ボストン・ダイナミクスが物流用ロボットStretchの販売予約受け付けを開始

Stretchはこれまで、Spotほどには注目されてこなかった。当然といえば当然なのだが。というのも、1つにはBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)が数十年にわたる研究開発を経て、初めて商品化したロボットではなかったからだ。また、人目につかないところで箱を移動させるなど、舞台裏で活躍することを想定して設計されているからでもある。有名なSpotは、Hyundai(現代自動車)傘下のロボットメーカーBoston Dynamicsにとって、世間の注目を集め、ちょっとした論争を巻き起こす一種のブランドアンバサダー的な存在となっている。

同社のHandleプロジェクトから生まれたStretchは、ここ数カ月で限られた顧客に試験的に使用されている。同社はまた、1月にDHLと1500万ドル(約18億円)相当という大規模なロボット購入契約を締結した。その他、衣料品チェーンのGapやH&Mも初期の顧客だ。

3月30日、このシステムの販売が始まった。2023年か2024年まで納品されないので、予約受付中といった方が正確かもしれない。予想通り、同社はこの新型ロボットへの関心の主な要因として、現在進行中の労働問題を挙げている。

画像クレジット:Boston Dynamics

「人手不足とサプライチェーンの混乱は、モノの流れを維持するための課題を生み出し続けています」と、CEOのRobert Playter(ロバート・プレイター)は話す。「Stretchは物流業務をより効率的かつ予測可能なものにし、倉庫内で最も身体的負荷の大きな作業を担うことで安全性を向上させることができます。当社のアーリーアダプターの顧客の多くは、すでにこのロボットの大規模な導入を決定しており、Stretchが間もなくより広範囲に活用され、小売業者や物流会社が継続的に急増する商品需要に対応できるようになることを期待しています」。

これらのシステムが世界で活躍するのを見るのは興味深い。これまで私たちは主に、制御された環境下でのBoston Dynamicsの動画を見てきた。Stretchは厳しい競争に直面している。企業がAmazon(アマゾン)の巨大な自動化軍団に対抗するための足がかりを探す中で、倉庫や物流は近年ロボティクスで最も注目されている分野の1つとなっている。直近では、そうした企業は雇用のギャップを埋めるのに役立つシステムを探している。

画像クレジット:Boston Dynamics

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

ボストン・ダイナミクスの倉庫ロボットがDHLから約17.2億円の業務を受注

2021年3月、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)は同社2番目の商用ロボット「Stretch(ストレッチ)」を発表した。箱を動かす見事なHandleコンセプトを元に作られたこのシステムは、同社の先進ロボティクス技術を倉庫・物流の舞台へと推し進めるために作られた。現在、ロボティクスで最も注目されている分野だ。

関連記事:Boston Dynamicsが恐竜的2輪ロボットで倉庫業務をデモ

米国時間1月26日、Hyundai(現代、ヒョンデ)傘下のBoston Dyanamicsは、同社初の法人顧客となる大物企業との提携を発表した。物流の巨人DHL(ディー・エイチ・エル)は、Boston Dynamicsのロボットを北米の事業所に配置する、1500万ドル(約17億2000万円)の複数年契約(両社にいわせると「投資」)を完了した。購入されるロボットの台数は明らかにされていないが、Boston Dynamicsは、今後3年間にわたり、DHL物流センターにロボット「集団」を納入するという。

Stretchは、トラックから積荷を降ろす作業から始める。発表時に製作者たちが主要な部分として強調していた機能だ。その後、他の作業も加えていき荷物処理システムの自動化を推進していく予定だ。

CEOのRobert Plater(ロパート・プレーター)氏は次のように語った。「StretchはBoston Dynamicsの最新型ロボットで、倉庫内の課題解決に特化して作られています。DHL Supply Chain(DHLサプライ・チェーン)とともに当社のロボット集団を展開し、倉庫作業の自動化を進め、そこで働く人たちの安全性を高める取り組みができることを大変うれしく思っています。私たちはStretchがDHLの事業活動に意味のある影響を与えると信じており、大規模なロボット集団が仕事をするところを見るのを楽しみにしています。

この提携は、Boston Dynamicsが現在推進している四足歩行ロボットSpot(スポット)を超えるビジネス目標の土台を築く鍵となる。荷物処理は労働集約的で極めて反復の多い重労働であり、長時間の緊張を強いられ障害点も多い。これは、商業化推進を目論むHyundai傘下の同社にとって大きな試金石だ。

一方、DHLにとっては、肉体労働力確保が困難な時期に、物流作業の一部を自動化できる好機だ。これは、配送事業を侵食しつつあるAmazon(アマゾン)らと競合する中、同社が完全オートメーション化を進めるチャンスでもある。

画像クレジット:Boston Dymamics

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【コラム】CES 2022で、メタバースはメタバースをメタバースした

CESを前にして、CES 2012のトップテックを振り返る記事を書いた。10年前のバズワードを思い出すなど、その執筆はさまざまな理由から興味深いものとなった。

その年は、LTEとUltrabookが上位だった。一方は広く長く普及しているが、もう一方はそれほどでもなかった。つまり、その年のCESでの話題の大きさは、その寿命を表すものではない。2012年半ばには、Ultrabookの死が本格的に語られ始めていた。

2022年のCESでは、会場に人の気配はなかったが、見たところ数メートルも歩けばメタバースに行き当たりそうな雰囲気だった。FacebookがMetaにブランド名を変えてから2カ月ほど、CESのような展示会では、企業は良い製品と同じくらい良いフックに投資している。それは理解できる。例えば、Samsung(サムスン)やHyundai(ヒュンダイ)といった企業でなければ、目立つことは難しい。

中小企業の具体的な話は割愛する。Twitterのスレッドでは前述のメタにかなり精通したものだった。正直なところ、私は、スタートアップがその輝きを少しでも得ることを期待しており、それを台無しにしたくない(「Goart Metaverse」という言葉は、私が地球上で最後の瞬間を迎え、脳内にDMTが出るまで、私の精神に入り込んでいくものだ)。

CESが始まる前に、メタバースとは何であるかを知らなかった人にとって、今回のショーはあまり良いものではなかったが、メタバースには間抜けな顔のミー文字とVR機器がおそらく含まれているという事実だけは確かだ。そして、このワードをタイプしている今、おそらくメタバースの説明としてはこれ以上ないほど適切だということもわかった。

画像クレジット:Hyundai

Hyundai(現代自動車)は、CES 2022で、ロボティクスとメタバースを通じて「『人間の可能性を広げる』新たなメタモビリティコンセプトのビジョンを共有する」という同社のプレスリリースを受け取ったことが、私を突き動かしたのかもしれない。あるいは、Boston DynamicsのSpotが火星で奇妙なメタバース人形たちと一緒に過ごしている映像が添付されていたせいかもしれない。実際の火星に実際のロボットを送り込むという、SFの枠を超えた映像が、メタバースを軸に展開されているのはシュールだった。

Hyundaiのコンセプトは、メタバース的な交流のためにBoston Dynamicsのような先進的なロボットを、現実世界のアバターとして機能させるという、何とも興味深いものではないが、自動車会社である同社でさえ、このコンセプトを将来性を託しているかを物語っている。一方、Samsungは、本物が登場するまでのその場しのぎのメタバース(betaverse?)を提供した。そこは同社プロダクトの「バーチャルショーケース」となっていて、少なくともラスベガスに出向いてメタバースを実際に見せてもらうという皮肉を回避できた。

Samsungは次のように述べている

念願のライフスタイルテレビ、生活を豊かにする家電製品、スタイリッシュな最新スマートフォンが手に入りました。では、それらの革新的な製品を使って、自宅を飾ることができるとしたらどうでしょう?

これは興味深いシナリオであり、メタバースが稼働し始めれば現実のものとなる。Samsungは、メタバースでさまざまなイノベーションを起こしており、CES 2022に興味を持った人たちがオンラインでこのイベントを体験できるオプションを用意しました。

メタバースに対して強気な人たちの間では、混乱が起こっているのだろう。美容ブランドからウェアラブルまで、あらゆるところで。「メタバース」というコンセプトにまつわるこれほどの興奮を目の当たりにすると、希望に満ちた気持ちになると同時に、ダメなメタバースも現れ始めていることもいらだたしい。メタバースが確立する前に、メタバースがすべての意味を失ってしまわないだろうか。あなたのメタバースは、私のメタバースと同じくらい良いものだ。

画像クレジット:Samsung

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

現代自動車、メタバースにボストンダイナミクスのロボット「Spot」を送り込む

現代自動車(Hyundai)がロボット開発に壮大な野心を抱いていることは確かだ。これまで現代自動車は積極的に資金を投入していて、特にロボットのパイオニアであるBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)の買収には10億ドル(約1160億円)以上を費やした。

今週開催される同社のCESにおけるプレゼンテーションでは、予想どおり、ロボットが中心的な役割を果たしている。2021年12月、現代自動車は、4輪モジュラーモビリティプラットフォームのスニークプレビューをMobile Eccentric Droid(モバイル・エキセントリック・ドロイド)という形で公開した。そして米国時間1月4日は、新しい「メタモビリティ」コンセプトに基づいて、将来に向けたより幅広い計画を発表した。

現代自動車は今後、その戦略についてより多くの情報を公開する予定であり、私たちは実際にどのようなものになるのかを知るために、何人かの幹部に話を聞くことを予定している。とりあえず、今回は「Expanding Human Reach」(人間の手の届く範囲を拡大する)という表題のもとに、バーチャルリアリティのメタバースにおけるモビリティとロボティクスの役割を模索するという大枠のアイデアが提示された。この早期の段階では、宣伝用コンセプトと実用性を切り離すのは難しいが、主な要素は、VRインタラクションの世界でハードウェアに現実世界へのプロキシのような役割を果たさせることようだ。

画像クレジット:現代自動車

現段階では、ずっとVRアプリケーションの根本的な問題となっていた、タンジビリティー(可触知性、実際に触った感覚を得ること)の欠如に関係する大きな成果がありそうだと言っておこう。現代自動車グループのChang Song(チャン・ソン)社長はこう語る。

「メタモビリティ」の考え方は、空間、時間、距離がすべて無意味なものになるというものです。ロボットをメタバースに接続することで、私たちは現実世界と仮想現実の間を自由に行き来できるようになります。メタバースが提供する「そこにいる」ような没入型の体験からさらに一歩進んで、ロボットが人間の身体感覚の延長となりメタモビリティによって日常生活を再構築し、豊かにすることができるようになります。

近い将来には、このような技術を利用して遠隔操作で製造ロボットを制御することが十分考えられる。これは、トヨタが以前から取り組んでいる「T-HR3」というシステム探求しているものだ。現代自動車によると、Microsoft Cloud for Manufacturing(マイクロソフト・クラウド・フォー・マニュファクチャリング)は、このような遠隔操作のためのゲートウェイとして利用することが可能で、このような実用的な機能を果たすシステムを想像するのは難しくないという。

画像クレジット:現代自動車

他のアプリケーションは、まだ先のことになる。現代自動車のプレスリリースによると「例えばユーザーが外出先からメタバース上の自宅のデジタルツインにアクセスすることで、アバターロボットを使って韓国にいるペットに餌をあげたり、抱きしめたりすることができるようになります。これにより、ユーザーはVRを通じて現実世界の体験を楽しむことができます」とのことだ。

このような考えは現時点ではほとんど概念的なもののようだが、現代自動車は今週開催されるCESで、最終的にはどのように見えるかのデモを提供している。新型コロナウイルスが急増する中で、TechCrunchだけでなく多くの人たちがバーチャルで展示会に参加していることを考えると、少なくとも将来的にリモートオペレーションがどのように役立つかを想像するのは簡単だ。

無生物や移動にロボットを導入する

現代自動車は、CESですべての時間をメタバースに費やしたわけではない。また「New Mobility of Things」(ニューモビリティオブシングス、モノの新しい移動方式)と題して、ロボットを使って大小の無生物を自律的に移動させるコンセプトを紹介した。

この「New Mobility of Things」のコンセプトのもとに発表されたのが「Plug & Drive」(プラグアンドドライブ、PnD)という製品だ。この一輪ユニットには、インテリジェントなステアリング、ブレーキ、インホイール電気駆動機構、サスペンションのハードウェアに加えて、物体を検知して周囲を移動するためのLiDARとカメラのセンサーが搭載されている。

このPnDモジュールは、例えばオフィスのテーブルのようなものに取り付けられるようになっている。ユーザーは、こうしたテーブルに対して自分の近くに移動するように命令したり、オフィスでより多くのスペースを必要とする特定の時間にそのテーブルを移動するようにスケジュールすることができる。

現代自動車の副社長でロボット研究所長のDong Jin Hyun(ドン・ジン・ヒョン)氏は「PnDモジュールは、人間のニーズに合わせて適応・拡張が可能です。というのも、これからの世界では、あなたがモノを動かすのではなく、モノがあなたの周りを動き回るようになるからです」と語る。「PnDは、通常は動かない無生物をモバイル化します。この能力があるからこそ、実質的にあらゆる空間を変えることができるのです。必要に応じて空間を構成することができます」。

現代自動車は、待っているバスへ人を運ぶためのパーソナルトランスポートシステムなど、PnDのさまざまな応用例を紹介した。4つの5.5インチ(約14センチ)PnDモジュールを搭載したこのポッドは、そのままこの「マザーシャトル」に合体する。

画像クレジット:現代自動車

理論的には、バスが止まると、(中に座っている人間を乗せた)ポッドが目的地までの最後の移動を行うことになる。

現代自動車がビデオで紹介したアイデアは、高齢の女性がポッドに乗り込んで待っているバスに移動する前に、1台のPnDが杖を彼女に届けるというもので、高齢者を直接ターゲットにしている。しかし、もしこれが仮に実現したとすれば、車道に1人乗りの大きな車を大量に増やすことなく、ファーストマイルとラストマイルの公共交通機関を提供するために使用することができる。

また現代自動車は「Drive & Lift」(ドライブアンドリフト、DnL)と呼ばれる、モノを持ち上げるためのモジュールも披露した。現代自動車は、DnLをそのMobED(Mobile Eccentric Droid)というロボットと組み合わせた。DnLはModEDの各ホイールに取り付けられており、上下に持ち上げることができ、ロボットが段差やスピードバンプなどの低い障害物上を移動しても水平を保つことができる。

画像クレジット:Hyundai

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

ロボットにスナイパーライフルを装着させるという一連問題

ロボットに銃を装備させるというのは、実用的な四足歩行ロボットが登場して以来、我々が追い続けてきたトピックだ。先の展示会で、SWORD(スワード)と呼ばれる企業が設計した遠隔操作可能な狙撃銃がGhost Robotics(ゴースト・ロボティクス)のシステムに装着されているものがお披露目されたため、この問題がさらに重要性を増してしまった。

これはBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)がどうにかして自らを遠ざけようとしていた問題である。当然のことながら戦争マシンを作っているという事実は、一般的に見て企業イメージにもよろしくない。しかし、多くのロボット産業がそうであるように、DARPA(国防高等研究計画局)の資金援助を受けたBoston Dynamicsが恐ろしいSF映画のようなロボットを生み出しているという事実は事態を複雑にしている。

先のコラムでは、威嚇や暴力を目的としたSpotの使用に対するBoston Dynamicsのアプローチについて話をした。また、ロボットの背中に銃を取り付けることについての筆者自身の考えも少し述べたつもりだ(繰り返しいうが、私は銃やデスマシン全般に反対である)。記事を書く前にGhost Roboticsに連絡を取ったものの、返事をもらったのは記事が公開された後だった。

筆者はその後、同社のCEOであるJiren Parikh(ジレン・パリク)氏に、同氏が「歩く三脚」と呼ぶこのシステムについて話を聞くことができた。Ghostはペイロード、この場合はすなわちSWORD Defense Systemsの特殊用途無人ライフル(SPUR)を設計していないため、こういった呼び方をするのだろう。しかしここには重要な倫理的疑問が詰まっている。歩く三脚と同社は呼ぶが、実際の責任はどこに置かれているのだろうか。ロボット開発会社なのか、ペイロードを製造する会社なのか。またはエンドユーザー(例えば軍隊)なのか、はたまたこれらすべてなのか。

銃を装備したロボット犬の軍隊が誕生し得るという可能性があるのだから、これは非常に重要な問題である。

自律性の観点からお話を伺いたいと思います。

ロボット自体には、武器のターゲティングシステムのための自律性やAIを一切使っていません。システムを作っているSWORDについては、私からはお話しできませんが、私の知っている限りでは、武器は手動で発射されるトリガー式であり、ターゲティングも裏で人間が行っています。トリガーの発射は完全に人間がコントロールしているのです。

完全な自律性というのは、越えるべきでない一線だとお考えですか。

我々はペイロードを開発していません。兵器システムを宣伝したり広告したりするつもりがあるかと聞かれれば、おそらくないでしょう。これは難しい質問ですね。私たちは軍に販売しているので、軍がこれらの兵器をどのように使用しているのかはわかりません。政府のお客様にロボットの使い方を指図するつもりはありません。

ただし販売先に関しては境界線を設けています。米国および同盟国政府にのみに販売しています。敵対関係にある市場には、企業顧客にさえロボットを販売しません。ロシアや中国のロボットについての問い合わせは多いですね。企業向けであっても、こういった国には出荷しません。

貴社が望まない方法でロボットが使われないようにするための権利を留保していますか?

ある意味ではそうですね。弊社にはコントロール権があります。全員がライセンス契約にサインしなければなりませんし、我々が望まない企業にはロボットを売りません。弊社が納得できる米国および同盟国の政府にのみロボットを販売しています。ただし軍の顧客は、彼らが行っていることすべてを開示しないということを認識しなければなりません。国家安全保障のため、あるいは兵士を危険から守るために、特定の目的でロボットを使用する必要があるのであれば、私たちはそれに賛成します。

画像クレジット:SWORD

ロボットを使って何をするかではなく、誰がロボットを購入するかというのが審査対象という事ですか。

その通りです。このロボットを使って格闘技のビデオを作ったり、ロボットがとんでもないことをするリアリティ番組を作ったりしたいという声が寄せられています。しかし誰が使うかわからなければお断りしています。ロボットはあくまでも道具です。検査やセキュリティ、そしてあらゆる軍事的用途のためのツールなのです。

先に見た写真に関してですが、タイムラインはあるのでしょうか。

2022年の第1四半期後半には、スナイパーキットのフィールドテストを行う予定だそうです。

このケースにおける契約内容は何ですか?国防総省は御社やSWORDと個別に契約をしているのでしょうか。

契約はありません。彼らは市場機会があると信じているただのロングガン企業で、彼らは自分たちのお金で開発し、我々はそれが魅力的なペイロードだと思った。顧客がいるわけではありません。

画像クレジット:Reliable Robotics

さて、(少なくとも今回)軍用犬ロボットの話はここまでにしよう。陸上での案件から、海や空へと話を移したい。まずはベイエリアに拠点を置く自律型貨物機企業、Reliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)が1億ドル(約114億円)を調達した。設立4年目の同社の総資金額は、今回のシリーズCラウンドにより1億3000万ドル(約148億円)となり、自律型トラック輸送モデルを空へと移行させるべく計画を進めている。

無人航空機といえば、Alphabet(アルファベット)の子会社であるWing(ウイング)が米国でのドローン配送を本格的に開始することを発表した。オーストラリアとバージニア州の小さな町でパイロット版に成功した同社。その後ダラス・フォートワース都市圏で自律走行による配達を開始するべく、Walgreens(ウォルグリーンズ)とのパートナーシップを発表したのである。

画像クレジット:Alphabet

Wingは規制面での取り組みについて次のように話してくれた。

2019年4月、Wingはドローン事業者として初めて米連邦航空局から航空事業者としての認定を受け、数マイル先にいる受取人に商材を届けることができるようになりました。この認定の拡大版として、2019年10月にバージニア州でローンチすることができました。現在この拡大版の許可に向けて作業を進めており、その一環として、今後数週間のうちにテストフライトを行い、この地域で新しい機能を実証する予定です。ダラス・フォートワース都市圏でのサービス開始に先立ち、私たちは地元、州、連邦レベルの当局と協力して、すべての適切な許可を確保してまいります。

画像クレジット:Saildrone

水上はというと、こちらでも1億ドル規模のシリーズCが行われている。科学的なデータ収集を目的とした自律航行船を開発するSaildrone(セイルドローン)は、すでにかなりの数の無人水上飛行機(USV)を配備しており、その総走行距離は約50万マイル(約80万Km)に達しているという。

最後に、パンデミックによる人手不足の中、ロボットウェイターを採用するというThe New York Times(ニューヨーク・タイムズ)の興味深い記事を紹介したい。ロボットウェイターというのは大して興味深いわけでもないのだが、おもしろいことに、この結果人間のウェイターが受け取るチップが増えたと報告されたのである。

Serviによってウェイターがキッチンを往復する手間が省かれ、常に忙しいウェイターは客と会話する時間を増やし、より多くのテーブルにサービスを提供することができたため、ウェイターはより高いチップを得ることができたのである。

自律型システムは既存の仕事を置き換えるのではなく、企業が現在の人員では補えない部分を補うものであるという、ロボット関連企業が以前から主張してきたことが、このニュースで裏付けられた形になった。自律型システムが既存の仕事を完全に取って代わる事はなく、現在の人員では補えない部分を補完するのだということがよく分かる。これが完全な自動化への一歩となるかどうかは疑問だが、人間がより人間的な仕事に専念できるようになることに、大きな意味があるのではないだろうか。

画像クレジット:SWORD

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

世界初、Boston Dynamicsロボット犬によるローリング・ストーンズの名曲MVカバー

Spotは、よく働き、よく遊ぶ。最新のビデオでBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)は、ローリング・ストーンズのアルバム「Tattoo You(刺青の男 )」の40周年を記念して、4足歩行ロボットがジャガーさながらの動きを見せる様子を披露した。「Spot Me Up 」では、Spotロボットのカルテットが、1981年にリリースされた「Start Me Up(スタート・ミー・アップ)」のミュージックビデオを全力で真似ている。

もちろん、バイラルビデオはBoston Dynamicsの重要なマーケティングツールであり、ロボットがより洗練されたものになればなるほど、そのパフォーマンスはより印象的なものになっている。ストーンズもまた、テクノロジーマーケティングに昔から関わってきた。実際にストーンズは、90年代半ばにWindows 95のキャンペーンで「Start Me Up」の使用をライセンス契約している。

分割画面では、ロボットがビデオの再生に合わせてそれぞれ動き、ストーンズは最高のスパンデックス姿で登場している(RIP、チャーリー・ワッツは常にベストドレッサーだった)。「Start Me Up」は、ストーンズが6時間かけてレコーディングしたと言われているが、ローリング・スポットの振り付けにどれだけの時間がかかったかは不明だ。しかし、これまで見てきたように、ミックのように動くかどうかに関わらず、1分半のビデオには多くの準備が必要とされる

関連記事:あまり見ることがないBoston Dynamics人型ロボAtlasのずっこけNGシーン、失敗が成功を生む

このビデオは、自律型ロボットシステムがより厳しい目で見守られている中で公開された。

画像クレジット:Boston Dynamics

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

【ロボティクス】軍用犬、ぶどう畑そしてお金

ロボットの背中に銃を固定することについて話をする。私は好きではない(立場を明確にしておきたいので)。2021年2月にMSCHFがSpotでそれをやったとき、あれは自律型ロボットとともに社会がどこへ向かっていくのかに関する思考実験であり展示会であり声明だった。そして何より重要だったのは、載っていたのがペイントボール銃だったことだ。Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)は不快感を示して次のように語った。

本日当社は、あるアートグループが当社の産業用ロボットSpotの挑発的な使い方に注目を集めるイベントを計画しているという情報を入手しました。誤解のないように申し上げますが、当社は、暴力や危害、脅迫を助長するような方法で当社の技術を表現することを非難します。

これは同社が何よりも大切にしている事柄であることが明らかだ。数十年にわたる殺人ロボットSFの歴史を経て、高度なロボットがそこに関わると人々が考えることは想像に難くない。これはオートマトン版のルール34(アシモフのロボット工学第1原則に対する明確な反逆)だ。もしロボットが存在するなら、誰かが兵器化する。

関連記事:MSCHFがSpotにリモコン式ペイントボール銃搭載、ボストン・ダイナミクスは嫌な顔

これまで私がこのコラムで言ってきたように、私はここでこうした会話をしていることを喜んでいるし、NYPD(ニューヨーク市警察)がSpotのブランド付きバージョンの話を持ち出したことに人々が懐疑的だったことをうれしく思う。一方で私は、たとえば警察が爆発物探知などの危険な作業にロボットを長年使ってきたことを指摘するのも重要だと考えている。大部分の人々は、人間を爆発から救うことはロボットの有効な利用方法であるという意見に賛成だろう。

Boston Dynamicsがロボットを危害のために使用することに対して反対の声を上げ続けていることをうれしく思う(頭脳を持たない四足ロボットに関して何をもって脅威とするかは、別の議論である)。Spotのメーカーである同社は、ロボティクス産業の多くの会社とともに、DARPA(国防高等研究計画局)出資プロジェクトで経験を積んでいる。荷運びラバのロボットを作ることと、移動兵器を作ることの間にはかなり大きな溝があると私は言いたいが、それはまさしく、会社のミッション・ステートメントに盛り込むべきことがらだ。

今週ワシントンD.C.で行われたAssociation of the U.S. Army(米陸軍協会)大会で展示されたGhost Robotics(ゴースト・ロボティクス)の犬型ロボットに関して言わせてもらえば、脅迫と言えるのは最良のシナリオの場合だ。ライフル銃メーカーのSWORD Defense Systemsに自ら語ってもらおう。

SWORD Defense Systems Special Purpose Unmanned Rifle(特殊目的無人ライフル)は、Ghost Roboticsの四足ロボット、Vision-60などの無人プラットフォームから精密射撃を行うように設計されています。兵器システムの安全で信頼性の高い配備を可能にする安全、装填、排出、および発射能力を備えており、操作者が遠隔から兵器を装填し安全に使用することが可能です。

もしこれがあなたの背筋を凍らせないのなら、他に何を言えばよいのか私にはわからない。軍隊が数十年空爆作戦に使っている攻撃ドローンと倫理的にかけ離れたものだろうか?違うかもしれない。しかし、私はドローン攻撃のファンでもない。

 

Ghost Roboticsが軍とのつながりを曖昧にしていることはもちろん責められない。会社のウェブサイトを訪れた人が最初に見るのはGhost Visionシステムと一緒に歩き回っている兵隊だ。しかし、DoDの予算と防衛費は、歴史的にロボット企業を存続させている主要部分であり、それはVCがこの分野に資金を注入するずっと前からだ。Ghostのサイトには、防衛、国土、および企業に分類した記述がある。Verizon(ベライゾン)との最近大きく取り上げられた5G契約は最後の分類に入る。

2020年12月の報道で、ロボット犬の戦場パトロールへの使用が取り上げられた。この場合Spotの機能とあまり変わらない。しかし、ロボットに銃を装備させることは大きく意味を変える。そこにはたくさんの疑問がある。私はGhost Roboticvsにいくつか基本的質問を投げかけた。しかし、この状況について質問するのはもちろんこれが最後ではない。

画像クレジット:Dexterity

無人ライフル以外のニュース。Dexterity(デクステリティー)は新たな大型資金調達で波を起こし続けている。ステルス状態から5620万ドル(約64億円)を獲得して表舞台に登場してからわずか1年あまり、ベイエリア拠点のスタートアップは、パンデミック下で自動フルフィルメントへの関心が急速に高まる中、鉄は熱いうちに打てを体現している。設立から4年、新たに1億4000万ドル(約160億円)を評価額14億ドル(約1595億円)で調達した。

この会社は自社システムを実世界で2年にわたって稼働させており、運ぶ商品は「ゆるく詰められた変形しやすいポリバッグから繊細なホットドッグ用パン、柔らかなトーティラチップス、下手にに詰められた段ボール箱、袋入のミミズ、消費者向け食品のトレイや木箱、さらにはとろけるバーデーケーキ」まで実に多岐にわたる。Dexterityは獲得した資金を、最初のロボット1000台の配置を続けるために使用する計画だ。

画像クレジット:Yanmar

最後に紹介するのはYanmar(ヤンマー) YV01、ぶどう畑に特化して設計された自律型噴霧ロボットだ。

「YV01は最先端自律テクノロジーを提供し、柔軟、軽量で、高い精度でぶどうに噴霧するため環境に負荷をあたえません」とYanmar EuropeのプレジデントであるPeter Aarsen(ピーター・アーセン)氏がリリース文で言った。「身近な管理者によって安全、簡単に操作が可能で、通路が狭く
つるがあまり高く伸びていないぶどう畑に最適です」。

現在、シャンパン産出地であるフランスのエペルネ(他にどこで?)でテスト中で、システムは2022年に販売される予定だ。

画像クレジット:SWORD

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ボストン・ダイナミクスを買収した現代自動車が4足歩行ロボットを工場の安全監視に活用

Hyundai(現代自動車)がBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)の買収を完了させたのは2021年6月のこと。この韓国の巨大自動車メーカーは、マサチューセッツ州に本拠を置くロボット企業の技術を、将来を見据えた多くのコンセプトモビリティ車に統合させるという壮大な計画を持っていることは間違いない。しかし現時点では、既存のロボットを活用することに、より力を入れているようだ。

現代自動車は米国時間9月17日「Factory Safety Service Robot(工場安全サービスロボット)」と名付けられたロボットを発表した。同社は発表文書の中で、簡潔にするためにすぐにこのユニットを「the Robot(このロボット)」と呼び始めたが「Factory Safety Service Robot」と何十回もタイプする時間がある人はいないだろうから、私もそうしたいと思う。

このロボット(わかるよね?)は基本的に、工場の安全点検用に開発された「Spot(スポット)」を改造したものだという。当然ながら、現代自動車は身近なところから始めることにしたようで、子会社であるKia(起亜自動車)のソウル工場で最初の試験運用を開始した。

Spot…ではなくこのロボットには、LiDARと熱検知カメラが搭載されており、空間内の高温になっている場所や火災の危険性、開いているドアなどを検知できる。何か異常を感知すると、安全確認用のウェブページを通じて警告を送信し、リアルタイムでその画像やデータを共有することができる。Spotと同様に自律的に動作することも、人間が遠隔操作することも可能だ。

「Factory Safety Service Robotは、ボストン・ダイナミクス社との最初のコラボレーション・プロジェクトです。このロボットは、産業現場における危険性を検知し、人々の安全を確保するのに役立ちます」と、現代自動車のDong Jin Hyun(ドン・ジン・ヒョン)氏はリリースで述べている。「私たちはボストン・ダイナミクスとの継続的な協業を通じて、産業現場の危険を検知し、安全な労働環境を支えるスマートサービスを、これからも作り出していきます」。

画像クレジット:Hyundai

全体的には、Spotに何ができるかを知っている人なら、センサーが追加されているとはいえ、このロボットの要点をほぼ理解できるだろう。ボストン・ダイナミクスは先週、このロボットにデータ収集機能を追加することを発表している。

画像クレジット:Hyundai

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

あまり見ることがないBoston Dynamics人型ロボAtlasのずっこけNGシーン、失敗が成功を生む

筆者は子どもの頃、スケートビデオをたくさん見て育った。いつの間にか、完璧なトリックと同じくらい、失敗もそれらの重要な要素になっていた。スケートボード文化が「ジャッカス(jackass)」を世に送り出したのには理由がある。私自身はアグレッシブに月並みなスケーターだったが、世界最高クラスのスケーターたちが無様に顔面から転び、(実際に怪我をしない限り)身を粉にして15回目のトリックに挑戦する姿には、何かほっとするものがあった。

これまでBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)の完璧に振り付けされた映像を何十、何百と見てきたが、撮影の合間に起こるであろう、ツルッと足を滑らせての転倒を見ることはほとんどなかった。米国時間8月17日、同社は、人型ロボット「Atlas(アトラス)」をカメラの前で格好良く見せるために何が行われているのか、カーテンを開けて少しだけ明らかにした。

同社の社内テストシステムの中・下部には、多くの擦り傷、引っかき傷や汚れが見られる。これには理由がある。

Boston Dynamicsはブログ記事でこう書いている。「撮影中、Atlasは半分くらいの確率で正しく跳躍します。一方他のランでは、Atlasはバリアを越えるものの、バランスを崩して後ろに倒れてしまいます。そこからエンジニアはログを見て、その場で調整できる機会を見つけようとします」。

同社は、ロボットにミニパルクールコースを走らせることに挑戦し、記事に付随したビデオで「パルクールは私たちが重要だと考えるいくつかの課題を浮き彫りにするため、チームにとって情報を組織化する有益なアクティビティです」と述べている。パルクールはロボットにとって、短期的な問題解決と長期的な問題解決の両方に挑戦するものだ。ロボットは、一連の個別の動きを実行するだけでなく、より広い意味で、それらをつなぎ合わせてA地点からB地点までどのように移動するかを決定しなければならない。

Boston Dynamicsによるとこの種のビデオは、Atlasが一度にコースを完走できるようにするまでに数カ月かかり得るという。「この最新の試みはほぼ完璧だったが、正確には完璧ではなく、ツメが甘かった」と同社は書いている。「ロボットたちがバク転を終えたあと、大リーグのピッチャーが試合終了間際に三振を取った時のように、ロボットの1台が拳を突き上げガッツポーズするはずでした。Atlasチームはこの動きを『Cha-Ching』と呼んでいます」。

Boston Dynamicsのコンピュータには確実に存在しないであろうハッシュタグ「Atlas最大の失敗ビデオ集」に加えて、足を踏み外すと、人間と同じようにロボットも厄介な怪我になりかねない。時にはロボットのChumbawumba(チャンバワンバ)のように「but I get up again」と立ち上がることもある。そうでない場合もある。このビデオはその両方をチェックできるだけでなく、こうしたビデオを作るためにどのような手間暇がかかっているのか、インサイトを得られるという点で見る価値がある。

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

ヒュンダイ傘下となったBoston Dynamicsが人型ロボット「Atlas」出演の新たなパルクール動画を公開

Boston Dynamicsが人型ロボット「Atlas」出演の新たなパルクール動画を公開

Boston Dynamics

ヒュンダイ傘下に生まれ変わったBoston Dynamicsが、ヒューマノイドロボット「Atlas」の新たなパルクール動画を公開しています。Atlasロボットはカメラの前でSASUKEよろしく五段跳びを軽くクリアし、平均台の上を走り、華麗なバク転も2連続でキメています。

ロボットメーカーいわく、この一連の動作は数か月かけてプログラムされ、ロボットが身体のバランスを取りつつ異なる動作に移行したり、強調動作させるための知見を得るのに有効だったとのこと。つまりすべてがシーケンス的な動作なのではなく、視覚的に得た情報から判断してコースに合わせた動きをさせているということ。

ヒュンダイ傘下となったBoston Dynamicsが人型ロボット「Atlas」出演の新たなパルクール動画を公開

Boston Dynamics

その証拠と言えるかはわかりませんが、動画では一連の動作の終盤で2体のうち片方のAtlasロボットが台の上に飛び乗る際に一瞬、台に蹴つまずいているのが確認できます。ここでAtlasはバランスを崩すも、すぐに立て直して再びもう一体とタイミングを合わせての動作に戻っています。

(Source:Boston DynamicsEngadget日本版より転載)

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タグ:Atlas(製品・サービス)ヒュンダイ / 現代自動車(企業)Boston Dynamics / ボストン・ダイナミクス(企業)

現代自動車がソフトバンクからBoston Dynamicsの支配権取得を完了「歩くクルマ」に向け前進

Hyundai(現代自動車グループ)は現地時間6月21日、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)の買収を完了したと発表した。この取引は革新的なロボットメーカーを11億ドル(約1210億円)で評価するもので、2020年末に発表されていた。両社は、今後の財務的な詳細については明らかにしていない。

韓国の自動車大手である現代(ヒュンダイ、2020年よりヒョンデに表記変更)は、これまでソフトバンクグループ(SBG)が所有していたBoston Dynamicsの支配的利権を持つことになった。3年強にわたってBoston Dynamicsを所有していたGoogle(グーグル)から前者を購入したSBGは、実質的に過渡期のオーナーだった。

ソフトバンク傘下にあった期間はGoogle / Alphabet X時代に比べてそれほど長くはなかったが、Boston Dynamicsは約30年前に設立されて以来、初めて2つの製品を商品化した。同社は、四足歩行ロボット「Spot」を市場に投入し、2021年には、倉庫用ロボット「Handle」のアップデート版である「Stretch」のローンチを発表した(発売日はまだ未定)。

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現代自動車のErnestine Fu(アーネスティン・フー)氏は、TechCrunchのMobilityイベントに最近出演した際、Boston Dynamicsの80%経営支配権を取得する計画について語った。フー氏は、現代自動車のUMV(Ultimate Mobility Vehicle、究極の移動手段)開発に特化したユニットであるNew Horizon Studiosが、数十年にわたるBoston Dynamicsの研究を基にした「歩く」自動車のコンセプトを複数プレビューしていることに言及した。

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「New Horizon Studiosでは、ロボット工学と、歩行ロボットや歩行車両などの従来の車輪付き移動手段とを組み合わせたときに何ができるかを再考することが課題となっています」とフー氏はTechCrunchに語った。「当然、Boston Dynamicsが開発してきた技術は、そのようなコンセプトを実現する上で重要な役割を果たします」とも。

Boston Dynamicsはこれまでの変遷の中で、独自の研究部門を維持することにこだわり、ヒューマノイドロボット「Atlas」のような商業的ではない技術を生み出してきた。現代自動車の傘下でどのように機能するかは未知数だが、現代は少なくとも将来を見据えたアプローチを維持することに強い関心を持っているようだ。

Boston DynamicsのCEOであるRob Playter(ロブ・プレイター)氏は、今回の買収が発表された際にこう述べていた。「当社と現代自動車はモビリティがもたらす変革力という視点を共有しており、最先端のオートメーションで世界を変える計画を加速させ、両社の顧客のために世界で最も困難なロボティクスの課題を解決し続けられるよう、協業することを楽しみにしています」。

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】警察犬ロボのパトロールが嫌ならCCOPS法の検討を

編集部注:本稿の著者であるAron Solomon(アロン・ソロモン)氏は、NextLevel.comのデジタル戦略責任者であり、モントリオールのマギル大学Desautels Faculty of Managementのビジネスマネジメントの非常勤教授。

ーーー

Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)のロボット「犬」やその類似製品は、ハワイ、マサチューセッツ、ニューヨークの警察署ですでに採用されている。ベールに包まれた実験とあって、これらの強力な監視装置を使用する利点やコストについて警察からの回答はほとんどない。

米国自由人権協会(The American Civil Liberties Union、ACLU)は、 CCOPS(警察の監視に対する地域社会による制御)に関する立場表明書で、監視技術の透明性を促進し、市民の権利と自由を保護するための決議を提言した。これまでに米国の19の都市がCCOPS法案を可決させている。つまり他のすべての地域社会では、事実上、警察による監視技術の使用の透明性は必要とされていないことになる。

このようにさまざまな場面で新しい未完成技術を使用できることは、多くの人にとって問題となる可能性がある。世界的に有名な人工知能の専門家であり、TuraltのCTO(最高技術責任者)のStuart Watt(スチュアート・ワット)氏はこれに不快感を示している。

「こうした指針とロボット犬、そして、その実情には愕然としています。膨大な資金の浪費であり、実際の警察業務の妨げとなっているのです」とワット氏は述べた。「間違いなく、地域社会はこれらに関与していく必要があります。正直言って、警察がどう考えているのかさえわかりません。物理的な監視システムを使って思いとどまらせるためでしょうか?それとも、実際に、ある時点で行われる何らかの監視に人々を備えさせているのでしょうか?」

「警察の大部分は『保護し、奉仕する』ことをすべて忘れてしまい、それを実行していません」とワット氏は付け加えた。「もし人工知能を使ってホームレス、麻薬中毒者、性労働者、貧困層、不当に攻撃されているマイノリティのような弱者を実際に保護し、奉仕することができるなら、その方がはるかに良いでしょう。人工知能に資金を費やす必要があるならば、人々を助けるために使うべきです」。

米国自由人権協会の主張は、ワット氏の提言とまったく同じだ。国中の市議会への提言で、米国自由人権協会は次のように明確に述べている。

市議会による監視技術に関する資金、導入、または使用の承認は、監視技術の利点がコストを上回り、その提案が市民の自由と権利を保護し、監視技術の使用や配備が、差別や見解要因に基づくことなく、いかなる地域社会やグループにも差別的インパクトがないと判断される場合にのみ行われるものとしなければならない。

Team Lawで特別顧問を務める、弁護士のAnthony Gualano(アンソニー・グアラノ)氏は、法的観点からCCOPS法案は多くの面で理に適っていると考えている。

「全国各地で警察による監視技術の使用が増えるにつれて、人々を守るために使用する技術はより強力で、効果の高いものとなってきます。使われる技術やその使用方法を確認するために、透明性を義務付ける法律が必要です」。

このボストン・ダイナミクスの犬だけでなく、未来のスーパーテック犬のすべてについて心配している人にとって現在の法的環境が問題なのは、地域社会が大手テクノロジー企業や政府が関わる実験場となるのを本質的に認めているからだ。

ちょうど先月である2021年4月、世論の圧力によって、ニューヨーク市警本部はDigidog(デジドッグ)という非常に控えめな名前のロボット犬の使用停止を余儀なくされた。市民からの反発のため、テクノロジー犬が一時帰休措置にされた後の3月に、ニューヨーク市警は公営住宅でそれを使用した。予想通り、これに端を発して、ニューヨークでのこうしたテクノロジーの当面の扱いに関する議論がもたらされた。

ニューヨーク・タイムズはこれを目の当たりにして「過度に攻撃的な治安維持活動の悲惨な例として批判者の注目を集め、ニューヨーク市警はこのデバイスを予定よりも早く返却することになるだろう」と的確に表現した。

これらのバイオニックドッグは犯罪を減少させるのには十分だが、それを使おうとしている警察は、まずは多くの広報活動を行う必要がある。警察は積極的かつ前向きにCCOPSの議論に参加し、明日、翌月、そして、今から数年後に使用する可能性があるテクノロジーの詳細やそれら(およびロボット)の使用方法を説明することから始めるべきだろう。

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画像クレジット:Harry Murphy / Getty Images

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(文:Aron Solomon、翻訳:Dragonfly)

倉庫から歩道まで、Amazonに対抗するロジスティックス実用ロボットの最新動向

先回りしておくと、ロボティクスの分野には注目すべき動きや製品が多数ある。しかし現在、全員が熱中しているのは倉庫でのフルフィルメントをはじめとする物資移動業務だ。これはAmazon対大勢という構図になっており、多くの面でAmazonが一歩先を行っている。労働者の管理、処遇に関する問題はまったく別の話となる(それはそれで別に議論したい)。

フルフィルメントロボットのトップ企業の幹部を取材すると、概ね話は共通していることがわかる。「どうすればAmazonとの競争に負けずにいられるか?」だ。これはビジネスの存在を賭けた真剣さを含んでいたのでので単なるロボット関連記事にまとめてしまうのはためらわれる。しかし、とりあえず簡単な答えを出しておくなら「自動化の提供」だろう。

ともあれBoston Dynamicsの最新ロボットが倉庫用であるのは理由がある。2021年夏に登場する予定のSpotは同社にとって2番目の市販ロボットだが、多くの意味で同社として最初初の特定目的型ロボットだ。SpotはBoston Dynamicsが創業以来取り組んできた四足歩行ロボットを拡張したものだ。同社はSpotをプラットフォームと表現してきたがその用途は当然極めて広範囲なものとなる。

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画像クレジット:Boston Dynamics

StretchはHandleから進化し、HandleはAtlasから進化した。このシリーズのロボットは「箱を運ぶ」という非常に限定された目的を果たすためにデザインされた。もちろん倉庫作業にはさまざまな側面があり、Boston Dynamicsは将来、多様な作業に対応していくだろう。しかし今のところはトラックからの荷降ろしやパレット上に注文された品々がはいった箱を積み上げることに集中している。これは明らかに巨大な成長市場であり、Boston Dynamicsのような組織がどのように規模を拡大していくのか注目していきたい。この点でHyundaiからの大口の引き合いが実現するかどうかが重要だ。

このカテゴリでは、いくつかの注目すべき発表があった。我々は中国がフルフィルメントロボットの分野でも注目されていることを報じているが、さきごろ北京を拠点とするForwardX Roboticsが6300万ドル(約69億5000万円)を調達して話題となった。CDH、Eastern Bell、Dohold CapitalがリードしたシリーズBでは地元中国に加えて米国、日本、英国、ドイツを含む国際市場への拡大を目指している。

ファウンダーでCEOのNicolas Chee(ニコラス・チー)氏はこのラウンドについて次のように書いている。

当社にやってくる倉庫や製造に携わるユーザーは業務を改革し、これまで達成できなかった新しいレベルの効率性を引き出すことが目的だ。ForwardX Roboticsの柔軟な自動化プラットフォームは、サプライチェーンで働く労働者のパフォーマンスを向上させ、増大する人件費の圧力を軽減し、市場の変化に迅速かつ効果的に適応することを可能にする。

画像クレジット:Ambi Robotics

このブームを機にステルスからの脱却を図っているAmbi Roboticsにもそれなりの規模の資金資金調達ラウンドを実施している。カリフォルニア大学バークレー校の教授であり、TechCrunch主催のロボティクスのセッションのゲストににもなったKen Goldberg(ケン・ゴールドバーグ)氏が設立したこの会社は610万ドル(約6億7000万円)の資金を調達したことを発表した。この会社は、いわゆるピック&プレース型のロボットに特化しており、AmbiSortとAmbiKitという2台のマシンでスタートを切っている。この分野ではゴールドバーグ氏には熱心な支持者がいる。これは間違いなく注目すべき企業だ。

画像クレジット:Skycatch

TechCrunchは最近、Skycatchが2500万ドル(約27億6000万円)を調達したというニュースを報じた。我々はこのドローンを提供するスタートアップについて何度も取り上げてきた。現在、多数の企業が実用ドローンのビジネス化のために多大な努力を払っている。その中でもSkycatchはコンセプトの現実化で一歩先を行くグループに属する。同社の3Dイメージング用ドローンはすでに世界中の何千もの現場で活躍中だ。

関連記事:ドローンを使い建設、採掘現場での高精度3Dスキャンサービスを提供するSkycatchが27.3億円調達

画像クレジット:REEF Technologies

もちろんロボットテクノロジー人間の配送要員に全面的に取って代わるような自体は当分ありえない。しかし多くの企業や都市が積極的にテストに取り組んでいる。そのスタートアップの1つがCartkenだ。ファウンダーは元Googleのエンジニアでマイアミでテストを開始している。この都市の宣伝文句は数えきれない。マイアミを推薦するWill Smith(ウィル・スミス)の歌さえある。

関連記事:元Googleのエンジニアによる自動運転ロボットがマイアミで料理配達業務を開始

画像クレジット:Toyota

一方Nuroは新たな投資家からの激励がなくても盛り上がりに欠けることはない。同社は2020年11月に5億ドル(約551億2000万円)のシリーズCを発表した。またトヨタ自動車が出資するWoven Capitalがこのラウンドに参加したことを発表し、詳細が明らかになった。Woven Capitaの投資・買収担当責任者であるGeorge Kellerman(ジョージ・ケラーマン)氏はTechCrunchに次のように語っている。

Nuroは我々の出発点として好適です。我々は乗客を運べる自動走行車の開発に焦点を当てているので、Nuroは地域におけるグッズの配送に焦点を絞り込んでいるので同社との提携は我々が多くのことを学ぶための第一歩となります。Nueoから学ぶべきことは多く、将来的には同社の世界的展開を支援することも可能性となります。

関連記事:トヨタの投資ファンドWoven Capitalが自動配送ロボティクスNuroに出資

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タグ:フルフィルメント物流倉庫Boston DynamicsForwardX RoboticsAmbi RoboticsCartkenToyotaフードデリバリー

画像クレジット:Boston Dynamics

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(文:Brian Heater、翻訳:滑川海彦@Facebook

ボストン・ダイナミクスの次期商用ロボットは退屈な倉庫仕事をこなす「Stretch」

Handleの後継機種のStretchは物流に活躍の場を見出す

Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)が、長い年月をかけてロボットの研究会社から、ハードウェアを製品化して販売する会社へと変遷してきた様子は、とても興味深いものだった。その過程では、結局世界のほとんどのロボットは、ありふれた仕事に使われることになるという、現実的な教訓を教える厳しいレッスンもあった

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もちろん同社は、自社の技術の結晶がオールディーズに合わせて踊ってみせる、楽しいバイラルビデオを世間に向けて発信し続けるだろう。しかし、実際にロボットを販売するという話になると、そのターゲットは、人間がやりたがらない退屈で汚くて危険な(dull, dirty, dangerous、3D)仕事であるということは変わらない。あるいは、以前から私が言っているように、ロボットは、明らかにクールではないタスクを実行するための、クールなテクノロジーであることが多いのだ。

同社のSpot(スポット)は検査ロボットとして成功を収めている。この4脚ロボットは、油田や原子力発電所など、多くの人ができれば滞在時間を制限したいと考える場所に配備されている。3D仕事のうち、危険(dangerous)な部分はこれで片づいたが、同社の2台目の商用ロボットは、退屈(dull)な部分を狙っていると言ってもいいだろう。

画像クレジット:Boston Dynamics

運送・物流がいかに巨大な産業であるかについては、たくさんの統計を引用するまでもないだろう。また、多くの注文がオンラインに移行しているために、規模は拡大する一方なのだ。Locus(ローカス)、Fetch(フェッチ)、Berkshire Grey(バークシャー・グレイ)などの多くのロボット企業が、この種の自動化に事業全体を振り向けていることには理由があるのだ。LocusのCEOが最近語ったように、誰もがAmazon(アマゾン)とその強大なロボット軍団に対抗するための技術を探し求めている。

(現在はプロトタイプの)Stretch(ストレッチ)は、同社が4年あまり前にYouTubeの動画で紹介したロボットHandle(ハンドル)の商用化を目指したものだ。この車輪つきロボットは、動画で紹介された最初期型は滑走しながらバランスを保ち、さまざまな障害物を乗り越えることができる、非常に汎用性の高いロボットだった。またそのときは、100ポンド(約45kg)の木箱を拾うこともできた。当時はこれが将来の進化の基礎になるとは、ほとんど想像することはできなかった。

実際、Handleの箱持ち上げの歴史はもっと古く、同社のヒューマノイドロボットAtlas(アトラス)を使ったビデオにまでさかのぼることができる。Boston Dynamics のプロダクト・エンジニアリング担当副社長であるKevin Blankespoor(ケビン・ブランクスポーア)氏は、TechCrunchに対して「私たちはそこで、Atlasが箱を移動する様子を紹介しましたが、それには倉庫関係の方々からの大きな関心が寄せられたのです」と語った。「実際、Atlasに働いて欲しいという声が挙がりました。その声を受けて私たちは、倉庫での作業をこなすことのできる、もっとシンプルなロボットを設計できると考え、そこからHandleが生まれました。実際にその時点で、Atlasプロジェクトから分離したのです」。

ブランクスプール氏によれば、Handleは「車輪と脚を組み合わせたい」という同社の長年の願望から生まれたもので、倉庫内で物を移動させるためのロボットを設計するという初期の実験のための基礎になったという。

画像クレジット:Boston Dynamics

「私たちはHandleを倉庫に置いて、お客様と実験を始めました。そこでHandleはいくつかの異なるタスクをこなしました。1つ目はパレットからの荷下ろしで、これはかなり良い結果を出せました。2つ目の応用は、トラックからの荷下ろしでした。ここでHandleは仕事をこなすことはできましたが、それはかなり遅いものでした。狭い空間で、たくさんの操作をしなければならず、動作が遅すぎたのです」。

2019年に公開された「Handle Robot Reimagined for Logistics」と題された動画では、上部に取り付けられた大きなアームに、複数の吸盤で構成されたグリッパーを装備した、車輪型ロボットが紹介されている。その動画では、2台のロボットが連携して、1つのパレットから別のパレットに箱を移動させている。しかし、Stretchの画像を見ると、Boston Dynamicsが商業的実用化に向けて、ロボットをどれだけ劇的に見直したかがわかる。

真っ先に目につくのは、Handleの2つの大きな車輪がなくなったことだ。車輪があった場所には、大きくて黒い台がある。「移動の基盤となるのは、その底部です」とブランクスポーア氏はいう。「パレットの大きさに合わせて設計されているので、倉庫内でパレット置ける場所ならどこでも操作を行うことができます」。

本体にはまだ車輪が付いているものの、ほぼ目立たなくなっている。2つだった車輪は4つになり、底部の内側に隠されている。どの方向にも動けるので、移動範囲が広く、このサイズのロボットとしては比較的コンパクトな旋回が可能だ。また、アームの横には「パーセプションマスト」(知覚柱)があり、自律的な移動やピッキングを行うために、ロボットの目として効率的に機能している。

画像クレジット:Boston Dynamics

このロボットは、現在約100名のスタッフが働くBoston Dynamicsの倉庫部門で設計されたものだ。その中には、2019年にKinema Systems(キネマ・システムズ)の買収の一環として同社が雇用した従業員も含まれているが、Kinama Systemsの3D視覚技術が取り込まれて、Stretchのピッキング性能を向上させている。

関連記事:Boston Dynamicsが3D画像認識技術を擁する企業を買収、ロボット商用化にも注力へ

初期の応用例としては、トラックからの荷降ろしやオーダービルディング(商品を1つのパレットに効率的にまとめること)などがある。将来的には、トラックへの積み込みなどの応用も考えられているが、現在はまだ初期段階だ。システムの特性は、Berkshire-Greyのようなゼロから自動化を組み上げる企業のものよりも、よりプラグアンドプレイに近いものだ。また、他の倉庫システムとも互換性を持つことができるようにしている最中だ。

Boston Dynamicsは、この夏に最初のユニットを製造し、2022年にはStretchを販売する予定だ。価格についてはまだ公表されていないものの、ブランクスポーア氏は「普通工場で見かける、床にボルトで固定された従来のロボットシステムと、同等のものになるでしょう」と語っている。

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タグ:Boston Dynamics倉庫物流

画像クレジット:Boston Dynamics

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

MSCHFがSpotにリモコン式ペイントボール銃搭載、ボストン・ダイナミクスは嫌な顔

筆者はSpotをさまざまな設定で操作したことがある。数年前に開催されたTechCrunchのロボティクスイベントで初めてSpotを操る機会があり、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)本社の障害物コースでSpotを走り回らせた。つい最近は、新しいリモートインターフェイスのテストとして、ウェブブラウザでSpotを操作した。

しかし最近実施されたテスト走行はこれとは話が違う。ボストン・ダイナミクスから正式に認可を受けたものではなかったことが、1つの理由として挙げられる。もちろん、この高度に洗練された四足歩行ロボットはしばらく前から市場に出回っており、一部の進歩的な企業がサンフランシスコの通りでSpotのリモート歩行体験の提供を始めている。

MSCHFの最新プロジェクトがそうしたものでないことは、もちろん驚くには当たらない。ブルックリンを拠点とするこの企業はそれほど単純でないからだ。MSCHFといえば「海賊放送」のストリーミングサービスAll The Streams.FMや、あのおもしろいAmazon Echoの超音波ジャマーを提供した企業である。何よりも同社のイベントは、プライバシーや消費者主義に対する批評や、今回のケースでは、ロボット工学がどうなるかという一種の陰鬱な伏線を示すものとなっている。

世間と同様、MSCHFはボストン・ダイナミクスがSpotを売り出したとき、非常に興味を持った。しかし私たちの大半と異なったのは、7万5000ドル(約818万円)を集めて実際にSpotを購入したことだ。

そして、その背中にペイントボール銃を搭載した。

画像クレジット:MSCHF

米国時間2月24日から、ユーザーはMSCHFのサイトからSpotを操縦し、閉鎖された環境でペイントボール銃を発射することができるようになる。同社はこれを「Spot’s Rampage(Spotの大暴れ)」と呼んでいる。

MSCHFのDaniel Greenberg(ダニエル・グリーンバーグ)氏は「2月24日の午後1時(東部標準時)に配信を開始します。4台のカメラでライブ配信を行います。スマートフォンでサイトに接続している間は、Spotを操作できるチャンスが均等にあり、操縦者は2分ごとに交代します。配信は数時間続く予定です」とTechCrunchに話した。

Spotのウェブポータル立ち上げに先立ち、同社はSpotのSDKとSpotの背中に搭載されたペイントボール銃の両方をリモート操作するAPIを構築した。ボストン・ダイナミクスがこの設定にとりわけ不快感を示すのも無理はない。Black Mirror(ブラックミラー)のような警鐘を鳴らすSF小説が伝える負の結末に長年取り組んできた企業にとって、サードパーティーによって銃が搭載されるということは、たとえ塗料を噴射するものであっても、理想的とはいえない。

ボストン・ダイナミクスの担当者によれば、同社は早い段階でMSCHFとの連携に興味を持っていたという。

「MSCHFは、Spotを使って創造的なプロジェクトを行うというアイデアを持ちかけてきました。MSCHFは、多くの創造的なことを手がけてきたクリエイティブ集団です。私たちは話し合いの中で、MSCHFが私たちと連携する場合は、人に危害を加えるような仕方でSpotを使用しないことを明確にしておきたいことを伝えました」。

ボストン・ダイナミクスはペイントボール銃が話題に上ると難色を示し、2月19日にTwitterを通じて以下の声明を発表した。

本日当社は、あるアートグループが当社の産業用ロボットSpotの挑発的な使い方に注目を集めるイベントを計画しているという情報を入手しました。誤解のないように申し上げますが、当社は、暴力や危害、脅迫を助長するような方法で当社の技術を表現することを非難します。当社の使命は、社会に刺激と喜び、プラスの影響を与える、非常に高性能なロボットを創造し、提供することです。当社は、お客様が当社のロボットを合法的に使用する意思があることを確認することに細心の注意を払っています。また、販売を許可する前に、すべての購入依頼を米国政府の取引禁止対象者リストと照合しています。

さらに、購入者は当社の販売条件に同意する必要があります。販売条件には、当社の製品を法律に準拠したかたちで使用する必要があること、人や動物に危害を加えたり脅したりするために使用できないことが明記されています。販売条件に違反すると、製品保証が自動的に無効になり、ロボットの更新、保守、修理、交換ができなくなります。挑発的なアートは、私たちの日常生活におけるテクノロジーの役割について有益な対話を促すものとなる一方で、このアートは、Spotと私たちの日常生活におけるそのメリットを根本的に誤って伝えるものです。

この声明は、Spotを使って違法なことをしたり、人を脅迫したり傷つけたりすることを禁止するSpotの契約書の文言と一致している。ボストン・ダイナミクスによれば、同社は見込み客に対して経歴調査などの「デューデリジェンス」を行っているようだ。

画像クレジット:MSCHF

ボストン・ダイナミクスにとって、この妥当性はいくぶん判断しにくい領域にある。同社はMSCHFにアイデアを持ちかけられたのだが、そのアイデアが四足歩行ロボットの使命に沿ったものではないと考え、難色を示した。Spot’s Rampageの公式サイトには以下の記載がある。

当社はボストン・ダイナミクスと話し合いましたが、当社のアイデアは極めて受け入れ難いものとされました。銃を搭載しなければSpotを無料であと2台提供することを提案されたことで、銃を搭載しようという当社の意思はさらに強まりました。もし当社のSpotが動かなくなれば、この小さなロボットの1つ1つに秘密の無効化機能が仕込まれていたということになります。

ボストン・ダイナミクスによれば、MSCHFの「このやり取りに関する理解」は「間違っている」という。

そしてこう付け加えた。「当社には、すばらしい魅力的な体験を創出するマーケティングチャンスが常に舞い込んできます。1台のロボットを販売することにそれほどおもしろさはありませんが、インタラクティブな優れた体験を創出することは非常に魅力的です。MSCHFが当社に提案したものの1つはインタラクティブなアイデアでした。Spotは高価なロボットですが、MSCHFはSpotを誰もが操作できるインタラクティブな体験を作り出したいと考えていました。当社はその考えが非常にかっこよく魅力的なものだと感じました」。

ボストン・ダイナミクスによると、MSCHFは、ペイントボール銃ではなく、Spotのロボットアームを使って、物理的空間にブラシで絵を描くというアイデアを提案した。同社は、ストリーミング配信中にロボットを保守する技術者を現場に派遣し、いくつかのモデルをバックアップとして提供することも提案した。

MSCHFがペイントボール銃を搭載したのは、結局のところ、キャンバスに絵を描くためだけではない。銃を搭載したロボットのイメージは、たとえ塗料を発射するだけであっても脅威的である。これがポイントなのだ。

「こうしたロボットが踊ったりはしゃぎまわったりするのを見ると、ある程度の知性を持つ、かわいい小さな友達だと思います」とグリーンバーグ氏は言い、こう続ける。「失敗して転ぶ姿が親しみやすさを感じます。私たちは、『おっちょこちょい』というシナリオを作り上げて、Spotのシナリオに虚飾を張りました。しかし、Spotの大型版(大型犬)は明らかに軍用の小型車両であり、市当局や法執行機関によって配置されることが多いということは、覚えておく価値があります。結局のところSpotは陸上版の無人航空機なのです。このロボットを操縦して引き金を引くスリルを体験する人は、アドレナリンが急上昇しますが、数分後には独特の寒気を感じて欲しいと願っています。正しい心を持つ人なら誰もが、この小さなかわいいロボットが遅かれ早かれ人を殺すことになることに気づくことでしょう」。

実際、ボストン・ダイナミクスの初期のロボットは、輸送用車両として使用するためにDARPAから資金提供を受けていたのだが、同社はほんのわずかな不気味なイメージさえも即座に遠ざける。ボストン・ダイナミクスは、TechCrunchのロボットイベントで行われたマサチューセッツ州警察の訓練でSpotが使われている映像を公開した後、ACLUから批判を受けた。

画像クレジット:MSCHF

同社はこのとき、TechCrunchに次のように語った。

現在当社は、自ら連携するパートナーを選定し、そのパートナーが同様の展望を持ち、人を物理的に傷つけたり威嚇したりするような用途でロボットを使用しないなど、ロボットの用途に対する同様のビジョンを持っていることを確認できる規模にあります。ただしロボットができることと、してはいけないことに対して、現実的な見方も持っています。

MSCHFはイベントの準備を進めているが、この考えには同意している。

ボストン・ダイナミクスはTechCrunchにこう話す。「当社はお化け屋敷にSpotを使いたいというお客様をお断りました。当社のテクノロジーを使って人を怖がらせるという意味で、その用途は当社の使用条件に合っていませんでしたし、当社が描く、人のためになるものではなかったので販売をお断りしたのです。MSCHFとの初めての販売会議においてこのコンセプトが提示されていたら、当社は『Arduinoの四足歩行ロボットならご希望の機能を簡単に搭載できるので、そちらを使ってはどうですか。ご提示になった機能は、当社が示すテクノロジーの使用方法とは異なります』と言ったでしょう」。

画像クレジット:MSCHF

しかし、ライセンスを取り消せるかどうかという問題が残っている。利用規約に違反した場合、同社はライセンスを更新しないことを選択できる。それにより、次回ファームウェアの更新時にはライセンスが事実上無効になる。その他のケースにおいては、実質的に保証を無効にすることができる。つまり、保守を提供しないという選択肢もある。

閉鎖された空間で発射されるペイントボール銃は、危害や脅迫、違法行為に該当しないと思われる。したがって、ボストン・ダイナミクスがこの件に関して直接的な行動方針を持っているかどうかは完全にはわからない。

ボストン・ダイナミクスは「現在、この特定のユースケースについて評価中です。当社にはロボットを危険な状態にする改造に関して、他にも利用規約があります。私たちはどのような影響があるのかを確認しようとしています」と話す。

ボストン・ダイナミクス(同社の現代自動車への売却は2021年6月に完了予定)は、危険な場所での日常点検から、最近の口コミ動画での複雑なダンスの動きまで、ロボットができるさまざまなタスクを紹介することに多くの時間を費やしてきた。MSCHFの主な(そして実際には唯一の)用途はインタラクティブなアート作品である。

グリーンバーグ氏は「正直なところ、ロボットに関してはこれ以上の計画はありません。ボストン・ダイナミクスと連携することはもうないでしょう。私たちは同じことは繰り返しません。真の創造力を発揮する必要があります。次に作るのは携帯用カップホルダーかもしれません」と話した。

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

Boston DynamicsがSpotを遠隔操作するインターフェース「Scout」発表、リモートでドアを開けられるように

Spot(スポット)が工場施設の階段を上っていくところを見るのは何かしっくりこない。何年もの間、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)のロボットたちによる美的で印象的なパフォーマンスビデオを見続けてきた後では、この四足歩行ロボットが、ロボット研究者たちが好んで口にする退屈で、汚れがちで、危険な仕事をしているところは興味を引かないのだ。

しかし、同社がSpotの販売を開始してから6カ月半が過ぎ(Boston Dynamicsによれば400台以上が売れたという)、購入した企業はそれらの先進的な機械を、いくつかの極めて地味なシーンへと投入している。米国時間2月1日の朝、私はそうしたロボットの1台を、自分の机からくつろいだ態勢で操縦できる機会を得ることができた。

