ユーザーのオンボーディングを改善する分析とノーコードが特徴のツール「Appcues」が約36.8億円を調達

アプリの世界では、ユーザーのオンボーディングは長い間ずっと続いている課題だ。開発者はデザインや技術上の制約に取り組む。配信元とユーザーとではサービスに関わる際の優先事項が異なるだろう。サービスのコンテンツは常に変化する。そしておそらくなんといっても、人は1人ひとり違うので、アプリのエクスペリエンスも1人ひとり違う。

ボストンに拠点を置くAppcuesは、オンボーディングの問題を特定し、それをすばやく解決するための非テクニカルなローコードのソリューションを提供するスタートアップだ。同社は米国時間1月18日、3210万ドル(約36億8200万円)のシリーズBラウンドを発表した。この資金調達は、オンボーディングの問題を解決するツールが市場で求められていることに加え、Appcuesにそのトラクションがあることの表れだ。

Appcuesの共同創業者でCEOのJackson Noel(ジャクソン・ノエル)氏は発表の中で「プロダクトのエクスペリエンスはこれまで以上に重要になっています。しかしプロダクトで何かをするのに何週間もかかることもいまだにあります」と述べた。Appcuesは、同社のツールでインサイトと利用者のオンボーディングの修正を数時間で顧客に提供できるとしている。

シリーズBを主導したのはNewSpringで、新たに投資するColumbia Partnersと、これまでに投資していたSierra VenturesおよびAccompliceも参加した。Appcuesは今回の資金でプロダクト開発を進め、海外に進出する計画だ。同社はこれまでに4800万ドル(約55億560万円)近くを調達した。判明している限りでは、同社の評価額は2億〜3億ドル(約229億4000万〜344億1000万円)あたりだ。

堅調に成長している中での今回の資金調達となった。Appcuesによれば、Freshworks、FullStory、Lyft、Zapier、Kaplan、Hopin、Pluralsight、Vidyardなどおよそ1500社の顧客を獲得しているという。同社のクラウドベースのプラットフォームはこれまでに2億人以上のユーザーに対して約20億回のエクスペリエンスを提供した。

Appcuesは2014年にマーケッターが開発者の手を借りることなくサイト上で利用しやすいプロンプトを作成できるSaaSのツールセットから事業を始め、その時点でユーザーのオンボーディングのフローに力を入れていた。現在の同社のプロダクトは、わかりやすく機能を使えるようにし、フィードバックのアンケートに誘導し、訪問者に発表を読んでもらうフローもカバーしているが、設計の前提は変わらない。技術系でない人がデジタルインターフェースの動作を向上させるダイアログを作れるようにするということだ。

そのプロセスはSDKから始まる。SDKはアプリのコードベースにインストールすることも、セグメントで統合することもできる。このSDKがサイト上のイベントをトラックし、動作のベースとなる。

ノエル氏はインタビューで、SDKがAppcuesの動作のポイントだと述べた。同氏は「外部アプリではなくネイティブの拡張機能のように感じられます。我々のゴールはこの領域にさらに力を入れてユーザーが最高のプロダクトエクスペリエンスを作れるようにすることです」と説明した。そして、アプリのフローや社員トレーニングなどに主眼を置いた同様のジャンルにおける他プロダクトとの違いはこの点であるとも述べた。

Appcuesの利用者としてはUX担当者、プロダクトマネージャー、インタラクティブマーケティング担当者、そしてもちろん開発者が考えられる。利用者はChromeの拡張機能からデータにアクセスしてアプリやサイトが意図した通りに動作している部分、していない部分を確認し、それに応じてイベントやフローを新しく作成する。ユーザーがどこからアプリに入ってきたか、すでにどのように使っているかに応じてセグメントを分け、それぞれに別のフローやイベントを作成できる。そして新しいフローが効果的に動作しているかどうかを追跡して調整したり、必要があれば新しいフローを追加したりする。

現在は以前に比べて間違いなくユーザーエクスペリエンスが重視されている。動作が良くないものはユーザーに短時間で見切られてしまう(デジタルサービスなら選択肢はいくらでもある)。企業はどんどん複雑さを増してデジタルの入れ物に何もかも詰め込み、しかもその入れ物が顧客にエンゲージする唯一のプラットフォームだったりする。ここでうまくいかなければ、これまでには存在しなかったような経緯で企業を左右しかねない。

だからこうした問題を解決するテクノロジーを構築しようとする企業がたくさんあるのも当然であり、それは大きなビジネスになり得る。この分野には株式公開を果たしたWalkMe、こちらもIPOの準備中であるPendo、組織内ユーザーのオンボーディングに重点を置くWhatfixなど、多くの企業がある。

Appcuesのツールセットについて特筆すべき点は技術系でないユーザーを対象としていることだが、分析にも力を入れている。両者は、誰にとってどんな問題があるかを把握するのにも、修正の試みがうまくいっているかどうかを判断するのにも役に立つ。

ユーザーのオンボーディングを調整するための高度な、あるいはたくさんのツールがあるとしても、最初の段階でのシンプルなニーズはなくならず、むしろ重要性を増す一方だ。

NewSpringの共同創業者でゼネラルパートナーのMarc Lederman(マーク・レダーマン)氏は発表の中で次のように述べた。「この5年間、我々はソフトウェア企業のプロダクトエクスペリエンスがビジネスの成功における最も大きな力になるという変化を目撃してきました。我々はAppcuesが顧客に与える影響に大きな期待を寄せ、Appcuesのこれからの成長段階でジャクソンとチームを支援できることを楽しみにしています」。

画像クレジット:Appcues

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

畑を走り回るAigenの農業ロボットは二酸化炭素排出量のマイナス化を目指す

そのロボットは今のところ、雑草を抜くことしかできないが、Aigen(アイジェン)は「雑草を抜くロボットを作っているわけではない」と断固主張する。同社のミッションは惑星規模の土壌再生であり、農業をカーボンネガティブにするための道筋を作っているのだという。

そんな主張には説得力があったに違いない。なぜなら、同社はシードラウンドで400万ドル(約4億6000万円)を調達したと発表したばかりだからだ。このラウンドはNEAが主導し、AgFunder(アグファンダー)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)、ReGen Ventures(リジェン・ベンチャーズ)が参加した。

Aigenは太陽電池を搭載した自律型ロボットを開発している。このロボットは、コンピュータビジョンを利用して、敵か味方か、作物か雑草かを見分けながら、畑を走り回ることができる。その最初のバージョンは、1日に最大3エーカー(約1万2000平方メートル)の農地を、ただひたすら歩き回っている。

「私の親戚がミネソタ州で農業を営んでいるのですが、彼らとは以前から話をしてきました。農家は従来の農業のやり方では問題があることを実感しています。化学薬品を進んで使い、土壌の耕起を愛し、何千年にもわたって大気中に炭素を放出してきた農法を愛する保守的な人々でさえ、他の方法に目を向けるべきなのではないかと気づき始めているのです」と、AigenのCEOであるRichard Wurden(リチャード・ウルデン)氏は語る。そんな話を聞いてきた同氏は、農業の炭素排出量をマイナスに逆転させることに、特に情熱を注いでいる。「現在、農業は炭素排出量の約16%を占めています。将来的には、ディーゼルの排出ガス、土壌の圧縮、化学薬品の使用、耕す回数を減らすことで、マイナスにできる可能性があります」。

このスタートアップ企業が根拠としているのは、光合成は全体ではカーボンネガティブであるということだ。植物は空気中のCO2を取り込んで糖(正確には炭水化物)に変える。つまり、実質的には空気中の二酸化炭素を大地に戻しているのだ。Aigenは、テクノロジーと農業のやり方を変えれば、カーボンニュートラル、あるいはネガティブな状態にすることも可能だと主張している。この草取りロボットは、会社が進むべき道の第一歩にすぎない。今、本当に価値がある物を作り、プラットフォームを拡大して、将来的にはより多くのミッションを遂行できるようにするというのが、同社創業者たちの主張だ。

「私たちは画像によるデータ収集を行っています。このロボットには複数のカメラが搭載されており、あらかじめ学習させたAIを使って植物やさまざまな物体を識別しています。見ているものが何だかわかったら、ロボットの下に備わる2本のアームを使って、植物を取り除くか、増殖させるかを判断します」と、同社COOのKenny Lee(ケニー・リー)氏は説明し、その小型軽量ロボットの価値をアピールする。「重機は土壌を圧縮するため、根が下ではなく横に伸びてしまいます。これが問題なのです。なぜなら、これでは植物が取り込んだ炭素を地中深くに送ることができないからです。トラクターや大型の農業機械を減らすことができれば、農業の仕組みを変えられます」。

Aigenの小さな太陽電池ロボットは、クルージングしながら自分の仕事をこなしている(画像クレジット:Aigen)

「Aigenの技術は、クラス最高のAIとロボット工学を活用し、人類最大の問題にエレガントなソリューションを提供します」と、NEAのパートナーであるAndrew Schoen(アンドリュー・ショーン)氏は述べている。「彼らの製品は、惑星規模で相当な量の大気中の炭素を封じ込める自然の強大な力を解放させるものです」。

同社は、今回の資金調達の評価額を公表していない。

画像クレジット:Aigen

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceXの元エンジニアがクリーンな自律走行型の電気鉄道車両を開発中

SpaceX(スペースエックス)の元エンジニア3人が設立したParallel Systems(パラレル・システムズ)は、バッテリーで駆動する型鉄道車両を開発する会社だ。同社は米国時間1月19日に4955万ドル(約56億円)のシリーズAでステルスモードから脱却した。360万ドル(約4億円)のシードラウンドを含め、これまでに5315万ドル(約60億円)を調達した同社は、既存の鉄道インフラを活用した、より効率的で脱炭素の貨物ネットワークの構築に取り組んでいる。

共同創業者でCEOのMatt Soule(マット・ソウル)氏によると、今回の資金はParallel Systemの第2世代車両の開発と、同社の車両を実際の運用に組み込む方法を考案するための高度なテストプログラムの立ち上げに充てられる予定だ。

同社は、Anthos Capitalがリードし、Congruent Ventures、Riot Ventures、Embark Venturesなどが参加した今回のラウンドで得た資金を、約60人のエンジニアの雇用に充てるつもりだ。そうしたエンジニアの多くはソフトウェアを担当するとソウル氏は話す。

同社の鉄道車両アーキテクチャは、貨物の二酸化炭素排出、トラック輸送のサプライチェーン上の制約、鉄道貨物の限界といったいくつかの問題の解決を目指している。米国では、鉄道網が全貨物輸送の28%を占めているが、そのほとんどはバルク輸送であり、すなわち石炭や木材などの天然資源を輸送する大型列車だ。鉄道貨物輸送のごく一部はインターモーダル輸送と呼ばれ、基本的に船やトラックなどさまざまな輸送手段間で鋼鉄コンテナを移動させる。

「鉄道は、インターモーダル輸送に関しては成長するチャンスが多く、当社はこの分野に重点を置いています。というのも、競争とイノベーションの余地があると考えている分野だからです」とソウル氏はTechCrunchに語った。

Parallelが特許出願中の車両構造は、標準的な輸送用コンテナを1段または2段積みにして輸送することができる個別動力の鉄道車両を含む。この鉄道車両は合流して「小隊」を組んだり、途中で複数の目的地に分かれたりすることができる。つまり、サービスを経済的なものにするために大量の貨物を積載する必要はない。しかし、米国でほとんどの貨物輸送を担っているトラックよりもはるかに多くの重量を運ぶことができる、とソウル氏は話す。

「貨物列車のユニットエコノミクス(ユニット単位での経済性)がトラックと競争できるようになるには、非常に長い列車が必要で、機関車と乗務員のコストをその長い列車1本で償却することになります」とソウル氏は語る。「問題は、その長い列車をどこに停めたらいいのかということであり、答えは『あまりない』です」。

貨物輸送を長い列車に頼るということは、eコマース分野の需要増に対して頻繁に処理するのは難しい、ということだ。なぜなら、そうした長い列車は常に都市部や港にアクセスできるとは限らない。その物理的な大きさに対応するために、特別に作られた大きなターミナルが必要なのです、とソウル氏は指摘した。

「当社のユニットエコノミクスは、それほど大きな列車には依存しません」とソウル氏はいう。「荷揚げと荷積みのために1日中待機するのではなく、小隊で動くことができます。1〜2時間で出発し、他の小隊のためにスペースを空けることができます。そのため、港湾や内陸部の港湾シャトルシステムを構築することで、海に面した港から内陸部の港にコンテナを移動させることができます。内陸部の港はトラックにとってアクセスしやすい場所であり、倉庫保管場所にも近いのです」。

自律性に関して言えば、鉄道の閉じたネットワークは、レールへのアクセスが制限され、交通が集中制御されているため、自律走行技術を安全かつ早期に商業化するための理想的な運用設計領域だとParallelは見ている。ただ、同社の長期的なビジョンは有望と思われるものの、同社はまだ全国ネットワークでのテストを行っていないことに注意が必要だ。同社は、全国ネットワークから隔離されたロサンゼルスの小さな鉄道でプロトタイプ車両をテストしてきた。

米国の鉄道はオーナー制で私有化されていて、これによりParallelが車両や車両を動かす自律システムを大規模にテストすることは難しい。同社は、民間の鉄道会社を顧客に据えており、鉄道会社が日常的にサービスを運営するためのツールを販売またはリースする一方、技術の提供や統合という点でサポートする役割を提供したいと考えている。従来型鉄道のパートナーを得るまでは、同社の技術が実際の運用に対応できるかどうかを確認することはできない。

Parallelが手がけている技術の市場投入は数年先になるかもしれない、とソウル氏は話すが、世界中の荷主はより速い輸送だけでなく、よりクリーンな輸送も求めており、この分野の市場を手に入れるチャンスはある。

同社の小隊技術は、自律走行型鉄道車両が互いに押し合って荷重を分散させるのが特徴で、この技術によりParallelの車両がセミトラックと比較してわずか25%のエネルギーしか使わないようになると同社は予測している。

「貨物の脱炭素化を加速させること。これが当社の取り組みの根本的な狙いです。しかし、我々が目にしている問題は、鉄道の事業規模がサービスを提供できる市場に限定されていることです」とソウル氏は話す。「なので我々は、エネルギー効率を高めると同時に、運用面や経済面の障壁を取り払おうとしているのです。さらに、パワートレインを電動化することで、脱炭素化の効果をさらに加速させることができます。というのも送電網そのものはクリーンではないからです。当社が開発しているものとディーゼルトラックの比較において、米国の送電網の平均的なCO2含有量を見ると、当社の技術を使えば、現在のディーゼルトラックより貨物輸送1マイル(約1.6km)あたりにかかるCO2を90%削減することができます」。

画像クレジット:Parallel Systems

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソフトバンクがマーケティング最適化のためのAIインフラ企業Pixisへの資金注入主導、新社名で新年度をスタート

Pixisの創業者。左からシュバム・A・ミシュラ氏、ヴルシャリー・プラサード氏、ハリ・ヴァリヤート氏

Pyxis One(現Pixis)は、シリーズCの資金調達で1億ドル(約114億円)を調達し、同社がいうところの「完全なマーケティング最適化のための、世界で唯一のコンテキストコードレスAIインフラ」の開発を続けている。

SoftBank Vision Fund 2(ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)がこのラウンドを主導し、新たな投資家であるGeneral Atlantic(ジェネラル・アトランティック)と、既存の投資家であるCelesta Capital(セレスタ・キャピタル)、Premji Invest(プレミジ・インベスト)、Chiratae Ventures(チラタエ・ベンチャーズ)が参加した。今回の資金調達は、Pixis(ピクシス)が1700万ドル(約19億4400万円)のシリーズBを発表してからわずか4カ月で行われ、これまでの総資金調達額は1億2400万ドル(約141億円)に達した。

カリフォルニアに拠点を置く同社は、3年前にShubham A. Mishra(シュバム・A・ミシュラ)氏、Vrushali Prasade(ヴルシャリー・プラサード)氏、Hari Valiyath(ハリ・ヴァリヤート)氏の3人によって設立された。ミシュラ氏はTechCrunchに対し、このチームが一緒に立ち上げた会社はこれで2つ目で、最初の会社はゲーム分野の人工知能だったと語っている。

会社が発展するにつれ、チームはほとんどの人が「Pyxis」を「y」ではなく「i」で綴っていることに気づき、クリーンで均整をとるために会社名を変更したと、彼は述べている。

Pixisを立ち上げる前、共同創業者たちはマーケティング責任者や収益責任者に、顧客のプライバシーを尊重するために企業が独自のシステムを導入しなければならない「Cookieなき」世界で、SaaS企業を迅速に拡大する方法について話をしたそうだ。

「この準備ができている人はあまりいません。私たちは、8秒以内に導入できるノーコードAIソリューションを構築することでそれを解決しています」。とミシュラ氏はいう。

実際、同社はマーケティングキャンペーンにAI最適化を加えるための自己進化型ニューラルネットワークのAIモデルを現在50個持っており、今後6カ月で200個にスケールアップする予定だ。Pixisは、ノーコードソリューションによって人々が部分的にデータサイエンティストになるというビジョンを信じている、とミシュラ氏は語った。

そして、それは「ノーコード」というだけのただの戦略ではなく、本当にノーコードであることを強調した。AIマーケティングモデルを徹底的にいじったり、データサイエンティストのチームを集めて何かを開発したり、30分のトレーニングを受けてボタンを押すだけで製品やプラグインを導入できるようにするため、このインフラは製品群のように構築されている。

シリーズCは、2018年からの600%の収益成長を受けたものだ。Pixisは1月中に100社以上の顧客を獲得し、すべて中堅から大企業の範囲に入るとミシュラ氏は述べた。PixisのAIインフラを利用する顧客は、毎月数時間にも及ぶ手作業の業務節約時間に加え、獲得コストが20%減少したと同氏は付け加えた。

今回の資金調達は北米、欧州、APACに拡大するAIプラットフォームとプラグインの拡張に役立てられるという。

「2022年は私たちにとって新たな夜明けです」とミシュラ氏はいう。「2021年は、BTCとDTCマーケティングへのソリューションを立ち上げていましたが、2022年の第1四半期の終わりには、B2Bとソフトウェア企業へのソリューションを提供する予定です」。

一方、SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)のパートナーPriya Saiprasad(プリヤ・サイプラサド)氏は、Pixisの特徴として「Cookieのない世界でより良い意思決定を促すために、マーケティング機能に最先端のデータサイエンス能力を装備する」デマンドジェネレーションのための真のエンド・ツー・エンドのインフラであるとメールで述べている。

マーケティングは企業にとって大きな予算項目だが、メッセージングやビジュアルのためのツールがないために、適切なタイミングで適切なチャネルを通じて適切な顧客をターゲットにできないと、その支出の多くが無駄になってしまうため、彼女は同社の製品が「ゲームチェンジャー」であると考えている。

「Pixisのプロダクトマーケットフィットの検証は、同社が立ち上げからわずか3年で達成したその目覚しい成長率と、忠実で熱心なグローバル大企業の顧客基盤に支えられています」とサイプラサド氏は付け加えた。「2021年に企業がデジタルマーケティングに費やした費用は推定4550億ドル(約52兆円)という市場規模と、さまざまな業種に対応できるPixisのプラットフォームにより、Pixisがこの勢いを持続するための大きな走路があると考えています」。

General AtlanticのマネージングディレクターであるShantanu Rastogi(シャンタヌ・ラストーギ)氏も、データ共有に関する新たな制限の結果、マーケティングエコシステムがシフトする中、Pixisはこれに対応し、予測AIモデルを活用してマーケティングの効率化を実現し、顧客に新しい投資収益率を生み出していると指摘している。

ラストーギ氏は「Pixisは、これまで時代遅れの技術に頼っていたプラットフォームを『十分である』と受け入れてきた業界に、自動化と統合をもたらそうとしています。今回の投資で、グローバルに成長・拡大しようとする有能なチームを支援できることをうれしく思います」。と語っている。

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ミミズ型ロボや蠕動運動ポンプロボなどソフトロボットを手がけるソラリスが1.6億円調達、累積調達額3.7億円に

ミミズ型ロボットや蠕動運動ポンプロボットなどソフトロボットを手がけるソラリスが1.6億円調達、累積調達額3.7億円に

生物に学んだ柔らかいロボット(ソフトロボット)を開発するソラリスは1月19日、第三者割当投資による1億6000万円の資金調達を発表した。引受先は、三菱UFJキャピタル6号投資事業有限責任組合(三菱UFJキャピタル)、MSIVC2020V投資事業有限責任組合(三井住友海上キャピタル)、科学技術振興機構。累積調達額は3億7000万円となった。

2017年9月設立のソラリスは、中央大学バイオメカトロ二クス研究室の研究成果をベースとする大学発スタートアップ。高出力で軽量・柔軟な軸方向線維強化型の空気圧人工筋肉をコア技術とし、蠕動運動ポンプロボット、ミミズ型ロボット、パワーアシスト装置を開発している。

粘度の高い固液混合体の混合や搬送が行える「蠕動運動ポンプ」

蠕動運動ポンプ」は、独自開発の人工筋肉を使い、腸管の蠕動運動を再現するロボット。粘度の高い固液混合体の混合や搬送が行える。土砂や粉体の搬送、ロケット用個体燃料の生成装置などに応用できる。

人間や他のロボット機構では侵入が困難な細い管の中を進める「ミミズ型ロボット」

ミミズ型ロボット」は、ミミズの蠕動運動を模したもの。移動に必要な空間が非常に小さく、人間や他のロボット機構では侵入が困難な細い管の中などを進むことができる。内部は空洞になっているため、カメラやメンテナンス装置を装備することが可能。インフラやビル配管の点検、清掃などが行える。

腕を長時間上げたままで行う作業を支援、電源不要のパワーアシスト装置「Tasuki」

パワーアシスト装置「Tasuki」は、農業・建設業・保守点検など腕を長時間上げたままで行う作業(上向き作業や腕上げ作業)を支援する。バネの力を利用した機械式自重補償という仕組みのため電源を必要としない。ロボット技術を応用した装置で、スマート農業に貢献する。

ソラリスは、調達した資金により、複雑な細管を可視化・点検するミミズ型ロボット、防爆性に優れ固液混相流体の混錬・搬送を行う蠕動運動ポンプロボットの製品化を促進し、インフラ・工場・プラント・ビル配管の点検・清掃や、化学品・食品製造現場や土木・建設現場の省人化など、ソフトロボットの実用化を目指すとしている。

「帰らない日は家賃がかからない家」を探せるunitoが約1.2億円調達、サイトのアップデートとともに料金プランを3種類に拡充

「帰らない日は家賃がかからない家」を探せるunitoが約1.2億円調達、サイトのアップデートとともに料金プランを3種類に拡充

「住んだ分だけの家賃で暮らせる部屋」など、新しい暮らしを提供するプラットフォーム「unito」を運営するUnitoは1月19日、第三者割当増資による総額約1億2000万円の資金調達を発表した。引受先は、アイティーファームほか既存株主、ベクトル、岡三キャピタルパートナーズ、シーラホールディングス、スペースマーケット。累計資金調達総額は約3億円となった。

調達した資金により、同社は「帰らない日は家賃がかからない家」の枠組みを超えて、多様な暮らし方のプランを取り揃え、さらに、あらゆるタイプの部屋を複数のエリアに展開することで、暮らしの最適化を追求する。

さらに、お部屋検索サイト「unito」をアップデートしたことを明らかにした。新たなunitoでは、料金プランを「メイン拠点プラン」「サブ拠点プラン」「マンスリープラン」の3つに拡充。メイン拠点プランは、月10日間以上利用できる部屋を持ちたい方向けで、利用しない日を申請することで、帰らない日数分の料金が差し引かれる料金システム「リレント」を導入したものとなっている。

サブ拠点プランは、月1~5日間だけ利用できる部屋を持ちたい方向けで、利用する日を申請し、その日数分の料金を支払う。マンスリープランは、毎日利用できる部屋を持ちたい方向けで、利用する日を申請しその日数分の料金を支払う。「帰らない日は家賃がかからない家」を探せるunitoが約1.2億円調達、サイトのアップデートとともに料金プランを3種類に拡充

このほか、ユーザーの暮らしを部屋探しから利用中・退去まで、LINEでサポートするコンシェルジュを強化。「部屋探しサイト」「仲介会社」「管理会社」と部屋探しから退去までが分断されているが、unitoでは部屋探しから退去まで、コンシェルジュが一気通貫でサポートする。「帰らない日は家賃がかからない家」を探せるunitoが約1.2億円調達、サイトのアップデートとともに料金プランを3種類に拡充

会計分野特化のAIソリューションを手がけるファーストアカウンティングが4億円のシリーズC調達

会計分野特化のAIソリューションを手がけるファーストアカウンティングが4億円のシリーズC調達

ファーストアカウンティングは1月19日、シリーズCラウンドとして、第三者割当増資により約4億円の資金調達を実施したと発表した。資金調達累計額は約14億円となった。調達した資金は、エンジニアの採用にあてる。引受先は以下の通りとなっている。

・BEENEXT2 Pte. Ltd.
・ALL STAR SAAS FUND Pte. Ltd.
・マイナビ
・Scrum Ventures Fund III L.P.
・KDDI 新規事業育成3号投資事業有限責任組合
・ライドオン・エースタート2号投資事業有限責任組合
・DEEPCORE TOKYO1号投資事業有限責任組合
・エースタート

ファーストアカウンティングは、買掛金(請求書支払)業務といった経理業務の効率化ソリューション「Robota」と、Robotaシリーズの機能を組み込んだAIソリューションとして「Remota」を提供。Robotaは、深層学習を通じて経理特有の証憑書類の形式をあらかじめ学習したAIと、AIが読み取った値を自動でチェックするロジックチェック機能を備えたクラウドサービスとなっている。

また同社は、デジタル庁および会計ベンダーの業界団体「電子インボイス推進協議会」が進めている「Peppol」(ペポル。Pan European Public Procurement Online)に貢献すべく、Peppolアクセスポイントの提供に向けて取り組んでいるという。Peppolは、国際的非営利組織Open Peppolが管理する電子インボイスの標準仕様だ。

Peppolにより請求書の根本的な電子化を進め、受取る請求書のみならず、大手のエンタープライズの販売管理システムにおける請求書の送付の電子化や、AIによる売掛金の消込を実現するとしている。そのため、エンジニアの採用を積極的に行う方針という。

またより強固な開発体制を構築することで、「買掛金業務を圧倒的に効率化する先進的な機能の開発」「安定的なサービス運用のためのインフラの整備やSRE体制の構築」「QA体制を強化し品質の高いプロダクトの提供」を実現し、Remotaに関して使い勝手を向上させるとしている。

行ったことのない都市でも環境に対応し走れる自律配送車向けAIの英Wayve、約229億円調達

アレックス・ケンダルCEO(画像クレジット:Wayve)

英国の自律走行車スタートアップ「Wayve」は、同社の技術をスケールアップし、商用フリートとのパートナーシップを拡大するために、シリーズBラウンドで2億ドル(約229億円)の資金を調達した。Wayveは、ロボデリバリーや物流の分野で主要なプレイヤーとなることを目指している。

同社は、これまでに総額2億5800万ドル(約296億円)の資金を調達している。この技術は、車両の周囲に設置された汎用ビデオカメラと車載AI駆動ソフトウェアに大きく依存しており、そのため4Gや5Gネットワークへの依存度が低くなり、環境への高い応答性を実現している。

今回のラウンドは、既存投資家であるEclipse Venturesがリードした。その他に参加した投資家には、D1 Capital Partners、Baillie Gifford、Moore Strategic Ventures、Linse Capitalのほか、Microsoft(マイクロソフト)とVirgin(ヴァージン)、アーリーステージ投資家であるCompoundとBaldton Capitalが含まれている。また、戦略的投資家であるOcado Groupや、Sir Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏、Rosemary Leith(ローズマリー・リース)氏、Linda Levinson(リンダ・レビンソン)氏、David Richter(デイビット・リクター)氏、Pieter Abbeel(ピーテル・アッベル)氏、Yann LeCun(ヤン・ルカン)氏などのエンジェル投資家も参加している。

WayveのAlex Kendall(アレックス・ケンダル)CEOによると、Wayveのテスト車両は、ロンドンだけでなく、これまでに行ったことのない都市での走行に成功したという。英国の道路は一般的に中世のレイアウトになっているため、これは並大抵のことではない。

英国のオンライン食料品会社Ocadoは、Wayveに1360万ドル(約15億6000万円)を出資して自律走行による配送実験を開始しており、英国の大手スーパーマーケットチェーンAsdaもWayveに出資している。

Wayveによると、同社のAV2.0技術はフリートオペレーター向けに特別に設計されており、カメラファーストのアプローチと、Wayveの他のパートナーフリートから提供される運転データから継続的に学習する内蔵AIを組み合わせている。これにより、交通情報や道路地図、複雑なセンサー群など、車外のデータから多くの入力を必要とするいわゆる「AV1.0」よりも、よりスケーラブルなAVプラットフォームになるとWayveは考えている。

Eclipse VenturesのパートナーであるSeth Winterroth(セス・ウィンターロス)氏は、次のように述べている。「業界が従来のロボティクスで自動運転を解決しようと奮闘している中で、AV2.0は、商業フリート事業者が自動運転をより早く導入できるような、スケーラブルなドライビングインテリジェンスを構築するための正しい道筋であることがますます明らかになってきています」。

TechCrunchの取材に対し、ケンダル氏はこう付け加えた。「今回の資金調達は、当社がコア技術の実証から、スケールアップして商業的に展開する権利を得たという市場からのシグナルだと思います。我々が事業を開始した2017年は、自律走行車のハイプサイクルのピーク時で、すでに何十億ドル(何千億円)もの投資が行われていました。誰もが1年先の話だと思っていたのです」。

「そして、何兆ドル(何百兆円)規模のテック巨人たちに対抗するために、逆張りスタートアップを作っていくことは、少しクレイジーだったかもしれません。しかし(技術を)裏づける実例のおかげで、次のレベルのスケールに移行することができました。それは、複数の都市でテストを行えるということです。ロンドンでシステムのトレーニングを行い、マンチェスター、コベントリー、リーズ、リバプールなど、英国全土で展開したことに加え、多くの商業パートナーや、すばらしい人材をチームに引きつけることができました」。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

「栄養」をがん治療の柱にすることを目指すFaeth Therapeuticsが約23億円調達

目の前に熱々のパッタイがある。その味と食感は、手軽なテイクアウトの夕食から想像できるものだ。しかし、これは単なる食事ではなく「薬」だ。

この仮説上のパッタイは、スタートアップFaeth Therapeutics(フェイス・セラピューティクス)が開発した、がんと闘うための食事療法の一部だ。食事そのものは、科学者によってすでに遺伝学的に精査されて「腫瘍を飢えさせる」ように特別に作られ、既存の抗がん剤や治療法と組み合わせて使用される。がん治療に対するこの「プレシジョンニュートリション(個別化栄養)」アプローチは確かに新しいものだが、2019年に創業されたFaeth Therapeuticsは、このアプローチを臨床に持ち込む最初の企業となることを望んでいる。

「会社設立の本当のきっかけは、世界的な科学者の3つの独立したグループが、私たちが基本的にヒト生物学とがんの治療の大部分を無視していることにそれぞれ気づいたことです」とFaeth Therapeuticsの創業者でCEOのAnand Parikh(アナンド・パリク)氏は話す。

「私は冗談で、これをがん生物学のマンハッタン計画と呼んでいます。科学者たちはそれぞれこの問題に異なるアプローチをしていましたが、既存の治療薬を増強するだけでなく、これらの栄養素の脆弱性をターゲットにした新しい治療薬の開発をサポートするために、がん患者の栄養を変えなければならないという考えに至りました」

Faeth Therapeuticsは米国時間1月18日、2000万ドル(約23億円)のシードラウンドを発表した。従業員15人を擁する同社にとって初の外部資金調達ラウンドだ。同ラウンドはKhosla VenturesとFuture Venturesが共同でリードした。また、S2G Ventures、Digitalis、KdT Ventures、Agfunder、Cantos、Unshackledが参加している。

Faeth Therapeuticsについてまず注目すべき点の1つは、同社を支える科学的なチームだ。Faethの共同設立者は次のとおりだ。2011年ピューリッツァー賞一般ノンフィクション部門を受賞した「The Emperor of All Maladies(病の「皇帝」がんに挑む 人類4000年の苦闘)の著者でコロンビア大学の腫瘍学者であるSiddhartha Mukherjee(シッダールタ・ムカージー)氏、Weill Cornellのメイヤーがんセンター所長でPI3Kシグナル伝達経路の発見者であるLewis Cantley(ルイス・キャントリー)氏、英国がん研究所の主任研究者でフランシス・クリック研究所のグループリーダーであるKaren Vousden(カレン・ボーデン)氏。ボーデン氏は、がん抑制タンパク質p53の研究で知られている。

特にキャントリー氏とボーデン氏は、代謝とがん治療の関係を深く追求した最初の人物だ。

例えば、PI3Kは細胞の代謝、成長、生存、増殖に影響を与える細胞シグナル伝達経路だが、がん患者ではしばしば制御不能に陥ることがある。この経路を標的とした薬があるが、キャントリー氏の研究は、患者によっては高血糖に陥り、この経路の制御異常を誘発する可能性があることが示唆されている。同氏は、その代わりに食事療法によってインスリンレベルを下げることで、再活性化を回避し、薬の効果を高めることができることを明らかにした。例えば、ネイチャー誌に掲載されたマウス研究では、ケトン食(低炭水化物、高脂肪)にすると、グリコーゲンの貯蔵量が減り、薬の効果を妨げる可能性のあるスパイクを防ぐことができることが示された。

これまで前臨床研究は断続的に有望視されてきたが、まだ多くの作業を必要としている(ムカジー氏がキャントリー氏の研究を説明する自身の論説で述べているように)。しかし、パリク氏は、この研究を改善し、よりターゲットを絞った方法で栄養学に基づく医療にアプローチする余地がまだたくさんあると指摘している。

「多くの人が、ケトン食で膠芽腫を治療しようといっていると思います。しかし、それよりも深いレイヤーがあるのです」と同氏は話す(注意:ケトン食[低炭水化物、高脂肪]食は、特定の膠芽腫の症例にも展開されている)。

「膵臓がんの場合、膵臓の腫瘍の働きによって、特定の栄養素に対するニーズが高くなる可能性があることがわかってきました。この場合、アミノ酸が必要かもしれません。そこで、特定のアミノ酸が不足するような食事を作るのです」。

Faethの使命は、今回調達した資金を利用して、この分野の研究を拡大・深化させることだとパリク氏は付け加えた。

栄養と健康は明らかに関連しており、栄養はがんの転帰に影響を及ぼす。しかし、この分野の研究は、当然のことながら懐疑的な見方をされることがある。食事と健康に関しては、科学的事実から、かなり簡単に神話の領域に入ってしまうことがある。はっきりいえば、この研究はがんのための「奇跡の食事」や「食事ベースの治療法」を宣伝しているわけではない。むしろ、栄養学ががん治療の「5本目の柱」になりうるかどうかを、科学的な研究を通じて検証することを目的としている。

Faethは、前臨床試験で明らかになった関連性を検証するために、すでに3つの試験の準備を進めている。ゲムシタビンとナブパクリタキセル化学療法にアミノ酸低減食を組み合わせた転移性膵臓がんの試験を開発中で、また、転移性大腸がんを対象とした別の試験も準備している。最後に、パリク氏によると、インスリン抑制食に関する試験が今後数週間のうちにclinicaltrials.govに掲載される予定だ。

もし、治療を保証するほど強力な結びつきが証明されれば、(前述のパッタイのような)高品質の食事と抗がん剤が一緒になってより良い治療結果をもたらすようながん治療をパリク氏は想像している。放射線治療や化学療法を受けながらも、家に帰れば医師が処方した食事が玄関まで届く(パリク氏は「世界的なシェフが開発した食事」だと付け加えた)。そして、心配な点が出てきたら栄養士に相談する。

しかし当面はこの研究を臨床の場に持ち込むことにほぼ全力を注ぐと同氏はいう。

「前臨床でできる限りのことをやってきたので、今回、臨床に移行するために資金を調達しました。安全性の確認はもちろんですが、有効性のシグナルがあるかどうかも確認するために、初期段階の試験を行っています」と、パリク氏は述べた。

画像クレジット:JESPER KLAUSEN / SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Nariko Mizoguchi

「バンライフ」のCarstayが損保ジャパンと資本業務提携、観光・防災におけるキャンピングカー活用推進で共創

「バンライフ」のCarstayが損保ジャパンと資本業務提携、観光・防災・新しいライフスタイルにおけるキャンピングカー活用で共創

キャンピングカーと車中泊スポットのシェアリングサービス「バンライフ」(Android版iOS版)を展開するCarstay(カースティ)と損害保険ジャパンは1月19日、観光・防災などにおけるキャンピングカーなどモビリティの活用推進を目指し資本業務提携を開始したと発表した。

またCarstayは、損保ジャパンを引受先として、第三者割当増資による約5300万円の資金調達を実施したと明らかにした。これにより、金融機関からの融資を含め、累計調達額は約2億9000万円となった。

日本RV協会(JRVA)の「キャンピングカー白書2021」によると、キャンピングカーの2020年の国内総保有台数は約12万7400台となり、この10年間で1.5倍に増加したという。バンなどの車両をキャンピングカーなど車中泊仕様の車に改修する個人も増えているそうだ。コロナ禍において密を避けた旅やワーケーションができる手段として、車を基盤とした新たな旅や暮らしのスタイル「バンライフ」とその市場規模は増加し、「動くホテル」「動くオフィス」としての需要が高まっているという。

一方Carstayによると、需要の高まりにも関わらず、キャンピングカーや車中泊仕様の車両を日常的に駐車できる施設は依然少なく、また車中泊の規則も各自治体や施設に委ねられているなど、現状のバンライフの基盤には課題があると指摘。安心・安全な「バンライフ」の実現のためにインフラやルール面の整備が求められているという。

そこで、Carstayと損害保険ジャパンは、今回の資本業務提携を通じて、コロナ禍や終息後に求められる、平時の観光・有事の防災・新しいライフスタイルとしての「バンライフ」のあり方を共創する。

今後Carstayと損害保険ジャパンは共同で、キャンピングカーと車中泊スポットのシェアリングに際して、より広範囲で利用者と所有者を補償する保険サービスの開発・提供、Carstayでの移動・滞在・体験に関連するデータを活用した新たなサービスの研究を実施する。また、パートナー事業者・自治体の開拓に向けて両社アセットを活用する。

「バンライフ」のCarstayが損保ジャパンと資本業務提携、観光・防災・新しいライフスタイルにおけるキャンピングカー活用で共創

損保ジャパンは、「『安心・安全・健康のテーマパーク』により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会の実現」を目指している。今回の提携により、新たなライフスタイル「バンライフ」の確立、地域の活性化を推進するとともに、有事の際やコロナ禍におけるスペース活用のあり方など、モビリティを活用した新たな社会価値の創造とそこから生まれるデータを活用した新サービス開発に向けて取り組む。

Carstayは、「誰もが好きな時に、好きな場所で、好きな人と過ごせる世界」の創造の実現に向けて、2019年1月に車中泊スポットのスペースシェアサービス、2020年6月にキャンピングカーのカーシェアサービスを発表し、全国各地に車中泊スポットを約330カ所、キャンピングカーシェア登録車両を240台に拡大するなど「バンライフ」プラットフォーム事業を展開。また提供しているサービスを応用利用することで、医療機関や被災地に休憩所としてキャンピングカーを提供する社会支援活動「バンシェルター」を実施している。

これまで同社は、大手企業や自治体への営業活動を行い、バンライフの普及と啓蒙を実施しており、今後全国にパートナーの事業者や自治体を有する損保ジャパンの参画を契機にバンライフのインフラ整備を加速する。安全性・社会受容性をさらに高めていき、バンライフの発展に貢献するとしている。

韓国の人事自動化プラットフォームflexが約329億円の評価額で約36.7億円のシリーズBを獲得

韓国を拠点とする人材管理プラットフォームのflex(フレックス)は、米国時間1月17日、評価額2億8700万ドル(約329億円)で、3200万ドル(約36億7600万円)のシリーズBラウンドを完了したと発表した。これで合計調達額が4200万ドル(約48億2500万円)に達することになった、今回の資金調達は、Greenoaks(グリーンオークス)が主導し、DST Global Partners(DSTグローバル・パートナーズ)が参加した。

同社のミッションは、企業が手作業の人事業務プロセスを自動化して合理化し、より人材に集中できるようにすることだ。同社の自動化ツールは給与計算、電子署名サポート、入社・退社手続き、人材分析などにおいて、グループ間でシームレスなデータフローを実現し、従業員の体験を最適化する。また、2022年第1四半期には、パフォーマンスレビュー(業績評価)とタレントリレーションズマネジメント(人材関係管理)ツールも発表する予定だ。

「flexでは、HRを『Human Resources(人事)』ではなく、『Human Relations(人間関係)』と定義しています。私たちは、人事チームが従業員を管理し、サービスを提供するために世界クラスのソフトウェアがふさわしいと考えています。しかし今日、多くの組織がいまだにスプレッドシートやレガシー製品を使っていることは明らかです」と、flexのCEOであるHaenam Chang(ヘナム・チャン)氏は述べている。

設立2年のこのスタートアップは、今回の資金を、需要に応じた事業の拡大、人事オートメーションやSaaS製品の開発、従業員の増員などに充てる予定だ。

シリーズBの資金調達は、多くの製品の発売と新規顧客の獲得により、2021年と比較して約10倍の収益成長を達成したことを背景に行われた。同社は、主にIT分野の中小企業にサービスを提供してきた。しかし、2022年、中小企業の新しい業界をターゲットにすることで、対応可能な市場を拡大する計画だ。なお、ユーザー数や顧客数については、質問されても明らかにしなかった。

現在、flexは、過去20年間の技術進歩への適応が遅れていた人事機能とプロセスを近代化するSaaSソリューションを提供することで、韓国での成長に注力している。同社は、韓国における人材管理の文化的ニュアンスと人事規制を深く理解しているため、韓国企業に合わせた製品群を提供するのに有利な立場にあると述べている。

「一部の企業は、従業員を把握し、管理方法を改善するためのソリューションを導入していますが、ほとんどの企業が、従業員に関するその場限りの決定を下す際に、直感や不十分なデータに依然として依存しています。flexでは、従業員データの信頼できるソースと、従業員を管理するための豊富なツールセットでお客様を支援し、個人と組織のパフォーマンスを最大化させます。私たちの目標は、単に優れた人事ソフトウェアソリューションを提供することではなく、企業が最も重要な資産である従業員をよりよく把握・管理できるようにすることです」とチャン氏は述べている。

GreenoaksのJosh Cho(ジョシュ・チョウ)氏は「韓国は世界で最も大きくダイナミックな経済の1つですが、歴史的に企業が従業員を管理し給与を支払うためのネイティブなソリューションがなく、企業は不満を抱えながら独自のソリューションを開発しなければなりませんでした。flexは、国内初の次世代人事情報システムおよび給与計算プラットフォームを急速に構築しています。私たちは、企業がパフォーマンス管理から採用、給与計算など、すべての人事機能を1カ所で処理できるようにするエンド・ツー・エンドの製品に関する彼らのビジョンに期待しています」と語っている。

画像クレジット:metamorworks / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

eコマースのカスタマーサービスで繰り返される作業の自動化をサポートするZowie

Zowieの共同創業者マット・シオレック氏とマヤ・シェーファー氏(画像クレジット:Zowie)

顧客サービスの内容は、ほぼ数種類に限定される。まず返品、そして返金、そして品質管理部門に対する質問だ。これらは、同じ内容が繰り返されることも多く、また、もっと複雑な話題で顧客エンゲージメントを深めるための時間はなかなか得られない。例えば情報をプロダクト部門へつないだり、顧客にとってベストのプロダクトを探す手伝いをするといったことはできていない。

Zowieを創業したMaja Schaefer(マヤ・シェーファー)氏とMatt Ciolek(マット・シオレック)氏は、繰り返されることが多いサービスは自動化できると考えている。同社を興した2019年、2人はプロダクト開発と、顧客調査の仕事をしていたeコマース企業での経験をブレンドしようと考えていた。

CEOのシェーファー氏は「顧客サービスは、既存のソリューションで解決する問題ではないということを私たちは悟りました。それらのソリューションはどれも実装がとても難しいからです。実装には数カ月も必要で、さらにその後、メンテナンスが困難になります」という。

2人は、繰り返し行われる仕事の解決策としてチャットボットをクライアントに提案し、数週間でその構築を任された後、Zowieのアイデアを思いついた。

顧客サービスにAIによるチャットボットを使うやり方は、新しいものではない。2021年1年でも、ForethoughtHeydayCognigyLandbotHeyflowなどが、この分野で資金調達を発表している。

しかし、競合他社の中には、回答などのワークフロー情報をツールに入力する必要があるものもあるとシェーファー氏はいう。その代わり、ZowieのZowie X1テクノロジーは、製品やブランドに特有のリクエストワークフローを最初から自動化する。同社は数分でデータを分析し、Zowieがサポートできるサポートチケットの割合(場合によっては50%)を顧客に伝えることができる。

シェーファー氏は、チャットボットの導入により、エージェント1人あたり1日2時間程度が解放され、チャットボットが回答しない質問を受け付けたり、より複雑な問題を解決したり、より多くのサポートを売上につなげたりすることが可能になると見積もっている。平均して、顧客は最大45%の売上増を実現することが可能だと、彼女はいう。

2020年から2021年にかけて売上が3倍になった同社は、資金調達を目指すことを決め、Gradient Venturesと10xFoundersが主導し、LatticeのCEOであるJack Altman(ジャック・オルトマン)氏、GiessweinのCEOであるMarkus Giesswein(マルクス・ジースバイン)氏、以前の投資家であったInovo Venture Partnersが参加してシードラウンドで500万ドル(約5億7000万円)を調達した。

ZowieはGiessweinを含む約100社の顧客と取引している。彼女は今回の資金を製品開発、マーケティング、販売、米国および北米全域の商業チームの成長に充てたいという。同社の従業員は現在36名で、2022年中にチームを倍増させる計画だ。

Zowieが拡大しようとしている製品機能には、ウェブサイトから電子メール、WhatsAppまで、できるだけ多くのチャネルでの自動化、および営業サイドでカスタマージャーニーをナビゲートできるような機能の実現が含まれている。

Gradient VenturesのジェネラルパートナーであるDarian Shirazi(ダリアン・シーラーズ)氏は、短期間で大きな収益を上げたことと、創業者たちが築いているビジネスに惹かれたこともあり、Zowieを選んだと語る。

「Zowieを見ていて感じた差別化の1つは、ナレッジベースを生成してくれるeコマース向けの初のAIチャットボットであることでした。他は質問に答えるためのナレッジベースを用意しなければならず、そんな時間がない企業もあります。私たちはチャットボットの期待していますが、巨大でバーティカルなeコマース向けにうまくやった人はいませんでした」とシーラーズ氏はいう。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クラウドセキュリティの次の波に取り組むPermiso、11.4億円を調達しステルス状態から浮上

パロアルトに拠点を置き、クラウドインフラのID検知と反応を提供するスタートアップPermiso(ペルミソ)が、1000万ドル(約11億4000万円)のシード資金を得てステルス状態から浮上した。

FireEye(ファイアアイ)元幹部のPaul Nguyen(ポール・ヌエン)氏とJason Martin(ジェイソン・マーティン)氏によって設立された同社は、パンデミックの開始以降、各企業が在宅勤務をサポートするために業務のデジタル化を急いだことから生まれた、クラウドセキュリティの潮流に載ったスタートアップの1つだ。

すでに競争が激化しているこの市場に18カ月遅れて参入したものの、ヌエン氏とマーティン氏は、同社の検知反応製品はクラウドセキュリティの次の波に備える準備が整っていると考えている。このアイデアは、Netflix(ネットフリックス)を含むPermisoのエンジェル投資家たちとの会話の中で、クラウドにおける一番の問題はIDであるといわれたことに触発されたものだ。

ヌエン氏はTechCrunchに次のように語っている「このことから私たちは、IDがクラウドで何が起きているかを物語る要(かなめ)であり、クラウドで検知機能を構築するための基礎でもあると認識し始めたのです」。

Permisoは、クラウドインフラの中で可視化されたIDを提供し、誰が環境の中で何をしているかをリアルタイムに把握できるようにする。これにより、監視対象環境で発生したアクセス、アクティビティ、変化の詳細を簡単かつ効率的に特定することが可能になり、このことは認証情報の漏洩、ポリシー違反、内部脅威を示唆する悪意ある行動や異常な行動を発見するのに役立つと同社は主張している。

「私たちは市場より少しだけ先を行っているのです」とマーティン氏はいう。「私たちの知る限り、クラウド先進企業が自社のために構築しているカスタム製品を除いて、IDを中心としたすべての活動、その環境におけるリソース、およびそれらの相互作用に焦点を当てたものは存在していません」。

Permisoは「専門家によって作られ、非専門家でも使える」ことをウリにしており、クラウドセキュリティ市場でスキル不足が進んでいることを考えると、これは重要なポイントだと述べている。「オンプレミスからクラウドに移行しているチームを見たとき私たちが目にしたのは、英語を話すのと同時に、まったく新しい言語であるペルシャ語を学ぼうとしているような姿でした。それはゼロからのスタートなのです」とヌエン氏はいう。

「何年も前から市場の1%のために開発してきましたが、それでは市場の1%を獲得するにとどまるだけです。今、私たちは残りの99%も狙っています」。

このスタートアップの1000万ドル(約11億4000万円)のシードラウンドはPoint72 Ventures主導し、Foundation Capital、Work-Bench, 11.2 Capital、Rain Capitalが参加した。また、Netflixの元情報セキュリティ担当副社長Jason Chan(ジェイソン・チャン)氏、Databricks(データブリックス)の製品セキュリティ責任者Travis McPeak(トラビス・マクピーク)氏、JupiterOneのCMO Tyler Shields(タイラー・シールズ)氏など、セキュリティ業界のリーダーたちがバックアップしているのも特徴だ。

Permisoは、今回の資金調達により、現在15名で構成されるチームを3倍に増員し、現在の顧客基盤を拡大する予定だ。

「私たちの投資家は皆、クラウドネイティブ問題の中でこのID問題を大規模に解決していますが、他の企業はあと1〜2年はここまでたどり着くことはできないでしょう」とマーティン氏は語っている。

画像クレジット:Permiso

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(文:Carly Page、翻訳:sako)

植物由来の素材を使ったヘアエクステンションを開発・販売するスタートアップ「Rebundle」

Rebundle共同設立者のDanielle Washington(ダニエル・ワシントン)氏とシアラ・イマニ・メイ氏(画像クレジット:Curtis Taylor Jr.)

米国時間1月17日朝、髪を専門とするスタートアップ企業でセントルイスに拠点を置くRebundle(リバンドル)は、プレシードラウンドで140万ドル(約1億6000万円)を調達したと発表した。この資金調達イベントを主導したのは、中西部を地理的に重視するベンチャーキャピタルのM25だ。Rebundleは、このプレシードラウンドに先立ち、6桁相当の助成金およびその他の非流動的な資金を調達していたことを、CEO兼共同創業者のCiara Imani May(シアラ・イマニ・メイ)氏はTechCrunchによるインタビューで語った。

Rebundleは、植物由来の素材を使ったヘアエクステンションを開発・販売している企業だ。ヘアエクステンションに関する筆者の知識は乏しいが、メイ氏はいくつかの重要なポイントを説明してくれた。まず、市場は大きく、かつ多様で、低価格なもの(プラスチック製)から高価なもの(人毛)まで、無数の価格帯があること。そして2つ目は、プラスチック製のエクステンションは頭皮に炎症を起こす可能性があるということだ。

Rebundleを設立する前から、メイ氏はより持続可能な生活に関心を抱いていたという。プラスチック製のエクステンションが引き起こす炎症についても認識していた。彼女のスタートアップ企業が生み出したものは、製品からプラスチックを取り除くことで顧客の頭を快適にし、廃棄物を減らすことで環境に貢献できるという、両方の可能性を持っている。

Rebundleは、バナナ繊維を芯材に使って製造したさまざまな色のエクステンションを販売している。また、海外ではなく、米国内に新たな生産拠点を建設していることにも注目すべきだろう。

今回の資金調達に話を戻すと、この資金はチームとサプライチェーンへの投資に充てられると、CEOは語っている。これまでRebundleの製品は、1時間以内に売れ切れてしまっていた。つまり、適切に事業を拡大するためには、今まで調達した資金では足りなかったのだ。そこで、ベンチャーキャピタルに支援を求めることにした。

RebundleはDTC(消費者に商品を直接販売する)企業であり、自社ウェブサイトを通じて製品を販売している。筆者はメイ氏に、ヘアエクステンションを使用している人が年に何回くらい新しいエクステンションに交換するのかを訊いてみた。多い人で年に5回と彼女は答えた。つまりRebundleは、定期的に購入される物理的な商品を独自のチャネルで販売しているということだ。

エクステンション市場の粗利益率がどうなっているのか、今ここで私たちにはわからないが、定期的にエクステンションが売れる可能性があるということを考えると、Rebundleは興味深いビジネスケースと言えるだろう。

継続的に購入される仕組みを持たない製品のDTCモデルに山ほどのベンチャーキャピタルが投資し、この実験がさまざまな結果をもたらしたことを思い出して欲しい。

製品のサブスクリプション(定期購入)について尋ねると、共同創業者は具体的な説明を避け、このアイデアには「遊びの余地がある」とだけ述べた。現在のエクステンションの顧客が、通常のサブスクリプションで製品を購入することはないと、メイ氏は説明した。もし、Rebundleが国内製造を拡大し、製品構成に定期サービスを導入できるようになれば、2022年中に同社が再び資金調達を行っても、私は驚かないだろう。

しかし、その必要はなさそうだ。同社のCEOがTechCrunchに語ったところによると、今回のラウンドはローリング・クローズで行われたが、この資金によって少なくとも18カ月、おそらくそれ以上のランウェイが確保されるという。そのため、同社が近い将来にさらなる資金を必要とすることはないだろう。しかし、資金が必要にならないからといって、スタートアップ企業が資金を提供されたときにそれを受け入れるのを躊躇することあまりないはずだ。

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フランスでは1月だけで5社のユニコーン誕生、その5社目は企業支出管理プラットフォームSpendesk

フィンテックのスタートアップSpendeskがシリーズCラウンドのエクステンションを発表した。Tiger Globalが1億1400万ドル(約130億8800万円)を投資する。今回の資金調達ラウンドを受けて、同社は評価額が11億4000万ドル(約1308億7200万円)に達したと述べた。

つまり、Spendeskはフランスのテックエコシステムにおけるユニコーンの仲間入りをしたわけだ。フランスではここ数カ月、資金調達のニュースが加速している。2022年1月だけで、スタートアップ5社がユニコーンのステータスに到達したと発表した。PayFitAnkorstoreQontoExotec、そしてこのSpendeskだ。

整備品のスマートフォンや電子機器を販売するeコマースマーケットプレイスのBack Marketも大型の資金調達ラウンドを実施し、評価額は57億ドル(約6540億円)となった。

Spendeskに話を戻そう。同社はオールインワンの企業支出管理プラットフォームをヨーロッパの中規模企業向けに提供している。もともとはオンライン決済用のバーチャルカードを手がけていたが、企業の支出に関するあらゆる事柄を扱えるようにプロダクトを拡張した。

Spendeskを利用している顧客は従業員用の物理カードを注文できる。従業員はこのプラットフォームで未処理の請求書の支払い、経費報告書の提出、予算管理、支出報告書の作成ができる。Spendeskは1つのサービスであらゆることをできるようにすることで、会計や承認全般をシンプルにし、自由にお金を動かせるようにしたいと考えている。

Spendeskは同社プラットフォームを「7in1の支出管理ソリューション」と定義している。つまりSpendeskは従業員用のデビットカードを注文するだけのプロダクトではないということだ。

共同創業者でCEOのRodolphe Ardant(ロドルフ・アルダン)氏は筆者に対し「我々は最初からこのゴールを考えていました。このプラットフォーム、この運用システムで、支出を管理できるようにしたかったのです。プロダクトに取り組み始めた時点で、それぞれのユースケースを考えてそれに合うワークフローを設計しました」と述べた。

特に、Spendeskはきちんとした社内プロセスの確立に役立つ。チームの予算を決め、高額支出の際の複雑な承認ワークフローを構築し、VAT差し引きのような面倒なタスクを自動化できる。

「我々は中規模のクライアントをターゲットにしています。従業員数が50〜1000人の企業です。これより大規模な企業も小規模な企業も、少数ながらクライアントになっています」とアルダン氏はいう。

現在、同社には3500社のクライアントがいる。そのおよそ半数はフランスの企業で、それ以外の大半はドイツと英国の企業だ。2021年だけで、クライアントはSpendeskを通じて30億ユーロ(約3930億円)の支払いを処理した。

Spendeskは財務スタックの中心となる位置づけであるため、一方では銀行、もう一方ではERPプロダクトというように、他の財務ツールと完全に連携する必要がある。

同社は現在、XeroやDatevなどヨーロッパの企業でよく使われている会計ツールの多くに対応している。取引のバッチを書き出して、SageやCegidなどの会計ソフトウェアソリューションに読み込むこともできる。

Spendeskは銀行口座との統合の自動化にも取り組んでいる。これは複数の銀行口座がある企業には特に便利だ。例えばドイツの業者に支払いをする際に、ドイツの銀行口座とSpendeskアカウントの間の振替を自動で実行するルールを設定するといったことが考えられる。

画像クレジット:Spendesk

ヨーロッパにおける支出管理

ヨーロッパにおける支出管理ソリューションはSpendeskだけではない。最近47億ドル(約5381億5000万円)の評価額に達したPleoや、2021年に1億8000万ドル(約206億1000万円)を調達して豊富な資金を有するSoldoなどの競合がある、

米国でも同様に、BrexRampなどの企業が高い評価額に達している。ただしSpendeskは自社が米国のスタートアップと同じ位置づけであるとは考えていない。

アルダン氏は筆者に対し「米国市場では支出管理業界と呼ぶようなものではありません。コーポレートカード業界です。BrexやRampなどのプレイヤーは自社を決済手段と位置づけています。ヨーロッパの企業文化はクレジットではなく引き落としの文化です。我々は決済手段ではなくプロセスを提供しています」と述べた。

プロダクトの位置づけに若干の違いがあるため、ヨーロッパの支出管理スアートアップが米国に進出して成功するか、その逆はどうか、興味を持って見ていきたい。

ビジネスモデルについても、Spendeskは自社を継続サブスクリプションのSaaS企業であると考えている。同社は売上の具体的な数字を共有していない。アルダン氏はSpendeskの売上について「毎年、2倍以上になっている」とだけ述べた。

今回の資金調達ラウンドで、Spendeskは今後2年間で従業員数を3倍にする計画だ。2023年末までに従業員数を1000人にすることを予定している。

画像クレジット:Spendesk

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

トヨタベンチャーズ、トラクターを自律走行車に変えるAgtonomyのシード拡張をリード

Agtonomy(アグトノミー)の共同創業者でCEOのTim Bucher(ティム・ブッチャー)氏は農場で生まれ育ち、自らも農場経営に深く関わっていたが、カリフォルニア大学デービス校在学中にコンピューターのコースを取り、その魅力にとりつかれた。

その農業とテクノロジーのパラレルキャリアが、Agtonomyの起業につながった。同社は自律と遠隔アシストのハイブリッド型サービスのスタートアップで、トラクターやその他の装備を自律型マシンに変え、そうしたマシンを管理するための労働力を、テクノロジーを駆使して低コストで地方の農場に提供する。

同社は2021年9月にGrit Ventures、GV、Village Globalを含む支援者グループから400万ドル(約4億5000万円)のシード資金を得て、ステルスモードから脱却した。

GritとGVは、南サンフランシスコに拠点を置くAgtonomyに再び投資すべく、500万ドル(約5億7000万円)のシードエクステンション(追加拡張投資)に出資した。Toyota Ventures(トヨタ・ベンチャーズ)がシードエクステンションをリードし、Flybridge、Hampton VC、E²JDJ、Momenta Venturesも参加した。今回の資金調達により、Agtonomyの累計調達額は900万ドル(約10億円)になった。

資金調達をしたばかりだったため、ブッチャー氏はこんなに早く再び資金を調達するとは思っていなかったが、2022年の展望として、アグテックが2022年以降の「ホットな分野」としてトップになると、追加の資金調達に踏み切った。

「5年前は、アグテック関連のVCはなかなか注目されませんでしたが、ちょうど投資家から圧倒的な関心が寄せられました。当社はまだスタートしたばかりですが、地方の農業は今、助けを必要としています」と同氏は付け加えた。「今回の資金調達は、試験やパートナーの追加を加速させ、チームの拡大も含めた取り組みのスピードを倍増させる活動や能力を増強します」。

ブッチャー氏は、今後数カ月の間に50の試験を行い、20人の従業員を倍増させることを期待している。

Agtonomyは、Uberドライバーを呼ぶくらい簡単なものだと同氏は話す。携帯電話のアプリを使って、農家はトラクターに畑の草刈りなどの仕事を割り当てることができる。このような自動運転技術や、John Deere(ジョンディア)のような他社が行っていることは、世界中の農場が直面している数十年にわたる労働力不足を解消するのに役立つ、と同氏は考えている。

Agtonomyは、ブッチャー氏が「概念実証」と呼ぶ電動車両を少台数保有し、自身のTrattore Farmsで1年間稼働させている。同氏の農場での農作業は、ほとんどこれらの車両で行われているという。

ブッチャー氏は2023年に商業展開を見込んでいて、差し当たっては数百台のトラクターでスタートする予定だ。参考までに、トラクターは毎年30万台ほど販売されている、と同氏は付け加えた。トラクターの価格は50万〜100万ドル(約5700万〜1億1500万円)で、John Deereのような企業は通常、大規模農場を狙っている。

これに対し、Agronomyの自律走行車両の価格は5万ドル(約570万円)程度で、この価格設定により大規模農場は24時間稼働し、環境にやさしく、土地を荒らさない小型機械を購入するようになるとブッチャー氏は考えている。

トヨタ・ベンチャーズの創業マネージングディレクターで、Toyota Research Institute(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)のエグゼクティブアドバイザーであるJim Adler(ジム・アドラー)氏は「完全自律走行車は、都会の道路で実現するよりもずっと早く、より切実に必要とされている農場で現実のものとなるでしょう」と書面で述べている。

同様に、ブッチャー氏は、今日の自律走行車の多くは、より「便利な技術」に対応している一方で、アグテック分野の企業は同氏が「必要な技術」と呼ぶもので同様の車を作っていると信じている。

「消費者の需要、気候変動、電動化、農業分野における労働力不足など、一種のパーフェクトストームです」と同氏は付け加えた。「我々は、他の種類の自律走行技術を生活に取り入れるよりも、アグテックでこうした問題をずっと早く解決することができるのです。当社の技術で、私たちみんながおいしいものを食べることができるのです」。

画像クレジット:AnneCN / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

外国人特定技能人材のマッチングプラットフォームtokutyが3000万円のシード調達

外国人特定技能人材のマッチングプラットフォームtokutyが3000万円のシード調達

外国人特定技能人材のマッチングプラットフォーム「tokuty」(トクティー)を運営するトクティーは1月18日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はマネックスベンチャーズ。

調達した資金により、顧客基盤および提携パートナーの拡大・UXの向上を図る。

  • 営業体制の強化:特定技能人材の採用企業の開拓、海外人材会社とのパートナーシップ提携の促進に向け、日本人・外国人の営業人員を強化
  • プロダクト開発の強化:tokuty上における、高精度の自動マッチング、ビザ申請業務の効率化に向け、機能追加・ユーザビリティー向上を図る

2018年8月設立のトクティーは、外国人人材採用・労務管理サービスを展開するグローバルスタートアップ。tokutyのβ版を2020年10月にローンチ。tokutyは、「特定技能人材を採用したい企業」と「外国人特定技能人材」をtokuty上でマッチングすることで、国境を超えた新たな就労機会を提供するサービスとしている。外国人特定技能人材のマッチングプラットフォームtokutyが3000万円のシード調達

データサイエンス領域スクール事業やオンライン受験システムを提供するデータミックスが総額2億3100万円調達

データサイエンス教育や監視機能付きオンライン受験システムなどを提供するデータミックスは1月17日、第三者割当増資により2億3100万円の資金調達実施を発表した。引受先はHCSホールディングス、滋慶、KIYOラーニング、Speee、IE ファスト&エクセレント投資事業有限責任組合(イノベーション・エンジン)、The Independents Angel 2号 投資事業有限責任組合(Kips)、AIX Tech Ventures、エッジ・ラボ、その他個人。

調達した資金により、データサイエンスに関連するサービスを通し国や地域を越えたデータサイエンスコミュニティを形成し、個人の成長・企業の成長力強化に貢献するため、以下の点を中心に強化する。

・データに基づいた、より学習効果の高いデータサイエンス教育カリキュラムとコンテンツの開発
・スクール受講生をはじめ顧客へのサービスの質向上に向けた体制強化と環境の構築
・データサイエンティスト育成プログラムなど各種サービス認知向上のための活動
・データサイエンス人材に特化した人材紹介サービスの営業および顧客サポートの強化
・オンライン受験システム「Excert」の開発・販売の加速
・人材の積極的な採用と社内の人材育成の強化

2017年設立のデータミックスは、データサイエンス領域でのスクール事業や企業研修・コンサルタント事業、データサイエンスビジネス事業開発などを展開している。主として統計学や人工知能、機械学習といったデータサイエンスの手法を駆使したデータ分析により、ビジネスの戦略設計ができる人材育成を行う。企業や個人に対し、年間約2200名以上(2020年度実績)にデータサイエンス関連の教育を提供しているという。

ブラウザベースの契約書プラットフォームを提供するJuroが約26.4億円を調達

ロンドンを拠点とするリーガルテックのスタートアップ「Juro」が、ブラウザベースの契約書自動化プラットフォームのためにシリーズBで2300万ドル(約26億4000万円)を調達した。2016年の創業以来、同社の調達金額は合計で3150万ドル(約36億1600万円)となった。

シリーズBを主導したのはEight Roadsで、これまでに投資していたUnion Square Ventures、Point Nine Capital、Seedcamp、Wise(旧TransferWise)共同創業者のTaavet Hinrikus(ターベット・ヒンリクス)氏も参加した。

Eight RoadsのパートナーであるAlston Zecha(アルストン・ゼシャ)氏がJuroの経営陣に加わる。

Juroによれば、同社の年間経常収益は対前年比で3倍になった。今回のラウンドでの評価額は発表していないが、同社は5倍以上になったとしている。

顧客の数はついに明らかにした。Deliveroo、Cazoo、Trustpilot、TheRealRealなど約6000社がJuroのプラットフォームを利用し、顧客は85カ国以上にわたっているという。

Juroの共同創業者でCEOのRichard Mabey(リチャード・メイビー)氏は「現在、我々はユニコーンの評価額となっている20社以上のスケールアップ企業と取引をしています。こうした企業は膨大な量の契約を扱うことが多く、その状況を我々はしっかりと支援しています。しかしReach plcのような歴史のあるエンタープライズもJuroを全面的に採用することが増えているので、我々は2022年にエンタープライズの需要にさらに応えていきます」と述べた。

Juroは契約におけるWordやPDFのようなレガシーなツールの使用を破壊しようとしている。単にファイルがあちこち動き回るクラウドベースのワークフローを構築するのではなく、専用のブラウザベースの契約締結プラットフォームを提供している。

メイビー氏はTechCrunchに対し「我々は、契約には静的なファイルが必要だという考え方に挑戦しています。契約書をWordではなく専用に構築したブラウザネイティブのエディタで扱うことにより、これを実現しています」と語った。

同氏はさらに「このエディタは高度にモジュール化され、企業の技術スタックにシームレスに統合されます。2021年は25万件の契約が処理され、場合によっては魔法のようにすばらしいものです(当社のNPSは72です)」と述べた。

「開発者がGitHubを使ったりデザイナーがFigmaを使ったりして共同作業をするのと同様に、Juroでは契約書の作成から署名までブラウザで処理できます。こうした意味で、我々の主なライバルはMicrosoft Wordであると考えています」とメイビー氏はいう。

同社は今回調達した資金で米国とヨーロッパの市場を拡大し、プロダクトに投資し、今後の拡大を支える役員を迎える予定だ。

Juroのオフィスはロンドンとラトビアのリガにあり「リモートハブ」も増えていることから、すべての拠点で増員しているところだという。

メイビー氏は、マーケティング担当VPとエンジニアリング担当VPを優先的に雇用したいと述べた。

同氏は「Juroの中心である強みは契約書の作成であり、ここにさらに力を入れていきます。我々は契約専用に設計されたブラウザネイティブのエディタを備える唯一のプラットフォームです。この部分を進化させ、エディタとの統合も開発していきます(例えばCRMシステムなど)。このようにして、お客様にとっては契約書の作成、承認、検討、署名、管理が1つに統一されたエクスペリエンスとなります」。

JuroのシリーズBに関する発表の中でEight Roadsのゼシャ氏は次のようにコメントした。「Juro以前には、契約を自動化し、クライアントのワークフローとフリクションなく統合できるオールインワンのプラットフォームは存在しませんでした。Juroはヨーロッパで顕著に成長している企業の法務、営業、人事などの部門で使われており、その中にはEight Roadsのポートフォリオに含まれる企業も多くあります。顧客満足度で市場をリードし、スケールアップ企業の従業員満足度も最高レベルです。我々はリチャード、Pavel(訳注:共同創業者のPavel Kovalevich[パベル・コバレビッチ]氏)、Juroのチームと連携できることをうれしく思います」。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Kaori Koyama)

お魚サブスク「フィシュル」で魚の食品ロス削減を目指すベンナーズが3200万円調達、サービス認知拡大目指す

魚の食品ロス削減を目的としたお魚サブスクリプションサービス「Fishlle!」(フィシュル)を運営するベンナーズは1月17日、第三者割当増資による総額3200万円の資金調達を1月14日に完了したと発表した。引受先はアカツキ、セゾン・ベンチャーズ、エンジェル投資家の海野慧氏。

調達した資金は、フィシュルのデジタルマーケティングチャネルの確立とPR強化、ユーザビリティ向上のための商品ラインナップの拡充とカスタマーサポート体制強化、シリーズAラウンドに向けた人材採用強化にあてる。

ベンナーズは、魚の食品ロスを減らすことで「日本における水産業の発展」と「作り手、使い手、社会を豊かにすること」を目的に、お魚のサブスクリプションサービスを2021年3月よりECサイトでスタート。ライフスタイルの変化による消費者ニーズの多様化や、コロナ禍による人々の生活・行動様式の変動に対応し、衰退しつつある日本の魚食文化の再建を目標としているという。

フィシュルは、最適な味付けを施した上で、季節ごとに旬の魚のミールパックを定期便として届けるサービス。形の悪さや十分な水揚げ量がないといった、味には関係のない理由で規格外とされ価値が付かず通常の流通に乗らない「未利用魚」を積極的に利用することで、食品ロス削減と漁業者の収入の底上げも図っているそうだ。

またそうした形で、SDGs12条の「つくる責任 つかう責任 持続可能な方法で生産し、責任を持って消費する」とSDGs14条「海の豊かさを守ろう。持続可能な社会のために、海と海の資源を守る 海と海の資源を持続可能な方法で利用する」への貢献も目指している。

2018年4月設立のベンナーズは、食の三方よし「作り手、使い手、社会を豊かにすること」を目指す、福岡拠点のスタートアップ。フィシュルなどによる魚の食品ロス削減のためのプラットフォーム事業や卸売業を事業としている。