SpaceX、再利用したFalcon 9の2度目の回収に成功

SpaceXは今日の歴史的宇宙飛行でもう一つの重大任務を完了した。Falcon 9ロケットを浮遊ドローン船で回収することに成功した。これが大きな偉業である理由は、以前にも同じロケット同じドローン船で同じことをしているからだ。Falcon 9は昨年4月の国際宇宙ステーションの補給ミッションで打ち上げおよび回収に成功している。

今回のFalcon 9回収は,SpaceXが打ち上げにロケットの再利用に成功しただけでなく、ストレス試験と評価をした後にもう一度再利用できる可能性があることを意味している。

「今日は宇宙業界にとっても、宇宙全体にとっても驚くべき日だ」と回収直後のインタビューでElon Muskが語った。「軌道に乗るロケット繰り返し飛ばすことができる。打ち上げロケットは宇宙飛行でもっとも高価な部品だ」。

「ここまで来るのに15年かかった。いくつもの困難を乗り越えてきた」とMuskは付け加えた。「この驚くべき偉業を成し遂げたSpaceXチームをただただ誇りに思う」。

Muckは彼自身が従来行ってきたロケット飛行との違いを繰り返し強調した。打ち上げるたびにブースターロケットを捨ててしまうのは、フライトのたびに飛行機を捨てるようなものだという。もちろん、それはあり得ないことでありそこが彼の要点だ。ロケットを再利用することで宇宙旅行のコストを劇的に下げることができる。SpaceXの究極の目標はビジネスに成功するだけでなく、人間を「多惑星種」にすることだ。

この偉業の大きさはいくら強調してもたりないが、やるべき仕事はまだ山ほどある。SpaceXのゴールはロケットを〈同じ日〉に再打ち上げすることだ。これは明らかにスケールの違う挑戦だ。それでも今日証明されたことが一つある。確実にそこに近づいている。

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NASAのメディアライブラリーは、宇宙の画像とビデオを検索できる宝の山

宇宙は好きですか? 宇宙を見て、自分がここではなく向こうにいればいいのにと思っている人もいるだろう。さて、NASAはそんな夢にあなたを近づけてくれる。米国航空宇宙局は新しいウェブベースの検索エンジン を公開し、同局が所蔵する膨大な画像、ビデオ、音声ファイルをキーワードとメタデータで検索、閲覧できるようにした。もうこれで、自分は地球に縛られているなどという暗い現実を思い出さす必要はない。

NASAの画像ビデオライブラリーには、必要と思われるものがすべてそろっている。大きくてよく目立つ検索バーに、asteroid(小惑星)、supernova(超新星)、reptilian([ヒト型]爬虫類)などと入力すれば、正確に探しているものが見つかる。検索結果をコンテンツ種別でフィルターしたり、アップロード日付や人気度で並べ替えることもできる。

検索結果1件:私はこれを存在証明と解釈する。

サイトのコンテンツはすべて埋め込み可能で、ダウンロードする場合には解像度を選ぶことができる。画像にはメタデータも付加されているので、どんな機器を使って撮影したかもわかる。全ビデオにキャプションファイルが用意されているので、転載する際に字幕を付加ができる。

これは宇宙科学に関するニュースメディアや、宇宙に興味のある人たちにとって実に素晴らしい資料だ。当面メディアを再利用する予定がなくても素晴らしい時間つぶしになる。NASAはこれを、利用可能なメディアの包括的な集大成ではなく、代表的な資料に使いやすい公開インターフェースを付けたものだと説明している。今後もコレクションを拡大している予定だ。

おそらく私が宇宙へ行くことはないが、少なくとも行ったふりをするのはずっと簡単になった。

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スウェーデンの科学者たちが人間の軟骨細胞でインプラントを3Dプリント、マウスへの移植に成功

3Dプリントで体の部品を作るこ技術が、また一歩前進したかもしれない。スウェーデンのSahlgrenska Academy(サルグレンスカ・アカデミー==ヨーテボリ大学医学部)とChalmers University of Technology(チャルマース工科大学)の科学者たちが、人間の軟骨の細胞を生後6週間のマウスに移植することに成功した

研究者たちは人間の軟骨細胞からゲルを作り、それを3DバイオプリンターCELLINKでプリントし、実験用マウスにインプラントした。するとその組織は成長を開始し、動物の体内で増殖した。やがて血管が生成し、血管はインプラント素材の中で成長した。2か月後にその素材は人間の軟骨に似たものになり、それをさらに幹細胞を加えて刺激した。

素材のインプラントは同じ大学の形成外科医が行ったが、同じやり方が、耳や鼻や膝などを事故やがんなどの疾病で失った患者に、もっと自然に近いインプラントで応用できると考えられる。

指導教授のPaul Gatenholmは次のように語る: “これまでは、耳を失った患者には、プラスチックやシリコンで作ったインプラントをチタンのネジで取り付けるような方法しかなかった。形成外科の方法は、患者の肋骨から軟骨を取り、それを形成していたが、痛みがひどくて結果も良くない。でも鼻や耳の細胞を、患者の髄や脂肪から取った幹細胞で育てれば、3Dプリントで完全な構造を得ることができる”。

Gatenholmは、期待を込めてこう述べる: “この方法は組織を再生して実装する医療技術を大きく進歩させるだろう。最初のブレークスルーはたぶん皮膚、次が軟骨、そして骨だ”。さらにその後は、臓器のような複雑な器官にも使えるようになるかもしれない。

Gatenholmは昨年の2月に研究論文を発表している。そこでは再生医療の教授Anthony Atalaと共に、3Dバイオプリンティングと、そのプリンターのノズルをモデルに従って制御するコンピューター画像技術を使い、骨や筋肉を作る技術が述べられている。後者のプログラムにより、細胞を正しい離散的な位置に供給するのだ。

従来の形成外科のモデルよりも本物の器官に近い部品を3Dプリントで得るためには、CAD用の3Dモデルの方が良い、とも言われている。

このプロセスはまだ、再生外科の治療現場で実際に利用できる段階にはない。技術の完成度のほかに、規制と当局の承認という面倒な問題もある。でも、これが、これまでよりも一歩前進した、将来性のありそうなプロセスであることは確実で、今後は軟骨だけでなく、そのほかの重要な組織にも応用されていくだろう。

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NASA、「地球に似た」惑星7つを発見

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NASAは地球に似た性質の惑星7つが近くの恒星を周回していることを発見した。今なお続く太陽系外惑星に存在する地球外生命探索の最有力候補となった。

7つの惑星はいずれも比較的気候が温暖で岩の多い地形を有している。どちらも水と生命を探す出発点として期待できる兆候だ。惑星群はTRAPPIST-1という、地球から約39光年の距離にあるいわゆる “ultracool dwarf star”(超低温矮星)を周回しているが、残念ながらLord of the RingsのGimliと共通の性質を持つという意味ではない。

TRAPPIST-1はわれわれの太陽の1/10ほどの大きさで、約1/4の放射熱を発している。惑星の太陽からの距離もずっと近い。もっとも近い惑星の「1年」(恒星を周回するのに要する期間)は1日より少し長く、もっとも遠い惑星でもわずか20日間だ。

TRAPPIST-1系およびこれに属する地球型惑星群は画期的な発見だ。これまでに発見された候補はわずか4個しかない。新しい地球型天体群は、主執筆者であるリエージュ大学のマイケル・ギロン氏らが、2015年以来観測を続けているTRAPPIST-1星を研究する中で、星の輝度が一時的に低くなることに気付き、周回する惑星のうち3つが星の表面を通過するためであることを突き止め今回の発見にいたった。

NASAは、この発見を地球外生命発見の可能性が高まった兆候とする観測筋の期待にすかさず釘を刺した。その可能性は極めて低く、これらの惑星が地球と似ているというのは、岩が多くTRAPPIST-1のいわゆる「居住可能区域」に属しているために温暖であることだけだ。大気があるか水や酸素等の気体があるかどうか等、他にも地球と共通する性質があるかどうかを判断するにはまだ早すぎるとNASAは説明している。

とは言うものの、たとえ最小限でも地球と似た性質を持つ惑星がこれほど数多く、これほど近くの星を周回しているという発見は有望な兆候であるとNASAの研究者らは言っている。実際、銀河系には地球型惑星が ― われわれが予想していたよりはるかに多く ― 散在しているかもしれないと理論立てる向きもある。

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SpaceX、Falcon 9ロケット第一段の垂直着陸に成功

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今日のSpaceXミッションはあらゆる点で成功だった。打ち上げに成功したDragonロケットは国際宇宙ステーションに向かっている。SpaceXは、Falcon 9ロケット第1段をケープカナベラルに着陸させることにも成功した。

天候は曇りだったが、SpaceXの打ち上げを妨げるほどではなかったようだ。東海岸時刻午前9時39分、Falcon 9はケネディー宇宙センター39A複合発射施設を飛び立った。

耳慣れない名前かもしれないが、アポロ11号ミッションはこの発射施設を使って1969年に初めて人間を月に送り込んだ。今回この発射施設を使うのは2011年にスペースシャトルを打ち上げて以来だ。

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発射から2分半経過後、Falcon 9ロケット第2段は第1段を切り離した。第1段は地球への帰路につき、一方第2段はDragon宇宙船を乗せて飛行を続けている。

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そして最初の打ち上げから8分後、第1段ロケットはケープカナベラルに無事着陸した。

一方その頃宇宙では、宇宙船Dragonがソーラーパネルを展開し、国際宇宙ステーションに近づくまで数日間地球軌道を飛び続けている。宇宙船は現在宇宙にいる飛行士たちのための補給品2500キログラムを載せている。

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遺伝子編集でマンモスを再生する研究にハーバード大学が取り組んでいる、それらしき胚ができるのも近い

ST. PETER-ORDING, GERMANY - MAY 31:  Two replicas of mammoths are seen during the "Giganten Der Eizeit" exhibition opening on May 31, 2011 in St. Peter-Ording, Germany. Europes biggest ice age exhibition opens on 3rd of June.  (Photo by Krafft Angerer/Getty Images)

マンモスはとっくに絶滅したけど、でも、もしかしたら戻ってくるかもしれない。ただしそれは、象の遺伝子を編集してマンモスの形質を持たせる、というお話なのだ。今週行われたAmerican Association for the Advancement of Scienceの今年の年次大会で、ハーバード大学の研究者たちが、その研究の進捗状況を発表した。チームリーダーのGeorge Church教授によると、その進捗は意外と早かったそうだ。

4000年前に絶滅したとされるマンモスを再生する話は、これまでもあった。とくに、遺伝子編集技術の進歩を語るときには、よく持ち出される例だ。Churchのチームも、実は遺伝子編集技術CRISPR Cas-9を使って、象のゲノムの遺伝子にマンモスの形質…長い体毛や厚い皮下脂肪の層、そのほかの寒季耐性特性などを導入しようとしている。

研究者たちは、あと2年ぐらいでマンモスふうの象の胚を作れる、と言っている。The Guardianによるとそれは、一般大衆が絶滅種の再生という言葉に期待するものとは違って、実際には、マンモスの復活というよりもむしろ、何か新しいものだ。

しかも胚は、まだ実際の動物ではない。発生して、胎児、新生児、と育っていく胚はまだ得られていない。チームは、それまでには多くの年月を要する、と気の長い話をしている。現段階の研究は、発生の複雑な段階を、少しずつでも前進した有機体が得られるような、編集技術にフォーカスしている。最初それは細胞だったが、今やっと胚の段階に来ているのだ。

チームの話の中で興味深いのは、この研究からアジア象の保全のための知見がいくつか得られるかもしれない、という点だ。アジア象も、今は絶滅危惧種だ。また、彼らの研究からは、地球温暖化に抗してツンドラの溶解を防ぐための、永久凍土層の曝気技術が見つかるかもしれない。

