YouTubeがNFTやライブショッピングなどクリエイターツールを拡充へ、TikTokやInstagramに対抗

YouTube(ユーチューブ)のCEOであるSusan Wojcicki(スーザン・ウォジスキ)氏は2022年初め、クリエイターがファンと異なる方法でつながるためのNFT(非代替性トークン)の導入を検討していることを強く示唆するなど、動画界の巨人である同社が今後1年間に計画していることの概要を明らかにした。そして米国時間2月10日、同社の最高製品責任者Neal Mohan(ニール・モナハン)氏は、このアイデアに賭けることをブログに投稿し、2022年全体としてクリエイターのためのツールをより多く構築するというYouTubeの大きな目標について詳細に説明している。

このブログ投稿は多くの項目からなる本当に長いリストだが、YouTubeがいかに大企業になったか、そしてYouTubeの最大の競合他社がビデオによる広告事業を補完するものとしてNFTに独自に取り組んでいるという事実を考えたとき、NFTがおそらくリストの最も興味深い部分であるように思われる。

「NFTは、共通の趣味を持つコミュニティの運営に利用されたり、クリエイターのためのより良い資金調達を可能にしたり、アーティストが自分の作品を検証可能な方法で作って販売し、将来の売上に対するレベニューシェアを獲得できるようにするなど、多くの興味深い応用例を目にしています」と広報担当者は語った。「当社は、この分野で人々がすでに行っていることに、YouTubeが多くのユニークな価値を加えることができると考えています」。

他の新機能には、買い物ができるビデオLive Shopping(ライブショッピング)と「アプリ全体で」多くのショッピングの機会を導入するなど、ショッピングに関するより多くの機能が含まれる、とモナハン氏は書いている。YouTubeの動きを注視している人は驚かないだろう。同社はここ数カ月、こうした機能をテストしている。Walmart(ウォルマート)などとのテストでは、200万回以上の再生と140万件のLive ChatメッセージがあったとYouTubeは説明した。

ライブストリーミングは、新しいひねりが加えられるもう1つの分野だ。そのひねりとは、コラボレーションだ。クリエイターがインタラクティブなストリームで一緒にライブすることができるようになり、これは、非常に型通りのビデオフォーマットになったものを一新したり、新鮮味を加えるための1つの方法だ。

また、クリエイターにとって重要なアップデートとなるのが、ビデオエフェクトとアナリティクスの分野で、ビデオエフェクトは自分の作品をより良いものにするため、そしてアナリティクスは人々が見ているものが好きかどうかを知るためのものだ。モナハン氏は、2022年の新しいツールには、より多くのビデオエフェクトや編集ツールが含まれると話した。これらのツールの多くはすでにYouTubeで構築されているため驚くものではなく、クリエイターがコンテンツを別のところに投稿するもう1つの口実を与えている。YouTubeのネットワークにクリエイターを確実に留めておく興味深い工夫の1つは、近々Shorts(TikTok、Snapchat、Instagramに対抗するYouTubeの短編動画)において動画上でコメントに返信できるようになることだ。

クリエイター経済、そしてより一般的なユーザー生成コンテンツは、今日すべてのアクションがある場所であり、ますますお金がともなうようになっている。YouTubeがこれを追求し、クリエイターを魅了し続けるツールを構築する明確な理由がある。有名なクリエイターだけでなく、より大衆的なユーザー生成ビデオの拠点として非常に人気があるTikTok(ティクトック)は、eコマース企業と緊密に連携しているあるフィンテック企業によると、リファラル数ですでにPinterest(ピンタレスト)やSnapchat(スナップチャット)を上回っていて、そこにYouTubeとMetaのアプリ軍団が続くようだ。

YouTubeにとって、今はまさに板挟み状態だ。というのも、競争の反対側では、Instagram(インスタグラム)とその親会社のMeta(メタ)が、NFTを中心とした大きなビジネスの構築と、それをサポートするための通貨について本腰を入れているとされている(ファイナンシャル・タイムズは1月にこの取り組みが進行中だと報じたが、TechCrunchはこの報道が氷山の一角だと聞いている。いずれにせよ、Metaは問題を抱えたNoviプロジェクトのためにすでに行ってきたすべての仕事にホームを与える)。

広報担当者によると、Google(グーグル)は「クリエイターと視聴者のための最高の場所であるという使命を深めるのに役立つ」NFTやWeb3のような新しい技術を模索しているのだという。「YouTubeの特徴は、クリエイターとファンの関係であり、これらの新しい技術は、それを補強する役割を果たすことができると考えています」。

広報担当者は、Googleがパートナーと協力するか、またはゼロからマーケットプレイスを構築しようとしているかどうかについての「現時点の」コメントを却下した。しかし、アイコン的なYouTubeのコンテンツがすでにNFTの波に乗って、YouTube広告以外でのさらなる収益化に成功している例は非常に多いため、Googleが既存のマーケットプレイスなどと組むのはおもしろいかもしれない。

「我々のクリエイターはすでにNFTと関わっているので、この分野を理解し、クリエイターと視聴者にとって良い方向に導く手助けをすることが重要だと考えています」と広報担当者は述べた。「当社はすでに代替の収益化製品でこれを行いました。人々がアイテムを販売しているのを見て、製品を作りました。クリエイターはすでにNFTと関わっており、我々はそれをより簡単に、より良くする手助けをしたいのです」。

導入されればNFTは、Super ChatやSuper Stickerなど、YouTubeの有料デジタルグッズを含む、広告の代替としてすでに存在する収益化ツールの小さな下支えの輪に加わる。「これらはクリエイターやファンの間で非常に人気があることがわかりました」と広報担当者は話した。「そして、この多くは、支援と、お気に入りのクリエイターを財政的にサポートしたいと考えているファンのためのものです。ですので当社は、クリエイターにお金を稼ぐ新しい方法を提供しつつ、クリエイターとファンとのつながりを深めるもう1つの方法として、NFTを検討しています」。

画像クレジット:Olly Curtis/Future / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

コラボレーション型データサイエンス用ノートブック開発のためにDeepnoteが23.1億円調達

Jupyter(ジュピター)互換のノートブックの上に、データサイエンスのためのプラットフォームを構築しているスタートアップのDeepnote(ディープノート)が、米国時間1月31日、2000万ドル(約23億1000万円)のシリーズAラウンドを実施したことを発表した。ラウンドを共同で主導したのはIndex VenturesとAccelだが両社は2020年のシードラウンドにも参加していた。今回のラウンドには、既存の投資家であるY CombinatorとCredo Venturesも参加している。

Deepnoteの共同創業者のJakub Jurovych(ヤコブ・ジュロビッチ)CEOが語ってくれたように、Deepnoteは数年前に設立されて以来、当初のビジョンにほぼ忠実であり続けている。

ジュロビッチはいう「起業したときに、私たちはデータサイエンスと機械学習のバックグラウンドを持っていました。そのときの私たちは、データサイエンスの分野で何かを変えて行く必要があると確信していました。というのも、ありとあらゆるツールを試していたのですが、何を試してもコラボレーションがうまくいかなかったからです」。

すでにJupyterノートブックに精通していた共同創業者のJan Matas(ジャン・マタス)CTOと、デザイン部門責任者のFilip Stollar(フィリップ・ストーラー)を含むチームは、この既存のツールへの、コラボレーションのためのより簡単な方法の導入に着手した。

画像クレジット:Deepnote

多くの点で、Deepnoteは共有型データサイエンスノートブックの業界標準になっている。現在、ByteDance(バイトダンス)、Discord(ディスコード)、Gusto(ガスト)などの企業が同社のプラットフォームを使用している。データサイエンス市場は急速に成長しているにもかかわらず、人材の確保が困難であるため、チームは同社のツールを学生に提供することにも力を入れている。現在、世界のトップ100大学のうち80大学が、少なくとも一部の授業でDeepnoteを使用している。

「学生や教師が感じている痛みは、他の組織で見られるものとほとんど同じです。同様のコラボレーションへの要求があるのです」とジュロビッチ氏はいう。1人の教授がこのツールを使って何百人もの学生に課題を配布できるように、企業ユーザーは自分のノートブックをトップ役員を含む社内の誰とでも共有できるようになるのだ。実際、ジュロビッチ氏は、ノートブックというフォーマットは、技術者と非技術者の間のギャップを埋めることができると考えている。そのため、Deepnoteはデータサイエンティストをターゲットにしているものの、チームの目標の1つは(Jupyter規格との完全な互換性を保ちながら)ノートブックを使用する際の参入障壁を下げることだ。

画像クレジット:Deepnote

ジュロビッチ氏は「2年前には、Pythonの書き方を知らなければ、ノートブックから何の価値も引き出すことができませんでした」という。「それが今では、チームの技術者である誰かからリンクを受け取れば、そのあと視覚化を微調整することはとても簡単なことなのです。コメントを残したり、フィードバックを行うためには、高い技術は必要ありません」。

Deepnoteには無料プランが用意されている。有料のProプランは12ドル/月/ユーザーからだが、学生や教師は無料で利用できる。

リモートファースト企業のDeepnoteは、今回の資金調達により、製品の開発とデータサイエンスコミュニティでの足場拡大を図る。ジュロビッチ氏は今後12カ月の間にチームの規模を2倍の約50人にすることを計画している。

画像クレジット:Deepnote

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

ハードウェア開発者のための「GitHub」を目指すコラボハブAllSpice

AllSpiceの創業者、カイル・デュモン氏とヴァレンティナ・ラトナー氏(画像クレジット:Harvard Innovation Labs)

AllSpice(オールスパイス)はハードウェア開発のためのコラボレーションハブだ。GitHub(ギットハブ)に触発され、DevOpsエコシステムを構築することを使命として、プライベートベータ版から登場した。

創業者のValentina Ratner(ヴァレンティナ・ラトナー)氏とKyle Dumont(カイル・デュモン)氏は、2019年にハーバード大学で出会い、2人とも工学修士とMBAの両方を取得した。2人は、物事を進めるのにPDFや電子メールに頼るという、ソフトウェア開発に比べて遅れているハードウェア業界でのそれぞれの仕事に対するフラストレーションで意気投合した。

「ソフトウェア業界は強力なコラボレーションと自動化を備えている優れた開発者ツールで一斉にスタートしているように感じていました」とデュモン氏はTechCrunchに語った。「私がヴァレンティナに会ったとき、私たちはどのようにこの業界を修正することができるか、市場の規模にどのような影響を与えることができるか、アイデアを出し始めました」。

未だに手作業で行われているタスクが多く、エンジニアは書類作成やスプレッドシートにかなりの時間を費やしているため、エンジニアがハードウェア製品の設計や構築に大半の時間を割けるようにすることが、AllSpiceの背景にある考え方だとラトナー氏は話した。

AllSpiceのデザインレビュー機能(画像クレジット:AllSpice)

リモートワークや近年のチップ不足を背景に、AllSpiceや他の企業は「ハードウェアのためのGitHub」が必要だと考えている。リモートでほとんど何でも作ることを可能にするコラボレーションツールを作っているWikifactory(ウィキファクトリー)は、2020年末に300万ドル(約3億5000万円)の資金調達を発表した。2021年10月に1200万ドル(約13億8000万円)を調達したFlux(フラックス)は、ブラウザベースのハードウェア設計ツールを開発中だ。

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AllSpiceのツールで、エンジニアリング専門の人は自分のプロジェクトを管理し、チーム内の関係者と共同作業ができるようになる、とデュモン氏は話す。AllSpiceは、GitHub、GitLab(ギットラボ)、Bitbucket(ビットバケット)などのツールと互換性があり、ハードウェアチームが修正、レビュー、リリースを1カ所で管理するための一種のホームベースとして機能する。

AllSpiceは2020年にプレシードラウンドを調達した。そして、Bowery CapitalとRoot Venturesが共同でリードし、Flybridgeとエンジェル投資家が参加した320万ドル(約3億7000万円)のシードラウンドをこのほどクローズした。累計調達額は380万ドル(約4億4000万円)となった。

2021年は、数百の企業向けユーザーコメント、30以上のプロジェクト、数百のプロジェクトリポジトリが作成され「信じられないような採用」があったとラトナー氏は述べた。この勢いを維持するために、新しい資本は継続的なインテグレーションとデリバリーのためのエンジニアリングとマーケティングの新規雇用に投入される予定だ。

「私たちは、開発者主導のアプローチをとっています。これは、ソフトウェア業界ではしばらく前からしっかりと確立されていることですが、ハードウェア業界では、まだかなり営業が強いのです。業界に追いついていない販売手法もあるため、私たちはまずエンジニアに役立つ製品を提供することを心がけています」。

AllSpiceはツールに依存しない。幅広い企業にアピールできるよう、統合のための別のCADツールをもたらし、そしてより多くのものがデジタルで非同期であることから、環境の変化にハードウェアチームが迅速に対応できるようにする、というのがAllSpiceの計画だとラトナー氏とデュモン氏は話す。

一方、Bowery CapitalのゼネラルパートナーであるLoren Straub(ローレン・ストラアブ)氏は、AllSpiceを紹介されたとき、同社は製品主導の成長アプローチに注目していたと述べた。ストラアブ氏が最もよく目にしたものは、サプライチェーン、製造、オートメーションと関係があり、ハードウェアも含まれていた。

ストラアブ氏は、創業者たちがソフトウェアとハードウェアのエンジニアリングの経験を持ち、ハードウェア開発がいかに困難で時代に遅れを取っているかを目の当たりにし、それを経験していたことに魅力を感じたという。

「事前調査を進めていくなかで、今まで見たこともないようなフラストレーションが溜まっているのを目にしました。人々は、そのエクスペリエンスがいかにクリエイティブな体験であるかを聞いて、いくつかのソフトウェアツールに自分達のワークフローを無理やり取り込もうとしたが、うまくいかなかった、とさえ言っていました」と付け加えた。「ヴァレンティーナとカイルは、ハードウェアのために適切なツールが作られれば、どれだけ良くなるかを深く理解していたのです」。

「VCになる前、私は10年以上ハードウェアエンジニアリングに携わっていました」と、Root Venturesのパートナー、Chrissy Meyer(クリッシー・メイヤー)氏は電子メールで述べた。「Appleのような大企業がスタートアップと共通していたのは、スクリーンショットを使ってデザインレビューをまだ行っていたことです。ハードウェアエンジニアがGitHubやJIRAのようなソフトウェアツールを寄せ集めるのを見たことがありますが、それらのツールはコードのために作られたもので、CADのためのものではありません。ヴァレンティーナとカイルに初めて会ったとき、私はすぐさま興奮しました。というのも、あったらいいなと私がいつも思っていたツール を彼らが説明してくれたからです」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

SlackやMicrosoft Teamsなどプラットフォームを超えてチャットできる企業向けメッセージサービス「Mio」

Mio(ミオ)は、Zoom Chat(ズーム・チャット)、Microsoft Teams(マイクロソフト・チームズ)、Slack(スラック)、Cisco Webex(シスコ・ウェブエックス)などのメッセージングサービスを横断して、企業チームの協業を支援するスタートアップ企業だ。同社は米国時間12月9日、シリーズA投資ラウンドを実施し、870万ドル(約9億9000万円)の資金を調達したと発表した。このラウンドは、Zoom(ズーム)とCisco Investments(シスコ・インベストメント)が主導した。

2016年にオースティンで設立し、Y Combinator Winter 2016(Yコンビネータ2016年冬)クラスに参加したMioは、これで総額1700万ドル(約19億3000万円)を調達したことになる。その他の投資家には、Goldcrest Capital(ゴールドクレスト・キャピタル)、Eniac Ventures(エニアック・ベンチャーズ)、Two Sigma Ventures(ツー・シグマ・ベンチャーズ)、Khosla Ventures(コースラ・ベンチャーズ)、Y Combinator(Yコンビネータ)、Capital Factory(キャピタル・ファクトリー)などが含まれる。

プラットフォームを超えてチャットができることは、社内では普通、あまり問題にならないが、組織を超えて仕事をしていると問題になる。従来、この種の会話は、対面でもバーチャルでも、事前に計画されたミーティングで行われていた。しかし、新型コロナウイルス感染流行の発生により、このように社外組織と協業するユースケースでも法人メッセージングサービスへの移行が加速した。

画像クレジット:Mio

MioのCEO兼共同設立者であるTom Hadfield(トム・ハドフィールド)氏は「この分野の互いに異なるプレイヤーたちは、自分たちの壁に囲まれた庭を競合他社から遮断しておきたいと考えるのではないかと、あなたは思うかもしれません。しかし、ZoomとCiscoがMioに投資しているという事実は、相互運用性を非常に重視していることを示しています」と、筆者に語った。さらに同氏は、Microsoft(マイクロソフト)とMeta(メタ)が最近、Teams(チームズ)とFacebook Workplace(フェイスブック・ワークスペース)の統合で提携したことや、SlackとTeamsもVoIPの統合で以前から提携していることを指摘した。

「Microsoft Teams はローカルエリアネットワーク(LAN、構内通信網)のようなもので、Microsoftは常に Microsoftユーザー間でメッセージを配信します」と、ハドフィールド氏は語る。「TeamsのユーザーがSlackのユーザーにメッセージを送りたい場合、職場でのコミュニケーションにワイドエリアネットワーク(WAN、広域通信網)を経由することになります。それがMioで構築しているものです」。

CTOのJames Cundle(ジェームズ・キャンドル)氏と共同で会社を設立したハドフィールド氏によると、同社のチームはこの数年、メッセージングクライアント間の基本的な違い(Slackがカスタム絵文字をサポートしていることなど)の管理や、チャンネルの扱い方など、技術的な課題への対応に取り組んできたという。プラットフォームが異なればユーザーに課せられる制限も異なるし、APIも常に変化する。

画像クレジット:Mio

「コラボレーション業界は、2000年代初頭にAIM、ICQ、MSN、Yahoo! Messenger(ヤフー・メッセンジャー)を接続していたTrillian(トリリアン)のような『多頭型クライアント』から長い道のりを歩んできました」と、ハドフィールド氏は説明する。「10年前には、XMPPやSIPなどのオープンスタンダードが大々的に推進されましたが、標準化団体はチームコラボレーションの急速な革新に追いつくことができませんでした。Mioは、一般に公開されているAPIを連合させることでこの問題を解決しているため、各プラットフォームがそれぞれのペースで革新しても問題ありません」。

このようなサービスに対する明白なニーズがあることを考えれば、そこに多少の競争が生じることは当然だろう。Zoom(ネクストプレーン)も同様の機能を提供しており、Matrixは分散型メッセージングのためのオープンソースプロトコルを使って、SlackやDiscord(ディスコード)などの橋渡しを行っている(ただし、Teams、Zoom、Webexは含まれない)。「我々はMatrixやNextplaneと緊密に協力して、統一メッセージング・エコシステムという共通のビジョンを推進していくつもりです」と、ハドフィールド氏は述べている。

Mioは新たに調達した資金を使って、Google Chat(グーグル・チャット)やMetaのWorkplace(ワークスペース)、Symphony(シンフォニー)など、対応するメッセージングサービスを追加し、同社のサービスを強化することを計画している。また、サービス間でプレゼンス情報を同期させることができるプレゼンス統一化機能も導入する予定だ。

「コラボレーション業界の最大手2社による今回の投資は、相互運用性の新しい時代の到来を告げるものです」と、ハドフィールド氏はいう。「これによって、地球上の誰もが、どのチャットアプリを使っているかに関わらず、お互いにコラボレーションできる『コラボレーション・ニルヴァーナ(協業涅槃)』に、私たちは一歩近づきます」。

画像クレジット:Morsa Images / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Spotifyがエアロバイク、トレッドバイクのPelotonと提携、Workout Hubでの新しいプレイリストを開始

Spotify(スポティファイ)はPeloton(ペロトン)と提携し、ストリーミングサービスの「Workout Hub」内に「Curated by Peloton」という専用コーナーを新たに開設する。本日からSpotifyのユーザーは、Pelotonのインストラクターによる7つのローテーションプレイリストにアクセスできるようになる。そのプレイリストには「Running by Peloton」「Tunde Oyeneyin’s Playlist(トゥンデ・オイネインズ・プレイリスト)」「Strength by Peloton」などがある。この厳選されたプレイリストは、ワークアウトクラスで使用されている曲をユーザーに紹介するものだ。

また、Spotifyは、Pelotonのインストラクターの音楽の好みが自分と合うかどうかを知るための新しいクイズ「Find Your Instructor(ファインド・ユア・インストラクター)」を開始した。このクイズでは、ユーザーにいくつかの質問をするとともに、ユーザーのリスニング行動を調べて、最も相性の良いインストラクターを見つけることができる。

また、Pelotonは、このパートナーシップを記念して「Today’s Top Hits」「Door Knockers」「Lofi Beats」「Indigo」「Baila Reggaeton」など、Spotifyの人気プレイリストの曲を使った11のクラスを開催する。

なお、SpotifyとPelotonのコラボレーションは、今回が初めてではない。2020年、Pelotonは、Spotifyの「Power Hour(パワー・アワー)」「Rock This(ロック・ディス)」「Viva Latino(ビバ・ラティーノ)」の各プレイリストからの楽曲を使用した数十種類のクラスを導入した。また、Spotifyは、Pelotonユーザーがクラス中に再生されるお気に入りの曲を保存できる「Track Love(トラック・ラブ)」機能を開始した。

今回の提携拡大は、パンデミックの影響で、人々が自宅でのワークアウトやモチベーション維持の方法を模索していたことから、SpotifyとPelotonの両社がこの1年間で好調に推移したことを受けたものだ。

また、Spotifyは、サービスを拡大し、他のデジタル企業との提携を模索している。Spotifyは2021年10月、eコマースプラットフォームのShopify(ショッピファイ)と提携し、サービスに参加しているアーティストのプロフィールをShopifyのストアに接続することで、商品をスポティファイのアプリを通じてファンに直接販売できるようにした。また、Spotifyは2021年初めにオンラインGIFデータベースGIPHY(ジフィー)との提携を発表し、GIFによる新しい音楽の発見を可能にした。

画像クレジット:Spotify

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

マイクロソフトがアプリを横断して使えるコラボツール「Microsoft Loop」を発表

Microsoft(マイクロソフト)は、Google(グーグル)が2009年に立ち上げて2010年に早々と閉鎖し、運の尽きたリアルタイムメッセージング&コラボレーションプラットフォームGoogle Waveを復活させる。

この再登場は予想すべきだったかもしれない。2019年にMicrosoftはFluid Frameworkを発表した(Fluentデザインシステムと混同しないで欲しい)。ここでのアイデアは、ビジネス文書の性質と、開発者がリアルタイムアプリケーションを構築する方法を再発明しようとするものに他ならなかった。同社は2020年にFluidをオープンソース化し、自社のOfficeアプリケーションのいくつかに組み込みを開始した。そして米国時間11月2日、Igniteカンファレンスにおいて、Fluidをベースにしたまったく新しい製品を発表した。Microsoft Loopだ。

Loopは、Fluidフレームワークを採用した新しいアプリケーションであり、新しいコンセプトでもある。Fluidフレームワークは、リアルタイム編集ベースのアプリケーションを作成するために、開発者が自由に組み合わせられる柔軟なコンポーネントを提供し、ユーザーが文書でコラボするための新しい体験を創り出す。リアルタイムのコラボに加えて、開発者用のフレームワークとプロトコルを提供することで、Waveをあらゆる場所で利用できるようにするというのが、Google Waveの約束でもあった。

そしてあなたはこういうかもしれない。Teamsのためのものではないのか? なぜこれがTeamsに組み込まれていないのか、と。その通りだ。それらの取り組みは進行中だ。しかしLoopアプリでもある。このアプリは、Microsoftがいうところの「パワフルでフレキシブルなキャンバスと、アプリ間を自由に移動して同期を保つポータブルなコンポーネントを組み合わせたもので、チームがともに考え、計画し、創造することを可能にする」ものだ。

Loopには3つの要素がある。リスト、テーブル、ノート、タスクなどの「生産性の原子単位(atomic units of productivity)」(このフレーズを考え出した人には脱帽だ)であるLoopコンポーネント「コンポーネントを整理し、ファイルやリンク、データなどの他の有用な要素を取り込み、チームが考え、つながり、コラボするのに役立つ柔軟なキャンバス」であるLoopページ、そしてみんなが取り組んでいることを把握し、共有する目標に向けての進捗を確認できる共有スペースであるLoopワークスペースだ。

Waveにはなかったことだが、Loopの中核的な機能として、Loopはカーソルの位置をリアルタイムに追跡することができる。これはメタバースの現状を表す。カーソルを動かしているときほど、会議に参加していることをアピールできるものはない。

間もなく提供されるLoop / Fluentの新しいコンポーネントとしては、投票表(Google Waveの最初の機能だ)とステータストラッカーがある。

Google Waveは明らかに時代の先を行っていた。

画像クレジット:Microsoft

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

元アップル社員が起ち上げたBild、クラウド上でのハードウェア設計の共有・共同作業を行うツールを提供

Apple(アップル)でハードウェアエンジニアリング・プログラムマネージャーを務めていたPradyut Paul(プラデュット・ポール)氏は、eメールやスプレッドシートといった旧式のツールを使ってハードウェア製品を構築・共有することの難しさを身をもって体験した。

設計が遅れたせいで何十万ドル(数千万円)もの費用をかけて迅速な出荷を行った後、ポール氏はハードウェアをより早く開発し、より多くの設計を検証するために、他のチームと連携するもっと良い方法があるはずだと考えた。

このようなコラボレーションをクラウドで行えるようになれば、組織全体のチームが設計プロセスをより簡単にレビューできるようになり、製品リリースのスピードアップにつながる。そのためにポール氏はアップルを退社し、2020年にCTOのAvinash Kunaparaju(アビナッシュ・クナパラジュ)氏、COOのDerrick Choi(デリック・チョイ)氏とともに、Bild(ビルド)を起ち上げた。

Bild共同創業者のプラデュット・ポール氏とアビナッシュ・クナパラジュ氏(画像クレジット:Bild)

「私たちは、エンゲージメントをクラウドに移行するというアイデアを思いつきました」と、ポール氏はTechCrunchに語った。「それは単なるやりとりではなく、非常に多くの関係者が関わり、受信箱が基本的にコミュニケーションの保管場所になります」。

同社は米国時間10月25日、シードラウンドで300万ドル(約3億4000万円)を調達したと発表した。この資金は、顧客獲得、セールス、マーケティングの分野でチームを強化し、新規ユーザーに向けたセルフサービス体験を構築するなど、製品開発を継続するために使われる。今回の資金調達は、Tola Capital(トラ・キャピタル)が主導し、Lux Capital(ラックス・キャピタル)、Shasta Ventures(シャスタ・ベンチャーズ)、Counterview Capital(カウンタービュー・キャピタル)、Frontier Ventures(フロンティア・ベンチャーズ)、Techstars(テックスターズ)が参加した。

ユーザーは、Bildのウェブベースのビューアを使って、3D CAD、ボードファイル、部品表、回路図、図面、シミュレーションデータなどを操作することができる。従来はこれを、スクリーンショットを共有したり、対面ミーティングでやっていた。

機械系エンジニアに特化したデザインレビュー管理や、ファイルの共同編集など、個々のペインポイントに取り組んでいる企業は他にもあるが、それらをすべて考慮に入れて、しかも会社全体で管理しているのはBildだけであると、ポール氏は確信している。

「別のチームに属している人々に、可視性を提供することは困難です」と、ポール氏は続ける。「私たちが注目していることの1つは、ハードウェアの将来性とソフトウェアとの連携をどのように強化し、両者がコラボレーションできる環境をどうやって作るかということです」。

これまでBildは、25社の企業を対象としたプライベートベータテストを行っていたが、今回の資金調達の発表に併せて、そのソフトウェアを一般にも公開した。初期の顧客の一部は有料顧客に変更されたが、価格戦略についてはまだ検討中であると、ポール氏は述べている。

Bildのコラボレーションツール(画像クレジット:Bild)

次に同社が取り組んでいることは、実際に見たときとコンピューター上で見たときのギャップを小さくするために、CADモデルをさまざまな視覚や方法で見せられるようにすることだ。

ハードウェア市場は500億ドル(約5兆7000億円)から700億ドル(約8兆円)規模の産業であり、まだデジタル化が進んでいないと、Tola CapitalのプリンシパルであるAkshay Bhushan(アクシャイ・ブーシャン)氏は述べている。

例えば、Autodesk(オートデスク)のような大企業は、これまでこの分野を壁で囲っていたが、リモートで働く人が増えたことにより、ハードウェアとソフトウェアが融合し始めていると、同氏は付け加えた。

「Bildは、すべてのエンジニアが抱えているであろう問題を解決し、ペインポイントを喜びに変えています」とブーシャン氏は語る。「プラデュットとアビナッシュは顧客志向で、顧客も認識しているこれらの問題を見据えていました。誰もが同じようなメールやプロセスのトラッキングに異なる名称を与えていましたが、Bildが行っていることに価値と機会を見出したのです」。

画像クレジット:Andrey Suslov / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Instagram、クリエイターがブランドとのコラボをするための新ツールを展開

Instagram(インスタグラム)は、クリエイターがプラットフォーム上でコミッションを得たり、ブランドとパートナーシップを結んだりするための新しいツールをテストしている。Facebook(フェイスブック)所有の同社は、6月に開始したクリエイターが商品を発見して、フォロワーと共有し、自分の投稿による売上でコミッションを得ることができるようにする既存のネイティブ・アフィリエイト・ツールを拡張している。

関連記事:Instagramはクリエイターの生活のためにアフィリエイトとショップ機能を導入

今回の新機能では、クリエイターが自分のプロフィールの「ショップを見る」ボタンの中に、すでにアフィリエイト提携している商品やコレクションを紹介するデジタルストアフロントを追加し、売上に応じてコミッションを得ることができるようになった。なお、Instagramによると、現在この新しい機能は、ネイティブ・アフィリエイト・プログラムに参加しているクリエイターのみが利用できる。

また、Instagramは、クリエイターがブランドに発見されるのを助けるために、新しいブランドコンテンツパートナーシップ機能をテストしている。クリエイターは、提携したいと思うブランドを「ブランドリスト」に追加することができるようになり、企業が新しいクリエイターを探す際に優先的に表示されるようになる。

さらに、Instagramは、DMの中にパートナーシップメッセージ専用の新しいフォルダを展開している。この新しいフォルダは、クリエイターの受信箱に埋もれてしまうかもしれないブランドからのメッセージを、クリエイターが見逃さないようにすることを目的としている。パートナーシップメッセージは、リクエストフォルダをスキップして優先的に配置されるため、ブランドとクリエイターは、コンテンツのパートナーシップを見つけて管理することができる。

画像クレジット:Instagram

また、ブランドは、データや独自のフィルターを使って、キャンペーンに適したクリエイターを見つけることができる。また、ショートリストを作成し、複数のキャンペーンやクリエイターを管理することもできる。また、ブランドコンテンツのリール広告も作成できるようになった。さらに、Instagramは、クリエイターが自分の投稿、ストーリー、リールのいずれかからブランドがコンテンツ広告を作成できるようにする新しいアカウント権限を導入した。

「これらのブランドとクリエイターのパートナーシップツールは、ブランドとのパートナーシップ、広告収入、オーディエンスからのサポート、Instagramからの直接のボーナスなど、クリエイターがInstagramで生計を立てられるようにするための当社の継続的な取り組みの大きな部分を占めています」と同社はブログ記事で述べている。

Instagramは、これらの機能のテストと改良を続け、将来的にはより多くのブランドやクリエイターが利用できるようにすると述べている。

Instagramは、ブランドとクリエイターがより協力しやすくなるように取り組んでいるいくつかのデジタルプラットフォームの1つだ。例えば、TikTok(ティックトック)は、マーケターがブランドキャンペーンのためにTikTokのトップパーソナリティを発掘するためのCreator Marketplace(クリエーターマーケットプレイス)を提供している。同様に、Pinterest(ピンタレスト)もクリエイターがブランドと提携するための機能を提供している。

関連記事:TikTokのCreator Marketplace APIでマーケターは1次データをアクセスし自社に最適なクリエイターが探せる

画像クレジット:Instagram

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

InstagramがCollabs機能、リールの新音楽機能、デスクトップからの投稿などを続々追加

Instagram(インスタグラム)は米国時間10月19日、InstagramのフィードとTikTok(ティックトック)のライバルであるReels(リール)の両方で、今週中いくつかの新機能を展開することを発表した。このクリエイター向けの機能追加により、ユーザー同士のコラボレーション、募金活動、リールでの音楽の有効活用などが可能になる。また、Instagramのデスクトップサイトの使い勝手を向上させ、ついにデスクトップのウェブブラウザから写真と1分以内の動画の両方を投稿できるようにする。

デスクトップからの投稿は以前から要望の多かった新機能で、米国時間10月21日(日本時間10月22日)から全世界のユーザーに提供される。

同社は2021年の夏にこの機能をテストしていたが、多くの人の目には触れていなかった。

画像クレジット:Instagram

その他の新機能は、米国時間10月19日の「Collabs(コラボ)」を皮切りに、1週間を通じて提供が始まっていく予定だ。

InstagramはこのCollabs機能を「テスト」と位置付けているが、フィード投稿とリールの両方を共同制作できるようになると説明している。それを行うために、ユーザーはInstagramのタグ付け画面から、別のアカウントをコラボレーターとして招待することができる。それを相手が承諾すれば、両方のアカウントが投稿やリールのヘッダーに表示され、両者のフォロワーにコンテンツが共有される。Instagramはこのテストを本日発表したばかりだが、同社は7月にこの機能の小規模なグローバルテストを開始しており、多くのInstagramユーザーがすでにアプリ内でこの機能を発見していた。

発表時、Instagramはこの機能にアクセスできるのはごく一部の人に限られると述べ、より広範囲に展開する時期については明らかにしなかった。

Instagramによれば、2人のクリエイターがコラボレーションを選択すると、両方のプロフィールグリッドに投稿やリールが表示され、ビュー数「いいね!」数、コメントスレッドが共有されるという。

また、米国時間10月20日には、Instagramは、非営利団体のための募金活動を行う新しい方法のテストを開始し、作成ボタン(画面右上の「+」ボタン)から直接募金活動を開始できる機能を導入する。このオプションをタップすると「投稿」「ストーリーズ」「リール」「ライブ」を選択する代わりに、非営利団体を選択するオプションが表示され、募金活動リンクをフィード上の投稿に追加することができる。

Instagramは以前から募金活動をサポートしており、2020年にはライブストリーム中に非営利団体の募金活動を行う機能を追加している。しかし、自身のInstagramのプロフィールからすぐに独立したスポットとして募金活動を行う方法は提供していなかった。

この機能は、開発者でありリバースエンジニアでもあるAlessandro Paluzzi(アレッサンドロ・パルッツィ)氏が、今週の発表に先立ち、9月にはすでに開発中の新しい募金ボタンを発見していた。

他にも、音楽に合わせてリールを楽しむための機能が2つ追加されている。

米国時間10月21日に、Instagramは、リール上で音楽を使って編集したりパフォーマンスを行ったりするクリエイターを支援するための、Superbeat(スーパービート)とDynamic Lyrics(ダイナミックリリックス)という2つの新しいエフェクトを投入する。Superbeatは、ユーザーの曲のビートに合わせて音楽に特殊効果をインテリジェントに適用し、Dynamic Lyricsは、曲の「グルーヴ」に合わせて3Dの歌詞を流れるように表示する、とInstagramは述べている。

これらの新機能は、4月にTikTokが発表した6種類のインタラクティブな音楽効果を追いかけるものだ(そのときTikTokに追加された機能には曲のビートに合わせて視覚効果を加えるものなどもあった)。一方、リールはこれまで、標準のクリエイティブなエフェクトの選択肢が非常に限られており、例えばタイマーや速度調整ツールなどの、基本的なものを超えるライブラリの拡張はコミュニティに頼っていた。

このリール機能は、デスクトップからの投稿機能と同時に提供され、Instagramによると、写真と1分以内のビデオに限定される。同社は今月、長尺動画用のIGTVブランドを廃止したが、いまでも60分までの動画は許可されている。現在では、ストーリーズやリールの動画ではないものは、まとめてInstagram Video(Instagram・ビデオ)と呼ばれている。

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画像クレジット:Instagram

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

リモートでのコラボで活躍するブラウザベースのハードウェア設計ツールFlux、約13.6億円調達

世界がパンデミックで終わってしまわないように、みんながリモートコラボレーションで頑張ろうとしているが、これまでの1年半は疑いの余地なく、人間の労働について考え直す重要な契機になった。それはFluxがもっと前から考えていたものであり、2019年に開発を始めた同社は、AppleやFacebookやNASAなどで正社員として仕事をしている人たちの集まりだった。

同社は、電子回路の設計と工作をウェブ上のリアルタイムのコラボレーションで行なうツールを設計した。米国時間10月13日、FluxはOutsiders Fundがリードするシードラウンドで1200万ドル(約13億6000万円)を調達したことを発表した。これには、Bain Capital Venturesや8VC、そしてLiquid2 VCが参加した。資金の用途は、Fluxの開発チームの拡大と新たな機能を作るための研究開発、およびマーケティングの強化だ。

 

Fluxは、近年における同社の技術への関心の増加の原因として、リモートワーク長期化の見通しと、長く続くチップなどハードウェアの供給の逼迫を挙げる。

共同創業者でCEOのMatthias Wagner(マティアス・ワグナー)氏は、ニュースリリースで次のように述べている。「1970年代と80年代に商用チップの開発企業が初めて誕生して以来、世界は大きく変わりました。今日の半導体不足は、最新の変化の兆候にすぎません。現在、私たちが直面しているサプライチェーンの問題は、パンデミックだけのものではなく、過去何十年間も設計プロセスそのものに注意を向けなかったことの報いです。私たちがFluxを創ったのは、この問題に今になってやっと対応するためですが、今回は多くのすばらしい投資家たちが私たちのビジョンを共有していることがわかり、とても幸運です」。

画像クレジット:Flux

Fluxによれば、同社の技術は「すべてのモダンブラウザー」でサポートされており、ダウンロードは不要だという。システムには、シミュレーター、自動部品調達、バージョン管理などの機能がある。一方、Community Libraryでは、回路図やモデル、オープンソースの部品などにアクセスを提供している。これは、GitHubやMakerbotのThingiverseに似ている。

ワグナー氏がTechCrunchに語ったところによると、同社はGitHubのような収益化の方法を採りたい、という。

私たちはGitHubがその、再利用性のあるコードの、オープンでコミュニティ駆動のリポジトリにより、ソフトウェアのエコシステムを全面的に変えてしまったことを、大いに参考にしています。同様に私たちも、フリーミアムのSaaSモデルで、誰でも容易に取り組みを開始できるようにし、またチームと企業などの組織には、彼らが必要とするタイプの機能を提供しています。このモデルによってハードウェアのコミュニティが一堂に集まって、部品やシミュレーターのモデルや、フォークでき改良できる参照回路図などの再利用性のあるコンポーネントを構築し共有できます。もちろん、共有し公開するものはすべて常に、エンジニアがコントロールできます。私たち自身もエンジニアなので、これからもなるべく多くのエンジニアとチームを力を与えていきたいと考えています。

資金調達に加えて同社は、この機会を利用してベータでローンチしている。

画像クレジット:Flux

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ウェブ会議とチャットで社内外をつなぐコラボツール「Parque」が資金調達、累積調達額1億円に

ウェブ会議とチャットで社内外をつなぐコラボツール「Parque」が資金調達、累積資金調達額は1億円に

働く人のつながりを強くするコラボレーションツール「Parque」(パルケ)を運営するパルケは、第三者割当増資による資金調達を発表した。引受先は個人投資家複数名。累積資金調達額は1億円となった。引き続きプロダクト開発を進めるとともに、2021年秋予定の正式リリースに向けた準備の強化を行う。

昨今、リモートワークやパラレルワークの浸透などに伴い「いつでも、どこでも」時間や空間に縛られず、また社内外を問わず、プロジェクトごとに人が集まってコラボレーションを進めていく機会が増えており、コミュニティの軸も企業内の人間関係だけではなく、業種・職種・趣味などへの複線化が進んでいるという。

これを受けパルケは、離れていてもつながりを感じられるビジネスコラボレーションツールやコミュニティスペースなどを提供するSaaSサービスとして、Parqueを開発。リモートワークやニューノーマルなど新しい働き方にフィットしたコラボレーションスペースとしており、社内外コミュニケーションのための「チャット」「ウェブ会議」「ダイレクトメッセージ」「ボイスチャット」、同時編集可能な「メモ」などのミニアプリをオール・イン・ワンツールとして提供していくとしている。なお、「パルケ」とはスペイン語で公園を意味するという。

2020年6月設立のパルケは、「for Fruitful Work-Life」(実りあるワークライフを届ける)というミッションの実現に向けて取り組んでいるスタートアップ。未来に向けて変化していく社会を見据えて、離れていてもつながりを感じることができるサービスを提供し続けるとしている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:コミュニティ(用語)コラボレーション / コラボレーションツール(用語)パルケ(企業・サービス)リモートワーク / テレワーク(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

SonosとIKEAの最新コラボは額のように壁にかけられるスピーカー

ちょっとしたリークがあったのに続いて、SonosとIKEAは登場以来3年になるホームスピーカーであるSymfoniskシリーズの最新モデルを発表した。「Picture Frame」(「額縁」の意)という名前の通り、中型のフラットパネルスピーカーで壁にかけたりスタンドを使って棚に置いたりすることができる。

Symfoniskシリーズの他の製品と同様に、Picture Frameも個性を廃し環境に溶け込むように設計されている。これはここ数年の業界の方向性であり、周囲の装飾に合うような布製の外装で、程度の差こそあれ背景から浮くことがない。

画像クレジット:Ikea/Sonos

Picture Frameのフォームファクターは当然この方向性を拡張したもので、机上のスペースを片づけずに設置できる。アーティストのJennifer Idrizi(ジェニファー・イドリッジ)氏がデザインしたフロントグリルは黒または白で、IKEAは音の振動を可視化するサイマティクスからヒントを得たと説明している。周囲に合うシンプルなデザインだが、同社は別デザインの交換用パネルも2枚1組、20ドル(約2200円)で販売する。

Picture Frame自体は199ドル(約2万2000円)で安くはないが、Sonosのハードウェアとして理解できる価格ではある。Wi-Fiを内蔵し、Sonosの他のハードウェアと接続でき、100種類のストリーミングサービスを利用できる。音量調整と再生 / 一時停止のボタンを備え、設置する場所に応じて電源ケーブルの配置を変更できるなど細かな調整が加えられている。

Picture Frameは2021年7月中旬までにオンラインとIkeaの店舗で販売が開始される予定だ。Symfoniskシリーズにはランプスピーカーや従来型の四角いスピーカーもあり、価格は100〜200ドル(約1万1000〜2万2000円)となっている。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:SonosIKEAスピーカーコラボレーション

画像クレジット:Ikea/Sonos

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

ビデオ会議の時間的縛りを解消、非同期ビデオミーティングプラットフォーム「Claap」

Claapの創業者たち

コロナ禍の影響で、我々はみんな好むと好まざるとにかかわらず、以前よりもずっとリモートワークに慣れた。しかし新型コロナ以前からあるSlackやTrello、Zoom、Asana、そして他にもたくさんのリモートツールは、認めたくはないが我々の生産性を上げるために本当に必要なことの表面をかろうじてかすっている程度にすぎない。幸いなことにリモートワークツールの新時代が早くも到来しつつある。筆者が先日ツイートしたように、長い目で見てリモートワークをもっと生産的に(そして健康的に!)したいなら、我々は非同期という観点でもっとしっかり考えなくてはならない。

以前からあるツールにも非同期のコラボレーション機能は備わっているが、新しいツールの波がやってきている。例えばLoomは「見せて伝える」ための一方向ビデオのツールで、2億360万ドル(約224億円)を調達した。しかしLoomには欠点がある。コラボレーションの機能が少ないのだ。

そこでヨーロッパの新しいスタートアップがこの問題を解決しようとしている。

Claapは動画とコラボレーションの機能を備えた非同期ミーティングプラットフォームで、同社は問題解決の一助になるのではないかと考えている。2021年6月中にプライベートベータを公開する予定だ。

Claapはプレシードラウンドで300万ドル(約3億3000万円)を調達した。投資したのはLocalGlobe、Headline、E.Ventures、Kima Ventures、そしてFront共同創業者のMathilde Collin(マチルデ・コリン)氏、Oyster共同創業者のTony Jamous(トニー・ジャマス)氏、NestとGoCardlessを創業したMatt Robinson(マット・ロビンソン)氏、Automatticのプロダクト責任者であるAadil Mamujee(アーディル・マムジー)氏などのエンジェルだ。他にSongkickのIan Hogarth(イアン・ホガース)氏、StripeのOlivier Godemen(オリビエ・ゴドメン)氏、Station FのRoxanne Varza(ロクサーヌ・バルザ)氏、FirstBaseのChris Herd(クリス・ハード)氏、KimaのXavier Niel(ザビエ・ニエール)氏、Remoteに投資したShane Mac(シェイン・マック)氏など30人のエンジェルも参加した。

以前はちょっとした情報交換で済んだものが今では30分のZoom会議になっていて無駄だと、我々はみんな気づいている。「非同期ミーティング」はこの状況を改善するかもしれない。

Claapの製品を使うと、従業員はあるトピックに関する最新情報の短い動画を録画し、他の人が気になった箇所にコメントを付けられるようにして、チームメンバーに対応してもらう期限を設定できる。その後、同僚は時間のあるときにその動画を見て対応する。Claapはリモートワークにおける「廊下でのちょっとした情報交換」に相当するものを開発している。TrelloやJiraといった他のワークスペースツールを統合できるので、プロジェクトに関して何か決定をする際にチーム全員が確認し振り返りができるように記録が残る。チームの規模に応じてスケールするサブスクリプションモデルが計画されている。

リアルタイムでのやりとりを必要としないため、全員がミーティングに参加できる時間を見つけなくて済む。「会ってミーティングをする」のではなくなるわけだ。その代わりに、このプラットフォームはフィードバックと反復の場を提供する。

創業者のRobin Bonduelle(ロビン・ボンデュエル)氏とPierre Touzeau(ピエール・トゥゾー)氏は、Automatticなどの企業やGitLabがすでに採用しているソリューションに着目した。トゥゾー氏は以前に360Learningに在籍していたが、同社ではミーティングに厳密な制限がかけられていた。ボンデュエル氏はプロダクト担当VPだったOguryの他、Rocket Internetなどさまざまなスタートアップやスケールアップで10年にわたるプロダクトマネジメントの経験がある。ボンデュエル氏は4つの異なる国と時間帯にまたがる50人のスタッフをマネジメントするうちに、非同期コミュニケーションが習慣となった。トゥゾー氏はL’Orealや360Learningなどに勤務し、360Learningではマーケティング担当VPだった。

非同期コミュニケーションが常に完璧というわけではない。メールやSlackのメッセージが読み落とされてしまうことがあるのはご存じの通りだ。動画はその解決策になるかもしれない。

Claapの共同創業者でCEOのボンデュエル氏は次のように説明する。「リモートで働くようになって1年が経ち、人々はオフィスで仕事をしないメリットを認識するようになっていますが、同時に最悪の成り行きと格闘しています。次から次へと実施されるビデオミーティングです。オフィスにいれば5分で解決する問い合わせに少なくとも30分はかかるようになり、誰もがこの状況に疲れ切っています。Claapはこの問題を解決するために作られています。スタッフ同士がこのツールを使って連絡を取り合えますが、時間に縛られません。決定を迅速にするミーティングの新しい形です」。

トゥゾー氏は次のように語った。「ミーティングは仕事に必要なことではありますが、1日をすべてミーティングに費やす必要はありません。非同期ミーティングは、カレンダーの予定を空けながらも仕事をやり遂げ、締め切りに間に合わせるための重要な手段です。我々は、人々があらゆる場所から仕事をするのに役立つClaapの可能性にわくわくしています」。

LocalGlobeのゼネラルパートナーであるGeorge Henry(ジョージ・ヘンリー)氏は「ロビンとピエールのビジョン、そしてプロジェクトに関わる従業員が必要なときにつながりどこからでも業務を遂行できるようにするClaapの可能性に魅力を感じました」と述べた。

HeadlineのパートナーであるJonathan Userovici(ジョナサン・ユーザーヴィッチ)氏は「Zoomはこの1年で企業がまずは使うアプリになったかもしれませんが、現在は多くの企業がリモートファーストになりつつあり、チームが連絡を取り合い業務を遂行するにはビデオ会議だけでは不十分です。ClaapはZoom疲れを終わらせようとするツールです」と述べた。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Claapビデオ会議コラボレーション資金調達非同期ミーティングリモートワーク

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

企業内の「時間の使われ方」を分析するTime is Ltd.が、約6.1億円を調達

企業の生産性分析を手がけるスタートアップ企業のTime is Ltd.(タイム・イズ・リミテッド)は、会社時間にとってのGoogleアナリティクスになろうとしている。あるいは、企業にとってのApple(アップル)のスクリーンタイムのようなものか。いずれにしても、企業内における時間の使われ方をマッピングすることができれば、膨大な生産性の向上が可能になり、お金をより有効に使うことができると、同社の創業者たちは考えている。

Time is Ltd.は今回、レイトシードラウンドで560万ドル(約6億1000万円)の資金を調達した。この投資ラウンドはロンドンを拠点とするChalfen Ventures(チャルフェン・ベンチャーズ)のMike Chalfen(マイク・チャルフェン)氏が主導し、Illuminate Financial Management(イルミネート・ファイナンシャル・マネジメン)、Acequia Capital(アセキア・キャピタル)、既存の投資家であるAccel(アクセル)、そしてエンジェル投資家としてSeal Software(シール・ソフトウェア)の前会長だったPaul Sallaberry(ポール・サラベリー)氏と同社の取締役だったClark Golestani(クラーク・ゴレスタニ)氏もこのラウンドに参加。さらに契約文書分析企業であるSeal Softwareの創業者で元CEOのウルフ・ゼッターバーグ(Ulf Zetterberg)氏が、社長兼共同創業者として会社に加わることも発表された。

このベンチャーは、2020年買収されたSocialBakers(ソーシャルベーカーズ)の創業者として知られるシリアルアントレプレナー Jan Rezab(ヤン・レザブ)氏の最新作だ。

非効率な会議、しつこい通知チャット、各種ビデオ会議ツール、メールの大洪水などは、我々の誰もが経験していることだろう。Time is Ltd.は、Microsoft 365(マイクロソフト365)、Google Workspace(グーグル・ワークスペース)、Zoom(ズーム)、Webex(ウェベックス)、Microsoft Teams(マイクロソフト・チームズ)、Slack(スラック)などのインサイトやデータプラットフォームを取得することで、この問題に対処しようというのだ。収集されたデータとインサイトは、経営陣が会社の生産性、エンゲージメント、コラボレーションを測定する新しいアプローチを理解し採用することに役立つと、このスタートアップ企業は述べている。

同社は現在、企業が参照できる400の指標を収集しているという。例えば、The Wall Street Journal (ウォール・ストリート・ジャーナル)がTime is Ltd.に設定したタスクによると、Slackと電子メールの平均応答時間を比較した場合、Slackが16.3分であるのに対し、電子メールは72分だった。

チャルフェン氏は次のようにコメントしている。「ハイブリッド型や分散型のワークパターンを測定することは、すべての企業にとって重要です。Time Is Ltd.のプラットフォームは、このような測定を簡単に利用でき、種類が異なる非常に多くの組織にとって実用価値があります。世界中のすべての企業に仕事の改善をもたらすことができると信じています」。

レザブ氏は次のように語っている。「社内のコラボレーションやコミュニケーションに関するこのようなデータを、プライバシーに配慮した方法で、既存のビジネス指標と一緒に分析することができれば、すべての企業にとって社内の鼓動を理解することにつながります。今後10年以内には、これらのプラットフォームからのインサイトを無視できないことに誰もが気づくでしょう」。

欧州のオンライン食品販売業界をリードするRohlik Group(ローリック・グループ)の創業者でグループCEOであるTomas Cupr(トーマス・クプル)氏は、次のように述べている。「パフォーマンスデータを利用する従来のBI(ビジネスインテリジェンス)アプローチとともに、Time is Ltd.を利用することによって、チーム内のコラボレーション方法を改善し、社内およびベンダーとの仕事の進め方を改善することができます。Time is Ltd.が提供するデータは、ビジネスリーダーにとって必要不可欠なものです」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Time is Ltd.資金調達データ分析

画像クレジット:Time is Ltd. founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

データ量の多い科学の再現をサポートし科学者たちのコラボを容易にするCode Ocean

科学のあらゆる分野で、ビッグデータとその分析への依存度が高まっている。そのため、フォーマットやプラットフォームがますます混乱に陥っている。これは不便なだけでなく、査読プロセスや研究の再現に支障をきたす。Code Ocean(コード・オーシャン)は、あらゆるデータセットや手法に対応した柔軟で共有可能なフォーマットとプラットフォームを提供することで、科学者同士のコラボレーションを容易にしたいと考えており、その構築のために総額2100万ドル(約22億8100万円)を調達した。

科学界には確かに「選択肢がどんどん増えていってしまう」といった雰囲気がある(これに関するXKCD漫画もある)。しかしCode Oceanは、Jupyter(ジュピター)やGitLab(ギットラブ)、Docker(ドッカー)のような成功したツールの競合製品を作っているわけではない。Code Oceanが作っているのは、データや分析に必要なすべてのコンポーネントを、どのようなプラットフォーム上であっても簡単に共有できる形式にまとめることができる小規模なコンテナプラットフォームだ。

問題となっているのは、自分がやっていることを他の研究者と共有する必要があるときだ(相手がすぐ側にいても、国内の大学にいても同じ)。再現する時は、他の科学技術と同じように、データ解析をまったく同じ方法で行うことが重要だ。しかし、他の研究者が同じ構造、フォーマット、表記、ラベルなどを使うという保証はない。

仕事を共有するのが不可能なわけではない。しかし、同じ方法を用いているか、同じバージョンのツールを同じ順番で使っているか、同じ設定で使っているかなど、複製や反復を行う人が何度も確認しなければならないため、多くの余計なステップが必要になる。小さな不整合は、将来的に大きな影響を及ぼす可能性がある。

この問題は、多くのクラウドサービスが生み出される過程に似ていることがわかった。ソフトウェアの展開は科学実験のように難しいが、その解決策の1つがコンテナだ。コンテナとは、小さな仮想マシンのようなもので、コンピューティングタスクを実行するために必要なものすべてを、さまざまなセットアップに対応するポータブルなフォーマットで管理する。この方法は、研究の世界にも当然当てはまる。データ、使用したソフトウェア、ある結果を得るために使用した特定の技術やプロセスを、1つのパッケージにまとめておくことができるからだ。Code Oceanは、このプラットフォームと「Compute Capsules(コンピュート・カプセル)」を提案している。

画像クレジット:Code Ocean

あなたは微生物学者で、ある筋肉細胞に対する有望な化合物の効果を調べているとしよう。あなたはUbuntuパソコンのRStudioでRを使用しており、データはin vitro観察で収集したものだ。発表する際にこれらのことをすべて公開しても、すべての人がRStudioが動作するUbuntuのパソコンを持っているとは限らないので、たとえあなたがすべてのコードを提供したとしても、それが無駄になるかもしれない。

しかし、このようにCode Oceanに載せれば、関連するすべてのコードが利用可能となり、クリックするだけで修正されずに検査・実行できたり、ユーザーが特定の部分が気になる場合には、その部分を微調整したりすることができる。Code Oceanは、単一のリンクとウェブアプリ、クロスプラットフォームで動作し、ドキュメントや動画のようにウェブページに埋め込むこともできる。(以下ではその方法を試してみるが、私たちのバックエンドは少し好き嫌いが激しい。カプセル自体はこちらを参照。)

さらに、コンピュート・カプセルは、新しいデータや修正を加えて他の人が再利用することができる。もしかしたら、自分が公開している技術は、適切にフォーマットされたデータを与えれば機能する汎用のRNA配列解析ツールであり、もし他の人が特定のプラットフォームで利用しようとしたら最初からコーディングしなければならなかったものかもしれないのだ。

他の人のカプセルを複製し、自分自身のデータで実行すれば、その人のカプセルを検証するだけでなく、自分の結果の検証もできる。これは、Code Oceanのウェブサイトを介して行うこともできる他、zipファイルをダウンロードして自分のコンピュータで実行することもできる(互換性のあるセットアップが必要)。その他のカプセルの例はこちらを参照。

画像クレジット:Code Ocean

このような研究手法の相互交換は、科学の世界では古くから行われているが、データを多用する現代の実験では、技術的にはコードを入手できても、共有や検証が容易ではないため、サイロ化してしまうことが多い。つまり、他の研究者が研究を先に進めて自分だけの研究を作り、サイロシステムをさらに強化してしまうのだ。

現在、Code Oceanには約2000のパブリックコンピュート・カプセルが存在し、そのほとんどが発表された論文と関連している。ほとんどのものは、他の人が複製したり、新しいことを試したりするために使用されており、中にはかなり特殊なオープンソースのコードライブラリのように、何千人もの人が使用しているものもある。

もちろん、個人情報や医療上の機密データを扱う場合にはセキュリティ上の懸念があるが、企業向け製品であるCode Oceanでは、システム全体をプライベートクラウドのプラットフォーム上で稼働させることができる。これによりCode Oceanを内輪でのツールとして活用でき、大手の研究機関ではそのこと自体が非常に役に立つかもしれない。

Code Oceanは、コードベース、プラットフォーム、コンピューティングサービスなどをできるだけ包括的に提供することで、最先端のコラボレーション環境を実現したいと考えている。

その野望は他の人の共感を呼んでいる。同社はこれまでに2100万ドル(約22億9400万円)を調達しており、そのうち600万ドル(約6億5500万円)は以前は未公開の投資で、1500万ドル(約16億3900万円)は現地時間5月17日に発表されたAラウンドで調達した。Aラウンドは、Battery Ventures(バッテリーベンチャーズ)が主導し、Digitalis Ventures(ジギタリスベンチャーズ)、EBSCO、Vaal Partners(バール・パートナーズ)をはじめとする多数の企業が参加した。

この資金により、同社はプラットフォームの開発、拡張、普及を進めることができるだろう。運が良ければ、必要性があり、深く統合されていて収益性の高い、事情に精通したSaaS業界にすぐに仲間入りできるはずだ。

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マイクロソフトが今や1日に1億4500万人が利用するTeamsの開発者向け新機能やツールを発表
クラウドを使わずドキュメント共同編集機能を実現するP2Pソフトウェア「Collabio」
簡単にコラボができる画面共有サービスCoScreenが約5億円調達

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Code Ocean科学者資金調達コラボレーションビッグデータ

画像クレジット:Code Ocean

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

マイクロソフトが今や1日に1億4500万人が利用するTeamsの開発者向け新機能やツールを発表

Microsoft(マイクロソフト)は、米国時間5月25日に(バーチャルで)開催された開発者・エンジニア向けイベント「Microsoft Build(マイクロソフト・ビルド)」で、自分たちのサービスをSlack(スラック)の競合製品であるMicrosoft Teams(マイクロソフト・チームズ)に統合したいと考えている開発者のために、さまざまな新機能やツール、サービスを発表した。マイクロソフトが、今や1日のアクティブユーザー数が約1億4500万人となったTeamsを、企業の社員が仕事を進めるための新たな拠点であると見做していることは明らかであり、サードパーティの開発者に彼らのサービスをTeamsに導入してもらいたいと望むのも当然と言える。

そこでマイクロソフトは、開発者がTeamsで新しいユーザー体験を容易に構築できるように、新しいツール群を提供することになった。

その内容は多岐にわたるが、最も重要なニュースはVisual Studio(ビジュアル・スタジオ)および Visual Studio Code(ビジュアル・スタジオ・コード)向けに強化されたMicrosoft Teams Toolkit (マイクロソフト・チームズ・ツールキット)の発表だろう。

「これによって開発者は、基本的にアプリケーションをより簡単かつ迅速に作成することができ、さらに豊富なマイクロソフトのスタックを活用した非常に強力なアプリケーションを作成することができます」と、マイクロソフトのグループプログラムマネージャーを務めるArchana Saseetharan(アーチャナ・サシーサラン)氏は説明する。「このアップデートしたツールキットで【略】、私たちは開発者が柔軟に対応できるようにしました。私たちは開発者の置かれている状況に対応したいと思っています」。

画像クレジット:Microsoft

このツールキットは、React(リアクト)、SharePoint(シェアポイント)、.NET(ドットネット)などのツールやフレームワークに対するサポートを提供する。今回のアップデートでは、Azure Functions(アジュール・ファンクションズ)との統合、SharePoint Framework(シェアポイント・フレームワーク)との統合、Microsoft Graph(マイクロソフト・グラフ)とのシングルライン統合などが実現した。

またマイクロソフトは、開発者が作成したTeamsアプリに認証ワークフローを簡単に統合できるようにもした。「ログインは、すべてのユーザーがアプリを使用する際に最初に体験することです。そして、ほとんどの落伍はここで発生します」と、サシーサラン氏はいう。「ですから、(シングルサインオンは)私たちが非常に力を入れて取り組んでいることです」。

また、Microsoft Teamsのための新しい開発者ポータルも開設され、開発者は1つのツールでアプリの登録や設定が簡単にできるようになった。ISV(独立系ソフトウェア事業者)は、この新しいポータルを使って、自社のアプリをTeamsアプリ内購入向けに提供できるようになる。

その他のTeamsの開発者向け新機能には、例えばホワイトボードやプロジェクトボードのようなリアルタイムのマルチユーザーエクスペリエンスを構築する方法や、会議の開始から終了までのワークフローを構築できる新しい会議イベントAPI、さらに開発者がTeamsの「Together(トゥギャザー)」モード用にシーンを簡単に作成・カスタマイズできる新機能などがある。

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他にもいくつかの新機能が追加されているが、要するにマイクロソフトは開発者の人々に、Teamsを自社サービスの実行可能なプラットフォームとして考えてもらいたいと思っているようだ。そしてそれは、1億4500万人のデイリーアクティブユーザーを抱えており、ソフトウェア企業にとって自社のサービスを新たなユーザーに提供するための有益な手段となる可能性がある。

「Teamsは、コラボレーションアプリと呼ばれるアプリの新たなクラスを実現します」と、マイクロソフトのTeams担当製品マーケティングディレクターであるKaran Nigam(カラン・ニガム)氏は述べている。「私たちはその協業スペースをさらに豊かにすることができる独自の立場にあります。拡張性の面で多くの革新を行うことで、アプリはより豊かになり、ツールキットのアップデートによって、それがより簡単に行えるようになりました。そして開発者ポータルは、ライフサイクル全体を管理できるワンストップショップとなります。最終的に、開発者は複数の場所に行く必要がなく、企業の観点からも1つの流れとして、開発を行えるようになります」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftMicrosoft BuildMicrosoft Build 2021Microsoft Teamsバーチャルイベントビデオ会議コラボレーション

画像クレジット:Rick Lawrence / 500px / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

クラウドを使わずドキュメント共同編集機能を実現するP2Pソフトウェア「Collabio」

クラウドレスでの共同編集を可能にするオフィススイートアプリCollabio Spacesをご紹介したい。データや変更履歴の管理を確実に行いながら、ドキュメントの共同編集を可能にするというものだ。

モバイルデバイスやデスクトップコンピューターから、複数人がローカルネットワークで共同編集できるようになるというこのP2Pソフトウェア。Googleドキュメントのような共有文書機能を使用している場合には必ずつきまとう、機密情報をクラウドにアップロードする際のリスクや、複数人にドキュメントをメール送信し、編集済みファイルが返信された後に手作業で変更点を照合する、などという面倒な作業をこのソフトウェアが解決してくれるようだ。

Collabioの機能は今後さらに強化されていくという。将来的には、ローカルネットワークだけでなくどこからでもドキュメントの共同作業ができるようになる。2021年4月に予定されているメジャーリリースでは、インターネットを介して動作するP2Pコラボレーションが追加される予定だが、それもリモートサーバーを介すことによるプライバシーリスクを回避している。

同アプリは今のところMacOSとiOSのみに対応しているが、Android版とWindows版も2021年中のリリースを予定しているという。

現在サポートされているテキストフォーマットは、DOCX、ODT、XLSX、ODS。Collabioオフィススイートには、カメラを使ってテキストや画像をスキャンして認識する機能、PDFに注釈やコメントをつける機能(音声入力も含む)、テキスト文書やPDFに電子署名をする機能、プレゼンテーションを表示する機能なども含まれている。

画像クレジット:XCDS/Collabio

英国のロンドンに本社を置き、チェコ共和国のプラハに研究開発拠点を持つXCDS(eXtended Collaboration Document Systems)が同アプリの製作会社だ。同社は約10年前から事業を行っているが、CTOのEgor Goroshko(イーゴル・ゴロシュコ)氏によるとオフィスツールの開発は7年ほど前から行っており、同氏はCollabio自体をスタートアップとして見なしているという。

このアプリは(非公開の個人投資家から非公開額の)資金提供を受けているが、チームは近い将来、開発を継続して製品を強化するためのさらなる資金調達を計画している。

新型コロナウイルスにより過去12カ月間でリモートワークが急速に広まったが、これを機会にコラボレーションツールや生産性向上ツールは大きな改善を遂げ、またオフィス勤務者が同じスペースで働かなくなった事によって直面したワークフローの障壁を安全に取り除けるようになった。現在のCollabioはリモートコラボレーションではなく近距離で働く者同士のためにデザインされているため、次のメジャーリリースがどのようなものになるのか非常に興味深い。

Collabioの初期チームには、Quickofficeの開発者で2012年の買収時にGoogleに移籍しなかったメンバーも含まれている。彼らはドキュメント関連製品のユーザーエクスペリエンスを向上させる方法を考えることに注力し、その結果、長年開発してきたP2Pドキュメントコラボレーション製品を2020年秋にようやく市場に出したのである。

「Collabioの開発を開始したときから長期戦を覚悟していました」とゴロシュコ氏はTechCrunchとの対談で当時を振り返る。「独自のアイデアを開発し始める前に、(オフィススイートソフトの)ユーザーが普段慣れ親しんでいるほとんどの機能を実装する必要があると確信していました」。

「簡単にいうと、弊社のクラウドレスコラボレーションは、クラウドのものとまったく同じように機能します。当然ドキュメントへの接続方法には多少の違いがありますが、それ以外はクラウドで作業する際とまったく同じ体験ができます」。

「2020年9月にiOSアプリからスタートし、10月にはmacOSバージョンを導入しました。初期のリリースでは主に実際のユーザーでアプリを検証し、私たちのアイデアを証明することにフォーカスしています。ローンチして以来約1万5000件のインストールがあり、ユーザーが何を必要としているのか、何を改善すべきなのかなど、貴重なフィードバックを得ることができました。2021年2月から集中的に市場に投入し、この1カ月間で1000人以上のユーザーを獲得することができました」。

CollabioのP2Pクラウドレスコラボレーションと、典型的なサーバーへのアップロード型コラボレーションとの間には、注目すべき重要な差がある。

その1つに、共同執筆や共同編集をしているドキュメントに、他者が常にアクセスできないという点がある。自分のデータへの共同アクセス権を厳密に管理したい場合には、こういった制限が役に立つかもしれない。

「Collabioではクラウドを使わない共同編集を『アドホックコラボレーション』と呼んでいます。クラウドなしでは常にドキュメントにアクセスすることはできないため、時折行われるドキュメントに対する議論や更新には最適です」とゴロシュコ氏。

もう1つの重要な違いは、共有されたドキュメントは所有者のホストデバイスにしか残らず、コピーは所有者しか保存できないという点が挙げられる(少なくとも現時点では)。

「共同作業者はセッションドキュメントにアクセスはできますが、デバイスにファイルをアップロードしたり転送したりすることはできません。セッションはホストがドキュメントを開いている限り続きます。ドキュメントを閉じた時点で他の参加者はアクセス権を失い、またドキュメントをローカルネットワークに保存することはできません。これはプライバシー保護のためですが、今後接続している相手にドキュメントのコピーを保存させるオプションをユーザーに提供するかどうかを現在検討中です」。

すべてのドキュメント作業はローカルネットワーク上のデバイスで行われるため、Collabioを使ったコラボレーションにインターネット接続は必要ない。安定したインターネット接続の確保が容易ではない出張などの状況で、これは非常に役立つと同チームは考えている。

ゴロシュコ氏によると、CollabioはこのローカルP2P接続が「より高い品質を達成できるよう」Wi-FiとBluetoothの両方を使用しているという。「これはAirDrop技術などでも採用されている一般的な手法です。相手のアドレスが特定されると、アプリケーションはWi-Fi経由で接続を確立し、データ交換の速度と品質を向上させます」。

「すべての作業はローカルネットワーク上のデバイスでのみ行われるため、アドホックコラボレーションにインターネットは必要ありません。AirDropでファイルを交換する際にインターネットが必要ないのと同じです。AirDropと同様に、Collabio Spacesには特別な設定は必要なく、すべてが自動的に行われます。セッションを開始すると同僚が自分のデバイスでそれを見ることができ、選択したドキュメントに接続するだけで、コードを知っていればドキュメントを編集することができます」。

Collabioチームは、Appleのテクノロジーと同社の「It just works(それだけで機能する)」という哲学に影響を受けているとゴロシュコ氏はいう。それでも、同製品をApple以外のプラットフォームにも提供できるよう取り組んでおり、年内のリリースを目指している。

「大規模かつ複雑で野心的なプロジェクトですが、我々が革新的なアプローチをもたらすことができると信じています。Officeソフトの市場はかなり保守的ですが、新しいソフトに対する市場からの期待値は高く、そのため公開までにかなりの時間を要しました。しかし参入障壁が高く、ドキュメント管理や編集の分野で革新が遅れているからこそ、そこに大きなチャンスが隠れているのです」。

従来の製品にコラボレーション機能を追加しなければいけなかった通常のオフィススイートとは違い、Collabioは「概念実証の最初の段階から共同編集を念頭に置き」ゼロから開発を行ったため効率化を図ることができたのだと同氏は考えている。そのため、共同編集アルゴリズムの実装が「携帯電話の最小限のリソース消費」でも可能になるというわけだ。

ゴロシュコ氏によると、Collabioのユーザーがモバイルデバイスを使ってコラボレーションセッションを開始した場合、最大5人のメンバーが同時に接続することができ、また全参加者がドキュメントを編集することができるという(デスクトップであればさらに大人数が同時に接続可能だ)。

「蜂の巣型のアイコンからコラボレーションセッションを開始すると、Collabio Spacesアプリがインストールされた周辺のデバイスに共有ドキュメントが表示されます。AirDropによるファイルの共有やAirPlayによるオーディオやビデオのストリーミングと同じように作動し、近くにいる人はセッションに割り当てられたセキュリティコードを知っていれば、編集に参加することが可能です」。

このP2P接続は「標準的なエンド・ツー・エンドの暗号化」によって暗号化されているとゴロシュコ氏はいうが「インターネットにアクセスすることなく、ローカルネットワーク内で信頼できる接続を許可するためのトリック」があると認めた上で「最初はこれで十分だと思いますが、将来的にはこの方法を改善することになるでしょう」と語っている。

独立したセキュリティテストを受けていないどんな初期製品にも同じことがいえるが、前述の理由から、これからCollabioによるこの斬新な製品を利用しようと考えているユーザーは、共同編集の目的で共有するデータの機密性を考慮しながら慎重なアプローチをとるべきである。

一方、同スタートアップはリモートワークでより効率的に仕事をしようと四苦八苦しているオフィスワーカーのニーズに応えることができれば、大きな成長が期待できると感じている。

「チームワークに特化したエディターを作り、コラボレーションを最大限に活用できるようにすることが我々の目標です。他のメンバーとともに仕事ができればメリットも大きいですが、他人と同期するためにはある程度の労力をともないます。プランニング、トラッキング、ディスカッション、レビューなどのこういった作業のほとんどは通常ドキュメントとは別に行われるか、ドキュメントの中での作業になっています。このギャップを埋め、ユーザー間でコラボレーションがスムーズに行えるようにしたいと考えています」。

「弊社にとって市場には大きく分けて2種類の競合が存在すると考えています。1つ目のMS Office、Googleドキュメント、Libre Officeのような大手のオフィスドキュメント編集スイートは、あまりにも膨大な機能を備えているため直接的な競合だとは思っていません。多くの人がほとんどの機能を使いこなせていないのが現状です」。

「そして、2つ目のNotionやAirtableのような新しい製品が登場し、ドキュメント編集プロセスをビジネスに統合するスマートな方法を紹介しています。我々はこの2種類の中間あたりに位置していると考えています」。

Collabioを使用するにはサブスクリプションの購入が必要となるが、1週間までの無料トライアル版が用意されている。

また、コラボレーションセッションのホストになることはできないが、ユーザーとしてドキュメントを閲覧したり編集したりすることはできる無料のオプションもあると聞いている。

2021年5月に予定されているメジャーリリースでは、インターネットを介してどこからでもP2Pコラボレーションができる機能が追加され、またリモートサーバーの必要がなくなるなど、リモートワークの普及に対応して実用性が大幅に拡大される予定だ。

こういった新機能の仕組みは、ひと言でいうなれば「数学」である。ゴロシュコ氏によると、このシステムは共同編集中「常に」ドキュメントの一貫性を保つためのOperations Transformation(操作変換)アルゴリズムに依存しており、リアルタイム操作の必要性がないようになっている。

「共同編集者が最後に何を入力しようと、最終的には必ず同じ内容になります。このアルゴリズムによって必ずしもすばらしいドキュメントができ上がるとは限りません。複数人が同じ場所に入力すれば、訳のわからない言葉になるでしょう。ただし、全参加者の間ですべての変更が同期された後は皆、同じ訳のわからない言葉が並べられたドキュメントを見ることができます。Operations Transformationではリアルタイム操作が必要とされないため、変更が早くても遅くても、最終的には他の変更と一致するように変換されます。つまり、クラウドまたはクラウドレスのコラボレーションモードどちらであっても、共同編集をサポートするための特別なインフラや高速処理が必要ないのです」。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

簡単にコラボができる画面共有サービスCoScreenが約5億円調達

米国時間3月25日、リアルタイムで画面を共有しチームがコラボレーションできるようにするスタートアップCoScreenが、そのプロダクトを公式に市場にローンチした。また、同日までの資金調達額が460万ドル(約5億円)であることも公表している。

CoScreenのシードラウンドをリードしたのはUnusual Venturesだ。同社の共同創業者でCEOのTill Pieper(ティル・ピーパー)氏がTechCrunchのインタビューで語ったところによると、資金の大半はパンデミックの前に調達しており、残りは2020年の間に少しずつ入ってきたという。多くのエンジェルが同社への投資に参加したが、その中にはGitHubのCTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏もいる

なぜ画面共有が何百万ドル(何億円)もの投資と、専属の開発チームを要するのか?良い質問だ。幸いにもCoScreenのチームは、あなたが現在、Zoomでミーティング時にチームと子犬の写真を共有するために使っているものよりもかなり良いと実証できるプロダクトを開発したのだ。

CoScreenって何だ?

CoScreenは画面共有機能を提供するが、その方法がシンプルですっきりしている。例えばあなたが自宅でMacを使っていて、私が自宅でPCを使っているとしよう。そして2人は、ある仕事でコラボレーションして、シェアをしなければならない。私のところにあるドキュメントの編集を、あなたは手伝いたい。あなたのところには画像があって、それをあなたは私に見てもらいたい。ピーパー氏によると、CoScreenを使えばワンクリックで2人は2つのアプリケーションをインターネットを介して共有できる。あなたの画像は私の画面に、あなたの画面上と同じように出現する。そして私のドキュメントも同様だ。2人はそれらを見ながらリアルタイムで話ができる。

ピーパー氏によると、リアルタイムに限りなく近づけるためには、レイテンシーがCoScreenにとって永久の課題になるという。それはもっともだが、同社は自分たちが開発したプロダクトは十分に市場に出せるものだと信じている。CoScreenはローンチまでに、WindowsとMacの両方の環境で長期に渡りβテストを行ってきた。

CoScreenは、音声とビデオのチャットもできる。それには制約があり、ビデオはウィンドウを大きくすることができない。そのため、かえってチャット時の精神的負担がない。毎日のようにZoom疲れに襲われている私には、好都合だ。

このスタートアップのプロダクトは、簡単に思えるが実はそうではないものの典型だ。瞬時に共同執筆が行えるGoogle Waveを覚えているだろうか?すばらしいものだったが、それは死んでしまった。その後継者らしきプロダクトがGoogle Docsとなるが、今でもまだ遅くて使いづらいし、未熟というよりも、ほぼ熟成されていない。リアルタイムの技術は、単純なものではないのだ。

CoScreenがスタートアップとして成功するためにできることは、現在、市場にたくさん存在するアプリにもできるのではないか?答えはどちらだろうか?Zoomはすでに成熟していたビデオチャット市場を、実際に使い物になるプロダクトで急襲した。私が使ったソフトウェアも、共有やコラボレーションはもちろんのこと、画面共有もよくできていた。だからこそ、CoScreenの技術が優れているのであれば、同社はもっと広く普及するよう努めるべきだ。

CoScreenのプロダクトは現在、数週間無料で提供されている。収益化の話はまだ早い、とピーパー氏はいう。現時点で収益化は、企業の燃えるような欲望のことではなく、プロダクトへの自信と資金力の問題だ。

最後に、同社はエンジニアやその他のアジャイルチームを狙っているようだが、私見ではこのプロダクトはいずれ、もっと広いマーケットからのニーズがありそうだ。

現時点では、CoScreenの将来を占うには数字が必要だ。同社はまだユーザー数などの数字を共有しないが、それはベータだから当然だ。次に同社を取り上げるときには、具体的な数字が欲しい。

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タグ:CoScreenコラボレーションツール資金調達

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

「パッシブコラボ(受動的協業)」がリモートワークの長期的成功の鍵となる

本稿の著者Mohak Shroff(モハック・シュロフ)氏はLinkedIn(リンクトイン)のエンジニアリング責任者。LinkedInの構築、規模拡大、保護を行うエンジニアリングチームを指揮している。

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1998年、Sun Microsystems(サン・マイクロシステムズ)は「オープンワーク」プログラムを試験導入した。従業員のおよそ半数を、どこでも好きな場所で勤務できるようにするものだ。このプロジェクトには、新しいハードウェア、ソフトウェア、通信ソリューションが必要であり、準備に約24カ月間を費やした。

結果は大変に良好で、経費も企業としての炭素排出量も減らすことができた。だがこうした結果とは裏腹に、長期的なリモートワークがこれ以上広がることは決してなかった。それどころか、2010年代には人と人の対面によるコミュニティがイノベーションには欠かせないという理念のもと、オープンオフィス、出勤手当て、協業スペースなどの考え方が登場し、別の方向性が注目されるようになっていった。

2020年、規模の大小に関わらず、世界中のあらゆる企業は、新型コロナウイルスの蔓延にともないリモートワークへの転換を余儀なくされた。中にはすでに従業員を分散していたり、クラウドアプリやサービスを軸にすえていたり、以前から就業方針として柔軟な働き方を採り入れるなどして他社よりもうまくやれた企業もあるが、完全にリモートに移行するための調整は、誰にとっても大変に厄介な問題だ。最大手企業であっても、この時期を耐え抜くためには、自らを犠牲にして数々の難題に挑む、社員の英雄的な行動に依存しなければならないのが現実だ。

高画質のビデオ会議やクラウドなどのテクノロジーは、リモートワークの実現には欠かせない。しかし私たちはまだ、人が現場で行う仕事を完全に置き換えられる代替手段を手に入れていない。なぜなら、極めて重要なある分野に対処できるツールがないからだ。その分野とは、パッシブコラボ(受動的協業)だ。これに対して、仕事の大部分を占めるアクティブコラボ(積極的協業)は、バーチャル会議や電子メールでも行えるが、しばしば最大のイノベーションを生み出す原動力となり、パッシブコラボの基礎となる、思いがけない閃きを呼び起こす会話や偶然の出会いなどを可能にする手段は、まだ完全にはでき上がっていない。

コラボのアクティブとパッシブ

テック産業を知らない人たちは、ソフトウェア開発者はコンピューターと安全なインターネット接続環境さえあれば仕事ができると考えるだろう。しかし、1人で黙々とコーディングを行うエンジニアというステレオタイプは、とっくの昔に崩壊している。理想の開発作業は、1人ではできない。チームで話し合い、議論を戦わせ、ブレインストーミングを重ねるコラボレーションで可能になるものだ。ビデオ会議プラットフォームやチャットアプリは、アクティブコラボを可能にしてくれる。MicrosoftのVisual Studio CodeやGoogle Docsなどのツールは、専門的な非同期のコラボを可能にしてくれる。

しかし、現在の私たちに欠けているものは、何の気なしに出会って交わされるおしゃべりだ。それは私たちに活力を与え、そうした会話でなければ生まれ得ない新しいアイデアを思いつかせてくれる。パッシブコラボは創造性の醸成には不可欠であるため、このような人と人の関わりを長期間欠いた場合、イノベーションが被る負利益は計り知れない。

ホワイトボード

パッシブコラボとアクティブコラボの違いは、ホワイトボードを見ればよくわかる。私は先日、ある人から「テック業界の人とホワイトボードとの関係とは?なぜ、そんなに重要なのか?」と聞かれた。ホワイトボードはシンプルで「ローテク」な道具だが、私たちの業界の真髄とも呼べるものだ。だからこそ、それがエンジニアリングのためのマルチモーダルなコラボの源になっている。新型コロナ以前のことを思い返してみよう。エンジニアたちがホワイトボードを囲んでスクラムミーティングを行う様子をどれだけ見たり、または参加したことだろうか。

たまたま聞こえてきた話の断片が気になって、深く知りたくなったり意見を言いたくなったりして、ミーティングの場で足を止めたことがおありだろうか?または、ホワイトボードに書かれていた内容が目に留まり、それについて別の同僚と語り合い、それが問題解決につながっがりしたことはないだろうか?これはみな、パッシブコラボの瞬間だ。これはリアルタイムのアクティブコラボ用ツールでもあるホワイトボードによって、見事に導き出されたものだ。ホワイトボードは、新しいアイデアや観点を、抵抗なく会話に招き入れる手段となっている。これ以外の方法では、そうはいかない。

ホワイトボードは、パッシブコラボを促進する手段の1つだが、他にもある。休憩室で偶然に始まるおしゃべり、パーテション越しに聞こえてくる隣の会話、部屋の向こうで暇そうにしている人間に意見を聞くことなども、パッシブコラボの実例だ。こうしたやりとりが、みんなで一緒に働く場において極めて重要でありながら、リモートワーク環境での再現が最も難しいものでもある。自己中心的なソフトウェア開発工程がソフトウェアの品質に害を及ぼすように、パッシブコラボの欠如もまた有害だ。

そのためには、他の人たちが何をしているのかを、公式な会議や社内報のような肩ひじ張ったかたちではなく、ちょっと覗き見できるツールが必要だ。自由にオープンに交わされるアイデアからイノベーションは生まれる。しかし私たちはまだ、そのための最適なバーチャル空間を作る方法を知らない。

今後を見据えて

未来の仕事は、これまでになくチームが分散されたかたちで行われるようになる。つまり、2021年だけでなく、この先もパッシブコラボのための新しいツールが必要とされる。私たちが行った内部調査では、パンデミックが迫ってきたときは完全にリモートで仕事したいと望む社員もいたが、大半は、将来的にもっと柔軟なソリューションが欲しいと考えていることがわかった。

その答えは、会議やメールのスレッドをもっと増やすことでは決してない。昔ながらのホワイトボードのように機能し、協業による偶発的な閃きが起こり得るバーチャル空間を再考することだ。私たちはまだ、この課題を解決する鍵を探っている最中だが、LinkedInでは、手始めにチームの垣根を越えた会話やオープンなQ&Aで資源を共有する方法を模索している。

この数十年間、テック業界は、協業と生産性の摩擦をなくすための空間やメリットを創造し、従業員がイノベーションを生み出しやすくなる道を踏み固めてきた。今、私たちは、将来のハイブリッドな仕事環境を見据え、従業員の生産性と創造性のサポートを維持するための新しい方法を見つけ出さなければならない。パッシブ・コラボがバーチャルで完全に実現して初めて、リモートとハイブリッドの仕事環境の可能性がフルに引き出されるようになるのだ。

カテゴリー:その他
タグ:リモートワークコラボレーションツールコラム

画像クレジット:Alistair Berg / Getty Images

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(文:Mohak Shroff、翻訳:金井哲夫)