SpaceXがStarship軌道試験でStarlinkインターネットを使った接続品質の実証を行う予定

SpaceX(スペースエックス)が予定しているStarship(スターシップ)軌道試験飛行は、同社の技術力を示す正真正銘の見本市になるだろう。なにしろ今回SpaceXは、連邦通信委員会(FCC)に対して、Starlik(スターリンク)端末を宇宙船に搭載し、宇宙へ往復する間に地上との「高速通信の実証」を行うための承認を申請したのだ。

SpaceXの計画は、再突入時に大気中の「イオン化したプラズマ」の存在によって通常は通信信号が失われる部分であっても、地球低軌道衛星Starlinkのネットワークが「これまでにない量のテレメトリーを提供し、大気圏再突入時の通信を可能にする」ことを示すことだ(Michael Baylor[マイケル・ベイラー]氏のツイートより)。もしこれが成功すれば、SpaceXの試験飛行中に、これまで以上に優れたライブデータを提供することが可能になり、StarshipやSuper Heavy(スーパーヘビー)ローンチシステムの開発に役立つはずだ。そして、よりよい画質でさらに壮観な光景を、ライブで私たちに見せてくれることだろう。

打ち上げ時のテレメトリーやその他の通信手段にStarlinkを利用することは、もし説明通りに機能するならばSpaceXにとっては間違いなく機能向上となるが、Starlinkの能力をアピールするという意味では、それ以上に役立つものとなる。FCCに提出した資料によると、宇宙船に搭載される端末は、基本的には既存の民生用端末に新しい外装を施したものだ、すなわちこれがうまく機能すれば、より多くの民生用ブロードバンド顧客の注目を集めることができるだろう。

さらにSpaceXは、Starlinkの機能を、旧式でより遠い距離にある静止衛星ネットワークに代わって、飛行機や船、その他の輸送手段に対する接続を可能にするシステムだと饒舌に語っている。ロケット打ち上げ時にもしっかりとした性能を発揮することを示すことで、その分野でのパートナーを増やすことになるだろう。

申請によれば、Starship上のStarlink運用の免許は米国時間8月1日から始まるとされている。これは、SpaceXのGwynne Shotwell (グウィン・ショットウェル)社長が「7月中に打ち上げたい」と発言したものの次の打ち上げを意味しているか、あるいは、その打ち上げそのものがすでに翌月にずれ込んでいる可能性があることを示唆している。

関連記事:SpaceXが開発中の新型宇宙船「Starship」初軌道投入試験の7月実施を目指す

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(文: Darrell Etherington、翻訳:sako)

SpaceXが開発中の新型宇宙船「Starship」初軌道投入試験の7月実施を目指す

SpaceX(スペースX)は、開発中の宇宙船「Starship(スターシップ)」を7月に初めて軌道に乗せることを目指していると、同社社長のGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏が語った。同氏は国際宇宙開発会議のバーチャルスピーチで、このタイムラインを明らかにした。

Starshipは数年前から開発が進められており、2020年から何度か短いテスト飛行を行っているものの、いまだ地球の大気圏内に留まっている。5月に行われた最近の飛行では、初めて完全着陸に成功した。これは、SpaceX初の完全に再利用可能なロケットシステムとなることを目指しているStarshipの開発にとって、必須の要素だ。

Starship初の軌道飛行を7月に行うというのは、野心的なスケジュールと言えるだろう。SpaceXは、テキサス州南部のブラウンズビル近郊にある同社の開発拠点(通称「スターベース」)から離陸し、最終的にはハワイ沖の太平洋上に着水して地球に帰還するというこの飛行計画のコースを、5月に提出したばかりだからだ。

初の軌道飛行では、5月の試験飛行のように、制御された着陸を行って終了というわけではない。目標は軌道に到達することであり、その過程を通して宇宙船のコンポーネントをテストすることにある。その後のテストには、Starship宇宙船で制御された着陸を行うことも含まれており、最終的には軌道への推進を助ける「Super Heavy(スーパーヘビー)」ブースターを含むシステム全体を、完全に再使用可能にすることを目標としている。

ショットウェル氏は、SpaceXがStarshipの軌道試験飛行を開始するために必要な技術的な準備をほぼ整えていると、高い自信を示しているようだが、SpaceXが現在取得しているライセンスは、準軌道飛行のみを対象としているため、軌道試験飛行を行うためには、連邦航空局(FAA)から新たにライセンスの承認を得なければならない。FAAは現在、周辺地域への環境影響評価を含め、ライセンス取得のための要件を検討しているところだ。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新宇宙経済ブームの到来で小型衛星用プラズマスラスター製造のOrbionは絶好調

人工衛星用の電気推進機構を開発しているOrbion Space Technology(オービオン・スペース・テクノロジー)は、シリーズBラウンドで2000万ドル(約22億1000万円)を調達した。同社はこの資金で「Aurora(オーロラ)」推進システムの生産能力を拡大すると述べている。

ミシガン州を拠点とするOrbion Space Technologyは、小型・中型衛星用のホール効果プラズマスラスラスターを製造している。スラスターは、人工衛星(または宇宙ステーションのように軌道を維持する必要のある宇宙物体)の寿命が尽きるまで、軌道高度の調整、衝突の回避、軌道離脱のために使用される。ホールスラスターは、磁界を利用して推進剤を電離させ、プラズマを生成する。

このタイプのスラスターは、宇宙では昔から使用されているものの、小型衛星の運用者にとっては高価すぎる場合がほとんどだった。Orbionでは、地球低軌道に向けて打ち上げを行うスタートアップ企業や開発者の高まる需要に応えるため、コスト効率の高い生産能力を構築したと述べている。Brad King(ブラッド・キング)CEOによれば、同社は製造委託先を検討していたが、最終的には垂直統合型の製造モデルを選択したという。現在は既存の製造スペースが手狭になっているとのこと。

同社はAuroraシステムに対する「かつてないほどの市場需要」に直面していると、キング氏はいう。いわゆるニュー・スペース・エコノミー(新宇宙経済)のブームは、プロセッサーや部品、さらには打ち上げコストの低下によってもたらされたものであり、効率的な宇宙推進システムの需要が同時に高まるのは当然のことだ。

画像クレジット:Orbion Space Technology

Orbion Space Technologyは2019年8月に、920万ドル(約10億2000万円)のシリーズA資金を調達した。その時以来、同社は米国の宇宙システムの回復力をテストしている米国防総省との研究パートナーシップを確保している。2020年9月には、小型衛星の製造を手がけるBlue Canyon Technologies(ブルー・キャニオン・テクノロジーズ)との契約も獲得した。

今回の資金調達は、米国とインドのベンチャーキャピタルであるInventus Capital Partners(インベンタス・キャピタル・パートナーズ)が主導し、Material Impact(マテリアル・インパクト)、Beringea(ベリンジア)、Wakestream Ventures(ウェイクストリーム・ベンチャーズ)が加わった。

「宇宙開発は変化しています」と、Inventus Capital Partnersの投資家であるKanwal Rekhi(カンワル・レキ)氏は声明の中で述べている。「PCがメインフレームに取って代わったように、大型衛星は多数の超小型衛星に取って代わられようとしています。Orbionはこれらの超小型衛星に、より正確な軌道に入り、より長く留まるための機動性を提供しています」。

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画像クレジット:Orbion Space Technology

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米連邦航空局がヴァージン・ギャラクティックの商業宇宙旅行を許可

米国連邦航空局(FAA)は、Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)に、同社の宇宙船「VSS」で民間人を宇宙へ運ぶ商業宇宙旅行を開始する許可を与えた。これは、プロフェッショナルのテストパイロットや宇宙飛行士を、同社のスペースプレーンで宇宙へ輸送することを許可していた既存のライセンスを拡大したものだ。このライセンス更新に先立ち、ヴァージン・ギャラクティックは2021年5月22日に、試験試験を成功させている。

今回の認可取得は、ヴァージン・ギャラクティックにとって、初の公式な「スペースライン」(宇宙のための航空会社)として事業運営を行う道が開かれたことを意味する。同社は旅行者や研究者のために、宇宙への準軌道飛行を定期的なサービスとして提供することを目指している。その約2時間の旅の間に、顧客は外から地球を眺めたり、数分間の無重力状態を体験することができる。

FAAの承認は大きな一歩だが、ヴァージン・ギャラクティックが実際に商業宇宙旅行の定期便を運行開始する前にクリアしなければならない最後の一歩というわけではない。その前に、同社は残りの3つの試験飛行を完了させる必要がある。それはヴァージン・ギャラクティックの宇宙船とその輸送用航空機が、初めて全定員を乗せて行う飛行だ。Michael Colglazier(マイケル・コルグラジエ)CEOによると「2021年の夏」に1回目のフライトを行うことを目標としているという。

2021年6月初めのParabolic Arc(パラボリック・アーク)の報道では、ヴァージン・ギャラクティックの創設者であるSir Richard Branson(リチャード・ブランソン卿)が次の試験飛行で搭乗する可能性があり、それが早ければ7月4日の週末に行われるかもしれないと伝えられていた。これは、ブランソン卿のロケット乗りとしてのライバルである億万長者Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏よりも、早く宇宙へ行けるということを意味する。ベゾス氏は7月20日に、自信が創設したBlue Origin(ブルーオリジン)のNew Shepard(ニューシェパード)宇宙船に搭乗する予定だ。ヴァージン・ギャラクティックは、次の試験飛行の時期を公式には発表していないが、情報筋によれば、Parabolic Arcの報道は誤りであるとのこと。

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タグ:Virgin Galactic民間宇宙飛行米国連邦航空局(FAA)

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

3Dプリントでわずか60日で完成するRelativity Spaceの新しい大型ロケットTerran R、もちろん再利用可能

3Dプリント製ロケットのスタートアップであるRelativity SpaceがシリーズEラウンドで6億5000万ドル(約712億円)を調達し、調達総額は12億ドル(約1315億円)を超えた。この件に詳しい情報筋がTechCrunchに語ったところによると、Relativityのポストマネー評価額は現在42億ドル(約4602億円)だという。

今回のラウンドを主導したのはFidelity Management & Research Companyで、他にBlackRock、Centricus、Coatue、Soroban Capitalが運用するファンドやアカウントを持つ新規投資家や、既存投資家のBaillie Gifford、K5 Global、Tiger Global、Tribe Capital、XN、Brad Buss(ブラッド・バス)氏、Mark Cuban(マーク・キューバン)氏、Jared Leto(ジャレッド・レト)氏、Spencer Rascoff(スペンサー・ラスコフ)氏らが参加した。

シリーズEからの資金は、同社の完全に再利用可能な2段式重量物打ち上げロケット「Terran R」の生産を加速するために使われる。Terran Rは、2021年末に初の軌道飛行を行うRelativityのデビューロケット「Terran 1」に加わることになる。

関連記事:Relativity Spaceが完全再利用可能な新しい大型ロケットの建造計画を発表

同社はTerran Rについて固く口を閉ざしてきたが、今回の資金調達の発表と合わせてさらに詳しい情報を明らかにした。予想通り、Terran 1とTerran Rはかなり大きな違いがある。Terran 1は消耗品であり、Terran Rは再利用可能だ。前者は小型ペイロード用、後者は大型ペイロード用に設計されている。Terran Rのペイロードフェアリングでさえ再利用可能であり、Relativityは回収とリサイクルを容易にするシステムを案出した。

この大型ロケットは、高度216フィート(約66メートル)、最大ペイロード2万ポンド(約9トン)で低地球軌道(LEO)に投入される(ちなみにSpaceXのFalcon 9ロケットの高度は約230フィート[約70メートル]、LEOへの最大ペイロードは2万2800ポンド[約10トン]である)。

左がRelativityのTerran 1、右がTerran R(画像クレジット:Relativity)

Terran Rは、1段目に7個の新しい「Aeon R」エンジンを搭載し、それぞれが30万2000ポンド(約134トン)の推進力を持つ。Terran Rのエンジンとロケットを製造するのと同じ3Dプリンターが、Terran 1の動力源となる9個の「Aeon 1」エンジンも製造しており、Relativityは新ロケットを製造するために生産ラインを大幅に再構成する必要がない。

CEOのTim Ellis(ティム・エリス)氏によると、Terran Rを1基製造するのにかかる日数は60日ほどだという。このようなペイロード容量を持つロケットとしては信じられない速さだ。

Terran 1の打ち上げはまだ行われていないが、RelativityがTerran Rの開発を遅らせる様子はない。エリス氏は、同社は2024年にはケープカナベラルの発射台からのTerran Rの打ち上げにも着手する予定であり、今回の新ロケットの最初のアンカー顧客として「有名な優良企業」と契約済みだと述べている。

Relativityは、2021年末に同社初の軌道飛行を行うロケットの約85%のプリントを終えたところだ。このミッションを遂行するTerran 1にペイロードは搭載されない。Terran 1の2回目の打ち上げは2022年6月に予定されており、NASAとの契約「Venture Class Launch Services Demonstration 2(VCLS Demo 2)」の一環としてCubeSat(キューブサット)をLEOに投入する。

RelativityのCEOであるティム・エリス氏はTechCrunchとのインタビューで、3Dプリントを製造におけるパラダイムシフトであると形容した。「私たちのアプローチ、あるいは一般的な3Dプリントは実際のところ、ガスの内燃機関から電気へ、あるいはオンプレミスサービスからクラウドへの移行に近いものだということが、人々にはあまり認識されていないように思います」とエリス氏。「3Dプリントはクールなテクノロジーですが、それ以上に、実用上ソフトウェアであり、データ駆動型の製造および自動化技術でもあるのです」。

3Dプリントのコアはテクノロジースタックであり、同社は従来の製造方法では「不可能だった幾何学的構造」をアルゴリズム的に生成することができる、とエリス氏は説明する。また、設計は市場の需要に合わせて簡単に調整可能だ。

Relativityの設立前にBlue Originで金属3Dプリント部門の立ち上げを担当したエリス氏は、Terran 1と、カウンターパートである重量物運搬仕様を設計、構築することが、Day1(創業初日)からの戦略だったと語っている。

3Dプリントの実際のメカニズムは、地球上の重力の38%しかない火星のように重力がはるかに小さい環境でも技術的に実現できる。しかしより重要なのは、それが惑星外の不確実な環境で「必然的に必須の」アプローチだということだ。

「Relativity設立へのインスピレーションは、SpaceXがロケットを着陸させ、宇宙ステーションにドッキングするところを目にしたことでした。創業して13年の同社は、その輝かしい成功に留まることなく、人類を多惑星化しようと考え、火星に行くことを目指す唯一の企業でした」とエリス氏は語る。「そして私は、3Dプリント技術が他の惑星に産業基盤を現実的に構築する上で避けられないものだと考えたのです。火星に行こうと実際に試みたり、それが自分たちのコアミッションだと主張する人さえいないときでした。それは5年後の今でも、実際にはまだ当社とSpaceXだけです。そしてそのミッションの後に進むべき数十から数百の企業にインスピレーションを与えたいと、私は心から願っています」。

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タグ:Relativity Spaceロケット資金調達3Dプリント

画像クレジット:Relativity Space

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

P&Gの洗濯洗剤ブランド「Tide」が宇宙用洗濯洗剤開発でNASAと協力、水がほとんどなくても衣類を清潔に

P&Gの洗濯洗剤ブランド「Tide」が宇宙用洗濯洗剤開発でNASAと協力、水がほとんどなくても衣類を清潔に

P&G

NASAをはじめとする世界の宇宙機関はいま、月や火星の有人探査や基地建設を目指し競争しています。しかし、人々が地球から遠く離れた別の星で生活していくためには様々な問題をクリアしなければなりません。酸素はどうするのか、食料は……といったことは誰でも考えるものですが、意外と想像が行き渡らないのが、おそらく毎日発生する作業のひとつでもある”洗濯”です。

現状、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する宇宙飛行士たちは、洗濯機も洗濯に使えるだけの水もない軌道上では、何日間かは同じ服を着て過ごし、補給船が来たときに新しい衣服と引き換えに廃棄物として出す、というルーチンを行っています。

しかし、何日も同じパンツをはいていれば、密閉されたISS空間内では微妙に香ばしいかほりが漂ってしまうこともあるかもしれません。P&Gの洗濯洗剤ブランドTideは、この問題を解決すべく宇宙で使うための初めての洗濯洗剤を開発しました。この洗剤はISSのように水を繰り返し浄化して使うシステム内できちんと機能を発揮し、衣類から汚れや香ばしいかほりを分離してくれます。

NASAは”Mission PGTide”と題し、2022年にはISSでこの洗剤をテストすることを計画しており、Tideのペン形汚れ落とし商品”Pen”や拭き取りペーパー形の”Wipe”の成分が無重力空間でどのような効果を示すかをはかります。また洗剤だけでなく、月または火星のやや重力の弱い場所で使える洗濯機と乾燥機の可能性についても研究していくとのこと。

月や火星には、ISSのようには補給船はやってきません。そのため彼の地では洗濯は避けて通れない日常作業になるはずです。もしTideの宇宙用洗剤が使えるとなれば、貴重な水の消費を抑えることができ、それはまた補給船に乗せる物資重量を節約しその分をほかに回すことも可能になります。少なくともNASAが月面で替えのパンツを待つ飛行士の心配をする機会は減るはずです。

そして、宇宙で役立つ技術は地球上でももちろん役に立つはず。すすぎなどを繰り返さずとも完全に分解する洗剤などは、水の節約だけでなく排水を綺麗にし、廃棄物も減らす、環境に優しい洗剤になるかもしれません。

ちなみに、宇宙空間で洗濯を試みた事例としては、2002年から2003年にかけてISSに滞在した第6次長期滞在チームのケネス・バウアーソックス(Kenneth Bowersox)飛行士が、無重力環境下での洗濯デモンストレーションを行っていました。ただこのとき、バウアーソックス氏が洗濯したのがソックスだったかどうかは知りません。2009年には、ESAの宇宙飛行士がISSでの洗濯について述べており「靴下は1週間はき続ける」と説明しています。

(Source:BusinesswireEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:ISS / 国際宇宙ステーション(用語)公衆衛生(用語)NASA(組織)P&G(企業)ヘルスケア(用語)

建設中の中国の宇宙ステーションに3人の中国人宇宙飛行士が到着

3人の中国人宇宙飛行士が、中国の宇宙ステーションのコアモジュール「Tianhe(天和)」に初めてドッキングに成功した。

この3人の宇宙飛行士は、中国では2016年以来の有人ミッションとなる宇宙船「Shenzhou(神舟)12号」で打ち上げられた。3人は9月まで宇宙ステーション「Tiangong(天宮)」のコアモジュールに滞在する予定だ。これは中国史上最長の有人宇宙ミッションとなる。

中国北西部の酒泉衛星発射センターから離陸したNie Haisheng(聶海勝)氏、Liu Boming(劉伯明)氏、Tang Hongbo(湯洪波)氏の3人は、打ち上げから7時間余りで最終目的地に到着。聶海勝氏は、2005年の「神舟6号」とその8年後の「神舟10号」で、地球低軌道を周回した経験が2度ある。劉伯明氏も一度、2008年に「神舟7号」で宇宙に出たことがある。

軌道上にいる間、3人の宇宙飛行士は忙しい日々を送ることになるだろう。中国初の宇宙ステーションを稼働させることを目的とするミッションは、2022年までに11回の打ち上げが予定されているが、今回はその3回目に当たる。神舟12号ミッションの目的は、コアモジュールを始動させ、そのシステムをテストし、後に続く宇宙ステーション組み立て作業の準備を整えること。残る8回の打ち上げのうち、3回は有人飛行になる予定だ。

近年、宇宙への野心を隠さずにいる中国にとって、独自の宇宙ステーションを建設することは論理的なステップだ。2011年に米国議会で可決された法律により、中国は国際宇宙ステーションへの搭乗を禁じられているからだ。しかし、だからといって中国の宇宙ステーションが自国専用になるわけではないと、中国政府は16日の記者会見で述べている。

BBCの報道によると、中国有人宇宙事業弁公室の主任補佐であるJi Qiming(季啓明)氏は、中国は「この点に関しては、一般に協力を歓迎する」と述べている。「近い将来、中国の宇宙ステーションが完成した後には、中国人と外国人の宇宙飛行士が一緒に飛行したり作業したりする姿を見ることができると信じています」と、同氏は語った。

急成長している宇宙開発計画の一環として、中国は5月に探査車「Zhurong(祝融)」を火星に送り込み、米国以外で火星にロボットを着陸させた唯一の国となった。

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カテゴリー:宇宙
タグ:中国有人宇宙飛行

画像クレジット:China News Service

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

超新星爆発の可能性が調査されていたオリオン座ベテルギウスの減光現象は「一時的な温度低下と塵の雲」との研究報告

超新星爆発の可能性が調査されていたオリオン座ベテルギウスの減光現象は「一時的な温度低下と塵の雲」との研究報告

ESO/M. Montargès et al

2019年末、天空で最も明るい星の1つであるベテルギウスが数か月間にわたって暗くなったとき、一部の天文学者はそれが超新星爆発の徴候ではないかと述べました。しかし、その後この赤く光る星は元の明るさに戻っています。

ではなぜ、当時この”The Great Dimming”と呼ばれる減光現象が発生したのか。その理由についての研究結果が報告されています。

ベルギーのルーベン・カトリック大学の宇宙物理学者エミリー・キャノン氏は、チリにあるVery Large Telescope(VLT)を使った観測結果から、原因はほぼ確実に地球とベテルギウスの間に巨大な塵の雲がかかったからだったと結論づけています。

研究チームは偶然にも減光が発生する数か月前の2019年1月にこの星の画像を撮影しており、その画像と減光が始まってからの2019年12月、2020年1月の3月に撮影した画像を比較することができました。

研究者らは、減光はベテルギウスの表面で一様ではなく、その南半球に暗い斑点が集中していたと報告しています。これは一時的また局所的にベテルギウスの表面温度が低下したために起こった減光現象だと推測されました。

一方で別の研究者らは、我々の住む星とベテルギウスの間に塵の雲が入ったため、夜空の月に雲がかかるようにその光が遮られた可能性を考えました。

そして天体物理学者のMiguel Montargès氏は「最も自然な結論は、両方の事象が起こったということです」と述べました。

現在のチームの仮説では、2019年後半にベテルギウスの南半球表面に一時的なコールドパッチが形成され、その冷却効果で一帯が暗くなったと考えられています。さらに、このコールドパッチによって星の表面から放出されたガスが冷えたことで塵の粒子が形成され、星の光がさらに遮られることになったと考えられます。

ただ、この報告に対して懐疑的な研究者もいます。

独マックス・プランク天体物理学研究所のThavisha Dharmawardena氏は、減光の際に塵の痕跡を探したものの、見つけることはできなかったとして「塵の証拠が得られるまで議論は続くだろう」と述べています。この意見に対してMontargès氏は「塵が見えなかったという人はおそらく誤りで、彼らが手にしているデータでは塵を見ることができないだけだ」と反論しました。

超新星爆発現象を見たいと思った人には残念かもしれませんが、今回の現象はベテルギウスが寿命を迎えようとしていることを示すものではなさそうです。

ではそれはいつ起こるのか?との問にMontargès氏は「それは今日ではないでしょう」と述べつつ「毎日、その日に近づいていることは間違いありません。しかしそれは今日でも明日でもなく、われわれが生きている間でもないでしょう」と付け加えました。

天文学的な時間でいえば”もうすぐ”でも、われわれ人間の尺度ではそれが数万年、数十万年だったりする可能性は大いにあります。

(Source:Nature。Via ScienceNewsEngadget日本版より転載)

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タグ:宇宙(用語)天文学(用語)中性子星(用語)ブラックホール(用語)

NASA火星探査ミッション用にRocket Labが双子の軌道上宇宙機の開発契約を獲得

Rocket Lab(ロケットラボ)では、火星の気候が時間とともにどのように変化してきたか理解を深めるため、火星を周回して磁気圏の研究を行うPhoton(フォトン)プラットフォームをベースにした2つの宇宙機を開発している。この科学ミッションはNASAのSIMPLEx(Small Innovative Missions for Planetary Exploration)プログラムから授与されたもので、2024年に、NASAがライドシェアロケットとして契約したまだ明らかにされていない商業打ち上げ用ロケットに搭載して火星に飛ぶ予定だ。

これは、Rocket Labが以前に発表した、地球の軌道を超えて移動する衛星プラットフォームとしてPhotonを使用するというビジョンを実現することを含め、いくつかの理由で注目すべき進展だ。また、Rocket Labの打ち上げ事業と宇宙船サービス事業が初めて切り離されるという意味でも興味深い。

Rocket Labの「Photon」は、同社の宇宙推進システム「Curie(キュリー)」を使用する衛星バスプラットフォームで、今回のミッションでは、状況制御システムや深宇宙探査システム、ウェイファインディングのためのスタートラッカーやリアクションホイールなどが搭載される予定だ。Photonの魅力は、深宇宙探査能力を小型で手頃な価格の、比較的質量の少ない打ち上げ用パッケージで提供することで、より多くの組織や機関に惑星間科学へのアクセスを広げることができるかもしれない。

Rocket LabがPhoton2機を投入するこの火星行きESCAPADEミッションは、2021年6月にデザインレビューが行われ、7月にはPhotonの製造、装備、飛行準備が始まる前に最終チェックが行われる予定だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Rocket LabNASA火星

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

ジェフ・ベゾス氏も同乗するBlue Origin初の有人宇宙飛行チケットは30億円、ライブオークションで落札者決定

オークションにかけられていたBlue Origin(ブルーオリジン)の初の有人宇宙飛行の1座席の落札者が決まった。民間人を乗せて飛ぶBlue Originの初のミッションに落札者は2800万ドル(約30億円)を払う。6月12日に行われたライブオークションで決定し、全オークション過程には159カ国から計7600人が参加した。

今回のオークション結果はBlue Originの3パートに分けて進められてきた宇宙飛行チケット入札の最終結論だ。まず非公開オークションがあり、次に最高の入札額が同社のウェブサイトに表示される公開かつ非同期のオークションがあった。そして最後のライブオークションで入札額はかなり跳ね上がった。それまでの提示額は500万ドル(約5億5000万円)以下だった。

売りに出た初の座席の額は、Blue OriginのNew Shepardカプセルでの商業フライトでかかると思われる価格をかなり上回った。初フライトは準軌道までで、そこで数分だけ過ごして地球に帰還する。通常、フライトの費用は100万ドル(約1億1000万円)以下、おそらく50万ドル(約5500万円)の方に近い額だと推測される。しかし今回のフライトは有人としては初であり、明らかに特別な意味を持つ。また、落札者はBlue Originの創業者Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏と交流することができる。ベゾス氏も弟のマーク氏とともに初フライトに搭乗する。そして4番目の搭乗者は7月20日の打ち上げに向けて「数週間」以内に発表される、とBlue Originは話す。

誰がオークションで落札したのかについても、もうしばらく待たなければならない。落札者については今日のライブオークション終了から「数週間以内に発表される」見込みだ。有人宇宙飛行能力の開発に何年も費やしてきたBlue Originにとって2800万ドルは大きな臨時収入になるのではと思った人もいるかもしれないが、そうではない。同社はオークションの売上をClub for the Futureに寄付する。子どものSTEM教育を促進する非営利団体であり、長期的には人間が宇宙で暮らせるようにするというベゾス氏の大きな目標をサポートする。

オークションのライブ入札の様子は以下のストリームで見ることができる。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Blue Origin民間宇宙飛行オークションジェフ・ベゾス

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

NASAが新たに2つの民間宇宙飛行士によるISS滞在ミッションの提案を募集

NASAは米国時間6月11日、民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)に滞在させる新たな2件のミッションについて、民間企業から提案を求めていることを発表した。最初のミッションは2022年秋から2023年半ばの間に、2回目のミッションは2023年半ばから2023年末までの間に行われる可能性が高い。

民間宇宙飛行士によるミッションは、NASAの地球低軌道商業開発プログラムの一環として、比較的最近開始されたものだ。人類による宇宙開発の歴史のほとんどにおいて、ISSに滞在できるのは各国の宇宙機関に所属する宇宙飛行士に限られていた。

ヒューストンに拠点を置く宇宙スタートアップ企業のAxiom Space(アクシオム・スペース)は、2022年1月に予定されている史上初の民間宇宙飛行士のみによるISSへの宇宙飛行ミッションを受注している。このミッションでは、フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられる4人の民間宇宙飛行士が、ISSに8日間滞在することになっている。このミッションに関連するサービスの対価として、NASAはAxiom Spaceに169万ドル(約1億8500万円)を支払う。

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新たに計画されている2つのミッションはそれぞれ最大14日間で、提案書の提出期限は7月9日。これらのミッションは米国の企業が仲介し、認定を受けた米国の輸送用宇宙船を使用しなければならないと、NASAは指定している。Axiom Spaceの民間宇宙飛行士ミッションでは、SpaceX(スペースX)のCrew Dragon(クルードラゴン)ロケットが使用される。

NASAは、今回のような民間の有人ミッションを可能にすることで「NASAは多くの顧客の1つとして、民間企業が主導する地球低軌道経済の活発な発展」に寄与できると述べている。

SpaceXが先導するロケットの再利用という革新などにより、打ち上げコストが大幅に低下したことに加え、この5年間で生まれた「新宇宙」企業のまったく新しいエコシステムのおかげで、宇宙はかつてないほど賑わいを見せている。

NASAはまた、ゆくゆくは今後のアルテミス計画(人類が待望する月面再着陸計画)や、太陽系のさらに遠い場所を目指すミッションのために、地球低軌道は「訓練と実験の場」として利用できるとも述べている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:NASA民間宇宙飛行国際宇宙ステーション

画像クレジット:NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NASA技術開発コンペ「血管組織チャレンジ」で肝臓組織を3Dプリントしたウェイクフォレスト大チームが優勝

NASA技術開発コンペ「血管組織チャレンジ」で肝臓組織を3Dプリントしたウェイクフォレスト大チームが優勝

eranicle via Getty Images

米ノースカロライナ州のウェイクフォレスト大学に属するWinstonおよびWFIRMと称する2チームが、NASAが開催していた技術開発コンペ「Vascular Tissue Challenge(血管組織チャレンジ)」で1位と2位を獲得しました。

このコンペは2016年に開始され、実験室環境において心臓、肺、肝臓、腎臓などの臓器を、血管組織を含み、ある程度の太さと代謝機能を持つように作成することを目標としています。賞金は50万ドルが用意され、上位の3チームに分配されます。

ウェイクフォレスト大の2チームは、いずれもわずかに異なる技術を用いて、実験室で血管を含む肝臓組織の3Dプリントに成功しました。これら組織は30日間生存し機能するように作られ、わずかに優秀とされたチームWinstonが賞金を30万ドル、WFIRMは10万ドルを獲得しています。

NASA技術開発コンペ「血管組織チャレンジ」で肝臓組織を3Dプリントしたウェイクフォレスト大チームが優勝

Wake Forest Institute for Regenerative Medicine

この受賞により2チームは今後、国際宇宙ステーション(ISS)で、それぞれが作り出した画期的な組織モデルに関する試験を実施する機会を得ました。

宇宙空間での実験は、この技術コンペが地上だけでなく、将来宇宙空間で長い時間を過ごすことになるであろう宇宙飛行士らの医療に活用するために行われているから。今回総勢11チームの研究を評価・審査したArun Sharma博士は「これは非常に重要な課題です」「そして、その可能性は無限大です」と述べました。

Center for the Advancement of Science in Space(先端宇宙科学センター)の暫定チーフサイエンティストで、米ISS国立研究所のマネージャーであるマイケル・ロバーツ氏は、この技術が今後10年以内に実用化される可能性があると述べています。そして「これが我々の未来です。15〜20年後にはすべての臓器を作り出すことができるかもしれません」とこれらの技術への期待を語りました。

NASAは、月や火星への旅行を含む将来の宇宙ミッションの準備のために、今後もチャレンジコンテストを活用していきたいと考えています。

(Source:PR NewswireNASAEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:医療(用語)ウェイクフォレスト大学(組織)3Dプリント / 3Dプリンター(用語)NASA(組織)

ヴァージン・ オービットがYouTubeで6月末の衛星打ち上げをストリーミング配信

Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)が2021年6月末に予定している次の宇宙への打ち上げミッションに向けて着々と準備を整えている。2021年1月に初めて軌道上への打ち上げを成功させて以来のミッションで、クライアントの米国防総省やオランダ空軍などに代わって小型衛星7基を打ち上げる。そして今回の打ち上げではミッションをYouTubeでストリーミングし、Virgin Galacticが宇宙へ旅する様子を誰もが視聴できる初の機会となる。

Virgin Orbitはこれまでフライトのライブ動画は提供せず、その代わりソーシャルメディアチャンネルでテキストによるアップデートを行っていた。YouTubeストリームでは、改造されたボーイング747旅客機の翼の下から高高度で空中打ち上げする小型ロケットLauncher Oneの輸送を含め、Virginの打ち上げプロセスのこれまでにない映像が提供されるはずだ。

打ち上げの様子のライブストリーミングは現時点で宇宙産業においてはかなり必要不可欠なものだ。特にSpaceX、Rocket Lab、Blue Originを含む、いわゆる「新宇宙」企業においてはそうだ。SpaceXはStarship開発のプロセス全体でもストリーミングした。成功に加えてかなりの失敗を広く流すことになるため、これは異例だ。

Virgin Orbitの打ち上げは飛行機を使うという斬新なものであり、垂直に打ち上げるものに比べてストリームは幾分ユニークな光景を提供するはずだ。なので今回の打ち上げは注目に値するだろう。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Virgin Orbit人工衛星ロケット

画像クレジット:Virgin Orbit

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

宇宙開発企業のAstraが推進装置メーカーのApollo Fusionを買収

特別買収目的会社(SPAC)との合併から上場を計画している宇宙開発企業のAstra(アストラ)は、電気推進装置メーカーのApollo Fusion(アポロ・フュージョン)を買収すると、米国時間6月7日に発表した。AstraのチーフエンジニアであるBenjamin Lyon(ベンジャミン・ライオン)氏は、同日のブログ記事で、電気推進システムは宇宙船を低軌道から高軌道へ、さらには月へと移動させるのに有効であると述べ、Astraが地球軌道を超えたミッションも計画していることを示した。

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今回の取引条件では、AstraはApollo Fusionを株式3000万ドル(約33億円)と現金2000万ドル(約22億円)、合計5000万ドル(約55億円)で買収する。さらにApollo Fusionが一定の業績ベンチマークを達成した場合、最大9500万ドル(約104億円)の追加対価を支払う可能性もある。PJT Partners(PJTパートナーズ)は、この買収に関してAstraの財務アドバイザーを務めていると、アラメダに拠点を置くこのスタートアップ企業は月曜日に発表した。

AstraのChris Kemp(クリス・ケンプ)CEOは、同社を打上げから宇宙サービスまで提供する垂直統合型宇宙ビジネス企業にするという目標を公言しており、Apollo Fusionのスラスター技術はそのパズルの主要なピースとなる。Astraは2020年12月にアラスカのコディアックから最初のテストロケットの打ち上げを成功させたが、ケンプ氏は公式声明の中で、毎月商業打ち上げを行う計画を示している。

Apollo Fusionは「アポロ・コンステレーション・エンジン(ACE)」と「ACE MAX(ACEマックス)
」という2種類の電気推進装置を製造しており、どちらもクリプトンとキセノンの推進剤に対応している。同社は、York Space Systems(ヨーク・スペース・システムズ)から、2022年に打ち上げが予定されている低軌道(LEO)衛星コンステレーション・プログラムの推進システム供給メーカーに選ばれているという。

AstraによるApollo Fusionの買収は、AstraがSPACであるHolicity(ホリシティ)との合併を2021年末に完了させた後、成立する予定だ。ケンプ氏はTwitter(ツイッター)で、同社が7月1日に「ASTR」というティッカーシンボルでNASDAQに上場する意向であることを明かした

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カテゴリー:宇宙
タグ:Astra買収

画像クレジット:Astra / John Kraus

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アマゾンのジェフ・ベゾス氏が宇宙へ、自ら設立したBlue Origin初の有人宇宙打ち上げに搭乗

Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が、7月20日に打ち上げられるBlue Originの初の有人宇宙フライトに搭乗する。Amazon(アマゾン)創業者である同氏が米国時間6月7日朝、自身の弟であるMark Bezos(マーク・ベゾス)氏も一緒に行くことをInstagramで明らかにした。ベゾス兄弟はBlue Originが現在行っているオンラインオークションの落札者とフライトをともにする。1座席がオークションにかけられていて、現在の最高入札額は280万ドル(約3億円)だ。

7月20日に行われる準軌道飛行の再利用可能なNew Shepardロケットの打ち上げは、有人としては初となる。最初の有人飛行ミッションに有料顧客を乗せるのは異例だ。そして今、世界最富裕の1人も搭乗することが明らかになり、初の有人飛行にもう1つ大胆な要素が加わった。対照的にVirgin Galacticは、今後Richard Branson(リチャード・ブランソン)卿の搭乗が予定されているが、すでにテストパイロットや宇宙飛行士を乗せて複数回打ち上げた。Elon Musk(イーロン・マスク)氏のSpaceXのロケット搭乗もまだ実現していないが、どこかの時点で搭乗すると過去に述べている。

しかしBlue OriginのNew Shepardは無人で何回も飛んでおり、初回フライトでは再利用可能なブースターをなくしたが、ブースターのランディング(初回を除く)やカプセルの回収などミッション15回を成功させている。New Shepardロケットは軌道までは到達しないが、宇宙の「縁」を飛行し、そこで搭乗者は数分間、無重力を体験したりカプセルにたくさんある窓越しにとびきりの地球の眺めを味わったりする。そしてパラシュートを使ってBlue Originの打ち上げサイト近くのテキサスに帰還する。

Blue Originの初の有料座席のオークションでは、最高入札額は同社が5月19日に入札を公開したときの140万ドル(約1億5000万円)から上昇し、このところ280万ドルのままだ。オークション最終日は6月12日で、残っている参加者がさらに高い額を提示する様子はオンラインでライブ公開される。

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米空軍が地球規模のロケット貨物輸送プログラムを計画中、SpaceX以外の民間企業も選択肢見込む

カテゴリー:宇宙
タグ:Blue Originジェフ・ベゾスNew Shepard民間宇宙飛行

画像クレジット:Matthew Staver/Bloomberg / Getty Images

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

米空軍が地球規模のロケット貨物輸送プログラムを計画中、SpaceX以外の民間企業も選択肢見込む

米空軍が地球規模のロケット貨物輸送プログラムを計画中、SpaceX以外の民間企業も選択肢見込む

Gene Blevins / reuters

米空軍が、民間の航空宇宙企業の大型ロケットを使い世界のどこへでも貨物を輸送することを想定した小規模な開発プログラムを継続していると述べました。

米国防総省は”Rocket Cargo”と称するこの実験的プログラムはアメリカ宇宙軍(USSF)が主導することになると説明し「これまで陸送や空輸、船便では困難だった場所への貨物輸送を実現させるためにロケットの着陸能力や、大気圏再突入後に貨物を空中投下するための分離可能なポッドを設計し運用する能力を実証する」と予算案に記しています。

宇宙ロケットを使う輸送や旅行は2地点間を短時間で結ぶことを可能します。よりわかりやすく言えば、地球の裏側まで行くにしても、ほんの1時間ほどの時間で到着できる可能性があるということです。

この計画は2022年の予算案で約5000万ドルの要求と規模こそ小さいものの、昨年からのSpaceXとExploration Architecture Corporation(XArc)との契約による研究開発作業を継続します。

Rocket Cargoプログラムでは具体的には言及していないものの、30〜100トンの貨物を輸送でき、完全に再利用可能なロケットとしては、現在はSpaceXのStarshpが唯一の選択肢でしょう。

SpaceXはこれまでにStarshipのプロトタイプSN15を高高度まで上昇させ、地上に垂直着陸させるテストを成功させています(それまでにはいくつもの爆発がありましたが)。SpaceXはロケットを素早く再利用して再び宇宙飛行に送り出し、それを宇宙経由の定期便に発展させるという、これまでの使い捨てによるロケット運用とは全く異なるコンセプトの実現を目指しています。

ただStarshipプロトタイプであっても、まだ一度も軌道には到達できていません。また、空軍はこのプログラムにおける選択肢をより広くしたいと考えています。

米空軍でRocket Cargoプログラムのリーダーを務めるGreg Spanjers博士は、SpaceXの他にこのプログラムに対し潜在的にロケット供給が可能な民間企業として、NASAの月着陸船契約を競っていたBlue OriginやDyneticsの名を挙げました。さらにほかにもいくつかの企業と話をしており、まずはより多くの企業がこの分野に参入することを奨励するため、窓口とロードマップを整備するとしています。

(Source: CNBCEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:安全保障(用語)XArc(企業)軍事(用語)SpaeceXDynetics物流 / ロジスティクス / 運輸(用語)Blue Origin(企業)米宇宙軍 / USSF(組織)

スペースXがDragon貨物輸送宇宙船を打ち上げ、新型太陽発電パネルやクマムシを宇宙ステーションへ

SpaceX(スペースX)のDragon(ドラゴン)カプセルが、再び国際宇宙ステーション(ISS)に向かっている。

同社は米国時間6月3日に、NASAから委託された22回目となる商用補給サービス(CRS)ミッションを打ち上げた。これはSpaceXが過去12カ月間にISSへ送ったカプセルとしては5回目になると、同社のDragonミッション管理担当ディレクターを務めるSarah Walker(サラ・ウォーカー)氏は、メディア向け会見で述べた。また、(再利用ではなく)新しいFalcon 9(ファルコン9)ロケットブースターを使った2021年最初の打ち上げでもある。

ロケットは米国東部時間午後1時29分にフロリダ州のケープ・カナベラルを、南と東から嵐の雲が迫っていたものの、予定どおりに離陸。第1段機体は計画どおりに分離し、打ち上げから8分後に大西洋に浮かぶ「Of Course I Still Love You(もちろん、今でも君を愛している)」と名づけられた無人船にタッチダウンした。カプセルを軌道に投入させる第2段は、打ち上げから12分後に分離、こちらも予定どおりだった。

今回のFalcon 9ロケットよる補給ミッションでは、新型太陽発電パネルを含む3.3トン以上の研究材料、物資、ハードウェアをISSのクルーに送り届ける。これは、SpaceXがNASAと結んだ新たな商業軌道輸送サービス(CRS)契約に基づく2回目のミッションで、1回目は2020年12月に行われた

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Dragonカプセルには、Colgate(コルゲート)の歯磨き粉を使って細菌の繁殖を調べる口腔内細菌、宇宙環境での生息と繁殖を試みる原始的な生物であるクマムシ(愛称、ウォーターベア)、宇宙飛行中に多くのクルーが罹患する腎臓結石の形成に対する微小重力の影響を調べる調査など、ISSで実施される多くの研究実験材料が積まれている。

また、りんご、ネーブルオレンジ、レモン、アボカドなどの生鮮食料品も運んでいる。

3328kgの積荷のうち、1380kgは宇宙インフラ企業のRedwire(レッドワイヤー)が開発した新しいロールアウト式の「flexible blanket(フレックスブランケット)」太陽電池パネルが占めている。「従来のリジッドパネル式太陽電池パネルと比べ、フレックスブランケット技術は質量や性能の面において利点があります」と、Redwireの技術ディレクターを務めるMatt LaPointe(マット・ラポイント)氏は、TechCrunchに語った。

この太陽電池パネルは、Dragonの非加圧トランクに収納されている。iROSA(ISS Rool-Out Solar Arrays、国際宇宙ステーション・ロールアウト式太陽発電パネル)をISSに送るミッションは3回予定されており、今回はその1回目だ。ラポイント氏によれば、各ミッションでは2セットずつ運ばれることになっているという。全部で6セットのiROSAが設置されれば、合計120KWを超える電力を生み出すことができる。2021年3月に特別目的買収会社との合併による上場を発表したRedwireは、新しいiROSAによって、ISSの発電量は20~30%向上すると述べている。

Dragonカプセルは6月5日の午前5時頃に宇宙ステーションに到着し、ISSのHarmony(ハーモニー)モジュールのポートに自律的にドッキングする予定だ。その後、1カ月以上を宇宙ステーションで過ごし、調査・帰還用の貨物を積んで地球に帰還、大西洋に着水することになっている。

関連記事:買収意欲旺盛な宇宙インフラ企業RedwireがSPAC経由で株式公開へ

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXCargo DragonNASAISSFalcon 9

画像クレジット:SpaceX

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ヴァージン・ギャラクティックが宇宙空間でのヘルスケア実験を行なう研究者を専用機で打ち上げ

Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)に新たな顧客International Institute for Astronautical Sciences(IIAS)が加わった。同研究所は研究者、市民科学者、STEMインフルエンサーのKellie Gerardi(ケリー・ジェラルディ)氏を、Virgin Galacticの専用機に搭乗させる予定だ。ジェラルディ氏は、宇宙飛行が宇宙飛行士に与える影響をリアルタイムで調査するための新しいバイオモニターシステムなどのヘルスケア技術の研究を中心に、さまざまな実験を行う予定となっている。

ジェラルディ氏は、これまでにもパラボリック・リサーチ・フライト(宇宙空間の無重力環境を模擬した高高度の航空機飛行)を何度か経験している。しかし、宇宙に行くのは今回が初めてで、これまで無重力状態をシミュレートして研究を行ってきた研究者たちにVirgin Galacticが提供したいと考えているメリットを示すものだ。

画像クレジット:Kellie Gerardi

ジェラルディ氏がテストするバイオモニターシステムはカナダのスタートアップHexoskinがカナダ宇宙庁と共同開発したもので、そのセンサーの配列でできたウェアラブルデバイスは「Astroskin(宇宙皮膚)」と呼ばれ、打ち上げや低重力や再突入、着陸など宇宙への旅の主な局面が及ぼすインパクトをモニターする。ジェラルディ氏が行うもう1つの実験は、宇宙で使う加湿器や注射器などの設計のための流体動力学テストだ。

Virgin Galacticは以前にも同様のミッションに応じたことがある。科学者のAlan Stern(アラン・スターン)氏の専用打ち上げでは、NASAとサウスウエスト研究所のための実験を行った。同社は、個人宇宙飛行士がお金を払って乗る有料宇宙観光ツアーで話題になっているが、今回のような商用の研究目的も、同社にとって重要なものとなるだろう。

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タグ:Virgin Galactic実験

画像クレジット:Virgin Galactic

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

わずか2cmの宇宙ごみを位相配列レーダーで検知し衛星との衝突をモニターするLeoLabs

低軌道は混雑している。破片やゴミだけでなく、衛星もある。衛星の数は打ち上げ費用の低下とともに急速に増えつつある。これは衛星プロバイダーにとって時として問題となる。価値あるスペースクラフトが他の衛星や軌道上にごまんとある物体と衝突するリスクを負う。

破片追跡はこれまでほとんど、わずかな軍や政府の機関によって行われていたが、完全に網羅していない。LeoLabs(レオラブス)は2016年の創業以来、同社がいう軌道物体追跡における「データ不足」を埋めることを目指してきた。そしていま、同社はInsight PartnersとVelvet Sea VenturesがリードしたシリーズBラウンドで6500万ドル(約71億7000万円)を調達し、オペレーションを拡大しようとしている。この最新ラウンドでLeoLabsの累計調達額は1億ドル(約110億円)を超えた。

LeoLabsは観測地域を飛ぶあらゆる物体を追跡して観測するために地上ベースのフェーズドアレイレーダー(位相配列レーダー)を使っている。レーダーはアラスカとテキサスに1基ずつ、ニュージーランドとコスタリカに2基ずつ配備している。LeoLabsの追跡システムの大きな優位点は検知できる物体のサイズだ。同社は2cm程度のものをとらえることができるが、これに対し従来の検知システムでは10cm程度だ。

検知可能なサイズの違いは大きい。大きさ10cm以上の物体は軌道上に約1万7000個超あるが、2cm以上のものになるとその数は25万個に跳ね上がる。衝突する可能性は高く、2cmというのは小さいように思えるかもしれないが、そうした小さなものでも軌道速度で動くことで壊滅的な被害をもたらすことができる。LeoLabsの顧客はサブスクサービスでこうした情報にアクセスでき、衝突のリスクは自動的に警告される。

「何が起きているのか、あまり情報はありません」とLeoLabsのCEOで共同創業者のDan Ceperley(ダン・チェパリー)氏はTechCrunchに語った。「ですので、当社は多くのデータを生み出すためにグローバルのレーダーネットワークを展開し、ソフトウェアインフラでそのデータを有用なものにしています」。

LeoLabsは週に3つから5つの大きな物体を含む近距離接近を目にしている、とチェパリー氏は話す。それらは注目に値する。というのも、衝突は何千もの小さな断片物、つまりはさらなる宇宙ごみを生み出す可能性があるからだ。さらに小な物体を追跡すると、衝突のリスクは20倍以上高まる。幸いなことに、多くの衛星は衝突を回避したり軌道を維持したりするためにアクティベートできる電動スラスターを搭載している。事前告知があれば企業は予想される衝突の数日前に操作できる。

新たに調達した資金でLeoLabsは世界中に設置するレーダーサイトの数を増やし、ソフトウェア・アズ・ア・サービス事業を拡大する、とチェパリー氏は語る。LeoLabsはすでに軌道を完全にカバーしているが、レーダーを増やすことで物体を追跡する周波数を広げることができると同氏は説明した。LeoLabsはまた、ソフトウェアとデータサイエンスのチームの規模(すでに社内では最大)を拡大し、米国外にもオフィスを置き、新しいプロダクトとサービスを加える計画だ。

「一生に1度という革命が宇宙産業で起きています。新たな投資が衛星打ち上げや衛星の製造、そして衛星運用の費用を抑制したため、多くの衛星が低軌道に向かっています」とチェパリー氏は話した。「これらを実際にすべて追跡する新世代のサービスが必要とされています。ですので我々は新しい時代のために次世代の追跡サービスとマッピングサービスを構築しています」。

カテゴリー:宇宙
タグ:宇宙ごみ人工衛星LeoLabs資金調達

画像クレジット:LeoLabs

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

スペースXが民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに運ぶミッションを2023年までに4回予定

SpaceX(スペースX)は、2020年1月に実施するとすでに発表済みのミッションに続いて、さらなる民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)へ送り込むための乗り物を提供することを発表した。計画されている4度のフライトは、すべて民間の商業宇宙飛行および宇宙ステーション企業であるAxiom Space(アクシアム・スペース)のためのもので、2022年はじめから2023年までの間に行われる予定だ。

SpaceXの宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」と「Falcon 9(ファルコン・ナイン)」は、ISSへの人間の輸送を認可された最初の民間打ち上げシステムであり、すでに3組のNASA宇宙飛行士を軌道上の実験室に送り出している。そのうち1組目は最終的な認証取得試験のデモ飛行で、2組はISSに滞在し作業を行うための運用飛行だった。AxiomとNASAは5月に、初の民間人のみによるISSへの飛行となるAX-1ミッションの詳細を明らかにした。このミッションでは、4人の民間宇宙飛行士をCrew Dragonに乗せてISSに送り届ける。4人は合計8日間、宇宙に滞在しながら作業を行い、地球に帰還する予定だ。

NASAとSpaceXは、ステーションに向かうAxiomの4人のクルー全員にトレーニングを提供することになっている。SpaceXもAxiomも他の3つのミッションの内容や時期については、今のところ詳細を明らかにしていない。だが、2年間に4回のミッションを行うということは、これでNASAが2022年と2023年に年2回ずつ割り当てている民間宇宙飛行士ミッションがすべて埋まることになる。

民間宇宙飛行士によるISSへの飛行は、すでに2021年内に1度予定されている。日本の大富豪である前澤友作氏は、12月初旬にロシアのSoyuz(ソユーズ)ロケットでISSに向かうフライトを予約した。この宇宙旅行を手配したSpace Adventures(スペース・アドベンチャーズ)は、2000年代に何人もの大金持ちの民間人を宇宙へ送り出してきた。

一方でAxiomは、軌道上宇宙ステーションでの商業活動について、ニッチではなくより継続的に行う未来を思い描いている。同社は既存のISSに追加する商用モジュールの開発に取り組んでおり、将来的にはISSの後継となる完全に民間運用の宇宙ステーションの建設も視野に入れている。2年間に複数のクルーを乗せた4回の旅行の予約があるということは、物好きな富豪による気まぐれ以上の需要が、商用宇宙旅行にあることを示すのに大いに役立つだろう。

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タグ:SpaceX民間宇宙飛行国際宇宙ステーションNASAAxiom Space

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)