アップルが15インチMacBook Proのバッテリーをリコール、異常加熱の可能性

アップルは6月20日、2015年9月から2017年2月までに発売された15インチMacBook Pro(Retina, 15-inch, Mid 2015)の一部で、内蔵のリチウムイオンバッテリーが異常に高温になる問題があることを公表し、同日からリコールを受け付けている。

同モデルのすべてがリコール対象ではなく、一部のロットに利用されたリチウムイオンバッテリーが原因。アップルではシリアル番号を入力することで該当するモデルかどうかを判別できるページを用意している。

アップル製品のリコールは、4月25日に明らかになった「AC電源プラグ(3芯)」に続いて今年2回目。2003年1月~2015年1月に販売された同製品が破損する可能性があり、破損した場合は感電の危険性があるというものだった。日本国内でこの製品を入手するには「Appleワールドトラベルアダプタキット」を購入する必要があるため、多くのユーザーには無関係のリコールだったが、今回のリコールは注意が必要だ。

リチウムイオンバッテリーの異常加熱は他メーカーでも発生しているが、環境によっては発火する恐れもある。熱が外に逃げない密閉されたカバンなどに入れて持ち運ぶ場合は特に注意が必要だ。

6月21日午前11時現在のアップルのトップページ(左)。スクロールしてもリコールについての記載は見当たらない。プレスリリースサイトやサポートサイトで情報を入手できる(右)

なおアップルはニュースリリースで「お客様の安全は最優先事項です。Appleは、お客様に対して、本件に該当する15インチMacBook Proユニットの使用を中止していただくことをお願い申し上げます」と記載しているが、リコールについての情報は同社のサポートサイトもしくはニュースルームにしか記載されていない。

トップページは相変わらず「対象となるあなたのiPhoneを下取りに出すと、新しいiPhoneが最大31,120円割引になります」という、同社らしからぬ安さをアピールする文言が最初に現れる。

次のiOSではアプリを削除するときに購読をキャンセルできる

OSのアップデートには機能が追加されたと感じる程度だったり、特に役には立たないと思うものもある。デバイスの使い方がほんとうに変わるものもある。iOS 13のベータ2で追加されたこの機能は、後者だ。アプリをアンインストールするときにサブスクリプションをキャンセルするかどうかをユーザーに尋ねてくる。

MacStoriesのFederico Viticci氏が発見したこの新機能は、大変革ではないにしても、確実にお金の節約にはなる。App Storeのマネタイズのパラダイムは、ずいぶん前に前払いからサブスクリプションに移行している。サブスクリプションの多くは、ユーザーが以前に申し込んで単に忘れて繰り返し支払っているものであることは間違いないだろう。

次回の自動更新日を知らせて「登録の管理」へのリンクを示すこの機能は、そうした開発者にとってはがっかりだろう。しかし、使っていないサービスにお金を払うのは適切ではない。もちろん、アンインストールするアプリをほかのデバイスで使っていたり再インストールするつもりだったりするなら、あるいは困っているアプリ開発者に毎月支払い続けたいなら、「継続」をタップすればよい。

iOS 13は6月はじめのWWDCで大々的にお披露目された。特に注目されたのはダークモードやプライバシー関連の機能などだったが、このちょっとした新機能はもっとも便利なもののひとつになるかもしれない。

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(翻訳:Kaori Koyama)

アップルが睡眠モニター「Beddit」のベータプログラムを米国で開始

アップルBedditのベータプログラムを開始した。アップルはオンラインストア/直営店のApple StoreでBeddit製品をしばらく販売し、その後の2017年にBedditを買収した。ベータプログラムのウェブサイトによると、このプログラムに登録した参加者には、Bedditアプリの新しいバージョンが一般公開に先駆けて提供される。参加者はデータを共有しアンケートに回答することで、アップルにフィードバックを提供することもできる。

ベータプログラムの参加者は、アプリの利用状況、アプリの設定、睡眠の結果に関するデータに加え、診断データも提供する。こうしたデータは個人的な特性であるため、同意書に署名することが必要だ。

アップルは、ベータプログラムへの参加は完全に自発的なものであり、いつでも参加を取りやめることができるとしている。取りやめると、それ以降はデータを収集されない。もし取りやめた後で気が変わったら、ベータプログラムの実施中は再度参加することもできる。

ベータプログラムへの参加にはいくつか条件がある。米国在住であること、Beddit Sleep Monitorモデル3.5を所有していること(145.95ドル、日本のApple Storeでは1万5800円)、22〜75歳であることだ。ベータプログラムに関するメールをアップルから受信することに同意する必要もある。

アップルはiOS 10で時計アプリに「ベッドタイム」機能を追加して以来、睡眠トラッキングに取り組んできた。時計アプリの「ベッドタイム」とは、決まった時刻に就寝するためのリマインダーと、決まった時刻に起床するためのアラームを繰り返し設定する機能だ。よりよい睡眠のために、「おやすみモード」の時間を決める、アプリの使用を時間で制限する、iPhoneから発するブルーライトを減らすためにNight Shiftの時間を決めるといった設定をすることもできる。自然な睡眠パターンの妨げとなるおそれのあることを避けるためだ。

しかしコネクテッドデバイスメーカーのBedditを買収することで、アップルは睡眠トラッキングに大きく一歩前進した。

今後、アップルはベータ参加者から収集したデータをもとにBedditアプリを改良していくと思われる。このアプリのApp Storeでの評価は5点満点中2.0点(日本のApp Storeの本稿翻訳時点のスコア)で、レビューではデザインや動作に対する不満が見られるので、今後に注目だ。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Apple WatchはwatchOS 6で内蔵アプリも削除できるようになる

Apple Watchを持ってるけど要らないアプリがたくさんあるのはいやだ、という方に朗報がある。新しいオペレーティングシステムwatchOS 6が今年後半にリリースされると、Apple Watchのオーナーは、デバイスに最初からあるファーストパーティ製のアプリをこれまでよりも多く削除できる。これまで削除できなかったアラーム、タイマー、ストップウォッチ、リモコン、カメラリモコン、ラジオなどに加えて、心電計や呼吸、ノイズ、生理の周期チェックなどの健康関連アプリも消せる。

Apple Watchのオーナーは現在、アプリストアからダウンロードしたサードパーティアプリは簡単に削除できる。アプリを押したままにすると表示される「X」をタップしてもよいし、あるいはApple Watchのアプリの設定へ行って「Show on Apple Watch」をオフにする。

また、多くの内蔵アプリをiPhoneから削除できるし、そうすると、それらに対応するApple Watchのアプリも削除される。

でもiOS側に何もないWatch専用アプリ、タイマーやラジオなどは削除できない。

それが、今秋ローンチされるwatchOS 6で変わるのだ。

今週Appleはこれらの、それまで削除できなかったアプリの一覧を、アプリストアのリストで発表した(下図)。

アプリのリリース日–画像提供: Sensor Tower

これらのアプリは、ユーザーが削除できるけど、気が変わったらアプリストアから再インストールできる。削除の仕方は、これまでのサードパーティアプリと同じく、アプリを押し続けると出る「X」をタップする。

内蔵のiOSアプリやWatchOSアプリでも、削除できないのがある。心拍やメッセージなどがそうだ。

Watchのデフォルトアプリの多くが削除可能になることは、オーナーにとって好評だろう。数年前にはiOSの内蔵アプリの一部も、iOS 10のリリースで削除可能になり、やはり好評だった。Stocks(株価アプリ)を削除できたときは、あなたも嬉しかったでしょ?

やはりApple Watchでも、最初からあるデフォルトアプリを全部使いたいユーザーはあまりいないのだ。

Apple WatchのBreathe(呼吸)アプリのセルフケアバイブなんて、全然関心のない人もいる。またもちろん、最近ローンチされたApple Watchの生理の周期チェックアプリは、女性にしか用がない。

この変更が発表される前には今月初めのWorldwide Developer Conference(WWDC)でアップルは、watchOS 6でApple Watchに専用のアプリストアを設けると初めて発表した。これで、WatchアプリのiOSからの独立性が強まる。iPhoneやiPadのアプリに同伴しなくてもよい。必要なければデベロッパーは、iOSバージョンを作らなくてもよい。

* 原注: 今提供されているwatchOS 6 betaにはこの機能はないが、Apple方面に詳しい情報筋によると、アプリは確かに「削除可能」になるようだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルがカナダ版HPにRaptorsへの賛辞を仕込む

トロントのバスケットボールチームことRaptors(ラプターズ)が米国時間6月15日の夜に2019年シーズンで優勝した。これを受け、Apple(アップル)のカナダ版のウェブサイトにはイースターエッグが仕込まれた。

https://apple.com/caを訪れると、一瞬の間だけウェブサイトのトップを押し下げて表示されるアニメーションを目にすることだろう。最初これを目にしたときには父の日の変わったプロモーションかと思ったものだ。

しかしページをリロードした時、このアニメーションが実際には渦巻く恐竜とカナダ国旗、そしてバスケットボールの絵文字でできていることに気づいた。そしてようやく、これがNBAチャンピオンシップの優勝チームに関連していることがわかったのだ。

なんであれ、このイースターエッグは楽しいし、たぶんクパティーノの本社の了承を得て埋め込まれたものだろう。頂上決戦に破れたGolden State(ゴールデン・ステート)のファンにとっては、苦々しいかもしれないが。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

iOS版iMovieが大幅アップデート、サウンドトラックを80本追加、画像オーバーレイも利用可能に

iOS 13上の登場に合わせて改訂される純正アプリの公式リリースに先駆けて、Apple(アップル)は人気の高いビデオ編集アプリ、iOS版iMovieの新バージョンをリリースした。今回のアップデートで、iMovieには数多くの新機能が追加された。中でも目立つのは、グリーンスクリーン効果をサポートしたこと。これにより、ビデオクリップから背景を簡単に削除することができる。また、さまざまなジャンルにわたる80もの新たなサウンドトラックも追加されている。

特にグリーンスクリーンをサポートしたことは、より高度な機能セットを提供することで優位に立とうとするサードパーティ製のビデオ編集アプリに対しても、iMovieの競争力を高めるものとなる。またその一方で、それほど機能にこだわらないユーザーにとっては、シンプルな使い方ができるという特長を保っている。

Appleによれば、新しいバージョン(2.2.7)では、ブルーまたはグリーンのスクリーンの前で撮影されたクリップから背景を削除できるようになり、さらに4ポイントマスクと「強さ」スライダーを使って効果のかかり具合を調整できるという。

80の新しいサウンドトラックには、ポップ、チル、センチメンタルといったジャンルが含まれている。サウンドトラックは、ムービーの長さに合わせて自動的に調整される。

新しいエフェクトに関しては、写真をオーバーレイとして追加して、ピクチャインピクチャ効果や、画面分割の効果を付けることが可能となった。その際、境界線を表示しないように設定することもできる。こうした機能は、iMovieに対する要望としてよく挙げられていたもの。実際、それがないことが、ユーザーが他のビデオ編集アプリを選んでしまう理由の1つに数えられていた。

その他の新機能は、iMovieをより使いやすくするためのもの。たとえば、他のアプリケーションからiMovieに切り替えたとき、作業中のプロジェクトの編集画面に戻るようになった。また、「…」のアイコンで示されるメニューからiMovie Theaterにはアクセスできなくなった。iMovieでは、ユーザーにムービーを直接iCloudに保存させる方向にシフトしているからだ。

また、iMovieをなんらかの教室で利用する場合に有効なアップデートとして、ClassKitのサポートが追加された。これにより、生徒は宿題として作成したビデオをApple純正の「スクールワーク」アプリを利用して先生に提出できる。

iMovieはApple製の各種プラットフォームで動作するように設計されているので、ユーザーはiPhone上でプロジェクトの編集を開始し、その後iPadやMacなど、他のデバイスに転送して編集を完了するといったこともできる。たとえば、グリーンスクリーン効果や色補正などは、大きな画面の方が作業しやすい。

新しいiMovieは、iPhone版、iPad版のいずれも、すでにApp Storeからダウンロード可能となっている。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

アップルはMac Pro発売を前にLogic Pro Xを強化

先週のWWDCステージで待望のMac Proの刷新を発表した時、Apple(アップル)はそのデスクトップPCのパワーを示すのに、プロ向けのソフトウェアを最良な方法として選んだ。そしてFinal Cutだけでなく、Logicにも焦点が当てられた。

米国時間6月13日、アップルはステージにて公開されたLogic Pro Xのアップデートを公開した。プロ向けの音楽制作ソフトとなる同ソフトウェアのバージョン10.4.5では、最大56のスレッド処理や最大1000のオーディオトラックとソフトウェア音源トラックをサポートする。

また、1000の補助チャンネルと1000の外部MIDIトラックも追加できる。アップルによれば、新バージョンでは前モデルのMac Proに比べて5倍のリアルタイムプラグインがソフトウェア上で処理できるという。

その他にも、小規模なアップデートがいくつもある。

  • ループブラウザではループタイプをフィルターしたり、複数ループプロジェクトに同時にドラッグ&ドロップできる。
  • 再設計されたDeEsser 2プラグインでは、オーディオトラックのシビランスをより低減するためのオプションが追加されている。
  • MIDIのビートクロックはタイミングのオフセットやプラグインの遅延補正などの固有の設定とともに、個別ポートに送信できる。

バージョン10.4.5は200ドル(約2万2000円)にて公開されており、また既存ユーザーは無料でアップデートできる。一方、新型Mac Proの発売は秋まで待つことになる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

アップル製品の将来を占う新しいアプリ開発環境

開発ツールに関しては、デベロッパー向けのメディア以外で大きく扱われることはあまりない。しかし、Apple(アップル)がWWDCで発表した開発ツール類は、今後のアップル製品向けのアプリの数と質の両方に、多大な影響を与える可能性が高い。それはiPhoneだけに限らない。macOS、watchOS、tvOS、そして新たに加わったiPadOSを搭載する製品にすべて関わってくる。

今回のイベントの主役ではなかったが、デベロッパーがさかんに話題にしていたのはSwiftUIだった。

5年前、アップルはプログラミング言語Swiftを発表して、アプリ開発をできるだけ容易なものしようとする動きを見せた。そして今回のWWDCでは、SwiftUIと呼ばれるまったく新しいユーザーインターフェースのフレームワークを発表し、そのビジョンをさらに押し進めた。SwiftUIを利用することで、スムーズなアニメーションの付いたフル機能のユーザーインターフェースを、シンプルな宣言的コードによって実現できる。

デベロッパーにとっては、これは大幅な時間の節約につながる。SwiftUIが備える自動化の機能によって、アプリの設計を洗練されたものにできるだけでなく、バグを減らすことになるからだ。また、アップルがデベロッパーに説明したところによれば、「単にコードの量を減らせるだけでなく、より良いコードにできる」ということだ。

シンプルであることを目指したのは、そうでなければどうしても避けられない、さまざま種類の誤りの発生を防ぐことを意図したもの。SwiftUIのコードは、まるで他の人からユーザーインターフェースについて説明を受けているかのように読みやすい。さらに、デベロッパーは異なるプラットフォーム間で、より多くのコードを再利用できるようにもなる。

それによって、開発サイクルの大幅な短縮にもつながる。デベロッパーが、アプリのユーザーインターフェースの一部だけを変更したくなった場合でも、素早く、しかも簡単に変更できる。

SwiftUIのフレームワークは、インターフェースのレイアウトをはじめとして、さまざまな面に効果を発揮する。たとえば、iOS 13が装備するダークモードへの対応、アクセシビリティ、右から左へ向かって書く言語への対応を含む国際化などだ。しかもSwiftUIは、同じAPIをiOS、iPadOS、macOS、watchOS、さらにtvOSという複数のOSに共通のものとすることで、アップルのアプリのエコシステム全域にまたがって使えることも重要なポイントだ。

このような特徴によって、これまでiOSだけに注力していたデベロッパーも、既存のアプリをSwiftUIに対応させさえすれば、クロスプラットフォームの開発に着手しやすくなる。

もちろん、アプリの性格によって、どこまでSwiftUIに対応できるかの程度は異なるだろう。しかしSwiftUIは、新規のデベロッパーにとっても魅力的なだけでなく、初めてアプリ開発に取り組むような初心者をも惹きつけるものがある。

SwiftUIは、Xcodeの新バージョンとともに発表された。このXcode 11には、新しいグラフィカルなUIデザインツールが含まれている。それによってデベロッパーは、コードを書くことなく、SwiftUIを使ったユーザーインターフェースの開発が可能となる。

視覚的なデザインツール上でUIが変更されると、そのつど新たなSwiftコードが自動的に生成される。さらに、そのアプリがどのような表示になり、どのように動作するのか、iPhone、iPad、iPod Touch、Apple Watch、Apple TVなど、接続されたデバイス上のリアルタイムのプレビューで確認できる。

これによりデベロッパーは、各プラットフォームでコードがどのように機能するかをテストできる。たとえば、マルチタッチに対してどのように応答するか、カメラやセンサー類の動作はどうかなど、開発プロセスの中で確認できるのだ。

Watchアプリ

watchOSに関しては、SwiftUIによって、Watchアプリならではのアニメーションとエフェクトの開発の複雑さを解消することができる。これまでは、その難しさのせいで、Watchアプリに手を出すのを躊躇するデベロッパーもいた。

SwiftUIは、スワイプして削除、リストアイテムの並べ替え、カルーセルのスライド、デジタルクラウンへの直接アクセス、といった機能を備えたWatchアプリの開発をサポートする。

またApple Watchは、デバイスから直接App Storeに接続できるようになり、ペアとなるiOSデバイスやiPhoneがなくても、スタンドアローンのアプリをインストールできるようにもなった。

このスタンドアローンのWatchアプリは、iOSから独立して動作させることができるだけでなく、Apple Watchを独立したプッシュ通知のターゲットに設定することも可能となる。つまり、そのユーザーがログインしているすべてのデバイスにではなく、Watchにだけ通知を送信することができる。

Watchアプリは、CloudKitのサブスクリプションをサポートできるようになり、プッシュ通知をコンプリケーションとして表示することで、ユーザーに最新情報を伝える。Watchアプリは、対応するiPhoneアプリを使っていないユーザーをもターゲットにできるようになったので、ユーザー名とパスワードを入力するテキストフィールドを表示するようになった。そこに入力してサインアップするか、今回発表された「Sign in with Apple」ボタンを使うこともできる。状況によってはアップルでサインインが必須の場合もある。

Watchアプリは、オーディオのストリーミング再生もできるようになった。これにより、これまで可能だったものとは異なるタイプのアプリへの道が開かれる。デモで見たように、Pandoraのようなインターネットベースのストリーミングサービスを利用して、スポーツ中継や音楽をストリーミング再生するアプリを想像するのも難しいことではなくなった。

さらに、watchOSの新しい拡張ランタイムは、ユーザーが手首を下げた状態でも動き続ける、新たな種類のWatchアプリの開発を促すことにもなるだろう。

たとえば、セルフケア、マインドフルネス、理学療法、スマートアラーム、健康状態のモニタリング、といった分野のアプリは、このランタイムを利用することで、Apple Watchのユーザーにとって新たな体験を創出することができるだろう。

これまでのWatchアプリのエコシステムが停滞したのは、アプリ開発の複雑さによるものだけでなく、ユーザーが手首を持ち上げている状態でしか動作しないというような制限をデベロッパーに課してきたことにもよる。ユーザーの手首の上で何ができるかを考えることを止めても、たとえばセンサーやストリーミングオーディオを利用することで、デベロッパーは単純に普通のiOSアプリを移植することも可能となる。

驚くべきことではないが、これまでそうしたアプリの多くは失敗し、やがて削除されることになった。アップルは、Watchアプリのエコシステムの再起動を狙っている。

macOSアプリ

今回のWWDCで発表された新しい開発ツールは、iOSのデベロッパーが、1億人のアクティブなMacユーザーにアピールする機会を生むことになる。

アップルによれば、いくつかの純正iPadアプリは、Mac上でも十分通用するものであることを認識しているという。しかし、一般のデベロッパーは、macOSのAppKitを使ってiPadアプリを移植する時間的な余裕がない。そこで今年のWWDCでは、デベロッパーにとって「最小限」の労力でiPadOSアプリをMac用に移植できるような技術を発表した。

現在、iPad用には100万本を超えるアプリのエコシステムがあり、その多くはMac上で動かしても意味のあるものだと考えられるということだ。

この取り組みの一環として、アップルはiOSからMacに40個ものフレームワークを移植した。その結果、わずかな例外を除いて、ほぼすべてのiOSのAPIの移植が完了した。これは、UIKitをネイティブなフレームワークとして採用し、次期macOSのリリース、Catalinaに直接組み込むことによって実現した、とAppleは述べている。

さらにアップルは、iPadアプリをMacに移植するための3段階のプロセスを用意した。

その最初のステップは、Xcodeのプロジェクト設定で「Mac」と書かれたチェックボックスをオンにすること。

するとXcodeでは、ソースに変更を加えるたびに、iOS、iPadOS、そしてmacOS用のすべてのアプリが自動的に更新されるようになる。

またiPadアプリを優れたものにすることは、ベストプラクティスをサポートするところから始まるという考えに沿って、デベロッパーはMac用にカスタマイズすべき部分を示唆される。つまり、状況に応じてメニューバー、タッチバー、マウスホバーのイベントなどをサポートすべきことが示される。

チェックボックスをオンにするだけで優れたMacアプリが開発できるわけではないが、それによって作業量は軽減される。

ただし、アップルが(優れた」iPadアプリの条件として、どの程度のものを要求するかについては疑問も残る。アップルは最大の効果を得るためには、デベロッパーはiPadのベストプラクティスを採用すべきだとしている。たとえば、外部キーボードをサポートしたり、Metalのようなキーとなる技術を採用することなどだ。

とは言え、もしアップルが本当にMac App Storeの品揃えを充実させたいなら、そしてもっと利益を生み出すアプリを増やしたいと考えているなら、Macに移植されるiPadアプリに、それほど多くを強いることはないかもしれない。

アップルでは、WWDCで発表する前に、すでに10社程度のデベロッパーとこの移植プロセスを試している。その中には、アメリカン航空、Crew、DCユニバース、Post-It、ツイッター、Tripit、フェンダー、アスファルト9、Juraなどが含まれる。

iPadOS

ところで、iPad上で動作するiOSには、iPadOSという新たなブランディングが施されることになった。

これまでのiPadは、発売当初からずっとiOSを搭載してきた。しかし時が経つにつれ、iPadの大きな画面を活かすための独自の機能も実現してきた。たとえば、スライドオーバー、スプリットビュー、ドラッグ&ドロップや、Apple Pencilのサポートなどが挙げられる。

まずはじめに、iPadOSでは、ホーム画面のアイコンのグリッド間隔は狭くなる。これは、サードパーティアプリが使えるホーム画面のスペースが広くなることを意味する。また、ウィジェットはホーム画面に固定できるようになる。これも、iPadアプリがホーム画面に占めるスペースを確保することになり、それだけユーザーの注意を引くことになるだろう。

