Hyzon Motorsが水素燃料電池を用いるトラックの販売を開始

水素を動力とする大型トラックの企業Hyzon Motorsの水曜日(米国時間8/11)の発表によると、同社はブランクチェック企業Decarbonization Plus Acquisition Corp.との合併を機に事業を拡大し、まず手始めに同社の最初のトラックをヨーロッパの顧客に販売する。

水曜日に第二四半期の決算報告を行った同社は、合衆国における最初の顧客の試乗を始める準備もしている。

特殊目的買収ファンドとの合併で上場したそのほかの運輸企業と同様、Hyzonにはまだ語るに足る売上はない。むしろHyzonがあてにしているのは、この取引から得られる巨額の資本注入だ。それは5億ドル以上とも言われていて、また受注の増大による上向きのキャッシュフローも期待している。

現状では同社は当四半期に940万ドルの純損失を計上し、それには350万ドルの研究開発費の支出も含まれている。調整後の利払い前税引前償却前利益(EBITDA)は、マイナス910万ドルである。同社の手中には5億1700万ドルのキャッシュがあり、それは追加の株式を売らなくても2024年までにはフリーキャッシュフローに達するに十分な額だ。第二四半期の決算報告でHyzonのCFO、Mark Gordon氏は、そう語った。

Hyzonは水素燃料電池のパワートレインを製造しているだけでなく、水素燃料を生産するハブにも投資している。それはこの技術の普及のために欠かせないインフラストラクチャのための、主要な部位だ。4月に同社は、最大で100の水素生産ハブを目指して、再利用可能燃料の企業Raven SRとのMOUに署名した。Gordon氏は、その最初の2つがベイエリアだと認めた。

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彼によると、同社は年内に85台の燃料電池車を出荷できるので、次の四半期では初めての売上を計上できる。オーダーと契約のMOUは4月の5500万ドルから8300万ドルに増えているが、ただしMOUの多くは非拘束だ。オーストリアの食料品チェーンMRPEISとのトラック70台の契約も、そんな例の一つだ。また顧客の多くは燃料電池車を初めて見る人たちなので、採用にあたっては技術的なハードルもある。

CEOのCraig Knight氏は、決算報告でこう述べている: 「顧客の多くが燃料電池車に初めて触る人たちであり、それを見るのも今後の半年から1年が初めての経験になる。したがってそれは本格的な技術評価過程になり、顧客が自分たちのユースケースにおいて、車の機能性を快適と感じる必要がある」。

トラックの個々の受注台数は比較的少ないが、Knight氏によると納車から車隊の編成と稼働までの時間は、とくにヨーロッパの場合、短くなっているという。ヨーロッパはすでに、水素の可用性が相当大きいからだ。氏は曰く、「初期には、最初の燃料電池トラックを入手し試乗してから、実用車隊を動かすまで12か月から18か月を要した。しかし今では、もっと短いだろう」。

同社は主に、長距離輸送よりも、毎回基地に戻るタイプの運用を考えている。長距離輸送が一般化するためには、水素燃料を補給する広範なネットワークが必要だからだ。合衆国のロジスティクス企業Total Transport Services Inc.による顧客テストでは一日18-20時間という長時間使用を達成したが、その間の燃料補給はカリフォルニア州ウィルミントンの補給ステーションで1回行っただけだ。そこでKnight氏は曰く、「水素の利用の仕方としても優れているし、しかも国中を走り回って水素ステーションを探す面倒を、顧客に課していない」。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Hyzon Motors

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Foxconnが2022年にEV工場を米国とタイに建設へ、23年から生産開始

Foxconn(フォックスコン)は電気自動車(EV)という野望に真剣になりつつある。同社は決算会見で投資家に、EVを生産する工場を2022年に米国とタイに建設し、翌2023年に大量生産を開始する計画だと語った。同社会長のLiu Young-way(リュー・ヤンウェイ)氏は、同社が欧州の工場候補地についても協議していると述べた。

米国の工場では、FoxconnはFisker(フィスカー)を含むEVクライアントのための車両を生産する。FoxconnとFiskerは5月に契約を交わしFoxconnは2023年末までにFiskerのEVの生産を開始する。両社はProject Pear車両に共同投資し、そこから得られる売上高も分かち合う。

Nikkei Asiaによると、FoxconnはEV工場についてウィスコンシン州を含む3州と協議中だ。同社は今年初め、ウィスコンシン州にある既存の工場の計画を大幅に縮小した。リュー氏はまた、Foxconnが議論を巻き起こした工場でEVを生産するかもしれないとほのめかしていた。

計画されているタイの工場は、石油・ガスのコングロマリットPTTとの合弁企業の一部となる。2社はEVと部品生産のためのプラットフォームに取り組んでいる。Foxconnは毎年最大20万台のEVを生産する計画だ、とリュー氏は述べた。

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。本稿を執筆したKris HoltはEngadgetの寄稿ライター。

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画像クレジット: SAM YEH/AFP / Getty Images

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(文:Kris Holt、翻訳:Nariko Mizoguchi

Craft Aerospaceの新型旅客輸送用VTOL航空機が持つ可能性

空の移動手段と言えば現在でもエアタクシーが挙げられるかもしれないが、航空旅行業界を進化させる方法は1つではない。350万ドル(約3億8330万円)の資金を調達したCraft Aerospace(クラフトエアロスペース)は、まったく新しい垂直離着陸航空機で空の移動を実現することを目指しており、同社では都市間の移動をよりシンプル、高速、安価、かつ環境に優しくできると考えている。

はっきりいうとこの航空機はまだ小規模なプロトタイプの状態だが、新しいVTOL技術を使用している。(不安定なことで有名なオスプレイのように)フラップの角度を変えるのではなく、フラップ自体を使用してエンジンからの空気の流れを変える仕組みになっており、非常に強固で制御しやすくなっている。

共同創業者のJames Dorris(ジェームス・ドリス)氏は、この高速で安定したVTOL航空機が空のローカル線の新しい扉を開く鍵となり、大きな空港よりも小さな空港やヘリポートが利用されるようになると考えている。1時間未満のフライトを経験したことがある人なら知っているが、セキュリティチェックの列やゲートに並ぶ時間や、空港への行き来(大きな空港は離れた場所にある)にかかる時間は、フライト自体の時間の3倍にもなる。

「我々はお金持ちを空からショッピングモールに輸送しようとしているのではありません。機内の通路が広ければそれだけ非効率になります」。とドリス氏はTechCrunchに語った。「遅延を短くする鍵は、都市の中で人を乗せ、都市の中で降ろすことです。そのため、このような短距離の飛行では、固定翼機とVTOL機の利点を組み合わせる必要があります」。

同社が実現した技術は「吹き出し翼」または「偏向スリップストリーム」と呼ばれるものだ。古い三流SF雑誌の表紙に載っている飛行機に少し似ている。だが、普通でない形状と多数のローターで目的を達するのだ。

これまで吹き出し翼の基本的な原理は考えられてきたが、製品としての航空機に実装されることはなかった。(見るからに極めて強固な)フラップのセットを、推力装置のすぐ後ろに配置するだけだ。そこでフラップを排気流路に向けて傾けることで、空気の流れを下に向けることができる。これにより機体が上昇、前進する。十分な高度に達したらフラップを格納する。これでエンジンが正常に動作し、航空機が前進して通常どおりに上昇する。

クラフトエアロスペース。離陸時にフラップを広げることで推力は下方に向けられる

冗長性のためにローターが多数あり、4つある「半翼」それぞれで推力を微調整できる。箱形の翼と呼ばれる形状も一定の制約下(その形状の翼を持つドローンなど)で試されてきたが、最終的に従来の後退翼の有効な代替手段とはならなかった。しかしドリス氏とクラフトエアロスペースは、この形状には大きな利点があると考えている。この形状により、エンジン2機のオスプレイより安定性が大幅に増し、離着陸時の調整が可能になる(実際、多くの人がティルトローターの航空機を提案したりプロトタイプを作成したりした)。

クラフトエアロスペース。飛行中はフラップが格納されて飛行機は通常どおり推力装置で前進する

「我々の技術は、既存の技術と新しい技術を組み合わせたものです」と彼はいう。「これまで、箱形の翼が作られて実際に飛行しました。また、高フラップの飛行機も作られて実際に飛行しました。しかし、両者がVTOL航空機でこのように統合されることありませんでした」。

繰り返すが、クラフトエアロスペースのモデルは、規模の面で制約がありながらも、原理的には正しいということを示してきた。同社は完全な規模の航空機の準備ができているとは言っていない。数年後に意欲的なパートナーが進化を支援してくれるだろう。

第5世代のプロトタイプ(おそらくコーヒーテーブルのサイズ)は吹き出し翼の原理でホバリングする。そして数カ月後に予定されている飛行の情報によると、第6世代では移動フラップが導入されるだろう。(私はつながれた状態で屋内ホバリングを行うプロトタイプの動画を見せてもらったが、クラフトエアロスペースはこのテストの様子を一般公開していない)。

現時点では航空機の最終的な設計は確定していない。たとえばローターの正確な数などはわかっていない。しかし、基本的なサイズ、形状、キャパシティはすでに固まっている。

乗客9人とパイロット1人を乗せ、時速約300ノット(時速約555.6キロメートル)で高度約1万668メートルを飛行する。これは通常のジェット旅客機よりは遅いが、空港を利用しないことで短縮できる時間を考えれば、ジェット旅客機のほうが時間がかかるはずだ。ガソリンと電気を使用したよりクリーンなハイブリッドエンジンでは、飛行距離が約1609キロメートルになる。柔軟性と安全性の面で相当な余裕ができる。これは、ロサンゼルスからサンフランシスコ、ソウルからチェジュ島、東京から大阪など、世界で利用者の多い上位50ルートのうち45ルートをカバーする距離でもある。

クラフトエアロスペース。おそらくこの高度では飛行しない

しかしドリス氏はとりわけ「ロサンゼルスからサンフランシスコ」ではなく「ハリウッドからノースビーチ」を強調したいと考えている。VTOL航空機の特徴は外見だけではない。規制上の問題がなければ、VTOL航空機は、はるかに狭い場所に着陸できる。ただし、離着陸場や「マイクロ空港」の詳細な形式は、航空機自体と同様にまだ構想段階だ。

クラフトエアロスペースのチームはちょうどY Combinator(Yコンビネータ)の2021年夏のコホートをなんとか終えて、洗練された輸送方法を構築する経験を積んだ。ドリス氏は以前、Virgin Hyperloop(ヴァージンハイパーループ)の推進システムの第1人者だった。共同創業者のAxel Radermacher(アクセル・レーダーマッハー)氏は、Karma Automotive(カルマオートモーティブ)のドライブトレインの作成に携わっていた。どちらの企業も航空機を作っていない点が気になるかもしれないが、ドリス氏はそれを欠点ではなく特徴だと考えている。

「みなさんは従来の航空宇宙産業が過去10~20年で生み出したものを見たでしょう」と彼はいう。Boeing(ボーイング)やAirbus(エアバス)のような企業が必ずしも車輪の再発明を行っているわけではないということを言おうとしている。一方、自動車業界の巨人と提携した企業は、規模のミスマッチのために壁にぶつかっている。数百機の航空機と50万台のシボレーのセダンは大きく異なるのだ。

つまり、クラフトエアロスペースは航空宇宙産業を大きく変えてきたパートナーに依存している。そのアドバイザーの中には、Lockheed Martin(ロッキードマーティン)のエンジニアリングディレクターであったBryan Berthy(ブライアン・バーシー)氏、Uber Elevate(ウーバーエレベート)の共同創業者の1人であるNikhil Goel(ニキール・ゴエル)氏、SpaceX(スペースX)の初期の従業員でハイパーループ信者であるBrogan BamBrogan(ブローガン・バンブローガン)氏がいる。

またクラフトエアロスペースは、ローカル路線の低摩擦フライトを提供している小規模航空会社であるJSXとの間で、航空機200機(必要に応じてさらに400機の追加オプションあり)を購入するという基本合意書について発表したばかりだ。ドリス氏は、クラフトエアロスペースのポジションと成長スピードを考えれば、航空機の準備ができた段階で完璧な早期パートナーを得られると信じている。おそらくそれは2025年前後で、フライトは2026年に開始されるだろう。

この動きはリスクがあり普通ではないものだが、ばく大な見返りを得られる可能性がある。クラフトエアロスペースは、現段階では自分たちのアプローチは普通ではないが、数百キロの飛行を行うためには明らかに優れた方法だと考えている。業界や投資家からのポジティブな反応を見ると、その考えは支持されているようだ。クラフトエアロスペースは、Giant Ventures(ジャイアントベンチャーズ)、Countdown Capital(カウントダウンキャピタル)、Soma Capital(ソーマキャピタル)およびそのアドバイザーであるニキール・ゴエル氏から計350万ドル(約3億8330万円)の初期投資を受けている。

「我々は実証してきました。また、多くのコンセプトを目にしてきた航空宇宙産業の人たちからも、非常に多くの支持を集めています」。とドリス氏は言った。「我々はわずか7人のチームで、もうすぐ9人になります。率直に言って、我々に対する現在の関心の高さは非常にうれしいものです」。

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タグ:Craft AerospaceVTOL飛行機資金調達

画像クレジット:Craft Aerospace

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

「空飛ぶクルマ」eVTOLを開発するSkyDriveがJAXAと協力し空力特性の研究開始、プロペラの試験データ取得

「空飛ぶクルマ」eVTOLを開発するSkyDriveがJAXAと協力し空力特性の研究開始、プロペラの試験データ取得

「空飛ぶクルマ」(eVTOL)や「物流ドローン」を開発するSkyDrive(スカイドライブ)は8月10日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と協力し、空力特性に関する研究を開始したことを発表した。これまでSkyDriveでは独自に研究を積み重ねてきたが、今回の研究は、空飛ぶクルマのプロペラ(ローター)の試験データを、JAXAが保有する日本最大の航空機用風洞試験設備で収集することが目的。

空飛ぶクルマのプロペラは、飛行機のプロペラやヘリコプターのローターとは異なる使われ方をするため、空力特性には未知の領域があるとSkyDriveは話す。「空気がプロペラにどのような影響を与えるかを正確に把握すること」が機体の開発には極めて重要であり、プロペラの形状や回転数を最適化することで、電力活用の高効率化、飛行の安定化・静音化などの性能向上につながるという。

2025年ごろの事業開始を目指すSkyDriveでは、今後、プロペラのみならず、機体を使った風洞試験、計算流体力学(CFD。Computational Fluid Dynamics)による解析、飛行データの解析でもJAXAと共同で研究を進めるとのこと。

空飛ぶクルマは、都市部のタクシーサービス、離島や山間部の新たな移動手段、災害時の救急搬送といった利用法に期待が寄せられているが、2018年からは経済産業省と国土交通省が主催する「空の移動革命に向けた官民協議会」が開かれ、空飛ぶクルマに関する法整備、運用方法、駐機場の確保、保険などさまざまな分野で実用化に向けた検討がされている。また経済産業省と国土交通省は、2023年ごろに事業を開始し、2030年には本格普及するというロードマップを制定している。

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タグ:eVTOL / 電動垂直離着陸機(用語)JAXA / 宇宙航空研究開発機構(組織)SkyDrive(企業)日本(国・地域)

歩道走行の防止と安全性の向上を目指すマイクロモビリティのVoiが50億円を調達

マイクロモビリティのスタートアップであるVoi(ヴォイ)が4500万ドル(約50億円)を調達した。同社はこの資金を、ユーザーが歩道を走らないようにしたり、スクーターが適切に駐車されるようにするなど、安全性を向上する技術の研究開発に使うと述べた。

VoiはアイルランドのスタートアップであるLuna(ルナ)と共同で、英国ノースハンプトンにおいて、駐車場や歩道走行の問題解決にコンピュータービジョン技術をどう使うかをテストするための試験運用を開始していたが、今回の資金調達はその1カ月後に行われた。今回の研究開発費には、「歩道走行を防止するためのコンピュータービジョン・ソフトウェアの使用に関する先駆的な取り組み」が含まれると、同社は発表した。

「当社はこの技術をリードしています。来年にはLunaのような技術を採用し、当社のフリートに搭載して広く提供したいと考えています」とVoiの広報担当者はTechCrunchに述べた。また、同社のe-bikeにコンピュータービジョン技術を搭載することに前向きであることも明らかにした。

Voiの広報担当者はTechCrunchに、同社はこれまでの進捗に満足しており、Lunaの買収も含め独自の技術を模索していると語った。今のところ意思決定や買収は行われていないが、Voiは次世代スクーターにも投資している。次期車両では、コンピュータービジョンをステムに後付けするのではなく、内蔵する可能性がある。

すでに英国や欧州の70都市でスクーターを展開しているVoiは、さらなる拡大を目指している。また、駐車場、安全性、歩道の混乱を解決する技術は、都市との提携を獲得し、すでにある提携を維持する鍵だとVoiは考えている。

Voiは、今回の資金により物理的な駐車ラックを増やし、歩道の駐車問題にも取り組む。8月4日、同社はストックホルム市との合意のもと、100台の駐車ラックを設置した。英国ではすでに300台以上の物理的な駐車ラックを設置している。

Voiは、LimeやSpinなどの事業者に人気のある交換可能なバッテリーシステムを採用しているため、ラックは単にスクーターを公道から遠ざけるためのものだ。Voiは、物理的なラックを設置することで、「都市とそこに住む人々にとって持続可能なサービスを生み出す」ことができると述べている。

今回のラウンドで、Voiの資金調達総額は2億500万ドル(約226億円)に達した。今回のラウンドは、The Raine Groupがリードし、VNV Globalなどの既存投資家が新規投資家とともに参加した。同社は、新規投資家が誰であるかは明らかにしていない。

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画像クレジット:Voi

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

LiDAR業界の勢力争いとVelodyneの内部問題

1年前にSPAC(特別買収目的会社)企業Graf Industrial Corp(グラフ・インダストリアル・コープ)と合併して公開を果たしたVelodyne Lidar(ベロダイン・ライダー)が、米国時間8月5日に第2四半期業績報告を行った。それによれば、同社は徐々に費用がかさみ始めた内紛に苦しみながら、製品の新しい顧客を開拓するためにより多くの経費を投じたことがわかる。

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同社の第2四半期レポートによれば、ほんの数週間前に、Velodyne(ベロダイン)のCEOであるAnand Gopalan(アナンド・ゴパラン)氏が辞任し、800万ドル(約8億8000万円)の株式報酬を受け取っている。ゴパラン氏の辞任の時点で、同社は2021年の収益に関する事業見通しを再び述べ、7700万ドル(約84億9000万円)から9400万ドル(約103億6000万円)の間という予想は変更しないとした。

2021年の初め、創業者のDavid Hall(デイビッド・ホール)氏は取締役会の議長を解任され、妻のMarta Thoma Hall(マルタ・トーマ・ホール)氏は、取締役会が「不適切な行動」を理由に夫婦を調査した後で最高マーケティング責任者の役割を失った。VelodyneのCFOであるDrew Hamer(ドリュー・ヘイマー)氏によると、この大問題のために、同社はこの四半期に140万ドル(約1億5000万円)、2021年上半期には合計370万ドル(約4億1000万ドル)の法的費用を費やしたという。

取締役会とホール夫妻との戦いはエスカレートした。5月の書簡の中で、デイビッド・ホール氏は、SPACならびに、合併会社の取締役会の中の、SPACが任命したメンバーの財務実績の低さを非難し、 ゴパラン氏と2人の取締役の辞任を求めた。

米国時間8月5日の投資家への業績報告会で、ヘイマー氏は公開にともなう費用と法的費用の増加により、2021年の一般管理費は約35%増加すると予想されていると述べた。つまり紛争は終わっていないことを意味している。第1四半期から第2四半期にかけて、それはすでに21%増加しており、1700万ドル(約18億7000万円)から2060万ドル(約22億7000万円)となっている。

この「一般管理費」のカテゴリーは、第2四半期は第1四半期の支出の約2倍である8480万ドル(約93億5000万円)となった、より大きな運営費用カテゴリーに含まれている。

法的費用の増加は、加速するコストプロファイルの一部にすぎない。同社はまた、成長、すなわち販売とマーケティングに多額の投資を行っている。

運営費用の大部分は販売およびマーケティングに費やされたのだ。販売およびマーケティングにVelodyneは第2四半期に4720万ドル(約52億円)を費やしたが、これは第1四半期の710万ドル(約7億8000万円)から大幅に増加している。

2020年に行われたCMOへのサーベイによれば、(目安に過ぎないものの)企業は平均して総収益の約11.3%をマーケティング予算に費やしている。資金が投下された同じ四半期中には、販売およびマーケティング支出の完全な効果が現れることは決してないことには注意することが大切だ。言い換えれば、Velodyneの第2四半期の拡大された販売およびマーケティング費用が、より多くのビジネスをもたらしたかどうかはまだわからないということだ。

同社の収益は第1四半期から第2四半期にかけて減少し、1770万ドル(約19億5000万円)から1360万ドル(約15億円)になった。販売に対してこれほど多額の投資をしている企業にとっては、仮に第2四半期の支出によってもたらされる結果の大部分が、企業の第3四半期の収益報告まで現れないとしても、収益の減少を目の当たりにすることは望ましくはない。

Velodyneは、その努力が今後の四半期の売上高の加速につながることに賭けているのだ。

同社は、LiDAR(ライダー)製品の需要の増加により、下半期にはさらに4600万ドル(約50億7000万円)から6200万ドル(約68億3000万円)の収益を見込んでいると語った。実際、第2四半期の総収益は第1四半期よりも少なかったものの、同社の製品ベースの収益は約30%増加した。このことをヘイマー氏は「新型コロナウイルスのパンデミックによる不確実性のために、購入が遅れた顧客からのLiDARセンサーの需要が新たなものとなった」ためだと説明する。

「私たちのパイプラインは成長を続けています」とヘイマー氏はいう。「8月1日時点では213のプロジェクトがありましたが、これは5月1日の198プロジェクトからは増加しています。【略】署名および合意されたパイプラインの中には、2026年から増加し始めると予想される、新しいADAS(先進運転支援システム)の複数年におよぶ契約たちが含まれています」。

ヘイマー氏は、2025年までに、Velodyneは、署名および合意されたプロジェクトから10億ドル(約1102億円)を超える収益が得られる機会を有しており、さらにまだ署名および合意がされていないプロジェクトのパイプラインからは、最大45億ドル(約4960億円)に及ぶ収益が得られると推定している。

4月末、VelodyneはEV(電気自動車)企業のFaraday Future(ファラデー・フューチャー)から、来年発売予定のフラッグシップ高級電気自動車FF91の独占LiDARサプライヤーに選定された。Faradayの車は、その自動運転システムのために、VelodyneのVelarray H800 LiDARセンサーを使用する。

Velodyneは他にもいくつかの既存のパートナーシップを有しているが、自動車分野では激しい競争に直面している。

例えばVolvo(ボルボ)やトヨタなどの大手OEMと取引を行っているLuminar(ルミナー)は、最近チップサプライヤーの1つを買収した、これはVelodyneを含む業界の他の企業のように半導体の不足に悩まされることがないようにするためだ。Hesai(ヘサイ)もまた、Lyft(リフト)、Nuro(ニューロ)、Bosch(ボッシュ)、Navya(ナビヤ)、中国のロボタクシー運営企業のBaidu(バイドゥ)、WeRide(ウィーライド)、AutoX(オートエックス)といった顧客などからの注目を集めている。

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長い間業界の主要サプライヤーであったVelodyneは、最近一部の顧客を失っている。

例えばもともとVelodyneを支援していたFord(フォード)は、同社の株式を売却し、自動運転車技術を自動車メーカーたちに供給しているArgo AI(アルゴエーアイ)に乗り換えた。Argoは、自社製のLiDARセンサーを大幅に改善することで競争力を強化した。つまりVelodyneに依存する必要がなくなったのだ。それは波及効果をもたらし、Ford向けのLiDARを製造するためにVelodyneと提携していたVeoneerに影響を与えたのだ。

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タグ:Velodyne LidarLiDAR

画像クレジット:Bloomberg

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

FiskerとフォックスコンのEVパートナーシップは「予想よりも速く進んでいる」とFiskerのCEOが表明

米国の電気自動車メーカーであるFisker(フィスカー)は、2021年の運営費用が4億9000万ドル(約538億1000万円)から5億3000万ドル(約582億2000万円)に達すると予想しているが、これは、Ocean(オーシャン)SUVのプロトタイプの研究開発費、先端技術のテストと検証、雇用、Foxconn(フォックスコン)とのパートナーシップの「加速」によって当初の見通しよりもやや増えている。

関連記事:フォックスコンと米Fiskerが電気自動車製造に関する正式契約を締結

米国時間8月5日の市場閉場後に第2四半期の業績報告を行った同社は、通年の主要な非GAAP運営費用と設備投資の予想を、当初の4億5000万ドル(約494億2000万円)から5億1000万ドル(約560億1000万円)という数字から引き上げた。業績報告の中で挙げられていたのは、2021年のプロトタイプ活動への研究開発費だが、その主要部分は先進運転支援システムのテストと検証、パワートレイン、およびユーザーインターフェイスによって構成されている。同社はまた、仮想検証ソフトウェアツールや、最近厳しくなったEuro NCAPおよびIIHSの安全規制に対応するための、人材採用、仮想および物理テストなどの社内コストへの支出が増加していることも指摘している。

CFOでCOOの共同創業者Geeta Gupta Fisker(ギータ・グプタ・フィスカー)氏は、業績報告会の中で、サードパーティだけに頼るのではなく、テストと検証を行うための内部体制を整える戦略的決定を下したことを付け加えた。

共同創業者でCEOのHenrik Fisker(ヘンリック・フィスカー)氏は米国時間8月5日のインタビューで「予想よりも速く進んでいる」Foxconnとのパートナーシップも支出の増加に寄与していると語った。

そのインタビューの中で、ヘンリック・フィスカー氏は「私たちの方向性は本当に一致しています」と語っている。「両社がこのプログラムに投資しているという意味で、これは非常にユニークなビジネス取引であるということができます。私たちが単にFoxconnを雇って車を作るわけではありません」。

Fiskerは現在、2つの車両プログラムを実施中だ。その最初の電気自動車であるFisker Ocean SUVは、ヨーロッパの自動車委託製造業者Magna Steyr(マグナ・シュタイヤー )によって組み立てられる。生産開始は2022年11月の予定で今の所順調に進んでいる、と同社は8月5日の発表で繰り返した。納車は2022年の終わりに欧米で開始され、2023年には月産5000台以上の生産能力を達成する計画だ。中国の顧客への納車も2023年には開始される予定である。

この5月にFiskerは、iPhoneを組み立てている台湾企業であるFoxconnと、新しい電気自動車を共同開発および製造する契約を締結した。ヘンリック・フィスカー氏によれば、両社は「極めて速やかに」設計を進めており、現在、トランクを開く新しい方法の特許やその他の技術革新に取り組むなど、エンジニアリングと技術の詳細に取り組んでいる。

「私たちは急激に加速しています、おそらく2021年の終わりまでにはいくつかの初期のプロトタイプが手に入ることでしょう」と彼はいう。

両社はまた、この新しいEVのデザインが都会のライフスタイル向けになることも決定した。

「万人向けの車を作ることはできません」と彼はいう。「農民向けであり、かつ都会のアパートに住む人のためでもある車を作ることはできません。これらは2つの異なる種類の車なのです。ということで、今回のEVには都会的なライフスタイルを選択しました」。

このプロジェクトPEAR(Personal Electric Automotive Revolutionの略)で生産される車両は、Fiskerのブランド名の下で北米、ヨーロッパ、中国、インドで販売される。Fiskerの8月5日の発表によれば、プリプロダクションは2023年末までに米国で開始され、翌年には増産される予定だということだ。

ヘンリック・フィスカー氏は、米国における製造拠点を明らかにしなかった。彼は最近ウィスコンシン州にあるFoxconnの製造施設を訪れ、この地域のサプライチェーンと同様に「印象的な」施設であると発言している。そして最終決定はFoxconnのものであるとFiskerは述べている。しかしFiskerは、自動車メーカーが顧客に直接販売できる州で電気自動車を生産したいと考えている。ウィスコンシン州では現在この行為は禁止されている。

「それは、私たちが店舗に出ていって電気自動車を販売するために変更しなければならない主要な事の1つになるでしょう」と彼は述べた。

業績報告

同社の第2四半期業績報告の概要は以下の通りだ。2つの重要な要素を心にとめておいて欲しい。Fiskerは2020年のこの時点では上場されていなかった。そのため前年との比較は利用することができない。この会社は基本的に収益開始前だが、グッズ販売から2万7000ドル(約296万5000円)を得ている。

Fiskerの報告によれば、前四半期から22%増加し、2万7000ドル(約296万5000円)の収益が生み出されたとされている。またFiskerは、前四半期の1億7680万ドル(約194億1000万円)の純損失と比較して、今四半期の純損失は4620万ドル(約50億7000万円)、つまり1株あたり0.16ドル(約17.6円)の純損失を報告している。第1四半期のこの大きな純損失だが、SECによる現金以外の項目を処理する方法の変更によって、第1四半期に1億3800万ドル(約151億4400万円)のワラント保証が要求されたことに起因する。公開ワラントは現在廃止されており、同社は将来の収益にこれらの影響を受けることはもうないと述べている。

第1四半期の営業損失は3300万ドル(約36億2000万円)だったが、第2四半期の営業損失は5310万ドル(約58億3000万円)となった。重要なのは、同社が「アセットライト」アプローチと呼んでいる方法を使用して現金を保持していることだ。つまり、工場を建設するのではなく、パートナーに依存するということを意味する。6月30日に終了した四半期の現金および現金同等物は9億6200万ドル(約1056億1000万円)で、第1四半期の9億8510万ドル(約1081億3000万円)をわずかに下回った。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:FiskerFoxconn電気自動車決算発表

画像クレジット:Fisker

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(文: Kirsten Korosec、翻訳:sako)

トヨタ、BMW、ブリヂストンの迷い、環境に配慮したモビリティは必要だがそのコストは誰が払う?

国連が採択したSDGsや、ESG投資に注目が集まる中、自動車業界にも環境への配慮が求められるようになってきた。フロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」においても、今後のモビリティを考える上で「循環型経済」がテーマとして挙げられている。同サミットでは、トヨタ・ダイハツ・エンジニアリング&マニュファクチャリング上級副社長兼一般財団法人トヨタ・モビリティ基金アジア・パシフィック地区担当プログラムディレクターのPras Ganesh(プラス・ガネシュ)氏、BMW Groupサーキュラーイニシアチブ担当役員のIrene Feige(アイリーン・フェージュ)氏、ブリヂストンGサステナビリティ推進部門長の稲継明宏氏、フロスト&サリバンヴァイスプレジデントのVijayendra Rao(ヴィジャンドラ・ラオ)氏が対談。フロスト&サリバンでアジア太平洋地区モビリティ部門担当アソシエイト・パートナーを務めるVivek Vaidya(ヴィヴェック・ヴァイジャ)氏をモデレーターとなり、循環型経済の重要性や実現可能性について語った。

本記事はフロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる

循環型経済は何から手をつけるべきか

対談はヴァイジャ氏の「循環型経済にはどんな意味があるか?」という問いから始まった。

ガネシュ氏は「循環型経済は、トヨタで30年以上テーマとなっています。二酸化炭素の削減には部分的なアプローチではなく、より大きな視点での全体的なアプローチが必要です」という。さらに同氏は、トヨタが持続可能な社会の実現に貢献するための新たなチャレンジ「トヨタ環境チャレンジ2050」を2015年に発表したことに触れ「循環型経済はトヨタにとっては新しいものではありません」と強調した。

では、循環型経済を実現するにあたり、何から着手すべきなのか。

稲継氏は「循環型経済はブリヂストンにとって、ビジネス機会だと捉えています。そこで重要になるのが資源の効率化です。当社のパートナーと協力し、必要なエコシステムを構築する必要があります」と話す。

一方、ガネシュ氏は車両寿命とリサイクルに注目すべきだと考える。車両寿命は地域ごとに差があり、アジアの車両寿命は10〜20年だという。同氏は「現状、使わなくなったクルマをリサイクルに出すよりも、売り払った方が所有者にとって得なことが多い。それでは循環が進まないので、政府のサポートを得ながら、リサイクルを促進したり、リサイクルしやすいように車体を分解しやすいデザインにしていくことが重要です」という。

フェージュ氏は、使用する材料を減少させるためのエコシステムの見直しの必要性を重要視している。同氏は「着手しやすいのは、金属の再利用です。もちろん、再利用品であれ、新品であれ、質が高くなければいけないのは大前提ですが、今後のクルマの生産では金属を再利用し、新品の金属を使用する際には、それを正当化するような仕組みが必要です」と語る。

リサイクルの壁

ヴァイジャ氏の次の質問は「循環型経済を考えた時、EV(電気自動車)はどういう意味を持つのか?」だった。

フェージュ氏は「持続可能性はEVによってもたらされます」と断言。車体やバッテリーの分解・再利用を視野に入れ、サプライチェーン全体を見直さなければいけないと見ている。

ガネシュ氏もリサイクルの重要性を認め「バッテリーのリサイクルモデルができ上がれば、クルマの価格を下げることに繋がります」と話す。しかし、同氏はリサイクルには壁もあると考える。例えば、アジアではほこりや湿度の関係で、バッテリーの再利用に限界がある。さらに、リサイクルに関わるテクノロジーはまだ発展途上で、変化が多い。生産からリサイクルまでのプロセスを最初から考えなければいけないという。

稲継氏は「ブリヂストンにとっては、クルマに関わるリサイクルというと、タイヤのリサイルを意味します。そしてタイヤリサイクルはビジネスだと捉えています。リサイクルとは、資源の循環ですので、やはりパートナーとの協力関係の構築と、エコシステムの見直しが鍵ですね」という。

循環型経済へのマイルストーン

ここまでで循環型経済に向けた課題が見えてきた。しかし、実現までのマイルストーンはどう設定していけば良いのか。

ガネシュ氏は先述の「トヨタ環境チャレンジ2050」を挙げ、トヨタは循環型経済の実現目標を2050年に定めていることに言及した。同時に、実現のために考えなければいけないことは多いとも語る。

同氏は「実現には戦略が不可欠です。例えば、カーボンニュートラルはどれくらいの規模でやるのか?トヨタだけでやるのか?政府と組むのか?何か他の組織と協力するのか?など考えなければいけません。トヨタには26カ国 / 地域に50の海外製造事業体があります。それぞれの国にはそれぞれの状況があります。つまり、カーボンニュートラルは一度やっておしまいではなく、それぞれの国でそれぞれの段階で進めなければいけません」と話す。

一方フェージュ氏は「カーボンニュートラルはBMWのゴールです」という。マイルストーンとしては、使用する金属の見直しや、市場の金属供給の精査がまず必要だという。

では、日本のモビリティにおけるカーボンニュートラルのマイルストーンはどうなのだろうか。

ガネシュ氏は、日本政府のサポートが強いことを指摘する。天然資源にそれほど恵まれていない日本では、循環型経済は喫緊の課題であるため、政府の支援も受けやすいという。

稲継氏は「日本の政府とコラボレーションするということは、規制のあり方を考えることでもあり、重要なことです」とガネシュ氏を補足した。

誰がコストを払うべきか

循環経済を実現するには、リサイクル技術の開発や、これまでと異なるプロセスを組み込むことでコストが発生する。ヴァイジャ氏は「こうしたコストや、コストによる自動車価格への影響はどうするべきなのでしょうか」と他の参加者に質問した。

稲継氏は「エコシステム全体でコストを分かち合う必要があると思います」と回答。

フェージュ氏は「素材の再利用で全体プロセスにかかるコストは下げられると思います。新品の素材でも再利用の素材でも、同じ質を担保することが課題となります」と答えた。

ガネシュ氏は「循環型経済のために自動車の価格が変動したら、その変動分を調整しないといけません。では誰が調整するのか?政府でしょうか?顧客でしょうか?自動車メーカーでしょうか?」と問題を提起。さらに、循環型経済は素材の再利用でコストが下がる可能性もあると指摘し「循環型経済で増加したコスト」と「循環型経済で下げられたコスト」のバランスがしばらく変化し続けるだろうと予測する。

さらに、同氏は発展途上国での循環型経済実現はより難しいであろうとも考える。そういった地域では、ロジスティクス用の車両を農業用に作り替えるなどして、1台のクルマに対し1回目の使い方、2回目の使い方、といったふうに複数回の用途を考えることが着手しやすいと指摘した。

「ただし、顧客がこういった車の使い方を望んでいるのか?お金を払いたいのか?というのも考えないといけません」とガネシュ氏は最後に付け加えた。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタBMWブリヂストン循環型経済二酸化炭素リサイクル電気自動車

巨大ロボットで有名な三笠製作所が、移動式交番2号機をドバイ警察に納車決定

画像は1号機のコンセプトモデル

 

ロボットやモビリティを手がける三笠製作所が、遠隔自動運転で動く移動式交番「SPS-AMV」2号機をドバイ警察に納車すると、8月5日に発表した

三笠製作所といえば、巨大ロボットプロジェクト「MegaBots(メガボッツ)」の立ち上げや、動くガンダム「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」への技術参加で脚光を浴びた企業。ロボットだけでなく制御盤技術も高いという。「SPS-AMV」は2017年からドバイ警察と共同プロジェクトとして開発をはじめ、2018年に1号機のコンセプトモデルを発表した。

人が乗れる巨大ロボットMegaBots

 

「SPS-AMV」は、ワイヤレス充電や太陽光発電で駆動する電動ビークルに、警察や行政のサービス端末を搭載したもの。速度違反や駐車違反の自動検出・通報や、周囲の360度映像を警察本部でVR視聴できる機能などを備え、パトロール業務の負担軽減を狙う。

さらに、スマートホンで希望の場所まで呼び出し可能で、乗車後は移動しながら各種支払いや遺失物や盗難の届け出など約30の行政サービスを提供できる。2号機の新機能としてHakobot社の小型自動運転車両が予定されており、さらなる利便性アップが期待される。

現状の2号機デザインは三笠製作所オリジナルのもので、ドバイ警察のデザインとは異なる。

 

今年10月から開催されるドバイ国際展覧会などで公開される予定だが、日本では一足先の8月9日、10日に東京・渋谷にてお披露目される。SPS-AMVへの試乗体験ができるという。

【SPS-AMV展示】
期間 2021年8月9日~8月10日(2日間)
場所 代官山TSUTAYA  〒150-0033東京都渋谷区猿楽町17-5
※新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴い、予告なく中止される可能性があります。

 

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Dubai, Police, Robot

GMが排ガスを出さない商用車ラインナップにカーゴバンと中型トラックを追加すると発表

General Motors(ゼネラル・モーターズ)は、配送業の「始点から終点まで」電動化するために設立した事業部門「BrightDrop(ブライトドロップ)」の商用車ラインナップに、新たに2台のゼロエミッション(無排出ガス)車を追加すると発表した。

1台目はChevrolet(シボレー)ブランドのバッテリー駆動カーゴバンで、人気の高いChevy Express Van(シボレー・エクスプレス・バン)に似たモデルになる予定だ。そして2台目は、Mary Barra(メアリー・バーラ)CEOが「EV用バッテリーのUltium(アルティウム)と水素燃料電池のHydrotec(ハイドロテック)の両方に対応する」と語る中型トラックだ。

GMが乗用車の電動化に多額の投資を行っていることはよく知られているが、それだけでなく、同社は商用車にゼロエミッション技術を導入することにも力を入れている。GMが注力している技術は、バッテリー式電気自動車と、大型車や長距離輸送向けとなる水素燃料電池の両方だ。

GMは2021年1月、トラックメーカーのNavistar(ナビスター)に水素燃料電池ユニット「Hydrotec Fuel Cell Power Cubes」(ハイドロテック・フューエルセル・パワーキューブ)を供給し、2024年に最初の水素燃料電池トラックの販売を開始すると発表した。また、米国の大手鉄道車両メーカーのWabtec(ワブテック)とは、機関車用の水素燃料電池とバッテリーを共同開発する契約を結んでいる。

GMは1月にBrightDropを起ち上げ、FedEx(フェデックス)との契約を皮切りに、電気自動車とコネクテッド技術を含むエコシステムを法人顧客に提供している。

BrightDropは、航続距離250マイル(約400キロメートル)の「EV600」と呼ばれる電動バンと「EP1」と名づけられたポッド型電動パレットという、2つの主要製品からスタートした。当時、BrightDropの幹部は、複数台のEP1電動パレットを輸送する中距離車両や、緊急配送用車両のコンセプトなど、他の製品にも取り組んでいることを示唆していた。

「これらの新型トラックから、BrightDrop、シボレーとGMCのEVピックアップ、そしてWabtecとの機関車や、Navistarとのセミトラックまで含めると、私たちは想像し得るほぼすべての牽引・運搬作業に対応する電動ソリューションを提供することができるようになります」と、バーラ氏は述べている。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:GMトラック電気自動車水素燃料電池

画像クレジット:GM

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

大日本印刷が11.1キロワット(WPT3)の大電力に対応したEV向けワイヤレス充電用シート型コイルを開発

大日本印刷が11.1キロワット(WPT3)の大電力に対応したEV向けワイヤレス充電用シート型コイルを開発

大日本印刷は8月4日、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV)、無人搬送車(AGV)などのための、薄型・軽量・低コストの11.1kW(キロワット)の大電力に対応したワイヤレス充電用シート型コイルを開発したことを発表した。大日本印刷では、この製品化を進め、2025年までに年間50億円の売上げを目指す。

大日本印刷が11.1キロワット(WPT3)の大電力に対応したEV向けワイヤレス充電用シート型コイルを開発

大電力対応ワイヤレス充電用シート型コイル

11.1kWは、自動車や航空機の規格開発を行う米非営利団体SAE International(Society of Automotive Engineers International)が定めたワイヤレス充電の規格「WPT」の中の、最大出力となる「WPT3」に該当する。つまり、世界のあらゆる電動車両の充電をカバーできる。

大日本印刷では、ワイヤレス充電技術が車のEV化を促進し、センサーやカメラを使った「自動駐車」技術とともに欠かせないものになると注目している。しかし、ワイヤレス充電には、従来のリッツ線(撚り線。よりせん)を使ったコイルでは、厚みと重量とコストが大きくなるという課題があった。そこで大日本印刷は、エレクトロニクス部門で培ってきた知見に基づくコイル設計技術と製造技術を用いたワイヤレス充電用シート型コイルを開発した。

このシート型コイルには、以下の特徴がある。

  • 送電側と受電側の両方のワイヤレス充電システムに対応
  • 電動車向けのフェライトを含めたコイルの厚さは約3mm、重量は約1kg(SAE Internationalが規定するJ2954 WPT3/Z2対応)。リッツ線を用いた同仕様の既存製品の厚さ約12mm、重量約4kg以上と比べて、厚さ・重量ともに約1/4
  • 材料を削減できるためコスト低減が可能
  • 独自のコイル設計技術により、コイルの外側に発生する漏洩磁界を低減。熱の低減や平均化も行うことで大電力伝送を実現
  • コイルのサイズや使用電力に合わせた最適設計により、設置スペースが小さな無人搬送車にも応用可能
  • コイルで発生した磁界を熱に変えるIH家電用コイルとしての代用も可能

今後はこの技術を、国内外の自動車メーカー、システムメーカー、道路などのインフラ関連業界のほか、AGVメーカーやIH家電のメーカーにも提供し、さらに、走行中充電への応用も展開してゆくという。

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大日本印刷が指紋センサー搭載FeliCaカードを開発、2021年度内の製品化を予定
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10分で満充電にできるEVバッテリー交換のAmpleがENEOSと日本国内での交換インフラ展開、運営で提携

カテゴリー:モビリティ
タグ:充電(用語)大日本印刷 / DNP(企業)電気自動車 / EV(用語)ハイブリッドカー / HV(用語)無人搬送車 / AGV(用語)ワイヤレス充電 / 無接点充電(用語)日本(国・地域)

大日本印刷が11.1キロワット(WPT3)の大電力に対応したEV向けワイヤレス充電用シート型コイルを開発

大日本印刷が11.1キロワット(WPT3)の大電力に対応したEV向けワイヤレス充電用シート型コイルを開発

大日本印刷は8月4日、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV)、無人搬送車(AGV)などのための、薄型・軽量・低コストの11.1kW(キロワット)の大電力に対応したワイヤレス充電用シート型コイルを開発したことを発表した。大日本印刷では、この製品化を進め、2025年までに年間50億円の売上げを目指す。

大日本印刷が11.1キロワット(WPT3)の大電力に対応したEV向けワイヤレス充電用シート型コイルを開発

大電力対応ワイヤレス充電用シート型コイル

11.1kWは、自動車や航空機の規格開発を行う米非営利団体SAE International(Society of Automotive Engineers International)が定めたワイヤレス充電の規格「WPT」の中の、最大出力となる「WPT3」に該当する。つまり、世界のあらゆる電動車両の充電をカバーできる。

大日本印刷では、ワイヤレス充電技術が車のEV化を促進し、センサーやカメラを使った「自動駐車」技術とともに欠かせないものになると注目している。しかし、ワイヤレス充電には、従来のリッツ線(撚り線。よりせん)を使ったコイルでは、厚みと重量とコストが大きくなるという課題があった。そこで大日本印刷は、エレクトロニクス部門で培ってきた知見に基づくコイル設計技術と製造技術を用いたワイヤレス充電用シート型コイルを開発した。

このシート型コイルには、以下の特徴がある。

  • 送電側と受電側の両方のワイヤレス充電システムに対応
  • 電動車向けのフェライトを含めたコイルの厚さは約3mm、重量は約1kg(SAE Internationalが規定するJ2954 WPT3/Z2対応)。リッツ線を用いた同仕様の既存製品の厚さ約12mm、重量約4kg以上と比べて、厚さ・重量ともに約1/4
  • 材料を削減できるためコスト低減が可能
  • 独自のコイル設計技術により、コイルの外側に発生する漏洩磁界を低減。熱の低減や平均化も行うことで大電力伝送を実現
  • コイルのサイズや使用電力に合わせた最適設計により、設置スペースが小さな無人搬送車にも応用可能
  • コイルで発生した磁界を熱に変えるIH家電用コイルとしての代用も可能

今後はこの技術を、国内外の自動車メーカー、システムメーカー、道路などのインフラ関連業界のほか、AGVメーカーやIH家電のメーカーにも提供し、さらに、走行中充電への応用も展開してゆくという。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:充電(用語)大日本印刷 / DNP(企業)電気自動車 / EV(用語)ハイブリッドカー / HV(用語)無人搬送車 / AGV(用語)ワイヤレス充電 / 無接点充電(用語)日本(国・地域)

イーロン・マスク氏のLoopのドライバーには同社の「偉大なリーダー」に関する台本が渡される

Elon Musk(イーロン・マスク)氏がラスベガスで展開している地下システム「Loop」のドライバーたちは、同社での運転歴を尋ねる乗客の質問をはぐらかしたり、衝突事故については知らないと宣言したり、マスク氏自身についての会話を遮断したりするよう指示されている。

TechCrunchは、公文書法を利用し、6月にオープンしたLoopの通常業務を詳細に記した文書を入手した。このLoopは、ラスベガス・コンベンション・センター(LVCC)の周辺で、改造したTesla(テスラ)車を使って参加者を輸送する。文書の中には、好奇心旺盛な乗客が質問してきたときに、新入社員が必ず従う「Ride Script(乗車に関する台本)」も含まれている。

この台本は、システムを構築・運営するThe Boring Company(TBC)が、新システムやその技術、特に創業者であるイーロン・マスクのパブリックイメージをコントロールすることにどれだけ真剣かを示している。

台本のアドバイスによれば「あなたの目的は、乗客に安全なドライブを提供することであり、楽しいドライブを提供することではありません。会話は最小限にして、道路に集中しましょう」「乗客はあなたに質問を投げかけてきます。質問される可能性のある内容と、推奨される回答がこちらです」。

乗客がドライバーに勤続年数を尋ねると、次のように答えるように指示される。「このトンネルをよく分かっているくらいには運転していますよ!」と答えるように指示されている。さらに「(何百回も運転しているとしても)1週間しか運転していないと思われると、お客様は安心できません。従って、勤務年数を話すのではなく、質問をかわすか、焦点をずらす方法を考えてください」とドライバーにアドバイスしている。

このシステムでどれくらいの衝突事故が発生したか(台本では「事故」という言葉を使っている)を聞かれたドライバーは、こう答えるように言われている。「非常に安全なシステムなので、よくわかりません。会社に問い合わせてみないとわからない」。TBCの従業員やドライバーの数、トンネルの掘削費用などを質問しても、同じように曖昧な答えが返ってくるはずだ(掘削費用は合計で約5300万ドル[約57億8800万円])。

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TBCでは、Tesla(テスラ)の先進的な運転支援システムであるAutopilotの使用が明らかに弱点となっている。クラーク郡は現在、自動緊急ブレーキや障害物を認識しつつ車線内にとどまる技術を含むさまざまな運転支援機能の使用をLoopシステム内のいかなる場所でも許可していない。

群は、整備士にこれらが作動していないかどうかを確認することを義務付けているほどだ。

文書には「初期点検チェックリストに基づくアクションの完了に加えて、整備スタッフは、手動によるループ操作のため、ハンドル操作やブレーキ・加減速アシスト(通称Autopilot)などの車両の自動機能が無効化されていることを確認します」と書かれている。TechCrunchが閲覧した車両整備プランによると、その後の確認はCWPMの技術者によって毎日行われる。

万が一乗客が、Loopのテスラ車がAutopilotを使用しているかどうかを尋ねた場合は、ドライバーは回答するだろう。しかしこれに関する内容は、TechCrunchが入手した文書では「公共の安全に関わる機密事項」とされ、他の多くの技術的な詳細と同様に編集されていた。

この決定について、TechCrunchは関係者に何度も説明を求めたが、回答は得られなかった。

名前を言ってはいけないあの人

台本には、マスク氏自身に関する質問への回答も含まれている。「この種の質問は聞かれることが非常に多く、非常にデリケートな質問です。当社の創業者に対する世間の関心は必然的なものであり、会話の大部分を占める可能性があります。可能な限り簡潔に、そしてそのような会話を止めるために最善を尽くしてください。乗客がその話題を強要し続ける場合は、『申し訳ありませんが、本当にコメントできません』と丁寧に伝え、話題を変えてください」。

にもかかわらず、このスクリプトには、マスクのよくある質問に対する答えがいくつも用意されている。マスクはどんな人かと聞けば、こんな答えが返ってくるはずだ。「彼はすごい人です!刺激的 / やる気にさせてくれる、など」。

さらにこんな追い打ちをかける。「彼の元で働くのは好きですか?」と尋ねると、北朝鮮のような答えが返ってくる。「はい、彼はすばらしいリーダーです!私たちがすばらしい仕事ができるようにやる気を与えてくれます」。

乗客が、マスク氏がどのようにビジネスに関わっているのか疑問に思った場合、ドライバーは次のように答えるだろう。「彼は会社の創設者であり、非常に深く関与し、サポートしてくれています」。また、マスク氏の不規則なツイートについての質問は「イーロンは有名人なのです。私たちはただ、すばらしい移動体験を提供するためにここにいるのです!」と跳ねのけられる。

しかし、ある質問は、すべての人がマスクの下で働くことに満足しているわけではないことを示唆しているようだ。「新聞で読んだ彼についての記事で、彼は『意地悪な上司である/マリファナを吸う/従業員に休暇を取らせない / など』というのは本当ですか?」ドライバーはどちらかというと曖昧な返事をするだろう。「その記事は見ていませんが、私の経験ではそんなことはありません」。

余談だが、TechCrunchが入手した数百ページに及ぶトレーニング文書や業務マニュアルには、Loopでの薬物使用やハラスメントを防止する強いポリシーが詳細に記されているが「休暇」という言葉は出てこない。

認められている技術

クラーク郡は現在、Loop内での自動運転機能の使用を禁止しているため、しばらくは人間のドライバーがシステムの一部となる可能性がある。しかし、クラーク郡に提出された設計・運用文書によると、このシステムには他にも多くの先進技術が導入されている。地下のLoopに設置された62台のテスラには、非接触型決済システムに使用される固有のRFIDチップが搭載されており、車道、駅、駐車場に設置された55個のアンテナの上を通過すると、その位置が特定されるようになっている。

また、各車両は、速度、充電状態、乗車人数、シートベルト着用の有無などのデータを24のホットスポットに送信する。乗客が気を付けるべきなのは、車内に設置されたカメラからの映像も常時ストリーミングされていることだ。これらのデータは、Loop内に設置された81台の固定カメラの映像とともに、コンベンションセンターから数ブロック離れた場所にあるオペレーションコントロールセンター(OCC)に送られる。映像は最低でも2週間は録画・保存される。

OCCでは、オペレーターがカメラの映像やその他のセンサーを監視し、セキュリティ上の脅威や、ドライバーの携帯電話の使用やスピード違反などの問題を発見する。OCCは、Bluetoothヘッドセットや車載用iPadを使ってドライバーと通信し、メッセージや警告、トンネル内の車両の位置を地図上に表示する。車両には、駅構内での時速16.09キロメートルからトンネルの直線区間の時速64.37キロメートルの範囲で厳しい速度制限があり、前の車と6秒以上の間隔を保たなければならない。

2021年の春に行われたテストでは、クラーク郡の職員が、一部のドライバーが規則を守っていないことを発見したことが文書に記されている。「速度制限について質問したところ、何人かのドライバーは、直線および / またはカーブしたトンネルの速度を間違って答えていた。駅、急行レーン、傾斜部の速度については誰も答えられなかった」とある文書には書かれている。「ドライバーは乗客にシートベルトを締めるようにアナウンスしておらず、質問されても、任意であるまたは必要ないと『答えていた者がいた』」。

また、何人かのドライバーは、前の車との安全のための距離を6秒維持できていなかった。TBCはクラーク郡に対し、これらの分野で再教育を行うと答えた。

TBC、クラーク郡、およびLVCCを管轄するラスベガスコンベンション・観光当局は、この件に関する複数のコメント要求に答えなかった。

LVCVAは最近、Alphabet(アルファベット)がスピンアウトした都市型広告代理店Intersection Media(インターセクション・メディア)とLoopシステムの命名権を販売する契約を結び、450万ドル(約4億9100万円)の利益を見込んでいる。

TBCは現在、近隣のホテルにサービスを提供するためLoopの2つの拡張工事を行っているが、最終的にはストリップとラスベガスのダウンタウンの大部分をカバーし、40以上の駅を持つ交通システムを構築したいと考えている。このシステムは、TBCが資金を提供し、チケット販売によってサポートされることになる。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:LoopElon MuskTeslaAutopilot運転支援システムThe Boring Company

画像クレジット:Ethan Miller / Getty Images

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(文:Mark Harris、翻訳:Dragonfly)

Nikolaが電動セミトラックの納車見通しを下方修正、バラ色とはいえない予測は収益面でも続く

SPAC(特別買収目的会社)との合併により上場を果たした電動トラックのスタートアップ企業であるNikola(ニコラ)は、サプライチェーンの制約から多くの遅延が発生している影響で、年内に納車できる車両の台数が半減する見通しであると、米国時間8月3日に警告した。

未だ量産開始前の段階にある同社は、第2四半期の決算発表の中で、年内に50〜100台の生産を計画していた電動セミトラックの生産台数を、25〜50台に引き下げると発表した。バラ色とは言えない予測は、収益面でも続いた。

同社は2021年度の売上高予想を、0ドル〜750万ドル(約8億2000万円)へと引き下げた。これまでは1500万ドル(約16億4000万円)〜3000万ドル(約32億7000万円)と予想していた。

Nikolaの報告によると、第2四半期の純損失は1億4300万ドル(約155億9000万円)と、前年同期の1億1570万ドル(約171億2000万円)の損失から増加したとのこと。調整後1株当たりの純損失は20セント(約22円)で、実際にはアナリストの予想よりも良い結果となった。同社の当四半期末の現金残高は6億3260万ドル(689億8000万円)となっている。

今回の決算発表では、量産前試作車のテストやアリゾナ州に建設している工場の0.5期工事の完了など、電動トラックの量産に向けた進捗状況に焦点が当てられたが、市場の関心は、見通しの下方修正や、創業者のTrevor Milton(トレバー・ミルトン)氏が証券詐欺で起訴されたことによる影響の方に向けられた。他に同社の最新情報としては、14台の量産前試作車と、5台のアルファ版および9台のベータ版のプロトタイプを製作したことが発表された。

Nikolaの株価は、日中の取引で7.47%下落した。

2020年NikolaののCEO兼会長を辞任したミルトン氏は、米国時間7月29日、連邦大陪審により2件の証券詐欺および1件の通信詐欺の罪で起訴された。検察は訴状の中で、ミルトン氏がソーシャルメディアを利用したり、テレビに頻繁に出演したりして、同社が製品を製造する前に「Nikolaに関する虚偽の誤解を招くような情報」を市場に氾濫させる広報活動を行ったと詳述している。

2020年3月、Nikolaは特別目的買収会社であるVectoIQ Acquisition Corp.(ベクトIQ・アクイジション)との合併により株式公開することを発表した。ミルトン氏は、その年の夏に会社が上場した後、Twitterに頻繁に投稿し、個人投資家に向けて直接的にメッセージを発信していた。そして9月、GMが20億ドル(約2181億円)の出資を発表した数日後に、著名な空売り専門投資会社のHindenburg Research(ヒンデンブルグ・リサーチ)が、Nikolaに詐欺の疑いがあると告発。米国証券取引委員会はこの件について調査を開始し、2週間後にミルトン氏は会長を辞任した。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GMの第2四半期は約3110億円の黒字、リコール費用は約875億円

General Motors(ゼネラル・モーターズ)が米国時間8月4日に発表した決算で、電気自動車Chevrolet Boltの2017年から2019年にかけての2回のリコール費用が8億ドル(約875億円)だったことが明らかになった。Boltバッテリーの欠陥修理のコストは同社の第2四半期の保証費用13億ドル(約1420億円)の大半を占めた。

CEOのMary Barra(メアリー・バーラ)氏は業績発表の中で、リコールは同社が韓国のLG Energy Solutionsとの合弁で開発中のバッテリーセルテクノロジーであるUltiumプラットフォームには影響しない、と明言した。「(Ultiumは)異なるバッテリーシステムであり、Ultiumセルを製造する合弁会社プラントは厳格な品質プロセスに従っています」と述べた。

GMは7月に、発火リスクを解決するために欠陥のあるバッテリーモジュールを交換する計画だと顧客に伝え、Boltの2回目となるリコールを発表した。GMは顧客にバッテリー交換の準備が整ったことを知らされるまで、毎使用後にクルマを充電し、バッテリーレベルを走行可能距離70マイル(約112km)以下にしないようアドバイスしている

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GMの第2四半期の売上高は342億ドル(約3兆7450億円)で、第1四半期より17億ドル(約1860億円)増え、前年同期からは174億ドル(約1兆9050億円)増となった。また、最終損益は28億4000万ドル(約3110億円)の黒字だった。前年同期は主にパンデミックとそれにともなう経済低迷のために7億5800万ドル(約830億円)の赤字だった。41億ドル(約4490億円)という調整後総収入にはリコール費用も含まれている。

収入は中古車価格、トラックやSUVの販売、そしてGM Financialの好調な業績によって増えた。GMの貸付部門の総売上高は34億ドル(約3720億円)、調整後収入は15億8000万ドル(約1730億円)だった。

「GM Financialの売上高は、中古車の価格により引き続き過去最高となりました」と同社CFOのPaul Jacobson(ポール・ジェイコブソン)氏は会見で述べた。

同社は2021年後半の見通しについても強気だ。調整後の通年収益予想を115億ドル〜135億ドル(約1兆2590億〜1兆4780億円)に、1株あたり収益を5.40〜6.40ドル(約590〜700円)に上方修正した。これまでは通年収益100億〜110億ドル(約1兆950億〜1兆2040億円)、1株あたり収益4.5〜5.25ドル(約490〜570円)を予想していた。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

Lyftが調整後EBITDAで初の黒字を達成、事業がコロナ打撃からリバウンド

米配車サービスのLyft(リフト)は米国時間8月3日の取引開始直後に第2四半期決算を発表した。全体として同社の業績は新型コロナウイルスパンデミックと、それによる米国のロックダウンで大打撃を受けた前年同期からリバウンドした。

Lyftはまた、調整後EBITDAで黒字を確保できた。これまで黒字を達成できていなかった同社は、収益を算出するのにより厳しい指標となる調整後EBITDAを好んで使っている。第2四半期の調整後EBITDAは2380万ドル(約26億円)だった。

同社の経営陣は8月3日の決算会見でマイルストーン達成を喜んだ。「ここしばらく視界にとらえていたマイルストーンを今期達成しました」と共同創業者でCEOのLogan Green(ローガン・グリーン)氏は述べた。同氏は2020年同期の決算会見で、Lyftが「文字通り移動を止めた100年に1度のグローバルパンデミックに直面し、と同時にカリフォルニア州のProposition 22法案が進行中だ」と指摘した。

同社の調整後EBITDAは2020年第2四半期にそれまでで最悪の2億8000万ドル(約305億円)の赤字となった。以降、同社は毎四半期、調整後EBITDAを増やしてきた。直近の四半期では調整後EBITDAマージン(比率)が3%ととなった。調整後の黒字を達成すると投資家らに約束したのち、Lyftはそれを実現した。

決算発表を受け、同社の株価は時間外取引で7%近く上昇している。

Lyftの第2四半期の売上高は7億6500万ドル(約830億円)で、3億3930万ドル(約370億円)だった前年同期の2倍超となった。これは注目に値することだが、2020年のこの時期、経済と配車サービスは新型コロナパンデミックで打ちのめされていたことを忘れないで欲しい。言い換えると、今期の売上増は予想されていた。

さらに重要なのは、同社の第2四半期の売上高は前四半期の6億900万ドル(約660億円)から25.6%成長したことだ。つまり、デルタ変異株のために米国内のコロナ新規感染者数が増えているにもかかわらず、同社はなんとか成長したことを意味する。

第2四半期のアクティブ乗客は1710万人で、この数字は前年同期の868万人から97%増えた。第1四半期にLyftは同期のアクティブ乗客が1349万人だったと発表した。また、第2四半期のアクティブ乗客1人あたりの売上高(44.63ドル、約4860円)は前年同期(39.06ドル、約4260円)から増えた。2021年第1四半期の45.13ドル(約4900円)からはわずかに減少した。

Lyftの成長は市場の予想を超えた。Yahoo Financeのデータによると、市場予想は売上高6億9620万ドル(約760億円)だった。この成長にもかかわらず、すべての費用を計算に入れると同社はまだ赤字だ。第2四半期に同社は2億5190万ドル(約275億円)の赤字を計上した。前年同期の4億3710万ドル(約480億円)の赤字から42%改善したが、それでも大きな数字だ。

第2四半期の赤字には、株式報酬とそれに関する給与税費用の2億780万ドル(約230億円)、以前明らかにした特定の古い自動車保険の負債のために再保険をかける取り決めに関連する費用2040万ドル(約20億円)が含まれる。

第2四半期にLyftの売り上げ関連の費用総額は増えたが、それは前年同期に比べて急激に売上高が増えたかを考えると予想されたことだった。同社はまた、一般管理費、そして「事業とサポート」項目の数字もなんとか削減した。しかしR&DコストとS&M費用はどちらも前年同期を上回った。

最後に現金をみてみよう。過去3カ月、調整後EBITDAで黒字を生み出すことができたにもかかわらず、Lyftの事業は第2四半期に現金2750万ドル(約30億円)を使った。同社の事業は2019年第3四半期から支出が上回っている。しかし資金不足に陥るのでは、と心配しなくてもいい。同社は成長を支えるために現金20億ドル(約2180億円)超を保有している。

Lyftの事業がかつてよりも収益性の高いものに成長しているという兆しが見える。同社の一般管理費なしの配車サービスモデル収益性を示すのに使われるnon-GAAP指標の貢献利益は、第2四半期に59.1%と過去最高となった。前年同期のこの数字は34.6%で、2017年第1四半期以来最低だった。

忘れないよう書いておくと、Lyftは費用のかさむLevel 5という自動運転車両テクノロジープログラムを現在抱えていない。同社はLevel 5をトヨタのWoven Planet Holdingsに売却した。この取引は7月13日に完了した。Lyftは決算会見時に、第2四半期に比べて、Level 5に関連するコストが第3四半期には約2000万ドル(約2180億円)減ると見込んでいる、と述べた。

それは、同社がロボタクシー競争に関わることに興味がない、ということではない。

Lyftは7月、まずはマイアミとオースティでスタートし、今後5年間で多くの都市におけるLyft配車サービスネットワークで自動運転車を少なくとも1000台展開するためのArgo AI、Fordとの提携を発表した。Argoの自動運転車両テクノロジーを搭載した最初のFord自動運転車両は2021年後半にマイアミにおいてLyftのアプリで使えるようになる見込みだ。

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画像クレジット:Mat Hayward / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

電動航空機メーカーLiliumがアズールブラジル航空と総額約1100億円の受注に向け交渉中

ドイツの電動航空機メーカーであるLilium(リリウム)は、ブラジル最大の国内航空会社の1つであるAzul Brazilian Airlines(アズールブラジル航空)と、総額10億ドル(1092億円)におよぶ220機の受注に向けた条件交渉を行っていると、両社は米国時間8月2日に発表した。アズール航空との契約が進めば、Liliumにとって創設以来最大規模の受注であり、南米市場への初進出を果たすことになる。

Liliumの広報担当者は「タームシートには調印しており、今後数カ月以内に最終合意に向けて動き出します」とTechCrunchに語った。

この220機の航空機は、ブラジルで運航される新しい共同ブランドの航空会社ネットワークの一部として飛ぶことになる。両社が合意に達した場合、アズール航空は7人乗りフラッグシップ機の運航とメンテナンスを行い、Liliumは交換用バッテリーを含むカスタムスペアパーツと機体の健康状態を監視するプラットフォームを提供する。

納入は2025年に始まる予定だ。これはLiliumが計画している欧州と米国での商業運航開始から1年後にあたる。ただし、これらのタイムラインは、Liliumが各国の必要な航空宇宙規制機関から、主要な認証承認を得ることが前提となっている。アズール航空は今回の契約の一環として「ブラジルで必要な規制当局の承認プロセスにおいてLiliumをサポートする」と述べている。

仮に契約が成立したとしても、Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)がUnited Airlines(ユナイテッド航空)から10億ドルの注文を受けた際の条件と同様に、Liliumが一定の性能基準やベンチマークを達成することが条件となるだろう。しかし、このような金額の受注があるということは、市場や投資家に対して、電動垂直離着陸機(eVTOL)がまやかしではないという肯定的なシグナルであると考えられる。

また、これもArcherと同様に、LiliumはSPAC(特別買収目的会社)方式での上場を計画している。同社は2021年3月、Qell Acquisition Corp.(ケル・アクイジション)と合併して「LILM」というティッカーシンボルでNASDAQに上場する意向を明らかにした。SPAC方式は、交通機関業界全体で一般的な上場手段となっているが、特に資本集約的なeVTOLスタートアップには人気がある。

この合併は、同社の事業継続のために必要なものと思われる。ドイツのニュースサイト「Welt(ヴェルト)」によると、Liliumは2019年の貸借対照表に、SPACとの合併が完了しない場合には2022年12月に資金が枯渇すると記したリスク警告を追加したとのこと。

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画像クレジット:Lilium

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

電動「ねこ車」のCuboRexが愛知県の海岸清掃プロジェクト「表浜 BLUE WALK 2021」とコラボ、作業効率化の実証実験

電動「ねこ車」のCuboRexが愛知県の海岸清掃プロジェクト「表浜 BLUE WALK 2021」とコラボ、作業効率化の実証実験を実施

タイヤ交換だけでねこ車(運搬用一輪車)を電動化できる「E-Cart Kit」を開発・販売するCuboRex(キューボレックス)は8月2日、愛知県の大学生が中心となり、能美半島の表浜海岸のうち豊橋市から田原市にわたる区域を清掃する海岸清掃プロジェクト「表浜 BLUE WALK 2021」に参加して、同社の電動ねこ車を使った海岸清掃効率化のための実証実験を行うと発表した。

CuboRexは、コロナ禍で海岸掃除に取り組む全国の団体に「E-Cart Kit」を貸し出したり特別価格での販売を行う「ロボネコ海岸清掃プロジェクト」を7月22日から実施し、ねこ車の電動化で海岸清掃を効率化したいパートナーの募集を行っており、これはその一環。希望する団体は件名「ロボネコ海岸清掃プロジェクト」として「https://cuborex.com/contactform/」で連絡を行うよう呼びかけている。

山形県の離島・飛島での海ゴミ回収作業例

山形県の離島・飛島での海ゴミ回収作業例

BLUE WALK」は、愛知県の大学生や若者が「等身大の視点で環境問題、地域社会問題などを考えて」行動する団体。「表浜BLUE WALK」は、愛知県能美半島の表浜海岸を清掃するイベントとして今回で14回目になる。累計参加人数は約5000人。2021年は8月9日から13日までの9日間実施され、CuboRexの実証実験も同時に開始される。新型コロナ禍で大勢の人たちが集まれないため、電動ねこ車で作業がどれほど効率化できるかを確かめることにしている。

「BLUE WALK 2021」開催概要(参加受付は終了している)

  • 開催日時:2021年8月9日~8月13日
  • 開催場所:遠州灘(表浜)豊橋市伊古部海岸付近、田原市赤羽根海岸付近

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自動運転トラック開発のTuSimpleが貨物ネットワーク構築に向けRyderと提携

2021年初めに上場した自動運転トラック開発のTuSimple(トゥーシンプル)は、自動運転トラック輸送をサポートする貨物ネットワークを構築する計画の一環としてRyder(ライダー)と提携した。

7月26日の週に発表した取引の下、Ryderの車両メンテナンス施設はTuSimpleの貨物ネットワークのためのターミナルとなる。AFNと呼ばれているTuSimpleの自動運転貨物ネットワークは、2024年までに米国中で展開されることになっている自動運転トラック輸送網のための配送ルートとターミナルの集合体だ。TuSimpleが上場する前に同社の少数株を獲得したUPS、運輸会社​​U.S. Xpress、Penske Truck Leasing、そしてBerkshire Hathawayのグローサリー・食品サプライチェーン会社McLane IncがAFNの立ち上げ時のパートナーだった。

TuSimpleのAFNは自動運転トラック、デジタルマッピングされたルート、貨物ターミナル、顧客が自動運転ロラックのオペレーションをモニターし貨物をリアルタイムで追跡できるシステムから構成される。

Ryderの施設は主に、TuSimpleのトラックがメンテナンスを受けたり、調整された自動運転システムが使われているセンサーを必要に応じて搭載したりできる戦略的ターミナルとして機能する。一部のケースでは、ターミナルは貨物をピックアップしたい小規模オペレーターのための移送ハブのようにも使われる。しかしこれは、TuSimpleの会長兼CEOのCheng Lu(チェン・ルー)氏によると、顧客がやって来て貨物をピックアップするハブ・ツー・ハブを意図するものではない。

「これらのトラックは修理やメンテナンスが受けられる必要があり、長い稼働時間を持っていなければなりません。これは、自動運転だろうがなかろうが、すべての運送業者が気にかけていることです」とルー氏は話した。

小規模の荷主と運送業者は、貨物のピックアップやドロップオフのためにこれらのターミナルを使うかもしれない。しかし大半の場合、特にUPSのような大規模オペレーターのために、TuSimpleは貨物を直接顧客の配送センターへ運ぶ。Ryderの施設はTuSimpleがより広範な地理的領域でより多くの顧客にリーチすることができるようになる結節点、あるいは停留場となる、とルー氏は付け加えた。

提携は徐々に導入される。TuSimpleは安全オペレーターが運転席に乗り込む50台の自動運転トラックを保有し、アリゾナ州、ニューメキシコ州、テキサス州で顧客のために貨物を運んでいる。提携ではこれら地域にあるRyderの施設をまず使用し、米国中にあるメンテナンス施設500カ所へと徐々に拡大する。

TuSimpleは2021年後半にフェニックスとオーランド間で貨物を運び、東海岸へと事業を拡大する予定だと述べた。同社は新しいトラック25台を注文していて、納車され次第、車両群に加わる。

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画像クレジット:TuSimpe

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Argo AIがカリフォルニア州で自動運転車に一般客を乗せる許可を取得

Ford(フォード)とVW(フォルクスワーゲン)が投資する自動運転車技術のスタートアップであるArgo AI(アルゴAI)は、カリフォルニア州の公道で同社の自動運転車に人々を無料で乗せることができる許可証を取得した。

承認された申請書によると、カリフォルニア公益事業委員会(CPUC)は7月初め、いわゆる運転手付き自動運転車の試験許可証を発行した。米国時間7月30日に同委員会のウェブサイトに掲載された。ArgoとFordはその1週間前、マイアミとオースティンを皮切りに、今後5年間で多くの都市でLyft(リフト)の配車ネットワークに少なくとも1000台の自動運転車を投入する計画を発表していた。

この許可は、州の自動運転車乗客サービス試験の一環だ。Argoは従来の自動運転車試験を超えて拡大を目指す少数の企業グループの一員となった。この動きは、業界、あるいは少なくとも一部の企業が商業運転に向けて準備を進めていることを示している。Argoは、2019年からパロアルト周辺でフォード車を使って自動運転技術の試験を行っている。同社は現在、カリフォルニア州で約12台の自動運転試験車両を有する。また、マイアミ、オースティン、ワシントンDC、ピッツバーグ、デトロイトでも自動運転試験車両を保有している。

Aurora、AutoX、Cruise、Deeproute、Pony.ai、Voyage、Zoox、Waymoが、CPUCの運転手付き自動運転車乗客試験プログラムへの参加許可を得た。このプログラムでは、人間の安全管理者がハンドルを握ることが義務付けられている。この許可を得た企業が乗車料金を請求することはできない。

Cruiseは、CPUCから運転手なし許可証を取得した唯一の企業だ。この許可証があれば、人間の安全管理者がハンドルを握らなくても試験車両で乗客を送迎できる。

CPUCの運転手付き許可証を取得することは、カリフォルニア州における商業化への道のりの一部にすぎない。同州は、CPUCとカリフォルニア州自動車局(DMW)の規制のハードルを越えることを求めている。それぞれの機関は独自の段階的な許可制度を設けている。人間が運転しないロボタクシーの乗車料金を徴収する前に両機関の規制のハードルを越えなければならない。

DMVは、自動運転車の公道試験を規制し、許可証を発行している。DMWが発行する許可証には3つのレベルがある。まず1つ目は、安全管理者が運転する自動運転車の公道試験を許可するもの。60社以上がこの基本的な試験許可を取得した。

次の許可証で運転手なしの試験を行うことができ、その後、商業運転を行うための展開許可証が発行される。人間の管理者がハンドルを握らない運転手なし試験許可証が新たなマイルストーンであり、州内で商用のロボタクシーや配送サービスを開始しようとする企業にとって必須のステップだ。AutoX、Baidu、Cruise、Nuro、Pony.ai、Waymo、WeRide、Zooxは、DMVから運転手なし許可証を取得した。

DMVでの最後のステップは、Nuroだけが達成している展開許可だ。この許可によりNuroは商業規模で展開している。Nuroの車両は乗客を乗せず、貨物だけを積載できるため、CPUCの許可プロセスを回避することができる。

一方、CPUCは2018年5月、自動運転車で乗客を輸送するための2つの試験プログラムを認可した。Argoが許可を獲得したばかりの運転手付き自動運転車乗客サービス試験プログラムは、企業が特定のルールに従う限り、自動運転車による配車サービスの運営を認めるものだ。乗車料金の請求はできず、人間の安全運転手による運転が必要で、一定のデータを四半期ごとに報告しなければならない。

CPUCの2つ目の試験では、運転手なしの乗客サービスが可能で、Cruiseが2021年6月に獲得した

このように、商用のロボタクシーを実現するためには、DMVとCPUCからの許可をすべて取得する必要がある。

[原文へ]

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi