日本の宇宙ベンチャーispaceが月の夜にも耐えられる大型月着陸船のデザインを発表

月面の経済発展でリーダーとなることを目指す日本の宇宙ベンチャー企業、ispace(アイスペース)は、早ければ2024年に月へ行く大型着陸機のデザインを発表した。

東京を拠点とするispaceによれば、この「シリーズ2」と名付けられた次世代ランダーは、同社が計画する3回目の月探査ミッションで使用される予定とのこと。このランダーは、同社の最初のランダー「シリーズ1」よりも全体の大きさとペイロード(貨物)積載容量が大きく、着陸脚を広げた状態で高さ約2.7メートル、幅約4.2メートルとなっている。月面には最大500キログラム、月周回軌道には最大2000キログラムのペイロードを輸送することが可能だ。2022年と2023年に打ち上げ予定のシリーズ1は、ペイロード積載容量が30キログラムしかない。

重要なのは、この新型ランダーが極寒の月の夜にも耐えられるように設計されていることで、月面には2週間の滞在が可能であるという。また、このシリーズ2ランダーは、極地を含む月の表側と裏側のどちらにも着陸できるように設計されている。

この着陸機には他にもいくつかの特徴がある。複数のペイロードベイを備えたモジュール式のペイロードデザインを採用していること、そして高精度な月面着陸を実現するための高度な誘導・航法・制御(GNC)システムを搭載していることなどだ。このGNCの技術は、宇宙産業で実績のあるエンジニアリング開発会社のDraper(ドレイパー研究所)から技術協力を受けている。ドレイパー研究所は、NASAのCommercial Lunar Payload Services(CLPS、商業月面輸送サービス)イニシアティブに選定された14社のうちの1社でもある。

ispaceの発表によると、このシリーズ2ランダーは基本設計審査を完了しているとのこと。次の段階となる製造と組み立ては、防衛・航空宇宙技術会社のGeneral Atomics(ジェネラル・アトミクス)と協力して行う予定であるという。

このシリーズ2ランダーをNASAのプログラムに参加させたいと考えているispaceにとって、鍵となるのがCLPS契約企業であるドレイパー研究所とのパートナーシップだ。ispaceの米国子会社のCEOであるKyle Acierno(カイル・アシエルノ)氏は「今後数カ月間はドレイパー研究所やジェネラル・アトミクス社と連携し、次のNASA CLPSタスクオーダーに向けて準備を進めていきます」と語っている。

ispaceは、コロラド州にある北米オフィスで次世代ランダーの開発を行っており、製造も米国内で行う予定だ。その一方で、2022年と2023年に予定されている1回目と2回目の月面探査の準備も進めている。同社によると、シリーズ1ランダーは、宇宙打ち上げ会社のArianeGroup(アリアングループ)が所有するドイツの施設で、フライトモジュールの最終組み立てを行っているという。最初のミッションの顧客積荷目録はすでに満杯だが、ミッション2のペイロード容量にはまだ余裕があると、ispaceは述べている。

今回のランダー発表の数週間前、ispaceはシリーズC投資ラウンドで約50億7000万円の資金調達を実施したことを発表している。この資金は同社が計画中の第2、第3のミッションに充てられる予定だ。

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画像クレジット:ispace

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」の開発・運営を手がけるフォトラクションが7.6億円調達

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」の開発・運営を手がけるフォトラクションが7.6億円調達

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」(フォトラクション)の開発・運営を行うフォトラクションは8月25日、第三者割当増資による7億6000万円の資金調達を発表した。引受先は、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、GMO VenturePartners、既存株主のDBJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル。調達した資金により、PhotoructionおよびAIを活用しデスクワークや雑務を代行するアウトソーシングサービス「建設BPO」の開発とカスタマーサクセス、採用と組織体制の強化を実施していく予定。

建設業界では、国内建設投資額が平行線になると予測され、今後も多くの需要が見込めるという。しかし、法改正により2024年には残業規制がかるのに加え、労働人口が100万人減ると予想されており、労働力不足のために1人当たりの生産性向上や人材リソースの確保は待ったなしの状況となっているという。そこで同社は、人材とテクノロジーへの投資を継続的に実施することで、国内60兆円を超える建設産業の生産性向上をさらに加速するとしている。

2016年3月設立のフォトラクションは、「建設の世界を限りなくスマートにする」をミッションとし、建設現場の生産性向上をアプリケーションとデジタルアウトソーシングで支援するサービスとして、Photoructionを提供している。同サービスは2017年末に工事現場の写真管理アプリケーションとしてスタートし、現在ではスーパーゼネコンをはじめ10万超の建設プロジェクトで活用されるようになった。また2018年には、建設業務に特化したAIの研究開発も開始。2021年1月に建設BPOをリリースした。

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同社は、SaaS×AIにより、業務の効率化だけではなく1人当たりの労働時間を増やせるよう、新しい生産性向上サイクルの可能性を追求するとしている。
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オンライン生放送学習コミュニティ「Schoo」など社会人教育SaaSのスクーが約7億円のシリーズD調達

オンライン生放送学習コミュニティ「Schoo」など社会人教育SaaSのスクーが約7億円のシリーズD調達

大人たちがずっと学び続けるオンライン生放送学習コミュニティ「Schoo」(スクー)を手がけるSchooは8月25日、シリーズDラウンドにおいて、総額約7億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のBonds Investment Group、インキュベイトファンド、SMBCベンチャーキャピタル、鎌倉投信・フューチャーベンチャーキャピタル、山口フィナンシャルグループ傘下の山口キャピタル。

調達した資金により、Schooや2021年6月に提供を開始した高等教育機関DXプラットフォーム「Schoo Swing(β版)」(スクー スウィング)のサービス向上に向けた人材採用やマーケティング投資を行う。また、地方エリアへの遠隔教育普及によって実現する「未来の暮らし」の確立も推進するという。

Schooは、2012年のサービス開始以来「未来に向けて、社会人が今学んでおくべきこと」をコンセプトとした生放送授業を毎日無料提供している。過去の放送は録画授業として約7200本を公開している。法人向けには社員研修と自己啓発学習の両立を実現する「Schoo for Business」を提供。

また、個人と法人合わせての登録会員数は約65万人にのぼり、導入企業実績は2000社を突破するなど、昨今のデジタル化の影響を受けて事業は急拡大を続けているという。

音声プラットフォーム「Voicy」でリスナーから音声配信者への直接課金が月間1000万円を突破

音声プラットフォーム「Voicy」でリスナーから音声配信者への直接課金が月間1000万円を突破

音声配信プラットフォーム「Voicy」(ボイシー。Android版iOS版)を提供するVoicyは8月24日、リスナーから音声配信者(パーソナリティー)への直接課金が、月間1000万円を突破(2021年8月時点)したことを発表した。

リスナーは、有料配信(プレミアム)を行うパーソナリティーに月額料金を支払うことで限定配信が聞ける「プレミアムリスナー」になれるが、直接課金とはその支払いを意味する。現在、プレミアム配信を行っているパーソナリティーは80名以上。月間流通総額は2021年年初から比較すると2倍に延びているという。

Voicyは日本で初めて「ボイスメディア」という音声フォーマットを確立。各分野の専門家、企業経営者、ワーキングマザーなどさまざまな立場の人たちが、気軽に録音して公開できる「音声の大衆化」を実現した。ただし、配信したい人はパーソナリティーとして応募し、審査を受けなければならない。審査通過率は5%と厳しいが、そのおかげで高いクオリティーが保たれているといえる。「プレミアムリスナー」には、「声のプロ」を育成する目的もあるとのこと。

今回の発表は「声のニュースリリース」でも聞くことができる。

サプリメントD2CのMilimが2000万円のシード調達、定額制カスタマイズサプリ「PERFOTM」を発売開始

サプリメントD2CのMilimが2000万円のシード調達、定額制カスタマイズサプリ「PERFOTM」を発売開始

サプリメントD2Cスタートアップmilim(ミリム)は8月24日、自分に合ったサプリを自由に選べる定額制のサプリメント提供サービス「PERFORM」(パフォーム)の販売を開始した。また同時に、DRG Fundからシードラウンドとして約2000万円の資金調達を実施したことを発表した。サプリメントD2CのMilimが2000万円のシード調達、定額制カスタマイズサプリ「PERFOTM」を発売開始

PERFORMは、同社が医師の監修の元に開発し、国内の適正製造規範(GMP)認定の工場で製造している5種類のサプリから、自分に合ったものを毎月3つ選択して購入できるというサービス。選択した3種類が月に1回届くが、そのときの体や生活の状態から、次回の組み合せを自由に変更できる。

価格は、単品購入の場合は2900円~3800円(税込)。また例えばお勧めの組み合わせ(COMPLETE VITAMINS & MINERALS、ENERGY、RELAX CBD)を通常注文した場合は、初回が1万2200円、次回からは1万200円。定期コースなら初回2900円、次回から7900円となる(それぞれ税込)。

サプリメントD2CのMilimが2000万円のシード調達、定額制カスタマイズサプリ「PERFOTM」を発売開始

選べる製品は次の5つ。

  • COMPLETE VITAMINS & MINERALS:不足しやすい11種類のビタミンと9種類のミネラルを配合した「必須栄養サプリ」
  • ENERGY:ザイナマイトを主成分に、アルギニン、カフェインを配合したエナジードリンク的なサプリ
  • RELAX CBD:CBD、GABA、L-テアニン、L-トリプトファンを配合したリラックス用のサプリ
  • BRAIN:オトメアゼナ、PQQ、EPA、DHA、カフェインを配合した「スマートアプリ」
  • RECOVERY:イミダペプチド、アントシアニン、クエン酸を配合した「抗ヘトへト」サプリ

Luxonusが被曝の心配がない超高解像度光超音波3Dイメージング装置を開発

  1. Luxonusが被曝の心配がない超高解像度光超音波3Dイメージング装置を開発

医療用の新しい画像装置を開発するLuxonus(ルクソナス)は8月24日、近赤外レーザーと超音波を融合させた光超音波イメージング技術を用いた超高解像度3Dイメージング装置の開発を発表した。

これは、近赤外波長のパルスレーザー光を体内に照射し、その際に血中ヘモグロビンから発生される超音波を512個の超音波センサーで捉え、3D画像を作り出すというもの。体表から3cmほどの深さまで、微細な血管の状態を撮影できる。利点としては、X線や造影剤を使わず放射線の被曝の心配がないこと、安全で簡便であるため専用の部屋が必要ないこと、リアルタイムの3D動画の撮影、酸素飽和度の画像化、血管とリンパ管を同時に画像化といった「機能画像」の撮影も行えることなどが挙げられる。

現在は、医師との間で、治療をターゲットとした応用方法を検討中とのこと。また臨床用だけでなく、実験小動物を対象とした基礎医学研究分野に向けた製品も開発している。これを使えば、動物の体内を、生きたまま安全に撮影ができるという。

送金アプリ「pring」がアプリ上で発行できる「店舗オリジナル電子マネー」を無料で提供開始

送金アプリ「pring」がアプリ上で発行できる「店舗オリジナル電子マネー」を無料で提供開始

pringは8月24日、送金アプリ「pring」(プリン。Android版iOS版)上で発行できる「店舗オリジナル電子マネー」を無料で提供すると発表した。このアプリを使えば、初期費用や月額費用が高額で小規模店舗では導入が難しかった電子マネーを無料で導入できるようになる。しかも、申し込みから最短5営業日で発行できるという。顧客管理システム(CRM)や決済機能が利用でき、決済と連動したポイント付与や顧客分析なども行えるとしている(決済機能の利用には加盟店申込と審査が必要。また決済手数料が発生)。

pringアプリでは、対象店舗で利用できるポイントをチャージでき、チャージごとに10%のプレミアムが付与される。ポイントはチャージ当日から1ポイント1円で利用可能。店舗で決済を行うと、決済額の5%のポイントが付与され、次回来店時から使える(ただし独自電子マネーでの決済時はポイントは付加されない。pringバリュー(円)での決済が対象)。

店舗独自の電子マネーの発行にともない、pringアプリでメンバーズカードも発行できる。地域通貨、ハウスカード、ポイントカードといった使い方が設定可能で、支払に使えるポイントの付与も行える。アプリのデザインはオリジナルに変更(着せ替え)可能。デザインを変えても、アプリの「お金をおくる、もらう、はらう、チャージする、もどす」という送金機能、大手コンビニなど全国30万店舗の「pring」加盟店での支払いにもそのまま使える。さらに近々、利用履歴などからレコメンド通知やクーポンの配布なども行えるようになるとのことだ。

pringでは、送金アプリ「pring」を「お金コミュニケーションアプリ」と呼んでいる。「スマホでメッセージを送るような感覚で、簡単にお金のやりとりができる送金アプリ」ということだ。自分の銀行口座と直結することで、店の買い物でのQR決済のほか、友人との割り勘や集金などの個人間送金が行える。基本機能として、お金を「おくる、もらう、はらう、チャージする、(銀行)口座にもどす」を採用している。すべて基本的に手数料はかからない。企業から個人への報酬の支払いなど、法人向けサービスも行っている。

pringは、8月下旬までに、全株式をGoogleに譲渡することが決定している。

フリーランス向け報酬即日払いサービス「先払い」提供のyupが4.5億円調達、スモールビジネス向け請求管理SaaSを予定

フリーランス向け報酬即日払いサービス「先払い」提供のyupが4.5億円調達、スモールビジネス向け新サービスとして請求管理SaaS予定

フリーランス向け報酬即日払いサービス「先払い」を提供するyupは8月24日、第三者割当増資およびデットファイナンス(借入)による総額4億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リード投資家のW ventures、またインキュベイトファンド、セブン銀行、AGキャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、會田武史氏(RevComm創業者)。借入先は、プライベート・デット・ファンドを運営するトパーズ・キャピタル子会社「ブルー・トパーズ」をはじめとする金融機関。

フリーランス向け報酬即日払いサービス「先払い」提供のyupが4.5億円調達、スモールビジネス向け新サービスとして請求管理SaaS予定

調達した資金は、「人材採用への投資」「与信アルゴリズムの強化」「マーケティング・ブランディング」などの採用・組織体制の強化、「先払い」および新サービスの開発にあてる予定。先払いユーザーを対象としたアンケートの結果、シンプルでわかりやすいUI・申請方法・料金体系を評価している一方、「申込金額枠が小さい」「サービスの仕組みが理解できない」といった課題も残っていることがわかったという。フリーランスのキャッシュパートナーとして、より使いやすいサービスになるよう改善を重ねるとしている。

また新サービスは、スモールビジネス向け支払い・請求業務簡略化サービスを予定。これにより、日本にいる1670万人(ランサーズ「フリーランス実態調査2021年度版」)のフリーランスを含め、すべてのスモールビジネスに従事する人が事業やサービスに集中できる環境作りに貢献するとしている。

先払いは、取引先に送った入金前の請求書情報をyupに登録すると、報酬を即日受け取れるというサービス。2019年9月26日にβ版、2020年10月8日に本格リリースを開始した。手続きはすべてオンラインで完結し、面談・書面でのやり取りは一切不要。審査は最短60分で完了し、会員登録を行った当日から利用できる。また、利用状況を取引先に知られることもない。利用者のうち70%以上がリピートで利用しており、申込件数は1万件を突破したという。

フリーランス向け報酬即日払いサービス「先払い」提供のyupが4.5億円調達、スモールビジネス向け新サービスとして請求管理SaaS予定

弁護士・法律事務所向けクラウド案件管理システム「LEALA」開発・運営のレアラが総額1億円のシード調達

弁護士・法律事務所向けクラウド案件管理システム「LEALA」開発・運営のレアラが総額1億円のシード調達

弁護士・法律事務所向けのクラウド案件管理システム「LEALA」を開発・運営するレアラ(LEALA)は8月24日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による総額1億円の資金調達を発表した。引受先は、DNX Venturesおよび米セールスフォース・ドットコムCVC「Salesforce Ventures」(セールスフォース・ベンチャーズ)。

調達したに資金より、LEALAの機能拡充と顧客満足度の向上を目的とした組織基盤の強化を図る。開発および顧客支援体制の強化により、顧客のフィードバックを反映したLEALAの機能拡充や改善を加速するとともに、弁護士・法律事務所の成功を支援する。

LEALAは、Salesforceを開発基盤として、弁護士・法律事務所向けに特化して開発されたクラウド案件管理システム。顧客、案件・契約、タイムチャージ、法律書面・請求書、対応履歴などの情報をすべて一元化し、効率的なコラボレーション実現のための社内SNS機能を搭載。対応漏れを防ぐためのアラートや進捗可視化、スケジュール・ToDo管理からリスト抽出、集計・分析などの戦略立案まで、業務効率化と業務品質向上の両立や組織基盤の形成のための強力な支援ツールとしている。

製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」が80.3億円調達、2030年までに1兆円規模のグローバルプラットフォーム目指す

製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」が80.3億円調達、2030年までに1兆円規模のグローバルプラットフォーム目指す

製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」(キャディ)を手がけるキャディは8月24日、シリーズBラウンドにおいて、総額80億3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、既存投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズ、WiL、DCM Ventures、グローバル・ブレイン、また新規投資家の海外投資家DST Globalのパートナー陣、Arena Holdings、Minerva Growth Partners、Tybourne Capital Managementなど。今回の増資により、累計調達額は99.3億円となった。また、今回の調達に合わせて三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行から25億円の追加融資枠も確保した。2021年冬には、製造業系の企業を対象にしたエクステンションラウンドも予定しているという。

調達した資金は、グローバルも含めた人材採用やCADDiの開発、そして新規事業に投資する予定。これにより、受発注にとどまらず、設計から製造・物流・販売までのバリューチェーン全体のDXを加速し、製造業のデジタル化におけるデファクト・スタンダードを構築することで、2030年までに1兆円規模のグローバルプラットフォームになることを目指す。

CADDiは、「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに、多重下請けピラミッド構造から「強み」をベースにフラットにつながる構造へと変革する、製造業の受発注プラットフォーム。装置メーカーの利用企業は全国約1600社(2021年5月現在)、提携加工会社は600社以上。

産業機械装置メーカーやプラントメーカーを対象とし、板金・切削・製缶などの特注部品で構成される装置・プラント一式の一貫生産を担う。独自開発の原価計算アルゴリズムに則った自動見積もりシステムにより、品質・納期・価格が最も適合する加工会社の選定を可能とするという。従来2週間以上かかっていた相見積もりの負担や複数サプライヤーの管理工数を削減できるうえ、低価格かつ高品質な加工品の安定発注を行えるとしている。

NEDOがバイオ由来製品生産の実用化に向けスケールアップ実証と人材育成の場を関東圏に提供

NEDOがバイオ由来製品生産の実用化に向けスケールアップ実証と人材育成の場を関東圏に提供

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は8月23日、バイオ由来製品生産(物質生産)技術を産学で実証する拠点を関東圏に提供し、「バイオものづくり」に携わる人材を育成する事業を開始すると発表した。これは同機構の事業「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」の一環として実施され、「実験室レベルの生産性を、商業レベルを想定した環境で再現するスケールアップ検証の場を提供」するとしている。企業、大学、研究機関で行われている基礎研究と事業化とのギャップを埋めて、「商用生産まで到達するバイオ由来製品の増加」を目指すとのこと。

発酵技術に見られるように、微生物や植物の力を借りてものを作る物質生産は、日本が競争力を発揮できる分野だとNEDOはいう。しかし、こうした技術は現場担当者の勘と経験に依存するところが大きい上に、製造拠点の海外進出や熟練者の高齢化が進んでいる。その知見を継承するためには、言語化されていないその暗黙知をデジタル化して、形式知にすることが求められている。そこで2020年、政府の統合イノベーション戦略推進会議は「バイオ戦略2020」をまとめ、バイオとデジタルの融合のための基盤整備、世界の人材と投資を惹きつける拠点作りの推進を掲げた。NEDOはこれを踏まえて、今回の取り組みを開始するに至った。

具体的には、企業、大学、研究機関などで開発された有用な生産候補株(スマートセル)の商用生産を想定したスケールアップ検証の場を提供(2026年度まで整備を継続予定)、2022年度以降はそこでバイオ生産実証を行う企業、大学、研究機関を段階的に公募し、委託または助成を行う予定としている。

主な実施内容は以下のとおり。

バイオ生産実証拠点(バイオファウンドリ)の整備

30Lから300Lまでの発酵槽を備える既存設備(三井化学茂原分工場)に加え、この設備に隣接して最大3000Lの発酵槽を含む発酵設備や前処理および糖化設備、精製設備を含む一連のパイロットスケールのバイオ生産設備を新設。

バイオファウンドリ機能の検証

利用者の菌株や技術情報の機密保持を考慮した運用ルールを整備し、各種法令や規制を遵守する体制を構築。設備を安全かつ効率的に稼働させる。さらに、利用者には事業化に向けた有用なサービスも提供。

バイオファウンドリ機能のための技術開発・技術適用による機能拡張

低コストで省エネなバイオ生産プロセスの開発を可能にする以下の技術を開発。

  • 短期間、低コストで、最適条件決定やスケールアップを可能とする手法とシステム
  • バイオ生産プロセスの低コスト化、省エネ化、低炭素化
  • バイオ生産プロセスに適合したライフサイクルアセスメントによるCO2排出量算出モデル
  • バイオマス残渣の短時間および高効率の前処理

バイオ生産実証拠点での実証テーマの研究支援

上に掲げた項目を、すでに実用化に近いレベルの性能を示している生産菌を使用し、生産実証テストを実施予定。

バイオものづくり人材の育成

パイロットスケールのバイオ生産設備を用いた実習、同事業で開発する技術の研修プログラムを作成、実際に生産を担う人材の研修を実施。

アルカディア・システムズが新型コロナ余剰ワクチンとキャンセル待ち希望者のマッチングシステムを試験運用開始

ワクチンを1本も無駄にしない、アルカディア・システムズがキャンセル待ち希望者と余剰ワクチンのマッチングシステムを試験運用開始

医療現場で役立つITソリューションを提供するアルカディア・システムズは8月23日、新型コロナウイルスの余剰ワクチンとキャンセル待ちの接種希望者とをマッチングさせるシステム「VAMCS」(ヴァンクス)を開発し、8月中に複数施設での試験運用、また9月には全国展開をはかる予定と発表した。

新型コロナワクチンの不足が続いている。一部には突然の予約キャンセルなどで余ったワクチンをキャンセル待ちの人に融通する措置を講じているクリニックなどもあるが、それには電話連絡や待機者のリスト管理などの業務負担が大きく、実施したくてもできない施設があるとアルカディア・システムズは言う。そこで同社は、ワクチンの簡単な余剰登録をするだけで、メールで自動マッチングをするVANCSを協力施設の指導の下開発した。

キャンセル待ち希望者は、1人で5件まで医療施設に登録でき、医療施設でワクチンの余剰が発生すると順番にメールが自動送信される。医療機関に来訪できる人とマッチングできるまで、15分ごとに次の人へ順番が回され、連絡が行くという仕組みだ。ワクチンは希釈後6時間で利用できなくなるため、すぐに応諾できる方をマッチングできるようにしている。希望者は、有効期限内(メール到着から15分以内)にシステムに応諾の入力をすることで接種予約が完了する。

医療施設の側では、希釈時間、受付終了時間、ワクチン種類、余剰数(シリンジ単位)を入力するだけで、マッチングが開始される。

8月17日の時点で、試験運用に参加している施設は以下のとおり。

  • 福岡東ほばしらクリニック(福岡県福岡市)
  • 岸辺くすのき透析クリニック(大阪府吹田市)
  • 横田クリニック(大阪府大阪市)
  • 下地診療所(沖縄県宮古島市)
  • 大正くすのきクリニック(大阪府大阪市)
  • 一般財団法人 医療情報健康財団(福岡県福岡市)
  • 中馬病院(兵庫県尼崎市)

また現在、試験運用に参加を希望する医療施設を募集している。試験運用に応じた施設には、システムが無償で提供される。9月中予定の本格運用に移ると、医療施設には月額2000円(税抜)の経費がかかるが、試験運用の参加施設は9月以降も無償となる。

アルカディア・システムズは、「VAMCS」というネーミングにはある願いを込めているという。「Vaccines Available Matching Circle System for COVID-19」の頭字語なのだが、この中の「Circle」には、ワクチンの循環という意味のほかに、「みんなで協力して新型コロナウイルスとの闘いに打ち勝てるように」との思いも表現されているとのことだ。

最大15秒の短尺動画を投稿し気の合う人と出会える、Z世代向けソーシャルマッチングアプリ「mow」がリリース

最大15秒の短尺動画を投稿し気の合う人と出会える、Z世代向けソーシャルマッチングアプリ「mow」がリリース

Vチューバーのマネジメント事業を行うV Chuu(ブイチュー)は8月23日、動画を使ったソーシャルマッチングアプリ「mow」(モウ。iOS版)を8月2日にリリースしたと発表した。主にZ世代に向けたアプリで、TikTok・Instagramのストーリー機能やリールズ機能のような感覚で相手を探すことができるという。男女の出会いだけでなく、「同じ趣味を持った友人」「気の合う友人」も探せることを意図しているため、あえて「ソーシャルマッチング」としている。現在mowは、有料会員機能を無料提供している。

最大15秒の短尺動画を投稿し気の合う人と出会える、Z世代向けソーシャルマッチングアプリ「mow」がリリース

V Chuuによると、SNSアプリはすでに数多く存在するものの「声をかける」という行為を前提として作られていないため、フォローはしてもそこからの声かけのハードルが非常に高いと考えているという。一方mowでは、従来からの「マッチングアプリ」の前提で自分の動画をアップロードしたり、相手がアップロードした動画にリアクション(=いいね)を送ることができ、マッチングすればそこからの会話のスタートは非常にスムーズとしている。

またV Chuuは、ソーシャルメディアとしての責任にも重点を置いている(インターネット異性紹介事業届出済み)。たとえば、インターネット異性紹介事業では公的証書による年齢確認が義務づけられているが、それらデータを確認後にすぐに削除している(mowは、18歳未満は利用不可)。通報やブロック機能もリリース当初から備え、利用規約に反する行為や投稿などをパトロールで見張っている。違反者があれば、即刻アカウントを停止するという。

2020年1月設立のV Chuuは、主要メンバーのほとんどがZ世代という若い企業。メンバーは、既存マッチングアプリに対して、「テキストと加工された写真だけでは人柄が分かりにくい」「実際に会ってみると想像と違った」といった不満を抱えていた。そこで、動画投稿に抵抗のないZ世代ならではの発想として、情報量が多く「ありのままを映し出す」動画を使ったマッチングサービスを思いついた。また、「男性が有料・女性が無料」「性別を男性もしくは女性のみしか選べない」という一般的なマッチングアプリに違和感を覚えていたことから、ジェンダー的に自由なアプリを目指した。

最大15秒の短尺動画を投稿し気の合う人と出会える、Z世代向けソーシャルマッチングアプリ「mow」がリリース

今後は、mowのブランドコンセプトにあったインフルエンサーを起用したプロモーションを展開してゆくという。

物流ロボットのサブスクを展開する「+A」がZOZO大型物流拠点に商品仕分けロボットシステム280台を提供

物流ロボットのサブスクを展開する「+A」がZOZO大型物流拠点に商品仕分けロボットシステム280台を提供初期投資のいらないサブスクリプションで物流ロボットを提供するプラスオートメーション(+A)は8月19日、ZOZOの大規模物流拠点のひとつ千葉県のZOZOBASE習志野1において、「t-Sort」(ティーソート)2ユニットの導入を完了したことを発表した。ロボット280台を含む、大規模2段式ソーティングロボットシステムだ。

この導入は、月額定額制のサブスクリプション型の一貫サービス「RaaS」(Robotics as a Service。サービスとしてのロボティクス)という+A独自の形態で提供された。その特徴を活かし、当初はロボット50台規模からスタートし、課題抽出と改善を繰り返しつつ3カ月あまりで280台という本格稼働を実現させた。物流ロボットのサブスクを展開する「+A」がZOZO大型物流拠点に商品仕分けロボットシステム280台を提供

ソーティングロボットとは、物流倉庫で荷物の仕分けを行うロボットシステムのこと。+Aのt-Sortは、ロボットの走行ステージを2段にすることで、限られたスペースを有効活用しつつインダクション数とシュート数を倍増し、単位面積あたりの処理能力を大幅に向上させるというもの。運用にあたっては、+Aの庫内実行システム「+Hub」(プラスハブ)が用いられる。これによって直感的なロボット操作が行え、作業進捗確認や実績の可視化も可能になるという。

+Aは、三井物産と日本GLPの出資を受け2019年6月に設立。2020年9月には物流ソリューションプロバイダーの豊田自動織機への第三者割当増資も実施した。2021年8月19日現在累計ロボット導入台数は1000台を超えるという。

 

オンライン完結型紛争解決「Teuchi」のミドルマンが5000万円調達、新日本法規出版と業務提携に向け基本合意

オンライン完結型紛争解決サービス「Teuchi」のミドルマンが5000万円調達、新日本法規出版と業務提携に向け基本合意オンライン完結型紛争解決(ODR。Online Dispute Resolution)サービス「Teuchi」を開発・提供するミドルマンは8月23日、新日本法規出版との業務提携に先んじて8月18日に投資契約を締結し、新日本法規出版を引受先とするJ-KISS型新株予約権による資金調達を実施したと発表した。同資金調達はプレシリーズAラウンドに位置付けられるもので、シードラウンドからの累計調達金額は8000万円となった。

同基本合意は、ODR領域における業務提携に向けた検討を進めるためのもので、両社の知見とネットワークを最大限に活かせるODR関連サービスの開発に共同で取り組む予定。調達した資金により、ユーザーの利便性向上に向けTeuchiの機能強化、新たな対象領域向けサービスのための開発・マーケティング体制を強化を行う。あわせて、エンジン開発ためのR&D部門を立ち上げる。

またミドルマンはADR認証取得を予定という。現在、法務省による最終審査を受けており、今後シリーズA調達に向けた準備を開始する予定。

オンライン完結型紛争解決サービス「Teuchi」のミドルマンが5000万円調達、新日本法規出版と業務提携に向け基本合意

近年のDX推進は司法分野も例外ではなく、「2割司法」という言葉で揶揄されるほどリーガルアクセスが確保されていない現状を改善するため、民事裁判手続きのIT化を政府が推進しているという。ただその完成は早くても2025年とされている。

一方政府は、裁判外紛争解決手続き(ADR。Alternative Dispute Resolution)のオンライン化(ODR)にスタートアップの参入を促すことでリーガルアクセス改善に弾みをつけるため、2019年度以来3年連続で「成長戦略フォローアップ」の重要施策としてODRを位置づけ、現在は法務省に設置された「ODR推進検討会」において、広くODRを社会実装するための政策について議論が交わされている。

このような背景のもと、ミドルマンはユーザー本位の視点から法的紛争解決のあり方をリデザインし、ユーザビリティの高いリーガルサービスを提供するため、国内初となるチャットによるODRシステム「Teuchi」を開発。紛争ジャンルごとに解決プロセスをパターン化(類型化)したうえで、合理化された交渉から調停人とのマッチング、合意書の締結までをオンラインで完結させる仕組みを提供している。

2020年1月からシェアリングエコノミー領域で実証実験を開始しており、2020年9月には「Teuchi for 敷金」、2020年12月には「Teuchi for 離婚」をリリースした。

ミドルマンは、2020年3月にシードラウンドでの資金調達を実施。新型コロナウイルスと社会との調和にはもう少し時間がかかるとみられる状況はODRの社会実装をもう一段加速させるための千載一遇のチャンスであり、ここでアクセルを踏み込んで事業を推進するためにはさらなる資金調達が必要との経営判断に至ったとしている。

企業の福利厚生で使えるAI恋愛ナビサービス「Aill」が1.15億円調達、公務員や有資格者団体に対象拡大

企業の福利厚生で使えるAI恋愛ナビサービス「Aill」が1.15億円調達、公務員や有資格者団体に対象拡大

企業の福利厚生で使えるAI恋愛ナビサービス「Aill」(エール)を手がけるAILLは8月18日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による1億1500万円の資金調達を発表した。今回は、今後のサービス拡大を見越し、朝日メディアグループ1号投資事業有限責任組合(朝日メディアラボベンチャーズ)、名古屋テレビ・ベンチャーズ)といったメディア企業からの出資を受けることで、マーケティング、PR戦略のさらなる実行を目指した。

またAillは、これまで700社超の法人が利用しており、今回公務員と有資格者団体を対象に拡げることとなった。現在、都道府県庁でも加盟準備が進められており、さらに出会いの機会が広がるとしている。企業の福利厚生で使えるAI恋愛ナビサービス「Aill」が1.15億円調達、公務員や有資格者団体に対象拡大

Aillは、ウェルビーイングが浸透する社会を目指し、幸福度の高いワークライフシナジーを実現する一助として、公的・私的承認が満たされる重要性に着目。公的承認は仕事やボランティアなどの社会活動によって得られるものの、未婚率の上昇に裏付けられるように、仕事を頑張ることでプライベートの時間・出会いの機会が少なくなり、パートナーシップや家族との関りによって得られる私的承認が満たされにくいという状況が課題となっているという。

そんな時代に一石を投じるサービスとして、Aillは、勤務先企業を通じて審査を受けた安心・安全なユーザーが集まるコミュニティを形成し、AIが出会いとコミュニケーションに伴走することで、信頼をともに育むライフパートナーの縁結びを提供しているという。

 

UTECがディープテック創業者の仕事の商業化を支援する新たなイニシアチブをローンチ

2021年7月、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)は、ディープテック創業者の多くが直面していると同社が指摘する問題に取り組むため、新たなプログラムをローンチしている。創業者たちは、インキュベーターやアクセラレータープログラムからプレシード資金を調達できても、アーリーステージのラウンドに進む前に資金ギャップに達してしまうことがある。資金がなければ、どんなに有望なテクノロジーであっても、商用化には時間がかかる。

東京大学をはじめとするアカデミアと連携している独立系ベンチャーファンドであるUTECは、このギャップに対処するために「UTEC Founders Program(UFP)」を開設した。フレキシブルな条件で最大100万ドル(1億円)を投資する「Equity Track(エクイティ トラック)」と、半年ごとに受領者に授与される約5万ドル(500万円、必要に応じ最大10万ドル[1000万円])の非希薄化型(ノン・ダイリューティブ)の助成金である「Grant Track(グラント トラック)」の2つのトラックから成る。

UFPのアプリケーションは、世界中のディープテック研究者や創業者に開かれている。

UTECは5月に約2億7500万ドル(約300億円)規模のファンドを立ち上げ、通常約100万ドルから500万ドル(約1億円~5億円)の小切手を発行している。同社が運用している資産総額は約7億8000万ドル(約850億円)に上る。UTECはサイエンスおよびテクノロジー企業向けの日本最大のベンチャーキャピタルファンドであり、アジア最大のディープテックファンドの1つであると同社は語っている。

ディープテック研究者や起業家からのフィードバックを受けて、同ファンドのパートナーらは、研究者や起業家が潜在的にインパクトのあるテクノロジーを開発したとしても、すぐにシード資金を調達できる状態にない可能性があることを認識した。今回のイニチアチブを通じて、多くのチームが、長いデューデリジェンスのプロセスを待つのではなく、テクノロジーの商用化の準備を続けるための迅速な資金調達からも恩恵を受けることになるだろう。

UTECのプリンシパルで、UFPのリーダーを務める小林宏彰氏とKiran Mysore(キラン・マイソール)氏は、TechCrunchに宛てたeメールの中で次のように述べている。「満たされない市場ニーズに応えるために新製品を生み出す起業家のように、UTECでは、サイエンスおよびテクノロジーの研究者や起業家のために、より機敏な形で新しい投資商品を提供するよう努めています。UFPは、UTECが15年以上にわたって培ってきたディープテック投資の経験と学習を、アーリーステージのテクノロジー商品化イニシアチブにつなげていこうとする試みです」。

Equity Track(エクイティ トラック)は主にシードおよびプレシリーズAのスタートアップを対象としており、SAFE、KISSやJ-KISS(日本版Keep It Simple Security)、転換社債、普通株といったフレキシブルな投資条件を提供している。年間を通して応募を受け付け、合格者には3日以内に一次面接が行われる。マイソール氏によると、デューデリジェンスと投資委員会のプロセスは、最初のインタビューから4週間以内に完了するという。

Grant Track(グラント トラック)は起業前またはアーリーステージのスタートアップを対象としており、資金はプロトタイピング、市場テスト、リクルートメントなどに利用できる。第1期募集は6カ月ごとに行われ、毎回約5チームが選ばれる。第1期の応募締め切りは7月31日で、決定は9月に行われる。

UFPに参加するディープテックチームは、115を超える日本および世界のスタートアップ、学術機関、政府機関、企業からなるUTECのネットワークへのアクセスも獲得することになる。

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画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Dragonfly)

設置工事不要なAIカメラ「ManaCam」14台を利用した福岡・スタートアップ施設の利用状況の可視化実証実験

設置工事不要なAIカメラ「ManaCam」14台を利用した福岡・スタートアップ施設の利用状況可視化実証実験

スマートIoTトイレットペーパーホルダー「カミアール」など手がけるFutuRocket(フューチャーロケット)は8月19日、福岡市のスタートアップ施設「Fukuoka Growth Next」において、ビジネス向けAIカメラ「ManaCam」(マナカム)を使ったオフィス空間の利用状況を可視化する実証実験を開始すると発表した。

ManaCamは、「誰でも簡単に扱えるシンプルなAIカメラ」として開発されたデバイス。USBケーブルによる電源供給以外にも電球のソケット(E26)に入れて給電できるため、配線や取り付け工事の必要がなく、個人で設置できる。Fukuoka Growth Nextでも、実際に工事業者に依頼することなくManaCamを14台を低予算で導入できた。

オープンソース設計のCPU「RISC-V」(リスク ファイブ)マイコンを使用し、機能を絞り込むことで作られたManaCamは、本体価格1万1000円で、年間利用料は9900円(すべて税込)。またManaCamは、オープンソースの画像認識アルゴリズムで、カメラから見える範囲の滞在者数を一定間隔でクラウドに送信する。画像は送信せず、人数のみが送られ、画像は一切保存されない。人数は、専用のダッシュボードにグラフと数値で示される。

この実証実験は、ワークプレイスコンサルティング事業などを展開するAnyWhereが、利用状況を把握したいというFukuoka Growth Nextの要望を受け、そこにAnyWhereが着目していたManaCamを活用するという形で実現した。

「ManaCam」実証実験の概要

  • 導入先:Fukuoka Growth Next(福岡県福岡市中央区大名2-6-11)
  • 期間:2021年7月8日から順次開始、2022年6月30日(予定)
  • 目的:コワーキング利用スペースの利用状況把握、コワーキングスペースの最適化を検証
  • 収集データ:利用人数カウント、滞在状況
  • 実験概要:1階イベントスペース、コワーキングスペース、3階会議室などに合計14台のAIカメラを設置し、各エリアの利用状況を把握

FutuRocketは、「デジタルではページビューなどで当たり前となっている利用者数の把握を、リアルの世界でも、手軽に利用者数の集計ができるようにする」ことを製品開発の目的としており、「小さな取り組みからスマートシティー化への一歩を踏み出せられる製品として開発を推進していきます」と話している。

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カテゴリー:IoT
タグ:AnyWhere(企業)オープンソース / Open Source(用語)画像解析(用語)Fukuoka Growth NextFutuRocket(企業)RISC-V(用語)日本(国・地域)

衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

さくらインターネットは8月19日、衛星データとAI画像認識技術を活用して駐車場として利用できそうな場所を検出するツール「Tellus VPL」のα版を、衛星データプラットフォーム「Tellus」(テルース)の公式ツールとして、無料提供を開始した。

同ツールは、さくらインターネットのほか、ディープラーニングをはじめとするAI技術で課題を解決するRidge-i(リッジアイ)、駐車場予約アプリ「akippa」を運営するakippa(アキッパ)の3社で研究開発した。

衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

「Tellus VPL」の新規駐車場用スペース解析結果イメージ画像

衛星データから駐車場として活用できそうな空き地などを見つけ出す同ツールは、空いている月極や個人の駐車場、空き地などを駐車場として一時利用するシェアリングサービスを展開するakippaの提案から生まれた。通常は、そうしたスペースを足で探さなければならず、大変な労力とコストがかかる。そこで、さくらインターネットがプロジェクトの取りまとめと衛星データの提供を、Ridge-iが機械学習とディープラーニング技術を使った候補地検出プログラムの開発を担当し、開発を進めた。akippaは、このツールの本格活用に向けて駐車場開拓パートナーとの連携を進めることにしている。

このツールが利用できるTellusは、さくらインターネットが経済産業省の「政府衛星データのオープンアンドフリー化・データ利活用促進事業」として開発・運用を行う日本初の衛星データプラットフォーム。衛星データの提供のほか、衛星データを活用するためのツールや関連コンテンツなども提供している。実際にこれを使って駐車場候補地が検出されているかを検証した記事が、Tellus公式メディア「宙畑」(そらばたけ)に掲載されている。衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

さくらインターネット、Ridge-i、akippaは、「Tellus VPL」の改良を重ね、衛星データの実用化に向けて取り組んでゆくと話している。

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カテゴリー:宇宙
タグ:akippa(企業・サービス)画像解析(用語)さくらインターネット(企業・サービス)人工衛星(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)リッジアイ(企業)日本(国・地域)

リコーと九州大学共同開発によるフィルム形状の有機薄膜太陽電池のサンプルが9月提供開始、「充電のない世界」目指す

リコーが「充電のない世界」の実現に向けフィルム形状の有機薄膜太陽電池のサンプルを9月から提供開始

リコーは8月18日、IoT機器を常時可動させるための自律型電源となるフレキシブル環境発電デバイスのサンプルを9月から提供すると発表した。これはリコーと九州大学が2013年から共同研究してきた発電材料を使ったもの。屋内の低照度でも高効率な発電ができる。フィルム形状なので、さまざまなIoTデバイスに搭載が可能。IoTデバイスメーカー、サービス事業者、商社向けにサンプルを提供し、早期の商品ラインアップ化を目指すとのこと。

リコーが「充電のない世界」の実現に向けフィルム形状の有機薄膜太陽電池のサンプルを9月から提供開始

リコーは、九州大学 稲盛フロンティア研究センター 安田研究室との共同研究によって、「光電変換層(P型有機半導体)の分子構造や材料組成などを精密に制御」することで、比較的暗い場所でも高い電圧と電流が得られる有機光電変換系を開発。有機デバイス設計では、中間層(バッファ層)材料の最適化や界面制御による高効率化と高耐久化を実現した。これには、安田研究室の高性能有機半導体の設計と合成の技術、リコーの有機感光体の材料技術が活かされている。

リコーと九州大学が共同開発したフィルム形状の有機薄膜太陽電池のサンプルを9月から提供開始

リコーが開発した有機薄膜太陽電池(OPV)の構成と機能

フレキシブル環境発電デバイスには、次の特徴がある。

  • 発電効率の向上と高耐久化の実現
  • 広い照度域における高い変換効率
  • 高照度環境下における高い耐久性
  • 部分陰による影響が少ない遮光特性

約200lx(ルクス。一般家庭の居間の照明程度)の低照度から、約1万lx(曇りの日の屋外程度)の中照度でも高い光電変換効率を維持でき、約10万lxという太陽光に近い明るさでも高出力を維持できる。また、セルに部分的に影がかかっても、急激な出力の低下は起こらない。

リコーと九州大学が共同開発したフィルム形状の有機薄膜太陽電池のサンプルを9月から提供開始
リコーでは、「移動型・携帯型のウェアラブル端末やビーコンなどのデバイス、およびトンネル内や橋梁の裏側に設置される社会インフラのモニタリング用デバイスなどの自立型電源として適用が可能」としている。これにより、小型電子機器の電池交換や充電の必要がなくなり、九州大学の安田琢麿教授は、SDGsの目標7である「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」の達成に貢献できると話している。

リコーと九州大学が共同開発したフィルム形状の有機薄膜太陽電池のサンプルを9月から提供開始リコーと九州大学が共同開発したフィルム形状の有機薄膜太陽電池のサンプルを9月から提供開始

主な仕様・41x47mmサイズで使用環境(照度)が200lxと10000lxの場合の出力

  • 最大出力(Pmax)min(取り出せる電力の最大値)
    200xl:84µW
    10000lx:4200µW
  • 最大出力動作電圧(Vpmax)typ(電力が最大となる電圧値)
    200xl:3.3V
    10000lx:3.6V
  • 最大出力動作電流(Ipmax)typ(電力が最大となる電流値)
    200lx:25µA
    10000lx: 1200µA

詳細はこちら。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:環境発電 / エネルギーハーベスティング(用語)九州大学(組織)太陽光 / 太陽光発電 / ソーラー発電 / 太陽電池(用語)有機太陽電池 / OPV(用語)リコー(企業)日本(国・地域)