しかし、iPadが本当に優れているのは、ノートパソコンの代わりに使えること。生産性も高くなり、スケッチやデジタルアートなど、クリエイティブな使い方も可能なのだ。

仕事効率化アプリのデベロッパーにとっては、1つのアプリから独立した別ウィンドウを開けるようになるのは、パソコン的な使い方を可能にする便利な機能だ。さらにアプリExposeや、3本指によってコピー、カット、ペースト、取り消しを可能にするジェスチャーも使えるようになる。

デベロッパー向けのツールについては、PencilKitというAPIが新たに加わり、サードパーティのアプリでも、純正アプリと同様に新しいApple Pencilにアクセスすることが可能になる。

それでも、実際にiPadアプリの開発を促進するのは、iPadアプリを簡単にMacに移植できるようになることかもしれない。言い換えれば、iPadアプリを開発しようというデベロッパーのモチベーションを本当に高めるのは、以前よりもずっと少ない労力で、同じアプリをMacでも動かせるようになること、なのかもしれない。

tvOS

Apple TV用のtvOSは、SwiftUIとiPadアプリのMacへの移植の話題に比べると、ほとんど注目されなかった。それにはアップルは、Apple TVとそのストリーミングサービス、つまりApple TV+に関しての熱意を示すイベントを開催したばかりだったということもある。

とは言え、SwiftUIはここでも活躍する。tvOSアプリでも、コードの再利用が可能になるからだ。

拡張現実と機械学習

アップルが今回のWWDCで発表したのは、作業をシンプルにして開発を促進することを狙ったものばかりではない。他の技術としては、まずARKitをさらにアップデートしたARKit 3が挙げられる。これは、モーションキャプチャー機能を備え、フレームの中の人物も認識できるようになった。それによって、人物をARオブジェクトの後ろに配置したり、前に出したりすることなどが可能となる。

これもアップデートされたCore ML 3を使えば、デベロッパーが機械学習の専門知識を持っていなくても、自分のアプリで機械学習を構築し、学習させ、その結果を利用できるようになる。

他にも、MetalやCreateMLのような重要な技術に進化が見られる。そうした技術を利用することで、デベロッパーは、それぞれの領域で、より品質の高いアプリを開発できるようになるだろう。

それでも、もっとワクワクさせ、興味を引きつける部分は、やはりアップルが現在最も人気のあるアプリプラットフォームであるiOSにテコ入れして、アプリのエコシステム全体に活を入れようとしていることだろう。今回のWWDCで発表されたツールによって、アップルは開発とデザインを合理化し、よりシンプルなものにしようとしている。それにより、より多くの人にプログラミングに参加してもらい、アプリのデベロッパーのコミュニティがiPhoneを超えて発想してくれるよう促しているのだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

iOS 13はマイナンバーカードや英国パスポートも読み取り可能に

NFC(近距離無線通信) テクノロジーはiOSでApple Payその他の基盤として広く活用されている。たとえばLaunch Center Proのアイコンをタップして複雑な動作をさせるアプリもNFCを利用している。WWDCで詳細が発表されたiOS 13ではNFC機能も大幅に強化される。

この一般公開されるiOS 13では、iPhoneでNFCタグを読み取るだけでなく直接タグに書き込めるようになる。また相互通信もネイティブなプロトコルとしてサポートされる。Apple(アップル)は先週のWWDCで、デベロッパーはICパスポートの情報を読み取ったり非接触型スマートデバイスと会話するアプリが簡単に開発できるようになると述べた。

先ごろ、アップルとGoogle(グーグル)はニューヨークの地下鉄でApple PayGoogle Payを利用したNFCで料金が支払えるようになると発表した。ポートランドの公共交通機関や他の大都市でも同様の試みがスタートしている。

iOS 13のアップデートでNFCフレームワークはさらに強化され、できることが飛躍的に増える。新機能を利用するプロジェクトが多数開発中だ。

例えば日本では、iOS 13のローンチに合わせて、iPhoneによるマイナンバーカードの読み取りをサポートする準備を日本政府が進めているとEngadget Japan日経が報じている。.このニュースは日本のCIO補佐官である楠正憲氏のツイートで確認された。

英国政府もNFCを利用したパスポート読み取りアプリを準備しており、iOS 13が公開されれば一般に利用できるようになるとReadIDの公式ブログが確認している。【略】

iOSアプリはID読み取り以外にもNFCタグの書き込み(NDEF)が可能だ。デベロッパーは一度書き込んだタグが後で変更されないようにするロック機能を持たせることもできる。

iOS 13のNFCフレームワークは今回発表されたNFC NDEFタグだけでなく、Mifare、FeliCa、ISO 7816(パスポート)、ISO 15693標準による読み書きをサポートする。iOS 13では言及された以外の場所でも広くNFCが活用されることになるだろう。

Above Image Credit: Ata Distance, which covers Apple Pay and contactless news

アップルはWWDCに先立ってラスベガスで開催されたにTransactカンファレンスでApple PayにおけるNFCを活用サービスについて発表していた。

通販のBonobos、パーキングメーターのPayByPhoneなどがNFCを利用したサービスに参入することを表明している。「支払いはApple Payだけで完結するため専用のハード、ソフトは必要とされない」と電動スクーターのシェアリングサービスを展開しているBirdのSteve Moser氏はツイートしている。【略】

Launch Center ProのデベロッパーであるDavid Barnard氏は、iOS 13が公開されれば、ブランクのNFCステッカーに内容を書き込めるようになるとツイートした。NFCステッカーはAmazonからバルクで買えるという。これにともない現在のプロダクトは値下げされる。

デベロッパーはこの間NFCの機能の拡充を求めてきた。一般消費者にとってNFCテクノロジーの詳細を理解するのは難しい。Near Field Communicationnの頭文字だということを知らないユーザーも多いだろう。それでもiOS 13ではNFCを通じてタップするだけけ複雑な仕事ができるようになる。ユーザーは自然に仕組みを覚えて使いこなすようになる違いない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アップルがオープンソース団体Cloud Native Computing Foundationに参加

KubernetesなどのオープンソースプロジェクトのホームであるCloud Native Computing Foundation(CNCF)が今日(米国時間6/11)、Apple(アップル)がトップレベルの会員資格であるプラチナ会員(Platinum End User Member)として参加することを発表した。CNCFのエンドユーザー会員はAdidas、Atlassian、Box、GitHub、The New York Times、Reddit、Spotify、Walmartなど89社いる。

Appleは例によってこの発表に何のコメントもしないが、しかしCNCFによると、エンドユーザー会員とは「オープンソースのクラウドネイティブ技術のヘビーユーザー」である企業や団体であり、コミュニティに対し何らかの還元意思のある者たちだ。CNCFのエンドユーザー会員になると、自動的に上位組織であるLinux Foundationの会員にもなる。

会員になったことによってAppleは、CNCFの統治委員会(Governing Board)にも加わる。具体的に委員として加わるのは、AppleのシニアエンジニアリングマネージャーTomer Doron氏だ。

Cloud Native Computing FoundationのCTO Chris Aniszczyk氏は、こう語っている。「経験豊富な大企業であるAppleがエンドユーザー会員として仲間になったことは、インフラストラクチャとアプリケーション開発の未来にとってクラウドネイティブコンピューティングが持つ生きた力の大きな証(あかし)である。Appleが本会をサポートすることは、たいへんすばらしいし、今ますます大きくなりつつあるクラウドネイティブプロジェクトのコミュニティに今後得られるコントリビューションに、大いに期待したい」。

Appleをメジャーなオープンソース企業と思う人はあまりいないと思うが、実際には同社はDarwinオペレーティングシステムの一部であるXNUカーネルやプログラミング言語のSwiftをオープンソースにしている。オープンソースのクラウドインフラストラクチャコミュニティにはまだ積極的に参加していないが、今日のCNCFへの参加でそれも変わるだろう。当然ながらAppleは、自前のデータセンターを動かしている。しかしそこではきっと、さまざまなオープンソースのインフラストラクチャプロジェクトを多用しているだろう。例によって同社は、それについてもあまり語らないと思うが。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルはアクセシビリティ機能に真正面から取り組む

WWDCで発表されたApple(アップル)のアクセシビリティに関するニュースの核心部分はすでに報道されているが、それ以外にもアクセシビリティに関連するアイテムは発表されている。ということで、ここでは、あまりニュースとして取り上げられないアップルの発表に関して、私が障害者としての観点から最も興味深いと思っている点について、考察を述べてみたい。

アクセシビリティが主要な関心事に

私がWWDCの週に報告したことの1つは、アップルが(iOS 13とiPadOS上で)アクセシビリティメニューを設定階層の最上位に移動したことだ。「設定」→「一般」→「アクセシビリティ」とドリルダウンするのではなく、いまやアクセシビリティ設定は「通知」や[「スクリーンタイム」などと同じリストビュー内にあるトップレベル項目になった。アップルはまた私に対して、この動きはwatchOS 6にも適用されると説明している。

同様に、アップルは最初の「セットアップ」プロセスにアクセシビリティ機能選択を追加したと語った。新しいiPhoneまたは他のデバイスを初めて設定するときには、システムはユーザーに対して、例えばVoiceOver(「設定」→「一般」→「アクセシビリティ」→「VoiceOver」)のような、望ましいアクセシビリティ機能を設定することを促す。

どちらの変更も、長い間待ち望まれていたもので、特に象徴的な重要度が大きい。平均的なユーザーにはあまり影響はないかもしれないが、アップルがこの動きを行った事実は、彼らが如何にアクセシビリティコミュニティを気にかけているかを饒舌に物語っている。「設定」の中で「アクセシビリティ」をフロントページに移動することで、障害を抱えた(そしてさまざまなな意味でアクセシビリティに課題を抱えた)ユーザーたちに、もう少しだけ配慮することになるのだ。

身体障害者としての私自身にとっては、これは取るに足らないことではない。この変更は、アクセシビリティを第一級の市民にするという点に関して、アップルが業界のリーダーとしての地位を強化することになる。アクセシビリティをトップレベルに引き上げることで、アップルはそれがオペレーティングシステムの重要な側面であり、私を含む多くの人びとのユーザー体験の重要な一部である、というメッセージを発信するのだ。

HomePodへのハンドオフ(切り替え)

私はHomePodを使って音楽やPodcastを聞いたり、HomeKitデバイスを制御したりすることを楽しんでいる。しかしながら、これまでのHomePodで最も煩わしかった点は、中断したところからの再開ができないということだった。音楽やPodcastを聞きながら、スーパーマーケットから家に帰ってきて、そのまま聞き続けたいと思っても、私はまず再生を止めて、出力先をオフィスのHomePodに切り替えなければならない。それは別に難しいことではないが、アクセシビリティの観点からすると、たくさんの余計なタップを繰り返さなければならない。私はもちろんちょっとした面倒を感じていて、その面倒な手続きを強いられるたびに悪態をついている。

iOS 13では、その面倒はなくなる。私のiPhone XRをHomePodに(設定時と同様に)近付けるだけで、iPhoneは再生中の音声を全て、スピーカーに対してハンドオフ(切り替え)するのだ。繰り返すが、入出力の切り替えは全体からすれば大した話ではない。しかし障害者の1人として、私はほんのわずかな不便さにさえ敏感なのだ。受信したiMessageを自分のAirPodではっきりと読み上げてくれる機能などと同様に、こうしたちょっとした洗練は、長い目でみたときにより楽しくシームレスな体験につながっているだけでなく、体験そのものへのアクセシビリティを高めてくれるのだ。こうした意味で、この技術は様々な意味で魔法のようなものなのだ。

ボイスコントロール(Voice Control)の素晴らしさ

ボイスコントロール(Voice Control)の追加そのものは間違いなくメインテーマの1つだが、その舞台裏が大きく語られることはない。

WWDCの開催週の中で、私が話をしたすべての人たち(同僚のレポーターだろうが、開発者だろうが、あるいはアップルの従業員だろうが)が、同じ意見を持っていた。ボイスコントロールはとても素晴らしいと絶賛していたのだ。実際に、 ジョン・グルーバー(John Gruber)氏のポッドキャスト「The Talk Show」の中で、彼と特別ゲストのクレイグ・フェデリギ(Craig Federighi)氏とグレッグ・ジョシュウィキ(Greg Joswiak)氏が議論している部分はその良い一例だ。それは私が会議で耳にしたことと、完全にかみ合う内容だ。フェデリギ氏は、Appleのアクセシビリティチームのメンバーによる内部デモを見たときに、涙があふれることを抑えることができなかったと語っていた。

同様に、会議の中でのアクセシビリティ集会でもそれは熱い話題の1つだった。多くのエンジニアたちや、アップルのアクセシビリティグループのメンバーたちが、ボイスコントロールを送り出せたことをどんなに誇らしく思っているかを、私に伝えてくれた。私はその開発が、大変な仕事だったことを聞かされており、そこに関わった全ての人びとにとって、それが世界に対してリリースされるところを見ることは、ここまでたどり着くために必要だった困難な道のりを振り返らせ、興奮させるものなのだ。

高いレベルから眺めた時に、ボイスコントロールは、私にとってアップルのアクセシビリティに対する取り組みを象徴するものとして目に映った。では動画を見てみよう。

これはとても信じられない、まるで魔法のように感じられるものだ。だがこれはすべて本物である。そして何より素晴らしいのは、これは非常に多くの人の経験をとても深く素晴らしいものへと変えてくれる、革新的機能だということなのだ。フェデリギ氏が泣いたのも無理はない。これは本当に素晴らしいものなのだ。

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(翻訳:sako)

アップルが自動運転スタートアップ「Drive.ai」の買収や人材獲得模索の報道

The Informationの報道によれば、Apple(アップル)はシリコンバレーの自動運転関連のスタートアップこと、Drive.aiの買収を模索している可能性がある。報道によれば、買収交渉は進行しており、また最終的なゴールはDrive.aiの人材、特に自動運転技術のエンジニアをアップルに移籍させることにあるという。

Drive.aiはスタンフォード大学のAI labの精鋭の卒業生によって、2016年に創立された。当初は自動運転システムだけでなく、自動運転者がドライバーや歩行者とより統合できる知的通信システムにも注力していた。

Drive.aiはその後、商用車の改造に重点を置いたビジネスモデルへと移行することでより多くの資金を集め、昨年からは自社の自動運転車両により配車サービスのテストをテキサスのフリスコにて開始した。

The Informationは今年初め、資金調達を継続し独自運営するための選択肢が少ないことから、Drive aiが買い手となる企業を探していることを報じていた。アップルは「Titan」プロジェクトにおいて主導的な幹部が交代するなど、自動運転技術の開発においていささか不確定な経歴がある。同社は現在でも車両の路上テストを実施しているが、計画の全貌は不明だ。

TechCrunchはアップルとDrive.aiにコンタクトをとっており、情報が入り次第アップデートする予定だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

アップルの音声コントロールはアクセシビリティをOSレベルで強化する

Apple(アップル)は、なめらかで直感的なユーザインタフェースをお家芸としている。しかし、もしユーザーがクリック、タップ、ドラッグといった操作のための指を持っていなければ、そんなものは何の役にも立たない。障がいを持つユーザーのために、Appleは強力な「音声コントロール」を装備し、音声ベースのアクセシビリティ機能の強化に本気で取り組んでいる。Mac、iPad、iOSデバイスで利用できる。

多くのデバイスが、すでに優秀な音声入力機能を備えている。そしてもちろん、Apple製のスマホやパソコンにも、もうかなり前から音声ベースのコマンド機能が備わっていた。古くはMacintosh Quadraにさえ、そのためのマイクが標準装備されていた。しかし今回の音声コントロールは、これまでにないほどの大きな進化だ。声による操作を、誰でも使える万能なものに近付ける。そして、すべてオフラインでも機能する。

基本的に音声コントロールでは、ユーザーはセットコマンドと、コンテキストに固有のコマンドの両方が使える。セットコマンドとは、「Garage Bandを起動」とか、「ファイルメニュー」とか、「タップして」などといったもの。もちろん、ユーザーが命令しようとしているのか、文章を入力しようとしているのかを区別するだけのインテリジェンスは備えている。

しかし、こうしたコマンドは、多くのボタンや入力フィールド、ラベルなどが1画面に混在しているようなインターフェースでは、うまく動かない。もし、すべてのボタンやメニュー項目に名前が付いていたとしても、いちいちすべての名前を端から読み上げて選択を促すのは時間もかかり、現実的ではない。

この問題を解決するため、Appleは表示されているすべてのUI項目に単純に番号を付けた。ユーザーが「番号を表示」と言えば表示する。そこでユーザーは、単に番号を発音するか、たとえば「22をタップ」のように、操作の種類も合わせて指示できる。基本的なワークフローは、下のGIF動画に示されている。ただ、音声がないので、伝わりにくい部分があるかもしれない。

こうした数字なら、声を出しにくい人、あるいはまったく出せない人にとっても、比較的簡単に指示できることは重要なポイントだ。たとえば、ダイアルや息を吹き込むチューブといったような、単純な入力デバイスでも選択できるのだ。視線を追跡するのも優れた入力方法だが、それなりの限界もある。数字を使う方法は、それを補うことができるだろう。

たとえば地図のように、どこでもクリックしたくなる可能性があるような画面用には、グリッドシステムを用意している。それによって拡大したり、クリックしたい場所を指定する。まさにブレードランナーのようだ。スクロールやドラッグといったジェスチャーに対応する機能もサポートしている。

テキストの音声入力は、ちょっと前から使えるようになっていたが、それについても進化した。あるフレーズだけを選択して置き換える、といったことも声で指示できるようになった。たとえば、「”be right back”の部分を”on my way”に置き換えて」のように言えばいい。他にも細かな改良点があるが、この機能を頻繁に使用する人なら、その変化に気付き、きっと気に入るはずだ。

音声の解析などの処理は、すべてオフラインで行われる。そのため応答も早く、ネットワークとの接続状態に影響されない確実な動作が可能。データ通信が困難な外国に出かけている場合も安心だ。また、Siriに組み込まれたインテリジェンスによって、基本的な語彙に含まれない名前や、特定のコンテキストに固有の単語なども認識できる。音声入力の進歩により、絵文字を選択したり、辞書に項目を追加したりすることも、簡単にできるようになった。

現状では、すべてのApple純正アプリが音声コントロールをサポートする。またAppleのアクセシビリティAPIを使用しているサードパーティ製アプリなら、簡単にそのメリットを享受できるはずだ。さらに、特に対応していないアプリでも、数字とグリッドによるインターフェースは機能するはずだ。というのも、OS自体が、アプリが表示しているUI項目の位置を把握しているからだ。このように進化したアクセシビリティ機能は、デバイスをiOS 13またはCatalinaにアップデートするだけで、すぐに利用できるようになるだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

アップルは子ども向けのiPhoneアプリの広告とサードパーティ製トラッカーを規制

Apple(アップル)はデベロッパーに対して、子ども向けのアプリにサードパーティ製のトラッカーを埋め込むことをやめるように通達した。従わなければ、そのデベロッパーのアプリはApp Storeから削除される。

Appleは、米国時間6月3日に開催されたWWDCの基調講演の後、App Storeの「子ども向け」カテゴリとして提供されるアプリのガイドラインを、こっそりと改定した

「子ども向けカテゴリのアプリには、サードパーティの広告や、分析ツールを含めることはできない」と新しいガイドラインは示している。以前のガイドラインは、広告に対するユーザーの行動を追跡することのみを規制していた。

Appleは現在、子ども向けカテゴリのアプリに、アプリの外部に向けたリンクや、アプリ内購入の機能を含めることも禁止している

Appleは、最近のマーケティングキャンペーンで、「iPhone内で起こることはiPhone内にとどまる」と主張した。それについて批評家は、正確ではないと指摘している。多くの場合、アプリには広告やトラッキングコードが含まれていて、アプリのメーカーは各デバイスの情報を収集できる。その中には、位置情報やその他のデータが含まれていて、サーバーに転送するようになっている。そうした情報から、アプリ会社はユーザーに合った広告を流したり、アプリがどのように使われているかを学習したりすることができるのだ。

先週、ワシントンポストは、1週間の間に5400を超えるアプリのトラッカーが、iPhoneからデータをアップロードしていることを発見しました。iPhoneの利用者が眠っている夜中の時間帯にもだ。

今年の初めのTechCrunchの調査によると、いくつかのアプリは、いわゆるセッションリプレイ技術を利用していた。それは分析ツールの一種で、アプリが動作中の画面を録画するものだ。Expedia、Hollister、Hotels.comの各社によって開発されたアプリは、Appleが定めた規則に違反していることが判明した。そうしたデベロッパーは、該当するコードを削除するよう指示された。

これに関してAppleは、Googleの後を追ったかたちだ。先週Googleは、Google Playから入手できるAndroidの子ども向けアプリに関する新しいポリシーを設定したこの動きは、FTC(米連邦取引委員会)からの告発に対応するものだった。それは、20を超える消費者擁護団体が、Googleはアプリが、子供のプライバシーを保護する連邦法を確実に遵守するための対策を怠っている、と告発したことに端を発するもの。

Appleの新しい規制のおかげで、少なくとも子供たちは、iPhoneデータのプライバシーを守るために戦うチャンスをようやく手にしたことになる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

WWDCで発表されたiOS、macOS、watchOSのおいしい部分まとめ

米国時間6月3日のWWDCの基調講演では、予想通り多くのものが発表された。そのすべてを見終わってみると、なんだかAppleは、今回取り上げた新機能の間で競争を繰り広げていたようにも感じられた。全部を2時間ちょっとのイベントに詰め込まなければならなかったのだから、それも当然だろう。

多くの人にとって、新しいMac Proが今回の発表のハイライトに見えただろう。ただしAppleとしては、ソフトウェアに焦点を当てていたのは確かだ。Appleは、ハードウェアの売り上げが伸び悩むにつれて、やはり将来はソフトウェア、サービス、そしてコンテンツにかかっているのだと、痛切に感じているはずだ。今回の基調講演では、iOS、macOS、そしてwatchOSが提供することになる新しい機能の中でもベストな部分を、解説付きで観ることができた。

驚くべきことではないが、その中ではiOS 13が最も大きな変更をもたらす。ダークモードは、いわばその中のハイライトだ。この機能のセールスポイントは、macOSなど、他のOSのものと基本的に変わらない。つまり、目に優しく、バッテリーの消費を抑えるというもの。ユーザーの設定によって、常にそのモードを使うか、太陽が沈んでいる間だけ有効にするかを選ぶことができる。

ダークモードにすると、自動的に暗い壁紙が選ばれる。とりあえずAppleの純正アプリで動作するが、やがてサードパーティ製アプリもサポートする。また、アプリ開発環境も標準的にサポートするはずだ。

Appleマップは、登場した直後には鳴かず飛ばずだったが、大きなアップグレードがずっと加えられてきた。今回の新機能で最も注目に値するのはLook Aroundだ。Googleがずっと前から実現しているストリートビューに対抗するものとなる。デモを見る限り、非常にスムーズに動作する。ただし、実際に路上のセルラーネットワーク環境でどのように動くかはわからない。しかしデモは、間違いなく印象的なものだった。

