公開されたコンテンツからAIでインサイトを抽出し企業の意思決定を支援するSignal AIが約57億円調達

インターネットなどで公開されている膨大なデータの海を探索し、より良いビジネス上の意思決定を行うためのセンチメントインサイトなどを組織に提供する人工知能スタートアップのSignal AI(シグナルエーアイ)が5000万ドル(約57億円)を調達した。同社はこの資金でAIプラットフォームの構築を進め、より多様なデータソースを取り込むことで、人が尋ねる可能性のある、より幅広いビジネス上の質問に対するインサイトを引き出す。

「組織はまだ、脅威や機会を先取りし、困難をチャンスに変えるための効果的なレーダーを持っていません」と同社のCEOであるDavid Benigson(デイビッド・ベニグソン)氏はインタビューで語った。同社は、ソーシャルメディアやニュースメディアから2万5000のポッドキャスト、規制当局への提出書類、その他の公的記録まで、何百ものデータソースを単一のプラットフォームに集約している。

そして、機械学習やその他のAI技術を適用し、Signal AIの顧客が投げかけた自然言語の質問に基づいて、そのすべてからインサイトを抽出する。「当社はプラットフォームに注入するデータを多様化しています」とベニグソン氏は付け加えた。Signal AIは現在、約100の言語で動作する。

今回の資金調達はシリーズDの形で行われ、Highland Europeがリードし、新規投資家のabrdnに加え、既存投資家のRedline(Signal AIの2019年のシリーズCをリード)、MMC、戦略的投資家のHearstとGuardian Media Group Venturesも参加している。ロンドンに拠点を置くSignal AIは、これで累計1億ドル(約114億円)を調達したことになる。評価額は公表していないが、ベニグソン氏(同社のチーフデータサイエンティストであるMiguel Martinez[ミゲル・マルティネス]氏と共同で創業)は、前回のラウンドより100%成長したと述べた。

PItchBookは同社の評価額が2019年時点で1億ドル程度だったと推定しており、この数字が正確であれば、現在は2億ドル(約228億円)ということになる。いずれにせよ、Signal AI自体が成長したことは間違いない。ベニグソン氏によれば、同社は現在、フォーチュン500に選ばれている企業の40%と取引しており、その顧客層にはDeloitte(デロイト)、Bank of America(バンクオブアメリカ)、Google(グーグル)などが含まれるという。

Signalが特定し、解決しようとしている課題は誰もが日々遭遇するものだが、道を間違えれば数十億ドル(数千億円)の投資が危ぶまれる可能性のある厄介な問題を企業が対処する際には、特に深刻に感じられるだろう。

インターネットは私たちに膨大な情報の宝庫を提供してくれるが、それを解き明かし、回避するための最適な鍵や地図があるとは限らない。特に、センチメント分析に関するよりふわふわした質問や、実際には多くのソースからの情報の照合である「答え」の場合のように、探している答えが単純ではない場合はなおさらそうだ。

Dataminr(2021年、41億ドル[約4670億円]の評価額で膨大な資金を調達)、Meltwater(株式公開企業で、技術力を高めるために企業買収も実施)、Cision(現在は非上場で、成長のために大規模買収も実施)など、このギャップを特定し、解決に向けて構築を進めている企業も多数存在する。

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これらの企業が重視し、推進したのはメディアモニタリングの分野であり、他のメディアソースだけでなく、企業自体も利用する巨大なビジネスだ。実際、Signal AIも以前はSignal Mediaと呼ばれ、この分野を中心に活動していた。

従来のやり方は、メディアの切り抜きを集めてクライアントに提供するものだったが、新しいやり方は単に言及を集めるだけでなく、そこから得られたより要約された情報やインサイトを提供するものだ。インターネットが発達すればするほど、クリップの数は増え、実際、最も熱心なコミュニケーション専門家のチームでさえ、クリップの山に対応するのは不可能になっている。

しかし、よりインテリジェントなメディアモニタリングのために構築されたこのモデルは、同じフォーマットとアルゴリズムをより幅広いユースケースに適用する道を開くものであり、Signal AIはその前提のもとに構築されている。

このように、Signal AIはコミュニケーション戦略に携わる人々へのインサイト提供に重点を置いているが、AIQプラットフォーム(Signalはそう呼んでいる)を通じて、クライアントに提供できる情報の種類をさらに増やしている。

例えば、潜在的なビジネスパートナーに関する情報や「インサイト」の提供、多様性と包括性でのスピードアップやそれらに他社がいかにアプローチしているか、環境戦略に関する決定事項、税金やデータ保護などの規制遵守についての企業の戦略に関するデータなどだ、とベニグソン氏は話す。

同氏によれば、Signal AIをDataminrのような企業と比較するのは妥当だが、ユーザーが求めるクエリの種類や回答において、より多くのコンテキストを提供する点でSignal AIは異なるという。ビジネスの成長とともに、このような豊かな体験ができることも、同社がいかに成長するか投資家が関心を寄せる理由だ。

Highland EuropeのパートナーであるTony Zappalà(トニー・ザッパラ)氏は「Signal AIは、傑出したカテゴリー定義会社です」と話す。「同社の革新的な成長の次の章に関与することに興奮しています。デイビッドと経営陣は、彼らが定義するのに役立っている意思決定拡張カテゴリに対して明確なビジョンを持っており、Gartnerの調査が示すように、その機会は膨大なものです」と述べた。

画像クレジット:pigphoto / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

OPPO初の自社開発チップは画像・映像処理に特化したNPU

中国の大手スマートフォン企業であるOppo(オッポ)は、現地時間12月14日に深圳で開催された年次イノベーションイベントで、初の自社製チップセットを発表した。マリアナ海溝にちなんで名付けられたというこの「MariSilicon X(マリシリコンX)」チップは、機械学習によって写真や動画の処理性能を高めることに特化したニューラルプロセッシングユニット(NPU)だ。

この動きによりOppoは、Apple(アップル)をはじめとする独自のチップを設計しているスマートフォンメーカーのリストに加わることになる。Qualcomm(クアルコム)での豊富な経験を持つJiang Bo(ジャン・ボウ)氏が率いるMariSiliconプロジェクトは、2019年に始まったばかりだった。

このシリコンは、Taiwan Semiconductor Manufacturing Co(TSMC、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)の6ナノメートルプロセス技術によって製造され、2022年の第1四半期に発売されるOppoの次期フラッグシップ機種に搭載される予定だ。現在進行中の世界的なチップ不足は、MariSilicon Xの生産には影響しないと、ジャン氏はこのイベントで報道陣に語った。

Oppoは今回のイベントで、自社開発のスマートグラスの第3世代も発表した。同社ではこれを、Augmented Reality(拡張現実)ではなく「assisted reality(補助現実)」デバイスと呼んでいる。

この表現は適切だ。この重さわずか30gのヘッドピースは「Google Glass(グーグル・グラス)」を彷彿とさせる。スマートウォッチで使用されている「Snapdragon 4100(スナップドラゴン4100)」チップを搭載しており、確かに一般的にはスマートウォッチで見られるような、ナビゲーションや翻訳などの2D情報を、厚さ1.3mmのメガネに投影することに限定されている。周囲の環境を認識するARデバイスのようなものではなく、スマートフォンの延長線上、あるいは目の前にスクリーンがあるスマートウォッチのようなものだ。発売は2022年春に予定されている。

Oppoの新しい「補助現実」メガネ(画像クレジット:Oppo)

そして3つ目の製品は、Oppo初の折りたたみ式スマートフォンだ。同社が巻き取り式スマートフォンのコンセプトを発表してから1年後に登場するこの折りたたみ式スマートフォンの詳細は、15日に発表される予定なので、また後ほど記事を更新してお伝えすることにしたい。

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これまでにわかっているのは、この新型携帯電話の開発を指揮した人物が、OnePlus(ワンプラス)の共同設立者であり、2021年OnePlusがOppoのサブブランドになった後、Oppoのチーフプロダクトオフィサーに就任したPete Lau(ピート・ラウ)氏であるということ。

OnePlusとOppoは、ともにBKK Electronics(BBKエレクトロニクス、歩歩高)の傘下にあり、合併前はサプライチェーンを共有しながらも、独立して事業を行っていた。今回の合併により、2つの携帯電話メーカーは、それぞれのブランドは別のまま、運営とOSを含めた研究開発の力を統合することになった。

OnePlusのもう1人の共同創業者であるCarl Pei(カール・ペイ)氏は、新たに設立したイヤフォンのベンチャー企業Nothing(ナッシング)で話題を集めており、投資家や初期フォロワーの大群を獲得している。

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画像クレジット:Oppo

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(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AIモデルのストレステストを行うRobust IntelligenceがシリーズBで約34億円調達

企業のAIモデルのストレステストを支援し、失敗を未然に防ぐAIスタートアップのRobust Intelligence(ロバスト・インテリジェンス)は、米国時間12月9日、Tiger Global(タイガー・グローバル)が主導する3000万ドル(約34億円)のシリーズB資金調達ラウンドを実施したことを発表した。このオーバーサブスクライブされたラウンドには、同社のシリーズAラウンドを主導した前回の投資家であるSequoia(セコイア)の他、Harpoon Venture Capital(ハープーン・ベンチャー・キャピタル)およびEngineering Capital(エンジニアリング・キャピタル)も参加している。

同社は、ハーバード大学のコンピュータサイエンスおよび応用数学の終身教授であるYaron Singer(ヤロン・シンガー)と、彼の元学生である大柴行人氏が共同で設立した。

Robust IntelligenceのCEOのYaron Singer氏(画像クレジット:Robust Intelligence)

シンガー氏は「AIはこれまで学術的な試みでした。私が大学院に通っていた頃は、AIは学術的な学問であり、ビジョンでした。その後、インターネット、データ、Google、データ処理が登場し、7、8年の間にその可能性に気づくこととなりました。今、私たちは、AI開発をソフトウェア開発と同じくらい厳密に行おうとしています。ソフトウェア開発は人類が60年前からやっていることですよね。それに私たちはAIを追いつかせようとしていますが、AIはまったく別の生き物です」と述べている。

シンガー氏が指摘するように、統計的な性質を持つAIは、予想外の行動を示すことがある。同社の使命は、このようなAIのミスをなくすことにある。

これを可能にするために「ロバスト・インテリジェンス・モデル・エンジン(RIME)」と呼ばれる、AIファイアウォールを核としたシステムをユーザーに提供している。このファイアウォールは、企業のAIモデルを包み込み、これらのモデルを常にストレステストすることで、ミスの発生を防ぐことができる。

「AIモデルとデータがあれば、ボタンをクリックするだけでストレステストを実行します。モデルが本番段階に入る前も、本番中も、データとAIモデルを自動的にテストします」とシンガー氏はいう。ここでのアイデアは、任意のモデルの故障モードを自動的に見つけるだけでなく、データドリフトなどの問題や関連する問題をキャッチすることだ。

画像クレジット:Robust Intelligence

ここで興味深いのは、AIファイアウォール自体が、あるデータポイントが間違った予測につながるかどうかを予測するAIモデルだということだ。「これは、AIや機械学習において、解決しようとしている最も難しい問題の1つです」。とシンガー氏は説明する。

Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・カーティウス)氏は「私がRobust Intelligenceの能力に初めて触れたのは、同社の初期開発段階でした。過去1年間に同社とその製品が成長するのを見て、同社の提供する製品がAIの信頼性のあり方を変えていることが明らかになり、我々Tiger Globalが重要なリソースを提供できると確信しました」。と語っている。

同社は、今回の資金調達を営業活動の拡大に充てる予定だが、大半は製品とエンジニアリングに充てられる。

画像クレジット:metamorworks / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Akihito Mizukoshi)

MetaがAWSを戦略的クラウドプロバイダーに選定、Meta AIの研究開発やPyTorch利用企業のパフォーマンスを強化

MetaがAWSを戦略的クラウドプロバイダーに選定、Meta AIグループの研究開発やPyTorch利用企業のパフォーマンスを強化

Amazon Web Services(AWS)は米国時間12月1日、Metaが戦略的クラウドプロバイダーとしてAWSを選定したことを発表した。

MetaとAWSはこの5年間で連携する範囲を拡大してきた。今回の合意を基に、AWSは引き続きMetaが取り組む研究開発をサポートし、イノベーションの促進、サードパーティやオープンソースソフトウェア(OSS)コミュニティとのコラボレーションを支援する。

Metaは、AWSの実績あるインフラストラクチャと包括的な機能を活用し、既存オンプレミスのインフラを補完するとともに、AWSが提供するコンピュート、ストレージ、データベース、セキュリティのサービス利用を拡大し、クラウドにおけるプライバシー、信頼性、拡張性を実現するという。サードパーティ企業とのコラボレーションをAWS上で行うとともに、すでにAWSを利用している企業の買収支援にも活用する。

またMetaは、AWSのコンピュートサービスを活かし、Meta AIグループの人工知能の研究開発を加速させる。AWS上でOSSの機械学習フレームワーク「PyTorch」を活用する顧客企業のパフォーマンスを向上させ、開発者による人工知能と機械学習モデルの構築・トレーニング・デプロイ・運用の加速を目指す。

AWSとMetaは、機械学習モデルの大規模な構築、トレーニング、デプロイに向けて、PyTorchのパフォーマンスならびにAmazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)や、機械学習専用に構築された機能を提供するAmazon SageMakerなどのコアマネージドサービスとの統合において、さらなる最適化を進める。自然言語処理やコンピュータビジョンのための大規模な深層学習モデルを開発者が容易に構築できるよう、両社はAWS上でのPyTorch活用を促進し、AIアクセラレーターの分散システム全体で大規模なトレーニングジョブのオーケストレーションを可能にする。

また両社は、PyTorch上での推論のパフォーマンス、説明可能性、コストを向上させるネイティブツールを共同で提供。本番環境へのモデル展開を簡素化するため、PyTorchのネイティブなサービングエンジンであるTorchServeを強化し、学習したPyTorchモデルを容易に一括展開できるようにするという。これらのOSSへの貢献をベースにAWS上でパフォーマンスを最適化し、大規模な深層学習モデルの研究から本番環境までをより迅速に導入するための支援を展開する。

ソフトバンク出資のユニコーンPicsArtがR&D企業DeepCraftを買収、AI・動画編集機能の強化狙って

ソフトバンクが出資しているデジタルクリエイションプラットフォームで、2021年8月にユニコーン企業の仲間入りを果たしたPicsArt(ピクスアート)は、米国時間12月2日、R&D企業であるDeepCraftを買収することを発表した。今回の買収は、現金と株式の組み合わせで、7桁(数百万ドル、数億円)規模の金額とのことだが、正確な条件は公表されていない。

PicsArtは現在、コンシューマーとプロ両方に向けて、写真やビデオ編集をより楽しく、親しみやすいものにするためのさまざまなデジタル制作・編集ツールを提供している。PicsArtは、DeepCraftが持つAI技術分野の人材と、同社のコンピュータービジョンおよび機械学習(ML)における画期的な技術が、PicsArtのAI技術を強化し、近年のPicsArtのサービスにおける動画作成の成長をサポートするものと考えている。また、チームは、PicsArtのAI研究開発部門であるPAIR(PicsArt AI Research)にシニアレベルのリソースを追加して補完するのにも役立つとしている。

アルメニアに拠点を置くDeepCraftは動画・画像処理に特化した企業で、2017年に設立された。ちなみに、PicsArtは同国初のユニコーンだ。DeepCraftの共同創業者であるArmen Abroyan(アルメン・アブロヤン)CEOとVardges Hovhannisyan(ヴァルジス・ホフハニシャン)CTOは、AIと機械学習に20年以上を費やしており、その専門性は地元コミュニティでよく知られている。アブロヤン氏はこれまで、アルメニア共和国ハイテク産業省の副大臣、RedKiteのリードAIアーキテクト、Synopsys(シノプシス)のシニアソフトウェア開発者などを歴任してきた。一方、ホフハニシャン氏は、Synopsysで13年間、シニアR&Dエンジニアとして活躍した。

DeepCraftでは、Krisp、PatriotOne、さらにはアルメニア政府など、多くのクライアントと契約ベースで仕事をしていた。これらの仕事は終了し、チームはエレバンにあるPicsArtのオフィスで仕事を始めることになる。今回の買収により、DeepCraftの機械学習および映像分野のシニアエンジニア8名が、PicsArtに正社員として入社する。

PicsArtは、2018年にEFEKT(旧D’efekt)を買収して動画市場に参入し、近年、利用者が急増している。特に、動画を利用するソーシャルメディアのクリエイターやECショップに同社のアプリが採用されている。2021年、PicsArtのアプリで編集された動画は1億8千万本を超え、前年比で70%増となっている。現在、数千種類のエフェクトと数十種類の動画編集ツールを提供しており、AIやクラウド技術の進化に合わせてこのラインナップを増やしていく予定だという。

PicsArtは、DeepCraftのスキルセットと技術的な専門知識が、2022年に重要な焦点となるであろう動画のサポートを前進させるのにどう役立つかに特に関心を寄せている。

ただし、PicsArtは、今回の買収でDeepCraftから特定のIPを取得するわけではない、と同社はTechCrunchに語っている。

PicsArtは、DeepCraftとはさまざまな技術開発で協力関係にあったため、今回の買収に先立ち、すでに関係を築いていた。

PicsArtの共同設立者兼CTOであるArtavazd Mehrabyan(アルタバズド・メフラビヤン)氏はこう述べている。「DeepCraftはユニークで高度な技術を持つエンジニアのチームであり、当社はすでに1年以上彼らと協力して当社のコア技術を構築してきました。当社の動画機能を進化させるためにさらなる投資を行うにあたり、DeepCraftのチームが動画の未来を築く上で重要な役割を果たすことを確信しています」。

DeepCraftとの取引は、8月に同社がソフトバンク・ビジョン・ファンド2(SVF2)主導で1億3000万ドル(約146億9000万円)のシリーズCラウンドを調達して以来、PicsArtにとって初の買収となる。そのラウンドにより、同社は2019年に約6億ドル(約678億円)だった評価額からユニコーンの地位に引き上げられた。

画像クレジット:PicsArt

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

AWSが機械学習をより簡単に拡張できるSageMakerの新機能をリリース

米国時間12月1日、AWSは毎年恒例のre:Inventカンファレンスで、機械学習(ML)モデルを構築、トレーニング、デプロイするマネージドサービスSageMakerに対する多数の新機能を発表した。Amazon(アマゾン)の機械学習担当副社長であるSwami Sivasubramanian(スワミ・シバスブラマニアン)氏は、今回の新機能は、ユーザーが組織内で機械学習を簡単に拡張できるようにすることを目的としていると述べている。

まず第一にAWSは、専門家を使って高品質のトレーニングデータセットをより迅速に提供する新しいSageMaker Ground TruthPlus(セージメイカー・グラウンド・トゥルースプラス)サービスを開始した。SageMaker Ground Truth Plusは、アクティブラーニング、事前ラベリング、機械検証のための機械学習技術などのラベリングワークフローを使用する。同社によれば、この新しいサービスはコストを最大40%削減し、ユーザーが機械学習に関する深い専門知識を持っている必要はないという。このサービスにより、ユーザーはラベリングアプリケーションを構築しなくてもトレーニングデータセットを作成できるようになる。SageMaker Ground Truth Plusは現在、Northern Virginia(バージニア北部)リージョンで利用できる。

同社はまた、ユーザーが最適なパフォーマンスとコストで機械学習モデルをデプロイするために、利用可能な最適なコンピューティングインスタンスを選択することを助ける新しいSageMaker Inference Recommender(セージメイカー・インファレンス・レコメンダー)ツールを開始した。AWSによると、このツールは適切なコンピューティングインスタンスのタイプ、インスタンスカウント、コンテナパラメーター、モデルの最適化を自動的に選択するという。Amazon SageMaker Inference Recommenderは、AWS China(AWSチャイナ)リージョンを除く、SageMakerが利用可能なすべてのリージョンで利用可能だ。

さらにAWSは、新しいSageMaker Serverless Interface(セージメイカー・サーバーレス・インターフェース)オプションのプレビューをリリースした。これによって、ユーザーは基盤となるインフラストラクチャを構成または管理しなくても、推論のための機械学習モデルを簡単にデプロイすることができる。この新しいオプションはNorthern Virginia、Ohio(オハイオ)、Oregon(オレゴン)、Ireland(アイルランド)、Tokyo(東京)、Sydney(シドニー)の各リージョンで利用可能だ。

画像クレジット:TechCrunch

AWSはまた、GPUインスタンスをより効率的に使用することで、ディープラーニングモデルのトレーニングを最大50%高速化できる新機能SageMaker Training Compiler(セージメイカー・トレーニング・コンパイラー)をリリースした。この機能は、高級言語表現からハードウェアに最適化された命令に至る、ディープラーニングモデルをカバーしている。この新機能は、Northern Virginia、Ohio、Oregon、Irelandで利用できる。

最後にAWSは、Amazon Elastic MapReduce(EMR、アマゾン・エラスティック・マップレデュース)で実行されているApache Spark(アパッチ・スパーク)ジョブを、SageMaker Studio(セージメイカー・スタジオ)ノートブックからユーザーがクリックするだけで、直接監視およびデバッグできるようになったと発表した。同社は、EMRクラスターをSageMaker Studioから直接発見、接続、作成、終了、および管理できるようになったと述べている。

「したがって、EMRとの統合が組み込まれたことで、単一のユニバーサルSageMaker Studioノートブック内から、ペタバイトスケールでインタラクティブなデータ準備と機械学習を行うことができるのです」とAWSはブログ投稿の中で説明している。

このSageMaker Studioの新機能はNorthern Virginia、Ohio、Northern California(カリフォリニア州北部)、 Oregon、 central Canada(カナダ中央)、 Frankfurt(フランクフルト)、 Ireland、 Stockholm(ストックホルム)、 Paris(パリ)、 London(ロンドン)、 Mumbai(ムンバイ)、 Seoul(ソウル)、 Singapore(シンガポール)、 Sydney(シドニー)、 Tokyo(東京)、Sao Paolo(サンパウロ)の各リージョンで利用できる。

これに関連したノートの中で、AWSは開発者が機械学習技術を学び、その技術を実験することを支援する無料サービスであるSageMaker Studio Labを立ち上げたことを発表した。また米国時間11月30日には、AWSはAmazon SageMaker Canvasと呼ばれる新しい機械学習サービスを発表した。新しいサービスによって、ユーザーはポイントアンドクリックインターフェイスを使って、機械学習予測モデルを構築できるようになる。

関連記事:AWSがノーコードのMLサービス「Amazon SageMaker Canvas」を発表

画像クレジット:AWS

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(文: Aisha Malik、翻訳:sako)

AWSが機械学習を学ぶための無料ツール「SageMaker Studio Lab」を発表、奨学制度も立ち上げ

AWSは米国時間12月1日のre:Inventカンファレンスで、SageMaker Studio Labを発表した。デベロッパーは、この無料サービスを利用して機械学習の技術を学び、実験をすることができる。Studio Labはユーザーに、最初に必要な基礎をすべて、JupyterLab IDE、CPU上とGPU上のモデルの訓練、そして15GBの永続的ストレージを提供する

またAmazonは同時に、AWS AI & ML Scholarship Program(AIとMLの奨学事業)を立ち上げた。1000万ドル(約11億3000万円)の奨学金をAmazonが提供し、授業はIntelとUdacityの協同で行われる。それにより2000名の生徒がUdacity Nanodegree(得られる奨学金をもらい、またAmazonとIntelの社員たちがメンター役を引き受ける。

AWSの機械学習担当副社長であるSwami Sivasubramanian(スワミ・シバスブラマニアン)氏は次のように述べている。「本日発表した2つの企画は、機械学習を学ぶための教育機会を大きく開き、この技術に関心のある人なら誰でも勉強できるようになります。機械学習はこの世代にとって、最高に重要な変革的技術の1つです。この技術のポテンシャルを全開にできれば、世界の困難な問題の一部も解決できます。そのためには、あらゆるバックグラウンドの体験知識と人生経験を持つ、最良の心の持ち主たちに参入して欲しい。私たちはこの奨学制度によって多様な未来のワークフォースに閃きを与え、心を動かしていただきたい。多くの人の機械学習の開始を妨げていた費用という壁は壊れるでしょう」。

画像クレジット:AWS

Studio Labで勉強を始めるためには、登録をして無料のアカウントを取得しなければならい(2000名という制限がある)。ただし、アクセスのためのその他の要件はまだ不明だ。

AWSのAntje Barth(アンティエ・バース)氏が、発表で次のように述べている。「AWSでの私たちのミッションは、機械学習を誰にでもアクセスできるものにすることです。過去数年間のいろいろな会話から、MLの初心者が直面する壁がわかってきました。現在のMLの環境は初心者にとって難しすぎるものが多く、また制約が多くて現代的なMLの実験をサポートできません。また初心者たちは、今すぐにでも勉強を始めたいと思っており、インフラストラクチャや、サービスの構成、予算超過を防ぐための警告的請求などと関わりたくありません。登録の際に要求される請求やクレジットカード関連の情報提示もまた、険しい壁の1つです」。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AWSのデータベース移行サービス「Fleet Advisor」はDB移転作業を数週間から数時間に短縮

2年前のAWS re:Inventで、そのときAWSのCEOだったAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏が、クラウドへの移行のペースが遅いのにはうんざりとぶちまけ、移行をもっと早くする方法を見つけたいと語った。ところが新CEO、Adam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏は米国時間11月30日の開会のキーノートで、その移行がまだ相当に遅く、現時点でクラウドに移行したワークロードは全体の5〜15%にすぎないと述べた。

ペースが遅い原因の一部は、クラウドへ移行すればいいことはわかっていても、データをオンプレミスからクラウドへ引っ越す作業が大変すぎることだ。しかもそれはデータの物理的な移動であるだけでなく、データをオンプレミスのレガシーなデータベースから、クラウド上の最新データベースへ構成し直さなければならないためだ。

複数のタイプのデータベースを使っている企業は、クラウドへの移行のためにそれらに完全にマッチした正しいデータベースを見つけることが、これまた大変だ。そこで、そのような問題を熟知しているAmazonは、顧客のクラウドへの移行をもっと簡単にしたいと考えた。

米国時間12月1日、同社が導入したAWS Database Migration Service(DMS) Fleet Advisorはそのためのツールで、データのクラウドへの移転を容易かつ迅速にし、それを正しいデータベースサービスにマッチさせる。

Amazon AIの副社長Swami Sivasubramanian(スワミ・シバスブラマニアン)氏は、12月1日のAIと機械学習に関するキーノートで次のように語っている。「DMS Fleet Advisorは、あなたのオンプレミスのデータベースとアナリティクスサービスの内容を、オンプレミスからAmazon S3へのデータのストリーミングによって自動的に構築します。そしてそこから先は、私たちの仕事になります。私たちはデータを分析、AWS Datastoreに合った大きさにマッチさせ、それから現状に合ったマイグレーションプランを提供します。これまで数週間から数カ月かかったこの作業が、数時間で終わります」。

シバスブラマニアン氏が指摘するのは、このアプローチが速いだけでなく、データの移動をサードパーティのコンサルタントに頼ることがないため安価でもあることだ。「これによりデータインフラストラクチャのモダナイズが極めて容易になり、目的に適った強力なリレーショナルデータベースが得られます」と氏は語った。

画像クレジット:AWS

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AWSがクラウド上のデータベースの問題を診断・修正する新ツールを発表

米国時間12月1日、AWSがユーザーがリレーショナル・データベース(関係データベース)の問題を容易に検出、診断、そして解決できるためのサービスを発表した。「DevOps Guru for RDS」というサービスは、AWSの完全な管理をともなうマネージド関係データベースプラットフォームであり、2020年、機械学習サービスの問題を検出するためにローンチしたDevOps Guru系列の一環だ。

Amazon AIの副社長であるSwami Sivasubramanian(スワミナ・サンシバスブラマニアン)氏が発表で、は多くの企業にとってデータベースの管理が優れていることが差別化要因にならないため、クラウドのマネージドサービスに下駄を預ける企業が多くなっていると述べた。しかしながら、そうであっても顧客たちはこれらのサービスを管理するためのより多くの自動化ツールを依然として求めている。特に要望が多いのは、パフォーマンスの診断の部分だとサンシバスブラマニアン氏はいう。

画像クレジット:TechCrunch

「いっそのこと、データベースに問題が起きたらアラートが鳴り、明確なガイダンスがもらえるようにしたらどうだろう?このままだとデータベースがロックしてユーザーのeコマースサイトが遅くなるという警告がもらえたらよいのではないか?原因となっている不正なSQLの文を教えてくれたら?」とサンシバスブラマニアン氏はいう。

DevOps Guru for RDSはそんなユーザーを助けて、彼らが、何らかの理由でパフォーマンスメトリクスがスパイクしたときの問題を検出できるようにする。このサービスは、データベースの中で生じているアクティビティを見て、異常を警告する。そしておそらくもっとも重要なのは、原因を分析して、変更方針を推奨してくれることだ。今後は、可能な場合には自動的に問題を修復してくれるだろう。

関連記事:AWSが運用上の問題を自動的に発見するDevOps Guruを発表

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AWSがノーコードのMLサービス「Amazon SageMaker Canvas」を発表

AWSは米国時間11月30日、新しい機械学習(ML)サービス「Amazon SageMaker Canvas」を発表した。新サービスは既存の機械学習サービスとは異なり、高度な技術を持つデータサイエンティストやエンジニアではなく、企業内のあらゆるエンジニアやビジネスユーザーをターゲットオーディエンスにしている。SageMaker Canvasは、ポイント&クリックインタフェースを使って、誰でも機械学習の予測モデルを構築できることを約束している。

この謳い文句に聞き覚えがあるとすれば、それはAzureなどが同様のツールを提供しているからかもしれないが、それでもAWSには、多くの企業がすでにすべてのデータをAWSに保存しているという利点があるかもしれない。

画像クレジット:Amazon

「SageMaker Canvasは、Amazon SageMakerと同じ技術を活用し、データを自動的にクリーンアップして結合し、何百ものモデルを内部的に作成し、最もパフォーマンスの高いモデルを選択して、新しい個別予測またはバッチ予測を生成します」とAWSのAlex Casalboni(アレックス・カザルボーニ)氏は今回の発表で書いている。「二値分類、多クラス分類、数値回帰、時系列予測など、複数の問題タイプをサポートしています。これらの問題タイプにより、コードを1行も書かずに、不正行為の検知、解約の削減、在庫の最適化などのビジネスクリティカルなユースケースに対応することができます」とも。

当然のことながらこのサービスは、AWSのフルマネージド機械学習サービスであるSageMakerに支えられている。

ここでの基本的なアイデアは、ベーシックなCSVファイルに至るまで、ユーザーはあらゆるデータセットを使用することができ、そのデータセットのどの列をCanvasが予測すべきかをユーザーが決めるということだ。しかし、従来のMLツールに比べてはるかに簡単なユーザーエクスペリエンスではあるが、ドラッグ&ドロップとまではいかないのが現状だ。結局のところ、AWSだからだ。全体としては、最新のノーコードアプリケーションというよりも、AWSコンソールでの作業に近いものとなっている。

画像クレジット:Ron Miller

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

AWS第3のカスタムチップ「Trn1」は機械学習モデルのトレーニングを高速化

顧客のワークロードのパフォーマンスを上げるためにカスタムチップに頼る企業が増えているが、Amazonもその例外ではない。同社は2019年に、機械学習の推論学習を高速化するためにInferentiaチップを導入した。その後、同社は2020年に機械学習のモデルの学習専用である第2のTrainiumチップをローンチした。そして本日、AWSはこれまでの流れの続きとして、最新の機械学習チップ「Trn1」を発表した。

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初めてAWS re:Inventのキーノートを担当するAdam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏は米国時間11月30日、最新のチップに関する発表を行った。

「Trainiumからパワーをもらっている新しいチップ、Trm1を発表できることに、私はワクワクしています。Trm1はクラウドでディープラーニングモデルをトレーニングするための最高のコストパフォーマンスと、EC2での最速のパフォーマンスを提供してくれるでしょう」とセリプスキー氏は語った。

続けて「Trn1はEC2のインスタンスとしては初めて、最大で毎秒800ギガバイトの帯域を提供します。そのため、大規模なマルチノード分散型トレーニングのユースケースには絶対に最適です」という。これは画像認識、自然言語処理、不正検知、予測などのユースケースに有効なはずだとのことだ。

さらに、これらのチップをネットワーク化して「ウルトラクラスター」とすることで、より強力なパフォーマンスを発揮することができる。

「これらを一緒にネットワーク化して、何万もの訓練アクセラレーターがペタバイト規模のネットワーキングへ相互接続した状態を、私たちは『ウルトラクラスター』と呼んでいます。そうしたウルトラクラスターの訓練を、強力な機械学習スーパーコンピューターが行い、パラメータが何兆個もあるような複雑な深層学習のモデルでも快速で訓練できます」とセリプスキー氏はいう。

セリプスキー氏によると、同社はSAPなどと協力して、この新しい処理能力の利用を追究していく計画だとのことだ。

画像クレジット:Ron Miller

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Verbitの文字起こしプラットフォームは人工知能と人間の知能を組み合わせて高い精度と早い納期を実現

1億5700万ドル(約178億6000万円)を調達したシリーズDラウンドからまだ半年足らずにもかかわらず、AIを活用したトランスクリプション&キャプションのプラットフォームであるVerbit(ヴァービット)は、同社を20億ドル(約2275億円)と評価するシリーズE投資ラウンドを、2億5000万ドル(約284億3000万円)でクローズしたと発表した。今回の資金調達により、同社の資金総額は5億5000万ドル(約625億6000万円)を超えた。

この新たな投資ラウンドは、Third Point Ventures(サード・ポイント・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家であるSapphire Ventures(サファイヤ・ベンチャーズ)、More Capital(モア・キャピタル)、Disruptive AI(ディスラプティブAI)、Vertex Growtht(ヴァーテックス・グロース)、40North(フォーティノース)、Samsung Next(サムスン・ネクスト)、TCPが参加した。

VerbitのCEO兼創業者であるTom Livne(トム・リブン)氏は、この資金を製品開発への投資と、垂直方向および地理的な拡大の継続に使用すると述べ、買収戦略も倍増させると付け加えた。

シリーズEをクローズしたことで、Verbitは近い将来に予定されているIPOに一歩近づいたと、上場計画について訊かれたリブン氏は答えた。

Verbitは、それまで法律の分野でキャリアを積んでいたリブン氏によって2017年に設立された。リブン氏は、テープ起こしの納期の遅さに不満を感じることが多かったが、弁護士としてその問題に正面から取り組むためのツールを持っていなかった。そこで同氏は、AIを活用したトランスクリプションとキャプションのプラットフォームを提供するスタートアップを設立し、AI駆動の自動トランスクリプションサービスとプロのトランスクリプターを結合させた。

約300億ドルと推定されるトランスクリプション業界は、非常に細分化されており、小さな家族経営の会社がたくさんある。この市場は統合の準備ができていると、リブン氏はTechCrunchにメールで語り、Verbitは5月に、2番目の買収先であるVITACを5000万ドル(約56億7000万円)で買収完了したと付け加えた。

Verbitのプラットフォームの特徴は、人工知能と人間の知能の両方の力を利用して、業種に特化したトランスクリプションやキャプションを提供し、各業界に適したソリューションを構築していることだと、リブン氏はいう。

「当社のAIは、特定の業種や顧客に基づいてトレーニングされているので、当社のプラットフォームは、時間の経過とともに改善されるカスタムモデルを構築することができます。つまり、Verbitの顧客は、法律、教育、メディア、企業などの分野にいて、それぞれに、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)やSOC IIコンプライアンスなど、独自の業界固有の規制や基準に準拠したトランスクリプションやキャプションを提供することができるということです」と、リブン氏は述べている。

さらに、機械学習と自然言語処理(NPL)を用いたモデルにより、99%以上の精度と、業界標準より10倍も早い納期を実現していることも、同社の大きな差別化要因であると、リブン氏は語った。

Verbitは、メディア、教育、企業、法律、政府機関など、2000社以上の顧客にサービスを提供している。リブン氏によれば、その顧客の中には、CNN、Fox(フォックス)、Disney(ディズニー)、Coursera(コーセラ)、Stanford(スタンフォード)、Harvard University(ハーバード大学)、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、AT&Tなどが含まれるという。

同社は急速に成長しており、前年同期比で6倍の収益成長を遂げ、年間の経常収益は1億ドル(約113億円)を超えていると、リブン氏は続けた。また、同社はキャッシュ効率に優れ、163%という高い顧客維持率を誇っており、これらは顧客からの信頼を示す重要な指標であると、同氏は付け加えた。

同社がトランスクリプションの分野で競合する企業として、リブン氏はRev.com(レブ)や3Play Media(スリープレイ・メディア)の名前を挙げた。

英国とオーストラリアで強い存在感を示しているVerbitは、ドイツ、フランス、スペインなど、欧州へのさらなる拡大を計画していると、リブン氏は述べている。これらの国々は、かなりのインバウンド関心が見られるため魅力的であると、リブン氏は付け加えた。

「市場機会は非常に大きく、業界リーダーとしての当社の立場を考えれば、我々はこれらの市場に迅速に参入することができます」と、リブン氏はいう。

Verbitは、ニューヨーク、コロラド、ピッツバーグ、パロアルト、カナダ、テルアビブ、キエフの470人を超える従業員と、世界中に3万5000人のフリーランスのトランスクリプターと600人のプロのキャプション担当者を擁している。

「今回の資金調達は、トランスクリプション分野におけるマーケットリーダーとしての地位を確固たるものにする当社の能力に対する信頼の証です」と、リブン氏は語る。「この業界を近代化するための強力な技術プラットフォームを構築し、垂直統合された音声AIソリューションを構築する当社の戦略は、私たちのお客様に多大な価値をもたらし、お客様のビジネスをよりわかりやすいものにしてきました」。

「Verbitは、トランスクリプション市場において卓越した技術によるオーガニックとインオーガニックの成長を兼ね備えた特別な企業です」と、Verbitの取締役会に加わるThird Point Venturesのマネージングパートナー、Rober Schwartz(ローバー・シュワルツ)氏は述べている。「このような大規模で断片化された市場で、デジタルトランスフォーメーションと同時進行の統合の機が熟している時に遭遇できるチャンスは、滅多にありません」。

画像クレジット:Verbit

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(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ロボットとAIが「空中庭園」の設計と建設をサポート、チューリッヒ工科大学による実験プロジェクト

建築や建設は、常に技術や素材のトレンドの最先端を静かに進んできた。チューリッヒ工科大学のような著名な工科大学で、AIやロボットを使った新しいアプローチのプロジェクトに取り組んでいても何ら不思議ではない。そこで行われている設計と建設を自動化する実験は、10年後に住宅やオフィスがどのように作られるかを示している。

このプロジェクトで作られているのは、古代都市バビロンの伝説的な建造物にヒントを得た「空中庭園」、つまり巨大なプランターの彫刻物だ(ちなみに、バビロン遺跡の有名な「イシュタル門」を発掘・盗掘したロバート・コールドウェイは私の祖先である)。

2019年に始まった「Semiramis(セミラミス)」(伝説的なバビロンの女王にちなんで名づけられた)は、人間とAIのデザイナーによるコラボレーションだ。もちろん全体的なアイデアは、プロジェクトの生みの親である建築学教授のFabio Gramazio(ファビオ・グラマジオ)氏とMatthias Kohler(マティアス・コーラー)氏のクリエイティブな頭脳から生まれたものだ。しかし、そのデザインは、大きさ、水やりの必要性、建造の様式などの基本的な要件を、コンピューターモデルと機械学習アルゴリズムに入力することで生み出された。

例えば、デザインの過程で、チームはこの20メートルを超える建造物を構成する大きな「ポッド」の位置を微調整したり、表面を構成するパネルのレイアウトを変更したりすることがある。そうすると、彼らが作成したソフトウェアは、その変更に合わせて全体の位置関係や他のパネルの形状を即座に調整し、自重に安全に耐えられることを確認する。

セミラミス空中庭園のCGによる完成予想図(画像クレジット:Gramazio Kohler Research)

もちろん、建築業界ではすでに多くの自動化されたプロセスが取り入れられているが、このプロジェクトでは、最終的なコントロールをAIに任せるという点でにおいて、これまでの限界を押し広げる試みだ。何といっても重要なのは、全体が崩壊しないように建築的なスペルチェックをAIにやらせるのではなく、人間とAIによる真のコラボレーションを実現するということである。

「コンピューターモデルを使うことで、従来の設計プロセスを逆に辿ることができ、プロジェクトの設計範囲をすべて探求することが可能になります。その結果、今までに見たこともない、しばしば驚くような形状が生まれるのです」と、コーラー氏はチューリッヒ工科大学ニュースの記事で述べている

最終的な設計に到達すると、建設はもう1つの人間と自動化の混成チームによって行われる。4本のロボットアームが一心不乱に作動して、複数の重い部品(1つのポッドには数十個の部品がある)を固定し、人間がそれらを結合するための樹脂を塗布する。この手法は、数年前に同じチームが使用した、ロボットを自動化されたアシスタントとして使用するやり方よりも一歩進んだものだ。

関連記事:大工ロボットと一緒に家を建てよう

セミラミスはこのワークショップで製作された後、最終的にはTech Cluster Zug(テッククラスター・ツーク)に向けて1個ずつ輸送される。2022年の春には完全に組み立てられ、土や種を受け入れる準備ができるはずなので、近くに行かれる際には是非、立ち寄ってみてはいかがだろうか。

画像クレジット:ETH Zurich

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

北極圏にデータセンターを構えて実質無料で冷却、Neu.roはゼロエミッションの機械学習モデル構築ソリューションを発表

企業が機械学習を活用してビジネスをより効率的に運営しようとする動きはますます活発になっているが、機械学習モデルの構築、テスト、稼働には膨大なエネルギーを必要とすることも事実だ。アーリーステージのスタートアップ企業でフルスタックのMLOps(エムエルオプス、機械学習運用基盤)ソリューションを手がけるNeu.ro(ニューロ)は、より環境負荷の少ないグリーンなアプローチに取り組んでいる。

同社は米国時間11月22日、フィンランドのクラウドインフラストラクチャパートナーであるatNorth(アトノース)とともに、ゼロエミッションのAIクラウドソリューションを発表した。

同社によると、atNorthはティア3に適合するISO 27001認定のデータセンターを提供し、そこでNVIDIA(エヌビディア)A100を搭載したDGXおよびHGXシステムを稼働させるという。80MWの電力容量を持つこのデータセンターは、すべて地熱と水力エネルギーで稼働している。さらに、北極圏に位置しているため、実質的に無料で冷却することができ、Neu.roのソリューションを使用して機械学習モデルを構築する顧客に、エネルギー効率の高いソリューションを提供できる。

Neu.roの共同設立者であるMax Prasolov(マックス・プラソロフ)氏によると、この問題を調査した結果、コンピューティングとテレコミュニケーションが世界の総エネルギー消費量の約9%を占めており、この数字は今後10年間で倍増する可能性があることがわかったという。プラソロフ氏らは機械学習モデルの構築がその中でも重要な役割を果たすと考え、自社の二酸化炭素排出量を削減するために、atNorthと提携することを決めた。

「当社ではすべてのオペレーションとすべての実験を、ゼロエミッションのクラウドに移行することに決めました。目標は、クレジットを購入して使用量を埋め合わせることができるカーボンニュートラルではありません。問題は、どうやってゼロエミッションを達成するかです。私たちは、顧客のために機械学習モデルをトレーニングする際に、非常に多くのエネルギーとコンピューティングパワーを費やしていることに気づきました。それこそが、間違いなく、我々が排出している最大のカーボンフットプリントであることを理解したのです」と、プラソロフ氏は述べている。

その一方で、同社はソフトウェアソリューションを通じて、より効率的な方法でモデルを構築する方法を考え出した。これによって必要なエネルギー量を削減し、さらに持続可能なソリューションを提供することが可能になる。

製品自体については、同社は柔軟性のあるクラウドネイティブなサービスを提供しており、そこでツールの一部を提供するものの、企業が自分たちにとって最適と考える方法で補う余地を十分に残している。

「当社のアプローチは、データの取り込みから、モニタリング、説明可能性、パイプラインエンジンなど、構築が必要なツールをすべて1つずつ構築するのではなく、相互運用性を重視しています。まだ構築されていないものを構築し、すでに存在するKubernetes(クバネティス)によるツールのユニバースに接続します」と、同社の共同設立者である Arthur McCallum(アーサー・マッカラム)氏は説明する。

このスタートアップ企業は現在、商用のソリューションを提供しているが、オープンソース版のスタックにも取り組んでおり、まもなく、おそらく年内にはリリースされる見込みだ。同社の目標は、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)というビッグ3以外の小規模なクラウドベンダーに、クラウドベースのAIソリューションを提供することである。これには世界各地の地域的なベンダーも含まれるだろう。

Neu.roは2019年に創業し、2020年にソリューションの最初のバージョンを公開した。これまでにシード資金として230万ドル(約2億6500万円)を調達しているという。

画像クレジット:a-image / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

特許庁、商標審査のための技術を公募する機械学習コンペティションを11月26日から実施

特許庁、商標審査のための技術を公募する機械学習コンペティションを11月26日から実施

特許庁は11月22日、初めての試みとなる機械学習コンペ「AI×商標:イメージサーチコンペティション」を実施すると発表した。図形商標の検索を行うためのAI技術を用いた、イメージサーチツールの開発を目的としている。採用された機械学習モデルは、特許庁の審査に試験導入される。賞金総額は50万円で、1位30万円、2位15万円、3位5万円となっている。

具体的には、類似する図形商標のデータを学習し、大量に存在する図形商標から類似画像を予測するモデルを開発するというもの。審査では、その精度が問われる。

参加資格は特になく、個人でも団体でも参加できる。参加希望者は、コンペの実施事業者であるNishikaでアカウント登録(無料)を行い、案内ページ(下記)から参加する。コンペのルールとしては、同一人物による複数アカウントからの参加は不可、オープンかつ無料で商用利用が可能なソフトウェアのみ利用可(Google Cloud Vision APIなど、有償のツールの利用は禁止)などがある。

https://www.nishika.com/competitions/22/summary

スケジュール

  • コンペティション開会式:2021年11月26日19時から20時
    開会式ライブ配信URLはこちら
  • コンペティション開始:2021年11月26日
  • コンペティション終了:2022年1月31日
  • 入賞者決定:2022年2月中予定

患者の治療に専念できるようになる、AI診断可視化プラットフォームLifeVoxelが約5.7億円のシード資金を調達

サンディエゴのスタートアップLifeVoxel(ライフボクセル)は、より迅速で正確な予後のためのAI診断可視化プラットフォームのデータインテリジェンスを強化するため、シードラウンドで500万ドル(約5億7000万円)を調達した。

Prescientという名称のプラットフォームは、診断、ワークフロー管理、トリアージに使用され、医師や病院はソフトウェアやハードウェア技術の管理でストレスを受けることなく、患者の治療に専念することができる。

Software-as-a-Service (SaaS) プラットフォームは、放射線科、循環器科、整形外科などのさまざまな医療分野で、医療施設が遠隔診断に使用する。Prescientには診断用の画像が保存されており、医師は携帯電話を含むあらゆるデバイスから必要に応じて画像を解析することができる。また、診断結果の注釈やレポートを作成する機能もある。

LifeVoxelの創業者でチーフアーキテクトのKovey Kovalan(コベイ・コバラン)氏は「今回のラウンドで確保した資金は、診断の効率と精度の向上のために、類似性や異常性、予測診断を識別できるデータインテリジェンスを提供できるよう、深層学習AIモデルや機械学習アルゴリズムの構築に役立てる予定です」と話す。

「つまり、当社が成長を続けることで、医療関係者が患者のどこが悪いのかをこれまでよりも迅速に把握できるようにし、より早く治療に取り掛かることができるようになるのです」とコバラン氏は述べた。

今回のラウンドには、医療や放射線の専門家、医療技術に関心のある富裕層など、さまざまな投資家が参加した。

マレーシアで生まれ育ったコバラン氏は、オハイオ州立大学でコンピュータサイエンスを学び、卒業後は人工知能を専門とするようになった。その後、研究のため、そして好奇心から、GPUを使った人工知能を医療画像の分類に応用し、その結果「インターネット上で医療画像のゼロレイテンシーのインタラクティビティを可能にする」プラットフォームの開発につながった。

このプラットフォームは、ソフトウェアを使用する病院のテクノロジーコストを約50%削減するように設計されていて、施設のニーズに応じて拡張または縮小することができる。また、医師が世界中のどこからでも患者やそのデータにアクセスできるようになり、よりスピーディーな治療が可能になる。

コバラン氏は、このプラットフォームを利用して、画像がオンプレミスで管理されているために共同作業がしづらいという医療画像の現状を変え、人工知能を活用したものにしたいと考えている。LifeVoxelはこの技術を使って、インテリジェントな可視化による診断結果の向上を目指している。

「専門家が不足している地方の人々は、どんなデバイスでも放射線技師のワークステーションにすることができるこのプラットフォームによって、都市部と同じように画像検査のレビューで専門医のネットワークにアクセスできます。最近ではパンデミックの間に、これまでにないインタラクティブな3D VRテレプレゼンスを実現するために、数千マイル離れた遠隔地のプロクターと手術室内の外科医との間でこのような技術が展開されました」。

新型コロナパンデミックをきっかけに、より多くの医療機関がリモートや遠隔医療の機能を拡大している中で、LifeVoxelの技術はタイムリーなものだ。加えて、従来のクラウドベースのシステムから脱却し、患者の予後を向上させるためにAI技術を採用する病院が増えている。

LifeVoxelの共同創業者で社長兼CEOのSekhar Puli(シェーカル・プーリー)氏は「医療用画像処理および放射線科には、従来のシステムの不備を補うダイナミックなソリューションが必要です」と話す。

「今回の資金調達により、世界中の医療用画像アプリケーションの事実上のプラットフォームになるというビジョンを加速させるだけでなく、ヘルスケアの未来のために、遠隔医療イメージングや高度な技術ベースのAIソリューションを大きく前進させることができるでしょう」。

画像クレジット:phuttaphat tipsana / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nariko Mizoguchi

キーワード検索を超える「ニューラル検索プラットフォーム」開発のJina.aiが約34億円調達

ベルリンを拠点とするJina.ai(ジナエーアイ)は、ニューラル検索を利用して、ユーザーが非構造化データ(動画や画像を含む)から情報を見つけ出すことをサポートしているオープンソースのスタートアップだ。同社は現地時間11月22日、Canaan PartnersがリードしたシリーズAで3000万ドル(約34億円)を調達したことを発表した。このラウンドには、新規投資家のMango Capitalの他、既存投資家のGGV Capital、SAP.iO、Yunqi Partnersも参加し、Jina.aiの資金調達総額は3900万ドル(約44億円)となった。

Nan Wang(ナン・ワン)氏、Bing He(ビン・ヘ)氏とともにJina.aiを創業したCEOのHan Xiao(ハン・シャオ)氏は、深層学習ニューラルネットワークを使って、従来のキーワードベースの検索ツールを超えるというのがニューラル検索だと説明する。伝達学習表現学習などの比較的新しい機械学習テクノロジーを利用することで、同社の中核のJinaフレームワークはデベロッパーが特定のユースケースに応じた検索ツールを迅速に構築するのに役立つ。

「画像、音声、動画などの場合、まずディープニューラルネットワークを使って、このデータフォーマットを普遍的な表現に変換します」とシャオ氏は説明する。「ここでは、ほとんどが数学的なベクトル、つまり100次元のベクトルです。そして、マッチングアルゴリズムでは、一致する文字数を数えるのではなく、数学的な距離、つまり2つのベクトル間のベクトル距離を数えます。このようにして、基本的にこの種の方法論を使って、あらゆる種類のデータ検索問題や関連性の問題を解決することができるのです」。

シャオ氏は、Jinaが検索のためのTensorFlowに似ていると表現した(TensorFlowはGoogleのオープンソースの機械学習フレームワークだ)。人々がAIシステムを設計する際のデザインパターンをTensorFlowやPyTorchが定義したように、Jinaは人々がニューラル検索システムを構築する方法を定義し、その過程で事実上の標準となることを目指している。

しかしJinaは、同社が現在展開する製品の1つにすぎない。Jinaベースのニューラル検索アプリケーションの構成要素を開発者が共有・発見できるマーケットプレイスであるJina Hub、あらゆるディープニューラルネットワークを微調整するためのツールである、最近立ち上げたFinetunerなども提供している。

「この1年半、我々は巨大なニューラル検索タワーの基盤となる中核インフラの構築に多大な労力を費やしてきましたが、その作業は終えました。今、我々はこの大きな建物の1階と2階を少しずつ構築しており、エンド・ツー・エンドの開発体験を提供しようとしています」とシャオ氏は話す。

同社によると、Jina AIの開発者コミュニティには現在約1000人のユーザーがいる。ビデオゲーム開発者がゲームエディターの右クリックメニューに関連するゲームアセットを自動入力するために使用したり、リーガルテックのスタートアップがPDF文書のデータを利用したQ&A体験をチャットボットで提供できるようにするために使用したりと、さまざまな用途がある。

オープンソースのJinaフレームワークには、2020年5月の発表以来、すでに200人近くの外部貢献者が参加していて、同社はこのプロジェクトに関するSlackコミュニティもホストしている。

「我々がオープンソースを採用している大きな理由は、オープンソースの速度にあります。私は開発の速度がソフトウェアプロジェクトの成功の鍵を握ると考えています。多くのソフトウェアは、この速度がゼロになってしまうことでダメになるのです」とシャオ氏は説明する。「我々はコミュニティを構築し、高速に反復するためにコミュニティを活用してフィードバックを集めています。我々のようなインフラソフトウェアにとってこれは非常に重要なことです。すばやく改善するには、使いやすさやアクセシビリティなどについて、一流の開発者たちにフィードバックしてもらう必要があります」。

Jina.aiは、今回調達した資金でチームを倍増させ、特に北米での事業を拡大する計画だ。増強したチームで、Jinaエコシステム全体を広げるための研究開発に投資し、新しいツールやサービスを立ち上げる。

「テキストデータ用に構築された従来の検索システムは、画像や動画、その他のマルチメディアがあふれる世界では機能しません。Jina AIは、企業をモノクロからカラーに変え、高速で拡張性があり、データにとらわれない方法で非構造化データを解き放ちます」とCanaan PartnersのJoydeep Bhattacharyya氏は話す。「オープンソースのフレームワークを使った初期のアプリケーションでは、意思決定の改善や業務の改善、さらには新たな収益源の創出などの機会をニューラル検索が支えており、未来の兆しがすでに見えています」。

画像クレジット:Jina.ai

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

転職した過去の顧客に接触できるようになる、予測マーケティングと営業インテリジェンスツールのUserGemsが約23億円調達

商談に関心を示さない相手に割く時間を削減しつつ、商談が成立する可能性がある見込み顧客と接触する方法を見つけることは、営業とマーケティングの世界においていわば究極のゴールである。この度、UserGems(ユーザージェムズ)という名のスタートアップが、AIとデータマッピングを組み合わせて、B2Bの営業・マーケティングで手応えが得られそうな顧客候補を予測、特定するプラットフォームを開発、2000万ドル(約23億円)を調達したことを発表した。このプラットフォームにより、以前に取引があったが現在は別の仕事に転職している顧客と接触することが容易になる。この種の課題に取り組むセールステックに好機が訪れているようだ。

今回のシリーズAラウンドは、Craft Ventures(クラフト・ベンチャーズ)がリードし、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)とTiger Global(タイガー・グローバル)が新たに参加した。また、以前から同社に投資しているUncork Capital(アンコーク・キャピタル)や、個人エンジェル投資家も参加しており、同ラウンドの調達額は合計2240万ドル(約25億5000万円)となった。

UserGemsは現在、Procore(プロコア)、Medallia(メダリア)、UserTesting(ユーザーテスティング)、Sisense(サイセンス)、BrightTALK(ブライトトーク)など、90社ほどの中堅企業を顧客に持つ。今回調達した資金は、製品開発と人材に投資する予定だ。

サンフランシスコに本社を置くUserGemsには、アイデアやビジネスが予期せぬ場から生まれて創業に至ったという興味深い背景がある。

UserGemsのCEO兼共同創業者であるオーストリア人のChristian Kletzl(クリスチャン・クレッツル)氏は、ノースウェスタン大学でMBAを取得してシカゴに住んでいた時、当時欧州のPwC(ピーダブリューシー)で働いていた双子の弟Stephen(スティーブン)に、米国に移住して一緒にスタートアップを立ち上げようという話を持ちかけた。

彼らは、書籍、電化製品などの中古品をより効率的に販売するeBay(イーベイ)やCraiglists(クレイグリスト)と同じ業界に参入すべく、ShelfFlip(シェルフフリップ)というeコマースソリューションを開発した。当初、彼らはこのアイデアでY Combinator(Yコンビネーター、YC)に応募し、合格したのだが、ShelfFlipのコンセプトはそれ以降、跳躍する様子はなかった。

クリスチャンは次のように語る。「私たちはShelfFlipでYCに参加したが、YC参加中にそのアイデアを捨てた。YC参加中に方向転換をした企業が数多くあることを知って力を得て、もう一度、新しいアイデアを一から考えた。数多くのYC同期企業やその他の企業と話をして、SmartHires(スマートハイヤーズ)のアイデアを生み出した」。SmartHiresは、同じ投資ポートフォリオ内のスタートアップの情報を参照できるネットワークだ。

TechCrunchは以前にこちらの記事で、2015年冬期のYCに参加した彼らのSmartHiresについて取り上げている。

クリスチャンとスティーブンのクレッツル兄弟が開発したSmartHiresには、顧客(特に、クリスチャンが「SmartHiresのメインの柱」の1つと呼ぶ顧客)が、ある企業から別の企業へと転職していくのをトラッキングできるソフトウェアが含まれている。スタートアップでは社員の入れ替わりが激しい。そのため、クレッツル兄弟がこのアイデアをYC同期に話したところ、SmartHiresに対してというより、そのアイデアに対して熱心な反応が返ってきた。

「私たちが実際に立ち上げた会社よりも、そのアイデアに関心を持った人の方が多かった。そこからUserGemsが生まれた。つまり、YC参加中に私たちは2回も方向転換をしたことになる」とクリスチャンは回想する。

UserGemsは「営業とマーケティングの動向」と「労働力の最新の動き方」という2つの基本的なアイデアに基づいて開発されている。

労働力に関しては、終身雇用の時代のみならず、同じ企業に数年務める時代もすでに終わりを迎えて久しく、今は「大退職時代」に入っている、とクリスチャンは指摘する。

UserGemsは、Google検索からニュース記事まで多岐にわたる公開された情報源から情報を収集、処理しているが、同社がトラッキングのために利用するデータベースやウェブサイトによると、最低でも20%の人が毎年転職するという。つまり、ある人が現在就いている職に翌年もとどまっているかどうかを定期的に予測するのは難しいということだ。

営業・マーケティングについては、デジタル時代の最中でデータドリブン化が飛躍的に進んだ。人々に関する情報をかつてなく大量に入手できるようになり、大人数に対して一斉にマーケティング目的の接触を図る作業を管理するソフトウェアや、それを実行するチャンネル、その成果を測定する分析ソリューションなども、かつてなく増えている。それでも、企業についてすでに知っている、あるいはその企業が売るものにすでに関心を持っている人にアプローチした方が、営業・マーケティングが成功する「命中率」は、各段にアップする。

UserGemsは基本的に、これら2つの状況を合わせたソリューションだ。営業・マーケティングツールとして、企業がすでに使用しているCRMと統合し、その企業と以前取引があった顧客をトラッキングすることにより、その顧客が別の職場に移っても取引が継続できるようにして「マーケティング対象の最有力候補」を作る。「これこそ、営業プロセスで使える宝の山だ」とクリスチャンは語る。

UserGemsが行っていることは、ある意味では新しいことではない、とクリスチャンは指摘する。優秀な営業担当者は元来、有望な営業先の記録を常に保持して定期的にチェックしている。その作業を基本的に誰でも「大規模に」行えるようにしたのがUserGemsだ。

これは、UserGemsが構築したプラットフォームの第1段階にすぎない。営業先の情報が集まると、ユーザーが誰と接触しているかを機械学習アルゴリズムが学習しはじめ、類似商品の利用状況や他のシグナルに基づいて、次にアプローチすべき営業先がレコメンドされるようになる。そのようにして、ユーザーは購買へとつながる可能性がより高い営業先を見きわめることができる。

UserGemsは、一方では、ZoomInfo(ズームインフォ)、LinkedIn(リンクトイン)など、特定の企業にいる的確な見込み顧客を探せるプラットフォームと競合している。また、もう一方では、一般的に「予測的営業」と呼ばれるセールステック分野で、急激に成長中のスタートアップであるPeople.ai(ピープルドットエーアイ、新型コロナウイルス感染症の影響で多少成長に陰りが見えたものの、持ち直して現在の評価額は10億ドル(約1140億円)を超えている)、LeadIQ(リードアイキュー)、6sense(シックスセンス、現在の評価額は20億ドル[約2280億円]以上)などと同業である。しかし、この分野は、頻繁に転職が繰り返される現在の傾向がこれからも続き、そのことが営業面での課題をさらに複雑にすることを考えると、その課題を解決するためのよりスマートなアプローチが今後も注目を集める分野だと言える。それこそ、エンタープライズ向けスタートアップの大型追加投資ラウンドにいくつも参加してきたTiger Globalのような投資会社がUserGemsに早期から投資している理由の1つだ。

Craft Venturesのパートナー兼COOであるBrian Murray(ブライアン・マレイ)氏は、声明の中で次のように語っている。「B2B営業・マーケティング担当者は現在、営業先のことを深く理解する点で困難に直面している。彼らの大半が、同じ方法で見込み案件を創出し、一般的な内容の営業用メールやそれに続くメールを何百通も送っている。多くの営業チームが目標を達成できず、顧客獲得コストが跳ね上がっていくのはそのためだ。UserGemsは、過去のユーザーが将来の商機であり、急成長中のチームにとって紛れもない価値を持つ財産となって、パイプラインを拡大し、勝率を高め、顧客離れを減らすということを理解している」。

画像クレジット:MicroStockHub / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

機械学習運用基盤(MLOps)スタートアップの話をよく聞くようになってきた

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

ああ、先週の金曜(米国時間11月19日)の午後はちょっと苦労していた。米国にいない人には、ちょっと説明が難しい。簡単に言えば、先週の終わりになって、私たちの警察と司法のシステムのある種の欠陥が明るみに出たのだ(訳注:警察のヘリコプターから撮影されたとみられる大量の監視映像が米国で流出した)。というわけで、今回のExchangeニュースレターは予定よりも短くなる。

DevOps(デブオプス)の市場は多忙で、資金も豊富だ。例えば先日はOpslyft(オプスリフト)の話を聞いた。インドと米国にまたがるこの企業は、ソフトウェアを作成する際のポストデプロイメント側のツールをまとめた統合DevOpsサービスを開発している。すばらしい企業なので、もし資本調達を発表したら、もっと時間をかけて記事を書くことになるだろう。最近の記憶に残る別の例を挙げるなら、先日公開されたプレデプロイメントDevOpsサービスであるGitLab(ギットラボ)がある。

つまり、大小を問わずのハイテク企業はDevOpsツールを構築しているということだ。そして、機械学習運用基盤(MLOps、エムエルオプス)の市場は、大きな兄弟(DevOps)と同じように急速に成長し始めている。TechCrunchは、MLOpsスタートアップのComet(コメット)が今週資金調達したことを記事にしたが、これを読んでThe Exchangeは、MLOpsスタートアップの別の資金調達イベントであるWeights & Biases(ウエイツ&バイアス)のラウンド、を取り上げたことを思い出した。

関連記事:企業の機械学習利用の空隙を満たすMLOpsのスタートアップCometが約57億円調達

こんな話を持ち出したのは、先日私たちがSapphire VenturesのJai Das(ジェイ・ダス)氏にインタビューを行い、AIによる資金調達のトレンドについての情報を収集したからだ。その対話の中で、私はAIOps(エーアイオプス)のアイデアを持ち出し、それが私たちが注目すべき第3の「Ops」カテゴリーになるのではないかと口にした。しかし、ダス氏によれば「MLOpsは基本的にAIOpsです」ということなので、2つの大きなカテゴリーに考え方をほぼ限定することができる。

とはいえ、AI(人工知能)とML(機械学習)は正確には同じものではない(ここであまり争うつもりはない、大まかな話なので)よって、2つの異なるタイプの仕事が、同じソフトウェアの中に収まるかどうかは興味深いところだ。

さらにAIについて

AIのテーマに沿って、今回はAI市場についてもう少し触れてみよう。Anna(アンナ)記者が、世界の人工知能投資の動向を論じた最近のエントリーを踏まえて、メモを用意した。彼女は、今日のAIファンドがどこに使われているのか、また「AI」という呼び名にふさわしいものの定義が変わることで、スタートアップ活動のための資金量がどのように増えていくのかについて考えている。

地理的な格差が私たちの注意を引いたが、AIの定義や応用が広がれば、資金はより均等に分配されると考えている。例えば第3四半期に新たにラテンアメリカのAIユニコーンに選ばれたのは、フードテックのNotCo(ノットコ)とデジタルIDを提供するUnico(ユニコ)の2社だった、またメキシコの融資会社Kueski(キュースキー)も大規模なラウンドを行った。私たちはこれをフィンテックと呼んでいたが、これもまたAIを活用したも企業だ。それがAIの新たな現実だとすれば、ラテンアメリカやアフリカなど、世界のあらゆる場所で、AIを活用して現実の問題に取り組むスタートアップに資金が集まるようになるのも不思議ではない。

来週はカナダにお住まいの方にはぜひ読んでいただきたいものがあるのだが、今回のAI記事の締めくくりとして前回のAI記事には少し遅れてしまったPoint72 VenturesのSri Chandrasekar(スリ・チャンドラセカール)氏からの回答をご紹介しよう。

AIに特化したスタートアップの経済性についての質問に答えて、投資家であるチャンドラセカール氏は以下のようなコメントを寄せてきた。

最近のAIへの関心のほとんどは、大規模なラウンドを調達している企業たちの収益の成長によってもたらされているのだと思います。しかし、その増収の背景にあるのは、商品の需要の高さと労働参加率の低さという極めてシンプルなものなのです。これは、Point72 Venturesのディープテック・ポートフォリオ全体に見られることです。AIは人間を補強して生産性を向上させ、場合によっては自動化に適した作業を人間に代わって行い、人間はより付加価値の高い戦略的な活動に専念できるようになります。これまでは、こうした自動化を導入するための労力が大きかったのですが、(人材不足によって)カスタマーサービスのリクエストに対応する人や受付を担当する人を雇うことができなくなると、自動化が俄然意味を持ち始めます。

最近私たちは、マクロ環境がスタートアップにどのような影響を与えるかについて、多くのことを学んでいる。インフレの進行でインシュアテックの利益が損なわれたり、「the Great Resignation(大退職時代)」が進んだりすることで、AIソフトウェアの需要が高まっているのだ。心に留めておきたい。

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その他のあれこれ

  • ユタ州を拠点とするPodium(ポディウム)の最近の巨額ラウンドを受けて、私たちは同州のより大きなスタートアップシーンを掘り下げたPitchBookの最新記事をご紹介する。ご想像の通り、数字は上向いている。
  • また、巨額ラウンドといえば、Faire(フェア)が今週、シリーズG調達を行った。だから?紹介したい興味深い成長の統計データがあったのだ。Faireは、自らの表現では「オンライン卸売市場」であり、かなり急速に成長しているビジネスだ。同社が「3倍」の収益成長と「年間10億ドル(約1141億円)以上のボリューム」を自己申告したことで、私たちの注目を集めた。もし非公開市場が、この会社をベンチャーキャピタルのフォアグラにしようと太らせているのでなければ、この会社はIPOの候補になるだろう。
  • さて他には?OKRスタートアップのKoan(コーアン)は、シリーズA調達に失敗した後、Gtmhub(ジーティーエムハブ)に売却されることになった。私たちは長年にわたってOKRソフトウェア市場について多くの記事を書いてきたので、この出来事を紹介しておきたいと思う(KoanのCEOは、公の場とメールの両方で、会社の終わりについてのメモを共有してくれたので、この件については、時間があれば来週お伝えすることになるかもしれない)。
  • そして、最後はBraze(ブレーズ)だ。ニューヨークを拠点とするソフトウェアのユニコーン企業であるBrazeは先週上場した。The Exchangeは上場日に同社のリーダーにインタビューを行った。すべてのIPO発表会と同様に、対象となる会社は、発言できること(あまり多くない)とできないこと(ほとんどすべて)に関して、かなり厳しい指導を受けていた。それでも、IPOの準備を始めたのは数年前で、実際に上場するためのプロセスを開始したのは約1年前であったという、準備プロセスについての情報を得ることができた。私たちは、2018年以降資金調達の必要がなかった同社が、なぜ直接上場を目指さなかったのかを知りたいと思った。BrazeのBill Magnuson(ビル・マグナソン)CEOは興味深い話をしてくれた。つまり最近の変化を踏まえれば、従来のやり方のIPOは一部の人々が考えているほど柔軟性に欠けるものではないというのだ。これから数週間、2021年の最後の公開を眺めながら、そのことを考える価値はあると思っている。なお、Brazeは、1株あたり65ドル(約7415円)で上場した後、現在は1株あたり94.16ドル(約1万700円)となっている。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

企業の機械学習利用の空隙を満たすMLOpsのスタートアップCometが約57億円調達

機械学習がビジネスを動かすための欠かせない技術になっているが、その中でモデルを構築する工程は今なお、反復と実験を必要としている。それに対しCometは、モデルをアイデアからプロダクトまで仕上げるための全体的なプラットフォームを作り、米国時間11月18日は5000万ドル(約57億円)のシリーズBを発表した。これに先立つシリーズAは、4月の1300万ドル(約15億円)だった。

OpenViewがリードしたこのBラウンドには、これまでの投資家であるScale Venture PartnersやTrilogy Equity Partners、そしてTwo Sigma Venturesが参加した。Crunchbaseのデータによると、同社の累積調達額は7000万ドル(約80億円)近くになる。

共同創業者でCEOのGideon Mendels(ギデオン・メンデルス)氏によると、プロダクトはノートパソコンでもクラウドでも、あるいはオンプレミスのクラスター上でも、どのようなプラットフォームでも使える。「Cometは実験の追跡調査からモデルのプロダクションのモニタリングまで、機械学習の全ライフサイクルを管理し最適化します。そのためデータサイエンティストに力をつけ、機械学習の技術者が開発を加速できるプラットフォームだ」とメンデルス氏はいう。

メンデルス氏によると、そのアプローチは実績を出し、同社の年間経常収益は2021年5倍になり、UberやZappos、Etsyなど150社がCometを利用している。またOpenViewのパートナーでリード投資家のMackey Craven(マッキー・クレイヴン)氏によると、彼がCometに惹かれたのは、同社が大きなチャンスを抱えた新興市場のための有効なプロダクトを作っているからだ。「私たちが今、目にしているのは、彼らを十分サポートできる大きくて永続性のある市場機会のコアとなりうるような傑出した創業チームと、そしてその市場における変化との稀なる組み合わせです。その変化の理由は、新しい市場の創造または、技術の転位によって新規参入者たちが、私たちが作り出す今後の大きな市場における価値を創造し捉えているからです」とクレイヴン氏はいう。

現在、同社の社員は50名で、4つの大陸の9カ国から来ている。計画では、2022年は100名になる予定だ。メンデルス氏によると、ダイバーシティとインクルージョンは同社の価値システムの重要部分だ。氏は「実はそれこそが、弊社の企業文化の核であり、今でも従業員の35%はマイノリティの人たちであり、今後の雇用でもそれに配慮していく」という。

同社の新製品であるArtifactsは、文書のバージョニングと同じように動作し使えるデータのバージョニングツールだ。それはデータの変更履歴を知るために、データサイエンティストたちが利用する。

メンデルス氏によると「機械学習のパイプラインで仕事をしているときCometのArtifactsがあれば、データの各回のスナップショットを自動的にバージョン化できます。変更を加えるたびに、そのバージョンができます」。そのアドバンテージはいろいろあるが、その主なものは、モデルの訓練に使っているデータがどう変わってきたか、データサイエンティストにわかることであり、訓練時のモデルのデータと最終プロダクションのデータを比べられる。

画像クレジット:yucelyilmaz/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)