インドの小規模小売店の運転資金や在庫を支えるElasticRunが約80億円調達

インドの小規模小売12万5000店超が運転資金やトップブランドからの在庫を確保したり、売り上げを伸ばすためのeコマース会社と協業をサポートするスタートアップElasticRunが、現地時間4月28日、世界2番目のインターネットマーケットである同国でさらにリーチを伸ばすために新たに資金調達したと発表した。

インド・プネー拠点のElasticRun(イラスティックラン)は、既存投資家のAvataar VenturesとProsus Venturesが共同でリードしたシリーズDラウンドで7500万ドル(約80億円)を調達したと明らかにした。同じく既存投資家のKalaari Capitalも本ラウンドに参加し、創業4年になるElasticRunがこれまでに調達した資金は累計1億3050万ドル(約140億円)になった。インドの大都市や小都市、町、村に点在し、eコマース大手やスーパーチェーン小売業者と競合するのは難しいことがわかっている何百万もの小規模小売店は、同国における新しい取り組みの中心にある。

多くのeコマース企業、実在店舗チェーン、フィンテックスタートアップが巨大な未開拓の機会に目を向け、こうした家族経営の小規模店と先を争って協業しようとしている。

2019年の会議で事業について話すElasticRunの共同創業者でCEOのSandeep Deshmukh(サンディープ・デシムク)氏

ElasticRunは、在庫確保のために1カ月に数日は大きな街に足を運ばなければならないというのが典型的な小売店経営者が、信頼でき、そして手頃な価格の商品を大手ブランドから直接入手するのをサポートしている(リーチを大きく広げられるため大手ブランドはこのサポートを気に入っている)。

こうした小売店のオーナーはまた、商売が低調なときは特に何もせずに何時間も過ごす。ElasticRunはこの労働力を顧客への配達に有効利用するためにAmazonやFlipkartなどを含む最大のeコマース会社と提携することで、この空き時間問題も解決している(eコマース会社はこの取り組みに価値を見出している。というのも、小規模店はインドでは大きな存在であり、顧客にすばやくアクセスでき、往々にして独自の在庫を持っているからだ)。

Prosus Venturesのインド投資責任者Ashutosh Sharma(アシュトシュ・シャルマ)氏は、ElasticRunが可変容量でクラウドソースの配達モデルを構築したとTechCrunchに語った。このモデルは、配達するのに給料を支払う人の数を固定している他のプレイヤーとElasticRunが異なる点だ。ElasticRunがレールを敷き、数多くの新たな機会が出てきたとシャルマ氏は話した。

そうした機会の1つが、運転資本を小規模小売店に提供することだ。小売店の経営者は多くの場合、貯蓄がなく、在庫を補充する資金を確保するために既存の在庫を売る必要がある。ElasticRunは近年、こうした小売業者にクレジットを提供するために銀行やノンバンク金融会社と提携を結んできた。

ElasticRunは現在インドのほぼ全州の300超の都市で事業を展開している。12万5000店超と協業し、今後18〜24カ月で100万店へと拡大する計画だ、と共同創業者で最高テクノロジー責任者のShitiz Bansal(シティズ・バンサル)氏はTechCrunchとのインタビューで述べた。

ElasticRunの現在のランレートは約3億5000万ドル(約380億円)で、この数字は今後12カ月で10億ドル(約1090億円)に成長する見込みだとバンサル氏は話した。

共同創業者で最高執行責任者のSaurabh Nigam(サウラブ・ニガム)氏は、新たな資金調達で過去5年にわたる同社の成長の「有形便益」に初期の従業員がアクセスできるようにした、と述べた。

カテゴリー:その他
タグ:ElasticRunインド資金調達eコマース小売

画像クレジット:Sanjit Das / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

ニュースレタープラットフォーム「Mailchimp」がeコマースへ本格的に進出

最近の数年間でMailchimpは、単純なニュースレターのプラットフォームから本格的なマーケティング企業に変貌した。同社のサービスはすでに、複数のeコマースサイトとの統合していたが、中小企業のための同社独自のオンラインストアと、新たにアポイント予約サービスを提供していく。

MailChimpには新たに「Websites & Commerce」というサービスプラン集が作られ、これら新しいサービスがそこに含まれる。このプランは無料から始まり、最も基本的な機能が提供されるが、売買に関しては2%の手数料を払う。月額10ドル(約1080円)の有料プランでは、Mailchimpというブランドが消えてユーザーはメールとチャットにアクセスでき、手数料は1.5%になる。月額29ドル(約3150円)の「Plus」プランになると、手数料は1つの注文につきわずか0.5%になる。

どのプランでもユーザーはページ数制限なし、帯域制限なしのサイトを作ることができ、SEOツールやGoogle Analyticsとの統合がある。ストアに関しては、ユーザーは商品のカタログを自分で作り、注文や税、発送方式などを自分で管理できる。これらすべてと、アポイントの機能は、当然ながらMailchimp本体と深く統合されている。

画像クレジット:Mailchimp

これらの新しいプランは現在ベータ版で、この新しいeコマース機能は5月18日までに米国と英国のMailchimpの顧客全員が利用できるようになる。アポイント予約機能は、全ユーザーが4月28日から利用できる。

コマースの機能を内蔵したことはMailchimpの進化の大きな一歩だ。しかもそれは、理に適っている。同社によると、その1400万の顧客の約40%がすでに何らかのかたちでコマースを行っており、その多くはMailchimpネイティブでコマースをやりたいと述べている。またユーザーの30%近くは、前述の既存のコマース機能とそれらの統合を利用しており、同社によるとそういうeコマース利用顧客のからの会費収入は2019年から2020年にかけて61%成長した。

Mailchimpはすでに、ウェブサイトやドメインやその他のコマース関連サービスを提供しており、今回の新しい機能は自然な延長のようだ。Mailchimpのストアから直接販売することも、サービス業がアポイントの予約を受け付けることも、ユーザーにとって次の一歩として自然だ。

同社が強調するのは、新しい分野に入っても既存のプロダクトや顧客から去るわけではない、という点だ。MailchimpのCEOで共同創業者のBen Chestnut(ベン・チェストナット)氏は、発表声明で次のように述べている。「私たちのスマートマーケティングソリューションを放棄するわけではないので、ご安心ください。私たちの目標は依然として世界最良のメールマーケティングを提供することです。私たちの顧客とパートナーのみなさまが、新しい機能とともに一貫性と継続性を求めていることは、よく承知しています。メールのデザインをできる限り容易にする努力を今後も続け、また数カ月後には新しくて美しいメールのテンプレート集を提供したいと考えています」。

画像クレジット:Mailchimp

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Mailchimpeコマース

画像クレジット:FilippoBacci/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

今、米国で盛り上がるD2Cソフトウェア、Z世代のAlloy創業者インタビュー

本稿は毎週月曜日に配信する米国の次世代ブランドやリテールテック、ニューラグジュアリーにフォーカスしたニュースレターとポッドキャスト「Cereal Talk投稿の転載記事となる。

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米国のECソフトウェア事情やAlloyの自動化、そして今流行っているD2C業界のトレンドについてAlloy AutomationのCEOのSara Du(サラ・ドゥ)さんにお話を伺った。

盛り上がる米国D2C業界を支えるソフトウェア

米国ではD2C企業の資金調達が減少気味ではあるが、まだまだ新しいブランドが立ち上がっている。同時にNikeやadidasなど大手小売もD2C化を本格的に行なったり、新型コロナによりECが主流になったことで、ECソフトウェア企業の需要が増加している。

スタート時はShopifyだけを活用しても問題ないかもしれないが、ほとんどのD2C企業が同じソフトウェアを使っているため、優位性をつくるのは難しい。現在、サイトやブランド、ECの体験を改善するツールが出てきているのは、少しでも他社との違いを作り出すためだ。そのため、どのD2Cブランドやオンラインリテーラーも自社に適したテックスタック(複数のテクノロジーの組み合わせ)を構築する必要がある。ただし、ソフトウェアをそれぞれ運営するのは大変なため、ECインフラの連携・自動化の需要が今後高まっていくはずだ。

画像クレジット:Bain Capital Medium

このトレンドは、2020年あたりから米国で盛り上がり始めた。多くのブランドは自動化ツール「Zapier」などを活用していたが、最近だとEC向けの自動化ツールも出てきている。その中でも最も注目されているサービスの1つがEC自動化プラットフォーム「Alloy(アロイ)」だ。Alloyは、Yコンビネーター2020年冬バッチに参加し、2021年2月には、BainCapital(ベインキャピタル)やAbstract Ventures、Color Capital「Shippo」の創業者などから400万ドル(約4億3000万円)の調達を発表。代表のサラ・ドゥさんはなんと20代前半という新世代の起業家だ。

新型コロナ後のD2CスタートアップへのVC投資事情

2018年がD2Cブランドへの資金調達のピークだった。2020年に上場したマットレスブランド「Casper」の株価も大幅に下がったため、D2C業界への投資が減少すると思われていた。実際に下記の図からわかるように、2020年のD2Cブランドへの合計資金調達額(1月〜9月)を見ると、2018年や2019年よりも下がっている。しかし、予期せぬ新型コロナの影響でEC需要が再熱し、投資家がまた興味を持ち始めている。

画像クレジット:Retail Dive

新型コロナの影響で、シリコンバレー全体での資金調達も一時的に止まったが、その後、EC率が大きく上がり、ECインフラを準備していたD2Cブランドが大手小売よりも大幅に伸びた。個人的に投資している低アルコール飲料ブランド「Haus」も前年比で780%成長、フェイクミートを活用したチキンナゲットを提供する「NUGGS」は、800万ドル(約8億7000万円)の売上を達成。そしてNikeなどもD2C戦略へシフトさせたことで2020年では全体売上の35%がD2Cチャネルからのものだった。

Business Insiderによると、過去5年間最も多くのEC系の投資を行なったVCの多くは長期的にEC市場が伸びるため、投資を続けるという。そんな中、ブランドだけではなく、D2Cブランドを支えるツールへの投資にフォーカスし始めている投資家も増えている。

ECインフラのソフトウェア「Shopify」の急成長

D2CやECの成長により、最も活躍したサービスといえばおそらく「Shopify」だろう。EC業界のトップであるAmazonに対抗して、Shopifyが唯一同等レベルのプラットフォームになり得るサービスだと思っている。それと同時に、クリエイターエコノミーの爆発的な成長も味方にし、インフルエンサーや一般の人でも販売を行う需要が増えた。

画像クレジット:Chartr

Amazonが全体のEC市場の39%のシェアを占めている中、Shopifyは2位の9%にまで成長した。その成長は、このまま続いてもおかしくないものだ。D2C企業に詳しいメディア「2PM」によると、トップ460社のD2C企業のうち、58.9%がShopifyを利用しているという。

画像クレジット:Web Smith Twitter

Shopifyの良さは、簡単にオンライン店舗を作れるだけではなく、2020年5月時点では4200アプリと連携している点で、80%の加盟店が第三者のアプリと連携していたと発表している。顧客獲得ツール、購入後の体験サービス、アンケートアプリ、配送サービスなどさまざまなアプリと連携できることによって、D2Cブランドは自分のプロダクトの販売とマーケティングに集中できる。Shopifyの成長により伸びたソフトウェア企業も多い。レビューサービス「Yotpo」やサブスクサービス「ReCharge」などがその代表例だ。3〜4年前と比べて、現在では10倍ほどのECソフトウェア企業が存在している。

画像クレジット:Red Sea Ventures

今回取材したAlloyのサラさんによると、コストを気にするD2C起業家が多いが、ある程度スケールし始めると必ずテックスタックを固める傾向にあるという。人を採用してマニュアルな作業を行うより、月額のSaaSプロダクトで1人で店舗を運営したほうがコスト的にも安いケースも多いため、初期でもソフトウェアを試すユーザーも多い。ただ、扱うソフトウェアが増える一方で、各ツールがバラバラで連携されてないため、全体的にツールを十分活用できている企業は多くないという。それを解決するのが自動化ツール「Alloy」だが、まだ新しい領域だとサラさんは語る。

ハーバード中退から起業、ストリートウェアブランドも運営するZ世代の起業家

画像クレジット:Sara Du

Alloyの創業者サラ・ドゥさんは高校生の時にLAに引っ越し、独学でプログラミングを学び始めた。当時、ハードウェア領域にも興味があり、舌を蓋につけると電気ショックで甘さを感じる「スマートコーヒーカップ」を開発した。これにより、Peter Thiel(ピーター・ティール)氏が行っている超難関といわれる若手起業家育成プログラム「ティール・フェローシップ」に選ばれた。そして、高校を飛び級で卒業し、ティール・フェローシップに採択されていたリーガルアシスタントサービス「Do Not Pay」にジョインした。当時、お金がまったくなかったサラさんは夏の間ひたすら知り合いの家を回り、ソファーで寝てたという。

その後、ハーバード大学に進学するが、そこでは東南アジアの歴史の勉強をした。1年が経ち、スタートアップのエネルギーが恋しくなった彼女は、Snapchatへインターンすることを決め、後に休学。大学時代やSnapchatにいた期間は、後にAlloyを一緒に立ち上げるグレッグさんといろいろなサイドプロジェクトを検証していたそうだ。10個ほどの失敗を続けたが、ずっとAPI連携できる開発者向けサービスには興味があったとサラさんはいう。Zapierをよく使っていたが、それ以外のツールを探した時に「Workato」などの自動化ツールを見つけた。そこで彼女は営業やマーケティングの自動化ツールが存在していると気づいたが、自分の思い描くツールや自分達のECショップを運営している友達や知り合いが求めているサービスが存在しなかったと理解した。サラさんは自分のストリートウェアブランドも運営していたため、ECオーナーとしてのニーズを理解していたのだ。

そこで2人は、誰でも安く使える自動化ツールが必要だと思い、開発を始めた。初期はECフォーカスではなかったが、後にEC向けにシフトした。

Product Huntへ投稿したら、WebflowのCTOから連絡がきた!

つまり、Alloyもサイドプロジェクトとして始まった。会社化したのは、当時Product Huntで働いていた友達が投稿するように薦められたのがきっかけだった。

画像クレジット:Product Hunt

Product Huntに投稿した翌日、好意的なコメントが数百件投稿されていた。その反響を受けて、サラさんはSnapchatでのインターンを辞めることを決意。「最悪、春には学校に戻れるし、インターン時代の給料を貯めていて、月次のバーンも低かったので、割とすぐにAlloyにフルタイムでコミットすることを決めた」と彼女はいう。この投稿から、後にシードラウンドをリードするベインキャピタルのケビン・チャンさんと繋がり、資金調達へ繋がった。そして、もう1人を見ていたのが、WebflowのCTOであるブライアント・チョウさん。たまたま投稿を見てAlloyを知り、エンジェル出資してくれたとのことだ。

著名VCからのフィードバックによるYコンビネーター2020のWinterに合格。Demo Dayはオンラインで、うまくピッチができるか迷いがあり、ステルスでもいたかったAlloyは、Demo Dayでピッチしないことを判断したという。

オンラインストアの運営作業を自動化するAlloy

Alloyは、オンラインストアの運営作業を一元管理して、細かいタスクの自動化を可能にするツールだ。現在、最新ツールがたくさんあり、オンラインストアの運営が複雑に、かつ手作業が多くなっているのが大きな課題だ。Alloyは、オンラインストア運営の作業を自動化し一元管理することができる。

Alloy営業資料から引用

Alloyは具体的に5つのカテゴリーの自動化にフォーカスしている。

  • ロイヤリティ+顧客体験
  • フルフィルメント
  • オペレーション
  • サポート
  • マーケティング

Alloy営業資料から引用

他の自動化ツールでは深いAPI連携がされていないため、Alloyの方が細かいロジックを組めるのが特徴だ。例えば、定期購入販売を簡単に実装できるアプリ「ReCharge」と連携しているが、他社サービスだとReChargeを活用して顧客の定期購入した数に応じてのアクションが行えない。AlloyだとReChargeの定期購入の数まで把握できるため、10回以上定期購入したユーザーが問い合わせした際にプライオリティを付けたり、自動的に特別扱いの顧客メールを送る設定なども可能となる。

以下は在庫切れになった際にSlackへメッセージが飛ぶようにトリガーを作るフローの事例だ。

AlloyはReCharge以外にも90以上のアプリとすでに連携している。競合となるShopify Flowは、Shopify Plusの顧客でないと使えないし、そもそも30〜40ぐらいのアプリしかFlowでは連携されていない。そのため、今のところAlloyほど幅広く、そして深くAPI連携しているEC自動化ツールは存在しない。

Alloy営業資料から引用

Alloyはノーコードで自動化されたフローが簡単にビジュアライズされているため、誰でも簡単に作ることも可能だ。さらにShopify以外にもMagento、Big Commerce、ヘッドレスなど全体のECエコシステムのカバレッジがある。

実際にAlloyを活用している企業には、人気D2CブランドのOpte、Italic、Doe、そして大手ブランドのBaltimore Ravensなどがある。最近は大手ラグジュアリーブランドも使い始めたとサラさんは語る。

Alloy営業資料から引用

OpteはAlloyを活用して、毎週10時間以上手作業で行っていたデータハーベスティング作業を自動化して、年間240万円以上のコストを節約している。

業界を教育しながら長期的成長につながるコンテンツ戦略

まだ米国のD2C業界でも自動化のトレンドは、始まったばかりだ。Alloyは、2020年の多くはコンテンツ制作や教育を行って、ようやく業界が自動化のポテンシャルに気づいたという。特にコンテンツ制作の戦略はおもしろく、Alloyの長期的成長に繋がる試作ともいえる。Alloyには、自動化フローのテンプレを用意している専用サイトがある。各テンプレを「レシピ」と呼んでいて、アプリやカテゴリー(カート落ち、アナリティクス、カスタマーサポートなど)で簡単に検索ができる。

画像クレジット:Alloy Marketplace

これにより、誰でも簡単に自動化フローを作ることが可能になる。現在はより大きいクライアントがAlloyを活用している傾向にあるが、今後はよりセルフサーブにして中小企業でも業務の一部を自動化してより効率よく販売ができるかたちにしたいとサラさんは語る。サイトの「人気レシピ」の多くはベーシックなものだが、自動化しやすい、バリューが最もわかりやすいものとなっている。

画像クレジット:Alloy Marketplace

また、このレシピのマーケットプレイスをさらに価値を与えるために「Social Proof(ソーシャルプルーフ)」を追加したいという。「EC業界での重要要素はSocial Proof、いわゆる他社が何をやっているかを見ることです。だからこそAlloyの初期では、トップティアなShopify Plusブランドや有名D2Cブランドをクライアントとして獲得してきました。今後はItalicなど著名ブランドがどのレシピを使っているかを公開していくことで、業界が自動化のニーズに気づいてくれると思います」。

D2Cブランドのスケールをサポートするテックスタック

米国では、D2Cブランドがスケールし始めると、バックエンドのソフトウェアの管理や連携をするためにエンジニアを採用しているほど最新テックスタックの導入は普通のことだ。Glossierは、サイト製作やECプラットフォームの構築を行っていたデジタルエージェンシー「Dynamo」を5200万ドル(約56億3000万円)で買収し、自社のテック部門を強化した。

社内で数十名のエンジニアを抱えるほどテックスタックが整い始めているD2Cブランドとしては、使えるツールが増えるほど可能性は増えるが、同時に内部システムやロジック構成などが複雑になってくる。だからこそ、Alloyのような自動化ツールが必要になってくる。ECブランド向けにツールを開発しながら他のアプリとの深いAPI連携は、多くのブランドは絶対行わない。AlloyはAPI連携が優位性なブランドとなっている。Zapierも130万ドル(約1億4000万円)の資金調達しか行わなかったのに、50億ドル(約5418億円)の時価総額になった今、これからも「APIのAPI」の概念が他の業界で広がる可能性は高い。今後も注目するべき市場に間違いない。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Alloy AutomationeコマースAPIShopifyインタビューD2C

(文:宮武徹郎 / @tmiyatake1、草野美木 / @mikikusano

アップルがiTunesストアの「購入」について集団訴訟に直面、「購入」と「レンタル」の区別が欺瞞的との主張

アップルがiTunesストアの「購入」について集団訴訟に直面、「購入」と「レンタル」の区別が欺瞞的との主張

電子書籍や音楽などDRM(デジタル著作権管理)がかかったものは、一般にあくまで「アクセス権」を購入しているにすぎず、ストアがサービスが終了したりアクセス権を停止すれば読んだり視聴できなくなるリスクがあります。

そうした文脈のもと、アップルがiTunesストアで映画やテレビ番組につき「購入」が詐欺的だとして集団訴訟に直面していると報じられています。

米メディアHollywood Reporterによると、本訴訟はカリフォルニア州の連邦地裁に提起されたものです。主席原告のデビッド・アンディーノ氏は、「購入」と「レンタル」の区別が欺瞞的だと言い、なぜならアップルが「購入した」コンテンツへのアクセスを停止する権利を持っており、実際に何度も行ってきた(だから「買う」と「借りる」の違いはない)と主張しているとのことです。

この裁判を担当するジョン・メンデス判事いわく、アップル側は「購入したコンテンツがiTunesプラットフォーム上に無期限に残ると信じている合理的消費者はいない(つまり永遠にアクセス権を取り消されないと信じてはいない)」と主張して訴訟を却下させようとしたとのことです。

しかし判事は「一般的な言い回しでは、『購入する』という言葉は何かの所有権を獲得することを意味しています」「合理的な消費者は自分のアクセスが取り消されないことを期待すると考えるのが妥当だと思われます」として、訴訟を却下せずに継続を認めています。

ほか、アンディーノ氏の主張に対してアップルは、原告が「デジタルコンテンツを買うのをやめたとも言ってないし、デジタルコンテンツが改善されたと思えるようなiTunes Storeの変更も申し立てていないので、有効な将来の脅迫侵害を主張していない」と反論したとのこと。これを判事は、原告が購入したコンテンツがいつか消える可能性があるという損害は具体性を欠き、むしろ憶測にすぎないと主張しているとまとめています。

アップルの主張につき判事は「原告が主張する損害は、アップルが言うような『購入したコンテンツへのアクセスをいつか失うかもしれない』というものではない。むしろ購入時に高額な金額を支払ったこと、または不当表示がなければ使わなかったであろうお金を払ったことが損害です。この経済的損害は、アップルが主張するような憶測ではなく、具体的かつ現実的なもの」だとコメントしています。

メンデス判事は、原告の主張のうち不当利得返還請求を棄却したものの、アップルにコンテンツ販売方法の変更を迫ることができる差止命令の余地は残したとのこと。つまりアンディーノ氏ら原告は払ったお金を返してもらうことはできないが、iTunesストアの「購入する」など表記の修正命令を勝ち取れる可能性はあるわけです。

こうしたデジタルコンテンツにまつわる問題は、アップルのみならずAmazonなどにも深く関係があり、実際に米Amazonプライムビデオは不公正な競争と虚偽の広告があるとして訴訟を起こされています。今回の訴訟もゆくえによっては、デジタルコンテンツ業界に広く影響を及ぼすのかもしれません。

(Source:Hollywood ReporterEngadget日本版より転載)

カテゴリー:ネットサービス
タグ:iTunes(製品・サービス)Apple / アップル(企業)訴訟 / 裁判(用語)DRM(用語)ネットショッピング / eコマース(用語)

eコマースのグローバルな荷物追跡プラットフォームを提供する香港AfterShipが71.2円調達

AfterShipは2012年に、主に中小のネットショップのための荷物追跡サービスとしてローンチしたが、その後同社は、メールによるマーケティングや顧客維持対策などのツールなどショッピング体験の一部始終をカバーする一連のデータ分析ツールを作った。香港に本社を置く同社は米国時間4月22日、Tiger GlobalのリードによるシリーズBのラウンドで6600万ドル(約71億2000万円)を調達したことを発表した。これにはHillhouse CapitalのGL Venturesが参加した。

AfterShipのこの前のラウンドは、2014年の100万ドル(約1億1000万円)のシリーズAだった。共同創業者のAndrew Chan(アンドリュー・チャン)氏によると、同社はローンチ直後から利益があり、主に口コミによる人気とパートナーシップで成長した。特にShopifyの統合で知名度が上がった。しかし同社は最近営業チームを作り、今回の資金も営業のための国際的な雇用とカスタマーサポートに充てるつもりだ。また同社は、新しいプロダクトのローンチを進めると同時に、すでにAfterShipの顧客の約70%がいる米国へさらに拡張していきたい、という。

同社のソフトウェアでセラーは、740社以上もの運送業者に対して荷物を追跡でき、同社は年間60億以上の荷物を扱っている。同社のパートナーは約1万社いて、中には5万店の出店者を抱えるShopifyやMagento、Squarespace、Amazon、eBay、Etsy、Groupon、Rakuten(楽天)、Wish、それにリテールブランドのDysonやInditexなど大物の名もある。

荷物追跡ページはブランドごとにあり、AfterShipのソフトウェアがメールを作る。(画像クレジット:AfterShip)

AfterShipのメインのプロダクトは荷物追跡プラットフォームだが、その他にセルフサービスの返品処理と顧客のためのパッケージ追跡、営業とマーケティングなどのツールも提供していて、マーチャントは荷物からのデータをさらに有効利用できる。チャン氏の説明によると、パッケージ追跡はセラーにとってユーザーエンゲージメントツールでもあり、いろんな商品の推奨や宣伝ができる。AfterShipのツールでマーチャントは、自分のブランド専用の追跡ページや通知を作れる。その他、各輸送業者のパフォーマンスを調べたり、メールによるマーケティングキャンペーンを展開したり、顧客の維持確保を増大したりできる。

CRM的な能力もあるので、AfterShipは他の荷物追跡情報集積企業とは一味違う。

「ビジョンを考えるときは、Salesforceがやってることを見ます。そして、営業の人たちが実際に使えるような、eコマースのためのSalesforceはあるだろうか、と考えます」とチャン氏はいう。

Tiger GlobalのグローバルパートナーであるPengfei Wang(ペンファイ・ワン)氏は、プレス向けの声明で次のように述べている。「AfterShipは、配送のプロセスを消費者と企業の両方にとってもっと透明かつ信頼性の高いものにすることで先頭を走っています。現在、eコマースの成長は急上昇しているため、AfterShipとパートナーできたことはありがたいし、特にそのリーダーシップチームは、この重要かつ拡大を続けている業界で、常にその技術が進歩していることがすばらしい」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AfterShip香港Tiger Globaleコマース資金調達

画像クレジット:athima tongloom/Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hiroshi Iwatani)

消費者直販スタートアップを支援するBrandProjectが約46.5億円を調達して新ファンドを設立

Freshly(Nestléに買収された)、Persona(Nestléに買収された)、Chef’s Plate(Hello Freshに買収された)など、消費者直販型のスタートアップ企業を支援してきたBrandProject(ブランドプロジェクト)が、同社によれば初の伝統的なベンチャーファンドになるという4300万ドル(約46億5000万円)の調達を発表した。

BrandProjectは、Virgin Mobile Canada(ヴァージン・モバイル・カナダ)の共同設立者であり、LEGO Americas(レゴ・アメリカズ)の社長を務めたAndrew Black(アンドリュー・ブラック)氏によって設立され、BrandProject Studio(ブランドプロジェクト・スタジオ)と連携した1200万ドル(約13億円)のファンドから投資を行ってきた。だが、資金は同社が提供するもののほんの一部に過ぎない。BrandProjectの8人のチームメンバーのうち6人はスタートアップ企業のサポートに専念しており、事実上のCTO、CFO、CMOを務めることも少なくないからだ。ちなみに、前述のFreshlyとPersonaはNestlé(ネスレ)に、Chef’s PlateはHello Fresh(ハロー・フレッシュ)に買収されている。

関連記事:ネスレが健康的な食材を宅配するスタートアップFreshlyを最大1570億円で買収

新たに設立されたBrandProject Capital(ブランドプロジェクト・キャピタル)ファンドによって、同社はより(ある程度)成熟した企業に、より大きな投資を行うことができるようになる。ブラック氏は、この新しいファンドが100万ドル(約1億800万円)から300万ドル(約3億2400万円)の小切手を発行することになると予想している。目標は案件の半分を新規投資に、残りの半分をBrandProject Studioのスタートアップ企業へのフォローオン投資にすることだ。

「BrandProject StudioでもCapitalでも、同じようなタイプのビジネスをサポートしていきますが、Studioでは、私たちにとって早すぎるということはありません。私たちは何よりチームを重視します」と、パートナーのHayden Williams(ハイデン・ウィリアムズ)氏は述べている。「しかし、Capitalの案件であれば、たとえ小規模であっても、何かがうまくいっているという証拠を探すことになるでしょう」。

その対象は引き続き、消費者直販ブランドが中心となる。新型コロナウイルスの影響で、eコマースは膨大に拡大しているが、BrandProjectの戦略は変わらないと、ブラック氏はいう。

画像クレジット:BrandProject

「新型コロナウイルスのために投資対象を調整したことはありません」と、同氏はいう。「私たちは常に、世界が必要としていると思われるカテゴリー、ブランド、セグメントに投資してきました」。

新しいファンドに投資したリミテッドパートナーの1人は、おそらくBrandProjectがこれまで支援した企業で最も成功を収めたFreshlyの共同設立者でCEOを務めるMichael Wystrach氏(マイケル・ウィストラック)氏だ。自身が起ち上げた健康的な食事を提供するスタートアップをネスレに15億ドル(約1620億円)で売却したウィストラック氏は、BrandProjectのことをTechCrunchで読み、同社を調べた後、ニューヨークにいるパートナーのJay Bhatti(ジェイ・バッティ)氏に、いきなり食事を送ったことを回想した。

その時点では、Freshlyは友人や家族からしか資金を調達しておらず「誰からでも小切手を受け取っていた」とウィストラック氏は認めている。しかし、バッティ氏が料理を気に入り、同社が投資を決めてくれたことは幸運だったと述懐する。ブラック氏はFreshlyの暫定的な共同CEOとなり、バッティ氏は暫定的なCTO、そしてパートナーのAndrew Bridge(アンドリュー・ブリッジ)氏は暫定的なCMOを務めた。

「私がBrandProjectで好感持ったところは、我々のところにやって来てビジネスにああしろこうしろと口出ししなかったことです」と、ウィストラック氏は続けた。「『これをやるべきだ』と言われることはありませんでした。それは私たちのビジネスであり、彼らは私たちがビジネスを構築するのを支援するチームメンバーだったのです」。

新しいファンドの背景にある考え方を説明するために、ウィストラック氏は投資のエコシステムを米国の学校に例えた。「アンドリューとチームが入って来るところは幼稚園から小学校で、とても手がかかります。新しいファンドでは、おそらく中学校になるでしょう」。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:BrandProjecteコマース資金調達ベンチャーファンドFreshly

画像クレジット:BrandProject

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EC商品のリモート写真・動画撮影を容易にするSoonaがシリーズAで約11.1億円を調達

eコマースのエコシステムでますます高まるコンテンツのニーズを満たすことを目指すスタートアップSoonaは、Union Square Venturesが主導するシリーズAラウンドで1020万ドル(約11億1000万円)を調達したと発表した。

2019年にSoonaについての記事を書いたとき、同社のモデルは、24時間以内に動画や写真を提供できる撮影の演出に焦点を当てていた。このスタートアップは現在もオースティン、デンバー、ミネアポリスで撮影スタジオを運営しているが、共同創業者兼CEOのLiz Giorgi(リズ・ジョルジ)氏によると、パンデミックの間に、Soonaは完全なバーチャル / リモートモデルにシフトしたという。顧客はSoonaに商品を郵送し、その後、リモートで撮影の様子を見てすぐにフィードバックを提供し、実際に欲しい写真(各39ドル、約4200円)やビデオクリップ(各93ドル、約1万円)に対してのみ料金を支払うというものだ。

場合によっては、スタジオが必要ないこともある。ジョルジ氏によると、Soonaのフォトグラファーと撮影クルーの30%は自宅で仕事をしているという。

Soonaは現在、Lola Tampons、The Sill、Wild Earthなど、4000社以上の顧客と取引しており、2020年の収益は400%増加した。ジョルジ氏は、より大規模な対面での撮影が可能になったとしても、多くの顧客にとってこのアプローチは理に適っている、と語る。

「オンラインで販売する商品でビジュアルを必要としないものはありませんが、すべてのビジュアルが1日がかりの大規模な撮影を必要とするわけではありません」と同氏はいう。

画像クレジット:Soona

ジョルジ氏は、Soonaのアプローチが「新しいレベルのスケーラビリティ」をもたらしたと考えている。彼女は次のように付け加えた。「Soonaのスタッフはみな、リモート撮影は効果的だと信じています。効率的なだけでなく、ブランドマネージャーをマイアミから飛行機に乗せて、ニューヨークの倉庫で1日過ごさせる必要がなくなり、よほど楽ですからね。(従来の方式は)コストが高いだけでなく、参加者全員にとって時間がかかり、疲れるプロセスでした」。

今回の資金調達は、120万ドル(約1億3000万円)のシードラウンドに続くものだ。ジョルジ氏は、今回のシリーズAによって、Soonaはより多くのコラボレーションツールを備えたサブスクリプション製品を開発し、どのような種類のビジュアルコンテンツが最も効果的かについてのデータを増やすことができるという。

「eコマースのビジュアル・エコシステムを初めから終わりまで支配するチャンスがあります」と同氏は語る。

またジョルジ氏は、投資家にセクシャルハラスメントや差別の苦情に直面したことがあるかどうか開示することを義務づける「candor clause(率直条項)」をSoonaが引き続き採用していることも指摘した。この条項は現在、人種差別、身障者差別、反LGBTQ差別をめぐる苦情にも拡大されている。

「これはある意味、トラブルメーカーの関与を防ぐためのゲートですが【略】投資家と創業者とのより深い結びつきを促すものです」とジョルジ氏は語った。「これにより私たちは、自分たちの価値観や、世界の見方について話し合うことができます。資本やキャップテーブルについて多くのことを語るのと同時に、平等や正義についても話し合えるわけです」。

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(文:Anthony Ha、翻訳:Aya Nakazato)

近隣の小売り店舗の回帰など、意外な2021年の米不動産業界のトレンド

パンデミックにより、誰もが予想していたよりも早く、リモートワークやオンデマンドデリバリーが日常的なことになった。世界がパンデミックから抜け出そうとしている今、「場所」は1年前ほど重要ではなくなった。

現代社会は、超高層のオフィスビルや高級マンションが立ち並ぶ洗練された大都市を生み出した。そして今、これらの都市の中心で活躍していた人々は、ポストパンデミックの世界での都市のあり方を考えている。

ここでは取材を元に、不動産のプロパティテクノロジーに注目する10人のトップ投資家がどのように未来を見据えているかを探る。

投資家らは総じて楽観的だ。というのも、本来なら氷河期にあるはずの不動産業界では、不動産テックが将来不可欠なものになると考えているからだ。しかし、少なくともパンデミック以前の戦略を知る者からすれば、オフィス分野は最も見通しが難しいようだ。

投資家らは、リモートワークが将来的に重要な役割を担うと考えており、郊外や比較的小さな都市での住宅需要が引き続き高いと予測している。そして、一戸建て住宅の販売や賃貸などの分野に焦点を当てたフィンテックやSaaS製品を特に高く評価している。多くの投資家は大都市への投資を続けているが、代替住居(敷地を共有する付属住宅ユニット)や気候関連のコンセプトを中核に据えている。

最も意外だったことは、一部の投資家が小売りのリアル店舗に期待していることだ。最新のデータを見れば、それも納得できる。大げさに聞こえるかもしれないが、地方の小規模ビジネスにとっては、より良い時代を迎えているのかもしれない。詳細は後にしよう。

オフィスがより贅沢品となるとき

パンデミックと既存のトレンドが相まって、オフィスの賃借人は「より高級品の消費者に近くなった」と、Bain Capital Ventures(ベインキャピタル・ベンチャーズ)のベンチャーパートナーであり、古くからの不動産テック投資家および不動産事業者であるClelia Warburg Peters(クレリア・ウォーバーグ・ピーターズ)氏はいう。

「1950年代以降、優位な立場にいた」家主は、これからはテナントを第一に考えなければならないと同氏は言い「賢明な家主は、単に物理的なスペースを提供していれば良かったものが、テナントにマルチチャネルのワークエクスペリエンスを提供していかなければならないというプレッシャを感じているだろう」と続ける。

それには、複数のオフィスを行き来する従業員を管理するためのソフトウェアやハードウェアなど、具体的な付加サービスが含まれる。しかし、今日の市場では、新たな姿勢が求められている。同氏は「これらの資産は、テナントのニーズに応えることを重視した、より人間的な関係の中で提供される必要がある」とし「リース期間は必然的に短くなるため、テナントに対してこれまで以上に積極的に売り込み、サポートしていく必要があるだろう」という。

こういったオフィス環境の変化は、郊外では供給側に有利に働く可能性がある。

MetaProp(メタプロップ)のZach Aarons(ザック・アーロンズ)氏は「都市部に本社のある企業は、従業員にスペースを提供しなければならなくなるだろう」と語る(同氏の会社は、この分野に関して非常にポジティブなレポートを発表したばかりだ)。しかし、多くの企業は「時折、従業員が家を出て働く必要が生じたとしても、電車で1時間もかからないよう、郊外に何らかの代替オフィスも提供したいだろう」という。

そして「メタプロップチームの多くのメンバーが前職で行っていたように、今でも(資金提供ではなく)実際に不動産の購入をしていたとしたら、郊外のオフィスの購入を積極的に検討していただろう」と付け加えた。

ほとんどの人が、リモートワークは今後根づいていき、将来的にオフィススペースのあり方に影響を与えると考えている。

Wilshire Lane Partners(ウィルシャー・レーン・パートナーズ)の共同設立者でマネージングディレクターのAdam Demuyakor(アダム・デムヤコール)氏は、概して大都市には強気だが、スタートアップ企業自身がすでに特定の場所から移転しつつあると指摘する。これは重要な先行指標であるとTechCrunchは考えている。

「この1年を振り返って興味深かったのは、パンデミックによって地理的な柔軟性を得たことで、スタートアップ自身がどのように進化し始めたかということだ」と同氏は語り「以前は、スタートアップ(特に不動産関連のスタートアップ)は、顧客や見込みのある資金源、人材の集まる場所の近くに「本社」を置かなければならないというプレッシャーを感じていた。しかし、ここ数カ月でこうした変化が見られるようになった」と述べる。

実際、筆者の元同僚で、現在はInitialized Capital(イニシャライズド・キャピタル)のパートナーであるKim-Mai Cutler(キム-マイ・カトラー)氏は、同社のポートフォリオ企業に対して定期的に行っている最近の調査で、こうした傾向を明らかにしている。パンデミックが始まった頃、創設者が会社を設立したい場所の1位はまだベイエリアだった。今では、リモートファーストが1位になっている。一方、投資先の企業では、リモートファーストか、本社を小さくして遠くにオフィスを置くハブ&スポークモデルのどちらかに移りつつある。何らかのオフィスを維持している企業は、週5日よりも大幅に少ない日数しか使われていないと答え、また、3分の2近くの企業が、勤務地による給与調整は行わないと回答している。

これは小さなサンプルだが「スタートアップは(a)効果的なリモートワークに必要なテクノロジーの活用に長けていることが多く、(b)同時に、人材獲得のための激しい競争にさらされている。そのため、パンデミックが過ぎ去った後、スタートアップの動向を観察することで、『仕事の未来』がどのようなものになるか推測できるだろう」とデムヤコール氏はいう。

一部の(大きな融資を受けている)家主や(大きな予算を持っている)大都市は、オフィスの再配置を早急に進めており、一部の大企業はオフィススペースを増設したり、現在の所在地へのコミットメントを改めて明確にしたりしている。

そういった努力に加え、直にネットワークを築きたいという自然な欲求が、産業クラスターを元に戻し、人々を以前の場所に引き戻すことになるのかもしれない。ともすれば、以前の100%近くまで戻るかもしれない。その場合、それはどういったものになるのだろうか。

RET Ventures(RETベンチャーズ)のパートナー兼マネージングディレクターであるChristopher Yip(クリストファー・イップ)氏は、このようなシナリオでは、パンデミック時のような傾向が持続するだろうという。そして「公衆衛生への配慮に敏感になった人々は、大量輸送機関より自動車や自転車などの単独の交通手段を好んで使うようになり、駐車場関連やバイクシェアリングのテックツールが伸びる可能性がある。また、不動産管理の観点からも、タッチレステクノロジーやセルフリースを可能にするツールに消費者の関心が高まり、密集した環境での生活をより快適に、より健康的にするテクノロジーが増えていくだろう」と同氏は続ける。

もう1つのシナリオとして「多くの仕事が完全なリモートであり続ける場合」を挙げる。

同氏は「理論的には、小売店やオフィスビルは、経済的構造上苦しい状況が続く可能性があり、ある地域の政府関係者からは、オフィスビルを手頃な価格の住宅に転換するという話も出ている」と実情を話し「都市の市場の空室率が高いままであれば、住宅に対する需要が高くない市場でも家主がホテルタイプの滞在から収益を得ることができるAirbnb(エアビーアンドビー)Kasa(カーサ)のような短期賃貸プラットフォームへの需要が高まるだろう」と語る。

Fifth Wall(フィフスウォール)のパートナーであるVik Chawla(ヴィック・チャウラ)氏は、中間的なシナリオを描いている。「大都市はパンデミック後も知識労働者や優秀な人材を惹きつけると思うが、リモートワークが労働経済にとってますます重要な要素となり、オフィスとそれ以外の場所で過ごす時間の中で柔軟性が増すと予想している」。

これはやはり、ある種の長期的な価格の下落を意味する。「都市レベルでは、需要の減少により、パンデミック前の水準に比べて賃料は右肩下がりになるはずだ」と同氏は主張する。「そうは言っても、パンデミックを通して成長を遂げた都市の不動産エコシステムは、イノベーションの時期を迎え、それに伴い、住宅密度、ADU、モジュラービルディング技術の増加が見られるだろう」。

DreamIt Ventures(ドリームイット・ベンチャーズ)で都市開発テック部門のマネージングディレクターを務めるAndrew Ackerman(アンドリュー・アッカーマン)氏も、商業オフィスの価格はそのうち緩やかに下落し、その後、スペース管理に関する複雑な問題が発生すると見ている。

「仕事が平常に戻ることは、オフィスの終焉ではなく、より柔軟なワークアレンジメントをもたらすだろう。しかしそのことで、今後5年から10年で賃貸契約が更新されていく間に、オフィススペースの需要は壊滅的ではないものの、徐々に減少していくことになる。問題は、その後、余ったオフィススペースをどうするかということだ」。

「オフィスを住居へ転換することはなかなか厄介だ」と同氏は言い「レイアウトが一番の制約だ。最近のオフィスの多くは、窓がなく内部に深い空間を持っており、再利用することを難しくしている。たとえ、狭いレイアウトであっても、構造的な要素が住居には適さない場所にあることが多い。水道管やガス管を適切な場所へ移すために、建物のコンクリートに何千もの穴を開けるのは大変な作業だ」と説明する。

これは、まだ価値のある物件の新しいタイプの利用法につながりそうか、と問うと「共同生活やマイクロユニットがより魅力的な転用方法かどうかというのは、今調査している分野の1つだ。オフィスの休憩室やビル内側の大部屋を、共有のキッチンやダイニングエリア、そしてレクリエーションや仕事のためのフレックススペースに変えれば、多額の費用をかけて改装しなくても、ビル内部の深いスペースを再利用できるかもしれない。また、配管のルートをあまり変更する必要がないのであれば、時間とともに変動するオフィスや住居スペースに対する市場の需要に応じて、個々のフロアを転換することも(さらには元に戻すことも)可能かもしれない」と同氏は答えた。

投資家10人全員が、オフィス自体に対する見通しが強気か弱気かは別にして、(当然のことながら)不動産テックは次の時代の大都市の中核をなすものだと考えている。

住宅の新たな均衡

パンデミックの間、ほとんどの場所で住宅の供給は大幅に制限され、購入を希望する人が増え、売却を希望する人は減った。今まで注目を集めていた都市で、賃貸価格が大きく下落していることとは裏腹だ。

住宅問題とそのソリューションの1つとして共同生活に注目しているウィルシャー・レーンのデムヤコール氏は「パンデミックにもかかわらず、ミレニアル世代やZ世代にとって、現在の賃金水準では、物件の価格が最も高い都市(ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスなど)は依然として高嶺の花だ」という。そして「そのため、大都市での生活のコスト負担を軽減するための物件やソリューションに対する需要は、今後も継続すると考えている。例えば、その中核として、共同生活は経済的に1つの判断となるだろう。住みたい場所に住むことをより容易にするソリューション(ADUもその一例だ)は、今後も発展していくだろう」と続ける。

Camber Creek(キャンバー・クリーク)のマネージングディレクター兼ゼネラルパートナーであるCasey Berman(ケイシー・バーマン)氏は「都市がより充実した生活、仕事、遊びを求める人々を惹きつけ続けるのは、そういった体験を実現する住宅密度と機会を提供しているからだ。このような事実がある限り、その欲求を満たす都市空間と不動産に対する新たな需要が生まれるだろう」と主張する。

また同氏は、密度の高い生活をより安全に、より便利にする製品やサービスに投資しており「そのためのソリューションがますます普及していくことを期待している。Flex(フレックス)は、オンラインによる分割払いでテナントの賃料の管理と支払いを容易にし、それに伴い、家主にとっては期日通りに支払いを受ける可能性が高まる。Latch(ラッチ)の入退室管理システムは、新築の集合住宅の10棟に1棟の割合で導入されている。また、この1年で多くの人がペットを購入した。PetScreening(ペットスクリーニング)は、ペットが介助動物や支援動物の場合、ペットの記録の管理と確認を容易にする」と述べる。

Picus Capital(ピカス・キャピタル)のパートナーであるRobin Godenrath(ロビン・ゴーデンラス)氏とJulian Roeoes(ジュリアン・ルーエス)氏は、おおむねこの視点を共有しており、都市での新しい生活スタイルが、人々の暮らし方により根本的な変化をもたらす可能性があると述べている。

「柔軟な生活ソリューションにより、リモートワーカーは短期か長期かにかかわらず、都市生活のために完全に管理された手頃な価格の安全な賃貸オプションを使って、さまざまな都市で時間を過ごすことができる」と両氏はいう。そして「一方で、商業施設から住宅への転換は、単位面積あたりの価格を下げる効果があり、長期的に戻ってくる居住者がよりゆとりのある空間を購入できるようになる。共同生活は集合住宅を高密度化するが、リモートワークへの移行が進むことによる仕事での社会的交流の希薄化を考慮すると、私生活におけるコミュニティの重要性が増すため、今後も興味深い分野だと考えている」と述べる。

しかし、現代の不動産テックは、長期的には郊外やその他の地域も魅力的にしていると多くの人がいう。生活の役に立つすばらしい新技術は、あらゆる場所に導入することができる。

不動産テックは、新たな郊外ブームの火付け役にもなっている。「都市部への回帰の傾向が続いており、郊外型の生活への需要が高まっている」と両氏はいう。「不動産テック企業は、特に住宅の売買や賃貸の取引プロセスをデジタル化することで、このシフトを可能にする重要な役割を果たしている(iBuyer、代替融資モデル、テクノロジー対応仲介業者など)。さらに、不動産テック企業は、遠隔鑑定、3D / VR映像、デジタルコミュニケーションなどにより、物理的なやり取りの低減にも関与しており、パンデミックの間も住宅の購入者と販売者の効率的かつ安全な取引に大きく貢献している」。

最終的には、都市部の価格帯をより手頃にするテクノロジーが、郊外でも同様に役立つだろう。「当社は、住宅売買プロセスのデジタル化が加速していることに加え、郊外型住宅への需要が大幅に増加していることや、買い手のプロファイル(テクノロジーに精通したミレニアル世代など)が進化していることから、建設、交通の便、ライフスタイルなどの面で、不動産テックが郊外の生活に大きな影響を与える多くの機会が広がっていると確信している。これには、賃貸専用住宅の建設、モジュール型住宅の建設、低価格住宅、コミュニティの構築、デジタルアメニティなどに注力する企業が含まれる」と両氏は述べる。

インタビューを行った投資家の多くは、一戸建ての賃貸市場のトレンドを重視していた。再びRETのクリストファー・イップ氏の見解に戻る。

同氏は「過去10年間注目されなかったトレンドの1つに、一戸建て賃貸(Single-Family Rental、SFR)市場の成長がある」とし「多くの大手投資家がこのアセットクラスに参入している。SFR市場は都市部からの移住の恩恵を受けることができ、SFRを支えるテクノロジーは業界全体にポジティブな波及効果をもたらすだろう」という。

また「SFRの物件は、効率的かつ大規模に運営することが特に難しい。多世帯住宅と比較して、多種多様なレイアウトのユニットがあり、地理的にも分散している」と同氏は説明する。そして「テクノロジーによって、SFRの運営者はオペレーションとメンテナンスを合理化できるようになった。SmartRent(スマートレント)のようなスマートホームツールを使えば、分散した物件をリモートで監視し管理することができる。当社はこの分野を有望視しており、この市場で効果を上げる不動産テックツールに注目している」と述べる。

ドリームイットのアンドリュー・アッカーマン氏も同意見だ。「一戸建て市場は軽んじられてきたが、ここしばらく、資産と不動産テックの両方の観点から、徐々に関心を集め始めている。例えば、パンデミック前には、NestEgg(ネストエッグ)Abode(アバウド)など、この業界のエコシステムにサービスを提供するスタートアップに投資していた。新型コロナウイルス感染症はこれらのスタートアップにとって良い方に働き、概して一戸建て住宅の物件が注目を集めた」と同氏はいう。

Urban.us(アーバン・ユーエス)の共同設立者であるStonly Baptiste(ストンリー・バティスト)氏とShaun Abrahamson(シャーン・エイブラハムソン)氏は、共同生活や短期賃貸などの選択肢により人々が新しいライフスタイルを見つけることができ、地理的な自由度が増した世界が広がっていると考えている。「共同生活はコスト面だけでなく、コミュニティとのつながりという見過ごされてきた重要な問題を解決してくれるので、Starcity(スターシティ)のようなポートフォリオ企業は非常に成長している。また、ノマド的なライフスタイルが生まれる余地もある。マイアミについて話されることの多くは、移住についてだが、多くの場所にとって関心の高い問題は、人々が1年のうち何カ月をそこで過ごすかということだろう。つまり、リモートワーカーから見れば、例えばマウンテンバイク、サーフィン、スノーボードなど、特定のアクティビティにアクセスしやすい場所になるかもしれない。スターシティは都市間の移動を容易にし、Kibbo(キボ)はバンライフを中心としたコミュニティを構築することで、都市を超越したサービスを提供している」と両氏は語る。

ベインキャピタル・ベンチャーズのクレリア・ウォーバーグ・ピーターズ氏は、こういった変化が郊外不動産市場に与える影響を次のようにまとめている。

「住宅取引の混乱は、現在、iBuyers(インスタントバイヤー、売主から直接住宅を購入し、最終的には売主として物件を再販する)、ネオブローカー(一般的にエージェントを雇用し、権原ローンや権原保険などの二次サービスを利用して収益を上げる)、エリートエージェントツール(トップエージェントに焦点を当てたプラットフォームやツール)の3つのコアカテゴリーに落ち着いている」。

こういったイノベーションの組み合わせは、今までの住宅用不動産を変えつつある。「消費者は、ホームエクイティーベースの融資モデル(自宅を株式化して販売したり、自宅の完全な所有権を時間をかけて購入したりする)など、代替的な金融手段の活用にますます積極的になっている。このような新しいモデルの成長と普及により、住宅市場全体が統合され、仲介業者の販売手数料や、住宅ローン、権原保険、住宅保険の販売による手数料が、機能的に1つの大きな、そして絡み合った複雑な市場となっている」と同氏は語る。

近隣の小売店の驚くべき復活

人は、にぎやかで歩きやすい地元の店が並ぶ昔ながらのメインストリートのような雰囲気が好きなようだ。しかし、独立した小売店をやりくりしようとしている人々には難しい状況が続いている。

Amazon(アマゾン)をはじめとする90年代に登場した「Eテイラー(電子小売業者)」などの電子商取引は、薄利の従来型小売業に打撃を与えた。さらに最近では、アートギャラリーや高級レストラン、ブティックなどが多くの都市でジェントリフィケーション(富裕化)の前兆となっている。そういった場所ではより高い賃料を払える借り手が増えたため、小売業店舗の家主が積極的に賃料を値上げし、結果的に一等地では家賃が払えない店舗が続出することになった。

パンデミックの影響で地元の店が閉まっている間に、得意客さえもオンラインで注文するようになり、決定打となったようだ。

しかし、複数の投資家が妙に楽観的な見方をしている。パンデミックは1年以上にわたって社会・経済活動に大混乱をもたらしたが、ほとんどの人が、実生活において小売店の存在は現代生活に欠かせないものだと認めている。

「人間は基本的に社会的な動物であり、安全に人と会えるようになれば、誰もが直接対面での交流を求めるようになると考えている。さらに、週5日のオフィスワークからの解放は、自宅でも規律正しいオフィス環境でもない、『第3の空間』への欲求を高めることになるだろう」とピーターズ氏はいう。

「商品を販売することよりも、顧客が実際に商品を手に取りウェブサイト以上にブランドコンセプトを体感できる環境を整えることに重点を置く、『Apple Store』のような小売店が今後も増えていくだろう。パンデミックが終わる頃には小売店の賃料が大幅に下がっていると予想されるため、新型コロナウイルス感染症以前よりもさらに実験的な試みが行われると考えられる。小売業にとっては非常に興味深い時代になるだろう」。

小売関連のテクノロジーを専門に投資しているか、第3の空間のアイデアに広く投資しているかにかかわらず、他にも、複数の投資家がこの視点で見解を述べている。

「小売業が10年以上前から変化しているのは事実だ。eコマースで普通に買えるものは、書籍や衣料品だったものが今では惣菜や食料品にまで拡大している。また、パンデミックがeコマースの成長を加速させ、リアル店舗の小売業が損失を被っているのも事実だ」とRETのイップ氏はいう。そして「しかし、人はやはり人間であり、直接会って交流することを求めている。たとえ都市の完全な立ち直りまで時間がかかっても、大都市にはかなりの数の小売店を支える客足があり、ポップアップショップのような革新的なモデルを導入することで、空き店舗の問題に対処できるだろう。また、大衆市場では、小売業に対する信頼がまだあることも留意する必要がある。主要なREITは2020年初頭から半ばにかけて苦戦したものの、多くは大幅に回復しており、いくつかは実際にパンデミック前の数値を上回っている。小売業にとってはひどい10年であり、この1年は最悪の年だったが、このセクターの幕を引くにはまだ早すぎる」と述べる。

ピカスのゴーデンラス氏とルーエス氏によると、映画館は、パンデミック後に一般市民の生活が一斉に再開された場合の成功を待ち構える小売セクターの一例に過ぎないとのことだ。

「ショッピングセンターの目玉テナントである映画館は、予約席、4DX映像、劇場内のレストラン、カフェ、バーなど、より総合的な体験型ソリューションの提供により、すでに従来型の営業スタイルを刷新しており、さらにパンデミックをきっかけに、プライベートシアターのレンタルやイベントなどのサービスを拡大している。こうした傾向は、レストラン(実体験のように感じる料理エクスペリエンス)から伝統的な小売業(オンラインとオフラインを統合したショッピングエクスペリエンス)まで、小売不動産業界全体に拡大していくだろうと見ている。また、小売不動産オーナーが見込みのあるテナントを特定して物件を売り込んだり、小売業者が店舗内での顧客エンゲージメントを促進し、カスタマージャーニーに関する重要なインサイトを得たりする時にも、不動産テックが決定的な役割を果たすと考えている」。

意外なことに、最近ではインターネットも味方になっている。「また、オンラインとオフラインの体験を巧みに融合したハイブリッドモデルにも大きな可能性があると考えている」と両氏はいう。「フィットネス分野を例にとると、スタジオでのコースを配信してより多くの参加者を募ったり、スタジオでのレッスンや自宅でのワークアウトを通じてトレーニングや健康状態の推移をアプリでトラッキングしたりするという新しいスタイルが考えられる」。

インタビューで投資家から聞いたものではないが、小売業の未来を信じる理由は他にもいくつかある。

また、小売業が、投資家が出資している他の多くのソリューション、特に都市の魅力を高め、気候変動などのマクロな問題を解決するためのソリューションとどのように関わっているかもわかるだろう。

バティスト氏とエイブラハムソン氏は「都市には活用されていない多くの資産があるが、最大のものは自動車に割り当てられている公共スペースだろう」とし「永続的に変っていくだろうと思われることは、駐車スペースを自家用車からマイクロモビリティ(自転車、スクーター、キックボード用のレーンや駐輪場など)に再配分することだ。Coord(コード、スマートゾーンという技術を使い商用車などの縁石スペース利用を管理)、Qucit(キューシット、多くの大都市で自転車やスクーターのシェア事業を管理)、Oonee(ウーニー、安全な自転車、スクーター、ボード用の駐車場)などのポートフォリオ企業に多くの需要があると考えている」と述べる。

これは、両氏が予見する好循環の始まりに過ぎない。

「(自動車の排除)が起こると、物流のようなユースケースはマイクロEVにシフトできる。同様に、パークレット(車道の一部を転用して人のための空間を生み出す取り組み)やシーティングエリアによって公共のスペースが増える。EUでは自動車使用の禁止を推進しているが、全体的に道路で自動車の往来が減れば、大きな変化が起きるだろう。確かに個人の生活の空間を明け渡すことになるが、共有スペースや社会的なスペースが増え、都市を魅力的なものにする可能性がある。こうしたことにより、共同生活が促進され、都市で生活するためのコストを下げることができるとともに、低密度のコミュニティでは比較にならないほど共有スペースから多くのものを得ることができる」と両氏は話す。

ウィルシャー・レーンのデムヤコール氏も同様の見方をしている。

同氏は「当社の全体的な戦略を立てる上での原則の1つは、常にスペースの活用に焦点を当て、有効に活用されていないスペースを、テクノロジーによって収益化する最良の方法を見つけ出すことだ。このことは、StufNeighbor(スタッフ、ネイバー、地下室、駐車場、その他の空きスペースの収益化)MealCo(ミールコ、空きキッチンの収益化)WorkChew(ワークチュウ、レストランのシーティングエリア、ホテルのロビー、会議室の収益化)Saltbox(ソルトボックス、空き倉庫の収益化)など、当社の直近の投資案件の多くに明確に表れている。家主は、このようなタイプの戦略を適切に利用すれば、今日の不動産業界で見られる空室の増加を中期的に緩和できる」と述べる。

この主張が正しければ、小売業は、より共有スペースのような存在になるかもしれない。「特に、先に資金調達を発表したばかりのワークチュウの製品は、需要側と供給側の両方で多くの需要がある。ホテルやレストランは、あまり利用されていないスペースやインフラを収益化するために、同社との提携に対する関心は極めて高い」とデムヤコール氏は述べる。そして「もちろん、雇用主や企業は、本社のオフィス以外で過ごす時間を増やしたいと考えているハイブリッドな従業員に提供できる簡単なアメニティとして、この共有スペースに満足している」と付け加える。

インタビューした投資家らから明確に聞いたわけではないが、小売業の将来を信じる理由がいくつかある。

  • まず、経済学者や政策立案者さえも驚くほど、パンデミックの間に何百万もの新しいビジネスが生まれている。その大部分は、非常に地域に根ざしたもので、食品の宅配(カップケーキ)やサービス(出張ヘアカット)、地域で強い支持を得ているインターネットファーストの製品(Etsyの多く)などが挙げられる。これらの起業家らは、インターネットで事業を始め、商業施設の賃料が下がった今、実店舗を構えるに十分な収益を上げている。
  • 第2に、新型コロナウイルス感染症の期間を耐え抜いた地元企業の多くは、インターネットで成功する方法を見つけ出した。近隣でどの企業が嵐を乗り切っているかは、好みのオンデマンドデリバリーやサービスのアプリを開いて注文すればわかる。
  • 第3に、投資家の回答や入手可能なデータが示すように、家主はすでに賃料を下げ始めており、数十年ぶりに借り手市場が形成されている。
  • 第4に、従来のビジネスでも新しいタイプの資金調達が可能となり、オンラインでの副業や趣味(あるいはより大規模なプロジェクト)で成功を収めている企業は、拡大のための資金を得ることができるようになる。(この理由はおそらくかなり推測的なものだが、著者らは、ここTechCrunchで未来を見極めようとしている)。例えば、Shopify(ショッピファイ)は、新しい「定期収入を取引するためのプラットフォーム」のcom(パイプ・ドット・コム)に資金提供をしたばかりだ。両社はこの関係について今は多くを語っていないが、ショッピファイで成功している多くの小規模ビジネスが、リアル店舗の採算の目処が立ったときに速やかに新しい種類の資本注入を受けることの想像はできる。

こういったすべてのことを、都市の密度や自転車レーンの設置による気候変動への配慮など、都市に対する考え方の他の広範な変化も含めて考慮すると、パンデミック以前の世界というよりも、ニューアーバニストの空想といわれそうな世界が見えてくる。

同時に、これらのコンセプトは小規模な都市、郊外、そして町にも展開されている。産業クラスターの古いネットワーク効果が奇跡的な復活を遂げない限り、すべての都市が最高の生活の質を提供するために競争することになる。

仮に、産業クラスターがかつてのように集結しないとしよう。そうすると、多くの家主や金融業者、市の予算はすぐに支出を削減せざるを得なくなり、魅力的な都市の経済の足を引っ張ることになるかもしれない。

そのような場合でも、ニューヨークやサンフランシスコのように、住宅や小売店、アメニティを中心に据える都市が再生することは想像に難くない。もしかしたらいつの日かこの数十年を、パンデミックで全世界が底を打ち長期的に正しい答えを決める必要が生じる前の古き悪し時代だったと振り返る日が来るかもしれない。

ということで、読者には、著者がインタビューした投資家らの回答全文を紹介したい。各投資家の回答は、このすでに十分に長い記事より更に濃い内容であり、詳細を読む価値はある。このような変化に関する継続的な記事の支援のため、Extra Crunchを購読して欲しい。

不動産テックと都市の未来については、近々さらに掘り下げる予定だ。この件について他に考えがあればeldon@techcrunch.comにメールして欲しい。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:新型コロナウイルス不動産リモートワーク住宅アメリカeコマース店舗小売

画像クレジット:Boston Globe / Getty Images

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(文:Eric Eldon、翻訳:Dragonfly)

アマゾンがインドのスタートアップに投資する272億円規模のベンチャーファンドを発表

Amazon(アマゾン)はインド時間4月15日、主要な海外市場であるインドの中小企業(SMB)のデジタル化に焦点を当てた、同国のスタートアップや起業家に投資する2億5000万ドル(約272億円)のベンチャーファンドを発表した。

今回の発表は、これまでインド事業に65億ドル(約7062億円)以上を投資してきた米国のeコマース巨人が、政府当局や、同社がサービスを提供していると称する中小企業からの批判に直面している中でのことだ。

「Amazon Smbhav Venture Fund」と名づけられたこの新しいベンチャーファンドを通じて、Amazonは中小企業のオンライン化、オンライン販売、業務の自動化とデジタル化、そして世界中の顧客への拡大を支援することに重点を置いたスタートアップに投資したいと述べている。同社は、このファンドのライフサイクル(つまり、何年かけて2億5000万ドルを使い切る予定か)については明らかにしなかった。

Amazonの次期CEOであるAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏は4月15日に開催されたバーチャルイベントで「中小企業は経済のエンジンであり、生命線です」と述べた。「当社は、中小企業を加速させることに情熱を持っています」とも」。

Amazonは、中小零細企業(MSMEs)向けに売掛債権のオンラインマーケットプレイスを運営する、グルグラム(旧称グルガオン)に本社を置く設立3年目のスタートアップであるM1xchangeに1000万ドル(約10億9000万円)の投資ラウンドを実施したと発表した。M1xchangeは、マーケットプレイスを介して中小企業と銀行やノンバンク金融会社を結びつける企業だ。中小企業は売掛債権(為替手形や請求書)を銀行や金融機関に譲渡することでより有利な金利で融資を受けることができ、これにより、中小企業・小規模事業者の支払いに関する課題を解決することができるという。これは、同社のAmazon Smbhav Venture Fundからの最初の投資となる。

Amazon Smbhav Venture Fundは農業とヘルスケアの2つの分野にも重点を置いているが、中小企業との接点があれば、他業種のテックスタートアップも視野に入れていくとのこと。

アグリテック分野ではAmazonは、テクノロジーを活用してアグリインプットを農家によりアクセシブルにしたり、農家にクレジットや保険を提供したり、食品の無駄を減らしたり、消費者に届ける農産物の品質を向上させるインドのスタートアップに投資することを検討している。ヘルスケア分野では、医療機関が遠隔医療、電子診断、AIによる治療提案を活用できるように支援するスタートアップに投資するとしている。

今回の発表は、インドに拠点を置く中小企業に焦点を当てた、Amazonが毎年4日間にわたって開催するSmbhav(ヒンディー語で「できる、可能」を意味する)イベントで行われた。またAmazonはこのバーチャルイベントで、2025年までにインドの北東地域の8つの州から5万人の職人、織工、中小企業をオンライン化し、同地域からの茶、スパイス、蜂蜜などの主要商品の輸出を促進するための取り組みである「Spotlight North East」を発表した。

2020年の第1回Smbhavイベントで、Amazonは10億ドル(約1087億円)を投じて中小企業1千万社のデジタル化を支援することを発表した。同社は2021年4月初め、2020年1月以降、インドで30万人の雇用を創出し、30億ドル(約3260億円)相当のインド製商品の輸出を可能にしたと発表した。

関連記事:Amazonがインドのスモールビジネスのデジタル化促進のため約1100億円を投資

同社によると、5万以上のオフライン小売業者や近隣店舗(現地ではキラナと呼ばれる)がAmazonマーケットプレイスを利用しており、約25万の新規出品者もプラットフォームに参加したという。同社は15日「Local Shops on Amazon」プログラムを通じて、2025年までに100万のオフライン小売業者・近隣店舗のオンボーディングを目指していると述べた。

2020年には、Amazonの創業者兼CEOであるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が参加した最初のSmbhavイベントからそれほど遠くない場所で、何万人もの抗議者が通りをデモ行進し、Amazonは自分たちをつぶすために不公正な行為を行っている、と主張して懸念を表明した。

今回も同様の抗議活動が行われ、商人たちはAsmbhav(ヒンディー語で「不可能」の意)と名づけられたイベントで政府の介入を求めた。こちらから、彼らのストーリーを一部見ることができる。これはインドでの論争に巻き込まれないように長い間苦労してきたAmazonにとって、継続的な課題だ。

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2021年2月には、米国のeコマースグループである同社がインドの一部の販売者を優遇し、それらの販売者との関係を公に偽り、インドの外資規制を回避するために利用しているとの報道を受け、何千万もの実店舗を代表する有力なインドの業者団体が、インド政府にAmazonの国内事業禁止を要請した。

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全インド商業連合(The Confederation of All India Traders、CAIT)は、ロイター通信の記事で明らかになったことを受けて、インド政府にAmazonに対する深刻な措置を取るよう「要求」した。「CAITは長年にわたり、AmazonがインドのFDI(外国直接投資)規制を回避し、不公正で非倫理的な取引を行っていると主張してきました」とCAITは述べていた。

Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、そしてMicrosoft(マイクロソフト)を含む複数の国際的なテクノロジー大手が、近年、インドのスタートアップ企業に投資している。Amazonも、配車スタートアップのShuttlや、消費者ブランドのMyGlammなど、多くの企業を支援している。2021月3月、同社はリテール決済スタートアップであるPerpuleを約2000万ドル(約21億7000万円)で買収した。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Amazonインド投資Amazon Smbhav Venture Fundeコマースアグリテックヘルスケアスモールビジネス

画像クレジット:Pradeep Gaur/Mint / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

ブラウザの拡張機能で商品購入時のカーボンオフセットを提案するEcoCartが約3.3億円調達

EcoCart(エコカート)は、提携するオンラインショップで消費者が商品を購入する際に、排出される二酸化炭素を相殺する方法を無料で提案する(ブラウザの拡張機能を使用して!)会社だ。同社はBase10 Partners(ベーステン・パートナーズ)から300万ドル(約3億2800万円)の資金を調達した。

店舗のウェブサイトを運営する企業は、標準的なアフィリエイトのマーケティングモデルに基づいてEcoCartに手数料を支払い、同社はその収益の一部を消費者の二酸化炭素排出量のオフセットのために使う。

EcoCartと直接パートナーシップを結んでいる企業や、受動的なアフィリエイトマーケティングサービスを通して同社と提携している企業は、約1万社に上る。共同設立者のPeter Twome(ピーター・トゥオミー)氏とDane Baker(デーン・ベイカー)氏によると、EcoCartは企業向けの炭素計算ツールやオフセットサービスも提供しているという。

サンフランシスコを拠点とするこのスタートアップは、ClimeCo(クライムコ)やBlueSource(ブルーソース)などのサービスを利用して、企業が融資可能なオフセットプロジェクトを調達・集約している。

サンディエゴ大学で出会った2人の共同創業者は、以前にToyroom(トイルーム)というスタートアップを起ち上げ、不必要な消費を減らすためにアウトドア用品を顧客に貸し出すという事業を行っていた。

「私たち自身がこの問題に直面しています。持続可能性という理念を維持することは、非常に難しいと我々は認識しました」と、ベイカー氏は述べている。

EcoCartは、ブラウザの拡張機能を利用する仕組みによって、Cloverly(クローバーリー)のような他のオフセットサービスとは一線を画している。その一方で、企業向けサービスでは、購入にともなう二酸化炭素をオフセットするオプションがチェックアウトフローに直接組み込まれる機能などを提供している。

EcoCartは、2020年6月にB to B(企業間)統合を開始し、現在では500社のベンダーが顧客となっている。これまでに、消費者の約4分の1が購入した商品を会計する際にオフセットすることを選択しており、その結果、約2500万ポンド(約1万1340トン)の二酸化炭素を削減することができたという。

同社を支援する投資家には、PopSugar(ポップシュガー)の共同創業者であるBrian Sugar(ブライアン・シュガー)氏が運営するアーリーステージの企業を対象としたベンチャーファンドのBase10 Partners(ベーステン・パートナーズ)をはじめ、Privy(プリヴィ)の創業者であるBen Jabbawy(ベン・ジャバウィ)氏、Klaviyo(クラビヨ)のグローバルパートナーシップ担当VPであるRich Gardner(リッチ・ガードナー)氏、Chubbie(チャビー)の共同創業者であるKyle Hency(カイル・ヘンシー)氏、Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)会長であるBryan Meehan(ブライアン・ミーハン)氏、BarkBox(バークボックス)の共同創業者であるCarly Strife(カーリー・ストライフ)氏などのエンジェル投資家が含まれる。

オンラインショッピングというと環境に悪いイメージがあるが、2020年Nature(ネイチャー)誌に掲載されたある研究によると、実際には実店舗での買い物より環境に優しくなる場合もあるという。

消費者によるオフセットは、善行ではあるものの、企業が実際に温室効果ガスの排出を抑制し、事業を脱炭素化することに比べると、同等の効果を得ることはできない。実際のところ、消費者のカーボンフットプリントや、地球汚染に対する消費者の個人的な責任という概念は、石油・ガス会社や消費財メーカーに頼まれて、広告会社の幹部が商品を売り込むために考え出したものだ。

しかし、何もしないよりは良いし、環境のために必要なプロジェクトの資金調達に役立つことは確かだ。

EcoCartは、数カ月かけてオンライン注文のカーボンフットプリントを計算する独自のアルゴリズムを開発したという。電子商取引用プラグインとブラウザ拡張機能のいずれも、商品への材料投入量、配送距離、パッケージの重量など、各注文の特徴を利用して、その注文から発生する二酸化炭素排出量を推定しているという。

「EcoCartは、ブランドが顧客と対話しながら、環境への影響を大規模に管理・対処する方法を再構築するものであると、我々は確信しています」と、Base10 PartnersのプリンシパルであるChris Zeoli(クリス・ゼオリ)氏は述べている。「EcoCartは、何十年にもわたって続いてきた有害な気候変動を元に戻すために役立つソリューションです。Base10は、EcoCartの創設者たちが、カーボンニュートラルなショッピングを、小売、マイクロモビリティ、フードデリバリーなどの業界で新しいチェックアウトの基準にしていくための活動に、パートナーとして協力できることを誇りに思います」。¥

カテゴリー:EnviroTech
タグ:EcoCartカーボンフットプリントカーボンオフセット資金調達ブラウザー機能拡張B2Bネットショッピング

画像クレジット:Taqi Fatikh/EyeEm / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

B2B向けD2Cソリューション「BRANDIT」でファッション業界のDXを推進するBranditが2億円調達

B2B向けD2Cソリューション「BRANDIT」でファッション業界のDXを推進するBranditが2億円調達

自社生産・自社ECにおいてインフルエンサーを起用したD2Cブランド「TRUNC 88」、生産から物流までをワンストップで提供できるB2B向けD2Cソリューション「BRANDIT」を展開するBrandit(ブランディット)は4月12日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による2億円の資金調達を実施したと発表した。同ラウンドにおけるリードインベスターとして大広と資本業務提携を交わし、新たにSMBCベンチャーキャピタル6号投資事業有限責任組合を引受先として迎え入れた。さらに、シード期からの既存株主であるDIMENSIONから3度目のフォローオンによるラウンド調達を実施した。

「顧客価値」を基点にした事業開発やマーケティングサポートを提供する大広が、その実績・ノウハウをさらに発展させ、eコマース事業の中でも特にD2C事業に関しての支援体制を強化・拡充していくことを受け、Branditの事業・ノウハウと掛け合わせることで幅広いクライアントに対するアプローチができると考え、資本業務提携を交わしたという。

D2Cブランドを展開するクライアントに対して、コミュニティ形成や販売支援などのファンマーケティングに基づく設計からEC構築に至るまでのサポート体制を確立し、ソリューション提供における連携を図るとしている。

さらにBranditは、事業拡大における経営体制・組織体制の強化を目的に、CxOを含む人材採用を積極的に行う。

2019年9月設立のBranditは、「Make Next Branding by Fashion Tech.」をビジョンに掲げ、D2CブランドやD2Cソリューション事業を通してファッション業界のDXを推進するスタートアップ企業。D2Cソリューション事業では、BRANDIT production、BRANDIT system、BRANDIT logisticsとして、「生産・EC・在庫管理・マーケティング/分析・ロジスティクス」の一気通貫サービスも実施している。

BRANDIT productionでは、自社オリジナルアイテムの企画・デザインをサポートし、小ロットでの生産による在庫リスクを軽減したアイテムの提案から生産を実現

BRANDIT productionでは、自社オリジナルアイテムの企画・デザインをサポートし、小ロットでの生産による在庫リスクを軽減したアイテムの提案から生産を実現

カート機能だけでなく、別々のツールで管理していた「受注」「原価」「各チャンネル別手数料」「販売開始日」「配送データ」「出荷売上」などの項目を一括管理できるECシステム「BRANDIT system」を運営

カート機能だけでなく、別々のツールで管理していた「受注」「原価」「各チャンネル別手数料」「販売開始日」「配送データ」「出荷売上」などの項目を一括管理できるECシステム「BRANDIT system」を運営

BRANDIT logisticsでは、商品マスタ登録→商品の入荷→受注データの連携→商品の出荷→出荷データの連携→売上計上→在庫引当後の在庫管理という一連の流れを自動連携させることで大幅に工数を削減

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:資金調達(用語)D2C(用語)ネットショッピング / eコマース(用語)ファッション(用語)Brandit(企業)日本(国・地域)

中国が独占禁止にいよいよ本腰、アリババに約3010億円の記録的な罰金

中国の規制当局は、Alibaba(アリババ)が同国最大のインターネット複合企業の支配権を握ろうとしている中、独占禁止法に違反したとして、180億元(約3010億円)という記録的な罰金を科した。

2020年11月、中国はそのインターネット経済を対象とする包括的な独占禁止規制を提案した。12月下旬、国家市場監督管理総局(State Administration for Market Regulation、SAMR)は、当局がAlibabaの金融関連会社であるAnt Groupの新規株式公開を中止した数週間後に、Alibabaに対する反トラスト調査を開始したと発表した。

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中国における最上位の市場規制機関であるSAMRは現地時間4月10日に、Alibabaは2015年以来中国の商業者に、PinduoduoやJD.comなど複数のサービスから自由に選ぶのではなく、1つのeコマースプラットフォーム上でのみ販売すよう強制してその「市場支配力を乱用した」と発表した。ベンダーたちは、Alibabaの巨大なユーザーベースを利用するためにはAlibabaの側につくよう、圧力を受けることが多かった。

2020年の終わりごろより、TencentやAlibabaなどの大手インターネット企業は、過去の買収承認を得なかったなどの理由で、反競走的な行いに対するさまざまな罰金を科せられた。それらの罰金の総額は、テクノロジー企業が彼らの市場集中から得る利益に比べると微々たる額だ。その帝国の分割を命じられた企業は1社もなく、ユーザーは依然として、お互いに他社をブロックするスーパーアプリ間を渡り歩かなければならなかった。

関連記事:中国が独禁法違反でアリババとテンセント子会社に罰金処分

しかし最近の数週間で、中国の独占禁止当局がより深刻になっている兆候がある。Alibabaに対する最新の制裁金の額は、同社の2019年の売上の4%に相当する。

「本日、中国の国家市場監督管理総局から行政処分決定が出されました」とAlibabaは声明で述べた。「私たちは誠意をもってこの刑罰を受け入れ、私たちの決意を確実に遵守します。社会に対する責任を果たすために、法に則り誠実に行動し、コンプライアンス体制を強化し、イノベーションによる成長を目指します」。

テクノロジー企業が互いの間に築いてきた厚い壁も崩れ始めた。Alibabaの幹部Wang Hai(ワン・ハイ)氏が最近認めたところによると、AlibabaはWeChatのミニプログラムプラットフォーム上で同社のショッピング情報アプリを実行するための申請書を提出した。

何年もの間、AlibabaのサービスはTencentの広大なライトアプリのエコシステムに存在しておらず、現在では何百万ものサードパーティーのサービスが存在している。逆に、WeChatは決済手段としてAlibabaのオンライン市場には存在しない。もし承認されれば、WeChatを搭載したAlibabaのミニアプリは、両社の長い対立の前例を破ることになる。

関連記事:中国政府がジャック・マー氏のフィンテック帝国Ant Groupの「修正」計画を発表

カテゴリー:ネットサービス
タグ:中国Alibaba独占禁止法eコマース

画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中国が独占禁止にいよいよ本腰、アリババに約3010億円の記録的な罰金

中国の規制当局は、Alibaba(アリババ)が同国最大のインターネット複合企業の支配権を握ろうとしている中、独占禁止法に違反したとして、180億元(約3010億円)という記録的な罰金を科した。

2020年11月、中国はそのインターネット経済を対象とする包括的な独占禁止規制を提案した。12月下旬、国家市場監督管理総局(State Administration for Market Regulation、SAMR)は、当局がAlibabaの金融関連会社であるAnt Groupの新規株式公開を中止した数週間後に、Alibabaに対する反トラスト調査を開始したと発表した。

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2020年の終わりごろより、TencentやAlibabaなどの大手インターネット企業は、過去の買収承認を得なかったなどの理由で、反競走的な行いに対するさまざまな罰金を科せられた。それらの罰金の総額は、テクノロジー企業が彼らの市場集中から得る利益に比べると微々たる額だ。その帝国の分割を命じられた企業は1社もなく、ユーザーは依然として、お互いに他社をブロックするスーパーアプリ間を渡り歩かなければならなかった。

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しかし最近の数週間で、中国の独占禁止当局がより深刻になっている兆候がある。Alibabaに対する最新の制裁金の額は、同社の2019年の売上の4%に相当する。

「本日、中国の国家市場監督管理総局から行政処分決定が出されました」とAlibabaは声明で述べた。「私たちは誠意をもってこの刑罰を受け入れ、私たちの決意を確実に遵守します。社会に対する責任を果たすために、法に則り誠実に行動し、コンプライアンス体制を強化し、イノベーションによる成長を目指します」。

テクノロジー企業が互いの間に築いてきた厚い壁も崩れ始めた。Alibabaの幹部Wang Hai(ワン・ハイ)氏が最近認めたところによると、AlibabaはWeChatのミニプログラムプラットフォーム上で同社のショッピング情報アプリを実行するための申請書を提出した。

何年もの間、AlibabaのサービスはTencentの広大なライトアプリのエコシステムに存在しておらず、現在では何百万ものサードパーティーのサービスが存在している。逆に、WeChatは決済手段としてAlibabaのオンライン市場には存在しない。もし承認されれば、WeChatを搭載したAlibabaのミニアプリは、両社の長い対立の前例を破ることになる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:中国Alibaba独占禁止法eコマース

画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

法政大学とShopifyが連携、2021年春講義の実習としてeコマース人材育成プログラムを学生約100名対象に提供

法政大学とShopifyがeコマース人材育成プログラムを学生約100名対象に提供、2021年春講義の実習として連携

eコマースプラットフォームを開発・運営するShopify(ショッピファイ)の⽇本法⼈Shopify Japan法政大学は4月8日、春学期(2021年4月)に開講するキャリアデザイン学部「流通・マーケティング戦略論」の実習として、eコマース人材の育成強化に向けたプログラムを提供する。外部招聘講師としてShopify社員が学生約100名対象に講義を実施する。

同講義の目的は、新しい流通・販売・マーケティングのあり方を考え、変化を先取しつつ前に進める視点や考え方を身に着け、将来実務で成果を出すために役立つスキルの基本概念と知識・経験を習得すること。

Shopifyは、様々な教育機関との連携を図り、デジタル化の支援、EC人材の育成に取り組んでいるという。EC需要が高まる中、ネットショップの立ち上げ・運用のサポートを必要とする事業者も増加していることからEC人材育成が急務と考えており、2020年はLANCERSとの連携を発表した。今後もShopifyエコシステムを強化し、オフライン事業者のオンライン化支援を行うとともに、日本から世界に羽ばたく起業家育成にも力を入れるとしている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Shopify(企業)ネットショッピング / eコマース(用語)法政大学(組織)日本(国・地域)

「Amazonではない」小売業者の即日配達を可能にするSwyftが19.2億円を調達

Amazon(アマゾン)やWalmart(ウォルマート)のような大手サービスのおかげで、私たちは翌日発送や即日発送に慣れてしまった。しかし、パンデミックはもっと小さな店や会社から買うことの価値をを再認識させている。

つい最近シリーズAで1750万ドル(約19億2000万円)を調達したSwyft(スウィフト)は、どんな規模の小売店でも即日発送できるようにする会社だ。ラウンドをリードしたのはInovia CapitalとForerunner Venturesで、他にShopifyと既存出資者のGolden VenturesとTrucks VCが参加した。
Swyftは運送業者とメーカーをつなぐマーケットプレイスだ。しかしこの会社は、輸送業者が効率を上げるためのソフトウェアを提供することで巨大な輸送ネットワークを構築し、各自がインフラに手を加えることなく、もっと荷物を扱えるようにする。

つまり、地域の運送業者は、本来の経路を大きく変更したり運転手やトラックを追加したりすることなく、Swyft経由で発送される荷物の配達に加わることができる。

これまでは配送、小売両方の大手企業がこの分野を支配してきたが、それは迅速な配達能力によるところが大きい。Swyftは家族経営の小売店、ベンダーから小さな地域運送業者まで、スモールプレイヤーだけからなる軍団を作ろうとしている。ソフトウェアを通じて結束することで、これらの運送屋と店は大金を使うことなく、巨人たちの規模と影響力に対抗することができる。

SwyftはCEOのAadil Kazmi(アーディル・カズミ)氏、技術責任者のZeeshan Hamid(ジーシャン・ハミッド)氏、営業責任者のMaraz Rahman氏(マラズ・ラーマン)の3名が共同設立した。カズミ氏とハミッド氏はAmazonで働いた経験があり、データおよびラストマイル運用の仕事を担当していた。ラーマン氏は、Y Combinatorが支援する不動産テックスタートアップの初期社員だった。

3人は2020年初めに、なぜ小売店は即日発達できないのかを自問し、そこで見つけたギャップに取り組むことを決めた。

Swyftの目玉は集約した運送業者そのものではなく、彼らに提供するソフトウェアだ。Swyftは集まった運送業者の需要を増やすので、彼らの効率を高めることも必要になる。バックエンドソフトウェアは、運送業者が伝統的に手作業で行っていたことの大部分をデジタル化あるいは自動化する。

カズミ氏によると、Swyftは伝統的方法と比べて25~30%安く利用できるという。

「みなさんの買い物の何パーセントがAmazonからなのかは知りませんが、私の場合は150%みたいなものです」とForerunner VenturesのEurie Kim(ユーリー・キム)氏はいう。「パンデミック下にどこか他のところで買い物をして地域や個人のブランドを応援したいのですが、Amazonは私たちをスピードと送料無料に慣れさせてしまいました。消費者の選択肢が狭まり、商売人の負荷が著しく重くなっているこの状態には、チャンスがあると感じています」。

現在、Swyftには16名の正規従業員がいて、12%が女性で75%は有色人だと会社はいう。

2020年4月以来、Swyftは18万件の荷物を扱い、粗利益率は78%から82%に伸びた。これはソフトウエア部門の売上と設備を持たないゼロアセットモデルによるところが大きい。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Swyft資金調達eコマース配送Amazon

画像クレジット:Swyft

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(文:Jordan Crook、翻訳:Nob Takahashi / facebook

インドのソーシャルコマースMeeshoが新たに330.3億円の資金を調達、評価額は約2312億円に

インドのソーシャルコマース系スタートアップMeeshoはインド時間4月5日「すべてのスモールビジネスがオンラインで成功できるようにする単一のエコシステム」になることを目指して、SoftBank Vision Fund 2(SVF2、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)が主導する新たな資金調達ラウンドで3億ドル(約330億3000万円)を調達したと発表した。

この新しいシリーズEラウンドにより、設立5年目の同スタートアップの評価額は21億ドル(約2312億円)となり、2019年に行われたシリーズD時点での約6億ドル~7億ドル(約661億円〜771億円)から上昇した。これまでに総額約4億9000万ドル(約539億5000万円)を調達している同社は、既存投資家であるFacebook(フェイスブック)、Prosus Ventures、Shunwei Capital、Venture Highway、Knollwood Investmentも新ラウンドに参加したと述べている。

今回の出資はShunwei Capitalにとって、約1年ぶりのインドのスタートアップへの投資となるようだ。インド政府は2020年、中国の投資家がインド企業に出資する際に、当局の承認を必要とする規則を導入した。

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バンガロールを拠点とするMeeshoは、WhatsApp、Facebook、Instagram(インスタグラム)などのソーシャルメディアプラットフォーム上で売り手と顧客をつなぐ、同名のオンラインマーケットプレイスを運営している。同社の提供するサービスには、注文管理、物流管理、オンライン決済、ショップのリアルタイム更新、顧客にサブスクライブしてもらうためのシステムなどが含まれる。

同社はインドの約5千市町村に広がる、女性を中心とした1300万人以上の起業家と、10万以上のサプライヤーからなるネットワークを有しており、主に食料品、アパレル、家電、電子機器などを取り扱っているという。

Meeshoのミッションを短い言葉で表現するとすれば「女性の経済的自立」です。

ですから、@meeshoappがGoogle Indiaの女性デーにPlay Storeでフィーチャーされ、今度は独立記念日にスポットライトを浴びるのはふさわしいことだと思います。

大規模な真のインパクトが認められたのです! pic.twitter.com/jcFz2ZOrDA
– スダンシュ・シェカール (@sdhskr) 2019年8月10日

Meeshoはこの新たな資本を、国内で1億人いる個人事業主や中小企業のオンライン販売を支援するために投入するとのこと。Meeshoの共同設立者兼CEOであるVidit Aatrey(ヴィディット・アートレイ)氏は、声明の中で「この1年間で、オンラインでのビジネス展開を目指す中小企業や起業家が非常に増えました」と述べている。

インド政府が数カ月間のロックダウンを余儀なくされたパンデミックの中で、Meeshoは誰もがゼロ投資でオンラインの食料品店を始めることができる製品「Farmiso」をローンチした。アートレイ氏は5日に、FarmisoはMeeshoで最も急成長している事業に浮上したと述べている(パンデミック以前、Meeshoは東南アジアでの展開も始めていたが、ここ数カ月はその取り組みを縮小している)。

SVF2を運営するソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのパートナーであるSumer Juneja(スマー・ジューンジャ)氏は、声明でこう述べた。「当社は過去18カ月間にわたりMeeshoを注意深く追跡してきましたが、その成長、日々のエンゲージメント指標、ユニットエコノミクスへの注力、そして強力なチームを作る能力を高く評価しています。Meeshoは、中小規模のサプライヤーやソーシャルリセラーがインドのeコマース革命に加わるための効率的なプラットフォームを提供し、彼らが消費者にパーソナライズされた体験を提供するのに役立つと考えています」。

UBSのアナリストは最近のレポートの中で、ソーシャルコマースやB2Bマーケットプレイスが、インドにおいてはAmazon(アマゾン)やFlipkart(フリップカート)などのeコマース企業に対する潜在的な競争要因であると指摘している。

画像クレジット:Meesho

ソーシャルコマースは、AmazonやFlipkartが何十億ドル(何千億円)も投じたにもかかわらず、インドではなかなか浸透しなかった近代的なeコマースに対抗するための有力な賭けの1つだ。もう1つの賭けは、インドの何万もの町や都市、村に点在する、ソーシャルな要素をあまり含まない近隣店舗のデジタル化だ。世界的な大企業であるFacebookとGoogle(グーグル)は、これら両方の馬に賭けている

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ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのマネージングパートナーであるMunish Varma(ムニッシュ・ヴァルマ)氏は、声明の中で次のように述べた。「ソフトバンクは、世界各地の市場に独自のソリューションを提供するファウンダーを支援してきました。MeeshoはAIと機械学習の力を利用して、多くの中小企業オーナーが次世代ネットユーザーに販売するためのプラットフォームを構築しました。当社は、この旅の一部になれることを楽しみにしています」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:MeeshoインドSoftBank Vision Fund資金調達ソーシャルコマースeコマース

画像クレジット:Meesho

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

気分に合わせてパーツの組み合わせ変更できるメガネを販売するPair Eyewearが約13.3億円調達

Pair Eyewear(ペア・アイウェア)が、シリーズAラウンドで1200万ドル(約13億3000万円)の資金を調達した。この会社は、メガネをかけている子供や大人にとって、そのメガネが「自己表現の1つの形」になることを目指していると、同社共同CEOのSophia Edelstein(ソフィア・エーデルシュタイン)氏はいう。

ともにCEOを務めるNathan Kondamuri(ネイサン・コンダムリ)氏と同社を設立したエーデルシュタイン氏は「メガネには多額の費用がかかるので、他の身につける物とは違って、その選択に制限があります」と言及している。

Pair Eyewearは、メガネを2ピースのアンサンブルにすることで、より高い柔軟性を実現した。処方されたレンズを含む基本となるベースフレームに、マグネットで取り付けられるさまざまなトップフレームを組み合わせることができるので、ユーザーは好きな時に交換して新しいスタイルを楽しめる。

「ある日は派手に、そして次の日には控えめにしたりすることが可能です」と、エーデルシュタイン氏は語る。

このスタートアップ企業は、毎月3種類ずつトップフレームの限定コレクションを用意したり、「Marvel(マーベル)」や「Harry Potter(ハリー・ポッター)」、NBAチームなどと提携して、ブランド化されたトップフレームも製作している。

「私たちのお客様は平均5個のトップフレームを所有していますが、その範囲は驚くほど広いのです」と、エーデルシュタイン氏はいう。「中には90個以上持っている方もいて、自宅の冷蔵庫をすっかり覆ってしまっているほどです」。

今回の資金調達は、Javelin Venture Partners(ジャベリン・ベンチャー・パートナーズ)のAlex Gurevich(アレックス・ガービック)氏が主導し、Norwest Venture Partners(ノーウェスト・ベンチャー・パートナーズ)、Precursor Ventures(プリカーサ・ベンチャーズ)、Gingerbread Capital(ジンジャーブレッド・キャピタル)、NFL選手のChristian McCaffrey(クリスチャン・マカフリー)氏、MasterClass(マスタークラス)のCEOであるDavid Rogier(デビッド・ロジエ)氏などが参加した。

Pair Eyewearの取締役会に参加するガービック氏は、このアイデアが彼自身の心に響くものだったと、筆者に語った。彼はかつて、当時4歳だった息子に乱視用のメガネをかけるよう説得することに苦心し「これをかけるとクラーク・ケントみたいになるよ」と息子に言ってようやく成功させたことを思い出したという。

「数週間後、チームと会ったとき、彼らは文字通りスパイダーマンとスーパーマンのメガネを見せてくれました」と、ガービック氏は語った。「私は『子供にメガネをかけるように説得するのに苦労したんだ! もしこれがあったら、すぐに上手くいっただろうね』と言いました」。

ガービック氏は、Pair Eyewearのチーム(「ソフィアとネイサンが、永続的で象徴的な消費者ブランドの構築にどれほど情熱を注いでいるかということに圧倒されました」)と、ビジネスモデルにも感銘を受けたという。つまり、これは「プリンターとインクカートリッジ、ヒゲ剃りの替刃のように、リピート率の高い用品モデル」をメガネに持ち込むことに成功した最初の試みだと思われると、同氏はいう。

Pair Eyewear創設者のソフィア・エーデルシュタイン氏(左)とネイサン・コンダムリ氏(右)

Pair Eyewearの価格は、ベースフレームがレンズ込みで60ドル(約6630円)で、トップフレームを追加するごとに25ドル(約2760円)となっている。医療費免税制度の口座からの支払いにも対応し、ネットワーク外の視力保険の給付金として払い戻しを受けることも可能だが、エーデルシュタイン氏によると、メガネの価格は平均300ドル(約3万3200円)を大きく下回るため、多くの人は気にしないという。

この料金設定は、独自の製造方法によるコストダウンと「業界標準」の利益幅を排除することで実現しているという。

「それでも私たちは、ベースフレームとレンズに信じられないほどのマージンを確保しています」と、彼女は語る。

2020年3月にTV番組の「Shark Tank(シャーク・タンク)」に出演して(資金を受け取って)以来、Pair Eyewearは前月比で30%の成長を遂げている。これは、このビジネスが「不況に強い」ことを示しており、たとえそれがZoom(ズーム)のビデオ会議で見せびらかすためであっても、あるいは家で楽しむためであっても、人々はカスタマイズ可能なアイウェアに興味を持っていると、エーデルシュタイン氏は主張する。

Pairは当初、子供用のアイウェアに注力していたが、現在では販売の60%が大人用になっているという。5種類が用意されているベースフレームは、もともと子供用にデザインされたもので、実際に大人に合うものはそのうちの2つだけであるにもかかわらずだ。今回の資金調達によって、チームは製品ラインアップの拡大を続け、特にそうした大人向けの選択肢を増やすことができると、エーデルシュタイン氏は語っている。

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タグ:Pair Eyewearメガネ資金調達

画像クレジット:Pair Eyewear

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

eコマースサイトが在庫切れの商品を共有在庫から販売できるようになるStockly

フランスのスタートアップStocklyは、さまざまなeコマースサイトの在庫を同期させている。eコマースサイトで在庫切れの商品を見つけた場合、そのサイトを離れて別のサイトで同じ商品を見つけられる可能性がある。

ECサイトを運営している場合、Stocklyを使えば在庫切れの商品でも販売できる。同スタートアップのサービスは、その商品を持っているサードパーティーのStocklyサプライヤーを自動的に見つける。

注文はそのサプライヤーから直接送られる。Stocklyはパートナーに対し、消費者が混乱しないようにニュートラルなパッケージを使うように指示している。

これは、サードパーティーの小売業者による健全な市場を持たない小規模なeコマース企業にとって、特に有用なものとなる。例えばAmazon(アマゾン)は、サプライヤーがアマゾンのマーケットプレイスにその商品を出品していれば、すでに在庫切れの商品を販売することができる。しかし、ほとんどのECサイトではそうはいかない。

Stocklyの主な課題は、さまざまなカタログフォーマットを分類し、異なる小売業者の異なる在庫をマッチさせることだ。同社はまず、衣料品に力を入れている。Stockly経由で注文が入ると、ロジスティクス、納期、履歴データなどの異なる基準に基づいて特定のサプライヤーが選択される。

これまでStocklyはGaleries Lafayette、Go Sport、Foot Shopなどと協力してきた。同スタートアップは最近、Idinvest PartnersDaphniTechstars、Checkout.com CEO Guillaume Pousazおよびさまざまなビジネスエンジェルから510万ユーロ(約66億円)の資金を調達した。

今回の資金調達によりStocklyはチームを20人に拡大し、新しいクライアントを追加して製品を改良する計画だ。

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画像クレジット:Brandable Box / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:塚本直樹 / Twitter

グーグルらが実店舗を簡単にオンライン化するインドのDotPeに約30.1億円投資

Googleのインドにおける最新の投資は、企業のオンライン化を助けるスタートアップだ。

現地時間3月26日、創業1年でグルガオンに拠点を置くDotPeが、シリーズAで2750万ドル(約30億1000万円)を調達したことを発表した。ラウンドをリードしたのはPayUで、これまでの投資家であるInfo Edge VenturesとGoogleが参加している。

この今や約9000万ドル(約98億7000万円)の価値が付く若きスタートアップは、路上の実店舗がオンラインでも販売を行い、デジタルで決済できるようにする。

インドの多くのスタートアップが現在解決しようとしている問題だが、DotPeにはさらにいくつかの魅力がある。これにより、販売業者は在庫をスキャンし、オンラインで迅速にログを作成できる。

カタログが用意できたら、店はWhatsAppでそれを公開し、顧客に届ける。WhatsAppはインドで人気最大のスマートフォンアプリで、ユーザーは4億5000万人以上いる。DotPeは、ユーザーの商業者がGoogleの検索結果にも出るようにする。

PayUの元共同創業者でマネージングディレクターのShailaz Nag(シャイラズ・ナグ)氏が共同設立したこのスタートアップは、近所の店が来店客から支払いを集めることを可能にし、顧客のエンゲージメントを高めるためにポイントや割引を提供するツールを備えている。

「この新しいパートナーシップにより、企業はより発見しやすくなり、ビジネスの道が広がり、これまでにない商取引を行うことができるようになります」とナグ氏はいう。「パンデミックであろうとなかろうと、私たちはオフラインビジネスのあり方を再考し、すべての起業家にデジタル革命をもたらすためにここにいます」。

画像クレジット:DotPe

DotPeの場合、店はアプリをインストールしなくてもよいため、これまでの6カ月で500万を超える事業者が利用した。それらの店では、リピーターからのオーダーの38%がオンラインからになっている。

インドPayUのCEOであるAnirban Mukherjee(アニルバン・ムカルジー)氏は「DotPeはその非の打ち所のないプロダクト体験とイノベーションで、非常に短期間に将来性に富む商業者ベースを獲得しました」と述べている。

Google India担当の副社長で、国別ではインドのトップであるSanjay Gupta(サンジェイ・グプタ)氏は声明で、同社のDotPeへの投資は「万人の利益になるさらに包括的で差別のないデジタル経済を作るという目標を、インドのスタートアップのエコシステムと一緒に実現する」というGoogleのポリシーを表している、と述べている。

Googleは2020年、ユーザー数では最大の市場であるインド向けの100億ドル(約1兆960億円)のファンドを発表した。AndroidのメーカーでもあるGoogleは、インドで他にも数社のスタートアップに投資しており、その中にはハイパーローカルなデリバリー企業Dunzoや、InMobi GroupのGlanceやDailyHuntがいる。

DotPeによると、同社は新しい資金を、同社のサービスがインドのもっと多くの商業者に到達し、その技術スタックを需要の成長に合わせてスケールすることに充てたい、という。

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タグ:DotPeインドeコマースGoogle投資

画像クレジット:ANNA ZIEMINSKI/AFP/Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Amazon上のブランドの買収と成長を目指すBenitago Groupが債務と株式を合わせて約60億円調達

Benitago Groupは、Amazon(アマゾン)上のブランドの大きなポートフォリオを作ることを目指している。同社はこのほど、5500万ドル(約60億円)の資金を調達したことを発表した。そのほとんどが買収資金のためのクレジットラインで、さらに株式投資も行っている。

共同創業者のSantiago Nestares(サンティアゴ・ネスタレス)氏は「私たちはこれらのブランドを成長させ、より効率的に運営していきたい」と語っている。

スタートアップもAmazon FBA(Fulfillment by Amazon)ビジネスを立ち上げるために多額の資金を調達しているが、ネスタレス氏によるとBenitagoは「金融裁定」だけに焦点を当てているのではないため、他とは違っているという。むしろ同社は、これらのビジネスを成長させ続けるための詳細で反復性のある青写真を描いている。

ネスタレス氏と共同創業者のBenedict Dohmen(ベネディクト・ドーメン)氏は、ダートマス大学の学生だったときに、腰痛治療具のSupportibackでBenitagoを始めた。ちなみに社名は2人の名前を合わせたものだ。同社はその後、美容、マタニティ、栄養などのカテゴリーに拡大したが、Nestaresによると、これまでは外部からの資金調達はあまりなかったが、収益で成長を支えたという。

その結果、チームのメンバーは整形外科などのエキスパートではないにもかかわらず、主にAmazon上でブランドを成長させることに注力して成功し、ネスタレス氏が「Amazonネイティブ」と呼ぶものになっていった。

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ブランドを買収する過程はまず、その製品の市場の競争状況を見極めることから始まり、また顧客によるレビューを調べる。そして「足りない機能や余計な機能はないか、包装の色はこのままで良いか、パッケージはAmazonのボックスにちょうど収まるかなど、あらゆることをAmazon向けに最適化します。」とネスタレス氏はいう。

同社がブランドを買収するとき、そのプロセスはわずか数週間で終わり、前のオーナーもブランドの所有権の一部を保有して、ブランドの継続的成長から利益を得る。

「これは受け身の財務的処理ではなくて、成長へのインパクトを生み与えるやり方です」とネスタレス氏はいう。

Amazonがeコマースの支配を失うことは当分ないと思われるが、それでもネスタレス氏はBenitagoのビジネスをたった1つのプラットフォーム上に築いている現状は「最大のリスク」だと認めている。しかしながらそのリスクは、企業にとってGoogleの検索のアルゴリズムがいつどう変わるかわからない、というタイプのリスクといったものとは違う。

「Amazonは違うと思います。Amazonもあなたと同じ目標、『顧客にできるだけたくさん売る』という目標を持っています」と彼はいう。

Benitagoは現在、5つのブランドを経営し、製品数は100種以上ある。今回獲得した資金でその数を大きく増やすことができる。ネスタレス氏によると、現在、商談が進んでブランドは12あり、年内にはさらに25かそれ以上のブランドを買収したい、という。

CoVentureが株式投資をリードし、融資枠にも参加している。

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タグ:Benitago GroupAmazon買収資金調達eコマース

画像クレジット:Benitago Group

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)