HyperSciencesは超音速ドリル技術で宇宙飛行の「大逆転」を目指す

Eron Muskがトンネルを掘りながら、地球の遙か上空を飛びたいと考えているのは偶然ではない。HyperSciencesに聞けば、宇宙へ行く最良の方法は、ドリル技術を逆にして先端を上に向けることだと話してくれる。それは、一般にロケットだと思われている大きな筒の上に小さなペイロードが載っかったやつを推進するための、巨大で高価な燃料タンクの「段」を取り去ることを意味する。

今月、同社は準軌道飛行を成功させ、その冒険の旅を大きく前進させた。これは、NASAの助成金で行われた研究の第一段階を締めくくるものであり、概念実証のための打ち上げを2回成功させ、同社のラム加速と化学燃焼のワンツーパンチを見せつけた。

HyperSciencesは、ニューメキシコ州トゥルース・オア・コンシクエンシーズから1時間という人里離れた商業用宇宙港スペースポート・アメリカの打ち上げ場で、いくつもの高高度試験を行い、アイデアの実現に取り組んでいる。同社は1.5フィート(約45センチ)から9フィート(約274センチ)を超えるものまで「さまざまな発射体」を打ち上げた。HyperSciencesは、テキサス大学の航空宇宙研究グループとパートナーシップを組み、市販の電子部品を使ってシステムを製作している。

「私たちは600Gから1000G(つまり地球の重力の600倍から1000倍)でペイロードを打ち上げることを目標にしていましたが、それが達成できました」とHyperSciencesの上級顧問Raymond Kaminskiは話す。「ペイロードが感じる衝撃は、市販の電子製品(携帯電話など)を床に落としたときと同じ程度のものです」。Kaminskiは、エンジニアとして国際宇宙ステーションの仕事に就いていたNASAを離れ、しばらくスタートアップの世界へ転向していたが、その後、HyperSciencesで航空宇宙の世界に戻ってきた。

1.5フィートのシステムを打ち上げれば、NASAの目的を満たすには十分だったが、彼らは誰が見ても驚く長さ9フィート、直径18インチ(約46センチ)の発射体も試している。「私たちは9フィートのやつを打ち上げます。もう誰も否定できないでしょう」とKaminskiは言っていた。

面白いことにすべての始まりは、HyperSciencesの創設者でCEOのMark Russellが、深い深い穴をいくつもあけた後のことだった。Russellは、Jeff Bezosの宇宙事業Blue Originでカプセル開発の指揮を執っていたが、家業の採掘事業に加わるためにBlue Originを去った。彼はBlue Originの10人目の社員だった。Russellには、採掘と掘削の経験があった。そこから、岩を砕き穴を掘るために化学薬品を詰め込む筒を長くすれば、宇宙へ行けるのではないかと思いついたのだ。

「筒と発射体を用意する。先端を尖らせて、筒には天然ガスと空気を詰める」とRussellは説明してくれた。「それは、サーファーが波に乗るように、衝撃波に乗るんです」

彼らは、もっと手早く、安く、ずっと効率的に宇宙に物資を打ち上げることができると信じている。しかしそれには、プロセスを根底から考え直さなければならない。SpaceXの再利用型の第一段ロケットが宇宙飛行の潮流を変えたのに対して、HyperSciencesの技術は新発見に過ぎない。ただ、彼らの展望、つまり推進力としての超音速技術をスケールアップさせれば、宇宙に物資を送るという複雑で危険性の高いビジネスに応用できる。

超音速推進システムは、発射体を少なくとも音の5倍の速度で打ち上げることができる。つまりそれはマッハ5以上のスピードであり、1秒で1マイル(約1.6キロメートル)以上進むことができる。現在話題になっている超音速技術のほとんどは、防衛技術に関するものだ。高度なミサイル防衛システムもかいくぐったり、迎撃される間もなく目標を攻撃できる高速なミサイルなどだ。しかし、航空宇宙と地熱は、また別の興味深い大きな分野でもある。

昨年12月、ワシントンポスト紙が伝えたところによると、現在、ロケット推進式の兵器から超音速兵器へ移行する計画は、防衛政策において優先順位が「第一位、第二位、第三位」だという。米国防総省の2019年度予算のうち20億ドル(約2220億円)が超音速計画に割り当てられていて、それはほぼ3年連続で前年比を上回っている。「政府が欲しいと言ったときにその技術を開発し始めるのでは遅すぎます」とKaminski。「後追いになってしまいます」

そうしたチャンスはあるものの、HyperSciencesは兵器の世界への参入を熱望しているわけではない。「私たちはプラットフォーム型超音速企業です。兵器開発業者ではありません」とHyperSciencesのメンバーはTechCrunchに話してくれた。「武器商人になるつもりはありません。HyperSciencesは、世界をより良くすることに専念しているのです」

そのためHyperSciencesは、武器以外の超音速利用に針路を向けている。同社は、同社が利用しているラム加速技術の応用では先駆者であり、そこで発明された技術の独占権を持つワシントン大学の研究所室に資金援助をしている。

Shellから10億ドル(約1110億円)の出資を受けた地熱事業で、HyperSciencesは、彼らが呼ぶところの「Common Engine」(共通エンジン)を開発できた。地熱が溜まっている深度まで穴を掘ることができ、星に向けて物資を打ち上げることもできる超音速プラットフォームだ。「HyperSciencesとは、まずは地球を本当に理解することなのです」と、掘削から学んだ教訓を飛行計画に応用できる相互互換システムのひとつの利点を指して、Russellは言った。

「私たちのHyperDrone技術は、NASAの新しい吸気式超音速エンジンのテストや、世界の各地を1時間から2時間で結ぶ次世代の超音速または極超音速飛行機を開発したい航空機メーカーの役に立ちます」とHyperSciencesのメンバーは説明してくれた。「現在は、実験のためだけに大型飛行機にロケットを載せる必要があります。私たちは、地上に設置した管の先でそれが行えます」

買収に興味を示しているとの噂もあるHyperSciencesだが、今のところは堅実で実践的な航空宇宙業界ではまずあり得ない、通常とは違う風変わりなクラウドファンディング・モデルを追求している。同社は現在、SeedInvestのキャンペーン中で、適格投資家以外の小規模な投資家による最低1000ドルからというじつに少額な投資を、夢の実現のために募っている。この記事を書いている時点では、2000人近くの比較的小規模な投資家から500万ドル(約5億5500万円)が集まっていた。

「SpaceXのシードラウンドは、大手のベンチャー投資企業から受けています」とRussellは言う。「どこから入れるでしょう? 巨大な業界です。普通なら一般人は絶対に投資に参加できません」

Russellは、HyperSciencesの事業を柔軟な形にしておきたいと考えている。そして、ベンチャー投資家に頼れば、会社の目標を絞るように強要されるに違いないと恐れている。Shellとの関係はあるものの、その石油とエネルギーの巨大企業は彼らの株式は一切持っていないと、HyperSciencesは即座に答えてくれた。業界固有の契約の間を渡り歩きながら、クラウドファンディングで資金を得て、HyperSciencesはそのプラットフォームを並行して適用させる道を追求し続けたいと願っているのだ。

「宇宙飛行の次なるアーキテクチャーでは、全般的に超音速を使うことになります」とRussellは話す。「私たちはまさに、宇宙飛行の流れを変えるアイデアから、これをスタートさせました。ロケットの第一段と、できれば第二段を省略し、すべてのエネルギーを地上に置く……間違いなく宇宙飛行の流れが変わります」

[原文]
(翻訳:金井哲夫)

オポチュニティ、火星での偉大な探査ミッションを終える

NASAとJPL(ジェット推進研究所)は米国時間2月13日、2004年に火星に送られた2台の探査機のうちの1つ「オポチュニティ」の活動が終了したと、特別なプレスカンファレンスにて発表した。NASAのThomas Zurbuchen氏は、「オポチュニティのミッションが完了し、マーズ・エクスプロレーション・ローバーのミッションが完了したことを宣言する」と述べている。

オポチュニティが活動を終了することになった原因は、重要部品を動作させ活動を維持する動力電源のためのソーラーパネルが、惑星規模の砂嵐によって完全に、そして想定以上に長期間覆われたことにある。最後の通信は2018年6月10日におこなわれた一方で、バッテリーが切れるまでは数ヶ月の猶予があるはずだった。同探査機は火星の過酷な気候を想定してデザインされたが、濃密な砂嵐の中でマイナス100度という環境に長時間さらされるという状況には耐えられないのである。

