ウォルマートがeコマースの有力スタートアップ、Jet.comを30億ドルのキャッシュで買収と発表

2016-08-09-jet-com-alt

このところ小売業はAmazonが君臨するeコマースが主戦場となっている。今日(米国時間8/8)、Walmartはデジタル・コマース・ビジネスにおける過去最大の買収を発表した。Walmartは運用開始後ちょうど1年のオンライン専門ショッピングサイト、Jet.comを30億ドルのキャッシュで買収する。またJet.comのファウンダーや関係者に最高3億ドル分のWalmart株式を与えるという。

Walmartの発表によれば買収後もJet.comは独立のブランドとして運営される。この買収は〔実店舗のスーパーマケットチェーンという〕Walmartのコア事業を多様化し、ターゲットの消費者を拡大する戦略に沿うものだという。

Jet.comの共同ファウンダー、CEOのMarc LoreはJet.comの責任者を続けるだけでなく、Walmartのオンライン事業のトップの地位をNeil Asheから引き継ぐ。Walmartの社長、CEOのDoug McMillonは買収についての電話記者会見で「われわれはeコマース事業にさらに注力していく。〔この人事は〕買収に伴う自然な成り行きだ」として次のように述べた。

「LoreがJetで確立した〔システム〕はWalmartでも採用される。Loreがこのポジションをは引き継ぐことは、Walmartをeコマースの世界にさらにコミットさせる役割を果たすだろう。これは理にかなったことだ」と述べた

2012年からグローバルeコマース部門のトップになったAsheは2016年からWalmart Technologyの責任者も兼ねているが、Asheが買収後も後者の地位に留まるのかは不明だ(取材中)。

McMillonは「Jet.comは「〔Jet.comは〕2020年までに黒字化を達成することになっているが、グループに入ったことで配送、人的資源、サプライチェーンなどにスケールメリットが活かせることになり、黒字化の目標達成は早められるだろう。ただし〔Jet.comに対して〕しばらく投資を続ける期間が必要必要だ。今日はWalamartのガイダンスの修正は行わないが、いずれにせよわれわれの企業文化は短期の損益に拘泥しない。われわれは消費者と共に勝利することに集中している」と述べた。

規制当局に承認されれば買収手続きの完了は年内を目標としている。【略】

WalmartとJet.comの買収交渉は1週間にわたって大きなビジネス・ニュースとなっていた。買収金額についてBoombergre/codeだけでなく、われわれTechCrunchも30億ドルになると報じたが、この情報は正しかったことになる。

今回の買収は急成長中のeコマース企業と世界最大の実店舗小売業の合併として大きなインパクトを与えている。現在Walmartは世界28ヶ国に1万1527店舗を展開し、会員制スーパーのSam’s Clubを始め63のグループ企業を展開している。1週あたり顧客は2億6000万人、会計年度の2016年には4820億ドルの売上を記録し、従業員は(なんと!)230万人に上る。

一方Walmartの発表によれば、Jet.comは事業を開始した最初の年に通年換算の流通総額 (Gross Merchandise Value=GMV)が10億ドルに達した。Jet.comの取扱商品は単品管理単位(Stock Keeping Unit=SKU)で1200万、月間新規顧客は40万、処理注文数は1日当たり2万5000、登録小売企業および提携企業数は2400となっている。

eコマース・ビジネスのインフラ構築のためにWalmartがこれほどの巨額を投じたことは強い関心を集めている。Walmartは世界最大の小売業だが、このところ採算性の悪い分野でのダウンサイジングにも努めている。たとえばWalmart Expressと名付けられたミニ・スーパーを実験的に開設している。

今日の電話記者会見で WalmartのCEO、McMillonは「Jet.comは「〔Walmartよりも〕都会的でありミレニアル世代を惹きつける力がある。現在われわれが扱っていないブランドにとっても魅力だ」と説明した。【略】

Jet.com―離陸したのか、滑走中か?

WalmartはJet.comのビジネスについは、売上総額、顧客総数、収益性など具体的な数字を発表していないが、買収以前にJet.comが発表したところによれば2019年までは赤字が続く見込みだ。

Jet.comは2013年に Lore、Mike Hanrahan、Nate Faustによって創立され、巨額のベンチャー資金を集めることに成功している。投資額は5億ドル以上と報じられているが、8億ドル以上の可能性もある。会社創立後、2015年7月に運用を開始するまで評価額上昇を続けた。30億ドルの買収額は、昨年末の資金調達ラウンドにおける評価額の1つとして報じられた額だ。

Jet.comはスタートアップとしても非常に若い会社で、事業の運営もアメリカに限定されている。しかしLoreはイギリスでドメイン名を登録しており、ヨーロッパ、少なくともイギリスには事業を拡張する計画かもしれない。

Walmartの広報担当者によれば、「JetはWalmartを助け、WalmartもJetを助けることができる」という。

この記事はアップデートでWalmartのCEO と広報担当の発言を追加している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Apple、Q3決算を発表―売上、利益ともアナリスト予想を上回り、株価は5%上昇

2016-05-17-timcook

空振りに終わった前四半期の後でAppleは良いニュースを必要としていた。今期はAppleにとって好ましい決算となった。

Appleの発表によれば、第3四半期の売上は424億ドル、1株あたり利益は1.42ドルだった。アナリストの予想は420.9億ドル、1株あたり利益は1.38ドルだった。この決算を受けて株価は上昇し、Appleは時価総額を100億ドル単位で取り戻した。時間外取引での5%のアップはさほどの急騰に思えないかもしれないが、時価総額が5000億ドルを超える企業にとっては莫大な金額となる。

それでも対前年比では依然としてマイナスの四半期だった。昨年同期のAppleの売上は496億ドル、1株あたり利益は1.85ドルだった。しかし中核事業であるiPhoneの市場が飽和に近づいていることからAppleの減速は予測されていた。発表によれば4040万台のiPhoneが売れた。前年四同期は5120万台だった。

前年同期は新製品の影響がない期間だったが今期もその点ではほぼ同様だ。売上はもはや急成長モードではない。iPhoneの販売台数も減少傾向だ。アナリストもAppleは成長中の企業ではないと考え始めていた。しかしAppleに新しい成長の可能性を見出したいと考える投資家が多い中、今回の決算は投資家にとっても朗報となった。

今回の決算では近年初めてAppleの手持ちキャッシュが減少したことが注目される。Appleは最近、大胆な投資を実行しており、中国におけるUberのライバル、滴滴出行に10億ドルを出資している。これはAppleが事業を多角化するために巨額のキャッシュを利用し始めたことを意味するのだろうか? 予測は時期尚早だろう。

前四半期はAppleにとって大きな分岐点だった。13年ぶりにAppleは売上の減少を記録し、アナリストの予測を大きく下回った。成長の原動力であるiPhoneの販売台数は昨年の第2四半期を大きく下回った。

その結果、Appleの株価は急落し、1日の午後の取引だけで400億ドルが時価総額から蒸発した。 すぐ背後に迫っていたGoogleは一瞬だが時価総額でAppleを抜いた。Appleの株価はまだ前四半期の急落から完全に回復していないが、それでも今期は復活に大きく踏み出した。

今期は安価な4インチiPhone、SEが売りだされた後、最初の四半期となった。消費者は初めてAppleから手頃な価格のiPhoneを買うチャンスを与えられた。またコンパクトなサイズの新型iPhoneを待っていたiPhone 5、5Sのユーザーにも歓迎された。しかしこうした安価な製品はより高価iPhoneの販売を妨げ、Appleの利益率に食い込む可能性がある。

Appleの業績のカギとしてアナリストが注目する粗利益率は39.7%から今期38%にダウンした。Appleの販売するデバイスは全体としてプレミアム・デバイスと考えられている。当然ながらそういう製品として粗利率は高く、これがAppleの独走の大きな原因となってきた。Appleのガイダンスでは、粗利率は今後さらに減少すると予測されている。新しいiPhoneが発売される直前の今年の第4四半期の粗利率のターゲットは37.5%から38%だ。

そこで明るい方面に目を向けると、iPadの販売台数だ。前四半期、AppleのCEO、ティム・クックはiPadの将来は明るいことを示唆した。1-3月期の決算でAppleは1090万台のiPadを売った。【略】

アナリストは今四半期の iPadセールスは9100万台と予測した。しかし予測を上まわって1000万台が売れたことが報告された。これは前四半期からは多少減少しているとはいえ、ほぼ同数を維持できたことになる。興味深いのはiPandの売上が44億ドルから49億ドルへとむしろ増加したことだ。原因はともかくとしてこれは投資家にとってポジティブなニュースといえる。

注目はiPhone 7の発表と次の四半期決算に集まっている。 Appleの他の部門がおしなべて頭打ち傾向であるときに、iPhone 6で見せたような中核事業の再活性化をiPhone 7で繰り返せるかどうかがAppleの今後を占う上で重要なポイントと考えられている。

今回の決算のポイントは次のとおり。

  • Q4ガイダンスの売上予測は455億ドルから475億ドル(昨年同期は515億ドル)
  • Q3売上は424億ドル(アナリスト予測は420.9億ドル、昨年同期は496億ドル)
  • Q3 1株あたり利益は1.42ドル(アナリスト予測は1.38ドル、昨年同期は1.85億ドル)
  • Q3粗利益率は38%(昨年同期39.7%からダウン)。
  • Q4ガイダンスの粗利率のは37.5%から38%

画像:Stephen Lam/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

予想を上回る業績を達成したeBay、株価が5%上昇

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eBayは20日の取引終了後に第2四半期の業績発表を行い、同社の株式は時間外取引で5%以上の値上がりを見せた。調整後利益は1株当たり43セントと、市場アナリストの予想額42セントを上回った。

また、同社の収益もウォールストリートの21億7000万ドルという予想額に対し、22億3000万ドルと上回ってみせた。

同社の通年予想が上方修正されたことも投資家に好感された。eBayによると、2016年の収益見通しは88億5000万ドルから89億5000万ドルであるという。

「今年は、最良の選択、最高の関連性、そして最強の販売プラットフォームを提供する戦略を実施する初年度ですが、すでに事業が波に乗っている兆候が表れています」と、同社CEOのDevin Wenig氏は声明で述べた。eBayは、1年前にPayPalから分社化している。

eBayはまた、第2四半期中に5億ドル相当の普通株を買い戻した。理事会では、さらに25億ドル分の株式買い戻し認可につき無期限で承認されている。

最近eBayが力を入れていることの1つが、同社で「構造化データイニシアチブ」と呼ばれる計画である。Monness Crespi HardtのアナリストJames Cakmakは、同社が「検索の使い勝手の向上と製品分類の改良についての取り組み」に注力していると指摘している。Cakmak氏は、投資家はこの戦略により最終的に売り上げが改善されるかの見極めようとしているという。

eBayは、オークション事業に陰りが見られることから、固定価格事業にシフトしようとしている。これはつまり、同社がより多くのブランドがeBayのマーケットプレイスサイトで製品を販売するように働きかけており、より直接的にAmazonと競合することを意味する。

もう1つ力を入れている分野が、急成長を遂げているコンサートやスポーツのチケット事業StubHubである。この部門は、前年度比40%増の2億2500万ドルの収益を上げている。 最近のTicketbisの買収により、国際的な事業拡大にも弾みがつきそうだ。

eBayは第1四半期にも 業績予想を上回っており、株価は過去3か月で9%上昇している。

水曜日の終値は26.99ドルで、同社の時価総額は310億ドルとなっている。

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(翻訳:Nakabayashi)

Yahoo相変わらず低迷の四半期決算報告、上場企業としてこれが最後か?

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Yahooの決算報告は、アナリストたちの予想をわずかに下回り、そして同社はTumblrの簿価を再び下げた。株価の、目立つ変化はなかった。

Yahooはここ数年、毎年こんな調子だ。Yahooのコアビジネスはこのところずっと下降気味であり、2012年にMarissa Mayerが指揮を取る前から下降は続いていた。MayerのCEO就任は、新しいリーダーがYahooを正しい方向に導き成長路線に戻すか、と期待された。なんといってもYahooは強力なブランドであり、蓄積されたユーザーの数も多い。

今日の決算報告は、Yahooの上場企業としての歴史に終わりを告げる感嘆符(‘!’)のようだ。すでに方向転換の可能性はほとんど見えず、ここ数か月は、どこがYahooの中核資産を買うか、という話しかなかった。同社が上場企業としての財務報告を公表するのはこれが最後かもしれず、そしてその内容は当然ながら寒い。

同社のその、2016第二四半期は、13億1000万ドルの売上に対して一株あたり9セントの利益だった。中にはTumblr関連の3億9500万ドルの‘のれん料’という費目もあるが、これは再度行われた買収簿価の切り下げだ。アナリストたちは、売上10億8000万ドルの売上、一株あたり利益10セントを予測していた。前年同期では、12億4000万ドルの売上、一株あたり16セントの利益だった。

売上の額面は大きいが、その中にはサンタクララの不動産を売った2億4600万ドルの売却益がある。トラフィック獲得費用を差し引くと、売上は8億4120万ドルになる…アナリストの予想は8億3960万ドルだった。トラフィック獲得費用は前四半期の2億ドルから第二四半期は4億6600万ドルと大きく増えた。

Mayerはこれまで、さまざまな買収を行ったが、会社を上向きに転ずることはできなかった。11億ドルで買収したTumblrは、その後何度もレイオフを重ねるたびに多くが償却された。そして同社のコアビジネスへの関心は低迷し、中核資産のパフォーマンスは低下した。過去数年間はモバイルへの注力が行われたが、並行してレイオフも随時行われ、業績は低下を続けた。

“事業活動の改善努力に加えて、代替的戦略においても大きな進歩を遂げた”、と方向書の発表文は言っている。

Yahooの株主たちの関心は、業績の回復よりもむしろ、同社が大量に保有している中国のeコマースAlibabaの株へと移った。Yahooの360億ドルという時価総額は、同社の協同ファウンダーJerry Youngが昔Alibabaの株を買ったことに大きく依存している…それは今の価額では2000億ドル以上にもなる。キャッシュに不自由しないMayerは、さまざまな業績回復プラン(多くは買収)を実行することができた。

今年、Yahooの株価は約4.5%ダウンした。

〔ここにグラフが表示されない場合は、原文を見てください。〕

[graphiq id=”aCp3EcOMRI9″ title=”Yahoo Inc. (YHOO) Stock Price – 1 Year” width=”600″ height=”463″ url=”https://w.graphiq.com/w/aCp3EcOMRI9″ link=”http://listings.findthecompany.com/l/19200951/Yahoo-Inc-in-Sunnyvale-CA” link_text=”Yahoo Inc. (YHOO) Stock Price – 1 Year | FindTheCompany”]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

S7シリーズの好調でSamsungの財務が2年ぶりに活況、Appleと激突する年末はどうか

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Samsungは、スマートフォン事業が復調したため、2年ぶりで高利益の四半期を報告した。

この韓国企業の決算報告のガイダンスが今日(米国時間7/7)発表され、2016年第二四半期は50兆KRW(約430億ドル)の売上に対して8.1兆KRW(70億ドル)の利益が予想されている。Reutersによると、これはアナリストの予測7.8兆KRWを上回り、2014Q1以降ではもっとも好成績の四半期となる。

Samsungの前四半期は同社のスマートフォン旗艦機種Galaxy S7とS7 Edgeの順調な売れ行きにより、49.8KRWの売上から6.7兆KRWの利益を稼いだ。同社は具体的な数字を挙げていないが、いくつかの記事によると最上位機種は前年内に売り切れとなり、それはタイミング(クリスマス、年末…いつもより1か月早い売り出し)と、サプライチェーン管理の改善、そしてiPhone 6sとiPhone 6s PlusにおけるAppleのやや中途半端なアップデート(Samsungにとって‘圧倒的に強力ではなかった’Apple)という三つの要素が重なったため、と見られている。

当時は売り出しの最初の1か月の動向を見てアナリスト企業のCounterpoint Researchが、Samsungはこれまでに全世界で1000万台のGalaxy S7デバイスを売ったと推計した。それは、同じ時期のGalaxy S6より25%近く多い。

Appleの新型iPhoneは発売が今年晩(おそ)くだから、Samsungのモバイル部門と、ひいては同社の財務の全体が、激しい競争の中で今の好調を持続する可能性もある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

クラウド会計ソフトのfreeeがAIによる自動仕訳の特許を取得、ラボも開設

左からfreee執行役員プロダクトマネージャーの坂本登史文氏とfreee CTOの横路隆氏

左からfreee執行役員プロダクトマネージャーの坂本登史文氏とfreee CTOの横路隆氏

様々な領域で利用に向けた研究の進む人工知能(AI)。FinTechの領域もその例外ではない。クラウド会計ソフト「freee」などを提供するfreeeは6月27日、自動仕訳に関するAI技術の特許を取得したことを発表。同時に、AIによるバックオフィス業務効率化をすすめる「スモールビジネスAIラボ」を創設した。今週中にもクラウド会計ソフトにAIを用いた自動仕訳機能を提供する。

クラウド会計ソフトfreeeは、銀行口座やクレジットカードなどと連携し、出入金を自動で取得、勘定科目を仕訳してくれるというもの。このデータをもとにして帳簿や決算書を作ったり、請求書や見積書を作ったりできる。

データは銀行口座などと自動で同期されるとは言え、勘定科目については当初キーワード単位でのルールで仕訳を行っていた。1つの例だが、「さくらインターネット」や「インターネットイニシアティブ」といったクラウド・インフラ企業への支払いが「インターネット」というキーワードをもとに「通信費」として仕訳される一方、本来ほかの勘定科目に仕訳すべき内容も「●●インターネット」という名称がついていた場合、「通信費」となってしまっていた。これを防ぐには、結局のところ、最終的に人間が勘定科目を確認・選択する必要があった。

AIを用いた自動仕訳機能のイメージ

AIを用いた自動仕訳機能のイメージ

だが仕訳登録AIを導入するより最適な勘定科目を推測できるようになるという。AIは学習エンジンを搭載しており、利用ユーザーが増えれば増えるほどにその精度は高まるのが特徴だ。開発を担当したfreee執行役員プロダクトマネージャーの坂本登史文氏によると、その精度は現在70%弱。今後は数カ月のベータ版運用を経て、90%程度まで精度を引き上げていく予定だという。

freeeのスタッフは現在200人以上。エンジニアの10%はラボのメンバーとしてAI関連の開発に従事しているという。デジタルインファクトの調査やMM総研の調査によると、freeeはクラウド会計、給与計算でシェア1位だという(とは言えそもそもクラウド化率が会計で11.1%、給与計算で12.5%という数字だ)。freee CTOの横路隆氏はこの数字を挙げて、「(freeeには)個人事業主や中小企業のデータが集まっている。このデータを利用すればイノベーションを起こせる余地はまだまだある。また我々は会社設立から会計、給与計算までの機能を提供している。パッケージされた業務システムを1つ1つ最適化するのでなく、すべてのサービスを1つのデータとして最適化できることは強み」と語る。

今後ラボでは、AIをもとにした不正データの検知や、チャットサポートの自動化、消し込み作業の支援といった経理作業の効率化に向けた機能を提供していく。また将来的には資金繰りのシミュレーションや経営分析など、経営意思決定の支援に向けた機能を提供していく。

社員に出張費の節約を促すRocketripが900万ドルを調達

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Rocketripは、社員にギフトカードなどの報酬を提供することで出張で使う経費を削減するモチベーションを高めることができると考えている。このスタートアップは各出張につき「目標予算」を設け、削減できた分を会社と分け合うことができるようにする。

このコンセプトは初期の段階から人々を惹きつけてきた。ニューヨークに拠点を置くRocketripは、 Bessemer Venture Partnersをリード投資家に、既存投資家のCanaan Partners、Genacast Venturesから新たに900万ドルを調達した。

「有力なクライアントを早いペースで獲得できています。今回の資金は、既存のクライアントに提供するソリューションを拡張すること、そして営業チームを拡大し、ビジネスを成長させることを考えています」とCEOのDan Ruchは言う。クライアントにはOpowerやWayfair、Fortune 500に名を連ねるいくつかの企業があるという。「このモデルが効果的であることを証明できました。社員に報酬を与えることで、会社にとって良い行動を喚起し、強力で大きな費用対効果を実現します」。

Rocketripは、クライアントにとって出張毎に平均で301ドルの節約になっていると推定する。これは各出張毎の予算の27.6%の節約に相当する。Rocketripは少なくとも出張費に年間100万ドルを使う企業をターゲットとしているとRuchは言う。Rocketripの最大のカスタマーは、昨年出張費に3億6500万ドルを使用したという。

Rocketripは、リアルタイムの交通費を検出するアルゴリズムを構築し、この情報をカスタマイズした出張予算に組み込む。社員はお気に入りの旅行サイトから予約できる。Rocketripは企業に対して出張費に関するアナリティクスとインサイトを提供する。

「業界全体が、社員が出張費に関して節約するインセンティブがまるでない方向に進んでしまいました。出張費は社員にとって他人のお金という認識があるからです」とBessemer Venture Partnersのパートナーを務める Alex Ferraraは言う。彼の推定では、企業の出張費は1兆2500億ドル市場だという。「 Rocketripがどの階級の社員にもコストに対する意識付けを促し、市場を少しでも削り取ることができるなら、それは雇用主とそこで働く社員、そしてもちろんRocketripにとって大きな成功となるでしょう」。

RocketripはSaaSビジネスモデルを採用し、出張費の規模に応じて利益を得る。Rocketripが社員に提供する報酬はギフトカードの他に、チャリティーへの募金、旅行先での特権などがある。

Rocketripは、以前Y Combinator、CrunchFundらから800万ドル以上の調達の調達を行っている。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

Bitcoin価格、4日間で21%のアップ―過去21ヶ月の高値を付ける

2016-05-31-bitcoin

今日(米国時間5/30)、ビットコインが再びポジティブな話題として戻ってきた。すでにすたれたという噂は明らかに早計だったようだ。ビットコインはBitfinexで現在547.40ドルで取引されている。このマーケットは米ドルとビットコインの交換を行う場所としてBitcoinityに次いで2位を占めている。この価格はこの4日間で21.4%の大幅な上げだ。

この価格は過去21ヶ月での高値でもある。意外なことに、今回の急騰以前の2ヶ月、ビットコイン価格は比較的安定していた。

今回の値上がりの原因を探るのは困難だ。ただ最近、HuobiOKCoinという中国で最大クラスの取引所の登録者が急増し、ビットコインの買い注文が大量に入っている。

最近、中国ではビットコイン価格がマクロ経済の状況に連動する傾向が強まっている。ビットコインへの殺到は、中国が依然デフレを恐れていることを示唆する。

多くの中国人はビットコインを有力な財産の保全手段と考えている。同様に、中国政府当局はピア・ツー・ピアの資金貸付サービスへの取り締まりを強化し、資金の出し手をビットコインコインへの投資に誘導しようとしている。

中国以外でもビットコインの先行きについて明るい情報が入っている。2015年末に、ビットコイン企業の多くがBitcoin_ClassicなどによりBitcoin Coreをフォークさせることで取引量を拡大することに積極的な姿勢を見せるようになった。これはオリジナルのBitcoin Coreプロジェクトにとって大きな挑戦となるかもしれない。

この数ヶ月のうちに、、ビットコインとそのブロックチェーンをさらに堅牢かつ将来性の高いものにするためBitcoin Coreは何度もアップデートされるはずだ。私はlightning networksに大きな期待をかけている。このネットワークはビットコインによる送金を秒の単位に高速化する。このことはビットコインを現行の送金手段を代替する存在に押し上げるものだ。

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画像: Antana/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE (IMAGE HAS BEEN MODIFIED)

〔日本版〕Bitcoin Core(以前のBitcoin-QT)は過去の取引を完全に記録したブロックチェーンで、65GB以上のサイズがあるとされる。最初のダウンロードには長時間かかり、十分な帯域幅を必要とする。なおテクノロジーの名称としては大文字のBitcoin、通貨単位としては小文字のbitcoinが用いられる慣行があるが統一性のある規則ではない。英文では見出単語、文頭の単語は表現スタイルとして自動的に大文字になることがある。Wall Street Journal、OED等は「常に小文字を使う」よう提唱しているという。この記事本文の訳文ではBitcoin Coreのような固有名詞を除いて暫定的に「ビットコイン」とカタカナ表記している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

好調Snapchat、シリーズFで18億ドル調達―取締役会資料で評価額、売上、ユーザー数も判明

2016-05-27-snapchat-money

今週われわれはSnapchatが資金調達中だという記事を書いたが、このメッセージ・スタートアップに関してもっと具体的な数字が判明した。

今日(米国時間5/26)、 証券取引委員会(SEC)に提出された報告書によれば、Snapchatは最新のシリーズFラウンドで18億ドルの資金を調達している。さらにTechCrunchに対して別途提供された同社の取締役会のプレゼン資料によって同社の売上や将来予測に関する情報を得ることができた。

このプレゼン資料によって、ロサンゼルスに本拠を置くSnapchatは2015年の売上が5900万ドルに過ぎなかったものの、巨額の資金調達を進めたことが明らかになった。しかし資金調達に成功した今は、本格的にビジネスを拡大する準備が整ったことになる。

信頼できる情報源がTechCrunchに告げたところによると、18億ドルを調達した最近のシリーズFのうち、11億5800万ドルは1月以降の5ヶ月で順次調達されたものだという。

同情報源によれば、資金を提供した投資家にはGeneral Atlantic、Sequoia Capital、T. Rowe Price、Lone Pine、Glade Brook Capital、IVP、Coatue Management、Fidelityなどが含まれている。

今回SECに提出されたForm D書式では会社評価額を明らかにする必要がない。評価額についてわれわれが聞いた情報は錯綜していた。情報源の説明によると、投資の一部はプレマネー(投資実行前の評価額)で175億ドルだったという。これに18億ドルを加えれば193億ドルとなり、TechCrunchが報じた「ポストマネーで200億ドル」という目標値にきわめて近いことになる。

ただし、この部分についてもわれわれは矛盾した情報をつかんでおり、実際の評価額はもっと低い可能性があった。TechCrunchに記事が出て数時間後にある情報源から接触があり、プレマネーの評価額は180億ドル以下だという数字が告げられた。今回のラウンドのポストマネーの評価額は160億ドルかそれ以下、プラス18億ドルだったという。

異例だが、同時に可能でもあるのは、一部の投資家が異なる会社評価額で出資したというものだ。われわれは大勢の投資家がSnapchat株式を購入するために特別に資金をプールするファンドが組成されたという噂を聞いていた。

同時にSnapchatの資金調達における会社評価額は「動的」、つまり現実に資金が調達される時点での時価総額に基づくということを聞いていた。これは同社の資金調達に多数の投資家が関与し、数ヶ月にわたるところから来たものだろう。つまりシリーズFラウンドというのは、こうした投資をすべて合計した名称ということのようだ。

記憶を呼び起こせば、昨年Snapchatは160億ドルの評価額で6億5000万ドルの資金調達を試みたことが報じられた。SECへ報告書によれば、このうち5億3700万ドルが調達ずみとなっている。Snapchatは残りの額も含めて全額を調達ずみだ。どうやら6億5000万ドルの出資目標額の残り〔1億1300万ドル〕が今回のシリーズFラウンドの最初の部分になったものらしい。

Wall Street Journalは3月の記事で、同社はFidelity(シリーズFラウンドの参加者)からhis round) から160億ドルの評価額で1億7500万ドルを調達したと報じている。この資金調達は今回SEC報告書に記載されたシリーズFラウンドの一部であったようだ〔そのためにFラウンドにおける会社評価額について異なる数字が流れたのだろう〕。【略】

巨額の資金、さらなる成長

Snapchatの会社評価額は〔160億ドルから〕いっこうに伸びていないと批判する意見もあるが、同社自体はそれどころでない成長を遂げている(TechCrunchが200億ドルという会社評価額をあり得ると考えたのもそれが一因だ)。

われわれの情報源はSnapchatに投資を試みたことがあり、同社のプレゼンのスライドをTechCrunchに提供した。この資料にはこれまで公開されたことがない数字が記載されている。

スライドの日付は2015年の末となっている。この時点でのSnapchatの2015年の売上は5900万ドルだった(ただし、同社が収益化をスタートさせたのは2015年の下半期であり、それ以前はまったく収益化を行っていなかったことは記憶しておくべきだろう)。

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Snapchatでは2016年の売上を2億5000万ドルから3億5000万ドルの間、2017年は5億ドルから10億ドルの間と予測していた。

プレゼンの資料によれば、こうした数字の上限は現実の売上に基づく推定ではなく、セールス部門の強気の目標数値だったとようだ。別の理由もあって売上予測は多少割引して聞く必要がありそうだ。それはこうした予測が同社が現に収益化の努力を始める前の予測であるという点で、広告やDiscoveなどのプロジェクトを始めるとそれなりのコストがかかることが判明した。

資料はまた2015年12月の1日あたりアクティブ・ユーザー〔DAU〕は1億1000万人だとしている。前年同期が7400万人なので50%弱の成長を遂げたことになる。

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もちろん今は2016年の5月であり、現在のDAUの数字は不明だ。しかしSnapchatは最近も目覚ましいスピードで機能を追加しており、ユーザーはテキストだけでなくビデオや音声をさまざまに処理して友達と共有できるようになっていえる。

たとえばke カメラロール中の写真の顔を別の顔と入れ替えたりビデオ中の動く対象にスタンプを貼り付けたりできるようになた。またさまざまな新機能でサービス全体の使い勝手もすっかりアップグレードされた。【略】

Snapchatではサービス内のビデオの視聴は昨年1年で350%増加し、1日あたり100億回となっていると発表している。またユーザーの3分の2は毎日Snapchatの提供する機能を利用してビデオ・コンテンツを作っている。

今回の資金調達に関連して取材した投資家は、こうした精力的な新機能の追加は「この会社のもっとも魅力的な点のひとつだ」と認めた。投資家の1人は「誰にとっても1週間は168時間しかない。 一般ユーザーのインターネット利用を考えると、1人のユーザーが繰り返し使うプロダクトはせいぜい5種類から7種類くらいだ。それ以上使う『帯域幅』はない」と語った。この投資家によれば「Snapchatはすでに一般ユーザーが繰り返し使うプロダクトの一つとしての地位を確立しており、しかもその成長は始まったばかりだ」とした。

この記事の取材にはMatthew Lynleyが協力した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Sonyは熊本地震で画像センサー工場が被害を受け、収益予測を下方修正、ゲーム部門は好調

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Sonyが、先月日本の南部を襲った地震からの復旧努力により、次の会計年度の収益が予想より低くなる、と発表した。同社は前にも、2017会計年度の予測の発表が、地震被害の評価により遅れる、としていた。

地震は、熊本県を襲った。そこには、デジタルカメラやスマートフォンに使用する画像センサーを作っているSonyのメインの工場がある。Sonyの画像センサーは、Appleをはじめ多くのスマートフォンメーカーが使っており、同社の主要な利益源のひとつだ。その部門は昨年、別会社として分離した

また同社によると、同社のミッドレンジデバイスの売上が世界の主要市場で鈍化しているため、スマートフォンの売れ行きも伸び悩む、と予測している。

2017会計年度のSonyの営業利益の予測は3000億円(約27億5000万ドル)で、前年比2%の増加だ。これは、約1150億円(10億4000万ドル)の地震被害を折り込んだ額である。

同社のスマートフォン部門は、前述のミッドレンジデバイスの落ち込みにより、利益はわずか50億円と予測している。それはSonyが、需要の減少に対応して、中国インドなどの市場を縮小したためでもある。

しかしSonyのゲーム部門は、PlayStation 4とそのゲーム作品の需要増が貢献して好成績が予測される。その利益予想額は1350億円だそうだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Appleの株価急落の原因を検討する

SAN FRANCISCO, CA - OCTOBER 22:  Apple CEO Tim Cook speaks during an Apple announcement at the Yerba Buena Center for the Arts on October 22, 2013 in San Francisco, California.  The tech giant announced its new iPad Air, a new iPad mini with Retina display, OS X Mavericks and highlighted its Mac Pro.  (Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

昨日(米国時間4/26)、Appleが第2四半期の決算を発表した後、時価総額は400億ドル減少した。これは深刻な事態だ。時間外取引でAppleの株価は最大で8%もダウンした。

事態は考えられる限り最悪のコースをたどった。まずAppleは売上と利益で予想を達成できなかった。iPhoneの売上はとうとう対前年比で崖から転落したように減少した。Appleが発表した第3四半期のガイダンスはきわめて生温いものだっった。簡単にいえば、良い四半期だったとはいえない。Appleはこの点について比較の対象となる昨年の四半期の業績が好調過ぎたことと世界経済のマクロな問題を指摘している。

まずは発表された数値をまとめておこう。

  • 売上:506億ドル。 昨年同期は580億ドル。アナリストは520億ドルを予想していた。
  • 利益:一株あたり1.90ドル。アナリストの予測は2ドル。
  • ガイダンス:第3四半期の売上予測は410億ドル、利益は43億ドル。前年同期は496億ドルでアナリストの予想は474億ドル。
  • iPhone販売:5120万台はアナリストの予測、5070万台を上回ったが、昨年同期の6120万台を下回った。
  • iPad販売:1030万台。アナリスト予測は940万台。昨年同期の実績1260万台に届かなかった。
  • Mac販売: 400万台はアナリスト予測の440万台、前年同期の実績460万台をいずれも下回った。
  • 中国本土:これまできわめて強い成長を遂げてきた地域だが、売上は125億ドルで昨年同期の実績、168億ドルを大きく下回った。

アナリストの予測を上回った点が多少はあったが、売上実績とガイダンスは低調で、市場の反応はAppleに大きな打撃となった。一日で8%の株価急落というのは同社として初めてのことだ。なるほどAppleは昨年1年で20%の下落を経験しているが、これほどドラマティックな株価の変動は過去になかった。ドラマティックな演出はAppleの得意分野だが、これはそれとは異質だった。

さまざまな数字に株式市場は反応する。プラスに働くのはまず利益だ。アナリスト予測の達成は良いニュースで、予測を上回るならなおさら良い。しかしApple、Twitter、Facebook、Alphabet(Google)のような大企業となると、成長性が株価の動きに占める割合がおそろしく大きくなる。Appleは過去13年で初めて売上の前年同期割れを発表しただけでなく、次の四半期の見通しも同様に暗いことを認めた。

同日に決算を発表したTwitterと比較してみよう。Twitterは売上でアナリスト予測を上回ることに成功した。さらにユーザーベースも意味ある成長を達成していた。Twitterの今期の月間アクティブ・ユーザーは3億1000万で、前年同期の3億500万を上回った。しかしTwitterの発表によれば、ガイダンスの売上予測は5億9000万ドルから6億1000万ドルの間で、アナリストの第3四半期の売上予測、6億7800万ドルを大きく下回った。着実に売上を伸ばしているものの、ユーザーベースの拡大が歯がゆいほど遅い(ときおり減少する)企業としてはまことに不本意な決算となった。

では別の企業と比較してみる。Alphabetはアナリストの予想をドラマティックに上回り、一時、時価総額でAppleを上回った。 クリックあたり単価(要するに1クリックの価値)が連続的に低下しているにもかかわらず、売上が健全な成長を見せたからだ。ところがAlphabetはc売上でも利益でもまったく弱気」であることが発表されて株価はただちに5%も下落した。

そこで話はAppleに戻る。前四半期、Appleの成績は業界関係者の期待に届かなかった。関係者は皆これが一時のことなのか、将来も続くのかいぶかった。その結果はやはり下落傾向が続いた。Appleは2期連続でウォールストリートの予測を下回った。これまでAppleの株価は健全な成長をもっとも長く続けてきた。単にIT分野の話ではなく、世界を通じてそうだった。もしAppleの株価が期待どおりアップしないなら、テクノロジー業界全体に(為替変動など)何か問題があるはずだと考えられていた。しかし最近の四半期では、Appleの成長の核心であるiPhoneに陰りがみられることがはっきりしてきた。

公開企業であることは一般投資家の意思に株価が左右される可能性を意味する。一般投資家は独自の利害にもとづいて行動する。 つまりカール・アイカーンのような「もの言う株主」はApple株を大量に取得することによって、一般投資家の利害を背景にAppleに強い圧力をかけけて不本意な行動を取らせることが可能となる。 なるほどAppleは群を抜いて巨大な企業だが、独自の戦略のみで行動することはできない。〔株式を公開している以上〕Appleはウォールストリートをハッピーにしておく必要がある。

ウォールストリート側からいえば、AppleにはもっとiPhoneやiPadsを売り、さらに新しいビジネス分野を発見してもらいたい。これに対してAppleはiPhoneとiPadをアップデートし、iPad ProやiPhone SEといった新製品を投入してきた。またサービス面でもApple Musicをスタートさせた。これは期待どおりに成長すれば売上の新しい柱のひとつなり得る。同社の発表ではApple Musicにはすでに1300万の有料ユーザーがおり、今期の売上は60億ドルに達したという。全体の売上からすればまだごく一部だが、すくなくとも新しい成長の可能性は見せたことになる。

今回の株価の下落はもうひとつ、人材の獲得という面でも問題となる。Appleのような企業に就職した場合、報酬のかなりの部分がストック・オプションで支払われ、いわば半凍結状態となるのが普通だ。株価が下落すれば、報酬は当初の期待を下回る。現実に報酬の目減りを経験している社員はAppleよりもっと安定した成長した成長が見込める企業への転職を考えるようになる―たとえばFacebookだ。あるいは成功すれば巨額のリターンが期待できる起業という道を選びたくなるかもしれない。Appleが今後も成長していくためにはきわめてイノベーティブな人材が必要だ。そうした人材を獲得し、保持するためには十分な報酬を支払えなくてはならない(Appleは貯めこんだ巨額のキャッシュに当面手を付けるつもりはなさそうだが)。

Appleにはウォールストリートを満足させるために打つ手がいつくかある。利益を株主に還元する、あるいは自社株買いによって株価をアップするのがその一つだ。しかし株価を投資に見合うレベルに引き上げるためにはAppleは本業で成長を続けなければならない。一株当たり利益のアップや自社株買いはたしかに役立つが、それは投資家の利益を真剣に考えていることを市場に向けてアピールするという効果が大半を占める。問題はAppleの成長であり、成長が続くかぎりウォールストリートは満足し、Appleもフリーハンドを得る。

それが実現できない場合、Appleは戦略の練り直しを必要とするだろう。さもなければ、ここ数年、Appleの実績に不満の声を上げてきた株式市場との危険な対決に踏み込むことになる。

〔日本版〕Appleの株価はこのページなどに掲載されている。4月28日早朝(JST)のAppleの株価は97.82ドル、時価総額は5386億ドルなどとなっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Alphabetの“そのほかの事業”は、売上$448Mに対して損失$3.6B

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Alphabet — かつてGoogleという名で知られた企業 — は今日(米国時間2/1)、かなり良い決算報告発表した。今回初めて同社は、今や子会社となったGoogleの本体プロダクト以外の、“そのほかの事業”の、収益と損失を明らかにした。それらの事業があげた収益(売上)は2015年に4億4800万ドルだったが、それに対するAlphabetの営業損失は36億ドルだった。

“そのほかの事業”には、Alphabetが好んで‘月ロケット’(moonshot)と呼ぶ、自動運転車やCalicoヘルスケアプロジェクトなどの投機的な事業が含まれているが、一方でNestや Google Fiber、ベンチャーキャピタルのGV(元Google Ventures)とGoogle Capitalなどもある。

今日の決算報告によると、そのほかの事業で目下売上を稼いでいるのは、主にNestとGoogle Fiber、そして — 意外にも — Verilyだ。それは、元の名をGoogle Life Sciencesという。

“そのほかの事業”にはあまりにもいろんなものが含まれているから、残念なことに自動運転車だけ、とか、Project Loonだけのように、個別事業の収支は、少なくとも今回の決算報告からは、分からない。

しかしAlphabetは、上記の総売上と損失が、2014年には3億2700万ドルと20億ドルだった、と言っている。Googleは昨年、多くのプロジェクトを整理し厳選したはずだが、しかしそれでも、損失(ひいては経費)は増え続けているのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Twitterの2015年を検討する―財務は上昇、ユーザー数は頭打ち、株価は急落

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Twitterにとって2015年は最良の年ではなかった。世界的に知らぬもののない大企業となり、売上はアップしたが、ユーザー数は頭打ちで、株価は急落した。

Twitterは結局今年も根本的な問題を解決できなかった。財務状況は良好なトレンドを示しているが、ユーザーベースの拡大がどうしてもくうまいかない。結果論になるが、市場は後者の要素をやはり重視した。今年、新しいCEOが就任したが、これまでのところ同社のユーザーを目に見えて増加させるような成果は上げていない。

その結果、年の終わりを迎えてTwitterの株価は上場以来最低水準のまま取引されている。

グラフを見れば一目瞭然だ。Twitterの株価は上場直後に60ドル近くまで急伸した。その後しばらく30ドル台の半ばで推移し、40ドル台を回復することはなかった。しかし夏を過ぎるとTwitterの株価は20ドル台にまで急落した。

報酬の一部として株式取得のオプションを得ているものの、その行使価格がはるかに高く設定されている社員にとってこの実勢価格は深刻な問題だ。こうした人々は被害者の分かりやすい例だが、株式の取引価格が下落すると現に巨額の損失を被る人々が存在する。また上場株の下落は人材の採用を困難にし、社内の士気を下げ、、幹部の離職を促す。

今年Twitterには何が起きていたのか? 順を追って検討してみよう。

Twitterの財務状況

あらゆる企業にとって極めて重要な情報、つまり財務のパーフォーマンスの数字はTwitterの成功を告げている。決算報告によれば、同社の売上は順調に拡大しており、ウォールストリートのアナリストの予測を上回っている。ユーザーベースの1人当たり売上も印象的な数字だ。以前Twitterは一過性のブームに過ぎないとか財政的に維持可能ではないなどと批判されたものだ。それに対して現状は次のようなものだ〔下記のTwitter決算記事はいずれも翻訳ずみ〕。

ソーシャルメディアのマネタイズの可能性に関する限り、Twitterは輝かしいパイオニアだと評してよいだろう。この良好な財務状況を考えれば同社の経営チームは称賛されるべきだ。

しかしこの優れた財務状況にも問題があった。経営チームがユーザーあたり売上額アップさせるという堅実かつ優秀な仕事をしたとはいえ、Twitterの売上総額は依然としてアクティブ・ユーザー数に比例する。長期的にみればTwitterが収入を増やすにはユーザーベースを拡大するしかない。単純な理屈だが、もしTwitterのユーザー数が現状のままで推移し、要するに拡大に失敗するなら、長期的な成長は望めない。

いくら全力で絞ってみても、乾いた雑巾では得られる水滴には限界があるということだ。

Twitterの経営陣は、これまでの優れた仕事にもかかわらず、このサービスこそ日常使うべきソーシャル・ツールだと一般ユーザーを説得することに失敗している。.

Twitterのユーザーベースはなぜ拡大しないのか?

2015年の第2四半期の決算報告に際して新CEOのジャック・ドーシーはTwitterの経営の困難さを非常にシンプルに表現してみせた。「第2四半期の決算は収益化の良好な進展を示しているが、オーディエンスの拡大の分野ではわれわれは不満を感じている」

ドーシーの声明はTwitterの置かれた状況を非常に的確に要約していると思う。各種の財務指標は良い。しかし実際にログインしてくるユーザー数は期待ほどに伸びていない。月間アクティブ・ユーザー数は実際のところ頭打ちだ。株価の将来性がユーザーベースの拡大にかかっているソーシャルメディア企業としては投資家への深刻な警告だ。

もちろん、Twitterのユーザーベースの拡大が完全に停滞しているわけでない。Twitterの公開投稿を読むだけならログインは必要ないので、さまざまな理由でログアウト中のユーザーも多数存在する。Twitterも努力を重ねているが、こうしたユーザーを追跡することは非常に難しい。またTwitterではサービスへのエンゲージメントを高めるためにさまざまなプロダクトを開発している。しかしTwitterがマネタイズを劇的に改善する最良の方法はユーザーの関心グラフの可視化だろう。ユーザーはこの情報を利用するためにはサービスに登録し、ログインしていなければならない。そうして他のユーザーをフォローして始めてそうした人々が何に関心を抱いているかを知ることができる。

いくらTwitterの財務パフォーマンスがアナリストの予測を上回り続けてもログイン・ユーザー数がフラットなまま推移するのでは今後の大きな成長は望めない。企業の損益、つまりボトムラインを改善する方法はいくつか存在する。まったく新しい広告手法を開発する、あるいは広告収入を得る新しい分野に参入することは有効だ。しかし結局のところ、投資家の目を覚まさせるような劇的な効果はユーザー数の爆発的な伸び以外には期待できない。

要約すれば、Twitterの売上は増加はしているが、ユーザー数は頭打ち、株価は低下しているという状況だ。

投資家はTwitterに冷たすぎるのだろうか? 同社は十分な額のキャッシュを抱えているし、何十億ドルも稼いでいる。しかしコンテンツのレベルのカギを握る優秀なジャーナリストや著名人の関心を失うことなく一般大衆をユーザーに引き込めるかどうはTwitterにとって今のところ未知数だ。

Twitterは以前からそうだったが、現在も非常に理解しにくい企業だ。経営チームは新たな広告プロダクトを多数発表してきた。またPeriscopeの例でも明らかなように、大金を投じてビデオ広告の分野にも進出した。これらはすべて必要なことであるが、理論としても現実としても、効果が現れるまでには時間がかかる。こうした事情がTwitterの株価を低い水準に留めているのだろう。

Twitterが成長を必要としているなら、いわば「全部の気筒に点火して仕事をさせる」必要がある。つまりオーディエンスのモニター、獲得、満足の最大化などに社員全員がもっと真剣にならなければいけない。

先日、2015年第3四半期の決算についてTwitterにコメントを求めたところ、広報担当社員は決算発表の際に行われた電話会議のページへのリンクを送り返してきただけだった。こんなことではいけない。

画像: Bryce Durbin

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ブロックチェーンをどう言い換えると人びとは理解するか?

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ブロックチェーン(blockchain)は、界隈の人びとにとって分かりづらい技術だ。そこらのコンピュータおたくたちでも、相当レベルの高い人でないと無理。ブロックチェーンをベースとするスタートアップにとっては、まずこの、ふつうの人にとって分かりづらい、という技術の特性が障害になる。

そこで本誌主催TechCrunch Disrupt London 2015は、ブロックチェーンのエキスパートたちに、それをもっと分かりやすい言葉で言い換える試みに、挑戦してもらった。

ブロックチェーンとBitcoinに投資しているPantera CapitalのパートナーSteve Waterhouseのは、単語が一つだけで、いちばんコンパクト、しかも一見、分かりやすそうだ: ‘分散化(decentralized)’。

独立系のブロックチェーンプラットホームEthereumのファウンダVitalik Buterinは、ちょっと気取って: ‘crypto 2.0’。cryptoはふつうに暗号の意味だから、ブロックチェーンほど技術用語っぽくはないけどね。

Blockstreamの協同ファウンダでCEOのAustin Hillは、“マーケティングのお遊びだ”と言ってこのパネルそのものに反対した。しかし、技術を多くの人びとに分かりやすくするためには、マーケティング的努力こそが必要だ。ブロックチェーンベースの生命保険や、今の銀行よりも安全な分散化銀行を一般消費者が理解納得するためには、まずそのための努力が必要。なお、Blockstreamはサイドチェーン(sidechains)というものを作っている。それは同社の言葉を借りれば、“互いに相互運用性のある並列ブロックチェーン”だ。

結局Hillが提案したのは、“分散化台帳技術(distributed ledger technology)”と“プログラマブルな信用のインフラストラクチャ(programmable trust infrastructure)”だ。ブロックチェーンよりもさらに難解になったようだが。

パネルの最初の方の雑談で彼は、ブロックチェーンは“大規模な分散化信用マシン”だ、と言った。こっちの方が、ましだと思うけどね。

ブロックチェーンを一般消費者向けにマーケティングするためには、10分間のブレーンストーミングを一回やったぐらいでは、名案は生まれない、ということ。

“ブロックチェーンについて考えるための一般的なアプローチは、それをプログラマブルな信用*のインフラストラクチャととらえることだ”、とHillは述べる。“信用をルールやコンセプトでプログラムできることが、重要な利点であり、それによってシステムのリスクを取り除けるのだ”。〔*: “信用”については、この本誌日本語記事などを。プログラム自身が信用を実装していることに比べると、国や大銀行に対する人びとの信用の方が、むしろ物理的な根拠も保証もなく、あやうい。 〕

“ブロックチェーンはリアルタイムの先験的な監査の機構(==信用の実装)として働く。それを長期的な視点で見ると、ほんとにすごいということが分かる”。

現在の監査の方式は、たとえばスポットチェックというものを行って、それらが事業全体の財務の過程を表している、と期待する。しかしブロックチェーンなら、それ自身に継続的連続的な追跡可能性(トレーサビリティー)がある、とHillは言う。そこで理論的には、スポットチェックで財務の不正を見抜けなかった場合には、別の検死的監査をしなければならない(Enronの場合のように)が、ブロックチェーンではその必要がない。監査は、ユーザがそれを利用するたびに行われるからだ。

ブロックチェーンの将来性を示すアイデアとしてHillが挙げるのが、P2P経済のための取引保険(transactional insurance)だ。

“今やあらゆる業界、あらゆる産業に、新しいタイプの新進企業が続々生まれている。先日保険業界で見たのは、P2P経済のための取引保険をやろう、という企業だった。たとえば、ある人が、週に2日Uberのドライバーをやり、週末にはAirbnbの貸主になる、という場合、そういうばらばらなユースケースをどうやって保険でカバーするのか? そこでその新進企業は、ブロックチェーンベースの保険市場というものを、作ろうとしている。すばらしいよね。ブロックチェーンの、斬新でエキサイティングなユースケースだから”、とHillは語る。

EthereumのButerin(前出)は、Ethereumのネットワークでも将来性のある保険業プロジェクトが進行中だ、と言った。たとえばそれは、フライトの遅れに対する保険だ。

“その場合おもしろいのは、暗号化によってWebページのセキュリティを確保し、そこから取り出したデータを実際に直接、スマートコントラクト*へプッシュする、という実用技術やサービスがすでにあることだ。ブロックチェーンによる分散化保険市場も、そんな技術の応用にすぎない”、と彼は言う。〔*: スマートコントラクトについては、英語Wikipedia本誌日本語記事などを。従来のコントラクトのように国など第三者による監査監督規制を要さず、コントラクト自身に(プログラミングによる)厳しい自己監査機能があるのが、スマートコントラクト。不正行為があり得ない。〕

Buterinが挙げたもうひとつのエキサイティングな事例が、IoTへのブロックチェーンの統合だ。ブロックチェーンの自己監査能力を利用して、物理的なオブジェクト(物)の所有権やレンタル等を支え、追跡するのだ。

“たとえば、完全に自動化された自転車レンタルシステムなら、ブロックチェーンによる暗号化決済技術で完全に実現可能だ。そういうものは、いったん立ち上げたら、その後は完全に自律的に動いていける”、とButerinは語る。

“そのほか、いろんなものがブロックチェーンで自動的自律的に不正なく管理運用できるから、応用例はあらゆる業界/産業にわたって無限にある。そう考えると、ぞくぞくしてくるよね”、と彼は付言した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

Square、上場申請書を更新―Q3の売上は3億3220万ドルに鈍化、損失は5390万ドルに拡大

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今日(米国時間10/26)、Squareはアメリカ証券取引委員会に提出していたS-1上場申請書を第3四半期のデータに更新した。これによると、同社の売上の伸びは鈍化し、純損失の比率は拡大している。.

Squareによれば、第3四半期には純損失約5400万ドルが計上されているが、これは主としてStarbucksとの取引におけるコスト4100万ドルが計上されたことよるとしている。また、第3四半期では支払処理手数料の売上が2億8100万ドル、全売上が3億3200万ドルだった。第2四半期では、全売上は2億2700万ドル、純損失は3770万ドルだった。

これらの数字は支払処理手数料の伸びが鈍化していることを意味している。近日上場を計画している企業として、投資家に送る最良のサインとはいえないだろう。ただし企業のサイズが拡大するにつれて売上の伸び率は一般に低下していく。しかし上場をめぐる株式市場は現在やや不安定な状態にある。決済サービスのFirst Dataの株式上場初日に急落した件は、市場に大きな影響を与えたようだ。

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当初、Squareの最初の上場申請書では、財務状況はそこまで悪いようには見えなかった。2015年上半期の売上は5億6060万ドル、 純損失は7760万ドルに過ぎなかった。また前年同期には売上3億7190万ドルに対して純損失は7940万ドルとやや膨らんでいた。

同社の営業費用は近年売上を追い越して大きく伸びている。2013年の第4四半期以降、運営コストが急増したことがSquareの非 GAAP損失がここまで高くなった主要な原因だ。事実、暦年の第3四半期の純損失は第2四半期の2倍近くになっている。もちろんSquareのビジネスは季節的要因に大きく左右される。しかし高コストだが高成長が期待できるとしていた企業の見かけ上の損失拡大は、浮き足立っている投資家の心理をさらに消極的にするおそれがある。

調整ずみEBITDAベース―上場の際に投資家が気にする指標―では、Squareはやはり問題を抱えており、前四半期には85万9000ドルの黒字だったのに対して今期は1580万ドルの赤字を計上した。この数字は昨年同期よりやはり悪く、EBITDAは1300万ドルの損失を計上しなければならなかった。

Squareの営業コストは今後も増大していく見込みだ。同社の発表によると、第3四半期の営業コストは1億4850万ドルだったという。前年同期には 9710万ドルだった。.

いくつかの理由から、Squareは最近もっとも注目される上場となっている。その一つはCEOのジャック・ドーシーだ。ドーシーはSquareとTwitter双方の共同創業者であり、両者を現に指揮している。ドーシーは数週間前に所有するTwitter株式の3分の1をTwitter社員に返還した。その際、ドーシーはSquare株についても20%以上を持っていることが明らかとなった。 つまりSquareの上場が成功すれば、ドーシーはこちらでも巨額の資産を得ることになるわけだ。

一方で、Forbesが気づいたところによると、ベテランのベンチャーキャピタリスト、 Vinod KhoslaがSquareの取締役を辞任していた。以下はSquareによる声明だ。

Khosla氏は以前から上場の直前にわが社の取締役を辞任したい考えを明らかにしていた。これは同氏が日頃から述べていた上場企業の取締役は務めないという方針に沿うものだ。Khosla氏のSquare社取締役会からの辞任は上場申請書が公式に有効となると同時に発効する。同氏は引き続きわが社において取締役会に対するアドバイザーの地位を占める。

現在TechcCrunchでは新しい上場申請書を精査しており、新しい情報が得られ次第この記事をアップデートする予定だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

カード支払サービス、Squareが上場申請―上半期の業績好調、ドーシーのTwitter CEO兼任に懸念

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以前からの予想どおり、カード支払サービスのSquareが上場を申請した。2015年上半期の詳細な財務内容を含む S-1上場申請書の提出と同時にSquareのすべての財務取引は一時停止されている。

S-1申請書によれば、2015年上半期のSquareの売上は5億6060万ドル、損益は7760万ドルの損失となっている。昨年上半期の数字では、売上は3億7190万ドル、損失は7940万ドルだったので、今年は財務状態が大きく改善されている。

要約すれば、Squareはこの種のサービスとして順調に成長しており、損失もわずかだか減少させることに成功している。

これは基本的に良い兆候といえるだろう。同社はNYSE(ニューヨーク株式取引所)に上場を予定している。今年上半期の粗利益は1億6460万ドルで、売上と比較すると、同社の事業の健全さと同時に支払サービス事業のコストが膨大なものであることを示している。

特筆すべき点は、同社の損失が今年第1四半期の4790万ドルから、第2四半期の2960万ドルへ急減していることだ。ただしSquareは過去に膨大な損失を抱えており、現状の成長が継続されても近い将来トータルで黒字に転じるのは難しそうだ。

Squareは今回特にStarbucksコーヒーチェーンとの取引内容を詳しく開示している。Squareによると、今年上半期のStarbucksからの収入は6290万ドルで、昨年同期の5660万ドルから大きく増加したという。

2015年上半期終了時点で同社の現金及び現金等価物は1億9790万ドルだという。つまり今後の成長に必要とされる資金は十分に手当されていることになる。しかしSquareが今後大型買収などで多額の資金を必要とすることなった場合、新規上場による資金調達は大いに歓迎すべきものとなろう。

同社の粗支払額、つまりSquareが支払うべきカード処理額の総額は、今年上半期に159億ドルに達した。これは昨年同期の104億ドル(通年で238億ドル)から大きく伸びている。Squareは2012年の粗支払額は65億ドル、2013年は148ドルだったとしている。

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現在の資金供給率が続く間に安定した黒字化を達成できるか否かなど、S-1にはSquareの将来性に関するリスクを警告するボイラープレートが大量に含まれている。しかしいちばん興味がある要素はSquareの共同ファウンダー、CEOのジャック・ドーシー(Jack Dorsey)に関するものだろう。これによれば、ドーシーが現在SquareとTwitterの常勤CEOを兼任しており、両者に時間を配分しなければならないことに対する懸念が示されている。「(この兼任は)最終的に、ドーシーがすべての能力、時間、注意力、努力等をSquareに集中することを妨げる可能性がある」とS-1申請書は警告している。

S-1に記載されたもう一つのリスク要因は、顧客データの漏洩の可能性だ。これはある意味で当然予想されるところで、最近もTargetやHome
Depotが攻撃を受け、大規模なユーザー情報の漏出に見舞われている。これらは近年で最大の顧客データ事故となった。当然ながらSquareはこうした事態を防ぐためにあらゆる努力を払わねばならない。

Squareの大株主に関しては、Khosla Venturesが17.3%、ドーシーが24.4%を所有しているという(下に詳細)。

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共同ファウンダー、CEOのジャック・ドーシーはSquare株の24.4%を所有し、 Khosla Venturesがこれに次ぐ7.3%を持っている。大口株主は以下、もう一人の共同ファウンダー、James McKelveyが 9.4%、JPMC Strategic Investmentsが 5.5%、Sequoia CapitalとRizvi Traverseがそれぞれ5.4%などとなっている。

Squareは現在2億2500万ドル相当の融資枠を持ち、そこから3000万ドルの借り入れを行っている。これらの融資枠、営業によるキャッシュの流入、予定されている新規上場などにより、今後の資金調達は万全だろう。

S-1申請書を一見したかぎり、数字自体はTechCrunchが予想していたより良かった。ただし、Squareがこれから参入しようとしている公開株式市場は現在微妙な時期を迎えている。あの巨大Alibabaやユーザーに人気の高いBoxの情報を含め、最近上場した各社は株価の維持に苦闘している。市場には広く不透明感が漂っており、株価の動向は不安定だ。Squareが踏み込もうとしているのは決して平穏無事な世界ではない。

われわれはSqure上場に関する取材を続けており、新情報をつかんだ場合はすにフォロー記事を発表する予定だ。.

画像: Nikita Starichenko/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Twitter、5%以上の大幅下落で上場時の株価水準に近づく

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今日(米国時間8/3)、Twitterの株価は大幅に下げた。一時は6%近く下落した。この記事の執筆時点でTwitterの株価は29ドルを少し上回る水準で、新安値を更新中だ。

Twitterは26ドルで上場し、その日のうちにに45.10ドルまで高騰し1、1日で74%のアップを記録した。投資家は酔ったようにTwitterに殺到した。

その後株価は上昇を続け、2014年上半期には70ドルを記録した2。 ところがその直後に30ドル近く3まで暴落、2014年いっぱいヨーヨーのように上下を繰り返した。そして2015年第1四半期の決算4を嫌気して急落している。

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Twitterはその後なんとか横ばいを維持したが、最近発表された第2四半期の決算で再び急落5した(マスコミにはTwitterの28.91ドルは上場以来の新安値だという記事が見えている。われわれはそれが事実かどうか確認中だ)。

こちらが上場以来の株価の推移だ。

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上のグラフのように、Twitterはこれまでにも株式市場で大きな困難を経験し、そこからカムバックすることに成功してきた。しかし今日の急落は簡単には見過ごせないだろう。株価下落はストックオプションに期待する社員の士気に打撃を与え、優れた人材の採用を困難にする。それがまたプロダクトの改良、新機能の追加のサイクルを遅くし、サービスの品質低下を招く。

一方、今年に入ってTwitterの共同ファウンダーたちの株式市場での動きが目立った。Ev Williamsは2015年に2億7503万7833ドルもの株を売却した。これはEv Williamsでさえ会社の前途に困難が横たわっていると考えているというサインを市場に送ることになったかもしれない。

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それでもTwitterのユーザー数がホッケースティック状の急上昇を続けていれば市場も先行きを楽観できただろう。しかし実情はその逆で、ある記事によればTwitterは前四半期から月間アクティブユーザーを800万しか増やしていない。しかもCEOは暫定だ。

はっきり言ってひどい状態だ。

Twitterの株式市場での苦闘はさらに続くだろう。

〔日本版〕Google Financeによれば、Twitterの終値は29.25ドル、時間外取引でもさらに下げて29.22ドルとなっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

会社経営のすべての雑務を引き受けるGeniacが大手会計事務所Grant Thorntonから£22Mを調達

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“ビジネス管理”という、あまり聞いたことのない分野に挑戦しているロンドンのGeniacが、イギリスの大手会計事務所Grant Thornton UK〔日本法人〕から2200万ポンドを調達した。Geniacはまだ、ベータである。

GeniacのファウンダMichael GalvinとEduardo Martinezは、元Accentureのコンサルタントで、企業の本業以外の管理雑務をすべて、自分たち一箇所で引き受けることを目指している。

“サービスとしてのオフィス(office as a service, OaaS)”を自称する同社は、ユーザ企業の経理会計、税務、法務、人事管理(+給与事務)、経営管理のすべてを引き受ける。

同社はロンドンとグラスゴーで向こう1年間は人集めに励む、という。

Geniacは今後、イギリスと海外でGrant Thorntonの企業支援事業win businessesの一環として組み込まれる。それは、DeloitteやPwC、E&Yのような経営コンサル業務のスタートアップバージョンだ。

同社の利用は月額会費制で、料金は企業のサイズによって異なる。

主な競合他社は、言うまでもなくGoogleとMicrosoftだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

既存金融企業のヒモのない純粋個人が財産管理スタートアップを起業、しかもFutureAdvisorは順調に成長

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YC S10*のFutureAdvisorが、ユーザ数と管理資産総額が1年で10倍に成長したことを発表した。管理資産総額(assets under management, AUM)はすでに6億ドルを超えている。〔*: YC, Y Combinator; S10, Summer 2010, 2010年夏季。〕

最近シリーズBで1550万ドルを調達した同社は、インターネット上の財産管理プラットホームで、ミドルクラスに人たちの資産管理とその有利な運用を助けている。同社のプロダクトは、投資アドバイザーと財産管理の二役(ふたやく)だ。

財産管理の面では同社は顧客の資産に直接介入して、運用先運用対象のバランスを図り、ユーザが望む投資目的を達しやすい資金配分を行う。今同社は4000名あまりの顧客の資金を管理し、そのポートフォリオの平均規模は14万3000ドルだ。

アドバイザーとしての同社は、登録ユーザが30万人以上おり、総額で約400億ドルを追跡している。なお、同社の投資アドバイザーサービスは、無料だ。

FutureAdvisorのCEO Bo Luによると最近同社は、顧客から要望の多かった、公的学資積立制度529 College Saving Planの管理も導入した。この、各州の積立制度は、1000万人のアメリカ人(主に子どもの親)が利用している。

コンピュータのアルゴリズムで投資のアドバイスを行うサービスは、WealthfrontやBettermentなどを初めとして、このところ混み合っている。しかしLuが強調するのは、FutureAdvisorがつねに、具体的な個人の本人性に基づくサービスであることだ。資金を正しく管理する責任を、同社は各個人に対して負う。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Twitter、期待外れの第1四半期決算で株価は18%下落―利益とユーザー数に懸念

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取引時間終了後に発表されるはずだったTwitterの第1四半期の決算 が、おそらくは手違いから、取引時間内にインターネットに流れ、同社の株価は急落した。一時はストップ安となった。

Twitterの今期の売上は4億3600万ドルで、対前年比74%のアップとなったが、自身のガイダンスで予測した額にも、アナリストの予測、4億5680万ドルにも及ばなかった。非GAAP基準の一株あたり利益は0.07ドル、 GAAP基準では0.25ドルの赤字だった。アナリストは非GAAPで0.04ドルのEPSを期待していた。GAAP純利益は対前年同期比で1億3230万ドル減少し、1億6240万ドルだった。

つまりTwitterは売上では予測を下回ったが非GAAP利益では予測を上回った。それなのになぜ大幅な下げをくらったのか? 2015年のガイダンスが下方修正されたこと、ユーザー数の伸びに懸念が生じたことの2点が理由だろう。

ガイダンス

Twitterはガイダンスの下方修正を決算報告の見出しにした。

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Twitterは現四半期の売上は4.7億ドルから4.85億ドルで赤字が続くと予想している。売上予想が前四半期を上回るとはいえ、市場はこれより高い5.382億ドルを期待していた。 Twitterの予想ははるかに弱気だった。

2015年通年では、Twitterは21.7億ドルから22.7億ドルの売上を予測している。市場は23.7億ドルを期待していた。ここでもTwitterの予測は市場の予測を大幅に下回ることとなった。

ユーザー数

Twitterの月間アクティブユーザー数は前四半期の2億8800人から3億200万人へ増加し、対前年比18%の伸びだった。月間アクティブユーザーの80%はモバイル・ユーザーだという。

Twitterの全広告売上のうちモバイル広告は89%を占め、3億8800万ドルだった。

ここしばらくTwitterは市場からユーザー数の伸びが期待外れだと厳しく批判されている。Twitterは財務内容では市場の予想をしばしば上回ってきたが、ユーザー数の増加に関しては市場の期待に応えることに失敗している。Twitterがユーザー数を増やすことができなければ、結局は売上を増やすこともできなくなる。投資家の懸念はそこにある。またTwitterのGAAP基準での1億6200万ドルの赤字も不安材料だ。

Twitterは現在大金を稼いでいるものの、10億人のユーザーを獲得する道筋を示せないでいる。Twitterというのは当初ブームになった頃に期待された規模にまで成長するようなサービスではないのかもしれない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+