レストランなどの食品調理業向け在庫管理マーケットプレイスを提供するブラジルのCayena

ラテンアメリカでは、商店の品揃えは楽な仕事ではない。発注は今でも、紙の伝票や電話で行われることが多く、お店の主人が卸屋まで車を運転して品物を手に入れることもある。

Cayenaを創業したGabriel Sendacz(ガブリエル・センダツ)氏とPedro Carvalho(ペドロ・カルヴァーリョ)氏、そしてRaymond Shayo(レイモンド・シャヨ)氏は、材料の確保にテクノロジーを利用すれば、彼らの母国であるブラジルやその他の地域で、レストランやバー、ベーカリー、ホテル、そしてダークキッチンなどの食品調理調製業がもっと楽になると考えた。

「ラテンアメリカのB2Bは巨大な市場ですが、その需要と供給は細分化しています。私たちの顧客も、約90%が中小の家族経営の独立店です。供給の側も、何千もの流通業者が、それぞれいろいろな品物を扱っていますが、マーケットシェアが1%に満たないところばかりです」とシャヨ氏はいう。

対照的に米国には、SyscoやU.S. Foods、Gordon Food Serviceのような大きなフードサービス企業がそれぞれおよそ10%のマーケットシェアを握り、食品から洗剤に至るまでのあらゆるもののワンストップショップを提供している。

Cayenaの共同創業者。左からペドロ・カルヴァーリョ氏、ガブリエル・センダツ氏、レイモンド・シャヨ氏(画像クレジット:Cayena)

そこで、シャヨ氏によれば、いくつかの問題が生じる。まず、ベンダー20社ぐらいで同じ品目の価格が最大で40〜50%も違う。クレジットカードがレストランに払うために30日かかることもあるが、一方レストランは自分の原料等の注文に前金を支払うため、運転資本の問題が生じ、特にレストランは材料費が最大のコストなので資金繰りが苦しくなる。

つまり、ラテンアメリカではレストランが慢性的に経営難を抱えることになる。そこで同社はB2Bのマーケットプレイスを構築し、年商1000億ドル(約11兆5400億円)といわれるラテンアメリカの食品卸業界を狙った。それによりユーザーは原材料などを一度に複数のサプライヤーからまとめて仕入れることができ、翌日に配達してもらえる。また、後払い販売(BNPL)といった新たな金融サービスを提供することもできる。

ユーザーは必要な品目の卸価格を複数の卸店にわたって比較でき、その品目の現在の相場を知ることができる。Cayenaのアルゴリズムは、サプライヤーの在庫品目と価格、ユーザーの予算を比較対照して、ベストマッチをユーザーにアナウンスする。配達には直送方式を利用して、注文が成立したら、そのオーダーを顧客に配達するようサプライヤーに通知が届く。

このマーケットプレイスを立ち上げた2020年以降は、顧客数が1年で10倍に増え、レストランの原材料の調達が困難になるにともない1回の購入単位額は4倍になり、Cayenaでの顧客の平均購入回数は1カ月で5回になった。

この急速な成長で資金が必要になった同社は、2021年後期にPicus Capitalがリードする350万ドル(約4億円)のラウンドを調達し、それが、その前にCanaryのリードで調達した55万ドル(約6300万円)に追加されることになった。

事業は順調で9月のシードラウンドのすぐ後にCayenaはそれまでの倍に成長し、2カ月で倍増というペースが続いたため、年商1億レアル(約22億6000万円)のマイルストーンに達した。同社の現在の商圏は、サンパウロ州の50都市となる。

こうした加速度的な成長が投資家の関心を集め、同社はVine Venturesが主導し、MSA Capital、Picus Capital、Canaan Partners、Clocktower Ventures、FJ Labs、Femsa Ventures、Gilgamesh、Astella、EndeavorおよびGraoVCの参加も得て、1750万ドル(約22億2000万円)のシリーズA投資を先取りすることになった。これにより、Cayenaは総額2100万ドル(約24億2000万円)強の資金を調達したことになる。

「今のところ極めてホットな市場ですが、世界中の投資家が成長企業を探している現状ではそれは良いことです。数年前、私たちは比較の対象にもなりませんでしたが、今ではどこが新しいアプローチと戦略で成長しているのか、誰の目にも明らかです」とシャヨ氏はいう。

Cayenaのビジネスモデルでは、倉庫やトラックや流通への投資はなくテクノロジーのみであるため、資金の多くが雇用に使われる。シャヨ氏の予想では年内に社員数は倍増して60名になるという。また、プロダクトとテクノロジーにもフォーカスしており、新たな金融プロダクトを作り、サプライヤーの地理的範囲も広げたいとのこと。

また、創業者たちはラテンアメリカ全体が商機だと捉えており、トラックなど1台も所有することなく次のステップでまず1〜3年後にブラジルで最大のフードサービスサプライヤーに、その次のステップでラテンアメリカ全体への拡張を考えているという。

画像クレジット:Cayena

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

セキュリティを強化した企業や政府機関向け新型AndroidスマホをブラジルのSikurが発表

BlackBerry(ブラックベリー)が企業の携帯電話として使われていたのは、今からもう何年も前のこと。タッチスクリーン式電話や「BYOD(Bring Your Own Device)」の流れが、そのすべてに終止符を打った。しかし、セキュリティに平均以上の懸念を持つ企業や政府機関に向けた専用モバイルハードウェアというコンセプトは、技術史の中に過ぎ去ってしまったわけではない。

ブラジルのソフトウェア企業であるSikur(シクール)は、2015年に「GranitePhone(グラナイトフォン)」というブランドで情報流出防止 / セキュリティ強固版のAndroidを搭載したスマートフォンをリリースして以来、このコンセプトを推し進めてきた。2018年には「SikurPhone(シクールフォン)」がその後を継いだ。

そして現在、同社はMobile World Congress 2022(モバイルワールドコングレス2022)で、セキュリティ強化を「保証済み」の新しいAndroid端末を発表した。これには「Sikur One(シクール・ワン)」というやや誤解を招きそうな(しかし、ある種の層に向けたマーケティングだと思われる)名称が付けられている。

この端末は「防御力を高め、機密情報を根源で暗号化する」と宣伝されている「Sikurのエンジニア保証済み」機能パッケージによる「ゼロ・トラスト(一切信用しない)」コンセプトを謳っている。

この内蔵セキュリティ機能には、デバイスの暗号化、サードパーティストアからのアプリのインストールをデフォルトで拒否、位置情報サービスのハードブロックなどが含まれる。もちろん後者は、Googleの多層な設定とユーザーデータへの貪欲さのおかげで、平凡なAndroid機ではオフにするのが一筋縄ではいかないと悪名高いものだ。

また、Sikurの「Android Verified Boot(Android検証起動)」は、内蔵システムアプリを追放することで、攻撃される面積を縮小し、さらに / またはデバイスを「軽量で安全」に保つと、宣伝文では述べている。

そして、いくつかの標準的なソフトウェアを編集したにもかかわらず、この端末は「完全に設定され、使う準備ができている」とSikurは言っており、さらに「一般的な機種と同等の使いやすさ」を備えていると主張する(それは具体的に何に使いたいかに依るだろうが)。

またこの端末は、ロックされたブートローダーや、OTA(無線アップデート)によるパッチ適用で、アプリやOSを常に更新された状態に保つことができる。ユーザーが手動でアップデートしなければならない状態にしておくと、その間にセキュリティ上の脆弱性が生じる可能性があるからだ。

さらにSikurは「パスワード不要の認証トークン機能」をアピールしており、これがフィッシングやマルウェアの攻撃を防ぐのに役立つと勧めている。デフォルトのネットワーク設定も、セキュリティに配慮して調整されている(さらに、安全でないWi-Fiへの接続を保護するために、SikurのセキュアVPNも利用できる)。

期待される通り、リモートロックとリモートワイプ機能も搭載している。

このデバイスには、デフォルトの通信アプリとして「Sikur Messenger(シクール・メッセンジャー)」が搭載されている。この同社のエンド・ツー・エンド暗号化メッセージングアプリは、安全な企業内チャットアプリ(メッセージ、音声、ビデオ通話などをサポート)として、また、安全なプライベートクラウドにデータを保持してファイル保存・共有するために使用できる。

ただし、このレベルのセキュアな通信は、Sikur Messengerのマイクロネットワーク内でのみ可能であり、このソフトウェアを搭載したデバイスを支給された社員のみが参加することができる(とはいえ、このメッセンジャーアプリは標準的なAndroid、iOS、Windowsでも利用可能なので、同社のモバイルハードウェアでなくてもアクセスできる)。

スペック面では、Sikur Oneは6.5インチのスクリーン、Android 11を動作させるオクタコアプロセッサ、4000mAhのバッテリーを装備している。

4G端末(5Gではない)であり、4GBのRAMと128GBの内部ストレージ(拡張スロットで最大512GBまで追加可能)を搭載している。

前後にカメラも搭載されており、デュアルSIMにも対応。カラーオプションは「ステルス(当然、ブラック)」のみの設定だ。

「一般的なデバイスはオープンで、設定を変更される恐れがあります。システムにダメージを与えたり、マルウェアを導入したりするようなアプリをインストールし、データ漏洩やスパイの扉を開くことができてしまいます。Sikur Oneなら、空港やレストランなどの公共ネットワークで行われる接続も保護されます」と、SikurのFabio Fischer(ファビオ・フィッシャー)CEOは声明で述べている。

この携帯電話は、Sikurとブラジルの電子機器メーカーであるMultilaser(マルチレーザー)の共同開発によるものだ。

Sikurは、このデバイスでは「大企業や政府機関」をターゲットにしており、セキュリティと、欧州の一般データ保護規則やブラジルの個人情報保護法のようなプライバシー規制への幅広い遵守の両方を懸念している組織に向けて、今週から先行販売を開始すると、広報担当者は語っている。

「デバイスは中南米、米国、欧州、中東で販売されています」と、この広報担当者は述べ「中でもブラジルと米国は、当社にとってこれまでのところ最大の市場です」と続けた。

Sikurによれば、同社は2015年以来、約3万5000台の端末を販売したという。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

a16zとMonasheesがブラジルの在庫発見B2BマーケットプレイスInventaの新ラウンドをリード

Inventaの共同設立者、左からフェルナンド・カラスコ氏マルコス・サラマ氏、ローラ・カマルゴ氏(画像クレジット:Inventa)

ブラジルを拠点とし、中堅・中小企業が新規在庫を発掘・購入するためのデジタルマーケットプレイスを提供しているInventa(インベンタ)は、シリーズAラウンドで2000万ドル(約22億7500万円)を調達した。

Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)とブラジルの大手VCであるMonasheesが共同でこのラウンドをリードし、Founders Fund、Greenoaks、Greylock、Tiger Global、そしてエンジェル投資家であるKavak(カバック)のHans Tung(ハンス・タン)氏とCarlos Gracia(カルロス・ガルシア)氏が参加した。また、今回のラウンドには、既存の投資家であるPear VC、NXTP、ONEVC、MAYA Capital、Alter Globalも参加した。

今回の新たな資本調達は、550万ドル(約6億2500万円)のシードラウンドを発表してから3カ月後に実施された。そのすべてが、2021年3月に設立された会社のためのものだ。

CEOのMarcos Salama(マルコス・サラマ)氏は、元General Atlanticの投資家Laura Camargo(ローラ・カマルゴ)氏、元McKinsey(マッキンゼー)のデータサイエンス専門家Fernando Carrasco(フェルナンド・カラスコ)氏とともに、ブラジルの起業家にテクノロジー、データ、クレジットを提供するために同社を設立した。

スペイン出身のサラマ氏は、機械工学のバックグラウンドを持ち、McKinseyとコロンビアのユニコーン企業Rappi(ラッピ)で働いた経験があり、それがブラジルへの道につながったという。同氏はRappiの食料品事業を担当していた時に、小売店と仕事をして、小さな店が品揃えや信用の確保に苦労している様子を目の当たりにした。

Inventaはテクノロジーを駆使して、中小企業の購買プロセスを容易にする。Inventaのオンラインプラットフォームは、実際の取引データに基づいて商品を推奨し、30日、60日、90日単位で小売店にクレジットを提供する。また、サプライヤー側でも、商品のアップロード、価格の管理、売れ筋・不人気商品の確認などができる。

これほど早く追加資金を調達した理由の1つは、Inventaが月次平均100%以上の成長を遂げていることだ。

「ブラジルには、Inventaがターゲットとしている小規模店舗を持つ起業家が500万人います」とサラマ氏は語る。「当社のB2Bマーケットプレイスは、ブランドと小規模小売店を結びつけ、化粧品、健康食品、ホームデコレーションなどの分野で品揃えを支援します。また、ニーズの高い製品のトレンドを知ることができるので、レコメンデーションがより有効になります」。

同社は400ブランドから7千以上の商品を提供し、2万人以上の顧客を獲得している。

今回の資金調達によりInventaは、100人の従業員の多くがエンジニアである同社の技術チームへの投資や、営業・マーケティングチームの構築が可能になる。サラマ氏は、今後数年間でさらに400人の従業員を増やすことを目標に、従業員分野での大規模な成長を期待している。

また、同社が化粧品、健康食品、家庭用品などの分野に深く入り込んでいくことで、扱うブランド数を1万に増やすことも計画している。さらに、技術開発にも力を入れ、最終的には小規模なサプライヤーや小売業者向けに無料のソフトウェア製品を提供できるようにしていきたいと考えている。

「Amazon(アマゾン)、MercadoLibre(メルカドリブレ)、RappiはB2Cの世界に対応していますが、B2Bにおいては、この市場をターゲットにしている企業は非常に少ないです」とサラマ氏はいう。しかし、B2Bでは、この市場をターゲットにしている企業は非常に少ない。「規模は大きいですがソリューションが欠けている中で、当社はサービスを提供する準備ができています」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

土木建設のさらなる効率化を目指すブラジルの建設テックAmbarが約41.2億円調達

ブラジルの建設テックスタートアップAmbar(アンバー)は、大規模なシリーズCラウンドを調達したことを発表した。2億400万レアル、今日の市場中値で約3600万ドル(約41億1800万円)だ。このラウンドはブラジルのEcho Capital(エコー・キャピタル)とOria Capital(オリア・キャピタル)が共同でリードし、TPG Capital(TPGキャピタル)、Argonautic Ventures(アルゴノーティック・ベンチャーズ)などが参加した。

Ambarは、テクノロジーを活用して土木建設プロセスを効率化するという野望を持って2013年に設立された。同社によると、これまでに3億6000万レアルの株式資金を調達している。これは約1億ドル(約114億4400万円)だと、CEOのBruno Balbinot(ブルーノ・バルビノット)氏は推定している。

この1億ドル(約114億4400万円)という数字は、現在のドル建て3億6000万レアルに相当する金額よりも高いが、為替レートはこの数年でかなり変動しているので、この数字を割り出すのは一筋縄ではいかない。また、一方で、同社の借入金も調達していることは考慮されていない。

正確な数字はともかく、Ambarは現在、計画実行のための相当量の資本を手に入れたということだ。TechCrunchの取材に応じたバルビノット氏は、この資金をラテンアメリカ全域で強いニーズがあるデジタル化事業を強化するために使う計画だと説明した。

スペイン語圏のラテンアメリカはAmbarの収益の一部となっているが、Ambarが最も存在感を示しているのはブラジルであるとバルビノット氏はいう。このスタートアップの母国には、2つの利点がある。この地域最大の市場であること、そしてブラジルのポルトガル語が競合他社に対する堀の役割を果たすことだ。

Ambarのサイトによると、467社のアクティブな顧客がいる。このうち3社は米国にあるが、米国に進出したのは、学習のためだとバルビノット氏はいう。一方、ブラジル国内では1500の建築現場がある。

Ambarのビジネスには、2つの側面がある。さらに推進する計画のデジタル化と、一部のメディアで建築分野のLego(レゴ)に例えられた工業化だ。

とはいえ、Ambarはゼネコンではない。「私たちは、建設業を営む人たちとパートナーを組むのが目的であり、決して建設業を営むことはありません」と、バルビノット氏はポルトガル語で語った。バルビノット氏は、Ambarが技術系企業であることを主張するだけでなく「建設部門よりもはるかに高い」単位経済性を裏付けにする。

バルビノット氏と共同創業者のIan Fadel(イアン・ファデル)氏には、自動車産業という意外なインスピレーションの源がある。Volkswagen(フォルクスワーゲン)の関連会社で働いていた2人は、同じようなプロセス駆動型のアプローチを建設分野にも取り入れたいと考えている。

建設業をより効率的に変革することは、同時に持続可能性を高めることでもある。人的・物的資源を最適化することで、Amberは従来の建設業の大きな副産物であった廃棄物を削減している。

これは、最新の投資家たちが取り組んでいる問題でもある。Oria CapitalはBコーポレーションで、サイトの環境・社会・ガバナンス(ESG)セクションは「Oriaのポートフォリオは、国連が提唱する主な持続可能な開発目標に貢献することを目指しています」と、説明している。

また、今回のシリーズCラウンドは、国連グローバル・コンパクトのイニシアチブと繋がりのあるAmbarの取締役Guilherme Weege(ギリェルメ・ウィーゲ)氏が新たに設立した成長ファンド、Echo Capitalが共同リードしている。ファッショングループGrupo Malwee(グルポ・マルウィ)のCEOは、同イニシアチブの1.5℃へのビジネス・アンビション・コミットメントに署名したビジネスリーダーの1人だ。

両ファンドは、Ambarが見習いたいポートフォリオの成功例がある。ウィーゲ氏のファミリーオフィスは、最近サンパウロのB3証券取引所のNovo Mercado(ノヴォ・メルカド)セグメントでIPOを果たしたブラジル企業のInfracommerce(インフラコマース)を支援した。Oriaは、1億ドル(約114億4400万円)の第3号ファンドで、2020年7月にNASDAQに上場したZenvia(ゼンヴィア)への追随投資を行った。

AmbarもOriaの3号ファンドが支援した企業の1つで、来年は大きな成長計画を立てている。「2022年には、Ambar製品を適用した同時施工数を2倍に増やし、970社の新規顧客を獲得する予定です」と、バルビノット氏は述べた。

最近、ソフトウェア会社のAutodoc(オートドック)を買収したバルビノット氏とそのチームは、ビジネスのIT面を優先させる計画だ。このスタートアップは、断片化を解消し、顧客が「1つのプラットフォームですべてにアクセスできるようにしたいのです」と、バルビノット氏は言った。「10のアプリケーションがあり、多くの人がそれらをコントロールする必要があったとしたら、これからはすべてを統一し、同じログインで提供します」。

画像クレジット:Amber

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(文:Anna Heim、翻訳:Yuta Kaminishi)

ラテンアメリカの卸売部門を変革するB2Bマーケットプレイス「ZAX」が約6.7億円調達

ZAXの共同設立者であるブルーノ・バラディ氏とフェルナンド・ザナッタ氏(画像クレジット:ZAX)

ラテンアメリカで小規模な販売ビジネスを維持するのには、新製品を探すための長時間バス移動や、運営資金不足、支払力不足をともなう。このような非効率性は卸売業者にも波及し、卸売業者はコストや納品期限の引き上げを余儀なくされる。

このような状況に目をつけた2度目の起業となるBruno Ballardie(ブルーノ・バラディ)氏とFernando Zanatta(フェルナンド・ザナッタ)氏は、2019年に「ZAX(ザックス)」を立ち上げ、ブラジルの売り手と買い手をつなぐ運賃・配送・決済ツールを一体化したプラットフォームを開発した。

ZAXを立ち上げる前、CEOのバラディ氏は、2018年にLema21(レマ21)と合併したメガネ型電子商取引会社eÓtica(エオジカ)の創業者だった。CTOのザナッタ氏は、顧客とグローバルな専門家をつなぐツールNetlolo(ネットロロ)の創業者で、以前はDafiti(ダフィティ)のCTOやBuscapé(バスカペ)のCOOも務めていた。

彼らは、テクノロジーとイノベーションのおかげで巨大化しつつある消費者直販市場と、それに反し同じような成長を遂げていない卸売部門を目の当たりにした。多くの人がサンパウロのような都市の中心部まで在庫を買いに行っていたが、注文を書くのに紙とペンを使い、取引にはWhatsAppを使っていたのだ。

「私たちは、人々がすばらしいビジネスを行うのを支援する大きなチャンスを見出しました。eコマースの普及率は7%しかなく、卸売部門では1%以下と、市場はかなり遅れていました。物流、決済、商品の発見など、すべての領域が未開発だったので、そのためのツールを作りました」とバラディ氏はTechCrunchに述べている。

バラディ氏によると、B2B取引でZAXが改善可能な市場は、ブラジル国内だけでも2兆4000億BRL(約49兆円)と推定されている。ZAXのプラットフォームは、当初は衣料品の卸売だったが、現在では靴、電子機器、玩具、アクセサリー、美容用品などに拡大している。購入者はプラットフォームにアクセスし、商品を選び、次に発送方法と支払い方法を選ぶことができる。

ZAXは現地時間10月5日、シリーズA資金として600万ドル(約6億6700万円)を調達した。このラウンドには、Atlantico(アトランティコ)が主導し、FJ Labs(FJラボ)、Caravela Capital(キャラベラ・キャピタル)、GFC、およびZAXの最初の2回の投資ラウンドを主導したCanary(カナリー)が参加した。今回の資金調達により、同社の資金調達総額は830万ドル(約9億2300万円)となった。

AtlanticoのマネージングパートナーであるJulio Vasconcellos(フリオ・ヴァスコンセロス)氏は「ZAXは非常に短い期間ですばらしい実行力を見せてくれました。ZAXは、 ブラジルだけでなく、ラテンアメリカ全体の売り手と買い手を支援する可能性を秘めていますし、卸売と小売はより多くのテクノロジーを利用することで大きく成長することができます」と語っている。

ZAXは、パンデミック前の100社から増加した700社以上のサプライヤーと取引しており、2020年3月以降、収益は10倍になったとバラディ氏は述べている。40人の従業員で構成されるチームを持ち、5万人以上のバイヤーがプラットフォームを利用している。

今回の資金調達により、同社はブラジルのさらに2つの地域に進出し、美容製品やアクセサリーのカテゴリーで製品ラインを増やすことができる。また、バラディ氏は、技術や商品開発のスタッフを追加で雇用したいとも考えている。

次のステップとして、ZAXは金融サービスへ注力をしており、いくつかのBNPL(後払い決済)のアイデアを試験的に実施し、顧客に資金を提供するために金融機関のパートナーを統合している。同社は現在、30日間の融資枠とPOSシステムを提供しているが、将来的にはデジタルウォレットやその他の決済ツールも提供する予定だ。

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ブラジルでペット用品やサービスをオンライン販売するPetloveが165億円調達、ソフトバンクも出資

サンパウロを拠点とするペット市場向け商品・サービスのデジタルプラットフォームPetlove&Co(ペットラブ・アンド・カンパニー)は現地時間8月30日、Riverwood Capitalがリードする資金調達ラウンドで約7億5000万レアル(約165億円)を調達したと発表した。

このラウンドは、Petloveがこれまでに調達した金額の約2倍に相当する。同社は、インターネット黎明期である1999年に創業した際、PetSuperMarketとしてスタートした。現在では、ペット用品やサービスを幅広く提供するオンラインストアの運営を続けている。

Crunchbaseによると、今回の資金調達ラウンドには、Tarpon、SoftBank(ソフトバンク)、L Catterton、Porto Seguro、Monasheesも参加した。同社の調達総額は2億2580万ドル(約248億円)となった。2020年1月以降だけでも、Petloveは1億9200万ドル(約211億円)以上を調達した。同社は最新のラウンドで、どの程度のバリュエーションで資金を調達したのか明らかにしていない。だが、全体として2020年の売上は前年比65%増だったとしている。

PetloveのCEOであるTalita Lacerda(タリタ・ラセルダ)氏は、今回の新たな資本を、配送能力強化を目的とした物流ネットワークのさらなる拡大に一部使用すると述べている。特に、注文から4時間以内に商品を届けることができるエクスプレスデリバリーサービス「Petlove Já」を他の地域にも拡大する予定だ。このサービスは現在、サンパウロやベロオリゾンテなど、ブラジルの一部の都市でのみ提供されている。

今回の資金調達は、サブスクリプションプログラムの拡大にも充てられる。これはブラジル初の試みであり、同社の主力サービスの1つだとラセルダ氏は話す。同氏によると、パンデミックの際には、このサービスが「大幅に成長」し、同社の取扱量の75%に達したという。

「ブラジルのペット市場は世界最大級であり、同国の消費者は、高いレベルで顧客中心主義を実行するデジタルネイティブな製品やサービスをますます求めるようになっています」とRiverwood Capitalの共同創業設立パートナー兼マネージングパートナーであるFrancisco Alvarez-Demalde(フランシスコ・アルバレス・デマルデ)は書面で述べた。

同社は、最近のDogHeroとの統合、VetusとVetSmartの買収、Porto.Petの立ち上げなどを経て、進化・成長してきた。

「当社は、この急速に拡大する市場において、すべてのステークホルダーのニーズを満たすために、ますます包括的で包摂的なプラットフォームを構築しました」とラセルダ氏はいう。

Petloveによると、ブラジルは総消費額で世界第4位のペット市場だという。Instituto Pet Brasilによると、ブラジルのペット市場の総売上高は2020年に400億レアル(約7700億円)を突破し、前年比13.5%増となったが、Petloveは65%増を達成した。同国のペット所有率は全体的に高く、米国では50%がペットを所有しているのに対し、ブラジルでは60%だ。

PitchBookによると、Petloveは400人以上の従業員を抱えている。

SoftBank Latin America Fundのブラジル担当兼オペレーティング・パートナーであるAlex Szapiro(アレックス・サピロ)氏は、Petloveが「ラテンアメリカ最大のエコシステムの形成」に貢献したことを「このセグメント、そして小売業全体において、最も並外れたものの1つ」と評した。

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画像クレジット:Petlove

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

スタートアップの成長率を追う

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

こんにちは!先週は慌ただしいどころの話ではなかった、そのため話題がてんこ盛りだ。今回お届けするのは、ブラジルのIPO市場に関するメモ、シカゴのスタートアップシーンに関する報告、スタートアップ企業たちの最近の成長に関連する数々の数字などだ。ということで、アーリーステージレイトステージのスタートアップ、海外のスタートアップ国内のスタートアップが好きな方には、ぴったりの内容となるだろう。

先週もまた、資金調達ラウンドについてのツイッターでの会話が続いていた。簡単に言えば、他のスタートアップ活動よりも、資金調達ラウンドを優先するメディアに対する不平不満が多く聞かれたのだ。それに対する私の意見を述べるなら、私たちのようなライター稼業連中が資金調達ラウンドを取り上げる理由は、それこそがあるスタートアップがその事業の成果を実際に発表しようとする貴重な瞬間だからなのだ。

投資家は、創業者がどうやってアイデアを思いついたかを短い電話会議で聞いただけでは、その会社に投資しようとは思わないだろうということを考えると、VCが時折こうした報道に文句をいうというのは馬鹿げた話だ。しかも創業者に対しては「メディアには何もいうな」という。なんてことだ。

そんなこんなで、私はこう叫ばずにはいられない「スタートアップ企業のみなさん、データを下さい!」と。そして、それに応えてくれた企業もある!また、以前に発表されていたものの、私たちが見逃していたものについて、メモを送ってくれた企業もあった。

そこで今回は、さまざまなステージや市場などから、スタートアップの成長をダイジェストでご紹介しよう。

CopyAI(コピーAI): 最近ARR(年間経常収益)が200万ドル(約2億2000万円)を突破した。CopyAIは、ビジネスを構築するために忙しくしているが、同時にメトリクスを共有しながら進めている(それは私たち好みのやりかただ)。その一方で、外部から資金を調達して急成長を遂げており、情報を共有しスタートアップが即座に炎上することはないことを証明している。

CEOのPaul Yacoubian(ポール・ヤクービアン)氏に、期待通り成長しているのかどうかを尋ねたところ「そうだ」という答えが返された。次に尋ねたいのは、会社の規模が再び2倍になるまでにはどのくらいかかるのかという質問だ。CopyAIがARR100万ドル(約1億1000万円)に達したのは2021年の初めだったのだ。

TextNow(テキストナウ): いまやARRが1億ドル(約110億円)を超えた。同社は創業以来200万ドル(約2億2000万円)以下の資金しか調達しておらず、基本的には自力で立ち上がった企業だ。最近CFOを採用している。その意味はおわかりだろう、IPOが近いということだ。正直なところ、TextNowは私がよく知っている会社ではなかったが、情報を共有してもらえたので、もっと知りたいと思うようになった。楽しみにしておこう!

Kalendar AI(カレンダーAI): この会社は、利用者が営業会議を予約することをAIを使って支援するらしい。このモデルは一定の支持を得ていると、創業者でCEOのRavi Vadrevu(ラビ・バドレブー)氏はいう。彼は、銀行の残高や成長のチャートなどの数々の指標をThe Exchangeに示した(データ万歳!)。そしてARRは6桁(数千万円台)に達し、最近のラウンドでは70万ドル(約7680万円)を調達した。

そして、そのチャートによれば、加入者の増加が加速しているように見える。また別のデータセットによると、この8月は、同社のビジネスの主要な(非GAAP的)指標である会議予約数に関して、これまでで最も忙しい月になるようだ。同社は、この数字(予約数)が毎月30%ずつ増加しているという。

バドレブー氏自身の言葉によれば、Kalendar AIは「AWSが仮想化でイノベーションを大衆化したように、企業の成長を大衆化したい」と考えている。

Balto(バルト):Baltoはセントルイスを拠点とするスタートアップで、これまでの調達資金額が5000万ドル(約54億9000万円)を超えたばかりだ。これは、先ごろ行われたシリーズBで、3750万ドル(約41億2000万円)という良い結果を得た結果だ、同社のCOOであるChris Kontes(クリス・コンテス)氏によれば「Jump Capital、OCA Ventures、Sandalphon」がこのラウンドに参加したという。シカゴ市場に関する最近の記事を読んでいただければ、これが大変なことだとわかるだろう。

にもかかわらず、Baltoは2020年第3四半期にシリーズA調達を行って以来、顧客ベースを84%、収益を200%成長させたという。私は、同社の顧客数と売上高の伸びの違いは、NDR(Net Dollar Retention、売上継続率)や、より大口の顧客によってもたらされたものなのかと尋ねた。コンテス氏は「答は『どちらも』です、ややNDRに寄っていますけれど」と答えた。絶対的な数字は答えてもらえなかったが、Baltoの「NDRは150%を超えています」と彼はいう。すばらしい。

ちなみにこの会社はサポート要員が、コール中に何をいうべきかを知ることができる技術を開発している。どうやらそれが、大きなビジネスになっているようだ。

HostiFi(ホスティファイ): デトロイト近郊に本社を置くHostiFiは「UniFiネットワークデバイスのリモート監視と管理」をサポートしている。悲しいかな、私にはそれが何を意味するのかわからないし、今はそれを深く掘り下げる時間もない。

だがうれしいことに、HostiFiの創業者であるReilly Chase(ライリー・チェイス)氏が、私たちの受信箱にメトリクスを送ってきた。それによれば、彼の会社は「今後数週間」でARR100万ドル(約1億1000万円)に到達し「今後3年間」ではARR1000万ドル(約11億円)を達成したいと考えているということのようだ。同社は、以前私たちが取材したこともある旧Earnest Capitalグループから10万ドル(約1100万円)を調達した。HostiFiには1700の顧客がいて、完全にリモートの6人のチームで構成されている。

おもしろいね?非公開企業が財務実績をよりオープンにすることは、不透明なスタートアップの世界を少しだけ明快にするという意味で、世界にとっても良いことだと思う。

ブラジル

ブラジルのスタートアップ市場とその間近に迫ったIPOについての記事は、書いていてとても楽しいものだった。しかし記事が出た後で、TechCrunchの取材に応じたブラジルのB3証券取引所が、私たちの質問への回答を送ってきた。惜しくも締切に間に合わなかったということだが、彼らのメモを紹介しないわけにはいかない。

ブラジルのテクノロジー関連IPO市場の現状について、B3のRafaela Vesterman Araujo(ラファエラ・ベステルマン・アラウジョ)氏は次のように書いている(わかりやすくするために若干の編集を加えている)。

現在、ブラジルの資本市場は記録的な時代を迎えています。2021年8月前半までのIPO件数は44件(比較のために挙げると、2020年は全部で28件でした)で、そのうち約30%がテクノロジー企業ですが、2020年以前のB3ではテクノロジー分野の存在感が薄かったことを考えると、これは非常に興味深いことです。

これこそが、まさに私たちが強調したかったトレンドであり、それがデータによって裏付けられたことはすばらしいことだ。

次に、B3に上場するにはどれくらいの規模である必要があるのか。ベステルマン・アラウジョ氏はこういう(わかりやすくするために若干の編集を加えている)。

2020年および21年上半期のテクノロジー関連IPOの約70%は、1億1000万ドル(約120億8000万円)から3億6700万ドル(約402億9000万円)の間の調達をしていました。またこれらの企業の70%は、最大5500万ドル(約60億4000万円)の純利益を挙げています。中には、他のセクターに比べて純収入が少ないにもかかわらず、成長への期待を反映してか、多くの企業がより多くの資金を調達しているケースも見受けられました。

すごいね。成長プレミアムだ!これは、自国の市場での上場を目指すブラジルのスタートアップ企業にとって、とてもすばらしいニュースだ。Nubank(ヌーバンク)やNuvemshop(ヌービンショピ)が非上場ながら巨大化している中では、国内企業がどこに上場するかはささいな問題ではない。

シカゴ

先週私たちはシカゴのブームについて調べた。過去数四半期におけるシカゴの巨大なベンチャーキャピタルの実績を追跡し、資金調達とスタートアップ活動の波を引き起こしている正確な要因を地元の人びとに尋ねた。それを原稿に取り込んでいくなかで、読んでもらいたいまた別の答えが出てきたので共有したい。

Techstars(テックスターズ)のシカゴ事業所のマネージングディレクターであるNeal Sáles-Griffin(ニール・セイルズ・グリフィン)氏は、シカゴ地域のスタートアップが2020年後半以降資本を集めるのに長けている理由を次のように説明している。

それは(投資家が投資対象をよりリスクの低い、安全性の高いものを求める)「質への逃避」です。あまりにも長い期間、1つのハブに資本が集中してきたため、COVID(によるロックダウン)後のイノベーションの分散化にVCが流れたのです。パンデミックは、古い習慣を打ち破り、シカゴのような成熟した市場に投資家を呼び寄せました。【略】何年も前から、シカゴはスタートアップ企業にとって全米でもトップクラスの目的地として成長してきました。米国のVCコミュニティは、中西部で急速に成長している創業者のすばらしいコミュニティを探って、ようやく追いついてきたところです。

私はシカゴの学校に通っていたので、この地域の学校の密度はよく知っている。私が気にしているのは、この事実が地元のスタートアップ企業にとって有益なものなのかどうかだ。セイルズ・グリフィン氏によると、その答えは確実に「イエス」だという。

当地には、トップ5に入る2つのMBAプログラム(シカゴ大学とノースウエスタン大学)があり、トップ5に入る工学系大学(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)と、全米で最も多様性に富んだ工学系大学の1つ(イリノイ大学シカゴ校)があります。また、この地域で最大規模のシティカレッジを擁する地区(シティ・カレッジ)や、シカゴ州立大学のような歴史的に黒人の多い教育機関もあります。どちらも複数のエンジニアリングやITのプログラムを持ち、次世代の人材を育成しています。

シカゴ発の次世代のスタートアップはどこに注目しておけばよいのだろうか?Techstarsは、ヘルスケアやライフサイエンスの他、フードテックや、より大きな輸送産業を構築する企業を重要な市場として挙げている。

他にもいろいろある!

残念ながら、このニュースレターの文字数を大幅にオーバーしてしまったので、このあたりで止めなければならない。しかし、他にも注目すべきものはたくさんあるのだ。たとえばインディアナポリスのLessonly(レッスンリー)がSeismic(サイズミック)に買収されたことなどだ。Lessonlyは、元気の塊のようなMax Yoder(マックス・ヨーダー)氏を中心に、独立運営しながら3000万ドル(約32億9000万円)弱の資金を調達してきた。また、多くの著名な俳優が支援しているAspiration Partners(アスピレーション・パートナーズ)は、SPACを利用して株式を公開する。この取引によって、同社には数億ドル(数百億円)の新たな資本が提供される。

続きはまた来週。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

電動航空機メーカーLiliumがアズールブラジル航空と総額約1100億円の受注に向け交渉中

ドイツの電動航空機メーカーであるLilium(リリウム)は、ブラジル最大の国内航空会社の1つであるAzul Brazilian Airlines(アズールブラジル航空)と、総額10億ドル(1092億円)におよぶ220機の受注に向けた条件交渉を行っていると、両社は米国時間8月2日に発表した。アズール航空との契約が進めば、Liliumにとって創設以来最大規模の受注であり、南米市場への初進出を果たすことになる。

Liliumの広報担当者は「タームシートには調印しており、今後数カ月以内に最終合意に向けて動き出します」とTechCrunchに語った。

この220機の航空機は、ブラジルで運航される新しい共同ブランドの航空会社ネットワークの一部として飛ぶことになる。両社が合意に達した場合、アズール航空は7人乗りフラッグシップ機の運航とメンテナンスを行い、Liliumは交換用バッテリーを含むカスタムスペアパーツと機体の健康状態を監視するプラットフォームを提供する。

納入は2025年に始まる予定だ。これはLiliumが計画している欧州と米国での商業運航開始から1年後にあたる。ただし、これらのタイムラインは、Liliumが各国の必要な航空宇宙規制機関から、主要な認証承認を得ることが前提となっている。アズール航空は今回の契約の一環として「ブラジルで必要な規制当局の承認プロセスにおいてLiliumをサポートする」と述べている。

仮に契約が成立したとしても、Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)がUnited Airlines(ユナイテッド航空)から10億ドルの注文を受けた際の条件と同様に、Liliumが一定の性能基準やベンチマークを達成することが条件となるだろう。しかし、このような金額の受注があるということは、市場や投資家に対して、電動垂直離着陸機(eVTOL)がまやかしではないという肯定的なシグナルであると考えられる。

また、これもArcherと同様に、LiliumはSPAC(特別買収目的会社)方式での上場を計画している。同社は2021年3月、Qell Acquisition Corp.(ケル・アクイジション)と合併して「LILM」というティッカーシンボルでNASDAQに上場する意向を明らかにした。SPAC方式は、交通機関業界全体で一般的な上場手段となっているが、特に資本集約的なeVTOLスタートアップには人気がある。

この合併は、同社の事業継続のために必要なものと思われる。ドイツのニュースサイト「Welt(ヴェルト)」によると、Liliumは2019年の貸借対照表に、SPACとの合併が完了しない場合には2022年12月に資金が枯渇すると記したリスク警告を追加したとのこと。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:LiliumeVTOLドイツブラジルAzul Brazilian AirlinesSPAC

画像クレジット:Lilium

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

eコマースEtsyが英Depopに続き「ブラジルのEtsy」ことElo7を約240億円で買収

若いユーザーをターゲットにしたソーシャル販売に足を踏み入れ、そして欧州での事業を本格的に拡大するためのDepop買収という巨額の取引に続き、Etsy(エッツィー)はまたもリーチを拡大する大きな取引を明らかにした。今回の対象は南米だ。EtsyはElo7を2億1700万ドル(約240億円)で買収すると発表した。Elo7はクラフトクリエイターに人気のマーケットプレイスで「ブラジルのEtsy」と言われている。

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Etsyはすでにブラジルで事業を展開しているが、ブラジルで最も大きな10のeコマースサイトの1つであるElo7はアクティブバイヤー190万人、アクティブセラー5万6000人、そして販売アイテム800万点を擁し、Etsyはブラジルでプレゼンスを大幅に高めることになる。

Depop(Etsyに16億ドル[約1770億円]で買収された)とReverb(Etsyが2016年に買収した楽器マーケット)と同様、Elo7は独立ブランドを維持し、現在の経営陣がブラジル・サンパウロの本社で指揮を取る。

今回のElo7買収はEtsyのCEOであるJosh Silverman(ジョッシュ・シルバーマン)氏が描く統合のシナリオを強調するものだ。シルバーマン氏はeコマース業界に長く身を置き、買収全盛期だった頃のeBayにも在籍した。

「Elo7は『ブラジルのEtsy』であり、目的やビジネスモデルは当社のものと似ています」とシルバーマン氏は声明文で述べた。「最近のDepop買収合意に続き、ユニークなマーケットプレイスをまた1つEtsyファミリーに持ってくることに胸躍らせています。この取引は当社にとって南米における足掛かりとなります。現在Etsyは南米でそれほど大きな顧客ベースを持っておらず、浸透が不十分なeコマース地域です。Elo7の優秀な経営陣と従業員をEtsyファミリーに迎え入れることを楽しみにしています」。

よりアグレッシブな成長モードに向かっているEtsyにとって興味深い動きだ。eコマース業界ではこれまで、企業はオーガニックではない形、特に同じ業界の企業あるいは新しく参入したい分野の企業の買収を通じて事業を拡大してきた。この手法はeBay、Amazon、Groupon、その他多くの企業がとってきたものだ。

おそらくeコマースが成熟してきたためかもしれないが、Amazonは巨大になりすぎて参入障壁が高くなっている。そしてそうしたモデルの「クローン」と呼べる企業に貼られた負のレッテルのようなものを世界のあちこちで目にするようになっている。

そのため、Etsyがこのケースにまさしく当てはまる買収を行うというのは興味深い。発表では、2社の事業モデルのシナジーによって囲い込みが簡単なものになると指摘した。これはElo7によって強調されるものでもある。Elo7はこれまでにAccel、Monashes、Insight Partnersといった投資家から1800万ドル(約20億円)を調達した。

「Etsyは我々にとって常にインスピレーションであり、参考にするものでもありました。EtsyのミッションやカルチャーはElo7のものとかなり近く、Etsyの一部として成長に向けた旅を続けることに興奮しています」とElo7で長らくCEOを務めてきたCarlos Curioni(カルロス・クリオニ)氏は述べた。「Elo7のマーケットプレイス、コミュニティ、チームがブラジルにおける我々の最大限の可能性を十分に引き出すために、Etsyのプロダクトやマーケティングの専門性を活用することを楽しみにしています」。

ブラジルはオーガニックでない買収戦略を展開するのに真に主要なマーケットだ。同国は人口、購買力、デジタルデバイス浸透度合い(特にスマートフォン)において世界で最も大きなeコマースマーケットの1つだ。多くの成熟したマーケットではeコマース成長は停滞に直面していて(パンデミックによる2020年の44%成長を除く)、米国のeコマース成長は15%程度とパンデミック前に比べて緩やかだが、ブラジルのeコマースは活況を呈している。浸透率はまだ低く、成長要因はそろっている。Etsyは2024年までにブラジルのeコマースが26%成長すると予想する数字を引用している。

「最近のDepop買収取引に続き、Elo7の買収を発表できることをうれしく思います。いずれもEtsyの資本活用のための高いハードルをクリアするエキサイティングな会社です」と同社のCFO、Rachel Glaser(レイチェル・グレイザー)氏は声明文で述べた。「当社の基幹事業Etsy.comマーケットプレイスの成長を引き続き促進するのに加え、DepopとElo7をEtsyファミリーに統合することに注力しています。Reverb、Depop、そしてElo7は今後も才能ある権限を委ねられた経営陣によって運営され、価値創出を加速させる方法でブランドにまたがる主要な機能をつなげ、個々の合計より全体の価値を高めます」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Etsy買収ネットショッピングブラジル

画像クレジット:Philippe Perreaux / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルが米国とアルゼンチンを結ぶ新海底ケーブル「Firmina」発表、電力供給能力で前進

Google(グーグル)は米国時間6月9日、米国東海岸とアルゼンチンのラス・トニナスを結び、さらにブラジルとウルグアイにも陸揚げされる新しい海底ケーブルの建設計画を発表した。これは南米のユーザーに、Googleのコンシューマー向けサービスやクラウドサービスへの低遅延アクセスを提供することを狙いとしている。

この地域で最も近いGoogleのデータセンター(南米では唯一のデータセンター)はチリのサンティアゴ付近にあり、GoogleのCurie(キュリー)ケーブルで米国西海岸と結ばれている。

ブラジルの奴隷制度廃止運動家で作家のMaria Firmina dos Reis(マリア・フィルミナ・ドス・レイス)氏にちなんで名づけられた「Firmina(フィルミナ)」ケーブルは、この地域におけるGoogleの既存のケーブル投資を強化するものだ。例えば、ウルグアイ政府所有のテレコムAntel UruguayとGoogleのジョイントベンチャーであるTannatケーブルはすでに同じ場所を結んでおり、Monet(モネ)ケーブルは米国とブラジル、そして同社のJunior(ジュニア)ケーブルもすでにブラジル各地を結んでいる。

画像クレジット:Google

この新しいケーブルは、Googleの既存ネットワークに容量だけでなく耐障害性も加える。具体的には、12組の光ファイバーペアで構成されるこの新しいケーブルで特筆すべき技術面の偉業は、シングルエンドの電源からケーブルに電力を供給できるというシステムだ。

Googleは次のように説明している。「海底ケーブルでは、データは光ファイバの中で光のパルスとして伝わります。その光信号を、100kmごとに各国の陸揚げ局で供給される高圧電流で増幅します。短いケーブルシステムの場合、シングルエンドからの給電の可用性は高くなりますが、最近の光ファイバーペアの数が多い長いケーブルでは、これが難しくなっていました」。それを実現するために、Firminaケーブルには、これまでのケーブルよりも20%高い電圧のケーブルが供給されている。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:海底ケーブルGoogle電力アメリカアルゼンチンブラジル

画像クレジット:makasana / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

ブラジルのモバイル決済アプリ「PicPay」が米国証券取引委員会に登録届出書を提出

ブラジルのモバイル決済アプリ「PicPay(ピクペイ)」は米国時間4月21日、時価総額最大1億ドル(約108億円)となるIPOを行うためのForm F-1を、米国証券取引委員会(SEC)に提出した。同社はティッカーシンボル「PICS」で、NASDAQに上場する予定だ。

PicPayは、主に金融サービスプラットフォームとして運営されており、そのサービス内容にはクレジットカード、Apple Pay(アップル・ペイ)に似たデジタルウォレット、Venmo(ベンモ)型のP2P決済要素、eコマース、ソーシャルネットワーキング機能が含まれる。

PicPayのCEOであるJosé Antonio Batista(ホセ・アントニオ・バティスタ)氏は声明の中で「私たちは、人々や企業の交流、取引、コミュニケーションの方法を、インテリジェントでコネクテッド、かつシンプルな体験で変革したいと考えています」と述べている。

PicPayは現在、サンパウロに拠点を置きブラジル全土で事業を展開しているが、当初は2012年にリオの北に位置する沿岸都市ビトリアで設立された。同社は2015年に、巨大食肉加工企業のJBS SAを所有するブラジルの億万長者、Wesley Batista(ウェスレイ・バティスタ)氏とJoesley Batista(ジョエスレイ・バティスタ)氏兄弟の投資持株会社であるJ&F Investimentos SAグループに買収された。

PicPayの登記簿謄本によると、J&Fは「Operation Car Wash(洗車場作戦)」と呼ばれるブラジル史上最大の汚職スキャンダルに関与しており、2017年にブラジル連邦検察当局と司法取引を行っている。2020年12月には15億ドル(約1600億円)の罰金を支払い、さらに4億4260万ドル(約477億7000万円)をブラジルの社会計画に拠出することに合意した。とはいえ、J&Fは依然として同国の強力なコングロマリットであり、PicPayの強力な支援者として位置づけられている。

2020年はPicPayにとって爆発的な成長を遂げた年となり、同社のアクティブユーザー数は2840万人から2021年3月時点で3600万人にまで増加した。PicPayからTechCrunchに提供された2020年の財務報告書によると、同社の収益も2019年の1550万ドル(約16億7000万円)から2020年には7100万ドル(約76億5000万円)へと飛躍的に伸びている。しかし、同社はまだ利益を出しておらず、2020年にはその成長を後押しするために、1億4600万ドル(約157億2000万円)を投じている。

「当社のエコシステムにおける顧客ベースとユーザーエンゲージメントの成長は、当社のビジネスモデルの規模拡大性を示すものであり、顧客にとってさらなる価値を生み出す大きな好機の現れであると、私たちは考えています」と、声明でバティスタ氏は続けている。

フィンテックは現在、ブラジルで最も注目を集める分野の1つだ。同国では伝統的に4つの大手銀行が支配しているが、これらの銀行はテクノロジーへの対応が遅れ、非常に高い手数料を徴収している。そのため、この分野には大いに改善の余地があるからだ。

PicPayのIPOは、Banco Bradesco BBI(バンコ・ブラデスコBBI)、Banco BTG Pactual(バンコBTGパクチュアル)、Santander Investment Securities Inc.(サンタンデール・インベストメント・セキュリティズ・インク)、Barclays Capital Inc.(バークレイズ・キャピタル・インク)が主導している。

関連記事:ブラジルの無料クレジットマーケットプレイス「FinanZero」が7.7億円を追加調達

カテゴリー:フィンテック
タグ:ブラジルPicPayモバイル決済新規上場

画像クレジット:PicPay

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新興市場の問題を解決するメキシコの中古車販売ユニコーンKavakが531.7億円を調達、評価額は4385億円

メキシコのスタートアップで、メキシコとアルゼンチンの中古車市場を破壊したKavak(カヴァック)は現地時間4月7日、シリーズDで4億8500万ドル(約531億円)調達したことを発表した。同社の企業価値は40億ドル(約4383億円)だった。わずか数カ月前の2020年10月に同社がユニコーンの地位を確立したラウンドの企業価値11億500万ドル(約1211億円)の3倍以上だ。Kavakはこれでラテンアメリカで企業価値トップ5のスタートアップになった。

ラウンドをリードしたのはD1 Capital Partners、Founders Fund、RibbitおよびBONDで、これでKavakの総調達金額は9億ドル(約986億円)を超えた。Kavakは最近ブラジルで限定公開を開始し、最新ラウンドの資金はブラジル市場への進出などに使用される、とKavakのCEOで共同ファウンダーのCarlos García Ottati(カルロス・ガルシア・オッタティ)氏はいう。同社は60日以内にブラジルで正式公開する、とガルシア氏は述べており、Kavakはラテンアメリカ以外の市場に2年以内に展開することも付け加えた。

「私たちは新興市場の問題を解決するためにあります」とガルシア氏はいう。

Kavakは2016年に設立された中古車市場に透明性と安心と融資をもたらすことを目的としたオンラインマーケットプレイスだ。同社はフィンテック子会社のKavak Capitalを通じて自らも融資を行っており、現在2500名以上の従業員を擁し、メキシコとアルゼンチンに20カ所の輸送・修理ハブがある。

「ラテンアメリカでは、中古車売買の90%が非公式に行われており、その結果40%が不正な価格で取引されています」とガルシア氏はいう。同氏は数年前にコロンビアからメキシコに移住してクルマを購入した際、身を持ってこの問題を経験した。

「私には中古車を買う予算がありましたが、買うための仕組みが近くにありませんでした。買うまでに6カ月かかった上、そのクルマには法律的にも機械的にも問題があり、ほとんどのお金を捨てる結果になりました」と彼は述べた。Kavakは個人からクルマを買い、修理調整して保証をつけて販売している。

「新車を買う代わりに、完全保証付きのもっと良いクルマを買えます。これは実に向上心に満ちたプロセスです」とガルシア氏はいう。会社は目的分野別に4つの会社から成り、市場のさまざまな違いに対応するために、包括的に作られている。

「ここ(ラテンアメリカ)で会社を作るためには、いくつかの会社を立ち上げる必要があります。それは多くの物事がうまくいかないからです」と彼は語った。例えば融資が成功の鍵になっているのはそれが理由だ。

融資はそもそもブラジルでは困難であり、ガルシア氏によると中古車市場にもその基盤がない。とはいえ、ブラジルはラテンアメリカのフィンテックハブであり、Nubank、PagSeguro、Creditas、PicPayなどが先陣を切ったこの分野は過去7~10年に大きく飛躍した。その結果クレジットカードやローンはこの地でも以前よりずっと手に入りやすくなり、Kavak Capitalのライバルとなっている。Kavakはブラジル市場向けにサービスの一部をローカライズしているが(アプリとウェブサイトのポルトガル版など)、市場はよく似ているとガルシア氏はいう。

「ブラジルではメキシコと同じ問題が今もありますが、ブラジルのほうがやや進んでいて、特にフィンテックはメキシコの何光年も先にいます」と同氏は述べた。

ブラジル向け製品の競合を踏まえ、ガルシア氏はすでに他の地域の計画を持っているといったが、名前は明らかにしなかった。

「新興国市場の80%の人たちがまだクルマを持っていません」とガルシア氏は世界市場の大きさを示唆した。「私たちは顧客が同じような問題に直面していて、Kavakがその人たちの生活を大きく変えられるような大きい市場に参入したいと考えています」と付け加えた。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Kavakメキシコブラジル中古車資金調達ユニコーン企業

画像クレジット:Kavak

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ブラジルの無料クレジットマーケットプレイス「FinanZero」が7.7億円を追加調達

ブラジルのオンラインクレジットマーケットプレイスであるFinanZero(フィナンゼロ)は、700万ドル(約7億7000万円)の調達ラウンドを完了したことを現地時間4月5日に発表した。2016年の設立以来4回目の資金調達だ。これで調達総額は2285万ドル(約25億2000万円)になった。

リアルタイムオンラインローンブローカー(融資仲介業)の同社は、利用者が個人ローン、自動車担保ローン、住宅担保ローンなどの申し込みを無料で行い、数分以内に回答が返ってくる。FinanZeroの成功のカギは、融資自体は行わず、代わりに融資を提供する銀行やフィンテック約51社と提携していることだ。

FinanZeroはブラジルの金融中心街であるサンパウロを拠点とし、52名の従業員がいる。

「私たちは初日からこう言っていました、『成功報酬だけで商売する』つまり利用者が融資契約に署名したときにだけ手数料を受け取ります」と共同ファウンダーでCEOのOlle Widen(オル・ウィデン)氏はいう。利用者からお金を取るのではなく、FinanZeroは提携パートナーから手数料を受け取る。そして増え続ける融資申し込み(月間平均75万件)のおかげで、会社は2019年から2020年の間に売上を61%伸ばした。

FinanZeroの共同ファウンダーでCEOのオル・ウィデン氏(画像クレジット:FinanZero)

ブラジルの金融・バンキング市場は崩壊が近づいており、伝統的に富裕層を優遇してきた。

低所得の人々、すなわちブラジル国民の大半にとって、融資の選択肢はほとんどなくその結果負債の悪循環から逃れることができない。ブラジルの若者は結婚するまで家族と暮らすのが伝統的であり、そこには文化的側面もあるが、つまるところ住宅ローンの承認を得ることが極めて難しいからだ。

FinanZeroや、ラテンアメリカ最大のデジタルバンクであるNubankのようなサービスによって、ブラジル人はこれまで自分たちの生活を支配してきた旧態依然の金融機関から離れ、自立した経済活動が可能になりつつある。

スウェーデン出身のウィデン氏は、約10年前に個人的事情でブラジルに渡り、そこで北欧のイノベーションをブラジルにもたらすことに焦点を絞った投資会社であるWebrodk VenturesにFinanZeroのアイデアを売り込んだ。

当時FinanZeroの先駆けとなったスウェーデンのスタートアップLendoはスウェーデンで大ヒットしており、ブラジルでも同じようなモデルが成功するとチームは考えた。官僚主義とお役所仕事で知られるこの国で、合理的で手間いらずの融資アプローチの機は熟していた。

最初のアイデアは単なるLendoのコピーだったが、やがて外部からの指摘を受け、サービスとユーザー体験の「トロピカル化」が必要だと気づいた。つまり、ブラジルの市場と人々に合わせたカスタムソリューションを作らなければならなかった。

「Lendoのファウンダーは私の幼なじみでした」と、ウィデン氏がスウェーデンフィッテックとの絆について話した。

FinanZeroで融資を申し込むために自分のクレジット(信用)スコアを提示する必要はない。必要なのは公共料金の請求書(住所の証明)と収入の証明、政府IDだけだ。手続きは簡単で、92%のローン申請はスマートフォンから行われているとウィデン氏はいう。

「私たちのビジネスモデルは、銀行のリスク選好度に強く依存しており、2019~2020年で60%成長しました。月間300万近いアクセスがあり、ユニークユーザーは約150万で、2021年3月には80万人が申し込みフォームに記入しました。全サービスを通じて承認率は約10%です」とウィデン氏は述べた。

今回のラウンドをリードしたのはスウェーデンの投資家であるVEF、Dunross & CoおよびAtlant Fonderで、いずれも同社の既存出資者だ。資金はマーケティング(ほとんどがテレビCM)、プロダクト開発、および人材獲得に使用される。

カテゴリー:フィンテック
タグ:FinanZero資金調達ブラジル

画像クレジット:FinanZero

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ブラジルのフードデリバリーiFoodが2025年までにカーボンニュートラルを目指す取り組みを発表

ブラジルを拠点とするラテンアメリカのフードデリバリー企業「iFood」は、消費者が企業に持続可能性への注力を求める中、同社の環境への影響を軽減するための一連の取り組みを発表した。

このプログラムは主に2つの要素から成り立っている。1つはプラスチック汚染と廃棄物に焦点を当て、もう1つは2025年までに事業活動においてカーボンニュートラルになることを目指すものだ。

廃棄物削減の取り組みの中でも最も意欲的で資金を要するのは、サンパウロにおける半自動リサイクル施設の開発だろう。

「当社は、ブラジルにおけるサプライチェーン全体をプラスチックフリー包装に変革したいと考えています。生産からマーケティング、物流まで、国全体のサプライチェーンをコントロールすることで、すでに存在しているものの生産量や需要が規模に達していない産業に対して、より競争力のある価格で包装を提供することができます」と、iFoodのCPO(チーフ・ピープル・オフィサー)&チーフ・サステナビリティ・オフィサーであるGustavo Vitti(グスタボ・ヴィッティ)氏は述べている。

同社は他にも、顧客がフードデリバリーを依頼する際に、プラスチック製の使い捨て食器を辞退することができるアプリ内オプションを設けた。

「これらの取り組みは、頼まれもしないのに送られてきて、結局使われずにゴミ箱に入ってしまうことが多いプラスチック製品の消費量削減に貢献します」とヴィッティ氏は語る。「最初に行ったテストでは90%の消費者がこのオプションを利用したため、何万本ものプラスチック製カトラリーが削減されました。これは家庭でのゴミの量を減らしたいという消費者の希望を表しています」とも。

排出量の面では、GHG inventory(greenhouse gas inventory、温室効果ガスインベントリ)を開発した炭素市場のテクノロジー企業であるMoss.Earthと協力し、環境保全や森林再生プロジェクトに結びついたクレジットを購入することで、同社の排出量をオフセットするという。

また、ブラジルで電動バイクを提供しているTembiciと協力して、同社の配送車両を内燃エンジンのモペットやスクーターから移行していく予定だ。

「相殺するだけでは十分でないことはわかっています。二酸化炭素排出量を削減するためには、革新的な方法を考える必要があります。2020年10月、当社はTembiciと提携して宅配業者専用に開発された、手頃な価格で電動自転車をレンタルできるプロジェクト『iFood Pedal』を立ち上げました」とヴィッティ氏は語る。「現在2000人以上の配達人が登録しており、サンパウロとリオデジャネイロで1000台の電動自転車を共有していますが、これには利用に加えて我々が考えていた教育的な側面もあります。定着状況が良好であることから、このプロジェクトを徐々に拡大し、他の都市でも実施して、クリーンな配送の割合を増やしていく計画です」。

ブラジルの電動バイクメーカーであるVoltz MotorsもiFoodと提携している。iFoodはVoltzから30台の電動バイクを注文し、一部の配送パートナーが現在それらを使用している。同社は、今後1年間で1万台以上の電動バイクを導入することを目指しているという。

iFoodは、水の再利用、再生可能エネルギーの導入、オサスコ本社の屋上緑化などの社内向けの取り組みと合わせて、ブラジル国内および国際市場の環境を改善するための持続可能性目標を達成したいと考えている。

「まだまだ道のりは長いですが、重要なパートナーたちとこの一連のイニシアチブに加え、現在開発中の他の取り組みを進めることで、プラスチックの発生や環境に与える二酸化炭素排出量を削減できると信じています。ブラジルの家庭生活における当社の関わりと存在は、地球に対するこれらの環境コミットメントの重要性をさらに高めています」とヴィッティ氏は述べた。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:iFoodフードデリバリーブラジル持続可能性二酸化炭素排出量電動バイクカーボンニュートラル

画像クレジット:Alfribeiro / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Aya Nakazato)

ブラジルの工場用機器監視技術TractianがY Combinatorの承認を取得

Igor Marinelli(イゴール・マリネッリ)氏とGabriel Lameirinhas(ガブリエル・ラメイリーニャス)氏は製造工場の周辺で育った。マリネッリ氏の父親はサンパウロ郊外のInternational Paperの工場で働き、ラメイリーニャス氏の父親はセメント工場で働いていた。

2人は自分たちの両親が工場の稼働に欠かせない重機のメンテナンスや監視が不十分だと訴えているのをずっと聞いていた。

そこで2人は、後にTractianの原型となる技術の開発に着手した。

サンパウロ大学時代からの友人であるマリネッリ氏とラメイリーニャス氏は、マリネッリ氏が米国で起業家としてのキャリアを積んだ後も連絡を取り合っていたが、同氏が立ち上げようとしていた慢性疾患の予測サービスBlueAIが破綻したことをきっかけに、ブラジルで再会した。

マリネッリ氏はしばらくの間、製紙工場で働き、その施設のソフトウェアエンジニアになった。そこで彼は、産業用監視ツールが置かれている粗末な状況を目の当たりにした。

そのため、ラメイリーニャス氏と一緒にもっと良い方法があるはずだと考えたのだ。ブラジルの工場には、、Siemens(シーメンス)やSchneider Electric(シュナイダー・エレクトリック)などの最新ソリューションで必要とされるWi-Fiやゲートウェイなどのネットワーク技術が備わっていない。マリネッリ氏によると、SAPなどの既存のエンタープライズリソースプランニングソフトウェアとの統合も、頭痛の種だという。

「巨大な資本を持つ企業でなければ、そのようなことはできません」とマリネッリ氏は語る。

Tractianのセンサーは、振動、温度、エネルギー消費量、機械の稼働時間時間を計測するホロメーターの4つを計測する。またセンサーから出力されるデータを分析して、マシンのメンテナンスが必要になる時期を予測するソフトウェアも開発した。

Y Combinatorは、このソフトウェアとハードウェアのパッケージに魅力を感じ、Soma Capital、Norte Ventures、Alan Rutledge、Immad Akhundなどのエンジェル投資家も同様に評価している。

Tractianの技術はセンサーに90ドル(約9800円)で、分析とソフトウェアはセンサーごとに月額60ドル(約6500円)かかる。マリネッリ氏によると、このサービスは2カ月未満で収益化できるという。同社はすでにAB InBevを最初の顧客として契約しており、合計約30人のバイヤーがTractianのセンサーを使用している。

カテゴリー:その他
タグ:TractianブラジルY Combinator

画像クレジット:Paolo Bona Shutterstock

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:塚本直樹 / Twitter

海外送金サービスのWiseが「根拠のない」不正告発をされたとブラジルの元銀行パートナーを非難

国際的な送金サービスで有名になり、IPOを計画中と報じられているロンドンに本社を置く企業Wise(ワイズ)は、ブラジルの元銀行パートナーが同社に詐欺の疑いがあると主張し「中傷キャンペーン」を行っていると非難している。この詐欺の疑いについて、Wiseは「虚偽であり、根拠がない」と述べている。

ブラジルのMS Bank(MSバンク)とWiseの間における舌戦は、Wiseが2021年1月にブラジル中央銀行から独自のFX事業免許を取得したため、MSバンクとの提携は間もなく終了することになった後で始まったようだ。その翌月である2021年2月、MSバンクは予告なしにWiseとの契約を打ち切り、独自の送金サービス「CloudBreak(クラウドブレーク)」を開始すると顧客に伝えた。

銀行のパートナーを失ったWiseは、ブラジルのコリドーを一時的に停止せざるを得なくなった。現地時間3月12日、Wiseは独自のライセンスのもと、ブラジルレアル(BRL)から米ドル(USD)へのコリドーを再び開設することができたが、その後、事態は一転した。

同日に顧客に送られたメール(今週初めにTechCrunchに提供された)の中で、MSバンクはWiseが顧客口座を介して詐欺行為を行っていたと主張している。この主張は、YouTubeの動画やMSバンクのウェブサイトに掲載された文章でも繰り返されており、顧客の口座とブラジル中央銀行に登録された取引方法の食い違いに焦点を当てている。

関連記事:IPOに先立ち国際送金のTransferWiseが「Wise」に社名変更

Wiseは、その後のブログ記事で、記録された取引方法の不一致について詳細かつ堅実に説明し、不正行為を明確に否定するとともに、MSバンクが「中傷キャンペーン」を行ったと主張している。

TechCrunchに提供された声明の中で、Wiseはこの非難が「元パートナーが発売した競合商品に対する認知度を高めるためにタイミングを合わせたもの」であり「当社はブラジルやその他いかなる国の規制当局または機関によるWiseに対する調査や告発も認識していません」と述べている。そして「当社は顧客データおよび / または資金を利用したいかなる詐欺的または不適切な活動にも責任がないことを確信しています。Wiseはこの問題に対処するために法的手段を講じています」と、このフィンテック企業は続けた。

以下はWiseの声明全文だ。

ここ数週間、Wiseはブラジルの元ビジネスパートナーによる中傷キャンペーンの対象となっていました。この告発は、元ビジネスパートナーによる競合商品の発売を意識させるタイミングで行われました。当社はブラジルやその他いかなる国の、いかなる規制当局または機関も、Wiseに対する調査や告発を行っていることを認識していません。

Wiseは、世界中の1000万人以上のお客様のために、事業の透明性と安全性に対するコミットメントを維持しています。当社は顧客データおよび / または資金を利用したいかなる詐欺的または不適切な活動にも責任がないことを確信しています。Wiseはこの問題に対処するために法的手段を講じています。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Wise銀行ブラジル

画像クレジット:MS Bank

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ソフトバンクが支援するブラジルのVolpe Capitalが約87億円を調達し中南米への投資を開始

近年、ラテンアメリカのテックとベンチャーシーンは加速度的な成長を遂げている。より多くのグローバル投資家がこの地域のスタートアップを支援しており、特にフィンテックなどの特定の分野が爆発的に伸びている。

グローバル投資家が資金を投入しているのは企業だけではない。ファンドにも投資している。

米国時間3月10日、Volpe Capitalは、ラテンアメリカの高成長技術への投資を目的としたファンドの8000万ドル(約87億2000万円)のファーストクローズを発表した。このファンドは、1億ドル(約109億円)のコミットメント総額と1億5000万ドル(約163億5000万円)のハードキャップを目標としており、注目すべきことにソフトバンク、BTG、Banco Interの関連会社がアンカー投資家として名を連ねている。またVolpeは、同社の経営陣から「大規模なアンカー投資」を受けたという。

ブラジルのサンパウロを拠点とするこのファンドは、3人の共同パートナーAndre Maciel(アンドレ・マキエル)氏、Gregory Reider(グレゴリー・レイダー)氏、Milena Oliveira(ミレーナ・オリヴェイラ)氏によって設立された。特筆すべきは、マキエル氏はソフトバンクが50億ドル(約5449億円)を投じて設立した、ラテンアメリカに特化したイノベーションファンドの元マネージングパートナーであることだ。同氏は主にソフトバンクの支援を受けて、2019年にVolpeを立ち上げた。レイダー氏は、かつてWarburg Pincusで投資を行っていた。

マキエル氏はこのファンドの資金調達について「確固たるコミットメントを得て、大幅な応募超過となった」と述べ「ラテンアメリカにおいて同クラスのファンドが初めて行った資本調達としては最高のものの1つ」と思われると語った。

Volpe Capitalは今後2年半の間に約10〜15社への投資を計画しており、平均的な出資額はそれぞれ約500〜1000万ドル(約5億4000万〜約10億9000万円)になるとマキエル氏は予想している。

これまでにVolpeは、Grupo Uol社の子会社でブラジルのデジタル学習体験を再定義することを目的としたUol Edtech社を支援している。

マキエル氏はTechCrunchにこう語った。「我々は急いでいません。最初の取引に満足しており、資本保全を考慮に入れています。今は市場がホットだと思っているので、忍耐強くサイクルを利用していくつもりです」。

このファンドの戦略は、積極的な資金調達を行っていない企業を狙うことだという。

「我々がアプローチしたときに、必ずしも資金を調達しようとしていない企業に投資したいのです」とマキエル氏は語る。

そして同ファンドは、ステージやプライマリー・セカンダリーの違いにとらわれないという。

Volpeは評価額が5000万ドル(約54億5000万円)未満のアーリーステージの企業や、レイターステージの高成長企業への投資を目指している。ファンドの最初の投資先であるUol Edtech社は後者に該当し、EBITDAマージンが30%を超えているとマキエル氏は述べている。

Volpeはたとえテック関連であっても、資本集約的な産業は避ける予定だ。

「そうした企業は、Volpeよりも懐の深い投資家に適しています」とマキエル氏は語る。

その代わりに、EdTech、ヘルステック、ソフトウェア、フィンテック(クレジット関連ではないもの)への投資を視野に入れているという。

「我々は、ラテンアメリカでディスラプションが起こりやすく、現地でのカスタマイズが必要なセクターを好んでいます」とマキエル氏はいう。「ラテンアメリカにおけるVC・成長産業の段階を考えると、ジェネラリストである方が良いと考えています」とも。

ソフトバンクインターナショナルのCEOであるMarcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏は、マキエル氏を「ラテンアメリカにおけるソフトバンクのすばらしい創業パートナー」の1人と評している。

クラウレ氏は声明で「Volpeのアンカー投資家の一員になれたことを大変うれしく思い、今後も関係を続けていくのを楽しみにしています」と付け加えた。

ソフトバンクとのつながりがあるアンカー投資家がもう1人いる。ブラジルで上場し、時価総額が70億ドル(約7629億円)を超えるフィンテックプラットフォームInterのCEOであるJoão Vitor Menin(ジョアン・ヴィトル・メニン)氏は、マキエル氏がソフトバンクを通じてInterプラットフォームへの投資を主導したことを指摘した。また、メニン氏によると、マキエル氏は取締役としても「価値ある貢献をした」という。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Volpe Capitalラテンアメリカ資金調達ブラジル

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Aya Nakazato)

ブラジルの新進フィンテックNubankが2.6兆円の評価額で420億円調達

パンデミックで資金不足に陥るスタートアップがある時代を、実にふさわしい名前をしたブラジルのネオバンクNubank(ヌーバンク)はかきわけて進んでいる。同社は米国時間1月28日、シリーズGラウンドで4億ドル(約420億円)を調達し、累計調達額は12億ドル(約1260億円)になったと発表した。しかし、250億ドル(約2兆6200億円)という新たなバリュエーションに加え(2019年の100億ドル、約1兆500億円から増加している)、さらに注目すべきはユーザー3400万人という顧客ベースで、同社はこの数字を2013年のフィンテック立ち上げから築き上げた。

「顧客の数は2019年の1200万人からほぼ口コミだけで3400万人に増えました」と同社の共同創業者でCEOのDavid Velez(デイビッド・ベレズ)氏は話した。2020年9月まで同社は1日あたり4万1000人の新規顧客を獲得していた。同社は顧客を獲得するのにコストがかかっていないことを誇りにしている。ベレズ氏は、同社がマーケティング費用を「いい給料」と優れた顧客サービスに充てていると述べた。優れた顧客サービスはブランドに対する好感を他人と共有する「熱狂的」な顧客につながる。

新たなバリュエーションにより、Nubankは南米で4番目に価値の大きな金融機関に、そして顧客数とアプリダウンロード数では世界で最も大きなデジタルバンクになった。

シリーズGラウンドは既存投資家であるシンガポールのGIC、Whale Rock、Invescoなどを含むプライベートとパブリックの投資家がリードした。他の既存投資家からはTencent、Dragoneer、Ribbit Capital、Sequoiaが参加した。ベレズ氏はSequoiaの前パートナーで、コロンビア出身。スタンフォード大学で学び、米国で何年も働いた。

南米の金融首都であり1280万人が暮らすサンパウロに拠点を置くNubankはコロンビアとメキシコに事業を拡大した。ブラジルで新サービスを構築しつつも、今回調達した資金はそうしたマーケットでの事業にあてる。

同社はクレジットカード会社として始まり、今やフルサービスを提供する銀行となっているが、支店は持たない。そのため同社は資金を主に成長に充てることができた。

ブラジルの悪名高い官僚的で恐ろしい銀行体験について、「人々はひどい扱いを受けたり高い手数料を払ったりするのに本当にうんざりしていました」とベレズ氏は話した。これまでブラジルで毎月の請求の支払いをするには、銀行の支店に足を運び、往々にして暑い中、銀行の外に並んで順番がくるまで待たなければならなかった。この順番待ちは、最新iPhoneのリリースのときにApple Storeの外にできる列のように長かった。

「銀行は口座を開くことであなたの願いに応え、その後、年間金利450%を課します」とベレズ氏は述べた。「人々は本当に人間として扱われたいのだと我々は思っていました」と付け加えた。

1994年にブラジルレアル通貨が導入されたとき、米ドルに対し1:1と固定された。しかし近年は、3人の大統領が続けざまに投獄や弾劾され、有罪になるという同国史上最大のスキャンダルがあり、ブラジルの経済は急激に悪化した。そして新型コロナウイルスももちろん状況を悪化させた。為替レートはいま1米ドルに対し5.40ブラジルレアルだ。ブラジル、コロンビア、メキシコの低い為替レートにより、特にNubankのブラジル事業のキャッシュフローがポジティブになった2018年以降、4億ドル(約420億円)の投資はかなりのランウェイ(会社の資金がなくなるまでの期間のこと)を生み出した。

同社はブラジルで銀行サービスを十分に受けられていない人々、特にクレジットカードを入手できるような経済状況にない人々にリーチしていることで知られている。従来の銀行はブラジルの市町村の80%に存在するが、Nubankのアプリベース型プロダクトは場所にとらわれず、あらゆる市町村からアクセスできる、と同社は話した。加えて、同社はブラジル人が信用を築くのをサポートしてきた。同社の紫色のBarneyクレジットカードは1カ月あたりの限度額が50レアル(おおよそ10ドル、1050円)からとなっている。顧客が最初の月に期限内に支払えば、信用はその後増す。

多数のプロダクトを展開しているなかで、Nubankはデビットカードと普通預金口座も提供しており、自前の支店は持っていないものの米国でも一般的なようにお金はATMのネットワークから引き出せる。

「Nubankは、人々がより良いもので透明性があり、そして自分のお金や将来をコントロールすることが可能になる人間的な金融サービスを受ける権利があるという信念の下に生まれました。当社は7年前に、世界で最も凝縮した銀行部門を持つブラジルで始まり、何百万という人を官僚主義と苦痛から解放することができました。テクノロジーと人間的な顧客サービスを通じて、当社は人々の日々の暮らしにポジティブな影響を与えることができました」とベレズ氏は述べた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Nubank資金調達ブラジル

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Nariko Mizoguchi)

パンデミックを追い風にブラジル版IKEAのMadeiraMadeiraが197億円調達、評価額1039億円超に

IKEA(イケア)やWayfair(ウェイフェア)のブラジル版ともいえるMadeiraMadeiraは、ソフトバンクのラテンアメリカ投資ファンドとブラジルの公共・民間投資会社Dynamoが主導したレイターステージラウンドで1億9000万ドル(約197億4000万円)の資金調達を終え、今や評価額約10億ドル(約1038億9000万円)の企業となった。

家具や生活雑貨に特化したオンラインマーケットプレイスであるMadeiraMadeiraは、顧客が家を建てたり、家具を整えたり、リフォームしたり、インテリアデコレーションしたりする際に利用できるよう、約30万点の製品を提供している。

Daniel Scandian(ダニエル・スカンディアン)氏、Marcelo Scandian(マルセロ・スカンディアン)氏、Robson Privado(ロブソン・プリバド)氏によって2009年に設立された同社は、世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの結果、ブラジルでも起こったオンラインショッピングへの移行が大きな追い風となった。

店舗が閉鎖されたことで、ブラジルでのオンラインショッピングは急増した。ダニエル・スカンディアン氏が指摘するように、ブラジルでのeコマースの普及率はパンデミック前は約7%だったが、パンデミックの最盛期には17%にまで膨れ上がり、現在は約10%で安定している。

スカンディアン氏によると、サードパーティのプライベートブランド商品の販売と、自社の配送・物流施設を組み合わせることで、MadeiraMadeiraは、複数のオンライン小売業者や家具インテリア量販店のベストプラクティスを活用することができるという。

MadeiraMadeiraのプラットフォームには1万以上の売り手が存在し、約250万ユニットの在庫を保管している。ここ数年、同社は顧客がオンラインで注文を済ませ、実店舗で商品をチェックアウトできる小売施設の中にショールームを加えた。

「こうすることで、デジタルマインドセットを持ちつつオフライン市場に取り組めます」とスカンディアン氏は述べている。

最新の資金調達で得た資金は、既存の10カ所の拠点に新たな倉庫施設を追加して物流能力を拡大するための投資に充てられる予定だ。同社はまた、同日配送やプライベートラベルサービスの拡大も視野に入れている。

今回の資金調達はおそらく株式公開前の最後のラウンドと見られており、FlybridgeやMonasheesといった以前からの投資家に加え、公開に焦点を当てた投資会社であるVelt、Brasil Capital 、Lakewoodなどが参加している。

Monashees、Kaszek、Fundo Avila、Endeavour Catalystなどの初期投資家や、Wayfairの創設者Niraj Shah(ニラージ・シャー)氏、Build.comの創設者Christian Friedland(クリスチャン・フリードランド)氏などのエンジェルバッカーがMadeiraMadeiraの初期の成功に貢献した、とスカンディアン氏は述べている。

ブラジル南部の主要都市クリチバに拠点を置くMadeiraMadeiraは、1300人以上の従業員を擁し、その大部分はテクノロジー、ロジスティック、製品開発に集中している。

「今回の新たな投資により、MadeiraMadeiraがラテンアメリカのホームプロダクツのリーダーとしての地位を固めていく中で、MadeiraMadeiraの長期的な価値創造のビジョンへのコミットメントを高めていきます。最初の投資以来、MadeiraMadeiraの経営陣は約束したことをすべて実現しており、彼らへの信頼はますます高まっています」とソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンドのマネージング・パートナーであるPaulo Passoni(パウロ・パッソーニ)氏は述べた。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:MadeiraMadeira資金調達eコマースブラジル

画像クレジット:MadeiraMadeira

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(翻訳:Nakazato)

BuzzFeedによる買収を受けブラジル版とインド版HuffPost閉鎖

HuffPostBuzzFeedの一部になりつつあるが、HuffPost IndiaHuffPost Brasilは移行しない。両サイトは米国時間11月24日に閉鎖される。

「今日は@huffpostIndiaの最後の日です」と、Aman Sethi(アマン・セティ)編集長はツイートした。「あらゆるニュース、ストーリー、レポーター。これは私が働いた中で、最大のニュースルームです(自分がリーダーという特権を持っていたとはまだ信じられない)。 私たちの記事を読み、ジャーナリズムを支援してくれた皆さんに感謝します」。

先週、BuzzFeedはVerizon Media(ベライゾン・メディア、TechCrunchも所属している)との広範な取引の一環として、HuffPostを買収すると発表した。買収の一環として、両社はコンテンツのシンジケーションと広告で協力する。

Verizon Mediaは声明で「私達はHuffPostがインド版とブラジル版を直ちに終了したことを確認しました」と述べた。「HuffPost IndiaとHuffPost Brazilのチームの努力と組織への貢献に感謝します」。

The Daily BeastのMaxwell Tani(マクスウェル・タニ)氏は、BuzzFeedのCEOであるJonah Peretti(ジョナ・ペレッティ)の内部コメントと思われるものをツイートした中で、同社は「ブラジル版とインド版を引き受けることは法的に許されていません」と述べている。インドでは「外国企業は報道機関を所有することは許されていません」としており、BuzzFeedはBuzzFeedを販売する条件によりブラジルで営業できないと主張した。

関連記事:BuzzFeedがVerizon MediaからHuffPost(旧The Huffington Post)を買収

カテゴリー:ネットサービス
タグ:売却インドブラジル

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter