人工知能が企業のセールス業務に利用される例が増えている

Asian woman over microchip circuits

2016年は人工知能(AI)が非常に注目された年だった。人工知能の開発は何十年も前からはじまっていたが、パワフルなコンピューターを安価で利用できるようになったことと、アクセスできるデータの量が飛躍的に伸びたことで、今年になってやっと人工知能の時代が訪れたようだ。

AIによるビジネスの効率化が最初に始まったのは企業のセールス業務だった。毎日のように繰り返される営業ワークフローをAIによって効率化させようという試みだ。考えてみれば、企業の収入を直接的に左右するこの分野でAIの応用がはじまったのは、当然の成り行きだったと言えるだろう。AIがビジネスに与える影響を調査する、Constellation ResearchアナリストのAlan Lepofskyは、ベンダーたちがこの動向に注目しているのは確かだと話す。

彼によれば、人間は情報オーバーロードに苦しめられているという。私たちがより多くのデータを集めるにつれて、そのデータがもつ意味を理解するために私たちはコンピューターの処理能力に頼らざるを得なくなる。「AIが情報をフィルタリングしたり、タスクを自動化することで、その負担を軽減してくれることが期待されます」とLepofskyは話す。

AIはスタートアップ・コミュニティにも多大な影響を与えている。TechCrunchでも今週、AIによる営業アシスタントを開発するConversicaが3400万ドルを調達したことを報じたばかりだ。このAIアシスタントには自然言語処理(NLP)、推論エンジン、自然言語生成などの技術が使われている ― なかなか洗練されたテクノロジーだ。このAIが見込み客との初期コンタクトを自動化し、その後に人間の営業員に引き継ぐという仕組みだ。

一方、CRM業界のベテランが創業したTactは、営業員のスケジューリング管理などにAIを活用するスタートアップだ。同社もまた、今月初めに1500万ドルを調達したことを発表している。営業員が「CRMの奴隷」になってしまうことを防ぎ、AIを活用して彼らにロジカルで効率的な営業法を提供するというアイデアだ。

これらのスタートアップは、営業という分野のなかにある様々な側面をAIによって効率化させようとしている一方で、SalesforceOracleBaseなどといったCRM業界の巨人たちは単に顧客情報を記録するためのツールではなく、それに内蔵された「知性」によって営業活動を強化するというCRMツールを開発している。

従来型のCRMは顧客と営業員とのやり取りを記録するためのツールだったが、AIによってそれ以上のことが可能になったと話すのは、Bluewolfでカスタマー・エクスペリエンス部門のSVPを務めるVenessa Thompsonだ(BluewolfはSalesforceと提携するコンサルティング企業である)。

「AIはカスタマー・インタラクションがもつ力を引き出し、新たなデータが追加されるたびにツールはより賢くなります」と彼女は語る。

プラットフォームがもつ力を有効活用することで、営業員は顧客と接する時間を増やし、契約を獲得することだけに集中することができる。「営業員がどこに時間を費やすべきか、そして次に何をすべきかを予測するためには ― 彼らに適切なデータを、適切なときに与える必要があります。営業員はあらゆるソースからデータを取得する必要があり、彼らがそのデータを利用して意思決定をするためにはコグニティブなプラットフォームが必要なのです」と彼女は説明する。

AIをカスタマーサービスの分野に適用する企業も増えている。ボットを利用した初期コンタクトの自動化などがその例である。シンプルなタスクはボットにまかせ、より複雑なタスクは人間のオペレーターが対応するというアイデアだ。今週、SalesforceはLiveMessageをリリースした。これは、同社のService Cloudプラットフォームにメッセージング・アプリを組み込み、人間のオペレーターとボットの力を組み合わせるためのツールだ。

AIを営業やカスタマーサービス分野に適用する動きは、AIによるビジネス効率化の初期事例にすぎないだろう。コンピューターによって従業員の能力を拡張することが主流になりつつある今、今後数年間のうちにAIがさまざまなビジネス分野に適用される事例が増えていくことだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

営業アシスタントAIのConversicaがシリーズBで3400万ドルを調達

Business woman sending email marketing

見込み客から何らかのコンタクトがあれば、営業員の出番だ。通常、自己紹介もかねた挨拶メールを送ることから始めることだろう。人工知能システムのConversicaは、このようなコンタクト初期のメールを自動化し、その後に人間の営業員に引き継ぐというシステムを開発している。現地時間14日、同社は3400万ドルの資金調達を完了したと発表した。

本調達ラウンドのリード投資家は、Providence Strategic Growthだ。その他にも、Tobo Capital、Wellington Financial LP、Recruit Strategic Partners、そしてシリーズAにも参加したKennet Partnersなどが参加している。これにより、本調達ラウンドをあわせた合計調達金額は5600万ドルとなる。

Conversica CEOのAlex Terryは、「Conversicaは会話型AIプラットフォームです」と話す。同社の主力プロダクトは、AIを利用した営業アシスタントだ。このアシスタントは人間ではないものの、自分の名前はもちろん、専用のメールアドレスを持ち、まるで人間のように企業の代表として顧客と接することができる。

Conversicaの役割は、企業のホワイトペーパーをダウンロードしたり、企業が主催したコンファレンスに参加したり、Webサイトから問い合わせがあった顧客とのコミュニケーションだ。コンタクト済みの顧客情報は営業部門に手渡され、営業プロセスが開始する。リストに顧客の名前が表示され、営業員がそれぞれの顧客の担当につくことになる。通常であれば、AIによる初期コンタクトはその後、各企業ごとに定められたワークフローへと移行する。

Conversicaの目標は、このような営業タスクを人間にとって自然な形で自動化することである。「連絡している相手がAIアシスタントであるとは気づかないでしょう。自然なコミュニケーションなのです」とTerryは話す。ConversicaのAIアシスタントは、顧客からの質問に答えたり、質問に答えられない場合には人間の営業員による電話へ顧客を引き継ぐことなどができる。

Conversicaには様々なAI関連技術が利用されている。その1つが自然言語処理(NLP)で、この技術によってAIアシスタントは顧客の言葉を「読む」ことができる。見込み客が発した言葉の背後にある意味を理解するのだ。

2つ目は推論エンジンだ。これにより、アシスタントは顧客の言葉に含まれるキーワードを探すだけでなく、そこから顧客が求めていることを正確に理解することが可能になる。言葉の内容を理解し、その内容の裏側にある感情を理解するという考え方だ。例えば、AIアシスタントが「すぐには売上につながらない」と判断した場合には、後々アプローチできるようにその顧客を「後から連絡するリスト」に加えることもできる。

最後に、このAIアシスタントは顧客からのメールの内容に対応した自然な返答を生み出すことができる。「このシステムには様々なテクノロジーが利用されています。よくある”自動応答システム”よりも、はるかに優れたカスタマーエクスペリエンスを生み出すのです」とTerryは語る。

これまでにConversicaは1000社以上のユーザーを獲得しており、同社は今後、このAI技術をカスタマーサポートの分野にも適用することを目指している。このプロダクトは現在開発中だ。

Terryによれば、Conversicaの従業員は現在140名で、年間の経常収益は1800万ドルにものぼるという。

同社は今回調達した資金を利用して、営業部門とマーケティング部門の人員を強化していく。それに加えて、新たなソフトウェア・パッケージとの統合や、パートナーシップの拡大も目指す。そして、おそらく2018年頃にはグローバル展開を開始する予定だ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

デベロッパーは自分のアプリケーション/サービスの音声インタフェイスとしてGoogle HomeのAssistantを利用できる

5-google-home

Googleが今日(米国時間12/8)、(非公開プレビューの参加者だけでなく)すべてのデベロッパーが、自分のアプリケーションやサービスをGoogle Assistantに載せられる、と発表した。Google Home上の、Googleが“会話アクション”(conversation actions)と呼ぶこの新しい機能により、アプリケーションはAssistantを介して会話のやり取りができる。その会話のシナリオは、もちろんデベロッパーが自分のアプリケーションの機能として書く。その会話はたとえば、“やあGoogle、Elizaを呼び出してくれ”、で始まるかもしれない。

AssistantはGoogleのスマートフォンPixelやチャットアプリAlloでも使えるが、Googleの計画では、そういう“Assistantの出先”のようなインタフェイスにデベロッパーのアクションを持ち込めるのは、もうすこし先だ。どれだけ先かは、発表されていないけど。

デベロッパーが自分のアプリケーション/サービスによる“会話アクション”を作るのを助けるために、Googleはいろんなところとパートナーしている。それらは、API.AI, GupShup, DashBot, VoiceLabs, Assist, Notify.IO, Witlingo, Spoken Layerなどだ。一部のパートナーはすでに、自分のアプリケーションをGoogle Home上で有効化できる。それらの統合が実際に動き出すのは、来週からだ。

ユーザーはこれらの新しいアクションを単純なコマンドで起動でき、AmazonのAlexaのように最初にスキルを有効化するという手間がないから、デベロッパーが自分の音声起動型サービスをユーザーに提供するのも、簡単なようだ。ただし、どのアクションをGoogle Homeで有効化するかは、Googleが判断する。

同社によると、今後のリリースではさまざまな業種に対応して、もっと詳細な会話をサポートしたい、という(買い物やチケット/航空券予約などなど)。ただしその具体的な詳細は、現時点では未定だ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Uberが人工知能のスタートアップGeometric Intelligenceを買収し、AI Labを設立

screen-shot-2016-12-05-at-5-33-24-am

タクシー配車サービスは競争力を保つためにも、機械による知性を必要としている。Uberが人工知能分野のスタートアップを戦略的に買収したことは意外なことではないだろう。Uberは、AIに知見のある学術研究者が共同創業したスタートアップGeometric Intelligenceを買収した。Geometric Intelligenceは、Uberがサンフランシスコ本社に新設したAI研究所の中核チームになる。

Uberがピッツバーグに置く研究チームでも、すでに機械学習の研究に取り組んでいる。ただ、ピッツバーグのチームが注力するのは自動運転に関連した問題だ。今回の新しいチームは、より広範に適用できるAIについて研究する。例えばルート検索など、AIを適用可能な広い分野に影響する基礎的な研究だ。UberはGoogleやApple、Microsoftといった1つの領域以外にも関心を持つ大手テック企業と肩を並べることを視野に入れているのだろう。

Geometric Intelligenceの創業チームにはニューヨーク大学の認知科学の研究者Gary Marcus、ケンブリッジ大学で機械学習の教授を務めるZoubin Ghahramani、セントラルフロリダ大学のコンピューターサイエンスの教授Kenneth Stanley、ニューヨーク大学の神経言語学の博士Douglas Bemisらを含む。Geometric Intelligenceの社員は15名で、データサイエンスや人工知能の領域で高名な学者が揃っている。契約では、社員はそれぞれが所属する学術機関とのキャリア面でのつながりも保持することができる。

GIが主に研究しているのは、通常のAIで必要となるデータより少ない量で物や景色の認識ができるAIシステムやエージェントを作成する方法だ。これまで大量のデータセットを解析する処理能力を持たせることでAIシステムを進化させてきたが、Uberの新チームは別の角度から問題をみている。限定的なデータ入力でシステムを賢くする方法だ。これはUberにとって解析するのに十分なデータセットを持っていない分野のプロダクトでも、その効果を素早く高める助けになるだろう。

UberのチーフプロダクトオフィサーJeff Holdenはブロク投稿に、会社のビジネスのどの分野を見ても「現実世界との交渉」という共通した課題があり、それは「高次の知性の課題」であると記している。基礎的な研究でAIの能力を高めることは、どの分野の問題を解決するために最も効果的な方法だろう。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

AIを活用してロゴデザインを行うLogojoy

logojoy-hero

ロゴをデザインしようと考えたことのある人なら、デザインにあたってはロゴを利用する組織の特徴やテイストの理解、また何年もの経験やさまざまな関連知識が必要であることに同意してもらえることと思う。そうした制作者の負担をすべて取り除いてしまおうとするのがLogojoyだ。AIおよび機械学習のノウハウを活用し、膨大なバリエーションも提示してロゴデザインを助けてくれる。実際に使ってみたが、なかなかのクオリティだ。

使い方はいたって簡単だ。ロゴを作りたい組織(モノ)の名前を入力して、アイコンや色などを選んでボタンを押すだけだ。あとはコンピューターの方が着々と仕事をこなして、できあがったデザインを見せてくれる。その中に最高のできだと思うものがなくても、「more」ボタンを押せば疲れ果ててしまうまで無限にロゴ候補を提示してくれる。

  1. process-1.jpg

  2. process-3.jpg

  3. process-2.jpg

  4. process-5.jpg

  5. process-4.jpg

細かな修正を指示して、コンピューターにそれに基づくバリエーションを提示させることもできる。

お気に入りのものが見つかれば、そのロゴをクリックすると実際にロゴをあしらったビジネスアイテムのサンプルが表示される。

logojoy-examples

利用例もおしゃれで使ってみたい気分を盛り上げる。

実際に利用すると決めたなら「Buy」ボタンで即座に購入することができる。Basic版、Premium版、Enterprise版があり、さまざまな用途で使うのであればPremium版を購入することになるだろう。価格は65ドルだ。この価格を高いと思う人もいると思うが、正直な話、このサービスから提供されるもののクオリティは価格に十分見合うものとなっている。Fiverr99designsでデザイナーを探すよりもはるかに簡単で、かつハイクオリティのものを即座に入手できるのがすばらしい。もちろんさまざまなサンプルをみたあとでも購入しないことを選択することもできる。

もしこのサービスから購入しない場合でも、デザイナーに方向性を示すためのツールとして利用することもできるだろう。いくつかサンプルを選んで提示すれば、デザインプロセスに必要な時間を大幅に節約することもできるだろう。

ともかく、ロゴデザインに興味のある人はぜひこのツールを使ってみて欲しい。触ってみるだけで楽しくなることまちがいなしだと思う。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

会話AIの発展のため、Amazonがアクセラレータープログラムを新設

amazon-echo-money

大手テクノロジー企業は、 どこかしこもブランドの認知向上やAPIの紹介、あるいは他のオープンソースの取り組みを促進するためにアクセラレータープログラムを立ち上げている。本日、Amazonも会話AIを開発するスタートアップ向けにアクセラレータープログラムを新設することを発表した。

Amazonは1億ドルのAlexa fundを持ち、この領域で展開する22社に出資している。投資しているのは多様な業界のスタートアップで、ステージもバラバラだ。だが、アクセラレータープログラムはAmazonにとって初の試みだ。Amazonは他にも優れた会話AIに贈るAlexa Prizeを立ち上げ、実際に会話が成立するボット制作を行う大学生を募っている。

Amazonの経営企画のVP、Doug Booms(彼がAmazon M&Aの責任者でもあるのには何か意味がありそうだ)は、この新しいアクセラレータープログラムはAlexa Fundの投資先探しやAlexa Prizeに参加したチームの次のステップという位置付けではないとTechCrunchに話す。

今のところAmazonのアクセラレーター戦略に制約は少ないようだ。プログラムに参加するスタートアップの種類に確かな制限はない。コネクテッドカーからスマートホームを手がけるチームまで幅広く迎い入れるという。

Amazonは単独で行うのではなく、Techstarsとパートナーシップを組んで13週間のプログラムを実施する。Amazonは当初、Techstarsに会話AIを支援するためのパートナーシップを提案していた。AmazonとTechstarsは、プログラムに参加するすべての参加者に対して2万ドルの初期投資を行う。

選ばれたスタートアップは、ワシントン大学に借りたスペースに集められる。ファウンダーはAmazonとTechstars、両方のメンターと接点を持つことができる。プログラムの最後にはコンバーチブル・ノート形式でさらに10万ドルの投資を受ける資格が得られるという。

アクセラレータープログラムの受付は1月から開始する予定だ。AmazonとTechstarsはプログラムが始まる7月までに世界中の主要都市で合同説明会を実施する。多くのアクセラレータープログラムで行われているデモデーも10月に開催予定だ。投資家がスタートアップのプレゼンを聞いたり、ファウンダーと接点を持つ機会となる。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

人間に話しかけるようにファイルの検索ができる「Findo」が700万ドルを調達

yang

ファイルやEメールがどこかにあるのだが、その場所が分からない。これは誰しもが抱える問題だろう。テック業界で働く人々にとっては特にそうだ。そんな時、理想を言えばEメールの受信ボックスやGoogle Docsにこのように尋ねたいと思うことだろう。「この前受け取ったプレゼン資料を探してほしい。送ってくれた人の名前は忘れたけど、彼とは昨年にNYCで会っているはずだ。バイオテックに関するプレゼンテーションだった」。人間にこのように尋ねるのは可能だが、機械では不可能だ。

この会話の問題は、機械が何かを探すために必要なキーワードを人間が思い出せないというところにある。それに加えて、最近では複数のEメールアカウントを持つのが当たり前になり、ファイルの置き場所が増えたことも問題の1つだ。

2013年にこの問題に気づいたのが、Findoの共同創業者であるDavid Yangだ。そして彼は現CEOのGary FowlerとFindoを立ち上げることになる。Garyは東ヨーロッパの主要アクセラレーターの1つであるGVA Launch Gurusを設立した人物としても知られている。

トップに掲載した写真に写っているYangは、少し特殊な経歴を持つ起業家だ。彼は21歳の時にモスクワでABBYYという会社を立ち上げている。ABBYYはその後、世界でも有数のAIを利用したOCR(光学文字認識装置)企業として成長し、1300人の従業員と16のオフィスを持つまでに成長した。シリコンバレーにも100人の従業員がいる。

テック業界のベテランたちへ:彼はあのCybikoを発明した人物でもある。Cybikoは当時10代の若者向けに開発された小型のワイアレス・コミュニケーションPCで、スマートフォンの前身となったデバイスだ。(私はこのCybikoが大好きだった!周りの友達にも普及しさえすれば、、)

そして今、Yangはドキュメントの検索システムに取り組んでいる。

彼が立ち上げたFindoはシードラウンドで追加の100万ドルを調達し、このラウンドでの合計調達金額は700万ドルとなった。それに加え、同社のプロダクトがPDFファイル向けのソリューションを提供するFoxitのソフトウェアに統合されることもすでに決まっている。

今回のシードラウンドに参加した投資家は、ABBYYの創業投資家、Flint Capital Venture Fund、戦略的な出資者として参加したFoxit、そして金額と名称は非公開ながら、ドキュメント・スキャナー業界から出資に参加した者もいる。

FindoのプロダクトがFoxitのソフトウェアに統合されることで、4億2500万人のFoxitユーザーはPDFファイルをトピック別に分類したり、類似ファイルの検索や比較をしたり、キーワードや送信者の名前を覚えていなくてもPDFファイルを検索したりすることが可能になる。このような機能に加えて、PDFの編集機能も備わっている。

Findoは、Dropbox、Evernote、Gmail、Google Drive、OneDrive、Outlook、Yahoo Mail、iCloud、そしてノートパソコンやデスクトップPCのローカルドライブに対応した「スマートサーチ・アシスタント」だ。Findoには5つの「フォームファクター」が用意されている:Webアプリ、iOSモバイルアプリ、チャットボット(Slack、Facebook Messenger、Skype、Telegramに対応)、Chrome拡張機能、iMessageアプリだ。

Findoは人間の言葉を理解することができる:人間に対して話しかけるようにファイルを検索することが可能なのだ。例えば、「1ヶ月前にボストンにいる人から送ってもらったプレゼン資料を探してほしい」だとか、「ユナイテッド航空で予約したサンフランシスコ行きのチケットを探してほしい」というような具合だ。

ユーザーが自身のEメールアカウントやローカルストレージなどをFindoに認識させると、Findoはユーザーのデータをインデックス化する。利用されるインデックスはキーワード・インデックスと「セマンティック・インデックス」の2種類だ。Findoはファイルの内容から企業名、人物名、ローケーション、ミーティングの要点、イベント、アジェンダ、各種チケット、請求書などのデータのまとまりを抽出し、それを全てつなぎあわせて「知識グラフ」を構築する。

Macに搭載されたSpotlightで同じことができるだろうか?SpotlightではローカルファイルやEメールの検索をすることはできるが、Evernoteの検索はできない。ローカルストレージと同期されていないDropbox内のファイルを検索することもできない。さらに、FindoではSpotlightで検索できないようなファイルも検索可能だ。

「ロンドンの”あの人”の電話番号を探してほしい」。このようにFindoに尋ねれば、Findoはロンドンという情報に関連する人物の電話番号を探してくれる。例えば、ロンドンに拠点を持つ企業に勤める人物の電話番号を探すというような具合だ。すべてのユーザーで共有のセマンティックインデックスを構築するGoogleとは違い、Findoは何億ものプライベートなセマンティックインデックスを、何百もの言語向けに構築することを目指している。

これまで3年間のあいだ極秘とされてきた同社のプラットフォームは今日から公開が始まっている。

同社のスポークスパーソンによると、「4つ以上のアカウントを連携するユーザーのリテンション率が特に高い」という。

Findoのプロダクトは現在、WebiOSアプリ版、そしてMessenger、Slack、Skype、Telegramに対応したチャットボット版、さらにChrome拡張機能版が公開されている。

6ヶ月以内に作成されたファイルの検索ができるAdvanced Planは月額4.99ドル、すべての期間に作成されたファイルの検索できるUltimate Planは月額9.99ドルで提供されている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

AIが搭載された研究者向けの高機能検索エンジンSemantic Scholar

s2

科学論文はかなりの頻度で発行されており、主要な分野の最先端にいる人が論文の情報を追おうとすると、それだけでフルタイムの仕事になってしまうほどだ。しかし、論文サーチエンジンのSemantic Scholarは、自動で論文を読み込み、トピックやその影響力、引用回数などの情報を取り出す機能を備えており、ユーザーは簡単に最新の論文や探しているものをみつけることができる。

もしもあなたが科学者であれば、きっとこのようなサービスを求めていたことだろう。Google  ScholarやPudMedも便利なリソースではあるが、メタデータに関しては、著者や論文の引用回数や実験対象となる有機体、使われている共変数など比較的基礎的なものしか含まれていない。

Semantic Scholarは、特定分野の論文を10万本以上読み込んだデータを参照し、重要なフレーズを探しながら、新しい論文の文章全てを分析する。自然言語処理能力も備えているため、ある論文が独自の実験を基に書かれているのか、他人の実験について論じているのか理解することができ、そこから実験方法やマテリアル、動物の種類、テストを行った脳の部位など重要な情報を取り出すことができるのだ。さらに可能な場合は図表を引っ張ってきて、後で検索やソートができるようにその内容まで読み込もうとする。

semantic_illoまた、Semantic Scholarは同じトピックについて書かれた他の論文の情報も参照するため、例えば、どの関連論文もしくは引用元の論文が分析対象の論文と関連性が高いかや、分析中の論文を参照してその後どのような研究が行われたか、といったインテリジェントな判断もできるようになっている。さらにはTwitterとも連携しているため、ユーザーは気になる論文の著者や部署・学部に直接メッセージを送ったり、その後の議論がどのように展開されていったか確認したりできる。

検索スピードは早く、検索結果の関連度合いも高い上、簡単に検索結果をソート・深堀りすることもできる。このような論文を参照することの多い科学者にとって、Semantic Scholarの機能は大きなアドバンテージだ。実際に昨年ベータ版が公開されてから、すでに何百万回もこのサービスが利用されている。

semantic_scholarSemantic Scholarが一番最初に特化した分野は、コンピューターサイエンスだった。しかし、今後はバイオメディカルにも対応していくと本日発表され、最初のフォーカスは神経科学になるようだ。神経科学に関する情報が貯まったあとは、PubMedのバイオメディカルに関する論文全てを2017年中にSemantic Scholarに読み込ませる予定だ。もちろん有料で提供されている他のサービス上にもたくさんの論文が掲載されており、ElsevierやSpringerといった企業がそれを無料で開放するとは考えづらい。しかしそのような企業とも交渉にあたっているところだとSemantic Scholarは語っていた。

Semantic ScholarをつくったAllen Institute for Artificial Intelligence(AI2)は、数十人程度の小さな組織であると同時に、アメリカ最大の非営利AI研究機関でもある。彼らのモットーは、「公共の利益のためのAI」で、純粋かつ直接的に社会に貢献できるよう、AIテクノロジーを発展させることに注力している。

「医療界のブレイクスルーを、科学論文の検索のように面倒なプロセスのために遅らせるわけにはいきません。私が考えているSemantic Sholarのビジョンは、科学者がオンライン上にある何百万という数の論文を効率的にチェックし、爆発的に増え続ける情報にもついていけるような強力なツールをつくることです」とファウンダーのPaul Allenはプレスリリースの中で語った。

また、AI2のシアトルのオフィスを訪ね、CEOのOren Etzioniに話を聞いたところ、彼はSemantic Scholarが最終的に仮説生成エンジンになる可能性を秘めていると説明してくれた。彼の言う仮説生成エンジンとは、研究者の仕事を奪ってしまうほど高度なものではなく、むしろ大局的な「この手法は、感覚皮質では有効だけど、運動皮質では誰も試したことがないようだから、もしかしたらそっちを試してみた方がいいかもね」と意見を述べる教授のようなものを指している。

さらにEtzioniは、他の分野でもAI関連のプロジェクトを率いており、その多くでも自然言語処理技術が利用されている。例えばEuclidは、「3つの立方数の合計で最小の正の数は?」のように、普段私たちが使っている言葉で表現された数学の問題を理解することができる。また、別のプロジェクトでは、4年生の子供が日頃解いているような、読解問題から構成された標準テストを解くことを目標にソフトの開発が進められている。このようなプロジェクトは意外に難しいと同時に、チュータリングソフトやテストを自動で生成するソフトのように、便利なサービスにつながる可能性があり興味深い。

Semantic Scholarは誰でも試すことができるが、コンピューターサイエンスや神経科学の分野にいない人だと、検索結果はあまり役に立たないだろう。しかし、もしもあなたがそのような分野の研究をしているのであれば、Semantic Scholarを天から与えられたツールのように感じるかもしれない。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

拡張現実と機械学習による農業革命

farming

【編集部注】著者のJeff Kavanaugh氏は、Infosys Consultingの、High-Tech & Manufacturingにおける、VP兼マネージングパートナーである

農業は、これまで人類が生み出したもっとも成熟した産業だ。文明の黎明期から、農業は洗練され、調整され、適応されてきた — しかし完成したことはなかった。私たちは社会として、常に農業の未来を心配している。今日では、私たちはハイテクセクターが提供する概念も適用している — デジタル、IoT、AIなどなど。では、なぜ私たちは心配しているのだろうか?

エコノミスト誌の技術四半期Q2報告では、世界の人口増加を養うために、農業はすぐに他の製造業のようになる必要があると宣言されている。サイエンティフィック・アメリカンの報告によれば、不確実な気候でも効率的に成長させるために、作物はより干ばつ耐性を上げる必要があり、またニューヨーク・タイムズ紙によれば、少ない水でより多く収穫する方法をすぐに学ぶ必要がある。

それらは皆正しい。もし農場が世界の人口を養い続ける場合には、変わり続け、不安定なこの星の気候から、独立しそして適応するやり方を進めなければならない。そのためには、実績があり最先端技術を用いた、スマートなアプリケーションが必要となる。そのインターフェイスは単純なものでなければならない。そしてもちろん、今日のスキルを基にした適用が行える必要がある。

幸いなことに、この将来のための基礎は現在探求されている最中だ 。例えば、垂直農法(農家が作物をコントロールされた環境の下で栽培から収穫までを行えるようにする技術だ、しばしば屋内で垂直な棚を用いる)は人気と可能性の両者で沸き立っている。実際にこの方法は、91%少ない水で20%速く、いくつかの作物を生育させることが示されてきた。干ばつや洪水に耐えることができる遺伝子組み換え種子は、ケニアで見られるような最も乾燥した条件下での収穫を可能にする。

もし農場が世界の人口を養い続ける場合には、変わり続け、不安定なこの星の気候から、独立しそして適応するやり方を進めなければならない

しかし、このような進歩を管理することは、屋内か野外かを問わず、それ自体が挑戦である。酸度と土壌の養分をモニタし、そしてそれぞれの植物のための最適な成長を促す水やりは、良くて当て推量であり、悪ければ後知恵である。しかし、ここでこそ新しいインタラクティブ技術が輝くのだ。少数のセンサーの組が、植物の生育状況を監視し、リモートサーバーへリアルタイムの更新を行う。人工知能の年下の従兄弟である機械学習は、この作物の生育状況を学習し、次に必要なものを予測することができる。そして、拡張現実(AR)を用いて日常のオブジェクトに有益な情報イメージをオーバーレイすることによって、農家や庭師たちによる作物の健康の監視と管理を可能にする。

Plant.IO*は、それをがどのように行えるかを示したシステムの1つだ:塩ビ管のキューブがセンサー、生育ライト、カメラ、その他のもののフレームを提供する。機械学習専用のリモートサーバが、生育と生育条件を分析し、この先の植物のニーズを予想する。AR対応のメガネセットは、使用場所を問わず、ユーザーに植物の画像または情報を提供する。もしAR装置が、Microsoft HoloLensように高機能である場合には、肥料、水の流れ、成長ライトなどを調整して、作物の面倒を見る手段を提供することもできる。

この方法論は、ゲーミフィケーションと対になったときに、作物管理の新しい簡潔な方法に自らを委ねることになる。AIとARは共に使われることによって、大人から青少年の誰にとっても、家庭や遠くから自分の庭園を監視し管理することを、シンプルで楽しいものにする。このアイデアがPlant.IOの心臓部である:農業シナリオに、楽しく、使えるソリューションを。そこではデジタル情報が物理的オブジェクトやフィールドに、コンテキストを失うことなくオーバーレイされる。

実際には、この種の管理システムは、庭園や農場を超えて拡張できる可能性がある。測定可能なデータが存在する環境であれば、どのようなシナリオでも潜在的にはAR/AIの応用から利益を得ることができる。例えば倉庫管理などの産業オペレーションは、有望なエリアだ。AIと赤外線カメラを組み合わせた、フィールドの健康を測定する農業は、また別の候補である。

ARとAIを正しく利用すれば、ユーザーは事実上世界中のどこからでも植物を監視し育てることができる。それがキッチンカウンターの上で植物を育てようとしているのか、あるいは次の収穫の準備をしているのかは問わない。もっと良いことは、こうした作業を植物の酸性度、栄養、水レベルその他の最新の情報に基きながら、環境に配慮した方法で行うことができるということだ。

最初の産業革命は、機械化農業による生産性向上で、私たちが農場から都市へと移動する手助けをした。今度の産業革命は機械学習とその他のデジタル「実装」が農業を更に先へと推し進める — そして世界を養うのだ。

*注記:Plant.IOはInfosysによって開発されたオープンソースのデジタル農業プロジェクトである

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

AIによる全自動衣類折りたたみ機を開発する日本のセブンドリーマーズが60億円の大型資金調達を発表

tdq7ueh5uax0hv91478918018_1478918045

AIによる全自動の衣類折りたたみ機を開発する日本のセブンドリーマーズは11月14日、パナソニック株式会社、大和ハウス工業株式会社、SBIインベストメントを引受先とした第三者割当増資、技術開発提携および販売提携により、60億円の大型資金調達を実施したことを発表した。2015年6月のシリーズAで調達した約15億円を含め、同社のこれまでの資金調達額の合計は約75億円となる。

日本のスタートアップとしては、今年3月に約84億円を調達したメルカリなどに次ぐ大型の資金調達だ。

放り込むだけでAIがベストな折りたたみ方を判断

セブンドリーマーズが開発するのは、構想に10年を費やした全自動の衣類折りたたみ機「ランドロイド」だ。同社によれば、人間が一生のうちに洗濯物の折りたたみに費やす時間は9000時間で、日に換算すると375日にもなるという。ランドロイドを活用することで、この時間を他のことに費やすことができるというのがコンセプトだ。

洗濯乾燥が済んだ衣服をランドロイドに放り込むと、画像解析によって衣類の種類ごとにベストなたたみ方をランドロイドが判断する。このテクノロジーの背後には機械学習が応用されているため、長く使えば使うほど賢くなっていく仕組みだ。また、設定により家族のメンバー別やアイテム別に仕分けることもできる。一度に約30枚の衣服が投入可能だ。

laundroid_carbon_2

ランドロイドの価格、サイズについては「来年3月の記者会見まで非公開」ということだが、サイズは大型の冷蔵庫のイメージが近いとのこと。衣類の折りたたみにかかる時間については、「出勤前にランドロイドを利用すると、帰宅前には折りたたまれた状態になっている」。ディープラーニングの度合いによっても折りたたみにかかる時間は変動するため、長く使えばそれだけ折りたたみにかかる時間が短縮する可能性もある。

長く培った技術力が強み

形の整ったモノを扱うのではなく、衣類という柔軟物を扱うには高度なロボティクス技術が必要になる。セブンドリーマーズ代表取締役社長の坂根信一氏によれば、ランドロイドに使われている技術は「セブンドリーマーズ独自のアルゴリズムを構築し、独自設計のロボットアームおよび制御技術との融合に実現した唯一無二の人工知能」だと語る。また、ランドロイドの開発の過程で生まれたあらゆる技術は、国内外で特許を取得済み、または申請中だという。

history1

スーパーレジン工業の創業者である渡邊源雄氏。1957年、彼が東京に設立したコンポジット成形工場がスーパーレジン工業のはじまり。

このように、みずからを「世の中にないモノを創り出す技術集団」と呼ぶセブンドリーマーズの強みは、同社の卓越した技術だ。同社の創業は2011年だが、そのルーツは1957年に創業のスーパーレジン工業株式会社までさかのぼる。同社は独立系専業FRP(繊維強化プラスチック)成形メーカーとしては国内最古参の企業だ。現在は航空宇宙分野などにおいてその技術力が広く認められており、2010年に話題となった小惑星探査機の「はやぶさ」にも部品供給をしている。テクノロジーの分野こそ違えど、ランドロイドは同社が長く培った技術力の結晶だと言えるだろう。

 

セブンドリーマーズは現在、サンフランシスコとパリにそれぞれ営業所と支店を構えており、ランドロイドについても国内外同時発売を計画している。ただし、出荷は国内優先になるとのこと。

2019年には洗濯乾燥機能も付いたオールインワンタイプも

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

セブンドリーマーズ代表取締役社長 坂根 信一氏(理学博士)

家電分野への参入というところで気になるのが販売チャネルだ。特に日本国内では家電メーカーと販売チャネルの結びつきが強い。ランドロイドの販売チャネルについて坂根氏は、「自社での独自販売を軸に計画を立てています。具体的には、Webやショールームなどを通して、お客様に直接お届けできるチャネルを構築していきます。家電メーカーの販売チャネルについては、活用はするが戦略の中心ではありません」と話している。

セブンドリーマーズは今年10月、今回のラウンドに参加したパナソニック、そして大和ハウス工業と業務提携を結んでいる。同社によれば、折りたたみ技術の開発はこれまで通り独自で進めていくものの、ランドロイドの量産に関してはパナソニックのアドバイスを受けながら進めていくという。また、同社は2019年に全自動洗濯乾燥機と折りたたみ機能を合わせたオールインワンタイプのランドロイドを発売予定であり、その開発には「パナソニック社の先進的な洗濯乾燥機の技術が必要不可欠」となる(坂根氏)。同じく、2020年には大和ハウス工業と共同してスマートハウス向けのビルトインタイプを販売予定だという。

ランドロイドの予約販売開始は2017年3月16日、現在はプロジェクトの参加メンバーを募集している。

バイアスなきAIを創るのは、なぜ難しいのか

wtf-machine-learning

編集部注:本稿を執筆したのは、TechTalksの創業者であり、自身もソフトウェアエンジニアであるBen Dicksonだ。

 

人工知能と機械学習のテクノロジーが成熟し、それを利用すれば複雑な問題をも解決できることが実証されつつある。それにつれて、私たちはこれまで人間には不可能だったことも、ロボットなら成し遂げることが可能なのではないかと考えるようになった。それはすなわち、個人的なバイアスを排除して物事を判断するということだ。だが、最近の事例によって機械学習が抱える予想外の問題が浮き彫りになっている。その他の革新的な技術と同じように、機械学習でさえも時には人間界のモラルや道徳的な基準からかけ離れた結果を生むことが分かったのだ。

これからお話するストーリーの中には面白おかしいものもあるが、それは同時に、私たちに未来についてよく考えるためのきっかけを与えてくれる。その未来とは、ロボットや人工知能が今よりももっと重要な責任をもち、もしそれらが間違った判断を下したとすれば、ロボット自身がその責任を取るという未来だ。

機械学習特有の問題点

機械学習とは、アルゴリズムを使ってデータを解析し、そこからパターンを抽出することで得た洞察をもとに、未来を予測したり、物事を判断することを指す。私たちが毎日のように使うサービスにもこの機械学習が利用されている。サーチエンジン、顔認識アプリ、デジタルなパーソナルアシスタントなどがその例だ。機械に投入するデータの量が多ければ多いほど、機械はより賢くなっていく。だからこそ、企業はより多くの顧客データやユーザーデータを集める方法を探し求めているのだ。

だが結局、機械は投入されたデータ以上に賢くなることはできない。そして、それこそが機械学習に特有の問題を生んでいる。アルゴリズムをトレーニングするために使用したデータによっては、機械が悪の心を持つことも、バイアスを持つこともあり得るからだ。

人間の子どもと同じように、機械もその育て親が持つ趣味嗜好やバイアスを受け継ぐ傾向がある。機械学習という分野において、この問題はより複雑だ。企業は自分たちのサービスの背後にあるアルゴリズムの内部を明かそうとせず、それを企業秘密として扱うからだ。

機械学習はどのように間違った結論を生むのか

機械学習のスタートアップであるBeauty.aiは今年、史上初のAIによる美人コンテストを開催した。このコンテストには6000人以上の人々が参加し、AIは提出された顔写真を解析して、顔の対称性やしわなどを元にその人がもつ「魅力度」を算出した。

このコンテストでは人間の審査員がもつバイアスを排除できるはずだった。しかし、結果はいくらか期待外れのものだった:44人の受賞者のうち、白人がその大半を占め、アジア人の受賞者は数えるほどしかいなかったのだ。褐色の肌を持つ受賞者にいたっては、そのうち1人しかいなかった。この結果について、Motherboardが掲載した記事では、アルゴリズムをトレーニングする際に使われた画像サンプル自体がもつ、人種や民族に対するバイアスがこの結果を生む原因となったのだと結論づけている。

機械学習の「白人びいき問題」が表沙汰になったのはこれが初めてではない。今年初めには、ある言語処理アルゴリズムが、JamalやEbonyといった黒人に多い名前よりも、EmilyやMattなどの白人に多い名前の方が心地の良い響きを持つと結論付けるという事件があった。

データベースからバイアスを取り除くことこそ、公正な機械学習アルゴリズムを設計するための鍵となる。

この他にも、Microsoftが開発したチャットボットの「Tay」がサービス停止に追い込まれるという事もあった。10代の女の子の言動を真似るように開発されたTayが、暴力的な内容のツイートをしたことが問題視されたからだ。Tayはもともと、ユーザーから受け取ったコメントを吸収し、そのデータを元に学習することで、より人間に近い会話をするという目的をもって開発されたチャットボットだった。しかし、ユーザーはTayに人間味を持たせることよりも、彼女に人種差別やナチズムの概念を教えることの方に興味があったようだ。

だが、もしこれが人間の命や自由に関わるような状況だったとしたらどうだろうか?ProPublicaが5月に発表したレポートによれば、当時フロリダ州が導入していた囚人の再犯率を計算するアルゴリズムは、黒人に対して特に高い再犯率を算出するような設計だったという。

黒人をゴリラとして認識するGoogleのアルゴリズム高給の求人広告を女性には表示しない広告エンジン下品なトピックや嘘の出来事を表示するニュース・アルゴリズムなど、機械学習の失敗例は他にも数えきれないほどある。

機械学習が犯した過ちの責任を取るのは誰か?

従来のソフトウェアでは、エラーの原因がユーザーにあるのか、それともソフトウェアの設計自体にあるのかということを判断するのは簡単だった。

しかし機械学習ではそうはいかない。機械学習において一番の難問となるのは、過ちが起きたときの責任の所在を明らかにすることなのだ。機械学習の開発は従来のソフトウェア開発とは全く異なり、プログラムのコードと同じくらい重要なのが、アルゴリズムのトレーニングだ。アルゴリズムの生みの親でさえも、それがもつ正確性を厳密に予測することは出来ない。時には、自分がつくったアルゴリズムの正確さに驚かされることもある。

そのため、Facebookの「Trending Topics」がもつ政治的バイアスの責任の所在を明らかにするのは難しい。そのサービスの少なくとも一部には機械学習が利用されているからだ。共和党の大統領候補であるDonald Trumpは、Googleが同社の検索エンジンを操作してHillary Clintonに不利なニュースを表示しないようにしていると批判しているが、これに関しても、Googleが検索エンジンの仕組みを明確に説明して、その主張を跳ね返すのは難しいだろう。

人工知能がより重要な判断をするような状況では、この問題はもっと深刻なものになる。例えば、自動運転車が歩行者をひいてしまったとしたら、その事故の責任は誰にあるのだろうか?運転手、より正確に言えばそのクルマの所有者の責任になるのだろうか、それとも、そのアルゴリズムを開発した者の責任なのだろうか?

機械学習のアルゴリズムからバイアスを取り除く方法とは?

データベースからバイアスを取り除くことこそ、公正な機械学習アルゴリズムを設計するための鍵となる。だが、バイアスのないデータベースをつくること自体が難問だ。現状、アルゴリズムのトレーニングに使われるデータの管理に関する規制や基準などは存在しておらず、時には、すでにバイアスを含んだフレームワークやデータベースが開発者のあいだで使い回されることもある。

この問題に対する解決策の1つとして、厳密に管理されたデータベースを共有し、その所有権を複数の組織に与えることで、ある1つの組織が自分たちに有利になるようにデータを操作することを防ぐという方法が考えられる。

これを可能にするのが、Facebook、Amazon、Google、IBM、Microsoftなど、機械学習界のイノベーターたちが結んだ歴史的なパートナーシップである「Partnership on Artificial Intelligence」だ。機械学習と人工知能が発展するにつれて様々な問題が浮き彫りとなった今、そのような問題を解決することがこのパートナーシップの目的である。人工知能がもつ道徳性の問題を解決すること、そして、複数の組織による人工知能のチェック機能をつくることなどがその例だ。

Elon MuskのOpenAIも面白い取り組みの1つである。OpenAIでは、AIの開発にさまざまな人々を参加させることで、その透明性を高め、AIが犯す過ちを未然に防ぐことを目指している。

ロボットが自分の言動の理由を説明し、みずから間違いを正すという未来もいつか来るだろう。しかし、それはまだまだ遠い未来だ。それまでのあいだ、人間がもつバイアスをAIが受け継ぐことを防げるのは人間しかいない。そして、それは1つの組織や個人によって成し遂げられるものではない。

人間の知恵を結集してこそ達成可能な目標なのだ。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Sinovation Venturesが狙うのはAIだ

img_0166

Sinovation Venturesを創業したKai-Fu Lee博士の中国製SNSのアカウントには、5000万人ものフォロワーがおり、彼はそこで中国のテクノロジーの将来を予測する賢者のように扱われている。TechCrunch Beijing 2016で彼は、中国のスタートアップ業界の重要なトレンドについて私たちに話してくれた。

Sinovation Venturesは先日、中国とアメリカのファンドから6億7500万ドルを調達しており、現在では300社以上の企業に出資している。Kai-Fu Leeは「1社につき1500万ドルまで投資ができる規模になった」と話している。

そして、これからのSinovation Venturesにとって最も重要な分野となるのが人工知能だ。自動運転技術は大勢から注目されている分野だが、Kai-Fu Leeはそれに加えて、画像認識技術、人工知能の金融分野への応用技術、そしてAIを利用したヘルスケア・スタートアップに狙いを定めている。ここ数年でSinovation Venturesが出資した企業うち、その約半数はAI関連企業だ。

「AIはあらゆる職業や業界に変化をもたらしました。AIが関与していない分野など無いといっても過言ではありません」とKai-Fu Leeは話す。「例えば、AI技術の教育分野への応用は想像がしやすいでしょう。従来の教育のほとんどは、AIによる教育に切り替えられる可能性があります。医療や医薬品分野もAIが活躍する分野です」。

もちろん、AIにはまだ根本的な問題が残されている。AIが人間に取って代わることで、人間の職が奪われてしまうのだろうか?Kai-Fu Leeもこの問題に気づいてはいるが、それに対しては楽観的な意見を持っている。

「AIはとてもよく働くだけでなく、それにかかるコストは非常に低い。それによって人類全体はこれまでより多くのリソースを持つことができ、AIのおかげで全ての人々に経済的な保障を提供することができるかもしれません」と彼は語る。「生産性が低い繰り返しのタスクをこなすことが、人類が地球上に存在している理由ではないでしょう」と彼は続けた。

彼によれば、人工知能の誕生によって最も影響を受けるのは貨物運輸の分野だという。その中でも、まず初めに影響を受けるのがトラックの運転手だ。「だからこそUberがOttoを買収したのです」と彼は話す。

一方で、彼はヘルスケアに関してより慎重な考えを持っており、AIがヘルスケア分野で利用されるようになるまでには時間がかかり、変化は徐々に進んでいくだろうと話す。「この分野が少し特殊なのは、そこに人の命が関わってくるからです。この分野でAIが使われるとすれば、それは人間のアシスタントとしての役割でしょう」う。

彼らはAI分野に力を入れてはいるが、複雑なテクノロジーだけにフォーカスしている訳ではない。Sinovation Venturesはこの他にも、エンターテイメント分野やコンテンツ制作系の企業にも投資をしている。様々なTV番組にも投資しており、これはVCとしては珍しいことだ。

  1. img_0169.jpg

  2. img_0160.jpg

  3. img_0168.jpg

「米国ではより小さい規模の投資をするようにしています。そうやって市場に入り込むことで、彼らから学ぶことができるからです」とKan-Fu Leeは話す。ハードウェアや玩具の分野に投資することも考えられるだろう。

最後に、Kai-Fu Leeは中国の消費者製品の動向について話してくれた。「モバイル・インターネットという分野では、中国は米国よりも進んでいると思います。なぜなら、これまで米国に遅れをとっていた中国は、いざ前に進むときに階段を数段抜かしすることができたからです」と彼は話す。「中国の人々は現金の支払いからモバイル・ペイメントに直接シフトしていきました。モバイル・ペイメント、モバイル・ゲーミング、モバイル・コミュニケーションなどの分野では、中国が主導権を握っています」。

今後数年のうちは、中国の企業が国外で大きな成功を収めるとは思いません。

— Kai-Fu Lee博士

彼の意見によれば、GoogleやFacebookなどの企業は、WeChatなどの中国のコンシューマー向けサービスと争うべきではないという。時すでに遅し、とのことだ。

「FacebookやGoogleといった企業は、中国企業が持っていないようなテクノロジーにフォーカスできるのです」と彼は話す。「例えばFacebookにはOculusがあり、Googleにも中国の競合企業には無い技術を持っています。もし私が彼らであれば、そういった技術を中国でもローンチしようとするでしょう」。

だが、米国市場を狙う中国企業にとってもそれは当てはまる。「米国市場においてWhatsAppはすでに独占的な地位を確立しており、中国企業がその分野に参入するのは難しいでしょう」とKai-Fu Leeは話す。「今後数年のうちは、中国の企業が国外で大きな成功を収めるとは思いません」。

つまり、これまで通り中国企業は中国で、米国企業は米国でそれぞれ独占的な力を持つということだろう。Uberが中国市場から撤退したことからも分かるように、真のグローバル・リーダーになるのは難しいということだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

IBM WatsonとUdacityがパートナーしてネット上に人工知能の単科学位コースを開設(全26週)

ibm-watson-servers

社会人のスキルアップ&キャリアアップのためのネット教育をやっているUdacityが、IBM WatsonDidi Chuxing、およびAmazon Alexaとパートナーして、人工知能のナノディグリー*を提供していく、と今日(米国時間10/25)のIBM World of Watsonカンファレンスで発表した。〔*: nanodegree、ナノ学位、‘ミニ’よりもさらに小さな学位、特定単一科目限定。Udacity独特の用語である。〕

この課程のためのカリキュラムはIBM WatsonとUdacityが共同開発する。‘中国のUber’(のひとつ)Didi Chuxingは、このナノ学位を取った学生を雇用する。IBMも、だ。人工知能ナノ学位の開発に関し、Amazon AlexaがUdacityのアドバイザーとなる。

UdacityのファウンダーSebastian Thrunは、Googleのイノベーション部門Google Xと、その自動運転車開発事業を創始した人物だが、彼によるとこのAIナノ学位は、ソフトウェア開発にある程度精通している人が対象だ。

IBMでWatsonを担当しているVP Rob Highが同社のブログ記事に、このナノ学位の教程では、ゲーム、検索、ロジックとプランニング、コンピュータービジョン、自然言語処理などのアプリケーションやプラットホームの作り方を学生に教えていく、と書いている。

人工知能と倫理の問題についてThrunはこう言う:

“その問題は、ナノ学位のカリキュラムには含まれない。AIに関して恐怖を声高に広める人たちがいるが、AIと世界の支配や破壊は無関係だ。むしろそれは、退屈な繰り返し作業から人間を解放する。あなたがライターじゃなくて、オフィスで毎日同じことをしているオフィスワーカーだ、と想像してご覧”。

“あなたの仕事のやり方を見ていたAIは、あなたの仕事をあなたの100倍の効率でできるようになるだろう。あなたには、大量の自由時間ができる。AIと人間の心との関係は、蒸気機関と人間の体との関係とパラレルだ、と私は思う。どちらも、世界にとって、ポジティブなニュースだ”。

UdacityのAIナノ学位課程は、13週間の学期を2学期受ける。最初の学期は、2017年の初めに開く。

カリキュラムは目下開発中だが、教えるのは人間だ。ただしそれらの先生たちが、自分の授業のためのAIアプリケーションを開発するのは、かまわない。

UdacityはEdX, Courseraなどなどのエドッテック(edtech)プラットホームと競合している。どこも、今のテクノロジー社会における、一般社会人のスキルアップとキャリアアップを、売り物にしている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Clarifaiが3000万ドルを調達、ビジュアル検索技術をディベロッパーへ

customtraining-adidas

Matt Zeilerはカナダの農村で育った。それから数十年後の今、彼はPinterestやGoogleが保有しているようなビジュアル検索ツールを、他の企業やディベロッパーへ提供するためにスタートアップを運営している。

そのスタートアップの名はClarifai。ニューヨークを拠点とする同社は、どんなものが写真の中に含まれているかというのをアルゴリズムが学習できるように、ディベロッパーに対してメタデータを写真にタグ付けできるサービスを提供している。この機能を利用すれば、Clarifaiのディベロッパーは、対象物の含まれる写真を検索したり、アップロードされた写真と似たものが含まれる画像を検索したりできるようにアルゴリズムを訓練することができる。本日Clarifaiは、リードインベスターのMenlo VenturesやUnion Square Ventures、Lux Capitalなどが参加したラウンドで3000万ドルを調達したと発表した。同社のこれまでの調達額は合計4125万ドルにのぼる。

GoogleやPinterestといった企業がビジュアル検索テクノロジーの開発を進める中、Clarifaiも同じことをしようとしているが、彼らはサードパーティのアプリやディベロッパーにビジュアル検索機能を提供することに注力している。複数枚の画像に相当するデータがあれば、どんなものが画像内に含まれているかというのを判断するモデルをClarifaiで構築することができるとZeilerは話す。そしてディベロッパーは自分たちが識別しやすいタグを使うことで、画像や動画の中に含まれる”オブジェクト”のクラス(雛形もしくは定型)を新規にアルゴリズムに教え込むことができる。

「私たちにとって、顧客に通じる1番大事な扉となるのがディベロッパーの方々です」とZeilerは話す。「Twilioのサービスを考えてみて下さい。彼らはディベロッパーファーストで通信機能に特化したAPIプラットフォームを運営しています。私たちは似たような形でAIサービスを提供していて、積極的にミートアップやハッカソンに参加したり、オフィスでイベントを開催したりしています。今後は、全てのディベロッパーの間でClarifaiが話題となり、彼らが実際に私たちのサービスを使って次世代のアプリを作るようになってくれればと願っています。将来的には次のSnapchatとなるようなサービスをガレージで開発している人たちと、一緒に成長していきたいです」

Clarifaiは、経験の浅いディベロッパーやプログラマーに向けて、Twilioのように数行のコードで実装可能なAPIの形でツールを提供しているほか、カスタマイズ性の高い玄人向けのツールも用意している。もしもClarifaiが、Twilioのように上手くディベロッパーのトレンドを利用することができれば、Twilioと似たような形で強力な事業に発展していくかもしれない。

しばらくのあいだClarifaiは、画像・動画検索の機能向上に集中し続ける予定だが、データ構造を理解できるような技術があれば、理論上ほかのメディアにもサービスを展開することができる。ZeilerはClarifaiがほかにどのようなツールの開発を行っているかについて口を閉ざしているが、音声やテキストなど、サービスが展開されるであろう方向性は簡単に予想がつく。

Clarifaiの本質的なゴールは、GoogleやPinterestが保有しているようなツールを開発し、それを下流にいるディベロッパーやほかの企業に提供していくことだ。例えば、WalmartやMacy’sなどの小売企業はこのようなサービスを利用したいと思うかもしれないが、Googleのような会社と協業すると、小売店の情報を競合企業に渡してしまうことに繋がる可能性がある。そして最終的には、彼らが競合サービスを構築するための手助けをしてしまうことになりかねないのだ。

「私たちは何社かの大手企業を競合と見ていますが、この分野のスタートアップの話はあまり聞きません」とZeilerは言う。「たくさんのスタートアップが引き続き買収されていますが、私たちにとっては喜ばしいことだと社内ではその状況を祝っています。というのも、私たちは独立系のAI企業を作り上げたいと考えていますし、この市場には独立した企業が必要だとも考えているんです。顧客となる企業にはデータの扱いに関して私たちを信用してほしいと思っている一方、多くの企業はGoogleやMicrosoftなどの大手IT企業が、そのうち集めたデータを使って競合製品を作ろうとしていることを知っており、彼らのことを信用していません」

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ココペリインキュベートが1億円を調達、金融機関向け融資審査AIをローンチ予定

kokopelli

中小企業向けスポットコンサルサービスのSHARESを運営するココペリインキュベートは、SBIインベストメント横浜キャピタルアドウェイズTISの4社を引受先とする第三者割当増資で、計1億円を調達したと本日発表した。

今回調達した資金は、既存ビジネスのBPO事業(給与計算・経理代行)とスポットコンサルサービスSHARESに続いて第三の柱となる、金融機関向けの融資審査AIエンジン・SHARESΦ(シェアーズファイ)の開発にあてられる。

中小企業の財務管理負担を軽減するサービス

ココペリインキュベート代表取締役の近藤繁氏は、もともと金融機関で中小企業への融資業務を担当していた。その現場で、財務管理が不十分なために融資を受けられないでいる企業を目の当たりにしたことから、中小企業をサポートするという使命感に目覚め、ココペリインキュベートを設立。

当初の財務コンサルティング業務から派生して、給与計算や経理作業を代行するサービスをスタートさせると、顧客から契約や登記関連業務の相談を受けるようになり、それをきっかけに同社は専門家と中小企業をマッチさせる、スポットコンサルティングサービスのSHARESを2015年6月にローンチした。

今では340名以上の専門家と1000社以上の企業が登録しているSHARES上では、既にSHARES AIという人工知能を利用したサービスが提供されている。企業が財務・労務・給与等の関連データを入力すると、AIがその内容を分析して、資金調達や助成金申請のタイミングなど経営課題に関する通知を行うようになっているのだ。

screen-shot-2016-10-17-at-13-11-47

なお、BPO事業での収益を中心とした、2015年度の売上規模は6000万円で、SHARESの有料化がはじまった今年度は20%前後の売上増加を見込んでいる。

AIで中小企業がお金を借りやすい環境をつくる

SHARES AIとは別のサービスとしてローンチ予定のSHARESΦは、月次の財務情報を基に与信判断を行うことができるAIエンジンだ。

大企業に対する貸し出しの状況はリーマンショック以前のレベルに回復している一方、中小企業への貸し出しについては、依然2008年の状況からそこまで好転していない。というのも、一般的に金融機関の与信審査は年次の財務情報を基に行われるため、一過性の減益などに左右されやすい。そのため、業績にブレが出やすい中小企業に対しては、銀行もリスクを取りづらい構造になっているのだ。

しかし、月次の情報を参照すれば企業の実態を深く把握でき、細かなリスク判断が可能になるため、金融機関も中小企業へ貸し出しを行いやすくなる。また、情報の受け渡しはクラウドベースで行われるため、融資担当者が決算書を受け取りにわざわざ企業を訪れたり、郵送を依頼したり、紙に印刷されたデータを金融機関側で再入力したりする手間もなくなり、結果的に審査プロセスがスピードアップする。

既にいくつかの金融機関で実証テストが開始されており、2020年までにSHARESΦを50の金融機関に導入することを目指していると近藤氏は話す。

shares_fai

また、SHARES AIは、クラウド会計ソフトのfreeeやMFクラウドとのAPI連携に対応しているほか、130万以上の登録ユーザー数を誇る弥生ともCSV連携できるようになっている。そのため、将来的には会計ソフトの情報をダイレクトにSHARES AIへと供給し、企業が資金調達のタイミングに関する通知を受け取ったら金融機関に連絡をとり、金融機関がSHARESΦ経由でその情報をもとに融資審査を行う、という一気通貫サービスが提供できるようになるかもしれない。

顧客ベース拡大に向けて

今回投資に参加したSBIインベストメントは、今年の6月に300億円規模の「FinTechファンド」を設立しており、SHARES Φの顧客獲得に向け、同社にはファンドに参加している金融機関とココペリインキュベートの関係深化を促す役割が期待されている。

また、ココペリインキュベートは、横浜キャピタルの親会社にあたる横浜銀行や他数社と共に、小口融資の自動審査システムを開発するためのコンソーシアムを今年立ち上げた。そこでは企業からの申し込み後、即日もしくは翌日に融資ができるようなシステムの開発にあたっている。

さらに取締役COOの森垣昭氏によれば、弁護士や税理士など士業への営業力に定評のある、アドウェイズ傘下のサムライアドウェイズとの業務提携を通して、SHARES上の登録専門家の数を増やしていく計画だ。

金融機関へのシステム導入実績のあるTISとは、財務情報登録作業の効率化や事務作業の軽減を目的とした同社の既存のシステムと、ココペリインキュベートの与信審査テクノロジーを組合せた新たなシステムの開発にあたっていくとのこと。

その他にもココペリインキュベートは、先月よりビッグローブと提携し、同社が起業家向けに提供している創業支援サービスの一部として、SHARES経由の相談サービスを提供している。

今後もSHARESを利用する企業数の拡大に取り組むと共に、 特許出願中のSHARESΦで、融資先を増やしたいと考えている金融機関と資金調達のハードルに苦しむ中小企業のギャップを埋めていく考えだ。

ハンズオン:自律飛行ドローンHover Camera Passport

img_0334

1年ほど前に、自律飛行が可能で、カメラも付いた新しいタイプのドローンが市場に(プレオーダーの形で)現れた。カメラとAIテクノロジーが組み合わさったこのドローンであれば、基本的にはユーザーが機体を空中に投げ上げるだけで、ドローンがユーザーの後ろをついて回って写真や動画を撮影することができる。

SnapLilyStaakerHoverなどがこのようなドローンの開発にあたっており、そのうちのほとんどが外部調達もしくはプレオーダーという形で何千万ドルもの資金を準備していたものの、実際の製品出荷までには時間がかかっている。

しかし、本日Hover(ZeroZero Roboticsの飛行カメラブランド)は、Passportと名付けられた同ブランド初のカメラドローンを発表した。現在の価格は549ドルに設定されており、最終的な予定小売価格599ドルから50ドル値引きされている。先週私たちはPassportを試すことができ、その性能には感動してしまった。

コンパクトなサイズ

数ヶ月前に私はニューヨークシティに引っ越してきて、大変気に入っているのだが、ドローンを飛ばすのは諦めざるをえなかった。予想される結果(と法律)を無視して、この街で図体の大きなInspireやPhantomを何百フィートも飛ばすなんてことはありえない。

しかしPassportなら話は変わってくる。折りたたみ可能なこのドローンの重さは242gで、飛行モードのときのサイズは本一冊分ほどだ。折りたたまれた状態だとビデオテープ程の大きさになる。街中を散歩する際に、このドローンを彼女のハンドバッグの中に放り込んでみたところ、最初こそ彼氏のドローンを持ち運ばなければならいことにイラついていた彼女も、そのうちドローンがハンドバッグに入っていることさえ忘れていた。スーツケース並のInspire用ケースのサイズと比べれば、Passportのサイズは夢のようだ。

  1. img_0331

  2. img_0335

  3. img_0334

  4. img_03331

しかしもちろんPassportは、DJIのInspireやPhantomのようなフル装備のドローンではない。4Kの動画と1300万画素の写真を撮影することはできるものの、カメラの用途としては、クローズアップでの撮影や三脚を使うような場面での撮影が想定されており、本当の意味での空撮カメラではない。WiFi接続についてもドローンがユーザーから60フィート(約18m)離れると途切れてしまい、そこまで高く飛ぶようにはできていない。実際に使用していたときも、1、2度接続が途切れたが、このときはまだWiFiのカバー範囲をメーカーに確認していなかったため、ほぼ間違いなく私が60フィートの境界を超えたために起きたものだと思われる。もしも接続が途切れてしまったとしても、ドローンがその場に浮いたままでいるため、ユーザーは近づいていってWiFiに接続し直すことができる。

そして何百フィートも飛ばせない代わりに、ユーザーはPassportを屋内でも飛ばすことができる。これまでリビングルームでInspireを飛ばそうとしたことがあるだろうか?私はあるが、本当に絶対にオススメしない。その一方でPassportは、ニューヨークにある私の小さなアパートの中や、外に出て歩道で飛ばすには完璧だった。Passportには音波センサーと、1秒間に100枚の写真を撮影できる、下向きに取り付けられたカメラが搭載されており、どちらもPassportを所定の場所で飛行させるために開発された。この安定性のおかげで、狭い場所でも壁にぶつかるのを心配せずにドローンを飛ばすことができる。

結局DJIのドローンは何百フィートという高さまで飛んで建物全体の動画を撮影することができる一方、Hover Camera Passportは、ユーザーから数フィート離れたところで写真や動画を撮影するという、いわば飛行型自撮り棒またはパーソナルカメラマンのような製品なのだ。

カメラ

しかしこのような、新しいタイプのドローンに関する理想論も、いい写真や動画が撮れなければ成立しない。

Passportにはイメージスタビライゼーション機能(電子式と1方向のジンバルによる物理的なものの両方)が搭載されており、動画のブレを抑えるのに一役買っている。なお、ZeroZero Roboticsは、風が環境下では4Kではなく1080pでの撮影を推奨している。というのも、同製品のイメージスタビライゼーションのアルゴリズムは1080pに最適化されているためだ。

カメラの性能は、長編映画の撮影に使えるほどではないものの、必要最低限のことはできる。カメラのレンズは非常に小さく、iPhoneのカメラのレンズと同じくらいだ。さらに撮影した写真や動画のクオリティも、iPhone 6Sのカメラで撮ったものとほぼ変わらず、599ドルで買える242gのポータブルドローンと考えれば悪くない。

  1. img_0218

  2. img_0229

  3. img_0307

さらにフラッシュも内蔵されており、ドローンが数フィートだけ離れている状態でグループ写真や個人写真を撮る際にはかなり役立つ。繰り返しになってしまうが、フラッシュが内蔵されているという事からも、Passportが空撮ではなくクローズアップ写真を撮るためにデザインされたということが分かる。

Instagram用や友人に送るためのものとしては、十分過ぎるくらいのクオリティの写真を撮影できるが、もしも映画のように見事な空撮映像を撮りたいという人が購入するとガッカリしてしまうだろう。

AIによる自律飛行とマニュアル操縦

見方によって、Passportがドローンよりも空飛ぶカメラに近いと考えられる理由が、かっこいい写真や動画を撮るために搭載されたテクノロジーの数々だ。一旦Passportを空中に浮かせれば、ビデオモードに移り、Follow・360-Spin・OrbitからAIモードを選択することができる。

Followは名前の通りだ。Passportのカメラがユーザーをとらえると、携帯電話上のストリーミング映像に写ったユーザーの体の周りに黄色いボックスが表示される。そして画面に写ったユーザーをダブルタップすると、ボックスが黄色から緑色に変わり、Passportがユーザーをロックオンしたことが分かる。そうすれば、ユーザーが歩き(もしくはゆっくり走り)回る後ろをドローンがついて行くようになる。さすがに走りながら急に方向転換したときには対象を見失ってしまっていたが、Follow機能はとても良くできていた。

Orbitもとても面白い機能だ。Followと同じ要領でPassportをユーザーにロックさせると、Passportが10フィート(約3m)程離れてユーザーの周りを回りだす。ユーザーが歩いているときにも有効で、撮影された動画はアクションムービーさながらだ。

素晴らしいことに、ユーザーはさらに、モバイルアプリ内のオンスクリーンジョイスティックを使って、Passportをマニュアルで操縦することもできる。自律飛行型のドローンの中には、AIの性能が良いからマニュアル操縦は必要ない(できない)と自慢気に謳っているものもある。しかしドローンを所有する上での楽しみの少なくともひとつが、自分でドローンを操縦することであるため、この宣伝文句は残念な結果につながることが多い。またPassportのサイズであれば、家の中を飛び回ることもできるため、さらにその楽しみが増える。

まとめ

Passportにはとても感動した。私はこれまでにも、”空飛ぶカメラ”という新たなカテゴリーに含まれるドローンを試してきたが、ほとんどが中途半端でガッカリするようなものだった。しかしPassportは本当に良くできている。InspireやPhantomのような怪物級のドローンを補完するサブ機を探している人や、屋内や人の周りでも飛ばせるようなエントリーモデルを探している人にとって、Hover Camera Passportはぴったりの製品だ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

自動運転シャトルバスの仏Navyaが3400万ドルを調達、バリュエーションは2億ドル超との噂

navly_confluence

自動運転車といえば、自家用車の発展に関する話が中心となるが、実はシャトルバスのようなカテゴリーでも大きな進化が起きている。

最新のニュースによれば、ドライバーレスのシャトルバスを製造するフランスのスタートアップ・Navyaが、人員・テクノロジー・営業力を増強するために3400万ドル(3000万ユーロ)を調達した。公共交通運営企業のKeolisおよび自動車パーツを製造するValeoグループという2社の戦略的投資家のほか、カタールの投資会社Group8も今回のラウンドに参加した。

Navyaはバリュエーションを公開していないが、Funderbeamのレポートによれば、本ラウンド後の額は2億2200万ドルに達するという。これまでにNavyaは、仏投資会社のGravitationやCapDecisif、Robolution Capital(ロボット関連企業専門の投資ファンド)から450万ドル(410万ユーロ)を調達していた。

Navyaは10年かけてフラッグシップ機・Armaの開発を行い、2015年10月にようやく同製品はローンチされた。Armaは完全電動・無人で、最大15人の乗客を乗せて最高時速45km(時速28マイル)で走行することができる。既に政府の交通プロジェクトのもとでArmaはリヨン市内の路上を走行しており、その他にも名前の明かされていない戦略的契約が複数結ばれている。さらにNavyaは、Group8とのパートナーシップを通じて、中東向けにもArmaを製造していく予定だ。

地方行政機関や、A地点からB地点に移動するのに交通手段が必要になるほど大きな敷地を有する企業のニーズを満たし、Navyaは今年中に30台の自動運転車を顧客のもとへ届けようとしている。

これが実現すれば、Navyaは自動運転シャトルバス市場で躍進を遂げるであろう一方、他のプレイヤーも同じゴールにむけて動きを加速させている。

今年の夏、Local Motors製のミニバスOlliにWatsonが採用され、IBMは自動運転車の世界にはじめてその足を踏み入れた。メルセデス・ベンツ製の自動運転バスも、12マイルを走りきってマイルストーンを達成した。ロシアの検索サービス大手で、最近はモバイルや機械学習分野へのリポジショニングを図っているYandexでさえ、シャトルバスの開発を行っている。

どうやら競争の激化をひとつの理由としてNavyaは資金調達を行ったようだ。しかも普通の投資ではなく、同社の成長を支えてくれるような戦略的パートナーからの投資だ。

「徐々に競争が激化している市場で成長を持続させるため、戦略的提携という道を選びました。今回の提携を通じて大手交通会社のリソースを利用することで、コストを抑えて競争力を保つことができると同時に、私たちの自動運転ソリューションであるNavya Armaを、効率的に世界各地へ流通させることができます」とNavya社長のChristophe Sapetは声明の中で語った。

「販売台数が一定のラインを越えれば、インテリジェントな自動運転車を整備したいと考えている街や企業が支払うコストが下がり、Navyaの成長スピードが上がります」

今回のラウンドに参加した投資家の中には、自動運転の分野で実績を持つ企業も含まれている。

Keolisは地方自治体と契約して交通システムの建設を行っているが、今後は同じ顧客からもっと持続可能で効率的な移動手段を求める声が挙がるだろう。そしてValeoは製造面だけでなく、実用面でもKeolisをサポートすることができる。というのも同社は、最近カリフォルニアでの自動運転車テストの許可を得たところなのだ。

こちらのビデオで実際にArmaが動く様子を見ることができる。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

産業用ロボットが人間に取って代わるのは良いことだ

Rotherham, UK

【編集部注】執筆者のMatthew Rendallは、Clearpath Roboticsの産業部門・OTTO MotorsのCEO。

間違った人の話を聞くと、北米の製造業は絶望的な状況にあると感じることだろう。

アメリカとカナダの仕事が、過去50年の間に海外へと流出していることに疑いはない。2000年から2010年の間だけで560万もの仕事が消え去った

しかし興味深いことに、外国へとアウトソースされた仕事はそのうち13%にしか満たないのだ。失われた仕事の大部分にあたる残りの85%については、”生産性の向上”、つまり機械が人間を代替したことがその原因となっている。

多くに人にとって、このシナリオは事態がさらに深刻であることを物語っている。中国やメキシコは「アメリカ・カナダ人の仕事を奪っている」かもしれないが、少なくともその担い手は別の人間だ。一方ロボットには、製造業のような分野の仕事をこの世から消し去ってしまう恐れがあると言われている。“How to Keep Your Job When Robots Take Over.(ロボットから自分の仕事を守る方法。)” “Is a robot about to take your job?(ロボットが私たちの仕事を奪おうとしているのか?)” “What Governments Can Do When Robots Take Our Jobs.(ロボットが人間の仕事を奪う中、政府に何ができるか。)” など、人々の恐怖心を利用しようとする動きも多く見られ、もう怖気づかされるのはたくさんだ。

しかし実情は少し違っている。過去20年間でアメリカのインフレ調整済み製造業生産高は40%も増加しており、アメリカ国内の工場が生み出す付加価値も過去最高の2.4兆ドルに達している。つまり仕事の数が減る一方で、製造業の生産高は増えているのだ。製造業に従事する人の教育・給与水準は上がり、彼らは作業員の生産性を向上させるテクノロジーを含め、価値ある製品を生み出している。

実際のところ、主に労働者の高齢化を背景に製造業では200万人もの労働者が不足している。彼らの平均年齢は45歳で、これはアメリカの非農業部門雇用者の中央値よりも2.5歳ほど高いほか、若い世代の同業界への関心も低い。

これまでもテクノロジーが存在する限り、技術の進歩を文字通り破壊するラッダイトのような人たちが存在していた

この数値からは違った結論が導き出される。ロボットは私たちの仕事を奪っているのではなく、私たちの仕事をより良いものにしているのだ。

ロボットを利用すれば安全性は向上するし、パフォーマンスも安定する。海外の労働力を搾取するより道徳的にも優れている。さらにロボットは驚くほど費用対効果が高く、投入資金を12ヶ月以内に回収できることもよくある。つまり、常にコスト削減の方法を模索し、進化のスピードが遅いことに悩まされている製造業にとって、ロボットはゲームチェンジャーだと言えるだろう。

さらにその後に続くコスト削減が連鎖反応を起こし、人がやりたがるような仕事がもっと北米にとどまることになる。そして製造業界は、イノベーションを生み出すことに資金や人員を集中できるようになるのだ。その結果、より良い教育を受け、高度な技術をもった労働者を必要とし、同時に彼らを生み出すような新しい仕事が誕生するだろう。短期的には仕事が減るだろうが、長期的に見るとロボットは労働者・社会の両方に利益をもたらす。

これは何も根拠のない非現実的な見解ではない。歴史的にも、テクノロジーの転換期には一定のパターンが見て取れる。前世紀のあいだに車の作り手は人間からロボットへと代わっていった。その結果、車の生産台数が増加し、車一台当たりの労働者数も以前よりむしろ増えたのだ。労働者は、危険な作業を行う代わりにプログラミングを担当してロボットに大変な仕事を任せ、彼らの給与は以前より増加した。これまでもテクノロジーが存在する限り、技術の進歩を文字通り破壊するラッダイトのような人たちが存在していたが、冷静に周りを見れば、生産性は向上し、生活の質はこれまでにないほど高まっている。

経済的にもこの理論は証明されている。産業革命のように、自動化技術への重点的な投資が行われる時期と、一国のGDPが増加する時期の間には強い相関関係が確認されており、さらにGDPの増加は生活の質の向上と強い関係がある。生活の質の向上とは、ケガの少ない安全な労働環境から、より高度な仕事をこなすことで得られる個人の満足度の向上までを意味しており、それがさらなる好循環を生み出すことになる。高度な仕事をすることで人々の収入が増え、高度な教育も賄えるようになり、その結果より高度な技術をもった労働者が生み出され、彼らがその時間と資金を使って経済をさらに加速させていくのだ。

最近のWashington Postの記事にこの流れが上手く説明されている。「(これこそ)生産性を向上させ、市場経済を豊かにする原動力だ。農業の生産性が向上したことで多くの農家が市街地へと移住し、彼らは市街地で工業経済を支える労働力となった。さらなる生産性の向上のおかげで、最終的に私たちは医療サービスや教育、そして政府を賄えるようになった」私たちは今まさしく同じサイクルの中にいるのだ。

ここでもう一度北米の製造業の現状に立ち戻ってみよう。恐怖心を利用しようとする動きや大げさなメディアの存在、人々のまっとうな不安、むなしく響く政治家の暴言にも関わらず、ロボットは製造業をより良い方向へ導こうとしている。ロボットはこれまでのテクノロジーのように、人の仕事を奪うとされる批判の対象でしかなく、ロボットが奪おうとしている仕事はそもそも人間がする必要がないのだ。

実際には、ロボットのおかげでより多くの(そしてより良い)仕事が母国にとどまり、国内産業が発展し、ミクロ・マクロ両方のレベルで私たちの生活の質が高まっていくだろう。自動化が進み、効率・安全・生産性が向上することで、北米の製造業はただ生き残るだけでなく、私たちのイノベーションや想像力のパワーを世界に見せつけることになるだろう。

結局、ロボットが私たちの仕事を奪っていくのか、と聞かれればそうかもしれない。しかしその代わりに、私たちや私たちの子ども、そして孫たちは、もっと意味があって高収入の仕事につく可能性が高くなるだろう。私の目には、これはまっとうなトレードオフのように映る。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

7月設立の慶大初のVC「KII」の投資1号は、AI開発の「カラフル・ボード」

慶應イノベーション・イニシアティブ」(KII)の山岸広太郎CEO(左)と、カラフル・ボード創業者の渡辺祐樹CEO(右)

慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)の山岸広太郎CEO(左)と、カラフル・ボード創業者の渡辺祐樹CEO(右)

kii-logoここ1、2年、大学発の技術系ベンチャーファンドが次々と立ち上がっている。すでに3号ファンドとなっている東京大学エッジキャピタル(UTEC)の145億円や京都大学イノベーションキャピタルの160億円など100億円を超えるファンドも少なくない。Beyond Next Venturesのような独立系VCや、ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタルなど事業会社によるCVCのファンドを含めると、2013年以降の大学発研究開発系のベンチャー資金は総額で約1300億円となっている。旧帝大だけでなく、2016年に入ってからは東工大や東京理科大もそれぞれ40億円規模のファンドを設立している。

慶應大学発の「慶應イノベーション・イニシアティブ」(KII)も、そうしたファンドの1つ。45億円のファンド規模で7月1日に設立されたばかり。1社あたり2億円程度、最大5億円ほどを開発に時間のかかることもある研究開発系のスタートアップ企業20社ほどに投資していく計画だ。KIIは元グリー副社長の山岸広太郎氏がCEOを務める、ということで、ちょっと関係者は驚いたかもしれない。山岸氏は日経BP編集記者、CNET Japanの初代編集長を経て、グリーを共同創業。グリーの副社長として10年間事業部門を統括してきた人物だ。

そのKIIの投資案件第1号となったのは、TechCrunch Japanでも以前に紹介したことのあるAI系スタートアップのカラフル・ボードだ。カラフル・ボードは10月11日、KIIに対する第三者割当増資により5000万円の資金調達を実施したことを発表した。カラフル・ボードは2011年の創業。2015年5月にACAをリード投資家とする1.4億円の資金調達などと合わせて、これまでに合計約3億円を調達したことになる。

カラフル・ボードを創業した渡辺祐樹CEOは、2005年に慶應義塾大学理工学部を卒業。フォーバル、IBMビジネスコンサルティング(現:日本IBM内のコンサルティングサービス部門)などでの戦略コンサルタントを経て起業している。学部在籍時には人工知能を研究していたが、研究者になることよりも技術で世の中に役に立つものを作り出したいとの思いからカラフル・ボードを創業していて、そういう意味ではKIIの投資1号案件にはピッタリという印象だ。

KIIの山岸CEOによれば、これまで慶應大学が直接出資したベンチャー企業は全部で13社。そのうち3社、ブイキューブ、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ、サンバイオが上場しているほか、ハイテク素材のスパイバーなども注目株となっている。

大学発ベンチャー、あるいは研究開発系ベンチャーというと、医療・介護、バイオ、素材、ロボティクス、製薬などの分野が思い浮かぶ。一方、カラフル・ボードはファッションや食(味覚の定量化)へのAIの適用を進めているので、相対的には資金需要が小さい分野に思える。山岸CEOによれば、KIIの狙いは「慶應大学の研究成果を社会実装していく」こと。カラフル・ボードが持つAI技術そのものだけでなく科学研究で使われるようなセンサーデータや生体情報のセンシングデータなど、慶應大学でつながる複数の研究を融合させるような応用にも期待している、ということだ。KIIの投資領域は、IT融合領域(IoT、ビッグデータ、AI、ロボティクス、ドローンなど)、デジタルヘルス(医療・介護)、バイオインフォマティクス、(ITxバイオ)、再生医療など慶應大学が強いジャンルで、社会的インパクトの大きい分野だという。

カラフル・ボードはAIによるファッションアイテムのリコメンドアプリ「SENSY」からスタートして、ワインや日本酒の個々人の嗜好の分析と提案というB2B2Cモデルで技術適用の実証実験を進めてきた。三菱食品や伊勢丹と協力し、売り場でAIを使った未完診断を実施。試飲後に購買につながる「CVR」を向上させつつあるそうだ。顧客の味覚データの可視化して、これを売上データと重ねることで、これまでできていなかった商品ジャンルごとの売場面積の最適化や販促施策などが打てるようになる、という。カラフル・ボードのチームは現在研究者3人、エンジニア7人を含む14人。今後研究者やエンジニアを増やしていくという。

文章が読めるチャットボットを開発するMaluuba

7978175055_fcd47665e5_o

MaluubaがSiriのようなパーソナル・アシスタントを最初にローンチしたのは、4年前サンフランシスコで開催されたTechCrunch Disruptのイベントにおいてだった。それ以来、同社は1100万ドルの資金を調達し、そのテクノロジーを多数の携帯製造会社にライセンスした。それらの会社はそのテクノロジーを使って、自社の携帯にパーソナル・アシスタント機能を実装している。

Maluubaの製品部門のトップであるMo Musbahによると、同社は直近の2年間を、ディープラーニングを自然言語処理の局面で利用する方法の開発に投じてきた。それに関連して一例を挙げると、同社は最近モントリオールに研究開発の為のオフィスをオープンした。「そこにおける私たちのビジョンは、ディープラーニングでの世界最大の研究施設を作ることです」とMusbahが言った通り、同社が野心に欠けるということはなさそうだ。

同社が研究開発に注力する余力があるのは、同社のボイス・アシスタント関連のOEMビジネスが着実に収益をもたらしてくれるからだ。本日同社はこの研究開発の成果を始めてお披露目してくれた。

2016-09-22_1358

同社の研究チームは過去数年間に渡り、文章を与えれば、その文章について自然言語形式で尋ねることが出来るようなシステムを構築してきた。今あなたが読んでいるこの文章を例にとれば、「Maluubaの製品部門のトップは誰?」といった風に質問することができ、システムは正しい答えを返してくる。

現在残念ながらまだ一般公開には至っていないものの、Maluubaの動作はこんな具合だ。

実際のところ、この問題を解決するのは大変難しい。というのも、このシステムは多くのトレーニングの恩恵を受けることなく、うまく動く必要があるからだ。この種の機械学習こそが今日のパーソナル・アシスタントをずっと賢いものにする手助けになるものだと研究チームは信じているのです、とMaluubaの研究部門のトップであるAdam Trischlerは私に語った。「我々が気づいたことが2つあります。まず最初に、いま使われているパーソナル・アシスタントは根本的に機能してません。外から知識を持ってくることは出来ません」と、彼は言った。「次に、会話がほとんど出来ないという点が挙げられます。我々は会話をしたいし、それができるシステムこそより強力なシステムと考えています」

ここで彼が言っている問題とは、例えばSiriやグーグル・アシスタントなどにそれらのサービスの守備範囲外の質問をした場合、ユーザーはそのウェブサイトに飛ばされてそこで検索をすることになる。もしアシスタントが実際にそれらのまとまりのない文章を理解できれば、そのサービスの答えることができる質問の数はずっと多いものとなるだろう。リアルタイムにそれを実現できるのなら、なお良い。Maluubaのテクノロジーを使えばそれが実現でき、それは非常に大きな前進だ。とりわけ、システムが外部の情報に頼らずに、与えられた文章を解析することだけで質問に答えることができるとすれば尚更だ。
[原文へ]

(翻訳:Tsubouchi)