Appleはさらなる機能を備えたより高品質なカメラをローンチして、引き続き世界中のフォトグラファーたちをとりこにしている。しかしAppleのマーケティングVPであるフィル・シラーが壇上に立って「デジタルズームは良いものだ」と言ったとき、真のフォトグラファーたちは誰も耳を貸さなかった。あなたも耳を貸すべきじゃない。その理由をここで述べたい。
レンズが2つ。素晴らしさも2倍。28mm相当レンズと56mm相当レンズ。いいぞApple。
iPhone発表会を見ていた筆者がイスの上でのたうちまわり、コンピューターに向かってののしってしまったのは、フィル・シラーがデジタルズームは何か良いもののように主張していたからだ。デジタルズームは本当にマズい。これまでも良かったことがないし、これからも決して*良くはならない。
デジタルズームの問題点
何が問題かというと、写真というのはカメラが集めることのできる光の量によって制限されるからだ。デジタルズームを使った場合、画像センサーはフルに使われない。代わりに使用する画素数はもっと少なくなる。大抵はそれでも同じだけの画素数は得られるが、そうするにはより少ない画素数を補間し、画像全体を埋め合わせねばならない。これがあまりよろしくないということは、プロの写真家でなくとも分かるだろう。
写真を撮るのに12メガピクセルすべてを使う必要がないとしても、撮った作品をFacebookやInstagram、Snapchatにアップロードする場合のことを考えてみよう。実はデジタルズームには他にも問題があるのだ。手ぶれ補正はフルフレームの画像用に最適化されている。だからデジタルズームすると手ぶれ補正の利点がすみずみまで活かせなくなる。つまり、ズームを使うなら手は石のようにして絶対に動かしてはいけない。
何よりも最悪なのは — カメラにも欠点があり、それを避ける手だてはないということだ。ピクセル単位でのあら探しを始めたなら、そうした欠点は見るにたえないくらいあからさまになるだろう。
「けれども筆者のHajeさん」と、がっかり感とフラストレーションを抱えたあなたは泣きそうになりながら言うかもしれない。「だったらフレーム内の被写体を大きく写すにはどうしたらいいんですか?」
答えは簡単だ。自分の足を使ってズームすればいい。被写体をもっと大写しにしたければ、歩いて近寄ればいい。そうすればあなたの作品はうんと良くなる。
誤解しないでもらいたい、筆者もデュアルカメラにはものすごく興奮している。焦点距離のより長いレンズを追加したのは素晴らしい進歩だ。つまり被写体にもっと迫って切り取ることが可能になる。スマートフォンで写真を撮る人にとって、これは大きな違いになると確信している。
素晴らしいカメラだが、光学ズーム比に留まれ
シラー、あなたのことは嫌いじゃないけど、冗談はやめてくれ。
今回、1つの光学ズーム機能ではなく、2つの全く異なるカメラ構造を盛り込んだのはスマートな選択だった。しかしこれだけ小型なカメラの内部において、可動性をもつ部品はとてつもなく精密な制作公差を必要とする。こうした可動性部品は衝撃にも敏感で、メカニクスは最後には摩耗するだろう。だからこそデュアルレンズは賢い選択なのだ。実際、AppleのiPhone 7とiPhone 7 Plusは、モバイル端末付属のカメラとしては最も優れたものの1つであることに疑いの余地はない。
だが、カメラを最大限に有効活用したいなら、壇上でペラペラとマーケティング文句をしゃべってる連中の言葉を聞いてはならない。デジタルズームのことは疫病並みに避けてかかり、カメラ本来のもつズーム機能に固執すべきだ。AppleのiPhone 7 Plusの場合なら、1倍または2倍ズームで撮影しよう。どちらかの間でも、それ以上でもいけない。どうしても「ズーム」する必要があれば、あとから画像を切り取ればほぼ同じ効果が得られる。
*この点については、1つだけものすごく細かくてギークな注意がある。極端な2つのものの中間地点をデジタルズームを使ってズームする場合、理論的には高性能な光照射野計算のおかげで、それぞれのパーツの性能を単純に足し合わせたよりも良いズーム比が得られる。その場合には、カメラは広角カメラを切り取ったバージョンを使い、もう一方のカメラからのデータでそれを増強し、合成画像を作成できる。これは理論的には有効な手段となるはずだ。LightのL16が採用しているのも結局この手法だ。しかし現時点ではこれがAppleのiPhone 7 Plusにも当てはまるという確証はない。
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(翻訳:Ayako Teranishi / website)