Bitcoin Bubble Burstは、bitcoinドリームの崩壊を予言するアプリ

あなたがbitcoin信者であっても、自分のバブル予測が的中するのを待っているハゲワシであっても、いつおきても不思議ではないと誰もが思っている崩壊を予想しながら変動チャートを見つめていることだろう。今日(米国時間12/3)Disrupt Berlinハッカソンで発表されたBitcoin Bubble Burst(BBB)は、価格の変動や価格に影響を与えるできごとをリアルタイムで教えてくれる以外にも目を向けさせる。

Bitoinの取引量や価格が大きく変わったときに警告を与えるアプリは山ほどあるが、BBBの作者いわく、何かが〈起こりそう〉なときに適切な警告を与えるものはない。そこで彼らは(当然)機械学習を利用してbitcoinの価格変動にかかわるデータを教え込んだ。

取引のパターンや重要なニュース項目 —— 国によるbitcoinの禁止、あるいは暗号化通貨収入に対する課税の提案等々 —— をシステムが検知し、一定の重要度に達するとメールが送られてくる。警告の根拠となるロジックも書かれている —— 単に「売りだ!売り!」というわけではない。

通常の近況通知の例はこちら。緊急時のアラートとは見た目が異なるかもしれない。

これまでのところシステムはかなり正確で、数ドル程度の変化を予知していると作者らは言っている —— 時間とともにデータが増えればもっと正確になる。別の警告方法(SMSなど)の追加や、通知を受ける危険レベルの設定なども計画している。

もちろん、暗号化通貨の世界は基本的に予測不能なので、何事にも眉につばをつけてかからなくてはならない。それでも、じっと観察してbitcoin が大変なことになりそうなことを警告してくれるエージェント、というアイデアを私は気に入っている。たとえ間違っていたとしたも。

Bitcoin Bubble Burstをつくったのは、Claudio Weck、Saad El Hajjaji、Kathick Perumの3人。アプリのGithubページでサインアップできる(下の方に60秒のプレゼンのビデオもある)。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

VRを使ってADHDを診断するreVIVE。作ったのは高校生3人のチーム

Dusrupt NY 2017ハッカソンで最初にステージに登場したのはreVIVE。ADHD(注意欠陥・多動性障害)をバーチャルリアリティーで診断するシステムだ。高校2年生3人からなるチームは、時間も費用もかかるこの病気の診断を簡単にする解決方法を見つけたいと思った。

チームによると通常ADHDの診断には6~9カ月かかり、それだけで患者は数千ドルの費用を負担しなくてはならない。

reVIVEは、ユーザーの運動能力、集中力、および反応時間を測定する3種類のテストからなる。被験者は迷路を進んだり、色のついた物体に触れたり、決められた場所に静止するなどの作業を指示に従って実行する。チームが開発したスコアリングシステムによってユーザーの能力を測定し、医療専門家がそれを見て数分のうちに症状を判断する。

Akshaya Dinesh(17)、Sowmya Patapati(16)、Amulya Balakrishnan(17)の3人はUnityを使ってHTC Viveのバーチャルリアリティーアプリを作った。ニュージャージー州から来たこの高校生チームはハッカソン会場で出会って友達になった。BalakrishnanとPatapatiの2人は、#BUILTBYGIRLSという団体でともに活動している。

「ADHDの診断を数値化したいと強く思っていました」とDineshは言った。「360度環境に没入することで、患者は実際にそこにいるような環境を体験できます」。

チームは治療に関してセラピストの役割を置き換えようとは考えていない。医療医療ツールの一つとして、セラピストに患者の最新の状態を伝えるとともに、IBM Watsonを利用してデータを分析する。

医学診断と治療は、バーチャルリアリティーの主要な応用分野であることがすでに証明されている。例えば、MindMazeは、VRソリューションを直接医療専門家に届けることによって、スタートアップとして大きな成功を収めている。病気の診断は「VRの最適な使用事例の一つ」だとチームは考えている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

BackMapは、視覚障害者を室内外で案内してくれるバックパック

もし自分に視覚障害があったら、ニューヨークの街を歩くことがどんなものなのだろうか。快適でないことだけは想像できる。TechCrunch Disrupt NY 2017のハッカソンに登場したBackmapは、左右に曲がるべき時を振動で知らせてくれるバックパックだ。

外出時にスマートフォンのアプリ通じて目的地を知らせておくと、このバックバックがそこまで連れて行ってくれる。スマホを取り出す必要はない。BackMapはEsriのPubNubという位置情報APIを利用してこの機能を実現している。室内ではビーコンを利用してトイレやショッピングモール内の特定の店に案内する。

「視覚障害のある人にとってかなり嬉しい機能だと思う。店に入ってから行きたい場所に行く方法がわからないことは多いので」と開発者のShasshank Sharmaがプレゼンの後で話した。

Disruptのような巨大なカンファレンス会場やウェストフィールド・モールなどの中を移動するのは誰にとっても大変だ。そこでこのチームは、バックパックを背負った歩行者や自転車に乗っている人全般を対象に、スマホを取り出したりヘッドホンを使わなくても通知を受け取れるようにしたいと考えている。

バックバックの左右のストラップにはRasberry Pi制御のモーターが仕込まれている。まだいかにもプロトタイプだが、私が試してみたところ確かに機能した。この触覚フィードバックシステムを作るのにかかった費用はわずか40ドルだったとのこと。

今後はスマートウォッチなどほかのウェアラブル機器にもこの機能を応用しようとチームは考えている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Waiterは、あなたに代ってカスタマーサポートの電話を待ってくれるサービス

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サポート電話で待たされるが好きな人などいないが、担当者が空いた時に電話をかけてくる会社はほとんどない。

その結果私たちは延々と待たされ、挙句の果てに電話をかけていることを忘れてしまい、相手に切られたり時間切れになったりする。いずれの場合も待った時間は無駄になる。

今日のDisrupt SFハッカソンで、 Ang LiJiang Chenは、あなたに代わって電話を待つAI ロボット、Waiterを作った。

しくみはこうだ。

まず、Waiterの専用番号にかけると、カスタマーサービスの番号をダイヤルするよう促される。するとWaiterは、企業とあなたとWaiterの3者通話を設定する。

img_1369ユーザーは、カスタマーサービスに必要な所定の操作(アカウント番号の入力等)を終えたら電話を切ってよい。あとはロボットが相手の出るのを待ち続ける。

その後Waiterは、“hello can you hear me” と何度も呼びかけを続け、担当者の声(hello、how are you 等)を検出したら、少し待ってくれるよう伝えてあなたにダイヤルする。

開発チームはこの “hello can you hear me” プロンプトを、チューリングテストになぞらえている。実際に担当者が出てきた時にだけユーザーを呼び出すために重要な手順だ。単に音を聞いているだけだと、保留音楽や広告に反応してユーザーを呼び出してしまうおそれがある。

システムは主にTwilioの電話会議と音声認識APIを使用して作られている。WaiterはGitHubにある(Pythonで書かれている)ので、誰でも専用バージョンを作れるが、有料版を作って独自にサービスを提供する計画もあるそうだ。

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PeppAR Waiterは、メニューを3Dで見せてくれるロボットウェイター

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レストランメニューの安っぽい写真はもういらない!これからはロボットと拡張現実が取って代る。

それが未来に向けてのプランだ。少なくとも、先週末TechCrunch Disrupt SFハッカソンに登場した大胆かつ先進的なプロジェクト、PeppAR Waiterを見る限りは。

作ったのは恐れを知らぬハッカーYosun Changで、このハッカソンで4つのプロジェクトに関わっている。PeppAR Waiterは、Softbankの愛らしいロボットPepperとChang独自の拡張現実サービス — Holo Yummy — を使って作られた未来的注文体験だ。

Pepperはウェイターになって、メニューを載せたタブレットを手に注文を受ける。タブレットではARを利用してホログラムによる料理のプレビューが作成され、客は専用アプリを通じて自分のスマホやタブレットで見ることもできる。

注文とプレビューが完了したら、Pepperは立ち去り、やかて出上がった料理を運んでくる(キッチンにもロボットがいる可能性はあるが、それはまた別の話)。

Pepperをウェイターに使う例は前にもあったが、ARを付加したことは一歩前進だ。Changはこの他に、SnapGlass.esPokeTrump.clubPoint.Shopでもハッカソンに参加している。デモに使ったメニューは、サンフンシスコのトレンディーなレストラン、Atelier Crennのもので、そこではプラットフォームにHolo Yummyを使っているが、他のレストランにも対応可能で、料理以外にも応用できる。

いずれこの種の技術は高級レストランやホテルなどで使われる可能性があるとChangは言う。どんな料理が出てくるのかを客が事前に知りたいと思い、ロボットによるサービスが受け入れられるような場面だ。PeppAR Waiterはそれを実現できるサービスではないかもしれないが、未来に向けて魅力的な一品を提供したことは間違いない。

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銀行API開放はまだか? UFJハッカソン優勝は「事務所の金庫問題」を解決

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3月13日、14日の週末に、東京・渋谷にあるイベントスペース「dots.」で三菱東京UFJ銀行(MUFG)がハッカソン「Fintech Challenge 2016 – Bring Your Own Bank!」を開催。最終日の14日には全12チームがこのハッカソンのために公開された銀行APIを活かしたアプリ・サービスのデモを披露した。

ぼくはTechCrunch Japan編集長として審査員の1人を務めさせていただいたのだけど、「もし銀行がAPIを公開したら」、しかも「手数料が無料だと仮定できるのだとしたら」という前提で作られたアプリのアイデアは思った以上に多様で、むしろBitcoinを始めとする暗号通貨の可能性の大きさ銀行APIが開放されたときに生まれるであろうFintechエコシステムの可能性を思わずにいられなかった。ちなみに、第1回のFintech Challengeで優勝した1社はクラウド会計のfreeeで、後にMUFGとfreeeは与信サービスでの協業を発表したりもしている。

今回、ハッカソンのために用意された銀行APIは、リテール向けでは「認証、残高照会、入出金明細、振込(都度、マイパターン)、来店予約、支店待ち時間情報取得」など。法人向けでは、このほかに為替レート取得などもある。

優勝は法人向け小口現金関連サービスの「Petty Pay」

今回のFintech Challengeで優勝したのは中小規模の法人向けに小口現金にまつわる問題をスマホで解決する「Petty Pay」だ。
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TechCrunch Japanを読んでいるスタートアップの経営者や経理担当、小さな事務所のオーナーであれば分かると思うのだけど、企業活動の中で発生する小口の決済は頭の痛い問題だ。支払い建て替えをする社員も含めて、レシートや領収書の精算は面倒だし、振り込みでATMの行列に並ぶこともあるだろう。きちんと収支管理をしていないと使途不明の使い込みのリスクもあるだろうし、部署間のアンバランスが可視化されていない問題も出てくるかもしれない。小さな金庫に常に現金を入れることが多いだろうが、持ち逃げの問題もある。

Petty Payは、例えば運送業者への支払いなど小口現金を電子化するのを狙う。ハッカソンのデモではiBeaconによる端末間トランザクションで、支払いをする人と業者の間で決済を行う様子を披露していた。同一法人アカウントを複数社員で使うことを想定していて、組織内の承認フローもアプリも組み込んである。事前承認がなくても個人口座で決済しておいて、後から承認ノーティフィケーションに上司が気付いてボタンを押したタイミングで払い戻しが行われる、いわゆる普通の経費精算同様のこともできる。

法人単位で利用者を囲い込みたい運送業者や飲食デリバリー、旅行代理店など、法人側にはPetty Payに対応するインセンティブがある。支払いをする社員にとっても面倒な経費精算から開放されるメリットがある。LINE Payと違ってサービス提供企業を友だちにしなくていい。そして経営者や経理担当には、もちろんメリットがある。特に法人カードが作れないような小規模なところには朗報だろう。そんな「三方良し」で、実際にサービスが立ち上がりそうなイメージが湧くというのが審査員全員が高得点を付けた理由だった。振り込み手数料についても、ある程度の単位で決済を束ねる、いわゆるネッティングをすることで低減できるのではないかと思う。

ちなみに、優勝したPetty Payのチームに贈られた賞金は日本のハッカソンとしては大きめの100万円だ。

残高の端数を手軽に募金する「Chocobo」

優勝に続く、優秀賞(賞金10万円)には2チームが選ばれた。

1つは残高が「2,483,183円」となっているときに端数の「183円」を任意の団体に募金できるアプリ「Chocobo」を作ったチームだ。UIUXが滑らかで、端数がなくなるすっきり感を示すアニメーションが楽しげなアプリだった。同一銀行内に募金団体のアカウントがあれば手数料も低く抑えられるので、銀行のCSRの一貫として既存の銀行アプリにあって良いのかもしれない。

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優秀賞のもう1チームはワリカンやプレゼント代替購入時などに使える個人間決済サービス「Check」を作ったチーム。銀行API開放で真っ先に思いつくサービスではあるが、実装レベルが高かったことと、ひいき客を増やしたい店舗がクーポンを発行できるなど工夫があったことが評価された形だ。

このほか、貯蓄や資産運用をゲーミフィケーションするアプリや、店舗でのレジ決済をスマホ決済で置き換えてレジ行列問題を解決するアプリ、小切手画像を生成してSMS経由で小口決済を行うアプリ、SNS上のグラフデータを与信の一助とすることでソーシャルレンディングをするプラットフォーム、メガバンクのWebサイト上のイケてないATM設置情報(住所のみ表示!)を混雑状況とともに地図にマッピングするアプリなどがあった。

銀行のAPI公開は進むのか?

MUFGの公式な立場としては、今回のハッカソンで提供したAPI群はあくまでも「デモAPI」で、今後これを公開するともしないとも言っていない。ただ、開発者からのフィードバックを収集するというのが今回のハッカソン開催の目的の1つでもあったというし、企画担当者レベルとの雑談では、MUFGがAPIを公開するのに半年とか1年かかかるようなことはない(もっと早い)という話でもあったので大いに期待したいところだ。銀行といっても当然一枚岩ではなくネット対応の見解についても「中の人」によっても、だいぶ温度差がある。ハッカソンを企画する現場レベルでいうと、銀行はセキュリティーレベルの要件について既存システムとネット向けアプリで2つの基準を使い分けるべきだ、という意見もあった。これは全くその通りで、一律に既存金融システムと同じ作り方をするのは無理がある。

すでにPFM(個人向け家計・資産管理:Personal Finance Management)関連サービスでは、外部サーバーから銀行のWebサイトをスクレイピングして無理やり口座情報を引っ張りだすなど、APIが存在しないがために力技に頼るようなことが行われている。このとき、利用者は銀行サイトのID・パスワードを第三者に預けていることが多い。これはセキュリティー上は決して好ましい状態ではなく、「セキュリティーや安定性を担保できないのでおいそれとAPI公開に踏み切れない」という金融関係者の懸念があるとしたら、それはむしろ現状認識としては逆だと指摘しておきたい。利用者は、便利なアプリやサービスを使いたいのだ。ビジネスの規模として小さく、リスクがあるからといって見過ごしていて良いレベルはとっくに超えていると思う。

2015年10月には、みずほ銀行がLINEと提携して残高確認ができる「LINEかんたん残高証明」を始めたり、マネーフォワードがNTTデータと共同で「Open Bank API」を推進すると発表するなど銀行API開放の機運は高まっている。2016年2月には「みずほダイレクトアプリ」がMoneytreeの口座情報を読み込む技術を採用、IBMも2月に「Fintech共通API」の提供を始めるとアナウンスしている。銀行APIが開放されて、便利なサービスが増えると消費者としては嬉しい限り。一方で少し皮肉なことを言うと、銀行の既存サービスを少し便利にする程度のものをいくら作っても、PayPalがやったような本質的なFintechイノベーションは出てこないのだろうな、ということも感じたハッカソンだった。FintechだモバイルECだといったところで金融のトランザクションは全銀システムや各行が持つメインフレーム上で起こっている。

Fintechのトレンドとして特定の銀行業務に特化したサービスが独自に立ち上がる「アンバンドリング」がいま起こりつつあることだとしたら、その次に来るのは「リバンドリング」だという意見がある。消費者個人個人が、それぞれの目的ごとにベストなサービスを自分で選ぶ「ベストオブブリード」という古きよきインターネット的なサービス利用モデルよりも、統一されたブランドの元に各サービスが統合されている未来のほうが、確かにありそうに思える。そのとき「お金のブランド」として人々が思い浮かべる名前はなんだろうか? みずほやUFJなのか、それともGoogleやAmazon、あるいは楽天やマネーフォワードなのか? それは今のところ分からない。ただ、そのブランドというのはAPIが上手に使えてエコシステムを醸成できるプレイヤーなのではないかと思う。

電話利用のシンプル決済から店舗行列受付システムまで、TC Tokyoハッカソン優秀作をご紹介

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今年もTechCrunch Japanでは11月15日、16日の2日間にわたって、東京・お台場のコワーキングスペースMONOでハッカソンを開催した。今回は84名が参加、グループ参加または1人での参加「ぼっちソン」で合わせて37チーム、37個のプロダクトが生まれた。その中から優秀作品として選ばれた5チームには、TechCrunch Tokyo 2015のイベントで5分間のライトニングトークを披露してもらった。

それでは当日のハッカソンの模様と、優秀作品5作品を紹介しよう。

「まずはスマホを裏返してください」

われわれのハッカソンでは、ハック開始の前に、紙とペンを使って、実際に手を動かしてアイスブレイクしてもらうのが恒例となっている。このアイスブレイクはチーム編成のきっかけでもある。去年のお題は「ドラえもんのひみつ道具を一筆書きで書く」だった。今年のお題はというと、「隣の人が知らないアプリを書く」だ。いきなり司会者から「スマホを裏返してください」と言われた参加者からは「ええ?」との声が聞こえてきた。日頃からアプリを研究しているエンジニアたちにとってはある意味難しいお題だったかもしれない。

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なんのアプリかみなさんはお分かりだろうか?

緊張がほぐれたところで、テーマ発表。

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テーマは特になし。強いて言えば、TechCrunchに掲載されそうなもの。10種類を超える提供APIの中から1つ以上を使っていれば、あとは自由だ。なんだかモヤっとしたお題。どんなプロダクトができるのか。

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2日間のハックが始まった。

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APIの説明を聞きに来る参加者たち

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そして夜。

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黙々と作業を進める。
ハックはこの後も夜を徹して行われた。今年は3分の1を超える人が泊まり込みでハックを続けた。

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朝方に見かけるこんな光景も、もう毎年のことだ。

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最後の追い込み。雰囲気がピリピリしてくる。
発表では、Pepperがうまく反応してくれず、プロダクトの発表うまくできなかったチームや、使用した外部サービスがメンテナンスに入ってしまったチームがあったりと、ハプニングもあったが、1時間半も予定時間を超えて全プロダクトがお披露目された。

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ひとことで感想を言えば、個性的で、完成度が高い。今すぐリリースしてもいいのではないか、と審査員から感想が出たプロダクトもあった。そんな37個の中から優秀作品に選ばれた5作品を紹介する。

1.Nomadify(ノマディファイ)

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Nomadifyは電話番号を使って、店舗などで待ち行列に登録できるアプリだ。レストランなどでよく見る紙のウェイティングリストの代わりに、オンラインでウェイティングリストに名前を記入しておくことができる。自分の番が近くづくと、登録した電話番号にシステムから電話がかかってくる。リストは公開されているので、自由に書き込み・削除ができる。自分の電話番号を使っているので、他の人に勝手に名前を削除されたり、割り込みされたりということがない。自分の番が来て電話が鳴るまで、店舗の受付から離れることができる。 一般的な受付システムだと、まずユーザー登録ということも少なくないが、そうした面倒がない。

2.PayCall(ペイコール)

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PayCallはECサイトなどで電話を使って簡単に決済ができるようにするサービスだ。ECサイトの購入画面などに表示された電話番号に自分の電話から発信すると、事前に登録してある個人情報がECサイト側に渡って決済も完了する。電話番号を認証として利用しているということだ。Webブラウザの購入画面などでセッションが切れたりして、面倒な個人情報の入力を何度も行わなければならないのを面倒に感じた経験から、このサービスを思いついたという。

3. kitayon(キタヨン)

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トレタのエンジニアチーム・風呂グラマーズが「遊び」で、「真面目に」作った、オフィス向け受付アプリ。オフィス訪問者は前もって招待コードを発行してもらう。来社時に招待コードをiPadに入力すると、招待者のSlackなどに通知がいく仕組みだ。似たようなサービスには米国スタートアップのEnvoyがあるが、Envoyが使いにくかったことから自分たちで作ろうということになったそうだ。kitayonはすでに6社の導入が決定したという。

4.Inc(インク)

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インディーズのアーティストとお店とをつなぐプラットフォーム。インディーズとして活動するアーティストは自分の音楽を公開したり、グッズ販売をすることができ、他方、お店の人は店舗で流す音楽を探すことができる。お店の人は自分で作ったプレイリストを公開することで利益を得ることもできる。アーティストとアーティストを探して紹介する人、双方にメリットが生まれるプラットフォームだ。

5.RTNope-D(アールティーノープディー)

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音声認識を使ったメモアプリ。かなり速い速度で喋っても単語を拾ってくれる。そこから関連する単語を表示させたり、画像を検索したり、関連キーワードを検索することもできる。商品名が出て来れば、そこから買い物だって可能だ。製作者は、もともとは医療現場で医師と患者がコミュニケーションを取る場面を想定して作ってみた、とのこと。機能がシンプルな分、使い方を広く考えられるプロダクトだ。

われわれはTechCrunch Japanとして、ハッカソンを開催する明確な5つの理由があった。理由の1つとして「エンジニアリングをバックグラウンドに持つ人たちに、起業やスタートアップのカルチャーに触れる機会を提供したい」としていたのだが、実際にハッカソンで優秀作を生み出した人たちはTechCrunch Tokyoのイベント開催中、会場でほかの起業家や投資家と話をするなど交流していただけたのではないかと思う。また来年も、多くのエンジニアの皆さんがハッカソンに参加してくださることを楽しみにしている。

この1年のハッカソンでいちばん人気があった言語、API、ハードウェアは?―Devpostが詳細統計を公開 

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今朝(米国時間7/28)、TechCrunch Disruptを始め数多くのハッカソンにバックエンド・ツールを提供してきたChallengePostがDevpostと改名したのを祝って大量の興味深い統計を公開した。これに昨年のハッカソンで使われたモバイル・プラットフォーム、使用されたプログラミング言語、APIなどの種類が人気順にリストアップされている。

この統計は13,281人のデベロッパーが1万のプロジェクトに取り組んだ160回のハッカソンに基づいている。オリジナルのレポートはこちらで公開されているが、いくつかハイライトを紹介してみよう

デベロッパーが好むモバイル・プラットフォームについては次のような結果になった。Android、38.2%。iOS、22.7%。Windows Phoneははるかに引き離されて4.9%。34.2%のデベロッパーは「特に好みなし」。

Devpostのハッカソンで使われたプログラミング言語トップ10:

  1. HTML/CSS (厳密な意味でのプログラミング言語ではないが、オリジナルを尊重して載せておく)
  2. JavaScript
  3. Python
  4. Java
  5. C/C++
  6. PHP
  7. Objective-C
  8. C#
  9. Swift
  10. JSON (これもプログラミング言語ではないので、11位を載せておく)
  11. Ruby

HTML/CSSとJavascriptがトップに来るのは自然だ。スクリプト言語vsプログラミング言語というテーマでたちまち議論が起きそうだが、ともかくどちらもとっつきやすく、コンパイルを必要とせず、OSと独立にブラウザ内で動作する。多くのデベロッパーが最初に学習する言語でもある。どんなハッカソンでももっとも使われる言語だろう。

注: HTMLはもちろん「プログラミング言語」ではない。これはドキュメントの要素をレイアウトし、コントロールするためのマークアップ言語だ。しかし「言語」であることには変わりない。またデベロッパーがもっとも頻繁に使う言語でもある。そこで言葉の定義には目をつぶってリストアップしておく。

Appleが公開してからわずか1年と1ヶ月しかたっていないのに早くもSwiftがリストされているのは驚きだ。

ではAPはどうだろう?

DevpostはAPIは細かいカテゴリー別に順位を公開している。いずれも非常に役に立つAPIだ。

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コミュニケーションAPIのトップはDevpostによればTwilioだ。ソーシャルは予想どおり、FacebookとTwitter。支払ではVenmoがPaypalを上回った。話題のStripeは3位にとどまった。Google Mapsが位置情報カテゴリーのトップなのも予想どおりだろう。

Twilioがコミュニケーションでトップになったのは、Twilioがハッカソンに非常に力を入れてきた成果だ。ときにはTwillioのエバンジェリストが非公式に会場に姿を見せるだけという場合もあったが、ほとんどあらゆるハッカソンにTwillioが何らかの形で参加しているのを私は見てきた。Twilioは新たに採用した社員に必ず同社のAPIを使ってプロジェクトを完成させるよう義務付けている。Twillioの上級エバンジェリストの一人は会社を辞めてMajor League Hackingという学生のハッカソンを世界中で組織するスタートアップを立ち上げたくらいだ。

ゲームではUnityが圧倒的だ。1000件ものプロジェクトがUnityを利用したという。2位のPygameのプロジェクトはわずか50件だった。

Devpostはテキスト・エディタのランキングも発表している。1位はSublime Textだったが、偶然これは私も愛用している。実はこの記事もSublime Textで書いている。

ではハードウェアはどうだろう?

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ハードウェア・ハッキングのキングがArduinoというのは誰しも納得だろう。比較的軽量なハードウェア・プロジェクトならなんでもこなす柔軟性があり、開発の途中でボードを数枚破壊してしまってもそれほど懐が傷まない。もっとトレンディーなところではMyoのジェスチャー・リストバンド、Pebbleのスマートウォッチ、Leapのモーション・ジェ・コントローラー、Oculus Riftヘッドセットなどが目立つ。Raspberry Piはなぜか6位にとどまった。

こうした統計は興味深いものの、現実世界の動向を表しているとは限らないという点は念を押しておきたい。このデータだけを頼りにどの言語を学ぶか決めたりするのは賢明ではない。初心者は取り付きやすい言語を選ぶのがよいだろう。その点でJavaScriptは悪くない。いずれにせよ、まずプログラミングというものの性質全般を学び、その後で各言語の差異に注意を向けるようにした方がよい。「そんな言語は古いからダメだ。なんとかいう〈今年のトレンディー言語〉を学べ」などという奴がいたら「くそくらえ」と言ってやるとよい。

Devpostのオリジナル・レポートはこちら。

TechCrunchの主催するDisruptサンフランシスコのハッカソン も数週間後に迫っている。

[Devpost(以前のChallengePost)がこの興味深いデータを送ってくれたことに感謝する]

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

TechCrunch Japanがハッカソンを開催する5つの理由

すでに告知させて頂いた通り、11月に東京・渋谷のヒカリエで開催予定のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2015」に付随する形でハッカソンを行う。イベント本編は11月17日、18日の火曜日・水曜日なのだけど、ハッカソンはその直前の土曜日と日曜日、お台場で開催する。これまでにTechCrunch Japanでは何度かハッカソンを開催してた。その理由を5つほど説明させてほしい。

1. エンジニアリングをバックグラウンドに持つ人たちに、起業やスタートアップのカルチャーに触れる機会を提供したい

hackerシリコンバレーでは大学を出るか出ないかという理系のギークたちが、すでに成功したギークたちからビジネスのイロハを学び、資金提供を受けることで、大きなテック・ジャイアントが生まれてきた歴史がある。Y Combinator共同創業者のポール・グレアムが言ったのは、例えば「客のところへ行って話を聞いて来い」とか「人々がほしがるものを作れ」だったわけだが、これは考えてみれば、ずいぶんナイーブな話だ。客の声を聞いて客のニーズに合うものを作れというのは商売の基本ではないか。「汝殺すなかれ」というぐらいに自明すぎる。

つまり、ポール・グレアムがやったことは、そのくらい自明なことを知らないギークたちにビジネスの基礎を教えたら、とてつもない価値を生んだということなのではないかと思うのだ。

ぼくは日本にも技術力の高いハッカーは数多くいると思う。ただ、日本ではまだエンジニア起業家の成功例が少ないために、こうした人たちはスタートアップ業界を遠巻きにみている面があるのではないかという気がするのだ。

「TechCrunch」が象徴するのはテックとビジネスで、その2つが交わる場所で起こっているイノベーションのことだと思っている。だから、TechCrunchがハッカソンを開催することで、日本のスタートアップ界と、エンジニアコミュニティの距離を少しでも縮められればと思っているのだ。

日本のスタートアップ業界で、優秀なエンジニアが不足しているという声をいつも耳にしている。優秀なエンジニアと、スタートアップ業界の起業家が出会うキッカケを提供したい。そんな思いから、今年のTechCrunch Tokyoハッカソンの参加者は、全員イベント本編にもハッカソンチケットだけで参加していただけるようにした。また入賞した上位5チームには、昨年同様にイベント本編のセッションでライトニングトークをやっていただければと思う。

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2. テックとビジネスのバランスが取れたイベントを開催したい

ハッカソンにも様々な種類がある。例えばエンジニアが「ハック」と言うとき、それはエンジニアが抱える問題を解決する純技術指向だったり、何かの実験だったり、技術を使った自己表現であるようなことがある。それはそれで良いのだが、もっと視線を社会へ向けた上でハックするような文化があって良いのではないかと思うのだ。TechCrunchのハッカソンでは、技術力よりも、アイデアの潜在市場やポテンシャルを評価したいと考えている。

3. 「作れる人たちだけ」の場を提供したい

TechCrunchが行うハッカソンはビジネスアイデアコンテストではない。だから優れたアイデアを出すだけではなく、最低限の実装を行っていただきたいと考えている。そのため、今年からは参加資格はエンジニアとデザイナーだけに限定している。ハッカソンでは、手を動かせないならやるべきことは何もない。

