Snapが企業のAR開発を支援するスタジオを公開

米国時間10月19日、SnapはブランドがARの広告やエクスペリエンスを開発する支援をするグローバルなクリエイティブスタジオの公開を発表した。この新しいスタジオはArcadiaという名称で、ウェブプラットフォームとアプリベースのAR環境にわたって使用できるエクスペリエンスを開発する企業を支援することを目的としている。

このスタジオはブランドおよびクリエイターと連携してSnapchatのミレニアルやZ世代の利用者に働きかけていく。ArcadiaはすでにVerizon、WWE、Shake Shack、P&G Beautyなど多くの企業と連携している。

ArcadiaはSnapの1部門として活動し、独立した運営で自由にクリエイティブな活動をして、Snapchatだけでなく他のソーシャルメディアプラットフォームでも使えるARエクスペリエンスを開発するブランドを支援する。Snapは、Arcadiaはブランドとクリエイターのゴールに応じてさまざまなサービスを提供すると説明している。例えばあるブランドのARプロダクションをすべて請け負うこともできるし、ワークショップやトレンドレポートの形でAR戦略に関する専門性をクライアントに提供することもできる。

Snapのクリエイティブ戦略担当グローバル責任者であるJeff Miller(ジェフ・ミラー)氏は「Arcadiaは、巧みな技術、テクノロジー、カスタマーエクスペリエンスに根ざした世界有数のARエクスペリエンスを短時間で開発する価値を理解しているブランドや代理店に、魅力あるソリューションをお届けします。ArcadiaをスタートすることでSnap Inc.はこれまで以上にARのエコシステムに投資し、パートナーやクリエイター、ツールの支えを受けて、世界中の企業にフルファネルの結果をもたらします」と述べた。

Snapは近年、Snapchat全体でAR機能をさまざまな方法で活用している。最初に人気となったのはユーザーの写真やビデオに犬の耳などを重ねるフィルタ機能だった。その後、この機能を拡張して動くBitmojiキャラクターをビデオに追加できるようにした。

最近では、デベロッパー向けツールとAR技術プラットフォームのLens Studioに関するアップデートを発表した。その多くはショッピングをSnapchatのエクスペリエンスに深く取り込むことを主眼にしている。同社は2021年5月にARグラス「Spectacles」の新世代バージョンも発表した。この第4世代のARグラスは1回の充電で30分間動作し、デュアル3D導波路ディスプレイを搭載し、視野角は26.3度だ。

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画像クレジット:Snap

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(文:Aisha Malik、翻訳:Kaori Koyama)

企業向け動画配信クラウド・動画SNSの市場データ分析を手がけるエビリーが7億円調達、開発・人材採用・販促活動を強化

企業向け動画配信クラウドのエビリーが総額7億円を調達、開発・人材採用・販売促進活動を強化

企業向けクラウド型動画配信システム「millvi」(ミルビィ)と動画SNSの市場データ分析サービス「kamui tracker」(カムイ トラッカー)を運営するエビリーは10月20日、第三者割当増資と金融機関からの融資による総額7億円の資金調達の実施を発表した。引受先は、大和企業投資、地域創生ソリューション、西武しんきんキャピタル、みずほキャピタル。調達した資金は、動画プロダクトの開発強化、マーケティング強化、開発・幹部をはじめとする全部門での人材採用の強化にあてる。

累計700社以上の利用実績を持つmillviは、企業内でのコミュニケーションや教育において動画の活用が進んだことで新規契約数が前年比の約380%増。動画によるプロモーション活動をサポートするkamui trackerは、YouTuber、広告主、広告代理店など利用者数は2万人以上。YouTubeのチャンネル運用や市場トレンドの分析、YouTuberのキャスティングやタイアップなどに活かされている。

エビリーは「動画の活用で企業のDX推進を支援する」をミッションにかかげ、今後はデータに基づいた動画制作から配信までをワンストップで提供することを目指す。顧客の動画マーケティング領域、インナーコミュニケーション領域の課題解決を支援するためのソリューションをより強化したいという。

グーグルがモバイルアプリで検索結果の連続スクロール機能を導入、まずは米国で

米国時間10月14日、Google(グーグル)はモバイルデバイスでの検索の動作をまず米国で変更することを発表した。現在はスマートフォンで検索結果の最後までスクロールすると、タップして次のページを表示する必要がある。今後は検索結果の続きが自動で読み込まれ、下へスクロールしていけば他の情報を続けて見られるようになる。

この変更は当面、米国で英語で検索した際にモバイルのウェブで動作し、iOSとAndroidのGoogleアプリにも対応する。徐々に導入されるため、はじめのうちは検索結果が連続スクロールすることもあれば、しないこともあるようだ。

Googleによれば、多くの人は先頭のいくつかの検索結果から目的の情報を見つけるが、さらに情報を求める人は検索結果を4ページブラウズする傾向がある。そこで同社は変更を加えることにしたとTechCrunchに語った。多くの情報を求める人はページ下部の「もっと見る」をタップする必要がなくなり、これまでよりもシームレスにベージを行き来できる。

Googleは、単に答えを見つけるのではなく特定のトピックに関してアイデアやヒントを求めて検索する人にとって特に役に立つだろうと述べている。

この設計には、Googleが言及していない利点が他にもある。

まず、連続してスクロールするなら、検索のどこかの時点でストップしてからリンクをタップして移動する必要がなくなる。この動作はデスクトップ時代のウェブ検索の名残りだ。この「クリックして詳しく」というタイプの設計は、例えばFacebookのニュースフィードのようにアプリ内のフィードが延々スクロールして新しい情報が表示される世界では時代遅れだと感じる。また、連続スクロールによって、ユーザーはこれまでよりも長い時間アプリを見ることになり、広告が多く目に入るかもしれない。

連続スクロールにすれば、Googleは広告をこれまでより柔軟に配置できる可能性がある。検索結果ページの上部に限られていた広告を、下ヘスクロールするにつれて検索結果の途中に挿入することができるだろう。SNSのフィードの途中に広告が表示されるのと同様だ。

Googleは今回の変更にともなう広告の計画を詳しくは明らかにしなかったが、同社はTechCrunchに対し、米国(英語)のモバイルの検索結果でページの上部と下部の間に表示されるテキスト広告の数を再配置する予定だと語った。テキスト広告は2ページ目以降の上部に表示され、各ページの下部に表示されるテキスト広告は減る。しかし現時点では、ショッピングと近隣の広告の表示には変更はないものと思われる。

また、Google検索は情報のボックス、検索の提案、ショッピング「ビデオ」など他の分類へ移動するボタンなどでごちゃごちゃしてきたため、検索結果の中から適切な項目をタップして進むのが難しい。ユーザーの目を引いてタップさせようとするためにボタン類の色が暗くなるので、さらに難しくなっていた。

今回の変更は、2021年1月にモバイルの検索結果ページをモダンなデザインに変更すると発表したことに続くものだ。1月の変更の主眼は検索結果を見やすくすることで、そのために余白を増やして一部には色を付け、フォント(実はGoogle独自のフォント)を大きく太くし、丸くて影が付けられていたボックスをシンプルな直線にするなどの変更が加えられていた。

ただ、その時の変更は主に検索結果の表示に関することで、動作の変更ではなかった。

Googleによれば、連続スクロールは米国で公開が開始されている。

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画像クレジット:Google

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

ツイッターがユーザーにより多くの広告を見せるための方法を検討

Twitter(ツイッター)は、同社のプラットフォーム上で新しい広告フォーマットと配置をテストする予定だ。米国時間10月13日、同社の収益プロダクトリーダーであるBruce Falck(ブルース・ファルク)氏は、Twitterがモバイル端末向けに、会話のスレッド内で1、3、8回目の返信の後に広告を表示し始めると述べた。同社はこの変更が永続的なものになるかどうかは明言しなかったが、最も理に適った挿入ポイントとレイアウトを決定するために、この方式で実験を行うという。また、Twitterは、広告の表示をクリエイターに強制するのではなく、クリエイターが選択できるようにすることも検討していると述べている。その場合、クリエイターにも広告収益の一部が還元されることになるという。

Twitterはこれまで、ユーザー数を大幅に増やすことに苦労してきた。そのため、既存のユーザーから得られる収益を最大限にするために、よりクリエイティブにならざるを得なかった。この1年ほどの間に、オーディオチャットルーム、チケット制イベント、クリエイターツール、サブスクリプション、バーチャルチップなど、さまざまな新プロダクトが次々と登場した。Twitterは、2020年に37億ドル(約4200億円)だった収益を2023年には75億ドル(約8500億円)以上に倍増させ、収益化可能な1日のユーザー数を3億1500万人にするという投資家への約束を果たしたいと考えている。

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ほとんどのあららしいプロダクトが初期段階のテストではあるが、Twitterはまだ大ヒットを飛ばしていない。例えば、第三者機関のデータによると、最近のTwitterの新しいクリエイタープラットフォームSuper Follow(スーパーフォロー)は、米国とカナダで公開されてから2週間で約6000ドル(約68万円)、もしくはそれより少しの多い程度の収益しか得られていない。(他の分析によると9月の17日間で1万2400ドル[約140万円])。どちらの数字が真実に近いかは別にして、クリエイターのサブスクリプションに対する需要がまだ高まっていないことは明らかだ。

関連記事:ツイッターのクリエイター向け機能「スーパーフォロー」、開始から2週間の売上はわずか66万円

一方、Twitterは、新しいプレミアム製品であるTwitter Blue(ツイッターブルー)サブスクリプションを、米国をはじめとする最大の市場にまだ投入していない。このプロダクトには、ユーザーが求める「ツイートの編集」ボタンに近い機能として、誤字脱字をすぐに取り消すことができる「アンドゥ」オプションが含まれている。

しかし、このような新機能が次々と追加されてはいても、Twitterの収益の大半は広告によってもたらされている。Twitterは7月、ウォール街の利益予想を上回る10億5000万ドル(約1190億円)の広告収益を上げた。これは、より良いターゲティングのために2500のトピックカテゴリーを新たに導入し、広告の効果が向上したためと考えられている。

同様に、Twitterは、会話中に表示される広告を、議論されている内容に関連したものにすることを計画している。

Twitterの発表によると、ファルク氏は「私たちは、クリエイターと広告主にとって価値を生み出し、インセンティブを一致させる広告サービスを構築する大きな機会を得たと考えています」と述べている。「今後数カ月間、このフォーマットを試していく中で、このフォーマットがどのように機能するのか、また人々や会話にどのような影響を与えるのかを理解することに集中します。さまざまな頻度、レイアウト、文脈に応じた広告、異なる挿入ポイントなどをテストします。そして、得られた結果を検証し、これを恒久的なものにするかどうかを考えます。私たちは、広告主のためにこの試みを行うことを楽しみにしていますし、Tweetのクリエーターに報酬を与える機会を増やす方法を模索したいと考えています」と付け加えた。

最後の部分は、コンテンツが広告掲載に適した長いスレッドにつながったクリエイターへの収益シェアの提案について言及している。ツイッターでは、ツイートが話題になると、ユーザーはよく画面をスクロールして他のユーザーの反応を読む。これにより、Twitterは、現在提案されているように、スレッドの先頭付近だけでなく、スレッドの下の方にも多くの広告を挿入することができる。しかし、このように話題のツイートをマネタイズすることは、Twitterのコンテンツや文化に影響を与える可能性がある。Twitterはすでに、悪口やジョーク、怒りのツイート、その他の感情的なコンテンツを投稿するような、ある種のパフォーマティブなタイプのユーザーが注目を集める傾向のある場所だ。ツイートの「話題性」をクリエイターの収益に結びつけることは、Twitterが提供したいと主張する、純粋で思慮深い会話からTwitterをさらに遠ざける可能性がある。

しかし、Twitterに多くの広告が表示されることで、それを嫌って広告なしの体験にお金を払う人たちに、Twitterは別のプロダクトを提供できるようになるかもしれない。現在、Twitter Blueは広告ブロック機能を提供していないが、アプリでは、ユーザーがお金を払うことで広告を表示しない方法を提供していることがよくある。この機能は、Twitter Blueにバンドルされるか、あるいは単独で購入できるようになるかもしれない。(念のためにいっておくと、Twitterはこれを検討しているとは述べていない。質問を受けた際、同社は現時点ではその計画の「一部ではない」と答えている)。

必要な場合もあるが、広告の表示は多くの人が好まず、敏感に反応する収益化ツールだ。Twitterは、四半期や年度末になると、タイムライン上に数ツイートごとに広告が表示されるようになり、ユーザーから不満の声があがる傾向にある。この新しい広告に対するユーザーからの激しい反発や、プラットフォーム上での消費者行動への悪影響があれば、Twitterがこのテストを再考する可能性はある。

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しかし、レイアウト、配置、コンテクストターゲティングの正しい方法が確立されれば、収益拡大を目指すTwitterが、この変更を展開していく可能性は高い。すでにTwitterは、広告を掲載するための新しいセクションを提供できるはずだった「stories(ストーリー)」を機能させることに失敗している。storiesは、継続的な投資に見合うだけのユーザーの支持を得られなかった。

そのためTwitterは、広告で収益を上げるための他の方法を模索している。そして、より多くの場所でより多くの広告を表示することが、現在の同社の答えのようだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

グーグルがスマホのスパイアプリを宣伝した「ストーカーウェア」広告を停止

Google(グーグル)は、ユーザーに配偶者の携帯電話をスパイすることを勧めるアプリを宣伝することで、ポリシーに違反した複数の「ストーカーウェア」広告を停止した。

このような消費者向けのスパイウェアアプリは、子どもの通話、メッセージ、アプリ、写真、位置情報などを監視したいと考えている親を対象に、犯罪者から身を守るという名目で販売されていることが多い。しかし、これらのアプリは、端末の所有者の同意を得ずに密かにインストールされるように設計されていることが多く、加害者が配偶者の携帯電話を盗み見るために再利用されている。

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いわゆる「ストーカーウェア」(または「配偶者ウェア」)の使用が増加していることから、近年、業界全体で電話監視アプリの普及に向けた対応が進められている。ウイルス対策メーカーはストーカーウェアの検出を強化し、連邦政府当局は、被害者をさらにセキュリティ上の脅威にさらすスパイウェアメーカーに対して対策を講じている。2020年8月、Googleはユーザーの検索結果に「他人やその活動を許可なく追跡・監視することを明確な目的として 」設計されたアプリを宣伝する広告を掲載することを禁止した。

しかしTechCrunchは、5つのアプリメーカーが先週の時点でもストーカーウェアアプリの広告を出していることを発見した。

「我々は、パートナーを監視するためのスパイウェアを宣伝する広告を許可しません。このポリシーに違反した広告はすぐに削除し、今後も新たな行動を追跡して、悪質な行為者が我々の検知システムを回避しようとするのを防いでいきます」とGoogleのスポークスマンはTechCrunchに語った。

Googleによると、スパイウェアのプロモーションを取り締まる不正な行為を可能にするというポリシーにより、親密なパートナーの監視を宣伝する広告は禁止されているが、そのポリシーが子どもの行動の追跡や、従業員の端末の監視の広告には適用されないことを広報担当者が確認した。このポリシーでは、プライベートな調査サービスも除外しているが、Googleは、アプリが何の目的で使用されているかをどのように判断しているかについては言及していない。

Googleのストーカーウェアに対する取り組みを支持する人々は、このポリシーの施行について懸念を示している。拡大するストーカーウェアの脅威に立ち向かうための企業グループCoalition Against Stalkerware(ストーカーウェア反対連合)の創設メンバーであるMalwarebytes(マルウェアバイツ)社は、2020年、このポリシーは「不完全」であり、ストーカーウェアメーカーが「内部の核となっている技術を変えずに、販売しているものの外観を変えることでルールを回避する」ことを可能にしていると指摘していた。

Googleの広報担当者は、Googleの施行方法の具体的な説明を避けたが、広告がポリシーに違反しているかどうかを判断するために、広告のテキストや画像、製品の宣伝方法、広告をクリックしたときのランディングページなど、さまざまな要素を組み合わせて検討しているという。

TechCrunchは、いくつかのストーカーウェアアプリは、さまざまなテクニックを使って、パートナー監視用の広告アプリとしてGoogleに禁止されるのをうまく回避し、Google広告として承認されていたことを発見した。

あるケースでは、2018年に大きなセキュリティ上の不備があったスパイウェアアプリmSpyが、mSpyのウェブサイトとはまったく別のドメインにあるインタースティシャルのウェブページにリンクするGoogle広告を掲載し、このアプリが「あなたの子ども、夫や妻、おばあちゃんやおじいちゃん」をスパイするためにも販売されていることを、Googleが検出できないようにしていた。

また、2020年に何千人もの被害者の電話データを流出させたストーカーウェアメーカーClevGuard(クレブガード)は、Google広告を出しており、そこからこのアプリを「関係におけるあらゆる疑いを払拭する」ために配偶者に使うこともできると書かれたページにリンクしていました。このページは、検索エンジンに検索結果に表示すべきものとそうでないものを指示する「robot」ファイルを使って、Googleの検索インデックスから隠されていた。TechCrunchは、同じ手法を使って広告を掲載しているストーカーウェア・アプリを他に2つ発見したが、Googleはこれらもポリシーに違反していると述べている。

他の違反広告はもっとあからさまなものだった。ニューヨーク州ロングアイランドに拠点を置くスパイウェアメーカーのPhoneSpector(フォンスペクター)は、アプリを「浮気者を捕まえる」方法として宣伝する広告を掲載した。

Googleは9月の時点で、配偶者を狙うスパイウェアを宣伝した場合など、広告ポリシーに繰り返し違反した広告主のアカウントを3カ月間停止するとしている。

ストーカーウェア企業はいずれもコメントの要請に応じなかった。

画像クレジット:Jake Olimb / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Yuta Kaminishi)

グーグルとYouTubeが気候変動を否定する広告と有料コンテンツを不許可に

米国時間10月7日、Google(グーグル)は気候変動を否定する広告や有料コンテンツを今後許可しないと発表した。この新しいポリシーは、コンテンツの発行者と広告主とYouTubeのクリエイターに適用され、彼らはもはや「気候変動の存在と原因をめぐる確立した科学的合意に反する」コンテンツから収益を得ることができない。

Googleはこの新ポリシーを、アルゴリズムによる検出と人間が行なう点検を併用して執行する計画だ。この新しいルールにはいくらかの解釈の余地もあるが、Googleによると「気候変動を誇大宣伝や詐欺と呼ぶコンテンツや、世界の気候が温暖化している長期動向を否定する主張、および温室効果ガスの排出など人間の活動が気候変動の原因であることを否定する主張」が不許可の対象になる。

Google Adsのチームはブログで、このポリシー変更は広告主の要望を反映していると述べている。「自社広告がそんなコンテンツの隣りにあるのは嫌だ」という。クリエイターと発行者は、気候変動を否定する広告が自分の動画に出ることも望んでいないが、Googleの動画プラットフォーム(YouTube)は虚偽情報の巣窟であるため、広告だけを排除する効果は疑わしい。

Googleの新しいポリシーは、気候の危機に関する間違った主張に強い姿勢で臨んでいるが、ソーシャルネットワークは気候関連の虚偽情報の拡散に果たす自分たちの役割を最近認め始めたばかりだ。YouTubeも、米国の選挙に関する虚偽の主張をはじめ、過去にはいろいろな問題で、虚偽情報の流れを止めるためのルールの導入が遅いことで悪名高いものであった。

このポリシーが改善であることは確かであり、すべてのプラットフォームが人類の存続の危機を加速するようなものに対しては強固なルールを設けるべきだが、今度のルールは、どんなに強力かつ根気よく執行されても、虚偽情報の界隈に影響を及ぼすだけだ。

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画像クレジット:Olly Curtis/Future/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ツイッターが中核事業への投資を加速、モバイル広告MoPubを売却へ

Twitter(ツイッター)は米国時間10月6日、2013年に買収したモバイル広告プラットフォームMoPub(モパブ)を、モバイルゲームおよびマーケティングソフトウェアメーカーのAppLovin(アップロビン)に売却すると発表した。

Twitterは、2013年に約3億5000万ドル(約390億円)でMoPubを買収したが、今回は現金10億5000万ドル(約1170億円)で同社を売却する。MoPubによると、同社は2020年に、約1億8800万ドル(約210億円)の売上高でTwitterに貢献した。Twitterは以前、2023年までに年間収益を2倍にするという目標を掲げていた。

TwitterのCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏はプレスリリースの中で「今回の売却により、当社の収益プロダクトロードマップへのフォーカスと自信がさらに高まり、Twitterの長期的な成長を支える中核製品への投資を加速させることができます」と述べた。

TwitterのCFOであるNed Segal(ネッド・シーガル)氏は、今回の買収はTwitterが新製品の開発を急いでいる中で「巨大な」広告機会に再び焦点を合わせるための手段だと特徴づけた。シーガル氏によると、Twitterは今後、自社で運営する製品の開発を重視していくが、ここ数カ月、そのビジョンに合致した企業の買収に幅広く投資しているようだ。

Twitterはこれまで、ほとんど問題なく事業を進めてきたにもかかわらず、2021年に入ってビジネスを大きく変える動きをいくつも見せてきた。立て続けにプロダクトをリリースする中で、TwitterはSuper FollowsTicketed Spacesなどの機能により、クリエイター経済の爆発的な成長を利用した新たな収益源を模索しているが、これらのプロダクトの浸透は今のところ限定的だ

Twitterは2021年、広告なしの読書ツールScroll(優れていたが今はないニュースアグリゲーターNuzzelを含む)や、人気のニュースレタープラットフォームRevueなど、新しい方向性を示す多くの買収を行った。

Twitterはまた、Clubhouseのようなオーディオルームや、新しい関心事ベースのコミュニティを立ち上げ、プラットフォームを害のない快適に過ごせる場所にするための実験的な機能を数多く提供している。これらの機能は、有料の月額制サービスTwitter Blueの広範な立ち上げに向けて準備を進めていく上で、重要な役割を果たすはずだ。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

Epic GamesのCEOがアップルはiPhoneの「設定」で自社サービスを宣伝していると非難

Apple(アップル)を相手取った反トラスト訴訟(現在控訴中)で大きな注目を集めているEpic Games(エピック・ゲームズ)CEOのTim Sweeney(ティム・スウィーニー)氏は米国時間10月7日、iPhoneメーカーは他社が利用できない広告枠を自身に与えていると非難した。その場所はiPhoneの設定画面だ。一部のiOS 15ユーザーが、Appleが設定画面のトップ、Apple IDのすぐ下で自社サービスを広告していることを報告している。提示されるサービスは、端末オーナー向けにカスタマイズされていて、すでにサブスクライブしているサービスに基づいていると見られる。

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例えばApple Musicをサブスクライブしていないユーザーには、6カ月の無料トライアルをすすめる広告が表示される。一方現在のApple Musicサブスクライバーには、AppleCareなどのまだ利用していないサービスの追加が促される。

スウィーニー氏は、この種のファーストパーティー広告はAppleによる反競争的行為の可能性があることを指摘している。推奨されているサービスの中にはApp Store(アップストア)で提供されているサードパーティー・アプリと直接競合するものがあるためから。しかしそれらのサードパーティー製アプリは、もちろんiPhoneの設定画面に近づくことができない。できるのはApp Store上の広告スロットに入札することだけだ。

「Fortnite(フォートナイト)を締め出した連中の新しいやり口。自社の音楽サービスのための設定画面広告は実際の設定画面より早く現れ、他の広告主、Spotify(スポティファイ)やSound Cloud(サウンド・クラウド)は利用できません」とスウィーニー氏はいう。

スウィーニー氏は、Mobile Dev Memo(モバイル・デブ・メモ)のアナリストであるEric Seufert(エリック・スーファート)氏の別の投稿をリツイートしており、スーファート氏はGlassfy(グラスファイ)の共同ファウンダーFrancesco Zucchetta(フランセスコ・ズチェッタ)氏の作成した画像をシェアしている。

ズチェッタ氏はTechCrunchに、その広告は自身が所有するiOS 15が動くiPhone 8で見つけたと語った。しかしもっと新しいデバイスで広告を見た人もいる。中には、Appleの宣伝をプッシュ通知でも受け取ったと指摘するコメントもあった。

この問題が微妙なのは、こうした広告は、Appleが自身の利益のために他社を不利な立場においているとは必ずしも言えないことだ。

例えば私たちのiOS 15.1が動作しているiPhone 13 Pro Maxでは、その掲示がAppleCare+(アップルケア・プラス)の保証を追加できる期限までまだ一定の日数があることを知らせるために使用されていた(我々はすでにAppleの他のサブスクリプションをほとんど利用している)。この場合、SpotifyがApple Musicと直接競合するのと同じようなAppleCareと直接競合するサードパーティーアプリは存在しない。Asurion(アシュリオン)などの保証会社はAT&T(エー・ティー・アンド・ティー)やVerizon(ベライゾン)などの 携帯キャリアと提携して、iPhoneの保険プランを販売し、App Storeを通じた消費者への直接販売は行っていない。

保証追加の喚起は有益な情報であり、望まない侵入ではないと指摘する向きさえある。

スウィーニー氏のツイートは、設定アプリ内のファーストパーティー広告の認知度を高めたが、実際これは新しいことではない。

AppleはこれまでにもiPhoneの設定画面を使ってユーザーに自社サービスを売り込むことがよくあり、今回と概ね同じやり方だった。

たとえば2020年、AppleはApple ArcadeAppleCare、およびApple TV+のプロモーションを設定アプリ内で展開しているところを見つけられた。設定画面以外にも、Appleは別の変わった方法で自社サービスを宣伝しており、プッシュ通知を使ったものもあった。さらに同社は、何年も前から自社アプリの中で別のアプリのクロスプロモーションを行っている。例えばApple Musicのサブスクリプションのおすすめが、iTunesを使っている時に表示されるといったものだ。

しかし現在規制当局は、プラットフォームが自らのマーケティングパワーを利用あるいは濫用する様子を綿密に監視している。現在Google(グーグル)は、端末製造メーカーが自社のスマートフォンを販売する際に一連のGoogleアプリをプリインストールすることを必須としていることに対するEUの記録的な罰金命令を控訴している。一方Samsung(サムスン)は、Galaxy(ギャラクシー)端末上で自社アプリの広告を掲載することを中止すると発表した(これまで同社は、他の企業が自社製品を宣伝する広告を時々掲載していた)。

Epic Gamesのスウィーニー氏のツイートについて補足コメントを出しておらず、同社がこのちょっとした最新情報を次の控訴審で使用するかどうかも明らかにしていない。Appleにはコメントを要求しているがまだ応答はない。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

気が散らないウェブコンテンツ読書サービス「Scroll」閉鎖、「Twitter Blue」の機能に

広告などを取り除き、ウェブ上の長いコンテンツを読みやすくするサービスのScroll(スクロール)が約30日間サービスを停止し、Twitter Blueの機能になる。Twitter(ツイッター)がTechCrunchへの電子メールの中で認めた。Twitterは5月にScrollを買収し、Twitter上でプレミアム機能としてScrollを提供する計画だと述べていた。Scrollは独立事業としてサービスを停止した後、Twitter Blueの一部として「Ad-Free Articles(広告ゼロの記事)」になる。

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Scrollの現在の購読者に送られた電子メールには「ローディングが迅速で、広告がない記事を引き続き読むことが可能、その一方でお気に入りのサイトのジャーナリズムをサポートするTwitter Blueを購読してください」と書かれている。

Scrollは現在、月5ドル(約560円)で有料購読者にUSA Today、Buzzfeed News、The Atlantic、The Vergeなどを含むさまざまなウェブサイトでの広告が入らないブラウジングを提供している。Scrollの使用はリーダービューに似ていて、読者がコンテンツにフォーカスできるよう、広告やトラッカー、その他のウェブサイト上の邪魔なものを排除する。月額料金の一部は購読者が読むコンテンツの資金にあてられる。

ScrollとTwitterが買収を発表して以降、Scrollは新規購読の受付を停止してプライベートベータに移行し、チームはScrollのTwitterへの統合に取り組んだ。現在の利用者は、ScrollがいつTwitter Blueで利用できるようになるのか、そして直接的な移行があるのかどうか知らされていない。2社は数週間内に詳細を提供すると約束している。

Twitterは以前、購読者がTwitterを通じてScrollを使用するとき、サブスクの売上高の一部は出版社とコンテンツを制作したライターのサポートに充てられると言及した。プレミアム購読者は、報道機関やTwitterの自前のニュースレタープロダクトRevueの記事を簡単に読むためにScrollを使うことができるとTwitterは説明していた。RevueはTwitterがこのほど買収したサービスで、すでにTwitterに統合されている。

Twitter Blueは現在、カナダとオーストラリアでのみ利用できるというのは注目に値する。購読すると、Twitterユーザーはプレミアムな機能にアクセスできる。ここには、ブックマークを整理するツールや、Twitterが長らくリクエストされてきた「編集」ボタンに関連して提供するものに最も近いものになる「Undo Tweet」機能などが含まれる。Twitter Blueにはまた、リーダーモード機能もある。Twitterが以前、Scrollの計画とは関連がないと言っていたものだ。一部の人はTwitter Blueに他の機能を期待していたかもしれないが、リーダーモードはScrollのような確固たるサービスとは対照的なThread Readerといったサードパーティのアプリに代わるものだ。

カナダとオーストラリアでは、Twitter Blueの購読料金は現在、3.49カナダドル(約310円)と4.49オーストラリアドル(約360円)だ。今後の統合で料金が上がるかどうかは不明だ。

画像クレジット:Twitter

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】クリエイティブがグロースマーケティングの決定的なXファクター

今後、グロースマーケティングがプライバシー保護を重視した、ターゲットの曖昧なものに移行するとき、Facebook(フェイスブック)などの有料ソーシャルチャネル上のクリエイティブが最も強力な手段になるだろう。重宝しているiOS 14.5で特定機能が利用できなくなってこの傾向は加速されたが、さまざまなチャネルで広告プラットフォームの自動化に向けた取り組みが強化されている。

それで筆者は、シードステージのスタートアップであれ、Google(グーグル)のような巨大企業であれ、グロースマーケティングを推進する場合は常に、クリエイティブをテストする適切なフレームワークの準備を整えるべきだと思う。

筆者は、Postmates(ポストメイツ)で3年間働き、さまざまなスタートアップのためにコンサルティングをし、直近ではUber(ウーバー)で仕事をして、多くの点でマーケティングが変化する様子を見てきた。しかし、我々が今目にしているものは我々の制御を超えたファクターによって動いており、今まで見てきたどんなものとも異なる変化が始まっている。続いて、有料のソーシャルアカウントでクリエイティブが最も強力な手段として登場した。

基本

クリエイティブの力を活用し、有料のソーシャルマーケティングで成功を収めようと考えているなら、その考え方は正しい。必要なのは、クリエイティブをテストするフレームワーク、つまり新しいクリエイティブアセットをテストする構造化された一貫性のある方法である。

次に、クリエイティブをテストするフレームワークを成功させるために必要な基本要素を示す。

  • 決められたテストスケジュール
  • テーマを構造化したアプローチ
  • チャネルに特化した戦略

クリエイティブのテストは、決められたテストスケジュールに従った、持続的で反復的なプロセスにする。目標と構造は、毎週5つの新しいクリエイティブアセットをテストするシンプルなものにできる。逆に、複数のテーマとコピーバリエーションから成る60の新しいアセットをテストする複雑なものにもできる。

出費があまり多くないアカウントの場合、イベントシグナルが限られているのでクリエイティブのテストは比較的限定的なものにする。出費の多いアカウントの場合はその逆にする。最も重要なことは、次の「優れた」アセットを探す際、テストを継続して目ぼしいものを見つけることである。

4つのテーマ×テーマごとに3つの変化形×5つのコピーバリエーション=60のアセット(画像クレジット:Jonathan Martinez)

テストのスケジュールを設定したら、思いつきのアイデアを大量にテストするのではなく、ビジネスとバーティカル市場の主要なテーマを定義する。これは、コピーや、製品とサービスの主要な価値提案と同様に、クリエイティブアセットにも当てはまる。クリエイティブのデータ分析を始めると、この構造を活用してテストすることで、何を強化し、何をカットするか、簡単に決定できることがわかるだろう。これは、テストの過程を通じて拡張または縮小するワイヤーフレームと考えることができる。

MyFitnessPal(マイフィットネスパル)のようなフィットネスアプリの場合、次のように構造化できる。

  • テーマ(製品のスクリーンショット、製品を使っている人の画像、UGCのユーザーの声、事前・事後の画像)
  • メッセージ(セグメント化された価値提案、宣伝広告、FUD)

チャネルは、クリエイティブのベストプラクティスやテストの機能がそれぞれ異なるので、チャネルに特化したアプローチになっていることを確認することは非常に重要である。フェイスブックでうまくいくことが、Snapchat(スナップチャット)やその他多くの有料ソーシャルチャネルでもうまくいくとは限らない。クリエイティブのパフォーマンスがチャネルによって異なるとしてもがっかりすることはないが、筆者は等価性テストを推奨する。あるチャネル向けのクリエイティブアセットがすでにある場合、残りのチャネル向けにサイズ変更して体裁を整えても問題はない。

何が成功かを判断する

適切なイベント選択と、テスト全体を通じて守る統計的に有意なしきい値は、クリエイティブにとって等しく重要である。クリエイティブのテストに使うイベントを選択する際、CACのレベルによっては、必ずしも自社のノーススターメトリックを使えるとは限らない。例えば百単位のCACで高額のアイテムを売る場合、各クリエイティブアセットで統計的に有意な値に達するには、多額の出費が必要になるだろう。代わりに、ファネル上部寄りのイベントと、ユーザーの転換の可能性を示す信頼性の高い指標を選ぶことができる。

ファネル上部寄りのイベントを使うと、学習の迅速化につながる(画像クレジット:Jonathan Martinez)

使用する統計的に有意な割合を決める際、クリエイティブのテスト全体にわたって一貫した割合を選択することは重要である。経験上、筆者は80%以上の確実性を好む。それによって、十分な確認と決定の迅速化が可能になるからだ。Neil Patel(ネール・パテル)氏のA/Bテスト向け有意性計算ツールは、便利な(無料の)オンライン計算ツールである。

成否を分けるもの

ソーシャルフィードをスクロールしていて、光沢のあるゴールドのペンダントに目が留まったとしよう。しかし、メッセージはブランド名と製品の仕様だけである。注意を引かれはしたが、引き寄せられるものが何かあっただろうか。考えてみて欲しい。人の注意を引くだけでなく「クリエイティブ」、つまり有料のソーシャルグロースマーケティングで成否を分けるファクターを使って、引き寄せているだろうか。

iOS 14.5のデータロスを迂回する

iOS 14.5でユーザーデータがわかりにくくなり、モバイルキャンペーンにおいてクリエイティブのテストは厳しくなる一方だが、不可能というわけではなく、ただもっと賢くなる必要があるということである。クリエイティブのパフォーマンスに関する明瞭なインサイトを得るのに役立つアイデアはいろいろあり、長続きしないものもあれば、ずっと残るものもあるだろう。

プライバシー保護のための制限はたくさんあるが、膨大な数のAndroid(アンドロイド)ユーザーには依然としてアクセス可能であり、これを活用しない手はない。クリエイティブのテストをすべてiOSで実施する代わりに、インサイトを収集する明瞭な方法としてアンドロイドを使うことができる。プライバシー保護のための制限はまだアンドロイドデバイスに課されていないのだ。アンドロイドでのテストで収集されたデータは、次にiOSでのキャンペーンに適用できる。アンドロイドでのデータにも制限が課されるのは時間の問題でしかないので、iOSでのキャンペーンに情報を提供できるこの回避策を活用するのは今である。

アンドロイドでのキャンペーンが実行可能なオプションでない場合、手早く簡単な別のソリューションは、Webサイトのリードフォームを断念し、クリエイティブアセットから記入済みフォームへの転換率を測定することである。ユーザーエクスペリエンスは確かにエバーグリーンコンテンツと比べればまったく驚くほどのものではないが、これを使えば短期間でインサイトを得ることができる(しかも、予算のほんの一部で)。

リードフォームを作成する場合は、エバーグリーンエクスペリエンスの重要な指標となるイベントを完成させるユーザーを見極めて明らかにする質問を考えよう。ユーザーがリードフォームに記入し終えたら、コミュニケーションを取ってユーザーの転換を図り、広告費を有効に使うことができる。

アカウントステージに基づいて取り組む

クリエイティブアセットのタイプに応じたテストの取り組みはアカウントステージアカウントステージによって大きく異なり、模倣、反復、イノベーションの3つに分けることができる。

クリエイティブのテストのタイプは時間とともに変化する(画像クレジット:Jonathan Martinez)

アカウントステージが初期であればあるほど、クリエイティブの方向性が他の広告主によって有効であることが証明されたものに依存する度合いは大きくなる。それらの広告主は、アセットのパフォーマンスの証明に多くの出費をしてきており、そこから強力なインサイトを得ることができる。時間の経過とともに、他の広告主から導き出す速度をわずかに落とし、ベストパフォーマンスの反復に重点を置くことができる。筆者が割合を決めるとすれば、初期段階では取り組みの80%を模倣に置く。成功事例が明らかになるにつれて自然と反復の勢いが増し、イノベーションが大きく遅れて最後の柱になる。

これは、すばらしいアイデアがある場合でも初期段階ではイノベーションを試すことはできないということではが、一般に、十分に成長した企業の方が革新的なアイデアの検証に多額の出費をする余裕がある。また、社内にデザインチームがあるにしても、フリーランスのデザイナーと一緒に取り組むにしても、50の異なる革新的なアセットを考えてデザインするより、50のバリエーションを考える方がはるかに簡単である。模倣と反復により、初期のテストは大幅に効率的になる。

競合他社のインサイトを活用する

ブレインストーミングをして、最高に美しく、目を引いて、人を引き付けるクリエイティブを思い描くことは、必ずしも数秒でできることではなく、数分でも、数時間でもできるとは限らない。ここで、競合他社のインサイトを利用することが関係してくる。

最も充実したリソースはフェイスブックの広告ライブラリである。そこには、プラットフォーム全体であらゆる広告主が使っているすべてのクリエイティブアセットがある。実際のところ、この無料の強力なツールのことを知っている人がほとんどいないことに、筆者はいつも驚かされる。

このライブラリで競合他社やクラス最高の広告主を参照すると、広告主が長く使ってきた具体的なアセットに、優れたパフォーマンスのクリエイティブの証拠を見ることができる。どうしてそれがわかるかというと、便利なことに、広告主がクリエイティブを使い始めた日付のスタンプが各アセットにあるのだ。これは非常に役に立つ。筆者は、何時間でもクリエイティブアセットを調べていられる。それぞれの広告主が、情報とひらめきをさらに提供してくれる。

有料のソーシャルグロースマーケティングで努力を傾ける分野を考えるときは、クリエイティブをリストのトップに置く必要がある。データがますますわかりにくくなるにつれ、アイデアに富んだ考え方をする必要がある。そうした考え方が、成功と失敗の分かれ目になる。実行する戦略のタイプは時間とともに変わるが、変わらないのは、強力なクリエイティブ、つまり成功を左右するファクターの重要性である。

編集部注:本稿の執筆者Jonathan Martinez(ジョナサン・マルティネス)氏は、元YouTuberで、カリフォルニア大学バークレー校の卒業生であり、Uber、Postmates、Chimeをはじめとするさまざまなスタートアップ企業の成長を支援してきた成長マーケティングのオタク。

画像クレジット:MirageC / Getty Images

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(文:Jonathan Martinez、翻訳:Dragonfly)

広告詐欺などアドフラウドの対策ツール「Spider AF」を提供するSpider Labsが約5.5億円のシリーズB調達

広告詐欺などアドフラウドの対策ツール「Spider AF」を提供するSpider Labsが約5.5億円のシリーズB調達

広告詐欺・不正広告といったアドフラウドへの対策ツール「Spider AF」(スパイダーエーエフ)を提供するSpider Labs(スパイダーラボズ。旧Phybbit)は9月29日、総額約5億5000万円となる第三者割当増資をシリーズBラウンドにおいて実施したと発表した。引受先はHeadline Asia、三菱UFJキャピタル、Darwin Venture Management、Golden Asia Fund。調達した資金によりSpider AFの事業拡大を行ない、インターネット上における不正を撲滅し社会課題の解決を目指すとしている。

Spider Labsは2011年に設立された日本発のサイバーセキュリティカンパニー。Spider AFをメインサービスとしており、信頼性の高いアドフラウド対策を提供している。デジタル広告業界の信頼性を高める世界最高水準の認証機関「Trustworthy Accountability Group」(TAG)の不正防止部門から、日本およびAPACで初めて認証を取得している。

SpiderAFは、不正な手法によって広告のインプレッションやクリック、コンバージョンを水増しして広告報酬を詐取するアドフラウド(広告詐欺)の対策ツール。誰にでも手軽にアドフラウド対策が行なえるよう、自動化と非属人化に特化しているという。無駄な広告トラフィックを排除する機能を持っており、2018年12年には複数事業者でブラックリストを共有する「SHARED BLACKLIST」(シェアードブラックリスト)を日本で初めて提供を開始したとのこと。

ネット動画広告制作の内製化を後押しするリチカが8億円調達、独自の自動生成技術や広告の自動最適化を強化

ネット動画広告制作の内製化を後押しするリチカが8億円調達、制作自動化に向け独自の自動生成技術や広告の自動最適化を強化広告クリエイティブ運用クラウド「リチカ クラウドスタジオ」の開発・運用などを行う広告テック企業リチカは、9月28日、第三者割当増資による約8億円の資金調達の実施を発表した。引受先は、既存株主であるみずほキャピタル、新生企業投資、FFGベンチャービジネスパートナーズ、DIMENSION、マネックスベンチャーズの他、新規株主としてGMO VenturePartners、大和企業投資、博報堂DYベンチャーズ、rooftopが加わった。これにより累積調達額は約10億6000万円になった。調達した資金は、「ネット広告の制作自動化」に向けた、独自の自動生成技術や広告の自動最適化の強化に充てられるという。

リチカ クラウドスタジオは、「導入したその日からネット広告で戦略的なクリエイティブ制作・改善を実現できる」というクラウドサービス。プロレベルの動画広告が簡単に作れるサービスだ。コロナ禍の影響で、広告を内部で制作する企業が増え、ネット広告制作ツールの需要が高まっているという。リチカのシステムは、ベネッセ、カドカワ、セブン銀行など大手を中心とした400社以上に導入され、月間2万本以上の動画広告が作られているとのこと。ネット広告以外にも、渋谷駅前のサイネージやテレビCMにも使われている。

リチカ クラウドスタジオの特徴は、クリエイティブ、テクノロジーなどの専門家集団「リチカ クリエイティブファーム」や独自のマーケティング研究機関「RC総研」を構え、プロレベルの広告用素材や簡単に使える動画制作ツールなどを提供する他、クライアントには専任のコンサルタントが付き、1対1で寄り添いながら、動画制作から広告運用まで総合的な「ワンストップ」でのマーケティング支援をしてくれる点にある。

代表取締役の松尾幸治氏は、デジタル世界でも「定量化できない曖昧なものの価値」を高めたいと話す。伝えにくいものを伝えるテクノロジーを提供するリチカは、それを「作り方の革命であり、届け方の革命」としている。

 

Vungle傘下のモバイルマーケターが「Fontmaker」をApp Storeのトップに押し上げたカラクリとは

よくあることだろうか?TikTokをはじめとするSNSで話題になったアプリが、すぐにApp Storeのトップに躍り出て、その露出度の高さからさらに新規インストール数を増やしていく。最近、米国のApp Storeで1位になった定額制のフォントアプリ「Fontmaker」は、TikTokの動画やその他のSNS投稿による口コミの恩恵を受けていたようだ。しかし、ここで私たちが目にしているのは、App Storeマーケティングの新しい形であり、この分野で最も歴史のある企業の1つ、Vungleを巻き込んだものだ。

Fontmakerは、一見すると、大ヒットしたインディーズのアプリのように見える。

Mango Labsが開発したこのアプリは、ユーザーが自分の手書き文字を使ってフォントを作成し、それをカスタムキーボードで利用できるというもので、1週間あたり4.99ドル(約551円)というかなり高額な料金が設定されている。このアプリが最初に登場したのは7月26日だった。Sensor Towerのデータによると、約1カ月後には、米国のApp Storeで第2位のアプリとなった。8月26日には、さらに1つ順位を上げて1位になったが、その後、無料アプリ総合ランキングの上位から徐々に下がっていったという。

8月27日には15位となり、翌日には一時的に4位まで上昇したが、その後は再びランクダウンした。現在アプリは全体で54位、競争の激しい写真 / ビデオカテゴリーでは4位となっているが、主に若いユーザーをターゲットにした新しくてややニッチな製品としては、堅実な位置にある。Sensor Towerによると、このアプリは現在までに6万8000ドル(約750万円)の収益を上げている。

しかしFontmakerは、ボットではなく実際のユーザーからのダウンロード数の増加によってトップチャートにランクインしたにもかかわらず、真の純粋なサクセスストーリーとは言えないかもしれない。むしろ、モバイルマーケティング担当者がアプリのインストールを促進するために、インフルエンサーのコミュニティを活用する方法を見つけ出した一例と言えるだろう。また、インフルエンサーマーケティングによって流行ったアプリと、真の需要によってApp Storeのトップに躍り出たアプリとを区別するのは難しいということを示す例でもある。例えば、トランシーバーアプリのZelloは、ハリケーン「アイダ」の影響で最近1位になったという。

Fontmakerは、典型的な「インディーズアプリ」ではない。実際のところ、誰が作ったのかは不明瞭だ。そのパブリッシャーであるMango Labs, LLCは、実際には、モバイル成長企業JetFuelが所有するiTunesの開発者アカウントである。JetFuelは最近、モバイル広告・収益化企業のVungleに買収された。Vungleは長年この分野で活躍し、時には物議をかもした企業で、自身も2019年にBlackstoneに買収されている。

Vungleが主に関心を示したのは、JetFuelの主力製品であるインフルエンサー向けアプリThe Plugだった。

モバイルアプリの開発者や広告主はThe Plugを通じて、合計したInstagramのフォロワー数は40億人、TikTokのフォロワー数は15億人、Snapchatの1日の再生回数は1億回になる1万5000人以上の検証済みインフルエンサーが集うJetFuelのネットワークにアクセスできる。

マーケターは、これらのネットワークのそれぞれに組み込まれた広告ツールを使ってターゲット層にリーチしようと試みることもできるが、JetFuelの技術を使えば、Z世代のうち価値の高いユーザーにリーチするためのキャンペーンを迅速に展開することができるとしている。このシステムは、従来のインフルエンサーマーケティングよりも労力をかけずに済む場合がある。広告主は、アプリのインストールに対して、CPA(Cost Per Action)ベースで支払いを行う。一方、インフルエンサーはThe Plugをスクロールして宣伝したいアプリを見つけ、それを自分のSNSアカウントに投稿するだけで、収益を得ることができる。

The Plugのウェブサイト。インフルエンサーにプラットフォームの仕組みを紹介している

つまり、多くのインフルエンサーがFontmakerに関するTikTok動画を作成し、消費者にアプリのダウンロードを促していたかもしれないが、インフルエンサーはそれに対する報酬を得ていたのだ(また、Fontmakerのハッシュタグを見ていると、金銭的な関係を一切開示せずに動画を作成している場合が多く、これはTikTokで増加しているよくある問題であり、FTCも懸念している)。

厄介なのは、Mango LabsとJetFuel / Vungleの関係を整理することだ。App Storeを見ていると、Mango Labsは楽しい消費者向けアプリをたくさん作っているように見えるし、Fontmakerはその中でも最新のものだ。

JetFuelのウェブサイトがこのイメージの促進にも役立っている。

同社はMango Labsという「インディー開発者」のケーススタディと、同社の初期アプリの1つであるCaption Proを使い、インフルエンサーマーケティングの仕組みを紹介していた。Caption Proは2018年1月に配信された(App Annieのデータによると、2021年8月31日にApp Storeから削除されている)。

画像クレジット:App Annie

しかし、VungleはTechCrunchに対し「Caption Proアプリはもう存在しないし、長い間App StoreやGoogle Playにも載っていない」という(App Annieの記録には、Google Playにこのアプリが掲載されている記録は見つからなかった)。

また「Caption Proは、JetFuelになる前にMango Labsが開発したもの」であり、JetFuelの広告機能を強調するためにケーススタディを使用したのだとも話した(しかし、その関係を明確に開示することはなかった)。

「JetFuelが現在のようなインフルエンサーマーケティングプラットフォームになる前、同社はApp Store向けのアプリを開発していました。同社がマーケティングプラットフォームへと方向転換した後、2018年2月にはアプリの作成を中止しましたが、Mango Labsのアカウントを時折使用して、第三者機関と収益化パートナーシップを結んだアプリを公開し続けていました」とVungleの広報担当者は説明している。

つまりこの主張は、Mango Labsは元々、ずっと前に方向転換してJetFuelになった人々やCaption Proのメーカーと同一であったけれども「Mango Labs, LLC」の下で公開されている新しいアプリはすべて、JetFuelのチーム自身が作ったものではないということだ。

「App StoreやGoogle PlayでMango Labs LLCの名前で表示されているアプリは、実際には他社が開発したものであり、Mango Labsはパブリッシャーとしての役割しか果たしていません」と広報担当者はいう。

Mango Labsを「インディー開発者」と表現するJetFuelのウェブサイト

この主張が腑に落ちないのには理由があり、JetFuelのパートナーがMango Labsの名前に隠れて喜んでいるように見えるからだけではなく、Mango Labsが過去にJetFuelチームのプロジェクトであったからでもある。また、Mango LabsとTakeoff Labsが一連の同じアプリを提供していることも奇妙だ。Mango Labsと同じく、Takeoff LabsもJetFuelと関係がある。

この記事を書いている現時点で、Mango LabsはApp StoreとGoogle Playの両方でいくつかの消費者向けアプリを公開している。

iOSでは、最近のNo.1アプリFontmakerをはじめ、FontKey、Color Meme、Litstick、Vibe、Celebs、FITme Fitness、CopyPaste、Part 2などがある。Google Playでは、さらに2つのアプリ、StickeredとMangoを提供している。

画像クレジット:Mango Labs

App StoreにあるMango Labsのリストのほとんどは、アプリの「開発者のウェブサイト」としてJetFuelのウェブサイトを提示しており、VungleがいうJetFuelがアプリのパブリッシャーとして機能していることと一致している。

しかし奇妙なのは、Mango Labsのアプリ、Part2が、App StoreのリストでTakeoff Labsのウェブサイトにリンクしていることだ。

Vungleの広報担当者は当初、Takeoff Labsは「独立したアプリ開発会社」であると説明していた。

Takeoff Labsのウェブサイトには、JetFuelの共同創業者兼CEOのTim Lenardo(ティム・レナルド)や、JetFuelの共同創業者兼CROのJJ Maxwell(JJ・マックスウェル)など、JetFuelのリーダーたちで構成されたチームが表示されている。Takeoff LabsのLLC登記申請書は、レナルドによって署名されている。

一方、Takeoff Labsの共同創業者兼CEOのRhai Goburdhun(ライ・ゴバードハン)は、LinkedInとTakeoff Labsのウェブサイトを見ると、今も同社で働いているのだ。この関係について質問されたVungleは、ウェブサイトが更新されていないことに気づかなかったと答えており、今回の買収ではJetFuelもVungleもTakeoff Labsの所有権を持っていないとのことだ。

Takeoff Labsのウェブサイトには、JetFuelの共同設立者を含むチームが掲載されている

Takeoff Labsのウェブサイトでは、同社の「ポートフォリオ」として、Mango LabsがApp Storeで公開しているCeleb、Litstick、FontKeyの3つのアプリも紹介されている。

Google Playでは、Takeoff LabsはCelebsの他、VibeとTeal(ネット銀行)の2つのアプリの開発者となっている。しかしApp Storeでは、Vibeを公開しているのはMango Labsだ。

Takeoff Labsのウェブサイトでは、同社のアプリのポートフォリオが紹介されている

(さらに事を複雑にするわけではないが、RealLabsという企業もあり、同社はJetFuelやThe Plug、そしてMango LabsがGoogle Playで公開しているアプリMangoなどの消費者向けアプリを提供している。Labsという名前を付けたがっている人がいるようだ)。

Vungleによれば、この混乱は、同社がMango LabsのiTunesアカウントを使ってパートナーのアプリを公開していることと関係があり、これはApp Storeでは「よくあること」だと主張する。Vungleも混乱を招いていると認めており、Mango Labsで公開されているアプリを開発者のアカウントに移行するつもりだという。

またVungleは、JetFuelは「現在アプリストアで公開されているいかなる消費者向けアプリも作っておらず、所有していません。同社がMango Labsとして知られていた頃に作られたアプリは、ずいぶん前にアプリストアから削除されています」と主張している。

JetFuelのシステムは混乱しているが、今のところその目標は成功している。Fontmakerは、インフルエンサーマーケティングによってグロースハックが行われ、確かに1位になった。

しかし消費者としては、自分がダウンロードしているアプリが実際に誰によって作られたのか、そして自分が非公開の広告に「影響」されてダウンロードしたのかどうかを知ることができないということになる。

インフルエンサーによるプロモーションを通じてグロースハックによりトップに躍り出たのは、Fontmakerが初めてではない。夏に大ヒットしたPoparrazziも、同様の方法でApp Storeのトップに躍り出た。しかしPoparazziはその後、写真 / ビデオ部門で89位に沈んだ。

Fontmakerについては、手を回したインフルエンサーのおかげで1位を獲得したものの、トップチャートにいる時間は短いものだった。

関連記事:米App Storeトップに華々しく登場、作られた完璧さが並ぶInstagramのアンチを謳う新SNS「Poparazzi」

画像クレジット:Fontmaker

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

独Xaynが広告を表示させずにプライバシーを保護できる検索ツールのウェブ版を発表

ベルリンを拠点とするスタートアップ企業Xayn(ゼイン)は、Googleのようなアドテック大手のトラッキングやプロファイリングを利用せずに、プライバシー保護とパーソナライズを両立させた広告のない検索サービスを提供している(2020年のTechCrunchの記事を参照のこと)。同社はその製品の提供範囲を拡大し、ウェブ版(現在はベータ版)を発表した。

関連記事:オンデバイスAIでプライバシー保護とパーソナライズを両立させる検索エンジン「Xayn」

同社がモバイルアプリと同様の機能を持つ「light web version」と説明しているウェブ版「Xayn WebBeta」は、あるコンテンツに「興味がないことを意思表示するためにスワイプ」できないといった点がXaynのモバイルアプリとは異なる。

ブラウザのように見えても、Xayn自体はブラウザとも少し違う。同社が「ブラウジングエンジン」と称するXaynでは、プライベート検索だけでなく、ディスカバリーフィード(ニュースフィード)の形でコンテンツを整理して表示することで、アプリ内でブラウジングすることができる。

デスクトップのブラウザでXaynを読み込むと、XaynのAIがフィードで何を表示するかを判断するために、短いタイムラグが発生する(モバイルでも同様)。Xaynを最初に起動したとき(すなわち、AIがゼロからコンテンツをユーザーの地域に合わせてローカライズしているとき)は、すでにユーザーが何回かXaynにアクセスしてユーザー固有の閲覧シグナルをAIが利用できるときを比べて、わずかに長く時間がかかるようだ。

ウェブ版のXaynでは、コンテンツの左右に緑(好き)またはピンク(嫌い)のバーが表示されている。そのバーの横にカーソルを合わせるとホップアップ表示される、上向き(または下向き)の親指のアイコンをクリックすることで、特定のコンテンツに対する「評価する」または「評価しない」のシグナルを送ることができる。左クリックだけで「いいね!」できる、という仕組みだ。

また、フィードを増やしたくない場合は、フィードをオフにして、起動時に検索バーだけを表示させることもできる。

デフォルトでは、検索結果はコンテンツペインに、ニュースフィードと同じような長方形のグリッドで表示される。情報を求めているユーザーにとっては、少しばかり情報密度が足りないだろうか。

Xaynウェブ版(ベータ版)の検索結果ページのサンプル(画像キャプチャー:Natasha Lomas / TechCrunch)

Xaynの学習AIは、右上の「脳」のアイコンをクリックすれば、いつでもオフにすることができる。オフにすると、ユーザーが閲覧しているものが、ユーザーに表示されるコンテンツ(フィードのコンテンツと検索結果の両方)を決定するAIの学習に使用されないようになる。

全体をまっさらな状態に戻したい場合は、手動で閲覧データを消去して学習をリセットすることもできる。

ユーザーに魅力的なもう1つの要素はXaynには広告が表示されないことだ。DuckDuckGoやQwantのような他の非追跡型プライベート検索エンジンは、コンテクスト広告を表示することで収益を上げているが、Xaynには広告がない。

さらに同社は、検索業界の常識にとらわれずに、Xayn AIの検索アルゴリズムをオープンソースで提供している。

他にもウェブ版のXaynには、クリック1つで関連コンテンツが表示される「ディープサーチ」や「コレクション」というブックマークのような機能がある。ユーザーは「コレクションを作成、コンテンツを追加、管理することで、お気に入りのウェブコンテンツを集めて保存することができる」という。

Xaynは広告を表示しないだけでなく、広告ブロッカーを搭載し、第三者のサイトに表示される広告をブロックして「ノイズのない」ブラウジングを実現している。

Xaynのウェブ版は、ChromiumベースのブラウザとFirefoxにのみ対応しているので、Safariユーザーはサポートされたブラウザに切り替えてXaynを使用する必要がある。

同社によると、2020年12月に発表されたXaynのモバイルアプリは、その後世界中で25万回以上ダウンロードされている。

Xaynのモバイルアプリでは、発表から3カ月後には毎日10万以上のアクティブ検索が行われ、Xaynはブラウジングデータとユーザーの興味を示すスワイプを取り込み、このツールの価値提案の中核であるパーソナライズされたコンテンツの検索のためのAIをトレーニングし、改善している。この学習と再評価はすべてデバイス上で行われ「Xaynはユーザーごとの検索結果のプライバシーを保護している」とアピールできる材料になっている。

また、フィルターバブル(泡の中にいるように、自分の見たい情報しか見えなくなること)効果を避けるために、Xaynの検索結果には意図的な変化が加えられ、アルゴリズムが常に同じものばかりをユーザーに提供しないようにしている。

Xaynのウェブ版もモバイル版も、Masked Federated Learning(保護されたフェデレーテッドラーニング(連合学習))と呼ばれる技術を用いて、ユーザーのプライバシーを損なうことなく、ユーザーにパーソナライズされたウェブエクスペリエンスを提供している。

もちろんGoogle(グーグル)も独自の広告ターゲティング技術の改善に取り組んでいて、現在、広告ターゲティングのためにブラウザユーザーをインタレストバケットに分類するFloC(コホートの連合学習)と呼ばれる技術を試験的に導入し、トラッキングクッキーを廃止しようとしている。しかし、Xaynとは異なり、Googleのコアビジネスはユーザーをプロファイリングして広告主に販売することだ。

共同創業者でCEOのLeif-Nissen Lundbæk(レイフニッセン・ルンドベーク)氏は声明で次のように述べる。「私たちは、誤ったプライバシーと利便性のジレンマへの直接的な対応としてXaynを開発しました。このジレンマを解決できることはすぐに証明されました。ユーザーはもはや敗者ではありません。実際、私たちのすばらしいエンジニア&デザイナーチームは、アップデートのたびに、プライバシーや品質、優れたユーザーエクスペリエンスがいかに密接に結びついているかを繰り返し実証してくれます」。

「私たちは既存のものをコピーするのではなく、じっくりと検討して新しいものを作りたいと考えました。Xaynでは、積極的にウェブを検索したり、インターネット全体からパーソナライズされたコンテンツを提案するディスカバリーフィードを閲覧したりして、インターネット上のお気に入りのサイトを見つけることができます。どちらの方法でもユーザーのプライバシーは常に保護されます」。

デザイン部門の責任者であるJulia Hintz(ジュリア・ヒンツ)氏も、別の声明で次のように付言している。「Xaynのウェブ版を開発するにあたり、Xaynアプリの成功につながったすべての要素をデスクトップのブラウザウィンドウで利用できるようにしました」。

「ウェブ版にもプライバシーを保護するアルゴリズム、直感的なデザイン、スムーズなアニメーションが採用されています。ユーザーは、慣れ親しんだ環境から切り離されることなく、モバイルとデスクトップを簡単に切り替えることができます。これこそが、シームレスで強いインタラクションの鍵となる、Xaynのすばらしい利点です」。

ウェブ版のXaynでは、ユーザーの個人情報はブラウザ内に保存されるという。

ウェブ版のセキュリティについては、広報担当者が次のように話す。「デスクトップパソコンは、一般的にスマートフォンよりも安全性が低いといわれています。Xaynはプライバシー保護のために、分散型の機械学習と暗号化を組み合わせて個人データを保護しています。純粋に技術的な観点から見ると、Xaynはデスクトップデバイス上のブラウザの中のブラウザです。Xaynはそれぞれのブラウザのサンドボックス内で動作し、個人データを第三者の不要なアクセスから保護します」。

Xaynは今後、プライバシーを保護しながらパーソナライズされたブラウジングを同期する機能を追加する予定で、オンラインであればどこからでも、モバイルとデスクトップの複数のデバイスでAIの学習結果を享受できるようになる。

ブラウザでwww.xayn.comにアクセスすれば、Xayn検索エンジンのウェブ版(ベータ版)をデスクトップパソコンで確認できる。

Xaynは2021年8月、日本のベンチャーキャピタルGlobal Brain(グローバル・ブレイン)とKDDIが主導し、ベルリンのEarlybird VC(アーリーバードVC)などの既存の支援者が参加したシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達。累計調達額は2300万ドル(約25億円)を超えた。同社が日本をはじめとするアジアに注目しているのは確実だ。

関連記事:プライバシーとパーソナライズを両立する検索エンジンXaynが日本のKDDIやGlobal Brainなどから約13億円調達

画像クレジット:Xayn

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックがアップルのプライバシーポリシー変更による広告事業への影響を報告

Facebook(フェイスブック)は米国時間9月22日、Apple(アップル)のプライバシーに関する変更が同社の広告事業にどのような影響を与えているかについての最新情報を提供した。すでに同社は、第2四半期の決算発表時に、第3四半期までに広告ターゲティング事業にさらに大きな影響が出ることが予想されると投資家に警告していた。同社は今回、その点を改めて強調するとともに、iOSのウェブコンバージョンを約15%過少に報告していたため、広告主にその影響が予想以上に大きいと思われていたことを指摘した。

Facebookのビジネスブログに掲載された発表によると、その正確なパーセンテージは、個々の広告主によって大きく異なる可能性があるとのこと。しかし、売上やアプリのインストールなどを含む実際のコンバージョンは、広告主がFacebookのアナリティクスを使って見ている数値よりも高い可能性があると述べている。

このニュースを受けて、Facebookの株価は4%近く下落している(記事執筆時点)。

Facebookが誤解を招くような測定値を公開したことは、今回が初めてではない。過去には動画広告の測定基準を水増ししていたにもかかわらず、すぐに問題を修正しなかったため、集団訴訟に発展したこともある。しかし、今回のケースでは、評価指標の問題はFacebookを実際よりも良く見せるのではなく、むしろ悪く見せてしまっていたということだ。Facebookは、広告主コミュニティから、ネットワーク上の広告投資に計画していた以上の影響が見られるという声を聞いており、懸念が高まっていると言及した。

そこでFacebookは、この新時代にキャンペーンの影響とパフォーマンスをよりよく理解するためのヒントをいくつか広告主に提供することにした。これまでのように毎日評価するのではなく、最低でも72時間、あるいは最適化ウィンドウがいっぱいになるのを待ってから、パフォーマンスを評価することを、同社は提案している。また、推定されるコンバージョンが遅れてレポートされる場合があるため、広告主は可能な限りキャンペーンレベルでレポートを分析すべきだとも述べている。さらに、広告主のコアビジネスに最も合致したウェブイベント(購入や登録など)を選択することなどを勧めている。

この測定値に関する問題に対処するため、Facebookはコンバージョンモデルの改善に取り組んでおり、レポートのギャップを解決するための投資を加速させ、ウェブコンバージョンを追跡する新機能を導入し、すでにインストールされているアプリ内のコンバージョンを測定する機能を拡張すると述べている。さらにバグを発見したら迅速にその修正に取り組むとしており、最近では約10%の過少報告につながっていたバグを修正し、広告主には共有済みだという。

Facebookは8月に、アップルとGoogle(グーグル)のプライバシーに関する変更と新たな規制の状況に照らして、パーソナライズド広告事業を適応させるためにどのように取り組んでいるかを説明したが、こうした取り組みには時間がかかると述べていた。

広告技術のアップデートだけでなく、Facebookは広告主がアプリを閲覧する消費者に、より効果的にアピールできるような新製品も開発している。例えば先週には、ビジネス向けツールのラインナップを刷新し、いくつかの新機能の導入や、消費者が企業を発見する機会を増やすための小規模なテストを拡大すると発表したばかりだ。すでに米国の一部ユーザーを対象に行われていたこのテストでは、ニュースフィードの投稿の下に、関連した他の企業やトピックを表示し、ユーザーを直接導こうとするものだ。他にも、企業がInstagram(インスタグラム)のプロフィールにWhatsApp(ワッツアップ)のボタンを追加できるようにしたり、InstagramユーザーをWhatsAppのビジネスチャットに誘導する広告を作成できるようにしている。

関連記事:広告ターゲティング事業が脅かされつつあるフェイスブック、事業主向けに数々の新機能を発表

Facebookは以前から、モバイルユーザーがiOSアプリ上で追跡されることをオプトアウトできるアップルの新しいプライバシー機能が、同社の広告ターゲティング事業の一般的な運用に問題をもたらすと広告主に警告してきた。Facebookはまた、アップルの変更が、Facebook広告に依存して顧客を獲得している小規模な店舗などの事業に影響を与えると繰り返し主張もしてきた。そしてこの変更が実施されると、Facebookの懸念は妥当であることが確認された。iOS上でトラッキング許可を選択している消費者はほとんどいないという調査結果が出たのである。

画像クレジット:Sean Gallup / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグル広告が透明性の向上を目指し変更、 ユーザーが過去30日の広告主の履歴へアクセス可能に

Google(グーグル)は米国時間9月22日、オンライン広告に関する変更を発表した。この変更により、ウェブ検索者は、広告主が誰であるか、なぜその広告が配信されたかだけでなく、その広告主がGoogleで実施した他の広告についても、最新のものから順に確認することができるようになる。今回の変更は、規制当局の監視が強化され、テック業界全体が透明性と消費者のプライバシーを促進する技術にシフトしている中で、Googleが広告ビジネスを広範囲に渡って刷新している改革の一環だ。

2020年開始された広告主身元確認プログラムでGoogleは、広告主が販売している商品の詳細だけでなく、広告主の個人情報(身分証明や、事業を行っている国を確認する書類など)を開示することを求めている。これらの情報開示は、2020年、Googleのネットワークから広告を購入する広告主に対して開始された。これまでに、Googleは世界90カ国以上で広告主の確認を開始したという。

同社は今回の変更により「この広告について(About this Ad)」製品にも、拡張された情報開示を盛り込んでいく。

これらの新しい広告主ページでは、誰でもクリックして広告主の詳細を確認したり、特定の広告主が過去30日間に掲載したすべての広告を見られるメニューにアクセスできるようになる。

Googleは、例えばコートなどの販売商品を見た消費者は、このツールを使ってそのブランドや他の商品について詳しく知ることができると指摘し、消費者の視点からこのツールは有用だと提案している。しかし、広告主の広告履歴が公開されることで、広告エコシステムにおいて悪質な行為を行う可能性のあるトラブルメーカーを特定する手段としても有用であることは明らかだ。

画像クレジット:Google

また、偽造品、危険な製品、不適切なコンテンツ、不正使用、インタレストベース広告ポリシーの違反、ユーザーを騙すような広告、地域の選挙法や規制への違反など、禁止または制限されているコンテンツに関するGoogleポリシーに違反している広告を、ユーザーが報告することも容易になる。

今回の変更は、オンライン広告に対するGoogleのアプローチがシフトしてきた中で行われた。Googleは新たな広告の情報開示について「Google製品上の広告を利用するユーザーに、明確で直感的な体験を提供するための努力の上に構築していくもの」と述べ、より広範な戦略を示唆した。また、3000万人以上のユーザーが毎日のように同社の広告の透明性・コントロールメニューを利用していることにも言及した。これらのメニューにアクセスするためには小さな「i」アイコンをクリックしなければならないという、製品の中では比較的埋もれた機能であるにもかかわらずそれだけ利用されているという事実は、Googleの世界的な規模の大きさを物語っている。

Googleはこれまでに、Chromeに統合された広告ブロック機能を追加したり、政治的な広告のターゲティングに新たな制限を設けたり、サードパーティのCookieを廃止する計画を発表したりと、広告分野でいくつかの重要な動きを発表してきたが、それらはその後延期されている

なお、Googleは、政治的透明性レポートにおいて、選挙広告を引き続き提供するとしている。これらの広告では、誰が広告費を支払ったかをユーザーが確実に理解できるように「資金提供元(paid for by)」という情報開示も表示される。ただし、政治色のないコンテンツはすべて広告主ページに表示されるとのこと。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

WhatsAppに欧州のGDPR違反で約294億円の制裁金、ユーザー・非ユーザーに対する透明性の向上も命令

長らく待たれていたが、ついにFacebookは、大々的に報じられていた欧州のデータ保護体制からの批判を感じ始めている。2021年9月初旬、アイルランドのデータ保護委員会(DPC)が、WhatsAppに2億2500万ユーロ(約294億円)の制裁金を科すことを発表した。

Facebook傘下の同メッセージングアプリは、欧州連合(EU)のデータ統括者であるアイルランドのDPCによって2018年12月から調査を受けている。その数カ月前には、WhatsAppのユーザーデータ処理方法をめぐって最初の苦情が申し立てられていた。同社のユーザーデータ処理方法は、欧州の一般データ保護規則(GDPR)の適用が2018年5月に開始されている。

関連記事:GDPR施行、「同意の強制」でさっそくFacebookとGoogleに対し初の提訴

WhatsAppに関する具体的な苦情がいくつも寄せられたにもかかわらず、2021年9月初旬に決定が下されたDPCによる調査は「自発的」な調査として知られているものであった。つまり、規制当局が調査自体のパラメータを選定し、WhatsAppの「透明性」に関する義務を監査することを選択したものだ。

GDPRの重要な原則の1つは、個人のデータを処理する事業体はその個人の情報がどのように使用されるかについて、その個人に対して明確でオープンかつ正直でなければならない、ということにある。

この度のDPCの決定(266ページに及ぶ)は、WhatsAppがGDPRで要求されている基準を満たしていなかったと結論づけている。

この調査では、WhatsAppが同サービスのユーザーと非ユーザーの両方に対する透明性に関する義務を果たしているかどうかが検討された(例えばWhatsAppは、ユーザーが他人の個人情報を含む電話帳を取り込むことに同意すれば、非ユーザーの電話番号をアップロードすることができる)。また、親会社のFacebookとのデータ共有に関してプラットフォームが提供する透明性にも注目していた(2016年にプライバシーUターンが発表された当時、大きな議論を呼んだが、GDPRの適用前だった)。

要約すると、DPCはWhatsAppによる一連の透明性侵害を発見した。GDPRの第5条1項(a)号、第12条、第13条、第14条に及ぶものである。

多額の制裁金を科すことに加えて、当局はWhatsAppに対し、ユーザーと非ユーザーに提供する透明性のレベルを向上させるために多くの措置を講じるよう命じている。このテック大手には、指示されたすべての変更を行うために3カ月の期限が与えられた。

WhatsAppはDPCの決定に対する声明の中で、調査結果に異議を唱え、この制裁金を「まったく不相応」と表現するとともに、控訴する意向を示し、次のように記している。

WhatsAppは、安全でプライベートなサービスを提供することに尽力しています。当社は提供する情報の透明性と包括性の確保に努めており、今後も継続的に取り組んでいきます。当社が2018年に人々に提供した透明性に関するこの度の決定には同意できず、制裁金はまったく不相応なものです。当社はこの決定に控訴する意向です。

最終的な決定が下されたDPC調査の範囲は、WhatsAppの透明性に関する義務への考慮に限定されていたことを強調しておきたい。

規制当局は、明示的に、広範囲の苦情について調査してこなかった。それはFacebookのデータマイニング帝国に対して3年以上も前から提起されているもので、そもそもWhatsAppが人々の情報を処理していると主張する法的根拠に関するものである。

したがって、DPCはGDPR施行のペースとアプローチの両方について批判を受け続けることになるだろう。

実際、今日に至るまで、アイルランドの規制当局は「ビッグテック」に対処するための国境を越えた大規模な訴訟において、わずか1つの決定しか下していなかった。Twitterに対して行われたもので、2020年の12月に遡るが、歴史的なセキュリティ侵害をめぐりこのソーシャルネットワークに55万ドル(約6045万円)の制裁金を科したというものだった。

これとは対照的に、WhatsAppの最初のGDPR罰則はかなり大きく、EUの規制当局がGDPRのはるかに深刻な侵害だと考えていることを反映している。

透明性は規制の主要原則の1つである。そして、セキュリティ侵害はずさんな慣行を示しているかもしれない一方で、アドテック帝国が大きな利益を上げるためにそのデータに依存する人々に対する、組織的な不透明さは、むしろ意図的なものに見える。確かに、それは間違いなくビジネスモデル全体のことである。

そして、少なくとも欧州においては、そのような企業は、人々のデータを利用して何をしているのかについて最前線に立たされることになるだろう。

GDPRは機能しているだろうか?

WhatsAppの決定は、GDPRが最も重要なところで効果的に機能しているかどうかについての議論を再燃させるだろう。世界で最も強力な、そしてもちろんインターネット企業でもある各社に対して。

EUの代表的なデータ保護規制では、越境事案の決定には影響を受ける全規制当局(27の加盟国)の同意が必要である。そのためGDPRの「ワンストップショップ」メカニズムは、主規制当局を介して苦情や調査を集めることにより、越境企業の規制上の義務を合理化しようとしているが(通常は企業がEU内に主要な法的根拠を持っている場合)、今回のWhatsApp事案で起きたように、主監督当局の結論(および提案された制裁)に対して異議を申し立てることができる。

アイルランドは当初、WhatsAppに対して5000万ユーロ(約65億円)という、はるかに少額の制裁金を科すことを提案していたが、他のEU規制当局がさまざまな局面でこの決定案に異議を唱えた。その結果、欧州データ保護会議(EDPB)が最終的に介入し、多様な論争を解決するための拘束力のある決定を下さなければならなかった(EDPBはこの夏に施行された)。

DPCはその(確かにかなり痛みをともなう)共同作業を通じて、WhatsAppに科される制裁金の額を引き上げるよう求められた。Twitterの決定草案で何が起きたかを反映して、DPCは当初、より軽微な制裁金を提案していたのだった。

EUの巨大なデータ保護機関の間の紛争を解決するには、明らかな時間的コストがかかる。DPCは12月にWhatsAppの決定草案を他のDPAに提出して審査を求めていたので、WhatsAppの不可逆的ハッシュ化などに関するすべての紛争を徹底的に洗い出すのに半年以上かかっている。その決定と結論に「修正」が加えられているという事実は、たとえ共同で合意していなくても、少なくともEDPBに押し切られた合意を経て到達しているのであれば、プロセスが遅くて不安定ではあるが機能していることを示している。少なくとも技術的な意味においては。

それでも、アイルランドのデータ保護機関は、GDPRに関する苦情や調査の処理における大きな役割について批判を受け続けるだろう。DPCが、どの問題を(ケースの選択や構成によって)詳細に調査し、どの問題を完全に排除すべきか(調査を開始していない問題や、単に取り下げられたり無視されたりしている苦情)を、本質的に選り好みしていると非難する声もある。最も声高な批判者たちは、DPCが依然として、EU全体におけるデータ保護権の効果的な実施の大きなボトルネックになっていると主張している。

この批判に関連した結論は、Facebookのようなテック大手は、欧州のプライバシー規則に違反するためのかなりのフリーパスをまだ得ている、というものである。

しかし、2億2500万ユーロの制裁金がFacebookのビジネス帝国の駐車違反切符に相当するものであることは事実だとしても、そのようなアドテック大手が人々の情報を処理する方法を変更するよう命じられたことは、少なくとも問題のあるビジネスモデルを大幅に改善するポテンシャルを秘めている。

とはいえ、このような広範な命令が期待される効果をもたらしているかどうかを判断するには、やはり時間を要することになるであろう。

欧州の長年のプライバシー活動家Max Schrems(マックス・シュレムス)氏によって設立されたプライバシー擁護団体noybは、この度のDPCのWhatsAppの決定に反応した声明で次のように述べている。「アイルランドの規制当局によるこの初の決定を歓迎します。しかし、DPCには2018年以来、年間約1万件の苦情が寄せられていますが、今回が初めての大きな制裁措置です。DPCはまた、当初は5000万ユーロの制裁金を科すことを提案しており、他の欧州データ保護当局によって2億2500万ユーロへの移行を余儀なくされました。それでもFacebookグループの売上高の0.08%にすぎません。GDPRは売上高の最大4%の制裁金を想定しています。このことは、DPCが依然として極めて機能不全に陥っていることを示しています」。

シュレムス氏はさらに、同氏とnoybは、DPCの前で保留中の訴訟をいくつか抱えており、その中にはWhatsAppも含まれていることを指摘した。

さらなる発言の中で同氏らは、DPCが他のEUのDPAによって強化を余儀なくされた制裁措置を筋の通った形で擁護するのかについて、また上訴プロセスの長さについての懸念を表明した。

「WhatsAppは確かに決定を不服として控訴するでしょう。アイルランドの裁判所のシステムにおいて、これは制裁金が実際に支払われるまでに何年もかかることを意味します。私たちのケースでは、DPCは事実上の基礎固めを行うことよりも、見出しに関心があるように私たちはしばしば感じていました。DPCが実際にこの決定を守るかどうかを見るのは、非常に興味深いことです。なぜなら、DPCは基本的に欧州のカウンターパートによって今回の決定を下さざるを得なかったからです。私はDPCが単純にこの訴訟に多くのリソースを割くことをしないか、アイルランドにおいてWhatsAppと「和解」することを想像することができます。私たちは、DPCが確実にこの決定に従って進めていることを確認するために、この件を注意深く監視していきます」。

【更新】別の反応声明で、Facebook傘下のWhatsAppに対して苦情を申し立てている欧州の消費者保護団体BEUCは、この決定を「遅すぎた」と評している。

デジタルポリシーのチームリーダーであるDavid Martin(デビッド・マーティン)氏は次のように付け加えた。「今回のことは、Facebookとその子会社に対して、データ保護に関するEUの規則を破ることは重大な結果をもたらすという重要なメッセージを送っています。また、アイルランドのデータ保護当局がEUのカウンターパートによってさらに厳格なスタンスを取ることを余儀なくされたことから、欧州データ保護委員会がGDPRの施行に果たした決定的な役割も今回示されました。私たちは、消費者当局がこの決定に留意し、BEUCがWhatsAppに対して起こしている、規約やプライバシーポリシーの最近の変更を受け入れるよう同社がユーザーに不当な圧力をかけたことに関する別の苦情について、速やかな対応がなされることを願っています」。

関連記事:フェイスブックのEU米国間データ転送問題の決着が近い

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

広告ターゲティング事業が脅かされつつあるフェイスブック、事業主向けに数々の新機能を発表

Facebook(フェイスブック)は米国時間9月16日、事業主向けにいくつかの新製品および新機能を発表した。これは、Apple(アップル)が新たなプライバシー機能を導入し、モバイル機器ユーザーがiOSアプリ上での追跡をオプトアウトできるようになったことから、Facebookの広告ターゲティング事業が脅かされていることを受けてのものといえるだろう。この巨大ソーシャルネットワーキング企業は、アップルのプライバシー方針変更が、Facebook広告から顧客を獲得している中小企業に影響を与えると繰り返し主張してきたが、アップルの変更を一切止めることはできなかった。それどころか、市場はユーザーのプライバシーに重点を置いた新しい時代へと移行しており、パーソナライゼーションやターゲティングは、よりオプトインな体験、つまりユーザーに許可する意思の表示を求めるようになっている。そのため、Facebookは企業広告について新たな方法で対処する必要があったのだ。

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Facebookがニュースフィードの投稿に企業の関連コンテンツを表示するテストを米国で開始

Facebookは、消費者を追跡する機能が低下した(追跡されることを自ら選択する消費者はほとんどいないという調査結果が出ている)ことから、企業が自社製品やサービスに関連があるユーザーに、より訴求できるようにする新機能をいくつか導入する。これには、顧客へのリーチ、顧客への広告、Facebookアプリによる顧客とのチャット、リード(見込み客)の生成、顧客の獲得などを可能にするアップデートが含まれる。

Facebookは2021年4月、ニュースフィードの投稿の下に表示される、美容、フィットネス、服飾など、興味のあるトピックをタップして、関連する他の企業のコンテンツを探索する方法のテストを開始した。この機能により、ユーザーは自分が好きそうな新しい企業に出会うことができ、Facebookは特定の種類のコンテンツを好むユーザーのデータセットを、独自に作成することができる。将来的には、この機能を広告ユニットにして、企業が料金を支払って上位表示させることも可能になるかもしれない。

しかし当面は、この機能を米国内のより多くのユーザーに拡大するとともに、Facebookはオーストラリア、カナダ、アイルランド、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、南アフリカ、英国で開始を予定している。

画像クレジット:Facebook

Facebookは、企業がもっと容易に顧客とチャットできるようにしたいとも考えている。企業はすでに、Messenger(メッセンジャー)、Instagram Direct(インスタグラム・ダイレクト)、WhatsApp(ワッツアップ)といった、Facebookが所有するさまざまなチャットプラットフォームで、人々にメッセージを送るよう促す広告を購入することができるが、今後は利用可能なすべてのメッセージングプラットフォームを選択できるようになり、会話が発生する可能性が最も高い場所に基づいて、広告に表示されるチャットアプリがデフォルトで設定されるようになる。

画像クレジット:Facebook

この取り組みの一環として、同社はWhatsAppをInstagramに結びつけることにした。多くの企業がInstagramで宣伝したり、ショップを運営したりしているのに、顧客とのコミュニケーションや質問への回答は、WhatsAppに依存していると、Facebookは説明している。そこで同社は、企業がInstagramのプロフィールに、WhatsAppのClick-to-Chat(クリック・トゥ・チャット)ボタンを追加できるようにした。

特にこの変更は、Facebookが別々のアプリをより密接に結びつけようとする動きを象徴するものだ。その背景には、規制当局が独占禁止の懸念から、Facebookの解体を検討しているという現在の状況がある。すでに同社は、MessengerとInstagramのメッセージングサービスを相互に接続しており、さらに最近では、MessengerをFacebookのプラットフォーム自体に直接統合し始めている。これらのことから、解体はさらに複雑なものになるだろう。

画像クレジット:Facebook

また、それに関連した変更として、企業は近日中に、Instagramアプリからクリックするだけで、直接ユーザーをWhatsAppに送り、チャットを始めることができる広告を作成できるようにもなる(Facebookはすでにこのような広告を提供している)。

今回のニュースとは別に、FacebookはWhatsApp内に新しいビジネスディレクトリを設けることも発表した。これによって消費者は、同チャットプラットフォーム上でもショップやサービスを探せるようになる。

その他の変更は、Facebook Business Suite(フェイスブック・ビジネス・スイート)のアップデートとして導入される。これを利用する企業は「Inbox(受信箱)」でeメールを管理したり、リマーケティングメールを送信できるようになる他、新たに導入される「File Manager(ファイルマネージャー)」を使って簡単に投稿コンテンツを作成・管理することや、異なるバージョンの投稿をテストして、どの投稿が最も効果的かを比較することもできるようになる。

画像クレジット:Facebook

それ以外にテストが行われる新製品としては、Instagramにおける有料の有機的なリードジェネレーション(見込み客生成)ツールや、Messengerで会話を始める前に顧客にいくつかの質問に答えてもらう見積もり依頼、そして小規模事業主がFacebook広告の利用を始めるために提供される特典などがある。これにはFacebook広告クーポン、会計ソフトウェア「QuickBooks(クイックブックス)」とグラフィックツール「Canva Pro(キャンバ プロ)」の3カ月間無料アクセスなどが含まれる。

画像クレジット:Facebook

また、Facebookは「Work Accounts」と呼ばれるもののテストも開始する。これにより事業主は、個人のFacebookアカウントとは別に、この仕事用アカウントでBusiness Manager(ビジネス・マネージャー)などの企業用製品にアクセスできるようになる。企業は従業員に代わってこれらのアカウントを管理したり、シングルサインオンなどの企業向け機能を利用することも可能になる。

Work Accountsは、年内に少数の企業を対象としてテストを行い、2022年には利用可能な範囲を拡大していく予定であると、Facebookは述べている。

その他の広告に関する取り組みとしては、クリエイターや地元企業のコンテンツをより多く取り入れることや、ユーザーが閲覧するコンテンツをコントロールできる新機能などが計画されているというが、これらの変更点については現時点では詳細が明らかにされていない。

今回発表された新機能のほとんどは、すでに展開が始まっているか、近日中に導入される予定だ。

画像クレジット:Sean Gallup / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ウェブ向けクリエイティブの制作・改善をAIとデータを活用し実現する「AIR Design」のガラパゴスが約11億円調達

ウェブ向けクリエイティブの制作・改善をAIとデータを活用し実現する「AIR Design」のガラパゴスが約11億円調達

ウェブマーケティング・ウェブ広告に必要なクリエイティブ(バナー・ランディングページ・動画)の制作および改善をAIとデータを活用し実現する「AIR Design」を手がけるガラパゴスは9月1日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による約11億円の資金調達を発表した。引受先として、既存株主のArchetype Ventures、みずほキャピタル、Globe Advisors Venturesに加え、新たにSTRIVE、THE FUND(シニフィアン が運営するグロース・キャピタル)、DIMENSION、THE GUILDの計7社が参加した。調達した資金は、AIR Designのプロダクト開発とマーケティング、採用強化にあてる。

AIR Designは、2019年秋にサービスを開始。2年弱で300社以上の広告制作に導入されたという。この成長を加速させるべく、今後は「デマンド・サイド(顧客開拓)」「サプライ・サイド(制作キャパシティ)」「プロダクト・サイド(システム開発)」の3方向に注力するとしている。

ウェブ向けクリエイティブの制作・改善をAIとデータを活用し実現する「AIR Design」のガラパゴスが約11億円調達

  • デマンド・サイド(顧客開拓):AIR Designの導入パートナーとしての代理店ネットワーク構築
  • サプライ・サイド(制作キャパシティ):社員や外注パートナーとしてのデザイナーネットワーク構築
  • プロダクト・サイド(システム開発):AIとデータを活用したSaaSプロダクトの開発

ガラパゴスは、「プロセスとテクノロジーで人をよりヒトらしく」をフィロソフィーに、属人性が強く再現性に乏しいデザイン領域のDXを推進し、コストパフォーマンスに優れたクリエイティブを広告主に提供するとともに、デザイナーがルーチンワークから解放され、スキルアップと付加価値向上に専念できる環境作りを目指すとしている。

不動産の物件確認をAIで自動化する「スマート物確」のライナフがLIFULL HOME’Sと「おとり広告」撲滅の取り組み

不動産の物件確認をAIで自動化する「スマート物確」のライナフがLIFULL HOME’Sと「おとり広告」撲滅の取り組み

ライナフは8月26日、LIFULL(ライフル)とともに、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」に掲載された、顧客を寄せ付けるために表示される架空広告「おとり広告」を自動的に非掲載にする取り組みを、三菱地所ハウスネット協力のもと実施した。不動産における物件情報の透明性・精度の向上を目的とするものという。

また同実証実験の結果として、特に東京都23区の副都心部エリアで、1人暮らし向け物件が非掲載対象のボリュームゾーンであることもわかった。

物件情報サイトに掲載される物件広告の多くは、物件を仲介する各仲介会社によって掲載・非掲載の情報更新が行われる。仲介会社は、定期的に管理会社へ電話などで物件確認(物確)をすることで、その物件の最新情報を取得し、広告掲載に反映している。

ただそのつど手動で更新作業を行うため、どうしてもタイムラグが発生してしまい、意図せず成約済みの広告が掲載されたままになってしまうことがあるという。またその状態を悪用し、人気物件の広告をあえて掲載させたままにし、意図的に問い合わせを増やす行為も一部で横行している。

こうした悪質な広告を「おとり広告」といい、不動産業界において根深い問題となっている。おとり広告については、宅地建物取引業法32条、不動産の表示に関する公正競争規約の21条によって禁止されており、物件の実在有無に関わらず、取引のできない物件や、取引する意志のない物件広告などが該当するという。

ライナフは、これまでも不動産業界の健全化のためにIT技術の提供やパートナー企業との協業を通じて取り組んでおり、今回長らくまん延するおとり広告排除に向けて、LIFULL HOME’Sと連携し、自動非掲載にできる仕組みを導入した。

ライナフが提供する「スマート物確」と「LIFULL HOME’S」をシステム連携

取り組み内容は、ライナフのAIによって物件確認を自動化するサービス「スマート物確」とLIFULL HOME’Sをシステム連携させることで、自動でLIFULL HOME’Sに掲載される「おとり広告」を非掲載にするというもの。スマート物確から得られる、管理会社が保有する入居の募集・非募集の情報をLIFULL HOME’Sと照合することで、人の手を介すことなくLIFULL HOME’Sへの物件広告を非掲載にできるとしている。

また今回、スマート物確を利用する三菱地所ハウスネット協力のもと、スマート物確に登録されている約1万5000戸の管理物件を対象に実証実験を行った。その結果、1カ月間で1000戸以上の非掲載対象の広告を検知し、非掲載処理を実施した。また、非掲載対象のボリュームゾーンが、東京都23区の副都心部エリア、家賃が10万円〜12万円台、1人暮らし向けの物件であることがわかったという(検知されたLIFULL HOME’S掲載物件を賃料・間取り・エリアで件数集計した結果より。集計期間:2021年5月12日〜6月30日)。

ライナフは、同取り組みによって、仲介会社は管理会社へ物確する手間がなくなることに加え、手動の情報更新作業がなくなるため人為的なミスがなくなり、業務効率化が図れるとしている。

さらにライナフは、企業としてのコンプライアンス遵守を挙げている。消費者に対しては、誤った広告表示がなくなることで、正しい情報を発信できるようになる。スマート物確とのシステム連携によって自動管理が可能になるため、管理会社・仲介会社・消費者に至るまで、物件情報の透明性・統一性を保てるとしている。

2014年11月設立のライナフは、AIとIoTの最新技術を活用した不動産管理ソリューション「ライナフスマートサービス」を展開。美和ロックと共同開発の住宅向けスマートロック「NinjaLockM」をはじめ、入居前のリーシング業務から入居後の物件管理に至るまで、不動産管理業務を効率化するサービスを提供している。

スマート物確は、AIによる音声案内で物件の確認応対を自動化するサービス。あらかじめ管理する物件情報をスマート物確に登録しておくことで、24時間365日、物件確認の電話にAIが応答するという。電話に加え、LINEでも物確が可能。