AEyeがSPAC経由で公開する最新のLiDAR企業に

乗用車の高度運転支援システムと自動運転車向けに技術を開発したLiDARスタートアップのAEye(エーアイ)が、20億ドル(約2100億円)で評価され、CF Finance Acquisition Corp. IIIとの合併により公開する。

この合併取引でLiDAR会社がまた1つ、従来のIPOプロセスに代わりいわゆるブランクチェック(白紙小切手)会社またはSPAC(特別買収目的会社)を選んだ。Velodyne Lidarが2020年夏に18億ドル(約1890億円)の市場価値で、特別目的買収会社のGraf Industrial Corp.との合併により公開する計画を発表し、このトレンドの口火を切った。Luminar、Aeva、Ouster、Innovizなど他社もすぐに続いた

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この取引でAEyeはGM Ventures、Subaru-SBI、Intel Capital、Hella Ventures、Taiwania Capitalを含む機関投資家および戦略的投資家から、PIPE(上場企業の私募増資)で2億2500万ドル(約240億円)を調達できたと述べた。他の非公開の投資家も参加した。この取引を通じて、AEyeの貸借対照表には約4億5500万ドル(約480億円)の現金が計上され、収入にはCantor Fitzgeraldがスポンサーとして入っているSPACのCF Finance Acquisition Corp.IIIからの2億3000万ドル(約240億円)の信託が含まれる。

LiDAR(光検出および測距レーダー)は、レーザー光を使用して距離を測定し、車の周りの世界の高精度な3Dマップを生成する。このセンサーは、新興の自動運転業界の多くから重要かつ必要なツールと考えられている。Velodyneは長い間LiDAR業界を支配し、ほとんどの自動運転車開発会社にその製品を提供してきた。Velodyneから市場シェアを奪うことを目指し、過去数年間に数十のスタートアップが出現し、それぞれがテクノロジーとビジネスアプローチに関して独自のバリエーションを売り込んできた。

過去3年間でLiDAR企業は、自動運転車を商品化するためのタイムラインが長引くにつれビジネスモデルを微調整してきた。スタートアップは自社の認識ソフトウェアについて力説し、センサーを乗用車に適用すれば冗長性が生まれ、運転支援システムの機能が強化できる、またはされるはずだと自動車メーカーに売り込み始めた。

AEyeは自動運転車を超えて重点を拡大しているLIDAR企業の1つだ。同社は公開で調達した資金を主要市場で会社を拡大するために使用すると述べた。AEyeの売りは、同社のLiDAR技術と、ContinentalなどのTier1およびTier2サプライヤーとの提携により規模を拡大し主要な自動車メーカーに採用されるのに適した位置にいるということだ。AEyeのLiDARセンサーは周囲をスキャンし、認識ソフトウェアの助けを借りて、関連する対象物を識別して焦点を合わせる。

自動車、特に乗用車および自動運転車の分野で長期的にADAS(高度運転支援システム)をサポートすることが、AEyeの基本的な市場だ。しかし同社は鉱業、トラック輸送、交通システム、航空、ドローンなど、より幅広い産業およびモビリティアプリケーションを見すえている。

「適切な価格と信頼性で、最終的にLiDARはカメラを備えたすべてのものに含まれると信じています」とCEOのBlair LaCorte(ブレア・ラコート)氏は投資家向けプレゼンテーションで述べた。「消費者および産業用アプリケーションにLiDARが広く採用されるという期待とともに、2030年までに獲得可能な最大市場規模が420億ドル(約4兆4000億円)になると予測しています」。

AEyeはその獲得可能な最大市場規模の初期段階にある。同社は2021年に400万ドル(約4億2000万円)の売上高と5900万ドル(約62億円)のマイナスのEBITDAを見込んでいると語った。同社はセンサーの商業生産を2021年第4四半期に予定しており、それが同社が予測する2022年の売上高1300万ドル(約14億円)に寄与する。同社は2024年までに売上高が1億7500万ドル(約180億円)になると見込んでおり、下半期にはEBITDAがプラスになると述べた。

合併後の会社はAEye Holdings Inc.という社名でNASDAQに上場する。合併取引は2021年第2四半期に完了する予定だ。CEOとしてブレア・ラコート氏、CTOとして創業者Luis Dussan(ルイス・デュッサン)氏、CFOとしてBob Brown(ボブ・ブラウン)氏らが経営陣に残る。

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画像クレジット:Aeye

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードが2030年までに欧州向け全車両を電動化

Ford(フォード)は米国時間2月17日、2030年までに欧州市場において電気自動車のみの販売を目指す新戦略を発表した。そのために10億ドル(約1060億円)を投じてドイツのケルンにある工場を改修し、Volkswagen(フォルクスワーゲン)のプラットフォームを使用して電気自動車を生産する予定だ。更新された工場における最初の生産車は、2023年までに出荷される予定となっている。

ヨーロッパフォードのStuart Rowley(スチュアート・ローリー)社長は同日、オンライン記者会見で発表した。

この新しい戦略では、ガソリン車から電気自動車への段階的な移行を目指す。Fordは2024年までに欧州で生産するすべての商用車を電動化するとしている。その2年後には、全ラインナップを電気自動車またはプラグインハイブリッドカーに転換する計画だ。なお同社によれば、2030年以降も欧州ではガソリン車の商用車を販売するとしている。Fordは現在、欧州での販売台数の3分の2を電気自動車が占めると見ている。

Fordの発表は、2035年までに電気自動車を中心に生産するとしたGM(ゼネラルモーターズ)による同様の公約に続くもので、同社は2035年までにほぼEVのみを生産すると述べている。FordもGMも、GMがほとんど撤退した欧州市場では小さなプレイヤーであり、Fordの市場シェアはわずか5%に過ぎない。

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(文:Matt Burns、翻訳:塚本直樹 / Twitter

コンピュータービジョンで駐車場をアップグレードするMetropolisが43.5億円調達

Metropolis(メトロポリス)は、自動化された駐車場管理の業界でシェアを獲得すべく、BMW傘下のParkMobile(パークモバイル)と競合しようとしているロサンゼルス拠点の新しいスタートアップだ。

出入りするクルマを認識するコンピュータービジョンベースのシステムで駐車場をアップグレードする、というのが創業者でCEOのAlex Israel(アレックス・イスラエル)氏が2017年に事業を開始したときからのMetropolisのミッションだ。

連続起業家のイスラエル氏は数十年も駐車場について考えてきた。同氏の直近の会社ParkMeは2015年にInrixに売却された。売却で得た収入と経験を元に、同氏は新しい種の駐車場料金決済と管理サービスを開発するために一から取り組んだ。

そして現在、Metropolisは事業立ち上げだけでなく、4100万ドル(約43億5000万円)の調達を発表しクローズアップされる準備ができている。投資家には不動産管理のStarwood、RXR Realty、Dick Costolo氏とAdam Bain(アダム・ベイン)氏の01 Advisors、Dragoneer、元Facebook従業員のSam Lessin(サム・レッシン)氏とKevin Colleran(ケビン・コレラン)氏のSlow Ventures、AlphabetのSidewalk Labs最高責任者Dan Doctoroff(ダン・ドクトロフ)氏、NBAのスターでアーリーステージ投資家のBaron Davis(バロン・デイビス)氏が含まれる。グローバルグロースエクイティファーム3Lがラウンドをリードした。

イスラエル氏によると、多岐にわたる都市モビリティサービスのハブとして駐車場の再構築を望んでいる大企業にとって駐車料金決済アプリケーションは基礎となる。

Metropolisの最終目標は、フロリダ拠点のスタートアップREEFと同じだ。REEFは既存のインフラや都市駐車場業界が作り出したものをどうすべきか、独自の考えを持っている。そしてREEFの2020年の7億ドル(約743億2000万円)の資金調達は駐車場につぎ込む金がたくさんあることを示している。

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イスラエル氏によると、REEFと違ってMetropolisはモビリティ分野に注力し続ける。「モビリティがシフトするにつれ、今後20年で駐車場はどう変わるでしょうか」と同氏は疑問を呈した。同氏はMetropolisが答えを提供することを望んでいる。

同社は調達したばかりの資金で、2022年にかけてサービス展開を600カ所に拡大したいと考えている。2017年の創業以来、同社はこれまでに累計6000万ドル(約63億7000万円)を調達した。

コンピュータービジョンと機械学習のテクノロジーは、同社が今後提供する駐車場、クリーニング、充電、ストレージ、ロジスティックといったものへの取っかかりとなる。「当社はインテグレーターになり、一部のケースでは直接的なサービスプロバイダーになります」とイスラエル氏は話した。

Metropolisはすでに大手の不動産所有者のために1万超の駐車スポットを管理しており、より多くの不動産管理者が同社のサービスを利用するようになると同氏は予想している。

「(大手の不動産管理者は)施設へのシームレスなアクセスを可能にするインフラ要件について考えていません」と同氏は話した。同氏のテクノロジーにより、ビルは価格変動制や歩留まりの最適化のようなサービスを通じて価値を有するようになる。

「Metropolisはスクーター充電、スクーターストレージ、車両ストレージ、車両のロジスティックや分類などで最も有効な使用を見出しています」と同氏は話した。

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タグ:Metropolisコンピュータービジョン駐車場

画像クレジット:Marvin E. Newman / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

電動モペッドシェアリングのRevelが電動自転車サブスクも開始、NYで提供

電動のモペッドシェアリングのスタートアップRevel(レベル)が月極の電動自転車サブスクリプションをニューヨークで開始する。ここ数週間で同社が発表した新規事業としては2つ目となる。

Revelは米国時間2月16日、プロダクトラインを拡大すると発表した。2021年1月末まではモペッドのシェアリングのみだったが、今後は電動自転車の月極サブスクも提供する。サブスクは、マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスの住人に提供される。WING Bikesが製造した自転車には36Vのバッテリーが搭載され、1回のフル充電で45マイル(約72km)走行でき、最高速度は時速20マイル(約32km)だ。

電動自転車サブスクの料金は1カ月99ドル(約1万500円)で、ここには自転車レンタル、ロック、バッテリー、修理・メンテナンス費用が含まれる。Revelは顧客が問題を報告してから24時間以内に、通常の自転車のメンテナンスを行うと約束している。また、同社によると、自転車に関する法律、安全、最善の施錠方法についての教材もアプリや印刷物などでユーザーに提供されるという。

Revelは電動モペッドのシェアリングサービスを2018年に開始した。Frank Reig(フランク・レグ)氏とPaul Suhey(ポール・スヒー)氏が創業した同社は、ブルックリンでパイロットプログラムを始め、その後クイーンズ、ブロンクス、マンハッタンに拡大した。2019年10月にIbex InvestorsがリードしたシリーズAラウンドで資金2760万ドル(約29億円)を調達し、事業を強化した。事業開始から18カ月も経たないうちに、同社はモペッドシェアリング事業をオースチン(すでに閉鎖)、マイアミ、ワシントンD.C.に拡大。さらに2020年オークランドでも事業を開始し、2020年7月にはサンフランシスコでの事業許可を取得している。

Revelはモペッドシェアリング事業のみを展開していたが、2月3日に電気自動車向けのDC急速充電ステーションをニューヨーク市で展開する計画を発表した。ブルックリンにある元Pfizer(ファイザー)ビルに置く新しい「Superhub」にはチャージャー30基が設置され、24時間だれでも利用できる。これはRevelがニューヨーク市で展開するSuperhubネットワークの初のステーションとなる。2021年春に開所予定のブルックリンのSuperhubサイトにおける最初のチャージャー10基は、Tritium社の新RTM75になる予定だ。Revelによると、これらチャージャーでは20分で100マイル(約160km)走行分の充電ができる。

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同社は現在、電気自転車サブスクという3つめの事業を加えている。レグ氏はさらに事業を多角化する用意ができているようだ。

「Revelのミッションは街を電動化することです」と同氏はTechCrunchへの電子メールで述べた。「このミッションを引き続き実行するために、そしてニューヨークのような都市の当社ユーザーにさらなるアクセスを提供するために電動自転車に事業を拡大します。これが2021年における最後の大きな発表ではないことは確かです」。

電動自転車サブスクのウェイトリストは2月16日に受付を開始し、自転車は3月初めから順次顧客のもとに届けられる。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Revel電動自転車サブスクリプション

画像クレジット:Revel

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

モビリティスタートアップTrafiがコロンビアのボゴタを皮切りにラテンアメリカにサービス展開

Trafiはユーザーが都市内で移動する際に各種の交通手段を確保して予約や支払ができるプラットフォームを作っている。同社はヨーロッパ市場を超えて世界で最も混雑した都市の1つにサービスを拡大しようとしている。

Trafiはリトアニアに本拠を置くスタートアップだが、コロンビアのボゴタ市とMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)提供することで合意したことを発表した 。

Trafiのプラットフォームはいわゆるホワイトラベルで、世界各地の都市やサービス提供者が利用できる。同社はすでにヨーロッパの7つの都市で事業を展開しており、チューリッヒのYuomov、ベルリンのJelbi、ミュンヘンのMVGなどがこのテクノロジーを利用している。システムは交通データを収集し、ユーザーはリアルタイムで移動ルートを計画できるというもので、同時に支払も処理できる点がライバルに対するセールスポイントとなっている。

Trafiは市当局と契約するだけではない。同社の技術はGoogle、Lyft、Gojekにも提供されている。

ボゴタでは、このプラットフォームがバスや路面電車だけでなく、地元のタクシーや電気自転車を含むあらゆる公共交通機関を統合する。ユーザーはTrafiの支払システムだけですべての交通手段の予約、支払いを行うことができる。Trafアプリにはユーザーの所在地でのリアルタイムの運行情報、その場所で利用可能なすべてのモビリティオプションが表示される。ニアバイ機能を利用してバス、タクシー、電動自転車など最大3つの異なる移動手段の比較、組み合わせを表示する「インターモーダル経路提案」も含まれている。

画像クレジット:Trafi

ボゴタは世界へのサービス拡大の手はじめだという。Trafiの共同ファウンダーCEOであるMartynas Gudonavičius(マルティナス・グドナヴィチウス)はTechCrunchの取材に対して、同社は他の中南米都市へもプラットフォームを拡大していく計画だと語った。はまずブラジルのサンパウロなど大都市や首都をターゲットにする。グドナヴィチウス氏は、Trafiはこの地域の中小都市との契約も視野も入れている。スクーター、自転車、バス、配車サービスなどの移動手段に加えてデジタルチケットなどサービスも展開されている都市はTrafiのサービス提供に適しているという。グドナヴィチウス氏はこう述べた。

ラテンアメリカは、サービスとしてのモビリティが本当に効果を発揮できるすばらしい例です。これが我々がボゴタに進出した理由です。ダイナミックで、急成長している都市は現在の交通網をサービスとしてのモビリティにアップグレードするのに適しており、我々はその移行を支援します。

Trafiは、この地域における事業の責任者を採用中だ。2021年はすべての部門で多数の社員を採用する予定だという。また、2021年後半にはアジアへの拡大も視野に入れている。グドナヴィチウス氏は具体的に明かすことは避けたが、すでに参入を計画している都市は絞り込んでいると語った。Trafiは特に、ある日本の都市への進出を計画しているという。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Trafiコロンビア

画像クレジット:John Coletti / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:滑川海彦@Facebook

GMがシボレー・ボルトEVのマイナーチェンジと新たに加わった兄弟車の電動クロスオーバーを発表

GM(ゼネラルモーターズ)は米国時間2月14日、2022年モデルとしてマイナーチェンジを受けた電気自動車「Chevrolet Bolt EV(シボレー・ボルトEV)」を発表。また、それと合わせてやや大きい(けれど、まだコンパクトな)「Chevrolet Bolt EUV(シボレー・ボルトEUV)」と呼ばれる電動クロスオーバーのニューモデルを発表した。これらはGMが掲げる次の4年間で30車種の電気自動車を発表するという目標の一環だ。

米国で2021年夏に発売が予定されている両車は、まるで兄弟のような存在だ。同じアーキテクチャを共有するものの、明らかに異なる独自の特徴を備えている。新型シボレー・ボルトEUVは、ハッチバックのシボレー・ボルトEVと比べると、ホイールベースが75mm延長され、全長は161mm長い。これによってボルトEUVは、コンパクトなクロスオーバーながら、後部座席の足元スペースがハッチバックの915mmから、993mmにまで拡がった。

GMによれば、車名のEUVとは「electric utility vehicle」の頭文字を取ったものであるという。この新型車はまた、GMの「Super Cruise(スーパー・クルーズ)」と呼ばれるハンズフリー運転支援システムを、シボレーブランドのクルマで初めて搭載したということも注目に値する。ただし、この完全に手放し運転が可能(認可されている道路区間のみ)な機能は標準装備ではない。ドライバーは、ベース価格の3万3995ドル(約357万円)に追加料金を支払ってアップグレードする必要がある。

また、この3万3995ドルという車両価格も注目を浴びるに違いない。なぜなら、実際に現在ディーラーで販売されている2021年モデルのシボレー・ボルトEVより、わずかとはいえ安い値づけだからだ。これに合わせて、リフレッシュされた2022年モデルのシボレー・ボルトEV(詳細は後述)も、価格が引き下げられている。

ポイント:GMはその規模を利用して価格を下げ、EVを選択する気持ちが日増しに膨らみつつある消費者を惹きつけようとしている。

2022年型シボレー・ボルト EUV(画像クレジット:GM)

メーカー推定航続距離(1度の満充電で走行可能な距離)は、ボルトEVが416kmであるのに対し、ボルトEUVは402kmとやや短い。新たに採用されたDual Level Charge Cord(デュアル・レベル充電コード)が標準で付属し、プラグを交換するだけで120Vと240Vのどちらのコンセントからも充電できる。

EUVにはナビゲーションも搭載される。これは2台のボルトにとって重要な追加機能といえるだろう。2016年にデビューしたボルトEVはカーナビゲーションを搭載しておらず、地図や道案内はAndroid Auto(アンドロイド・オート)かApple CarPlay(アップル・カープレイ)に頼らなければならない。

重要なことは、これらの2モデルがいずれも、2020年春に発表されたGMの新しい「Ultium(アルティウム)」バッテリー駆動プラットフォームを採用した車両ではないということだ。Ultiumプラットフォームは、コンパクトカーから作業用トラック、大型プレミアムSUV、パフォーマンスカーなど、GMの各ブランドにおける幅広い製品群をサポートするように設計されている。ボルトEUVとボルトEVは、GMがより野心的なEV戦略に取り組む間、競争に参加し続けるために投入された、重要なプレースホルダーと見るべきだろう。

2022年型シボレー・ボルトEV

2022年型シボレー・ボルト EV(画像クレジット:GM)

GMが2月14日に発表したモデルはボルトEUVだけではない。同自動車メーカーは、4年以上前に登場したハッチバック型電気自動車のシボレー・ボルトEVにもマイナーチェンジを施した。

ポイント:スペックは変わらず、インテリアがアップグレードされ、価格は5500ドル(約58万円)下がった。

2022年型シボレー・ボルトの車台を支える「BEV2」と呼ばれる電動プラットフォームはそのままだ。

65kWhのバッテリーパックを搭載し、1度の充電で推定416kmの距離を走行可能。1基のモーター(デビュー当時と変わらず)が最高出力150kW(200hp)と最大トルク360Nmを生み出す。全幅は1765mmと変わらないが、全高は少しだけ高い1611mmとなった。全長は20mmほど短縮され、4145mmとなっている。

2022年型シボレー・ボルト EUV(画像クレジット:GM)

2022年型シボレー・ボルトは3万1995ドル(約336万円)からと、新型車のボルトEUVより2000ドル(約21万円)安い。その価格でGMは現代的にアップデートされたインテリアと、「快適性が向上した」というフロントシートを詰め込んだ。同社によると、これらの改良は顧客からのフィードバックに基づいたものだという。

車内には10.2インチのタッチスクリーンに加え、8インチのデジタルゲージクラスター(計器盤)を装備。従来と同様、2022年モデルもAndroid AutoとApple CarPlayに標準で対応する。前述したように、2022年モデルのシボレー・ボルトにはまだカーナビゲーションが標準装備されていないため、代わりに自分のスマートフォンをつなぎ、CarPlayやAndroid Autoを利用することになる。

2022年モデルで採用された新機能の1つとして、センターコンソールに備わるボタンを押すと、ワンペダル走行が可能になる。ドライバーはアクセルペダルを踏み込んで加速し、その足をペダルから離すと、車両に搭載された回生ブレーキが作動して、車両を減速・停止させる。つまり、ブレーキペダルに踏み変える必要がないわけだ。

ボルトEVには、Super Cruiseという名称で知られるGMのハンズフリー運転支援システムが搭載されていない。GMは、数年前からキャデラックに搭載してきたこのシステムを初めて採用するシボレー車に、新型車のボルトEUVを選んだ。代わりにハッチバックのボルトEVは「Chevy Safety Assist(シボレー・セーフティ・アシスト)」を標準で装備し(ボルトEUVも標準装備はこちら)、その6つの運転支援機能には、車線維持アシストや車線逸脱警報などが含まれる。

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タグ:GM電気自動車

画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

トヨタ出資の電動航空機メーカーJoby AviationもSPAC経由で上場か

Toyota(トヨタ)がリードしたラウンドで5億9000万ドル(約620億円)を獲得してから1年、Uberの空飛ぶタクシー事業を買収してから数カ月後、Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)は特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じての上場を交渉していると報じられた。このディールによる電動航空機メーカーJoby Aviationの評価額は57億ドル(約5980億円)になるとのことだ。

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このニュースはArcher Aviationの大きなSPACディールに続くものだ。ファイナンシャルタイムズ紙の報道が正確であれば、Joby AviationとArcher Aviationは合計100億ドル(約1兆500億円)近いバリュエーションで近く公開企業となる。

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炭化水素以外のもので動く車両を作っているスタートアップが主役になる時代であり、SPACの大きな波が押し寄せている。

電気自動車メーカーのArrival、Canoo、ChargePoint、Fisker、Lordstown Motors、Proterra、The Lion Electric CompanyはすでにSPACと合併したか、合併の計画を発表した。

そして今、あらゆる形態の交通の電動化に関係する企業はSPACというビークルを通じての上場という波に乗ろうとしている。従来のIPOは課題が多いかもしれないと感じており、しかし資金調達という観点でいつまでもスタートアップのままではいたくないという企業にとって、SPACとの合併は今のところかなり人気となっている手法だ。

Jobyを上場させようとしていると報じられた投資グループは、億万長者のテック起業家で投資家、そしてLinkedIn共同創業者のReid Hoffman(リード・ホフマン)氏と、ゲーム会社Zyngaを創業したMark Pincus(マーク・ピンカス)氏が率いている。

両氏は2020年初めに一緒にSPACのReinvent Technology Partnersを立ち上げた。このペーパーカンパニーは上場し、合併のために6億9000万ドル(約720億円)を調達した。

Jobyが上場するとなれば、トヨタやBaillie Gifford、Intel Capital、 JetBlue Technology Ventures(米国拠点の航空会社の投資部門)、Jobyに1億2500万ドル(約130億円)を投資したUberなどJobyを支援している企業にとって勝ちとなる。

Jobyはすでにフライト600回をこなしたプロトタイプを持っているが、まだ連邦航空局に認証されていない。そしてファイナンシャルタイムズ紙が指摘したように、同社とホフマン氏、ピンカス氏のSPACグループとの取引がうまくいくかはわからない。

この取引は、両氏が設立したSPACへの追加の資金注入を必要とするかもしれない。資金の追加がなければすべてが白紙に戻る。実際、これはおそらくみなさんが今この記事を読んでいる理由の1つだろう。

あらゆる種類の輸送車両を動かしすべての移動手段をカバーする電動化は、投資の間で大流行している。部分的にはこれは投資対象となりそうな環境要素、持続可能性、良いガバナンスを備える企業を見つけるというプレッシャーが機関投資家の間で高まっているためだ。

環境への影響はユナテッド航空のCEOであるScott Kirby(スコット・カービー)氏が、Archer Aviationから10億ドル(約1050億円)分の電動飛行機を購入することについて語ったときに言及した要素だ。このArcherは今週初めにSPACを通じての上場を目指すと発表した。

「Archerとの協業で、ユナイテッド航空はよりクリーンで効率的な交通手段を擁する時だということを航空業界に示しています。正しいテクノロジーを活用して我々は航空機が地球に与えるインパクトを抑制できますが、これを早期に現実のものとする次世代の企業を特定し、そうした企業が飛び立つのをサポートする方法を見つけなければなりません」とカービー氏は述べた。

TechCrunchが先日報じたように、今回の動きは、ゆくゆくはユナイテッド航空の乗客の空港送迎ができるかもしれないという新たなビジネスラインへの投資でもある。ArcherのeVTOL1機を使えば乗客1人のハリウッド-ロサンゼルス国際空港間の移動による二酸化炭素排出量を最大50%減らすことができる、とユナイテッド航空は算出している。

Archerがステルスモードから登場して1年も経たないうちに、SPACとの合併契約とユナイテッド航空からの受注となった。Archerは2018年にAdam Goldstein(アダム・ゴールドステイン)氏とBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏が共同創業した。2人はSaaS企業VetteryをAdecco Groupに1億ドル(約105億円)超で売却した。Archerの主要投資家はMarc Lore(マーク・ロア)氏で、同氏は自身の会社Jet.comを2014年にWalmartに33億ドル(約3450億円)で売却し、2021年1月までWalmartのeコマース責任者を務めていた。

EV飛行機投資のブームから取り残されたと心配しているSPAC投資家あるいはベンチャーキャピタリストがいるなら、ご安心を。まだドイツのテックデベロッパーLiliumがいる。そしてもし超音速旅行に関心があるなら、Boomがいつでもいる

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Joby AviationSPAC

画像クレジット:LockieCurrie / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

Shellが2025年までにEV充電ステーションを50万カ所に設置

今後4年で50万カ所に電気自動車(EV)充電ステーションを設置するというShell(シェル)の計画は、EV充電インフラブームを示す最新の証拠だ。ブームで投資家はこの業界に資金を注ぎ、需要に対応するのに必要な資本を求めて数社に上場を促した。

年初来、この業界の3社が特別買収目的会社(SPAC)に買収され、公開への道を歩んでいる。その一方で3分の1の企業が商業化に向けた取り組みのために名だたるプライベートエクイティ投資家から数千万ドル(数十億円)を調達した。

SPAC攻撃はEV充電ネットワークChargePointが市場価値24億ドル(約2500億円)でSPACのSwitchback Energy Acquisition Corporationと合併する契約を結んだ時に始まった。同社は米国時間2月16日にニューヨーク証券取引所に上場する。

関連記事:EV充電ネットワークのChargePointがSPACとの合併を経て上場へ

2021年1月、EV充電インフラを展開するEVgoは26億ドル(約2720億円)のバリュエーションでSPACのClimate Change Crisis Real Impact I Acquisitionと合併することに同意した。これはEVgoの非公開株式の所有者、電源開発投資企業のLS Powerにとって大きな勝利だった。現在EVgoの全株式を所有するLS PowerとEVgoの経営陣は全資本を取引に組み込む。第2四半期にトランザクションがクローズすれば、LS PowerとEVgoは新合併会社の株式74%を保有することになる。

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その後にもう1つSPAC案件が続いた。Volta Industriesが2021年2月、Tortoise Acquisition IIとの合併に同意した。この合併では、バッテリーを発明したAlessandro Volta(アレッサンドロ・ボルタ)氏にちなんだ社名のVolta Industriesのバリュエーションは14億ドル(約1470億円)になる。本取引によりSPAC会社の株価は今週初め31.9%上昇し17.10ドル(約1790円)になった。現在は15ドル(約1570円)前後で取引されている。

プライベートエクイティファームも引けを取らずこのゲームに参戦している。プライベートエクイティのエネルギー投資で有名なRiverstone HoldingsはFreeWireに投資してEV充電に賭けた。FreeWireは初め新規ラウンドで5000万ドル(約52億円)を調達した。

「不吉な前兆があり、投資家たちは時宜をとらえなければなりません。マーケットにある従来の投資機会から飛び立つフライトがあります」とFreeWireのCEOであるArcady Sosinov(アーカディ・ソシノフ)氏はインタビューで述べた。「石油・ガス企業から、そして従来のユーティリティから去るフライトがあります。他の機会に目を向けなければなりません。これは今後10年で最も大きな成長機会となるでしょう」。

FreeWireは現在BPとインフラを展開しているが、同社の充電テクノロジーはファーストフード企業、郵便局、グローサリーストア、あるいは人々が足を運び20分間から1時間ほど過ごす場所であればどこにでも導入できる。米連邦政府が所有する車両をEVにするというバイデン政権の計画があり、郵便局は実際に充電ネットワークとなる大きな機会を手にしている、とソシノフ氏は話した。

「モビリティの電動化が魅力的だと我々が感じている理由の1つは、『もし』とか『どうやって』ではなく『いつ』だからです」とRiverstoneでESG(環境、社会、ガバナンス)責任者でパートナーのRobert Tichio(ロバート・ティキオ)氏は述べた。「ノルウェーや北欧に比べ、浸透率は驚くほど低い。そうした国々は浸透率2桁を達成しています」。

俳優のWill Ferrell(ウィル・フェレル)氏が登場した最近スーパーボウルで流れたGMのコマーシャルは、EV浸透においてノルウェーがいかに進んでいるかを示した。

交通の電動化における資本の需要は年間7500万ドル(約79億円)に近づき始めます」とティキオ氏は話した。「あなたの疑問への短い答えは、我々がともに政治的に、社会的に、そして経済的に抱えている資本の需要は、我々がどこに向かうかという観点でコンセンサスを得て転換点を迎えます」。

ShellはすでにEV充電インフラをいくつかのマーケットで展開している。2019年に同社はロサンゼルス拠点のEV充電デベロッパーのGreenlotsを買収した。また初めには英国のEV充電会社Ubitricityも買収している

「顧客の需要が進化するにつれ、我々はさまざなま種の代替エネルギーソースの提供を増やしていきます。これらはデジタルテクノロジーに支えられ、どこへ運転して移動する必要があろうが人々に選択肢とフレキシビリティを提供するものです」とShellのNew Energies代表取締役副社長Mark Gainsborough(マーク・ゲインボロー)氏はGreenlots買収に関する声明で述べた。「今日の米国ドライバーの低炭素エネルギー需要に応える最新の投資は、より良い明日をつくるという当社の広範な取り組みの一環です。EV充電をよりアクセスしやく、ユーティリティや事業者、コミュニティにとってより魅力的なものにするための一歩です」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Shell電気自動車充電ステーション

画像クレジット:Shell

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

eVTOL開発のArcherがユナイテッド航空から受注、SPAC経由で上場も

都市部の航空モビリティマーケットをターゲットとしている電動航空機スタートアップのArcher Aviation(アーチャー・アビエーション)が、SPAC(特別買収目的会社)との合併を通じて公開企業となることを目指す一環で、United Airlines(ユナイテッド航空)を顧客そして投資家として獲得した。

Archer Aviationは米国時間2月10日、SPACのAtlas Crest Investment Corpと合併することで合意したと明らかにした。SPAC合併はスタートアップが従来のIPOプロセスを回避するのを可能にするという、このところよく見られる手法になっている。ティッカーシンボル「ACHR」でニューヨーク証券取引所に上場する合併会社の評価額は38億ドル(約3975億円)となる見込みだ。

ユナイテッド航空やStellantis、Exorのベンチャー部門、Baron Capital Group、Federated Hermes Kaufmann Funds、Mubadala Capital、Putnam Investments、Access Industriesといった投資家からのPIPE(私募増資)の6億ドル(約628億円)を含め、計11億ドル(約1150億円)を得ると予想される、とArcher Aviationは話した。Ken Moelis(ケン・モエリス)氏とその仲間、Archer Aviationの主要・初期投資家の1人であるMarc Lore(マーク・ロア)氏、そして初期投資家もPIPEに3000万ドル(約32億円)を投資する。

合併会社はまた信託で5億ドル(約523億円)を保有する。SPAC合併に先駆けてArcherはシードラウンドとシリーズAで6000万ドル(約63億円)を調達していた。

これとは別に、カリフォルニア州パロアルト拠点のArcherはユナイテッド航空がArcherに投資することに同意したと発表した。合意条件の下で、ユナイテッド航空は10億ドル(約1045億円)分の航空機をArcherに発注した。同航空は追加で5億ドル(約523億円)分の航空機を購入するオプションも持つ。

Archerはまだ電動垂直離発着機(eVTOL)の大量生産を開始していない。同社のeVTOLはフル充電すると時速150マイル(約241km)で60マイル(約96km)飛行できる。同社はフルスケールのeVTOLを2021年後半に披露する計画で、2023年の大量生産開始を目指している。

画像クレジット:Archer Aviation

同社は、ユナイテッド航空との取引、そして以前発表した自動車コングロマリットStellantisとの提携ならびにSPAC合併を通じて調達した資金によって商業化へ向けた取り組みを加速させられると確信している。

関連記事:エアタクシースタートアップArcherが電動飛行機生産で自動車メーカーのフィアット・クライスラーと提携

ユナイテッド航空のCEOであるScott Kirby(スコット・カービー)氏は今回の投資は同社が空の旅の脱炭素化を進める手法の1つだと表現した。

「Archerとの協業で、ユナイテッド航空はよりクリーンで効率的な交通手段を擁する時だということを航空業界に示しています。正しいテクノロジーを活用して我々は航空機が地球に与えるインパクトを抑制できますが、これを早期に現実のものとする次世代の企業を特定し、そうした企業が飛び立つのをサポートする方法を見つけなければなりません」と同氏は述べた。

また今回の動きは、ゆくゆくはユナイテッド航空の乗客の空港送迎ができるかもしれないという新たなビジネスラインへの投資でもある。ArcherのeVTOL1機を使えば乗客1人のハリウッド-ロサンゼルス国際空港間の移動による二酸化炭素排出量を最大50%減らすことができる、とユナイテッド航空は算出している。ロサンゼルスはArcherが最初に機材を飛ばそうと計画している都市の1つだ。

Archer Aviationがステルスモードから登場して1年も経たないうちに、SPACとの合併契約とユナイテッド航空からの受注となった。Archerは2018年にAdam Goldstein(アダム・ゴールドステイン)氏とBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏が共同創業した。2人はSaaS企業VetteryをAdecco Groupに1億ドル(約105億円)超で売却した。Archerの主要投資家はロア氏で、同氏は自身の会社Jet.comを2014年にWalmartに33億ドル(約3450億円)で売却し、現在はWalmartのeコマース責任者を務めている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Archer AviationSPACeVTOLエアタクシー

画像クレジット:Archer Aviation

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタが米国市場に電気自動車3モデルを2022年に投入

米国時間2月10日、Toyota Motor North America(北米トヨタ、TMNA)は新しく電動自動車3車種を米国市場に投入すると発表した。多くの自動車メーカーが米国の排ガス規制やゼロエミッションをクリアする乗用車、SUVを提供して顧客を獲得しようとしているためだ。

関連記事:アウディが同社初の電動スポーツセダン「e-tron GT」を発表、欧州では約1270万円から

トヨタによれば、2車種は全電気式、1車種はプラグインハイブリッドだという。実車の販売開始は2022年になると予想されている。

TMNAのセールス担当上級副社長であるBob Carter(ボブ・カーター)氏 によると、顧客ニーズに適するパワートレインの選択肢を提供することが目的だという。トヨタはプリウスなどのハイブリッド、RAV4などのプラグインハイブリッド、ミライなどの燃料電池車の開発と販売を行っている。

同社によれば、2025年までにトヨタブランドと高級ブランドのレクサスの各モデルでオプションとして電動パワートレインが選択できるようになる。またトヨタはさまざまなニーズに適合するよう組み合わせることができるe-TNGAと呼ばれる独自のバッテリー電気プラットフォームを開発している。

こうした努力はすべて温室効果ガスの排出量を削減して市場シェアを獲得することを目的としている。トヨタは、この目標を達成するには多様性を提供する必要があると考えている。同社は2025年までに新車販売台数の40%を電動モデルに置き換える計画だ。EVの割合は2030年までに70%弱まで増加すると見込んでいる。

TMNAのCEOでToyota Research Institute(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)のチーフサイエンティストであるGill Pratt(ギル・プラット)氏は声明で次のように述べている。

運輸部門で温室効果ガスを削減する最も速い方法は、ドライバーのニーズに適合した低炭素パワートレインのオプションを提供することだと信じています。あらゆる価格帯で複数のパワートレインを提供することにより、北米全体でより多くの人々がよりクリーンな自動車に乗るようになり、もっとも短時間で炭素排出総量に最大の削減効果をもたらすことができるでしょう。

トヨタは、温室効果ガス排出削減にともなう所有コストの上昇というトレードオフを検証するツールを利用した調査を行ってきた。その結果、バッテリーの充電に使用される電力を生み出す際に米国の発電所から排出される温室効果ガスを考慮した場合、現在の完全電気式バッテリーモデルとプラグインハイブリッドモデルの温室効果ガス排出総量はほぼ同等であることを発見した。

トヨタの電気自動車戦略はバッテリー型とプラグインハイブリッド型の環境に対する負荷がほぼ同様であるという同社の調査に基づいている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタ自動車EVアメリカ温室ガス効果

画像クレジット:Toyota

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(文:Kirsten Korosec 翻訳:滑川海彦@Facebook

現代自動車が荷物運搬用でドローンに取り付けられる小型の「ウォーキングカー」ロボットを発表

Hyundai Motor Group(ヒュンダイ、現代自動車グループ)が新しい「ウォーキングカー」ロボットで帰ってきた。このロボットは車輪で道を走り、足で立ち上がって険しい場所を進む。荷物を運ぶ設計で、小さくてドローンで運べるというのが今回のコンセプトだ。

このTIGERは、現代自動車グループのUMV(Ultimate Mobility Vehicle、究極のモビリティビークル)開発の拠点であるカリフォルニア州マウンテンビューのNew Horizons Studioから生まれた、初の「無人」UMVコンセプトだ。名前のTIGERは、Transforming Intelligent Ground Excursion Robot(変形するインテリジェント地上移動ロボット)の頭文字をとっている。同社は2019年にCESで車輪走行と四足歩行で人間を運ぶコンセプトカーのElevateを発表したが、TIGERはこれに続くものでElevateより小さい。

画像クレジット:スクリーンショット / Hyundai

コンセプトが実際の製品になるとは限らないが、New Horizons Studio責任者のJohn Suh(ジョン・スー)氏はTechCrunchに対し、TIGERを「できるだけ早く」実用化したいと述べ、おそらく5年ほどかかるだろうと補足した。

スー氏によれば、今後2年間は核心となる技術的な問題の解決に取り組んで基本設計を固める。2023年と2024年にはベータプロダクトの段階に到達して、最終的に市販する前の高度なテストを開始するという。

TIGERの現時点でのバージョンは、大型のElevateと同様のモジュラープラットフォームアーキテクチャに基づいている。このロボットには足と車輪で移動するシステム、360度の方向制御、荷物を積載するストレージベイ、そしてリモートで観測するためのさまざまなセンサーが搭載される。ドローンに取り付けられる設計で、目的地まで飛行している間にロボットを充電できる。

TIGERは地形に応じて2つのモードで移動する。複雑でない平坦な地形ではロボットの足が格納され4つの車輪で移動する。TIGERが動けなくなったり、小さな壁や盛り土、丸太といった障害物を前方に見つけたりすると立ち上がり、車輪をロックして歩き出す。

今回発表されたのは、実験用のX-1と呼ばれているTIGERの初のバージョンで、今後New Horizonsから別バージョンが登場すると思われる。今回のTIGERは、エンジニアリングデザインソフトウェア企業のAutodeskとコンセプトデザイン企業のSundberg-Ferarの協力で作られた。

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画像クレジット:スクリーンショット / Hyundai

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Kaori Koyama)

アウディが同社初の電動スポーツセダン「e-tron GT」を発表、欧州では約1270万円から

Audi(アウディ)はドイツ時間2月9日、新型電気自動車「e-tron GT quattro(イートロンGTクワトロ)」と、その高性能バージョンである「RS e-tron GT quattro」を発表した。このドイツの自動車メーカーにとって、両車はその拡大を続けている電気自動車ラインアップにおけるフラッグシップであり、初のSUVやクロスオーバーではないモデルだ。

アウディ e-tron GTとRSは、2018年に発表されたSUV「e-tron」と翌年の「e-tron Sportback(イートロン・スポーツバック)」に続く、(米国市場では)3台目と4台目の電気自動車だ。さらに5番目のモデルとして、もう1つのSUV「Q4 e-tron」の導入が予定されている。これらのe-tronモデルはすべて、2025年までに30台以上の電気自動車とプラグインハイブリッド車を発売するというアウディの計画の一環である。

「このクルマは古典的なGTの、新しい、非常に進歩的な解釈です」と、アウディデザインの責任者であるMarc Lichte(マルク・リヒテ)氏は、9日のプレゼンテーションで語った。「それは、スーパースポーツカーのようなプロポーションと、実際に4人が乗れる使い勝手の良さを併せ持つということです。そして、それはまったく新しいものです」。

画像クレジット:Audi

2021年春に量産が始まり、今夏には米国市場に投入されるe-tron GTは、スポーティなパッケージにパフォーマンスとラグジュアリーが詰め込まれている。ベース車のe-tron GTは、前後に1基ずつ搭載された2つのモーターが合計で350kW(476ps)、オーバーブースト時は390kW(530ps)に相当する出力を発生し、93.4kWhのバッテリーで487km(欧州のWLTP基準)の距離を走行できる。

一方、RS e-tron GTはエントリーレベルのGTと同じフロントモーターを装備するが、後輪側にはより強力なモーターが搭載され、それらの組み合わせによって合計最高出力440kW(598ps)、オーバーブースト時は475kW(646ps)を発揮。その結果、RS e-tron GTはゼロから100km/hまで3.3秒で加速し、最高速度は250km/hに達すると同社は述べている。WLTP基準の航続距離は472kmとなる。

この両車は、Porsche Taycan(ポルシェ・タイカン)と同じ800Vの高電圧システムを採用しており、バッテリー残量5%から80%まで22分30秒で充電できるという。これは業界で最も速い充電速度の1つだ。

e-tron GTは、ポルシェと800Vの充電システムを共有しているだけではない。同じVWグループに属するアウディとポルシェは、e-tron GTとタイカンを共同開発した。この2モデルは、シャシーや「J1」と呼ばれるEV専用プラットフォームも共通だ。

画像クレジット:Audi

e-tron GTの車内には、12.3インチの「Audiバーチャルコックピット」と呼ばれるデジタルインストルメントクラスター(メーターパネル)と、10.1インチのタッチスクリーンが標準装備されており、音楽やナビゲーションのほか、充電ステーションの検索といった電気自動車に特化した機能を、これを使って操作できる。オーナーは追加料金を払ってヘッドアップディスプレイを装備することも可能だ。

レザーフリーのインテリアは多くのリサイクル素材が使われており、「Dinamica」と呼ばれる人工スウェードが標準だが、オプションでナッパレザーも選択できる。

すべてのパフォーマンスとラグジュアリーは価格に反映される。2月中に予約受付が始まる欧州での価格は、e-tron GTが9万9800ユーロ(約1270万円)から、RS e-tron GTは13万8200ユーロ(約1750万円)からとなっている。米国ではe-tron GTのベースグレードが9万9900ドル(約1050万円)で、その上級トリム仕様が10万7100ドル(約1120万円)、RS e-tron GTは13万9900ドル(約1460万円)から。オプションを追加していけばこの価格よりさらに高くなるわけだが、ハイビームの照射を自動で配光するマトリクスLEDヘッドライトは、米国仕様では選ぶことができない。

カテゴリー:モビリティ
タグ:AudiVW電気自動車

画像クレジット:Audi eventVW(スクリーンショット)

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Auroraがトヨタ、デンソーと自動運転ミニバン「シエナ」を共同開発

自動運転テクノロジー企業のAuroraは車両開発およびテストを実施する契約をToyota(トヨタ自動車)および大手部品メーカーのDENSO(デンソー)との間で締結した。Auroraのテクノロジーを搭載して開発される自動運転車両はまずミニバンのトヨタ・シエナが予定されている。

米国時間2月9日、Auroraとトヨタは自動運転バージョンのシエナを設計、テストすることで協力することを発表した。両社のエンジニアのチームは2021年末までに実車のテストを開始することを目標としている。

この発表は、2019年にAuroraがトヨタ、デンソー、SoftBankのVision Fundから10億ドル(約1046億2000万円)を調達してUberから独立したUber Advanced Technologies Groupを買収したことに続くものだ。1月20日に完了したこの買収は、UberがATGの株式を手渡し、4億ドル(約418億5000万円)をAuroraに投資するという複雑な取引だった。Uberは合併後の新会社の株式の26%を保有している。また、トヨタはAuroraの株式の一部を取得している。

関連記事:Uberが自動運転部門Uber ATGを売却、購入したAuroraの企業価値は1兆円超え

発表された提携計画は、 少なくとも部分的には 、2018年にトヨタとUberが合意したオンデマンド自動運転タクシー配車(ride-hailing)サービスを市場に投入するための計画に似たものとなっている。両社はUberのタクシー配車ネットワークでミニバン「シエナ」を使用し、同車にUber ATGの自動運転テクノロジーを搭載することで合意した。これにともないトヨタは5億ドル(約523億円)の投資を行った。当時、トヨタとUber ATGはこれらの車両はサードパーティーの企業が買い取って運用・管理することができると述べていた。

関連記事:トヨタ、Uberに5億ドル投資――2021年からから自動運転の実用サービス開始を目指す

Auroraの共同ファウンダーで最高製品責任者のSterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏は、「これはまったく新しいパートナーシップであり、以前のトヨタのUber ATGn提携の延長ではない」と強調した。

トヨタとAuroraは、開発チームの規模、契約に関連した財務的インセンティブなどの詳細を明らかにしなかったため、現在のところこの提携が影響する範囲などを見極めるのは難しい。

それでもAuroraは一車種の開発とテストを超えたパートナーシップだという野心的なビジョンを打ち出し「長期的な戦略的提携」と表現している。また2021年の共同開発作業は、最終的に自動運転車両をトヨタと共同で量産し、Uberやそれ以外のタクシー配車ネットワーク上に乗せる基盤を築くことが目的だとしている。また自動走行に必要な部品の量産ではデンソーと協力する。自動運転車に関する融資、保険、メンテナンス等のカスタマーサービスのプラットフォームの構築でもトヨタと協力する方法を検討していくという。

アンダーソン氏はトラック運送のPACCAR、そして今回のトヨタとの提携が実現したことで「フリート管理などの商用の川下(ダウンストリーム)サービスの開発が同社にとってますます重要になってきた」と述べた。

最近のインタビューでアンダーソン氏はこう語っている。

タクシー配車サービスにはまず自動車とドライバーが必要ですが、その次にはサポートサービスが必要です。この一環としてトヨタと協力して研究している分野の1つは、Auroraのサポートサービスとトヨタの販売ネットワークを組み合わせ。Auroraの自動運転テクノロジーを搭載したトヨタ製車両を大規模に展開することです。これはトヨタのネットワークの巨大さが我々にとって非常に重要になる分野です。

自動車の場合、開発、テストから実際に市場で商用化されるまでの道のりは非常に長い。資金調達以外のも技術的な課題や規制上の課題が生じる。熟練労働者の確保をめぐるライバルとの競争もある。これらすべてをクリアしても自動運転タクシー配車ネットワークの運営にはまた独自のハードルがある。つまりAuroraがトヨタと提携したからといって今すぐに成功が保証されたわけではない。

しかし世界的な大手自動車メーカーとの提携はAuroraにとって極めて重要な一歩だったに変わりはないだろう。

Auroraの共同ファウンダーであるCEOのChris Urmson(クリス・アームソン)氏は米国時間2月9日のブログ記事にこう書いている。

トヨタには比類ない実績があり、エンジニアリングの専門知識と高いリーダーシップを持っています。これによりトヨタは高品質かつ手の届く価格で信頼性の高い車両を提供してきました。またタクシー配車ネットワークで真っ先に選定されるメーカーでもあります。我々はトヨタと協力できることをうれしく思っています。Auroraの自動運転テクノロジーでドライバーレス・モビリティサービスを実現しようと考えています。

アームソン氏はまた、同社初の商用プロダクトが自動運転トラックのテクノロジーであることに触れ「現在のライドシェア予約のかなりの部分が時速80km以上のスピードでの運転を必要としています。このため自動運転トラックで培った高速道路対応能力は乗客を安全に移動させるために非常に重要になると考えています」と付け加えている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Auroraトヨタ自動車自動運転

画像クレジット:Aurora

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:滑川海彦@Facebook

中国当局がテスラを品質問題でに召喚

中国で現地生産能力を増強し急成長を遂げているTesla(テスラ)は、電気自動車の品質問題を巡って中国政府から協議に召喚されている。

米国時間2月8日遅くに掲載された中国政府の通達によると、消費者から不正な加速、バッテリーの発火、ソフトウェアアップグレードの失敗、その他の車両問題について苦情を訴えたことを受け、市場規制当局やサイバーポリス、交通当局を含む中国政府のグループがTeslaと協議を行ったとのこと。

Teslaは中国語SNSのWeibo(ウェイボー)で「政府省庁の指導を真摯に受け止める」とし、「中国の法律を厳守します」と述べている。また安全性と消費者の権利を確保するために、規制当局の指示の下、「内部の運営構造とワークフロー」の強化に取り組むという。

Teslaはここ数年、中国で人気が急上昇する一方、国内では部品や機能の不具合によるリコールが相次いでいる。中国の市場規制当局は先週、政府との協議の直前に、輸入車のModel Sの2万428台とModel Xの1万5698台をリコールしたと発表した。

Teslaにとって中国はますます重要性を増し、現在では第2位の市場となっている。Teslaは上海のGigafactoryで自治体による減税措置を受けているため、現地調達と生産が可能となり、Model 3などの価格を引き下げることができた。

Teslaが米証券取引委員会 (SEC)に今週提出した書類によると、中国は2020年に前年比で倍増となる66億6000万ドル(約6963億8000万円)の売上をTeslaにもたらし、同社の総売上の20%以上を占めた。2019年には、中国はTeslaの収益の約12%を占めた。

同時にTeslaはNioやXpengのような資金力のある地元発の中国電気自動車スタートアップと競合しており、両社とも米国で上場している。Xpengは2020年に合計2万7041台を出荷し、Nioは4万3728台でそれを上回った。しかしこれらの数字は、2021年に49万9647台に達したTeslaの総出荷台数にまだおよんでいない。

関連記事:中国は今やテスラの売上の4分の1近くを占めている

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タグ:Tesla中国

画像クレジット:WANG ZHAO/AFP/Getty Images / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ビットコイン購入がテスラの環境重視の評判と収益に悪影響をおよぼす可能性

Tesla(テスラ)によるBitcoin(ビットコイン)へ15億ドル(約1570億円)分の購入は、Elon Musk(イーロン・マスク)氏にはいいだろうが、彼を世界一の大富豪に仕立て上げた会社には、間違いなく大きなリスクだと投資家、アナリスト、米最大手クラスの銀行の資産管理担当者たちは訴えている。

関連記事:テスラが約1578億円相当のBitcoinを購入、将来的に仮想通貨での支払いも検討

一般消費者向け電気自動車(EV)業界と、その周囲に集結する広範な気候テック運動の旗手であるTeslaが、仮想通貨に社運を賭けるとなれば、環境重視の姿勢と、たとえ他の自動車メーカーがEV市場になだれ込んで来ている中でも保たれていた顧客からの評判に傷がつく恐れがある。

現在のBitcoinが環境に残した痕跡を考えるに、今回の取り引きは、クリーンなエネルギー源と商慣行へ世界を移行させることに強い関心を表明しているTeslaの顔と矛盾する。

マスク氏の計画について語る許可を取っていないことを理由に匿名で話を聞かせてくれたあるエネルギー系投資家によれば、ロシアや中国などの地域が電力網の脱酸素化に踏み出さない限り、Bitcoinのマイニングは(エネルギーの観点からは)ダーティーなビジネスのままだという。

「2018年にロシアで行われていたことです。マイニング事業のために彼らがどれほど石炭エネルギーを使っていたかが問題なのです」と同投資家は語る。「エネルギー強度の観点から見た取り引きあたりのコストは、高くなる一方です。そこから気候問題と仮想通貨がどんな結合体になっていくのか、私には読めません」。

今回の購入で、Teslaは世界最大のBitcoin保有企業となったが、これは同社が保有する190億ドル(約1兆9900億円)の現金と、手元の現金に相当するもののうち、大きな部分を占める。

「その資産の額を考えると、私個人の意見として無責任なように思われます」と、創設当初からTeslaを支援してきた投資会社の投資家は話す。今回のTeslaの行動は、現代の投資環境における米国の資本市場の愚かしい一面を露呈している。そしてこれは、最大の受益者たちからの内に秘めた皮肉ともとれる

関連記事:金持ち連中はなぜくだらない資産をやりとりしているんだ?

その一方で、Bitcoinの投資家たちはこの動きを歓迎している。これにより彼らが保有するBitcoinの価値は、その日のうちにおよそ18%も急騰した。

「Bitcoinを加えることで資産を多様化したというTeslaの発表は、特に驚きではなく、手元現金の8%の配分で安心できたというものでもありませんでした。2020年のTeslaの研究開発費と同額のこの投資は、同社にとって極めて大きなものであり、株主への配当を最大化するという決意の表れです」とStillmark(スティルマーク)の共同創設者Alyse Killeen(アリス・カイリーン)氏は書いている。「イーロン・マスク氏には、技術的に可能なものを、後に経営上ごく普通のものにする流れを作るという原則で、企業を運営してきた長い経歴があります。それがここにも当てはまり、Teslaは大手上場企業としては初めて、現金のリターンをBitcoinで最大化しようと考えたのだと思います」。

ウォール街の業界オブザーバーたちは、TeslaのBitcoinへの大きな賭けを批判している。

「TeslaがBTCを15億ドル分購入したことは興味深い。リスク回避をしていないようなので、将来、大量の現金を手にするか、帳簿に大穴を開けるかのどちらかだ。イーロン・マスク氏はいつだってワイルドだ」と、報道の取材に答える権限を持たないため匿名を希望したウォール街の大手銀行で資本計画を担当するある企業幹部はいう。「大手企業が非常に不安定な新興市場の通貨に現金を投資するのと変わらない」。

それでも短期的には、この取り引きは配当金をもたらした。Teslaが発表を行ったその日のうちに、Bitcoinの価格は8000ドル(約84万円)近くまで、18.73%も上昇している。

だが、今回の投資額は、同社の研究開発予算の総額に匹敵するとカイリーン氏は指摘する。大変な額だ。もう1つ疑問がある。規制当局が乗り出してマスク氏にお仕置きをしないか、ということだ。

マスク氏はこの数週間で、Bitcoinや、ドージコインなどのその他の謎めいた(つまり役に立たない)仮想通貨を支持するとツイートしていた。これは、米連邦証券取引委員会(SEC)との合意に違反するように思われる。

関連記事:マスク氏のツイートを弁護士が監督することでSECと和解

この世界一の大富豪は、以前、そのツイート癖のために規制当局から罰金を科せられたことがあった。2018年、1株420ドル(約4400円)でTeslaを非上場企業にするとのツイートを詐欺だとしてSECに訴えられたのだ。

その後マスク氏はSECと和解し、Tesla取締役会の会長を辞任して、個人的に2000万ドル(約21億円)の罰金を支払った。

不安定な仮想通貨はTeslaの収益にインパクトを与えるだけではない。仮想通貨でクルマを購入しようとする消費者にも影響をおよぼす。

「Bitcoinは米国時間2月8日には15%も高騰して4万4000ドル(約460万円)という高値を更新した。このような誇大広告で価格が変動する通貨は、投資家にとっても消費者にとっても心配なものです。特に、これが交換媒体に使われるとなればなおさらです」と、GlobalData(グローバルデータ)のアナリストであり主題調査部門責任者のDanyaal Rashid(ダニアル・ラシッド)氏は書いている。

「もしイーロン・マスク氏が、そのアセットの価格をツイートや大量注文で自在に操れるとしたら、同じことが価格の引き下げにも使えることを意味します。クルマを購入するという行為は、投機的であってはなりません。不換通貨の代わりにBitcoinで買い物をしようという消費者は、思いどおりにほしいものが買えなくなる事態が多発するでしょう」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:TeslaBitcoin仮想通貨