4. 大企業とスタートアップの人材交流により、オープンイノベーションを促進したい

大企業が持つ技術やサービス、APIなどをご提供いただいて自由に触れるようにすることで、オープンイノベーションを促進したいという思いもある。人と情報の流通こそ命だ。週末ガッツリと同じ時間を共有することで、人的交流が生まれ、そのことで新しいコラボレーションが生まれるきっかけになるのではないか、ということを考えている。

5. 日常業務から離れて、実験的な試みができる場を提供したい

すでにスタートアップ企業で働いているエンジニアや起業家は、目の前のプロダクト作りで忙しいだろう。ちょっと思いついたアイデアを実装してみるような時間的余裕はないと思う。こうした人たちに、週末で一気に何かを作ってみる、そんなサイドプロジェクトの出発地点としてのキッカケを提供できればと考えている。

と、なんだかちょっぴり偉そうな感じで書いてしまったけど、2日間のハッカソンというのは楽しいもの。ぜひたくさんのクリエイター、起業家に参加していただければと思う。今年はチームビルディングの時間を設けないので、友だち同士や、スタートアップ企業のエンジニアチームでのチーム参加など大歓迎だ。

参加申し込みはこちら

(photo / Alexandre Dulaunoy)

日本は評価が甘め? Braintreeのグローバルなハッカソンで審査員をやって感じた厳しさ

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PayPalの子会社であるBraintreeが世界規模のハッカソン「BattleHack 2015」の東京予選を6月14日、15日に開催した。ぼくは審査員を務めさせていただいたのだけど、その審査過程で軽いカルチャーショックを受けた。評価が厳しく、歯に衣着せぬ感じ。ダメなものは本当にダメとしか言わないのだ。これは今までぼくが参加した国内のハッカソンとだいぶ違う。Braintreeのハッカソンそのものの紹介と合わせて、そのことを少し書いてみたい。ちなみにぼくはTechCrunch Japan編集長という肩書きと、ときどきコードを書くテック系ジャーナリストということで、いろんなハッカソンに審査員として呼ばれることが多い。

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世界14都市、優勝賞金1230万円のグローバルなハッカソン

BattleHackがどういうハッカソンか紹介しよう。BattleHackは世界14都市で週末の2日間(実際の作業は24時間)を使って予選的なハッカソンを行い、各地で優勝したチームがシリコンバレーに集まって決戦を行い、優勝チームに10万ドル(約1230万円)が贈呈されるという大がかりなイベントだ。決勝戦にはeBayのCEOが参加したり、PayPalからメンターがついたりするなど、かなり手厚い待遇だ。

ここ数年、ぼくの周囲ではPayPal決済のAPIのつなぎ込みで泣いている開発者をたくさん見かけるようになった。ドキュメントが分厚い、そもそも上手く動かない、意味が分からないという声を良く聞くのだ。反対に、Stripeのような新しいモバイル決済サービスのAPIの使いやすさの話を聞くようになっている。使いやすいAPIという面で遅れを取っていたPayPalが、2013年9月に8億ドルのキャッシュという巨額で買収したシカゴのスタートアップ企業がBraintreeだ。Braintreeは決済ゲートウェイで、PayPalだけでなく、Apple PayやAndroid Pay、Bitcoinも使える。現在、AirbnbやGitHub、OpenTable、Uber、TaskRabbitなどがBraintreeを使っている

BattleHackというハッカソンはBraintreeのマーケティングの一貫だ。Uberの採用事例のように国際展開でモバイル決済を必要とするニーズには適しているということを、スタートアップ企業で決済を実装することになるハッカーたちに触って理解してもらいたいということだ。国境を超えるたびに決済回りの実装を継ぎ接ぎするよりも、1つのゲートウェイで済むならそれがいいでしょうというのがBraintreeが提供する価値だそうだ。

優勝は余分な部分を自動カットする動画編集アプリ「talk’n’pick」

Battle Hack Tokyo 2015で優勝したのは「talk’n’pick」という動画編集アプリ。動画を撮影すると、動画ファイル全体で音声レベルを解析し、声がある部分(会話しているところ)だけを残して残りをカットしてくれる自動動画編集アプリだ。AWSのクラウド上でキューを使って動画の解析と編集をやるなど、24時間で作ったと思えないクオリティだし、デモを見ても、すでにかなり実用的にみえた。無駄な無音部分を削除するというのは一部のYouTuberがすでに実践してるテクニックに近いし、市場ニーズもあるのではないかと思う。

聞けば、このプロダクトを作ったチームメンバーの4人のうち2人は、すでにスタートアップをやっていてプロダクトを準備中。IPAの未踏プロジェクト出身者でもある。1人はニュース記事から自動で動画を生成するというプロジェクトに取り組んでいたこともあるというから、「プロの仕業」という感じでもあった。イベント後のインタビューでは、今回作成したプロダクトは実際にリリースまで持って行きたいと話していた。

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BattleHack Tokyoで2位に選ばれたのは「SNSHOT」というイベント向けのオンサイトプリンタだ。結婚式やパーティー、イベントなどに設置するのを想定したもので、プロトタイプとしては厚紙で作ったケースにiPadを入れただけのものだったが、会場で撮影した写真にロゴやスタンプを入れた上で、その場でプリントアウトしてくれる。写真はTwitterやInstagramで共有したものでよくて、EstimoteによるiBeaconを使ってユーザーは自分の写真を受け取れる仕組み。こちらのチームも、実は創業準備中のスタートアップ予備軍だった。

3位に選ばれたのは、「Cheers」。Chrome拡張として実装されていて、GitHub上のプロジェクトに「寄付ボタン」を設置することができる。バグ修正や機能実装のリクエストごとに寄付することができ、早く直してほしいバグがあるなどした場合に、それを望む人がパッチのコミッターに対して対価を支払うことができる。これまでであれば善意とか遠回りなインセンティブで結びついていた利用者と開発の間で、対価を直接流すことでオープンソースのエコシステムが変わる可能性がある。報酬が逆説的に内発的動機付けを低下させる「アンダーマイニング効果」は心理学では古くから知られていて、こうした明示的な報酬との結び付けがエコシステムにマイナスの影響を及ぼすことはないのか? というのは気になるけれど、とても興味深い提案だと思う。ちなみに、ぼくは15年ほど前にフリーソフトウェア活動家でFree Software Foundation代表のリチャード・M・ストールマンにインタビューしたことがあるのだけど、その時に彼が口にしていたのは、まさにこの開発モデルだった。

日本はアイデアに対する評価が甘め?

ハッカソンの審査員には、ぼくのほかに、Braintreeシニアディレクターでハッカーのジョン・ルン氏、BEENOSの投資家 前田ヒロ氏、Asakusa.rb創設者でRuby on Railsコミッターの松田明氏の3人がいた。

審査は各チーム10点満点で、アイデアの新規性、市場性、実装レベルで評価した。それで驚いたのは、ぼくと松田氏という日本育ちが付ける点数が中央の5点に寄りがちだったのに対して、ジョンと前田氏の評価は1点が少なくなかったということだ。「狙いが全く分からなかった」「動いてなかったよね」「誰が使うのか理解不能」「そもそも仮定が成立してない」「ほぼ同じものが2年前からあるのに調査不足すぎる」というような評価だ。

ちなみに前田氏は日本育ちだがインターナショナルスクールで英語で教育を受けているので、英語のほうが日本語よりも得意という投資家だ。投資先も最近は完全にグローバルになっている。

ぼくの評価は最低でも3点、多くは5点から7点の間としていた。いちばん良いのが8点だった。5点というのは「すでに確立したジャンルで何も新味はないけど、いちおう何かが動いていた」「新規性はないが日本では市場はあるかも」とか、そういうものも含まれる。

ぼくは審査員としての自分のガラパゴスっぷりを痛感してしまった。つまり、日本市場で日本のハッカーたちが作っているという前提でプロダクトを「甘く」見ていて、日本市場で可能性があるかどうかを考えていたのだ。

すでに海外に類似スタートアップやプロダクトがあっても、日本ではこれからという市場もある。だから、ぼくとジョンで評価が大きく違ってくることがあった。でも、Braintreeのハッカソンは14都市から勝ち残ったチームがシリコンバレーで決戦に臨むので、日本市場なんて関係がない。日本市場でしか通用しないプロダクトを作る、そういう目線のチームを日本から代表としても良いのかと言えば答えはノーなのだった。

これは、ふだん日本の起業家と会っていても同じことを感じている。「これって、アメリカのxとyに似てますね」とか「abc市場だとグローバルにはxとyがありますよね」という話をすると、キョトンとする起業家が少なくない。別に海外のスタートアップやプロダクトに超詳しくなくても良いとは思うが、自分が作っているプロダクトの競合や、技術・市場動向を知らないというのではガラパゴスそのものだ。

アイデアの新規性に対する要求が日本では低いのではないか? 日本という個別市場に依存しない普遍的なアイデアで勝負することを、ハナから諦めているところがあるのではないか?

確かに新しいことが価値とは限らない。まだ日本市場になければコピーキャットと言われようが、やる価値はある。そもそも、すでに海外のどこかで証明されたビジネスモデルやプロダクトで、まだそれに相当するものが日本に存在しないのであれば、それを提供することも大事だ。成功する起業家が増えることが重要なのだとしたら、やれ「1000億円企業を作れ」だとか、「ゴー・グローバルだ!」と言い過ぎるのもいかがなものか、むしろやるべきことは起業のハードルを下げて小さな成功事例をたくさん増やすことではないかとの意見も良く耳にする。ぼくも同感だ。ただ、そのことで必死に新しい何かを考えるという基礎体力やメンタリティーが削がれているという面がないだろうか。ハッカソンで多くのチームやプロダクトを見てきて、そんなことを考えている。

TechCrunch Disrupt San Franciscoのハッカソンも過去2回ほど現場で見ていて、ハッカソンにバカげたアイデアや意味不明のプロジェクトが入るのは普通のことだとは思っている。お祭りだから、それもいい。ただ、それに対して10点満点中1点だとハッキリと言うことは、審査の公平性という意味でも、もともと市場は厳しいものなのだからスタート地点だって本音で「これって誰か使う人いるの?」「これ、もうあるよね」と言うのは大切なことなのじゃないだろうか。と、審査員としての我が身のガラパゴス感を反省したのだった。内向きに褒め合うぬるい文化では、結局大きく勝てるチームもスタートアップも出てこないだろうと思う。もう1つ言うと、プロダクトの評価と、それを作った人の評価を切り分けて考えるということをしたほうがいいのじゃないかということも思ったりしている。

TechCrunch Disrupt NYハッカソン:Gruberieはウェイターの代わりに注文を取ってくれるモバイル・アプリ

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TechCrunch Disrupt NYで実施されたハッカソンの成果のひとつはリリース後24時間たたないうちに早くも現実の顧客を獲得した。Gruberieはアプリを開発し、サイトを立ち上げただけでなく、ニューヨークのダイナーにGimbal Beaconを経由してこのアプリをテストしてみるよう説得することに成功した。

Gruberieをサポートしているレストランに入って席に着いたら、スマートフォンを取り出してアプリを起動する。するとアプリはGimabal位置ビーコンを通じてユーザーのいるレストランを特定し、そのメニューを表示する。食べたい料理を選んで支払情報を入力する(最初の1回だけ)。これで注文と支払が完了だ。しばらくするとテーブルに料理が運ばれる。水と食器を運んでくるときを除けば人間とのやりとりは一切介在しない。

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このサービスはGimbal、Atlantic.NetMasterCard Simplifyの各サービスをベースにしている。開発チームのSven HermannとVincent Volckaertはマンハッタンを歩きまわってこのサービスのテストに協力してくれるレストランを探した。最初の何件かには断られたが、Skylight Dinerが店内の45のテーブルにGimbalビーコンを設置し、メニューをGruberieデータベースに登録するのに協力してくれた。

このチームは以前にもハッカソンに挑戦している。昨年のDisrupt New York eventでは3位に入賞した。前回はその場かぎりのお楽しみプロジェクトだったが、Gruberieは優れたインフラが利用でき、すでにユーザーも獲得できているので、チームは今後も継続的な事業にしていきたいと語った。

アップデート: GruberieはAtlantic.Net、MasterCard、Gimbalからスポンサー特別賞を受賞した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

TCハッカソンに感情認識ロボ「Pepper」が3体も来る! ハックは意外に簡単

ソフトバンクの感情を認識するロボット「Pepper」が、11月15日、16日の週末に予定している「TechCrunch Tokyo Hackathon 2014」に3体ほど来ることになったのでお知らせしたい。

Pepperは現在、開発者向け先行予約として200台限定で出荷準備中だが、実際には2000台を超える申し込みがあって人気となっているそうだ。本体19万8000円、開発者パッケージとしてメンテナンス費を含む月額9800円という比較的高額な価格設定でも、これだけの数を受注しているのにはワケがある。それは、大手企業の新規事業開発部門や、スタートアップ企業、教育や介護での応用を模索する人々などからの引き合いが強いから、という。ソフトバンクの孫社長の当初のプレゼンでは、家庭向けということを強調していたが、介護や店舗での案内係など、今はPepperとビジネスをつなげるという応用に注目が集まってる。

ぼくは、ほかのロボットをプログラムしたことがないので比較はできないのだけど、Pepperを使ったビジュアル開発環境「Choregraphe」は想像以上に手軽だった。開発環境のインストール方法は、ここのQiitaのページにまとまっているけれど、統合開発環境をインストールして同一セグメントのWiFi接続で開発環境を入れたPCをPepperに接続すれば、コードのアップロード準備は完了。統合開発環境にはエミュレーターで動くPepperも入っているので、簡単な動作確認はその場でできる。

開発は「ボックス」と呼ばれる単位で行う。ボックスの1つ1つは、ロボット動作やセンサー入力、条件分岐やループといった制御構造に対応していて、このボックスをドラッグ&ドロップして線で繋いでいくことでプログラムをする。ボックスには具体的には、オーディオ、振る舞い、コミュニケーション、データ編集、フロー制御、LED、数学、モーション、センシング、システム、テンプレート、追跡、ビジョンなどに分類して用意されている。それぞれのボックスには受け付けるインプット・アウトによって、色分けがされていたりして、何となくプログラミング言語の型を思わせるものもあるし、switch/caseのような制御構造で「音声を聞いて、答えがyesならA、noならB」というようなボックスもある。プログラミング経験者ならスラスラとブロックを並べられるだろうし、そうでなければ、むしろ良いプログラミング入門となりそうな印象だ。

ボックスをダブルクリックすると、その場でテキストエディタが開いてPythonで10〜30行程度のコードが表示される。このコードを直接カスタマイズすることでボックスの動作を変えられる。ボックスには、onLoadとかonUnloadといったフックとなるメソッドも用意されていて、JavaScriptなんかのモダンなスクリプト言語で開発経験があれば拡張は簡単にできそう。複数のボックスをグループ化して、新たなボックスを定義するなど抽象化もできるが、これまでの実例だと最大150個程度のボックスを使って複雑な動作をするプログラムを作った人もいるのだとか。

で、どんなアプリができるのか。

たとえば顔認識が搭載されているので、学校の校門に立ったPepperが登校して来る子どもたちの顔を認識し、父母に「学校に到着しました」とメールする仕組みを作ったような事例だったり、ヤマハのボーカロイドを使って、Pepperに何か言葉を投げかけると、その言葉を使った歌を作ってくれるというようなアプリがこれまで実装されたという。視覚と聴覚センサー、それに身振りが加わったハブのような存在として、各APIを繋いで何かを利用者に見せるエージェント的な動きをPepperが果たすというのは分かりやすい応用例。たとえば、占いのアプリをケータイでやると当たり前すぎるが、「占ってます、占ってます! キターッ!」という表現をつけるだけで面白いし、Pepperの担当者によれば、これが意外にハマるそうだ。人の顔写真を撮影して、それを絵画風にレタッチするようなサービスも、Pepperに画家の仮装をさせることで、UIが人型である魅力というのは出てくるという。PCとキーボードの組み合わせがネットを使う最適なデバイスじゃなかったんだね、結局、というのがモバイルシフト時代の共通認識だと思う。同様に、5年や10年経ったときに、天気予報やニュースを見たり、調べ物やレストランの予約をするようなサービスに適したUIは「タッチ画面なんかではなく人型UIだったんだね」ということになる可能性もあるのかなと思う。

ちなみに、今は開発者向けに出しているPepperだが、2月出荷を予定している一般出荷向けPepperには基本的な会話機能に加えて、アプリ数十個が最初から搭載される予定という。ちょうど、iPhone 3Gのローンチのようなもので、アプリストアもオープンして、アプリのエコシステムがスタートする。2月時点で有償アプリの仕組みを提供するかどうかは未定で、これは来年の夏以降となる見通しという。

なお、Pepperを使った開発をTechCrunch Tokyoハッカソンでやってみたい! という人は、9月に行われたPepper Tech Festival 2014のページで、開発者向け資料やクリエーターショー、Pepper技術セッションなどを見て予習しておくように! そして、以下から参加を申し込んで頂ければと思う。

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SDカードサイズの開発ボード「Edison」をTCハッカソンで20個ご用意!

TechCrunch Tokyo 2014の前夜祭的な位置付けで、11月15日、16日の週末に予定している「TechCrunch Tokyo Hackathon 2014」の開催まで2週間ちょっととなった。200人が入れる会場を24時間借りた大きめのハッカソンで、すでに160名を超える方に参加登録を頂いている。特別参加エンジニアとして増井雄一郎氏、堤修一氏の参加が決まっているほか、ギークな女優、池澤あやかさんがガチでハックしに個人参加してくれることになっている。

今回のハッカソンは規模が大きいということもあって、特にテーマを設けていない。すでにAPIやサービス、モジュールを提供してくれる企業は多く集まっているのだけど、ここで1つ、ハードウェアをやりたいWeb開発者に朗報があるのでお知らせしたい。

大々的なモバイルシフトと、それに伴うARM攻勢で最近スタートアップ界隈では存在感が薄い気もするインテルだが、ここに来て、やたらとハッカビリティの高そうなSDカードサイズの開発ボード「Edison」(エジソン)を、お正月のCESで発表して注目を集めたのは皆さんご存じの通り。Edisonは端的にいえば、Intel Atom相当の500MHzのデュアルコアプロセッサに1GBのメモリと4GBのフラッシュメモリ、無線モジュール、各種標準I/Oが全部詰まった小型Linuxコンピューターで、5年ぐらい前のPCがSDカードサイズになった感じだ。

国内でも10月末に出荷が始まって、もう手にした人もいるかもしれないが、秋葉原のパーツショップの中には、初回入荷分を売り切ったという話も早速聞こえてきている。今回、TechCrunch Tokyoハッカソンのために、Edison(Arduinoボード)20個、Galileoボード20個、Grove Sensor Kitなどをインテルから提供いただけることが決定した。Edisonを使ってプロダクトを作ったチームには、ハッカソン終了後もそのまま作品としてハックに利用したデバイスを、お持ち帰りいただける。

ちょっとEdisonについて、何が話題となっているのかを簡単に紹介しておきたい。

モノ系のIoTブームを支えているのは、広くはメーカーズムーブメントだが、テック系で言えば、3Dプリンタの登場や、ArduinoやRaspberry Piといった開発ボードの普及だろう。プロトタイピングが身近になり、それまでハードウェアに手を出さなかったエンジニアにまでハンダごてを持たせ、サードパーティ製拡張ボードを含めたエコシステムを育てたのはArduinoの功績だろう。

先行するArduinoやRaspberry Piに対して、Edisonは何が違うのか?

まずサイズが小さいことが挙げられる。開発ボードでありながら、そのままスマート・トイなどに組み込めるというのが大きく異なる。搭載するWiFi(11a/b/g/n)やBluetooth(4.0/2.1)の無線チップは国内の認証を経ているので、Kickstarterでプロトタイプのイテレーションを回すような場合でも、Edision搭載のまま出荷も可能という。インテルのプロセッサといえばバッテリ食いのイメージもあったりしたが、Edisonはボード全体で1W程度の消費電力なのでリチウムバッテリでもそこそこ動くのだそうだ。12月に追加リリース予定のMCU(Micro Controller Unit)開発環境を使えば、I/O部分をMCUでコントロールして、プロセッサ部分は普段は寝かせてしまう省電力な設計も可能になるという。

Edisonはモジュール単体でも発売するが、開発ボードとして使う場合には、ブレークアウト基板キットか、Arduino変換基板キットを利用する。すでにEdision向け拡張ボードもあるが、Arduinoキットを使えば、Arduino向け拡張ボードである「シールド」がそのまま使えるので、Arduino向けサードパーティモジュールと、Linuxを使った開発ができるモダンさを備えているということになる。OSとしてYocto Linuxを搭載しているが、Debian GNU/Linuxの稼働や、その上でのGo言語の稼働も確認されているなど、x86の開発エコシステムが使えるのが非組み込みエンジニアにとっては魅力だろう。Node.jsやPython、HTML5による開発もできて、たとえば、スマート・トイでiPad向けUIを作る場合、HTMLとJavaScriptを使ったりもできるという。このほか開発言語として「Wyliodrin」というScratch風のビジュアル開発言語も利用できるそうで、学校教育を意識している面もあるそうだ。

というわけで、「初物」に近いEdisonを使ってハックしたいエンジニアを、TechCrunch Tokyo Hackathonでは募集中だ。まだチケットには余裕があるので、是非参加を検討してほしい。

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Disrupt Europe 2014ハッカソン:優勝はInfected Flight、次点はAppilepsyとSeeusoon

これほどエキサイティングなことはない。昨日(米国時間10/19)ロンドンのオールドビリングスゲートで行われたDisrupt Europeハッカソンには、数百名のハッカーが集まった。彼らは過去24時間ダンジョンのような会場で休みなく働き、気の利いた楽しくスマートなハックを作り上げた。89チームが1分間の短いデモを壇上で披露し、他のハッカーや審査員たちを魅了した。

しかし、グランドプライズを持ち帰れるのは1チームだけだ。説明はこのくらいにしてDisrupt Europe 2014 ハッカソンの勝者を紹介しよう。

最優秀賞:Infected Flight — Disease Mapper

Infected Flightは、病気の蔓延をモデル化するクロスプラットフォームのウェブアプリだ。チームメンバーで現在博士課程にいる一人が作った微分方程式に基づいている。このハックは人口を4つのグループに分ける:susceptible[高感受性]、exposed[接触]、infected[感染]、recovered[回復]。

舞台裏でInfected Flightは、実際の飛行経路データ(出発都市、出発空港、飛行時間、到着空港、到着都市)を分析して、利用者の国が病気の強い影響を受けているかどうかを調べる。

パラメータを入力したり、感染状態を時間を追ってシミュレーションしたりできる。医療専門家向けのユースケースだったのかもしれないが、ステージでのデモは実に洗練されていた。

次点その1:Appilepsy

Appilepsyは、加速度計データを高度なアルゴリズムを用いてリアルタイムに分析して、痙攣性てんかん発作の発症を検出するモバイルアプリだ。発作が起きるとテキストメッセージでユーザーの緊急連絡先に通知を送る。これは、クールでかつ実用的なハックだ。

次点その2:Seeusoon

Seeusoonは、長距離恋愛カップルの出会いを支援する。フライトを監視して、同じ都市でロマンチックな週末を楽しめるよう通知する。ユーザー体験は実に滑らかで、Seeusoonの中から直接航空券を買うこともできる。

最後に、われらが審査員団はiComicの説得力あるハックに特別賞を授与した。彼らはトップ3に入ることはできなかったが、壇上で紹介する価値があった。

勝者は賞金3000ポンドを受け取り、上位3チームは火曜日に再びステージに上ってここロンドンのDisruptメインステージでプロジェクトのデモを行う。しかし、それだけではない ― 他のハックもわれわれのAPIスポンサーから豪華な賞品を持ち帰った。ハッカソンの主なスポンサーは、ChallengePost、CrunchBase、Esri、Evernote、Intel Mashery、Matrix、英国司法省、Nexmo、Paymill、Twilio、Yammer、およびZalando。それぞれのAPIやサービスをいちばんうまく利用したユースケースを選んで賞品を授与した。そしてもちろん、スコアを3点以上獲得したチームは、メインのDisruptカンファレンスの参加チケットを2枚手に入れる。

今回の審査員は、政府デジタルサービスエンジニア、Camille Baldock、Startupbootcampのパートナー・プログラムスペシャリスト、Eric Brotto、Virgin Managementの投資家、Claudia De Antoni、Techstarsのディレクター、Tak Lo、およびFutureLearnのデベロッパー、Melinda Seckingtonの面々だった。

以上! 今回のハッカソン参加者全員におめでとう。一から最後まで何かをデザイン、開発していくほど興奮させられるものはない ― 苦労の連続だっただろうがみんなは成し遂げた。Disrupt Eurpopeカンファレンスは明日ロンドンで開かれる。

Disruptのチケットはまだ残っている。ここで購入可能だ。

アップデート:Infected Flightチームの受賞後インタビューはこちら。


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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


Laplockは、離席中にノートパソコンの電源ケーブルが抜かれると通知を送るアプリ

Laplockは、TechCrunch Disrupt Londonのハッカソンで生まれたばかりの小さなアプリだ。Martin Saint-MacaryとIvan Maederのふたりが、24時間休みなく働いてMacをロックするための誰にでも使えるアプリを作った。しくみはこうだ。

LaplockはMacのメニューバーに置かれる。インストールして、自分の携帯電話番号かYoアカウントを入力すれば準備完了だ。それ以降、あなたがノートパソコンのふたを閉じて席を外している間に、誰かが電源ケーブルを抜くと、スピーカーからアラーム音が鳴り響き、携帯電話に通知が送られてくる。
通知は、短いテキストメッセージまたはYoで送られる。うまく届かない場合、アプリは電話をかける。この通知を送るために、ハッカーたちはNexmo APIを使用した。

Saint-Macaryは、ベルリンのDisruptハッカソンで次点に入ったチームのメンバーだが、Maederにとっては初めてのハッカソンだった。ふたりは昨日会場で出会い、すぐにこのプロジェクトを開始した。

「2日間フルタイムで何かをやり通すのはすばらしいことだ。普段そんな機会はない」とMaederは言った。

私は彼に少しは寝られたのか尋ねた。椅子をふたつ並べて何時間か眠ったそうだ。「このハッカソンは、10日間にも感じられた」と彼は言った。

結果を見る限り、その努力は報われたようだ ― 私はこの後すぐインストールするつもりだ。アプリはLaplockのウェブサイトで今すぐダウンロード可能で、Mac App Storeにも申請中。

良い仕事をしたふたりには、昼寝を楽しんでほしい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


ギークな女優、池澤あやかがTechCrunch Tokyoの司会として登場するぞ!

プログラミングができるギークな女優として知られる池澤あやかさんに、11月18日、19日のTechCrunch Tokyo 2014の司会として登壇いただけることが決定したのでお知らせしたい。

この間、ぼくはトヨタの主催するハッカソンに審査員として参加したのだけど、隣にギークなタレント・女優で知られる池澤あやか(@ikeay) が同じく審査員として座っていた。プログラミングができる女優ということで、ぼくは前から池澤さんのことを知っていたのだけど、色々と話をしてみて驚いた。

Webサイトやサービスなど、何かを作るのが好きだというので、「でも本業の仕事で使うということではないですよね?」と水を向けると、「仕事ではシナトラを使ったことがありますね」と来たもんだ。Sinatra!

ご存じない方のために説明すると、SinatraというのはWebサービスやモバイルアプリのバックエンドを作るためのツールとして、スタートアップ企業の間でも定番となっている「Ruby on Rails」の弟分のような存在。ササッと何かを作るときなんかに良く使われる玄人ごのみの開発者向けソフトウェアのことだ。オープンソースのプロジェクトが集まるGitHub上で池澤さんが投げた、このプル・リクエスト(オープンソースのプロジェクトに対してコードの変更を要求すること。最近流行のオープンソースへの貢献のやり方)を見れば、ガチでコードを書いていることも分かったりする。GitHub上で活動している女優というのは、ぼくは池澤さんの他に聞いたことがない。オープンソースは、いまだに男性が多い世界のままで、コミット・ログ(変更履歴)に並ぶ写真もギークなアバターや、むさ苦しい顔が多かったりする。だから以下の「アイドルでーす!」という爽やかな感じのアイコンが混じってる様は異様ですらある。なんて爽やかな……。

池澤さんは1991年生まれの23歳。この3月に慶應義塾大学環境情報学部を卒業していて、実は研究室でもテックなモノづくりをしていたそうだ。以下の写真にあるのは、池澤さんがArduinoで作ったメダカの水槽デバイスだ。メダカというのは視覚情報を頼りにして水の流れに乗る性質があるそうで、これを逆手にとって、メダカを騙すパターンを水槽内部壁面に表示させるという。水槽に向かって手をかざすことでパターンが変化し、メダカが泳ぐ方向を人間が操ることができるARデバイスなのだそう。ぼくはご本人に動画を見せてもらったのだけど、「メダカをハックするんですよ!」と本当に楽しそうに語る。

ギークである。女優である。

おっと、女優活動のほうのご紹介をしていなかった。池澤さんは数年に1度という不定期で東宝芸能が実施している女優の登竜門「東宝シンデレラ」のオーディションで2006年に審査員特別賞受賞し、その年に映画『ラフ』で女優としてデビューしている。映画『あしたの私のつくり方』(2007年)、映画『デトロイト・メタル・シティ』(2008年)、ドラマ『斉藤さん』(NTV/2008年)、土曜ワイド劇場『刑事殺し』(ABC/2007年〜2008年)などに出演してきている。最近だと「NHK高校講座〜社会と情報〜 」にMCとして出演しているそうで、テクノロジーが語れる女優として活躍中だそうだ。

と、いうことで、今年のTechCrunch Tokyo 2014は、TechCrunch Japan編集長のぼく(西村賢)と、池澤あやかさんの2人で司会・進行を務めさせて頂こうと思っている。皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!

あ、そうそう、もう1つ。TechCrunch Tokyoのイベント本編の前の週末に開催を予定しているTechCrunch Tokyo Hackathon(11月15日、16日)に池澤さんをお誘いしてみたら、「ハッカソンって参加したことないんですよね。個人参加で行きます!」というお返事だった(なんと!)。すでに告知しているように、今回のハッカソンには特別参加エンジニアとして増井雄一郎氏と堤修一氏の参加も決定しているので、だいぶ豪華な感じのイベントになるのではないかと思っている。まだハッカソンのチケットのほうは少し残りがあるので、参加希望の方はこちらからどうぞ。

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増井雄一郎氏、堤修一氏も参加決定、TechCrunch Tokyo Hackathonは空き枠あり!

11月に開催するTechCrunch Tokyo 2014だが、このイベント本編ともいえる11月18日(火)、19日(水)の2日間に先立つ週末の11月15日、16日の土日に「TechCrunch Tokyo Hackathon 2014」を開催予定というのは、すでに告知の通り。東京・台場のコワーキングスペース「MONO」を借りきって200人規模での開催を予定している。

すでにたくさん参加表明を頂いているハッカソンだが、特別参加エンジニアとしてゲストをお招きしたのでお知らせしたい。増井雄一郎(masuidrive)氏と、堤修一氏だ。2人にはエンジニアとして最初からチームに入り、ブレストや開発、プレゼンなどをしていただくことになっている。

masuidrive、もしくは「風呂グラマー」としても知られる増井雄一郎氏は、現在、料理写真共有サービスの「ミイル」の元CTOで、現在は店舗向け予約受け付けサービスの「トレタ」のCTOとして活動している。PukiWikiなどのオープンソース活動や早い次期からRuby on Rails関係の開発で知られていて、2008年4月にはアメリカでBig Canvas社を設立して、iPhoneアプリなどの開発を行うなど、そのときどきに「来そう」なテクノロジに早く飛びつくタイプだ。そして2010年12月から2年弱は、米Appcelerator社のテクニカルエバンジェリストを務めるなど、ごりごりのエンジニアというよりも、会社も含めて新しいアプリやサービスを作る活動を続けてきた人でもある。最近では個人でメモサービスの「wri.pe」やRubyでiOSアプリのネイティブアプリが作れる「MobiRuby」など話題になるプロダクトをリリースしている。ハッカソン向きのプロダクト指向の強いエンジニアだと思う。

もう1人の堤修一氏は、昨年のTechCrunch Hackathonで講演をお願いして、「スキルなし・実績なし 32歳窓際エンジニアがシリコンバレーで働くようになるまで」というタイトルで以下のような発表をしていただいた。このスライドは昨年ネット上で話題となった。

堤氏はiOS方面では良く知られたエンジニアで、500 Startupsに参加するグロース・プラットフォーム「AppSocially」の元開発者でもある。かつて「スキルなしのおっさんだった」というが、京都大学大学院で情報学をやってNTTデータやキヤノンで音声・画像処理の研究開発をやっていたという時点で、「スキルなしはねぇだろ」とツッコミたくなるわけだが、それにしても着実にステップアップしている感がすごい。2014年に独立してからは、iBeaconを実店舗に導入する仕事や、BLE関連の仕事として、WHILLやMoffといった日本発のハードウェアスタートアップに携わるなど多くのプロジェクトをこなしているそうだ(ブログ1ブログ2)。どうやったら、そうやって面白いプロジェクトに関わってエンジニアとして生計を立てて行けるのかについて考察した「とあるシングルスタックエンジニアの生存戦略」(おもしろく働くための、わらしべ長者方式)もエンジニアであれば必読だ。

さて、TechCrunch Tokyo Hackathonだが、まだチケットに余裕がある。ガチでプロダクトを作っている増井氏、堤氏らと楽しくハックしたい人は是非早めの参加登録をお願いしたい。

 


11月のTechCrunch Tokyoでは週末2日間のハッカソンもやります! 参加者募集開始!

11月に開催するTechCrunch Tokyo 2014だが、今年もまたハッカソンを行うことにしたので、お知らせしたい。イベント本編ともいえるTechCrunch Tokyo 2014は11月18日(火)、19日(水)と2日間の予定だが、「TechCrunch Tokyo Hackathon 2014」のほうは、それに先立つ週末の11月15日、16日の週末の土日は東京・台場のコワーキングスペース「MONO」を借りきって200人規模で行う予定だ。200人というのは、たぶん日本のハッカソンとしては最大規模といえる参加者数だ。

今日から参加者の募集を開始したので、ぜひ早めの登録をお願いしたい。参加費は1人5000円。2日間ハックし続けるのに必要な5回分の食事をご用意させていただく。会場は24時間使えるので、土曜の朝10時から日曜夕方までひたすらハックしても良いし、チームメンバーと徒歩圏内にある大江戸温泉でビールを飲みながら「企画合宿」をやっても良いと思う。200人だと全部で40〜60チームということになるが、優秀賞に選ばれた上位5チームには、TechCrunch Tokyo 2014に無料招待させていただくほか、特別セッションで各5分の発表もしてもらえればと考えている。

ひと口にハッカソンといっても色々ある。テクノロジーカットで、特定の技術が流行の兆しを見せているので、興味のあるエンジニアで集まってハックしようという、割とハッカソンの原型ともいえるものがある。これはシード・ニーズという分類軸でいえば、シード側のハッカソンだ。逆に、大学や起業サークルなどが行うビジネスコンテスト的な、ニーズ側に近いハッカソンもある。また最近ではネット企業が人材獲得や自社技術の宣伝、外部の知恵を取り入れたいというオープンイノベーション的発想から主催されるハッカソンも増えてきている。

TechCrunch Japanがハッカソンを主催する理由は2つある。

1つは、日本のハッカーたちにこそ、もっとスタートアップ界隈に目を向けてほしいと考えていること。もう1つは、テックとビジネスの交差点を用意することで、そこで化学反応が起きることを支援したいと考えていることだ。

そこで今回のハッカソンでは参加者の役割を3つに分けて、それぞれチケット販売枚数に上限をもうけたい。エンジニア枠が130人、デザイナ枠が35人、企画担当枠が35人だ。ハンダごてでもIDEでもテキストエディタでも何でも良いが、実際に手を動かせるエンジニアが主体のハッカソンにできればと考えている。主催者や審査員として、ぼくは結構な数のハッカソンを見てきたが、チーム5人のうち1人しか手を動かす人がいないというような状況もあった。そういうのは異常だと思うのだ、下の写真のように。

もちろんエンジニア以外のデザイナーや、ディレクター・企画担当者にも来て欲しい。

ハードウェアスタートアップMoffを創業した高萩昭範氏は、2013年に大阪で行われたハッカソンの場でできた、企画、エンジニア、デザイナーの3人がコアメンバーとなっているのだと、以前ぼくに話してくれた。主催者による割り振りによって、たまたま同じテーブルの席に座った、その時のメンバーが後に起業したという。そんなことがあるのかと思う人もいるかもしれないが、海外だとハッカソンから起業というのは時々聞く話ではある。

ハッカソンには個人での参加も、チームによる参加もオッケーだ。個人で来ても、ちゃんと初日の朝に「自分が作りたいもの」をベースに相性の良さそうな人たちと組むチームビルディングの時間をもうけるので、これが初めてだという人も是非参加を検討してもらえたらと思う。

なお、API協賛企業やスポンサー企業も同時に募集しているので、うちのサービスのAPIを提供したいとか、モジュールを使ってほしいといった方がいれば、tips@techchrunch.jp 宛てにご連絡いただければと思う。ちなみに、今年春に大阪で行ったTechCrunch Hakathon Osaka 2014では、こちらの記事にあるようなAPIを企業にご提供頂いた。


ネットワーク経路の匿名化を行うTorをLinuxボックス化したoRouterが登場

長らくTechCrunchのハッカソンに参加してくれているKay AnarとGilad Shaiが、今回はハードウェア・ハックを見せてくれた。LinuxベースのRaspberry Pi風コンピュータを利用して、Wi-FiによるネットワークアクセスをTor経由で行うようにするものだ。プロダクトを「oRouter」という。ソフトウェアのダウンロードは無用となり、またiPhoneなどのモバイルデバイスでもTorを利用できるようになる。

Kayによると、このプロダクトのアイデアは技術に詳しくない人との会話から生まれたのだそうだ。その友人に「簡単に取り付けられて通信を安全にするツールはないのか」と尋ねられたのだそうだ。その質問を受けて「oRouter」のように簡単に利用できるデバイスがないことに気付いたのだとのこと。

「oRouter」はTexas Instruments製低電力ワンボードコンピュータや低電力USB Wi-Fiドングルなど、ラジオシャックで売っているパーツを使って組み立てられている。5ボルトの電圧で動作し、ポータブル充電器で充分対応可能だ。ハッカソン会場で行われたデモでは、32回線の同時接続にも対応することができた。

「oRouter」の使い方は非常にシンプルだ。何も設定など必要なく、電源を入れてoRouterの提供するWi-Fiネットワークに繋ぐだけだ。ソフトウェア版のTorを使う場合と異なり、追加のソフトウェアなども必要ない。ウェブのブラウズも、オンラインサービスを利用する場合もTor(Wi-Fi経由)を利用することになり、通信の安全性を高めてくれることとなる。安全性をさらに高めるため、oRouterのMACアドレス(ハードウェアに付されるアドレス)も、10分毎に変更されるようになっている。

開発者たちは、さらに進化させてさまざまな設定ができるようにもしたいと考えているようだ。必要に応じた機能強化などを行えるようにしたいということの様子。

もともとは、ハッカソンの課題としてちょうど良いレベルのものだという考えもあったようだ。しかしいざ作ってみるといろいろな可能性も見えてきたようだ。投資を受けたり、あるいはクラウドファンディングによって実際に販売していく方向で考えていきたいと話してくれた。

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Maeda, H


Android直挿しボードでIoTの可能性も見えた!? TechCrunch Hackathonの優秀作品を紹介

TechCrunch Japanは大阪市との共催で4月12日、13日の2日間にわたって大阪でハッカソンを開催した。イベントには約50人の開発者やデザイナが集まり、12チームに分かれてプロダクト作りを行ったのだが、これが結構「大阪な感じ」だった。

どう大阪だったのかと言えば、プロダクト発表のデモで、いきなりボケ満載の寸劇が始まるのは当然として、例えばステージに登壇した新生チームに「このチームのプロダクトリーダーは誰ですか?」と問えば、「はーい!」と5人が一斉に手を挙げてしまうだとか、チームビルディングがなかなか終わらないなと思って話を聞けば、「オレはこれが作りたい」「オレのアイデアはこれだ」というのが噛み合わず、「だったらキミはキミの道を行けばええやんか、オレはオレがやりたいことをやる」という感じでまとまらなかったりしたといった具合。

大阪・梅田にある大阪イノベーションハブに50人ほどが集まった

2日間でチームビルディング、アイデア出し、実装を行った

デバイスを扱うハッカソン。中にはロボを扱うチームも

全国各地でハッカソン主催の経験があり、今回の運営にも協力して頂いていたMashup Award実行委員会の伴野智樹氏によれば、「やっぱり大阪は違いますね……。東京だったらさっさと譲り合うところです」と苦笑いしていた。形式そのものに対する慣れがなかったということもあったかもしれないが、大阪人のDNAというようなものを感じたハッカソンではあった。リーダーシップの欠如が日本社会の宿痾のように言われる昨今、頼もしい話ではないか。

さて、今回のハッカソンは多くのデバイスメーカーやサービス提供企業の協力を得て「IoTの可能性を探る」というテーマで行った。開催告知記事に書いたように裏のテーマは「MVP」。結果としては、12チームとも明確な課題意識と、ぼんやりした可能性を広げすぎずにシャープなフォーカスを持ったプロトタイプ実装を行ったという意味で興味深いイベントになったと思う。

ポスターや展示用ディスプレイを「見た人」の数をグラフ化

審査の結果、最優秀賞は福本晋也氏(エンジニア)と安川達朗(エンジニア)による作品「ポスタライズ」とさせていただいた。

ポスタライズは、ポスターなどの印刷物が、実際にどれだけ見られたかを計測・解析するプロダクトだ。ネット系のサービスでは、利用者が何をどれぐらい見ているか、どう行動したのかというのは数値化して計測できる。オフラインのポスターなどはそうではないので効果測定が難しい。これを解決するために、ポスターに対して額縁のような形でデバイスを付加して顔認識を行う、というのがポスタライズのアイデアだ。顔の角度認識の技術を使って「見た」ことを特定する。収集したデータは時系列のデータとしてデータベースに保存してグラフ化する。利用したのは、オムロンが最近評価用モジュールとして提供している人認識モジュールの「HVC」というデバイスだ。

優勝したポスタライズは、ポスターの枠として顔認識モジュールを実装するアイデア

実際のデモでは、チラッとポスターに視線をやるとブラウザ上に実装された集計用の折れ線グラフにピコンと「1ビュー」のぶんだけ山型に表示されるという素朴なものだったのだが、これは2つの意味でIoTの未来を感じさせてくれるデモだった、というのがぼくを含めた審査員たちの意見だ。

審査員の1人で、みやこキャピタル ベンチャーパートナーの藤原健真氏はポスタライズがデジタルサイネージでないところに可能性を感じると指摘した。実は藤原氏自身、最初の起業が街中に設置する大きなデジタルサイネージ事業だったそうだ(後に売却)。非常に高価なデジタルサイネージのソリューションは、すでに世に出ている製品も少なくないし、性別や年齢を推定して推薦ドリンクを切り替える自動販売機なんていうものもある。しかし、ポスタライズは、小さく、既存の紙ベースのポスターや展示物にアタッチするデバイスでしかない。

オムロンは、元々こうしたソリューションで使われるエンジンを企業向けに提供している。HVCは、それをモジュール化したところがミソで、まだ3月に発表したばかり。ハッカソンで使った評価用ボードは約7万円とお高いが、量産すれば数千円の前半になるという(もちろん出荷数次第)。とすれば、BLEモジュールをくっつけてショーウィンドウの食品サンプルに埋め込むという未来も薄っすら想像できる。カフェであれば、どのスイーツに目を留めて顧客は入店しているのか、というようなことが計測可能になるかもしれない……、という会話がその場で生まれて来たのは、まさに今回のハッカソンの趣旨である「IoTの未来を探るためのMVP実装」だったと思う。

ちなみにオムロンのHVCは、今回のハッカソンでは大人気のデバイスだった。手のひらに乗る小さなモジュールながらカメラ付きで10種類のアルゴリズムが使える。3月20日に発売したばかりで、今のところ企業向けにしか売っていないのが惜しい。人間や顔を認識し、「どちらを向いてるか / 誰なのか / 視線の方向 / 年齢・性別推定 / 手検出 / 表情(5種類、信頼度あり)」などを数値で取り出せる。

オムロンの手のひらに乗る小型顔認識モジュールは10種のアルゴリズム搭載

アルコールセンサーをiPhoneに繋げて遊ぶ「DrunkenMaster」

優秀賞は「DrunkenMaster」(ドランケンマスター)を作ったチーム、Drunker5に贈らせて頂いた。DrunkenMasterは、呼気中のアルコール濃度を検出するセンサーをiPhoneにアタッチした酔っぱらい向けのゲームだ。ポイントは2つある。1つはアルコールセンサーのようなデバイスを、極めて容易にiPhoneに付ける仕組みを提供する「PocketDuino」(このデバイスも大阪発だ)の可能性が垣間見れたこと、もう1つは、遊び心からビジネスのタネが生まれて来そうと思えたことだ。

正直に書くと、Drunken5のチームが初日に「お酒とSNS」とホワイトボードに書いているのを見て、ぼくは「あちゃー」と思っていた。なんか面白そうだからという理由で作ってみて、結局なんだかよく分からないプロダクトができてくる、というのは良くあること。ところが実際に出てきたものは、ドラクエ風の画面を備えたシンプルながらも完成度の高いゲームだった。

DrunkenMasterは一定量以上のアルコールを摂取していないと、そもそもログインができない。そして、ゲーム内容といえば酔うほどに難易度の上がりそうな認知能力テスト系。スライムの絵のあるカードに書かれた色の名前を即座に答える(タッチする)というだけのことだが、「青」とか「赤」と書かれた色の名前と実際のカードの色が一致しない。酔うほどに成績が落ちるわけだが、この路線には確かにお酒の場を盛り上げそうな何かがあるという予感を感じさせるのに十分なデモだった。若者のアルコール離れや、年々落ち込むビールの売上といった課題を抱える酒造メーカーや飲食チェーンが導入して、ネットワーク越しに参加型のキャンペーンを展開するなどアイデアは広がりそうだ。

DrunkenMasterはアルコールセンサーを使った酔っぱらいのためのスマフォゲーム

実際にビールを飲んで試す審査員の久下玄氏(Coiney,Incプロダクトストラテジスト)

「iPhone+センサー」のプロトタイピングのハードルを下げる「PocketDuino」

DrunkenMasterはモバイルゲームとして画面デザインがよく出来ていた。デザイナーのセンスということもモチロンあると思うが、限られた開発時間の中でアプリの作り込みに時間をかけられたことも大きかったのではないかと思う。これはセンサーをiPhoneにアタッチして計測値を取得するという部分を、PocketDuinoに任せられたからではないかと思う。

PocketDuinoはAndroidのUSB端子に直接挿せるArduino

アルコールセンサーを付けたPocketDuino。手軽にプロトタイピングできる

PocketDuinoで使えるセンサー類。各数百円。火炎センサーなんていうのもある

PocketDuinoは4月10日にIndiegogoでクラウドファンディングのキャンペーンを開始したばかりの大阪発の開発者向けボードだ。簡単にいうとAndroidのUSB端子に直接挿すことのできるArduinoだ。USB端子形状はmicro-B。Arduino Pro Miniとピン互換なので既存の多くのデバイスが利用できる。開発しているのはソフト・ハードウェアのエンジニア2名、Webエンジニア1名からなる大阪発のPhysicaloidプロジェクトチームだ。

Arduinoという開発ボードが、IoTやMakerムーブメントにおいて重要な役割を果たしているのはご存じの通りだが、Arduino自身はインプットを受け取ってアウトプットをするだけの素のコンピュータのようなところがある。組み込みデバイスで使うぶんにはこれで良くて、そこにLEDのような表示デバイスをつけたり、センサーからの入力を繋げたりしてデバイスのプロトタイプを作っていく。一方、PocketDuinoはスマフォを前提とすることで、開発のハードルを大きく引き下げたのがポイント。スマフォにはディスプレイもユーザーインターフェースもネットワークも全部ある。まさに今回のハッカソンででてきたDrunkenMasterのようなプロトタイプの開発とフィールドテストのサイクルを速く回すのに好都合だというのが、PocketDuinoの開発をリードする鈴木圭佑氏の説明だ。Pysicaloidプロジェクトでは、PocketDuinoというミニボードを提供するだけでなく、Androidアプリ開発者向けにJavaで書かれたライブラリもオープンソースで提供する。これまでArduinoで必須だったC言語による開発でなく、Android開発者が使い慣れたJavaで対応センサーを使った開発ができるのがポイントで、例えばアルコールセンサーや距離センサー、温度・湿度センサー、火炎センサー、心拍センサーといったデバイスから値を読み出すのが、3行ほどのコードで書ける。もう少し具体的に言うと、センサーごとに用意されているデバイスのクラスをインスタンス化して使うというオブジェクト指向っぽい開発ができるということだ。ハンダごてもブレッドボードもC言語もなしに、Android開発者なら手軽にIoTを試せる。ちなみにセンサー類は数百円程度だそうだ。

PocketDuinoの値段はボード1個にユニバーサル基板がついて39ドル、ユニバーサル基板5枚とアルコールセンサー基板1個が付くもので55ドル。PocketDuinoのコンセプトは「自分の作ったIoTプロトタイプを気軽に持ち歩いてカフェや飲み屋の席で見せて楽しむこと」だそうで、今回のハッカソンで出てきたDrunkenMasterはまさに狙い通りの応用だったと思う。

ちょっと記事が長くなってきたので、ほかの10チームの作品については別記事で。