もちろんこのような研究には、倫理の方面からの批判もある。生きるために社会を必要とする種を個体として再生することの意味。そして、遠い昔の動物を再生することよりも、今人間の介入によって危険に瀕している種の保全に、そのぶんのリソースを回すべきではないか。などなど。

しかしこのプロジェクトは、科学的にはすごくおもしろいし、研究が中断されることもないだろう。倫理的懸念は、確かにあるとしても。

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スマホを物の上にかざすとスペクトル分析でその成分(毒物の有無など)を当てるアプリがもうすぐ完成

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アプリの作者が、これを使うと物の内部が見えて構成成分が分かる、と言ったら、ガマの油はどっかよそで売れ、と言うだろう。でもこのアプリは、ベテランのR&D集団Fraunhoferの作だから、本物かもしれない。

このアプリは「HawkSpexモバイル」と呼ばれ、上図のように、何かの上にスマホをかざすと、それのスペクトル分析を行う。広く使われているテクニックだけど、これまでは分析機器として、専用のプリズムとかハイパースペクトルカメラなどの特殊な装置を必要とした。でもHawkSpexが使うのは、ふつうのスマホのふつうのカメラだ。では、どうやって?

通常は、スペクトル分析機器は物に当たって反射してくる光の、各波長の強さを調べ、強い場所(スパイクがある波長)がどことどこにあるかによって、存在する成分を当てる。たとえば水を調べて283.3ナノメーターの波長にスパイクがあれば、その水は鉛を含んでいる。

“ハイパースペクトルカメラはスマートフォンに組み込まれていないので、われわれは単純にこの原理を逆にした”、とFraunhoferの発表声明で、プロジェクトのリーダーUdo Seiffertが説明している。

全波長を含む反射光を各波長域に分類するのではなく、HawkSpexはスマートフォンのディスプレイを使って、さまざまな波長の光で物を照らし、それらの反射率を観察する。それでうまくいくのなら、とっても巧妙な別ワザだ。

こんな簡略なスペクトル分析には、もちろん限界もあるが、ある物質の有無は分かる。たとえばスーパーマーケットで買ってきたリンゴに、農薬が残っていないか。塗料に鉛が含まれていないか。土壌中に作物の栄養成分はあるか。このワインに毒は入っていないか。などなど。

“ありとあらゆる用途がありえるから、われわれだけでは市場のニーズに応えられなくなるだろう”、とSeiffertは語る。“確かにね”、とFraunhoferも言う。アプリをいろんな物の例で訓練すれば、ユーザーはそのデータをサービスに寄付できる。たとえば、カフェインのあるコーヒーとないコーヒーの違い、とか。

ただし当分は、このアプリは彼らのラボの中だ。もっとテストを行い、いくつかの一般的なユースケースを載せられたら世に出したい、と彼らは言っている。

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科学を黙らせる努力、やりたいようにやってみれば!

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テクノロジーとインターネットは、ビジネスやコミュニケーションと並んで科学にも力を与えてきた。ほかのものと同様にテクノロジーは、科学の努力も、その活動と到達の範囲をグローバルにし、妨害に対して強くし、数十億の人びとがアクセスできるものにした。それは、権力の承諾の有無とは無関係に。そのことは、現在の政権の、科学の研究に口輪をはめようとする努力が失敗する、理由のひとつにすぎない。

オンラインのコミュニケーションを改ざんされたり、即座に閉鎖された国の省庁のリストが、日に日に成長している。環境保護局、国立公園庁、エネルギー省、農務省、運輸省、そして内務省、などなど。その雑でぶきっちょなやり方を見ると、これらの省庁がもっぱら気候変動に関して情報活動を抑圧されたことが明らかだ。うまくいくと、いいけどね!

しかしまず、早とちりを防いでおきたい。今はしょせん、政権移行期だ。模様替えでちょっとした失敗が起きるのは、当然ではないか? ホワイトハウスのWebサイトのスペイン語バージョンが完全になくなったのも、入れ替えに手間取っているだけかもしれない。

しかし、現政権のエネルギー計画に、“solar”や“wind”、“renewable”の言葉がないことは、たまたまではない。

また、Obamaの気候変動政策に代わるものや、まして反証すらもないことは、偶然ではない。

国立公園庁が、気候変動に関するいくつかのツイートのあとで叱責されたのも、

疾病管理センターが気候変動に関する会議を突然キャンセルしたことも、

閣僚指名者たちが何度も繰り返して、気候変動の存在やその危急性を認めることを拒否したのも、

硬軟多様なコミュニケーションの制限を受け取った省庁の多くに、気候変動に大きく影響する、あるいは影響される、担当行政職掌があることも、

環境保護局が気候変動のページを閉鎖され、削除を命令され、そして今では同局の研究を公表前に政府が検査するとなったのも、偶然ではない。

これは移行作業のちょっとしたミスでも、正々堂々とした主張でも、特定の考え方の誇大宣伝でもない。ほかのことは何を語ってもよいが、気候変動はだめ。それは、政府による、政府が危険と見なす話題に関連する情報の、意図的な抑圧だ。

もっと、ふさわしい言葉がある。今日(こんにち)、その言葉は誤用されることが多いが、この場合は正しい使い方だ。それは、検閲である。

検閲志望者にとって不運なことに、そんなものが有効だったのは遠い昔だ。どんなに強力な情報抑止努力よりもStreisand effectの方が強いことは、何年も前から証明されている。でも今回のは、そんなレベルではない。要するに、科学を黙らせることは、誰にもできないのだ。

とくに気候変動は、おとなしく寝かせておくことが難しい厄介者だ。ここ数十年にわたって、世界中の何千×n人もの科学者たちによる研究が、人為起源の気候変動(あるいは、いわゆる“地球温暖化”)という理論(重力や進化が理論だ、という意味での理論)に到達し、それを日々強化している。

それは、どこかの小さな研究室のひとにぎりのインテリたちではない。その膨大な数の科学者たちを、ほかの研究課題へ再配置したり、彼らの膨大な量の論文を小さな学術誌に封じ込めることは、誰にもできない。結果はすでに目の前にある。産業界はすでに、対応努力をしている。かつては議論があった場所の突然の沈黙は、これらの省庁が言うかもしれない文句などよりもずっと大声で語るだろう。それは、誰かに月について語るな、と言うのと同じで、そんなことをやってみようと思うだけでも、十分に異様だ。

