リモートで働く新入社員向けのハードウェア選択・配布を支援するFirstbaseが約60億円調達

Firstbase(ファーストベース)は米国時間3月25日、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)が主導するシリーズBラウンドの資金調達を発表した。TechCrunchが同社のシリーズAを取材したのは1年前、世の中のリモートワークシフトが本格化した頃だった。

現在、よりハイブリッドな世界で、大小の企業がオフィス内の社員と在宅勤務の社員のバランスをどのようにとるかを考えており、我々はFirstbaseがどのように将来計画を立てているかに興味があった。

このスタートアップは、遠隔地にいるスタッフの入社を支援し、必要なハードウェアを必要なときに受け取れるようにするための支援を行っている。パンデミック時に転職した人なら、テクノロジー製品を新入社員に届けるのは必ずしも簡単なプロセスではないことを知っているだろう。この問題は、オフィスと個人の物理的な距離が遠くなる程、より複雑になる。

前回話したときから、同社は機能の幅を広げている。Firstbaseは、現在も顧客の新入社員がハードウェアを選ぶのを手伝い、出荷や回収、管理を担当している。そして、その提供内容に融資が加わった。現在、Firstbaseは、顧客が通常料金で、新入社員のハードウェアや、家具など遠隔地にあるオフィス周辺機器の購入代金を支払うことができるようにしている。

ハイブリッド時代の成長

Firstbaseにとって重要なのは、部分的にオフィスに戻りつつある世の中にどう適合していくかということだ。2021年4月以降の16倍の収益成長、同様の期間での7倍の顧客増加など、最近の四半期でスタートアップ級の指標を掲げた後、市場はFirstbaseの遠隔従業員サービス製品を以前より歓迎しなくなるのだろうか。

創業者兼CEOのChris Herd(クリス・ハード)氏はTechCrunchに、ハイブリッドな労働力を持つ企業は、Firstbaseを、オフィス内の従業員だけでなく、自宅から働く従業員にもハードウェアを供給していると語った。TechCrunchは、平均的な企業がどこに向かっているのかをより良く把握するために、リモートファーストの企業とハイブリッドスタイルの企業の間の顧客分布について同社に尋ねた。ハード氏によると、Firstbaseの顧客構成はかなり均等であるが、ハイブリッド型と言われる企業の中には、依然としてリモートワークが大半を占めている企業もあるという。

仕事の未来はまだ流動的だ。

しかし、Firstbaseが構築しているものは、オフィスの世界にきちんと適合する可能性がある。このスタートアップは、米国、英国、ヨーロッパで倉庫を拡張することを計画している。この物理的なフットプリントによって、同社は従業員との間でのデバイスの流れを管理し、必要性から納品までのタイムラグを抑えることができる。世界的なチップ不足の中、重要なサプライチェーン業務を第三者に任せることは、より多くのオフィスなど現実世界での労働力を求める企業にとっても魅力的であることがわかる。

TechCrunchは、Firstbaseが現在の活動に加えて、モバイルデバイス管理(MDM)ビジネスに参入する計画があるかどうかに興味があった。Jamf(ジャムフ)のようなMDMは、現在公開されているが、デバイスの物理的な配送やケアに関わるよりも、デバイス上でより多くの仕事をする。ハード氏は、2年前、MDM機能の構築は検討事項であったと述べている。しかし、その間にFirstbaseは、顧客が既存のMDM製品やHRIS(人事情報システム)ソフトウェアシステムを置き換えるのではなく、それらのシステムにプラグインすることを望んでいることを知った、と彼はいう。

もしFirstbaseがMDMツールを持たない中小企業に十分な販売をすれば、やがて小規模な顧客向けにシンプルなものを構築できるかもしれない。

とはいえ、シリーズAやBステージのスタートアップ企業との取引を想定していた同社は、数百人、数千人の従業員を雇用する顧客へと成熟度を高めていると、ハード氏は述べている。これは、5桁の取引ではなく、6桁の取引を意味すると、彼は言った。非公開企業は通常、このような一般的な指標以上のものを共有しないが、このケースでは、会社の最近の成長率を説明するのに役立っている。

Firstbaseは、ソフトウェア、ハードウェア、金融技術を巧みに組み合わせた企業だ。そのため、粗利やその他の経済的な詳細を推測するのは困難だ。誰かがデッキをリークするか、あるいはできるだけ早く会社が公開され、我々がデータを覗き見ることができるようになることを願う。

画像クレジット:filmstudio / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Yuta Kaminishi)

中国の旅行最大手Trip.comがハイブリッドオフィスを採用

世界中で数多くのテック企業が過去2年間の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)期間中、リモートワークあるいは何らかのハイブリッドモデルに切り替えた。しかし中国では、ほとんどのテック企業が2020年夏以降オフィスに戻っている。国のゼロ・コロナ政策による感染者数減少のおかげだ。こうした通常生活の中、ある中国企業がリモートワークを続ける決断をした。

3月1日から、中国最大の航空券・ホテル予約プラットフォームTrip.com(トリップ・ドット・コム)は、従業員が許可を得れば週2日まで在宅勤務することを可能にすると2月15日に発表した。1999年に設立され、2019年にCtrip(シートリップ)からTrip.comにブランド変更した同社は、2021年6カ月間実施したリモートワークの試行に参加した従業員1600名の75%に「健康の改善」が見られたことを受け、今回の行動に至った。実験には技術、プロダクト、ビジネス、マーケティング各部門の中核スタッフおよび約400名の管理職が参加した、と広報担当者がTechCrunchに語っている。

参加者の93%が、自分の時間を「より有効に」使えたと感じ、社員の離脱率は、期間中約3分の1に減った。60%近くが、ハイブリッドワークを「強く」支持する、と試行終了後に答えた。

同社従業員は3月以降、自宅、喫茶店などあらゆる場所で働く申請ができる。各部門のマネージャーは、チームの目標、各個人の状況に基づいてリモートワークを認めるかどうかを判断する、と広報担当者はいう。またマネージャーは、自己判断で取り決めを調整することができる。

ハイブリッド方式はまずTrip.comの中国国内の事業所に適用され、海外の支店は「現地の状況と新型コロナ防衛措置に応じて」このモデルを適用する予定だ。

Trip.comは、NASDAQおよび香港証券取引所に上場しており、過去数年に海外競合他社を次々と買収して国際的に拡大している。2016年に17億400万ドルでスコットランドのSkyscanner(スカイスキャナー)を買収した。2019年には、インドのMakeMyTrip(メイクマイトリップ)の持ち株を半数近くへと増やした。そして2020年にはオランダの旅行会社グループ、Travix(トラビックス)を金額非公開で買収した。

2020年12月時点のTrip.comおよび関連会社の従業員数は約3万3400名で、うち約3万名が中国国内だ。

Trip.comの共同ファウンダー・会長のJames Liang(ジェームズ・リャン)氏は中国社会問題のコメンテーターとして頻繁に登場している。この柔軟な勤務体系を考えた際、コンピューター・サイエンティストで経済学者でもあるリャン氏は、中国の人口統計学上の課題も念頭に置いていたに違いない。

リャン氏は声明で、ハイブリッド勤務は「企業、従業員、地域社会すべてにとってのマルチ・ウインです。効率を犠牲にすることなく従業員の満足度を高めるだけでなく、交通渋滞を緩和し、環境保護にも役立ちます。住宅価格の高騰と地域格差を軽減し、家族や女性のキャリア育成と出産率の向上にも貢献します」と語った。

Trip.comによるハイブリッド・オフィス採用は、中国テック業界の過重労働カルチャーに対する懸念と批判が高まる中で生まれた。同社は、リモートワークが生産性を犠牲にしないことを示している。2021年の実験参加者の71.9%が、ハイブリッドワークは業績に影響を与えなかったと報告した。

関連記事:Bilibiliコンテンツモデレーター過労死疑惑で中国テック業界の長時間労働文化の議論が再燃

「ハイブリッドワークモデルが将来中国の主要企業全体に広まることを願っています。それは社会と経済に有益で広範囲にわたる影響を与えるでしょう」とリャン氏は語った。

画像クレジット:Olivier Douliery / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国生まれの音声ネットワーキングアプリ「Tiya」、国際的な事業展開を進めるべくシンガポールに本社を設立

TikTok(ティックトック)は、おそらく中国から生まれた最も成功したアプリであり、国際市場への印象的な進出を果たしている。しかし、中国で開発されたより小規模なエンターテインメントアプリにも、海外で事業を展開しているものが数多くある。

Tiya(ティヤ)もその1つだ。中国のポッドキャスティングプラットフォームであるLizhi(リーチ)から生まれたこのアプリは、音声ベースのリアルタイムなネットワーク体験を提供する。その名前に聞き覚えがあるかもしれない。そう、TiyaはよくClubhouse(クラブハウス)と比較されているのだ。そして、そのClubhouseが2021年流行したおかげで、2021年春にLizhiの株価は急上昇した。

しかし、Tiyaの背後にあるアイデアは、Clubhouseの隆盛(と没落)よりも先行していた。2019年にローンチしたこのアプリは、Clubhouseとはかなり違った人々を魅了しており、その多くは一緒にゲームをしながらチャットをするために利用している。2013年に設立された親会社のLizhiは、早くから音声コンテンツにインタラクティブな機能を取り入れ、リスナーがクリエイターにメッセージを送ったり、バーチャルギフトを購入したりできるようにした。バーチャルアイテムを販売するというビジネスモデルは、すぐに収益の柱となった

Tiyaはこの3年間、デビューした米国で着実に人気を博してきたが、さらに海外展開を進めようとしている。同社は現地時間2月7日、シンガポールの中央ビジネス地区に、Yahoo(ヤフー)やGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)などの大手企業と並び、1万平方フィート(約930平方メートル)の本社を設立したことを発表した。

このオフィスの開設にともない、早ければ2022年の第1四半期にはシンガポールで同アプリのダウンロードが可能になる予定だ。Tiyaは全世界で約2000万件のダウンロードを記録しているものの、そのうちアクティブユーザーがどれほどいるかは明らかにされていない。

中国のテック企業が、国際的な事業展開を進める中で、海外に拠点を置くことは自然な流れだ。例えば、TikTokは世界的に普及が進むにつれて、中国国外での運営体制を大幅に強化し始めた。TikTokは、ユーザーのデータをシンガポールに保存しているというが、これは西側の規制当局がデータセキュリティへの懸念を強めているためだ。中国の新しいデータセキュリティ法では、企業が海外にデータを移動する方法についても規制を厳しくしているため、企業にとっては国内外のデータを分離することが得策となる。

関連記事:長きにわたるマイクロソフトの中国ローカライズの結果

Tiyaのシンガポール本社には、ビッグデータ、人事、ユーザーリサーチ、管理、運営などの機能を担当する部署が置かれ「技術プラットフォームと製品開発計画」を支援するチームになると、同社は今回の発表で述べている。同社は、2022年末までにこの都市国家で「完全に運用可能なチーム」を持つことを目指しており「最新バージョンのアプリを世界各地で順次展開する」計画を立てているという。採用活動の一環としては、南洋理工大学とパートナーシップを結び、新卒者を募集する。

Tiyaの会長であり、Lizhiの創業者でもあるMarco Laii(マルコ・ライ)氏は「Tiyaをシンガポールに導入し、世界に通用する才能を持った現地のチームと協力することで、我々はこの地域でより大きな成功を収めることができると確信しています」と語っている。

画像クレジット:The Tiya app. Photo:App Store

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(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オフィス勤務再開需要に向けて、室内に新型コロナ感染者がいたかどうかを調べられるPhylagenが全力疾走

パンデミック開始から2年が経った今、世の中の企業は安全な対面業務の再開に向けて奮闘中だ。Apple(アップル)はオフィス勤務再開の計画を延期し、Google(グーグル)は2022年中には週3回のオフィス勤務を義務づける予定だが、ワクチン未接種者は最終的には職を失うことになると先日の発表で明言している。「従業員を守り、業務を進めるためには、ワクチン接種の義務化が最も効果的な方法となります」と同社は CNBCへの声明で伝えている。

しかし、ワクチンを接種した人でも感染力の強い新型コロナウイルスに感染する可能性はある。サンフランシスコを拠点とする設立7年目の企業、Phylagen(フィラゲン)は、微生物ゲノミクスとデータ分析を組み合わせて、物理的な空間に新型コロナウイルスの感染者がいたかどうかを調べることができるという。

その方法は次の通りだ。Phylagenは、センサー、スワブ、サンプルコレクターを活用し、これらを週に2回パッケージに入れて研究所に発送する。そして感染者が建物内(トラッキングのためにフロアやゾーンに分けられている)に細菌を持ち込んだかどうか、あるいは建物内の空気が安全かどうかを72時間以内にデータとして提供するという仕組みである。

同社はこれを「サービスとしての企業病原体モニタリング」と呼んでいるが、元生物学教授で、土木技師とマイクロバイオーム科学者の両方で正式な訓練を受けた創業者兼CEOのJessica Green(ジェシカ・グリーン)氏は、その実現可能性に長い間魅了され続けてきた。

しかしグリーン氏いわく、これまでの道のりは孤独なものだったという。「私たちは90%の時間を室内で過ごしていますが、自分が口から何を吸い込んでいるかについては何も知りません。この会話の間にも、私たちは何百万もの微生物を放出し、健康やウェルビーイングに深刻な影響を及ぼす可能性のある何百何千ものウイルス、バクテリア、カビを吸い込んでいるのです」。これは「何十年も前から分かっていた」ことだが、一般の人々の理解が「今回のパンデミックで結実した」のだと同氏は話している。

Phylagenは当初から我々が呼吸している空気に焦点を当てていたわけではなく、創業当初から2020年の春まで、同社はサプライチェーントラック&トレースと呼ばれる市場で事業を展開していた。これは企業が自社の製品が最終目的地に向かって予定通りの経路をたどっているかどうかを確認するためのセグメントである(迂回した場合、製品に手が加えられた可能性も出てくるため、企業の評判を落としたり、特に医薬品に関しては致命的な結果を招いたりすることもある)。

グリーン氏によると、パンデミックの発生にともない、新型コロナウイルスを追跡する手段として同社の製品にも関心が寄せられたという。しかし、ウイルスが表面ではなく空気を介して広がっていることが明らかになると、同社は同社の技術を別の用途に使用するため完全シフトすることにした。これまでに得た知見や増え続ける微生物のデータベースを、トレーサビリティーのためではなく、建物の中にいる微生物を捕獲し、その情報をデジタル化して顧客に提供するというのがその考えである。

顧客数も増え続けているようだ。グリーン氏は具体的な顧客名を明かしておらず、多数の大手テック企業や商業用不動産会社と密接に連携しているとだけ伝えているが、産業用バイオテック企業Solazyme(ソラザイム)を共同設立したHarrison Dillon(ハリソン・ディロン)氏とともに共同設立された同社の事業は2022年に向けて大繁盛しているという。

収入は前年比10倍、従業員も20人から40人へと増加した同社。Phylagenはこの夏、ヨーロッパの上場企業で、ビルの防火・空調・セキュリティ機器を製造しているJohnson Controls(ジョンソンコントロールズ)から戦略的資金をひそかに調達したこともあり、人員をさらに倍増させる計画だという。

Phylagenはこれまでに3M(スリーエム)、Breakout Ventures(ブレークアウト・ベンチャーズ)、Cultivian Sandbox(カルティビアン・サンドボックス)などから合計3000万ドル(約34億円)を調達している。

しかし当然、次々と現れるライバルたちを出し抜けるかどうかという疑問も残る。

「これがニューノーマルだからこそ、新たな競争相手が現れたのです」とグリーン氏は話す。「誰もが安全な室内空気を求めるようになるでしょう。現在、室内空気の質を測定できる方法は非常に古く、空気に関連する生物学的要素を検査する、手頃で信頼性の高い方法もありません」。

Phylagenが所有するサンフランシスコとマンハッタンの研究所や、提携研究所からの結果を72時間も待つと聞くと、Phylagen独自のプロセスも時代遅れだと感じる人もいるかもしれない。新型コロナウイルスがいまだに急速に広がっていることを考えれば、2~3日というのは決して迅速な提供とは言えない(更新:この記事の掲載後、Phylagenから連絡があり、グリーン氏の発言は誤りであり、Phylagenは24時間以内に顧客に結果を返すことができるとのことであった)。

この速度は近い未来に短縮されるだろうとグリーン氏は考えている。「次世代のテストではすべてが自動化され、現場で行われるようになるでしょう。CO2センサーや、温度と相対湿度の情報を提供するサーモスタット のNest(ネスト) を想像してみてください。これと同じように空気中のDNAやRNAを検出できるようになるのは確実で、私たちは今それを目指して取り組んでいます」。

確かにPhylagenがその潜在能力を発揮すれば、同社のチャンスは絶大なものになるだろう。新型コロナウイルス以外にも多くのものを検査することができ、アレルギー誘発物質も計画に含まれているという。

商業利用のみならず、家庭での使用にも可能性はある。初期投資家である3Mはすでにデータ駆動型の消費者向け製品の開発に取り組んでいるようだ。9月にはPhylagenの技術を使った家庭用清浄度キットの販売を開始しているが、Amazon(アマゾン)で約180ドル(約2万円)という価格はほとんどの家庭にとっては高価すぎるため、現時点では試験的なものなのだろう。

一方でグリーン氏は、今はまだ企業顧客に集中していると主張している。これには他の製品を検討する時間がないという理由もあるようだ。

「3Mの製品から得られる最大のポイントは、検査したい有機体の一覧を自由に作ることができるということです。しかし、現在最も重要で、最大の市場機会と市場ニーズがあるのは商業ビルの分野です」。

「私たちがどんな機能を提供できるかということにかかっています。今、私たちは需要に追いつくために全速力で走っています」。

画像クレジット:Phylagen

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

ハイブリッドチームがSlackで各々のオフィスタイムを調整可能に、Officelyが2.3億円を調達

会社が在宅 / 通勤のハイブリッドに移行するんだって?いい話だね!たとえ管理上の決定や、あなたの役割の特殊性によって、毎日は不可能だったとしても、在宅勤務はより主流になっている。

では、誰がいつオフィスに行くかをどのように調整すればよいだろう?毎週同じ日である必要があるだろうか?ランダムに日を選んで、机が使えることを期待するだろうか?もしその日に行ったのがあなただけだったらどうだろう?本当に通勤する必要はあったのだろうか?これらすべてをスプレッドシートで追跡すべきだろうか、それとも追跡するためだけにまったく別のツールが必要だろうか?

Officely(オフィスリー)は、多くのチームがすでに使用しているツールのSlackを介して、それらをすべて上手く処理したいと考えている。彼らは成長を始めるために200万ドル(約2億3000万円)のシードラウンドを行ったところだ。

Officelyの主な売りはデスクの予約機能だ。これにより、どのオフィスにあるデスクか、または多数のデスクがある場合は、オフィス内の「どの付近にあるか」でデスクをグルーピングすることができる。ある日に何人の人がオフィスに行くのか、使えるデスクがあるのかを確認し、もし使えるなら予約することができる。他にもいくつかのカスタマイズ項目がある。例えば誰かが犬をオフィスに連れてくる場合にフラグを立てる機能などだ。アレルギーのためにその日は家にいたい人や、私のようにオフィスに少なくとも1匹は犬がいるときに出社したい人のために役立つ。

画像クレジット: Officely

カスタマイズ可能な健康診断調査表を設定して、熱を持っていなかったり既知の接触履歴がないことを確認したり、出社予定の朝に調査表に記入するように自動的に通知することができる。もし誰かが病気になった場合には、Officelyは連絡先の追跡を支援して、同じ日にオフィスにいた従業員のリストを作成することもできる。

彼らはまた「Officeチャット」機能の実験も行っている。この機能は、1日の初めに新しいSlackルームを自動的に作成し、その日に出社が予定されているすべての人を招待し、1日の終わりにルームをアーカイブする。家にいる同僚を悩ませることなく、ランチプランを計画するのに最適だ。

Officelyのテストインスタンスを起動してみたが、非常に円滑に使うことができた。デフォルトからカスタマイズするためのUIは、少々目立たないように感じられるが、それは主にSlackアプリの範囲内で動作しているからだ。しかしその一方で彼らは私がSlackアプリでできるとは知らなかったすばらしいこともたくさんしてくれている。チームTCは現在、オフィスで多くの時間を費やしていないので、ストレステストを行うことはできなかったが、見た限りでは、この先多くの人たちがオフィスに戻ったときにも上手く機能できるだろう。

Officelyは現在、小規模チーム用は無料だ(10人までの従業員と1カ所のオフィスに限定)。より多くの従業員または複数のオフィスがある場合には、月額でオフィス従業員1人あたり2.50ドル(約280円)が請求される(「Officelyを使用してオフィスを予約する従業員に対してのみ請求します」と彼らはいう)。500人以上の従業員がいる場合には、カスタム料金プランが提供される。

ところで、なぜSlack内ですべてを構築するのだろうか。共同創業者のMax Shepherd-Cross(マックス・シェパード=クロス)氏は私に「デスク予約ツールの興味深い挑戦課題は、ソフトウェアを効果的に使用するには、社内の全員が同じソフトウェアを採用する必要があることです」と語る。だが新しいウェブアプリに参加するように全員を説得するのは困難だ。一方、Slackなら企業のチームあれこれがすでに集まっている。

Officelyはピボット(方向転換)を行った企業だ。同チームは2017年に、ホテルの部屋の予約という別の焦点でスタートした。「私たちは新型コロナに押しつぶされました。一夜にして、私たちはすべての顧客を失ったのです」とシェパード=クロス氏は語る。「数週間眠れない夜を過ごしたあと、私たちはこれからのオフィスがこれまでのホテルのように運営されることに気づきました。【略】過去4年間ホテル用に構築していた予約インフラストラクチャ全体が、今ではオフィスに必要なのです」。

今回のラウンドはTEN13が主導し、エンジェル投資家のVu Tran(ブー・トラン。学習プラットフォームGo1の共同創業者)とAdam Schwab(アダム・シュワブ、travel co. Luxury EscapesのCEO)が参加した。

画像クレジット:Officely

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(文: Greg Kumparak、翻訳:sako)

英国、2022年から新築住宅・オフィスにEV充電器の設置を義務づける

英国政府は、2022年から英国のすべての新築住宅およびビジネスに電気自動車(EV)充電ステーションの設置を義務付けると発表した。この新しい施策は、毎年14万5千カ所の充電ポイントを追加することで、英国でのEV普及を促進することを目的としている。

「これにより、人々はEVの未来に備えた新築物件を購入することができ、また、英国内の新しい店舗や職場で充電ポイントを容易に利用できるようにすることで、今日のガソリン車やディーゼル車の給油と同じように簡単に利用できるようになります」とプレスリリースには記されている。

英国政府はすでに25万台以上の充電ポイントの設置を支援しているが、この新ルールにより、初年度だけで50%以上の増加が見込まれる。スーパーマーケットやオフィスビルなどの建物に加え、10台以上の駐車スペースを持つ大規模な改築も対象となる。ただし、設置場所の仕様や出力など、ルールの詳細はまだ公表されていない。

英国の野党である労働党は、ロンドンと同国の南東部には「イングランドとウェールズの他の地域を合わせたよりも多くの充電ポイントがある」と指摘し、新法はその点で役に立たないと主張している。また、低・中所得者層がEVをより購入しやすくなるような条項も含まれていないと、BBCは報じている。

英国政府は、予定よりも10年早い2030年までに化石燃料車の販売を完全に禁止することを目指している。同国政府は以前、英国内のEV充電インフラ整備に5億ポンド(約769億円)を投じる用意があると述べていた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

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(文:Steve Dent、翻訳:Dragonfly)

「ゾーンに入る」のを助けるアプリ「Centered」、仕事が30%早く終わりストレスも軽減

Centered(センタード)は、ユーザーが1日の流れを確認する手助けをし、仕事が達成できるようにカレンダーを守り、軌道修正に役立つパーソナルアシスタントを追加することができるアプリだ。このアプリでは、仕事を成し遂げるために他の人たちとバーチャルな会合をしたり、仕事に集中するように脳を働かせるための心地よいビートを流したりすることもできる。この会社はまだプロダクトを発売したばかりだが、あなたが健全に仕事に打ち込めるようにするために、390万ドル(約4億5000万円)の資金を調達した。

何かを成し遂げたり、その作業を楽しんだ人であれば、おそらく「フロー状態」(人によっては「ゾーン」と呼ぶこともある)を経験したことがあるだろう。しかし、多くのオフィス環境は、そんな状態になることができないように設定されている。仕事を終わらせるために、早朝出勤や残業、休日出勤といった馬鹿げたことをする人もいる。「朝7時に出社して、電話が鳴り始める前にオフィスで時間を過ごすのが好きだ」なんてセリフを言っている、あなたのことだ。

Centeredのアプリは、チームのメンバーがビデオフィードを介して小さなサムネイルとして表示されるバーチャルなコワーキングセッションを提供する。つまりこれは、同僚があなたの姿を見ることができれば(ただし、音や会話は聞こえない)、あなたはコードをレビューしなければならないときに、スマホをいじったり、6杯目のコーヒーを飲みに行ったりする可能性が低くなるだろうという考えに基づくものだ。また、このアプリには「フローミュージック」と呼ばれる、ゆっくりとしたテンポの環境音楽も鳴らすことができ、脳に仕事をする時間だと納得させるために役立つ。さらにパーソナルアシスタントも用意されており、同社の創業者はこれを「生産性を向上させるSiri」と表現している。

「飛行機の中でヘッドフォンをしていると、突然、気を散らすものが一切ないような感覚になることがあるでしょう? 周囲に邪魔する人がいないため、短時間に今まで書いたことがないほどたくさんの文章を書くことができたりします。これがCenteredで再現しようとしている体験です。フローセッションを開始すると、Noah(ノア)が出迎えてくれます。このボットは、あなたの作業をガイドしてくれます」と、Centeredの創業者兼CEOであるUlf Schwekendiek(ウルフ・シュエッケンディック)氏は説明する。「このアシスタントは、割り当てられた時間の半分を過ぎると知らせてくれます。あなたが気が散っていることに気づいたら、仕事に集中するよう促してくれます。親が宿題をするはずのあなたがゲームボーイに夢中になっていることに気づいて、他のことをするべきだと注意するようなものです」。

Centeredの創業者兼CEO、ウルフ・シュエッケンディック氏(画像クレジット:Centered)

Centeredは米国時間11月17日、Uncork Capital(アンコーク・キャピタル)とYes VC(イエスVC)が主導する投資ラウンドで390万ドルを調達し、JLL Spark(JLLスパーク)、Shrug Capital(シュラッグ・キャピタル)、Basement Fund(ベースメント・ファンド)、AVG Basement(AVGベースメント)、Remote First(リモート・ファースト)の他、多くのエンジェル投資家からも支援を受けたことを発表した。

「この資金調達によって、いくつかのことが可能になりました。もう、私1人ではありません。コーディングやデザインなど、すべてを業者に依頼することはなくなります」と、シュエッケンディック氏は語る。「私たちは、エンジニアリング、デザイン、コンテンツの各チームに人員を配置し始めました。より大きなコンテンツ契約を結び、より良い音楽やボイスオーバーを利用できるようになりました。しかし、本当におもしろいのは我々が持つデータです。私たちはこのデータの活用を始めたばかりです。人々がどのように働いているかを私たちは知っています。他の誰にも真似できません」。

実行中のCenteredアプリ(画像クレジット:Centered)

シュエッケンディック氏は、同社がデータを匿名で集計し、安全に取り扱っていると断言している。今回のラウンドでは、評価額は公表されていない。

「何千人もの人々が当社の製品を利用しています。初期のユーザーは、見積もっていた時間よりも平均30%早く仕事を終えられ、その結果、より幸せになり、ストレスが減ったと報告してくれました」と、シュエッケンディック氏は述べている。「トップユーザーは、Centeredを生産性向上のためのオペレーティングシステムとして1日に3〜5時間ほど使用しています。第1週目以降のユーザー維持率はほぼ100%であることもわかっています」。

画像クレジット:Centered

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

リモートワーク時代にふさわしい「バーチャルオフィス」を提案するLoungeの新アプリ

Loungeと呼ばれるスタートアップが、リモートワーク時代にふさわしいオフィスとはなにかをもう一度考え直そうと試みている。社員同士がまだ一度も実際に会ったことがない状態で(今後、顔を合せる機会が訪れない可能性もある)企業が企業文化や社員同士の関係を築くにあたり、Slack、Zoom、Teamsといったツールでは不足している要素があるからだ。こうした従来のツールでは、ユーザーの身元はメッセージボードやプロフィールに、写真や短い経歴で記されるだけであったが、Loungeの場合は、その人物のタイムゾーン、天気、場所、所属チーム、会社のイベントへの参加状況など、さまざまな情報が伝えられるようになっている。また、Loungeは社員同士がお互いを知り、個人的に交流を深められるよう、ドロップインオーディオチャット、フォトシェアリングのようなツールも提供している。

Loungeのアイデアは、共同創設者であるCEOのAlex Kwon(アレックス・クウォン)氏とCTOのJason Jardim(ジェイソン・ジャーディム)氏が構想したものだ。両氏はかつてともにLife360で働いていた。2人は、パンデミックの最中、リモートで働きながら、家族向けのタスク管理アプリを開発していた。結局そのプロジェクトは廃止されてしまったが、2人はこの時期にリモートワークとその落とし穴について多くのことを学んだのだ。

クウォン氏はかつて一度もリモートで働いたことがなかったが、実際に経験してみると人とのふれあいの部分で物足りながあることに気がついたという。

「Zoom通話で1日に1回話したり、Slackで1時間遅れでチャットするというやり方を、私はとても寂しいと感じました」と彼は説明する。

そういったオンラインでの会話には、同僚と実際に向き合って交わす会話から得られるきらきらした火花のようなものが欠けていた。そうした火花が新しいアイディアにつながったりすることも少なくない。こうした対面での共同作業こそ、多くの企業がパンデミックの有無に関わらず、スタッフをオフィスに呼び戻したいと望んでいる理由の1つなのだ。

しかし、クウォン氏は、対面でのふれあいだけがチームに仲間意識をもたらし企業文化を育てる唯一の方法ではないと信じている。

「人々はインターネットが普及して以来、オンラインで関係を『育んで』きました。彼らはWorld of Warcraftの中でオンラインで人と出会ったり結婚したりしています。そして、私の友人の多くもパートナーとなる相手をデートアプリで見つけています。それもこれも、始まりはオンラインです」。

友情や愛がオンラインで生まれるなら、仕事がらみの仲間意識だって育むことができる、というのがクウォン氏の考えだ。

画像クレジット:Lounge

両氏は、より繋がりを感じられる方法の模索を始めた。インスピレーションが湧いた時いつでも会話できるよう24時間年中無休のZoom通話を試したりもしたが、それはあまりに圧迫感もあり、子どもが邪魔をすることもしばしばだった。常にオーディオをオンにしていることも、同様の問題があった。このため、最終的には、お互いのプライバシーを尊重しながら、タップするだけでオーディオチャットですばやくつながることのできるシンプルなアプリが開発された。

このアプリが彼らがリモートワークで感じていた問題を解決することができたことを受け、彼らはタスク管理アプリを開発するスタートアップのアイデアを捨て、かわりにLoungeに取り組むことになった。

Loungeでは社員はチームやプロジェクト、さらには趣味や興味ごとにグループ分けされたバーチャルデスクで表示されている。こうすることで、誰がどんな作業をしているのかが簡単にわかる。このバーチャルデスクは、役割的には会社の組織図に似ているが、よりパーソナライズされた情報を伝えることができる。例えば、画像にある小さな窓で夜なのか昼なのか示しタイムゾーンを伝えたり、さらには天気までわかるようになっているのだ。また、社員のプロフィール写真や他のデータも見ることができる。

画像クレジット:Lounge

社員自身の個々のデスクに加え、Loungeには複数の社員からなる「ルーム」コンセプトが導入されている。トピックやプロジェクトのみに焦点を当てているSlackチャンネルとは異なり、ルームはどんな目的にも対応できるようデザインされており、従来のオフィスが提供していた物理的空間のバーチャルバージョン的役割を果たす。例えば、ユーザーは対話集会や、ホワイトボードセッションが開催されているルームに参加したり、会社のカフェテリアのような公共スペースで同僚とバーチャルに交流することもできる。

ルームには鍵をかけることもできるし、それを解除することもできる。プロジェクトに没頭中なら、訪問者に応答する必要はない。ルームに鍵をかければよいのである。その場合、訪問者は、Slackでするのと同様、チャットにプライベートなダイレクトメッセージを残すことができる。しかし、ルームがオープンの場合は、クリックして音声で同僚とその場でやりとりすることができる。これは、誰かの机まで歩いていって「やあ、元気?」と声をかける行為のバーチャルバージョンである。相手はあなたが挨拶するのを聞き、ミュートを解除して音声で会話する。

クウォン氏は「これをZoomとSlackを合わせたようなものだと考えてください」という。

画像クレジット:Lounge

またLoungeは、写真をシェアする機能もある。これはクウォン氏が以前立ち上げたスタートアップ、Oneminuteで得た着想で、人々が撮ったさまざまな写真をシェアすることのできる機能だ。写真をシェアするとしばらくはその写真がバーチャルデスクやアプリ内の他の場所に表示される。これにより周囲の人々に個人的に関心を持っていることや、飼い犬や週末に楽しんでいる趣味など、プライベートな事柄を伝えることができる。これは Slackチャンネルにすでに備わった機能だが、Loungeではこれを一歩進め、これらの共有された写真が1本にまとめられる仕組みになっている。これを新入社員が見てチームメートとの会話のいとぐちを見つけるのに利用することも可能だ。

Loungeは4月以来一部の顧客に対し非公開ベータ版サービスを行ってきたが、ウェイティングリストには何百もの顧客が登録している。現在のところ、同社がターゲットにしているのは社員が20名以下の比較的規模の小さなチームである。

Loungeは、Unusual Ventures、Hustle Fund、Translink、Unpopular Venturesやその他のエンジェル投資家から120万ドル(約1億3000万円)の資金を調達している。

   画像クレジット:Lounge

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

【コラム】自分の価値観を自ら立ち上げたスタートアップの社風に織り込むための3つのアドバイス

「模範を示してリードする」というフレーズは聞いたことがあるだろう。しかし「価値観を持ってリードする」というフレーズは聞いたことがあるだろうか?

私は常に私の価値感を指針として用いつつ、模範を示して会社をリードしてきた。しかし、私自身が最初の会社を立ち上げるまでは、それらの価値観を会社に根付かせることの重要性を完全には理解していなかった。

「誠実さ」「個人」「影響力」「革新性」は私の意思決定と社員の行動を日々推進する「4つの価値観」である。これらは単に本社の壁や、リモート社員のマウスパッドに書かれている言葉というだけでなく、社員全員が実際に実行して血の通ったものにすべき価値観である。これらの4つの価値観は過去2年にわたり、私や家族、会社の責任者たちを導いてくれる指針として、ますますその重要性を増している。

多くの企業が「職場に戻る」(仕事は中断したわけではないので「仕事に戻る」ではない)計画を立てているが、私たちは、ただ単に以前の状態に戻るべきではない。そうではなく、価値観を羅針盤として、みなの成功につながる何事かを再設計することをお薦めしたい。こうすることで、社員たちは単にこの厳しい時期を乗り切ることができるだけでなく、職場で十分に能力を発揮できるようになると思うのだ。

私の経験でいうと、価値観でリードするということは、最良のリーダーシップのとり方であり、この目標を達成するためには3つの方法がある。

旧弊な職場のヒエラルキーを排除する

あなたはキャリアのどこかの時点で(卒業直後かもしれないし、卒業から数年後かもしれないし、その中間かもしれない)、下位レベルの社員を敬意に欠ける態度で扱うのが「あたりまえ」の会社を経験したのではないだろうか。「下積み」を是とするようなこうしたタイプの会社は、これらの下位レベルの社員に単調な辛い仕事をあてがう傾向が高く、結局彼らは燃え尽きて会社を離れてしまう。

あるいは、彼らがなんとかマネージメントレベルのポジションに這い上がることができた場合、彼らは新しく入ってきた社員を低く見ているためにこのサイクルが続き、健全な文化は損なわれていくことになる。

これは正しいやり方とはいえないだろう。

リーダーとして、職場に受容性、サポート、協調性、チームワークを望むなら、あなたは、今すぐにも前例を示すべきだ。つまり、職階に付随するヒエラルキーを除去し、 役職に関係なく功績に基づいて社員を評価する会社であることを明確にするのである。会社全体があなたの価値観に基づき、使命を実現するために団結する1つのチームである。このような社風を確立して全員が会社の行く末に責任を持つようになれば、誰も他の社員を粗末に扱うことはなくなるだろう。

象牙の塔的な考えにとらわれないようにしよう

私は働くようになってすぐ、可能な限りオフィスを誰かと共有するようにした。オフィスは、家具や窓からの景色も含め、人々から見栄えのよいすてきな空間と思われないものにするよう心がけた。現在はCEOであるが、社員の中には私のオフィスをクローゼットと呼ぶものもいる。しかし、仕事を成し遂げるには十分なオフィスである。

このような単純なシグナルは強力なメッセージとなる。そして、シグナルは一貫していなければならない。リムジンに乗らず、安い車を借りる。ファーストクラスに乗らずエコノミークラスに乗る。ささいなことに聞こえるかも知れないが、CEOが遭遇する最大の落とし穴の1つは、象牙の塔的考え方に陥ることだ。

経験を通して社員を知るための努力をしよう。「現場に足を運ぶマネージメント」戦略を実行しよう。一日中オフィスに座っているのを避け、部屋から出て社員の様子を見て回ろう。彼らの机に立ち寄り、話しかけよう。ランチは休憩室で取り、新人研修にも顔を出そう。

まだ物理的にオフィスに戻っていない場合はどうすればよいだろう?その場合は、SlackチャンネルやZoomミーティングを行おう。私は社員のベービーシャワー(赤ちゃん出産前の前祝パーティー)に、Zoomで突撃をしかけたことがある。参加者のお祝いの言葉に耳を傾けることができ、私にとっても彼らにとってもよい一日になった。職場にいて、そこを人間味のある空間にしよう。こうした努力は必ず報われるものだ。

職場慣行に配慮し一貫性を保つ

社風は会社のトップによる影響が大きい。あなたが思い描く社風は、あなたが社員に実行するようにと要求する慣習を彼らが納得して受け入れる場合にのみ、実現するものだ。より重要なのは、これらの取り組みや慣行を自ら全力で行わなければ、堅実な文化を育むことができないということだ。

例えば、私の会社 SailPointでは2020年、Free2Focusと呼ばれる新たな取り組みを行った。これは、1週間に2度、Free2Focusの時間帯に会議を、数時間を入れないようすることで、Zoom疲れを防ぐだけでなく、散歩するなり、子どもの勉強を助けるなり、カメラを少しの時間切るなり、個人にあった方法で一息ついてもらうための取り組みである。

1週間のうち一息つける時間を社員に取って欲しいと思うなら、私自身も同じことをする必要があると私は気づいた、つまり、Free2Focusの時間帯にはミーティングを入れず、1日中メールを送り続けるのをやめ、社員が必要な休憩を取っているからといって批判するのをやめるということである。私はほとんどの場合、社員が自分の時間に自分なりのやり方で仕事を達成していると信じている。こうして信用すれば、社員の業績は確実に上がるのだ。

CEOであるということは、ビジョン、製品、アイディアを築く以上のことが求められる。それは、士気や尊厳を損なうことのなく相互の目標を達成するために、価値観を持って人々を導くということである。仕事に付随するさまざまなことに気を取られるのは簡単なことだが、自分自身と自らの価値観を全社に浸透させる努力をしなければ、結局自分のためにならないし、会社のためにもならない。

これは一夜にして成し遂げられることではない。しかし、最も小さなことが、最も大きな影響力を持つものであることも多いということを覚えておこう。あなたがリーダーなら、模範を示してリードしよう。これこそ、年月を経ても長続きするチームを構築する唯一の方法なのである。

編集部注:本稿の執筆者Mark McClain(マーク・マクレーン)氏はクラウド・エンタープライズ・セキュリティのリーダーであるSailPointの創業者兼CEO。

画像クレジット:Getty Images under a Dimitri Otis license.

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(文:Mark McClain、翻訳:Dragonfly)

【コラム】未来の仕事場は従業員が自身でデザインする、ハイブリッドワークの試験運用から見えたこと

なぜ私たちはオフィスに行くのか?

これは誇張した意味での質問ではない。他の人と一緒に仕事をするために行くのだろうか?オフィスに行くのは、自分の仕事に集中できる決まった場所だからだろうか?「見られる」ことが必要だから行くのだろうか?ただ、いつもそうしてきたから、仕方なく行くのだろうか?

私たちSAP(サップ)では、これらの質問に対する答えを見つけるだけでなく、社員自身がその答えに一役買うこと、そして未来のハイブリッドな仕事場を築いていくことが重要であると考えている。

この夏、私たちはパロアルトにあるオフィスで、まったく新しいハイブリッドワークの試験運用プログラムを開始した。この数カ月間、私たちはさまざまなフロアプランやセットアップ、多様な勤務体系、最も生産的なスペースの使い方、理想的なミーティングの構成などをテストしてきた。また、この新しい現実に適応するマネージャーやリーダーシップのトレーニング、仕組みづくりなど、たくさんのことを行ってきた。

では、私たちはこれらから何を学んだのか?そして、その教訓をあなたのビジネスにどう生かすことができるのだろうか?

まずはじめに:社員からの声

試験運用プログラムの開始前や開始中に寄せられた社員からのフィードバックによると、利便性が高く、エネルギー効率の高いワークスペースが求められていることがわかった。私たちはただ、必要なときだけでなく、使いたいときに使えるような空間を作る方法を見つけなければならなかった。では、人々がオフィスに来たいと思う要因は何だろう?

調査の結果、主に4つの要因が見つかった。

同僚間の学び合い:当社の社員は自分のネットワークを構築することに情熱を持っており、多くの社員が、自分のキャリアを早く向上させ、SAPがどのように自社製品を構築し、革新を生んでいるのかを学ぶ機会として「同僚からの学び」を挙げた。

入社オリエン、トレーニング、学習の機会の大部分はまだバーチャルで行われているが、社員が希望する場合は直接会う機会を与えるために、現在はハイブリッドオプションを検討している。

コラボレーション:新型コロナの状況が許す限り、多くの人は実際に会って話をしたいと思っている。ビデオ通話は機能的ではあるが、テーブルを挟んで一緒にブレインストーミングをしたり、学んだり、成長したりする効果にはかなわない。

ハイブリッドワーク試験運用プログラムに参加した社員にとって、コラボレーションは大きな推進力となっている。さまざまな社員がホワイトボードを使い、画面を共有して複雑な問題を一緒に解決している。鍵となるのは、高品質のビデオやオーディオ機器が装備されたスペースで、物理的に離れた場所にいるチームメンバーが同じように参加できるようにすることだ。

仲間意識の構築:全員参加型のミーティングやQ&Aセッション、その他のチームビルディング系の機会は全員が同じ物理的なスペースにいることでより効果的になる。私たちが調査した多くの社員は、オフィスにいることの明確な利点として、半年に一度の懇親会を挙げている。

私たちは、オフィスでの社員イベントの開催を試み始めたばかりだが、その環境は以前とは大きく異なる。小規模かつ屋外で、新型コロナ対策が施された環境だ。最初のイベントを開催する前に、私たちは自問した。「社員は来たいと思うだろうか?」その答えは、圧倒的に「イエス」だった。

申し込みを開始すると、数分後には申し込みがいっぱいになり、その倍の人数がキャンセル待ちとなった。ミーティング当日はエネルギーがみなぎっており、社員からのフィードバックも非常にポジティブなものだった。みんな、再び一緒にいられることに感激していた。

意図:多くの人が、オフィスでの当たり前の習慣が恋しいと語っていた。朝、服を着て車で出勤し、チームメンバーと一緒に机に向かうことで、生産性や集中力が格段に向上するという人もいる。

すべての社員がチームワークや仲間意識を求めてオフィスに来ているわけではない。中にはプライベートと仕事のスペースを分けたい人もいて、自分が最も生産性を発揮できる静かな場所を探している人もいる。オフィスではオープンなコラボレーションスペースは不可欠だが、無音スペースや電話ブースも同様に必要不可欠だ。

私たちがこれらの特性を実践しようとしている1つの方法が、オフィス内の「スクラムネイバーシップ」だ。この環境では15〜20のデスクが用意されており、コラボレーションとチームワークを促進するために、美しく創造的で自由なオフィススペースが設けられている。また、このスペースを有効に活用するために、モバイルアプリを開発した。チームはこのアプリを使って、一緒にオフィスに来る時間を調整したり、スペースや電話室を予約することができる。

同時に、私たちはリーダーたちがこの新しい現実の中でメンバーを管理できるように、偏見を避け、典型的なマネージャーと部下という関係を、より人間的で共感し合えるものにするための努力をしてきた。

試験運用プログラムから得られた教訓

これらはまだ始まりに過ぎない。試験運用プログラムは順調に進んでいるが、今後もハイブリッドワークを推進し、最適化するための最良の方法を研究・検証していくつもりだ。

従業員の80%が、将来的には自宅とオフィスの両方で仕事をしたいと考えていることがわかった。また、80%の社員がオフィスの比較的近くに住みたいと考えていることもわかった。

もちろん、このタイミングで戻ることに違和感を覚える人も少なくなかった。しかし、試験運用プログラムでオフィスにきた人の多くは、オフィスでの仕事環境の平穏さと静けさ、対面でのミーティングの生産性、そして無料のコーヒー、スナック、ランチなどのアメニティを、明らかな利点として挙げている。さらに、リーダーやマネージャーは、私たちが彼らとの間で培ったコミュニティの行動指針に基づくことで、この環境で指導や管理を行う準備が整っていると感じている。

これまでの「普通」が完全に戻ることはないため、私たちは何が有効で何がそうでないかを見極めるために、継続的な実験と内省を続けなければならない。なぜなら、ハイブリッドなワークモデルは、理論的に成功するだけではなく、実践的に成功しなければならないからだ。

例えば、2020年、多くの従業員が、家庭や家族の事情に合わせて早朝や深夜に働くなど、勤務時間を大幅に変更できる環境に慣れてしまっていることに気づいた。また、通勤時間やオフィスが不要になったことで、チームの一部の者にとっては大きな時間も生まれていた。一方で、これまで対面式で行っていた施策の中には、全体的な実行力と効果を向上させ、場所を問わず従業員の体験をより包括的なものにするために、再考する必要があるものもある。

私たちが自問すべきことは明らかだ。あとは、その答えを見つけるだけだ。

では次は?「なぜ」と問いて「どうやって」を見つける

同じくして、2020年には、仕事の現実において、一時停止したり、もしくは一気に進めたりしなくてはいけない状況でもあった。これは、私たちの多くがいまだになんとか管理 / 運営しようとしている矛盾でもある。私たちは、ハイブリッドワークの試験運用プログラムで得られた教訓が、未来のオフィスのあり方や生産性の向上に役立つとともに、社員やリーダーがこの変化に対応できるようになることを願っている。2022年に向けて、試験運用プログラムで得られた私たちの知見は、グローバルなフレックスワークポリシーに反映され、世界の各地域で何が最適かを判断するための基準となるだろう。

その答えを考えるのに、今が一番いい時期だ。私たちと一緒に考えてみよう。あなたの「なぜ」を「どうやって」に変え、従業員が自ら未来の仕事場を構築する力を与えよう。

編集部注:本稿の執筆者Anamarie Huerta Franc(アナマリー・ウエルタ・フラン)氏は、米国のSAP Labsのマネージングディレクター。全米の開発部門の従業員を対象とした、企業間コラボレーション、ロケーション戦略、コミュニケーション、従業員エンゲージメントのリーダー。

画像クレジット:Shannon Fagan / Getty Images

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(文:Anamarie Huerta Franc、翻訳:Akihito Mizukoshi)

アップルがワクチンを接種していない従業員に対し、毎日の新型コロナウイルス検査を義務付け

Apple(アップル)は、Google(グーグル)のように全従業員にワクチン接種を義務付けるような命令はまだ出していないものの、それでも新型コロナウイルスに関する指示は締め付けを増している。Bloombergによると、アップルはワクチンを接種していない社員に対し、自宅ではなくオフィスで仕事をしなければならない場合には、毎回ウイルス検査の義務付けを始める予定だという。9月にBloombergが報じたところによれば、アップルは従業員に、ワクチン接種状況を自主的に共有するよう求めていた。ワクチン接種状況の共有を拒否した人は毎日検査を受けなければならないが、ワクチンを接種した社員は週に1回の迅速検査だけで済む。

しかし、同社の小売店であるApple Storeの従業員は、消費者に接する仕事であるにもかかわらず、毎日の検査は課せられない。ワクチンを接種していないスタッフは、週に2回の検査が義務付けられており、ワクチンを接種したスタッフは、アップルのオフィスワーカーと同様に、週1回の迅速検査を受けるだけで済む。この巨大テクノロジー企業が今後、新型コロナウイルスのワクチン接種を義務付けるようになるかどうかはわからないが、Biden(バイデン)政権は以前、すべての連邦事業請負業者に対し、12月8日までに全従業員へのウイルス接種を義務付けるよう指示している。Bloombergが指摘するように、アップルは米国政府にも製品を販売しているのだ。

現在のところ、アップルは従業員に10月24日までに予防接種の状況を報告し、証明を提示するように指示したと報じられているため、11月1日から新規則を実施する可能性が高い。ワクチンを接種していない従業員は、アップルのオフィスや店舗で家庭用の迅速検査キットを受け取り、自分で検査をして、その結果を社内アプリを通じて報告しなければならない。

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。本稿を執筆したMariella Moonは、Engadgetの編集委員。

画像クレジット:Apple / Apple

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(文:Mariella Moon、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ポストコロナ時代に向けDenizenが1人で仕事に集中できるハイテクなオフィスポッドを開発

タイニーハウス(小さな家)と呼ばれるムーブメントは、新型コロナウイルスが流行してから輝きを失ったかもしれないが、リモートワークの未来を改めて想像してみると、タイニーオフィスの必要性が浮かび上がってくる。

Denizen(デニズン)を創業したNick Foley(ニック・フォーリー)CEOによると、人々は最近、落ち着いて考え事ができる空間を求めており、そのためには喜んでお金を払うという。

フォーリー氏は、2018年にUber(ウーバー)が2億ドル(約220億円)で買収したレンタル自転車サービス企業「Jump Bikes(ジャンプ・バイクス)」の元チーフプロダクトオフィサー兼インダストリアルデザイン担当ディレクターを務めていた人物だ。同氏はDenizenで、ある疑問に答えることを目指している。それは「1人の人間が完璧な就業日を過ごすための驚異的な体験を提供する製品として、オフィス空間を構築することができるか?」というものだ。

フォーリー氏は、コワーキングスペース企業のWeWork(ウィーワーク)が仕事環境を最適化する方法に関して、いくつかの点で間違っていたと考えている。多くの人がコワーキングの社会的メリットを享受する一方で、異なるプロジェクトに集中しているワーカーで賑わう環境は、ある種の仕事に必要とされる精神的集中に有害となる可能性がある。

画像クレジット:Nick Foley and David Krawczyk

Denizenの考え出したソリューションは、10平方メールに満たないスペースに、コンセント、USBプラグ、カメラ(ビデオ会議用)、スピーカー、ルーター、ホワイトボードウォールなどがあらかじめ組み込まれた、小さな独立型オフィスの小部隊を作ることだ。Denizenのオフィスポッドは美しくデザインされており、プライバシーを守るために数秒で不透明にできる窓、リサイクル可能な素材、そして建築デザイン雑誌「Dwell(ドウェル)」に掲載されているような美的感覚を備えている(実際にDwellに掲載されたばかりだ)。

「天井はとても高く、ガラスが周りを取り囲んでいて、とにかく広々としていて巨大な感じがします」というフォーリー氏は、Denizenが人々に「インスピレーションを得て、生産的な仕事時間を過ごす」ために必要なツールを提供することを目的としていると付け加えた。彼らは単に美しいコンセプトイメージを見せただけではない。NASAのジェット推進研究所に勤めるフォーリー氏の友人が、Denizenで作られた自分のマイクロワークスペースのバーチャルツアーを披露してくれたのだ。

Denizenは当初、プレハブ式のオフィスポッドを企業に提供し、企業がそれらを月極めでレンタルできるようにする形を構想していた。しかし、自宅で仕事することに行き詰まっている人々からの要望が非常に多かったため、現在では個人向けに、自宅敷地内に設置できる車輪付きの独立型オフィスとして販売することを計画している。Denizenの美しくハイテクな小型オフィスは、個人で購入すると約5万5000ドル(約608万円)ほどの金額になる。

フォーリー氏は、Denizenのモデルが、新型コロナウイルス時代における企業の不動産計画に合致すると考えている。オフィスに通勤してくる従業員の数が減るにつれて、企業はこれまで長いこと「会社」というものを定義づけていた高価でむやみに広大な社屋を縮小し、未来の仕事のあり方に合った、より柔軟で専用に設計された選択肢を模索している。フォーリー氏によれば、企業が一括して契約する場合、スマートポッドのレンタル料は1台あたり月額1000ドル(約11万円)程度になると予想されるという。

画像クレジット:Nick Foley and David Krawczyk

このポッドは、従来のオフィスを補完し、刺激的な1人用のオフィス環境を提供するが、フォーリー氏は、いつか企業や市政府がDenizenのオフィスポッドを緑地に設置し、1日単位で予約できるようにしたいと考えている。

「本当の夢は、正直なところJump Bikesとよく似ています。本当にすばらしい共用施設を作るためには、近隣レベルでどのように協力し合えるかを考えることです」と、フォーリー氏はいう。

同社は現在、シードラウンドの資金調達を行っており、2022年初頭に複数ユニットのテストを開始するために、ベイエリアおよびカリフォルニア州内の企業と契約を結んでいるところだ。ゆっくりと規模を拡大していく方針で、来年には100台程度の販売を目指す一方、その間にも製品の製造工程を効率化していくという。

Denizenはこのスマートポッドを車輪付きにすることで、チームが泥沼にはまるような許認可の問題を賢く回避している。Jump Bikesでキオスクや駐車場を設置した経験を持つフォーリー氏は「それがどれほどビジネスモデルを複雑にするかを理解しています」と語る。

迷路のような地域の規制に入り込むことなく、約3.6メートル×2.3メートルほどのスペースと資金に余裕があれば、誰でもこの小さなポッドオフィスに入って仕事をすることができる。つまり規制の観点からは、基本的には美しい小さなRV車に、配管を施したものということになるわけだ。

フォーリー氏は、自分のビジョンが未来の仕事のスタイルにどのように適合するかということに興奮しているようだが、同時にDenizenの小さなオフィスがどのように組み立てられるかということにも興奮している。このポッドオフィスの製造には、大規模な自動制御CNC、3Dプリント、洗練されたプロダクトデザインが融合されており、西海岸の初期の顧客には、車輪も含め工場組み立て済みの状態で、そのまま出荷できる製品となっている。

画像クレジット:Nick Foley and David Krawczyk

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

UVC殺菌システムR-Zeroが「目と耳」となる室内の占有センサーCoWorkrを買収、「職場にとってのOS」を作る

パンデミック渦に誕生したバイオセーフティ企業のR-Zeroは2021年7月下旬、室内の占有センサーを開発する企業であるCoWorkrの買収を発表した。人々が職場に戻り、ワクチンが広がりを見せる今、新型コロナウイルスの出現によって生まれた企業たちはパンデミックの次の段階を見据えて適応し始めている。R-Zeroにとって今回の買収は、同社の焦点のシフトと言えるだろう。

2020年4月に設立されたR-Zero。同社は主に病院グレードのUVC殺菌システム、つまり特定の種類のウイルスを中和できる照明の開発に注力していきた(詳細は後述)。企業が建物内を除菌する方法を求めて奔走する中、同社は2億5650万ドル(約282億円)の評価額で合計5880万ドル(約65億円)の資金を調達。R-Zeroは現在、複数の矯正施設、Brooklyn Nets、Boston Celtics、サウスサンフランシスコ統一学区など、約1000の民間および公共部門の顧客を抱えている。

CoWorkrは2014年に設立され、Crunchbaseによると総額約20万ドル(約2200万円)のシードファンディングを調達している。

CoWorkrの買収により、R-Zeroは職場の人員と清掃の両方を管理するモノのインターネットのようなセンサーネットワーク開発を計画していると、R-Zeroの創業者であるGrant Morgan(グラント・モーガン)氏は話している。単に空気や物の表面を消毒するだけではなく、公共スペースにおける人(およびウイルスやバクテリア)の流れを管理する事に重点を置いていくようだ。

「職場のOSのようなモノです。健康と生産性を核とした室内環境の構築と維持を支援するツールを作っています」とモーガン氏はTechCrunchに話す。

CoWorkrの共同設立者であるElizabeth Redmond(エリザベス・レドモンド)氏とKeenan May(キーナン・メイ)氏は引き続きフルタイムで勤務することとなっており、企業の不動産関連の取り組みを運営し、IoT能力を開発していく予定だ。

「我々はお客様と多くの時間を過ごし、お客様の取り組みを理解できるよう努めてきました。中でも特に商業用不動産に対して注力しました」とレドモンド氏はTechCrunchに話している。

「大半の企業がハイブリッドな働き方に移行しているため、占有率情報はとても必要とされています。私たちがR-Zeroに加わったのは、ハイブリッドワークの未来、そして商業不動産の未来がどうなっていくのかという点が非常に注目されているためです」。

CoWorkr買収前のR-ZEROの主力製品はUVCライトの「Arc」というもので、これは清掃員が退社した後のオフィススペースに持ち込めるホイール付きの長方形のライトである。また、居住空間で使用可能な製品として提供されていた、同じくUVC光で除菌するエアフィルター「Arc Air」もある。

2020年半ばにUVCライトが脚光を浴びたのにはいくつかの理由がある。1つには共同スペースを消毒するための強力な手段だと考えられたこと、そしてもう1つには企業が新型コロナに対して技術的なソリューションを用いると一定のインセンティブが受けられたことなどが挙げられる。

UVCライトは何十年も前から病院で使用されており、スキャナーなどの表面を除菌したり、UVエアダクトに挿入して空気を除菌したりするために活用されてきた。研究によると、UVCは空気中のインフルエンザウイルスを不活性化することができるとされており、また限られた証拠しかないものの、UVCはウイルスの外側のタンパク質コーティングを破壊することで、SARS-CoV-2その他のコロナウイルスも不活性化できるという研究結果もある。

これらのライトは実際にパンデミック渦でも活用されていた。例えばニューヨーク都市交通局は、毎晩地下鉄車両を消毒するために100万ドル(約1億1000万円)相当のUVCライトを購入。2020年3月に可決されたCARES法は、企業や公的機関がUVライトなどの清掃サービスを購入する際に、政府の融資を利用できるようにするものだった。

しかし、消費者向けのランプの中には批判的な意見も存在した。1つは長時間照射すると目を傷つけたり、火傷をしたりする可能性があること。またUVC消毒に関するあるレビュー(UVC消毒会社と関係のある2人の科学者によって書かれたもの)では「性能に関する非科学的な主張」が広まっているとの厳しい評価がなされている。

一方で第三者機関によるテストを行なったところ、R-ZEROのArcは一般的な風邪のコロナウイルスと、表面に付着したノロウイルスの代替ウイルスの2種類のウイルスを99.99%減少させることが確認されている。また、大腸菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しても99.99%の除菌効果があったという。

UVCライトの殺菌技術としての有用性については賛否両論あるものの、この業界が消え失せてしまうことはないと複数のアナリストが指摘している(例えばLGはUVベースのクリーニング分野に参入したところだ)。William Blairの商業サービス株式アナリストであるTim Mulrooney(ティム・マルルーニー)氏は、ワシントン・ポストに対し、人々の衛生に対する考え方が「パラダイムシフト」していると伝えている

2020年に行われた世論調査によると、衛生管理は従業員と顧客の両方にとって最重要事項であることが示唆されている。Deloitteが3000人を対象に実施した調査では、従業員の64%が共有スペースの定期的な清掃を重要視していると回答し、顧客の62%が毎接客ごとに表面を清掃して欲しいと回答している(新型コロナウイルスは表面接触では感染しにくいと考えられているのにも関わらずである)。

ワクチン接種の増加が、今後のオフィス衛生に対する認識にどのような影響を与えるかはまだわからない。しかしモーガン氏は、企業(および従業員)は身近な細菌の存在をパンデミック前よりも意識し、オフィス内の人の流れを管理することも含め、その蔓延を抑制する方法を模索し続けるだろうと考えている。

R-ZeroはCoWorkrを買収したことでUVC殺菌だけでなく、占有管理にも力を入れることになったわけだ。

モーガン氏はCoWorkrのセンサーをR-Zeroの「目と耳」と呼んでいる。R-Zeroは居住空間の空気清浄度に対応したUVCベースの2つの製品を発表する予定で、CoWorkrのセンサーを使って「完全な自動化」を実現していくという。

例えばCoWorkerのバッテリー式熱センサーを使えば、従業員はオフィスのどの部屋が使われているかを知ることができる。その情報をもとにUVベースのエアフィルターやその他の清掃用品を活用することができるという。

この情報をもとに、その日の晩にその部屋をより徹底的に掃除するよう清掃員に指示することができ、逆に一日中誰も触っていない部屋は掃除しなくてもよいことになる。

「お客様はすぐにROIを高めることができ、30〜40%の人件費を削減しています」とモーガン氏は話す。

パンデミックの「傷跡」が癒えることはまだなく、人々は今後も依然として衛生的な職場環境を求め続けるだろうと同社は考えている。

「ほぼ100%、お客様はこれを長期的な投資として考えています」とモーガン氏はいう。

画像クレジット:R-Zero

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

オフィスでの新型コロナ感染リスク率を表示するATMOの空気モニタリングデバイス

2015年、TechCrunchは電子機器の見本市であるCESで発表されたのち、数々の賞を受賞した小型で革新的なポータブル大気質モニター「Atmotube(アトモチューブ)」を紹介した

Vera Kozyr(ヴェラ・コザー)氏が共同で設立したATMOは、企業向けの室内空気環境モニタリングシステム「Atmocube(アトモキューブ)」を発表した。Atmocubeは、オフィス内の空気環境が極めて重要となるポストCOVID時代に向けられており、小型で持ち運びができる以前の製品(この製品もまだ販売されてはいる)と異なり、目立つことでオフィスワーカーに良い空気環境であると安心感が与えられるようにもなっている。

その鍵となるのが、さまざまな指標とともに「Atmocube」の画面に表示される二酸化炭素レベルの測定値だ。

このデバイスには最大14個のセンサーが搭載されており、CO2、ホルムアルデヒド、PM1(空気中の小さな粒子)、PM2.5、オゾンなどの各種環境パラメータや相対湿度、温度、気圧、環境騒音、光量、色温度などを測定する。

ATMOによると、この新デバイスは、粒子状物質、湿度、CO2のレベルに基づいて、ウイルスの空気感染スコアを計算し、閉ざされた空間でウイルス疾患が感染する確率を推定する「スコア」を導き出すという。もちろん、これを検証するには独立したテストが必要だが、WHOが新型コロナウイルスは換気の悪い、あるいは混雑した室内環境で感染する可能性があると勧告しているのは事実だ。

「大気汚染は、気づかないうちに自分自身や健康に影響を及ぼすので危険です。私たちは、人々が自分の吸い込んでいるものを知り、その結果として変化を起こす助けになることを目指しています。企業がオフィスに戻る際には、室内の空気環境に関する情報を透明化し、従業員がその情報にアクセスできるようにするツールが必要です。多くの空気環境モニターは隠されることを前提に設計されています。そこで私たちは暖房、換気、および空調のパフォーマンス(HVAC)の安全性を強調する、より透明性の高いインターフェースを備えたデバイスを作り、オフィスにいる人々とビルのオーナーの間に信頼関係を築くことを目指しました」とコザー氏はいう。

この分野には、AirThingsAwair OmniKaiterraなどが参入しており、ATMOだけが唯一のプレイヤーではない。

関連記事:オフィスの新型コロナ対策を支援する空気品質監視プラットフォームのOpenSensorsが4.1億円調達

画像クレジット:Atmocube

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(文:Mike Butcher、翻訳:Yuta Kaminishi)

テレワーク・イベントなど対応のバーチャル空間を提供するoViceが18億円調達、海外進出やハイブリッドワーク対応加速

テレワーク・イベントなど対応のバーチャル空間を提供するoViceが18億円調達、海外進出やハイブリッドワーク対応強化

ちょっとした会話・雑談も行え、自由に動いて自由に話しかけられるバーチャル空間「oVice」(オヴィス)を手がけるoViceは9月15日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による18億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のEight Roads Ventures Japan、既存株主のOne Capital、MIRAISE、DGベンチャーズおよびDGインキュベーション、新規投資家のJAFCO。ファーストクローズとなる今回は14億円を調達し、セカンドクロージングも合わせると総額18億円になる予定。調達した資金により、海外への展開を加速させるとともに、アフターコロナのハイブリッドワークでも快適にoViceを使用できるよう開発を進める。

調達の目的と今後の展開

  • 海外市場への積極的な展開:海外でのテレワークやオンラインイベントの需要の高まりから、日本以外での販売も徐々に増加していることを受け、今後はさらに積極的に海外市場に展開。特に韓国など新たな市場に参入、定着を図る
  • ハイブリッドワーク対応に向けた技術開発:アフターコロナで増加するであろうハイブリッドワークに対応するべく、技術開発や他社との提携を引き続き行う。例えば他社の開発している360度カメラとoViceを連携させ、リモートワーク・テレワークでオンラインで勤務する人と実オフィスに出社している人がシームレスにコミュニケーションができるような環境構築などを行う
  • 他ツールとの連携強化:ビデオ会議システムやチャットツールなど、様々なテレワーク関連ツールと連携することで、ユーザーがより快適にoViceを利用できる環境を構築する

2020年2月設立のoViceは、「人々の生活から物理的制約をなくす」ことをミッションに掲げ、バーチャル空間「oVice」を開発・提供。oViceは、ウェブサイト上で自分のアバターを自由に動かし、相手のアバターに近づけることで話しかけられる2次元のバーチャル空間となっており、自分のアバターに近い声は大きく、遠い声は小さく聞こえ、現実の空間で話しているような感覚を体験できる。また偶然聞こえてきた雑談・会話にも参加でき、会話する中で生まれた新たなアイデアを形にしやすい環境を整えている。テレワーク・イベントなど対応のバーチャル空間を提供するoViceが18億円調達、海外進出やハイブリッドワーク対応強化

2020年8月のサービス開始から9000件以上利用されており、テレワークにおけるバーチャルオフィスとして、また展示からネットワーキングまで自由にできるオンライン展示会、自由に席替えができるオンライン飲み会など、さまざまな場面での活用が進んでいるそうだ。

 

リモートワークに関する議論はすでにスタートアップ企業の勝利で決着がついている

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

リモートワーク、オフィスカルチャー、分散したスタッフのチームをどう管理するかなどの議論は尽きない。新型コロナウイルス(COVID-19)のデルタ株は、多くの企業でオフィスへの復帰日を遅らせているが、未来の仕事がどうなるかについては、まだ健全な議論が続いている。

しかし、大企業が態度を決めかねている間に、この論争はほぼ収束し、スタートアップが勝利したというのが私の見立てだ。

新型コロナの出現以来、スタートアップの創業者たちと膨大な数の通話を行ってきたが、ここ数四半期はアーリーステージの企業と話をすると、ほぼ毎回、遠隔地に分散したチームを持っているように思われた。こうしたスタートアップの中には、文字通り新型コロナの時代に設立されたものもあるため、それも納得だ。しかし、こうした傾向はそうした新しい企業だけでなく、より広い範囲に及んでいる。

スタートアップ市場に限って考えてみると、現在スタートアップにとってサーバーラックを購入し、設置費用を支払うことに資本を使うことが奇妙なことであることと同じように、やがて家賃に費やすために資本を使うことは奇妙な概念になるだろう。今では私たちはAWSやAzureを手にしているし、オフィスに関してはリモートワークがあるのだ。なぜ、床面積のために資金を使うのか?

ある程度単純化して考えているものの、シードやシリーズAの資金を家賃に充ててしまうと、少なくとも、成功するスタートアップにとっては初期のオフィススペースは世界で最も高価な不動産の1つになってしまう。目鼻が利く人なら税金を回避するだろう。

理由はそれだけにとどまらない。現在、多くの重要な職務に対して、人材市場は非常に厳しい状況にある。機械学習の人材を採用しようとしている人に聞いてみると良い。あるいは、上級の開発職でも、もしくは、マーケティングチームのリーダーでも良い。リストはまだ続く。スタートアップ企業が求める人材は、不足しているしコストもかさむ。

新興のハイテク企業にとってさらに悪いことに、ビッグテック企業はかつてないほど裕福になっている。では、若い会社はどうすればいいのだろうか?大手が嫌がるような、リモート指向の仕事を提供するのだ。これにより、スタートアップ企業が大手ハイテク企業から、優れた才能をもった人材を引き抜くことも可能になる。

個人的には、やがて人事担当者の流動性が高まることで、職場に対する柔軟性がどの会社でも高まるのではないかと考えている。また、現在リモートで活動している多くのスタートアップ企業は、このモデルを固持しながら規模を拡大し、完全なリモートチームを持つ明日の大企業になるだろう。そのため、リモートワークか高額なオフィススペースに戻るべきかの会話はまだ続いているものの、それは本当の議論というよりも、沈没しようとしている船の上でデッキチェアをどう並べれば良いかを議論しているように思える。

オフィスでヘッドフォンをつけて集中できるように、本当にクルマや公共交通機関を使った通勤に戻りたいだろうか?どうだろう。私はお断りだ。

ボストンについて

The Exchangeは、世界のさまざまなスタートアップハブの調査に時間を費やしているが、その中でも特に時間を割く価値のある米国市場のいくつかに焦点を当てている。たとえばシカゴ、そして最近ではボストンも見てきた。

ボストンの記事が公開された後、いくつかのコメントが寄せられた。それらのキーポイントをかみ砕いてみよう。

Glasswing VenturesのRudina Seseri(ルディナ・セセリ)氏はボストンの近い将来の展望について「市場に出てくる企業や新しい調達ラウンドを行う企業の数は多く、それらの企業は経営的にも強いものです。なので、市場の調整が行われない限り(それはボストンよりもはるかに広い範囲で行われると思いますが)、資金調達の意欲は失われないでしょう」と語った。

このような状況が続くと、ボストンではスタートアップベンチャーの活動がさらに活発になる可能性がある。セセリ氏はメールでThe Exchangeに対して「プレシードやシードステージの企業の数は劇的に増えています。実際に、資金調達のための高度な資格を持つ人の数は、(前年比で)2倍に増加しています」という。

彼女の見解では、ボストンが生み出しているきちんとしたスタートアップの量は「アーリーテックの起業家精神と、新型コロナウイルスが初めて加速もさせた市場機会の証」だという。

最後に、ニューイングランドベンチャーキャピタル協会のAri Glantz(アリ・グランツ)氏は「2020年上半期に一旦減速した後、パンデミック時代のシフトによって新たなニーズや機会が生まれたことで、創業者も資金提供者も歴史的な資金の流れを目の当たりにしたのです」と語り、そして「企業とその支援者が適応を続けているおかげで、先行きは明るいままです」と続けた。

最後の言葉は、ほぼすべての場所に当てはまるので入れておいた。スタートアップ企業にとって、これ以上良い言葉はない!

ではまた来週。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

アフターコロナでもバーチャルオフィス業界で独自の地位を確立しようとするNooks

分散したチームをターゲットにしたバーチャルワークスペースの空間を提供するNooksは、1年間のベータ運用を経て、数千人のユーザーを魅了し、ベンチャーキャピタルから数百万ドル(約数億円)の資金を引き寄せてきた。スタンフォード大学の学生が率いるこの有望なスタートアップがこのたび、シードラウンドでの500万ドル(約5億5000万円)を調達している。ラウンドを主導したのはTola Capitalで、出資者にはFloodgateの他、EventbriteのCEOであるJulia Hartz(ジュリア・ハーツ)氏と同会長のKevin Hartz(ケヴィン・ハーツ)氏、Awesome People Venturesの創業者Julia Lipton(ジュリア・リプトン)氏が名を連ねている。

この資金調達は「バーチャルオフィス」の領域で事業展開する企業に賭ける投資家のさらなる中核グループの兆候を示している。つまり、分散した従業員たちがZoomを卒業し、生産性とゲーミフィケーションを念頭に置いて作られた「メタバース」へと進む準備ができていると考える、スタートアップ数十社を含むコホートだ。ケヴィン・ハーツ氏が仮想HQ事業に投資したのは今回が2度目で、最初はGatherへの投資だった。現時点では、Sequoia Capital、Andreessen Horowitz、Menlo、Battery Ventures、Index Ventures、Y Combinator、Homebrew、Floodgateの各社が、それぞれ別のバーチャルオフィススタートアップに出資している。

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言い換えれば、投資家が資金を投入していてもなお、Nooksは資金調達に対して難しい仕事を抱えているということだ。

Nooksは2020年5月、スタンフォード大学の学生Daniel Lee(ダニエル・リー)氏、Rohan Suri(ローハン・スーリ)氏、Nikhil Cheerla(ニキル・チェルラ)氏、そしてRensselaer Polytechnic Institute(レンセラー工科大学)のAndrew Qu(アンドリュー・クー)氏によって設立された。予期せずにリモートワークの世界に飛び込んできた他の大半の人々と同様に、スタンフォードの学生3人組は学校や授業でZoomがもたらす疲労を体験した。彼らはほどなく、よりパフォーマンスの高いチームや同じ考えを持つコミュニティが一緒に仕事を楽しむことができる空間を作る必要性を感じた。

共同創業者たちは最初に、Nooksをスタンフォード大学内で試験運用し、夏のバーチャル授業の魅力的なレイヤーとして教員支援用に提供した。Nooksの初期のユースケースは、オフィスでの時間や宿題パーティーの様相を呈していた、とリー氏は語っている。学校で試験運用を行っていたNooksはその後、分散したチームの業務支援に注力するようになったが、その精神は一貫している。

「会議のような束の間の空間ではなく、より自然発生的なつながりを作ることができる場所を提供する、永続的な空間が必要です」とリー氏は語る。

Nooksの求心力の要素

ユーザーがNooksにアクセスすると、Slack風のインターフェイスが表示される。ただし、左側にあるチャンネルのパネルの代わりに、従業員は「スペース」への参加に招待される。各スペースの用途は、デスク周りのモックアップからビーチでのくつろぎ、企画や考案のハドルにいたるまで、さまざまだ。また、コードに現れるバグを取り除くための専用スペースが設けられている。プラットフォームへの最初の参入時点で、NooksのUXは他の競合他社とは一線を画していた。BranchやGatherのような企業は、生産性要素を備えたビデオゲームのような印象だが、Nooksはアバターのような雰囲気をまったく感じさせず、TeamflowTandemに近づいている。同社はビデオAPIを利用して、各ユーザーが小さなスペースを利用できるようにしている他、Googleドキュメント、YouTube、Asana、GitHubなどのプラットフォームとの統合も追加している。

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画像クレジット:Nooks

共同創業者であるスーリ氏によると、同社は会話の促進を図るために、クリック数を増やすことなく、よりシンプルな美意識を追求するようにしたという。

「誰かと話をするにあたって、ビデオゲーマーになる必要があるとは、私たちは考えていません。自分のアバターが周囲に存在し、会話をする相手に歩み寄るようなものです」とスーリ氏はいう。「部屋の中にいる彼らを見つけて、その部屋に入るのと同じくらい簡単であるべきです」。

画像クレジット:Nooks

当然のことながら、同社はそのシンプルさと魅力的な環境のバランスを取ることに力を入れており、スペースやBGMのカスタマイズもその一環だ。プレゼンテーションの最中に仲間同士が会話できる「ささやき機能」や、Nooksがトップセラーのリーダーボードを作成するバーチャルセールスフロア、アイデアの相互交流を促進するコワーキングスペースなどがある。

シンプルさは、自発性を犠牲にしてしまうこともある。他のバーチャルオフィスプラットフォームが空間的広がりのあるオーディオを使って「一過性」の感覚(他の同僚の近くにいるときは主張の声が大きくなり、離れているときは寡黙になる)を作り出しているのに対して、Nooksは、そのシンプルさを常に「ワンクリックで誰とでも話ができる」という目的で創出することで、即興のコラボレーションとカジュアルな会話を促進している、とリー氏はいう。

摩擦のないコミュニケーションは重要な機能だが、Nooksの唯一の求心力要素ではないようだ。SlackやHangouts、さらにはTwitterのDMのようなプラットフォームでは、ユーザーが誰かとコミュニケーションするのに必要なのはワンクリック(最大でも2クリック)だけである。いうまでもなく、Slackは自発性とライブコミュニケーションを中心とした一連のコミュニケーションツールをリリースしている。

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それでもNooksには現在、スタンフォード、Embroker、Workatoなどのチームや組織による、毎週何千人ものアクティブユーザーが存在する。同社によると、Nooksを利用するチームは1日平均6時間をNooksのプラットフォームに費やしているという。

ハイブリッドワークのバーチャル成長の難しさ

世界各地でパンデミックが収束するにつれ、Nooksのようなスタートアップは、リモートワーク中心の長い期間に及ぶ対応を経て、ハイブリッドチームの復帰に適応する方法を見つける必要があるだろう。これらのスタートアップにとっての新たな課題は、新しい仕事の文化にうまく組み込むためにどのように自らを位置づけるかである。

そして、近接性バイアスによってそれが難しくなる可能性もある

近接性バイアスとは、バーチャルで働く従業員よりも、対面で働く従業員の方が高く評価されるという考え方だ。ハイブリッドが大規模に成功するのを難しくしている現実の1つは、従業員のグループがオフィスに出向くことができるという理由だけで、より重要な存在として位置づけられたり、高く評価されたりすると、公平性が損なわれることだ。

バーチャルワークスペースのスタートアップ、特に職場の文化をオンライン化したいスタートアップは、在宅勤務者とオンサイト勤務者を誤って分断してしまう可能性がある。分断化は、少数民族や女性を含む、歴史的に見過ごされてきた個人に不相応な影響を与えてしまう。顕著なことに、現在のバーチャルオフィスのほとんどが男性によって構築、運営、資金提供されている。

近接性バイアスへの対処方法について尋ねると、リー氏は「リモートの従業員とより頻繁に、流動的でカジュアルな会話をすることで、チームの他のメンバーとより強い絆を築くことができます」と説明した。当然のことながら、バーチャルオフィススタートアップの多くは、オフィスにいる全員を同じデジタル世界に連れてくることを通して近接性バイアスの解消に乗り出したものだ、という主張もあるだろう。

最終的には、プレイフィールドを平等にするには積極的な意図が必要になる。スタートアップはどうすれば、会議室Aでの自然発生的な対面でのスタンドアップミーティングにバーチャルオフィスの従業員がアクセスできるようにすることができるだろうか。プラットフォームはどのようにして従業員に、場所に関係なく、意見を出したり、反対意見を述べたり、会議後の冗談を共有したりする機会を与えるだろうか。アバターは、拍手や親指を立てる以外にも、物理的なヒントを与え始めることができるだろうか。

私はこれらの機能が、長期的に見てバーチャルオフィススタートアップのムーンショットであり、サバイバルハックであると確信している。

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

仮想の窓を通しリモートワーカーがオフィスと「つながっている感」を保つVideo Window Remote

多くの企業がオフィスで働く人と自宅で働く人が混在するハイブリッドな働き方にシフトしている中、Zoom(ズーム)のようなビデオ会議ツールを使っていても、自宅勤務の人は断絶感を感じてしまいがちだ。Video Window(ビデオウィンドウ)は、まるで仮想の窓を通して見ているかのように、他のオフィスとつながっている感覚をユーザーに与えるように設計されている。同社は米国時間8月17日、そのようなリモートワーカーに向けて、iOSおよびAndroid用のコンパニオンアプリ「Video Window Remote」を発表した。

その名の通り、Video Windowシリーズの最新作は、オフィス内のリモートコミュニケーションだけでなく、自宅や別の場所など、オフサイトで仕事をしている社員も巻き込んで、オフィスにいるかのような感覚を味わえるように設計されている。

ビデオ会議では、バーチャルにミーティングをしてビジネス上の議論を交わすことはできるが、オフィスにいて同僚とおしゃべりしているときに感じるようなつながりはない。そのため、ときには孤立感を感じたり、自分のアイデアが聞いてもらえていないと感じることもある。

Video Window Remoteでは、携帯電話やタブレット端末にアプリをダウンロードし、それをオフィスとの視覚的なコネクションとして使用することで、必要に応じてビデオと音声の両方を得られる。これにより、多くのリモートワーカーがオフィスにいないことで不足していると感じている、ウォータークーラーの周りで同僚と話すような体験を提供するという。

同社のDaryl Hutchings(ダリル・ハッチングス)CEOは、パンデミックの際に自宅で仕事をした経験から、Video Window Remoteの機能の多くを思いついたと語る。「Video Windowを使うことは、まさに窓越しに同僚を見るようなものです。プロジェクトを成功させ、目標を達成しながら、ともにに働く人たちと本当に一緒に存在することができ、仕事をより良く、より楽しいものにし、すべての人の競争条件を平等にします。最終的には、ハッピーハイブリッドな職場を作ることができます」と同氏は声明で述べた。

このようなツールのセキュリティやプライバシーを心配に思うユーザーのために、ハッチングス氏はいくつかの安全策を講じたという。ゲストアクセスを防ぐこと、デフォルトでオーディオとビデオをオフにすること(自分が他の人に見える / 聞こえる時をコントロールできる)、ビデオやオーディオの状態にかかわらず誰が出席しているかを誰でも見ることができる機能、スケジュールされた時間にのみサービスをオンにするスケジュールスリープモードなどだ。

このツールは、米国時間8月17日よりiOSおよびAndroidのアプリストアから無料でダウンロードできる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Video Windowリモートワーカービデオ会議アプリオフィスリモートワーク

画像クレジット:Video Window

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(文:Ron Miller、翻訳:Aya Nakazato)

ワークスペースシェアの「テレスペ」が「誰でも使える・誰でも提供できる」テレワーク個室専門予約サイトを公開

ワークスペース・シェアリングの「テレスペ」が「誰でも使える・誰でも提供できる」テレワーク個室専門予約サイトを公開

首都圏の緊急事態宣言が続き、テレワーク・リモートワーク用スペースの需要がますます高まると思われる中、ワークスペースのシェアリングサービス「テレスペ」を提供するテレワーク・テクノロジーズは8月3日、東京都内のテレワーク個室のための専門予約サイトを公開した。これは、東京都の緊急事態宣言中に期間限定された「テレスペ 緊急事態宣言限定プラン(都内)」に対応するもの。

基本的に同サービスは、以前から提供されている「テレワーク個室」サービスの特別版となる。テレワーク個室は、企業が法人契約をして、社員が1日単位で利用できるほか、個人でも月額会員制で利用できる。しかし、基本的に月単位の契約であるため、たとえば「学生さんがウェブ面接をするために1時間半使いたい」とか、会員になってない人が1日だけ使いたいといったニーズには対応していなかった。

「契約不要、初期費用不要、月額料金不要」で、料金は1時間990円(税込)から

そこでテレワーク・テクノロジーズは、「契約不要、初期費用不要、月額料金不要」で、個人も法人も、最短2分で行えるユーザー登録だけで利用できるサービスを開始した。料金は1時間990円(税込)。4時間では2200円、6時間では4999円となる(それぞれ税込)。目的に応じて1日から30日まで自由に予約が可能(1カ月以上の利用は別途相談)。支払いはクレジット決済のみ。テレワーク・テクノロジーズでは「少し高いけど安心の完全個室」と説明している。

専門予約サイトの運用は、東京都に緊急事態宣言が出されている間となっているが、その後の展望は未定とのこと。

部屋を貸したい人も、気軽に提供できる

このサービスは、誰でも利用できることともうひとつ、「誰でも提供できる」という特徴がある。つまり、部屋を貸したい人にとっても、気軽に提供できるサービスになっている。夜間営業の店舗で日中だけ貸したい、レンタルオフィスを開設したが予約が埋まらない、シェアハウスの個室が空いているなど、1人から6人程度で使える個室を貸したい人は、このサイトに出品しさえすれば、テレワーク・テクノロジーズが提供している、部屋のオーナーがレンタルスペース業務を丸投げできる「テレスペ丸投げ」サービスのノウハウを活かして、すべて代行してくれる。条件としては、最低1坪の個室で、1カ月以上貸し出せるところとなる。

現在テレワーク・テクノロジーズは、「富士通アクセラレーター for Work Life Shift」に採択され、大企業のオフィス分散を支えるサービスの実験を行っているという。テレワークを推進したい企業は、サービス利用とは別に様々な提案が可能なので相談してほしいと話している。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:オフィス / 事務所(用語)新型コロナウイルス(用語)テレワーク・テクノロジーズリモートワーク / テレワーク(用語)レンタルスペース(用語)日本(国・地域)

フェイスブックもグーグルと同様に職場復帰する従業員にワクチン接種を義務付け

Google(グーグル)のSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)CEOは、米国時間7月28日、同社が従業員に対し、現場で仕事に復帰する前にワクチン接種を義務付けることを発表した

このことは、GoogleおよびAlphabet(アルファベット)のスタッフに送られた手紙に書かれており、新型コロナウイルスのデルタ変異型が世界的に流行し続けていることから、同社が在宅勤務ポリシーを10月18日まで延長することにも言及している。

また、Facebook(フェイスブック)のVPであるLori Goler(ローリー・ゴーラー)氏は、TechCrunchへ送られたメッセージの中で、このソーシャルメディアの巨大企業が同様のポリシーを採用していることを認めた。

「オフィスの再開にともない、米国内のすべてのキャンパスに出勤する人には、全員にワクチン接種をお願いする予定です」と、ゴーラー氏は書いている。「このポリシーをどのように実行するかは、地域の状況や規制によって異なります。医療上の理由やその他の理由で予防接種を受けられない人々にはプロセスを用意し、状況の進展に応じてそれ以外の地域でアプローチを評価していく予定です。当社は引き続き専門家と協力して、すべての人の健康と安全を優先したオフィス復帰計画を立てていきます」。

この声明と同様の同様の文言で、ピチャイ氏が書いた長文の手紙にも「医療上またはその他の保護された理由で」という例外を分けている。Facebookでは当初、9月に半数、10月までに全員の職場復帰が計画されていたが、ゴーラー氏のコメントには、この復帰時期の変更については示されていない。

先週、同社の広報担当者は、The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)紙に「専門家のガイドラインでは、デルタ変異を含む新型コロナウイルスの変異種の予防にはワクチンが非常に有効であるとされています。オフィス再開までのスケジュールに変更はありません」とコメントしている。

両社の声明とも、地域や州の規制、医学的または個人的な懸念、そしておそらくは地域によって大きく異なるワクチンへのアクセスなどに基づき、会社の方針にある程度の幅を持たせている。

また、Amazon(アマゾン)もTechCrunchの問い合わせに対し「アマゾンの従業員や契約社員には、新型コロナウイルスワクチンが入手可能になり次第、ワクチンを接種することを強く勧めます」と回答している。

同社の現在のガイドラインでは、オフィスに戻るためにワクチン接種が必要というわけではないようだが、ワクチンを接種していない従業員にはマスクの着用が義務付けられている。ワクチン接種を完了したことが証明されている人は、顔を覆うことは任意となっている。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Facebook新型コロナウイルスオフィスリモートワーク新型コロナウイルスワクチンアメリカGoogleAlphabetAmazon

画像クレジット:Kim Kulish / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)