【3月2日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はロシアでApple Pay利用停止、2位はランサムウェアグループのチャットログ流出

【3月2日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はロシアでApple Pay利用停止、2位はランサムウェアグループの内部チャット流出

掲載記事のうち、3月2日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:ウクライナ侵攻に対する経済制裁により、ロシア国内でApple PayやGoogle Payなどが利用停止


ロシアのウクライナ侵攻を受けて、米国政府およびEUはロシアの大手銀行5行に対して外国為替取引の制限を含む経済制裁を実施しました。その結果、現地の主要銀行口座と紐付けられたApple PayやGoogle Payなどのデジタルウォレットがロシア国内で利用停止となったと伝えられています。

第2位:ロシアのウクライナ侵攻支持を宣言したContiランサムウェアグループの内部チャットがネットに流出


ランサムウェアグループContiのチャットログのキャッシュが、ロシアのウクライナ侵攻を支持するグループに異議を唱えると主張している内部関係者らによって、オンライン上に流出した。情報は、マルウェアのサンプルやデータを収集するマルウェア研究グループであるVX-Undergroundに共有された。

第3位:ウクライナがロシアにハッキングで対抗する「IT部隊」を募集し反撃、テックリーダーにも参加を呼びかけ

ウクライナがロシアの一方的な侵攻に対抗するために現地の一般市民を動員し武器を与える中、ウクライナ国外で力になりたい人々は、バーチャルワールドでの戦いに参加するよう要請されている。

第4位:グーグル、ウクライナでGoogleマップのリアルタイム交通状況ツールを無効に


Alphabetは米国時間2月28日、取材に対し、ウクライナでGoogleマップのライブ交通状況ツールの一部を無効にしたことを明らかにした。Reutersが報じたこのニュースは、同国がロシア軍からの攻撃に直面している中で、同社が地元当局と協議した後に発表された。

第5位:核融合炉の心臓部(ブランケット)において900度で機能する液体金属の合成に成功、腐食に耐える構造材も発見


東京工業大学は2月24日、核融合炉の心臓部であるブランケットの冷却に使用する革新的な液体金属、リチウム鉛合金の大量合成に成功し、さらにその摂氏900度に達する液体金属に耐えられる構造材の候補物質としてクロムアルミニウム酸化物分散強化合金の発見にも成功したことを発表した。

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ロシアのIT企業で働く約3万人が反戦の請願書に署名

専門職に従事するロシアの人々のウクライナ戦争反対の強い思いを示唆するように、2月24日の侵攻以来、ロシアのIT業界では、軍事侵略行為に抗議し平和を求める公開書簡が回覧され、自称ITワーカーから約3万筆の署名が集まった。

請願書のタイトルは「ウクライナ領土での軍事作戦に反対するロシアIT業界の代表からの公開書簡」だ。

名前と肩書きのリスト(一部の人は勤務先も明記)には、起業家、プロダクトマネージャー、顧客体験責任者、分析専門家、バックエンド開発者、プロダクトデザイナー、マーケティングスペシャリスト、デベロップエンジニア、iOSエンジニア、ゲーム開発者、システムアナリスト、IT採用担当者など、IT専門家が多数名を連ねている。

嘆願書のホストとして使用されているGoogleドキュメントは652ページにも及ぶ。

ロシア語で書かれた公開書簡の全文は、以下の通りだ(機械翻訳での訳)。

我々ロシアのIT産業の従業員は、ロシアの軍隊が開始したウクライナ領土での軍事行動に断固として反対する。

我々は、戦争勃発につながるあらゆる武力行使を不当とみなし、必然的に双方の人的犠牲をともなう可能性のある決定の中止を求める。我々の国は、常に互いに緊密な関係にある。そして今日、我々はウクライナの同僚、友人、親戚のことを心配している。今、ウクライナの街で起きていることを我々は懸念し、道徳的に胸塞がれる思いだ。

我々の仕事では、最高の製品、最高のサービスを作り、ロシアのITソリューションが誇れるよう誠実にすべてを行う。我々の国が戦争ではなく、平和と進歩に結びつくことを望む。

人間の利益となる技術の進歩や開発は、戦争、人々の命や健康への脅威がある状況では不可能であり、協力、視点の多様性、情報交換、オープンな対話がある状況でのみ可能だ。

国の指導者が我々の訴えに注意を払い、この状況を平和的に解決する方法を見つけ、人的被害を防ぐことを求める。

署名者として記載されているすべての名前が本物であるかどうかを確認することはできないが、この請願はNatalia Lukyanchikova(ナタリア・ルキャンチコワ)という女性によって始められたことをTechCrunchは確認し、自身は「IT専門家」だとルキャンチコワ氏は語っている。

同氏は、この書簡の最初の署名者でもあり、署名では求人サイトhh.ruの食品アナリストと称している。

TechCrunchがルキャンチコワ氏に電子メールで問い合わせたところ、同氏は先週、自身のFacebookページでこの平和の嘆願書を公開し、他のITワーカーにも署名と、この活動をメディアに取り上げてもらえるよう働きかけを呼びかけたと説明した。

また、TechCrunchは別のロシア人ITワーカーにも話を聞いたところ、彼らも請願書に署名し、勤務先のCEOを含むテック企業の関係者も多数署名したとのことだ。しかしこの人物は報復のリスクがあるために、行動への注意を集めることを回避すべく匿名を希望した。

ルキャンチコワ氏は、署名活動を開始するための最初のFacebook投稿で、次のように書いている(ロシア語からの翻訳)。「以下は、ITコミュニティからの公開書簡の文面です。これがうまくいくかどうかはわかりませんが、集団行動は時に役立ちます。これはまた、人々が自分たちは1人ではないことを理解する助けにもなります。今のところ、これは私が知る限り禁止されていない唯一の法的措置です。最初のコメントにあるリンクから署名できます」。

その後、Facebookページへの投稿では、署名の数が増えるにつれて、数日間の経過を追っている様子も見られた。

この署名活動は、ロシアによるウクライナ侵攻が進むにつれ、ロシアのIT業界の間で急速に盛り上がり、2月26日までに1万筆以上、2月27日には2万筆を超え、3万筆近くに達する前に署名活動が締め切られた。

この署名活動が影響を与える可能性があるかどうか尋ねると、ルキャンチコワ氏はこう語った。「私たちの声が届き、平和が取り戻されると信じたい」。

ロシア国内の一部のメディアは、この反戦の書簡について報じている。

例えば、テック系メディアvc.ruは現地時間2月26日にこれを取り上げ、その際、署名者は約1300人で、ロシアのテック大手YandexやVKontakteの従業員をはじめ、多くの異なる企業の従業員が含まれていると報じた。

また、教師、科学者、医師などロシア国内の他業界の代表者からも同様の反戦の書簡が出されていることも取り上げている。ただ、IT業界の書簡が最も多くの署名を集めたようだ。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

YouTube、欧州でロシア政府系メディアRTとスプートニクのチャンネルをジオブロッキング

Google(グーグル)は、ロシアの戦争プロパガンダを封じるよう欧州地域議員からの圧力を受け、YouTubeが欧州でロシア政府系メディアのRT(旧ロシア・トゥデイ)とSputnik(スプートニク)をジオブロックすると発表した。

米国時間3月1日、ジオブロッキングを発表したツイートで、Googleの欧州ポリシーチームは「ウクライナで進行中の戦争のため、RTとSputnikに結びついているYouTubeチャンネルを欧州全域でブロックします。直ちに有効となります」と書いている。

我々は欧州委員会にYouTubeの発表に対するコメントを求めている。

TechCrunchが先に報じたように、EUは昨夜、RT、Sputnikおよびその子会社に対する禁止措置が、オンラインプラットフォームを含むすべての全配信経路を対象とすることを確認した。

欧州委員会のThierry Breton(ティエリー・ブルトン)委員(域内市場担当)は現地時間2月28日、GoogleおよびYouTubeのCEOとビデオ通話を行い、両社の取り組みを強化するよう求めていた。

YouTubeは、ロシア政府系メディア2社による何千ものビデオをホストしており、昨日触れたように、RTチャンネルのマーケティングは「YouTubeで最も視聴されているニュースネットワーク」であると謳っている。

今、RTのYouTubeチャンネルを閲覧しようとする欧州の人々は「このチャンネルはお住まいの国では視聴できません」というメッセージに遭遇する。

スクリーンショット:Natasha Lomas/TechCrunch

28日には、Facebook(フェイスブック)、Microsoft(マイクロソフト)、TikTok(ティックトック)、Twitter(ツイッター)が似たような制限を発表した。

しかし、Googleはその対応を検討するのに他社よりも少し時間がかかった。テック巨人は、この遅れについて説明をしていない。

今朝、ジオブロッキングを発表したツイートの中で、Googleはこうも警告している。「完全なシステム立ち上げには時間がかかります。当社のチームは迅速な行動を取るために、24時間体制で状況を監視し続けます」。

つまり同社は、クレムリンとつながりのあるチャンネルの一部のコンテンツは、システムの「立ち上げ」に伴い、短期的には引き続きアクセス可能であり続けることが予想される、と示唆しているようだ。

YouTubeはRTとSputnikのアカウントを禁止したり停止したりするのではなく、ジオブロックをかけるだけなので、ロシアのプロパガンダはもちろん欧州の外では広がり続け、ロシア国内でもまだ利用できる。

だが、このような妥協策を選んだのはGoogleだけではない。

Facebookの親会社であるMeta(メタ)とTikTokも、ロシア政府系メディアのアカウントを完全に停止または禁止するのではなく、ジオブロックすることを選択した。

TwitterとMicrosoftも、それぞれのプラットフォームのニュアンスの違いを反映して、微妙に異なる方法を取った。両社は国家の支援を受けたRTとSputnikのコンテンツの可視性を減らす措置を取ると述べ、実質的にそれらメディアのリーチの自由度を制限している。

Twitterは28日さらに、ラベル表示ポリシーを拡大し、ロシア国家関連メディアへのリンクがあるツイートには通知を追加し、ユーザーに「stay informed(情報に注意 / 情報源を知りましょうという意)」と警告している。

後者がソーシャル(またはブロードキャスト)ネットワークというよりも情報ネットワーク寄りであることを考えると、ラベリングとコンテキストを加えることは適切な対応と思われる。ただし、EUがこれからRTとSputnikを禁止することで、ウェブプラットフォーム各社がさらなる対応を迫られるかはまだわからない。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Den Nakano)

フェイスブックとInstagramがロシア国営メディアの情報拡散を抑制、紛争地域のIGユーザーに暗号化DM提供へ

Meta(メタ)は米国時間3月1日、同社のプラットフォームにおいて、ロシア政府によって作成されたコンテンツの拡散を制限していることを明らかにした。同社は、ロシア政府とつながりのあるFacebook(フェイスブック)ページやInstagram(インスタグラム)アカウントが共有するコンテンツのアルゴリズムによる拡散を抑制し、これらの情報源へのリンクを含む投稿をランクダウンさせる予定だ。

Metaのセキュリティポリシー責任者であるNathaniel Gleicher(ナサニエル・グライチャー)氏は、Twitter(ツイッター)の投稿で、同社は「今後数日間」、ロシア政府とつながりのある情報源にリンクするコンテンツに新しいラベルを付け始め、ユーザーがそれらのサイトをクリックしたりリンクを共有したりする前に、より多くのコンテキストを提供すると付け加えた。同社はまた、今回の侵攻を受け、ウクライナとロシアのInstagramユーザーが暗号化されたDMを利用できるようにするとも発表した。

米国時間2月28日、MetaはウクライナとEUにおいて、ロシア政府系メディアの代表的なアカウントであるSputnik(スプートニク)とRT(旧ロシア・トゥデイ)へのアクセスを制限した。Metaのグローバル・アフェアーズ担当社長であるNick Clegg(ニック・クレッグ)氏(元英国副首相)は、同社が政府からアカウント制限の要請を受け、事態の「例外的な性質」を理由にこれを実現したと述べた。

ウクライナ侵攻をめぐる、ロシア政府のプロパガンダのリーチを制限するMetaの動きは、28日にTwitterが実施した同様の措置に続くもの。この新たな制限は、先週ロシア政府が、Facebookがロシア政府関連アカウントからのコンテンツに警告ラベルとファクトチェックを追加した後、同国内のFacebookへのアクセスを「部分的に制限する」と表明した後のことでもある。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Den Nakano)

ロシア侵攻でウクライナ市民は暗号化メッセンジャー、オフライン地図、ツイッターを積極利用

ウクライナの人々はロシアによる侵攻を受けて、オフラインで使える地図アプリや暗号化されている通信アプリに目を向けている。侵攻により、数百万の人々が家を離れ、抗戦するか近隣諸国に逃れている。アプリストア分析企業Apptopiaのデータによると、ここ数日、ウクライナの人々はTwitterやストリーミングラジオアプリなど、最新のニュースや情報を入手できるさまざまなコミュニケーションアプリやオフライン地図などをダウンロードしている。

現在、同国のiOS App Storeでは、プライベートメッセンジャーのSignal、メッセージングアプリのTelegram、Twitter、オフラインメッセンジャーのZelloやBridgefyがトップ5にランクインしている。その他トップ10にはWhatsApp、そしてオフライン地図アプリのMaps.Meが入っている。Maps.MeはGoogle Mapsよりも6つ上にランクインしていて、Google Mapsは現在、リアルタイムの交通状況(セキュリティリスクとされる情報)の提供を停止している。そしてSpaceXのStarlinkアプリが入っていて、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が衛星インターネットサービスが現在ウクライナで利用できるようになっていると発表してから39ランクアップした(もちろん、このサービスが必要とされる場所で実際にどの程度利用可能であるかは、今後のアプリの順位に反映されるかもしれない)。

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メッセージングアプリの上位に入っているものの中で、より多く採用されたアプリがいくつかある。

2022年2月24日のロシアの侵攻開始から2月27日までの間、Telegramの新規インストール数はApp StoreとGoogle Play合計で5万4200回とトップで、1月の同時期から25%増加した。一方、オフラインメッセージングアプリのBridgefyは、新規インストール数の増加率が最も高く、1月同時期にわずか591回だったダウンロードが、ここ数日で2万8550回と、前月比で4730.8%増という大幅な伸びを記録した。

同じくトランシーバーアプリのZelloは、1月24~27日のダウンロード1万2540回から、2月24~27日は2万4990回へと99.3%増加した。Signalの増加率は20.6%と控えめだが、1月の同期間のインストールは3万9780回、ここ数日では4万7990回とかなり強力な採用を誇っている。

もちろん、セキュリティに関しては、すべてのメッセージングアプリが同じように作られているわけではない。

Signalは最も安全なアプリで、エンド・ツー・エンドの暗号化を提供し、アカウント作成日以降のデータは収集されない。一方、Telegramはデフォルトではエンド・ツー・エンドの暗号化を提供していないが、ユーザーが暗号化された「秘密のチャット」機能を手動で有効にすることができる。ただし、TelegramはSignalの創業者Moxie Marlinspike(モクシー・マーリンスパイク)氏から、主張するほど安全ではないとの批判を受けており、その主張は長年にわたり他のセキュリティ研究者や暗号技術者などによっても支持されている

マーリンスパイク氏は最近Twitterで、Telegramが安全でないことをウクライナの人々に再び注意喚起し、Telegramはデフォルトで、誰もがこれまでに送受信したすべてのメッセージのプレーンテキストのコピーを持つクラウドデータベースになっているとツイートしている。

トランシーバーアプリのZelloは、1対1およびグループでの会話をエンド・ツー・エンドで暗号化しているとされているが、同社が2020年にセキュリティ侵害に直面していたことは注目に値する。Bluetoothとメッシュネットワークのルーティングに依存する人気の抗議アプリBridgefyも、過去数年にわたり数々のセキュリティ問題に直面してきた。このアプリは香港、インド、イラン、レバノン、ジンバブエ、米国での抗議活動の際に利用者が急増したが、2020年には深刻な脆弱性が見つかり、「プライバシー災害」と呼ばれることになった。

その後、エンド・ツー・エンドの暗号化のサポートを展開したものの、2021年にアプリを分析した暗号技術者は、それらの修正が不十分であることを発見した

メッセンジャー以外のアプリで、ここ数日ウクライナで急増しているのは、ストリーミングラジオとTwitterのアプリだ。

通常、TwitterはiOSのNewsカテゴリで1位だが、総合順位は90位から130位程度に落ち着いている。しかし、2月27日時点で、ウクライナのiOS App Store総合チャートでは前日から2ランクアップして4位、Google Playでは15ランクアップして28位となった。2月27日にTwitterはiOSとAndroidで約7000回ダウンロードされ、これは1日のダウンロード数としては過去最多だ。

画像クレジット:Apptopia ウクライナのアプリストア 2022年2月27日

ストリーミングラジオアプリのRadios UkraineとSimple RadioはApp Storeでも順位を上げ、現在それぞれ19位と21位につけている(Facebookが20位で、その間に入っている)。

Google Playのウクライナのトップチャートは、少し様子が違う。

Signal、Bridgefy、Telegram、Zelloもトップ5に入っているが、エンド・ツー・エンドの暗号化を提供するAndroid専用のピア・ツー・ピアメッセンジャーBriarもランクインしている。オフライン地図アプリのMaps.Meは11位、Two Wayとシンプルな名前の別の双方向トランシーバーアプリは15位で、WhatsAppがそれに続く。

ウクライナのGoogle Playストア、2022年2月27日(画像クレジット:Apptopia)

両アプリストアとも、多くのゲームがトップチャートにランクインしている。家族が急場しのぎの防空壕に隠れたり、安全な場所まで長距離移動する間に、子どもたちを楽しませるためにダウンロードされたようだ。

世界の他の場所では、ロシア・ウクライナ戦争が他のアプリをチャート上位に押し上げている、とApptopiaは指摘する。

米国では、ニュースアプリのCNNとFox Newsがここ数日で急上昇し、ワシントンポストでは、国家間の緊張が高まる中、2月19日の侵攻に先立って1日のインストール数が過去最高(1万5000回)を記録した。

画像クレジット:Apptopia 米国ユーザーのニュースアプリダウンロード数

そして今、ロシアがニュースやソーシャルメディアへのアクセスを遮断したことで、VPNアプリの需要が高まっている。Apptopiaの調べによると、ロシアが国内でFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアアプリへのアクセスを制限し始めた後、VPNアプリのトップ5は1日のダウンロード数が大幅に増加し、ユーザーは通常よりも1日に数万回多くVPNアプリをダウンロードした。しかし、ロシアの人々は、VPNが必ずしもセキュリティに優れているわけではないことに注意する必要がある。VPNプロバイダーは、インターネットトラフィックをISP(インターネットサービスプロバイダー)以外の誰かにルーティングするだけなので、セキュリティは、VPNプロバイダーをどれだけ信頼できるかに左右される。

急増するVPNアプリのダウンロード(画像クレジット:Apptopia)

画像クレジット:Anna Fedorenko / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

自宅から離れた好きな場所にホーム(オフィス)環境を提供するAnyplaceが6.1億円調達

リモートワークの時代、人々は好きな時に好きな場所で暮らせるよう、できる限りの柔軟性を求めている。

長期滞在の選択肢を増やそうと、スタートアップ企業が次々と登場しているのも当然のことだ。Anyplaceもそんなスタートアップの1つだ。自称「デジタルノマド」であるSatoru Steve Naito(内藤聡)氏によると、2017年にサンフランシスコに拠点を置くAnyplaceを共同設立したのは、自分自身がこのプロダクトを欲していたからだという。

その名の通り、Anyplaceは、ホテルやレンタカーを30日以上ほとんどどこでも予約できるマーケットプレイスとしてスタートした。当マーケットプレイスは今日、60カ国以上、450以上の都市で展開されている。そして現在このスタートアップ企業、Anyplaceは、最新の製品であるAnyplace Selectの提供を開始し、オペレーターとしての役割に移行しつつある。この製品は、リモートワーカーや企業の出張者が「完全に設備が整った」ホームオフィスなどの家具付きの部屋を利用して、どこでも仕事ができるようにするために設計されたものだ。

パンデミックが猛威を振るい、オフィスが閉鎖され続ける中、柔軟に移動できる人がかつてないほど増えた。Anyplaceは2021年、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンディエゴでSelectの提供を開始し、開始から7カ月で100万ドル(約1億1500万円)のランレートを達成したと、同社のCEOを務める内藤氏はいう。Selectのサービスの月次収益成長率は平均50%以上、今月現在、稼働率は90%以上となっている。

AnyplaceはGreystarやAvalonBayなどの不動産デベロッパーと提携し、マンションを借りて家具を揃え、Selectで価格を上乗せしてマスターリースしている。各部屋には「完全なオフィス設備」が揃っており、フレキシブルな期間契約(最低30日間)が可能だ。設備には高さ調節可能なスタンディングデスク、人間工学に基づいた椅子、約86cmの「超ワイド」モニター、プロ用マイク、ウェブカメラ、折り畳み式グリーンバック、パソコンスタンド、ドッキングステーション、キーライトなどが含まれている。

「Selectに掲載されているすべての部屋で、ホームオフィスと同等以上の生産性を実現します。全室1Gbpsインターネット対応なので、Wi-Fiの速度も問題ありません」と内藤氏は語る。

他の都市に住んでみたいというリモートワーカーは、なぜAirbnbで物件を借りないのだろうか?リモートワークのために家や部屋を用意することは、思っているほど簡単ではないと内藤氏は主張する。Wi-Fiの速度が遅い部屋もあれば、適切なデスクや専用のワークスペースがない部屋もある。

「現在の宿泊施設のほとんどは、パンデミック前の滞在に最適化されています。ホテルやAirbnbに滞在している間、人々は本当に1日中部屋で仕事をしていました。しかし、パンデミック後の世界では、Zoomコールをする時間が増え、部屋で仕事をするようになりました。だから私たちはパンデミック後の世界に最適化した宿泊施設を作っています」と内藤氏はいう。

確かに、サービス業の巨人Airbnbは昔から短期滞在に注力しているが、現在は、Airbnbのマーケットプレイスで長期滞在が増加している。つまり長期滞在の需要が増加している。2021年5月、AirbnbのCEOであるBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)氏はYahoo Financeに対し、Airbnbの宿泊の24%がAnyplaceだったと語った(わずか2年前は14%)。さらにこのトレンドの裏付けとなるのは、Airbnbが最近、この分野の別のスタートアップ企業であるZeus Livingを支援しているということだ。同社は当初、企業の出張者向けの柔軟なオプションの提供に重点を置いていたが、現在はより幅広い潜在顧客層へと拡大している。

これまでAnyplaceはマーケットプレイスを運営していただけだったが、新たなSelectの提供により、現在はより幅広いビジネスの焦点をオペレーターにシフトしている。

内藤氏はTechCrunchに対し「Airbnbは競合ではなく、パートナーであり、実は最大の獲得チャネルの1つです。Airbnbが独自のインベントリーを持つオペレーターの領域に進出するとは思っていません。彼らの強みはプラットフォームビジネスです」と語る。

Anyplaceはインベントリーを他の市場に「積極的に」拡大し、機能改善を続けるために、シリーズAで530万ドル(約6億1100万円)を調達したと発表した。これはGA Technologiesが主導し、Jason Calacanis、Launch Fund、日本のサッカースターで(Will Smithとともに)Dreamers Venturesの共同設立者である本田圭佑、メルカリ共同設立者の富島寛、East Venturesが参加した。今回のラウンド資金調達で、Anyplaceは合計800万ドル(約9億2330万円)を調達し、現在は17人である従業員の増強にも充てられる予定だ。

内藤氏によると、当スタートアップはすでに次のラウンドの資金調達を開始しており「急成長とAnyplace Selectが提供する宿泊施設に対する需要の急増」によって、すでに「いくつかの投資の約束」を受けているという。具体的には、米国の主要都市、特にハワイ、マイアミ、オースティン、デンバーといった人気の高いリゾート地への進出を考えていると内藤氏はいう。

内藤氏はTechCrunchにこう語った。「デジタルノマドになるために、フルタイムの仕事を辞める必要はもうないのです。パンデミック以前は、ノマド的なライフスタイルを送るためには、会社を辞めてフリーランサーや中小企業のオーナーになる必要がありました。しかし今では、Google、Facebook、Twitterのようなハイテク大手が、従業員にフルタイムのリモートワークを許可しています。パンデミックは、多くの新しいタイプのノマドを生み出しました。つまり、これは人々の働き方における大きなパラダイムシフトなのです」。

本田圭佑はTechCrunchに、初めて会ったときに内藤の「気概」を感じたとメールで語ってくれた。

「彼は、どのようにしてJason Calacanis(ジェイソン・カラカニス) のような米国の有名な投資家からの資金調達に成功したのかを話してくれました。簡単ではなかったし、苦労もした。彼は、移民の創業者が直面する言語やその他さまざまな障壁を乗り越えたのです」本田氏はいう。スタートアップで成功するためには、気概が最も重要なものの1つだと思います。また、彼が望んだ製品を、彼自身が居住し、仕事をしている場所で作り上げたことにも感銘を受けました」。

さらに本田氏は、サッカー選手として多くの国を旅し「多くのホテルやAirbnbの部屋に宿泊した」という。

そしてこのようにTechCrunchに語った。「Anyplace Selectのように、オフィス環境が完備された宿泊施設は見たことがありません。明らかに自宅で仕事をする人が増えており、そのような人たちは1つの場所だけに住みたいとは思っていないのです。Anyplace Selectは、パンデミック後の世界において、そのような人たちの標準的な宿泊施設になるでしょう」。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

【3月1日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はウクライナ侵攻への経済制裁によりロシア国内でApple Pay利用停止

【3月1日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はロシア国内でApple Pay利用停止、2位は2022年後半のポケモン新作

掲載記事のうち、3月1日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:ウクライナ侵攻に対する経済制裁により、ロシア国内でApple PayやGoogle Payなどが利用停止


ロシアのウクライナ侵攻を受けて、米国政府およびEUはロシアの大手銀行5行に対して外国為替取引の制限を含む経済制裁を実施しました。その結果、現地の主要銀行口座と紐付けられたApple PayやGoogle Payなどのデジタルウォレットがロシア国内で利用停止となったと伝えられています。

第2位:ポケモン新作「スカーレット・バイオレット」、2022年後半に発売


「ポケモンカフェ」はともかくとして、第9世代のポケモンが登場する。米国2月27日のポケモン公式YouTubeチャンネルの放送で、2019年末に発売された「ポケットモンスター ソード・シールド」に続く、メインシリーズのポケモンゲーム最新作「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」が発表された。Nintendo Switch用ゲームは2022年末に発売される予定だ。

第3位:ウクライナがロシアにハッキングで対抗する「IT部隊」を募集し反撃、テックリーダーにも参加を呼びかけ

ウクライナがロシアの一方的な侵攻に対抗するために現地の一般市民を動員し武器を与える中、ウクライナ国外で力になりたい人々は、バーチャルワールドでの戦いに参加するよう要請されている。

第4位:【コラム】創業者として成功に「大学なんて関係ない」というのはシリコンバレーの幻想だ

シリコンバレーは「ドロップアウト(中退)」を礼賛するのが大好きだ。伝統的な教育では、関連性のないことを教えられ、なかなか進歩できず、そして情報が簡単に手に入る世界では、もはやかつてのように学習リソースを提供できないため、自分には向いていないと判断した起業家が、着想を得ると考えられているからだ。

第5位:イーロン・マスク氏率いるスペースX、ウクライナの要請に応じスターリンク通信と端末提供―ただし有効性に疑問の声も

ロシア軍が侵攻してその動向が世界に注目されているウクライナ情勢に絡んで、イーロン・マスク氏はSpaceXの衛星インターネットサービスStarlinkをウクライナに導入したことを明らかにしました。マスク氏いわく「すでにウクライナでStarlinkサービスは有効になっている」「さらに多くの端末を送る用意がある」とのこと。

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ZendeskがSurveyMonkeyの買収計画を中止、自社投資家が拒絶

Zendesk(ゼンデスク)は米国時間2月25日、SurveyMonkey(サーベイモンキー)の親会社であるMomentive(モメンティブ)を41億ドル(約4740億円)で買収する案について、株主が拒否したため手を引くと発表した。この発表は、同社がプライベート・エクイティ・ファンドによる170億ドル(約2兆円)の買収提案を拒絶してから、わずか2週間後のことだった。

公式には、同社は次のように発表している。「Zendesk, Inc.は本日、Zendesk、Milky Way Acquisition Corp.(ミルキーウェイ・アクイジション・コープ)、および Momentive Global Inc.(モメンティブ・グローバル・インク)との間で合意および計画していた合併案について、2022年2月25日に開催された株主総会において、Zendeskの普通株式を発行する提案の採択に向けた株主の承認が得られなかったため、これを打ち切ったことを発表しました」。

SurveyMonkeyを含むMomentiveの事業は、Zendeskの中核であるカスタマーサービスをより広い顧客体験市場に押し出す手段になると考えていたCEO兼創業者のMikkel Svane(ミッケル・スヴァーン)氏にとって、これは厳しい打撃とならざるを得なかった。それでも同氏は、株主投票の結果を発表したブログ記事の中で、できる限り前向きな態度を示している。

「Momentiveの買収は、カスタマーインテリジェンスの未来を提供する当社の能力を加速させる方法として計画しました。この買収を進めることはありませんが、お客様がデータからより多くの価値を引き出せるよう、これまでと同様に支援することをお約束します」と、同氏は記している。

続けて同氏は、同社が今後も中核顧客にとって理に適った形でプラットフォームを拡張する製品の開発に挑戦し続けると述べている。これは買収する代わりに自社で構築することを意味しており、おそらく、高額な価格設定や顧客経験に対する戦略の転換を好まない株主にとって、より受け入れやすいアプローチとなるだろう。

Wall Street Journal(ウォールストリート・ジャーナル)は今月初め、投資家、特に同社株の3%を保有するJana Partners(ジャナ・パートナーズ)と5%を保有するJanus Henderson(ジャナス・ヘンダーソン)投資信託が、この買収とそれが同社にもたらす方向性に不満を持っていると報じていた。最終的には、積極的行動主義の投資家が勝ったようだ。

Momentiveの方では、Zander Laurie(ザンダー・ローリー)CEOが平静を装い「Zendeskの株主が買収承認に賛成しなかったことは残念ですが、私たちは今後の戦略に自信を持っています」と、声明で述べている。おそらく、新しい買い手を探すか、現在の製品ポートフォリオで単独でやっていく方法を見つけるのだろう。

いずれにせよ、この買収が見送られたことで、両社は今後、どのように進めていくかを決めなければならない。

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中国の「データの罠」に陥るのを避ける方法

TechCrunch Global Affairs Projectとは、ますます複雑に絡み合うテクノロジー分野と世界政治の関係性を検証するためのプロジェクトである。

米国人事管理局(OPM、Office of Personnel Management)、航空会社の乗客リスト、ホテルの宿泊客データのハッキングなど、最近の顕著なデータ侵害事件によって、公共システムと民間システムの両方がスパイ行為やサイバー犯罪に対していかに脆弱であるかが明らかになっている。それほど明白ではないのは、外国の敵対者や競合相手が、国家安全保障やスパイ活動の観点からはあまり明確ではないデータを標的にする方法である。今日、広告主が消費者の選好分析に使用する種類のデータなどの国民感情に関するデータは、従来の軍事目標に関するデータと同じくらい戦略的に価値のあるものになっている。戦略的に価値のあるものに対する定義がますます曖昧になるにつれて、戦略的データを識別し保護する能力は、より一層複雑かつ死活的な国家安全保障上のタスクとなるであろう。

これは特に、戦略的データへのアクセスを求め、それを敵対国に対するツールキットの開発に利用しようとする中国のような国家主体に関して当てはまる。2021年11月、MI6の長官であるRichard Moore(リチャード・ムーア)氏は、中国の脅威を「データの罠」と表現し、次のように論を唱えた。「自国の社会に関する重大なデータへのアクセスを他国に許せば、やがて主権が損なわれることになり、もはやそのデータをコントロールすることはできなくなるだろう」。ほとんどの政府はこの脅威を把握し始めたばかりである。

2021年11月の議会証言で筆者は、今日民主主義を守るためには、外国、特に中国が特定のデータセットをどのように収集し、使用しているかについてよりよく理解する必要があることを主張した。また、将来的に戦略的データを適切に保護する(そして保護すべきデータセットを定義して優先順位づけを行う)には、敵対者がそれらをどのように利用するかを想定する創造的な取り組みが必要となる。

中国国家による権威主義的支配を強化する目的での技術の使用は、近年かなり注目されている話題である。新疆ウイグル自治区のウイグル人を標的にすることは、監視技術の侵略的で強制的な利用に後押しされ、この議論の焦点となっている。そのため、当然のことながら、中国の「技術独裁主義」がグローバル化するリスクについて考えるとき、大部分の人々は同じように侵略的な監視がグローバル化する可能性について考察する。しかし、実際の問題は、デジタルやデータ駆動の技術の性質ゆえに、はるかに重大であり、検出しにくい。

中国の党国家機関はすでにビッグデータ収集を利用して、グローバルな事業環境を形成、管理、コントロールする取り組みを推進している。それだけでは重要ではなさそうに見えるデータが、集約されたときに莫大な戦略的価値をもたらすことを同国は理解している。広告主は、私たちが必要としているとは認識していなかったものを売り込むために国民感情に関するデータを使うこともあるだろう。一方、敵対的な行為者は、そのデータを利用して、デジタルプラットフォーム上の民主的な議論を覆すようなプロパガンダ活動を発信する可能性がある。

米国をはじめとする各国は、前述のOPMMarriott(マリオット)、United Airlines(ユナイテッド航空)のような、中国を拠点とする関係者に起因する悪意のあるサイバー侵入のリスクに焦点を当ててきたが、データアクセスはデジタルサプライチェーンにおける悪意のある侵入や改変から導き出す必要はない。それは、中国国家のような敵対者に、下流でのデータ共有につながる通常の、そして合法的なビジネス関係を悪用することを求めているだけである。これらの経路はすでに発展しており、最近制定されたデータセキュリティ法や中国における他の国家セキュリティ慣行などのメカニズムを通じて、目に見える形で展開されている。

データにアクセスするための法的枠組みを作ることは、中国が国内および世界のデータセットへのアクセスを確保するための唯一の方法となっている。別の方法として考えられるのが、市場を所有することだ。最近のレポートで筆者と共著者は、調査した技術領域において、中国は他の国と比較して出願された特許の数が最も多いが、それに対応するインパクトファクターは高くないことを見出した。

ただし、これは中国企業がリードできていないという意味ではない。中国では、研究開発インセンティブ構造によって、研究者は特定の政策目的を持つアプリケーションを開発することになる。つまり、企業は市場を所有し、プロダクトを後から改良することができる。中国の指導者たちは、世界市場での優位性を確立し、世界的な技術標準を確立しようとする努力が、海外でのより多くのデータへのアクセスを促進し、最終的には異なるプラットフォーム間での統合につながることを十分に認識している。

中国は、そうでなければ注目に値しないデータを組み合わせて、全体として極めて明確な結果をもたらす方法を模索している。結局のところ、いかなるデータでも、適切な処理を行えば、価値を生み出すことができるのである。例えば、筆者は2019年のレポート「Engineering Global Consent」の中で、機械翻訳による翻訳サービスを提供する宣伝部門統括会社であるGlobal Tone Communications Technology(GTCOM、グローバルトーン・コミュニケーション・テクノロジー)のケーススタディを通じてこの問題を取り上げた。同社の広報によれば、GTCOMはHuawei(ファーウェイ)やAlicloud(Alibaba Cloud、アリババクラウド)などの企業のサプライチェーンにもプロダクトを組み込んでいる。しかし、GTCOMは翻訳サービスを提供しているだけではない。同社の役員によると、同社が事業活動を通じて収集するデータは「国家安全保障のための技術的なサポートと援助を提供している」という。

さらに中国政府は、将来的により優れた技術力を想定して、明らかに有用ではないデータも収集している。日常的な問題解決と標準的なサービス提供に貢献するのと同じ技術が、中国の政党国家の国内外における政治的支配力を同時に強化する可能性がある。

この増大する問題に対応するためには、中国との「技術競争」について異なる考え方をする必要がある。問題は、単に競合する機能を開発することではなく、将来のユースケースを想定して、どのデータセットを保護する価値があるかを知ることにある。国と組織は、自らのデータの価値と、現在または将来そのデータにアクセスする可能性のある潜在的な当事者にとってのデータの価値を評価する方法を開発しなければならない。

私たちはすでに、世界がよりデジタル的に相互接続されるようになるにつれて、中国のような権威主義体制が弱体化すると考え、その脅威を過小評価している。民主主義国家は、技術の権威主義的な適用によって生じる問題に、対応して自己修正しようとしているとはいえない。私たちは、現在の脅威の状況に合わせて、リスクを再評価しなければならない。そうしなければ、中国の「データの罠」に陥る恐れがある。

編集部注:本稿の執筆者Samantha Hoffman(サマンサ・ホフマン)博士は、オーストラリア戦略政策研究所国際サイバー政策センターのシニアアナリストで、独立したコンサルタント。

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(文:Samantha Hoffman、翻訳:Dragonfly)

インターネットの未来を守るために米国主導のテック外交は変革が迫られている

TechCrunch Global Affairs Projectとは、ますます複雑に絡み合うテクノロジー分野と世界政治の関係性を検証するためのプロジェクトである。

米国は最近の民主主義サミットにおいて「志を同じくする民主主義国」が「インターネットの未来に向けた連合」を新たに形成し、オンラインのオープンで自由な価値観を擁護することを提案した。協調を目指す構想の長い系譜の中で最も新しいこの構想は、前進を実現する有望株である。しかし現在の様相からすると、その構想は不足をきたす恐れがある。当局者間の意見の不一致で始動が遅延している今、米国はこれを再考の機会とする必要がある。

この連合の背後にある基本的な論理は理に適っている。インターネットの自由は世界中でますます危機にさらされ、諸政府は競って自らの権限を主張し、幾十年にもわたって形成されてきたボランティア団体の統治システムからは今やきしみ音が聞こえているのだ。バイデン政権のテクノロジー政策担当アドバイザー、Tim Wu(ティム・ウー)氏は最近「我々は間違った道を進んでいる」と述べた。こうした背景をふまえると、インターネット時代のオープンで自由な価値観を奨励し、擁護する新しい構想が切に必要とされている。

しかし、現実には、米国は「志を同じくする民主主義国」による協調を重視することによって、自らの目標をむしばむ危険を冒している。なぜなら、自分たちだけで話し合う民主主義国の小さなクラブや強制だけでは、オープンなインターネットの未来は保証されないからだ。そうではなく、連合というものは、もっと包摂的で、経済や安全保障のインセンティブを適正な位置に置くことを最初から重視し、広範で持続可能な連合を長期にわたって構築するものでなければならない。

このことは、インターネット政策に対して米国が通常採用する必要のあったアプローチよりもずっと国際主義的なアプローチが必要なことを示している。何十年もの間、オープンなインターネットモデルはアメリカの並外れた管轄権限によって支えられてきた。世界のインターネットユーザーのうち、米国にベースがあるユーザーはわずか7.1パーセントにすぎないが、世界のインターネットの核となるインフラストラクチャーサービスの61パーセントは米国にある。使用許可の必要ない革新的で相互運用可能なネットワークと「ダムパイプ」(自らは伝送内容を知ることができないインフラストラクチャー)のモデルは、米国の優位性によって支えられてきたのだ。このことによって、巨大な経済的・社会的価値が生み出されてきた。世界のインターネットユーザーの19パーセントがいる中国だけが、地政学上比較可能な位置を占めている。

しかし、米国の覇権に依存して自由なインターネットを維持することはもうできなくなった。インターネットの統御の仕方において多くの国が転換点を迎えており、検閲、監視、遮断などの権威主義的なインターネットモデルが急速に勢いを増している。加えて、今日、37億の人々が依然としてインターネットを利用できない。

接続状況が向上するにつれ、このグループのほとんどの人がいる発展途上国がインターネットの未来を決めることになるだろう。そして、今のところ、それらの国は必要な資金を他のどこよりも中国から調達する可能性が高い。多極的なインターネットへのシフトは既定路線だが、その方向は、つまり開かれているか閉ざされているか、自由か権威主義的かは、定まっていない。

この傾向をふまえると、今日の民主主義国間の協調だけを重視することは、インターネットの先細りの部分を指標として過度に重視することになる。また、価値観だけで協調すると、インターネット規制のいくつかの分野に関するEUと米国の協定など、従来の協定がまだ合意されていない分野が目立つようになる。したがって、どんな連合も成功のためには「志を同じくするパートナー」という決まり文句を乗り越え、2本立てのアプローチを採用する必要がある。経済および安全保障のインセンティブの優先と、インターネットの遮断の禁止など、インターネットの開放性の確約である。そうすることで、参加国の幅を広げることができる。

この戦略は、ますます制限的なインターネット政策を検討している国を納得させる上で特に重要になる。例えば2015年以来、アフリカの54か国のうち31か国がある程度ソーシャルメディアへのアクセスをブロックしている。明らかに、こうした遮断の一部はあからさまな弾圧に起因しており、国際的に強い対応で応じる必要がある。それでも、比較的イデオロギー色の薄い介入もある。暴力的なオンラインコンテンツのために指導者が公共の安全に懸念を持つ場合、政策の混乱、国の許容度の低さ、主要なソーシャルメディアサービスによるコンテンツモデレーションへの投資の不足が相まって、もっと支援があれば回避できた可能性のある残念な行動につながってきた。

この傾向をとどめ、インターネットの核心となる自由を守るのに遅すぎることはない。しかし、そうした努力は強制だけでは成功しないだろう。権威主義に対する戦いは極めて重要であるが、あらゆる議論をひとまとめにして「民主主義対権威主義」という二極化した言葉にしてしまうと、実際には協調の機会が閉ざされて、制限と分断が加速されるだけになる可能性がある。この徐々にむしばむ過程の影響は、すでにアフリカで見ることができる。西側はアフリカの国々を米国と中国の大規模な「冷戦」の「委任状争奪戦」の現場としてしか扱わないことがあまりにも多い。こうした思考はどれも役に立たない。

中国は西側のパートナー、競合相手、対抗者のどれかなのではなく、そのすべてなのだ。米国、EU、その他の国は、中国を世界のインターネットのインフラストラクチャー市場から強制的に締め出すことはできないし、それを望むべきでもないし、そうする必要もない。どの国も供給を独占したり費用を全部負担したりすることのない、インターネットインフラストラクチャーの世界的な競争市場があれば、アフリカも米国も中国も皆、その方がメリットがあるだろう。

同様に、アフリカ諸国だけに独自の政治的な優先順位や課題があるのではなく、支援を提供することが西側自身の経済的利益になることもよくある。例えばインターネットを利用できない37億の人々をすべてつないだとしても、コストは米国、英国、韓国、日本などOECD諸国の国民総所得のわずか0.02パーセントにすぎないが、利益は25倍にもなる

それでも、G7が2022年、中国のインフラストラクチャー構想に対抗するために策定した「Build Back Better World(より良い世界再建)」プロジェクトに乗り出したとき、新たな金銭的裏付けはなかった。また、米国が影響力を持つはずの世界銀行やIMFの開発プログラムを刷新する努力もほとんど払われていない。それらのプログラムは競争がなく官僚的、リスク回避的であり、脆弱な開発過程と差し迫った雇用創出の要求に直面しているアフリカの多くの指導者にとって高くつくにもかかわらず、である。

長年にわたって我々は、この種のプログラムに関して必要な政治的リーダーシップと熱意に欠けてきた、しかし、インターネットの未来に向けた連合はリセットのための力を秘めている。成功のためには、インターネットの核心となる自由がむしばまれるままにして繫栄の道はないことを示し、同時に、さまざまなアプローチを可能にする適切なガイダンスとインセンティブも提供する必要がある。参加しようとしない国は常に存在するだろうが、こうした強力なインセンティブがあれば、インドネシア、ケニヤ、ブラジルなど、多くの「態度を決めかねている国」を参加するよう説得することができる。経済と安全保障の面で皆の持続的な利益になる幅広い国際主義的な連合を構築することでのみ、オープンで世界的なインターネットを長期にわたって真に守ることができるのだ。

編集部注:本稿の執筆者Andrew Bennett(アンドリュー・ベネット)氏はトニー・ブレア地球変動研究所のシニア・ポリシー・アナリスト。インターネット政策と地政学を専門とする。最近、共著で「The Open Internet on the Brink: A Model to Save Its Future.」を上梓。

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(文:Andrew Bennett、翻訳:Dragonfly)

ウクライナがロシアにハッキングで対抗する「IT部隊」を募集し反撃、テックリーダーにも参加を呼びかけ

ウクライナがロシアの一方的な侵攻に対抗するために現地の一般市民を動員し武器を与える中、ウクライナ国外で力になりたい人々は、バーチャルワールドでの戦いに参加するよう要請されている。G7(米国時間2月27日に日本も参加)が結集して国際銀行システムのSWIFTからロシアの銀行を締め出そうとしている一方で、ウクライナ政府はデベロッパーたちに向けて、具体的なサイバー攻撃の任務を負ったIT部隊への参加を募るキャンペーンを行っている。政府はテック企業のリーダーにも、それぞれの役割を果たすよう名指しで呼びかけている。

IT Army of Ukraine(ウクライナIT部隊)」は26日に発表され、すでに同部隊のメインTelegram(テレグラム)チャンネルに集まった18万4000近いユーザーは(人数は伸び続けており、本稿執筆時点で1万人近く増えている)、アカウントを使って特定目的のプロジェクトを複数立ち上げ、ロシアのサイト、ロシアのスパイ、ロシアと共謀して行動する人々を封鎖し、ウクライナに住む人たちを動員して自分たちにできる行動をするよう呼びかけている。(Telegramを使っていない人たちのためのGmailアドレス、itarmyura@gmail.com も用意されている。TechCrunchはこのアドレスに連絡を取り、主催者がプロジェクトの詳細について話してくれるよう尋ねている)。

そしてその効果は現れているようだ。ロシア最大級の銀行であるSberbank(ズベルバンク)のAPIを封鎖するためのチャンネルの呼びかけがすでに実行に移されたようで、サイトは現在オフラインになっている。同様に、ベラルーシの公式情報ポリシーサイトも、対応するチャンネルで呼びかけがあったあと、オフラインになったと報告されている。彼らのとっている単純なアプローチは、Anonymous(アノニマス)をはじめとする活動家ハッカーグループが特定のターゲットを攻撃する際に用いているものと類似している。

「信じられないサイバー攻撃がロシアの政府サービス・ポータル、官邸、議会、チャンネル1、航空宇宙、鉄道などのサイトを襲った」と、ロシアメディアを引用して同部隊は指摘した。「『50を超えるDDosアタックが1テラバイト以上の容量を飲み込んだ』誰のしわざ:)?なんと悲しい事故でしょう」。

この取り組みは口コミで広がっているだけでなく、政府担当者もリンクをツイートして支援している。(ただし、政府が実際に背後にいるかどうかはわからない)。

「私たちはIT部隊を作っています。私たちはデジタル人材を必要としています」とウクライナの副首相兼デジタル変革相、Mykhailo Fedorov(ミハイロ・フェドロフ)氏がTwitterで呼びかけた。「誰にでも任務があります。私たちはサイパー前線で戦い続けます。最初の任務はサイバー専門家のためのチャンネルに書いてあります」。

フェドロフ氏はTwitterで言葉を無駄にしていない。同氏はMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏とElon Musk(イーロン・マスク)氏も指名して、それぞれのプラットフォームと既存の製品を使ってプロジェクトを支援するべく、ロシアでのFacebookへのアクセスを禁止し、ユーザーがデータをバックアップできるようにStarlink(スターリング)のアクセスをウクライナに拡大するよう呼びかけた。しかし、Facebookの行動は少々遅れているようだ(広告は禁止されたが、今のところアクセスは禁止されていない)。

フェドロフ氏は、NFT(非代替性トークン)などのバーチャル商品の取引に使われているDMarket(ディーマーケット)が、ロシアとベラルーシのユーザーのアカウントを凍結したこともとり上げて称賛した。それらのアカウントの資金は対ウクライナ攻撃に使われる可能性があったからだ。

この国の暗号資産プラットフォームに対する立ち位置は概してかなり積極的であり、ウクライナ公式Twitterアカウントは26日、Bitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、およびTether (テザー、USDT)による寄付を受け付けるためのアドレスを公表した。多くの人々はアカウントがハックされたものだと思ったが、現在このツイートはピン留めされており、真剣であると思われる。しかし、寄付された資金がどのように集められ、どのように使われるのかは明確にされていない。

一連の出来事は、テクノロジーの動きの速さと、そこへの依存性の高さを物語っている。これを銀行間ネットワークSWIFTの閉鎖と対比すると興味深い。「swift(迅速)」の名前とは裏腹に、この制裁の動きはあまり速くない。なぜなら効果を得るためには各国が名乗りを上げるだけでなく、メンバーの金融機関(SWIFTには200カ国にわたる1万1000社の銀行その他の金融機関が加入している)もスイッチを切る必要があるからだ。

「SWIFTは中立的国際協力機構であり、200か国、1万1000以上の機関からなる共同体の総合的利益のために運営されています。国や個人を制裁するあらゆる決定は、適格な政府機関および適用される立法機関に委ねられています。ベルギー法の下に法人化されている私たちの義務は、EUおよびベルギーの関連規則を遵守することです」とSWIFTがTechCrunchに提供した声明で述べた。「私たちは欧州委員会、フランス、ドイツ、イタリア、英国、カナダ、米国の指導者による、ロシアの銀行に対して近々新たな規制実施を言明した共同声明を認識しています。私たちは欧州当局と協力して、新たな規制の対象となる実体の詳細を理解し、法律を遵守する準備を進めています」。

誤解のないようにいっておくが、SWIFTのアクセスを失うことは一大事であり、ロシアとロシア企業から商品売買のための取引機会を奪うものだ。しかし、この種の封鎖が最後に実施されたのはイランに対するもので、最大の効果を得るまで数年を要した。

「SWIFTを禁止されたりそこから排除されることは確実な影響があります、なぜならポイント・ツー・ポイント・ネットワークに関して、代替手段は多くないからです」とフィンテックコンサルタント会社、Firebrand Research(ファイアブランド・リサーチ)のアナリストファウンダー、Virginie O’Shea(バージニー・ オーシェイ)氏がTechCrunchに語った。彼女は、ロシアはかつてロシア国内銀行ネットワークを独自に構築しようとしたが、現時点で海外へは拡大していないことを指摘した。「SWIFTのような仕組みを作るには多くの時間と手続きが必要です」。

イランのときと同様、他国にも莫大な影響がありガスなどのエネルギー製品をロシアに依存している国々は特にそうだ。SWIFT決議の実施に時間がかかる理由の1つがそれだ。「石油とガスの視点で考えれば、これらのサービスへの支払いを妨げているのであり、ロシアだけでなく取引国にも影響を与えることになるのです」。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【2月28日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―ウクライナ侵攻関連記事に注目が集まる

【2月28日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位は家庭用ルーターなどIoT機器のマルウェア検査サービス

掲載記事のうち、2月28日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:横浜国立大学とゼロゼロワン、家庭用ルーターなどIoT機器のマルウェア検査サービス「am I infected?」を無料提供開始

横浜国立大学とゼロゼロワンは2月24日、家庭用ルーターやスマート家電を始めとしたIoT機器のマルウェア検査サービス「am I infected?」(アム・アイ・インフェクテッド)の提供を開始したと発表した。費用は無料で、オプションなどによる追加料金は発生しない。

第2位:【レビュー】Angry Miao・Am Hatsu、このメカニカルキーボードは「別格」だ


ここ数年、メカニカルキーボードの市場は活況を呈していが、パンデミックの影響で、多くの人がさらに自宅の設備増強を行っている。現在は、AliExpressの20ドル(約2300円)の特売品から600ドル(約6万9000円)のカルトキーボードまで、キートップやスイッチなどがついていない状態のものも選べる。そんな中に登場したのが、価格は1600ドル(約18万3000円)のAngry MiaoのAm Hatsuだ。

第3位:ロシア、国内でのフェイスブックへのアクセスを部分的に制限すると発表

ロシアは、Facebookがテレビ局Zvezda、通信社RIA Novosti、ウェブサイトのLenta.ruとGazeta.ruのロシア国営メディア4社に対して独自の規制をかけたことを受けて、具体的には示されていないこのアクセス制限措置を実施すると主張した。

第4位:ロシアのウクライナ侵攻へのテック業界各社の対応


2月24日、ロシアは数カ月におよぶ国境での軍備増強を経て、隣国ウクライナへの侵攻を開始した。侵攻の影響は、ウクライナのテックエコシステム全体にも及んでいることは間違いない。ウクライナには、何百ものスタートアップやテック大企業だけでなく、世界最大のテクノロジーブランドの研究開発オフィスもある。

第5位:ウクライナ、ベラルーシのハッカーが同国防衛軍をターゲットにしていると発表

ウクライナのサイバーセキュリティ当局は、ベラルーシに支援されたハッカーが、ウクライナ軍関係者のプライベートな電子メールアドレスを標的にしていると警告している。

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SPACがすべてゴミとは限らない、そしてチームワークの力

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

こんにちは!今回は2つのトピックを取り上げる。1つ目は、いつもの取材範囲にすっぽり収まるものだ。2つ目はそうでもない。では始めよう!

すべてのSPACがゴミというわけではない

2021年のSPACラッシュの中で、Alight Solutions(アライト・ソリューションズ)の公開を見逃していた。この会社は、シカゴ郊外に拠点を置き、米国内の数千万人の従業員をサポートするビジネス・プロセス・アウトソーシング企業だ。2021年初めにSPAC経由で上場する意向を表明した後、2021年7月に白紙委任のFoley Trasimene(フォーリー・トラジメン)と統合した。

今週は決算発表もあり、その後にCEOのStephan Schol(ステファン・ショル)氏と対談した。Alightのレポートには重要な点が3つあるので、一緒に眺めていきたい。以下のようなものだ。

  • すべてのSPACが滅茶苦茶なわけではない: 現在Alight Solutionsは約47億ドル(約5431億円)の価値があり、統合前の1株あたり10ドルをわずかに上回る水準で取引されている。つまり、この会社のSPAC取引はかなり高く評価され、この手法で会社を上場させても、その後の数週間、数カ月、数四半期のうちに、ダメージを受けずに済ませることが可能だということだ。これまでは、失速しなかったSPACコンボの代表例はSoFiだったが、そこにまた新たな名前を加えることができる。
  • いくつかのSPACの予測がそれを裏づけている:Alightは、1月の合併発表時の投資家向けデッキで、2021年のBPaaSの収益は億6300万ドル(約419億5000万円)になるとの見通しだったと語っている。BPaaSはBusiness Process as a Service(サービスとしてのビジネスプロセス)の略で、同社のSaaS的なサービスの中でも、最も急速に収益が伸びているセグメントだ。しかし実際には、2021年のBPaaSの売上は3億9000万ドル(約450億7000万円)に達していた。重要な指標で予想を上回った!それこそが、会社をまだ水面上にとどめているのだと思う。
  • 利益ある成長という考え方:ハイテク企業が配当を開始すると、なぜ一部の業界では悪い知らせと見なされるのか?その理由の1つは、定期的な支出を通じて株主に現金を還元するという選択は、企業が資金を投入する場所がないことを示しており、将来の成長が鈍化することを意味しているからだ。そのような理由から、私たちは巨人ではないハイテク企業が、利益を犠牲にしてでも、がむしゃらに成長する様を目にすることが多くなる。Alightは両極端の間に位置し、ショル氏がTechCrunchに語ったように、利益の出る成長に焦点を合わせているようだ。これによって、彼の会社は特定の努力に対して「過剰な回転」をすることはなく。BPaaS戦略にすべてを賭けることもしない。もし長期的にうまくいかなくても、会社は生き延びるだろうと彼は説明した。なおAlightは利益を出しているので、彼の発言は黒字の立場からなされていることは念頭に置いて欲しい。それでも、ソフトウェアの移行を経験しているテクノロジ企業と多くの点で共通している点が多い一方で、成長と利益のバランスを取るアプローチが非常に異なる企業と話をするのは興味深いことだった。本当におもしろい。

さて次は少し毛色の変わった話だ。

チームワーク

毎週のことだが私はこの原稿を金曜日(米国時間2月25日)の午後に書いている。Daily Crunchを少しばかり補足するこの原稿を書き、週末を迎える。

だが、今週の金曜日はグッタリしている。不透明な経済、パンデミック、ウクライナ侵攻などの理由だけでなく、Chris Gates(クリス・ゲイツ)がTechCrunchを辞めて別の場所で新しい仕事をすることになったからだ。これまで彼の名前をあまり取り上げてこなかったので、クリスのことは多分ご存知ないだろう。

ともあれ、彼はEquity podcastの立ち上げメンバーであり、今日が最終日となった。この記事が読まれるころには、彼はもういない。私たちは約5年間一緒に仕事をし、何百もの番組を収録し、失敗に苦しみ、勝利を祝い、総じてチームとして番組を成功させてきた。ホスト役の交代、親会社の売却など、さまざまなことがあったが、彼はいつもそこにいて、落ち着いていて、温かく、準備万端だった。もちろん、EquityはGrace(グレース)、Mary Ann(メアリー・アン)、Natasha(ナターシャ)のおかげでもあり、ときおりDanny(ダニー)、Kate(ケイト)、Matthew(マシュー)、Katie(ケイティ)、Connie(コニー)にも参加してもらえる喜びもあった。グループプロジェクトとしての意味合いが強いのだ。

クリスと一緒に仕事ができなくなるのは、とても寂しい。しかし、彼の退任は、チームワークという人間力の掛け算を思い起こさせる。

その人物、その逸話、その微笑み。これはクリスが退社を発表したときにSlackに投稿したものなので、ここで晒しても文句は言われないだろう。彼は毎日エネルギーを持ち込んでくれた。

たとえばこのニュースレターは、私自身が書いている。そして、Annie (アニー)かRichard(リチャード)に読んでもらう。Henry(ヘンリー)もよく覗いてくれる。彼は数年前、私と一緒に企画を練りこの誕生をサポートしてくれた人物だ。最後に、セールスチームが適切な広告要素を取り込むために準備しているスロットへ、メールを使って原稿を送る。その後、読者の受信トレイに配信され、サイトに掲載されるのだが、それを可能にしているのは、私たちの技術陣だ。私の名前が一番上に出ているのは、中の言葉を書いたからだ。しかし、この記事は、重要な一連のチームワークの結果なのだ。

チームに関しては、身に余る幸運に恵まれている。私がこれまで一緒に仕事をしてきた人たちは、ごく少数の例外を除いて、私の人生の中でも普通に愛せるひとたちだった。クリスと私は、結婚式や子どもの誕生、引っ越しなどを挟みつつ、一緒にEquityに取り組んだ。私たちは一緒に人生を歩んできたのだ。

そして、The Exchangeが所属しているTechCrunch+のチームはエース級であることもお伝えしておきたい。Walter (ウォルター)、アニー、Ram(ラム)、Anna(アンナ)をはじめとするチームのメンバーはすばらしい人たちばかりで、一緒に仕事をできることは本当に幸運だ。一緒に仕事をしているからこそ、私はできることがたくさんあるのだ。そして、その恩返しができればと思っている。

チームワーク。それこそが最高のものだ。だからこそ仕事の別れがより一層辛くなる。

クリス、君の次の冒険のために、幸運を祈ろう。君が次に生み出すものが何であれ、君の1番のファンでいられることを楽しみにしている。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ロシアのウクライナ侵攻へのテック業界各社の対応

2月24日、ロシアは数カ月におよぶ国境での軍備増強を経て、隣国ウクライナへの侵攻を開始した。

インターネットトラフィックの氾濫とデータ消去マルウェアによる、ウクライナ政府機関を標的としたサイバー攻撃に始まり、その後、地上、海上、空からの侵攻を開始した。ウクライナの報道機関もサイバー攻撃による障害を報告しており、ウクライナ政府はこのサイバー攻撃はモスクワと「明確な関連」があると指摘している

米国、欧州連合、NATOの同盟国は侵攻を激しく非難し、ロシアに広範で前例のない金融・外交制裁を科そうとしている。この制裁は地域全体のビジネス、貿易、金融に影響を及ぼすと思われる。

侵攻の影響は、ウクライナのテックエコシステム全体にも及んでいることは間違いない。ウクライナには、何百ものスタートアップやテック大企業だけでなく、世界最大のテクノロジーブランドの研究開発オフィスもある。

今後数時間、数日の間に現地の状況が急速に変化する中、TechCrunchはこの紛争がテックやスタートアップのコミュニティにどう及ぶのか、ニュースや分析を提供し続ける予定だ。

ある大手テック企業の役員は、従業員の安全のために社名を伏せるよう要請しつつ、ウクライナにいる全スタッフを避難させる方法を検討している最中であることをTechCrunchに認めた。現在、全空域が立ち入り禁止になっており、公共交通機関もほとんど機能していないことが事態を困難にしている。現在の計画では、ハンガリーかポーランドのどちらかに国境を越えてスタッフを移動させる方法を考えている。

こうした状況は、ウクライナのスタートアップにも大きな経済的影響を与えそうだ。

PDFや電子メール、その他の生産性ツールを手がけているReaddleは、ウクライナで最も有名な自己資金で起業したスタートアップの1社だ。南部の都市オデッサを拠点とする同社の広報兼マネージングディレクターのDenys Zhadanov(デニス・ジャダノフ)氏は、現在処理しなければならない緊急事態が多すぎると述べ、この記事のための電話インタビューをキャンセルした。しかし、ジャダノフ氏はテキストメッセージでTechCrunchに語った。

「我々は少し前に事業継続計画を立て、今それを実行しています。Readdleのすべての製品とサービスは稼働しており、現時点ではチームの避難は行われていません」。

ジャダノフ氏は、Readdleが11カ国で従業員を抱える国際的な企業に成長したことを指摘した。チームの「大部分」は、今もウクライナを拠点にしているという。

「ウクライナには、優秀なエンジニアやデザイナーなど、技術系のプロフェッショナルが集まっています」とも付け加えた。「多くのテック企業のCEOが、ウクライナに留まることを意図的に選択しました。彼らの多くは、この国とその人々を助けるために、援助や寄付をしています」。

ウクライナでは、さらに多くの国産スタートアップが、その影響を感じている。家庭用無線セキュリティのAjax、AIベースの文法・文章作成エンジンGrammarly、顔交換アプリのReface、ペットカメラシステムのPetcube、販売・マーケティングインテリジェンスのスタートアップPeople AI、語学個別指導マーケットプレイスのPreplyなどだ。これらの企業は、世界最大級のVCのいくつかから資金を調達しており、今回の事態でそうした関係にどのような影響が出るのか、また出るのかが1つの疑問点だ。

Macのソフトウェアやユーティリティを開発するソフトウェア会社のMacPawは、本社はキエフにあるものの、インフラはAmazon Web Servicesでホストされており、物理的にはウクライナ国外にあるとブログへの投稿で明らかにした。同社の決済処理会社Paddleは英国に拠点を置いており、ユーザーにとって「何も変化はない」見込みだ。「現時点で、我々は強く、団結し、ウクライナの主権と領土保全を守る準備ができています」とMacPawはTechCrunchへの電子メールで述べた。

ウクライナに進出しているある企業は、現地の状況が急速に変化していることを理由に、TechCrunchとの会話を報道されることを拒否した。

スタートアップだけでなく、研究開発部門を国外に置いているテック大企業や、コンテンツから広告販売まで、より地域に密着したサービスを提供しているチームもある。

GoogleのYouTubeやByteDanceのTikTokのような消費者向けのプラットフォームを持つ企業にとっては、偽情報や、逆の検閲にどのように利用されているか、あるいは誤用されているか、またその種のトラフィックをどう処理しているかが問われることになる。その上で、サービス全体がどのように維持されているのか、制裁やインターネットサービスの中断によって停止するリスクはないのかも問われる。TechCrunchはAmazon、Apple、ByteDance、Facebook、Google、Meta、Snapにコメントを求めた。詳細が分かり次第、更新する。なお、Microsoftはコメントを却下した。

その他、伝える点がいくつかある。

Googleでは、その様子からして、グローバルサービスの研究開発と現地でのオペレーションを担当する約200人がウクライナで働いているようだ。同社は長年にわたり、ロシアにおけるYouTubeをめぐる検閲で多くの問題に直面してきたが、今のところウクライナではそのようなことはない。

2016年からウクライナで事業を展開し、9都市に進出しているUberは、同国内での事業を一時停止した。Uberはキエフ在住の従業員とその近親者に、ウクライナの他の地域や他国への一時的かつ自主的な移転を提案した。ギグワーキングのドライバーと彼らがサービスを提供するライダーにとって、Uberのアドバイスは家にいることだ。

「私たちは、Uberの乗客、ドライバー、従業員の安全を守るためにできる限りのことをすることに引き続き注力しています。「部門横断的なチームが状況を注意深く監視しており、安全が確認され次第、サービスを再開する予定です」とUberはTechCrunchに述べた。

Lyftもウクライナを拠点とする従業員に対して予防策を講じている。ロイター通信によると、Lyftは緊急物資や避難のための金銭的支援に加え、休暇も提供する予定だという。Lyftはウクライナに約60人の従業員を抱えているとされ、2021年12月のブログでは、同年4月に開設したキエフオフィスを拡張する計画があると書いている。Lyftの広報担当者はすぐにはコメントしなかった。

TikTokとその親会社のByteDanceは通常、国別の従業員数を公表していないため、ウクライナに何人いるかは不明だ。しかし、彼らは非常に人気のあるアプリを持っている。同国では2021年に30%のリーチがあったと推定され、前年の2倍となった。TechCrunchは2021年、TikTokがアレクセイ・ナワリヌイ氏を中心とした反プーチン活動をめぐる重要な戦場となった様子を紹介した

関連記事:ナワリヌイ氏が混ぜっ返すロシアの政治戦争にTikTokも台頭

TikTokの広報担当者は、TechCrunchに提供した声明の中で「当社のコミュニティと従業員の安全は最優先事項です」と述べた。「当社は、有害な誤情報を含むコンテンツを削除するなど、当社のプラットフォームの安全を脅かすコンテンツや動きに対して行動を起こし、状況が進展するなかで監視を続け、リソースを投入していきます」。

Facebookの安全保障ポリシー責任者Nathaniel Gleicher(ナサニエル・グレイチャー)氏は、ロシアのウクライナ侵攻に対応してプラットフォームが取る行動についてツイートした。グレイチャー氏によると、Facebookはネイティブスピーカーによる特別作戦センターを設置し「状況を注意深く監視し、可能な限り迅速に行動する」ことにしているという。また、同プラットフォームは、ユーザーが自分のアカウントをロックできる機能をウクライナに展開し、ユーザーの友人でない人は、プロフィール写真のダウンロードや共有、タイムライン上の投稿の閲覧ができないようにした。これは、Facebookが8月にアフガニスタンでユーザーを保護しようとしたときに使ったのと同じ戦略だ。Metaはまた、アフガニスタンのユーザーの「友達」リストの表示と検索機能を一時的に削除し、アカウント保護に関する指示を表示するポップアップの警告をInstagramで展開した。今のところ、この2つの措置はウクライナのアカウントには採用されていない。

Twitterはウクライナのユーザーに対し、多要素認証の使用やツイートの位置情報の無効化など、オンラインアカウントを保護するよう警告している。24時間前にTwitterが、侵攻前のロシアの軍事活動に関する詳細を共有しているアカウントを誤って停止したことを認めた時とは打って変わった事態になっている。

関連記事:ツイッター、ロシアの軍事的脅威に関するオープンソース情報を共有するアカウントを復活

また、インターネット大手CloudflareのCEO、Matthew Prince(マシュー・プリンス)氏は、データセンターが侵害された場合に顧客のデータと通信を保護する取り組みの一環として、侵攻開始の数時間後に「ウクライナのサーバーからすべてのCloudflare顧客の暗号資料を削除した」と述べた。同社は2016年にキエフのデータセンターを開設しており、同社のステータスページによると、現在も稼働している。Cloudflareは、組織や政府機関にコンテンツ配信とネットワークセキュリティを提供している。

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(文:Zack Whittaker、Ingrid Lunden、Carly Page、Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

【2月25日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はAndroidスマホからストーカーウェアを削除する方法

【2月25日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はAndroidスマホからストーカーウェアを削除する方法

掲載記事のうち、2月25日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:あなたのAndroidスマホがすぐに修正される見込みがないストーカーウェアに感染している可能性


今日最も広く展開されている消費者向けスパイウェアの1つにセキュリティ上の脆弱性があり、約40万人の携帯電話データが危険にさらされており、その数は日々増え続けている。この脆弱性がすぐに修正される見込みはないため、このガイドでは、あなたのAndroidスマートフォンからこれらの特定のスパイウェアアプリを削除する方法を説明する。そうすることが安全だとあなたが思えばの話だ。

第2位:日本人の赤ちゃんの顔の「かわいさ」には客観的な特徴があった―日本版かわいい乳児顔データセット公開


大阪大学大学院人間科学研究科教授の入戸野宏氏らによる研究グループは2月18日、日本人の乳児の顔の形状を分析し、その「かわいさ」には客観的な特徴が存在することを明らかにしたと発表した。日本人の赤ちゃんの顔をベースにした体系的な研究はこれが初めてとのこと。

第3位:世界初の可動部のない自動運転用ソリッドステートLiDAR開発、見たいところを必要なだけ見る人間の目のような視覚システム実現

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、LiDAR(ライダー)システムの開発・製造・販売を行うSteraVisionは2月21日、世界で初めて、スキャナー(MultiPol)の可動部を一切なくし量産性を向上させたソリッドステートLiDARを開発したと発表した。光の干渉を利用した光コヒーレント技術を組み合わせることで、肉眼では見えない遠方や霧の先が見えるようになり、さらに自動運転車向け認識技術と連動させることで、「見たいところを必要なだけ見る」ことができる人間の目のような機能を持たせることが可能になった。

第4位:テスラ取締役のキンバル・マスク氏、同社がビットコインを購入した際の環境影響について「無知だった」と発言

TeslaのCEOイーロン・マスク氏の弟で、同社取締役のキンバル・マスク氏は、イーサリアム会議のステージ上でのTechCrunchとのインタビューで、Teslaが2021年に暗号資産のBitcoinを15億ドル(約1725億円)分購入し、この通貨で同社の車両を購入できるようにする予定だと発表したとき、同社は環境への影響について「とても無知だった」と述べた。

第5位:これがオーブ型の新ヘッドセット「PlayStation VR2」だ


SonyはCESで、近日発売予定のバーチャルリアリティヘッドセットについて簡単に言及した。これは、Sonyが例年この展示会で行っていることで、詳細についてはあまり説明せず、今後の製品についての耳よりな情報を提供する。そして、もし何かエキサイティングなものを隠し持っているのなら、それを少し見せればいいのだ。

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【2月24日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位は日本版かわいい乳児顔の客観的な特徴

【2月24日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位は日本版かわいい乳児顔の客観的な特徴、2位Androidスマホのスパイウェア削除方法

掲載記事のうち、2月24日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:日本人の赤ちゃんの顔の「かわいさ」には客観的な特徴があった―日本版かわいい乳児顔データセット公開


大阪大学大学院人間科学研究科教授の入戸野宏氏らによる研究グループは2月18日、日本人の乳児の顔の形状を分析し、その「かわいさ」には客観的な特徴が存在することを明らかにしたと発表した。日本人の赤ちゃんの顔をベースにした体系的な研究はこれが初めてとのこと。

第2位:あなたのAndroidスマホがすぐに修正される見込みがないストーカーウェアに感染している可能性


今日最も広く展開されている消費者向けスパイウェアの1つにセキュリティ上の脆弱性があり、約40万人の携帯電話データが危険にさらされており、その数は日々増え続けている。この脆弱性がすぐに修正される見込みはないため、このガイドでは、あなたのAndroidスマートフォンからこれらの特定のスパイウェアアプリを削除する方法を説明する。そうすることが安全だとあなたが思えばの話だ。

第3位:世界初の可動部のない自動運転用ソリッドステートLiDAR開発、見たいところを必要なだけ見る人間の目のような視覚システム実現

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、LiDAR(ライダー)システムの開発・製造・販売を行うSteraVisionは2月21日、世界で初めて、スキャナー(MultiPol)の可動部を一切なくし量産性を向上させたソリッドステートLiDARを開発したと発表した。光の干渉を利用した光コヒーレント技術を組み合わせることで、肉眼では見えない遠方や霧の先が見えるようになり、さらに自動運転車向け認識技術と連動させることで、「見たいところを必要なだけ見る」ことができる人間の目のような機能を持たせることが可能になった。

第4位:トランプ氏のTRUTH SocialがApp Storeに登場、しかし誰も利用できず


ドナルド・トランプ氏のメディアグループは米国時間2月21日、米国でiOSアプリ「TRUTH Social」をリリースしたが、公開されているツールを使って同アプリのAPIをスキャンしたところ、すでに登録自体を締め切っていることがわかった。

第5位:これがオーブ型の新ヘッドセット「PlayStation VR2」だ


SonyはCESで、近日発売予定のバーチャルリアリティヘッドセットについて簡単に言及した。これは、Sonyが例年この展示会で行っていることで、詳細についてはあまり説明せず、今後の製品についての耳よりな情報を提供する。そして、もし何かエキサイティングなものを隠し持っているのなら、それを少し見せればいいのだ。

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EUのデジタル政策責任者、オランダの反トラスト命令を無視するAppleに苦言

欧州連合(EU)のデジタル政策責任者Margrethe Vestager(マルグレーテ・ヴェスタガー)氏は、Apple(アップル)が、出会い系アプリがアプリ内コンテンツを販売する際にサードパーティの決済技術を利用することを認めるよう求めたオランダの反トラスト命令の遵守を回避するために、意図的に罰金を支払うことを選択していると指摘し、同社を非難した。

Appleは現地時間2月21日、オランダで5回目の罰金500万ユーロ(約6億5000万円)を支払った。この問題に関して同社がオランダの競争当局からこれまでに科された罰金総額は2500万ユーロ(約32億円)に達したが、依然として命令は遵守されていない。

米国で2月22日に行われた講演で、EUの競争部門を率いるヴェスタガー氏は、デジタル政策の重要な柱である今後導入されるデジタル市場法(DMA)に言及した。この法律は、最も強力で中間的な技術プラットフォーム(別名「ゲートキーパー」)に事前ルールを適用する。同氏はまた、支配的プラットフォームによる不正行為と積極的に戦い、デジタル市場の公正性を回復するために、EU議員が課す予定の「すべきこととしてはならないこと」のリストを効果的に執行することが喫緊の課題であることも示唆した。

「一部のゲートキーパーは、時間稼ぎをしたり、規則を回避しようという誘惑に駆られるかもしれません」と同氏は警告した。「オランダにおけるAppleのこのところの行為は、その一例と言えるかもしれません。私たちの理解では、Appleは、サードパーティが同社のアプリストアにアクセスするための条件に関するオランダ競争当局の決定に従うよりも、定期的な罰金を支払うことを基本的に望んでいるようです。そしてそれは、DMAに含まれる義務の1つにもなります」。

ヴェスタガー氏の発言について、TechCrunchはAppleに問い合わせている。

また、デジタル領域で市場規制が成功する可能性を最大限に高めるために、テック大企業に対して事前の競争ルールを適用するというEUのアプローチと足並みを揃えるか、少なくとも支持するよう米国の議員に訴える前に「コンプライアンスを確保するためには、欧州委員会が十分なリソースを有することを含め、効果的な法執行が鍵となります」とヴェスタガー氏は述べた。

「ゲートキーパーに関する私たちの取り組みが、他の地域にも同じように刺激を与えればと思っています」と同氏は語った。「例えば日本、英国、オーストラリアでは現在そうなっています。米国では、いくつかの法案が議会と上院で進行中ですが、それらは私たちの提案と多くの特徴を共有しています。これは、世界的なコンセンサスが得られていることを意味し、非常に心強いことです」。

往々にして法案は議会や上院を通過しない。しかし、EUは、米国の議員たちが団結してデジタル競争改革を実現させることを望んでいると明確にしている。

ヴェスタガー氏はまた、貿易・技術評議会や「これらの問題に対する共通のアプローチを見つけるために再構築された大西洋横断パートナーシップ」と同氏が呼ぶものについて言及し「私たちのデジタル法案の影響は、EU域内と同様に域外で起こることに左右されます」とも述べた。

「特に競争政策に関しては、新しいTechnology Competition Policy Dialogue(技術競争政策対話)を立ち上げましたが、これは私たちの長年の協力の伝統に基づくものです」とも指摘し、次のように付け加えた。「EUと米国は、最終的にまったく同じ法律を制定することはないかもしれないが、市民を保護し、市場を公正かつオープンに保つためのデジタル政策の策定に関しては、同じ基本的ビジョンを共有していることがますます明らかになってきています」。

つまりここではっきりとしているのは、DMAがデジタル市場の不均衡を是正する有効な手段になるとEUは確信していないということだ。そして、世界で最も強力なテック企業を規制するためには、米国を含むグローバルな対応が必要であり、実際にこれらの企業の多くは米国に本社を置いていているため、米国も含まれなければならない。

そのためヴェスタガー氏は、米国の聴衆を前に、DMAが「客観的かつ非差別的」であることを強調し、欧州が米国のテック企業のみを罰するような規則を考案して保護主義的であるという非難に対抗しようとしている。

「執行機関としての信頼性と自由で開かれた貿易へのコミットメントの両方が、関係する企業がどこの国に本社を置いているかに関係なく、平等に取り組むことを求めています」とヴェスタガーは訴えた。「ゲートキーパーは、欧州市場における規模やリーチに基づいて指定されることになります」。

欧州連合がテック企業に対してデータ保護規則を強力かつ統一的に執行することに失敗し続けていることも、ここで示唆されているようだ。米国はもちろん、包括的な連邦プライバシー法をまだ整備していない。

画像クレジット:Emmanuel Dunand / AFP / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップル、アムステルダムでの店舗人質事件で従業員と顧客の安全を確認

アムステルダムのAppleの店舗で発生した人質事件で、同社は「この恐ろしい経験の後、すべての従業員と顧客は安全である」と述べている。同社は、まだ調査が進行中であることを付け加えた。

「我々は彼らの例外的な仕事と継続的な調査のための地元の法執行機関に感謝したい。私たちのチームと顧客は、本日、迅速な行動を取り、信じられないほどの強さと決意を示しました。私たちは、このような困難な状況下で、彼らがお互いに示したサポートとケアにとても感謝しています」とAppleの広報担当者は声明で述べている。

ロイターの報道によると、男が少なくとも1人を数時間にわたって人質にしていた旗艦店内の人質事件を警察が解決した数時間後に声明は出されている。地元アムステルダム警察のツイートによれば、膠着状態の際、住民は屋内にとどまり、人気エリアから離れるよう促されたという。

AP通信によると、数時間後、銃を持った犯人が店内から逃亡し、警察がクルマなどを使い阻止したとのこと。

警察はオランダ語のツイートで「人質犯がApple Storeから出ていることを確認できた。その男は路上に横たわっており、ロボットが爆発物がないかを確認している。武装した警察官が遠くから彼を制圧している。人質は無事だ」と述べている。

警察は、銃撃犯の潜在的な動機について公にコメントしていない。AP通信によると、地元放送局AT5は、人質を取った犯人は武装強盗をしようとしていたのではないかとの見方を示している。

世界中に500以上の店舗あるApple Storeが犯罪の現場になるのは今回は初めてではない。2021年夏には、アトランタでの10代の若者の2人が、店の警備員を銃撃した疑いで逮捕された。その数カ月後には、マンハッタンのApple Storeの警備員が、入店時のマスク着用を客に伝えた後に刺されるという事件も起きている。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Mascarenhas、Amanda Silberling、翻訳:Katsuyuki Yasui)

日本人の赤ちゃんの顔の「かわいさ」には客観的な特徴があった―日本版かわいい乳児顔データセット公開

日本人の赤ちゃんの顔の「かわいさ」には客観的な特徴があった―日本版かわいい乳児顔データセット公開

かわいさを増やす・減らす方向に変形させた顔のペアから、よりかわいい方を選ぶ課題を587名の成人が行った

大阪大学大学院人間科学研究科教授の入戸野宏氏らによる研究グループは2月18日、日本人の乳児の顔の形状を分析し、その「かわいさ」には客観的な特徴が存在することを明らかにしたと発表した。日本人の赤ちゃんの顔をベースにした体系的な研究はこれが初めてとのこと。

赤ちゃんの顔のかわいさについては、1943年にオーストリアの動物行動学者コンラート・ローレンツが提唱した「ベビースキーマ」という概念がある。大人が赤ちゃんに対してかわいいという感情を抱かせる身体的特徴を分析したものだが、研究対象は白人の赤ちゃんに限られていた。そこで同研究グループは、同様の方法を使って日本人の赤ちゃんの顔に関する実験を行った。

実験には、保護者から提供してもらった生後6カ月の赤ちゃん80名の無表情な正面顔の写真を使用した。それを20歳から69歳の日本人の男女200名に見せ、「まったくかわいくない」から「非常にかわいい」までの7段階の評価を付けさせた。そして、平均得点の高いほうから10名、低い方から10名を選び、両グループの顔を平均化し、かわいさが高い顔と、低い顔とを合成した。

画像を合成して作られたかわいさが高い顔(左)と低い顔(右)のプロトタイプ(原型)。6カ月児80名の顔のかわいさを20~69歳の日本人200名が評定した。かわいさの得点が高い10名の平均顔と得点が低い10名の平均顔をそれぞれ求めた

画像を合成して作られたかわいさが高い顔(左)と低い顔(右)のプロトタイプ(原型)。6カ月児80名の顔のかわいさを20~69歳の日本人200名が評定した。かわいさの得点が高い10名の平均顔と得点が低い10名の平均顔をそれぞれ求めた

そこから、かわいさが低い顔から高い顔にするには、どの部分を変形させればよいかというパターンを導き出したところ、「ベビースキーマ」の特徴と一致したという。さらにこの変形パターンを50枚の赤ちゃんの顔に適用して、かわいさを増した顔と減らした顔を作り、そのペアを20歳から69歳の日本人の男女587名に見せ、かわいいと思う方を選ばせた。すると、9割の人がかわいさを増した写真を選んだ。ただし、若い男性だけは、女性や中高年の男性にくらべて正答率が低かった。

ほとんどの人が赤ちゃん顔のかわいさの違いを識別し、よりかわいい方を選んだが、若い男性は正答率が低かった(587名のデータに基づく)

ほとんどの人が赤ちゃん顔のかわいさの違いを識別し、よりかわいい方を選んだが、若い男性は正答率が低かった(587名のデータに基づく)

このことから、赤ちゃんのかわいさには、個人の好みとは別に、多くの人が共通して感じる客観的な特徴が存在することが判明した。この研究で作成された「日本版かわいい乳児顔データセット」Japanese Cute Infant Face(JCIF) dataset)は、インターネット上で公開されている。

「人材と資金」がEUのスタートアップ政策に対するフランスの戦略のカギ

現在、欧州連合理事会議長国となっているフランス。同政府はこの機会を利用して、テクノロジースタートアップ政策において進展を図ろうと目論んでいる。フランスのデジタル大臣であるCédric O(セドリック・オ)氏はTechCrunchとのインタビューの中で、欧州のテクノロジーエコシステムに関するニュースをいくつか紹介してくれた。

その前に少しだけ振り返ってみよう。ここ数年、EUでは税制や人材確保、投資などに関する法律を見直し、調和させようという取り組みが盛んに行われている。

2021年、欧州委員会と加盟国は「Startup Nations Standard」を発表した。その名が示すように、この新制度は欧州各地のスタートアップ政策の基準を確立することを目的としており、言い換えると、加盟国間で共有できるベストプラクティスのようなものである。

ポルトガルが欧州連合理事会議長国になった際、ポルトガルはさらに一歩進んで「European Startup Nations Alliance(ESNA)」を創設すると発表した。ESNAは「Startup Nations Standard」を担う新たな組織であり、ベストプラクティスをまとめるだけでなく、技術的なサポートや進捗状況のモニタリングも行うというものである。

同じ頃、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が「Scale-Up Europe」という別のグループを立ち上げている。テック企業や投資家、団体がマニフェストに署名し、2030年までに1000億ユーロ(約13兆2100億円)以上の価値を持つテック企業を10社にすることを目標に掲げている。

大規模なVCファンドを10~20作るための新たな金融インセンティブ

フランス政府は2日間の会議の中で、人材の魅力を高めるためにESNAに新たな責務を課すこと、運用額10億ユーロ(約1321億円)以上のレイターステージの投資ファンドを10~20個設立すること、ディープテック分野への投資を強化することなどを発表している。

レイターステージの資金提供から見てみよう。EUの加盟国のいくつかは、European Investment Fund(欧州投資基金、EIF)に出資して新たなファンド・オブ・ファンズを設立すると発表している。

「ヨーロッパの強力なエコシステムを構築するためには、資金調達が重要です。世界中から投資を集めたいとは思っていますが、欧州の資金、欧州の知識、欧州のチームによる欧州のベンチャーキャピタルを実現したいと考えています」とオ氏は話している。

「我々の目標は10億ユーロ以上のファンドを10~20作ることです。現在米国では10億ユーロ以上のファンドが40あるのに対し、欧州では2つとなっています。Eurazeo(ユーラゼオ)とEQTの2つで、フランスのファンドとスウェーデンのファンドです」。

この新たなファンド・オブ・ファンズは、欧州の大規模なレイターステージのファンドにリミテッドパートナーとして投資する計画である。この新しい仕組みにより、ファンドマネージャーはより簡単に新しいファンドを調達できるようになり、例えばEIFがあるファンドに1億ユーロや2億ユーロの投資をすると言えば、この新しいファンドにはより多くの機関投資家が集まるだろうという考えである。

また、Bpifrance(公的投資銀行)のような一部の国立投資銀行は自国のファンドに対しても支援を行っている。フランスでは、民間の保険会社や公的な投資家もTibi(ティビ)氏の取り組みに倣ってレイターステージのファンドに参加しているのである。

今回の発表はヨーロッパ全土に関するもので、加盟国の予算の一部を欧州におけるレイターステージのテック分野への投資に充てることを主な内容としている。

オーストリア、ブルガリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スペイン、スウェーデンの18カ国がこのEIFのファンド・オブ・ファンズに貢献するという拘束力のない誓約書にすでに署名しており、近日中にさらに多くの国が加わる予定だという。

具体的には、フランスは「フランス2030」の投資計画のうち10億ユーロを振り向けると言い、ドイツは10億ユーロを投資、さらにEuropean Investment Bank(欧州投資銀行)はこのファンド・オブ・ファンズに5億ユーロ(約660億円)を特別に割り当てる他、別途でレイターステージのファンドに直接投資を行うと伝えている。

その他いくつかの国立投資銀行も、大規模なレイターステージファンドに直接資金を投資すると発表している。フランスとデンマークの投資銀行は欧州のレイターステージファンドにそれぞれ5億ユーロを割り当てる計画で、またギリシャも近々計画を発表する予定だという。

10年前に米国の経済を大きく変えたように、デジタルト・ランスフォーメーションがヨーロッパの経済に大きな影響を与えるだろうとオ氏は考えている。

「今、欧州は転換期にあると考えています。そして問題は、その変化を誰が利用していくのかということです。米国の企業なのか、ヨーロッパの企業なのか。それがヨーロッパの企業になるように、できる限りのことをしたいと思っています」。

そして、ヨーロッパ内で大規模な成長資金を調達できるようになることが、この先大規模なテック企業を生み出すことにつながると同氏は強く信じている。「プライベート投資による欧州の大規模なファンドが増えれば、クロスオーバー投資でも、公共投資でも、近いうちにヨーロッパのNASDAQの上昇につながるでしょう」。

画像クレジット:Ministère de l’Économie, des Finances et de la Relance

技術者向けビザの改善

ヨーロッパの多くの国では、すでに技術系人材のための特別なビザプログラムを設けている。例えばフランスには「French tech visa」があり、またスペインではスタートアップビザを含む法的パッケージの立ち上げに取り組んでいる。

しかしそれぞれのプログラムの違いは、近い将来ほぼなくなることになるかもしれない。ESNAは、加盟国がそれぞれの規制が欧州の基準と比べてどうなのかを確認できるよう、ベストプラクティスを共有する計画だからだ。

フランスはさらに一歩進み、専門のチームを持つ「European Tech Talent」サービスデスクを作りたいと考えている。ESNAは各加盟国の移民局に取って代わるものではないものの、将来の移住者がビザを比較できる単一の情報源ができることになるため、外国人の人材を雇用しようとしている技術系のCEOにとっても、特に有用なものとなるだろう。

「こういったプログラムによって何れすべてがつながっていくことを期待しています」とオ氏はいう。

また、ESNAのサービスデスクは、問い合わせを適切な行政機関の適切な担当者に転送してくれるという。オーストリア、ベルギー、キプロス、チェコ、エストニア、フィンランド、ポーランド、フランス、ギリシャ、アイルランド、イタリア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、ポルトガル、スペインの少なくとも16カ国がこの誓約に署名することに合意している。

技術者に対するこの新たな取り組みは、言わばプロモーションのためのものである。真新しいサイトとどんな質問にも答えてくれるチームがあれば、優秀なエンジニアにとってヨーロッパへの移住はこれまでになく魅力的なものになるかもしれない(一部の国では極右の候補者がかなりの人気を博しているという事実が、この取り組みにダメージを与えているかもしれないが)。

「米国のテクノロジーが成功しているのは、優秀なフランス人、ナイジェリア人、インド人を集める能力に関係しています。ヨーロッパはこのテーマでは遅れをとっています。我々はEUブランドを作っていない。しかし、コロナ後の世界には歴史的なチャンスが広がっています。欧州の福祉モデルと欧州の生活の質は極めて重要な資産となっています」と同氏は話している。

ディープテックへの投資上限解除へ

European Innovation Council(欧州イノベーション会議、EIC)には100億ユーロ(約1兆3251億円)の予算があり、これはかなりの額の資金管理である。EICはヘルスケア、エネルギー、グリーン・イノベーションなど、さまざまな戦略的産業における画期的な技術を支援することになっている。

これまでEICファンドは、ディープテック企業への直接的な株式投資に1500万ユーロ(約20億円)までしか投資できなかった。EUの革新・研究・文化・教育・青年担当委員のMariya Gabriel(マリヤ・ガブリエル)氏は、EICが従来の1500万ユーロの上限を超えてより大きな投資を行えるようになると発表している。

また「EIC Scale Up 100」と呼ばれる欧州のランキングが発表される予定だ。このランキングを活用してEUがあらゆるサービスや経営上の支援を行い、最も有望なディープテックベンチャー企業を支援しようという計画だ。

今回の発表で、フランスとEUはスタートアップ政策における競争促進のビジョンを打ち出している。オ氏は欧州のスタートアップと米国のスタートアップをよく比較するが、ビッグテックに対抗する最善の方法は、ヨーロッパ独自のビッグテック企業を作ることだと同氏は考えている。

「私たちは米国人よりも上手くできると信じています。Back Market(バックマーケット)Ynsect(インセクト)のように、米国企業よりも優れた企業が出てきていますし、それを目指すべきだと感じています。本能的な個人的意見としては、閉ざされた市場ではなく、もっと野心的で競争的なものを支持したいと思います」と同氏は話している。

画像クレジット:Ministère de l’Économie, des Finances et de la Relance

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(文:Romain Dillet、翻訳:Dragonfly)