YouTubeが新型コロナポリシーに違反した英TalkRadioの追放処分を撤回

YouTubeは、ニュースと時事問題をカバーするNews Corp(ニューズコープ)が所有する英国の全国ラジオ局であるTalkRadio(トークラジオ)のアカウントに関して、物議を醸していた追放処分を撤回した。

TalkRadioは米国時間1月5日、YouTubeのチャンネルが削除されたことを明らかにしたが、説明は受けていないと述べた。

広く知られた全国放送局のアカウントを一時停止するという決定は、新型コロナウイルス(COVID-19)についての誤った情報に関するYouTubeのポリシーに関連しているようだ。ロイターによると、TalkRadioのプレゼンターの何人かが新型コロナの拡散を遅らせる政府の措置について過剰または間違った方向性だとして批判的だったとのことだ。

しかし、全国放送局を追放するというテック大手の決定は、閣僚であるMichael Gove(マイケル・ゴーヴ)氏によってすぐに批判された。同氏は1月5日、TalkRadioについて触れ、新型コロナに対する政府の政策について質問する権利を擁護した。

i newspaperによると、この追放措置はNews CorpのRupert Murdoch(ルパート・マードック)会長からの介入も招いた。マードック氏はGoogle(グーグル)が所有するYouTubeに対し「危険な前例」「言論の自由と合法的な全国的議論の検閲」と非難したという。

YouTubeの広報担当者は、TalkRadioのアカウントを復活させたことを認めた1月6日の声明で次のように語った。

TalkRadioのYouTubeチャンネルは一時的に停止されていましたが、さらに検討した結果、現在は復活しています。YouTubeは、コミュニティーガイドラインに違反するとしてフラグを立てたコンテンツを迅速に削除します。その中には各国の保健当局や世界保健機関の専門家のコンセンサスと明確に矛盾する新型コロナウイルスに関するコンテンツを含みます。教育、ドキュメンタリー、科学、芸術目的で投稿されたまたはそう見なされた資料は例外とします。

YouTubeが、TalkRadioの復活を正当化する際にどの例外を適用したのかははっきりしない。ラジオでの主張はコンテンツによってあらゆるカテゴリーに渡るためだ。

iによると、TalkRadioは以前、YouTubeのポリシー違反で2020年10月と12月に処分を受けていた。短い停止につながった3回目の違反は、ホストの1人であるJulia Hartley-Brewer(ジュリア・ハートリー・ブリューワー)氏と元国立教育連合会会長のAmanda Martin(アマンダ・マーティン)氏の間で行われた、新型コロナワクチンの最優先権を教師に与えるべきかどうかについてのインタビューに関連していると考えられる。

TalkRadioの追放の取り消しは、表現の自由への懸念と衝突してきたテック大手のモデレーション(コンテンツのモニタリング)に関する決定、という長い物語の最新例だ。プラットフォームが残すと選択するものは、多くの場合、物議を醸す可能性がある。新型コロナに関する誤った情報がオンラインで拡散・増幅されることによる公衆衛生のリスクへの懸念は、間違いなくいつものようにプラットフォームモデレーションビジネスにとって新たな落とし穴となった。

共通する懸念事項は、力を持つ民間団体だ。それらは(英国の)報道機関と同じような統制を受けておらず、「許容できる言論」のレバーの上に手を置いて引き続き自分たちでコントロールしている。

ただし、英国では変化が起こりつつある。政府は、ビッグテックをOfcomの規制下に置く法案を準備している。そしてTalkRadioが以前の声明で指摘したように、その放送はすでにOfcomによって規制されている。

2021年に議会へ提出される予定のオンライン安全法案は、違法で有害な幅広いコンテンツからユーザーを保護するため、テックプラットフォームの「注意義務」を提案している。

この計画では、Ofcomはプラットフォームのコンプライアンスを監視し、コンプライアンスに準拠していないデジタルサービスへのアクセスをブロックする権限と、違反に対して巨額の罰金を課す能力を付与される予定だ。

関連記事:2021年提出予定の英国オンライン危害法案の注意義務違反への罰金は年間売上高10%

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TalkRadioYouTubeイギリス新型コロナウイルス

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(翻訳:Mizoguchi

英裁判所がウィキリークス創設者アサンジ被告の米国引き渡しを却下

英国の地方裁判所はWikiLeaks(ウィキリークス)の創設者、Julian Assange(ジュリアン・アサンジ)被告の米国への引き渡しを却下した。

ウェストミンスター治安裁判所で現地時間1月4日朝に行われたヒアリングでVanessa Baraitser(ヴァネッサ・バライスター)判事は、アサンジ被告が自殺を図る恐れがあり、またアサンジ被告の不安定な精神状態に影響をおよぼすことが考えられるという観点から米国の刑務所システムへの引き渡しは過酷だとして、米国への引き渡しを却下した。

ハッキング陰謀、そして議論を巻き起こしているスパイ活動法に反する数多くの罪を行ったとしてアサンジ被告を自国での裁判にかけることを模索してきた米国は控訴すると述べた。

アサンジ被告の裁判は、報道の自由・表現の自由 vs 国家権力の重要なテストとしてみなされてきた。

判決でバライスター判事はアサンジ被告の引き渡しに対する数多くの弁護論を退けたが、アサンジ被告が自殺を図る恐れがあり、自殺を阻止するために導入されうる回避策に対する知性を被告が持ち合わせているという臨床証言に同意した。

「アサンジ氏が自殺を図るかもしれないというリスクは、裏付けがあるものだと確信しています」とバライスター判事は132ページにわたる判決に書いており、そこでは2020年のヒアリングにあった引き渡しについての多くの精神科医の証言についても触れている。

「かなり高いしきい値を要する引き渡しを阻むものとして、抑圧があることを認めます。また、条約上の義務に影響をおよぼすことにかなりの公益があることも認めます。留意すべき重要な要因です。しかしながら、アサンジ氏の自閉スペクトラム症には「1つのことを思い込む」傾向があり、こうした厳しい条件のもとでアサンジ氏の精神状態の悪化が自殺を招くかもしれないことを認めます」。

また「アサンジ氏の精神状態にとって、米国への引き渡しは過酷なものになり得ます」とも書いている。

判決はアサンジ氏の即日釈放を命じているが、この記事執筆時点で同氏は拘留されていて、保釈聴聞会次第となる。

米国は14日以内に控訴できる。

身柄引き渡しを免れようと2012年から2019年にかけてロンドンにあるエクアドル大使館に籠城したアサンジ被告は、同大使館が外交上の保護を中止した2020年に逮捕された。

アサンジ被告は保釈の条件に違反したとして英国の裁判所で有罪となり、禁錮50週がいい渡されていた

米国は、それとは別の罪状でアサンジ被告の引き渡しを要求するとすぐさま述べた。これらの罪状は、元米軍インテリジェンスアナリストで内部告発者のChelsea Manning(チェルシー・マニング)氏がWikiLeaksにリークした機密情報をアサンジ被告がいかに入手して公開したかにともなうものだ。

【更新】米司法省の広報担当はTechCrunchに次のような声明を出し、控訴する方針を明らかにした。「英裁判所の判決に我々は極めて落胆している一方で、米国が提起した法律上の論点で勝利したことには満足しています。特に政治的な動機、政治的犯罪、公正な裁判、言論の自由についてのアサンジ氏のすべての主張を裁判所は退けました。我々は引き続きアサンジ氏の米国への引き渡しを模索します」。

関連記事:英裁判所がウィキリークス創設者に50週の禁固刑

カテゴリー:セキュリティ
タグ:ジュリアン・アサンジ裁判イギリスアメリカ

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(翻訳:Mizoguchi

英国のEU離脱を受けFacebookが同国の個人データをEU個人情報保護法の管轄外へ移転

英国の欧州連合(EU)離脱による取引条件の変更が迫る中、Facebook(フェイスブック)は、先行したGoogle(グーグル)に倣って(未訳記事)、英国の数千万人にのぼるユーザーの個人データを、EUの個人情報保護法の管轄外となる米国(そのような包括的な個人情報保護の枠組みを持たない)に2021年に移動させることになっていると、米国時間12月15日にReuters(ロイター)が報じた

この切り替えを認めたフェイスブックは、ロイターに次のように述べている。「他の企業と同様に、フェイスブックはBrexit(英国のEU離脱)に対応するための変更を行う必要があったので、フェイスブックアイルランドから(米国の)Facebook Inc.(フェイスブック・インク)に、英国のユーザーのための法的責任と義務を移転することになります」。

「プライバシー管理やフェイスブックが英国の人々に提供するサービスに変更はありません」とフェイスブックは付け加え、EUから米国への移行は、データとプライバシーの法的保護において大幅な格下げを必然的に伴うという事実を無視した表現を用いている。

ロイターによると、フェイスブックは今後6カ月以内にこの切り替えについてユーザーに通知するという。この法的な変更に不満がある場合、ユーザーはInstagram(インスタグラム)やWhatsApp(ワッツアップ)も含むフェイスブックが提供するサービスの使用を停止する「選択肢」が与えられる。

グーグルが2月に(未訳記事)英国のユーザーに関して同様の法的移行を発表したときにお伝えしたように、EU子会社から米国に移動させるという動きは、EUの基準から離れることを決めた英国の国民投票の結果を受けてのものだ。そのEUの基準の中には、長年維持されてきたデータ保護の枠組みも含まれる。

Brexit移行期間の終了まであと数日となった現在、英国がEUとの貿易協定を得るのか、それとも協定なしで離脱するのかはまだ不明だ。後者の場合、英国はEUからデータの適切性に関する協定も得られない可能性が高まり、データ保護基準に関する将来の乖離が生じやすくなる(EU・英国間における摩擦のないデータフローの維持に向け、継続的な協力を行うための「ニンジン」がないため)。

英国はまた、データを活用した経済復興を望んでいることを明らかにし、9月に(未訳記事)「国家データ戦略」を発表した。これは新型コロナウイルス感染拡大時におけるデータ共有を、復興後の新たな基準とするものだ。

この文書で、英国政府は「国内のベストプラクティスを推進し、国際的なパートナーと協力して、データが国境や分断された規制体制によって不適切な制約を受けないようにして、その潜在能力を最大限に活用できるようにする」ことを計画していると述べている。これはデータ保護の概念全体に影を落とすものだ。

それ以来、プライバシーの専門家たちは、(EU離脱後の)日英貿易協定が英国の既存のデータ保護体制(これはいまのところ、転換されたEUの規定に基づいている)を弱体化させており、Open Rights Group(オープン・ライツ・グループ)が2020年11月に警告した(Open Rights Groupブログ)ように、「データ保護の取り決めが弱い、または自主的に行っている」国への個人データの流出を可能にするおそれがあると、懸念を表明している(Open Rights Groupブログ)。

米国は、データ保護のための包括的な枠組みを欠いている国の1つだ。カリフォルニア州は独自の消費者プライバシー法を可決し、11月には住民投票でこの制度を強化することを決めている。しかし、連邦レベルではGDPR(EU一般データ保護規則)に相当するものはまだない。

英国のEU離脱後の基準がどこに向かっているのかという不確実性が非常に強いため、グーグルやフェイスブックのような大手テック企業が、EUのプライバシー規則の下における責任を軽減する機会を得ようとしていることは不思議ではない。フェイスブックの場合、ダブリンにある子会社の管轄から4500万以上の英国ユーザーを削除することになる。

ヨーロッパの最高裁判所が下した最近の「シュレムスII」判決(未訳記事)もまた、個人データをEUから米国へ転送することに関する法的リスクと不確実性を増大(未訳記事)させており、フェイスブックにその英国における契約条件を再構築するためのもう1つの潜在的な理由を与えている。

もちろん、英国のユーザーが失うプライバシー保護を考えれば、これはあまり良いことではない。

しかし、今回問題なのは、巨大テック企業ではなくBrexitの方だ。Brexitはこの場合、英国のユーザーは2021年から、自分たちの政府が米国のような国と貿易取引を結ぶために、国家のプライバシー基準を廃棄すると決めないように祈らなければならないことを意味する。フェイスブックが自分たちのプライバシーの利益に気を配ってくれると信じつつ(未訳紀伊J)。

そう、英国のデータ保護法は適用され続ける。幸運(未訳記事)にも英国個人情報保護監督機関(未訳記事)があなたの権利のために立ち上がってくれたらだが。

しかし、EUの法律によって定められている包括的な保証は2021年に消え失せる。

2018年に成立した米国のクラウド法(未訳記事)では、すでにインターネットサービスの利用者に関するデータを、捜査目的などで英米の機関が容易にやり取りできるようになっている。

その一方で英国政府には、監視社会(未訳記事)や暗号化への攻撃(未訳記事)に対する憂慮を巻き起こした実績もある。

英国が新たに打ち出した、インターネットサービスを規制する「子供の安全に焦点を当てた(未訳記事)」計画では、コンテンツ監視やIDチェックを義務づけるため、強力な暗号化を使用しないようにデジタルサービスに圧力をかけているようにも見える。

つまり、Brexitとは、簡単にいえば、英国人のプライバシーとオンラインの自由を速やかに減らし、データの分野におけるコントロールを取り戻すことの反対を意味するようになっているということだ。

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タグ:イギリスEUFacebookGoogleプライバシー個人情報GDRPBrexit

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(翻訳:TechCrunch Japan)

大手銀行出身者のデータプライバシー専門スタートアップeXateが3.2億円調達

データのアクセスや共有は大きな企業ほど複雑な問題で、しかもそのセキュリティとコンプライアンスが多くの場合難題だ。ロンドンのデータソフトウェア企業eXateはこの問題に取り組んでおり、このほどOutward VCがリードするシードラウンドで230万ポンド(約3億2000万円)を調達した。これにはING VenturesとTriple Point Venturesが参加した。

eXateは、データプライバシー問題のそれぞれ特定の側面に特化しているHazyやPrivitar、そしてVery Good Securityなどと競合している。eXateによると、同社はこれらとは対照的に、複数のタイプのプライバシー問題を1つのソリューションにまとめて、集中管理的な統轄と制御を提供している。

eXateを創業したのはPeter Lancos(ピーター・ランコス)氏とSonal Rattan(ソナル・ラタン)氏で、どちらも大銀行HSBCでデジタル事業を担当していた。英国の伝統的な銀行であるINGも同社のクライアントで、新しい投資家でもある。

「大量のデータを保存し処理する企業は、データの共有に関して多くの難問に直面している。私たちの見解では、考え方や方針が統一されていないことが最大の障害です。個々の部門や事業所にしか通用しないソリューションを複数使用しているのでコストが高くつき、また国によって異なる複雑なポリシーを監視することも重なって、データ関連プロジェクトの開発所要時間と予算が高騰しています」とCEOのランコス氏は声明で述べている。

今回の資金でeXateは、チームを大きくしてDataSecOps(データセキュリティのオペレーション部門)の需要に大規模に対応できるようになる。またプラットフォームの開発を加速して、新たな国や業種にも進出できる。

Outward VCの投資家Andi Kazeroonian(アンディ・カゼロニアン)氏は今回の投資について「データを利用して顧客や投資家に価値を提供したいと願う企業にとって、機密データの確実な保護はミッションクリティカルなチャレンジだ。eXateのユニークなプラットフォームは、企業にデータのプライバシーを確保し保護するために必要な、最初からそのために設計されているツールを提供する」とコメントしている。

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タグ:eXate資金調達イギリス

画像クレジット:eXate

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

退役軍人がサイバー&テックの分野で働けるよう英国の2つの非営利団体が協力

技術の進歩とサイバー脅威の増加は、膨大な雇用機会を生み出している。しかし、英国では、英国軍退役軍人で労働年齢(16~64歳)にある95万2000人と、年間1万5000人の軍退職者のうち、技術やサイバー分野で働いている人はわずか4%にすぎない。これは退役軍人以外の人口と比べると20%も低い。退役軍人の失業者や不完全就業者が英国経済に与えるコストは、5年間で15億ポンド(約2100億円)と見積もられている。それはつまり、これらすべての才能、文字どおり現在の世界のような目まぐるしく激動している状況に適応できるために訓練された才能が、無駄になっていることを意味する。特にビジネスと社会の大規模なデジタル化が進みつつある今のような時代において、これは大きな問題だ。

そういうわけで、英国のRFEA(Force Employment charity)が、退役軍人のためにサイバーセキュリティとテクノロジー分野への橋渡しをするために設立された非営利団体「TechVets」との新たなパートナーシップを開始したことは、大きな意味がある。

RFEAの支援を受けてTechVetsは、「技術に興味のある」退役軍人や中途退職者のために、新たに設けられたTechVetsアカデミーを通じてネットワーキング、メンタリング、サインポスティング、トレーニングサービスを提供し、広範な無料の新しいスキルアップや仕事の機会を創出していく。

この発案は時宜を得たものだ。英国の退役軍人は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による経済的影響と、2021年3月に予定されている一時帰休制度の終了により、17万3000人以上が危機にさらされていると推定されているからだ。

2018年の創設以来、TechVetsは6000人以上のメンバーと英国各地のいくつかの「チャプター」からなるコミュニティに成長した。

TechVetsは、サイバー / テクノロジーに初めて触れる人が自分に最適な道を選択できるように、オープンソースのリソース、パートナーによるトレーニング、コミュニティによるサポートを組み合わせて活用している。退役軍人や中途退職者はすべて無料で利用することができる。

画像クレジット:TechVets

TechVetsのプログラム・ディレクターを務めるJames Murphy(ジェームズ・マーフィー)氏(写真上)は、2019年の退役軍人である。同氏は2000年にロイヤル・アングリアン連隊第1大隊に入隊し、2013年にアフガニスタンのヘルマンド州で生涯残る負傷を負った後、情報軍団に移った。

「軍の役割を担ったことのある者は誰でも、安全保障の現場で働くことの繊細さを理解しています。退役軍人はまた、新しい技術を学ぶ能力を生得しており、迅速に仕事ができ、簡単にチームに溶け込むことができる天性の問題解決能力を持っています。元軍人はまた、プレッシャーのかかる状況や時間に追われる状況をやりがいと感じられる種類の人々です。これらのソフトスキルは、セキュリティおよびテクノロジー業界では素晴らしい資産であり、この分野で現在不足しているスキルを埋めることができます」とマーフィー氏は声明の中で述べている。

RFEAのAlistair Halliday(アリスター・ハリデイ)最高経営責任者は、次のように付け加えた。「TechVetsプログラムは、RFEAのサービスに新たに加わった素晴らしいプログラムであり、才能のある退役軍人に、これまで見過ごされていたかもしれない技術やセキュリティに携わる職務を検討するように働きかけることは間違いありません。また、退役軍人がより幅広い職務に就けるように、デジタル技術を向上させるのにも役立ちます」。

TechVetsメンバーのGareth Paterson(ガレス・パターソン)氏は1994年に陸軍に入隊した。戦車兵から始まり、2001年に教官として王立電気機械工兵学校に移籍。北アイルランド、旧ユーゴスラビア、アフガニスタンでの作戦視察を終え、2018年に退役した。彼の人生はTechVetsによって変わったという。「私は24年目のキャリアを終えたときに陸軍を辞めました【略】その後どのような道に進むべきか、手がかりがなかったのですが、そんなとき攻撃的サイバーセキュリティとペネトレーションテスト(進入テスト)を紹介されました。TechVetsに参加して、ペネトレーションテストのツールやテクニックを初めて知ることができました。それから私は夢中になりましたよ!TechVetsのみなさんとそのコミュニティのサポートのおかげで、自信をつけ、もっと頑張ろうと思えるようになりました。ペネトレーションテストの資格を取得することができたので、その分野における仕事の展望が開けました。2018年11月から、私はサイバーセキュリティコンサルタントとして働いています」。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:TechVetsイギリス退役軍人

画像クレジット:British Army

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(翻訳:TechCrunch Japan)

英国がファーウェイの5G機器設置禁止を前倒しへ、2021年9月発効

英国政府は、国内の通信会社が中国企業製の5G機器を設置することを禁止する措置の導入を前倒しした。BBCの報道によると、いわゆる「高リスク」とされているメーカーの機器を導入できるのは来年、2021年9月までとなる。

英国はすでにHuawei(ファーウェイ)などからの機器購入を2020年末で禁止すると発表している。中国の監視法の管理下に置かれている企業に対する国家安全保障上の懸念のための措置だ。しかしBBCによると、大臣たちは、政府が既存の5Gネットワークに導入した機器を2027年までに排除することを認めたため、通信企業が今後設置するための機器を備蓄するかもしれないことを懸念している。すでに設置済みの機器の維持は2027年まで許される。

政府が5G機器を国家安全保障上のリスクと特定し、国内ネットワークでの使用を禁止することを可能にする通信セキュリティ法案は12月1日に議会に提案されることになっている。

デジタル大臣のOliver Dowden(オリバー・ダウデン)氏はBBCに「高リスクメーカーの完全なる排除」を進めていると述べた。

2020年7月に英政府は、米国の制裁のために中国の機器メーカーにつきまとうセキュリティリスクをもはや管理できないと述べた。

この動きは2020年1月に発表した方針から180度転換となった。1月の方針では、中国メーカーが英国内ネットワークへの供給で限定的な役割果たすことを認める、としていた。しかしながらこの方針は与党議員からの反対、そしてファーウェイ完全排除のための同盟を強化していた米国からのかなりの圧力に直面した。

高リスクの5Gメーカーの使用を制限するという方針とともに、その結果起こるサプライヤーの欠如が新たなセキュリティリスクを招くという懸念に対処するために新規事業者の参入を促進すると政府は述べた。

5Gのためのサプライチェーン拡充戦略を明らかにしながら、ダウデン氏は「高リスク」メーカーを禁止することは英国があまりにも少ないサプライヤーに過度に依存することになると警告している。

「5Gサプライチェーン拡充戦略は、今後の傾向や脅威に対して耐性があるようにしながら国内の通信サプライチェーンを成長させる透明性のある野心的な計画です。3つの主要目的があります。1つは現サプライヤーのサポート、それから新たなサプライヤーの英国マーケットへの参入の誘導、そしてオープンインターフェースのソリューション開発と展開を加速することです」と同氏は述べている。

英政府は、激しさを増す競争と相互運用性を考慮し、5G拡充計画に2億5000万ポンド(約350億円)を注ぐ。

「この長期的ビジョンの達成は、新たにマーケットに参入する事業者がサプライチェーンに加わること、加速する開発や相互運用展開のモデルを支えるためのR&Dへの投資、そして国際的な協力や各国政府と業界間の政策調整などを阻むバリアを取り除くことにかかっています」と述べている。

短期・中期的には政府は既存サプライヤーのサポートを優先するという。つまり、さしあたってこの戦略の恩恵を受けるのはフィンランド企業Nokia(ノキア)になりそうだ。

ただ、政府は「可能な限り早期に、サプライチェーンを拡充させるプロセスを開始するために新しいサプライヤーを英国マーケットに引きつけることを模索します」と話している。

「アプローチの一環として、政府はサプライチェーンの主要エリアで対応能力を構築するための機会を優先します」とし、さらに「こうした動きを展開する中で、競争があり活気に満ちた通信サプライマーケットという共通の目標を達成するために、英国のネットワーク運営事業者、通信サプライヤー、各国政府とともに取り組むことを楽しみにしています」。

TechCrunchは、英通信会社がファーウェイの5G機器導入を禁止される新たな期限について同社にコメントを求めている。

Huaweiはこれまで同社事業の安全保障上の懸念を否定している。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:Huawei5G英国

画像クレジット:DANIEL LEAL-OLIVAS/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

​英国が過去30年で最大の国防費増額、人工知能とサイバー分野に積極投資

英国は国防費の大規模な増額を発表した。その額は4年間で165億ポンド(218億ドル、約2兆2770億円)であり、30年間で最大の増加となる。Boris Johnson(ボリス・ジョンソン)首相は「一世代に一度の近代化」「後退の時代の終焉」と表現している。

英国の首相は全体的に支出の増加により4万人の雇用が創出されると述べ、英国は欧州で最大の国防支出国であり、NATOでは米国に次ぐ規模の国としての地位を確固たるものにすると付け加えた。

ジョンソン首相は、投資の焦点は戦争を「革命化」することができる最先端技術になると述べ、人工知能とセンサーを搭載したコネクテッドハードウェアが我々の軍事資産を「敵を克服するために設計された1つのネットワークにする」点で重要な役割を果たすことを示唆し、安全保障、防衛、開発、外交政策に関する(現在進行中の)レビューの最初の結論を発表した。

「敵地にいる兵士たちは、センサーや衛星、あるいは無人偵察機によって察知した遠隔地からの奇襲に対する警告を、人工知能を使って瞬時に送信することで、空爆の要請から大量のドローンによる攻撃命令、サイバー兵器で敵を麻痺させるなど最適な対応策を考えたり、さまざまな選択肢を持つことができるようになる」と、ジョンソン首相は米国時間11月19日に開かれた庶民院での講演で述べ、新型コロナウイルスとの接触後も自己隔離を続けていることをビデオ会議で明らかにしている。

「これまでの物流の限界を超えた、新たな進歩が期待される」と彼は続け、軍事技術の向上に投資することの合理性を強調した。「我々の軍艦や戦闘車両は、無尽蔵のレーザーで標的を破壊する指向性エネルギー兵器を搭載するだろう。『弾薬切れ』という言葉は不要になる」。

「各国は戦争における新たなドクトリンをマスターしようと競い合っており、我々の投資は英国を勝者にすることを目的にしている」と彼は付け加えた。

今回の見直しでは、軍事研究開発に少なくとも15億ポンド(約2070億円)、合計58億ポンド(約8000億円)の追加支出が予定されており、ジョンソン首相は「戦争の新しい技術をマスターするように設計された」と述べている。

またジョンソン首相は、人工知能に特化した研究開発センターも新設すると述べている。

英国宇宙司令部も準備中で、2022年にスコットランドから英国初のロケットを打ち上げるなど同国の衛星を軌道に乗せることを目指している。

英国空軍はジョンソン首相が指定した新しい戦闘機システムを手に入れるが、それにはAIとドローン技術が組み込まれる。

彼はまた、英国の情報機関の職員とテロ、組織犯罪、敵対的な外国籍の者を標的とした、サイバー作戦を実行する同国情報機関のメンバーと軍人から成る合同部隊である国家サイバーフォースの存在を認めた。

ジョンソン首相は議員らに対して、「新たな技術への軍事費の増加は、我々の軍隊だけではなく航空宇宙から自動運転車に至るまで広範な民生用途があり、経済発展の新たな展望を開くだろう」と述べており、今回の軍事支出増加が、より社会的技術の進歩に広くつながることを示唆した。

ジョンソン首相の声明を受けて、野党党首である労働党のKeir Starmer(キール・スターマー)氏は、国防と軍隊のための支出増加の発表を歓迎したが、また「戦略のないプレスリリース」を出したと政府を非難、歴代の保守党政権が過去10年間にわたり国防支出を侵食してきたことを指摘した。

「これは戦略のない支出発表だ。政府は、統合的な見直しにおける重要な部分を再び後退させており、政府の戦略的優先事項が明確ではない」とスターマー氏は続け、新型コロナウイルスによるパンデミックの結果として英国が直面している経済危機を考えると、支出の増加分の財源はどうするのか、つまり増税が必要なのか、あるいは国際開発予算など他の分野での公共支出を削減する必要があるのか、と疑問を呈している。

スターマー氏はまた、ロシアに関する報告書(未訳記事)の問題も指摘し、なぜジョンソン政権は、報告書で特定された「緊急」な国家安全保障上のリスクに対処しなかったのかと指摘している。

議会の情報・安全保障委員会による報告書によると、英国にはロシアや他の敵対国がオンラインで偽情報を流し影響力のある作戦を行うことで、民主的な制度や価値観を標的にしていることから生じるサイバー脅威に対応するための首尾一貫した戦略が英国にはないことを明らかにした。

また、ロシアの資金が英国の政党にどれだけ流れ込んでいるのかについても警鐘を鳴らしている。

「首相は、世界的な安全保障上の脅威への取り組み、サイバー能力の向上を口にしている。それは歓迎すべきことであり、我々はこれを歓迎しているが、情報・安全保障委員会が報告書を発表してから4カ月後、ロシアは【略】我々の国家安全保障に対する緊急の脅威をもたらしたと結論づけた」とスターマー氏は指摘した。

これに対してジョンソン首相は、スターマー氏の質問をすべてかわし、彼の批判を「へまをする」と決めつけ、英国の防衛費増額を支持しなかった労働党の元指導者であるJeremy Corbyn(ジェレミー・コービン)氏の下にいたことをを理由に労働党党首であるスターマー氏を攻撃することを選んだ。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:イギリス軍事

画像クレジット:Andrew Brookes

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Juggleが210万ドルを確保、上級管理職の「柔軟な働き方」を促進するSaaSマーケットプレイスの拡大を目指す

ご存知の通り、世界はCOVID-19パンデミックによって大きく様変わりし、一部のスタートアップ企業はビジネスモデルの軌道修正を余儀なくされている。一方で、創業当時は夢にも思わなかったものの、自社のビジネスモデルがこんな時代にほぼぴったりであることが明白になった企業もある。

わかりやすい例として、SaaSマーケットプレイスのJuggle(ジャグル)がある。元々はエグゼクティブレベルの女性が結婚や出産の後に仕事に柔軟に復帰しやすくするためのマーケットプレイスとして設計されたもので、その後さらに、自由に働きたい人やそういったタイプの人材を必要とする雇用主も対象に市場を広げてきた。パンデミックによって世界が一変した今、最も重要とされているのがまさにこの「柔軟性」である。

Juggleの発表によると、同社は英国と米国の投資家から210万ドル(約2億2千万円)の資金を集めたという。これには、英国有数のエンジェル投資家が含まれているほか、Oxford CapitalSocial Capital7percent Venturesも名を連ねている。その他にも、Oculusを支援したAndrew Gault(アンドルー・ゴート)氏、シリアル投資家のAndreas Mihalovits(アンドレア・スミハロヴィス)氏、Magic Ponyを支援したAndrew J. Scott(アンドリュー・Jスコット)氏、Casperを支援したCharlie Kemper(チャーリー・ケンパー)氏、Charlie Songhurst(チャーリー・ソングハースト)氏、Uberの初期メンバーのCurtis Chambers(カーティス・チャンバー)氏、企業家で投資家のPip Wilson(ピップ・ウィルソン)氏、東海岸投資家のRajiv Kapoor(ラジーブ・カプール)氏といったそうそうたる顔ぶれがそろう。

リモートワーク、パートタイム、役割分担など多くの企業が柔軟な働き方へ移行するのに伴い、Juggleは「9時から5時」の勤務時間を基本とする人たちではないプロフェッショナルと企業を結び付けている。

仕事における柔軟性とは、働く時間や場所はもちろん、ジョブシェアリングなどの働き方にも及ぶ。英国の1996年雇用権利法により、26週間以上勤務している従業員には理由に関係なく、柔軟な働き方を要求する制定法上の権利がある。つまり、Juggleにとって状況はそろっている。Avivaの2019年のレポートによると、英国の従業員の5分の1は受け入れられるはずがないと柔軟な働き方を要求するつもりはなく、35%はより柔軟な働き方を雇用主に要求しづらいと感じている。しかし、従業員の5分の1以上がより柔軟な働き方を求めて転職または部署を異動しており、約半分は自分のワークライフバランスのニーズに合った新たな役職が提示されれば変わることも検討するという。つまり、こういった人たちの受け皿となるプラットフォームを用意すれば、同社は他の方法では働きたくないと考えている多くのプロフェッショナル達を拾い上げることができるだろう。

プロフェッショナル達は同サービスにサインアップすると、求人ツールを使って求職の申し込みをスケジュールして管理できるほか、コーチングやサポートも利用できる。またJuggleは「スマートマッチング」や柔軟な働き方に備えるための必要な事務処理の機能も提供する。求人にJuggleを利用する企業は、柔軟な働き方に確実に対応できるか事前に調査されるため、雇用主と雇用者の双方にミスマッチが生じることはない。

かつてヘッドハンターであったRomanie Thomas(ロマニー・トーマス)氏が創設したJuggleの基本使命は、2027年までに企業の経営幹部の50%を女性にすることだという。2017年の創業以来、Juggleによる全職業斡旋の62%が女性であった。

画像クレジット:Juggle

「これまでシニアエグゼクティブのヘッドハンティングで数々の成功を収めてきましたが、その一方で優れた社員が出産のために退職し、なかなか復帰できない様子を見てきました。企業は申し分のない候補者でも、個人の要望に合わせた契約設定が面倒なために採用を見送り、社員は自分にとって最も効率的で生産性の高い方法で働けるようにするための変化を要求することはありません。柔軟性を持つことで人々はエネルギーとスキルを最大限に発揮できるため、これを実現できれば雇用主にとって莫大な利益になります」とトーマス氏は述べている。

Juggleには同社のB2Bプラットフォームを使っている多様な企業が集まっており、Reallife Tech、Hopster、Hubble、White-Hatなどがクライアントに名を連ねている。

7percent Venturesの創設パートナーであるAndrew Gault(アンドリュー・ゴート)氏は次のようにコメントしている。「現在のパンデミックは私たちの仕事のあり方に今後もずっと影響を及ぼしていくことでしょう。私たちが重大な変化の瀬戸際にすでに立たされていたとき、Juggleは先手を打って先回りしていました。多くの雇用主や雇用者が柔軟な働き方に目を向けるようになった今、Juggleは企業と人材を適正にマッチングし、幅広い知識を提供して柔軟な働き方を実現する態勢を完璧に整えています。データによると、優れた柔軟性はだれにとっても有益であり、また優秀な女性たちに上層の役割に就いてもらえるようになるため男女格差にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう」。

TechCrunchのインタビューでトーマス氏は次のようにも付け加えている。「この会社自体、私の個人的な挫折とヘッドハンターをしていて企業の経営層に女性がいないことを肌で感じていたことから生まれました。企業にあるのは男性用の回転ドアだけのように見えました。男女比を均等にするには柔軟な働き方が重要です。Juggleで私たちが扱うセグメントは技術的なものではなく、一般的には技術プラットフォームの対象外です。しかし、プロフェッショナルが柔軟な働き方でキャリアを積上げられる環境を作ることには、製品としてのチャンスがあります。問題は実際には女性ゆえの問題ではなく、人間の問題なのです。私たちが女性ばかりに注目してしまうと、私たちがやっていることはすべて男女の役割を固定させてしまうことになります」。

同氏によるとJuggleは、現代の労働者の需要に適応していない従来型の人材紹介業界にもその手を伸ばすつもりだと言う。「私たちが直面している労働力の問題は技術プラットフォームを使って解決する必要があります。そもそも問題を作った従来型の業界だけでは何も解決しません」。

パンデミックを受けた今、性別や多様性に対する時代遅れの姿勢によって後れを取っているこれら既存の産業に立ち向かうスタートアップに終わりはないように思われる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:SaaS 資金調達 イギリス

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(翻訳:Dragonfly)

英国のMarshmallowが評価額3億1000万ドルで3000万ドルを調達、より「包括的な」自動車保険を目指す

特定の顧客に提供するサービスの種類や価格設定を導くのにアルゴリズムを始めとする計算手法を用いることに関して、保険業界は最も古い活用歴を持つ業界の1つである。しかし、その伝統的なポジションの水面下には、そうした手法による測定の中に改善の余地があるという事実が存在する。プロファイルに適合しない顧客に競争力のある価格を提供できていないからだ。

英国のスタートアップMarshmallowは、リスクを判断する新しいアプローチでこれらのレガシー保険会社大手に挑戦することを展望し、3000万ドル(約31億円)の資金調達ラウンドを発表した。自動車保険からスタートした同社は、より幅広いアナリティクスとシンプルなモバイルやウェブネイティブのインターフェースを活用して、十分なサービスを受けていない市場セグメントをターゲットに展開している。今回調達したシリーズA資金を用いてダイバーシティとインクルージョン(多様性と包括性)を重視した事業拡大を継続し、今後18ヶ月のうちに、より広範な種類の保険を対象国を拡大してローンチする計画だ。

同社は今回のラウンドで3億1000万ドル(約321億円)の評価を得たとみられているが、現時点では市場浸透と成長という観点から顧客数を明らかにしていない。保険業界は巨大産業であり、McKinsey(マッキンゼー)の推計によると、2017年の保険料は全世界で4兆ユーロ(約49兆円)以上であった。一方Allianz(アリアンツ)は最近の報告書の中で、COVID-19による経済不安の結果、市場は今年「冷え込んだ」が、それはまた、新技術と新たなアプローチの傾向を加速させていると指摘した。それに加えて、全体的に巨大な市場のわずかなシェアでも大きな収益につながるという事実は、Marshmallowが注目すべき挑戦者であることを意味する。

同社は今回のラウンドの参加者の名前を明らかにしていないが、著名なフィンテック支援者と、大手金融機関の1つが名を連ねているようだ。PitchBookによると、Outrun Venturesのほか、匿名の投資家がこのラウンドに参加している。以前の支援者はPassion CapitalとInvestecだった。

Marshmallowは2018年、外国人居住者をターゲットにした製品を携えて登場した。英国の保険会社は通常、保険料を決定する際に被保険者の英国での実績を評価するが、それはつまり、海外から英国に移住した成人の場合、履歴は良くとも悪くとも関係しないということだ。同社はそのロジックに着目した。Marshmallowの解決策は、国のデータだけでなく、グローバルなデータを組み込んだ評価アルゴリズムを構築することだった。

同社の共同創設者兼CEOであるOliver Kent-Braham(オリバー・ケントブラハム)氏は当時、TechCrunchに次のように語っている。「自動車保険では概して、人の運転能力、運転歴、現在のライフスタイルを捕捉したうえで保険会社が適正価格を提示する必要があります。残念なことに多くの保険会社は、英国に住む外国人ドライバーを適正に評価することなく彼らに過剰請求しています。英国を拠点とする外国人ドライバーは、市場平均より51%高い提示価格が見込まれています」。

現在ではより幅広い年齢層の、英国で一貫した記録を持たない人たちにもその範囲が広がっている。

「引き続き外国人居住者を対象とした自動車保険を提供していますが、現在当社は21歳から50歳までの人を対象にした保険サービスも手掛けています。これは、住所や信用履歴が断片的で、あまり裕福ではなく信用スコアが低い人たちに対して魅力的な価格と経験を提供することに焦点を当てたものです」と同氏は近況をTechCrunchに語る。「これらの顧客グループはいずれも、従来の保険業界からより高い料金を請求されています」。

ケントブラハム氏自身、規範から外れていることについての意識が高いかもしれない。同氏は双子の兄弟Alexander(アレクサンダー)氏と共同でこの会社を設立したが、両氏は黒人である。アメリカでは黒人の創設者は1%未満であると推定されており、ヨーロッパでも同様に有色人種の創設者の数字は低いものとなっている。なお、David Goate(デビッド・ゴート)氏は3番目の共同創設者である。

実際、Marshmallowの台頭は、少数派の創設者のストーリーとしても、十分なサービスを受けていない社会のセグメントにサービスを提供するという同社のフォーカスにしても、時宜を得たものである。

今年のテック業界の大きな焦点の1つは、ダイバーシティとインクルージョンをより積極的に業界に組み込む方法に関するものだった。米国で黒人が警察に殺害された事件が多発し、社会不安の波が押し寄せたことをきっかけに、経済的、社会的格差にどう対処するのが最善かという問題意識が世界中で高まっている。

テクノロジーの世界では、関係する企業の構成に多様性を持たせることが、より幅広いオーディエンスとニーズに対応するために重要であることが長い間認識されてきた。その意味では、2人の黒人男性が率いる保険スタートアップが、より幅広いユーザーグループのための製品を特定し、構築しようとしていることは驚くことではないだろう。

「当社には、従来の保険会社を悩ませている顧客に保険を提供するためのツールがあります」とアレクサンダー氏は声明で述べている。創業者の1人で現在は会長を務めるTim Holliday(ティム・ホリデイ)氏は、保険業界で長い実績を有する人物だ。既存企業が市場に残したギャップをスタートアップが特定するために同氏は不可欠な存在となっており、Marshmallowは自身の新しいテクノロジーを用いてそれに取り組んでいる。

COVID-19のパンデミックと世界中に広がる不確実性を背景に、前年度はインシュアテックに大きな注目が集まった。

現在の時価総額が28億ドル(約2900億円)を超えるLemonadeの上場に加えて、Hippoの評価額は大幅に上昇し、ターゲット層の選択やモデル化の手法という観点で保険モデルを再考する企業の増加も顕著になってきている。BIMAとWaterdropはそれぞれ、新興市場向けのマイクロ保険と、クラウドファンディング保険サービスのアイデアに注目している。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:イギリス 保険 資金調達

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(翻訳:Dragonfly)

London Business SchoolとLocalGlobeが女性、黒人、アジア人に力を入れる新しいVCコースを発表

今週、英国で開催されているBlack Tech Fest(ブラック・テック・フェスト )に足並みを揃えるように、VC業界に入りたい人たちを教育するための新しいエグゼクティブ教育コースが英国で発足した。このコースはこれまで過小評価されてきたグループ、特に女性、黒人、アジア人、その他のマイノリティを対象にすることを意識している。

このたびLondon Business School(ロンドン・ビジネス・スクール)とヨーロッパを代表するシード投資家の1つであるLocalGlobe(ローカルグローブ)が共同で、VC業界全体が必要とする役割への正式なビジネス教育を提供するために、新しいプログラムを作成した。そのNewton Venture Program(ニュートン・ベンチャー・プログラム)コースは、VC投資家からリミテッドパートナー、エンジェル投資家、アクセラレーター、技術移転担当者までを含む、ベンチャーエコシステムにおける投資側の役割の全範囲をカバーしている。このプログラムの目的は、人びとがベンチャーキャピタル業界に参加できるルートを広げながら、業界のスキルを底上げすることだ。

コースでは性別の割合が半々になることを目指しており、同時に少なくとも半数が黒人、アジア人、その他のマイノリティになるように考慮されている。コースは初心者もしくは中堅を広く対象としている。

毎年、最大60人の学生からなる2つのクラスが用意され、最初のオンラインプログラムは2021年4月に開始される予定だ。また最初の実キャンパスクラスは、2021年10月に開始される予定となっている。世界中のどこからでも応募することが可能だが、大部分は英国、EU、アフリカ、イスラエルからと予想されている。

オンラインのみのプログラムには2050ポンド(約27万9000円)、中堅の専門家を対象としたLondon Business Schoolキャンパスでの対面式プログラムには1万6000ポンド(約217万8000円)の費用がかかる。どちらのプログラムも最大100%の奨学金を利用することができる。

この動きは、英国研究技術革新機構(UKRI)の一部であるResearch England(リサーチ・イングランド)からの助成金によって支えられており、Newtonプログラムは、コースに協力する機関やVC企業を募集している。LocalGlobeとPhoenix Court Works(フェニックス・コート・ワークス)は、20のデジタルスカラーシップを後援することを約束している。

このプログラムに参加することで、受講生たちはa16z、Benchmark、USVなどのトップパフォーマンスを叩き出すグローバルVC企業の専門家、および経験豊富な起業家とその創業チームに直接アクセスすることができる。例えばLuisa Alemany(ルイーザ・アルメニー)氏、Julian Birkinshaw(ジュリアン・バーキンショウ)氏、Gary Dushnitsky(ゲイリー・ダシュニツキー)氏、Florin Vasvari(フローリン・バスバリ)氏といった、VC業界の学術的権威者たちが重要な概念を教え、ケーススタディのディスカッションを主導し、参加者たちと最新の研究知見を共有する。

そして現役投資家とエコシステムの専門家たちが、取引を見つけ獲得する方法、ベンチャーの財務および法務、資金管理、ポートフォリオ企業を支援する方法といったテーマで、クラスを指導する。学生はまた業界の円卓会議、近隣の会合に参加し、Newton同窓会ネットワークの一員になることができる。

始まりと終わりがLondon Business Schoolで開講されるキャンパスプログラムは、トータル5年から15年の実務経験を持つ人間を対象としている。これには、すでに投資家である者だけでなく、投資家になりたいと考えている強力な運用バックグラウンドを持つ参加者も含まれる。シラバスに含まれるのは、スポンサーVC企業での研修、一流のベンチャーキャピタル投資家やリミテッドパートナーの側での実習、そして技術移転オフィス、アクセラレーターオフィス、その他のパートナーやスポンサーとの協業体験などだ。各参加者はフィンテックからAIまで、特定の業界とテクノロジーをカバーする1対1のメンタリングや徹底した詳細コースの恩恵を受ける。

Atomico(アトミコ)の信頼されているState of European Tech(ヨーロッパテック企業の状況)レポートによれば、ヨーロッパの創業者に黒人の占める割合はわずか0.9%に過ぎない。また、より広いITセクターであっても、それほどぱっとはしていない。英国コンピュータ協会(The Chartered Institute for IT)によれば、2019年の英国には26万8000人の黒人、アジア人、その他のマイノリティ(いわゆるBAME)のITスペシャリストがいた。これは全IT従事者の18%を占めていて、過去5年の間に(16%だった2015年と比べて)2ポイント上昇している。

Diversity.VCによれば、2019年にはベンチャーキャピタルで働く人材のうち、女性はわずか30%に過ぎなかった。英国ビジネスバンク(The British Business Bank)が発表した2019年のレポート(UK VC Female Founders)によれば、英国で投資されたベンチャーキャピタル投資のうち、女性創業者だけで構成されているチームに投資された額は、1ポンド(約136円)あたり1ペンス(100分の1ポンド=約1.36円)未満に過ぎない。

Newton Venture ProgramのエグゼクティブディレクターであるLisa Shu(リサ・シュウ)氏(上の写真)は声明で次のように述べてる。「世界をリードする次世代のハイテクビジネスを見つけるためには、投資家は私たちの社会の良き代表となる必要があります。【略】Newton Venture Programは次世代の投資専門家を育成する機会であり、ベンチャーキャピタル投資をより広く、より代表的な範囲の意見と経験に対して開放するのです」。

デジタル文化大臣であるCaroline Dinenage(キャロライン・ダインネージ)議員は次のように語る「投資家は、起業家がビジネスの夢を実現する過程における財政的支援とガイダンスによって、テクノロジーセクターで重要な役割を果たしているのです。このセクターは、社会を反映する必要があります。それが正しい事だというだけでなく、ビジネスとしても理に適っているためです。なので、今回の新しいコースの創設は、多様性を高め、あらゆる分野の創業者が成功する機会を増やすための歓迎すべきステップなのです」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Newton Venture ProgramLondon Business SchoolLocalGlobeイギリス

画像クレジット:Lisa Shu, Newton Venture Program

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(翻訳:sako)

車載ホログラフィック・ディスプレイ開発の英国Envsicsが約53億円調達、Jaguarランドローバーへの搭載目指す

VR(拡張現実)技術の実現可能なビジネスモデルとはどんなものか、まだ世間は模索を続けている状態だ。そんな中、英国のあるスタートアップは、車の中に大きな市場があると見定め、ホログラフィック・ディスプレイとというかたちで賭けに出た。米国時間10月7日、言うなればその「ビジョン」を実現させる戦略的投資家による巨額投資の発表に漕ぎ着けた。

Envisicsは(エンヴィシクス)は、コンピュータービジョン、機械学習、ビッグデータ解析、ナビゲーションといったテクノロジーを自動車用のホログラフィック・ヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)のためのハードウェアに統合し、マップ表示やナビゲーションガイド、危険の警告などの情報をドライバーに示す高度な「ダッシュボード」を提供する。同社は本日、シリーズB投資5000万ドル(約53億円)の調達を発表した。

同社の創業者のJamieson Christmas(ジェイミソン・クリスマス)博士はインタビューの中で、この投資は2億5000万ドル(約270億円)を上回る評価額の段階で実施されたと話している。前回のラウンドによって評価額が「大幅にアップ」したとのことだが、イングランドでロンドンの北西に位置するミルトン・キーンズを拠点とするEnvisicsは、これまで評価額を公表していなかった。

この資金は、すでにこのスタートアップに協力してきた、韓国のHyundai Mobis(現代モービス)、米国のGeneral Motors Ventures(ジェネラル・モーターズ・ベンチャーズ)、中国のSAIC Motors(上海汽車集団)、自動車販売と関連サービスで財を成した米国Van Tuyl Group(バン・タイル・グループ)のファミリーオフィスであるVan Tuyl Companiesからなる企業の強力な戦略的投資家グループによってもたらされた。

Envisicsは、すでに数社の自動車メーカーと手を組み、その技術の車両への導入を進めている。まずは市場のハイエンド層を狙い、「インドのTata Motors(タタ・モーターズ)が所有するJaguar Land Rover(ジャガー・ランドローバー)のモデルに搭載する」とクリスマス氏は話す。その技術を組み込んだ車の量産は2023年から開始される予定だ。

ARスタートアップ各社の足元が揺らいでいるこの時期にあって、今回の投資はEnvisicsの価値を認めるものとなるばかりか、同社の事業が関わる幅広い市場も評価されたことになる。

クリスマス氏がホログラフィック・ディスプレイの世界に足を踏み入れたのは、同氏が創業した最初のスタートアップであるTwo Trees(トゥー・ツリーズ)でのことだ。この会社は、Microsoft(マイクロソフト)とそのHoloLens(ホロレンズ)に抵抗できる優れた技術を探していたARグラスの企業Daqri(ダクリ)によって2016年に買収された(Forbes記事)。

クリスマス氏は、Daqriがヘッドセットに力を入れていた間も、ホログラフィック・ディスプレイを自動車メーカーに売り込む機会を引き続き探り続けていたという。事実、買収された時点でTwo Treesは、すでに自動車メーカー数社を顧客にしていた。

それが2年後の2018年、Envisicsのスピンアウトにつながった。前の企業と同じく、同社は英国のスタートアップとして創設されたが、今回は自動車へのホログラフィック技術導入に特化している。

それは結果的に適時の判断だった。結局Daqriは、ビジネス用途に軸足を置いたことで失敗し、すでにARには厳しい状況になっていた中で資金が底をついて2019年9月に倒産(未訳記事)してしまった。Daqriだけではない。当時犠牲になった企業には、特許や資産を売却に追い込まれたOsterhout Design Group(オスターハウト・デザイン・グループ)とMeta(メタ)がある。

Envisicsは燃え盛る舞台からの脱出に成功したと考えるなら、それは間違いなくフライパンから炎の中に飛び込むのと同じだった(紛らわしい火の比喩で申し訳ない)。自動車セクターには巨額の資金が投入され、次世代の輸送手段として期待が集まる自動運転車で、熱い競争が繰り広げられている。

もしあなたが、ARはまだビジネスとしての着地点を発見していないと考えていたとしても、自動運転車は、彼らの目標地点のずっと彼方にある。人間と同等の信頼できる判断が下せる完全な自動運転車が登場するのは、まだまだ何年も先のことだと多くの専門家は口をそろえる。そもそもその実現性を危ぶむ専門家もいる。

そこで、Envisicsのような技術の出番となる。同社のツールは人間のドライバーに取って代わるものではなく、人間の運転を支援するものであり、今から、最終的に自動車が自律走行をできるようになる未来までのいくつもの段階で同社などの技術は極めて重要で、また面白い役割を担い続けることになる。想像できる範囲内でも、自動車そのものの発達と共に進化していく余地は非常に大きい。例えば今、重要なデータを提供してくれるものが、将来、人が運転しなくてもよくなったときには気の利いた娯楽を提供してくれるようになるかもしれない。

「現代モービスは、2025年の量産を目指して、自動運転に特化したAR HUDをEnvisicsと共同開発しています」と現代モービスの上級副社長兼CTOのSung Hwan Cho(チョ・ソンファン)氏は声明の中で述べている。「私たちは世界の自動車メーカーに向けて、安全性を高め、ドライバーの集中力を削ぐことなく利便性をもたらす次世代型AR HUDを積極的に提案していきます」と続ける。

「GMは、Envisicsのホログラフィック拡張現実ヘッドアップ・ディスプレイ技術に大変に感銘しました」とGM Venturesの社長Matt Tsien(マット・チエン)氏は話す。「この技術は、Cadillac LYRIQのような将来のEVの手放し運転を支援する機能など、さまざまな安全機能や高度に統合された直感的なアプリケーションにより、自動車内の体験に革命をもたらします」

「私たちは、Envisicsの革命的ホログラフィック技術の商品化という冒険の旅に参加できることを、とても嬉しく思っています。そして、彼らと手を組み、中国国内および国際市場の次世代の自動車に、高度なAR HUDを展開できることを心待ちにしています」と、SAIC Capitaiの投資ディレクターMichael Cohen(マイケル・コーエン)は自身の声明で語っていた。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Envisics、イギリス、HUD、資金調達

画像クレジット:Envisics

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(翻訳:金井哲夫)

英国拠点のスタートアップSpacebitがNASAの商業月探査機プログラムで2度目のペイロード輸送を獲得

英国を拠点とするロボットローバーのスタートアップであるSpacebit(スペースビット)が、月への2回目のペイロード輸送の権利を獲得した。NASAの商業向け月輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services、CLPS)プログラムの一環として、Intuitive Machinesが2021年に月面に送ることを計画している着陸船「Nova-C」に搭載されることになる。

Spacebitはすでに、2021年7月にVulcan Centaurロケットを使って月への打ち上げが予定されているAstrobotic Peregrine着陸機で月にペイロードを輸送する権利も持っている。これは、2021年10月に予定されているSpaceXのFalcon 9を使ったIntuitive Machinesの着陸機の打ち上げに続くものとなる。

同社の4本足歩行ローバーのASAGUMO(あさぐも)は、最初のCLPSミッションで飛行することになった。NASAは、最初のCLPSミッションを、アルテミス乗組員による月面ミッションに先立って、民間の貨物と一緒に実験やペイロードを月に届けるための商業的パートナーを調達するために立ち上げている。

今回発表された2回目のNova-C着陸機の打ち上げに向けて、SpacebitはNASAの小型科学モジュールを搭載する車輪付きローバーを準備している。この車輪付き探査車と歩行用探査車はどちらも、Artemis(アルテミス)計画を支援する目的で、月面で利用可能な資源の種類を評価に役立つように設計されている。

これによりSpacebitは、ミッションの主要な目的であるレゴリス(他の惑星の土壌に相当)の構成を評価する機会を何度も提供可能になる。また、ローバーのデザインを変えることで、どちらが任務に適しているかをよりよく評価できるようになる。4本脚のデザインは、歩行型ローバーが凹凸のある表面にも対応できるようにすることを目的としており、溶岩流のチューブなど自然のシェルターや将来の月の生息地創出に適した洞窟のようなエリアを探索することも可能だ。

カテゴリー:宇宙
タグ:SpacebitNASAイギリス

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(翻訳:TechCrunch Japan)

英国のオンライン中古車販売プラットフォームCazooが320億円超を追加調達

英国では、多くの人々は、より多くの社会的な距離を確保するための方法として、現時点では公共交通機関に乗る代わりに車を使用することを選んでいる。車の販売・購入のためのより効率的な方法を構築したスタートアップのCazooは、英国時間10月1日に大規模な資金調達のラウンドを発表した。中古車を閲覧して購入するためのアプリベースの方法を提供する同社は、2億4000万ポンド(約326億円)の資金を集めた。米国のVroomに似たモデルを採用する。

資金調達は、同社が1億1600万ドル(約122億円)を調達してからわずか6カ月後のことだ。Cazooの広報担当者は、同社の評価額が20億ポンド以上(約2715億円)となり、以前の評価額の2倍になったことを確認している。一部の文脈では、同社はこの夏に10億ドル(1050億円)の評価額を確認しており、ほかの人はもっと低い額で見積もっていた。

今回の資金調達は、General Catalyst、D1 Capital Partners、Fidelity Management & Research Company、Blackrockが運営するファンドが主導しており、ほかの新規投資家や既存投資家も参加している。そのリストには、L Catterton、Durable Capital Partners、The Spruce House Partnership、Novator、Mubadala Capital、dmg venturesが含まれている。これにより、同社がこれまでに調達した総額は4億5000万ポンド(約61億円)に達した。

同社は、これが借入のないオールエクイティラウンドであることを強調した。借入は、自動車のような多くの資産を必要とする企業の資金調達において、ビジネスモデルを機能させるために大きな役割を果たす。しかしFairのような自動車販売を根本から変革するほかの会社で見てきたように、負債が株式投資をはるかに上回ることもあるし、Fairで見てきたように大金がビジネスに役立たないこともある。

「今回調達した資金は、チーム、ブランド、インフラを成長させ、英国のすべての消費者のために車の購入をより良いものにしていくための提案を継続的に開発するために使用する」とスポークスパーソンに確認した。

Cazooは、Alex Chesterman(アレックス・チェスターマン)氏によって設立された。同氏は、LoveFilmや不動産販売サイトZooplaを創業した人物だ。ちなみにLoveFilmは、Amazon(アマゾン)に買収され、NetflixのライバルであるAmazon Primeビデオ構築への第一歩として利用された。

なお、Cazooによるとローンチしてから1年足らずで1億ポンド(135億8400万円)の収益を上げ、毎月 「数千台」 の車を販売。配達しているという。ただし、利益が出ているか公表していない。

同社の急成長は、A地点からB地点への移動のために車を所有する人が増えたということだけでなく、新たな関心の高まりから来ている。私はロンドンに住んでいるが、最近の交通事情は間違いなく悪化している。また、従来の車の購入方法につきものだった物理的な接触を避けるために、オンラインで仮想的な方法を探している人たちもいる。

「ここ数カ月で、英国の消費者が当社のユニークで市場をリードする提案を受け入れ続けているため、オフラインからオンラインでの自動車購入へのシフトが加速しています」とチェスターマン氏は声明で述べている。「今回の資金調達は、当社のビジネスモデルとチーム、そして英国市場に対する世界最高の投資家の確信を示すものであり、英国の消費者に最高の自動車購入体験を提供するという当社の計画を実現するための力をCazooに与えてくれます」と付け加えた。

チェスターマン氏の起業家としての経歴は、資金調達やドアを開くのに役立つ。

「アレックスとは、LoveFilmを作っていた頃から17年来の付き合いです」とGeneral Catalystのマネージング・ディレクターであるAdam Valkin(アダム・ヴァルキン)氏は声明で述べている。「アレックスは、テクノロジーで変革を促すことができる大規模な消費者市場を特定し、顧客に焦点を当て、価値、利便性、信頼できるサービスの提供によって変革をリードすることで、キャリアを築いてきました。Cazooでは彼の実績ある戦略で、英国中の中古車購入者の利益のために、今までで最大のチャンスを手に入れようとしています」と指摘する。

D1 Capital Partners創業者であるDan Sundheim(ダン・サンドハイム)は「アレックスとCazooのチームとパートナーを組むことができて興奮しています。彼らは過去のインターネットベンチャーで顧客や株主に莫大な価値をもたらしており、Cazooが中古車業界のデジタル変革を大きく加速させ、英国の消費者の車購入体験を劇的に向上させると確信しています」とコメントしている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Cazooリテールテック中古車販売資金調達イギリス

画像クレジット:Cazoo

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(翻訳:TechCrunch Japan)

元GCHQのデータ科学者が設立したRipjarが金融犯罪を検知するAIに約39億円を調達

幅広い意味でサイバー犯罪に区分される金融犯罪には、詐欺、マネーロンダリング、テロへの資金供与といったさまざまな不正行為が含まれ、オンライン上の脅威の中で今なお最も影響力が大きい犯罪であり続けている。そのような犯罪に対抗すべくデータインテリジェンスのソリューションを構築してきたスタートアップの1つが本日、さらなる成長を遂げるための資金を調達したことを発表した。

英国の政府通信本部(GCHQ、米国のNSAに相当)で諜報業務に従事していた5人のデータ科学者によって設立された英国企業Ripjar(リップジャー)は、シリーズBで3680万ドル(約38億8000万円)を調達した。この資金は、AIプラットフォーム(Labyrinthと呼ばれる)のスコープと事業規模を拡大するのに充てられる予定だ。

リップジャーによると、Labyrinthは自然言語処理とAPIベースのプラットフォームを使用して構造化データと非構造化データの両方を処理するため、組織は分析したいデータソースをプラットフォームに組み込んでアクティビティを監視できる。Labyrinthは、制裁対象リスト、重要な公的地位にある者(PEP)、取引のアラートなどのデータソースを使用して、アクティビティをリアルタイムに自動でチェックする。

リップジャーに近い情報筋によると、今回の資金調達で、同社は1億2700万ドル(約134億円)の価値があると評価されているという。同社も、現在のところ利益を上げていることを認めている。

資金調達は、フィンテック専門の投資会社であるLong Ridge Equity Partners(ロング・リッジ・エクイティ・パートナーズ)が主導しており、以前の投資会社であるWinton Capital Ltd.(ウィントン・キャピタル株式会社)とAccenture plc(アクセンチュア)も参加している。リップジャーの戦略的パートナーであり、コンサルタント/システムインテグレーターであるアクセンチュアは、リップジャーのテクノロジーを使用して、金融サービス部門の多くの顧客と連携している。リップジャーは政府機関の顧客も抱えており、同社のプラットフォームはテロ対策にも使用されている。具体的な名前の公表は拒否されたが、数多いパートナーの中には、 PWC、BAE Systems(BAEシステムズ)、Dow Jones(ダウ・ジョーンズ)のような企業が含まれていることを同社も認めている。

リップジャーのCEO兼CTOであり、Tom Griffin(トム・グリフィン)氏、Leigh Jones(リー・ジョーンズ)氏、Robert Biggs(ロバート・ビッグス)氏、Jeremy Laycock(ジェレミー・レイコック)氏と同社を共同設立したJeremy Annis(ジェレミー・アニス)氏は次のように語る。「急成長中のソフトウェア企業が規模を拡大する際に専門知識とリソースを提供してくれるロング・リッジと提携できることを大変うれしく思っている。この投資は、世界をリードする当社のデータインテリジェンステクノロジーに対する大きな自信と、資産と繁栄を脅かす犯罪行為から企業と政府を守る当社の能力を示すものだ。今回の資金調達により、当社は世界展開を加速させ、顧客に最先端の金融犯罪ソリューションを提供するとともに、Labyrinthプラットフォームを新たなレベルに押し上げることができる」。

同社は、今年は今までで一番変化の大きい年だと言っている。状況から考えれば当然のことである。2020年は新型コロナウイルス感染症の世界的流行にともないオンライン取引への移行が大きく進んだだけでなく、世界経済の引き締めにより金融の混乱や新たな不正行為が増加したほか、この不安定な状況から利益を得ようとする犯罪行為も発生している。

これをうけてリップジャーは、6社の新規企業顧客と契約を締結し、4社の主要な既存顧客との取引を拡大した。現在では世界中に約2万の顧客を抱えているという。

筆者と同じように、読者の皆さんも「Ripjar(リップジャー)」という社名が気になっているかもしれない。この社名に意味があるとすれば、それは、同社の取り組みを暗に示唆するものに違いない。

しかし、広報担当者の説明によると「名前には何の意味もありません。これまでに使われたことのない名前を確実に選択するテクノロジーを使用して名前を付けたのです」とのことだった。

世界有数の金融センターの1つであるロンドンは、興味深いフィンテックスタートアップが生まれ育つ場所として高い評価を得ている。人工知能の分野でも有能な人材を輩出している英国は、フィンテックの保護に役立つサービスを構築するスタートアップにとって非常に豊かな土壌になっているということだ。

リップジャーが資金調達して規模を拡大したのは、詐欺や金融犯罪に対抗するためにAIを構築している他の2社が同じく資金調達し成長を遂げてから数か月以内のことだった。7月には、金融犯罪を食い止めることを目指してデータベースとプラットフォームを構築してきたComplyAdvantage(コンプライアドバンテージ)が5000万ドル(約52億8000万円)の資金調達を発表した。その1週間前には、金融犯罪やその他のサイバー犯罪を検知するためのAIを構築している別の英企業Quantexa(クアンテクサ)が6470万ドル(約68億3000万円)を調達している。

リップジャーは、Palantir(パランティア)のような業界大手だけでなく、この2社のことも競合相手だと考えている。ほとんどの場合、金融犯罪に取り組んでいる大企業は、複数の企業のテクノロジーを同時に使用している。

リップジャーは、より高度なアプローチを取っていると主張している。同社のインテリジェンス部門のディレクターであるDavid Balson(デビッド・バルソン)氏は、競合他社に関する筆者の質問に答えて次のように述べた。「Labyrinthは市場で最も先進的なソリューションであると確信しています。何十年にもわたり国家安全保障局内で犯罪やテロと戦ってきた経験を経て、Labyrinthを開発したからです。犯罪との闘いに特効薬はありません。そのため金融部門や法執行機関で行われている重要な仕事の効率性と有効性を強化するために、何百もの新しい技術を考え出さなければなりませんでした。このような新しい技術には、世界をリードする自然言語処理(NLP)や身元分析機能が含まれています。これらの機能はグローバルな言語とスクリプト上で機能し、構造化データと非構造化テキスト(ドキュメント、ニュースレポート、Webページ、インテリジェンスレポートなど)の間の点を自動的に結びます。これは、この分野でよく見られる情報過多の問題をアナリストが克服するのに不可欠な手段です」。

確かに、単体で特効薬になれないのはリップジャーのテクノロジーだけではない。マネーロンダリングの問題だけでも2兆ドル(約211兆円)の規模があるため(そのうち犯人を特定して、損失を取り戻したものは1~2%のみ)、少なくとも現時点では、銀行や政府などがこの問題に取り組むために複数のリソースを投入するのをいとわないのも当然だ。

ロング・リッジのマネージングパートナーKevin Bhatt(ケビン・バット)氏はある声明の中で次のように述べている。「金融機関、企業、政府機関は、金融犯罪やサイバー脅威にかかわるリスクの増大に直面している。我々は、リップジャーが、自動化によって新たな脅威を発見しつつコンプライアンスにかかるコストを削減できるような人工知能ソリューションを提供できる有利な立場にあると確信している。また、継続的な成長をサポートするために同社とパートナーを組むことができて非常にうれしく思っており、同社のチームと密接に連携し、新しい地域、顧客、垂直市場への拡大を支援することを楽しみにしている」。

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カテゴリー:人工知能・AI

タグ:データサイエンス 資金調達 イギリス

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(翻訳:Dragonfly)

英裁判所がUberのロンドンでの事業継続を許可、ただし18カ月のみ

Uber(ウーバー)はロンドンでの事業免許更新を求めた裁判で勝訴した

英国時間9月28日の判決で、裁判所は配車サービスUberの市交通当局とのやり取りなどを含めプロセスの改善は評価できると認めた。

業界筋によると、新しい事業免許はUberとTfL(ロンドン市交通当局)が共同で裁判官に提案した21の条件付きとなる。

本日の判決では、Uberがどれくらいの期間の事業を許可されるのかはすぐさま明らかにはならなかった。裁判官は判決を出す前にさらなる証拠を求めている。その後、事業免許を18カ月認めたことが明らかになった。18カ月というのは、2017年に許可された5年の事業許可(未訳記事)よりもずいぶん短い。

「Uberは完全ではない。しかし改善が認められる」と裁判官は述べ、次のように付け加えた。「この部門における合理的な事業はこうあるべきということをUberが行っていること、おそらく今後一層そうするだろうということに納得している」。

ロンドンの交通当局であるTfLが、安全上の懸念とハイヤー事業免許を持つにふさわしくないとの理由で、2017年にUberの事業免許を更新しないというショッキングな決定を下したのち、同社は複数年にわたって闘争を繰り広げてきた。

2018年、英国の裁判所はTfLの要件を満たす時間をUberに与えよう(未訳記事)と、暫定的に15カ月の事業許可を認めた。しかし2019年11月、当局は新たな安全問題を指摘し、免許の更新を再び却下した。

こうした措置、そして許可の見通しが立たないにもかかわらず、Uberは上訴することでロンドンでの事業を継続することができた。そして同社はいま、こうした不確実性が過去のものになることを願っている。

上訴でのUberの主な訴えは、事業許可を持つに「ふさわしい」というものだ。同社は、当局の懸念に耳を傾け、過ちから学び、乗客の安全に関連する問題を解決するために大きな変更を加えたと主張した。

たとえば同社は、ガバナンスと資料レビューシステムを改善したと指摘した。ここには長時間業務を行っていないドライバーの凍結、リアルタイムのドライバーID認証、新たなセキュリティチームとプロセス、そしてライセンス状態の漏洩を防ぐことを目的とする「プログラムゼロ」の立ち上げが含まれる。

同社はまた、システムの欠陥が広範なものではなかったとも主張した。システムを悪用したのは、同社のアプリを使用するドライバー4万5000人のうち24人だけだったとした。

そしてUberは現在、効果的かつ積極的にTfLや警察当局と協力していると主張し、過失の隠蔽を否定した。さらには、免許の取り消しは、女性や少数民族、障がい者などストリートハラスメントのリスクを負うグループに「甚大な影響」を及ぼすとも指摘した。

2020年のUberは、当局の監視を妨害するための専用ソフトウェアを開発し、最終的に幹部の刷新につながった有害な社内文化を持った企業からいくらか改善したといってもいいだろう。

しかし、裁判所がUberに与える事業許可の長さを検討するための手順を踏んだというのは興味深い。裁判そのものはUberの勝訴だが、用心深い警告が含まれている。

本日の判決についてのコメントで、法律事務所Taylor Wessingの首席弁護士であるAnna McCaffrey(アンナ・マキャフリー)氏は判決のこの要素を強調した。「治安裁判所はUberが安全性に関するTfLの懸念を解決したことに同意した。しかし事業許可の延長期間についてはUberが求める5年を認めず、議論の余地があるとした事実は、Uberが今後もTfLや裁判所に同社が本当に変わったことを証明すべく真摯に取り組まなければならないことを示している。そうしなければ、Uberは来年また同様の裁判に直面することが予想される」と声明で述べている。

マキャフリー氏はまた、Uberのドライバーは従業員なのか、それとも自営業者なのかという論争で最高裁判所の判決がまだ出ていないことも指摘した。こちらもUberが英国で長く続いている裁判だ。

同社はまた、ドライバーのアルゴリズム的管理に関連する新たな訴訟にも直面している。つまり、弁護士が取り組む仕事はまだ山ほどある。

一方、The App Drivers and Couriers Union(ADCU)はUberの事業免許更新を認める裁判所の決定を警戒しつつ歓迎した。

ただ、ADCUはUberプラットフォーム上で登録できるドライバーの数に制限をかけることでUberの「寡占」を阻止するようロンドン市長に求めた。声明の中で、ADCUのトップであるYaseen Asla(ヤセン・アスラ)氏は「事業規模を抑制することでUberとTfLの双方に、労働者の権利などあらゆる遵守義務が将来守られるようにするための息つく間ができる」と述べた。

アップデート1:Uberは、北欧・東欧担当リージョナルゼネラルマネジャーであるJamie Heywood(ジェイミー・ヘイウッド)氏の声明を明らかにした。「今回の判決はUberの安全へのコミットメントを認めるものであり、当社は引き続きTfLと建設的に取り組む。Uberアプリを使用する人の安全が最も重要であり、ロンドンを前に進めるためにともに取り組む」。

アップデート2:TfLもまたコメントを出し、広報担当は次のように述べた。「裁判所は、Uberが現在、ロンドンでのハイヤー事業免許を有するにふさわしいと判断した。2019年11月の我々の決定の結果、Uberは乗客の安全を向上させるために、そして我々が指摘した問題を解決するために多くの変更を加えた。数多くの条件が付いた今回の18カ月という事業免許でTfLはUberの規則遵守を監視でき、もし基準に満たない場合は迅速に行動を取ることができる」。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー

タグ:Uber TfL 英国

画像クレジット:Carl Court

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(翻訳:Mizoguchi

VRベースの製品デザイン&コラボプラットフォーム開発する英国拠点のGravity Sketchが3.8億円を調達

英国・ロンドンを拠点にVR(バーチャルリアリティ)を活用したプロダクトデザインとコラボレーションのプラットフォームを展開するGravity Sketch(グラビティ・スケッチ)が、370万ドル(約3億8600万円)の資金調達を明らかにした。

このシードラウンドはKindred Capitalがリードし、Point Nine Capitalと既存投資家であるForward Partnersが参加した。これにより同社が調達した総額は540万ドル(約5億6300万円)となった。なお同社は以前、InnovationRCA(英王立美術院の起業家支援プログラム)とJames Dyson Foundation(ジェームズダイソン財団)から助成金を受けていたこともある。

Oluwaseyi Sosanya(オルワセイ・ソサンヤ)氏、Daniela Paredes(ダニエラ・パレデス)氏、Daniel Thomas(ダニエル・トーマス)氏が2014年に設立したGravity Sketchは、物理的な製品の設計、開発、市場投入の方法を変えたいと考えいる。具体的には、分野を超えたチームに3Dデザインソフトウェアを提供し、3Dでのリアルタイムコラボレーションが可能なVRを含め、よりスムーズな方法で「作成、コラボレーション、レビュー」ができるようにする。このアイデアは、特にグローバルに分散しているチームや遠隔地にいるチームの開発サイクルを加速させるのに役立つという。

同社CEO兼共同創業者であるソサンヤ氏は「時間枠が短縮され、消費者はより早く、より多くの機能を備え、より持続可能な生産を求めるようになっているため、コラボレーションの重要性はますます高まっています」と説明する。続けて「また、グローバルに分散した設計・エンジニアリングチームを持つ多国籍企業が急増しており、かつて同じ場所にいたときと同じ精度で製品を提供するは常にネットワークに接続している必要があります。大企業にサービスを提供する中小規模の設計事務所も、ビジネスを獲得するためにはこのアプローチを採用しなければなりません。Gravity Sketchのサービスを利用すれば、国内の顧客ほど頻繁に顔を合わせることができない国際的な顧客から仕事を得られるだけでなく、高い品質でアイデアなどを引き渡せます」と語る。

現在では、製品サイクルの高速化やリモートワークによるプレッシャーに加え、製品設計プロセス自体が常に最適であるとは限らない。また、異なる専門分野やソフトウェアツールを持つ複数のチームが関与し、2Dから3Dへの移行が進められている。「物理的な製品を設計する場合は、3Dでオブジェクトを想像します」とソサンヤ氏。「しかし長年にわたり、私たちはそのアイデアを2D、またはラフな物理モデルを通して再現しなければなりませんでした。すべての物理的な製品は2Dのスケッチから始まり、それをデジタル3Dモデルに丹念に書き起こし、標準的な製造プロセスを経て製造されるのです」と説明する。

Gravity Sketchはこの作業を軽減するために、最初のスケッチの段階からデザイナーをデジタル3D空間に連れて行き、初期のアイデアとそれがどのように発展していくかをコントロールできるようにする。また、デザインチーム全員が同じVR空間に参加することで、時間とリソースを消費する前にデザイナーの視点からデザインを完全に理解することができるという。

「デザイナーはアイデアの段階で、すべての関係者をより正確にその内容を共有できます」と同氏は説明する。「VRを使えば、誰もが3Dで考えているという現実を利用して、すべての設計プロセスに存在する2D化作業を省略できるので、ユーザーは3Dで考え、3Dで作成することができます。これは3DのZoom会議のようなもので、誰もが自分の視点からまだ実現されていない製品を理解するのに役立ちます」と主張する。

さらに、Gravity Sketchで作成されたコンテンツは、デザインの制作工程全体をさらに発展させることができるという。具体的には、同社のデザインは市販のほぼすべてのCADツールに100%の精度で取り込めるそうだ。

現在、Ford(フォード)、日産、Reebok(リーボック)などの世界的な企業がGravity Sketchを使用しており、世界中の60大学や5万人以上のクリエイティブな専門家が使用している。

Gravity Sketchは今回の新たな資金提供によりプラットフォームをスケールアップし、「ハードウェアに完全に依存しない」ものを開発することを明らかにしている。現在、さまざまなVRのハードウェアで動作し、iPad、モバイル、デスクトップ用にベータ版が用意されている。

画像クレジット:Gravity Sketch

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(翻訳:TechCrunch Japan)

スコットランドの宇宙港を規制当局と政府が完全承認、年間12回の打ち上げが可能に

The Northern Times(ザ・ノーザン・タイムズ)の記事によると、スコットランドで初めて計画されていた宇宙港が完全に承認され、建設と運用が進められることになった。この施設は、サザーランドの北部、北大西洋に突き出た半島の上に作られる。ここは、英国初の再利用可能軌道ロケットの開発を目指すOrbex(オーベックス)のロケット打ち上げ施設となる。

この承認には、大量の書類を提出する必要だった。それには、地元規制当局とスコットランド政府に向けた完璧な環境アセスメントも含まれている。完全な承認とは、建設が開始でき、今後数年のうちにここからロケットを打ち上げられる道筋が出来たことを示す。

英国内からロケットを打ち上げられるようになれば、この地域で急速に発展しつつある民間宇宙産業の大幅な拡大が見込まれる。Orbexなどの地元サプライヤーによる小型衛星の打ち上げ事業が始まれば、英政府はロケット打ち上げ能力を手に入れるだけではない。先日、米国の打ち上げ企業が英国の施設を使ったロケットの打ち上げを認可する協定(未訳記事)を両国は取り交わしている。つまり、このスコットランドの発射場には、国際ミッションや大規模なグローバルビジネスを確保する可能性があるというわけだ。

The Space Hub Sutherland(ザ・スペース・ハブ・サザーランド)と呼ばれるこの宇宙港は、英宇宙局からの経済支援を受けることになっているが、比較的小さな施設で、打ち上げ台は1基、制御センター、2.5キロほどの道路を含めても、全体の広さは4ヘクタールほどだ。それでも、次世代の小型軌道ロケットには十分なスペースがある。小型ロケットは小型衛星の運用を専門に設計されているため、SpaceX(スペースエックス)のFalcon 9(ファルコン9)などの既存の民間ロケットのための発射場とは異なり、ずっと小さな施設で事足りるのだ。
画像クレジット:HIE
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(翻訳:金井哲夫)