金属3DプリントのMarkforgedがSPAC経由での株式公開計画を発表

マサチューセッツ州のハイテク企業が、SPAC(特別買収目的会社)を通じた株式公開を計画している。Berkshire Greyがその意向を明らかにした直後、ウォータータウンを拠点とするMarkforgedがその計画を発表した。金属3Dプリント技術を開発する同社はKevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏が作った特別目的会社のONEと合併し、同氏が取締役会に加わる予定だ。

この買収によりMarkforgedの価値は約21億ドル(約2200億円)となり、現金で約4億ドル(約420億円)を手にすることになる。同社はこの資金を新製品や新素材の研究開発に活用し、同社の技術による新たな垂直市場を開拓する計画だ。なお、Shai Terem(シャイ・テレム)氏は引き続きCEOを務める。

「Markforgedは添加製造業界の最前線に立ってきました」と、同社幹部はこのニュースに関連したリリースで述べている。「今回の取引により、Markforgedは信じられないほどの勢いを得て、当社のブランドを成長させ、製品のイノベーションを加速させ、主要な垂直市場における顧客の採用拡大を推進するための資本と柔軟性を提供することが可能になります」。

Markforgedは2013年の創業以来、同社の技術は1000万以上の部品のプリントに使用されており、Markforgedの機械は70カ国の約1万カ所に配備されている。なお、2020年の売上げは約7000万ドル(約74億円)だった。これまでに1億3600万ドル(約140億円)以上の資金を調達しており、2019年には8200万ドル(約87億円)の資金調達を行っている。

3Dプリントはここ数年で力強い成長を遂げているが、企業がこの技術に注目しているのは、それが最も一般的だったラピッドプロトタイピングを超えて拡大していくことが期待されているためだ。MarkforgedやDesktop Metalを含む競合他社の金属印刷は、プラスチックの堆積物よりもはるかに高い耐久性を提供する重要なステップと見られている。

SPACは企業を上場させる手段として人気が高まっている。Markforgedは現在のところ巨大なプレイヤーではない(スマートロックマットやラッチなどの一部の例外を除いて)が、状況は変わりつつあるようだ。今回の買収手続きは2021年夏に完了する見込みだ。

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画像クレジット:Markforged

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

EVのLucid MotorsがSPAC合併で上場へ、2021年下期に北米でLucid Airの販売開始

Lucid Motors(ルシード・モーターズ)が特別買収目的会社(SPAC)であるChurchill Capital IV Corp.との合併を通じて公開企業となることに同意した。これまでのSPACと電気自動車スタートアップ間の取引で最大のものとなる。

サウジアラビアの政府系ファンドが引き続き最大株主となる合併会社の合併取引における株式価値(合併後新会社の株式価値)は117億5000万ドル(約1兆2370億円)となる。上場企業の私募増資は1株あたり15ドル(約1580円)で、形式上の企業価値は240億ドル(約2兆5270億円)になる。発表の1週間以上前にBloomberg(ブルームバーグ)が匿名情報筋の話として合併交渉が最終段階にきていると報じていた

Lucidのケースは、いくぶん企業価値は小さいArrivalCanoo、Fisker、Lordstown Motorsなど2021年発表された他の電気自動車スタートアップのSPAC合併に続くものだ。EVgoやChargePointなど、いくつかのEVインフラ企業もまたSPAC合併を通じて公開企業となった

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Lucidは最も合併が予想された企業だったかもしれない。何週間にもわたって自由奔放に繰り広げられていた誇大広告と憶測によって、上場時に1株10ドル(約1050円)だったChurchill Capital IV Corp.の株価は2021年1月以来470%超上昇した。うなぎのぼりの株価は合併の詳細発表後に30%超急落した。

私募増資とChurchillからの現金によって、Lucidの調達総額は約44億ドル(約4630億円)になる。この資金は同社の計画を加速させ、拡大するのに使われる。同社は2021年下期に北米でLucid Airの生産と納車を開始する計画だ。これは注目すべきタイムラインの後ろ倒しで、同社は以前、2021年春の納車開始を目指していた。Airは2022年に欧州で発売され、翌2023年に中国にも投入される。重力パフォーマンスに優れた高級SUVは2023年に北米マーケットで発売される見込みだ。車両はアリゾナ州カサグランデに新設した工場で生産される。

資金は2種の車両のマーケット投入とともにアリゾナ州の工場を拡張するのにも使われる、とCEO兼CTOのPeter Rawlinson(ピーター・ローリンソン)氏は米国時間2月22日に述べた。同社は生産能力を年36万5000台にするために今後数年かけて3段階で工場を拡大する計画だ。7億ドル(約740億円)をかけた工場拡張工事の第1段階は2020年末に完了し、年生産能力は3万台となる。

画像クレジット:Lucid Motors

今回の合併は、EVテクノロジーを他の自動車メーカーのようなサードパーティーに提供したり、住宅・商業・ユーティリティセグメントのエネルギー貯蔵に生かすというビジョンにLucid Motorsが目を開くのに役立つ、とローリンソン氏は述べた。

EV企業の事業を拡張することは安くもなければ、簡単でもない。Lucidは数年前に、超高級セダンAirの生産に必要な資金を提供する投資家を探すのに苦労し、万事休すのぎりぎりのところまでいった。結局、2018年9月にサウジアラビアの政府系投資ファンドがLucid Motorsに10億ドル(約1050億円)投資することに同意した。

Lucidは2007年にAtievaとして始まり、Teslaの元副社長で役員だった Bernard Tse(バーナード・ツェ)氏と、EVバッテリーテクノロジーの開発に注力していた起業家のSam Weng(サム・ウェン)氏によって設立された。初期の研究、開発そして部品と全体的な電動アーキテクチャの最終的な進展はLucidの将来にとって重要な基礎となった。同社はEVを生産するという目標とともに2016年末に登場した(同社は数年間静かにこの取り組みを進めていた)。2013年にTeslaを辞めてLucidにCTOとして加わったローリンソン氏はこの新たなミッションの原動力となっている。同氏はのちにCEO職と責任を引き継いだ。

Lucidは往々にしてTeslaの競合相手と目される一方で、ローリンソン氏はAirがドイツの自動車メーカーのガソリン車のフラッグシップMercedes S ClassのライバルになるはずだとTechCrunchに語った。2月22日に公開された投資家向けのプレゼンテーションは「Teslaはイノベーティブだがラグジュアリーではない」という同氏の先のコメントを反映している。Lucidは自らを「ポスト・ラグジュアリー」と称し、「確立されたラグジュアリー」ブランドのAudi、BMW、Mercedes-Benzと競合する、とした。

LucidはTeslaを手本にしていて、大量生産が始まればより安価なEVを提供する計画の概略を示した。

ローリンソン氏が引き続きCEOとCTOを担う。合併は2021年第2四半期にクローズする見込みだ。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Lucid Motors電気自動車SPAC

画像クレジット:Lucid Motors

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

コネクテッドカーからデータ収集、匿名化するサービスのOtonomoがSPAC経由で上場へ

インターネットに緊密に統合されたいわゆるコネクテッドカーのデータを取得して収益化するビジネスを支援するOtonomoは株式上場を準備中だ。 同社はイスラエルを拠点とするクラウド・サービスのスタートアップで、評価額は14億ドルで上場のための特別目的会社(SPAC)Software Acquisition Group Inc.IIとの合併に合意したことを発表した。

自動車関連でも従来の上場方法の煩雑さを嫌ってSPACないしブランク・チェック・カンパニーとの合併による上場を狙うスタートアップが増加中だ。OtonomoもSPACによる上場のブームに加わった。過去数か月間でSPACとの合併を発表または完了した自動車関連スタートアップには、Arrival、Canoo、Lordstown Motors、Luminar、ChargePoint、Lion Electric、Proterraなどがある。

株式市場からの資本調達は、自動車メーカーになろうとするなど資本集約的な目標を抱えている企業にも成長を加速させたい企業には非常に魅力的だ。Otonomonoは後者のグループに属する。

OtonomoはPIPE(限定的私募)により1億7250万ドルを調達したと発表した。投資家にはFidelity Management&Research Company LLC、BNP Paribas Asset Management Energy Transition Fund、Senvest Management LLCなどが含まれ、また戦略的投資企業のDell Technologies Capital、Hearstの支援を受けた。現在のOtonoo株主は合併完了時に所有権の過半数を所有する。この際Otonomoの保有キャッシュは3億700万ドル以上となる。

Otonomoは調達した資金は企業規模拡大と新しいマーケット、ユースケースへの参入のために利用する計画だと語った。

Otonomoは2015年に車両からのデータを取得して匿名化するクラウドベースのソフトウェアプラットフォームとして創立された。このプラットフォームは、電気自動車の管理、位置把握、各種有料サービスの提供、駐車場、利用距離従量型保険、 トラフィック管理、メディア、緊急サービスなどを提供するアプリに利用できる。 Otonomoによれば同社のプラットフォームは自動車メーカーや大量の自動車運用社16社、サービスプロバイダー100社以上に利用されている。

同社はコネクテッドカーを介して実行されているあらゆるオペレーションを企業が収益化するのを支援できるとするプロモーションで数十社のユーザーの獲得に成功している。Otonomoはデータを安全に収集しデータを匿名化して企業が運用車フリート、スマートシティ、個人向けアプリやサービスの開発に利用できるようにする。GDPR、CCPA、その他のプライバシー規制をクリアできる個人別データ、集計データを総合したソリューションも提供される。

Otonomoの企業規模は、少なくとも1つの方法として、同社のサービスを利用して収集されるデータポイントの数で推定することができる。1年前同社は、自動車メーカー、フリート、農業・建設メーカーとの提携により、1日あたり2000万台以上の車両から26億種類のデータを収集していると発表した。現在、同社のプラットフォームは世界の4000万台以上のコネクテッドカーから1日あたり40億以上のデータを取得しているという。

上場に向けたSPACとの合併は2021年の第2四半期に完了する予定だ。上場先はNASDAQでCEOは引き続き Ben Volkow(ベン・ヴォルコウ)氏が務める。

画像:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec 翻訳:滑川海彦@Facebook

AEyeがSPAC経由で公開する最新のLiDAR企業に

乗用車の高度運転支援システムと自動運転車向けに技術を開発したLiDARスタートアップのAEye(エーアイ)が、20億ドル(約2100億円)で評価され、CF Finance Acquisition Corp. IIIとの合併により公開する。

この合併取引でLiDAR会社がまた1つ、従来のIPOプロセスに代わりいわゆるブランクチェック(白紙小切手)会社またはSPAC(特別買収目的会社)を選んだ。Velodyne Lidarが2020年夏に18億ドル(約1890億円)の市場価値で、特別目的買収会社のGraf Industrial Corp.との合併により公開する計画を発表し、このトレンドの口火を切った。Luminar、Aeva、Ouster、Innovizなど他社もすぐに続いた

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この取引でAEyeはGM Ventures、Subaru-SBI、Intel Capital、Hella Ventures、Taiwania Capitalを含む機関投資家および戦略的投資家から、PIPE(上場企業の私募増資)で2億2500万ドル(約240億円)を調達できたと述べた。他の非公開の投資家も参加した。この取引を通じて、AEyeの貸借対照表には約4億5500万ドル(約480億円)の現金が計上され、収入にはCantor Fitzgeraldがスポンサーとして入っているSPACのCF Finance Acquisition Corp.IIIからの2億3000万ドル(約240億円)の信託が含まれる。

LiDAR(光検出および測距レーダー)は、レーザー光を使用して距離を測定し、車の周りの世界の高精度な3Dマップを生成する。このセンサーは、新興の自動運転業界の多くから重要かつ必要なツールと考えられている。Velodyneは長い間LiDAR業界を支配し、ほとんどの自動運転車開発会社にその製品を提供してきた。Velodyneから市場シェアを奪うことを目指し、過去数年間に数十のスタートアップが出現し、それぞれがテクノロジーとビジネスアプローチに関して独自のバリエーションを売り込んできた。

過去3年間でLiDAR企業は、自動運転車を商品化するためのタイムラインが長引くにつれビジネスモデルを微調整してきた。スタートアップは自社の認識ソフトウェアについて力説し、センサーを乗用車に適用すれば冗長性が生まれ、運転支援システムの機能が強化できる、またはされるはずだと自動車メーカーに売り込み始めた。

AEyeは自動運転車を超えて重点を拡大しているLIDAR企業の1つだ。同社は公開で調達した資金を主要市場で会社を拡大するために使用すると述べた。AEyeの売りは、同社のLiDAR技術と、ContinentalなどのTier1およびTier2サプライヤーとの提携により規模を拡大し主要な自動車メーカーに採用されるのに適した位置にいるということだ。AEyeのLiDARセンサーは周囲をスキャンし、認識ソフトウェアの助けを借りて、関連する対象物を識別して焦点を合わせる。

自動車、特に乗用車および自動運転車の分野で長期的にADAS(高度運転支援システム)をサポートすることが、AEyeの基本的な市場だ。しかし同社は鉱業、トラック輸送、交通システム、航空、ドローンなど、より幅広い産業およびモビリティアプリケーションを見すえている。

「適切な価格と信頼性で、最終的にLiDARはカメラを備えたすべてのものに含まれると信じています」とCEOのBlair LaCorte(ブレア・ラコート)氏は投資家向けプレゼンテーションで述べた。「消費者および産業用アプリケーションにLiDARが広く採用されるという期待とともに、2030年までに獲得可能な最大市場規模が420億ドル(約4兆4000億円)になると予測しています」。

AEyeはその獲得可能な最大市場規模の初期段階にある。同社は2021年に400万ドル(約4億2000万円)の売上高と5900万ドル(約62億円)のマイナスのEBITDAを見込んでいると語った。同社はセンサーの商業生産を2021年第4四半期に予定しており、それが同社が予測する2022年の売上高1300万ドル(約14億円)に寄与する。同社は2024年までに売上高が1億7500万ドル(約180億円)になると見込んでおり、下半期にはEBITDAがプラスになると述べた。

合併後の会社はAEye Holdings Inc.という社名でNASDAQに上場する。合併取引は2021年第2四半期に完了する予定だ。CEOとしてブレア・ラコート氏、CTOとして創業者Luis Dussan(ルイス・デュッサン)氏、CFOとしてBob Brown(ボブ・ブラウン)氏らが経営陣に残る。

カテゴリー:モビリティ
タグ:AEyeSPACLiDAR

画像クレジット:Aeye

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

缶入り飲料水がLAベンチャー最大のイグジットとなるのか

ロサンゼルスに本社を置く創業10年のインキュベーター兼ベンチャー企業Science Incは2021年1月最終週の初めに3億1050万ドル(約378億円)を調達し、NASDAQにブランクチェックカンパニー(SPAC)を立ち上げた。創業者のPeter Pham(ピーター・ファム)氏とMike Jones(マイク・ジョーンズ)氏は、この資金をモバイル、エンターテインメント、消費者直接取引(D2C)サービスの分野で会社を上場させるために使用するとしている。

株式公開を考えている投資先企業があるとしても、先日の対談では語らなかっただろう。しかし、もしそうであれば、興味深い候補がいくつか存在するはずだ。ファム氏は、South by SouthwestフェスティバルのダンスフロアでアマチュアのeスポーツプラットフォームであるPlayVSの創業者であるDelane Parnell(デレイン・パーネル)氏に会ったことをきっかけに、同プラットフォームの育成に貢献した。同氏はまた、Credit Suisse(クレディ・スイス)との連携を報じられているマイクロモバイル企業Birdの出資者でもある。そして山の水をアルミ缶で売る、冗談混じりのマーケティング戦略を持つLiquid Deathの創設と成長にも貢献している。しかもファム氏によると、これはかなりの売り上げを出したようだ。

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ただしこれはあながち冗談でもない。実際に飲料水は2016年以来米国で最も売れているパッケージ飲料なのだ。

両氏は長時間におよんだTechCrunchとの対談の中で、2021年に強力な消費者ブランドを構築する方法について分野を問わず語ってくれた。その対談の全容はこちらで聞くことができる。また長さとわかりやすさを考慮して軽く編集した大筋を以下に記載するので、参照いただけたらと思う。

TechCrunch(以下、TC):新しいSPACを設立しましたね。潜在的なターゲットについてお伺いします。ご自身がこれまでに関わった企業、あるいはScienceで資金を調達した企業を検討していますか?

マイク・ジョーンズ氏(以下、MJ):いいえ、SPACは独立した組織です。私たちは100社をはるかに超える企業群が、スタック内で私たちが求めている資質に適合すると考えています。これらの企業は私たちが(彼らに対する)投資エクスポージャーを持っているかもしれませんし、持っていないかもしれませんが、分析のプロセスはScienceのポートフォリオに依存していません。

TC:そうなるとその可能性は否定できないのですね。

MJ:独立した取締役を置いていますので、ポートフォリオ内の企業を検討する場合には異なるプロセスが実行されます。しかし現時点はターゲット候補となる適切な範囲を集積しているところです。その後正式なプロセスに進みます。

TC:どのような指標に注目していますか?あなたはD2Cをはじめとする企業に携わる専門家です。ターゲットとしている企業は収益性の高い企業である必要がありますか?

MJ:私たちが関心を寄せている多様な見込み企業は、特定のレベルの収益性や売上が必要条件となっているわけではありません【略】セクター内で成功する企業を生み出すと私たちが考える重要な指標や収益要因については公開していません。しかし、私たちはデータに特化したチームです。次世代を担うジェネレーションZとミレニアル指向のマーケティングの最前線にいます。大ブレイクするブランドになり得るための要素とは極めて特定的なもので、それを我々は求めているのです。

TC:お2人はソーシャルメディア分野に精通されています。Clubhouseのように多くの注目を集めている新しいソーシャルメディア事業が出現していますね。Scienceの中核事業に話を移しますが、この分野での投資は検討していますか?

ピーター・ファム氏(以下、PP):YouTubeがマーケティングのプラットフォームになったのは10年前です。そして6年か7年程前にInstagramが(マーケティングのプラットフォームになりました)。Snapchatに続いてInstagram Stories(が登場し)、次にTikTok、そしてさらに新たなプラットフォーム、それがClubhouseです。常に新しいものが現れています。

Facebook、Instagram、Snapchatから目を離すことはできませんが、Clubhouseはまるで別物です。ほとんどラジオのようなものですが、参加型です。South by Southwestに行くとまるで24時間SWSXパネルのようです。聴衆の中にいながら、手を上げて、ステージ上に引き上げてもらえば、あなたはパネルの一員になれる、という実に興味深い動的な体験ができます。それが多くの人々を魅了する理由であり、自分を知ってもらい、より多くの聴衆に自分の声を届ける機会が得られる場となります。

TC:その成長が持続可能だと思われる理由をお聞かせください。

PP:マーケターがプラットフォームに参入する瞬間です。本物のマーケター、つまりお金の稼ぎ方についての方法や不動産の手に入れ方、不動産を売って収入を得る方法などを販売するタイプのマーケターが現れたとき、それはアービトラージ(裁定取引) になります。基本的には非常にスマートな人たちで、費す時間ごとに多くのお金を稼ぐことができます。ROI、顧客獲得コスト、収益の面で他人がやっている他のことに時間を費やすよりも価値があることを認識しています。

TC:2021年、Scienceのポートフォリオ企業はこういったプラットフォームをどのように利用していくでしょうか?あなたはLiquid Deathの投資家です。2020年末に4000万ドル(約42億2200万円)を調達したサブスクリプション下着企業MeUndiesの成長を支援しました。また初期のDollar Shave Clubに関わっていました。水や下着、カミソリなどでどのようにして切り拓いていくのでしょうか。

PP:プラットフォームは、常に単なる踏み台に過ぎません。ゲームのルールやフィードは変化するので、長期的にこれらの場所を当てにすることはできません。10年前、Dollar Shave Clubをローンチしたとき、私たちのホームページにはYouTubeの動画が自動再生されていました。その当時は、誰かに何かを買ってもらうためにYouTube動画を投稿することについて考えた人はいませんでした。MeUndiesはInstagramを使っていました。サブスクリプション方式の下着を想像した人はいたでしょうか。けれどクリスマス、新年、バレンタインデー、セント・パトリック・デーなどの祝日が毎月のようにやってきます。そのときに合わせて着ることができる何かおもしろくて楽しいものがあったらいかがでしょうか?

Liquid Deathに関しては、まだInstagramとTikTokにフォーカスしています。しかし、どのようなケースにおいてもブランドは、誰かがそのブランドについて好意的に話し、支持してくれるような存在にならなければなりません。

マイクは私たちのデータ面を控えめに表現していますが、私たちは絶え間なく、それぞれのビジネスに関して起きているすべてのことを測定しています。それには、彼らのソーシャルリーチ、彼らのエンゲージメント、ビジネスの維持、顧客が戻ってくる頻度、私たちがそれぞれの個人からどれだけの収益を生み出しているかそしてそれぞれのマーケティングの価値が何に値するかなどが含まれます。これらはすべて(私たちが決定する)この複雑なエンジンにつながります。背後にビジネスは存在するのか。Facebookに頼らずに自力で成長できるのか。ほとんどの企業では、自分自身のコミュニティやブランド、オーディエンスを構築する方法を理解していなければ、最終的にはGoogleかFacebookが勝者となってしまいます。

TC:今はどのようにコミュニティを構築しているのですか?

私は個人的に4000缶を配りました。Liquid Deathの初期の頃は10代の若者たちに手渡していて、10人中6人が写真を撮って友達にスナップを配信しました。その瞬間を何度も目にして、これはうまくいくと確信しました。3月、4月、5月にInstagramのフィードがいかに退屈だったか気づいたと思いますが、それはみんなが家にいて何もすることがなかったからです。しかし私たちはコンテンツの一部を提供することができました。

TC:Liquid Deathは現在、セブン-イレブンを含むいくつかの店舗で販売されています。人々はオンラインで購入していますか?何パーセントの人がサブスクリプションを利用していますか?

PP:1 / 3の顧客がオンライン(サイト)で商品を購入しています。24ドル(約2500円)の帽子と45ドル(約4700円)のパーカーも扱っており、コンスタントに製品を提供しています。ブランドであり、ライフスタイルとも言えます。CEOのMike Cessario(マイク・セサリオ)は、お気に入りのバンドのようなものを作っていると表現しています。海に捨てられてしまう(ペットボトルのような)プラスチックではなく、砂糖も入っていません。また飲酒運転につながるお酒でもないため、この製品のファンになることができるのです。

絶妙なセンスがあり、誰かに伝えたくなる理由となります。アイスブレーカーにもなり得るし、楽しく、どうしようもなく、呆れてしまうけどおもしろい。それでこそみんあにとって話す価値があり、見る価値があります。

こういった軌道は測定するのが難しいかもしれませんが、実際に見てよく観察し、繰り返し見られるようなら結果は明らかだと言えます。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Science Inc資金調達ロサンゼルスSPAC

画像クレジット:Liquid Death

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

トヨタ出資の電動航空機メーカーJoby AviationもSPAC経由で上場か

Toyota(トヨタ)がリードしたラウンドで5億9000万ドル(約620億円)を獲得してから1年、Uberの空飛ぶタクシー事業を買収してから数カ月後、Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)は特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じての上場を交渉していると報じられた。このディールによる電動航空機メーカーJoby Aviationの評価額は57億ドル(約5980億円)になるとのことだ。

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このニュースはArcher Aviationの大きなSPACディールに続くものだ。ファイナンシャルタイムズ紙の報道が正確であれば、Joby AviationとArcher Aviationは合計100億ドル(約1兆500億円)近いバリュエーションで近く公開企業となる。

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炭化水素以外のもので動く車両を作っているスタートアップが主役になる時代であり、SPACの大きな波が押し寄せている。

電気自動車メーカーのArrival、Canoo、ChargePoint、Fisker、Lordstown Motors、Proterra、The Lion Electric CompanyはすでにSPACと合併したか、合併の計画を発表した。

そして今、あらゆる形態の交通の電動化に関係する企業はSPACというビークルを通じての上場という波に乗ろうとしている。従来のIPOは課題が多いかもしれないと感じており、しかし資金調達という観点でいつまでもスタートアップのままではいたくないという企業にとって、SPACとの合併は今のところかなり人気となっている手法だ。

Jobyを上場させようとしていると報じられた投資グループは、億万長者のテック起業家で投資家、そしてLinkedIn共同創業者のReid Hoffman(リード・ホフマン)氏と、ゲーム会社Zyngaを創業したMark Pincus(マーク・ピンカス)氏が率いている。

両氏は2020年初めに一緒にSPACのReinvent Technology Partnersを立ち上げた。このペーパーカンパニーは上場し、合併のために6億9000万ドル(約720億円)を調達した。

Jobyが上場するとなれば、トヨタやBaillie Gifford、Intel Capital、 JetBlue Technology Ventures(米国拠点の航空会社の投資部門)、Jobyに1億2500万ドル(約130億円)を投資したUberなどJobyを支援している企業にとって勝ちとなる。

Jobyはすでにフライト600回をこなしたプロトタイプを持っているが、まだ連邦航空局に認証されていない。そしてファイナンシャルタイムズ紙が指摘したように、同社とホフマン氏、ピンカス氏のSPACグループとの取引がうまくいくかはわからない。

この取引は、両氏が設立したSPACへの追加の資金注入を必要とするかもしれない。資金の追加がなければすべてが白紙に戻る。実際、これはおそらくみなさんが今この記事を読んでいる理由の1つだろう。

あらゆる種類の輸送車両を動かしすべての移動手段をカバーする電動化は、投資の間で大流行している。部分的にはこれは投資対象となりそうな環境要素、持続可能性、良いガバナンスを備える企業を見つけるというプレッシャーが機関投資家の間で高まっているためだ。

環境への影響はユナテッド航空のCEOであるScott Kirby(スコット・カービー)氏が、Archer Aviationから10億ドル(約1050億円)分の電動飛行機を購入することについて語ったときに言及した要素だ。このArcherは今週初めにSPACを通じての上場を目指すと発表した。

「Archerとの協業で、ユナイテッド航空はよりクリーンで効率的な交通手段を擁する時だということを航空業界に示しています。正しいテクノロジーを活用して我々は航空機が地球に与えるインパクトを抑制できますが、これを早期に現実のものとする次世代の企業を特定し、そうした企業が飛び立つのをサポートする方法を見つけなければなりません」とカービー氏は述べた。

TechCrunchが先日報じたように、今回の動きは、ゆくゆくはユナイテッド航空の乗客の空港送迎ができるかもしれないという新たなビジネスラインへの投資でもある。ArcherのeVTOL1機を使えば乗客1人のハリウッド-ロサンゼルス国際空港間の移動による二酸化炭素排出量を最大50%減らすことができる、とユナイテッド航空は算出している。

Archerがステルスモードから登場して1年も経たないうちに、SPACとの合併契約とユナイテッド航空からの受注となった。Archerは2018年にAdam Goldstein(アダム・ゴールドステイン)氏とBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏が共同創業した。2人はSaaS企業VetteryをAdecco Groupに1億ドル(約105億円)超で売却した。Archerの主要投資家はMarc Lore(マーク・ロア)氏で、同氏は自身の会社Jet.comを2014年にWalmartに33億ドル(約3450億円)で売却し、2021年1月までWalmartのeコマース責任者を務めていた。

EV飛行機投資のブームから取り残されたと心配しているSPAC投資家あるいはベンチャーキャピタリストがいるなら、ご安心を。まだドイツのテックデベロッパーLiliumがいる。そしてもし超音速旅行に関心があるなら、Boomがいつでもいる

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Joby AviationSPAC

画像クレジット:LockieCurrie / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

eVTOL開発のArcherがユナイテッド航空から受注、SPAC経由で上場も

都市部の航空モビリティマーケットをターゲットとしている電動航空機スタートアップのArcher Aviation(アーチャー・アビエーション)が、SPAC(特別買収目的会社)との合併を通じて公開企業となることを目指す一環で、United Airlines(ユナイテッド航空)を顧客そして投資家として獲得した。

Archer Aviationは米国時間2月10日、SPACのAtlas Crest Investment Corpと合併することで合意したと明らかにした。SPAC合併はスタートアップが従来のIPOプロセスを回避するのを可能にするという、このところよく見られる手法になっている。ティッカーシンボル「ACHR」でニューヨーク証券取引所に上場する合併会社の評価額は38億ドル(約3975億円)となる見込みだ。

ユナイテッド航空やStellantis、Exorのベンチャー部門、Baron Capital Group、Federated Hermes Kaufmann Funds、Mubadala Capital、Putnam Investments、Access Industriesといった投資家からのPIPE(私募増資)の6億ドル(約628億円)を含め、計11億ドル(約1150億円)を得ると予想される、とArcher Aviationは話した。Ken Moelis(ケン・モエリス)氏とその仲間、Archer Aviationの主要・初期投資家の1人であるMarc Lore(マーク・ロア)氏、そして初期投資家もPIPEに3000万ドル(約32億円)を投資する。

合併会社はまた信託で5億ドル(約523億円)を保有する。SPAC合併に先駆けてArcherはシードラウンドとシリーズAで6000万ドル(約63億円)を調達していた。

これとは別に、カリフォルニア州パロアルト拠点のArcherはユナイテッド航空がArcherに投資することに同意したと発表した。合意条件の下で、ユナイテッド航空は10億ドル(約1045億円)分の航空機をArcherに発注した。同航空は追加で5億ドル(約523億円)分の航空機を購入するオプションも持つ。

Archerはまだ電動垂直離発着機(eVTOL)の大量生産を開始していない。同社のeVTOLはフル充電すると時速150マイル(約241km)で60マイル(約96km)飛行できる。同社はフルスケールのeVTOLを2021年後半に披露する計画で、2023年の大量生産開始を目指している。

画像クレジット:Archer Aviation

同社は、ユナイテッド航空との取引、そして以前発表した自動車コングロマリットStellantisとの提携ならびにSPAC合併を通じて調達した資金によって商業化へ向けた取り組みを加速させられると確信している。

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ユナイテッド航空のCEOであるScott Kirby(スコット・カービー)氏は今回の投資は同社が空の旅の脱炭素化を進める手法の1つだと表現した。

「Archerとの協業で、ユナイテッド航空はよりクリーンで効率的な交通手段を擁する時だということを航空業界に示しています。正しいテクノロジーを活用して我々は航空機が地球に与えるインパクトを抑制できますが、これを早期に現実のものとする次世代の企業を特定し、そうした企業が飛び立つのをサポートする方法を見つけなければなりません」と同氏は述べた。

また今回の動きは、ゆくゆくはユナイテッド航空の乗客の空港送迎ができるかもしれないという新たなビジネスラインへの投資でもある。ArcherのeVTOL1機を使えば乗客1人のハリウッド-ロサンゼルス国際空港間の移動による二酸化炭素排出量を最大50%減らすことができる、とユナイテッド航空は算出している。ロサンゼルスはArcherが最初に機材を飛ばそうと計画している都市の1つだ。

Archer Aviationがステルスモードから登場して1年も経たないうちに、SPACとの合併契約とユナイテッド航空からの受注となった。Archerは2018年にAdam Goldstein(アダム・ゴールドステイン)氏とBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏が共同創業した。2人はSaaS企業VetteryをAdecco Groupに1億ドル(約105億円)超で売却した。Archerの主要投資家はロア氏で、同氏は自身の会社Jet.comを2014年にWalmartに33億ドル(約3450億円)で売却し、現在はWalmartのeコマース責任者を務めている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Archer AviationSPACeVTOLエアタクシー

画像クレジット:Archer Aviation

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロモビリティHelbizがSPACと合併しゴーストキッチン事業へ参入

欧州と米国で事業展開するマイクロモビリティスタートアップのHelbiz(ヘルビズ)が、公開企業となるために特別買収目的会社(SPAC)と合併する。公開することで同社はマイクロモビリティ分野における自社よりも小さい企業との競合に打ち勝つための軍資金、そしてフードデリバリーへの業務拡大の一環として「クラウド」あるいは「ゴースト」キッチンと呼ばれるものに参入するためのリソースを得る。

Helbizは2021年第2四半期にGreenVision Acquisition Corpと合併する。合併企業の社名はHelbiz Inc.で、ティッカーシンボル「HLBZ」でNASDAQナスダックに上場する。

合併取引には機関投資家が主体の3000万ドル(約32億円)のPIPEが含まれ、正味売上高約8000万ドル(約84億円)がユーザー270万人を抱えるHelbizのマイクロモビリティと広告事業に注がれる。

Helbizは合併会社のバリュエーションが4億800万ドル(約430億円)になり、CEOのSalvatore Palella(サルバトーレ・パレーリャ)氏のもとHelbizの現経営陣で運営されると述べた。

パレーリャ氏は「この取引を通じて我々はシームレスなラストマイルソリューションになるのにマイクロモビリティを使うことで交通に革命を起こすというビジョンを実現することを約束します」と話した。

同氏はさらに、配達時間5分を導入する目的で同社が2021年後半ミラノとワシントンDCに「ゴーストキッチン」を設置する計画であることを筆者に明らかにした。

Helbizは、電動スクーターや電動自転車、電動モペッドを1つのプラットフォームで提供することでLime(ライム)やBird(バード)といった競合他社と差異化を図ってきた。

Helbizのサービスの鍵は、スクーターがあちこちに放置されるのを好まない市当局にアピールする統合ジオフェンスプラットフォーム、そして簡単に充電できる交換式バッテリーだ。同社のサブスクではユーザーは電動自転車や電動スクーターの30分乗車を毎月無制限に利用できる。

同社は現在、欧州ではミラノ、トリノ、ベローナ、ローマ、マドリッド、ベオグラードで、米国ではワシントンDC、アレクサンドリア、アーリントン、マイアミで電動スクーターと電動自転車のサービスを展開している。

GreenVisionの会長兼CEOのDavid Fu(デイビッド・フ)氏は「Helbizは電動スクーター、電動自転車、電動モペッドを1つのユーザーフレンドリーなプラットフォームで提供することで差別化を図ってきました。Helbizはすでに証明済みのハードウェアとソフトウェア、広範な顧客関係をともなうサービスを組み合わせたキャピタルライトのビジネスモデルを持っています」とコメントした。

カテゴリー:モビリティ
タグ:HelbizSPACゴーストキッチン

画像クレジット:Helbiz

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソフトバンクがSPACをさらに2社申請

SPAC(特別買収目的会社)を巡る熱狂は衰えることなく続いており、時には新しいSPACがほぼ1時間ごとにSECに申請されることがある。

巨大なビジョンファンドとその後継ファンドを運用する日本の通信コングロマリットであるSoftbank(ソフトバンク)は取り残されたくないと考えている。同社は米国時間2月5日、2つの新しいブランクチェック(白紙小切手)会社に関して連続してSPAC登録届出書を提出した。

SVF Investment Corp 2(SVF2)は2億ドル(約210億円)、SVF Investment Corp 3(SVF3)は3億5000万ドル(約370億円)のビークルだ。それぞれのSPACには標準で約15%のオーバーアロットメントオプションがある。つまり、引受会社がオプションを選択したと仮定すると、最終的なサイズはそれぞれ2億3000万ドル(約250億円)と4億ドル(約420億円)になる可能性がある(計算していただくとわかるが、SVF3のオーバーアロットメントは15%よりわずかに小さい)。

2社の興味深い要素の1つは、ソフトバンクのビジョンファンド2に関連する先渡購入契約と呼ばれるものがあることだ。ビジョンファンド2はこの契約に基づき、対象となるスタートアップとの企業結合が始まるときにSPACの株を購入できる。つまり合併に参加する権利が与えられる。ビジョンファンド2はSVF2と1億ドル(約105億円)、SVF3と1億5000万ドル(約160億円)の契約を結んだ。

すべてのSPACと同様、登録届出書は単に資金を調達する意図で提出されているが、最近では大部分の申請が後になってクローズしている。

数字が示すように、ソフトバンクは以前SPACの申請を行っていた。これは2020年12月に申請され、2021年1月7日に正式にクローズした。このビークルは引受人のオーバーアロットメントオプションを含め合計6億400万ドル(約630億円)の資金調達を目標としていた。また、最新のビークル2社と同様、ビジョンファンド2との2億5000万ドル(約260億円)の先渡購入契約も含まれていた。

SPAC2社が探しているのは何か。提出書類によると「私たちはテクノロジーを利用するセクターでの事業を探索、買収、経営する意図があります。その分野で私たち経営陣は他とは異なる経験と洞察を有しています。モバイル通信技術、人工知能、ロボット工学、クラウドテクノロジー、ソフトウェア全般、計算生物学およびその他のデータ駆動型ビジネスモデル、半導体およびその他のハードウェア、輸送テクノロジー、消費者向けインターネットおよび金融テクノロジーが含まれますが、これらに限定されません」。

多くをカバーしているように見えるが、念のために、提出書類では「しかし、私たちは異なるまたは関連する業界の企業との取引を完了するかもしれない」と述べている。つまり基本的に何でも対象になる。

SPACがクローズされるタイミングついて決まった予定はまだないが、市場平均を考えると通常は4〜8週間だ。

カテゴリー:その他
タグ:Softbank GroupSPACSoftbank Vision Fund

画像クレジット:Alessandro Di Ciommo/NurPhoto / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Nariko Mizoguchi

遺伝子検査の23andMeがVirgin GroupのSPACとの合併を通じて公開へ

遺伝子検査とゲノム研究の23andMeは、Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏と同氏の会社Virgin Group(ヴァージン・グループ)のビークルである特別買収目的会社(SPAC)のVG Acquisition Corpとの合併を通じて上場する。この取引で23andMeはクローズ時にキャッシュ約9億8400万ドル(約1040億円)を手にすると予想される。同社はこの資金をプロダクト開発、人材採用、 他の成長戦略に使う。そして同社の評価額は約35億ドル(約3700億円)になり、この合併についての話し合いを詳細に報じた先の記事にあった額に近いものになる。

CEOのAnne Wojcicki(アン・ウォシッキー)氏、Linda Avey(リンダ・ エイヴィ)氏、Paul Cusenza(ポール・カセンザ)氏が2006年に創業した23andMeは、2020年12月に発表した8500万ドル(約90億円)のシリーズFラウンドを含め、これまでに9億ドル(約950億円)を調達した。同社は個人消費者向けの在宅遺伝子テストを最初に開始した企業の1社で、個人が自身のDNAについて、そして潜在的な健康問題や先祖などについて情報を得るのに使えるキットを提供している。

直近では、同社は膨大なゲノムデータをオプトイン式の遺伝子研究リソースに保存している。将来の治療の発見に使うためだ。同社はまた、研究と事業の目的でサードパーティとともに収集するデータの統合と匿名化された共有を通じて収益を上げている。

取引には、ウォシッキー氏とリチャード・ブランソン氏の会社の合併に付随するPIPEへの各2500万ドル(約26億円)の投資も含まれる。合併は2021年第2四半期にクローズする予定で、NYSEにティッカーシンボル「ME」で上場する。

このところのSPAC旋風は、多くのスタートアップ、そしてエグジットイベントがないためにテクニカル的にまだ非公開企業だが、手元資金を確保するのにプライベート投資家に頼る要素を持っている23andMeのような非公開企業がエグジットする手法となっている。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:23andMeDNASPAC

画像クレジット:ERIC BARADAT/AFP / Getty Images

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

米自動車保険スタートアップMetromileがウェブサイトに侵入者が運転免許証番号を取得できるバグがあったと報告

サンフランシスコに拠点を置く自動車保険スタートアップのMetromileが、侵入者が運転免許証番号を取得できるウェブサイトのセキュリティの欠陥を修正したと報告した。

同社は米国証券取引委員会に提出した最新の8-K報告書でセキュリティの侵害について明らかにした。

Metromileによれば、同社ウェブサイト上の見積フォームと申し込みプロセスのバグにより、侵入者が「個人の運転免許証番号を含む特定の個人の情報を取得」できたという。実際にどのような状態で侵入者はフォームから運転免許証番号を取得できたのか、何人の運転免許証番号が取得されたかは明らかにされていない。

報告内容には以下のように記載されている。「Metromileは、即座にソフトウェアを修正するなどこの問題を封じ込め回復する手段を取り、保険会社に通知し、営業は継続しています。Metromileはセキュリティ専門家や弁護士と全面的に連携して、問題がどのように発生したかを突き止め、追加で必要な封じ込めと回復の措置を特定し、必要に応じて影響を受ける個人、法執行機関、監督機関に報告します」。

Metromile広報のRick Chen(リック・チェン)氏は、同社はこれまでに運転免許証番号にアクセスがあったことは確認したが「引き続き調査中」だと述べた。

Metromileは自社ウェブサイトやソーシャルのチャンネルではこの問題について公表していない。チェン氏は、問題の影響を受ける個人に通知する予定だと述べた。

Uberの元幹部であるRyan Graves(ライアン・グレイブス)氏から5000万ドル(約52億6000万円)の投資を受け、同氏がMetromileの経営陣に加わることを認めたタイミングで、この問題が明らかになった。MetromileはSPAC(特別目的買収会社)を通じて13億ドル(約1367億6000万円)で株式公開する計画であると、2020年11月に発表したばかりだった。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:MetromileSPACバグ

画像クレジット:Smith Collection/Gado / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Kaori Koyama)

EVが制度面で追い風を受ける中、バッテリー会社が最新のSPACターゲットに

バッテリーが投資家にとって最新の着地目標だ。

先週だけでも、2社が特別買収目的会社(SPAC)と合併して上場企業になる計画を発表した。欧州のバッテリーメーカーFREYRは米国時間1月29日、14億ドル(約1470億円)のバリュエーションで特別買収目的会社を通じて上場企業になると語った。ヒューストンのスタートアップMicrovastは米国時間2月1日、自身のSPACを30億ドル(約3150億円)のバリュエーションとともに発表した。

2社の売上高が1億ドル(約105億円)強(FREYRはまだバッテリーを製造していない)で、バリュエーションの合計が44億ドル(約4620億円)というのは、将来信じがたいほどのバッテリー需要がなければ、ばかげているように思われる。

GM(ゼネラルモーターズ)やFord(フォード)などのレガシーな自動車メーカーは、ポートフォリオを電気モデルにシフトするために数十億ドル(数千億円)を投じてきた。GMは2020年、電気自動車(EV)と自動化技術の開発に今後5年間で270億ドル(約2兆8350億円)を費やすと述べた。一方、多くの新規参入者は、電気自動車の生産を開始する準備をしているか、スケールアップしている。たとえばRivian(リビアン)は2021年夏に電動ピックアップトラックの販売を開始する。同社にはまた、数千台のEVバン製造でAmazon(アマゾン)が接近した。

米国政府がその需要の一部を後押しする可能性がある。バイデン大統領は先日、米国政府が連邦政府の自動車、トラック、SUVの全車両を米国で製造された64万5047台の電気自動車に置き換えると発表した。つまりGMとFordだけでなく、Fisker(フィスカー)、Canoo(カヌー)、Rivian、Proterra(プロテラ)、Lion Electric(ライオンエレクトリック)、Tesla(テスラ)などの米国を拠点とする企業にも多くの新しいバッテリーを供給する必要がある。

一方、世界最大の都市のいくつかは、独自の電化イニシアチブを計画している。Royal Bank of Canadaの調査によると、上海は2025年までに電気自動車がすべての新車購入の約半分を占めるようにしたいと考えており、すべての公共バス、タクシー、配送トラック、公用車を同じく2025年までにゼロエミッションにする予定だ。

中国の電気自動車市場は世界最大の市場の1つであり、政策が世界の他の地域よりも大幅に進んでいる

中国のEV市場での追い風がおそらくMicrovastへの多額の投資の理由の1つだ。100年の歴史を持つ産業用自動車メーカーであるOshkosh Corp、8兆6700億ドル(約910兆円)の資金管理会社であるBlackRock、Koch Strategic Platforms、プライベートエクイティファンドマネージャーのInterPrivateなどが投資した。これは、Microvastの既存の投資家に、中国で最もコネクションを持つプライベートエクイティおよび金融サービス会社であるCDH InvestmentsとCITICSecuritiesが含まれていたためだ。

Microvastは、商用車と産業用車両に力を入れている。同社は商用電気自動車の市場が短期間に300億ドル(約3兆1500億円)規模になると考えている。現在、商用EVの売上高は市場のわずか1.5%を占めるにすぎないが、同社によれば、2025年までに9%に上昇すると見込まれている。

「当社は2008年、電気自動車が内燃機関車と競争できるような革新的なバッテリー技術を開発することにより、モビリティ革命の推進に着手しました」とMicrovastの最高経営責任者であるYang Wu(ヤン・ウー)氏は声明で述べた。「それ以来、当社は3世代のバッテリー技術を発表しました。この技術により競合他社よりもはるかに優れたバッテリー性能を顧客に提供してきました。長年の事業運営を通じて商用車オペレーターの厳しい要件を満たすことに成功してきました」。

約3万台の車両でMicrovastのバッテリーが使われている。同社への投資には約8億2200万ドル(約860億円)の現金が含まれている。この現金で2022年までに9ギガワット時に達するよう製造能力を拡張する。同社によると、この資金のおかげで約15億ドル(約1580億円)の契約上の義務を果たすことができるはずだという。

中国の投資家が来たるMicrovastの株式公開で大きな勝利を収めるなら、米国の複数の投資家と巨大な日本企業が1社、FREYRの株式公開を心から待っている。Northbridge Venture Partners、CRV、伊藤忠商事はすべて、欧州の投資家ではないとしても、FREYRのエグジットから利益を得るとみられる。

この3社は、International Finance Corp.と並んで、ボストンを拠点とするスタートアップである24Mの投資家であり、その技術はバッテリーを製造するFREYRにライセンス供与されている。

FREYRの株式公開は、バッテリーおよび材料科学業界で革新を起こしてきた長い歴史を持つシリアルアントレプレナーで教授でもあるYet-Ming Chiang(イエット・ミン・チアン)氏にとっても勝利となると思われる。

MITの教授である同氏は過去20年間、最初に今はもうないバッテリースタートアップのA123 Systemsで、それから次のような多数のスタートアップで持続可能な技術に取り組んだ。3Dプリント会社のDesktop Metal、リチウムイオンバッテリー技術開発の24M、エネルギーストレージシステム設計のForm Energy、別のアーリーステージのエネルギーストレージスタートアップであるBaseload Renewablesだ。

Desktop Metalは特別買収目的会社に買収された後、2020年に公開した。24Mは現在、欧州の製造パートナーの1つであるFREYRへの多額の現金注入によって勢いを得ようとしている。

ノルウェー本社のFREYRは、母国のサイトの周りに5つのモジュール式バッテリー製造施設を建設する計画を立てており、今後4年間で最大43ギガワット時のクリーンバッテリーを開発する予定だ。

FREYRの最高経営責任者であるTom Jensen(トム・ジェンセン)氏にとって、24Mテクノロジーには2つの大きな魅力があった。「それは製造プロセスそのものです」とジェンセン氏は語った。「彼らが行っているのは基本的に電解質を活物質と混合することです。これにより電極を厚くし、バッテリー内の不活性物質を減らすことができます。さらに、実際にそれを行うと、多くの従来の製造ステップは不要になります。従来のリチウムバッテリーの製造と比較して、製造工程は15ステップから5ステップへと削減されます」。

こうしたプロセス効率は、セル内の大量のエネルギー含有材料と組み合わされ、バッテリー製造プロセスの根本的な革新につながる。

ジェンセン氏は、同社の計画を完全に実現するには25億ドル(約2630億円)が必要だが、それには流動性が必要だったと述べた。同社はSPACのAlussa Energy Acquisition Corpと合併した。このSPACにはKoch Strategic Platforms、Glencore、Fidelity Management & Research Company LLC、Franklin Templeton、Sylebra Capital、Van Eck Associatesなどの投資家が名を連ねる。

これらの投資はすべて、世界が決められた時間軸で車両電化の目標を達成するために必要だ。

Royal Bank of Canadaは2020年12月の電気自動車業界に関するレポートで「バッテリー式電気自動車(BEV)は2020年の世界需要の約3%を占めるのに対し、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)は約1.3%を占めると予測する」と指摘した。「しかしこうした低い数値から、力強い成長を見込んでいる。2025年までの成長が依然として規制により主導される場合、BEVの世界全体での普及率は新たな需要により約11%に、CAGR(年平均成長率)は2020年の水準比で約40%になり、PHEVの普及率は約5%に、CAGRは35%になると見込まれる。2025年までに、西ヨーロッパでのBEVの普及率は約20%、中国で約17.5%、米国で7%になる。これに比べ、内燃機関(ICE)車両は、2025年まで2%のCAGRで(周期的に)成長すると予想される。純粋な台数ベースでは、2024年にピークを迎えると見られる」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:電気自動車バッテリーSPACMicrovastFREYR

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロケットスタートアップAstraがSPAC経由でNASDAQに上場の予定、ステルスから現れて1年

昨年12月にアラスカからのテスト打ち上げで宇宙空間に到達したばかりのロケット打ち上げスタートアップAstra(アストラ)が、Holicityという特別目的買収会社(SPAC)との合併を通じNASDAQに上場することになった。最近のSPAC熱はすでに宇宙ビジネスセクターにまで及んでおり、Virgin Galacticがこの新しい波に乗って上場した企業の一つであることを見ると、宇宙船打ち上げについては前例があるが、NASDAQに上場するのはAstraが初めてとなる。

取引の条件は、Holicityが信託で保有する3億ドル(約315億円)と、BlackRockが運用するファンドからのPIPE(パブリック・エクイティへの私募投資)による2億ドル(約210億円)の注入を合わせて、Astraに5億ドル(約525億円)の現金がもたらされることが予想される。この取引によりAstraのプロフォーマ評価額は約21億ドル(約2205億円)となるが、これは同社の評価額から、SPAC合併によってもたらされる5億ドル(約525億円)の現金を差し引いたもの。Astraは、今年の第2四半期までに合併を完了し、その後はティッカーシンボル「ASTR」で取引される予定だ。

Astraはカリフォルニア州アラメダの施設で、小型の軌道上ペイロードを運ぶために設計された独自のロケットを製造している。これまでのところ、アラスカ州コディアックにロケットを輸送して飛行を実施しているが、実際の宇宙港施設ではほんの一握りのスタッフがロケットの搭載と打ち上げを担当した。チームの大部分は、カリフォルニアにあるミッションコントロール施設から遠隔操作で飛行を監督した。同社のモデルは、比較的安価なロケットを高い供給能力で生産することに重点を置いており、ニーズに応じてほぼどこでも出荷・打ち上げが可能だという。

12月のテストが成功したことで、Astraは、打ち上げモデルの構築と反復型開発の作業に何年もかけて取り組んできた成果を得ることができた。同社はもともと、衛星を迅速に打ち上げることを目指し、DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency、米国防高等研究計画局)が資金提供して実施した技術開発レースを追求していたが、そのレースは賞金の該当者が出ることなく期限切れになってしまった。12月に行われたテストの成功により、Astraのモデルの実行可能性は証明されたが、実際にペイロードを届けるための軌道速度を達成するにはわずかに足りなかった。同社によると、これは比較的簡単に解決できる問題であり、ソフトウェアの微調整で完全に管理できるとのことで、今年の夏には最初の商業衛星を納品する予定だという。

Astraは、最終的には2025年までにペイロードを毎日のように打ち上げることを目標としている。SPACのニュースに伴うブログ記事の中で、Astraの創業者兼CEOのChris Kemp(クリス・ケンプ)氏は「宇宙サービスのプラットフォームを構築する」ことにも取り組んでいきたいと述べており、現在のロケット事業の域を超えた野心を示唆している。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Astra 新規上場 SPAC

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nakazato)

SPACはVCがクリーンテックに資金を提供するために必要なツール

【著者紹介】本稿著者のBrian Walsh(ブライアン・ウォルシュ)氏は、中南米の大手エネルギー企業であるCOPECのベンチャーキャピタル部門WIND Venturesの責任者だ。U.S. WIND Venturesは、モビリティ、エネルギー、小売分野のスタートアップやスケールアップに中南米へのアクセスを提供している。

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気候変動や世界的なエネルギー需要の増大を背景に、再生可能エネルギーやエネルギー貯蔵から原子力発電に至るまで、新たなクリーンテクノロジーに注目が集まっている。こうした技術には大きな可能性があるが、多くのイノベーションが必要であり、イノベーションには豊富な資本が必要だ。

しかし問題は、アーリーステージのクリーンテックへの資金供給が十分に行われず、新エネルギー企業の成長を阻害しているのはなぜかということだ。一般に、クリーンテック企業は敏捷性と柔軟性というスタートアップの利点を欠いている。

「迅速に動く」ことは消費者向けモバイルアプリやSaaSソリューションなどの製品では機能する。一方、クリーンテックセクターは高度に規制され、資本集約的で、ミッションクリティカルなインフラに関わる傾向がある。

それがリターンと善意に基づく影響力の両方を傷つけた。Cambridge Associatesによると、ベンチャーキャピタルが投資した企業の2000年以降の内部収益率(IRR)は平均してマイナス15%だった。これをベンチャーキャピタルが投資したヘルスケア企業と比べてほしい。同じ期間のIRRは24%だった。

クリーンテックに資金が不足している理由

テクノロジーを通じて世界をより良く、よりクリーンで、より安全で、より健康的な場所にするというその目的は高貴なものだ。しかし、クリーンテックベンチャーキャピタルは苦しんできた。理由は、単にクリーンテックが従来のベンチャーキャピタルモデルに合わないということだ。ベンチャーキャピタルモデルの中心となるのは、新しいアイデアのリスクを軽減し、最も有望なアイデアを大幅に活用して、M&Aまたは新規株式公開(IPO)により流動性をもたらす機能だ。

アーリーステージのクリーンテックへの資金供給は十分に行われず、新エネルギー企業の成長を阻害している。

ベンチャーキャピタルという仕組みがVC自身に投資リターンをもたらすだけでなく、ベンチャーキャピタルの投資評価額の上昇を通じてさらなる資金調達を可能にする。こうした資本化イベントにより、ベンチャーキャピタルから投資を受ける企業は成長を加速し、市場への影響を最大化することもできる。

これがどのように機能するかは、ヘルスケアとクリーンテックを比較すると明らかになる。ヘルスケアでは、VCが新しいイノベーションのリスクを軽減する。そして毎年、より成熟したイノベーションが得られたり、IPOを達成したりしている。その結果、2012年以降、VCの投資金額に対するイグジット時の調達金額の平均年率は1.8となっている。この比率は、クリーンテックではわずか0.2であり、反対方向に800%以上の差がある。このため、クリーンテック企業のリターンは低く、時価総額も抑えられている。

「SPAC」で(もう一度)検索してほしい

世界の環境の状況と新興国に豊富なエネルギーがないことを踏まえ、私たちはこうした問題をまとめて解決する必要がある。特別買収目的会社(SPAC)はクリーンテックが必要とするベンチャーキャピタル機能を大幅に改善している。Investopediaによると、

SPACは、既存の会社を買収するために新規株式公開(IPO)を通じて資金を調達する目的で設立される、商業活動を行わない会社である。

「ブランクチェック(白紙小切手)会社」としても知られるSPACは、何十年も前から存在している。近年人気が出ており、アンダーライターや投資家のビッグネームを引きつけ、2019年に記録的な金額のIPO資金を調達した。

2020年には110社を超えるSPACが米国で取引を完了し、290億ドル(約3兆450億円)以上の資本がもたらされた。

2020年、SPACからFisker、Lordstown Motors、QuantumScape、Hyliion、XL Fleetなどのクリーンテック企業に合計約40億ドル(約4200億円)の資本が投入された。これにより、同年にベンチャーキャピタルの投資金額に対するイグジット時の調達金額の比率は、以前の平均0.2からはるかに健全な0.6に押し上げられ、200%向上した。

2021年にはさらに改善すると思われる。なぜか。クリーンテックに携わる合併対象会社を探したり決めたりしようとするアクティブなSPACが43社存在するためだ。これらのSPACが合計120億ドル(約1兆2600億円)の成長資本を提供する可能性がある。2021年にこれ以上新しいSPACが現れず、M&AとIPOが歴史的低水準になっても、2021年はクリーンテックへの投資の継続的な改善が約束されている。

Nikolaを悪しき前例にするな

最も注目を集めたクリーンテックSPACの1つはNikola Corporationだ。バッテリー式で水素を動力源とするトラックを製造する同社は、2020年6月に特別買収会社VectoIQとの逆さ合併により公開して以来、注目の的となってきた。時価総額は急上昇し、事態は順調に進んでいるように見えたが、2020年末に同社の技術などについて虚偽の発言をしたとして非難され、物議を醸した。

Nikolaのような例は、クリーンテックへの投資促進手段としてのSPACの台頭を阻む汚点となる可能性があるが、そうなってはならない。品質と誠実さを主張するスタートアップの例はたくさんある。たとえばエネルギー貯蔵最適化分野のリーダーであるStem(Wind Venturesのポートフォリオカンパニー)は、Star Peak SPACを介して公開する予定であり、現在SECの承認待ちだ。

公開市場は熱意を持ってSPACを迎えている。Stemの合併が起こると仮定すると、成長を加速し、影響を促進するために4億5000万ドル(約470億円)を超える現金を保有することになる。クリーンテックを機能させ、繁栄するセクターとするために必要かつ前向きなベンチャーキャピタル機能としてのSPACの例だ。

私自身、長年のクリーンテックベンチャーキャピタリストとして、SPACを介した公開市場での投資がクリーンテックにとってVC機能に代わる可能性があることは興味深い。何年もの間、企業がこの問題を解決するためにプレミアムを乗せたバリュエーションでM&A活動を強化すると思っていた。だが私は、長い間待ち続けることとなった。

活動から判断すると、企業は「所有」の役割ではなく、依然として非常に重要な投資家や育成者の役割を果たし続けることに満足しているようだ。とにかく、有望なクリーンテック企業に資金を提供するということが意味するのはたった1つ。これらの企業は資本を必要とし、また規模を拡大するためにそれを使用する中で、クリーンテック関連のインパクトがかつてないほど大きくなっているということだ。

新しい優れたクリーンテクノロジー企業を見つけて資金を提供するための、新しくより多様なアプローチが切実に必要とされている。SPACは、クリーンテックをヘルスケアなどのセクターと同等にするために必要なツールになると思われる。それは私たち全員にメリットがある発展だ。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:SPAC

画像クレジット:ATU Images / Getty Images

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(文:Brian Walsh、翻訳:Nariko Mizoguchi)

個別指導サービスのEdTechスタートアップNerdyがSPACを介して上場へ

ギグエコノミーで駆動している消費者EdTechプラットフォームがニューヨーク証券取引所に向かう。

人気の個別指導事業Varsity Tutorsを所有するEdTechスタートアップのNerdy(ナーディ)は特別買収目的会社(SPAC)を通じて上場する予定だ。

Nerdyは、2015年に公開したSPAC、TPG Pace Tech Opportunities(NYSE:PACE)と合併する。取引は2021年第2四半期にクローズする見込みだ。

この取引でNerdyのバリュエーションは17億ドル(約1780億円)となる。合併を通じてNerdyは現金で7億5000万ドル(約785億円)を調達する計画だ。ここにはFranklin Templeton、Healthcare of Ontario Pension Plan、Koch Industries、Learn CapitalからのPIPE(私募増資)での1億5000万ドル(約157億円)が含まれる。

Nerdyの基幹ビジネスであるVarsity Tutorsは指導者と学生を大規模、小規模、1:1でマッチングする両面性を持つマーケットプレイスだ。学習プラットフォームは3000以上のテーマをカバーしている。他のEdTech企業と同様、Varsity Tutorsはより良いマッチングになるよう人工知能とデータ分析を使っている。加えて、2020年8月にVarsity Tutorsは従来の学校に代わるものとしてホームスクーリングのサービスを立ち上げた。公立学校やチャータースクールで以前働いていた120人のフルタイム教育者を競争力のある給料で引き抜いた。

財務実績

TechCrunchはNerdyのSPAC投資家プレゼンをレビューした。

Nerdyは、新型コロナウイルスパンデミックによるリモート学習の需要によって急成長してチャンスをつかんだ消費者EdTech企業の1つだ。2020年下期に同社は年換算売上高は1億2000万ドル(約125億円)を超えた。2020年第4四半期に同社のオンライン売上高は前年同期から87%成長し、オンライン有料アクティブ学習者の数は前年同期比59%増、有料オンラインセッションの数は同169%増だった、としている。

好ましいものになりがちな年換算業績ではなく2020年第3四半期から第4四半期にかけての実際の業績を掘り下げてみると、Nerdyは2020年の予想収益は1億600万ドル(約110億円)で、これは2019年の収益から16%増だ。

その成長レートは2019年の26%成長を下回り、2021年に予想している31%成長のおおよそ半分だ。しかしNerdyの2022年の予想はさらに強気だ。売上高は2021年予想1億3800万ドル(約144億円)から43%増の1億9800万ドル(約207億円)を見込んでいる。

同社がその目標を達成できるかどうかは今後明らかになる。SPAC主導のデビューにより同社は従来のIPO手法を踏んだ企業よりも関心を集めることになる。

Nerdyの成長は損失を食い止めてはいない。同社はまだ赤字だ。2020年に予想される純損失は2300万ドル(約24億円)で、2019年の損失よりも大きいが、2018年の赤字よりは少ない。2020年の成長をベースに考えると、同社の2021年の純損失は800万ドル(約8億4000万円)に抑えられ、2023年までに黒字化を達成する。

Nerdyは売上高が増える中で、2020年になぜ損失を減らせなかったのだろうか。セールスやマーケティング費用とは別に、同社のコストが控えめな損益につながった。特定領域の費用は2019年の3800万ドル(約40億円)から2020年の4400万ドル(約46億円)予想に増えた。

それとは対照的に、Nerdyの純損失は2020年にほぼ変動がなく、純差益は2019年のマイナス24%から2020年の予想マイナス22%に改善した。黒字を達成する方法もあるが、純利益を計上するのはわずか数年先のことだと同社が考えていることを財務は示している。

黒字化を達成するために、同社は2023年の売上高2億6700万ドル(約279億円)が必要だと予想している。これは2022年から35%成長で、粗利益率は2020年に達成した67%よりも5ポイント高い。

同社の事業をよく見ると、SPACブームで見られる共通の疑問が湧く。逆さ合併は、そうでもしなければ上場が果たせなかった短期の成長見通しが芳しくない企業を上場させるために使われているのだろうか。これまでのところSkillsoft、Meten International、そして今Nerdyと、数多くのEdTechスタートアップがSPACの手法を取っている

EdTechにとって2020年は力強い年となった。この分野のスタートアップの年間経常収支1億ドル(約105億円)を超えるにつれ、今後より多くのエグジットが予想される、とこの部門の投資家は話す。GSVのマネジングパートナーのDeborah Quazzo(デボラ・クアゾ)氏は2020年12月、「キャピタルマーケットの清算がEdTechで起こっています」とTechCrunchに語っている。「未公開企業と公開企業の間を流動的に動けることが厚みのある資本市場をともなうEdTech部門の特徴で、これはエグジットの選択肢がかなり限られていたかつてのEdTechと大きく異なる点です」。

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カテゴリー:EdTech
タグ:NerdySPAC

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(文:Natasha Mascarenhas、Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi)

WeWorkがSPACとの合併を通じて上場を検討中、WSJが報道

WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)の新しい報道によると、2019年秋に株式公開の目論見が華々しく吹き飛んだ巨大コワーキング企業のWeWork(ウィーワーク)は、あるブランクチェックカンパニー(SPAC)と合併して株式公開企業になる可能性があるという。

WSJによると、具体的にはニューヨークに拠点を置くWeWorkは「Bow Capital Management LLC(ボウ・キャピタル・マネジメント)と関連があるSPAC(特別買収目的会社)と、少なくとも1つの正体不明のがわからない他の買収団体からのオファーを数週間前から検討している」ところだという。この取引では、WeWorkの評価額は約100億ドル(約1兆420億円)になる可能性があると、WSJの情報提供者は語っている。

同社の広報担当者に尋ねたところ、WSJに送ったものと同じ声明が送られてきた。「過去1年間、WeWorkは、収益性を達成するための計画を実行することに力を注ぎ続けてきました。私たちの著しい進歩は、柔軟に使えるスペースの需要増と相まって、私たちのビジネスに肯定的な兆候を示しています。私たちは目標に向かって近づくための補助となる機会を探求し続けます」。

WeWorkに近い関係者によると、同社はより多くの民間資金のインバウンド関心も検討しているという。

WeWorkの広報担当者によると、同社は8億7500万ドル(約912億円)以上の利用可能な現金を含む、36億ドル(約3750億円)以上の現金と未払いの現金支払債務を持っており、これは「長期化する新型コロナウイルス禍を乗り切るのに十分以上の流動性」であると考えているという。

WeWorkのSandeep Mathrani(サンディープ・マスラニ)CEOは2020年秋、WeWorkは同年のある時期に黒字化する軌道に乗っていると述べ、その後は「最初の利益成長」となり、「新規公開株の計画を再検討することになるだろう」と語っていた。また、同氏はニューヨークからZoomコールを介してインドの記者団に対して、WeWorkは2020年10月、Bloomberg(ブルームバーグ)が報じたように、従業員の約3分の1にあたる8000人を解雇した後、100%適正規模化を完了したと付け加えた。

マスラニ氏は2020年2月、WeWorkの共同創業者であるAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏が退任した後を受けてCEOに就任した。同社が上場を取り止める数カ月前のことだ。

それ以前、マスラニ氏は1年半の間、Brookfield Properties(ブルックフィールド・プロパティーズ)の小売グループのCEOと、Brookfield Propertiesの副会長を務めていた。シカゴを拠点とする同社に入社する前は、General Growth Properties(ジェネラル・グロース・プロパティーズ)のCEOを8年間務めた。同社は2018年にBrookfieldが92億5000万ドル(約9640億円)の現金で買収するまで、全米最大級のモール運営会社だった。また、マスラニ氏は上場不動産会社であるVornado Realty Trust(ボルナド・リアルティ・トラスト)で8年間、取締役副社長を務めていたこともある。

Bow Capital ManagementはTibco Software(ティブコソフトウェア)の創設者であるVivek Ranadive(ヴィヴェク・ラナディブ)氏によって運営されている。同社は2020年7月、テクノロジー、メディア、通信業界における事業買収に焦点を当てた3億5000万ドル(約365億円)のブランクチェックカンパニーの計画を登録した。

WeWorkがテック企業なのか、それとも純粋な不動産業の範疇かについては、何年も前から多くの議論が交わされてきたが、同社はずっと前者であると主張している。

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タグ:WeWorkSPAC合併

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(文:Connie Loizos、翻訳:TechCrunch Japan)

ネイティブ広告のTaboolaがSPACを介して公開へ

Taboola(タブーラ)は特別買収目的会社(より一般的にはSPAC)を介して公開しようとしている最新の会社だ。

そのためにTaboolaは、イスラエルのテック企業買収資金の調達のため2020年に公開したION Acquisition Corpと合併する(Haaretzは2020年12月、TaboolaがIONと交渉中だと報じた)。取引は第2四半期に完了する予定で、合併後の会社はニューヨーク証券取引所でティッカーシンボル「TBLA」で取引される。

2007年に設立されたTaboolaはCNBC、NBC News、Business Insider、The Independent、El Mundoなどのパブリッシャー向けに9000のウェブサイトでコンテンツレコメンドウィジェット(およびそれらのウィジェットでの広告)を提供している。同社によると、1万3000以上の広告主と協力しながら、1日あたり5億1600万人のアクティブユーザーにリーチしているという。

同社は以前、競合他社のOutbrainとの合併を計画していたが、2020年秋に破談した。情報筋は、新型コロナウイルスのパンデミックの市場への影響、企業文化統合の難しさ、合併目的の規制当局への説明という問題を指摘している。

Taboolaの創業者でCEOのAdam Singolda(アダム・シンゴルダ、上の写真左)氏は、これがSPAC取引に直接つながったわけではないと筆者に語った。しかし同氏は「私はいつも公開したいと考えていました」と述べた。合併が進められている間は不可能だった。合併は中止され、フタを開けてみれば2020年がTaboolaにとって力強い年になった今となっては、時期は適切で、IONも適切なパートナーのように思える。2020年は12億ドル(約1250億円)の売上高を見込んでおり、これはトラフィック獲得コスト控除後(パブリッシャーへの支払い後)の売上高3億7500万ドル(約390億円)を含んでいる。調整後EBITDAは1億ドル(約104億円)を超えた。

「Taboolaは、壁に囲まれた庭園に挑戦するのに相応しいオープンウェブのレコメンドリーダーであると信じています」と、IONのCEOであるGilad Shany(ギラッド・シャニー)氏は声明で述べた。「私たちはイスラエルのDNAを持つ世界的なテクノロジーリーダーとの合併を模索していました。そしてTaboolaに出会いました。同社が構築した何千ものオープンウェブデジタルプロパティーとの長期的な提携、広告主へのダイレクトアクセス、グローバルでの膨大なリーチ、実績のあるAIテクノロジーの組み合わせにより、Taboolaはパートナーに大きな価値を提供します。同社は成長とともに魅力的なユニットエコノミクスを実現しています」。

この取引によりTaboolaの価値は26億ドル(約2700億)になる。同社はこの取引を通じて、Fidelity Management & Research Company、Baron Capital Group、Hedosophia、Federated Hermes Kaufmann Fundsなどが管理するファンドや口座から調達した2億8500万ドル(約290億円)のPIPEファイナンス(上場企業の私募増資)を含め、合計5億4500万ドル(約570億円)を調達する予定だ。

シンゴルダ氏は、同社が2021年に1億ドル(約104億円)を研究開発に投資する計画であり、「ブラウザーの先」へ移動することを目標にeコマースやテレビ広告などの分野にテクノロジーを拡大したいと述べた。同氏はTaboolaをもっと広く「オープンウェブを擁護する強力な公開会社」にしたいと語った。

「オープンウェブはTaboolaの見積もりによると640億ドル(6兆6600億円)の広告市場ですが、オープンウェブ用のGoogle(グーグル)はありません」と同氏はいう。

確かにGoogle自体は同様のアイデアについていろいろ発表している。シンゴルダ氏は、Googleには検索やYouTubeなど、消費者の時間と注意を巡り他のパブリッシャーと競合する消費者向け製品があるが、「Taboolaは消費者ビジネスではありません。私たちはパートナーにサービスを提供しています。そして、視聴者の成長、エンゲージメント、収益を促進するのは私たちのアイデンティティです」と主張した。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:TaboolaSPAC

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(翻訳:Mizoguchi

スマートロックのLatchが不動産企業と組んでSPACによる上場を目指す

今週、LatchがSPACの行列に加わる最新の企業になった。2014年に創業したニューヨークに拠点を億Latchは2年後にステルスを脱して、スマートロックシステムをローンチした。その後、多くの例に漏れず同社も単なるハードウェア企業を超えて、アパートオーナーのためのインターネット接続されたセキュリティソフトプラットフォームを提供し、ソフトウェアにも進出した

Latchは、ブランクチェックカンパニーであるTS Innovation Acquisitions Corp.との合併により株式公開を予定しているが、パートナーシップとしてはTishman Speyer Propertiesがこの戦略的に理に適っている。ニューヨークの商用不動産企業であるTishman Speyer Propertiesは、現在、住宅用集合住宅にのみ技術を導入しているLatchにとっては、ふさわしい相手だ。

Latchの創業者でCEOのLuke Schoenfelder(ルーク・シェーンフェルダー)氏は、取材に対して次のように語っている。「標準的なIPOでは、すべての銀行が大口の投資家を相手にしてくれます。私たちは、このプロセスの一環としてより高いレベルの戦略的パートナーシップと、より高いレベルの製品拡張の機会がここにあると感じました。このパートナーシップにより、ヨーロッパおよび商業オフィスへの進出が大幅に加速しています」。

SPACの事例はここ数カ月の間でかなり増えており、最近ではTaboolaのような例もある。Crunchbaseによると、Latchはこれまで1億5200万ドル(約157億7000万円)を調達している。同社は2020年に、堅実な成長を遂げ、このパンデミックの中でハードとソフトの二兎を追う企業としては、異例の存在となっている。

TechCrunchのAlex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)は米国時間1月25日のExtra Crunchで「ざっと計算すると、Latchの予約の売上は2019年から2020年にかけて50.5%伸びた、その間にソフトウェアの売上は37.1%増、ハードウェアは70%ほど増加した」と述べている。

「何年も前から私たちはLatchの顧客であり投資家です。私たちの顧客、つまり弊社の建物に住んでる人たちはLatchの製品を愛しています。そのため現在、私たちの住居用物件すべてにLatchを採用しています。私たちはLatchにとって、パートナーとプロダクト開発の両面でお役に立つことができるでしょう」とTishman Speyerの社長でCEOのRob Speyer(ロブ・シュパイアー)氏と語っている。

Latchには商用オフィスにも拡張していく計画があるが、これまでのところアパートが主な収入源だ。一般の戸建て住宅の鍵と競合しない点も強みとなっている。今後、Amazon(アマゾン)などと競合することになれば、ソフトウェアも扱う専門企業であることが同社の強みになる。またLatchがTishman Speyerのような不動産企業と提携している点も、同じく強みだ。

シェーンフェルダー氏によると、同社は自社技術のテストとなるような提携を目指しているという。「私たちの製品は集合住宅の分野で長い歴史がある。商用オフィスになると、利用のパターンがやや異なってきます。その違いはわかっているつもりですが、実用レベルで展開しその結果を確認することが、何よりも重要です」と同氏は語る。

この取引でLatchの評価額は15億6000万ドル(約1618億5000万円)、SPACによる買収の完了は第2四半期と予想される。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:LatchSPAC

画像クレジット:Latch

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

巨大なSPACが現われるかもしれない

多くの人が2020年は特別買収目的会社(special purpose acquisition company)の略であるSPACの年だったと見ているが、2021年から振り返れば2020年が懐かしく感じられるかもしれない。

次の質問は時期尚早ではないはずだ。SPACの買収対象として大きすぎる会社というものは存在するだろうか。

ちょうど今日(米国時間1月22日)、SPACとの合併によって株式を公開した会社としてはこれまでで最も価値の大きい会社の取引が始まった。創業35年、ミシガン州ポンティアックを拠点とするUnited Wholesale Mortgage(UWM)は、米国最大の住宅ローン会社の1つだ。

取引終了までに株価は少し下落し、取引開始時の11.54ドル(約1200円)から下げて11.35ドル(約1180円)で取引を終えたが、関係者が今夜カクテルを前に泣いているかどうかは疑わしい。今週初め、UWMが「白紙小切手」会社であるGores Holdings IVとの合併を承認されたとき、なんと160億ドル(約1兆6600億円)で評価された。

なぜこれが興味深いのか。まずUWMの規模にもかかわらず、公開まで1年もかからなかった点だ。Gores Holdings IVは2020年1月下旬にIPOを完了し、約4億2500万ドル(約440億円)の現金を調達した。

プライベートエクイティ会社Gores Groupの創業者であり億万長者のAlec Gores(アレック・ゴア)氏が取引をリードした。合併の予定は9月に発表され、最終的にはさらに5億ドル(約520億円)の私募増資も行われた(対象会社が特定され、提案された合併の条件に同意したら、取引に進むのが一般的だ。ほとんどの対象会社は合併相手である白紙小切手会社よりも何倍も大きい)。

また、UWMは成熟した企業であり、2020年の第3四半期だけで13億ドル(約1350億円)の収益を計上した。同社は1986年、CEOの父親が創業した。CEOは2020年秋、「非常に収益性が高い」と述べた。

SPACのプロセスを通じて最近公開したほとんどの会社とは異なるストーリーだ。Opendoor、Luminar Technologies、Virgin Galacticを思い出してほしい。いずれも資本を必要とするビジネスの開発途中であり、未公開市場の投資家から多くの資金を調達できなかったものと思われる。

Space XのディレクターであるSteve Jurvetson(スティーブ・ジュベッソン)氏は先週、この点をかなり率直に強調した。たとえばVirgin Galacticは公開後の「事業開発に良いところはありませんでした」と述べている。「同社は極超音速機を開発すると発表しました。しかし、それは彼らが立ち上げようとしている現在のビジネス、つまり顧客にとってまだ実現していない弾道宇宙飛行との相乗効果はありません」。

より収益性が高く、成熟しており、将来の収益への道が非常に明確な多くの企業(UMWのような多くの企業)が従来のIPOよりもSPACを選択し始めれば、SPACの候補は他に行き場がない企業という一般的な認識を変える可能性がある。

この方法での公開が適している企業とはどれほどのサイズなのか、ということについてまで考えを広げることもできるし、はるかに大きな取引につながるのかもしれない。

より確実にいえるのは、UWMが「史上最大のSPAC取引」という記録を長く保持する可能性は低いということだ。SPACに対し相変わらず熱狂的な関心が寄せられているからだけでなく、あるビークルが実際にそのタイトルを奪取する準備ができているように見えるからだ。それは億万長者投資家のWilliam Ackman(ウイリアム・アックマン)氏のSPACだ。この白紙小切手会社が2020年夏に40億ドル(約4160億円)を調達したのだ。

おそらく、取引は風変りなものになると思われる。伝えられるところによると、アックマン氏はかつてSPACでAirbnbを公開しようとした。Airbnbが提案された合併を可決したとき、同氏は非公開のメディアコングロマリットであるブルームバーグに連絡したと伝えられている(ブルームバーグはそれは真実ではないと述べている)。

SPACは通常2年以内に未公開企業との合併を完了することから、アックマン氏の計画に関して憶測が広まっている。ヘッジファンドからさらに10億ドル(約1040億円)の現金を調達する予定のアックマン氏が、調達した資金をどのピースと組み合わせるのだろうか。

ところで、過去22日間だけで67件の新しいSPACの公開があった。これは2019年の合計と同じ数だ。調達合計は192億ドル(約2兆円)。だが資金調達は終わらないようだ。

ちょうど今週、ロサンゼルスに本拠を置く創業4年のプロップテック(不動産テック)のベンチャー企業であるFifth Wall Venturesが、新しい白紙小切手会社による2億5000万ドル(約260億円)の調達計画を登録した。

以前に医療機器の巨人であるMedtronicを経営していたインテルのOmar Ishrak(オマー・イシュラック)会長は、医療技術セクターの取引を対象とした白紙小切手会社のために7億5000万~10億ドル(約780~1040億円)を調達する計画を立てていると報じられた。

Gores Groupは1月20日に、最新の白紙小切手会社のIPOで4億ドル(約420億円)を調達する計画を登録した。これは、グループとして7番目のSPACになる。

カテゴリー:その他
タグ:SPAC

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(翻訳:Mizoguchi

EV充電施設のEVgoがSPACとの合併を通じて上場へ

電気自動車(EV)向けの公共急速充電設備を所有・運営しているLS Powerの完全子会社EVgoは、特別買収目的会社(SPAC)のClimate Change Crisis Real Impact I Acquisition Corporationとの合併を通じて公開企業となることで合意した。

新しいティッカーシンボル「EVGO」で上場する合併会社の時価総額は26億ドル(約2700億円)となる見込みだ。100%自社で所有しているLS PowerとEVgoの全資本は今回の合併に合体させる。取引が第2四半期にクローズすれば、LS Powerは新合併会社の株式74%を保有することになる。

EVgoはこれまでに約5億7500万ドル(約597億円)を調達した。ここにはPIPE(プライベートエクイティによる上場企業の私募増資の引き受け)での4億ドル(約415億円)が含まれる。発表によると、投資家はPacific Investment Management Company LLC (PIMCO)、BlackRockが管理するファンドや個人、Wellington Management、Neuberger Berman Funds、Van Eck Associates Corporationなどだ。

EVgoの経営陣はそのまま残り、引き続きCathy Zoi(キャシー・ゾイ)氏が合併会社のCEOを務める。

EV関連企業がいわゆる白紙小切手会社と合併して、IPOに向けた従来の手法を回避するという動きがこのところ続いており、今回の取引は最新のものとなる。過去8カ月間でArrival、Canoo、ChargePoint、Fisker、Lordstown Motors、Proterra、The Lion Electric Companyといった企業がSPACと合併したり、あるいは合併の予定を発表した。

EVgoはEV業界新規参入者ではない。同社は2010年に創業され、過去10年のほとんどをインフラの拡大に費やしてきた。今日では同社は34州にまたがる67主要都市マーケットの800カ所超にチャージャーを展開している。同社はチャージャーを設置するのにAlbertsons、Kroger、Wawaなどを含め数多くの提携を結んでいる。

EVgoはまたGMや日産といった自動車メーカー、配車サービスのLyftやUberなどとも提携している。2020年7月にGMとEVgoは向こう5年で2700基超の急速充電を新設する計画を発表した。

現在走行している乗用車、トラック、SUVにEVが占める割合はまだ小さい一方で、自動車業界はEVマーケットが2019年から2040年にかけて100倍超に拡大すると予想している、とEVgoは述べた。同社によると、公開市場で調達する資金は事業拡大を加速させるのに使われる。

「わずか数年前、EVはニッチなものととらえられていました」とEVgoのCEOであるゾイ氏は声明文で述べた。「今日では改良されたテクノロジー、低コスト、豊富な選択肢、EVパフォーマンス評価の向上によって、選択できる車両テクノロジーになりつつあります。そのため急速充電の需要は高まっています」。

米国人の30%が自宅で充電できないと推測され、EVに切り替える車両の増加と併せて、そうした需要に応えるために公共の充電施設は必要不可欠なものになると、とゾイ氏は述べた。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:EVgo電気自動車充電ステーションSPAC

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