ビットコイントレーダー向けのダッシュボード「coincheck tradeview」、レジュプレスが提供

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いつでも決済でき、また手数料もかからないことから、少額決済にも有効だとそのメリットをうたっているビットコイン。しかし日本での利用はまだまだこれからという状況で、現在は投資目的の取引が大半を占めるという。ビットコイン取引所「coincheck exchange」を運営するレジュプレスは6月10日、そんな投資目的のビットコイントレーダー向けのサービス「coincheck tradeview」をリリースした。

coincheck tradeviewでは、FXのオンライントレードにあるようなグラフィカルなUIでユーザーのビットコイン運用をサポートする。

レジュプレスによると、coincheck exchangeの月間取引額1.6億円のうち、8割の取引はトレード目的で運用しているユーザーだという。そしてそのユーザーというのは、入金額でいえば上位5%のユーザーで、それぞれ100万円以上入金しているそうだ。tradeviewはそんな高額取引者向けの機能となる。FXトレーダーに馴染みやすい機能やユーザーインターフェースを採用。ビットコインにこれまで触れたことのない新規ユーザーの獲得にもつなげるとする。

tradeviewの利用は無料だが、利用には一定の条件がある。具体的には以下の条件のいずれかをcoincheck exchangeで満たしている必要があるという。

  • 合計25万円以上の日本円を入金したユーザー
  • 合計20BTC以上のビットコインを入金したユーザー
  • これまでに25万円分以上の取引をしたユーザー

tradeviewではこれまで指値注文(レートを指定しての売買)のみだった取引に加え、成行注文(その時点のレートで売買)にも対応する。将来的には海外ビットコイン取引所の売買情報やチャートのテクニカル分析なども追加する予定だ。

マネタイズに関してだが、coincheckではリリース記念で取引手数料が無料(原稿執筆時点)なこともあり、tradeviewのリリースで取引額が増えても同社の利益には直結しないという(レジュプレス取締役の大塚雄介氏)。それよりもまずはビットコインのマーケットを拡大するということに狙いがあるそうだ。

なお大塚氏は国内におけるビットコインサービスを改善すべく、米国ニューヨークに2週間の視察調査に向かうという。クラウドファンディングのReadyForで支援者を募集中だ。

ますますアルゴリズムが活躍するTwitter、今度は会話のスレッドをアルゴリズムが検出して表示

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昨日(米国時間6/8)はAppleの例年のWWDCで賑わったが、同じ日にTwitterが、同社のネットワーク上のコンテンツに対する新しい整列アルゴリズムにより、ツイートをもっと会話的/対話的に見れるようにする、と発表した。その新しい機能は、昨日からお目見えしている。

昨年Twitterは、タイムラインの生成を人間の手作業ではなくアルゴリズムによるものにする、と声明した。意図的に人力によるキュレーションを薄めるのは、それがTwitterの魅力にもなる反面、Facebookのような厳しいコントロールが敷かれているソーシャルサービスに比べて、ユーザのコンテンツの露出度が大きくなる危険性があったからだ。

Twitterがユーザに、アルゴリズムによってやや希薄化されたコンテンツと情報をあえて見せるのは、このところのユーザ増加率の低迷を意識しているからだ。とくに、新しいユーザが今後リピーターとなり固定客として定着していくためには、情報やコンテンツのより魅力的な提示の仕方が重要、とTwitterは考えた。長年Twitterを使っているユーザ(たとえば私)は、このサービスの価値を築いてきたのは自分たちだと自負しているから、そんないやらしい小細工を歓迎しない。

しかしこのところTwitterは継続的に、ユーザ(とくに新人ユーザ)の視線を意識して、そのコンテンツの見せ方をいじくってきた。たとえば昨年末にローンチした、未読まとめ機能’while you were away‘は、アルゴリズムが選択した(そのユーザが好むと思われる)ツイート集合をユーザのタイムラインのトップに持ってくる。それもまた、ユーザになるべくおもしろいものを見せようとする、おせっかいの試みだ。〔日本語記事。〕

この4月にTwitterは、暴言や脅迫などがなるべく拡散しないための、自動化フィルタ(すなわちアルゴリズム)をテストした。長年、言論の自由の味方を標榜してきたTwitterにとって、それは微妙な問題だったが、でも過去のTwitterは同時に、集団いじめのような発言を厳しく取り締まることもしなかった。

ツイートに参加性をもたせる

そして最新の小細工、会話的ビューは、だれかのツイート列と、それに対する応答の列が会話のような形になっているとき、それを会話らしく見せようというレイアウトデザインだ。

発言と応答が入り交じっている従来のTwitter列の形ではなく、会話的ビューでは応答をアルゴリズムが拾って整列する(下図はキャメロン首相のツイートに対する応答列)。

この新しい機能についてTwitterのプロダクトマネージャAkarshan Kumarはこう書いている:

ひとつのツイートをめぐる会話は、応答の数が多くてしかもいろんな人が発言しているときには、会話として把握することが難しくなる。そこで私たちは、それをもっと見やすくするための工夫を講じた。会話をグループにまとめ、とくにおもしろい意見交換をオリジナルのツイートの真下に置いた。たとえば、オリジナルの人が、応答に対してさらに応答しているような場合は、‘おもしろい意見交換’と〔アルゴリズムが〕判断している。

この小細工では、2013年に複数の対話的ツイートを青い線でつないでスレッドを作ろうとした工夫が、不人気だったにもかかわらず、再び使われている。オリジナルとの対話のあるスレッドが上に置かれるから、それがない孤立的な意見はどんどん下の方へ移動する。つまり参加性(エンゲージメント)に富んだ応答列が、上の方へレイアウトされる。

たとえば下図は、イギリスの首相デイビッド・キャメロンからの最近のツイートへの、最初のいくつかの応答だ:

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実際には、最初の4つのグループ化された応答では、複数のTwitterユーザがオリジナルのツイートに対して、入れ子状(ネスティング)に応答していて、キャメロン自身からの応答はない。他からのリアクションのない個別の応答は、階層の下の方へ追いやられていく。ただし、会話的な応答が個別的な応答の上に必ず来る、という単純なルールでもないのだけど。

だから、こういった会話的スレッドを作り出すアルゴリズムが、何を基準にして、優遇すべきスレッドを決めているのか、それがよく分からない。上の引用では、「応答に対してオリジナルからのさらなる応答があること」だけを挙げているが、上図を見るかぎり、ほかにも基準はありそうだ。今Twitterに問い合わせているから、答が得られ次第、この記事をアップデートしよう。

キャメロンのツイートには、ひどい暴言の応答が寄せられることが多い。上図の会話例でも、多いのはネガティブな感情だ。キャメロンのことをdishface(お皿顔)とののしるツイートは、ずっと下までスクロールしないと見れないけどね。それでも、悪名高い”fuck off dishface“がまったく登場しないのは、Twitterのアルゴリズムが事前に、暴言として排除したためだろうか。

Twitterは、アルゴリズム的小細工をやるたびに、“今後も継続的に改良して参ります”と言い訳をしている。そして、今回の会話ビューのねらいは、“Twitter上の会話を分かりやすく、そして参加しやすくし、また、もっとも適切で良質なコンテンツを見つけるためです”、だそうだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

SMX Advanced 2015-最新のSEOの技術的なお話し。

日々進化を続けるWeb業界。Googleもその変化に併せ(むしろ牽引して)、より優れた環境を整えようとしています。このセッションでは、現在Googleが注力している分野の技術の紹介や、SEOにおける技術的な問題の話などの内容になっています。技術系に明るくない人は難しい内容かもしれませんが、逆に言うと学ぶチャンスが非常に多いということでもあります。すぐに全てを理解することは難しいかもしれませんが、こうしたセッションを契機に、徐々に理解を深めていければいいですね。– SEO Japan

原題:The Latest In Advanced Technical SEO

このセッションは以下の3セッションで構成されています。

Googleが伝えたい”http/2″と”https”と”レンダリング”について

Speker:Maile Ohye,Senior Developer Programs Engineer,Google Inc.

httpについて
httpについて1970年台は非常にシンプルなものだった。当時はサイトを構成する要素が少なかったが、現在は様々な要素を用いてサイトを作成している。httpのパフォーマンスを向上させるために様々な手法が用いられているが、http自体を速くすることが可能である。

http/2の利点
http/2には幾つかの利点があるが、具体的に挙げると以下のようになる。

  1. 複数のファイルを同時に送ることができる。
  2. どのデータをまずはダウンロードするか優先順位を付けることができる。
  3. ヘッダを圧縮(サイズを小さく)することができる。

Googleもクロームが今後http/2をサポートしていくことをブログで報告している。

httpsについて
httpsはますますデフォルトとなりつつある。Gメール、Facebook、Twitterなども全てhttpsに対応している。セキュリティを強めることがスタンダードとなっているのだ。

https対応のステップ
httpsへの対応を検討しているのであれば、すぐにでも開始すべきだ。しかし、確かな手順で行う必要がある。以下にその手順をまとめてみよう。

  • 多くのブラウザに対応されている、2048ビットのTLS証明書を認証を受けた機関から取得する。
  • TLS証明書を設定する。
  • サーバーのパフォーマンスを確認し、必要であれば調整する。
  • httpからhttpsへ301リダイレクトを設定する。(両URLをアクセス可能にしない)
  • 挙動を確認する。
     -CSS、JavaScript、画像などのリソースを全てhttpsに通す。
     -ページ内の全てのマークアップがhttps対応になっているか確認する。

レンダリングについて
Googleのレンダリングのパフォーマンスを確認するために、Fetch as Googleを使用しよう。最初の200KBのコンテンツに何が表示されるか?ブロックしているリソースがあれば修正しよう。また、サーバーのパフォーマンスに優先順位をつけよう。

Googleが考えるレンダリング
レンダリングにおけるGoogleの目標は、ユーザーが見るのと同様に、サイトを見ることだ。適切にレンダリングができれば、より多くのコンテンツをインデックスに加える事ができる。また、モバイルかデスクトップかなど、レイアウトの判断も向上する。Googleはユーザーにとって価値のあるコンテンツを全てインデックスしたいと思っている。

隠れたコンテンツがないか?
重要なコンテンツを読むために、クリックやマウスオーバーを要求していないだろうか?そうであれば、すぐにそれらをやめるべきだ。”隠されたコンテンツ”をGoogleは”重要度が低いコンテンツ”と認識することを忘れないで欲しい。重要なものは上に置く、の原則に従ってほしい。

ページを構成する要素が多い場合
例えば、Eコマースのサイトで100個の商品があるページの場合などは特に注意だ。ページのリソースは全てクロールされるようにしよう。商品や記事と平行して優先順位をつけ、キューに加えるようにしよう。

CSSとJavaScript
CSSとJavaScriptはクロール可能な状態にしておこう。ユーザーにとってはきちんと表示され、モバイルフレンドリーのサイトと認識されるかもしれないが、ブロックしていると、Googleは内容を確認できない。結果、Googleにとってはモバイルフレンドリーのサイトでなくなってしまう。

あなたがGoogleに送るべき、技術的なシグナル

Speaker:Jenny Halasz,President, Founder,JLH Marketing

シグナル
シグナルとはGoogleにあなたが何をしているか、していないかを伝える手段である。

決定的なシグナル
まずは最も重要なシグナルをまとめてみよう

  • 301リダイレクト
    恒久的な移動を意味する。サーバー側で設定し、デフォルトではなく、リンクのパワーを渡す。
  • ページ削除
    404(Not Found)はデフォルト、410(Gone)はデフォルトでない。
  • noindex
    ページ単位で設定が可能。デフォルトではなく、nofollowを設定していなければ、リンクパワーは渡される。設定されたページはインデックスされない。
  • robots.txt
    ディレクトリかページ単位で設定が可能。インデックスは(おそらく)される。リンクのパワーは渡される。

それでも重要なシグナル
非常に強いシグナルではあるが、決定的ではない。

  • rel=canonical
    重複コンテンツを知らせる。https設定の場合は気をつける。
  • rel=next/prev
    連続したページの関係性を伝える。外部・内部のリンクに気をつける点はrel=canonicalと同じ。
  • hreflang
    言語の設定を伝える。言語と地域の設定から成り、言語だけでは使えるが、地域だけでは使えない。

よくある間違い

  • リダイレクト(wwwの有り無し、httpとhttpsなど)
  • パンくずリスト
  • サーチコンソールのパラメータ

IBMのサイトに起きた、技術的な問題

Speaker:Christine Smith,IBM Search Marketing Technical Lead,IBM

IBMのサイトに実際に起こった出来事
このセッションではIBMに実際に起こった技術的なエラーの内容と修正方法をお話する。具体的には、1.数千ページがインデックスから消失、2.内部リンク評価、3.URLの特定の不備、というストーリーだ。

1.数千ページがインデックスから消失
サーバーやソフトウェア用のセルフサポートのページがインデックスからなくなってしまった。2013年の出来事で、月のトラフィックの24%が減少した。検索結果に出てこなくなってしまったのだ。

原因究明
検索結果から消えた30ページを抜粋し、色々と確認。ページの表示、リダイレクト、canonical、tobots.txtなど。

サイトマップが原因?
全体の10%しかインデックスされていなかった。そのため、サイトマップを再度作成し、canonicalに注意しながらURLを訂正した。この作業で全体の60%(現在は88%)がインデックスされたが、Googleからの流入の改善はされないまま。

Googleに相談
2014年の4月と5月にGoogleに相談したところ、対象の30ページが重複コンテンツと見なされており、最後のクロールが2013年の11月となっていたことが判明した。その後、状況の説明と伴に再審査リクエストを提出し、クロールの頻度をあげることもリクエストした。その結果、6月には22%までインデックス数が増加した。

原因は?
おそらく、リダイレクトの不備(メンテナンスページヘのリダイレクトなど)と500や504の設定が疑わしい。サイトがメンテナンス状態の場合は503を設定し、Googleが再度クロールしてくれる状態にしておこう。

2.内部リンク評価の消失
IBMのsmarterplanetというサイトが”カード”システム(各記事をカードのように選り分けるレイアウト)を採用したが、その”カード”が内部リンクの評価を受けていないようだ。

原因は?
robots.txtがJavaScriptをブロックしており、JavaScriptがカードをレンダリングしていた。robots.txtのブロックを解除した後、Googleは内部リンクの評価を認めてくれるようになった。しかし、BaiduやYandexはJavaScriptをサポートしていないことは要注意。

3.URLの特定の不備
IBMのとあるサイトにある既存のコンテンツを別のプラットフォームに移動した。そこではコンテンツが動的に再作成されるようになっていた。

検索結果に現れなくなった
原因はcanocnicalの設定に不備があったことだ。結果、全てのコンテンツが重複コンテンツと見なされ、Googleのインデックスから削除されてしまった。canonicalのコードを再度見直した結果改善されたが、canonicalの設定とエンコード文字には特に気をつけることを薦める。

全体のストーリーで学んだこと

  • “canonical”、”robots.txt”、”リダイレクト”は常にダブルチェックしよう。
  • サイトマップはよく確認しよう。
  • サイトメンテナンスの際は503を使おう。
http/2についてはGoogleからの公式文章は日本語では発見できませんでした。(そもそも、Chrome Blogは英語のみかもしれないです。)新しい技術のため、まだまだこれからといったところでしょうか。httpsとレンダリングについては、Googleが注力していることを、色々な場面で見られますね。SEOへの影響というよりも、根本的な問題を発生しかねないため、実装には最新の注意が必要です。アップデートの話題も気になってしまいますが、こうした技術的な話にも、日々注目していきたいと思います。

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Mesosphereがベータを脱して一般公開へ、無料利用もありだが当面AWS上のみ

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Mesosphereが2013年の創業以来構築してきた、コンテナ技術をベースとするDatacenter Operating System(DCOS)が、今日(米国時間6/10)から一般的に可利用になる。すなわち今日からこのデータセンターオペレーティングシステムは、無料でパブリックでクラウドのみのコミュニティエディションと、有料のエンタプライズライセンスという2種類の提供形式となり、とくにエンタプライズユーザは、自分がソフトウェアをその上で動かしたいと願うどんなプラットホームでも、DCOSを使えるようになる。

DCOSがユーザ企業に提供する基本的なコンセプトは、データセンターやパブリッククラウドのデプロイメントがどれだけ多くのサーバやクラスタから構成されていても、それらを、まるでたった一台のコンピュータであるかのように操作し管理しコントロールできる、という考え方だ。そしてそれによって、リソースの利用効率を最大化する。

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エンタプライズエディションとコミュニティエディションは同じ技術をベースにしているが、前者の有料プランでは24/7の技術サポートが受けられ、またセキュリティとポリシー管理が強化される。また有料プランではMesosphereを、パブリッククラウドだけでなく、企業のプライベートクラウド(OpenStackなど)やハイブリッドクラウドでも利用できる。同社によると、Mesosphereのエンタプライズエディションのベータには3800社あまりのユーザ企業が登録している。

“最近ではデータセンターにおけるアプリケーションのデプロイメントが複雑化しているため、どうしても、データセンターオペレーティングシステムと呼べるような新しいタイプのオペレーティングシステムが必要になっている。今の企業が求めているのは、オンプレミス、クラウド、ハイブリッドと多様に分散している大規模な分散システムを統一的にデプロイし管理するための、フレキシブルでスケーラブルな方法だ”、とMesosphereの協同ファウンダでCEOのFlorian Leibertは語る。“これ(DCOS)は、TwitterやYelp、Groupon、AppleのSiriなど動かしているインフラストラクチャと同じコアテクノロジだ”。

なお、今Mesosphereが提供する一般的な可利用性(上記2タイプ)は、利用環境がAmazonのクラウドコンピューティングプラットホームに限定される。Microsoft AzureとGoogleのCompute Engineの上では、公式にはまだベータだ。デベロッパは無料のエディションを使ってSparkやHadoopなどの複雑なプロダクトのスケーラブルなインストールを素早くセットアップでき、同じクラスタの上で並行的に動かすことができる。

Mesosphereの今回のローンチの参照顧客はYelpだ。同社はOpenStackなどの技術を使ってハイブリッドクラウドをセットアップすることを考えたが、最終的にはDockerを主役に据えているMesosphereに落ち着いた。そしてMesosphereのクラスタを、本番並の稼働状態にもっていくために、三ヶ月を要したという。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

eBay、Apple Watchアプリを公開。腕の上で入札が可能に

eBayは今日(米国時間6/9)Apple Watchアプリを公開し、買い手、売り手の両方がeBayのマーケットプレースに関する最新情報を受け取れるようにする。同社はこれまでSamsung GearおよびPebble等他のスマートウォッチで同様のアプリをテストしてきた。

eBayのApple Watchアプリは、Apple Watchのハードウェアが入手可能になって以来社内でテストされてきており、初期のWatchアプリが闘ってきた「反応の遅さ」問題に対処してきたと同社は語っている。

アプリのホーム画面には4つの主要機能がある。Activity、Watching、Buying、およびSellingだ。Watchingは注目しているが入札はしていない商品を追跡し、Buingは入札中の商品、そしてSellingはeBayで自分が売っている商品だ。それぞれの画面では、入札残り時間、現在の価格、入札件数、商品写真等が一覧できる。

売り手は過去30日の売上グラフも見ることができる。

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一方、Activity画面にはeBayユーザーが自分のオークションで最も急を要するコミュニケーションが表示される。例えば、自分より高値をつけられた、間もなく終了する、出荷すべき製品等々だ。売り手のフィードバックに答えて、eBayのWatchアプリは売り手がすばやくメッセージに返信して顧客をサポートする機能も提供する。そのためには、メッセージをタップして返信を音声入力すればよい。

「グランス化された」サマリーも各分野について用意されているので、文字盤を上にスワイプするだけですぐに見ることができる。

全体で28種類の通知がサポートされており、eBayのiOSアプリでカスタマイズできる。

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eコマース会社の中には、スマートウォッチオーナーが腕の上で 積極的に商品を探しさらに購入まで行うと信じているところもあるが、eBayのアプリは、ユーザーが実際どうWatchアプリと向き合うかを理解しているように思える ― 緊急情報をすぐに知りたい、一覧できて、必要ならすぐに対応できる。eBayのアプリでは、売り手はメッセージに返信が可能で、買い手は急な入札もできる ― そしてどの手順も数秒以内に完了する。

Apple Watchアプリに合わせてeBayのiPhone、iPadおよびAndroidアプリもアップデートされ、インターフェースや使いやすさが改善された他、ドイツおよびインドでの支払いサポート、英国での店頭受取りオプション等が追加された。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AlibabaのファウンダーJack Maがアメリカ市場への進出について語る

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ファウンダーで経営執行役会長のJack Maは、Alibabaのアメリカにおけるチャンスは大きいと話した。「Alibabaは中国で創業しましたが、Alibabaは世界のために誕生したのです」。

Maは今日、The Economic Club of New Yorkで登壇し、The Wall Street Journalに先日寄稿した記事 (有料ページ)と同様の論点に触れた。Alibabaは成長を続け、特に史上最大のIPOを達成した直後から、アメリカ進出の予定について頻繁に聞かれるようになったと言う。「Amazonと対決するのはいつ頃の予定ですか?eBayと張り合うのはいつになりますか?」と尋ねられるそうだ。

「eBayやAmazonに深い敬意を表します」と話し、「私たちがチャンスだと考え、戦略とするのは、アメリカの小さいビジネスに対し、中国市場への進出と中国での商品の販売を手伝うことだと考えています」と続けた。

また中国の中産階級は、アメリカ全土の人口と同じくらいなったと指摘し、次の10年でその数は5億人に上ると予想していると話した。中国はその中産階級のために製品を輸入する必要があるという。国内製造は中国のリソースを圧迫し、公害の問題も発生させているのが主な要因だ。

「アメリカの製品がもっと必要です」と彼は言った。

Maは、既にNokiaのような国際的な大企業と手を組んでいるが、同様のことをアメリカの中小企業とも行っていきたいとした。これは彼の世界規模のヴィジョンと紐付いている。10年か20年内に、Alibabaはシンプルな公約を果たせるようにする考えだ。それは「どこからでも購入でき、どこからでも販売できる」ということだ。これはつまり、オンラインの買い物客は、世界中のどこにいてもAlibabaから商品を購入でき、72時間以内に受け取れるようにするということだ(中国国内の買い物客なら24時間以内での配達を目指す)。

Alibabaがアメリカでは特に浸透していないこともMaは認めた。Amazonとよく比較されるが、Alibabaは自社で商品を購入したり、販売したりしないと説明する。代わりに小さいビジネスが、製品の購入と販売、そして在庫管理と配達ができるようにサポートしていると話した。Alibabaのこの事業は昨年、3900億ドルの売上高に結びつき、今年にでもAlibabaは世界規模ではWalmartより大きくなる可能性があると話した。最終的に、1兆ドルの売上高を目指しているという。

質疑応答の際、Maは中国政府と協力する上での課題について問われた。アメリカの企業が中国で仕事をするのに課題はあるが、同時にこれまで中国企業もアメリカで仕事をする上で課題もあったと説明した。重要なのは、忍耐強くあることと長期的な視点で物事を考えることだという。

「次の10年か20年で、中国で成功するアメリカのインターネット企業も多く現れるでしょう。なぜなら、この流れは止められないからです」と彼は言った。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

SMX Advanced 2015-最適なリンク精査の方法と高品質なリンクを獲得するためのベストプラクティス

パンダやペンギンのアップデート情報もちらほらでてきましたが、ペナルティの話題はやはり注目度が高いようです。いつ何時Googleからペナルティを受けるとも限らないため、日々の予防とペナルティを受けた時の対処方法は理解しておきたいところです。また、解除後の再度のリンク構築も重要な項目ですね。ペナルティに関する幅広いトピックを扱ったセッションになります。– SEO Japan

原題:Advanced Link Auditing & Best Practices For Acquiring Authoritative Links

このセッションは以下の2つのパートで構成されています。

リンク精査とペナルティ解除の方法。あなたのサイトを”牢屋”から開放しよう。

Speaker:Megan Geiss,Marketing Strategy Director,Merkle | RKG

さあ、調査しよう
最近獲得したリンク、被リンク元のドメイン、アンカーテキスト、などが対象だ。リンクネットワークからの被リンクはないか?サイトワイドリンクの比率は?ダイレクトアンカーの量は?怪しいと思われる要素は全て確認しよう。

リンク査定に使用するツール

  • Majestic SEO
    被リンク全体のデータを確認。
  • Ahrefs
    アンカーテキストを深く調査。
  • Moz Open Site Explorer
    被リンクのオーソリティや信頼度を確認。
  • Googleサーチコンソール
    Googleのインデックスからサンプルを取得。

被リンク数の異常値
Majestic SEOでは被リンク数をグラフで確認できるため、不自然なほど多くのリンクを取得した時期を特定することができる。

アンカーテキストの分析
全てのアンカーテキストを抽出し、それぞれの被リンク数とドメイン数を算出する。全体の割合も計算し、不自然な程に割合の高いアンカーテキストの種類や、リンク数とドメイン数の割合が不自然なものを特定する。

非リンク元の地理的な条件を分析
Majestic SEOを使用し、どの国のサイトからのリンクが多いかを確認する。ここでも不自然な値がないかを特定する。

リンクの信頼度
Majestic SEOで”Citation Flow(被リンク元のサイトがどのくらいリンクを獲得しているか)”と”Trust Flow(非リンク元がどのくらい信頼できるサイトからリンクを獲得しているか)”を確認する。

ページ単位のリンクデータ
Moz Open Site Explorerを使用する。サイト全体でなく、それぞれのページのデータも確認する。ペナルティはサイト単位とは限らない。ページ単位でのペナルティも存在する。

ペナルティを受けた?
サイトの内部の問題やクロールエラー以外の理由でトラフィックが急激に落ちていないだろうか?また、Googleからメッセージがきていないだろうか?もしもペナルティを受けていた場合は、下記のステップでリンクを解除しよう。

1.全ての被リンクデータを取得する。
被リンクのデータを抽出しよう。Majestic SEOとサーチコンソールのデータが主要になる。

2.被リンクの品質でランク付をする。
Majestic SEOとサーチコンソールのデータを統合し、重複しているデータやnofllowのリンクは削除する。”Citation Flow”が30以下のリンクを抽出し、IPのCブロックのパターンも確認する。

3.分析する。
上記ステップで抽出したリンクを分析し、Googleの品質ガイドラインに違反していると思われるリンクを抜き出す。ドメイン単位で特定できた場合は、そのドメイン配下のリンクを全て削除対象とする。

4.リンクの削除を要請する。
リンク元のサイトの連絡先をできる限り特定する。Webマスターに削除の要請を依頼するが、相手も人間なので、丁寧に依頼しよう。また、これらの一連のやり取りは全て記録しておくこと。後述する再審査リクエストに含めるからである。

5.フォローアップ。
削除依頼を要請した後のWebマスターの反応は様々。すぐに解除してくれる人もいれば、削除のために金銭を要求してくる人もいる。また、何も反応がない場合もある。

6.リンクの否認ツールを使う。
テキストでリストを作成する。UTF-8か7-bit ASCIIを使用し、1行に1URLという形にする。よくあるミス(“これで十分だろう”という量しか含めない、被リンクの全てを記載してしまう、古いリストを上書きしてアップロードしてしまう)に気をつけよう。

7.再審査リクエストを送信する。
一連の経緯を記す。Googleは”ガイドラインに違反する行為をやめたこと”、”可能な限りリンクをキレイにしたこと”、を見ている。

あなたが本当に必要としているリンクを獲得する方法

Spekaer:Ruth Burr Reedy,Head of On-Site SEO,BigWing Interactive

はじめに
“優れたコンテンツを作成しよう!”というが、実際は結局リンクが必要。自らベストなリンクを構築しよう。ベストなリンクはトラフィックも生み出してくれる。逆にトラフィックを生まないようなリンクは良いリンクとは言えない。人々がリンクを張ってくれるコンテンツを作成するのだ。

リンク獲得のためのコンテンツ作成を計画する
ユーザーは誰か?彼らは何を望んでいるのか?1ヶ月に1テーマを設定し、4つの記事を書く。それぞれの内容は以下のようにする。

  • ローカルコンテンツを1記事。自然検索、関連性のある話題、ローカルSEOなどが指標。
  • 長く参照されるようなコンテンツを2つ。トラフィックの獲得が指標。
  • リンクを張りたくなるようなコンテンツを1つ。リンクの獲得が指標。こちらの記事を参考に。

コンテンツ作成に役立つツール

  • Buzzsumo
    コンテンツのパフォーマンス、トピック、競合サイトの分析など。
  • followerwonk
    Twitterの分析。ソーシャル活動に。
  • TagCrowd
     関連するキーワードを特定。それを元にコンテンツを作成する。

戦略

  • Twitter
     15分に1度アクション(ツイート、シェア、メッセージ)を起こそう。誰が何を話しているか、どこにリンクを張っているか、分析しよう。
  • HARO
     あらゆる分野のエキスパートとコンタクトが取れる。信頼できるソースを探す際に。
  • プレスリリースについて
     リンク獲得のために使う。ユニークでおもしろいコンテンツであれば、リンクを張ってくれる。
  • 個人的に頼む(知り合いなども含む)
     ニッチなマーケットの場合などは特に有効。
ペナルティへの対処方法はほぼ確立されているようなものですが、改めて振り返ると、煩雑なプロセスだと実感できます。また、仮にペナルティを解除されたとしても、有効なリンクも削除してしまうこともあり、ペナルティ以前の順位に回復しないケースもあります。現在ペナルティを受けていないとしても、定期的に被リンクの確認は行いたいところですね。なお、今回のセッションは3つのパートからなるセッションでしたが、残りの一つは割愛させて頂いております。

続きを読む SMX Advanced 2015-最適なリンク精査の方法と高品質なリンクを獲得するためのベストプラクティス

Apple、ようやく女性軽視にピリオド。iOS 9のHealthKitに月経追跡機能を追加

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Appleはようやくヘルスアプリケーションの著しい見落としを認め、女性にとっての利便性を改善した。 iOS 9のヘルスアプリは女性の性と生殖に関する健康状態の追跡をサポートする。そう、やっとAppleが月経追跡をiPhoneの内蔵機能にしたのだ。昨日サンフランシスコで行われたWWDCイベントで、Appleのソフトウェアエンジニアリング担当SVP、Craig Federighiは、AppleのHealthKitプラットフォームのアップデートの一環としてこの件に簡単に触れた。HealthKitは、UV暴露、水分摂取、およびユーザーの定住状態に関するデータも保存できるようになる。

Appleが、総合健康管理アプリに含まれることを人口の約半分が期待するであろう機能を見過ごしていたことは、さほど驚くにはあたらない。

現在Appleで従業員に占める女性の割合はわずか30%であり、エンジニアリング職のうち女性はわずか20%だ。そしてAppleは、その多様性の欠如を補う取り組み(WWDC 2015スカラシップ拡大による女性エンジニアの増加、あるいはWWDC 2015のステージに女性幹部を登用長年にわたりキーノートスピーカーは男性だった ― さらには問題の多い従業員比率はすべて会社自身の責任であることを認めた)を進めているが、ヘルスアプリの問題は、社内の不均衡がイノベーションやテクノロジーの発展に直接影響を与え得ることを示す典型例だ。

ヘルスアプリの発表以来、同社は女性の健康問題を無視していることを広く世間から批判されてきた。The Atlanticが指摘するように、女性は何千年も前から周期を記録し続け、月経と受胎の相関を早くから理解していた。

つまり月経周期記録は、定量的自己追跡の最も古い事例の一つなのだ。

FusionのKashmir Hill記者が怒りをぶちまける:「『健康の全体像を把握する』ことを約束しているアプリが、女性の健康にとって最も重要な要素をどうして無視できるのか?」。

apple-wwdc-20150250

現在AppleのApp Storeは、このシンプルだが極めて重要な追跡機能を提供するアプリが数多くある。女性が妊娠(あるいは避妊)することを手助けするためのアプリとして、BellabeatGlowがある他、単に生理日が近いことを知らせるアプリもあり、良くできたものもそうでないものもある。

しかし、受胎は月経追跡が有用である唯一の理由ではない。女性なら誰でも知る通り、生理不順は他の健康状態、例えばストレス、体調不良、ホルモンバランス等に影響を及ぼし、周期のタイミングはダイエット、旅行、運動、服薬、授乳その他の変化の影響を受ける。

女性の周期は、総合健康アプリにとって理想的なデータであると言っても過言ではない。

それなのにAppleは、銅摂取やセレン摂取といった比較的ニッチな追跡オプションを、月経周期のように基本的なデータ以前にサポートしてきた。

Appleは、iOS 9のHealthKitに含まれる「性と生殖に関する健康」追跡機能について詳しく語らなかったが、デベロッパー向けサイトにいくつか追加情報がある。

ここにリストされている新しいHealthKit定数には、月経追跡関連のデータがいくつか見られる。頸管粘液(増加は生殖能力の高まりを表し、ユーザーは色と濃度データを入力できる)や出血量(軽、中、重)も追跡できる他、家庭用排卵検査の結果も入力できる。

全体的に見て、AppleのiOS 9ヘルスアプリが、月経周期を主として妊娠に関連付けていることは明らかだ。それが周期追跡の重要な理由であることは間違いないが、それだけではない ― 女性がこのデータを身近に置く必要がある健康関連の理由が数多くあることは上に述べた通りだ。

それでもこれはAppleにとって正しい方向への一歩だ ― そしていつかSiriが十分賢くなって、そろそろタンポンを買う時期だと知らせてくれるようになるかもしれない。無理な願いではないと思うのだが、どうだろうか?

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

OS X 10.11からSafariブラウザがForce Touch入力をサポート…より豊かなWeb閲覧体験へ

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OS X 10.11 ‘El Capitan’についてくるSafariでは、Webデベロッパがネイティブアプリのデベロッパと同じく、Force Touch入力を使った独自のユーザ体験を作り出せる。つまりAppleのノートブックの最新機種(レティナディスプレイのMacBookとMacBook Pro)のトラックパッドで深くクリックしたときの、Webページ上のコンテンツのアクションをカスタマイズできるのだ。

AppleのForce Touchトラックパッドでは、ふつうの標準的なクリックだけではなく、クリックされたときの圧力の違いを入力として識別する。標準的なクリックは、Safariで表示されるテキストに対して、辞書の定義や地図のビュー、リンクのプレビューなどを表示するために利用されてきた。

しかし今度のForce Touchツールでは、デベロッパはユーザのより深いクリックで、アニメーションの起動や、リスト上の好きなコンテンツに対するスター(星)づけ、など、そのほかのアクションを起こせる。コード的にはマウスクリックの登録と同じだが、そこに圧力レベルの補助変数がつく。

この‘より深いクリック’が加わったことによってユーザは、メニューの項目をセレクトしたり、別のページへ行ったりしなくても、今やってることに関連した機能を簡単に呼び出せるようになり、デベロッパは補助的なアニメなどで閲覧体験をより楽しいものにできる。ただし、Force Touchのない機種のユーザもまだ多いから、使いすぎは良くないかも。

いずれにしても、これはおもしろい機能であり、Force TouchをすでにサポートしているiOSデバイスなみの体験をMacBook上のWebアプリケーションからも提供できることになる。次世代のAppleハードウェアはすべてこれをサポートする、という噂もあり、今回Safariがこの機能を導入したことは、噂の信憑性を一挙に高めてくれる。

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Apple Watchのサードパーティーアプリ、watchOS 2でワークアウトデータを利用可能に

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デベロッパーに朗報:ネイティブWatchアプリを作ってユーザーのアクティビティーを追跡し、ワークアウトに関する情報をHealthアプリに送信するだけでなく、ワークアウトセッション中ずっとアクティブでいられるようになった。Appleの内蔵ワークアウトアプリと同じように。

新しいwatchOS 2のワークアウトAPIを使うと、サードパーティーアプリはアクティビティーやワークアウトのデータにアクセスできる。Watchアプリは、既存のiOS HealthKit APIも、iPhoneやiPadと同じように利用できる。Watchアプリに保存されたデータはペアリングされたiPhoneと自動的に同期し、Watch上で完了したワークアウトはiOSのアクティビティーアプリの履歴に表示される。

AppleはWatchのワークアウトに関してプライバシー重視を貫いている。ユーザーは、ヘルスデータをアクセスしてワークアウトデータをアプリに送ることについて、アプリに許可を与える必要があり、iPhoneとWatch両方でアプリ毎にプロンプトが表示される。ただし承認は両デバイスで共有され、これは両機で異なる許可が与えられる可能性が極めて低いことから理にかなっている。

デベロッパーはApple Watchの追跡精度を高めるためにアクティビティーの種類を指定することが可能で、上記の通りアプリはフォアグラウンドで動き続けられるため、ユーザーは腕を上げると文字盤ではなくデベロッパーの作ったワークアウト進行画面やサマリー画面を見ることができる。現在も可能なユーザーが最後に開いたアプリを表示する設定が有効になっていない限り、ワークアウト後は通常通り文字盤が優先的に表示される。

Apple Watch上では同時に1つしかワークアウトをアクティブにできないため、いずれRunkeeperがネイティブWatchアプリを作った時にも、ワークアウトと同時に動かすことはできない。既にワークアウトアプリが動作している時に別のワークアウトアプリを起動すると、後に実行された方が優先される。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Rhombusのシステムで、テキストメッセージを送るだけで決済が可能に

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ミレニアル世代は、クレジットカードも現金も使わない。もちろんビーズや貝殻を使って決済を行ったりしない。彼らに決済を求める場合は、必ずスマートフォンを通す必要がある。 Rhombusのようなテキストメッセージから決済ができるサービスは、若い世代を惹きつけて止まないまたたびのようだ。このアプリは、特定の連絡先番号に金額をテキストで送るだけで送金することができる。例えば、カスタマーがテキストメッセージから商店に注文する。「ラージサイズの豆乳チャイラテソイレント、アーモンドミルク入りを5つ」とカスタマーが注文したら、店舗は代金の現金払いを依頼する。システムが彼らに決済の内容を確認した後、カスタマーの口座から代金が自動的に引き落とされるのだ。

Rhombusは、二人のフィンテック(金融テクノロジー)マニアのEdwin ElodimuorとTaiwo Oyeniyiが製作した。Elodimuorは Navigant Consultinで、OyeniyiはGoldman Sachsに勤めていた。Oyeniyiはコンピューターサイエンスで修士号を取得していて、Elodinuorは経済学で修士号を取得している。

システムは運営を開始していて、既におよそ40万ドルの決済が行われたという。3656の取引を完了し、プラットフォームには100を超える商店が登録している。SquareやVenmoのシステムと違い、アプリも必要ない。代わりに、その商店の固有の番号にテキストを送るだけで、カスタマーと商店との取引が完了する。

「私たちが抱えていた問題を解決するためにRhombusを作りました」とOyeniyiは言った。「共同ファウンダーと私は、地元の教会への寄付を送る簡単な方法はないかと考えていました。寄付金は通常、現金や小切手を封筒に入れて毎週日曜日に集められていました。すぐに代金を簡単に受け取る方法を探していた一般企業からも、注目を集めました。商店とカスタマーに私たちが提供するこのシンプルなサービスにメッセージ機能を加えるのも自然な選択でした」。

このシステムは、どのモバイル端末でも使用でき、別のハードウェアは一切必要ない。また、システムからRhombusが利用できる商店のリストをテキストで受け取ることができる。

「カスタマーはビジネスとやりとりするのに何かにサインアップする必要はありません。連絡帳に載っている人にテキストメッセージを送る感覚と一緒です。会話のやりとりの中で決済を行う時は、金額を入力して送るだけというシンプルさです」とOyeniyiは言った。このサービスでも、注文したプロテイン入りカップケーキを取りに行く時など、何かを買う工程の中で人と少なくとも一回は接しなければならないが、支払いの手間が大幅に省かれていて画期的だ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

LINE既読が重たい人向け? 日本版Snapchat「winker」が1億円を資金調達

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Snapchatは日本を含む多くのアジア地域では全く鳴かず飛ばず。類似アプリも死屍累々、もうこの市場は日本ではダメなんじゃないかという見方もあると思うのだけど、日本版Snapchatを目指す「winker」を運営するプライムアゲインがシリーズAで1億円の資金調達を行った。投資したのは2013年3月の1200万円のシードラウンドから資金を入れていたEast Venturesに加え、iモバイルとgumi ventures、それに個人投資家数名だ。

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プライムアゲインはもともとNTTドコモ・ベンチャーズのインキュベーションプログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」の第1期生だ。写真加工のアルバムアプリ「DecoAlbum」を提供してきた。DecoAlbumは広告収益は出ているが、現在プライムアゲインは2014年6月にローンチしたwinkerに力点を置いていて、今回の投資もwinkerの将来性を見込んでのもの。2015年6月にはAndroid版もリリース予定だ。

Yahoo Japanの「CommuCamera」(2014年10月終了)、mixiの「muuk」(2015年2月終了)など、すでに「Snapchatライク」なサービスは終了しているところも多い。

winkerはシンプルに消えるメッセージを実現したアプリで、動画は最大10秒。受信者側は1回見たら、そのメッセージや写真、動画は消えるようになっている。画面キャプチャをしたら、そのことは送信者側に通知される仕組みになっている。この辺はSnapchatと同じだ。消える前提だからこその気軽さがあるのが、従来のチャットや写真共有アプリとの違いだ。TechCrunch読者には説明不要かと思うが、Snapchatは2011年にスタート。2015年5月のシリーズFラウンドでは5億3800万ドルの追加資金を調達し、これまでに合計14億ドル(1700億円)もの資金を調達している。シリーズF時の評価額は150億ドル以上(1兆8600億円)とForbesが伝えている。同記事はまた、CEOのエバン・スピーゲルによる情報としてDAUが1億人に近づいているという情報も伝えている。

それほど人気のSnapchatは何故日本で立ち上がっていないのか? 他の類似サービスと違うところは何なのか? プライムアゲイン代表取締役の阿部伸弘氏によれば、winkerに勝機がある理由は大きく2つある。

photo011つはSnapchatがバタ臭いこと。「日本ではSnapchat系自体が伸びていませんが、どこかで(Snapchatのような消えるメッセージのアプリが普及するタイミングが)来ると思っています。Snapchatはアメリカっぽすぎるんだと思っています。例えば、Snapchat Discoverというニュース機能がありますが、CNNとかが並んでいます。UIも独自路線を突っ走っていて、ヘビーユーザーには良いが、新規ユーザーお断りというぐらいハードルが高くて、どんどん分かりづらくなってます」(阿部氏)。なので、winkerは日本人向けに分かりやすく作ってあるという。

阿部氏が指摘するもう1つのポイントはタイミング。2006年ごろ、足あと問題による「mixi疲れ」があってTwitterやFacebookといったSNSにユーザーが流れたように、いま日本の若者にはLINEなどで「SNS疲れ」を感じている人が少なくないという。「SNS上で送るテキストを一生懸命考えるんですよ。もし変なことを言ったら、その会話を抜き出した別グループを立てられて裏で悪口を言われたりする」。グループチャットやタイムラインの様子をキャプチャして、そこでの発言について別の少人数のグループで批判するようなことがありがちなんだとか。LINEだと「既読」がついたまま返信がなくてやきもきするという既読問題もあるが、これは「既読という表示のすぐ隣にコンテンツがあるからツラい」のだというのが阿部氏の見立て。これがwinkerだと、開封したテキストは2度と受信者は開くことができないし、送信者側にも既読と表示されるだけで内容を再表示することはできないという違いがある。記憶には残るかもしれないが、画面上にもクラウド上にも痕跡が残らないのだ。「だから返信が気楽なんです。すごく雑でいい。晩御飯食べてるよという写真が来て、そうなんだー、とかでいい」。winker上では1人のユーザーから恋人や親友、友だちといった3、4人に一斉送信するのが多いパターンだそう。

InstagramやFacebookでやっていた写真や日常の一コマのシェアが気軽にできるのがwinkerの良さ、という。特に若い人にとってFacebookは、上の世代と繋がるメールのような存在だと認識しているし、Instagramも最近ではFacebook繋がりで人が入ってくることから、おやじが増えてきてウザいと思っている若い女性なんかが多いそうだ。若いユーザーほどセルフィーをたくさん撮るし、動画で歌も歌う。ただ、そうしたものをオープンなSNSに共有するほど勇気はないという人が多い。だから「winkerでソーシャル疲れとかなしに、気楽にコミュニケーションする。その問題を解決したい」のだという。

欧米では爆発的に普及したSnapchatだが、日中韓のアプリストアではランク外。Snapchatのコピーアプリも世界各地で全滅している中、日本版Snapchatというポジションを目指すwinkerにどれだけ可能性があるだろうか。もしあるのだとしたら、アップサイドのデカさが薄っすら見えているだけに面白いチャレンジと思う。

メッセージはFacebookの一人勝ち―Messenger、Google Playでのダウンロードが10億回に

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Google Playでダウンロードが10億回を超えた会社は2社しかない。そのうちの1社はもちろんGoogle自身だ。今日(米国時間6/9)、FacebookはSMSを代替するビジネスの市場がどれほど巨大かを実証した。Messenger部門の責任者、David Marcusが発表したところによると、MessengerのAndoid版のダウンロード回数が 10億回の大台に乗ったという。10億回超えのアプリはFacebook本体、WhatsApp、Gmail、YouTube、Google検索、Googleマップと極めて数が少ない。Messengerもついにこのエリートクラブに仲間入りしたわけだ。

最新のモバイル・デバイスの共有機能とスピーディーなテキストメッセージのやりとりを結合させるというMessengerの基本戦略は成功した。しかもFacebookはMessengerの機能を野心的に拡大中だ。VOIP通話、ビデオ会議、スタンプ、ボイスメール、ピア・ツー・ピア支払、ロケーション、サードパーティー向けアプリのためのプラットフォーム化等々、Messengerはユーザーのあらゆるコミュニケーションのニーズに一手に応えようとしている。 そしてそのユーザーはすでに6億人に上っている。

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シンプルなメッセージ・サービスに特化したWhatsAppを傘下に持つFacebookはメッセージ・アプリの世界の難攻不落の要塞を建設することに成功している。Snapchat とYik Yakもいくらかおこぼれにあずかれるかもしれないが、Facebookはすでにコミュニケーション・ユーティリティーとして次の展開を狙っている。

Facebookは現在、目立たないやり方でMessengerを本体にさらに緊密に組み込もうとしている。

たとえばグラフ検索で「xxの曲を聞いたことがある友達は?」のような検索をすると、そのユーザーのプロファイルではなくMessengerのリンクが表示される。友達の誕生日にFacebookは誕生祝いのメッセージを、ニュースフィードではなく、メッセージで送信するよう促すことがある。

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先週、FacebookはMessengerの地図とロケーション機能をリニューアルした。これはGPS機能を利用した新たなロケーション機能導入のための準備だ。これまで、待ち合わせ場所の確認はFacebppl本体アプリのNearby Friendsが受け持っていた。

Facebookがライバルのチャットサービスに対して優位なのは、FacebookはMessengerで金を儲ける必要がないという点だ。広告を溢れさせたり有料のスタンプを売り込んだりする必要がない。Messengerの役割はユーザーをFacebookコミュニティーにしっかりと繋ぎ止めることで十分果たされており、その後はFacebookのモバイル広告が十分すぎるほどの売上をもたらす

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しかしここまでの道のりは必ずしも平坦ではなかった。Facebookはユーザーにメッセージを使うなら本体と別に新たなアプリをダウンロードするよう告げねばならず、少なからぬユーザーが反発した。しかしそれも無事に収まって新アプリが普及するに連れ、チャット・サービスに日が当たるようになり、エンゲージメントは着実に上昇し始めた。Facebook本体という巨艦から独立したことでMessengerは身軽になり、新機能の実装も素早くなった。

PayPalの元プレジデント、David Marcusをトップに、プロダクトのエキスパート、Stan Chudnovskyがナンバー2を務めるMessengerチームがこの半年で実施した主なアップデートは次のようなものだ。

一方で、メッセージ分野を制することができる資金と技術力をもったライバル、Googleはここ数年、彼らが言うところのムーンショット(野心的)プロジェクトに気を取られて失敗を重ねてきた。Googleハングアウトはビデオチャットで先行したにもかかわらず、それ以上に伸びなかったし、WhatsAppの買収にも失敗した。成功していれば二頭立てレースになったはずだが、現状はFacebookの一人勝ちという結果になっている。

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Facebookはメッセージ・アプリが今後モバイルでもっとも長い時間使われるようになると考えている。中国のWeChatはチャットをすべてのモバイル活動のポータルとするという戦略のパイオニアだが、Facebookも必要に応じてあらゆる機能をMessengerに移植できる態勢を整えている。

長年、シリコンバレーでは「何がFacebookキラーになるか?」という議論が続いてきた。結局、Facebookキラーを作り出したのはFacebook自身だったようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Apple WWDC 2015キーノートのまとめ

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昨日(米国時間9/8)のAppleのWWDCの2時間に及ぶキーノートではたくさんの重要な発表があった。上にこれを90秒のビデオにまとめてみた。下に個々の記事へのリンクも張っておいたので参考にしていただきたい。〔日本版:最後のConnectの記事以外、すべて翻訳ずみ〕

キーノートの冒頭でAppleはMac OS X 10.11 El Capitanを発表した。 昨年のYosemiteのようにビジュアルが一新されるものではなかったが、ジェスチャー操作のサポート強化、ウィンドウの整列、Spotlightの自然言語検索などの新機能が盛り込まれた。 MacとiOSに新しいMetal APIが採用され、デベロッパーは同一のハードウェアでグラフィックスのパフォーマンスの大幅な改善が可能になった。ゲーマーには朗報だ。デベロッパー向けベータ版は即日公開された。

iOS 9では新しいパーソナル・アシスタント、Proactiveが紹介された。これはGoogle Nowによく似ており、ユーザーの本日の予定などを教えてくれる。Google Nowと異なるのは、クラウドではなく、デバイス内に存在する情報をベースにして処理することだ。プライバシーに敏感なユーザーにアピールする点だろう。

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iPadでは、本格的なマルチタスクがサポートされた。ユーザーは画面を左右に分割して2つのアプリを同時に作動させることができるようになった。このスプリットビュー・モードをサポートするのは最新のiPad Air 2のみだが、既存のiPadの大部分にも2つのアプリを簡単に往復できるスライドオーバーと呼ばれる簡易版が導入された。またカーソルを自由に動かせる新しいソフト・キーボードも発表された。

Apple Watchについても発表があり、新しいネーティブ・アプリのSDKが公開された。デベロッパーはこのSDKを使って、ペアとなるiPhone上ではなく、Watchそのものの上で作動するアプリが開発できる。デベロッパーはビデオ再生、心拍モニター、マイク、デジタル竜頭、振動インターフェイスを管理するTaptic Engineなどの機能にアクセスが可能になった。これによりApple Watchがローンチされた当初のもののよりずっと複雑、高機能のアプリが続々登場することになるだろう。

Appleはキーノートの締めくくりにAppleミュージックをお披露目した。SpotifyやRdioのライバルとなる音楽ストリーミング・サービスは個人が月額9.99ドル、家族が月額14.99ドルで、ユーザーはAppleの膨大な楽曲が聞き放題となる。加えてBeats1インターネット・ラジオ 、新しい音楽ソーシャル・ツールのApple Connectが利用できる。Apple Musicは6月30日にサービスがスタートする。当面はiOS、Mac、Windowsがサポートされるが、この秋にはAndroid版が出るという。〔ミュージックはApple Japanのサイトでもサービスのスタートが予告されている。〕

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

IAB調査:モバイルデバイスで閲覧するビデオは長時間化の傾向あり?!

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Interactive Advertising Bureauにより、世界のさまざまな国を対象とした、モバイル端末によるビデオ閲覧状況についての調査が行われた。

「あたりまえ」と言えるのかもしれないが、1年前に比べてより多くの人がモバイル端末を利用してビデオを楽しむようになってきているようだ。アメリカでの回答者の50%、カナダ、ニュージーランド、および南アフリカにおける回答者の42%が、モバイル端末でビデオを閲覧する頻度が高まっていると回答している。

そうしたビデオ閲覧者も、ごく短い30秒程度のクリップを見ているわけではないようだ。回答者の36%が、5分以上の長さをもつビデオを毎日閲覧していると回答しているのだ(36%という率は半数にも見たない数字ではある。しかし「多くの人」と表現してよい割合であるように思える)。

とくに中国においては映画やテレビドラマなどもスマートフォンで閲覧する傾向が高まっているのだそうだ。なお、中国では37%、シンガポールでは35%のひとが、スマートフォンのビデオ閲覧が増えるに従って、以前よりテレビを見る時間が減ったと回答している。

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閲覧するビデオを見つけるきっかけとしては、62%がYouTubeをあげていて、33%がソーシャルメディアからの情報であると回答している。情報を検索していてビデオを見始めたという人は20%で、広告経由で見ることになったと回答している人も14%存在している。

IAB Mobile Marketing Center of ExcellenceのシニアディレクターであるJoe Laszloが調査についてのプレスリリースで述べたところによると、「コンテクストに合致した適度な広告については、多くの視聴者がその存在を受け入れる傾向であるようです」とのことだ。

この調査は24ヵ国にて、それぞれ200名を対象として行われたものだ。より詳細な内容についてはこちらで見ることができるようになっている。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

Apple Musicはヒットとなるか?競合サービスとの比較で見る、強みと弱点

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Spotifyを倒すことになるのか?それともPing 2.0か?Appleはオンデマンド音楽ストリーミング事業に進出すべく、本日ようやくApple Musicを公表した。次の問題は果たしてApple Musicが一般向けにヒットし、ストリーミングサービスを初めて利用するユーザーを大量に惹きつけ、そして他の競合サービスからユーザーを奪うことができるかどうかだ。あるいは、フォルダーのどこかにしまわれ、存在すら忘れられてしまうその他大勢のAppleアプリになってしまうのか。

以下の表はAppe Musicと競合サービスの比較一覧だ。ローンチ情報から、強みと弱点の分析を加えた。

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強み:オンデマンドストリーミングサービス
音楽ダウンロードの売上が急激に落ち込む一方、ストリーミングサービスは急速に拡大している。Appleは、iTunesの販売モデルをストリーミングによるサブスクリプションモデルに変更するために手を尽くしてきた。そうしなければ、日々の利用率と売上の減少を見届けるリスクを負うことになるからだ。

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弱点:ローンチ日
全世界が注目する中、Appleは新しい音楽アプリを早速ダウンロードして今すぐ使い始めてほしいと言うこともできただろう。しかしそうは言わず、6月30日のローンチまで待ってほしいと言った。それまでにこのサービスを忘れてしまう人もいることだろう。新しい端末の販売なら発表からローンチまでに時間があっても問題にはならない。誰もが何百ドルを費やして、これから手に入れる新しいピカピカのガジェットについて話をし、手に入れたのなら皆に見せびらかすだろうから。しかしソフトウェアはモバイル端末の中に隠され、無料トライアルを始めたことを大々的に宣言する人はいないだろう。

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強み:利用可能な端末と地域が広い
Appleは、Android端末とWindowsパソコンでもApple Musicを利用可能にするという賢い動きを見せた。しかし「秋」までローンチされない。それまではiOS、MacとApple Watchでしか利用できない。ここでもやはりAppleがストリーミングアプリを世界規模の現象にしたいのなら、統一されたクロスプラットフォームサービスを今日ローンチした方が強い影響力があっただろう。しかし、Spotifyは58カ国で利用できるのに対し、Apple Musicは100カ国で利用できる。オフラインモードに曲を同期できるのも良い。

強み:無料トライアル
誰でも3ヶ月Apple Musicを無料で試すことができるのは良い。検索ボックスから探すだけで、ほとんどどんな曲でも聴くことができるサービスを多くの人が初めて体験することになる。初日からApple Musicがユーザーに課金したのなら、ローンチした直後には撤退に追い込まれただろう。

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弱点:無料の広告表示モデルはない
無料トライアルの問題は、再生リストを作成してサービスに自分の好みを教えるといった、視聴体験をパーソナライズする手間をかけることをユーザーに躊躇わせてしまうことだ。Spotifyは、無料で利用できる、機能が制限された広告表示のあるバージョンを提供することで、気軽に音楽を視聴し始めるユーザーを獲得し、有料登録に結びつけることで大きく成功した。Spotifyの有料登録ユーザーの80%は、無料モデルからサービスを利用し始めていたという話をSpotifyから聞くことができた。

影響は大きくなかったiAdもあるが、そもそもAppleは広告企業ではない。よって、広告表示の無料モデルがないことは予想できたことだ。しかし、それでもBeats1のラジオ放送、iTunes Radio、Apple Music Connect以外に、有料登録に消極的な人を囲い込む方法を提案できたと思う。曲数や利用時間に上限を設けたり、モバイルでの機能を限定したりすることで、部分的にでも継続的に無料でアクセスを提供するクリエイティブな方法が考えられただろう。3ヶ月後には有料登録するか、サービスを使うのを止めてラジオに移行するしか選択肢がない。これは、有料登録の見込みが少ない若いユーザーを遠ざけてしまうかもしれない。彼らは、重要なネットワーク効果とバイラル効果をもたらすかもしれないにも関わらずだ。

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弱点:価格
Apple Musicは月額10ドルだ。他のSpotifyといった独立系サービスと同様の価格だ。Appleはレコード会社を説得し、彼らに支払う金額を抑えることができなかったようだ。しかし、Appleの本当の失敗はサブスクリプションの費用を補助しないことに決定したことだろう。結局の所、Appleは購入されたコンテンツから得られる数ドル単位の利益で、会社が成り立っているのではない。彼らはデバイスの売上で、何十億単位の金額を得ているのだ。世界で最も有名なオンデマンドストリーミングサービスが使えるとなれば、iPhoneの販売を後押しすることになるだろう。サービスが低価格、あるいは無料で利用できたのなら、さらにそれは現実味を増す。iPhone、iPad、MacBook、Macの購入に、無料で6ヶ月、あるいは12ヶ月間のサービスを付けるとなれば、それはデバイスの購入を後押しする賢い施策と言えるだろう。音楽は常にあるものであるし、この競争に勝つために彼らの1980億ドルの資金のいくらかを投じるのは良い選択だと思う。

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強み:ファミリープラン
Appleは6アカウントまで加入できる、14.99ドルのファミリープランで親を取り込むことに力を入れている。10ドルのサブスクリプション料がかかるSpotifyアカウントを解約し、Apple Musicを子どもたち全員と、更に両親までもリーズナブルな価格で利用できると訴求することができる。(Sportifyの料金体系は、2アカウントで15ドル、5アカウントで30ドルだ。)

弱点:独占的なコンテンツの欠如
Appleが他に投資できた方法としては、ユーザーが確実に欲しいと思うコンテンツをApple Musicに囲い込むことだ。ザ・ビートルズやテイラー・スイフトの楽曲を提供できたのなら、ユーザーがApple Musicにサインアップあるいは、他社から乗り換える魅惑的な要素となるだろう。Appleはそのような独占的にApple Musicで利用できるコンテンツの存在を口にしていない。

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強み:Beats1 Radio
オンデマンドストリーミングサービスの最大の問題は、ユーザーは何を検索して聴けば良いか分からないことだ。彼らが力を入れている、24時間放送の人の手で運営されるBeats1ラジオステーションは気軽に音楽を楽しみたいリスナーがエンターテイメントとしてストリームするのに適したアーティストを見つける機会を提供する。また、iTunes Radioもまだ生きている。Beats1に埋め込まれているのだ。無料ユーザーを含め、誰でもそれぞれのユーザーに特化したPandoraスタイルのiTunes Radioを利用できる。自分で編曲したくないユーザーでも、音楽を流し続けることができるのだ。

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今後の経過次第:Connect
AppleはPingをConnectと名前を変更し、再登場させる。Connectは、Apple Music内のタブからアクセスでき、音楽、写真、動画やテキストの投稿を見ることができる。アーティストとファンとのつながりをAppleが保有できるよう設計されているが、そのような関連性はTwitterやFacebookといったサービスで既に出来上がっているのが課題だ。

Connectが成功するか失敗するかの判断はまだ難しい。それはアーティストが実際に、Connect専用のコンテンツを作成したり、そこでファンとの交流に時間を割いたりするかどうかにかかっている。他のソーシャルメディアで投稿した内容を同期させるかもしれないし、全くConnectの存在を忘れてしまうかもしれない。Appleがアーティストに対し、ユーザーがストリームする音楽を探すタブで発見されやすくするといった優遇措置を提供し、Connectの利用を促すことも考えられる。しかし、友人の投稿を見るという日常的な動作がなければ、Connectタブにユーザーを誘導するのは難しいかもしれない。また、ユーザーの聴いている音楽を読み取り、自動でアーティストがフォローされるのではなく、ユーザーがフォローするアーティストを手動で登録しなければならない。このことからもアーティストはConnectという新たなフィードに投稿するのを手間に感じるかもしれない。

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最終的な評価:悪くない。
Apple Musicは申し分ないストリーミングサービスだ。他の競合と比べて、大幅に優れているのでも、劣っているのでもないだろう。Appleが今後どのようにマーケティングするかで結果が変わってくる。

Appleが、iTunesのクロスプラットフォーム対応を充実させ、iOSに予めインストールし、端末の購入には無料でサービスを付与したり、著名人と独占契約を獲得するのに動けば、Appleよりリソースの少ないSpotifyや音楽をさほど優先していないと思われるGoogleを軽く超えることができるかもしれない。

しかし、ユーザーに登録を促す無料バージョンや一つのアカウントからでも手軽に利用できる価格、そして目を引くプロダクトのイノベーションが無いのなら、まだ利用していない人や既に他のストリーミングサービスを利用している人をApple Musicに惹きつける要素に欠けるだろう。今月末のローンチ後、サービスを実際に試してみたら、もう少し状況が分かるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

中高生に人気爆発のメッセージングアプリJottはデータプラン不要のメッシュネットワーク

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【抄訳】
FacebookやYikYakなどが若いユーザを増やそうと努力している中で、あるスタートアップが10代のユーザの重要な属性…お金がないのでデータプランを使えない…を利用して急成長している。

データプランやWiFi接続の要らないメッセージングアプリJottが、中学生や高校生にうけている。協同ファウンダのJared Allgoodによると、アクティブユーザ数は2月の15万から3月には50万へと、大きく伸びた。

彼によると、その後もユーザ数は1日に15000〜20000名ずつ増えている。より客観的と思われるApp Annieでもそんな数字だ。4月半ばには、iOSのソーシャルネットワーキングアプリ(合衆国のみ)の上位75にランク入りした。

Jottを使うと、データプランのないティーンたちがiPodやiPadを使って、学校から100フィートの範囲内ならクローズドなネットワークの上でテキスティングできる。お互いの電話番号も不要だ。

Pew Researchによると、13-17歳層の88%が携帯やスマートフォンを持っているが、その全員がデータプランを使えるわけでもないし、学校でインターネットにアクセスすることもできない。テキストで、無限に長時間おしゃべりをしたい年頃なのに、それができない。

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テキストメッセージは通常、電話機から至近のセルタワーへ行く。それから、そのほかのセルタワー(複数)を経由して、相手に届く。しかしJottは、セルサービスを使わずにデバイスからデバイスへ直接、メッセージを送る。ただし、お互いの距離が十分に近いことが条件だ。

Jottの仕組みは、物理的にはBluetooth Low Energy(Bluetooth LE)や、各ユーザから100フィート以内にあるルータを利用するメッシュネットワークだ。それは、グループメッセージングアプリFireChatと同じだが、Jottはネットワーク内の個人にメッセージできる。

この、ひとつのネットワーク内で直接、ピアツーピアでメッセージングできる機能が鍵だ。FacebookやSnapchat、Instagramなどもティーンのあいだで人気のソーシャルネットワークだが、しかし何と言ってもダントツはテキスティングだ。右のデータによると、ティーンの87%が毎日テキスティングしているのに対し、次位のFacebookを使っているティーンは61%だ。

テキスティングが好まれる理由は未だによくわからないし、客観的な調査データのようなものもない。友だちにメッセージを送る方法として、いちばん簡単だからか? 理由はともあれ、なにしろ多い。大人より多い。Pewの調査では、女子は毎月平均3952通のテキストメッセージを送っており、男子は2815通で、これも少なくはない。

はっきりしているのは、iPodなどよりもスマートフォンを持ってるティーンの方が、激しくテキスティングしていることだ。2012年のPewの調査によると、ヘビーなテキスターの41%、ほどほどのテキスターの33%がスマートフォンを持っているが、軽度のテキスターでスマートフォンの保有者は19%にすぎない。

しかしJottがとくに中学生に人気があるのは、彼/彼女らは高校生に比べてスマートフォンを持ってる者が少ないからだ。Jottを使うと、スマートフォンやデータプランのない者でもテキスティングでき、友だちとメッセージングできる。

“データプランのない子はいても、iPodはほとんどの子が持っている”、と10代前半の娘のいるAllgoodは語る。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

WWDC:iTunes App Storeの登録アプリケーション数は150万超でダウンロード回数は1000億

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今年のWorldwide Developers Conferenceでは、App Storeについての報告の順序がいつもとは違って後回しとなっていた。ただし内容はいつもと同じで、いろいろと細かな数値を報告してくれた。まず登録アプリケーションの数は150万本となったとのこと。これはGoogle Playの登録アプリケーション数を上回る数となっている。ダウンロード数は1000億を超え、開発者たちの収入もこれまでの累計で300億ドルを超えることとなったようだ。

「開発者のみなさんの努力に感謝したい」とCEOのTim Cookは話していた。

ただし、成長の速度という面で見るとやや鈍化の兆しもあるようだ。Andreessen HorowitzのパートナーであるBenedict Evansのツイートによれば、開発者のこの12ヶ月間での収入は100億ドルで、これは昨年と同じレベルであるとのこと。

もちろんAppleにとって主要な収益源はハードウェアであり、App Storeからの収益に依存しているというわけではない。ただしアプリケーションやその他のサービスの充実は、消費者や開発会社などからの注目を得るために欠かせないものだ。そうした面での充実があってこそ、ハードウェアプロダクトも売れていくわけだ。巨大な存在となったApp Storeの成長へのテコ入れとしての役割も考えつつ、NEWSや新しい音楽サービスなどの投入を行なっているわけだ。

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アプリケーションのダウンロード頻度は毎秒850本のペースとなり、1人のユーザーは平均して119本のアプリケーションをインストールしているのだとのこと。こうした状況もふまえて、ディープリンクの実装なども行うようになっているわけだ。

過去のデータとも比較しておこう。2014年WWDCでは、登録アプリケーション数は120万で、ダウンロード数が750億だった。2013年のWWDCではアプリケーション数が90万でダウンロード数が500億だった。なお、ある調査によればGoogle Playに現在登録されているアプリケーションは143万本だとのこと。Google自身の公式発表では「100万本以上となっている。

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(翻訳:Maeda, H

「本物の定額制音楽サービスを見せる」 LINE MUSIC仕掛け人、狙いを語る

LINE MUSICの社長であり、LINEの取締役CSMO最高戦略・マーケティング責任者舛田淳氏(左)と、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長(右)

いよいよ「LINE MUSIC」が始まる。5月28日にティザーサイトを開設し、近日中にサービスを開始することを公表した。音楽配信を主体とする事業会社、LINE MUSICに共同出資するエイベックス・デジタル、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ユニバーサルミュージックの音楽レーベル3社と共同でビジネスを開始する。

LINE MUSICのティザーサイト

LINE MUSICのティザーサイト

それにしても、スタートまでに紆余曲折があったものである。LINEは幾度も音楽配信への参入宣言をしているが、具体的な動きをなかなか出せずにいた。そもそも定額制音楽サービスは、日本では芽が出ていない。海外大手「Spotify」も近日中の日本参入を公表しつつも具体的な動きが見えない状況にある。きょう未明には、Appleが月額9.99ドルの「Apple Music」を世界100カ国で6月30日に開始すると発表。日本でもまもなく登場することが予想される。

今回LINEはようやくサービス開始にこぎつけたわけだが、スタートが難航した理由はなんだったのか。そしてLINE MUSICは、どうやって日本に定額制音楽配信を根付かせようとしているのか。LINE MUSICの社長であり、LINEの取締役 CSMO 最高戦略・マーケティング責任者である舛田淳氏と、音楽レーベル側の代表として、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長に話を聞いた。

残念ながら、この記事が公開される段階では、LINE MUSICのサービスは開始されていないため、料金体系を含めたサービスの詳細は明かすことができない。そのため、ビジネス状況や戦略を中心に説明していただいた。サービスの詳細を含めた戦略と展開については、別途近日中にインタビューの第二弾を公開する予定である。

LINE MUSICの社長であり、LINEの取締役CSMO最高戦略・マーケティング責任者舛田淳氏(左)と、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長(右)

LINE MUSICの社長であり、LINEの取締役CSMO最高戦略・マーケティング責任者舛田淳氏(左)と、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長(右)

4度目の正直だったLINE MUSIC

――LINEは音楽事業への参入にかなりこだわってきたように見えます。LINE MUSICはなかなかスタートできなかった。これまでの経緯を教えてください。

舛田氏(以下敬称略):LINEがまだ生まれる前のネイバージャパンの時代……2010年頃に検索サービスを日本で立ち上げた時代から、「検索と音楽」であったり「まとめと音楽」であったりというものが何かないかと考え、「NAVER MUSIC」という企画を立てました。「まとめ」というキュレーションメディアにストリーミングをくっつけたり、検索にストリーミングメディアをくっつけたりというモデルをしたかったんです。

その時、企画書をもって色んな音楽メーカー・レーベルを回らせていただいたのですが、一言でいえば「ダメ」でした。市場の環境がまったく整っていなかった上に、私どもも「検索サービス」という意味ではパワーがまったく足りませんでした。「NAVERまとめ」も成長の過程にあった状態でしたし、この企画自身はなくなりました

さらにそれ以降、本日に至るまで3回くらい、過去に「LINEは音楽をやります」と宣言してきました。第一弾は2012年のカンファレンスにて、話をさせていただいて、その時は大手音楽配信サービスとのパートナーシップを検討していました。しかしこれも、私たちが思い描くサービスができそうになかった。サービスとして十分ではないものは出さない、という判断をして、企画をまた白紙にしました。

次は私どもが単独で、2013年に「LINE MUSIC」を立ち上げて、そこに対して、各メーカー・レーベルさんに参画いただく、という形で準備を進めました。我々は「LINE MUSIC 1.0」と呼んでいるんですが、これは予定日の1週間前になって、サービスのローンチを止めました。ちょうど1年前でしたが、アプリマーケットの審査も通しましたし、記者会見の場所すら押さえていたんです(笑)。

でも「1.0」はアプリごとつぶし、ゼロにしました。そして、それを経て出来上がったのが、今のLINE MUSICです。

「腹をくくって一緒にやろう」

――ローンチ直前まで進んでいた「1.0」を捨てた理由は? どんなきっかけがあったのですか?

linemusic04舛田:今、思い返せば、実は私も迷いながら、GOを出そうとしていたんです。市場環境が整わないなら、まず出してみて、そこから変えていこうと。

日本において「ユーザーの音楽体験を変える」「海外と同じように、ダウンロードからストリーミングに変えていく」には、いくつかの条件があると思っているんです。それは「主要メーカーが参加しているか」や「豊富な楽曲数」であるとか「新譜があるか」であるとか、「手に入りやすい価格帯か」「オンデマンドであるか」「ユーザーにデリバリーする仕組みとして特徴があるか」、あとは「アーティストから見てプロモーション力があるか」といったところでしょうか。こういったところが、「LINE MUSIC 1.0」は、高いレベルになかった。

ローンチ前の段階でも、楽曲をご提供いただくことについて、最後の最後の段階で返事をいただけていなかったレーベルさんもいたんです。ソニー・ミュージックさんなんですが(笑)「前向きなようだが、まだGOは出ていない」という話だったので、ある種の直談判ということで、ソニー・ミュージックさんを訪ねていったんです。

日本の音楽市場の未来、問題点、アーティストのモノ作りへの想い、LINEとしての構想など、お互いに素直に話をさせていただいたのですが、その時に、ソニー・ミュージックの村松(俊亮社長)さんに思ってもみない言葉を言われました。「今よりも、もっと腹くくって一緒にやらないか?」と。

——渡辺さんにおうかがいします。ソニー・ミュージックはなぜ「腹をくくって一緒にやろう」とLINE側に言ったのですか?

渡辺:レコード会社は、音源を作り、ユーザーに届けるのが仕事です。当時も今も大きいのは「パッケージメディア」。特に日本はパッケージの売り上げが多いのが特徴です。ですからビジネスプランもそこが中心になります。

その一方で現在は、映画業界のように「ウィンドウ」的にサブスクリプションを捉えていかなくてはいけない時代です。ファースト・ウィンドウはパッケージとダウンロードで、どちらかといえばアーティストのファンに向けて売っていく。その後にウィンドウをつけてサブスクリプションに持っていく……というプランが、当時の構想でした。

ただ僕たちが重要だと思ったことがあります。アーティストのファンはもちろん大切なんですが、やはり「音楽ファン」に広くアプローチして、そこからアーティストのファンになっていただきたい。そういうやり方はウィンドウ戦略とはまた違うものです。

そういう発想でいくと、やっぱり一番一緒にやりたいのはLINEだよね、と社内で話していたのですが、そこにLINEからサブスクリプション型の提案がきていました。ならば、僕たち側からも逆提案しよう、という形になったんです。

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舛田:LINE MUSICを立ち上げる前に、ユーザーアンケートをとりました。「音楽は好きですか?」「音楽は聴きますか?」という問いに対しては、9割以上の方々が「聴きます」「好きです」と答えるんです。音楽はいつの時代も皆が好きで、魅力的なコンテンツなんです。

ただ、今の市場環境としては、パッケージ販売が落ちてきています。ある種、世界の中で希有な存在とされてきた日本のパッケージ市場ですら、ダウントレンドに入ってきた。それを埋めるはずのダウンロードも世界ではダウントレンドに入ったと言われています。

音楽は好きだが、そこにお金を払う、という状況から離れ始めた、というのが今の状況です。

日本のユーザーの多くは「本物のサブスクリプション・サービス」を知らない

――LINE MUSIC 1.0は、音楽レーベルとLINEの双方で「これじゃない」という思いがあったようですが、具体的に何が足りなかったんでしょうか。

舛田:今の時点に至るまで、日本のユーザーの多くは「本物のサブスクリプション・サービス」を知らないんですよ。カタログが揃っている、と言える状態には一回もなったことがない。なおかつ、手に入りやすい価格でもなかった。いままでもいくつか出てはいますが、多くのユーザーを熱狂させるものには、なれていなかった。

LINEが「1.0」として出そうとしていたものも、「業界標準価格の1メニューだけで、メジャーレーベルも参加せず、カタログも不十分」という形でした。その当時の判断として、これでは熱狂させる「本物のサブスクリプション」にはなっていない、という判断をしました。

逆にいえば「カタログが揃っている」「手に入りやすい価格である」のが、これからスタートするLINE MUSICである、と言えます。

フリーミアムモデルは音楽市場の成長につながらない

――海外のストリーミングサービスは、無料の機能制限版+広告の無料会員と、月額10ドル程度の有料会員の2階建ての「フリーミアムモデル」が主流です。LINE MUSICはどのような料金体系なのでしょうか?

舛田:まだ詳細はお伝えできませんが、日本のLINE MUSICに関していえば、一般的なフリーミアムモデルを採用しません。海外でフリーミアムのストリーミングはここ数年伸びていますが、今年に入り「本当に大丈夫?」という声もアーティスト側から聞こえてきています。市場を本当に成長させてくれるの? という疑問が出てきていますね。テイラー・スウィフトがフリーミアムサービスには楽曲を提供しないと発言したのは印象的でしたね。今後世界でのフリーミアムモデルの環境変化には、注目しています。

――フリーミアムモデルは無料で音楽を聴く人が増えすぎて消耗戦に陥っている、との批判があります。音楽業界側からは無料型ではなく「有料型」で、という意見が強いのですが、LINE MUSICもそれに倣うということでしょうか。

舛田:日本のユーザーは素晴らしい。これまでも音楽に価値を認め、お金をお支払いいただいているわけです。グローバルでフリーミアムが流行っているからといってそれを闇雲に日本のサービスに持ち込むべきでない、という部分は、コンテンツ側からの要請ではなく、私自身も「そうすべきだ」と思っているからです。コンテンツ、国、市場によって、それぞれ最適なモデルにしていくべきです。

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コミュニケーションに音楽を取り込む

舛田:昔はレコード店で楽曲を買いました。情報はテレビ・ラジオなどのマスメディアで仕入れる。それがデジタル化し、次は「検索」や「ポータル」で知るようになりました。今はさらに時代が変わり、「ソーシャルメディア」で知るようになりました。ソーシャルメディア・サービスが人のコンテンツとの出会いを演出するメディアになったんです。

しかし一方、一般的なSNSは密接なクローズドなコミュニケーションの中には入り切れていません。我々が目指すところであり、求められていることは、LINEが担っているリアルな人間関係の中のリアルなコミュニケーションの中に音楽の話題を入れていくことです。

学生時代は、とにかくたくさん、友人と音楽のことを話していたはずです。でも今はそんなにしなくなっている。「好きなのに」「聴くのに」です。

そこに矛盾が生まれ始めている。ユーザーにとっても、提供するプラットフォーム側にとっても、音楽を提供する側にとっても、です。今回は、我々のコミュニケーションプラットフォーム上に音楽コンテンツを置くことで、コミュニケーションの中でもう一回音楽を採り上げていただく環境を作る、ということが、一つの大きな方向性です。

「着うた」以上の巨大市場を期待するレコード会社

――音楽レーベルとしては、LINE MUSICでどのくらいのユーザー数を獲得したいと考えていますか?

linemusic02渡辺:着うたの時もユニークなユーザーが、最盛期には約2000万人くらいいました。LINE MUSICをはじめとしたストリーミング・ミュージック全体で、2000万人くらいのユーザーに楽しんでもらえるようになれば……と思います。非常に大きなデジタルでの音楽マーケットができるのではないか、と期待しています。

2000万人に楽しんでもらえるような市場になれば、アーティストへの分配も、着うた時代以上に可能になるでしょう。特に日本においては、フリーミアムによる広告モデルでのレベニューシェアでは、そうした規模のビジネスは非常に難しいと思います。

日本で定額音楽配信サービスはブレイクするか?

定額制音楽配信の多くは、音楽をPCやスマートフォンなどにダウンロードせず、ストリーミング形式で再生する。すでに海外では、CDやダウンロードをしのぐ勢いである。アメリカ・レコード協会(RIAA)の発表によれば、2014年のアメリカの音楽事業では、ストリーミング・ミュージックの売り上げは18億7000万ドル。ついに、CDの売り上げ(18億5000万ドル)を越えてきた。

しかし、日本ではどうも伸びない。日本でも「KKBOX」や「レコチョク Best」、「dヒッツ」などの先行サービスはあるものの、ブレイクするには至っていない。海外の大物を含め、「本命」と呼べるサービスが不在であるから……ともいえる。

5月27日には、エイベックスとサイバーエージェントが共同出資する「AWA」がスタートして話題になったが、メッセージングの分野で圧倒的なシェアを持つLINEが参入するとなれば、注目されるのも当然といえる。

LINEとしてはもちろん、定額制音楽配信の中でトップを狙う。競合となるサービスも今年中に続々スタートするとみられており、舛田氏は「2015年というのが、日本の音楽市場にとってターニングポイントになるのではないか。いや、そう”したい”」と意気込みを語る。

では、具体的にどのようなサービスになるのか? それはどういう狙いで組み立てられたものなのか? そうした点は、サービスがスタートした段階で改めて解説していくこととしたい。