MITの研究者が消化管を監視する消化型センサーを開発

MITの研究者らは長年消化型技術を研究してきた。ここ数年で様々な服用可能デバイスが開発され、その中にはブタの組織からなるバッテリー不要のロボットもある。特に同大学のKoch Instituteはこの分野に焦点を当てており、薬物摂取等を監視する消化可能センサーの利用を研究している。

研究チームが開発した新しいタイプのセンサーは丸めてカプセルに入れ飲み込むことができる。カプセルが溶けるとセンサーは胃の内壁に吸着して、消化器疾患の診断や食物摂取の追跡に使用できる。

装置が展開されたときの大きさは2 x 2.5 cmで、消化管と一緒に動く人間の皮膚に似た柔軟なポリマーで作られている。センサーは圧電性のため操作を受けると電圧を発生する。将来はこの性質を別のセンサーの電力源に利用し、内蔵バッテリー不要のシステムを作ってリスクを軽減できる可能性がある。

ブタを使って試験の結果、このセンサーは消化管の過酷な環境下で最長2日間問題なく動作した。

「著しい生理学的反応を起こすことなく消化管の中に留まれる素材は数多い」と研究員のGiovanni TraversoがTechCrunchのインタビューに答えて言った。「装置を埋め込むと著しい炎症反応を起こす。本研究で使用した電子回路は柔軟で、胃の中で広がって内壁に付着する」

将来のバージョンでは、医師が疾患の検出や患者の食物摂取の監視に使うことが期待されている。本研究はボストンのBrigham and Women’s Hospitalと共同で実施された。

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SpaceX、Falcon 9ロケットの発射と3度目の回収に成功

本日(米国時間10/11)SpaceXはFalcon 9ロケットの今年15回目の打ち上げに成功した。ロケットはフロリダ州のケネディ宇宙センターから飛び立ちEchoStarおよびSESの二重目的ミッションをもつ衛星を搭載している。今回打ち上げに使った第一段ロケットは2月に宇宙ステーションの補給ミッションで飛んだ後回収され、SpaceXによって修復された。

LC-39Aの発射は、6:53 PM EDTからのSpaceXの発射時間帯の初期に実行された。積載された通信衛星はクライアントであるEchoStarのKuバンドおよびSESのCバンド両方の送受信が可能だ。

SpaceXは、第一段ロケットの回収に再び成功した。これは、状態がよければ使用したFalcon 9を3度目の飛行に利用できることを意味している。着地したのは大西洋上のSpaceXのドローン船 “Of Course I Still Love You” 。SpaceXにとって、Falcon 9第一段ロケットの18回目の着陸成功だった。

これはSpaceXにとって、月曜日午前のイリジウム-3ミッションに続く、今週2回目の打ち上げだった。将来SpaceXは、打ち上げのペースを早めるだけでなく、ロケットを24時間以内に再利用したいと考えている。同じ週に複数のロケットを打ち上げられるようになれば、長期計画にも良い影響を与える。

発射からおよそ30分後、SpaceX Falcon X第二ステージは、積荷を目標軌道に配置することに成功し、SpaceXにとって本ミッション全体が成功裏に終わった。

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World Viewの成層圏気球がツーソン本社からの浮上操作に成功、商用化に一歩前進

成層圏気球をさまざまな目的のために提供するWorld Viewが、同社の発表によると、アリゾナ州ツーソンの本社から、その最初の浮上に成功した。その新しい本社は公式には2月にオープンしたが、その後今日まで各種の準備作業に追われ、本日(米国時間10/1)やっと初浮上に至りついた。

World Viewは高高度の気球船を使うことにより、商用宇宙ビジネスに新しい分野を開拓しようとしている。その気球は地球の大気圏の上端で運用され、科学研究や観測などの目的に、低地球軌道人工衛星よりずっと安い費用で利用できる。その成層圏高度は、長期的な観測サイトにも適しており、気象観測や国防用途にも向いているとされる。

ツーソンにおける初浮上は、土曜日(米国時間9/30)に行われ、その前の気球充填テストは8月半ばに行われた。ツーソンの本社には浮上のための施設設備だけでなくオフィスもあり、巨大な気球を手作業で組み立てるための世界最長のテーブルもある。将来的には客室のある気球も構想しており、それが実現したら成層圏観光旅行や科学者たちの搬送も可能になる。

World ViewのCEO Jane Poynterによると、ツーソンからの最初の浮上は同社の(ブランド名)Stratollite気球の一連の開発および立証過程における、重要な里程標のひとつにすぎないが、今日の成功を踏まえて今後は徐々に、長期の滞留や永続的ステーションの実現に向けて努力していかなければならない、という。

ツーソン本社ではなく試験サイトからの浮上では、すでに気球の27時間の連続飛行に成功している。複数の気球の、数時間でなく数か月の一斉滞留が可能になれば、商用の運用もできる、と同社は考えている。

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NASAとロシア、月宇宙ステーションの共同開発で合意

今年の国際宇宙会議で、NASAとロシアの宇宙機関、ロスコスモスが共同声明に署名し、地球を遠く離れ月軌道を周回する宇宙ステーションを共同開発する意志を表明した。月面探査と深宇宙科学両方の拠点となる。

これはNASAが熱望するいわゆる「深宇宙ゲートウェイ」コンセプトの探究と開発の一環であり、人類の宇宙探査の範囲と能力を拡大するための戦略基地を目指している。NASAは人類を月より遠くに連れていきたいと思っている。言い換えると、このゲートウェイコンセプトは、月の周辺に軌道周回宇宙ステーションを置くことで、計画の実践的可能性を高めようとするものだ。

「深宇宙ゲートウェイはまだコンセプト形成の段階だが、人類の宇宙探査を前進さする第一歩としてのシスルナ(地球と月の間)空間進出に国際的関心が高まっていることをNASAは歓迎する」とワシントンのNASA本部長官代理、Robert Lightfootがこのニュースを伝えるプレスリリースで語った。「ロスコスモスと共同署名したこのような声明は、ゲートウェイ構想が手頃価格で維持可能な探査アーキテクチャーの先駆けとなることを示している」。

ロスコスモスとNASAの共同作業はまだごく初期段階にある ―― 将来共同作業に合意する可能性に関する合意とみることもできる。しかし、将来月の周回軌道に科学および探査施設を設置することについて、開かれた会話が持たれる良い兆候だ。

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カーボンナノチューブを撚って作った糸は引っ張ると発電する…スマート衣料の実用化へ

スマートな服は誰もがほしいと思っているけど、みんな、バッテリーパックを着るのは嫌だ、と言うだろう。まあ典型的な第一世界問題だけど、そのソリューションの中には単純におもしろいものもある。テキサス大学ダラス校の研究者たちが、カーボンナノチューブを撚(よ)って作った撚り糸で発電する方法を作り出し、しかもそれに、ツイストロン(twistron)というかっこいい名前をつけた。

引っ張ったり押したりすると発電する圧電素子素材は、これまでにも多種類あるけど、このツイストロン撚り糸には強度と柔軟性があり、おまけにスーパーキャパシター(超コンデンサー)として動作する。極細のカーボンナノチューブを集めて撚り、コイル状にすると、伸展性、伝導性など、役に立つ資質を持つようになるのだ。

同校のナノテク研究所のトップRay Baughmanが、ニュースリリースで述べている: “電子織物には大きな商業的関心が集まっているが、では、それらにどうやって電力を供給するのか? 人間の体の動きから電気エネルギーを得ることは、バッテリーを不要にする方法の一つだ。われわれの撚り糸は、これまでの各種文献に報告されているそのほかの可織繊維に比べて、伸展したときに得られる電力が100倍以上大きい”。

とは言っても、それが微々たる大きさであることに違いはないが、でも組込みシステムは電力要量が小さい。では、何が問題か?

そう、つまり問題は、このツイストロンは電解液に浸けないと動作しない。しかし、たしかにそれだけを想像すると大変そうだが、実際にはそれほどでもない。チームがScience誌に発表したペーパーによれば、ツイストロンを固体電解質…塩性のポリマー…で包むことによって、液体に浸けなくても発電できた。

研究チームがツイストロンで編んだシャツは、着用者の呼吸から実用レベルの電気を生成した。数分おきにバーストでデータを送るワイヤレスのトランシーバーなど、低電力のデバイスをシャツに編み(織り)こめば、この微小な電力で十分実用になるだろう。

チームは、海の波でもテストした。ペーパーの共著者の一人Shi Hyeong Kimは、ツイストロンの撚り糸で作ったおもりに風船をつけて、彼の故郷韓国のしょっぱい海に投じた。波の動きから撚り糸は力を受けて伸展し、電気を生成した。この方法はスケール(規模拡大)も容易であり、用途に応じ自由にカスタマイズして、海から電力を取り出すだろう。

“われわれのツイストロンを使った電力収穫機をもっと安価に作れるようになれば、大量のエネルギーが海の波から得られるようになるだろう”、とBaughmanは述べている。

チームはすでに特許を申請し、その応用を研究しているが、クールな技術がいつもそうであるように、世の中で一般的に見られるようになるまでは時間がかかる。なお、同大のナノテク研究所のサイトへ行くと、そのほかのおもしろいプロジェクトも見られる。

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トランプ大統領、安全メガネを外して日食を見る

ドナルド・トランプは安全メガネをかけて、今日(米国時間8/21)米国を横断する日食を見ていた ―― 少なくとも最初は。観察の終わりが近くなると、大統領はあのへんてこなメガネをかけていたことを忘れたかのように、メガネを取り去り直接太陽を凝視した。それは、賢明な人間のすべきことではない ―― 日食でもそうでなくても。

彼が行動に出たとき、トランプの側近は「見ないでください!」とまで叫んだが、効果はなかった。安全メガネを外して空を見上げた最高司令官は、目を細め、見てはいけないと言われていたものを指差しもした。

きっと彼は熱烈なU2ファンに違いない。たぶん、盲目になりたいのだろう ―― 見たくないものを見つけるのが怖くて。

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GoogleのLunar Xprize賞(民間・個人資金による月面着陸)は締め切りを変更して賞金の種類を増やした

民間ないし個人の取り組みで月面着陸を競うGoogleのLunar Xprize賞は、このほど参加のインセンティブを増やし、締め切りを延ばした。優勝者の資格は、2018年3月31日までにミッションを完了する、という一つだけになり、今年中に着陸船を打ち上げる、という要件はなくなった。

月へ行く宇宙船はほぼ完全に民間〜個人資金だけで作り、それが月面に着地するものでなければならない。さらにその後、着陸機は月面を1/3マイル(536メートル)動きまわり、画像とビデオを地球へ送信する。優勝賞金は2000万ドルである。二位の準優勝者は500万ドルもらえる。

The Vergeによれば、これらの情報が一般公開されたのは今日(米国時間8/16)だが、すでに参加者たちは数か月前から開発に着手している。打ち上げの締め切りがなくなったのは、来年初めなどかなり遅く打ち上げてもミッション締め切りに間に合うチームもありえる、と考えたからだ。

締め切りの変更に加えて、賞金計475万ドルの新条件が登場した。まず、3月よりも前に月を一周して着陸を開始したチームには175万ドル、さらに月面にソフトランディングして期間終了までにデータを送信し続けることのできたチームは300万ドルをもらえる(トップの優勝/準優勝チーム以外?)。

今残っている参加チームはMoon Express, Synergy Moon, SpaceIL, Hakuto, TeamIndusの五つだけだ。どのチームもすでにロケットを予約しているが、打ち上げの日程や、締め切りに間に合いそうかなどは、まだ分からない。

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ブタ胚の遺伝子編集は、移植臓器の不足を解決?!

ブタの内臓は人間のものと同じ大きさで、機能的にも同様になっている。そこで、ブタの臓器を人間に移植できないかという発想が出てくるわけだが、これにはなかなか難しい問題があった。移植した際に、豚の細胞内に潜むウィルス性疾患が顕在化することがあったからだ。

しかし、どうやら対処する可能性が見えてきたようだ。遺伝子編集(CRISPR-Cas9)を施した豚についての記事がScienceに掲載されている。研究を行った科学者によれば、遺伝子編集の技術を用いて、すべてのブタに認められるブタ内在性レトロウイルス(PERV)を不活性化(inactivation)することに成功したのだそうだ。

これにより動物の組織を人体で利用するという、異種移植への道が開かれることとなる。現在、アメリカには117,000人の移植待機者がいて、ドナー不足から22名の人が毎日亡くなっている。ブタの心臓や肺などが人間に移植可能となれば、多くの命を救うことができるようになる。

PERVを不活性化して異種間コンタミネーション(汚染)を防いで、移植を実現する具体的な方法が示されたのは、これが初めてのこととなる。

研究成果の発表を行ったのは、ハーバードにおけるゲノム研究の第一人者であるGeorge ChurchおよびLuhan Yangが設立したeGenesisだ。このeGenesisによれば、ブタの胚細胞に対して遺伝子編集を行いつつ、62個のレトロウィルスの非活性化を行いながら細胞を生かし続ける技術を開発したのだとのこと。処理後の肺を胎内に移植することで、PERVフリーなブタに成長する。

遺伝子編集の技術は、人間および動物のさまざまな病気を治療できる可能性を持つものだ。食糧問題にも応用可能だし、誰も想像もしていないような可能性も含んでいるに違いない。先日も、米国の科学者がヒトの胚細胞に対する遺伝子編集を行なって心臓疾患治療を行う研究についての発表がなされたところだ。もちろん、遺伝子編集を人間に適用していくには、まだまだ多くの研究および議論が必要なのは言うまでもない。

eGenesisは、遺伝子編集を行ったブタの様子を注意深く観察し、「PERVフリーのブタから、安全で効果的な異種間臓器移植を実現できるように」していく予定なのだとのことだ。

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(翻訳:Maeda, H

SpaceX、大型ロケットFalcon Heavyの理想的な姿を描いたアニメーションを公開

Elon Muskは、SpaceXの大型ロケット、Falcon Heavyの打ち上げプロセスを描いたアニメーションを公開した。来る11月に初の打ち上げを予定している。アニメーションには、3基のブースターを備えたロケットが打ち上げられ、1段目と2段目を切り離し、宇宙にロケットを送り込むために使われた3つのブースターが地上に戻り軟着陸する様子が描かれている。

Instagram Photo

もちろんこれは、SpaceXがFalcon Heavyを打ち上げたとき、そうなって〈欲しい〉理想的な姿であり、現実がこのコンセプト・シミュレーションのようになる可能性は高くない ―― 少なくとも最初は。

Musk自身でさえ最初のFalcon Heavyの打ち上げが成功するかどうかについての発言はかなり慎重だ。例えば上に貼ったInstagram写真のキャプションには「11月の打ち上げが失敗する可能性はいくつもある」と書いてあり、今年のISS R&Dカンファレンスでも、何も問題が起こらずに打ち上げできればSpaceXはラッキーだと言っていた。

どうやらMuskは、最初の打ち上げでは軌道に達する前に「想定外の急速な分解」(別名、爆発)が起きることを予想しているらしい。それはSpaceXにとってこのテストが時間の無駄だという意味ではない。ロケット事業ではあらゆる失敗が学習の機会であり、Falcon Heavyの打ち上げシステムには、地上での実験やシミュレーションでは学べないことがあるとMuskは言っている ―― ロケットはまず飛ぶ必要がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

重量4グラム、世界最小の宇宙船を低地球軌道に打ち上げ成功

世界最小の宇宙船の実動プロトタイプが先月、周回軌道に乗った。それはOHB Systemが運行するMax ValierVenta衛星に相乗りする形で、Indian Space Research Organization(ISRO)により軌道上に打ち上げられた。

この小さな‘Sprite’宇宙船はBreakthrough Starshotのプロジェクトとして作られ、2011年にKickstaterで資金を募集した。大きさは3.5cm×3.5cm、重量は4グラムだが、動力源(ソーラーパネル)とコンピューティングの部位、センサー、そして無線通信装置がある。

このちっぽけな宇宙航空機Spriteは、さらに小さなワンチップ宇宙船の研究開発の初期的段階だ。これまでのテスト結果は良好で、カリフォルニアとニューヨークにある地上局とメッセージを通信できた。また、アマチュア無線愛好家たちが、Spriteが頭上を通過するとき信号を捉えることができた。

なぜこんなに小さな宇宙船を作るのか? 実はBreakthrough Starshotは、光の力で、光速の20%の速度で航行する宇宙船が可能であることを、実証しようとしている。そしてそれを、プロキシマ・ケンタウリbのような、ケンタウルス座α星系の惑星群の、撮影可能な範囲内に定置させたい、としている(上図)。

それは、実現可能な宇宙航行方法の一つとして、Liu Cixinの硬派SF三部作The Remembrance of Earth’s Pastに詳述されている。ぼくがその理論を初めて知ったのもこの本からだ。この夏、ひまを持て余しそうな人には、一読をお勧めしたい。

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NASA、宇宙船カプセルの海上脱出テストを実施

NASAは、宇宙飛行士を運ぶあらゆる機器について長期にわたり徹底した安全確認をおこなう。そして有人カプセルOrionも例外ではない。このカプセルは2021~2023年に、大型打ち上げロケットSpace Launch System(SLS)に乗ってクルーと共に宇宙へ飛び立つことを目標にしている。メキシコ湾で行われた海上脱出テスト(via Space.com)では、宇宙飛行士たちが太平洋に着水した後安全に脱出、移動できるかどうかを確認した。

NASAによるこのテストが行われたのは7月11日で、Orionカプセルは米国沿岸警備隊の船で運ばれてメキシコ湾の海上に置かれた。飛行士たちは宇宙服を着て小型ボートでカプセルに乗り込み、実際にカプセルが太平洋に着水したときの非常手順を再現した。

宇宙飛行士が鮮やかなオレンジ色の緊急用ゴムボートでカプセルを脱出するのは、望ましい行動ではない。Orionが予定通り着水した場合の標準運用手順では、地上の救出チームが飛行士らを収容する。長時間の宇宙滞在で筋肉劣化などの体調不良も考えられる飛行士らにとって、この方が好ましいやり方だ。

しかし、何らかの理由で24時間以内(Orionが維持できる時間)に救助チームが来なかった場合、あるいは早く脱出する必要が生じた場合には、すべての手続きを宇宙飛行士が担当しなくてはならない ―― たとえ身体能力が低下していようとも。

他の有人宇宙船も発射前にNASAが要求する安全確認手順を実施している。例えばLochkeed MartinとBoeingのジョイントベンチャーであるULAは、CST-100 StarlinerがAtlas Vロケットに搭載された際の発射前作業用に作られた緊急脱出システムのデモを行った。

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ニューヨーク大学が都市を俯瞰した世界で最高密度LiDARデータセットを一般公開、都市計画図面が3Dになる?

ニューヨーク大学が同大のCenter for Urban Science and Progress(CUSP)から、これまででもっと高密度なLiDARデータセットを一般公開した。このレーザーでスキャンしたデータは上空からのLiDAR機器を使って集められ、1平方メートルをおよそ300の点で構成する従来のふつうのデータセットの30倍の密度で、ダブリンの都心部の1.5平方キロメートルを収めている。

このデータを集めたのはDebra F. Laefer教授と彼女の研究チームで、上空からの屋根のビューと建物の分布のほかに垂直面の情報もあるので、都市景観の3Dモデルを作ることも可能だ。しかもそこには、建物の大小関係や木、電線、電柱、それに化粧屋根の高さなどまで、細部を再現できる、とCUSPは言っている。

これだけの大規模で高品質なデータが誰にでもアクセスできることは、都市計画や都市開発の研究者たちにとって大きな意味を持つだろう。また自動運転車とかドローン編隊などに取り組んでいるエンジニアチームや、感染症の感染経路を調査している人たちなどにも役に立つはずだ。もちろん他のもっといろんな都市で、これぐらいのものが採用されてほしい。CUSPが今回一般公開したのも、そんなねらいからだろう。現に今、ニューヨークで同様のデータイメージングプロジェクトをやることが、議論されている。

このデータセットを使ってできる、クールなことのアイデアがある人は、ここで入手できる。LiDARに関する情報や関連の画像も、セットになっている。

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SpaceX、インテルサット35e打ち上げを発射10秒前に中止

アップデート 8:35 PM EDT:打ち上げは再び発射10秒前に中止された。これは昨日の発射中止と同じタイミングだ。このことから今回もコンピューターによる自動遮断によって中止されたことが示唆されるが、SpaceXは昨日の問題は間違いなく修正されたと打ち上げ時のアナウンスで発表した。

昨日の中止の原因は、ロケットのガイダンスシステムがオフになっていると表示されたためとされていたが、後の検査の結果同システムに異常はなく、コンピューター自身が原因だったことがわかった。SpaceXは今日の中止の原因を今も調査中だが、代わりの打ち上げ日は明日7月4日に設定された。

アップデート 7:06 PM EDT: SpaceXの2回目の変更により、打ち上げ時刻は8:35 PM EDT(5:35 PM PDT)に再設定された。発射時限は8:36 PM EDTなので、これ以上延期されれば本日の発射は中止するほかない。

アップデート 6:50 PM EDT:SpaceXは発射予定時刻を8:07 PM EDT(5:07 PM PDT)に変更した。今日のミッションの発射時限は7:37 PM EDTから約1時間後までなので、状況によっては再変更もありうる。ライブフィードは7:52 PM EDT(4:52 PM PDT)開始の予定。

SpaceXの静止衛星Intelsat 35eの打ち上げ時刻は月曜日(米国時間7/3)7:37 PM EDT(4:37 PM PDT)に再設定された。これは、前日カウントダウン10秒を残してコンピューターにより打ち上げが中止されたことによる、バックアップ用打ち上げ時間帯だ。

Intelsat 35eの打ち上げでは、宇宙への推進に使われるFalcon 9ロケット第一段目の回収は行わない。これには正当な理由がある。今回の積載物はSpaceXによるFalcon 9打ち上げの中で最も重いため、ロケットは第一段目の回収が不可能な形態で構成されているからだ。

この打ち上げはSpaceXにとってわずか10日間で3回目の試みになる。先々週の金曜と先週の日曜日にそれぞれミッションを実行した。7月3日、SpaceXは同社が打ち上げたISS補給ミッションのDragonカプセルの回収にも成功している。これは、ISS訪問後に地球に帰還後、改修して再利用された最初のDragonカプセルだ。

SpaceXの打ち上げライブストリーム中継は、発射約15分前から始まる予定で、7:22 PM EDT(4:22 PM PDT)頃に始まる予定だ。

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SpaceX、1月に使ったFalcon 9の第一段ロケットを6月17日に再利用へ

SpaceXは1月14日の打ち上げに使ったFalcon 9の第一段ブースターロケットを次の打ち上げに再利用しようとしている。実現すればすばらしいターンアラウンドタイム(約6か月)だ。SpaceXは3月30日のSES-10ミッションで Falcon 9のブースターを1度だけ再利用したことがある。その時のロケット改装には1年近くかかっているので、半分に満たない6か月以下というのは劇的な改善だ。

SpaceXは最終的にFalcon 9を24時間以内に再打ち上げしたいと考えている。短い時間にできるだけ多く発射することで打ち上げ容量を最大化しスケールメリットを高めることができる。

[CRS-11の打ち上げから数時間後、この実証済みのブースターロケットは39A格納庫に収容され、6月17日のBulgariaSat-1の発射を目指す]

SpaceXがFalcon 9の再利用を予定している6月17日のBulgariaSat-1ミッションは、ケネディ宇宙センターで開始される。当初は昨年末に実施される予定だったが、昨年9月にSpaceXのロケットが発射前のテスト中に爆発した事故を受け延期されていた。

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IBMが爪の上に300億個のトランジスターが乗る5nmプロセスルールの微小トランジスタを開発

IBM Researchがチップ製造用の新しいタイプのトランジスターを作った。それは、5nmというこれまでで最小のプロセスを使用し、研究パートナーのGLOBALFOUNDRIESやSamsungと共同で開発された。チップの組み立て方式を変えるなど、いくつかの基本的な事項の変更によって生まれたその微小トランジスタは、これまでムーアの法則は終わったと言われていた、プロセスの限界を突破できた。

この新しいプロセスによって、チップのサイズと密度は、人間の指の爪の上に300億個のトランジスターを乗せられるレベルになる。その場合、集積のために全周ゲートFET(gate-all-around(GAA) transistors)と呼ばれる立体的なゲート集積プロセスを用いる。〔参考記事。〕

性能的には、同じ消費電力で、現在の10nmチップの40%アップとなる。現在の10nmチップと同性能として省エネをねらった場合は、75%の電力節約が可能になる。

しかし、喜ぶのはまだ早い。IBM自身も認めるように、この超過密チップの実用化商品化まではあと10〜15年はかかる。でも、これにより、われわれのローカルなコンピューティングやモバイルデバイスは、とても強力になるだろう。

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Google Mapsの地図上で現在地の空気汚染度が分かる…カリフォルニア州オークランドから

Google Mapsが初めての、今自分が立っている場所の大気質が分かる地図を、カリフォルニア州オークランドでローンチした。

このプロジェクトはEnvironmental Defense Fund(EDF)Aclimaとのパートナーシップによるもので、後者は2015年から、ベイエリアとセントラルヴァリー、そしてロサンゼルスの環境の変化を地図化している。

このパートナーシップによりGoogleは、AclimaのセンサーをStreetViewの車に装着、酸化窒素や二酸化炭素やばい煙など自動車の排気物質の多い地域では、街路ごとにそのデータを地図上に表示できるようにした。

その地図がベイエリアの環境科学者たちの役に立っている例として、ベイブリッジからI-80への合流点にかけて、車が加速することによって発生する高い汚染を把握できたことが挙げられる。そこは渋滞が頻発するフリーウェイで、ラッシュアワーだけでなく、週末にも大気の汚染が生ずることが分かった。

今日のGoogleのブログ記事は、Googleがこれまで発表した汚染データの中では最多だ、と主張している。“1年間で測定回数は300万近く、のべ20000キロあまりにわたって測定した”と述べ、今後は他の都市でもやる、という。

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SpaceX、ISS補給船Dragonの再利用打ち上げに成功

土曜日(米国時間6/3)に打ち上げされたSpace XのCRS-11ミッションは成功し、6000ポンド(2.7トン)近い補給物資と実験器具を積載した宇宙船Dragonを軌道に乗せた。注目すべきなのは、SpaceXがこのDragonカプセルをすでに一度国際宇宙ステーション(ISS)の補給に送り込んでいることだ ―― 2014年9月にISSに荷物を送ったあと回収、改装された。

リサイクルされたDragonの再打ち上げ成功はSpaceXにとってまた一つの歴史的節目となった。SpaceXは、宇宙飛行のコストを下げるために打ち上げと宇宙船機器の様々な部分を再利用することを目標に掲げてきた。これは、ロケット打ち上げを高利益事業にするという目標だけでなく、火星への有人飛行を含む同社の飛行計画を達成するための大きな鍵だ。

SpaceXのFalcon 9(今回は再利用機ではない)が軌道に送り込んだDragonは、打ち上げから約10分後にロケットを切り離し、ISSへの旅に使うエネルギーを収集するためのソーラーパネル翼を広げた。

Dragonは、発射から約36時間後にISSとのドッキングを試みる。宇宙ステーションのクルーは備え付けの長さ17.5メートルのカナダ製ロボットアームを使って宇宙船を捕獲する。予定通り任務を完了すれば、Dragonは回収、改装の後うまくいけば将来のミッションで再利用される。

SpaceXはDragon 2を開発中だ。ISSのクルーを地球と往復させるためのカプセルで、来年には宇宙飛行士を乗せたテスト飛行をしたい考えだ。

使用されたFalcon 9の1段目の回収もこのミッションの目的の一つであり、成功した。着陸はまさに教科書通りで、ロケットはケープカナベラル空軍基地にあるSpaceXの着陸地点LZ-1に問題もなく着地した。

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宇宙から初めての4Kライブストリーミング、これはすごい

水曜日(米国時間4/26)に宇宙から送られてきたAWS/NASAのライブストリーミングを見た人はもうご存知だろう。実に、実にすばらしかった。4Kクオリティの比較的深度の浅い映像は、地上220マイル(354 km)を周回する宇宙ステーションからのライブ中継というよりNetflixでChef’s Tableを見ているような気持にさせる。宇宙飛行士のDr. Peggy WhitsonとJack Fischerが地上にいるNABの番組出演者と話したのはわずか数分間だったが、びっくりするような実験を驚異の解像度で見せる時間はあった。

Dr. WhitsonとFischerはほかにも宇宙で4Kライブストリーミング技術を使える利点をいくつか説明した。国際宇宙ステーションで進行中の実験をライブ中継できることもそのひとつで、スローモーションカメラなどを使って地上の研究者仲間に非常に高い精度で実験結果をリアルタイムで送ることができる。さらにFischerは、宇宙ステーションの外の景色を中継できるのも大きな利点になる可能性があることを指摘した。

それに加えて、高解像度で撮影、放送できる能力は、火星を含め宇宙のさらに彼方へ到達する取り組みにとっても重要だ。高度な画像技術は、火星旅行に向けた意思決定プロセスの重要な要素になる。なぜなら、目的地を事前に観察し研究することは渡航計画の中で非常に重要な部分を占めるからだとDr. Whitsonは説明した。

今のところ、火星はまだはるかに遠いターゲットだ ― しかし、宇宙でのおどけたしぐさの4kストリームから作った高解像度GIF動画は、十分手の届くところにある。

[日本語版注:ライブ中継の録画は https://live.awsevents.com/nasa4k で後ほど公開される予定]

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男女間の問題を生命徴候と声から早期に検出してその芽を摘むためのウェアラブルをサウスカロライナ大が研究中

男女間の問題を、実際に顕在化する前にその芽を摘むために、問題が発生しそうなことを告げている生命徴候を検出する、という研究をサウスカロライナ大学の複数の研究チームが共同で進めている。被験者のカップルは複数種類のセンサーを収めたウェアラブル(上図)を身につけ、そのデータを記録するスマートフォンを与えられる。

その研究はほとんど研究室の外で行われ、協力者のカップルはそれぞれ1時間のアンケートにつき合って、相手に対する気持ちを述べる。研究者が意図的に論争を導入したり、主観的な事項に触れたりはしない。中にはまったく問題が報告されないカップルもいるが、全体としては大量の問題が検知される。なにしろ、男女のカップルだからね。

研究報告を共同執筆しているTheodora Chaspariは述べる: “ウェアラブルから生体信号を捉えるのは、肉眼では見えない情報を捉えるためだ。それは実際に、相当有益な情報源だった”。

そのウェアラブルが捕捉するのは、体温と心拍と発汗だ。これらに、喋りの(音声の)内容と強度を検出するためのオーディオ信号を組み合わせる。チームが開発した機械学習は、抗争のタイプや内容を86%の確度で判定できる、という。

執筆主任のAdela C. Timmonsは語る: “うちの大学では、心理学の家族研究と、工学部のSAILプロジェクトが長年コラボレーションしている。両者が協力して、われわれが収集した大量のデータを処理分析し、それらに機械学習の技術を適用して、カップル間に対立や抗争が生じつつあるかを、高い確度で判定する”。

研究の次のステップは、その機械学習のアルゴリズムを利用して、抗争の発生をその5分前までに予見できるためのモデルを作ることだ。そのモデルには、心理学的なデータと音声の判定を学習させる。今、商品としてのウェアラブルはかなり高度化しているから、商用製品に体のフィットネスだけでなく心の健康をチェックする機能が導入されたって、おかしくはない、と思ってしまった。

“でもこれは、とっても難しい仕事よ”、とChaspariは語る。“抗争や対立の原因や徴候は、心理学的にも行動科学的にも、微妙に徐々徐々に積み重なって大きくなっていくものだから”。

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スイスの3D画像暗号化システムは指を使うバイオメトリックスのセキュリティを大幅に向上

バイオメトリックスはセキュリティの完全解ではないかもしれないが、堅牢で周到に考えぬかれたものなら、使用に耐える場合もある。AppleのTouchIDも悪くはないが、でもそれで核基地の安全は確保できない。しかし映画の世界を別にすれば、それでもなお、核基地を指紋認証で守らざるを得ないだろう。でもスイスの研究者たちが考えたこの新しいシステムは、正しい方向への一歩だ。

Lambert Sonna Momoが率いる、彼の会社Global IDとスイス連邦工科大学ローザンヌ校(École polytechnique fédérale de Lausanne, EPFL)のコラボレーションは、前者のバイオメトリックス技術と後者の暗号技術を結びつけた

そのバイオメトリックスの側面は、Sonna Momoが開発した、静脈の3D画像だ。“今では誰でも偽の指紋を簡単に安上がりに作れる”、と彼は大学のニュースリリースで説明している。“2Dの静脈認識技術はすでに世界中で使われているが、そのシステムには欠点がある。しかし3Dなら、偽造の危険性はほとんどない”。

同じように見えるパターンでも、画像の次元がひとつ増えると容易に区別できるようになる。3Dのスキャナーもそれほど高価ではなく、300ドルぐらいでできる。彼らはこれまで、さまざまな人びとと肌のタイプに対してスキャナーの性能をテストしてきた。光学的バイオメトリックスでは、重要な検討事項だ。

EPFLは、そのシステムのもうひとつの重要な部分を担当した。それはデータ処理と暗号化だ。指紋でも網膜でも静脈でも、盗まれたからといってリセットはできない。一度破られたら一巻の終わりだ。そういうものに関しては、プライバシーが非常に重要だ。

そこでEPFLの暗号研究室は、スキャナーやIDシステムが暗号を解読する必要のない、準同型暗号方式を考案した。これなら、データがデバイスや通信線の上にあって盗まれても、セキュリティは破られない。またこの方式の副産物として、盗まれたデータが使われたとき、そのパターンには、それがどこから来たかを示すデバイス情報がある。

Sonna Momoは、この技術が病院で活用されることを期待している。そこでは、正しい診療のためには正しい本人確認が重要だからだ。また、迅速で正確なIDを必要とする銀行でも役に立つ、と彼は考えている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))