イメージングに関しては、これまでもiOSにとって重要なアップグレードのポイントとなってきた。それは今回も同じだ。写真アプリの編集機能はかなり進化している。ホワイトバランス、コントラスト、シャープネス、ノイズ除去など、プロっぽいコントロールが可能となった。

簡単に使えるフールプルーフ的な機能も加わっている。たとえば、肌の色に影響を与えずに彩度を調整する機能などだ。また、画質や色調の調整や、全体の回転など、ビデオに対して使える編集ツールも加わった。また写真アプリでは、撮影した写真の1画面の表示数、並べ方をダイナミックに変更できる。たとえば、誕生日に撮影した画像をグループ化して表示すれば、時の経過を嫌でも再認識することになるだろう。

今年の基調講演は、iPadにとって、大きな節目となるものだった。iPad用のOSが、iPhone用のiOSから分離されたからだ。ユーザーにとっては、iPadの大きな画面を活かした機能を利用できるようになることを意味する。たとえば、同じアプリのウィンドウを複数開いて、これまでとはまた違う意味のマルチタスクも可能となる。さらに、ジェスチャーによってテキストを選択したり、コピー&ペーストまでできるようにもなる。こうしてiPadOSは、パソコンの操作感覚に近づいていく。

しかし、それより何より、最もエキサイティングな新機能は、実はMac側にあった。macOS Catalinaは、DuetやLuna Displayのようなセカンドディスプレイ機能をiPadに付加する。つまり、iPadをMacの外部モニターとして利用できるのだ。この機能は、Bluetoothによる無線接続でも、USBによる有線接続でも使える。

WWDCの会場は、無線通信にとっては過酷な環境のためか、デモは有線接続で行われた。複雑な操作にも対応して完璧に動作したことは言うまでもない。iPad Proなら、Apple Pencilで描くこともできる。また、iPadのディスプレイの下部には、Touch Barのようなメニュートレイも表示される。

watchOSについても、いくつか付け加えておく価値があるだろう。中でも重要なのは、月経周期の記録、予想機能だ。この機能はiOSでも利用できるようになる。これまでとはまた違った意味での健康管理を可能とするもの。

その他、watchOSに追加される機能としては、オーディオブックをApple Watchで直接聴くための純正アプリ、内蔵マイクを使用して、聴覚障害の原因となる可能性のある騒音をユーザーに警告するNoiseアプリなどがある。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

WWDC 2019で発表されたアップルのプロダクトまとめ

今週米国サンノゼでApple(アップル)のWWDC19が開催された。カンファレンスにはここしばらくAppleが開発に努力してきたハード、ソフトが勢揃いした。TechchCrunchではそれぞれ個別記事で紹介しているが、ビデオでハイライトを振り返ってみよう。

iOS 13

今年秋に一般公開されるiOS 13はかなりビッグなアップグレードになることわかった。デザインではダークモードが目立つが、アプリのダウンロードサイズは50%も小さくなり、動作は2倍速くなる。プライバシーが強化され、Appleがアカウント作成を代行する機能が加わった。これによりユーザーの個人情報がサイト側に漏れるリスクが大きく減少する。またiPhoneからスマートスピーカーに音楽をストリーミングできるようになる。

AirPods

AirPodsとiOSの連携が強化され、AirPods利用中にメッセージが届くと音声で再生され、返信もできる。まだ楽曲再生のシェアリングも容易になった。

Mac Pro

ハードウェアでは噂どおりMac Proがリニューアルされた。Appleは円筒形の「ゴミ箱」スタイルを捨て、実用的なタワー型に戻した。ただし本体は「チーズおろし」スタイルの枠に収められている。12コアのIntel Xeonプロセッサーが用いられ、メモリーは最大1.5TB、PCIスロットx8を備える。恐ろしく強力な処理能力を誇るが、価格も6000ドル(64万8000円)からで財布に大穴を開けそうだ。

6Kディスプレイ

Mac Proの発表と同時に6K、32インチのフラグシップディスプレイとしてPro Display XDRが発表された。表面にはナノテクスチャと呼ばれる新しいマット加工のガラスが用いられている。価格も5000ドル(54万円)とモンスター級だ。同時に1000ドルのディスプレイスタンドも発表され、会場をざわめかせていた。

macOS

maOSでは新しいCatalina(カタリナ)が登場した。予想どおりiTunesは音楽、ポッドキャスト、Apple TVの3つのアプリに分割された。SicecarはiPadをMacの外部ディスプレイにできる。MacBook、iPhone双方を探してくれる新しい「Find My App」アプリがmacOSで使えるようになった。

iPadOS

iPadのOSがiOSから分離し、広い画面を活用できるようになった。Safariでウェブサイトを訪問するとパソコン版がデフォールトで表示される。またスライドオーバーなどマルチタスキングが改良された、後付けでSDカードもサポートされる。新しい3フィンガーのジェスチャーでカット&ペーストができる。Apple Pencilのレイテンシーが9ミリ秒と半減した。

tvOS

tvOSが複数ユーザーをサポートし、XboxとPlayStationのコントローラにも対応するようになった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

iOS 13からアプリは連絡先のメモ欄を読めなくなる

Apple(アップル)は、アプリ開発者がユーザーのデリケートな個人情報をアクセスするおそれのある抜け穴を塞いだ。iOS 13から、ユーザーの連絡先データを要求したアプリは連絡先の「メモ」欄のデータを読めなくなる。

過去何人もわたってセキュリティー専門家は、連絡先にプライベート情報を書き込まないよう警告してきた。保護も暗号化もされていないので盗まれる恐れがあるからだ。

それでも、アドレス帳をパスワードマネージャー代わりにする人は後を絶たない。あるいは、さまざまなプライベート情報をメモ欄に記入する人もいる。

ATMの暗証番号、家のドアを開けるためのコード、金庫のコード、社会保障番号、クレジットカード番号等々。人に聞かれたくない個人情報も入っているかもしれない。

しかし、iOSアプリがユーザーの連絡先を要求すると、名前、住所、メールアドレス、電話番号とともにメモ欄のデータも返ってくる。Appleは今週のWWDCカンファレンスで、今後そういうことはなくなると発表した。

メモフィールドには、ボスの悪口などデリケートな情報が書かれている可能性がある。実際には多くのユーザーのメモ欄にもっとまずいものが入っていることがある。

このプライベートなメモ情報を必要としているアプリはほとんどないので、影響はないはずだとAppleは言った。もしメモ欄を必要とする正当な理由があるという開発者がいれば、例外を要求することができる。

ほとんどのユーザーはこの問題についてよく考えたことがないだろう。連絡先を秘密情報のために使わない賢明な人は、この変更の影響がないので気にする必要がない。

そして事情を知らなかった人たちのためには、Appleが代わってプライベートデータをプライベートなままにしてくれる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

iPadをMacの外部モニター/液タブにするアップル純正Sidecarの脅威

Apple(アップル)は、macOS 10.15 Catalinaに新たな機能を導入する。私に限らず、iPadとMacの両方を持っている人なら、誰でもすごいと認めざるを得ないだろう。この「Sidecar」と呼ばれる機能を使えば、iPadをMacのセカンドディスプレイとして利用できる。有線、無線、どちらでも機能する。さらにApple PencilをサポートするiPadなら、間接的にMacでペンシルが使えるようになる。

WWDC 2019のステージを見た範囲で言えば、何かをインストールしたり、設定したりすることなく、そのままで非常にシームレスに動作するようだ。この機能は、一般的なグラフィックタブレットに対応しているMacアプリも、そのままサポートする。つまり、その分野で非常に重要なAdobe Creative Suiteでも使える。

このような機能は、はっきり言って最初にiPadが登場したときから多くの人が求めていたものだ。しかし、Appleはなぜかそれを無視して純正のソフトウェアで実現してこなかったため、いろいろなサードパーティが独自にそのギャップを埋めてきた。最初に登場したのは、元AppleのエンジニアだったRahul Dewan氏によるもの。培った専門知識を生かして作ったiOSアプリ「Duet Display」だ。これも有線でも無線でも利用可能で、iPadやiPhoneをMacのセカンドディスプレイとして使うことができる。ミラーリングや入力デバイスとしての利用もサポートしている。もちろんApple Pencilにも対応する。他にはAstropadも、iPadをMacのディスプレイとして利用でき、アーティスト向けの入力機能も一通り揃えるなど、ほぼ同様のものとなっている。

ワコムも見逃せない。かなり初期のころから、大半の仕事をデジタルでこなす必要があるプロのアーティストやアニメーターが標準的に選択する製品だった。同社のCintiqシリーズは、ディスプレイに直接書き込めるスタイラスをサポートする高品質の描画タブレットを必要としている人にとって、長い間、ほとんど唯一の現実的な選択肢だった。ただし、それらは非常に高価で、デジタルアーティストとして生計を立てているような人だけが、購入を正当化できるほどのものだった。

ワコムは、Cintiq Proシリーズにおける革新を続けていて、最近になって16インチのCintiq Proを発売した。価格も、以前の製品よりもかなり手頃なものになっている。おそらく部分的には、iPadシリーズのApple Pencilサポートが拡大されたことに対抗したものだろう。もちろんAmazonを探せば、もっと低価格の代替品が豊富に販売されている。

しかしSidecarは、こうしたワコムの製品もそうだが、特に先に挙げたサードパーティ製のiPadアプリにとって脅威となる。誰か他の人のエコシステムに依存した製品を作っている限り、残念ながら避けられないリスクだ。

Appleは、自分たちのコアプラットフォームに組み込むにはあまりに些細な機能だと最初のうちは考えていたものを、後になって取り入れることに躊躇しない会社だ。たとえそれが、自らのエコシステムのパートナーが築いた領域に土足で踏み込むことになるとしてもだ。実のところ、間違いなく消費者に価値を提供し、自分が投資したハードウェアの価値を向上させるものだと感じられる場合には、Appleがそうすることを非難するのは難しい。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ゴミ箱からチーズおろし器へ、新型Mac Proはモジュール化により拡張性が大幅向上

もうゴミ箱にはさよならだ。Apple(アップル)の新しいMac Proは、これまでのモデルよりもずっと伝統的な形状ながら、プロのクリエイターのニーズに応えることを主眼とするマシンに仕上がっている。また、Apple製の他のデバイスとモジュール単位で協調動作するレイヤー構造を採用している。それによって動作は大きく異なったものとなる。

見た目はステンレス製のチーズおろし器にかなり似ている。意図的に似せたのではないと考えるのには無理があるほどだ。この新しいMac Proは、モジュール化を強く意識して設計されたもので、修理、交換の際の内部へのアクセス性もかなり優れている。

最大28コアの最新世代のIntel Xeonプロセッサを搭載。パワーも冷却も十分だ。GPUとしては、Radon Pro 580X、またはRadeon Pro Vega IIを搭載可能。NVIDIAではなく、AMDを選択したことに対する世間の反応については、おいおい明らかになるだろう。メモリ用には、12基のDIMMスロットを装備し、最大1.5テラバイトのRAMを実装できる。もはや、搭載可能なメモリ容量がボトルネックになることはまずないはずだ。しかし、そのような性能を手に入れるには、それなりの出費は覚悟しなければならない。

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PCI Expressスロットも充実している。拡張カード用には4本のダブル幅スロット、小規模なカード用にも4本のシングル幅スロットを備え、さらにThunderbolt、USB-Aコネクタ、および3.5mmオーディオジャックを含む内蔵I/O用に専用の1スロットを確保している。これらのI/Oポートは、プロ用として最小限必要なものとAppleが考えていることがうかがえる。

電源は1.4kWと巨大なものを備える。現在私が使用しているデスクトップ機の3倍もある。冷却は、フロント側にある巨大な、ただし音の静かな3つの空冷ファンと、多数のヒートシンクによっている。水冷は採用していない。

このマシンは、巨大なワークフローを処理するためのものだ。たとえば、Logicの何百ものインスツルメント、ビデオ編集とエフェクト処理のための複数の8Kと4Kのビデオストリームなど。あるデモを見て、観衆はあっけにとられていた。56のスレッドを使用して、一度に1000本ものオーディオトラックを再生するものだ。しかも、CPUにはほとんど負荷がかかっていない。

これは、2013年に登場した旧モデルのMac Proとは似ても似つかないマシンだ。旧モデルの未来志向のデザインは、ステージ上で観衆におっと言わせるものではあったが、機能が形状によって制限を受け、「プロ」用という割には実用的なものでないことが、すぐに明らかになってしまった。旧モデルのユニークなデザインは、新世代のGPU中心のコンピューティングのパラダイムに適応するのが困難であることが証明されてしまった。そもそも、ユーザーによって求めるところがさまざまに異なる構成に対して、通常のタワー型が備えているようなフレキシビリティを提供できなかったのだ。

Apple製品としては、ますます珍しいことではなくなっているが、大胆なデザインが他の部分に妥協を強いるのだ。Mac Proの場合には、ゴミ箱型のデザインが行き止まりであることを認めるのに4年もかかってしまった。そして、最後のアップデートの後で、円筒形のパソコンデザインは破棄されるべきものであることを明らかにした。

それから1年後、Appleはワークフローを中心に据えたアプローチによって、新しいMac Proを設計したと説明した。

ハードウェアエンジニアリング担当副社長のJohn Ternus氏は、昨年4月にTechCrunchに以下のように語っていた。

私たちは、何人かの非常に素晴らしい才能を持った人々を招き入れました。熟練した技術を持った人たちです。そして今、彼らは現実的なコンテンツを使ったワークフローの構築に腰を据えて取り組んでいます。そして、ボトルネックとなりそうなところを洗い出しているのです。弱みとなるのはどこか。どうすれば改善できるのか。そして、それぞれを詳細に調査し、アーキテクチャチームとパフォーマンスのアーキテクトに報告します。そして、どこがボトルネックとなるのか、徹底的に分析するのです。それがOSであれ、ドライバであれ、アプリケーションであれ、あるいはシリコンチップであれ、問題を捕まえて解決するわけです。

たぶんAppleでは、OXOかどこかから、工業デザイナーもスカウトしてきたのだろう。このマシンのデザインは、尋常ではないほどチーズのおろし金にそっくりだ。

もちろん、Mac Proがこのような外観になったのは、これが初めてではない。以前のモデルにもおろし金のようなスタイルのものがあった。しかし、新モデルでは、それをさらに押し進めた感じだ。もちろん、放熱の面では、穴のあいたケースにはメリットがある。しかし、他にいくらでもやりようはあるだろう。

昨年の記事でも示したように、基本的なアイデアは、中心に据えたMac Proを頭脳として使い、あとはインターフェースを好きなようにカスタマイズするということ。Thunderboltによって、他のデバイスやモニタを非常にシームレスに接続することができる。たとえば、iPadを使ってMac Pro上のFinal Cutを操作したり、単にiPadをプレビュー用のモニタとして使うことも可能だ。ハードウェア自体は、このような使い方を考慮して設計されているが、果たしてユーザーが実際にそうした使い方をするものか、しばらく見守る必要があるだろう。Apple自身は、そうした使い方を排除してはいない。

Mac Proの価格は、財布に優しいとは言えない5999ドル(約64万8000円)から、となっている。言うまでもなく、そこにさまざまなオプションを追加することで、合計価格はあっという間に跳ね上がる。基本構成では、価格に見合った性能はまったく得られないから、そうせざるを得ないのだ。Appleが言っているように、サードパーティ製のアップグレードオプションが、豊富に登場することを願うのみだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)