“シックスポケット”を握る家族向けSNS「wellnote」、動画共有機能を提供開始


NTTドコモ・ベンチャーズが主催するインキュベーションプログラムの卒業生でもあるTIMERSの「Pairy」や韓国スタートアップVCNCの「Between」、さらには米国の「Pair」のようなカップル向けSNS、ミクシィやディー・エヌ・エーが出資する京都のREVENTIVEによる9人限定SNS「Close」など、「Path」なんかよりもっとクローズドなSNSは、数多く登場している。

ウェルスタイルの「wellnote」は、家族に特化したクローズドSNSだ。家族特化のSNSとしては、ヤフーの「kazoc」やCompath Meの「KiDDY」のように、子どもの写真を共有したり、成長記録をつけるといったものが多いが、wellnoteは「家族の交流の場である茶の間をネットで再現する」というコンセプトなのだそうだ。ちなみにTIMERSも、家族向けSNS「Family」を開発中だと語っていた。

wellnoteの会員数は非公開だが、直近半年で2倍、週間アクセスユーザーは2.5倍になっているという。子どもの成長記録を残せる母子手帳機能や、テキストに加えて、写真やスタンプを送れるメッセージ機能共有なども備えるが、前述の「茶の間」でテレビや雑誌を見るように、育児関連のニュースなどを閲覧、共有できる「ニュース機能」があるのが特徴的だ。

実はこのニュース機能、提携する各種メディアのニュースに加えて、企業の商品・サービス紹介をはじめとしたマーケティング向けコンテンツも配信しているのだそうだ。すでに赤ちゃん本舗や学研が参画している。

ウェルスタイル代表取締役の谷生芳彦氏は、「あくまで仮説だが、家族コミュニケーションほど自然に広告に接しているものはない。テレビでも、チラシでも、家族で見れば『今度ここに行こうか』『これを買おうか』となる。その理由は『互いの財布の距離が近い』ということ」と語る。シックスポケット(両親、その祖父母4人の計6人の財布のこと)とも言われる財布の近さ、そしてカップルとは異なり、10年経っても変わらない関係性であるということから、マーケティング目的でコンテンツを配信したがる企業も少なくないのだそうだ。

そんなwellnoteだが、4月11日には動画共有機能の提供も開始している。「Vineのようなソーシャルな動画共有サービス、Snapchatのようなクローズドで消える動画、画像共有サービスもあるが、クローズドで残るという価値を提供したい。ストレージとコミュニケーションの間の存在を目指す」(谷生氏)


目指すは弁当版Uber、スマホで注文してから20分で届く「bento.jp」が都内でスタート


スマートフォンのボタン1つでハイヤーを呼び出すUberのように、アプリで注文してから20分で弁当を届けてくれる「bento.jp」が10日、渋谷区と港区の一部エリアでスタートした。メニューは日替わりで1種類のみ、料金は配送料込みで800円。オフィス街にはワンコインで買える弁当もあるけれど、近くのコンビニに行く暇すらないようなときに、メールを2〜3本書いている間に弁当が届くのは便利そう。

弁当のデリバリーといえば、日本では有名飲食店の弁当を扱う「ごちクル」が着々と全国展開を進めている。東京23区では1万円以上の注文で配送料無料となるごちクルは、法人や団体の「会議室弁当需要」を見込んだビジネスだけれど、1個の注文でも配送料がかからないbento.jpが狙うのは「普通のランチ需要」。オフィスで働くすべての人をターゲットにしているのだとか。

目指しているのは“弁当版Uber”だ。使い方は至ってシンプルで、iPhoneアプリで住所や電話番号、メールアドレスなどを事前に登録する。その上で、午前11時半以降にスマホの「今すぐ注文する」ボタンを押せば、20分以内に自転車で指定の場所に届けてくれる。料金は現金かクレジットカードで支払う。「Uberがボタンを押したらハイヤーが来ることが当たり前になったように、ボタン1つで弁当が来ることを当たり前にしたい」(ベントー・ドット・ジェーピーの小林篤昌社長)。

便利なだけでなく、味にもこだわっているのだとか。調理はミシュランの星を取得したフランス料理店「シェ・ナカ」で修行したシェフが担当。当初のメニューは黒酢酢豚や回鍋肉、焼肉といった定番弁当らしいけれど、今後は定番以外のメニューも投入していく予定だ(フランス料理店出身のシェフが作る黒酢酢豚弁当も気になる)。

ベントー・ドット・ジェーピーの小林篤昌社長は現在27歳。ウェブマーケティングを手がけるイトクロに新卒で入社して上海オフィスを立ち上げ、その後はソーシャルゲームのKLabの上海オフィス開設に携わってきた。帰国後の2014年1月に創業した小林氏は、単なる弁当デリバリー屋にとどまるつもりはないようで、将来的にはアメリカで注目されつつある「数時間後配送」のネットワークを構築する狙いがあるのだという。

「GoogleやAmazon、eBayなどをはじめ、アメリカでは数時間後配送のソリューションが始まり、どんどん進化している。bento.jpでは、ユーザーが欲しいと思ってから、手に届いてほしい時間が特に短い弁当に取り組む。これが実現できれば、数時間でものを届けることは商材を変えても可能だと思っている。」


TechCrunch Japan編集部と起業家を結ぶランチ会「TechLunch」を始めます

2013年7月の編集長交代以降、日本国内の編集体制も強化してきたTechCrunch Japan。2014年に入ってからは、平日夜のイベント「TechCrunch School」も開始するなど、オンライン、オフラインを問わずに読者との接点作りを進めてきた。そんな編集部だが、今度は起業家とよりリアルな接点を作るべく、起業家限定のランチ会「TechLunch(テック・ランチ)」を定期的に開催していくことにした。

TechLunchでは、まだTechCrunch Japan編集部と接点のない起業家、新しいプロダクトを世の中に紹介したいと考えている起業家などを編集部に招待して1時間半ほどのランチミーティングをしていく。応募条件は、法人登記後5年未満の起業家、もしくは今後起業を予定する人物。1回3人程度の起業家にお声がけさせて頂きたいと考えている。応募多数の場合は抽選となる。

すばらしいプロダクトを手がけている起業家に対しては、11月に開催する「TechCrunch Tokyo 2014」内のプレゼンイベント「スタートアップバトル」への参加も呼びかけていきたい。また、プレゼンの様子は動画で撮影させて頂く予定で、内容によってはそのままTechCrunch Japanで掲載することも予定している(もちろんランチの場に限定した情報公開でも構わない)。

第1回は4月16日12時より開催する予定だ。今後は反応を見つつ、月1回程度定期的に開催していきたいと考えている。

なおTechCrunch Japan編集部は、東京・末広町(秋葉原からも徒歩数分だ)にある建物「3331 Arts Chiyoda」の中にある。この建物は中学校をリノベーションしたもので、アートスペースやコワーキングスペース、そして僕らが入居するオフィススペースなどがある。かつて運動場だった場所には大きな木が植えられ、緑も豊かでステキな場所だ。ちょっと情報交換をしつつランチしたいという起業家たちは、まずは下記から申し込み頂いて、気軽に遊びに来て欲しい。

TechLunch申し込みはこちらから


引っ越しに伴う住所変更手続きなどを一括して行うUpdater、ソフトバンクなどから800万ドルを追加調達

引越ほど面倒なことは他にあるだろうか。

新しい住まいを見つけて、引っ越す計画を立てて、そして新たな場所に移る。それだけで済むなら大したこともないが、他にもやるべきことが山積みになっている。郵便で送られてくるものの住所変更をしなければならない。電気ガス水道などの手配もする必要がある。また宅配で送られる定期購読雑誌などの送り先を変更しなくてはならない。

こうした手間はなんとかすべきだ。誰もがそう思うからこそ、手間を軽減するためのサービスを展開するUpdaterが、シリーズAにて800万ドルの資金を獲得することができたのだ。出資したのはソフトバンク、Second Century Ventures(National Association of Realtorsの投資機関)、IA Ventures、そしてCommerce Venturesだ。

仕組みはシンプルだ。

これまでの引っ越しといえばケーブルテレビ会社に電話をかけ、銀行で手続きをして、郵便局に転送依頼を申し込みにいくという手続きが必要だった。Updaterでは、ひとつひとつ別々に手続きを行いにいくかわりに、引っ越しに関わる手続きをまとめて行うためのダッシュボードを提供する。

このダッシュボードを利用すれば、オンラインで住所変更、銀行口座情報の変更、ケーブルテレビ関連その他、さまざまな手続きを行うことができる。ダッシュボード上の処理を完成するだけで、購読している雑誌も新しい住まいで読むことができるようになる。

現在のところ、Updaterから直接操作できたり、ないしUpdater経由で必要なサイトにジャンプできるケースを含めて6万の組織と「繋がって」いるのだとのこと。

ファウンダーのDavid Greenbergによれば、年間に4500万のアメリカ人が引っ越しを経験し、そして引っ越しを行うたびに平均的して10ないし15の組織に登録情報の更新依頼をかける必要がある状況にあるのだとのこと。Updaterは、こうした作業のすべてを1箇所のダッシュボードから行えるようにしようとするものだ。

Updaterの利用は完全に無料で行うことができる。収益はネイティブ広告であげていくことを考えているのだとのこと。確かに、こうしたサービスはネイティブ広告と親和性が高いのかもしれない。引っ越しを行うとき、慣れ親しんだ店への気持ちというのはいったん整理されることになる。それまで何年もHome Depotを愛用していたとしても、新たな住まいのそばにロウズ(Loews)があればそちらに通うようになる。

Updaterとしては、そうした習慣の変化に乗じる形でのネイティブ広告を展開していこうとしているわけだ。引越し先などの情報に基づいて、さまざまな企業ないしサービスの情報を展開していこうとする。さらに引っ越しは往々にして出産や、あるいは結婚などを期に行われることが多い。Updaterとしては(匿名状態ではあるもののデータを収集して)利用者にとっても、また広告出稿者側にとっても有益な情報を提供していけると考えているのだろう。

Updaterはこれまでに200万ドルのシードラウンドを実施している。今回のシリーズAとあわせて1000万ドルを調達したことになる。

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(翻訳:Maeda, H


ソシャゲのノウハウで毎月200%成長、住まいのまとめサイト「iemo」が資金調達

住まいに特化したまとめサイトとして2013年12月にローンチした「iemo(イエモ)」。当初は投稿された写真をスクラップするユーザー向け機能が中心だったが、このたび建築家やリフォーム業者、インテリアメーカーといった事業者向けの「ビジネスアカウント」を開設。無料でiemoに自社の写真を掲載できるようにした。今後はiemoでユーザーと事業者が交流できるソーシャル機能を拡充し、両者のマッチングによって収益を得る狙いだ。

iemoは住まいや暮らしに関する2万点以上の写真の中から、気に入ったものをクリッピングしたり、まとめ記事を作成できるサイト。まとめ記事は「マスキングテープでリメイク10選」「狭い空間を克服するレイアウトアイディア」など2500本以上が投稿されている。同じような記事は他のサイトでもありそうだが、記事を投稿できるのは審査を通過した「インテリアリテラシーの高い」ユーザーに限定しているのがポイントだという。iemo共同代表取締役CEOの村田マリは、「主婦層に刺さるインテリア雑誌のリプレイスを狙っているので品質管理に力を入れている」と話す。

事業者のスマホ対応を後押し、ユーザーとのマッチングで収益化へ

9日に開設したビジネスアカウントは、建築家やリフォーム業者、メーカーなどが施工事例やプロダクトの写真をiemoに無料で投稿できるようにするもの。現時点では国内外の約30社が登録。事業者は、自ら投稿した写真がクリッピングされたり、まとめ記事の一部として使われることで、ユーザーへの露出機会が増えることになる。また、写真を投稿するだけで、iemoが対応するスマホやタブレット、PCに最適化したポートフォリオ写真ページを作れることもメリットなのだという。

村田マリによれば、住宅業界はスマホへの最適化が遅れていて、「PCサイトだけはかろうじて作っている」という状況。ビジネスアカウントを作れば、事業者の写真を含むまとめ記事を通じて、スマホでリフォームに関する情報を収集する30〜40代の潜在顧客獲得につながると見ている。「住まいに関するサイトの集客方法といえば、大手であればテレビCMを展開したり、ネットではキーワード広告を打つ程度。iemoのビジネスアカウントはベンチャーならではのスマホドリブンな集客方法」。今後は地域内で事業者を検索したり、ユーザーが資料請求できる仕組みを整え、事業者からマッチングに応じた手数料を徴収するモデルを構築していく。

iemoのユーザーやPV数は非公表だが、ユーザーの97%は女性で、全体のアクセスの90%がスマホ経由。2013年12月の正式ローンチ以降、PVは毎月200%の成長を続けているのだという。PVの稼ぎ頭はまとめ記事だが、成長の背景にはiemo創業前に手がけていたソーシャルゲーム(ソシャゲ)事業での経験がある。村田マリは以前、バーチャル空間でレストランを経営する育成ゲームを運営していて、そのターゲット層はiemoと同じ25〜40歳の共働きや専業の主婦層。「育児の合間や就寝前など、彼女たちが行動するタイミングはわかっている」。そう語る村田マリも、一児の母である。

iemoにおけるKPIの見方もソシャゲの経験が生きているそうだ。例えば、平日と週末、昼と深夜、長期休暇などさまざまな時間帯でのアクティブ率を分析し、どんな内容の記事を投稿するとソーシャルでシェアされやすいかといったデータを収集。反応が悪い場合は、タイトルやサムネイル画像を「30分で4回入れ替えることもある」のだとか。詳しい手法については教えてくれなかったが、「ソシャゲと同様に、初速を見るのがポイント」と語っている。

ソシャゲの経験を生かしたメディア運営を後押しすべく、iemoは9日、2007年に検索エンジンやソシャゲの開発を手がけるフォリフを創業し、国内ベンチャーキャピタル3社からも資金調達を実施したことのある熊谷祐二を共同代表取締役COOに迎えている。村田マリは引き続き、拠点を置くシンガポールで経営に携わり、主にコンテンツの品質強化を担当。熊谷祐二は東京で技術開発と経営、財務面を担当する。このタイミングで、B Dash Venturesから資金調達を実施したことも発表(調達額は非公表)している。

(敬称略)

熊谷祐二(左)と村田マリ(右)


Vine風ビデオをプライベートチャットに活用するConvies登場

Vineがプライベートなビデオメッセージを送ることができるようにしたその直後ではあるが、新たなビデオチャット用アプリケーションのConviesがリリースされた。友人(ないし複数の友人)にビデオメッセージを送ることを主目的にするものだ。プライベートなビデオチャットが第一義のサービスだが、FacebookやTwitterで共有することもできるようになっている。

ConviesはLerer VenturesのSoho Tech Labsのインキュベーションを受けて誕生したものだ。友人の間で利用するためのVine風アプリケーションを生み出そうとしてきたのだが、サービスのリリース直前に、Vineがプライベートメッセージ機能を実装して発表してしまった。

しかしファウンダーのMichel Loenngrenは、Convies独自の魅力があり、マーケットでも受け入れられるはずだと考えているのだそうだ。さらに、VineやInstagramなどはそもそもパブリックな写真/ビデオ共有ツールであり、一定の認知が行われたあとにダイレクトメッセージング機能などを追加してもあまりうまくいかないのが一般的だと感じてもいるとのこと。

「Vineはそもそもソーシャルアプリケーションで、そこにダイレクトメッセージの機能を追加しようとしています」とLoenngrenは述べる。「ConviesはWhatsAppやLineのように、まずチャットを指向したアプリケーションなのです。プライベートなチャットツールの中でのビデオの扱いについて、深く考えた設計となっています」。

Loenngrenは、このConvies以前にTimeFreezeというモバイル向けビデオアプリケーションを作った経験を持つ。日本の投資銀行で働く傍ら、サイドプロジェクトとして生み出したアプリケーションだ。Loenngren曰く、これがモバイルメッセージング分野の人材を探していたLerer Venturesの目に止まったのだそうだ。

Lerer Venturesとの交渉の末、Loenngrenは日本での職を辞し、ニューヨークに居を移した。そこでConviesのアイデアを生み出されることとなった。

Loenngrenはエンジニアリングおよび物理関係のバックグラウンドをもっており、それもあってTimeFreezeではビデオの再生速度をいろいろといじる仕組みを実装していた。ConviesでもTimeFreezeにて実装した機能をいろいろと再利用しているようだ。たとえばメッセージの送信前に、アプリケーションでスライダーバーを操作することによりビデオメッセージの再生速度をスローにしたり、あるいは逆に高速化することができる。

ともかくビデオありきのメッセージングアプリケーションということも、汎用的なメッセージングアプリケーションとは異なる魅力を備える要因となっている。ビデオのやり取りが自在の行えるように設計され、また複数ビデオの連続再生機能なども備えている。

ビデオの撮影はVineと同様の方法で行い、収録時間は6秒となっている。やり取りされるビデオメッセージは外部サイトで共有することもできるが、「locked」指定をすることで、あくまでもプライベートなものとしておくこともできる。尚、Vineのビデオフィードのような形で、特定の人に向けてではなく、公開ビデオとすることもできるようになっている。Conviesの中で公開しておくこともできるし、またFacebook、Twitter、WhatsApp上で公開したり、あるいはリンクをシェアすることもできるようになっている。

Lerer Venturesは40%の持ち分と引き替えにかなりの額を出資していて、またオフィスおよび各種リソースの提供も行っている。Conviesの運営に携わるメンバーは現在のところ4名で、Vineに似たところも多いアプリケーションを通じて、独自の使用感などもアピールしつつ、利用者を開拓しつつあるところだ。

VineというのはTwitterを使う場合と同様に、パブリックな意味合いを強くもつものだと言える。そしてVineについてはそれが魅力となり、いろいろな人が面白いビデオを作ろうとしている。Conviesの方はメッセージングに注力することで、よりパーソナルな魅力をアピールしようとするものだ。

モバイルメッセージング全般と同様、ビデオメッセージングの分野も非常に多くのサービスが競合しているエリアだ。ビデオ共有アプリケーションはもちろん、SMSツールとして親しまれてきたものも、ビデオなどのマルチメディアに対応するようになっている。そのような中、Cinviesがどのような動きを示していくのか興味深いところだ。

Conviesは現在iOS版が提供されており、Android版も開発中だとのことだ。

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(翻訳:Maeda, H


本物のピボットの極意とは?

リーンスタートアップを提唱する起業家が語る真のピボット論。成功に向かって模索している起業家は必見! — SEO Japan

Lean Analytics」(分析を事業において適切に利用する方法を解説する最新の書籍)の執筆者の一人、ベン・ヨシュコヴィッチによるゲスト投稿。現在、ベン・ヨシュコヴィッチは、2012年にSalesforceが買収したGoInstantで製品部門のVPを勤めている。また、ブログ「Instigator Blog」で定期的に記事を投稿している。また、ハンドル名「@byosko」でTwitterを利用している。

ピボットした経験はあるだろうか? 恐らくあるはずだ。

適切なピボットだっただろうか? そうであったと願いたい。

残念ながら、リーンスタートアップ、そして、リーンスタートアップが広めるコンセンプトのおかげで、ピボットは、ほぼ意味がなくなるほど価値を下げてしまった。「ピボット」と言う用語を耳にすると、唸るか、もしくは、肩をすくめてしまう。ピボットを言い訳として用いる人達が多いためだ。

起業家には妄想癖がある。これは起業家の特徴の一つである。現実歪曲空間に自ら身を投げ入れ、スタートアップを運営する厳しい環境を乗り越え、心の中で、自分達が作るもの、そして、思い描くものが成功することを確信している。起業家は、世界に飛び出し、消費者、投資家、提携者等に同じことを信じてもらう必要がある。証拠がない状態では、妄想、そして、現実歪曲空間に身を委ねて、前に進むしかない。

しかし、現実歪曲空間が、濃い霧で覆われ、事実と創作を見分けることが出来なくなったなら、破滅してしまう。起業家の多くが、この状況に追い込まれる。私達にとっての地獄である。

リーンスタートアップは、現実歪曲空間に穴をあける。その結果、壁にぶち当たらずに済み(あるいは、当たってもかすり傷程度で済む)、適応する上で必要な、知的な正直さを十分に私達に与えてくれる。

それでは、ピボットとは一体何なのだろうか?

私は次のように定義している: ピボットは、検証学習に基づき、スタートアップの焦点の一つの領域における変更を指す。

ビジネス全体を変えようとしているなら、それは「やり直し」である。やり直すことに問題があるわけではないが、それはピボットではない(また、正しい方向に導いてくれる見解がなければ、やり直しても失敗してしまう)。ピボットは、やり直しよりも遥かに定義の範囲が狭く — 学んだことを基に始める行為を指す。これは「バリデイティドラーニング」(検証学習)と呼ぶものだ。ピボットする場所、そして、理由を理解している時にピボットするべきである。取り組みを通じて(リーンスタートアップのメソッドを通じて取り組む)、自分自身が向かう方角を指し示す見解を得ることが出来る。

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検証学習

バリデイティドラーニング(検証学習)は、リーンスタートアップの心臓と言っても過言ではない。仮説で始まり、続いて、テストを行い、仮説の正しさ、もしくは、誤りを証明する。 そして、分析を用いて、実験の成果を計測する。Backupifyを例にとって、考えていこう。

Backupifyは、オンラインバックアップ保存サービスを提供している会社だ。当初はリーンスタートアップの法則を徹適的に採用しているわけではなかったものの、創設者のロバート・メイ氏は、創設時からアイデアをテストする取り組みを実施していた。「当初、私達はサイトのビジターに専念していました。なぜなら、サイトにとにかくアクセスしてもらいたかったためです。その後、製品をテストしてもらう必要があったため、トライアルに焦点を絞るようになりました。」と、メイ氏は、当時の取り組みを振り返っている。当初、「サービスの提供を継続する上で、オンラインバックアップ保存サービスに関心を持っている人達は十分に存在するのか?」と言う仮説を立て、 ウェブサイト、そして、ビジターを獲得する(そして、登録してもらう)取り組みは、実験であった。継続する価値があることを正当化するためには、「十分な人数」をターゲットとなる目標で定めるべきであった(10名?100名?1000名?)。

ロバート・メイ氏は、十分に多くのネットユーザーが、オンラインバックアップ保存サービスに関心を持っていることを学んだ。しかし、事業が成長していき、料金を請求するようになると、問題に直面することになった。 顧客を獲得するコストは、得られる収益よりも遥かに高いことが判明したのだ。

「2010年の前半の時点では、1人の顧客を獲得するために243ドルを投資したものの、顧客一人当たりの年間の収益はたった39ドルでした。完全な赤字です。大半の消費者向けのアプリは、高額の顧客獲得コストをバイラル化によって避けていますが、バックアップはバイラル化しないのです。そのため、[顧客のセールス]からピボットし、企業を狙う必要がありました。」とメイ氏は指摘している。

ここで重要な点を2つ挙げる:

  1. メイ氏は、その他の多くのポイント(消費者がオンラインバックアップに興味を持っていること、顧客が長期的に関心を持ち続けること等)を学ぶまで、赤字である点に気づかなかった可能性がある。Backupifyが、顧客を獲得して、維持する方法を解明して初めて、メイ氏は、利益に焦点を絞ることが出来るようになった。
  2. 消費者向けのビジネスを拡大することが出来ると考えた、同氏の仮説は、赤字が判明したことで、無効になった。ロバート・メイ氏が得た教訓の「検証」された部分は、とても明白であった — ただ単に計算が合わなかったのだ。

そこで、Backupifyは企業に狙いを定める方針に転換し、その後、ビジネスを拡大していくことに成功した。企業は(基本的に)同じサービスにより多くの金額を支払い、メイ氏は、顧客獲得コスト:生涯価値の比率に注目し、コアの金銭の流れに目を光らせることが出来る。

検証学習は必ずしも定量化することが出来るわけではない。 スタートアップを創設したばかりの頃は、質的なアプローチを行う可能性が高い。質的なフィードバックは、厄介であり、解釈するのが難しいものの、重要度はとても高い。経験上、10-20名に話しかけると(十分に構成を練ったインタビューを顧客に行う)、パターンが見出され、十分に鋭い見解を得られ、決定を下すことが可能になる。その後、調査を用いて、より多くの人達により量的な方法で接触することで、この教訓をスケールアップすることが可能になる。

怠惰なピボット

検証学習を行わない状態では、闇雲にピボットしてしまう。これが「怠惰なピボット」であり、ビジネスを失敗に導く可能性が高い。怠惰なピボットは、次のような思考過程を経て形成される:

「今取り掛かっている試みは、あまりうまくいかない…理由はよく分からない…しかし、この別の試みは面白そうだし、格好いいから、やってみよう。」

恐らく、既存のアイデアに徹底的に力を注ぐことなく、また、別のアイデアに転換するために必要な見解を得ているようにも見えない。光り輝くアイデアから、別の光り輝くアイデアに飛び移っただけである。

リーン分析を使ってピボットを成功に導く

ピボットを成功させるには、焦点と学習が欠かせない。ビジネスの1つのポイント — ビジネモデル、価格設定、あるいは、ターゲットのマーケット等 — を変更し、結果を確認する必要がある。リーン分析に関する記事を作成している際、アイデアや製品をテストして、ピボットするべきか否かを判断するプロセスを説明する上で役に立つサイクルを思いついた:

pivot-flowchart

リーン分析サイクルを作成すると、仮説をテストして、必要に応じて適応するために必要な焦点の絞られた注目、そして、知識に基づいた正直さが求められる点に気づくはずだ。これはスタッツベースのアプローチだが、ハイレベルな問いを自分に問いかける手もある。

ビジネスモデルを評価する

私はLean Canvas(リーンキャンバス)を「自分の取り組みをしっかり理解しているかどうか」を確認するために必ず利用している。リーンキャンバスを良く知らないなら、絶対にチェックしてもらいたい。これは1ページのビジネスモデルツールである。リーンキャンバス(20-30分のセッションで作ることが出来るはずだ)を見た際に、自信を持って前進を続けることが出来るほど、十分に答えを得たと正直に言えるだろうか?解決しようとしている問題を本当に理解しているのだろうか?製品を売るチャンネルを把握しているのだろうか?不当な優位性を持っているだろうか?

次の一手を適切に判断するためには、ビジネスを定期的に見直さなければならない。

一部の人達はリーンスタートアップ(そして、その延長線上にあるリーン分析)を完全に機械的なプロセスであり、熱意に欠けており、効果がないと考える。あるいは、プロセスに従っていれば、必ず成功すると考える人達もいる。しかし、どちらの考えも誤りである。スタートアップは、工場の製造ラインで作られているわけではない。本能と熱意をないがしろにするべきではない。

リーンキャンバスに従い、次のステップに進む上で十分な情報、そして、十分な自信を得ているか自分自身に問いかけてもらいたい。いきなり問題に直面している場合は、解決する価値があるほど、その問題が深刻だと理解したと正直に言えるだろうか?顧客候補を対象とした、質の高いインタビューを十分に実施しただろうか?

リーン分析に関する記事を作成した際に、問題のインタビューを採点する取り組みを提案した。インタビューでは構成を良く練ることを前提としているため、特定の質問にスコアを割り振り、インプットに量的な印象をもたらすことも可能である。すると、質的なインプットのみを利用する方針を超えるため、検証学習にプラスの影響を与える可能性もある。

熱意は重要

実施している取り組みに対して熱意を持っていないなら、失敗する。成功に導くには、多大な労力が必要とされるため、強烈な思いやり、そして、感情がなければ、うまくいくはずがない。プロセスに焦点を絞る方針と、食い違うこともあるが、熱意/本能と情報に基づく正直さと厳しさを組み合わせる方法を見つける必要がある。

何か興味深いアイデアを発見し、ピボットする場所を導く — 現在のビジネスをベースとしたデータを持っていると仮定する。自動的にピボットし、ピボットを続ける前に、「本当に関心があるかどうか」を自分自身に問いかけるべきである。関心がないなら、ピボットが理に叶っているかどうか考え直す必要がある。

自分達の取り組みが分からなくなり、あまりにも力を入れていたため、当該のビジネスを始めた理由を忘れてしまった人達(私もその一人)に出会ったことがある。実に恐ろしい状況である。

ピボットを行う前に、向かおうとしている目的地に強い思い入れがあるかどうかよく考えてもらいたい。思い入れがあるなら、ピボットするべきだ。ないなら、ピボットを中止する必要がある。一歩下がって、評価を再び行う、または、時間を割いて、深呼吸をして、よく考える、もしくは、負けを認め、傷を癒して、再起を誓うべきかもしれない。

ピボットする前の簡単なチェックリスト

検証学習を行い、ピボットするべき方向に関するデータを得たと仮定する。また、ピボットを行い、事業を継続することを望んでいるとしよう。その他に何が必要だろうか?

  1. 大きなビジョン。 会社を始める前、達成しようとすることに対して、大きなビジョンを持っていたはずである。大きなビジョンがない状態では、拡大するポテンシャルのない小さな(一つの機能に特化した会社)スタートアップを作ってしまう。大きく、斬新なゴールが存在しないなら、ピボットを行う意味はない。ピボットは、大きなビジョンに向かってジグザグに進む行為である。
  2. 問題を深く理解する。 私が話しをする起業家の多くは、解決しようと試みている問題、そして、解決する価値があるうのかどうかを理解していない。十分に問題を調査していないためだ。あるいは、不変の真理を解決しようとしている起業家もいる。 根本的な問題を理解していないなら、適切にピボットする方法を解明することは出来ない。
  3. 実際の(反証可能な)仮説。 検証学習を行うだけでは、十分ではない。対照としてテストすることが可能な、反証可能な仮説が必要になる — さもなければ、ピボットがうまくいくかどうかを把握するのが大幅に難しくなる。
  4. 絶対に譲れない基準。 追跡する適切なスタッツを選び、比較する基準を設けることが、リーン分析のコアのコンセプトである。そのため、重要な計測基準を一つ(状況を把握することが出来る単一の計測基準)を持ち、譲れない一線を示す必要がある — つまり目標のターゲットを定める。ターゲットを達成することが出来なかったら、見直しを行う。ターゲットを達成したら、次のステップを進む自信(とデータ)を得られる。

ピボットは難しい。 適切にピボットを行い、成功に導く取り組みは、難しい。適当に、怠惰に、楽観してピボットを行うことも可能だが、それでは害をもたらすだけである。 正直さ、そして、データでピボットを支えることで、輝かしい未来を持つ事業を見つけられる可能性が得られるのだ。


この記事は、A Smart Bearに掲載された「The *real* pivot」を翻訳した内容です。

事業を軌道に乗せるまでには通常数々の苦難があり、成功を信じてそのまま続けるべきか、ピボットして方向転換すべきか、はたまた撤退すべきか、など起業家の悩みはつきません。この記事があなたのピボットを成功させるヒントの一つになれば幸いです。 — SEO Japan [G+]

フリマするほど暇じゃないOLに訴求、中古ブランド品委託販売「RECLO」

大手ネット企業やスタートアップが次々と参入するフリマアプリ。ユーザーにとっては、スマートフォンで撮影するだけで気軽に出品できるのが魅力だ。その反面、商品の撮影や配送に手間がかかったり、購入者の中には「ブランド品は偽物かもしれない」と不安を抱く人もいるかもしれない。4月9日に正式ローンチする「RECLO」(リクロ)は出品の手間がかからず、安心してブランド品を売買できることをうたうブランド品の委託販売サービスで、フリマアプリが取り込めないユーザーを獲得しようとしている。

フリマアプリとターゲット層や流通アイテムでは重なりが小さくなさそうだけれど、RECLOがフリマアプリと違うのは、出品価格を出品者自身が決めるかどうかだ。フリマでは出品者が価格を決めたり、購入者と交渉したりするのが一般的。これに対して、RECLOはどちらかと言うとブランド買取に近い。

RECLOで出品するユーザーはまず、宅配キットを取り寄せて商品をRECLOに送る(ここは無料)。すると、そのアイテムはRECLOの鑑定士によってブランド品の真贋判定を含めた査定が行われて、そこで値段が決まる。この値段付けは、中古市場が確立しているブランド品だから可能なことだそうだ。RECLOは鑑定士に相場データを伝えつつ適性な価格を決める。といっても、実は最初は少し高めに設定される。査定は質屋と似ているが、店舗や人件費などの中間コストを抑えることで、高めに設定できるのが特徴なのだという。ちなみに、この設定金額に同意しないのであれば、ユーザーは出品を取り下げることもできる。金額に同意すれば、RECLOが商品を撮影した上で出品する。

出品後の仕組みもちょっと面白い。値段が少しずつ下がっていくのだ。出品後には、5日おきに自動的に5%値が下がる。これで「1点モノがSOLDになる危機感」を与えて購入を促すのだという。値下げの下限は出品者の自由だが、初期設定では半額まで。程良い価格設定から半額まで落ちるので、ほとんどのアイテムは売れるということらしい。商品が落札された場合は、金額に応じて出品者はRECLOから50%~70%の手取り額を受け取る。これは、ブランド買取業者よりも2~3割良い条件になるようだ。

お小遣い稼ぎという点では、出品金額が自由に設定できて、販売手数料がかからないLINE MALLやメルカリなどのフリマアプリに分があるかもしれない。その一方で、RECLOはフリマアプリで必要な商品の撮影や配送を肩代わりし、ユーザーとの交渉さえもしないでいいっていうところがポイントだ。RECLOでは「フリマアプリで出品したい商品はあるけど、そこまでヒマじゃない」というユーザー、特にブランド品を頻繁に購入する25歳から45歳の女性を取り込みたいという。サービス名称は、「クローゼットをスッキリさせる」という意味の「re-closet」にちなんだもの。サービス運営元のアクティブソナーの青木康時社長は、「女性のクローゼットの中に眠る宝の山を有効活用してもらいたい」と話している。

6月には、スマホで商品を撮影してアップロードするだけで出品価格の相場がわかるiPhoneアプリ「かんたん査定」をリリースする。同アプリでは出品者が登録した「ブランド名」「カテゴリー」「状態」と、RECLOのデータベースをマッチングして査定を行う。もちろん、写真ではわからないようなダメージがある商品は、事前の買取価格よりも下がることはある。こうしたケースでは提携業者による買取価格が提示され、その金額に納得がいかなければ無料で返送してもらえる。

アメリカで活況のブランド品委託販売、日本でも大手参入の噂

日本で馴染みのないスマホを活用した中古ブランド品のオンライン委託販売サービスだが、アメリカでは活況を呈している。例えば、セレブ御用達の高級ブランド委託販売サービスとして知られる「RealReal(リアルリアル)」は、シャネルやエルメス、カルティエなどを中心としたラグジュアリーブランドのリセール商品を扱う。2013年8月には日本進出を果たし、女優やモデルを起用したプロモーションを展開している。そのほかにも、800万ドルを調達した「Threadflip」や、日本人が立ち上げたニューヨーク発の「Material Wrld」などがある。日本ではRealRealが当面の競合となりそうだが、青木氏は次のように勝算を語っている。

「RealRealはセレブが出品する派手な商品が中心。エルメスのバーキンが60万円で売っていたりして、見ているのは楽しいかもしれないが、普通のOLには手が届かない。ハイエンドにシフトしすぎている印象があってスケールしにくいのではないか。客単価で言うとRealRealは4~5万円と見ている。RECLOはその半額に抑えてでも客層を増やしていく。」

アクティブソナーの青木康時社長

競合という意味では、大黒屋やコメ兵、ブランドオフなどのいわゆる質屋型サービスや、テレビCMを展開しているブランド買取サイト「ブランディア」なども含まれるかもしれない。これらのサービスについて青木氏は、即座に現金化できるメリットがある反面、「買い叩かれて儲からない」「そもそも質入れする行為がクールじゃない」と指摘していて、買い取りよりも高く売れたり、安く買えるのがRECLOの優位点だと語る。

ユーザー獲得の施策としては、4月30日までに会員登録したユーザーに、購入・出品時に使える4000円相当のクーポンを配布。ユーザーは商品購入時にクーポンを適用したり、出品時に還元される金額にクーポン分の金額を上乗せできる。あわせて、出品者を紹介した人に対しては、一定マージンを還元する代理店施策も実施中だ(紹介料はRECLO側の取り分から支払われる)。現在は青木氏自らが代理店を開拓。ブランド品を大量に買う女性が多く在籍する飲食店や芸能プロ、引越し時にブランド品を処分する可能性がある人と接する不動産賃貸会社などにアプローチし、出品者を増やしているのだという。

青木氏は2012年11月にアクティブソナーを設立する以前は、ミュージシャンとして吉本興業に所属。「原宿の竹下通りでCDを手売りしていた」という異色の経歴の持ち主だ。その傍らで2004年には知人と携帯電話・通信機器の販売会社を立ち上げ、5年で年商約50億円にまで事業を拡大。その後は、2008年に天然水宅配サービスのウォーターダイレクトの営業部長として年商約30億円を経験し、2010年には同業のファインスプリングスを設立し、2年でグループ年商約40億円を達成するなど、営業やマーケティング畑を歩んできた。前述した代理店営業は、「ウォーターサーバーの代理店施策では常套手段」と語る。

なお、RECLOやRealRealのようなサービスは国内でもアツいジャンルと言う話は漏れ伝わってきていて、ゲームやSNSを運営する大手企業が参入するとの噂もある。青木氏はこれを認めた上で、「彼らは出品するサイトだけを用意して、鑑定や撮影・配送といった部分は他社に代行してもらうケースが多いはず。飛込み営業も含めた泥臭い作業も含めてスピーディーにやることでパイを取って行きたい」と話す。2015年9月には常時出品数5000点、年間販売アイテム数4万5000点、会員数30万人を目標に掲げる。将来的には、日本のユーザーがブランド品をアジアに出品する「逆BUYMA的なビジネスモデル」も視野に入れているそうだ。


メキシコ版Zipcarサービスを展開するCarrot.mx、200万ドルの資金を追加調達

メキシコ版ZipcarのCarrotがシリーズBにて200万ドル程度の資金を調達した。本シリーズを主導したのはVenture Partnersで、これにAuria Capitalおよびそのファウンダーたちや、以前から出資しているMexio Ventures(メキシコの政府系ファンド)も参加している。これによりCarrotの合計調達額は350万ドルということになった。

メキシコにおける車所有のあり方に変革をもたらそうとするCarrotだが、今回の調達資金はおもにメキシコ内での主導的地位を保つために活用していくのだそうだ。具体的には今後2年間で会員数1万人および車の保有台数300台超を目指していくとのこと。

メキシコ市場における成長拡大と主導的地位獲得を狙っては、2012年にUBICARの買収も多なっている。CarrotはUBICARについて「唯一の競合的立場のサービス」と位置づけていた。またメキシコシティの自転車共有サービスとも連携して、同サービスに登録する12万人にもCarrotのサービスの門戸を開いている。

現在のところ、Carrotはメキシコの三大都市にて運用されている。これを人口の多い15都市にまで拡大していきたいとのこと。15都市をカバーすることで潜在利用者数は4500万人になるのだそうだ。

「世界には20ほどのカーシェアリングサービスがあります。その中でもCarrotはもっとも急成長を遂げているサービスなのです」とVenture Partnersでmanaging Partnerを務めるFederico Antoniは言っている。「迅速な意思決定と行動力により、メキシコにおける市場をしっかりとその手におさめています」とのことだ。

もちろん、今後、世界規模のカーシェアリングサービスが参入してきて、シェアが大きく変化するということも考えられる。カーシェアリングサービスについては、今後まだ大きな業界再編が行われる可能性もあるのだろう。

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(翻訳:Maeda, H


ランサーズがKDDIと手がけるのは「IT」と「非IT」をつなぐクラウドソーシング

オンラインで不特定多数の人に業務を発注できるクラウドソーシング。その多くはデザインやプログラミング、ライティングなどオンラインに閉じた業務がほとんどだ。

その取り組みをオフラインの業務まで拡大するのが、4月7日よりランサーズとKDDIが取り組む「ランサーズプレイス」だ。

このランサーズプレイスでは、工事や引っ越し、印刷など、リアル領域の業務をクラウドソーシングで展開する。すでに、KDDIの法人向けプログラム「KDDIまとめてオフィス」を展開する営業部隊が、顧客企業向けにランサー(受注者)としての登録を案内。ランサーズにてその申し込みをアクティブ化しているという。また同時に、発注者としてのニーズをヒアリングしている。今後は個人、法人を問わずに受注者の登録を拡大していく。当面はベータ版として運用し、10月にも本サービスを開始する。2014年度10万件の案件掲載を目指す。

「クラウドソーシングの本質的な価値はネットで完結すること。つまりITありきだった。そのため非ITの領域にはリーチできなかったが、そこにリーチできるようになるのが強み」——ランサーズ代表取締役の秋好陽介氏は今回の取り組みについてこのように語る。

KDDIの法人営業としては、顧客企業からの細かなニーズのすべてをサービスとして自社で提供することが難しい。そんな課題に対して顧客同士をクラウドソーシングでマッチングすることで解決したいというニーズもあったそうだ。

また同時にランサーズでも「たとえばこれまでランサーズでデザインを作っても、それをプリントする印刷会社までをつなげることができなかった」(秋好氏)というように、ITと非ITをつなぐソリューションがないままで、この溝を埋めたいという思いがあったという。

「リアル」ゆえの課題も

ただ一方で課題もある。KDDIまとめてオフィスの顧客企業には、ITリテラシーのあまり高くない中小企業も少なくない。秋好氏からは、KDDIの営業部隊に対して「クラウドソーシングとは何か」というところを理解してもらうまでにも時間がかかったという話も聞いた。そういう環境で、果たしてクラウドソーシングをどこまで利用してもらえるのだろうか。実際、KDDIの営業部隊が顧客からもらった紙の申し込み資料をランサーズがアクティベーションする時点でも説明が必要なケースが多々あるという話も聞いた。

しかしランサーズビジネス開発部の小口展永氏によると、クローズドベータ版の段階で、都市部については比較的ユーザーが集まっており、地方でも徐々に成功事例が出てきているという。「中小企業ではアウトソーシングができないと思っていた人が多い」(小口氏)とのことなので、潜在的なニーズをいかに顕在化できるかという点こそが成長の課題になってきそうだ。


喘息対策に利用するピークフローメーターのテック化を目指すMy Spiroo

喘息を患っている人には、日常的にピークフローメーターという器具を使う人が多い。息を吸い込んでから吐き出すまでの息の速さ(ピークフロー値)を測るためのものだ。発作の予兆をチェックしたり、アレルギー物質などの外部要因が、自身の喘息症状にどのように関係しているのかを確認する用途などにも利用できる。このピークフローメーターは、ほとんどのものが機械式で動作するものとなっている。そこにテックの要素を持ち込もうとして生まれたのがMy Spirooだ。スマートフォンに繋いで使うようになっていて、データを有効に活用でき、そして持ち運びも多少楽になる。

このプロダクトを世に送り出したのはDr. Lukasz KoltowskiPeter Bajtalaだ。大きさはこれまでのピークフローメーターとあまりかわらないが、スマートフォンに繋ぐためのヘッドフォンジャックがついている。

「一度の測定にも時間がかかり、また数回ずつ繰り返して測定しなければならない手間を軽減しようと考えてMy Spirooを考案しました」とBajtalaは言う。「測定結果はスマートフォンに保存され、必要な相手と共有することができます」。従来は測定して結果を紙に書いて医師に見せるという手順を踏んでいた。My Spirooを使えば測定をしながら記録と情報共有が同時に行えるようになるわけだ。

必要最小限のデータをとることを目的とした患者用版に加えて、医師用の「プロ版」もつくっていく予定なのだとのこと。現在ポーランドの製薬会社やベンチャーキャピタリストなどと、今後の動きを話し合っているところなのだそうだ。ここまでは自己資金でやってきている。

スマートフォン経由でネットワークにつながっていることを活かして、ピークフロー値などだけでなく、位置情報や地域毎の統計情報なども蓄えていく仕組みを実装しようとも計画しているのだそうだ。花粉や空気汚染などの状況と発症具合を結びつけることで、患者たちの健康管理(吸入器の準備など)にも多いに役立てることができるだろう。「データはすべて個人情報と切り離した形で収集します。統計的データのみをシェアすることにより、いろいろな面で役立つ喘息マップのようなものを提供できるようになると思うのです」とBajtalaは言っている。

My Spirooは、先週行われたポーランドのスタートアップフェスティバルで2位を獲得したそうだ。デバイスは年内にも提供できるようにしていきたいとのことだ。

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(翻訳:Maeda, H


Dropbox、資金5億ドルを融資調達

オンラインストレージサービスのDropboxは、5億ドルを上回る資金を負債(融資)調達した。Recodeの記事による。

本誌はDropboxに確認メールを送ったので情報が入り次第続報する予定。最初にこのニュース(有料ページ)を報じたのは、Financial Timesのようだが、Recodeによると、同誌は「現場に近い情報筋」に確認を取った、と言っている。

今年2月、Dropboxは株式発行によって3.5億ドルを調達し、評価額は100億ドルだった(同社はこのラウンドを正式に認めたことはないが、当事の報道は規制当局への提出書類によって確認されている)。つまり、同社にとって今は積極的成長の時のようだ。4月9日に予定されているプレスイベントで詳細が明らかになるだろう。

若いIT企業で、融資による資金調達を行っているのはDropboxだけではない。Squareは最近、「数百万ドル」の資金を融資枠で調達したと、CNBCは報じている

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook


シャワーの後の濡れた身体を、乾いたタオル以外でなんとかしたい

シャワーはとても便利なものだと思う。とても大好きだ。しかし身体を拭く段になるとどうだろう。これは非常に面倒だと思うのだ。あちこちをタオルで拭くうちに汗をかいて、もう一度シャワーを浴びたくなるようなこともある。ニューヨークのThe Body Dryerも、そのように感じたようだ。そこでタオルを使わずに身体を乾かす方法を生み出してくれたのだ。

名前からしてすでにおわかりだろう。体重計のような形をしたこのデバイスは、下から風を送ることでいらない水分を飛ばしてしまう仕組みになっているのだ。快適に身体を乾かすことができるだけでなく、濡れたタオルで増殖して育っていくバクテリアを減らすことにもつながるわけだ。濡れタオルというのは黴などの絶好の巣となってしまうのだ。

このBody Dryerではイオン化した温風ないし冷風を送り出すことが出来るようになっている。家庭用としてだけではなく、ジムなどなどの業務施設でも利用できるのではないかと、商機をうかがっているところだ。定価は250ドル程度となる予定だそうだ。しかし現在進行中のindiegogoのキャンペーンにてプレオーダーを行えば、125ドルで手に入れることができる。目標資金調達額は5万ドルだが、すでに3万4000ドル以上が集まっている。

こうしたプロエジェクトを紹介する際、たいていプロジェクトページに置かれたビデオも併せて紹介するようにしている。ただし今回は不必要なビキニ女性が使われていることが少々気になったので、ビデオは掲載せずにおいた。しかしその点はおいておいて、シャワーの後のタオルを無用にするというアイデアはとても良いと思う。洗濯物も減らすことができるわけだ。

乾燥にかかる時間は30秒ほどであるとのこと。もちろん身長などにもよるのだろう。背の低い人の方が送風校に近いわけで、はやく乾くのだと思う。出荷開始は9月を予定しているとのこと。もしかするとダイソンが競合に名乗りをあげてくることになるかもしれない。しかしともかく、プロダクトは面白そうだと思う。

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(翻訳:Maeda, H


3分で分かるAPI経済の仕組み

APIが様々なプラットフォームで提供され、様々なサービスで活用される今日。そんなAPI経済の状況をわかりやすくまとめてくれた記事をThe Next Webから。 — SEO Japan


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アダム・ドゥヴァンダーは、SendGridでディベロッパーコミュニケーション部門を統括する、「開発」のスペシャリストである。過去には、Wired、Webmonkeyに記事を寄稿し、また、APIのリソースとして名高いProgrammableWebで編集に携わった経験を持つ。


数年前、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)は、楽に、そして、機能的にアプリケーションを連動させるための手段、つまり、デジタル版の接着剤と認識されることが多かった。しかし、現在、APIの価値は、単なる橋渡し以上の役目に進化している。

多くの開発者にとって、APIは、ビジョンを明らかにすることが可能な基礎的な構造の役目を担っている。ここで、効果の80%は20%の原因によって引き起こされると説くパレートの法則について考えてもらいたい — アプリとクラウドのサービスは、アプリが必要とする作業の80%を既に実施しているため、この環境を活かして、自分ならではの20%の「魔法」に力を入れれば良い。

過去を振り返る

「API」と言う用語は以前から使われているが、現代の、ウェブに接続するAPIのバージョンが勢いをつけ始めたのは、AmazonのStore APIが登場した2000年代の前半であった。このAPIによって、どんなウェブサイトでもサイト上にAmazonを掲載することが可能になった。

例えば、小規模な小売業者がAmazonのStore APIを統合すると、別にEコマースの機能を開発することなく、ウェブサイトから商品を販売し、配送することが可能になる。中小規模の業者にとって、今までとは全く異なる新しいチャンネル(そして、経済)が登場したと言えるだろう。

FacebookとTwitterも独自のオープン API戦略を用いて、Amazonの後に続いた。Facebook、または、TwitterのログインAPIを統合したウェブパブリッシャーは、ウェブサイトを訪問している人、閲覧している人、そして、コメントを投稿している人に関するデータを集めて、理解することが可能になり、その結果、広告スポンサーにより良い製品とサービスを売ることが出来るようになった。

この頃から、APIは大幅に成長し、採用するサイトは増加していった。APIを公開してとりわけ大きな成功を得た企業の一つが、Salesforce.comである。同社は、第三者アプリのエコシステムで300万近いアプリに利用され、サイトのトラフィックの大半は、APIによってもたらされている。

APIは、ビジネスを早く確立し、成功に導くモデルとして、インターネット全体に影響を与えている。インターネットは、様々な事業体によって所有され、運営されるウェブページのネットワークから、オープン API、そして、アプリケーションが連動して、新たなアプリケーション、新たなビジネス、そして、新たな協力関係を築く手段を作り出すエコシステムへと姿を変えつつある。

APIを活用するべき理由

APIには明確なビジネス上のメリットがあるものの、運用の面でも幾つかメリットをもたらす(その多くはビジネスの成長 & 成功に関連する)。現在、ウェブアプリの開発者は、多数のAPIを利用することが出来る。Facebook、Google、そして、Salesforce等の一流のテクノロジーブランドがAPIを提供している。

また、政府機関、教育機関、金融機関、さらには、大型の小売業者等、一風変わった業界からも多くのAPIが提供されている。

APIから得られるメリットを幾つか挙げていく:

APIは余計な作業を減らす。 APIを利用することにより、運用およびインフラの一部をその領域のプロにアウトソースすることが可能になる。

APIは知識を得る上で役に立つ。 アプリのインフラの一部をエキスパートに対応してもらうことで、プロから学ぶ機会を得られる。

APIはより幅広いアプリのエコシステムに接触することが可能になる。 アプリのインフラの一部をエキスパートに委託する機会が増えると、エキスパートとのつながりも増える。

APIは新製品を作り & テストする上で役に立つ。 独自のAPIを公開すると、顧客& パートナーのエコスシテムが活用するビジネスを公開することになり、新たなビジネスの機会が生まれる可能性がある。

要するに、APIの消費者になると、アプリケーションやビジネスの構築を簡素化することが可能になる。オープン APIを統合して、インフラを管理し、運営上の懸念を拭い去ると — たとえ解決策が分かっていることでも — 最も重要なこと、つまり製品に集中する余裕が生まれる。当該の領域を専門にするエキスパートにアウトソースすることで、不要な作業を回避することが可能になるのだ。

現代の一般的な開発者にこのパターンを当てはめてみよう。大半の開発者は、様々な API コール & サービスを利用して、アプリをデザインし、開発している。例えば、SMSや音声にはTwilioを、ログインにはFacebookやTwitterを、モバイルアプリのデータおよび分析にはParseを、そして、eメールにはSendGridを利用している可能性がある。

事実、アプリの大半の必要とされる機能は、誰か、または、どこかの会社によって既に解決策が提示されている。また、このようなサービスの多くを当初は無料で利用し、規模を拡大する中で、徐々に出費を増やしていくことになる。

このPareto-As-A-Service(サービス型パレート)モデルにより、既存のAPIのエコシステムを基盤として活用し、マーケットにもたらすことが可能な固有の価値、能力、そして、ビジョンに力を入れられるようになるのだ。

API経済に還元する

APIのエコシステムを使って、アプリを作ったら、今度は自分のアプリのオープン APIを提供することで、他の開発者が自分のプラットフォームをベースとしてアプリを構築することが出来るようになり、エコシステム(そして自らのビジネス)に還元する機会が生まれる。すると、パートナーにプラスに働き、また、エコシステムに貢献して、シームレスなアプリ間のUXを提供することで、成功を収めることが可能になる。

APIの統合は、ビジネスを推進させるツールとして定着しており、多くの企業がAPI限定のビジネスを立ち上げるようになった。例えば、WePayは、先日、Eコマース、クラウドソーシング、そして、零細企業のソフトウェアプラットフォームを統合するために構築されたオンライン支払いシステムのAPIに事業を一本化している。その結果、過去の1年のみで、WePayのAPIビジネスは600%増加し、先日、1500万ドルの資金を調達していた。

どのようなルートを選ぶにせよ、パレートの法則を指針にするべきである。素晴らしいアプリを作り、良質なUXを提供することに集中しよう – その他の作業はAPIに任せておけば良い。


この記事は、The Next Webに掲載された「The rise of the API economy and consumer-led ecosystems」を翻訳した内容です。

3分で分かるだけにポイントを簡潔にまとめた内容、新しい発見があるわけではありませんでしたが、そういうことだよね、という納得感はありました。私もたまたま今API主体の新サービスを手掛けているだけに、早くこのAPI経済に飛び込んで(いつもはユーザーとして利用させてもらっている側ですが)、その世界で自由に泳いでみたいです。この記事を参考に、途中で溺れないように・・・。 — SEO Japan [G+]

儲からないSaaSビジネスモデルの罠

SaaS事業にも取り組んでいる私としては、ドキっとしてしまうタイトルですが、さてその内容は? — SEO Japan

2012年に前年比で80%の成長を遂げ、6000万ドルの収益を上げたMarketoが、IPOを申請した。

しかし、実際には、同社は3500万ドルを失っていた。これは一体どういうことなのだろうか?

go for broke

収益1ドルに対して、1.60ドルを支払い、利益の出ない製品を無理やり販売のチャンネルに詰め込む状況は、理想とは程遠い。

「企業向けのSaaSの会社を成長させるためなら、当然だ」などと考えるべきではない。言いたいことは分かる — 「販売、マーケティング、そして、初期費用の回収期間は長いものの、最終的に利益が出るはずだから、待ってくれ」と言いたいのだろう。

冗談じゃない。EloquaもSaaS会社であり、同じような製品を同じ業界で販売し、同じようにSalesforce.comを統合していたものの、IPO時、7100万ドルの利益のうち、損失は500万ドルであった。60%も失っていたMarketoと比べ、たった7%の損失である。

このような逆さまのビジネスモデルを、SaaSビジネスは見習うべきではない。現代のスタートアップコミュニティには、このように会社を成長させる考え方を理解した上で、逆らってもらいたい

一般的な考え方:

  1. 企業の顧客を獲得するには、多額のコストが必要になる。マーケティング、法務、顧客管理、オンボーディング、技術的な指導、トレーニング等々。このプロセスを何度も実施しても、顧客を失ってしまうこともある。つまり、このコストは、顧客を獲得する度に、分割で返却していくことになる。
  2. SaaSの会社は、時間の経過と共に収益を獲得していく。通常のソフトウェア会社は、企業との取引で10万ドルを要求し、上述した「顧客の新規事業」のコストをすぐに取戻し、さらに、利益も得るが、SaaSの契約では、5000ドル/月で支払われ、同額の収益を得るまでに18ヶ月間かかることもある。幸いにも、18ヶ月間が過ぎた後も、SaaSの会社は、5000ドルの月額料金を引き続き請求することが出来る。その他のタイプの会社は、たった20%/年のメンテナンス料金で誠心誠意尽くさなければならない。
  3. つまり、企業向けのSaaSの会社は、最初の12-24ヶ月間は利益を得ることが出来ない。
  4. しかし、成長著しいSaaSの会社は、新しい顧客を獲得し、その結果、顧客の数を増やしていき、儲けの少ない業務が次々に蓄積されていく。
  5. 儲けの少ない業務があまりにも多いため、以前の顧客との仕事が黒字に転換しても利益が出ない顧客がさらに多いため、会社は健全な成長を続けている限り、儲からないことになる
  6. また、製品を作るためのR & D、オフィスの賃料、重役の給料、広告、法務、融資、人事、技術サポート、会計等 — その他のコストの存在も忘れてはならない。実際に利益を得るためには、このコストを埋め合わせる必要がある。そのため、最終的な損益を黒字にするために必要な期間は長くなる。
  7. よって、少しでも成長しているなら、儲けが出ない状況は、SaaSの企業にとっては健全であり、妥当である。

会社を立ち上げたばかりの頃は、この考え方は誤っていない。しかし、Marketoの規模の会社には、当てはまらない。

その理由を説明しよう

この概念においては、成長するための資金の投入をストップすれば、利益が出ると言う暗黙の前提が存在する。よって、実際には利益を上げることが出来る企業であり、儲けが出ていないのは、成長しているためである。これは、マーケットシェアを増やし続けている証拠であり、望ましい状況である。

この考え方の誤っているポイントを指摘しよう — 成長させる試みを止めることは不可能である。つまり、成長率が低くなり、利益をもたらす顧客を多数抱える見返りを得られる日は、永遠にやって来ることはない。一体いつになったら黒字化するのだろうか?

それでけではない。SaaSの会社を成長させるのは、徐々に難しくなる。契約の解除が発生するためだ。維持率が高くても(75%/年)、収益の25%を新たな「利益の出ない」顧客で置き換える必要があり、損益は0になる。契約が解除される度に、利益が遠ざかっていく。

大まかな数字であっても、このモデルが失敗する理由を容易に理解することが出来るはずだ。企業を相手にするSaaSビジネスの典型的なスタッツを挙げていく:

  • 1年半の回収期間(顧客を獲得するために投資した資金を賄える収益を得られるまでにかかる期間)。
  • 75%の年間維持率(4年おきに顧客ベースを一新する。もちろん、長い期間とどまる企業もあれば、早く打ち切る企業もあるため、あくまでも平均の期間である)。
  • 顧客にサービスを提供するための30%のコスト(70%の売り上げ総利益率と言い換えることも出来る。要するに、1ドルの収益を得る度に、サーバー、ライセンス、技術サポート、顧客管理等の直接経費として0.30ドルが消える計算である。多くのSaaSの企業は、たとえSalesforce.comのような巨大な会社であっても、売り上げ総利益率は70%程度である)。
  • 15%の収益 == R & D部門のコスト。
  • 15%の収益 == 管理部門のコスト(賃料、融資、人事、重役の給与)。

平均的な顧客が、年間の収益Rドルをもたらすと仮定すると:

  • 顧客の存続期間の収益は$4Rとなる。ただし:
  • 顧客を獲得するために$1.5Rを投資する(回収期間)。
  • 顧客にサービスを提供するために、売り上げ総利益の$1.2Rを支払う(4年 X 30%のコスト)。
  • R & Dに$0.6Rを出費(4年間で15%)。
  • 管理費として$0.6Rを出費(4年間で15%)。

つまり、元々あった$4Rから最終的に残った$0.1Rが利益となる。これは収益の1/40であり、この額を得るために4年間を要する

しかも、まったく成長しないことを前提としている。しかし、最低でも契約の解除を賄うだけの成長を続ける必要があり、これで僅かな利益も失われる。

それでは、

どうすれば利益を出すことが出来るのだろうか?

成功をもたらす、利益を出すSaaSの企業(3000万ドル/年を上げる企業はもちろんのこと、500万ドルの利益を出す企業も注目に値する)は、利益を得るために複数の取り組みを行う:

  1. アップセル/アップグレードを介して、契約解除の影響を抑え込む。例えば、 Salesforce.comとZenDeskは、ユーザーを加える度に、そして、機能を増やす度に、一人当たりの料金を値上げする。顧客は増えているため、4年間の収益は4Rではなく、1年目ではR、2年目は1.5R、3年目は2R、そして、4年目は7Rになる可能性がある。この増加によって、計算に大きな変化が生じる。なぜなら、顧客を獲得するためのコスト、そして、一般的にR & Dと管理のコストも上がることはないためだ。「契約解除率」-「アップグレード率」=「ネットチャーン」である。ネットチャーンを0に近づけることは、利益を得る上で大きなステップとなる。優良なSaaSの企業は、ネットチャーンがマイナスに到達する。この境地に達する会社は、純粋なソフトウェア会社だけでなく、例えば、ハードウェア/サーバーを提供するRackspaceも、ネットチャーンをマイナスまで下げることに成功しており、その結果、収益を前年比で30%増加させ、15億ドルを獲得し、3億ドルの利益を上げている。
  2. バイラルな成長を達成して、契約解除を相殺する。「バイラルな成長」を名乗る資格があるB2Bの企業は少ない。しかし、実際にこのレベルに達した企業は、年間の成長率Xを維持し(Xは契約解除率よりもは遥かに高い)、獲得のコストを最低限に抑えている。このケースでは、契約解除が「追いつく」ことはなく、利益を出すことが出来る。
  3. 顧客獲得のコストを大幅に減らす。18ヶ月間の回収期間は、企業にとって大きな負担となる可能性がある。・広告を使って顧客を見つけることが出来るなら、・営業スタッフに話しかけることなく登録してもらうことが出来るなら、・製品内のチュートリアル、良質な文書、そして、利用方法を説明する動画を使って、製品を学ぶことが出来るなら、・データをサポートの支援を受けずにインポートすることが出来るなら、・営業スタッフが、プレゼンテーションを作成することなく、収支の管理者に価値を証明することが出来るなら、成長することが前提であっても、契約解除-切り換えのコスト、そして、適切な成長の規模を、利益を阻害しない程度に抑えられる。
  4. 売り上げ総利益を大幅に改善する。サービス主体の企業向けのSaaS会社なら、技術サポート、顧客管理、そして、本格的なITのインフラは必須である。だからこそ費用効率の高い(利益を出す)企業向けのSaaSの会社であっても、売り上げ総利益率を70%以上に引き上げることに苦労する(Slaesforce.comやRackspace等)。しかし、カスタマーサービスを最低限のレベルに抑えている企業(カスタマーサービスが悪いとは限らない)は、出世を続け、「資金と投じることなく」利益を得ることに成功している(例えば、Google、Facebook、Freshbooks)。

SaaSのビジネスの基本的な基準値は変化する点にも注目してもらいたい。SaaSの企業は、基準値を改善していく必要がある — 契約解除率を下げ、ネットチャーンを下げ、売り上げ総利益率を高め、顧客獲得コストを削減する必要がある。基準値の改善を怠り、「利益が出るまで成長」させる方針は、うまくいかない。

ジャッキー・メイソンの古いジョークを思い出す: ある衣料品店では、原価でジャケットを売っている。ある日、客が「それで利益が出るのですか?」と店員に尋ねたそうだ。すると、店員は「ジャケットを一杯売れば儲かりますよ!」と答えた。

Marketoは大量にジャケットを売っている。


この記事は、A Smart Bearに掲載された「The unprofitable SaaS business model trap」を翻訳した内容です。

米国と日本では規模も事情も違うでしょうが(そもそも儲からない会社に資金がそこまで投下されないですし・・・)、中々に身につまされる記事でした。数字で羅列されている1つ1つの項目、どれもそれなりに納得感もありますし、SaaSが成功するにはどこかで圧倒的に効率的なことをやって、利益が出る余剰を作ることが大事なのかな、と日々事情を回していて感じます。私が関わるSaaSサービス提供会社もバイラルな拡がりは最近見せてくれたのですが、これが仕事につながるかは全く未知数な今日現在です。 — SEO Japan [G+]

3Dデザインで10億通りのシャツが作れる「Original Stitch」が日本上陸

約10億パターンの組み合わせの中から、自分だけのシャツを注文できるシリコンバレー発のサービス「Original Stitch」(オリジナルスティッチ)が4月3日、日本で正式ローンチした。約180種類の生地を用意していて、袖、襟、ボタン、プリーツ、イニシャルの有無など、シャツの細部までカスタマイズすることが可能。同品質のシャツと比べて3〜4割安く買えるという。自分仕様のシャツを作りたい人だけでなく、「服を買いに行く服がない」となげく人にも持ってこいのサービスかもしれない。

操作画面の特徴は、実物に近い形でシャツを見られることだ。例えば、生地をマウスオーバーするだけで、その質感がわかるほどに画像が拡大される。

シャツをカスタマイズする際は、生地やスタイル、襟の形……と好きなパーツを選んでいく。独自の3Dデザインシステムによって、パーツを変えるたびにリアルタイムで完成予想のシャツが変わるので、直感的にデザインできるようになっている。

デザインしたシャツは正面からだけでなく、斜め前、後ろからも確認できる。納得がいかなければ各パーツを行ったり来たりして、心ゆくまでカスタマイズすることができる。

サイズは首まわりと裄丈を入力する。サイズがわからない場合、注文後にサイズの計測方法を記載したメールが届くが、最終的には自分あるいは同居人が採寸する必要がある。

品質面では「ヨーロッパ産の高級生地」を使用し、有名ブランドのシャツを手がける長野と天草の工場で制作。店舗を持たず、工場に直接発注して中間コストを削減することで、同品質のシャツと比べて3〜4割安く、既成品と同程度の価格に抑えているという。

価格は送料込みで約9000円から約1万2000円程度。注文から2週間程度で届き、購入後30日以内であれば無料で返品できる。キャンペーンとして、登録者全員に20ドル(約2000円)分のギフトカードをプレゼントしている。

DellとNIKEidから着想

この手のサービスとしては、日本人の体型に特化した「フィットアルゴリズム」によって、試着をせずに自分に合ったスーツやシャツを購入できる「ラファブリックス」をTechCrunch Japanで紹介したばかり。北米では2007年にカナダで創業し、2013年3月にシリーズBで1350万ドルを調達した「Indochino.com」が有名だ。既存のサービスとの違いについて、Original Stitchを運営する米BleuFlamme創業者のJin Koh氏は、「スーツではなくシャツだけに特化していること」と説明。技術面では独自の3Dデザインシステムが差別化のポイントなのだという。

Original Stitchは2013年12月、シリコンバレーで働くエンジニアの「服を買いに行くのがめんどくさい」という思いを出発点に生まれたサービスで、自宅やオフィスにいながら「最短5分」で注文できることを売りにしている。Koh氏は、在庫を持たずに注文を受けてから製造するDellのBTO(Built To Order)モデルと、好きな色やデザインで世界で1足だけのスニーカーを作れる「NIKEid」から着想を得たと話す。「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」とはロングセラー『アイデアの作り方』の一節だけれども、Original Stitchもそんな発想から生まれたサービスと言えそうだ。

日本上陸にあたっては、国内でベンチャー支援を手がけるInsproutと提携。InsproutはBleuFlammeに出資していて、サイトの日本語化やユーザーサポートなどの業務を担当している。日本ではFacebook広告を使ってサービスを訴求するとともに、サイト上ではチームラボ代表の猪子寿之氏を起用したYouTube動画を展開。年間で50万枚の販売を目指す。今後は猪子氏以外にもウェブ業界で知名度を持つ人物を用いたキャンペーンを行う予定だという。


グロースハックツール提供のKAIZEN platformが500万ドルを調達、海外進出に積極投資

KAIZEN platformは2013年設立でもっとも注目の集まったスタートアップの1社だろう。同社の手がける「Plan BCD」は、異なるユーザーインターフェース(UI)のウェブページを用意し、ユーザーの反応をもとにコンバージョン率の改善などを図るA/Bテストを実現するサービスだ。

自らページを用意するだけでなく、登録するグロースハッカーにページのUI改善を依頼できるのが特徴。その詳細はTechCrunch Japanでも「グロースハッカーごとサービスで提供――、日本発の新A/Bテストの『Kaizen Platform』」「A/Bテストの「KAIZEN platform」がグーグルとグリー出身者を要職に起用して海外展開へ」として紹介してきた。提供から半年でのエンタープライズ版の導入社数は30社以上。2013年11月リリースのオンライン版は提供から4カ月で世界15カ国500社に導入されているという。

Plan BCDのイメージ

そんな同社がFidelity Growth PartnersJapanとグリーベンチャーズから総額500万ドルの資金調達を実施したと発表した(グリーベンチャーズはシードラウンドからの追加投資となる)。

同社では今回の調達をもとに、かねてから発表されていた海外進出を本格化。米国サンフランシスコとニューヨークの両地域にてマーケティングを強化するという。「日本のビジネスは拡大基調。少なくとも日本のマーケットはできてきたので、海外でのセールスを強化していく。米国ではクライアントの獲得と合わせて、デザイン会社、グロースハッカーとの提携を進める」(創業者兼CEOの須藤憲司氏)

調達にあわせて、今後は須藤氏が海外事業の立ち上げに注力する。初夏をめどに、拠点も米国に移す予定だ。国内については、グーグル日本法人で広告営業部門を立ち上げた経験もある小川淳氏が、カントリーマネージャーとして統括する。なお、KAIZEN Platformは日本人チームによる創業だが、当時より海外進出を想定していたため、米国に登記している。

戦える500人のグロースハッカーが必要

実はこれまでPlan BCDを導入しているのは、グロースハッカーやデザイナーを社内、プロジェクト内に抱える企業が中心だという。Plan BCDの“キモ”とも言える外部のグロースハッカーへのクラウドソーシングは、品質管理も含めて一部の導入企業でテストの真っ最中だ。

同社ではこれまで国内のデザイン会社などにグロースハッカーの登録を促してきたが、「事業をやって分かったが『天然モノ』のグロースハッカーはいない。我々が『養殖』するしかない状況だ。根本的にはツールを使える人は少ないので外部のリソースが欲しい。日本も海外も人が全然足りない」(須藤氏)状況だという。

そのため今後は学校との提携や地方自治体と連携した人材教育なども視野に入れていくという。「戦えるグロースハッカーが500人いれば、相当な案件をさばけるようになる」(須藤氏)。また、クラウドソーシングによって得られる対価も「デザイン会社などでも、単なるサイトの受発注では単価が安くなるが、我々がやるのはコンバージョンの改善。比較するのが広告費やシステム費なので、1万、2万円の作業でなく、数十万円の広告と換算できる」(小川氏)と期待を寄せる。

左から小川淳氏、須藤憲司氏、瀧野論吾氏(写真は2月のもの)


14.5億円の大型調達を実施したフリマアプリ運営のメルカリ、米国進出へ

スタートアップから大手まで、各社が参入して競争に拍車がかかるフリマアプリだが、ウノウ創業者である山田進太郎氏が立ち上げたメルカリが、大型の調達を実施。米国でのサービス展開を進める。

メルカリは3月31日、グローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)、GMOベンチャーパートナーズ(GMO-VP)などを引受先とした第三者割当増資を実施し、14億5000万円を調達したことを発表した。今回の発表に合わせて、2013年末より参画していた元ミクシィ取締役の小泉文明氏が取締役に、GCPの高宮慎一氏が社外取締役に就任する。

また、米国に子会社を設立。取締役でRock Youの創業者である石塚亮氏が赴任する。開発は当面国内に集中し、米国ではマーケティングやカスタマーサポートなどの体制を整えるとしており、早期のアプリリリースを目指す。「法律面も含めて複数の弁護士に話をしているところ。米国では夏までにアプリを出したい。UberやAirBnBなども広義でのCtoCサービス。どちらかと言うと(法律面で)きれいにするのに時間かかっているが、市場としては日本の4〜5倍はあるはず。もちろんそんなに簡単ではないが、米国の次はヨーロッパ、その先にはアジアやクロスボーダーな取引にも挑戦したい」(メルカリ代表取締役の山田進太郎氏)。人材についても、石塚氏のこれまでの人脈などを通じて「アンオフィシャルなものも含めて数十人とは会っている。普通の日本の会社に比べるとAクラス、Sクラスの人々にアクセスできている」(山田氏)という。

すでに国内最大規模に——競合の参入には「歓迎」

メルカリは、2013年2月の設立(当時の社名はコウゾウ)。7月にフリマアプリ「メルカリ」を公開した。これはスマートフォンのカメラで撮影したアイテムをそのまま出品できるアプリだ。商品を販売した金額は、メルカリ内での商品を購入するポイントとしても利用できる。現在アプリのダウンロード数はiOS、Android合わせて150万件以上。地方の20代女性の利用を中心に、1日の出品数は数万件、流通総額は月間で数億円となっている。フリマアプリの事業者は、各社とも流通総額などを公開しておらず、メルカリも“数億円”という表現にとどまっている。だが、競合と比較しても「推定ではあるが、国内最大級だと考えている」と山田氏は語る。僕が業界関係者らに聞いたところでも、「大きなサービスでも月間の流通総額は数億円前半ではないか」という回答が多い。ちなみにヤフーの「Yahoo! オークション」は月間流通総額500億〜600億円と言われているので、まだまだのびしろは大きいだろう。

最近はLINEも「LINE MALL」でフリマアプリに参入している。これについて山田氏は「若干怖いが、僕らとしては市場が盛り上がればいい。プッシュ(通知)をフックにユーザーを集める企画(チャンスプライス)なども、LINEのDAUを考えれば理にかなっており、よくできている」と語る。市場全体については、「消費増税も追い風。いいものを安く買いたい、使えるものを誰かに渡したいとは思うが、これまでのオークションでは敷居が高い。そのハードルを下げていければもっと使ってもらえるのではないか」(メルカリ取締役の小泉文明氏)と期待を寄せる。

なおメルカリでは、出品、販売、落札の手数料を「当面無料」としており、落札代金の振り込みのみ有料としているが、今後もこの施策を続けていく予定だという。「今は市場拡大の時、短期的に収益を求めるわけではない。とはいえ社員も30人ほどいる。今回の調達は、厚めに資本を持って市場を開拓していくための施策だ。最終的にはどこかのタイミングでで有料化するつもりだ」(山田氏)

メルカリ代表取締役の山田進太郎氏(右)と取締役の小泉文明氏(左)


写真を撮ればそれだけで3Dモデリングが行えるMatterport

実在の空間を正確な3Dモデルにするのは、何万ドルも費用がかかるし、何週間もとまでは言わないまでも、それなりの日数のかかる作業だった。この状況を大きく変えてしまおうとするのがMatterportというスタートアップだ。4500ドルのカメラを使って、数分間で物体や空間の3Dモデリングを行うことができると主張している。さらに操作も非常に簡単で、iPadが利用できる人なら誰でも操作できるとのこと。3Dモデリングを非常に身近なものとしてくれるのだそうだ。

あまりに魅力的な主張を行っていて、眉唾ものだと感じる人もいるだろう。そんなわけでMatterportをTechCrunchのヘッドクオーターに招き、TechCrunch TVの控室の3Dモデルを作成してもらうことにした。その様子は上のビデオでもご覧いただける。

MatterportのCEOであるBill Brownはインタビューに応えて、このプロダクトは3種類の人に大きなメリットになるのではないかと語っていた。まず建築業界のマネージャー職にある人など、設計業務に携わる人だ。あるいはイベントスペースやエンターテインメント施設などのオーナーにもメリットがあるはずだとのこと。または内装関係の仕事を行っている人も、室内設備の配置換えなどを検討することができるだろうとしている。

ちなみに、Matterportは現在でもかなりの小型化がなされていて、そのサイズと使いやすさが大きな魅力であると考える人も多い。しかしBrownによれば、現在のものはあくまでも「初期型」であると述べている。Matterportのシステムはスマートフォンサイズのものになる日も近いのだそうだ。「Matterportは、誰もが3Dセンサーをポケットに入れて持ち運ぶというような状況を目指して生み出されました。現在の2D写真にかわって、誰もが3D写真を撮影するような日がくるのではないかと考えているのです」。

また、Matterportも参加している、GoogleのProject Tangoについても話をしていた。曰く、3Dキャプチャーの技術は、当初思い描いたよりも素早く展開し始めていると感じているそうだ。「最初のモバイル(3Dモデリング)デバイスが年内に登場してもおかしくない状況になっています。少なくとも数年のうちには、一般的なデバイスという位置付けになるものと思われます」とのこと。

現在のMatterportデバイスは、まだポケットに収まるようなものにはなっていない。しかし確かに宣伝文句にそった性能をみせてくれている。行ってもらったデモで、撮影に要した時間は20分未満だ。そしてナビゲート可能な3Dイメージにまとめあげるのも数時間で行うことができた。どんな具合のものであるかは、これもまた上のビデオに掲載してある。フライスルーなども行うことができ、その様子は下のビデオで確認することができる。

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(翻訳:Maeda, H


タイムマシンの楽しみを感じさせてくれるTimehop、待望のAndroid版がついに登場

過去にFacebook、Instagram、Foursquare、そしてTwitterなどに投稿した記事や写真を、Timehopで楽しんでいるという人も多いことだろう。このTimehopについにAndroid版が登場した。

ご存じない方のために説明しておくと、Timehopは1年前や2年前、あるいはさらにその前の今日(同じ日)に、自分がいったいどのような投稿をしたのかを見せてくれるサービスだ。自分自身の投稿で振り返る「今日は何の日」風のアプリケーションだと言えばわかりやすいだろうか。

Timehopは昨年夏に、従来に引き続いてSpark Capitalの主導により300万ドルを追加調達しており、Android版の開発にはその資金も役立てられている。

iOS版の方はこれまでに100万回以上ダウンロードされており、エンゲージメント率も非常に高いアプリケーションとなっているそうだ。TimehopのファウンダーだるJonathan Wegenerによれば、40%の人が、毎日アプリケーションを起動しているらしい。ユーザー数の増加率などについての詳細は教えてもらえなかったが、アメリカのアプリケーションストアでは、Top 200内に位置している。

写真共有を目的とするソーシャルアプリケーションは数多くあるが、Timehopはそうしたものを活用しつつ、自分自身の過去を振り返るためのユニークで頭の良い方法を生み出したといえるのだろう。

スマートフォンの普及とともに、写真は印刷してアルバムにおさめ、家族や友人と何度も振り返ってみるというものではなくなりつつある。体験をリアルタイムでシェアして、そしてそのまま忘れ去られるものとなってきているのだ。

忘れ去るのはプリントしないからという理由だけではなく、非常に多くの写真を撮るようになったということも関係している。おかげで撮った写真をすべて記憶に残しておいたり、または何度も繰り返してみるという行為が非現実的なものともなってきているのだ。

実のところ、Instagramなどもこうした動きの中でこそ、人気を集めることになったアプリケーションだということもできよう。撮りっぱなしの写真をそのままそこらに投稿しておしまいにするのではなく、写真に適したフィルタを適用するなどすることで、写真に対する思い入れを強めているわけだ。

Timehopも「思い出」を大事にするわけだが、こちらはInstagramとは違ったアプローチをとっている。数年前のこの日に、自分がどこにいて何をしていたのか、いわゆるタイムトラベルを体験させることで、利用者のノスタルジーを満たそうとしているのだ。懐かしい友だちを思い出し、思い出のバカンスをついこの間のことのように感じつつパーティーやイベントを再体験したり、あるいは子供の成長を振り返ったりすることができる。

「作ったコンテンツというのは、時の流れの中で輝きを強めるものだと思うのです。年月を経るにつれ、撮影した写真への思いが大きくなるということもあるはずです」とWegenerは言っている。「多くの人が、ソーシャルメディア上に数年分の思い出を蓄積するにいたっています。そうした人が過去を味わい楽しむためのツールとして、Timehopを利用してくれればと思っているのです」。

Timehopの利用者は、今のところ高校や大学に通う女性が多いのだそうだ。しかしより幅広い層に利用されるAndroid版をリリースしたことで、利用者の年齢構成なども変わってくることになるのだろう。

アプリケーションは無料で、Google Playよりダウンロードできる。
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(翻訳:Maeda, H