イギリスでは初等教育の標準カリキュラムにプログラミング教育が含まれるなど、青少年に普遍的にデジタルスキルを身につけさせようとする政府の姿勢がこのところ目立つが、一方イギリスの通信業界を監督するお役所である情報通信庁(Office of Communications, Ofcom)の最新の調査は、それと並行して、情報過剰の現代においては、批判的な思考力をもった子どもたちを育てることが絶対的に必要だ、と示唆している。
現状では、オンラインで消費するメディアをあまりにも過信し騙されやすい若者たちが増加傾向にある、というのだ。Ofcomの調査によると、イギリスの子どもたちは、自分が見ているコンテンツが真実であるか、偏向していないかを、まったく気にしない場合がある。
2015年にイギリスの子どもと親たちを調査したその「メディアの利用と態度に関する調査報告書」は、オンライン情報に対する子どもたちの信頼や信用が上がっていることを示している。8〜15歳の層では10人に一人が、ソーシャルメディアのWebサイトやアプリで見る情報を“すべて真実”と信じているようだ。この10%という率は、昨年の調査から倍増している。
その原因の一つとして、近年ではますます、サイト本来のコンテンツとマーケティングや広告のためのコンテンツの境界が、曖昧になっていることが挙げられる。また企業は、Facebookなど広告に支えられている大手ソーシャルメディアが日々大量に生み出すユーザ生成情報を、広告などのマーケティングコンテンツをユーザの心に点滴するための、‘信用の支え’として利用している(例: だれだれさんがxxxと言ってる…)。
しかし、子どもたちに、彼らに供給されるデジタル情報に関してもっと批判的であれ、と教えるべき理由は、ほかにもある。必ずしも、政府がそれを重視しているから重要なのではない。たとえばソーシャルメディアマーケティングの技法を無料で教える、と称するオンラインのコースがある。デジタルビジネスは、そんなスキルのある人材を必要としている。しかしそんな教科の中に、メディアリテラシはないだろう。
ふつうのコンテンツのふりをしたマーケティングコンテンツが、ますます粗製濫造される。正しく教育すべき対象は、情報の受け手である子どもたちだけではない。
Ofcomの調査によると、12〜15歳層のなんと5人に一人(20%)が、GoogleやBingなどの検索エンジンが返す情報が絶対に真実だと信じている。しかし検索結果の中にある有料の広告を見分けられる者は、わずかに1/3だった。
Ofcomの調査結果は、YouTubeがイギリスの子どもたちをますます虜(とりこ)にしていることも、示している。YouTubeもまた、広告の巨人Googleの保有企業だ。子どもたちはYouTubeを、今世界で起こっていることを知るための“真実で正確な情報”として利用している。子どもたちの8%近くが、YouTubeをそんな情報を得るための場所、と見なしている。2014年の調査では、そんな子どもたちの率はわずかに3%だった。
しかしYouTubeが広告収入で成り立っていることを知っているのは、その12〜15歳層の半分にすぎない。また、ビデオブロガーが製品やサービスを推奨してお金をもらっていることを知っているのは、半分弱だ。
現代は、マーケティングと意図的な誤報(真実らしく見せるマーケティング情報)の黄金時代だ。
この調査は、イギリスの若者たちが、個人情報をオンラインで共有することに対し、ますます平気になりつつあることも、示している。そもそも、ユーザ情報を(ターゲット広告のために)広告主に売ることが重要な経営基盤であるソーシャルメディアが、そんな風潮を作り出してしまったのだ。
調査報告書は、自分の位置情報や、趣味、自分の写真やビデオなどを、友だちなど他人に見られたくないと思うティーンが昨年に比べて少ない、と述べている。
ただし、これらの個人情報を誰となら共有するか、という問に対しては、「友だちだけ」という答が昨年より増えている。それはおそらく、最近の子どもたちはメッセージングアプリによる少人数の共有の機会が多く、反比例的に、オーディエンスが多くて親が見ているかもしれないソーシャルメディア上の共有が、減っているためかもしれない。
Ofcomの今年の「メディアの利用と態度に関する調査報告書」は、ここで見られる。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。