第3四半期の全世界のアプリダウンロード数は360億回、支出額約3.8兆円でともに過去最多に

アプリ経済に関する新たな予測では、第3四半期にアプリとゲームに費やされる額は過去最多となることが見込まれている。App Annieは、世界の消費者が同四半期にアプリとゲームに前年同期比20%増の340億ドル(約3兆7650億円)を費やすと推定している。この増加は、人々が現在エンターテインメント、買い物、仕事、教育などのためにアプリをどのように使っているかという点において、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが消費者行動にまだ影響を及ぼし続けていることを示している。

App Annieに関しては、初期に秘密の情報源を使って情報を人為的に操作し、証券会社のクライアントに不正確な情報を伝えていたことが先にニュースになったことを記しておくべきだろう。同社はそうしたことを防ぐために内部コントロールで統計的にモデル化してきた。証券会社が投資判断を下すのに操作されたデータを使ったため、App Annieは証券詐欺で1000万ドル(約11億円)超の罰金を支払うことで米証券取引委員会と和解した。

しかしこうした操作にもかかわらず、App Annieのデータは今日でもモバイルマーケットをかなり正確にとらえており、かなりのアプリ会社、マーケッター、投資家にモバイルエコシステムに関する情報を提供している数多くのトップ企業の1社だ。

第3四半期のアプリ売上高に最も貢献したのは、引き続きゲームでの支出とモバイルサブスクリプションだとApp Annieは指摘した。モバイルサブスクは、Apple(アップル)とGoogle(グーグル)がアプリストアプラットフォームを通じての購入で手数料を徴収する権利を保持しようとする中で、訴訟や増えつつある規制の焦点となっている。ゲームは引き続き消費者支出の大部分を占めているが、ゲーム以外の支出もサブスクのおかげでここ数年割合を増やしてきた。

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また、ダウンロード数では引き続きAndroidがiOSを凌いでいるが、消費者支出額では逆の構図であるのも変わらない。

画像クレジット:App Annie

第3四半期のダウンロード数は前年同期に比べて10%増え、過去最多の360億回に達した。この増加は主にGoogle Playによるもので、特にインドやブラジルなどの新興マーケットでのダウンロードが貢献した。増加幅が最も大きかったのはブラジル、フィリピン、メキシコで、中南米マーケットは今や世界のアプリ会社の注目を集め始めていて、成長の可能性を秘めている。

ダウンロード数の成長を支えた産業は、旅行、教育、医療だ。この3部門はパンデミックの影響を受けた。旅行アプリのダウンロードは Google Playで前年同期比35%増、iOSで同15%増だった。ワクチン接種が広がる中で夏の旅行シーズンを迎えたことが貢献した。もちろん医療と教育のアプリもパンデミックに結びついていて、ユーザーはオンライン学習や診察、新型コロナ検査やワクチン接種の予約でモバイルテクノロジーを活用した。

モバイルアプリの売上高となるとiOSが優勢で、過去4四半期でもそうだったが世界のアプリストアの消費者支出の65%を占めた。

画像クレジット:App Annie

iOSアプリでの消費者支出額は前年同期比15%増の220億ドル(約2兆4360億円)に達し、Google Playでは同15%増の120億ドル(約1兆3290億円)だった。売上高の大半はゲームアプリによるもので、両アプリストアでの支出額の66%を占めた。非ゲームアプリ部門では、消費者支出の76%がiOSでのものだった。どちらのアプリストアでもゲーム以外の部門での成長のほとんどはエンターテインメント、写真・ビデオ、ソーシャルメディア、デートのアプリによるものだった。

消費者支出額においては米国と中国が最大のiOSマーケットで、日本、米国、台湾で最も増加した。Google Playでは、米国、日本、韓国の消費者支出額が最大だったが、日本、ロシア、オーストラリアが成長を牽引した。

売上高やダウンロード数の調査はこれまでモバイル経済の全体図を把握するのに役立ってきた一方で、マーケットが成熟するにつれ、アプリをデバイスにすでにインストールした消費者のアプリエンゲージメントにもかなりの関心が寄せられている。

App AnnieのライバルSensor Towerが9月23日に発表した調査結果では、ゲームアプリと非ゲームアプリのアクティブユーザー、セッション、リテンション(保持)の数字を分析している。同社によると、世界のトップ500のアプリの平均の月間アクティブユーザー数は9170万人で、この数字は第2四半期に前年同期の8460万人から8.4%増えた。

画像クレジット:Sensor Tower

ビジネスアプリは2018年第1四半期から2021年第2四半期の間に約42%という最も高い複合年間成長率(CAGR)を見せた、とSensor Towerは指摘した。一方、消費者は2021年第2四半期にエンターテインメントアプリで最も多くの時間を費やし、トップ100の各アプリの使用時間は平均1日あたり約29分だった。

画像クレジット:Sensor Tower

ゲームの中では、ジャンル別に「PUBG Mobile」や「Garena Free Fire」などのシューティングゲームのデイリーアクティブユーザーが第2四半期に最も多く、このジャンルのトップ50のゲームのデイリーアクティブユーザーは平均760万人だったが、ハイパーカジュアルゲームがトップだった。

Sensor Towerはまた、ロックダウン中に人々がモバイルデバイスを頻繁に利用するようになり、初期のアプリ全般のアクティブユーザー数の増加は新型コロナパンデミックによるものとしている。しかし2020年第3四半期でわずかに減ったのち、アクティブユーザー数はいまパンデミック前のレベルに戻った、と指摘した。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルは控訴決着まで「フォートナイト」のApp Store復帰認めず、Epicが通告メール公開

Apple(アップル)と「Fortnite(フォートナイト)」の大規模でドラマチックな訴訟は、どちらの当事者にとっても実際に望んでいた結論には至らなかったようだが、その解決策はフォートナイトファンにとって、同タイトルがApp StoreやAppleデバイスに戻ってくるかもしれないという希望を与えた。

しかし、そうは問屋が卸さない。法律用語が再びこのバトルロワイヤルに割り込んでくることになりそうだ。米国時間9月22日に投稿されたEpic Games(エピックゲームズ)のTim Sweeney(ティム・スウィーニー)CEOのツイートスレッドを見ると、同氏とAppleの法務チームとの間で交わされたコミュニケーションは、Epicが裁判所の判決を不服として訴え続けている間は、Appleがフォートナイトを復活させる気がないことを裏付けているようだ。スウィーニー氏は、このプロセスによって、フォートナイトがあと5年以上App Storeから姿を消してしまう可能性があると見積もっている。

Appleは嘘をつきました。Appleは過去1年、世界、裁判所、報道機関に「Epicが他の企業と同じルールでプレイすることに同意するなら、EpicのApp Storeへの復帰を歓迎する」と伝えました。Epicはこれに同意しましたが、Appleは10億人を超えるユーザーに対する独占的な力をまたもや乱用し、これを反故にしました。

スウィーニー氏は、自身がAppleのPhil Schiller(フィル・シラー)氏に送ったメールと、Appleの法務チームから受け取った手短な返信メールを共有した。「Appleは、Epicの開発者プログラムアカウントを現時点で復活させないという裁量権を行使しました」と説明されており「さらにAppleは、連邦地裁の判決が確定して上訴できなくなるまで、再登録を求めるさらなる要請について検討することはない」という内容だった。

以下がそのメールの全文だ。

ゲイリー様

2020年、正当な理由により解約されたEpicの開発者プログラムのアカウントを復活させて欲しいというAppleへの要請についてお答えします。Epicは、Appleからコードを隠し、関連する不実表示と不作為を行うことで、意図的な契約違反と信頼の失墜を犯しました。裁判所は判決の中で「Appleは、同社の行動に関し契約上の権利を持っていた。(Epicの) 内部文書によれば、Epic Gamesが期待していたように、これらの権利を行使したに過ぎない」と認めました(ECF No. 812 178-79頁)。さらに裁判所は「Appleによる、Epic GamesとAppleとの間の [開発者プログラムライセンシング契約] および関連する契約の解除は、有効かつ合法的であり、強制力がある」と判断しました(判決文179頁)。この判決を受けて、スウィーニー氏は、Epicが「フォートナイトをiOSに戻すために(代替決済システムを)引き換えにすることはない」と公言しました。裁判所の判決以降のこのような発言やその他の発言、そしてEpicの過去の二枚舌的な行動を考慮して、Appleは現時点ではEpicの開発者プログラムアカウントを復活させないという裁量権を行使しました。さらにAppleは、連邦地裁の判決が確定し上訴が不可能になるまで、今後の復帰要請を検討しないこととしました。

マーク・ A・ペリー

裁判所は2021年9月初めの判決で、Appleは「反トラスト法に違反していない」と判断し、Epic GamesはAppleに失われたApp Storeの手数料を返済しなければならないとした。だが最も興味深いことに、AppleはApp Store内での代替的な支払い方法をブロックし続けることはできないとした。この判決はAppleのApp Storeの経済状況を非常に複雑にするものだが、Appleはこの判決を全体的に圧倒的な勝利とみなし、控訴しなかった。一方のEpic Gamesは、この判決を不服とし「戦い続ける」ことを誓った。

判決の直後に行われた記者会見で、Appleは、Epic GamesがApp Storeの他の開発者と同じルールに従うことに同意すれば、フォートナイトの復活を歓迎すると述べていたが、この発言は、Epicが判決に対して公式に控訴する前のことだった。

スウィーニー氏は、同氏のスレッドのさらに下の方にあるツイートで、Appleがフォートナイトの開発者アカウントの復活を拒否したことについて「Appleによるもう1つの途方もない反競争的な動きであり、彼らの市場を再構築して勝者と敗者を選ぶ力を示している」と述べている。

TechCrunchはAppleにコメントを求めている。

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画像クレジット:Christian Petersen / Getty Images

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

中国政府が新作オンラインゲームの認可を8月から一切停止中、未成年ゲーマー関連規制の成功のため

中国政府が新作オンラインゲームへの認可を8月から一切停止中、未成年ゲーマー関連規制の成功のため

Reuters/Kim Kyung-Hoon

中国では18才未満が週に3時間以上ゲームをプレイするのを禁じられたばかりですが、それに続いてApp Storeを含むオンラインゲームの新作リリースが1本も許可されなくなっていると報じられています。

香港メディアThe South China Morning Post(SCMP)によると、中国規制当局はテンセントやネットイースといった大手ゲーム開発企業との会議を行い、そこで新作ゲームのライセンス発行を停止する決定を下したとのことです。その会議には出席していないが説明を受けた関係者が「すべてが保留になっている」と述べています。

別の関係者によると、この発行停止は「しばらくの間」続くとのこと。規制当局は、2021年前半にライセンス発行を「少し積極的に行いすぎた」と考えているそうです。その目的は「新作ゲームの本数を削減する」ことにあり、それにより中国政府の「ゲームの追加を減らす」意図を助けるつもりだと伝えられています。

この会議に参加していた別の関係者は、「発行を凍結する」と具体的に決められたわけではないとも語っています。むしろ、ゲーム依存症を減らす計画を「円滑かつ成功裏に展開する」ために、認可プロセスを遅らせると議論されたとのこと。つまり、今後は新作のリリースを一切認めないわけではなく、ペースに歯止めを掛けることが狙いと示唆されている模様です。

この会議は水曜日(9月8日)に行われたと報じられてはいますが、SCMPは今年8月にはライセンスが承認されなかったとも伝えています。新作ゲームに対する締め付けは、もっと早くから始まっていた可能性があるわけです。

中国が新作ゲームのライセンス発行を停止したことは、今回が初めてではありません。まず2018年3月~12月にかけて停止され、中国ゲーム市場の成長が大幅に鈍化したこともありました。

もともと中国では2016年以降、有料またはアプリ内購入を提供しているゲームはすべて事前に規制当局に提出し、公開前にライセンスの取得が義務づけられています。それがアップルのApp Storeでは数年にわたってお目こぼしされていましたが、2020年には厳密に実施されるようになりました

中国でのライセンス取得の義務化は、これまでもApp Storeの収益に大きな影響を与えてきました。ティム・クックCEOとルカ・マエストリCFO(最高財務責任者)は、2018年のライセンス発行停止の際に、App Storeにとって財務上の逆風の原因になっていると述べていたことがあります。

すでに中国は世界最大のゲーム市場となっており、App Storeにおいてもゲームの収益は66%を占め、iOS用ゲームで最も稼いでいるのは中国企業テンセントの『王者栄耀』という調査結果もあります。今回のライセンス発行“保留”は、アップルにとって大きな痛手となるのかもしれません。

(Source:The South China Morning Post。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

アップルがApp Store外での決済方法への誘導ブロック禁止に、Epic Gamesとの裁判で

カリフォルニア州で行われているEpic Games対Appleの訴訟において、米国時間9月10日朝、判事がサードパーティによる支払いに関して「Fortnite」のメーカーに味方する判決を下した。事実上、判事はAppleが開発者に対して、AppleはApp Storeベースの収益化以外の代替決済のリンクを追加することを禁止することはできないという判決を下している。

Epic Gamesは、ゲーム購入が現金収入源であるiOSの料金をAppleが管理していることに長年悩まされてきた。

今回の判決では、以下のように述べられています。

Apple Inc.およびその役員、代理人、使用人、従業員ならびにこれらの者と積極的に協力または参加している者(以下「Apple」)は、開発者が(i)アプリ内での購入に加えて、購入メカニズムに顧客を誘導するボタン、外部リンク、その他の行動喚起をアプリとそのメタデータに含めること、および(ii)アプリ内でのアカウント登録を通じて顧客から自発的に取得した連絡先を通じて顧客と連絡を取ることを禁止するよう、永久的に拘束および差し止められるものとする。

この判決は、Appleと大規模開発者、特にApp Storeにおいてその収益の70%を占めるゲームカテゴリーの開発者との間で何年にもわたって繰り広げられてきた争いの結果だ。

2020年8月、Epic Gamesの「Fortnite」アプリが、Appleのアプリ内課金の枠組みを回避できる新しい決済方法を導入したことを理由にAppleから禁止された。その後、Epic GamesはAppleは決済システムの使用を企業に強制することで市場で力を乱用していると主張してAppleを提訴している。また、Epic GamesはGoogleも提訴し、他のアプリ開発者と共同でCoalification for App Fairnessを結成し、米国の州レベルでの法案作成のための個別の取り組みに関与するなど、アプリストア改革のための積極的な働きかけを行ってきている。

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その中には、日本の規制当局との和解により「リーダーアプリ」(購入したコンテンツへのアクセスを提供するアプリ)のポリシーを変更し、ユーザーがサインアップしたりアカウントを管理したりできる自社のウェブサイトを紹介できるようにしたことも含まれている。また、別の和解案には、アプリ内で収集した顧客の連絡先情報を使い、他の支払い方法を顧客に伝えることを許可するというものもある。韓国では、新しい法律によりAppleとGoogleは開発者が独自のサードパーティ製決済システムを使用することを認めざるを得なくなった。法律成立後、Epic Gamesは同市場のApp Storeに「Fortnite」を復活させることを求めたが、Appleはその要求を拒んでいる。

Appleは、App Storeのルールを環境の変化に適応させることを拒否し続けているのは、消費者保護のためだと歴史的に主張してきた。以前の声明では、アプリ内課金の代替手段を認めることは、ユーザーを詐欺のリスクにさらし、プライバシーを損なう可能性があるとしていた。

今回の判決により、Appleは開発者に対して、支払いができる他の場所へのボタンやリンクを含めるという選択肢を認めることで対応せざるを得なくなった。しかし「独占」とみなされなかったという意味では、Appleの勝利だ。Yvonne Gonzalez Rogers(イボンヌ・ゴンザレス・ロジャース)連邦地裁判事は、AppleとEpic Gamesの両社が関連市場をどのように定義しているかについて同意しておらず、モバイルゲームのデジタル取引において、Appleは独占していないと述べている。

「法廷は、Appleが55%以上というかなりの市場シェアと非常に高い利益率を享受していることを認めているが、これらの要素だけでは反トラスト行為であると示すことはできない。成功は違法ではない」とロジャース氏は述べている。

Appleの広報担当者は「本日、裁判所はApp Storeが独占禁止法に違反していないという、我々がずっと知っていたことを確認した」と述べている。「裁判所が認めたように『成功は違法ではない』のです。Appleは、事業を展開するすべての分野で厳しい競争に直面していますが、お客様や開発者がAppleを選ぶのは、Appleの製品とサービスが世界で最も優れているからだと信じています。私たちは引き続き、App Storeが安全で信頼できる市場であり、繁栄する開発者コミュニティと210万人以上の米国内の雇用を支え、ルールが誰にでも平等に適用されるよう尽力していきます」という。

この度の判決は、開発者コミュニティには長期的な影響を与える可能性がある。というのも、Appleは他の支払い方法を示すアプリに対応するために、規則を調整しなければならないためだ。例えば、アプリにApple独自のアプリ内決済オプションを選択肢として含めることを要求するようになるかもしれない。また「リーダーアプリ」を別のカテゴリーとして認定することは、今回の新しい要件を考慮すると、もはや意味がないと判断することもできる。これらに関する動きや決定は、今後数日のうちに展開されるだろう。

Epic Gamesが勝利できなかったのは、Appleを「独占企業」と呼んでしまったからだ。これは最終的には米国政府の規制につながる可能性のある、はるかに大きな問題だ。また、Appleはサードパーティのアプリストアやサイドロードを許可する必要はないが、App Storeビジネス全体の長期的な見通しに大きな影響を与える可能性がある。消費者にとっては、購入や価格設定のためにアプリを終了しなければならないためApp Storeがより複雑になる可能性がある。消費者が外部の決済システムを利用する場合、すべての購読契約を一括して管理することができなくなり、解約がより困難になる可能性もある。

訴訟の結果、ロジャース氏は、Epic Gamesが「Fortnite」に代替決済システムを導入した際に得た1200万ドル(約13億2000万円)のうち30%をAppleに支払わなければならないという判決を下したが、これは当時、Appleとの法的契約に違反していたためだ。

判決を受けて、Epic GamesのCEOであるTim Sweeney(ティム・スウィーニー)氏は「Fortnite」は「Appleのアプリ内課金との公正な競争」のもと、アプリ内課金を提供できる時と場所でApp Storeに復帰し、その節約分を消費者に還元するとツイートしている。

「また、非常に複雑な訴訟を迅速に対応してくれた裁判所にも感謝しています。私たちは、これからも戦い続けます」。

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(文:Brian Heater、Sarah Perez、翻訳:Katsuyuki Yasui)

Epicがアプリ決済の強制禁止法成立後の韓国で「フォートナイト」復活を要請、アップルは拒否

人気ゲーム「Fortnite(フォートナイト)」の開発元Epic Games(エピックゲームズ)は、米国のゲームメーカーである同社が韓国でiOS版Fortniteを再リリースし、EpicとApple(アップル)両方の決済手段を選択肢として提供することを計画しているため、Appleに韓国でのFortnite開発者アカウントの復活を要請したとツイートで発表した。

今回の要請は韓国が8月下旬に、開発者がサードパーティ決済システムを利用できるようにすることをAppleや他のテック大手に義務付ける電気通信事業法改正案を可決したことを受けたものだ。

Fortniteの公式Twitter(ツイッター)アカウントでEpicは「Epicは韓国の新しい法律に準拠して、Epicの決済とAppleの決済の両方を並行して提供し、韓国でiOS版Fortniteを再リリースする予定です」と述べている。

「当社がこれまでも言ってきたように、Epicが他の会社と同じルールでプレイすることに同意するのであれば、EpicのApp Storeへの復帰を歓迎します。Epicは契約違反を認めており、現在のところ、開発者アカウントを復活させる正当な根拠はありません」とAppleは表明して申請を拒否した。

Epicはすべてのアプリに関して適用されるAppleのApp Storeレビューガイドライン順守に同意する必要があるが、一貫してガイドラインを遵守しておらず、今回のAppleへの申請はEpicの立場を変えるものではない、とAppleは声明で付け加えた。

まだ発効していない関連法が仮に韓国国内で法制化されたとしても、Appleに開発者プログラムのアカウント申請を承認する義務は課せられないと同社は指摘している。

2020年8月、EpicがFortniteにAppleのアプリ内課金要件に違反する直接決済システムを導入したため、AppleはFortniteをApp Storeから追放した。以来両社は、App Storeの決済システムを巡って法廷で争ってきた。

Appleは、開発者が外部のウェブサイトにリンクできるようにアプリポリシーを変更しており、今月、2021年9月2日には「リーダー」アプリの開発者が自社サイトへのリンクを設置できるようにしたことで、日本の公正取引委員会と和解している。

Epic Gamesの広報担当者にコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。

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画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

アップルが日本の公正取引委員会と和解、アプリ内の外部リンクを承認

Apple(アップル)は、日本の規制当局と和解し、「リーダー」アプリの開発者がユーザーアカウントを管理するための独自のウェブサイトにリンクできるようにすることを決定した。この変更は2022年初頭に有効になる。

これまで、日本の公正取引委員会はAppleに対して、「リーダー」アプリに対する同社のポリシーを変えるよう迫っていた。リーダーアプリとは、NetflixやSpotify、Audible、Dropboxなどのように、ユーザーが購入したコンテンツやコンテンツのサブスクリプションを提供するアプリで、そのコンテンツはデジタル雑誌や新聞、本、オーディオ、音楽、ビデオなどさまざまだ。

AppleでApp Storeを統轄しているPhill Schiller(フィル・シラー)氏は、「私たちは日本の公正取引委員会をとても尊敬しており、これまでともに成し遂げたことも高く評価しています。今後、『リーダー』アプリの開発者は、ユーザーのために自分のアプリやサービスをセットアップし管理することが、より容易になり、また同時に、ユーザーのプライバシーの保護と信頼の維持が可能になるでしょう」と述べている。

声明によると、この変更が有効になる2022年まで、Appleは「リーダー」アプリのユーザーのためにガイドラインとレビュープロセスのアップデートを続け、ユーザーと開発者の両方にとってより良いマーケットプレイスでありたいという。

Apple Storesは先週、いくつかのアップデートを発表を行い、開発者が顧客にもっと柔軟に接することができるようにし、また地元のジャーナリストをサポートするためのNew Partner Programをローンチしている。

なお、「リーダー」アプリに関するこの変更はグローバルに適用される。

Appleやその他のテクノロジー巨大企業に対しては、世界中の政府や議会がその市場支配をますます厳しく監視しようとしている。オーストラリアの競走・消費者委員会も、AppleとGoogle、WeChatのデジタル決済システムに対する規制を検討しており、また韓国ではAppleとGoogleがアプリ内での購入に独自の決済システムを課すことを制限する最初の国となった

Appleの登録開発者は3000万人を超えている。

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画像クレジット:Kiichiro Sato/AP

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(文:Kate Park、翻訳:Hiroshi Iwatani)

世界初、韓国がグーグルとアップルのアプリ内課金手数料を抑制する「反グーグル法」可決

韓国国会は現地時間8月31日、何度も延期されてきた「反グーグル法」を可決した。この法案は、Google(グーグル)とApple(アップル)が、市場を支配する2つのアプリストア向けのアプリを開発する際に、両社のアプリ内決済システムを利用するようデベロッパーに義務付けることを禁じるもので、検索の巨人Googleにちなんだ名称だが、より広範な内容となっている。

この法案は、GoogleとAppleが自社のアプリ内決済システムを開発者に強要することを防ぐために、政府が介入した世界で初めてのケースだ。

GoogleとAppleは、他の市場での両社のシステムの制限的な側面についてますます厳しい目を向けられるようになっており、今回の韓国での動きが転機となって、他の国でも同じような措置が取られるかどうかに注目が集まっている。メディアの報道によると、オーストラリアの競争・消費者委員会(ACCC)も、AppleとGoogle、さらにWeChatのデジタル決済システムに対する規制を検討しているとのこと。

関連記事:グーグルとアップルのアプリ内決済ルール強制を禁じる韓国の法案の最終採決が延期に

韓国の予備委員会は8月25日、GoogleとAppleがアプリ内課金でアプリ開発者に手数料を請求する慣行を制限しようとする電気通信事業法改正案を進めることを承認した。

2020年8月以降、韓国の国会議員たちは、世界的なテック企業がアプリ決済市場で支配力を振るうことを禁止する法案を提出してきた。

Googleは2021年3月、アプリ開発者からの批判を鎮めるために、アプリ内課金の手数料を当初の30%から15%に引き下げた。しかしその4カ月後には、新しいアプリ内課金システムの導入を2022年3月に延期すると発表した。

Appleは8月、米国のソフトウェア開発者らが同社を相手取って起こした訴訟の和解案を提示した。その内容は、アプリ開発者がiOSアプリやApp Store以外での支払い方法をユーザーに指示できるようにするというものだったが、アプリ自体に別の支払い方法を組み込むことまでは認めていない。

Appleは声明の中で「提案されている電気通信事業法は、他のソースからデジタル商品を購入するユーザーを詐欺のリスクにさらし、プライバシー保護を弱め、購入の管理を困難にし、(子ども向けの)『承認と購入のリクエスト』やペアレンタルコントロールなどの機能の効果が失われることにつながる」と懸念を示していた。

Googleのコメントは得られていない。

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

アプリ開発者は今後、アップルに手数料を支払わなくてすむ直接購入をユーザーへ提案可能に

米国時間8月26日、Apple(アップル)は、米国の開発者から同社に提起されていた訴訟について、和解案に合意したことを明らかにした。この和解案にはいくつかの変更点が含まれており、その中でも最大の変更点は、開発者がiOSアプリやApp Store以外で購入した支払い方法に関する情報を共有できるようになることだ。これにより、開発者は、Appleの手数料の対象にならない支払い方法についてユーザーに伝えることができる。また、この和解案には、価格帯の拡大や、アプリの審査プロセスに関する新たな透明性レポートが含まれている。

この集団訴訟は2019年4月に、アプリの開発者であるDonald Cameron(ドナルド・キャメロン)氏とイリノイ州のPure Sweat Basketballにより起こされたもので、AppleがiPhoneアプリのダウンロードをApp Storeに限定する反競争的な行為を行っているとしている。

本日の発表でAppleは「開発者が電子メールなどのコミュニケーション手段を利用して、iOSアプリ以外の支払い方法に関する情報を共有できることを明確にしています。開発者のみなさんは、常に自分たちのアプリやApp Store以外で行われたいかなる購入に対しても、Appleに対して手数料を支払うことはありません」と述べている。

これにより、開発者は電子メールや「その他の通信サービス」を利用して顧客とコミュニケーションをとることができるようになる。これまでAppleは、App Storeの規則で開発者に対してアプリ内で取得した連絡先情報を使い、アプリ外でユーザーに連絡することを禁じていた。今回の和解案では、この規則がすべてのアプリカテゴリーで解除されるため、開発者は同意したユーザーに対して、Appleの手数料を回避する支払い方法を伝えることが可能になる。

価格帯については、Appleは開発者が利用できる価格帯の数を100以下から500以上に拡大するとしている。また、アプリの審査プロセスに関する情報を共有するために、新たな年次透明性レポートを発行することに合意している。このレポートには、何本のアプリが却下されたか、無効化されたユーザーおよび開発者アカウントの数、「検索クエリと結果に関する客観的なデータ」、App Storeから削除されたアプリの数などが含まれる。

また、米国のApp Storeを通じて100万ドル(約1億1000万円)以下の収入を得た米国内の資格ある開発者を対象に、新たなファンドを創設するとしており、これには米国内の開発者の99%が含まれる。訴訟で原告を代理する法律事務所の1つであるHagens Bermanは、このファンドの規模は1億ドル(約110億円)で、250ドル(約2万7600円)から3万ドル(約330万円)の範囲で支払いが行われるという。

Cameron et al v. Apple Inc. proposed settlement by TechCrunch on Scribd

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グーグルとアップルのアプリ内決済ルール強制を禁じる韓国の法案の最終採決が延期に

Apple(アップル)とGoogle(グーグル)が、それぞれのアプリストアで配信するサードパーティ製アプリ内のサービスへの課金方法について定めたルールを巡ってますます厳しい目を向けられている中、韓国ではそれに関し大きな進展が起こっている。

韓国国会の司法委員会は現地時間8月25日、GoogleとAppleがアプリ内課金でソフトウェア開発者に手数料を請求する慣行を防ぐための、世界初となる画期的な法案を可決した。同日の本会議で予定されていた、同案を可決・有効化するために必要な全議員による最終採決は、当面の間延期となった。

メディアによると、本会議は暫定的に8月30日に延期されたとのこと。

法案が成立した場合、韓国は、このようなグローバルテック巨人らが特定のアプリ内決済システムを強要することを禁止する最初の国となる。

「反グーグル法」と名付けられたこの法案は、国会の立法・司法委員会で承認された電気通信事業法改正案で、GoogleとAppleがアプリ開発者に自社の決済システムの使用を強制することを禁じようとするものだ。

Googleは2020年9月、すべてのアプリ開発者に自社の決済システムを課し、すべてのアプリ内課金に対して最大30%の手数料を徴収すると発表した。

現地メディアの報道によると、2021年7月、Googleはアプリ開発者の要求に応じて新しい課金制度を2022年3月末に延期することを決定し、プレイストアの手数料を15%に引き下げると発表した。

Appleは声明で次のように述べた。「提案されている電気通信事業法は、他のソースからデジタル商品を購入するユーザーを詐欺のリスクにさらし、プライバシー保護を弱め、購入を管理することを困難にし、(子供向けの)『Ask to Buy』やペアレンタルコントロールなどの機能の効果が失われるでしょう。この法案の結果、App Storeでの購入に対するユーザーの信頼が低下し、これまでにAppleから8兆5500億ウォン(約8079億円)以上の収益を得ている、韓国の48万2000人以上の登録デベロッパーの事業機会の縮小につながると考えています」。

AppleとGoogleはもちろん、自社のアプリ内決済システムを義務付けることで、より良い安全なユーザーエクスペリエンスを実現するという大きな問題があると主張している。そして、この点がここでも論拠となっている。

Googleはコメントの要請に直ちに返答していない。

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

WeedmapsのiPhoneアプリで大麻購入が可能に

Apple(アップル)のApp Storeガイドライン緩和によって、Weedmaps(ウィードマップ)ユーザーは人気アプリの中でカナビス(大麻)を購入できるようになった。これは、Weedmapsのユーザーがカナビスを一覧、選択、購入し、受取りあるいは配達までをアプリ内で行えるという意味だ。これまでユーザーは、地元小売店を探してメニューを見ることしかできなかった。それはApple(アップル)および地方、国のガイドラインのためだった。

アップデートされたアプリはすでに公開中だ。

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この変更は、Appleが一部のカナビスアプリのためにApp Storeの規制を緩和した結果だ。新しいガイドラインの下では、ライセンスを受けたカナビス販売業者はライセンスを受けた薬局と同じ制限を(Appleから)受けるため、Weedmapsのようにライセンスを受けたカナビス業者を掲載しているアプリは販売サービスの提供が可能になる、という意味だ。

「当社のiOSアプリから購入できる機能は、当社の顧客とビジネスパートナー双方にとっての利便を改善する画期的な出来事です」とWM Technology, Inc.の最高技術責任者であるJustin Dean(ジャスティン・ディーン)氏はいう。「Appleのような会社が業界のリーダーたちと強力して私たちの業界のイノベーションを進めるソリューションを見つけてくれたことに感謝します。カナビスに対するポリシーや姿勢が目覚ましい成長を約束する形で変化していることに勇気づけられるとともに、当社プラットフォームを通じて小売店にカナビスを注文するもっと簡単な方法を提供できることを期待しています」。

Weedmapsはこの市場で独特の位置にいる。カナビス・アプリの第1人者として、すでに全米を通じて利用されている。競合するデリバリーサービスのEaze(イーズ)などと異なり、Weedmapsは配達に関与していない。ライセンスを受けたディスペンサリー(販売薬局)が商品とサービスのリストを載せるためのプラットフォームを提供しているだけだ。

新しいApp Store規則の下では、Weedmapsのようなアプリはユーザーがカナビスの販売が合法である限定地域内でのみ注文できるように制限しなければならない。これは、カナビス販売が違法な場所に住んでいるユーザーは、合法地域内のディスペンサリーから購入できないことを意味している。

以前のApple App Storeポリシーは以下のとおりだ。

たばこや電子タバコ(関連製品を含む)、違法な薬物、過度のアルコールの摂取を助長するAppは、App Storeでは許可されません。未成年者にこれらの摂取を促すAppは却下されます。また、規制薬物の販売(許認可を受けた薬局を除く)、およびたばこの販売を幇助することは認められません。

米国時間6月7日に改定されたポリシーは以下のとおり、変更部分を強調してある。

たばこや電子タバコ(関連製品を含む)、違法な薬物、過度のアルコールの摂取を助長するAppは、App Storeでは許可されません。未成年者にこれらの摂取を促すAppは却下されます。また、規制薬物の販売(許認可を受けた薬局、または許認可済みかその他の合法的な大麻ディスペンサリーによる販売を除く)、およびたばこの販売を幇助することは認められません。

規制の多い分野(バンキングや金融サービス、ヘルスケア、ギャンブル、合法大麻の使用、航空旅行など)でのサービスを提供するApp、機密性の高いユーザー情報を必要とするAppは、個人のデベロッパではなく、そうしたサービスを提供する法人によって提出される必要があります。大麻の合法的な販売を促進するためのAppは、それが合法とみなされる法的管轄地域でのみ利用できるよう、地域制限を設定する必要があります

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Weedmaps大麻AppleiOSApp Storeアメリカ

画像クレジット:Weedmaps

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(文:Matt Burns、翻訳:Nob Takahashi / facebook

犯罪ライブ配信「Citizen」が地域ジャーナリズムに取って代わることはない

地元で起こった犯罪を撮影するアプリCitizenが、1時間あたり25ドル(約2760円)で極秘にジャーナリストを雇って、犯罪現場の映像をサードパーティのウェブサイト経由でアプリからライブ配信していることがわかった。やれやれ。

Citizenが2016年に初めてApp Storeに登録されたときはVigilanteという名前で、透明性によって不正と戦うプラットフォームと銘打ってマーケティングを展開していた。というと聞こえはよいが、実際には、犯罪現場を探し出すよう故意にユーザーを煽って、その現場を報告させるというものだった。Vigilanteは、Apple(アップル)のアプリ開発者レビューガイドラインの「アプリはその使用によって身体に害を及ぼすことがあってはならない」という条項に違反しているとしてApp Storeから削除された。

もちろん、これでこの悪質なアプリの芽は摘まれるはずだった。が、大災害の後のゴキブリのように、このアプリも生き残っていた。VigilanteはCitizenと名前を変えて、利用者は犯罪現場に介入しないものとするという免責条項を追加してApp Storeに再登録を果たし、引き続きVCから資金を調達している。このアプリは現在、App Storeの同アプリページによると、クラウドソース型事件記録簿ということになっており「警察が対応する前に発生中の犯罪を市民に知らせる」のだという。しかし、このような行き過ぎた自警行為は、市民に安心感をもたらすどころか、混乱に拍車をかける可能性がある。アプリユーザーによる犯罪報告は、単なる間違いで済めばよいが、下手をすると人種差別につながり兼ねないことはいうまでもない。このアプリは911番通報からデータを取得しているが、911番通報の情報はすべて確認されているわけではないため、誤通報の原因となる可能性がある。

Citizenの代表は、このアプリは不審人物の通報を禁止しており「未確認のコンテンツや利用者によって報告された犯罪」は訓練を受けた専門家のレビューを受け許可されるまで配信されないと主張している。しかし、ほんの数カ月前、CEOのAndrew Frame(アンドリュー・フレーム)氏はライブ動画で放火犯と疑われる人物を追跡したCitizenのユーザーに情報提供料として3万ドル(約330万円)を支払ったが、結局その人物は犯人ではなかったことが判明した。

Citizenは十分なユーザー数が確保されないと機能しないため、同社はこのアプリを使うよう一般市民を囲い込もうとますます躍起になっている。SensorTower(センサータワー)によると、Citizenは、Black Lives Matter抗議活動の拡大に乗じて、2020年6月に月間最高ダウンロード数を記録した(米国全体が警察の残忍な行為に抗議する中、67万7000人の市民が警察アプリをダウンロードした)。しかし、その翌月のダウンロード数は20万7000件に低下し、以降、2020年3月は29万2000件、2021年3月は28万3000件と、ダウンロード数は頭打ちになっている。

Daily Dot(デイリー・ドット)は6月「ランドン」とうい名前のユーザーが1日に複数の犯罪現場からライブ配信を行ったという記事を掲載した。こうした犯罪現場に偶然出くわす頻度からして、この人物は単なる熱狂的なアプリユーザーではないように思われた。昨日もニューヨークポストに、1日で6つの犯罪現場をCitizenでライブ配信した「クリス」という名前の別のユーザーの記事が掲載された。Citizenによると、ランドンもクリスも、Street Team(ストリートチーム)のメンバーとしてアプリでの犯罪通報を行っているという。

「Citizenではいくつかの都市にチームを配置しています。これらの都市では、Citizenプラットフォームの動作方法をデモし、まさに犯罪が発生しようとしている状況での責任のある配信行為の見本を示すためにアプリを利用できます。最終的には、これらのチームが、効果的、有用かつ安全に配信を行う方法をユーザーに示すことになると信じています」とCitizenの広報担当は語った。

Citizenはアプリの立ち上げ以来、ストリートチームを配置しており、その事実を隠そうとしたことはないと同社の広報担当はいう。しかし、このストリートチームの仕事はCitizenのウェブサイトでは求人されておらず、Flyover Entertainmentというサードパーティのリクルート業者がJournalismJobs掲示板でCitizenの名前を出さずに求人広告を出している。NYU Journalismのウェブサイトでも、同じような求人広告を掲載しているが、こちらにはCitizenという名前が明記されている。Citizenによると、これらはどちらも、Citizenのストリートチームの求人広告だという。報酬は、ロサンゼルスでは10時間のシフトで250ドル(約2万7000円) / 日、ニューヨークでは8時間のシフトで200ドル(約2万2000円) / 日(25ドル[約2700円] / 時)となっている。

「放送記者たちには安全に責任を持って放送してきた経験があります。これこそストリートチームのメンバーに必須の条件です」とCitizenの広報担当は語り、これらの求人広告がCitizenのウェブサイトではなくサードパーティの求人掲示板に掲載されている点については、Citizenは本職の記者を求めていたからだという点を強調した。ただ、自社のウェブサイトでも本職の記者を募集することはできたと思われる。

監視による自警主義に対する懸念はさておき、ローカルニュースは瀕死状態であるし、Citizenは個人ジャーナリズムに替わるものとして開発されたわけではない。もちろん、地域の新聞も犯罪を報道するわけだし、詳細を調べるために報道記者を犯罪現場に送るというCitizenのやり方も前例のないことではない。しかし、ニュース報道と、監視アプリを使った犯罪現場からのライブ配信とでは意味が違う。しかも、Citizenは本職の記者が配信したのか、それとも一般市民が配信したのかを質問されない限り明らかにしない。「透明性の向上」を謳い文句にしているアプリにしては、求人広告に自社名を明記しないというのは透明性が高いとは思えない。また、福利厚生も有給もないのに、しっかりとした放送スキルを要する不定期のフリーランスの仕事にしては、時給25ドルというのはかなり低い報酬と言わざるを得ない。

現在、Citizen’sは、成長を目指す最新の試みとして、月額19.99ドル(約2200円)のProtectと呼ばれる有料サービスを提供している。このサービスを利用すると、ユーザーは、自分のカメラからProtectエージェントに自分の居場所とライブストリームを送ることができる。Citizenによると、Protectエージェントには、前警察官や911オペレーターが在籍しており、緊急時には「緊急対応部隊」を派遣できる。これは、個人向けの911オペレーターに料金を支払っているようなものだ。今でさえお粗末な警察システムのお粗末な代替システムのような感じだ。ユーザーが犯罪を恐れるほど、自分たちの身を守ってくれると信じて月額サブスクリプションサービスに料金を支払う動機も高まる。ニューヨーク市議会議員のJustin Brannan(ジャスティン・ブラナン)氏は、次のように書いている。「自分の近辺で起こった犯罪を絶えず把握できれば、都市の犯罪発生率が現在歴史的低水準になっているとはいえ、ユーザーは多少は安心できます。ただし、脱走したトラが実はアライグマだったなどということもあります」。

おそらくシリコンバレー育ちのテック企業では、1世紀近くの長きに及ぶ米国の警察の残忍行為、人種プロファイリング、監視を抑えることはできないのかもしれない。犯罪を減らすには、すべての人が医療施設を利用でき仕事にありつけ手頃な価格の住宅を購入できるようにしたほうが、よほど効果的なのかもしれない。答えは誰にもわからない。

関連記事:論議呼ぶ防犯アプリ「Vigilante(自警団員)」改め「Citizen」が月額約2180円のProtectサービスを開始

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:CitizenジャーナリズムマスコミアプリApp Store透明性犯罪

画像クレジット:Citizen

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

論議呼ぶ防犯アプリ「Vigilante(自警団員)」改め「Citizen」が月額約2180円のProtectサービスを開始

10万人以上のベータテスターによる数カ月間のテストを経て「Citizen(シチズン)」アプリは米国時間8月3日、プレミアム版「Protect(プロテクト)」の提供をすべてのユーザーに向けて開始する。このサブスクリプションサービスは月額20ドル(約2180円)で、アプリ上の多くの機能を利用することができる。

有料の新機能の中で最も重要なのは「Get Agent」ボタンで、これはさまざまなシナリオでCitizenのオペレーターへのアクセスを提供する。同社によると、このボタンは「911(日本の110番に相当する緊急番号)に電話するところを見られたくない」場合に利用できるという。それが身の安全の問題なのか、あるいは警察に電話することについての他の問題なのかは、間違いなくユーザーと状況の両方により異なるだろう。同社のエージェントは事実上、緊急通報のオペレーターとのパイプ役として機能する。

多くの人にとってCitizenアプリの機能は近年、さまざまな論争の影に隠れがちだった。当初は「Vigilante(自警団員)」という名称でスタートしたこのアプリは、2021年初めに「Personal Rapid Response Service(個人向け緊急対応サービス)」という私有のフリートを立ち上げたことや、ロサンゼルスの山火事を起こしたと濡れ衣を着せられた人物を捕らえる報奨金を提供したことでニュースになった。

「当社のProtectエージェントたちは、高度な訓練を受けた安全エキスパートであり、ストレスや不安を感じるさまざまな状況に対応できる能力を備えています」と同社は新サービスについて書いている。「彼らは、あなたの状況に合わせてエクスペリエンスをパーソナライズします。必要に応じて911コールにエスカレートしたり、ファーストレスポンダーにあなたの正確な位置を伝えたり、指定された緊急連絡先に通知したり、安全な場所に誘導したり、あるいはあなたが再び安全だと感じるまで、単に通話を続けてあなたをモニターすることもできます」。

もう1つの重要な機能は新しい「Protect Mode(プロテクトモード)」で、これもまた、前述のエージェントにすばやくアクセスできることを意味する。不審な状況で有効にすると、アプリはユーザーの音声フィードをライブモニターし、AIを使い叫び声などを検知し、エージェントへの接続を提供する。ユーザーが応答しない場合は、自動的に接続される。また、ユーザーは電話を2回振ることで、エージェントに直接アクセスすることができる。

最近の同社の求人情報には下記のように記されていた。

この役割では、危険となり得る状況下で支援を必要としているユーザーとのコミュニケーションを行います。難しい会話を導き、最善の判断に基づいてこれらの状況の重大性をリアルタイムで判断する責任があります。あなたは、周囲に危険を感じているユーザーを助ける最前線に立ち、直接支援や911へのエスカレーションを行います。

これは、Noonlightのようなパニックボタンアプリを探している人にとっては有用なサービスになる可能性がある。しかし、Citizenの歴史にある危険信号を考えると、同アプリがそのようなサービスを提供するのに最適な立場にあるかどうかは疑問が残る。

2016年にリリースされたこのアプリは当初、自警主義(vigilantism)への懸念からApp Storeから追放された(もともとの名前や位置づけからして、無理もないことかもしれない)。ニューヨーク以外にも拡大していく中でリブランディングされたこのアプリは、全米レベルで懸念を生み続けている。

2021年5月には、同社は犯罪発見のためのクラウドソーシングをブランディングされた車両にまで拡大し、ロサンゼルスをパトロールし始めた。当時、ある情報筋はViceのテックニュース部門であるMotherboardに「大規模なマスタープランは、民営化された補助的な緊急時対応ネットワークを作ることだった」と語っている。同社は後に、初期パイロットの後にサービスを拡大する予定はないと付け加えた。

それと同月、CitizenサービスのCEOは、ロサンゼルスの山火事を起こした疑いのある人物を捕らえるために3万ドル(約327万円)の報奨金を出した。その後、同サービスは誤った人物の写真を配信し、それが80万回以上の動画ビューを記録したことを謝罪した。「深く反省し、二度とこのようなことが起こらないよう、内部プロセスの改善に取り組んでいます」と同社は声明で述べた

Citizenは現在、米国の20都市でサービスを提供している。新しいProtect Modeサービスは、米国時間8月3日よりiOS向けに提供を開始する。Android版の開発も進行中だという。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:CitizenアプリサブスクリプションiOSApp Store防犯

画像クレジット:Citizen

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

アップルが反ワクチン主義者の出会い系アプリ「Unjected」をApp Storeから削除、Google Playでは公開継続

アップルが反ワクチン主義者の出会い系アプリ「Unjected」をApp Storeから削除、Google Playでは公開継続

Morsa Images via Getty Images

アップルは新型コロナや誤報に関するガイドラインに違反したとして、反ワクチン主義者の出会い系アプリ「Unjected」をApp Storeから削除しました。このアプリは「医療の自主性と言論の自由を支持する、志を同じくする人々」のための場所と自称しており、記事執筆時点ではAndroid版は今なおGoogle Playで公開されています。

Bloomberg報道によると、このUnjectedアプリは5月にサービスを開始したもの。ユーザーはプロフィールの作成や他の人とのマッチング、メッセージのやり取りなどを行うことができたと説明されています。

本アプリは基本的には反ワクチン主義者のための出会い系サービスであり、その公開は偶然にもTinderやBumbleといったマッチングアプリが新型コロナワクチン接種をユーザーに勧める特典を追加した時期と重なっており、そのため「アンチワクチン主義者向けのTinder」と呼ばれていたそうです。

また最近UnjectedはFacebookやTwitterのようなソーシャルフィードを追加したところ、これが(Android版では)Google Playによる審査のきっかけとなり、ユーザーが投稿した誤報を含むコンテンツを十分に取り締まっていないと判明したとのことです。GoogleはUnjected社へのメールで、ワクチンが「実験的なmRNA遺伝子改変剤」や「生物兵器」だという主張、人々を5Gネットワークに接続する「ナノテクノロジーマイクロチップ」などの投稿にフラグを立てた(規約違反と判断した)と伝えられています。

そして7月16日、GoogleはUnjected社に対して、それら投稿を削除するか、あるいはアプリをストアから削除されるかを選ぶ2週間の猶予を与えることに。それを受けてUnjectedの共同創設者シェルビー・トムソン氏は「私たちは検閲の綱渡りをしなければなりませんでした」と語りつつ、最終的にはソーシャルフィードを削除しています。

しかしトムソン氏は、フラグが立てられた投稿とともにソーシャルフィードを復活させる予定であり「レーダーに探知されないようにしたい」と語っており、反ワクチン活動を諦めるつもりはなさそうです。

一方、iOS版のUnjectedアプリは最近までApp Storeで配信されており、この件につきBloombergがアップルにコメントを求めたところ、削除されたとのことです。アップルはUnjectedの開発者に、削除理由を「コンセプトやテーマにおいて、COVID-19感染拡大に言及していることが不適切である」と伝えたそうです。

アップルの広報担当者いわく、最初の審査プロセスではUnjectedを拒否し、新型コロナ関連アプリのポリシーに準拠するよう変更した後にアプリを承認したとのことです。が、それ以降「開発者がユーザーに対して対外的に発言したり、アプリを更新しましたが、その結果、再びコンプライアンスから外れることになりました」と述べられています。

さらにアップル広報は、Unjected社がユーザーに対して、検出を避けるために特定の言葉を使わないように勧めていたとも付け加えました。こうした行いは、App Store Reviewガイドラインにある「システムに対して不正を働こうとした場合は(中略)そのデベロッパのAppはApp Storeから削除されます」の箇所に抵触するというわけです。それらアップルの回答は、米Engadgetも確認しています。

新型コロナのワクチン接種に反対する人々は世界各地でデモを起こすなど、少なからず社会問題となっています。すべての人々がどのように考え、どういった思想を持つことも自由ですが、あくまで正しい知識に基づいて行動し、誤った情報を拡散しないよう心がけたいところです。

(Source:Bloomberg。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Apple / アップル(企業)Google / グーグル(企業)新型コロナウイルス(用語)Tinder(企業・サービス)Bumble(企業・サービス)フェイクニュース / 偽情報(用語)マッチングアプリ / デートアプリ(用語)ワクチン(用語)

マスク氏はアップルのApp Store手数料を「インターネットにおける税」と呼ぶ

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、App Storeの独占訴訟においてEpic Gamesを支持している。TeslaのCEOは米国時間7月30日の朝、Apple(アップル)のApp Storeの料金を「インターネットに対する事実上の税。Epicは正しい」とツイートした。

Epic GamesとAppleの法廷闘争は何年も続くことは間違いなく「Fortnite」のメーカーは世論を味方につけることも目的としていることを隠していない。マスク氏のこの信任投票は、本テーマについてまだ明確な意見を持っていない消費者に影響を与える可能性がある。

Appleは、不満のある開発者は、自社製品をAndroidやiOSのモバイルウェブに移すことができると公に主張してきたが、Epic Gamesなどは、Appleがアプリに対する取り組みは、独占状態に他ならないと主張している。

なぜマスク氏がこの問題を取り上げたのかは、あまり明確ではない。マスク氏は、自分と関係のない争点について外野から意見を述べることはほとんどない。現在、マスク氏の会社はいずれもApp Storeからの課金に強く影響を受けていないようだが、水面下で何かしらのアクションが起きている可能性はある。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:イーロン・マスクAppleApp StoreTwitterEpic Games裁判

画像クレジット:Yichuan Cao/NurPhoto / Getty Images

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(文:Lucas Matney、翻訳:Katsuyuki Yasui)

アップルのApp Storeがドイツで調査の対象に、競争規制当局が「市場支配力」に向けた手続きを進行

ドイツの競争規制当局であるドイツ連邦カルテル庁(FCO)は、ビッグテックGAFAの「ビンゴ」カードを完成させ、Apple(アップル)に対する手続きを開始した。

当局はすでに2021年に入り、Amazon(アマゾン)Facebook(フェイスブック)Google(グーグル)に対して同様の調査を開始しており、本措置も、改正されたドイツの競争法の基準をiPhoneメーカーが満たすかどうかを判断するものとなる。

関連記事:大手テック企業に対する反トラスト調査の手を強めるドイツ競争規制当局がGoogle News Showcaseの徹底調査開始

2021年1月に施行された同法の第10次改正法により、連邦カルテル庁は、大規模なデジタル企業が「市場間競争において重要な影響(paramount significance)を与える」と判断された場合や、その反競争的行為への関与を防ぐ目的において、これらの企業の慣行に対して積極的に介入することができるようになった。

この競争法(通称、GWBデジタル化法)の重要な新条項、特に第19条aに関する議論が行われた先に行われたパネルディスカッションで、FCOのAndreas Mundt(アンドレアス・ムント)長官は、この競争法の更新はFacebookによるインターネットユーザーの「スーパープロファイリング」に対する長期にわたる(かつ先駆的な)訴訟の経験に影響を受けたと説明した。

関連記事:ドイツ裁判所がフェイスブックに対する「スーパープロファイリング」訴訟を欧州司法裁判所に付託

要するに、ドイツの競争法には現在、競争法とデータ保護を内包する有害性の理論があるということだ。ただしAppleの場合、同社が管理するテック帝国は概して(乱用というよりは)ユーザーのプライバシー保護と結びついている。

しかし、ドイツの反トラスト法に対する包括的な改正は、ビッグテックに広く向けられたものだ。FCOによる規制の対象となる条項を通じて、市場の開放を維持し、イノベーションを促進し、いかなる不正行為も阻止することを目的としている。当該規制の対象には、自己優遇やバンドル、巨大企業の融合商品による隣接市場への強引な参入、競合他社を締め出すために相互運用性やデータアクセスをブロックすること等が含まれている。

各ケースの特性や個別のエコシステム事業に応じて、条項が組み合わされて展開され、テック大手が法の下で対処され得るだろう。そのため改正法が実際にどのように機能するかはまだ未知数だ。これまでのところ、FCOはGAFAに対して法律を適用できるかどうかをそれぞれのケースで判定中である。

Appleの訴訟に関して、ムント長官は米国時間6月21日の声明で、App Storeの運営は調査の「主要な焦点」になると述べ、その理由として「Appleがサードパーティの事業活動にさまざまな方法で影響を与えることが考えられる」と指摘した。

「Appleがその専有OSであるiOSを用いて、複数の市場にまたがるデジタルエコシステムをiPhoneを中心に構築したかどうかを検証する」と同長官は続けた。「Appleはタブレット、コンピュータ、ウェアラブルを製造し、デバイス関連のサービスを数多く提供している。同社はさまざまなハードウェア製品の製造に加えて、 App Store、iCloud、AppleCare、Apple Music、Apple Arcade、Apple TV+などの提供をサービス事業の一環として行っている。これらの分野における同社の立場を評価するだけでなく、複数の市場レベルにわたる広範な統合、技術的および財務的資源の規模、データへのアクセスなどについて、さまざまな側面から検討していく」。

FCOはまた、Appleに対する「反競争的行為の可能性に関連した」多くの苦情が寄せられていることについてプレスリリースで言及した。例えば、iOS 14.5の導入でユーザー追跡が制限されたことに対する広告およびメディア業界からの抗議などだ。また、GWBの第19a条で禁止されている自己優遇の可能性として、同社独自のアプリケーションを排他的にプリインストールしたことに対する苦情も挙げられている。

「アプリ開発者はまた、Appleが提供するアプリ内課金システム『App内課金(In-App Purchase、IAP)』の義務的利用とそれにともなう30%の手数料率を批判している」とFCOは同プレスリリースで付言している。「これに関連して、AppleのApp Storeにおけるアプリ開発者のマーケティング上の制限についても対処されている。後者の苦情は、ストリーミングサービスのSpotifyに制限を課して自社サービスを優先させているとして欧州委員会がAppleに対し現在進めている訴訟と類似している。この点に関して、連邦カルテル庁は必要に応じて欧州委員会や他の競争当局と連絡を取る方針である。これまでのところ、さらなる手続きを開始する決定はなされていない」。

FCOの行動についてTechCrunchがAppleにコメントを求めたところ、広報担当者の名前で以下のような回答が送られてきた。

Appleはイノベーションと雇用創出の原動力であることに誇りを持っており、ドイツのiOSアプリ経済が支える雇用は25万件を超えています。App Storeによる経済成長と活動は、あらゆる規模のドイツの開発者に、世界中のユーザーと情熱と創造性を共有する同一の機会を与えるとともに、顧客が好みのアプリをダウンロードするための安全で信頼できる場所を作り、彼らが期待するプライバシー保護を提供するものとなっています。ドイツにはAppleの欧州最大のエンジニアリング拠点もあり、ミュンヘンのEuropean Silicon Design Center(欧州シリコンデザインセンター)に新たな10億ユーロ(約1320億円)の投資も行われています。当社のアプローチについてFCOと議論し、FCOの懸念についてオープンな対話を行う機会があることを期待しています。

FCOが裁定を下すと「重要な影響(paramount significance)」の認定は5年間続く。一方で、第19a条による訴訟は意図的に早められ、上訴はドイツの連邦司法裁判所(専属的管轄権を与えられている)に委ねられる。その目的は、Facebookのスーパープロファイリングに対するFCOの訴訟で起きたような、長期間に及ぶ長引く訴訟を回避することにある。同訴訟は、連邦カルテル庁がFacebookのデータ慣行の調査を開始してから5年もの月日が流れた2021年3月に、法的問題としてCJEU(欧州司法裁判所)に付託されたものだった。

GAFAが欧州最大の経済圏でどのように事業を展開していくのかという点において、今後数カ月から数年の期間は非常に重要な意味を持つだろう。そしてその延長線上で、多くの管轄区域がビッグテックを規制する方法に積極的な関心を寄せている中、欧州やそれ以外の地域でも同じような様相となる可能性が高い。

例えば2021年3月には、英国競争・市場庁(Competition and Markets Authority、CMA )がAppleのApp Storeの調査を開始している。同時に同庁は、テック大手への規制を強化することを念頭に置いた「競争促進」を生み出す国内法の改革に取り組んでいる。

また、欧州連合(EU)の立法者たちは2020年12月にデジタル市場法案を提出し、いわゆる「ゲートキーパー」プラットフォームのパワー市場に対処することを目指している。

FTC(米連邦取引委員会)がLina Khan(リナ・カーン)氏を委員長に任命したことも、米国におけるテック業界の反トラスト法に対する方針転換を意味するように思われる。

関連記事:英競争当局がアップルのApp Store独禁法調査を開始

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AppleApp Storeドイツ独占禁止法

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

2021年上半期のモバイルアプリ支出額が過去最大の7兆円超え、ダウンロード成長は鈍化

消費者のモバイルアプリ支出が2021年上半期に過去最多の649億ドル(7兆1780億円)となったことがアプリストア調査会社Sensor Towerの予備分析データで明らかになった。App Store、Google Playでの支出額は前年同期に比べて24.8%増加した。しかし業界の専門家はパンデミックによるモバイルへの加速的なシフトは今後も継続するとみている一方で、これは指摘するに値するが、過去最多の支出額にもかかわらず支出額の成長率はわずかに鈍化し、ダウンロード数の成長率はさらに大幅に縮小した。

2019年上半期から2020年上半期にかけて、モバイルアプリでの支出額は405億ドル(約4兆4780億円)から520億ドル(約5兆7500億円)へと28.4%増えた。その前の成長率を24.8%下回った。

画像クレジット:Sensor Tower

2021年上半期のグローバル支出のうちAppleのApp Storeが415億ドル(約4兆5900億円)を占め、これはGoogle Playの234億ドル(約2兆5860億円)の1.8倍だった。

しかしGoogle Playは引き続き成長を加速させていて、App Storeが2020年上半期の340億ドル(約3兆7580億円)から22.1%成長したのに対し、Google Playは180億ドル(約1兆9890億円)から30%増だった。これは部分的には、フィリピンのように新型コロナウイルスによるパンデミックで事業閉鎖や自宅待機を余儀なくされたマーケットの需要による、とSensor Towerは指摘した。

ゲーム以外の消費者支出はスポーツ、金融、ビジネス、本、エンターテインメントのアプリに支えられた。トップ100にランクインしているサブスクベースのアプリ(ゲームを除く)が支出の大半を占め、83億ドル(約9175億円)だった。2021年上半期に売上が最も多かったアプリは引き続きTikTokで、YouTubeとトップ常連のTinderが続いた。

画像クレジット:Sensor Tower

もちろん、モバイルゲームが全体の支出額に最も貢献し、2021年上半期の支出額は447億ドル(約4兆9380億円)に達した。うち260億ドル(約2兆8720億円)がApp Storeでのものだったが、成長は2020年上半期の26.5%から2021年上半期には13.5%に減速した。

画像クレジット:Sensor Tower

2020年上半期に売上高が最も多かったゲームは順に、TencentのHonor of King(150億ドル超、約1兆6570億円)、PUBG Mobile(中国版も含め約15億ドル、約1660億円)、Genshin Impact(8億4800万ドル超、約940億円)、Roblox、Coin Masterだった。

モバイルアプリのダウンロードの成長は2021年上半期に大幅に減速したとSensor Towerは指摘した。

2020年、消費者はパンデミックの影響で仕事、教育、買い物、健康、グローサリーなどのためにアプリに目を向け、新しいモバイルアプリのインストールは世界中で大幅に増えた。2020年上半期、アプリインストールは前年同期比25.7%増の713億回に達した。しかし2021年上半期にはダウンロードはわずか1.7%増にとどまり725億回だった。

画像クレジット:Sensor Tower

App Storeではゲーム以外のインストールの前年同期からの減少はさらに顕著で、2020年上半期の183億回から2021年上半期は163億回に減った。これについてSensor Towerは、経済や対面での活動が再開した米国のようなiOSユーザーが多いマーケットでは消費者の注意をひく競争が激化していることの表れだと考えている。

一方、Google Playでの(ゲーム以外)のインストールは2020年上半期の530億回から2021年上半期は562億回へと6%増加した。これはいまだにパンデミックの影響を受けているインドのようなAndroidが主流のマーケットでのアプリに対する需要と結びついているかもしれない。結果として、Google PlayでのアプリインストールはApp Storeの3.5倍だった。

画像クレジット:Sensor Tower

ゲーム以外のアプリで最もダウンロード数が多かったのはTikTokで、2021年上半期中の新規インストールは3億8460万回だった。しかしこれは前年同期の6億1900万回から約38%減だった。2020年インドで禁止されたことが響いたのかもしれない。アプリダウンロードのトップ5の残りはFacebookがほぼ独占し、第2位がFacebook、第3位がInstagram、第4位がWhatsAppだった。そしてTelegramが第5位で、Messenger、Zoom、Snapchat、CapCut、Google Meetが続いた。

一方、モバイルゲームのダウンロードはApp Storeでは22.8%減の44億回だったが、Google Playでは前年同期比3.9%増の237億回と成長した。

発表されたデータは予備分析のものであり、今後より正確なものになるかもしれない。また全体像を把握するのに他の会社の分析レポートと比較する価値もあるだろう。

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カテゴリー:その他
タグ:Sensor TowerアプリApp StoreGoogle Play

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフトのナデラCEOがアップルに「Windows版iMessageを歓迎する」と呼びかけ

マイクロソフトのナデラCEOがアップルに「Windows版iMessageを歓迎する」と呼びかけ

ymgerman via Getty Images

マイクロソフトは本日未明に次世代OS「Windows 11」を正式発表し、それとともにAndroidアプリもWindows上で動く上にMicrosoft Storeアプリから入手できる見通しも明らかにしました。

その後MSのサティア・ナデラCEOはThe Wall Street Journalのインタビューにて、アップルのiMessage(日本名は「メッセージ」)をWindowsに迎え入れることを歓迎するなどを語っています。

ナデラCEOいわく、Windows 11の大きな目標の1つは「サードパーティ製アプリ市場への開放」であり、Microsoft Storeの枠を超えて創造性の中心になるということ。その上で「すべてのアプリ」が参加するよう招かれていると述べています。

その上で順調とは言えないのが、iPhoneとWindowsの連携です。WindowsとAndroidデバイスとは「スマホ同期(Your Phone)」から密に連携し、ついにAndroidアプリがWindows上で動くにいたりましたが、iPhoneとはそうではありません。この点につきナデラCEOは「もっと上手くいくようにしたい」と語っています。

さらにナデラCEOは、他の企業と同じくアップルがWindows上でやりたいことを行うのは歓迎されると述べ、その1つとしてWindows版iMessageの可能性にも言及したという流れです。

iMessageは(少なくとも米国では)アップル製品を代表するアプリであり、iPhoneやiPad、Macに共通で搭載されているものです。アップルは今年(2021年)秋にビデオ通話アプリFaceTimeをAndroidやWindowsにも部分的に解放すると発表済みですが、iMessageについてアップル製品の独占であることに変更はありません。

なぜ、アップルはiMessageを他のプラットフォームに解放しようとしないのか。先日のEpic Gamesとの訴訟のなかで、裁判資料として提出された社内メールからは、アップルが一度はAndroid版iMessageを検討しながらも、幹部らが「iPhoneユーザーが子供にAndroidスマホを買い与える際の障害を取り除くことになる」つまりAndroidに顧客を奪われることを懸念して、結局は取りやめにされたことが明らかとなっていました

おそらくナデラCEOもその資料には目を通していて、アップルの意図は織りこみ済みのはず。Windows 11とともに発表されたストアの刷新では、MSの決済システムを使う必要もない、MSに手数料を支払わなくても良いとされていますが、これは正にアップルがApp Storeの30%手数料を一部を除いて守り続け、自社システム以外の独自購入方法を認めないことと真逆と言えます。

MSはアップルに表向きはWindows版iMessageの歓迎を呼びかけることで、実は挑発しているのかもしれません。

Windows 11: Microsoft CEO Satya Nadella on the New ‘Start’ of the PC (Exclusive) | WSJ

(Source:Wall Street JournalEngadget日本版より転載)

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タグ:iMessage(製品・サービス)App Store(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Amazon / アマゾン(企業)Android(製品・サービス)Satya Nadella / サティア・ナデラWindows(製品・サービス)Windows 11(製品・サービス)OS / オペレーティングシステム(用語)FaceTime(製品・サービス)Microsoft / マイクロソフト(企業)Microsoft Store(製品・サービス)Microsoft Teams(製品・サービス)

iOSアプリ内でそれぞれのサブスクの管理や返金が可能に、アップルがStoreKit 2を発表

iOSアプリの中でサブスクリプションを購入し、後でキャンセルしたりアップグレード、ダウングレードあるいは払い戻しをしたいと思ったことのある人なら、そのための変更や申請のやり方がわからなくて苦労したことだろう。中にはアプリをiPhoneから削除するだけでサブスクリプション料金を取られなくなると信じている人もいる。iPhoneの設定アプリやApp Storeを探し回って返金方法を見つけようとする人もいる。Apple(アップル)が今週のWWDC 2021で発表したStoreKit 2は、そんなユーザーの苦労を少し和らげてくれるかもしれない。

StoreKitはAppleのアプリ内購入を管理するためのデベロッパーフレームワークだ。ここ数年複雑さをましている分野だ。なぜなら、多くのアプリが1回の買い切りからサブスクリプション方式に切り替ええ、さまざまなコースや期間や機能の選択肢を提供しているからだ。

画像クレジット:Apple

現在、サブスクリプションを管理または解約したい人は、App StoreかiPhoneの設定から行うことができる。しかし、設定アプリからそこへ至るためにはApple ID(画面トップの自分の名前とプロフィール写真がある部分)をタップする必要があることに気づかない人もいる。設定アプリやApp Storeの使い方に慣れていないために挫折することもあるだろう。

ちなみに「アプリ内サブスクリプション」の返金を要求するにはさまざまな方法がある。たとえばメールの受信箱からAppleの領収書を探し出して、「Report a Problem (問題を報告)」リンクをタップすれば、問題があったときに返金を要求することができる。これは、サブスクリプションを間違えて(あるいは子どもが!)購入してしまったときや、約束されていた機能が目的どおりに働かなかったときなどに有用だ。

Appleは、専用ウェブサイト提供していて、そこではアプリやコンテンツの返金を直接要求することができる(「Apple 返金手続き」などのワードで検索すると、たいてい検索結果のトップにこのページが出てくる)。

しかし、多くのユーザーは技術に長けていない。そんな人たちにとって、サブスクリプションを管理したり返金手続きをする最も簡単な方法は、おそらくそのアプリ内で行うことだ。このため、多くの良心的アプリ開発者は、ユーザーをAppleのサブスクリプション管理や返金のページに誘導するリンクをアプリ内に設けている。

StoreKit 2は、デベロッパーがその種の仕組みをさらに簡単に実装するための新しいツールを導入した。

新しいツールの1つがManage Subscription API(サブスクリプション管理API)で、デベロッパーはユーザーをApp Storeにリダイレクトすることなく、アプリ内で直接サブスクリプション管理ページを表示することができる。またデベロッパーはオプションとして、ユーザーに「Save Offer(割引特典)」画面を表示して、解約を思い止まらせるための割引などを提案したり、サブスクリプションを中止する理由を尋ねる出口アンケートを行うこともできる。

新機能が実装されると、ユーザーはApp Storeでサブスクリプションの解約や変更を行う時とまったく同じ画面をアプリの中で見ることができる。解約後には、解約の詳細とサービスが使えなくなる日付の書かれた確認画面が表示される。

ユーザーが返金を要求したいときは、新しいRefund Request API(返金手続きAPI)を使えば、ここでもApp Storeや他のウェブサイトにリダイレクトされることなく、アプリ内で直接返金手続きを開始できる。ユーザーは表示された画面で、返金して欲しい項目を選択し、返金を求める理由にチェックを入れる。返金手続きはAppleが処理し、返金を承認または却下した通知がデベロッパーのサーバーに送られる。

しかし、中にはこの変更でもまだ十分ではないというデベロッパーもいる。彼らは顧客のサブスクリプション管理や返金の手続きを、プログラムによる方法を使って自分自身で行いたいのだ。ちなみに、現在ユーザーが返金申請の結果を受け取るまでには最大48時間かかるとAppleは言っているので、混乱を招く可能性もある。

「Appleは手続きを多少スムーズにしましたが、デベロッパーは未だに返金や解約を自身で主導することができません」とRevenueCat(レベニューキャット)のCEO Jacob Eiting(ジェイコブ・イーティング)氏は指摘する。この会社はアプリ開発者がアプリ内購入を管理するためのツールを提供している。「これは正しい方向への一歩ですが、誰が返金の責任を持つかに関して、デベロッパーと消費者の間の混乱を大きくする恐れがあります」。

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つまり、アプリの中で申請がやりやすくなったことで、ユーザーは返金手続きをデベロッパーが行っていると信じる可能性がある。実際には今と同じくAppleが行っているのに。

新しいプロセスが対応していないシナリオもあると指摘するデベロッパーもいる。例えばユーザーがアプリをすでにアンインストールしていたり当該デバイスをすでに所有していない場合には、従来と同じく他の方法で返金を申請しなくてはならないことだ。

しかし消費者にとっては、この種のサブスクリプション管理ツールができることは、今以上に多くのデベロッパーが、サブスクリプション管理や返金申請のボタンをアプリ内に置くようになり、体験が向上することを意味している。ユーザーがアプリを使うこともサブスクリプションを管理することも簡単にできるようになれば、デベロッパーは顧客維持や利用度の向上が見込め、App Storeのレビュー評価も高くなる、とAppleは述べている。

StoreKit 2の変更は、サブスクリプションと返金を管理するためのAPIに限定されていない。

デベロッパーは、新たにInvoice Lookup APIも利用できるようになり、ユーザーのアプリ内購入を調べて請求書を確認したり購入に関する問題を特定したりすることができる。例えばApp Storeですでに返金処理が行われているかどうかを知ることができる。

新しいRefunded Purchases API(返金済み購入API)を使うと、デベロッパーが特定ユーザーによる返金をすべて見ることができる。

新しいRenewal Extension API(更新延長API)は、使用不可期間が生じた場合に、デベロッパーが有効な有料サブスクリプションの更新時期を延期することができる。たとえばストリーミングサービスがダウンした場合などのカスタマーサポート問題に対応するためだ。このAPIを使うとデベロッパーは、年間2回まで、それぞれ最長90日間サブスクリプションを延長することができる。

そして、新しいConsumption API(コンテンツ消費API)では、デベロッパーがユーザーのアプリ内購入に関する情報をApp Storeと共有できる。これはApp Storeでの返金承認手続きの際に役立つ情報だ。ほとんどの場合、ユーザーは購入直後からコンテンツを使用し始める。しかしこのAPIを使うことで、App Storeはユーザーがアプリ内購入したものを一部あるいは全部使ったのか、あるいはまったく使っていないのかを知ることができる。

他には、ユーザーがアプリを再インストールしたり別のデバイスでダウンロードしたときに役立つ変更がある。これまでユーザーは、新たにダウンロードしたり再インストールしたアプリに、完了した支払い状態を「購入の復旧」によって手動で同期する必要があった。これからはその情報はStoreKit 2が自動的に取得するので、アプリはユーザーの支払状況を直ちに更新できる。

全体としてはStoreKitフレームワークにとって大きな意味のあるアップデートだが、デベロッパーが自身のサブスクリプション顧客に対するコントロールを拡大することに対するAppleのためらいぶりは、この会社がどれほどアプリ内購入を支配したがっているかをものがたっている。おそらくそれは、過去にデベロッパーによる返金管理を許そうとして痛い目にあったためだろう。

2021年5月、Epic Games(エピック・ゲームズ)対Appleの反トラスト裁判に関連してThe Vergeが報じたところによると、AppleはかつてHulu(フールー)にサブスクリプションAPIを提供したところ、Huluが高額のサブスクリプション・プランにアップグレードしようとしたユーザーに対して、App Storeを通じて自動的にサブスクリプションを解約する方法(訳注:Appleの手数料を回避するため)を知らせていたことを知った。AppleはこうしたAPIの誤使用を防ぐために行動を起こす必要があることを認識し、Huluは後にAPIへのアクセスを失った。それは、当該APIが広く利用可能になる前のできごとだった。

その反面、サブスクリプション管理と返金を、デベロッパーではなく、Appleに任せることは、Appleが詐欺行為防止に関連する責任をもつことを意味している。詐欺行為はユーザー、デベロッパー両方によるものがあり得る。また、ユーザーにはサブスクリプション請求を1カ所、すなわちAppleで管理したい、という要望もある。デベロッパーとの個別のやりとりは、一貫性のない体験になりがちでユーザーにとってありがたくない。

一連の変更が重要なのは、サブスクリプション収入がAppleの裕福なApp Storeビジネスに多大な貢献をしているからだ。WWDC 21の前にAppleは、2020年のApp Storeでのデジタル製品とサービスの売上が前年比40%増の860億ドル(約9兆4080億円)に伸びたことを報告した。2021年1月Appleは、App Storeが2008年に開始して以来、2000億ドル(約21兆8800億円)以上をデベロッパーに支払ったてきたことを発表した。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleWWDCWWDC2021サブスクリプションアプリApp Store

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルが詐欺撲滅を目指してApp Storeガイドラインを改訂

Apple(アップル)は米国時間6月7日、App Store Review Guidelines(アップストア・レビュー・ガイドライン)を改訂した。アプリをApp Storeで公開するために従わなくてはならないルールを定めた膨大な文書だ。今回公開された中で特に注目すべきなのは、AppleがApp Storeにおける不正、詐欺、デベロッパーの不品行などに対して強固な姿勢をとっていることで、悪事を追求する権限を他のデベロッパーに与える新しいプロセスも含まれている。

この点に関する大きな変更は、AppleのDeveloper Code of Conduct(デベロッパー行動規範 / レビュー・ガイドラインの5.6および5.6.1~5.6.4項)に見られる。

この項目は大きく拡張され、操作的あるいは誤解を招く行動の繰り返し、あるいはその他の詐欺的行動はApple Developer Programからの追放につながることが記載されている。これはAppleが違反の繰り返しに対してこれまでも行ってきたことだが、ガイドラインに明文化することを重要視した、と同社は言っている。

本項目に追加された3番目の段落で、Appleは、デベロッパーがデベロッパー行動規範に違反する行動または行為に携わった場合、Appleデベロッパーアカウントが剥奪されると言っている。

さらに、削除されたアカウントを復活させるためには、自分たちが実施した改善点を詳しく説明した書面をAppleに提出し、Appleの承認を得る必要があると具体的に記されている。もしAppleが、改善がなされたことを確認できれば、そのデベロッパーのアカウントを復活させる可能性がある。

Appleは記者会見で、この変更は、Appleに捕まったデベロッパーが、後に変更を元に戻した悪事を続ける、一種のキャッチ・アンド・リリース行為を防ぐことが目的だと説明した。

今回の改訂で、Appleはデベロッパーの個人認証に関する新たな項を追加した。これは、Appleおよびユーザーに提供されているデベロッパーの連絡先情報が正確であり機能していること、およびデベロッパーがApp Store上の正当なデベロッパーになりすましていないことを保証するためだ。これは、あるユーザーの老後の蓄え(Bitcoinで約60万ドル、約6600万円)をだまし取った暗号ウォレットアプリに関わるApp Store詐欺が大きな問題になった案件だ。その詐欺被害者は、問題のアプリがハードウェア暗号デバイスを作っている別の会社と同じ名前とアイコンを使い、5つ星の評価が付けられていた(もちろん不法に)ために騙された。

これに関連して、AppleはApp Storeの発見詐欺に関する文言(5.6.3)を明確化し、App Storeのランキング、検索、レビュー、および紹介に対するあらゆる種類の操作を、より具体的に非難している。これは、現在急増している詐欺アプリをランキングと検索の上位に持ち上げるApp Store偽評価偽レビュー業界を撲滅することが目的だ。

一方、紹介取り締まりは、インストールを促進するためにApp Store外で消費者に誤った価格を示す行為を対象としている。

別の項(5.6.4)では、アプリが公開された後に起きる問題を取り上げている。ネガティブなカスタマー報告や懸念事項、異常に高い返品率などだ。Appleがこの行為を見つけた場合、違反があるかどうかアプリを捜査する、と述べている。

もちろんここでの問題はこうだ。果たしてAppleは潜在的詐欺師を実際に見つけられるのか?ここ数カ月間、Appleのレビューはあまりにも多くの詐欺アプリをすり抜けさせている、と多くのデベロッパーが指摘している。

Appleにとって悩みのタネの1つが、キーボードアプリ「Fleksy」のファウンダーであるKosta Eleftheriou(コスタ・エレフセリウ)氏で、同氏は彼が詐欺師に奪われた売上に関してAppleを訴えているだけでなく、1人詐欺集団のようなものを作り、過去の悪質な詐欺行為を暴露している。この中には上に挙げた暗号詐欺、子ども向けゲームの顔をしたオンラインカジノ、ユーザーから年間500万ドル(約5億5000万円)騙し取る新しいVPNアプリなどさまざまある。

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App Storeに蔓延する詐欺行為はAppleの反トラスト公聴会でも取り上げられ、ジョージア州のJon Ossoff(ジョン・オソフ)上院議員はAppleのKyle Andeer(カイル・アンディア)最高コンプライアンス責任者に、なぜAppleは詐欺師を見つけられないのか「簡単に」特定できるのに、と質問した。

当時Appleはその懸念を軽視し、その後もApp Storeが2020年に15億ドル(約1641億3000万円)の詐欺取引を阻止したことを謳ったこのプレスリリースを出すなどその態度を貫いている。

しかしガイドラインのこの最新改訂は、この件に関してAppleが何らかの助けを必要としていることを認めているように読める。そこには、デベロッパーは他のデベロッパーのアプリに違反の可能性を見つけた時、直接報告できるようになったと書かれている。この種の報告を標準化した新しいフォームを通じて、デベロッパーはガイドライン違反あるいはその他の信用あるいは安全に関する問題を指摘することができる。多くの場合、デベロッパーは自分たちのビジネスと売上に影響を及ぼしているアプリに気づくので、詐欺師に対処する第1ステップとしてこのフォームを使う可能性は高い。

別の変更では、デベロッパーが政治的偏見を含むなんらかの不当な扱いがあったと思ったとき、異議申し立てできるようになる。従来Appleはデベロッパーに対して、App Storeの決定に不服を申し立て、ガイドラインの変更を提案することを認めてきた。

AppleはTechCrunchに対し、現在81言語に対応する500人のアプリレビュアーが、改訂されたガイドラインとポリシーを執行するために毎日取り組んでいると語った。Appleは、日々起きている個別の問題をシステムとアルゴリズムと教育にフィードバックすることで、将来同じ問題が起きないようにすると言っている。中でも新しい行動規範ルールは、App Store詐欺を厳重に取り締まるために必要なツールをもたらすと革新している。

詐欺に関する規則は、この日のApp Store Reviewガイドライン改訂で公開される多くの変更点のごく一部にすぎない。

他に注目すべきものをいくつか挙げておく。

  • Appleは「フックアップ」アプリに関するルールを明確化し、App Storeでポルノおよび売春が許されていないことをデベロッパーが間違いなく理解するようにした。ほとんどの問題は、セックスに関する夜逃げ的アプリであり、おとり商法でユーザーを釣る
  • クリエイターコンテンツアプリは、ユーザー生成コンテンツのルールに従うよう指導されている。すなわち、コンテンツのブロック、報告、および厳重な管理を受けなければならない
  • Appleは、許可を受けた薬局と許可を受けた大麻販売者は、合法かつ地域制限されていれば、購入を支援できる条項を加えた
  • 犯罪行為の報告を行うアプリではデベロッパーは地域警察と協力する必要がある。(Citizenは、ユーザーが誤った人物を捕まえて問題になった最近の事例だ。このレベルの不注意はなくなるかもしれない)
  • おとり商法およびアプリの価格に関する広告は許されていない
  • 携帯通信会社アプリは音楽とビデオサービス以外のサブスクリプションを提供できるようになった
  • Appleは、デベロッパーは誰とでもメールで連絡をとれることを明確にしたが、App Storeを通じて獲得した顧客をターゲットしてApp Store以外で購入する方法に関するメッセージを送ることはできない、と言っている
  • 飲み比べゲームアプリはくさるほどあるので、送ってこないように
  • アカウント作成を提案するアプリは、アカウントの削除も提案しなくてはならない
  • 他にギフトカードのアプリ内購入、アプリメタデータ、バグ修正登録などの明確化が加わったが、主要な変更ではない

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タグ:AppleWWDC 2021WWDCApp Store詐欺

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルがApp Storeに製品ページA/Bテストとアプリ内イベントの宣伝を導入

Apple(アップル)は米国時間6月7日、App Storeの今後のさまざまな変更・改善を発表した。これにより、開発者はより効果的にアプリのターゲットユーザーを見つけ、より多くの人々にアプリを発見してもらえるようになるという。また、アプリ内でどのようなイベントが行われているかを強調することで、新規ユーザーにアプリをダウンロードしてもらい、既存ユーザーの再訪を促すことを目指す。

同社によると、App Storeは現在175カ国で毎週6億人のユーザーに利用されており、App Storeの開設以来、開発者に2300億ドル(約25兆1300億円)以上の支払いを行ってきたとのことで、アプリ開発者にとってのビジネスチャンスを強調している。

だがApp Storeの成長にともない、アプリ開発者にとっては、新しいユーザーに向けてアプリを販売したり、自分のアプリを見つけてもらうことがより難しくなっている。今回の新機能は、そのような状況に対応することを目的としている。

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1つの変更点は、アプリのプロダクトページに関するものだ。2021年からアプリ開発者は、複数のカスタムプロダクトページを作成して、ユーザーごとにアプリの異なる特徴を紹介できるようになる。例えば、スクリーンショットやビデオ、アプリのアイコンなどを変えて、ユーザーの好みをA/Bテストできるようになる。

また、アプリ内で起こっているダイナミックな出来事を継続的に宣伝することもできる。Appleは、アプリやゲームは常に新しいコンテンツを展開しており、ストリーミングサービスでの映画のプレミア上映や、Pokémon GO(ポケモン GO)フェスタのようなイベントもあれば、Nike(ナイキ)フィットネスチャレンジのような期間限定イベントも行われていると説明した。しかしこれらのイベントは、すでにそのアプリをインストールしていて、さらにプッシュ通知をオプトインしているユーザーしか発見できないことが多かった。

画像クレジット:Apple

Appleは今後、開発者がこれらのイベントをより効果的に宣伝できるようにし、アプリ内イベントを「App Storeの中心」に位置付けていくという。イベントは、アプリのプロダクトページで紹介することができる。ユーザーは、イベントの詳細を確認したり、通知を受け取るために登録したり、現在開催中のイベントにすばやく参加したりすることができる。また、パーソナライズされたレコメンデーションやApp Storeの検索を通じて、イベントを発見することも可能になる。

また、App Storeのエディターがベストイベントをキュレートし、新しいApp Storeウィジェットでは、ユーザーのホーム画面上に今後のイベントが表示される。

Appleによるとこの機能は、すでにイベントを運営している開発者も、これから始める場合も含め、すべてのデベロッパーに開放されるとのこと。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)