探査機のチームはここ数ヶ月の間、あらゆる手法でオポチュニティとの交信を試み、探査機からの反応を得ようとした。たとえメモリが消去されたり、観測機器が動作しなくなったとしても、わずかな通信さえ確立できれば、システムを再プログラムしリフレッシュして活動が続けられたはずだ。しかし通常の通信手段から「sweep and beep」という指示まで、残念ながら探査機からの応答はなかった。そして昨晩、最後の信号発信がコントロールセンターから行われたのだ。

https://platform.twitter.com/widgets.js

スピリットとオポチュニティはマーズ・エクスプロレーション・ローバーのミッションとして2003年の夏に別々に打ち上げられ、15年前となる2004年1月に火星の異なる地域に着陸した。

それぞれの探査機は岩石やミネラルを分析するためにパノラマカメラやマクロカメラ、スペクトロメーターを搭載し、またサンプル収集用の小型のドリルも備えていた。もともとの運用期間は90日間で、毎日40メートル移動し最終的には約1kmの距離を探査するはずだった。しかし、どちらの探査機もそれを大幅に上回ることとなる。

スピリットは最終的に、7年間で7.7kmを移動した。そしてオポチュニティは驚くべきことに、14年間でフルマラソンを超える45kmを移動したのである。

もちろん、どちらの探査機も我々の火星に対する理解を大幅に引き上げてくれた。特に、単に過去の火星に水が存在していただけでなく、生命が存在しうる液体の水が存在していた証拠を発見した功績は大きい。

オポチュニティは科学観測だけでなく、たくさんの「セルフィー」も行なった。これは、エレバス・クレーターで撮影したもの

 

これまで活躍してきた探査機やロボットがその寿命を終えるのは、いつでも寂しいものだ。探査機「カッシーニ」は称賛の中で消滅し、探査機「ケプラー」も運用を終了した。しかし究極的にいえば、これらのプラットフォームは科学観測機器であり、われわれはその素晴らしい業績をたたえつつ、避けられない最期の日を弔うべきなのだ。

「スピリットとオポチュニティは活動を終了しただろうが、我々に遺産を残した。つまり、太陽系探査の新たなパラダイムだ」JPLを率いるMichael Watkins氏は語っている。「その遺産は、火星表面で約2300日間活動しているキュリオシティに連なるだけでない。現在JPLにて組み立て中の、マーズ2020にも引き継がれるのだ」

「スピリットとオポチュニティの功績は、それだけではない。探査機による火星探査への大衆からの関心を高めたのだ。ミッションが巻き起こしたエネルギーと興奮は、確かに一般へと伝わった」

もちろん、これで火星から探査機がいなくなったわけではない。昨年にはインサイトが火星に着陸し、注意深く観測機器をセッテイングしながらシステムをテストしている。さらに、探査車「マーズ2020」も打ち上げの準備がすすめられている。火星は人気の惑星なのだ。

いつの日か、我々はこの勤勉な探査機を掘り起こし、火星のミュージアムに展示することだろう。今は、次なるミッションを楽しみにしようではないか。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

Keplerが引退前に撮影した「最後の光」をNASAが公開

NASAのKepler宇宙望遠鏡の「最後の光」の写真

NASAは9月にKeplerが撮った最後の写真を公開した。これは、この宇宙望遠鏡が引退する直前のもの。われわれの太陽系の外側の宇宙についての、ほぼ10年間にわたる前例のない発見の最後を締めくくるものだ。

「この宇宙探査機が最初に空に目を向け、その『最初の光』の画像を捉えたときから、9年半におよぶ感動的な時間を締めくくりました」と、NASAエイムズ研究センターの広報担当官、Alison Hawkesは述べた。「ケプラーは、私たちの太陽系の外に2600を超える世界を発見し続け、私たちの銀河には恒星よりも惑星が多いことを統計的に証明しました」。

この「最後の光」の写真は、Keplerが引退する約1か月前の、9月25日に撮影された。宇宙望遠鏡は水瓶座の方向を向いていて、この画像はTRAPPIST-1系全体をカバーしている。そこには、「7つの岩石惑星が含まれていて、少なくともそのうち3つは温和な世界だと信じられています」と、Hawkesは書いている。また、GJ 9827系は 地球型の太陽系外惑星を持つ恒星で、「今後、他の望遠鏡による観察によって、遠く離れた世界の大気がどのようなものなのかを研究するための、絶好の対象と考えられています」とのことだ。

Keplerの視野は、その惑星探査の後継機であるNASAのTESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite=トランジット系外惑星探索衛星)のものとも、わずかながら重複していたので、天文学者は2つの観測データを比較することができるはずだ。TESSは昨年打ち上げられ、1500を超える太陽系外惑星を探査する予定となっている。

Keplerの主要な任務の期待寿命は、元々3.5年に過ぎなかったので、その遺産はさらに特別なものとなった。この、17世紀のドイツの天文学者であり数学者のJohannes Keplerにちなんで名付けられた宇宙探査機は、9年間も仕事をしてくれたのだ。それは、頑丈な構造と予備の燃料のおかげだった。その間に、3912の太陽系外惑星を含む、4500以上の確認済の惑星と惑星の候補を発見した。

特に重要なのは、Keplerが発見した惑星の多くが、地球と同じくらいの大きさの可能性があることだ。NASAの分析によれば、空にある恒星の20〜50パーセントは「小さな、おそらく岩石でできた惑星、それも表面に液体の水をたたえた、その恒星系の中で生命が存在可能な領域にある惑星」を周回軌道上に持っているという。実際に生命が存在する可能性もある。

Keplerは、さらに「最後の光」を撮影した後の数時間も、30秒ごとに指定したターゲットを記録し続けた。「Keplerの送信機の電源は切られ、もはや科学的情報を収集していませんが、これまでに蓄積されたデータからは、今後何年にもわたって有効な情報を引き出すことができるでしょう」と、Hawkesは書いている。

画像クレジット:NASA

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

SpaceX、ボーイングの有人宇宙飛行計画さらに遅延、当面ソユーズの利用が続く

今後の宇宙関連プロジェクトでもっとも重要なのはSpaceXとボーイングがそれぞれ進めている有人宇宙飛行カプセルの開発であることは間違いない。 しかし、今日(米国時間2/6)のNASAのブログによれば、すでに遅れているスケジュールがさらに遅れることが明らかとなった。

ボーイングのStarlinerとSpaceXのCrew Dragonは ISS(国際宇宙ステーション)にクルーを往復させるために用いられるカプセルだ。有人飛行であるため、現在の物資輸送用カプセルとは比べものにならないくらい厳密なテストが繰り返されてきた。

しかし、これは簡単な開発ではなく、両社とも長い道のりを歩んできた。当初2017年の運用開始が予定されていたが、スケジュールは大幅に遅延している。実際に人間を乗せて飛ぶのがいつになるかはまったく分からない。

今月はCrew Dragonにとって大きなマイルストーンとなるはずで、無人でISSに向かってテスト飛行が実施される計画だった。ボーイングも近く軌道飛行のテストを実行することを計画していた。しかしこれらのテストは双方とも延期されたという。NASAはこう述べている。

NASAではSpaceXのCrew DragonのDemo-1無人フライトテストを3月2日に予定している。 Boeingの無人の軌道フライトテストは4月以降となる。

ハードウェアの開発、テスト、データの確認、NASAや関係機関による結果の評価、乗員、地上要員の訓練などのスケジュールによって日程は調整される。

簡単にいえば、両社ともまだまったく準備が整っていないこということだ。かなり完成に近づいてはいる。しかし有人飛行の場合、「かなり」では十分ではない。

もしこれ以上の深刻な遅れが出ないなら、2019年の開発スケジュールはおおむね以下のようなものになる。

  • SpaceX Demo-1(無人):2019年3月2日
  • Boeing 軌道フライトテスト(無人):2019年4月以後
  • Boeing フライト中止テスト:2019年5月以後
  • SpaceX フライト中止テスト:2019年6月以後
  • SpaceX Demo-2フライトテスト(有人):2019年7月以後
  • Boeing フライトテスト(有人):2019年8月以後

この夏はSpaceX、ボーイングともに有人宇宙飛行を行う予定なので、アメリカの宇宙飛行にとってきわめて重要な時期になる。現在のところ、ISSにクルーを往復させる手段はソユーズしかない。ソユーズは何度も人員輸送を成功させてきたが、すでに登場から40年もたつ古いシスムであり、言うまでもなく、ロシア製だ。21世紀にふさわしいアメリカ製のシステムがかつてなく強く求められている。

画像:NASA

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

Voyager 2が恒星間宇宙に到達、その双子の兄弟に追いついた

1977年に打ち上げられた多惑星探査機Voyager 2が、ついに恒星間宇宙(interstellar space)に到達した。その双子であるVoyager 1が到達してから、6年が経過している。現在地球から約110億マイル(177億キロ)の場所にいるが、これは人類が作ったものが到達した2番目に遠い位置だ。

恒星間宇宙は、私たちの太陽の「太陽圏(heliosphere)」が終わるところから始まっている。太陽圏は巨大な放射線とプラズマの球体で、その中に惑星が包まれつつ守られている。2機のVoyagerにはこうしたものを観測できる機器が搭載されていて、どちらも大幅な電気的そしてプラズマ的なアクテビティの低下を示している。これが示唆するのは、彼らが太陽圏を離れたということだ。

恒星間宇宙の正確境界は論議の的だ。Voyager 1がその端にいた時、大いなる論争が巻き起こり、科学者たちはそれが恒星間宇宙に出たのか否かについて議論を行っていた。しかし合意は形成されて、今では多くの科学者たちが、両機が既に太陽圏を去ったことに同意している。

とはいえ両機は、多かれ少なかれオールトの雲によって定義される太陽系はまだ立ち去ってはいない(オールトの雲とは太陽の重力 ―― といっても本当に僅かなものだが ―― によって捕えられた、塵と小さな物体で構成された巨大な外殻である)。2機のVoyagerがそこを通り過ぎるまでは(おそらくあと3万年程かかる)、両機は定義的な意味ではまだ太陽系の中にいるのだ。

興味深いことに、Voyager 2が恒星間宇宙に入ったのは2番目だったが、打ち上げは先に行われていた。これらの複雑で野心的な探査機の失敗のリスクはとても高かったため、NASAは2機を建造し、連続して打ち上げるべきだと考えたのだ。このためVoyager 2はVoyager 1に16日先立って打ち上げられた。しかし後者はその軌道のために、黄道面(太陽系の天体の大部分が周回している平面)をより早く違う角度で脱出したのだ。

こうしてVoyager 2はNASAのもっとも長期的に継続しているミッションとなった(ただし宇宙空間に最も長く存在しているというわけではない ―― もっと初期の衛星が宇宙には漂っているからだ)。それに携わる人たちはこれ以上ない喜びを感じている。

「2つのVoyager探査機が、どちらも長い歳月を経てこのマイルストーンを達成できたということを、私たち全員が喜ぶと共にほっとしていると思っています」と、NASAのニュースリリースの中で語るのは、VoyagerプロジェクトのマネージャーであるSuzanne Dodd(JPL所属)である。「これこそ私たち全員が待ち続けていたものです。この先私たちが、恒星間宇宙に出た2機の探査機から、何を学ぶことができるかを楽しみにしています」。

両方のVoyagerは少なくともあと数年間は運用が続くだろう。彼らの電力が尽きるのは2025年ごろの予定だ。その時点で彼らは、宇宙から50年近くにわたってデータを送り続けていることになる。驚くべきことを成し遂げてくれたチームに、そして人類に、心から祝福を送りたい。

[原文へ]
(翻訳:sako)

NASAのInSight探査機が収集した、心落ち着く火星の風の音を聞こう

InSight火星探査機は先週、Elysium Planitiaエリアへの完璧な着陸を果たした。現在同機は地面の下への掘削の準備に大忙しだ(そしてもちろん自撮りも行った)。しかし、「予定外の作業」の1つが、火星の平野を吹き渡る風の音の録音だった。その音は記事の下の方のリンクから聞くことができる。

技術的に言えば、探査機は音を検知するようにはできていない。少なくとも慎重に音を録音しようと準備しているときのようには。しかし、ロボットプラットフォームの空気圧センサと地震計は、両方とも風が吹き抜けていく際の微かな変化を検出することができる。上の写真に見ることができる銀色のドームの中に置かれた空気圧センサーが、ほぼ通常の音の信号を生成するが、それでも仮に火星の大気の中に立つ人間が居たとして、実際に聞くことのできるような音の信号にするためには、かなりの調整が必要だった。

「InSight探査機は巨大な耳のように働きます」とNASAのニュースリリースで説明したのは、InSight科学チームのメンバーTom Pikeである。「探査機の横のソーラーパネルは、風の圧力変動に反応します。まるでInSightが耳に手をあてて、その耳に当たる風を聞いているようなものです」。

それがどのような音かに興味があるだろうか?録音された音ははSoundCloud上もしくは以下のリンクから聞くことができる:

ほぼ普通の風のように聞こえるって?何か違うものを期待していただろうか?宇宙探査の多くの側面と同じように、現象そのものはありふれたものだ ―― 岩石、景観、風の音など ―― だがそれが、現象が数百万マイルの彼方にある見知らぬ世界で起きていて、ハイテクロボットによってここまでリレーされて来たことを思うと十分に感慨深いものとなる。火星の風の音は地球上の風とはあまり違わないかもしれないが…そんなことは問題ではない!

興味がある人のために付け加えれば、録音の中の風の動きは北西からのもので、その地域に見られる「ダストデビル(アメリカ南部の旋風)による風紋」に一致している。InSightの「耳」をその目的のために使えることがわかったことは良いことだが、探査機の科学的ターゲットはあくまでも地下であって、地表を調べることではない。

すぐにより多くの録音が増えることだろう。それを眠りにつくためのノイズとして利用することもできる。しかしこの先さらに良い音が期待できる予定だ:Mars 2020ローバーが、真に高品質のマイクを搭載し、火星の環境音はもちろん着陸音も録音する予定なのだ。

[原文へ]
(翻訳:sako)

NASAの探査機、InSight、火星着陸に成功――ライブビデオあり

NASAの新しい探査機、Insightは無事火星に着陸した!  観測機器を含め探査機の状態が完全であるかどうか確認するにはまだ多少時間がかかる。しかし宇宙を4億6000万キロも飛行した後で火星の大気圏に突入するという、もっとも危険な部分はクリアされた。Insightのチームにおめでとうを言いたい。もっと詳しいことが分かり次第アップデートする。

地球の外の宇宙の神秘は科学者(そして科学に興味があるものなら誰でも)の興味を何世紀もひきつけてきた。今日(米国時間11/26)のInSightの着陸で赤い惑星の成り立ちに関して多くの事実が判明するだろう。

着陸は太平洋時間で今朝の明け方、 3時に行われ、オペレーション成功の方にNASAのジェット推進研究所のコントロールルームには歓声が溢れた。

今回の火星探査ミッションの目的は何だったのか?

火星といえば、われわれの多くは地球外生命が存在するかどうかに関心を抱きがちだが、Insightの使命はこれとは異なる。この探査機には火星の地表jを分析する多数の観測機器が搭載されている。また人工地震によって火星内部の構造を探査することも重要な目的だった。

宇宙バンザイ!

〔日本版〕TechCrunch Japanの詳しい紹介記事

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

現実のHAL9000が開発される – その名はCASE

慌てないで! たしかに、現実は芸術を模倣するが、Cognitive Architecture for Space Exploration(宇宙探査のための認識アーキテクチャー):CASEの開発者たちは、映画『2001年宇宙の旅』から教訓を学んでいる。彼らが作るAIは人を殺さないし、人間を未知の物体に遭遇させて宇宙の涅槃の境地に導いたりはしない(たしか、そんな話だったと思うが)。
CASEは、数十年間にわたりAIやロボット工学に携わってきたPete Bonassoが行っている研究で、始まったのは、今のバーチャルアシスタントや自然言語処理が流行するずっと前のことだ。今では忘れられようとしているが、この分野の研究の発端は、1980年代1990年代のコンピューター科学とロボット工学が急速に発達してブームとなった時代に遡る。
問題は、宇宙ステーション、有人宇宙船、月や火星のコロニーといった複雑な環境を、いかにしてインテリジェントに観察し管理運営するかだ。このシンプルな問題には答えが出ているが、この数十年で変化し続けてきた。国際宇宙ステーション(20年目に入った)には、それを管理する複雑なシステムがあり、時とともにどんどん複雑化してきた。それでも、みんなが想像しているHAL9000には遠く及ばない。それを見て、Bonassoは研究を始めたのだ。

20歳を迎えた国際宇宙ステーション:重要な11の瞬間

「何をしているのかと聞かれたとき、いちばん簡単な答は『HAL9000を作ってる』というものだ」と、彼は本日(21日)公開のScience Robotics誌で語っている。現在、この研究は、ヒューストンの調査会社TRACLabsの後援のもとで進められている。
このプロジェクトには数々の難題が含まれているが、そのなかのひとつに、いくつもの認知度の層と行動の層を合体させることがある。たとえば、住環境の外にある物をロボットアームで動かすといった作業があるだろう。または、誰かが他のコロニーにビデオ通話を発信したいと思うときもある。ロボットとビデオ通話用のソフトウエアへの命令や制御を、ひとつのシステムで行わなければならない理由はないが、ある地点で、それら層の役割を知り、深く理解する包括的なエージェントが必要になる。

そのためCASEは、超越的な知能を持つ全能のAIではなく、いくつものシステムやエージェントを取りまとめるアーキテクチャーであり、それ自体がインテリジェントなエージェントという形になっている。Science Robotics誌の記事で、またその他の詳細な資料でもBonassoは解説しているが、CASEはいくつかの「層」から構成されていて、制御、ルーチン作業、計画を統括する仕組みだ。音声対応システムは、人間の言葉による質問や命令を、それぞれを担当する層が処理できるようにタスクに翻訳する。しかし、もっとも重要なのは「オントロジー」システムだ。
宇宙船やコロニーを管理するAIには、人や物、そしてうまうやっていく手段を直感的に理解することが求められる。つまり、初歩的なレベルで説明すると、たとえば部屋に人がいないときは、電力を節約するために照明を消したほうがよいが、減圧をしてはいけない、といった状況を理解することだ。または、誰かがローバーを車庫から出してソーラーパネルの近くに駐車したときは、AIは、ローバーが出払っていること、どれが今どこにあるか、ローバーの無い間のプランをどう立てるかを考えなければならない。
このような常識的な理屈は、一見簡単そうに思えるが、じつは大変に難解なものであり、今日、AI開発における最大の課題のひとつに数えられている。私たちは、原因と結果を何年もかけて学び、視覚的な手がかりをかき集めて、周囲の世界を頭の中に構築するなどしている。しかしロボットやAIの場合は、そうしたことは何も無いところから作り出さなければならない(彼らは即興的な行動が苦手だ)。その点、CASEは、いくつものピースを組み合わせることができる。

TRACLabsのもうひとつのオントロジー・システム PRONTOEの画面

Bonassoはこう書いている。「たとえば、利用者が『ローバーを車庫に戻してくれ』と言ったとする。するとCASEはこう答える。『ローバーは2台あります。ローバー1は充電中です。ローバー2を戻しますか?』と。ところが『ポッドベイのドアを開けろ』(居住区にポッドベイのドアがある場合)と言うと、HALとは違い、CASEは『わかりました、デイブ』と答える。システムに妄想をプログラムする予定ははいからだ」
なぜ彼は「ところが」と書いたのか、理由は定かではない。しかし、どんなに映画好きでも、生きたいという意欲に映画が勝ることがないのは確かだ。
もちろん、そんな問題はいずれ解決される。CASEはまだまだ発展途上なのだ。
「私たちは、シミュレーションの基地で4時間のデモンストレーションを行ったが、実際の基地で使用するまでには、やらなければならないことが山ほどある」とBonassoは書いている。「私たちは、NASAがアナログと呼ぶものと共同開発を行っている。それは、遠い他の惑星や月の環境を再現した居住空間だ。私たちは、ゆっくりと、ひとつひとつ、CASEをいろいろなアナログで活動させ、未来の宇宙探査におけるその価値を確実なものにしていきたいと考えている」
私は今、Bonassoに詳しい話を聞かせてくれるよう依頼している。返答があり次第、この記事を更新する予定だ。
CASEやHALのようなAIが宇宙基地を管理するようになることは、もはや確定した未来の姿だ。たくさんのシステムをまとめる極めて複雑なシステムになるであろうものを管理できる合理的な方法は、これしかないからだ。もちろん、言うまでもないが、それは一から作られるものであり、そこでとくに重要になるのが、安全性と信頼性、そして……正気だ。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

イーロン・マスクの秘密の屋根裏部屋、NASAのSpaceX立入検査を呼ぶ

Elon Muskが9月のラジオインタビューで口走ったマリファナとの関わりは、彼の信奉者たちを離れらせただけでは済まなかった(人工知能やソーシャルメディア、発明、宇宙などにまつわる 興味深い会話もあった)。

Washington Postによると、NASA当局はMuskの屋根裏部屋話を喜んではいられず、CEOの派手も悪ふざけを受けてSpaceXとBoeingの安全審査を命じた。

NASA の有人探査担当副長官William GerstenmaierはWashington Postのインタビューに答えて、審査は来年開始されBoeingおよびSpaceX両社の「安全カルチャー」を調査すると語った。

ロケットそのものの安全性ではなく、この審査では従業員の労働時間、薬物ポリシー、リーダーシップおよび経営スタイル、従業員の安全への懸念に対する会社の対応などに目を向ける、Post紙は伝えている。

審査の指揮を執るのはNASAの安全ミッション保証部で、これまでに同様の審査を行ってきた部門だ。

NASA当局者によると、審査手順は「かなり踏み込んだ」もので、会社が活動している全所在地にわたり、あらゆる地位の従業員から数百回もの聴き取りを行う可能性がある。

2014年に有人宇宙飛行復活のために両社が受託した68億ドルの契約が危機にひんしている。SpaceXは同プログラムでNASAから26億ドルを受け取り、残りがBoeingに渡った。

両社ともに、NASA宇宙飛行士を軌道に送り込む有人システムのテスト中につまづきがあった。Boeingは宇宙船の断熱材とパラシュートシステムのテストと、緊急中止プロセス中に起こる可能性のある推進剤漏出への対応が必要だ。

SpaceXもパラシュートシステムに問題を抱えている。

SpaceXはPost紙に送った声明で、「これまでNASAと共に成し遂げてきたすべての仕事に大きな誇りを持っており、アメリカに有人宇宙飛行を取り戻す日を楽しみにしている」と言った。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

「スペースペン」、50周年を迎える

スペースペンのことは誰もが知っているだろう。NASAが無重力で使える究極のペンを作るために数百万ドルの開発費をかけた結果、この驚くべき道具が出来上がった。いや、違う。事実はといえば、1966年にあるボールペンメーカーが作った——しかしそれが軌道に乗ってスペースペンの運命を全うしたのは1968年10月のことだった。

そのペンを作ったのはペン職人のPaul Fisherで、彼は100万ドルの私費を注ぎ込みそのAG-7反重力ペンを作った。ご存知かもしれないが、そのイノベーションは加圧されたインクカートリッジとゲルインクによって、方向、温度、そしてもちろん重力の有無によらず確実にインクを送り出すしくみだった。

FisherはそのペンをNASAに送った。もちろんそこは、ものごとが微小重力下で働くかどうかを間違いなく心配する唯一の組織であり、そのペンを大いに気に入った。実際、間もなくしてロシアでも使われるようになった。

Walt Cunningham、Wally Schirra、Donn Eiseleの3人は、1968年10月11日に打ち上げられたアポロ7号ミッションにこのペンを持っていき、その後軌道上で11日間使い続けた。

ペンの50周年記念エディションが、裕福で金製品を愛する人たちのために作られた。価格は500ドルで限定500本、「金色の窒化チタン張り真鍮」製で、ケースにはCunningham飛行士のことばが入った記念プレートがついている。

「50年前、初めて宇宙を飛んだスペースペンと共にアポロ7号に乗った。私はこのペンを信頼し、今でも地球上で信頼できる唯一のペンだ。

うん、いい話だ。宇宙飛行士たちが生涯これを供給され続けるのであればの話だが。

Fisher Space Penに乾杯! 半世紀にわたり使われ続けポップカルチャーに支持された、独創的でシンプルで信頼あるアメリカングッドデザインの代表例だ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ロシアのロケットの失敗にもかかわらず、NASAはソユーズの打ち上げ予定を変えない

米国時間10月11日に起こった、通常は信頼性が高いソユーズロケットの打上げ失敗は、様々な意味で宇宙コミュニティに衝撃を与えた(今回は国際宇宙ステーションへ向かう有人ミッションだった)。だがNASAの担当官Jim Bridenstineは、いずれにせよ新しい乗組員を12月にソユーズで打ち上げる予定だと語った。

モスクワの米国大使館でBridenstineは記者たちに向かい「全ての失敗ミッションがこんなに上手く終わるわけではない」と語った。実際故障したロケットは、組み込まれた脱出システムは設計通りに働いたために、幸運にも何の人的被害も出さなかった。

宇宙飛行士であるNick HagueとAleksey Ovchininは、発射後約90秒で切り離されパラシュートを開いたカプセルと共に、発射場から約250マイル(約402キロ)離れた場所に安全に着陸した。

調査官たちが何が原因かを述べるのは時期尚早だが、Bridenstineはソユーズシステムとロスコスモスの彼のチームを信頼しているようで、新しい有人カプセルが年内にも打上げられることを示唆した。

「私は、ソユーズロケットの再度の打上げを十分に予想していて、現段階ではこの先の予定が変わると考える理由はない」と彼は語る。

そのミッションは12月に行われる予定である。すなわち現在ISSに搭乗している3人の乗組員たちは、一部で心配されたようにその滞在を延ばす必要はなく、ISSがしばらくのあいだ無人で飛行を続ける必要もないということだ。後者の可能性は様々な不安を引き起こしていた。ISSはしばらくの間無人で飛行できるように設計されてはいるが、問題が起きた時にその場に誰も居ないことはリスクとなる、そして多くの実験も失敗する可能性がある。

ソユーズの打ち上げシステムは、人間を宇宙に送るために現在利用可能な唯一のものである。SpaceXとBoeingがその状況を変えるために懸命に働いているが、彼らのソリューションの完成にはまだ長い道のりが待ち受けている。仮にソユーズシステムに重大な欠陥が発見された場合には、その解決策が見つかるまで人類は基本的に地球に閉じ込められることになるだろう。だが幸いなことに、ソユーズは何度も実証されているため、すぐに再飛行が行われる確率は高いだろう。

もちろんBridenstineの自信だけでロケットを打ち上げるわけではない。ロケットの調査は続いており、2つの宇宙機関は元々の予定に先立ち、どのように新しい乗組員をステーションへ送り込むかについて協議しなければならない。しかし、現段階では、宇宙はまだ私たちの手の届くところに留まっているようだ。

[原文へ]
(翻訳:sako)

宇宙船の液体極低温化技術や空中回収でNASAが$44Mの助成金をBlue Originらに

NASAがアメリカの宇宙企業数社と、総額4400万ドルの巨額なパートナーシップを結んだ。Blue Origin, Astrobotic Technology, United Launch Alliance(ULA)などの各社が、宇宙利用の安全性と効率性を探求する複数のプロジェクトで、それぞれ最大1000万ドルを受け取る。

その10種類の懸賞金はNASAの言う“転換点となる”技術を対象とし、将来性はきわめて高いが、地上または飛行時のデモに資金を要する。言い換えるとそれらは、研究室を出て実用レベルに達したものでなければならない。

ULAがここでは大きな勝者で、三つのプロジェクトに計1390万ドルを受け取る。内1000万ドルは、月面着陸船を単純化し改良する液体燃料の極低温化管理システムに向けられる。残りは、長期間のミッションのための極低温液体プロジェクトと、最大8000ポンド(3632キログラム)までの、帰還船の空中回収のデモンストレーションに充てられる。帰還船は帰還の直前まで軌道を定常速度で周回していたものでなければならない。三つのうち、最後のがいちばん‘安い’プロジェクトだなんて、信じられないね!

1300万ドルをもらうBlue Originも、着陸船の極低温液体管理システムを探求する。どうやらNASAは、月の表土に執着関心があるようだ。残りの額は、月面着陸を容易にするための一連の高度なセンサーの試験に充てられる。同社はこれら二つのシステムを、100キロメートル上空のNew Shepard機上でテストする。

もう一社Astrobotic Technologyにも1000万ドルが行く。こちらはBlue Originと同じく、Terrain Relative Navigation(地形照合航法, TRN)のための一連のセンサーを開発する。これは着陸船に“地形の安全性の判定”という知性を与える技術で、着地直前の具体的な状況下で、実観測により、安全性を確保する。

Mars 2020 Roverは、独自のTRNシステムを使用するが、今回の資金はより高度な方式を対象とする。でも下図のGIF画像を見れば、TRNの概念を理解できるだろう。

今回のNASAの研究資金提供事業では、これら以外のプロジェクトも対象になっている。詳細を知りたい方は、このパートナーシップの発表ページへ行ってみよう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

SpaceX、明日NASAの重力観測衛星を打ち上げへ――地球の水循環をモニター

明日(米国時間5/22)打ち上げが予定されてSpaceXのFalcon 9ロケットには5基のIridiumコミュニケーション衛星と2基のNASAの観測衛星が搭載される。Iridium衛星の高度は800キロだがNASAの衛星は480キロ前後なのでFalcon 9は複雑な機動をする必要がある。NASAのGRACE-FO衛星は地球の重力を精密に測定して水の循環をモニターするのが目的で、いわばレーシングカーがシケインを抜けるような動きをする。

もちろん宇宙にシケインなどはないし、衛星のスピードも時速何万キロと桁外れに速い。しかし速度が変化する点は同じだ。

Falcon 9からNASAの衛星は一つが上方に、一つが下方に分離される。2つの衛星が220キロ離れたとき、下方の衛星が加速して他方の衛星の軌道に同期する。この動作には数日かかるが、Falon 9自身はNASAのGRACE-FO衛星を放出すると10分後にはIridium衛星打ち上げのためにエンジンを再点火する。

GRACEはGravity Recovery and Climate Experiment(重力取得による気候実験)の頭文字でFOはフォロー・オンの意味だ。Gravity Recovery and Climate Experimentはドイツの地球科学研究センターとの共同プロジェクトだ。オリジナルのGRACE衛星は2002年に打ち上げられ、15年間にわたって地球の水(地下水を含む)の循環をモニターしてきた。これは気象学の進歩にきわめて大きな影響を与えたが、今回のGRACE-FOはさらに精度をアップさせてその続きを行う。

地表の大きな質量の上空を一対の衛星が通過すると重力の変化によって軌道に微小な変動が起き衛星の間隔が変動する。これによって地表とその地下のようすを詳しく知ることができる。オリジナルのGRACEではこれによって地下の水を探知した。GRACE-FOにはレーザー測距装置が装備され、衛星間の距離測定の精度が文字通り桁違いにアップしているという。

今回用いられるロケットはこの1月にZuma衛星を打ち上げたその同じ機体だ。ZumaはFalconの2段目から無事に放出されたものの、衛星の不具合により軌道投入に失敗している。機密ミッションだったため何が起きたのか正確な情報がほとんどないが、SpaceXに原因がなかったことだけは間違いない。

Falcon 9は明日午後12:30にカリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から発射される予定だ〔日本時間は水曜日の明け方、4:30〕。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

NASAの惑星探査衛星TESSが星だらけの最初の試験画像を送ってきた

先月NASAが打ち上げた衛星TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)は、何千もの星の中に地球に似た太陽系外惑星を探すことが目的だが、このほど最初の試験画像を送ってきた。それはとりあえずざっと撮ったもので“科学品質”のものではないが、それでもミッションの規模を伺わせるに十分だ。TESSが調べる領域は、この画像がとらえている領域の400倍の広さだ。

上図はケンタウルス座周辺のスターフィールドだが、2秒間の露出で20万あまりの星をとらえている。TESSにはこのような画像を撮るカメラが4基あり、それらをすべて同時に使い続ける。27日かけて二つの軌道を通り、宇宙のそれぞれ異なる領域を観察する。

下図は、中央のカメラだ:

これらのスターフィールドの高解像度の画像を繰り返し撮ることにより、地上のチームはわずかに暗くなる星(恒星)を見つけ、その星と太陽系の間を惑星が通過したことを検出する。この方法は類似のKeplerミッションに比べてはるかに多くの星を観察でき、比較的狭い視界でも、暗くなる星だけに着目することによって、今後調べる対象となる何千もの太陽系外惑星の証拠を見つける。

TESSはやっと昨日(きのう)、月からの重力アシストをもらって、最終軌道に接近できた。5月30日の最後のエンジン噴射によりその操作を終了し、その作者たちが設計したきわめて偏心的でまだ試されたことのない軌道に乗る。

軌道に到達し、すべてのシステムが良好なら、TESSが地球にもっとも接近する二週間おきの機会に、新しい画像を送ってくる。初めての、完全に調整された利用可能な画像、通称“first light”は、6月の予定だ。

画像クレジット: NASA

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

NASAの火星着陸探査機、順調に飛行開始――InSightの火星到達は11月

NASAはAtlas Vロケットを予定どおりの時間に打ち上げた! 現在第2段ロケットの燃焼が11秒になったところだ。ブースターは正常に分離された。

リフトオフ! 人類の新しい火星ミッションは地球を出発した! @NASAInSightは火星に向かう6ヶ月の宇宙の旅に出た。 到着後、火星の活動を詳しく調べ、この岩だらけ惑星の成り立ちを理解する手助けとなるはず。
https://t.co/SA1B0Dglms pic.twitter.com/wBqFc47L5p

フェアリングは花びらのようにきれいに分離した。2段目、Centaurロケットはあと数分弾道飛行を続ける。発射ブログはこちら。https://t.co/50dnoQSHB8

アップデート: 打ち上げ後17分。ロケットは軌道に投入された。霧が出ていたものの、人類初となるアメリカ西海岸のバンデンバーグ空軍基地からの打ち上げはすべて順調に進行した〔これまでの火星探査機は東海岸のケープカナベラル基地からの打ち上げ〕。

メインエンジン停止(MECO)を確認。 @ULALaunch#AtlasVロケットは順調に @NASAInSightを火星に向けて推進している。 https://t.co/SA1B0Dglms #InSight pic.twitter.com/YjCuQ0dhRB

アップデート: 打ち上げの最終段階も無事に終了。火星の成り立ちを詳しく調べる科学的機器を満載したミニ宇宙船、Mars Cube One(MarCO)は2段目Centaurロケット頭部のディスペンサーから無事に切り離され火星に向かった。

探査機は自立飛行に入った。#AtlasVロケットからの分離を確認。これでいよいよ火星#Marsに向けての6ヶ月の旅が始まる。打ち上げブログはこちら。https://t.co/50dnoQSHB8 pic.twitter.com/aQjGnvUvAc

【略】

〔日本版〕InSight探査機のミッションと構造を詳しく紹介したTechCrunch記事はこちら

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SpaceX、NASAの宇宙望遠鏡を軌道に送り出す

SpaceX は、NASAの新しい太陽系外探査望遠鏡を地球高軌道に送り出すことに成功した。今後は月の重力補助を受けて軌道に乗りミッションを開始する。一方、地上ではFalcon 9の第一段ロケットがドローン船 Of course I Still Love Youへの着陸に成功した。

これは今年8回目の打ち上げで、SpaceXがFalcon 9の第一段 —— 人工衛星を大気圏外へと加速させたロケットの一部 —— を軟着陸させたのは計24回目だ。最終的な計画では、落下するロケットを「巨大キャッチャーミット」で捕獲するとElon Muskは言っていたが、ボートに乗ったミットは現在太平洋上にるが、今回の打ち上げは大西洋だった。

The rocket shortly after landing on Of Course I Still Love You. The ship’s feed cut out when the rocket landed.

回収したロケットは検査、再調整の後に、次のISS再補給ミッションで再利用される予定だ。しかしこの世代のFalcon 9は近々使い果たされる。SpaceXは第5世代のFalcon 9(ブロック5)をまもなく打ち上げる。これまでの2~3回よりも多く利用できるように再利用性を改善するためにさまざまな工夫がなされている。新世代ロケットの最初の打ち上げは来週計画されている。

2段目の噴射も無事に進みTESSは軌道に乗った。あとは月から必要な重力アシストを得られるようにNASAが軌道を微調整するだけだ。多少時間はかかるが、その後(数週間から数カ月以内)人工衛星からデータがやってくる。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

真菌建材から形を変えるロボット群まで、これがNASAの「野心的」最新プロジェクトだ

NASA Innovative Advanced Concepts program(NASA革新的先進コンセプトプログラム)は、おそらく馬鹿げているように聞こえるアイデアに、国家予算が使われていることを観察できる最適な場所だ。なぜならこのプログラムのマネージャーたちは、実現できたら本当に素晴らしい大風呂敷を狙っているからだ。

採択された研究者たちは約12万5000ドルと9ヵ月を与えられ「フェーズI」で自分たちのアイデアの実現に取り組む。これは気の遠くなるような作業か、ひたすら技術的に困難なものである。もし重要な進展が見られたり、そのコンセプトが有望であるとわかった場合には、「フェーズII」に進むことができて、ここではNASAの判断で、50万ドルまでの投資を受けることができる。

今年は、NIACプログラム担当者のJason Derlethによれば「特に競争は激烈でした。230以上の提案書が届き、その中からわずか25だけが採択されたのです」ということだ。それなりの数のフェーズII採択も行われた(おそらく昨年の採択者の何人かを覚えている読者もいるだろう)。

それらの多くをここに集め、できる限りのわかりやすい説明を添えてみた。NASAが考える未来の宇宙探索がどのようなものかを眺めてみて欲しい。

1:大気試験船の群


ただ1機の宇宙船を、厳しい大気の中を降下させて、ただ1箇所の測定値を集めるのではなく、それを数十の機体に分けて、数百マイルの範囲にわたってセンサーをばら撒けば良いのではないだろうか?これがLofted Environmental and Atmospheric VEnus Sensorsプロジェクトの背後にあるアイデアだ。このプロジェクトでは、降下中にお互いに協調しながら、より多くのデータを収集することにできる軽量ユニットの開発が目指されている。

2:小惑星の掘削

小惑星の中には何があるだろう?まだ誰も知らない。そしてそれを調査するためには大変な努力が必要とされる。高価な宇宙弾丸を作って撃ち込み、そのとき飛び散るものを観察する代わりに、隕石を使えばいいのではないだろうか?もともとそれらは宇宙の弾丸なのだし ―― それらを小惑星に撃ち込んでみれば

宇宙船から監視することなく、どうやって隕石を小惑星にぶつけるかが課題だが。

3:巨大な自己組立型望遠鏡

望遠鏡は一般的に、ひたすら大きなものが求められる一方である。しかし、本当に巨大なものを軌道に乗せることは簡単な話ではない。そして何かが上手く行かなければ、全てを廃棄することになりかねない。

その代わりに、ある研究者たちが提案するのは、数百もしくは数千の同一の宇宙船を打ち上げ、お互いを発見させながら、1つの巨大な面を構築させようというものだ。もし1つが壊れた場合には、他のユニットを送り込んでその場所を置き換えるのだ!

4:宇宙真菌

見知らぬ星の上で、居住区や作業区を作り上げることは、困難な作業だ。おそらく宇宙に馴化(じゅんか:生物が環境に慣れて変化すること)した様々な真菌類が、私たちを助けてくれることだろう。

とあるチームが、非常に強靭で、耐火性があり、絶縁性であり、成長させることが容易ないくつかの菌糸型素材を発見した。もちろん、それらが火星で生育可能かどうかはまだ検証されていない。

5:軌道上の小さなデブリ(破片)を検出する

軌道上のデブリ(破片)はその付近にいるもの全てにとって危険な代物だ。しかし小さくて動きの速い物体を検出することは困難である。このプロジェクトは、そのような物体がプラズマの中を飛行する際の一種の航跡を検出することを狙っている。高度400から1600キロメートルにある物体を「100個以下のキューブサット」を使ってマッピングするのだ。話を聞くだけなら簡単そうだ!

6:粒子ビームを用いた宇宙船の推進

巨大なレーザーを使用して宇宙船を推進しようという考えは、使われるレーザーの幅が数キロメートルに及ぶという事実を除けば、実用的である。

この非常に興味深いプロジェクトは、基本的にレーザービームを中性粒子の流れと絡ませようというものだ。粒子は光子の経路を限定する導波路効果を生み出し、光子は粒子が引き付けられる高エネルギーコアを生み出す。この「ソリトン」ビームはレーザー単独よりも細く強力で、宇宙船を光速の1/10まで加速することができる。

またクールな名前も付けられている。PROCSIMA(Photon-paRticle Optically Coupled Soliton Interstellar Mission Accelerator):光結合型光子粒子ソリトン恒星間ミッション加速装置だ。

7:「仮想」衛星ネットワークを展開する

これは非常に巧妙なプロジェクトである。本質的には、現在互いに数百フィート以内の場所に、例えば200機の衛星を配置することは不可能である。しかしそのような配置を行うことができれば、とても興味深いデータを収集することが可能だろう。

そこで、実際にそのような配置を行う代わりに、R-MXAS(Rotary Motion Extended Array Synthesis)プロジェクトは、すべてのセンサーを円筒状の衛星上に配置し、その衛星を「転がしながら」地球に対する動きと同期させて、移動しながらさまざまなセンサーを向ける。

麺棒に凹凸が刻まれたデザインを想像して欲しい。生地に沿ってそれを転がすことで、円筒上のパターンが2次元に展開される。それがここでの基本アイデアだ。

8:形を変えるロボット探索機

地球のような複雑な表面環境では、飛行、水泳、歩行、転がりなどの多くの運動形態を必要とする。同じことはエウロパ(木星の衛星)、火星、その他の目的地でも言うことができる。

Shapeshifterは、可能な限り多くの移動形態を持つロボットプラットフォームの構築を目指している。それはボールのように転がり、ドローンとして飛んだりホバリングしたり、魚雷のように水中を進み、それでいて「最小限のデザインで非常にシンプル」なものになる予定だ。

これは、依然としてSFの分野に片足を突っ込んだような話だが、私はこうしたものが拡大していくことを想像することが大好きだ。

9:蒸気式地表ホッパー

蒸気は19世紀と20世紀にはとても役に立った。それを21世紀に使ってはいけない理由はないだろう。

この小さな物体は、海のある世界に投入される、親着陸船がホッパーに電力と氷を供給する。ホッパーはその氷を蒸気に変換し、周囲へホップするための推進力を生み出す、これによって障害物を気にする必要はなくなる。彼らはこれを「完全地形非認識方式」(complete terrain agnosticism)と呼んでいる。

略語もぴったりだ。SPARROW (Steam Propelled Autonomous Retrieval Robot for Ocean Worlds):海洋世界のための蒸気推進型自律回収ロボットである(注:sparrow にはスズメという意味がある)。

10:反物質駆動装置

このコンセプトは、かつて存在していた「非現実的な量の反物質」を利用するという馬鹿げた考えを捨て去り、その代わりに「放射性同位元素陽電子触媒融合推進」を利用するというものだ、要するに反物質を生成しながら進むらしい。

まあ、いいんじゃない?

11:自律生活支援ロボット

新しい宇宙服たちは、背中に巨大な生命維持システムを装着する必要があるためにクールさが台無しになっている。それは外見を台無しにするだけでなく、嵩張るし重いものだ。

その代わりに、もし背中のユニットが、そばにいる犬のように横を一緒に移動してくれるとしたらどうだろう?まあ良いかも。とはいえ、露出したパイプが単一障害点にみえるので、私にはデザインの欠陥のように思えてならない。

12:火星フラッパー

このための技術は、それほど多くは存在してはいないものの、多くの点で簡単なもののように思える。ローバーまたはランダーを基地として、遠隔地の調査や標本採取のために飛行する小さな翼を持つドローンたちだ。

Marsbeeプロジェクトでは、特に火星の大気中で飛行する羽ばたき(フラッパー)ロボットを狙っている。チームの一部は既に地球上で飛行できるハチドリサイズの羽ばたきロボットを作成している。なので実現可能性が全くないわけではない。

13:小惑星を削り取るソフトロボット

これらの配備可能なロボットは、単一の高価な着陸装置を小惑星の表面に送り込むというリスキーなアプローチに対する代替手段だ。そのソフトな外殻は、着地を容易にし、地形にそって這って移動し、最終的にはフジツボのように表面をしっかりと掴むことを可能にする。

一旦固定されると、サンプリング機構が物質を表面から「削り取り」それらを待機中の宇宙船に送ることができる。

私はこれを昨年から覚えているが、デザインは少々改良されて、一種のパンケーキや虫のようなものから、花のようなものに進化している。

14:キロメートル幅の宇宙望遠鏡

このプロジェクトは、そのような望遠鏡があれば手に入るであろう様々な便益を追求することが目的で、キロメートル幅の望遠鏡を構築することそのものが目的ではない。便益のいくつかは明白だが、他のものはそうではなく、チームは研究室でそれをあれこれ研究している最中だ。

彼らはそれがどのように構築できるかも研究しているが、それはまだまだ遠い先の話である。彼らのデータは、キロメートル幅であろうとなかろうと、次世代宇宙望遠鏡の製作に役立つことだろう。

15:恒星間移動のためのレーザー推進

これも昨年から続くもう一つのフェーズIであり、この推進方法の難しさを例証している。良いニュース:レーザーの幅は10キロメートルに及ぶ必要はない…たったの2キロで大丈夫だ。悪いニュース:100メガワットの出力では不十分だ。必要なのは400メガワットである。

それでも、イオンエンジンを併用して移動するレーザー駆動の宇宙船のアイデアは有望であり、必要とされる高効率(50%超)の太陽電池は、それ自身興味深い研究プロジェクトである。

16:メガドライブ

いや、これはSEGAのものではない。これはMach Effect Gravity Assist driveシステムである。これは「加速度と内部エネルギーの変化が同時に起こる際の、物体の静止質量の一時的な変化」を利用する。私たちは、このシステムが「技術的に信頼できる物理学」に基づいていると確信している。。

これは(Emdriveのような)どちらかと言えば骨折り損の研究のように聞こえるかもしれない、しかしそれはこの種の研究につきものなのだ。そしてフェーズⅡも選択されたという事実は、それが何らかの成果を得る見込みがあることを意味している。

17:宇宙線からの宇宙船の保護

長期にわたる宇宙旅行の主な問題の1つは、放射線被曝である。もちろん、鉛やその他の遮蔽材を使用することはできるが、完全にクリーンなものにしたい場合には、有害な放射線を能動的に排除するシステムを最初から作る必要がある。それがこのプロジェクトの基本アイデアである。

本質的にはそれは巨大な環状マグネットであり、「銀河の宇宙線の大部分を偏向させる並外れた能力を持ち」、一次衝突から発生する二次粒子への対処の必要をなくすものである。

いやちょっと待った、実はまだ続きがある!磁気遮蔽は、物理的な遮蔽が少なくて済み、船体自体の必要質量が減少することを意味するのだ。これは超有望な技術なのだ。

18:自己給油式プローブ

太陽系の中で、木星以遠の惑星に到達することは、宇宙的尺度で言えば比較的簡単な仕事である。しかし、そこでサンプリングを行い、そのサンプルを地球に持ち帰ることは難しい!到着時に減速しなければならないだけでなく、帰る際には逆方向に加速しなければならないからだ。このためには燃料が必要だ。

The Nano Icy Moons Propellant Harvester(NIMPH)は、惑星や衛星の表面に着陸機を送り、地球に帰るために十分な燃料を作るために必要な材料を集める。これはまた、最初の打ち上げ質量を減らし、ミッションを行いやすくする。

19:海王星のトリトンで跳ね回る

トリトンは海王星の最大かつ奇妙な衛星である。文字通り、太陽系内の他のすべての衛星とは異なり、それは惑星の自転の反対方向に公転している。その表面は奇妙で、滑らかな部分と、凸凹した部分が交互になっており、その起源は冥王星に似たものだと考えられている。

その探査のために提案された着陸船は、凍った窒素を動力に使って飛び跳ねながら、その衛星の荒れた地形の上を移動することを狙っている。

20:太陽系外惑星の太陽重力レンズ画像

遥か遠方の太陽系外惑星を見ることは困難である。しばしばそれらを直接見るのではなく、その惑星の従属する恒星からの光を反射した光によって間接的に見ることになる。このプロジェクトは、太陽重力レンズの概念を利用することによって、より直接的なイメージングを可能にすることを目指している。

基本的には、太陽系外惑星から届き、私たちの太陽の周りで曲げられた非常に少量の光でも、それをモデル化することで一種の3D写像を作り出して見ることが可能なのである。

それはとても野心的なことのように聞こえるかも知れないが、もし物理学によって裏付けの計算が行われれば、30パーセク離れた太陽系外惑星のメガピクセルサイズの画像を得ることができるだろう。

[原文へ]

(翻訳:sako)

SpaceX、Dragon補給船打ち上げ成功――ISSから故障したロボットを持ち帰る予定

先ほどSpaceXはCRS-14ミッションを開始し、Falcon 9によるDragon補給船の打ち上げに成功した。これは国際宇宙ステーションに対する14回目の物資補給で、再利用されたDragonはISSに物資を補給した後、故障したロボット、Robonaut 2を持ち帰る予定だ。

今回のDragon補給船が宇宙に出るのはこれが2回目だ。最初の飛行は2年前のCRS-8ミッションだった。 Falcon 9ロケットも再利用だが、今回の飛行が最後となる。つまりブースターの回収は行われない。

補給物資には食品など生活必需品の他に 興味深い科学実験設備が含まれている。ASIM( Atmosphere-Space Interactions Monitor)は大気と宇宙の相互作用を観測して雷発生のメカニズムの解明に役立てようというものだ。スプライト、エルブ、ブルージェットなどと呼ばれる上層大気で強い光が放たれる現象が観測されている。これはすべて高圧放電だという。

エルブ、レッドスプライト、ブルージェット等の発生する高度

また宇宙における加工テクノロジーに期待が集まるなか、新型のHP 3Dプリンターも宇宙ステーションに運び込まれる。マイクログラビティ(微小重力)状態を利用した積層プリンティングの実験が行われる予定だ。

生理学の分野でも各種の薬剤の代謝にマイクログラビティがどのように影響するかモニターする実験が行われる。また植物の生育に関する影響も調査される。

Dragon補給船はISSに1ヶ月ほど結合され、慎重に物資の搬入、搬出が行われる。故障したRobonaut 2は数年前からISSで運用実験が行われてきたが、最近このロボットにいくつかの不調が発見された。日曜日のNASAの記者会見によると科学者は回路のショートなどの電気的不具合を疑っているという。

しかしISSに修理のためのツールも時間もないため、Robonaut 2は地上に帰ってメンテナンスを受けることになった。ロボットは1年程度後に再び宇宙に向かう。その間、宇宙ステーションには多少余分の空間が生まれる。

画像:NASA

トップのビデオでは14:30からミッションの説明があり、19:50で打ち上げとなる。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

NASAが作った雪の結晶が解けていくシミュレーションは嵐の予報に役立つだけでなくとても美しい

雪については、まだ分かってないことが多い。それはどこから来るのか? どこへ行くのか? どんな味がするのか? これらの疑問に、一応の答はあるけれども、もっと複雑な疑問もある。顕微鏡的な微細なレベルでは、空中の雪はどのように解(溶)けるのか? それが、NASAのあるプロジェクトのテーマで、その結果は実用的であると同時に美しい

雪は、天候というシステムの重要な要素だ(雪氷圏(cryosphere)という言葉をご存知だったかな?)。そして、雪が形成され解けていく過程は、気象学者が、たとえば嵐やその激しさを予報するのに役に立つ。でも雪について知るためには、雪片を手のひらに取って、それを見つめているだけではだめだ。どんな研究でも、それを正しく理解するためには現象の数学的モデルが必要だ。

Jussi Leinonenは、NASAのジェット推進研究所で長年、この問題に取り組んできた

“解けていく雪のモデリングに関心があった。それがわれわれの遠隔感知機器の観察に与える影響を、知りたかったからだ”、と彼は最近のリリースで言っている。天候のパターンを理解し予測できることは、もちろんロケットの打ち上げにも関係がある。

Leinonenがもたらしたものは、雪片の解ける様相や要因の正確なモデルだ。それを雪片のタイプごとに、温度の違いごとに、解け方の状態ごとに作っていく。そのベーシックなバージョンは: 雪片の凹面に水が集まってそこが液体になる。その小さな湖が広がり、やがて氷の結晶全体を覆い、核を包む。そしてそれもやがて解ける。

と書いてしまうと単純だが、Leinonenのモデルはきわめて詳細で、雪片の形の違いや塊りの違いによる解け方の違いも表している。それを3Dで視覚化した映像(下図)は、とても美しいだけでなく、とても正しく見える。

正確なモデルがあれば気象学者は、雪や雨のさまざまなタイプを分析でき、それらが、どんな条件下でどう振る舞う、ということも分かる。またそれらの違いがレーダーのどんな画像になるかも、詳細に分かる。

雪片が解けていく様子を高解像度で映像化した動画は、スクリーンセーバーとしても人気が出そうだ。ただしLeinonenが作ったのは、Geophysical Researchに載った研究論文のみだけど。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

アメリカ、国際宇宙ステーションの民営化を検討――シャトルの引退後NASAによる運営困難に

Washington Postによれば、トランプ政権は2024年に国際宇宙ステーション(ISS)を退役させる代わりに、民営化する方策を検討しているという。

Washington Postが入手した文書によれば、アメリカ政府はISSを単に洋上に落下させるのではなく、民間企業に運営を任せる方法を模索している。これに伴いNASAは「地球低軌道における人類の活動を継続するために、向こう7年の間にパートナーシップを国際的にも商業的にも拡大していく」ことになるという。

WPの記事によれば、トランプ政権は2019会計年度のNASAの予算中に、ISSの商業的運営が成功するよう方策を講じるための予算として1億5000万ドルを要求するという。これは後継運営者がISSの全体または一部を必要に応じて利用できるよう整備するためだという。

アメリカ政府はこれまでに概算で1000億ドルの予算をISSの開発と運営のために投じてきた。ISSはアメリカの他に、欧州宇宙機関(European Space Agency)、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)、ロシア宇宙機関(ロスコスモス)などが主要メンバーとなって運営されている。

宇宙飛行士、 Cady ColemanがISSの窓際から地球を見下ろす(画像:NASA)

しかしNASAのエンジニアがQuoraで説明したように、NASAは「すべてのプログラムを実行するための予算がない」ため、ISSの運営を停止さざるをエなくなっていた。

NASAの衛星組み立てと日常運営部門の責任者、Robert Frostはこう書いている。

…残念ながら〔NASAは〕すべての巨大プログラムを同時に望むように実行するリソースを欠いている。ISSの建設にあたってはスペースシャトル・プログラムが必須の要素だった。しかしISSの〔基本部分の〕組み立てが終わった後、次の有人宇宙計画(Constellation)が実現する前にスペースシャトルが退役を余儀なくされた。

NASAの使命は宇宙というフロンティアの開拓にある。地球低軌道における〔有人衛星の〕経験は十分に得た以上、 NASAはこの分野を民間企業に引き継ぐことが可能だろう。【略】

将来のISSの運用にあたっては政府と民間企業による第三セクター方式が考えられるだろう。NASAが運営を停止した後のISSを大洋の墓場に落下させて葬るよりいいはずだ。

NASAでISSの運用に10年携わったエンジニア、Michael T. Suffrediniが創立したAxiom Spaceは宇宙ステーションの商業的運営を行うビジネスを目的としており、シード資金として300万ドルを調達している。エキセントリックな言動で知られるラスベガスの大富豪、Robert BigelowのBigelow SpaceもISSに新たな居住・実験区域を追加するプロジェクトを進めている。

ISSを商業的に運営することが可能かどうかについては議論があるものの、NASAがシャトルの運営を停止したときからISSの運営をこのまま続けるのは不可能だというのは動かしがたい結論だった。

ISSの運命は長年宇宙関係者の懸念することがらとなっていたが、先週、元宇宙飛行士のMark KellyはNewyork TimesのコラムでISSの運用継続を訴えている。【略】

ISSの民営化にあたっては、商業的に成立させる方策を探ることも重要だが、国際協力の枠組みを再交渉するという大きなハードルも存在する。ことにISSの建設当初に比べてアメリカとロシアの関係が冷え込んでいることが影響するおそれがある。

またアメリカがISSから手を引けば、大いに歓迎する国がすくなくとも一つある。近年、中国政府は宇宙計画に数十億ドルを注ぎ込んでおり、宇宙における役割の拡大に努力している。

Kellyは、New York Timesのコラムで「アメリカが手を引けば、その空白を他国が埋めることになるのは疑いない。それはおそらくロシアと中国だろう。われわれが重大なライバルと見ているこの両国が主導権を握れば…宇宙における活動がアメリカが信じる価値や利害に反する方向に動かされる危険性がある」と警告している。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+