今週、Hyundai(現代、ヒュンダイ)が所有するロボットのパイオニアBoston Dynamicsが、ロボットを遠隔操作するためのブラウザベースのインターフェースScout(スカウト)を発表した。またこの発表には続いて、セルフ充電式の「エンタープライズ」版や、すでに発表されていたSpot Arm(スポットアーム)も加わる予定だ。すべての新しいハードウェアは、すでにBoston Dynamics社のサイトから入手可能で(価格は「見積依頼」形式だが)、Scoutはどのバージョンのロボットとも互換性がある。

画像クレジット:Boston Dynamics

とはいえ、同社はセルフドッキング型のエンタープライズ版とのペアリングを推奨している。結局のところ、ロボットの1回の充電あたりの動作時間は約90分なので、人間の介入なしに、状況監視でロボットを使うのであればおそらくそうする方がよいだろう。

実際に何度かSpotを直接操作してみたが、ご想像の通り多少は練習する必要がある。Boston Dynamicsの見積もりでは、完全にスピードを上げるのには約15分かかるとのことだったが、1~2分後には、私はロボットにBoston Dynamicso本社の階段を昇り降りさせることができていた。ありがたいことに、この7万5000ドル(約788万円)のロボットには、カメラや他のセンサーがたくさん内蔵されていて、本当にバカなことはできないようにしてくれている。

画像クレジット:Boston Dynamics

システムはBluetoothゲーミングコントローラーでも動作するが、私はキーボードを使うことにした。もしこれまでPCゲームやったことあるなら、きっとおなじみの基本的なWASD式の操作を行うことができる。一方、矢印キーを使えば、4つのカメラを切り替えて四方を見ることができる。ロボットを上方から見下ろしたような景色を見せてくれる、terrain(地形)モードなどのいくつかの追加ビューが用意されている。それはおそらく、目の前の障害物すべてを表示するための最良の方法だが、それでもさまざまなビューを一度に見るためにピクチャー・イン・ピクチャーを行うこともできる。

私自身は「クリックして進む」を多用していることに気がついた。その動作は基本的には言葉が示しているとおりだ。地面上の地点をクリックするとSpotがその場所に向かって歩いて行く。この機能は主に接続に問題がある場面を想定して設計されている。たとえばどこかの石油採掘基地に、かわいそうなSpotが投入されたところを想像してほしい。

画像クレジット:Boston Dynamics

「ある発電所で、設備故障が疑われた事例がありました。もし本当に故障していたとしたら、人間の検査担当者にとっては危険だった設備を、ロボットを使うことで、繰り返し検査することができました」と、SpotのチーフエンジニアであるZack Jackowski(ザック・ジャコウスキー)氏はTechCrunchに語った。「つまりシステムを使い、何回もパイプを検査することで、高くつくシステム停止を回避することができたのです」。階段を上り下りさせるためにロボットを配置する「階段モード」もある。この機能は手動でオンオフを切り替える必要があるのだが、ロボットは通常モードでも階段を上ることができるはずだ(私はデモの最中にこれを行ったが、スタッフは誰も心臓発作を起こすことはなかったようだ)。当面の間、この遠隔操作機能は視覚情報の収集に限定される。ジャコウスキー氏は「建物の規模へ拡張できる、いろいろとすごい計画を立てていますが、まず最初に提供したいのは視野を提供することです」と付け加えた。

エンタープライズ版では、ロボットの底部に新しいドッキングコネクタを装備したほか、CPUを強化しワイヤレス接続性を向上させている。ドックとの同梱か単体での出荷となる。

残念ながら、新しいアームを実際に回転させることはできなかったが、ジャコウスキー氏はその機能について、詳細をいくつか教えてくれた。「アームコマンドは、『アームをここへ動かせ』とか『この物体を持ち上げろ』とか『このバルブを回せ』といったかたちで出すことができます。するとロボットは『もしこのバルブを回すのなら、まずあそこに立つ必要があって、次に重心をどのように移動して、バルブを動かすためにどのような部品を腕に装着している必要があるのかを判断する必要がある』ということを自分で考えるのです」。

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タグ:Boston DynamicsSpotレビュー

画像クレジット:Boston Dynamics

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

ロボティクスの先駆者Boston DynamicsのCEO、ヒュンダイによる買収後の展望を語る

物事は1年で大きく変化するものだが、今年は特にそうだ。Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)も、この規模で社歴30年の企業としては普通考えられないほどの大きな変化を、ここ12か月間に何度も経験した。具体的には、創業以来初めてのCEO交代、初めての商用製品の一般販売開始、そして3回目となる買収などだ。

もちろん、ボストン・ダイナミクスのことを保守的だと非難した人など、これまで1人もいない。

マサチューセッツ州ウォルサムに本社を置くロボティクス分野のパイオニアであるボストン・ダイナミクスは2020年12月、同社がHyundai(ヒュンダイ)に買収されるという噂が事実であることを認めた。同社の株式のうち80%は韓国のテクノロジー大手であるヒュンダイが保有し、残りの20%はそれまでの所有者であるソフトバンク・グループが引き続き保有することになる。この取引は来年6月に成立する見通しで、従業員300人を抱えるボストン・ダイナミクスの企業価値は11億ドル(約1100億円)と評価されている。

ボストン・ダイナミクスのCEOであるRobert Playter(ロバート・プレイター)氏は、TechCrunchの取材に対して次のように語っている。「ソフトバンクのもとで、当社は100人から300人規模の会社へと成長しました。それには資金が必要であり、ソフトバンクは私たちが思い描いていた製品をローンチできるよう後押ししてくれました。彼らのおかげで、運動性、操縦、視覚といった分野を含む複数のロボット製品をローンチするというミッションに向けて動き出すことができ、そのミッションの達成を目指して実際に動き出し、加速していく力を得ることができたのです」。

ボストン・ダイナミクスで長年働いてきたプレイター氏は、短期間に親会社の交代が続いたことに対する周囲の危惧は取り越し苦労だと考えている。どの親会社も、ボストン・ダイナミクスの収益アップに貢献してきたからだ。最初の親会社だったGoogle(グーグル)は調査のためのリソースを提供し、ソフトバンクは製品化を促した。今後はヒュンダイが、製品のスケールアップに必要となる工学面と製造面でのノウハウを提供するだろう。

画像クレジット:Boston Dynamics

「(ソフトバンクは)結局のところ投資会社なので、この状況はいずれ変わるだろう、という予想はいつも頭にありました」とプレイター氏は語る。「あとは、それがいつ起こるのか、そしてどのタイミングで起こるのが適切なのか、ということだけでした。ですから買収話が持ち上がってもまったく驚きませんでした。製品が無事にローンチされ、成長軌道に乗っていたので、おそらく彼らから見ても、私たちから見ても、適切なタイミングに思えました」。

プレイター氏はさらに、ソフトバンクによる買収に対して米国の対米外国投資委員会(CFIUS)が課した規制のために、同社とソフトバンクとの間の交流は非常に限定されていた、と付け加える。また、「CFIUSの承認を得ることが、ヒュンダイとの契約を成立させる条件になるでしょう」とも説明している。

同社がソフトバンク傘下に入ったことは、控えめに言っても、研究所として何十年も機能してきた会社を商業化の方向へと強力に押し出すものだったが、プレイター氏がTechCrunchに語ったところでは、ヒュンダイも同社の既存ロードマップに概ね賛同しているようだ。ここ2年間の変化はかなり大きなものだったとはいえ、ボストン・ダイナミクスは依然として非常にリーンな組織であり、市場に対するアプローチも慎重だ。

300人ほどの従業員のうち、100~120人は最初の商用製品であるSpotに注力している。また、同社による最近の採用人員は、営業、カスタマーサービス、品質管理といった、最初の製品を出さないまま四半世紀以上の歴史を重ねた組織にとっては馴染みのない分野に集中している。一方、物流ロボットであるHandleに携わるチームはそれよりかなり小さいが、拡大を続けており、プレイター氏によれば「来年にはSpotチームと同じかそれ以上の規模になる」という。さらに、4月には箱を持ち上げるロボットの商用化バージョンもお披露目予定だ。それに続いて、Spotの時に実施されたのと同じようなパイロットプログラムが実施され、翌年どこかのタイミングで製品の販売が始まるだろう。

ボストン・ダイナミクスはすでに、実際の倉庫業界から選んだパートナーとともに「概念実証」モデルのテストを開始している。「これらのシステムは、顧客の所に行って概念実証テストを実施する必要があります。設計を向上させるためにいろいろと学んでいるところです。また、このロボットの製造業向けバージョンの設計も同時進行で進めています。新世代機の最初のバージョンは来年夏に稼働できるようになるでしょう」とプレイター氏は説明する。

物流配送はこれまで何年もの間ロボティクスが最も注目してきた分野だが、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、この方面への関心は高まるばかりだ。市場に対するHandleのアプローチは、この点でSpotとは明らかに異なっている。四足歩行ロボットであるSpotのパイロットプログラムの大部分は、顧客やパートナーとの協力によって、高度なロボティクステクノロジーが最も必要とされているのはどのような方面なのかを判断するために行われた。Spotの需要は決して巨大とは言えないが、安定したものであり、同社は最初の15か月で400ユニット以上を売り上げている。

需要に合わせた応用例としては、BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)の油井や英国ナショナルグリッドの発電所での危険な業務への導入がある。また、予想していなかったようなユースケースも出現している。昨年後半、米国自由人権協会(ACLU)は警察のトレーニングにSpotロボットが使用されている動画(その前の4月のロボティクスイベントで初公開された)に対して懸念を表明した。この10月には実際の犯罪現場でSpotが目撃された。実際、プレイター氏によれば同社の顧客にはニューヨーク市警察(NYPD)も含まれているという。

「NYPDはSpotを所有していて、おそらくバリケードを築いた相手(武装しているかもしれない容疑者)との間に安全な距離を保つために使っていたと思います。それで、カメラを組み込み、できればコミュニケーションを実現させ、危険な状況がさらに悪化するのを防げるこのエスカレートを防止させることを目指していました」とプレイター氏は説明する。

「Spotの開発で意図されていた目的の1つは、危険な環境から人間を遠ざけることを可能にして、顧客の安全度を高めることです」とプレイター氏は付け加える。「そして、それには警察などの公共安全分野の人々も含まれます。具体的な例として、マサチューセッツ州警察は、従来の可動ロボットと同じ方法でSpotを応用し、あやしい荷物や爆発物かもしれない物を調査するのに使うことに関心を持っています。これはロボティクスの優れた応用だと思いますし、サポートしていきたいと考えています」。

ボストン・ダイナミクスは来年も引き続きSpotの市場を広げていくことだろう。ヒュンダイの傘下に入っても、SpotとHandleのリリース予定は変わらないと思われる。

プレイター氏は次のように語る。「私は、2、3年ごとに1つのロボットをリリースするのが、同社にとってちょうどよいペースだと思います。白紙の状態から新しいロボットを作ること自体は1年未満で可能ですが、作った後に、そのコンセプトを練り直し、市場にどれほど適しているか把握するというプロセスを繰り返す必要があります。それで私としては、まずSpotをしっかり安定させたいと思っています。検討したい改善点がすでにいくつもあります。それで、次の世代のSpotを作るかどうか、それとも別のロボットを作って別の市場に進出するかどうかは未定です。それが可能なほど大きいチームには、まだなっていません」。

ボストン・ダイナミクスの研究部門は、人間型ロボットであるAtlasなどの最先端ロボットに集中しており、ヒュンダイの監督下でもそれが継続されるだろう。同社はGoogleによる買収からしばらくたった2014年に国防契約の新規受け入れを停止したとはいえ、研究部門がボストンダイナミクスの業務で重要な位置を占めていることに変わりはない。

「Atlasの研究開発は自社内で進めています」とプレイター氏は言う。「そして、高度なハードウェアとソフトウェア両方の構築に、プラットフォームとして引き続き利用されています。近い将来には、心躍るようなニュースをいくつかお知らせできるでしょう。おなじみのボストン・ダイナミクスお手製動画で、進行中のプロジェクトを紹介することになると思います。公開日がいつになるかはまだ決まっていませんが、楽しみにしていてください」。

ボストン・ダイナミクスの非常に高度な研究成果の一部は、例えば最近発表されたアルティメートモビリティビークル(UMV)など、ヒュンダイが持つ斬新なコンセプトとの相性がいいだろう。「脚に車輪を組み合わせるアイデアは実に興味深いものです。思い返せば、Handleの最初のバージョンを作った時にも、車輪と脚が付いていました。相乗効果があると思うのです。ヒュンダイは本当にそういう車を作れるようになると思いますよ」とプレイター氏は語った。

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(翻訳:Dragonfly)

現代自動車がBoston Dynamicsを買収、ソフトバンクから80%の株式取得へ

正式に発表された。Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)は現代自動車グループの一員になる(当然のことながら当局の承認次第ではある)。マサチューセッツ州ウォルサムに拠点を置くロボットメーカーの Boston Dynamicsは12月11日付けのプレスリリースで、韓国のテック企業が経営支配権を獲得すると明らかにした。Boston Dynamicsの企業価値を11億ドル(約1140億円)としたこのディールでは、現代自動車グループがBoston Dynamicsの株式の80%取得し、残り20%はソフトバンクが保有する。

この買収は、Boston Dynamicsにとってわずか7年の間に3回目の親会社変更となる。研究会社として四半世紀近く前に設立され(米国防高等研究計画局のような組織から資金援助を受けた)、2013年のGoogleによる買収で時のAndy Rubin(アンディ・ルービン)氏が率いる新しいロボティック部門の一部になった。

Google X Roboticsの大部分が解体された後、Boston Dynamicsは2017年に親会社が変わり、ソフトバンク傘下に入った。奇妙な組み合わせであり、ソフトバンクにとって厳しい年だったこともあって状況は改善しなかった。最も知られているロボットは人型ロボットPepper(ペッパー)であるソフトバンクに所有された後では、少なくとも現代自動車はBoston Dynamicsにとってより論理的な「ホーム」だ。

今回の買収についての初期の噂を報じる記事で指摘したように、現代自動車はロボット分野に大きな投資をしてきた。ここには、自動運転システム商業化のためのAptivとの合弁会社設立が含まれる。またUMV(ultimate mobility vehicles、脚を持つサイエンスフィクションのような乗り物)も発表した。

「繰り返しの作業や危険な作業を人間レベルのモビリティで自動で行うことができる最初のロボットをマーケットに投入し、Boston Dynamicsの商業事業は急速に成長してきました」とCEOのRob Playter(ロブ・プレイター)氏は買収に関するリリースで述べた。「当社と現代自動車はモビリティの変革力という視点を共有していて、最先端のオートメーションで世界を変え、引き続き顧客のために世界で最も困難なロボティクスの問題を解決する計画を加速させるために協業することを楽しみにしています」。

もちろんBoston Dynamicsはこの数十年、サイエンスフィクションと現実の境界線を曖昧にしてきた。しかし直近では、同社の高度な技術を商業化することに注力してきた。ソフトバンクのもとで、Boston Dynamicsはアイコン的存在のBig Dogを含め、何年もかけてロボティックのイノベーションに取り組み、四つ足ロボットSpotを立ち上げた。

Spotは昨年数量限定で発売された。現在は米国内で7万4500ドル(約770万円)という価格で販売されている。同社は、倉庫や仕分け作業関連目的のための車輪付きハンドルロボットの商業化も進めている。こちらは来年発売される見込みだ。ロボットの高度化と最終的な価格はかなりの懐疑論を巻き起こしたが、新型コロナウイルスによって企業が一時閉鎖を余儀なくされたことを受けて、投資家たちのロボットやオートメーションの企業に対する関心は高まった。

「現代自動車グループは、Boston Dynamicsがグループの製造能力やスケールメリットによる費用対効果にアクセスできるようにする戦略的パートナーとなります」とリリースにはある。「Boston Dynamicsは新たな資本、テクノロジー、関連顧客、そしてBoston Dynamicsのロボット製品の商業化機会を促進する現代自動車グループのグローバルマーケットへのアクセスの恩恵を受けるでしょう」

買収は来年6月までにクローズする見込みだ。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Boston Dynamics

画像クレジット: Boston Dynamics

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(翻訳:Mizoguchi)

ヒュンダイがBoston Dynamics買収でソフトバンクと交渉中と報道

Boston Dynamicsのオーナーがまた変わるかもしれない。Bloombergの記事によれば「事情に通じた筋」がそう語ったという。

韓国の大手自動車メーカーHyundai(ヒュンダイ)がBoston Dynamicsの買収に成功すれば三代目のオーナーとなる。この7年間でGoogle(グーグル)、次にSoftBank(ソフトバンク)グループが同社を買収してきた。Boston Dynamicsは4脚のBigDog、人間型のAtlasなどを含め、先進的なロボティクステクノロジーで世界に知られている。

TechCrunchではヒュンダイ、ソフトバンク、Boston Dynamicsの各社にコメントを求めている。回答があれば記事をアップデートする予定だ。

Boston Dynamicsは25年の間、主に開発研究と軍事用の応用に集中していたが、2017年にソフトバンクグループの一員となって以後、ロボットの商用化を積極的に推進し始めた。例えば同社は2019年に四足歩行ロボットSpotの販売を開始したが、チェルノブイリの放射能汚染の除去(The Telegraph記事)、ニューヨーク市警察のパトロール(New York Post記事)、新型コロナウイルス(COVID-19)治療のための遠隔医療など極めて広い用途で利用されている。

同社はまた車輪で移動するアームを持つHandleをフルフィルメントセンターなどの倉庫におけるパッケージ処理向けに提供している。これはパンデミックによって人手不足が生じている中で注目を集めているプロダクトだ。しかしながら、こうした先進的テクノロジーを用いたロボットは複雑かつ高価となり、量産・販売には困難な課題がある。また利用者側にも、十分なノウハウと多額の投資に耐える体力が必要だ。オーナーのソフトバンクはWeWorkへの投資失敗などもあり、2020年は波乱の年だった。

ソフトバンクのロボティクスに対する取り組みは、Aldebaran Roboticsが開発したPepperロボットでわかるように比較的シンプルな応用を主としているのに対して、ヒュンダイのビジョンはBoston Dynamicsのこれまでの歴史に近いといえる。ヒュンダイが2019年に発表したコンセプトカーであるElavate(Business Insider記事)は通常は4輪で走行するが、必要に応じて4脚に変身してどんな悪路も走破できることを目標としていた。つまり非常に高度なロボティクスを利用するものだった。

ヒュンダイは、2019年から自動走行車とロボティクスのテクノロジーに関心を示し始めた。同社は自動走行車開発のためにAptivと持ち分50%ずつのジョイントベンチャーでMotionalを創立(未訳記事)した。新会社の目標はレベル4からレベル5の段階の高度な自動走行テクノロジーの開発で、Hyndaiはこうしたテクノロジーを最終的に量産に結びつけようと狙っている。同社は2022年までに自動走行車の量産だけでなく、これを利用したロボタクシーの運用も目標としている。

Aptivとヒュンダイのジョイントベンチャーへの投資総額(研究開発費用や知財の価値を含む)は40億ドル(約4200億円)に上る。両社は当初、完全自動走行テクノロジーのテストは2020年までに開始され2022年の商業化を目指すとしていた。

実はヒュンダイはこれまで自動走行車にはさして多額の投資をしていいなかった。2019年10月には、次世代移動テクノロジー開発のために2025年までに41兆ウォン(約3兆8600億円)を投資するという計画を発表した。この資金の大部分は同社の自動車ラインナップのEV化に向けられるものだが、自動走行を含む各種の次世代テクノロジーにも強い興味があると述べている。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:ヒュンダイBoston Dynamicsソフトバンクグループ買収

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

来年発売のBoston DynamicsのSpotはアームと充電用ドックがある

Boston Dynamicsの新CEO、Rob Playter氏によると、同社の精巧なロボットSpotは、先月Disruptに登場した時点でほぼ260台売れていた。この75000ドルのロボットは、商品としての魅力には問題があっても、さまざまな業界がそれぞれ自分なりにデプロイする方法を見つけて使いたいようだ。

Spotの多くの特長の中でとくに開発者やサードパーティが気に入ったのは、いろんなアクセサリーを後づけして、建設や遠隔医療など様々なアプリケーションを実現できる、プラットホームとしての位置づけだ。しかしBoston Dynamics自身も積極的にアクセサリーを開発して、Spotの用途を多様化しようとしている。

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同社が最近発表したのはロボットアームのアドオンで、ドアを開けたり物を持ち上げたりなど多様なタスクを実行できる。アームはすでに、数年前のSpot/Spot Miniのビデオにあるから、それを加えることは同社にとって容易だっただろう。同社の初めての商用製品でありながらアームがないことに、正直言って私はちょっと幻滅していた。

画像クレジット: Boston Dynamics

アームの発売は来年の早い時期になる。それは6つの自由度があり、ロボットと一緒に動く。同社によると、「ベースになるロボットと同じく、このアームも単なるハードウェアではない。直観的なUIがあり、タブレットから遠隔操作や自動運転の監視や制御ができる」、という。

アームとグリッパーは、開発者がAPIからアクセスできる。ドアを開けたり、物を掴んで引きずったりする自動化ができるアプリケーションは、そのベータがアームの出荷時に同梱されている。

画像クレジット: Boston Dynamics

Boston Dynamicsの発表では、このロボットにはエンタープライズバージョンがあって、それにはロボットが自分で自分を充電するためのドックがある。でっかい高性能なRoombaのように、Spotは自力でドックに戻り、充電をする。石油掘削の現場や放射能の危険のある場所など、人間がいない方がよい場所で、このロボットは理想的な仕事をする。

エンタープライズバージョンも、来年初頭の発売だ。どちらも、価格は未定である。

画像クレジット: Boston Dynamics

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa