実在しているような合成アバターがしゃべるプレゼン動画を簡単に作れるSynthesiaの技術

AIを利用して合成ビデオを作成するスタートアップ企業のSynthesia(シンセシア)は、不気味さとすばらしさの微妙な境界線をうまく渡り歩いている。

同社は米国時間12月8日、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)が主導するシリーズBラウンドを5000万ドル(約56億8000万円)でクローズしたと発表した。このラウンドには、GVおよび既存投資家のFirstmark Capital(ファーストマーク・キャピタル)、LDV Capital(LDVキャピタル)、Seedcamp(シードキャンプ)、MMC Ventures(MMCベンチャーズ)も参加した。

Synthesiaは、単なるテキストやスライドを使ったプレゼンテーションを、しゃべるアバター付きのビデオに変えることができる。ユーザーは俳優の演技から作られたすでに用意されているアバターを利用することもできるし、動画をアップロードして数分で自分自身のアバターを作ることもできる。また、ユーザーは録音した自分の声をアップロードすることもでき、その声を使って何でも言えるように変換させることができる。

このスタートアップ企業は、インターネット上の強力なツールのほとんどが悪用可能であるという事実を認識しているので、誰でもこのプラットフォームを利用できるようにするのではなく、企業顧客のみに限定している。同社の顧客は、主にトレーニング用ビデオにこのツールを使用しているというが、その他にもチームへの月例報告や、通常は電子メールで送られてくる情報の配信などにSynthesiaを使っているという。

おもしろいことに、創業者のVictor Riparbelli(ビクター・リパルベリ)氏は、ユーザーの行動は必ずしも当初の予想とは一致しなかったと述べている。ビデオ制作部門で多く利用されるというよりも、むしろ組織内の他の部門の人々がこのツールのパワーユーザーになっているのだ。

「Synthesiaを導入する以前は、PowerPoint(パワーポイント)でスライドデッキを作成したり、Word(ワード)で文書を書いたりしていた人が、今では実際に、動画コンテンツを制作することができるようになっています」と、リパルベリ氏はいう。「これこそが、AIの観点から私たちを急速に成長させている重要な点ではないかと思います」。

4月に1250万ドル(約14億2000万円)のシリーズA資金調達を実施して以来、Synthesiaはユーザーが独自のアニメーション話者の作成をさらに容易にする機能を追加しており、現在は1000種類のカスタムアバターがこのプラットフォーム上で使われている。リパルベリ氏は、顧客の一例としてErnst & Young(アーンスト・アンド・ヤング)を挙げた。この企業では、35人のパートナーがそれぞれのアバターを持ち、社内コミュニケーションと顧客とのコミュニケーションの両方に向けてビデオを作成しているという。

この「誰でもビデオを作ることができる」というコンセプトは、Canva(キャンバ)に似た雰囲気を強く感じさせる。評価額が400億ドル(約4兆5000億円)を超えたオーストラリアのスタートアップ企業であるCanvaは、デザイン部門以外の組織に、何でもデザインできる能力を解放した後、ロケットのように急成長した。Canvaは最近、独自のビデオ製品も発表しており、既存のデザインやスライドデッキをアニメーション化し、生き生きとしたビデオに変えることに力を入れている。

Synthesiaはさらに一歩進んで、無名の俳優や自分の会社のCEOなど、まるで実在の人物のように見えるアバターを使ったビデオを作成することができる。

このような難問に取り組んでいる企業はSynthesiaだけではない。イスラエルのD-IDという会社は、Disrupt 2021(ディスラプト2021)で実際にデモを行い、人物の静止画を動画コンテンツに変換する方法を披露した。

つまり、いくつかの意味で競争が始まっているのだ。AIやアバターを使って動画作成を容易にしようとする企業は、リアリティを高めたり、感情表現に順応性を持たせるといったことで競うだけでなく、ユーザーの安全性や自社プラットフォームの信頼性を確保することにも力を入れなければならない。

この種のツールが、多くの人々に誤解を与えたり、危害を加えたりするために使われる可能性があることは明白であり、このようなツールを作成する企業は、それが公正に使用されるということを保証する責任がある。

Synthesiaでは、明確な同意なしに誰かを合成することはないと明言している。また、この技術には同社が完全にコントロールしているオンレール体験を通してのみアクセスできる。

それはともかく、近い将来、あなたの部署の責任者やCEOのように見えるけれど実際は本人が出演していないビデオを見ても驚いてはいけない、ということだ。

画像クレジット:Synthesia

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(文:Jordan Crook、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Pocket RDが4.5億円調達、メタバース向け3Dアバターの自動生成・編集システムやNFT 3DCGマーケットプレイス開発強化

PocketRDが3DCGデータの二次流通・二次創作が可能なブロックチェーン活用サービスのβ版公開

Pocket RDは、シードBラウンドにおいて、第三者割当増資による4億5000万円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のKDDI Open Innovation Fund 3号(グローバル・ブレイン)、また講談社、大日本印刷(DNP)、SMBCベンチャーキャピタルが運営するSMBCベンチャーキャピタル6号投資事業有限責任組合。これにより、同社の資本業務提携先はスクウェア・エニックス、KDDI、講談社、大日本印刷の計4社となった。

調達した資金は、アバターの自動生成・編集システム「AVATARIUM」と、ブロックチェーン技術を活用したNFT 3DCGマーケットプレイス「Pocket Collection」の開発強化にあてる。また、資本提携先のKDDI、講談社、大日本印刷との業務提携による事業推進強化を行う。

すでにKDDIとは事業連携を開始しており、AVATARIUMスキャナーをGINZA456 powered by KDDIやau Style SHIBUYA MODIなどへ設置、オリジナルアバターと「バーチャル渋谷」が連携させた。「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス 2021 ~Fun for Good~」においてコラボレーションを行い、ユーザー自身をデフォルメしたアバターや、有名キャラクターの衣装を提供し、オリジナルアバターでバーチャルハロウィーンを楽しめるようにした。

今後は、アバター生成技術やブロックチェーンを活用したマーケットプレイスをau版メタバースで活用してもらい、リアルとバーチャルが連携した「バーチャルシティ」でユーザーだけのオリジナルアバターで楽しめる体験や、生活者自身のデジタルデータを両社で協力し生み出すという。

アバターの自動生成・編集システム「AVATARIUM」

AVATARIUMは、撮影から用途に合わせたアバターをすべて同時に自動生成することを可能とし、外部環境へもシームレスなエクスポートを実現するという。エクスポート時の対応ファイル形式は、OBJ、FBX、PLY、glTF、VRMを実装。特殊なアバターを活用するメタバースの対応も完了しており、今後も業界ニーズに合わせて順次機能追加するとしている。Pocket RDが4.5億円調達、メタバース向け3Dアバターの自動生成・編集システムやNFT 3DCGマーケットプレイス開発強化

ブロックチェーン技術活用のNFT 3DCGマーケットプレイス「Pocket Collection」

Pocket Collectionは、ブロックチェーンを活用し、3D技術を活用したアートワークなど、デジタル創作物全般の大量保存・2次創作・2次流通・販売が可能なサービス。作品の2次創作・2次流通においても権利を管理し、利益分配を行える。クリエイターの創作活動における中心的なプラットフォームとなれるように大容量ストレージ機能によるポートフォリオ掲載機能、プロジェクトマネジメント機能によるグループによる制作活動、マーケットプレイス機能による購入・販売も可能にし、創作活動を全面的に支援するとしている。Pocket RDが4.5億円調達、メタバース向け3Dアバターの自動生成・編集システムやNFT 3DCGマーケットプレイス開発強化Pocket RDが4.5億円調達、メタバース向け3Dアバターの自動生成・編集システムやNFT 3DCGマーケットプレイス開発強化

NVIDIAが多機能でリアルなAIアバター・AIアシスタントが作れるプラットフォーム「Omniverse Avatar」を発表

NVIDIAは11月9日、仮想コラボレーションとリアルタイムシミュレーションのためのプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」(オムニバース)上で使えるインタラクティブなAIアバターが作れる機能「Omniverse Avatar」(アバター)を発表した。

Omniverse Avatarは、単にインタラクティブに動かせるレンダリングされた3Dキャラクターを作るだけではなく、音声、AI、自然言語理解、レコメンデーションエンジン、シミュレーションといったNVIDIAのテクノロジーが駆使され、見たり、聞いたり、多言語で話したりができるAIアシスタントとして機能する。NVIDIAの創業者でCEOのジェンスン・フアン氏はこれを、「インテリジェントな仮想アシスタントの夜明け」と称している。

NVIDIA Omniverseの新機能として追加された「Omniverse Avatar」には、次の要素が盛り込まれている。

  • 音声認識:複数言語の音声を認識するソフトウェア開発キット「NVIDIA Riva」をベースに会話の応対を行う
  • 自然言語理解:「NVIDIA Megatron 530B大規模言語モデル(Large Language Model)」をベースに、複雑な文書の作成、幅広い分野の質問への回答、長いストーリーの要約、他言語への翻訳などを行う
  • レコメンデーション エンジン:大量のデータを処理し、賢明な提案を行うことを可能にするディープラーニング レコメンデーション システムを構築するためのフレームワーク「NVIDIA Merlin」を利用
  • 認知機能:ビデオ分析用のコンピュータービジョン・フレームワーク「NVIDIA Metropolis」を活用
  • アバターのアニメーション:2Dおよび3DのAIによるフェイシャルアニメーションとレンダリングの技術「NVIDIA Video2Face」と「NVIDIA Audio2Face」を使用
  • これらの技術がアプリケーションに組み込まれ、「NVIDIA Unified Compute Framework」を使ってリアルタイムで処理される

フアン氏のアバターを使ったデモでは、同僚とのリアルタイムの会話が披露され、生物学や気象科学などの話題について語った。また、別のデモでは、レストランの2人の客にカスタマーサービス担当アバターが対応し、ベジタブルバーガーとフライドポテトと飲み物の注文を受けることができた。さらに、騒々しいカフェでビデオ通話をする女性の音声を正確に聞き取り、その言葉をリアルタイムで書き写し、その女性と同じ声とイントネーションで、ドイツ語、フランス語、スペイン語に翻訳して見せたとのことだ。

サイバーエージェントAI Lab・大阪大学・東急ハンズが操作者4名ロボット20体による自律・遠隔ハイブリット接客の実証実験

サイバーエージェントAI Lab・大阪大学・東急ハンズが操作者4名・ロボット20体による自律・遠隔ハイブリット接客の実証実験サイバーエージェントは11月4日、同社研究開発組織AI Lab、大阪大学大学院基礎工学研究科東急ハンズと共同で、東急ハンズ心斎橋店(大阪市中央区)にて、操作者4名が遠隔対話ロボット20体による接客を行い、店舗における顧客満足度を向上できるかを検証すると発表した。実証実験は、2021年11月18日から11月29日まで行われる。調査結果については、2022年2月以降に発表の場を設ける予定。

これは、内閣府が主導するムーンショット型研究開発事業の一環である「ロボットによる次世代サービスの実現」をテーマにした実証プロジェクトの第3弾。第1弾と第2弾では、市役所でのコミュニケーション活性や空港での顧客体験創出の検証を行っており、今回は東急ハンズ心斎橋店において、遠隔対話ロボットによる「多接点での迅速な質問対応」「きっかけの提供」が、顧客の満足度や新しい体験価値につながるかどうかが検証される。つまり、「商品の場所がわからない」とか「おすすめの商品を知りたい」といった顧客の「困った!」に迅速に対応できるかが調査される。

具体的な調査内容は次の4つ。

  1. 複数体のロボットを4人のオペレーターが操作することで、顧客に対し迅速な質問対応ときっかけの提供をどれだけ遂行できるか
  2. 複数体のロボットを4人のオペレーターが操作することで、顧客の満足度を高めることができるか
  3. 東急ハンズのスタッフではないオペレーター4人によるロボット接客が、東急ハンズの熟練スタッフに比べてどの程度パフォーマンスを発揮できるか
  4. 複数体のロボットを4人のオペレーターが操作する際に生じる利点や課題

フェイスブック、独自ARフィルター作成アプリ「Polar」発表

開催したAR/VRに焦点を当てたイベント「Connect」で、Facebookはより多くのクリエイターを拡張現実(AR)の世界に呼び込むことを目的とした新アプリを発表した。

画像クレジット:Facebook

「Polar」と名づけられたこのiOSアプリは、Spark ARプラットフォームを利用して、FacebookやInstagram用に独自のARフィルターを作成することができる。ユーザーは、既存のフレームワークよりもはるかに軽い技術的負担で、テンプレートを使いこれらのフィルターを視覚的に簡単に作成することができる。

nstagramが「Reels」プラットフォームを通じて動画をより強力に推進していることから、ユーザーの間でARフィルターへの関心が高まっており、FacebookがクリエイターにARフィルターを売り込むチャンスになっている。

このアプリはまだかなり初期の段階にあるようで、Facebookによると、2021年後半にクローズドベータを開始し、特定のクリエイターを厳選して参加させる予定だという。最終的には、誰もが自分のARフィルターを作成できる無料アプリとして、広く展開していく予定だ。

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画像クレジット:Facebook

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(文:Lucas Matney、翻訳:Katsuyuki Yasui)

Robloxが今後の計画を発表、アバターの改良やNFTのような限定アイテム販売などを予定

Roblox(ロブロックス)は、米国時間10月14日に開催された年次開発者会議で、子どもや若者に人気の高い急成長しているオンライン・マルチプレイヤー・ポータルの今後について展望を示した。

基調講演では、Robloxの共同設立者兼CEOであるDavid Baszucki(デイビット・バシュッキ)氏が、計画の概要を説明した。それによると同社は、プレイヤーのアバターを磨き上げ、ゲーム内における新たな収益化の流れを導入し、ゲームとソーシャルネットワーキングの交差点で同社を大きな成功に導いた、ユーザー生成コンテンツを創造している開発者の体験を能率化させていくという。

関連記事:ゲーミングプラットフォームのRobloxが約3.7兆円の評価額7倍で資金調達、直接上場に向けて準備

Robloxは、ブロック状の比較的素朴なキャラクターモデルとゲームグラフィックスで知られているが、そのスタイルが同社の爆発的な成長を妨げることはなかった。しかし、Robloxはプレイヤーのアバターを、よりリアルでカスタマイズ可能なものにしようとしている。これは、若いコアユーザーが年齢を重ねても魅力的なプラットフォームを維持し、仮想世界に作られた無限の拠点の中で、さまざまな形の自己表現を可能にするという、同社の目標に合致した選択である。

「Robloxには際限がないことを、人々は理解すると思います」と、Robloxの最高製品責任者を務めるManuel Bronstein(マニュエル・ブロンスタイン)氏は、TechCrunchに語った。

同日、Robloxはこの方向性に沿ったいくつかの重要な変更を発表した。1つ目はLayered Clothing Studio(レイヤード・クロージング・スタジオ)と呼ばれるもので、これはアバターの衣装をよりリアルでダイナミックなものにするビジュアル・アップデートだ。これによって、例えばあなたが気に入ったRobloxのバーチャルなジーンズ・ジャケットを、あなたのキャラクター・モデルが人型であっても、恐竜であっても、体型に合った姿で着ることができる。これらの衣服は、より写実的なゲームで見られるように、キャラクターの身体にぴったりとフィットし、自然なドレープを描く。

この新たに発表されたRobloxのアバター・アップデートは、現在のRobloxの象徴ともいえるレゴのようなブロック状の外見に、より多くのカスタマイズ性とリアリティを注入することを目的としている。ブロンスタイン氏は、今回の変更を、Robloxのソーシャル体験で中核をなすアバターの「莫大な進化」と表現している。「自己同一性はメタバースの重要な柱であり、自分のユニークなアバターに合わせて衣服をきちんとカスタマイズできることは、個人の表現において最も重要な能力です」と、バシュッキ氏は基調講演で語った。

ゲーム内アイテムを販売するビジネスが活況であることを考えると、Robloxには、バーチャルなファッションシーンを、より洗練された実在感のあるものにするための経済的な動機がたっぷりとある。Epic Games(エピック・ゲームズ)のような、競合他社に遅れを取るわけにもいかない。Epic Gamesは「Fortnite(フォートナイト)」のキャラクターデザインと、1件で5000万ドル(約57億円)もの収益を上げることができるブランドパートナーシップの両面で、業界をリードする存在だ。Robloxは独自のブランドとIP(知的財産)との提携を持っているが、さらに見た目に魅力的なバーチャルグッズの販売を広く手がけるようになれば、その旨味はどんどん増すだろう。

画像クレジット:Roblox

さらなるリアルさを目指して、Robloxは開発者に「Dynamic Heads(ダイナミック・ヘッズ)」と呼ばれる機能のベータ版の提供も開始した。これはアバターの顔がアニメーションするというもので、フェイシャルトラッキングと組み合わせて、キャラクターモデルの口が言葉に合わせて動くようにすることもできる。これには、Robloxが2020年末に買収したデジタルアバターのスタートアップ企業「Loom.ai(ルーム・ドット・エーアイ)」の技術が活用されている。同社はまず、プラットフォームのルーツを思わせるブロックのような頭のデザインをいくつか用意した。開発者はこれらを使って、新しいフェイシャル・アニメーションを試すことができるようになる。最初はユーザーに提供せず、まず導入の第一段階として開発者の手に渡ることを、Robloxは望んでいる。

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Robloxに仮想世界が今本当に必要する「ボイスチャット」機能が登場予定

Robloxは、2021年9月に発表したボイスチャットの大規模な展開を続けており、これまでテキストチャット中心だった体験を、より自然で没入感のあるインタラクションへと急速に移行させようとしている。また、同社は今回、13歳以上の全ユーザーが年齢認証を選択できるようになったことも発表した。この審査過程をパスすることによって、一部のユーザーは導入予定の新機能にいち早くアクセスできるようになる。認証されたユーザーは、Robloxの新しいボイスチャット機能を「2021年の秋の終わり頃から」利用できるようになるという。

アバター体験の向上に加えて、Robloxは限定アイテムを導入する計画も発表した。これは、にぎやかなゲーム内経済からお金を稼ぐ(現実のお金と交換できるRobuxという形で)ための興味深い新たな方法だ。Robloxのクリエイターは、自分がデザインしたアイテムを限定数または期間限定で販売することができる。ゲーム内で確立された仮想経済に、コレクションする楽しみという要素を取り入れるわけだ。クリエイターは、Robloxのゲーム内アイテムをいくつかのNFTと共有し、ロイヤリティを有効にすることで、そこでの販売から収益を得ることもできる。「最終的には、アイテムの再販に関するルールを、ユーザーが設定できるようにするという発想です」と、ブロンスタイン氏はNFTとの関連性について、TechCrunchに語った。

開発者はまた、RobloxがOpen Cloud(オープン・クラウド)と呼ぶ新しいシステムを通じて、そのプラットフォーム用のコンテンツをより柔軟に作成できるようにもなる。Open Cloudでは、開発者はRoblox自身の開発環境であるRoblox Studio(ロブロックス・スタジオ)に制限されることなく、サードパーティ製ツールでコンテンツを作成し、それをRobloxにプラグインすることができる。

同社はクラウド化を推進しており、Robloxのコンテンツ制作者に、より多くのデータ・ストレージを提供し、このプラットフォームを、開発者にとって全般に魅力的で汎用性の高い場所にしようとしている。Robloxはまた、よりリアルな衝突物理学やパラシュートが展開するようなビジュアルを表現できる空気力学など、開発者がすぐに遊び始めることができるグラフィックスの強化も発表した。

2021年には、Robloxはそのユーザー生成ゲームの世界でコンテンツを作成した開発者に、総額5億ドル(約570億円)を支払うことになる見込みだ。3年前の7000万ドル(80億円)と比べると、どれほど大きく成長しているかがわかるだろう。

「私たちは、このメタバースが完全にユーザーによって生成されるものになると確信しています」と、ブロンスタイン氏はいう。「そして、誰もがクリエイターになれるようにすることで、より没入感が増した、多くの種類(の体験)をプラットフォーム上で得ることができるようになると、私たちは考えています」。

画像クレジット:Roblox

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

本田技研工業がeVTOL、アバターロボット、宇宙技術に向けた計画を発表

本田技研工業は9月下旬、電動垂直離着陸機(eVTOL)、二足歩行ロボット、宇宙技術などの新規事業分野におけるイノベーション計画を発表した。

本田技研工業(HMC)のイノベーション部門である株式会社本田技術研究所(Honda R&D)が中心となり「モビリティの可能性を3次元、さらには時間や空間の制約を受けない4次元、そして最終的には宇宙へと広げて、人々に新たな価値をもたらすテクノロジーへの既成概念にとらわれない研究」を行なっていくという。

まるでSF小説のような話である。こういったイノベーション計画は結局うまく行かずに終わることも多々あるが、説明会で同社は過去73年間にわたって開発し続けてきた燃焼、電動化、制御、ロボティクスなどのコア技術が、これまでのモビリティニーズと大きく異なる未来の目的に適応し、いかに進化を遂げることができるかを論証したのである。

ハイブリッドeVTOLとそれに対応するモビリティ・エコシステム

画像クレジット:本田技研工業株式会社

eVTOLとヘリコプターの違いは、前者がバッテリーからの電力で駆動する独立したモーターを持つ複数のプロペラを備えているのに対し、後者は巨大で騒がしいローターを上部に備えていることである。つまりeVTOLは通常、より安全で静か、そしてクリーンであることになる。

世界中で開発されているeVTOLのほとんどがオール電化であるのに対し、HMCは「自社の電動化技術を活用し、ガスタービンハイブリッドのパワーユニットを搭載したHonda eVTOLを開発する」ことを目標としている。この分野での技術開発を進めていくという計画意図は4月の記者会見で初めて発表されたが、その中でHMCは2050年までに製品を100%EVにするという目標も掲げている。

HMCのコーポレートコミュニケーション担当マネージャーであるMarcos Frommer(マルコス・フロマー)氏はプレスブリーフィングの中で、全電動式のeVTOLは質量あたりのバッテリー容量の関係で航続距離が非常に短いため、新型車両のほとんどのユースケースが都市間移動やシャトル便などの近距離飛行に限られると説明している。2024年までの商業化計画を発表したばかりのJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)でさえ、これまでで最も長いeVTOLのテスト飛行は1回の充電で約150マイル(約241km)だったという。

「当社の市場調査結果によると、eVTOL機での移動における最大のニーズは、航続距離が250マイル(約402km)程度の長距離の都市間移動です」とフロマー氏。「自動車の電動化もあって、ホンダはリチウムイオン電池の研究開発に力を入れています。しかし、現在のリチウムイオン電池をベースに進歩しても、容量あたりのエネルギー密度は今後20年間で数倍程度にしかならないと予想されています。そのため、さらなる軽量化が求められる空のモビリティでは電池だけで長距離を実現するのは難しいと考えています」。

フロマー氏によると、将来的にバッテリーがさらに進化すれば、HMCはガスタービン発電機を取り外してeVTOLをオール電化にすることも可能だという。

ホンダはコアテクノロジーを活用しながら新分野へ取り組み、挑み続けている(画像クレジット:本田技研工業株式会社)

同社はeVTOLを核に、地上のモビリティ製品と連携した新しい「モビリティ・エコシステム」を構築したいと考えているという。同社の説明会ではアニメーションを使った次の例が発表された。ケープコッドに住むビジネスエグゼクティブが、1つのアプリを使ってハイブリッドeVTOLを予約。ニューヨークのオフィスまでは空路でわずか2時間の距離だ。このアプリはホンダの自律走行車に接続されており、離陸のためのモビリティーハブに向かう間には今日の天気を教えてくれるだろう。着陸すると自律走行のシャトルがビッグアップルで待機していて、オフィスに連れて行ってくれる。仕事が終わり、悠々と帰宅すれば、家族と一緒に自宅のテラスでディナーを楽しむことができるだろう。

「モデルベース・システム・エンジニアリング(MBSE)の手法を用いて、従来のものづくり企業から、システムやサービスの設計・商品化も行う新しい企業へと変革するために挑んでいます。予約システムのインフラ、航空管制、運航、自動車などの既存のモビリティー製品など、さまざまな要素からなる1つの大きなシステムを完成させてこそ、お客様に新たな価値をお届けすることができるのです。これらの要素をすべて弊社だけでまかなうことは不可能であり、多くの企業や政府機関とのコラボレーションが必要になるでしょう」とフロマー氏は話している。

HMCは2023年に試作機による技術検証を行い、2025年にハイブリッド実証機の飛行試験を行うことを予定している。商業化の判断はそれからだ。HMCがそこから進み続けることを決めた場合、2030年までに認証を取得し、その次の10年でローンチできるようにしたいと考えている。同社がTechCrunchに話してくれたところによると、商業化が実現した場合、一度に4人以上の乗客を乗せることができるeVTOLの価格は民間旅客機のビジネスクラスよりも低くなることが予想されている。

「商用化の可能性については、まだ詳細を議論中です。しかし、すべてのお客様が民間旅客機のビジネスクラスよりも安い価格で当社のeVTOL機を利用できるようになるよう努力しています」とフロマー氏は話している。2040年までにはeVTOLが日常化するとHMCは予想しており、それまでに市場規模は約2690億ドル(29兆8800億円)になると予測している。

ホンダのロボット「Asimo」で時空を超えた世界へ

ホンダのアバター・ロボット・レンダリングは、医師が遠隔で患者を助けることを可能にする(画像クレジット:本田技研工業株式会社)

ユーザーが実際にその場にいなくてもタスクを実行したり物事を体験したりできるという、第二の自分を持つことを可能にする、ホンダによるアバターロボットコンセプトの「Asimo」。ユーザーはVRヘッドセットと、手の動きを正確に反映させることができる触覚グローブを装着することで、アバターを接続して遠隔操作することができる。

「私たちはこれを、2Dや3Dのモビリティを超え、時間と空間を超越した4Dモビリティと位置づけています」とフロマー氏。

Asimoは、世界で通用するような外科医がいない発展途上国では高いニーズを得るであろう遠隔手術や、人が住めない場所や人が到達するのが困難な場所にアバター版の人間を送る宇宙探査などの用途を想定している。

「アバターロボット実現の核となるのが、弊社の強みであるロボット技術を活かして開発された多指ロボットハンドと、ホンダ独自のAI支援の遠隔操作機能です。多指ハンドを使って人間用に設計されたツールを使いこなすことができ、AIによってサポートされた直感的なユーザー操作に基づいて複雑な作業を迅速かつ正確に行うことができるアバターロボットを目指しました」と同社は話している。

トヨタ自動車にもテレプレゼンスでコントロールできる同様の二足歩行アバターロボットT-HR3があり、テスラも最近人型ロボットの計画を発表している(テスラのロボットは遠隔操作技術をベースにはしていないようだが)。もしホンダがAsimoの計画を進めるならば、操作を容易にするためにも、ロボットの学習のためにも、遠隔操作の利用は理に適っている。ロボットに動作を直接行わせるというのは、ロボットを訓練する上で最良の方法なのかもしれない。

同社は2030年代にはAsimoを実用化したいと考えており、2024年3月期末までにテストを実施したいと考えている。

宇宙技術の研究・開発を強化する

循環型の再生可能エネルギーシステム(画像クレジット:本田技研工業株式会社)

同社はさらに宇宙技術分野、特に月面開発の研究開発を加速する計画も発表した。その中で少し触れたのが、同社が以前発表した循環型再生可能エネルギーシステムだ。6月、本田技術研究所と宇宙航空研究開発機構はこのシステムの共同事業化調査を発表した。月面上の基地や惑星探査機に酸素、水素、電気を供給し、人間が長期間にわたって宇宙で生活できるようにすることを目的としたシステムについてである。このシステムは、ホンダの既存の燃料電池技術と高差圧水電解技術を活用したものだという。

同社は宇宙飛行士が宇宙に飛び出す際のリスクを最小限にするために、月面で遠隔操作のロボットを使うこと、さらには地球からバーチャルで月を探索できるようにするということも検討している。月面用ロボットには、アバターロボットで開発中の多指ハンド技術や、AI支援の遠隔操作技術に加え、ホンダが衝突被害軽減のために使用しているトルク制御技術が搭載される予定だ。

同社はまた、再利用可能なロケットの製造に向けて、流体や燃焼、誘導、制御などのコア技術を役立てたいと考えている。

「このようなロケットを使って低軌道の小型衛星を打ち上げることができれば、コネクテッドサービスをはじめとするさまざまなサービスにコア技術を進化させることが期待できます」とフロマー氏はいう。「これらのサービスはすべて、ホンダの技術と互換性を持つことになるでしょう」。

フロマー氏によると、同社はロケット製造を夢見る「若いエンジニア」たちに、2019年末に研究開発を開始する許可を与えたという。ホンダは宇宙に関するいずれの取り組みについても、それ以上の具体的な内容を明らかにしていない。

画像クレジット: Honda Motor Company

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

ツイッターがアバター関連スタートアップFacemojiに出資

アバター関連のスタートアップ企業はここ数年の間に次々と生まれては消えていったが、その背後にいる起業家の多くが当初想像していた未来は、多かれ少なかれ正確であることが証明されている。Apple(アップル)はMemoji(ミー文字)によるアバター表現に関心を高めており、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏はFacebook(フェイスブック)をメタバース企業にしたいと考えている。また、ユーザーが仮想世界に入り込み、自分のキャラクターのためのアクセサリーを購入するRoblox(ロブロックス)のようなプラットフォームは、かつてないほどの人気を博している。

Facemoji(フェースモジ)は、ゲームやアプリの開発者が同社のSDK(ソフトウェア開発キット)を使ってアバターシステムをアプリに導入するためのプラグアンドプレイ技術プラットフォームを構築している。Facemojiは、Play Ventures(プレイベンチャーズ)を中心に、Twitter(ツイッター)、Roosh Ventures(ルーシュベンチャーズ)、エンジェル投資家が参加した300万ドル(約3億3400万円)のシードラウンドを実施した。

チームによると、この分野の他の多くの企業は、開発者が扱いたくないUnityのプラグインに依存しているが、Facemojiの軽量ソリューションは、独自のレンダリングパイプラインに依存している。また、開発者が望むのであれば、すぐに利用できる多様なアバターアートのシステムをすでに持っている。

画像クレジット:Facemoji

Facemojiは、より多くのゲームメーカーが独自のアバターシステムを簡単に構築したいと考えているが、必ずしも他のネットワークに接続したいとは思っていないと考えている。初期のアバタープラットフォームの弱点は、独自のメタバースとして機能する一貫したクロスプラットフォームのアバターシステムを構築しようとする野心にあることが多い。それは、製品を開発するスタートアップやユーザーにとっては意味のあることだが、ゲームメーカーにとっては、独自のプラットフォームを作る機会をただテーブルの上に置いておくのは無駄なことだった。

Facemojiは、AppleがMemojiを開発者コミュニティに開放することは予想しておらず、Snap(スナップ)の方がより顕著な競争相手であると述べている。Facemojiのスタートアップの競合企業は、ますます速いペースで買収されている。2020年には、RobloxがLoom.aiを買収し、Epic Games(エピックゲームズ)がHyperSense(ハイパーセンス)を買収した。

関連記事:ゲーミングプラットフォームのRobloxがデジタルアバター作成のLoom.aiを買収

Facemojiの創業者たちは、メタバースの流行や最新のNFTブームに強く惹かれており、開発者が統合してユーザーにアバター用のアクセサリーを購入させることができるプラグアンドプレイのNFTストアフロントを開発している。Facemojiは、初期の暗号化されたTwitterのプロフィール写真の使い方は、一般消費者が自分のアバターをカスタマイズすることに興味を持つようになった証拠だと考えている。

「最終的には、エゴに帰結します」とFacemojiのCEOであるRobin Raszka(ロビン・ラズカ)氏は、TechCrunchに次のように述べた。「バーキンのバッグを持っていることをどうやってアピールするか、Twitterのアバターはそのための主要な領域であり、人々はただ見せびらかしたいだけなのです」。

企業への投資をあまり行わないTwitterにとって、これは特に興味深い投資だ。Facemojiのチームは、画面共有ソーシャルアプリSquad(スクワッド)がTwitterに買収される前に、Squadのチームとアバターの統合についていくつか会話をしたと述べている。また、Twitterは、現在進行中のNFTプロジェクトについて詳しく説明しており、CEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は、この分野のスタートアップ企業を積極的に支援している。

Facemojiチームは、ゲームに加えて、人々がアバターとして次のZoom(ズーム)にダイヤルしたり、クラスに参加したりすることが簡単にできるようになり、実写のアバターがこれまでの汚名を返上し、カメラのオンとオフの間の自然なメディアとして扱われるようになることを期待している。

関連記事:Twitterがスクリーン共有ソーシャルアプリのSquadを買収

画像クレジット:Facemoji

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(文:Lucas Matney、翻訳:Yuta Kaminishi)

テレワーク・イベントなど対応のバーチャル空間を提供するoViceが18億円調達、海外進出やハイブリッドワーク対応加速

テレワーク・イベントなど対応のバーチャル空間を提供するoViceが18億円調達、海外進出やハイブリッドワーク対応強化

ちょっとした会話・雑談も行え、自由に動いて自由に話しかけられるバーチャル空間「oVice」(オヴィス)を手がけるoViceは9月15日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による18億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のEight Roads Ventures Japan、既存株主のOne Capital、MIRAISE、DGベンチャーズおよびDGインキュベーション、新規投資家のJAFCO。ファーストクローズとなる今回は14億円を調達し、セカンドクロージングも合わせると総額18億円になる予定。調達した資金により、海外への展開を加速させるとともに、アフターコロナのハイブリッドワークでも快適にoViceを使用できるよう開発を進める。

調達の目的と今後の展開

  • 海外市場への積極的な展開:海外でのテレワークやオンラインイベントの需要の高まりから、日本以外での販売も徐々に増加していることを受け、今後はさらに積極的に海外市場に展開。特に韓国など新たな市場に参入、定着を図る
  • ハイブリッドワーク対応に向けた技術開発:アフターコロナで増加するであろうハイブリッドワークに対応するべく、技術開発や他社との提携を引き続き行う。例えば他社の開発している360度カメラとoViceを連携させ、リモートワーク・テレワークでオンラインで勤務する人と実オフィスに出社している人がシームレスにコミュニケーションができるような環境構築などを行う
  • 他ツールとの連携強化:ビデオ会議システムやチャットツールなど、様々なテレワーク関連ツールと連携することで、ユーザーがより快適にoViceを利用できる環境を構築する

2020年2月設立のoViceは、「人々の生活から物理的制約をなくす」ことをミッションに掲げ、バーチャル空間「oVice」を開発・提供。oViceは、ウェブサイト上で自分のアバターを自由に動かし、相手のアバターに近づけることで話しかけられる2次元のバーチャル空間となっており、自分のアバターに近い声は大きく、遠い声は小さく聞こえ、現実の空間で話しているような感覚を体験できる。また偶然聞こえてきた雑談・会話にも参加でき、会話する中で生まれた新たなアイデアを形にしやすい環境を整えている。テレワーク・イベントなど対応のバーチャル空間を提供するoViceが18億円調達、海外進出やハイブリッドワーク対応強化

2020年8月のサービス開始から9000件以上利用されており、テレワークにおけるバーチャルオフィスとして、また展示からネットワーキングまで自由にできるオンライン展示会、自由に席替えができるオンライン飲み会など、さまざまな場面での活用が進んでいるそうだ。

 

ロボット学者・石黒浩教授が大阪大学発スタートアップ「AVITA」を設立し5.2億円の資金調達

ロボット学者・石黒浩教授が大阪大学発スタートアップ「AVITA」を設立し5.2億円の資金調達

ロボット学者として知られる石黒浩教授は9月7日、大阪大学発スタートアップとして「AVITA株式会社」を設立するとともに、5.2億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、大阪ガス、サイバーエージェント、塩野義製薬、凸版印刷、フジキン。各社と事業連携を行いながら、アバターの社会実装に取り組む。ロボット学者・石黒浩教授が大阪大学発スタートアップ「AVITA」を設立し5.2億円の資金調達

大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩教授は、20年以上に渡り、人と関わるロボットやアバターを研究・開発してきた。今回、これまでの研究成果と、石黒教授がプロジェクトマネージャーを務めるムーンショット型研究開発制度、テーマ事業プロデューサーを務める大阪・関西万博などの様々なプロジェクト、また企業との連携によって新たに生み出す研究成果を社会に実装するための新会社としてAVITAを設立した。

AVITAは、「Virtualize the Real World」というビジョンのもと、アバター技術によって人々の可能性を拡張するという。人は、複数の自分(働く自分、家庭の自分、友達との自分など)で活動しており、アバターを用いれば、その自分を実世界でさらに多様に拡張し、状況や目的に応じた様々な自分として自由に活動できるとしている。このことを、アバターを用いた実世界の仮想化と多重化(virtualize the real world)と呼ぶという。

AVITAは、大学発スタートアップとして実世界の仮想化と多重化により、人々を解放する新たな世界を創造するとしている。

3Ⅾのアバター・仮想空間によるクラウドオフィス「RISA」、テレワークで失われた気軽な会話を生む環境を追求

RISAで取材を実施、アバターはイスに座ることもできる

コロナ禍で働き方が見直されている中、テレワークの浸透は大きな課題となっている。内閣府が2020年12月に行った調査によると、全国のテレワーク実施率は21.5%だった。

この中でテレワーク経験者が答えた「テレワークのデメリット」は「社内での気軽な相談・報告が困難」が38.4%で最多となった。「画面を通じた情報のみによるコミュニケーション不足やストレス」は3番目に多く、28.2%に上る。

テレワークでは目的ありきのウェブ会議などが軸となり、ちょっとした雑談を生む機会もなく、働き手の孤独感が増してしまっている。その穴を埋めるのが、クラウドオフィスという新たなワークプレイスだ。

クラウドオフィス「RISA」は、ビジネスシーンで利用可能な3Ⅾのアバター・仮想空間による新たなバーチャルオフィスとなる。大阪に拠点を置くOPSIONが2020年10月からRISAの提供を開始し、現在はコニカミノルタなどの大手企業をはじめ約40社が導入している。この他にも800社ほどからサービス導入へ声がかかっているという。

RISAはインストールする必要はなく、PCからブラウザで起動できる。ブラウザはGoogle Chromeを推奨しているが、Microsoft Edgeにも対応している。また、2022年までにはスマホやタブレットなどのマルチデバイス対応をしていく予定だという。

「3Dならではの臨場感や没入感がRISAの特徴です。社員同士が気軽に集まれる居場所を提供し、テレワークで失われた偶発的なコミュニケーションや、簡単に相談ができる環境を作り上げています」とOPSIONの深野崇代表は語る。今回は実際にRISAでアバターを動かしながら、深野氏に話を聞いた。

RISAでアバターを走らせ、相手に話しかける

さまざまなパーツを組み合わせて自分好みのアバターを作れる

RISAでは自身が立つ四角いタイル内にいるメンバー同士と音声通話で話せるようになっている。遠くにいる誰かに話しかけたいときは、その人が実際にいる部屋などにアバターを走らせ、話しかける。アバターは床をクリックすればその位置に移動できる。キーボードのA、W、S、Dキーや矢印キーでも移動可能だ。

RISAのアバターは髪型や顔、服装など、さまざまなパーツをカスタマイズできる。手足が一部だけしか表現されないアバターは一見すると奇妙だが、実際に動かしてみると違和感はない。深野氏は「細部の動きなど、人は見えていない部分を想像で補うので、想像の範疇でどのような動きをしているのかを最低限わかるところまで削りました。動作を軽くするといった狙いもあります」と説明する。

細かな動きは人の想像力で補う仕組み

テレワークをしていると、相手がいまどのような状況かわからないことも多い。RISAではアバターの頭上に「声かけ可能」「取り込み中」「離籍中」を示すステータスを表示できる。エモート機能もあり、手を振ったり、拍手をしたり、ダンスしたりすることも可能だ。

頭上の白文字が「ひと言メッセージ」。その時や気分や困ったことなどもひと目でわかるようにした

「ただ、これだけではわかりづらいこともあります。そこでいまやっていることなどを『ひと言メッセージ』として、頭上に表示できます。私の場合、今日は『テッククランチさん取材』にしました。相手の状況が分かりづらいリモートワークの欠点を、記号だけでなく文字情報でも補完できるようにしています」と深野氏は語った。

また、ウェブ会議で話し手が一方的に話し続けるといった問題も解決していく。RISAではスタンプ機能を追加し、アバターにクエスチョンマークやハートマークを連続して表示できるようにした。

スタンプ機能でインタラクティブなコミュニケーションを促進

目くばせやうなずきなど、人が何気なく行っていたちょっとしたジェスチャーに寄せた表現ツールだ。「一方通行になりがちなウェブ会議でも、インタラクティブなコミュニケーションができるように工夫しました」と深野氏はいう。

マップ機能も追加して誰がどこにいるかわかるように

RISAによる会議のイメージ

料金体系は1つのRISAの仮想空間上で、1~50人利用で月額税込3万3000円となっている。RISAでは100人ほどが常時接続できるようになっているが、50人以降は10ID毎に月額税込5500円で追加できる。導入企業をみると、部署単位で最大80人が働いている企業もあれば、4人で利用している企業もあるという。

製品版リリースから約6カ月のタイミングとなる2021年4月には、大型アップデートを行った。RISAの部屋配置などを刷新し、これまでよりも音声通話ができる空間を増やしている。

「リアルのオフィスでは、会議前にロビーで少し作戦会議したり、会議終わりに『わからないところがあった』など雑談が生まれたりします。この会議前後の時間はとても大事だと考えています。RISAでも会議を起点にした偶発的なコミュニケーションがより生まれるよう、簡単に空いている部屋へ移動できるレイアウトにしました」と深野氏は語る。

マップ機能で利便性を高めた

また、2Dのマップ機能も追加した。これにより、誰がどこにいるのかカーソルを部屋に合わせればわかるようになった上、誰もいない空間を簡単に探せるようになった。

2Dではなく3D。情報量の多さを重視

エモートの「ヨガ」のポーズ。思わず何をしているのか、尋ねたくなる

クラウドオフィスには2Dのアイコン・空間を用いてサービス展開している企業もいる。OPSIONではなぜ3Dを選んだのか。深野氏はこう語る。

「臨場感や没入感、『ここで働いているんだ』という帰属意識をRISAは重要視しています。2Dのアイコンがあるだけよりも、3Dのアバターは人の形をしているため、直感的に実際に集まって働いているという感覚を高めることができます。また、3Dは情報量が多い分、相手が何をしているといった状況も分かりやすく、声をかけやすいです」。

OPSIONは3Dにこだわり、人に近しい感覚で働ける環境づくりを追及しているのだ。しかしデメリットもある。

「3DではPCの動作が重くなるといったことがあります。ただ、PCそのものの性能が上がっていたり、5Gといった新たなテクノロジーも発展していくはずです。2Dとの差である『動作の重さ』といった不都合は時間とともに無くなるはずです」と深野氏は述べた。

ポイント制度導入で帰属意識をより高める

開発中のポイント制度によって、楽しみながら仕事ができる

OPSIONの業務もRISA上で行われているが、現在は試験的に「ポイントショップ」「ポイントランキング」といったポイント制度を取り入れている。

深野氏は「RISAにおけるユーザーの活用状況に応じて、ポイントを付与する仕組みを実装しようとしています。ポイントを貯めれば、アバターの見た目を変えたり、部屋の椅子などをカスタマイズできるようにします」と構想を語った。

具体的には誰が誰に話したのかといった発話者を特定して、そのコミュニケーション量などに応じてポイントを付与できるようにするという。ポイント制度は早ければ2021年の夏ごろには実装する予定だ。

「ゲーム性を含んだポイント制度には意味があります。楽しんで仕事ができることはもちろん、『最近アバター変わったね』など会話のきっかけ作りにもなります。また、オフィス空間を自分たちで作り上げていけば、より帰属意識も高まっていくはずです」と深野氏は意気込む。

リアルオフィスとテレワークを繋ぐ居場所として発展させていく

深野氏は新型コロナウイルスの影響が収束しても、リアオフィスとテレワークの両方を取り入れたハイブリット的な働き方が主流になるとみる。RISAでもマルチデバイス対応などを行うことで、双方をよりシームレスに行き来できる居場所として、発展させていく考えだ。

「5、10年というスパンでは、リアルオフィスだけでなく、RISAのようなクラウドオフィスを企業が持つことが当たり前になると思っています。我々は家にいても、リアルオフィス以上にコミュニケーションが取れるような世界観を目指していきます」と深野氏は想いを語った。

なお、取材中はCPUがIntel Celeron N4100、メモリが8GB、OSはWindows 10 Home(64bit)のノートPCを使っていたが、アバターは問題なく動き、音声通話も終始クリアに聞こえた。他のタブなどは閉じた状態で、GPUはほぼ100%の使用率となり、CPUは30%前後だった。

実際にRISAを使ってみて、キーボードで動かすPCゲームなどの経験は筆者にはなかったので、アバター移動は多少手間取ってしまった。その点を除けば、取材を1時間ほどしている中で、RISAでアバターを動かしながら話を聞くことに不便さはなかった。回線落ちなど何かしらの不具合はあると思っていたが、杞憂だった。

アバターではあるが、取材中は相手の正面に立とうとするなど、気づけばアバターは「自分化」していた。アバターは多種多様なパーツがあったため、その日の気分によって服装や髪型を変更でき、使い込んでいけばお気に入りの見た目なども出てくるかもしれない。

テレワーク環境で失くした「人と1つの場を共有して働いている」という感覚は、バーチャル空間で実現すると真新しくもあった。RISAが導入されれば、深野氏がいう「偶発的なコミュニケーション」による職場の温かさのようなものが取り戻せるかもしれない。リアルオフィス以上を目指すというOPSIONの動きに、引き続き注目したい。

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カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:OPSIONRISAテレワーク仮想オフィスアバター仮想空間日本