次世代ゲームコンソールの売り方は、やさしくもあり難しくもある。PlayStation 5とXbox Series Xはスペックが強化しされ十分な下位互換性があり、間違いなく買いではある。しかし発売時点でのゲームタイトルは数が少なく、新機能も目を奪うようなものではない。「改良されている」という以上の説得力に乏しい。つまり新しいiPhoneのようなもので、最後には買うことになるかもしれない。しかし初めから宣伝文句をうのみにする必要はない。ともあれ急ぐ必要はない、というのが私たちの意見だ。
TechCrunchはリリース前にMicrosoft(マイクロソフト)とSony(ソニー)の両社から新しいゲームコンソールを提供され、両社ならびにサードパーティのゲームパブリッシャーから数種類のゲームタイトルの提供を受けて本記事を作成している。
この1カ月ほど、複雑な(かつ一部は現在も有効な)記事発表解禁日時の設定により、新機能や新ゲームに対する情報を小出しに流さざるを得なかった。実はだらだらと発表を続けると新機種の驚きが失せ、ユーザーの興味を鈍らせるリスクがある。筐体の外観やローンチタイトルのゲームの最初のレベルだけしか書けない場合、そういう記事に興奮するゲーマーは少ない。
リリース時以降でなければ発表されなかったり、発表されていても解禁日がずっと後だったりするのはレビュー担当者泣かせだ。私たちは新しい情報が得られ次第、この記事をアップデートする。また新しく記事を書いた場合、本記事にリンクを追加するかもしれない。
ともあれPS5は記事が解禁となり、新機能についてほとんどすべて(完全にすべてでない)について書くことができるようになった。しかしPS5がソニーが主張するほどの一大飛躍だとはまだ断定できない。
新プラットフォームが失敗だといいたいわけではない。それどころか優れた点は多々ある。それでも新世代機は旧世代機とよく似ている。実際、後方互換性はPS5とXbox Series Xの最大の売りだ。
そういった次第で、以下が現時点で私たちが率直かつ確信をもって報告できる内容のすべてだ。
ハードウェア概要
下がPS5、その上にPS4を載せてある。PS5はPS4より相当に大きい。曲線を多用した特徴的なデザインだ(画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch)
PS5は見たところかなりユニークなデザインだ。空気清浄機と間違われるかもしれないが、少なくとも他のゲームコンソールと混同されるおそれはない。
大きくかつ曲がりくねったデザインは、たいていのインテリアとしっくりこないだろう。目立つのは諦めるしかない。ただし縦置きないしスタンドに横置きすることが可能だ(雲形定規のような奇妙な曲線を隠す専用シールドを誰かが作ってくれないだろうか?)。
新コンソールはプレイ中かなり静かだがハードディスクを利用するゲームの場合は1m以上離しておいたほうがいい。別売HDDは本体よりはるかにうるさい。
PS5のパフォーマンスについて判断することはまだできない。私がプレイできた次世代(実際は「半次世代」だが)ゲームは「Marvel’s Spider-Man: Miles Morales」だけだった。優れたゲームだと思えたが(詳しくはこの記事の後半を参照)、デバイスのコンピューティングやレンダリング能力について中身のあるコメントをすることは非常に難しい。
画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch
4K、HDRを利用したレイトレーシングはゲームの印象を大きく進化させた。こうした高度なテクノロジーはエキサイティングだ。しかしこの機能を利用できるディスプレイないしテレビ受像機が必要だし(正直にいえば)、数年以内に発売された高品質の1080p解像度のテレビならDolby Visionその他の新機能をサポートしていなくてほぼ同様の高画質映像を楽しめる(私はレビュー期間中に新しいディスプレイを入手したのでこの点は体感として報告できるが、どちらの映像も素晴らしかった)。
読み込み時間(ソニーがSSDを採用した主な要因だ)の評価も難しいが、「Miles Morales」でメニューからゲームを開くスピードは十分速かった。既存のゲームの読み込みもPS4より速い。ただし程度はゲームごとに異なる。一部のデベロッパーはパフォーマンス向上の度合いを発表しているが、沈黙しているデベロッパーもいる。新デバイスがパフォーマンスにはっきりとした影響を与えなかったデベロッパーは「寝た子を起こすな」を実践しているのかもしれない。PS5向けタイトルがもっと増えるまでパフォーマンスの向上についてはソニーの発表を信じるしかない。
コントローラー:DualSenseには意味がある
画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch
PS5の本格的な新機能の1つはDualSenseコントローラーだ。
コントローラーのボタンは半透明でそれなりにスマートだが、 PlayStation特有のPSは正直好きになれない。全体に磁石つき汚れ落としスポンジみたいに感じる。
また、コントローラー内蔵のスピーカー、マイクにもあまり感心しない。通常のヘッドセットではなく、この方式でなければいけないゲームというのはどんなものだろうか?考えつくのに苦労する。
実際に意味がある改良点ははトリガーボタンだ。メカニカルな抵抗は非常に正確なコントロールができる。どんなゲームでも想像力をかきたて、優れた機能を提供する。
PS5(左)とPS4(右)のコントローラー(画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch)
PS5のトリガーボタンの内部には巧妙なハプティックコントローラーが装備されており、ごく軽い感触から(私自身は試すチャンスがまだないが)強く指を押し戻すところまで明確な反応を伝える。
PS5のアダプティブトリガーは非常に広い範囲で応答圧力が変化する。ゲームにとって適切な抵抗を正確に発生させることができるため、シューティングゲームなどの場合、引き金を引くに従って応答圧力が増加し、クリック感と同時に発砲されて圧力がゼロに戻る。「Marvel’s Spider-Man:Miles Morales」の場合、トリガーボタンは音響を感触で正確に伝えるだけでなく糸の先端でスイングする感覚をフィードバックし、物体の表面に接触した瞬間もはっきりわかる。
このトリガーはとてもいい。 可変抵抗機能を上手く使ったゲームは楽しいし、正直、使っていないゲームはプレイしたくないくらいだ。デベロッパーがトリガーの新機能を利用したゲームを開発することを願っている。これは本当の意味で新しいゲーム体験で、ゲームのアクセシビリティを向上させる可能性もあると思う。
UI機能はますます便利か?
PS4のユーザーインターフェイスは簡単そうに見える工夫がされていた。PS5も同様だが、2歩進んだ面と1歩後退した面がある。
PS5ではゲーム機能とメディア機能がはっきり分離されているが、これは賢明だ。 インターネットを介して動画などマルチメディアを提供するOTTアプリやストリーミングサービスが普及している。こうしたサービスはますます多くのストレージ容量を必要とするようになるため、ゲームと分離することは理に適っている。
ゲームを開始するには水平に並んだアイコンをクリックすればよい。これはPS4と同様だ。ゲームがハイライトされると、最新ニュースや履歴などすべての情報を表示する画面に引き継がれる。これは以前と同様うまく機能する。
従来はPSボタンを押すと、どんな状況でも再生をポーズしてメインメニューに戻っていた。 ボタンを長押しするとゲーム内にサイドメニューが開き、友達の招待や電源オフなどのコンソール全般をコントロールすることができた。
PS5ではこれが逆転している。つまり長押しするとホーム画面に戻り、普通にクリックするとゲーム内にメニューが表示される(実際には画面下部にごく小さいアイコンの列として表示される。私にはこの変更は使いづらく感じた)。
ゲーム内メニューのアイコンは大きなカードに展開される方式で理屈としてはいいが、実際にはあまり効果的に使用されていないように思える。巨大なカードには最近のスクリーンショット、履歴、友達のアクティビティ、デベロッパーが有効にしている場合は、現在のミッションやゲームの進行状況に関する情報が詳しく表示される。
例えば「Marvel’s Spider-Man:Miles Morales」では、ポーズボタンを押すと、「スパイダーマン」という名前のコンビニのマスコットのネコを救助するミッションを22%完了していることが表示された。同時に引き受けたときのネコの画像も表示された。 それはいいが、実は他の方法で一時停止したときにゲーム内に表示される情報と重複している。しかしこの情報カードはマルチプレーヤー、進行状況のクエスト、クイックトラベルロケーション、さらにはゲームのヒントなどの深い層の機能へのディープリンクを開くためにも使用できる。
画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch
ソニーは「リビッツ! ビッグ・アドベンチャー」のプロモーションビデオでこうした高度な機能をデモした。しかしこのゲームはまだプレイできないので具体的に説明することはまだできない。新機能をうまくゲームに組み込むのは難しい仕事で、デベロッパーの主張をうのみにして代弁はできない。優れた機能かもしれないが、一人称ゲーム専用に格下げされてオプション機能になるかもしれないと懸念している。
新UIは現在のUIより改善されたといえるだろうか?かなり性格が異なるので判断は難しい。一面では複雑化し、別の面では効率的になった。それが物事を改善する可能性があるのは、ボイスチャットの設定や友達をゲームに招待するプロセスなどでフリクションが減らされているかもしれない。しかしまだ実際にリリースされていないので体験的な判断はできない。
しかしいくつか素晴らしい改良になっている点もある。まずPS5を好みに合わせてカスタマイズするすることが簡単になった。 クラウドに保存されたか設定データを1、2分間でダウンロードできた。新しい設定ページはゲームで頻繁に変更される要素(難易度、言語、カメラの変更など)に対応している。 組み込みのユーザー補助オプションもあります。スクリーンリーダー、チャットの文字起こしなどハンディキャップのあるユーザー向けのアクセシビリティ機能があるのは好ましい(ただし私自身はまでテストできていない)。
ゲーム:要約するなら「PS5はPS4の最高バージョン」といえるだろう
新しいコンソールを購入する主な理由は新しいゲームをプレイするためだ。Nintendo Switchが登場したとき、購入理由の最大のものは新しいZeldaをプレイすることだったはずだ。残念ながら今回のPS5の場合、ローンチタイトルは貧弱だ。
上でも触れたが、実際にレビューが書けるだけのプレイができたゲーム(かつ記事が解禁されているタイトル)は「Marvel’s Spider-Man:Miles Morales」だけだ。しかしこのゲームはPS4でほぼ完成しており、新しいゲームはルックアンドフィールもプレイ自体も優れているし、読み込みも速くなり、レンダリングも改善されて建物なども詳細に表示されている.しかし2018年のスパイダーマンも非常に優れており古びては見えない。つまりPS5のスパイダーマンは新世代のゲームというより続編に近い(念のために断っておくと、PS5バージョンはかなり改良されている。しかし夜が昼になるような劇的な変化ではない)。
レビューとしては、オリジナルのゲームが気に入ったなら続きも気に入るはずだといえる。オリジナルをプレイしていないなら、そちらを最初にプレイするきことをお勧めする。素晴らしいゲームだ。 ダイバーシティの改善、強化に真剣に取り組んでいる点で続編を高く評価したい。
しかしこの続編は近くPS4でもプレイできるようになるだけでなく、Xbox OneとSeries X版も登場するだろう。2021年中に主要なゲームはすべてこうしたプラットフォームでプレイできるようなるはずだ。もちろん、PS4よりもPS5でプレイするほうが見た目も操作感も良い。しかし「アサシン クリード」や「Horizon Zero Dawn 」を1080pから4K HDRにアップグレードするためだけに500ドル(約5万2500円)を払わせるように仕向けるのはなかなか難しいだろう。
PS5でしかプレイできないゲームは、ニッチなプレイヤー向けだ。「リビッツ! ビッグ・アドベンチャー」は楽しいゲームだが大ヒットにはならないと思う。今シーズン、私は新しい「Demon’s Souls」に最も期待している。しかしこのタイトルはコントローラーの操作が非常に難しかったPS3ゲームで、実際にあまりプレイされていない。リメイクされてもベストセラーにはならないだろう。
こうした要素を総合すると、少なくとも2021年にはPS4 Pro、ないしXbox Series XよりPS5を選択するという積極的な理由は見つけにくい。
とはいえグッドニュースは、PS5がいまや膨大に存在するPS4のゲームタイトルをプレイするための最良のデバイスだという点だ。ほぼすべてのゲームでレンダリングが向上し、プレイがスムーズになり、読み込み速くなる。PS5にPS4ゲームが多数多数バンドルされたのはソニー自身がこの点を認めたに等しい。正直なところ新しい「アサシン クリード ヴァルハラ」よりも前世代プラットフォームで開発された「ゴッド・オブ・ウォー」をプレイしたい(また時間を食うゲームに巻き込まれそうだが)。
ただし私自身はPS4ゲームがPS5上で改善されているかどうかまだ体験としては話せない。PS5への移行にはデベロッパーのサポートが重要だ。しかし簡単なテストとして、「Bloodborne 」の特定画面のロードにPS4で33秒、PS5では16秒かかった。 時間は計測しなかったが他のゲームでも体感的に改善がみられた。
PS5コンソールは2021年のクリスマスにはぜひ購入すべし
画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch
「2021年」というのはタイプミスではない。私はPS5とライバルのXbox Series X双方のレビューチームに参加しているが、PS5はなにがなんでも急いで購入しなければならないコンソールではない。特に2020年のクリスマスにPS5は品薄となり購入は難しそうだ。熱心にPS5を求める若いゲームファンにとっては気の毒だがクリスマスにPS5を開封するの不可能に近いだろう。
実際にプレイできたゲームでは、PS5でなければならないという次世代パワーはあまり感じられなかった。もちろん今後のゲームにはPS5でなければならないタイトルも登場するはずだ(この点も後述)。しかしそうした利点を生かしたゲームも他のプラットフォームでも同様にプレイできる可能性がある。
可変抵抗とハプティックフィードバックを装備したアダプティブトリガーを除いて、PS5に本当の意味で次世代的新機能は見つけにくい(Series Xには少なくとも複数ゲームの同時ポース機能が設けられ、複数ゲームの切り替えプレイが容易になっている)。つまりこの半年から8カ月程度はこれまでも大勢がプレイしてきたゲームを4Kでプレイするのが賢明だ。
ソニーとマイクロソフトは2020年のクリスマス商戦にそれぞれの新しいゲームコンソールを投入しようと急いだものの、コンソールに本当の意味で価値を与えるゲームデベロッパーやパブリッシャーからのサポートは乏しかった。次世代コンソールの能力を活かしたタイトルが登場し始めるのは2021年後半になるはずだ。それ以降、ゲーム界の状況は一変するだろう。いまから1年後にはPS5、Xbox Series Xはゲームプレイヤー必需品になる。こうしたプラットフォームでなければ利用できない機能がフルに活用され始めるからだ。
だからといって子供のクリスマスプレゼントにPS4 Proを買えと勧めているわけではない。PS5がさまざまなゲームをプレイするのに最適な方法ではないと主張しているわけでもない。ただPS5はPS4と比較して体感的な差異はごくわずかだ、多くのゲーマーには設定オプションすらない程度の差異だと指摘しているに過ぎない。いますぐ貯金箱を壊してPS5を買いに走りまわる必要はない。2021年夏発売の「サイバーパンク2077」バンドルは50ドル(約5250円)割引になるようだ。現在のPS4は非常に優れたプラットフォームで最高レベルのコンソールであることに自信を持っていい。リラックスしてPS4でゲームを楽しんではどうだろう。
次世代はコンソールはゆっくり普及を続け、最終的にはスタンダードになるだろう。しかしクリスマスにPS5を入手できなくてもこの世の終わりではない。2020年の冬はPS4で問題なく楽しく過ごせるはずだ。
画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)