14年に及ぶ開発期間を経てジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打上げ成功、太陽電池パネルも展開

14年に及ぶ開発期間を経てジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打上げ成功、太陽電池パネルも展開

alex-mit via Getty Images

12月25日、NASAはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を打ち上げました。14年におよぶ開発期間、JWSTと呼ばれるようになる前のコンセプト段階を含めると25年もの歳月をかけて製作された次世代宇宙望遠鏡が、ようやく宇宙へと旅経ちました。

JSWTは、地球から150万kmほど離れた、地球と太陽のラグランジュ点(L2)に近い太陽の軌道を周回する予定です。機体は打ち上げのために折りたたまれた状態から、太陽光発電のパネルを展開し、通常運用形態へと変化します。機体には「これまでにない解像度」の高感度赤外線検出器を備えた4つの科学機器を搭載しており、反射鏡を形成する18ものセグメントの背面には、曲率を調整するための小さなモーターが備えられています。

試運転は6か月におよびますが、その試運転の最後には、最初の観測画像を地上に送信してくる予定です。配信します。

NASA長官のビル・ネルソン氏は「まだ非常に多くのことが動いており、それらが完璧に機能しなければならない。しかし大きな報酬を得るには大きなリスクがあることを私たちは知っている」と打ち上げに際して述べました。

JWSTは幅6.5mの巨大なミラーや4つの超高感度観測機器により、これまで以上に遠くの(言い換えれば時間をさかのぼった昔の)宇宙の観測が可能になるはずです。重要なのは135億年以上も前に起こったビッグバン直後から最初に現れ始めた頃の天体を観測すること。このごく初期の宇宙の天体では核反応により生命に必要不可欠な炭素、窒素、酸素、リン、硫黄といった重元素が作られたとされ、その痕跡をさぐります。

また、もうひとつの大きな目標は遠方の惑星の大気を調査することです。これは、これらの惑星が生命が存在可能か、居住できるかどうかを研究者が評価するのに役立ちます。

また機体はマイナス233℃という著しい低温環境で機能しなければなりません。この非常に低い温度になることで、この望遠鏡が機能するために必要な赤外線の波長で機体が(赤外光で)光らなくなり、非常に遠くから届いた赤外線を高感度にとらえることを可能にします。

なお、記事執筆時点ではすでにJWSTは太陽光パネルの展開を完了しており、電源状況は良好、6つのリアクションホイールも正常に機能して太陽に対する姿勢制御も正しく実行されているとのことです。

(Source:NASA(1)(2)Engadget日本版より転載)

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、悪天候のため打ち上げ予定を日本時間12月25日21時20分からに変更

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、悪天候のため打上げを日本時間12月25日21時20分からに変更

NASA / MSFC / David Higginbotham

NASAは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の打ち上げを予定していた12月24日から25日に1日遅らせることを決定しました。理由は、今回打ち上げを行うフランス領ギアナ・ギアナ宇宙センター周辺の天候が悪いため。

すでにNASAは打ち上げ準備のレビューをクリア、打ち上げ準備完了の記者会見も済ませており、あとは予定の日時を迎えるだけの状態でしたが、悪天候にはどうしても逆らうことはできません。

新しい打ち上げ予定日時は日本時間で12月25日の21時20分~21時52分の間。ただし現地の天気状況によってはさらに延期になる可能性ももちろんあります。

打ち上げ後、JWSTは地球と太陽からの光(赤外線)を同時に遮光できるラグランジュ点(L2)に配置される予定。世界の天文学研究者らは、そこから宇宙の最も初期の銀河や天体を眺め、ブラックホールを調べ、そして地球にそっくりな、生命が存在するかもしれない太陽系外惑星を探してそれを評価できるようになるのをいまかいまかと待ちわびています。

すでにJWSTはアリアン5ロケットに搭載され、組み立て棟で発射台への移動を待っている状況とのこと。今回の打ち上げまでにはかなりの紆余曲折があり、さらに新型コロナのパンデミックでも遅延を余儀なくされたJWSTだけに、天候もすべて万全の状態で軌道へと送り届けてほしいものです。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

「はやぶさ2」が持ち帰った試料の初期記載データが公表、リュウグウは水と有機物に富む原始的な小惑星だった

はやぶさ2が持ち帰った試料の初期記載データが公表、リュウグウは水と有機物に富む原始的な小惑星だった

2020年12月に小惑星リュウグウから帰還した「はやぶさ2」が持ち帰った試料の初期記載(カタログ化)に関する論文が、12月21日、イギリスのオンライン科学雑誌「Nature Astronomy」に掲載された(「Preliminary analysis of the Hayabusa2 samples returned from C-type asteroid Ryugu」「First compositional analysis of Ryugu samples by the MicrOmega hyperspectral microscope」)。同試料から、リュウグウが水と有機物に富む原始的な小惑星であることがわかってきたという。

リュウグウが、炭素、有機化合物、水を含む炭素質のC型小惑星であることは、地上からの観測でわかっていた。この小惑星を探ることで、原始的な太陽系の様子がわかり、今の地球の成り立ちや生命の発生に関する手がかりがつかめる。地球には、炭素質コンドライトというC型小惑星とほぼ同じ組成の隕石が少数飛来していて、それを調べて太陽系形成期のプロセスを解明しようとする研究がなされている。だが、炭素質コンドライトはC型小惑星から飛来したと考えられるものの、物的証拠はこれまで得られていない。「はやぶさ2」ミッションの目的は、それを確かめるために、C型小惑星のリュウグウから直接試料を採取してくることだった。

JAXAでは、リュウグウの2カ所の表層から採取した計5.4gの試料を、フランス宇宙天体物理学研究所(IAS)で開発された赤外分光顕微鏡マイクロオメガを使って分析した。近赤外線の波長帯で試料を観察することで、それを構成する鉱物や、そこに存在する分子を調べることができるというものだ。それによると、地上観測で得られていた小惑星全体の特徴が反映されていることがわかった。リュウグウは、水や有機物に富む原始的な小惑星だったということだ。だが既知の隕石との比較では、炭素質コンドライトの中のCIコンドライトにもっとも似ていたが、密度が小さいことと反射率が低い点で異なっていたという。

この帰還試料は「実験室で入手できる最も始原的な試料の一つであり、太陽系の起源と進化の概念を再考させることになるであろう、唯一で貴重なコレクションである」とJAXAでは話している。今後は、初期分析、2次キュレーション分析、公募分析とより詳細な分析が行われる予定だ。

画像クレジット:JAXA

国際宇宙ステーションで高校や学習塾が科学実験、SpaceXのFalcon 9でJAMSS実験装置Kirara 3号機を本日打ち上げ

国際宇宙ステーションで高校や学習塾が科学実験、SpaceXのFalcon 9・ドラゴン補給船でJAMSS実験装置Kirara 3号機打ち上げ

国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」の運用・利用支援などを行う有人宇宙システム(JAMSS。ジャムス)は米国時間12月21日、SpaceXのドラゴン補給船に宇宙工場モデル「Kirara」3号機を搭載しFalcon 9ロケットで打ち上げる(CRS-24・SpX-24ミッション。記事掲載時点では打ち上げ成功)。Kiraraは主に、創薬分野で利用される高品質タンパク質結晶生成を宇宙で行うサービスのための実験装置として、複数の企業や団体からの宇宙実験を請け負っているのだが、今回新たに「Kiraraシェアサービス」を開始し、初めての試みとして、日本国内の学校や学習塾から募った宇宙教育ミッションも行うことになっている。

今回の打ち上げに参加する団体は、東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部、欧州コンフォーカルサイエンス、静岡大学電子工学研究所、米国のBayer、ハンガリーのInnoStudio、フランスのInstitut Laue-Langevin、スペインのCSISとIACT、そして教育関連では、茨進、日本旅行(ミライ塾)、柳川高等学校、東京都立小石川中等教育学校、みどりの学園義務教育学校、Nikkei宇宙プロジェクト。

なかでも、市進教育グループの茨進では、JAMSSと共同でISSでの宇宙実験教育を実施する予定となっており、その材料の準備を子どもたちが行った。柳商学園柳川高等高校は、高校主催による宇宙でのタンパク質結晶生成実験を行う。みどりの学園義務教育学校は、持続可能な社会の実現に向けて学んだ成果であるデータやメッセージをSDカードに納めて宇宙に打ち上げる。

Kirara 3号機を載せたSpaceXのFalcon 9は、米国時間12月21日にケネディー宇宙センターから打ち上げられ、翌22日午前4時半ごろ(米国東部標準時間)にISSにドッキングする予定。

【Max Q】SpaceXが初めて1日に2回Falcon 9を打ち上げ

TechCrunchは、Space 2021イベントを終えたばかりが、宇宙ビジネスに限っては、年末だからといってニュースのペースが落ちることはない。

SpaceXがロケット再利用の新記録を達成、初の1日に2回の打ち上げ

SpaceX(スペースエックス)は、同社のStarlink(スターリンク)衛星の新たな一群を、ヴァンデンバーグ空軍基地の発射施設から米国時間12月18日に打ち上げ、続いてその日の夜遅くにトルコの通信衛星をフロリダ州ケープカナベラルから打ち上げた。これはSpaceXが1日に2回の打ち上げを行った初めての事例だ。また、このStarlinkミッションでは打ち上げロケットのFalcon 9を11回にわたって発射・回収し、SpaceXの打ち上げシステム再利用記録を更新した。

それだけでも十分目覚ましいが、現在SpaceXは、同社の商業再補給サービス(CRS)ミッションの一環として国際宇宙ステーション(ISS)に補給品と実験材料を届けることになっている。予定では米国時間12月21日午前にケープカナベラルから飛び立つ。

画像クレジット:SpaceX

2021年を宇宙投資家の目で振り返る

上に書いたように、我々はTC Sessions:Space 2021イベントを終えたところだが、その中でもスタートアップコミュニティにとって特に興味深かったに違いない話題が、宇宙分野に関心のあるアーリーステージ投資家のパネルとTechCrunchが行ったディスカッションだろう。たとえばSpace Capital(スペース・キャピタル)のファウンダーであるChad Anderson(チャド・アンダーソン)氏は、長年スタートアップに早期投資する中で、宇宙産業が著しく進化してきたことについて語り、現在業界で起きている大きな転換に言及した。Assembly Ventures(アセンブリー・ベンチャーズ)のJessica Robinson(ジェシカ・ロビンソン)氏は、スペーステック(宇宙技術)が他のあらゆる分野に影響を与えその逆も起きていることについて話した。

ディスカッションはTC+サブスクライバー専用サイトでその他の会話とともに公開されている。

画像クレジット:Axiom Space

その他のニュース

Voyager Space(ボイジャー・スペース)はBlue Origin(ブルー・オリジン)のグローバル販売担当VPを新たな最高収益責任者(CRO)として雇った。Clay Mowry(クレイ・モーリー)氏はBlue Originチームのかなり有力なメンバーであり、その以前はArianespace(アリアンスペース)の会長兼社長を務めていた。

NASA(米国航空宇宙局)と各国の提携機関は、民間有人宇宙飛行計画、Axiom(アクシオム)Mission 1の国際宇宙ステーションへの飛行を承認し、2022年2月28日に実施されることが決まった。

ジョージア州カムデン郡のSpaceport Camden(スペースポート・カムデン)は、FAAから正式な打ち上げ許可を受けた。運用に入るまでにはまだいくつかハードルが残っているが、民間打ち上げ会社の新たな打ち上げ場所の選択肢としての役割が期待される。

Rocket Lab(ロケットラボ)は太陽電池、ソーラーパネルその他の宇宙拠点インフラの構成要素のメーカー、SolAero Holdings(ソロエアロ・ホールディングス)を買収する。TechCrunchは先にRocket LabのPeter Beck(ピーター・ベック)氏と、同社の最近の買収ラッシュについて話した(要サブスクリプション)。

The U.S. Space Force(米国宇宙軍)が2歳に!よちよち歩きの武官組織になった。

NASAはJames Web(ジェームズ・ウェッブ)宇宙望遠鏡を米国時間12月24日に打ち上げる予定で、目標打ち上げ時刻は東海岸標準時午前7時20分(日本時間12月24日午後9時20分)だ。フランス領ギアナ、クールーにある宇宙センターから発射され、Arianespaceのロケット、Ariane 5をESA(欧州宇宙機関)との提携で搭載する。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nob Takahashi / facebook

JAXAが13年ぶりの宇宙飛行士候補者募集の応募受け付けを本日開始、学歴は問わず

JAXAが13年ぶりの宇宙飛行士候補者募集の応募受け付けを本日開始、学歴は問わず

以前お伝えしたとおり、JAXAは13年ぶりとなる宇宙飛行士候補者の募集の受け付けを12月20日正午から開始した。今回は、月面有人探査ミッションへの参加も予定されている。募集要項は以前に比べて大幅に緩和され、学歴も問われない。

選抜は、書類選考、第0次選抜から第3次選抜まで行われる。その中では、英語、一般教養、STEM(理工系)分野の試験、小論文、適正検査、医学検査、面接、資質特性検査などの審査が行われる。JAXAが宇宙飛行士に求める人物像は、国際共同事業で多様性を尊重しつつリーダーシップがとれる人、極限環境でも柔軟な思考と着眼点で適時的確な判断ができる人、ミッションで得た経験を人々に伝える発信力のある人。

選抜で評価されるポイントは、明確な目的意識と達成意欲、任務と訓練に耐えうる健康状態、STEM分野の知識と論理的思考力、英語力、実務経験から得られた専門性、緊急事態にも的確に対処できるミッション遂行能力、環境や技術の変化に適用できる身体能力、精神的適応性、強靱性、未経験の知識や技量を速やかに習得できる能力などとなっている。

予定されている宇宙活動には、ISSでのシステム操作や保全・実験研究・船外活動、月周回ステーション「ゲートウェイ」での操作保全・実験研究・船外活動・月面での滞在・実験研究・船外活動などが含まれる。

カシオ計算機とJAXA、月面基地建設に向け高精度位置測位システムpicalicoによる位置測位の実験を開始

月面基地イメージ ©JAXA

申し込みには、エントリーシートの入力と健康診断書の提出が必要となる。

募集および選抜の実施概要

  • 採用人数:若干名
  • 受付期間:2021年12月20日から2022年3月4日まで
  • 選抜結果発表:2023年2月ごろ

12月1日に行われたオンライン説明会の様子は、こちらから見ることができる。

詳細はこちらを。

 

Rocket LabがNeutron打ち上げ機でロケット設計を再考、打ち上げの常識に挑戦

Rocket Lab(ロケットラボ)がついにNeutron(ニュートロン)ロケットの覆いを外した。ニュートロンは、CEOのPeter Beck(ピーター・ベック)氏が「2050年のロケット」と呼ぶ中型機である。Rocket Labは、現在SpaceX(スペースX)が支配する打ち上げ市場でシェア拡大を目指している。

今回、3月のニュートロンのアナウンス以来、同社のプロジェクトに関する最初のメジャーアップデートである。3月以来、Rocket Labは、特別買収目的会社を使った合併による株式公開Electron(エレクトロン)再利用計画の開発継続、宇宙サービス部門の拡大で忙しい。その間ずっと、今に至るまで、ニュートロンに関しては沈黙を保ってきた。

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炭素複合材

ニュートロンの特徴は、運用と開発の両面で同クラスの他のロケットとは異なる、いくつかの意外なイノベーションにある。まず素材である。約40メートルのロケットは、姉妹機のエレクトロン同様、特別な炭素複合材で作られる。

これは興味深い選択である。特に、周知のようにスペースXがStarship(スターシップ)システムで炭素複合材を捨ててステンレス鋼を取ったことを考えるとそうである。しかし、Rocket Labが炭素複合材を使うのはこれが初めてではない。ベック氏は、ニュージーランド政府の研究施設でキャリアをスタートさせて以来、エレクトロンロケットの大部分で使うだけでなく、高度な複合材や素材に取り組んできた。

「金属の扱いに慣れてきた場合、実際に複合材をてがけるのは本当に困難です。でも、ずっと複合材と関わりがあって経験があるなら、実際のところ、複合材はシンプルな素材です」とベック氏はTechCrunchに語った。

金属の構造体は重くてパフォーマンスが低い。高パフォーマンスエンジンで補うことはできるが、再利用の点で大きな余裕や高い信頼性にはつながらない、と氏は付け加えた。構造体が軽くなれば、氏が「ロケットの破綻のスパイラル」と呼んだものを避けることができる。構造体が重くなると必要な推進剤が増え、推進剤が増えると必要な推進剤タンクが大きくなり、タンクが大きくなると重量が増えて必要な推進剤がさらに増える、という終わりのないせめぎ合いだ。際限がない。

「これは、私のキャリアで破綻のスパイラルが逆転する最初の時です。軽量の構造体で破綻のスパイラルが逆転します。このことは、打ち上げの観点から重要なだけでなく、実際のところ再突入の観点からも本当に重要です」と氏は言った。なぜなら、ベック氏によれば、約7メートルというニュートロンの大きな直径と軽い重量によって、弾道係数、つまり空気抗力に対する物体の抵抗の大きさが大きくなるからだ。それで、構造体を重視することで、再突入で消費する推進剤は少なくなり、空気抗力は小さくなり(結果として熱も少なくなり)、エンジンはシンプルになる。

また、ニュートロンは新しいタイプのグラファイト複合材で仕上げられるので、耐熱性が向上する。これは、今後のエレクトロンロケットにも新たに導入される。

「口を大きく開けたカバ」

従来のロケット設計と大きく異なる別の点はニュートロンのフェアリングだ。この機材は、ノーズコーンのように伝統的にロケットの先端に取り付けられ、内部のペイロードを保護する。歴史的には、フェアリングは分離されて地球に落下し、使い捨てになるものと一般に見なされている。もっとも、スペースXでは、修理調整して再利用するために海から回収している。

Rocket Labではその代わりに、4枚のフェアリングが1段目に装着され、機械的に開く(ロボットのような風変わりな花を想像して欲しい)。これもまた、複合素材の使用によって導かれた設計上の決断であるとベック氏は述べた。

画像クレジット:Rocket Lab

「通常、フェアリングを付けたままにしたり、それと似たようなことをしたりする質量上の余裕はない。フェアリングはできるだけ早く切り離さねばならない。そのような寄生質量を抱えている余裕はないからだ。しかし、寄生質量が本当に小さければ、この種のことができる」。

ニュートロンは、最大1万5000キログラムのペイロードを低地球軌道に運ぶことができ、ちょうどスペースXのFalcon 9(ファルコン9)やRelativity Space(レラティビティースペース)が開発中のTerran R(テランR)ロケットと競合する。

しかし、2段目はどうだろうか?

Rocket Labは、ペイロードのノーズコーンフェアリングを無くすだけでなく、2段目も徹底的に見直すことにした。従来のロケットの設計では、1段目とペイロードの間に2段目を入れる。しかし、ニュートロンでは、2段目は1段目の中に置かれる。ロケットがペイロードを展開するときになると「口を大きく開けたカバ」のようなフェアリングが開いて、2段目とペイロードの両方を軌道に送り出す。

Rocket Labは、有人宇宙飛行を含むさまざまなタイプのミッションにニュートロンを使うことを意図している。ベック氏によれば、有人打ち上げの場合は、ただフェアリングを取り外して、クルーを乗せたカプセルを打ち上げることができるということだ。

2段目は使い捨ての設計である。他のロケット企業は完全な再利用に取り組んでいるが、ベック氏によれば、2段目の再利用が理に適っているかどうか、まだ結論は出ていないとのことである。特に、再利用にともなう質量要件の増大と回復に関連する運用コストを考えるとそうである。

地球への帰還

2段目が展開されると、1段目は地球に帰還し、正確に発射台に戻る。つまり、洋上のはしけに降りるのではない。この選択もまた、運用コストを節約するものになる、とベック氏は言った。

ニュートロンは、Rocket Labが開発した7基の新しいエンジンを使って軌道に上がり、戻ってくる。Rocket LabはこのエンジンをArchimedes(アルキメデス)と呼んでいる。この低圧エンジンは液体酸素(LOX)とケロシンではなくLOXとメタンで作動する。ちょうど1段目を打ち上げ場に戻すという決断と同様、推進剤の選択はミッション間のターンアラウンド時間が最小になるように行われた。

「これまで、エンジンには通常膨大な修理調整が必要とされてきました。また、推進剤としてLOXとケロシンが選ばれることから、膨大な修理調整が必要です。ケロシンからは大量のすすとコークスが発生するんです。それで、メタンを使う決定をしました。メタンでエンジンを作動させることは可能で、そうすればエンジンはまったくクリーンで、燃焼後もまだピカピカです」とベック氏は語った。

ニュートロンは結局、米国内のどこかから打ち上げられるだろう。Rocket Labは、打ち上げ場と製造所の選定をめぐる競争のさなかにある。多くのことが行われてきたが、ニュートロン打ち上げの具体的な期日は不明だ。Rocket Labは以前、2024年だと言ったが、今回のアップデートでは言及がなかった。しかし、ベック氏によれば、それは意図的なものではないとのことだ。

「私たちは、2024年にニュートロンを発射台に載せ、2025年に企業顧客を宇宙へ送るつもりです。しかし、私たちはこれがロケットの計画であることも認めています。膨大な仕事ですが、懸命に努力を続けること、それが私たちの計画です」とベック氏は断言した。

ここで、Rocket Labのニュートロンに関するアップデートをもう一度視聴してみよう。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

インターステラテクノロジズが17.7億円のシリーズD調達、超小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を加速

インターステラテクノロジズが17.7億円のシリーズD調達、超小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を加速

「低価格で便利な、選ばれるロケット」をミッションに、観測ロケット「MOMO」と超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」を独自開発・製造しているロケット開発ベンチャー「インターステラテクノロジズ」は12月17日、シリーズDラウンドとして、第三者割当増資による総額17億7000万円の資金調達を実施したと発表した。

引受先は、藤田誠氏(INCLUSIVE代表取締役社長)、INCLUSIVE、サイバーエージェント、シリアルインキュベート、セブンスターズキャピタル1号投資事業有限責任組合、サンコーインダストリー、中島瑞木氏(coly 代表取締役社長)、中島杏奈氏(coly 代表取締役副社長)、山本博士氏(スマレジ 代表取締役)

同社「ねじのロケット(MOMO7号機)」「TENGAロケット(MOMO6号機)」は2021年7月に2機連続で宇宙空間に到達。2019年5月の「宇宙品質にシフト MOMO3号機」を含め、3度の宇宙空間到達を達成した。国内民間単独での宇宙空間到達は唯一となっている。MOMOは実証から事業化の段階に入り、並行して2023年度の打上げを目指すZEROの開発を本格化させている。

今回調達した資金は、ZEROの開発をさらに加速させるための研究開発・設備投資・人材採用・材料費などにあてる。「誰もが宇宙に手が届く未来をつくる」というビジョンの実現に向け、今後も低価格、高頻度な宇宙輸送の観点から日本の宇宙産業をリードするとしている。

同社ZEROについては、一般的には複雑で高額となるエンジンシステムを独自設計するなどコア技術を自社で開発。設計から製造、試験・評価、打上げ運用までを自社で一気通貫させた国内唯一の開発体制、アビオニクス(電子装置)への民生品活用などにより、低価格で競争力のあるロケットを実現するという。

ZEROの燃料には低価格で性能が高く、環境にも優しい液化メタンを選定。エア・ウォーターと協力し、牧場から買い取ったメタンガスで製造した液化バイオメタンをロケットに使うことを計画している。インターステラテクノロジズが17.7億円のシリーズD調達、超小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を加速

また東と南が海に開かれた世界有数の好立地、かつ本社から7.5kmの近距離に射場を有することも、世界的に見て大きなアドバンテージとしている。2021年1月には人工衛星開発の100%子会社「Our Stars」を設立しており、日本初の「ロケット×人工衛星」の垂直統合による、革新的な衛星サービスの開発を目指す。

 

宇宙で発生した電磁波が地上に伝わる5万キロにおよぶ「通り道」が世界で初めて解明される

「電磁波の通り道」を同時多地点観測する様子 ©ERGサイエンスチーム

「電磁波の通り道」を同時多地点観測する様子 ©ERGサイエンスチーム

金沢大学理工研究域電子情報通信学系松田昇也准教授らからなる国際研究チームは12月10日、複数の科学衛星と地上観測拠点で同時観測された電磁波とプラズマ粒子データなどから、電磁波の通り道の存在を世界で初めて突き止め、電磁波が地上へ伝わる仕組みを解明したと発表した

地球周辺の宇宙空間では、自然発生した電磁波が地球を取り巻く放射線帯を形成したりオーロラを光らせるなどの物理現象を引き起こしているが、1つの衛星や観測地点からの観測では、電磁波の伝搬経路全体を三次元的に捉えることができなかった。そこで研究グループは、日本のジオスペース探査衛星「あらせ」、アメリカの科学衛星「Van Allen Probes」、そして日本が世界に展開する地上観測拠点「PWING 誘導磁力計ネットワーク」とカナダが北米に展開する「CARISMA 誘導磁力計ネットワーク」を連携させて、同時に観測を行った。

それにより、宇宙空間の特定の場所で電磁波(イオン波)が生まれ、その一部だけが宇宙の遠く離れた場所や地上に届いていることがわかり、そのおよそ5万キロの旅の途中で宇宙のプラズマ環境変動を引き起こし、やがて地上に到達していることを解明した。

宇宙空間には冷たいプラズマが存在し、それが電磁波によって温められると、地上の大気の寒暖の変化のように、宇宙の環境が変化する。特に大規模な太陽フレアによる宇宙嵐が起きると大量の電磁波が発生し、人工衛星の故障、宇宙飛行士の放射線被曝、地上の送電網の障害など、多くの影響をもたらす。電磁波の通り道がわかれば、プラズマ環境変化が様々な場所で同時に発生する仕組みもわかる。

イオン波を4つの拠点で同時に捉えた観測結果

だがそれを解明するには、イオン波が発生している時間帯の、2つの科学衛星と2つの地上観測拠点の位置関係が大変に重要になる。研究グループは、そのタイミングを予測しつつイオン波の観測を続けたところ、2019年4月18日に4つの拠点でのイオン波の同時観測が達成され、同一のイオン波が地磁気赤道から地上に伝搬する「電磁波の通り道」が同定された。それによると、イオン波は5万キロの距離を移動するが、経路の断面はその1/1000ほどと小さい、細長いストロー状であり、広い宇宙空間で、きわめて局所的に伝搬経路が形成されていることもわかった。

あらせ、Van Allen Probesの衛星軌道と地上観測拠点の位置関係

「電磁波の通り道」が解明され、電磁波がどこで発生し、どう伝わるかがわかったことで、安全な宇宙利用に向けた「宇宙天気予報」の精度向上が期待されるという。同研究グループは「地球以外の惑星でも電磁波が発生し伝わっていく仕組みを解明し、宇宙環境変動の網羅的な理解と普遍性の解明へと歩みを進めていきたい」と話している。

この研究には、金沢大学の他、名古屋大学、東北大学、コロラド大学、ミネソタ大学、JAXA宇宙科学研究所、京都大学、九州工業大学、ロスアラモス国立研究所、ニューハンプシャー大学、情報通信研究機構、国立極地研究所、アルバータ大学などが参加している。

宇宙ロボットのGITAI、トヨタの月面モビリティ「有人与圧ローバ」向けロボットアームの開発に着手

宇宙ロボットのGITAI、トヨタの月面モビリティ「有人与圧ローバ」向けロボットアームの開発に着手

宇宙ロボットスタートアップのGITAI(ギタイ)は12月13日、トヨタが開発を進めている月面用モビリティ「有人与圧ローバ」(Luna Cruiser。ルナ・クルーザー)向けのロボットアームの開発に着手したことを発表し、開発中の試作機を公開した。

GITAIとトヨタは、2021年6月25日にLuna Cruiser向けロボットアームの開発を進める共同研究契約を締結している。今回公開されたのは、ロボットアームの先端ツールを着脱するシステム「グラップルエンドエフェクタ」(本体側インターフェイス)と「グラップルフィクスチャ」(受け手)のブレッドボードモデル(宇宙機における初期段階の設計実証用試作機)。

グラップルエンドエフェクタ

グラップルフィクスチャ

月面での探査・点検・メンテナンスを行うためには、ロボットには複数の仕事を行う「タスク性能」と、広範囲での作業を可能にする「移動性能」が求められる。この2つの課題を解決するのが、グラップルエンドエフェクタを両端に装着したロボットアームだ。ロボットアームは、片側のグラップルエンドエフェクタを有人与圧ローバ壁面のグラップルフィクスチャに固定して、反対側のグラップルエンドエフェクタに様々なツールを着脱して、いくつもの仕事をこなすことになる。移動は、ローバー壁面の別のグラップルフィクスチャにアームの先端を嵌合(かんごう。軸と軸受けがはまり合っていること。はめ合わせるといった意味)し、反対側を切り離すことで行う。フラップルフィクスチャをローバー以外の建造物などに設置すれば、移動範囲は無限に広がる。

床や壁面に設置されたグラップルフィクスチャと嵌合(かんごう)することで移動するロボットアーム

床や壁面に設置されたグラップルフィクスチャと嵌合(かんごう)することで移動するロボットアーム

グラップルエンドエフェクタとグラップルフィクスチャは、嵌合すると、機械結合、電力結合、通信結合がなされる。またアームには充電器があり、グラップルフィクスチャに充電機能を備えれば、移動しながらの充電も可能となる。

今後は、2029年のLuna Cruiserの打ち上げを目指し、自律制御技術と、低重力・真空・極低温~高温・レゴリスといった月面特有の過酷な環境への対応に取り組んでゆくという。

 

SpaceX、ブラックホールを観測するNASAのX線偏光望遠鏡を打ち上げ

SpaceX(スペースX)のFalcon 9ロケットが、NASAのX線偏光観測衛星「Imaging X-ray Polarimetry Explorer(IXPE)」を搭載して飛び立った。2017年に最初に発表されたIXPEは、ブラックホールや中性子星などの宇宙線源から飛来するX線偏光を測定できる初めての衛星だ。

冷蔵庫サイズのこの衛星には、光の方向、到達時間、エネルギー、偏光を追跡・測定できる3つのX線偏光望遠鏡が搭載されている。それらすべての望遠鏡からのデータを組み合わせることで、NASAはX線を放出する謎の天体がどのように機能しているのかをより深く知ることができる画像を形成することが可能になる。例えば、超新星残骸の中心で中性子星が高速回転している「Crab Nebula(かに星雲)」の構造をより詳しく知ることができるのではないかと期待されている。

ブラックホールを観測することで、人類がまだほとんど知らない宇宙の領域について、IXPEは科学者の知見を深めることができる。ブラックホールがなぜ回転しているのか、どのように宇宙の物質を飲み込んでいるのかなどの手がかりを得られるかもしれないとともに、新たな発見につながる可能性もある。今回のミッションの主任研究員であるMartin Weisskopf(マーティン・ワイスコフ)博士は、ブリーフィングで次のように述べている。「IXPEは、宇宙がどのように機能しているかについての現在の理論を検証し、磨きをかけるのに役立ちます。また、これらのエキゾチックな天体について、これまでの仮説よりもエキサイティングな理論を発見できるかもしれません」。

SpaceXは今回の打ち上げに、前回のミッションで使用したFalcon 9ロケットを使用した。順調にいけば、ロケットの第1段はIXPEを宇宙に運んだ後、同社のドローン船「Just Read the Instructions(つべこべ言わず説明書を読め)」に着陸する。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Mariella Moon(マリエラ・ムーン)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:NASA

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(文:Mariella Moon、翻訳:Aya Nakazato)

理化学研究所ら日本の研究グループが参加するX線偏光観測衛星IXPE打ち上げ、ブラックホールの詳細な観測が可能に

理化学研究所ら日本の研究グループが参加するX線偏光観測衛星IXPE打ち上げ、ブラックホールの詳細な観測が可能に

理化学研究所(理研)は12月9日、X線偏光観測衛星「IXPE」(Imaging X-ray Polarimetry Explorer)がケネディー宇宙センターから打ち上げられることを発表した(日本時間9日午後3時に打ち上げられた)。ブラックホールに落ち込む物質の形、ブラックホール周辺の空間の歪み具合、中性子星の強い磁場で歪められた特異な真空などの「これまでの観測とはまったく質の異なるデータが得られる」と期待されている。

これは、理化学研究所開拓研究本部玉川高エネルギー宇宙物理研究室の玉川徹主任研究員、山形大学学術研究院の郡司修一教授、名古屋大学大学院理学研究科の三石郁之講師、広島大学宇宙科学センターの水野恒史准教授らからなる共同研究。アメリカとイタリアとの国際プロジェクトである「IXPE」衛星に、理研がX線偏光計の心臓部である「ガス電子増幅フォイル」を、名古屋大学が X線望遠鏡の「受動型熱制御薄膜フィルター」を提供している。またプロジェクトには日本から20名を超える研究者が参加している。これによりIPXEは、観測例が極めて少ないX線偏光を捉え「誰も見たことがない新しい宇宙の姿」を明らかにするという。

偏光とは、電磁波の偏りのこと。偏光サングラスは、この光の性質を利用して眩しい光をカットし、風景がはっきり見えるようにしている。同じように、X線偏光を利用することで、X線を放射する天体の詳細な観測が可能となる。X線は大気に遮られてしまうため、宇宙で観測するしかない。そのためX線天文学が始まったのは、人工衛星での観測が可能になった1960年代からのこと。日本ではJAXAの宇宙化学研究所を中心に研究が進められていて、X線天文学は「日本のお家芸」ともいわれている。

試験中の「IXPE」衛星

そんな中で、X線偏光観測の手段として本命視されているのが、NASAマーシャル宇宙飛行センターが中心となって提案されたIXPEだ。この衛星のX線偏光観測能力によって観測できるものには、たとえば、恒星とブラックホールが互いの周りを回っている連星系で、恒星から流れ出した物質がブラックホールが吸い込まれる際に形成されるプラズマの円盤「降着円盤」がある。降着円盤はブラックホールに近づくほど高温になり、ブラックホールの近くではX線を放出する。そのX線の偏光を観測できれば、どんなに高性能な望遠鏡でも観測できない遠くにある円盤の構造が「まるでその場にいるように」観測できるという。

IXPEは、SpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げられ、赤道上空高度600kmの軌道を周回する。最初の1カ月で機能や性能の評価を行った後に観測が開始される。運用期間は2年間となっているが、衛星の機能が維持されているかぎり延長されるとのことだ。

IXPEを載せたFalcon 9は、日本時間9日午後3時、ケネディー宇宙センターから打ち上げら、3時34分ごろに衛星を無事、切り離した。

画像クレジット:NASA / BallAerospace

小型SAR衛星の開発・運用を手がける九州大学発QPS研究所がシリーズBファーストクローズとして38.5億円調達

小型SAR衛星の開発・運用を手がける九州大学発QPS研究所がシリーズBファーストクローズとして38.5億円調達

小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行うQPS研究所は12月9日、シリーズBラウンドのファーストクローズにおいて、総額38億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターのスカパーJSAT、またスパークス・グループ運営の未来創生ファンド、日本工営、リアルテックファンド、三井住友海上キャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルの計8社。累計調達額は約72億円となった。

QPS研究所、自社開発した小型衛星用の収納式大型軽量アンテナにより、従来のSAR衛星の1/20の質量、1/100のコストで100kg 級高精細小型SAR衛星の開発に成功。現在は2025年以降を目標に36機の小型SAR衛星を打ち上げてコンステレーションを構築し、約10分ごとの準リアルタイム地上観測データサービスの提供を目指している。

このプロジェクトの実現に向け、2017年10月・2018年2月のシリーズA調達にて総額24億5000万円の資金調達を行い、2020年11月に総額8億6500万円の追加資金調達を実施した。これにより、当初のプラン通り衛星「イザナギ」「イザナミ」の2機の開発・製造・打ち上げに取り組んだ結果、2021年5月にはイザナミによる70cm分解能という民間の小型SAR衛星として日本で最高精細の画像取得に成功。衛星データビジネスの構築に向けた活動を本格化させた。

シリーズBで調達した資金は、2022年打ち上げ予定の衛星3号機~6号機の開発・運用の資金として使用する予定。同社が目指す小型SAR衛星36機のコンステレーションの実現に向け、着実に取り組むとしている。

ロケットエンジン分野における「インテル」的企業を目指すUrsa Major

ロケット打ち上げの分野には、ますます多くの参入が続いている。大手企業の多くは自社でロケットエンジンを製造しているが、宇宙関連スタートアップ企業のUrsa Major(ウルサ・メジャー)は、多くの新規打ち上げ事業者が自社でエンジンを製造するよりも外注したいと考えていることに賭けている。

SpaceX(スペースX)やBlue Origin(ブルー・オリジン)で推進機関エンジニアを務めてきたJoe Laurienti(ジョー・ラウリエンティ)氏が設立してから6年が経過したUrsa Majorは、事業規模を拡大する準備が整っている。そのために過去最大の資金調達をクローズしたばかりだ。8500万ドル(約96億5000万円)を集めたこのシリーズCラウンドは、主導したBlackRock(ブラックロック)が運用するファンドやアカウントに加え、XN、Alsop Louie(アルソップ・ルーイ)、Alpha Edison(アルファ・エジソン)、Dolby Family Ventures(ドルビー・ファミリー・ベンチャーズ)、KCK、Space Capital(スペース・キャピタル)、Explorer 1(エクスプローラー・ワン)、Harpoon Ventures(ハープーン・ベンチャーズ)などが参加した。

「私たちが市場に投入しようとしているものの多くは、その次のステップです」とラウリエンティ氏は説明する。「私たちは、この産業をより速いライフサイクルへと進化させたいと考えています」。

そのためにUrsa Majorは、迅速にエンジンを製造したいと考えており、2022年には週に1基、さらにその後は週に2基のペースでエンジンを製造することを目指している(現在は1人の従業員が1基のエンジンを組み立てるのに約5日、顧客への出荷準備には最大で数週間を要する)。同社はPhantom Space(ファントム・スペース)やStratolaunch(ストラトローンチ)など、いくつか民間企業の顧客を獲得し、政府と研究開発契約を結んでいるが、まだそのエンジンは宇宙に出ていない。

「宇宙には非常に多くのアクセスビリティが必要になるため、打ち上げにはかなり複雑なエコシステムが必要になるだろうということは、6年前からわかってました」と、ラウリエンティ氏はいう。

打ち上げコストが下がっていく一方で、宇宙への打ち上げサービスに対する需要は、この10年の間に増える一方であることが予想される。Fortune Business Insights(フォーチュン・ビジネス・インサイト)では、打ち上げ事業の世界市場規模が、2019年の126億7000万ドル(約1兆4400億円)から、2027年には最大261億6000万ドル(約2兆9700億円)に拡大すると予測している。

しかし、ロケットエンジンは最も開発が困難な装置の1つだ。Blue OriginがUnited Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)のためにBE-4エンジンを開発した際の労苦や、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が従業員に宛てた「ラプター生産の危機」に関する手紙を見るだけでも、エンジン開発が簡単な仕事ではないことがわかる。

Ursa Majorは2つの製品を持っている。現在生産に入っている推力5000ポンドの液体酸素/ケロシンエンジン「Hadley(ハドレー)」と、その10倍の推力5万ポンドを発生する次世代エンジン「Ripley(リプリー)」だ。2022年には50基以上のHadleyエンジンを納入する予約を受けており、Ripleyエンジンは今後2、3年のうちに生産を開始すると、ラウリエンティ氏は語っている。

同氏はUrsa Majorを、常によりパワフルなプロセッサーを開発し、その専門知識をDell(デル)やLenovo(レノボ)などのブランドに供給しているIntel(インテル)のような企業に例えている。「私たちは、自分たちが技術開発の会社であるという考え方を好んでいます。現在ロケットを飛ばしている企業は、自分たちが10年前に設計したロケットと同じエンジンを飛ばすべきではなかったはずです。それが垂直統合のパラダイムなのです」。

同社はコロラド州にエンジンを製造する施設を持っているが、そのエンジンの大部分は3Dプリントで作られている。施設には3つのテストスタンドが併設されており、各々のエンジンは顧客に納品する前にそこでテストされる。

Ursa Majorは新たに調達した資金を使って、製造規模の拡大とさらなるエンジン開発に取りかかることを計画している。

画像クレジット:Ursa Major

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SynspectiveとRocket Labが小型SAR衛星2号機「StriX-β」の打ち上げで契約締結、2022年初旬に打ち上げ予定

SynspectiveとRocket Labが小型SAR衛星2号機StriX-βの打ち上げで契約締結、2022年初旬に打ち上げ予定

小型SAR衛星による観測データを活⽤したワンストップソリューション事業を展開するSynspective(シンスペクティブ)は12月8日、SAR(合成開口レーダー)衛星の実証2号機「StriX-β」の打ち上げ契約を、再利用型ロケットの開発と打ち上げを行うアメリカ企業Rocket Lab(ロケットラボ)と締結したことを発表した。2022年初旬の打ち上げを予定している。また、StriX-βに続くStriXシリーズ2機の打ち上げ契約も同時に締結している。

Synspectiveは、2020年12月にRocket LabのElectron(エレクトロン)ロケットにより「StriX-α」を打ち上げ、民間小型SAR衛星としては日本で初めて、衛星画像の取得に成功している。StriX-βは、地表のミリ単位の変動を観測する技術「干渉SAR」(InSAR)のための軌道制御機能を搭載した小型衛星で、今回は軌道上でその実証実験を行う。Synspectiveでは、2023年までに6機の衛星を打ち上げ、2020年代後半までには30機を打ち上げコンステレーションを構築する計画を立てている。

StriX-βはもともとドイツの衛星打ち上げサービスを行う企業Exolaunch(エクソローンチ)を通じてSoyuz-2(ソユーズ2)ロケットで2021年内に打ち上げられるはずだったが、打ち上げスケジュールが変更されたことにより、Electronロケットに切り替えられた。

Astraが2022年1月に初めてフロリダ州ケープカナベラルからロケットの打ち上げを行うと発表

Astra(アストラ)はこれまで、初期のロケット数機をアラスカ州コディアックで打ち上げてきたが、今後は打ち上げ場所を拡大する予定だ。同社は米国時間12月6日朝、クライアントであるNASAから請け負ったミッションを、2022年1月にフロリダ州のケープ・カナベラルから打ち上げると発表した

この打ち上げは、ケープ・カナベラル宇宙軍基地の広大な敷地内にあるSpace Launch Complex 46 (スペース・ローンチ・コンプレックス46)で行われる予定だ。この施設は、かつてミサイル試験用基地として使われていたが、しばらく使用が停止されていた後、1997年に商業宇宙事業のために再開された。以降は2019年に実施された直近のミッションまで、散発的に使用されている。

Astraが計画している打ち上げは、同社にとってだけでなく、米国からの打ち上げに尽力している米宇宙軍のSpace Launch Delta 45(第45宇宙航空団)にとっても大きな価値がある。これまでの宇宙開発では、打ち上げに必要な承認には数年を要していたが、今回のミッションはわずか「数カ月」で承認を得ることができた。

Astraにとっては、打ち上げのために利用可能な選択肢が増えることになり、顧客のペイロードを届ける軌道の幅を広げるという意味でも重要だ。また、フロリダという土地は歴史的に天候が比較的安定していることもあり、打ち上げ場所として人気が高い。

Astraのコアバリュープロポジションの1つは、ロケットが小型であり、現場における打ち上げ業務に必要な装備も軽量であるため、最小限の人員と準備だけでさまざまな場所から効果的に打ち上げを展開できることだ。ゆえに、それを証明するためにも、打ち上げ場所を多様化することは重要になる。

AstraのBenjamin Lyon(ベンジャミン・リオン)氏とKelyn Brannon(ケリン・ブラノン)氏は、来週の「TC Sessions:Space 2021」に講演者として参加する予定なので、2022年の計画についてはそこでより詳しく知ることができるだろう。

画像クレジット:Astra / John Kraus

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

宇宙ステーションの運用ギャップ回避のためにNASAがBlue Origin、Nanoracks、Northrop Grummanと450億円以上の契約を締結

NASAは、2030年までに国際宇宙ステーション(ISS)を商用ステーションに置き換える予定であることを公式に(かつ静かに)認めてからわずか2日後に、今度は民間ステーションの計画のさらなる推進のために、3社と4億ドル(約450億円)以上の契約を結んだ。

NASAと商用低軌道(LEO)目的地プログラムの下で契約を結んだ3社は以下のとおりだ。

  • Nanoracks(ナノラックス)、1億6000万ドル(約180億5000万円)
  • Blue Origin(ブルーオリジン)、1億3000万ドル(約146億7000万円)
  • Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)、1億2560万ドル(約141億7000万円)

NASA商用宇宙飛行のディレクターであるPhil McAlister(フィル・マカリスター)氏は米国時間12月2日に、NASAは合計11件の提案書を受けとったと語った。彼は、選択された3つの提案には、多様な技術的概念と、ロジスティックならびに打ち上げロケットのオプションが提供されていると付け加えた。「この多様性は、NASAの戦略の成功の可能性を高めるだけでなく、高度なイノベーションにもつながります。それは、宇宙に対するほとんどの商用の取り組みの中で重要なのです」と彼はいう。

3社はすでに、提案に関わるいくつかの詳細を発表している。Blue Originは、そのステーションコンセプトを「Orbital Reef(オービタル・リーフ)」と呼び、Boeing(ボーイング)やSierra Space(シエラ・スペース)、その他と共同で設計している。チームは、2027年にステーションを打ち上げたいと述べている。一方Nanoracksは、親会社のVoyager Space(ボイジャースペース)ならびに航空宇宙業界の雄Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)と共同で開発中のステーションを「Starlab(スターラボ)」と呼んでいる。Northropはステーションの提案に派手な名前を付けていなかったが、Dynetics(ダイネティクス)と協力して、Cygnus(シグナス)宇宙船をベースにしたモジュラー設計を提供しようとしている。

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NASAがISSの廃止と新しいステーションの導入の間にギャップがないようにしようとしている中で、今回の重要な契約は2フェーズプロセスの最初のフェーズに相当する。NASAは、議会ならびに最近の監察総監室の報告書の両方で、LEOにおける経済的繁栄の全体的な成功は、このギャップを回避することにかかっていると繰り返し強調してきた。

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画像クレジット:Blue Origin

NASAは報告書の中で「ISSが廃止された後に、低軌道(LEO)に居住可能な商用目的地がない場合、NASAは、月と火星への長期にわたる人間の探査ミッションに必要な、微小重力健康研究と技術実証を実施できなくなり、それらのミッションのリスクが高まったり遅延したりするだろう」と述べている。

この潜在的なシナリオを回避するために、NASAは、1つ以上の商用LEO「目的地」(ステーションと呼ばれることもある)を2028年までに運用可能にすることを提案した。これによって2030年に引退する予定のISSと2年間の並行運用期間が生じる。その報告書はそのタイムラインを達成できる可能性についての疑問は投げかけているものの、今回の3社とNASAの幹部はそれぞれ、ステーションの運用ギャップを回避できることに自信を持っていた。

「商用貨物便が打ち上げられてから10年経った今でも、人びとは商用航路の堅牢性とアイデアと柔軟性に疑問を抱いています」とNanoracks CEOのJeffrey Manber(ジェフリー・マンバー)氏は述べている。「確かに、今後の課題は残っています、【略】しかし私たちには堅牢性があり、一緒に取り組んでいるプロバイダーが多数います。これは、リスクの軽減を進め、商用航路に複数のプロバイダーを配置するためのまさに正しい方法なのです」。

この最初の一連の契約は、2025年まで続くと予想される設計や作業を各企業が遂行するのに役立つだろう。

NASAは、2026年の開始を目標とするプログラムの第2フェーズでは、このグループの企業または他の参加企業から人間が使用するステーションを1つ以上認定し、最終的には軌道上サービスを購入しステーションを利用する多くの顧客の1つになる予定だ。NASAは声明の中で、これにより、人間を再び月に送り、最終的には有人宇宙飛行を火星に送り込むことを目的とするArtemis(アルテミス)計画に集中できるようになると述べている。

今回のフェーズにいないことで目立っているのはAxiom Space(アキソム・スペース)だ、同社はISSに取り付けるためのモジュール(自社のステーションとして自己軌道を回り分離する)を打ち上げるための別契約を獲得しているが、今回のプログラムには参加しなかったことを明かしている。

もちろん、大きな問題は、これらのステーションの最終コストがどれだけになるか、そしてNASAが最終的に全体のコストのどれ位を支払うかということだ。マカリスター氏は、NASAが「入札の方々がこれらの活動への財政的貢献を最大化することを奨励しています」と述べ、現在NASA以外の投資が約60%を占め、NASAの貢献は40%未満であると述べた。しかし、3社とNASAは、ステーションの設計、立ち上げ、運用にどれだけの資本の投下が必要なのかと予想しているのかという点はあまり語ろうとしなかった。

画像クレジット:Nanoracks

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(文: Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

小型宇宙機メーカーPhase Fourが次世代プラズマスラスターを発表、約85%の性能向上を実現

宇宙スタートアップ企業のPhase Four(フェーズ・フォー)は、次世代の高周波プラズマ推進システム「Maxwell(マックスウェル)」を、2022年の上半期に発売する予定だ。同社によれば、このシステムは軌道上における宇宙船の操縦性をより広範囲に向上させるための重要な性能改善が施されているという。

一般的に、真空の宇宙空間で衛星を動かす場合、推力と「比推力(ISP)」という2つの重要な性能指標が重視される。比推力とは、単位重量の推進剤あたりどれだけの推力を得られるかというシステムの効率を示す指標だ。

これらのトレードオフは、小型宇宙機メーカーにとって特に重要だ。推力が大きいシステムでは、大量の燃料を搭載する必要があり、ミニ冷蔵庫程度の大きさの衛星ではコストがかかり過ぎる。しかし、特に衛星がライドシェアミッションで宇宙に向かい、自力で最終軌道に到達しなければならない場合には、ISPの高い推進技術が理想的というわけでもない。従来の電気式スラスターは、比推力を最大化すると推力が犠牲になることが多く、スラスタの効率は高くても、移動に数カ月かかることさえある。

Phase FourのMaxwellスラスターは、このトレードオフを解消し、顧客が比較的高い推力モードまたは高いISPで運用できるようにしたと、CTOのUmair Siddiqui(ウマイール・スィディキ)氏は説明する。つまり、必要に応じて高速な移動を行うことも、推進剤を節約するために高ISPモードにすることもできるということだ。

同社はこれらの革新技術を最初の製品である「Maxwell Block 1(マックスウェル・ブロックワン)」スラスターに導入した。Maxwellスラスターの新型となる「Maxwell Block 2(マックスウェル・ブロックツー)」は、これらの指標において約85%の性能向上を実現している。「これは重要なことです」と、スィディキ氏はいう。「ISPや推力が85%向上するということは、推進剤の使用量や軌道上での移動時間が大幅に減ることを意味します」。

Phase FourのMaxwellスラスターには、他にもいくつかの革新的な技術が見られる。ホール効果型と呼ばれる従来のプラズマスラスターは、製造が困難な陰極材料を用いて推力を発生させる。また、システムが大きく重くなるため、多くの顧客にとって理想的とはいえなかった。これらの問題を解決するために、Phase Fourのスラスターは、陰極と陽極ではなく、高周波のプラズマ源を使って推力を発生させる。そのため、より小型で製造が容易であり、キセノンやクリプトンなどの高価なホール効果型スラスターの推進剤だけでなく、あらゆる気体の推進剤に対応できる。

Block 2では、Block 1で初めて達成した4カ月以内の生産を維持することを目指している。このような短納期が可能になるのは、製品のモジュラーデザインに一因がある。Maxwellエンジンでは、(少なくとも考え方としては)自動車産業を参考にした「シャシー」という方式を採用している。「同じ生産ラインを使ったままで、次世代の開発に対応できることが、この製品には求められています」と、スィディキ氏は述べている。「これは最初から生産性を考えたプラズマスラスターです」。

2015年に設立されたPhase Fourは、これまでに10台のMaxwell Block 1システムを顧客に納入している。2021年の夏、同社はNew Science Ventures LLC(ニュー・サイエンス・ベンチャーズ)が主導するシリーズBで2600万ドル(約29億円)の資金を調達した。

画像クレジット:Phase Four

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

宇宙商社Space BDが10.4億円調達、SpaceX「Falcon9」ロケット衛星打上げ枠の利用権確保など宇宙輸送手段拡大

宇宙商社Space BDが10.4億円調達、SpaceX「Falcon9」ロケット衛星打上げ枠の利用権確保など宇宙輸送手段拡大

宇宙産業における総合的なサービスを展開する「宇宙商社」Space BDは12月1日、第三者割当増資による総額10億4000万円の資金調達完了を発表した。引受先は、既存株主であるインキュベイトファンド、アニヴェルセルHOLDINGS、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、これに新規株主として、シンガポール政府系投資会社Temasek Holdings傘下のPavilion Capital PTE. LTD.が加わっている。融資も含めた累計調達金額は、18億9000万円となった。

2017年設立のSpace BDは、JAXAの初の民間開放案件「国際宇宙ステーション『きぼう』日本実験棟からの衛星放出事業」に採択されたことを機に、船外プラットフォーム利用事業、微小重力環境を活用するライフサイエンス事業、H-ⅡA/H3ロケット相乗り打上げ事業と、JAXAとのパートナーシップを軸にした事業を進めてきた。現在は、衛星打上げ事業のほか、宇宙をテーマとした地域産業振興、教育および人材育成事業、技術プロジェクトマネージメントなどを展開している。

今回調達した資金で、Space BDは「国内外の多様な打上げ手段の確保による衛星打上げサービスの拡大」と、人材採用と組織力の強化を行うとしている。特に打ち上げ手段に関しては、2021年11月にSpaceXのFalcon9ロケットの利用権を確保するなど、調達の幅を広げている。

「プロジェクトごとに異なる課題・目的に対し、ゼロからの事業立案・実行と技術的な支援をワンストップで提供することで、当社の設立理念である『宇宙を日本発で世界を代表する産業にする』に向けて邁進してまいります」とSpace BDは話している。

NASA、2030年までに国際宇宙ステーションを民間に置き換える意図を詳述

NASAのOffice of Audits(内部監査室)は、国際宇宙ステーション(ISS)が退役した後、ISSを1つまたは複数の商業宇宙ステーションに置き換えるというNASAの取り組みについて、詳細な報告書を作成した。ISSの運用終了は2024年に予定されているにもかかわらず、すべて2030年まで延長されることを示している。つまりそれが、軌道上で人間が滞在するための科学施設を民間企業に引き継ぐことができる時期であると、NASAでは想定しているようだ。

今回の監査では、基本的に現在のISSの維持・運用コストを詳細に説明するとともに、人間が長期間宇宙に滞在するための実験場となる研究施設や、月面における恒久的な駐留の確立や火星探査を含む深宇宙探査の鍵となる技術を開発・実証するための施設が、今後も必要不可欠であると考えている理由を説明している。

結論として、NASAは2028年までに商業宇宙ステーションの運用を開始し、予想されるISSの退役・離脱の前に2年間のオーバーラップ期間を設けたいと考えている。しかし、このスケジュールには明らかなリスクがある。NASAによれば、それは「市場の需要が限られていること、資金が不足していること、コスト見積もりが信頼できないこと、まだ要求条件が進化し続けていること」などだ。

一方、良いニュースも報告されている。それは最近、多くの企業が軌道上の商業ステーションの開発に興味を持っているようだということだ。Nanoracks(ナノラックス)とその親会社であるVoyager Space(ボイジャー・スペース)、そしてLockheed Martin(ロッキード・マーチン)のパートナーシップは、2027年までに商業宇宙ステーションを製造し、運用開始することを目指している。Blue Origin(ブルーオリジン)はSierra Space(シエラ・スペース)とBoeing(ボーイング)とともに、遅くとも2030年までにOrbital Reef(オービタル・リーフ)と名付けられたステーションを打ち上げたいと望んでいる。Axiom Space(アクシオム・スペース)では、退役前のISSに取り付けるモジュールを打ち上げ、それを2028年までにISSから分離させ、独自のステーションとして自力で軌道に乗せるという計画をすでに進めている

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NASA Office of Auditsによる報告書の全文は以下で読むことができる。

画像クレジット:Axiom Space

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)