している、と同報告書には記されている。

「これらの数字を減らすために規制当局ができる最も重要なことの1つは、融資条件の透明性を向上させ、顧客が情報に基づいた意思決定をしやすくすることです」とCGAPは述べている

同組織は、融資アプリを管理するためのより厳格な規則について勧告し、金融機関に融資条件の透明性を呼びかけた。

画像クレジット:Tala

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(文:Annie Njanja、翻訳:Dragonfly)

【コラム】暗号資産の規制が米国でスーパーアプリが生まれるきっかけになるかもしれない

今や、中国社会の大部分が「スーパーアプリ」と呼ばれるものに依存するようになった。診察の予約からタクシーの配車、ローンの申し込みに至るまで、さまざまなタスクを1つのプラットフォームでこなすWeChat(ウィーチャット)などのアプリのことだ。

米国ではこのようなワンストップショップが勢いに乗ることはなかったが、ついに米国でもそのときが来たのかもしれない。フィンテック業界、とりわけ暗号資産を専門とするプラットフォームからスーパーアプリが誕生する可能性が高いのだ。

株価の高騰と金利の記録的な低下、近い将来に起きるインフレへの不安などが重なり、暗号資産は急速に人気を集めている。米国政府が暗号資産を全面的に規制することを決定した場合(現在、米国議会はこの議題を検討している)、暗号資産の正当性はさらに高まるかもしれない。

今後、暗号資産の発行体が規制当局と連携し、消費者を保護しながら金融および投資に関する新たなオポチュニティを生み出すための妥協案を見いだせた場合、Coinbase(コインベース)などの暗号資産専用プラットフォームの他、PayPal(ペイパル)、Venmo(ヴェンモ)、Stripe(ストライプ)など、最近になって暗号資産による決済機能を追加したサービスが米国版のスーパーアプリに進化する可能性がある。消費者が暗号資産を安全かつ正当なもの、そして使いやすいものとして見ることができれば、これがスーパーアプリの基盤となり得るだろう。

関連記事:オンライン決済の巨人「Stripe」が暗号資産市場に再参入

これらの暗号資産アプリや決済アプリを拡大し、他のアプリやサービスと統合すれば、さまざまなタスクが便利になるはずだ。結局のところ、人は銀行に行くときにだけ資金管理のことを考えているわけではない。そもそも銀行口座を持っていない人も存在する。人は、買い物や旅行をするとき、診察料を払うときにも資金管理について考えており、こうしたアプリはそれぞれの人に必要な金融サービスを各個人に合わせて提供する助けとなるだろう。

暗号資産による決済を他のタスクと統合することは、金融業界を一般に広く行き渡るものに変えるという面でも大きなカギとなるだろう。暗号資産を普及させることで、十分なサービスを受けていないコミュニティの他、信用履歴がなくクレジットカードやローンの申し込みが困難な人に対し、より幅広い金融サービスを提供できるようになるからだ。

スーパーアプリの台頭

WeChatは2011年に中国国内のメッセージングアプリとしてサービスを開始したが、2013年には決済プラットフォームとしての機能を果たし、その後まもなく買い物や食料配達、タクシーの配車といったさまざまなサービスを展開するようになった。

今や、WeChatは何百万もの種類のサービスを提供しており、その大部分は、各企業がWeChat内で動作するミニアプリを開発し、そのミニアプリを通してサービスを提供する形となっている。10億人以上のユーザー数を誇るAliPay(アリペイ)の仕組みも同様だ。これら2つのアプリは、過去10年間で中国を現金主義経済からデジタル決済に大いに依存する経済へと変換したとして評価されている。デビットカードやクレジットカードが普及する中間段階を飛び越えた形での進化だ。

この仕組みはインドネシアをはじめ、同地域の他の国でも普及が進んでいる。ここでカギとなるのは、スーパーアプリのサービスの多くに、決済手段を含む金融サービスが搭載されているという点だ。

米国と欧州でも、こうしたアプリの使用は急増している。Apple(アップル)やFacebook(フェイスブック)、Google(グーグル)などの大手テック企業が決済サービスを追加し、VenmoやSquare(スクエア)といった複数の決済アプリがさらに普及するようになった一方で、スーパーアプリの出現はいまだに見られていない

その理由の1つは、データプライバシーに関する規制だ。米国、そして特に欧州におけるプライバシー規制によってアプリ間のデータ共有が制限されているため、アリペイなどのスーパーアプリにミニアプリを自動統合するようなエコシステムの構築が困難となっている。

また、以前から米国に充実したインターネットエコシステムがあることも理由の1つだ。フェイスブックなどの人気ソーシャルメディアやペイパルなどの決済サイトがスマートフォンの誕生以前から存在したため、1つのアプリが複数のサービスを提供する代わりに、これらのプラットフォームがそれぞれ別のアプリを展開する結果となっている。一方中国では、インターネットの大半がモバイルファーストで、スマートフォンの出現以降に進化している。米国市場は長きにわたり、各タスクについて別個のプラットフォームを使用する形態に慣れていたというわけだ。

しかし、アナリストの多くは、さまざまなアプリやテック企業がサービスの種類を拡大している点(例えばTikTok(ティックトック)はショッピング機能を追加し、Snapchat(スナップチャット)はゲーム用のミニアプリを統合し、Appleは決済業界に参入)を指摘し、米国でもいずれスーパーアプリが台頭するか、たとえそうでなくても今より多機能の大型アプリが出現するだろうと述べている。1つのアプリにサービスを追加し、ユーザーのリテンションを維持する方法を見いだすことができれば、あるアプリでのユーザーの挙動を別のアプリと共有せずに済むため、プライバシー規制を回避することにもなる。

米国では、アジア市場のように1つまたは2つのアプリが群を抜いて市場を支配することは考えにくいものの、アプリの巨大化、そして包括的なものへの変化が進んでいることは明らかだ。

DeFiの進化

一方、過去10年間で暗号資産が生み出したものは決済アプリとスーパーアプリだけではない。ビットコインという1つの製品から誕生した暗号資産は、今や総合的なピア・ツー・ピアの金融システム、いわゆるDeFi(ディーファイ、分散型金融)へと進化した。これには、Ethereum(イーサリアム)やDogecoin(ドージコイン)など複数の通貨が含まれ、システム上でユーザーによるお金の投資、売買、消費、貸し出しが可能となっている。

新型コロナウイルス感染症の拡大によって経済の先行きが不透明になり、また従来の金融機関のなかにも暗号資産関連のサービスを一部提供する機関が増えたことで暗号資産の人気がさらに上昇している反面、暗号資産はいまだに主要の金融システムや金融セクターから除外されており、高い危険性があることを多くの専門家から指摘されている。暗号資産の発行体もまた、分散型の金融製品を生み出すという目標から外れるとして、規制に長らく抵抗してきた。

しかし、この状況には変化が生じ始めており、一部の暗号資産プラットフォームが規制の遵守に関心を示すようになっている。

例えば、Coinbaseはユーザーがコインを他人に預け入れた場合に利子を獲得できるという製品の提供を計画していた。ところが、米国証券取引委員会によるガイダンスの提供がなかったにもかかわらず、同委員会から「Coinbaseが製品をリリースした場合は同社を提訴する」との警告が発せられ、この計画を断念するに至った。事実、暗号資産の発行体は、一部の規制に従うことで自社の製品の正当性が高まり、より多くの人に幅広い目的で使用してもらうことができると認め始めているのだ。この流れには、最近、Stablecoin(ステーブルコイン)をはじめとする新たな暗号資産製品が市場に現れたことで、従来の通貨の価値が議論されていることも関係している。

暗号資産の規制については、米国証券取引委員会の委員長Gary Gensler(ゲーリー・ゲンスラー)氏をはじめ、一部の議員や暗号資産業界の人物が賛成の立場を表明しており、規制の実現は近づいていると考えられる。

暗号資産が米国初のスーパーアプリを後押しする存在に

暗号資産の発行体が政府関係者と連携し、イノベーションを制限することなく消費者を保護するような規制を定めることができた場合、暗号資産は長年動きのなかった米国のスーパーアプリの開発を促す要素となる可能性が高い。

Coinbaseが米国証券取引委員会と連携し、互いに調整しながら質の高い規制を定めることができたならどうだろうか。法令をもとにCoinbaseが、ユーザーが暗号資産として信頼できる、存続可能かつ認定された金融手段であることを立証し、魅力的な収益創出のオポチュニティとなる新規の金融製品のみならず、日常シーンでも使用できるツールとして成長させることができる。規制によって通貨に安定性が生まれれば、隠れた価値を持つ資産としてだけでなく、買い物に便利なツールとして変化させることができるだろう。現時点では日常生活で暗号資産を使おうとした場合、トランザクション時間の長さや手数料の高さ通貨価値の変動の大きさなどがユーザーエクスペリエンスに摩擦を生むことになるが、こうした規制により、面倒な一部の手順を排除することも可能だ。

規制のフレームワークを作成することで暗号資産の需要は圧倒的に増加し、飲食業から小売業に至るまで、暗号資産を使った決済処理への対応を希望する企業が突如として増えるだろう。そうなれば、既存の暗号資産決済アプリへの統合が加速し、それらがスーパーアプリに進化していくと考えられる。従来の通貨を銀行に預金する代わりに、これらのアプリで暗号資産の預金をする人も増え、経済、そして金融のエコシステム全体が根元から覆るだろう。

銀行はいつでも大衆が望む製品を生み出してきたが、暗号資産および分散型金融の業界はまぎれもなく、人が必要とする製品とサービスを提供してきた。現に、規制や法的な環境がはっきりしない今でさえ、何百万もの人が暗号資産を使用しているのだ。

中国では、クレジットカードのサービスを十分に受けられない市場で現金の代替手段が必要となり、そのニーズを満たすべく、ユビキタスかつ統合型のデジタル決済が急速に進化した。同じように、暗号資産ベースのスーパーアプリは従来の決済手段に代わって、あるいはそれに加えて、暗号資産を安全かつ効率的に使用することを望む消費者や企業のニーズを満たすものとなるだろう。

暗号資産が無規制のグレーゾーンにとどまる限り、そのプラットフォームもスーパーアプリに進化することなく、業界外の経済や日常生活から除外されたままとなってしまう。そうなれば、米国はモバイルファーストかつデジタルファーストな、革新的で新しい金融エコシステムを構築するチャンスを逃すことになるのである。

編集部注:本稿の執筆者David Donovan(デビッド・ドノヴァン)氏は、デジタルコンサルタント会社Publicis Sapientの米大陸におけるグローバル金融サービスプラクティスを率いており、元Fidelity Investmentsの幹部。

画像クレジット:loveshiba / Getty Images

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(文:David Donovan、翻訳:Dragonfly)

中小企業にクレジットカードを提供する支出管理プラットフォーム「Moss」が約97.8億円調達

ベルリンのMossが今週初めに、8600万ドル(約97億8000万円)のシリーズBを発表した。同社は中小企業にクレジットカードを提供して、支出管理が容易にできるようにする。

このラウンドによりMossの評価額は5億7300万ドル(約651億3000万円)に達した。Tiger Global ManagementがこのシリーズBをリードし、A-Starが参加した。合わせて同社の調達額は総額で1億5000万ドル(約170万5000円)近くとなった。

Mossは、支出管理のプラットフォームだということができる。ヨーロッパの競合他社は、SpendeskPleoSoldoなどだ。Mossの強みは、デビットカードでなくクレジットカードを提供していることだ。取引は各決済の数秒後にMossのダッシュボードに表示される。

カード本体だけでなく、従業員はオンライン決済のためのバーチャルカードを作ることができる。何かを買うたびに、Mossの顧客はすべての支出に0.4%の割引がある。

これなら、小さな会社でも1枚のコーポレートカードですべての経費を共有する必要がない。チームリーダーは、従業員ごとに予算を設定し、より簡単に経費を把握することができる。

従業員自身にとっても、ヨーロッパではコーポレートカードはそれほど一般的ではない。Mossに切り替えることで、従業員の経費を自己負担する必要がなくなる。Mossのカードで決済し、レシートを添付すればいい。また、カード決済ができないレストランでは、現金での経費精算もMossで行うことができる。

カード決済以外にも、すべての請求書をMossアカウントで一元管理することで、Mossに頼ることができる。Mossのユーザーは、承認ルールを設定し、ビジネス銀行口座の支払いリストをエクスポートすることができる。

最後に、Mossは、ドイツ市場で人気の会計ソフトであるDatevと統合しているため、会計業務をスピードアップすることができる。今後、このスタートアップは、製品をさらにモジュール化する予定だ。すべてを必要としないのであれば、支出管理スタック全体を使用する必要はないだろう。

Mossは、全体で25万件の取引を処理し、2万枚のカードを発行している。製品はドイツとオランダで提供されている。同社は現在、英国への進出を計画している。

画像クレジット:Moss

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Block(旧Square)のCash AppがLightning Networkを統合、手数料無料でビットコイン支払い可能に

2021年11月、Twitter(ツイッター)CEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏が辞任した。同氏が所有する別の会社Square(スクエア、現在はBlock)に全力を注ぐためだ。同社は近年ブロックチェーンと暗号資産に多大な投資を行っており、それはドーシー氏自身も同じだ。そして今、Blockの暗号資産への取り組みの結果が見え始めてきた。米国時間1月17日午前、Blockのモバイル決済サービスCash App(キャッシュ・アップ)はLightning Network(ライトニング・ネットワーク)との統合を発表し、米国ユーザーが世界中の誰にでもBitcoin(ビットコイン)を手数料なしで送れるようにした。

この機能は以前からCash Appユーザーに向けて徐々に公開されていたが、正式な発表はなかった。「今後数週間」のうちに米国の全Cash App利用者に行き渡る予定だと同社はいう。

新機能が有効になると、Cash AppユーザーはBitcoinを全世界の対応するウォレットに送れるようになる。家族や友達への送金の他Chivo Wallet(チボ・ウォレット)やBlueWallet(ブルーウォレット)、Muun Wallet(ムーン・ウォレット)などの自己管理ウォレットも対象だ。さらに、ユーザーはLightning Network決済に対応している商店にも手数料なしでBitcoinを送金できる。まだ主流にはなっていないが、一部の売り手がLightning決済を受け入れ始めているので、ユーザーはLightning Network経由でピザを注文したりギフトカードを買ったりできる。

Lightning NetworkがCash Appに統合されたことは、現在成長中のクリエイター経済にも力を与えるだろう。クリエイターやCause(大義)がLightning 決済に対応していれば、ファンはBitcoinを送って支援の気持ちを表すことができる。

画像クレジット:Lightning Network

Cash Appはこのシステムの優位性について、一般的なBitcoinネットワーク取引はLighning Networkと比べて、時間がかかり手数料も高いことを挙げ、Lightningという名前はその高速性を伝えるためだと説明した。同システム上での取引はブロックチェーンとは独立に(オフ・チェーンで)実行される。これは通常関わってくる手数料、時間、エネルギーを減らす効果がある。それでもLightning Networkがブロックチェーンのテクノロジーと分散化の恩恵を受けることができるのは、そこで行われた取引は、後にメインのBitcoinブロックチェーンに集約、記録されるからだ。

ドーシー氏は以前からLightning Networkに関心を示しており、2019年にツイートで、これは #BitcoinTwitterユーザーの間で行われている実験の「クールな事例」だという。最近では、BlockのBitcoinに特化した子会社、Spiral(スパイラル)がLightning開発キット(LDK)を提供して、どんなアプリにも簡単にBitcoin支払いを統合できるようにした。今回のCash AppへのLightning統合にもSpiralのLDKが使用されている。Cash Appは、LDKを組み込こんだ最初の、現時点で最大の決済アプリケーションだと同社はいう。

LDKの提供は、一部門の作ったツールが他のBlock傘下企業で使われるという点で、Blockの戦略的ビジョンが具現化された新たな事例でもある。

画像クレジット:ThaiMyNguyen / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国デジタル人民元「e-CNY」ウォレットアプリの個人ユーザー数が2億6千万人超に、五輪に向け実証実験を加速

中国で今、インストール数が急増しているアプリの1つが、中央銀行のデジタル人民元ウォレットだ。中国人民銀行(中央銀行)の金融市場担当責任者であるZou Lan(ゾウ・ラン)氏は、中国時間1月18日のプレスイベントで、人口の約5分の1に相当する2億6100万人の個人ユーザーが「e-CNY」ウォレットをセットアップし、875億元(約1兆5780億円)相当の取引が行われていると述べた

中国では過去2年間にわたり、深圳を含む10の主要都市でデジタル人民元の実証実験を行ってきた。人々は当初、抽選に参加して初期ユーザーになるための申請をする必要があった。そして2022年1月4日、中銀は実証実験を加速させる明確なサインとして、e-CNYウォレットを中国国内のiOSおよびAndroidストアで利用できるようにした。

関連記事:中国のデジタル人民元の大規模な実験が深圳でスタート

デジタル人民元は、中国で禁止されている暗号資産の一種では決してない。中央銀行は、ビットコインなどは変動性が高く、投機的で本質的な価値を持たないと判断し、暗号資産がマネーロンダリング(資金洗浄)の道具になる可能性を指摘している。

e-CNYは、異なる結果を目指している。中央銀行が発行するe-CNYは、中国で流通している現金通貨(M0)の法定デジタル版であり、規制当局はNFC技術を用いてインターネットがなくてもデジタル人民元の決済ができるようにすることを意図している。

2021年、中央銀行のe-CNY研究開発ワーキンググループが発表した研究論文によると、デジタル人民元の目的は以下のとおりだ。

  • 中央銀行が国民に提供する現金の形態を多様化し、国民のデジタルキャッシュに対する需要を満たし、金融包摂を支援する。
  • リテール決済サービスの公正な競争、効率性、安全性を支援する。
  • 国際的なイニシアティブに足並みをそろえ、国境を越えた決済の改善を模索する。

e-CNYウォレットは現在、中国のアプリストアでダウンロード可能だが、実際に登録してアカウントを補充し、Alibaba(アリババ)での買い物やDidi(ディディ)の乗車料金の支払いなど、800万件の「試験シナリオ」でデジタル通貨を使うことができるのは、試験的に導入された都市と冬季オリンピックの会場にいるユーザーだけだ。

現金をe-CNYに交換するには、Tencent(テンセント)が出資するWeBankやAnt(アント)が出資するMyBankなどのデジタルバンクを含む、中銀がデジタル通貨の運用・流通を認可した商業銀行のいずれかから資金を移動させる必要がある。

中国の人気決済サービスとの関係について、中央銀行は報告書の中で、e-CNYはWeChat Pay(ウィーチャットペイ、微信支付)やAlipay(アリペイ、支付宝)に取って代わるものではなく「補完」するものであると述べている。例えば、小額の取引では、e-CNYは物理的な現金と同じように匿名性をサポートすることができる。また別の例では、地方政府から市町村に送られる多額の資金をe-CNYで支払うことで、デジタル通貨の追跡機能を利用して汚職を防止することもできるという。

しかし結局のところ、e-CNYが本格的なアクティブユーザー基盤を獲得するには、ユーザーエクスペリエンスの面で大手民間決済企業に対抗する必要がある。

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)