アウディが旧モデルの「e-tron」にソフトウェアアップデートを実施、航続距離が最大20km増加

Audi(アウディ)が、電気自動車SUV「e-tron(イートロン)」の2019年および2020年モデルに対して、バッテリーの航続距離を最大20km伸ばすソフトウェアアップデートを実施した。

航続距離の向上は、わずか20kmということで、大したことないと思うかもしれないが、これは自動車メーカーがソフトウェアを使って、旧型の電気自動車を改良できることを示している。今回のケースでは、アウディはソフトウェアを更新することで、既存のバッテリーの使用可能な容量を拡大し、実質的な効率を向上させたということだ。また、同社によれば、このソフトウェア・アップデートによって、フロントの電気モーターの制御も最適化され、バッテリーの熱管理システムの効率も改善するという。

2019年および2020年モデルの「Audi e-tron 55 quattro(アウディ・イートロン55クワトロ)」は、95kWhのバッテリーを搭載しているが、今後はそのうち86kWhを使用できるようになる。これによって一度の満充電で走行可能な航続距離は、現行モデルの最大441km(WLTPサイクル基準)に近づくはずだ。

このソフトウェアアップデートは、2018年9月中旬(モデルイヤー2019年)から2019年11月末(モデルイヤー2020年)の間に製造されたすべての量産モデルのAudi e-tron 55 quattroに無料で提供される。ただし、Wi-Fiにアクセスできる場所であればどこでも無線でソフトウェア・アップデートを起動できるTesla(テスラ)とは異なり、アウディではお近くのサービスセンターを訪れる必要がある。

このソフトウェアアップデートを受けることで、旧モデルのe-tronは、ソフトウェアとハードウェアが改良された2020年および2021年モデルのe-tronやe-tron Sportback(イートロン・スポーツバック)に遅れを取らずに済むようになる。

なぜアウディは最初から、それだけのバッテリー容量を使えるようにしなかったのかと、思う人もいるかも知れない。アウディをはじめとするEVに初めて参入する自動車メーカーは、劣化を避けるために慎重を期して、当初はバッテリーの使用可能容量を制限していたのだ。

テスラに続き、他の自動車メーカーも、機能の追加や改善のために、OTA(Over-the-Air、無線による)ソフトウェア・アップデートを採用し始めている。Volvo(ボルボ)は2月、欧州で電気自動車「XC40 Recharge(XC40リチャージ)」に初のOTAソフトウェア・アップデートを実施。そして10月には、バッテリー管理システムとプレコンディショニング・タイマーの改良により走行距離を伸ばすOTAをリリースした。同社はまた、ドライバーがバッテリーから最大限の航続距離を引き出せるよう支援する「Range Assistant(レンジ・アシスト)」というアプリの提供も開始している。

画像クレジット:Audi

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

メルセデス車は2022年からDolby Atmosオーディオをオプション提供

より没入感のあるDolby Atmos(ドルビーアトモス)を搭載したクルマが欲しいときに、Lucid Air(ルーシッドエア)を買う必要はなくなる。メルセデスは、最新のSクラスに搭載された最新のインターフェースMBUX、またはオプションの「Burmester(ブルメスター)3D/4Dサウンドシステム」を採用した全モデルに、アトモスオーディオを搭載する。実際に運転する機会があるかどうかはともかく、同レベルの音楽を立体的に拡大された音場で聴くことができる。その音質はメルセデスが主張する「ライブコンサート」のようなサウンドではないかもしれないが、通常のステレオ再生よりもワンランク上のサウンドになるはずだ。


4Dシステムには31個のスピーカーが搭載されており、そのうち6個のスピーカーが上方から3D効果を生み出す。また、フロントシートには4つの「耳近傍」スピーカーが設置されていて、4つのシートにはそれぞれ2つのサウンドトランスデューサー(別名エキサイター)が設置されている。まあ1750Wの総出力(18.5Lのサブウーファーを含む)が投入されれば、オーディオ処理方式に関係なく満足できる可能性が高いだろう。

ただ、すぐにアトモス搭載車を買いに走ることはできない。この装備は、2022年夏にまずメルセデス・マイバッハ(Mercedes-Maybach)に搭載され、その後すぐにSクラスにも搭載される予定だ。他のモデルも追随するだろうが、アトモスを搭載したAクラスの販売はすぐには期待できないだろう。

編集者注:本記事の初出はEngadget。執筆者のJon Fingas氏はEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Daimler

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(文:Jon Fingas、翻訳:sako)

UberがテスラのEVを一挙に5万台レンタルしてドライバーに貸与、企業イメージアップを狙う

レンタカー大手Hertz(ハーツ)が大量のテスラ車を購入した理由は明らかだ。同社は最大5万台のテスラの電気自動車を、11月1日より米国のUberライドシェアのドライバーに貸与する。ロサンゼルスとサンディエゴ、サンフランシスコ、ワシントンD.C.の労働者は毎週334ドル(約3万7900円、今後299ドル[約3万3900円]以下になる)を支払うと、Model 3と保険、メンテナンスで構成されるパッケージを利用できるようになる。

格付けの星の数が4.7以上、これまで走行回数150以上が利用資格になる。この事業は、数週間後には全米に拡張される。


Uberは、Hertzとのこの1件により、環境とドライバーの収入に貢献できると考えている。排気ガスを減らすと同時に、EVの初体験者が増えると同社は述べている。車両の維持費も下がるだろう。なによりドライバーは燃料費を払わなくてよくなり、UberにはUber Greenというインセンティブ事業があるため、EVドライバーは1回の走行あたり最大1ドル50セント(約170円)の奨励金を受け取ることになる。

UberにはEVを採用すべき強力な理由がある。まず、2040年までに二酸化炭素排出ゼロという同社の目標を達成し、ライドシェアはCO2排出の元凶という悪評と戦う。エコフレンドリーな車両が路上を走り回ることにより、企業イメージを変えることができる。それにしても5万台は、クルマからの排出抑制とEVの採用という両面において大きな取り組みとなる。また、5万台はテスラの生産量としても大きく、1社の顧客としては最大となるだろう。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者であるJon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

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(文:Jon Fingas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

GMがディーラーと協力してEV充電ステーション4万基を北米で設置

General Motors(ゼネラル・モーターズ)は、電気自動車の導入を促進するため、7億5000万ドル(約853億円)を投じて充電インフラを整備するという野心的な計画の一環として、北米全域に最大4万基の電気自動車用充電器を設置すると発表した。


このプログラムでは、GMは米国およびカナダの自動車ディーラーに充電器を提供する。しかし、ディーラーは自社の敷地内に充電器を設置するのではなく、適切な場所を特定してインフラの設置を行う。GMは、各ディーラーに最大10基のUltium充電ステーションを提供し、それぞれの地域に配備する。また、ディーラーが充電器を設置するためのインセンティブやその他の資金調達プログラムへの申請を支援するとしている。

GMのEVインフラ担当リードアーキテクトであるAlex Keros(アレックス・ケロス)氏はTechCrunchに「ディーラーはすでに地元で活動していることが多く、この計画(Dealer Community Charging Programと呼ばれている)でGMはディーラーと提携することにしました」と語った。「ディーラーはすでに地域社会でかなり活発に活動しており、すばらしい関係を築いて地域社会のことをよく知っているので、それを活用しない手はありません」。

新しいインフラは「Ultium Chargers」と呼ばれ、GMの明確なブランド名を持つことになるが、TeslaのSuperchargingネットワークと違ってGMの4万基の新しいレベル2充電器は独自のネットワークではない。ケロス氏は、電気自動車の販売を促進するために、独占的なネットワークを展開することには興味がない、と明言した。

「我々の世界観は、『誰でも参加できる 』というものです。私たちは、海を育てるようにしたいのです」。

GMはまた、EV充電器メーカーのCTEKと共同で開発・製造した家庭用および業務用のUltium Level2スマートチャージャー3種を展開する。このうち2種は11.5kW、残る1種は19.2kWで、間もなく発売予定の電気自動車GMC HummerやCadillac Lyriqへの電力供給に最適だ。これらの充電器は、Dealer Community Charging Programで使用されるが、家庭での使用にも適している、とケロス氏は話した。

充電器にはWi-FiとBluetooth機能が搭載され、より強力なタイプにはカスタマイズ可能なスクリーンが搭載される。また、充電器は負荷を分散することができ、車両へのエネルギーの流れを安全に調整することができる。例えば、住宅に設置した場合、自動車と他の家電製品との間の電流のバランスを取ることができる。

GMのアプリ「Ultium Charge 360」を使えば、充電器の状態を把握したり、充電スケジュールを設定したりすることができ、充電の習慣や履歴などの統計情報を閲覧することも可能だ。このアプリではすでにGreenlots、Blink、FLO、ChargePoint、EVgo、EV Connect、Greenlots、SemaConnectなど北米の7つのネットワークの充電器を検索することができる。GMは、GM車と非GM車の間で充電体験がどのように異なるかについて詳細は明らかにせず、すべてのEVに対応するとだけ述べた。

GMは、コミュニティ充電プログラムの開始に合わせて、来年には充電器の販売を開始する予定だ。顧客は充電器の購入費用をGMファイナンシャル・リースや契約に組み込むことができる。

同社は、2025年末までに全世界で30種のEVを発売するという目標を掲げている。同年までにEVと自動運転技術に350億ドル(約3兆9810億円)を投資する計画を立てており、その実現に向けて迅速に動いている。

関連記事:GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

先の記者会見で、会長兼CEOのMary Barra(メアリー・バーラ)氏は「入手しやすい価格のEV、真に手ごろ価格のEVを提供します。またそうした車両は多くの人々にとって唯一の自動車となり、信頼できる充電インフラを必要とするため、当社はエコシステムにも取り組んでいます」と述べた。

画像クレジット:General Motors

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

高級SUV「レンジローバー」の電気自動車が2024年に登場

Land Rover(ランドローバー)は、そのラインナップに高級SUV「Range Rover(レンジローバー)」の電気自動車を、2024年に加える計画があることを明らかにした。

この発表は、第5世代モデルにあたる新型レンジローバーの公開に併せて行われた。デザインが一新された新型レンジローバーは、無線によるソフトウェア・アップデートのサポートなど新たな技術を満載しており、プラグイン・ハイブリッド車や電気自動車にも対応するその新開発のフレキシブルなアーキテクチャは、ランドローバーから将来登場する新型モデルのベースとしても使われる予定だ。

ランドローバーは、この近々登場する電気自動車について、多くの情報を開示していない。だが、ブランドの親会社であるJaguar Land Rover(ジャガー・ランドローバー)の動きを観察していた人であれば、この事態を予測していたかもしれない。振り返れば2017年に、JLRはJaguar(ジャガー)とランドローバーの両ブランドから2020年以降に発表されるすべての新型車に、電気自動車またはハイブリッド車を設定すると述べていたからだ。

ランドローバーによると、新型レンジローバーは、まずマイルド・ハイブリッド・バージョンが発売になり、やや遅れて(米国では2023年に)プラグイン・ハイブリッド・バージョンが追加されるという。

2023年に登場するExtended Range(エクステンデッド・レンジ)プラグイン・ハイブリッドは、48ボルトのマイルド・ハイブリッド技術を採用した直列6気筒エンジンと、105kWを発生する電気モーター、そして38.2kWh(使用可能容量は31.8kWh)のリチウムイオンバッテリーを搭載し、システム合計で最高出力440psを発生。電気のみで最長100kmの距離を走行可能だ。

画像クレジット:Land Rover

2022年に発売になる新型レンジローバーには、標準 / ロングホイールベースのボディ、6気筒/ 8気筒のパワートレイン、2列5人乗り/ 2列4人乗り/ 3列7人乗りの座席オプションなど、さまざまなバリエーションが用意されている。

米国向けの2022年モデルでエントリーグレードとなるマイルド・ハイブリッドの「レンジローバーP400 SE」は、最高出力400ps、最大トルク550Nmを発揮する3.0Lガソリンターボ直列6気筒エンジンを搭載し、ベース価格は10万4000ドル(約1180万円)。そして最上級グレードは、ロングホイールベースのボディに最高出力530psと最大トルク750Nmを発揮する4.4LガソリンツインターボV8エンジンを搭載した「P530 First Edition」で、こちらは16万3500ドル(約1860万円)からとなっている。いずれも価格には税金およびディーラーまでの輸送費1350ドル(約15万円)は含まれていない。

新型レンジローバーにおけるもう1つの注目すべき技術的なハイライトは「Electrical Vehicle Architecture(EVA 2.0)」と呼ばれる新しい電気系アーキテクチャが採用されたことで、これによって70以上の電子モジュールにおける無線ソフトウェアアップデートが可能になったという。つまり、ランドローバーはこの無線アップデートを介して、新型レンジローバーに新しいアプリなどの機能を追加したり、既存の機能を改良したりできるようになるということだ。これはテクノロジー中心の時代に対応したいと考える自動車メーカーにとって重要な機能である。

新型レンジローバーには、音声アシスタントとしてAmazon Alexa(アマゾン・アレクサ)が搭載されており、最新ニュースを読み上げたり、ドライバーがカレンダーにアクセスできる他、一部の車載機能の制御や、自宅の照明の点灯、Alexa対応の他のデバイスとの接続などが可能だ。

また、スマートフォンの見た目や機能を、車内に設置された画面に表示して使うことができる「Apple CarPlay(アップル・カープレイ)」と「Android Auto(アンドロイド・オート)」も、新型レンジローバーの前席中央に備わる車載タッチスクリーンで利用できる。

画像クレジット:Land Rover

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】フォード2021マスタングMach-E GTとGTパフォーマンス初試乗、ついに「Mach-E」の名にふさわしいものに

Mustang Mach-E(マスタングMach-E)という名前について議論するのはもうやめよう。Mach-Eではなく、もう片方のことだ。電気SUVに塗られたポニーカーの血統。その議論に終止符を打つ。人々は二手に分かれたのだ。Mach-Eがマスタングかどうかという疑問は妥当ではない。「Mach-E GTがGTの名にふさわしいか」という、それよりはるかに差し迫った問いが私たちに投げかけられている。


無条件で、Mach-E GT(5万9900ドル[約684万円]から)とMach-E GTパフォーマンスエディション(6万4900ドル[約741万円]から)の両方がFord(フォード)のグランドツーリングの名にふさわしい。これは通常のMach-Eからのトリムレベルの著しい強化、新たなトラックモード、そしてパフォーマンスエディションではアップグレードしたサスペンションシステムにより実現した。

アンブライドルド

画像クレジット:Roberto Baldwin

ベース車のMach-EはEVパワートレインのおかげですでに加速面で優れている。GTとGTパフォーマンスエディションでは、加速とスロットルレスポンスが増して驚異的な速度のバーストを生んだ。標準のGTは480馬力、600ポンドフィート(約814ニュートンメートル)のトルクを誇り、完全停止状態から3.8秒で時速60マイル(約96km)に達する。フォードは加速のために、バッテリーパックは88 kWhと変わらないままパックの配線とチューニングを強化しつつ、フロントモーターをアップグレードした。

予算に余裕があり、もっと早く時速60マイル(約96km)を出したい人には、480馬力、634ポンドフィート(約860ニュートンメートル)のトルクで、3.5秒でゼロから時速96kmに達するGTパフォーマンスエディションがよい。GTと同じく、バッテリーの配線とチューニングのアップグレードとフロントモーターの強化が行われた。

両車とも出荷時は前輪駆動(AWD)標準だ。すべてのEVトルクを道路に伝達するのに役立つが、そのパワーは本来あるべきほど十分に維持されない。複数回のローンチの間、両方の車両の前輪が、ローンチ時または時速30マイル(約48km)に達する前にスリップした。また、GTパフォーマンスエディションで、完全停止状態からアクセルを踏んだ瞬間のトルクステアも体験した。

これらの小さな急加速がGTで予想される。通常のMach-Eと同じマルチリンク式サスペンションで回転する。しかしGTパフォーマンスエディションは、MagneRideサスペンションシステムを装備したフォード初のEVだ 。コーナーでボディロールを減らすことには優れているが、発進時にフロントのホイールのスリップを減らすためにバックエンドが飛び出さないようにするには、もう少し調整が必要なようだ。私は同日に両方の車を運転して、高速道路と田舎道の両方でMagneRideの利点を見ることができた。GTは角を曲がったところで適切なハンドリングができたが、より高価なGTパフォーマンスエディションよりもはるかに多くのボディロールが見られた。ヘアピンターンでこれは特に顕著だった。そこではパフォーマンスエディションは車体を保持していたが、GTは外側に飛び出していた。

コーナリングに関しては、どちらの車両もAWDで、わずかなアンダーステアを示した。これさほど驚くことではない。しかし試乗2日目には、フォードはGTパフォーマンスエディションでレース用トラックを走らせてくれた。トラクションコントロールをオフにするとコーナーでよりニュートラルに感じ、力を入れるとわずかにオーバーステアが生じた。

BlueCruise

GTを運転している最中に、フォードのハンズフリー運転支援システム「BlueCruise(ブルークルーズ)」に初めてお目にかかった。GMのSuper Cruise(スーパークルーズ)のように、レベル2システムにより一定条件下でドライバーがホイールから手を離すことができる。スーパークルーズと同様、システムは地図化されている中央分離帯のある高速道路に対してジオフェンスされており、ドライバーモニタリングシステムを使用してホイールを握る人が道路に注意を払っているか確認する。フォードは、ブルークルーズをオプションの1900ドル(約22万円)のフォードCo-Pilot360 アクティブ2.0パッケージの一部として両方の車両で利用できると述べた。

テスト中、システムはGMの製品よりもわずかに堅牢性が低く、急カーブ後の車両のノッキングが少し多いことがわかった。1度だけ、車両が十分に鋭く曲がっていないと感じ、隣の車線に滑り込んでいくと思ったため、ステアリング動作を引き継いだ。ほとんどのコーナーで、直線で走行するとき、変化する交通状況とカットインを上手く処理していた。前方の路上ではなくインフォテインメント画面を見るのに時間をかけすぎると、システムに適切に注意してくれた。

警告音が少し大きくなり、フォードがダッシュクラスターに加えて、ライトバーまたは警告灯が車両のステアリングホイールに追加され、注意が必要なときやBlueCruiseのハンズフリー機能が解除されるときに警告してくれるようになることを強く願う。BMW、GM、Mercedes(メルセデス・ベンツ)はオンホイールインジケーターを使用している。フォードが彼らの先導に従わないことに決めたのは残念だ。

内装:同じだが、違う

内装は通常のMach-Eと同じだが、新しいシートでは素材がアップグレードされている。GTではスポーツスタイルのシートにより、コーナリング中にドライバーがシートから飛び出さないよう、サイドボルスタリングをわずかに追加している。新しいシートは、過度にスポーティーでなく快適だ。

GTパフォーマンスエディションのシートは別の問題がある。パフォーマンスのシートはショルダーラインに追加エレメントがあり、身長190cmの私は態勢をどう変えても座り心地がよくなかった。背が低い場合は大丈夫だが、私は座り心地が悪く、GTに乗り換えるとよくなった。

通常のMach-Eと同様、二種類のGTはSync 4A を搭載したフォード製15.5インチポートレートディスプレイを採用している。インフォテインメントシステムはわずかなレイテンシを示した。その表面積の大きさが、これが車の未来であることを思い出させてくれる。ほとんどの機能をすぐに利用でき、ディスプレイ近くに大きなノブがあることがこの車で一番のお気に入りだ。

温度調節はインフォテインメントシステムによって処理されるが、私は好きではない。コントロールが常に画面の下にあるため、温度の調整は比較的簡単だった。

両方の車両の後部座席は、背の高い大人でも快適だ。また、後部座席の後ろにあるMach-Eの29.7立方フィートの貨物スペースは、中型の荷物を4〜5個運ぶには十分だ。

バッテリ―とレンジ

画像クレジット:Roberto Baldwin

GTのすべての楽しみは、ベース車のMach-Eの4万2895ドル(約490万円)と比べて、大きなコスト差のある価格で提供される。

パワーが増強されると、走行距離を失う。Mach-E(5万775ドル(約580万円)から)は1回で306マイル(約492km)走行できる。Mach-E GTは最高270マイルに達し、GTパフォーマンスエディションは260マイルの後電力系統に接続する必要がある。

幸運もどちらもDC急速充電ステーションで最大150 kWの充電をサポートしている。さらにはプラグアンドチャージ機能を備えていることから、Electrify America(エレクトリファイ・アメリカ)のような充電ステーションでアカウントを持っていれば、車両を接続するだけで、アプリやクレジットカードを使用せずにその電気を車両のバッテリーに送り始める。車両を認識してくれるのだ。

どちらを購入するか

Mach-E GTパフォーマンスエディションは5000ドル(約57万円)をパワーのわずかな向上とサスペンションの改善に費やすことへの、説得力ある事例を作り出している。現実は、運転者のほとんどがトラックを見たり、フォードのMach-E trackトラックモードのUnbridled Extend機能を使用したりすることは絶対にない。彼らはトラックタイムより交通状況を見る、日常生活のドライバーである可能性が高い。その場合、ハンズフリーのBlueCruiseを搭載した1900ドル(約22万円)の運転支援パッケージは価値ある出費だ。

どちらを選択しようとEVの運転体験が得られる。私たちは同意しないかもしれないが、間違いなく認めることができるのは、マスタングがGTバッジにふさわしいということだ。

画像クレジット:Roberto Baldwin

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(文:Roberto Baldwin、翻訳:Dragonfly)

テスラの時価総額が1兆ドル突破、レンタカーHertzとの大型契約で株価上昇

Tesla(テスラ)の時価総額が米国時間10月25日に1兆ドル(約113兆円)を突破した。上場から11年目にして達成したマイルストーンだ。これにより同社は、時価総額が1兆ドルを超えるApple(アップル)、Amazon(アマゾン)、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)と並ぶ。

Teslaの株価は、米国時間10月25日正午に998.22ドル(約11万3400円)となった。本稿執筆時点の株価は約994ドル(約11万2900円)で、取引開始時から約9%上昇している。

この株価上昇は、最近破産から脱却したレンタカー大手のHertz(ハーツ)が、Teslaから10万台のEV購入に合意したことなど、Teslaに関連するいくつかのニュースを受けてのものだ。この購入により、Hertzが全世界で展開するレンタカー車両の20%がEVとなる。契約額は42億ドル(約4777億円)とされている。早ければ11月にも米国の主要市場および欧州の一部の都市で、HertzのレンタカーにTeslaのModel 3が導入される。

また、Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)のアナリストであるAdam Jonas(アダム・ジョナス)氏が、目標株価を従来の900ドル(約10万2200円)から1200ドル(約13万6300円)に引き上げ、オーバーウエート(買い)の評価を継続すると発表したことなど、Teslaに関する強気の情報を提供するニュースも株価上昇に貢献した。

加えて、これとは別に、JATO Dynamicsのレポートによると、TeslaのModel 3は9月に欧州で最も売れたクルマで、初めて電気自動車が内燃機関モデルを上回ったとロイターが報じた

画像クレジット:Tesla

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

米レンタカーHertzがテスラにEV10万台発注、両社の株価は上昇

レンタカー大手のHertz(ハーツ)はTesla(テスラ)車10万台を発注した。2022年末までの納車が見込まれる。これは、単一のEV(電気自動車)購入としては史上最大規模だ。Bloombergの報道によれば、この契約額は42億ドル(約4777億円)といわれており、Hertzは全世界で展開するレンタカーの20%をEVでまかなうことになる。

Tesla Model 3は、早ければ11月にも米国の主要市場および欧州の一部の都市でHertzのレンタカーに登場する。

今回の注文は、今後14カ月間に生産・納入されるTesla車のかなりの部分を占めることになりそうだ。Teslaの2020年の納入台数は49万9550台で、その大半が最も人気の高いセダン「Model 3」だった。2021年に入ってから、生産台数と納車台数は増加している。同社は2021年第1〜第3四半期に62万7572台を納車した。同期間の生産台数は約62万4582台だった。

Hertzはまた、EV増加に対応するため、ネットワーク全体で数千台の充電器を設置し、Tesla車をレンタルする顧客に対して、車の使い方や充電方法の教育を含む「プレミアムで差別化されたレンタル体験」を提供する計画を発表した。Model 3をレンタルする顧客は、Teslaのスーパーチャージングステーションも利用することができる。同充電施設の一部は、Tesla車の販売が急増しているためにすでに切迫した状態にある。

今回のニュースを受けて、Teslaの株価は5%以上上昇し、取引開始直後に960ドル(約10万9200円)まで上昇した。また、Hertzの株価も11%上昇し、約27ドル(約3070円)となった。

旅行・観光業界の他の企業と同様に、Hertzも2020年5月にはレンタカー利用の減少により破産申請を行うなど、多難な状況を経験した。今回のTeslaとの契約は、Hertzが破産から脱却してからわずか4カ月後のことで、レンタカー業界が目覚ましい回復を遂げている中でのものだ。投資会社Knighthead Capital ManagementとCertares Managementが2021年初めにHertzを買収した。

画像クレジット:Hertz

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

完全自動運転、フライングカー、ロボットポニー。XPeng 2021 Tech Dayトップハイライト

中国のスマート電気自動車メーカーであるXPeng(小鵬汽車、シャオペン)は、未来のモビリティエコシステムの構築を見据えた一連のイノベーションを発表した。

XPengの会長でCEOのHe Xiaopeng(小鵬何、シャオペン・フー)氏は、中国時間10月24日(日曜日)に北京で開催された2021 Tech Dayにおいて「より効率的で安全、かつカーボンニュートラルなモビリティソリューションの探求は、スマートEVをはるかに越えて、当社の長期的な競争優位性の礎となります」と述べた。「お客さまのために、最先端のモビリティ技術を量産モデルに搭載することを目指しています」。

シャオペン氏は、同社の先進運転支援システム(ADAS)の最新バージョン 、スーパーチャージャー・ネットワーク 、HT Aero(HTエアロ)との共同開発による次世代飛行自動車、そして 子ども用ロボットポニーについて詳しく説明した。

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街乗り用にデザインされるXpilot 3.5

「シティ・ナビゲーション・ガイデッド・パイロット(NGP)」を搭載するXpilot 3.5

XPengは、2022年前半に一部の都市で次世代ADASをドライバーに提供する予定だ。Xpilot 3.5は「シティ・ナビゲーション・ガイデッド・パイロット(NGP)」を搭載するが、XpengのP5ファミリーセダンのみで利用できる予定だ。P5ファミリーセダンには、都市レベルのNGPには必須の、LiDAR(ライダー)、ミリ波レーダー、複数のターゲットを認識・分類・位置付けできる3D視覚認識ネットワークが搭載される。

これに対して、XpengのP7セダンのドライバーに提供されたXpilotの現行バージョンである3.0は、高速道路レベルのNGPに対応し、Xpengは距離にして約1200万キロメートル分のデータを収集している。

Xpilot 3.5には、高度な予測機能を備えた戦略的プランニングモジュールが搭載され、ルール駆動型とデータ駆動型のAIを組み合わせて、静止物や路上の弱者の回避、任意の速度での車線変更などの、都市型シナリオに対応できるという。

XPengの完全自動運転へのアプローチは、Tesla(テスラ)と同様にレベル2の自動運転(ADASシステム)を経て、レベル5に到達することを目指している(SAE International[米国自動車技術者協会]は、レベル2の自動運転を、アダプティブ・クルーズ・コントロールやブレーキ・サポートなどのサポート機能を中心としたものとしている。そしてレベル5の自動運転とは、あらゆる状況下でどこでも運転ができるシステムと説明されている)。テスラは2021年9月、顧客がFSDベータ(Full Self-Driving Beta)ソフトウェアの利用を要求できるソフトウェアアップデートをリリースした。FSDには、自動車線変更、駐車場への進入・退出、オートステアリングなどの機能が含まれているものの、現在のところ街中ではまだ利用できない。テスラは、この機能をいつ都市で使えるようにするかについては明らかにしていない。同機能は視覚とニューラルネットワーク処理のみを利用する

XPengの自動運転担当副社長であるXinzhou Wu(吳新宙、ウー・シンジョウ)氏は、イベントの中で「人間と機械の共同運転機能は、当面の間、重要なものであり続けるでしょう」と述べた。「私たちの 使命は、高度な運転支援から完全な自動運転へと段階的に移行することであり、まずすべての運転シナリオを完全に洗い出すという明確なロードマップを持っています。クローズドループでのデータ操作、ソフトウェアの反復開発、量産性など、すべてを自社で開発していることで、私たちは安全性を大幅に向上し、業界のロングテール問題を解決するための最先端を走ることができているのです」。

テスラがFSDソフトウェアを有料化したように、XPengもXpilotを有料化した。XPengはバージョン3.5の価格を明らかにしなかったが、XPengの広報担当者は、バージョン3.0は現在2万人民元(約35万5400円)で買い切るか、または年間サブスクリプションで支払うことができるとTechCrunchに語った。

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Xpilot 4.0でフルシナリオのポイントツーポイントADASを実現

XPengが2023年前半に展開を予定しているXpilot 4.0は、完全な自律性を目指すレースでの優位をもたらすことになるだろう。この計画でXPengは、クルマを起動してから駐車するまで、ならびにその間のすべての場面のフルシナリオの、アシスト付きスマートドライビング体験を提供する最初の企業となることを目指していいる。

このバージョンのXpilotは多大な計算能力を必要とするため、XPengはバージョン4.0のためのハードウェア・アップグレードを開発している。同社はその声明の中で「508 TOPS ECUの計算能力を、2つのOrin-X自動運転システム・オン・ザ・チップ(SOC)ユニットでサポートしています。800万画素のフロントビュー双眼カメラと290万画素のサイドビューカメラ(これらで前後左右をカバー)、そして高度に統合された拡張可能なドメインコントローラーを搭載しています」と述べている。

XPengは、Xpilot 4.0の市場投入準備を行う中で来年末までに、高速道路でのNGP走行距離7500万マイル分、市街地でのNGP走行距離2200万マイル分のデータ収集、さらに自動駐車機能であるValet Parking Assist(VPA)の普及率90%を目指している。

XPengはまた、これらのADASを量産する際の安全性の重要性を強調し、スマートドライビングはその1つの側面に過ぎないとした。スタートアップは、ユーザーインターフェイスとオペレーティングシステムのアップグレードを発表した。Xmart OS 4.0は、車の周囲の環境を3Dで表現し、詳細な表示を行うことを約束した。XPengは、ドライバーがよりスムーズに運転できるように、独自の音声アシスタントのバージョン2.0も提供しようとしている。

最後に、テスラがFSDベータ版ソフトウェアをテストしたいドライバーのために安全性スコアを公開すると同時に、新しい保険のために大量のデータを取得したように、XPengはXpilotを起動する前にドライバーがXpilotの限界を理解できるようにするための安全性テストを公開している。ドライバーにはスマートドライビングスコアが表示されるが、XPengはその正確な提供時期を明らかにしていない。

5分で最大200kmの走行が可能になるスーパーチャージャー

もしXPengが未来のスマートモビリティーのエコシステムを作りたいのであれば、そのための電力が必要だ。XPengは、すでに中国全土で1648カ所の無料充電ステーションと439カ所のブランド充電ステーションを展開しているが、今回のTech Dayでは、800Vの高電圧を持つシリコンカーバイド製の量産型充電プラットフォームをベースにした次世代の「X-Power」スーパーチャージャーを生産する計画を明らかにした。

X-Powerチャージャーは、わずか5分でEVが200kmまで走行できるだけの電力を供給することができ、1台のスーパーチャージャーで平均30台の車両を同時に充電することができるとXPengはいう。またXPengは、軽量の480kWの高電圧スーパーチャージャーバッテリーを導入する予定だ。このバッテリーは車両と一緒に納品されるためオーナーは初回の充電にそれを使うことができる。このスーパーチャージングネットワークをサポートするために、XPengは電池と移動式車両の形の充電設備を立ち上げるという。

XPengは、この新しい充電技術がいつ市場に出るかについては明言していない。

地上走行もできるフライングカー

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XPengはこのイベントで、世界トップの、低高度有人フライングカーメーカーになるという新たな目標を明らかにした。そして、第6世代のフライングカーの計画を発表した。しかし、これはただのフライングカーではない。路上も走行できるようになるのだ。

イベント中に上映されたビデオでは、Xpeng P7よりもさらにセクシーなクルマが、折り畳み式のローター機構によって普通の車からフライングカーに変身するという映像が示されていた。XPengによれば、この低高度フライングカーの重量はP7の50%になり、道路走行用のステアリングホイールと飛行モード用のシングルレバーを備えているという。

また、この新型フライングカーには、周囲の環境や天候を十分に評価し、離陸前に安全性の評価を行うことができる高度な環境認識システムが搭載されるという。システムは収集したデータを運行目的に照らし合わせて評価し、安全な離着陸を確保し、飛行中は高度な知覚と飛行制御アルゴリズムを用いて障害物を回避する。

XPengの関連会社であるアーバンエアモビリティ(UAM、都市型飛行移動)企業のHT Aeroが開発しているこの新しい装置は、早ければ2024年には量産が開始される予定だ。最終的なデザインは来年中に決定される予定だが、シャオペン氏によれば100万人民元(約1780万円)以下のコストを目指しているという。

先週XPengは、HT Aeroの5億ドル(約567億8000万円)のシリーズA資金調達を主導した。HT AeroはXPengのために他のUAM機も製造しており、直近ではXPengの第5世代のフライングカーである2人乗りのXPeng X2を製造している。XPengの広報担当者がTechCrunchに語ったところによれば、第6世代のフライングカーはX2同様の、たとえばオフィスから空港への移動などの、飛行時間が30分以内の都市部での利用が想定されているという。XPengの狙いは消費者に直接販売することで、低高度飛行規制がどのように変化して、そのかなり早い市場投入戦略に対応するのかが注目される。同社は、2024年までに民間用のフライングカーを量産するために、規制当局とどのように協力していくかについては、詳しく述べていない。

ロボットポニーに乗ってスマートモビリティへの道へ

XPengは2021年9月、子どもが乗って遊ぶことのできるポニー(子馬)型ロボットを発表した。人間の感情を察知することができる明敏な四足動物となることが理想だ。XPengはTech Dayにおいて、このポニーのようなスマートロボットが、自動車よりもはるかに複雑な自律性の課題に対応できる、統合スマートモビリティシステムのインテリジェントなプラットフォームになると考えていることを詳しく説明した。

Xpengのロボットポニーにおやつを積み込む女性。Xpengの2021年Tech Dayで発表されたビデオより

そして、それは子どもだけのものではない。XPengはプレゼンテーションの中で、このかわいいポニーのロボットが、オフィスでスナックやその他の小包を配達するのに使えることを示すビデオを上映した(そして同じビデオの中で、XPengは同じ仮想オフィスの中をうろうろしている別のロボットをからかい気味に描いていた。それはXiaomの不気味なロボット犬にどことなく似ていた)。

このロボットは、多様な環境と複数のターゲットを認識するように訓練され、3Dでルートプランニングを行い、顔、体、声紋によってユーザーを認識することができるようになるとXPengはいう。また、動的音響マッピング、バイオニック聴覚、バイオニック嗅覚、さらには足裏や指紋によるタッチや皮膚のセンシングによるバイオニック触覚体験などの技術を実験している、XPengのロボットは、360度カメラモジュールとLiDARセンシングシステムに加えて、物体認識と音場認識技術を備えており、やり取りする環境の最も正確なモデルを得ることができる。

XPengの広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、このロボットポニーの市場投入までのスケジュールはまだ決まっていないものの、開発段階のプロトタイプはあるという。

声明の中で同社は「より高度なターゲット認識と環境との正確なインタラクション、より複雑な地形での移動を可能にする3Dルートプランニング、そして強化されたバイオニックな感覚を利用することで、XPengはスマートモビリティの未来のために、より広いモビリティ、より高度な自律的プランニング、そしてより強力なマンマシンインタラクションをサポートする、より大きなアプリケーションシナリオを実現します」という。

画像クレジット:Xpeng

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

【コラム】「完全自動運転の電気自動車」という革命には「設計」の革新も必要だ

1世紀以上前、内燃機関の出現によって、私たちは馬車の時代を脱し、自動車の時代に入った。馬の撤退とともに、ドライバーの快適性と安全性を重視した車両設計が台頭し始めた。

それ以来、社会はある種のクルマの設計を受け入れるようになった。つまり、ガソリンを動力とし、歩行者や他の道路利用者への配慮が不十分で、しばしば注意散漫な人間によって運転されることがあるというものだ。今日、モビリティはまた別の大きな変化を遂げつつある。そして私たちは次なるものを構築しようとしている。それは完全自動運転の電気自動車である。

自動運転車(AV)は今や、車両の設計方法、使用方法、そして誰に役立つかを再考することを通して、変革の機会を提供している。

この変革を支援するために、私たちは、Coalition for Safe Autonomous Vehicles and Electrification(SAVE、安全な自動運転車と電化のための連合)の立ち上げを発表する。SAVEの創設メンバーであるZoox(ズークス)、Nuro(ニューロ)、Local Motors(ローカル・モーターズ)は、安全な自動運転システムの構築、完全電動プラットフォームへの自動運転車の配備、すべての人のモビリティとアクセスを向上させる新しい車両設計の採用という、3つの基本原則に沿って結束している。

従来の車両設計では十分ではない

今日、私たちは、1人乗りのクルマによって促進される渋滞、ガソリン車による汚染、不均衡なアクセス、増加する交通事故死亡者数などの問題を抱えている。SAVEは、政策立案者、業界のリーダー、そしてアドボケイトたちを団結させ、私たちのコミュニティを自律性を持って改善しようとしている。この自律性には、クルマの再考も含まれている。

クルマの設計変更なしに自動運転車を構築することは、ダイヤル式の携帯電話を構築するようなものである。

SAVEのメンバーは、誰もが利用できるモビリティの未来のためのクルマの設計を進めている。Zooxが開発した自動運転車は、共有されるように設計されており、従来の車にはない100を超える安全革新が盛り込まれている。

Nuroは、クルマの外にいる人の安全のために設計された無人配送用自動運転車を開発している。これにより、フードデザート(食の砂漠)の食料品へのアクセスを改善できる。

Local Motorsは、障害者のアクセシビリティを向上させる設計革新により、交通機関とのファーストマイルおよびラストマイルの接続を提供するシャトルバスを構築している。

AVは誰にとっても安全なクルマづくりにつながる

私たちの道路の公衆衛生危機は、2020年に推定3万8680人の死亡をもたらした。自動運転車は、ドライバーのミスや選択(飲酒運転、スピード違反、注意散漫など)が重要な要因となっている死者をともなう衝突事故の94%を減らすのに役立つ可能性がある。しかし、自動運転車と新しい車両設計を組み合わせることで、さらに大きな改善を達成できるだろう。

今日の道路は、1989年以来と比べて、歩行者にとってより危険な状態になっている。歴史的に車両は、外部の人々ではなく、ドライバーの安全と快適さのために設計されてきた。そのため、歩行者や自転車にとってより致命的な車両サイズが増え続けている。ピックアップとSUVは現在、年間新車販売台数の約70%を占めており、衝突事故で歩行者を死亡させる可能性は2倍から3倍高くなっている。

シートベルトとエアバッグが乗員の安全性を大幅に向上させたように、自動運転車は車外の人々の安全を大きく変える機会を提供する。バージニア工科大学の最近の研究によると、無人配送用自動運転車は、設計ベースだけでも、致死的な衝突事故や負傷事故を約60%減らすことができるという。加えて、Zoox車の外部照明と音響システムのような新しい安全革新は、自動運転車と、歩行者や他の道路利用者とのコミュニケーションを可能にする。

ゼロエミッションAVは、排出量を削減し、効率を向上する

輸送の未来はゼロエミッションである必要があり、それが私たちが完全電気自動車を基礎から徹底的に作り上げようとしている理由である。

U.S. Environmental Protection Agency(EPA / 米国環境保護庁)によると、輸送セクターは温室効果ガス排出量が最も多く、その汚染が生命を脅かす小児喘息の発生率を高め、特に有色人種のコミュニティに大きな影響を与えているという。

しかし、1人乗りのガソリン車で埋め尽くされた混雑する道路の状況は、電気自動車でもまったく同じことである。そのため、自動車の使い方を根本的に変える必要があるだろう。

電気自動運転車を共有フリートに幅広く導入し、交通機関や能動輸送と組み合わせることで、2050年までにCO2排出量を80%削減することにつながる可能性がある。さらに、複数の人に電気とバッチによる配送を行うことで、配送用自動運転車は2025年から2035年までに4億700万トンのCO2排出量を削減し、10年間にわたって米国の4大都市のすべての家庭に電力を供給することによる排出量を、効果的に相殺することに貢献するだろう。

AVはアクセス可能で公平な移動オプションを提供する必要がある

クルマがあれば仕事に就く可能性は4倍になり、安価な共有自動運転車サービスを利用すれば家計費を大幅に削減し、低所得層の米国人を新たな仕事の機会に結びつけることができる。

さらに、配送用自動運転車は、フードデザートで暮らす2000万人の低所得者層の米国人のうち、1400万人(70%)の生鮮食料品へのアクセスを改善するのに役立つ。

車両は伝統的に健常者を中心に設計されており、障害者や高齢者が利用できる移動手段の選択肢が限られている。自動運転車の導入は、移動を制限する障害を持つ2550万人の米国人が利用できる自動車を設計する新たな機会を私たちに与えてくれる。それは、障害を持つ人々に推定200万の新たな雇用機会をもたらす可能性がある。

規制の近代化がAVの最大のメリットを引き出す

議会は2021年に入り、切実に必要とされている補修に資金を提供し、電気自動車の消費者への普及を加速させるため、米国のインフラへの世代間再投資を検討している。しかし、新しい道路を同じように使うだけでは十分ではない。

議会は連邦政策を近代化し、道路がどのように使われているかを再考する機会を捉えなければならない。安全目的を維持しつつ、連邦車両基準を更新することは、より安全な道路、アクセスの拡大、そしてより持続可能で効率的な輸送セクターを提供する自動運転車の展開を促進するであろう。

そうでなければ、舗装されたばかりの道路でもう一度缶を蹴る(難題への対応を繰り返し先送りする)ことになるだろう。

編集部注:本稿の執筆者はMatthew Lipka(マシュー・リプカ)氏、Bob de Kruyff(ボブ・デ・クルイフ)氏、Bert Kaufman(バート・カウフマン)氏。マシュー・リプカ氏は、SAVE Coalitionの設立メンバーでNuroの政策責任者。ボブ・デ・クルイフ氏はSAVE Coalitionの設立メンバーでLocal Motorsのエンジニアリング担当副社長。バート・カウフマン氏はSAVE Coalitionの設立メンバーで、Zooxの企業および規制関連業務の責任者。

画像クレジット:Artur Debat / Getty Images

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(文:Matthew Lipka、Bob de Kruyff、Bert Kaufman、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】GMC Hummer EVにしびれる。3つのモーターと四輪操舵ですばらしいスピードとハンドリングを実現

11万ドル(約1230万円)のGMC Hummer EV(ジーエムシー・ハマー・イーブイ)は、最高のオフローダーであるとともに、高級セダンの快適さとスポーツカーのスピードを併せ持つ、欲張りなマッシュアップだ。そしてトラックとしての荷台を備える。GM(ゼネラルモーターズ)は、この車をスーパートラックと呼ぶが、そのとおりだろう。

GMのテストコースでHummer EVを運転してみて、いくつかのことがすぐにわかった。まず、この巨大なHummer EVは、十分なパワーと優れた四輪操舵のおかげで、運転が楽しい。次に、インフォテインメントシステムと運転席のメーターパネルは美しいが、非常に込み入っており、時折表示に遅れが生じる。最後に、Hummer EVは、GMの「Ultium(アルティウム)」プラットフォームが、いかに新規性のある機能や特徴を車に持たせることができるかを示す、絶好の例となっている。

GMの広報担当者は、筆者に運転させる前、あまり大きな期待は抱かせなかった。GMは、Hummer EVの運転や操作の仕方についてのみ説明し、具体的な車両の仕様、性能、入手状況などについては答えられないとしていた。カメラの使用は禁止され、筆者の携帯電話にセキュリティテープを貼るほどだった。筆者がHummer EVを運転したのはわずか30分だけで、すべてミシガン州ミルフォードの僻地にあるGMの試験場奥地でのことだ。

留意すべきは、その試走は量産前の車両で行われたということだ。必要なものはすべて揃っているといわれたが、一部の内装材や付加的な騒音防止材など、いくつかの部材が欠けていた。

Hummer EVで岩場を越えたり、未舗装の道路を突っ走ったり、GMの高速テストコースで時速95マイル(時速約153 km)を叩き出したりした。そして、いろいろなことがわかった。Hummer EVは、どこへでも行けて、何でもできるクルマだ。岩場を登ることも、狭い駐車場に入れることも、大人5人とその荷物を快適に運ぶこともできる。3秒で時速60マイル(時速約97 km)に達し、四輪操舵のおかげで、見た目よりもずっと小回りが利く。

GMCHummer EV、2021年9月25日土曜日、ミシガン州ミルフォードにあるゼネラルモーターズのミルフォード試験場にて(画像クレジット:Steve Fecht for GMC)

四輪操舵が最高

Hummer EVには、楽しい仕掛けがある。この大きな幅広の車は、道路上をのろのろと走り出すが、それはあっという間に軽快な走りに変わる。電気モーターと四輪操舵により、ピックアップトラックよりも軽快に走り、大型クロスオーバー車よりも応答性が良い。つまり、Hummer EVはピックアップトラックではなく、頑丈で幅広のスポーツカーのような走りをする。

往年のハマーは、耐久性のあるトラックのように、圧倒的なパワーが感じられた。このHummer EVもやはり止めることのできない感じがあるが、今では高速道路でも山奥の小道でも同じように快適に走ることができる。購入者は、Hummer EVの性能のために快適さを譲歩する必要はない。過去のハマー(そして現在のJeep[ジープ]や4Runner[フォー・ランナー])は、オフロード性能のためにオンロードでの乗り心地を犠牲にしていたが、Hummer EVでは何も失われていないように見える。あるボタンを押せば、岩場を登り、別のボタンを押せば、ほとんどのスポーツカーを凌駕する走りを見せる。

その公式は、3つの電気モーター+四輪操舵だ。これは秘密の公式というわけではなく、Tesla(テスラ)のCybertruck(サイバートラック)にも同じ組み合わせが搭載されている。

Hummer EVの四輪操舵のインパクトは簡単には語れない。後輪は最大10度まで舵角を変えることができ、全モデルに標準装備されている。「CrabWalk(クラブウォーク、カニ歩き)」と呼ばれる最も極端な使用例では、四輪操舵により、まるで氷の上のように左右に滑るように動き、5人乗りのピックアップトラックというよりも後輪駆動のフォークリフトのような感覚で走行することができる。

後輪操舵は1980年代に登場したが、当時はスポーツカー以外にはほとんど採用されなかった。しかし、2000年代初頭から再度使われ始め、GMは2002年から2005年までハーフトントラックのSuburban(サバーバン)とSilverado(シルバラード)に搭載していた。現在では、いくつかのセダンに搭載されており、一部のモデルでは2~3度、超高級モデルでは最大10度の転舵が可能だ。これらのシステムは、一部の購入者に向けた高価なオプションだが、Hummer EVでは標準装備されており、その機能と魅力に欠かせないものとなっている。

また、この四輪操舵により、Hummer EVは同等のサイズの車よりもはるかに小回りが利く。転回は速く、バックも楽になり、大型SUVというよりファミリーセダンのように扱えるピックアップトラックだ。回転半径は37フィート(約11 m)で、フルサイズピックアップのシボレー・シルバラードよりもコンパクトカーのシボレー・ソニックに近い。

このシステムを試せたのはほんの数分だけだったが、四輪操舵に慣れが必要ということもなく、タイトな転回を補うために自分のドライビング感覚を調整する必要もなかった。自然に機能し、自然に感じられた。後部座席ではこの違いを感じられるかどうか気になるところだ。

四輪操舵は、デフォルトでアクティブになっているが、オフにすることもできる。高速道路を走行しているときには、Hummer EVの前輪と後輪は同位相で動くため、けん引するトレーラーの揺れがなくなり安定するという(検証する機会があるとよいのだが)。

この四輪操舵機能により、Hummer EVは斜めに走ることができる。クラブウォークを作動させるには、ドライバーが車を止めて、いくつかのメニューボタンをクリックする必要がある。一旦作動させると、前輪と後輪が連動して転舵するようになり、今までにない感覚で車を横へ向かって走らせることができる。ハンドルを左に切れば、車体は左斜めに滑るように移動する。車の前部が左に向くのではなく、車両全体が左に流れて行くのだ。四輪操舵はスピードを出すためのものではなく、駐車やロングドライブを快適にし、見る者を感動させるためのシステムだ。そして、これまでにはない感覚だ。

デトロイトで開催された2021年のWoodward Dream Cruise(ウッドワード・ドリーム・クルーズ)においてGM社員がHummer EVの能力を示す熱いデモを行っている。その様子は以下の動画をご覧いただきたい。

Watts to Freedom=WTFモード

Hummer EVは、本気を出せば、とんでもない加速を見せる。Watts to Freedom(ワッツ・トゥ・フリーダム、WTF)モードと呼ばれる発進モードはすばらしく、ドライバーは3秒で時速60マイル(時速約97 km)に達する。これは超絶な速さだ。標準的な車両モードでの普通の発進でも、Hummer EVはスムーズに加速するが、WTFモードのようにドライバーをシートに貼り付けるほどではない。

どのような車でもこの加速があるだけですばらしいことだが、5人乗りのピックアップトラックでそれを実現するのは、さらに衝撃的だ。この四輪駆動のピックアップは、余裕の駆動力によりロケットのような勢いで飛び出していく。これは、テスラのModel X(モデルエックス)など、他の電気自動車からも受けるスタート感覚に似ている。

通常の走行モードでは、Hummer EVのトルクは抑えられているが、それでもなおドラッグレースにも足りる十分な速さがある。加速はモニターされた上で制御されており、このチューニングの精度は評価に値する。

Hummer EVのワイドなボディは、安定した乗り心地につながっている。試験場の裏道でHummer EVを走らせ、砂利道ではテールを振ってみた。アグレッシブなコーナリングでは、車体はしっかりとフラットを保ち安定している印象を受けた。バンクのあるテストコースでも、他の車と同じようにしっかりとした頑丈さが感じられた。トラックの底部に詰め込まれたバッテリーにより、重心は低く保たれ、Hummer EVは、以前のガソリンモデルのようにトップヘビーになることはなかった。

高速周回コースでは、何もしなくても時速90マイル(時速約145 km)に達した。無理をしている様子はなく、アクセルを踏めばあっという間にスピードに乗る。Hummer EVは、ラングラーの35インチ(約89 cm)の巨大なタイヤで道路を疾走し、最高のクルーズを提供する。また、タイヤノイズも気にならない。

Hummer EVは静かではない。アクセルを踏むと、2つの音が聞こえてくる。3つの電気モーターがうなる音と、より鈍重で電気ノイズのように聞こえる人工的な回転音だ。オフロードモードでは、増えたロードノイズをかき消すほど、人工的な音が大きくなる。しかし結局のところ、不快ではないと感じた。これらの音は激しくなく、常にバックグラウンドに溶け込んでいる。GMのエンジニアは、ドライバーが音によるフィードバックを必要とし、無意識のうちに期待していると同社は判断したと説明する。

筆者はHummer EVで数十の大きな岩を乗り越えるボルダリングを試した。乗り越えられたか?もちろん。難なく?そうでもない。Hummer EVは岩の上を滑り、トラクションを維持するのに苦労した。念のためにいっておくと、今回の試走は、GMがビーチボール大の岩を多数敷き詰めたテストコースで行われ、10フィート(約3 m)のセクションを試すことができた。Hummer EVのオフロード性能を結論づけるには、今回の体験だけでは足りないだろう。

工業製品的な使用感

インフォテインメントシステムについては、あまり詳しく見る機会がなかった。それでも、いくつかの発見はあった。1つは、Epic(エピック)のUnreal(アンリアル)グラフィックエンジンのおかげで、このシステムが美しいことだ。ビデオゲーム用に開発されたUnrealエンジンのこの特別なビルドを使用したのは、Hummer EVが初めてだ。このシステムは美しいが、量産前のテスト車両ではラグがあり、入力に反応するまで、常に数秒を要した。これは、画面上でオプションを選択しても、機械的なコントローラー(テレインセレクトのダイヤルなど)を使用しても同じだった。

また、インフォテイメントのデザインは、表示は美しいものの、複雑で込み入っており、いかにも人工的な工業製品のようだ。GMのエンジニアは、大げさなアイコンやメニューを多数使ったインターフェイスにより、画面のグラフィック能力を誇示しようとしたのではないだろうか。グラフィカルな要素は、使いやすさよりも見た目の美しさを重視しているように見える。

GMは、Hummer EVのカメラの性能のデモに熱心だった。車両には18台のカメラが搭載されており、そのうちの数台は車体の下に取り付けられている。これは、不整地を走行するときやトレーダージョーズで駐車するときにドライバーをサポートするためのものだ。これらのカメラは公表されている通りに機能し、一部のカメラには汚れを除去するクリーナーが内蔵されている。

また、GMがエアコンのボタンをタッチスクリーンのメニューに含めるのではなく、物理的なボタンとして残しているのはうれしいことだ。テスラやRivian(リビアン)など、他のEVメーカーは、温度設定ダイヤルやシートヒーター、さらにはベントの向きのコントロールさえもタッチスクリーンに追いやっているが、Hummer EVでは、そうした操作のためにロッカースイッチが並んでいる。

運転席からの視界はすばらしく、ドライバーは、遠くまで見渡すことができる。運転席と助手席の足元と上部には十分なスペースが確保されており、広々としている。後部座席は足元が若干狭くなっているが、それでもワイドボディのおかげで余裕がある。フルサイズSUVといえば、前は広く、後ろは狭いというものだろう。

新しい電動パワートレイン

GMは、Hummer EVのパワートレインの詳細を公表している。Hummer EVエディション1は、ユニボディのフレームに24モジュールのバッテリーシステムを搭載している。これは、GMが2020年3月に発表したUltiumプラットフォームを、同社で初めて採用したものだ。

関連記事:GMが電気自動車戦略のコアとなるモジュラー式アーキテクチャー「Ultium」を公開

3つのモーターを搭載するメリットはいくつかある。これらの電気モーターにより、ハマーの前後輪両軸に電子制御式のディファレンシャル機構を装備することができ、低トラクション時に効果を発揮する。前輪には「eロッカー」を搭載し、後輪の2つのモーターは物理的には接続されていないがソフトウェアによって仮想的にロックされており、トルクベクタリングにより4輪のトラクションを制御でき、各タイヤの駆動や停止はミリ秒単位で制御できる。

Hummer EVのバッテリーについて、バッテリーが原因で二度のリコールを行ったChevy Bolt(シボレー・ボルト)に使用されているバッテリーパックと同様のものではないかと聞いてみた。GMの広報担当者は、GMはLG(エル・ジー)と共同でセルを開発しているが、Hummer EVのパックはミシガン州デトロイトのブラウンズタウン工場で製造しており、このバッテリーはボルトに使われているものよりも新しいセル化学を採用していると説明した。最終的には、オハイオ州ローズタウンにLGと共同で設立した施設でUltium電池を製造する予定だという。

残る疑問

Hummer EVには、筆者が試乗や使用できなかった機能が満載されている。例えば、GMの自動運転モードの最新版である「スーパークルーズ」では、高速道路での車線変更が可能になった。また、自動でタイヤの空気を抜く機能や、26インチ(約66 cm)の水深でも走行できる機能、100マイル(約161 km)の走行に必要な充電を10分で行う機能なども搭載されているという。残念ながら、ルーフパネルを外したり、いわゆるフランクに収納された状態を見たりすることはできなかった。また、インフォテインメントシステムも詳しく見てみたい。没入感は得られそうだが複雑そうでもある。

GMは、Hummer EVのいくつかの点について公表しておらず、今回の試乗でもほとんど何も明かされなかった。価格の詳細と入手状況は未だ不明だ。EPA(米国環境保護庁)の公式な航続距離評価は未発表であり、牽引力や運搬能力もまだわからない。

日頃から大型トレーラーを牽引している筆者には、Hummer EVは運搬や牽引のために作られたものではないように感じられた。パワーはあるが、ユニボディのフレームとエアサスペンションが、シボレー・シルバラード1500やFord(フォード)F-150よりも低い牽引力を物語っている。Hummer EVの牽引力は、ハーフトン・ピックアップ(8000~1万2000ポンド[約3600~5400 kg])よりもフルサイズSUV(6000~8000ポンド[約2700~3600 kg])に近いと推測している。もしそうであれば、Hummer EVはATV(四輪バギー)や小型ボートのトレーラー、そしてカーゴトレーラーなどは牽引できるということだ。しかしその仕様では、トラベルトレーラーについては小型か超軽量タイプ以外を牽引することはできないだろう。また、荷物を運ぶことがバッテリーの航続距離にどう影響するのかについても不明だ。

電気自動車革命

ここからは実際の状況だ。GMはナーバスになっている。Hummer EVは2020年10月に発表され、2021年秋にはディーラーに並ぶ予定だった。2021年10月現在、自動車産業に影響を与える世界的なサプライチェーンの危機に加え、同社のもう1台のEVであるシボレー・ボルトのバッテリーのリコールに思いの他注力しなければならない状況だ。関係者によると、GMは、シボレー・ボルトにおいて2回のバッテリーリコールを行ったことにより、消費者からの信頼について神経質になっているという。

ハマーのEV劇場の主役は、GMのUltiumプラットフォームだ。GMが2020年にEVの青写真を発表した際には、後輪駆動、前輪駆動、全輪駆動など、バッテリーと駆動ユニットの組み合わせにより19種類の構成で車両を作ることができるとしていた。また、400ボルトと800ボルトのバッテリーパックも用意するとし、このデザインはこのアメリカ最大の自動車メーカーに多くの選択肢を与えることを意味している。ハマーのEVは、そのUltiumプラットフォームの能力を実地で示す概念実証だ。もしそれが、Hummer EVの圧倒的なスピードと優れた操縦性を実現するのであれば、ロードスター、クロスオーバー、または7人乗りのファミリーカーに何が提供できるかも明白だ。

Hummer EVは、GMの仰々しく、注目を集めるスーパー電気自動車として成功している。最新のHummer EVは、これまでのハマーと同様に法外であり過剰だ。GMが何か特別な電動ピックアップトラックを作ったことは、ほんの数分でわかる。大きくて、重い電気自動車でありながら、とてつもないスピード、本格的なオフロード性能、充実した荷室容量など、すべてを備えている。Hummer EVにはすべてが詰まっている。

画像クレジット:GMC

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(文:Matt Burns、翻訳:Dragonfly)

テスラは標準モデルEVに旧来の安価な鉄ベースのバッテリーのみを採用

Tesla(テスラ)は米国時間10月20日、標準モデルであるModel 3とModel Yに、グローバル市場全体で鉄ベースの電池を採用すると発表した。同社の第3四半期業績報告では、テスラのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏が何カ月も前から示唆していた、この安価なバッテリーの役割が大きくなっていることが裏付けられていた。

このLFP(リン酸鉄リチウム)電池は、旧来の安価な電池化学技術を利用したもので、中国では人気がある。これに対して中国以外の地域では、EV(電気自動車)用電池はニッケル・マンガン・コバルトやニッケル・コバルト・アルミニウムなどのニッケル系が主流だ。しかし、LFP電池にはコスト削減だけでなく、コバルトやニッケルなどの希少な原材料に依存しないという魅力もある。特に、テスラのCFOであるZach Kirkhorn(ザック・カークホーン)氏は、水曜日の投資家向け電話会議で、ニッケルとアルミニウムの価格に影響が出ていることを認めている。

LFP電池が中国以外であまり見られない理由は、中国がLFP市場を独占することを許している一連の重要なLFP特許に関係している。

だが、それらの特許は間もなく切れるため、テスラはその時期を狙っているように見える。実際テスラの幹部は、LFP電池の生産を車両の生産地と同じ場所で行うつもりだと示唆している。

関連記事:テスラが旧来のリン酸鉄リチウムバッテリーに賭けていることは、メーカーにとって何を意味するのか

テスラのパワートレイン・エネルギーエンジニアリング担当SVPであるDrew Baglino(ドリュー・バグリーノ)氏は、投資家に対して「私たちの目標は、車両の主要部品をすべて同じ大陸上で生産すること、たとえ距離は近くなくても車両が生産されている場所と同じ大陸で生産することです」と語った。「それが私たちの目標です。私たちはその目標を達成するために、社内でサプライヤーと協力して、最終組立レベルだけでなく、可能な限り上流レベルに遡れるように取り組んでいます」。

またテスラは、自社設計のカスタムセルを採用した4680バッテリーパックの最新情報を、ごく簡単に少しだけ発表した。テスラは、4680バッテリーは、より高いエネルギー密度と航続距離を実現できるとしている。バグリーノ氏によると、4680は構造試験と検証がすべて予定通り行われており、来年の初めには車両に搭載される予定だという。しかし、現行のスケジュールには満足しているものの「これは新しいアーキテクチャーであるため、予想外の問題がまだ存在する可能性があります」とバグリーノ氏は述べつつ「セル自身の観点からは、デザインの成熟度と製造の準備は、いまご説明したバッテリーパックのスケジュールに合致しています」と付け加えた。

画像クレジット:Tesla

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

テスラが過去最高の四半期純利益1852億円を達成、世界的チップ不足の中でもEV販売が絶好調

Tesla(テスラ)は引き続き収益性を高めている。米国時間10月20日に発表した第3四半期の純利益は16億2000万ドル(約1852億円)で、前年同期の3億3100万ドル(約378億円)の約5倍に増えた。世界的なチップ不足とサプライチェーンの制約が業界に影響を及ぼしているにもかかわらず、この過去最高の利益は記録的な売上高の達成によるものだ。

注目すべきは、売上の大半が同社のラインナップでは安めの電気自動車Model YとModel 3で占められているにもかかわらず、16億2000万ドル(約1852億円、GAAPベース)の利益を確保できたことだ。なお、同社は9月30日までの四半期で、ビットコイン関連の減損5100万ドル(約58億円)を計上した。

営業利益は20億ドル(約2286億円)で、前年同期の8億900万ドル(約925億円)から増加し、第2四半期の13億ドル(約1486億円)からは54%増となった。また、第3四半期の売上高は137億5000万ドル(約1兆5721億円)で、前年同期の87億7000万ドル(約1兆円)から56%増加し、2021年第2四半期の119億6000万ドル(約1兆3675億円)を15%上回った。

Teslaは自らをエネルギー、テクノロジー、持続可能性の企業と称しているが、その売上は大部分が依然として電気自動車の販売からだ。Teslaの自動車関連の売上高は、第3四半期に120億ドル(約1兆3680億円)となり、前年同期に比べ50%増加した。その自動車関連売上高のうち約2億7900万ドル(約318億円)は環境クレジットの販売によるものだ。これは2019年第4四半期以降、最低の水準だった。一方、Teslaの自動車事業の売上総利益(GAAPベース)は、過去最高の30.5%に急上昇した。

決算はアナリスト予想を上回った。Yahoo Finance提供の売上高のアナリスト予想は136億2000万ドル(約1兆5557億円)だった。Factset提供のアナリスト予想は、売上高が136億ドル(約1兆5550億円)、利益を13億ドル(約1480億円)としていた。

今のところ、同社の成功は(同社が製造・販売する太陽光発電システムや蓄電池という他の2つの製品ではなく)電気自動車を生産・販売できるかどうかにかかっている。、またFSD(Full Self-Driving)と呼ばれるソフトウェアを、製品を購入したオーナーが広く利用できるようにすることができるかどうかにかかっている。一部のオーナーにベータ版ソフトウェアを公開するという戦術をめぐって、規制当局によるTeslaへの監視の目が厳しくなっている

同社は第3四半期決算報告で「半導体不足、港湾の渋滞、計画停電などのさまざまな課題が、私たちが工場をフル稼働させようとする際に影響を与えています」と指摘した。このコメントは、需要が問題なのではなく、同社が制約を受けているのはサプライチェーンや物流のみからであることを示唆している。

蓄電池の販売量(メガワット時ベース)は、前年同期比で71%増加した。しかし、第2四半期から第3四半期にかけて成長が鈍化し、メガワット時ベースの販売量はわずか1.6%の増加にとどまった。

太陽エネルギーの分野でも同じストーリーとなった。Teslaは第3四半期に83メガワットのソーラーパネルを設置した。前年同期比で46%の増加、前四半期比で2.35%の減少となった。第3四半期に設置したパネルの数は、2021年の四半期決算の中で最も低水準だった。

今回の好決算は、第3四半期にModel 3およびModel Yの販売台数が記録的に増加したためだ。第3四半期に24万1300台の電気自動車を納入し、予想を大きく上回る結果となった。世界的なチップ不足の影響で、他の米国の自動車メーカーは販売台数を減少させた。

販売台数の大部分(約96%)は、新型のModel 3セダンとModel Yクロスオーバーだった。納入台数は、第2四半期から20%増加し、前年同期比で73%増加となった。

生産台数も伸びた。第3四半期に23万7823台を生産し、同社の記録を更新した。

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画像クレジット:Tesla

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードが約360億円を投じて英国のトランスミッション組立施設を電動パワーユニット工場に転換

Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)は、2億3000万ポンド(約360億円)を投じて、英国・ヘイルウッドにある自動車用トランスミッションの組立施設を、電動パワーユニット工場に転換すると発表した。これが同社初の欧州における電気自動車用コンポーネントの自社組立施設となる。

The Times(タイムズ紙)によると、この投資には英国政府が自動車変革基金を通じて提供する推定3000万ポンド(約47億円)の資金が含まれているという。この投資により、約5000人の自動車関連の雇用が地域に創出されると、同紙は伝えている。

この工場で生産されるパワーユニットは、フォードが将来欧州で販売する電気自動車の乗用車および商用車に供給され、同社の電動化に向けた目標達成を後押しすることになる。フォードは2021年2月、2030年までに欧州で販売する乗用車のすべてを電気自動車に、商用車の3分の2を電気自動車またはプラグインハイブリッド車にするという欧州戦略を発表。同社は10億ドル(約1140億円)を投じてドイツのケルンにある組立工場を改修し、2023年にはそこで同社初の欧州製となる量販電気乗用車の生産を開始する予定だ。

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この電動パワーユニットは、内燃機関自動車のエンジンとトランスミッションの代わりとなるもので、バッテリーから供給される電気の流れを管理し、電気モーターの速度や発生するトルクを制御する。フォードはその生産を2024年半ばに開始する予定で、年間約25万台程度の生産能力を計画している。このパワーユニットはケルンの工場または他の工場の組立ラインに送られるのかという質問に、フォードは答えなかった。歴史的に、ヘイルウッド工場で生産されたユニットは100%が輸出されており、フォードは、エンジンやトランスミッションを「6大陸15カ国以上に輸出し、海外での売上は年間約25億ポンド(約3900億円)に上る」英国最大の輸出企業の1つとなっているという。

「電気自動車の製造を確保するための激しい国際的な競争の中で、英国が確実に利益を得ることが我々の優先事項です」と、英国のビジネス大臣であるKwasi Kwarteng(クワシ・クワーテング)国会議員は、声明の中で述べている。「本日の発表は、政府の資金援助を受けたものであり、英国経済の将来性と電気自動車の生産拡大計画に対する大きな信頼の証しです。これにより、ヘイルウッドの誇るべき産業遺産が将来にわたって維持され、北西部の高技能・高給の雇用が確保されることになります」。

フォードが電気自動車の生産を拡大しようとしているのは欧州だけではない。この自動車会社は電動化に向け、2025年までに300億ドル(約3兆4300億円)の投資を用意しており、そのうちの1つである中国でも努力の成果が実り始めている。10月18日、中国で最初に製造された電気自動車「Mustang Mach-E(マスタング・マックE)」が組立ラインからロールオフされたのだ。中国の顧客は、フォードの直販ネットワークであるEVシティストアを通じて、年末までに現地生産のMach-Eを手に入れることができる。フォードは、2021年中に主要都市部で25店舗のEV販売店をオープンし、今後5年以内に100店舗以上に拡大する予定だという。

関連記事:フォードが電動化への投資を3.3兆円に引き上げ自社バッテリー研究開発を加速、30年までにEV比率40%

画像クレジット:Ford Motor Company

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォックスコンがSUV、高級セダン、路線バスのEVプロトタイプを公開

Foxconn(フォックスコン)は現地時間10月18日に開催した「HHTD21」イベントで、SUVとセダン、そして路線バスを含む3台の電気自動車のプロトタイプを発表した。YouTubeで公開されている公式動画Nikkei Asia(日経アジア)の報道によると、同社はEVに関して「もはや新参者ではない」と述べ、最大で年間1兆新台湾ドル(年間約4兆円)のビジネス展開を目指すという。

FoxconnはこれらのEVを「Foxtron(フォックストロン)」というブランドのもと、台湾のYulon Motor(裕隆汽車)と共同で開発した。裕隆汽車はLuxgen(ラクスジェン)という自社ブランドで高級車を展開している他、Nissan(日産自動車)やMitsubishi(三菱自動車)の車種を現地生産している自動車会社だ。今回公開されたプロトタイプは、高級セダン、SUV、路線バスの3車種で、それぞれ「Model E(モデルE)」「Model C(モデルC)」「Model T(モデルT)」と名付けられている。

これらの車両は、Foxconnが開発したソフトウェア / ハードウェアのオープンプラットフォーム「MIH」をベースとしている。基本的にはキットとして設計されており、EVブランドが独自の仕様で量産できるリファレンスデザインとして提供されるものだ。

Model Tバスは、早ければ2022年(できれば別の名前になることを願いたい)路上に登場する可能性があり、一度の満充電で走行可能な航続距離は400km、最高速度は120km/hとなる見込みだ。Taiwan News(台湾英文新聞)によると、このバスには、歩行者に注意を促す警告音を発する機能や、高度な温度管理、高い衝突安全性などの技術が搭載されているという。

Foxtron Model Cは、2023年までに台湾で販売が予定されている電気自動車のSUVで、高い効率性と停止状態から100km/hまで3.8秒で加速する動力性能を備える。FoxconnのYoung Liu(劉揚偉)会長によれば、価格は100万新台湾ドル(約400万円)以下になる見込みだという。2台より遅れて市場に投入される予定のModel Eは、イタリアのPininfarina(ピニンファリーナ)と共同でデザインされた高級パフォーマンスセダンで、最高出力750馬力、0-100km/h加速2.8秒、航続距離750kmという高い性能を発揮することになっている。発売時期は未定だ。Yulon Motorは、このデザインを採用する最初のEVメーカーの1つになるだろうと、同社のLilian Chen(嚴陳莉蓮)会長は述べている。

Foxtronが目指すのは、EVを販売する市場の近くで生産することによってコストを抑えるというトレンドを利用することだという。Foxconnは米国内にEV工場の建設を計画しており、先には資金繰りに苦しむLordstown Motors(ローズタウン・モーターズ)からオハイオ州の製造工場を買収すると発表した。この工場では、Lordstown Motorsの電動ピックアップトラック「Endurance(エンデュランス)」を製造するとともに、Foxconnが提携を結んでいるFisker(フィスカー)と開発したEVの生産を2023年末までに開始することを目指している。Foxconnは、欧州におけるEV生産計画の詳細も、近日中に発表するとしている。

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編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。本稿を執筆したSteve Dentは、Engadgetの共同編集者。

画像クレジット:Fabian Hamacher / reuters

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(文:Steve Dent、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

自動車メーカーにクラウドベースの分析を備えたダッシュボードを提供するUpstreamがセキュリティ強化のため約68億円調達

少し前のことになるが2015年に、研究者であるCharlie Miller(チャーリー・ミラー)氏とChris Valasek(クリス・バラセク)氏が、ソフトウェアの潜在的な落とし穴について自動車業界に警告し、自動車のサイバーセキュリティに関する法律作りを促すことを目的として、WiredのレポーターであるAndy Greenberg(アンディ・グリーンバーグ)氏が運転するJeep Cherokeeを遠隔操作でハッキングしたことがあった。ことはそれだけでは済まなかった。結果として、Jeepを所有するFiat Chryslerは140万台の車両をリコールし、さらに米国運輸省道路交通安全局に対し、1億500万ドル(約115億5000万円)の罰金 を支払うことになったのだ。

自動車サイバーセキュリティ企業Upstreamの共同創設者兼CEOのYoav Levy(ヨアブ・レビー)氏は、この出来事はJeepのブランドイメージに大きな打撃を与えただけではなく、同社にリコールにかかった費用として10億ドル(約1101億円)以上の損失を与えたと考えている。2021年8月下旬、イスラエルに拠点をおくUpstreamは、こうした遠隔操作によるハッキングが起きないよう保証するため、同社の自動車クラウドベースセキュリティを強化する資金として、6200万ドル(約68億円)のシリーズC資金調達を発表した。

「当社は、車両に送られるあらゆるデータを、メーカーのクラウドから、車両が受信する前の段階でモニターします。よい仕事ができた場合には、当社はそれらが車両に到達する前にブロックすることができます。当社は車両からアップロードされるコネクテッドデータやテレマティクスデータを分析し、携帯電話のアプリケーションや無線アップデートからデータを分析し、そのデータに異常が含まれているかどうかを探します」とレビー氏はTechCrunchに語った。

またUpstreamは、セキュリティオペレーションを強化するだけでなく、この資金を使ってデータ分析、保険テレマティクス、予測分析、ビジネスインテリジェンスにおけるサービスを拡充したいと考えている。レビー氏は、Upstreamが分析するデータの中にサイバーセキュリティとは無関係の異常を見つけることがよくあると言い、これをOEMを対象としたアプリケーションを立ち上げるさらなるインサイトを提供するチャンスだと考えている。

とはいえ、自動車のサイバーセキュリティ市場は2020年の19億ドル(約2162億)から2025年には40億ドル(約4400億)に増加すると予測されており、Upstreamはこの市場に専念するだけで、十分なのではないかと思われる。この成長の要因の1つとなっているのが、強化義務である。自動車基準調和世界フォーラム(WP 29)は、ヨーロッパ、日本、韓国で自動車を販売する自動車メーカーに、車両セキュリティオペレーションセンター(VSOC)で24時間年中無休で車両を監視することを要求するサイバー車両規制コンプライアンスを発行した。VSOCとは、インフラ、クラウド、データ、ファイヤーウォールを常時監視しているアナリストが大勢詰めている制御室である。米国にはそうした自動車業界へのサイバーセキュリティ関連の義務はないが、自動車メーカーはChrysler-Fiatと同じ運命をたどらならないよう、製品とブランドイメージを作りたいと望むようになっている。

Upstreamは自動車メーカーにクラウドベースの分析を備えたダッシュボードを提供する(画像クレジット:Upstream)

クラウドベスの分析ツールとダッシュボードに加え、VSOCサービスもUpstreamが提供するサービスだ。レビー氏によると、Upstreamは現在同社のプラットフォームで米国、ヨーロッパ、日本の6つのOEMのコネクテッドカー400万台近くにサービス提供しており、路上を走るコネクテッドカーが増えるに従ってこの数字は増え続けると同氏は期待している。

「コネクテッドカーは毎年どんどん増えており、OEMが収集するデータは毎年倍増しています。これは車両やクラウドだけの話ではなく、車両対車両のインフラ、はるかに洗練されたモジュールや、車両内部でエッジコンピューティングを行っているコンピューター、ADASシステム、コンピュータービジョン、レベル2の自動運転、これはまもなくレベル3になりますが、これらを含めた話しです。こうしたコネクティビティーの複雑さにより、ハッカーが車両を乗っ取り彼ら自身のコードを注入しようとする際に、付け入る隙となるソフトウェアバグが生じるのは避けることができません」とレビー氏は語った。

誰かが車両を遠隔操作で乗っ取り、大音響で音楽を開始したり、車両を壁に衝突させる、といったことを考えると恐ろしく感じるが、レビー氏によると、ほとんどのハッカーは暴力を振るいたいのではなく、また車両に興味があるわけでさえないという。彼らが欲しいのはデータである。これは特に荷物を運ぶフリートに顕著で、ランサムウェア攻撃という形をとる。

「これは、あなたがクリスマスイブに配達会社で働いていて、突然ドアのロックが解除できなくなったり、エンジンをかけることができなくなる、といった状態だと想像してみてください。これはビジネスにとって好ましい事態ではありません」。

レビー氏は、こういう事態にこそ、クラウドベースのセキュリティが役立つという。車両を一度に1台づつ見るのではなく、フリートとコネクテッドデバイスのすべて、そしてインターネットから入ってくるデータに悪意のあるものがないかを俯瞰的に見ることができるのだ。

Upstreamのビジネスの進め方は、自動車メーカーに対しこの技術が必要であると説得することが中心となっているが、レビー氏はフリートが来年以降同社にとって大きなチャンスになるという。

今回のラウンドで、同社は2017年の設立以来、総額1億500万ドル(約115億7000万円)を調達した。シリーズCは、三井住友海上保険が主導し、I.D.I.Insurance、57 StarsのNextGen Mobility Fund、La Maison Partnersが新規に参加している。既存の投資家であるGlilotCapital、Salesforce venture、Volvo Group Venture Capital、Nationwide、DelekUSなどもこのラウンドに参加した。

レビー氏は、今まで関わりのあった投資家の一部は顧客でもあると述べた。Upstreamは、Alliance Ventures(Renault、Nissan、Mitsubishi)、Volvo Group Venture Capital、Hyundai、Nationwide Insurance、Salesforce Ventures、MSI、CRV、Glilot Capital Partners、およびManivMobilityからもプライベートに資金提供を受けている。

画像クレジット:Upstream

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

トヨタが米国でも車載用電池生産に約3800億円投資を発表、新会社を設立し2025年稼働を目指す

Toyota Motor(トヨタ自動車)は、他の大手自動車メーカーと同様に、電動化に向けて巨額の資金を投入している。同社は米国時間10月18日、米国での車載用電池生産に、今後約10年間で約34億ドル(約3800億円)を投資すると発表した。

この投資はトヨタの北米部門を通じて行われるもので、その第一歩としてトヨタの北米事業体であるToyota Motor North America, Inc.(TMNA)が、トヨタグループの総合商社である豊田通商とともに、米国で車載用バッテリー工場を新会社として設立する。2025年の生産開始を目指すというこの工場には、2031年までに約12億9000万ドル(約1430億円)の投資が予定されており、現地で1750人の従業員を新規雇用する見込みだという。なお、工場の場所は現時点では発表されていない。

今回の計画は、トヨタが2030年までに世界全体における電池供給体制の整備と研究開発を行うため、約1兆5000万円(約135億ドル)を投資するという大きな目標の一部であり、すでに電池開発の促進とラインナップの電動化に向けて巨額の投資を約束している他の自動車メーカーに追いつくためのものでもある。General Motors(ゼネラルモーターズ、GM)など他の大手自動車メーカーも同様の、しかしさらに大きな投資を発表している。例えばGMは、2025年までに350億ドル(約4兆円)を投じて、電気自動車の生産能力を増強し、30車種の新型EVを世界市場に投入することを計画している。

関連記事:GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

トヨタはこの新工場で、まずはハイブリッド車用のバッテリーを製造すると述べている。新工場の生産能力は明らかにされていない。

トヨタの新工場建設計画は、他の自動車会社が最近発表した計画と足並みを揃えるものだ。Ford(フォード)は電池メーカーのSK Innovation(SKイノベーション)と共同で、114億ドル(約1兆3000万円)を投じて、米国内に2カ所のEV用バッテリーの製造拠点を設けると発表している。また、Fiat Chrysler(フィアット・クライスラー)とGroupe PSA(グループPSA)の合併により誕生した自動車会社のStellantis(ステランティス)も、LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)と予備的な契約を結び、北米でバッテリーセルとモジュールを生産すると発表したばかりだ。

しかし、今回のトヨタの発表は、これら他の自動車メーカーとは少々異なる印象を与える。トヨタが他の電池メーカーと提携せず、車載バッテリーの完全な内製化を計画していることを明確に示すものだからだ。

トヨタは他の自動車メーカーと比べると、電気自動車の展開で遅れを取っている。同社は現在、米国でBEV(内燃機関を搭載せず、バッテリーだけで走る純粋な電気自動車)を販売しておらず、いくつかのプラグインハイブリッド車やハイブリッド車をラインナップに揃えているだけだ。しかし、2021年6月にはクロスオーバーSUV型BEVのコンセプトカー「bZ4X」を公開し、2022年にその量産モデルを発売すると発表した。同社は2025年まで世界全体でBEVのラインナップを15車種へと拡大することを目指している。

関連記事:フォードとSKが1.27兆円をかけEVとバッテリーに特化した2つの製造キャンパスを米国に建設

画像クレジット:HECTOR RETAMAL/AFP / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ポルシェのEV「タイカン」の販売台数がフラッグシップスポーツカー「911」を超える

Porsche(ポルシェ)の電気自動車Taycan(タイカン)の2021年1月〜9月の販売台数が、内燃機関を搭載した同ブランドを代表するスポーツカーであるポルシェ911の販売台数を上回った。2019年末に発売されたTaycanにとってマイルストーンとなる。

10月15日に発表された販売台数をみると、ポルシェは第1〜3四半期に全世界で21万7198台を販売し、前年同期比で13%増となった。タイカンの販売台数が約3倍に増加したことに加え、人気の高いガソリン車Macan(マカン)の販売増も貢献した。こうした数字は、ポルシェが2019年から2020年にかけての9カ月間に経験した販売台数5%減から回復したことを示している。

ガソリン車であるPorsche Cayenne(カイエン)の2021年1〜9月の販売台数は6万2451台で、ポートフォリオの中で最も多いが、実際には前年同期比2.8%減となっている。カイエンより小型のマカン SUVに対する需要は強く、販売台数は12%増の6万1944台となった他、タイカンや911も全体的な販売台数増加に貢献した。

ポルシェは1月〜9月に2万8640台のタイカンを販売し、この数字は同社の長年のフラッグシップスポーツカーポルシェ911を上回った。911の販売台数は2万7972台で、前年同期比10%増だった。

その他Panamera(パナメーラ)を2万275台、718Boxster(ボクスター)と718Cayman(ケイマン)を1万5916台販売し、いずれも前年比で約1%の増加となった。

ポルシェの販売台数の大部分は内燃機関搭載の車両で占められているが、タイカンの成功により同社はEVへの取り組みを強化する可能性がある。同社は2023年にマカンの全電動バージョンを導入する計画だ。

画像クレジット:Porsche

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

現代自動車が独自の半導体チップ開発を計画、世界的不足対策で

Hyundai Motor(現代自動車)のグローバルCOOであるJosé Munoz(ホセ・ムニョス)氏によると、同社は半導体メーカーへの依存度を下げるため、独自の半導体チップ開発計画を発表する。

パンデミックの影響で自動車の販売台数が減少し、自動車メーカーは一時、受注を停止した。同時期に、電子機器メーカーは、ノートパソコンやゲーム機などの需要増に対応するために生産を拡大しており、チップを買い漁っていた。消費者が再び自動車購入に向かうと、自動車メーカーは世界的な半導体不足に見舞われ、Tesla(テスラ)とトヨタを除くほとんどのOEMメーカーが生産ラインを休止し、自動車販売の低迷を招いた。また、ほとんどの自動車メーカーが電気自動車への移行を積極的に計画しているため、チップの必要性がかつてないほど高まっている。現代自動車以外では、TeslaGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)が自社でチップを生産し、中間業者を排除する計画を発表した。

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ロイター通信によると、現代自動車の前四半期の販売はそれほど苦戦しなかったものの、ムニョス氏は「最も厳しい月」は8月と9月だったという。同社は2021年、複数の工場で一時的な閉鎖に追い込まれたが、同氏は、Intel(インテル)が生産能力拡大に向けた大規模な投資を行ったため、チップ不足の最悪の事態を脱したと述べた。

だが、同氏は記者団に対し、現代自動車は再び半導体供給不足に直面することを望んでおらず、この分野で自給能力を高める必要があると述べた。同氏は、チップの自社開発には多大な時間と投資が必要であることを認めた上で、これは「我々が取り組んでいること」であり、おそらく現代自動車の部品関連会社であるHyundai Mobis(現代モービス)と共同で取り組むことになるだろうと述べた。

「供給を確保できるかどうかが、今後の業界再編・統合を生き抜き、成功するOEM企業の特徴になるかもしれません」とソフトウェア開発会社Real-Time Innovationsのコマーシャルマーケット担当シニア・マーケット・ディベロップメント・ディレクターであるBob Leigh(ボブ・リー)氏はTechCrunchの取材に対して述べた。「OEM企業が供給を確保できる企業を買収したり、そうした企業と提携する可能性は高くなりそうです。しかし、供給不足により、業界はより経済的に生産できる新しいチップ技術を採用するようになるでしょう。チップメーカーは、自動車メーカーが求めるような従来のチップを作りたがらないのです」。

リー氏はまた、多くの自動車メーカーがチップの自社開発へと進むだろうが、専門知識がないため実現可能とは限らず、規模も大きくならないと考えている。

ムニョス氏は、現代自動車が自社で半導体を生産しないとしても、2022年に米国で電気自動車を製造する予定は変わらず、アラバマ工場を強化して生産能力を高める計画もあると話す。Hyundai Motor North America(現代自動車ノースアメリカ)の社長でもある同氏は、米政府から提案を受けた4500ドル(約51万円)の電気自動車税額控除の優遇措置を、労働組合がある工場だけでなく、ない工場で生産された車にも適用するよう働きかけた。現代自動車の米国工場以外では、Rivian(リビアン)、Tesla、トヨタ自動車の工場が組合に加入していない。

画像クレジット:DIRK WAEM/AFP / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ボルボ・グループが「化石燃料を使わない」鉄鋼で作られた車両を公開

スウェーデンのVolvo Group(ボルボ・グループ)は現地時間10月13日「化石燃料を使わない」鉄鋼で大部分が製作された新しい車両を発表した。同社では、早ければ2022年にこの新素材を使用した小規模な連続生産の開始を計画している。

「私たちの意図は、この化石燃料フリーの鉄鋼を使って、このような比較的積載量の小さな運搬車両の製造を始めることです」と、ボルボ・グループのトラック技術担当エグゼクティブ・バイスプレジデントであるLars Stenqvis(ラルス・ステンクヴィスト)氏は、TechCrunchによる最近のインタビューで語った。「重要なのは、これが研究開発プロジェクトでもなければ、政治家に見せるためのある種の実証プロジェクトでもないということです。これは連続生産するのです」。

今回公開された試作車は、鉱山や採石場で使用される完全電動式の自律走行型運搬車で、車体に3000kgを超えるこの新素材が使用されている。ボルボによれば、建設現場用トラックは車両重量の約70%が鉄鋼と鋳鉄でできているため、この化石燃料フリーの鋼材を最初に適用することにしたという。

この鋼材は、ボルボが2021年初めに提携したスウェーデンの鉄鋼メーカーであるSSAB(スウェーデンスティール)が製造したものだ。従来の鉄鋼製造では、石炭を使って鉄鉱石から酸素を取り除いていたが、SSABは水素を使って鉄鋼を製造するプロセスを開発した。この水素は、再生可能エネルギーを使って水を水素と酸素に分解する電気分解によって生成される。

今回発表された運搬車は、化石燃料フリーの鋼材で100%作られているわけではない。ステンクヴィスト氏によると、それはSSABがまだ、例えば円筒形のシャフトを作るために必要となるような、ある種の形状を実現できていないためだという。しかし、部品の大部分、特に車体後部の大型バケットは化石燃料フリーの鉄鋼製であると、同氏は付け加えた。

SSABの鋼材は、すべての面で従来の鋼材と同じであるため、ボルボの既存の製造施設のすべてで使用することができる。「これは、私たちにとって非常に重要なインプットです。なぜなら、生産や製造の面では変わらないということを意味するからです」と、ステンクヴィスト氏は述べている。

ボルボは、2040年までに事業全体でゼロエミッションを達成することを目標としており、今後10年間でこの鋼材の使用量を増やすことを目指している。また、中国の浙江吉利控股有限公司(Zhejiang Geely Holding、ジーリー・ホールディング・グループ)傘下のVolvo Cars(ボルボ・カーズ)も、早ければ2025年に、この材を使用したコンセプトカーの製作を計画している。

画像クレジット:Bo Håkansson, Bilduppdraget / Volvo CE

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)