外科医の技をVRで磨くOsso VRが手術室チーム訓練をマルチプレイヤーゲーム化するため約30億円調達

パンデミックの際、VRは究極のオフィス代替テレプレゼンスマシンにはならなかった。そうしようとする努力が不足していたわけではない。しかし、VRを使った従業員トレーニングに力を入れているスタートアップの一部は、2020年、さまざまな業界の専門家がリモート環境から組織的な知識にアクセスする必要に迫られたことで、新たな評価を得た。

サンフランシスコを拠点とし、医療トレーニングに特化した仮想現実のスタートアップであるOsso VRは、パンデミックの間、Johnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、Stryker、Smith & Nephewなどの医療機器の大企業各社とのパートナーシップを強化したことで、投資家の注目を集めた。Osso VRがTechCrunchに語ったところによると、最近同社は、GSR Venturesが主導し、SignalFire、Kaiser Permanente Ventures、Anorak Venturesなどが参加したシリーズBで、2700万ドル(約30億円)の資金を調達したという。

創業者兼CEOのJustin Barad(ジャスティン・バラッド)博士はTechCrunchに、パンデミックによって顧客が同社のプラットフォームに新たな需要を見出したことで「非常に強いレベルの緊急性が生まれた」と語った。

Osso VRは、VRをベースにしたソリューションで、現代の外科手術のあり方を変えようとしている。このソリューションにより外科医は、腕を伸ばせるだけのスペースがあればどこにいても、新しい医療機器を3D空間で操作し、デジタルの解剖用死体に対して何度も手術を「行う」ことができる。Ossoの取り組みは、特に医療機器企業の顧客にとって有益なものだ。顧客はこのプラットフォームを利用して自社のソリューションに精通することができ、外科医はそれらを移植する経験を積める。

Ossoの大きな目標の1つは、ビデオゲームのマルチプレイヤー機能を仮想手術室に導入することだ。これにより、外科医と医療助手がリアルタイムで協力し合い、自分の担当する部分を把握するだけでなく、手術全体の中でどのように位置づけられるかを把握できるようになる。

「(手術は)オーケストラのようなもので、それぞれが異なる役割を担っているのと同時に、お互いにコミュニケーションをとる必要があります」とバラッド博士はいう。

バラッド博士は、これはVRの空間的な広がりを必要とするプロセスであり、それに加えて指導は常にテキストやビデオによって補完されると語った。

同氏は、スタートアップの目標を「明確に良いもの」と呼んでいる。そのおかげか、同社のチームは約100人の従業員を抱えるまでに成長し、その中には世界最大の医療イラストレーターチームも含まれている。このチームのおかげで、プラットフォームのコンテンツは、10の専門分野にわたる100以上のモジュールにまで拡大した。

近年、VR関連企業は、消費者や企業への普及がこの技術に対する初期の野心に比べて遅れているため、投資家の注目を集めるのに苦労している。その代わりに投資家は、ゲームやコンピュータビジョンなど、頭に装着する特殊なハードウェアを必要としない隣接技術への投資に注目している。Osso VRのプラットフォームは、Facebook(フェイスブック)のOculus for Businessプログラムを通して提供されるOculus Quest 2ヘッドセットで動作する。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

「Google マップ」の屋内ARナビ「インドア ライブビュー」が東京駅や渋谷駅などJR東日本の主要駅で提供開始

「Google マップ」の屋内ARナビ「インドアライブビュー」が東京駅や渋谷駅などJR東日本の主要駅で提供開始

Google

「Google マップ」での屋内ARナビゲーション「インドア ライブビュー」が東京駅や渋谷駅など、JR東日本の主要駅で提供が開始されました。

この機能は、5月のGoogle I/Oで発表されていた機能。ARを利用したライブビューは、周囲の風景をカメラで認識し、そこに画像を重ねることで目的地までのナビゲーションを行うというもの。地図ではなく、実際の風景の中に進む方向が示されるので、地下鉄の出口から出た際など、地図上で自分の向いている方向が分からないといった場合にも便利な機能です。

インドアライブビューは、この機能を建物内でも利用可能にするもの。建物内であっても正確な位置や高度を判別でき、空港や駅での乗り換え、ショッピングモールなど、これまでナビゲーションが難しかった屋内施設でもスムーズなナビゲーションが行えるとしています。確かに、内部が複雑な巨大ターミナル駅などでは、乗換ホームを探すのに苦労することもなくなるかもしれません。

現在、JR東日本の駅では、東京駅、新宿駅、渋谷駅、品川駅、上野駅、池袋駅、新橋駅、秋葉原駅、高田馬場駅、五反田駅、恵比寿駅、日暮里駅、中野駅、北千住駅、立川駅、大宮駅、浦和駅で利用でき、今後も順次拡大予定とのことです。

(Source:GoogleEngadget日本版より転載)

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ARと3Dモデルを使えば知識の共有もスムーズ、無料アプリも提供するJigSpaceが約5.2億円調達

元アートディレクターのZac Duff(ザック・ダフ)氏は、2015年にゲーム開発コースをオンラインで教え始めたが、新型コロナウイルスの影響によるロックダウンが起きた後、世界中の教師が経験したのと同じ困難に直面した。そこでダフ氏は、自分の3Dデザインの経験を活かして、バーチャルリアリティの教室を構築し、生徒たちがリモート学習をもっと魅力的に感じられるようにした。この学校では、Zoom(ズーム)で講義を受ける代わりに、生徒たちはVRヘッドセットを装着して、ダフ氏が作った古代ギリシャ風の教室に移動する。

とはいえ、このような学習モデルを容易に普及させることはできないことも、ダフ氏にはわかっていた。ほとんどの学校にはVRヘッドセットの準備がないし、ほとんどの教師は10年を超えるゲームデザインの経験を持っていないため、緑の野原に蝶が舞う教室を(ダフ氏のように)作ることはできないからだ。しかし同氏は、誰もが3Dプレゼンテーションを作成し、ARで情報を共有できる、ユーザーフレンドリーなプログラムに可能性があると感じた。

「その中心にあるのは、知識の伝達です。ある人が別の人に知識を本当に効果的な方法で伝えることです」と、ダフ氏はTechCrunchに語った。同氏は、一般的なユーザーでもアイデアを伝えるためのプレゼンテーションやグラフィックを簡単に作成できる、Microsoft Powerpoint(マイクロソフト・パワーポイント)やCanva(キャンバ)のような製品に言及した。「2Dではそういったシステムがありますが、3Dではそれがありませんでした。何かを作るためには、本当に複雑で高価な技術的プロセスを経なければなりません。それが私の心に引っかかっていました」。

画像クレジット:JigSpace

それからすぐに、ダフ氏は金曜日に仕事を休んで、3Dにおける知識共有の標準を確立するための会社となるJigSpace(ジグスペース)の概要をまとめ上げた。2017年にローンチした同社のプラットフォームは、現在400万人以上のユーザーを抱え、App Store(アップ・ストア)における平均評価は4.8。JigSpaceのアプリをダウンロードすると、水漏れしたシンクを修理する方法や、乾いた壁の補修方法、あるいはLego(レゴ)Star Wars(スターウォーズ)の宇宙船の作り方などを示す3Dモデル(Jigと呼ばれる)に、ARで触れることができる。また、ピアノの構造や人間の目の仕組み、新型コロナウイルスの感染経路などを教える教育用モデルもある。JigSpaceの潜在的な使用例は多岐にわたる。ダフ氏はメーカーと協力し、自社製品のJigを作ってもらいたいと考えている。そうすれば、例えばエアコンのフィルターを交換する際に、説明書に載っている白黒の2次元の図面ではなく、3次元のモデルをARで見ることができるようになるというわけだ。

JigSpaceは米国時間6月30日、シリーズAラウンドで470万ドル(約5億2000万円)の資金を調達したと発表した。この投資ラウンドはRampersand(ランパーサンド)が主導し、Investible(インベスティブル)の他、Vulpes(ウルペス)、Roger Allen AM(ロジャー・アレンAM)などの新たな投資家も参加した。

JigSpaceのアプリは無料で利用でき、誰でも3Dモデル化されたオブジェクトのプリセットやテンプレートを組み合わせて独自のJigを作成することができる。技術的な知識を持った人なら、無料版でも30MBまでのファイルをアップロードして、よりカスタマイズされたJigを作ることもできる。しかし、Jigspaceの収益源は、商業ビジネスや製造会社向けに設計された「Jig Pro(ジグ・プロ)」プラットフォームだ。Jig Proの個人向けサブスクリプションは月額49ドル(約5450円)だが、企業向けの価格はオンラインに記載されていない。

画像クレジット:JigSpace

「当社にとって最適な分野は耐久消費財の製造業です。なぜなら、ほとんどの製造業の製品にはCADファイルがあり、3Dデータがすでに存在しているからです」と、ダフ氏はいう。「当社はそれらの企業と協力することで、製品の構造を示す素材を製作するためのツールを企業に提供することができます」。

