散らばりがちな作業の指示や会社からのメッセージをまとめたコピー作成を支援、スムーズな共同作業を実現するDitto

パンデミックでリモートソフトウェアがブームになり、一部のワークフローは専用ツールの恩恵を享受したが、チームのその他のメンバーは自分の生産性をばらばらにされたまま放置されている。そんな状態で、会社のメッセージをカプセル化してまとめたり、ユーザーに指示をするためのコピーを作る社員たちのことは、忘れられてしまう。Dittoは、コピーに関する「たった1つの真実の源泉」を見つけるソフトウェアを作っている若きスタートアップだ。

同社はY Combinatorの2020年冬季に参加し、そのときTechCrunchも同社をそのジャンルのお気に入りに選んだが、創業者たちによると同社はその後GreycroftやY Combinator、Soma Capital、Decent Capital、Twenty Two VC、Holly Liu(ホリー・リウ)氏、Scott Tong(スコット・トン)氏などから150万ドル(約1億6000万円)のシード資金を調達した。

コピーのワークフローは、デザインと実装において特に厄介で、よくまとまったチームでもメールの迷路のようなスレッドや、スクリーンショットのダンプ、互いに無関係なチームのSlackのDMなどをかき集めることになる。Dittoの創業者たちが望むのは、彼らのソフトウェアがコピーのチームに、あらゆるものをまとめて、複数のプロジェクトやアプリケーションにまたがって同期する、コピーという仕事のホームを与えることだ。そこには最終的で確定的な言葉があり、その時が来たら配布などもできる状態になっている。

同社の創業者であるJessica Ouyang(ジェシカ・オウヤン)氏とJolena Ma(ジョレナ・マ)氏はスタンフォードのルームメートで、正しい優先順のコピーを作るようなツールセットを作る機会を自分たちの専門にしたいという思いを、ずっと抱えていた。

「テキストとそれがどこにあるかを結びつけるのはとても簡単で、多くのライターがデザインのためのツールセットの中でそれを管理しなければならないとか、あるいはすでに開発の一部だと思っているかもしれないため、ライターはコードベースに入って、コンテンツデザイナーであってもJSONをコード化したり管理したりする方法を考えなければなりません」とオウヤン氏はTechCrunchの取材に対して語った。

最初からDittoはFigma向けに開発されたため、ユーザーはテキストブロックをアプリ内のデザインから簡単にエクスポートして、Dittoのウェブアプリの中で変更し、そのアップデートをデザインそのものを調べることなくプッシュできる。創業者たちによると、彼らは現在、SketchやAdobe XDの統合にも取り組んでいる。Dittoのウェブアプリ内でユーザーはチェンジログにアクセスして、プロジェクト内の特定のテキスト片のステータスを、常に確実に承認されるようにアップデートできる。

「コピーを作業されているすべての場所に統合することで、より多くの機会が得られることがわかりました。開発者との統合や、A/Bテスト、国際化、ローカリゼーション、その他のワークフローなど、コピーが使われるすべての場所との統合をさらに進めていきたいと考えています」とマ氏はいう。

コピー開発には多くの関係者がいるため、チームはその関係者に応じた価格設定を設けようとしている。現在のところ、Teamsプランでは、ユーザーをエディターとコメンテーターに分け、それぞれ月額15ドル(約1640円)と10ドル(約1100円、年間利用料)を支払っている。Dittoには、2人チーム向けの無料版と、大企業向けの料金プランがある。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Ditto資金調達Y Combinator

画像クレジット:Ditto

原文へ

(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

現場と社内をつなぐビジネスチャット「direct」など手がけるL is Bが12.3億円資金調達

現場と社内をつなぐビジネスチャット「direct」など手がけるL is Bが12.3億円資金調達

L is B(エルイズビー)は6月2日、第三者割当増資および融資による総額12億3000万円の資金調達を発表した。引受先は、チェンジ、大和企業投資、イノベーション・エンジン、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタル。借入先は日本政策金融公庫など。

調達した資金は、顧客の要望に応えるための新機能開発やサービス拡充、営業・マーケティングの強化にあてる。また日本国内での開発にこだわり、より多くの課題解決と安心感を実現するため、資金調達に合わせ開発、営業、マーケティングなどすべての職種で採用を強化する。

2010年9月設立のL is Bは、現場業務におけるコミュニケーションのDXを支援するビジネスチャット「direct」(ダイレクト)、独自AIエンジンを搭載したFAQソリューション「AI-FAQボット」など、業務における生産性向上を目的としたDX化支援ソリューションを提供。

directは、文字のやり取りだけでなく、現場で撮った写真や図面ファイルを使った情報共有、緊急時の連絡手段として、現場で働くフィールドワーカーと社内をつなぐDXソリューションとして広く活用されているという。2021年1月現在2500社以上の企業が導入しているそうだ。最大10名まで無料で使える「フリープラン」も提供しており、職場や現場における操作性を体験できるようにしている。

現場と社内をつなぐビジネスチャット「direct」など手がけるL is Bが12.3億円資金調達

関連記事
賃貸不動産の原状回復工事がネットで完結、内装工事クラウド「リモデラ」が6月1日より関東でサービス開始
デスクレスワーカー向け現場の改善提案クラウド「Cayzen」を手がけるエイトスが6000万円調達
電気設備工事での電力計確認を効率化、SPIDERPLUSときんでんがOCR連携機能実験
登録建設業者数が5万社突破、建設業マッチングの「ツクリンク」が約3億円を調達
現場監督の業務を効率化する建設現場管理・図面共有アプリ「SPIDERPLUS」が4万ユーザーを突破

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:L is B(企業)建設 / 建築(用語)デスクレスワーク(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

マイクロソフトが次期Windowsの発表オンラインイベントを6月24日開催

マイクロソフトが次期Windowsの発表オンラインイベントを6月24日開催

Microsoft

マイクロソフトが6月24日にWindowsのメジャーなアップデートに関する発表イベントをオンラインで開催します。すでに主要メディアにはイベントの案内が送られました。

このイベントは、マイクロソフトがデュアルスクリーンデバイス向けに開発していたWindows 10Xの開発を中止したあとにやってきます。マイクロソフトは、Windows 10Xに用意していた新機能やUIなどの一部をWindows 10に導入すると述べています。

新システムアイコン、改良されたエクスプローラー、Windows 95時代から残っていたアイコンの廃止などビジュアル面での更新のほか、マルチモニター環境におけるアプリの再配置問題の修正、Xbox Auto HDR機能の追加、Bluetoothオーディオの改善など、Windowsの基本的な機能の改善も取り込まれています。

Windowsのアプリストアの改善にもマイクロソフトは取り組んでおり、そのストアをあらゆるアプリや第三者の決済プラットフォームに開放すると言われています。

イベントにはマイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏とチーフプロダクトオフィサーのパノス・パネイ氏が登壇し、詳細を発表する予定。ナデラCEOは先週、この次世代Windowsをしばらくのあいだ「自らテストしてきた」と述べ、「次世代Windowsに非常に期待している」と語っていました。

新しいWindowsが一体どんなものになるのか、24日が楽しみです。

(Source: MicrosoftEngadget日本版より転載)

関連記事
マイクロソフトのナデラCEOがBuild 2021で「自らテストしてきた」次世代Windowsに言及
マイクロソフトのブラウザ「Edge」は起動が速くなりタブがスリープする機能も搭載する
Internet Explorerが2022年6月15日にサポート終了、ただしEdgeのIEモードは2029年までを予定
マイクロソフトが個人向けTeamsのデスクトップ・モバイル・ウェブ版を正式リリース
Windows 10Xの開発が中止か、10X用に開発された機能は通常版Windows 10に統合へ
マイクロソフトが「Windows 10コンポーネント版Flash Player」を完全削除するアップデートを7月配布
マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か
マイクロソフトが「Windows 10 Insider Preview」最新ビルドでフォルダーアイコンを刷新
マイクロソフトがワークフローを自動化するPower Automate DesktopをWindows 10ユーザーに無料で公開

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:OS / オペレーティングシステム(用語)Windows(製品・サービス)Windows 10(製品・サービス)Microsoft / マイクロソフト(企業)

ファーウェイがAndroidに代わるスマホ向けHarmonyOSを正式に発表

Huaweiコンシューマビジネスグループのソフトウェア開発担当プレジデントWang Chenglu(ワン・ チェンルー)氏

ハイパーコネクテッドな世界で生活していることを想像してみよう。中国の通信機器大手Huawei(ファーウェイ)独自のHarmonyOSは、デバイスを動かしているシステムにかかわらずすべてのデバイスに互換性を持たせることで、あるデバイスから別のデバイスに切り替えて使う際のユーザーエクスペリエンスの遅れやギャップをなくすことを目指している。

2019年にHuaweiは米国のエンティティリストに追加され重要なチップセットGoogleのAndroid開発者向けサービスなど米国のテクノロジーの利用が禁止されたが、エンティティリスト追加から2年経って、Androidに代わるHuaweiのスマートフォン向けオペレーティングシステムが発表された。

関連記事
ファーウェイが米国による新たな妨害の悪影響を懸念
ファーウェイがAndroid提供中止にコメントするも今後の見通しは依然不明

米国時間6月2日、Huaweiは正式にスマートフォン向け独自オペレーティングシステムのHarmonyOSを発表した。同社は2016年にオペレーティングシステムの開発を開始し、2020年9月にはタブレット、電気自動車、スマートウォッチ向けにオープンソース化した。同社のフラッグシップデバイスであるMate 40などは同日からHarmonyOSにアップグレードできる模様で、今後数四半期でローエンドモデルにも順次HarmonyOSが搭載される。

Huaweiは、HarmonyOSはAndroidやiOSにとって代わるためのものではないとしている。むしろHarmonyOSのアプリケーションはもっと広範囲にわたり、スマートフォンやタブレットだけでなく、増えつつあるスマートデバイスでも動作する。そのため同社は、ハードウェアや家電メーカーがこのエコシステムに参加するように努めてきた。

これまでに50万以上の開発者がHarmonyOSベースのアプリケーションを開発している。GoogleやFacebookといった欧米の主力アプリのHarmonyOS版が開発されているかどうかは明らかになっていない。

一部の中国テック企業はHuaweiからの呼びかけに答えている。スマートフォンメーカーのMeizuは同社のWeiboアカウントで、同社のスマートデバイスがHarmonyOSに対応するかもしれないと示唆したMeizuよりかなり大手のOppo、Vivo、Xiaomiは、ライバルのオペレーティングシステムの採用にはおそらく抵抗があるだろう。

関連記事:中国におけるアップルのスマホ売上回復、ファーウェイは王座を失う

HuaweiはHarmonyOSが動作するデバイスを1つのコントロールパネルにまとめようとしている。例えば、1台のテレビと複数のヘッドフォンのBluetooth接続をリモートでペアリングする。スマートフォンでプレイしていたゲームをシームレスにタブレットに引き継ぐ。ユーザーのスマートウォッチから収集したヘルスケアデータをもとにスマート豆乳ブレンダーがドリンクをカスタマイズする。

HarmonyOSが搭載されていないデバイスも、シンプルなプラグインでHuaweiのデバイスと通信できる。WindowsのノートPCにHarmonyOSのプラグインがインストールされていれば、PCに保存されている写真をHuaweiのスマートフォンに直接保存できる。ということは、Android、さらにiOSは、いつか共通の言葉でHarmonyOSと話せるようになるのだろうか。

来週にはAppleのWWDCが開催されるというタイミングで、HarmonyOSが発表された。Macrumorsが指摘したように、Appleの最近の求人情報には新しいコンセプトであると見られるhomeOSの記載があり、Appleのスマートホーム戦略と関連しているようだ。

Huaweiは、HarmonyOSがAndroidの派生であるという憶測を否定し、Androidのコードと同一のコードは1行もないと述べた。Huaweiの広報は、HarmonyOSがLinuxベースであるかどうかについてコメントを避けた。AndroidはLinuxカーネルをベースにしている。

テック大手数社が独自のモバイルオペレーティングシステムの導入を試みたことがあるが、成功しなかった。AlibabaはLinuxベースのAliOSを開発したが、長いことアップデートされていない。Samsungは独自のTizenを手がけたが、スマートテレビなどいくつかのIoT機器に搭載されるにとどまっている。

先行企業と比べると、Huaweiは開発者の関心を集められるかもしれない。米国政府によって重要なチップサプライヤーが遮断され、最先端スマートフォンの製造が阻害されかねない状況になって大きな市場を失ったにもかかわらず、Huaweiは今も中国最大のスマートフォンブランドの1つだ。Androidに不満を持つ開発者のニーズを捉えることができれば、HarmonyOSは開発者にとっての次の選択肢となるチャンスがある。

米国の制裁では、HuaweiがAndroidのオープンソースソフトウェアを使うことは禁止されていない。中国の大手スマートフォンメーカーは自社向けのAndroidオペレーティングシステムを開発するためにAndroidのオープンソースソフトウェアを使用している。しかし米国政府の禁止措置によってHuaweiのスマートフォンでGoogle Playのサービスを利用できなくなり、国外のコンシューマー市場としては終わりを告げられたようなものだった。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:HuaweiOSHarmonyOSスマートフォン中国

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

衛星データで耕作放棄地の把握や土壌解析を行い農業課題解決に取り組むサグリが約1.55億円調達

衛星データで農業分野における課題解決に挑むサグリが、 リアルテックファンドをリード投資家として、みなとキャピタル池田泉州キャピタル広島ベンチャーキャピタルひょうご神戸スタートアップファンド、他エンジェル投資家等を引受先として総額約1億5500万円を調達した。今回の調達で、投資家である地域金融機関とも連携しながら、全国における市町村のユーザー獲得・導入を目指す。

耕作放棄地をデジタル地図で確認できる「ACTABA」

耕作放置地である可能性が赤色の濃淡で確認できるACTABA

同社は、自治体や農業委員会向けに「ACTABA(アクタバ)」という耕作放棄地把握アプリを提供。日本では農業従事者の高齢化等にともない耕作されなくなった農地が増えているが、その把握は、自治体職員が行わねばならない。ACTABAでは、Planetの衛星データを使用し、農地の荒れ具合を人工知能(AI)が判断、耕作放棄地とみられる土地を、可能性の強弱に応じて赤色の濃淡で表示し、職員の作業を軽減する。耕作放棄地の判定精度は現状でも9割を超える正答率であり、また全国の自治体で広く使われることでACTABA自身が学習し、アプリの精度が高まっていくという。

区画形成の自動化でデジタル地図の作成を容易にするAIポリゴン

区画形成データは、より高解像度なMaxer Technologiesの衛星データを用い、独自のAIポリゴン技術によって加工し、提供しているという。料金は農地面積に応じる。

東南アジアにプレシジョンファーミング(精密農業)を

同社は、衛星データによる土壌解析技術を使って、施肥量適正化による肥料コスト削減や植生解析による収量増加、土壌より生じる「温室効果ガスの把握と削減」など「地球環境改善」と「農家の収益改善」の二軸を求めていく考え。対象は東南アジアとしており、タイ、インドにはすでに進出している。

代表の坪井俊輔氏は横浜国立大学理工学部在学中に、子どもたちが未来に夢を感じられていない状況を危惧し、教育事業の「うちゅう」を創業。日本のみならず海外の子どもたちの様子も知るため、2016年にルワンダへ行くが、若年労働がほぼ義務化されている状況にあり、同じく子どもたちが夢を追いかけられない現状があることを知った。子ども達を労働から解放するため、まず途上地域の農業DXを進めようと、サグリを設立。坪井氏は「当初は営農アプリ開発をはじめ、途中でメディア事業へピボットするなど、試行錯誤して今があります。資金調達を経て、改めてパートナーのみなさまと事業を大きくしていきたいと感じています」と語った。

関連記事
農地の石を除去するロボットを開発するTerraClearが約27.3億円を調達
ブロッコリーの収穫期をドローン画像とAI解析で診断、スカイマティクスの葉色解析サービス「いろは」が生育診断提供開始
スマホ活用・画像解析AIによるイチゴの高精度生育解析の検証実験結果をキヤノンITSが報告

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:サグリACTABA資金調達農業東南アジアタイインド人工衛星日本画像解析

ポケットの中の音楽スタジオ、700万ユーザーを獲得した作曲アプリ「Rapcha」

YouTube、Snapchat、Twitter、TikTok、FacebookのInstagramは、映画やテレビの業界を根底から覆した。撮影監督やディレクター、俳優はテクノロジーの革新を活かして新しい作品を作り、それを何十億もの消費者に直接見てもらうというニューウェーブを起こしている。2021年4月末、ある新興企業が230万ドル(約2億5000万円)の資金調達を発表し、音楽の世界にも同様のインパクトをもたらそうとしている。

Rapchat(ラップチャット)は、ユーザーが(その名の通り、ラップやその他のジャンルの)音楽を作ることができるアプリで、ユーザーはクラウド上のビートにボーカルを乗せて楽しむことができる。

ソニー・ミュージックエンタテインメントとニューヨークのベンチャーキャピタル企業Adjacent(アジェイセント)が共同で主導した今回の資金調達は、2018年にRapchatが行った170万ドル(約1億9000万円)のシード資金調達ラウンドの延長線上にあり、CEOかつ共同創業者のSeth Miller(セス・ミラー)氏は、同社がより大きなシリーズAの準備を進める一環としての調達であると話す。

ミラー氏とPat Gibson(パット・ギブソン)氏が、2015年に大学在学中に副業として会社を構想した際に、(Snapchatの)chatという言葉をひっかけた言葉遊びを除けば、少なくとも今はRapchatとSnapchatにつながりはない。Rapchatはすでにかなりの規模に拡大している。

現在、Rapchatには約700万人の登録ユーザーがいて、プラットフォームでは毎月50万人のアクティブユーザーが、約10万曲のビートカタログを使って、約25万曲を作成しているという。ユーザーは1日平均35分アプリを利用していて、これは、楽曲を作るユーザーだけでなく、その楽曲を聴いたり共有したりするためにアプリを利用する人たちのソーシャルグラフ(人と人とのつながり)が形成され始めたことを意味する。

Rapchatは、今回の資金調達を利用して、Rapchatのコンペティション「Challenges」の賞金額を増やすなど、プラットフォーム上でできることを拡大していく予定だ。より多くのアーティスト、プロデューサー、業界のエグゼクティブからプラットフォーム上で指導を受けられるようにしたり、プラットフォームのリーチを拡大して、TikTok、Snapchat、Spotify、Apple Musicなど、クリエイターがすでに多くのコンテンツを制作していて、音楽が重要な役割を果たしているプラットフォームとより緊密に統合したりすることも検討している。

Rapchatの成長は、音楽を簡単に作れるようにしたいという同社の夢を実現しただけでなく、クリエイターエコノミー(クリエイターのマネタイズをプラットフォームやテクノロジーが後押しする経済)における貪欲さと歯がゆさを物語っている。世の中には広大な音楽制作の世界があり、自分が評価されるかどうかを知りたいと思う人が増加しているのだ。

