LINEアプリからスクールランチを予約注文、福岡拠点の給食スタートアップPECOFREEが総額6100万円の資金調達

LINEアプリからスクールランチを予約注文できるサービス「PECOFREE」(ペコフリー)を開発・運営するPECOFREEは11月15日、資金調達を行なったことを発表した。引受先はSun Asterisk、RKB毎日放送、テノ.ホールディングス。また9月に実施したNCBベンチャーキャピタルからの資金調達と合わせて、総調達額は6100万円となった。調達した資金は、システム開発、サービス認知拡大のためのマーケティング、人材採用の拡充に充てる。

PECOFREEは、学校で食べる食事をスマートフォンで予約注文(モバイルオーダー)できるサービス。学校単位での導入が可能。栄養士が監修した献立の弁当を毎日3種類用意しており、生徒が食べたいものを前日までにLINE上のLINEミニアプリで選択・予約注文すると、学校内に配置された受け取り・返却ボックスに当日配送を行う。

価格は1食(弁当)あたり税込450円(価格変更可能)で、支払いは保護者がチャージしたポイントから行なわれる。アプリからの注文は、学校が配布するログインコードをLINEアプリに入力するだけで誰でも開始できる。氏名や連絡先などの個人情報、さらに支払時のカード情報はシステムに保存されないため、保護者としても安心して利用できるとしている。

2021年2月設立のPECOFREEは、福岡を拠点とする給食領域のスタートアップ。「お腹を空かせた(ペコペコ)学生へ自由(フリー)な食事を!」をスローガンに、全国の高等学校を対象とした高校生のための給食(お弁当)モバイルオーダーサービスとして、2021年4月より同サービスを開始した。

リリース後、高校以外にも幼稚園・小中学校、専門学校、大学、塾などから問い合わせがあるという。現在は小学校学童施設、専門学校などを含めて県内外を含め約70校以上の導入が決定しており、学校寮の朝食・夕食の提供や自治体、市の給食への導入検討も進めているそうだ。

【コラム】中南米の食品事情パラドックス

中南米の農場や畑ではたくさんの食糧が生産されているが、それでも4700万人の人々が今も飢餓状態にある。

この地域は果実、野菜、サケ、トウモロコシ、砂糖、コーヒーなど、世界の農水産物輸出量の約4分の1を占めている。農業は中南米の生計にとってなくてはならない部門であり、GDPの平均4.7%を生み出し、地域住民の14%以上の雇用に貢献している。

しかしながら逆説的に、地域の栄養不良の人々の数は毎年増え続けており、過去5年間に約1300万人増加している。汎米保険組織(PAHO)は、2030年までに「飢餓の影響は地域住民6700万人におよび、この数値に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの波及効果は考慮されていません」と推定している。

主要な責任の一端は、食品廃棄にある。世界で生産される食品の3分の1以上が使用されずに廃棄されており、中南米・カリブ海も例外ではない。流通網が改革、強化されれば、この量の廃棄食品は世界で最大20億人に栄養分を与えるのに十分だ。

それには課題がある。中南米の栄養不良対策が成功するためには、アグリテックとフードテックの技術的ソリューションが当地から生まれる必要がある。中南米は膨大な天然資源を有しているだけでなく、中南米の人々ほぼ全員が、何らかの形で食料不安を経験している。問題を理解している人は最適な解決策を構築するのに最適な人たちだ

Nilus(ナイラス)の最高執行責任者、Ady Beitler(アディ・バイトラー)氏が雄弁に語っている。「世界には飢饉を撲滅するために必要な量以上の食糧があります。それは間違いありません。ないのは、最も必要としている人たちにその食糧を届ける流通システムです」。

幸いなこと、中南米はアグリテックやフードテックのソリューションを創り出し、農業効率を高め人々を飢饉から救う創造力の温床でもある。起業家たちは農民が自分たちの役に立つツールを利用し、食品廃棄を減らし植物由来製品を開発する手助けをする。そんなソリューションは、畑から皿まで、食糧生産システムのさまざまな部分に取り組んでいる。

食品廃棄を減らすことが期待されるイノベーションのカテゴリーの1つが、農業従事者の生産性を上げるためのツールだ。例えばブラジル、ミナスジェライス州の会社Sensix(センシックス)は、ドローンと機械学習を使って農地の肥沃度のマップを作っている。チリのスタートアップ、Ciencia Pura(シェンシア・プラ)は、自然光が得られない時、さまざまな成長段階に 合わせた植物に光を当てるソフトウェアを開発している。

コスタリカのスタートアップ、ClearLeaf(クリアリーフ)は、植物の成長を促進する天然由来の殺菌剤を開発した。そしてブラジルのスタートアップ、SensaIoTech(センサイオテック)は、監視して害虫を適時に検出・特定するための情報を収集するプラットフォームを運営している。

サプライチェーンもまた、食品廃棄を防ぎ、その結果温室効果ガス排出量を減らすための重要な位置にいる。

規格外」を理由にある地域で捨てられる食糧は、人々が飢餓に苦しむ別の地域では十分健康的で消費可能だ。アルゼンチンのスタートアップらが流通を改革しようとしているのはそれが理由だ。Nilusは、食べるのは完全に安全だが、いつもなら捨てられてしまう食糧を回収し、低所得地域に割引価格で販売している。Savetic(サベスティック)は、商品を追跡、データ分析して消費者の購買傾向を予測することでスーパーマーケットの食品廃棄を減らす。

もう1つの食品廃棄を減らすカテゴリーは、農業廃棄物の再利用だ。チリのスタートアップ、Fotortec(フォトーテック)は、農業廃棄物をキノコ類に転換して、香料やタンパク質増強剤に使用する。

そして、タンパク質と栄養分を環境に優しい形で提供する植物由来製品を作っている起業家たちもいる。メキシコシティーのPlant Squad(プラント・スクワッド)は、栄養豊富で環境に配慮した植物由来の代替タンパク質製品を開発している。ブラジル、サン・レオポルドのFaba(ファバ)は、ひよこ豆から持続的な方法でタンパク質を抽出している。

中南米の食糧システムは巨大かつ複雑なので、1日で変わることはない。しかし上に挙げたスタートアップ(他にもたくさんいる)は、集団的行動の道を開き、起業家が必要とする経済的支援を巡る認識を高めている。

アグリテックとフードテックの分野は、世界と地域の投資家やエコシステム構築者たちの関心を呼んでいる。もし起業家たちがこうした重要なエコシステム関係者からもっと支援を受けられるようになれば、とてつもない量の食糧廃棄物が減り、起業家たちは中南米に魅力的で持続可能なフードシステムを作るだろう。

編集部注:Daniel Cossío(ダニエル・コッシオ)氏はVillage Capital Latin Americaのリージョナル・ディレクターとして、地域のより公正な未来の構築に取り組んでいる。

画像クレジット:Jose Luis Raota / EyeEm / Getty Images

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(文:Daniel Cossío、翻訳:Nob Takahashi / facebook

健康的なスナック食品のR&Dとテストマーケティングを繰り返すThe Naked Market

職場向けの置き菓子サービス「オフィスグリコ」が全国で利用可能になる「どこでもオフィスグリコ便」の受け付け開始

食品と飲料のスタートアップThe Naked Marketが、2750万ドル(約31億円)のシリーズAを調達した。Integrated Capitalがリードし、同社の健康的な食べ物というブランドイメージの発展に寄与していく。

同社は2019年にHarrison Fugman(ハリソン・ファグマン)氏とAlex Kost(アレックス・コスト)氏とTim Marbach(ティム・マーバッハ)氏が創業し、新しい食品を開発するために、アイデアから市場までを約3カ月で行うエンドツーエンドのインフラを含む「ファストフェイル」手法を生み出した。同社は流通も手がけている。

またThe Machineと呼ばれる独自のデータツールで、Shopifyや顧客からのフィードバック、Amazon、営業や検索エンジンのトレンドであるリテールポイントなどの場所からの1500万ほどのデータポイントを集めて、同社が追究すべき有望なカテゴリーを見つけ出す。加えてまた、直接的な顧客フィードバックのループによりThe Naked Marketは、どの製品が消費者に好まれていて大規模化してよいかを測る。

CEOのFugman(ファグマン)氏は「このポートフォリオアプローチは、データに基づいたフェイルファスト戦略を採用している点が異なります。数年単位ではなく、数カ月単位で食品を特定して市場に投入することができ、製品市場に適合しないブランドがあれば、すぐにシャットダウンすることができます」という。

創業以来、The Naked Marketは5つのブランドをプロデュースした。Flock Chicken Chips、AvoCrazy、Project Breakfast、Beach House Bowlsなどで、最新のブランドであるRob’s Backstage Popcornは、Jonas Brothersとのジョイントベンチャーだ。

シリーズAに参加したのはGreat Oaks Venture CapitalとPacific Tiger Group、Sope Creek Capital、そしてClearcoとなる。The Naked Marketは約3300万ドル(約37億6000万円)を調達したことになるが、それには初期の600万ドル(約6億8000万円)のシードラウンドも含まれている。

Integrated Capitalの常務取締役Jeffrey Yam(ジェフリー・ヤム)氏は以前、香港でファグマン氏とコスト氏に会い、彼らがヤム氏に事業計画をプレゼンしたときにはすでに知己だった。

ヤム氏によると、マーケットの大きさを追求する彼らの手法と、新参のブランドにとって未開拓の分野を探す彼らの手法が気に入っている。また彼らの、データドリブンなやり方も魅力的だという。

「データドリブンで早期に勝者と敗者を見分けるアプローチは彼らを、この市場を追うにふさわしい完璧なプラットフォームにしている。製品を非常に短時間で市場に出せる軽量のインフラストラクチャが、大きな機会を作り出している」とヤム氏はべた褒めだ。

The Naked Marketの創業者アレックス・コスト氏とハリソン・ファグマン氏(画像クレジット:The Naked Market)

スナック食品の市場は2020年で4270億ドル(約48兆6479億円)といわれ、2026年まで年率3%で伸びると予想されている。ファグマン氏によれば、このような数百億〜数千億ドル(数兆〜数十兆円)の巨大市場をテクノロジーの力でディスラプトするのはやりがいがある。彼によると、最近の10年で健康的なスナックが好まれるようになり、彼の会社のような研究開発に投資する企業にチャンスが訪れている。

「既存企業は研究開発に投資していないか、投資していたとしても一桁台の低予算であり、これがチャンスになる。私たちは、マーケットリーダーを追いかけるブランドを構築できるカテゴリーを探しており、市場を特定し、ブランドを構築し、合理的な規模を実現する方程式を解いたと感じています」とさらにファグマン氏は語る。

The Naked Marketの製品は12カ月以上市場にあり、今回の新しい資金で「その炎に油を注ぐ」ことができる、という。つまり既存のブランドを規模拡大し、新製品を作り、そしてそれらブランドのM&Aの機会を追うのだ。

今同社の社員は10名だが、創業時の2年前に比べて3桁成長を遂げている。今度の新しい複数のブランドは2022年前半のローンチを予定している。

販売は目下、オンラインのみだが、今後はリテールへの卸も考えている。すでにパートナー数社が行列に並んでいる。

画像クレジット:The Naked Market

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

代替肉ブームに乗って海藻をハンバーガーにしたAKUAが3.6億円獲得

世界の代替肉の市場規模は、2年前には45億1000万ドル(約5140億円)で、2027年までに倍増すると見込まれており、スタートアップを惹きつけている。AKUA(アクア)のような代替肉テック企業も含まれる。同社は、この新しい業界で、重要な地位を確立することを目指している。

テクノロジージャーナリストだったCourtney Boyd Myers(コートニー・ボイド・マイヤーズ)氏は5年前、Matthew Lebo(マシュー・レボ)氏と共同でAKUAを創業した。マイヤーズ氏は、後世に何かを残し、気候変動を食い止めるという使命を果たせる仕事を探していた。

フードマーケターの父のもとで育ったボイド・マイヤーズ氏は、ファストフードの食生活が人に与える影響を目の当たりにし、地球にも良い影響を与える、より健康的な食品を常に探していたと話す。

AKUAの共同創業者でCEOのコートニー・ボイド・マイヤーズ氏(画像クレジット:AKUA)

創業者らは当初、食品に関して持続可能性に欠ける部分、つまり工場的畜産を再生可能な海洋農業に置き換えることを考えていた。ボイド・マイヤーズ氏は友人からケルプの養殖場を見せてもらう機会があり、行ってみたところ、とても気に入り、それからAKUAが誕生した。

AKUAは米国時間11月5日、Vibrant Venturesのリードによる320万ドル(約3億6000万円)のシードラウンドを発表した。資金調達総額は540万ドル(約6億2000万円)となった。総額には、プレシード投資家やRepublicのキャンペーンからの投資や、共同創業者らの出資が含まれている。

また、今回のラウンドには、Pegasus Sustainable Finance、Halogen Ventures、Fifth Down Capital、Alumni Ventures Group、Karmagawa、ニューイングランド・ペイトリオッツのコーチで元ラインバッカーのJerod Mayo(ジェロッド・マヨ)氏、美容業界の創業者であるCristina Carlino(クリスティーナ・カーリノ)氏、SmartyPantsのCEOであるCourtney Nichols Gould(コートニー・ニコラス・グールド)氏、Sir Kensington’sの共同創業者であるBrandon Child(ブランドン・チャイルド)氏、Gellert Global Groupの社長であるAndy Gellert(アンディ・ジェラート)氏、SOAのSeabird Ventures、Blue Angelsといった面々が参加した。

2019年には、4種類のフレーバーを揃えた最初の商品「Kelp Jerky」を発売した。これはボイド・マイヤーズ氏が、海で養殖されたケルプを新しい形で人々に見てもらう良い試みだと考えた商品だった。

「運を天に任せてというところはありました。ですが、とにかくヘルシーです」と同氏は付け加えた。「パンデミックの際には新製品の開発に戻り、『The Kelp Burger(ケルプバーガー)』を考案しました」。

このバーガーは、ビーガン(完全菜食主義者)、非遺伝子組み換え、大豆フリー、グルテンフリーで、原材料として、海で養殖されたケルプ、クレミニマッシュルーム、エンドウ・プロテイン、黒豆、キヌア、クラッシュ・トマト、複数のスーパーフードが含まれる。

しかし、ジャーキーでは可能だった試食が実施できなかったため、フードクラブを立ち上げ、ハンバーガーのサンプルを送った。最終的には1000人の顧客が登録し、The Kelp Burgerは「英雄的商品」になったとボイド・マイヤーズ氏は話した。

肉の代替品には、化学的な保存料や耳慣れない成分が含まれていることが知られており、より健康的な選択肢を求める目的が損なわれてしまう。最近では、Shiruのように、この問題に注目しているスタートアップもある。同社は、より体に良い肉の接合剤の開発を目指し、1700万ドル(約19億円)を調達した

ボイド・マイヤーズ氏は、AKUAがケルプバーガーの原材料を考える際、そうした主張がヒントになったと話す。ケルプバーガーは15の原材料から成り、すべてが食品または食品由来だ。

「植物由来の食事の第1波は、Boca Burger、豆、豆腐でした」と同氏は付け加えた。「第2波はImpossibleとBeyondです。第3波はホールフードやクリーンな食事への回帰になるでしょう。これまでに存在したものがなければ、私たちは今日ここで、より優れた植物性バーガーを作ることはできなかったと思います」。

AKUAは5月に消費者への直接販売を開始し、現在はアラスカとハワイを除くすべての州に出荷している。ボイド・マイヤーズ氏は、同社には売り上げがあり、リピーターもいるものの、成長の指標を語るには時期尚早だと説明する。しかし、同社は小売店舗にも手を広げており、ニューヨークでは100店以上から予約注文を受けた。今後数カ月のうちに出荷し、続いてサンフランシスコとロサンゼルスの店舗にも出荷を見込む。

同社の品揃えには、ジャーキーやハンバーガーの他に、ケルプパスタもある。今回の資金調達は、代替肉や植物由来のシーフードの分野で、ケルプやそれ以外の食品、例えばレンズ豆などを使った新製品の研究開発に充てる。

同社は、ケルプのひき肉製品をソフトローンチした。2022年第2四半期にはケルプのクラブケーキを発売する予定だとボイド・マイヤーズ氏は話す。また、人材をさらに採用し、販売・マーケティング活動を強化する。

同氏は、Vibrant Venturesの創業者であるJarret Christie(ジャレット・クリスティー)氏と一緒に働けることをうれしく思うと語った。他の創業者から紹介されたという。Vibrant Venturesは、7月に発足したロサンゼルス発の新しい「植物由来志向」のファンドだ。

クリスティー氏はボイド・マイヤーズ氏を知るにつれ、同氏がコミュニティビルダーであると考えるようになった。工場的畜産から脱却し、気候変動と戦い、人々がより低価格で健康的な食品を手に入れられるような運動を起こしていると見ている。

