【レビュー】Appleの14インチMacBook Pro(2021)、新・旧機能の融合

TechCrunchスタッフのリアクションはすばやく、私の知る限り、全員共通だった。特定の新機能についてこれほど多くの同僚たちが心から興奮したところを見たことがかつてあっただろうか。MagSafeが帰ってきた。iPhoneバージョンではないオリジナル(あちらにも魅力がないわけではないが)。MacBookバージョンだ。2017年にApple(アップル)が、オールUSB-C / ThunderboltのMacBook到来とともにあっさりと見捨てたあのバージョンだ。

これが、新しいプロ向けノートパソコンの長文レビューの始まりとして奇妙であることはよくわかっている。MagSafeが、2021 MacBook Proの最重要ポイントではない。最大の特徴はほぼ間違いなく、新しいチップ「M1 Pro」と「M1 Max」だ。しかし、この独自コネクターは重要な縮図である。ポートに喜び、ポートに悲しみながらこのシリーズにこだわってきた長年の信奉者にとっては魅力的な目玉となる。

新モデルは全部のせノートパソコンではない。実際Appleはそういう製品を出さない。しかし、同社はいくつかの新機能を追加するとともに、多くのユーザーが消えてしまうことを恐れていたに違いないかつての大好物を復活させた。MacBookが進化する過程において、さまざまな機能がやってきてはいなくなった。去る2016年にヘッドフォンジャックが廃されたとき、Appleはそれを「勇気」と呼び不評を買った。あれはAppleが明確に時代の先頭にいた数多くの場面の1つだった。ただし、それは勇気の話だ。ものごとはいつも予定どおりに運ぶわけではない。

画像クレジット:Brian Heater

我々消費者は、変化を要求し、一方でそれについて不満をいう。我々を満足させるのは大変だ。中には、ヘッドフォンジャックやその前のディスクドライブのケースのように、メインストリームの消費者の利用形態が追いつき、多くの人にとってその機能がほとんど惜しまれないこともある。メーカーの勇み足だったこともある。USB-AからUSB-Cへの転換についていえば、あれは明らかに不可避な進化の兆候だった。しかしMagSafeを失ったのは痛かった。

そのコネクターは、幸いにも帰ってきた。改良された形状で。他にSDXCカードスロット(SD 4.0規格、UHS-I、UHS-II SDXCカード対応)、HDMIポート、そして現在のMacラインナップから消えていたファンクションキーの隊列(窮地にたたされたTouch Barを置き換えた)も。USB-Cポートは3つで、13インチモデルの4つから減った。ポートを失いたい人などいないが、HDMIとMagSafeの復活は多くの人が正当なトレードオフだと感じているに違いない。個人の意見だが。

Appleは、同社のパソコン製品ラインナップにとって長年基盤となっているクリエイティブのプロたちを奪還しようと組織的な努力を行った。そして、多くの意味で、新しいProモデルはその最も純粋な意思表示だ。それはパワフルで図体の大きいMacの未来を示唆するマシンであるとともに、過去のヒットをいくつか再現している。

1年経ってみると、2020年の13インチMacBook Proは一種の珍しい存在になるのだろう、2016年のMacBookと同じように。現在も14インチ、16インチモデルの13インチの姉妹として製品ラインナップに残っている。奇妙な位置づけだ。実際のところ13インチMacBookのDNAは、同時に発売されたAirとの共通点の方が多く、たぶんMacBook Pro LiteかMacBook Air+ のようなものだ。当時、2つのモデルに我々が期待したような違いは見られなかったが、2021年のProモデルは「差」をはっきりさせた。

新モデルの中心は、もちろん、Appleの最新シリコンだ。我々は2021年10月の「Unleashed(パワー全開)」イベントで新チップが登場することを予測していたが、Appleは2種類のチップで我々を驚かすことに成功した。M1 ProとM1 Maxだ。いずれもM1(同じ5nmアーキテクチャーで作られている)のパワーアップ版だが、ほとんどのユーザーのほとんどのシナリオでは、2つのチップの違いは取るに足らない。そもそもほとんどのユーザーのほとんどのシナリオでは普通の古いM1が十分仕事をこなす。しかし、Appleのデモがターゲットにしているのはほとんどのユーザーではない。それはクリエイター層という、3Dレンダリング、8Kビデオ編集をはじめとする10年前のノートパソコンでは不可能に近かった作業でシステムを限界まで押し広げる人たちだ。

画像クレジット:Apple

要約すると。

  • M1:160億トランジスタ、8 CPUコア、7/8 GPUコア、メモリ帯域幅68.25 GBps、最大メモリ16 GB
  • M1 Pro:337億トランジスタ、8/10CPUコア、14/16 GPUコア、メモリ帯域幅200 GBps、最大メモリ32GB
  • M1 Max:570億トランジスタ、10CPUコア、24/32 GPUコア、メモリ帯域幅400 GBps、最大メモリ64GB

AppleがProとMaxを発表した後、すぐに湧いた疑問はAppleが2つのチップをどう使い分けるかだった。結局、同社は正しい選択をしたと私は思う。Maxを両方のシステムのアップグレードとして提供した200ドル(日本では2万2000円)で。もちろん金額はすぐにかさむが、Apple.comのショッピングカートにとっては歓迎だ。AppleはM1 Max、10コアCPU、32コアGPU、64GB RAM、2TBストレージという構成のシステムを編集部に送ってくれた。


メモリのオプションは16~64GB(後者はMaxでのみ使用可)、ストレージは512GBから最大8TBまで選択可能。この構成のシステムは4100ドル(日本では税込47万5800円)。ストレージを8TBに増やすと5899ドル(税込67万3800円)になる(ちなみに16インチにすると約68万円を超える)。これはエントリー構成の1999ドル(税込23万9800円)より3900ドル(約43万円以上)高い。



このベンチマークはスペックの違いを裏づけている。GeekBenchのAppleシリコン向けシングルコア・テストは大きな違いを見せておらず、2020年MacBook Proの1711に対して1781だが、マルチコアのスコアは7549から1万2674と飛躍的に向上している。



このGFXBench Metalグラフィックテストでは、新しいGPUがAztecデモで3490フレーム(54.3fps)から7717.5(120fps)へ、オフスクリーン版で4981フレーム(77.4fps)から1万7981(279.6fps)へと急上昇している。前者では一部のNVIDIA GPUより劣っているが、後者では他を圧倒している。中でも特に注目すべきなのは、Appleが高い性能数値をほとんどのライバルより著しく少ない電力消費で実現していることだ。

画像クレジット:Brian Heater

本機が熱を持たないという表現は行き過ぎだ。アルミニウム筐体の底部は快適な温かさになるが、真実はといえば内蔵ファンを働かせるためにはシステムにかなりの負荷をかける必要がある。バッテリー持続時間も長い。1回の充電でApple TV+を17時間29分見ることができた(新作のドキュメンタリー、Velvet Undergroundはいい。なぜわかるかというと「何度も」見たから)。ちなみに復活したMagSafeによる充電は高速で、0から50%まで30分で充電できた(96または140Wの電源アダプター使用)。3つあるUSB-Cポートでも充電が可能(専用プラグを家に忘れた時に重要)だが、速度は落ちる。

MagSafeプラグにはすてきなブレイデッドケーブルが付いてくるが、外見を除けばみんなが知っていてほとんどの人が愛する簡単着脱プラグと驚くほどよく似ている。

新しいMacBookは新しい内部に合わせてデザイン変更もなされている。たとえば16インチモデルは先行機よりも厚く、重くなり、4.3から4.7ポンド(2.1、2.2kg)に、高さ0.64(1.62cm)から0.66インチ(1.68cm)に増えている。14インチは13インチの3ポンド(1.4kg)対して3.5ポンド(1.6kg)だが高さは小さな姉妹と変わらない。

2020年版Airを持ち歩いている1人(時々アパートを離れるとき)として、これは無視できる違いではない。私の大胆な憶測は(少なくとも今のかたちの)13インチMacBookの将来を危ぶんでいるが、薄くて軽いAirがいなくなることは想像できない。

画像クレジット:Brian Heater

14.2インチのディスプレイは大きくて明るい3024×1964画素。13インチの227ppiに対して254ppiだ。2020年の輝度500nitは、持続時1000ニト、ピーク時1600ニトへと上昇した。これはミニLEDアレイと120Hzのリフレッシュレートのおかげだ(ProMotionテクノロジーによって作業に適応する)。支えているテクノロジーは最新のiPad Proや多くのノートパソコンに見られるものと類似している。

MacBook Air 2020(左)、:MacBookPro 2021(右)

このリモートワーク時代にはありがたいことに、FaceTimeカメラがアップデートされ、2021年の新iMacと同じ1080pカメラになった。これは2020年のProとAirに搭載されていた720pカメラからのうれしいアップグレードで、これまでは画像処理技術とM1の性能に頼ってホワイトバランスの改善や画像ノイズを減らしていた。上の画像でわかるように、最新のAirと比べてかなり劇的な向上だ。

画像クレジット:Brian Heater

ベゼル(前面カバー)は前モデルより24%減少した。エッジ・トゥー・エッジまではいかないが、近づきつつある。この変更にともない、おそらく最も賛否を呼ぶ変更が、恐ろしいノッチ(切り欠き)の追加だ。このノッチの活発な評価についてはDevin(デビン・コールドウェイ)の記事を読んで欲しい。私は概してノッチにとらわれない立場で、つまり当然フルスクリーンがベストだが、ノッチが存在する理由も理解している。これは、Appleが4年前のiPhone X発売以来iPhoneで採用し続けているものだ。

関連記事:【コラム】アップルがMacBook Proにノッチを付けてしまった

先のイベントで会社がいうには「これはコンテンツに余分なスペースを与える実にスマートな方法であり、フルスクリーンモードでは16対10のウィンドウが得られ、見た目もすばらしい。これはシームレスです」。慣れるまでに少し時間が必要であることは間違いないと私はいっておく。

他のモバイル機器メーカーには、ピンホールあるいはスクリーン下カメラを採用しているところもある。後者は大部分が失敗で、画質が著しく損われる。Zoom会議の時代のウェブカムには決してあってほしくない事態だ。ノッチの採用は実質的にこれまでベゼルがあった上部にスクリーン財産が追加されたことを意味している。ほとんどの場合、適切な暗い背景や、フルスクリーン動画ならレターボックスの黒いバーが隠せないものではない。

しかし、フルスクリーンモードで、特にメニューシステムに依存の強いアプリにとっては厄介だ。メニューバーは自動的にノッチを回り込む。デベロッパーは何もする必要がなく、メニュー項目が隠されないうようにシステムがメニューバー移動する。これはノッチ対応はもちろんまだでAppleシリコンバージョンをまだ出していないAudacityの場合だ。ちなみにマウスポインターは、実質的にノッチの下を通過して動く。

14インチ画面以上のものが必要になった時(そういうときもあるだろう?)、ProチップはPro Display XDRを2台同時にサポートできる。Maxなら、Pro Display XDRと4K TVを動かせる。復活したHDMIポートは4K60およびHDRビデオに対応している。

画像クレジット:Brian Heater

キーボードはここ何年かMacBookラインナップにとって一種の弱点だった。うれしいことに、2020年同社はようやく実績ある機構に戻した。キーの固着や最終的にキーボード交換プログラムに至った惨劇を受けてのことだ。現在の構成は、ノートパソコンのキーボードではソフトな側に寄っているが、数年前の頑強な過ちより何光年も前進している。

Touch Bar(タッチバー)がそれ自身「頑強な過ち」に当たるかかどうかは視点の問題だが、Appleの予想に達しなかったことはかなりはっきりしている。キーボード上部に超薄型タッチディスプレイを置くことは理論上は興味深いアイデアだったが、定常的に触れ合った人が多くいたとは思えない。これは、好きになりたいけれども、最終的に存続する理由を正当化できずに提案を断念する類いのものだった。つまり、私は、それが消えゆくことを悲しまない1人だ。

画像クレジット:Brian Heater

完全な死を悼むにはまだ早い、なぜなら13インチMacBookにはまだ必死でしがみついていくのだから。しかし、まあ、その入力デバイスの未来は決して明るいとはいえない。代わりに、フルハイトのファンクションキーが戻り、Appleはその復活をすばらしい新機能として位置づけた。会社はこう書いている。

このたび、Magic Keyboardがフルハイトのファンクションキーを初めてMacBook Proにもたらしました。プロの愛するメカニカルキーの感触とともに。

キーには、明るさ、音声入力、音量、Spotlight、Siri、おやすみモード、音楽再生などが割り当てられている。さらに、常にTouch Barの最高の部分であったものを維持している。Touch IDだ。今度は2020年のAirに付いていた小さな突起ではなくフルサイズのキーだ。

画像クレジット:Brian Heater

MagSafeの復活と同じく、Touch Barの放棄は、新しいMacBookが数年来で最高と言われる主要な理由だ。彼らはいくつかの重要な ブレイクスルーを成し遂げてきた過去の世代のテクノロジーと学習に基づき、何よりもユーザーのフィードバックに耳を傾けて開発してきた。それは、うまくいかないものから離れ、うまくいくものを強化することを意味し、とりわけ重要なのは消費者にとって何がベストであるかを自分が知っていると思わないこと、非常に特化したクリエイティブのプロが相手となればなおさらだ。

税込23万9800〜67万3800円という価格は、みんなのためのMacBookという感じではない。ほとんどの消費者にとってはMacBook Airが役割を果たすかそれ以上だろう。しかし、マシンの限界を求めるような使い方をする人には、新しいProはMacBookライン最高の要素の集大成だろう。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【レビュー】GMC Hummer EVにしびれる。3つのモーターと四輪操舵ですばらしいスピードとハンドリングを実現

11万ドル(約1230万円)のGMC Hummer EV(ジーエムシー・ハマー・イーブイ)は、最高のオフローダーであるとともに、高級セダンの快適さとスポーツカーのスピードを併せ持つ、欲張りなマッシュアップだ。そしてトラックとしての荷台を備える。GM(ゼネラルモーターズ)は、この車をスーパートラックと呼ぶが、そのとおりだろう。

GMのテストコースでHummer EVを運転してみて、いくつかのことがすぐにわかった。まず、この巨大なHummer EVは、十分なパワーと優れた四輪操舵のおかげで、運転が楽しい。次に、インフォテインメントシステムと運転席のメーターパネルは美しいが、非常に込み入っており、時折表示に遅れが生じる。最後に、Hummer EVは、GMの「Ultium(アルティウム)」プラットフォームが、いかに新規性のある機能や特徴を車に持たせることができるかを示す、絶好の例となっている。

GMの広報担当者は、筆者に運転させる前、あまり大きな期待は抱かせなかった。GMは、Hummer EVの運転や操作の仕方についてのみ説明し、具体的な車両の仕様、性能、入手状況などについては答えられないとしていた。カメラの使用は禁止され、筆者の携帯電話にセキュリティテープを貼るほどだった。筆者がHummer EVを運転したのはわずか30分だけで、すべてミシガン州ミルフォードの僻地にあるGMの試験場奥地でのことだ。

留意すべきは、その試走は量産前の車両で行われたということだ。必要なものはすべて揃っているといわれたが、一部の内装材や付加的な騒音防止材など、いくつかの部材が欠けていた。

Hummer EVで岩場を越えたり、未舗装の道路を突っ走ったり、GMの高速テストコースで時速95マイル(時速約153 km)を叩き出したりした。そして、いろいろなことがわかった。Hummer EVは、どこへでも行けて、何でもできるクルマだ。岩場を登ることも、狭い駐車場に入れることも、大人5人とその荷物を快適に運ぶこともできる。3秒で時速60マイル(時速約97 km)に達し、四輪操舵のおかげで、見た目よりもずっと小回りが利く。

GMCHummer EV、2021年9月25日土曜日、ミシガン州ミルフォードにあるゼネラルモーターズのミルフォード試験場にて(画像クレジット:Steve Fecht for GMC)

四輪操舵が最高

Hummer EVには、楽しい仕掛けがある。この大きな幅広の車は、道路上をのろのろと走り出すが、それはあっという間に軽快な走りに変わる。電気モーターと四輪操舵により、ピックアップトラックよりも軽快に走り、大型クロスオーバー車よりも応答性が良い。つまり、Hummer EVはピックアップトラックではなく、頑丈で幅広のスポーツカーのような走りをする。

往年のハマーは、耐久性のあるトラックのように、圧倒的なパワーが感じられた。このHummer EVもやはり止めることのできない感じがあるが、今では高速道路でも山奥の小道でも同じように快適に走ることができる。購入者は、Hummer EVの性能のために快適さを譲歩する必要はない。過去のハマー(そして現在のJeep[ジープ]や4Runner[フォー・ランナー])は、オフロード性能のためにオンロードでの乗り心地を犠牲にしていたが、Hummer EVでは何も失われていないように見える。あるボタンを押せば、岩場を登り、別のボタンを押せば、ほとんどのスポーツカーを凌駕する走りを見せる。

その公式は、3つの電気モーター+四輪操舵だ。これは秘密の公式というわけではなく、Tesla(テスラ)のCybertruck(サイバートラック)にも同じ組み合わせが搭載されている。

Hummer EVの四輪操舵のインパクトは簡単には語れない。後輪は最大10度まで舵角を変えることができ、全モデルに標準装備されている。「CrabWalk(クラブウォーク、カニ歩き)」と呼ばれる最も極端な使用例では、四輪操舵により、まるで氷の上のように左右に滑るように動き、5人乗りのピックアップトラックというよりも後輪駆動のフォークリフトのような感覚で走行することができる。

後輪操舵は1980年代に登場したが、当時はスポーツカー以外にはほとんど採用されなかった。しかし、2000年代初頭から再度使われ始め、GMは2002年から2005年までハーフトントラックのSuburban(サバーバン)とSilverado(シルバラード)に搭載していた。現在では、いくつかのセダンに搭載されており、一部のモデルでは2~3度、超高級モデルでは最大10度の転舵が可能だ。これらのシステムは、一部の購入者に向けた高価なオプションだが、Hummer EVでは標準装備されており、その機能と魅力に欠かせないものとなっている。

また、この四輪操舵により、Hummer EVは同等のサイズの車よりもはるかに小回りが利く。転回は速く、バックも楽になり、大型SUVというよりファミリーセダンのように扱えるピックアップトラックだ。回転半径は37フィート(約11 m)で、フルサイズピックアップのシボレー・シルバラードよりもコンパクトカーのシボレー・ソニックに近い。

このシステムを試せたのはほんの数分だけだったが、四輪操舵に慣れが必要ということもなく、タイトな転回を補うために自分のドライビング感覚を調整する必要もなかった。自然に機能し、自然に感じられた。後部座席ではこの違いを感じられるかどうか気になるところだ。

四輪操舵は、デフォルトでアクティブになっているが、オフにすることもできる。高速道路を走行しているときには、Hummer EVの前輪と後輪は同位相で動くため、けん引するトレーラーの揺れがなくなり安定するという(検証する機会があるとよいのだが)。

この四輪操舵機能により、Hummer EVは斜めに走ることができる。クラブウォークを作動させるには、ドライバーが車を止めて、いくつかのメニューボタンをクリックする必要がある。一旦作動させると、前輪と後輪が連動して転舵するようになり、今までにない感覚で車を横へ向かって走らせることができる。ハンドルを左に切れば、車体は左斜めに滑るように移動する。車の前部が左に向くのではなく、車両全体が左に流れて行くのだ。四輪操舵はスピードを出すためのものではなく、駐車やロングドライブを快適にし、見る者を感動させるためのシステムだ。そして、これまでにはない感覚だ。

デトロイトで開催された2021年のWoodward Dream Cruise(ウッドワード・ドリーム・クルーズ)においてGM社員がHummer EVの能力を示す熱いデモを行っている。その様子は以下の動画をご覧いただきたい。

Watts to Freedom=WTFモード

Hummer EVは、本気を出せば、とんでもない加速を見せる。Watts to Freedom(ワッツ・トゥ・フリーダム、WTF)モードと呼ばれる発進モードはすばらしく、ドライバーは3秒で時速60マイル(時速約97 km)に達する。これは超絶な速さだ。標準的な車両モードでの普通の発進でも、Hummer EVはスムーズに加速するが、WTFモードのようにドライバーをシートに貼り付けるほどではない。

どのような車でもこの加速があるだけですばらしいことだが、5人乗りのピックアップトラックでそれを実現するのは、さらに衝撃的だ。この四輪駆動のピックアップは、余裕の駆動力によりロケットのような勢いで飛び出していく。これは、テスラのModel X(モデルエックス)など、他の電気自動車からも受けるスタート感覚に似ている。

通常の走行モードでは、Hummer EVのトルクは抑えられているが、それでもなおドラッグレースにも足りる十分な速さがある。加速はモニターされた上で制御されており、このチューニングの精度は評価に値する。

Hummer EVのワイドなボディは、安定した乗り心地につながっている。試験場の裏道でHummer EVを走らせ、砂利道ではテールを振ってみた。アグレッシブなコーナリングでは、車体はしっかりとフラットを保ち安定している印象を受けた。バンクのあるテストコースでも、他の車と同じようにしっかりとした頑丈さが感じられた。トラックの底部に詰め込まれたバッテリーにより、重心は低く保たれ、Hummer EVは、以前のガソリンモデルのようにトップヘビーになることはなかった。

高速周回コースでは、何もしなくても時速90マイル(時速約145 km)に達した。無理をしている様子はなく、アクセルを踏めばあっという間にスピードに乗る。Hummer EVは、ラングラーの35インチ(約89 cm)の巨大なタイヤで道路を疾走し、最高のクルーズを提供する。また、タイヤノイズも気にならない。

Hummer EVは静かではない。アクセルを踏むと、2つの音が聞こえてくる。3つの電気モーターがうなる音と、より鈍重で電気ノイズのように聞こえる人工的な回転音だ。オフロードモードでは、増えたロードノイズをかき消すほど、人工的な音が大きくなる。しかし結局のところ、不快ではないと感じた。これらの音は激しくなく、常にバックグラウンドに溶け込んでいる。GMのエンジニアは、ドライバーが音によるフィードバックを必要とし、無意識のうちに期待していると同社は判断したと説明する。

筆者はHummer EVで数十の大きな岩を乗り越えるボルダリングを試した。乗り越えられたか?もちろん。難なく?そうでもない。Hummer EVは岩の上を滑り、トラクションを維持するのに苦労した。念のためにいっておくと、今回の試走は、GMがビーチボール大の岩を多数敷き詰めたテストコースで行われ、10フィート(約3 m)のセクションを試すことができた。Hummer EVのオフロード性能を結論づけるには、今回の体験だけでは足りないだろう。

工業製品的な使用感

インフォテインメントシステムについては、あまり詳しく見る機会がなかった。それでも、いくつかの発見はあった。1つは、Epic(エピック)のUnreal(アンリアル)グラフィックエンジンのおかげで、このシステムが美しいことだ。ビデオゲーム用に開発されたUnrealエンジンのこの特別なビルドを使用したのは、Hummer EVが初めてだ。このシステムは美しいが、量産前のテスト車両ではラグがあり、入力に反応するまで、常に数秒を要した。これは、画面上でオプションを選択しても、機械的なコントローラー(テレインセレクトのダイヤルなど)を使用しても同じだった。

また、インフォテイメントのデザインは、表示は美しいものの、複雑で込み入っており、いかにも人工的な工業製品のようだ。GMのエンジニアは、大げさなアイコンやメニューを多数使ったインターフェイスにより、画面のグラフィック能力を誇示しようとしたのではないだろうか。グラフィカルな要素は、使いやすさよりも見た目の美しさを重視しているように見える。

GMは、Hummer EVのカメラの性能のデモに熱心だった。車両には18台のカメラが搭載されており、そのうちの数台は車体の下に取り付けられている。これは、不整地を走行するときやトレーダージョーズで駐車するときにドライバーをサポートするためのものだ。これらのカメラは公表されている通りに機能し、一部のカメラには汚れを除去するクリーナーが内蔵されている。

また、GMがエアコンのボタンをタッチスクリーンのメニューに含めるのではなく、物理的なボタンとして残しているのはうれしいことだ。テスラやRivian(リビアン)など、他のEVメーカーは、温度設定ダイヤルやシートヒーター、さらにはベントの向きのコントロールさえもタッチスクリーンに追いやっているが、Hummer EVでは、そうした操作のためにロッカースイッチが並んでいる。

運転席からの視界はすばらしく、ドライバーは、遠くまで見渡すことができる。運転席と助手席の足元と上部には十分なスペースが確保されており、広々としている。後部座席は足元が若干狭くなっているが、それでもワイドボディのおかげで余裕がある。フルサイズSUVといえば、前は広く、後ろは狭いというものだろう。

新しい電動パワートレイン

GMは、Hummer EVのパワートレインの詳細を公表している。Hummer EVエディション1は、ユニボディのフレームに24モジュールのバッテリーシステムを搭載している。これは、GMが2020年3月に発表したUltiumプラットフォームを、同社で初めて採用したものだ。

関連記事:GMが電気自動車戦略のコアとなるモジュラー式アーキテクチャー「Ultium」を公開

3つのモーターを搭載するメリットはいくつかある。これらの電気モーターにより、ハマーの前後輪両軸に電子制御式のディファレンシャル機構を装備することができ、低トラクション時に効果を発揮する。前輪には「eロッカー」を搭載し、後輪の2つのモーターは物理的には接続されていないがソフトウェアによって仮想的にロックされており、トルクベクタリングにより4輪のトラクションを制御でき、各タイヤの駆動や停止はミリ秒単位で制御できる。

Hummer EVのバッテリーについて、バッテリーが原因で二度のリコールを行ったChevy Bolt(シボレー・ボルト)に使用されているバッテリーパックと同様のものではないかと聞いてみた。GMの広報担当者は、GMはLG(エル・ジー)と共同でセルを開発しているが、Hummer EVのパックはミシガン州デトロイトのブラウンズタウン工場で製造しており、このバッテリーはボルトに使われているものよりも新しいセル化学を採用していると説明した。最終的には、オハイオ州ローズタウンにLGと共同で設立した施設でUltium電池を製造する予定だという。

残る疑問

Hummer EVには、筆者が試乗や使用できなかった機能が満載されている。例えば、GMの自動運転モードの最新版である「スーパークルーズ」では、高速道路での車線変更が可能になった。また、自動でタイヤの空気を抜く機能や、26インチ(約66 cm)の水深でも走行できる機能、100マイル(約161 km)の走行に必要な充電を10分で行う機能なども搭載されているという。残念ながら、ルーフパネルを外したり、いわゆるフランクに収納された状態を見たりすることはできなかった。また、インフォテインメントシステムも詳しく見てみたい。没入感は得られそうだが複雑そうでもある。

GMは、Hummer EVのいくつかの点について公表しておらず、今回の試乗でもほとんど何も明かされなかった。価格の詳細と入手状況は未だ不明だ。EPA(米国環境保護庁)の公式な航続距離評価は未発表であり、牽引力や運搬能力もまだわからない。

日頃から大型トレーラーを牽引している筆者には、Hummer EVは運搬や牽引のために作られたものではないように感じられた。パワーはあるが、ユニボディのフレームとエアサスペンションが、シボレー・シルバラード1500やFord(フォード)F-150よりも低い牽引力を物語っている。Hummer EVの牽引力は、ハーフトン・ピックアップ(8000~1万2000ポンド[約3600~5400 kg])よりもフルサイズSUV(6000~8000ポンド[約2700~3600 kg])に近いと推測している。もしそうであれば、Hummer EVはATV(四輪バギー)や小型ボートのトレーラー、そしてカーゴトレーラーなどは牽引できるということだ。しかしその仕様では、トラベルトレーラーについては小型か超軽量タイプ以外を牽引することはできないだろう。また、荷物を運ぶことがバッテリーの航続距離にどう影響するのかについても不明だ。

電気自動車革命

ここからは実際の状況だ。GMはナーバスになっている。Hummer EVは2020年10月に発表され、2021年秋にはディーラーに並ぶ予定だった。2021年10月現在、自動車産業に影響を与える世界的なサプライチェーンの危機に加え、同社のもう1台のEVであるシボレー・ボルトのバッテリーのリコールに思いの他注力しなければならない状況だ。関係者によると、GMは、シボレー・ボルトにおいて2回のバッテリーリコールを行ったことにより、消費者からの信頼について神経質になっているという。

ハマーのEV劇場の主役は、GMのUltiumプラットフォームだ。GMが2020年にEVの青写真を発表した際には、後輪駆動、前輪駆動、全輪駆動など、バッテリーと駆動ユニットの組み合わせにより19種類の構成で車両を作ることができるとしていた。また、400ボルトと800ボルトのバッテリーパックも用意するとし、このデザインはこのアメリカ最大の自動車メーカーに多くの選択肢を与えることを意味している。ハマーのEVは、そのUltiumプラットフォームの能力を実地で示す概念実証だ。もしそれが、Hummer EVの圧倒的なスピードと優れた操縦性を実現するのであれば、ロードスター、クロスオーバー、または7人乗りのファミリーカーに何が提供できるかも明白だ。

Hummer EVは、GMの仰々しく、注目を集めるスーパー電気自動車として成功している。最新のHummer EVは、これまでのハマーと同様に法外であり過剰だ。GMが何か特別な電動ピックアップトラックを作ったことは、ほんの数分でわかる。大きくて、重い電気自動車でありながら、とてつもないスピード、本格的なオフロード性能、充実した荷室容量など、すべてを備えている。Hummer EVにはすべてが詰まっている。

画像クレジット:GMC

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(文:Matt Burns、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】Facebook Portal Go、ライバル不在の「携帯性」がポイントのスマートディスプレイ

発売当初から、Portal(ポータル)製品ラインはある大きな疑問に悩まされてきた。Facebook(フェイスブック)がなぜこれを開発したのかということではなく、Amazon(アマゾン)とGoogle(グーグル)がスマートアシスタントとディスプレイの分野でそれぞれ先行しているのに、いったいなぜ人々がこれに興味を示すのだろうかということだ。

Facebookサービスとの連携に加えて、Portalの当初の目玉機能は物体検知を利用して対象を追いかける「スマートパンニング」だった。これはクレバーな追加機能だったが、ライバル製品ではなくFacebook製を買うことを正当化するほどのものではなかった。以来、Google、AmazonそしてApple(アップル)さえもそれぞれ独自技術を導入し、Facebookの優位性を失われてしまった。

画像クレジット:Brian Heater

Portal Goは、「なぜ」という大きな疑問に答えるものではないが、ポータビリティー(携帯性)を追加することで、スマートディスプレイの枠にとらわれないFacebookの能力を改めて示している。

正直なところ、ライバルたちはまだこの「ポータビリティー」を採用していないことに驚いている。Amazonは、ポータブルBluetoothスピーカーのTapを少し前に販売終了している。

それ以外だと、同じようなポータブル製品はAlexa内蔵のFireタブレットやサードパーティー製くらいしかない。あるいは、AmazonとGoogleのソリューションは、実質的に、使うつもりの部屋全部にデバイスを置くようにユーザーを説得しているともいえる。個人的には、各メーカーがなぜバッテリー搭載モデルの便利さを認めないのかいつも不思議に思っている。

Goは携帯性を前提につくられており、本体の背面にはハンドルもある。重量はまあまあ軽い(たとえばAppleが発表したばかりのMacBook Proの4.7ポンド[約2.13kg]と比べて)3ポンド(1.36 kg)だ。ところで、持ち歩けるスマートディスプレイが必要な人はいるのか?もちろん、スマートディスプレイを必要とする人以上にはいないが、その柔軟さについてはいうべきことがたくさんある。主として動画のために作られたデバイスにとって、どこへでも持っていけることは間違いなくうれしい。

画像クレジット:Brian Heater

鍵は内蔵バッテリーとワイヤレス充電だ。後者は独自の3ピン充電パッドでケーブルにはUSB-Cプラグがついている。この充電器はプロダクトデザイン上最大の不満かもしれない。Facebookが移動するためにプラグを抜かなくてもよいようにと充電ケーブルをやめた理由は理解できる。しかし、有線でもっと早く充電するオプションがあればもっとよかった。少なくとも、マグネットでピタッと収まる充電パッドは欲しかった。ピンを合わせて充電するのは面倒だ。

画像クレジット:Brian Heater

ディスプレイは10インチのタッチスクリーンで解像度は1280×800。特にいうべき点はないが、リモート会議やFacebookでショートビデオを見るなど、これを使うほとんど人のにとって十分なのは間違いない。これに12メガピクセルの前面カメラと4基のマイクアレイがつく。ここでもこれは、世界が一変しすべてのミーティングがバーチャルなった時に資産を投入したリモート会議システムと比べるものではないが、家族と話したり、ちょっとした仕事の打ち合わせには十分だ。布地で覆われたデバイスの背面には後ろ向きのスピーカーとウーファーが2基内蔵されている。音質はすばらしくはない。少しこもる。日々の音楽鑑賞に使いたいものではないが、いざというときには役立つ。

筐体はほとんどのスマートディスプレイよりも大きめだ。角は丸く、ベゼルは太く、覆っている布地は昨今の家庭用製品では標準的だ。実際このデザインは、EchoかNestスタイルのホームデバイスと子どもをターゲットにした何かとの中間という感じだ。

画像クレジット:Brian Heater

堅牢とはいえないが、ちょっと叩いたりぶつけたりしたくらいなら、おそらくNest Homeより強いだろう。以上の機能に子ども向けの物語コンテンツが加わったPortal Goは、小さな子どものいる環境に向いているだろう。前面カメラには物理的シャッターがついている。もしあなたが私と同じなら、90%の時間、事実上ビデオ通話中以外いつでも、閉じることになるだろう。これでマイクはオフにならないが、ボリュームボタン横の丸いボタンで切ることができる。ボタンを押すとカメラとマイクがオフになり、赤いランプがそのことを示す。

Facebookで通話を始めるのは簡単だ。「hey Portal, call such and such(ヘイ、ポータル、誰々にかけて)」と言えば、名前を表示して意図した人物かどうかを確認する。これこそがこの製品の核心であり、Facebook Messenger(メッセンジャー)を通じて会話することに合わせてつくられたデバイスならではだ。フィルターをかけたり、友だちと一緒にビデオを見たり物語を読んだりすることもできる。このデバイスの強みはこのような体験の共有であり、Facebookのソフトウェアに特化して作られていることだ。

画像クレジット:Brian Heater

シェアできる物語本は祖父母が孫たちとリモートでつながった時に最適だ。Facebook Messenger組み込みのフィルターはまあまあオーケー。おかしな帽子をかぶらせたり、時々声を変えたりできるが、見かけの欠点を隠すようなものではない。良くも悪くも。遅いWi-Fiで調子が悪いことがあり、Facebook Watchのビデオでも同じことが起きた。遅延が見られることもあり、エフェクトが少々損なわれた。

Facebook以外のアプリセレクションは少ない。Spotify(スポティファイ)、Tidal(タイダル)、Dezer(ディーザー)、Pandora(パンドラ)は良い。Goはディスプレイ付きポータブルBlootoothスピーカーとしても使える。私はカメラをオフにして寝室に持ち込み、タッチスクリーンでSpotifyを操作して音楽を聴いた。リモート会議についてはZoom(ズーム)、WebEx(ウェブエックス)、Blue Jeans(ブルー・ジーンズ)などまずまずの選択肢が揃っている。何でもあるわけではないが、そこそこの仕事の会議には対応できるはずだ。

画像クレジット:Brian Heater

リモート会議の具合はいい。実際、その携帯性と組み合わせると、最も有効な使い方かもしれない。主要なスマートディスプレイは、サードパーティー製リモート会議アプリとの互換性が高いが、どこへでも持っていけて、コンセントを探さなくてよいことは、1日中デスクに縛り付けられたくない人にとってはうれしい。

これ以外、アプリのセレクションは最小限だ。ニュースとクッキングのアプリがいくつかある他、YouTubeなどの人気サードパーティ製サービスがブラウザーのショートカットから利用できる。もし、Netflix(ネットフリックス)を見たかったら、ブラウザーでサイトを訪れて見ることができる。最終的にはほとんどのことはそこに落ち着く。もしあなたが、すべてをFacebookアプリ(およびそれがもたらす厄介なことすべて)に捧げている人なら、これはおそらくあなたのデバイスだ。

携帯性に関して言えば、現時点でGoに直接のライバルはいない。この製品はPortalラインについての広い意味の「なぜ」には答えていないが、少なくとも「どこで」には対応している。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【レビュー】2022年のフォード・マーベリックは可能性を秘めたコンパクトトラック

Ford(フォード)のFシリーズピックアップは、米国のトラックである。少なくとも数字を見る限りその事実は間違いない。

半世紀近くにわたって米国で最も売れているトラック、それがフォードのFシリーズピックアップだ。Chevrolet Silverado(シボレー・シルバラード)やRam(ラム)のピックアップシリーズも立派な競争相手ではあるが、フォードはいまだにそのどちらよりも数万台多く販売している。

一度実際に乗ってみると、その魅力がわかるかもしれない。大きくてパワフルなトラックは、モバイルオフィスとしても作業台としても機能し、あらゆるタスクやあらゆる地形に対応することができるからだ。しかしフォードも、このオールインワンのユーティリティービークルがすべての人に向いているわけではないことくらいわかっている。

このトラックに対して否定的な人にとって、Fシリーズは大きすぎて面倒で無駄が多い。不愉快な気持ちにさえしてしまうかもしれない。フォードが必要としていたのは、フォードのNo.1セラーに嫌悪感を抱いている人たちのために向けたトラックであり、ピックアップのあるべき姿という一般的な期待から外れた、常識にとらわれないクルマだったのである。

そこで登場したのが、Ford Maverick(フォード・マーベリック)である。

フォードはおよそ10年間にわたって北米のコンパクトピックアップトラック市場を放棄してきたが、同社はマーベリックによってそのブランクを破り市場に戻ってきた。先代モデルのRanger(レンジャー)は中型トラックに改良されて戻ってきたが、新型マーベリックはこれまでの流れを継承している。ちなみにマーベリックという名前は、1970年代にフォードがコンパクトセダンのシリーズに初めて使用したものである。

基本概要

画像クレジット:Alex Kalogianni

ユニボディ構造の同新型トラックは、4ドア5人乗り の「SuperCrew」キャビンと約54.4インチ(140cm強)の荷台を備えている。比較のために書くと、この長さはSuperCrewキャビンを持つレンジャーよりも15cmほど短いものとなっている。

TechCrunchが試乗したマーベリックは、ハイブリッド化された2.5リッター4気筒エンジンを標準搭載し、191馬力と155ポンドフィートのトルクを発揮。無段変速機と組み合わされて、前輪にパワーを送る仕組みだ。

標準的な構成を持ちながらも、この小さなトラックは優れた燃費性能を実現している。都市部では推定40mpg、1タンクで500マイルの航続距離となっている。また、1500ポンド(約680kg)の荷物を積み、2000ポンド(約900kg)の荷物を牽引することが可能だ。

さらなるパワーを求めるなら、オプションの2.0リッターEcoBoostエンジンにアップグレードすることで最高出力250馬力、最大トルク277ポンドフィートを発揮する。このエンジンはより伝統的な8速オートマチックギアボックスと組み合わされ、前輪または4輪を駆動できる。性能面ではペイロードの数値は変わらないものの、単体で2000ポンドの荷物を牽引し、オプションの「4K Tow Package」(AWDモデルのみ)を付ければその2倍の荷物を引くことができるという。

EcoBoostを搭載したマーベリックのAWD(全輪駆動)車には、オフロードでの活動をサポートするアンダーボディプロテクション、サスペンションのチューニングの調整、オフロードに特化した追加のドライブモードを揃えたFX4パッケージを加えることも可能だ。

XL、XLT、Lariatの各トリムレベルは、フォードファミリーらしい馴染みのあるものだ。マーベリックではXLとXLTに大きな違いはないが、XLTにはより豊富なアクセサリーが装備されている。どちらも布製シートで、パワートレインは好みのものを選択できる。

Lariatトリムでは複数の付属品が追加されている他「activeX」と呼ばれる合成素材を使用してキャビンに若干のプレミアム感を与えている。マーベリックの初値はベースとなるハイブリッド車で2万ドル(約223万円)を下回り、その他のトリムは2万ドルから3万ドル(約335万円)の範囲に収まっている。フル装備の場合でも最大で3万5500ドル(約396万円)程度となっている。

搭載テクノロジー

画像クレジット:Alex Kalogianni

同社の大型版と同様に、このコンパクトトラックにも最新の安全技術や便利なテクノロジーが搭載されている。しかし感心させられるような技術はほとんどがオプションだ。歩行者検知機能つきの自動緊急ブレーキや衝突警告機能は標準装備されているものの、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシスト、ヒルディセントコントロールなどの、さまざまな運転支援機能を希望する場合は追加のテクノロジーパッケージとして装備する必要がある。

車内にはApple CarPlayとAndroid Autoに対応した8インチのタッチスクリーンが搭載されている。内蔵のWi-Fiホットスポットでは、最大10台のデバイスがFordPass Connectを介してインターネットにアクセス可能だ。ちなみにFordPass Connectは契約が必要になる前の3カ月間、無料トライアルが用意されている。

一方で、スマートフォンのアプリを使ってクルマにアクセスできるなど、便利な機能を備えているFordPassは無料だ。スマートフォンのアプリでクルマにアクセスすると、クルマの始動やドアのロック解除、クルマの状態の更新などが遠隔操作で行える。

マーベリックの真骨頂は、多様なニーズに対応するために構築された標準装備の荷台「Flexbed(フレックスベッド)」にある。マルチポジションのテールゲートや内蔵式の収納スペース、フォルスロードフロア用のスロット、リアカーゴを固定するための複数のアタッチメントポイントなど、細やかな工夫が施されている。

マーベリックは柔軟性を重視し、あらゆる面で実用性を高められるように設計されている。例えばユニボディ構造を採用したことで、燃料タンクを後方に移動させることができ、後部座席の下にかなりの量の収納を確保することができた。また、今人気のマルチユースのドリンクボトルを想定してドアを設計したり、空いているスペースをすべて収納機能として活用したりしているのである。

マーベリックのデザインには、フォードのトラックオーナーのDIY精神が反映されている。

ユーザーたちが自分のトラックを最大限に活用するために考え出したユニークなソリューションを観察した同社。その結果としてマーベリックは、ユーザーが配線するためにテールランプをハッキングしたり、ブラケットを取り付けるためにトラックの荷台にドリルで穴を開けたりする必要がないよう改めてレイアウトされたのである。マーベリックオーナーは車内各所に設置されたQRコードから、ハウツー動画が掲載されたサイトにアクセスすることが可能だ。また、一部の部品のCADファイルもアップロードされ、3Dプリンターでオリジナルのアクセサリーを作ることもできるようになる。

ユーザーエクスペリエンス

F-150のような大型トラックの走りを敬遠してしまう人にも、マーベリックはフレッシュな親しみやすさを感じさせてくれる。半分はクルマ、半分はトラックというデザインのため、ボディオンフレーム車のような走りではなく、シートポジションを高くしたサブコンパクトカーのような感覚になっている。ユニボディ構造のサスペンションにはしっかりとした安定感があり、重厚なピックアップにありがちな車体のロールはない。スポーツカーではないが乗り心地は良く、楽しい道も無駄なく楽しむことができる。

前輪駆動のこのハイブリッド車は、ノーマルモードでもスポーツモードでもよく走る。後者は効率を重視したアトキンソンサイクルエンジンにもう少しスロットルレスポンスを求める人のためのものだ。また、CVTトランスミッションとの相性も良く、良い意味で普通である。ハイブリッドのマーベリックのドライビングエクスペリエンスを表現するには「無難」という言葉が最適かもしれない。マーベリックは日常の足として期待を裏切らずに仕事をこなしてくれるが、特に何かが優れているわけではない。期待を裏切らないという意味では勝利と言えるだろう。

ある意味十分なパフォーマンスを発揮してくれたため、EcoBoostを搭載したマーベリックのパワーに大きな期待を抱く必要もなかったが、クルマを乗り換えたときに良く分かった。ちょっとしたパワーがあるのはいいことだが、ハイブリッドを差し置いて選ぶほど路上でのダイナミクスが劇的に変化することはなかったのだ。オフロードでは別の話だろうが、それはまた複雑な話になってくる。

ハイブリッドへのためらい

フォードはマーベリックのオフロード性能に対して慎重に言葉を選んでいる。「Built Ford Tough」ではあるものの、このトラックはドライバーを冒険のスタート地点に連れて行くためのものであり、トラック自体が冒険なのではない。これは、マーベリックがフォードのオフロード性能ランクの下の方に位置することを遠回しな言葉で伝えているのである。

どこまでも旅をしたい冒険家はBroncoを、また放浪好きなドライバーにはBronco Sportがおすすめだ。マーベリックと同じプラットフォームを採用していながら、ホイールベースの短さとクリアランスの面で、コンパクトトラックよりも優れている。

実際には、スロットルとホイールのスリップを制御するドライブモードが追加され、より高性能なタイヤと組み合わされたマーベリックは、試乗会のオフロードでも活躍を見せた。大きな岩がゴロゴロしたヒルクライムを除けば、平坦な砂利道と草原の中のよく整備された道では特に難しいことはなかった。

マーベリックは荒れた道でも問題なく走破した。オフロード経験者にとってはなんてことのない道だろうが、まだ慣れないクルマに乗っているドライバーにとっては一瞬躊躇するほどの岩場である。

全輪駆動のEcoBoostバージョンのマーベリックが、軽い障害物を乗り越えられるというのは疑う余地もない。しかしハイブリッドは別の話である。今のところフォードは全輪駆動のハイブリッドを提供していない。また、前輪バージョンをオフロードで走らせることはできなかった。

メカニズム的には、マイルドハイブリッドシステムは非常にインパクトの少ないシステムだ。大雑把に言えば、大容量のパワーパックを搭載したマルチモーターのPHEVとは逆に、ドライブトレインに組み込まれた小型モーターと小型バッテリーを組み合わせて、軽快な動力回復を実現するというものである。ハイブリッドマーベリックに独自の全輪駆動を搭載することは、不可能ではなさそうではないか。オフロードではEcoBoostよりも性能が落ち、燃費が下がるのは間違いないだろうが、その落差はごくわずかなものだろう。

例として燃費を見てみよう。フォードは前輪駆動のハイブリッドマーベリックで40mpgの燃費を実現したと大々的に発表している。より重く、よりパワーを必要とする全輪駆動システムは、このリターンを下回る可能性が高いが、とは言え30または25といったところだろう。40とはいかなくとも、コンパクトトラックとしてはかなり良い数値だと言えるのではないだろうか。

フォード自身も認めている通り、最もたくましいマーベリックでもオフロード機能に関しては限界がある。オフロードで最も重要な数値である277ポンドフィートのトルクというのは、150ポンドフィートに比べれば間違いなく優れているが、それでもマーベリックが必要とするパラメーターを考えれば十分である。

FX4を搭載したEcoBoost AWDマーベリックの方が優れていることは間違いないが、ハイブリッドシステムが標準搭載され、かつ最も魅力的であることを考えると、ハイブリッドのマーベリックが最も売れるであろうことは明らかであり、ドライバーたちが試乗しようと思うのはまずはハイブリッドだろう。

ライバルたち

フォードはマーベリックをデザインするにあたり、トラックからダウングレードしようと考えている人に向けてというよりは、乗用車をアップグレードしたい人に向けてデザインしている。中型のレンジャーとマーベリックの間には顧客がオーバーラップする部分があるかもしれないが、厳密には対立するものではないだろう。

都市部や郊外での使用を想定しているため、マーベリックの最も近いライバルとなるピックアップは、Honda Ridgeline(ホンダ・リッジライン)と言ったところだろうか。洗練されたクルマのような中型トラックとしての実績は、今のところ他の追随を許していないが、マーベリックや新型Hyundai Santa Cruz(ヒュンダイ・サンタクルス)がその地位を揺るがす可能性もある。

フォード・マーベリックは、その実力というよりも、可能性を秘めた「白紙状態」のクルマとしての魅力が高いトラックである。

このトラックは、コストパフォーマンスに優れた低燃費のコンパクトユーティリティービークルであるのと同時に、そこそこの性能を持つオフローダーでもあるわけだ。新たな家族にと犬を探す際、セントバーナードではなくテリアを選ぶのと同様、トラックのような実用性を持ちながらも価格や物理的な制約が少ないクルマを探している人の目に留まるのだろう。

乗用車のように扱えるため、初めて運転する人にも、重厚なSUVやフルサイズのピックアップを運転するのが苦手だという人にも親しみやすいのがこのトラックだ。フォード・マーベリックは 極めて「無難」であり、またその可能性は無限大なのである。

画像クレジット:Alex Kalogianni

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(文:Alex Kalogiannis、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】Nintendo Switch有機ELモデル、モバイルユーザーに良いがテレビにつなぐならスキップしてもよい

任天堂の大ヒットゲーム機「Nintendo Switch」の新バージョンは、それ自体を正当化するのに十分な違いがあるが、従来のSwitchを購入した何百万もの人たちが絶対に買わなければならにものではない。より大きく、より明るく、より高性能なディスプレイを備えたSwitchは、主に携帯ゲーム機として使おうとする人には良い選択だが、主に据え置きゲーム機として使う人にはアップグレードする理由はほとんどない。とはいえ、2021年のホリデーシーズンには多くの台数が販売されるだろう。

任天堂のハードウェア戦略がどのようなものか、本当に戦略があるのかどうかを見極めるのは、どんなに良い時期であっても難しいものだ。350ドル(日本では税込3万7980円)のNintendo Switch有機ELモデルがその好例だ。

ライバルであるSony(ソニー)やMicrosoft(マイクロソフト)が、次世代ゲーム機は最強だとアピールしている際、任天堂は5年前に発売されたときにはすでに性能が低かったゲーム機とほぼ同じバージョンを発売する。迷走しているのか?それとも、それだけ自信があるのだろうか?

ウワサでは、形状は同じだが、内部をアップグレードしディスプレイを変更した新しいSwitchの販売を2021年予定していたが、パンデミックとチップ不足でそれができなかったという話もある。

この状況を最大限に利用するため、任天堂は有機ELディスプレイをオリジナルのハードに取り付け、何年も前から3DSで繰り返してきたように、QOLのちょっとした向上のためのアップデートとして販売しているという話だ。任天堂はほとんどの説明や憶測を否定しているが、この話(これも単なるウワサだが)は正しいような気がする。

それについて、何といえばよいのかわからない。有機ELディスプレイモデルは明らかにオリジナルよりも優れているが、その改善はほんの少しだけで、人によてはまったく改善されていないこともある。

ディスプレイが最も良くなったのはいうまでもない。私は「メトロイド ドレッド」をプレイしたが、

動きが速く、色鮮やかでコントラストの高い環境はすばらしいものだった。有機ELディスプレイの暗い部分は、明るい部分や色をより鮮明にしていた(ただし、測定によるとピーク輝度は実際には低くなっている)。またディスプレイサイズも7.0インチに拡大されている。以下の写真では最小限に見えるが、実際にはとても大きなポイントで、細部や細部やUI、テキストがよりわかりやすくなっている。

また、黒一色の前面は、ホコリが目立つ。

画像クレジット:Darrell Etherington

動きのあるシーンでは、OLEDの方がピクセル単位のリフレッシュレートが速いため、フレームが次のフレームにぼやけてしまうような感覚が少なく、鮮明さが向上しているように感じる。初代Switchのディスプレイもはっきりいって問題ないものだが、有機ELディスプレイは明らかに優れている。

初代の液晶ディスプレイとは色味が違うが、ゲームではほとんどの人が気づかないだろう。私の目には、初代の液晶ディスプレイがマゼンタ寄りだったのに対し、有機ELディスプレイはグリーン寄りになっているように見ええる。興味深いことに、有機ELモデルでは設定に「あざやか」と「標準」のオプションがある。あらかじめ「あざやか」が選択されており、私は確かに良かった。画像に少し彩度を与えますが、気になるほどではない。

画像クレジット:Darrell Etherington

これに加えて、全体的に品質が向上している。薄いキックスタンドは、より頑丈で調整可能になり、全体的によくまとまっている。内部構造に大きな変更はないが、熱プロファイルが若干改善されたことで、動作温度がやや低くなり、ファンの使用をより抑えられている。スピーカーも改善されていると思われる。

Switch 有機ELモデルの本体保存メモリー64GBで、初代モデルの32GBから大幅にアップグレードされた。もちろん、多くの人がmicro SDカードを入れることになるだろうが、誰にとっても好ましいものであり、古いゲームをアーカイブする必要性もこれで減る。

Switchのゲームを主に本体でプレイする人、またはその予定がある人であれば、Switch 有機ELモデルは優れたデバイスだ。定価を支払ってアップグレードする価値があるとはいわないが、初代モデルをプレゼントしたり売ったあとに新しいゲーム機を購入するのであれば、50ドル(日本では約5000円)を追加で支払う価値は間違いなくある(モバイル機のみのLiteよりも約1万5000円高いが、テレビに表示できないというトレードオフは私にとっていつも正当化しがたいものだ)。

画像クレジット:Darrell Etherington

もちろん、私のように、旅行中以外は常にSwitchをドックに入れておくことが多い人にとっては、ほとんど何も変わらない。技術的には新しいドックが登場し、より頑丈になり、有線接続好きのためにEthernet接続も採用されているが、それ以外はほとんど同じだ。

Switchのゲームをプレイするには、Switch 有機ELモデルが最適であることは疑う余地もないが、それでもアップグレードの必要性を感じる人はいないはずだ。任天堂の次世代機がいつ登場するかは誰にもわからない。任天堂でさえ、その点についてはよくわかっていないのではないだろうか。だから今のところ、あなたが持っているSwitchがボロボロだったり、誰かの手に渡ったほうがいいものだったりしない限りは、無理に買う必要はない。

画像クレジット:Darrell Etherington

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Katsuyuki Yasui)

【レビュー】Apple Watch Series 7、アップルがトップを走り続ける要素がすべて揃う

スマートウォッチカテゴリー全体の第2四半期の業績は好調で、前年同期比で27%の増加となった。 新型コロナウイルス流行の懸念にもかかわらず、あるいはその懸念があったからこそか、前年同期比で20%の増加となっている。これらのデバイスの人気は、まさに潮の満ち引きのようなもので、大手企業のほとんどが全体的な普及率の上昇から恩恵を受けている。

しかし、かなり成熟したカテゴリーでは滅多に見られないあり方で、1つのモデルが引き続き大きくクローズアップされている。Counterpoint Researchによると、前四半期、Apple Watchのアクティブユーザー数は1億人を超えたそうだ。Apple Watchは「Series 6」「SE」「Series 3」で世界のスマートウォッチ市場のトップ4のうち3つを占めており、Samsungは最新の「Galaxy Watch Active」でなんとか3位に食い込んでいる。

ローエンド市場では、100ドル(約1万1300円)以下のデバイスが続々と登場し、競争が激化しているが、プレミアムおよびミッドレンジ市場では、SamsungやGoogleなどの競合他社が手を組んで対抗するほど、Appleは圧倒的な強さを維持している。Appleはどうしているか?ただ多少の手を加えるだけでいい。画面を少しだけ大きくしたり、充電器の機能を上げたり、そして何よりすでに良いものにはあまり手を加えないようにしている。

画像クレジット:Brian Heater

ヘルス面でのアップデートなど、変わった噂情報が飛び交っていたが、それは間違いで、Appleはデバイスの外観を変えることに注力する道を選んだ。Series 7は、過去数世代の中で最も大きなデザイン変更の1つとなるが、それも急激な変化とはいえない。むしろ、つけて歩いていても誰にも気づかれないかもしれないレベルのものだ。

一方、日常的にApple Watchを使用している方であれば、腕につけた瞬間にその違いに気づくはずだ。Series 6からSeries 7へのアップグレード。大型モデル(今回のレビュー記事ではこちらを中心に扱う)の画面サイズは、1.78インチ(スマートフォンと同様に対角線上の測定)から1.9インチにアップデートされている。これは、Series 6に比べて20%、なぜかいまだに販売されているSeries 3に比べて50%の増加となる。

世代を超えた急激な変化というわけではない。また、電卓のボタンが12%大きくなったからといって、誰もがアップグレードを希望するわけでもないだろう。実は、ウェアラブルという製品の性質上、デザイナーはあまり過激なデザイン変更をすることができない。なぜなら、製品は身体にフィットしなければならないからだ。初期のスマートウォッチは、装着性を阻害してしまう大きなデザインで苦戦した。

画像クレジット:Brian Heater

画面サイズが大きくなっても、周囲のハードウェアが小さくなれば、それに見合うだけの効果が得られるはずだ。それが、ベゼルを1.7mmまで薄くしたことで一部成功することになった。黒いベゼルが完全になくなったわけではないが、Series 6と比較しても、明らかにスリムになっている。にもかかわらず、ケース全体のサイズを40 / 44mmから41 / 45mmへと拡大せざるを得なかった。これまで、スマートウォッチのケースサイズが大きくなることに問題を感じていた者としても(Samsungのことを指している)、この1mmの増加による違いはあまり感じられなかった。手首に装着しても、寝るときに装着しても同じ感覚だ。私は、スマートウォッチを寝るときに着用することが完全に快適だとは思わないが、ヘルス計測結果は変わってくるかもしれない。

2インチ以下の画面では、ミリ単位での調整が必要になるが、このような調整によりUIも調整され、驚くほど多くのコンテンツを追加できるようになった。同社によると、メッセージなどのアプリケーションでは、Series 6に比べてテキストを50%以上追加で表示できるようになったとのことだ。また、文字数が少なくて済む場合には、文字サイズが2倍になり、たとえばパスコード画面のボタンが大きくなるなどの効果がある。

しかし、日常生活での最大の変化は、フルQWERTYキーボードが追加されたことだ。テキスト入力は、タップするか、QuickPathで文字をスライドさせて行う。小さな画面で、どちらもうまく機能していることに驚いた。アプリケーションを開くとすぐに、接続しているiPhoneに「Apple Watchキーボード入力」の通知が表示され、iOSでテキストを入力するかどうかを尋ねてくる。ほとんどの場合、答えはおそらく「イエス」だろう。しかし、もし少しの間携帯電話から離れることになった場合、その選択肢があるのはすばらしいことだ。

画像クレジット:Brian Heater

今回のモデルでは、ディスプレイのクリスタルに厚みを持たせることで、強度を高めている。腕時計は携帯電話ほど砕けて割れるようなことはないだろうが、私にはちょっとしたことで時計をドアにぶつけてしまう悪い癖がある。まだ割れるようなことにはなっていないが、すでに何度か危ない目にあっている。また、この時計は、従来のWR50の防水に加えて、防塵機能を追加した初めてのモデルだ。IP6Xで、完全な防塵性能を実現している。

ディスプレイのエッジが少しだけカーブしてケースと同じ高さになり、横から見たときでもディスプレイが少しだけ見えるようになっている。新しいカウンターウォッチフェイスは、数字を縁に沿って伸ばし、この利点を活かしているといえる。他の2つの新しいフェイス(モジュール式デュオとワールドタイム)は、追加されたスペースを利用して、さらに多くのコンプリケーションを詰め込んでいる。

画像クレジット:Brian Heater

ケースが大きくなったことで、実質より大きなバッテリーも搭載できるようになったことになる。実際に容量を増やしたかどうかについては、Appleが明らかにしていないので、必ず行われるであろう分解の検証結果を待つしかない。しかし、これまでと同じバッテリー駆動時間を維持するために、電池容量を少し増やした可能性は高いと思われる。Appleは18時間を約束しているが、確かに、ディスプレイが大きくなり、常時点灯でもかなり明るくなった(内側では70%、同社調べ)にもかかわらず、問題なく1日を過ごすことができるはずだ。

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    画像クレジット:Brian Heater

競合他社の中には、1回の充電で何日も使えることを謳っているものもあるので、純正の睡眠トラッキング機能が追加されたことで、バッテリー駆動時間に対してもより積極的なアプローチができるのではないかと期待していた。少なくとも新たに得たものは、Series 6に搭載されているものよりも33%高速で、約45分で80%の充電が可能な新しいUSB-Cマグネット式充電器だ。実際には、10分以内にひと晩分の充電ができることを意味する。つまり、計画的に充電すれば、快適に昼夜を問わず装着できるというわけだ。

新しい充電器は、旧モデルの時計との互換性があり、それらを通常速度で充電することができる。しかし、廃棄物を減らすというAppleの方針に基づき、Series 7には電源アダプターは付属していない。しかし、みんなが(願わくば)持っているUSB-Cのものを使って充電することができる。また、新しいバンドもいくつか用意されているが、Series 7は、ありがたいことに、Appleのサイトにある既存のバンドすべてと互換性がある。

画像クレジット:Brian Heater

センサー類はほぼそのままで、Series 7にはこれまでと同じプロセッサとLTEチップが搭載されている。Series 8では5Gになるのだろうか?新色もいい。Appleから送られてきた「グリーンアルミニウム」は、予想以上に繊細な色合いだった。濃いオリーブ色で、光の加減によってはダークグレーやブラックと見間違うほどだ。もうちょっとポップな感じにしたいなら、赤や青がいいかもしれない。

Series 7の価格は、41mmが399ドル(日本では税込4万8800円)から、45mmが429ドル(日本では税込5万2800円)から。バンドの種類や仕上げによって、価格も上がる。もしすでにSeries 6を持っている人にとっては、それほど大きなアップグレードにはならないだろう。まだ使えるのであれば、1年か2年待って、ヘルス機能やその他の機能について、Appleが今後どのような展開を見せてくれるのか見てみてはどうだろうか。今のところ、Appleがトップを走り続けるには十分な要素が揃っている。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【レビュー】Rivianから待望の電動トラック、2022 Rivian R1Tにはたくさんのお気に入り機能と工夫が溢れている

Rivian(リビアン)は、初めての試みで、ピックアップトラックのゴルディロックスを作った。

Rivian R1T電気トラックは大き過ぎず、小さ過ぎない、適正サイズのトラックだ。ロッククローリングやオフキャンバー走行を難なくこなす。ダートでも数秒で時速約96kmに達し、後輪のスリップも発生しない(ただし、オプションでドリフト効果を発生させることもできる)。また、曲がりくねった山道でコーナーを攻めても車体が横揺れすることもない。

内装も外装も間違いなく最高級の仕上がりになっている。が、Rivian R1Tは決して見かけだけの軟弱なクルマではない。

リビアンのデザイナーとエンジニアは、あらゆる面で形と機能を両立させることで、見せ掛けだけのクルマにならないように配慮している。さらに驚かされるのは、タイダウンフック、エアコンプレッサー、コンセントといった装備の場所などから、多くの社員が、キャンプ、マウンテンバイク走行、あるいは買い物などの日常的な作業に至るまで、実際のさまざまな条件下でこのクルマをテストしたことが伺える点だ。

こうした努力の結果、季節を問わず、あらゆる用途に使えるクルマになっている。そして何より、運転していて楽しい。

記者向けの3日間の試乗で、最終製品仕様に近いR1Tは、誰もこんなクルマが必要だと気づいていなかった、そんな電気トラックであることが分かった。

といっても、すべてが完璧だと言っているわけではない。ハードウェアの細かい部分やソフトウェアユーザーインターフェイスなど、改善して欲しい点はいくつかある。1つ指摘しておくと、おそらくペン立てなのだろうが奇妙な切り込みがあるのだが、これはワイヤレス充電パッドによって間違いなくすぐにホコリがたまるだろう。

はっきり言っておくが、このクルマを詳細にレビューするにはもっと時間をかけて試乗してみる必要がある。とはいえ、全体としてRivian R1Tには好印象を持った。

画像クレジット:Kirsten Korosec

リビアンがR1Tで実現したことは簡単ではない。

名のある自動車メーカーにとって、消費者の欲しいものリストを予想して、すべての要望を実現していくのは難しいことだ。量産しながら適切な仕上がりを維持するのはさらに難しい。リビアンは、最初の電気トラックを米国市場に投入して、ドライバーが欲しがるトラックをきちんと製造することを目指す絶好の立場にある。

リビアンは消費者の要望と運転のしやすさという点では期待に答えていえるが、生産と配送というさらに2つのテストに直面している。

リビアンはこれらの目標に向かって前進している。リビアンブルーの車体を持つ最初のRivian R1T電気ピックアップトラックは、今月始め、イリノイ州Normal(ノーマル)の同社工場の組み立てラインから排出され、創業10年を超える同社と創業者兼CEO RJ Scaringe(RJ・スカーリンジ)氏にとって画期的な出来事となった。

関連記事:アマゾンも出資するRivianが電動ピックアップトラック「R1T」の量産第1号車を出荷

2009年にMainstream Motors(メインストリームモーターズ)として創業した同社は2年後にリビアンに社名を変更し、この2年間で、社員、支援者、パートナーの数が急増し、爆発的な成長を遂げた。

リビアンは数年間ひそかに事業を展開した後、2018年、ロサンゼルスのモーターショーで完全電気自動車R1TトラックとR1S SUVのプロトタイプを発表した。

その後、リビアンは数十億ドル(2019年以来105億ドル)を調達し、イリノイ州ノーマルの工場を拡張し、数千人(8,000人以上)の社員を雇用し、アマゾンを法人顧客として獲得した。最近では、ひそかにIPOを申請している。また、イリノイ州の工場の他にも、カリフォルニア州のパロアルトとアービン、ミシガン州プリマスにも工場があり、英国支社もある。

基本概要

画像クレジット:Kirsten Korosec

筆者が試乗したR1Tは、グレイシャーホワイトのLaunchエディションで、Pirelli Scorpionの全地形対応タイヤを履いていた。価格は約7万5000ドル(約833万円)だ(1075ドル[約12万円]のコンテナ取扱料金を除く)。

特性のバッジが付いてくるLaunchエディションはもう購入できないが、リビアンの「Adventureパッケージ」トリム(7万3,000ドル[約811万円]より)は装備という点でLaunchエディションとほぼ同じだ。例えばLaunchエディションとAdventureエディションは、どちらもオフロード向けアップグレードが標準装備されている。具体的には、強化されたボディー底面シールド、デュアルフロントバンパーけん引用フックとエアーコンプレッサー、内装アクセント、100%リサイクルのマイクロファイバー天井材、Chilewich(チルウィッチ製)フロアマットなどだ。

R1Tの特徴は、バッテリーパック、駆動装置、扱いやすい独立型空気サスペンション、保温性の高い下部構造などで構成されるスケートボードアーキテクチャーだ。このスケートボードシャーシには上記のすべての装備が組み込まれている。つまり、このスケートボードに異なるボディを乗せることができる。これにより、柔軟性とコスト効率性が向上し、同じ基盤を使用して車を量産できる。

その結果、重心が低く、68立方フィート(約28リットル)の積荷スペースが確保された。積荷スペースは、デザイナーとエンジニアがさまざまな身長の顧客に配慮して設計したものだ(下の2階層の前方トランクはそうした例の1つだ)。

画像クレジット:Kirsten Korosec

パワートレインには、135kWhのリチウムイオンバッテリー、全輪駆動用の4台のモーター、835馬力 / 最大トルク1,231.25N・mのシングルスピードトランスミッションが搭載されている。これらの数字によって、パワー、パフォーマンス、カーブで加速したときの安定感といった利点が得られる。

リビアンがクワドモーター駆動(前輪軸と後輪軸にデュアルモーター駆動ユニットを搭載)を設計した経緯は説明しておく価値があるだろう。というのは、筆者はその設計が重要な理由を身を持って体験できたからだ。4台のモーターはそれぞれ独立にドルクを調整するため、さまざまな条件下でトラクションを制御できる。筆者が試乗したのは未舗装の悪路だった。クワドモーター駆動により、状況に応じて、最もパワーを必要としている車輪にパワーを伝えることができるため、スリップを防いだり、車両の回転を制御したりできる。

車両の温度管理とバッテリー管理システムにより、車両は最大11,000ポンド(約5トン)をけん引でき、直流急速充電速度は走行距離140マイルの場合200kWで20分の充電が必要となっているが、どちらも試すことはできなかった。この2点については、数日間試乗できる機会がきたら試してみようと思う。

サーキット

画像クレジット:Kirsten Korosec

記者向けの試乗会は全員デンバー国際空港をスタート地点として開始された(ただし筆者は飛行機が遅れたため同時にスタートできなかった)。空港から州間ハイウェイ70を100マイル北上し、ロッキー山脈の東側地域に入り、ブレッケンリッジ(テンマイル・レンジにある人気のスキーリゾート)を最終地点とする(今回の旅費と宿泊費はリビアンではなくTechCrunchが負担してくれた。リビアンはトラックと食事を供給してくれた)。

筆者は、 Rivian R1Tに試乗するのを、次の日まで待たなければならなかった。

翌朝早く、Rivian Camp Kitchenで屋外での朝食をとり、安全性チェックと簡単な説明を聞いた後、いよいよコースでの試乗が始まった。

初日の大半はオフロードだが、舗装されたマウンテンハイウェイも面白そうだ。最初のルート(スワンリバーのノースフォークに沿って走りディアー・クリークとセントジョン・トレイルに接続するコース)は、ロッククローリング、難しいV時型の切り込みのある区間、険しい上りと下りで構成されている。スピードの出せるダート・ロードもあるので「ラリー」モードを試すこともできた(詳しくは後述する)。

画像クレジット:Kirsten Korosec

ドライバーは、古い鉱山採石場だったモンティズマを通過し、ハイウェイ6(ラブランド・パス峠を越える曲がりくねった舗装道路)に入る。初日の最後はドライバーによって走行距離に差が出た。トラックに乗車した筆者と他の記者たちが選んだ午後のルートは、ラブランド・パス峠を2回越えて、キーストーン、スワン・ロードを通過して最終地点に到達するルートだった。

翌朝、記者たちは再度空港まで試乗車を試すことができた。今回の初めての試乗は計約270マイルにおよぶ3日間の旅だった。

ハンドリングとパフォーマンス

画像クレジット:Rivian

オフロード区間の走行時は、4輪独立の空気サスペンションが真価を発揮した。ドライバーは、多目的、スポーツ、オフロード、節約、けん引などの複数のモードからいずれか1つを選択できる。オフロードモードには、さらに、オフロードオート、ロッククロール、ラリーなどのオプションが用意されている。ドリフト走行モードも用意されているが、今回はテストしなかった。

最低地上高、ダンピング、再生ブレーキを制御するペダルマップ、車両のサスペンションは、走行モードに応じて調整される。例えば節約モードでは、車高は約8インチ(約20cm)だが、オフロードでは14.9インチ(約37cm)にまで調整できる。

オフロード走行では、急斜面の登り下り、浅瀬走行も行った。地上高と、34度のアプローチ角、25.7度のブレイクオーバー角(斜路走破角)、29.3度のデパーチャー角により、車体が地面をこすったり、つっかえたりすることは一度もなかった。特に大きな石を避けて進もうとしていたら(他の車両ではごく普通のテクニック)、リビアンの社員がそのまま乗り越えるようアドバイスしてくれたことがあった。言われるとおりにやってみると、まったく問題なかった。

画像クレジット:Rivian

オフロード走行中に突然発生した唯一の問題は、同乗者の窓の開閉がときどき遅くなったり、止まってしまうことだ。これは量産仕様の車両では問題になるだろうが、ちょっとした誤作動の類で、あと数週間で実際に顧客に納車されるまでには修正されていることを望みたい。

このクルマのさまざまなモードでのパフォーマンスは期待どおりだったが、インターフェイスが原因で、モード切り替えが若干もたつく感じがした。これについては、以下で詳しく説明する。

ユーザーインターフェイス

画像クレジット:Rivian

内装はテクノロジーと物理構成要素のバランスが非常によくとれている。フロントガラスのワイパーとギヤセレクターの操作はレバーに組み込まれており、中央の車載インフォテインメント・システムから操作しなくてよいのはありがたい。また、ハンドルには親指操作の2つのトグルスイッチが装備されており、音量、1曲飛ばし、電話応答制御、Alexa音声アシスタントを制御できる。また、先進の運転補助機能もいくつか用意されている。

先進の運転支援システム(ブランド名Driver+)がアクティブ化されたときに使用される運転者監視システム(カメラ)も用意されている。ドライバー用ディスプレイは仕様に組み込まれているもので、わずかな重要情報(速度、ナビゲーションマップ(必要な場合)、レンジなど)のみが表示される。

運転席の右側中央には矩形の中央タッチパネルがあり、クルマに関して必要なほぼすべての情報が表示される。その中には、物理的なボタンやノブでも操作できればありがたいと思える項目もいくつかある。とはいえ、良い点を挙げると、インフォテイメントシステムでは、面倒なホーム画面ボタンを省略して、必要な項目がすべて画面下部に固定的に配置されている。これにより、ほとんどの機能を直感的に見つけて操作できる。

画像クレジット:Rivian

普通のドライブなら「どうしてもっとボタンとノブで操作できるようにしないんだ?」などと愚痴をこぼすこともないだろう。だが、急な石だらけの斜面を登るときなど、換気口の向きを変えるのに、いちいちタッチパネルをタップして小さなドットを動かして自分の顔に風が当たるように調整するのは何とかならないのかと思わず声に出して愚痴ってしまった。また、ガタガタ道や曲がりくねった道を走行しているときに回生ブレーキのレベルを変更したいとも思わなかった。

こうしたぎこちなさの中には慣れれば解消されるものもあるだろう。それでも、リビアンのユーザーが物理的なノブや換気口を掴んで操作できることを望んでいるのではと思うような機能もいくつかある。エアコンはその最たるものだ。

ソフトウェアは思ったとおりに動作した。今回試乗したトラックでは、が反応が遅くてもたつくことはなかった。携帯電話は簡単にBluetooth接続して音楽を再生できた。ただし、リビアンの車載システムにはApple CarPlay やAndroid Autoはインストールされていない。

リビアンはソフトウェア中心型でクラウドベースのアーキテクチャーの利点を享受している。これにより、無線でソフトウェアをアップデートできるため、わざわざサービスセンターまで足を運ばずに済むとリビアンの社員が保証してくれた。アップデートは定期的に実行され、新しい機能とアプリがインストールされる。

テスラでは、ビデオゲームやその他のお楽しみコンテンツを配信する手段としてOTA(Over The Air)を使っているため、テスラのオーナーはOTAがお気に入りになっている。リビアンは少なくとも現時点では、OTAにはあまり乗り気ではない。リビアンの電気トラックの隠し機能はハードウェアを重視しており、それは未来のリビアンオーナーの希望に沿ったものだと同社は考えている。

ハードウェアアクセサリー

キー、ギア・トンネル、ギアガードなど、簡単に触れておくに値するハードウェアコンポーネントがいくつかある。すべてのアクセサリ(粋なポータブルスピーカー、タイヤ空気圧縮機、懐中電灯など)については、今週掲載する記事で詳しく紹介する。

まずはキーだ。いや複数のキーといったほうがよいかもしれない。リビアンはオーナーがクルマのドアを開けるための4つの方法を用意した。携帯アプリ、カラビナタイプの錠前のついたフォブ、クレジットカード型のキー、ブレスレットの4つだ。やり過ぎではないかと思うかもしれないが、これはアクティブで、辺ぴな地域で一種の冒険を楽しむことが多いリビアンのターゲットユーザーに合わせたものだ。

画像クレジット:Kirsten Korosec

次はギア・トンネルだ。これは11.6立方フィート(約328リットル)の収容スペースを提供する。ギア・トンネルはこのクルマの主要な特徴であり、スカーリンジ氏によると、何度も修正が繰り返されたトラックの初期デザインでギア・トンネルだけは一貫して変わらなかったという。

ギア・トンネル内にオプションのスケートボードアップグレードを施すことで、5,000ドルのキャンプ用キッチンを装着できる。リビアンはこれ以外にもアクセサリを追加する準備を進めているようだ。スキーやスノーボードブーツの乾燥用ヒーター、泥だらけの自転車走行用着衣を入れる簡単着脱式バケツ(スケートボードに装備可能)などが考えられる。

ギア・トンネルのドアは荷台のフレームに付いているボタンを押すと下向きに開く。ドアは人が1人乗っても耐えられるくらい十分な強度があり、収容スペースを広げてくれる。下の写真では、リビアンの社員が空気圧縮機のアタッチメントをドアの収納ボックスから取り出しているところだ。

画像クレジット:Kirsten Korosec

最後に、Adventureパッケージトリムに含まれているギアガードと呼ばれるハードウェアとそれに付随するソフトウェア機能について触れておく。このシステムは荷台の側面に差し込む積荷固定用ケーブルで構成されている。このケーブルをラックに搭載した自転車やその他の道具に接続できる。接続すると、セキュリティシステムが稼働する(下の写真参照)。

セキュリティシステムは車の10台の外部カメラに接続されており、何者かが荷台の道具に近づいていじり始めると、録画を開始する。録画された動画は、中央のディスプレイで表示したり、保存および共有もできる。ただし、細かい点だが、この動画がユーザーのスマホアプリに即座に送信されることはない。

画像クレジット:Kirsten Korosec

リビアンはこの機能を発表と同時に追加し、アプリを改善していくものと思われる。これは、ソフトウェアとハードウェアの統合を重視しながら、ゼロから車を開発する場合の利点だ。多くのちょっとした点を改善していくことができる。

リビアンが実現したことは、たまたま変更が難しいものになっている。リビアンのトラックは、トラックのオフロード走行能力、機敏なセダンやスポーツカーの路上性能、静かな電気自動車の利点を備えながら、デザイン、内装素材の選択、ソフトウェア、機能アクセサリなどもなおざりにはしていない。

それはブランドの信頼性を構築するに違いない初期的な取り組みであり、お客様にも良い印象を与えることだろう。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】「メトロイド ドレッド」、不朽の名作の流麗さと緊張感がサムスとともに帰ってきた

Nintendo(任天堂)は数十年来のシリーズを放置することができず、再発明をやめる意志はないようだ。しかし同社は、この「Metroid:Dread(メトロイド ドレッド)」で、良いものには手を付けないほうが本当にいいこともあると認めている。本ゲームの伝統的アプローチは、このジャンルを最近の人気作品のように前進させることができないかもしれないが、とにかくこれをプレイすることで最高に愉快なひとときを過ごすことができる。

10年以上のときを経て登場した最初の「本流」メトロイド「ドレッド」は「メトロイド フュージョン」直系の続編だが、ストーリーの要約は書かないでおこう。マリオやゼルダなどのタイトル同様、ストーリーはその時々の体験に付随するものだ。しかし、銀河最強の賞金稼ぎであるSamus Aran(サムス・アラン)が、捜査のために送りこまれた太陽系外惑星ZDRでに取り残され、不可解な「physical amnesia(肉体的記憶喪失)」に苦しめられ、我々の知る彼女のあらゆる能力が使えなくなっていることだけはいっておこう。

任天堂のレビューガイドラインの制約上書ける範囲で続きを話すと、人工的な環境や自然の中をいかにもメトロイドっぽいトンネルをはい回りながら新しい武器と能力を集めて新たな道を切り開き、新たなパワーと自信を身に付けていく。つまり1986年からあまり変わっていない。

スムーズな60FPS

「ドレッド」についてまず言っておかなくてはならないのが、サムスのコントロールとゲームプレイがすばららしく滑らかで反応がよいことだ。これは私にとって大きな心配事だった。なぜなら、メインキャラクターの操作感覚はこの種のゲームで最も重要な部分の1つだからだ。「Hollow Knight(ホロウナイト)」のキャラクターは軽快かつ正確に動く。「Blasphemous(ブラスフェマス)」の主人公は慎重で重厚だ。新参の「Death’s Door」はスムーズで操作しやすい。「メトロイド ドレッド」では、サムスは「高速」かつ「俊敏」だ。

Nintendo Switch版メトロイド ドレッドのスクリーンショット

安定した60FPS(フレーム毎秒)で動き、基本動作は、サムスが時折みせる落ち着いたジョギングではなくスプリントのようなスピード。このゲームであなたはハンターであると同時に獲物でもあり、すばやく動き、すばやく反応する必要があることは明らかだ。あらゆるアクションが高速で操作しやすく、このゲームはプレイヤーに、安全な場所でじっとしているのではなく、スピード感を持って敵を倒していくようなプレイを望んでいる。そこそこパワフルさも感じるが、最大の武器は敏捷性だ。

それは、無敵のハンターキラーロボット「E.M.M.I.」がサムスの足音に聞き耳を立て、その存在に気づくと執拗に追いかけてくる「ドレッド」の特徴的なエリアでは特に重要だ。高速で壁を登り狭い空間を這い回る能力を持つE.M.M.I.は、まるで映画「Alien(エイリアン)」のXenomorph(ゼノモーフ)のようで、彼らと同じく、一度捕まえられると正確なタイミングでカウンターを決めない限り一巻の終わりとなる。

Nintendo Switch版「メトロイド ドレッド」のスクリーンショット

この点はぜひはっきりさせておこう。「メトロイド ドレッド」では死ぬ、何度でも。おそらく半分の時間はE.M.M.I.が相手で、敵はあなたの目の前のシュートから這い出てパニックになったあなたを捕まえるか、安全な場所に隠れようとするあなたを追い詰める。残りの時間は、さまざまなボスたちの容赦ないパターンを学習することになるだろう。1つか2つエネルギータンクを持っていれば、オーバーワールドはそれほど脅威ではない。ただし、特殊なE.M.M.I.ゾーンの特別なドアに入ると(ありがたいことにこの時点でセーブされる)、あなたのストレスレベルは急上昇する。ゲームに入ってすぐ手に入れた遮蔽能力でさえ、捕獲を防ぐことにかけては驚くほど限界がある。彼らを確実に倒すためには、逆説的だが、持ち場を守る必要がある。それは逃げるよりも大変だ。

ほとんどの部分でゲームはタフだがフェアだ。「Demon’s Soul(デモンズソウル)」で無傷でいられるマゾレベルのゲーマーにとってはあまりチャレンジはないだろうが、一定水準の危険が訪れるので、セーブルームに到達するといつも安心する。私はゲームの最終場面までプレイしたが、そこに困難な罠と滑稽なほど難しいカウンターのタイミングがいくつもあることは明らかで、通常数回試してみれば、ゲームがあなたに何を求めているかを理解できるだろう。そうでなければラッキーだ。

ポーズ画面では、マップのチェックと新しいアイテムのチュートリアルを再確認するくらいしかすることがない。インベントリーやロードアウトはなく、すべてのアクションはボタンの組み合わせによって実行するが、これが少々厄介だ。左バンパーがFree Aim(フリーエイム)、右でグラップルを作動、左スティックで照準、ジャンプはBの後Yを押す、もしできるなら。

サーガ・オブ・サムス

Nintendo Switch版メトロイド ドレッドのスクリーンショット

先に書いたように、ストーリーは「メトロイド」の本質ではないが価値があるもので「ドレッド」のイベントは進行するサーガ(冒険物語)に興味深いアクセントと新事実を加える。最初のいくつかのエリア以外について話すことを許されていないが、個人的にお気に入りの「ホロウナイト」と比べて感情移入はあまりできない。「ホロウナイト」では、ビジュアルメインの物語と音楽の組み合わせは見ごたえがあるもので、訪れた場所が物語的で名高く悲劇的であることを感じさせた。「ドレッド」は、どちらかというとビデオゲームのレベルのようで、異なるフィーリングとテーマではあるものの「ダークソウル」の登場以来、ゲーム用語の1つとなっている「ineffable(筆舌に尽くしがたい)」の類ではない。

それに加えて、レベルデザイナーはこれらの場所をとても巧妙に設計していることが挙げられる。

最初のいくつかのエリアでは、場所を移動させたり、ループさせたりすることで、ほとんど直線的になっているにもかかわらず「あ、そういえば前に開けられなかったドアがあったな……あそこに戻ってみよう」と、あちこち見て回っているような気分になる。幸いなことに、スーツや武器のアップグレードは、特定のドアを開けるためのキーとして機能すること以外でも、必然的なものと感じられるだろう。

中にはあれこれ物事がオープンになるポイントもあるが、全体としてはZDRのガイド付きツアーの要素が強い。ときには制限がありすぎる、合理化されすぎだと感じることさえあるが、引き返す手段も用意されているが、
その多くは都合が良すぎる場所に設置されたテレポーターによって回避され、次に行くべき場所に正確に連れて行ってくれることが多い。このゲームでは、膨大な当て推量が必要で、それは良くもあり悪くもある。私は何度も「Metroidvanias(メトロイドヴァニア)」で苦しんだが、次に何をするべきかを見つけることもチャレンジの一部だ。

画像クレジット:Nintendo

マップは非常に良くできており、情報がありながらも多すぎることがない。ミサイルタンクへの秘密の経路を見つけるために地形を破壊する道中で休憩するたびに「something is around here(近くに何かがいる)」というメッセージが点滅する。特定の種類のドアやアイテムをすべて表示できることも、時間の節約に役立つ。

ここには水のエリアもある

1つのまとまりある世界にいるような雰囲気も良いものだが「ドレッド」はあまりそれがない。訪れるさまざまな場所にはそれぞれ独特の外観と雰囲気があるが、まったく調和していない。電車やエレベーターに乗ると、次の瞬間まったく新しいゾーンにいて、2つのゾーンにオーバーラップや秘密の通路はない。たとえば「Super Metroid(スーパーメトロイド)」では、秘密基地が隠された岩肌や、巨大な海に衝突する難破船がすべて燃えるコアの上にあり、その中を論理的に進んでいく。「ドレッド」では、岩の多いエリアやジャングルのようなエリアや灼熱のエリアなどがあるが、繋がっている感じはない。

そこに探索的な「je ne sais quoi(よくわからない何か)」はないかもしれないが、それぞれのエリア自体は美しく歩き回るのが楽しいため、あなたは繰り返しそこ訪れ、それまで存在すら想像しなかったまったく新しいセクションのキーを開けるだろう。さらに、ストーリーの展開やプレイヤーの能力の進化に合わせてエリアは変わっていき、その変化は巧妙かつ過度に制限的だ。

Nintendo Switch版メトロイド ドレッドのスクリーンショット

私の「ドレッド」の旅は8時間少々続き、最後のボスとの遭遇だと私が信じるところまで到達したが(まだ倒していない。かなり大変だ)、正直なところ大急ぎで進んだにもかかわらずもっと長く感じた。そしてもちろん、すべての「メトロイド」と同様、スキルを蓄積して複数回プレイする楽しみがある。大きく異なるエンディングがあるのかどうかは聞いたことがない。またメトロイドファンの間でメジャーな楽しみとなっているシーケンスブレイク(ボスをスキップしたり、エリアを違う順番で攻略したりすること)の機会もあまりなさそうだ。私が間違っているかもしれないが。

「メトロイド ドレッド」は、とことんメトロイドなゲームであり、近年の類似ゲームほどのスケールではないかもしれないが、その驚くほど流れるようなゲームプレイシステムと推進力は補って余りあるものだ。私は常にゲームを続けたくて、毎晩手を止めるのも大変で、レビューの締め切りが迫っていなければ時間をとることもできなかったに違いない。これはプレイしたくなるゲームであると同時に、最小限のパッド操作とコンスタントな前方移動によって、プレイヤーの時間を無駄にしない。壮大な作品ではない。しかしプレイヤーにとって時間とお金の価値があるゲームであるために、すべてのゲームがそうである必要はない。

画像クレジット:Nintendo

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【レビュー】Windows 11搭載「Surface Pro 8」は快速で新鮮な印象、新OSとライバルiPad Proとの比較

最新のSurface Proには、新しい良さが詰まっている。スクリーンが新しくなり、筐体も新しくなった。最新のIntel(インテル)製チップセットを搭載し、ついにThunderbolt 4にも対応してくれた。「Surface Pro 8」にはWindows 11も搭載され、多くの新機能が追加されている。特徴的なキックスタンドの動きも良くなり、オプションのキーボードも改良されている。唯一欠けているのはMicroSDXCスロットで、今回のバージョンでは採用されなかった。

Surface Pro 8は、これまでのモデルから大幅にアップデートされているが、それでいて親しみやすさも兼ね備えている。Microsoft(マイクロソフト)は、ついにSurface Proのデザインをアップデートしたが、そろそろ頃合いだったのだろう。同社は2013年にSurface Proを発表したが、7世代のプロダクトを通じて筐体はほとんど変わってこなかった。Surface Pro 8では、Microsoftが2020年に発表した「Surface Pro X」のすばらしいボディを活用した。最高だ。Surface Pro 8はこれまで以上に優れている。

私自身、これをいうことに何のためらいもない。Surface Pro 8は、これまでで最高の2in1であると。気に入っている。使っていて楽しいし、コンパチブルタイプのWindowsマシンを探している人には最適なソリューションと言えるだろう。

レビュー

Surface Pro 8はすばらしい。キックスタンドを開くと、Windows 11が起動する。遅延もほとんどない。読み込みも反応もすべてがスピーディなのだ。第11世代のIntel Core CPUを搭載したSurface Pro 8は、LightroomからFactorioまで高速に動作する。

ディスプレイも美しく、これまでのモバイルデバイスの中で最高のものの1つだと思う。残念なことに、Windowsが120Hzのオプションをコントロールパネルの奥深くに隠しているので、すべての購入者がこのスクリーンの良さを体験できるというわけではない。また、HDRのサポートについては、私は動作させることができなかったのでここで報告することができない。

Windowsは、Surface Pro 8の弱点のように思える。新しいWindows 11の状態であっても、OSはやはりSurface Proの欠点の1つだろう。Windows 11には、ユーザー泣かせな奇妙な癖があり、それに慣れるのに時間がかかった。新しいスタートメニューはあまり好きになれないし、ウィジェットのようなモバイルファーストの機能はすべてただ無造作に追加されているだけのように映る。

ハードウェア

Surface Pro 8は、2020年に発売されたSurface Pro Xの美しいアルミニウム筐体の中で、最新のIntelチップを動かしている。新しい筐体のおかげで、指紋が表面に付着することがなくなった。エッジは丸みを帯びており、過去のモデルよりも洗練されたハードウェア体験を提供してくれる。先代モデルと比較して、厚さは2mm、重さは100g増加している。その理由を尋ねたところ、Microsoftの担当者は、冷却性能の向上と大容量バッテリーは、多少の厚さに見合う価値があると感じていると答えてくれた。

Surface Pro 8は、あらゆるポータブル機器の中で最高のスクリーンを搭載している。このスクリーンは、画質とタッチスクリーン機能の両方の点で見事な仕上がりだ。明るく鮮明で、ピクセル数が多く、クリアな画面だ。リフレッシュレートは120Hzだが、この機能を有効にするには、詳細メニューの「ディスプレイ設定」で有効にする必要がある。また、HDRにも対応する予定のようだが、現時点では対応していないようだ。アダプティブ・カラー・アジャストメントにも対応している。Surface Pro 8は、周囲の光に合わせて色温度を微調整してくれる。

11.3インチのディスプレイ解像度は2880×1920、1インチあたり267ピクセル(ppi)だ。ちなみに、最新iPad Proの11インチのディスプレイは2388×1668、264ppiだ。

ディスプレイは、この新しいSurface Proの魅力の大きな部分を占めているといえるだろう。とても美しく、SlackからPhotoshopまで、あらゆるものを新しいもののように輝かせてくれる。

タッチスクリーンの操作性も向上しているようだ。新しいディスプレイ(あるいはWindows 11)は、スタイラスや指を使ったときの感触がより滑らかになっている。加えて、画面に触れることが楽しくなった。大げさに聞こえるかもしれないが、私はそう感じている。

Microsoftは「Surfaceスリムペン」の新バージョンをリリースした。この第2モデルでは、先端部のデザインを一新し、ハプティックフィードバックとともに遅延を低減している。スリムペン2は使っていて楽しい。さまざまな種類のブラシに合わせて異なるハプティックフィードバックを感じられる。ブラシを使うと、スマッジングスタンプを使うのとは違う感覚を得られる。鉛筆を選択すると、スリムペン2は擦れるような感覚を与えてくれる。アプリケーションがこの機能をサポートする必要があるが(現在はいくつかのアプリケーションがサポートしている)、この体験は過去のものとは根本的に異なるものとなるだろう。

また、Surfaceスリムペン2は、キーボードヒンジの気の利いた場所に収納して充電することが可能だ。しかし、これはSurfaceシリーズの新機能というわけではない。Microsoftは2020年に「Surface Pro X」でこれを採用していたからだ。

内部では、第11世代のIntelチップがSurface Pro 2を動かし、アクティブな冷却によって安定したパフォーマンスを維持している。今回のSurface Proは、過去のモデルほど大幅にパフォーマンスをスケールアップしているようには見えない。

私の試用機は、Core i7に16GBのRAMと256GBのSSDを搭載している。IntelのIris Xグラフィックスを採用している。このマシンの価格は1599ドル(日本では税込21万5380円)で、これにキーボードの価格が加わる(Surfaceスリムペン2の有無にかかわらず)。このモデルが、CPUにCore i7を搭載したモデルの中では最も安価な選択肢だ。もっとお金をかければ、ストレージやRAMを増やしたモデルを選ぶこともできる。価格は2599ドル(日本では税込32万5380円)まで上昇し、32GBのRAMと1TBのSSDを搭載している。

これまでのUSB-Aポートはなくなってしまった。その代わりに、ついにSurface ProシリーズにUSB-Cを導入し、最新のThunderbolt 4を採用した。この構成では、Surface Pro 8は複数の4Kディスプレイに電源を供給したり、外部GPUに接続したり、その他の激しいデータ転送を行うアクセサリーも使用したりすることができる。USB-CポートはSurface Proの充電にも対応しているが、Microsoftは独自のSurface Connectポートでの充電を推奨している。

microSDXCスロットはなくなってしまったが、SSDはユーザー自身で交換できるようになった。MicrosoftがmicroSDXCスロットを廃止したのは残念だ。これはiPad Proと比較して大きなセールスポイントだったからだ。SSDはキックスタンド下のパネルに隠れている。それを突き出せば、SDDに簡単にアクセスでき、ネジ1本で固定できる。SSDの交換には1分もかからないだろう。

バッテリー駆動時間

Surface Pro 8は、1日中使えるポータブルデバイスだ。試用機を手にしてからまだ1週間も経っていないが、頻繁に使用していて、一晩中コンセントにつないでいただけだ。しかも、私はMicrosoftのアプリを使っていない。EdgeやTeamsではなく、Chrome、Slack、Xoomを使っている。これは重要なことだ。バッテリー駆動時間について語るとき、Microsoftは、バッテリー駆動時間を延ばすためにアプリを最適化したことを明らかにした。

同社によると、Surface Pro 8は18時間のバッテリー駆動が可能とのことだが、私はその数字を達成できなかった。Chromeの使用、YouTubeTVのストリーミング、ビデオ通話などで、平均して約10時間のバッテリー駆動時間を確認した。

Surface Pro 8には新しいアクティブクーリングデザインが採用されているが、それでも触ると熱さを感じる。この熱さのために、メディアを編集する際にタブレットとして使用すると不快感があった。Lightroomは問題なく動作するが、PhotoshopではSurface Pro 8が不快なレベルまで熱くなってしまう。

ウェブカメラ

Surface Pro 8にはすばらしいウェブカメラが搭載されており、しかも適切な位置に設置されている。この配置については、MicrosoftがApple(アップル)を軽く非難してすらいる。発表会でMicrosoftの広報担当者は「そして前面カメラは、横ではなく中央の、本来あるべき場所に配置されています」と笑顔で語っていた。Appleはなぜか、iPadのカメラを画面の短辺側に配置し続けている。そのため、タブレットをラップトップモードにしてキーボードを接続すると、ウェブカメラが横にずれてしまい、奇妙なウェブカメラ体験となってしまう。

前面のカメラは非常に優れている。1080pの動画と5mpの静止画を搭載しており、ホワイトバランスや露出などの高度なコントロールが可能だ。

以下、Surface Pro 8やiPad Pro(2020)との比較だ。

Windows 11についての簡単な説明

私がPCを使う目的は主に2つある。ゲームとメディア編集だ。私がこのレビューをMacで書いているのは、それが私の仕事環境だからだ。Windowsは私の毎日の仕事道具ではないし、Windows 11は私にMac OSをやめさせようとするものでもなかった。

新しいスタートメニューは、ユーザーに圧迫感を与えるものだ。画面の中央にかなりのスペースを占めており、その大きさを正当化する理由が見当たらない。その新しいスタートメニューの大部分は空白となっている。さらに悪いことに、以前のバージョンのようにスタートメニューをカスタマイズすることはほとんどできない。

それ以外の新しいWindows体験については一応許容範囲内だ。Windowsのトップレイヤーしか使わない私にとっては、この新しいシステムは古いシステムと同じように感じる。

私はMac OSではウィジェットを使わないし、Windows 11でも使うことはないだろう。今のところ私の試用機では、これらのウィジェットはカスタマイズできない。プリインストールされているウィジェットはカスタマイズできるが、ウィジェットを追加することができない。また、読み込みや更新にも時間がかかる。

Windows 11を日常的に使用しているユーザーから見たWindows 11の詳細をまた待っていて欲しい。

Surface Pro 8とiPad Proの比較

Surface Pro 8とiPad Proは、根本的に異なる製品だが、ターゲットとする市場の多くは同じだ。Surface Pro 8が完全なデスクトップOSを搭載しているのに対し、iPad ProはiPhoneで使われているソフトウェアのモバイル版を搭載しているが、その機能は強固だ。

Surface ProとiPad Proは、どちらもすばらしいディスプレイを備えており、タッチスクリーンの機能も同様にすばらしいものだ。スタイラスも同様に機能する。新しいSurface Penの方にはハプティックフィードバックが搭載されている一方、最新のApple PencilとiPad Proの方がより正確で、より楽しく使える。

この2つを選ぶには、それぞれのユースケースを見る必要がある。Surface Pro 8はデスクトップに代わるデバイスとして優れているが、ユーザーによっては、タスク次第でモバイルOSを使った方が良い場合もあるだろう。

ここで、いくつかアドバイスがある。

Surface Pro 8がおすすめな方。

  • 独自のソフトウェアを実行する機能を備えている、デスクトップに代わるデバイスを探していている方
  • Microsoftの法人向けアプリを動かすためのポータブルデバイスが必要な方
  • ゲームが好きで、Xboxゲームのストリーミングに満足している方
  • フルサイズの着脱式キーボードが必要な方

iPad Proがおすすめな方。

  • 主流のアプリ(Adobe PhotoshopやLightroomなど)でメディアを編集するためのデバイスを探している方
  • Google(グーグル)のG-Suiteを動作させるためにハイエンドのポータブルデバイスを必要としている場合
  • Microsoft Office 365の基本機能やアプリを使っている方
  • スマートフォンに搭載されているようなモバイルファーストのゲームを楽しみたい方

その価値は?

Surface Proは、これまでのバージョンで最も優れたモデルとおえるだろう。発売時にはいくつかの重要な機能が欠けているが、可能性を十分に秘めている。この製品は、美しいディスプレイと優れた品質を備えたすばらしいセットだ。新しいスタイラスは歓迎すべきアップグレードであり、Intelの最新チップはパフォーマンスにおいて、コンピューターとしてより信頼できるものにしてくれている。

Surface Proシリーズの製品ラインは常に奇妙なポジションに位置していたが、今回のバージョンでメインストリームとしての選択に近づくことができた。これまでは、パフォーマンスがわずかに不足していて、ハードウェアもぎりぎりまぁ良いかなという具合だった。Surface Pro 8では、パフォーマンスはようやく許容できるものになり、ハードウェアは美しいものになった。Surface Pro 8は、最高のWindows 2in1といえるだろう。

画像クレジット:Matt Burns

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(文:Matt Burns、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【レビュー】ランボルギーニ Huracán STO、強力なエンジンの代名詞な企業がハイブリッド化に向かうとき何が起こるのだろうか

Lamborghini Huracán(ランボルギーニ・ウラカン)。ランンボルギーニで最大の販売台数を誇るスーパースポーツカーは、ガソリンエンジン車としての時代を終えようとしている。

2014年にHuracánが登場して以来、同社は全世界で1万7500台を販売したという。しかし、顧客がどれほど望んでいても、V10エンジンを救うには十分ではなかった。ランンボルギーニのラインナップに加わる最新のスーパースポーツカー、新型Huracán STO(ウラカン スーパートロフェオ・オモラガータ)は、ランボルギーニの未来を垣間見せてくれると同時に、轟音を放ちながら、激しくパワフルなガソリンエンジンの終焉を称えている。

「Huracán STOはガソリンエンジンの最後の祭典です」。Willow Springs Raceway(ウィロー・スプリングス・レースウェイ)でのプレスイベントで、トラックサイドに座りこんだランンボルギーニの新しい北米CEO、Andrea Baldi(アンドレア・バルディ)氏はTechCrunchにこのように語る。このスーパースポーツカーの価格は32万7838ドル(約3600万円、税金と配送料を除く)から。公道からサーキットまで対応する。

画像クレジット:Lamborghini

ランンボルギーニの最高技術責任者、Maurizio Reggiani(マウリツィオ・レッジャーニ)氏は、その後筆者に「エンジンは単なるエンジンではなく、音楽であり、ランンボルギーニブランドのDNAの一部です」と語ってくれた。

このDNAは、印象的なデザイン、パワー、そして2人の経営者が「感情」と呼ぶもの、すなわち富裕層がランボルギーニに惹かれる排他性と喜びの感覚を体現する抽象的な概念に強く結びついている。

熟練したプロのレーシングカー・ドライバーを気取るつもりはない。筆者はトリッキーで起伏のあるビッグ・ウィロー・トラックを先導されながら走行しただけだが、ランンボルギーニが最後に発表するガソリンエンジン車に何か特別なものを取り入れたことは明らかだ(次回は、公道を走るHuracán STOを見てみたい)。

街乗りできるレーシングカーとしての親しみやすさ

新型Huracán STOは、ランボルギーニが世界各地で開催しているSuper Trofeo EVOシリーズやGT3 EVOシリーズなどのワンメイクレースで成功を収めていることから学び、それに「快適性、実用性」と「公道走行」を融合させている。Huracán STOは、高度な空気力学と素材、ブレーキ、テレメトリ(車両の状態の遠隔監視)を備えた、競技団体が規定する規格を公道に降ろしたとも言える公道仕様のレーシングカーであり、サーキットで高速走行することもできるし、Huracán STOで人目を引きつけながらデートを楽しむこともできる。

Huracánは後輪駆動で、巨大な5.2リッターV10エンジンは631馬力。7速デュアルクラッチ・ギアボックスと組み合わせることで、ビッグ・ウィローのストレートでは一瞬で時速200kmに加速した。STOの最高時速は300km/hなので、まったくもって余裕である。ANIMA(アダプティブネットワークインテリジェンスマネジメント)の設定が最も緩いストリート(STO)モードであっても、アクセルを踏んだ途端に走り出す。このSTOモードは、Lamborghini Dinamica Veicolo Integrata(LDVI、ランボルギーニ・ディナミカヴェイコロインテグラータ)システムによってサスペンションとダイナミクスが管理され、他のモードよりも反応が良く、より緩やかな走りになっている。

コーナーでのスライドをもう少し高めにして、ラップタイムを上げたければ、ANIMAボタンをもう一度押すと、Trofeoモードに切り替わる。このTrofeo(トロフェオ)モードでは、LDVIによって管理されるトルクベクタリングが変更され、テールの動きが良くなる。Piaggio(ピアッジオ)モードは雨天用のモードで、ウィロー・スプリングスのあるカリフォルニア州ローズミード周辺の砂漠地帯では久しく見られなかったものだ。

Huracán STOは、ビッグ・ウィロー周辺の険しいオフ・キャンバーやダブル・エイペックスの急カーブでも、コース上と同じ乗りやすさを感じることができる。シャークフィンと手動で調整可能な巨大なウイングが代表する、この車両の高度な空気力学がその理由だろう。後部のウイングは3つのポジショニングが可能で、重心を最大13%変化させ、ダウンフォースを90kg以上増減することができる。

最先進の素材とブレーキ

また、ランンボルギーニは、ボディ剛性と重量の最小化を両立させるために軽量のカーボンファイバーを採用している。Huracán STOのボディは75%以上がカーボンファイバーで構成され、Miuraにヒントを得たクラムシェル型のフロント「コファンゴ」(イタリア語のボンネットとフェンダーを組み合わせた造語)もその1つだ。ボンネットの下には小さな収納スペースがあり、その日のドライブプランに合わせて、レーシングヘルメットやバッグを入れるのに十分な大きさである。ベースとなったPerformanteに比べ、STOはカーボンファイバーの採用やインテリアの軽量化などにより、約45kg軽量化されている。

レース上で重要なのは、高速走行ではなく、ブレーキが甘くなく、何度でもすばやく止まれることだ。STOには、F1用に開発されたBrembo(ブレンボ)製CCM-R(Carbon-ceramic Resin Matrix)ブレーキが、民生車としては初めて採用されている。この技術は、ブレーキの温度を下げ、長時間の走行時のフェード現象を防ぐことができる。また、フェンダーに設けられた通気孔により、キャリパーやディスクに空気を送り込み、熱がこもらないように工夫されている。ブレーキの温度はインストルメントパネルで確認でき、LDVIもフェード現象をチェックする。

速く走るためのテクノロジー

Lamborghinは、サーキットでのタイムの向上を実感したいオーナーのために、サーキットでのタイムやパフォーマンスを記録し、比較するためのテレメトリシステムを提供する。プロが使用するVBOXと同じようなものだ。

このシステムは、ブレーキやスロットルの入力からステアリングの角度まですべてを分析し、オーナーやドライバーが馴染みのサーキットでより速く走行できるように支援する。記録されたデータと動画はランンボルギーニ独自のソーシャルネットワークにアップロードされ、オーナーはスマートフォンのUNICAアプリでアクセスすることができる。自分のトラックタイムを他のオーナーや友人、コーチと共有することも可能だ。

画像クレジット:Lamborghini

(ランンボルギーニのブレーキはいうに及ばず、)自分の車に装着されていた特注のブリジストン製ポテンザでさえも限界まで走行した訳ではない筆者だが、Huracán STOは、筆者が経験した中で最も自分に自信を与えてくれて、コミュニケーションを取りやすく、親しみやすい車両の1つであるとは言えるだろう。ステアリングはダイレクトかつリニアで、私がサーキット内外で運転したことのある他のランンボルギーニ車とは異なり、STOは車の能力ギリギリまで使っても、動きが乱れたり、操作性が悪くなったりすることはない。高速走行時でもコントロールされ、洗練された走り……これは従来の、サーキット志向のランンボルギーニとは結びつかなかった言葉だ。

富裕層にとっては、Huracán STOの生産の制約となるのはSant’Agata Bolognese(サンタガタ・ボロニェーゼ、イタリアの自治体)の工場の生産能力だけだ、というのは良いニュースだろう。バルディ氏によれば、Huracán STOは生産量は年間2500台程度で、すでに2022年の分まで完売しているとのことだ。「制約となるのは私たちの生産能力です。生産能力には限界があります。私たちは2024年までにHuracánをハイブリッド化して、既存のガソリンエンジンバージョンを廃止する予定です」とバルディ氏。

ランンボルギーニによれば、STOは3秒以内で時速100kmまで加速するという。プロのレースドライバー、Richard Antinucci(リチャード・アンティヌッチ)に先導されてサーキットを回ったのはほんの数周だったが、Huracán STOが、レース仕様の車を限界まで走らせるだけの資金と度胸のある人に、何か特別なものを届けてくれるのは間違いない。

画像クレジット:Lamborghini

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

iPhone 13シリーズ最大の発明は「シネマティック」という命名だ

9月24日から、iPhone 13が発売になる。今回はデザイン変更ではなく「中身」が中心のターン。変化がカメラに集中しているので「別にまあいいか」と思っている人もいそうだ。

iPhone 13 Pro(シエラブルー)とiPhone 13(PRODUCT RED)

iPhone 13 Pro(シエラブルー)とiPhone 13(PRODUCT RED)

こちらもiPhone 13(PRODUCT RED)とiPhone 13 Pro(シエラブルー)

こちらもiPhone 13(PRODUCT RED)とiPhone 13 Pro(シエラブルー)

右がiPhone 12 Pro Max(パシフィックブルー)で、左がiPhone 13 Pro(シエラブルー)

右がiPhone 12 Pro Max(パシフィックブルー)で、左がiPhone 13 Pro(シエラブルー)

iPhone 13 Pro(シエラブルー)。かなり爽やかな色

iPhone 13 Pro(シエラブルー)。かなり爽やかな色

iPhone 13(PRODUCT RED)。昨年より濃い赤で光沢が映える

iPhone 13(PRODUCT RED)。昨年より濃い赤で光沢が映える

でも、ちょっとそれはもったいない。というのも、今回からiPhone 13シリーズに入ったカメラ機能はとても大きな可能性を秘めているからだ。

実機性能も含め、その辺をちょっとまとめてみよう。

今回のiPhoneも「カメラ」がポイント

今回のiPhoneも「カメラ」がポイント

誰でもスマホ1つでできるのが「シネマティックモード」の魅力

多くの人が記事にしているように、今回のiPhone 13シリーズにおけるカメラのポイントは「動画」、特にシネマティックモードだ。

シネマティックモードの正体はシンプル。静止画における「ポートレートモード」の動画版だ。写真に計算から生み出した「深度(奥行き)」の情報をセットして、適宜フォーカス(ピント)が合う場所を変えてそれ以外をボカす……というモードである。

性能が上がったら静止画から動画へ、というのはわかりやすい流れなのだが、その際には新しい配慮も必要になる。「フォーカスが合う場所を時間の変化によって変える」ことを助ける機能が必要なのだ。

その一番シンプルな形が、「人を認識して、動きに応じて変える」というものだ。以下の動画は、iPhone 13 Proを使って撮影したものを、音声カット以外は未編集で掲載したものだ。手前に入ってくる筆者から奥の矢崎編集長へのフォーカス切り替えは完全に自動だ。

▲iPhone 13 Proで撮影。音声カット・前後カット以外は撮ったままの無加工。人が入ってきたり、振り向いたりするとフォーカス場所が変わる
認識するのは人だけでなく物体も含まれるので、以下のような動画も撮れる。

▲せっかくなので「シネマティック・ドリンク」と「シネマティック・焼肉」も。どちらもiPhone 13 で撮影し、音声・前後カットと2本の連結以外は撮ったままだ
「輪郭のヌケが完全じゃない」「背景のボケ感が画一的で書き割りのように見える」
たしかに。この機能はまったく完全じゃない。適切なカメラとレンズを用意し、しっかりとフォーカス操作をしながらなら、もっとハイクオリティなものが撮れるのは間違いない。カメラに慣れた人ならあたりまえのテクニックであり、今なら「Vlog向けカメラ」などでもっと高品質に撮れる。

だが、これらの動画を「スマホ1つで」「特別な操作なしで」「撮って出し」で作れるのは大きな進化だ。iPhone 13シリーズを買えば、誰でもこんなことができるのだ。

ついでに、ちょっとこんな動画も撮ってみた。

▲テーブルを囲んで会議している様子をシネマティックに。撮影された側曰く「テラハっぽい」
どうだろう? 単にテーブルを囲んで話しているだけなのに、ボケの演出がついただけでなんとなくドラマチックに見えてこないだろうか。
この「誰でも日常を撮るだけでテラハっぽくなる」ことこそ、シネマティックモードの価値なのである。今回iPhone 13シリーズを買わなくても、これからiPhoneの新シリーズを買うと標準機能として付いてくるだろう。そして、似たことは他のハイエンドスマホメーカーもやってきて、ありふれた機能になっていく。

今回のアップルの最大の発明は、ボケ付きの映像を撮影する機能に「シネマティックモード」という印象的な名前をつけたことそのもの、と言ってもいい。簡単なことに思えるが、こういうところが糸口となって、機能は一般化していくものだ。

編集はiMovieがお勧め、シネマティックモードの視聴は「大型画面」向き

ちょっとネタバラシはしておこう。

実は、一番最後の最後の動画だけは「撮って出し」ではない。アップルの動画編集ソフト「iMovie」のiPad版を使い、フォーカス位置をかなり細かくいじって作ったものだ。

自動でもある程度はできるが、人が多いとフォーカスが頻繁に変わりすぎて見づらい映像にになる。なので、シネマティックモードのデータをそのまま再編集できるiMovieで編集をしているのだ。なお、ここに掲載した他の動画も、フォーカス位置はいじっていないものの、音と前後のカットにはiMovieを使っている。

iPad Proに画像を転送してiMovieで加工

iPad Proに画像を転送してiMovieで加工

編集に使う機種は、iOS 15/iPadOS 15が入ったiPhoneかiPadであれば、シネマティックモードを持っていない機種(要はiPhone 13シリーズ以外)でもいい。

ただし、編集する場合の動画データは、「シネマティックモード用の付加データがカットされてない」必要がある。

同じ1080p・30Hzの動画で比較すると、通常のモードで撮影した映像データとシネマティックモードで撮影した映像データでは、容量が倍近く違うこともあった。すなわち、1080p・30Hzのシネマティックモード動画の容量=1080p・60Hzの通常動画の容量、という感じになっている。

ここで注意すべきは、単に転送するとシネマティックモード用の「深度データ」が消えてしまうこと。

自分のアカウントである場合にはiCloudの「写真」データとして同期すればいいのだが、他人にAirDropなどで渡す場合には、シェアする際の画面上方にある「オプション」をタップし、次の画面で「すべての写真データ」をオンにしてから転送しよう。

AirDropで誰かに動画を送る場合には「すべての写真データ」(右画面の最下段)をオンにしないと、シネマティックモードの深度情報がなくなり、フォーカスなどの再編集はできなくなる

AirDropで誰かに動画を送る場合には「すべての写真データ」(右画面の最下段)をオンにしないと、シネマティックモードの深度情報がなくなり、フォーカスなどの再編集はできなくなる

また、フォーカス位置の変更などの再編集については、iMovieを使わず、iPhoneの「写真」アプリだけでも可能だ。とはいえ、操作はiMovieの方が簡単で、できることも多い。iPhoneユーザーであればiMovieは無料で使えるので、活用をお勧めする。

iPhone 13での撮影時や「写真」アプリからでも、フォーカスなどの変更は可能。でも、iMovieを使った方が操作は楽だ

iPhone 13での撮影時や「写真」アプリからでも、フォーカスなどの変更は可能。でも、iMovieを使った方が操作は楽だ

それからもう一つ。

前述の動画、「どうも効果が分かりづらい」と思った人はいないだろうか。そういう方々は、おそらく「スマホの画面」で動画を見ているのだろう。

実のところ、ボケはそこそこ繊細な表現であり、動画自体の表示サイズが小さいと分かりづらい。スマホの縦画面などではピンと来ないことも多いのではないだろうか。

お勧めは、MacやiPadなどで視聴することだ。10インチ以上の画面になれば、ボケの効果は驚くほどしっかり楽しめる。また、Apple TVを使ったり、iPhoneなどをテレビにつないだりして、より大画面で楽しむのもいいだろう。

そういう意味では、シネマティックモードは「スマホで撮れるが、楽しむならスマホ以外からの方がいい」機能でもある。

やはり「Pro」は速かった。A15は順当な進化

ベンチマークテストから見える性能についても触れておこう。

すでにご存知の通り、iPhone 13シリーズが採用しているSoCは「A15 Bionic」。アップル設計によるSoCの最新モデルだが、現時点でもバリエーションが3つ存在する。

1つ目は、「iPhone 13」「iPhone 13 mini」に使われているもの。これらに使われているのはクロックが最大3.2GHzで、GPUコアが4つ。メインメモリーは4GBだ。

iPhone 13/miniのSoC。メインメモリーは4GBになっている

iPhone 13/miniのSoC。メインメモリーは4GBになっている

2つ目は「iPhone 13 Pro」「iPhone 13 Pro Max」のもの。こちらもクロックは最大3.2GHzで、GPUコアが5つになる。メインメモリーは6GBだ。

こちらはiPhone 13 Pro/Pro MaxのSoC。メインメモリーは6GBになっている

こちらはiPhone 13 Pro/Pro MaxのSoC。メインメモリーは6GBになっている

そして3つ目が、先日レビューも掲載した「iPad mini」向け。こちらはクロックが最大2.93GHzで、GPUコアが5つ。メインメモリーは4GBだ。

参考記事:iPad mini 第6世代に死角なし iPhone 13 Pro同等の最新仕様で処理も通信も高速(西田宗千佳)

さて、これらの性能はどのくらいなのか? 数字を丸めて簡単な大小で表すと、

iPhone 13 Proシリーズ>iPad mini≒iPad Pro 11インチ(2020年モデル)≒iPhone 13シリーズ>iPhone 12 Proシリーズ>iPhone 12シリーズ

という感じだろうか。

メインメモリー量とクロックは違うが、同じ構成のiPhone 13 ProとiPad miniは、おおむね「クロック通り」の差。全体的にワンランク上だ。

iPhone 13とiPad miniは、CPUについてはほぼクロック通りの差で、GPUのコアが多い分、クロックが低くてもiPad miniの方が高性能。総合して考えると大体近い性能……という感じかと思う。

Geekbench 5によるiPhone 13/miniのCPUスコア

Geekbench 5によるiPhone 13/miniのCPUスコア

Geekbench 5によるiPhone 13 Pro/Pro MaxのCPUスコア

Geekbench 5によるiPhone 13 Pro/Pro MaxのCPUスコア

Geekbench 5によるiPhone 13/miniのCompute(主にGPU)スコア

Geekbench 5によるiPhone 13/miniのCompute(主にGPU)スコア

Geekbench 5によるiPhone 13 Pro/Pro MaxのCompute(主にGPU)スコア。コア数が1つ多い分、iPhone 13より数値がグッと高い

Geekbench 5によるiPhone 13 Pro/Pro MaxのCompute(主にGPU)スコア。コア数が1つ多い分、iPhone 13より数値がグッと高い

昨年モデルであるA14世代はもちろん、A12世代でコア数を増やしたハイエンド製品(主にiPad向け)を超えていくのだから、性能向上はいまだ「ちゃんと続いている」といっていいだろう。

iPad miniのレビューでも述べたが、A15は高性能とはいえ、それでも「よりパフォーマンス重視で作られたM1」にはまったく敵わない。コア数の考え方を含め、コストも狙いも違うのだ。

この辺からも、アップルが「スマホ向けで進める性能向上」と「Mac向けで進める性能向上」が違ってきており、使い分けが今後も進むであろうことが予測できる。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)

【レビュー】2021年版miniは衝撃的だった初代以降、最も「iPad」らしいiPadだ

iPad miniを愛する人たちは、数年ごとにこの特別なデバイスが存続するのか、それとも切り捨てられるのかを固唾を呑んで見守ることになる。新しいiPad Proのようなデザイン、A15 Bionicチップ、新しいディスプレイ技術を採用して、大きくモダンに生まれ変わったばかりなので、しばらくはその心配をする必要はないだろう。

また、iPad miniは一部の市場で非常によく売れているため、それほど心配する必要もないだろう。パイロットや医療従事者、産業従事者といったプロフェッショナルは、仕事に欠かせないものとしてタブレット端末を活用している。基本的に、Apple(アップル)のiPadは十分な普及率と互換性を備えた唯一のデバイスだ。空の上のコックピットは、基本的にiPadがないと成り立たなくなっている。パイロットの脚や白衣の大きなポケットなど、スペースが限られている場所では、iPad miniが圧倒的な存在感を示している。

もちろん、iPad miniが旅行に最適なポータブルサイズであり、長時間の読書や視聴をする際に手に持ちやすいと感じる人も同じようにたくさん存在する。

今回の新しいiPad miniは、そのよう人たちのために、ハードウェアとソフトウェアを最新のものになっている。iPad AirおよびProのデザイン言語を取り入れたminiの再設計は、Appleの「トップエンド」のiPadデザイン理論が統一されたということであり、歓迎すべきことだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

エントリーモデルであるiPadも、同じ価格でありながら舞台裏でアップグレードされている。これはすばらしいことだ。新デザインの採用や新しいApple Pencilとの互換性はないが、それでもこの価格では非常に高性能なマシンだ。タブレット市場は基本的にAppleが独占しているため、エントリーモデルを大々的に投入することも可能だったが、価格の割には非常に優秀で、使ってみると速さと親しみやすさを感じることができる。IPSディスプレイとA13 Bionicは最先端ではないかもしれないが「iPadが欲しい」というニーズだけであるなら、このベーシックなモデルを購入してもまったく損をしないのはうれしいことだ。

しかし、iPad miniにはその両方が備わっている。価格もそれに見合うものだ。499ドル(日本では税込5万9800円)という価格は、Appleはこの製品でエントリーポイントを狙っていない。そのメッセージは明らかに「このサイズで作れる最高のiPad」というものであり「より小さく、より安く」ではない。

このメッセージは、フォームファクターは好きだが、1、2世代遅れているのが嫌なユーザーには理想的なものだろう。

画像クレジット:Matthew Panzarino

最大の新機能は、iPad Airで導入された上部に搭載されたTouch IDだ。ほとんどの場合、すばやく簡単に動作する。しかし「ロックを解除するために休んでいる」のに、誤って電源ボタンを押して電源を切ってしまうという厄介なループが発生する可能性もある。しかし、全体的にはAirよりも使いやすいといえるだろう。手がより小さなminiのエッジにフィットしやすいことを考えると。

使い勝手はこれまでとあまり変わらないものの、依然として残っているユーザビリティに対する指摘には、分割表示の実装でかろうじてクリアしている。機能的には問題ないが、時として少々窮屈に感じることもある。ここにもっと良い解決策があるかもしれない。アイコンのサイズも、縦方向では少し粗いが、横方向では完璧なものに感じられる。要するに、iPad mini専用に調整したバージョンのiPadOSが必要だ。リニューアルされたモデルを手に入れた現在、私はiPad miniを独自の使いやすさの次元に引き上げるために、2022年の進化を求めたいと思っている。

それ以外は、すべて本当に楽しい。スピード、軽さ、そして大きくなった画面サイズは、初代iPad移行、最も「iPad」らしいiPadの1つだと思う。初代iPadは、今思えばかなり重かったが、実際に使って触ってみたときは、本当に衝撃的だった。コンピュータの純粋な「スラブ(平板)」だった。今回のminiでは、その感動を思い出した。

ここ数日、iPadで読書やブラウジング、映画を観ているが、とてもいい感じだ。新バージョンのApple Pencil(側面のフラット化とマグネット式充電により実現)が追加されたのも良い点で、これによりすばらしいスケッチツールとなった。

iPad miniは、iPad Airが持つすべての機能とそれ以上の機能を、最新の技術を駆使して小さなパッケージに収めたものだ。全体的にとても魅力的だ。もし迷っている人がいるのであれば、まずそのことを知ってほしい。

画像クレジット:Matthew Panzarino

画像クレジット:Matthew Panzarino

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Katsuyuki Yasui)

【レビュー】iPhone 13 Proを持ってディズニーランドへ!カメラとバッテリー駆動時間をテスト

2021年のiPhoneレビューは、えーと、もちろん、数年ぶりにディズニーランドに戻ってくることになった。うれしいことに、iPhone 13 ProとiPhone 13は非常に良いパフォーマンスを見せてくれた。また、iPhone miniとiPhone 13 Pro Maxで行った限定的なテストでは、初めて、望遠レンズがなくても問題なければ、iPhoneをサイズの好みで簡単に選択できるようになったことがわかった。

私がこれらのiPhoneをいつもディズニーランドに持ち込む大きな理由の1つは、Apple(アップル)が主張する改善点を実際の環境で激しくテストするのに最適な場所だからだ。ディズニーランド内は暑く、ネットワーク環境は最悪で、写真やチケットのスキャン、食べ物の注文など、最近ではほとんどすべてのことに携帯電話を使わなければならず、かけたお金の分最大限楽しめるようできるだけ長く滞在することが多い。これは、人為的なバッテリー消耗や管理された写真環境を含まない、理想的な耐久テストと言えるだろう。

私の行ったテストでは、それほどではないケースもあったが、Appleの改良点のほとんどが、実際に旅先での生活の質に目に見える影響を与えてくれた。画面の明るさ、より長い望遠、そして長くなったバッテリーの持続時間は、いずれもうれしいポイントだった。

パフォーマンスとバッテリー

iPhone 13 Proのバッテリーは、園内での使用でちょうど13時間超えを記録したところで使い切った。2021年はビデオのテストが多かったため、カメラアプリが通常よりも長く画面に表示され「画面上」での使用時間が1時間強となり、システムに少し負担をかけてしまった。実際に標準的な使い方をすれば、それ以上の効果が得られると思うので、iPhone 12 Proのビデオ再生時間が1時間以上長くなったというAppleの見積もりは、おそらくかなり正確なものだと言えるだろう。

画像クレジット:Matthew Panzarino

私のテストでは、iPhone 13 Pro Maxに同じレベルの負荷を与えることは難しかったものの、iPhone 13 Proが充電を必要としたときにまだ余力があったことを考えると、iPhone 13 Pro Maxにはさらに多くのバッテリー駆動時間が期待できると言えるだろう。ただ、より大きなバッテリーで、より多くのバッテリー駆動時間が得られるというのは、大きな驚きではない。

開園一番に入園するつもりなら、午前6時くらいに充電器から外して、午後4時くらいまでには充電器を用意して、電池切れにならないように計画したほうがいいだろう。これは、厳しい環境下でカメラを多用するiPhoneにとって、全体的に悪くない稼働率だと思う。

Appleの新しいProMotionディスプレイもいい感じにアップグレードされていて、画面の明るさが増していることに気づいた。ただし、この明るさの向上は、iPhone 12 Proの画面にハイキーなコンテンツを表示した状態で並べてみて初めて実感できるものだった。ディズニーランドのアプリを起動してバーコードを読み取ると、読み取りの安定性が向上し、直射日光の下では全体的な明るさが増していることがわかる(はっきりとは言えないが)。直射日光が当たらない場所では、この違いほとんどわからないと思う。

ProMotionスクリーンの可変リフレッシュレートは、Safariをスクロールしているときに120Hzまで上昇するが、これは本当に生活の質の面ですばらしい向上だ。私はここ数年、コンピューティングのほとんどをiPad Proで行ってきたので、残念ながらこの分野には少し飽きているが、まだ経験したことのないiPhoneユーザーにとってこれは驚くべき進歩に映るだろう。Appleのシステム上で120Hzに固定されているわけではないため、写真やテキストなどの静止したコンテンツを見るとき、スクロールしないときなどは画面のリフレッシュレートを遅くすることで、バッテリー寿命を節約することができる。うれしいことに、スクロール中に大きなずれも発生せず、この切り替えの際にも、実に反応が良く、シームレスに処理されている。

新しいA15チップは、そう、2020年よりもパワフルになっている。この点が気になる人のために、以下いくつかの数字を紹介しよう。

画像クレジット:Apple

特に、バッテリー駆動時間が短くなったのではなく、むしろ長くなったという点で、非常に印象的だ。Appleデバイスのワットあたりの性能は、チップ担当部門の(あまり)知られていない偉業であり続けている。2021年のiPhoneやM1ラップトップが、単にめちゃくちゃ速いというだけでなく、充電器に接続せずとも、実際に膨大な時間使用が可能であるということだ。気になる方のために触れておくと、iPhone 13 Proには6GBのRAMが搭載されているようだ。

デザイン

画像クレジット:Matthew Panzarino

iPhoneのデザインは、相変わらずカメラと無線を中心に構成されている。カメラパッケージのセンサーとレンズをサポートするために必要なもの、そしてアンテナが5Gに対応できるようにするために必要なものが、iPhoneの現時点におけるデザインのハンドルをコントロールしており、それはごく自然なことだ。

iPhone 13 Proの背面にあるカメラアレイは、Appleが新たに搭載した3つのカメラに対応するため、より大きく、高くなっている。そう、全体で40%も大きくなり、高くなっているのだ。Appleの新しいケースには、非常に目立つ隆起がある。これは、ケースを表面に置いたときにレンズを保護するためのものだ。

他のすべての部分は、カメラと、ワイヤレス充電と無線性能の必要性を中心に作られている。しかし、Appleのつや消しガラスとスチール製の縁の外観は、2021年も宝石のような品質を維持しており、やはりすばらしい見た目のものに仕上がっている。多くの人がケースを付けずに長時間見ることはないと思うが、見ている間はイケてる携帯電話だと言えるだろう。

カメラのパッケージングを改善したことで、前面のノッチはわずかに小さくなり、動画視聴などの際の画面領域がわずかに増えたが、デベロッパーの人たちが浮いたピクセルをうまく利用する方法を見つけてくれるのを待たなければならない。

次に、カメラについて説明しよう。

カメラ

純粋に、ユーザーの選択肢や、見違えるほど画質を向上させるような改善を、Appleが毎年続けていくことはあり得ないことのように思える。にもかかわらず、カメラの品質と機能は、iPhone 11 Proから全面的に大きく飛躍しており、iPhone 12 Proからも顕著な改善が見られる。それら以前の機種を使っている人であれば、きっと気に入るであろう最高の画質を目の当たりにすることになるだろう。

カメラのパッケージと機能セットも、これまで以上にラインナップ全体で統一されている。Appleのセンサーシフト光学式手ぶれ補正システムは、すべてのモデルに搭載されており、iPhone 13 miniでさえも搭載されているのだが、このセンサーアレイの全体的なパッケージサイズを考えると、これは驚くべきことだろう。

2021年のディズニーランド内での私の経験では、どのレンズを選んでも、Appleによるカメラ改良の大きな違いを感じることができた。低照度から高倍率ズームまで、熱心な写真家の人たちにも満足してもらえる内容となっているはずだ。それと、シネマティックモードについても後で紹介しよう。

望遠

私が改善を期待していたレンズの中で、望遠レンズには実はそれほど大きな期待を寄せていなかった。しかし、このレンズの撮影範囲の広さと実用性の高さには、うれしい驚きを感じた。私は自他ともに認める望遠派で、iPhone 12 Proで撮影した写真の60%が、ワイドよりも望遠で撮影したものだ。後からトリミングしなくても、フレーミングをより綿密に選ぶことができるのが個人的に好きなのだ。

望遠レンズにナイトモードが搭載されたことで、以前のように暗闇の中でクロップしてワイドレンズに戻ることがなくなった。このように、本来の光学の望遠に加えて、ナイトモードの魔法も手に入れることができる。2年前にはまったく手が届かなかったことだが、黒の表現力が格段に向上し、手持ちでズームしても、全体的にすばらしい露出を生んでくれるようになった。

画像クレジット:Matthew Panzarino

より高いズームレベルでは、ポートレートはよりタイトにトリミングされ、ポートレートモード以外の有機的なボケ(ブラー)がより美しくなる。この新しいレンズを使えば、人物をより美しく撮影できるようになるだろう。

もしあなたがカメラ好きならわかると思うが、3倍ズームは私が愛用している105mm固定式ポートレートレンズによく似ている。このレンズのパッケージは、クロップ機能もあり、優秀な背景の分離機能もあり、そして光学品質がとにかく非常に優れている。今回、Appleは望遠で見事に成功したと言えるだろう。

画像クレジット:Matthew Panzarino

演出のときもあるが、基本的にはパンデミック対策のため、パフォーマーとゲストとの間に距離があることが多いディズニーランドでは、より長い光学レンジも非常に便利だった。カイロ・レンが観客を盛り上げているところを、手を伸ばして撮影できたのは楽しいことだった。

広角

Appleのワイドレンズは、センサー技術全体で最大の進歩を遂げている。ƒ/1.5の大きな開口部と新しい1.9µmのピクセルサイズにより、集光力が約2倍になり、その違いがよく表れている。夜間や車内での撮影では、黒の深みやダイナミックレンジが向上し、全体的な画質が著しく向上した。

画像クレジット:Matthew Panzarino

ナイトモードを有効にすると、集光範囲の拡大とSmart HDR 4の改善により、黒がより濃くなり、洗いざらしのような写りにならなくなる。あえて言えば、全体的に「より自然」ということになるが、これは今回のiPhoneのカメラに共通するテーマだと言えるだろう。

画像クレジット:Matthew Panzarino

ナイトモードを有効にしていない状態では、より多くの光を取り込むことで画質が向上していることが一目瞭然だ。ナイトモードをオフにしなければならない状況はほとんどないと思うが、光が少ない中で動いている被写体などはそのユースケースの1つであり、この新しいセンサーとレンズの組み合わせであれば、そのような場合でも数センチの余裕を得ることができる。

センサーシフト式OIS(光学式手ブレ補正)がiPhone 13に搭載されたことは、静止画と動画の両方に大きな恩恵をもたらす。私はiPhone 12 Pro Maxの手ぶれ補正機能でいろいろ遊べたことに満足しているが、まだ手ぶれ補正機能を使ったことがない人は、この機能がもたらす、レベルアップしたシャープさに信じられないほど満足することになるだろう。

超広角

Appleの超広角カメラは、しばらくの間、嫌われてきた。新しい視点を提供してくれるものの、発売以来、オートフォーカス機能の欠如や集光性能の低さに悩まされてきた。しかし今回のカメラでは、ƒ/1.8の大口径化とオートフォーカスを実現している。集光力が92%向上したとAppleは主張しているが、かなり厳しい照明条件でテストしたところ、全体的に大幅な改善が見られた。

ディズニーランドでは通常、ワイド撮影の方法は2つに1つだ。1つはポートレート撮影時に魚眼レンズのような遠近感を出すために接近して撮影する方法、もう1つは照明やシーンの設定が特に良いときに景色を撮影する方法だ。オートフォーカスを使えば、1つ目の方法は大幅に改善され、2つ目の方法も絞りを開けることで大幅に改善される。

月明かりに照らされたTrader Sam(トレーダー・サム)を撮影した写真を見て欲しい。照明と風景がちょうどよく、思わず手に取ってしまいそうなスナップだ。iPhone 12 Proも悪くないが、両者の露出には明らかな差があるのがわかる。絞り値の改善を比較するために、どちらもナイトモードをオフにして撮影している。

画像クレジット:Matthew Panzarino

この差は明らかで、Appleがこの超広角カメラを改良し続けていることに総じてかなり感心しているのだが、現時点では、このサイズの12MPセンサーがこのような広い視野を持つレンズにもたらすことができる限界に達しつつあることは明らかだと思われる。

新しいISP(画像信号プロセッサ)では、ナイトモードの撮影も改善されている。絞り値が大きくなったことで撮影可能な生の範囲が増え、ナイトモードの撮影では、明るいキャンディのような見た目が削ぎ落とされ、より深みのある有機的な感覚が得られる。

マクロ写真と動画撮影

また、iPhone 13 Proの新たな撮影機能として、2cmまで接近して撮影できるマクロモードがある。iPhone本体の超広角レンズに搭載されているだけあって、本当によくできている。

信じられないほど細かい部分まで撮影することができた。「物体の表面の質感」が見えるくらい細かく「蜂の胸部にぶら下がっている花粉」が見えるくらい細かく「露が….」、まぁこのあたりはもうなんとなくわかるはずだ。マクロアタッチメントを持ち歩かなくても、かなり接近して撮影でき、これだけで十分なのだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

撮影領域の中心となる40%程度の粗い領域では、マクロ画像のシャープさと鮮明さが際立っていた。マクロモードがウルトラワイドであるため、画像の周辺部にはかなりの量のコマ収差が発生する。基本的には、レンズが非常に湾曲しているため、超球面素子の端で過剰なボケが発生する。これは、焦点距離の最小値である非常に近い距離でのみ見えるものだ。数センチの距離であれば、気がつくと思うが、おそらくトリミングするか、我慢するだろう。10cm程度の「中マクロ」であれば、あまり気にはならないかもしれない。

これは、すべてのマクロレンズの特徴である「極めて」狭い焦点距離とは別の要素だ。基本的に、最大マクロでは精密さが求められるが、それは今に始まったことではない。

ディズニーランドのスケールの大きさを考えると、マクロの使い方を積極的に模索しなければならなかったが、他の場所ではもっといろいろな使い方ができるのではないだろうか。しかし、Radiator Springs(ラジエーター・スプリングス)のボトルのきめや、Galaxy’s Edge(ギャラクシーズ・エッジ)の人工的な菌類など、クールな写真を撮ることができた。

マクロ撮影も同様に楽しいものだが、本当に活用するためには、手をかなり安定させるか三脚が必要となる。手のわずかな動きが、焦点領域に比例してカメラを大きく動かすことになるからだ。基本的に、このモードでは小さな手の動きが大きなカメラの動きに繋がってしまう。しかし、これは非常に楽しいツールであり、私はこれを使ってGrand Californian Hotel(グランド・カリフォルニア・ホテル)の庭で花びらにいる虫を追いかけるのを楽しんだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

大きなスケールから超細かなディテールまで、さまざまな写真を撮影するのに最適な方法だ。

iPhone 13 Proでは、超広角カメラがマクロ撮影のホームグラウンドとなっているが、興味深い点として、マクロ撮影の範囲に入ると、広角カメラと超広角カメラとの切り替わりが確認できるという点が挙げられる。これは、1つのカメラがオフになり、もう1つのカメラがオンになるという、画像の素早い変化として現れる。これは、照明条件やiPhoneのカメラスタックによる画像判断によってカメラが常に切り替わるにもかかわらず、他の状況ではほとんど見られなかったことだ。

通常、ユーザーはこのことにほとんど気づくことはないだろうが、公式のマクロカメラが利用できるようになったことを考えると「1倍」撮影中に対象物に急接近すると「0.5倍」モードに切り替わり、超近接撮影が可能になる。これはこれでいいのだが「マクロの距離」(約10~15cm)に入ったり出たりしてカメラが切り替わると、少しハラハラする。

このカメラ切り替えの動作についてAppleに問い合わせたところ「今秋のソフトウェアアップデートで、マクロ撮影やビデオ撮影のための近距離での撮影時にカメラの自動切り替えをオフにする新しい設定が追加される予定です」とのことだった。

これにより、マクロ域に特化した作業をしたい人にとっては、この比較的小さなクセが解消されるはずだ。

フォトグラフィックスタイルとスマートHDR 4

コンピュテーショナルフォトグラフィー(デジタル処理によって画像を生成することを前提としたイメージング技術)に対するAppleのアプローチでよく対立することの1つが、高度に処理された画像に関しては、全般的に控えめになりがちだということだ。簡単に言えば、Appleは自分たちの画像が「自然」であることを好むのだが、Google(グーグル)やSamsung(サムスン)といった競合他社の同様のシステムでは、差別化を図るためにさまざまな選択を行い「よりパンチの効いた」、時には全体的に明るい画像を作り出している。

画像クレジット:Matthew Panzarino

画像クレジット:Matthew Panzarino

2年前にAppleがナイトモードを導入したとき、私はこれらのアプローチを比較した。

関連記事:iPhone 11 ProとiPhone 11で夜のディズニーランドを撮りまくり

2021年、Appleが発表した新製品でも、この「自然体」というテーマに大きな変化はなかった。しかし今回「フォトグラフィックスタイル」が導入され「トーン」と「ウォーム」と呼ぶ2つのコントロールを調整することができるようになった。これらは、基本的には「ヴァイブランス」と「色温度」だ(一般的にはの話だが)。調整なしを含む5つのプリセットと、-100〜+100のスケールで調整できるプリセットの2つの設定を選ぶことができる。

私は、長期的に人々がこれらの設定を使いこなし、特定の見え方を撮影するためのおすすめの方法などが出回ることを予想している。これらのプリセットの中で私が最も気に入っているのは「ヴァイブラント」だ。オープンシャドウと中間色のポップさが好きだからだ。しかし、多くの人が「リッチコントラスト」に惹かれると思う。一般的に、コントラストが高い方が人間の目には好ましいと映りがちだからだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

子どもサイズのスピーダーを撮影したこの写真では、シャドーとミッドトーン、そして全体の色温度に影響が出ているのがわかる。私は、これは状況に応じたフィルターというよりも、フィルムカメラでフィルムの種類を選ぶような、深い「カメラ設定」機能だと捉えている。コントラストを重視するなら「Kodak Ektachrome」、寒色系やニュートラル系なら「Fuji」、暖色系の肌色なら「Kodak Portra」、発色を重視するなら「Ultramax」といった具合だ。

この設定では、出したい色が出るようにカメラを設定することができる。この設定は、カメラアプリを閉じても保管される。これにより、カメラを開いたときにすぐ、思い通りの撮影ができるように設定されている。iOS 15では、ほとんどのカメラ設定がこのようになっている。これは、iPhoneのカメラを開くたびにリセットされていた昔と比べて、生活の質を向上させるものだろう。

なお、これらのカラー設定は画像に「埋め込まれて」おり、ポートレートモードのライティングシナリオのように後から調整することはできない。また、RAWの状態では有効ではない。これは理解できる。

また、スマートHDR 4は、フレーム内の被写体に基づいてスマートなセグメント化を行うようになったことも特筆すべき点だ。例えば、逆光で撮影されたグループ写真を撮影した場合、新しいISPでは、それぞれの被写体を個別にセグメント化し、カラープロファイル、露出、ホワイトバランスなどの調整をリアルタイムに行う。これにより、窓からの撮影や太陽の下での撮影など、暗い場所から明るい場所への撮影が格段に向上した。

2021年の自撮りカメラは、あまり改善されていないように思うが、いつもどおりだ。シネマティックモードを使用することができ、自撮りモードではそれほど便利ではないものの楽しい。

シネマティックモード

これは、一般に公開されている実験機能のようなモードだ。実験に参加しようとしている人たちにとっては、最高の舞台装置となるだろう。Appleの一般的なマーケティングに反して、これはまだ映画セットでの実際のカメララックフォーカスのセットアップに取って代わるものではない。しかし、これまでカメラやレンズ、機材といった多くの扉の後ろに閉じ込められていた巨大な撮影ツールセットを、新進の映画制作者やカジュアルユーザーに開放するものとなる。

シネマティックモードでは、カメラの深度情報、加速度センサー、その他の信号を使用して、合成ボケ(ブラー)を挿入し、フレーム内の被写体を追跡して、ユーザーの要求に応じて効率的に被写体間でフォーカスを「ラック」する映像を作成する。また、驚きのフォーカストラッキング機能が搭載されており、被写体をロックして追いかける「トラッキングショット」では、人混みや手すり、水辺などの障害物があってもピントを合わせ続けることができる。初期のテストでは、このような深度を利用したトラッキング機能は非常に印象的だったが、セグメンテーションマスキングでは、被写体を背景から分離するための鮮明な境界線を定義するのに苦労し、少し物足りなさを感じてしまった。ポートレートモードが静止画で行っていることを、複雑で混乱した背景で1秒間に30回行うのは、非常に困難であることがわかった。

この機能は1080p/30fpsに固定されているが、これはその使用目的をよく表している。この機能は家族映像をデバイス上で流したり、テレビにAirPlayしたり、ウェブに掲載したりするためのものだ。セレクティブフォーカスの新しいストーリーテリングツールを使って、すばらしい作品を作ることができるであろうTikTok(テイックトック)の映像制作者の間ではかなりウケるだろうと踏んでいる。

画像クレジット:Matthew Panzarino

子どもたちが人混みの中を歩いたり、メリーゴーランドに乗ったりしているところをテスト撮影してみたが、本当に衝撃的なほど良かった。以前は、一眼レフカメラでマニュアルフォーカスのレンズを使って動画を撮影する際に、すばやく連続的にフォーカスを調整することでしか得られなかった、映画のような、夢のようなクオリティの動画が撮影できた。

これこそが、シネマティックモードを理解するための大きな鍵だと思う。このモードは、マーケティング上はともかく、焦点距離の設定や膝を曲げてのスタビライズ、しゃがんで歩いてラックしてのフォーカシングなどの方法を知らない大多数のiPhoneユーザーに、新たなクリエイティブの可能性を提供することを目的としている。今までは手の届かなかった大きなバケツを開けるようなものだ。そして多くの場合、実験的なものに興味があったり、目先の不具合に対処したりすることを厭わない人は、iPhoneの思い出ウィジェットに追加するためのすばらしい映像を撮影することができるようになると思う。

画像クレジット:Matthew Panzarino

画像クレジット:Matthew Panzarino

この機能については、今週末に詳しく紹介する予定なので、お楽しみに。とりあえず知っておいてもらいたいのは、平均的な人が明るい場所でこれを使って撮影すれば、かなり楽しくて感動的な結果が得られるということ。しかし、本格的なプロ用ツールではないということ。そして、特定の被写体にピントが合わなかったとしても、レンズの焦点範囲内であれば、編集ボタンを押して被写体をタップするだけで、後から調整することもできる。

その場で即座にいつでも撮影したい世代のための映画制作ツールとして、これは非常に魅力的なコンセプトだろう。実際、映画製作のメカニズムに費やす時間と技術的なエネルギーを減らし、ストーリーテリングの部分により多くの時間を割くことができるのだ。映画製作は、常にテクノロジーと絡み合った芸術であり、アーティストは常に新しいテクノロジーを最初に採用し、その限界に挑戦するものであるという理想の真の例の1つと言えるだろう。

最近では、私たちのほとんどが映画の言葉に慣れてしまっているので、説明するのは難しいのだが、このようなツールを手に入れることは、今後数年間に私たち一般の人たちが作るホームビデオの見た目や雰囲気を大きく前進させることになるだろう。

Appleのポートレートモードが過去6年間で大幅に改善されたように、シネマティックモードも成長し続け、改善されていくことを期待している。低照度下でのかなり雑なパフォーマンスとロックされたズームは、来年に望む改善点のうちの上位に入っているし、セグメンテーションの改善もそのうちの1つだ。リアルタイムのプレビューだけでなく、撮影後の編集モードでもこのようなスライスや調整ができるのは、Appleの技術力の高さを感じるし、今後もその進化を楽しみにしている。

評価

今回のアップデートは、1日がかりの濃厚なディズニーランドへの外出でも、あらゆる面でユーザー体験を向上させるすばらしいものとなっている。明るさと画面のリフレッシュレートが改善されたことで、ディズニーランドシステム内の操作が容易になり、日中でも案内や待ち時間などの視認性が向上している。カメラの性能が向上したことで、行列での待ち時間や高さのある場所からの撮影など、暗い場所から明るい場所への撮影がしやすくなった。また、新たに追加された望遠では、最近は人混みから離れた場所にいるキャストをクローズアップして撮影することができ、ポートレートモードでなくても美しいポートレートレンズとして機能する。

全体的に、園内で携帯電話をテストした今までの経験の中で最も良いものの1つとなった。カメラを使って「すごい!」と思う瞬間が続き、自分のバイアスに疑問を感じたほどだ。上で紹介した「ナイトモード」の広角と望遠の写真のように、印象的な写真がたくさんあったので、ブラインドテストで他の人にこの2つの画像についてどう思うか聞いてみることにした。そのたびに、明らかにiPhone 13が勝っていた。本当に、全体的に画像作りが明らかに向上しているのだ。

他の部分もかなり良いものになった。A15 Bionicのパフォーマンスが大幅に向上したことで、バッテリー駆動時間に目立った影響がないばかりか、1時間も延長された。上述のパフォーマンスチャートを見れば一目瞭然かもしれないが、1日のチップの電力使用量のパフォーマンスは、まさにAppleのチップチームの最も印象的な偉業であり続けている。

2021年のiPhone 13は画質、バッテリー駆動時間、そしてありがたいことにスクリーンの改良など、この先また1年間にわたってAppleに貢献してくれるであろう強固な壁を提供してくれる、すばらしいプロダクトだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Akihito Mizukoshi)

生まれ変わったiPad mini 第6世代は「いにしえの理想的な電子手帳」を超える存在だった

生まれ変わったiPad mini 第6世代は「いにしえの理想的な電子手帳」を超える存在だったあくまで”個人的に”ではあるが、2021年秋のApple新製品発表会で、最も購買意欲を湧かせてくれたのはiPad miniだった。無論、iPhoneは今回も想像以上にこだわったカメラを搭載しているが、カメラは使いやすさや画質など絶対的な性能に加えて感性領域の評価もあり、必ずしもスペックやプレゼンテーションの内容だけでは結論づけられない部分もある。

しかし第6世代iPad miniは、スマートデバイスを日常的に使う上でそれらの使い方、あるいはiPhoneの買い替えサイクルや製品選びなどをも変える可能性がありそうだ。

例えば近年のスマートフォンは内蔵カメラの画質を訴求してきたが、カメラのアップデートにさほど興味がない、どちらかと言えば動画、電子書籍、ゲームなどを中心に端末を使ってる人にとっては大画面の最新スマートフォンに買い替えるよりも、iPhone SEなどのコンパクトな基本モデルとiPad miniの組み合わせの方が使いやすいかもしれない。

あるいはiPadシリーズをタブレットとして使いつつ、シームレスで相互の行き来ができるMacと組み合わせたいという人もいるだろう。MacBook Airが仕事のために必須だが、移動時や待ち時間にはコンパクトなiPad miniを活用したいなら、両方を持ち歩くというのも悪くはない。

iPad miniの300グラムを切る重量は、大型のスマートフォン2台ぶん程度。これをどう考えるかだが、コロナ禍で変化したライフスタイルの中で、スマートフォン、パソコン、タブレットの関係性、使いどころを考え直す機会になるかもしれない。

関連記事:5分でわかるiPhone 13シリーズまとめ。iPad mini(第6世代)やApple Watch Series 7も発表

当面は現役で活躍してくれそうなパフォーマンス

電源ボタンにTouch IDを搭載する

電源ボタンにTouch IDを搭載する

第6世代iPad miniのハードウェアとしての概観を、極めて大雑把に説明するならばiPad Airをほぼそのまま小さくしたものだ。パフォーマンスの面ではiPad Proに劣るもののiPad Airよりも強力で、1世代前のA12Zを搭載するiPad ProよりもSoC性能は高い。

12MP広角カメラを備える

12MP広角カメラを備える

搭載されるSoCは最新のiPhone 13シリーズと同じA15 Bionicとなるが、A15 BionicにはGPUが5つのバージョンと4つのバージョンがある。5 GPUバージョンはiPhone 13 ProシリーズとiPad miniに。4 GPUバージョンはiPhone 13(およびmini)に搭載される。

新しいGPUはコア数が増加しただけではなくアーキテクチャや動作クロック周波数も上昇してパフォーマンスが上昇。Neural Engineをはじめとした機械学習処理のアクセラレータも強化されている。このあたりはGeekBench 5とGeekBench ML(機械学習処理のベンチマーク)のスコアを掲載しておくので参考にしていただきたい。

興味深いのは同じ5 GPU版のA15 Bionicでも、iPad miniとiPhone 13 ProではCPUのスコアが違うこと。これはiPad miniではCPUが3GHzで動作しているのに対し、iPhone 13 Proでは3.2GHzで動作しているからだ。

これについてAppleは理由を明らかにしていない。熱の制御なのか、それとも意図しての制限か。しかし、過去の製品の例からすると、おそらくラインナップや価格差などを差別化したものではないだろう。

何らかの理由で、iPad miniではCPUとGPUの性能のうちGPU性能を重視したということなのだと推察されるが、ひとつにはiPad miniをAppleがポータブルゲーム機としても訴求していることと関係しているかもしれない。

現代のSoCは電力をどこに使うかを制御しながら全体のパフォーマンスを形作ることが多いが、iPad miniの場合は(スマートフォンに比べ)十分に高速なCPUパフォーマンスを確保しつつ、画面が大きなiPad miniの画面に見合うGPUパフォーマンスを割り当てたかったではないだろうか。

インターフェースはUSB-C

インターフェースはUSB-C

いずれにしろ、ミニタブレットというジャンルは低価格を意識した製品が大多数で、このモデルのようにパフォーマンスがトップクラスというモデルはない。言い換えればライバルは不在で、当面はパフォーマンス不足を感じずに済むと言える。

高価なミニタブレットと考えるか、最高のMac製品のパートナーと考えるかで評価が分かれる

ところで本機はiPadシリーズとしては初めて、ディスプレイの縦横比が4:3ではない製品となる。そのため縦横比4:3で固定されたアプリを使う場合は少しだけスクリーンが余るのだが、実使用上、気になる場面はほとんどなかった。

今後の話では縦横比が変化しても問題なく動作するアプリが順次増えていくだろう。さらに未来の話をすれば、iPad Proなどにも縦横比が異なる(今回のiPad miniは16:10よりも縦長で3:2よりも横長)サイズの製品が登場する可能性もありそうだ。

そうした従来のiPadシリーズと少し異なる部分はありつつだが、サイズやスピーカー構成の違いを抜きにすれば、前述のとおりiPad miniはiPad Airを小型化した上で最新のSoC搭載で高性能化した製品である。

12.9インチiPad Proと重ねたところ

12.9インチiPad Proと重ねたところ

となると、サイズが小さいとはいえ、約6万円からという価格も納得の設定だ。あらゆる体験がコントロールされた最高峰のタブレットと同等の品質をそのまま電子手帳ライクなフォーマットに落とし込んでいるのだから、大昔の電子手帳大好き世代にはたまらなく夢のある製品だろう。

ただ、ミニタブレットというジャンルに6万円は払いにくいという意見があることも理解はできる。実際のところ、Apple製品の中でも「mini」という名前が付く製品は、iPhoneを含めてかなり苦戦している。スタートダッシュは良いが、一部の小型製品ファンにはウケるものの、長続きしないのが現実。そうした人の目からは”高価なミニタブレット”と映るかもしれない。

しかし、冒頭で言及したようにMacとの連携は極めて良好で、それはiPhoneとの使い分けでも同じだ。Hand Offを使えば、それぞれの作業の続きを別の端末で継続できるし、Macを使っているならば外出先でのiPad miniとの連携は魅力的だと思う。いや、個人的にはそこがこの製品のキモだろうと。生まれ変わったiPad mini 第6世代は「いにしえの理想的な電子手帳」を超える存在だった

これこそがAppleの狙いなのである。業界標準に準拠しつつも、自社製品の間は密にOSレベルで結合していく。高価なミニタブレットと考えるなら、大ヒット商品とはならないかもしれない。しかし、MacやiPhoneのオーナーが併用する端末として価格を考えずに評価するならば、バッテリー持ちが良く閲覧性の高い、そして5Gモデムを持つ端末として面白い位置付けにある製品だと思うのだ。

いにしえの電子手帳を最新の技術で作り直したなら

生まれ変わったiPad mini 第6世代は「いにしえの理想的な電子手帳」を超える存在だった古いAppleのファンならばNewtonという端末を覚えている人も少なくないだろう。Newtonは個人のあらゆる行動をサポートするコンパニオンになるはずだった。ちなみに開発に協力していたシャープは、Newtonと同じOSを導入したGalileoという端末を発売する予定だった。

Newtonとは何かといえば、それは電子手帳の発展版だ。手帳だけにさっと記録し、アイディアを書き留めておき、ほとんど意識しないうちにデータが同期されている。そんなイメージで考えればいいかもしれない。

一方で、iPad miniは全てのiPadアプリとiPhoneアプリが動作する手帳スタイルの高精度なペン入力が可能な端末。ペン入力といってもメモ書きを書くレベルではなく、絵を描くレベルの製品だ。

生まれ変わったiPad mini 第6世代は「いにしえの理想的な電子手帳」を超える存在だったもし、いにしえの電子手帳を最新の技術で作り直したなら──そんな想いがよぎるが、当時想像していた製品はこれほど完成度が高くなかった。本機が必要、欲しい人は、自分自身で判断できていることだろう。

iPad miniは唯一無二の存在だが、その重要性は使い方による。毎日持ち歩く電子ステーショナリーとしてならば買って損はない製品だ。

(本田雅一。Engadget日本版より転載)

最もスタンダートなモデルとして登場したiPad 第9世代は「廉価版」のお手本

最もスタンダートなモデルとして登場したiPad 第9世代は「廉価版」のお手本9月15日の発表イベントではiPhone 13シリーズ、Apple Watch Series 7、iPad mini 第6世代と一緒にiPad 第9世代も発表されました。ほかの製品にくらべると大きな変化もなく地味ですが、Appleの製品戦略的には、普及の鍵を握る重要な位置づけの製品と言えるでしょう。

関連記事:第9世代iPad発表 20%高速でセンターフレーム対応

ボディーは2019年に発売されたiPad(第7世代)のものを引き継いでおり、別売の周辺機器も共通となっていますが、中身はパワーアップしています。

デザインは変わらず、画面下のホームボタンがTouch IDを兼ねる

デザインは変わらず、画面下のホームボタンがTouch IDを兼ねる

現行iPadでは唯一のLightning端子搭載モデルとなる(ほかはUSB-C)

現行iPadでは唯一のLightning端子搭載モデルとなる(ほかはUSB-C)

Apple Pencilは第1世代が利用可能(税込1万1800円)

Apple Pencilは第1世代が利用可能(税込1万1800円)

miniには用意されていない純正キーボードに対応(税込1万8800円)

miniには用意されていない純正キーボードに対応(税込1万8800円)

キーボードカバーは旧デザインのものだが、後ろに畳んだりスタンドにできたりと、これはこれでなにかと便利だったりする

キーボードカバーは旧デザインのものだが、後ろに畳んだりスタンドにできたりと、これはこれでなにかと便利だったりする

質実な進化

SoCはA12 Bionic→A13 Bionicになり、処理速度は前モデルより20パーセント高速化。Appleは最も普及しているChromebookよりも3倍高速であるとアピールしています。A13 Bionicは、iPhone 11シリーズやiPhone SEが採用しているニューアルエンジンが強化されたチップ。これらは現行モデルでもあるため、無印iPadで同じチップを採用することで製造ラインを絞り、コストパフォーマンスにも貢献しているわけですね。

背面カメラは低照度とオートフォーカス性能が向上。出っ張りがないので裸で置いてもカタつかない

背面カメラは低照度とオートフォーカス性能が向上。出っ張りがないので裸で置いてもカタつかない

前面カメラは解像度12MP。超広角レンズになり、iPad Pro、iPad mini 6thと同じくセンターフレームを利用できるようになりました。

物理的にカメラが動いているかのように正確に追従

物理的にカメラが動いているかのように正確に追従

またディスプレイについても、エントリーモデルで初めてTrue Toneに対応しました。

あらゆる環境下で、画面が自然に見えるよう自動で色味を調整

あらゆる環境下で、画面が自然に見えるよう自動で色味を調整

10年の節目にふさわしいiPad

マルチタスクやクイックメモなど、iPadOS 15の機能をサクサク使えて税込3万9800円~(Wi-Fiモデル・64GB)、ペンを一緒に買っても5万円前後ですから、どう考えてもお買い得と思います。ちなみにセルラー版(LTE対応・5Gは非対応)は税込5万6800円〜。

最もスタンダートなモデルとして登場したiPad 第9世代は「廉価版」のお手本iPad誕生10年目に、最もスタンダートなモデルとして登場したiPad(第9世代)。文教市場や企業導入を視野に入れたモデルではありますが、初めてiPadを持つ方や、しばらくiPadを使っていなかったような人への再エントリーモデルとしてもオススメしたいです。

iPadとiPad miniの動画レビューも公開していますので、こちらもチェックしてみてください。

Engadget日本版より転載)

iPad mini 第6世代のミニチュア感にガジェット萌え―実機先行レビュー

iPad mini 第6世代のミニチュア感にガジェット萌え―実機先行レビュー

リーク情報はあったものの、9月15日のスペシャルイベントではiPhone 13シリーズほど発表が確実視されていなかったiPadシリーズ。第6世代のiPad miniか第9世代のiPad、どちらかはありそうくらいに身構えていましたが、まさか両方来るとは思いませんでしたねー。

とはいえ私は最新のiPad Proを持っているので、何が出ても記事にこそすれ個人的に買う予定はありませんでした。しかし、実機をひと目見て、その考えは速攻変わりました。iPad mini 第6世代のミニチュア感にガジェット萌え―実機先行レビュー

か、かわいい……

iPad mini 第6世代のミニチュア感にガジェット萌え―実機先行レビューこれは、iPadのミニチュアですね。仕様的にはTouch IDということもありiPad Airのミニチュアといったほうが正しそうです。

AppleはこれまでiPad miniに関してのアップデートが比較的緩やかだったので、無印iPad同様まだまだ同デザインの筐体を使い回すと信じ込んでいました。これは私の勝手な妄想ですが、とりあえずAirを小さくした試作機をつくってみたら意外と実用的だったのでリリースすることになったのではないかと勘ぐっています。iPad mini 第6世代のミニチュア感にガジェット萌え―実機先行レビュー

パープルとスターライトの実機(共にセルラー版)。カラーバリエーションは、ほかにピンク、スペースグレイの計4色

パープルとスターライトの実機(共にセルラー版)。カラーバリエーションは、ほかにピンク、スペースグレイの計4色

アウトカメラは1200万画素×1基。LiDARセンサーは非搭載

アウトカメラは1200万画素×1基。LiDARセンサーは非搭載

とにかくコンパクト。本体は6.3ミリという驚異の薄さ

とにかくコンパクト。本体は6.3ミリという驚異の薄さ

セルラーモデルで297グラム(実測値は296グラム)と、iPhone 13 Pro Max+60グラムほど増すだけ

セルラーモデルで297グラム(実測値は296グラム)と、iPhone 13 Pro Max+60グラムほど増すだけ

8.3インチのLiquid Retinaディスプレイを搭載

8.3インチのLiquid Retinaディスプレイを搭載

iPad Air同様、電源ボタンにTouch IDを搭載。ボリュームボタンもすべて同じ側面に備える

iPad Air同様、電源ボタンにTouch IDを搭載。ボリュームボタンもすべて同じ側面に備える

充電はUSB-C端子

充電はUSB-C端子

スピーカー穴は4か所あるが、Proシリーズとは異なり再生はステレオ。縦置き・横置きで左右が自動で切り替わる。音量も十分で、前miniと比べるとかなり迫力が増した

スピーカー穴は4か所あるが、Proシリーズとは異なり再生はステレオ。縦置き・横置きで左右が自動で切り替わる。音量も十分で、前miniと比べるとかなり迫力が増した

12.9インチのProと比較すると半分未満のサイズ

12.9インチのProと比較すると半分未満のサイズ

8.3インチに2266x1488ドット表示(326ppi)なので、表示はかなり繊細。年配者は設定で文字サイズを大きくしないと厳しいかも……

8.3インチに2266×1488ドット表示(326ppi)なので、表示はかなり繊細。年配者は設定で文字サイズを大きくしないと厳しいかも……

Smart Folioカバー(税込7480円)もまた既存品のミニチュアのような共通デザインとなっています。

12.9インチ用の上に乗せてみた。従来モデル同様、背面にマグネットでピタッとくっつく仕組み

12.9インチ用の上に乗せてみた。従来モデル同様、背面にマグネットでピタッとくっつく仕組み

フタの開閉と連動するオートスリープ対応

フタの開閉と連動するオートスリープ対応

三角に折りたたみ、2段階の角度でスタンドに

三角に折りたたみ、2段階の角度でスタンドに

パープルの実機には、マゼンダのカバーがピッタリ

パープルの実機には、マゼンダのカバーがピッタリ

ProとAirのいいとこ取り

フロントカメラはiPad Proシリーズと同じ超広角のものになり、FaceTimeやZoomなどのビデオチャット時に自動でフレームインするセンターフレームに対応しました。これは現行モデルではiPad Proでしか使えない機能です(同時に発表された第9世代iPadも対応)。

そこそこ激しく動いてもカメラが追っかけてくる

そこそこ激しく動いてもカメラが追っかけてくる

最新世代のA15 Bionicを搭載

パフォーマンスに関しては別記事でより詳しく触れていますが、SoCはiPhoneと同じ最新のA15 Bionicを搭載、2019年発売のiPad mini 5thと比べてCPUが40パーセント、GPUは80パーセント高速になっています。第5世代のユーザーは、体感的な速度の差にすぐ気づくと思います。

iPad mini 第6世代のミニチュア感にガジェット萌え―実機先行レビュー

iPad mini 第6世代のミニチュア感にガジェット萌え―実機先行レビュー

手帳のような手軽さ

Apple Pencil 第2世代(税込1万5950円)が利用できるので、小さなスケッチブック、またはメモ端末として手帳のように気軽に扱えます。iPad mini 第6世代のミニチュア感にガジェット萌え―実機先行レビュー

iPad miniにはApple純正のキーボードは用意されていませんが(Bluetooehキーボードは接続可)、手書きや音声による入力やフリック入力も使えるので、文字入力は意外と困りません。

サッとクイックメモを呼び出し、手書きによる文字入力が可能

サッとクイックメモを呼び出し、手書きによる文字入力が可能

設定でフリック入力をフローティング表示にすれば、iPhoneと同じように快適に文字入力できる

設定でフリック入力をフローティング表示にすれば、iPhoneと同じように快適に文字入力できる

Bluetoothのキーボードが接続可能。文字入力で困ることはない

Bluetoothのキーボードが接続可能。文字入力で困ることはない

5G対応で大判iPhoneみたい

ちょうどカーナビに近い本体サイズなので、地図などを表示するとより一層それっぽくなります。Macのサブディスプレイとして使うSidecarも利用できますし、カワイイだけでなく、いろいろ小回の利く便利ガジェットといった感じ。

iPhone 13 Pro Maxとサイズ比較

iPhone 13 Pro Maxとサイズ比較

マップ表示はiPhoneより広範囲。5G+GPSでカーナビとしても使える

マップ表示はiPhoneより広範囲。5G+GPSでカーナビとしても使える

Kindleとも近いサイズで、電子書籍も1ページ表示だとちょうどいい感じ

Kindleとも近いサイズで、電子書籍も1ページ表示だとちょうどいい感じ

iPadの2台持ちを決意

実際、目新しさからの一目惚れでしたが、しばらく使ってみて、すでにiPadを使っているユーザーの2枚めiPadとして全然アリだと思いました。

iPad Pro 12.9インチと2台持ちでいくことに

iPad Pro 12.9インチと2台持ちでいくことに

新しいiPad miniは64GBモデルのWi-Fi版が税込5万9800円〜ですが、ガジェット好きな方はeSIMも使えるセルラー版を是非と思います(税込7万7800円〜)。発売日はiPhone 13シリーズと同じ9月24日。動画レビューも是非ご覧ください。

Engadget日本版より転載)

新iPad miniの5Gを試す―高画質&大画面FaceTimeに感動

新iPad miniの5Gを試す。高画質&大画面FaceTimeに感動

9月24日に発売される第6世代のiPad miniは、5G対応iPadとして3機種目の端末。“Pro”のつかない一般ユーザーをターゲットにした無印のiPadとしては、iPadやiPad Airを差し置き、初の5G対応モデルになります。筆者が注目しているのも、この機能。そんなわけで一足先に実機を使い、iPad miniの通信関連機能をあれこれチェックしてみました。

フルモデルチェンジを果たしたiPad mini。5GやeSIM関連の機能をチェックした

フルモデルチェンジを果たしたiPad mini。5GやeSIM関連の機能をチェックした

まずはeSIMから。物理的なSIMカードを入れていない状態で「設定」の「モバイルデータ通信」をタップすると、auやソフトバンクを含む複数のキャリア名が表示されます。ただし、これはいわゆるApple SIMの名残。iPadのeSIMは、iPhoneとは異なり、eSIM以前から搭載していたApple SIMを統合した形になっています。第6世代のiPad miniでも、それは踏襲されています。

少々分かりづらいのはauやソフトバンクが残っているところで、ここをタップすると、Apple SIMとしてプリペイドプランを端末上から直接契約でる仕組みでした。QRコードの読み取りやアプリが必要なeSIMより進んでいるところではありますが、残念ながら両プリペイドプランは4Gまでの模様。しかもauは新規契約の受付をすでに終了しているため、既存のユーザーしか利用ができません。料金的にも1GB、1500円と高く、あまり利用価値は高くないサービスになってしまいました。

Apple SIMの名残が残る「モバイルデータ通信」のメニュー

Apple SIMの名残が残る「モバイルデータ通信」のメニュー

キャリア各社が提供するeSIMを利用する場合は、このメニューで「その他」を選択する必要があります。メニュー的に分かりづらいため、このユーザーインターフェイスはそろそろ見直した方がいいのでは……という気もしますが、後の手順は簡単。「その他」をタップするとカメラが立ち上がるので、キャリアから送られてきたeSIMのQRコードを読み込めばOKです。

「その他」をタップすると、QRコードリーダーが現れeSIMを設定できる

「その他」をタップすると、QRコードリーダーが現れeSIMを設定できる

今回は物理SIMで試しましたが、売りである5Gにもきちんと対応していました。5G関連の設定はiPhoneとほぼ同じ。消費電力を抑える「5Gオート」が用意されているほか、5G接続時のみ、FaceTimeなどのコンテンツの画質を上げる機能にも対応しています。ただし、初期設定でこれが有効になるのは一部キャリアのみ。オンになっていないと、せっかくの高速通信が生かせないので、忘れずに設定しておきましょう。

5Gと4Gを自動的に切り替え、バッテリーを節約する「5Gオート」に対応

5Gと4Gを自動的に切り替え、バッテリーを節約する「5Gオート」に対応

「データモード」で「5Gでより多くのデータを許容」にチェックをつけると、FaceTimeなどが高画質化される

「データモード」で「5Gでより多くのデータを許容」にチェックをつけると、FaceTimeなどが高画質化される

周波数的には、iPhoneと同様、4Gから転用したバンドも利用することができます。転用バンドで積極的にエリアを拡大しているKDDIやソフトバンクで使えば、アンテナピクトの横に5Gの文字を見かける機会が多くなるはずです。ただし、転用5Gは帯域幅が狭いこともあり、期待されているような爆速は出ないおそれもあります。例えば筆者の事務所周辺はソフトバンクの5Gエリアですが、スピードテストをすると、100Mbpsをやや超える程度。4G並みと言えば4G並みの速度です。

転用エリアでは、このように速度があまり出ないことも

転用エリアでは、このように速度があまり出ないことも

ここで生きてくるのが、先に挙げたコンテンツを高画質化する機能です。この自動判定機能は、接続している帯域を問わないため、爆速ではない5Gエリアでも有効になります。正直なところ、FaceTimeや動画の高画質化なら、100Mbpsを超えていれば十分。1Gbps超のスピードは必須ではありません。実際、iPad miniで5G接続時にFaceTimeを試してみましたが、その画質はご覧のとおり。肌のトーンや髪の毛の細かな部分までしっかり見えるほどになりました。思わず「おおっ」と声を出してしまったほどです。

速度的には100Mbps強のエリアだったが、高画質化が有効になり、FaceTimeの映像が精細になった。iPhoneより迫力もある

速度的には100Mbps強のエリアだったが、高画質化が有効になり、FaceTimeの映像が精細になった。iPhoneより迫力もある

このテストでは、筆者のiPad miniからFaceTimeを発信して、矢崎編集長がiPhoneで受けた格好ですが、両方が5Gに接続していたため、筆者の顔もかなり精細に表示されていたようです。ポロシャツに付着したチリまで写っているので、油断なりません(笑)。iPad miniはiPadの中では最小ですが、iPhoneと比べるとやはり大画面。ディテールまではっきり見えて、FaceTimeでも映像の迫力が増し増しになった印象を受けました。

筆者側から送信していた映像も、きちんと高画質になっていた。微妙な表情の変化まで、見逃さずに会話できそうだ

筆者側から送信していた映像も、きちんと高画質になっていた。微妙な表情の変化まで、見逃さずに会話できそうだ

特にこの機能は、iPad miniでこそ使いやすいと感じています。10インチ超のiPadの場合、利用シーンはどうしても室内が多くなり、5Gが届きにくいからです。片手でガシっと握れるiPad miniであれば、よりスマホに近い感覚で利用可能。出先でFaceTimeを着信して、そのまま通話するといったケースにも使いやすい端末だと感じました。iPad miniのモビリティがあってこそ、5Gが生かせるというわけです。

ただし当然ながら、iPadのため、VoLTEなどの音声回線を使った通話はできません。IP電話アプリはインストールできるものの、耳に当たる位置に通話用のスピーカーはなく、近接センサーも対応していないのでディスプレイも消灯しません。片手で持てるので、思わずやってしまいそうになりますが、耳に当てての通話はできないので注意してください。

思わず耳に当てたくなるが、こんな使い方はNG。スピーカーがないので、スマホのようには通話できない

思わず耳に当てたくなるが、こんな使い方はNG。スピーカーがないので、スマホのようには通話できない

ちなみに、5Gを有効化できるのは、アップルが認めたキャリアのみになります。iPadシリーズを取り扱っていない楽天モバイルのSIMカード/eSIMをセットすると、表示されるメニューが他3キャリアとは異なっていました。楽天モバイル回線だと5Gのメニュー自体が表示されなくなり、3GかLTEしか選択できません。そのため、上記のようなコンテンツ高画質化の恩恵にもあずかれません。段階制の料金プランはタブレットとの相性もよさそうなだけに、ここはちょっと残念です。

楽天モバイルのeSIMをセットしたところ、5Gを有効にできなかった

楽天モバイルのeSIMをセットしたところ、5Gを有効にできなかった

簡単な動画の編集もサクサクこなせて、コミュニケーションツールとしても使い勝手のいいiPad miniは、5G搭載のメリットが大きいと思います。FaceTimeなどの着信ができるのは、常時接続が可能なセルラーの特徴。このポータビリティを生かすのであれば、やはりWi-Fi+Cellular版一択な気がしています。

(石野純也。Engadget日本版より転載)

iPad mini 第6世代に死角なし、iPhone 13 Pro同等の最新仕様で処理も通信も高速

iPad mini(パープル)。試用したのはWi-Fi + Cellularモデルだ。別売のApple Pencil(第2世代)とともに

iPad mini(パープル)。試用したのはWi-Fi + Cellularモデルだ。別売のApple Pencil(第2世代)とともに

9月24日に発売となる第6世代iPad mini(以下、iPad mini)のレビューをお届けする。

今回のiPad miniはまさに「フルモデルチェンジ」。デザインはiPad AirやiPad Proと似た形になったが、中身はiPad AirともProとも違う、最新仕様のiPadと言っていいものだ。

ここでは、その魅力やパフォーマンスを見ていきたい。

サイズ・デザインはやはり絶妙

iPad miniの魅力が「サイズ」「デザイン」にあるのは疑いない。大きめのポケットにも入る……のは冬服などの一部のものに限られるかもだが、それでも片手で持てるサイズのiPadであることは間違いない。

ポケットにも……割と入る

ポケットにも……割と入る

本体裏面。パープルが映える

本体裏面。パープルが映える

iPad miniのパッケージと内容物。同梱されるのはUSB-CケーブルとACアダプター

iPad miniのパッケージと内容物。同梱されるのはUSB-CケーブルとACアダプター

iPad miniのパッケージと内容物。同梱されるのはUSB-CケーブルとACアダプター

特に今回は、対応するペンが第2世代のApple Pencilになり、充電時の収まりもよくなった。Lightning端子に突き刺す第1世代は、充電頻度が高くないので実用上そこまで大きな問題はなかったのだが、やっぱり見栄えが良くなかったし、なによりペンの充電キャップをなくしやすかった。マグネットで接続する第2世代はそのあたりの問題が非常に少ない。

本体右側面。ここに第2世代のApple Pencilがくっつく

本体右側面。ここに第2世代のApple Pencilがくっつく

メモ帳やコンパクトなスケッチブックのように持ち運べることに魅力を感じる人は多いと思うし、ペンはそうしたシーンで特に活躍する。

ペンをつけて片手で持ってみるとメモ帳っぽい雰囲気に

ペンをつけて片手で持ってみるとメモ帳っぽい雰囲気に

別売のiPad mini用Smart Folio(イングリッシュラベンダー)をつけて。片手にうまく収まるサイズ感だ

別売のiPad mini用Smart Folio(イングリッシュラベンダー)をつけて。片手にうまく収まるサイズ感だ

300g以下で「2020年のiPad Pro」に迫る性能

ポイントはなにより、このサイズで「速い」ということだろう。

iPad miniはiPhone 13 Proと同じ「A15 Bionic」が採用されている。A15 Bionicには、iPhone 13で使われている「GPUが4コア」のものと、Proで使われている「GPUが5コア」のものがあり、iPad miniは後者を使っている、とAppleは言う。

ただし、同社がプロセッサの動作クロックやメインメモリの搭載量を公開しないのはいつものこと。なので、iPad miniとiPhone 13 Proが「まったく同じ性能」とは限らない。

ということでGeekbenck 5でのテスト結果を見てみよう。

どうやらminiのものは、クロック周波数が低く、メインメモリ搭載量も少ないようだ。iPad mini搭載のA15 Bionicは最大クロックが2.93GHzで動いている。メインメモリは4GBだ。iPad Proが3.2GHz・6GBもしくは8GBであるのに比べるとやはりランクは下がる。

だが、速度が遅いわけではない。簡単に言えば、マルチコア処理の速度・シングルコアでの速度・GPUを中心とした「Compute処理」での値すべてが2020年発売の「iPad Pro 11インチモデル」に近いことがわかった。当時使われていたのは「A12Z Bionic」でこれもかなり速いプロセッサーだったが、それと近い性能のものが2年で300gの小型iPadに入ってくるというのは驚きだ。それだけ、Appleが積極的に自社開発プロセッサーの性能向上と生産性向上に努めている、ということだろう。

Geekbench 5を使った、iPad miniのベンチーマーク。プロセッサーの性能は2020年発売の「iPad Pro(11インチ)」に近いGeekbench 5を使った、iPad miniのベンチーマーク。プロセッサーの性能は2020年発売の「iPad Pro(11インチ)」に近い

Geekbench 5を使った、iPad miniのベンチーマーク。プロセッサーの性能は2020年発売の「iPad Pro(11インチ)」に近い

Geekbench 5を使った、iPad miniのベンチーマーク。プロセッサーの性能は2020年発売の「iPad Pro(11インチ)」に近い

同時発売となる「第9世代iPad」のテスト結果を見てみると、やはりこちらはiPad miniと比べて見劣りする。と言っても、昨年のフラッグシップスマホである「iPhone 12 Pro Max」に近い値ではあるので、けっして性能が低いわけでもない。4万円以内でこの性能が買えると思えば、それはそれでやはり驚きである。

同じく「第9世代iPad」の性能。さすがにiPad miniほどではないが、iPhone 12 Pro Maxより少し劣る程度か

同じく「第9世代iPad」の性能。さすがにiPad miniほどではないが、iPhone 12 Pro Maxより少し劣る程度か

同じく「第9世代iPad」の性能。さすがにiPad miniほどではないが、iPhone 12 Pro Maxより少し劣る程度か

一方で気になるのは、「最新のA15と、昨年のM1を比べたらどちらが速いのか」という点。

これはM1の圧勝だ。コア数がCPU・GPUともに8と多く、もともとMac向けに高負荷な処理を行うことを前提にチューニングされているから意外な結果ではない。

過去には、「iPad Proのプロセッサーを、最新の技術を使ったiPhoneのプロセッサーがすぐに追い抜いていく」現象もあったのだが、M1はちょっと違う。同じ技術を核として生み出されたプロセッサーであっても、iPhone・iPad向けの「Aシリーズ」と、Mac・iPad Pro向けの「Mシリーズ」は明確に違う路線を歩み始めている、と見て良さそうだ。

M1を搭載するiPad Pro(12.9インチ)の値。速度は圧倒的でA15 Bionicが載っているiPad miniでもかなわない

M1を搭載するiPad Pro(12.9インチ)の値。速度は圧倒的でA15 Bionicが載っているiPad miniでもかなわない

M1を搭載するiPad Pro(12.9インチ)の値。速度は圧倒的でA15 Bionicが載っているiPad miniでもかなわない

5G搭載で通信が高速化、4Gより5倍以上速い

もう一つ、速度面で魅力だったのは「5G」だ。

今回テストしたのはWi-Fi + Cellularモデルで、iPad miniは5Gに対応している。

この効果は絶大だ。今回は、同じくWi-Fi + Cellularモデルの第9世代iPadの貸し出しを受けているので比較してみたが、通信速度は下で5倍以上の差が出た。(テストはどちらもソフトバンク回線。テスト場所はJR五反田駅)

iPad miniの通信速度をJR五反田駅で計測。安定的に「下り285Mbps」程度が出ていた

iPad miniの通信速度をJR五反田駅で計測。安定的に「下り285Mbps」程度が出ていた

もちろん、通信エリアとして「5Gがしっかり入る場所」であることは重要だ。今はまだ5Gインフラも過渡期で、東京・山手線の駅で利用者数も多い五反田駅というロケーションは、それなりに恵まれた場所であるのは間違いない。

だとしても、安定的に下り285Mbpsが出ていたという事実はとても魅力的だ。ぶっちゃけ自宅の光回線と変わらない。本来なら、5Gならもっと速くなっても不思議ではないわけで、「インフラさえ整えば……」という気持ちになってくる。

4G・iPadでの「下り44Mbps」と言う値も、けっして遅くはない。だが、やはり5Gとの差は明白だ。

同じ場所で、4GのiPadの速度を計測。40Mbps台でも遅くはないのだが、5Gに慣れると人は贅沢になる

同じ場所で、4GのiPadの速度を計測。40Mbps台でも遅くはないのだが、5Gに慣れると人は贅沢になる

バッテリー搭載量が比較的大きく、これだけ通信速度が出るのであれば、単にタブレットとして使うだけでなく、「カバンの中に入れておいて5G対応モバイルルーター代わりにする」パターンも十分にアリだと感じた。

マイナス点としては「現状、5Gのミリ波に対応していない」ことが挙げられる。だが、ミリ波の利用可能な範囲がまだ狭いことを考えると、そこまでクリティカルな話ではないとも思える。日本で「ミリ波必須」と感じるようになるには、まだしばらくかかりそうだ。

「最新仕様」はゲームにも撮影にも活きる

こうした速度は、ウェブや動画を観るだけでなく、ゲームにも活かせるだろう。

SIEは先日のアップデートで、スマホ・タブレットからでもPS4/PS5が遊べる「リモートプレイ」をWi-Fiだけでなくセルラー回線にも解放した。5G環境なら(通信料の問題はあるが)問題なく遊べる。マイクロソフトも、クラウドゲーミングである「Xbox Cloud Gaming」を海外では展開中で、日本でも「2021年中」にスタートとしている。どちらもiPadに対応しているので、相性はいい。

もちろん、Apple Arcadeのタイトルやスマホ・タブレット向けのF2Pタイトルでもいい。パフォーマンスの高さはゲームにとって全ての面でプラスに働く。

また、今回のiPad miniはインターフェースが「USB Type-C」になったので、外部ストレージや使いやすいのもポイントだ。

iPad miniのインターフェースは、iPad ProやiPad Airと同様にUSB Type-Cに

iPad miniのインターフェースは、iPad ProやiPad Airと同様にUSB Type-Cに

写真や動画を扱う際、ビューワーがどうしても欲しくなる。移動先からデータを急いで転送したい時もあるだろう。iPad miniの処理能力とデータ通信性能なら、そんな要求を十分にこなしてくれる。

結局、「多くの人に求められているサイズのものが、最新のプロセッサーと最新の通信規格を使った仕様で出てきた」のが、iPad miniの最大の美点。どこにどう使うかも「最新仕様が活きるところ」がふさわしいのだ。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)

iPad mini(第6世代)とiPad(第9世代)実機で確信した2021年iPadの選び方

実機で確信した2021年iPadの選び方

9月24日に発売となるアップル・iPad mini(第6世代)とiPad(第9世代)を試用する機会を得た。

iPad miniは8.3インチとコンパクトながら、iPhone 13シリーズと同じA15 Bionicを搭載。端子もUSB-C、ロック解除はTouch IDと申し分のない進化を遂げている。

SNSでつながっている知り合いも、9月15日未明に開催されたアップルスペシャルイベントが終わるやいなや予約していた。すぐに予約して24日に届く人、これから購入をしようかと思う人、iPad miniは誰もが満足できる仕上がりになっている。コンパクトで使い勝手は申し分なく、おそらく日本でかなり人気のデバイスになるのではないか。

これまでのiPad miniは長らく後継機種が出なかったり、デザイン的に変化がなかったりと、アップルとしてもどっちつかずのポジションになっていたと思う。しかし、今回は明確にハイエンド路線に舵を切ってきた。

アップルのiPadラインナップを俯瞰すると、今回、iPad miniが進化したことで、iPad Air、iPad Proなど全体的にわかりやすくなり、消費者とすれば選びやすくなったのではないか。

観るための iPad mini

今回、発売となるiPad miniは一言でいえば「観る」ためのデバイスだ。8.3インチでYouTubeやNetflix、DAZNといった動画コンテンツを観るのに最適だ。Kindleで本、dマガジンで雑誌、紙面ビューワーアプリで新聞も読めてしまう。コロナ禍で家にいる時間が増えているが、リビングや寝室、仕事部屋、トイレの中など、どこにでも持ち込んで、コンテンツを観まくりたくなるのがiPad miniなのだ。

実機で確信した2021年iPadの選び方

Apple Pencil(第2世代)に対応する iPad mini (第6世代)

Apple Pencil(第2世代)に対応する iPad mini (第6世代)

一方、去年10月に発売されたiPad Airは「書く」ためのデバイスだ。10.9インチというサイズ感、Apple Pencil(第2世代)に対応しており、イラストを描いたり、頭の中を整理するためにあれこれ書き起こすのに最適だ。オプションにはMagic KeyboardやSmart Keyboard Folioがあり、文章を書くのに向いている。

ただ実際のところ、日本語変換能力がちょっとイケてないことがあったりもする。しかし「頭に浮かんだ文書を素早くテキストに落とし込む」という点においてはiPadOSは結構、反応が早く追従性が良いのが気に入っている。

今年4月に発売した11インチ並びに12.9インチのiPad Proは「創る」人向けのiPadだ。チップセットにはMacBookやiMacと同じ「M1チップ」を搭載。写真や動画の編集、書き出しも難なくこなすスペックを持ち合わせている。実際、YouTubeに上げるための動画も、iPhoneで撮影し、AirDropでiPad Proに転送。iPad Proで編集して、5Gエリアなら5G、ダメなら4Gでアップするということも可能だ。

カメラマンや記者など、取材先で撮った画像や動画を編集して編集部に納品するには快適だ。まさにコンテンツを創る人向けのiPadだろう。

「観る」「書く」「創る」。いまのiPadはラインナップが多く、選びにくい感があるが、自分がiPadでどんなことをやりたいのか突き詰めると、自ずと選ぶべきiPadが見つかるような気がしている。

安く売るためのiPad(第9世代)

iPad(第9世代)を試用してみたが、やはり昔から代わり映えのしないデザインであり、正直いって、「ワクワク感」はみじんもない。しかし、「これぞ伝統のiPad」という風情があり、安心して使えるのは間違いない。

実機で確信した2021年iPadの選び方iPad(第9世代)はどちらかといえば、アップルが安く「売る」ためのiPadだ。今回もエントリーモデルとして、初めてタブレットを購入する人、さらには学校などの教育市場向けを意識した価格になっている。一般向けでは3万9800円からだが、学生や教職員向けなら3万6800円からとなる。

タブレット市場は、過去から熾烈な価格競争が続いている。中国メーカーなどが安価なタブレットを投入し、もはや儲けが出る市場ではなくなっている。

アップルとしては、ここで勝ち残るために、できるだけ安いiPadを作り、市場に提供し続けている。コストが厳しいなか、長い期間、同じ筐体で大量生産を行い、製造コストを下げようとしている。チップセットもiPhoneからの型落ちを採用することで、コスト効果を狙っている。できるだけ切り詰めることで、性能は落とさず、価格競争力を維持しているのだ。

一方で、iPad mini、iPad Air、iPad Proはハイエンド路線にすることで「儲かるタブレット」にしつつある。こういった戦略はアップルにしかできないやり方だ。

おそらくアップルとしては、このコロナ禍の影響で、iPad AirやiPad Proが好調で儲かるタブレットになった。そこで、方向性を見失いつつあったiPad miniも、iPad ProやiPad Airに習う路線に突き進むことにしたのではないか。まさに今回のiPad miniはアップルの「勝ちパターン」にうまいこと乗ろうしているような気がしてならない。

(石川温。Engadget日本版より転載)

【まとめ】最新iPhone 13シリーズレビュー集、13 ProからiOS 15まで、気になるのはどのモデル?

すでに予約開始、9月24日に発売され手に取ることができるiPhone 13シリーズ。TechCrunchでは、ハイエンドモデルiPhone 13 Proをはじめとした実際に触った上でのレビュー、さらに先に配信されたiOS 15の使用感など、最新iPhoneに関する記事を掲載、以下にまとめた。

新たなレビュー記事も公開予定であり、本記事もそれに合わせて更新する。お楽しみに。

iPhone 13 Pro / 13 Pro Max

カメラ機能が同等になった「iPhone 13 Pro」「iPhone 13 Pro Max」実機先行レビュー

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iPhone 13 / 13 Pro×カメラ

カメラが楽しいiPhone 13 / 13 Pro、12からの乗り換えも「アリ」な理由

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iPhone 13×eSIM

iPhone 13でデュアルeSIMを試す―自由度アップで機種変が楽に

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iPhone 13 mini

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iPhone 13 miniは究極の手のひらスマホだ

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iPhone 13シリーズの新色「スターライト」「シエラブルー」実物の印象はどう?

iOS 15

【レビュー】アップルのiOS 15は欠けていた小さな機能をすべて採用、アップデートは任意だが個人的にはオススメ