個人がお金を送ったり受け取ったりするのはとても簡単で、たくさんのキャッシュアプリがある。しかし、ビジネスにおいて企業が10万ドル(約1100万円)を同じように送金するのは容易ではない。
Paystand(ペイスタンド)はこの状況を変えたいと考えている。カリフォルニア州スコッツバレーに本社を置く同社は、クラウドテクノロジーとイーサリアムブロックチェーンをエンジンとして使い、手数料(フィー)ゼロで企業間決済を可能にするPaystand Bank Network(ペイスタンド・バンク・ネットワーク)を構築した。
同社は、NewView CapitalがリードしたシリーズCで5000万ドル(約55億円)を調達した。ソフトバンクのSB Opportunity FundとKing River Capitalも参加した。これにより、同社の資金調達総額は8500万ドル(約93億5000万円)に達したと、Paystandの共同創業者でCEOのJeremy Almond(ジェレミー・アーモンド)氏はTechCrunchに語った。
2008年の経済不況の際、アーモンド氏の家族は家を失った。同氏は大学院に戻ることを決意し、商業銀行業務をどのように改善できるか、デジタルトランスフォーメーションがその答えになるかをテーマに論文を書いた。企業側の視点から自身の会社のビジョンを見つけ出し、Venmo(ベンモ)が消費者向けに提供しているものを、Paystandは中堅の法人企業の顧客の商取引に提供していると語った。
「収益はビジネスの生命線で、お金はソフトウェアになりましたが、収益以外はすべてクラウドにあります」と付け加えた。
アーモンド氏によると、企業の決済の約半分はいまだに紙の小切手で行われており、フィンテックでは2〜3%の取引手数料がかかるカードに大きく依存しているという。同氏は、10万ドル(約1100万円)の請求書を日常的に送付するようなビジネスでそれは維持不可能だと話す。Paystandでは、取引ごとの手数料ではなく、月々の定額制を採用している。
Paystandのプラットフォーム(画像クレジット:Paystand)
一般消費者向けのサービスでは、Square(スクエア)やStripe(ストライプ)といった企業が、買掛金管理に特化し、既存のインフラの上にビジネスプロセスソフトウェアを構築するという手法をとっていた。
Paystandの世界観は、売掛金側の方が管理が難しく、なぜか競合他社が少ないというものだ。だからこそ同社は、ブロックチェーンや分散型金融を原動力とするフィンテックの次の波に乗り、カードに代わる自律的でキャッシュレス、フィーレスの決済ネットワークを提供することで、125兆ドル(1京3750兆円)規模のB2B決済業界を変革しようとしているのだ、とアーモンド氏は語る。
3年間にわたってPaystandを利用している顧客は、平均で売掛金のコストを50%削減し、取引手数料を85万ドル(約9350万円)削減するといった利益を得ている。同社では、毎月のネットワーク決済額が200%増加しており、顧客数も過去1年間で2倍に増加した。
同社は、今回調達した資金でオープン・インフラへ投資し、事業の成長を続けていくとしている。具体的に、アーモンド氏は、B2B決済をはじめとするデジタルファイナンスを再起動し、CFOの守備範囲全体を再構築したいと考えている。
「こういうものがあって欲しいと20年前から望んでいました」アーモンド氏は語る。「時には、こうしたセクシーではない分野にこそ、最大のインパクトを与えられるものがあるのです」。
今回の投資の一環として、NewView CapitalのプリンシパルであるJazmin Medina(ジャスミン・メディナ)氏がPaystandの取締役に就任する。同氏はTechCrunchに対し、このベンチャー企業はゼネラリストではあるものの、フィンテックとフィンテックインフラに根ざしていると述べた。
同氏はまた、B2B決済の分野がイノベーションの面で遅れているというアーモンド氏の意見に同意し、中堅企業のキャッシュニーズをプロアクティブに管理するためにアーモンドが行っていることに「強い確信」を持っている。
「決済業界には広大なブルーオーシャンがあります。そして、あらゆる企業は競争力を維持するために完全にデジタル化しなければなりません」とメディナ氏は付け加えた。「デジタル化されていないために収益が伸び悩んでいるとしたら、そこには重大な欠陥があります。だからこそ、今がその時なのです」。
画像クレジット:jossnatu / Getty Images
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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi)