ウクライナ政府がロシア軍の追跡手段をDX、Telegramチャットボットを作成し活用・認証アプリで偽情報をブロック

ウクライナ政府がロシア軍の追跡手段をDX、Telegramチャットボットを作成し活用・認証アプリで偽情報をブロック

Thomas Trutschel via Getty Images

ウクライナ政府は、Telegramアプリにチャットボットを作成し、ユーザーがiPhoneを使ってロシア軍が侵入した情報を防衛側に報告できるようにしたと報じられています。

ロシアのウクライナ侵攻の始まりは、Googleマップやアップルのマップで察知されていましたが、今やウクライナ政府が意図的に個人向けテクノロジーを活用する事態にいたっています。

現地メディアのUkrainian Newsによれば、ウクライナのDX(デジタルトランスフォーメーション)省は「eVororog」または「eBopor」(英訳すると「e-Enemy」)など様々なチャットボットを作成したとのことです。これは独立したアプリではないため、ロシアもかつて(国内の)App Storeから野党支援アプリを削除させたように簡単にはいかないというわけです。

このチャットボットはTelegramの@「everog_botチャンネル」になっている—とミハイル・フェドロフ副首相が自らのTelegramチャンネルで説明しています。

フェドロフ氏によれば、他にデータを集める方法もあったかもしれないが、破壊工作員が偽の写真やデマを混ぜる恐れがあると示唆。そこでウクライナ国民であることを認証するため、DX省の無料アプリ「Diya」が使われているそうです。

ユーザーがチャットボットへの投稿を許可されると、目撃したものを正確に詳しく入力するよう求められるとのこと。そこで軍隊を見たか、戦車などの装備を見たかをiPhoneを通じて正確な位置を送信し、可能であれば写真やビデオを添付することになります。

Ukrainian Newsは、このチャットボットがどれほどの効果があるのか、まだ詳しく報じていません。しかしTwitter上では、20万人以上のウクライナ人が「eBopor」を使って1万6000人以上のロシア兵士や4000台もの車両の破壊に繋がったと主張しています。

どちらの陣営であれ人命が失われることは絶対にあってはなりませんが、ハイテクが悲惨な戦火の終結に貢献するよう祈りたいところです。

(Source:Ukrainian News。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

ウクライナ・マリウポリのレトロPC博物館がロシアによる侵攻により破壊、500以上の歴史的コレクションが失われる

ウクライナ・マリウポリのレトロPC博物館がロシアによる侵攻により破壊、500以上の歴史的コレクションが失われる

Club 8-bit

ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、現地にあるレトロPCとビデオゲームを集めた個人運営の博物館「Club-8bit」が戦火により破壊されたと報じられています。500を超えるレトロPCやゲーム専用機など、15年近くにわたり集められたコレクションが爆弾により失われたとのことです。

このレトロPC博物館はマリウポリにあり、ドミトリー・チェレパノフ(Dmitry Cherepanov.)氏により運営されていました。今回のニュースはウクライナのコンピュータとソフトウェア博物館(Software and Computer Museum/所在地はキーフ)のTwitterアカウントにより報じられ、オーナーのチェレパノフ氏は無事だそうです。

しかしチェレパノフ氏はFacebookで、博物館だけでなく自宅も失ったと述べています。「マリウポルのコンピュータ博物館はもうないんだ」「15年間集めてきたコレクションから残されたのは、博物館の(Facebook)ページ、ウェブサイト、ラジオ局での思い出の断片だけだ」とのことです。

米Gizmodoは2019年に博物館にてチェレパノフ氏に取材していましたが、そこではソ連圏が独自のPCを作っていた頃からコンピュータを集め始めていたと語られています。

コモドール64やMacintoshといった西側のマシンのみならず、広く知られていないが歴史的には貴重な価値があったソ連圏の遺産まで失われてしまったわけです。

チェレパノフ氏は10年以上にわたってこれらのPCを収集・修復しており、自らのPC博物館を「1980年代のPC革命の広い範囲を見ることができる魅力的なものです」と語っていました。

自宅とコレクションが破壊されて以来、チェレパノフ氏はPayPal口座を開設し、同氏やウクライナの他の人々を支援するための寄付を受け付けています

ロシアによるウクライナ侵攻は現在進行中であり、すでに数千人の死者や負傷者を出しています。また300万人以上が国外への脱出を余儀なくされ、大規模な難民危機も広がる一方です。世界各国はロシアに対する経済制裁をしだいに強化していますが、これ以上掛け替えのないものが失われないよう、一刻でも早く戦火が終わることを祈りたいところです。

(Source:Software and Computer Museum(Twitter)。Via KotakuEngadget日本版より転載)

米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも追加

米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも

Sergei Karpukhin / reuters

米連邦通信委員会(FCC)は25日、ロシアの情報セキュリティ企業Kaspersky Lab(カスペルスキー)を「国家安全保障上の脅威」に認定したことを発表しました。FCCによってロシア企業が「米国の国家安全保障に受け入れがたいリスクをもたらす」リストに加えられたのは、これが初めてのことです。

カスペルスキーは、China Mobile(中国移動通信)やChina Telecom(中国電信)とともに、25日付けでリストに追加されています。このほか、中国ZTEやHuaweiもリストに含まれており、全8社の名前が並んでいるかっこうです。

このリストで名指しされた企業の製品については、米国内の企業はFCCが運営するユニバーサルサービス基金(USF)を使って購入することが禁じられます。この基金は低所得者層や農村部、離島など採算が合わない地域でも、都市部と平等に通信サービスを受けられるようにする補助金であり、今回の措置が大手企業に与える影響の範囲は限定的と見られています。

FCCのBrendan Carr委員は「FCCは、我が国の通信ネットワークの安全確保に重要な役割を果たしており、対象リストを最新の状態に保つことは、そのために自由に使える重要な手段である」と表明。さらにカスペルスキーを含めた3社をリストに加えることを「スパイ行為やアメリカの国益を損ねようとする中国やロシアの国家支援団体による脅威から、我々のネットワークを守るのに役立つだろう」と説明しています。

この決定に対してカスペルスキーは、失望したとの声明を発表。「カスペルスキー製品の技術的評価に基づいておらず、政治的な理由によるものだ」との趣旨をコメントしています。

米国内でカスペルスキー製品に規制が課されたのは今回が初めてではなく、2017年末にも米トランプ政権が政府機関全体での使用を全面的に禁止する大統領命令を出しています。それを受けてカスペルスキーは評判を毀損し、営業を妨害されたとして米政府を相手に訴訟を起こしていました

また、今回の件に先立ちドイツの情報セキュリティ当局も、ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、カスペルスキー製品を使うことは「相当程度」のサイバーリスクがあるとして、利用を控えるよう警告していました。日本政府も同じような対応を取るのか、注視していきたいところです。米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも

(Source:FCCBleepingComputer。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

サウジの石油化学工場と米の原発をハックしたロシア人スパイを起訴

合衆国司法省は4人のロシア政府被雇用者を、米国の原子力発電所やサウジの石油化学工場など、重要なインフラストラクチャを狙った数年間に及ぶハッキング作戦で起訴したことを発表した

最初の2021年6月の起訴は、ロシア国防省のプログラマーEvgeny Viktorovich Gladkikh氏(36)と二人の共犯者を、全世界のエネルギー施設の、工場の正常な稼働に欠かせない制御システムのハッキングを計画した、と告発している。Gladkikh氏は悪名高いTritonマルウェアの作者と疑われており、それは2017年のサウジアラビアの石油化学工場に対する攻撃で使われた。ハッカーたちはそのマルウェアを使って、工場の安全システムを不能にしようとした。それは、液漏れや爆発などの危険な状況を防ぐためのシステムだ。Tritonとロシアが初めて結び付けられたのは2018年の10月だ。

司法省によると、サウジの工場を爆破する計画に失敗したハッカーたちは、合衆国の同様に重要なインフラストラクチャを管理している企業のコンピューターをハックしようとした。

2021年8月付の第二の起訴は、Pavel Aleksandrovich Akulov氏とMikhail Mikhailovich Gavrilov氏、およびMarat Valeryevich Tyukov氏を訴えている。全員がロシアの連邦セキュリティビューローFSBの71330部隊のメンバーで、2012年から2017年にかけてエネルギー部門を狙った攻撃を数多く仕掛けている。このハッカーたちはセキュリティ研究者の間では「DragonFly」、「Energetic Bear」、「Crouching Yeti」などの名前で知られ、石油やガス、原子力発電、公益事業、送電企業など、国際的なエネルギーセクターに属する企業のコンピューターネットワークへのアクセスを試みた。

彼らの攻撃の最初のステージは2012年から2014年にかけて行われ、工場用の制御装置のメーカーやソフトウェア提供企業のネットワークを侵犯し、それからHavexマルウェアをソフトウェアアップデートの中に忍ばせた。これと、スピアフィッシングと水飲み場型攻撃を組み合わせた犯行により、ターゲットがよく訪れるWebサイトに感染し、マルウェアをインストールさせる。これまで、合衆国と海外を合わせて17000台以上のユニークなデバイスに感染した、とされている。

二度目の、「DragonFly 2.0」と呼ばれる段階は2014年から2017年にかけて行われ、合衆国およびグローバルの500社あまりの企業の3300名以上のユーザーが狙われた。その中には合衆国政府の原子力規制委員会(Nuclear Regulatory Commission)やWolf Creek原子力発電所も含まれている。

合衆国の副司法長官、Lisa Monaco氏は声明でこう述べている。「ロシアの国が支えているハッカーは合衆国と全世界両方の重要なインフラストラクチャにとって深刻で恒常的な脅威だ。本日の刑事訴追は過去の活動を反映するものであるが、それによって明らかになったのは、米国の企業が防御を強化して警戒を怠らないことの、喫緊かつ継続的な必要性だ」。

Mandiant(マンディアント)の諜報分析担当副社長John Hultquist氏によると、今回の起訴で垣間見えるようになったのは、ロシアの国が支えるハッキング行為における、FSBの役割だ。起訴はまた、こういう破壊的なサイバー攻撃を実行するロシアの侵入グループへの「警報射撃」でもある。「犯行は個人によるものなので、起訴は、これらのプログラムで仕事をしている者全員に、当分ロシアを出るなと告げている」、とHultquist氏は言っている。

しかしHultquist氏は、ハッカーたちはこれらのネットワークへのアクセスを維持するだろう、と警告する。「重要なのは、私たちが、破壊攻撃の現場を目撃していないことだ。将来の不測の事態に備えて、重要な機密情報をほじくり返しているだけだ。最近の事件に関する私たちの懸念は、それがまさに、私たちがずっと待っていた不測の事態かも知れないことだ」。

Dragosの上級索敵員Casey Brooks氏はTritonマルウェアの背後にいるグループを「Xenotime」と呼び、本誌の取材に対して「起訴がハッカーたちを思いとどまらせることはない」、と言っている。

「これらの犯行グループはリソースにも恵まれ、継続的で複雑な仕事を実行できる。今回の起訴でこれらのグループの一部の、侵入行為の詳細は分かるが、彼らの広がりはもっと大きい。たとえば、Xenotimeにとってこれは、彼らの活動全体のごく一部でしかないことを、私たちは知っている。重要なのは、これらのグループが今なお健在であり、訴状はこれら敵対集団の未来の犯行を抑止するために、ほとんど役に立たないと理解することだ」。

訴状が公表されたのはジョー・バイデン大統領が、ロシアのウクライナ侵攻に対して西側が制裁を科したため、対抗して合衆国企業に対するロシアのサイバー攻撃の可能性が増えていることを、警告してから三日後のことだ。また数日前に司法省は、ロシアの軍事諜報サービスGRUで仕事をしていた6名のハッカーを訴追した。そのハッカーグループはSandwormと呼ばれ、5年間の活発な犯行を告発された。それらの中には、2017年に世界中の数百の企業と病院を狙った破壊的なNotPetyaサイバー攻撃や、ウクライナの送電網を破壊したサイバー攻撃がある。

(文:Carly Page、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: David McNew/Getty Images

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Spotify、言論弾圧を受けロシアでのサービスを停止へ

Spotify(スポティファイ)は、ロシアで新たに導入された言論の自由に対する劇的な規制を受け、ロシアでの同ストリーミングサービスへのアクセスを停止する予定だ。

3月上旬、ロシア議会は、ウクライナにおけるロシアの軍事作戦について同政府が「虚偽の情報」と見なすものを共有することを犯罪とする新法を制定した。この新しい規制は「戦争」という言葉を使ってウクライナでの戦争を表現することなどを含め、軍を貶めるような言論も罰するものだ。

CNN、ABC、BBCなどの西側報道機関は、最大15年の禁固刑を科すことができるこの法律を受けて、ロシア国内での放送や事業を取りやめた。Spotifyは主に音楽ストリーミングプラットフォームだが、政治や時事問題を取り入れたポッドキャストへの投資をこのところ増やしており、その方向性はすでに多くの論争を巻き起こしている。

Spotifyの広報担当者はTechCrunchにこう述べている。「Spotifyは、ロシアで信頼できる独立系ニュースや情報を提供するために、ロシアでのサービス運用を維持することが極めて重要だと考え続けてきました。残念ながら、最近制定された、情報へのアクセスをさらに制限し、表現の自由を排除し、特定のニュースを犯罪化する法律は、Spotify従業員の安全と、さらにリスナーをも危険にさらす可能性があります」。

Spotifyはさまざまな道を検討した結果、ロシアでのサービスを「完全に停止」することを選択した。このプロセスは、同社が移転に関連するロジスティクスを確保した後、4月上旬までに完了する予定だ。Spotifyは以前、ロシアでのプレミアムサブスクリプションを停止したが、無料版アプリは引き続き利用可能だった。

世界の大部分が恐怖の目で見ている中、クレムリンは情報の流れに対する支配を強め続け、先月からの行動を、一般市民の命を奪う血なまぐさい選択による戦争ではなく、人民解放運動であると偽って伝えている。このような動きとそれにともなう法的取り締まりは、ロシア政府と対立する、侵略であるという観点を共有する国内の人々にとって深刻なリスクとなる。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Den Nakano)

ロシアがMetaを過激派認定、FacebookとInstagramを禁止する一方WhatsAppは除外

ロシアがMetaを過激派認定、FacebookとInstagramを禁止する一方WhatsAppは除外

NurPhoto via Getty Images

モスクワの裁判所が3月21日(現地時間)、米Metaが過激派活動の罪を犯していると認定しました。同社のFacebookとInstagramは、すでにロシアでの活動が禁止されていますが、裁判所がそれを追認した形です。ただし、ロシア国内で人気の高いメッセージングサービスWhatsAppは、除外されるとのこと。これはWhatsAppが広く情報を普及させる能力を有していないからだとする裁判所のコメントをReutersが伝えています。

米Metaは、通常は攻撃的な内容として削除対象となる「ロシアの侵略者に対する攻撃(死)」に関する投稿を許可するという規約変更を行っており、ロシア当局はこれへの対応としてFacebookとInstagramをブロックしていました。

ロシア国営メディアのTASSによると、今回の判決により、Metaはロシアでのオフィス開設やビジネスが事実上禁止されるとのこと。ただし、そのサービスを利用している一般ユーザーがただちに過激派として非難されることはないとも伝えています。ただし、人権活動家のPavel Chikov氏は、ウェブサイトや店の入り口、名刺などにFacebookやInstagramのロゴを記載すると、最大15日間の禁固刑の根拠になり得ると指摘しています。

また、対象外とされたWhatsAppですが、デジタル著作権グループであるロシアの非政府組織RoskomsvobodaのSarkis Darbinyan氏は、WhatsAppはロシアで人気があり、政府や国営企業も利用しているために放置された可能性があるものの、一度に閉鎖するのではなく徐々に閉鎖しようとしているのかもしれないと述べています。とはいえ、ユーザーは徐々に離れているようで、ここ数週間でロシア内で最も利用されているメッセージングツールから転落、その座をTelegramに明け渡したとのことです。

(Source:ReutersEngadget日本版より転載)

欧米の制裁でロシアから逃げ出すテック人材、この波は数十年続く慢性的な頭脳流出の最後かもしれない

欧米の制裁と政情不安により、ロシアでは国際的な事業を展開することが不可能になり、起業家やコンピュータープログラマー、その他教育を受けた中産階級の人々が国から脱出している。

ロシアのウクライナ侵攻により、何百万ものウクライナの人々が命の危険を感じながら故郷を追われた。しかし、この戦争は、ロシア人が母国を後にすることにもつながっている。筆者は、ロシアの起業家やベンチャーキャピタリストに話を聞き、彼らが祖国を離れた理由、あるいは離れようとしている理由を聞いた。しかし、海外で新たなスタートを切ろうとする彼らにとって、反ロシア感情や経済制裁は重荷になっている。

きっかけ

2月中旬、ロシアがウクライナ国境に軍隊を集め続ける中、Eugene Konash(ユージン・コナシュ)氏は、ロンドンにある自身のゲームスタジオDc1abのためにロシアにいるスタッフをリモートで働かせていたが、次第に心配になってきた。しかし、他の多くの人々と同様、コナシュ氏も本格的な侵攻は予想していなかった。

緊張が和らぐという期待は、すぐに消えた。ロシアがウクライナに全面戦争を仕かけていることが明らかになると、欧米諸国はロシアに制裁を加え始めた。企業もすぐにその影響を受けた。

コナシュ氏の従業員の1人は、銀行が制裁を受け、自分の口座への海外送金ができなくなった。ルーブルが暴落したロシアでは銀行の前に長蛇の列ができ、人々は慌てて貯蓄をドルに換えようとしたが、高額な手数料と政府が外貨の入手を制限していることに気づいた。

コナシュ氏にとって転換点となったのは、投資家から「このままロシアに重きを置いていては、投資できない」とはっきり言われたことだった。ロシアを拠点としていたチームも、離れる時期だと賛同した。

「1カ月前までは、どんなことがあってもロシアを離れないと言っていた連中が、荷物をまとめて、文字通りクルマで陸路国境を越えてカザフスタンに行こうと言い出したのです。というのも、ロシアを脱出する航空券は売り切れているか、非常に高価でしたので」とコナシュ氏は語った。

国際展開する多くのテック企業と同様、同氏のゲームスタートアップも、手頃な価格で質の高いプログラマーを確保できる東欧各地の開発者を雇用している。ベラルーシ出身の同氏は、旧ソ連圏の国々が科学と数学の教育に力を入れてきたことで、世界レベルのエンジニアリングと科学の人材が育ってきたことをよく理解している。

金融制裁はともかく、外国のテックサービスが禁止されるか撤退し始めると、ロシアからIT会社を運営することは現実的ではなくなってきた。

Google(グーグル)とMicrosoft(マイクロソフト)はロシア国内での販売をすべて停止し、ロシアはFacebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)、Twitter(ツイッター)をブロックしようとしたが、その結果はまちまちだった。一部のユーザーは、禁止された後もこれらの米テック企業のプラットフォームにアクセスすることができ、ロシアが中国のような強固な検閲機関を持つにはまだ少し時間がかかることを示唆している。FacebookとTwitterは、ロシアでのサービス復旧に取り組んでいると述べた。

「Unityのような開発ツールがいつブロックされるかは誰にもわかりません」と、2015年のクリミア併合とその後の西側による経済制裁を受けて国を離れたシベリア生まれのゲーム投資家は語った。「誰も外の世界にアクセスできない国で終わりたくはありません」。

この投資家は、ロシア政府による反対派への取り締まりを恐れて名前を伏せた。

ロシア国外に法人設置

7年前のクリミア侵攻の後、多くのロシア系企業は、ロシア企業を支援することにともなう政治的リスクや見栄えを懸念する投資家をなだめるために、別の場所に法人を設立し始めた。以前は、こうした企業の多くは、書類上は国外に拠点を置き、チーム全体はロシアにいることが多かった。しかし、ウクライナへの本格的な侵攻により、その流れは一変した。

「2015年以降、企業は合法的にロシアから流出するようになりました」と、最近モスクワのチームを国外に移したあるベンチャーキャピタルの投資家は指摘する。ウクライナ危機以前でも、この会社はロシアに拠点を置くスタートアップが国外で法人化され、国際的な事業展開をしている場合にのみ支援していた。

「物理的には、これらのスタートアップはまだロシアに拠点を置いています。物価が安いため、ロシアでR&Dを行うのでしょう」。この投資家は、ロシアと距離を置こうとしている会社にとってこの話題は「非常にセンシティブ」であるため、匿名を要望した。

4年前にAkimov(アキモフ)から姓を変えたNikita Blanc(ニキータ・ブラン)氏は、海外で設立され、モスクワで活動するスタートアップとしての生活は、つい最近までかなり楽なものに思えたと語った。ブラン氏の会社Heyeveryone(ヘイエブリワン)は、IR管理を自動化するツールを構築しているが、デラウェア州で法人化の手続き中だ。

ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアを離れる前にモスクワで働くニキータ・ブラン氏のチーム

Heyeveryoneは初めからロシア市場だけにサービスを提供するつもりはなかった。しかしブラン氏と同氏の妻は、いくつかのメリットのためにモスクワを拠点とした。それは、双方の両親が3歳の娘の世話を手伝ってくれること、当時はインターネットが高速で安価、かつ無料だったこと、モスクワには技術者の集まりが多く、同じ志を持つ創業者を見つけられたことなどだ。

脱出

ブラン夫妻のいいとこ取りの起業家生活は、ロシアのウクライナ攻撃で突然終わった。侵攻から3日後、ニキータ氏の妻ヴァレンティナ氏はベッドに横たわり、祖国ウクライナが崩壊するのを目の当たりにして打ちのめされていた。そして、ヴァレンティナ氏はロシアを去ることを決めた。

「仕事も手につきませんでした。私の家族の一部はウクライナ出身なんです」とヴァレンティナ氏は語った。「子どもを連れて去るのは困難なものになるでしょうが、この状況が変わるとは思っていませんでした。それで、それぞれ23キロの荷物をまとめて、片道切符を買いました」。

夫妻は幼い娘を連れて、現在ロシアの人材流出先として上位に位置するグルジアに移住した。トルコ、アルメニア、カザフスタン、タイなどと並んで、ロシア人にとって比較的物価が安価で入国しやすい国として人気がある。

最近モスクワを離れたベンチャーファンドは、ここ数週間で自社のスタッフや投資先企業を中心に数百人のロシア人を国外に引き揚げている。インターネット上では、数万人のロシア人が脱出計画を議論し、互いに助け合うTelegram(テレグラム)グループが急増している。

「ロシア人は最悪な状況に」

ロシアへの制裁が日々強化される中、移住希望者たちは急いで脱出計画を立てなければならない。どの国がまだロシアからのフライトを受け入れているのか、どうやってお金を移動させるのか。

制裁は、海外に逃れたロシア人、あるいはずっと前に逃れたロシア人にも影響を与え続けている。PayPal(ペイパル)、Mastercard(マスターカード)、Visa(ビザ)といった著名な金融インフラプロバイダーはすでにロシアでの業務を停止しており、これはロシアの銀行を利用している駐在員は海外でカードを利用することができないことを意味するに。エストニアは最近「制裁逃れや違法行為の可能性を防ぐため」ロシアやベラルーシの国民からのeレジデンシー(電子住民)申請を停止した。欧州連合(EU)の規制当局は一部の銀行に対し、EU居住者を含むすべてのロシア人顧客による取引を精査するよう指示したと報じられている

この広範な制裁の波は、一部の人にロシアのパスポートを手放すことを促している。シベリア生まれのゲーム投資家は、ロシア国籍によって米ドルベースの金融システムから切り離されることを恐れ、シンガポールの市民権を手に入れようとしている。

「ウクライナ人は世界中で難民として受け入れられているが、我々ロシア人は最悪な状況だ」とこの投資家は嘆いた。

また、5年前に資産の大部分を暗号資産に投資したブラン夫妻のように、暗号資産が制裁回避に役立つと賭けている人もいる。ゲーム起業家のコナシュ氏は、スタッフが今後ロシアで身動きが取れなくなった場合、Bitcoin(ビットコイン)とEthereum(イーサリアム)がクロスボーダー決済の最後の手段になると予想した。

Binance(バイナンス)やCoinbase(コインベース)などの大手取引所は、すべてのロシア人に全面禁止を科すには至らなかったものの、制裁を守ってターゲットとなる個人をブロックしてきた。BinanceのCEOは、取引は公開された台帳に記録されるため、政府が追跡しやすく、暗号資産は逃げ道にはなり得ないと主張した

しかし、EU規制当局は、ロシアとベラルーシに科された制裁がすべての暗号資産に及ぶと主張し続けており、米国の議員たちはロシアが制裁を逃れるために暗号資産を使用できないようにすることを財務省に促している

「冷静さは新しい通貨」

ロシアを離れる人は、家族や友人と離れるという困難もあるが、それ以上に最近の出来事に対する認識の違いによる苦悩がある。

「両親や年配の親族は、『ここは大丈夫だから戻れ』と言い続けています。ロシアはすばらしい国だと」とブラン氏は信じられないような、しかし悲しい口調で話した。

教育を受け、自由を求めるロシアの技術者たちは、おそらく後ろを振り返ることはない。筆者が話をした、国を出るか他の人の脱出を手伝っているロシア人は、自国の苦境を語るとき驚くほど冷静だった。それは部分的には、避けられない別れに対して精神的に準備してきたからだ。

「投資家であるSOSVは、私たちに起業家としてゴキブリのように新しい環境に柔軟に適応することを教えてくれました。この哲学が、今、不確実な時代を乗り越える支えになっています」とヴァレンティーナ・ブラン氏は話した。「冷静さは新しい通貨です」。

ブラン夫妻のような移住者は、数十年前から続くロシアの慢性的な頭脳流出の最後の波となるかもしれない。

「私が気になるのは、ソ連やロシアで生まれたすばらしいエンジニアリングや科学の人材に目を向けると、大半が機会あるごとにソ連の世界を離れていっていることです」とコナシュ氏は話した。

「ソ連崩壊後の世界には、誰が残るのでしょうか? 私にとっては、この頭脳流出の最後の波は、ソ連から生まれた数少ないポジティブなものである教育や文化科学の伝統に死を告げるものです」。

画像クレジット:People line up to withdraw U.S. dollars at a Tinkoff ATM in a supermarket on Tverskaya street in Moscow. Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

なぜWeb3の富裕層は現金ではなく暗号通貨を寄付しているのか

ロシアとウクライナの戦争が激化する中、暗号資産は海外の寄付者がウクライナを支援するのに不可欠なツールとなっている。このような状況下での暗号資産による募金活動の成功は、暗号資産保有者が慈善活動の目的を支援するためにコインを手放すという、2022年大流行した広範なトレンドを反映している。

世界中の慈善団体が、ウクライナを支援するために暗号資産による寄付を募っている。人気の暗号資産寄付プラットフォームEndaoment(エンダオメント)は、2月下旬の戦争勃発以来、ウクライナを支援する慈善団体が200万ドル(約2億4000万円)超を集めたと明らかにした。また、別の暗号資産非営利プラットフォームThe Giving Block(ザ・ギビング・ブロック)もすでに150万ドル(約1億8000万円)もの暗号資産による寄付を受けておりキャンペーンのウェブページによると、United Way Worldwide(ユナイテッド・ウェイ・ワールドワイド)やSave the Children(セーブ・ザ・チルドレン)などさまざまな認定非営利団体を支援するウクライナ緊急対応基金に2000万ドル(約24億円)を暗号資産で集めるキャンペーンを3月19日に発表した。

暗号資産を寄付のツールとして活用しようとしているのは、非営利団体だけではない。主要な暗号資産取引所との提携の詳細を説明している新しいウェブサイトによると、ウクライナ政府はすでにBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Tether(テザー)、Polkadot(ポルカドット)、その他の暗号資産で5400万ドル(約64億円)超を集め、主に軍資金として活用している。ウクライナ政府のデジタル変革省は、暗号資産を通じて寄付を呼び込む取り組みの先頭に立っており、新しいパートナー企業はこれらの寄付をフィアット通貨に換えてウクライナの中央銀行に送るのを支援するとウェブサイトにはある。

ウクライナ侵攻は、確かに暗号資産を寄付するきっかけとなったが、この仕組みは2021年にあらゆる種類の慈善活動で人気が急上昇した。

米国を拠点とする501(c)3非営利団体への暗号資産寄付を促進する非営利団体のEndaomentは、プラットフォーム上での寄付額が2021年に25万3000ドル(約3000万円)から2800万ドル(約33億円)へと100倍になった。The Giving Blockも、年次報告書によると、2021年の寄付額が6900万ドル(約82億円)超となり、前年比1558%増と急増した。

こうしたことから疑問が湧く。寄付者はなぜ現金ではなく暗号資産をおくることを選ぶのだろうか。

The Giving Blockの共同創業者でCEOのPat Duffy(パット・ダフィー)氏は、税制優遇措置が重要な動機付けだとTechCrunchに語った。

「もしあなたが何か慈善的なことをしたいと思っていて、価値を認められた暗号資産を持っているなら、その暗号資産は最も税優遇措置を受ける寄付の方法です」とダフィー氏は話した。

米国を拠点とする寄付者にとって、501(c)3団体に暗号資産を寄付する場合と、ウクライナのような外国政府に寄付する場合とでは、大きな違いがある。前者は寄付者に有利な税優遇措置がとられることが多く、後者はそうではない。

法的に認められた非営利団体に現金を寄付すると、寄付者は税控除対象となり、慈善団体に寄付した分だけ支払うべき税金を減らすことができる。暗号資産や株式などの資産を寄付することは、現金で寄付するよりもさらに有益だ。というのも、税控除に加えてもう1つの重要な税優遇措置を受けることができるからだ。

通常、暗号資産保有者が利益を確定するために、価値が上がった後にコインを売却した場合、その利益の最大37%をキャピタルゲイン税として支払わなければならない。しかし、コインを寄付すれば、キャピタルゲイン税を支払う必要はない。この2つの税優遇措置は、デジタル通貨の価値が上がり続けることを期待してできるだけ多くのデジタル通貨を保有したいと考える暗号資産保有者が、現金を寄付する代わりに実際に慈善団体にコインを提供することを望む理由の1つだ。

資産寄付の手段として人気があるのが、ドナー・アドバイズド・ファンドだ。暗号資産やその他の資産、現金を専用口座に拠出することで、即時税控除を受けることができ、時間の経過とともに価値を高めることができる。口座保有者は最終的に自分の裁量で口座内の資金を非営利団体に振り向けることができ、すべての資金をすぐに使用する必要はない。Fidelity(フィデリティ)の慈善寄付部門、Endaoment、The Giving Blockは、暗号資産を受け入れることができるドナー・アドバイズド・ファンドを提供している。

ダフィー氏は、税優遇措置は暗号資産を提供する寄付者の取引を促進かもしれないが、暗号資産による慈善活動の唯一の動機ではないと指摘した。暗号資産の寄付者は、株式や現金を寄付する寄付者よりも多額を寄付する傾向があると付け加えた。

「暗号資産に関わっている人、特に暗号資産を扱い始めたばかりの人は、最先端にいること、世界を変える何かの一部になることに関心を持っています」とダフィー氏はいう。

暗号資産分野のトレンドと同様に、アイデンティティとコミュニティの感覚が参加促進の中心的な役割を担っている。精通した慈善団体は最終的に寄付された暗号資産を使う前にフィアット通貨に変換しているが、この文化的な現象を利用している。

「暗号資産ユーザーのためのスペースをもうける非営利団体は、他の団体を凌駕しています」とダフィー氏は話した。

セーブ・ザ・チルドレンのような大きな非営利団体は、そのリソースと規模から、暗号資産寄付プログラムを構築することができたが、多くの中小規模の慈善団体は、このオプションを追求していない。暗号資産の寄付は、慈善事業全体のごく一部に過ぎない。Giving USAによると、米国の慈善団体は2020年に寄付者から推定4700億ドル(約56兆円)超を受け取った。

米国証券取引委員会のGary Gensler(ゲイリー・ゲンスラー)委員長を含む規制当局は暗号資産が詐欺や不正行為と関連していることを指摘しており、非営利団体は関与することをためらっているのかもしれない。また、暗号資産による寄付の受け入れに対応する技術やインフラが整っていない団体もある。

インターネット上で強固なプレゼンスを持たない零細の非営利団体はときに、暗号資産の受け入れは「宝くじ」のようなものだと考える、とダフィー氏は話した。同氏は、このような考え方に注意を促し、オンラインプレゼンスを持たない非営利団体は、暗号資産の統合を構築する前に「基本に忠実であるべき」だと述べた。

EndaomentとGiving Blockの年次報告書によると、両プラットフォームで2021年最も多く寄付に使われた暗号資産はEthereumだった。Ethereumは、他の暗号資産を抜いて、2021年に両プラットフォームで最も寄付された暗号資産となり、以前から人気のあったBitcoinやChainlinkをも上回った。

暗号資産の寄付はコインだけにとどまらず、NFT(非代替性トークン)の慈善プロジェクトも寄付者の間で人気を博している。例えば、人気NFTアーティストのPplpleasrは、Endaomentのプラットフォームを利用して、自身のアート作品の収益をStand with Asians Community Fundに寄付した。それぞれの年次報告書によると、EndaomentとThe Giving Blockのプラットフォームでは、合わせて約2000万ドル(約24億円)のNFTによる寄付が行われた。

特にNFTは、非営利団体にとって長期的な寄付の流れを生み出す可能性を秘めている。Solana(ソラナ)ベースのNFTマーケットプレイスMetaplex(メタプレックス)は、寄付APIスタートアップChange(チェンジ)との統合により、自社プラットフォームのクリエイターがNFTの販売を通じて定期的なロイヤルティ支払いで事前活動を支援することを可能にしている。

Web3のクリエイターは、NFTの寄付を「自分の作品を通して遺産を残す」機会だと考えていると、Changeの共同創業者Sonia Nigam(ソニア・ニガム)氏はTechCrunchに語った。

「これは、従来の慈善事業ではなく、クリエイターの実用化に関するものです。スマートコントラクト技術によって、インパクトが製品自体に宿り、そして永続的に寄付することができます」とニガム氏は語った。

「NFTのコレクションが始まると、彼らは、例えばすべての二次販売のうち2%を気候変動との戦いにずっと提供するという目標を設定します。そうすれば、再販のたびにクリエイターの初志が失われることはないため、クリエイターにとってエキサイティングなものになります。非営利団体にとっては、定期的な寄付のルートを確保することは常に第一の目標です」。

2021年は暗号資産による寄付が牽引してきたが、特に3月のウクライナ支援のための迅速な資金動員は、暗号資産コミュニティが他のものを支援するための触媒となる可能性がある。

TechCrunch Disrupt SF 2017に登場したヴィタリック・ブテリン氏(Ethereum考案者)

ロシア出身のEthereum共同創業者ヴィタリック・ブテリン氏は先週、暗号資産投資家Katie Haun(ケイティ・ハウン)氏のチームが主催したTwitterスペースの会話で、最近の支援キャンペーンによって開かれた可能性について語った。

「(ブロックチェーンと暗号資産分野の)本当に中核となる多くの人々は、自由を支持し、より民主的な組織化の方法をサポートし、人々が基本的なものとして平和的に自分の個人的および経済的生活を持つ能力を一般的にサポートしたいと考えてその分野にいると思います」とブテリン氏は述べた。

ウクライナでこうした権利が侵害されるのを見て、暗号資産コミュニティの関心が高まったと同氏は語り、このような意識の高まりは、著名な暗号資産プロジェクトに携わる多くの人がウクライナ人であることが一因だと分析している。

ウクライナを支援するための暗号資産寄付キャンペーンの成功は、暗号資産が「非常に迅速に資金を集めることができるかなり優れた手段」であることを実証したと同氏は付け加えた。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロシアの検索大手Yandex、メディア事業からの撤退を検討中と投資家に説明

ロシアのインターネット大手Yandex(ヤンデックス)は、同社のメディア製品について「戦略的オプション」を模索していると投資家に語った。その中には、ニュースアグリゲーターのYandex Newsや、ユーザー生成コンテンツの推薦とブログの「インフォテインメント」プラットフォームであるZenの売却の可能性も含まれている。

このディスクロージャーは、米国時間3月16日に報じた、YandexがYandex NewsとZenの売却に向けて協議中であるという情報筋の話を裏付けるものだ。

この動きは、ウクライナ侵攻開始以来、ロシア国家による表現の自由に対する規制が強化されていることによるリスクと関連していると、情報筋は指摘する。この中には、ロシア軍に関する「偽」情報(クレムリンが好む「特別軍事作戦」という表現ではなく、ウクライナでの「戦争」に言及するなど)を流した者に長期の禁錮刑を科す恐れがある新しい法律が含まれている。

Yandexは中央ヨーロッパ時間3月18日、投資家向けの声明の中で、「ニュースアグリゲーションサービスとインフォテインメントプラットフォームのZenについて、売却を含むさまざまな戦略的オプションを検討します」と記している。

「当社は、その他のテクノロジー関連事業および製品(検索、広告、自動運転、クラウドなど)、トランザクションサービス(ライドヘイリング、eコマース、ビデオ / オーディオ、ストリーミングなど)の開発に注力する意向です」と同社は付け加えた。

Yandexの広報担当者は、Yandex NewsとZenの売却について協議中であることを確認した。

「ニュースアグリゲーションサービスとインフォテインメントプラットフォームのZenについて、売却を含むさまざまな戦略的オプションを検討していることを確認します」と同担当者は述べた。

同社はメディア製品の買い手候補について公のコメントを出していないが、内情に詳しい情報筋は先に、ロシアのソーシャルメディア大手VKが有力候補だと話していた。

Yandexは投資家向けの将来予測に関する声明で、売却プロセスが「初期段階にある」ことを示唆し「買い手の特定、許容できる条件の交渉、取引の締結に成功する保証はない」とも投資家に警告している。

オランダに籍を置くロシア企業である同社は、時価総額が68億ドル(約8106億円)だった2月25日に取引を停止している。

画像クレジット:Alexander RyuminTASS / Getty Images(Image has been modified)

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Den Nakano)

ロシア、YouTubeに「反ロシア」広告を止めるよう警告

2月末にウクライナに侵攻して欧州で陸戦を開始したロシアが、外国のソーシャルメディア大手に対する最新の攻撃として、反ロシア的な「情報攻撃」がYouTubeを通じて広まっていると主張し、同国のインターネット検閲当局からGoogle(グーグル)に警告を発した。同国は動画共有プラットフォームの広告がロシア国民への脅しに利用されることをGoogleが許容しているとして、米国のハイテク企業が「テロ行為」に関与していると非難している。

ロシアの通信情報技術監督庁Roskomnadzorは現地時間3月18日、同庁ウェブサイトに掲載した声明の中で、YouTubeがロシアとベラルーシ間の鉄道接続を遮断するよう人々に呼びかけるターゲティング広告を配信していると主張している。

「YouTube管理者の行為はテロ行為であり、ロシア国民の生命と健康を脅かすものです」と規制当局は書いている(ロシア語から機械翻訳)。

「このようなアピールの発信は、米国企業であるGoogle LLCの反ロシア的な立場を明確に示しています」とも。

規制当局はまた「反ロシア動画」の配信をできるだけ早く停止するよう、Googleに警告した。

その声明はさらに、米国のIT企業全般、特にテック大手のGoogleとFacebook(フェイスブック)を所有するMeta(メタ)が「ロシア軍、メディア、公人、国家全体の信用を落とす」ことを目的とした「情報攻撃」の標的キャンペーンを展開し、ロシアとの「対立の道」を選んでいると非難している。

「Meta Platforms Inc.とGoogle LLCによる同様の行為は、ロシアの法律に違反するだけでなく、一般に受け入れられている道的規範にも反しています」とRoskomnadzorは付け加えている。

Roskomnadzorの警告について、YouTubeからすぐにコメントを得ることはできなかった。

国家インターネット検閲機関からGoogleへの直接の警告は、ロシアがYouTubeへのアクセスをブロックする前兆である可能性がある。

最近、FacebookInstagram(インスタグラム)がRoskomnadzorによってブロックされている。ウクライナ戦争と並行して、ロシア政府がデジタル情報領域への支配を強化しようとしているためだ。

FacebookとInstagramは、Metaがヘイトスピーチポリシーを緩和し、特定の地域のユーザーがロシアに向けた特定の種類の殺害脅迫を投稿できるようにすると発表した後にブロックされた。Metaのグローバルアフェアーズ担当社長であるNick Clegg(ニック・クレッグ)氏は、これを「自衛の表現としての言論の権利」を守るために行われた一時的変更だと弁明した。

ここ数週間、RoskomnadzorはTwitter(ツイッター)にも制限を加えている。

しかし、YouTubeはウクライナ侵攻以来、同社がロシアでのサービスにいくつかの制限を加えているにもかかわらず、大きな検閲を受けずに済んでいる。例えばユーザーへの支払いサービスを停止するなどだ(同社はロシアの銀行に対する西側諸国の制裁の結果、この措置を取った)。

この状況が変わりつつあることを示す1つのシグナルとして、18日ロシアの報道機関が、Roskomnadzorに近い情報筋の話として、早ければ今日か来週にもYouTubeがブロックされる可能性があると伝えており、ブロックが迫っていることを示唆している。RIA Novostiの情報筋は、来週末までにYouTubeがブロックされる可能性が「最も高い」と述べている。

ロシアとウクライナの間で激化しているサイバー戦争のもう1つの小さな指標かもしれないが、今日この記事を執筆していた際、Roskomnadzorウェブサイトの読み込みが著しく遅かった。また、CAPTCHAを導入したようで、DDoS攻撃を防止・軽減しようとしている可能性がある。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Den Nakano)

ロシアの「グーグル」Yandex、メディア事業から撤退か

プーチン政権はウクライナでの戦争に関するロシア国内の情報共有について締め付けを続けており、その影響でFacebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Twitter(ツイッター)と同じくメディア分野の主要プレイヤーでもあるロシア国内のハイテク大手がメディア資産の再編に着手している。

現地時間3月15日のロシアの報道では、往々にして「ロシアのGoogle」と呼ばれる同国の大企業Yandex(ヤンデックス)がメディア部門の売却交渉に入っており、ロシアのソーシャルネットワーキング大手VKが買い手候補に挙がっていると報じている。

この件に詳しい情報筋はTechCrunch に、ニュースアグリゲータのYandex Newsと、レコメンダーエンジンと連携したブログプラットフォームのYandex Zenを含むメディア部門の売却交渉が「最終段階」にあることを認めている。今後あり得る売却の時期については確認できなかった。Yandexは報道についてのコメントを拒否した。

この噂は、欧州連合(EU)内部でYandexに制裁を加えるよう圧力がかかっている中でのものだ。ニュース部門はすでに、Yandexの主要幹部(現在は元)Tigran Khudaverdyan(ティグラン・フダヴェルディヤン)氏に関連した制裁を通じて、EU規制当局から目をつけられている。

フダヴェルディヤン氏は3月15日、ロシアのウクライナへの正当な理由なき侵攻に関してEUの制裁を受ける個人リストに加えられた。EUは、Yandexのニュース事業の元責任者であるLev Gershenzon(レフ・ゲルセンゾン)氏の告発を引用し、Yandex Newsがプーチン政権のプロパガンダを広める役割を担っていることを強調した(ゲルセンゾン氏は現在ベルリンを拠点としていて、LinkedInのプロフィールによると2013年にYandexを退社している)。

この発表に続いて、今度はYandexから別の発表があった。フダヴェルディヤン氏は、Yandex NV(オランダに本拠を置き、NASDAQで株式公開しているYandexの親会社)の副CEOおよび取締役を退任する(取締役会は、同氏がEUの制裁対象者となったことを知り「ショックを受け、驚いている」と述べている)。

EUは「我々は、政権に実質的な収入源を提供している経済部門に関与しているオリガルヒ(新興財閥)や政権所属のエリート、その家族、著名なビジネスパーソンをさらに制裁リストに追加している」と述べた。「この制裁は、プーチン大統領のウクライナ人に対する戦争にともなう誤情報やプロパガンダにおいて主導的な役割を担っている人々も対象としている。我々のメッセージは明確だ。ウクライナへの侵攻を可能にした者は、その行動の代償を払うことになる」。制裁対象者への罰則は、資産の凍結や欧州への渡航禁止などだ。

フダヴェルディヤン氏が制裁対象個人リストに加えられた理由は2つある。1つは、プーチン政権とその対ウクライナの戦争をほう助したと考えられるYandexと、そのニュース部門の経営監督を行ったこと。もう1つは、2月24日にクレムリンで行われたオリガルヒとロシア高官の会合にフダヴェルディヤン氏が出席し、差し迫った制裁の影響について話し合ったことだ。

Yandex NVは2月25日に取引を停止したが、その時の時価総額は68億ドル(約8110億円)だった。

「ティグラン・フダヴェルディヤンは、機械学習によるインテリジェントな製品とサービスを専門とする、ロシアを代表するテクノロジー企業であるYandexの執行役員だ」と、EUは公式通知で述べている。「Yandexの元ニュース部門責任者は、同社がウクライナでの戦争についてロシア人から『情報を隠すための主要な役割』を担っていると非難した」とある。

EUはまた、Yandexの検索エンジンのユーザーが検索結果に基づいてウクライナに関するより広範なニュースを読むことを抑止しているとほのめかす製品決定にも言及し、こう書いている。「さらに同社は、ロシア政府がロシアメディアの掲載内容に関して脅迫した後、同社の検索エンジンでウクライナに関するニュースを探しているロシア人ユーザーに対して、インターネット上の信頼できない情報について警告している」。

さらに、2月24日に西側制裁の影響について話し合う会議にフダヴェルディヤン氏が出席したという事実そのものが「同氏がウラジーミル・プーチンに近いオリガルヒの内輪メンバーの1人であり、ウクライナの領土保全、主権、独立、またウクライナの安定と安全を損ねたり脅かす行動や政策を支持または実行している」ことを示していると指摘した。

これに加え、Yandexの幹部として、フダヴェルディヤン氏はロシアのテック分野でトップ幹部の1人であり、EUは「クリミア併合とウクライナの不安定化に責任を負うロシア連邦政府にかなりの収入源を提供している経済部門」の1人だと説明している。

フダヴェルディヤン氏が役職から離れることが現実的な動きなのかは明らかではない。同氏はもう国際的に活動できないのか、あるいはYandexがEUの直近の非難から経営陣を遠ざけようとするためにこれを行ったのか。

同社に関してはここ数週間、国際的にさらに孤立するような動きがいくつもある。NASDAQ市場での取引停止に加え、投資家のEsther Dyson(エスター・ダイソン)氏とスタンフォード大学の経済学者Ilya Strebulaev(イリヤ・ストレブラエフ)氏という、国際的に知名度の高い長年にわたる2人の取締役が3月初めに取締役を辞任した。Yandexは、財務的にも制裁の範囲に関しても同社は安全な状態にあると主張している。

いずれにせよ、ニュース事業を完全に切り離すことは、Yandexをすべてのドラマから遠ざける1つの方法といえるかもしれない。

その点では、VKは興味深い買い手となるだろう。VKの創業者 Pavel Durov(パーヴェル・ドゥロフ)氏が会社のトップから追い出されようとしていたときのことを思い出して欲しい。クレムリンにつながる企業が支配するMail.ruがソーシャルメディアのプラットフォームを支配下に置いた後(現在はVKを所有している)、政府がすでにビジネスにおいて強い役割を果たしているとドゥロフ氏が考えたことが内部紛争の一因だった。当時クリミア半島に集中していたウクライナでの紛争勃発が転機となった、とドゥロフ氏は当時述べた。

Yandexは長年にわたり、国際的な事業展開に意欲を燃やしてきた。実際には、ロシア語圏の国々への進出や、トルコでの事業展開が主なものだった。同社は、法律に則って事業を行わなければならないと主張しているプーチンのロシア内で開発されている「中立的」なプラットフォームであるという姿勢を維持しようとしてきた。

しかし、現在のロシアの体制下で、Yandexあるいはどの企業も中立であり続けることができるかどうかは疑問だ。

中立の幻想

オンラインに適用される法的規制には、大規模なニュースアグリゲーターに適用されるメディアライセンス規則が含まれる。つまり、Yandex Newsは国のメディア規制当局が監督する公式登録に記載されたニュースソースしか表示できないため、本質的に「中立」はまだ政府の公式監査人によって認定されたものだ。独立系メディアも、その過程で締め出される。その最新例が、調査報道サイト「Bellingcat」(ウクライナに対する戦争について報道し、プーチンのプロパガンダに長年苦しめられてきた)の国内での禁止だ。

Yandex NewsとZenの売却計画に詳しい情報筋はTechCrunchに、Yandexは5年も前にメディア部門の売却を検討していたと語った。しかし、これらの製品と他のYandexの資産との統合をほどくことの複雑さが、メディア部門からの撤退に向けた動きを先送りした可能性が高いという。

それ以来、プーチン政権はロシアのメディアに対する規制を強化し、2021年はニュースアグリゲーターに外国のメディアソースを「外国のエージェント」とラベル付けすることを要件とするなど、規制強化の動きは明らかだ。

TechCrunchの情報筋によると、ウクライナに関する言論を制限する新しい規制が導入された後、Yandexのこの分野からの撤退の決定が最終的に加速したという。ロシア議会は2022年3月初め、ロシア軍に関する「虚偽」情報を広めたとみなされた人に最高で15年の懲役刑を科すという新しい法律を承認した。

この法律は、Yandex Zenのようなプラットフォームのブロガーに明白なリスクをもたらすだけでなく、テックプラットフォーム自体にも、そのアルゴリズムが制裁対象コンテンツを拡散させていると見なされた場合リスクをもたらす。

RTBが報じたように、Yandexは近年、ニュースの選別アルゴリズムについてロシアの政治家たちから注目されていて、トップニュースの結果に影響を与えたと非難されている(同社は繰り返し否定している)。

Yandexは最近、Zenプラットフォームにいくつかの変更を加えた。おそらく、そうした政治的リスク、そしていまや法的リスクを少なくするための措置で、開かれたオープンインターネットからコンテンツを取り込んでいたオープンレコメンデーションモデルから、購読ベースのコンテンツのみを推薦するように変更したが、これはレコメンデーションによる収入に依存しているブロガーの怒りを買った。

しかし、TechCrunchの情報筋は、Yandexが中立性を主張しながらメディア領域で事業を継続することが実行可能だとはもはや考えておらず、代わりに、メディアの影響をそれほど大きく受けない検索やその他のテックに焦点を当てたサービスに力を注ぐことを示唆した。

「このような規制への対処は、技術的なものだけでなく非常に難しい仕事です」と売却計画に詳しい情報筋は付け加えた。

検索大手の同社は、広告収入からの多角化を図るため、他にもさまざまなサービスや事業を行っている。クラウドやeコマースサービス、翻訳技術、自動運転車技術、さらに配車やフードデリバリーサービスなどだ。

ある人は、Yandexがテックにもっと集中するためにメディアをあきらめ「事業を再構築する方法を再調査」する必要があり、クレムリンの管理強化や対ロ制裁が強まる国際情勢に適応しようとしていると語った。

VKの参入

ロシアのソーシャルメディア大手VKが、Yandexのメディア資産を購入する可能性があると言われている

TechCrunchの情報筋3人はVKがYandexのメディア事業買収を交渉している企業の1社であることを認め、VK内部の情報筋によると、同社は2021年もYandexと取引の可能性を議論していたという。

「2021年、Yandex NewsとZenの買収について議論しました。しかし、Yandexが売却を望んでいるため、今が買収する良い機会です」とこの情報筋は匿名を条件に話した。

別の情報筋は、VKを現時点でのYandex NewsとZenの「最も近い」買い手候補とし「Yandexにとって時間が重要だ」と述べ「数カ月以内に」取引が行われる可能性も示唆した。

TechCrunchは、VKがYandex NewsとZenの買収を交渉しているという噂についてVKに公式コメントを求めたが、本稿執筆時点で回答はない。

VKはすでに、同社の消費者向けソフトウェア製品群の中にニュース製品を持っており、インターネットポータル「Mail.ru」を通じてニュースコンテンツを表示している。

VKの関係者は、Instagram(インスタグラム)がロシア市場から締め出されたことで生じたソーシャル分野の空白でYandex Zenが成長する可能性を指摘し、ビジネスの観点からすれば、欧米の大手ソーシャルメディアへの規制は、トラフィックを獲得できるため喜ばしいことだと述べている。

「我々はロシア、ベラルーシ、および他のロシア語圏の国々で唯一のメディアかつソーシャル(プレイヤー)になりたいのです」と情報筋は付け加えた。

Yandexとは異なり、VKは国際的な事業を拡大する野心を表明しておらず、成長努力を地元市場に集中している(ただし、Yandexが国際的に大きく成長する見込みは、欧米のロシアに対する制裁が強化されるにつれて低くなる可能性がある)。

一方、Yandex検索は、プーチン政権が好まないウェブサイトやアプリをすべてブロックし、ユーザーに提供できるコンテンツを制限できるインターネット規制の下で運営しなければならない(実際、そうなっている)。

例えば2021年9月、Yandexは政府の禁止措置に従うため、獄中のクレムリン批判者Alexei Navalny(アレクセイ・ナヴァルニー)氏が作成した戦術的投票アプリを検索結果から排除することを余儀なくされた。

また、ロシアの裁判所は、Yandexがキーワード検索システムで「スマート投票」というフレーズを使用することを禁止した。つまり、そのフレーズに関連するコンテンツを提案することはできない。だが、Yandexは判決を不服として控訴した。

クレムリンの規制と欧米の制裁がロシア経済に打撃を与え続ければ、技術系人材の流出につながる可能性がある。ITコミュニティは、数千人のテックワーカーが個人的なリスクを冒して最近の公開嘆願書で戦争反対の意志を公にしたように、最も外向きでグローバルなつながりを持つプロフェッショナルの 1 つであることを考えると特にそうだ。

そのため、クレムリンが自国のテック企業に対する業務上の制限をどこまで強化するかという問題がある。強化すれば、企業全体が海外に移ることもあるかもしれない(Telegramの創業者ドゥロフ氏が自身の会社だったVKをロシアに残したように)。

クローンの攻撃

国際的な事業展開を目指すロシアのハイテク企業は、ロシアが世界からますます孤立していく中で、選択肢を考えているに違いない。すでにクレムリンの勢力圏に完全に組み込まれている企業もあれば、制裁によって外国人が残した空白にローカル成長の新たな機会を見出そうとしている企業もある。

1つだけはっきりしていることは、ウクライナでのロシアの戦争が、ロシア国内のデジタル経済のあり方に大きな影響を及ぼしているということだ。

西側諸国は、ウクライナ侵攻を受けてプーチン政権に圧力をかけるための重要な手段として、テクノロジーをターゲットにしている。ウクライナのハッカー集団「IT Army」のような草の根活動が、ロシアの多くの機関や企業のウェブサイトやインターネット事業を組織的に狙ってダウンさせる一方で、米国とEUはロシアの銀行や企業幹部、その他Internet Research Agencyとして知られる悪名高い企業などの団体に制限を加えている。

欧米の制裁ではロシアの決済が崩壊し、サービス撤退を求めるかなりの圧力が強まったため、多くの外国のハイテク大手がロシアから撤退した。

活動の変化の一部は、ロシア自身によって起こった。Facebook、Instagram、Twitterなどの主要ソーシャルメディアプラットフォームは、ロシアのインターネットおよびメディア検閲機関であるRoskomnadzorによってブロックまたは制限されており、プーチン政権はデジタル情報領域に対する支配を強めている。

欧米の大手ハイテク企業に対する制限の必然的な帰結として、そのギャップを埋めるためにロシア企業が参入する機会が生まれるということがある。

例えば、ロイターは3月16日、InstagramのクローンであるRossgram(ロスグラム)が地元の起業家によって立ち上げられ、3月28日に開始予定だと報じた。ロイターは、この構想のPRディレクターがソーシャルネットワークVKontakteに投稿した文章を引用ている。「我々の開発者グループはすでに準備ができており、我々の同胞に愛される人気のソーシャルネットワークのロシア版アナログを作成する機会を逃さないことにした」。

一方、戦略イニシアチブ機関(これ自体はロシア政府が設立した非営利団体)が設立したベンチャーファンドのIIDFは、ロシアから撤退したり、事業を禁止されたりしているサービスを代替したり、真似したりする、すでに存在するか構築されているテックサービスの登録を開始した。この登録は、IIDFのアクセラレータという形で行われているため、そのギャップを埋めるために、新しいスタートアップに資金を提供するプログラムも展開していることが想像できる。

画像クレジット:Lilyana Vynogradova / Shutterstock

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(文:Natasha Lomas、Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグル、ランサムウェア犯罪集団に初期アクセス手段を提供するブローカーとして働く組織を発見

Google(グーグル)の脅威分析グループは、ランサムウェア「Conti(コンチ)」を使う犯罪集団などロシアのハッカーの仲介役として働く、金銭的動機を持った脅威アクターの存在を確認したと発表した。

Googleが「EXOTIC LILY(エキゾチック・リリー)」と呼ぶこのグループは、初期アクセス手段のブローカーとして、脆弱な組織を見つけ、そのネットワークへのアクセス情報を、最高額の入札者に販売する。Contiのようなランサムウェア犯罪集団は、被害者となるネットワークへの初期アクセスをこのグループに委託することで、攻撃の実行段階に集中することができるというわけだ。

EXOTIC LILYの場合、この初期アクセスは標的に電子メールを送信する活動から始まる。メールのやり取りの中で、EXOTIC LILYはなりすまし用ドメインや偽のIDを使って、正当な組織や従業員を装う。多くの場合、なりすましドメインは、既存の組織の実際のドメイン名とほぼ同じだが、トップレベルドメインが「.us」「.co」「.biz」に変わっている。EXOTIC LILYは、なりすました組織の正当な従業員に見せかけるため、ソーシャルメディアに偽のプロフィールを作成し、そこにAIで生成された人間の顔の画像を使っていた。

この攻撃グループは、まずビジネス提案を口実に標的型フィッシングメールを送り、最終的にはWeTransfer(ウィートランスファー)やMicrosoft OneDrive(マイクロソフト・ワンドライブ)などの公開ファイル共有サービスにアップロードしたマルウェアをダウンロードさせるという手口を用いる。そのメール送信などの活動時間帯から、グループは中央または東ヨーロッパで活動している可能性が高いと、Googleは考えている。

Googleの研究者であるVlad Stolyarov(ヴラド・ストリャロフ)氏とBenoit Sevens(ブノワ・セブンス)氏は、公開前にTechCrunchに共有したブログ記事で「大規模な作戦に焦点を当てたサイバー犯罪グループにとって、このレベルの人的交流はかなり珍しい」と指摘している。

これらの悪意のあるペイロードは、当初はマイクロソフトのMSHTMLブラウザエンジンに存在するゼロデイ脆弱性(CVE-2021-40444として追跡されている)を悪用した文書の形をとっていたが、最近では攻撃者が「BazarLoader(バザーローダー)」マルウェアを隠したISOディスクイメージの配信に切り替えている。この移行から、Googleの研究者は、EXOTIC LILYが「WIZARD SPIDER(ウィザード・スパイダー)」という名称で追跡されているロシアのサイバー犯罪集団と関係があることが確認されたと述べている。UNC1878としても知られるWIZARD SPIDERは、2018年以降、企業や病院(米国のUniversal Health Services[ユニバーサル・ヘルス・サービス]を含む)、政府機関を標的に使用されてきた悪名高い「Ryuk(リューク)」ランサムウェアを使うサイバー攻撃組織だ。

この関係の性質は依然として不明だが、EXOTIC LILYはメール送信活動による初期アクセスの獲得に重点を置いており、Contiや「Diavol(ディアヴォル)」ランサムウェアの展開を含むその後の活動とは、別の独立した組織として運営されているようだと、Googleは述べている。

Googleによると、2021年9月に初めて観測され、現在も活動を続けているEXOTIC LILYは、活動のピーク時には1日に5000通以上のフィッシングメールを650もの組織に送信していたという。同グループは当初、ITやサイバーセキュリティ、ヘルスケアなど特定の業界をターゲットにしていたようだが、最近では、あまり特定の焦点にこだわらず、さまざまな組織や業界を攻撃し始めている。

Googleは、組織のネットワーク防御に役立てるため、EXOTIC LILYの大規模な電子メール活動から得たIOC(セキュリティ侵害インジケーター)も公開している

画像クレジット:Yasin Ozturk / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ウクライナ発の顔交換アプリ「Reface」が反戦キャンペーンに対するロシアユーザーの反発を受け同国から撤退

Facebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)などの主要ソーシャルネットワークが最近ロシア当局にブロックされ、ロシア政府がウクライナ戦争に関わる会話を完全制御しようとする中、ウクライナ発の顔交換アプリReface(リフェイス)は、自発的にロシアから撤退した。

プーチン大統領が2月末にウクライナ侵攻を軍隊に命じて以来、同スタートアップは、自社アプリをロシア政府によるメディア検閲を回避するために使う試みを早々に決定し、ユーザーに反戦メッセージをプッシュ送信し、ロシアに対する制裁を支持するよう呼びかけた他、ウクライナで起きている荒廃の画像をアプリで表示した。さらにRefaceは、ロシア人ユーザーに向けて位置ターゲットされたメッセージを送り、戦争に反対する運動に参加するよう呼びかけた。

この反戦キャンペーンの結果、数百万件という反戦メッセージがロシアのRefaceユーザーに届けられた。米国時間3月15日のブログ記事で、約1300万件の反戦プッシュ通知が送られたとスタートアップは語った(同社によるとロシアの同アプリのユーザーは200万人程度)。

しかし、その反戦コンテンツはロシアのユーザーから直ちにネガティブな反応を受け、キャンペーンは中止され、アプリは星1つのレビューで埋め尽くされた。以下にブログ記事のグラフを載せた。

画像クレジット:Reface

Refaceのブログには、同社はロシアのユーザーのネガティブな反応を、彼らがウクライナで壊された家屋や殺された女性や子どものことを気にかけていないことの証だと解釈しつつ、中には完全に否定的とは言えない言葉もあったことを指摘した(ただし、ほとんどがネガティブであるとも言っている)。

「私たちの努力が、ロシアの国を上げてのプロパガンダと争うには不十分であったことを認識し、当社はRefaceアプリをロシアのApp Store(アップ・ストア)およびGoogle Play(グーグル・プレイ)から削除することを決定しました」と同社は書いている。3月10日以前にアプリをダウンロードした人は今も使用できるが、新規のダウンロードとサブスクリプションは無効になっている。

「ロシアの市場やロシアと何らかの関わりのあるものから、いかなる利益を上げることも当社は望んでいません。この国によるウクライナに対する残酷な戦争のために起きている経済制裁や技術的孤立の影響を、すべてのロシア人が感じるべきです」とRefaceは付け加えた。

同社CEOで共同ファウンダーのDima Shvets(ディマ・シュベッツ)氏は、ロシアからアプリを撤退する決定はRefaceだけの判断であることを明言した。

「当社はロシアのインターネット検閲による制限は受けていません」と同氏がTechCrunhに話した。「ロシアの巨大な情報キャンペーンの後、撤退を決めました。ロシアとは一切接点を持ちたくなかったからです。

画像クレジット:Natasha Lomas/TechCrunch(スクリーンキャプチャー)

これはロシアにおけるインターネット体験がウェブの主流から取り残されつつあることを示す小さな兆候の1つであり、それはロシアの銀行、著名な企業幹部、その他の組織(たとえば悪名高いInternet Research Agencyという名の荒らし軍団)に対する西側諸国の正式な制裁措置によるだけでなく、 大企業から小企業までさまざまなテック企業が自主的に市場を離れたことによるものだ。

RefaceアプリのAI利用の顔交換エフェクトは元々純粋なエンターテインメント目的であり、ユーザーは自分の顔を有名な映画シーンのセレブと交換したりしていたが、開発チームの母国ウクライナで起きた戦争は、 穏やかな気持でアプリ運用するための状況を明確かつ著しく変化させた。

「以前、Refaceユーザーは自分をジャック・スパロウやアイアンマンと入れ替えて楽しんでいました。今私たちは、自分たちをゼレンスキー大統領と入れ替え、ウクライナ国歌とともに写真に息を吹き込むよう働きかけています。今やゼレンスキー氏には カニエ・ウェストより多くのInstagramフォロワーがいます。何というタイムラインでしょう!」とRefaceは消費者の状況の変化ぶりをブログ記事に要約した。

現在同社は自社アプリを使って、ロシア外でのウクライナ支援を呼びかけるために使い続け、ユーザーに、ウクライナ大統領、Volodymyr Zelensky(ヴォルディミル・ゼレンスキー)氏の人気ビデオクリップや、ユーザーがアップロードしたウクライナ兵士の画像と顔交換できるようにしている。

Refaceは作成された親ウクライナ合成メディアに、#StandWithUkraine(ウクライナ支持)のハッシュタグを付加して、こうした支持のビジュアルメッセージをソーシャルネットワークで拡散するようユーザーに呼びかけている。

ウクライナ国土で進行している実際の戦争とともに、オンラインで同時進行する情報戦争で起きた最近の出来事として、ウクライナ大統領がオンラインで自国の戦争努力を傷つけているように見せかけるディープフェイク映像が出現した。最近、ゼレンスキー氏が降伏しているように見せる改ざん動画が、Telegram(テレグラム)、およびFacebook(フェイスブック)とロシアのライバルサービスであるVKontakte(ヴィー・コンタクテ)などのソーシャルネットワークに出回っていることがわかった。

これらの偽動画の出どころがどこなのかははっきりしていない。しかし2022年3月、ウクライナの戦略コミュニケーションセンターは、ロシアが改ざん動画を流布して、自らの侵攻に対する一般大衆の認識を操作しようとしていると警告した

関連記事:ウクライナのゼレンスキー大統領が降伏するフェイク動画をMetaが削除

画像クレジット:Efrem Lukatsky / AP

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ウクライナのゼレンスキー大統領が降伏するフェイク動画をMetaが削除

ウクライナ大統領Volodymyr Zelensky(ウォロディミル・ゼレンスキー)氏が軍に降伏を命じているフェイクビデオを、Metaは米国時間3月16日に削除した。動画は、ロシアによる隣国ウクライナへの残忍な侵攻と並行して行われている情報戦争において警戒を要する最新の出来事だが、以前からウクライナ政府とソーシャルメディア企業が予期瞬間でもある。

MetaのセキュリティポリシーのトップであるNathaniel Gleicher(ナサニエル・グレイチャー)氏の説明によると、そのコンテンツは「操作されたメディア」に対する規則を破っているため削除された。マルチメディアによる偽情報の形式の1つで、公人が実際には口にしていないことを言ってるように編集した動画で表現されている。

このビデオは、誤解を招く操作されたメディアに対する、弊社のポリシーに違反しているため迅速に検討して削除し、他のプラットフォームの同僚たちにも通知した。

この誤解を招く動画のMetaによる削除はかなり早かったが、ロシア版FacebookであるVKontakte上ではすでに広まっているようだとAtlantic Councilのデジタル犯罪捜査研究所はいう。同研究所はさらに、Telegramのロシア寄りチャンネルが3月16日にゼレンスキー氏が国の降伏を呼びかけているディープフェイクを掲載したともいう。

国営テレビネットワークのUkraine 24も、ニュース表示が3月16日に同じ目的でハックされたと報じている。その表示は、Zelenskyからと称するメッセージがウクライナ国民に、ロシアの侵略軍への抵抗をやめるよう呼びかけている。

ロシアのハイブリッド戦争が始動。Ukraine 24のテレビチャンネルがハックされた。ニュース表示がゼレンスキー大統領の偽の降伏宣言を表示されるようになった。@ZelenskyyUaはすでにこのフェイクに反論して、彼が武器を置けと要求できるのはロシア軍に対してだけだと述べている。

ウクライナの大統領はすばやくその偽情報を否定して、侵攻の開始以来ゼレンスキー氏のコミュニケーションのスタイルとなったセルフィービデオで、Telegram上でメッセージした。

2022年3月初めにウクライナの戦略的コミュニケーションセンターが、ロシアは変造したビデオを使って侵攻の一般大衆の受け止め方を歪曲するかもしれないと警告した。そのセンターはウクライナ政府の文化情報政策省に属し「外部の脅威、中でも特にロシア連邦の情報攻撃を阻止する」ことに注力している。

同センターは3月2日にFacebookページで次のように述べている。「ウォロディミル・ゼレンスキーがテレビで降伏声明を述べているところを、自分が見ていると想像してみよう。姿も見えるし声も聞こえるからそれは事実だが、しかしこれは本当ではない。用心しよう。これはフェイクだ!」。

画像クレジット:Drew Angerer/Getty Images/Bloomberg, Getty Imagesより/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Slackがロシア国内のアカウント停止措置を開始、親会社Salesforceの対応に追従

Slackがロシア国内のアカウント停止措置を開始、親会社Salesforceの対応に追従

Oscar Wong via Getty Images

業務用コミュニケーションツールのSlackが、ロシア国内のアカウントを停止する措置を開始しました。Slackの親会社であるSalesforceはすでにロシアからの撤退を表明しており、これに準じた対応と考えられます。

ニュースサイトAxiosによると、Slackのアカウント停止は主に米国からの制裁対象になった会社や組織を対象に予告なく行われており、一切のデータのダウンロードやバックアップの機会も与えられなかったとのこと。

Slackは数多くの企業に浸透しており、社内におけるコミュニケーションやファイルのやりとりなど、利用する企業にとって重要なデータを多く取り込んでいます。そのためバックアップ手段を講じていない状態で突然利用できなくなった場合、業務への影響は非常に大きなものとなりそうです。

SlackはAxiosに対し「われわれは、事業を展開する他の国々における米国の制裁規制を遵守することを法律で義務付けられており、状況によっては事前通知なしにアカウントを即時停止するなどの行動を起こすことが求められている」と述べました。そして「法律で許可されている場合には、これらのアクションの影響を受ける顧客と連絡を取っている」とコメントしています。

なお、Slackとしては遮断した企業のアカウントのデータを削除はしていないものの、制裁によって遮断された組織はそれが解除復旧されるまではデータにアクセスすることもできません。

ちなみにSalesforceは、撤退は先週から開始しているものの、ロシア国内の顧客はごく少数であり「ロシアには重要な事業はない」と述べています

(Source:AxiosEngadget日本版より転載)

Ecosiaが検索による広告収益をグリーンエネルギーに投資

非営利的な検索エンジンであるEcosia(エコシア)は、ユーザーの検索結果に対して得られる広告収入の一部を、再生可能エネルギー分野のスタートアップ企業に提供することを始めた。

これは、Ecosiaが気候変動に注力するスタートアップ企業を支援するために、2021年立ち上げた3億5千万ユーロ(約456億円)の「WorldFund(ワールドファンド)」に追加されるものだ。

Ecosiaは、検索による広告収益で植林のための資金を寄付する活動も続けている(この活動は、Ecosiaの活動として最もよく知られている)。しかし、ベルリンを拠点とするこの検索エンジンは、ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされたエネルギー危機を受け、グリーンエネルギーへの投資に「継続的に取り組む」ことにしたと語っている。

その最初の投資対象はドイツに焦点を当てている。特にロシアからのガス購入に依存しているドイツは、その経済がウクライナ危機の影響を大きく受けていることを意味する。

この戦争はすでに、世界に化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を加速させる新たな原動力を生み出している。気候危機に経済危機が重なったことで、再生可能エネルギーへの需要が急増する可能性がある。

しかし、化石燃料の利権者たちは、グリーンエネルギーへの急速な移行を阻止するため、すぐに反論を展開し、西側諸国が石油やガスの利用を進め、地球上の生命をより早く焼き尽くしてしまうように、ロビー活動を行っている。つまり、投資家が再生可能エネルギーに小切手を切ることに急ぐ理由には事欠かないというわけだ。

Ecosiaは、スタートアップ企業や自然エネルギーの取り組みに資金を提供するため、まずは2700万ユーロ(約35億円)を用意したという。その初期の投資の対象となるのは、ベルリンのスタートアップ企業であるZolar(ゾーラー)の供給ネットワークだ。Zolarは太陽光発電システムの設置を希望する顧客と、地域の計画・設置事業者を結びつけるプラットフォームで、ドイツ中の家庭へグリーンエネルギーを普及させることに貢献している。

Ecosiaは、Zolarの地域ソーラー販売ネットワークを通じて、小型ソーラーシステムにすでに2000万ユーロ(約26億円)を投資したと述べている。同時に、ドイツ全域でその他の再生可能エネルギープロジェクトにも投資を行っているという。

「現時点では、我々はドイツ全域の再生可能エネルギープロジェクトを支援しています。再生可能エネルギーへのさらなる投資は、Ecosiaが地域自然エネルギープロジェクトや起業家からの提案を評価した上で、他の国でも行われる可能性があります」と、広報担当者は筆者に語った。

Ecosiaのグリーンエネルギー投資の目標は、より多くの企業が再生可能エネルギーに投資することを促し、化石燃料を地中に埋めたままにしておくことがかつてないほど急務となっている今、再生可能エネルギーへの移行を加速させることであると、広報担当者は付け加えた。

Ecosiaの広報担当者は「再生可能エネルギーへの投資を、気候変動に留まらない規模に拡大したいと考え、助言を求めている企業や、欧州の化石燃料への依存度を下げるという意味で変化をもたらすグリーンエネルギーのアイデアを持つ起業家やコミュニティのプロジェクトリーダーは、当社のエネルギーチームに連絡してください」と述べ、最高執行責任者のWolfgang Oels(ウルフガング・オールズ)氏がこの取り組みを指揮していることを強調した。

Ecosiaは、検索による広告収入の投資先をさらに多様化し、将来的には再生可能農業も視野に入れることを示唆している。ただし、現時点では、グリーンエネルギープロジェクトに重点を置いていることは変わらない。

植林と再生可能エネルギーへの投資をどのように分配するかという質問に対して、Ecosiaは、エネルギー資金は応募者の能力次第であるため、正式な分配は行わない、つまり収益の分配は毎月ケースバイケースで決定されると答えた。

広報担当者によれば、Ecosiaは月次の財務報告書で「いつ、どのように」投資を行うか、利益の分配を公表するという(これは従来からの植林への寄付も同じだ)。

幅広い気候変動技術に注力し、資金調達を希望するスタートアップ企業は、Ecosiaの創業者であるChristian Kroll(クリスチャン・クロール)氏がベンチャー・パートナーを務めるWorldFundに売り込むことをお勧めしたい。これまでWorldFundは、植物由来ステーキをてがけるスタートアップ企業のJuicy Marbles(ジューシー・マーブルズ)や、植林のためのフィンテック企業であるTreeCard(ツリーカード)、カカオを使わないチョコレート代替品を作るQoa(コア)などに出資してきた。

画像クレジット:Ecosia

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

欧州のスタートアップによるウクライナ難民支援状況

ベルリンに本社を置くバッテリー交換のスタートアップSwobbeeの創業者でCEOのThomas Duscha(トーマス・ダーシャ)氏は、3月初旬にポーランドにいる家族を訪ねた。そこでウクライナ危機に接し、それが行動を起こすきっかけとなった。

「数週間前まで妻と生まれたばかりの子どもと一緒にポーランドにいたのですが、いつもと変わらない様子だったのに、突然、ブラックホークのヘリコプターが飛んできて。大変なことになっているんです」とダーシャ氏は話した。「何かしなければと、すぐに決心しました」。

ロシアがウクライナへの侵攻を始めてから数週間経つが、国連難民機関の追跡調査によると、米国時間3月15日時点で300万人超のウクライナ人が国外に逃れた。うち180万人超がポーランドに向かった。ベルリンはポーランドとの国境に近いため、ベルリンのスタートアップをはじめ多くの人々が技術に裏打ちされた草の根的な活動を始め、物資の提供、国境を越える移送、難民のための仕事と家の確保に取り組んでいる。

ダーシャ氏は、LinkedInへの投稿で、ベルリンのテックコミュニティに行動を呼びかけることから始めた。

3月3日の投稿には「SwobbeeはモバイルエネルギーとVodafone Gigacubeを提供し、人々が愛する人と確実に連絡が取れるようにします」と書かれている。「3月11日には、私の故郷であるトマシュフ・ルベルスキへ緊急物資を支援者と共に車で届けに行きます。状況が刻々と変化する中で、我々は市長とよくつながっています。市長のチームはどこをどのように支援すればよいかを熟知しています」

ダーシャ氏はフォロワーに、ベビーフード、缶詰、おむつ、寝袋、救急用品、生理用品、薬、パワーバンク、懐中電灯、電池などの寄付を求めた。そして、ベルリンのモビリティやスタートアップシーンで活躍する多くの経営者や創業者、投資家たちをタグ付けした。

「タグをつけたからには逃げられない。彼らは助けが必要だ」と、ダーシャ氏がある投稿でTier Mobilityの幹部をタグ付けしたところ、Tierには10トンの物資があるが運送業者がいないとすぐに返事が来たという。「その5分後には、解決策が見つかったのです」。

Swobbeeは、国境に送る物資を積んだバンを提供するために、都市部の物流に特化したeモビリティ企業のOnomotionや、最近GoTo Globalに買収されたeモペットシェアリング企業のEmmyなどのスタートアップの協力を得ることができた。国境で物資を降ろし、ウクライナの難民をベルリンに連れ帰ろう、と一部の物流顧客から声をかけられさえした。

ポーランドのウクライナ難民に物資を届けるベルリンのスタートアップのボランティアたち(画像クレジット:トーマス・ダーシャ氏[SwobbeeのCEOで共同創業者])

3月11日金曜日、約30人が乗り込んだ6台のバンの車列には5000個のヘッドランプ、2000個のパワーバンク、その他基本的な日用品が積み込まれ、ウクライナ国境に届けられた。その際、近くにあるキャビン付きのダーシャ氏の家族の敷地がベースキャンプになったと同氏は話した。

「まず孤児院を訪れ、いくらかの物資を置いてから、国境近くで電力供給が不足しているので助けてほしいと頼まれた都市に行き、クリミアに直接持ち込まれ、現在キエフにある電源バッグやバッテリーなども置いてきました」と同氏は述べた。「翌日、私たちの半分はドイツに戻り、国境で人々を拾いました。ポーランドの東部はすでにかなり混雑していて、そこで人々を受け入れる能力は限られています」

ダーシャ氏によると、自身とベルリンのテックコミュニティはLinkedIn、Facebook、WhatsApp、Telegramといった主要通信プラットフォームの様々なチャットルームを使って、国境を越えた物資や人の輸送を調整している。また、自身と身近にいる誰もが自分の家でウクライナからの避難民を受け入れているという。

ダーシャ氏のクラウドファンディングへの寄付はこちらからできる。

「これほどの連帯感を見たのは初めてです」とダーシャ氏は話す。「戦争中でなければ、EU(欧州連合)に起こった最高の出来事と言えるでしょう。新型コロナウイルス感染症やナショナリズムの影響によって分裂していましたが、今我々は結束しています。私がこの地球に生まれてから、一丸となったEUは見たことがありません」

ダーシャ氏とSwobbeeは、現地で難民に物資を届ける、難民を輸送する、難民のために家や仕事を見つける、資金を募る、サイバー攻撃や偽情報と戦っている、より広範な欧州のスタートアップエコシステムの一例に過ぎない。

このリストは定期的に更新される。最新情報を再度チェックしてほしい。

現地での物資調達

大規模な商業荷主と中小の貨物輸送会社をつなぐプラットフォームのSennderはベルリンで物資の寄付を集めてウクライナ国境まで輸送すべく、他のスタートアップとチームを組んだ

スタートアップのViceroy GroupとPopupのチームによって設立された慈善団体Commerce4goodは、高齢者への食料、民間人への無線機器、生産者への布地など必要な物資を迅速に提供するために、ウクライナにサプライヤーと現場ボランティアのネットワークを構築した。寄付はこちらから。

Uberはポーランドの多くの都市で、赤十字の拠点に物資を届けるために無料で利用できるコードのリストを公開した。このプロモーションの有効期限は3月6日で、最大7ドル(約830円)を1回無料で利用できるというものだった。このプロモーションを継続するのか、するとしたらいつまで続けるか、TechCrunchはUberに問い合わせたが、返事はまだない。

10分で食料品を配達するベルリン拠点Gorillasは、ベルリンの倉庫から必要なアイテムを集めて寄付し、国境に物資を届けるべくWolne Miejsce(ウォルネ・ミエジスツェ)財団に送っている。顧客はGorillasのアプリで「ヘルプボックス」を1つ注文して国境に送ることができる。

La French Tech missionFrance DigitaleThe Galion Projectの連合はLeetchiでクラウドファンディングを開始し、ウクライナ難民への物資を調達するための資金集めを行っている。

ウクライナからの難民の輸送

避難した人々が自立した生活を取り戻せるよう持続可能なデジタルソリューションを生み出している英国拠点の非営利団体Techfugeesは、ウクライナの難民に輸送や移住の選択肢など多くのリソースを提供するために通常の倍取り組んでいる(免責事項:TechCrunchの編集長Mike ButcherはTechfugeesの共同設立者で社長でもある)。 寄付はこちらから。

同団体は、インバウンドのリードコンバージョンとスケジュール管理アプリChili Piperを手がける米国の財団Citizens of Our Planetと連携し、ウクライナから人々を脱出させる方法、ウクライナ国内から国境までの輸送手段、難民を受け入れるすべての周辺国の手続き、利用できる宿泊施設などをまとめた広範囲なドキュメントを作成した

オンデマンドの配車サービス、クルマやスクーターのシェアリング、レストランや食料品店の配達を行うエストニアのスタートアップで社名を冠したアプリBoltは、ウクライナでのすべてのサービス手数料をゼロにすると発表した。また、ポーランドとスロバキアのドライバーには、ウクライナ国境での乗車を受け入れ、難民の輸送を支援するようインセンティブを与えている。さらにBoltは欧州での各注文の5%を赤十字などのNGOに寄付していて、来週中に最大500万ユーロ(約6億5000万円)を寄付する予定だ。

企業価値30億ドル(約3550億円)のドイツの交通スタートアップFlixMobility傘下のバス輸送サービスFlixbusは、国籍を問わず難民に無料チケットを提供している。同社は、ポーランドのプシェミシルやジェシェフ、あるいはルーマニアのブカレストからウクライナとポーランドの国境にやってくる人々のために、追加の接続路を設けた。同社はまた、自社の車両やパートナーとの連携により、難民のために物資を輸送している。

Uberはポーランドとウクライナの国境で無料乗車を提供している。「POMOCLUBELSKIE」または「POMOCPODKARPACKIE」というコードでUber Aidを選択すると、国境とルブリンまたはジェシェフの間で乗車できる。このコードではそれぞれ70ドル(約8300円)までの無料乗車が可能だ。注意事項にはコードは3月12日まで有効と記載されているが、UberはTechCrunchにこのキャンペーンはまだ継続中だと述べた。

ウクライナ人のソフトウェア開発者Andrii Taganskyi(アンドリイ・タガンスキー)氏とEugene Gusarov(ユージーン・グサロフ)氏は、最悪の紛争地域から逃れる民間人のために相乗りと乗車を手配しようと、相乗りアプリのBlaBlaCarとウクライナのUberであるUklonを説得した。2人はBlaBlaCarに手数料をなくしてもらい、ウクライナ全土の1万7000人のドライバーにテキストを送信して、人々を安全に移動させるための支援を呼びかけてもらった。

「最初の3日間だけで、BlaBlaCarは5万人以上をウクライナ西部の安全な場所に輸送しました」とタガンスキー氏はインディペンデント紙に語った。その後、同氏とグサロフ氏はウクライナの保険会社を巻き込んで、7万人以上のバス所有者にBlaBlaCarへの参加を求めるテキストを送ったと述べた。

難民のための住宅

パリのスタートアップキャンパスであるStation Fは、フランスに避難してきたウクライナ人起業家に対し、Station Fの起業家向け住居Flatmatesで宿泊を無料で提供している

ドイツのユーザーが家具付きの仮住まいを探すためのプラットフォームWunderflatsは、ウクライナ難民の仮住まい探しを支援している。価格設定は住居を提供する側の裁量によるため、Wunderflatsは無料の宿泊施設を約束することはできないが、同社によると、支援に登録した家主の3分の2は無償提供を申し出ているという。

空き部屋を抱えている人は、ウクライナ難民をさまざまな方法で支援する新しいプラットフォームWe Help Ukraineに登録することができる。テック企業から慈善団体、広告代理店まで、実に多様な団体が設立したこのプラットフォームは、避難しているウクライナ人が経済面、医療面、心理面でのサポートを得たり、難民資格を取得したり、仕事を見つけたり、現地の語学教室に通ったりすることも支援している。

EU4UAは、難民とシェルターを提供できる人をマッチングするプラットフォームとして、パリに拠点を置くHRTechスタートアップJobgetherの共同創業者たちによって結成された。

ウクライナ国内では、テックに精通した国民が、難民のためのAirbnbやCouchsurfingと称されるPrykhystokなどのウェブサイトを立ち上げた。Prykhystokは、独創的な考えを持つウクライナの国会議員Halyna Yanchenko(ガリーナ・ヤンチェンコ)氏が考案したものだ。インディペンデント紙によると、母親であるヤンチェンコ氏は砲撃を受けているキエフから動けず、安全のために子ども2人を西部に送り、子どもと離れ離れになっているという。このウェブサイトには現在、全国5000以上の避難所が掲載されているとヤンチェンコ氏は話す。

また、Ukraine Nowというウェブサイトも近々立ち上げられ、出国途中にウクライナ国内で滞在できる住宅の情報をクラウドソーシングするオンライン・シェルター・サービスを提供する予定だ

テック系スタートアップのCasafariによるものを含め、Shelter UKRTakecareBnBIcanhelp.hostUkraineTakeShelter.comなど、他にも多くの住宅に関する取り組みが展開されている。しかし、宿泊施設のホストの身元を確認する検証済みの方法を打ち出しているサイトはほとんどないため、慎重に行動することを読者にはお勧めする。

ウクライナ人のためのテック職

UA Talentsは、故郷を離れざるを得なくなったウクライナ人が欧州連合の雇用主を見つけるのをサポートするために生まれた雇用プラットフォームだ。設立メンバーは、海外に住むウクライナ出身のIT起業家や専門家で、難民とその家族の生活を支援したいという思いからボランティアで活動している。

Jobs4Ukraineは、ウクライナ人の職探しを支援するために最近設立されたプラットフォームだ。このサイトには、すでに数十社の企業が潜在的雇用主として登録している。また、ソフトウェア開発からマーケティング、翻訳に至るまで、スキルシェアリングに協力するボランティアを希望する人も登録することができる。

また、高度な技術を持つウクライナ人の労働力活用を目指すプラットフォームとしてRemote Ukraineがある。高度な訓練を受けたテック人材をEUの企業に紹介している。単発の仕事から短期契約、フルタイムのものまで何でもある。このサイトでは、プロセスをシームレスにするために支払いも行っている。Techfugeesとのジョイントベンチャーだ。

Techfugeesは、英国や欧州のVCと協力して、移住中に家族を支えるためにリモートで働くことができる避難民を支援できるような資金をプールしている。Tech Nation U.K.および特定の英国VCとオンラインプラットフォームを立ち上げ、合理的なプロセスを形成する予定だ。Techfugeesはまた、欧州のVCと集団を形成している。

IT軍団

NGOが人道支援をこれまで以上にうまく調整できるよう、システムの近代化とデジタル化を支援する取り組みがいくつか始まった。Tech to the Rescueは、この目的のために非営利団体と技術系企業をマッチングさせるプラットフォームで、最近#TechForUkraineキャンペーンを開始した。脆弱なセキュリティシステム、時代遅れのソフトウェア、ユーザーフレンドリーなUIやUXの欠如といった問題を抱えるウクライナの慈善団体を、テックに精通した人が支援することを目的としている。

Code for Romaniaは、市民社会と国家のためにルーマニアのデジタル化を目指すボランティア組織で、全力を戦争タスクフォースに注ぐために2月24日に通常の活動を停止した。この組織と2700人超のボランティアのコミュニティは、ウクライナ危機に対するデジタルソリューションのエコシステムを考案するために協力し合っている。ルーマニアの緊急事態省と協力して、リソースやボランティアを管理するためのツールを提供し、避難民のための重要な情報を掲載したガイドを作成した。

Code for Romaniaのタスクフォースは、難民を安全な宿泊施設に誘導し、緊急支援を提供するソリューションにも取り組んでいる。

Techfugeesは、、現在の紛争地域と安全な地域をマッピングするオープンソースの迅速対応サイトを開発し、車で出国する人のための燃料マップも作成した。

誤情報、フェイクニュース、ディープフェイクと戦うAI駆動型プラットフォームCREOpointは、ウクライナでの戦争に関連して、ロシアのプロパガンダマシンなどから出回る偽データに対抗するために活動している。

スタートアップではないが、GoogleウクライナのAndroidスマホに空襲警報を送信している

それでも必要なものは?

「スペインやドイツ、オランダなど、ウクライナの人々が避難する国では、セラピストやセラピー能力、トラウマに対処できる人材が必要です」とダーシャ氏は話す。「土曜日に、生後2カ月の赤ちゃんと6歳と10歳の女の子を連れて到着した男性に会いました。彼らはキエフから逃げてきたのですが、ロシア軍に攻撃され、男性の妻は車の中で撃たれて死亡しました。男性は子供たちと高速道路の脇に妻を埋葬しなければなりませんでした」

It’s Complicatedのようなセラピープラットフォームは、ウクライナでの戦争の影響を直接受けた人に、無料のオンラインカウンセリングを提供している。一部のイスラエルのヘルステック企業も、ウクライナ人の心のケアに協力するためにチームを組んでいる。心の健康をサポートするAI駆動型のパーソナルコーチKai、特別なニーズや学習・感情面での困難を抱える学生を支援するプラットフォームAmplio Learning、デジタル医療サービス企業Femiなどだ。

ロシア軍に攻撃されている都市から逃げ出すウクライナ人が増える中、住宅も非常に重要になる。3月14日には、2週間前にロシア軍に包囲されたマリウポル市から、初めて民間人が出発することができた。ウクライナ当局は、市内に閉じ込められた市民が食料や医薬品の配送を断たれ、ロシアからの執拗な砲撃が人々の脱出を妨げていることから、同市での人道的大惨事を警告している。戦闘が始まって以来、マリウポルでは2000人以上が死亡した

多くの企業がNGOや政府と協力して支援を行っているが、次の大きなステップはまさに需要と供給の調整、構造、最適化だとダーシャ氏は話す。資源をより集中的に管理する必要があり、そのためには民間企業の協力が必要だ。

ウクライナ難民を支援している他のスタートアップの情報を持っている人、またはこの記事に掲載されているいずれかのソースとのつながりを望む人は、rebecca.techcrunch@gmail.comまたはmike@techcrunch.comまで連絡を。

画像クレジット: Techfugees

[原文へ]

(文:Rebecca Bellan、Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

ドイツがカスペルスキーの利用を控えるよう警告、ロシアの侵攻で「相当程度」のサイバーリスク

ドイツ連邦情報セキュリティ局(BSI)は、ロシアによるウクライナでの戦争が続く中、カスペルスキー・アンチウイルスソフトウェアがサイバースパイに利用されたり、サイバー攻撃を仕掛ける恐れがあるとして、さまざまな組織に対して警告を発した。

当局はカスペルスキーの使用を明確に禁止したわけではないが、ドイツのさまざまな組織に対し、モスクワに本社を置く同社製の製品を、ロシア以外のベンダーの代替ソフトウェアに変えるよう促した。また、ロシアのウクライナにおける軍事・情報活動や、その欧州、NATO、ドイツへの脅威は「IT攻撃が成功するリスクが相当程度ある」ことを意味していると警鐘を鳴らしている。

「ロシアのITメーカーは、自ら攻撃的な作戦を実行したり、意に反して標的とするシステムへの攻撃を強いられたり、それとは知らずにサイバー作戦の犠牲者としてスパイされたり、その会社の顧客に対する攻撃の道具として悪用される可能性がある」とBSIは声明で述べた。また、カスペルスキーなどのアンチウイルスソフトはシステムに深くアクセスするため、そのメーカーは自社のサーバーへの接続を暗号化し、検証不可能な状態で恒久的に維持するはずだと説明した。「セキュリティに特別な関心を持つ企業や当局、重要なインフラの運営者は特に危険にさらされている」とも述べている。

BSIは、攻撃が成功した場合、消費者が「最後の標的」になる可能性が高いものの「巻き添え」被害や波及的に被害者になる可能性もあると付け加えた。

BSIはこの警告を「起こりうる危険に対する認識を高めることのみが目的」だとしたが、すでにドイツの組織、例えばサッカークラブのEintracht Frankfurt(アイントラハト・フランクフルト)などが、カスペルスキーとの関係を断つに至っている。「私たちはカスペルスキーの経営陣に対し、スポンサー契約を直ちに終了することを通知しました」とクラブの広報担当社であるAxel Hellmann(アクセル・ヘルマン)氏はプレスリリースで述べた。「我々はこの展開を非常に残念に思っています」。

イタリアのコンピュータセキュリティインシデント対応チーム(CSIRT)も、カスペルスキーについて明確には言及していないが、ロシア企業やロシアとつながりのある企業から提供されているテクノロジーを緊急にリスク評価するようさまざまな組織に呼びかけている

カスペルスキーは、BSIの決定は、同社製品の技術的な評価に基づくものではなく、政治的な理由に基づくものだと考えていると述べた。

カスペルスキーの広報担当者であるFrancesco Tius(フランチェスコ・ティウス)氏はTechCrunchに対し「私たちは、パートナーや顧客に対して、製品の品質と完全性を保証し続けるとともに、BSIの決定について明らかにし、同社や他の規制当局の懸念に対応するための方法を模索するつもりです」と述べている。「カスペルスキーは民間のグローバル・サイバーセキュリティ企業であり、民間企業として、ロシアやその他の政府とは関係がありません」。

「私たちは、平和的な対話が紛争を解決する唯一の可能な手段であると信じています。戦争は誰にとっても良いものではありません」と同社は付け加えた。

この声明は、同社のCEOであるEugene Kaspersky(ユージン・カスペルスキー)氏の同様のコメントに続くものだ。同氏は2022年3月初め「歩み寄り」につながる交渉を歓迎するとツイートし、怒りの反応を引き起こした。ロシアでは最近、ウクライナにおけるロシア政府の軍事作戦を「戦争」または「侵略」と呼ぶことをジャーナリストに禁じる法律が施行されたが、これがロシアに拠点を置く企業に適用されるかどうかは不明だ。

カスペルスキーとロシアとのつながりは以前から知られているが、長い間論争の種となってきた。トランプ政権は2017年、同社とロシア政府とのつながりが疑われることを懸念して、政府機関がカスペルスキーのソフトウェアを使用することを禁止した。翌年には欧州議会が、同社とロシア情報機関とのつながりが疑われることから、同社のソフトウェアを「悪質」と分類する決議を採択した

画像クレジット:Andreas Rentz / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

HackerOneがウクライナのハッカーへのバグ報奨金支払いを停止

ウクライナのハッカーやセキュリティ研究者によると、バグ報奨金制度プラットフォームのHackerOne(ハッカーワン)は、場合によっては数千ドル(数十万円)にもなるバグ発見・報告の報酬金を保留し、ハッカーが報酬を引き出せないようにしているという。

HackerOneのアカウントを持つ複数のハッカーや研究者は、2022年2月末のロシアのウクライナ侵攻にともなう経済制裁と輸出規制を理由に、HackerOneが支払いをブロックしているが、自分たちには制裁は適用されないとツイートしている。

HackerOneのサポート担当者がセキュリティ研究者のVladimir Metnew(ウラジミール・メットニュー)氏に送ったメールには「ウクライナ、ロシア、ベラルーシにお住まいの場合、すべての通信と取引(スワッグの発送を含む)は当分の間、一時停止されます」とあり、メットニュー氏はその文面をツイートしている。ウクライナ人だが現在は欧州連合内にいるメットニュー氏はアカウントが凍結されているとTechCrunchに語った。「ウクライナから登録した人全員への支払いをブロックしたのだと思います」と同氏は話した。

バグ報奨金プログラムを展開するHackerOneは、セキュリティバグを発見・報告するハッカーやセキュリティ研究者と、製品やサービスの修正を依頼する企業の仲介を行っている。2020年にHackerOneは1億700万ドル(約126億円)超のバグ発見報酬金を研究者に支払い、彼らの多くはその収益を収入源としている。

ウクライナに残っている他のハッカーや研究者からも「口座が凍結された」「資金を引き出せない」といった同様の状況が報告されている。発見したバグTechCrunch定期的に報じられているウクライナのセキュリティ研究者Bob Diachenko(ボブ・ディアチェンコ)氏は、2月以降の収益3000ドル(約35万円)が現在保留されているとツイートで述べた。

HackerOneからの明白な公式連絡がなく、ウクライナ人全員への支払いを止める動きは怒りと混乱をもって受け止められている。HackerOneがどのような制裁や輸出規制を指しているのかは不明だ。米国、欧州連合、その他いくつかの同盟国は、ロシアとベラルーシに対して厳しい経済制裁を科し、現在分離主義のグループが保持しているウクライナ東部のドンバス地方や、2014年にロシアに併合されたクリミアに対する禁輸措置も行っている。しかし、ウクライナはそうした制裁の対象ではない。

影響を受けているハンドルネームkazan71pのあるウクライナ人ハッカーは「クリミアやドンバス出身ではない【略】あなたはすべてのウクライナ人のアカウントを停止し、国全体を制裁下に置いただけだ」とHackerOneに言及したツイートで述べた。

HackerOneは、ウクライナのハッカーや研究者への支払いをブロックした理由や、適用されると考えている特定の制裁を引用していない。TechCrunchが本稿公開の数時間前にHackerOneに連絡を取ったところ、同社の広報担当者はすぐにコメントしたり質問に答えたりすることはできなかった。詳細が分かり次第、更新する。

アカウント凍結は、HackerOneのCEOであるMarten Mickos(マーチン・ミコス)氏が、制裁対象国、特にロシアやベラルーシに住むハッカーの収益を慈善事業に「再ルート」すると述べたた頃に実施されたようだ。同氏はツイートのスレッドでそのように発言し、そのスレッドはすでに削除されている。

xnwupというハンドルネームのあるハッカーは、HackerOneが2万5000ドル(約295万円)の収益を「私がベラルーシ市民だから」奪っていると述べた。ウクライナへの支持を表明しながらも、ベラルーシ政権に反対する発言で安全が脅かされることを恐れたこのハッカーは、自分たちの収益は「長年の努力の結果」だと語った。

ミコス氏は新しいツイートスレッドで資金のルート変更についてのコメントを撤回し、今度はハッカーの許可を得た場合にのみハッカーの報酬を寄付することを申し出た。

画像クレジット:Alexandre Dulaunoy / Flickr

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロシア、脅迫どおりInstagramのアクセスをブロック

ロシアは現地時間3月14日、Meta(メタ)傘下のInstagram(インスタグラム)をブロックするという脅迫を実行し、同国のユーザー数千万人へのアクセスを遮断した。

ロシアではInstagramは人気だ。Sensor Towerのデータによると、Metaのアプリの中で、ユビキタスなメッセージングサービスWhatsApp(ワッツアップ)に次いで2番目に人気がある。2014年以降、ロシアのApp StoreとGoogle Playで合わせて1億6600万回インストールされていて、Facebook(フェイスブック)の3倍人気がある。

ロシア政府は48時間の「移行期間」を経てInstagramへのアクセスを制限すると同国の検閲機関Roskomnadzorが発表した後、InstagramのトップAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏は同国の8000万人に影響を与えるロシアの行動を非難した。

「ご存知のように、Meta Platforms Inc.は3月11日、同社のソーシャルネットワークFacebookとInstagramにロシア市民に対する暴力の呼びかけを含む情報の投稿を許可するという、前例のない決定を下しました」とRoskomnadzorは3月11日のブログ記事で、Metaがロシア人に対する暴力を助長したと非難している。

ロイターは先週、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえてMetaがコンテンツポリシーを密かに調整し、ウクライナ国内でのロシア兵に対する暴力の呼びかけを認めていると報じた

同社のグローバル問題担当のNick Clegg(ニック・クレッグ)社長は、このポリシーの変更を「自衛の表現としての言論に対する人々の権利を守る」ための一時的な変更と位置づけ、これを擁護した

「事実、もし私たちが何の調整もなしに標準的なコンテンツポリシーを適用した場合、私たちは今、侵攻する軍に対する抵抗と怒りを表現する普通のウクライナ人のコンテンツを削除することになり、それは当然受け入れ難いとみなされるでしょう」とクレッグ氏は書いている。

ロシア政府によるInstagramの制限は厳しいように聞こえるが、経験豊富なユーザーはブロックされた同アプリにアクセスするためにVPNとTorを使って自分の位置情報を隠す方法を見つけることができる。Twitter(ツイッター)は先週、ロシアの規制を考慮して独自の検閲回避策を開始し、ユーザーを専用Torバージョンに誘導している。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi