アップルがApp Storeの反トラスト訴訟でEpicの秘密プロジェクトを告発、Epicは独占を批判

Epic Games(エピックゲームス)対Apple(アップル)の後者による独占的慣行を巡る裁判は2021年5月に始まり、4月8日に両者の主張が発表された。裁判所の意向により一部削除されている。基本的事実の合意を踏まえ、両者はそれぞれの解釈について争う、そのために両CEOが(バーチャル)証言台に立つ可能性は高い。

先にTechCrunchでも報じたように、Epicの主張の論旨は、Appleのアプリ市場支配と30%の手数料が反競争的行動であり、反トラスト法で規制されるべきだというものだ。同社は、自社のゲーム内通貨ストアを人気のゲーム「Fortnite(フォートナイト)」に忍び込ませてAppleの支払い方法を回避するという、不法行為とされる行動で反逆した。CEOのTim Sweeney(ティム・スウィーニー)氏は後日、うかつにもこれを悪法に抵抗する公民権運動になぞらえた。

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Appleは市場独占の訴えを否定し、同社が自身のApp Storeだけでなく、市場全体で膨大な競争に直面していることを主張した。そして手数料の割合に関しては、ある程度調整の余地はあるだろうが(Appleは2020年を通じて批判を浴びたあと、デベロッパーの最初に100万ダウンロードについて取り分を15%に引き下げた)違法である可能性は低い。

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一方Appleは、反トラストの申立て自体も、関連した言いがかりも、Epicの人目を引くための宣伝行動にすぎないと主張した。

実際Epicは、訴訟を提起した時点で広報戦略の準備をすべて整えており、訴状には「Project Liberty」 と呼ばれる長期的社内プログラムがあった(Appleは下落しているFortniteの売上を強化するため、としている)。EpicはPR会社に30万ドル(約3300万円)ほどを払い「アプリ公正性のための連合」を通じたAppleとGoogleに対する複数企業による告発キャンペーンを含む「2フェーズのコミュニケーション計画」を指示したと見られている。

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Project LibertyはAppleの訴状の中で1つの節全体を占めており、Epic Gamesとスウィーニー氏による「Googleを(おそらくAppleも)反トラストを巡る法廷闘争に引き込む」計画が詳しく述べられており、内部のメールによると、決済システムを回避してアプリストアから追放されることをきっかけにしようとしていた。EpicはProject Libertyにはわずか1段落でのみ言及し、プロジェクトを秘密にしていた理由を「Epicは、AppleにFortnite Version 13.40を拒否されることなく、これを公表することが不可能だった」ためだと説明した。つまりそれは違法な決済システムが組み込まれたバージョンだったという意味だ。およそ説得力のない反論だ。

果たしてAppleの手数料は高すぎるのか、また果たしてEpicはFortniteの儲かる期間を伸ばすためにこれをやっているのか。裁判は反トラスト法と方針に基づいて裁定されるが、その点でこの裁判はAppleにとってさほど恐ろしいものには思えない。

双方の法的議論と事実の概要は数百ページにわたるが、要点はEpic Gamesの訴状の最初の一文に十分要約されている。「本訴訟はAppleによる同社iOSエコシステム内の2つの市場における市場独占を告発するものである」。

具体的には、Appleが自ら作り当初から管理し、デジタル配信およびゲーム分野においてあらゆる競合相手から明確に非難されているそのエコシステムの上で、Appleが支配者であると言えるのかどうかを争う裁判だ。

しかし、一介の記者の意見などあまり役に立たない。だから裁判が行われるのであり、2021年5月に予定されている。示すべき根拠はたくさんある。Epic Gamesの主張の説明は、Appleの反論と同じくらい正確でなくてはならない。その意味でも、Apple CEOのTim Cook(ティム・クック)氏、Epic CEOのティム・スウィーニー氏、Appleの元マーケティング責任者でおなじみの顔Phil Schiller(フィル・シラー)氏らによるライブ証言が楽しみだ。

証言と質問のタイミングと内容は後日までわからないが、聞くに値する興味深いやり取りがあることは間違いない。裁判は5月3日に始まり、約3週間続く。

これに関連して他にもいくつか裁判が進行中であり、AppleがEpicを契約違反で訴えている対抗訴訟もその1つだ。多くの訴訟がこの主要な訴訟の結果に全面依存している。すなわち、もしAppleの契約条件が違法であれば、契約違反そのものが成立しない。そうでなければ、Epicが自ら規則違反を十分認めていることから裁判は事実上終わっている。

双方が提出した「事実認定案」の全文はこちらで読むことができる

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Epic GamesApple独占禁止法App StoreFortnite裁判

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

英国の独禁監視当局がフェイスブックのGIPHY買収を調査中

GIFの流動性に対する潜在的な脅威が英国の競争監視当局を悩ませ続けている。

2020年発表された、Facebook(フェイスブック)の4億ドル(約443億円)でのGIPHY(ジフィー)買収は現在、デジタル広告に関連する競争上の懸念があるとしてCMA(英国競争・市場庁)の徹底的な調査を受けている。CMAは調査して9月15日までに報告書をまとめる。

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当局は2020年夏この買収案件について調査に乗り出し、2021年になってもその調査は続いた。そして先週、CMAは(すでに完了した)FacebookとGIPHYの買収は、Facebookがすでに主要プレイヤーであるデジタル広告マーケットにおける競争をさらに抑制しうると述べ、懸念を示した(Facebookはディスプレイ広告マーケットで50%超のシェアを握っている)。

関連記事:英国の競争監視当局はフェイスブックのGIPHY買収を未だ検討中、2021年3月末に進展か

当局は、買収の前にGIPHYが自社のデジタル広告提携を英国を含め他国に拡大する計画だったという証拠を見つけた、と述べた。

「もしGIPHYとFacebookが合併したままだったら、GIPHYはデジタル広告を拡大するインセンティブをさほど持たず、ひいてはこのマーケットにおける潜在的な競争の逸失につながる」との考えを文書で示した。

CMAはまた、ソーシャルメディアのライバルに害をもたらし得るFacebook所有のGIPHYが、他社へのアニメーションピクセルの供給を搾る、あるいはライバルにそれまでよりも悪条件でのサインアップ(ライバルにユーザーデータの提出を求めてそれらを広告ターゲティングエンジンに使い、さらにマーケットパワーを得るなど)を求めるテック大企業になることが懸念されると述べた。

現実感3月25日にGIPHYとFacebookは懸念を解消するため5日の猶予が当局から与えられた。懸念を和らげるための法的拘束力のある提案の提出だ。

綿密な調査を行う「第2段階」は、当局に受け入れられる譲歩がなされていたら回避できていただろう。しかし明らかにそうではなく、CMAは4月1日、第2段階の委託を発表した。最後の通知から作業日5日経って発表されたことから、譲歩はなかったようだ。

TechCrunchはFacebookとCMAにコメントを求めた。

Facebookの広報担当は次のように述べた。「当社は引き続きCMAの調査に全面的に協力します。この合併は競争にとって良いものであり、デベロッパーからサービスプロバイダー、コンテンツクリエイターに至るまで、GIPHYや当社のサービスを使う英国のすべての人の利益にかなうものです」。

FacebookはすでにGIPHYの買収を完了した一方で、CMAの調査によってFacebookが自社のビジネスにGIPHYを深く統合する作業は凍結が続いている。

とはいえ、Facebookのデジタル広告分野における独占的な立場を考えると、プロダクトイノベーションを通じてすばやく動くビジネスの必要性は過去数年よりもはるかに差し迫っている。過去においては、当局の干渉なしに市場での優位性を構築していた。

近年、CMAはデジタル広告マーケットに細心の注意を払ってきた。2019年には広告テックを独占しているGoogle(グーグル)とFacebookのパワーに関して重大な懸念を報告した。だが最終レポートの中でCMAは、マーケットパワーの不均衡そのものを解決するために介入するより、政府の法律制定を待つと述べた。

英国は現在、デジタルマーケットでみられる「勝者がすべてを得る」の力学に対する懸念への対応として、テック大企業に的を絞った競争促進の規制を専門とする機関を立ち上げる過程にある。設置されるDigital Market Unitは「数年内に新たなコンプライアンス要件を課されるインターネットプラットフォームのための「競争促進」体制を監督する。

一方、CMAは引き続きテック企業の取引や戦略の変更などを精査する。ここには、他の業者からの苦情を受けてこのほど調査を開始したGoogleのChromeでのサードパーティのCookieに対するサポート打ち切り計画も含まれる。

またCMAは2021年1月にUber(ウーバー)のAutocab(オートキャブ)買収計画も調査していると発表した。しかし3月29日に、両社の間にあるのは「限定間接」の競争だけで、Autocabが将来Uberにとってかなりの、そしてより直接的な競合相手になる可能性が高いことを示す証拠は見つからなかったとして買収取引を認めた。

関連記事:UberのAutocab買収を英国の競争監視当局が調査

CMAはまた、AutocabとUberがタクシー会社に販売する予約と配車のソフトウェアの質を下げることで、Autocabの顧客であるタクシー会社を不利な状況に置こうとしているかどうかも考慮した。しかし第1段階の調査で、もしUberがそうした措置を取っても、タクシー企業は他の信頼できるソフトウェアサプライヤーと委託ネットワークに切り替えられることが明らかになり、これが買収取引を認めることにつながった。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookGIPHYイギリス買収独占禁止法CMA

画像クレジット:Muhammed Selim Korkutata/Anadolu Agency / Getty Images(Image has been modified

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

欧州のAndroidの「選択画面」はより優れた選択肢を隠し続ける

2018年に欧州委員会によって下された反トラスト法違反の重い制裁を受けて、Google(グーグル)が欧州のAndroid(アンドロイド)で検索エンジンの「選択画面」の枠をオークションにかけ始めてから1年以上が過ぎた。しかし、2年以上前にGoogleに記録的な罰金を科したにもかかわらず、ほとんど何も変わっていない。

Googleの検索エンジン市場でのシェアは依然として低下しておらず、EUでは高い関心を集める代替の検索エンジンがGoogleが考案した「是正処置」によって値付けされている。この是正処置は、GoogleのAndroid OSを搭載したスマートフォン上で、最も多くの費用を支払える検索エンジンを優先し、支配的なGoogle自身の代替手段として掲載するというものだ。

四半期ごとの選択画面の勝者は、ますます変わらなくなってきている。Googleの代替検索エンジンは、またすぐに見栄えのしない「勝者」たちが列挙されるだろう。

2021年第1四半期の結果は、スマートフォンユーザーのほとんどが聞いたことがないであろう広告ターゲティングの検索エンジンオプションの一団で占められていた。ドイツの「GMX(ジーエムエックス)」、カリフォルニアを拠点とする「info.com(インフォ・ドット・コム)」、プエルトリコの「PrivacyWall(プライバシーウォール)」(ウェブサイトに「100%プログラマティック広告」というスローガンを掲げている会社が所有している)に加えて、もう1つは名の知れたアドテック大手の検索エンジンMicrosoft(マイクロソフト)の「Bing(ビング)」だ(*記事執筆時。現在は2021年第2四半期の結果が掲載されている)。

リストの下方では、ロシアの「Google」にあたるYandex(ヤンデックス)が8つの枠を獲得した。また、チェコの検索市場の古参Seznam(セズナム)は2つの枠だ。

大敗となったのは、トラッキング防止機能を備えた検索エンジン「DuckDuckGo(ダックダックゴー」だ。同社は、10年以上にわたってオンラインでのプライバシーを擁護してきたが、獲得枠は1つ(ベルギー)のみとなった。オークション開始時にすべての国でまんべんなく枠を獲得していたのとは対照的に、ほぼ完全に締め出されてしまった。

関連記事:AndroidのEUにおけるデフォルト検索エンジン指定に批判多数

広告収入のすべてを植樹活動に寄付する非営利団体の検索エンジンEcosia(エコシア)は、今回もほとんど出てこない。スロベニアのAndroidユーザーの画面に表示される1枠のみだ。しかし、エコシアは12月にiOS(アイ・オーエス)、iPadOS(アイパッド・オーエス)、macOS(マック・オーエス)のSafari(サファリ)にデフォルトの検索オプションとして追加され、世界中で1500万人以上のユーザーに利用されるようになった。

一方、プライバシー保護に焦点を当てた欧州産の検索オプションであるフランスの「Qwant(クワント)」は、わずか1枠にとどまった。それも、自国の市場ではなく非常に小さな国、ルクセンブルクだ。

もし欧州の規制当局が、自ら指摘した重大な反トラスト法違反を受けてGoogle自身が考案した「是正処置」によって、Android検索市場に健全な競争が自然に取り戻せるとでも思っているのなら、ほぞを噛むことになるだろう。Googleの検索市場でのシェアは、へこむどころか、かすりもしていないというのが純然たる事実だ。

Googleは、iPhoneのデフォルトに同社の検索エンジンを設定するために、Appleに毎年数十億ドル(数千億円)を支払っているが、Statista(スタティスタ)のデータによると、2021年2月の欧州におけるAndroidとiOSを合せたモバイル検索市場でのGoogleのシェアは97.07%であり、欧州委員会が反トラストの裁定を下した2018年7月の96.92%から上昇している。

そう、実際にはGoogleは、この「是正処置」を実施してシェアを伸ばしているのだ。

これはどう見ても、EUの競争法執行の壮大な失敗だ。大きなニュースとなったAndroidに対する反トラスト判決から2年半以上経ってご覧の有様だ。

欧州委員会はまた、Googleがこのオークションを行っている間、欧州がテクノロジーの主権を握ることを目標に掲げ推進してきた。Ursula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)欧州委員会委員長は、この包括的な目標を自身のデジタル政策プログラムに結び付けている。

テクノロジーの主権という施策においても、Androidの選択画面は大きな失敗と言わざるを得ない。2020年、検索エンジン付きブラウザーの事業から完全に撤退したCliqz(クリックス)が、その責任の一端は、欧州独自のデジタルインフラを所有する必要性を理解できなかったEUの政治関係者にあるとしているように、Googleに代わる(ほとんどの)欧州産の検索エンジンの助けになっていない。それどころか、最も関心を集め、Googleの代替となるべき欧州の検索エンジンを積極的に埋没させ、広告から資金を得ているGoogleクローンの一群との競争を強いている。

(もしBrave Searchが軌道に乗れば、欧州産でない新たな代替検索エンジンとなる。欧州発の専門知識やテクノロジーの恩恵を受けたものではあるが……)

これは、オークションの仕組み上、Googleに最も多くの費用を支払った企業だけが、Androidのデフォルトオプションとして設定されるチャンスを得られるからだ。

稀に欧州の企業が大枚をはたいて選択リストに掲載されることがあっても(これは検索クリックごとにコストがかかることを意味するようだ)、ほとんどの場合、他の欧州以外の選択肢やGoogleと一緒に掲載されることになり、晴れて選択されるまでのハードルはさらに高くなっている。

このような方法を取る必要はないはずだ。実際Googleは当初、市場シェアに基づいた選択画面を設けていた。

しかし、Googleはすぐに「載りたければ金を払え」モデルに切り替え、ユーザーのデータを追跡しない(または、純粋に環境保護を目的とし広告収入を植林に充て、利益を追求しないエコシアなど)代替検索エンジンの見つけやすさを一気に低下させてしまった。

このような代替検索エンジンの企業のほとんどは、Googleの選択画面オークションに勝つ余裕がないという(このゲームに参加する企業は、GoogleとのNDA締結が必要なため、発言に制限があることも注目すべきだ)。

Googleのオークションの落札者が、Google自身のビジネスの土台である行動ターゲティングモデルにほぼ偏っているのは、明らかに偶然ではない。あらゆるデータ追跡型のビジネスモデルが集結している。そして、消費者の観点からすると、人為的に限定されたGoogleの劣化バージョンしか含まない貧弱な「選択肢」の中からGoogleを選ばない理由があるだろうか。

エコシアがTechCrunchに語ったところによると、同社は現在、オークションプロセスから完全に撤退することを検討しているという。これは、参加するべきと考える前にオークションをボイコットするという、最初の直感に立ち返ることになる。Googleの「載りたけりゃ金を払え」スタイルの「no choice(選択不可)」(と、エコシアはオークションのことを呼んでいる)ゲームを数カ月間プレイしたことで、このシステムは、真正直な検索エンジンプロバイダーには勝ち目がないという見解を固めた。

過去2回のオークションで、エコシアは毎回1つの枠しか獲得できなかったが、ユーザー数には何の好影響も見られなかったという。完全に撤退するかどうかは、次のオークションプロセスの結果が明らかになった後に決定される。(そのオークションの結果は、3月8日に発表され、エコシアは今回も1枠となっている)。

「結局、このゲームをプレイするのが『面白くない』ことに気づいた」とエコシアの創業者であるChristian Kroll(クリスチャン・クロール)氏は語る。「このゲームは非常に不公平で、『ダビデ対ゴリアテ』というだけでなく、ゴリアテがルールを選び、アイテムを手に入れ、望めば途中でルールを変えることさえできる。だから、参加してもおもしろいことは何もない」。

「参加して9ヵ月になるが、欧州の市場全体のシェアを見ると、何も変わっていない。今回のラウンドの結果はまだわからないが、何も変わらないと思っている。いつものお仲間がまた掲載されるだろう……今掲載されている選択肢のほとんどは、ユーザーにとって興味深いものではないが」。

「興味を引く選択肢をすべて画面から消してしまって『選択』画面と呼ぶのは、何とも皮肉なものだ。だから、状況は変わらず、ゲームをするのがますますつまらなくなり、ある時点で、もうこのゲームは止めるという決断を下すことになるかもしれない」と同氏は付け加えた。

TechCrunchが話を聞いた他の代替検索エンジンは、今のところ参加を継続する予定だが、いずれもAndroidの「選択画面」でGoogleが「載りたけりゃ金を払え」モデルを採用していることに批判的だ。

ダックダックゴーの創設者であるGabriel Weinberg(ガブリエル・ワインバーグ)氏は「我々は入札に参加しているが、それはGoogleの出来レースがどれほど酷いものかを欧州委員会の前にさらけ出すためであり、消費者にとって本当に役立つものへと正すために、欧州委員会がより積極的に使命を果たすことを期待している。当社の厳格なプライバシーポリシーのため、前回と同様に排除されると予想している」と述べている。

同氏は、同社が2020年秋に掲載した「根本的に欠陥のある」オークションモデルを公然と非難するブログ記事を紹介し「記事全体はまだ有効だ」と述べている。このブログ記事で同社は、2014年から利益を上げているにもかかわらず「ユーザーからの搾取で利益の最大化を図るという選択肢はなかったため、今回のオークションでは落札に至らなかった」と書いている。

「実際のところ、プライバシーの保護とクリーンな検索エクスペリエンスという当社のコミットメントは、検索1件あたりの収益が少なくなることを意味する。つまり、利益の最大化を狙う他の企業と比較して、より少ない金額で入札しなければならないということだ」とダックダックゴーは続ける。「このEUの反トラスト法に対する是正処置は、消費者が使いたいと思う代替検索エンジンを排除し、掲載される検索エンジンからは、設定メニューで得た利益の大半を奪うことで、モバイル検索におけるGoogleの優位性をさらに強化することにしかならない」と述べている。

「このオークションの形式は、ユーザーの選択ごとに期待される利益を入札価格として入札するという動機を与える。長期的に見ると、選択されたGoogleの代替検索エンジンは、設定メニューから得た利益のほとんどをGoogleに渡さなければならない。Googleのオークションは、検索エンジンプロバイダーがプライバシーを軽視したり、広告を増やしたり、善意の寄付をしなかったりする動機を与えているが、それはそうすることで、より高い価格で入札する資金が得られるからだ」とも述べている。

フランスのクワントも同様に批判的であり、オークションに対して「極めて不満」と述べ「早急な修正」を求めている。また、2018年の欧州委員会の決定を「文面においても、その精神においても」完全に尊重すべきだとしている。

CEOのJean-Claude Ghinozzi(ジャン・クロード・ギノッジ)氏は「当社は、オークションシステムに極めて不満を持っている。Googleに最も費用を払っている3つの選択肢だけでなく、消費者が自分の使いたい検索エンジンを見つけられるように、選択画面の早急な修正を求めている。2018年の決定を、文面でも精神面でも完全に尊重することを要求する」と語る。

「当社はあらゆる選択肢を検討し、四半期ごとに決定を再評価している。いかなる場合でも、Googleが提供するたった3つの代替選択肢に限られることなく、消費者が好みの検索エンジンを自由に選択できるようにしたいと考えている。消費者の利益は常に最優先されなければならない」と付け加える。

ロシアのヤンデックスは、第2四半期のオークションへ参加することを明言した。しかし、Googleの処置について、Androidユーザーに真の「選択の自由」を提供するには至っていないと批判する。

「当社は、高品質で便利な検索エンジンを世界中に提供することを目指している。検索エンジンの選択の自由は、活発な市場競争につながり、各社のサービス向上へのモチベーションを高めると確信している。現在のEUの解決策は、2020年3月以降に発売される端末のみを対象としており、ユーザーの選択の自由を完全に保証するものではないと考えている」とヤンデックス社の広報担当者はいう。

「そのようなデバイスは、現在のEU市場でユーザーが手にしているデバイスの総数に比べて、非常に少ない。正当で実質的な選択の自由を提供することが不可欠だ。サービスプロバイダー間の競争は、最終的には、より良い製品を受け取るユーザーに利益をもたらす」

検索分野に新たに参入したトラッキング防止機能付きブラウザーのBrave(ブレイブ、前述のとおり、ブレイブはクリックスの資産を買収し、近く公開される自社ブランドであるブレイブサーチを立ち上げようとしている)は、オークションに参加することはまったく考えていないことを明らかにした。

「ブレイブは、このオークションに参加する予定はない。当社はユーザーを第一に考えているが、この入札プロセスは、ユーザーの選択肢を狭め、Google Play(グーグルプレイ)ストアの最適化に最も有効な入札者のみを選択し、ユーザーへ最大の利益を提供することを無視している」と同社の広報担当者は述べている。

そして「皮肉なことに、Googleは、ChromeとAndroidを結びつけた反競争的な行為で有罪となったことを受けた自らの是正処置で利益を得ている」と付け加えた。

Androidの選択画面に参加せずにEUでブレイブサーチのシェアを拡大するための戦略について尋ねられた広報担当者は「ブレイブはすでに欧州市場向けにブラウザーをローカライズしている。マーケティングキャンペーンや推薦プログラムで紹介されているクラス最高のプライバシーを提供することで、今後も成長を続けて行く」と述べている。

Googleが自ら策定した「是正処置」は、2018年に欧州委員会が下した反トラスト法上の裁定、つまり記録的な50億ドル(約5480億円)の制裁金と、さまざまな侵害行為の停止命令に対処したものだ。EUの反トラスト規制当局は、現在も同社の実施状況を監視し続けている。しかしクロール氏は、欧州委員会はGoogleに対し、指摘した不正行為を修正させるのではなく、実質的には時間稼ぎをさせているだけだと主張する。

「現時点での見方だが、欧州委員会は、選択画面のオークションは必ずしも是正処置として要求したものではないため、Googleに変更を強制することはできないと考えており、それが自分たちの責任と捉えていない理由かもしれない」と同氏は言い「しかし、同時に、欧州委員会はGoogleに状況を解決するよう要求し、それに対しGoogleは何もしていない」と付け加える。

「欧州委員会はまた、Googleがマスコミやユーザーから信望を得る隙を与えていると思う。Googleが何か対処しているように見えるため、Googleが好きなように動くことを許している【略】本当の選択画面が良い解決策になるかどうかはわからないが、それを決めるのは私ではない。Googleが代替検索エンジンの損害をうまく修復したかどうか【略】また、これまでに与えた損害をいくらかでも補償したかどうかを決めるのは欧州委員会だが、それが成されているようには見えない。[マーケットシェア]の数字を見れば、基本的にはまだ同じ状況が続いていることがわかる」。

さらに同氏はGoogleの現在の「是正処置」についても「全体的に、人気のある選択肢を画面から排除するように設計されている」と主張し「それがオークションの仕組みだ。もちろん、誰もそこに踏み込もうとしないことに失望している。つまり、基本的にGoogleの競合他社同士で殴り合うという不公平なゲームに参加している。どこかの規制当局が介入して、これではダメだと言ってくれることを期待しているが、そうはならない」と述べる。

「今のところ、当社の唯一の選択肢はそこに留まることだが、もし本当に効果がなく、規制当局が介入する可能性もないと判断すれば、完全に撤退して私たち抜きでGoogleに楽しんでもらうという選択肢もある。[現在のオークションモデル]からは何も得られないだけでなく、当然ながらそこに投資もしている。また、NDAを締結しているために制限もあり、その制限さえもちょっとした苦痛だ。つまり、弊害ばかりがあり、何の利益も得ていない」。

NDAによってオークション参加にともなうコストについて話すことは制限されているが、クロール氏は、収益を犠牲にしてリーチを追求しているため、落札者は損をしていると示唆する。

「前回の入札を見てみると、この入札では当社が利益を得ることは難しく、他社も損をするのではないだろうか。これはまさに、勝者がしばしば損をするという、このオークション、というよりむしろほとんどのオークションの作られ方だ。つまり、落札者が過剰な値段を付けるという『勝者の呪い』そのものだ」。

同氏は「当社は非常に慎重に入札したので、損をするというようなことにはなっていない。前回幸運にもスロベニアの枠を落札した。スロベニアは美しい国だが、やはり当社の収益には影響しないし、この落札は予想もしていなかった。これは、基本的にゲームに参加するためのものだが、財務上のリスクはない」とし「当社が落札できることはまずないだろうと思っていたため、[現在オークションに参加しているものの、ほとんどが落札できないエコシアにとっての]財務リスクはそれほど大きくないが、実際に落札した他社にとっては話は異なるかもしれない」と付け加える。

クロール氏は、このオークションモデルによって、Googleは競合企業を弱体化させながら市場シェアを伸ばし続けることができたと指摘する。

「検索によって損をしてでも、シェアを拡大しようとする企業は割りと多くある。そして結局Googleはそのすべてのシェアを獲得し、同時に競合企業を弱体化させている」と同氏は主張し「競合企業はシェアの拡大に費用をかける必要があるからだ。また、少なくともオークションが始まった当初は気づかなかったことだが、本物の検索会社であれば【略】ブランドを構築し、製品を産み出し、そのためにあらゆる投資を行い、本物のユーザーがいるはずだ。そしてそういった状況であり、真の意味での選択画面があれば、ユーザーはそのブランドを自ずと選ぶ。しかし、このオークションモデルの選択画面では、基本的には、すでに獲得しているであろうユーザーのためにコストをかけることになる」と語る。

「つまり、そういう企業は不利になってしまう。ダックダックゴーや当社のような『真のUSP(独自の強み)』を持っている企業がそうだ。Lilo(リロ)、そしてクワントさえも、基本的に検索でより自国民よりのアプローチを取っていれば、そうなる可能性がある。これらの企業は、さらに不利な立場に置かれることになる。これは不公平なことだと思う」と同氏はいう。

オークションの勝者のほとんどは、Googleのように、検索ユーザーのデータを収集して広告ターゲティングで利益を得るという監視資本主義に関わっている。そのため、EUの競争法執行が、ウェブを支配しているプライバシー上好ましくないビジネスモデルを打ち砕く(そして、より健全な代替検索エンジンが参入するきっかけをつかむ)方策として機能することを当てにしていた人がいたとしたら、ひどく失望していることだろう。

広告のために消費者を追跡しない、あるいはエコシアのように完全に非営利のミッションに基づく、より優れた代替検索エンジンは明らかに迫害されている。

欧州委員会は、抗議を聞いていなかったとは言えない。Googleがオークションモデルを発表すると直ぐに、ライバル企業らはそのモデルの欠陥、不公正、不公平、持続不能性を非難し、(確かに、Googleの「広告収益モデルのための行動ターゲティング」を模倣しているわけではないので)競争上不利になると訴えていた。

それにもかかわらずこれまでのところ、最大手のプラットフォーム企業らに対して、公正な事業を保証するための大規模な新規則を大々的に提案しておきながら、欧州委員会は対応する気がない、あるいは、対応できない様子だ。しかし、なぜ欧州委員会は、Googleのようなテクノロジー大手に対して、既存のEU規則をより効果的に行使しないのかという疑問が生じる。

TechCrunchからGoogleのAndroidの選択画面オークションモデルに対する批判を欧州委員会に提起したところ、欧州委員会は月並みな主旨で回答してきた。そこには「選択画面がユーザーの選択を促進する効果的な方法であることは過去に見てきた」と書かれている。

「選択画面は、EEA(欧州経済領域)加盟国のすべての新しいAndroid端末の起動時に、ユーザーに追加の検索プロバイダーを提示することを意味する。これにより、ユーザーは新たに購入したAndroid端末のセットアップ時に、好みの検索プロバイダーを選択できるようになった」と述べ「この決定が完全かつ効果的に実施されるよう取り組む」と付け加えている。

「そのため、選択画面の仕組みの適用状況を注意深く監視している」という。これは、Googleが2018年のEUの裁定を「遵守」し始めて以来の決まり文句だ。

わずかな進展だが、欧州委員会は「市場からの関連するフィードバック」と称し、選択画面の仕組みについてGoogleと協議したことも明らかにした。

同委員会は「選択画面の表示と仕組み、およびライバル検索プロバイダーを選択する仕組み」を中心に話し合ったと述べている。

しかし、時は刻々と過ぎ、Google検索に代わる真の選択肢は市場からますます排除されている。そして、欧州の消費者はプライバシーを侵害するAndroid上での検索に対して有益な代替手段を提供されないままとなっているが、規制当局は何を待っているのだろうか。

欧州委員会でMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベスタガー)氏が競争政策を担当して以来(そして2019年からはEUのデジタル政策の重要な決定者でもある)、肝心なところでテクノロジー大手への姿勢が弱腰になっているように思われる。

テクノロジー大手と対峙することを厭わないという評判を得て、過去5年以上に渡りGoogle(およびその他の企業)に対して、注目を浴びる数々の罰金を科してきたにもかかわらず、最近のGoogleの事例に限って言えば、モバイルデバイスでの検索、スマートフォンのOS、検索広告の仲介などで、同氏が市場のバランスを取り戻すことに成功したとは言えない。

それでもなお、同氏は、2020年末のGoogleによるウェアラブルメーカーFitbit(フィットビット)の買収について、このテクノロジー大手がさらなる支配を固めることに多くの反対の声があったにもかかわらず、甘んじて受け入れている。

関連記事:EUがグーグルのFitbit買収を承認、健康データの広告利用を10年間禁止することで合意

その際、同氏は、その懸念に対処するにはGoogleが確約した譲歩で十分だと言い訳がましく主張した(例えば、少なくとも10年間はフィットビットのデータを広告に使用しないという約束をGoogleから引き出した)。

しかし、Googleが一連のEU反トラスト法の裁定を遵守しているかどうかを監視してきた同氏の実績を考えると、Google以外の誰が、同社に対する欧州委員会の命令執行能力や意思を信じることができるだろうか。そうこうしている間に、Googleのやり方に対する不満は、蓄積される一方だ。

欧州委員会の対応についてクロール氏は「聴いているとは思う」と述べ、そしてこう続けた「しかし、見たいのは行動だ」。

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画像クレジット:Ecosia

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

FacebookはFTCの反トラスト法違反訴訟にビッグテックの荒削りな戦略で反論

Facebook(フェイスブック)は、独占の定義に対するFTC(連邦取引委員会)の広範なアプローチに疑問を投げかける標準的なプレイブックを通じて、FTCの反トラスト法(独占禁止法)違反訴訟に異議を唱えている。しかし、これまで信頼されてきた「私たちは価格を上げていないので独占ではない」「競争を許していない場合、どうやって反競争的になり得るのか」という考え方自体が、まもなく新しい原則や新政権に揺さぶられるかもしれない。

関連記事:Facebookの独占禁止法違反を米連邦取引委員会が主張、買収した企業を切り離すよう要求

Facebookはこの件に関して、米国時間3月10日に提出された文書(この記事の末尾に掲載)の中で、憤慨したような調子で次のように述べている。

反トラスト法上の懸念とはまったく関係のない事柄についてFacebookを容赦なく批判するという厳しい状況の中で、FTCは1票差で、Facebook自身の事前決定、前例の管理、法的権限の制限を無視した訴訟を起こすことを決定した。

そう、ここではFacebookが犠牲になっている。(ちなみに、連邦通信委員会と同様に、FTCも党の方針に沿って3対2に分割するように設計されているため、多くの重要な措置で「1票の差」が見られる。)

しかし、その必然的な批判に続き、FTCは自身の業務を把握していないとする消極的な説明がなされている。Facebookに対する訴訟は、3つの観点から問題があり、判事の判断を仰ぐべきだと同社は主張している。

第1に、FTCは「妥当な関連市場を提示」していない。結局のところ、独占をするにはその独占力を行使する市場がなければならないが、FTCはこれを示していないとFacebookは指摘し「漠然とした『パーソナルソーシャルネットワーク』市場であり『このような自由商品市場が独占禁止目的のために存在すると裁判所が判断したことはない』。FTCはまた、実際に会社に利益をもたらす『競争の激しい』広告市場を黙殺している」とFacebookは主張している。

つまるところ、Facebookの「シェア」が大きいと主張できる無料サービスに理解しがたい「利用」 市場を構築しようとするFTCの取り組みは、作為的で一貫性がないということだ。

このことは、FTCがソーシャルメディア市場を定義しなかった (そしてFacebook自身もそうしなかった) ということだけでなく、ソーシャルメディアは無料であり、収益は別の市場で作られているので、ソーシャルメディア市場自体が存在しないかもしれないということを意味している。これはビッグテックの典型的な議論のバリエーションで「私たちは既存のどのカテゴリーにも該当しないため、事実上規制されていない」というものだ。いずれにせよ、ソーシャルメディア企業を広告慣行によって規制することはできないし、その逆もできない(ある点では結びついているかもしれないが、概して異なるビジネスである)。

このようにFacebookは、これまでの多くの企業と同様、規制の枠組みの隙間を埋める努力をしている。

これは同社の2番目の主張に続くもので、FTCは「Facebookの製品が無料で無制限に提供されていることを認めているため、Facebookが価格を引き上げたり、生産量を制限していることを証明することはできない」。

製品が消費者に無料で提供されるのであれば、当然のことながら、プロバイダーが独占権を持つことや独占権を乱用することは不可能だというのが、この考え方だ。FTCが、Facebookがソーシャルメディア市場の60%を支配している(もちろんそもそも存在しない)と主張したとき、それは何を意味するのだろうか。ゼロはその60%あるいは100%あるいは20%であっても、ゼロのままである。

第3の主張は、FTCが指摘した行動、すなわち将来有望な競合他社を巨額で買収し、Facebookのプラットフォームとデータへのアクセスを制限することで他社の芽を摘む行為は、完全に合法であるだけでなく、FTCには彼らに対抗する資格はないというものだ。過去には是認しており、現在に至っても指摘すべき特定の違法行為は存在しない。

もちろん、FTCは合併や買収については常に再調査を行っており、たとえば審査の過程で得られなかった新しい情報が明らかになった場合には、ずっと後になってこれらを解消するという前例もある。

「Facebookは2012年に小規模写真共有サービス、Instagramを買収したが [中略]、その後買収はFTCによってレビューされ、全会一致の5対0で承認された」と文書には書かれている。10億ドル規模の買収を「小規模」とする不合理な説明はさておき、買収と同時期に行われた社内での会話のリークや暴露は、この買収をまったく新しい観点からとらえている。当時は今ほど安全性が高くなかったFacebookは、Instagramが自社のシェアを奪うのではないかと驚き、心配していた。

FTCはこの点と、Facebookが最初の申請時に掲載したFAQの中で指摘したその他の多くの点に対処している。

これらの議論のいくつかは少し奇妙に思われたかもしれない。例えば市場が消費者間で交換されるマネーを持っていなくても、それらのユーザーのサービスへのエンゲージメントに応じて他の場所で交換される価値があるとすれば、なぜそれが問題になるのだろうか。そして、プライバシーを侵害する(そしてそのために莫大な罰金を科された)無料製品という文脈での企業の略奪行為が、広告のような隣接市場での行動によってどう判断されるのだろうか。

単純な真実は、反トラスト法と慣行は何十年間にもわたってマンネリ化しており、市場は消費財によって定義され、製品の価格と企業がそれを恣意的に引き上げることができるかどうかによって定義されるという原則によって圧迫されてきたということだ。競合他社を出し抜くことで相手を吸収し、後に唯一の供給者であるときに価格を上げる鉄鋼メーカーはその典型的な例であり、反トラスト法が対抗するために作られた類のものである。

それが不必要に単純化されているように思えるとしても、実際にはもっと複雑であり、多くの状況で効果を発揮している。しかし過去30年の間に、MicrosoftやGoogle、Facebookなどの複雑な複数ビジネスドメインに対応するには不十分であることが示されてきた(もちろん、TechCrunchの親会社であるVerizonは別問題だ)。

Amazonの支配は、反トラストの原則の失敗における最たる例の1つであり「Amazon’s Antitrust Paradox」と呼ばれる画期的な論文に結実した。この論文は、これらの時代遅れのアイデアを嘲笑し、ネットワーク効果がいかに巧妙で効果の低い反競争的慣行につながったかを示した。体制派の声はそれをナイーブかつ過剰なものだと非難し、進歩派の声はそれを反トラスト哲学の次の波だと賞賛した。

この物議を醸した論文の著者であるLina Khan(リナ・カーン)氏が、間もなくFTCの空席となっている5人目のコミッショナー職に指名されると報道されていることから、後者の陣営が勝つ可能性もありそうだ(このパラグラフで最初に述べたように、同氏はまだ指名はされていない)。

同氏が承認されるかどうか (明らかに現状に反対する部外者としての激しい反対に直面することは間違いない) はともかく、同氏の指名は、その見解が重要視されていることを裏付けるものだと言える。カーン氏とその支持者たちがFTCのような機関で責任を担うことになれば、FacebookがFTCの訴訟を形式上拒否するために何十年も前から頼りにしてきた仮定が脅かされる可能性がある。

今回の訴訟はどちらかといえば回顧的な性質を持っているため、前述の見解が適用される可能性は低いものの、次のラウンドではその議論が幕を開け、間違いなく新たな展開が始まりはおよそ間違いないだろう。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookFTC独占禁止法

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

インドの独占禁止監視機関がWhatsAppのプライバシーポリシー変更に対する調査を命じる

WhatsApp(ワッツアップ)が計画しているポリシー変更は、このインスタントメッセージングサービスが最大のユーザー数を抱えるインドで順調に進んでいない。同国の独占禁止監視機関であるインド競争委員会は現地時間3月24日、Facebook(フェイスブック)傘下のWhatsAppが、ポリシーの更新を装い現地の独占禁止法にあたる競争法に違反しているとして、同社のプライバシーポリシー変更に関する調査を命じた(PDF)。

インドの監視当局は、WhatsAppの新ポリシーを調査し「ユーザーの不本意な同意によるデータ共有の全容、範囲、影響を確認」するよう、同国の事務局長(DG)に命じた。事務局長は、60日以内に調査を完了し、報告書を提出するよう命じられている。

インドの監視当局はこの命令の中で、WhatsAppのプライバシーポリシーと利用規約の「嫌なら使うな」的な本質について「WhatsAppが享受している市場での地位と市場支配力を考慮すると、詳細な調査が必要である」と述べている。

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これに対しWhatsAppの広報担当者は声明で「インド競争委員会との交渉を楽しみにしています。WhatsAppは、エンド・ツー・エンドの暗号化によって人々の個人的なコミュニケーションを保護し、これらの新しい任意のビジネス機能がどのように機能するかについて、透明性を提供することに引き続き取り組んでいます」と語っている。

「WhatsAppは顕著なネットワーク効果を享受しており、インドのインスタントメッセージング市場に信頼がおける競合他社が存在しないことから、個人情報保護の観点における水準を妥協できる地位にあり、ユーザーベースの減少を恐れることなく、『オプトアウト』などのユーザーフレンドリーな選択肢を保持する必要がないと判断できる立場にあると思われる。さらに、WhatsAppを継続したくないユーザーは過去のデータを失う可能性がある。なぜなら、WhatsAppから他の競合アプリにデータを移植することは、面倒で時間のかかるプロセスであるだけでなく、すでに説明したようなネットワーク効果により、ユーザーがアプリを切り替えることは困難だからだ。以上のことは、ポリシー変更によって代替アプリへの移行を希望するユーザーの乗り換えにともなう代償を増大させ、強調するものである」と、インド競争委員会の命令文には書かれている。

「プライバシーポリシーの2021年の更新により、事業者はFacebookのような第三者のサービスプロバイダーに、通信内容を送信、保存、読み取り、管理、その他の処理を行うことができるアクセス権を与えることになる。Facebookが企業にサービスを提供する際には、収集したデータの使用を条件とする可能性もある。DGは調査の際にこれらの点についても調査することになるだろう」。

今回の動きは、WhatsAppが2021年5月に施行を予定している新たなポリシーのアップデートをめぐり、インドで繰り広げてきた数カ月に及ぶ法定闘争に続くものだ。インド政府は先週、WhatsAppが計画しているプライバシーアップデートがいくつかの点で現地の法律に違反していると主張した。また、連邦政府はデリー高等裁判所に提出した書類の中で、WhatsAppがインドでアップデートを実施することを阻止するように裁判所に求めてもいる。

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2021年初め、インドのIT省はWhatsAppの責任者であるWill Cathcart(ウィル・カスカート)氏に書面を送り、アップデートとその影響について「重大な懸念」を表明し「提案された変更を撤回するよう求め」ていた。

WhatsAppは2021年初めから、その懸念を払拭するためにインド政府に協力してきた。しかし、インドはFacebookの説明に納得していないようだ。インドの監視当局は、強い言葉で書かれた命令の中で「Facebookは新しいアップデートの直接的かつ隣接的な受益者であり、このような状況下でFacebookがアップデートの潜在的な影響についてまったく知らないふりをして、それについての見解の提供を避けているのは言語道断である」と述べている。

20億人以上のユーザーに利用されているWhatsAppは、2016年から親会社のFacebookと一部の情報を共有している。それ以来、利用規約を大幅に更新していなかった同社は、2020年、電話番号や位置情報など、ユーザーの個人データをFacebookと共有するために、いくつかの変更を行うと発表した。

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2021年1月にWhatsAppは、アプリ内のアラートを通じて新規約への同意をユーザーに求めたが、これに対して一部のユーザーは即座に反発。数千万人のユーザーがSignal(シグナル)やTelegram(テレグラム)などの競合サービスを求めるようになったため、WhatsAppはユーザーに新しい規約を確認するための期間をさらに3カ月間設けると発表した。

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月間アクティブユーザー数が4億5千万人を超えるインドは、WhatsAppにとって、そしてその親会社であるFacebookにとっても、最大の市場だ。この巨大ソーシャル企業は近年、インドを重要な市場にすることに賭けており、そのための投資を倍増させている。2020年はインド最大の通信事業者であるJio Platforms(ジオ・プラットフォームズ)に57億ドル(約6211億円)を投資した。この会社は、インドで最も裕福な人物であるMukesh Ambani(ムケシュ・アンバーニ)氏が経営している。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:インドプライバシーWhatsApp独占禁止法

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

バイデン大統領は反トラスト法のスターでビッグテック企業批判の闘士リナ・カーン氏をFTC委員に指名へ

選挙期間中、バイデン大統領はテクノロジー企業への攻撃を大きなテーマにはしなかった。しかし最近の行動をみればバイデン政権は明らかに巨大テクノロジー企業を抑制する方向に舵を切った

米国時間3月22日、ホワイトハウスはLina Khan(リナ・カーン)氏を連邦取引委員会(FTC)の委員に指名する意向を確認した。これによりバイデン政権はオバマ時代の親シリコンバレー的な方針から離れることが明確となった。Politicoは2021年3月初めにバイデン大統領ががカーン氏を指名する予定だと最初に報じている。この指名は上院の承認を必要とする。

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リナ・カーン氏は、巨大テクノロジー企業には規制が必要だとる反トラスト運動のスターだ。カーン氏は、2017年にロースクール在学中に発表した「Amazan社の反トラスト法上の矛盾(Amazon’s Antitrust Paradox)」という論文で一躍有名になった。ここでカーン氏は「独占的と分類されるべき行動」についての基準が、現代のビジネスの手法、ことにハイテク分野の企業行動に大きく遅れを取っていると論じた。

カーン氏は、反トラスト法を現代に活かすには価格の釣り上げや生産量の取り決めなどの伝統的な尺度だけではなく企業の市場支配力を大局的に見なければならないと主張している。

私は21世紀の市場における競争、ことにクラウドプラットフォームなどオンラインにおける競争の実態を正しく把握するには、こうした市場の基本的な特質とダイナミクスを分析する必要があると主張したい。このアプローチでは競争という概念を狭い範囲の物質的数量に限定するのではなく、競争のプロセスそのものを検証していく。このフレームワークの背景には、巨大企業のパワーがもつ潜在的的な反競争性は、企業の本質的構造と市場における役割の実態を考慮せずには完全に理解できないはずだ。この見地からすると、例えば企業の存在そのものがが反競争的な利益相反を生み出していないかを評価せねばならない。例えばあるビジネス分野で圧倒的な市場シェアがある場合、その優位性を別のビジネス分野に流用して不当な利益を得ていないか、また市場の構造そのものが略奪的、反競争的な行為を生み出す動機付けをしたり許容したりするものではないかもチェックすべきだろう。

現在、カーン氏はコロンビア大学ロースクールのアソシエイトプロフェッサーだが、2020年の下院の反トラスト小委員会が発表した包括的な報告書の作成にも大きく貢献している。同報告書は、いわゆるビッグテック企業の無制限の巨大化を抑えるための抜本的な反トラスト法改革への第一歩となった。

テクノロジー企業に関する反トラスト法強化を求める活動家はもちろんカーン氏だけではない。バイデン政権下で注目を集めている専門家としてははコロンビア大学ロースクールのTim Wu(ティム・ウー)教授がいる。2021年3月上旬、バイデン大統領はウー教授を、国家経済会議の技術・競争政策担当者に指名した。ウー教授は「ネット中立性」という用語を案出し、開かれたインターネットの提唱者として知られている。2018年にウー教授は「The Curse of Bigness:Antitrust in the New Gilded Age(巨大であることの呪い:新しい金権社会と反トラスト法)」を執筆し、テクノロジー分野での無制限が企業統合が現実的の政治的、経済的脅威となりつつあることを訴えている。

上院反トラスト法小委員会でハイテク分野の反トラスト法改革を主導しているエイミー・クロブシャー(Amy Klobucha)議員は、Khan氏の指名を歓迎してTechchCrunchに対し、世界最大のの独占企業に対抗するためにはすべての人々の協力が必要でありバイデン大統領が新しい競争政策へのコミットメントを明確にしていることはすばらしいとして次のようなコメントを寄せた。

リナ・カーン氏は議会とFTC(連邦取引委員会)の双方に関わった実績があり、法執行を含めた消費者保護の取り組みを進め健全な市場競争の維持するために重要な役割を果たすでしょう。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデンFTC反トラスト法

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:滑川海彦@Facebook

英競争当局がアップルのApp Store独禁法調査を開始

Apple(アップル)はiOS App Storeについて欧州で新たな独占禁止法の調査に直面している。

英国の競争・市場庁(CMA)は現地時間3月4日、デジタル部門での不平等な条件とその結果についてデベロッパーからの数多くの苦情を受けて調査を開始した、と発表した

「CMAの調査は、Appleが英国においてAppleデバイスでのアプリ配信で支配的な地位にあったかどうかを考慮します。もしそうであるなら、Appleが不公正あるいは反競争の条件をApp Storeを使っているデベロッパーに課し、結果的にユーザーが選択肢を失ったりアプリやアドオンに高い料金を払うことになったのかが焦点となります」とプレスリリースで述べられている。

「これは調査の始まりに過ぎず、Appleが違反しているかどうかまだ決定は下されていません」と付け加えた。

声明の中で、CMAのトップAndrea Coscelli(アンドリア・コシェリ)氏は次のように述べた。「何百万という人が天気をチェックしたり、ゲームしたりあるいは持ち帰りを注文したりと毎日アプリを利用しています。Appleが不公正だったり競争や選択を阻害するような条件を課すのに市場での地位を使っているという苦情について、これは結果として顧客がアプリを購入したり使ったるする際に不利益を被っているかもしれず、注意深く精査します」。

Appleの広報担当は、CMAの調査開始に対し次のような声明をTechCrunchに出している。

当社は顧客が好きなアプリをダウンロードできる、そしてデベロッパーがすばらしい事業機会を得られる、安全で信頼できる場所としてApp Storeを作りました。英国だけでもiOSアプリの経済は数十万人の雇用を支えており、すばらしいアイデアを持っているデベロッパーは世界中のAppleの顧客にリーチできます。

あらゆるすばらしいアイデアが溢れている、活気があり競争が展開されているマーケットを当社は信じています。App Storeはアプリデベロッパーにとって成功のエンジンであり続けました。これは部分的には顧客をマルウェアから守り、同意なしの顧客データ収集の横行を防ぐために当社が定めている厳格な基準によるものです。基準はすべてのデベロッパーに公正平等に適用されます。当社のプライバシー、セキュリティ、コンテンツに関するガイドラインがいかにApp Storeを消費者とデベロッパーの両方にとって信頼できるマーケットプレイスにしてきたかを説明するために、英国の競争・市場庁に協力することを楽しみにしております。

EUは音楽ストリーミングサービスSpotify(スポティファイ)による2019年の苦情申し立てを受けて、すでにAppleの事業の多くの要素について独禁法調査を行っている。EUは2020年夏にApp StoreとApple Payについての調査を発表していた。

米国の議員もまたテック大企業に対する主要な独禁法調査の一環としてAppleを問いただしてきた。アリゾナ州ではちょうど、AppleとGoogle(グーグル)にそれぞれのスマホストアでサードパーティの決済オプションを認めることを強制する目的の法案に進展があった

一方、EUのAppleに対する調査はまだ継続中だ。ビデオゲーム開発のEpic Games(エピックゲームズ)は、Appleがデベロッパーに課している不平等な「税」と呼ぶものについてAppleと激しい論争を展開してきたが、2020年2月に欧州委員会に苦情を申し立ててEUの調査に加わろうとした。

関連記事:フォートナイトのEpic Games創設者、Appleとの闘争を公民権運動に例えて語る

Epicは以前、同様の苦情を英国でも申し立てた。なので同社はCMAが引用した不満のあるデベロッパーの1社だ。

英国はEUから離脱したことから、CMAは英国の当局として重要な役割を担うようだ。ブレグジット後、コミッションとして同じ問題を自由に調査できる(一方、EUの規則では各国の当局は重複を避けることが求められる)。

英国がEUの当局よりすばやく動くことができれば、テック大企業に適用する基準を形成する機会を得るかもしれない(CMAは3月4日「グローバルな懸念」と表現したものに取り組むためにEUや他の当局と「引き続き緊密に連携を取る」と述べた)。

また英国は2020年秋に、テック大企業のマーケット支配力に取り組むことを目的とする、競争促進の規制体制を確立する計画を発表した。これはCMAが実施したオンラインプラットフォームとデジタル広告についての主要な市場調査を受けてのものだ。CMAは2020年12月に規制体制の確立を政府に提言している

「現在の執行力を補うことになる提言についてCMAは政府と協業している一方で、こうした分野における競争を保護するために既存の力を引き続きフル活用します」とCMAは述べた。

「我々の継続中のデジタルマーケット調査ではすでに懸念すべきトレンドがいくつか見つかっています」とコシェリ氏は付け加えた。「もしテック大企業による反競争のプラクティスが野放しにされれば、事業者そして消費者が実害に苦しむことになります。だからこそ、我々は新たな機関Digital Markets Unitを設置し、必要に応じた新たな調査の立ち上げで前進しています」。

テック大企業を狙った最近の他の動きでは、CMAはGoogleのサードパーティ追跡のクッキーを廃止する計画について調査を開始した。またUberが予定している英国拠点のSaaSメーカーAutocabの買収についても調査を始めた。

関連記事:UberのAutocab買収を英国の競争監視当局が調査

CMAは2020年のオンライン広告マーケットについての最終レポートの中で、GoogleとFacebook(フェイスブック)のマーケット支配力はあまりにも大きく「広範で自己強化」の懸念と要約したものを解決するために、新しい規制アプローチと専従の監視機関が必要との結論を出した。間もなく立ち上がるDigital Markets Unitはテック大企業に対する英国の当局対応の主要部分を担う。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Appleイギリス独占禁止法App StoreEU

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

TikTokの親会社ByteDanceが市場独占疑惑をめぐりTencentを提訴、中国の裁判所が受理

中国政府が同国のインターネット大手による独占的な動きを阻止しようとしている中、ByteDance(バイトダンス)がライバルのTencent(テンセント)との戦いを裁判所に持ち込んだ。

TechCrunchがByteDanceの広報担当者に確認したところ、北京の知的財産裁判所(知識産権法院)は、Tencentに対して提起されたByteDanceの訴訟の進行を許可したという。新興のメディア企業ByteDanceは、TikTok(ティックトック)の中国版であるDouyin(抖音)に対するTencentの制限が中国の独占禁止草案に違反していると主張している。Douyinは北京に本社があるのに対し、Tencentの拠点は深圳にある。

Tencentは3年前から、Douyinを同社の主力SNSアプリであるWeChatとQQからブロックしており、ユーザーがDouyinアプリのコンテンツを閲覧したり共有したりすることを禁止している。Tencentの行動は「間違いなく」独禁法草案で禁止されている「市場支配を悪用して競争を排除し、制限することで達成される独占的行動」に該当すると、Douyinは述べている

「当社は、競争は消費者にとってより良いものであり、イノベーションを促進すると信じています。我々の権利とユーザーの権利を守るために、この訴訟を提起しました」。

Tencentはこれに対し、今回の告発は虚偽で悪質な名誉毀損であると述べている。さらに、毎日6億人のユーザーが利用しているDouyinは、WeChatのユーザーデータにアクセスするために違法で反競争的な方法を使っており、同社のプラットフォームエコシステムとユーザーの権利を侵害したとして、ByteDanceを提訴する予定であると主張している。

ByteDanceとTencentは、それぞれがお互いの縄張りを狙っている。ByteDanceは、ソーシャルネットワーキングにおけるTencentの支配に対抗するためにチャットアプリをデビューさせ、Tencentは多数のショートビデオアプリを導入してDouyinの人気に対抗しようとした。どちらも、それぞれの分野で他方の優位性を脅かすことはできていない。

関連記事:中国人が熱狂するショートビデオにネットの巨人も気が気ではない

20年間の比較的緩い規制に続いて、中国政府は中国のインターネット大手の独占的行為を抑制しようとする姿勢を強めていることが、早期の兆候として示されている。

2020年11月には、中国のトップ市場規制当局が初の独占禁止法の草案を発表し、訴訟や調査への門戸が開かれた。12月には、規制当局がAlibaba(アリババ)のプラットフォーム上での独占販売をベンダーに強要したとして、Alibabaに対する独占禁止法の調査を開始した。そして2021年2月になって、北京の裁判所は、反競争的な行為を行ったとして、ファッションeコマースサイトのVipshopに300万元(約4900万円)の罰金を課した。今後数カ月の間に、中国のインターネット大手がさらに独禁法違反で打撃を受けても不思議ではないだろう。

関連記事:中国eコマース大手アリババの独禁法違反調査始まる

カテゴリー:ネットサービス
タグ:ByteDanceTencent裁判中国独占禁止法

画像クレジット:Greg Baker / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

巨大テック企業を規制する米国の新たな独占禁止法案の方針

民主党は議会両院の支配を固め、党の立法の優先順位が明らかになってきた。これまでのところ、テック規制状況再考への議員の関心は未だ健在のようだ。

Amy Kobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員(民主党・ミネソタ)は反トラスト法改革の新たな提案として、大型合併の障壁を増やし、国の反トラスト法執行要員を強化することを謳っている。クロブシャー氏の法案、Antitrust Law Enforcement Reform Act(反トラスト法執行改革法)は、さまざまな業界にわたる統合を対象とし、特に「支配的デジタルプラットフォーム」に重点を置いている。

「かつて米国は世界有数の反トラスト法を有していましたが、現在我が国の経済は深刻な競争問題に直面しています」とクロブシャー氏はいう。「もうこれ以上この問題を見ないふりをして既存の法律が適切であると願うことはできません」。

現在、クロブシャー氏は上院の反トラスト・競争政策および消費者の権利小委員会の長を務めている。これまでにも巨大テック企業に影響を与える改革に関心を示している議会の一角である。

新法案は、1914年に制定され競争に関わる法律の枠組みを作り現在も適用されているクレイトン反トラスト法を強化するものだ。具体的には、反競争的合併の評価基準を標準化し、「競争を大きく損なう重大なリスクを生む」契約を防ぐよう現在の文言を変更する。

目的は反トラスト行為の可能性を早期に発見することで、これは政府が現在、抱えている難問であり、現在国の規制当局は、合併後何年も経ってから独占状態に発展した案件の再評価を行っている。

また同法案は、競争を減少させる危険が生じないことの証明を、合併する企業に義務付けることによって政府の負担を軽減する。これらの規則が適用されるのは、時価総額50億ドル(約5269億4000万円)以上で50%以上の市場シェアを持ち、現在あるいは将来の競合相手を買収しようとしている会社だ。

さらにクロブシャー氏の提案は、クレイトン法を修正して、競合相手を不利に陥れる行為を禁止する条項も加えようとしている。直接的合併、買収のみならず、一部曖昧な領域のトラスト行為についても対象とする。

執行予算の欠如を掲げる同法案は、3億ドル(約316億2000万円)の追加予算を司法省反トラスト部門およびFTC(連邦取引委員会)につぎ込む。FTCでは、委員会内に市場と合併を調査する部門を設置するためのその資金を使用する。

法案は、全員が民主党上院議員で反トラスト小委員会のメンバーでもあるCory Booker(コリー・ブッカー)氏、Richard Blumenthal(リチャード・ブルーメンソール)氏、Brian Schatz(ブライアン・シャーツ)氏、およびEd Markey(エド・マーキィー)氏が共同発起人となる。また現在は一党による取り組みだが、反トラスト改革は共和党ミズーリ州選出のJosh Hawley(ジョシュ・ホーリー)上院議員の支持も得られる可能性がある。同議員は巨大テック企業を標的にした反トラスト改革に今週になって関心を示した。ホーリー氏も上院の反トラスト小委員会のメンバーである。

クロブシャー氏は、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)といった大型テック企業の解体までは求めていないが、それはここ数年Elizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)上院議員とBernie Sanders(バーニー・サンダース)上院議員の支持を得ている行動だ。大型テック企業をターゲットにした複数州による訴訟の最中、FTCはFacebookに対する独自の訴訟を2020年末に提起し、同社の分割を要求している。

関連記事:
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Facebookの独占禁止法違反を米連邦取引委員会が主張、買収した企業を切り離すよう要求

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookGoogleアメリカ反トラスト法

画像クレジット:Bloomberg / Contributor / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国政府が決済事業の規制案を発表、AntとTencentによる寡占を抑制

中国の決済業界における最近の一連の出来事は、Ant Group(アントグループ)とTencent(テンセント)による複占が揺らいでいる可能性を示唆している。

Ant Groupの急な新規株式公開の中止と、中国政府が同社の事業に修正を指示したことに続き、中国当局は先週、繁栄を続けるデジタル決済業界の寡占を抑制する計画を示す新たなメッセージを送った。

ノンバンク決済を規制するために、中国人民銀行(PBOC)が先週発表した一連の草案によると、1社でノンバンク決済市場の3分の1を占める場合、または2社の合計で半分を占める場合、国務院に属する反独占委員会から規制上の警告を受けるという。

一方、ノンバンク決済事業者1社でデジタル決済市場の半分以上を占める場合または2社で3分の2を超える場合は、独占状態にあるかどうか調査される。

2つの規則の違いは微妙であり、前者はノンバンク決済、後者はデジタル決済に焦点を当てている。

さらに当局が企業の市場シェアをどのように測定するのか、たとえば総取引額なのか、総取引量なのか、それともそれ以外の基準で判断するのかについては、規則では特定されていない。

市場調査会社のiResearch(アイリサーチ)によると、Ant GroupのAlipay(アリペイ)は2020年第1四半期に中国の第三者決済取引の半分以上を処理しており、Tencentは同期間に40%近くを処理していたという。

中国は決済大手への監視を強めており、一方で金融市場を国際的なプレイヤーに開放してもいる。2020年12月には、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)が中国の合弁事業の完全所有権を取得した。そして2020年1月、PayPal(ペイパル)は現地の決済パートナーであるGoPay(国付宝)の残りの株式を買い取り、中国で1つの決済事業を100%支配する初の外資系企業となった

業界の専門家は、PayPalが中国内の決済大手を追うことはないだろうが、代わりにクロスボーダー決済の機会を探る可能性があると、TechCrunchに語った。つまり、Antのベテランチームによって設立されたXTransferなどの地元企業がいる市場だ。

AntとTencentは、他の中国インターネット企業との競争にも直面している。食品配達プラットフォームのMeituan(美団)や電子商取引プラットフォームのPinduoduo(拼多多)やJD.com(京東商城)、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)まで、様々な企業が独自の電子ウォレットを導入しているが、いずれもAntのAlipay(アリペイ)やTencent傘下のWeChat Pay(ウィーチャットペイ)に差し迫った脅威を与えるものではない。

PBOCの包括的な提案では、決済処理業者が顧客データをどのように扱うかについても定義している。ノンバンク決済サービスは、一定のユーザー情報や取引履歴を保存し、データチェックについて関係当局と協力することになっている。また、企業はユーザーの同意を得て、顧客のデータがどのように収集され、どのように使用されるかを明確にすることも求められている。これは不正なデータ収集を取り締まる中国の広範な取り組みを反映した規則だ。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:モバイル決済AlibabaAnt GroupTencentWeChat Pay中国独占禁止法

画像クレジット:Alipay via Weibo

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(翻訳:TechCrunch Japan)

EUがValveほか5つのゲームパブリッシャーにジオブロッキング行為で9.8億円の罰金

EUは独占禁止法違反の疑いで長年にわたりPCゲームのジオブロッキング問題を捜査してきたが、欧州委員会は米国時間1月20日、EUの法律に違反していると認め、Valve(バルブ)他5つのゲームパブリッシャーに7800万ユーロ(約97億8000万円)の罰金を科した。

ジオブロッキング行為の調査はスポーツ、シミュレーション、アクションなど異なるジャンルのおよそ100本のPCゲームを対象に2017年から続けられていた。

1600万ユーロ(約20億円)以上の罰金を科せられたValveの他に措置を受けたのは、バンダイナムコ(34万ユーロ、約430万円)、カプコン(39万6000ユーロ、約500万円)、Focus Home(280万ユーロ、約3億5000万円)、Koch Media(97万7000ユーロ、約1億2200万円)、ZeniMax(160万ユーロ、約2億円)の5社となる。

欧州委員会によると、罰金は企業の捜査協力により10〜15%の減額が認められたという。ただし、Valveは協力を拒んだといわれてる(この場合は罰金の減額は適用されず「禁止決定」となる)。

「7年にわたる捜査の間、Valveは委員会に全面的に協力し、要求された証拠と情報のすべてを提出しています。私たちは罰金には同意できず、今回の決定に対して提訴します」とValveの広報担当者はいう。

委員会は2017年2月に、独占禁止法に基づく徹底的な捜査を実施すると公表。そのおよそ2年後、これらの企業が「消費者が居住国以外の場所で入手したPCゲームの購入と使用を阻止するための二国間協定に結んだ」と委員会が告発したたときに、公式な異議申立がなされていた。

特定のゲームの、特定の国境を越えた販売を阻止するために企業が使用した仕組みは、Steam(スティーム)のアクティベーションキーをジオブロッキングし、ライセンシングと配給の二国間協定により特定の国境を越えた販売を制限するというものだった。

EUの議員たちは、こうした商慣行が欧州市場を部分的に国境で分断し、最良の買い物ができるよう打ち出されたEUのデジタル単一市場戦略の恩恵から、特定地域の消費者を遠ざけていると突き止めた。

声明の中で、EUの競争政策を率いるMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステアー)執行副委員長は次のように述べている。「ValveとPCビデオゲームパブリッシャー5社のジオブロッキング行為に対するこの度の措置には、国境を越えた販売を企業が契約によって制限することは、EUの競争法で禁じられているとを注意喚起する役割があります。こうした行為は、EUデジタル単一市場の恩恵、およびEU域内で最も好ましい取引を探して回る機会を欧州の消費者から奪うものです」。

委員会の捜査により、当該5社のゲームパブリッシャーは、特定のゲームタイトルについてチェコ、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、スロバキア、エストニア、ラトビア、リトアニア以外の国でSteamのアクティベーションキーを使えなくしていることが判明した。

アクティベーションキーのジオブロッキングに関する企業間の協定は、1年から5年の期限が定められ、2010年9月から2015年10月までの時々で履行されていたと委員会は話している。

カプコンを除く4つのゲームパブリッシャーは、ライセンシングと配給の契約を複数のゲーム配給企業(Valveではない)を欧州経済地域(EEA)で交わしていたことがわかったが、それには前述の中央および東ヨーロッパの国々を含むEEA内で関連タイトルの国境をまたいだ販売を制限する条項が含まれていた。

これらの協定は一般的に長期にわたり(3年から11年)、2007年3月から2018年11月にわたり、時を異にして履行された。

捜査が開始された後に、EU議員たちは不当なジオブロッキングを規制する法律を可決した。だがこれは、CDまたはDVDで提供されるPCビデオゲームのみが対象であり、ダウンロード版には適用されないため、規制を受けるのは一部のゲームに留まる。

委員会は、ジオブロッキング規制がどのように実行されているかに関する評価報告を2020年11月に発表したが、そこではゲームを含む対象範囲の拡大について論議されている。だが変更を強く主張するものではない(またこの報告は、国境を越えたゲームやソフトウェア一般へのアクセスの要求は、その他のコンテンツサービスに比べて少ないとも指摘している)。

しかし、ダウンロード配信のゲームはEUの不当なジオブロッキングの制限の対象外に置かれたままに見えるものの、Valveとその他の企業に罰金が科せられたことは、国境をまたぐ販売を制限する契約上の合意がEUの独占禁止法に触れることから、ジオブロッキングが法的地雷原である可能性を示している。

同委員会によると、具体的に今回の件が抵触した法律はEU機能条約(TFEU)第101条と、EU単一市場における競争の阻止、制限、歪曲を目的とした企業間の合意を禁じるEEA協定第53条となる。

Valveは、委員会の捜査結果に対する異議について、我々に詳細を送ってくれた。彼らは、Valveが捜査に協力していないとの委員会の見解を否定している。また同社は、リージョンロックの廃止により、「あまり豊かでない」一部の地域ではゲームパブリッシャーが最低取引を避けるために価格を吊り上げる結果になりかねないと警告している。

広報担当者は、我々に次のように伝えた。

7年におよぶ捜査の間、Valveは欧州委員会(EC)に広範にわたってに協力し、要求された証拠や情報を提出しています。しかしながらValveは、ECが求めるように、法令違反を認めることはできません。ValveはECの捜査結果とValveに対する罰金の取り立てに異議を唱えます。

ECが科した罰金の額は、ValveのPCゲームサービスSteamでのPCゲームの売上げとは連動していません。反対に、ValveがSteamのアクティベーションキーを提供し、(パブリッシャーの要求に応じて)特定の地域でキーを使えなくする(リージョンロックをかける)ことでEEA域内でジオブロッキングを可能にしているとECは主張しています。このキーは、利用者がサードパーティーの販売業者から購入したゲームをSteamで起動しプレイできるようにするためのものです。Valveでは、Steamのアクティベーションキーを無料で提供し、サードパーティーの販売業者(小売店はオンラインショップなど)がゲームを販売した際には、売上げの一部を請求するようなことは一切していません。

リージョンロックが適用されたのは、ごく少数のゲームタイトルに限られます。一度に適用されるのは、Stermを利用しているゲーム(Valve製のゲームは含まず)のわずか3%程度であり、それが現在問題として争われているEEA内のリージョンロックの対象です。

ECによる、こうした状況でのプラットフォーム提供者の責任の拡大解釈は、適用法で支持されているものではありません。それにも関わらず、ECの懸念を理由に、ValveはEEC内でのリージョンロックを、地元の法的要請(ドイツのコンテンツ法など)に従ったものでない限り、またSteamの提携業者がゲームの配給ライセンスを有するという地理的な制限がない限り、2015年から廃止しています。リージョンロックの廃止には、あまり豊かでない地域においてパブリッシャーが裁定取引を避けるために価格を吊り上げる懸念もあります。あるの国から別の国へアクティベーションキーを送る際には費用はかかりません。またユーザーがPCゲームを起動しプレイするために必要なものはアクティベーションキーのみです。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:EU独占禁止法ジオブロッキング

画像クレジット:thecrazyfilmgirl Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(翻訳:金井哲夫)

Facebook Photosの元プロダクトマネージャーが反トラスト訴訟について思うこと

著者紹介:Samuel Odio(サミュエル・オディオ)氏はプロダクトリーダーで、2社を創業した経験を持つ。現在はFivestars(ファイブスターズ)のプロダクト担当副社長。後にFacebook(フェイスブック)に買収されたDivvyshot(ディビーショット)を創業し、TellApart(テルアパート)に買収されたFreshplum(フレッシュプラム)を共同創業した。

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Facebook(フェイスブック)によるInstagram(インスタグラム)の買収まで、筆者はFacebook Photos(フェイスブックフォト)を担当するプロダクトマネージャーだった。Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏はそれまでに、筆者の前の会社であるDivvyshot(ディビーショット)を買収していた。ディビーショットは最初のiOS向け写真共有アプリの1つだ。筆者はマーク氏と緊密に協力して働いていたので、ソーシャル共有アプリや台頭していたモバイルアプリの将来についてよく話し合った。インスタグラムは一度ならず競合相手として現れた。

48州の検事総長と連邦取引委員会(FTC)がインスタグラム買収の件でフェイスブックを訴えている今、筆者はその件で一家言あるだろうと思われているかもしれない。フェイスブックフォトの元プロダクトマネージャーとして、またフェイスブックに会社を買収された者として、思うところは確かにある。いくつかの点で、筆者はその後のメインディッシュのアペタイザーだった。筆者は、米国の消費者として、FTCの勝利はイノベーションにとって間違いなく災いになるということが分かる。

この反トラスト訴訟の主な問題点は、フェイスブックは競争上の脅威を排除するためにインスタグラムを買収したのかということだ。マークがインスタグラムを脅威と認識していたことを示唆する文書がすでにリークされている。マークと話したときにも、彼がインスタグラムに対してそのように感じていることははっきりと伝わってきた。

筆者はフェイスブックに長くいたわけではない。20代半ばで自信にあふれていた筆者は、当時の会社を離れて別の会社を始めることにした。今になってみれば、退社は唐突で、考えが足りなかった。モバイル版のフォトプロダクトを改良する構想を開始して間もない、難しい状況の中でチームを去った(モバイル改良版が発売されることはなかった)。数か月後、マークはインスタグラムにアプローチし始めた。筆者の突然の退社からちょうど1年後、その取引が正式に成立した。

筆者は、競争を制限する意図を示唆するこうした事例だけでなく、最近の反トラスト訴訟が、競争を繰り広げるスタートアップのエコシステムや消費者全体のためになるとはまったく考えていない。

スタートアップの世界には「第一原理から考える」という格言があるが、この場合それが役に立つ。米国政府が独占を規制する主な理由は、「競争を確保して消費者の利益を図る」ことである。政府は、フェイスブックに対する最近の反トラスト訴訟により、表面上は、スタートアップのエコシステムにおいてフェイスブックの競合相手を保護している。

フェイスブックが違反したとして告訴されている主な法律は2つある。1つはシャーマン法で、独占を維持または獲得することを違法としている。もう1つはクレイトン法であり、さらに一歩踏み込んで、競争を制限する独占的な合併や買収を禁止している。

反トラスト法による告訴(シャーマン法第2条に対する違反。フェイスブックはこの違反で告訴されている)の必須条件は、企業が独占力を使って「生産を低下させたり、価格を上げたり、革新を停滞させたりして、市場が競争的な場合に比べて社会に損害を与えた」ことを証明できることである。また、司法省は、独占が成立する主な要素は、企業が「3分の2を超える市場占有率を長い期間にわたり保持しているかどうか」である、としている。

フェイスブックについて考える前に、勝訴した反トラスト訴訟の例を見てみよう。フェイスブックに対する批判では、米国政府対Microsoft Corp(マイクロソフト・コーポレーション)の件がよく先例として指摘される。この訴訟でマイクロソフトは、WindowsとInternet Explorerの抱き合わせ販売に端を発する独占の理由で告訴された。誤解のないように言っておくと、筆者はこの反トラスト訴訟に賛成である。マイクロソフトは独占力を持っていたからだ。1998年のオペレーティングシステムに関するマイクロソフトの市場占有率を調べれば分かるが、提訴の時点で市場の86パーセントを占めていた。Internet Explorerの市場占有率を人為的に上げるために不条理な抱き合わせ販売をしたことが容易に分かる。明らかに、社会の「生産を低下させ」、「革新を停滞させ」ている(Internet Explorerのことを好意的に懐かしむ人はいないだろう)。

フェイスブックがどんな点で独占力を持っているのか正確に判断することははるかに難しい。たとえば、FTCはインスタグラムを売却させようとしてフェイスブックを訴えている。インスタグラムの収益は主に、プラットフォーム上の広告主から得られる。独占に関するFTCの告訴では、インスタグラムのことが指摘されており、フェイスブックがデジタル広告市場で支配的なシェアを獲得したことが示唆されている。しかし、市場調査会社のEMarketer(イーマーケッター)によれば、この市場における2020年のフェイスブックのシェアは23パーセントである。3分の2の支配からはほど遠い。フェイスブックを独占企業とする訴えは、決して単純明快な訴訟ではない。

ここで、実際のところ誰がこの反トラスト訴訟から利益を得るのか、という疑問について考えてみよう。

それは、フェイスブックに取って代わる次の企業の創業者ではない。FTCが買収を規制すれば、スタートアップ創業の見返りは減少し、リスクは高まる。

シリコンバレーの新しい創業者はすべて、創造的破壊者たることを切望している。しかし、彼らも、彼らの出資者も、「打ち負かせないなら、一緒になれ」という格言の価値を理解している。銀行口座の残高がゼロになって間もなく、2010年にディビーショットをフェイスブックに売却したときに、筆者はそれが事実であることを理解した。

大手企業による高額買収の見込みがなければ、生活を賭ける創業者は減り、ベンチャーキャピタルの資金は縮小するだろう。大手テック企業は、新参のチームを買収するより、その製品をただコピーしようとするだろう。忘れてはいけない。買収されることは、ほとんどのスタートアップや起業家にとって「成功」なのだ(彼らにとって、それ以外に魅力的な成果はないことが多い)。

また、この反トラスト訴訟から利益を得るのは消費者でもない。消費者が利益を得るには、「インスタグラムはフェイスブックなしの方がもっと成功した」または「フェイスブックの行動はほかの競合スタートアップを落胆させた」という点のいずれかを確信している必要がある。

前者はよく議論されてきたが、少々主観的な議論だ。後者については、どのカテゴリーでも、競争が少なくなれば資金や創業者も少なくなる。だが実際には、あらゆる使用事例において、ホーム画面をたくさんのアプリアイコンでいっぱいにしているのは、その競争なのだ。インスタグラムが10億ドル(約1030億円)で買収される結果になったことで、Vine(バイン)、Flipagram(フリッパグラム)、VSCO、さらにはTikTok(ティックトック)のような模倣サービス、競合他社、イノベーターは奮起した。

マーク・ザッカーバーグ氏が自らの買収について述べたように、「この点を見る1つの方法は、我々が実際に買っているのは時間だということだ」。テクノロジーでトップにとどまり続けるのは大変なことである。ネット企業の歴史が何かを示しているとすればそれは、今日はリーダーでも明日はYahoo(ヤフー)になり得るということだ。的を外さないようVRのような新しいカテゴリーの革新的な製品に賭けるようにフェイスブックなどの企業を奮起させているのは、反トラストの脅威ではなく、今の時代の宿命であるそのプレッシャーなのである。

今こそ、新たなプランを立てるべきときが来た。はっきり言うと、我々はここ米国のテクノロジー業界内で競争を育んでいく必要がある。懲罰的な評価ではなく肯定的な成果に焦点を当てた、まったく新しい反トラスト法を探究すべきなのだ。

米国政府は、エコシステムの発展を通して企業による寛容な買収を考慮できるかもしれない。買収を停止するのではなく、買収者が大きな買収額の一定の割合を、恵まれない少数派の立場にいるほかの新しいスタートアップに投資するための要件を考慮するのだ。

これはドラマチックな考えだが、新しい動きが出てきて、イノベーションが圧倒的な勝者として生まれてくるかもしれない。巨大テック企業は、考えが凝り固まった競合相手に対抗しようとするスタートアップに資金を出すことができる。例えば、フェイスブックはこの冒険的な手段を使って、自分たちの領域外にあるFuture of Work(「仕事の未来」)のアイデアに資金を出して、マイクロソフトに対抗するライバルを生み出せるかもしれない。

既存企業からスタートアップへの資金の流れは競争を育むと同時に、既存企業がさらに規模を拡大することを可能にするだろう。忘れてはいけない。どの経済も手放したくないものである、低価格、質の高い生活、研究開発で促進されるイノベーションを我々消費者が享受できるのは、この規模の効果のおかげなのだ。

もっと重要な独占が危うくなっている。シリコンバレーは、世界で最も競争力があって革新的な地域だ。世界中の地域や政府が我々の「秘密のソース」をコピーすることを切望したが、多くの場合、規制や汚職、反資本主義の法律によって阻まれてきた。我々は自分たちがそれらをコピーするときだと本当に考えているのだろうか。

最近まで、その質問は仮想的なものにすぎなかった。イノベーションのリーダーというシリコンバレーの称号が危機にひんしたことはなかった。我々は、地理的な集積、よく機能する資金市場、軽い規制、寛容な移民政策という堀に守られていた(何しろ、シリコンバレーのスタートアップの50パーセントが移民の資金提供を受けているのだ)。我々はその勝利の方程式を強化したくないと本当に考えているのだろうか。

その一方で、中国は経済を自由化してきた。中国のテクノロジーイノベーションの拠点である深センの国内総生産(GDP)は直近の40年間、年平均20.7パーセントで成長し、最近香港を上回った。2020年に世界で最もダウンロードされたアプリケーションとしてティックトックが最近フェイスブックを王座から引きずり降ろしたことは、不吉なしるしだろう。

独裁政権によって支配される外国の企業に個人データを提供したいと思う人はいないだろうが、ほとんどのユーザーは、ソーシャルメディアで次のスクロールをすることの結果を考えていない。結局のところ、我々の中で、隔離期間中にティックトックの動画を楽しむ誘惑に負けない人が誰かいるだろうか。

我々が「独占」と呼ぶものについて、また、最も成功した自国企業をどのように抑制する(または罰する)かという点について、我々は因習にとらわれず分別のある対応をしなければならない。フェイスブックに戦いを仕掛けて勝つかもしれないが、もっと大きな戦いに負けるかもしれない。その戦いに負けたら、次のインスタグラムをシリコンバレーから追い出すことになるかもしれない。

そしてそのことは、いくぶん皮肉なことに、米国政府が反トラスト法で解体しようとしている二つとないテクノロジーの独占事業体は、実は米国自身だということを意味しているのかもしれない。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:反トラスト コラム Facebook

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(翻訳:Dragonfly)

反トラスト法に阻まれてVisaがPlaid買収中止、フィンテック関係者に落胆の声が広がる

報じられているようにVisaはフィンテックスタートアップPlaidとの買収交渉を打ち切った。すでに両者の間では合意があったが、これも無効とされた。消費者向けクレジットカードの大手がフィンテックのAPIを構築しているスタートアップをグループに組み込む可能性はなくなった。

合併に関して当初両者の合意が発表されたとき、買収額は53億ドル(約5510億円)とされた。買収交渉が行われていることを我々が報じたのはちょうど1年前、2020年1月13日だった。しかし2020年11月、米司法省はこの合併に反対した。司法省は「この買収は、在来の貯蓄口座およびさらに進歩的なオンラインデビットカードサービスの分野で、現在生じつつあるライバルを排除することになる危険性がある。したがってこの合併はライバル企業ならびに消費者の利益に反する」と主張した。

当初、VISAは「政府の見解は誤っている」と主張し、争う姿勢を見せていた。

しかし2021年1月12日になって両社は買収合意が正式に解消されたことを確認した。プレスリリースの中でVisaは「最終的には買収を実行できたかもしれないが問題の複雑性を考慮し、(訴訟になれば)解決まで長時間を要することになるのは不適切だと考えた」と述べている。

要するにVisaは手間がかかりすぎる、と嫌ったわけだ。

これに対してPlaidはもっと強気で社内向けのメモに「昨年には、Plaidを利用したサービスに対する需要が前例のないレベルに高まった」と書いている。2020年に始まったフィンテックブームによって一般消費者が無料の株取引アプリや「ネオバンク」に殺到したことを考えれば、昨年のPlaidの成長は驚くべきことではない。結局、PlaidのプロダクトであるAPIは消費者とフィンテック企業を仲介する位置にあるため、両者がいっそう緊密なトランザクションを望むならAPIスタートアップには強い追い風となる。

【更新】Plaidに取材し、今後、独立企業としての計画と、2020年に具体的にどれほどのスピードで成長したかを尋ねた。PlaidはTechCrunchに対して「2020年にはクライアントが60%増加し、4000を超えた」と回答している。顧客ベースの純ドル保有率が中程度だと仮定した場合、Plaidは昨年数百パーセントの成長を遂げた可能性がある。

VisaのPlaid買収は単に1つの取引の中止であることには違いないが、資金力豊富な既存大企業への買収という有利なエグジット(現金化)を狙っていたフィンテック分野のスタートアップやユニコーン企業は失望を隠せない。つまり米司法省による反トラスト法を根拠とした主張で買収が不可能になったわけでないが、大企業はスタートアップの買収により慎重にならざるをない。金持ちの大企業への売却というエグジットを考えていたフィンテックスタートアップ関係者にとって都合のいい話ではない。

これにより、今後、フィンテックスタートアップの買収金額は下がることになると予想される。フィンテックに重点をおくベンチャーキャピタルの意欲を削ぎ、スタートアップの資金調達にも逆風となる可能性がある。フィンテック関係者は、VisaのPlaid買収における高額の企業評価額が、ベンチャーキャピタルによるスタートアップへの投資ラウンドでの評価額にも反映すると期待していた。つまり買収がなくなればその逆、ということになるわけだ。

【Japan編集部】日常用語ではタータンチェックのような格子をPlaidと呼ぶためトップ写真はその模様の布地になっている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:VisaPlaid買収反トラスト法

画像クレジット:Sarah Wardlaw / Unsplash

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

FTCからの独占禁止法違反訴訟を受けてRentPathがCoStarとの買収合意を取り下げ

「Rent.com」や「Apartment Guide」といった物件検索サイトを運営するRentPath(レントパス)が、米国時間12月30日、CoStar Group(コスターグループ)からの買収合意をキャンセルした(PR Newswire記事)ことを発表した。米国連邦取引委員会(FTC)から取引阻止の訴訟を受けたためだ。

Apartments.comやApartmentFinder.comなどの物件検索サイトも運営する商用不動産データ・分析会社のCoStarは2020年2月に、RentPathを5億8800万ドル(約606億5000万円)で買収することで合意していた(The Wall Street Journal記事)。全額キャッシュでのこの取引は、RentPathが連邦倒産法第11章の適用を始めると公表したあとで発表された。RentPathはその時点ですでに、6億5000万ドル(約670億4000万円)以上の負債を整理するために財務アドバイザーを雇っていたと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている

しかし2020年12月初めになって、米国連邦取引委員会(FTC)はその買収を、連邦裁判所に対して、独占禁止法違反として提訴した。FTCの競争局の副局長であるDaniel Francis(ダニエル・フランシス)氏は声明の中で「今回の買収は、賃貸人とプロパティマネージャーの両方に利益をもたらしている価格と品質の競争を阻害する」と述べた(FTCサイト)。これまでCoStarとRentPathのライバル関係が、最も人気のあるリスティングサイトのいくつかを含む、彼らのプラットフォーム上の広告料金を低く保っていたからだ。

12月30日の発表の中でRentPathは、その破産手続きが、融資の貸し手によってまだ支えられていると語っている。そのような業者には「類似の状況下のビジネスへの投資を成功させてきた実績のあるオルタナティブ・アセット・マネジメント会社」も含まれているという。

FTCの訴訟や、RentPathが買収契約から手を引く決定が下された理由は、世界の多くの国々が技術的な統合を取り締まるようになってきたからだ。米国は独占禁止法違反規制の面で、他国の政府に遅れをとってきたものの、この状況は徐々に変化している。たとえばAmazon(アマゾン)、Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)が法的な精査を受けていることや、最近では米国46の州が、Facebookが市場での力を増すために「違法に」競合他社を買収したという提訴を行っている

RentPathとCoStarの取引の運命は、米国の不動産テックに対するさらなる独占禁止に関する精査を促す可能性がある。CoStarは、過去10年間に、現在も進行中の様々な買収を通じて事業を構築してきた、たとえば先月FTCの審査を通過した(Business Wire記事)物件検索サイトHomeSnap(ホームスナップ)や、不動産分析会社CoreLogic(コアロジック)への入札が報告されている(Reuters記事)。CoStarとRentPathの競合であるZillow(ジロー)も、2014年に35億ドル(約3610億円)で行ったTrulia(トゥルリア)の買収を始めとする一連の買収を通じて、事業を拡大して(Crinchbase記事)きたことで知られている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:FTC独占禁止法

画像クレジット:seksan Mongkhonkhamsao / Getty Images

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(翻訳:sako)

テクノロジーへの独占禁止の動きが米国から中国、韓国、インド、ヨーロッパまで勢いを増している

テック分野における何十年にもわたる拡大と統合を経て、独占禁止の動きは世界中の産業にとって重要な課題となっている。

過去10年間にはゆっくりとばらばらに進んできた動きだったが、この数週間で、該当産業に対する急速かつ包括的な行動としてまとまりつつある。これに対して、米国は世界的にも顕著な遅れをとっている。

この動きが最も顕著なのは中国だ。同国の競争当局が、長年続いたインターネット大企業への無干渉政策を突然かなぐり捨てて、同国の最も巨大なテック企業に対して抜本的な措置をとることを決定したのだ。

この動きは、中国の規制当局が11月初旬にAnt(アント)の記録破りのIPOを妨害することから始まった。Antは中国で最も重要なテック企業の1つであるとともに、3000億ドル(約31兆円)以上の評価額を視野に入れていたフィンテック企業で、中国人と華僑を中心に世界で13億人のアクティブユーザーを抱えている。

その規制措置は、Antの株式の33%を保有するAlibaba(アリババ)の、時価総額を即時に600億ドル(約6兆2000億円)下落させた(未訳記事)。

北京からの悪いニュースはテック業界全体に続いている。今週初め、市場規制当局は、貸出基準の厳格化などを含む、Antの「是正」計画を示したが、それらは同社の高い収益、利ざや、成長に深刻な影響を与えることが予想されている。米国時間12月29日のウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、中国政府がAlibaba創業者であるJack Ma(ジャック・マー)氏の、ビジネス帝国に対する影響力を具体的に「縮小」しようとしているとし、中国政府自身も同社の大規模な所有権を取得する可能性があると報じている。

さらに北京政府は、AlibabaとTencent(テンセント)が協業し、連動する2社のウェブの外部に、他のスタートアップたちが生息できる場所を作るように強制するように見える。2020年12月初め、当局はalibabaに僅かな金額の罰金を科し、また、Tencentによる買収案件を調査した(Bloomberg記事)が、その動きは、独占禁止法による介入の新しいラウンドの号令として、アナリストたちには受け止められていた。2021年にはさらなる動きが予想される。

だが、テック企業を服従させようとしているのは中国だけではない。ほぼ1年前、ドイツに拠点を置くDelivery Hero(デリバリー・ヒーロー)は、ソウルに拠点を置く人気フードデリバリーアプリのBaedal Minjok(ベーダル・ミンジョク)を40億ドル(約4133億円)で買収することを発表した。韓国時間12月29日、韓国の競争当局は、Delivery Heroに対し買収の承認のためには既存のローカルデリバリー資産を売却(The Financial Times記事)するよう命じた。この命令はそもそもBaedal Minjokを買収する理由の1つを損なう要求だ。Delivery Heroは、取引を完了させるために対象となる資産を売却する(Bloomberg記事)と述べている。

一方、今月には欧州とEUを離脱する英国は、違法コンテンツに対する法的責任の強化、サービスの透明性の拡大、主要プラットフォームでのオープンな競争の義務化など、テック分野での競争を強化するための新しい政策や規制が相次いで発表された(NYTimes記事)。こうした政策は、ずっと以前から進められてきていたが(未訳記事)、いまや力を持ち始め、旧大陸における最大規模のハイテク企業の運営方法に、大きな変化がもたらされる予兆が現れている。

世界的な政策の多くは、業界の統合や規模を元に戻そうとするものだが、インドでは、規制当局がそもそもそのような大規模化を防ぐために動いている。現地の競争当局は2020年11月に、現地での決済額の30%以上を扱う企業が出てこないようにする枠組み(Bloomberg記事)や、金融相互運用性の基準を義務づけることを発表した。この政策は、中国で見られるAlipay(アリペイ)とWeChat Pay(ウィーチャットペイ)のような、フィンテックの2社独占を避けるためにデザインされているように見える。

このような世界的な独占禁止活動が活発化している中で、後れを取っているのは実は米国だ。おそらく最大手のハイテク企業のすべてが、米国内に本社を置いているからだろう。議会、大統領、複数の州法務長官たちが、Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)のような企業の領分について、徐々に態度を厳しくして来ているが、巨人たちに対する動きは、まだほんの初期段階に留まっている。

これまでで、最大かつ最も注目すべき動きは、2020年12月初めに46州がFacebookを相手に起こした大規模な訴訟である。その当時私たちはこの訴訟のことをを、同社が成長し市場支配力を維持するために「競合他社を「違法」かつ「略奪的方法」によって買収したと主張している。顕著な例としてFacebookによるInstagramおよびWhatsAppの買収が挙げられている」と報じている。

もちろん、1990年代のMicrosoft(マイクロソフト)に対する米国政府の訴訟を覚えている人もいると思うが、独占禁止法の訴訟は、裁判所での審議に何年もかかることが多く、最終的に何か変更が行われてとして、大きな変化にはつながらないことが多い。

バイデン政権がこれらの動きを劇的に変えるかどうかは不明のままだが、2020年1月の就任に向けての移行準備のために、現時点では非常に限られた情報しか得られていない。

とはいえ、これらすべての独占禁止法に関わる動きは、それぞれこの数週間以内に世界中で同時に発生している。この動きは2021年におけるテック業界の大規模な規制闘争を予感させる。

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カテゴリー:その他
タグ:独占禁止法

画像クレジット:Aitor Diago / Getty Images

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(翻訳:sako)

中国eコマース大手アリババの独禁法違反調査始まる

中国の最高市場監視機関が、eコマース企業の反競争的慣行の疑惑をめぐりAlibaba(アリババ)の調査を開始。これは拡大を続ける同国のインターネット大手に歯止めをかけようとする中国政府の最新の取り組みだ。

12月24日、国家市場監督管理総局は短い声明の中で、企業がAlibabaでの独占販売を余儀なくされ、競合するJD.comやPinduoduoを避けるという「2つの中から1つを選ぶ」という方針に関して同社を調査していると述べている。

Alibabaからのコメントは得られていない。

同日、Alibabaの関連企業であるAnt Groupが金融当局に召喚され「コンプライアンス」業務について話し合われたと中国国営の新華社通信は報じている

金融サービスと顧客の仲介役を務めるAnt Groupは、中国当局が2020年11月に巨額の新規株式公開を突然中止したことを受け、債務リスクを抑制する措置を講じると約束した。

同社は声明で「本日、Ant Groupは規制当局から会議通知を受け取った。私たちは、あらゆる規制要件を真剣に検討し、厳格に遵守し、関連するすべての業務を遂行するために全力を尽くします」と述べている。

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グーグルの「独占力」を非難する米国35州が新たな反トラスト法訴訟を提起

1日が過ぎ、今日もまた、未曾有の力を有するもつ世界最大級のテック企業を解体しようと大がかりな反トラスト行動が起きている。

米国時間12月17日、38人の司法長官からなるグループがGoogle(グーグル)を相手に超党派訴訟を起こし、同社が検索および検索広告における独占を得るために、「違法な反競争的行為」に携わったたと主張した。

「グーグルの反競争行為は同社の検索全般における独占状態を保護し、競合を排除し、消費者から競争的選択の利益を奪い、イノベーションを妨げ、新たな参入や拡大の機会を蝕んでいる」とコロラド州のPhil Weiser(フィル・ワイザー)司法長官は語った。「この裁判の目的は競争を取り戻すことである」。

コロラド州はアリゾナ、アイオワ、ネブラスカ、ニューヨーク、ノースカロライナ、テネシー、およびユタの各州とともにこの訴訟の共同代表を務めている。ニューヨーク州のLetitia James(レティシア・ジェームズ)司法長官はグーグルを「インターネットの門番」と呼び、自ら収集した個人データを利用して市場の独占的地位を固めていると糾弾した。

前日発表の行われたテキサス州率いる対グーグル訴訟と比べて、第2の訴訟は35の州、ワシントンDC、プエルトリコ、およびグアムからなる広範囲な連合が主体だ。本訴訟と並行して司法省自身あ連邦訴訟(未訳記事)を起こしており、こちらも同社が独占を構成、維持するために権力を乱用していると主張している。

この新たな訴訟の原告団は、グーグルが排他的契約を結び、自身の検索エンジンマーケティングツールによってExpediaやYelpなどの特化した検索サイトを不利に、自社ビジネスを有利に扱っていると指摘している。彼らはグーグルの権力を自己補強的と評し、同社が消費者の選択肢を制限し、結果的に彼らの行動にとってより価値のあるデータが提供されることを制限している、と非難した。

競争の保護を目的とする連邦反トラスト法であるシャーマン法第2条違反であるとする同グループは、裁判所にグーグルが享受している有意性の再均衡を要請し、行動指針の一例として「組織再編」を提案している。

先週発表された46州対Facebookの訴訟と異なり、グーグルに対する米国各州の行動は二分化している。なぜ、グーグルに対する同じような告発が2つの反トラスト訴訟に分かれたのだろうか?おそらく、多くの州の指導者はテキサス州のKen Paxton(ケン・パクストン)司法長官の指揮する取り組みへの参加をためらったからだろう。同氏は4つの州で選挙結果を覆そうする不毛で望みのない裁判を率いているだけでなく、現在収賄容疑でFBIの捜査を受けている(AP NEWS記事)。

グーグルはブログで新たな訴訟に示された主張に対し、同社の消費者および小企業に対するプラスの影響を強調した。「この訴訟は、米国市民から有益な情報を奪い、企業の消費者と直接つながる能力に害を及ぼすように『検索』を再設計しようとしている」とグーグルの経済ポリシー担当ディレクターでありAdam Cohen(アダム・コーエン)氏は書いている。「法廷でそれを主張する日を待つとともに、私たちの利用者に高品質の検索体験を提供することに引き続き注力していきます」。

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米連邦取引委員会がByteDance、Facebook、Snapらにユーザーデータの扱い方の説明を命令

FTC(米連邦取引委員会)は、大手のソーシャルおよびビデオのプラットホームを運営する企業の多くに、彼らがユーザーから集めたデータの集積をどのように利用しているかについて、説明するよう命じた。Amazon(アマゾン)、TikTokを保有するByteDance、Facebook(フェイスブック)、WhatsApp、Discord、Reddit、Snap、Twitter(ツイッター)およびYouTubeらにその命令は送られ(FTCリリース)、締切は45日後とされている。

FTCの関心は、これらの企業による「個人情報の集め方、利用と提示の仕方、彼らの広告とユーザーエンゲージメントのやり方、そしてそのやり方が子どもたちと10代に与えている影響」にある。FTCの4名の委員がこの命令に賛成し、Noah Joshua Phillips(ノア・ジョシュア・フィリップス)委員は反対した。

命令に賛成したFTC委員のRohit Chopra(ロヒト・チョプラ)氏、Rebecca Kelly Slaughter(レベッカ・ケリー・スローター)氏およびChristine S. Wilson(クリスティン・S・ウィルソン)氏は、共同声明で次のように述べている。「国民の日々の生活の中で中心的な役割を演じているにも関わらず、突出して大きいオンラインプラットフォームが消費者および消費者データに関して行っている意思決定は秘密のベールの下に隠されている」。

「政策立案者と公衆は、ソーシャルメディアと動画ストリーミングサービスがユーザーのデータと関心をどうやって捕捉し販売しているかに関して闇の中にある。企業が私たちに関してとても多くを知っていても、私たちは企業に関してほとんど何も知らない。この状況が、私たちを不安にさせる」。

FTCによるこの実態調査は、テクノロジーを標的とする国の最近の活動の一環だ。先週、同委員会がフェイスブックを独禁法違反で提訴するというニュースが流れている。この命令はFTC法6条b項に基づいて発せられ、テクノロジー業界の実践慣行に対する調査研究事業として遂行される。それは、いかなる法執行行為もともなわないが、委員会は発見した事項によっては、法の執行が求められることもある。

2019年FTCは、特に反トラスト法(独占禁止法)との関連で、テクノロジーへの関心を強めた。同委員会は、目的を特定したテクノロジー関連作業部会を立ち上げ、買収をはじめ、彼らに懸念をもたらすような反競争的振る舞いを監視していくことになった。2020年の初めにFTCは、AlphabetとアマゾンとApple(アップル)、フェイスブック、Microsoft(マイクロソフト)が最近の10年近くの間に行ってきた買収を調べる、大規模な調査(未訳記事)を開始した。

関連記事:Faccebookの独占禁止法違反を米連邦取引委員会が主張、買収した企業を切り離すよう要求

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フェイスブックが全米46州からの大型反トラスト訴訟に直面

米国時間12月9日、膨大な数の州が反トラスト法(独占禁止法)訴訟を起こし、Facebook(フェイスブック)が独占的ビジネス手法で競合を抑圧していると主張している。46の州とグアム地区およびワシントンD.C.の各司法長官48名が本訴訟を形成しており、参加していないのはサウスダコタ、サウスカロライナ、アラバマ、およびジョージアの4州のみだ。

本訴訟はフェイスブックの創業以来の行動に注目し、同社が成長し市場支配力を維持するために、競合他社を「違法」かつ「略奪的方法」によって買収したと主張している。顕著な例としてフェイスブックによるInstagramおよびWhatsAppの買収が挙げられている。

原告団はコロンビア地区裁判所に対し、「今後、フェイスブックが原告州に事前に通知することなく1000万ドル(約10億4000万円)以上の価値の買収を行うことを抑制する」よう求めた。本訴訟はさらに、「法廷が適切と認めるあらゆる追加の救済命令、たとえば違法に買収された企業、あるいは現在のフェイスブックの資産もしくは事業分野の分割あるいは再構成」を裁判所に求めている。

訴訟はカリフォルニア、コロラド、フロリダ、アイオワ、ネブラスカ、ノースカロライナ、オハイオ、テネシーおよびワシントンD.C.の司法長官からなる委員会が中心となり、ニューヨーク州のLetitia James(レティシア・ジェームズ)司法長官が陣頭指揮する。

「国のほぼすべての州がこの超党派の訴訟に参加しており、それはフェイスブックの市場を支配するやり方が違法かつ有害だったからです」とジェームズ氏はいう。「本日の訴訟はフェイスブックだけでなく、競争を抑制、革新を阻害、あるいはプライバシー保護を軽視するあらゆる企業に対して、我々司法当局が全力で立ち向かうことを伝える明快なメッセージです」。

フェイスブックに対するこの国レベルの反トラスト訴訟は、ソーシャルの巨人に対してFTC(連邦取引委員会)が自ら反トラスト訴訟を起こすことを決議した同じ週に具体化した。委員会の決議はフェイスブックに対する20カ月に及ぶ捜査(POLITICO記事)を約束するものであり、2つ独立したアプリをソーシャルの巨人のビジネスに吸収した、WhatsAppとInstagramの買収についても追求する。

フェイスブックは、その並外れた影響力について常に批判を受けており、関連する問題について議会で幾度も証言してきたが、今回の国と州レベルの組織的反トラスト行動は、同社に新たな課題を突きつけるものだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Faccebookの独占禁止法違反を米連邦取引委員会が主張、買収した企業を切り離すよう要求

米国連邦取引委員会(FTC)は米国時間12月9日、Facebook(フェイスブック)に対する新たな反トラスト法(独占禁止法)違反訴訟を発表した。このソーシャルネットワークが「深刻な競争上の脅威を抑圧し、無力化し、抑止する目的で」独占的地位を利用していると主張し、これを破棄しなければならないとしている。なお、この訴訟とは別だが、全米48州・地域の司法当局の1つも協調して調査を行ったと同日に発表した(未訳記事)。

どちらの訴訟も、Facebookが違法な行為に関与していると主張しており、州と連邦政府の調査官が協力してその特徴を明らかにした。しかし、州訴訟は州法レベルでの違反に関係しているが、FTCは連邦法の違反を主張している。そのため2つの訴訟は、Facebookによる同じ行動に異議を唱えながらも、別々に追求され、裁かれることになる。

どちらの申し立ても似たようなものだ。すなわち、FacebookによるWhatsApp(ワッツアップ)とInstagram(インスタグラム)の買収は、新興他社の競合を封じる違法な反競争的行為に等しく、Facebookはそのプラットフォームを、競合他社の台頭を防ぐために利用しているというものである。

FTCと州の訴訟はいずれも、InstagramとWhatsAppの買収を遡って違法と判断し、それらの企業のFacebookの本体から切り離すように求めている。

この分割に加えて、Facebookは今後のすべての合併・買収について、FTCと州当局の両方に事前通知と承認を求めることが義務づけられ、競合機能を提供しないようにAPIアクセスを停止させることなど、さまざまな行為も禁止されることになる。

Facebookはツイートで今回の訴訟について調査中と述べているが、「政府は現在、この前例が広範なビジネスコミュニティに与える影響を考慮せずにやり直しを望んでいる」と、この訴訟を軽蔑している。

確かに当然の疑問である。政府がInstagramとWhatsAppの買収を承認し、さらにそれらを遡及的に不承認するとなれば、FTCと他の規制機関の監視メカニズム全体に対する疑問を呼び起こすことになるだろう。

FTCがこの訴訟に関するQ&A(FTCリリース)で指摘しているように、これは実際には前例がないわけではないし、予想外のことですらない。ある企業が他の企業に買収されることを承認するプロセスは、その時点では明らかな違法性を感じさせないかもしれないが、裏では多くの違法性が絡んでいる可能性がある。たとえば承認されて完結した合併が、後になって偽りの口実で実行されたことが判明した場合、あるいは今回のケースのように、後になって違法行為のパターンの一部であることが判明した場合には、承認されて完結した合併が取り消される可能性があるのだ。

「我々の執行措置は、買収だけでなく、それ以上のことに異議を唱えるものです」と、FTCは説明する。「我々はパーソナルソーシャルネットワーキング市場の独占を構成する複数年に及ぶ行為に異議を唱えているのです。【略】FTCは、消費者取引が法律に違反している場合には異議を唱えることができるし、しばしば異議を唱えています。実際、反競争的な消費取引を特定することは、2019年2月にテクノロジー・タスクフォースとして執行部が設立されて以来、その任務の重要な部分となっています」。

今回の訴訟は、ほぼ確実に複数年におよぶプロセスの最初の一部に過ぎない。それは2つの政権にまたがることになり、そのため手続きが遅くなることは間違いない。次のステップはおそらく、無実を説明するFacebookからのPR攻勢になるだろう。

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