セキュリティやクラウドソーシング事業を展開するココン、動作拡大型スーツ開発のスケルトニクスへ出資

サイバーセキュリティ事業や特化型クラウドソーシング事業を展開するココンは12月21日、エンターテイメント領域で動作拡大型スーツを開発するスケルトニクスに出資したことを明らかにした。

スケルトニクス代表取締役の阿嘉倫大氏と開発している動作拡大型スーツ

ココンではスケルトニクスが発行する株式の一部を取得するとともに、CB債(転換社債型新株予約権付社債)の引受けを行う。出資額は非公開だが、CB債転換後のココンの株式保有比率は約51%になるという。

スケルトニクスは高専ロボコン全国優勝を果たした沖縄高専のメンバーが集まったチーム。2010年から動作拡大スーツの開発に取り組み、初期モデルを半年で完成。その後2013年に事業化する形でスケルト二クスを創業した。2015年には4つ目のプロダクトである「スケルトニクス・アライブ」をアラブ首長国連邦ドバイ首相オフィスに売却している。

現在同社では「究極の外骨格を創る」というミッションのもと、動作拡大型スーツのバージョンアップや様々な産業分野への活用の検討、パワードスーツの研究開発を行っている。今後はココンや同社のグループ会社とも連携を強化し事業の拡大を目指す。

ココンは2013年2月、Panda Graphicsという社名で創業。2Dイラストと3Dコンピューターグラフィックスに特化したクラウドソーシングサービス「Panda Graphics」を手がけていた。2014年6月に3DCGモーション制作を展開するモックス、2015年1月にUIデザイン事業を展開するオハコと資本業務提携。2015年5月には音声クラウドソーシングサービス「Voip!」をGroodから譲受するなど、事業の多角化を進めてきた。

2015年6月には社名をココンに変更。その後セキュリティ診断事業を展開するイエラエセキュリティ、セキュリティのコンサルテーションを行うレピダムを完全子会社化し、現在主力事業となっているサイバーセキュリティ領域に進出した。一方でPanda Graphics、Voip!を運営するクラウドソーシング本部を分社化し、Panda Graphicsを新設している。

ココンは2017年1月にSBI FinTechファンドなどから総額5億円を調達するなど、これまでにVCや個人投資家から調達した資金は総額12億円以上だ。

経費精算アプリ「Staple」のクラウドキャスト、「ルナルナ」などを提供するMTIから1億円調達

経費精算サービス「Staple(ステイプル)」を提供するクラウドキャストは12月21日、「music.jp」や「ルナルナ」などを手がけるエムティーアイ(以下、MTI)を引受先とする第三者割当増資を実施し、総額1億円を調達したと発表した。

クラウドキャストが提供するStapleはクラウド型の経費精算サービスだ。アプリへの手入力で簡単に経費精算できるほか、交通系ICカードをアプリで読み込むことで交通費の精算を自動化することが可能だ(NFC対応のAndroid端末のみ)。また、領収書を撮影した画像データを経費レポートに添付することもできる。

クラウドキャストは2014年9月にSMB向けの「Staple」をリリースし(現在は「Staple 2」として提供)、同サービスのユーザー企業数は現在1万社を超える。この数字は月に300社ほどのペースで増えているという。その後クラウドキャストは2017年6月にSMB向けのStapleをエンタープライズ版に拡大した「Staple 3」をリリース。提供開始から約半年が経過した現在、トライアルに登録した企業数は100社ほどだという。有料版に移行したのはその内の10社ほどだ。

MTIとの資本業務提携

今回の資金調達により、クラウドキャストは今後、Stapleの販売促進と機能開発においてMTIとの協業を進めていく。

まず1つ目に考えられるのが、MTIがもつ営業リソースの活用だ。MTIというと、「music.jp」や「ルナルナ」などのBtoCサービスを提供する企業という印象が強いけれど、実はBtoBサービスも数多く提供しており、全国に法人向けの営業拠点や人的リソースを持っている。

同社が提供するBtoBサービスには、従業員が受けた健康診断の結果をデータ化することで企業が従業員の健康状態を把握するための「CARADA」や、企業が既にもつPC向けやガラケー向けのWEBサイトをスマートフォン向けに自動変換する「モバイルコンバート」などがある。そのため、今後はMTIのBtoBサービスとStapleをセットで提案するなどの営業面での協業が考えられる。

Automagiが開発した「FEEDER」

両社の協業はStapleの機能強化にもつながる。今のところ、Stapleには領収書の画像を経費レポートに添付する機能はあるが、画像から文字を読み取り、それを自動的に経費データに変換する機能はない。

一方、MTIの子会社であるAutomagiは2017年6月、AI利用した領収書読み取りアプリ「FEEDER」を発表している。クラウドキャストは自前で読み取り機能を開発するよりも、Automagiがもつ技術を利用する方法を選んだようだ。

また、その他にも技術的な協業の余地はあると代表取締役CEOの星川高志氏は語る:

MTIは常陽銀行と口座直結型スマートフォン決済の実証実験を開始するなど、Fintech分野への投資を進めている。経費の分野には経費を建て替えた従業員への送金手数料が高いという課題があるが、この送金手数料を下げるような仕組みをMTIと共同で開発していきたい」(星川氏)

クラウドキャストは2011年1月の創業。同社は2015年12月にクレディセゾン、IMJ Investment Partnersから数億円規模の資金調達を実施している。

SoftBank、Lemonadeの1.2億ドルのラウンドをリード――不動産損保投資にはGV、Sequoiaも参加

SoftBank Groupはやっと不動産事業でテクノロジーに投資する気になったようだ。

44億ドルをWeWorkに投資したSoftBankだが、この会社は本質的にオフィス・スペースの短期賃貸業務だ。4億5000万ドルを投じた Compassは金持ちのためのZillowだろう。しかし日本の巨大投資会社が今回リード1億2000万ドルの投資ラウンドをリードした対象はLemonadeだ。これは家屋の賃貸者と居住者の双方に保険を提供するスタートアップだ。

既存投資家、Alphabetの投資会社GV、有力ベンチャーキャピタリストのGeneral CatalystとSequoia Capitalも今回のラウンドに参加した。

損保業務というのは非常に難しいビジネスで、データサイエンスのための広汎なデータ、業務を成り立たせる顧客数を必要とする。Lemonadeはスマートフォン時代の新しいテクノロジーと市場の状況を利用してゼロから新らたに損保業務に参入する企業のパイオニアの1つだ。

Lemonadeの保険約款策定業務の大部分はチャットボットを利用したコンピューター処理によって自動化が図られている(AI利用かどうかについては明言できない。なるほど複雑な業務であるが、単に効率的なアルゴリズムかもしれない)。

まずこの点で大幅なコストダウンが図られている。しかしLemonadeはまた保険契約者が損害請求を当って正直に申告することを動機づける興味あるビジネスモデルも採用している。ユーザーはアプリから保険契約を行う際、まずお気に入りのチャリティー団体を選定する。保険請求を行わなかったことによって生じた期末の利益の一部はこチャリティー団体に寄付されるという仕組みだ。

つまりユーザーは保険契約から生じた利益が、どこかの顔のない企業役員のボーナスを増やすのに消えるわけではなく、自分の支持するチャリティーを後押しするために使われると知っていれば、苦労して請求額を水増ししようとしなくなるだろう、というわけだ。

Lemonadeによれば、同社は今回調達した資金を「史上初の消費者の方を向いた保険会社として、こうした業務を世界に拡大するために利用する」ということだ。また2018年には新たな保険商品を開発して顧客に提供していくという。ただしLemonadeが進出を予定していない分野の一つは自動車保険だという。CEOのDaniel Schreiberによれば「確かに巨大な興味ある市場だが、条件が厳しすぎる」とのことだ。

「Lemonadeはすでに9万件の保険契約を持っており、保険の対象の物件の総額は数十億ドルに達する」とSchreiberは述べた。

長年無風だった損保市場にTrōvCoverHippoSwyfftなど、最近多数のスタートアップが参入を試みている。

SoftBank Groupの上級投資専門家、David Thevenonは「ビッグデータとAIをシームレスに結合して新たなユーザー体験を創出することによってLemonadeは損保業界に本当の革命を起こそうとしている」と声明に書いている。

ただしSoftBankの広報担当者は、「投資が完了するまで大部分の質問に対する回答を保留する。また当社の投資専門家は出張中のため現在コメントできない」と述べた。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook <A

AIによる需要予測で過剰在庫の削減へ、物流スタートアップのニューレボが5000万円を調達

通販事業者向けのクラウド在庫管理システム「ロジクラ」を提供するニューレボ(New Revo.)は12月20日、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により総額5000万円を調達したことを明らかにした。

同社はこれまでにも2016年9月にF Venturesから、2017年8月にDGインキュベーションから資金を調達。今回新たに調達した資金をもとに、データ収集や機械学習の精度向上・体制強化を進め、AIを用いた需要予測機能などプロダクトの拡張を進める。

通販事業者の負担となる入出荷作業をシステムで効率化

ロジクラは商品の入荷から在庫管理、出荷までを一気通貫で管理できるシステム。バーコードやラベルの発行、在庫管理、通販サイトの受注取り込み、納品書の作成といった一連の物流業務をクラウド上で完結できることが特徴だ。

ニューレボ代表取締役社長の長浜佑樹氏によると、通販事業者が在庫管理や発送を行う現場では未だに紙やFAXを中心としたやりとりや、目視での検品作業などアナログな部分が多いそう。それが生産を低下させる原因になっているという。

「中小のEC事業者では自社で商品の出荷まで行っているところが多い。他の業務もある中で注文データと目の前の商品があっているかなど逐一目視でチェックするのは負担になる。加えて送り状の記入なども毎回手書きでやっているのが現状。このようなアナログな作業をデジタル化することで生産性を上げたい」(長浜氏)

なんでも通販事業者によっては、全体の60%以上が検品作業など入出荷に関する業務に使われているという。その点は長浜氏自身も学生時代に倉庫業務のアルバイトを経験していて、同じ課題を感じていたそうだ。

ロジクラでは商品のバーコードをスマホで読み取りクラウド上で管理することで、目視で行っていた際に起こり得る検品作業のミスや無駄な時間の削減など、入出荷業務をスムーズにする。目標は「現場の入出荷作業の時間を80%削減する」ことだ。

サービス自体は11月上旬から事前登録ユーザーの募集を始めたところ。すでに約50社から問い合わせがあり、これからテスト版の運用を実際に始めていくフェーズだという。

蓄積したデータをもとにAIで需要予測、過剰在庫の削減へ

ニューレボ代表取締役社長の長浜佑樹氏

現在のロジクラでは上述したようなクラウド在庫管理機能のみを提供しているが、目指しているところはもう一歩先。蓄積された在庫データなどを解析することで、在庫の需要予測までできるシステムだ。

ニューレボが内閣府の資料をもとに計算したところ、国内の中小企業の倉庫には売れずに眠っている「過剰在庫」が54兆円ほど存在しているという。また平成28年には過剰在庫がキャッシュフローを圧迫し1週間に1社のペースで企業が倒産するなど、過剰在庫が大きな問題となってきた。

「過剰在庫が発生する原因のひとつは、発注担当者が自分の経験や勘で発注してしまうこと。欠品を恐れて必要以上に発注してしまった結果、在庫が増えてキャッシュを回収できないという状況に陥ってしまう。1番の問題はデータに基づいた需要予測ができていないことにあると考えた」(長浜氏)

そこでロジクラでは在庫管理システム上に蓄積された在庫・販売データと、景気動向や天気など外部のデータを組み合わせて解析。企業ごとに最適化された需要予測ができる機能を構築する計画だ。

「完全に過剰在庫をなくすことは難しいが、予測と出荷実績のばらつきを抑えることはできる。需要予測機能を使った場合の在庫の削減目標は30%。それだけでも大きなインパクトがある」(長浜氏)

ニューレボでは今回の資金調達を機に、統計解析や機械学習をはじめとしたAI技術を保有する人材の採用を強化する。2019年度までに各企業に最適化された需要予測機能を提供することが直近の目標だ。また長期的には在庫データをもとにした在庫売買のプラットフォームや在庫を担保にしたレンディングなど、「在庫データ」ビジネスの展開も検討していくという。

ニューレボの創業は2016年の8月。代表の長浜氏が学生時代にシリコンバレーでUberに出会ったことが起業のきっかけだ。自身がアルバイトなどで交通や物流領域の仕事をしてきたこともあり、当初は食品や日用品の即日配送アプリ「FASTMRT(ファストマート)」を運営。そこからより物流業界の大きな課題に着目する形で、在庫管理を効率化するロジクラを始めている。

成約率が高い見込み客を自動でリスト化、DBスタートアップのBaseconnectが1億円調達

企業情報データベースの「BaseconnectLIST(以下、LIST)」を開発するBaseconnectは12月20日、ジェネシア・ベンチャーズみずほキャピタル、京都市スタートアップ支援ファンド、ユーザーローカル代表取締役の伊藤将雄氏、YJキャピタルEastVenturesなどから総額1億円を調達したと発表した。この調達金額には地銀からの融資も含まれる。

テレアポや飛び込み営業というのは、今も昔も変わらない営業の現場の姿。営業員たちはいわゆる「見込み客リスト」を片手に営業をかけていくわけだが、そのリストの作成には膨大なコストと手間がかかる。Web上の情報や電話帳から得たデータをもとに人力でリストを作成し、片っ端から営業をかけていくという企業も少なくないだろう。

そのような企業に対し、営業先となる企業に関する各種情報を集めた企業データベースを安価で提供するのがBaseconnectだ。LISTでは、同社が保有する企業データを約20項目の検索条件(従業員数、売上規模など)で絞り込み、それを見込み客リストとして出力することが可能だ。LISTは12月20日よりベータ版を公開。正式リリースは2018年4月を予定している。

SaaS型で低価格、レコメンドも

企業情報をデータベースとして提供する企業は多くある。大企業まで網羅する企業としては帝国データバンクランドスケイプなどがあるし、スタートアップを中心としたデータベースにはCrunchBaseもある。しかし、Baseconnect代表取締役の國重侑輝氏は、それでも「データベース業界は旧態依然とした業界であり、企業情報を安価で入手できるSaaSがない」と話す。

Baseconnect Listの料金は従量課金制で、企業情報1件にかかる料金は25〜30円。最も安いプランでは月額9000円で利用できるという。この値段であれば、スタートアップや中小企業でも手を出しやすい。企業規模が大きくなり、営業活動が本格化すれば見込み客リストを無制限に作成できるプラン(月額50万円)を選ぶこともできる。

Baseconnect Listにはレコメンド機能があることも特徴だ。これは、ユーザーが既存顧客のデータをアップロードすると、その企業に似た企業をデータベースから抽出してリスト化するというもの。既存顧客と見込み客との間の類似点をスコア化し、その点数が高い見込み客が成約率が高いと判断する。“既存顧客と似ている見込み客の成約率は高い”というロジックがアルゴリズム化されているというわけだ。

一方で、データベース企業の勝敗を分ける要因の1つが”情報の網羅性”であることも確かだ。今のところ、LISTに格納された企業データは約10万社。國重氏によれば、本社ベースで数えた企業数は全国で400万社ということだから、カバー率はまだ低い。Baseconnectの当面の目標は、その400万社のうち企業活動が活発な150万社をデータ化することだ。

データはデジタルなものだが、その入力作業は人間の手によるアナログなタスク。今ある10万社分のデータを作成するのには約1年の時間を要している。「今では2ヶ月で10万件のペースでデータ化できるようになった」と國重氏は話すが、Baseconnectは今回の資金調達によって現在200名(アルバイトなど含む)体制のデータ作成チームの増強をさらに進める。また、1社分のデータを作成するコストは今のところ約300円だということだが、このコストもデータ作成の自動化を進めることで圧縮していくという。

エウレカ出身者が採用管理システム「HERP」を発表、エウレカ共同創業者の赤坂氏と西川氏も出資

エウレカ出身者が創業したHR系スタートアップのHERPは12月19日、自動連携型の採用管理システム「HERP」を発表し、同サービスのティザーサイトを公開した。

また、HERPはエウレカの共同創業者である赤坂優氏と西川順氏の2人から資金調達を行ったことも明らかになっている。調達金額は非公開だが、数千万円規模の調達とみられる。同社はHERPのベータ版を2018年1月中旬より提供開始する予定だ。

HERPは、複数の既存求人媒体と自動連動するAIリクルーティングプラットフォームだ。採用担当が行う各種作業をシステムを自動化することで、採用担当は戦略的な採用活動そのものに注力できるようになる。

HERPには3つの構成要素がある。自動応募管理の「HERP ATS」、チャットアプリケーションの「HERP CHAT」、求人票一括管理の「HERP JOBS」だ(CHATとJOBSは現在開発中)。

HERP ATSは、複数の求人媒体に送られた応募をHERP上に自動登録し、一括で管理できる機能だ。新着情報がくるとSlackに通知が送られ、そこから候補者とのチャット画面に遷移できるようになっている。

各求人媒体に応募した候補者とHERP上でコミュニケーションを取るための機能がCHATだ。タブで複数の求人媒体を開いてコミュニケーションを取る必要がなくなる。また、各媒体に提出した求人の中身を変更する場合でも、HERP JOBSを利用することで一括更新を行うことができる。

現状、求人媒体との連携はHERPが採用担当者のログイン情報を保持するというかたちで連携が行なわれているが、同社は今後、それらの媒体との正式連携を進めていく方針だという。また、「SmartHR」など他のHR系システムとの連携もすすめる。Smart HRとの連携では、入社予定の候補者データをSmartHRへ簡単に移行できるような仕組みを整える。

HERP創業者の庄田一郎氏は、リクルートで新卒エンジニア採用などを担当したあと、採用広報担当としてエウレカに入社。そのうちの半年間は「Couples」の事業担当者も務めている。これらの経験を重ねるなかで採用現場の不合理さを目の当たりにしたことが、後にHERPを創業するきっかけになったそうだ。

「エウレカ創業者の赤坂さん、西川さんには毎月食事に行くレベルでお世話になり、経営者としての学び、Web業界への学び、人としての学び、たくさんの学びを得た。最後に背中を押してくれたのも彼らでした。そういった背景もあり、早期に株主として入って頂いています」(庄田氏)

HERPは現在、ティザーサイトにてベータ版のユーザー登録を受付中だ。

葬儀やお墓など、“終活”に関する情報のポータルサイト「終活ねっと」が8300万円調達

葬儀やお墓、仏壇など人生のエンディングにまつわる情報ポータルサイト「終活ねっと 〜マガジン〜」などを運営する終活ねっとは12月19日、ジェネシア・ベンチャーズと花房弘也氏など数人のエンジェル投資家を引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は8300万円だ。

同社はシードラウンドで1700万円を調達しており、今回を含む累計調達金額は1億円となる。

終活ねっとは、葬儀やお墓など人生のエンディングにまつわる様々な情報を配信するメディア「終活ねっと 〜マガジン〜(以下、終活ねっとマガジン)」、そして葬儀事業者などを集めた比較サイトの「終活ねっと」を運営するスタートアップ。同社代表取締役の岩崎翔太氏は、22歳の現役大学生だ。

現在、終活ねっとマガジンには約20人の編集チームがおり、同メディアには1日5〜6記事ほどが掲載されている。PV数などは開示していないが、終活ねっと代表取締役の岩崎翔太氏によれば「1日数万PVほど」だという。主な読者は40〜50代が中心だということで、両親の終活のために検索される例が多いそうだ。現在のところ、同メディアでの広告収入が同社の主な収入源となっている。

前述したとおり、終活ねっとは葬儀関連事業者を集めた比較サイト「終活ねっと」も運営している。ただ、正直こちらのサービスはまだ発展途上といったところだ。例えば東京都の事業者を検索すると864件の検索結果(記事執筆段階)が表示されるが、今の段階では、口コミや価格などの情報は掲載されていない。

もっとも、公平を期すために言えば、この業界は価格だとか口コミだとか、リアルなデータの開示に関してとてもセンシティブな業界であることは確かだ。上場企業の鎌倉新書が運営する「いい葬儀」というポータルサイトでも、都市部こそ価格の開示が進んでいる印象を受けるが、地方の葬儀社になればなるほど価格の欄には「ご相談ください」と書かれているだけだ。

今回のラウンドでリード投資家を務めたジェネシア・ベンチャーズの河野優人氏も、「ライフエンディング業界は高齢化の進む日本において、市場としての注目度はもちろん、人々にとっての重要度も高まっていると感じています。一方で、依然としてユーザーとサービス提供者間の情報の非対称性が大きく、多くの課題が残される領域だ」と語る。

鎌倉新書の「いい葬儀」で青森県の葬儀場を検索した例

岩崎氏は終活ねっとを起業した理由について、「『食べログ』や『ゼクシイ』などは社会インフラとして機能するサービスだと思う。そのようなサービスを作りたかった。結婚式をしない人は増えていますが、葬儀はそうではない。そこで、誰しもがいつかは直面する“終活に関する悩み”をすべて解決できるような情報サービスを作ろうと思いました」と話す。終活にまつわる悩みの解決が岩崎氏が目指す目標だ。

個人的には、このサービスの買い手と売り手との間に存在する“情報の非対称性”こそがこの業界の問題であるとするならば、それを解消することが本当の意味での社会的課題の解決につながるのではないかと思う。TechCrunch Japanの記者である僕は、それを可能にするのがスタートアップのディスラプト精神なのだと信じたい。

どこよりも使いやすいEC運営支援ツールを――福岡発のPearが約3500万円調達

EC事業者向けの支援ツールを開発するPearは12月13日、BEENEXT大和企業投資F Venturesの3社を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額約3500万円を調達したと発表した。今回の資金調達はPearにとってシードラウンドの位置づけで、同社初の外部調達となる。

写真中央がPear代表取締役の島井尚輝氏

福岡発のスタートアップであるPearは、複数のプラットフォームにまたがるEC運営の一括管理ツール「OMNI-CORE(以下、オムニコア)」を開発するスタートアップだ。

Pear代表取締役の島井尚輝氏が「使いやすさを重視した」と話すオムニコアでは、ITリテラシーが低いユーザーでも簡単に使いこなせるようにUI/UXを最適化している。同ツールを導入すれば、楽天市場やAmazonなど複数のECプラットフォーム間での在庫管理や注文管理、出品管理などを一括して行うことができる。

また、このような“管理”の機能のほか、簡単な質問に答えていくだけで自身のEC店舗が抱える問題点を明らかにし、それに対する解決策をタスクとして提案してくれるなど、“ECコンサルティング”の機能も備えていることが特徴的だ。

「EC運営を始めたばかりの人は、そもそもツールの使い方が分からなかったり、何から手をつけていいか分からなかったりするケースが多い。高度なコンサルティングを提供する事業者はいるが、このような初歩的な問題はシステムによるコンサルティングで解決することができる」(島井氏)

現在はベータ版を公開中のオムニコアだが、正式リリース後にはフリーミアムモデルでマネタイズを開始する。月商にして30万円以下のユーザーには前述したコンサルティング機能を無料で提供し、月商が増えるにつれて必要になる機能を有料で開放していく仕組みだ。高機能版の料金は月額2〜5万円程度になるようだ。

EC運営の一元管理ツールは、Hameeの「ネクストエンジン」やハングリードの「item Robot(アイテムロボ)」などが先行する分野だ。オムニコアはそれらの競合ツールに対し、独自のコンサルティング機能や使いやすさに注力することで差別化を図るという。

学生時代からWebサービス開発

Pearは2017年8月の創業。代表取締役の島井氏は学生時代から複数のWebサービス開発を手がけ、学園祭情報サービスの「学フェス」などをリリースした。これは、学園祭の実行委員がイベントをPRする場であり、学園祭を訪れたユーザーは、学フェスを使って学園祭内の催しモノや出店の場所を確認できるというサービスだ。登録ユーザーも2万人を超していた。

ただ、島井氏がこのサービスを持ち込んで東京のVCの前でプレゼンしたところ、「こんなんじゃ儲からない」と一蹴されてしまったそうだ。マネタイズする相手が学生だという点が気に入らなかったらしい。

学フェスでは出資を断られてしまったが、次にEC分野へと焦点を定めた島井氏は大学卒業後にオムニコアを自らの手で開発。チームメンバーも創業4ヶ月にして20人にまで拡大し、シードラウンドでの出資を勝ち取った。島井氏にとってある意味ではリベンジとも言えるオムニコアの正式リリースは、2018年春を予定している。

Kaizen Platformが5.3億円調達し、動画広告の改善サービス強化へ

WebサイトのUI/UX改善サービスなどを提供するKaizen Platformは12月13日、SBIインベストメント電通イノベーションパートナーズみずほキャピタルYJキャピタルを引受先とした第三者割当増資を実施し、総額5億3000万円を調達した。これにより、同社の累計調達金額は26.3億円となる。

Kaizen Platform代表取締役の須藤憲司氏

Kaizen Platformは、Webページのデザインを改善することで各種KPIを上げていくというサービスを提供している。一般のA/Bテストサービスでは、コンサルやSlerなどが専用のツールを利用してUI/UXの改善を目指す一方で、Kaizen Platformでは、「グロースハッカー」と呼ばれるスキルを持った個人から改善案を集め、その効果を比較しながら継続的に改善していくという、クラウドソーシングに近いモデルを採用している。

現在、グロースハッカーの人数は5000人以上。Kaizen Platformを利用する登録企業ユーザー数は300社を超える。前回の資金調達の際にTechCrunch Japanが取材した2016年2月時点では企業ユーザー数が170社ということだったから、Kaizen Platformはこれまでも順調に成長を重ねてきたようだ。

Kaizen Platformが今回の資金調達を実施した目的は、動画広告の改善サービス事業を強化することだ。同社は2017年6月、WebサイトのUI/UX改善のノウハウを動画広告に応用した「Kaizen Ad」を発表している。これは、従来のKaizen Platformと同くグロースハッカーたちから集めた改善案によって動画広告の配信から効果検証までPDCAを回していくというサービスだ。

Kaizen Adによる動画広告の改善例。写真はバンダイナムコのゲームタイトル「テイルズ オブ ザ レイズ」の北米向け広告

Kaizen Platformは電通デジタルと業務提携し、このKaizen Adを利用したソリューションパッケージ「P動CA」を提供していたが、これが一定の成果を得たことから資本業務提携を結び、動画広告を改善するクリエイティブ人材のマーケットプレイス事業を加速していくという。それにしても、「P動CA」というネーミングセンスは素晴らしい。一度聞いたら忘れられない。

Kaizen Platform代表取締役の須藤憲司氏は今後の展望について以下のように語る:

「クリエイティブ人材のパフォーマンスや実績を可視化し、付加価値を高めるクリエイティブ人材が健全に評価されるマーケットプレイスを広げていくことで、21世紀の新しい働き方と雇用の創出という当社のビジョンの実現に向けて邁進していく」。

「Live Shop!」提供のCandeeが総額24.5億円を調達、ライブコマース事業の横展開を視野に

若い女性向けのライブコマースアプリ「Live Shop!」を手がけているCandeeは本日、総額24.5億円の第三者割当増資を実施した。リードインベスターはEight Roads Ventures Japanが務め、既存株主であるYJキャピタル、NTT ドコモ・ベンチャーズ、オプトベンチャーズ、グリー、大一商会、みずほキャピタルも調達ラウンドに参加。また、同時にEight Roads Ventures Japanの深澤優壽氏がCandeeの社外取締役に就任したことを発表した。

Live Shop!」は、モデルやインスタグラマーなどのインフルエンサーが出演する1時間程度の番組をライブ配信するアプリだ。ユーザーは番組を見ながらインタラクティブにハートのスタンプを送ったり、コメントを残したりできることに加え、番組で紹介される商品を購入することができる。

Candee20176月に「Live Shop!」をリリースし、現在週に10本ほどのライブ配信を行なっている。Candeeではこれまでに9800本以上のライブ配信、1300以上のモバイル動画を制作したという。

サービスリリース以降、「検証をしっかりやってきた」と取締役副社長CCOを務める新井拓郎氏は話す。ライブコマースは一足先に中国で盛り上がっているものの、本当に日本のユーザーもライブ配信を見て物を買うのか。検証を進めた結果、ユーザーのライブ配信におけるエンゲージメントを高めることで、商品の購入率も高まることが分かり、ライブコマース事業に手応えを感じていると新井氏は言う。

「ライブ配信中にハートのボタンを押したり、コメントしたりするユーザーの参加率を見ています。このユーザーの参加率を高めていくと、購入率も高まることが分かりました」。

Candeeの掲げるソーシャルビデオプラットフォーム構想

Candeeは、現在提供している「Live Shop!」を他にも音楽、ニュース、スポーツといった分野に横展開する「ソーシャルビデオプラットフォーム構想」を描いている。「視聴者のエンゲージメントを作って、ユーザーにアクションしてもらうことは、どの領域でも活用できる部分であると考えています」と新井氏は説明する。具体的な時期はまだ決めていないものの、次はスポーツ分野でのサービス展開を検討しているという。トライアル段階ではあるが、CandeeはすでにNTT ドコモと「Live Shop!」の番組内でスポーツ関連の配信企画を進めている。

今回の資金調達は「ソーシャルビデオプラットフォームの構想に向けてアクセルを踏むため」であり、事業拡大と人材採用に充てる予定とCandeeは説明している。

孫の写真や動画をテレビで共有、「まごチャンネル」開発元のチカクが1億5000万円調達

離れて暮らす家族のテレビに写真や動画を送ることができるIoTデバイスの「まごチャンネル」。その開発元のチカクは12月12日、インキュベイトファンドを引受先とした第三者割当増資により1億5000万円を調達したと発表した。これにより、同社の累計調達金額は3億円超となる。

同時に、「カーブス」や「らくらくホン」などのシニアビジネスに参画したこともある、村田アソシエイツ代表の村田裕之氏がチカクの顧問に就任。また、企業間レンタル移籍プラットフォーム「ローンディール」を通して関西電力の田村博和氏が6ヶ月限定でチカクにジョインする。

まごチャンネルはITリテラシーの低いシニア世代でも簡単に使えるように設計されたIoTデバイス。遠く離れた場所に住む家族と、テレビを通して写真や動画を共有することが可能だ。

まごチャンネルの操作はテレビのリモコンで完結する。だから、スマホやPCの操作に慣れないシニア世代でも使いやすい。その名の通り、祖父母たちのテレビに「まご専用のチャンネル」を追加するためのデバイスだ。また、まごチャンネルのクラウドストレージに写真をアップロードすると家の形をしたデバイスの“窓”が光り、祖父母がその写真を観ると専用アプリ経由で通知がくるなど、離れて暮らしていても距離がチカク(近く)感じるような仕組みが特徴だ。

ところで、前回の取材時には3万9800円だったまごチャンネルの価格は、現在1万9800円まで値下げされている。チカク代表取締役の梶原健司氏によれば、「うまく増産が進み、価格を下げられるようになった」という。

現在はWebサイトや通販サイト経由での注文が多いということだが、そういった純販売だけでなく、他社との連携も順調に進んでいる。野村證券が実施したアクセラレータープログラム「VOYAGER(ボイジャー)」に採択されたこと経緯から、同社と共同でまごチャンネルを利用したカスタマーリレーションの構築の実証実験を行っている。これは、野村證券の営業員が顧客にまごチャンネルをプレゼントし、子供や孫の動画に混ざって営業員が挨拶ビデオレターを送るというもの。

証券会社の営業員は1人が抱える顧客の数が多く、直接会ってコミュニケーションが取れる顧客の数は限られている。顧客の高齢化も進むなか、彼らとのコミュニケーションを深めるためにシニア向けに開発されたまごチャンネルが選ばれたというわけだ。この協業を通して、これまでに3000台のまごチャンネルが導入されている。

チカクは2014年3月の創業。同社は2015年9月にクラウドファンディングプラットフォームの「Makuake」でまごチャンネルを発表した。そして、その翌年の2016年12月には500 Startupsなどから約1億円を調達している。現在、チカクはまごチャンネルの第2世代を開発中で、2018年の投入に向けて準備を進めているという。

クルマのアフターパーツを扱うカタログECサイト「Garage」運営が2.5億円を資金調達

クルマのカスタマイズパーツを扱うカタログECサイト「Garage(ガレージ)」を運営するMiddleFieldは12月11日、フェムトパートナーズが運用するファンドを引受先とする2.5億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

MiddleFieldは2015年12月の設立。モータースポーツに関する情報を提供するウェブメディア「Motorz(モーターズ)」と、アフターパーツと呼ばれるクルマのカスタマイズ用パーツを販売するカタログECサイトのGarageを運営している。

2017年4月にサービスを開始したGarageでは、まとめて確認することが難しかったクルマのアフターパーツを、メーカーや車種、デモモデルごとに情報掲載。自分が乗っているクルマから探すことができる。また、取り付け店舗の紹介やパーツの対応車種情報なども提供しており、パーツ購入後の取り付け相談や予約もできる。パーツ購入や取り付け相談は現状、メールまたはウェブチャットベースで行う仕組み。現在は1500超のブランドや300店舗以上の取り付け店舗と提携し、クルマのアフターパーツ領域でデータ量では国内最大のインターネットサービスとなっているという。

MiddleFieldでは今回の資金調達により、運営体制の強化のほか、Garageのサービスリニューアルに伴うデータベースの強化、取り付け店舗とのネットワークの構築や、中古車販売、ユーザー間取引などの新機能を順次提供していく、としている。

AIとのレッスンで英会話を学ぶ「TerraTalk」、提供元が2億円を調達

AI英会話アプリ「TerraTalk(テラトーク)」を提供するジョイズは12月8日、YJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、ベンチャーラボインベストメント、インキュベイトファンドを引受先とする第三者割当増資により、総額約2億円を調達したことを明らかにした。

TerraTalkはアプリと会話することを通じて、様々な場面で使える実践的な英語を習得できる英会話アプリだ。実際に教室に通ったりオンライン通話サービスを使って講師からレッスンを受けるのではなく、スマートフォンのマイクを使いながらAIを相手に会話を進める。

レッスンではAIとの会話をチャット形式で確認することも可能。自分が話した英語がリアルタイムで文章化され、会話が成立しない場合は再度トライすることになる。

実際に少し試してみたが、はっきりと発音をしないとうまく認識されないのでその点については注意が必要。ただ相手がAIなのでシャイな人でも使いやすいのと、講師のスケジュールなどを気にせず好きな時間にレッスンを受けられるのは使い勝手がいい。

また会話だけでなくレッスンで使う重要単語や発音を学べるドリルや、リスニングスキルを磨ける機能も備える。月額1980円の有料プランでは自分の使いたいシーンに応じて適切なレッスンを選べるように、旅行やビジネス、日常会話など100以上のコース用意。加えてアプリが発音や表現を自動で診断し、苦手な箇所をピンポイントで学習できる「弱点克服ドリル」などを提供する。

ジョイズによるとスピーキングの個別指導が困難な教育現場の課題を解決できるサービスとして学校や塾からも関心を集め、自習用教材として品川女子学院や日体大柏高校などでTerraTalkが採用。また大手サッカースクールのクーバーや野球教室BBCなどでも活用実績があるほか、地方のインバウンド対策への支援も進めているという。

今回調達した資金を基に、今後ジョイズではTerraTalkのさらなる機能拡充と事業基盤の強化を図る。

「飲食店のネット予約を当たり前に」VESPERが1.5億円を調達、オートメーションで業界革新へ

飲食店向けのオンライン予約管理システム「TableSolution(テーブルソリューション)」を提供するVESPERは12月6日、SMBCベンチャーキャピタル株式会社を引受先とする第三者割当増資により、1.5億円を調達したことを明らかにした。

なおVESPERは2015年にもジャフコから2億円を調達しているほか、元ソニー代表取締役社長の出井伸之氏やメルカリ創業者の山田進太郎氏も株主となっている。

ホテルチェーンや星付きレストランなど2000店舗に導入

TableSolutionは飲食店のオンライン予約や顧客管理をサポートするSaaS型のシステムだ。メインとなる予約管理機能に加えて電話自動応答やカード決済、POSシステム連携といった各種機能を備え、14ヶ国語に対応。基本料金は席数に応じて月額1万2000円、1万5000円、2万円のいずれかとなる。

2013年7月のリリース以降顧客を増やし、現在は約2000店舗が導入。大手グローバルホテルチェーンや星付きのレストランなども活用する。ネット予約システムを使ったことがある飲食店が、さらなる機能を求めてTableSolutionに行き着くケースも多く、導入店舗の65%が他システムからの乗り換えだ。

また現時点で海外10カ国に展開。拠点を持つ韓国ではコンラッドやグランド・ハイアットなど有名ラグジュアリーホテルの店舗にも導入実績がある。VESPER代表取締役の谷口優氏によると「海外のトラックレコードが評価されたこと」が今回の資金調達にもつながったという。

前年対比で予約件数が約3倍、無断キャンセル防止策の利用進む

以前取材した際に、谷口氏は指標として「予約件数」を重要視しているという話をしていた。実際にどれだけ活用してもらえているかを測るためだが、この数値が2017年10月時点では前年対比で約3倍に増加しているという。

成長の要因のひとつは、飲食業界の課題でもある無断キャンセルを減らすべく2017年6月にリリースした、カード決済機能「キャンセルプロテクション」だ。この機能では飲食店がネット予約成立時に事前カード決済、ないしクレジットカード利用枠に応じた一部仮押さえ(与信)できる。

あらかじめ金額が決まっているイベントなどでは事前決済をし、キャンセルの場合にはポリシーに基づいてキャンセル料を相殺するプラン(事前決済型)。予約時にカード情報を入力してもらうことで、直前キャンセルには与信枠を上限にキャンセル料を請求するプラン(与信型)の2つを用意。TableSolution導入店舗が対象で、追加の導入費や月額固定費用がかからないこともあり引き合いが強く、すでに約300店舗で利用されている。

勝手ながらレストランの事前決済には抵抗がある人も多いイメージだったが、谷口氏によるとおもしろい結果がいくつかでているそう。ある導入店舗では現地決済プランと、それよりも1000円安い事前決済プランを2つ用意した。するとほとんどの利用者が事前決済を選んだため、途中から事前決済のみに変えたという。

「宿泊や航空券、映画などネット上で予約をして事前決済することが、少しずつ当たり前になってきている。最初は事前決済を嫌がる人も多いかと思ったが、利用者の心理的な負担も変わってきているように感じる」(谷口氏)

新宿の人気レストランでは他システムからTableSolutionに切り替え、ネット予約の全プランを与信型プランにしたところ約64%だったキャンセル率が0.2%まで低下。その一方で来店数は増えた。

「以前は『とりあえず予約しておこう』という人が多くキャンセル率が高かったことに加え、本当に行きたい人が予約できなくなっていたのではないかと考えている。結果として本当に行きたい人が予約できるようになったため、来店数の増加につながった」(谷口氏)

キャンセルプロテクションを活用する寿司屋では、当日キャンセルを申し出た顧客にポリシーに沿ってキャンセルフィーが発生する旨をつげたところ、なんと7~8割がやっぱり行くと答えたそう。自分自身もやってしまったことがあるため胸が痛いけれど、飲食店の予約や当日キャンセルがどれほど気軽に行われているかがわかる。

谷口氏によるとこの傾向は海外の方がさらに顕著らしく、キャンセルプロテクションは海外の飲食店からの関心も高いという。

ネット予約を当たり前に、オートメーションも当たり前に

VESPERでは今回の資金調達を機に、今後はさらに海外展開を加速させる計画だ。まずは東南アジアのラグジュアリーホテルを中心に、2020年をめどに海外2000店舗、国内1万2000店舗へTableSolutionの導入を目指す。

またより広い店舗が使えるように簡易版のリリースを検討するほか、2018年は分析システムの基盤を強化していくことを大きなテーマとして掲げる。

「上位概念にあるのは、オートメーション。適切なデータを適切なタイミングで顧客に届けることで、広告予算の配分や顧客管理を最適化するサポートをしていきたい。AIの導入なども含めて基盤を強化する」(谷口氏)

VESPER代表取締役の谷口優氏

TableSolutionを立ち上げた当初から根本にあるのは、ネット予約を当たり前にしたいということだ。飲食業界でも人材が不足し人力だけで対応するのは難しくなってきているし、今後さらに国内の人口減少が進めば飲食店は外国人の顧客を獲得していく必要もある。そうなれば複数言語に対応し、24時間いつでも予約を受け付けられるネット予約システムはニーズがありそうだ。

「飲食店の人とも『1回も予約の電話がならないけど、今までと同じ数のお客さんが来るなら楽だよね』という話を毎回している。理想は100%ネット予約になること。今後さらにネット予約を当たり前に、そしてオートメーションを当たり前にしていきたい」(谷口氏)

「リモートワークを当たり前にする」、オンライン秘書サービスなど開発するキャスターが3億円調達

オンライン秘書サービス「CasterBiz(キャスタービズ)」などを展開するキャスターは12月5日、WiLを引受先とした第三者割当増資を実施し、総額3億円の資金調達を完了したと発表した。また、同社は年内にも、既存株主を引受先とする第三者割当増資を追加で実施する予定だ。

「リモートワークを当たり前にする」というミッションを掲げるキャスターは2014年9月創業のスタートアップだ。同社はオンラインで経理、人事、秘書代行などを行うCasterBizを2014年12月にリリース。その後にも、リモートワーカーをオンラインで派遣する「在宅派遣」やウェブ制作や開発受託に特化した「RemoteStyle」など、新しい働き方を軸にした新サービスを次々に展開してきた。

そして、2017年9月には“新しい働き方”特化の求人サイト「REWORK」をリリース。同サイトには現在までに60件の求人が掲載されている。

キャスターが提供するサービス群

少子高齢化が進む日本では、労働人口は年々減っていく一方だ。そんななか、安倍政権は「一億総活躍社会」の実現に向けて、さまざま働き方改革を推進している。リモートワークや在宅勤務といった新しい働き方の推進もその1つだ。

でも、一部の先進的な企業を除いて、大部分の企業ではそのような新しい働き方が十分に浸透していない印象もある。その理由として、キャスター代表取締役の中川祥太氏は次のように語る。

「リモートという分散型労働を行う際の基本的な運用ルールとして基礎となるものが存在していないからだと認識しています。しかし、一旦ベーシックなルールさえ一般化して普及してしまえば、必然的に導入が進むと思う。弊社では運用ルールが整備された各サービス群の中で、企業側の運用ルールなどのハードルを下げ、購入しやすい形態に直す事で、企業側の導入を促進していく考えだ」(中川氏)。

キャスターは今回調達した資金を利用して、更なる事業拡大に向けた人材採用の加速と、徹底した効率化を図るシステム開発を行うとしている。新しい働き方を軸としてさまざまな分野に対応するサービスを横展開してきた同社だが、今後の戦略についても中川氏は「基本的には働いて貰う側、働く側の両面ともにニーズが多様な状態。今後も横展開が主軸の戦略となる」と語る。

疾患名で地域の診療所を検索、“地域医療連携”の実現目指す「メドプラス」が5000万円を調達

医療機関向けのSaaS「メドプラス」を開発するAppdateは12月4日、ジェネシア・ベンチャーズと公的金融機関などから総額5000万円の資金調達を完了したと発表した。同時に、メドプラスのベータ版を本日よりリリースする。

Appdateが開発するメドプラスは、地域医療連携の手助けとなるSaaS型の医療情報データベースだ。日本の医療費が急増しているというニュースをよく目にするというTechCrunch Japan読者も多いだろう。政府はその対策の1つとして、同一の中核病院で半永久的に医療を提供しつづけるという従来の「病院完結型」の医療から、中核病院と地域の診療所が連携しながら適材適所で医療を提供する「地域医療連携」の実現を進めている。

高額な医療機器を多く揃える都内の大学病院などは固定費が高く、軽度の患者を必要以上に多く診察していては赤字になってしまう。一方、地域の診療所にも十分な医療を提供するだけの能力があるにも関わらず、患者が中核病院に集中してしまっているのが今の現状だ。中核病院が抱えきれない患者を地域の診療所に紹介することで、適切な医療を適切な医療機関で受けるという本来あるべき姿に近づけることができる。

しかし、これまでの医療機関間でのやり取りはとてもアナログなものだった。やり取りは電話やメールで行なわれ、紹介できる診療所のデータベースは医者の頭のなかにある。

そこでAppdateは、厚生労働省が毎年公開しているオープンデータを使って地域の診療所をデータベース化し、それを医療期間向けに提供している。メドプラスでは、患者が住んでいる地域にある診療所を疾患名ベースで検索できるほか、営業でいうところのCRM情報のような定性的なデータも「営業日誌」として残しておくことができるのも特徴だ。

これまでにも内科や外科などの診療科目で診療所を検索できるサービスはあるが、メドプラスの最大の特徴は、診療科目ではなく疾患名(例えば糖尿病など)で検索できることだとAppdate代表取締役の大嶋啓介氏は話す。Appdateはこの疾患名による検索システムを特許出願中だ。

「診療科目で検索すると、どうしても関係のない医療機関まで検索結果に出てきてしまう。また、病院は遠方にある診療所の情報をほとんど知らないのが現状であり、そのような情報を検索できるツールは画期的だと思う」(前 三井記念病院、地域連携部地域連携室チーフの窪田勝則氏)

2016年6月に創業のAppdateは、今回調達した資金を利用してエンジニアや営業員などの人材の強化を進めいく。メドプラスの本リリースは来年春ごろを予定しているという。

「医療と言うと、とかく治療自体に目が行きがちですが、その一歩前の医療連携や医療事務などの周辺領域のIT化を促進することで、医療全体の底上げを図り、最終的には患者の健康に貢献したい」(大嶋氏)

完全審査制のマッチングアプリ「イヴイヴ」提供元が約1.6億円を調達、“出会いのFacebook”目指す

マッチングアプリ「イヴイヴ」を提供するMarket Driveは12月4日、East Venturesとカラオケのパセラなどを運営するNewtonに加えて、ヘッジファンド1社と複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、総額1.65億円を調達したことを明らかにした。

Market Driveは2016年11月2017年2月にもそれぞれ資金調達を実施していて、今回が3回目の調達となる。今後は組織体制やプロモーションを強化するほか、コミュニティ機能やサポーター機能の充実などアプリの改善を進める。またNewtonとは共同で新たな事業の開発も検討していくという。

運営とユーザーによる二重審査を採用するマッチングアプリ

マッチングアプリといえば累計会員数が600万人を超える「Pairs」を筆頭に、サイバーエージェントグループのマッチングエージェントが展開する累計会員数250万人超えの「タップル誕生」、同じく累計会員数が250万人を超える「Omiai」などすでに複数のアプリが乱立している。

同種のアプリも多い中でイヴイヴが重要視しているのが、安心安全に使えるかどうかということ。ユーザーが入会する際に運営側と既存ユーザーによる二重審査を採用しているのもそのためだ。運営側の審査はよくあるが、既存ユーザーの過半数が賛成しないと入会できないという仕様は珍しい。

Market Drive代表取締役社長の伊藤太氏によると、サービス立ち上げ前にマッチングアプリについてヒアリングを重ねたところ「安全面に不安がある」という声が多かったそう。それも踏まえてイヴイヴではユーザーがきちんと自分の情報を登録し、お互いが確認した上で安心して出会える空間を目指している。必須となる年齢確認などとは別に、任意ではあるが本人確認なども行う。

また機能面で特徴的なのがキャラクターの存在とプチ恋機能。イヴイヴでは2人のキャラクターが登場し、ユーザーの恋愛やサービスの使い方をサポートする。機械的なものではなく、ユーザーからの相談にひとつひとつ人力で対応。恋愛のサポートに加えてカスタマーサポート的な役割も果たす。

これは運営メンバーでディスカッションした際にでた「実際の恋愛と同じように、マッチングアプリ内でも恋愛を相談できたりサポートしてくれる存在がいたら使いたい」という声から生まれた機能だ。

もうひとつのプチ恋機能は毎週金曜日の夜21時〜24時の間限定で、すぐにトークできる人だけを探せるというもの。その日ちょうど暇な人とアプリ内のチャットでコミュニケーションをとり、出会いのきっかけを作れる。

意識しているのは「出会いのFacebook」

Market Drive代表取締役社長の伊藤太氏

「『出会いの数×子どもを生みやすい、育てやすい環境の質』を最大化することが少子化への対策になるとした場合に、出会いの数が圧倒的に足りないと考えた」(伊藤氏)

Market Driveの創業は2016年7月。少子化を解決するサービス、そして世界でも通用するようなサービスを作りたいという伊藤氏の思いからスタートした。出会いの数を増やすサービスに取り組むことを決めて、2016年11月にリリースしたのがイヴイヴだ。とはいえ当初は今と少し違い、実際にすぐ出会えることに重きをおいた、相席アプリのようなモデルだったという。

相席アプリではユーザーが同時刻に同じ場所へ集まる必要があり、適切なマッチングを実現する難易度も高くなる。結果的には同エリア内で一定数のユーザーを集めることが難しく、2017年1月に現在のモデルへと形を変えた。

伊藤氏が目指している方向性は「出会いのFacebook」。しっかりとユーザーの情報が登録されていて、その情報をお互いが確認した上でやりとりが進むことを重要視している。今後はコミュニティ機能やサポーター機能もさらに充実させていく予定だ。

当面は日本国内でユーザーを拡大することに注力し、運営体制やプロモーションの強化、アプリの改善に取り組む。並行して「オフライン」でも出会いの数を増やすアプローチを進めていく予定で、調達先のNewtonと新たな取り組みを検討していくという。

東大発の技術で太陽光パネルの異常検知を自動化、ヒラソル・エナジーが数千万円を調達

太陽光IoTプラットフォームを開発する東大発ベンチャーのヒラソル・エナジーは12月1日、ANRIおよびpopIn代表取締役CEOの程涛氏、同社CFOの田坂創氏から総額で数千万円の資金調達を実施したことを明らかにした(popInは2008年創業の東大発ベンチャー。2015年にバイドゥが買収している)。

ヒラソル・エナジーが開発するのは独自の電力線通信技術を活用した、太陽光発電所向けのIoTプラットフォーム「PPLC-PV」。発電モジュール(「パネル」という名称の方がなじみがあるかもしれない)にとりつけたセンサーからデータを収集し解析することで、遠隔からモジュールの異常を自動で検知できることが特徴だ。

2016年に東京大学准教授の落合秀也氏が発明した通信技術を実用化する形でプロジェクトをスタート。2017年2月に東京大学産学協創推進本部の元特任研究員である李旻氏、情報理工学研究科の池上洋行博士がヒラソル・エナジーを創業し、李氏が代表取締役を務めている。同年3月には東京大学協創プラットフォーム開発の支援先にも選ばれている。

業界の課題である「発電量の保守維持」を効率的に

世界的にみて現在盛り上がってきている太陽光発電産業。基本的には金融アセットとして投資をしている人が多く、発電した電力を売ることで約20年かけて回収する。そのため投資回収においては、長期的に安定して売電収益をあげていくことが大前提だ。

そこで欠かせないのが発電量の保守維持。特にモジュール1枚が劣化するだけで全体の発電効率に影響を及ぼすため、いかにモジュールの状態を正確に把握するかがポイントとなる。

李氏によると「日本製のパネルでは7年で23%のパネルに深刻な劣化が生じ、個々の発電量が2〜4割低下している」というデータもあるそう。これは小規模な調査のためあくまで参考レベルにはなるが、たとえば100枚のパネルがあればそのうち23枚は劣化が生じていることになる。

すでに太陽光発電所向けのIoTプラットフォーム自体はいくつかの企業が手がけているものの、どれもストリング(複数のモジュールを直列に接続したもの)単位でしか異常を検知することができず、改善の余地があった。そこに独自の技術で切り込んでいるのがヒラソル・エナジーだ。

太陽光発電所のレイアウト

「これまでモジュール1枚1枚の状態を観られる技術はなかった。ストリングごとでしか異常が検知できなければ、最終的には現地へ人を派遣して、どのモジュールで異常が発生しているかを特定する必要がある。PPLC-PVの場合は異常が発生しているモジュールを自動で検知できるのが特徴」(李氏)

PPLC-PVでは各モジュールに外付できるセンサーを設置し、モジュールの稼働データを収集。そのデータを解析して異常点を自動で検知する。それを可能にしているのが、ノイズ耐性に強い独自の電力線通信技術だ。

もちろんモジュール1枚1枚にセンサーを設置するのにコストはかかるが、従来の方法では部分的に異常を検知したあとは人力で対応する必要があり、そこに多額のコストがかかっていた。

李氏によると顧客として見込んでいるのは、50キロワットから数メガワット規模の商業用発電所を大量に管理しているような事業者。そのような企業には「全国に点在する発電所の管理に困っている」「人件費を主とした異常発生時の検査コストを抑えたい」というニーズがあり、PPLC-PVの概念にも興味を持つことが多いそうだ。

保守維持の分野から産業をリードするチャレンジを

ヒラソル・エナジーのチームメンバー。左から3人目が代表取締役の李旻氏、左から4人目がANRIの鮫島昌弘氏

2016年の時点で、日本国内の太陽光発電所の導入量は累積で42.8ギガワット。これはモジュールに換算すると約1.6億枚になる。PPLC-PVの顧客となるような企業は日本国内だけでも約200〜400社は存在し、数千億円の市場規模を見込んでいるという。

海外にも目を向けると、現時点で日本の約6倍ほどの規模がありすでに世界に存在するモジュールは10億枚ほど。今後市場はさらに拡大することが見込まれる。関連企業のエグジットの事例もでてきていて、2014年にアメリカの大手パネルメーカーのFirst Solarが保守維持事業を手がけるドイツのskytron-energyを買収。2015年には独自技術で発電量の最大化に取り組むイスラエル発のSolarEdgeがNASDAQに上場した例がある。

「PPLC-PVも正しく製品化を進めることができれば、太陽光発電産業をさらに持続可能なものにできる可能性がある。日本はかつて部材事業でこの産業をけん引していた。今度は保守維持の分野から再び世界をリードしていけるチャンスがある」(李氏)

今回李氏の話で興味深かったのが、保守維持事業を進めるにあたって日本は今いい環境にあるということ。李氏によると日本には運営30年になる発電所など古いものも多く残っていて、これは世界的にみても珍しいそうだ。保守維持の課題は運営開始から数年たって直面することも多いため、新しい発電所が多い海外よりもチャンスがあるという。

合わせて日本はFIT価格が比較的高く(固定価格買取制度で決められた買取価格のこと。中国の3倍ほどだという)、かつ人件費も高いため自動化のニーズが大きいというのが李氏の見立てだ。なんでも世界の発電所のアーキテクチャは約9割が同じだそうで、日本でいいソリューションを開発できれば、世界のほとんどのところに展開できる可能性もある。

今回ヒラソル・エナジーに出資したANRIの鮫島昌弘氏も「大きなペインポイントとそれを解決できる技術があり、かつ市場が大きくグローバル展開も見込めるプロダクト、チームである」ことが決め手になったという(ANRIはシードに加えてハイテク領域のスタートアップを対象にした3号ファンドを8月に立ち上げ、北大発のメディカルフォトニクスなどにも出資している)。

ヒラソル・エナジーでは取得したデータを用いた発電量の価値評価や発電所向けの保険、モジュールのリサイクルといった事業展開も将来的に検討していくが、当面は保守維持の分野に注力していく。

ファッションレンタルのエアークローゼットが9.5億円調達、AIやデータ活用強化でサービス拡充へ

定額制ファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」などを展開するエアークローゼットは11月30日、ジャフコやホワイト急便を展開する中園ホールディングスなど複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により、9.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回の資金調達を踏まえてエアークローゼットが取り組むのは、AIの導入や蓄積してきたデータの活用だ。同社の強みでもある「プロのスタイリストによるスタイリング」をAIで補助し、選定業務の効率化を進める。加えてデータサイエンスへの投資も強化することで、ユーザーの選好情報や洋服に対するフィードバック情報などの独自データを分析。サービス基盤の拡充を目指す。

エアークローゼットの主力サービスであるairClosetは、2015年2月のサービス開始から2年9ヶ月で会員数14万人を突破。300ブランド、10万点以上にのぼる洋服の中から、スタイリストがユーザーにあったコーディネートを提案する。独自開発したスタイリング提供システムは2017年2月に特許も取得した。

また2016年10月にはスタイリストのパーソナルスタイリングを実店舗で楽しめる「airCloset×ABLE」を表参道にオープン。2017年7月にはスタイリストが選定した洋服が自宅に届き、気に入ったアイテムを購入できる「pickss」を始めるなど、「パーソナルスタイリング」の軸で事業の幅を広げている。

エアークローゼットは2016年1月にジャフコ、中園ホールディングス、寺田倉庫、セゾン・ベンチャーズらから約10億円規模の資金調達を行っていたが、今回はそれに続くラウンド。なお2015年4月にも約1億円の資金を調達している。

これまで同社はスタイリング提供システムの開発や洋服の調達、独自の管理・物流オペレーション構築への投資によってサービス基盤の整備に力を入れてきた。今後は蓄積したデータやパーソナルスタイリングのノウハウを活用しるフェーズへ突入し、スタイリング精度の向上のみならずairCloset全体のUX向上に取り組む。

 

日本に住む外国人を豊かにしたい——外国語講師と生徒をマッチングする「フラミンゴ」が1.7億円を調達

写真左からグロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー兼COO 今野氏、フラミンゴ代表取締役 金村氏、グローバル・ブレイン パートナー 深山氏

外国語講師と生徒のマッチングアプリ「フラミンゴ」を運営するフラミンゴは11月30日、シリーズAラウンドで総額1.7億円の資金調達を実施することを発表した。第三者割当増資の引受先はグロービス・キャピタル・パートナーズグローバル・ブレイン、および個人投資家。調達に伴い、グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー兼COOの今野穣氏と、グローバル・ブレイン パートナーの深山和彦氏が社外取締役に就任する。

フラミンゴは、外国語を学びたい人が講師を探してレッスンを予約できるマッチングアプリ。教わる側は、他の生徒のレビューやチャットを通じて、本当に相性のいい講師を納得がいくまで、レッスンで会うまでは無料で探せる。フラミンゴ代表取締役の金村容典氏は「会話だけでなく、異国語を話す人とのつながりや興味、関心をフォローすることで、相性がよく、会話を楽しめる講師と出会えることが、フラミンゴの特徴」と話す。

レッスン費用は講師の設定により異なるが、教わる側はその設定額に一律プラス500円を手数料として支払う仕組み。講師側に費用負担はない。そのせいもあってか、現在、登録講師は1500人を超え、年内には2000人に届く状況だという。対応言語は37言語あるそうだ。

「直接会うということもあって、安心して使ってもらえるように外国人講師の質や安全性については、例えば出入国書類の裏表両面をチェックするなどの方法で担保している。一方で、日本にいる外国人講師に稼いでほしいとの思いから立ち上げたサービスなので、講師と運営側との距離も近く、講師の側も生徒との待ち合わせ、レッスンをするのに使いやすい内容になっている」(金村氏)

フラミンゴの設立は2015年6月。2016年4月にEast Ventures、DeNA、partyfactoryから資金調達を実施し、2016年10月にアプリをリリースした。2017年6月には、メルカリとエンジェル投資家らからも資金調達を行っている。

最初のアプリリリース時には、苦労もあったと金村氏は言う。「クラウドソーシングサービスなどでも課題になる“中抜き”が初めは多く、マッチングしても生徒と講師がその後、直接やり取りして会うようになってしまっていた。当時は講師からマッチング手数料を取っていたことが原因。日本人に手数料を負担してもらうようにサービスを変更したところ、外国人の先生側に『便利で、無料で使える』と評価されて離脱が減り、講師の登録も増えた。また生徒から講師への感想レビューがたまるようになると『いい評価で新しい生徒がまた呼べるのに、もったいない』という意識も出てくるようだ」(金村氏)

自身も4カ国で暮らしてきた経験を持つ、金村氏。海外で異邦人が暮らすことの大変さもよく知っていたことから、日本に住む外国人の暮らしを良くするためのサービスを提供したいと考えていた。「日本に住む外国人が収入を得ようとすると、語学講師のイスは埋まりがちで、深夜のコンビニやホテルの清掃など、キツい仕事でしかも時給が安い、ということになりやすい。暮らしを良くするにはまずは収入の確保だと考えて、フラミンゴを立ち上げた」(金村氏)

今回の調達資金は、フラミンゴの開発・運用の強化のほか、訪日・在留外国人に向けた新規事業のための人材採用にも活用したい、と金村氏は話している。フラミンゴについては、リリース済みのiOS版アプリに加え、ウェブ版、Android版の提供も進めていく、としている。また「現在は都内と関西で地域を限定して提供しているフラミンゴのサービスを、札幌・福岡など地方の主要都市に広げたい」と金村氏。ゆくゆくは、語学学習に対してポテンシャルがありそうな国の主要都市、例えばソウルや台北などにもサービスが広げられればいいと考えているそうだ。

金村氏は「語学レッスンプラットフォームの提供で外国人によろこんでもらえるようになってきた。これからは、そうした日本に住む外国人に、お金を使ってもらえるようなサービスを提供していきたい」と今後の展開について話す。「まずは消費財が買えるようなサービスから、と考えているが、家やお金を借りやすくしたり、外国人だからということで高いお金で今は受けているサービスを安く提供したり、といったことを、インターネットを介してできれば、と思う」(金村氏)