JigSpaceはPro版を発表した直後、Apple(アップル)のiPhone 12発表イベントで取り上げられ、iPhone 12のLiDARスキャナーと5G機能を使って製造業の時間とコストを削減する方法の実例を示した。また、JigSpaceはSnapchat(スナップチャット)とも提携し、キッチン用品をスキャンすると、電子レンジやコーヒーメーカーなどがどのように動くかを示す3Dイメージ(Jig)が表示されるレンズを作成した。

Jig Proの顧客数は、2020年半ばの発売以来、毎月40%ずつ増加しており、平均的なユーザーは1日1回以上アプリにログインしているという。Verizon(ベライゾン)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Medtronic(メドトロニック)などの企業は、JigSpaceを使って3Dモデルを開発し、関係者や顧客、遠隔地の従業員に提示する方法として活用している。アップルのCapture(キャプチャ)のような製品が出てくれば、自分の3DモデルをJigSpaceに取り込むことがさらに容易になるだろう。

商業的な可能性を秘めているにもかかわらず、JigSpaceは手軽にARを通して学べるように、無料版を維持している。これはダフ氏にとって重要なことであるという。

「私たちは、トップ技術者だけでなく、情報を共有したいと思っているすべての人々に、確実にサービスを提供できるようにしたいのです」と、ダフ氏はいう。「共同設立者のNuma Bertron(ヌマ・ベルトロン)と私は、最初から無料版を提供したいと考えていました。知識は可能な限り最善の方法で人々がアクセスできるようにすべきであり、そうすべきでない理由はありません」。

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画像クレジット:JigSpace

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ARメイクアプリ「YouCam メイク」がGoogleとタッグ、検索結果ページで40以上のブランドのメイク体験が可能に

ARメイクアプリ「YouCam メイク」(Android版iOS版)など手がけるPerfect Corp(パーフェクト)は6月29日、Google開催の「Marketing Livestream 2021 Conference」において、Googleとのパートナーシップにより検索結果ページ上にバーチャルメイク体験機能が導入されたと発表した。米国で開始し、日本国内では順次対応予定。

同機能はGoogleの検索結果ページに埋め込まれており、ユーザーはその場で自分のデバイスのインカメラを起動し顔を撮影することで、すぐにバーチャルで気になる製品の色味などを試せる。また、肌のトーンが異なる既存モデル画像を利用することで、様々な肌で商品の色味がどのような発色となるか確認することも可能だ。

また現在、同サービスはEstee Lauder、MAC Cosmetics、Charlotte Tilbury、Black Opalなどを含む40以上の化粧品ブランドのリップとアイシャドー製品に対応しており、順次対応商品カテゴリーを拡充する予定。

Perfect Corpは現在、台湾(本社)、日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国、インドに拠点を構え、YouCam メイクを筆頭に、累計9億ダウンロードを超えるビューティーアプリシリーズを開発。さらに、コスメブランドや小売店向けに高度な顔認証技術とAI技術を利用して開発したバーチャル メイクアップサービスを提供している。現在、300以上のコスメブランドをパートナーとして迎え、10万を超えるコスメ商品を60カ国以上で展開しているという。

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ゲーミングチャットアプリのDiscordがARスタートアップUbiquity6を買収

投資家から数千万ドル(数十億円)も調達し、2021年初めに実質的な方向転換を図った後、拡張現実(AR)のスタートアップUbiquity6とそのチームはゲーミングチャットアプリのDiscordに買収された。

野心的なUbiquity6はBenchmark、First Round、Kleiner Perkins、そしてARコンテンツをホストする消費者向けプラットフォームを構築するというビジョンに賭けていたGoogleのGradient Venturesなど一流の投資家からこれまでに3750万ドル(約41億円)を調達した。公開された直近の資金調達は2700万ドル(約30億円)を獲得した2018年10月のシリーズBだった。

Discordによる買収の条件は明らかにされなかった。しかしここ数カ月、Ubiquity6は構築に最初の数年を費やしたプロダクトの大半を放棄していたようで、これは同社が幅広いオーディエンスを見つけるのに苦労していたことをうかがわせる。

2017年創業のUbiquity6は携帯電話ユーザーがARコンテンツをブラウズするのに中心的な方法になるアプリの構築を描いていた。2019年後半に同社は、3Dスキャニングの物理的環境のプロセスをスマホのカメラでゲーム化することを目指すDisplaylandというプロダクトを立ち上げた

大衆に受け入れられるようにするという同社の取り組みは、AppleやGoogleなどを含むテック大手がかなり投資してきたにもかかわらずここ数年勢いを得るのにほぼ失敗していたモバイルARマーケットによって妨げられた。

2020年初め、CEOのAnjney Midha(アンジニー・ミドハ)氏はUbiquity6が従業員65人を雇用している、とTechCrunch に語った。

ここ数カ月でUbiquity6はかなり抜本的な方向転換を実行した。ユーザーがシンプルなオンラインパーティゲームをリモートで一緒に遊ぶことができるデスクトッププラットフォームを構築することを選び、ARを完全に捨てたのだ。Backyardというベータプラットフォームは米国がパンデミックから立ち直るにつれてなくなりつつあるパンデミック時代の習慣のためにデザインされていた。

買収を発表するMediumへの投稿の中で、ミドハ氏はUbiquity6のARテクノロジーがDiscordの中で生き続けるとの期待を控えめに述べた。

「Ubiquity6での我々のミッションは常に、人々が共有体験を通じてつながる新しい方法を見つけることでした」とミドハ氏は書いた。「Discordに加わることで我々はそのミッションを加速させることができます。Ubiquity6のチーム、プロダクトのBackyard、そしてマルチプレイヤーテクノロジーはDiscordに統合されます」。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

わずか8分でストレスを軽減できるTrippのサイケデリックVR瞑想アプリ

消費者のウェルビーイングやマインドフルネスを支援するモバイルアプリを投資家に売り込むスタートアップ企業が増えているが、中にはユーザーが周囲の世界から完全に切り離されるような、より没入感のある方法を模索しているスタートアップもある。

Tripp(トリップ)は、没入型のリラクゼーションエクササイズを開発している企業だ。それはガイド付き瞑想アプリで体験できるような種類のものと、より自由な形の体験を融合させることを目指したもので、ユーザーはVRヘッドセットの中で、フラクタル図形や光る木、惑星が目の前を通り過ぎるのを見ながら、日常から離れて自分の思考を探求することができる。

その社名が示すように、このスタートアップ企業は、幻覚剤を使わずに、サイケデリックトリップの際に感じるものを模倣した視覚と聴覚の体験を作り出そうとしている。

「幻覚剤を摂取することに抵抗を感じる多くの人にとって、これはより穏便な方法でサイケデリック体験の一部を提供できる、摩擦の少ない代替手段です」と、同社のNanea Reeves(ナネア・リーブス)CEOはTechCrunchに語った。「このアイデアは、マインドフルネスとビデオゲームの仕組みを組み合わせることで、人々の感覚を実際にハックできないかと発想したものです」。

Trippによると、同社はVine Ventures(ヴァイン・ベンチャーズ)とMayfield(メイフィールド)が主導し、Integrated(インテグレーテッド)などが参加した投資ラウンドで、1100万ドル(約12億2000万円)の資金調達を完了したという。これで同社が調達した資金の総額は1500万ドル(約16億6000万円)となった。

画像クレジット:Tripp

近年、VR関連のスタートアップ企業の多くは、投資家の熱い支持を得ることに苦労している。主なテックプラットフォームが次々とバーチャルリアリティへの取り組みを終了させ、今やFacebook(フェイスブック)とソニーだけがその分野の提供者として残ったが、彼らも依然として収益化に苦心している。その一方で、多くのVRスタートアップ企業が取り組みを続けているものの、5年前にこの分野の企業を支援していた多くの投資家は、より幅広い用途が期待できるコンピュータビジョンやゲームのスタートアップ企業に目を向けている。

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リーブズ氏によると、新型コロナウイルスの影響から、人々のマインドフルネスやメンタルヘルスに対する意識が高まったため、投資家もこの分野のプロジェクトを積極的に支援するようになったという。

Trippは、Oculus(オキュラス)とPlayStation VR(プレイステーションVR)の両方のストアにアプリを配信しており、月額4.99ドル(約550円)のサブスクリプションという形で利用できる。

同社はさまざまなガイド付き体験を提供しているが、ユーザーは「Tripp composer」を使って独自のビジュアルフローを構築することもできる。

カスタマイズだけでなく、Trippの大きな売りの1つは、消費者により深く、より早く瞑想体験を提供することであり、ユーザーはヘッドセットを装着してから8分という短い時間で、ストレスを軽減できると同社は主張する。

Trippはこのプラットフォームを、企業のオフィスでウェルネスソリューションとして活用することも検討している。現在はこのソフトウェアプラットフォームの治療器としての有効性を研究するため、臨床試験を行っているところだ。

同社によると、このアプリでは、これまでのべ200万回以上のセッションが、ユーザーによって行われたという。

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画像クレジット:Tripp

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブックのVR広告参入は前途多難

Facebook(フェイスブック)によるOculus(オキュラス)のVRプラットフォームに広告を持ち込もうとしている数十億ドル(数千億円)を費やした取り組みは、幸先の良いスタートを切ったとは言えないようだ。

先週同社は、多作で知られるVRゲームデベロッパーであるResolution Games(レゾリューション・ゲームズ)のタイトル「Blaston」に初のゲーム内広告を展開する予定だった。そのわずか数日後、ユーザーから多くの苦情を受けたゲーム会社は、広告の導入を中止したことを公表した。

「プレイヤーのフィードバックを聞いた結果、Balstonはこの種の広告テストに最適ではないと気づきました」とBlastonアカウントのツイートに書かれている。「このためテストの計画を中止しました。みなさんがアリーナにやってきて、本日公開されたCrackdown Updateをプレイしてくれることを楽しみにしています」。

この広告計画で特に注目すべきなのは、サードパーティー製ゲームの中でテストしようとしていることだ。Facebookはここ数カ月間にいくつものVRゲーム会社を買収し、最も人気のあるQuest(クエスト)のタイトルを複数所有しているため、サードパーティーパートナーと一緒に広告を導入することで、これをFacebook自身ではなく、他のデベロッパーのための収益化手段を切り開く機会にすることが期待できる。

先週の発表は、Facebookが広告とユーザープライバシーのバランスに悪戦苦闘していることを喜んでいないVRコミュニティから多くの批判を浴びたが、他のユーザーがもっと気にしたのは、購入済みの有料タイトルの中に広告が出てくることだろう。BlastonはOculusストアで9.99ドル(日本では税込990円)で販売されている。

【更新】Resolution GamesはTechCrunch宛の声明で、同社の無料アプリ内で広告テストを行う可能性を示唆した。「私たちはBlastonがこのタイプの広告テストに最適でないと気づいたたことをまず申し上げておきます。代わりに、この小規模な一時的テストを当社の無料ゲームである『Bait!』で将来行う可能性を検討しています」。

Resolution Gamesが開始もしないうちにテストを断念したことは、FacebookのVR広告への取り組みにとって早期の挫折であり、Oculusプラットフォームで声の大きいユーザーが未だにFacebookに対して懐疑的であることを浮き彫りにしている。Facebookは先週のブログ記事で、VRで広告を掲載するためにどのユーザーデータが使われるのかという懸念を払拭しようと、ヘッドセットのマイクロフォンで録画された会話も内蔵トラッキングカメラが分析した画像も広告に使用されないことを明記した。

2020年Facebookは、ヘッドセットのユーザーがデバイスをアクティベートするためにFacebookアカウントが必要になることを公表した際、VRファンからかなりの反発を買った。その後も批判は続いているものの、先に発売された299ドル(日本では税込3万7180円〜)のヘッドセットOculus Quest 2は、これまでFacebookが販売したVR機器すべてを合わせたよりも多くすでに売れている。

TechCrunchはFacebookにコメントを求めている。

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画像クレジット:Facebook

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ついにフェイスブックがOculusでVRアプリ内広告の導入テスト開始

これはまあ、時間の問題だった。

広告業界の巨人Facebook(フェイスブック)は米国時間6月16日、Oculusプラットフォーム上のバーチャルリアリティ(VR)タイトルの中に広告を掲載するテストを近日中に開始すると発表した。最初の展開はかなり限定的で、Facebookが広告をテストするのは、Resolution Gamesのシューティングゲーム「Blaston」1本からとなる。Oculus Studioタイトルとの統合は避けられないと思われるが、興味深いことに、当初ファーストパーティタイトルではこのテストは行われない。

「今のところ、これはいくつかのアプリでのテストになります。このテストの結果を見て、開発者やコミュニティからのフィードバックを取り入れた後、OculusプラットフォームやOculusモバイルアプリで広告がより広く利用できるようになる時期について、さらに詳細な情報を提供します」と同社ブログには書かれている。

ユーザーは、広告をミュートまたは非表示にしたり、現在の形で広告が表示されている理由についての情報を見ることができる。

Facebookが長い間、現在の収益を度外視して投資してきたプラットフォームにとって、これは驚くべき展開ではない。とはいえ、同社はプライバシーに関する質問がたくさん出てくることを認識しており、いくつかの質問に正面から取り組んでいる。最大の告白は、FacebookがOculusヘッドセットにローカルに保存されているデータ(デバイスのカメラからの画像を含む)を広告のターゲティングに使用することはないとしていることだ。また、あまり強調していないが「動きデータを広告のターゲティングに使用する計画はない」とも述べている。

Facebookは、そうした報道がなされる前に、スマートフォンのマイクを使って会話を監視したり、広告のターゲットを絞るのに使うことはないと宣言するブログ記事を何年も前に発表すべきだったとようやく気づいたようだ(主に、アドテックデータパートナーを通じてより優れた個人情報にアクセスできるからだが、それは本題ではない)。Facebookは、ヘッドセット上の音声会話を広告のターゲティングにしないことを明記している。

これまでVRはFacebookにとって、未来を見据えた取り組みだった。今回の動きは、ある種の採用の山を乗り越え、より積極的にマネタイズを開始する時期が近づいていると同社が考えていることを示すものだ。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

これで誰でもディズニープリンセス、ARアプリへの捧げ物はあなたの生体情報!?

先週末、あなたのお友達は、次々とみんなをピクサーのアニメーションキャラクターに変身しましたとさ。これは熱にうなされて見た夢ではなく、あなただけに起こったわけでもない。

Snapchatは米国時間6月10日、ARを使ってあなたを「アナ雪」のサブキャラクターのように見せる「Cartoon 3D Style Lens」をリリースした。Snapchat(スナップチャット)では、2億1500万人以上のユーザーが「Cartoon 3D」レンズを利用し、17億回以上再生されている。TikTok(ティックトック)独自のARアニメーション効果はSnapchatほど説得力があるわけではないが、人々はTikTokを利用して、自分がディズニープリンセスになっている動画を共有している。プリンセスになったのだから、当然の流れだ。

ディズニー風のARトレンドがバイラルに広まったのは今回が初めてではない。2020年8月、Snapchatの新規インストール数は2850万で、4120万だった2019年5月以来のヒット月となった。2020年8月初旬にSnapchatが「Cartoon Face」レンズをリリースし、ペットを「Disneyfy(ディズニーキャラ化)」するのにそれを使えるとユーザーが気づいたのは偶然の一致ではないかもしれない。TikTokでは「#disneydog」というタグがプラットフォーム間で4090万回再生された。その後Snapchatは同年12月に「Cartoon」レンズをリリースすることで、再びバイラルの金を掘り当てた。このレンズでは、以前よりも人間の顔がよりリアルに表現されるようになった。

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Sensor Towerによると、Snapchatの世界的なインストール数は2020年の残りの期間を通じて前月比で上昇し続けていたが、12月にはインストール数がわずかに減少した。それでも、同月のSnapchatのダウンロード数は3600万だった。現在、最新の「Cartoon Style 3D」レンズが再びバイラルになった後、SnapchatはApp Storeの無料アプリチャートで6位となった(TikTokは2位)。しかし、2021年5月のSnapchatのダウンロード数は3200万で、4月の3400万から減少している。一方、TikTokの2021年5月のインストール数は8030万で、4月の5930万から増加している。

画像クレジット:Snapchat(TechCrunchによるスクリーンショット)

しかし1位の枠には、先週末のアニメの爆発的ヒットにも影響を与えた新しいアプリがある。
2021年3月にリリースされた「Voilà AI Artist」は、私たちをアニメバージョンに変えるこれまた別のプラットフォームだ。SnapchatやTikTokのARを使ったエフェクトとは異なり、Voilàはフォトエディターだ。ユーザーはセルフィーをアップロードし、広告(広告なしバージョンは週3ドル、約330円)を見た後、自分がアニメの登場人物になったような姿を見られる。

「Voilà AI Artist」は、2021年3月には世界で400回しかダウンロードされなかった。それが5月には100万ダウンロードを突破し、今月の最初の2週間だけで1050万回以上ダウンロードされているとのこと。

ここでもまた「Disneyfy」トレンドで繰り返されたイテレーションと同様、Voilàのようなアプリは新しいものではない。2019年に流行した「FaceApp」は、自分が年老いて白髪やシワになったときの姿を人々に見せるものだった。同アプリは、AIでセルフィーを編集するためにユーザーの写真をクラウドにアップロードしていたため、プライバシー論争の中心となった。FaceAppは「パフォーマンスとトラフィック上の理由」から「更新された写真をクラウドに保存することがある」が「ほとんどの画像」は「48時間以内」に削除されると声明を出した。しかし、これらの曖昧な表現は私たちの頭の中で警鐘を鳴らし、60年後の自分の姿を見ることの裏にひょっとしたら悪意が潜んでいるのでは、と考えさせられた。その2年前にFaceAppは、ユーザーの肌の色を明るくする「hotness」フィルターを発表し、人種差別的なAIを使用したことを謝罪した。カナダのWemagine.AI LLPが所有するVoilàも、そのAIがヨーロッパ中心主義であると批判されている。これらのアプリは人気が高まるにつれ、私たちの文化が持つ最も有害な類のバイアスを支持することにもなりかねない。

画像クレジット:Voilà

FaceAppと同様、Voilàもインターネットへの接続を必要とする。また、Voilàの規約では、ユーザーはVoilàに対して「アップロードされたコンテンツおよび生成されたコンテンツをホスト、保存、任意の方法で使用、表示、複製、変更、適応、編集、公開、配布するための、非独占的、世界的、ロイヤリティフリー、サブライセンス可能、および譲渡可能なライセンス」を付与することになっている。基本的には、あなたが画像をプラットフォームにアップロードした場合、Voilàはその画像を使用する権利を得るが、所有権はないということだ。このようなアプリでは、珍しいことではない。例えば私たちがInstagram(インスタグラム)に写真をアップロードすると、その画像を使用する権利を同社に与えることになる。

それでも、Voilàのようなアプリは、私たちはかわいいディズニープリンセスになれるという知識と引き換えに、いったい何を放棄しているのか考えさせてくれるのでそれは良いことだと思う。2021年6月初め、TikTokは米国でのプライバシーポリシーを更新し、同アプリがユーザーのコンテンツから「バイオメトリック識別子および生体情報を収集することがある」と規定した。これには「faceprints and voiceprints(顔の記録と声紋)」が含まれているが、TikTokはこれらの用語を定義していない。TechCrunchはTiktokにコメントを求めたが、なぜ今になってバイオメトリックデータの自動収集を可能にするように規約が変更されたのかは確認できなかった。バイオメトリックデータとは私たちを識別する身体の特徴、測定値、特性を指し、それには指紋も含まれる。

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VoilàがApp StoreでNo.1の座に上り詰めたとき、SnapchatがピクサーにインスパイアされたARレンズを再発表したのも不思議ではない。Facebook(フェイスブック)のARプラットフォーム「Spark(スパーク)」も新機能を搭載し、先週のWWDCではApple(アップル)がARソフトウェア「RealityKit」の大幅なアップデートを発表した。しかし、これらのトレンドは、私たちがディズニーを懐かしんでいるというよりも、顔を変えるARに慣れてきていることを示している。

【更新】米国時間6月14日東部標準時午後3時40分にSnapchatの「Cartoon 3D」レンズの使用統計を追加した。

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Aya Nakazato)

ライオンが美白ハミガキによる白い歯を疑似体験できるTikTokの「ブランドエフェクト」を公開

ライオンが美白ハミガキによる白い歯を疑似体験できるTikTokの「ブランドエフェクト」を公開

TikTok for Business(ティックトック・フォー・ビジネス)とライオンは6月14日、2021年3月に発売した美白ハミガキ「Lightee」(ライティー)のPR施策として「明るく白い歯」を疑似体験できるオリジナルのブランドエフェクト(Branded Effect)を共同開発し、6月13日よりハッシュタグチャレンジ「#顔の印象は歯で変わる」を開始したと発表した

TikTokのブランドエフェクトとは、2D・3D・ARなど様々なクリエイティブコンテンツにより、ブランドの世界観や商品の機能性を「体感的」に提供するというデジタルブランド体験機能。ライオンの場合は、「歯の色が明るいことが顔の印象まで明るく見せる」という同社の調査データに着目し開発したものという。「顔の印象は変わるのよ、歯で」という台詞をきっかけに、歯が白く、肌のトーンも明るくなり、「可愛く盛られた」自分の姿を確認できる。

ライオン エクスペリエンスデザイン 西岡勢奈氏は、「ご自身でも実際に『歯が白く明るいと、顔の印象も明るく見える』ということを体感いただくとともに、『Lightee』の認知を獲得することを目的に、オリジナルエフェクトの開発および、#チャレンジを実施させていただきました。オリジナルエフェクトの中では、CMにご出演いただいている中村アンさんのセリフに合わせて、印象が実際に変わることを疑似体験いただけます。ぜひ、エフェクトを通して印象がどれだけ変わるのかお試しいただき、実際にLighteeも使って頂けたら嬉しいです」と話している。

@kaneko_miyuこの美白*ハミガキ「ライティー」のエフェクトめちゃくちゃ白くなるwみんなも試してみて!#顔の印象は歯で変わる #PR *歯本来の白さへ

♬ #顔の印象は歯で変わる – Lightee(ライティー)

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カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:SNS / ソーシャル・ネットワーキング・サービス(用語)TikTok(製品・サービス)VFX / ビジュアルエフェクト(用語)美容(用語)ライオン(企業)日本(国・地域)

FacebookがPopulation: OneのゲームスタジオBigBox VRを買収

近年、仮想現実のゲームスタジを数社買収してきたFacebookが、金曜日(米国時間6/11)にシアトルのBigBox VRを買収してポートフォリオにまた一社を加えた。

このスタジオの主力タイトル「Population: One」は、FacebookのOculus Quest 2ヘッドセットのローンチ後のビッグリリースのひとつで、かなりモロにFortniteクローンだ。ゲームプレイの重要なテクニックの多くをコピーしているが、仮想現実向けに調整されており、また裏技やアートは独自化している。

これまでもそうだが、このようなゲームスタジオの買収は価額などの条件が公表されていない。CrunchbaseによるとBigBoxは650万ドルを調達しており、その投資家はShasta VenturesやOutpost Capital、Pioneer Square Labs、およびGSR Venturesなどだ。

FacebookのMike Verdu氏がブログにこう書いている: 「POP: ONEはわずか9か月前にVRシーンを席巻し、Oculusのプラットホームで上位に定着した。最大で一度に24名が接続して、仮想世界の中でプレーし争っている」。

ゲームのハードウェアプラットホームのオーナーが自分のスタジオのネットワークを作り、専用プラットホームを構築することは珍しくないが、VRの世界では、Facebookと競合する者もあまりいないので、やや状況は異なる。

Oculus Studiosのデベロッパーの多くがValveのStreamストア向けにゲームを作り続けており、それらはサードパーティのヘッドセットとでプレイできるが、Facebook以外のVRプラットホームというものがVR市場全体の中で先細りであり、しかも大衆化を狙ったFacebookの積極作戦と違って高価格だから、将来が難しいだろう。FacebookのOculus Quest 2は小売価格が299ドルで、これまでの、デバイスとのセット販売は数か月で売り切れた。

4月にFacebookは、VRシューティングゲーム「Onward」のDownpour Interactiveを買収した。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: BigBox VR

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iOSアプリ開発者に訊く:LiDARで空間を演出するアプリ「Effectron」 (アフェクション)

iOSアプリ開発者に訊く:LiDARで空間を演出するEffectron (アフェクション)

AFFEXION

アップルの世界開発者会議 WWDC 2021 を前に、iOS開発者にアプリを巡るストーリーやWWDCへの期待について訊きました。

今回お話をうかがったのは、iPhone 12 Pro や iPad Pro のLiDARセンサを使い、カメラ映像にリアルタイムのARエフェクトをかけるアプリ Effectron の開発元、株式会社アフェクション(Affexion)。

Effectron はカメラを向けた方向の奥行きや三次元形状を取得できる LiDAR センサをエンタテインメントに活用した最初のアプリのひとつで、2020年8月に iPad Pro 版、10月に iPhone 12 Pro 対応をリリースしています。

リアルタイムARエフェクトのアプリは以前からありましたが、Effectron はLiDARで三次元認識した床や壁に光るグリッドを引いて古典的な「サイバースペース」風に変えるといったインパクトのある映像で、搭載されたばかりのLiDARセンサの機能を示すアプリとして話題になりました。

開発元の株式会社アフェクションは、群馬県高崎市に本社を構える社員10名の企業。WebからVR・ARまでデジタルコンテンツ制作を手掛けます。アフェクションの閑 代表と、同社 CG motion 開発室 室長の金井氏にお話をうかがいました。

──Effectron はアフェクションがリリースした最初のアプリだそうですが、そもそもどういった経緯でアプリをリリースすることになったのでしょうか

閑代表:「弊社は2007年にウェブ制作からスタートしました。デザインを基点に広告やウェブ制作を手掛けておりましたが、2年ほど前から社として第二、第三の柱をどうしようか、という話になりまして」

どういったアプリが良いか?を社内で50案ほど考えたなかで、金井氏からこのLiDAR技術を使ってみたいと提案があり、Effectronにつながったとのこと。

金井氏:「提案にはマーケティング的な面と、ビジュアル的なことをやりたかったという2点があります。マーケティングとしては、これまでアプリを出したことがない会社だったので、まず使ってもらう取っ掛かりが欲しかった。新しくLiDARを搭載したiPad Proが出たところで、新機能をアプリで使い新規性を出せればと考えました」

・もう一点は、前職で建築用の測定機器で取得した点群データを見て、これをビジュアル表現やエンタメに使えたら面白いなとは考えていたこと。ミュージックビデオなどでも使われていて、インスピレーションを受けた面もある。

・LiDARセンサは高価で、以前ならば手が出なかったが、WWDCでiPad Proに搭載されたことを知り、世界中のユーザーが身近な環境で使えれば面白いだろうと制作を決めた。

──WWDCで発表を見て一番乗りを狙ったとのことですが、結果的に一番になれましたか?

金井氏:「一番乗りくらい、ですね。LiDARを使ったアプリは他にもあるにはあったのですが、機能が限定的だったり。メッシュを取得して描画するエンタメ系アプリという意味では、確認する限り初めてだったと思います」

──他の開発者もLiDARアプリを一斉に作る中で、エンタメ系で一番乗りになれた理由はどのあたりだったんでしょう

金井氏:「意外とスキャンニングのアプリは出ていたので、アプリ開発者的には実用アプリのほうが安牌だったというか。LiDARに興味を持っていたのがもともと建築系などの層だったので、エンタメに使ったアプリは初期には意外とあんまりでなかったな、という感じです」

──狙いが良かった、ということですね。スケジュール的にはどうでしたか。

金井氏:「7月から開発をはじめて、たしか8月にはリリースしました。スケジュールを間に合わせるため心がけたのは、必要な機能に絞ること。機能を増やしすぎると覚えるのが大変といった面もありますので、できるかぎりシンプルに、背景のメッシュのエフェクト切り替えと、人物のエフェクト切り替えという二点だけに絞って。あとは録画とSNS共有くらいはつけておいて」

──LiDARセンサの利用は、一般の開発者にとって学習コストが高いものなんでしょうか。

金井氏:「作りたいものが決まっていれば、ある程度アップルはサンプルを用意してくれるので、そちらを見れば作りやすいのかなと思います。あとはある程度、映像や3Dに関する知見があればすぐに取りかかれるはずです」

──Effectron は3月時点で3万ダウンロード超だったそうですが、ビジネス的なインパクトはありましたか。

「直接にEffectron を使ったビジネスというよりは、アプリの新規性が話題になったことで、たとえばいま開発している教育向けARアプリなど、開発の案件をいくつもいただけるようになりました。そうした意味で会社のビジネスにつながっています」

──WWDCに向けて、次はこんな機能やデバイスがあったら、といった期待があれば教えてください

「あまり考えたことはなかったですが、ロケーションアンカーが日本中で使えたら良いな、というのはあります。まだ限られた地域でしか使えないので。あれが使えたら、活用はコロナ後になるでしょうが観光アプリだとか、面白いものが作れるかなと考えています」

──ありがとうございました!

iOSアプリ開発者に訊く:LiDARで空間を演出するEffectron (アフェクション)

Apple

WWDC 2021 は米国時間で6月7日から、日本時間では6月8日深夜2時からのキーノートで始まります。

「Effectron」をApp Storeで

株式会社アフェクション | AFFEXION Inc.

Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:iPad(製品・サービス)iPhone(製品・サービス)Apple / アップル(企業)アフェクション(企業)拡張現実 / AR(用語)WWDC(イベント)WWDC2021(イベント)LiDAR(用語)日本(国・地域)

フェイスブックのAR作成ソフト「Spark AR」がビデオ通話対応に

Facebook(フェイスブック)は、米国時間6月2日に開催された開発者会議「F8 Refresh(F8リフレッシュ)」で、同社の主力AR作成ソフトウェアである「Spark AR(スパークAR)」の新機能を発表した。Facebookによれば、Spark ARがF8 2017で発表されて以来、190カ国の60万を超えるクリエイターが200万以上のARエフェクトをFacebookやInstagram(インスタグラム)で公開しており、今や世界最大のモバイルARプラットフォームになっているという。Instagramの投稿で、自撮りした自分の髪が緑色になるエフェクトや、自分の顔を動かすことで犬の表情をコントロールできるエフェクトを使ったことがあるなら、Spark ARを使ったことがあるはずだ。

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今回発表されたMultipeer API(マルチピアAPI)の導入により、間もなくそのようなARエフェクトが、Messenger(メッセンジャー)やInstagram、そしてスマートディスプレイ「Portal(ポータル)」によるビデオ通話で利用できるようになる。クリエーターは、複数の通話参加者を共通のAR体験で結びつけるARエフェクトが作成できるようになる。公開されたプロモーションビデオでは、その一例として、ビデオ通話で行われる誕生日パーティーの様子が紹介されている。参加者の頭にはそれぞれARのパーティハットが現れる。

クリエイターは、ビデオ通話中に参加者がみんなで遊べるゲームを開発することもできる。Facebookのビデオ通話では、1分間に誰が最も多く空飛ぶARハンバーガーを口に入れられるかを競うゲームがすでに存在している。しかし、新しく軽いゲームを作れる機能が開発者に開放されれば、ビデオ通話中に友達同士で挑戦できる新しいゲームが数多く見られるようになるだろう。

このようなビデオ通話のエフェクトや複数の人が参加できるARゲームは、Sparkのプラットフォーム独自のMulti-Class Segmentation(マルチクラス・セグメンテーション)機能によって強化される。これによって、開発者は1つのエフェクトの中で、ユーザーの体を複数のセグメント(髪や肌など)ごと個別に拡張現実化することができる。

FacebookはARグラスの開発にも意欲を見せている。Spark ARのパートナーシップディレクターであるChris Barbour(クリス・バーバー)氏は、この目標はまだ「何年も先」のことだと述べながらも、革新的なウェアラブル技術の可能性をいくつか示唆している。

「友達の家のソファにテレポートして一緒に番組を見たり、ハイキング中に見かけた美しい景色の写真を共有したりできることを想像してみてください」と、バーバー氏はいう。何年か先に製品が発売される頃には、それほど未来的な話ではなくなっているのかもしれない。

2020年10月には最先端のクリエイターを対象としたプログラム「Spark AR Partner Network(スパークARパートナー・ネットワーク)」が起ち上げられ、2021年に入ってからは、Facebookの教育プログラム「Blueprint(ブループリント)」を通じて、クリエイターがARエフェクトを向上させる方法を学べるSpark ARカリキュラムも始まった。Spark AR Partner Networkの募集は、2021年の夏に再び始まる予定だ。現時点でクリエイターや開発者は、Spark AR Video Calling Beta(Spark ARビデオ通話ベータ版)を使って、ビデオ通話用エフェクトの作成を始めることができる。

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画像クレジット:Facebook
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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

BIMやCIMなどデジタルツインへの位置情報統合に道筋、Cellidが建設現場において独自ARによる3次元位置情報の取得に成功

Cellidは5月26日、大林組の建設現場において、独自のAR技術「Cellid SLAM」を用い、作業員の3次元位置情報の取得に成功したと発表した。

今回の実証実験の目的は、「屋内外の大規模・複雑な構造を備える建設現場において、汎用単眼カメラを装着して巡視する職員の移動経路を3次元の動線として把握できるか」「BIM/CIMを含むデジタルツイン・プラットフォームとSLAMで取得した3次元位置情報を統合することで、安全管理や労務管理のためのツールとして発展する可能性があるか」を検証するものだ。BIM(Building Information Modeling)は、3次元の形状情報、材料・部材の仕様・性能・コスト情報など建物の属性情報を備える建物情報モデル。CIM(Construction Information Modeling)は、土木分野において国交省が提言した建設業務の効率化を目的とした取り組み。計画・調査・設計段階から3次元モデルを導入し、施工・維持管理の各段階でも連携・発展させ、事業全体で関係者間で情報を共有するというもの。

一般に、レーザーや赤外線を活用するSLAM技術(自己位置推定と周辺環境の地図を同時に実行する技術。Simultaneous Localization and Mapping)は、専用センサーを必要とすることから、デバイス費用が高額、かつセンサーの設置のためのスペースや電源供給に課題があった。またセンサーの代わりに画像データを活用する研究も進められているものの、膨大な計算負荷に加え、現場での活用に耐える精度の確保が難しく、実装には至っていないという。

一方Cellid SLAMの空間認識アルゴリズムは、すでに現場に導入されている汎用単眼カメラの映像のみを入力情報とする。そして今回、非GNSS環境を含む大規模な建設現場において、GNSS(全球測位衛星システム)やビーコンといった従来の自己位置推定技術を上回る測位精度を発揮することが確認された。

Cellidは今後、BIM/CIMなどから構築されたデジタルツイン上にウェアラブルカメラを装着した作業員などの位置情報を反映し、情報の統合を進めるとしている。また、同一現場で同時に複数の作業員がウェアラブルカメラを装着・撮影することで、位置情報だけではなく、大規模な現場の点群データなどをスピーディに収集することも可能となる。

そして将来的には、位置測位技術とAR技術などとを組み合わせることで「AR付箋」などの早期実現も期待できるとしている。AR付箋は、現実空間の特定の3次元位置に「作業ガイド」や「注意事項」を、デジタルツイン側からの入力により、設置するサービスという。

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Snapが同社のARグラスに技術を提供するWaveOpticsを545億円以上で買収

米国時間5月20日にAR(拡張現実)メガネ「Spectacles(スペクタクルズ)」の最新バージョンを発表したSnapは、その翌日にさらなるニュースを発表した。それは同社の躍進を後押しする技術を持つスタートアップ企業を買収するというものだ。

写真共有アプリ「Snapchat(スナップチャット)」で知られるこの企業は、ARメガネに使われる導波管とプロジェクターを製造するARスタートアップのWaveOptics(ウェーブオプティクス)を買収する。ARメガネは、それをかけた人が見ている現実世界の景色の上に、バーチャルな画像を重ね合わせて見ることができるというもので、Snapはその最新モデルをWaveOpticsと協力して開発した。

この動きはThe Verge(ザ・ヴァージ)が最初に報じたもので、TechCrunchはSnapの広報担当者に直接その詳細を確認した。SnapはWaveOpticsの買収に、現金と株式交換で5億ドル(約545億円)以上を支払うという。そのうちの半分は、買収が正式に完了した時点で株式の形で支払われ、残りは2年後に現金または株式で支払われる予定だ。

これはWaveOpticsにとって大きな飛躍だ。同社はこれまで、Bosch(ボッシュ)やOctopus Ventures(オクトパス・ベンチャーズ)、そして英国のベテラン起業家で、現在はFiveAI(ファイブAI)に在籍するStan Boland(スタン・ボランド)氏や、初期ARスタートアップのBlippar(ブリッパー)創業者の1人であるAmbarish Mitra(アンバリッシュ・ミトラ)氏などの個人を含む投資家から、約6500万ドル(約70億8000万円)の資金を調達していたが、直近の評価額は1億500万ドル(約114億円)程度にとどまっていた

WaveOpticsはオックスフォードで設立されたが、我々が知る限りでは、今後も英国を拠点に置くようだ。

TechCrunchでは、この会社がホログラム物理学とフォトニック結晶をベースにした導波路という、非常に興味深く、時代を先取りした技術を展示した初期の頃から取材してきた

重要なことは、同社の技術が、画像の処理と表示に必要なハードウェアのサイズと負荷を、劇的に圧縮するということだ。これは、WaveOpticsの技術をベースにしたARハードウェアのフォームファクタが、より幅広く、より適応性が拡大することを意味する。

買収後もWaveOpticsが他の企業と協力を続けていくかどうかは不明だが、Snapにとっては、このスタートアップ企業の技術を自社だけのものにすることが、大きなアドバンテージになることは明らかだと思われる。

Snapはここ最近、同じような買収を繰り返している。1月以降だけでも、eコマースへのAR活用を目指してFit Analytics(フィット・アナリティクス)を買収した他、3Dマッピング技術のPixel8Earth(ピクセルエイトアース)や、位置情報プラットフォームのStreetCred(ストリートクレド)など、少なくとも3社のスタートアップ企業を買収している。

しかし、今回の取引は、Snapにとって評価額の面ではこれまでで最大の買収となる。

これは、基礎的な人工知能技術に依然として高い価値がある(加えて、WaveOpticsを設立した科学者たちのチームは12件の出願済みおよび進行中の特許を保有している)ということを示すだけではない。SnapがARを使用するソーシャルアプリだけに留まらず、ハードウェアにおいても影響力のある地位を築き上げ、その技術を使うだけでなく、どこでどのように展開するかという進行と計画を握る中心的存在でありたいという、財務的な、はっきり言いえば実存的な、コミットメントの表明だ。

これは粘り強い取り組みであり、必ずしも報われるものではないが、しかしSnapは(同社は長い間、自らを「カメラ会社」と表現してきた)、ハードウェアを将来の戦略に不可欠な要素として位置づけている。

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カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:SnapARグラス買収Snapchat

画像クレジット:Snap

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

車内VRエンタメのHolorideが市場投入に向けブロックチェーンとNFTを導入

Audi(アウディ)のスピンオフ企業で、車内で体験するXRエンターテインメントを手がけるHoloride(ホロライド)は、2022年の市場投入に向けた準備の次の段階として、ブロックチェーン技術とNFTを導入するという。

2021年4月のシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達した同社は、自動車メーカーとコンテンツ制作者によるエコシステムに透明性をもたらすため、Elrond(エルロンド)のブロックチェーンを自社の技術スタックに統合すると発表した。HolorideはNFT(非代替性トークン)を使用することで、トークンの購入によって開発者がより多く稼げることを約束し、同社のプラットフォーム上でより多くの魅力的なコンテンツを作成するように奨励して、車内の体験をパーソナライズしたいと思う乗員を惹き付けたいと考えている。

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ブロックチェーン、NFT……。Holorideはインターネットの流行に乗ろうとしているだけなのだろうか?そうかもしれないが、少なくともブロックチェーンの統合には、1年前から取り組んでいたと、Holorideの創業者でCEOを務めるNils Wollny(ニルス・ウォルニー)氏は言っている。

Holorideの没入型車内メディアプラットフォームは、それが機能するためにブロックチェーンを必要とするわけではない。乗員が体験するコンテンツは、車両のリアルタイムの動きと位置情報に基づいたデータに同期して調整される(つまり、乗り物酔しない!)。ブロックチェーンが果たす役割は、Holorideがコンテンツを公正かつ透明に配信し、ユーザーのエンゲージメント時間と評価に基づいて、開発者に報酬を与えられるようにすることだ。

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「私たちは最初から、このエコシステムにおけるすべてのパートナーを、極めて公正かつ透明な方法で結びつけたいと考えていました」と、ウォルニー氏はTechCrunchに語った。「すべての取引とエンゲージメントは、ブロックチェーンに保存できます。自動車メーカー側は、車内のHoloride体験にどれだけの時間が費やされたかを把握することができますし、コンテンツクリエイター側にとっては、私たちのプラットフォームのために制作したタイトルに、どれだけユーザーが時間を費やしたかということが透明になります」。

NFTはブロックチェーン上に記録された、他のものとは代替ができない唯一無二のデジタルトークンだ。ほとんどのNFTはEthereum(イーサリアム)のブロックチェーンに属しているが、HolorideのNFTはElrondのブロックチェーンでサポートされることになる。

Holorideの体験に没入しながら、NFTを買ったり集めたりするという魅力が、より多くのエンゲージメントにつながると、ウォルニー氏は期待している。同氏はまた、未来学者や技術オタクたちが「メタバース」と呼ぶような、デジタルでバーチャルの世界と物理的な現実や拡張された現実が結びつくという概念が、加速していくことも予見している。

ヘッドセットを装着して次の目的地へ移動する間に、この仕組がどのように機能するのだろうか? それをイメージするには、ウォルニー氏に具体的な例を上げてもらったほうがわかりやすいだろう。Holorideの場合、NFTは仮想世界の要素を現実世界の場所や出来事に結びつけることから始まる。

「人々が仮想の乗り物、例えば宇宙船や潜水艦なんかに乗って移動しているところを思い浮かべてください。同時にその人たちの物理的な身体は、現実の世界で自動車に乗っているのです」と、ウォルニー氏は説明する。「彼らがある場所を通り過ぎるとき、コンテンツ制作者はそこに、乗員が集められるような何かを置いておくことができます」。

つまり「Pokémon GO(ポケモンゴー)」のようなものだ。だが、スマートフォンを手に持って、拡張現実のアニメ・ペットを狂ったように追いかけて外を歩くのではなく、VRヘッドセットを装着して車内に座っていればいい。そして捕まえるのは、レアなポケモンどころか、唯一無二の自分だけが持つことができるアイテムであり、交換しない限り、他の誰もそれを手に入れることはできないのだ。

「あるいは、ユーザーがあるゲームをとても上手にプレイしたら、賞品としてアイテムを得ることができるというものも考えられるでしょう」と、ウォルニー氏は続ける。「将来的には、それを他のユーザーに見せたり、交換したりできるようになり、現実世界と仮想世界の距離が縮まります」。

HolorideのNFTの将来性は、乗員が車内で体験するコンテンツに没頭し、デジタルトークンという形で得られるものに、愛着や所有欲を感じるようになるかどうかにかかっている。ウォルニー氏がバーチャルリアリティに熱中し過ぎているのかもしれないし、我々が拡張現実に依存せずにいられなくなるような、我々が知らないことを彼は何か知っているのかもしれない。しかし、彼がTechCrunchに語ったように、これは同社のエコシステムの始まりであり、Holorideを「メタバースの輸送企業」にするためのステップに過ぎない。

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タグ:HolorideNFT自動車

画像クレジット:Holoride

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SnapがARグラス「Spectacles」の新世代バージョンを発表

Snap(スナップ)が、事前録画されたPartner Summit(パートナーサミット)で、Snapchat(スナップチャット)のユーザー、クリエイター、企業向けの新しいツールをひと通り紹介した。そのプレゼンテーションの最後にSnapは「もう1つ」という言葉を投げかけて、数年前に手痛いスタートを味わった同社が、ハードウェアの野望をまだ諦めていないことを示した。

Snapが発表したのは最新世代のSpectacles(スペクタクルス)グラスだ。60年代風味の黒を基調とした最新式デザインで、これは同社がこれまでに開発してきた拡張現実技術(AR)の一部を、それに合う特定のデバイスに融合させる、これまでで最大の試みとなる。

Snapの共同創業者でCEOのEvan Spiegel(エバン・スピーゲル)氏は、Spectaclesのことを「拡張現実を生活にもたらす初のグラス(メガネ)」と表現している。もし以前のバージョンのグラスを所有したり試したりしたことがあるなら、今回のグラスはより直感的でシームレスなものになっているように思える。

第4世代のこのグラスは、一度の充電で30分間動作することができると彼はいう。デュアル3D導波路ディスプレイを搭載し、視野角は26.3度で「目の前の世界に自然に重なっているように感じる」没入感のあるレンズ体験を実現している。屋内外で使用できるようにディスプレイは明るいものとなっており、マイク、ステレオスピーカー、タッチパッドを内蔵している。また、134gと比較的軽量だ。

Snapはこのデバイスを、これまで同社のハードウェアがターゲットとしていたコンシューマー向けではなく、Snapプラットフォームを利用するクリエイター向けにマーケティングしていくようだ。今回のSnapのリリースは、その基礎となる技術がまだ大量に市場投入できる状態ではないにもかかわらず、公開してしまうという、他社も採用している戦略に沿ったものだ。

ハードウェア自体の性能は、先行したMagic Leap(マジックリープ)のようなARスタートアップがリリースしたものよりは劣るものの、Snapは機能性を犠牲にしてフォームファクターを追求し、他のARヘッドセットに比べて、ヘルメットのような外観が抑えられたデバイスの提供を選択したようだ。

スピーゲル氏によると、このグラスには同社の新しい空間エンジンが搭載されており「6つの自由度、ハンドトラッキング、サーフェストラッキングを活用し、デジタルオブジェクトを物理的な世界にリアルに置く」とのことで、より高い応答性を実現するために、動作から視覚への遅延は15ミリ秒になっているそうだ。また、このグラスはSnapのLens Studio(レンズスタジオ)と統合されており、クリエイターはこのデバイス用のカスタムレンズを作ることができる。すでに一部のアーリーユーザーにグラスは提供されているので、やがてさまざまなレンズやその他のカスタマイズが、あらかじめ組み込まれた状態で出荷されることになるだろう。

Snapは、拡張現実を大きなチャンスと捉えてきたが、巨大な競合他社の規模に比べると、この分野ではまだ劣勢だ。

今回のAR対応Spectaclesは、Facebook(フェイスブック)がRay Ban(レイバン)と提携して製造を予定しているスマートグラスに先駆けて登場する。そちらのグラスにはディスプレイは内蔵されず、他の入力手段に大きく依存することが予想されている。また、Appleも以前から拡張現実グラスの開発に取り組んでいると噂されており、何千人もの従業員がその製造に携わっていると伝えられている。

関連記事:FacebookがARが日常生活になるスマートグラスを2021年に発売、Ray-BanブランドのLuxotticaともコラボ

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:Snap拡張現実ARグラス

画像クレジット:Snap

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(文:Ingrid Lunden, Lucas Matney、翻訳:sako)

3Ⅾのアバター・仮想空間によるクラウドオフィス「RISA」、テレワークで失われた気軽な会話を生む環境を追求

RISAで取材を実施、アバターはイスに座ることもできる

コロナ禍で働き方が見直されている中、テレワークの浸透は大きな課題となっている。内閣府が2020年12月に行った調査によると、全国のテレワーク実施率は21.5%だった。

この中でテレワーク経験者が答えた「テレワークのデメリット」は「社内での気軽な相談・報告が困難」が38.4%で最多となった。「画面を通じた情報のみによるコミュニケーション不足やストレス」は3番目に多く、28.2%に上る。

テレワークでは目的ありきのウェブ会議などが軸となり、ちょっとした雑談を生む機会もなく、働き手の孤独感が増してしまっている。その穴を埋めるのが、クラウドオフィスという新たなワークプレイスだ。

クラウドオフィス「RISA」は、ビジネスシーンで利用可能な3Ⅾのアバター・仮想空間による新たなバーチャルオフィスとなる。大阪に拠点を置くOPSIONが2020年10月からRISAの提供を開始し、現在はコニカミノルタなどの大手企業をはじめ約40社が導入している。この他にも800社ほどからサービス導入へ声がかかっているという。

RISAはインストールする必要はなく、PCからブラウザで起動できる。ブラウザはGoogle Chromeを推奨しているが、Microsoft Edgeにも対応している。また、2022年までにはスマホやタブレットなどのマルチデバイス対応をしていく予定だという。

「3Dならではの臨場感や没入感がRISAの特徴です。社員同士が気軽に集まれる居場所を提供し、テレワークで失われた偶発的なコミュニケーションや、簡単に相談ができる環境を作り上げています」とOPSIONの深野崇代表は語る。今回は実際にRISAでアバターを動かしながら、深野氏に話を聞いた。

RISAでアバターを走らせ、相手に話しかける

さまざまなパーツを組み合わせて自分好みのアバターを作れる

RISAでは自身が立つ四角いタイル内にいるメンバー同士と音声通話で話せるようになっている。遠くにいる誰かに話しかけたいときは、その人が実際にいる部屋などにアバターを走らせ、話しかける。アバターは床をクリックすればその位置に移動できる。キーボードのA、W、S、Dキーや矢印キーでも移動可能だ。

RISAのアバターは髪型や顔、服装など、さまざまなパーツをカスタマイズできる。手足が一部だけしか表現されないアバターは一見すると奇妙だが、実際に動かしてみると違和感はない。深野氏は「細部の動きなど、人は見えていない部分を想像で補うので、想像の範疇でどのような動きをしているのかを最低限わかるところまで削りました。動作を軽くするといった狙いもあります」と説明する。

細かな動きは人の想像力で補う仕組み

テレワークをしていると、相手がいまどのような状況かわからないことも多い。RISAではアバターの頭上に「声かけ可能」「取り込み中」「離籍中」を示すステータスを表示できる。エモート機能もあり、手を振ったり、拍手をしたり、ダンスしたりすることも可能だ。

頭上の白文字が「ひと言メッセージ」。その時や気分や困ったことなどもひと目でわかるようにした

「ただ、これだけではわかりづらいこともあります。そこでいまやっていることなどを『ひと言メッセージ』として、頭上に表示できます。私の場合、今日は『テッククランチさん取材』にしました。相手の状況が分かりづらいリモートワークの欠点を、記号だけでなく文字情報でも補完できるようにしています」と深野氏は語った。

また、ウェブ会議で話し手が一方的に話し続けるといった問題も解決していく。RISAではスタンプ機能を追加し、アバターにクエスチョンマークやハートマークを連続して表示できるようにした。

スタンプ機能でインタラクティブなコミュニケーションを促進

目くばせやうなずきなど、人が何気なく行っていたちょっとしたジェスチャーに寄せた表現ツールだ。「一方通行になりがちなウェブ会議でも、インタラクティブなコミュニケーションができるように工夫しました」と深野氏はいう。

マップ機能も追加して誰がどこにいるかわかるように

RISAによる会議のイメージ

料金体系は1つのRISAの仮想空間上で、1~50人利用で月額税込3万3000円となっている。RISAでは100人ほどが常時接続できるようになっているが、50人以降は10ID毎に月額税込5500円で追加できる。導入企業をみると、部署単位で最大80人が働いている企業もあれば、4人で利用している企業もあるという。

製品版リリースから約6カ月のタイミングとなる2021年4月には、大型アップデートを行った。RISAの部屋配置などを刷新し、これまでよりも音声通話ができる空間を増やしている。

「リアルのオフィスでは、会議前にロビーで少し作戦会議したり、会議終わりに『わからないところがあった』など雑談が生まれたりします。この会議前後の時間はとても大事だと考えています。RISAでも会議を起点にした偶発的なコミュニケーションがより生まれるよう、簡単に空いている部屋へ移動できるレイアウトにしました」と深野氏は語る。

マップ機能で利便性を高めた

また、2Dのマップ機能も追加した。これにより、誰がどこにいるのかカーソルを部屋に合わせればわかるようになった上、誰もいない空間を簡単に探せるようになった。

2Dではなく3D。情報量の多さを重視

エモートの「ヨガ」のポーズ。思わず何をしているのか、尋ねたくなる

クラウドオフィスには2Dのアイコン・空間を用いてサービス展開している企業もいる。OPSIONではなぜ3Dを選んだのか。深野氏はこう語る。

「臨場感や没入感、『ここで働いているんだ』という帰属意識をRISAは重要視しています。2Dのアイコンがあるだけよりも、3Dのアバターは人の形をしているため、直感的に実際に集まって働いているという感覚を高めることができます。また、3Dは情報量が多い分、相手が何をしているといった状況も分かりやすく、声をかけやすいです」。

OPSIONは3Dにこだわり、人に近しい感覚で働ける環境づくりを追及しているのだ。しかしデメリットもある。

「3DではPCの動作が重くなるといったことがあります。ただ、PCそのものの性能が上がっていたり、5Gといった新たなテクノロジーも発展していくはずです。2Dとの差である『動作の重さ』といった不都合は時間とともに無くなるはずです」と深野氏は述べた。

ポイント制度導入で帰属意識をより高める

開発中のポイント制度によって、楽しみながら仕事ができる

OPSIONの業務もRISA上で行われているが、現在は試験的に「ポイントショップ」「ポイントランキング」といったポイント制度を取り入れている。

深野氏は「RISAにおけるユーザーの活用状況に応じて、ポイントを付与する仕組みを実装しようとしています。ポイントを貯めれば、アバターの見た目を変えたり、部屋の椅子などをカスタマイズできるようにします」と構想を語った。

具体的には誰が誰に話したのかといった発話者を特定して、そのコミュニケーション量などに応じてポイントを付与できるようにするという。ポイント制度は早ければ2021年の夏ごろには実装する予定だ。

「ゲーム性を含んだポイント制度には意味があります。楽しんで仕事ができることはもちろん、『最近アバター変わったね』など会話のきっかけ作りにもなります。また、オフィス空間を自分たちで作り上げていけば、より帰属意識も高まっていくはずです」と深野氏は意気込む。

リアルオフィスとテレワークを繋ぐ居場所として発展させていく

深野氏は新型コロナウイルスの影響が収束しても、リアオフィスとテレワークの両方を取り入れたハイブリット的な働き方が主流になるとみる。RISAでもマルチデバイス対応などを行うことで、双方をよりシームレスに行き来できる居場所として、発展させていく考えだ。

「5、10年というスパンでは、リアルオフィスだけでなく、RISAのようなクラウドオフィスを企業が持つことが当たり前になると思っています。我々は家にいても、リアルオフィス以上にコミュニケーションが取れるような世界観を目指していきます」と深野氏は想いを語った。

なお、取材中はCPUがIntel Celeron N4100、メモリが8GB、OSはWindows 10 Home(64bit)のノートPCを使っていたが、アバターは問題なく動き、音声通話も終始クリアに聞こえた。他のタブなどは閉じた状態で、GPUはほぼ100%の使用率となり、CPUは30%前後だった。

実際にRISAを使ってみて、キーボードで動かすPCゲームなどの経験は筆者にはなかったので、アバター移動は多少手間取ってしまった。その点を除けば、取材を1時間ほどしている中で、RISAでアバターを動かしながら話を聞くことに不便さはなかった。回線落ちなど何かしらの不具合はあると思っていたが、杞憂だった。

アバターではあるが、取材中は相手の正面に立とうとするなど、気づけばアバターは「自分化」していた。アバターは多種多様なパーツがあったため、その日の気分によって服装や髪型を変更でき、使い込んでいけばお気に入りの見た目なども出てくるかもしれない。

テレワーク環境で失くした「人と1つの場を共有して働いている」という感覚は、バーチャル空間で実現すると真新しくもあった。RISAが導入されれば、深野氏がいう「偶発的なコミュニケーション」による職場の温かさのようなものが取り戻せるかもしれない。リアルオフィス以上を目指すというOPSIONの動きに、引き続き注目したい。

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カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:OPSIONRISAテレワーク仮想オフィスアバター仮想空間日本

グーグルが実物大の相手がすぐ向こう側にいるかのような3Dビデオ通話ブースを開発中

Google(グーグル)は、3Dディスプレイ上の3D映像を利用して、双方のユーザーをリアルに映し出すビデオ通話ブースの開発に取り組んでいる。まだ実験的なものではあるが「Project Starline(プロジェクト・スターライン)」は長年の研究と買収を基にしており、近い将来、よりパーソナルに感じるビデオ会議の中核となる可能性がある。

このシステムは、事前に何も知らなかった参加者のビデオを通じてのみ公開された。参加者たちはまず、スクリーンとカメラのセットアップがほとんど隠された部屋に入るように指示された。その後、スクリーンが点灯し、家族など大切な人のビデオ映像が映し出されたが、それは誰も予想していなかった方法によるものだった。

「彼女を見て、感じることができ、まるで3Dの体験のようでした。まるで彼女がここにいるかのようだった」。

「彼に本当に触れられるような気がしたわ!」。

「本当に、本当に彼女と私が同じ部屋にいるように感じました」。

Sundar Pichai(サンダー・ピチャイ)CEOは、この「エクスペリエンス」は高解像度のカメラと独自の深度センサーによって可能になったと説明している。これはほぼ間違いなく、人物や場所を撮影した動画をインタラクティブな3Dシーンに変換するという、グーグルの研究プロジェクトに関連していると思われる。

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ディスプレイの周囲に隠されたおそらく10数台のカメラとセンサーが、人物をさまざまな角度から撮影し、正確な形状を把握して、ライブで3Dモデルを作成する。このモデルと、すべての色やライティングの情報は、(多くの圧縮と処理を経て)相手のセットアップに送られ、迫真の3Dで表示される。さらに、頭や体をトラッキングし、その時々の視点に合わせて映像を調整する(この技術の初期バージョンについては、こちらでもう少し見られる)。

しかし、3Dテレビはどちらかというと廃れてしまった感がある。誰も特別なメガネを何時間もかけて見たいとは思わないし、メガネなしの3Dはこれまで一般的に画質がかなり悪かった。では、この特別な3D画像は何によって作られているのだろうか?

ピチャイ氏は「当社は画期的なライトフィールドディスプレイを開発しました」と述べているが、これはおそらく、独自の技術を軌道に乗せることができず2018年に解散した、ライトフィールドカメラのLytroを買収して獲得した人材とIPの助けを借りたものだろう。

ライトフィールドカメラやディスプレイは、さまざまな技術を使って2Dで説明したり見せたりするのが非常に難しい3D画像を作成し、表示する。スタートアップのLooking Glassは、3Dモデルや写真のシーンが小さなホログラムのように見える、実際に見ると非常に印象的なものを制作している。

関連記事:Looking Glassが2D画像を3Dにするホログラフィック技術のためのソフトを開発

Googleのアプローチが似ていようと違っていようと、参加者たちが示すように、そのインパクトは同様に目覚ましいものであるようだ。現在、社内でテストを行っており、人の存在感が大きな違いを生むさまざまな業界(医療など)のパートナーにユニットを送り出す準備をしているという。

現時点では、Project Starlineはまだプロトタイプに過ぎず、おそらくとんでもなく高価なものになるだろうから、すぐに家に置くことはできない。しかし、このライトフィールド・セットアップのコンシューマー版が将来的に登場するかもしれないと考えることは、決して荒唐無稽ではない。Googleは、2021年後半にもっと情報を共有すると約束している。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Aya Nakazato)

FacebookがVRシューティングゲーム「Onward」の開発企業を買収

2019年の後期から2020年の初期にかけてゲーム制作会社を相次いで買収してきたFacebookもこのところは、VRコンテンツの充実整備に関してややペースを落としていた。

しかし今日(米国時間4/30)は、ソーシャルメディアの巨人がその流れを断ち切り、人気の高いVR一人称シューティングゲームOnwardの開発者Downpour Interactiveの買収を発表した。このタイトルは同社のRiftとQuestプラットホームと、ValveのSteamストアで手に入るが、ここ数年における仮想現実コンテンツのトップセラーだ。

Facebookによると、今後もこのタイトルはFacebook以外のVRハードウェアでもサポートされ続ける。

一人称シューティングゲームはFacebookが最近自社製を作っていただけに、この買収は興味深い。ちなみにその自社製VRタイトルMedal of Honorは、Apex Legendsの開発者Respawn Entertainmentとパートナーして巨額を注ぎ込んだ作品だが、この前の12月にリリースされ、批評家たちからあまり高い評価はもらえなかった。

今回のDownpourの買収につき、Facebookはその条件等を公表していないが、チーム全体がOculus Studiosに加わる、と言っている。FacebookのAR/VRコンテンツ担当副社長Mike Verdu氏は、買収に関する詳しいブログ記事で、Onwardは「マルチプレイヤーの傑作」と言っている。

関連記事: Facebook buys VR studio behind Beat Saber(未訳)

(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)
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