Via、現代自動車、Aptivが米国でロボタクシーサービスを2021年上半期に展開

Hyundai(ヒュンダイ、現代自動車)とAptiv(アプティブ)の合弁企業Motional(モーショナル)と、オンデマンドシャトルスタートアップのVia(ビア)は2021年上半期に米国の都市の公道でロボタクシーサービスを展開する計画だ。オンデマンドシェアリングロボタクシーの「青写真」を描き、こうしたドライバーレスの車両をどれくらい大量輸送機関に統合できるかを調べるのが目的だ、と各社は話した。

今回の提携とサービスについて、詳しいことはまだわかっていない。詳細は後日明らかにすると語り、サービスを展開する都市、サービスの対象となる地理的範囲、使用される車両の台数やタイプについての情報はなかった。明らかにしたのは、Motionalがすでに事業を展開している米国の都市の1つでサービスを立ち上げる予定で、ボストン、ピッツバーグ、ラスベガス、サンタモニカから絞り込むということだ。

画像クレジット:Via

提携によりMotionalの自動走行車両は、Viaのプラットフォームにコネクトする。Viaのプラットフォームは予約、ルート案内、乗客と車両の割り当て、身元確認、顧客エクスペリエンス、車両管理などに対応する。今回の提携は、MotionalがラスベガスでLyft(リフト)と結んでいるものと似ている。

提供しようとしているロボタクシーはまだ「ドライバーレス」サービスではない。すべての自動走行車両の運転席にはセーフティオペレーターが乗り込む。しかし、商業展開の開始を目指していると周知した上で、MotionalとViaはサービス提供でユーザーに料金を請求できる。ユーザーは一般市民に提供されているViaのプラットフォーム経由でロボタクシーサービスを利用できる。このプラットフォームでは、Waymoのアーリーライダープログラムで採用されているプラクティスと同様、ユーザーがあらかじめ審査されたり、秘密保持契約にサインしなければならないということはない。

トランジットネットワークの一環であるオンデマンドのシェアリングロボタクシーサービスの商業展開に向けてはハードルだらけだ。車両はオンデマンドで、最適なルートを選択し、複数の乗客とシェアされるものでなければならない、とMotionalとViaはいう。新型コロナウイルスのパンデミックが事態をさらに複雑なものにしているが、ただチャンスでもあるとMotional社長兼CEOのKarl Iagnemma(カール・イアグネマ)氏は指摘する。

「新型コロナが交通機関についてのとらえ方や消費者需要をよりフレキシブルにし、またさまざまなオプションをともなものへと変えているという特殊な時期にこのパートナーシップは結ばれた」とイアグネマ氏は発表文で述べた。同氏は、調査対象となった米国人の70%が新型コロナ感染リスクが交通手段の選択に影響を与えてると答え、5人に1人がパンデミック以前よりも自動運転に関心がある、とするMotionalが最近行った調査(Medium投稿)に言及した。

ViaとMotionalは、パーテーション、マスクのような個人防護具、頻繁な消毒、車両利用者の健康と安全を確保するための接触追跡など幾重もの安全策を講じてサービスが提供されると述べた。

自動走行車両を配車するためにプラットフォームをどのように使うことができるか、Viaはすでにテストとデモンストレーションを行った経験がある。2019年10月にVia、現代自動車、中国AV企業のPony.aiはカリフォルニア州アーバインでBotRideサービスを提供すべく提携した。このサービスでは、Pony.aiの自動運転システムとViaの配車サービスプラットフォームを活用した現代自動車の電動自動走行車Konaクロスオーバーを展開した。またViaはNavyaとAurrigoとともに、豪州ニューサウスウェールズ州での「BusBot」AVサービスでデモンストレーションも行った。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Via現代自動車AptivMotional自動運転

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(翻訳:Mizoguchi

トロント市がLocal Motors製8人乗り自動運転シャトルを試験運行へ

トロント市はLocal Motors(ローカル・モータース)と契約し、2021年春からオール電化の自動運転シャトルフェリー「Olli 2.0」を乗客に開放し、試験的に自動運転シャトルバスの運行を開始する。試験は交通事業会社のPacific Western Transportationとの共同実施となり、トライアル期間中は、2名の常駐スタッフ、Pacific Western Transportationのオペレーター、トロント交通局(TTC)またはMetrolinx(メトロリンクス)のカスタマーサービス担当者が参加する。Metrolinxは、トロントは通勤輸送サービスの大半を担っている鉄道公社だ。

Olli 2.0の車両は、一度に8人まで乗車可能で、車椅子用のスロープや固定ポイントなどのアクセシビリティ機能も備える。また、乗客に情報や最新情報を提供するためのAVシステムも搭載する。さらに、安全上の懸念やその他の理由で必要が生じた場合には、車両に搭載されている安全オペレーターがいつでも手動制御を引き継ぐことができる。

今回策定されたパイロットルートは、West Rouge(ウェスト・ルージュ)とRouge Hill GO(ルージュ・ヒル・ゴー)駅間でサービスを提供する。Rouge Hill GO駅は、トロント市の西に位置するGreater Toronto Area(グレーター・トロント・エリア)のコミュニティである Scarborough(スカーボロー)の近隣地域だ。このサービスは、通勤者を同地域の主要な長距離輸送用ライトレール・ネットワークの1つに接続するように設計されている。市によると、新型コロナウィルスを考慮して、自律型シャトルがその時点でどのような清浄度や消毒基準で維持されているかを確認することも目標の1つだという。

このようなラストマイルのユースケースは、予測可能な繰り返しのルートを比較的低速で移動することを伴うこともあり、都市における自動運転輸送のターゲットとなっている。これにより、現在の大動脈ではカバーされていない部分に、市内のライトレールや地下鉄をつなぐインフラが追加され、Olliのシャトルを使ったサービスルートの展開が進む可能性がある。

カテゴリー:モビリティ
タグ:トロント、Local Motors

画像クレジット:Local Motors and City of Toronto

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Cruiseがドライバーなし自動運転車の公道テスト認可をサンフランシスコ州から取得

GM(ゼネラル・モーターズ)傘下の自動運転開発Cruise(クルーズ)は、ドライバーが乗り込まない車両のサンフランシスコでの公道テストをカリフォルニア州当局から許可された。同社にはソフトバンク・ビジョン・ファンドやホンダ、T. Rowe Price & Associatesが出資している。

カリフォルニア州の自動運転車両を監督するDMV(車両管理局)は、認可によりCruiseは自動運転車両5台をドライバーを乗せずにサンフランシスコ内の特定の道路でテストできる、と述べた。同社はセーフティー・ドライバーが乗り込む自動運転車両のテストを2015年に取得している。

「この許可を取得するのは当社が初めてではありません。しかし米国の主要都市の道路で用いる初の会社になります」とCEOのDan Ammann(ダン・アマン)氏は10月15日、同社のブログに書いた。「今年末までに当社はサンフランシスコの公道で、ガソリンを使用せず、ハンドルを誰も握っていない車を走らせる予定です。安全を維持しながらドライバーを不要にすることは自動運転車にとって真のベンチマークであり、また化石燃料を燃やすことは交通の未来を構築することにはならないからです」。

アマン氏は、ドライバーレスの許可が出たことは控えめだが同社にとってマイルストーンだと表現した。同社は自動運転に6年取り組んでいる。

「この取り組みは注意を引くものではないかもしれません。目にするのは街中を静かに自動で動く車だけです。スピードもそう出しません。衝突もしません。静かに走行するだけです」と同氏は書いた。「しかし実際にサービスは立ち上がっていませんが、我々の壮大な計画です。サンフランシスコのカオス的でごちゃごちゃした通りが我々の発射場です。Cruiseのミッションに何年も心血、汗、涙を注いできた場所です。そして200万マイル(約320万キロ)のテスト走行をした場所で、実際に初めて道路走行を行います。自律的に走行する電動車両が、世界で最も運転が難しい都市を走るのです」。

運転席に誰も乗り込まないことを意味するドライバーレスの認可にはいくつかの制限がある。Cruiseの車両は日夜問わず時速30マイル(約48キロ)以下で道路を走行すること、濃い霧や大雨の時はテストしないことなどが条件だ、とDMVは述べた。ドライバーレスの認可を申し込む企業は保険あるいは500万ドル(約5億円)の債券、車両がドライバーなしで走行できること、連邦政府自動車安全基準をクリアしていること、あるいは国家道路交通安全局の除外、SAEレベル4もしくは5をクリアしていることを証明する必要がある。

Cruiseはカリフォルニアでドライバーレス認可を受けた5番目の企業だ。他にはWaymo、AutoX、Nuro、Zooxが認可を取得している。DMVによると、現在60社がセーフティドライバー付きでの自動走行車両のテスト許可を持っている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Cruise、自動運転

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(翻訳:Mizoguchi

Waymoが運転手不在の自動車送迎サービスをフェニックスで一般公開

Google(グーグル)の自動運転プロジェクトから、親会社のAlphabet(アルファベット)のグループ企業になったWaymo(ウェイモ)は、ドライバーレス自動車の送迎サービス(Ride-Hailing、ライド・ヘイリング)の様子を一般公開した。

同社によると、米国時間10月8日からWaymo Oneサービスのメンバーは、フェニックス地域で家族や友人を完全にドライバーレスの送迎サービスに連れて行けるようになるという。既存のWaymo Oneの会員は、ドライバーレスライドを最初に利用できる。さらに同社によると、今後数週間のうちに、Google PlayとApp Storeから入手可能なアプリを通じて、より多くの人が直接サービスに参加できるようになるという。

Waymoは「その乗り物の100%が完全にドライバーレスになる」と述べた。その100%の主張には少し説明が必要だ、一般の人々は、ハンドルの後ろに人間が乗っていない何百台ものWaymoブランドのCHRYSLER PACIFICA(クライスラー・パシフィカ)のミニバンが、フェニックスの600平方マイル(約1554平方km)以上のエリア全体に突然氾濫することを期待してはいけない。

同社は現在、約600台の車両を保有しており、そのうち約300~400台がフェニックス地域にある。Waymoは、これらの車両のうち何台がドライバーレスライド専用になるのか、正確な数は明らかにしなかった。しかし、WaymoのCEOであるJohn Krafcik(ジョン・クラフシック)氏は最近のインタビューで、フェニックス地域にはさまざまな車種が存在するとTechCrunchに説明している。これらの中には「ライダー専用」のものもあれば、訓練を受けた安全オペレーターが運転するものもある。また、一部の車両はテストにも使用される。

クラフシック氏はTechCrunchの取材に対し「あらゆる面で準備ができています。しかし、準備ができているかどうかを知るにはどうすればよいいのかのでしょうか」と話し、「以前から安全面には自信を持っていたのですが、私たちには素晴らしい初期ライダーのグループがいて彼らがサービスに磨きをかけるのを助けてくれました」と続けた。「これらの初期のライダーが『満足と喜びを提供しているかどうか』を判断するのに役立った」と締めくくった。

今年後半には、Waymoは訓練を受けた車両オペレーターによる乗り物の提供を再開し、容量を追加し、より広い地理的エリアにサービスを提供できるようにする予定だ。クラフシック氏によると同社は現在、車内の衛生と安全のために、最前列と後部座席の間の車内バリアを追加しているところだという。

Waymoは約100平方マイル(約260平方km)のエリアで活動している。Waymo Oneのメンバーに提供されるドライバーレスまたはライダーのみのサービスエリアは約50平方マイル(約130平方km)だと同氏。

さまざまな注意点があるが、今回の取り組みはマイルストーンであり、同社が過去10年間に達成した数多くのマイルストーンのうちの1つとなる。過去5年間は特に盛りだくさんで、視覚障がい者のSteve Mahan(スティーブ・マハン)氏が2015年にオースティンの街中で同社のFireflyプロトタイプに乗って「初ドライバーレスライド」を体験したことに始まる。2017年には、カリフォルニア州キャッスルにあるWaymoのテスト施設のクローズドコースで、十数人のジャーナリストがドライバーレスライドを体験した。そして昨年11月、TechCrunchはフェニックス郊外の公道をWaymo Pacificaのミニバンで初めてのドライバーレスライドを体験した。

このようなデモやテストが続く中でも、同社は商用製品の規模を拡大していった。2017年、Waymoはアーリーライダープログラムを開始。このプログラムでは、NDA(秘密保持契約)に署名した一般市民の中から審査を受けたメンバーが、フェニックス地域での自動運転車の走行が可能になった。これらの自動運転車はすべて、ハンドルの後ろに人間の安全運転手が付き添っていた。

Waymoはその後、NDAに縛られることなく公共利用を目的とした自動運転配車サービス 「Waymo One」 を立ち上げた。繰り返しになるが、これらの乗り物はすべて運転席に人間の安全オペレーターを配置しており、必要に応じて運転を引き継ぐことができる。 その後同社は、初期のライダープログラムのメンバーをよりオープンなWaymo Oneサービスに徐々に移行させた。また、乗車料金の実験を開始し、サービスエリアを拡大した。現在同社は、フェニックス地区の全プログラム(アーリーライダーとWaymo1)を対象に料金を請求している。なお、人間の安全オペレータ付きのWaymo Oneサービスは、アリゾナ州チャンドラーと同様にフェニックス郊外においても約100平方マイル(約260平方km)の営業エリアを持つ。

Waymoが、人間の安全運転手のいない車に人を乗せる準備ができていることを示す、最初の意味のある兆候が現れたのは昨年秋。アーリーライダープログラムのメンバーが、間もなくドライバーレスライドが利用できるようになることを示すメールを受け取ったときとなる。

その後、限定された無料のものだったがドライバーレスライドは実現した。ここで重要なのは、NDAの保護を受けたアーリーライダープログラムの対象となっていたことだ。Waymoは、2020年の総ライドの約5~10%がNDAのもとで早期ライダーの独占グループのために完全にドライバーレスになるまでゆっくりと規模を拡大していった。その後、新型コロナウィルスの感染蔓延が発生したことでサービスを停止した。同社は現在、アリゾナ州とカリフォルニア州で安全運転手によるテストを続けている。ただしスタッフの間では、新型コロナウィルスを終息させること、カリフォルニアの山火事によって引き起こされる大気の質の問題に対処するという二重の問題についていくつかの懸念が生じている。

Waymoは新型コロナウィルス対策のために「ユーザーにマスクの着用を義務づけ、全車両に手指消毒剤を用意し、クラフシック氏が言うところの車両内に送られる空気量を4~5回増加させる『キャビンフラッシュ』を毎回乗車後に実施するなど、新たな安全ルールを追加した」と述べている。

クラフシック氏はまた「Waymoは近々オール電化のJaguar I-Paceを追加し、まずは公道でテストを実施し、その後早期ライダープログラムに追加する予定だ」と述べている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Waymo、自動運転

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(翻訳:TechCrunch Japan)

自律走行の電動貨物車両を開発するスウェーデン拠点のEinrideが約10億円調達

スウェーデンのスタートアップであるEinride(アインライド)はここ4年間、周囲の関心や投資を集め、そして不思議な外観をしたポッドでいくつかの企業との契約を獲得してきた。このポッドは電動かつ自律的に走行する車両で、貨物運搬用だ。しかし開発、テスト、自律走行車両認証の促進は費用がかかり、時間を要する。特に運転席すらなく、遠隔操作に頼るタイプではそうだ。

同社はT-Pod車両でいくらかの進展をみせた。現在4台が公道を走行し、顧客のスウェーデン食品生産企業Oatlyの貨物を運搬している。2500万ドル(約26億円)を調達してから1年がたったいま、Einrideは既存の投資家から追加で1000万ドル(約10億円)を調達した。

今回の資金調達発表は同社が10月8日に行う新車両の公開に先立つものだ。車両について多くは明らかにされておらず、短く曖昧なティーザービデオの提供にとどまっている。

Einrideは、1000万ドルの調達ラウンドはNorrsken VCがリードし、EQT Ventures fund、Nordic Ninja VC、Ericsson Venturesが参加したと述べた。Nordic Ninja VCはEinrideの顧問会議にも加わる。

調達した資金はEinride Podsの公式展開の促進に向けて使われる、とEinrideは述べた。同社は、新型コロナウイルスパンデミックの初期にAIとロボティクスのスタートアップがめちゃくちゃな状態になり、閉鎖したところもあることを認識していた。そして、コンタクトレスの配達オプションに対する需要が新型コロナの影響で増大していることは偶然の一致ではないとしている。現在のOatlyやスーパーマーケットチェーンLidlとの提携、そして顧客に出荷量や輸送距離、それに伴うガス排出量に関する情報を提供するための貨物モビリティプラットフォームの立ち上げを含めた「新たな提携の強い引き合い」を維持してきたた、と述べた。

「自律走行トラックに関しては多くの期待と不確定要素が入り混じっています。しかしわかっていることは、歴史において最大のビジネスチャンスの1つであるということです」とEinrideのCEO、Robert Falck(ロバート・ファルク)氏は声明で述べた 。同氏は、自律輸送産業が数年のうちに、特にグローバルパンデミックを受けて拡大する可能性があると見込んでいる、と付け加えた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:資金調達、自動運転、Einride、スウェーデン

画像クレジット:Einride

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(翻訳:Mizoguchi

Armが自動運転・自律制御システム向けの新チップを発表、安全性を高めるダブルチェック機能を搭載

チップ設計メーカーのArmは米国時間9月29日、車載および産業向けの自律システム向けソリューションの新しいチップ群を発表した。このチップには、CPUにArm Cortex-A78AE、GPUにMali-G78AE、画像信号プロセッサにArm Mali-C71AEを採用する。

これら3つのチップを際立たせているのは安全機能を内蔵している点だ。ここでいう「安全性」とは、すべての計算が本質的にダブルチェックされていることを保証する追加機能を備えていることを意味する。

従来、ArmはCPUに2つのモードを提供してきた。「スプリットモード」では、すべてのコアが独立して動作し、オフラインになったときに素早く安全性をチェックする。これは、コアが最大性能に近い状態で動作するため、安全性の要求が低い、あるいはまったく必要ないアプリケーションに適している。

画像クレジット:Arm

一方の「ロックモード」は、コアはペアで動作し、その動作は相互に照合される。これにより、これらのチップは自動車の安全性に関するさまざまな要件を満たせるが、コア数が半分しか使用できないため、パフォーマンスは明らかに低下してしまう。

そこで同社は本日、新たにハイブリッドモードを発表した。これは両方の長所を組み合わせたモードで、中程度の障害検出しか必要としないが高パフォーマンスが要求される用途に向いている。コアは引き続きスプリットモードで動作するが、コアを統合する共有クラスタロジックはロックモードで動作する。これにより、ロックモードの安全メカニズムが、別のレイヤーでスプリットモードのパフォーマンスとともに提供される。

新しいMali GPUのAEバージョンは、同社が「フレキシブル・パーティショニング」と呼ぶ仕組みを導入しており、必要に応じてさまざまなGPUコアをワークロード間で簡単に分割できるようになる。つまり、マップのような機能をドライバーの監視や計器クラスタの実行などの安全機能とは別に、1つのパーティションで実行できるというわけだ。

従来同社は、これらのAEブランドのデザインを自動車産業向けに開発していた。AEは実際には「Automative Enhanced」の略だ。しかし、現在では、より広範な自律型システムの市場をターゲットにしている。

Armで自動車事業担当副社長を務めるChet Babla(チェット・バブラ氏)は「私たちは本日、知的財産としてのAEを発表しました。もともとは『Automative Enhanced』という意味だったので、自動車市場向けの特定の機能、性能、安全性が備わっています」と説明した。「しかし、産業用OEMメーカーとの話し合いの中で、彼らの持つ安全性要件が『実際には自動車業界で行っていることは、我々が直面している安全性とコンピューティングの課題に非常に適用可能だ』ということがわかったのです」と続けた。

同社はNVIDIA(エヌビディア)による400億ドル(約4兆2200億円)買収については比較的沈黙を保っているが、NVIDIAは独自のGPUに加えてARMのCPUを使用するJetson AGXなどを使用して、自律型ロボット用の独自プラットフォームを提供している、両社が自律型システムの市場に目を向けていることは注目に値するだろう。その方針がすぐに変わることはなさそうだ。

NVIDIAのハードウェア開発担当上級副社長であるGary Hicok(ゲイリー・ヒコック)氏は「将来の自動運転車や自律動作する機械を実現するには、強力な新しい処理能力が必要です。新しいArm Cortex-A78AEのリードパートナーとして、NVIDIAは高度な性能と安全性を提供します」と述べている。

画像クレジット:SAM YEH / Contributor / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

視覚障がい者が自動運転タクシーを呼ぶ際の困難をWaymoはどう解決か、12月のSight Tech Globalで探ろう

想像してほしい。視覚に障がいがあって車の運転ができないとしたら、あなたの生活はどう変わるだろうか。私はそれを毎日、家で目の当たりにしている。私の妻は法律で認められる盲人で、とても忙しい人なのだ。妻はUberとLyftを敬愛している。いつでも、どこへでも行ける素晴らしい選択肢を提供してくれているからだ。だから1年前、Waymoの自動運転タクシーにちょっと乗る機会を得たときに、彼女はどれほど喜んだか。セイフティドライバーは彼女に、シートベルトを締めて「スタート」ボタンを押すように言った。まったくなんということか。スタートボタンはどこにあるの?

彼女の外出の用件はフェニックスですでにサービスを開始しているWaymoの自動運転タクシー開発におけるアクセシビリティへの取り組みについて話すことだったので、私たちは皆笑ってしまった。WaymoはフェニックスのFoundation for Blind Children(FBC)と緊密に連携して体験のフィードバックを集め、サンフランシスコのLighthouse for the Blindにも助言を求めている。12月2~3日に開催されるバーチャルイベントのSight Tech Globalでは、Waymoのアクセシビリティへの取り組みを紹介する。このイベントは、AI関連テクノロジーが障がい者支援技術やアクセシビリティに今後どのような影響を与えるかをテーマとする。参加は無料で現在登録を受け付けている

Waymoのアクセシビリティのセッションには重要な人物が3人登場し、Waymoの取り組みを紹介する。Clement Wright(クレメント・ライト)氏(LinkedIn)はWaymoでユーザーエクスペリエンスとアクセシビリティを担当するプロダクトマネージャーだ。ライト氏は、障がいを持つ人も含めてすべての利用者が安全で快適で便利にWaymoの完全ドライバーレスサービスを利用できるよう努めている。Marc Ashton(マーク・アシュトン)氏(LinkedIn)は、フェニックスに本拠地を置くFoundation for Blind ChildrenのCEOで、視覚障がい児教育のリーダーとして全米で知られている。自身の息子に視覚障がいがあることからアシュトン氏はこの分野に関心を持ち、2007年にCEOになった。Bryan Bashin(ブライアン・バシン)氏(Lighthouse for the Blindサイト)はサンフランシスコにあるLighthouse for the BlindのCEOだ。このNPOはカリフォルニアのほか世界中の視覚障がい者に教育、トレーニング、支援、コミュニティを提供している。バシン氏は大学生の頃から視覚に障がいがあり、キャリアの大半を視覚障がい者の平等、アクセス、トレーニング、メンタリングに捧げてきた。

Waymoはアクセシビリティに優れた自動運転車両の利用を追求しているが、これは簡単なチャレンジではない。ライト氏は「現在、タクシードライバーは厳密な運転以外の業務をこなしている。ドライバーはピックアップ時に窓を開けて乗客と話したり、乗客が車を見つけられるようにしたりする。我々がWaymo Driverの構築にあたって取り組んでいる最大の課題のひとつは、人間の乗務員がいない車で利用者の付加的なニーズを理解することだ」と語る。

WaymoはFBCの成人メンバーと連携し、Waymoタクシーを呼ぶときに使うモバイルアプリのフィードバックを得ている。例えばアプリからタクシーのクラクションを鳴らして車を見つけるメカニズムなどだ。ライト氏は「特定の人々、例えば視覚障がい者を支援するために組み込んだ機能が実はその他の利用者にもとても役立つということを、我々は何度も目にしてきた。このことから我々はインクルーシブデザインにさらに幅広く取り組むようになった。特定の利用者のニーズから重要な課題を理解し、それを活かしてすべての人に役立つソリューションを構築する」と語っている。

自律車両には、法律上の盲人である130万人の米国人などの障がい者が安全で効率よく目的の場所へ移動できるようにする可能性がある。Waymoがプロダクト開発サイクル全体でアクセシビリティにどう取り組んでいるかを詳しく知り、全盲とロービジョンの両方のユーザー、そして視覚障がいをもつ人々の代表にあたる協力組織からのフィードバックが開発プロセスにおいて果たす重要な役割を探ろう。12月2~3日に開催されるSight Tech Globalのセッションに参加してほしい。今すぐ無料で申し込める

Sight Tech Globalではスポンサーを募集している。現在、Verizon Media、Google、Waymo、Mojo Vision、Wells Fargoがスポンサーとなっている。イベントはボランティアによって運営され、イベントの収益はすべてシリコンバレーにあるNPOのVista Center for the Blind and Visually Impairedの収入となる。

画像クレジット:Waymo

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(翻訳:Kaori Koyama)

インテル子会社のMobileyeが中国最大手の民間自動車メーカーの吉利汽車集団と運転支援契約を締結

Mobileyeのコンピュータビジョン技術が、中国最大の民間自動車メーカーである吉利汽車集団(Geely Automobile)の新型プレミアム電気自動車「Zero Concept」(ゼロコンセプト)に採用されることになった。MobileyeのオーナーであるIntel(インテル)は米国時間9月23日、北京オートショーでこの内容を発表した(Intelプレスリリース)。ゼロコンセプトとは、吉利汽車とVolvo Car Group(ボルボ・カー・グループ)の合弁会社として設立されたブランド「Lynk & Co」(リンク&カンパニー)が生産しており、Mobileyeの運転支援システム「SuperVision」(スーパービジョン)を採用している。

またインテルは、Mobileyeと吉利汽車が先進運転支援システムの長期大量契約を締結したことを発表した。これは、吉利汽車の車両にMobileyeのコンピュータビジョン技術が搭載される台数が増えることを意味している。

Mobileyeの最高経営責任者でインテルの上級副社長でもあるAmnon Shashua(アムノン・シャシュア)氏は「今回が初めての契約だ」と説明している。続けて「また、Mobileyeの導入後に無線でシステムのアップデートを提供する計画について、OME先が公式に言及したのは今回が初めてです。システムのアップデートは機能として常に含まれていますが、吉利汽車とMobileyeは運転支援機能を簡単にスケールアップして、車の一生を通じてすべてを最新に保つことができることを顧客に保証したいと考えています」と付け加えた。

イスラエルに拠点を置くMobileyeは、2017年に153億ドル(約1兆6100億円)でインテルに買収(未訳記事)された。同社の技術とサービスは、BMW、アウディ、フォルクスワーゲン、日産、ホンダ、ゼネラルモーターズなどの自動車メーカーの車に採用されており、死角や潜在的な車線逸脱、衝突の危険性、制限速度などの問題をドライバーに警告する機能が含まれている。

吉利汽車の親会社は浙江吉利控股集団で、ボルボ・カー・グループの親会社でもある。吉利汽車によると、2019年に同社のブランドは合計で146万台以上を自動車を販売したという。中国は世界で最も急成長している電気自動車市場の1つ(McKinsey & Companyレポート)で、新型コロナウイルスの感染蔓延の影響で販売が打撃を受けたものの、消費者への補助金や充電インフラへの投資などの政府の政策によりEV市場の回復が期待されている(Wolrd Economic Forum記事)。

画像クレジット:Intel

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(翻訳:TechCrunch Japan)

VWのTratonグループが中国TuSimpleと自動運転トラック開発で提携、スウェーデンで実証実験へ

VW(フォルクスワーゲン)の大型トラック事業を手掛けるTraton(トラトン)グループは、自動運転(自律運転)トラックの開発に関する合意の一環として、中国の自動運転トラックのスタートアップであるTuSimple(トゥーシンプル)に少額出資した。

両社ともパートナーシップの財務条件や少数株主持分の割合は明らかにしていない。この取引に詳しい情報筋によると、TratonグループはTuSimpleに直接資本投資を行ったという。現物出資が含まれていたかどうかは不明だ。なお今回のTratonの投資は、シリーズEラウンドで2億5000万ドル(約262億円)の調達を目指すTuSimple(未訳記事)の最近の資金調達ラウンドとは異なる。

両社は9月23日、TuSimpleの自動運転車技術を搭載したTratonのScaniaトラックを使用する開発プログラムを発表した。テストはスウェーデンのSödertälje(セーデルテリエ)とJönköping(ヨンショーピング)の間のルートで開始されるという。最終的にTratonは、スウェーデン、ドイツ、その他の国の道路で、ドライバーレストラックのテストを計画している。

なお、Tratonブランドのトラックのレベル4自動運転(特定の場所ですべての操作を完全自動化)を開発するために「緊密に協力」する計画を発表した以外、両社はプログラムの範囲やスケジュールの詳細は明らかにしていない。しかしTratonは「これらのトラックにレベル4の能力を持たせることを目標としており、定められた走行条件の下で、人の手を借りずに完全な自動化を達成し、すべての市場に適用する」と表明している。

Tratonによると「自動運転による走行は、中期的に増加するドライバー不足に対抗する手段として機能する可能性がある」と述べている。そして「最初の導入事例は、特別に区切られたエリア以外の場所で、特に頻繁に利用されるハブ間のルートで実施される可能性がある」と続けた。

この提携によりTuSimpleの自動運転事業は、米国と中国を超えて欧州にまで拡大することになる。Sina、NVIDIA、UPS、そしてTier 1 (ティア1)サプライヤーであるMandoの支援を受けているTuSimpleは、米国で40台の自動運転トラックを運営しており、すでにアリゾナ州とテキサス州の間のテストや貨物輸送に使われている。2015年創業の同社は、中国、カリフォルニア州サンディエゴ、アリゾナ州ツーソンで事業を展開中だ。

今回の提携は、Traton、TuSimple、Navistarの関係をより強固なものとする。TuSimpleは7月、Navistarと提携して2024年までに自動運転型セミトラックを開発し、生産を開始する計画を発表した。計画では、TuSimpleが現在使用しているNavistar Internationalの商用トラックを改造するのではなく、自動運転に特化設計したセミトラックを開発するとしている。戦略的パートナーシップには、NavistarがTuSimpleの非公開株を取得することも含まれている。

一方のTratonは、2016年9月に2億5600万ドル(約268億円)相当で取得したNavistarの16.6%の株式を保有しており、両社は最終的により連携を深める可能性がある。というのも1月にTratonは、所有していないNavistarの残り株を35ドルで買い取るという敵対的買収提案を発表している。そしてTratonは今月、そのオファーを1株43ドル、約39億ドル(約4093億円)に引き上げたという(Bloomberg記事)。

カテゴリー:モビリティ

タグ:VW Traton TuSimple 自動運転

画像クレジット:Traton Group

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Zooxがカリフォルニアで自動走行車両の無人テスト許可を取得

2020年にAmazon(アマゾン)に買収された自動走行車両テクノロジー開発のスタートアップであるZoox(ズークス)が、カリフォルニア当局からセーフティドライバーなしでの自動走行車両公道テストの許可を取得した。

許可は州内すべての公道を対象としているものではないが、同社は運転席にセーフティオペレーターがいない車両のテストを行うことができる。カリフォルニア州内での自動走行車両のテストを管轄するカリフォルニア州車両局は、サンマテオ郡フォスターシティの一部でテストできる許可を発行した。

国家幹線道路交通安全局の前ディレクターで、現在Zooxの最高安全責任者を務めるMark Rosekind(マーク・ローズカインド)氏は、同社の「カリフォルニアの顧客に安全で完全電動、良心的な料金の自動走行モビリティを提供するための取り組み」において重要なマイルストーンだとした。

Zooxは自動走行車両に「all of the above」的なアプローチを取ってきた。同社の目的は特定の目的を持つ電動車両の開発、テスト、認証を行い、ロボタクシー車両を展開することだ。この目的に変更はないようだ。アマゾンはZooxがそのまま独立した会社であると述べた。

Zooxはセーフティドライバー付きの自動走行車両テストを2016年から認められている。今回取得した認可により、同社はフォスターシティにある本社近くの決められた公道でドライバーを乗せない状態で自動走行車両2台をテストできる。小雨や霧といった天候での走行も認められていて、最高速度は時速45マイル(時速約72km)だと車両局は9月18日に明らかにした。

全部で60社がドライバー付きでの自動走行車両テストの認可を得ているが、ドライバーなしでとなるとそう多くはない。AutoX(オートエックス)、Nuro(ニューロ)、そしてWaymo(ウェイモ)だけだ。ドライバーなしでのテスト許可を持つこれらの企業は保険の証明、あるいは500万ドル(約5億2000万円)相当の債券を提出し、そしてテクノロジーを使ったリモートオペレーターの訓練などいくつかの規則に従う必用がある。

Zooxはまた、公道上で自動走行車両に人を乗せて運ぶための認可も持っている。これは2018年に取得した。こうした配車サービスの認可はカリフォルニア公益事業委員会の管轄下にあり、取得するには別途さまざまな要件やルールがある。配車サービスの認可により、Zooxは同州の自動走行車両乗客サービス試験事業(CPUCリリース)に参加できる。ただしこの試験では事業者は乗客に運賃を請求することはできない。

Zooxはまた、同社がもう1つのターゲットとして考えているラスベガスでもテストしている。2019年初めにネバダ州車両局から自動走行車両を州道で走行させることができる許可を取得した。同社は昨年ラスベガス地域で新たなルートのマッピングと試験走行を行った。

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(翻訳:Mizoguchi

LiDARのスタートアップOusterが44.5億円を調達、セールスと製品の多様化を進める

LiDARのスタートアップであるOuster(オースター)は、競合ひしめく市場でシェアを勝ち取ろうと、数年にわたり製品ラインの拡大と改良を続けてきた。今、Ousterは4200万ドル(約44億5000万円)を調達したことを発表。この新たな資金を製品開発とセールスの拡大に投入する予定だ。

早い話が、逆風の中で生き残り戦を続けてきたこのサンフランシスコのスタートアップには、進歩の証がいくつか見られるということだ。今回の4200万ドルのシリーズB投資には、従来からの支援者であるCox Automotive、Fontinalis Partners、Tao Capital Partnersはみな参加したものの、新しい投資家の参加はなく、金額も前回の6000万ドル(約63億5000万円)を下回った。Ousterもご多分に漏れず、新型コロナウイルスの影響により従業員を10%削減したことを認めている。

とはいえ、この新型コロナの渦中でラウンドをクローズし、売上げ拡大を継続させようとするOusterの努力は注目に値する。しかも、新型コロナに関連する政府のシャットダウン政策により、サンフランシスコの工場が一時的に閉鎖されている状態にも関わらずだ。事業はこれ以上のレイオフを必要としない程度に伸びており、すべての従業員と臨時作業員の給料も満額支給されていると同社は話している。Ousterは本日までに、1億4000万ドル(約148億2000万円)を調達した。

Ousterは、収益の具体的な数値は公表していないが、12カ月の収益は62%伸びており、第3四半期の売上げは前年比で209%伸びたとのことだ。そのビジネスモデルと幅広い製品ラインを考えれば、この数値にも納得がいく。

LiDARとは、レーザー光線を使って距離を測定し、自動車の周囲の3Dマップを非常に高い精度で生成する装置だ。LIDARは、自動運転車技術業界のほとんどの企業が、ロボットタクシーやその他の自動運転車両の安全な運用には必須のセンサーだと考えている。Elon Musk(イーロン・マスク)氏や一部の企業は別かも知れない)。

しかし、Ousterの技術とビジネスのアプローチは、多くの競合他社とは違っている。

同社のレーザー発生器と光検知機は、集積回路を作るときの標準的な手法(詳しい人にはCMOSといったほうがわかりやすいだろう)によって2つのチップに印刷されている。それにより、個別のコンポーネントを上下に重ねる一般的な方法を使うことなく、目的のソリューションを実現できるという。このアプローチから作られるセンサーは比較的シンプルで、信頼性も高いとOusterは主張する。

「OusterのデジタルLiDARアーキテクチャーは、我々が製品を提供するすべての市場で顧客を勝ち取るという、根本的な優位性をもたらしてくれました。デジタルCMOSテクノロジーはLiDARの未来であり、OusterはデジタルLiDARを最初に発明し、製作し、特許を取り、商業展開した企業です。手頃な価格のこれらのセンサーの解像度階と信頼性を一度でも体験すれば、レガシーなアナログLiDARにはもう戻れなくなります」と、OusterのCEOであるAngus Pacala(アンガス・パカラ)氏は声明の中で述べている。

2020年1月、Ousterは第2世代のLIDAR製品ラインの発売を開始した。それぞれ128本のレーザービームを発する3モデルがあり、1つは都市環境や倉庫の中での自動走行など、さまざまな用途に対応できる。あとの2つは、計測範囲が120メートル、視野角45度の中距離モデルと、範囲が200メートル以上の高速自動運転用の長距離モデル。Ousterによれば、この3つのセンサーはいずれも出荷を開始しており、50種類の異なる設定が用意されているという。

同社のビジネスモデルも、他の多くの企業のものとは違っている。自動車メーカーやロボットタクシーの商品化を目指す企業をターゲットとはせず、より大きな網を投げて事業の多様化を図っている。このLiDARセンサーの販売先にはロボティクス、ドローン、マッピング、防衛、ビルセキュリティー、鉱業、農業などの企業も含まれる。1月に発売を開始した3つの128ビームの第2世代新型モデルの用途は広い。この第2世代は、64ビームの前モデルの発展形であり、解像度が改善されている。

その戦略は功を奏したようだ。Ousterは、2019年3月から顧客ベースを倍増させたと話している。同社によると、現在は15の市場で800の顧客を抱えているとのこと。そこにはKonecranes(コネクレーンズ)、Postmates(ポストメイツ)、Ike(アイク)、May Mobility(メイ・モビリティー)、Kodiak Robotics(コディアク・ロボティクス)、Coast Autonomous(コースト・オートノマス)、米軍、NASA、スタンフォード大学、MITも含まれる。idriverplus(アイドライバープラス)、WhaleAI(ホエールエーアイ)、Hongjing Drive(ホンジン・ドライブ)、qCraft(キュークラフト)といった中国の自動運転車企業への販売も、同社の成長を支えている。

こうした成長を遂げつつも、Ousterは規模の拡大のための資金を必要としている。LiDARセンサーのデザイン、製造、販売は大変な金がかかる仕事なのだ。Ousterは、グローバルなセールスと顧客サービスの能力を高めようとパリ、ハンブルグ、フランクフルト、香港、蘇州にオフィスを開設した。生産施設は2つある。2019年3月にオープンしたサンフランシスコの工場は、以前は新製品を発表する場として使われていたところだ。こちらの生産能力は低い。バリデーションを終えた製品の生産は、Ousterの契約製造業者である東南アジアのBenchmark(ベンチマーク)に渡されている。

現在、Benchmarkでは第2世代センサーを月間数万台生産していると、Ousterは話していた。

カテゴリー:ハードウェア

タグ:Ouster LiDAR 自動運転 資金調達

画像クレジット:Ouster

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(翻訳:金井哲夫)

ロシアYandexがUberとのJVから自動運転事業をスピンアウト、159億円を新会社に投資

自動運転車が実際に普遍的な存在になるまでにはまだ何年もかかる。だが実現したときに最前線に立っているための戦略の一環として、自動運転車の開発や普及に向けた大きな取り組みの1つが今日、重要な一歩を踏み出した。ロシアで検索エンジンとしてスタートした上場ハイテク大手で、米国のGoogle(グーグル)と同じように多くの関連分野に手を拡げたYandex(ヤンデックス)が9月4日、Uber(ウーバー)との合弁事業(JV)で配車サービスと料理宅配を行うMLU BVから自動運転事業をスピンアウトすると発表(Yandexリリース)した。

YandexとUberが昨年MLUのIPOを目論んでいたという報道も(Bloomberg記事)ある中での動きとなった。当時、合弁会社のバリュエーションはおよそ77億ドル(約8160億円)と見られていた。新型コロナウイルスが世界中の配車サービスと料理宅配ビジネスに大きな圧力となり、全般的にIPOが1年前と比べて減少している状況で、MLUのIPO計画がこの数カ月でどう影響を受けたのかは定かではない。

その意味で、同ユニットのスピンアウトはMLUの経済性とコストベースを改善する可能性があるが、Yandexは自動運転への集中投資のためだと述べている。

「Yandexのスピンオフの動機は2つある」と広報担当者は述べた。「ビジネスの観点からは、成長性が高く戦略的に重要なビジネスへの投資を増やすということだ。テクノロジーの観点からは、自動運転技術は実行可能なビジネスとなるべく急速に前進している」

広報担当者はまた、モビリティユニットのIPOは「現在は優先事項ではない。今のところIPOは検討していない。Yandex.Taxi(ヤンデックスタクシー)は、他のYandexビジネスとの相乗効果からさらに多くのものを得ることができると確信している」と付け加えた。

スピンアウトの一環として、Yandexは1億5000万ドル(約159億円)を投資した。同社によると1億ドル(約106億円)の出資と5000万ドル(約53億円)の転換社債が含まれる。同社はこれまでこの事業におよそ6500万ドル(約69億円)を投資したと付け加えた。Yandexは今回のプロセスでUberが保有する株式の一部を買い取り、スピンアウトされる事業の株式の73%を保有する。Uberは19%を保有し、残りの8%はYandex自動運転グループ(SDG)の経営陣と従業員が持つ。

YandexのCEOで共同創業者のArkady Volozh(アルカディ・ボロズ)氏は声明で「当社の事業の戦略的に重要な部分への投資を増やせることを喜んでいる」と語った。「自動運転の分野で、極めて短期間に画期的な成果を達成した。巨大な市場があり、安全で費用対効果の高い交通手段としての自律的モビリティの未来を強く信じている。SDGへの追加投資により自律型モビリティの研究開発と製品化を引き続き追求できる」

自動運転ユニットを担当していたDmitry Polishchuk(ドミトリー・ポリッシュチャック)氏が新しい自動運転グループのCEOに就任する。

Yandexは自動運転ユニットとMLUのいずれのバリュエーションも開示していない。UberがIPOに先立ち、収益性が低く競争が激しい国際事業の一部を売却する戦略の一部(未訳記事)として、2017年に最初のスピンアウトを実施したとき(未訳記事)、MLUの事業全体のバリュエーションは37億2000万ドル(約3940億円)だった。言い換えれば、少なくともいくつかの見積もりに基づけば、それ以来バリュエーションは2倍以上になったということだ。

その間、MLUは特定の地域における拡大のためにいくつか買収を実施(未訳記事)しており、カーシェアリング事業などいくつかの事業を筆頭株主から引き継いだ(Yandexリリース)。なお、現在MLU JVの事業に含まれていない理由は正直わからない。

とにかく自動運転車ユニットは大きく前進した。これには、ロシア、イスラエル、米国における合計約130台の試験車両の開発も含まれる。さまざまな都市や気象条件における自動運転で合計400万マイル(約644万キロメートル)の走行距離を記録した。走行は自動運転会社がAIアルゴリズムに動きを「教える」重要な部分だ。同ユニットはHyundai(ヒュンダイ)との契約(未訳記事)のように、自動車メーカーに技術のライセンスも行っている。

Yandexはまた、2018年に立ち上げた同社のロボタクシーサービスを欧州で最初に展開すると主張している。また、独自の自動宅配ロボットYandex.Rover(ヤンデックスローバー)も開発しており、これも自動運転ユニットが引き継ぐ。

Googleの親会社であるAlphabet(アルファベット)の自動運転部門であるWaymo(ウェイモ)と同様、Yandexの自動運転車ユニットの理論的背景は、Yandexの強力なエンジニアリングチームが開発・展開する知的財産を活用すればコストが抑えられるということだ。

Yandexによると、この契約はスピンオフ後も継続し、会社のインフラやリソースなどへのアクセスは確保される。商業的な成果を得る手段として、開発した技術を、MLUの配車事業と料理宅配事業の中心を形成するYandex.Taxiだけでなく他のeコマースや物流事業にも販売し続ける。

Yandexは上場会社であり、現在の時価総額は約230億ドル(約2兆4000億円)。引き続きYandex SDGの損益を連結し、その収益を「その他の賭けと実験」カテゴリーの一部として報告する予定だ。

画像クレジット:Alexander RyuminTASS / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

SOMPOホールディングスが自動運転OS開発の「ティアフォー」に約98億円出資し関連会社化

SOMPOホールディングスが自動運転OS開発の「ティアフォー」に約98億円出資し関連会社化

SOMPOホールディングスは8月28日、自動運転システム開発事業など展開のティアフォーに対し、第三者割当増資の引受および損害保険ジャパンが保有する株式取得により約98億円を出資し、資本提携契約を締結したと発表した。ティアフォーは、SOMPOホールディングスの関連会社となる。なお、ティアフォーの累計資金調達額は175億円となった。

政府策定の官民ITS構想・ロードマップでは、2020年までに限定地域(過疎地域等)での無人自動運転移動サービスの実現や、2025年度を目途とした全国40ヵ所以上での実装可能性が示されているという。また、工場や商業施設など施設内での実装が全国各地で検討されている。

そこで、SOMPOホールディングスとティアフォーは、自動運転の頭脳にあたるソフトウェア技術と「Level IV Discovery」を一体として提供し、自動運転技術の社会実装を支援する「自動運転プラットフォーム」の開発を事業として両社で展開するため、資本提携を行うことで合意した。Level Ⅳ Discoveryは、損保ジャパン、アイサンテクノロジー、ティアフォーが共同開発するインシュアテックソリューション。走行前にリスク調査を行う「リスクアセスメント」、走行中の「遠隔見守り・トラブル対応」、自動運転車の多様なリスクをカバーする「保険」の3ソリューションにより、自動運転の走行前・走行中・トラブルまでを総合的にサポートすることで自動運転走行の安全を支えるとしている。

両社は「自動運転プラットフォーム」に参画する主要なプレイヤーを募り、一体となって社会実装に向け協創するとしている。また、得られたデータと、これまでに損保ジャパンが培ってきた事故の未然防止や事故対応のノウハウを融合することで、安心・安全な自動運転の実用化を支援するという。

今後は、「自動運転プラットフォーム」開発事業の展開により得られる車両・走行・乗客・位置のデータなどモビリティにかかわる各種データと、保険事業やSMPOホールディングスがすでに展開しているモビリティ事業(CtoCカーシェアリング、駐車場シェアリングなど)から得られるデータなどを組み合わせ、将来的にはMaaSやスマートシティの分野においてSOMPOグループ独自のサービスや新事業の創造を目指す。

SOMPOホールディングスの中核事業を担う損保ジャパンは、過疎地域での移動手段確保、人口減少による物流業界のドライバー不足の解消といった社会的課題の解決策として期待される自動運転技術が、「安心・安全」に社会実装されるために、損害保険会社として果たすべき役割について研究を推進。

これまでに、ティアフォーと自動運転システムの遠隔監視・操作を支援する「コネクテッドサポートセンター」を共同開設。また、それをリスクアセスメントや保険商品と組み合わせて提供し、自動運転技術の社会実装に必要な安全性と利用者の安心感を高めるインシュアテックソリューション「Level IV Discovery」の共同開発に取り組んできた。

また2019年6月には、損保ジャパンがティアフォーに48億円を出資するなど、両社の協業を推進してきた。

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BlackBerryは中国のスマートカーXpengのOSになる

一時期は先頭を走っていたものの、スマートフォン製造ゲームからずいぶん遠ざかってしまった(未訳記事)BlackBerry(ブラックベリー)だが、カナダの拠点でネット接続機器向けのソフトウェアを提供するための移行に忙しい。その機器の中に、スマートカーがある。現在、同社はその部門を中国に移している。

今週、BlackBerryは中国で最も多くの資金を調達した電気自動車スタートアップのひとつであり、中国におけるTesla(テスラ)のライバルでもあるXpeng(小鹏、シャオペン)のレベル3自動運転ドメインコントローラー開発にソフトウェアを提供することを発表した(BlackBerryリリース)。Xpengのインテリジェントコックピットには、QNXと呼ばれるBlackBerryのオペレーティングシステムが搭載される。これで、自動車メーカーの次世代モデル開発に参入したAndroid(アンドロイド)やLinux(リナックス)に対抗することになる(GlobeNewswire記事)。

BlackBerryとXpengの提携には、Aptiv(アプティブ)のような車載システムを総合的に扱う企業Desay SV Automotive(德賽西威汽車、デゼイエスブイ・オートモーティブ)が仲介に立っている。Desay SVは1986年に創設され、Siemens(シーメンス)を含む中国とドイツのジョイントベンチャーとして輝かしい歴史を持つ。恵州を拠点とする同社は、現在は中国をはじめ世界の自動車業界のティアワンブランドに部品を供給しつつ、OEM機器も提供している。

Xpengのドメインコントローラーのカネールには、NVIDIA(エヌビディア)の自動運転車用Xavier(ゼイビア)コックピットチップが使われているため、Xpengの新型車のソフトウェアとハードウェアのかなりの部分が外国の技術に依存している。

現在注目を集めているXpengの量産モデルは、P7と銘打たれた電気スポーツセダンだ。これには、「車の運転状況」の計算を行い「周囲の環境をリアルタイムでモニターし安全な運転判断を行う360度全方位の感知システムを提供する」処理ユニットが搭載される、と同社は発表の際に伝えている。

「Desay SV Atomotiveは、インテリジェントコックピット、スマートドライビング、ネット接続機器に豊富な経験を有しています。BlackBerry QNXの安全性に関する専門技術を加味することで、私たちはともに、有意義なトランスフォーメーションを推進する自動車業界の多様なニーズに対応できるようになります」と、BlackBerry Technology Solutions(ブラックベリー・テクノロジー・ソリューションズ)の上級副社長兼共同経営者であるJohn Wall(ジョン・ウォール)氏は声明の中で述べている。

「その目標にとって、BlackBerryの技術をXpeng Motorsの革新的な新型P7システムに導入できることは、まさに特権といえます」。

Alibaba(阿里巴巴、アリババ)とXiaomi(小米科技、シャオミ)の支援を受けるXpengは、今回の提携により、ニューヨークでの初の募集で11億ドル(約1170億円)の調達を見込んでいる。Li Auto(理想汽車、リーオート)とNIO(上海蔚来汽車、ニーオ)という中国のライバルも、米国でのIPOで同等の資金を調達している。

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カテゴリー:モビリティ

タグ:BlackBerry Xpeng 自動運転 中国

画像クレジット:Xpeng P7 electric sedan

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(翻訳:金井哲夫)

自律走行車の開発を後押しするはずの公道試験「評価」、実は逆効果か

著者紹介:

Grace Strickland(グレース・ストリックランド)氏は、自律輸送業界をはじめとする最先端産業界のテック企業の顧問弁護士として6年以上の実績を持つ弁護士。

John McNelis(ジョン・マックネリス)氏は、Fenwick & West(フェンウィック・アンド・ウェスト)の自律輸送および共有モビリティ部門の主席弁護士。専門は知的財産。California Technology Council(カリフォルニア技術評議会)の自律輸送イニシアチブの議長も務める。

毎年、年末が近づくと、自律走行車の開発企業から不満の声が噴出し始める。毎年恒例となっているこの不満の原因は、California Department of Motor Vehicles(カリフォルニア州車両管理局(DMV))がすべての自律走行車(Autonomous Vehicle、以下「AV車」)開発企業に提出を義務づけている「Disengagement Report(自動運転解除レポート)」だ。AV車の試験を行うすべての開発企業は、試験走行中に「Disengagement」した回数、つまり自律走行モードから人間のドライバーによる手動運転に切り替えた回数を、毎年1月1日までに同レポートにまとめて提出しなければならない。

しかし、すべての自動運転解除レポートには1つの共通点がある。それは、「どの提出企業もレポートの有用性に疑問を呈している」という点だ。サンフランシスコのとある自動運転車企業の創業者兼CEOは公の場で、自動運転解除レポートは「AV車の商業展開が可能かどうかを判断するための意味ある判断根拠を提供する、という本来の目的をまったく果たせていない」と発言している。また、自動運転技術を扱う別のスタートアップ企業のCEOも、レポートの測定基準は「的外れ」だと言っている。Waymo(ウェイモ)は、レポートの測定基準は同社の自動運転技術を把握するのに「有効なインサイトを提供するものではなく、自動運転分野の競合他社と性能を比較するものとしては不十分である」とツイートした。

AV車開発企業がカリフォルニア州の自動運転解除レポートにこれほどまで強く異論を唱えるのはなぜなのだろうか。企業によって異なる試験方法を採用しているため、状況説明が十分に行えない同レポートの測定基準は誤った結論を引き出すことにつながる、というのが開発企業の意見だ。筆者の見解では、レポート内で自動運転解除の状況を説明するための表現とその定義について十分な指針が確立されていないことも、報告データから間違った結論が引き出されることにつながると思う。さらに、自動運転解除率という現在の測定基準では、各社が、数字を低く抑えるためにAV車をより無難な状況で試験走行させるようになったり、より多くのインサイトが得られるバーチャル試験よりも実地試験の方を好むようになったりする恐れがある。

自動運転解除レポートの測定基準を理解する

カリフォルニア州の公道でAV車の試験走行を行いたい企業は、AV Testing Permit(AV車走行試験許可)を取得しなければならない。2020年6月22日時点で、同州にはこの試験許可を受けた企業が66社あり、そのうちの36社は2019年にも同州でAV車の走行試験を行ったことを報告している。全66社のうち、乗客を輸送する許可を取得しているのは5社のみだ。

カリフォルニア州の公道でAV車を走らせる許可を取得した企業は、物損、人身被害、死亡に至った車両事故を、発生から10日以内に報告することが義務づけられている。

2020年度はこれまでに24件のAV車両事故が報告されている。ただし、大半が自律走行モード時に発生したとはいえ、ほとんどすべての事故は、AV車が後ろから衝突されて発生したものだ。カリフォルニア州では、追突事故の場合、大抵は後ろから衝突した方のドライバーに非があるとみなされる。

この車両事故データに有用性があることは明らかだ。消費者と規制当局が最も懸念しているのは、自律走行車が歩行者や乗客にとって安全か否か、という点である。もしAV車開発企業が、自律走行モードで車両大破や歩行者または乗客への深刻な人身被害に至った事故を1件でも報告すれば、その影響力は非常に大きく、事故を起こした車両の開発企業(ひいてはAV車業界全体)への風当たりは相当強くなる。

しかし、自動運転解除レポートで報告されるデータの有用性は、これよりはるかに疑わしい。カリフォルニア州車両管理局は、1月1日から始まる暦年中にカリフォルニア州内の公道でAV車の試験走行を行っている最中に自動運転を解除した回数と解除に至った状況の詳細を報告するよう各社に義務づけている。同局はこれを「AV車の試験走行中に自律走行モードが解除された回数(技術的な不具合、または試験走行ドライバー/オペレーターが安全のために手動走行へと切り替えざるを得ない状況が生じたことに起因する解除)」と定義している

AV車のオペレーターはまた、自律走行モードを解除した頻度と、その解除がソフトウェアの不具合、人為的ミス、車両オペレーターの裁量のいずれによるものなのかを追跡する必要もある。

AV開発企業は自社製品に関する測定可能なデータについては厳重に秘密を守っており、公開するのはせいぜい、制御された環境でのデモ走行を撮影した動画の一部とわずかなデータくらいである。不定期に「安全性に関する年次報告書」を発表する企業もあるが、どちらかと言えばAV車の性能をアピールする販促資料のような感じだ。さらに、公道での試験走行に関する報告を開発企業に義務づけている州は他にない。カリフォルニア州の自動運転解除レポートは例外的な存在なのだ。

このように、AV車に関して入手できる情報がほとんどない状況であるため、カリフォルニア州の自動運転解除レポートはしばしばAV車に関する唯一の情報源として扱われてきた。自動運転解除に関するこのデータは良く言っても「不完全」、悪く言えば「誤解を招く」ものだが、世間がAV車の開発の進み具合や相対的パフォーマンスを判断するにはこのデータに頼るしか方法がない、というのが現状だ。

自動運転解除レポートには状況説明が欠如している

自動運転解除レポートのデータには数字の根拠となる状況説明が欠如しているため、AV車業界の発展度合いを判断する尺度として使うには不十分である、というのが大半のAV車開発企業の意見だ。なぜなら、自動運転解除レポートのデータを読み解くには、試験走行を行った場所や走行の目的に関する情報が欠かせないためだ。

人口密度が低く、気候は乾燥していて、交差点もほとんどない地域で走行した距離と、サンフランシスコ、ピッツバーグ、アトランタのような都市部で走行した距離とでは、意味するものがまったく異なる、と言う業界関係者もいる。そのため、このような2つの異なる地理的環境下で走行した結果をまとめた自動運転解除レポートでは、競合企業を互いに比較することはできない。

また、自動運転解除レポートの提出義務が、試験走行の場所と手法に関する開発企業の決定を左右することを認識しておくことも重要だ。たとえ安全でも自動運転の解除が頻繁に必要になる試験走行は敬遠される可能性がある。自動運転解除率が高くなって、商業展開への準備が競合他社よりも遅れているように見えてしまうからだ。実際には、そのような試験走行こそ、商業展開に最適な車両の開発につながる可能性がある。商業展開への準備が進んでいるように見せるために、走行環境を無難なものにして自動運転解除レポートの報告基準を操作している、と競合他社を批判したAV車開発企業もある。

さらに、無難な走行環境と負担の少ない道路状況によって良好なデータを作り上げることができる一方で、AV車用ソフトウェアを改善するための戦略的な試験走行を行うと、非常に見栄えの悪いデータがはじき出される可能性がある。

一例として、米公共ラジオ局NPRのビジネス情報番組「Marketplace(マーケットプレイス)」のレポーターであるJack Stewart(ジャック・スチュワート)氏が紹介するケースについて考えてみよう

「例えば、まったく新しいソフトウェアを開発して本格展開しようとするある企業が、単に本社が近いからという理由で、カリフォルニア州で試験走行を行ったとする。試験の開始直後は特に多数のバグが見つかり、自動運転を何度も解除することになるだろう。しかし、同じ会社が、自動運転解除レポートの提出が不要な他の州、例えばアリゾナ州で試験走行を行えば、商業運転サービスを開始できるかもしれないのだ」とスチュワート氏は言う。

「そのサービスは非常にスムーズに運行するかもしれない。自動運転解除率という狭義の測定基準1つだけで、AV車開発企業が持つ能力の全体像を把握することなど到底できない。カリフォルニア州が数年前に追加情報の収集を開始したのはよいことだとは思うが、それでもまだ、本来の目的を果たすまでには至っていない」と同氏は続けた。

状況説明に使用する用語の定義が確立されていない

自動運転解除レポートが誤解を招く恐れがあるのは、自動運転解除の状況を説明する用語や表現に関する指針が確立されておらず一貫性が欠如しているためでもある。例えば、自動運転解除の理由を説明する際にさまざまな表現が用いられる中、最も多用されているのが「perception discrepancies(認知の不一致)」という言い回しだが、この表現が正確に何を意味するかは不明だ。

物体を正確に認識できなかったことを「認知の不一致」と表現しているオペレーターもいる。しかし、Valeo North America(北米ヴァレオ)は同様の誤作動を「物体の誤検知」と表現している。また、Toyota Research Institute(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)は、ほぼすべての解除事例について「セーフティードライバーが予防的に解除した」という、どんな状況における解除にも当てはまる曖昧な表現を用いている。その一方で、Pony.ai(ポニー)は、自動運転解除の各事例について詳細に説明している。

他にも、自動運転解除の理由を「試験を目的とした計画的な解除」、あるいはほとんど意味がないほど抽象的な表現を用いて説明しているAV車開発企業は多い。

例えば、「計画的な解除」は、意図的に作り出した不具合をテストすることを意味していると考えることもできるが、単にソフトウェアが新しくてまだ荒削りであるために解除は想定内だったことを意味している可能性もある。同じように、「認知の不一致」という言い回しも、予防的な解除からソフトウェアの極めて危険な不具合による解除まで、あらゆる状況を意味し得る。解除理由の説明に「計画的な解除」や「認知の不一致」をはじめとする多数の曖昧な表現が使われていることが、競合企業間の比較をほとんど不可能にしている。

そのため、例えば、サンフランシスコを拠点とするAV車開発企業の自動運転解除がすべて予防的なものだったとしても、その理由を説明する表現に関する指針が存在せず、曖昧な表現が多用されているせいで、解除に関する説明が怪しく見えて疑問視されてしまうのが現状だ。

レポート提出義務がバーチャル試験走行の足かせになっている

現在、AV車開発の本質はソフトウェアにある。ハードウェア、ライダーやセンサーなど、AV車を構成する他の物理的な要素は、実質的に既製品で間に合う。本当に試験が必要なのはソフトウェアだ。ご存じのとおり、ソフトウェアのバグを発見するのに最適な方法は、とにかくそのソフトウェアを可能な限り頻繁に実行することである。路上の走行試験だけで、バグをすべて発見できるほど膨大な回数のソフトウェアテストを実行できるわけがない。そこで必要になるのがバーチャル走行試験だ。

しかし、自動運転解除レポートで報告する公道での試験走行距離が短いと、「路上走行の準備ができていない」と判断される可能性があるため、このレポートの提出義務自体が、バーチャル走行試験の足かせとなっている。

先ほども登場した米公共ラジオ局NPR「マーケットプレイス」のスチュワート氏も、同様の見解を述べている

「特に最近は、割りと既製品で間に合う部品もある。数社も回れば、必要なハードウェアが手に入るだろう。鍵はソフトウェアにある。そして、そのソフトウェアがバーチャル試験と実地の公道試験でどれだけの距離を無事故で動作したのか、ということが一番重要だ」とスチュワート氏は語る。

では、AV車開発の競合企業間の比較を行うのに必要な、本当に使えるデータはどこから入手できるのだろうか。ある企業は、3Dシミュレーション環境でエンドツーエンドの走行試験を毎日3万回以上行っている。別の企業は、社内のシミュレーションツールを使ってオフロード走行試験を1日に何百万回も行っており、その試験の中で、歩行者、車線合流、駐車車両などがある道路ではテストできないシナリオを含む運転モデルを動かしている。ウェイモはCarcraft(カークラフト)というシミュレーションシステムで1日あたり2000万マイル(約3200万キロメートル)の試験走行を実施している。同じ距離を実地の公道走行試験で走破するには100年以上かかる。

あるCEOは、バーチャル走行試験1マイル(約1.6キロメートル)から得られる成果は、公道走行試験1000マイル(約1600キロメートル)分に相当すると見積もる。

ウェイモのシミュレーション・自動化部門でプロダクトリードを務めるJonathan Karmel(ジョナサン・カルメル)氏も同様の見解を示し、カークラフトのバーチャル走行試験によって「最も興味深く有用な情報を得られる」と語っている。

今、何をすべきか

自動運転解除レポートに問題があることは明らかだ。同レポートのデータに依存することは危険であり、走行試験についてAV車開発企業に負のインセンティブを与える場合もある。しかし、これらの問題を乗り越えるために、AV車業界が自主的に取り組めることがある。

  1. バーチャル走行試験を重視して、そこに投資する。信頼性の高いバーチャル走行試験システムを開発・運用するには多額の資金がかかるかもしれないが、より複雑で危険度の高い運転シナリオを数多くテストできるようになれば、商業展開へぐっと近づくチャンスが開ける。
  2. バーチャル走行試験から収集できたデータを共有する。バーチャル走行試験の結果データを自主的に共有すれば、世間が自動運転解除レポートに依存する可能性が下がる。AV車開発企業が、開発の進み具合に関して信頼できるデータを一定期間にわたって一般に公表しない限り、商業展開への準備ができているかどうかを議論することは無意味だろう。
  3. 公道走行試験から最大限の成果を引き出す。AV車開発企業はカリフォルニア州での公道走行試験を続けるべきだが、バーチャル走行試験からは得られない成果を獲得することを目指して公道走行試験を行う必要がある。バーチャル走行試験よりも遅い速度で走行するからこそ発見できることがあるはずだ。レポートで報告する自動運転解除率が高くなるのは仕方がない。また、レポートでは、解除した理由や状況について具体的に説明する必要がある。

上記のような取り組みにより、AV車開発企業は、カリフォルニア州の自動運転解除レポートのデータがもたらす苦悩を和らげつつ、AV車が活躍する未来へと、より速く歩を進めることができる。

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カテゴリー:モビリティ

タグ:自動運転 自動車 コラム

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(翻訳:Dragonfly)

ミシガン州で自動運転車専用道路を建設へ、ホンダやトヨタ、GM、フォードなども協力

Alphabet(アルファベット)傘下のSidewalk Labs(サイドウォーク・ラブス)からスピンオフした次世代インフラ開発のSidewalk Infrastructure Partners(サイドウォーク・インフラストラクチャー・パートナーズ)は、最初の大きなプロジェクトとなるコネクテッド自動運転車専用の道路を開発する子会社「Cavnue」(キャブニュー)の立ち上げを発表した。

Cavnueはミシガン州を起点として、Ford、GM、Argo AI、Arrival、BMW、ホンダ、トヨタ、TuSimple、Waymoなどのパートナーと協力して、今後の標準となる物理面およびデジタル面のインフラ開発に取り組む。コネクテッド自動運転車をパイロットプロジェクトとしてではなく、米国のハイウェイ、フリーウェイ、州間道、市街地道路で走らせるために必要なインフラを検討する。

Cavnueが着手するのは、ミシガン州デトロイトのダウンタウンとアナーバーの間の40マイル(約64km)で、この区間が自動運転車専用道路の対象となる。同社の構想は、最終的に自動シャトル、バス、トラック、自家用車のために設計された道路を数多く建設することだ。

「Cavnueが40マイルの道路のマスターデベロッパーとなる」とGretchen Whitmer(グレッチェン・ホイットマー)ミシガン州知事は8月13日にSidewalk Infrastructure Partnersとの共同発表で述べた。

「我々が今取ろうとしている行動は、家庭、ビジネス、そして経済全体にとって良いことだ。世界を動かす州、ここミシガンでは、未来の自動車をテストして展開する土台となるインフラを構築する最初の一歩を踏み出した」とホイットマー氏は声明で述べた。「すべてのミシガン人が子供達を車で安全に学校へ送り迎えできるよう道路を再開発する一方、明日の道路への布石となるスマートインフラの構築にも取り組む」。

画像クレジット:Getty Images / petovarga

「デトロイト・アナーバー・コリドー(回廊)」にはミシガンアベニューと州間道94号線沿いにウェイン郡とウォッシュノー郡のコミュニティが存在し、ミシガン大学、デトロイトメトロポリタン空港、ミシガン中央駅などがある。Sidewalk Infrastructure Partnersの声明によると、この区間には最大12の「オポチュニティーゾーン」が用意され、コミュニティや中小企業がこの地域の産業、技術、学術のハブにアクセスできる予定だ。

プロジェクトの第1フェーズでCavnueは「モビリティと電化の未来室」やミシガン交通局などのミシガン州の多数の政府機関と協力し、約2年にわたり実行可能性とデザインの検討を行う。

プロジェクトの第1フェーズの最初の仕事として、道路設計の商業的、技術的な実行可能性を検討する。Cavnueの声明によると、コネクテッドバスと、バンやシャトルなどのシェアモビリティビークルが道路を最初に利用する。その後、貨物車や自家用車などのコネクテッド自動運転車に対象が拡大される。

主なパートナー

Bill Ford(ビル・フォード)氏は2018年、Cavnueが建設を提案したのと同様のコネクテッド・コリドーを構想していた。Ford(フォード)のコークタウンイノベーションハブを、アナーバーからデトロイトへの回廊沿いの経路の東端拠点として考えていた。フォードはCavnueのプロジェクトの主要なパートナーとなった。

Cavnueは他にも多数のパートナーに頼る。ミシガン大学のCAV(Connected and Automated Vehicle)研究センターとMcity Test Facility、交通研究所(UMTRI)、その他の回廊沿いの施設や米国モビリティセンターなどだ。

「ミシガン・セントラル駅(のプロジェクト)における私のビジョンは、明日の交通問題を解決し、すべての人のモビリティアクセスを改善するオープンモビリティイノベーションのための場所を作ることだった」と同氏の名を冠した自動車会社の会長を務めるフォード氏は声明で述べた。「コネクテッド・コリドーを作ることで、ミシガン州はより通信でつながり(Connected)、自律的で電化が進んだ未来を作るリーダーとしての地位を確立する。コミュニティ、経済的利益、そしてミシガン南東部全体にスマートインフラを構築することの重要性を認めてくれた州に感謝する」。

画像クレジット:Andrey Suslov / Getty Images

ハンドルを握る人間によるミスが米国における死因のトップだ。ミシガン州では過去10年間で自動車の死亡事故により1万人が亡くなった。Cavnueのパートナーでもあるフォード、GM、Argo AI、Arrival、BMW、ホンダ、トヨタ、TuSimple、Waymoのような企業は、コネクテッド自動運転車が死者を減らし、通勤に費やす時間を削減できると主張している。

Cavnueのミッションが包括的なものになっているのは、自動運転車の商業展開が業界で当初考えられていたよりはるかに遅いと認識されていることの裏返しだ。同社はGoogle(グーグル)本社でのイノベーションイベントから生まれた。レベル5の自律性(人間の介入を必要としない完全自動運転車)は、短期で達成できる機会というよりは未来志向の人達のコンセプトであると思われていた。

自律性に関する研究開発を続けるために必要な数十億ドル(数千億円)の投資を正当化するために、企業には短期的に応用できる対象が必要だ。応用には物理​​的なインフラが必要となる。

新型コロナウイルスの時代にあって、ライトレールシステム(路面電車)やその他の大量輸送ソリューションが使われなくなり渋滞が増える心配を抱える自治体にとって専用レーンは、自律型公共交通機関には新しい収入源を、企業には大規模なパイロットプロジェクトの一部として自動システムを安全にテストする機会を提供できるのかもしれない。

一部の計画担当者が考えていたことの1つに、ライトレールの代わりとしての自動シャトルの使用と、よりダイナミックなソリューションの可能性があった。需要に応じて稼動する台数を調節し、ルートを共有することで効率が向上し、目的地に到達するまでの時間を短縮できる。

資金は、技術を検証する場を得る自動システムメーカーが提供する可能性がある。最終的には、高度な運転システムを備える車を所有する個人が、レーンにアクセスして公共輸送車両の間の空きスペースを使うために対価として支払う可能性もある。

例えば、道路を使いたい人は10ドル(約1070円)を払った上で、自分の車を自律モードにすることが考えられる。公共交通機関と民間の配達車両が優先されるだろう。道路を使うには自動運転機能を備えていることを証明する必要があるかもしれない。

画像クレジット:Getty Images

新しいサービスはこれまでにない種類の官民パートナーシップによって運営されるかもしれない。新しいレーンが生み出す公共料金の金額によって結果を評価する。Cavnueのような企業は車両を調達し、インフラを構築する。道路への投資を担い、許可された自動運転対応車へアクセス権を売る権利を得る。

これがミシガン州で機能するなら、州議会のリーダーの一部は計画の全米普及を推進するつもりだ。

「ミシガンはモビリティの新しいフロンティアの最前線にいる。わが州には自動車メーカー、サプライヤー、エンジニア、大学、試験施設が密集している。彼らが我々の移動手段を一変させるような交通手段の開発を進めている 」とミシガン州選出の上院議員Gary Peters(ゲイリー・ピーターズ)氏は語る。「この発表はミシガン州が自動運転車の研究開発の中心であり続けるための大きな一歩だ。私は連邦レベルで引き続き働き、こうした革新的な(そして命を救う)技術を安全に導入する連邦レベルのフレームワークを開発する」

だが投資が理にかなっていると誰もが確信しているわけではない。

「(可能性がはっきりしない)灰色のインフラへの莫大な投資だ。これは大きなインフラプロジェクトだ」と、プロジェクトについて話す権限がないため匿名を希望したインフラの専門家は述べた。「想定が偏っている。設計が偏っており、想定する利用方法が偏っている。専用レーンは交通の専門家が提唱しているものではない。自動運転車で働いており、それが採用されることに既得権を持つ人々の声のみが反映されている」

画像クレジット:petovarga / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

自動運転OS開発のティアフォーが国内初となる自動運転のセーフティレポートを公開

ティアフォー Tier IV Safety Report 2020

ティアフォーは8月4日、自動運転技術の発展および実用化に貢献することを目的として、同社の自動運転に対するアプローチや考え方、これまでの実証実験で得られた安全性に関する知見、今後の課題と対策を集約したレポート「Tier IV Safety Report 2020」を公開した。

また、8月4日から11月8日までの約3ヵ月間、東京都西新宿エリアにおいて自動運転用データ収集実験を実施することも明らかにした。

Tier IV Safety Report 2020では、世界初のオープンソースの自動運転OS「Autoware」(オートウェア)開発を通して得た知見、多様な環境下での実証実験を通して培った経験を基に、正常に運行するための道路条件にあたるODD(Operational Design Domain。運行設計領域)類型やReference Design(リファレンス デザイン)を一部公開。透明性の高い安全な自動運転技術の確立に向けた方向性を提示している。

また、自動運転技術の検証方法、車両走行を伴うオペレーションの安全性対策、規制対応や許認可に対する提言を含め、これまでの開発と実証実験のプロセスで見えてきた様々な課題についても形式知として広く共有している。なお、同Safety Reportの英語版も後日公開予定としている。

2015年創業のティアフォーは、「創造と破壊」をミッションに掲げるディープテック企業。Autoware開発を主導し、様々な組織、個人が自動運転技術の発展に貢献できるエコシステムの構築を目指している。またこれを「自動運転技術の民主化」と位置づけ、世界中の人々が新しい時間と空間を享受できる社会を実現するという。自動運転システムの開発、サブスクリプションモデルによる自動運転EVの提供、自動運転EVを用いた無人物流・旅客サービスなどに関するビジネスを展開している。

ティアフォーは「自動運転の民主化」というビジョンの下、交通事故の低減や交通の利便性向上など、様々な社会課題の解決に向けて自動運転技術を開発。自動運転にかかわる構成要素は車載システムからソフトウェア、クラウド、すべてを包括するプラットフォームまで多岐にわたり、さらに技術の実用化・普及のためにはコストや安全性の面でも社会的に受容されることが必要不可欠という。

同社は、これら要素を効率的・大規模に開発していくために、Autowareに立脚したエコシステムの構築を推進。このエコシステムを最大活用することで、世界中の誰もが自動運転技術の発展に寄与できる「水平分業型」のオープンな開発を展開し、透明性の高い安全な自動運転技術の確立を目指している。

また、ティアフォーは、Autowareの開発を主導する立場として、18都道府県の約50市区町村において、約70回という国内トップクラスの実証実験数を実施。海外においても現地パートナーと協力して着実に実績を残している。

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自動運転車両開発のAutoXがカリフォルニア州で無人運転テスト許可を取得

Alibaba(アリババ)が支援する自動運転車両開発のAutoX(オートエックス)が、サンノゼの限定エリアの公道で無人自動運転のテストを行う許可をカリフォルニア州から取得(カリフォルニア州リリース)した。

この許可により、AutoXは自社の自動車両をセーフティドライバーなしでテストできる。ドライバーなしのテストが認められた企業はAutoXが3社目だ。すでにWaymo(ウェイモ)とNuro(ニューロ)が許可を取得している。自動運転車両テストを管理するカリフォルニア州車両管理局によると、AutoXの許可は車両1台に限定され、同社本部近くのサンノゼの決められたエリアでのみテストできる。テスト車両は晴天と小雨の中で走行でき、スピードは時速45マイル(約72km)以下とのことだ。

完全自動運転を開発しているAutoXは2017年からセーフティードライバー付きの自動運転車両をテストする許可を得ている。現在、62社が同州内でセーフティードライバーを乗せて自動運転車両をテストできる許可を持っている。

ドライバーなしのテストの許可を得るには、保険証明、500万ドル(約5億円)相当の債権、ドライバーなしのオペレーションが可能であることの証明、連邦政府自動車安全基準をクリアしていること、あるいは国家幹線道路交通安全局からの免除を提示する必要がある。

AutoXはカリフォルニアと中国でロボタクシー展開してきた一方で、真の目的はロボタクシーを自前の車両で展開したい企業にテクノロジーをライセンス貸しすることだと同社は述べていた。中国の一部地域で操業してきたが、今回のドライバーなしのテスト許可取得は同社が米国でも積極的に展開するかもしれないことをうかがわせる。

AutoXは2019年に上海市の嘉定区で自動運転車両100台を展開することで自治体当局と合意したのを受けて、4月に広さ8万平方フィート(7432平方メートル)の上海ロボタクシー・オペレーション・センターを開所した。使用されている車両は上海から93マイル(約150km)離れた工場で組み立てられた。

同社はBYDと2019年に立ち上げたパイロットプログラムを通じて上海でロボタクシーを展開してきた。1月にAutoXは中国やアジア諸国でロボタクシーを展開するためにFiat Chrysler(フィアット・クライスラーと提携した。

画像クレジット: AutoX

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(翻訳:Mizoguchi

自動運転スタートアップのTuSimpleがトラック製造大手のNavistarとタッグ、2024年までに自動運転トレーラーを生産

Navistar(ナビスター)とTuSimple(トゥーシンプル)は米国時間7月15日、2年間の提携関係を結び、2024年までに自動運転セミトレーラーを開発し生産を開始すると発表した。

この戦略的提携では、Navistarが額面は非公開ながら自動運転トラックのスタートアップTuSimpleの株式を取得する。この計画の目的は、Navistar International(ナビスター・インターナショナル)の商用トラックに現在のTuSimpleのシステムを後付けする方式から脱却し、自動運転での運用を主体とするセミトレーラーを開発することだ。

「自動運転技術は私たちの業界にも浸透しつつあり、それには私たちの顧客の業務を根底から変えるインパクトがあります」とNavistaのCEO兼社長のPersio Lisboa(パージオ・リズボア)氏は声明の中で述べている。さらに、この提携により同社は、顧客のニーズに合致した製品の開発と提供のリーダーとして位置づけられることになるとも話している。

この完全自動運転トレーラーは、米国、カナダ、メキシコにあるNavistarの従来の販売チャンネルで購入できると、同社は7月15日に明らかにした。

今回の取り決めは、両方の企業にとって重要なものとなる。TuSimpleは、安全で結果的に利益を生む本格的な無人商用運用を開始するときのために、その技術プラットフォームを投入できる独自のトラックメーカーを必要としている。そしてNavistarは、Daimler Trucks North America(ダイムラー・トラックス・ノース・アメリカ)やVolvo Group(ボルボ・グループ)といったOEM競合相手に差をつけ突出させてくれる企業としてTuSimpleを見込んでいる。

TuSimpleの社長、Cheng Lu(チェン・ルー)氏も、両社がひとつになることで、クラス8の自動運転大型トラックを大規模に商品化する道が開けると、この提携に大変な自信を見せている。ただし、この道を追求しているのはNavistarとTuSimpleだけではない。Ike(アイク)やKodiak(コディアク)といった自動運転トラックのスタートアップが、ここ数年大量に登場してきている。さらに、Aurora(オーロラ)やWaymo(ウェイモ)といった自動運転技術の企業には、無人トラックに軸足を伸ばしたり、人の輸送も行うロボタクシーなどのビジネスモデルから移行するものも多い。

Sina(新浪)、Nvidia(エヌビディア)、UPS(ユーピーエス)、同社の一次サプライヤーであるMando Corporation(マンドー・コーポレーション)からも支援を受けるTuSimpleは、アメリカで40台の自動運転トラック群を運用していて、アリゾナとテキサスの間でテストや荷物の輸送を行っている。このトラックには、かならず2名の安全担当エンジニアが乗車している。

この戦略的提携は、TuSimpleが少なくとも2億5000万ドル(約267億円)の資金を新規に調達しようとしているときと重なった。同社は、資金調達を実現されるために投資銀行Morgan Stanley(モーガン・スタンレー)と契約している。

またこの資金調達と同時に、TuSimpleは、2024年までに全米に展開を予定している自動運転トラック運用のための輸送路線ネットワークと専用にデザインされたターミナルの計画を公開した。2024年は、Navistarが自動運転トレーラーの生産開始を目指している時期と同じだ。

TuSampleの少数株を保有するUPS、U.S. Xpress(ユーエス・エクスプレス)、Penske Truck Leasing(ペンスキー・トラック・リーシング)、Berkshire Hathaway(バークシャー・ハサウェイ)の食料品およびフードサービスのサプライチェーン企業McLane Company(マクレーン・カンパニー)は、そのいわゆるAutonomous Freight Network(自動運転運輸ネットワーク、AFN)の初期パートナーだ(未訳記事)。

TuSimpleのAFNは、自動運転トラック、デジタルマッピングされた路線、運輸ターミナル、自動運転トラックの運用状況と荷物の配送状況をリアルタイムでモニターするシステムという4つの要素で構成される。TuSimpleは、完全な無人運用を2021年にデモンストレーションする予定だと話している。

画像クレジット:TuSimple

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(翻訳:金井哲夫)

自動運転車向けLiDARセンサーのVelodyneが特別目的買収会社を利用して上場

センサーは自動運転車の商用展開に重要だと広く考えられている。その主要サプライヤーであるVelodyne Lidar(ベロダインライダー)は米国時間7月2日、特別目的買収会社(SPAC)であるGraf Industrial Corp.(グラフ・インダストリアル・コープ)との合併契約を締結した。合併後の会社の時価総額は18億ドル(約1900億円)なる。

同社によると、新規参加の機関投資家やGraf Industrialの既存株主からPIPEs(上場企業への私募増資)により1億5000万ドル(約160億円)を調達した(Velodyne Lidarブログ)。一連の取引の結果、Velodyneの貸借対照表には約1億9200万ドル(約210億円)の現金が計上される。

Velodyneの創業者であるDavid Hall(デイビッド・ホール)氏は、株主であるFord(フォード)、中国の検索エンジンBaidu(バイドゥ)、Hyundai Mobis(ヒュンダイモービス)、Nikon Corp.(ニコン)の持分と合わせ、合併後の会社の株式の80%を保有する。ホール氏はエグゼクティブチェアマンに就任し、Anand Gopalan(アナンド・ゴパラン)氏がCEOとして残る。

合併は2020年第3四半期に完了する見通しだ。Velodyneによると、合併後の会社はNYSE(ニューヨーク証券取引所)で引き続き取引され、企業結合完了後は新しいティッカーシンボルVLDRで取引される。

この取引は、従来のIPOプロセスに代えてSPACを利用する企業の最新例となった。今週初めにオンライン中古車市場のスタートアップであるShift Technologies(シフトテクノロジーズ)が、SPAC Insurance Acquisition Corpとの合併契約を発表した。合併新会社は、米NASDAQ(ナスダック)に新しいティッカーシンボルとともに上場される。Nikola Motor(ニコラモーター)も2020年初めにSPACを通じて公開した。

Velodyneは自動運転車業界で統合が進む中で株式公開することになる。スタートアップ、自動車メーカー、大手テック企業は、資本集約的な自動運転車の開発と展開に長期的な時間軸で取り組むようになった。大企業に飲み込まれたスタートアップがあり、消滅したスタートアップもある。過去18カ月間に自動車メーカーは、より多くの経営資源と労力を乗用車、トラック、SUVにおける高度な運転支援システムに割いている。

関連記事:As autonomy stalls, lidar companies learn to adapt(未訳記事)

LiDAR(ライダー)は、おそらく自動運転車業界で最もプレーヤーが多いサブカテゴリーの1つだ。レーザー光で距離を測定し、非常に正確な車の周辺環境の3Dマップを作成するセンサーだ。自動運転車業界では、センサーはロボタクシーなどの自動運転車を安全に運用するために必要な主要技術だと認識されている。

Velodyneは「KFCバケット」回転レーザーLiDARで最もよく知られている。2004年のDARPA Grand Challenge(米国防高等研究計画局によるロボットカーレース)に出走した車両に取り付けたセンサーの欠陥により設計を見直した。ホール氏は回転レーザーLiDARを開発し、DARPAが主催する自動運転車コンテストに将来出場するチームにセンサーを販売した。KFCバケットは、自動運転車に取り組む企業にとって重要なLiDARセンサーだった。Waymo(ウェイモ)はGoogle(グーグル)の自動運転プロジェクトだった頃、Velodyne LiDARセンサーを2012年まで使用していた。

ただし回転LiDARユニットは高価で、機械的にも複雑だ。これが新しいアプローチを試す新世代のLiDARスタートアップの誕生を促した。今日、自動車メーカーや自動運転車開発企業にセンサーを売り込むLiDAR企業は数十社あり、70社に上るという声もある。彼らはすべてVelodyneを目指している。

こうした新世代の企業がVelodyneにも進化を促している。同社は2020年1月のCES 2020で新しいセンサーを発表した。その中には「VelaDome」、100ドル(約1万800円)の小型LiDARユニット「Velabit」、ソフトウェア製品「Vella」が含まれる。

「LiDARの市場機会について議論の余地はない」とゴパラン氏は1月にTechCrunchの記者Devin Coldewey(デビン・コールドウェイ)に語った。「議論するとすれば、それで何がしたいかだ。他社は、自動運転レベルで2+または3に焦点を合わせている(単純なドライバー支援より上のレベル)。当社はそのアプローチの近道を探している。低いレベルで採用されていない唯一の理由は価格だ。LiDARが100ドル(約1万800円)で手に入るなら、もちろん使うだろう。100ドル未満なら、ドローン、家庭用ロボット、歩道ロボットなど、応用の可能性は計り知れない」。

同社は過去数年間、LiDARのコスト削減とポートフォリオの多様化に重点的に取り組んできた。Velabitは、自動運転車業界以外の顧客を獲得しようとする同社の取り組みの一例にすぎない。小型センサーには自動運転車に必要な機能がない。代わりにVelodyneは、センサーを小型の産業用ロボットへ応用することを検討している。

画像クレジット:Bloomberg

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