「半年前には誰の目にも留まらなかったケルプですが、今では作物の飼料や包装資材、作物の肥料としても検討されています」とクリスティー氏はいう。「ボイド・マイヤーズ氏はケルプの生産者と手を取り合って働いています。これは始まりに過ぎないと思います」。

画像クレジット:AKUA / AKUA Kelp Burger

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

サッポロビールと日本IBMがAIによる商品開発システムをテスト運用、コンセプトから味を作り出す新たなスキーム目指す

サッポロビールと日本IBMがAIによる商品開発システムをテスト運用、コンセプトから味を作り出す新たな商法開発スキーム目指す

サッポロホールディングスは11月4日、グループ企業のサッポロビール日本IBMが、コンセプトから味を作り出す新たな商法開発スキームを目指すシステムのテスト運用の実施を発表した。2022年の実装を目指すという。

これは、140年を超えるサッポロビールの歴史の中で蓄積された味に関するデータを学習したAIが、目標とする味のコンセプトと「香味プロファイル」に合致するレシピ(推奨配合骨格と推奨香料)を出力するというもの。それにより、RTD(Ready to Drink。栓を開けてすぐに飲める低アルコール飲料)開発のDXを推進し、経験と熟練技術を伝承するという、時間のかかるプロセスを改善するという狙いがある。

同システム構築では、商品開発システムのアルゴリズム作成にあたり、過去のレシピの官能評価データと、採用した香料の特徴に関する情報をAIにまず学習させたという。これに、立案した新商品コンセプトを基に香料の特徴と目標とするプロファイルを入力すると、AIが学習したデータを基に分析を行い、目標とするコンセプト・香味プロファイルに合致するレシピを出力する。

実際に、出力されたレシピで試作を行ったところ、「コンセプトに合致した良好な香味」が得られたという。そのレシピの検討時間は、従来のやり方と比較して50%以下に抑えられた。

このシステムではまた、「従来の手法では実現できなかった新規性」のあるレシピの考案も可能とのことで、つまり「人では思いつかない創造性を伴う商品レシピ」の創出も期待されるとのことだ。

ウミトロンがAIスマート給餌機「UMITORN CELL」を活用し「くら寿司」の養殖事業と協業

愛媛県宇和島市のくら寿司委託生産者に実験導入された「UMITRON CELL」

愛媛県宇和島市のくら寿司委託生産者に実験導入された「UMITRON CELL」

AI・IoT・衛星リモートセンシングなどを駆使して持続可能な水産養殖に取り組むスタートアップ「ウミトロン」は10月28日、くら寿司傘下のKURAおさかなファームと協業して、スマート給餌機「UMITRON CELL」」(ウミトロンセル)を使った養殖事業を支援すると発表した。

UMITRON CELLは、生け簀で泳ぐ魚のリアルタイム動画を見ながら、遠隔で餌やりが行えるスマート給餌機。AIが魚の食欲を判定し、餌の量や与える速度を最適化することで、労働負荷を軽減し、無駄な餌やりをなくして海の環境を守ることができるというもの。従来よりも少ない餌量でも、適切なタイミングで給餌することで、出荷時のサイズや品質を保ちながら短期間で魚を育成できるという。すでに、近畿、四国、九州地域を中心に、真鯛、シマアジ、サーモントラウトなどの養殖に導入されている。

くら寿司が100%出資するKURAおさかなファームは、回転寿司チェーン業界では初となる、水産専門の子会社。自社養殖と委託養殖を行う。委託養殖された魚は、くら寿司が中長期契約で全量を買い取り、店舗で提供される予定だ。「くら寿司の先端技術と水産業界のノウハウを結集して、持続可能で国際競争力のある水産経営モデルの創出」を目指している。

今後100年愛されるブランドを目指す、クイックサービスレストラン「Salted」

ロサンゼルスでデジタルネイティブなクイックサービスレストラン(QSR)のブランドを展開するSaltedが、シリーズAで1600万ドル(約18億2000万円)を獲得し、全国展開を続けていくことになった。

同社は7年前にCEOのJeff Appelbaum(ジェフ・アペルバウム)氏が創業し、約3年前には、健康的なQSRブランドを提供して総年商3250億ドル(約37兆313億円)のフードデリバリー業界の仲間入りをすることになった。アペルバウム氏がTechCrunchに語ったところによると「デジタル時代のYum! Brands(ヤム・ブランズ)」になりたいという。

Saltedはこれまでに、moonbowls、Califlower Pizza、lulubowlsなど6つのブランドを作った。それらは中華のテイクアウトやピザ、サラダなどのブランドだ。

「私たちの技術とSalted Analyticsプロダクトにより、希望どおりの成長率を達成しています。良質な顧客体験も維持されています。自分たちのことをゴーストキッチンとは呼びたくはありません。今後100年間、栄える新興ブランドの創造者です。優れた価値はドミノ・ピザやPanda Expressなどと同様にブランド自体にあり、彼らはブランドを多くの人が愛するスケールにまで育てました」とアペルバウム氏は語る。

このシリーズAはCreadevがリードし、Proof VenturesとB. Riley Financialが参加した。その前には5月に、400万ドル(約4億6000万円)のシードラウンドを調達した。そのときアペルバウム氏は資金を成長資金として使い、今度の資金でもその戦略を継続して「次のチポトレ」を目指すという。

今社員はキッチンのスタッフを含めて200名おり、最近19番目の場所をオープンした。同社がフードを提供している州は、カリフォルニアやイリノイ、オハイオなど計7つの州となる。1つの場所が4つから6つのブランドを提供している。アペルバウム氏の予想では、2022年には50カ所を超えるだろう。

これらの立地は全体としては黒字であり、年商は100万ドル(約1億1000万円)から250万ドル(約2億8000万円)の間だという。

Creadevの投資ディレクターであるAdrien Lejal(エイドリアン・レハル)氏によると、Saltedに惹かれた理由は「より健康的な食品の選択肢に近道をせず、そしてミッションに忠実であることだ。そのことがチームの価値になっている」、という。

彼は同社をおよそ18カ月追ってみて、Aラウンドの調達を始めたとき乗ることに決めた。QSRはCreadev通常の投資分野ではなかったが、食品チェーンには投資しており、また「今後の成長性が大きい」企業にも投資している。Saltedはその興味深い例だ、とレハル氏はいう。

さらにレハル氏は「現在の同社は2018年に創られたものだが、すでに7つの州で営業しており、スケーラビリティと実行能力とクオリティとスピードを備えている。私たちはもっぱら人に投資しますが、ジェフのリーダーシップと経営スタイルは、短期間でマイルストーンに達したやり方を見てもすばらしいと思います」という。

画像クレジット:Salted

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

糖尿病でも諦める必要はない、ヘルシーなアイスクリームを作るN!CK’Sがスナック文化革命のために約113億円調達

スウェーデンのフードテック企業「N!CK’S」は、ヘルシーなアイスクリームを1パイントずつ作ることで、世界に挑もうとしている。

同社は中央ヨーロッパ時間10月28日、シリーズCで1億ドル(約113億円)の資金を調達したと発表した。この資金は、甘味料と原材料を独自にブレンドすることでカロリーを抑え、砂糖を添加しない健康的なスナックやアイスクリーム製品の開発に活用される。

Kinnevik、Ambrosia、Temasekが共同でこのラウンドを主導し、Gullspangが参加した。今回の資金調達により、同社の累計調達額は1億6000万ドル(約182億円)に達したと、N!CK’Sの北米CEOであるCarlos Altschul(カルロス・アルトシュル)氏はTechCrunchに語っている。

N!CK’Sは、2017年に欧州で、創業者で研究開発責任者のNiclas Luthman(ニクラス・ルースマン)氏の母親が糖尿病と診断され、そしてルースマン氏自身が糖尿病予備軍と診断されたことから始まりました、とアルトシュル氏は語った。

「彼は、体に良いソリューションを提供するフードサイエンスがあまりないことを認識していました」と同氏は付け加えた。「彼は、食べ物を変えるのと、食生活を変えるのとでは、食べ物を変える方が簡単だと考えました」。

欧州では同社は、アイスクリーム、スナックバー、コンフェクショナリー製品を製造している。しかし、N!CK’Sは「文化を変えるためのプラットフォーム」であるスナックブランドだと、アルトシュル氏は語る。また、同社の研究開発に根ざしたイノベーションと素材が、競合他社との差別化につながっているという。

この2年間、同社は忙しい日々を過ごしてきた。2019年末、N!CK’Sはアイスクリームで米国に進出し、そのカテゴリーでは1店舗あたりのセールス速度でトップに立っている、と同氏は付け加えた。また、Perfect Day独自の動物由来成分を含まない乳たんぱく質と植物性代替脂肪を使用した、ヴィーガン乳製品ラインを発売した。

同社が2020年にスタートした直販(D2C)事業は、7月以降、D2Cアイスクリームデリバリー分野でトップの座を維持していると、アルトシュル氏は述べている。2021年、同社はケトプロテインバーのラインを立ち上げた。まずはD2CとAmazon(アマゾン)のチャネルで販売開始し、年末までに小売店に展開する予定だ。

2020年から2021年にかけて、N!CK’Sを取り扱う小売店は米国では4500店舗から6700店舗に拡大し、英国ではWHSmithとの提携により拡大した。

今回の資金調達によりN!CK’Sは、欧米での店舗数の倍増、人材の増員、マーケティング、新製品の発売に向けた研究開発への投資など、同社の目標を加速させていきたいと考えている。

Kinnevikの投資ディレクターであるMagnus Jakobson(マグナス・ヤコブソン)氏は、彼は数年前から食品分野への投資を行っており、現在起こっている持続可能性と健康という複数の追い風が需要を喚起し、川上でのブランド構築能力があるため、この業界は魅力的であると述べている。

同氏は今を「エキサイティングな時期」と考えており、特に最初は自力で実現したN!CK’Sのこれまでの牽引力は「印象的」であり、その戦略は現在、他の食品技術パートナーを引き付けている、という。

ヤコブソン氏はこう述べた。「人々の生活や食べ物の消費の仕方は変化しており、それが新しいブランドの構築を可能にしています。Oatly(オートリー)、Beyond(ビヨンドミート)、Impossible(インポッシブルフーズ)といった企業が業界をリードしてきましたが、今では技術面での躍進や、スタンドアロンブランドで消費者にアプローチする新しい方法が見られるようになりました。中でもN!CK’Sは非常にエキサイティングなもので、業界の黎明期にあっても期待されています」。

画像クレジット:Nick’s

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

より持続可能な、カカオをまったく含まないチョコレートを作る独QOAが約6.8億円のシード調達

ミュンヘンを拠点とするQOAは、100%カカオフリーのチョコレート製品をいち早く市場に投入するための準備を進めている。


QOAはこのたび、Cherry Venturesがリードし、Fifty Years、World Fund、Nucleus Capital、Trellis Road、Pioneer Fund、Tet Venturesが参加した投資ラウンドで、600万ドル(約6億8000万円)のシード資金を調達した。

同社は2021年、Sara Marquart(サラ・マルカート)博士とMaximilian Marquart(マクシミリアン・マルカート)博士の姉弟チームによって設立された。サラ・マルカート博士は風味形成を専門とする食品化学者であり、マックス・マルカート博士は材料科学者で、これまで3度の起業を経験している。

QOAの製品テストキット(画像クレジット:QOA)

世界のチョコレート菓子業界は、2020年には2080億ドル(約23兆6700億円)を超える規模になっており、米国の製菓業界では最大の部類に入る。世界のカカオ供給の3分の2は西アフリカ産だが、危機に瀕しており、これが2人のマルカート博士が同業界に注力することにした理由の1つだ。現在、病原菌や気候変動により、カカオ供給の最大50%が危険にさらされており、カカオは森林破壊強制的な児童労働の一因となっている。

マックス博士は、TechCrunchにこう語った。「我々の食生活によって、食料供給が脅かされています。私たちはチョコレートが大好きですが、持続可能性のリスクがあることに気づき、将来も食べられるように何とかしたいと思ったのです」。

California CulturedVoyager Foodsなどの企業も、さまざまなアプローチでカカオを使わないチョコレートを作っている。一方、QOAは、他の食品製造プロセスで発生する天然の副産物を基材とする発酵プロセスを開発した。酵母やその他の微生物、独自のフレーバー形成を使って、人工添加物を一切使用せずに、チョコレートの食感と風味を再現するヴィーガン製品を開発したとのこと。

この発酵プロセスにより、2035年までに生産規模を拡大し、従来のチョコレートと同じかそれ以下の価格で製品を提供できるようになるという。実際、マックス博士は、将来のチョコレート市場は、通常のカカオを使った高級で高価な製品と、QOAの製品の2本柱になるだろうと予測している。

QOAは、2021年のY Combinator(Yコンビネータ)に参加し、製品テストキットを稼動させて、9つのオプションを試せるようにした。マックス博士は2022年にQOAの最初の製品を市場に投入することを期待しており、今回の資金調達は、スイスでスタッフ採用中の施設に加え、ミュンヘンに最初のパイロット生産施設を建設するために使用される。

現在、最初の企業間取引の顧客と交渉中で、近々小規模な契約を締結する予定だとマックス博士は述べている。

「その後、より大規模な生産ラインを構築するために、シリーズAの獲得を目指します」と同氏は付け加えた。

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

原材料欄をスマホで撮影するだけで食材やメニューのアレルギー情報を一元管理できる「アレルギー管理サービス」アプリ

飲食店などでのアレルギー対応をサポートしているCAN EATは10月25日、スマートフォンで原材料ラベルを撮影するだけで食材やメニューのアレルギー情報を一元管理できる「アレルギー管理サービス」を開始したと発表した。今後、アプリ上で登録した、メニューごとのアレルギー情報を印刷・ダウンロードできる機能を追加予定。

アレルギー管理サービスは、飲食店や宿泊施設などがアレルギーについての情報を正しく把握し適切な表示・説明を行いやすくするサービス。同社が従来提供していた「アレルギー表作成代行サービス」を機能性の高いアプリに進化させたもので、日替わりメニューといった素早く情報の確認が必要なメニューにも対応可能になった。

具体的には、原材料ラベルをスマートフォンで撮影し送信するだけで、食品を構成する原材料とどういったアレルギー物質を含んでいるかを判定してくれるサービス。判定はCAN EAT独自の自動アレルギー判定エンジンと専門家による目視チェックで行なわれ、結果をアプリに通知する。

また、アレルギー判定を行なった加工品や生鮮品の情報を組み合わせてメニューを登録すれば、日替わり・週替わりなども含めたすべてのメニューのアレルギー情報を管理し確認できるようになる。

登録したメニューに対しては、特定のアレルギー物質を選択しそのアレルギー物質を含むまたは含まないメニューを検索することも可能。これはマルチアレルギーを持った飲食客に対応する時に役立つとしている。

活用例としては、レストラン・カフェ・ホテルなどの飲食品を提供する店のほか、修学旅行や学校・保育園での給食、パン屋や惣菜店など食品販売店までも含む幅広い状況でアレルギー管理を想定している。さらに百貨店やサービスエリアなど施設のテナントの品質管理や衛生管理、品質保証部の業務効率化も図れるという。

アプリの利用に関しては、事前に管理サービスへの利用者登録が必要。無料トライアルや費用・契約に関する相談は「お問い合わせフォーム」から受け付けている。

2019年4月設立のCAN EATは、「すべての人の食事をおいしく・楽しく・健康的にする」をミッションに掲げている。アレルギー管理サービスのほか、食べられないものがある人の外食を助けるサービス「CAN EAT」、QRコードを元に食事制限情報をゲストから手軽に収集できる「アレルギーヒアリングサービス」などを提供している。

チーズを愛するStockeld Dreamery、豆類からチーズを作るために約22億円調達

チーズは一度ハマると虜になる食べ物の1つだ。また、ミルク以外のものから作るのが最も難しい食べ物の1つでもある。Stockeld Dreamery(ストッケルド・ドリーマリー)は、その難題に挑戦しただけでなく、その成果として製品を生み出した。

9月上旬、ストックホルムを拠点とする同社は、Astanor Ventures(アスタノール・ベンチャーズ)とNorthzone(ノースゾーン)が共同で実施したシリーズAラウンドで2000万ドル(約22億円)を調達したことを発表した。創業者のSorosh Tavakoli(ソロシュ・トヴァコリ)氏がTechCrunchに語ったところによると、このラウンドは「植物由来の代替品を扱う欧州のスタートアップとしては過去最大のシリーズAラウンド」であるとのことで、Gullspång Re:food(グルスポング・リフード)、Eurazeo(ユーラゼオ)、Norrsken VC(ノルフェンVC)、Edastra(エダストラ)、Trellis Road(トレリスロード)、およびエンジェル投資家のDavid Frenkiel(デイヴィド・フレンキエル)氏とAlexander Ljung(アレキサンダー・リュング)氏が参加した。

トヴァコリ氏は以前、動画広告のスタートアップ「Videoplaza(ビデオプラザ)」を設立し、2014年にOoyala(ウーヤラ)に売却した。次のプロジェクトを探していた同氏は、自己分析を重ねた結果、次の会社では環境に好影響を与えるようなことをしたいと考えていたという。そして、行き着いたのが、食の世界、特に植物性食品の世界だ。

「動物に頼らないことは、工場式農場はもちろん、土地、水、温室効果ガスにおいて大きなメリットがある」と同氏はTechCrunchに語る。そして「チーズの影響が最も大きいことが分かった。しかし、人々は食生活を変えたいと思っていても、いざ代替品を試してみると、それが気に入らない」と続ける。

そこでトヴァコリ氏は、科学に精通する共同創業者を探し、バイオテクノロジーと食品科学をバックグラウンドに持つAnja Leissner(アンジャ・ライスナー)氏と出会った。そして2019年、両氏はストッケルドをスタートさせた。

ノースゾーンのジェネラルパートナーでありビデオプラザへの出資者でもあったPär-Jörgen Pärson(パー・ヨルゲン・パーソン)氏は、ストッケルド・ドリーマリーは「最高の技術と最高の科学がペアになった」結果であり、トヴァコリ氏とライスナー氏は「科学的な知識と未来のビジョンに基づく商業的なアプリケーションを提案しており、ユニークではないにしても、フードテックの分野では非常に珍しい存在だ」とメールで述べている。

同社の最初の製品であるStockeld Chunk(ストッケルド・チャンク)が5月に発売されたが、そこにはいくつもの挑戦や試練があった。トヴァコリ氏によると、製品といえる「チーズ」にたどり着くまでにチームは1000回以上のテストを繰り返し、納得できる配合を見つけ出したという。

植物由来のミルクのカテゴリーは、そのほとんどが成功しているが、それは必ずしも植物性だからという理由ではなく、美味しいからだと同氏は説明する。肉のカテゴリーでもイノベーションは進んでいるが、チーズはまだ難しいようだ。

「通常、植物由来のチーズは、でんぷんとココナッツオイルから作られており、その匂いやゴムのような口当たりでは食を楽しむことはできないだろう。それに、タンパク質も含まれていない」とトヴァコリ氏は付け加える。

ストッケルドは、タンパク質を主成分としたいと考えていたため、チャンクは発酵させた豆類(今回はエンドウ豆とそら豆)を使用している。その結果、フェタチーズのような見た目と食感を実現したことに加え、タンパク質を13%含んでいる。

チャンクは当初、スウェーデンのレストランやシェフを対象に発売された。その他にも、塗るチーズやとろけるチーズなどの製品を開発中であり、トヴァコリ氏は今後1年以内に市場に投入したいとしている。とろけるチーズは、作るのが最も難しいチーズの1つだが、成功すればピザの材料としての可能性が広がると同氏はいう。

今回のラウンドを含め、ストッケルドはこれまでに2400万ドル(約26億円)を超える資金を調達している。4人でスタートした同社は、現在23人にまで成長しており、トヴァコリ氏は来年末までにそれを50人にする意向だ。

今回の資金調達により、同社は研究開発に注力するとして、パイロットプラントを建設している。また、来年にはストックホルムの新本社ビルに移転する予定だ。さらに同社は、スウェーデン国外への展開や米国への進出も視野に入れている。

トヴァコリ氏は「当社には、当社がやろうとしていることを理解してくれる意欲的な投資家がいる。大きく考え、それに応じて計画を立てるチャンスがある。当社は、豆類をタンパク質に利用するという意味では、独自のカテゴリーに属していると思う。豆類を発酵させた第3のカテゴリーのようなもので、これをどこまで進化させることができるか、とても楽しみにしている」と述べる。

アスタノール・ベンチャーズの共同設立者兼パートナーのEric Archambeau(エリック・アーシャンボー)氏も、そのような投資家の1人だ。同氏もトヴァコリ氏とは前の会社で知り合い「植物由来の次世代のチーズ」を作るというアイデアを聞かされたとき、興味を持ったとメールで語っている。

「ストッケルドのチームは、設立当初から、本当に革命的でおいしい製品を作ろうとする勤勉さ、決断力、コミットメントを持ち、それに感銘を受けてきた。彼らは型にはまらない製品を作り、世界のチーズ業界の新しい未来に向けて道を切り開いたのだ」とアーシャンボー氏は語った。

画像クレジット:Stockeld Dreamery

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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

コロンビアのクラウドキッチンFoodologyが約17億円調達、中南米全体へサービス拡大

FoodologyのCEOで共同創業者のダニエラ・イスキエルド氏と共同創業者フアン・ギレルモ・アズエロ(画像クレジット:Foodology)

Foodologyはクラウドキッチンとバーチャルレストランをベースとするレストランブランドで、2019年以降、コロンビアとメキシコで急伸している。今回新たな資金を得たことにより、ラテンアメリカ全体に拡大することを希望している。

ボゴタを拠点とする同社はこのほど、Andreessen HorowitzとBase PartnersがリードするシリーズAのラウンドで1500万ドル(約17億円)を調達した。これまでの投資家であるKayyak VenturesとJaguar Ventures(今はWollef)も参加し、またInstacartの社長Nilam Ganenthiran(ニラム・ガネンティラン)氏やKavakのCEOであるCarlos Garcia(カルロス・ガルシア)氏、UaláのCEOであるPierpaolo Barbieri(ピエルパオロ・バルビエリ)氏、Burger Kingの元会長Dick Boyce(ディック・ボイス)氏、そしてMeramaのCEOであるSujay Tyle(スジェイ・タイル)氏らのエンジェルたちも投資に加わった。これでFoodologyの調達総額は2000万ドル(約22億7000万円)を超えた。

同社を創業したCEOのDaniela Izquierdo(ダニエラ・イスキエルド)氏とJuan Guillermo Azuero(フアン・ギレルモ・アズエロ)氏は、ハーバード・ビジネス・スクールのレストラン産業コースで出会った。イスキエルド氏は、元々料理が大好きだったので、それをビジネスにしたいと願った。

「リスクの多い業界で、破産や閉店が頻繁に起こります。小さな店でさえ、開店までに相当の資本が必要です。私たちはテクノロジーとデータの力をもっと効率的に利用して、来たるべきバーチャルの世界に備えたいと考えています。バーチャルレストランを、フードデリバリーが支える。これまでは、デリバリーの顧客に奉仕するために、レストランはまったく何も変化しませんでした」という。

さらにアズエロ氏は「フードデリバリーは顧客にとってまあまあの体験であり、すばらしい食体験ではありませんでした」という。食べ物のパッケージングも、あまり良いものではない。Foodologyは、それを変えようとしている。彼らが作ったモデルであれば、レストランのラテンアメリカ全域への規模拡大が短期間ででき、また顧客が喜ぶ食事を配達できる。

そのためにまずFoodologyは、ユーザーの好みに関するデータを収集する。そしてそれを近隣の食べ物の既存の選択肢と対照し、オリジナルの料理を作り、そしてデリバリーに載せる。

イスキエルド氏によると、同社のクラウドキッチンを通常は7つから10のレストランが利用し、各自がよく売れる料理を研究開発し、シェフたちのチームとともにメニューを創造する。

Foodologyのキッチンは現在、コロンビアの6都市に計20、メキシコに10あり、企業従業員は60名、キッチンの労働者は300名を超えている。コロンビアでは、毎月のオーダーが10万件で、総オーダー数は100万のマイルストーンを超えたばかりだ。イスキエルド氏の計画ではさらに6つのキッチンを開き、また今回の資金で2022年にブラジルとペルーにも進出したい。

ラテンアメリカのフードサービス業界は2020年の推計値で2640億ドル(約29兆9820億円)という規模だ。その成長に乗り遅れないためにはキッチンの数を増やすとともに、製品開発にも投資して売上を月額で50%上げたい。そのためにはメキシコでその数を増やすこと、そして新市場の開拓が重要だ。アズエロ氏によると、目標は500のキッチンをサポートすることだ。

「現在、は多くの人にバーチャルレストラン求められているが、この地域では大きなモデルがまだほとんどありません。ラテンアメリカでは私たちが、圧倒的に最大のプレイヤーなのです」とイスキエルド氏はいう。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

食べチョクのビビッドガーデンが大阪府と事業連携協定、若手生産者のネット販売による成功事例を創出

食べチョクのビビッドガーデンが大阪府と事業連携協定、若手生産者のネット販売による成功事例を創出

国内産直通販サイト「食べチョク」(Android版iOS版)を運営するビビッドガーデンは10月19日、大阪府と事業連携協定を10月25日に締結すると発表した。大阪産の食材「大阪産」(おおさかもん)の全国への販売促進、次世代をになう若手生産者のインターネット販売を通じた成功事例の創出を行うという。

大阪産とは、大阪府域で栽培・生産される農産物、畜産物、林産物、水産物(一次産品)と、それらを原材料として使用した加工品を指す。

農林水産省「平成31年農業構造動態調査結果」(2019年)によると、基幹的農業従事者の全国平均年齢が66.8歳なのに対して、大阪府の平均年齢は69.8歳と3歳平均年齢が高いという。ただしその一方、大阪府では毎年一定数の若手の新規就農者・親元新規就農者が生まれていることから、その支援を強化するために事業連携協定を締結することとなった。

今回の協定により同社は、大阪産の魅力を全国に発信し、大阪農業の持続的な成長・発展に向けたプロモーション、また生産者を結びつけた販売促進などを行う。食べチョク内で大阪産の商品特集を設置するという。

また府内の若手農業者を中心に、食べチョクでの販売に関するノウハウやヒット商品作りの支援などを行う。例えば、府内生産者への出品支援、SNS・メルマガなどの活用、先進事例生産者の登壇イベント開催、顧客から意見のフィードバックと常時サポートなどを予定している。

さらに、農業体験機会・援農活動の創出も実施。農業の生産現場において一般消費者が体験する機会や、援農する機会を創出し、大阪農業のファン作りと、新たな担い手の創出を行う。大阪府の都市農業の特徴を最大限に活かし、移動コストが比較的かからず消費者に農を体験する場を提供する。

溶かして楽しむ冷凍コーヒーのCometeerが約39.4億円を調達し、本格的に製品販売を開始

マサチューセッツ州グロスターに本社を置く「Cometeer(コメテア)」は、設立から9年目を迎えた。この間、同社はコーヒー業界に新風を吹き込むために、マッドサイエンティストのようなコーヒー科学者、機器、プロセスを構築してきた。元冷凍魚介食品工場を拠点とする同社は、瞬間冷凍する小さな「パック」で、豆の風味を損なわないようにカプセルに封入するため、数百万ドル(数億円)をかけて独自の生産ラインを構築している。これで、10倍に抽出されたコーヒーが、すぐに楽しめる。

豆を選ぶ。焙煎する。豆を挽く。水を入れる。飲む。本来コーヒーは複雑である必要はないのだが、毎年十数社の新しいスタートアップが、さえない無意味なテクノロジージャーナリストに、コーヒーの味とカフェインを注入すべく新しく革新的な方法を見つけようと躍起になっている。それらのスタートアップ企業の大半は、年末に「各社の現在の状況」記事を書こうと思う頃には消滅しているので、安心して無視していい。しかし、ひと握りの投資家が総額1億ドル(約114億円)をスタートアップ企業に投じるとなれば、どんなにコーヒーを飲んでいない記者でも、しぶしぶ爪楊枝を突っ込んでまぶたを開き、注意を払ったほうがいいだろう。

前回のラウンドは5000万ドル(約57億円)で、2020年の4月にクローズした。今回の資金調達では、D1 Capital(D1キャピタル)、Elephant(エレファント)、Tao Capital(タオ・キャピタル)、Addition Ventures(アディション・ベンチャーズ)、Avenir(アベニール)、Greycroft Partners(グレイクロフト・パートナーズ)、TQ Ventures(TQベンチャーズ)に加え、コーヒーに精通したエンジェル投資家から3500万ドル(約39億9400万円)を調達した。同社は、今回の資金調達ラウンドの評価額を公表していない。

ポッドを淹れるには、お湯または水を入れたカップにパックを入れて「溶かし」、少し待てば、新鮮なコーヒーを飲むことができる。必要なのは水、もしホットコーヒーを飲みたいのであれば、その水を温める道具だけだ。カプセルは、冷凍庫で保管すれば3年間、冷蔵庫で保管すれば3日間は新鮮な状態を保つことができる。

Cometeerのカプセルは、味を保つために液体窒素で瞬間冷凍されている。冷凍庫に入れておけば、約3カ月間鮮度を保つことができる。(画像クレジット:Cometeer)

コーヒーは、すべて豆から始まる。

「私たちの焙煎パートナーは、Cometeerのバックボーンです。優れた味の焙煎と同様に重要なのは、コーヒー農家を支援し、フェアトレードの最低価格の何倍もの公正な価格で直接取引して購入することを決めているということです」と、Cometeerの共同設立者兼CEOのMatt Roberts(マット・ロバーツ)氏は説明する。「私たちは、ユニークな背景、調達技術、焙煎スタイルを持つ、多様な焙煎パートナーのグループを構築することに注力しています。これらのパートナーとともに、コーヒー業界の脱コモディティ化をサポートしていきたいと考えています」。

Cometeerは、過去数年間で非常に大きな成長を遂げており、前回の資金調達時には12人だった従業員が120人にまで増えている。今のところ、同社は消費者への直接販売に注力している。

「今は消費者向けのサービスに注力していますが、ボストンにあるGeorge Howell(ジョージ・ハウエル)カフェでオンプレミス環境でのサービスを試したり、企業へのギフトを中心としたB2Bのコーヒーソリューションを試験的に行っています」とロバーツ氏は説明する。

同社は本日、ウェイティングリストを閉じ、クレジットカードを持っていてコーヒーテクノロジーの新境地を求める人なら誰でもこのコーヒーを入手できるようにした。カプセルは2個入りで、価格は約2ドル(約220円)だ。基本出荷量はカプセル32個で64ドル(約7300円)となる。

画像クレジット:Cometeer 

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Akihito Mizukoshi)

電子レンジで温めるだけの植物由来食品を宅配するAllplantsが59億円を調達

ベジタリアン向け食事宅配サービスを提供するAllplants(オールプランツ)は、Draper EspritがリードするシリーズBラウンドで3800万ポンド(約59億円)を調達した。英国の消費者に、家で温める、植物由来のおいしい食事を提供することを目指す。

今回のシリーズBラウンドの規模は、ヨーロッパの植物由来食品の企業としては過去最大とのことだ。

ロンドンを拠点とするAllplantsは、2018年にシリーズAで750万ドル(約8億5500万円)を、またエクイティ・クラウドファンディング・プラットフォームのSeedrsを通じても資金を調達している。

同社によると、2017年の創業以来、収益は毎年2倍以上で推移しているという。

シリーズBに参加した他の新規投資家には「パーパス・ドリブン」の消費財ファンドThe Craftory、シリコンバレーを拠点とするTriplePoint Capitalに加え、イングランドの国際的なサッカー選手であるChris Smalling(クリス・スモーリング)氏とKieran Gibbs(キーラン・ギブス)氏、英国の独立系スナック菓子会社Proper Snacksの創業者でMBE(大英勲章第5位)のCassandra Stavrou(カサンドラ・スタブロウ)氏などがいる。

また、既存の投資家からFelix Capital(オートミールベースの代替ミルク「Oatly」を開発したベンチャー企業)とOctopus Venturesも参加した。

近年、欧米では、食肉生産にともなう気候変動への懸念が高まり、植物由来の代替品への関心が高まっている。

さまざまなスタートアップが肉に代わる便利な製品を幅広く開発してきた。Allplantsのような消費者に直接届ける食事や、Heuraのような植物由来の肉代替製品などの選択肢がそうだ。後者の製品はAllplantsの食品の原材料になるかもしれない。

関連記事:スペインの100%植物由来チキンのスタートアップ「Heura」が英国に進出

Alplantsは「植物由来の食品に興味がある人々」、つまりフレキシタリアンの消費者市場が急速に拡大していることが同社の成長要因だと分析する。同社によると、現在、英国だけで100億ポンド(約1兆6000億円)、先進国市場では年間1000億ポンド(約16兆円)の市場規模があるという。今のところ英国のみの展開だが、同社のウェブサイトには、世界進出も視野に入れているとある。

今回の資金は、ロンドン北部のウォルサムストウにある植物由来食品のキッチンを現在の6倍に拡張するために使用するという。急増する国内需要に対応する。

現在、同社のキッチンでは140人のシェフが24時間体制で働く。冷凍された状態で消費者に届けられるため、従来の電子レンジ食品と同様、食べる前にオーブンや電子レンジで再加熱する必要がある。

現在のメニューは、朝食、昼食、スナック、おやつ、夕食をカバーし、カレーやチリ、パスタやリゾットなど、さまざまな種類の世界の料理を提供している。肉の代替品としてはビーガンのタンパク源となる、ビーガンチーズ、豆腐、豆、ビーガンチョリソーなどが含まれている。

ユーザーは、宅配用に用意された料理の中から、1人分または2人分の量を選び、6食入りの箱を作る。

また、好みに合わせて「肉の代替品」のみの食事(いつも肉の塊がお皿にのっていることに慣れている人向け)や「最もチーズの効いた」料理(100%ビーガンのチーズを使用)のセレクションなど、バラエティに富むセットを販売している。

同社は、肉を使った食事を植物由来の食品に変えることが、環境への負荷を減らす最も効果的な方法の1つだと指摘する。植物由来の食事を週に1日増やすだけで、英国の平均的な消費者の食品からの二酸化炭素排出量を年間10%以上削減できるとしている。

さらに、シリーズBにおける計画として、他の販売チャネルへ迅速に進出する能力を構築するという。つまり長期的には、スーパーマーケットなどの小売店を含めたマルチチャネルでの販売を視野に入れているようだ。

今回の資金調達は、チームの大幅な拡大にも充てられる。料理学校で研修を受けたシェフをはじめ、オペレーション、イノベーション、マーケティング、テクノロジーなど、ビジネスのあらゆる機能に関して採用を予定している。

また、シリーズBの計画には、拡大する顧客層の好みに合わせて食事の範囲を広げることや、より幅広いカテゴリーの製品を開発することなどが含まれる。

Allplantsの創業者兼CEOであるJonathan Petrides(ジョナサン・ペトリデス)氏は、声明の中で次のように述べた。「我々が料理に関わり始めてからの5年間で、植物由来食品の需要が爆発的に増加していることを実感しています。我々には、このムーブメントをより多くの人々のキッチンに届けるためのエキサイティングな計画が多数あり、今回の投資はそれを可能にしてくれます」。

「食品の選択は非常に個人的なものです。ですから、品質と味は常に我々の最優先事項です。それが我々のすべての活動の原動力であり、顧客が妥協することなく、より多くの植物を食生活に取り入れることを可能にしています」とペトリデス氏は付け加えた。「我々は今、より多くのおいしいレシピや製品を想像して創造し、そして提供することができます。そして最終的には、植物由来の生活が我々の地球の未来にもたらす変革を加速させることができるのです」。

Draper EspritのパートナーであるNicola McClafferty(ニコラ・マクラファティ)氏は投資にともなう声明で次のように述べた。「今回の投資は、Draper Espritにとって非常にエキサイティングです。Allplantsは、今日の食品消費において最も急速に成長している複数の分野が交差する場所で、ユニークな位置にいます。消費者にとって非常に便利な方法で、味、持続性、栄養に配慮しながら高品質の植物性食品を提供しています」。

「ペトリデス氏と彼のチームは、非常に明確な価値観を持ち、信じられないほど力強い成長と忠実な顧客ベースを持ちあわせた、すばらしいブランドを確立しています。Allplantsは、消費者への直販ビジネスを拡大すると同時に、英国内および海外の新しいチャネルにも進出する可能性を秘めています。植物由来の食品に興味がある消費者に栄養、味、利便性を提供する、世界的なブランドになれると信じています」。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

マクナルドが米国の一部都市でBeyond Meatの植物由来肉を使ったMcPlantバーガーを発売

2021年2月にBeyond Meatとの契約を発表したMcDonald’s(マクドナルド)は、米国時間10月14日の朝、植物由来のBeyond Meatを使ったバーガーの販売を2021年11月から一部店舗で開始すると発表した。

11月3日に登場するMcPlantバーガーは、同社の8つの店舗(テキサス州アービングとキャロルトン、アイオワ州シーダーフォールズ、ルイジアナ州ジェニングスとレイクチャールズ、そしてカリフォルニア州エルセグンドとマンハッタンビーチなど)で販売される。

いまだ初期段階であるため、マクドナルドは今回の販売をBeyond製パテの「テスト」と呼ぶ。その原料は、豆や米、ポテトなどの植物だ。2021年10月に同様のテストをスウェーデンやデンマーク、オランダ、オーストリア、英国 / アイルランドなどで行っている。

マクドナルドによると「そのパテは、トマトとレタス、ピクルス、玉ねぎ、マヨネーズ、ケチャップ、マスタード、そしてアメリカンチーズのスライスと一緒に挟まれる。味はマクドナルドの象徴的なものです。なぜならそれはマクドナルドのバーガーだからだ」。この最後の文章は、人によって反応がまちまちかもしれない。

同社によると、今後のMcPlantには植物由来のチキンやポーク、それに卵も使っていきたいという。

Beyond Meatは2021年2月に、Yum Brandsと提携している。同社の傘下にはKFCやPizza Hut、Taco Bellなどがある。競合するImpossible Foodsは、Burger KingやStarbucks、 White Castleなどと契約している。

画像クレジット:McDonald’s

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

さつまいも「紅天使」のポテトかいつかの選別ラインで活躍、ロビットのAI外観検査ソリューションTES RAY for food & agri

ロビットのAI外観検査ソリューションTES RAY for food & agriがさつまいも専門大手ポテトかいつか選別ラインで本格稼働

ロボット・精密機器・ソフトウェアの開発販売を行うロビットは10月12日、AI外観検査ソリューション「TESRAY for food & agri」が、さつまいも専門大手「ポテトかいつか」に導入され、選別ラインで本格稼働を開始したことを発表した。

AI外観検査ソリューション「TESRAY」は、独自のハードウェア技術とAI技術を活用した画像処理アルゴリズムにより、外観検査を自動化するシステム。製造業をはじめ、幅広い産業に対応できるほか、食品や農作物分野への導入も拡大している。食品分野の選別工程に必要となるAI・撮像・ロボティクスといった技術を自社ですべて保有しており、「高精度の異常検出を瞬時に行い、インラインで全数検査を実現」できるという。

ポテトかいつかは、オリジナルブランド芋の「紅天使」(ベニテンシ)を生産するさつまいも専門の食品企業。約600軒の農家から仕入れたさつまいもの貯蔵・選別・加工・出荷を行っている。選別においては、さつまいもの傷、カビ、虫食いなどの外観不良の検出と、大きさや形などを加味した等級付けも行われる。外観不良の検査項目は大変に多く、これまで手作業に頼ってきたが、生産量の増加に人手が追いつかない状態が続いていた。

AIによる外観検査不検出例。左から皮むけ、くびれ、腐敗

AIによる外観検査不検出例。左から皮むけ、くびれ、腐敗

TESRAYソリューションにより、さつまいもに最適化したラインを専用設計で開発したところ、洗浄後の搬送・計量・撮像・AIによる選別判定・選別までが自動化できた。また、多面撮像機構によるさつまいもの全周囲検査、すべての外観不良項目の検査も実現された。これにより、品質の安定化に加え、従業員の負担軽減による人材の定着化も実現できたとのことだ。

さつまいも「紅天使」のポテトかいつか選別ラインで活躍、ロビットのAI外観検査ソリューションTES RAY for food & agri

TESRAYソリューションの装置画像。左はコンベアへの搬送の様子。右が装置の撮像部

さつまいも「紅天使」のポテトかいつか選別ラインで活躍、ロビットのAI外観検査ソリューションTES RAY for food & agri

画像左は選別風景と判定結果。右は多面撮像の様子

NTTテクノクロスが撮影するだけで繁殖に適した母豚の体重管理ができるシステムを販売

NTTテクノクロスが撮影するだけで繁殖に適した母豚の体重管理ができるシステムを販売

NTTテクノクロスは10月11日、母豚(ぼとん)を撮影するだけで繁殖に最適な増体(体重の増減)を管理できるシステム「any-condition」(エニコンディション)を2021年10月26日から発売する。

豚の繁殖においては、適正な給餌と給水の管理による母豚の増体管理が決め手となる。しかし、母豚は通常、体重が200kgを超えるため、体重測定には大変なコストと労力を要する。専用の体重計も高価なため、多くの養豚業者では目視や触診による推定や、超音波による背脂肪厚の測定などが採り入れられているが、いずれも熟練の技術が求められ、誤差も生じやすい。

NTTテクノクロスは、山形県養豚研究所と伊藤忠飼料との2年間の共同研究により、母豚の胸囲が増体変化に大きく関わっていることを突き止めた。また、NTTテクノクロスが開発した、撮影するだけで肉豚の体重が推定できる小型端末「デジタル目勘(めかん)」の技術を応用し、「any-condition」を開発した。

「any-condition」の主な特徴は次の3つ。

  • 非接触で簡単計測:母豚の背中を撮影し胸囲を推定。従来の測定作業と比べて手軽に素早く計測ができる
  • 給餌管理に活用:推定した胸囲から母豚の太り具合を自動評価。増体推移はグラフでも確認でき、熟練の知識や勘がなくても給餌量の調整が可能。繁殖に最適な増体管理を実現し、飼料コストの最適化も図れる
  • 繁殖成績の見える化・分析に活用:データの蓄積により品種や飼養環境に合わせた農場ごとの増体推移曲線を作成可能。増体変化と繁殖成績の紐づけにより、繁殖傾向の見える化や分析が行え、繁殖成績の改善をサポートする

導入価格は母豚の頭数によるが、100頭以上の場合、初期導入費は7万2000円から。年間ライセンス料は2万8000円から。1000頭以上の場合は、初期導入費が60万円。年間ライセンス料は24万円となっている。これとは別に、スマートフォン、深度センサーなどの機材一式(10万円程度)が必要となる。

Atlantic Labsが「気候」と「健康」に取り組む約130億円規模のフードテックファンドFoodLabsを設立

FoodLabsのクリストフ・F・メア氏とパトリック・フーバー氏(画像クレジット:Viktor Strasse)

テック業界が気候と持続可能性に軸足を移しつつあることを示す最新の兆候として、長年のテック投資家であるChristophe F. Maire(クリストフ・F・メア)氏が率いるベルリンのファンドAtlantic Labs(アトランティック・ラボ)の分社であるAtlantic Food Labs(アトランティック・フード・ラボ)が、食品、健康、持続可能性に関わるスタートアップに投資する1億ユーロ(約130億円)規模のフードテック専用ファンド「FoodLabs(フードラボ)」として再出発することとなった。

2016年に設立されたAtlantic Food Labsは、Infarm.com(インファーム.com)、SanityGroup.com(サニティグループ.com)、Formo.bio(フォルモド.bio)、Mushlabs.com(マッシュラボ.com)、Mitte.co(ミッテ.co)、Choco.com(チョコ.com)、Stenon.io(ステノン.io)、Gorillas.io(ゴリラ.io)などのスタートアップへの投資を行ってきた。FoodLabsは、この新しいファンドで、この分野にさらに力を入れていく。

知的財産と「農業、生産、流通、人の健康から廃棄物ゼロの分野まで、地球から地球へ、より効率的で持続可能な食品産業に向けたスケーラブルなデジタルビジネスモデル」に焦点を当てている。

メア氏は「食品産業は世界最大の産業であり、世界の温室効果ガス排出量の4分の1以上を占めています。食品の生産と消費の方法を、より効率的で持続可能なものへと変革することは、地球と人々に大きな影響を与えます。私たちは、テクノロジーと起業家精神が、現代の重要な課題に取り組むための鍵を握っていると強く信じています。フードファンドでは、より健康的な栄養価、持続可能な農業、食料へのアクセス改善への道を切り開く革新的な企業を作る最も野心的な創業者を支援します」と述べている。

私との電話で、彼はこう語っている。「5年前にFoodLabsを立ち上げたのは、食品産業は人間の健康に最も関連する産業の1つである一方、気候に最も無関係な産業の1つでもあると感じたからです。私は、今日の重要な問題を解決するために、起業家が力を貸してくれると信じています。当初の投資額は約1500万ドル(約16億9300万円)と比較的小規模なものでしたが、その過程で、私が想像していたよりもはるかに大きな可能性を秘めていることがわかりました。そこで今回、1億ユーロ(約130億円)のファンドを立ち上げました。私にはすばらしいチームと、このミッションに本気で取り組んでいる人たちがいます。これは、私のキャリアの中でも最高の活動だと思っています。ここはすばらしい空間で、とても魅力的です」。

新ファンドの最初の出資企業は以下の通りだ。

  • Foodji(ドイツ):新鮮で健康的な食品の持ち帰りを可能にするデジタルソリューション
  • Habitual(英国): デジタルヘルス関連のスタートアップで、糖尿病の改善を消費者に直接提供する
  • Kitch (ポルトガル):デリバリーサービスのためのソフトウェアを提供する
  • Klim (ドイツ):炭素農法で農業をより持続可能なものにすることを使命とする
  • getVoila(ドイツ): ヨーロッパのベストレストランの高級料理を我々のリビングルームに届ける
  • Microharvest(ドイツ)持続的に生産される栄養素やタンパク質へのアクセスを提供する
  • Myota(スイス):男性の健康に対する新たなアプローチを提供
  • Yababa(ドイツ):東洋料理のファストデリバリー企業
  • The Plate:料理創作プラットフォーム
  • Airfarm(ドイツ):農家向けにデジタルプラットフォームを提供するアグリテック企業

また、科学者を対象とした現地起業家プログラムの立ち上げも発表している。

メア氏は「私たちは、ヨーロッパがフードテック&アグテックのイノベーションの中心地になると強く信じています。ヨーロッパは、科学研究やエンジニアリングの専門知識では常に強みを持っていますが、起業家支援システムでは遅れをとっています。私たちの使命は、起業家精神、大学や研究機関の科学的ノウハウ、そして業界の主要企業を結集し、食品業界におけるイノベーションと持続可能性のための国際的なプラットフォームを構築することです」と述べている。

FoodLabsのゼネラルパートナーであるPatrick Huber(パトリック・フーバー)氏は次のように述べている。「ここ数年、私たちは、優れた企業を作るために参加してくれた科学者たちに感銘を受けてきました。科学者と起業家のコラボレーションが、フードバリューチェーンに抜本的なイノベーションをもたらす鍵になると強く信じています」。

メア氏は「私たちはまず、より多くの炭素を回収できる農業や農法から始めます。例えば、パーマカルチャーに力を入れている会社がありますが、これは一般に想像されているよりもはるかに大きなことだと思います。また、水産養殖、新たなタンパク質、新たな生産方法、新たな流通方法にも注目しています。その他クイックコマース、現地調達、新しい消費者行動など、食と健康についてです。というのも、この分野の魅力は、起業家側からの働きかけだけではなく、消費者側からの働きかけが非常に大きいからです」。と語ってくれた。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

風味と言語の総合変換を行う日本酒ソムリエAI「KAORIUM for Sake」を京都酒蔵館が導入

風味と言語の総合変換を行う日本酒ソムリエAI「KAORIUM for Sake」を京都酒蔵館が導入

香りを言語化するAIシステムであらゆるものに情緒的な体験価値をプラスする香りのビジネスデザイン集団SCENTMATIC(セントマティック)は、香りと言葉の相互変換を行うAIシステム「KAORIUM」(カオリウム)の技術を用いた日本酒ソムリエAI「KAORIUM for Sake」を、10月1日より、京都42酒蔵の日本酒が楽しめる居酒屋「京都酒蔵館」に関西で初めて導入した。

「KAORIUM for Sake」は、インターネット上の膨大な言語表現、ユーザーの1万件以上の感性データ、酒ソムリエ赤星慶太氏の感性を学習した、日本酒の風味を言葉で可視化するAIシステム。今まで感じ取ることが難しかった奥深い味わいが感じられる体験を提供するという。

日本酒を「すずしげ」、「ふくよか」、「あたたかみ」の3要素のバランスに加え、香りや印象、情景に喩えた表現や言葉で可視化することで、日本酒の特徴がわかりやすくなり、好みの酒が選びやすくなる。SCENTMATICによれば、「キーワードを見ながら言葉を意識して味わうことで、今まで感じることのでき なかった風味や味わいに気付くことができます」とのことだ。同時に、客がタブレットで酒の印象を表す言葉をタップれば、さらにAIの学習が進む。

「接客を頑張りたい」が人的に限界があり悩んでいたという京都酒蔵館は、「KAORIUM for Sake」の画面を見ながら酒を楽しむ客の姿を見て、客と会話ができなくとも日本酒の魅力が伝えられるようになったと話している。