しかしさらに加えて、今の科学は何にも増してグローバルであり、そしてテクノロジーに強い。科学のグローバルなコミュニティとテクノロジーおよびインターネットは、今や切っても切り離せない親密な仲だ。どの研究所にも、すべての実験を詳述している小さなブログがあり、そんなブログは何千もある。大学のニュースサービスは教授たちのインタビューを載せ、公刊されている学術誌は新しい研究を誰もがレビューできる形で公開し、Natureのような巨大でグローバルな出版物は、話題を求めて研究者たちの世界を掘りあさり、おもしろい研究結果を載せる。TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアも、ほとんど無限にある研究や意見の公式/非公式なアウトレットだ。その一つを切り殺せば、そこに新たな二つが生まれる。

要するに、彼らがやっていることは無駄である。もちろん、今日の人類が直面している最重要な問題への言及は、どの政権にとっても不快にきまっている。それらの言及は、過去の政策を批判し、新しい政策を求めているからだ。たぶん、現政権がやっている気候変動の無視は、ほかでもあったし、現にほかでもやっているだろう。それはとても不幸なことだけれども、でも、言及を削除するやり方は、単なる、途方もないアホだ。

今ではたくさんの気象衛星が地球のまわりの大気を見張り、そのデータを各国に報告している。海洋では多くのブイや船が水温等を調べ、結果を世界中のいろんな機関に共有している。専門の研究機関が世界各地にあって、研究者たちが毎日のようにたくさんのペーパーを発表している。今ぼくらがこうしているあいだにも、海水面の上昇が続き、国全体が水没しつつある。それを黙らせるなんて!

科学者も、自己の情熱というものを持つ個人である。ロボットの改良でも、疾病の治療法の発見でも、そしてこの惑星の気候というミステリーの解明でも。彼らは書き、共有し、友だちと話し合う。彼らは、真実を探求する者たちのグローバルなコミュニティだ。友だちの誰かがひどい目に遭ったら、黙っていないだろう。そのひどい目が、どんなに幼稚で無意味な方法だったとしても。彼らは、自分たちが発見したものに関する知識を、広める方法を見つける。ぼくたちは、彼らを助ける。そして、そう、彼らもワシントンでデモ行進をする

ところで、2016年が記録の上では史上最温暖の年だった、と言っているツイートはすべて消されるかもしれないから、ここでも言っておこう。2016年は記録上最温暖の年でしたd〔NASAのこのページは日本時間1/26 11:54現在、消されていない。〕。

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ちょいと冥王星へ散歩しよう

何かの理由で、今すぐ、ものすごく遠くへ行きたくない? 冥王星はどうかな…こいつは遠いぞぉ。

NASAは、無人探査機New Horizonsが撮った約100枚の画像からビデオを作った。同機は2006年に打ち上げられ、この準惑星への接近飛行を2015年に完了した。ビデオにはNew Horizonsが撮った写真が使われているが、それらはオリジナルのモノクロ写真に、この探査機が別のカメラで撮った低解像度のカラー画像をオーバレイして、高解像度でフルカラーのビデオに似せたものだ。一部のフレームは、ほかのデータを利用して“補完”した絵だ。つまり全体としては、宇宙船の機械装置が実際に撮った動画ではなくて、推測作品だ。

でも、それらしく見せるためにサウンドトラックも一役買っている。まさに、人工的宇宙映像にぴったりの宇宙音楽だから、ラリった状態でプラネタリウムに行ったときのような、うっとりした気分になってしまって、まさに‘遠くへ行きたい’の目標を達成できるだろう。

出典: Gizmodo

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このスイス製腕時計は、心臓の鼓動をペースメーカーの動力に変える

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スイスの研究者が昔ながらの時計じかけを改造して、心臓ペースメーカーの動力源を心臓の鼓動そのものから取り出す仕組みを作った。自動巻の腕時計が手首の動きをエネルギーに替えるのと同じ方式だ。

ペースメーカー等の埋め込みデバイスには動力源が必要であり、通常その力は電池で供給する。しかし電池は消耗し、交換が必要になる ― 皮膚から1~2インチ下では容易な作業ではない。

ベルン大学のAndreas Haeberlinとミシガン大学のAdrian Zurbuchenのふたりは、本物の時計じかけを利用した代替手段を提唱している。実際の(当然スイス製の)腕時計から回収した部品を使っている。

「ヒトの心臓の連続的で強力な収縮は電池の代替として理想的な性質だ」と、IEEE Transactions on Biomedical Circuits and Systemsに掲載された論文にふたりは書いた。ペースメーカーは心臓が正確に鼓動する手助けをするが、心筋を実際に動かすための豊富なエネルギーは、身体から供給されている。

しかし、その運動エネルギーをどうやって捕獲し蓄積するのか? 研究者の出身地が、そのための精密機械を何世紀も作り続けてきたことで有名な国だったらどうだろうか。まさしくそうであることに気付いたふたりは、スイス製腕時計を分解し、研究のために再利用することにした。

通常腕時計は手首に着けられ、手首が動くと内部のおもりが振れ、その運動がゼンマイに蓄積される。これを心臓の近くに置き、おもりが心蔵の鼓動そのものによって動くように機構を修正した。ブタを使った初期試験では約6マイクロワットが得られた。これはペースメーカーを駆動するのに十分なエネルギーだ。

両方の鼓動が同時に停止したときに備えて、小型のバックアップ電池が必要になるだろうが、それも心筋活動が順調な間に心臓の動きによって充電することができる。

今後数年間は研究とテストを継続する必要があるが、うまくいけばペースメーカーの電池交換は過去のものになるかもしれない。

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パンスターズ計画、5年間2ペタバイトの巨大宇宙観測データを公開

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パンスターズ(Pan-STARRS)計画で5年間にわたりハワイ、マウイ島のマアナケア山頂天体観測から撮影した50万枚の画像によって、天文学者は新たに強力なデータ資源を得た。今日(米国時間12/19)一般公開された2ペタバイト(2 x 10^15)のデータは、天空の3/4を網羅し、恒星、星雲、小惑星等数十億個の天体を写し出す。

これは印刷して壁に飾る種類の画像ではないが、上に載せた観測範囲全体の可視光を映しだした画像は実に美しい。ハッブル天文台等で撮影した写真が超望遠レンズで写した個々の表情だとすれば、これはわれわれの宇宙近隣を撮った超広角写真だ。実際には何千ものレイヤーを重なり合わせて作られている。

長期間にわたり繰り返し観察することで、地球近傍天体や、明るいけれども短時間の事象、大規模な現象等を追跡することが可能になる。パンスターズによって、数十の小惑星やクエーサー(準恒星状)が発見され、宇宙マイクロ波背景放射の「コールドスポット」といった謎の事象の定義にも役立っている。プロジェクトの成果の一部は、この(やや古い)PDFに記載されている。

Pan-STARRS1 Observatory「パンスターズは、既に地球近傍天体や太陽系のカイパーベルト天体から、星間の浮遊惑星まで様々な天体の発見に成功している」とプロジェクトの責任者であるハワイ大学のケン・チャンバース博士がニュースリリースで言った。「銀河系内のダストを3次元にマッピングすることで、新たな星の流れを発見したほか、新種の爆発星や初期宇宙の遠方クエーサーも見つけた。

今回公開されたのは “static sky” と呼ばれる5年間の観測データを平均した値だが、来年には高精度の大規模データが公開される。知りたいことのわかっている人はパンスターズのウェブページへ行けば見つけられるはずだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

震動検知モバイルアプリのMyShakeは、地震データの世界ネットワークを作る

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去る2月、UCバークレーの地震学者グループが、MyShakeというアプリを発表した。地震活動を受動的に監視するシステムで、地震を記録すると共に、発生している最中には人々に警告する。アプリは開発者の予想を超え、発表後数ヵ月間に10ヵ国以上で200回以上の地震を検出した。

すでに20万回以上ダウンロードされているが、同時に動いている数はわずかだ。正確に測定するために、アプリはスマートフォンが静止するのを待って動作する。それでも最初の6ヵ月間で、このセンサー・ネットワークが極めて有効であることを証明した。

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地震発生地(星印)と近くのデータポイント。

「MyShakeが大きな地震だけでなく、不可能だと思っていた小さな地震も検知できることがわかった」とアプリ開発者の一人、Qingkai KongNew Scientist誌に話した。

初期の結果を報告した論文は、Geophysical Research Lettersで公開されている ― アプリ成功の概要が論文の要旨に書かれている。

通常1日に約8000台の端末から加速度波形データがMyShakeに送られてくる。端末アプリはP波の初動を検出し、マグニチュード2.5以上の地震を記録する。これまでに一回の地震から得られたデータが一番多かったのは、南カリフォルニアのボレゴプリングスで起きたM5.2の地震で、MyShakeは有効な3種類の波形データを103件収集した。Google Playストアでは毎日アプリが新たにダウンロードされているので、ネットワークは拡大を続けており、地震が続けて起きた時等人々の関心が高まった時には、急速に増えている。

スマートフォン等の携帯端末の加速度計が驚くほど役立つことは科学者やエンジニアが報告している。何十何百もの端末が、震源地からの距離と高度が様々な場所に置かれていることは、地震学者にとって計り知れない価値がある。また地震の多い地域では、事前に警告を発することで、避難の準備や声をかけあう時間を少しでも増やして安全性を高められる。

MyShakeは世界中で最近起きた地震のサマリーも提供していて、自分の住む地域で過去にどんな地震が起きたかを知ることができる。私もインストールしたので、シアトルに大きい地震が来たときに誰よりも早く行動できるが、もちろんその過程で科学コミュニティーに貢献できれば光栄だ。

アプリはAndroid用のみ。無料でここからダウンロードできるので、ワールドワイドネットワークの構築に協力しよう。

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SpaceX、NASAの地表水探査計画でロケット打ち上げ契約を獲得

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NASAは、2021年4月に予定している初めて地球全体の表層水を調査する計画で、ロケット打ち上げ事業者にSpaceXを選んだ。この「地表水および地形」計画の打ち上げには、SpaceZのロケットFalcon 9が使用され、カリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地の4E発射施設から飛び立つ。

NASAにとって初めてのこの計画は、地球の海洋を高精度で測定するとともに、海の時間変化も記録する。この調査では世界の90%以上をカバーし、川、湖、海、その他の淡水および海水を、21日ごとに2回以上測定する。このデータを収集する目的は、気象科学での利用に加え、世界中の人々の淡水の確保にも役立てることだ。

現在SpaceXは、打ち上げ予定の中にNASAの計画を9件抱えているが、去る9月に発射台の打ち上げ前検査中にSpaceXロケットが爆発を起こして以来、打ち上げ再開の正確な日程は明らかにしていない。11月初めにSpaceXのCEO Elon Muskは、爆発の原因調査が間もなく終るので打ち上げは早ければ12月中旬に再開できるだろうと話した。

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直径24ミリのPiccolissimoは動力内蔵・操縦可能ドローンとしては世界最小

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Spotのような巨大ロボットは、物を運んだり、見世物としてはすごいかも知れないが、それらと同じ高度な技術が、小さなロボットにも使われている。ペンシルベニア大学のこの超ミニドローンは、中でも世界最小のひとつだ。

そのPiccolissimoという名前は、イタリア語で最小を意味し、また作者Matt Piccoliの名前にも由来している。空を飛ぶロボットとして必ずしも世界最小ではないが、動力内蔵でコントロールできる空飛ぶロボットとしては世界最小そうだ。ほかのもっと小さいのは、操縦ができなかったり(例: Robobee)、電力を外部から供給したりする。

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幅は25セント硬貨ぐら(直径24.26ミリ)で、可動部品は二つしかない。それでも、今月初めに見たballbotよりは一つ多い。ひとつはプロペラ、もうひとつは3Dプリントで作られた本体だ。両者が、異なる速度で回転する。プロペラはわずかに中心を外れていて、本体は毎秒40回回転し、それにより垂直方向の推力を均等化するが、その回転速度をちょっと変えることによって、方向を変える。制御信号はすべて、単一の赤外線ビームで送られる。

今できることは、ホバリングのみだが、新たな機能を加えるのは容易だ。

大学のニューズリリースでPiccoliは説明している: “本体が回転する乗り物は人間にとっては恐怖でも、センサーを搭載するにはとても適している。空港のレーダーに見られるように、センサーを回転させて利用することは、よく行われている。われわれの場合は、わざわざセンサーだけを回転させなくても、本体と一緒に回転する。だからバーコードリーダーのようなラインスキャンカメラへの応用もありうるし、また車に載せたら360度の写真やビデオが撮れる”。

追加する装置は、重量1グラム未満ならOKだ。それが、この超ミニ機の最大積載量だ。

超小型で超単純なデバイスを作る理由は、たくさんある。単純は往々にして効率と安価を意味し、ときには使い捨て可をも意味する。消費者製品だけでなく、産業用の可能性もある。たとえば放射能漏れや建物の被害調査に、いきなり、1台100万ドルもする人型ロボットを使うのは意思決定だけでもたいへんだが、それは高価なだけでなく、本物の人間と同じく、放射能や粉塵やそのほかの障害物に弱い。

でも、100基のPiccolissimosを編隊としてコントロールしながら飛ばせば、そのカメラや放射能探知器や加速度計が、一定範囲を素早く安価に偵察するだろう。そして、もしも彼らが生還しなかったら、また100基プリントすればよい。

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この星団から送られてくる信号は「おそらく地球外知的生命体」と科学者らが主張

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“Astronomical Society of the Pacific” 誌に寄稿した科学者らは、ある星団から送られてくる特異な信号を発見し、それは「おそらく地球外知的生命体から」であると言っている。その信号は、「以前の論文が予言した形状と正確に一致しているため、この[地球外知的生命体]仮説を裏付けている」。

「少数の太陽型星団の特異な周期的スペクトラム変調の発見」と題した論文には、その信号がある種の地球外知的生命体[ETI]の存在を示唆しているという仮説が説明されている。

「太陽のスペクトル型付近を中心とする狭いスペクトル域内にある極く少数の星団にのみ、この信号が見られるという事実も、ETI仮説と一致している」と論文の著者である、E.F. BorraとE. Trottierは書いている。

終末論カルトに走り出す前に言っておくと、問題の信号が知的生命体によって生成されたものであることが証明されたわけではない。実際、それはある種の星団で化学反応によって形成されたものである可能性もある。

「現段階では、この仮説を裏付けるために研究を重ねる必要がある」と著者らは書いている。「可能性は低いが、この信号がごく一部の銀河系ハローに存在する非常に特異な化学物質によることもあり得る」

信号は、バーストの連続からなり、地球外生命が自らの存在を伝えようとしていることを示唆していると言う。この主張に同意する人は多くない。地球外知的生命体探査協会の上級天文学者、Seth Shostakは、この論文は天文学界で議論を呼んでいる、とAstronomy Magazineに言った。

「査読者の何人か ― 3、4人以上 ― はこれが掲載されることに抵抗を感じているようだ。私もかなり懐疑的であり、特にスペクトルデータの採取や時間変化の推測方法には疑問がある。このため少々慎重になっている」とShostakは語った。

著者たちでさえ、結論までにいくつか飛躍があることを指摘している。また、結局自らの仮説を主張しながらも追加研究が必要であると認めている。

「これは複雑かつ極めて不確実性の高い問題であり、あまり深入りすべきではない」と著者らは書いている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

スマート義肢の‘スマート’機能を靴下状のウェアラブルにして超低コストを実現

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義肢の未来が足早にやってくる。3Dプリント、新しい素材、そしてセンサーの内蔵が、古き日のそっけない木とプラスチックに代わりつつある。でも未来はどれも、平等には行き渡らない。そこで、高価な新しい義肢に手が届かない人たちのために、オーストリアの研究者たちが、センサーを取り付けた衣料品で無脳な義肢をスマート化(有脳化)する方法を提案している。

リンツの応用科学大学が開発したそのproCoverと呼ばれる製品は、ACMのUIST(User Interface Software and Technology)カンファレンスで紹介され、最優秀論文の一つに選ばれた。

その論文の序文には、こうある: “感覚をエミュレートできる義肢の開発は、昨今ますます多くの研究者たちが、関心を持ちつつある。しかしながら、この分野における優れたイノベーションの多くが、多くの人びとにとって手の届かないままでありがちである。われわれのビジョンは、既存の義肢に後付けできる、センサーを装備した安価なウェアラブルにより、この落差を填めることである”。

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彼らのソリューションは、義肢のユーザーの多くが、ふつうの手足のようにソックスやグラブを着用することから発想されている。だったら、そのソックスをスマートな素材で作ればよいではないか。そこから、彼らのproCoverは誕生した。伝導性素材の層が圧電抵抗の層をサンドイッチすれば、脚や足首全体をカバーする感圧性のグリッドが作られる。

それを、ユーザーが必要とするときに振動モーターのリングに接続する。脚のある部分が圧力を受けると、その部分のモーターが、それぞれ異なる周波数で振動する。別のバージョンとして、義肢の膝(ひざ)を曲げたときの角度を伝えるものもある。

それは多方向的な柔軟性があり、圧力や位置をローコストで感知できる。フィードバックの機構も非侵襲性(体内に入らない)なので、手術は不要だ。

プロトタイプの初期の実ユーザー実装テストでは、デバイスは構想どおりに機能し、有用性に富むフィードバックが得られたが、ユーザーの実態に応じてのカスタマイズの必要性が明らかとなった。センサーなどの配置位置や、フィードバックの強度などは、カスタマイズが容易だ。またフィードバックを、振動ではなく圧力の増加で表す方法も考えられる。

チームの次の課題は、ソックスの構造をもっと単純化することだ。そして義手のユーザーのためのグラブも、作らなければならない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

このカラーeペーパーは、柔軟で厚さはわずか1μm

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電子書籍端末に見られる反射型ディスプレイは、白黒テキストには最適だが、カラーはまだ人を引きつけるだけの魅力をもたない。新たに発見されたフルカラー eペーパーがそれを変えるかもしれない。しかも、材質は柔軟で電力消費も少ない。

スウェーデン、チャルマース工科大学のAndreas Dahlinと大学院生のKunli Xiongは、導電性ポリマーとナノ構造体を組み合わせる方法を研究中にこの材料を作り出した。小さなセル ― プラズモニックメタ表面と呼ばれる ― はわずかな電圧変化によってオン/オフできる。液晶のサプピクセルと似ている。しかし、他の反射型ディスプレイ(通常の紙も)と同じく、自らは光を発しない。

この材料サンプルは結線されていないが、表現できる色の一部を示している。

「通常のディスプレイと異なり自らは発光しないが、外部の光を反射して光る」とDahlinがニュースリリースで説明する。「このため、暗いところで見やすいLEDディスプレイとは反対に、屋外の太陽等の明るい光の下で非常によく見える」。

〈プラズモニックメタ表面〉の構造を変えることによって、反射する色を調整できるため、レッド、グリーン、ブルーを構成を変えることによって様々な中間色を作り出すことができる。

従来のカラーeペーパーは、概して色あせた印象があり、このテクノロジーがその〈わな〉を回避できるかどうかは定かでない。Dahlinもそれは認識していて、できるだけ濃い色を出す努力をしているところだと言っていた。

リフレッシュレートは1秒間に数回程度だが、解像度は液晶や既存のeペーパーをはるかに上回る可能性をもっている。

「解像度の限界はまだ試していないが、何を表示するのにも十分な、おそらく数マイクロメートル/ピクセル(10^4 dpi)は可能で、これは人間の目が識別できるものよりずっと小さい」とDahlinはTechCrunchにメールで伝えた。ちなみに、10の4乗、即ち1万DPIというのは、iPhoneの解像度よりおよそ1桁高い(もし私の計算が正しければであり、それは大きな〈もし〉だ)。

もちろん、実際に製造できなければあまり意味がない ― そしてそれが2人チームでは足りない部分だ。

「私たちは基礎的なレベルを研究している。それでも、製品を生産する段階はそれほど遠くない。今必要としているのはエンジニアだ」とDahlinは言った。

現在この材料には金と銀が使用されており、量産コストを下げるためには避けたいものであることは明らかだ。

これは、E-Inkのような会社が大いに興味を持つに違いないものだ。この種の低消費電力・多色ディスプレイは、十分価格が安ければデジタルサイネージに最適であり、少々高価でもeリーダーに使える。うまくいえば数年のうちにDahlinのディスプレイを手にすることができるだろう。ふたりの研究は、Advanced Materials誌に発表されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

‘JOLED’は、空中浮遊する小さな球体で作られたディスプレイ

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液晶ディスプレイはもう古い! これからは、超音波で宙に浮かぶ数十個の小さな球体だ。サセックス大学とブリストル大学の研究者らが作ったのはまさしくそれで、想像する通りの奇妙な代物だ。もっともこの汗かきロボットほど奇妙ではない。

このディスプレイは “Janus objects” と呼ぶ小球体を、「音波浮遊」によって「物理的ボクセル(3次元ピクセル)」として使用する。これでおわかりいただけただろうか? 多分もう少し説明が必要だろう。

Janus objectsは、ポリスチレン製のビーズだ。上下に設置されたスピーカーから出る超音波によって空中に留まっている。それぞれのビーズが、自分専用の小さな超音波ポケットに収まっている。音を変調することによって、ポケットを移動し、ビーズの位置を変えることができる。

白いドットだけを表示するならこれで十分だ。しかし、研究者たちはさらに一工夫して、ドットの片側に色を塗り(こうして2つの顔を持つことからJanus[ヤヌス:土星の衛星の1つ]と呼ばれる)、二酸化チタンでコーティングすることによって帯電させた。こうすることによって、電場を調節して球体の向きを細かくあるいは一気に変えることができる。

こうしてできあがったのは、空中浮遊するビーズのグリッドだ ― 6 x 7なのでRetina解像度とはいかない。その場で回転して色を変えたり、モノクロ画像を表示することができる。実際これは、宙に浮かぶEペーパー以上と言えるかもしれない。

チームはこれをJOLEDと呼んでいるが、何の略かはわからない。Janus Objects Levitated and Electrostatically Driven? 悪くない予想だ。

ビーズの位置と回転は、入力に応じて変えることができ、トラックの周囲や障害物の間を動かすこともできる。十分な数があれば、空中に浮かぶタッチ式フィギュアが作れそうだ。モニターの上に浮かべて、少々粗いセカンドモニターにするのもいいかもしれない。

サセックス大学のSriram SubramanianとDeepak Sahooは、来週のACM User Interface Software and Technology Symposiumで成果を発表する予定。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ボディカメラの装着で警官に対するクレームが93%減少

METHUEN, MA - AUGUST 20: Methuen police officer Nick Conway wore a body camera while he wrote a citation on Saturday August 20, 2016. In May, the Methuen Police Department, with little fuss, became the first major law enforcement agency in Massachusetts to start using body cameras, putting them on 47 patrol officers after a six-month trial run last year. (Photo by Matthew J. Lee/The Boston Globe via Getty Images)

ケンブリッジ大学の研究によれば、警察官へのウェアラブルカメラの装着を義務付けると、警察官に対する苦情が大幅に減ることがわかった。特定の警察署にて一部の警官に対してカメラの装着を義務付けた場合、カメラを装着しない警官の振る舞いも変化するようでもあるとのこと。

データは7つの警察署から集めたものだ。2014年および2015年に収集し、記録時間はトータルで140万時間で、対象となったのは1,847人の警察官だ。データはCriminal Justice and Behavior誌に掲載され、こちらでPDFを閲覧することもできる。

カメラを装着する警察官は、1週間毎にランダムに選ばれた(全体の半数の割合で装着させた)。装着が義務付けられた警察官は、他人と話すシーンでは常にカメラをオンにしておくことが義務付けられた。カメラがどのような効果をもたらすのかについては、警官への不満の多寡を指標として用いた。たいていの警察署では、問題行動のあぶり出しのために一般市民から寄せられる不満などについて計測してもいるので、カメラの効果を確認しやすいという意味もあった。

カメラ装着実験を行う前年は、警官の行動に対する不満申し立て件数は1539件となっていた。そしてカメラの装着実験を行った2年目には、不満申し立ての件数は113件に減少したのだった。

Figure from the paper showing how much complaints were reduced in each experimental site.

実験を行った警察署における、不満申し立て件数の減少率

この結果を見る限り継続した研究ないしカメラの採用を本格的に検討すべきであるようにみえる。もちろん不満の申し立てが、必ずしも警察官による不適切な対応を示すというわけではないが、苦情の申し立て件数が減れば、調査のための時間も費用も削減することができる。また、研究では、カメラを積極的に採用すべきかもしれないもうひとつの変化も指摘している。

すなわち、カメラを装着した警察官に対する不満申し立てと、非装着の警察官に対する不満申し立て率に、違いが見られなかったのだ。

これはちょっと気になる話だ。公平な証拠を記録に残すカメラの存在が、警察官および市民の双方を冷静にして、カメラが存在する場合にトラブルが減少するという方が正しい帰結であるように思える。しかしカメラを装着しない警察官に対する不満申し立ても同じように減っているのだ。

「カメラで収集したデータを何度もみるうちに、警察官側に振る舞いを変えるべきだという意識が生まれたのかもしれません。それにより、コミュニケーションがうまくいくようになったという可能性もあります」と、研究のリードオーサーであるBarak Arielはニュースリリース中で述べている。「100%近く苦情申し立て件数が減っている中、他に考えられる要因は見当たりません」。

研究社たちは「contagious accountability」と名付けている。カメラに監視されていなくても、ただしい振る舞いをしようとする人が増えていく、というような意味だ。

この調査からは、警官が自らの振る舞いを大きく変えたのか、それとも苦情申し立て側(ないし被疑者など)が慎重になっているのかはわからない。両者が相乗効果を示しているのか、あるいは別の要因があるのかもしれない。そうしたことを明らかにしていくためには、さらに詳細な調査が必要ともなるだろう。ただ、調査の結果をいろいろとみてみる限り、他の要因が考えられるにしても、警官側の振る舞いが変わった可能性が高いようにもみえる。

今後、さまざまな角度からの検討が望まれるのはもちろんのことだ。しかしここに示される結果は十分に魅力的に見える。警察はウェアラブルカメラの導入に前向きであるべきなのかもしれない。

Arielおよび共同執筆者のAlex Sutherlandは、CambridgeのFestival of Ideasにて今回の研究成果を発表することになっている。近くに住んでいて興味のある方は、ぜひでかけてみてはどうだろうか。

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(翻訳:Maeda, H

Wikipediaの上ではボットたちが毎日のように喧嘩している

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ボットはWikipediaの便利なツールだ: 彼らは編集結果をアンドゥーする破壊行為を見つけ、リンクを加え、人間のご主人様が命じた面倒な仕事をこなす。でも、彼らのような自動化されたヘルパーたちですら、争いに巻き込まれ、同じ記事の上でお互いに、書いたり消したりを繰り返す。中には、長年続いている抗争もある。

それは必ずしも、本格的な戦争ではない。むしろ、家庭で繰り広げられる、エアコンの温度設定をめぐる争いに似ている。誰かが70度(華氏)にセットする。次の日にルームメートが71度にセット。翌日70に戻す。また71にされる。その繰り返しだ。必ずしも緊急の問題ではないが、オックスフォード大学のアラン・チューリング研究所(Alan Turing Institute)の研究者たちによると、それでも研究に値する。彼らは、単純なボットでも予想外の対話的行為に及ぶことがある、という。

彼らは10年間にわたる編集履歴を調べ、ボットがやることは、いろんな点で人間がやることとは違う、ということに気づいた。

ボットたちは機能が単純だから、自分がやってることの意味を知らない。2体のボットが長年にわたって、同じ箇所のアンドゥー/リドゥーを繰り返していることもある。その記事はいつまでも更新されず、ボットが互いに相手がやったことをキャンセルしているだけだ。人間の場合は、ミッション意識があるので、互いに相手を消し合うことはなく、一人の人間が他人の仕事の数百箇所を変えても、何も言われないこともある。

botbattles

English Wikipedia is by far the largest, and has the most total, but Portuguese bots reverted more often.

ボットが互いに相手の編集結果を消す/元に戻す行為は、国によって激しさが違う。10年間で、ドイツのボットは比較的礼儀正しく、お互い消し合う行為は、ボット1体につき平均約32回だった(1年平均3.2回)。逆に激しいのがポルトガル、ボット1体あたり188回やりあっている。それが何を意味するか、その解釈は読者にお任せしよう。

結局のところ、このような些細な小競り合いは、重大な結果には行き着かない。しかし研究者たちによると、それは、Wikipediaがとても注意深くコントロールされている環境だからだ。でも、少人数のお行儀の良い、公認のボットでも、抗争はつねにあり、それらは往々にして複雑、そして変化が激しい。野放しの環境では、もっとひどいだろう。研究者たちは、これは人工知能の分野の人たちにも参考になるはずだ、と述べている:

互いの相違を管理でき、不毛な抗争を避け、社会的かつ道徳的に許せるやり方で仕事ができる協力的ボットを設計するためには、何がどうやって、ボット間の対話的行為〔抗争など〕の契機になるのかを理解することが、きわめて重要である。

研究報告書“Even Good Bots Fight”(善良なボットでもファイトする)は、Arxivで無料で入手できる

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))