ロサンゼルスのWoman’s Marchは女性運動の連帯と鼓舞に最新テクノロジーを活用

今年で第3回となるWomen’s March(ウイメンズ・マーチ)におよそ30万人の参加者がロサンゼルスのダウンタウンを行進したが、彼女たちは米国を代表する有力政治家の話を聞く機会に恵まれただけではない。主催者が、この運動のために導入したテクノロジーによる新しい体験ができた。

偶然にもWomen’s Marchと同じタイミングでローンチされたSameSide(セイムサイド)と呼ばれる組織運営ツールを活用することで、選挙の投票を促す非営利団体RockTheVote(ロックザボート)とも力を合わせるWomen’s Marchの主催者は、今年の大統領選挙に向けて、この行進のエネルギーを、地方や国レベルの女性問題に対処するための、もっと大きな政治的運動に発展させたいと考えている。

同時に彼らは、公共の空間を汚すことなく、このイベントにアートやアーティストを巻き込も方法を模索していた。そこで目を付けたのが、まだローンチ前の新しいアプリケーションMark(マーク)だ。

Markは、デンマークのゲーム開発企業Sybo(シボ)と中国のモバイルゲームのパブリッシャーiDreamSky(アイドリームスカイ)とのジョイントベンチャー。拡張現実によってデジタルな形でストリートアートを恒久的に残せるというもの。設立から2年目の企業でアプリはまだベータ版だが、Women’s Marchで初めての製品テストを行うことを決めた。

同社は、最大で総額30万ドル(約3300万円)と、アプリを新規ダウンロードしたユーザー1人につき最大で100ドルを寄付することに合意している。ユーザーがアプリをダウンロードして、このイベント期間中にアカウントを開設し最初のシェアを行うと、Markから1ドルが寄付される。残りの寄付は、その後も、アプリを続けて使用し、Markから投稿を複数シェアしたときに実施されると同社は話している。60日間連続してログインしてMarkで拡張現実作品を20本投稿すると、Women’s Marchに100ドルが寄付される仕組みだ。

画像提供:Mark

「どの運動もアートを取り入れています」とWomen’s March財団ロサンゼルス事務局長Emiliana Guereca(エミリアナ・グレカ)氏は話す。「社会正義芸術とテクノロジーと社会運動が、ここでうまく融合しています。テクノロジーではありますが有機的です」。

ARCoreには、Googleの耐久性の高いクラウド・アンカーを使っているため、どこかに絵を描けば恒久的に保存され、Markを使っていつでも見たり変更したりができる。ロサンゼルスでは、同社は国際的な米国人アーティストのAmy Sol(エイミー・ソル)、Sam Kirk(サム・カーク)、 Faith XLVII(フェイス47)、Ledania(レダニア)、Fatma Al-Remaihi(ファトマ・アル・ルマイヒ)と協力して作品を制作し、行進のルート上のさまざまな場所で見られるようにした。

Women’s MarchはMarkのデビュー会場となったわけだが、同社は、政治に関連する場所は避けた。「私たちは、できるだけ政治的中立を保ちたいと思っています」とMarkの最高責任者Jeff Lyndon Ko(ジェフ・リンドン・コー)氏は言う。コー氏は中国・深圳の上場ゲームパブリッシャーiDreamSkyの創業者であり、その新しい会社は中国当局の統制が厳しいソーシャルメディア市場では活動できなかったものと広く考えられている。

「このプロジェクトには、大中華圏の外に多くの脚を伸ばせる可能性があります」とコー氏は言う。中国の株主たちにとって(iDreamSkyはMarkに投資している)、米国の女性運動は未知の領域だ。「中国のチームは、何それ?って感じです」とコー氏。

Markとの協力が人々を鼓舞することを目的としているならば、Women’s March財団ロサンゼルスがSameSideと行っている活動の目的は、行動を促すことにある。

政治に焦点を当てたアクセラレーターHigher Ground Labsを卒業したSameSideは、Nicole a’Beckett(ニコール・エイベケット)と、海軍特殊部隊出身の兄とで創設された。2人は協力して政治的関与と社会活動を結びつけ、共通のイデオロギーと目的を持つコミュニティーを育てるソーシャルネットワークを構築した。

関連記事:Higher Ground Labsはテクノロジーが2020年大統領選挙を民主党有利にすると予測(未訳)

SameSideは、重要な日の通知やリマインダー、それに社会的イベントに参加してくれそうな政治活動家のデータベースも提供する。言うなれば、政治に特化し、メンバーに重要な日を伝えたり将来の活動のための行動を呼びかける機能を追加したMeetupのようなものだ。

「Women’s Marchで、SameSideが非公式ローンチされます。プラットフォームを提供することで、ロサンゼルスのWomen’s Marchを活動の媒体にして、いたるところで人々が関連イベント、例えばプラカードを作るパーティー、行進の前の朝のミートアップお茶会、行進に参加できない人のためのハウスパーティーなどを設定できるようになります。また、SameSideでは、さまざまな関連イベントやロサンゼルスのWomen’s Marchに出欠の返事をすたすべての人に、RockTheVoteが制作した選挙人登録活動キットを配布します」とエイベケット氏はメールに書いてくれた。

Woman’s March財団ロサンゼルスの主催者は、行進の参加者にとって、政治への関与が次なる重要なステップだと考えている。「行進の後の、やることリストがあります」とグレカ氏。「SameSideを仲間にしたことで、人々がつながれるようになりました。スマートフォンを使ってどのように運動を継続させるかが、とても重要なのです」。

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(翻訳:金井哲夫)

ブロックチェーンでアート市場を変えるスタートバーンが3.1億円を調達、元Anypay CEOの大野氏が取締役に

ブロックチェーンを活用すれば、長年自分が模索してきたアートの民主化を実現できるかもしれない——。自身も美術家として活動を続けてきた施井泰平氏が代表を務めるスタートバーンの「アートブロックチェーンネットワーク」構想を紹介したのは、2018年7月のこと。

あれから約8ヶ月、同社が次の段階に向けて新たな一歩を踏み出すようだ。スタートバーンは3月19日、UTEC、SXキャピタル、電通、元クリスティーズジャパン代表の片山龍太郎氏を引受先とした第三者割当増資により、3億1000万円を調達したことを明らかにした。

また同社は3月1日付で元AnyPay CEOの大野紗和子氏が取締役COOに、片山氏が社外取締役に就任したことも発表している。

今回調達した資金を活用してブロックチェーンネットワークや接続ASPの開発を加速させつつ、事業提携・共同事業を含めた国内外のビジネス展開や組織体制の強化を進める計画だ。

サービス横断で作品の来歴・流通をマネジメント

スタートバーンが現在開発するアートブロックチェーンネットワークは、世界中のアートサービスをつなぐ“インフラ”の役割を果たすものだ。

ここで核となるのは、ブロックチェーンの非改ざん性・相互運用性を活用した「証明書」を発行できること。この証明書には売買の履歴に加えて、美術館での展示、貸し出し、鑑定など作品の評価と信頼性に関わる様々な履歴が連続的に記録されていく。

それも特定のサービスだけではなく、ネットワークに参加する全サービスを横断して「各作品がどのような道のりを歩んできたのか」、その来歴を自動的に記録し、参加者が閲覧できる環境を整えるという試みだ。

前回も紹介した通り、アート業界では「これまでに誰が所有してきたのか、どこで展示されてきたのか」が作品の価値にも大きな影響を及ぼすため、来歴情報をトレースできることは非常に価値が高い。加えて、作品の足取りや今の在り処がわかることは、各プレイヤーにとって別のメリットもある。

「アーティストやマネジメント層の場合、いざカタログを作ったり展示会をやろうと思った際に自分の作品を誰が保有しているのか把握できず、苦労するということがよくある。またセカンダリーのオークションハウスでは、偽物を売ることが1番のリスクとなるからこそ、来歴の調査にものすごく神経を使っている」(施井氏)

これまではアート作品の証明書に関する共通のフォーマットやルールが存在しなかった。その観点では「電子化された、同じフォーマットの証明書」をブロックチェーン上で簡単に発行できるだけでも意味のあることだが、そこに来歴が自動的に記述される仕組みも紐づいているのがアートブロックチェーンネットワークの特徴だと言えるだろう。

施井氏はこのネットワークをあらゆるステークホルダーが使えるものにしたいと考えていて、Eコマースやオークションサイトだけでなく、保険、真贋鑑定、融資サービスなど様々なプレイヤーと連携していくことを目指しているという。

還元金の仕組みもアップデート、数社との提携も決定

上述したように「サービスをまたいで来歴を追える」ようになれば、アート作品の流通手段やアーティストの収益構造にも新しい可能性が生まれる。

たとえば二次販売、三次販売とユーザー間で作品が売買される度に、作品を生み出したアーティストに還元金が支払われる仕組みを作ることも可能だ。

そもそもスタートバーンは2014年3月に施井氏が「アートの民主化」を目的に創業したスタートアップだ。

既存の仕組みでは、マーケットに流通するアーティストになれるのはほんの一握りの人たちのみ。その状況を改善するには、作品の価格決定の仕組みから変える必要がある。そう考えた施井氏は2015年に「Startbahn.org」を立ち上げた。

アート特化のSNSとオークションを組み合わせたようなこのプロダクトの特徴は、サービス上で作品の来歴が記録され、ユーザー間で作品が売買されるごとに作者へ還元金が支払われること。このサイクルが回れば、初期の販売価格を抑えながら、最終的に相応の対価を受け取れるチャンスが生まれる。

ただ当時のStartbahn.orgには大きな穴があった。外部のサービスで作品を売買されてしまった場合、来歴をトレースできたいため還元金も発生しなくなってしまうのだ。

なんとかその状況を打破できないか。いろいろと試行錯誤をしていた時に施井氏が出会った技術こそがブロックチェーンだった。そこから約2年に渡ってアイデアをブラッシュアップした結果、今のブロックチェーンネットワーク構想と、このネットワークに参加する1サービスとして新生Startbahn.orgのアイデアが生まれることになる。

7月に話を聞いた際は全ての作品において還元金が発生する仕組みを考えていたようだったけれど、還元金の存在が二次流通を阻害する要因になると考える人もいるため、アーティストや各サービスがスマートコントラクトによりルールをカスタマイズできる仕様へとアップデートしたという。

たとえば証明書を発行する際にアーティストが「還元金が発生する場所でのみ販売できる」というルールを設定しておけば、この作品は「売買時に還元金が発生する」と規定されたサービス上でのみ流通することができ、常に還元金が生まれるようになる。

同じように「この作品は3年間、日本の販売所でのみ売ることができる」「アート保険に入っていない作品はこの展示場に出せない」など、アーティストやサービス提供者が、自分たちの意思を込めて流通の仕方をコントロールすることも可能だ。

「(昨年7月の)シード調達は、自分たちの構想が実際に形にできるのか、そこに賛同してくれる企業がどれだけいるのかを試すためのものでもあった。結果的には各方面の企業とディスカッションする機会に恵まれ、新しい可能性に気づいたり、アイデアをよりブラッシュアップすることができた」(施井氏)

昨年9月にはあくまでテストネット上ではあるが、アートブロックチェーンネットワークを公開。11月には同ネットワーク上でサービス展開を予定する丹青社など5社との提携も発表した。

金融以外のブロックチェーンのユースケースへ

スタートバーンのメンバー。前列の右から4人目が代表取締役CEOの施井泰平氏、その左隣が取締役COOに就任した大野紗和子氏

業界内外の企業と連携を深めながら、構想をアップデートし続けてきた中で迎えた今回の調達。夏頃にはブロックチェーンネットワークのメインネット公開も予定しているが、これからは一層社会へのインパクトを追求するフェーズになっていくという。

その上ではボストン・コンサルティング・グループやGoogleを経て、前職のAnyPayで取締役COO、代表取締役CEOとして決済やブロックチェーン事業の立ち上げに携わった大野氏。そして産業再生機構で執行役員を務めるなど、ビジネス経験豊富な片山氏の参画は非常に心強いだろう。

特に大野氏はスタートバーンの新たな取締役COOとして、事業連携や海外展開、アートブロックチェーンネットワークの社会実装をリードしていく役割を担うことになる。

「これからの時代『オンラインで完結するものから一歩外に出て、リアルなものや場所とテクノロジーを絡めないと新しいものが生まれづらいのでは』という考えがあった。(その点、実世界と交わるアート領域には興味を持ったことに加え)スタートバーンはブロックチェーンありきではなく、アート市場に対する課題意識から始まった会社。いかにアーティストへ収益を還元するか、来歴管理の仕組みを作るか考えた結果、ブロックチェーンと相性が良かったのでアートと融合させようというアプローチが面白いと感じた」(大野氏)

「土地の登記のように最終的に国のデータベースに届け出が必要な領域の場合、それを代替するのは法律や市場のハードルもあって難しい。一方でアートは来歴管理のニーズが高いにも関わらず、明確に定められたルールやデータベースがない。非常に珍しい領域であり、金融に次ぐブロックチェーンのユースケースになる可能性も秘めている」(大野氏)

もちろん本格的に社会へと普及させていくためには、乗り越えなければならない壁もまだまだ多いという。例えばアート作品の場合、仮想通貨などと違ってブロックチェーンの外にある情報をインプットさせる必要があり、その際に間違った情報が登録されてしまう恐れもある。いわゆるオラクルの問題だ。

これについては今のところ「後から編集できるようにしておいた上で、編集した場合は必ず履歴が残る仕様を検討している」(施井氏)そう。オラクルの問題ひとつとっても、様々な業界で課題となるポイントなので、アートという切り口からその最適解を追求していきたいというのが2人に共通する考えのようだ。

今後スタートバーンでは幅広いアート関連サービスとの連携を進めるほか、従来のアート流通における活用に加えてデジタルコンテンツの流通や販売管理、美術品のレンタルビジネス、高級ブランドの二次流通管理、美術品の分散所有など、各種事業との連携も見据えていく計画。

日本発のアートブロックチェーンネットワークがこれからどのように社会と交わっていくのか、今後の展開に注目だ。

チェーンゲート式空き駐車場もシェアできるakippaの新サービス

駐車場予約アプリ「akippa」(あきっぱ)を運営するakippaは、マンションや月極駐車場などに設置されているチェーンゲート式駐車場に対応したことを発表した。


アートと共同開発した、Bluetoothまたはテンキーでゲートを自動で開閉できる機器「シェアゲート」を使うことで実現する。同機器は、アートが開発した管理システム「ALLIGATE」(アリゲイト)連動しており、鍵や利用履歴などを一元管理できる。シェアゲートの施工・保守はアートが担当する。なお、無人ゲート式駐車場には対応済みだ。

2019年内の導入であれば初期費用は無料

akippaは、月極駐車場や個人宅の車庫、空き地、商業施設などで契約されていない空きスペースを、15分単位でネット予約して駐車できる、誰でも簡単に駐車場をシェア可能にするサービス。予約駐車場サービス、駐車場シェアサービスでは現在業界1位となる駐車場拠点数を確保しており、2018年11月現在で会員数は100万人を突破している。

チェーンゲート式駐車場

チェーンゲート式駐車場とは、無断侵入を防ぐために入り口がチェーンに仕切られている駐車場のこと。通常は、マンションに住んでいる人、もしくは月極駐車場の契約者でないとチェーンを操作して入り口を開けられないが、「シェアゲート」を使うことでakippaの利用者が一時的に操作可能になるわけだ。

マンションの管理組合や月極駐車場の運営元との協議は必要になるが、通勤に自動車を使っている場合は日中は空いている駐車場を貸し出せるのはもちろん、都市部を中心に問題になっているマンション内の空き駐車場を有効活用することもできる。

すでに大阪市にある24時間営業の「西長堀パーキング」 (大阪府大阪市西区新町4丁目10-13)は、2018年12月28日から「シェアゲート」を導入し、akippaのサービスに対応している。

akippaに対応した西長堀パーキング

ムーミン谷を彩るチームラボのテクノロジー

チームラボ森と湖の光の祭

本日12月1日(土)から2019年3月3日(日)の約3カ月間、埼玉県飯能市にあるメッツアビレッジにて「チームラボ森と湖の光の祭」が開催されている。開催時間は、2月11日(月)までは17時30分~21時(最終入場20時)、2月12日(火)~3月3日(日)までは18時~21時(最終入場20時)の時間帯となる。

期間は12月1日(土)から2019年3月3日(日)の約3カ月間

メッツアビレッジは、周囲約2kmの宮沢湖を囲む埼玉県立奥武蔵自然公園の一部で、11月9日にオープンしたばかりの北欧をテーマにした施設。西武池袋線飯能駅北口からバスで約12分、JR八高線・東飯能駅からバスで約10分の場所にある。なお一部のバスではSuicaやPASMOなどの交通系ICカードや高額紙幣が使えないので1000円札や小銭の用意が必要だ。

飯能駅北口からは直通バスが出ている。料金は200円。武蔵高萩駅行きはメッツアを経由するがICカードが使えないバスが多いので注意

入場は無料で、北欧雑貨のほか、地元の野菜が販売されているほか、ワークショップやイベントなども随時開催されている。レストランエリアもあり、都内でも有名な「らーめんAFURI」や埼玉県内で有名な食品加工メーカーである「サイボク」(埼玉種畜牧場)の直営店もある。フィンランドのコーヒーチェーン店で関東初展開となる「ロバーツコーヒー」も出店している。

アート展示に合わせた特別メニューも用意されている

チームラボ森と湖の光の祭は、このメッツアビレッジを中心に展開されるインタラクティブな光のアート空間。入場料は、中学生以上が平日1000円/土日祝1200円、4歳以上で小学生以下はそれぞれ半額、3歳以下は無料だ。チケットは、ローソンやミニストップのほか、西武沿線の主要駅で購入できる。12月14日からは西武沿線各駅の駅ナカコンビニ「トモニー」での入手可能だ。なお、前述のようにメッツアビレッジ自体への入場は無料なので、建物内のレストランなどから光の流れを眺める場合は無料で楽しめる。

浮遊する、呼応する球

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エリアは主に3つに分かれており、カフェなどが併設されている宮沢湖湖畔のエリアが「浮遊する、呼応する球体」。ここにはヘリウムが充填されたバルーンが浮遊しており、それぞれがさまざまな色の光で輝いている。このバルーンを少し強く手で叩くと、音とともに発光色が変わり、そのバルーンを起点にほかのバルーンにも同じ色が伝播していく。

自立しつつも、呼応する生命

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メッツアビレッジの中心エリアから宮沢湖畔を半周回ったところのエリアが「自立しつつも、呼応する生命」。発光色が変化する仕組みは「浮遊する、呼応する球体」と同じだが、このエリアのバルーンは一部が湖上に浮いているのが特徴。バルーンは湖畔から湖上に向けて扇状に配されているいるので、扇の手元部分にあたるバルーンを強く叩くと、瞬く間に湖上のバルーンの色が変わる様が圧巻だった。

たちつづけるものたちと森

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さらに湖畔を進むと「たちつづけるものたちと森」がある。ここにはさまざまな大きさのバルーンが密集しており、まるで迷路にようにバルーンや書き分けながら奥へと進めるようになっている。奥には大人の身長よりも大きなバルーンも設置されていた。バルーンの密集度が高いので、複数人でバルーンを叩くとさまざまな色が混じった幻想的な雰囲気になるのが印象的だった。

チームラボの猪子寿之氏(左)と、ムーミン物語の渡邊基樹社長(右)

ムーミン物語の渡邊基樹社長によると、メッツアビレッジには11月9日からのオープン2日間で1万人程度が入場するなど、想定以上の来場者を集めたとのこと。そして12月1日からは、チームラボさんのアート作品の展示によってより多くの来場者が訪れることを期待したいとのことだ。なお、原作者であるトーベ・ヤンソンが描くムーミン物語の世界感

またチームラボの猪子寿之氏は、素晴らしい森と湖と調和したアート作品に仕上げたいと思った。球体だけでなく森の木々などの色も変わっている様に注目していほしいとのこと。宮沢湖の湖畔は2キロ以上あり、チームラボとしては最長のアート作品とのこと。さらに、チームラボが湖を使ったアート作品を手がけるのは初めてだそうだ。

3Dプリンターがプラスチックでなく濡れた紙パルプを使ったら楽しいアートができる

紙弾(かみつぶて)を撃って遊ぶ子どもたちのように、デザイナーのBeer Holthuisも、いたずらをするための最良の素材は濡れた紙だ、と考えた。彼の3Dプリンター、RepRapの粗末なクローンは、文字通り紙パルプの長い紐(ひも)を吐き出して、プラスチックよりも持続可能性のある3Dオブジェクトを作る。

3DPrint.comの記事によると、Holthuisは、大量の廃棄物で汚染を増大させない素材を探していた。そして彼は、すりつぶした紙に到達した。濡れた紙を押し出すと、パルプの太い飾り紐のようなものができて、それを重ねると装飾的なオブジェクトを作ることができた。

“そうやってプリントしたオブジェクトのデザインは、この技術の可能性と美しさを示すものだ”、とHolthuisは語る。“触感がいいし、紐の太さやプリントのスピードを変えていろんな形を作れる。しかも、意外と強度があって、長持ちする”。

おもしろいのは、彼は天然バインダーを使って層をくっつけているので、完全にリサイクル可能であることだ。紙をマシンに放り込んで、自動的にパルプを作らせたら、リサイクルの過程も自動化されるだろう。でも、このお話の最良の部分は、作品がまるで、高度な知性を持った蜂のコロニーが他の集団と交易するために作った物のように見えることだ。そう思うと、楽しいよね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

個人とアーティストをつなぐ新サービスThe Chain Museum、スマイルズとPARTYが共同出資

スマイルズの遠山正道社長(左)とPARTYの伊藤直樹CCO(右)

食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」やネクタイ専門店「giraffe」などを手がけるスマイルズと、成田空港第3ターミナルの空間デザインやサンスターと共同開発した歯みがき IoT「G•U• M PLAY」などで知られるクリエイター集団PARTYが、共同出資で新会社The Chain Museumを設立。アーティストの活動を支援する新サービスを立ち上げた。

実は、国内で展覧会などに作品を展示しても、入場料収入は会場やスタッフに支払う必要経費でほどんど残らず、アーティスト本人に還元される額は少ない。それでも絵画の場合は、オリジナル作品そのもの売買やコピーの販売などでアーティストを支援できるが、インスタレーションや屋外に設置したアート作品などに個人が支援する手段は用意されていないのが現状だ。スマイルズの遠山正道社長によると「欧米とは異なり企業などからの寄付も少ないため、少子化が進む日本の芸術の発展に危機感を覚えている」とのこと。

The Chain Museumは、こういった現状を打開すべく個人がアーティストと簡単につながれるサービス。気に入ったアート作品を見つけたら手軽に気軽な金額を寄付できるのが特徴だ。

アートに触れる場を「ミュージアム」として再定義し、青森県・十和田市のラファエル・ローゼンダール「haiku」や東京・南青山での「ドクダム by Co.山田うん」など、アーティストとともに「プロジェクト」を立ち上げていくという。具体的には、アーティストの制作活動を同社がプロジェクトとして定義し、アーティスト個人ではなかなか難しいスポンサー探しなどをチームとして進めていく。空間や施設に合わせたアート作品のキュレーションやコンサルティングなども実施していく予定とのこと。

気になるサービスの内容についてPARTYの創業者でCCOを務める伊藤直樹氏は「これまで絵画などのアート作品は個人が購入するとその人のものになっていました。しかし最近のアート作品にはインスタレーションなども増えており、売買以外の方法でアーティストを支援する仕組みが必要だと感じていました。The Chain Museumでは、アート作品がある場所に行くことで、QRコードを利用して気に入った作品にその場で数百円から寄付できるようにする予定です」とのこと。アプリを開くと近くにあるアート作品を教えてくれるような仕組みも取り入れるそうだ。

「アート作品はこれまで、専門家や実際に作品を購入する資金力のある人の評価しか得られませんでしたが、The Chain Museumによってアーティストは一般の人からの寄付を伴った評価を受けられるようになります」と遠山氏。ユーザー同士の情報交換も可能になる予定で、遠山氏によると「例えば、遠山コレクションとして私が自分が好きなアート作品をリストにまとめておくと、他のユーザーがそれを見て『この人はこういう作品が好きなんだ』といったコミュニケーションが生まれるかもしれない。FacebookやInstagramとは異なる、アート作品を評価する新しいSNSのように育てたい」とのこと。

The Chain Museumが広がることで、街中に展示されたアート作品を個人が気軽に評価、支援できるようになる。そんな未来は楽しい。

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    ラファエル・ローゼンタール「RR Haiku 061」(2014、十和田美術館)
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    須田悦弘「風車の上の雑草」(2018、唐津市湊風力発電所)
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    山田うん「ドクダム by Co.山田うん」(2018,Restaurant 8ablish)
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    Smiles「檸檬ホテル(レモンホテル)」(2014、香川県・豊島唐櫃岡地区)

Appleの新本社キャンパスを85000ピースのLEGOブロックで作った人がいる、しかも立派なアートだ

2018年は、ばかばかしいぐらい巨大なLEGO作品の年だった。数週間前には、実物大で運転可能なLEGO製Bugattiまで登場した。

そして今度は誰かが、Appleがクパチーノに建てた宇宙船型キャンパス、またの名Apple Park(アップル・パーク)の巨大模型を作った。約2メートル×140センチだから、そこらのキッチンテーブルより大きい。

85000ピースを要したこの作品は、デザイナーのSpencer_Rを2年余り拘束した。その時間の大半は、建設中のキャンパスのドローン映像を繰り返し々々々々見ることに費やされた。Spencerによると、重さは35キログラムだ。

メインは巨大な円形の建物だが、ありとあらゆる細部に凝っているのでこのブロック製絵画はメリハリがしっかりある。ガラス張りのSteve Jobs劇場(スティーブ・ジョブズ・シアター)があり、元々この地に建っていた築100年の納屋、Glendenning Barnもある(いったん解体してここに再び建てた)。社員が駐車するためのガレージ、ビジターセンター、そしておまけに、社員用の小さなバスケ/テニスコートもある。

そして、すごいのは木だ。大量の木がある。Spencer本人が数えたら、1646本あるそうだ。

Spencerが巨大な建物をLEGOで作るのは、これが初めてではない。彼独自のアイデアに基づいて、エッフェル塔ロックフェラー・センターなどなど、何でも作った。しかしそれでも、今度のアップル・パークは、これまで彼がLEGOで作った高層建物を全部合わせたぐらい大きいそうだ。

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制作の詳細を知りたい人のためには、Spencer_Rのギャラリーと制作ノートがある。この記事用に自分の写真を使わせてくれたFabrizio Costantiniに、感謝しよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

「アートとブロックチェーンは相性がいい」美術家が創業したスタートバーン、UTECから1億円を調達

アート×テクノロジーを軸に複数の事業を展開するスタートバーン。同社は7月5日、UTECを引受先とする第三者割当増資により、約1億円を調達したことを明らかにした。

同社では今回の調達も踏まえ、以下の3つの事業に取り組む方針だ。

  • 文化・芸術品の管理に特化したアート×ブロックチェーンネットワークの構築
  • ネットワークと連動する自社サービス「Startbahn BCM(仮称)」の開発
  • アート領域以外の事業者も含めたブロックチェーン事業の共同開発

ブロックチェーンネットワークは9月末より試験運用を開始、Startbahn BCMも同様に9月末より提供を開始する予定だという。

油絵専攻の現代美術家が立ち上げたアートスタートアップ

スタートバーンが今後取り組む事業には、同社がこれまでやってきたことが大きく関わっている。ということで、まずは同社の成り立ちや手がけてきたプロダクトについて紹介したい。

スタートバーンは現代美術家として活動していた施井泰平氏が、東京大学大学院に在学していた2014年3月に立ち上げたスタートアップだ。施井氏は多摩美術大学の絵画科出身。大学で油絵を専攻した後、美術家として「インターネットの時代のアート」をテーマに制作活動を行ってきた。

ギャラリーや美術館での展示に加えて、複数のオンラインプロジェクトも発表。東京藝術大学では教鞭をとった経験もある。

そんな施井氏が起業するきっかけとなったのが、かねてから構想を進めていた「Startbahn」のアイデアだったという。

「テーマとしていたのは『アートの民主化』。インターネットの時代では、様々なジャンルで名もない多くの人たちが業界を盛り上げ、それが中心となって新たな市場を開拓してきたという背景がある。ただしアートに関しては限られたトッププレイヤーだけしか市場に関わっていなかった。結果的に一部の作品だけがやりとりされ、情報も広がっていかない。そんな状況を変えたいと思っていた」(施井氏)

たとえば毎年1万人以上が美術大学を卒業するのに、マーケットに流通するアーティストになるのはわずか1〜2人程度なのだそう。そう考えるとほんの一部の人だけがチャンスを掴めるシビアな市場だ。もちろんネットによる民主化が進まなかったのには、アート市場特有の理由もある。

「通常、多くのマーケットでは基本的に中古市場より新品市場の方が商品価値が高い。一方でアートは新品が最も値段が安いというケースがほとんど。アーティストのキャリアや、その作品がどんな人に買われたか、どんな展覧会に展示されたかによって価値が高まっていく。そのような情報を管理するのが困難だったため、簡単にネット上で自動化もできず、アートをやりたい多くの人たちの作品が流通してこなかった」(施井氏)

転売されるごとにアーティストへ還元金が分配

2015年12月にリリースした「Startbahn.org」は、これらの課題を解決するために作ったプロダクトだ。

同サービスはアート特化のSNSとオークション組み合わせたような仕組み。アーティストが自身の作品を掲載したり、レビュワーが作品のレビューを投稿するSNS機能に加え、アーティストとコレクター間だけでなくコレクター同士でも作品を売買できるオークション機能を備える。

特徴は再分配システムを搭載していること。Startbahn.orgでは作品の来歴がトレースされるほか、コレクター間で作品が売買されるごとに(n時販売時に)オリジナル作者へ還元金が支払われる仕組みになっている(日米間で特許を取得済み)。

これは上述した「トッププレイヤー以外の作品が流通しやすくなるための仕掛け」のひとつだ。

「まず作品の価格決定の仕組みを変える必要があった。従来の仕組みでは若手のアーティストの作品が高いと感じられがち。たとえば30日かけて作った作品が30万円で売られていても、多くの人は高いと思うはずだ。そこで初期の価格を落とす一方で、転売されるごとにアーティストに還元されるようにすれば、ひとつの作品から同じくらい、もしくはそれよりも多くの収益が得られるのではと考えた」(施井氏)

ブロックチェーンを活用すれば課題を解決できる

ところが実際にサービスの運用を続けていると、いくつかの課題が明確になった。特に頭を悩ませていたのが、外部サービスで作品が売買されてしまった場合、来歴のトレースも還元金の徴収もできなくなってしまうことだ。

どうすればこの問題を解決することができるのか。ずっと打開策を考え続けていた時に施井氏が出会った技術こそが、ブロックチェーンだったという。

還元金や証明書の情報はブロックチェーンに記録し、かつブロックチェーンネットワークを通じて外部サービスとも連携できる仕組みを作れば、サービスをまたいで来歴の管理や還元金の徴収も可能になる。

約2年に渡ってその考えを磨き続けた結果生まれたのが、現在開発を進めているアート×ブロックチェーンネットワーク構想であり、自社サービスのStartbahn BCMだ。

アート×ブロックチェーンネットワークでは、アートマーケットの発展のために共有すべき「作品のタイトルやサイズ、制作年度、作者情報、来歴情報」といったデータをブロックチェーン上でオープンにする。

一方で所有者の個人情報や販売管理者のための管理情報など、共有したくない情報については自社で管理できる仕組みを整備。双方のバランスをとりつつ、ネットワークを活用すれば参加機関が独自の作品証明書発行サービスを立ち上げたり、既存のプロダクトをアップデートできる環境を作る。

ネットワークの参加機関として想定しているのは、アーティストやクリエイター、ギャラリー、オークションハウス、管理業者など、文化や芸術作品に携わるあらゆるプレイヤー。まずは第一段階として9月末から一部のパートナー企業と共に試験運用を始め、2019年初には正式版を公開する予定だという。

同じく9月末の公開を予定しているStartbahn BCMは、アート×ブロックチェーンネットワークに参加するサービスのひとつという位置付け。Startbahn.orgのコンセプトや特徴を引き継ぎながら、従来抱えていた課題をブロックチェーンの活用で解決し大幅にアップデートしたものだ。

Startbahn BCMでは外部サービスとの連携だけでなく、独立性やカスタマイズ性を重視。作品や商品管理機能をバージョンアップし、ギャラリーやショップ、イベント、教育機関での利用も視野にいれている。

施井氏いわく「イメージとしてはBASEやSTORES.jpにも近い」部分があるそう。それぞれのユーザーが独自性のある作品サイトを作成でき、裏側では各サイトがStartbahn BCMに紐付く仕組みだ。

またスタートバーンではアート×ブロックチェーンネットワークの構築を通じて培った知見を、文化や芸術以外の領域にも応用していく方針。来歴管理や証明書発行、真贋鑑定技術などを必要とする事業者と共同で、オリジナルのブロックチェーンネットワークを開発していきたいという。

アート界隈でも注目度の高いブロックチェーン

海外ではすでにブロックチェーンをアート市場の課題解決に用いたスタートアップが増えてきた。特に作品の真贋鑑定や来歴管理はブロックチェーンと相性がよく、「Codex」や「Verisart」を始めとしたサービスが注目を集めている。

施井氏の話ではアート界隈の人と話していても「トレーサビリティだけでなく国際送金やエスクローの仕組みなど、ブロックチェーンへの関心度や期待値は高い」そう。特にアート業界は贋作が多いと言われていて、それが業界の透明性を下げてきた部分もあるからだ。

その一方でギャラリーやオークションハウスとしては自分たちの情報を守りたいという思いもあり、従来は双方のバランスをとりながら情報公開を進めることができていなかった。

スタートバーン代表取締役の施井泰平氏

「自分たちの強みがあるとすれば、このような問題をもう何年も前から現場で考えてきたこと。(各プレイヤーに)ヒアリングを重ねながら、どのようなインセンティブ設計や再分配の仕掛けがあればみんなが参加したくなるのか、どうすれば機関を横断して情報共有ができるかずっと模索してきた」(施井氏)

それだけにブロックチェーン技術が台頭してきたことは、スタートバーンにとっても大きな追い風だ。同社では今回調達した資金も活用して、アート×ブロックチェーンネットワークの構築、展開の加速を目指す。

電池切れ直前のスマホでないと使えないチャットアプリDie With Meはデジタルアートだった

【抄訳】
今人類は、過度のスマートフォン中毒だろうか? その疑問はとりあえず置いておき、ここではチャットアプリの形をしたアート、Die With Me(一緒に死んで)をご紹介しよう。この有料アプリは、お互いのスマートフォンの電池残量が5%以下になると、チャットができる。

作者の一人Dries Depoorterによると、このアプリは“アートのプロジェクト”だ。アートの部分を担当したのが彼で、もう一人の作者David SurprenantはWeb開発を担当した。

ペアの二人がどちらもたまたま、テクノロジー中毒者のためのソリューションに出くわすことがありえる。それがたとえば、非常に限られた時間内にしか使えないアプリだ。

特定のアプリにアクセスできる時間帯を制限することは、たとえば子どもに勉強をさせたい親がOSの設定でできる。

でも、なぜ電池がチャットアプリを制限するのか? Die With Meのアイデアは一体どこから出てきたのか?

Depoorterはこう言う: “ぼくはテクノロジーを使うアーチストなんだ。ぼくの作品は、ネット上の監視やソーシャルメディアやプライバシーに関するものが多い。こういうテーマについて何かを語りかけているような、オリジナルなアイデアをひねり出そうと、いつも努力している”。彼が成功作のひとつと言う、もうひとつの作品は、宝くじの自動販売機で、くじに当たるとその人のInstagramやTwitterのアカウントに最大25000の偽造フォロワーができる。

彼によると、よく知らない都市にいるときスマートフォンの電池が切れてホテルへの帰り方が分らず途方に暮れたことが何度もある。“スマートフォンを使ってる人は誰もが、そんな状況になったことがあると思う。ぼくにとってそれは、作品のアイデアのひらめきだったけど”、と彼は言う。

“ぼくはアーチストだから、この感覚はアートになる、と思った。電池が5%以下になったときだけ使えるアプリ、というアートのアイデアをこれまでずっと追ってきた”。

“でも、おもしろいアプリのアイデアがなかった。そして最近、一般公開のチャットルームがおもしろそうだ、と思えてきた”。

なぜそのアイデアがスマートフォンユーザーに受ける、と思えたのか。彼曰く、“そんなアプリはこれまでなかったし、だれもが知ってるけど新しい感覚でもある。電池があと少ししかない、という感覚。自分たちがテクノロジーに依存している、という感覚だ”。

iOSでもAndroidでも0.99ドルと有料ダウンロードなのは、チャットサーバーの費用を捻出するためだ。電池が5%以下になったら、ニックネームでアクセスして、あと数分、という同じ感覚を共有する。お話できる時間はだいたい4分ぐらいだが、残量が5%弱のバッテリーパックを用意しておくと、もっとお話できる。

【中略】

彼のお気に入りの会話の例が、これだ:

– Malk (4%): ほんと、ちょっと悲しいね。朝の目ざましをセットしてあるんだけど、電池が死んだら自力で起きて充電してセットしないといけない。

– Pablo(3%): 忘れるなよ!

– Malk(4%): うん

– Pablo(3%): 明日(あした)仕事をクビになるぞ!

– Malk(4%): 仕事はしてないよ

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

膨大な量の所蔵品(展示不可能)を抱える美術館がスマホアプリですべてを見せる

美術のファンのための、楽しい仕掛けがある。サンフランシスコ現代美術館(San Francisco Museum of Modern Art, SFMOMA)(572-51)にテキストすると、同館が所蔵する作品で返事が来る。

送ったメッセージ中のキーワードを見て、その言葉にマッチする作品を送ってくる。色の名前、テーマ、ムード、それに絵文字でもよい。

このサービスはSFMOMAの所蔵品APIを使って、その35000点あまりの作品に付けられているデータを調べる。そして絵やアーチストや日付などの中にリクエストのキーワードに関連する何かを見つけたら、その作品を送り返す。候補作品からの選択はランダムに行われているから、同じリクエストを繰り返すと、毎回違う作品が来る。

昨年スタートしたときは10桁の番号だったが、その後、大量のトラフィックをさばきやすい5桁の番号に変えた。5桁になると、テキストサービス界のセレブを意味するステータスシンボルである。

その番号が572-51、今ちょっと試してみるとよい。“send me”に続けてキーワードを書く。すると美術作品が返ってくる。サービスは無料だが、テキスティングは、あなたとキャリアとの契約にもよるが、たぶん有料だろう。

同館によると、実際に館内に展示できるのは全所蔵品のわずか5%だ。でもこのSend meのサービスなら、展示されていないものも含め、全所蔵品が対象になる。今日の巨大化した美術館を訪れるための、賢い方法である。

でも最近ではこのサービスの人気が沸騰しているから、遅い。本誌TeckCrunchで試したかぎりでは、全員が、まあまあだったけどね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

この新しい折り紙アルゴリズムならどんなものでも折れる

折り鶴を千羽折ったら、どんな願いでも叶う、と言われている。学生のころ、一度やってみたが、目が赤く充血した。しかしMITから発表されたペーパーは、たとえばたった一枚の紙から千羽の折り紙を作る方法を記述している。折り紙を実現するアルゴリズムを見つけたため、そんなことも可能になったのだ。

計算機に折り紙をやらせることは、コンピューターサイエンスの長年の難問だった。2008年には、Tomohiro Tachi(舘知宏)が、主に長い巻紙のような紙の上に折りのパターンを作り出す、世界で初めてのソフトウェアを考案した。しかし今度のMITのアルゴリズムはふつうの大きな紙を使い、折りが多くて接合部の少ない、“水が漏れにくい”折り紙パターンを作る。

研究者の一人Erik Demaineは語る: “このアルゴリズムの方が、折り方が実践的でずっと良いと思う。実はまだ、折り紙を完全に数学的に定量化できたわけではないが、やってみてこっちの方が良いことは確かなんだ。でも、前の方法とは完全に違う数学的特性がひとつある。われわれの方法では、作ろうとする面の境界として元の紙の境界をキープしている。そのことをぼくらは、水が漏れない(watertightness)と呼んでいる”。

折り紙ソフトがこのアルゴリズムを使うと、何でも折れることになる。紙が十分に大きければ、一枚の紙でシンプルな折り鶴を1000羽折ることもできるだろう。

“多面体を細い紐で巻くような方法は、‘いかさま’と呼ばれていたし、うまくいくはずがない、とも言われていた”、と数学のJoseph O’Rourke教授は語る。“この新しいアルゴリズムは折りを作り出せることが保証されているし、多面体のどの面もシームレスな小面でおおわれているから、いかさまではない。そして紙の境界が多面体の面の集合の境界と同じだから、“水漏れしない”。また、折りを実現するために必要な余計な部分は全部中に隠れているから、外からは見えない”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

機械学習に“本物の芸術らしさ”を教育訓練できるか?、二人の学部学生がそんなGANに挑戦

Generative Adversarial Net(GAN)の人気は今がピークなのか、よく分からないが、1年前に比べると、これをいじくっている人びとの数が相当増えている。そしてそれは、すごいことだ。ウィリアムズ大学の二人の学部学生が機械学習の初歩を独学し、そして今やほとんどメインストリームの技術であるGANに関する論文を50近く読んでから、ある教授と一緒に美術作品を生成するGANに取り組み、ほぼ1年で完成させた

コンピューターサイエンスの学生だったKenny JonesとDerrick Bonafiliaは今年の初めごろ、Martin ArjovskyのWasserstein GAN(WGAN)に出会った。ベーシックなGANの安定性を高めたWGANは、アートの様式(スタイル)の学習や新しいアートの生成により適していることが明らかになった。

GANの基本構成要素はジェネレーター(generator, 生成部)とディスクリミネーター(discriminator, 差別部)で、両者が敵対的に対話することによって動作する。ジェネレーターは人工的な画像を作り、それをディスクリミネーターに本物と思わせようとする。同時にディスクリミネーターは、偽の画像をできるだけ多く排除しようとする。

ジェネレーターとディスクリミネーターが対決

しかしGANは、不安定なことで悪名高く、まったく使いものにならないこともある。Wassersteinが改良したGANは、アートと分かるようなものを作り出す程度の安定性はある。そこでチームはWikiArtのデータベースからラベル付きの絵画10万点を取り出し、訓練用の素材として使った。

そのモデルの性能を最大化するためにチームは、ディスクリミネーターに新たな部位を加え、絵画のジャンルを予見できるようにした。またモデルが、生成される画像の“本物性”と“偽物性”にこだわりすぎるのを避けるため、予備訓練によりグローバル条件を加えた。これによりディスクリミネーターは、アートの様式の違いに関する理解を、維持できるようになった。

“難しいのは、成功の判定方法だ”、とJonesは語る。“そのための普遍的な測度はあまりない。それはアートに限った問題ではないが、芸術作品は通常の画像認識のように本物偽物の区別が明瞭でないから、判定がものすごく難しい”。

しかしとりあえずそのプロジェクトは成功し、JonesとBonafiliaは秋になったらソフトウェアエンジニアとしてFacebookに就職する予定だ。Bonafiliaの考えでは、もっと強力な計算機資源を使えたらプロジェクトの性能は大きくアップするだろう。Facebookには、強力なコンピューターがふんだんにあるはずだ。

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アートは今、機械学習で人気の高い素材だ。Jonesによるとその理由は、ビジュアルでしかも分かりやすいからだ。Facebookは昨年の秋に、モバイル上のリアルタイムのスタイル変換(style transfer)で関心を喚(よ)んだ〔例: 葛飾北斎のスタイルをふつうの写真に移送(transfer)する〕。JonesらGANGoghチームの作品と違ってStyle Transferは、新しいアートを作り出すのではなく、既存のストリームに(別のスタイルで)変更を加える。

スタイル変換は映画で使われている…女優のKristen Stewartは今年の1月に共著したペーパーで、彼女の短編映画Come Swimへの機械学習の応用を説明している。機械が生成した新しい作品が現代美術の美術館に展示されるのはまだ早いと思うが、今後本物のアーチストがモデルづくりに取り組んだそれらを、美術館はどう扱うか。その問題を歴史上初めて指摘した文献がこの記事だぞ、と自慢しておこう。

〔GAN関連日本語訳記事:(1)(2)(3)(4)。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

データサイエンスを用いてアートへの最適投資を行うArthena

私たちは皆アートについて何らかの意見がある(例えその意見がただ、理解できない、というものであるとしても)。しかし投資対象としてのアートについてはどうだろうか?

YCombinatorに、現在在籍しているスタートアップの1つであるArthenaは、投資家がアートから確かな収益を挙げることを助けることができると言う。創業者兼CEOの Madelaine D’Angeloによれば、Arthenaは当初アートを買い付ける、投資型クラウドファンディング(equity crowdfunding)として立ち上げられた。そして最近「アート市場に対する量的戦略に対応する」ファイナンスツール群を追加した。

特に、Arthenaは、作品の作家自身、作家のキャリアと活動年数などの要素に着目して、アートオークションの結果と組み合わせ、ある作品に対するリスクと投資利回りを予測する。この分析により、投資家たちは自身のリスク許容度に基いて、異なるArthenaのファンドに投資することが可能になる。

D’Angeloによれば、Arthenaはこれらのツールを必要に迫られて作ったのだという。ウェルスマネージャーたちや、有力な投資家たちが興味を持ってくれたものの、何より先に「ヘッジファンド相当の分析結果」を提供する必要があったのだ。

D’Angeloは、美術界がArthenaの数字を基にしたアプローチに懐疑的だろうと認めた。しかし彼女は、同社はいつでも「その最終決定を助けるループの中に人間を介在させる」と語った。また彼女は、彼女自身の目標は、アートバイヤーやアーティストの価値を貶めようとするものではなく、「市場の規模を大きくしたい」というものだと語った。

「収集と投資は完全に別々の2つの活動ですが」と彼女は語る。「その情緒的側面を切り離すことはとても難しいことです。もしそれを、数字に基かない視点から眺めていたら、市場の本当に素晴らしい機会を見落とすかもしれません。あるいは、自分が引き付けられるものに対して、過剰に払いすぎてしまうかもしれません」。

結局、なぜアートに投資するのだろうか?D’Angeloは、アート市場の魅力は、株式市場の上下動にあまり縛られずに、印象的なリターンを提供してくれるところだと語った。

Arthenaは、アート市場の標準的な年間利回りである10%を、倍にすることが可能だと言う。そして投資家たちの興味を確かに引いているようだ。同社は数ヶ月前に現在のアプローチに切り替えてから、既に2000万ドルのコミットメントを受け取っている。

D’Angeloはまた、他のアートスタートアップは通常「アートの世界世界のみ、あるいはテクノロジーの世界のみ」の出身者で占められているが、Arthenaは両者を兼ね備えていると語る。アートの世界におけるD’Angeloの経験と、彼女の兄弟でありデータサイエンスのバックグラウンドを持つCTOのMichael D’Angeloが、彼らを「この問題に取り組むためのユニークな資質」を提供しているのだ。

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(翻訳:sako)

メトロポリタン美術館の収蔵品数十万点が、CC0ライセンスで公開された

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古典的アート作品で、ちょっとしたリミックスを楽しみたい気分だろうか?あなたは運がいい。メトロポリタン美術館が数十万点の作品をクリエイティブ・コモンズゼロ(CC0)ライセンスの下で利用可能にしたばかりだ。つまりそれらをお望みのまま、どのようにでも利用できるということを意味する。

コレクションは基本的には、キュレーターが決定したパブリックドメインのデジタルカタログ作品だ。なので、実際にこれらは既に著作権が消滅したものだ。しかしそれは常に高画質だったり、正式にどのような目的にも使えると公式に認められているわけではない。使用したいと思う作品の下に「Public Domain(パブリックドメイン)」とCC0のロゴがあるかどうかを確認して欲しい。

ドメインあるいはここにあるすべてのパブリックドメインの項目を眺めるのも良いだろう。ただしご注意を。数は膨大だ。どこから手を付ければ良いかわからないときには、インターネットの多くの利用者に魅力的だと思われるカテゴリーが美術館から提供されている。

傑作絵画、猫、モンスターと神話の生き物、メトロポリタン秘蔵品、ニューヨーク市、印象派とポスト印象派、冬のワンダーランド、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ、ラファエル前派スタイル、セルフポートレート、キルト、ゴールド、ジョルジュ・スーラ、武器と鎧、メトロポリタンの男性モニュメント、古代世界の面、ティファニーのガラス、印象的なドレス、アートかデザインか?、そして食器

私がどこからトップ画像を見つけたかおわかりだろうか?

ライセンスの変更に加えて、博物館はまた、デジタル化されたコレクションのメタデータをこのGitHubのアカウントの下に収集している。そして、彼らはクリエイティブ・コモンズ、ウィキメディア、Pinterest、その他とのパートナーシップを発表した(もちろん詳細はこれからだ)。

他の多くの博物館、図書館や教育機関のように、メトロポリタン美術館は、できるだけ多くの人がコレクションをオンラインで入手できるように努力を続けている。しかし巨大なコレクションを、どのような分類方法にせよアップロードすることには、驚くべき労力がかかる筈だ。なのでお気に入りの機関がまだそれに手をつけていないからといって腹を立てないで欲しい。

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(翻訳:Sako)

ロシア発のThngsはモノのWikipedia

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モスクワに拠点をおくThngsは、形のあるものを対象にしたWikipediaのようなサービスを開発している。しかし、現在同社がマネタイズの方法を模索していることを考えると、Wikipediaの哲学に共感している人はこの対比に納得がいかないかもしれない。

まずは美術館をターゲットとしているThngsは、高画質な写真や説明と共にモノをデジタルに保管することで、その情報を永遠に保存できるようなサービスをつくろうとしている。

同社は既に、ロシア国内のふたつの美術館(Polytechnic MuseumMoscow Design Museum)と契約を結んでいるほか、美術館やメーカーがオンラインコレクションを作成する際に使えそうな”Shows”を何十種類も準備している。

「Thngsは、モノ(Things)に関する情報を集めて共有するためのサービスです」とCEO兼共同ファウンダーのDima Dewinnは説明する。「Thngs上では、簡単かつ快適にモノの情報を発見し、共有し、保存できるようになっています。美術館やコレクター、ブランド、メーカーは、Thngsを使うことで、現実とほぼ同じようなエクスペリエンスを提供し、ターゲット層にリーチすることができます」

Dewinnによれば、Thngsの資金調達はこれまで上手くいっておらず、事業に必要なお金は全て自己資金からまかなわれてきた。「私たちはこれまで何度かロシアの投資家とミーティングの場を設けてきました。といってもロシアの投資家という存在自体、神話みたいなものですけどね」と彼は話す。「ロシアの投資家からは、Thngsのような複雑なサービスを構築するのは不可能だし、万が一サービスが完成しても儲からないと言われました。一方アメリカのVCからは素晴らしいサービスだと言ってもらったんですが、彼らの投資を受けるにはアメリカに拠点を移さなければいけないんです」

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外部から投資を受ける代わりに、Thngsは主要な機能の開発に注力し、それをマネタイズする方法を編み出した。実は美術館は、コレクションの電子化や電子化されたコンテンツを効果的に使うためのツールという、まさにThngsが提供可能なサービスを必要としていたのだ。「メーカーも同じニーズを持っています」とDewinnは話す。

そのような企業のために、Thngsは、高画質な写真や360度画像の制作をサポートするとともに、一般の人に馴染みがある形式でコンテンツを公開できるツールを提供している。さらにThngsは、Getty Imagesとパートナーシップを結び、顧客(美術館、ギャラリー、コレクターなど)がコレクションの写真や360度画像、3DモデルなどをThngs経由で販売できるようなサービスを間もなくローンチする予定だ。

「全てのモノを物理的に保存することはできませんが、私たちはモノに関する情報であれば保存できます。モノのWikipediaとして開発されたThngsには、全てのアイテムに個別ページが割り当てられるほか、誰でも編集可能なメタデータや画像、関連ファイルを追加するためのスペースも用意されています。私たちはモノを発見し、収集し、購入できるようなツールの開発を目指しているんです。例えるならば、モノで溢れる現代に誕生したノアの方舟といったところでしょうか」とDewinnは付け加える。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

写真をアートに変えるアプリPrismaから動画フィルターが登場

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写真のアートフィルターアプリPrismaはiOSアプリに新機能をつける。今日から、動画フィルター機能を展開する。

このアプリは、機械学習アルゴリズムを用いて、自撮り写真をアニメ風などに変換することができる。写真を多用なグラフィックアートに変換するこのアプリは、夏にローンチして以来バイラルに広がって、何千万というダウンロード数を達成した。早くも、彼らの後を追うクローンアプリが次々と誕生している。

アートなセルフィーを作る以外に、PrismaのiPhoneアプリでは、15秒以内の短い動画をアニメーションに変換することができるようになる。現在、9つのスタイルのフィルターが利用でき、フィルターを選択すると、アプリのAIアルゴリズムが1フレームずつ動画を変換していく。

退屈な家の廊下の動画も、数分でまるで動くコミックのようになる(この動画クリップに関しては)。

動画はアプリから撮影するか、カメラロール内の動画を選択することができる。Prismaの動画フィルターを利用するためにはiOS 10が必要だ。また、動画の長さや解像度、使用しているiPhoneモデルによってはフィルターをかけるのに1分以上かかる場合もあり、それを待つ忍耐力が求められる。

Androidユーザーはもうしばらく待たなくてはならない。Androidアプリの動画対応はこれからだ。

Androidアプリにはまず、オフラインで写真にフィルターをかける機能を追加すると、共同ファウンダーのAram Airapetyanは言う。「その後動画開発をします」という。「Androidは手強いのです」と付け足した。

iOSのPrismaアプリで動画にフィルターをかけるには、iPhone 6で約2分、iPhone 6sで55から60秒、iPhone 7で30秒ほどとAirapetyanは言う。ただ、私が試した動画は、彼の言う平均時間よりたいてい少し早く完成した。

全ての処理は、デバイスのローカルで行うので、モザイク調、ムンク調、漫画風アニメ調など、色々な動画リミックスを楽しむとiPhoneのハードウェアが多少熱を持つことになる。

今後iOSアプリには、GIF作成機能を搭載するとPrismaはいう。これは、動画をループ再生するもので近々公開するという。今月後半という話だ。

荒削りな部分も

iOS版におけるPrismaの動画フィルター機能は、現段階ではベータローンチだ。Airapetyanは、動画の品質を改善させたバージョンを展開すること、そして動画クリップを彩るアートフィルターの種類も直に増やすと話す。Prismaの写真で使用できるフィルターを動画でも利用できるようにし、それに加え新しいフィルターも追加する考えだそうだ。

動画フィルターを展開しているのは、もちろんPrismaだけではない。写真加工アプリのPicsArtを手がけるスタートアップは、Prismaより先に動画フィルターを出した(ただ、PicsArtの場合、動画フィルター機能は、彼らにとって2つめのスタンドアローンアプリとなるMagic Videoとして展開している)。

しかし、Airapetyanはライバルの施策は特に気にしていないという。「私たちのアプリはより早く、良い仕上がりです。現段階でローンチする動画フィルターはまだベータ版で、最終的な品質はもっと良くなります」とPrismaの動画フィルターはPicsArtとどのように対抗するかについて聞いた時、彼はそう答えた。

「また、数週間内に写真フィルターの品質も向上させる予定です」と彼は言う。

売り言葉に買い言葉だが、Prismaは最初にバイラルな広がりを獲得したものの、今は競合の機能展開に追いつかなければならない。

Prismaのベータ版の動画フィルターは、品質にまだ荒削りの部分もある。Magic Videoではより洗練された動画が期待できる。ただ、個人的にはたくさんの設定やレイヤーを選択するMagic VideoよりPrismaのシンプルなインターフェイスの方が好みだ(もちろん動画編集の選択肢やツールは多い方が良いと思う人は反対意見だろう)。

ローンチ前にPrsimaの動画フィルターを試してみたところ、いくつかの仕上がりはまだ多少荒く、Prismaの写真のアートフィルターに比べると一目で惹かれるような結果ではなかったように思う。動画もややチカチカする印象だ。

とはいえ、写真のアートフィルター同様、フィルターによって動画の仕上がりがかなり違うので、良い仕上がりになったフィルターもある。いくつか違うスタイルを試して遊んでみるといいのが見つかるだろう。

私の場合少なくとも1つは満足できたり、面白いと思えるフィルターを見つけることができ、動画加工を楽しめた。ただ、撮ったセルフィーにすぐにアートフィルターをかけてシェアする楽しさに比べると、一気にバイラルで広がる力は劣るかもしれない。

ここにいくつか作ったテスト動画を載せた。上から「Gold Fish」と「Scream」のフィルターを使用している。


音楽グループTweedはPrismaの技術を使って長い動画を制作している(ただ、アプリでは15秒できっかり処理が止まる仕様なので、今の段階でPrismaアプリから直接長編動画を加工することはできない)。

Prismaのアプリは動画でも写真でも、PicArtの2つのアプリが提供するような細かい設定はできない。しかし、私が思うにPrismaのシンプルさがバイラルな広がりを実現した要因であると思う。また、いくつか写真を加工するのに登録する必要もない。ただ、これも好みによるもので、もっとたくさんの機能を備えた写真加工アプリが欲しいのならPrismaは適していないと言えるだろう。

写真のフィルター効果に関しても、私はPrismaの仕上がりの方が好きだ。PicArtの仕上がりは少し派手になりすぎると感じているからだが、これもまた個人の好みによる。

Prismaは1つの機能に特化したアプリにも関わらず(あるいは、特化しているからこそ)、ダウンロード数を引続き増やすことに成功している。TechCrunchに対し、ローンチから3ヶ月で7000万ダウンロードを突破したという。

8月の時点では5500万超のダウンロードだった。Prismaは開発を継続するためにVCからの資金調達を行うのではないか、あるいはInstagramやSnapchatといったソーシャルプラットフォームが自社のコンテンツ制作人材を強化するために彼らを買収するのではないかという噂が早くも流れていた。

現時点までにPrismaはどちらも行っていない。その代わり、彼らはアプリで利用できるスポンサードフィルターでマネタイズを図っている。

現在、1つのスポンサードフィルター「Gett」をローンチしている。また、他のフィルターも今月には追加する予定だ。Prismaのチームは大型の資金調達を行なっている様子もない。

「調達しなくても大丈夫だと思っています」とAirapetyanは、資金調達は検討していないのかという単刀直入な質問に対して回答した。数千万ダウンロードを達成した新入りアプリは、自社のソーシャルプラットフォームを持っておらず、他のパクリアプリが彼らの牙城を狙っている。クールな機能を持つアプリが持続可能なビジネスに転換できるかはまだ分からない。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website