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

マイクロモビリティHelbizがSPACと合併しゴーストキッチン事業へ参入

欧州と米国で事業展開するマイクロモビリティスタートアップのHelbiz(ヘルビズ)が、公開企業となるために特別買収目的会社(SPAC)と合併する。公開することで同社はマイクロモビリティ分野における自社よりも小さい企業との競合に打ち勝つための軍資金、そしてフードデリバリーへの業務拡大の一環として「クラウド」あるいは「ゴースト」キッチンと呼ばれるものに参入するためのリソースを得る。

Helbizは2021年第2四半期にGreenVision Acquisition Corpと合併する。合併企業の社名はHelbiz Inc.で、ティッカーシンボル「HLBZ」でNASDAQナスダックに上場する。

合併取引には機関投資家が主体の3000万ドル(約32億円)のPIPEが含まれ、正味売上高約8000万ドル(約84億円)がユーザー270万人を抱えるHelbizのマイクロモビリティと広告事業に注がれる。

Helbizは合併会社のバリュエーションが4億800万ドル(約430億円)になり、CEOのSalvatore Palella(サルバトーレ・パレーリャ)氏のもとHelbizの現経営陣で運営されると述べた。

パレーリャ氏は「この取引を通じて我々はシームレスなラストマイルソリューションになるのにマイクロモビリティを使うことで交通に革命を起こすというビジョンを実現することを約束します」と話した。

同氏はさらに、配達時間5分を導入する目的で同社が2021年後半ミラノとワシントンDCに「ゴーストキッチン」を設置する計画であることを筆者に明らかにした。

Helbizは、電動スクーターや電動自転車、電動モペッドを1つのプラットフォームで提供することでLime(ライム)やBird(バード)といった競合他社と差異化を図ってきた。

Helbizのサービスの鍵は、スクーターがあちこちに放置されるのを好まない市当局にアピールする統合ジオフェンスプラットフォーム、そして簡単に充電できる交換式バッテリーだ。同社のサブスクではユーザーは電動自転車や電動スクーターの30分乗車を毎月無制限に利用できる。

同社は現在、欧州ではミラノ、トリノ、ベローナ、ローマ、マドリッド、ベオグラードで、米国ではワシントンDC、アレクサンドリア、アーリントン、マイアミで電動スクーターと電動自転車のサービスを展開している。

GreenVisionの会長兼CEOのDavid Fu(デイビッド・フ)氏は「Helbizは電動スクーター、電動自転車、電動モペッドを1つのユーザーフレンドリーなプラットフォームで提供することで差別化を図ってきました。Helbizはすでに証明済みのハードウェアとソフトウェア、広範な顧客関係をともなうサービスを組み合わせたキャピタルライトのビジネスモデルを持っています」とコメントした。

カテゴリー:モビリティ
タグ:HelbizSPACゴーストキッチン

画像クレジット:Helbiz

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

シンガポール拠点のライドシェアSWAT Mobilityが資金調達、日本におけるサービス開発に投資

シンガポール拠点のライドシェアSWAT Mobilityが資金調達、日本におけるサービス開発に投資

シンガポール拠点のモビリティスタートアップ「SWAT Mobility」の日本法人SWAT Mobility Japanは2月8日、資金調達を発表した。調達額は非公開。引受先はグローバル・ブレインが運営するグローバル・ブレイン7号投資事業有限責任組合(GB7号ファンド)など。またグローバル・ブレインは事業開発や知財戦略など多面的に成長支援を行う。

調達した資金により、日本におけるサービス開発への投資や、モビリティに関する国内の様々な課題解決を主導していく。

日本では、地方の人口減少と付随する移動人員の減少、路線バスの撤退などによる地域公共交通の利便性低下といった課題を抱えており、それら解決のため、独自アルゴリズムの開発強化からサービス展開までさらに投資していくという。

また、都市部を中心とする営業員・保守員の「移動」効率化、営業車両の削減によるコスト最適化を実現する、都市型法人向けライドシェアサービスの展開も進める。

SWAT Mobilityは、テクノロジーの力で「移動」に関する様々な課題解決を進め、効率的で消費者にとって最適な移動を実現する社会に向けて取り組む。

SWAT Mobilityは、最小の車両台数で、複数の乗客を効率良く相乗りさせる高精度のルーティングアルゴリズムを保有し、オンデマンド相乗りサービスを世界7カ国(シンガポール、日本、フィリピン、タイ、ベトナム、インドネシア、オーストラリア)で展開。

オーストラリアでは、オンデマンド公共バス(MetroConnect)を運行。トヨタ・モビリティ基金との協力の下、コロナ禍における医療従事者の通勤負担削減のためオンデマンド送迎サービスをタイ、フィリピン、インドネシアで運行した。

日本では、新潟市における市街地オンデマンドバス導入に向けた実証実験や、J:COMと共同で営業社員を対象とした都市型法人向けライドシェアサービスの活用を進めるなど、MaaS(Mobility as a Service)の観点から日本の市場環境に合わせた取り組みを実施済み。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:資金調達(用語)SWAT MobilityJ:COM MaaS配車サービス / ライドシェア(用語)MaaS(用語)モビリティ日本(国・地域)

電動自転車メーカーRad Power Bikesが新型コロナを追い風に約158億円調達

電動自転車は2020年にブームとなった。新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックと、それによって引き起こされた消費者の日常生活の混乱による原動力となっている。

そして今、Rad Power Bikes(ラッドパワーバイクス)はそうした追い風を生かして従業員の倍増とグローバル展開に注力している。

シアトル拠点の同社は米国時間2月4日、Morgan StanleyのCounterpoint Global Fund、Fidelity Management & Research Company、TPGのグローバルインパクト投資プラットフォームThe Rise Fundといった機関投資家、そしてT. Rowe Price Associatesのアドバイスを受けたファンドや個人から1億5000万ドル(約158億円)を調達したと明らかにした。既存投資家のDurable Capital Partners LPとVulcan Capitalも参加した。

米国の電動自転車スタートアップとしては最大となるこの資金調達は、Rad Powerの事業モデルと2019年に1億ドル(約105億円)だった売上高の今後の成長を証明している。

Rad PowerはD2C(消費者直接取引)の電動自転車販売会社でファットタイヤ、大容量バッテリー、モーター、タッチスクリーン、さらには貨物運搬能力すらも組み合わせてしっかりとしたプロダクトを製造することで知られている。そして価格は競合相手よりも数百ドル(数万円)安い。

2007年創業の同社は当初、カスタム自転車を少量生産していた。それが変わったのは2015年だ。同社の創業者でCEOのMike Radenbaugh(マイク・ラデンボウ)氏が友人のTy Collins(ティ・コリンズ)氏とチームを組み、D2C事業として再ローンチした。その年、ラデンボウ氏とリンズ氏はクラウドファンディングIndigogoキャンペーンを通じてRadRover Electric Fat Tire自転車を立ち上げた。同社は大量販売者に進化し、今ではポートフォリオに11モデルの自転車をもち、30カ国で販売されている。

Rad Powerは自転車以外のものにも取り組んだ。オンライン販売プラットフォーム、購入前後の顧客サポートチーム、小売ショールーム、バンを使ったサービス、ローカルのサービスパートナーネットワークを立ち上げた。事業を拡大してもずっと利益を上げていた、とラデンボウ氏は話した。

同社はほとんど自己資金で事業を展開してきたが、2009年に数百万ドル(数億円)を、2020年に2000万ドル(約21億円)をプライベートラウンドで調達した。同社のこれまでの累計調達額は1億7500万ドル(約184億円)で、その大半は今回の新規ラウンドでのものだ。

「これは特別な機会だと考えました。というのも、すでに何年も試験し、うまくいうことがわかったさまざまなエリアの事業への投資を加速させることができるからです」とラデンボウ氏は述べた。

調達した資金は事業の全部門のスケール展開に使われる、と同氏は話した。Rad Powerは現在325人を雇用しており、2021年末までに倍増させる計画だ。また小売ショールームやサービスロケーションを増やし、サプライチェーンの多様化と、自転車カスタマイズのためのアクセサリーの増加を目的にメーカーとの契約も引き続き増やす計画だ。

今後最も急速に成長するチームは現在35人が所属するR&D部門だとラデンボウ氏はつけ加えた。

「中核となる戦略は今後も新しい乗り物のカテゴリーを開発することです。なので、当社が電動自転車の会社である間、そして当社は常にペダルとそうした種のエクスペリエンスを生み出そうとしていますが、電動自転車とスクーター、モペッド、さらには自動車産業との境目を真に曖昧なものにするものを作り出し続けます」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Rad Power Bikes資金調達電動自転車

画像クレジット:Rad Power

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

電動原付スクーターのシェアサービスRevelがEV充電ステーション事業を起ち上げ

電動原付スクーターのシェアサービスを展開するスタートアップ企業Revel(レベル)が、ニューヨーク市に電気自動車用のDC急速充電ステーションを建設中だ。これは同社の新事業の1カ所目で、いずれは他の都市にも拡大が計画されている。

ブルックリンの旧Pfizer(ファイザー)ビルに新設されたこの「Superhub(スーパーハブ)」には、30台の充電器が設置される予定で、24時間いつでも一般利用が可能になると、同社は米国時間2月3日に発表した。これは、Revelがニューヨーク市全域で開設するスーパーハブのネットワークの最初のものになると、同社は述べている。

RevelはEV充電器を自社で開発しているわけではない。ブルックリンで最初に設置された10台の充電器には、Tritium(トリチウム)社製の新型モデル「RTM75」が使用されており、この春から稼働する予定だ。Revelによると、これらの充電器は約20分間で100マイル(約161km)を走れる電力をEVに供給できるという。

EV充電ビジネスは、都市を電動化するためのミッションであるとRevelは説明する。この動きは、GM、Ford(フォード)、VWグループといった伝統的な自動車メーカーに加え、新規参入を図るRivian(リヴィアン)やEV業界のリーダーであるTesla(テスラ)などの企業が、ますます多くの電気自動車を製品ラインアップに加えていることを受けてのものだ。

Revelの充電ステーションは、同社にとって2018年に発表した電動原付スクーターのシェアリングサービス以来の新事業となる。Frank Reig(フランク・ライグ)氏とPaul Suhey(ポール・スヘイ)氏が設立したRevelは、ブルックリンで試験プログラムを開始し、後にクイーンズ、ブロンクス、マンハッタンの一部にまで事業を拡大していった。2019年10月にIbex Investors(アイベックス・インベスターズ)が主導したシリーズAラウンドで2760万ドルの資本を調達したおかげで、急速な成長を続けている。このエクイティラウンドには、新たにToyota AI Ventures(トヨタAIベンチャーズ)が参加し、Blue Collective(ブルー・コレクティブ)、Launch Capital(ローンチ・キャピタル)、Maniv Mobility(マニブ・モビリティ)もさらなる投資を追加した。

現在、ニューヨークではRevelによる数千台の原付スクーターがレンタル可能になっている。同社は業務開始から18カ月で、オースティン、マイアミ、ワシントンD.C.など他の都市にも原付スクーターのシェアサービス事業を拡大した。2020年はオークランドでも事業を開始し、同年7月にはサンフランシスコで営業許可を取得した。

とはいえ、原付スクーターのシェアサービスはどこでも成功しているわけではない。Revelは2020年12月、オースティンから撤退した。ライグ氏は当時、新型コロナウイルス感染流行が、マイクロモビリティのシェアサービス全体で利用者数の減少を引き起こしていることに加え、同市の根深い自動車文化が、その浸透の妨げになると証明されたと語っていた。

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タグ:電気自動車充電ステーションRevelニューヨーク

画像クレジット:Revel

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EVが制度面で追い風を受ける中、バッテリー会社が最新のSPACターゲットに

バッテリーが投資家にとって最新の着地目標だ。

先週だけでも、2社が特別買収目的会社(SPAC)と合併して上場企業になる計画を発表した。欧州のバッテリーメーカーFREYRは米国時間1月29日、14億ドル(約1470億円)のバリュエーションで特別買収目的会社を通じて上場企業になると語った。ヒューストンのスタートアップMicrovastは米国時間2月1日、自身のSPACを30億ドル(約3150億円)のバリュエーションとともに発表した。

2社の売上高が1億ドル(約105億円)強(FREYRはまだバッテリーを製造していない)で、バリュエーションの合計が44億ドル(約4620億円)というのは、将来信じがたいほどのバッテリー需要がなければ、ばかげているように思われる。

GM(ゼネラルモーターズ)やFord(フォード)などのレガシーな自動車メーカーは、ポートフォリオを電気モデルにシフトするために数十億ドル(数千億円)を投じてきた。GMは2020年、電気自動車(EV)と自動化技術の開発に今後5年間で270億ドル(約2兆8350億円)を費やすと述べた。一方、多くの新規参入者は、電気自動車の生産を開始する準備をしているか、スケールアップしている。たとえばRivian(リビアン)は2021年夏に電動ピックアップトラックの販売を開始する。同社にはまた、数千台のEVバン製造でAmazon(アマゾン)が接近した。

米国政府がその需要の一部を後押しする可能性がある。バイデン大統領は先日、米国政府が連邦政府の自動車、トラック、SUVの全車両を米国で製造された64万5047台の電気自動車に置き換えると発表した。つまりGMとFordだけでなく、Fisker(フィスカー)、Canoo(カヌー)、Rivian、Proterra(プロテラ)、Lion Electric(ライオンエレクトリック)、Tesla(テスラ)などの米国を拠点とする企業にも多くの新しいバッテリーを供給する必要がある。

一方、世界最大の都市のいくつかは、独自の電化イニシアチブを計画している。Royal Bank of Canadaの調査によると、上海は2025年までに電気自動車がすべての新車購入の約半分を占めるようにしたいと考えており、すべての公共バス、タクシー、配送トラック、公用車を同じく2025年までにゼロエミッションにする予定だ。

中国の電気自動車市場は世界最大の市場の1つであり、政策が世界の他の地域よりも大幅に進んでいる

中国のEV市場での追い風がおそらくMicrovastへの多額の投資の理由の1つだ。100年の歴史を持つ産業用自動車メーカーであるOshkosh Corp、8兆6700億ドル(約910兆円)の資金管理会社であるBlackRock、Koch Strategic Platforms、プライベートエクイティファンドマネージャーのInterPrivateなどが投資した。これは、Microvastの既存の投資家に、中国で最もコネクションを持つプライベートエクイティおよび金融サービス会社であるCDH InvestmentsとCITICSecuritiesが含まれていたためだ。

Microvastは、商用車と産業用車両に力を入れている。同社は商用電気自動車の市場が短期間に300億ドル(約3兆1500億円)規模になると考えている。現在、商用EVの売上高は市場のわずか1.5%を占めるにすぎないが、同社によれば、2025年までに9%に上昇すると見込まれている。

「当社は2008年、電気自動車が内燃機関車と競争できるような革新的なバッテリー技術を開発することにより、モビリティ革命の推進に着手しました」とMicrovastの最高経営責任者であるYang Wu(ヤン・ウー)氏は声明で述べた。「それ以来、当社は3世代のバッテリー技術を発表しました。この技術により競合他社よりもはるかに優れたバッテリー性能を顧客に提供してきました。長年の事業運営を通じて商用車オペレーターの厳しい要件を満たすことに成功してきました」。

約3万台の車両でMicrovastのバッテリーが使われている。同社への投資には約8億2200万ドル(約860億円)の現金が含まれている。この現金で2022年までに9ギガワット時に達するよう製造能力を拡張する。同社によると、この資金のおかげで約15億ドル(約1580億円)の契約上の義務を果たすことができるはずだという。

中国の投資家が来たるMicrovastの株式公開で大きな勝利を収めるなら、米国の複数の投資家と巨大な日本企業が1社、FREYRの株式公開を心から待っている。Northbridge Venture Partners、CRV、伊藤忠商事はすべて、欧州の投資家ではないとしても、FREYRのエグジットから利益を得るとみられる。

この3社は、International Finance Corp.と並んで、ボストンを拠点とするスタートアップである24Mの投資家であり、その技術はバッテリーを製造するFREYRにライセンス供与されている。

FREYRの株式公開は、バッテリーおよび材料科学業界で革新を起こしてきた長い歴史を持つシリアルアントレプレナーで教授でもあるYet-Ming Chiang(イエット・ミン・チアン)氏にとっても勝利となると思われる。

MITの教授である同氏は過去20年間、最初に今はもうないバッテリースタートアップのA123 Systemsで、それから次のような多数のスタートアップで持続可能な技術に取り組んだ。3Dプリント会社のDesktop Metal、リチウムイオンバッテリー技術開発の24M、エネルギーストレージシステム設計のForm Energy、別のアーリーステージのエネルギーストレージスタートアップであるBaseload Renewablesだ。

Desktop Metalは特別買収目的会社に買収された後、2020年に公開した。24Mは現在、欧州の製造パートナーの1つであるFREYRへの多額の現金注入によって勢いを得ようとしている。

ノルウェー本社のFREYRは、母国のサイトの周りに5つのモジュール式バッテリー製造施設を建設する計画を立てており、今後4年間で最大43ギガワット時のクリーンバッテリーを開発する予定だ。

FREYRの最高経営責任者であるTom Jensen(トム・ジェンセン)氏にとって、24Mテクノロジーには2つの大きな魅力があった。「それは製造プロセスそのものです」とジェンセン氏は語った。「彼らが行っているのは基本的に電解質を活物質と混合することです。これにより電極を厚くし、バッテリー内の不活性物質を減らすことができます。さらに、実際にそれを行うと、多くの従来の製造ステップは不要になります。従来のリチウムバッテリーの製造と比較して、製造工程は15ステップから5ステップへと削減されます」。

こうしたプロセス効率は、セル内の大量のエネルギー含有材料と組み合わされ、バッテリー製造プロセスの根本的な革新につながる。

ジェンセン氏は、同社の計画を完全に実現するには25億ドル(約2630億円)が必要だが、それには流動性が必要だったと述べた。同社はSPACのAlussa Energy Acquisition Corpと合併した。このSPACにはKoch Strategic Platforms、Glencore、Fidelity Management & Research Company LLC、Franklin Templeton、Sylebra Capital、Van Eck Associatesなどの投資家が名を連ねる。

これらの投資はすべて、世界が決められた時間軸で車両電化の目標を達成するために必要だ。

Royal Bank of Canadaは2020年12月の電気自動車業界に関するレポートで「バッテリー式電気自動車(BEV)は2020年の世界需要の約3%を占めるのに対し、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)は約1.3%を占めると予測する」と指摘した。「しかしこうした低い数値から、力強い成長を見込んでいる。2025年までの成長が依然として規制により主導される場合、BEVの世界全体での普及率は新たな需要により約11%に、CAGR(年平均成長率)は2020年の水準比で約40%になり、PHEVの普及率は約5%に、CAGRは35%になると見込まれる。2025年までに、西ヨーロッパでのBEVの普及率は約20%、中国で約17.5%、米国で7%になる。これに比べ、内燃機関(ICE)車両は、2025年まで2%のCAGRで(周期的に)成長すると予想される。純粋な台数ベースでは、2024年にピークを迎えると見られる」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:電気自動車バッテリーSPACMicrovastFREYR

画像クレジット:RONNY HARTMANN/AFP / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi