ノーコードで非技術者でも使えるコンピュータービジョンを提供するMobius

ベルリンのMobius Labsが、同社のコンピュータービジョン訓練プラットフォームの需要増に応えるために、520万ユーロ(約6億8000万円)の資金調達を完了した。このシリーズAの投資ラウンドをリードしたのはVentech VCで、これにAtlantic LabsとAPEX Ventures、Space Capital、Lunar Ventures、および一部のエンジェル投資家が参加した。

ユーザーは同社が提供しているSDKにより、若干の訓練データのあるカスタムのコンピュータービジョンモデルを自分で作ることができる。一般的な類似製品として売られているソフトウェア製品には、ユーザーの特殊なユースケースに応じた細かいカスタム化ができないものが多い。

また同製品は「ノーコード」を謳っており、非技術系のユーザーでも使えるという。

Mobius LabsのプラットフォームはSDKであり、オンプレミスでもオンデバイスでもどちらでもデプロイできる。顧客がクラウドサービスに接続してAIツールを利用する、というタイプの製品ではない。

CEOでチーフサイエンティストのAppu Shaji(アップ・シャジ)氏は、次のように語る。「弊社のカスタム・トレーニング・ユーザー・インターフェースは、極めてシンプルで使いやすく、事前に何らかの技術知識を必要とすることはまったくありません。このところ私たちの目に入ってくるトレンドは、AIから最大の価値を引き出せるのは技術系の人間ではない、ということです。むしろ多いのは、報道やクリエイティブエージェンシーで仕事をしているコンテンツマネージャーや、宇宙企業のアプリケーションマネージャーなどです。日常的に、視像(ビジョン)の最も近いところにいるのが彼らであり、彼らはAIのエキスパートやデベロッパーチームが助けに来るのを待たずに仕事をしています」。

2018年に創業したMobius Labsでは、現在、30社の顧客企業がそのツールを使ってさまざまなユースケースを実装している。その用途は、カテゴリー分類やリコメンデーション、予測、そして一般的に「ユーザーやオーディエンスを彼らのニーズに合った視覚的コンテンツに接続する」ことだ。当然のことながら、報道や放送、ストックフォトなどの利用が多いが、実際には同社ユーザーの業界はもっと多様で、それぞれが同社の成長に寄与している。

ユーザー企業の規模も多彩で、スタートアップや中小企業もいる。ただしメインは、大量のコンテンツを扱うグローバルなエンタープライズだ。そのため、今でもメディアやビデオ関連の利用が最も多い。しかしながらそれでも、現在の同社は地理空間情報や地球観測といった多様な業種をターゲットとして狙っている。

現在の社員数は30名だが、過去1年半で倍増している。今度の資金で、今後1年以内にさらに倍増し、特にヨーロッパと米国を中心に地理空間情報方面の顧客を開拓したい、という。売り上げも前年比で倍増しているが、顧客をより多分野に広げることにより、さらなる増大を狙っている。

「主な対象業種はビジュアルデータの扱い量が多い業種です。ビジュアルデータの扱い量が多いという点では、地理空間情報の分野を逃すべきではありません。しかし、彼らが持つ膨大な量の生のピクセルデータは、写真などと違って他の役には立たないものだけどね」とシャジ氏はいう。

「彼らが私たちのプラットフォームを利用する例として、川に沿った地域の広がりを調べたければ、衛星からデータを集めて、それらを整列しタグづけして分析するだろう。今はそれを、手作業で行っている。私たちが開発した技術を、いわば軽量級のSDKとして使えば、それを衛星上に直接デプロイして、機械学習のアルゴリズムで分析できる。現在、実際に私たちはそのような観測画像分野の衛星企業と一緒に仕事をしています」。

シャジ氏が主な競合他社として挙げるのは、ClarifaiGoogle Cloud Vision APIだ。「どちらも大きくて強い相手ですが、彼らにできないことが私たちにはできます。彼らのソリューションと違い、私たちプラットフォームはコンピュータービジョンの専門家でない人が利用できる。機械学習のモデルの訓練を、技術者でない人が誰でもできるようになれば、コンピュータービジョンに誰もがアクセスでき、理解できます。仕事の肩書はなんでもいい」とシャジ氏はいう。

関連記事
Googleの画像認識/分類API、Cloud Vision APIが誰でも使える公開ベータへ
Clarifaiが3000万ドルを調達、ビジュアル検索技術をディベロッパーへ

「もう1つの重要な差別化要因は、クライアントデータの扱い方です。私たちはソリューションをSDKの形で提供するため、オンプレミスで完全にローカルにクライアントのシステム上で動作します。データが、当社に戻ってくることはありません。私たちの役割は、人々が自分でアプリケーションを構築し、自分たちのものにできるようにすることです」。

コンピュータービジョンのスタートアップはここ数年、買収のターゲットとして人気がある。一部のITサービス企業は「コンピュータービジョン・アズ・ア・サービス」を看板に掲げるスタートアップを買って自分のメニューを増やそうとしている。またAmazonやGoogleのような巨人は、自前のコンピュータービジョンサービスを提供している。しかしシャジ氏によると、この技術は今までとは異なる段階にあり、「大量採用」の準備が整っていると指摘している。

「私たちが提供しようとしているのは、技術者に力をつけるソリューションではなく、クライアント自身がアプリケーションを自分で作れるためのソリューションです」とシャジ氏は現在の競合状況についていう。「私たちのソリューションはオンプレミスで動き、私たちがクライアントデータを見ることはないため、データのプライバシーも完全です。しかも軽量級の使いやすいソリューションであるため、スマートフォンでもラップトップでも、あるいは衛星上でも、さまざまなエッジデバイスにデプロイできます」。

投資家を代表してVentech VCのパートナーStephan Wirries(ステファン・ウィリーズ)氏は次のように語っている。「Mobius LabsのAppuと彼のチームは、コンピュータービジョンの分野では他に類のないものです。そのSuperhuman Visionと呼ばれるプラットフォームは、感動的なほど革新的であり、新しいオブジェクトを見つけるための訓練が比較的簡単にできるし計算効率もいい。今後さまざまな産業がAIによって変わっていく中で、Mobius Labsはヨーロッパのディープテクノロジーの革新的なリーダー兼教育機械にもなることができるだろう。

関連記事:Googleの画像認識/分類API、Cloud Vision APIが誰でも使える公開ベータへ

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

機械学習のデベロッパーツールを開発するExplosionはオープンソースと商用プロダクトを併用

オープンソースの機械学習ライブラリと一連の商用のデベロッパーツールを併用してサービスを提供するExplosionは米国時間9月2日、1億2000万ドル(約131億7000万円)の評価額による600万ドル(約6億6000万円)のシリーズAを発表した。SignalFireはこのラウンドをリードし、同社は投資額は評価額の5%に相当するという。

この投資にともない、SignalFireのOana Olteanu(オアナ・オルテアヌ)氏が取締役会に加わる。なおこのラウンドには、同じ評価額による1200万ドル(約13億2000万円)の追加投資の保証が含まれている。

Explosionの共同創業者でCEOのInes Montani(イネス・モンタニ)氏は、次のように語っている。「基本的にExplosionはソフトウェア企業であり、AIと機械学習と自然言語処理のデベロッパーツールを開発しています。目標はデベロッパーの生産性を上げ、自然言語処理をもっと利用していただき、大量のテキストを理解できるように機械学習のモデルを訓練し、それによって工程の一部を自動化していただくことです」。

同社が発足したのは2016年で、モンタニ氏がベルリンで共同創業者のMatthew Honniba(マシュー・ホニバ)氏に会ったときだ。そのときモンタニ氏はオープンソースの機械学習ライブラリspaCyを書いていた。その後、そのオープンソースのプロジェクトは4000万回以上ダウンロードされた。

2017年、同社は機械学習のモデルのためにデータを生成する商用プロダクトProdigyを加えた。モンタニ氏は次のように語っている。「機械学習はコード、プラス、データであるため、その技術を有効に利用するためには、常にモデルを訓練してカスタムのシステムを作らなければなりません。なぜなら、最も価値があるものは、ユーザーにとって固有の問題(一般性汎用性のない)と、そのビジネスそして、何を見つけたいのかということです。そのため訓練用のデータを作って機械学習のモデルを訓練するという部分には、ほとんど注意を払いません」。

今回資金を調達した最大の理由が、Prodigy Teamsと呼ばれる同社の次のプロダクトだ。モンタニ氏によると「Prodigy Teamsはユーザーに対しホスティングされるサービスで、ユーザー管理とコラボレーションの機能をProdigyに追加します。しかもそれをセキュリティ完備のクラウドで動かすため、Prodigyが好まれている最大の理由、すなわちデータの守秘が損なわれず、いかなるデータもサーバーがそれを見る必要性がありません」。そのためには、データをプライベートクラウドにある顧客のプライベートクラスターに置き、それからパブリックなクラウドサービスにあるProdigy Teamの管理機能を使っていく。

今日では、MicrosoftやBayerなどおよそ500社がProdigyを利用し、また数百万のオープンソースユーザーによる大きなコミュニティもある。Explosionわずか6名の初期の社員たちで、これらのシステムをすべて開発したが、年内には20名に増員したいとのこと。

ダイバーシティに関して、モンタニ氏の意見では雇用に際してこだわり過ぎると、それ自体が問題になる。「何も考えずに結果的にダイバーシティが実現するのはいいけど、義務感に駆られてダイバーシティを気にするようになると、それ自体が問題になる」と彼女はいう。

「現在、自分の会社に20代の白人男性が50名いて、そこにいわゆるダイバーシティのために20代の非白人男性を入れようとすると、なかなかうまくいかずそれ自体が問題になります。しかし私たちの場合、いい人を雇おうとしているだけなので、いい人だけを採用していたら自然にダイバーシティになる。スタートアップの教科書のようなものを気にし始めたら、いろいろなことで制約にぶつかる」。

彼女によると、彼女自身はこれまで、出来合いの教科書のようなものを気にしたことがない。「資金を調達するのも今回が初めてだし、チームは自然に成長した。外部資金を導入するまでは、会社の利益と独立性だけを気にしていた」と彼女は言っている。

しかしお金以上に問題になるのが、モンタニ氏によると、オープンソースに対する投資家の理解だ。会社のあらゆる部分を大きくできるだけの資本を持っているだけでなく、そのビジネスのオープンソースの側面を理解できる投資家を見つける必要がある。「オープンソースはユーザーと顧客と従業員のコミュニティです。彼らは今生きてる人間であり、スタートアップというゲームの『歩(ふ)』ではなく、しかもゲームですらありません。リアルな人間のリアルな営みです」とモンタニ氏はいう。

「彼らは単なる私の手足ではない。だから資本と引き換えに少量の株を売ったからといって、オープンソースは依然として私たちの企業の核であり、妥協できない部分です」とモンタニ氏は言っている。

画像クレジット:Usis/Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

円滑なカスタマーサービスのために、あるアクセントをリアルタイムで別のアクセントに変換させるSanas

カスタマーサービス産業では、アクセントが仕事のさまざまな側面を左右する。本来アクセントには「良い」も「悪い」もないはずだが、現在のグローバル経済(とはいえ明日のことは誰にもわからないが)では、米国人や英国人のアクセントのように聞こえることには価値がある。多くの人がアクセントを補正するトレーニングを受けていいるが、Sanas(サナス)はそれとは違うアプローチを採用するスタートアップだ。同社は音声認識と音声合成を利用して、ほぼリアルタイムで話し手のアクセントを変える。同社はまた550万ドル(約6億1000万円)のシード資金を調達している。

同社は、機械学習アルゴリズムに訓練を施し、人間の発話をすばやくローカルに(つまりクラウドを使わずに)認識し、同時にその同じ単語をリストから指定したアクセントで(または相手の会話から自動的に検出したアクセントで)出力する。

画像クレジット:Sanas.ai

このツールはOSのサウンドスタックに直接組み込むことができるので、ほとんどのオーディオ / ビデオ通話ツールですぐに使用することができる。現在同社は、米国、英国、フィリピン、インド、ラテンアメリカなどの拠点で、数千人規模のパイロットプログラムを運用している。年内には米国、スペイン、英国、インド、フィリピン、オーストラリアのアクセントに対応する予定だ。

正直なところ、最初はSanasのようなアイデアには賛成できなかった。それは、自分のアクセントが優れていて他の人を下に見ているような偏狭なな人たちに譲歩しているように感じたからだ。偏狭な人たちを許容する方向で、技術が問題を解決する……。いいだろう!

だが、まだその気持ちは少し残っているものの、やがてそれだけではないことに私は気づいた。基本的には、自分と同じようなアクセントで話している人の方が、理解しやすいということだ。しかし、カスタマーサービスやテクニカルサポートは巨大な産業であり、実際には顧客がいる国以外の人びとによって行われていることが多い。この基本的な断絶を改善するには、初級レベルの労働者に責任を負わせる方法か、テクノロジーに責任を負わせる方法がある。どちらの手段をとるにせよ、自分を理解してもらうことの難しさは変わらず、なんとか解決しなければならない。自動化されたシステムはそうした仕事をより簡単に実現し、より多くの人が自分の仕事をできるように手助けしてくれるだけのことだ。

もちろんこれは魔法ではない。以下のクリップからわかるように、話者の特徴や調子は部分的にしか保持されておらず、結果としてかなり人工的な音になっている。

しかし、技術は進歩を続けているので、他のスピーチエンジンと同様、使えば使うほど良くなっていくだろう。また、元の話者のアクセントに慣れていない人にとっては、米国人のアクセントの方が理解しやすいかもしれない。つまりサポート役の人にとっては、自分の電話がより良い結果をもたらすことになり、誰もが得をすることになる。Sanasによると、パイロット版はまだ始まったばかりなので、この運用によるちゃんとした数字はまだ出ていないものの、試験運用によっても、エラー率が大幅に減少し、対話効率が向上していることが示唆された。

いずれにせよ、Human Capital、General Catalyst、Quiet Capital、DN Capitalが参加した550万ドル(約6億1000万円)のシードラウンドを獲得できたことは喜ばしい。

今回の資金調達を発表したプレスリリースで、CEOのMaxim Serebryakov(マキシム・セレブリャコフ)氏は「Sanasは、コミュニケーションを簡単で摩擦のないものにするために努力しています。これにより人びとは、どこにいても、誰とコミュニケーションをとろうとしても、自信を持って話しお互いを理解することができるのです」と語っている。そのミッションに反対することはできない。

アクセントや力の差といった文化的・倫理的な課題がなくなることはないだろうが、Sanasが提供する新しい試みは、プロとしてコミュニケーションをとらなければならないのに、自分の話し方がその妨げになっていると感じている多くの人にとって、強力なツールになるだろう。これは、たとえ完璧な世界であったとしても、お互いをよりよく理解するために、探求し議論する価値のあるアプローチだ。

関連記事
LINEの論文6本が世界最大規模の音声処理関連国際学会「INTERSPEECH 2021」で採択
東京大学齊藤研究室とバベルがAIエンジニアコミュニティ設立、wav2vec 2.0利用し日本語関連OSSプロジェクト開始
異音検知プラットフォームや議事録自動作成システムを手がける音声認識AIスタートアップ「Hmcomm」が4.2億円調達
画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

LINEの論文6本が世界最大規模の音声処理関連国際学会「INTERSPEECH 2021」で採択

LINEの論文6本が世界最大規模の音声処理関連国際学会「INTERSPEECH 2021」で採択

LINEは8月30日、世界最大規模の音声処理に関する国際会議「INTERSPEECH 2021」において、国内トップクラスとなる6本の論文が採択されたことを発表した。これらの論文は、8月30日より9月3日にかけてオンライン開催される「INTERSPEECH 2021」で発表される。

INTERSPEECHは、International Speech Communication Association(ISCA)が主催する国際会議で、2021年は22回目の開催となる。約2000件の投稿から約1000件の論文が採択されている。

採択されたのは、高速な音声認識を実現する手法として注目されている非自己回帰型音声認識の性能向上に関するもの、音声の適切な位置に無音区間(ポーズ)を挿入することで合成音声の品質を向上させる句境界予測の研究に関するもの、NAVERと共同で進めているParallel WaveGAN(PWG)をより高品質にするための取り組みとなるMulti-band harmonic-plus-noise PWGの研究に関するものなどとなっている。

LINEは、AI事業を戦略事業の1と位置付け、NAVERとの連携も行いながら、AI関連サービスや新機能の創出を支える技術の基礎研究に力を入れているという。データ基礎開発、データ分析、機械学習、AI技術開発、基礎研究の各チームが事業や担当領域を超えて連携し、研究、開発、事業化のサイクルのスピードアップを目指しているとのことだ。

「INTERSPEECH 2021」に採択された6本の論文は以下のとおり。

  • Relaxing the Conditional Independence Assumption of CTC-based ASR by Conditioning on Intermediate Predictions」(中間予測の条件付けによるCTCベースの自動音声認識における条件付き独立性仮定の緩和)。Jumon Nozaki、Tatsuya Komatsu
  • 「Acoustic Event Detection with Classifier Chains」(分類子チェーンによる音響イベントの検出)。T.Komatsu、S.Watanabe、K.Miyazaki、T.Hayashi
  • Phrase break prediction with bidirectional encoder representations in Japanese text-to-speech synthesis」(日本語の文章読み上げ合成における双方向エンコード表現を使用した句境界予測)。Kosuke Futamata、Byeongseon Park、Ryuichi Yamamoto、Kentaro Tachibana
  • 「High-fidelity Parallel WaveGAN with Multi-band Harmonic-plus-Noise Model」(マルチバンド高調波ノイズモデルを使用した高忠実度並行WaveGAN)。Min-Jae Hwang、Ryuichi Yamamoto、Eunwoo Song、Jae-Min Kim
  • 「Efficient and Stable Adversarial Learning Using Unpaired Data for Unsupervised Multichannel Speech Separation」(教師なしマルチチャンネル音声分離のための対応のないデータを用いた効率的で安定的な敵対的学習)。Yu Nakagome、Masahito Togami、Tetsuji Ogawa、Tetsunori Kobayashi
  • 「Sound Source Localization with Majorization Minimization」(メジャー化最小化による音源定位)。Masahito Togami、Robin Scheibler

金融業界が機械学習を簡単に利用できるようにする「Taktile」

金融サービス企業のための機械学習プラットフォームに取り組む新しいスタートアップのTaktileを紹介しよう。機械学習を金融商品に生かそうとする企業は同社が初めてではない。しかし同社はAIモデルを簡単に使い始め、移行できるようにすることで競合との差別化を狙う。

数年前、どのピッチのプレゼンにも「機械学習」と「AI」のフレーズがあったころ、金融業界に的を絞ったスタートアップもあった。銀行や保険会社は山ほどデータを集めているし顧客の情報もたくさん知っているのだから当然だ。銀行や保険会社はこうしたデータを使って新しいモデルをトレーニングし、機械学習アプリケーションを展開できるだろう。

新しいフィンテック企業は社内にデータサイエンスチームを作って自社プロダクトのための機械学習に取り組み始めた。Younited CreditOctoberといった企業はリスク予測ツールを融資の判断に役立てている。これらの企業は独自にモデルを開発し、過去のデータに基づいてそのモデルを動かすと有効であることを把握している。

しかし金融業界に古くからある企業はどうだろうか。既存の銀行のインフラと統合できるプロダクトの開発に取り組んでいるスタートアップはいくつかある。AIを使って疑わしい取引を見つけたり返済能力を予測したり保険請求の不正を検知したりすることができる。

保険に特化したShift Technologyのように成長しているスタートアップもある。しかし概念実証をしてそこで終わってしまうスタートアップが多い。その先に、長期にわたる有意義なビジネスの契約はない。

Taktileは取り入れやすい機械学習プロダクトを開発することでこうした問題を克服したいと考えている。同社はIndex Venturesが主導するシードラウンドで470万ドル(約5億1700万円)を調達した。このラウンドにはY Combinator、firstminute Capital、Plug and Play Ventures、数人のビジネスエンジェルも参加した。

同社のプロダクトはそのまま使えるモデルでもカスタマイズモデルでも動作する。顧客は自社のニーズに応じてモデルをカスタマイズできる。モデルはTaktileのエンジン上でデプロイされメンテナンスされる。顧客のクラウド環境でもSaaSアプリケーションとしても動作する。

導入後はAPIコールを使ってTaktileのインサイトを活用できる。プロダクトに他社のサービスを統合するのと同様の動作だ。Taktileは自動で下された決定に関する説明や詳細なログを提供して、できるだけ透明性を高めようとしている。データソースとしては、データウェアハウスやデータレイクのほかERPやCRMシステムにも対応している。

まだ初期段階のスタートアップであり、Taktileのビジョンが成功するかどうか気になるところだ。同社はすでに経験豊富な支援者たちを説得している。今後に注目しよう。

画像クレジット:Taktile

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

機械学習で消費者トレンドをリアルタイムとらえ企業の迅速な対応をサポートするAi Palette

消費者製品の製品開発は、調査やプロトタイピングやテストなどで2年以上を要する場合もある。しかしソーシャルメディアのある社会では、人びとはトレンドがもっと早く店頭でカタチになることを期待している。2018年に創業されたAi Paletteは、機械学習を利用してトレンドをリアルタイムで発見し、早ければ数カ月でその商品開発を実現させる。すでにクライアントとしてDanone(ダノン)やKellogg’s(ケロッグ)、Cargill(カーギル)、Dole(ドール)などを抱える同社は、米国時間8月24日、pi VenturesとExfinity Venture Partnersがリードする応募超過のシリーズAで440万ドル(約4億8000万円)を調達したことを発表した。

このラウンドにはさらに、これまでの投資家であるフードテックのベンチャーAgFunderとDecacorn Capital、そして新たな投資家としてAnthill Venturesが参加した。これでAi Paletteの総調達額は、2019年のシードラウンドを含めて550万ドル(約6億円)になる。

Ai Paletteはシンガポールに本社があり、主な技術者たちはベンガルールにいる。顧客ベースは東南アジアに始まり、その後中国や日本、米国、ヨーロッパへと拡大した。

関連記事:人が食べる限りなくならない、フードテック投資機会の現在とこれから

Ai Paletteは現在15の言語をサポートし、したがって多くの種類のAIベースのツールを利用して消費者向けパッケージ製品(CPG)のトレンドを予想できる。今回の投資は主に市場拡大と、特にデータサイエンス方面の技術者の増員に当てられる。

Ai Paletteを2018年に創業したCEOのSomsubhra GanChoudhuri(ソンブラ・ガンチョウドリ)氏とCTOのHimanshu Upreti(ヒマンシュウ・ウプレティ)氏は、ロンドンのインキュベーター / アクセラレーター事業であるEntrepreneur Firstで出会った。それまでガンチョウドリ氏は、世界最大の香料メーカーGivaudanで営業とマーケティングを担当していた。その仕事を通じて彼は、スナックやファストフードや包装製品などさまざまな消費者製品のイノベーションの過程を見てきた。彼は見てきた企業の多くが、2年という製品のイノベーションサイクルでは需要に追いつけないことを理解し始めていた。そこで以前Visaなどで仕事をしたことのある、高度な機械学習とビッグデータ分析のエキスパートであるウプレティ氏は、数ペタバイトという大量のデータを処理できるモデルを作った。

Ai Paletteの最初のプロダクトであるForesight Engineは、原材料や香味などのトレンドを調べて、その人気の理由を分析し、需要の継続期間を予想する。それはまた、まだ満たされていない需要である意味する「空白の商機」を見つける。例えば、新型コロナ(COVID-19)の流行で、人々の食生活が変わった。1日に6回もテレビを観ながら健康スナックを食べるようになったため、企業は新しい種類の製品を発売するチャンスがあるとガンチョウドリ氏はいう。

ウプレティ氏によると、Foresight Engineは状況に即した情報も提供できる。「例えば、ある食品が外出先で食べられているのか、それともカフェで食べられているのか。社会的的に消費されているのか、個人的に消費されているのか。子供の誕生日会では何が流行っているのか?特定の製品や成分について、画像は製品の組み合わせや製品のフォーマットに関する情報を提供します」。

このプラットフォームが利用するデータのソースは、ソーシャルメディア、検索、ブログ、レシピー、メニュー、企業のデータなどさまざまだ。ガンチョウドリ氏によると「各市場で人気の高いデータセットは分析に際してプライオリティを上げる。たとえば地元のレシピやフードデリバリーアプリには、そのときのトレンドが見られることが多い。そしてそれらのデータを時系列で追えば、かなり高い確度で成長の軌跡を判断できる」。

たとえばAi Paletteが新製品開発に貢献した例として、特定の国のポテトチップやソーダが挙げられる。彼らはForesight Engineを使って人気上昇中のトレンドを知るだけでなく、長期的な人気になりそうなものを知り、無駄な投資を避けようとした。

パンデミックの間、Ai Paletteの顧客の多くが、そのツールを使って新しいトレンドや消費者の行動パターンに応じようとした。中でも多くの市場で関心が高かったのは、健康食品や免疫力を高める食材だ。たとえば東南アジアではレモンとにんにくの需要が増え、米国ではアセロラやマリファナがトレンドになった。

一方、中国では健康より味が優先されたとガンチョウドリ氏はいう。「おそらく平常時感覚への回帰が優先されたのではないか」とのこと。さらにインドでは、パンデミック対策として商店は棚持ちの良い商品を歓迎したが、消費者の多くは退屈をまぎらわすために、一風変わったスナックを求め、中でもキムチなどの韓国系香辛料に人気があった。

Ai Paletteは使える言語が多いため、機械学習を利用する他のトレンド予測プラットフォームとの差別化という点で有利だ。現在サポートしている言語は、英語、簡体中国語、日本語、韓国語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語、マレー語、タガログ語、スペイン語、フランス語、ドイツ語となる。今後はヨーロッパ各国やメキシコ、ラテンアメリカ、中東もターゲットにする予定だという。

画像クレジット:Ai Palette

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Hiroshi Iwatani)

サイバー脅威を「狩る」XDRセキュリティ技術拡大のためHuntersがシリーズB33億円を調達

ランサムウェアやサプライチェーンセキュリティへの攻撃が増加する中、組織はより迅速に脅威を検知することが求められている。米国時間8月24日、Bessemer Venture Partners(BVP)が主導する3000万ドル(約33億円)のシリーズBラウンドを調達したと発表したHunters(ハンターズ)は、この機会を生かそうとしているスタートアップだ。

マサチューセッツ州ニュートンとイスラエルのテルアビブにオフィスを構えるHuntersは、2018年に設立され、これまでに総額5040万ドル(約55億3000万円)を調達している。同社は2019年5月に、YL VenturesとBlumberg Capitalが主導して540万ドル(約5億9000万円)のシードラウンドを調達した。続いて2020年6月に、Microsoft(マイクロソフト)のM12(旧Microsoft Ventures)とU.S. Venture Partnersが参加する1500万ドル(約16億5000万円)のシリーズAラウンドを実施した。2020年12月には、Snowflake VenturesがHuntersに出資する追加の成長資金調達ラウンドが発表された。

関連記事:セキュリティ脅威を芽の段階で狩るHuntersにデータクラウドのSnowflakeが追加投資

このスタートアップは、さまざまなソースやセンサーからデータを取り込む「Extended Threat Detection and Response(XDR)」と呼ばれる技術を構築している。XDRは、それらのデータを関連づけ分析し、潜在的な脅威を発見するための「ハント」を行う。ハンターズの共同創業者兼CEOであるUri May(ウリ・メイ)氏は、同社のOpen XDRプラットフォームが、攻撃者が組織へのアクセスや悪用に使用する戦術、技術、手順(TTPs:tactics, techniques and procedures)の特定に役立つと説明している。その目的は、潜在的なセキュリティインシデントの発見までの時間を短縮し、対応までの時間を加速させることにある。

Snowflake Venturesが同社に投資しているだけでなく、SnowflakeがHuntersのパートナーとして関与していることも、Bessemerを惹きつけた理由の1つだ。BVPのパートナーであるAlex Ferrara(アレックス・フェラーラ)氏は、彼の視点では、Huntersと同じ分野のベンダーは他にもあるが、Snowflakeのようなクラウドデータウェアハウスベンダーと提携しているところはなく、これが大きな差別化要因になったと述べている。しかし概して、フェラーラ氏と彼の会社にとってHuntersが興味深いスタートアップとなっている理由は、市場の状況とサイバー攻撃の現状にある。

フェラーラ氏は、TechCrunchの取材に対しこう述べた。「ランサムウェアの組織化が進むのを目の当たりにしているので、Huntersには期待しています。多くの事業やミッドティア市場の企業がすでに危険にさらされていると思われる中で、より積極的に対応できるHuntersのようなソリューションが必要だと考えています」。

同氏は、Huntersが市場のもう1つの重要なトレンドに適合していると考えている。それは、有能なセキュリティ専門家のギャップを埋めるためのニーズだ。Huntersの技術は自動化と機械学習(ML)を利用しており、セキュリティアナリストが短時間でより効果的な作業を行えるようになっている。

メイ氏は、今回の新たな資金調達により、Huntersはスタートアップ企業として次のステージに進むことができると述べている。同社はこれまでに、顧客獲得と収益に関する社内のマイルストーンを達成し、XDR技術が市場に適合していることがわかったという。現在はビジネス規模を拡大し、市場開拓のための営業・マーケティング活動やパートナーとの連携を強化したいと考えているとのこと。同氏はまた、今回の資金調達を機に、ますます騒がしくなってきたセキュリティ技術のビジネスに切り込み、市場を破壊するような新しいイノベーションを起こし、ユーザーにさらに多くの機能を提供したいと強調している。

Huntersが取り組んでいる新機軸の中には、情報源をよりよく理解し、相関させるための機械学習技術の強化も含まれている。Huntersプラットフォームのソースを拡大することは、メイ氏が自社プラットフォームの拡大を期待しているもう1つの分野であり、将来的にはより多くの脅威インテリジェンスデータフィードを統合することを目指しているという。

「自社で行っているサイバーセキュリティの研究に関連したイノベーションという点で、私たちは非常に綿密でユニークなロードマップを作成しています」とメイ氏は語った。

画像クレジット:Hunters

原文へ

(文:Sean Michael Kerner、翻訳:Aya Nakazato)

問い合わせ対応ソフトShelf.ioが過去1年間でARR4倍に、57.7億円という巨額のシリーズBを完了

上場企業の取材に少々気が重くなることがある。上場企業というものは毎年そこそこ成長し、担当アナリストは粗利益率の改善や営業担当者の効率性について質問攻めにする。やや単調にもなり得るのだ。一方、スタートアップ企業の成長は早く、語るのも楽しい。

それはShelf.io(シェルフ・アイ・オー)にも当てはまる。同社は米国時間8月23日、2020年7月から2021年7月までの間に年間経常収益(ARR)を4倍に伸ばしたことなど、一連のすばらしい指標を発表した。また、Tiger GlobalとInsight PartnersがリードするシリーズBで5250万ドル(約57億7500万円)を獲得したことも発表した。

シリーズA以降のスタートアップとしては早い成長だ。Crunchbaseには、シリーズBの前に820万ドル(約9億円)を調達したとあるが、PitchBookでは650万ドル(約7億円)となっている。いずれにせよ、同社は今回の資金調達の前に、限られた資本で効率的に事業を拡大していた。

同社のソフトウェアは何をするのか。Shelfは、企業の情報システムに接続してデータを学習し、従業員が検索などで情報収集をしなくても、問い合わせに対応できるようにする。

同社はまず、カスタマーサービスをターゲットにしようとしている。ShelfのCEOであるSedarius Perrotta(セダリウス・ペロッタ)氏によると、Salesforce(セールスフォース)、SharePoint(シェアポイント)、従来のナレッジマネジメントプラットフォームや、Zendeskなどから情報を吸収することができるという。そして、モデルやスタッフのトレーニングを経て、サポートスタッフが顧客とリアルタイムで会話をしながら、顧客の質問に対する回答を提供することができる。

また、同社のソフトウェアは、人間のエージェントに向けられたわけではない顧客からの質問に対する回答を提供したり、企業のナレッジを検索可能なデータベースとして提供したりすることで、従業員が顧客の問題を迅速に解決できるようにする。

ペロッタ氏によると、Shelfが次にターゲットにしているのは営業市場で、その他の分野も追いかけるという。Shelfは営業にどうフィットするのだろうか。同社のソフトウェアは、スタッフに対し、すでにある類似案件の提案書やその他の関連コンテンツを提示できるかもしれないという。要するに、Salesforceをクリックしたり、サポートの問い合わせに答えたりと、多くの従業員が同じような仕事をしている企業では、Shelfがそうした活動を学習して、従業員の仕事をより賢く支援できる。ソフトウェアの学習能力も、時間とともに向上していくものと思われる。

現在100人程度のShelfは、年内に規模を2倍にし、2022年にはさらに2倍にしたいと考えている。

そこで新たな資本が投入されることになった。機械学習やデータサイエンスの分野で人を雇うのは、非常に高くつく。また、採用規模を早く拡大したいなら、銀行口座に多額の残高が必要になる。

Shelfが、少なくともそれまでの資金調達額と比較し、今回のような桁違いのシリーズBを確保できた理由は、ARRの急成長だけではない。ペロッタ氏によると、同社は純額で130%の契約保持を達成しており、解約もない。これは、同社の顧客が定着し、有機的に拡大していることを意味している。

現在のShelfは興味深い存在であり、現在の形で販売できるニッチな分野を見つけたことは確かだが、筆者はMerlinAIと呼ばれる機械学習システムをどこまで進化させることができるかに興味がある。もしこの技術が十分に賢くなれば、従業員を促したり、助けたりする機能によって、新入社員研修の時間を短縮し、従業員の研修にかかるコスト全般を削減することができるだろう。それは巨大な市場になると思われる。

これはいかにもTigerが入り込んできそうな取引だ。過去のラウンドと比べて大規模な高成長企業への投資で、その企業が向かう市場には大きな空白がある。Tigerがこの会社の株をいくらで買ったとしても、数年間の継続的な成長があれば、投資のリスクを打ち消すはずだ。筆者の読みでは、Tigerは、ソフトウェア市場の長期的な成長に関して強気なファンドで、その点でまさに市場をリードしている。Shelfはその仮説にきちんと合致しているのだ。

画像クレジット:Vladyslav Bobuskyi / Getty Images

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

特別なハードウェアを使わずに誰でもAIの開発ができるようにするThirdAIの技術

ヒューストンに拠点を置くThirdAI(サードAI)という企業は、GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)のような特殊なハードウェアを必要とせずに深層学習技術を高速化するツールを構築している。同社はシード資金として600万ドル(約6億6000万円)を調達した。

Neotribe Ventures(ネオトライブ・ベンチャーズ)、Cervin Ventures(セルヴァン・ベンチャーズ)、Firebolt Ventures(ファイアボルト・ベンチャーズ)が共同で主導したこの出資は、従業員の増員とコンピューティングリソースへの投資に使用すると、Third AIの共同創業者でCEOを務めるAnshumali Shrivastava(アンシュマリ・シュリヴァスタヴァ)氏はTechCrunchに語った。

数学の素養があるシュリヴァスタヴァ氏は、もともと人工知能や機械学習に興味があり、特にAIをより効率的に開発する方法について再考していた。それはライス大学に在籍していた時に、AIでディープラーニング(深層学習)をどうやって実行するかについて検討したことがきっかけだった。そして2021年4月、同氏はライス大学の大学院生たちとThirdAIを起ち上げた。

ThirdAIの技術は「深層学習へのよりスマートなアプローチ」を目的に開発されたもので、大規模なニューラルネットワークを学習させる際に、アルゴリズムとソフトウェアの革新的な技術を用いて、汎用の中央処理装置(CPU)をGPUよりも高速に機能させることを目指していると、シュリヴァスタヴァ氏はいう。多くの企業は何年か前にCPUを放棄し、高解像度の画像や動画をより迅速に同時レンダリングできるGPUを用いるようになっている。しかし、GPUにはあまり多くのメモリが搭載されていないため、ユーザーがAIを開発しようとすると、ボトルネックになることが多いとシュリヴァスタヴァ氏は語る。

「深層学習の状況を見ると、技術の多くは1980年代から使われているものであり、市場の大部分、約80%がGPUを使用し、高価なハードウェアと高価なエンジニアに投資して、AIの魔法が起こるのを待っているのです」と、同氏は続けた。

シュリヴァスタヴァ氏と彼のチームは、将来的にAIがどのように開発されていく可能性が高いかを検討し、GPUに代わるコストを抑えた方法を生み出したいと考えた。彼らのアルゴリズム「サブリニア・ディープラーニング・エンジン(劣線形深層学習エンジン)」は、専用のアクセラレーション・ハードウェアを必要としないCPUをGPUの代わりに使用する。

Neotribeの創業者兼マネージングパートナーであるSwaroop “Kittu” Kolluri(スワループ・”キットゥ”・コルリ)氏は、この種の技術はまだ初期段階にあると述べている。現行のやり方は手間とコストと時間がかかる。例えば、より多くのメモリを必要とする言語モデルを実行している会社では問題が発生するだろうと、同氏は続けた。

「そこにThirdAIの出番があります。今までできなかったことが可能になるのです」と、コルリ氏は語る。「それが、我々が出資しようとした理由でもあります。コンピューティングだけでなく、メモリも含めて、ThirdAIの技術は誰でもそれができるようにします。ゲームチェンジャーになるでしょう。深層学習に関する技術がもっと洗練されるようになってくれば、可能性は無限に広がります」。

AIはすでに、ヘルスケアや地震データ処理など、最も困難な問題のいくつかを解決する能力を備えた段階にあるが、AIモデルの実行が気候変動に影響を与えるという問題もあると、同氏は指摘する。

「深層学習モデルを訓練することは、1人で5台の自動車を所有するよりもコストがかかります」と、シュリヴァスタヴァ氏は語る。「AIの拡大に向けて、我々はそういうことについても考える必要があります」。

関連記事
OpenAIが自然言語AIコーダーのCodexをアップグレード、プライベートベータを開始
一般的なAIモデルを10分の1に圧縮できるというLatent AIが約21億円調達、IoT、エッジAIへの活用に期待
異音検知プラットフォームや議事録自動作成システムを手がける音声認識AIスタートアップ「Hmcomm」が4.2億円調達

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:ThirdAI人工知能深層学習資金調達機械学習

画像クレジット:Jeff Fitlow/Rice University

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AIと機械学習で将来的な人材戦略を予測するretrain.aiが約7.7億円を調達

世界経済フォーラムによれば、オートメーションにより2025年までに8500万人が職を失い、同時に9700万人の新たな雇用が創出されるという。良いニュースのように聞こえるが、多くの人が将来の仕事のために再びトレーニングを受ける必要があるという厳しい現実だ。

多くのスタートアップが従業員のスキルに関するこうした問題の解決に取り組み、人材育成、神経科学に基づく評価、人材配置の予測テクノロジーに着目している。このようなスタートアップにはPymetrics(5660万ドル、約62億1000万円を調達)、Eightfold(3億9680万ドル、約435億3000万円を調達)、EmPath(100万ドル、約1億1000万円を調達)などがある。しかしこの分野はまだこれからだ。

retrain.aiは自社を「人材インテリジェンスプラットフォーム」企業と宣伝している。同社はこれまでに投資していたSquare Peg、Hetz Ventures、TechAviv、.406 Ventures、Schusterman Family Investmentsから追加で700万ドル(約7億7000万円)を調達した。また戦略的投資家としてSplunk Venturesが加わった。このラウンドにより、調達金額の合計は2000万ドル(約22億円)となった。

retrain.aiはAIと機械学習を活用して、行政や組織が将来の業務のために人材の再トレーニングやスキルアップを実施し、多様性に取り組み、従業員と求職者のキャリアマネジメントができるように支援するという。

同社の共同創業者でCEOのShay David(シェイ・デビッド)博士は「データの力で世界の労働市場で広がりつつあるスキルギャップを解決するエキサイティングなジャーニーにSplunk Venturesが加わることを喜んでいます」と述べた。

retrain.aiは、企業が「多数のデータソースを分析してスキルセットの需要と供給を理解する」ことにより将来的な人員の戦略に取り組むための支援をするとしている。

新たに得た資金は、米国内での事業拡大、人材の雇用、製品開発に充てられる。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:retrain.ai

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

電子フロンティア財団などが批判する中、アップルの児童虐待対策用iCloud写真スキャンに関する社内メモ流出か

電子フロンティア財団などが批判する中、アップルの児童虐待対策iCloud写真スキャンに関する社内メモ流出か

Apple

アップルが予告した次期iOS 15等での児童の性的虐待対策は、メッセージアプリに添付された写真やiCloudに保存される画像をスキャンすることから、複数の方面からプライバシー侵害や監視の恐れがあると批判を集めています。

こうした反発に対して、アップルが新機能を「誤解」を招きやすいと認めつつも、これらの新機能は子供たちの安全を守るための「重要な使命」の一部だと信念を強調した社内メモが流出したと伝えられています。

アップルが5日(米現地時間)に発表した「子供のための保護機能の拡張(Expanded Protections for Children)」への反発とは、具体的にはエドワード・スノーデン氏(米国国家安全保障局の情報を持って逃亡し、米政府が個人情報を監視していることを暴露した人物)や電子フロンティア財団(EFF)など著名な関係者からも寄せられているものです。

批判の対象となっているのは、主にアップルがiCloud画像をスキャンして児童性的虐待資料(CSAM)のデータベースに照合して一致するかどうかチェックする計画であり、わずかな変更により他の個人データも監視できるようになる可能性です。

さて米9to5Macが入手したのは、アップルのインテリジェントシステムエクスペリエンス担当副社長 セバスチャン・マリノー・メス(Sebastien Marineau-Mes)が社内スタッフ向けに書いたメモです。そこでは、アップルは「子供のための保護機能の拡張」に含まれる「機能の詳細を説明していく」ことを続けていくと述べられています。

マリノー・メス氏は、これら新機能に対して「多くの好意的な反応」を確認している一方で、どのように機能するのかを「一部の人々が誤解している」ことや、「少なからずその影響を心配している」ことも認識していると述べています。それでも、これらの機能は「子どもたちを守る」ために必要であり、同時に「ユーザーのプライバシーに対する深いコミットメント」を維持するものであるというアップルの信念を強調しています。

そのメモの全文は、次の通りです。

本日、「子どものための保護機能の拡張」が正式に公開されました。この数年間の皆さんのご尽力に感謝するために、この場をお借りしたいと思います。皆さんのたゆまぬ努力とたくましさがなければ、このような節目を迎えることはできませんでした。

子どもたちの安全を守ることは、とても重要な使命です。アップルらしく、この目標を達成するためには、エンジニアリング、GA、HI、法務、プロダクトマーケティング、PRなど、部門を超えた深い関与が必要でした。本日発表した製品は、この素晴らしいコラボレーションの成果であり、子供たちを守るためのツールを提供すると同時に、ユーザーのプライバシーに対するアップルの深いコミットメントを維持するものです。

今日は多くの好意的な反応をいただきました。誤解をされている方や、その影響を心配されている方も少なからずいらっしゃると思いますが、私たちが作ったものを理解していただけるよう、今後も機能の詳細を説明していきます。また、数ヵ月後に機能を提供するために多くのハードワークが待っていますが、本日NCMEC(全米行方不明・被搾取児童センター)から受け取ったこのメモを共有したいと思います。私自身、非常に刺激を受けましたし、皆さんにもぜひ読んでいただきたいと思います。

このような素晴らしいチームと一緒にアップルで働けることを誇りに思います。ありがとうございました。

このメモには上記の通り、NCMECからのメッセージも含まれています。

そこでは「全員がみなさん(アップル)を誇りに思っており、子供の保護を優先するという名目で行った信じられないような決断を称賛したいと思い、励ましの言葉をお伝えします」と称賛が述べられるとともに、激しい批判に晒されているアップルに対して「この長い日と眠れない夜の間、御社のおかげで何千人もの性的搾取の被害を受けた子供たちが救出され、癒しと彼らにふさわしい子供時代を過ごすチャンスを得ることができることを知って、慰めにしていただきたいと思います」という励ましの言葉も添えられています。

ほかアップルは、米国外でのCSAM検出機能の拡大は、現地の法律や規制に応じて国ごとに行われると9to5Macに対して確認したとのことです。ただし、いつ、どの国や地域に拡大するのかは具体的なスケジュールは提供されていません。

アップルやNCMECが言うとおり、新機能が本当に「プライバシーを守りつつ、子どもを保護するための道筋」となり、その他の使い道へと逸脱するおそれがあり得ないのか。今後もアップルに対しては技術の詳細につき説明が求められ、専門家らの厳しい精査にさらされる展開となりそうです。

Engadget日本版より転載)

関連記事
アップルがメッセージアプリで送受信される性的な画像を検知し子どもと親に警告する新技術を発表
アップルがiCloud上の児童虐待画像を検出する新技術「NeuralHash」導入へ
Twitterが「業界初」機械学習アルゴリズムの「バイアス」を対象とする報奨金コンテスト実施
アップルが最新iOS 15のベータ版をすべての人に公開、開発者アカウント不要
【コラム】バイデン政権はインクルーシブであるためにAI開発の取り組みにもっと力を入れる必要がある
アリババは自社クラウド部門のウイグル人を顔認識する民族検知アルゴリズムにがく然
政府のデータ要求からユーザーを保護する(or しない)IT企業はここだ

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:iOS(製品・サービス)iOS 15(製品・サービス)iPhone(製品・サービス)iPadOS 15(製品・サービス)Apple / アップル(企業)子ども / 子ども向け(用語)機械学習 / ML(用語)電子フロンティア財団 / EFF(組織)プライバシー(用語)

ガイアックスが日本初の「スマートシティ実現に向けたLiDARデータ活用アイデアソン&ハッカソン」を9月30日開催

ガイアックスが日本初の「スマートシティ実現に向けたLiDARデータ活用アイデアソン&ハッカソン」を9月30日開催

ガイアックスと芝浦工業大学は8月5日、LiDARをテーマとした「スマートシティ実現に向けたLiDARデータ活用アイデアソン&ハッカソン」を9月30日に開催すると発表、参加者の募集を開始した。

LiDARとは、光を使って検知や測距を行うシステムのこと。電波を使うレーダーに対して「ライダー」と呼ばれる。このイベントでは、京都市内の10地点で数カ月間にわたりLiDARで取得した交差点、幹線道路、駐車場の3Dデータを使ってアイデアを競い合う。内容は、「新規事業のアイデアを創出することを目的としたアイデアソン」と、「ディープラーニングによる分析により新たなナレッジを創出することを目的としたハッカソン」に分かれている。その結果は、京都市の交通混雑、交通事故、路上犯罪の対策に役立てられることが期待されている。LiDARで実際に取得した画像「動的LiDARデータ」を使ったアイデアソンやハッカソンは、ガイアックスによれば日本初の取り組みとのこと。

共催者には、エクサウィザーズ、京都リサーチパーク、京都高度技術研究所(ASTEM)が参加。後援者には、エースコード、データサイエンティストの古屋俊和氏 (エクサウィザーズ創業者およびQuantum Analytics CEO)、京都大学桂図書館が参加している。

LiDARの開発の競争は100社以上に激化しており、応用についても2021年2月Google TensorFlow 3Dの発表、2021年6月の「3D-LiDAR活用ビジネスを創出するスマートセンシングアライアンス」の設立に代表されるとおり、今後急速な活発化が予想されるという。エンジニアや学生が同イベントに参加することで、今後のキャリアパスやキャリアアップにつながると考えているという。

概要

  • 開催日時:2021年9月30日9:00〜18:30
  • 対象者:学生、社会人で下記の参加要件を満たす方
  • 参加要件
    ・LinuxのCUI操作に関する基礎的知識とスキルを有すること
    ・プログラミング言語の基礎的知識とスキルを有すること
    ・機械学習プログラミングに関する基礎的知識とスキルを有すること
    ・Dockerに関する基礎的知識を有すること
    ※3DデータやAI未経験者歓迎
  • 参加費:無料
  • 募集人数:最大30チーム
  • 収容人数:京都会場10名、東京会場10名、オンライン会場50名
  • 開催形態:オンラインと会場のハイブリッド
  • 会場
    ・京都会場 京都リサーチパーク KRP1号館4階 G会議室(京都市下京区中堂寺南町134)
    ・東京会場 芝浦工業大学豊洲キャンパス研究棟14階 新熊研究室(東京都江東区豊洲3丁目7-5)
    (新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては完全オンラインになる可能性もある)
  • 参加形態:最大3名のチーム。1名で参加も可能だが、複数チームを兼ねての参加は不可
  • 入賞特典:入賞したチームには下記の特典を付与
    ・最優秀賞 / 賞金20万円 1件
    ・ガイアックス特別賞 / ガイアックスでのエンジニアインターンの権利 最大1件
    ・データサイエンティスト古屋俊和 特別賞 最大1件など

ガイアックスの技術開発部マネージャー、日本ブロックチェーン協会理事の峯荒夢氏は、こう話している。
「人間は道具を使うことより食料調達を効率化し、節約できた時間でさらなる進化をしてきました。スマートシティはデータを使った効率化による人間の進化を引き起こすものだと私は考えています。本アイデアソン・ハッカソンでは、LiDARを軸にその新たな効率化そして人間の進化の一歩となることを期待しています」。

関連記事

iOSアプリ開発者に訊く:LiDARで空間を演出するアプリ「Effectron」 (アフェクション)
Proxima Technologyが単眼・ステレオカメラ対応の深層学習を用いた高精度visual SLAM技術「DVF SLAM」開発
テスラのライバルNIOにLiDARを供給する中国Innovusionがシンガポール政府系ファンド主導で69.5億円調達
エアバスとLuminarが提携を発表、LiDARを使い航空機の自動操縦や安全向上を目指す
ガイアックスが完全オンラインの起業支援開始、地方在住スタートアップを募集
NASAやJAXAが5月末に新型コロナ対策ハッカソンを共同開催

カテゴリー:イベント情報
タグ:ガイアックス(企業)機械学習 / ML(用語)芝浦工業大学(組織)3D / 3Dモデル(用語)3D-LiDAR(用語)TensorFlowDocker(企業・サービス)ハッカソン(用語)プログラミング(用語)LiDAR(用語)Linux(製品・サービス)日本(国・地域)

グーグルがPixel 6用にカスタムチップを開発、AIとMLを自社スマホの差別化要因にする

Google(グーグル)はさきほど、もうすぐ発売されるスマートフォン「Pixel 6」のニュースをぶちまけた。米国時間8月11日にSamsungの大規模なイベントがあるため、その前に行いたかったのだろう。それとも、秋の大々的な発表に数カ月先駆けて、多くの人の関心を集めたかったのかもしれない。今後のさまざまなリーク情報の、先手を打つという意味もあるだろう。

いずれにしても、Googleが次に出すAndroidスマートフォンの外観の第一印象としては、背面にあるカメラシステムの大きな新デザインが目立つ。これまでの正方形の構成が大きな黒いバーに変わり、ハードウェアの大型アップグレードへの強い意志を感じることができる。前バージョンと前々バージョンでのメインのポイントはソフトウェアとAIだった。

関連記事:グーグルが正式に新スマホPixel 6を公開、専用チップにTnsorを搭載

さらに興味深いのは、TensorがPixel 6とPixel 6 Proで新たにデビューするカスタムのSoCで登場したことだ。同社はこれまでずっと、混雑したスマートフォン市場で自らを差別化することに苦戦してきた。そのための同社の決定打が未だに出てこない現状において、Tensorを実装したカスタムチップは重要な持ち玉かもしれない。

それは、ハイエンドのシステムにおいてQualcommのチップを捨て、Appleに倣ってカスタムチップの道を進むということだ。ただしそのチップはベースがARMのアーキテクチャだ。それは今や世の中の至るところにあるQualcommのSnapdragonチップのベースでもある。そしてGoogleもその低価格製品A Seriesでは、コンポーネントのサプライをサンディエゴの企業(Qualcomm)にこれまで同じく依存している

画像クレジット:Google

「Tensor」という名前は明らかに、これまで多くのプロジェクトを牽引してきたGoogleのML(機械学習)システムであるTensorFlowに由来している。当然ながら、同社はAIとMLを、来るべきスマートフォンにおけるチップの基礎として位置づけている。Pixelのチームはこれまで長年、差別化要因として、コンピュテーショナルフォトグラフィー(計算写真学)といったソフトウェアによるソリューションを追究してきた。

「私たちのシリコンを設計してきたチームは、Pixelをもっと有能にしたいと考えました。例えばTensorがすべてのチップにあれば、すべてのチップをGoogleのコンピュテーショナルフォトグラフィーのモデルを動かせるようにカスタム化できるでしょう。ユーザーにとってそれは、まったく新しい機能であり、同時にまた既存機能の改善でもあります」とGoogleは述べている。

Tensorは、カメラシステムのアップグレードだけでなく、発話認識や言語学習などの改善でも主役となる。当然ながら、その詳細は秋の正式発売までは一般には発表されないが、今回の発表はPixelチームの刷新された未来の姿の紹介に終止していたようだ。スマートフォンにおいてもAIとソフトウェアにフォーカスすることは、まさにスマートフォン分野でGoogleがやるべきことの中心にあるはずだ。

2020年の5月に、Pixelチームの主要メンバーがGoogleを去り、それはチームの今後の変化の方向性を示していたようだ。当時、ハードウェア部門のトップであるRick Osterloh(リック・オスターロー)氏が、厳しい言葉を述べていたらしい。

「AIは私たちのイノベーションの未来ではありますが、今の問題は、私たちがコンピューティングの限界にぶつかっていることです。そのために、ミッションを全幅的に追究することが阻まれています」とオスターロー氏は本日のポストで書いている。「そこで私たちが挑戦したのは、私たちの最も革新的なAIと機械学習をPixelのユーザーに提供できるためのモバイルのテクノロジープラットフォームの構築でした」。

関連記事
Google Pixel開発チームから2人の主要エンジニアが離脱、チーム内の争いが原因か
グーグルがAndroid 12の開発者プレビュー最新版を公開、触覚フィードバックなど拡張
中止の噂を否定するためグーグルがPixel 5a 5G販売を突然発表、2021年中に米国と日本で

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:GoogleGoogle PixelPixel 6スマートフォンAndroidTensor機械学習人工知能

画像クレジット:Google

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Twitterが「業界初」機械学習アルゴリズムの「バイアス」を対象とする報奨金コンテスト実施

Twitterが「業界初」機械学習アルゴリズムの「バイアス」を対象とする報奨金コンテスト実施、ハッカーと企業をつなぐHackerOne協力

Andrew Kelly / Reuters

Twitterが、システムが自動的に画像をクロップする際の”偏り”を発見した人に謝礼を支払う報奨金コンテストをHackerOneを通じ開始しました。報奨金と言えば、セキュリティ上の問題や処理上の不具合を発見した人に対して賞金を支払うバグバウンティ・プログラムが一般的におこなわれていますが、今回Twitterが始めたのは、ユーザーが投稿した写真をサムネイル化するため、ちょうど良い具合にクロップ(切り抜き)するアルゴリズムにどこか偏りがないかを探そうというコンテスト形式のプログラムです。

Twiiterの自動画像クロップは2018年から使われ始めましたが、一部ユーザーからはこのアルゴリズムが肌の白い人を中心にするようなバイアスがかった処理を行う傾向があると批判の声が上がっていました。

「われわれは5月に画像切り出しアルゴリズムの提供をいったん止め、認識の偏りを識別するアプローチを共有し、人々がわれわれの作業を再現できるようにするためコードを公開しました」とTwitterはブログで述べ「この作業をさらに進めて、潜在的な問題を特定するため、コミュニティに協力を仰ぎ、奨励したいと考えています」としました。

Twitterいわく、この報奨金コンテストは「業界初」のアルゴリズムのバイアスを対象とした報奨金プログラムとのこと。賞金額は最高3500ドル(約38万円)と控えめではあるものの、Twitterで機械学習倫理および透明性・説明責任チームのディレクターを務めるRumman Chowdhury氏は「機械学習モデルの偏りを見つけるのは難しく、意図しない倫理的な問題が一般に発見されて初めて企業が気づくこともあります。われわれは、それを変えたいと考えています」としています。

そしてこのプログラムを行うのは「これらの問題を特定した人々が報われるべきだと信じているからであり、我々だけではこれらの課題を解決することはできないからだ」と述べています。このコンテストは、2021年7月30日から2021年8月6日までエントリーを受け付けるとのこと。受賞者は、8月8日に開催されるTwitter主催のDEF CON AI Villageのワークショップで発表されます。

(Source:TwitterEngadget日本版より転載)

関連記事
フェイスブックがバグ懸賞プログラムに「支払い遅延ボーナス」を追加
アリババは自社クラウド部門のウイグル人を顔認識する民族検知アルゴリズムにがく然
Twitterは投稿時の画像プレビューのトリミング方法をユーザーに委ねる方針へ
Kubernetesのバグ褒賞金制度は多数のセキュリティ研究者の参加を期待
ハッカーと企業をつなぐHackerOneが39億円調達、調達総額は117億円に
テック企業大手のサービスのアルゴリズムによる偏向を防ぐ法案を民主党が提出

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:機械学習 / ML(用語)差別(用語)説明責任(用語)Twitter / ツイッター(企業)DEF CONハッカー / ハッキング(用語)HackerOne(企業・サービス)バイアス(用語)バグバウンティ / バグ報奨金制度(用語)倫理(用語)

借金に悩むユーザーに代わり債権者と交渉してくれるアプリを目指すRelief

Jason Saltzman(ジェイソン・サルツマン)氏はシリアルアントレプレナーだ。最初にSeamlessDocs(シームレスドックス)を共同設立し、それからニューヨークでコワーキングスペースのAlley(アレイ)を設立した。AlleyがVerizon(ベライゾン)とのジョイントベンチャーになった後、何か新しいものを作りたいと考えていたサルツマン氏は、債務整理と救済の分野に惹かれた。

その結果、サルツマン氏がBryan Okeke(ブライアン・オキキ)氏やRam Barrouet(ラム・バルエ)氏と3人で共同設立したRelief(リリーフ)が誕生した。このスタートアップは米国時間7月28日、Collaborative Fund(コラボレーティブ・ファンド)、BFV、Necessary Venture(ネセサリー・ベンチャー)、The Fund(ザ・ファンド)が主導するコンバーチブルノートにより、200万ドルを調達したと発表。このラウンドには、Justin Kan(ジャスティン・カン)氏、Ben Kaplan(ベン・カプラン)氏、Elliot Tabele(エリオット・テーブル)、David Galanter(デイヴィッド・ギャランター)氏などのエンジェル投資家も参加した。

サルツマン氏の命題は、この分野の観察から生まれた。第三者の債権回収会社は多くの自動化ツールを使用しているが、同じサービスが債務救済を求める個人には提供されていない。Reliefは、機械学習アルゴリズムと団体交渉を利用して債務残高を減らすアプリだ。Reliefはユーザーに代わって計算を行い、債権者と直接交渉して、残高を(サルツマン氏によると半分以下に)減らすことができ、すべて無料で利用できる。

Justworks(ジャストワークス)とは異なり、Reliefはユーザーベース全体の力を使って債権者と交渉し、残高を減らしたり金利を下げたりする。交渉が成立すると、ユーザーが残りの借金を返済するための支払い計画も設定してくれる。

財政困難に陥っている人のために債務整理やローンを提供することは新しくはないが、ユーザーに代わって交渉する機能は、多くの類似プラットフォームでは広く提供されていない。

誤解のないように言っておくと、これはお金を節約するためのプラットフォームではない。Reliefのアプリは破産の代替手段であると、サルツマン氏は説明する。

当初は、Reliefはクレジット発行会社が示談交渉のために支払う費用から収益を得る。Reliefが債権回収業者の代わりになるわけだ。また、同社は債券を発行して、その利息で収益を得ることもできる。しかしサルツマン氏は、十分な数のユーザーを獲得することで、他の収益を上げる方法について創造的に検討を始めたいと希望している。

「信頼が最大の課題です」とサルツマン氏はいう。「私たちは消費者の家に入り込み、この恐るべき問題の汚名を返上しなければなりません。今のところ、解決策はありません。データによると、米国人の3人に1人がクレジットカードの支払いを滞納しているそうです。だからこそ、私たちを信頼してもらう必要があるのです」。

関連記事
消費者が家計の「管理と計画」を行うためのサブスク式の財務プラットフォーム「Monarch」が5.3億円調達
ユーザーが課題をクリアすることで請求書の支払額を減らせるPlay2Payのサービスとは?
アップルがApple Payに後払い決済機能を導入か

カテゴリー:フィンテック
タグ:Relief債務資金調達機械学習

画像クレジット:relief

原文へ

(文:Jordan Crook、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「はやい、やすい、巧い」エッジAIのフツパーと高速なアノテーションを提供するFastLavelが協業し国内産業のAI化推進

「はやい、やすい、巧い」エッジAIのフツパーと高速なアノテーションを提供するFastLavelが協業し国内産業のAI化を推進

AI開発に欠かせないアノテーション作業の高速化を行うFastLabel(ファストラベル)は7月29日、中⼩企業向けエッジAIシステムを提供するフツパー(Hutzper)と7月より協業し、システム連携を開始すると発表した。高速アノテーションとエッジAI技術を組合せることで、目視検査業務の効率化を目指す。

FastLabelは、AIの機械学習に用いられる「教師データ」作成に必要なアノテーション(データに関連するメタデータを埋め込む作業)の高速化を行っている。AIの産業利用では、教師データの不足や品質の低さで十分な性能が発揮できず、「実用化のボトルネック」になっているという。「AI開発を10倍速くする」をミッションとするFastLabelは、教師データの作成、分析、管理を効率化し、精度を向上させるアノテーションプラットフォーム「FastLabel」を開発・提供している。

一方、フツパーは、「はやい、やすい、巧い、AIを」をミッションに、目視検査業務を効率化する画像認識エッジAI特化型SaaS「Hutzper Insight」(フツパー・インサイト)と、画像認識AIモデル開発「Hutzper Vision」(フツパー・ビジョン)を開発・提供している。どちらも2020年設立の新しい企業だが、大手から中小まで、国内の企業に貢献している。

この協業では、両社の技術を組み合わせて、データアノテーションをエッジAIの運用オペレーションに組み込み、継続的に教師データの蓄積が可能となる機械学習基盤MLOpsを構築する。MLOpsは、機械学習用のDevOpsといった意味合いで、「機械学習」(ML。Machine Learning)とソフトウェア分野における継続的な開発手法「DevOps」を組み合わせた造語。

具体的には、フツパーの技術で認識した画像データをFastLabel側に連携し、アノテーターによるアノテーション完了後のデータをリアルタイムでフツパー側に連携するというものだ。アノテーションの難易度やデータ量に応じて、内部で処理するか、外注するか、両方を組み合わせるかが選べるという。

フツパー代表取締役CEOの大西洋氏は、「FastLabelと連携することにより、弊社のはやい・やすい・巧いAIがさらに速くなりました」と話している。今後も、エッジとクラウド間での「AIモデルの最適運用」を追究していくとのこと。

またFastLabel代表取締役CEOの鈴木健史氏は、「両者の強みを活かして製造業へのAI導入をさらに加速させていきます」と述べている。

関連記事
ソニー「IMX500」採用、動線分析のリアルタイム処理も可能なエッジAIカメラ「S+ Camera Basic」高機能版登場
レクサス製造ラインの熟練工の技を人とAIが協働し伝承、TRIARTとトヨタが「不良予兆感知システム」の試行開始
ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供
既存防犯カメラで来店客の店内行動を解析可能なエッジAI端末を提供する「AWL」が20億円調達
パトスロゴスが画像10枚から30分でAIモデルを作成できるノーコードの外観検査ソフト「DEEPS」リリース
「目についたら異常」などあいまいな官能検査も対応、ロビットが工業製品向け汎用型AI外観検査ロボを提供開始
中⼩企業向け検品・検査⼯程用エッジAIをサブスクで提供するフツパーが約1億円を資金調達
自動目視検査など製造業にAI外観検査システムを提供するMENOUが8000万円を調達
中小企業へ「はやい・やすい・巧いAI」の提供目指すフツパーが数千万円調達

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:アノテーション(用語)エッジAI(用語)エッジコンピューティング(用語)MLOps(用語)機械学習 / ML(用語)製造業(用語)DevOps(用語)FastLabel(企業・サービス)フツパー(企業)日本(国・地域)

誰でも緑の指に、植物の種類や日当たりなどに合わせた栽培のアドバイスをくれるアプリ「Greg」

パンデミックによる閉じこもり生活が始まる以前から、すでに勢いづいていた観葉植物業界。1年間の隔離生活を経た今、屋内ガーデンのように生い茂ったリビングルームがあちこちで見られるようになっている。

機械学習を用いて植物の世話の手助けをするアプリ「Greg」(グレッグ)は、5月下旬540万ドル(約6億円)のシード資金を獲得したことを発表した。今回のラウンドはIndex(インデックス)がリードし、First Round Capital(ファーストラウンド・キャピタル)が参加している他、Tinder(ティンダー)の前CEO であるElie Seidman(エリー・セイドマン)氏、植物配達サービスThe Sill(ザ・シル)の創業者Eliza Blank(エリザ・ブランク)氏、60万人のフォロワーを持つ「プラントスタグラマー」Darryl Cheng(ダリル・チェン)氏などの専門的なエンジェル投資家やアドバイザーによって支えられている。現在、Gregのリモートチームには11名のメンバーが在籍しており、今後はブランド責任者の他Androidのシニアエンジニアを含む少なくとも5名のエンジニアを採用する予定だ(今のところ同アプリはiOSでのみ提供されている)。

関連記事:ワクチン接種普及のためにホワイトハウスはデートアプリと協力

Gregは主に植物に水をやるタイミングを教えてくれるというアプリである。植物によってこのタイミングはそれぞれ異なるため、毎週のリマインダー設定をすれば良いというわけにはいかない。Gregは植物の種類、地理的な位置、日当たり、窓からの距離など、それぞれの植物に合わせてアドバイスをしてくれる。これにより誰もが簡単にどんな状況下でも植物を繁殖させることができる。また、アプリにはディスカバーフィードが組み込まれており、ユーザーは「Keanu Leaves」や「Michelle Branch」(セレブと植物の名を掛け合わせたジョーク)などと名付けられた植物の写真を共有することもできる。

画像クレジット:Greg

 

CEOで共同設立者、エンジニアのAlex Ross(アレックス・ロス)氏にとって植物の手入れは単なるパンデミック中の趣味ではない。Greg の背後にある企業、Gregarious, Inc.(グレガリアス・インク)は公益法人として設立された会社である。法的拘束力のある公式声明の中で、同社は地球の生態系にプラスの効果をもたらすことを約束しており(「またはマイナスの効果の軽減」が気候変動における現状である)、設立趣意書には「植物への理解を深めるための独自の技術と研究の開発」「地球の健康を守る団体としての活動」「あらゆる生物の繁栄のための機会の創出」という3つの目標が掲げられている。

「植物は地球の仕組みを理解する上で非常に優れた手段です。これがGregを始めた大きな理由です。今後10年、20年の間に社会としてより正しい判断を下すためには、より多くの人が生態系の仕組み、植物の仕組み、そして食料システムの仕組みを理解する必要があると考えています」とロス氏は話す。

これはロス氏にとって初めてのミッション志向的起業ではない。ロス氏はTinderのエンジニアリング・ディレクターとしてTrust & Safetyチームを立ち上げ、出会い系アプリのユーザーを悪用から守る役割を担っていた。その際に同氏は、消費者向けのモバイルアプリがオーディエンスを獲得する可能性を見出していたのだ。

「実はTinderは、信頼性と安全性を備えた製品として最先端を走っていました」とロス氏は振り返る。「私はTinderの中でも公共のために確実に役に立てる部分に取り組みたかったのです。そして今(Gregでは)公共の利益こそが核心となっています」。

2020年10月にアプリストアで一般公開されて以来、Gregは5万人の月間アクティブユーザーを生み出してきた。こういった植物愛好家たちがこれまでに4000種類の植物35万点を登録し、200万回以上のやりとりが行われている。このアプリの手法は、国際連合食糧農業機関が作物の水使用量を推定するためのアルゴリズムに基づいている。写真を撮ったり、植物に水をやったり、さらには水やりのアドバイスを読み流したりするすべてのやりとりが同社のAIをスマートにする。より多くのデータを解釈すればするほど、GregのAIは植物を育てるための最も効果的で効率的な方法を学んでいくのである。

「数年以内に国際連合食糧農業機関のアルゴリズムにお返しとして貢献し、発展途上国の農家がそのアルゴリズムを利用してより高収量の農産物を栽培し、自国の食糧システムに役立てることができるようにしたいと考えています。こういったことこそが、私たちが公益法人としてスタートした理由です」とロス氏はいう。

ロス氏によると、同社が直面している最大の課題はまだ人々に知られていないことだという。そこでHouse Plant Shop(ハウスプラント・ショップ)やAmerican Plant Exchange(アメリカン・プラント・エクスチェンジ)などの植物販売店と提携し、定額制の「Super Greg」のプロモーションコードを提供することにした。購読者は月額6.50ドル(約715円)、年契約の月額2.50ドル(約275円)、または生涯アクセス権の49.99ドル(約5500円)を支払うことでGregに無制限に植物を登録することができる。無料版では5つの植物しか追加できないため、観葉植物に目覚めてしまった人には物足りないかもしれない。

「これはユーザー獲得の大きなきっかけにつながっています」とロス氏は話す。このアプリを使えば植物の変わりやすい生態系をより深く理解することができるようになる。「Coinbaseが人々を暗号の世界へと導くように、Gregは人々を植物の世界に導くための大切な役割を担うことができると考えています」。

画像クレジット:Greg

同氏はまた、 GregのモデルをWaze(ウェイズ)のようなアプリに例えている。より多くのユーザーが交通パターンを報告すればするほど、その地域の他のドライバーにますます利益をもたらすことができるというものだ。同様にGregが植物の健康状況をより深く把握することで、同社はそのデータを使って環境に優しいミッションを果たすことができるのだ。同社は最終的には、既存のどんなテクノロジーよりも植物の仕組みを理解することのできる「極めてスケールアウトしたプラットフォーム」を構築したいと考えている。

それまでの間、未だ続く世界のロックダウンにともない、Gregは小規模ながらもユーザーに恩恵を与え続けていくことだろう。

「客観的に見ても植物は精神衛生上とても良いものです。一度植物のある生活をした人が、植物のない生活に戻るという例は聞いたことがありません」とロス氏はいう。

関連記事
ガーデニングに特化した英国のマーケットプレイス「Sproutl」はアドバイスやアドバイスで園芸をもっと身近なものに
アマチュア園芸家と町の園芸店をつなぐコミュニティの構築を目指すNeverlandが約3.2億円調達
MITが植物を実験室で植物の組織を培養する方法を開発、最終的には林業や農業の代わりに木材や野菜を生産

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Greg植物資金調達園芸アプリ機械学習

画像クレジット:Greg

原文へ

(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

ウェブサイト変更モニタリングの誤アラートを80%減らすVisualpingが約6.6億円を追加調達

ウェブサイト上の値下げなどの更新や変更を監視できるサービス「Visualping(ビジュアルピング)」は、2021年初めに発表した200万ドル(約2億2000万円)のシードラウンドに加え、600万ドル(約6億6000万円)のエクステンションを調達したと発表した。今回のラウンドは、シアトルを拠点とするFUSEがリードした。FUSEは、2020年にIgnition Partnersからスピンアウトした比較的新しい投資家を擁するVCだ。先行投資家のMistral Venture PartnersN49Pも参加した。

関連記事:ウェブの変更をスキャンするVisualpingが2.2億円を調達、ワクチン接種状況なども検出可能

バンクーバーを拠点とする同社は、現在カナダで行われているGoogle for Startups Acceleratorクラスの一員だ。このプログラムは、AIや機械学習を活用したサービスに焦点を当てている。ウェブサイトのモニタリングは機械学習が大きな価値をもたらす明白な分野には見えないかもしれないが、これらのサービスを利用したことがあれば、多くの誤アラートが発生する可能性があることをご存知だろう。これらのツールはほとんどの場合、ウェブサイトの基本的なコード内の何かが変更されたことを探し、それに基づいて(そして時には、あなたが設定した他のパラメータに基づいて)警告を発するだけだ。

画像クレジット:Visualping

先にVisualpingは、まさにそれを回避するための初の機械学習(ML)ベースのツールを発表した。同社は、150万人以上のユーザーからのフィードバックと新しいMLアルゴリズムを組み合わせることで、最大80%の誤アラートを排除できるとしている。これによりVisualpingは、ユーザーが新しいアラートを設定する際に、サイトをどのように監視するかの最適な構成を学習できるようになった。

「Visualpingは、世界中で100万人以上のユーザーと、フォーチュン500社の大多数の人々の心を掴んでいます。彼らの旅の一部となり、このラウンドの資金調達をリードすることは夢のようです」とFUSEのBrendan Wales(ブレンダン・ウェールズ)氏は語った。

Visualpingの創業者兼CEOであるSerge Salager(セルジュ・サラガー)氏によると、同社は今回の資金調達を、製品の開発だけでなく、商用チームの構築にも充てる予定だという。これまでのところ、同社は主に製品主導で成長してきたと同氏は語った。

同社はその一環として、これらの新しいMLツールに対応し、コラボレーション機能を追加した「Visualping Business」と、コンサートのチケットの空き状況などを監視したり、ニュースや値下げ、求人情報などを把握したい個人ユーザー向けの「Visualping Personal」の発売を予定している。今のところ、パーソナルプランにはMLのサポートは含まれない。「誤アラートは、個人利用では2〜3のウェブサイトをチェックするので大きな問題にはなりませんが、企業ではチームが1日に何百ものアラートを処理しなければならないので大きな問題になります」とサラガー氏は話してくれた。

現在のところ、これらの新プランは、iOSおよびAndroid用のモバイルアプリとともに、2021年11月にリリースされる予定だ。また、同時期にブラウザ拡張機能もリニューアルする。

また、Visualpingはウェブベースのサービスを収益化しているが、ブラウザ拡張機能はまだ無料で使用できることも言及するに値する。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Visualping資金調達機械学習

画像クレジット:1e$PWYSR22lI4M / Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

非プログラマーのために開発された機械学習のノーコードプラットフォーム「Obviously AI」、大日本印刷と提携し日本市場開拓戦略も進める

Nirman Dave(ニーマン・デイヴ)氏が起ち上げた2つのスタートアップは、まったく異なるものだが、どちらもDIYの精神を持っている。1つめは、高校卒業後のギャップイヤーに設立したCircuiTricks(サーキットリックス)という会社で、電子工学や物理学を学生に教えるためのキットを作っていた。そして現在、デイヴ氏は、技術的なバックグラウンドを持たない人でも機械学習モデルの構築とトレーニングができる、ノーコードのAI / MLプラットフォーム「Obviously AI(オビアスリー・エーアイ)」の最高経営責任者を務めている。バークレーに拠点を置くこの会社は、シードエクステンションを行い、ラウンドの総額は2カ月前に発表した360万ドル(約4億円)から470万ドル(約5億2000万円)となった。このエクステンションは、ディープテック分野の投資会社である東京大学エッジ・キャピタル・パートナーズ(UTEC)が主導し、Trail Mix Ventures(トレイル・ミックス・ベンチャーズ)とB-Capital(Bキャピタル)が参加した。

UTECのプリンシパルであるKiran Mysore(キラン・マイソール)氏は、AI / MLやコーディングのバックグラウンドを持たない友人が機械学習モデルを構築するのを手伝っていたときに、Product Hunt(プロダクト・ハント)でObviously AIを見つけたと、TechCrunchに語った。Obviously AIを使用し、他のAutoML製品との比較試験を行った後、マイソール氏は非常に感銘を受け、このスタートアップ企業に連絡を取り、投資ラウンドを主導することになったという。

この1年間、ノーコード / ローコードのスタートアップは多くの注目と、そして資金を集めている。Noogata(ヌーガタ)やAbacus(アバカス)などがその代表例だ。デイヴ氏によると、Obviously AIの適所は、データサイエンスチームを持たない中規模企業、あるいはデータ分析の知識はあってもプログラマーではない人たちのチームだという。

関連記事:企業向けノーコードAIプラットフォームのNoogataがシードラウンドで約13億円を調達

Obviously AIは「Edge-Sharp AutoML」と呼ばれる独自の技術を用いて、顧客のニーズに合わせてカスタマイズされた機械学習モデルを構築・教育し、顧客の既存のクラウドサービスやデータベースに統合することができる。同社では、マーケティング、ソフトウェア、ダイレクト・トゥ・コンシューマー、フィンテック、保険会社といった分野を中心に、現在3000社以上の顧客を持っており、Obviously AIのモデルにホストされた8万2000以上の予測モデルが、これらの顧客企業で使われている。

新たに追加調達した今回のシード資金は、アジア市場における事業拡大のために使用される。特に日本では、同社の顧客である国内最大級の印刷会社の大日本印刷(DNP)と提携し、市場開拓戦略を進めていく予定だ。

大日本印刷の研究開発マネージャーである下村剛哉氏は、TechCrunchにメールで次のように語った。「大日本印刷では、マーケティングや営業のための最先端の予測分析が非常に重要です。しかし、現在のツールは非常に複雑で、結果が出るまでに数カ月かかります。我々はObviously AIを使うことで、何人かのアナリストをシームレスに起用することができ、わずか数時間で稼働させることができました」。

デイヴ氏が、Obviously AIの共同設立者で最高技術責任者を務めるTapojit Debnath(タポジット・デブナット)氏と出会ったのは、2人ともハンプシャーカレッジの留学生だった頃のことだ。卒業後、2人はベイエリアのスタートアップ企業でインターンシップを始めた。デイヴ氏は、ライブストリーミング・ソフトウェア・プラットフォームを提供するStreamlabs(ストリームラボ)で、データサイエンスのインターンをしていた。

もともとビデオエンコーディングのアルゴリズムを担当するために採用されたデイヴ氏は、会社のマーケティングやセールスチームのために、機械学習モデルの構築にも多くの時間を費やした。小売業向けソフトウェアのスタートアップ企業であるb8ta(ベータ)で機械学習のインターンをしていたデブナット氏も同様の経験をしていた。

2人は、機械学習エンジニアの人材が不足しており、多くの企業が「市民データアナリスト」、つまりデータサイエンスを理解していてもコーディングの経験がない人に頼っているということに気づいた。

Obviously AIの機械学習モデルによるリポートのユーザーインターフェース(画像クレジット:Obviously AI)

「膨大なデータを扱う仕事をしているけれど、自分自身はプログラマーではない人たちがいます。そのような人たちのために、私たちはこのツールを開発しました。その目標は、データを理解し、そのデータを用いて、何時間も何日も待たずに、ソフトウェアを使って本当に速くモデルを構築できるようにすることです」と、デイヴ氏は語っている。

同氏とデブナット氏は、2018年に仕事を辞めてこのスタートアップに取り組み始めた。家賃代わりにAirbnb(エアビーアンドビー)ホストのために雑用をこなしながら、カリフォルニア大学バークレー校のSkyDeck(スカイデック)アクセラレータプログラムに参加し、投資家への売り込み方を学んだ。

デイヴ氏によれば、多くの自動AI / MLソフトウェアプラットフォームは「データセット上でたくさんの異なるアルゴリズムを総当りで実行し、最もパフォーマンスが高いものを選ぶ」という。例えば、100種類のアルゴリズムを実行してから最もパフォーマンスの高いものを選んだりするわけだが、これでは他のアルゴリズムを自動的に構築するのに費やした時間が無駄になってしまう。

Obviously AIのEdge-Sharp AutoMLが異なる点は、データセットに使用できる特定の機械学習モデル群を調べてから、顧客のニーズに合った上位5つのモデルを自動的に候補として挙げ、それらのハイパーパラメータを自動的にチューニングし、予測結果を返すところだ。

Obviously AIの料金プランは、月額75ドル(約8300円)からとなっている。同社の典型的な顧客は、データサイエンスのチームを持たない中規模企業や、あるいはデータサイエンティストが他の仕事に没頭している大企業の小規模なチームだ。

例えば、インドの小規模な小口金融会社では、15人ほどのチームが、どの申請者に融資をするかを手作業で決めていたが、これをAIモデルに切り替えることに決めた。彼らはObviously AIを使って、申請者が債務不履行に陥る可能性や、どれくらいの金額を融資すべきかを自動的に予測するようにした。現在、この会社のアプリではエンド・ツー・エンドでObviously AIが使われており、顧客は申し込み後すぐに融資を受けられる可能性のある金額を知ることができる。

もう1つのユースケースとして、ドイツのモバイルゲーム会社では、変動料金制を導入しようとしていたが、個々のユーザーがゲーム内トークンのような商品に、どのくらいの金額を支払おうとするかを把握する必要があった。彼らはObviously AIを使って、プレイヤーのゲームへの参加状況からそれを予測している。

Obviously AIが調達したシード資金の一部は、より多くのユースケースに対応するために、機械学習の研究開発に使用される予定だ。デイヴ氏によるとObviously AIは、顧客がデータを持っていて、何を予測すべきかがわかっている教師あり学習のユースケースに焦点を当てているという。一方、教師なし学習のユースケースは、顧客がデータセットを持っているが、何を求めているのか正確にはわからない場合で、機械学習モデルを使って、データに興味深いパターンがあるかどうかを判断するものだ。教師なし学習のアルゴリズムは、eコマース・プラットフォームにおける自動分類やレコメンドエンジンなどに使われる。

関連記事
グーグルのAirTable対抗ワークトラッキングツール「Tables」がベータを卒業、Google Cloud追加へ
データ専門家でなくてもプロダクトアナリティクスをよりアクセシブルにするJune
マイクロソフトはGPT-3を使い自然言語でコードを書けるようにする
誰でも簡単にAI分析が使えるSaaS「datagusto」が8500万円を調達、創業者「自動調理器のようなツール」

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Obviously AIノーコード資金調達機械学習大日本印刷(DNP)

画像クレジット:Obviously AI

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】深層強化学習は私たちが知る製造業を変革する

編集部注:Chris Nicholson(クリス・ニコルソン)氏は、深層強化学習を産業オペレーションとサプライチェーンに適用する企業であるPathmindの創業者兼CEO。

ーーー

通りを歩きながら、目に入るものすべての名前を大声で叫んでみたとしよう。「ごみ収集車!」「競輪選手!」「プラタナスの木!」  多くの人は、そんなあなたを特に賢いとは思わないだろう。一方で、例えば障害物コースを通るときに、一連の障害をうまく切り抜けて無傷で最後までたどり着く方法を示したなら、人々の評価は変わってくるはずだ。

ほとんどの機械学習アルゴリズムは、街中で名前を連呼するようなものである。人間が1秒たらずで行えるような知覚的な作業を実行する。しかし、もう1つのAIである「深層強化学習」は、戦略的なものだ。目標を達成するための一連のアクションを実行する方法を学習する。これはパワフルかつスマートな手法であり、多くの業界を変革しようとしている。

AIトランスフォーメーションの最前線にある2つの業界は、製造とサプライチェーンだ。物を作り、出荷する方法は、協働する機械群に大きく依存しており、その機械の効率性とレジリエンスは、経済と社会の基盤となっている。それがないと、生活や仕事に必要な基本的な物を手に入れることができなくなる。

CovariantOcado傘下のKindredBright Machinesなどのスタートアップは、機械学習と強化学習を用いて工場や倉庫での機械の制御方法を改変し、ロボットにさまざまな大きさや形の物体をビンの中から検出して拾わせるなど、極めて難易度の高い課題を解決している。これらの企業はまさに巨大な市場に挑んでおり、2020年には産業用制御および自動化市場は1520億ドル(約16兆7530億円)、物流自動化市場は500億ドル(約5兆5110億円)を超える価値を示した。

技術者としては、深層強化学習を機能させるには多くのことを行う必要がある。最初に考えるべきことは、どのようにして深層強化学習エージェントに、求めるスキルを実践させるかだ。これには、実際のデータを活用する方法と、シミュレーションを使用する方法の2つの手法のみ存在する。各アプローチにはそれぞれ独自の課題がある。データは収集して整理する必要があり、シミュレーションは構築して検証することが求められる。

いくつかの例を挙げて、これが何を意味するかを示そう。2016年、Google Xはロボットの「Arm Farm」を公開した。モノをつかむことを学び、他者にも同じことを教える、複数のロボットアームで満たされた空間である。これは、強化学習アルゴリズムが実際の環境で動きを練習し、動作の成功を測定するための初期の方法の1つだった。このフィードバックループは、目標指向アルゴリズムの学習に欠かせないものである。つまり、連続的な決定を行い、その決定が導く対象を把握することが必要だ。

多くの場合、強化学習アルゴリズムが学習できる物理環境を構築することは現実的ではない。複数の工場から数多くの小売店に商品を輸送する数千台のトラック群をルーティングするための、異なる戦略をテストすることを想定しよう。可能なすべての戦略をテストするには莫大な費用がかかるだけでなく、実行に失敗した場合、多くの顧客に不利益をもたらしかねない。

多くの大規模システムにとって、最適なアクションパスを見つける唯一の方法はシミュレーションを使用することである。その際、データ強化学習のニーズを生成するために、理解したい物理システムのデジタルモデルを作成する必要がある。これらのモデルは、デジタルツイン、シミュレーション、強化学習環境とも呼ばれるものだ。これらはすべて、製造とサプライチェーンの用途において、本質的に同じことを意味する。

物理システムを再作成するには、システムの動作を理解しているドメインエキスパートが必要である。このことは、単一のフルフィルメントセンターのような小規模システムでは困難な課題となり得る。というのも、システムを構築した人々が退職していたり、あるいは亡くなっている可能性があり、後継者はシステムの運用方法は習得しているものの、再構築は行っていないからだ。

多くのシミュレーションソフトウェアツールは、ドメインエキスパートによる物理システムのデジタルモデル作成を可能にする、ローコードのインターフェイスを提供する。ドメインの専門知識とソフトウェアエンジニアリングのスキルを同じ人物が兼ね備えることは難しいため、これは重要である。

なぜ1つのアルゴリズムにこれほどの労力がかかるのだろうか。つまるところ、深層強化学習は、他の機械学習や最適化ツールでは実現し得ない結果を一貫して生成するからである。DeepMindも当然ながら、囲碁の世界チャンピオンを倒すために深層強化学習を使用した。強化学習は、チェス、タンパク質フォールディング、Atariのゲームにおいて、画期的な成果を達成するために不可欠なアルゴリズムの一部となった。同様に、OpenAIは「Dota 2」で、最高水準の人間チームに勝利するための深層強化学習を訓練した。

Geoffrey Hinton(ジェフリー・ヒントン)氏がGoogleに、Yann LeCun(ヤン・ルカン)氏がFacebookに入社した後の2010年代半ばに、深層人工ニューラルネットワークがビジネス用途を開拓し始めたように、深層強化学習も業界に大きな影響を与えるようになるだろう。囲碁で見たのと同じように、ロボットの自動化とシステム制御の飛躍的な向上がもたらされ、我々の持っている中で最高の、しかも他と大きくかけ離れたものになることが大いに期待される。

その恩恵を受けて、製品の製造とサプライチェーンの運用における効率性とコスト削減が大幅に促進され、炭素排出量と労働災害の低減につながっていくだろう。明らかに物理的世界の難問や課題は、我々の周りに存在している。2020年だけでも、新型コロナウイルス(COVID-19)、ロックダウン、スエズ運河の崩壊、異常気象によって、社会は複数のサプライチェーンの混乱に見舞われた。

新型コロナに着目すると、ワクチンが開発され承認された後も、多くの国でその製造や迅速な供給が困難になっている。これらは、過去のデータでは対応できない製造やサプライチェーンの問題だ。何が起こるかを予測するシミュレーションと、危機が発生したときに最善の方法で対処するためのシミュレーションが必要だったと、Michael Lewis(マイケル・ルイス)氏は最近の著書「The Premonition」の中で指摘している。

まさにこのような、工場やサプライチェーンで発生する制約と新たな課題の組み合わせにこそ、強化学習とシミュレーションがより迅速な解決をもたらすのである。そして、我々は将来、その数々のブレイクスルーを目にすることになるだろう。

関連記事
宇宙船や先進的製造の未来をより良くより早く実現する工場を建設するHadrian
新しいコンセプトのロボティクスに挑むRapid Roboticsが13.2億円調達
製造業を立て直すために米国は中小企業技術革新研究プログラムを強化せよ

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:機械学習深層学習強化学習コラム製造業サプライチェーン

画像クレジット:rozdemir01 / Getty Images

原文へ

(文:Chris Nicholson、翻訳:Dragonfly)