巨大なクリエイターエコノミーにおける音楽クリエイターの存在を考えたのはRapchatだけではない。

Voiseyというアプリも類似のサービスを提供しているが、メインは音楽トラックではなく、短いクリップを作って録音し、それを他のプラットフォームで共有することに重点を置いていた。あまり普及はしなかったが、新しいアーティストへの注目を少し集めることに成功し、2020年Snapにひっそりと買収された(現在のところ、SnapはVoiseyのアプリを維持している)。

関連記事
Snapが自分のボーカルを重ねた音楽トラックを作成できるアプリVoiseyを買収
ビデオに自動的に音楽を付けるためにTikTokはJukedeckを買収か

TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)も、別の音楽作成アプリJukedeckの買収を行っている。Snapの買収と同様、この買収がどこでどのように行われているのか、今のところ完全には明らかになっていないが、うわさによると、TikTokは新しい音楽サービスを開発中で、より多くのコンテンツをTikTokの音楽レイヤーに接続することができるようになるらしい。

そして、このトレンドを最も裏づけることといえば、Facebook(フェイスブック)がRapchatの真似をしたことだろう。Facebookの社内部門であるNPE(新製品実験)チームは、2021年2月に「BARS」を発表。ユーザーはこのアプリで自分のラップミュージックを作ることができる。

関連記事:Facebookがラップを制作・公開できるTikTok風アプリ「BARS」を発表

このような状況下、ミラー氏は(少なくとも今のところは)、新しいプレミアム機能のテストを含め、Rapchatの実績に非常に満足し、自信を持っている。現在アプリは無料で使用できるが、プレミアム機能では、クリエイターに、もっと多くの制作ツールや、作品を共有してマネタイズするためのより良い方法を提供する予定だ。その鍵となるのは、音楽のライセンス料を要求しないということ。Rapchatの価値は、クリエイターが音楽を制作し、それらのトラックのメタデータを使って音楽がどのように使用されたかを追跡することにあり、クリエイターはロイヤリティを維持することができる。

この控えめなアプローチは、Rapchatとその創業者たちが、スタートアップ企業の中ではやや異質な存在であることに由来する。このアプリのアイデアは、ミラー氏とギブソン氏がオハイオ大学(コロンバス)の学生だった2013年に生まれたという。

「大学生の誰もがSnapchatやInstagramなどのアプリを使っている時代でした」とミラー氏は話す。「私たちは、ビデオを撮るためにこれらのアプリを愛用していましたが、音楽を作るためのアプリはありませんでした。そこで私たちは、Startup Weekend(スタートアップウィークエンド)のコンペティションで、『Snapchatのような、ラップのためのスナップ 』というアイデアを提案しました。その際に誰かがRapchatと言ったのです」。

2015年、彼らはこのアプリを携えて500 Startups(ファイブハンドレットスタートアップ)に参加し、本格的にこのアイデアに取り組み始めたが、それでもビジネスを構築し、投資家の注目を集め、資金を調達するまでには何年もかかっている。その理由の1つは、音楽は扱いが難しいもので、ざっくりというならここ数年の流行は制作サービスではなく、ストリーミングだったからだ。

しかし、ミラー氏とギブソン氏は諦めなかった。「この市場が巨大であることを知っていたのは私にとってはとても意味のあることでした」とミラー氏は話す。「モバイルデバイスが登場し、Instagram、VSCO、Snapchatなどのアプリは人々をフォトグラファーや映像作家に変えました。Substackも人々を執筆者に変えています」。そして今、Rapchatがラッパーのための世界を開拓しようとしている。

AdjacentのリードインベスターであるNico Wittenborn(ニコ・ウィッテンボーン)氏は、声明の中で次のように述べる。「Rapchatはポケットの中の音楽スタジオです」「Rapchatで世界中の誰もが、どこにいても、スマートフォンから直接音楽を録音して公開できるようになります。ユーザーは創造性を最大限に活かすことができます。モバイルを活用したテクノロジーを誰にでも利用できるようにすることがAdjacentの目指すところであり、この次世代の音楽プラットフォームを構築するRapchatのチームをサポートできることを非常にうれしく思っています」。

関連記事
Apple Musicがロスレス・空間オーディオを2021年6月から提供、追加料金なし
アマゾンがAppleに対抗して無料でロスレス音楽配信サービスにアップグレード、まずは北米などから
ゲーム的アプローチでギターやピアノ、歌などの音楽教育をもっと身近にするYousicianが30.6億円調達
動画、ポッドキャスト用BGMのマーケットプレイスEpidemic Soundが約490億円調達
ライセンスされた音楽をソーシャルメディアで使えるようにするSongclipが約12億円を調達

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Rapchat音楽資金調達クリエイターアプリ

画像クレジット:Rapchat

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

データ専門家でなくてもプロダクトアナリティクスをよりアクセシブルにするJune

プロダクトアナリティクスの専門家でなくても、分析ダッシュボードやレポートの作成が容易にできるようにしたいと考えている新しいスタートアップJuneをご紹介しよう。Juneは、Segmentデータの上に構築されている。多くのノーコードスタートアップと同様に、技術者でなくても使い始められるように、テンプレートとグラフィカルインターフェースを使用している。

共同創業者兼CEOのEnzo Avigo(エンゾ・アビゴ)氏は「現在行っているのはインスタントアナリティクスであり、そのためにSegmentの上に構築しています」と筆者に話してくれた。「それでデータへのアクセスがより迅速になります」。

Segmentは、アナリティクスのためのデータ収集とデータ保存の役割を果たす。その後、Juneでデータを操作することができる。Juneはいずれは、データソースの多様化を計画している。

「当社の長期的なビジョンは、アナリティクス分野のAirtableになることです」とアビゴ氏は語る。

Airtableをご存知の方なら、Juneは見慣れた感じがするかもしれない。同社は、ユーザーがすぐ使い始めるのに役立つテンプレートライブラリを構築している。例えばJuneでは、ユーザーリテンション、アクティブユーザー、顧客獲得ファネル、エンゲージメント、機能の使用状況などを追跡・把握することができる。

画像クレジット:June

テンプレートを選んだら、データソースとテンプレートをマッチングさせてレポートの作成を開始できる。Juneは自動的にチャートを生成し、ユーザーベースをコホートに分類し、重要なメトリックを表示する。ゴールを作成することで、何か良いことや悪いことが起こった際にSlack(スラック)でアラートを受け取ることも可能だ。

上級ユーザーであれば、チーム内の全員が同じツールを使用するようにJuneを使うこともできる。カスタムSQLクエリを作成し、そのクエリに基づいてテンプレートを構築することができるのだ。

同社はPoint Nineが主導して、185万ドル(約2億円)のシードラウンドを調達した。Y Combinator(Yコンビネータ)、Speedinvest、Kima Ventures、eFounders、Base Caseの他、複数のビジネスエンジェルも参加した。

June設立の前は、共同創業者の2人はIntercom(インターコム)に勤務していた。そこで彼らは、分析ツールが多くの人々にとって使いづらいものであることに気づいた。それゆえに(当時の顧客は)アナリティクスに基づいた意思決定を行っていなかったという。

現在何百社もの企業がJuneを利用しており、その数は毎週10%ずつ増加している。今のところ同社の製品は無料だが、将来は使用量に応じて課金する予定だ。

画像クレジット:June

関連記事
マイクロソフトはGPT-3を使い自然言語でコードを書けるようにする
誰でも簡単にAI分析が使えるSaaS「datagusto」が8500万円を調達、創業者「自動調理器のようなツール」
企業がサイバー犯罪と戦うためのノーコードプラットフォームを提供するSpecTrustが約4.7億円調達

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Juneノーコード資金調達データ分析

画像クレジット:Maddi Bazzocco / Unsplash(Image has been modified)

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

「顧客フィードバックマネジメント」のフライルが8100万円調達、ZUU最年少執行役員を経験した財部氏が創業

ソフトウェア開発企業向けに「顧客フィードバックマネジメント」SaaSを提供するフライルが、UB Venturesおよびエンジェル投資家8名からシードラウンドで合計8100万円を調達した。同社が提供するFlyle(フライル)は、Slack・メールなどに散らばる顧客要望やアイデアを半自動で集約することで、データドリブンかつ効率的なプロダクト開発を促進するためのツールだ。

散らばったフィードバックを半自動で集約

「昨今、企業と顧客の接点はますますデジタル化しています」。そう話すのは、フライルCEOの財部優一氏だ。「例えば、セールスが受け取ったフィードバックはSalesforce、カスタマーサクセスはZendesk、マーケティングはHubspot、その他はSlack、Gmail……など、プロダクト開発の重要な指針となりえるフィードバックはさまざまなツールに散らばってしまっています」。このような状況のなか、ソフトウェア開発の指揮を取るプロダクトマネージャーは、各ツールに点在するフィードバックを手作業でエクセル等にまとめなおし、分析を行うことが多い。

この方法の問題点は、プロダクトマネージャーの膨大な時間を消費することだ。また、手動で行うため「漏れ」が発生し、すべてのフィードバックをすくい上げることができず、顧客ニーズに沿わないプロダクトの開発にすすんでしまう危険性もある。「プロダクトマネージャーは優秀な人が多く、本来はもっと創造的な業務に多くの時間を使うべきです。彼らが労働集約的な『コピペをしてエクセルにまとめ直す作業』を行っている現状を変えたいと思いました」と、財部氏はフライル創業の想いを語る。

同社が提供するFlyleは、Slack・Zendesk・Gmail・スプレッドシートなど、多様なツールに散らばる顧客要望やアイデアを半自動で集約する。プロダクトマネージャーにとっては、これまで手作業で行っていた集約作業が不要になるだけでなく、Flyleを確認しさえすれば「どのツール」を経由して「何件」「どのような要望」が来ているのかが一目瞭然になる。さらに「どの会社(や顧客)・どの担当者からのフィードバックなのか」「どのような文脈のなかでの要望なのか」などの詳細情報まで、クリック1つで確認可能だ。財部氏は「必ずしも『顧客からの要望件数が多い=優先順位が高い』とはなりません。プロダクトマネージャーは、フィードバックの詳細や熱量も見極めたうえで意思決定を行う必要があります」という。

またFlyleは、バックログツールであるJira Softwareと連携させることで、機能開発の進捗ステータスを一元管理することも可能だ。つまり、ビジネスサイドの人間はFlyleを見ることで「フィードバック→機能アイデア→開発ステータス」まで一気通貫で把握できる。一方で開発チームにとっては、JiraからFlyleに飛ぶことで「開発の背景となったフォードバック」を容易に確認可能。これまでビジネスサイドと開発サイドの間で生まれがちだった「情報の壁」をFlyleが取り除いてくれる。

画像クレジット:フライル

新進気鋭のスタートアップ出身の3人が創業

フライルは、ZUUで最年少28歳の執行役員を経験した財部氏をはじめとして、ユーザベース出身の相羽輝氏、ビズリーチ(現ビジョナル)出身の荒井利晃氏という、いずれもスピード上場を果たしたスタートアップ出身の3人がチームを組み、2020年2月に創業。同年12月にFlyleのクローズドβをリリースし、業界・規模を問わず約30社からフィードバックを得ながら改善を進めてきた。2021年4月末からは有償で約10社が利用しており、6月1日から正式なリリースとなる。

今回のシード調達で注目したい点は、エンジェル投資家にZUU社長の富田和成氏、ユーザベースCo-CEOの佐久間衡氏、ビジョナル社長の南壮一郎氏といった、共同創業者3人の古巣の社長が名を連ねていることだ。ここからは、彼らが前職でパフォーマンスを発揮し、トップから十分な信頼を勝ち得る人材であったことが見て取れる。財部氏は「現在、日本で私たちと同じサービスを提供している競合他社はありません。だからこそ、導入社数の拡大よりもプロダクトの価値を上げることに集中して、日本のプロダクトマネージャーにとって『マストハブ』なツールを創りたい」と意気込みを語る。

米国ではUserVoiceCannyRoadmunkなど、SaaS企業向けにフィードバックマネジメントを行うサービスは徐々に勃興しつつある。日本ではフロンティアともいえるこの新たな市場を、若き3人の起業家がいかに切り開いていくのかに注目していきたい。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:フライル資金調達SaaS日本

スケール展開が難しいサブスク事業の構築に必要なツールを提供するRevenueCat

サブスクベースのアプリを手がけるデベロッパー向けに一連のツールを提供するスタートアップRevenueCat(レベニューキャット)はシリーズBラウンドで4000万ドル(約44億円)を調達し、ポストマネーの評価額は3億ドル(約330億円)になった。サブスクアプリのスケール展開の難しさを身をもって知っているデベロッパー2人によって設立されたRevenueCatのソフトウェア開発キット(SDK)ソリューションでは、企業がサブスクそのものを加えるだけでなく、その後アプリストアが変更を加えてもアプリを維持するなど、サブスク事業を構築するのに必要なツールを提供する。また企業が広告や分析、あるいはアトリビューションで使っている他のツールでサブスクデータを共有することで企業をサポートしている。

資金調達ラウンドはY CombinatorのContinuity Fundがリードし、Index Ventures、SaaStr、Oakhouse、Adjacent、FundersClub、そしてBlinklistのCTO、Tobias Balling(トビアス・ボーリング)氏とAlgoliaの共同創業者で元CEOのNicolas Dessaigne(ニコラス・デサイン)氏が参加した。ラウンドとともにYC ContinuityパートナーのAnu Hariharan(アヌ・ハリハラン)氏がRevenueCatの取締役会に加わる。取締役会には創業者らに加えてIndexのMark Fiorentino(マーク・フィオレンティーノ)氏も名を連ねている。

RevenueCatのアイデアは、CEOのJacob Eiting(ジェイコブ・エイティング)氏と共同創業者でCTOのMiguel Carranza Guisado(ミゲル・カランザ・ギサド)氏がElevateで一緒に働きながらサブスクインフラを理解するのに苦戦したのちに湧いた。購読者の保持やライフタイムバリュー(顧客生涯価値)のような基本的な疑問の答えを理解するために数年かけて「サブスクのカオス」を紐解いたのち、2人は他のデベロッパーのためにこの問題を解くのをサポートすることに潜在可能性を見出した。

AppleとGoogleは企業がサブスク事業を構築するために実際に必要とするものに関して常に最先端状態を保っているわけではない、とエイティング氏は説明する。「進みながら学んでいるといった感じです。彼らは我々が必要としていたデータを提供することができなかったのです。そしてそれを行うためのインフラも重要でした」。

画像クレジット:RevenueCat

エイティング氏とギサド氏が2017年にRevenueCatに取りかかったとき、誰もそうしたものを作ってさえもいなかった。しかしスタートアップのツールと統合に対する需要は、成長中のサブセクションアプリマーケットで似たような問題に直面していたデベロッパーの共感を呼んだ。

RevenueCatのサービスを使うことで、デベロッパーはサブスク売上高や解約、LTV(ライフタイムバリュー)、購読者数、コンバージョンといった主要なメトリクスを表示するリアルタイムダッシュボードにアクセスできる。データはAdjust、Amplitude、Apple Search Ads、AppsFlyer、Branch、Facebook Ads、Google Cloud Intercom、Mixpanel、Segment、その他のツールやサービスの統合を通じて共有できる。

翌年、Y Combinatorのアクセラレーターから出発した後、RevenueCatはすぐに100のアプリで使われ始め、シードラウンドで150万ドル(約1億6000万円)を調達したときまでに追跡収益は100万ドル(約1億1000万円)を超えていた。

今ではRevenueCatはプラットフォームで6000超のアプリをサポートしており、同社のツールで管理されている追跡サブスク収益は10億ドル(約1099億円)を超える。このアプリの数はシリーズAで1500万ドル(約16億円)を調達した2020年8月時点の倍だ。

今回の追加の資金調達で、同社はさらに多くのデベロッパーにツールを使ってもらうためにサービスの価格を下げる。これまではチャートといくつかの統合のサービスは月120ドル(約1万3000円)、すべての統合へのアクセスは月499ドル(約5万5000円)としていた。この価格設定は大企業にとってはリーズナブルだが、月間売上高が1万〜5万ドル(約110万〜550万円)のロングテールのアプリデベロッパーに売り込むには難しいものかもしれない。

そしてRevenueCatは現在、固定価格ではなくアプリの売り上げのわずかな割合の料金を課そうとしている。月間追跡収益(MTR)が 1万ドル以上のデベロッパーは無料のサービスから始めることができ、チャートへのアクセスやウェブホックのサポート、インテグレーションの必要性など、需要が大きくなるにつれ月額8ドル(約880円)のStarterプランか、MTR1000ドル(約11万円)あたり月12ドル(約1300円)のProプランに移行できる

「そうしたツールをデベロッパー、特に零細事業者に提供することをうれしく思います。というのも、『1万ドル以下のレンジ』から抜け出すのに必要なものかもしれないからです」とエイティング氏は話す。「フリーミアムの美点、あるいは真に寛大な無料サービスをもっていることは、あなたのツールを事実上あるものにします。あなたはソフトウェアサービスを提供するために可能な限り摩擦を取り除き、そして価格を正しく設定したら、我々はそうしていると思いますが、それに値する代償を受けます」と付け加えた。

RevenueCatは新たに調達した資金を、App StoreとGoogle PlayのサポートからAmazonのAppstoreを含むものへと事業を拡大するのにも使う計画だ。また、チームの増強も図る。

その見込まれる成長の一環として、同社はプロダクト責任者Jens-Fabian Goetzmann(ジーン・ファビアン・ゲッツマン)氏を採用した。同氏はMicrosoftでプロダクトマネジャーを、その後フィットネスアプリ8fitでプロダクト責任者を務めた。RevenueCatの従業員は現在30人で、今後はデザイン、プロダクト、エンジニアリング、セールスなどの部門で採用を進めて60人に増やす計画だ。

「世界はサブスクに向かっています。企業にとってこのモデルの構築はデベロッパーの数週間という時間を意味します」とYC Continuityのハリハラン氏は語る。「RevenueCatはデベロッパーがものの数分でサブスクを展開し、顧客データの真実のソースを創造するのをサポートします。デベロッパーは世界の問題に対するソリューションを作り出していて、デベロッパーが収益をあげ、成長し、そして最も熱心な顧客をサポートする方法を見つけ出せることは重要です。RevenueCatはサブスク2.0を構築することでそれを実行しています」。

関連記事
Spotifyが米国で有料ポッドキャスト開始、2年間クリエイターの取り分は100%
パン屋さんの課題を冷凍パン技術とITで解決するパンフォーユーが8000万円を調達
ツイッターに月額330円サブスク「Twitter Blue」、間もなく登場か

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:RevenueCatサブスクリプション資金調達

画像クレジット:RevenueCat

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

アリババのクラウドOSが複数のチップアーキテクチャに対応

Alibaba Cloudのインテリジェンスビジネスグループのプレジデントであるチャン・ジェンフェン氏。

Alibaba(アリババ)は米国時間5月28日のカンファレンスで、同社のクラウドコンピューティング部門が、Armやx86、RISC-Vといったアーキテクチャをベースとする複数種類のプロセッサーと互換性のあるApsaraオペレーティングシステムを開発していることを発表した。

マーケットリサーチ会社IDCによると、Alibaba Cloudは中国のeコマース巨人の最速成長事業の1つであり、また2020年の後半時点では世界で4番目に大きいパブリッククラウドサービスである。

チップの世界市場は、パーソナルコンピューティングはIntelのx86に、モバイルデバイスはArmにほぼ支配されている。しかしArmの技術と競合するオープンソースのチップアーキテクチャであるRISC-Vは、世界中、特に中国の開発者に人気となっている。カリフォルニア大学バークリー校の研究者たちが始めたRISC-Vは、誰もがライセンスや特許料などなしで利用でき、米国の輸出規制の対象にもなっていない。

トランプ政権の国家のセキュリティに対する懸念によるHuawei(ファーウェイ)とそのライバルであるZTEに対する禁令は実質的に、中国の通信大手と米国のテクノロジー企業、特に半導体の大手サプライヤーとの仲を断った。

関連記事
ファーウェイが米国による新たな妨害の悪影響を懸念
米国がファーウェイ製品の使用禁止を1年延長

Huaweiとの関係を決断せざるをえなくなったArmは、英国生まれの企業ということもあり中国企業へのライセンス提供を継続できると主張したが、そのアーキテクチャを使って設計したチップを実際に製造することが能力的にも法的にも可能なファブを見つけることで、Huaweiは依然として苦労している。

中国の開発者たちは米国の技術規制が今後も続くことを恐れ、そのための備えとしてRISC-Vに殺到したため、米国の制裁がRISC-V周辺の突然の活況を招いた。そしてその運動の先頭にいたのが、Alibabaだ。Alibaba CloudとHuaweiとZTEは、RISC-V Internationalの13社の上位メンバーに含まれ、同団体の取締役会と技術先導共同体に席を有している。

2019年に、このeコマース企業の半導体事業部T-Headが、最初のコアプロセッサーXuantie 910を立ち上げたが、それはRISC-Vがベースで、クラウドエッジとIoTアプリケーションに使われた。そのオペレーティングシステムが、1つのメインストリームのアーキテクチャではなく複数のチップシステムで使えるようにしたことにより、Alibaba Cloudは中国のチップ独立(特定チップ非依存)の未来に備えたことになる。

Alibaba CloudのIntelligenceグループの代表取締役Zhang Jianfeng(チャン・ジェンフェン)氏は、次のように述べている。「ITのエコシステムは従来、使用するチップで定義されましたが、クラウドコンピューティングがそれを抜本的に変えました。クラウドコンピューティングシステムはサーバーのチップや特殊目的のチップ、およびその他のハードウェアのコンピューティングのパワーをすべて標準化するため、チップのベースがx86やArm、RISC-V、あるいはハードウェアアクセラレータなどどのようなものであっても、顧客に提供されるコンピューティングパワーは標準化され高品質なものです」。

一方では、中国の企業がRISC-Vのような代替製品に向かうと技術とスタンダードの分極化が進み、RISC-Vが世界のその他の部分でも広く採用されないかぎり、グローバルなコラボレーションにとって理想的ではない、との主張もある。

関連記事
クラウドインフラ市場は2020年に13.6兆円に成長、リッチな企業はますますリッチに
アリババクラウドが11年目で初めて黒字化、世界シェア3位に

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AlibabaAlibaba Cloud

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

従業員のコミュニケーションをパーソナライズし本当に重要な社内メッセージを確実に送る「Pyn」

最近のマーケターのほとんどは、ターゲットを絞ったコミュニケーションを顧客に送信する方法を知っており、役立つツールもたくさんある。だがパーソナライズされたメッセージを社内で送信するとなると、選択肢はそれほど多くない。オーストラリアを拠点とするアーリーステージのスタートアップであるPyn(ピン)はそれを変えたいと考えており、現地時間5月28日、800万ドル(約8億8000万円)のシードラウンドを発表した。

Andreessen Horowitzが投資をリードし、Accel、BambooHRの共同創業者であるRyan Sanders(ライアン・サンダース)氏、Atlassianの共同創業者で共同CEOのScott Farquhar(スコット・ファクファー)氏が参加した。

最後の1社は偶然ではない。Pynの共同創業者でCEOのJoris Luijke(ジョリス・ルイク)氏は、Atlassianで人事を担当し、後にSquarespaceや他の会社でも人事を担当した。同氏は、社内コミュニケーションにおいてターゲットを絞ったメッセージを提供するという一般的な課題に気づいた。

「私はプロフェッショナルとしてのキャリアを通してこの問題に取り組み、人々が受け取るメッセージをパーソナライズしようとしてきました。つまりそれがPynが行おうとしていることです。ひと言でいえば、私たちは従業員のコミュニケーションを根本からパーソナライズします」とルイク氏は説明する。共同創業者であるJon Williams(ジョン・ウィリアムズ)氏は、従業員体験管理プラットフォームであるCulture Ampの共同創業者だった。同氏は2011年にCulture Ampの立ち上げを支援した(同社は1億5000万ドル、約165億円以上を調達した)こともあり、2人はこのアイデアに没頭した。

彼らはWorkday、BambooHR、Salesforce、Zendeskなど、企業がすでに使用している既存システムの情報を利用し、Pynにパーソナライゼーションをもたらした。そしてマーケターがさまざまなタイプの情報を活用してパーソナライズされたメッセージを顧客に送るのと同じように、彼らは既存システムのデータを利用する。

つまり、すべての人に関係があるわけではないのに社内の全員が受け取る電子メールを削減し、受信する人にとって本当に重要なメッセージを送信できるということだ。また、マーケティングコミュニケーションツールと同様に、メールを開いた人の数がわかるため、目的を達成できたかどうかを確認できる。

a16zのゼネラルパートナーであり、今回の取引のリードインベスターでもあるDavid Ulevitch(デービッド・ウレビッチ)氏は「Pynは組織全体の文化の構築とポリシーの設定に役立つ、カスタマイズ可能なコミュニケーション資料のライブラリーも提供しています」と指摘する。「Pynはまた、従業員のコミュニケーションチャネルを『レール』として扱います。レールの上で、管理のためのプレイブックのライブラリーを提供することにより、組織全体を管理することができます」と同氏は投資を発表したブログ投稿で述べた。

2019年に立ち上げられたこのスタートアップには現在10人の従業員がおり、チームはオーストラリアとカリフォルニアのベイエリアで働いている。ウィリアムズ氏によると、チームの半分はすでに女性であり、会社を拡大するにあたり多様性を最優先とする計画だ。

「ジョリスは『ラディカルなパーソナライズ』が私たちのマントラだと言っています。これを組織に当てはめると、つまり実際にはインクルージョン(包摂性)に関わることです。私たちが1人1人のニーズに応えたいなら、それを理解する必要があります。ですから、私たちにとって多様性は極めて重要です」とウィリアムズ氏は語った。

同社は顧客数の詳細を開示していないが、Shopify、Rubrik、Cartaを初期の顧客として挙げている。創業者らによると、2020年のパンデミックで多くの関心が寄せられ、頻繁で意味のあるコミュニケーションがさらに重要になったという。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Pyn資金調達オーストラリアAndreessen Horowitz

画像クレジット:Muqamba / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

オープンソースのコントリビューター行動規範がエシカルソース推進団体へ移管

オープンソースのプロジェクトにおいて技術の管理は往々にして問題となる。しかもコントリビューター間の対立が避けられない場合、各自が自分が正しいと信じているだけに状況はさらに悪化する。オープンソースコミュニティのグランドルールを作ろうとする努力の1つが、2014年のCoraline Ada Ehmke(コラリーヌ・エイダ・エームケ)氏によるContributor Covenantコントリビューター行動規範)だ。オープンソースのプロジェクトの多くがそうであるように、Contributor Covenantもエームケ氏の情熱が込められていた。数年間にわたる最初の2回の改訂の間に、その規範書をCNCFやCreative Commons、Apple、Google、Microsoft、Linuxプロジェクトなどが採用し、他にも数百のプロジェクトが彼らに続いた。

今度バージョン3.0に取り組むにあたり同規範書は、 エームケ氏が共同創業者で事務局長でもあるOrganization for Ethical Source(OES、エシカルなソースのための団体)にその管轄を任せることになった。

このことについてエームケ氏は次のように語っている。「Contributor Covenantは、オープンソースプロジェクトの行為規範としてこの世界で初めてのドキュメントですが、それは信じられないほどの議論を誘発し、今でもそれらの議論は鎮まっていません。私がいたのはRubyのコミュニティでしたが、そのコミュニティは規範書のコンセプトと文書そのものを真剣に受け入れていました。そしてそこから、多くのオープンソースプロジェクトやオープンソースのコミュニティに広がっていきました」。

ドキュメントの中核にあるのは「年齢、体の大きさ、目に見えるまたは目に見えない障害、民族性、性別、 性同一性、表現、経験のレベル、教育、社会経済的地位、国籍、人格、人種、宗教、または性的同一性と性的指向性に関係なく、コミュニティへの参加を誰にとってもハラスメントのない体験にする」という誓いだ。そしてコントリビューターは、多様で開放的で誰でも歓迎するコミュニティに貢献すべく、行動しなければならない。

Ehmke氏によると、これまでの数年間で進化したのは、メンバーが行動規範に違反したときの結果をどうすべきか、コミュニティのリーダーが判断できるための、規約の執行指針を加えたことだ。

「この文書が批判を浴びたとき私が考えたのは、そんなにまじめでない議論も含めて、そこには、何らかの具体的な行動に結びつくべきフィードバックがあるのではないか、ということだ」、とEhmke氏は語る。「これまで何年間も、Contributor Covenantに対する批判の多くは、『何か間違ったことを言ったらプロジェクトから永久追放になるのかい?厳しすぎるし不合理だよ』というものだ。つまり、違反に対してプロジェクトリーダーに何をされるか、という結果を心配している。その心配はもっともだ、と私も感じた」。

エームケ氏はCovenantをOESに置くことを「コミュニティへの出口」と呼ぶ。それは企業などが、成熟したオープンソースプロジェクトをファウンデーションの傘下に置くようなものだ。彼女によると、OESにはコミュニティ管理やプロジェクト統轄のエキスパートが多い。彼らなら、このプロジェクトをもっとフォーマルなかたちにしてくれるだろう。「Contributor Covenantの進化には今後も関与していきますが、開発はOESのワーキンググループが担当することになるでしょう」と彼女は説明した。

バージョン3.0に関してエームケ氏が期待するのは、Covenantが「ツールキット」のようなものになり、OESが定めている倫理原則は堅持しつつ、さまざまなコミュニティが自分たちの目標と価値に合ったかたちに変えていくことだ。

MicrosoftのOpen Source Program OfficeのプログラムマネージャーEmma Irwin(エマ・アーウィン)氏は、次のように語る。「MicrosoftがContributor Covenantを採用したことは、私たちが本気で、健全で多様性と包容力のあるコミュニティを築き、エコシステムの多くのメンバーとともに貢献し構築して行きたいと考えていることの表れです。会社のこの意図と私の能力をOESのContributor Covenant 3.0ワーキンググループに持参できることは、名誉です」。

関連記事
Microsoft AzureがPyson向け機械学習プラットフォーム「PyTorch」のエンタープライズサポートを提供
必要な場所にデータを移動させるオープンソースのデータコネクタープラットフォームAirbyteが28.3億円調達
AWSがオンプレミスソフトウェアをSaaSに変えるツールをオープンソースでリリース

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:オープンソースContributor Covenant

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

飛行機や自動車などでユーザーの認知状態を識別し致命的なヒューマンエラーを予見・回避するCorrActions

センサーデータを用いて、眠気やアルコール、疲労などに影響されるユーザーの認知状態を査定する非侵襲的神経科学のスタートアップ「CorrActions」は、イスラエル時間5月27日、シードラウンドで270万ドル(約3億円)を調達したと発表した。アーリーステージファンドのVentureIsrael、シードファンドのOperator Partners、政府系ファンドのIsraeli Innovation Authority(IIA、イスラエル・イノベーション・オーソリティ)が、OurCrowdのインキュベーターLabs/02を拠点とする同社を支援している。

CorrActionsのアイデアは、戦闘機のコックピットや自動車など人間が機械と相互作用する、そしてユーザーの認知状態を知ることで致命的なエラーを防ぐことができる場所にタッチセンサーを使用するというもの。同社は、独自アルゴリズムによりユーザーの認知状態を識別し「体動監視により無意識の脳信号を解読する」ことで、エラーが発生する150ミリ秒前にエラーを検出できると約束している。このシステムは、基本的にどこに実装するかに依存しない汎用的なプラットフォームであるため、ほとんどの場合ユースケースを問わない。

「CorrActionsは、スマートウォッチやスマートフォン、さらにはステアリングホイールやジョイスティックなど、ほぼすべての電子機器にすでに搭載されているセンサーを使い、ユーザーの筋肉活動の微小な変化を分析することで、その瞬間の認知状態を読み取ることができる世界初のシステムです」と、同社の共同創業者でCSOのEldad Hochman(エルダド・ホフマン)氏は説明する。「ユーザーが2分間電子機器に触れるだけで、認知状態を正確に数値化し、故障や事故につながる急激な悪化を予測することもできます。そのような事態が起こる数秒前に予見できるのです。つまり疲労、酔い度、疲弊、集中力の欠如などのレベルを任意の瞬間に数値化できるということです」。

もちろん、最近の自動車の多くには覚醒度をモニターするセンサーが搭載されている。CorrActionsがすでに自動車業界の数社と共同で実証実験を行っているのも不思議ではない。さらに防衛産業ともプロジェクトを進めており、同社のシステムがパイロットのパフォーマンスを評価できることを示している。ホフマン氏は同社のアルゴリズムによって、スポーツ選手や高齢者が怪我や転倒の危険にさらされているときに警告を発することができるかもしれないとも考えている。

同社は今回の資金調達により、アルゴリズムのさらなる開発と、特に自動車業界における現在の導入パートナーのサポートを行っていくという。

CorrActionsの共同創業者兼CEOであるZvi Ginosar(ズヴィ・ジノサール)氏はこう述べている。「当社は、基本的な操作ミスを防ぐことで企業の工数やコストを削減できる可能性を秘めた技術を開発し、すでに大きな成果を上げています。さらに、当社のプラットフォームを応用することで、人命を救い、何千もの事故やミスを防ぐことができます。今後数カ月のうちに、さらに画期的な成果や実証実験を報告できるようにしたいと考えており、今回の資金調達はこの目標達成に大きく貢献するものです」。

関連記事
貨物船にコンピュータービジョンを後付けして衝突事故を防ぐOrca AIがシリーズAで約14億円調達
パブリッシャーのコンテンツ推奨収入を最大化を支援するイスラエルのWhizzCo
材料研究を効率化するプラットフォーム開発するのイスラエルMaterials Zoneが約6.5億円を調達

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:CorrActions資金調達イスラエルヒューマンエラー

画像クレジット:anand purohit / Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

Googleの新OS「Fuchsia」が第1世代「Nest Hub」向けに配信開始

Googleの新OS「Fuchsia」が第1世代「Nest Hub」向けに配信開始

Googleの新OS「Fuchsia」が、第1世代のNest Hub向けに配信が開始されました。9to5GoogleがGoogleに確認したとして伝えており、まずはプレビュープログラムを対象にリリースされ、今後数か月で広く展開予定とのことです。

2016年にその存在が明らかになったFucshiaは、あまり公に語られることもなく、どういった立ち位置のOSなのかも不明なままでした。しかし、2020年には開発者サイトがオープンし、プロジェクトが一般公開されたほか、5月初めには、Bluetooth SIGでFucshia 1.0を搭載するGoogle Home Hub(第1世代のNest Hub)が見つかるなど、正式リリースも近いのではと考えられていました。

Fuchsiaの特徴は、LinuxベースのAndroidとは異なり、独自のマイクロカーネルZircon(以前はMagentaと呼ばれていました)を採用していること。Googleは公式ブログの中で、汎用のオープンソースOSを作成するための長期プロジェクトだと説明されていました。

肝心のNest Hubのアップデートですが、見た目や機能に変化はなく、アップデートに気づかない可能性も指摘されています。というのも、Nest Hub自身はCast OSで動作していますが、その上でオープンソースのアプリ開発プラットフォームFultterが動作しています。Fultterはクロスプラットフォームを特徴としており、Fuchsiaもサポート済み。このため、ベースとなるOSが変わっても、見た目や動作に影響はないというわけです。

今後、他の機種へのアップデートも行われると考えられますが、最終的にAndroidやChrome OSを置き換えるものになるのか、あくまでもスマート機器向けに留まるのか、注目しておきたいところです。

(Source:9to5GoogleEngadget日本版より転載)

関連記事
グーグルがクロスプラットフォームUIツールキット「Flutter」をアップデート
グーグルがFlutterツールキットをバージョン2に、デストップとウェブアプリをサポート
GoogleがAndroid、Chromeに続くOS「Fuchsia」プロジェクトを一般開放へ
Googleが謎めいたOSをベータテスト中―Fuchsiaは小さなIoTデバイスでも走る

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:OS / オペレーティングシステム(用語)オープンソース / Open Source(用語)Google / グーグル(企業)Fuchsia(製品・サービス)Flutter(製品・サービス)

ユニークな強みを持つデバッグと可観測性プラットフォームのLightrunが25.3億円調達

開発者による本番コードのデバッグを支援するスタートアップLightrunが米国時間5月26日、Insight PartnersリードするシリーズAで2300万ドル(約25億3000万円)を調達したことを発表した。同社の400万ドル(約4億4000万円)のシードラウンドを仕切ったGlilot Capital Partnersもこのラウンドに参加している。

モニタリングのスタートアップは海水より多いが、その中でLightrunが傑出しているのは、ITのチームよりもデベロッパーを重視し、彼らが自分の日常のIDE(統合開発環境)からプロダクションコードをデバッグできるようにするからだ。彼らはわずかなキーストロークでモニタリング用のコードを装備できるが、ここで重要なのはLightrunが、コントロールをデベロッパーに持たせるための、同社が「ops-free」と呼ぶプロセスを提供することだ。この「シフトレフト」のアプローチにより、アプリケーションをモニタリングする工程をSplunkやNew Relicのようなops中心のツールから外して、デベロッパーがすでによく知っているワークスペースの中へ置く。

Lightrunの共同創業者でCEOのIlan Peleg(イラン・ペレグ)氏は次のように説明する。「可観測性の市場は極めてITのオペレーター指向です。ITのオペレーターが、サービスがダウンしているという恐れていたページをもらうと、彼らはサーバー上で実働しているインスタンスのヘルスメトリックスを見て、さまざまなフェイルオーバー方法とサービスの健康回復策を試みます。しかも彼らは、システム管理のために日常的に使っているのと同じインタフェイスの上でネイティブにそれを行おうとします。しかし、デベロッパーがバグがあるという恐ろしい通知をもらったら、それは犯罪の初動捜査のようなものになり、容疑者不在でわずかな手がかりしかありません」。

 

現在このサービスはJavaと、それ用の開発環境であるIntelliJのみをサポートしているが、言語とプラットフォームは今後もっと増やし、まずPythonとNode.jsをサポートし、対応するIDEも増やす予定だ。

ラウンドをリードしLightrunの取締役会に入ることになったInsight PartnersのマネージングディレクターであるTeddie Wardi(テディ・ワルディ)氏は、次のように述べている。「さまざまな可観測性ソリューションが市場に参入していますが、その中でLightrunのシフトレフトのアプローチは本当にユニークだ。可観測性をソフトウェア開発のライフサイクルの左(初期工程)へシフトすることの主眼は、可観測性をデベロッパーの日々のワークフローに合体することです。Lightrunは可観測性をさらにops抜きでリアルタイムで、他のどんなプラットフォームよりも開発工程にとってより人間工学的にしています。彼らは今後、敏速な機能開発と高頻度なデリバリーを最優先する企業の開発チームの、巨大な国際市場を手中にする位置にある、と私たちは信じています」。

同社は最近、サービスの無料のコミュニティエディションをローンチし、またDatadogやIntelliJ IDEA、Logz.io、Prometheus、Slack、StatsDなど一連の新たな統合を導入した。Lightrunの現在の顧客には、TaboolaやSisense、Tufinなどがいる。

同社の社員数は、2020年の1年間でそれまでの倍に増えた。今度の資金はデベロッパーコミュニティの育成の継続と、さまざまな能力を持った人材の雇用に当て、米国におけるプレゼンスも、もっと大きくしたいという。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Lightrunデバッグ資金調達

画像クレジット:Andrea Giampietro/Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

インフラ管理もできるヘッドレスCMS開発のPrismicがシリーズAで約22億円を調達

コンテンツ管理システム(CMS)を開発するPrismic(プリズミック)がシリーズAラウンドで2000万ドル(約22億円)を調達した。同社は2016年以来利益を計上しているが、製品を迅速に反復開発することにより、ヘッドレスCMSの可能性を最大限に引き出したいと考えている。Aglaé VenturesとEurazeoが資金調達ラウンドを共同でリードした。

ヘッドレスコンテンツ管理システムは、従来のコンテンツ管理システムとは少し異なる。ウェブサイトのバックエンドとフロントエンドが完全に別々に動く。安全なところに保存されているバックエンドにコンテンツを書き込む。アプリケーションのフロントエンドは、APIによりバックエンドからコンテンツを引き出し、それを顧客や読者に表示する。

コンテンツ管理システムの上記2つの重要部分を分離することには多くの利点がある。より安全になり、はるかに優れた拡張性を獲得し、フロントエンドフレームワークとホスティングに関して大きな柔軟性が生まれる。

Prismicは、CMSでの反復開発に加え、インフラを管理する。サインアップするときにバックエンドを自分のサーバーに持ち込む必要はない。管理インターフェイスに接続すれば、作業を始められる。

その後はAPIからコンテンツにアクセスできる。これは、独自のウェブサイトを構築し、Prismicからコンテンツを取得できることを意味する。モバイルアプリを作成して、ニュースセクションのコンテンツバックエンドとしてPrismicを使用することもできる。

独自のフレームワークを選択し、そのフレームワークを介してサイトを構築できる。Prismicは、Gatsby、React.js、Next.js、Vue.jsなどをサポートしている。

Prismicはまた「Slices」の普及を試みている。従来のコンテンツ管理システムでは、ページや投稿を作成できる。各ページで同じヘッダーとフッターを使用する。これは、ウェブサイトに含まれるコンテンツの単位にすぎない。

Slicesは上部のバナー、注目のコンテンツ、いくつかの関連コンテンツ、最近のレビュー、ニュースレターのサインアップフォームなど、ウェブサイトのバーティカルセクションだ。開発者はReact.jsやVue.jsなどにより独自のカスタムスライスを作成できる。

その後、コンテンツマーケティングチームは、スライスを組み合わせて一致させたり、新しいページを作成するたびにスライスをカスタマイズしたりできる。それは多くの可能性を解き放ち、技術者以外の人々がウェブサイトの動的コンテンツを作成できるようになる。本質的には、PrismicはそれらのスライスによりCMSにいくつかのノーコード機能を追加しようとしている。

「Prismicはマーケティングチームのページビルダーになります。そこから、サイトのすべてのセクションにアクセスし、それらのスライスをつなぎ合わせてコンテンツを追加することで、新しいページを作成できます」と共同創業者でCEOのSadek Drobi(サデック・ドロビ)氏は筆者に語った。

特にそのコンセプトにはいくつかの可能性があるようだ。同社が資金を調達できたのはそのためだ。このスタートアップはサブスクリプションから収益を生み出し、ウェブエージェンシーなどの小規模なクライアントだけでなく、法人向けプランを選ぶ大企業もターゲットにしている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:PrismicCMS資金調達ヘッドレスCMS

画像クレジット:HalGatewood.com / Unsplash

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

エンド・ツー・エンド暗号化対応Googleドキュメント対抗テキストエディター「Skiff」が4.2億円調達

もしGoogleドキュメントがエンド・ツー・エンドで暗号化されて、Googleでさえ自分の文書をアクセスできないとしたらどうだろうか。Skiff(スキッフ)は、ひと言で表現すればそれをやっている。

SkiffはGoogleドキュメントと似たルック・アンド・フィールのテキストエディターで、文章の作成、編集、同僚とのリアルタイムの共同作業ができることに加えて、プライバシー第一で作られている。テキストエディターはエンド・ツー・エンド暗号化の基盤の上に作られているので、Skiff自身は誰の文章を見ることもできない。アクセスできるのはユーザー自身と共同作業に招待された人だけだ。

このアイデアはすでに投資家の注目を集めている。米国時間5月26日、Skiffの共同ファウンダーである、Andrew Milich(アンドリュー・ミリッチ)CEOとJason Ginsberg(ジェイソン・ギンズバーグ)CTOは、同社がベンチャーキャピタルのSequoia Capitalから370万ドル(約4億円)のシード資金を調達したことを発表した。2020年3月にSkiffが設立されてから1年と少しが過ぎたところだ。Alphabet(アルファベット)のチェアマンJohn Hennessy(ジョン・ヘネシー)氏、Yahoo(ヤフー)のCEOであるJerry Yang(ジェリー・ヤン)氏、Eventbrite(イベントブライト)の共同ファウンダーであるJulia Hartz(ジュリア・ハーツ)氏とKevin Hartz(ケビン・ハーツ)もラウンドに参加した。

ミリッチ氏とギンズバーグ氏はTechCrunchに、シード資金はチームの増員とプラッフォーム拡大に使うつもりだと語った。

Skiffは、エンド・ツー・エンド暗号化という意味ではWhatsAppやSignalと大きくは変わらないが、その上でテキストエディターを動かしている。「多くの人へにメッセージを送るためにこれを使う代わりに、私たちはこれを使って文章を細かいピースに分けて送り、それらをつなぎ合わせて共同作業ワークスペースを作ります」とミリッチ氏は言った。

しかし共同ファウンダーの2人は、重要な文章をクラウドに置くためにはユーザーがスタートアップに大きな信頼を寄せる必要があることを認識している、生まれて間もない会社ならなおさらだ。Skiffが自社のテクノロジーの仕組みを詳しく説明した白書を公開し、コードの一部をオープンソース化して、プラットフォームの中身を誰でも見られるようにしたのはそれが理由だ。ミリッチ氏は、本格的なセキュリティ監査を1回以上実施しており、Signal Foundation(シグナル・ファウンデーション)やTrail of Bits(トレイル・オブ・ビッツ)のアドバイスも受けている、と語った。

どうやら順調にいっているようだ。Skiffが招待のみのプログラムで限定公開を開始して以来、ジャーナリスト、研究者、人権派弁護士などを含む数千人のユーザーが毎日Skiffを使用しており、8000人がその行列に並んでいる。

「最も喜んでいるのは、プライバシーに気を使っているごく普通の人たちです」とギンズバーグ氏はいう。「このタイプの製品の支持者で、プログラムがどのように作られたのかを真剣に考え、大会社への信頼を失いかけている、そんなプライバシーコミュニティや人々が世界にはたくさんいます」。

「彼らが私たちの製品を使っているのは、エンド・ツー・エンド暗号化の構想と将来に大きく期待しているからです」と彼は語った。

関連記事
クラウドを使わずドキュメント共同編集機能を実現するP2Pソフトウェア「Collabio」
iOS用ドキュメント作成アプリCraftが約8.8億円調達、ブラウザベースエディターも提供予定

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:SkiffGoogleドキュメントテキストエディタープライバシーエンド・ツー・エンド暗号化資金調達

画像クレジット:Skiff / supplied

原文へ

(文:Zack Whittaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Microsoft AzureがPyson向け機械学習プラットフォーム「PyTorch」のエンタープライズサポートを提供

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間5月26日、PyTorch Enterprise(パイトーチ・エンタープライズ)を発表した。Azure(アジュール)上でPyTorchを使うための新たなサポートをデベロッパーに提供する新サービスだ。

PyTorchはPython(パイソン)向けのオープンソース機械学習プラットフォームで、コンピュータビジョンと自然言語処理に焦点を当てている。当初開発したのはFacebookで、Google(グーグル)の人気フレームワークであるTensorFlow(テンサーフロー)と似ている部分もある。

Microsoftのコミュニケーション担当コーポレートVPであるFrank X. Shaw(フランク・X・ショー)氏は、新サービスPyTorch Enterpriseについて「データサイエンス業務にPyTorchを使っている組織のデベロッパーに、より信頼性の高い生産体験を提供する」ものであると説明した。

PyTorch Enterpriseは、MicrosoftのPremier(プレミア)およびUnified(ユニファイド)のサポートプログラム・メンバーに、ホットフィックス、バグ、セキュリティ・パッチなどの優先リクエスト、直接サポート、ソリューションなどを提供する、とショー氏は説明した。Microsoftは毎年、長期的なサポートを行うPyTorchのバージョンを1つ選んでいる。

AzureはすでにPyTorchを比較的容易に使用できるように作られていて、Microsoftは2020年、PyTorch for Windowsの開発を引き継ぐなど、長年このライブラリに投資してきた。この日の発表でMicrosoftは、最新リリースのPyTorchはAzure Machine Learningに統合され、デベロッパーから入手したPyTorchコードを公開PyTorchディストリビューションにフィードバックすることを約束した。

PyTorch Enterprizeは、Windows 10およびいくつかのLinuxディストリビューションで動作しているPyTorch バージョン1.8.1以上で利用できる。

「Microsoftが提供するこの新しいエンタープライズレベル製品は、重要なギャップを埋めるものです。PyTorchは私たちの研究者がモデルをデザインしたり実験を行う上で、これまでにない柔軟性を与えてくれます」とNuance(ニュアンス)の上級主任研究員Jeremy Jancsary(ジェレミー・ジャンクサリー)氏はいう。「しかしこれらのモデルを製品化するのはチャレンジです。Microsoftが直接関わることで、私たちはAzure上に新しいバージョンのPyTorchを安心して展開できます」。

この新サービスの提供でMicrosoftは、オープンソースプロジェクトの上に追加サービスを提供することによって、スタートアップにオープンソース収益化戦略の見本を示している。PyTorchはスタートアップが開発したものではないため、メジャーなクラウドサービスがオープンソースコードの上に自社の商品バージョンを載せることも、問題なく受け入れられるだろう。

関連記事

マイクロソフトのブラウザ「Edge」は起動が速くなりタブがスリープする機能も搭載する
マイクロソフトはGPT-3を使い自然言語でコードを書けるようにする
マイクロソフトが今や1日に1億4500万人が利用するTeamsの開発者向け新機能やツールを発表
マイクロソフトのナデラCEOがBuild 2021で「自らテストしてきた」次世代Windowsに言及

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftMicrosoft BuildMicrosoft Build 2021Microsoft Azure機械学習自然言語処理PyTorchオープンソース

画像クレジット:Gingagi / Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nob Takahashi / facebook

必要な場所にデータを移動させるオープンソースのデータコネクタープラットフォームAirbyteが28.3億円調達

現在、企業が直面している大きな課題の1つは、関連するデータを見つけることではなく、必要な場所にデータを移動させることだ。この課題を解決するために、オープンソースのデータ統合プラットフォームを構築しているアーリーステージのスタートアップがAirbyte(エアバイト)である。同社は、先の520万ドル(約5億7000万円)のシードラウンドを発表してからわずか2カ月後である米国時間5月25日に、2600万ドル(約28億3000万円)のシリーズAを発表した。

このラウンドを主導したのはBenchmarkで、8VC、Accel、SV Angel、Y Combinator、および複数の技術業界の著名人が投資に参加した。同社はこれまでに3100万ドル(約33億7000万円)以上を調達しているが、そのすべてが2021年に入ってからのものだ。

共同創業者でCEOのMichel Tricot(マイケル・トリコット)氏は、TechCrunchの取材に対して「当社が開発しているのはデータベース、ファイル、APIなどのどこに置かれたデータでも、データウェアハウスやデータレイクなどのお好みの場所に移動させるための、オープンソースのデータ統合プラットフォームです」と語る。このために、さまざまなデータタイプへのコネクターの開発が行われている。同社は、コネクターを開発するためのオープンソースのプラットフォームとSDKを提供し、自身でもコネクターを開発しつつ、コミュニティに対して独自のコネクタの追加を呼びかけている。

スタートアップを取り巻く状況は急速に変化している。今回の資金調達に加えて、2021年5月初めには「Connected Development Kit」(CDK、コネクター開発キット)をリリースした。共同創業者であるJohn Lafleur(ジョン・ラフルール)氏は「このフレームワークを使うことで、カスタムコネクターを2〜3日ではなく、2時間で開発することができます」という。現時点で、プラットフォームの70個のコネクターのうちの約20%がコミュニティから提供されたものだが、CDKがコミュニティに普及するにつれて、その割合は増加するだろうと2人の創業者は期待している。

関連記事:データサイエンティストが社内全体とデータを共有するプロセスをシンプルにするHexが6.1億円調達

Airbyteは2020年創業されたばかりだが、同社は2021年を、急速に成長しているコミュニティを拡大するために費やす予定だ。現時点でコミュニティメンバーは1200人、アクティブユーザーは500人に達している。当面はオープンソースのプロジェクトを継続しながら、将来はホステッドバージョンを開発しそこから収益を得る予定である。

今回の投資を主導しているBenchmarkのゼネラルパートナーであるChetan Puttagunta(チェタン・プッタグンタ)氏は、BenchmarkにはこれまでRed Hat(レッドハット)をはじめ、Elastic(エラスティック)、MongoDB(モンゴDB)、Acquia(アクイア)などのオープンソースのスタートアップへ、初期の投資家として投資を行ってきた歴史があると語った。

プッタグンタ氏がAirbyteにアプローチしたのは、コミュニティで多くの開発者が短期間に活躍しているのを見たからだという。「開発者コミュニティへの関わり合いという観点から、私たちは彼らに声をかけました。Airbyteがあちこちで見られるようになり、データを統合するためのデファクトスタンダードとして急速に普及していくのを目にしたのです。設立からわずか数カ月の会社としては、驚くべき成果でした」。

急激な成長によって、社員数は短期間で2倍の14名となった。ダイバーシティとインクルージョンに関しては、創業者が自ら会社のハンドブックを書き起こしており、その中には詳細な定義や目標などが含まれているが、これは初期段階の会社ではあまり見られることはない。

トリコット氏は「私たちは、ダイバーシティ、インクルージョン、帰属意識を継続的に向上させようとしています。決してこれで終わりと考えることはありません。常に改善の余地があるのです」と語る。

関連記事
オープンソースのデータ統合プラットフォームのAirbyteが5.6億円を調達
オープンソースのデータパイプラインプラットフォーム「Airbyte」

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Airbyte資金調達オープンソースオープンデータデータウェアハウス

画像クレジット:ipopba/Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:sako)

ドライバーモニタリングのSmart Eyeが感情検知ソフトウェアAffectivaを約80億円で買収

ドライバーのモニタリングシステムを自動車メーカー12社に供給しているスウェーデンの上場企業Smart Eye(スマートアイ)が、感情検知ソフトウェアスタートアップのAffectiva(アフェクティヴァ)を現金と株式合わせて7350万ドル(約80億円)で買収した。

MIT Media Labから2009年にスピンアウトしたAffectivaは人間の感情を検知して理解できるソフトウェアを開発した。このソフトウェアはSmart Eyeが自社のAIベースの視線追跡テクノロジーと合体させたがっているものだ。両社の創業者たちは、ドライバーの覚醒度を追跡・計測するための高度なドライバーアシスタンスシステムによく使われているテクノロジーであるドライバーモニタリングシステム以上の機会を目にしている。両社が一緒になることで、そのテクノロジーは新たに生まれている「インテリアセンシング」マーケットに参入するのに役立つかもしれない。インテリアセンシングは車両の乗車空間全体をモニターし、乗車している人の感情に応じたサービスを提供するのに使われている。

買収取引条件に基づき、6750万ドル(約73億円)が新規発行されるSmart Eyeの235万4668株で支払われることになっており、うち201万5626株は取引完了時に発行される。残りの33万9042株は取引完了から2年以内に発行される。そして2021年6月の取引完了時に約600万ドル(約6億5000万円)が支払われる。

AffectivaとSmart Eyeは競合していた。2020年のテクノロジー展覧会CESでのミーティングが合併につながった。

「マーティンと私は、両社が互いに競うために同じ道を歩んでいて、もし力を合わせればさらに良くなるのではないかと気づいたのです」とAffectivaの共同創業者でCEOのRana el Kaliouby(ラナ・エル・カリウビー)氏は米国時間5月25日のインタビューで述べた。「一緒に取り組むことで、OEM企業のインテリアセンシングに関する要求のすべてを満たし、我々は競争で優位に立ちます。個々にやるよりもずっとうまく、そして早く達成する機会を手にします」。

ボストン拠点のAffectivaは感情検知ソフトウェアを買収取引に持ち込み、これによりSmart Eyeは既存の自動車業界のパートナーにさまざまなプロダクトを提供できるようになる。Smart EyeはAffectivaが開発やプロトタイプ作業を超えて生産契約に移れるようサポートする。Smart EyeはBMWやGMを含むOEM13社から生産契約84件を獲得した。スウェーデン・ヨーテボリ、デトロイト、東京、中国・重慶市にオフィスを置いているSmart Eyeは忠実に再現できる人間工学研究のためのアイトラッキングシステムをNASAのような研究組織に提供する部門も抱える。

Smart Eye創業者でCEOのMartin Krantz(マーティン・クランツ)氏は、ラグジュアリーでプレミアムな車両を製造している欧州のメーカーがドライバーモニタリングシステムの変化をリードした、と話した。

「インテリアセンシングでも同じパターンが繰り返されています」とクランツ氏は述べた。「初期の契約の大半はMercedes、BMW、Audi、JLR、Porscheといった欧州のプレミアムなOEMになるでしょう」。そしてCadillacやLexusなどを含む欧州外の地域でターゲットにする他のプレミアムなブランドも数多くある、と付け加えた。

まずは人間が運転する乗用車に照準を当て、高度な自動運転がマーケットに導入されるにつれゆくゆくは拡大する。

ボストンとカイロのオフィスに従業員100人を抱えるAffectivaは感情検知ソフトウェアをメディア分析に応用する別の事業部門も擁している。買収取引に含まれ、別に運営されるこの部門は収益をあげているとカリウビー氏は話し、世界の大手広告主の70%がメディアコンテンツへの感情反応を測定して理解するのにこのソフトウェアを使っているとも指摘した。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Smart EyeAffectiva買収インテリアセンシング自動車

画像クレジット:Smart Eye

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi