Mediumがソーシャル読書アプリの「Glose」を買収、電子書籍販売や教育分野に事業拡大か

Mediumは、パリに拠点を置くスタートアップのGloseを非公開の金額で買収すると発表した。Gloseは、デバイス上で本を購入したり、ダウンロードしたり、読んだりできるiOS、Android、ウェブアプリを構築してきた。

Gloseは本棚を作ったり、フォロワーとメモを共有したり、余白で会話を始めたりすることができる読書アプリで、同社は読書をマルチプレイヤー体験に変えた。確かに、Goodreadsのような本について会話できるソーシャルプラットフォームは存在する。しかし、Gloseの差別化ポイントは、ソーシャル機能が読書機能と本質的にリンクしていることであり、それらは2つの別々のプラットフォームではないところだ。また、例えば連続リワードというような、難しい本を読むときにモチベーションを維持するのに役立つゲーミフィケーション機能もある。

多くの点で、Gloseのワンタップハイライト機能やコメント機能は、Mediumの機能を彷彿とさせる。スマホやタブレットの他の読書アプリでもテキストをハイライトすることはできるが、それをさらにどうにかすることはできない。

最近になって、Gloseは「Glose Education」という別のサービスを開始した。その名が示すように、こちらは大学や高校向けのサービスだ。教師は課題を配ることができ、生徒たちはグループとして本を読むことができる。

100万人以上のユーザーがGloseを使用したことがあり、スタンフォード大学やコロンビア大学を含む25校の大学がGlose Educationと契約している。

しかし、Gloseは単なるソフトウェアだけの事業ではない。同社は、総合的な書店も運営している。2万社の出版社と提携しているので、アプリから直接電子書籍を購入することができる。

また、今学期にVirginia Wolf(ヴァージニア・ウルフ)を勉強している場合、Gloseは何十万冊ものパブリックドメインの本を無料で提供。さらにGloseはオーディオブックにも対応している。

Mediumが記事やブログを超えて拡大することを計画している中、これは最も興味深い部分だろう。Gloseは今のところ存在し続けるが、Mediumの方も、電子書籍とオーディオブックを同サービスに統合することを計画している。

多作なブロガーの多くは本の著者でもあるので、これは賢い動きだ。現在、彼らはMediumでブログ記事を書き、読者がライターの本を購入したい場合は、サードパーティのサイトにリンクしている。著者が書いたものをすべてホストする機能を持つことは、コンテンツ制作者と読者の両方にとってより良い経験になる。

「我々はGloseの読書プロダクツや技術だけでなく、本の著者や出版社と提携した経験にも感銘を受けています」とMediumのCEOであるEv Williams(エブ・ウィリアムズ)氏は声明の中で述べている。「本はアイデアを探求するための手段、深化への道です。世界のアイデアの大部分は本や雑誌に保存されていますが、検索も共有もほとんどできません。Gloseとともに、Mediumの大規模なネットワークを利用する読者やライターの体験を向上させたいと考えています。Gloseチームと協力して、出版社と提携し、著者がより多くの読者にリーチできるよう支援していきたいと考えています」。

Gloseチームはパリに残る予定で、Mediumは米国外に初のオフィスを開設することになる。Gloseは今後も著者、出版社、学校、機関とのパートナーシップを続けていくという。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MediumGlose買収

画像クレジット:Glose

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(翻訳:Nakazato)

選択だけで簡単に作れるブランド向けコラボ動画プラットフォームのCapsuleが2.1億円を調達

ブランドを対象とした動画Q&AプラットフォームCapsule(カプセル)は、パンデミックの中で消費者へのリーチに苦しむ企業のニーズへ、直接対応するものとして2020年に誕生した会社だ。この度、同社はプレシード資金の200万ドル(約2億1000万円)を調達した。このラウンドはArray Venturesが主導し、Bloomberg Betaや他のエンジェルも参加している。

このスタートアップを創業したのは、元々アニメーションGIFキャプチャツールでソーシャルネットワークのPhhhoto(フォート)を作ったチームだ(残念ながらPhhhotoは、最終的にはInstagramによるクローン機能のBoomerangに負けてしまったが)。Phhhotoは2017年に停止し、チームは体験型マーケティング事業であるHypno(ヒプノ)に取り組むために方向転換を行った。新会社はライブイベントや体験会を主催するブランドと、その顧客がつながる手段を提供する活動を行ってきていた。Hypnoはブランドに対して、インタラクティブな操作を可能とした、撮影装置やカメラプラットフォームのようなものを提供した。

だが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、ライブイベントは干上がり、Hypnoのビジネスは実質的に殺されてしまった。しかし、Hypnoが一緒に仕事をしてきたブランドたちは、今でも同じニーズを持っていた。ただ、違うやり方で顧客にアプローチしなければならなくなったのだ。

画像クレジット:Capsule

それがCapsule(カプセル)が誕生した理由だ。2020年に立ち上げられたこのスタートアップは、Q&Aセッションをホスティングするための完全なプラットフォームを提供している。ブランドはテンプレートを選び、キャンペーンに合わせてロゴ、色、ボタン、背景、URLを変更してカスタマイズを行う。いわば簡易ウェブ構築サイトであるSquarespace(スクエアスペース)の動画Q&Aフォーマット版のようなものだ。

そしてブランドは、消費者向けの質問や問いかけを、短い動画応答のかたちで作成することができる。一方このQ&AのURLは、たとえばソーシャルメディアといった企業が選択した方法で配信できる。また、「カプセル」をウェブサイトに埋め込むことができる新機能も登場した。

Q&Aに対する消費者の反応は、最終的な製品のために収集整理される。この技術をさらにおもしろくしているのは、この映像をCapsuleが組み立てる方法だ。

Capsuleは音楽やグラフィック、プリロールやポストロールなどの要素を追加して、瞬時に自動的に動画を処理し、まるで専門的に編集されたように見える動画を生み出す。このスタートアップは、カラー、オーディオ、グラフィック、ダイナミックタイプなどのミキシングを自動化する独自のJavaScriptベースのプログラミング言語を使用している。顧客がやらなければならないことは、自分が望む動画の種類を選択だ。たとえばエネルギッシュな感じのものとか、より落ち着いたものといった選択を行う。

現在、Capsuleはそのライブラリを拡大し、約20種類の基礎テンプレートを提供するようになった。しかし、それぞれ色、スタイル、さらには音楽を変更することで編集することができる。その過程で直接アップロードしたり、またはCapsuleが提供する多数のロイヤリティフリーの音楽を使うことが可能だ。

Capsuleの共同創業者Champ Bennett(チャンプ・ベネット)氏によれば、プラットフォームの柔軟性により、さまざまなユースケースが生まれているという。同社の最初の顧客は、Hypnoが対応していたライブイベント関連の顧客だったが、すぐに新しい顧客たちが製品を採用し始めた。

「既存のお客さまからも、突然押し寄せた新しいお客さまからも、私たちのプラットフォームがさまざまな文脈で役に立つという声がすぐに寄せられ始めました」と彼は説明する。「たとえばUGC(ユーザー生成コンテンツ)キャンペーンや、事業プロモーションのためのソーシャルコンテンツ、知名度向上、製品レビューや体験談、さらには見た目がもう少しプロフェッショナルな感じのコンテンツを高速に作成する方法を探していたクリエイターの方にさえお使いいただいています」とベネット氏はいう。

立ち上げ時には、CapsuleはNetflix(ネットフリックス)のような企業やOkayAfrica(オーケーアフリカ)のような組織に利用されていた。それ以来、Google(グーグル)、Samsung(サムスン)、Salesforce(セールスフォース)、Deloitte(デロイト)、The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)などの大規模な組織内のチームや、Paloma Health(パロマ・ヘルス)などの中小企業を含む、何百もの顧客企業と契約を結んできた。米国慰問協会(USO)もCapsuleを使用している。

こうしたブランドたちや多くの組織が、企業が製品やサービスをマーケティングする上で重要な方法になりつつあるオリジナルの短編動画コンテンツを作成するためのツールを強く求めている。Capsuleによると、動画のクリックスルー率は静止画に比べて2~3倍であることを示しており、95%の企業が対前年比の動画支出が増加していると報告しているという。

パンデミックの影響で動画コンテンツの既存需要は加速したが、各ブランドは動画のスケールアップは難しいという課題に直面していた。

「徐々にブランドが動画を作成する方法をハックするケースが増えています」とベネット氏はいう。「その方法の1つが社員、創業者、パートナー、インフルエンサー、ブランドのファンなど、立場を問わず組織内外のさまざまなクリエイターに接触し、ブランドのためのコンテンツ作りに参加してもらうことです」と彼は続ける。「私たちはこれをコミュニティ・ジェネレーテッド・コンテンツと呼んでいます。まあユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツの一種のようなものです。コンテンツはどこからでもくると考えています」。

Capsuleは、Array VenturesのゼネラルパートナーであるShruti Gandhi(シュルティガンジー)氏との協力を望んでいたのだという。なぜなら彼女はエンジニアリングのバックグラウンドを持っており、コア技術を非常に深く理解していたからだ。彼女はまたニューヨークのBloomberg BetaにCapsuleのチームを紹介したが、そのチームもまた、Capsuleが何を作っているのかをすぐに理解してくれたとベネット氏はいう。

今回の追加資金で、Capsuleはプロダクトデザイナーを雇用し、コンテンツの推薦投票機能などの、新たなコラボレーション機能を開発していく予定だ。

長期的には、同社のプラットフォームによって、より多くの人が動画制作に関わることができるようになると同社は考えている。

「企業内には、動画コンテンツを作成できる、実に様々な人材がいることがわかりました。単に作成するためのノウハウを持たないだけなのです。彼らはビデオ編集者ではなのですから」とベネット氏はいう。「ということで、私たちが実際にやっていることは、大小を問わず、あらゆるビジネスの中に存在する創造的な可能性を引き出すことなのです」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Capsuleショートビデオ資金調達

画像クレジット:Capsule

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(翻訳:sako)

Healthvanaの新型ワクチン接種デジタル証明書は免疫のパスポートではなくコミュニケーションツール

新型コロナウイルス(COVID-19)への反撃の準備が(多難のスタートながら)進む中、数多くの企業がワクチンの効果を高めようと、いろいろな支援を計画している。HIV患者のための患者情報をデジタルで提供する専門企業としてスタートしたヘルステックのスタートアップHealthvana(ヘルスバーナ)は、Apple(アップル)のウォレット技術を利用して新型コロナウイルスのワクチン接種証明書をモバイル機器に提供するというロサンゼルス郡の取り組みに協力している。この技術をざっと見た限りでは、それを導入することで、個人のワクチンの効果を手軽に証明できるようになると思われるかもしれないが、これは免疫を請け合うものではなく、技術自身もHealthvanaも、むしろ人々に個々の医療プログラムへの参加を促すことに重点を置いている。

「医療のほとんどが、見た目も使い勝手も、総じてWindows 95のようなものだと私は思っています」とHealthvanaのCEOで創設者のRamin Bastani(ラミン・バスタニ)氏はいう。「私たちのルック・アンド・フィールはInstagram(インスタグラム)です。どうしてそこにこだわるのかって?なぜなら患者は、自分が理解できるものに頼るからです。最も楽なのは、普段からコミュニケーションに利用している方法によるコミュニケーションです。つまるところそれが、より健康な結果をもたらすのです」。

バスタニ氏は、そのアプローチでHIVに関する患者教育とコミュニケーションに特化した会社を立ち上げ、そのソフトウェアを利用した場合、従来の方法で今後の治療に関する情報や次回の診察予約日のお知らせ受け取った人に比べ、7.4倍もの人が次の予約日に受診するようになることが証明できたと話す。同社は、単により良い医療を個々人にもたらすというだけでなく、誤解の払拭や、受診を続けるよう患者を追跡して説得するといった、労働時間を大幅に消費する大変な作業から医療や介護のスタッフを解放し、医療提供者のコストを削減することも視野に入れて、ツールやアプローチを構築している。

「実際に私たちは、医療提供者のコスト削減も実現しています。結果はどうだったか、理解できない、ログインできない、SARS陰性とはどういう意味かわからないといった1000件もの問い合わせにスタッフが対応する必要はなく、すべて私たちがシンプルに対処するからです」とバスタニ氏。「これで大きな違いが出ます。結局、患者の関心を惹き、彼ら自身が自分の健康問題に対して行動を起こせるようにすることが、あらゆる医療において重要な鍵になるだろうと、私は考えます」。

それはまた、新型コロナウイルス予防接種証明書で同社がロサンゼルス郡と協力して行っている取り組みの目標でもある。彼らは、同郡のワクチン接種証明書を確実に成功に導く極めて重要な役割を担っている。現在認可されている新型コロナウイルス用ワクチンは、どれもが2回接種を行うことになっている。1回目の予防接種に続き、少し間を開けて2回目で効果を高める。ロサンゼルスの住民への新型コロナウイルス予防接種、および2回目の接種が必要な人にはその旨の告知を徹底することが、この取り組みの第1の目標だ。そこに、患者の治療継続率を高めてきたHealthvanaの経験が活かされる。しかもこのアプリでは、新型コロナウイルスの治療に関する情報や、とりわけ便利な機能として、感染拡大の予防と感染を鈍化させる方法が提示される。

突き詰めれば、Healthvanaはメッセージ伝達の「最後の1マイル」だとバスタニ氏はいうものの、また適切な治療と予防のための正しい行動の判断にはそれ以外にも数多くのレイヤーが関わっているものの、彼らの実用価値のある情報を送り届ける方法は、すでにひとつの重要な手段である「接触者追跡」において大きな恩恵をもたらしている。一部の自治体では、Healthvanaは、検査で陽性になった人に、濃厚接触者のデバイスに匿名で直接知らせるよう促す取り組みを開始する。通知相手には、無料で受けられる検査の情報と、関連情報のリストも提供される。

「この広いロサンゼルス地区で2カ月以内にこれを成し遂げたのは、私たちだけです。すでに1万2000人以上の人たちにウイルスに曝露したことを通知しています」とバスタニ氏。「それぞれの人が、他の人や家族と同居している可能性が高いため、これが感染拡大を鈍らせる方法になります」。

Google(グーグル)とApple(アップル)は、珍しく協力して、最近のアップデートでiOSとAndroidのデバイスに曝露通知ツールを組み込んだが、その導入は比較的ゆっくりだった。その基礎となっている技術は確かなものであり、ユーザーのプライバシーにも特別な配慮を払っているにも関わらず、利用者数は世間の関心を惹くにはほど遠い。たとえばバージニア州の曝露通知フレームワークを使ったアプリでは、ローンチ以来この3カ月間に曝露を通知した人の数はわずか388人止まりだ。

Healthvanaは、その時々に即して個々人の必要性に応じた情報を、その人が一番よく理解している最も使い慣れた方法を通じて届けることに専念している。それはすでに、新型コロナウイルスとその地域感染の対策に大きな力を発揮できる潜在力を示した。同スタートアップは現在、米国国内の別の地域でも同様の取り組みを実施するための協議に入っている。これが米国国内のワクチンの効果を高め、ワクチンを手にした後の人々の新型コロナの対処法に大きな影響を与えることになるだろう。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Healthvana新型コロナウイルスワクチンロサンゼルス

画像クレジット:Healthvana

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(翻訳:金井哲夫)

米テック企業で人気が高まる計画方法OKRに注力するGtmhubは2020年に3倍に成長、シリーズBで31億円調達

企業の事業計画管理支援ソフトウェアを開発する多国籍スタートアップのGtmhubは米国時間1月7日、シリーズBで3000万ドル(約31億円)を調達したと発表した。ラウンドはInsightが主導し、新規投資家としてSingularが、また既存投資家からLauncHubCRVが参加した。

Gtmhubは、約13カ月前にシリーズAで900万ドル(約9億円)を調達(未訳記事)した。当時調達した資金は、それまでに調達した合計よりも大きかった。同社の新しい資金調達ラウンドは、2019年のシリーズAと同様、これまでの資金調達合計を上回った。

Gtmhubはどのようにしてこれほど多くの資金を調達できたのか。ひと言でいえば成長だ。

シリーズAの時点でTechCrunchは、Gtmhubのラウンド直前の年間経常収益(ARR)が前年比で400%増となると報じた。同様の水準でトップラインの拡大が続いており、GtmhubのCOOであるSeth Elliott(セス・エリオット)氏はTechCrunchに、同社のARRは昨年(2019年12月~2020年12月で測定)の3倍に増加したと語った。

2019年にGtmhubが立ち上がった頃、他にも同じソフトウェア市場に特化する多くのスタートアップが立ち上がったため、TechCrunchは「なぜ誰もがOKRソフトウェアを作っているのか(未訳記事)」と問いかけた。

OKRは「objectives and key results」を意味する。これは、米国のテック企業の間で人気が高まっている計画方法であり、エリオット氏によれば、国際的にも、また非テック企業の間でも人気が高まっている。

またエリオット氏はTechCrunchに、Gtmhubは2つのビジネストレンドとともに成長していると語った。第1にOKR自体の台頭であり、同社が乗っている波だとTechCrunchに述べた。第2に同社が先頭を走っていると同氏が考えているもので、敏捷性を高め変革を進める大企業を対象とする。こういった企業がGtmhubを採用している。GtmhubはDX(デジタルトランスフォーメーション)や同様の取り組みを成功させるのに役立つ。

事業の活性化を目指す大企業が、スタッフを1つの方向へまとめる新しい計画の方法を望んでいることは大きな驚きではない。Gtmhubは長い間、法人向けのビジネスを得意としてきた。

同社の狙いは2020年、うまく当たったことがわかった。TechCrunchは新しいラウンドに関して同社と議論する中で、年間契約額(ACV)の実績と粗利益の水準に関する最新情​​報を同社に求めた。2019年のシリーズAの時点で、同社はACVを前年から650%増加させたと述べた。エリオット氏はTechCrunchに、ACVは2020年に10倍になったと語り、大企業への販売が成功したと示唆した。また同氏は、このサービスの有料ユーザーの総数も、同年中に10倍に増加したと付け加えた。

同社の粗利益率は、2019年の約90%の水準に維持されたと同社は語った。

こうした実績を踏まえると、Gtmhubがスタートアップの標準である18カ月より短い期間で新たなラウンドを迎えられたのは驚くに当たらない。

ラウンドはすぐに実現した。エリオット氏によると、Gtmhubは2020年11月初旬に正式なプロセスを通さずに投資家と協議を開始し、同月終わりまでに資金調達に向け本格的に取り組み始めた。2020年の終了とともにラウンドも完了した。

ソフトウェアカテゴリーに属し約1年前に資金を調達した他のスタートアップもまた、今後多くの資金を調達するのかは興味深いところだ。この問いに関するウォッチリストにはWorkBoardAllyが含まれる。2020年の成長に関しては、Perdooのように他にも聞いてみたいプレーヤーがいる。

Gtmhubは2021年の成長計画をTechCrunchと共有することを拒否している。

このラウンドでの大きな教訓は、ニッチすぎて見向きもされなかったソフトウェア、すなわちOKR向けソフトウェアのは、実際には少数の高成長スタートアップを支えるのには十分大きいということだ。これは広くいえることで、ベンチャーやスタートアップ業界の過去数四半期のペースについての説明になっているところがある。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:OKRGtmhub資金調達

画像クレジット:Mimi Thian / Unsplash (Image has been modified)

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(翻訳:Mizoguchi

特許のためのナレッジグラフ方式の検索エンジンを提供するIPRally

特許の検索という問題の解決を目指すフィンランドの新進スタートアップIPRallyが、シード資金200万ユーロ(約2億5000万円)を調達した。

ラウンドをリードしたのはJOIN CapitalとSpintop Ventures、これにプレシードの支援をしたIcebreaker VCが参加した。2018年に創業した同社の調達総額は235万ユーロ(約3億円)となる。

共同創業者でCEOのSakari Arvela(サカリ・アルヴェラ)氏は、パテント弁護士として15年の経験がある。IPRallyは、知識グラフを作ってマシンが特許の技術的詳細を理解できるようにし、また人間が既存の特許を効率的に調べられるようにしている。同社の基本命題は、特許の検索にはシンプルなキーワード検索や自然言語のテキストによる検索よりも、グラフベースのアプローチがより適してい、というものだ。

アルヴェラ氏によると、公布される特許をすべてシンプルな知識グラフに純化すればIPのプロフェッショナルにとって理解しやすい情報になり、また機械可読性も限りなく向上する。

「IPRallyは2018年4月に創業したが、その前の1年間は共同創業者でCTOのJuho Kallio(ジュホ・カリオ)と一緒に資金集めや概念実証に奔走した。その前の約2年間はグラフ方式についてしっかり勉強して、ベンチャー企業を始められるための自信をつけた」とアルヴェラ氏は語る。

アルヴェラ氏によると、特許の検索はテクノロジーに対する深い理解と、異なるテクノロジーを詳細に比較できる能力が必要であり難しい問題だという。

「だから特許システムができてから今日までずっと、検索は完全に手作業で行われていた。また、最新の機械学習のモデルですら、この問題の正確な解の提供には程遠い。そこで私たちは特許というドメインに特化したMLのモデルを開発し、人間のプロが検索をするときのやり方を反映できるようにし、同時に問題をコンピュータにとって扱いやすいかたちにした」とアルヴェラ氏はいう。

そのやり方はうまく行ったようで、IPRallyはすでにSpotifyやABBなどの顧客が利用し、また知財関連の役所や法律事務所も使っている。同社が狙っている顧客は、自分たちのR&Dを特許で積極的に保護していたり、製品開発などで競合他社の知財権をいつも詳しく調べなければならないような企業だ。

とはいえ、IPRally自身にも競合はある。従来的なキーワード検索の検索エンジンで現在の市場を支配している大手のClarivateやQuestelをアルヴェラ氏は挙げている。

また、AmplifiedやIPScreenerなど、AIベースのスタートアップもすでにかなりある。しかしアルヴェラ氏の主張によると「IPRallyのグラフ方式の方がずっと正確な検索が可能で、コンピュータによる詳細な分析もできる。しかもユーザーに十分な説明ができ、ユーザー自身がコントロールできる、ブラックボックスではないソリューションを提供できる」という。

関連記事:米国特許登録は2019年に過去最高の33万3530件を記録、FAANGではなくIBM、Samsungが他をリード

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:IPRally特許資金調達

画像クレジット:IPRally

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

早ければ今週にもGoogleのiOSアプリにApp Storeのプライバシーラベルが追加される見込み

Google(グーグル)はApple(アップル)が最近発表したApp Storeのプライバシーラベルのポリシーに従いたくないと考え、それが理由でグーグルのiOS用アプリのアップデートが遅れていると一部で報じられた(Fast Company記事)が、そうではない。App Storeの新しいポリシーはアップルがプライバシー保護を推し進める大きな取り組みの一部で、開発者に対しApp Storeのユーザーからどのようなデータを収集し、追跡のためにデータがどのように使われるかを開示するよう求めている。TechCrunchは、グーグルがこのラベルに対抗する立場ではないことを確認した。実際には、グーグルは今週か来週にはかなりの数のiOS用アプリでプライバシーラベルを公開する準備をしている。

米国時間1月5日にFast Companyは、グーグルはユーザーから収集するデータに関する透明性の情報を提出できる状態になっていないため同社のiOS用アプリのアップデートが遅れているのではないかと推測した。これを受けて、TechCrunchはグーグルのアプリの状況を調べた。Fast Companyは、2020年12月7日以降グーグルのアプリは「1つも」アップデートされていないと述べている。2020年12月7日といえば偶然にもアップルの新しいプライバシーラベルの要件がApp Storeに適用される前日だ。

さらにFast Companyは、11月後半から12月初めにかけてグーグルのiOS用アプリが多数アップデートされたのは、グーグルがアプリにプライバシーラベルが適用される前に最後のアップデートを詰め込もうとしていたことを示すと述べている。

しかし、こうした推測にはいくつか疑問点がある。

まず、グーグルは実際にはプライバシーラベル適用以降に2つのアプリをアップデートしたことを指摘したい。ただしこのアップデートにはプライバシーラベルは含まれていない(これは、アプリが適用期日以前に承認されたものの保留になっていたことを示唆している)。

生産性向上の分野においてグーグルにとって重要なスライドプレゼンテーションアプリのGoogleスライドは、2020年12月14日にアップデートされた。教育カテゴリーの無料アプリで7位になっている宿題支援アプリのSocratic by Googleは、2020年12月15日にアップデートされた(このデータはSensor Towerの協力によりファクトチェックをした。何しろグーグルのiPhone用アプリは100個近くあるのだ!)。

グーグルはアップルの新しいルールを回避しているように見えるかもしれないが、アップデートのタイミングを深読みしすぎないように気をつけなくてはならない。通常はアプリが短い間隔でアップデートされているとしても、12月にアプリのアップデートが遅れるのはどう考えても珍しいことではない。また、アップルのApp Store自体が年末は動きが止まるため、年末年始の数週間前にアプリの変更が公開されるのも不思議なことではない。年末に動きが止まるのは毎年のことで、2020年のApp Storeは12月23日から12月27日まで止まっていた。

そしてグーグルなどの大企業は12月終わりから1月初めにコードフリーズをする。スタッフが対応できない年末年始に製品やサービスに大きな問題が起きないようにするためだ。

グーグルの主たるビジネスが広告であることを考えると、アプリのプライバシーラベルはもちろんグーグルにとって懸念材料だ。実際、グーグルは事態を深刻に受け止め、経営幹部は会議でこれに関して話し合っている。

しかしアプリのプライバシーラベルにすぐには対応できていない大手アプリ提供企業は、グーグルだけではないことを指摘しておく。たとえば本稿執筆時点でAmazon(アマゾン)の一部のアプリやPinterestはプライバシーラベルに対応したアップデートを行っていない。

こうした遅れは必ずしもその企業が新しいラベルの要件に対抗していることを意味するものではない。慎重に検討しているだけだろう。開示する情報が少ない企業よりもさらに慎重だと思われる(そしてデータの収集と広告が収益の重要な要因である企業に遅れが見られることには注意が必要だ)。

グーグルにコメントを求めたところ、同社の広報担当者はアプリ全般にプライバシーラベルを追加する予定であることを認めた。正確な日付は未定だが、今週か来週にできるだけ早くラベルの公開を開始する見込みであることも認めた。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:GoogleAppleApp Store

画像クレジット:Google

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(翻訳:Kaori Koyama)

Looking Glassが2D画像を3Dにするホログラフィック技術のためのソフトを開発

2020年12月にLooking Glass Factoryは、より一般的なユーザー向けの最初の製品であるPortraitを発表した。このデバイスは、同社の印象的なホログラフィックイメージング技術を利用したより身近なフォームファクター、つまりデジタルフォトフレームとして登場した。

もちろんこのようなテクノロジーの最大の課題の1つは、常にコンテンツだ。349ドル(約3万6000円)の製品を購入した人は、実際にどのようにして3D画像を作成して使用するのだろうか?その問題に対する解決策を用意すべく、Looking Glassは米国時間1月6日にHoloPlay Studioを発表した。これは、2D画像を3Dに変換するために作られた同社独自のソフトウェアだ。

「今日ではあらゆる種類の非常にリアルなホログラフィック画像を作成し、これまで以上に多くの人々が楽しむことができるようになりました。そして、私たちがホログラムを通してイメージを創造し、伝え、体験する世界に一歩近づくことができます」と、Shawn Frayne(ショーン・フレイン)CEOはリリース文で述べている。

ソフトの使い方は簡単だ。ユーザーは画像をアップロードするだけでよい。変換の結果は、多くの要因によって異なる可能性がある。この種のソフトウェアは長年待ち望まれていたが、ここ数年の結果は期待外れだった。

このテクノロジーは今春のどこかの時点で、Looking Glassのサイトで利用できるようになる。その後、新しいPortraitに同梱される。支援者は20回のコンバージョンを無料で利用でき、20ドル(約2060円)支払えば100枚の画像を変換できる。

関連記事:Looking Glassの次期製品はホログラフィック・デジタルフォトフレーム、写真はiPhoneで撮影

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Looking Glass Factoryホログラム

画像クレジット:Looking Glass

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

スマホでペット保険金を請求できる「アニポス」が正式サービス開始、日本ペット少額短期保険に対応

スマホでペット保険金を請求できる「アニポス」が正式サービス開始、日本ペット少額短期保険に対応

スマートフォンでペット保険金請求を行えるサービス「アニポス」(Android版iOS版)を展開するアニポスが1月5日、2021年1月1日付けの正式サービス開始とともに、日本ペット少額短期保険の保険金請求への対応を発表した。

アニポスは、ペット保険金請求がスマホだけで完結するというサービスおよびアプリ。動物病院からもらった「診療明細原本」の写真を撮ってアップロードすると、加入している保険運営会社から飼い主の口座に保険金が入金される。診療明細原本以外に動物病院でもらう必要のある書類はなく、郵送などの作業は不要。

なお、アニポスアプリで一度に請求できるのは1回の通院分で、同一の診断・症状であっても複数回受診の請求を一度に行うことはできない。

スマホでペット保険金を請求できる「アニポス」が正式サービス開始、日本ペット少額短期保険に対応

また診療明細データ1件ごとに、公益社団法人アニマルドネーションを通じ、動物救済団体に対してアニポスが寄付を行う。寄付は毎月実行されアニポスの公式サイトで公表している。

この寄付の原資は、すべててアニポスが負担しており、ユーザーが負担することはない。アニポスサービス利用規約にある引き受け対象に合致したアップロードに限り寄付を実行する。保険金請求を行わない選択も可能で、その場合は寄付のみ行われる。

また同社は、提携ペット保険運営会社に対して、保険金査定で必要な情報の取得、保険金請求業務のデジタル化などを含む包括的な業務効率化サービスを提供している。

スマホでペット保険金を請求できる「アニポス」が正式サービス開始、日本ペット少額短期保険に対応

2019年3月設立のアニポスは、「すべての人がより良い適切な動物医療を享受し、動物と幸せに暮らせる世界を創る。」をビジョンに掲げ、ペット保険のDXを推進。ペット保険金を簡単に請求できるスマホアプリ「アニポス」と、「アニポス」からシームレスにつながるペット保険事業者の保険金支払い業務効率化サービスを始め、テクノロジーの力で動物医療を支えるサービスを開発提供していくとしている。

ペットの長寿化、ペット医療の高度化・高額化を背景に、日本のペット保険市場は年率20%で成長しているという。ペット保険は、生活者(ペット保険加入者)にとって身近になったものの、手続きの利便性向上を求める声が増しており、同時にペット保険運営業者のデジタル化を含む業務効率化・業界全体のDXが求められているという。

また同社は、提携ペット保険運営会社に対して、保険金査定で必要な情報の取得、保険金請求業務のデジタル化などを含む包括的な業務効率化サービスを提供している。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:医療(用語)ペット(用語)保険(用語)日本(国・地域)

AppleがバーチャルiPhone「Corellium」を訴えた裁判で一部敗訴

2019年8月、Apple(アップル)はバーチャルソフトウェア企業のCorellium(コアリウム)を著作権侵害で訴え、後に、同社製品がDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に違反しているという主張を付け加えた。

DMCAに関する主張はこれから法廷で決着する必要があるが、フロリダ州裁判所はAppleの著作権侵害の主張を退けた。

さて、Corelliumとは何か?かなり端折っていえば、Corelliumはセキュリティ研究者がブラウザ上でバーチャル化されたARM端末(iOS端末を含む)を立ち上げ、内部を「詳しく」調べることで潜在的セキュリティバグを発見するためのツールだ。2019年に私は以下のように書いている

Corelliumは、たとえばセキュリティ研究者がシミュレートされたiPhoneをすばやく立ち上げ、バグを探すために利用できる。もしバグが見つかれば、iOSの以前のバージョンを立ち上げて、そのバグがいつから存在していたかをすぐに確認できる。仮にバグがバーチャルiOSを「文鎮化」したとしても、ブートし直すだけでいいので、新しいiPhoneを入手する必要はない。バーチャル化デバイスは一時停止させることができるため、研究者は任意の瞬間に正確な状態を観察することが可能になる。

Washington Postによると、Rodney Smith(ロドニー・スミス)判事は米国時間12月29日の訴訟一覧表に次のように書いた。

証拠を確認した結果、裁判所は誠実かつ公正な利用の欠陥を発見しなかった。さらに必要な要因を検討した結果、Corelliumは公正使用を達成する義務を果たしていたことを裁判所は認めた。よって同社によるCorellium製品に関連するiOSの利用は許容される。以上を踏まえ、Appleによる著作権侵害訴訟の略式判決をCorelliumに与える。

スミス判事はCorelliumに以下の行為を許可した。「1.  実行プロセスの監視と停止、2. カーネルの改変、3. システムコール監視ツールであるCoreTraceの使用、4. アプリブラウザーおよびファイルブラウザーの使用、5. ライブスナップショットの撮影」を、同製品が「iOSの単なる再パッケージバージョンではなく」公正使用であることの証拠として行うこと。

さらにスミス判事は、この訴訟はAppleがCorelliumの買収を考えた後に起こされたことを繰り返し摘した。

2018年1月から2018年夏の間に、両社はAppleによるCorellium買収の可能性に関する会議を複数回行なった。期間中、両社は対面および電話で顔を合わせた。CorelliumはAppleに対してCorellium製品を支えるテクノロジーおよび動作の仕組みを説明し、CorelliumのビジネスおよびCorellium製品を商品化する意志について検討した。

そして、

もしAppleがCorellium製品を買収していれば、同製品は社内の試験および検証(システムの脆弱性や端末の機能の検証)に使用されただろう。

この判決は著作権に関するAppleの主張を一蹴するものだが(上訴の可能性はある)、DMCAに関してそのような迅速な裁定はなかった。AppleはCorelliumがシステム内蔵の認証およびセキュリティ検査を回避していると主張しているのに対し、Corelliumはそれらはハードウェアレベルで実装されており、彼らが扱っているファームウェア(iOS IPSWファイル)は「非暗号化、非保護、非ロック状態で開放されており、一般人によるアクセス、コピー、編集、配布、実行、および表示が可能である」と主張している。

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タグ:AppleCorelliumDMCA裁判

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

フェイクニュースとソーシャルメディアの「共鳴室」問題をスマートなニュースアプリで解決するGawq

Gawqと呼ばれる新しいスタートアップがフェイクニュースの問題とソーシャルメディアが作り出す「エコーチェンバー(共鳴室)」問題に取り組みたいと考えている。ソーシャルメディアでは、巧みに操られたアルゴリズムとパーソナライズされたフィードによって我々の世界観が形成される。Gawqが新しくリリースしたモバイルニュースアプリでは、さまざまなソースからのニュースを提示しつつ、ユーザーによるニュース、意見、有料コンテンツなどのフィルタリング、ソースの比較、事実かどうかの確認、さらにGawq上のコンテンツの正確性の確認を可能にすることを目指す。

GawqのアイデアはJoshua Dziabiak(ジョシュア・ディジビアク)氏が出した。同氏は今や利益を計上しているインシュアテックスタートアップのThe Zebraの共同創業者で、現在取締役も務める。2020年3月に常勤から退き、その直後にGawqを創業した。

「それは情熱のプロジェクトとして始まり、その後ビジネスに変わりました」とディジビアク氏は説明する。「私はより大きな社会的影響を与える何かをしたかったのです。そして、このアイデア、この問題は、特にこの1年間で非常に大きく表面化し、拡がりました」と同氏はいう。

ニュースがソーシャルメディアチャネルから流れると、人々は自分だけのバージョンの現実を見せられる。アルゴリズムは人々が関心を持たないニュースを取り除き始め、関心を持つニュースをどんどん見せ始めるからだ。時が経つにつれ、このシステムにより一部の配信元は突飛でセンセーショナルな見出しによりクリックや怒りを引き付けるようになった。だが、右寄りまたは左寄りの聴衆に訴えるニュースに傾き、また偏る配信ネットワークも生み出した。

その結果、メディア環境は全体として、必ずしもニュースの質ではなく読み手を意識し始めたとディジビアク氏はいう。質の高いジャーナリズムはまだ生み出されているが、あらゆるノイズをかき分けて見つけるのが難しいこともある。

「ジャーナリストとコンテンツクリエーターは成功のために新しい手段を必要としています。クリックやシェアの数ではなく、ジャーナリズムの核心をなす倫理に基づくものです」とディジビアク氏は語った。

画像クレジット:Gawq

Gawqの名前は、近頃の見出しが我々の注意を引くためによく叫んでいる様子を思い起こさせる意図がある。だがそれは、このアプリがニュースの正確性を念頭に置いたアプリであるという点では的外れだ。根本的にGawqというニュースアグリゲーターは、読者が見出しを「gawk(驚きの目で見る)」ことではなく、実際にはより批判的な目でニュースを読み、検討することを目指している。

アプリは当初、いずれの方向に偏っているものを含め、あらゆる種類と大きさの150を超える多様なトップメディアソースから構成される。配信元が網羅するトピックは米国や世界のニュース、政治、スポーツ、ビジネス、技術、エンターテインメント、科学、ライフスタイルニュースなどに及ぶ。

またGawqは、アルゴリズムやパーソナライズエンジンを使わずにトピックごとにその日のニュースを整理する。読みながらクリックすると、ある話題に関する報道を他の情報源と比較し、異なるメディアが同じトピックについてどうに書いているのかを深く理解できる。画面上部の巧妙な赤と青のスライダーバーを指で赤い方に引っ張り右寄りのソースからの報道を確認したり、青側に引っ張り左寄りのソースの報道を表示したりできる。

同社によれば、メディアを監査する3つの異なる非営利団体(AllSidesMedia Bias Fact CheckAd Fontes Media)のデータを使用して、ソースが「右」か「左」かを判断する。

画像クレジット:Gawq

スライダーバーのすぐ下には、目下のトピックに関するファクトチェックが簡単に参照できるようになっている。

ユーザーはアプリの設定で一部のニュースソースのオンとオフを切り替えられる。だが、Gawqは「多様なメディアの品揃え」がある場合にアプリが最適に機能することをユーザーに喚起するためにオンオフの切り替えを思いとどまらせる表現を使っている。

さらにGawqは「スマートラベル」機能を導入して、論説、スポンサーコンテンツ、セレブのゴシップなどのニュース以外のコンテンツを自動的に識別してタグ付けする。かっちりしたニュース以外を非表示にしたいなら、オンとオフを切り替えることもできる。

もう1つの優れた点は、もし配信元にとってではないなら少なくともニュースの利用者にとってということだが、Gawqがデフォルトで記事を「リーダーモード」に流し、最近ニュースサイトのページを埋めつつある広告や余計なものを取り除く機能だ。必要に応じて、クリックによりウェブサイトの記事を表示することもできる。

上記の多くは読者へのニュースの表示方法に関するものだが、Gawqのより大きな賭けはニュースレビューアーからなるウィキペディアのようなコミュニティを作れることだ。レビューアーはジャーナリズムの慣例を守っているかどうかに基づき記事を評価する。これは、より野心的で、おそらく過度に楽観的な取り組みだ。

すべての記事で、ユーザーはレビューボタンをクリックすると短いクイズに誘導され、記事のバランス、提供された詳細、見出しがクリックベイトであったかどうかを評価できる。次にユーザーはコメントを追加してレポートを送信する。このレビュープロセスは、プロフェッショナルジャーナリズム協会が定めるジャーナリズムの倫理規約に基づいて構築されたとディジビアク氏はいう。

画像クレジット:Gawq

おそらく、Gawqユーザーのうち記事を評価するのは少数にとどまる。だが時が経ち規模が大きくなるにつれ、レビューはニュースの消費者の目から見たニュースの正確性とセンセーショナルな傾向について、正確な評価を配信元に提示できるかもしれない。そのようなデータは会社外部で価値を持つかもしれないが、今のところGawqのビジネスモデルは「未定」だとディジビアク氏は認めた。

Gawqが取り組もうとしている問題は難しいものだ。そして間違いなく、世界観を広げる必要がある人がそのために新しいアプリをダウンロードする可能性は極めて低いと思われる。彼らは多くの場合、パーソナライズされたソーシャルメディアのフィードからニュース(そして多くの場合、怒りや嘘)を取り込む、ニュースの受動的な消費者だ。それから彼らは、誰でも見ることができるニューステレビチャンネルからお気に入りを1つ選んでクリックする。だが、より中立的なメディアを求める人は増えている。Gawqは情報源を比較する際、ニュースを右、左、または真ん中に配置して中立的なメディアを見つけるのに役立つ。

Gawqは現在自己資金で経営しており、エンジニアの小さなチームを抱え、ほとんどが契約ベースで働いている。ただし、Gawqは将来の資金調達を否定していない。

このアプリはiOSAndroid無料でダウンロードできる。

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画像クレジット:Gawq

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(翻訳:Mizoguchi

自動車修理業者の業務をデジタル化するAutoLeap、顧客との関係性「修復」を支援

自動車修理工場に行くのが好きな人はいないだろう。クルマを預けた後に何が起こるかのか、透明性はほとんどなく、請求書は大抵の場合、読みにくい箇条書きの連続に過ぎない。まるで混沌とした試練のように感じられることがある。

トロントを拠点とするスタートアップ企業のAutoLeap(オートリープ)は、6カ月前に設立されたばかりだが、9月にはひっそりとシードファンディングで500万ドル(約5.2億円)の資金を調達した。このチームは、自動車修理工場をようやく21世紀に持ち込むことで、この崩壊した経験を修復する方法が見つけ出せると考えている。彼らの大きなアイデアは、自動車修理業者が業務を整理し、仕事のスケジュールを立て、部品を注文し、デジタル検査を実施し、透明でシームレスな方法で顧客に請求書を発行するのを支援するというものだ。

自動車修理のプロセスを近代化しようしたのは、彼らが初めてではない。他のスタートアップ企業の中では、シアトルを拠点とする5年前に設立されたWrench(レンチ)が、その目的に向けて既に4000万ドル(41.4億円)の資金を調達(GeekWire記事)している。2年前にLAで創業した自動車修理・整備サービス業のRepairSmith(リペアスミス)は、ダイムラー社から支援を受けている。

だが、世界の自動車修理市場は現在7000億ドル(約72.5兆円)と評価されており、まだ新たな企業とアプローチの参入する余地があることは明らかだ。そしてAutoLeapにはいくつか有利な点がある。

まず第一に、有益なコネクションのある投資家ベースを持っていることが挙げられる。AutoLeapのシードラウンドを主導したThreshold Venturesは、10月に逆さ合併で株式公開(Insurance Journal記事)した自動車販売プラットフォームのShift(シフト)への投資を含め、自動車業界とのつながりを持っている。

他にもMaple VC、Liquid2 Ventures、Global Founders Capital、Codename Venturesなどのベンチャー投資家が投資しているが、AutoLeapはさらに、自動車業界に影響力を持つ何人かの著名人からも支援を受けている。Shiftの共同創業者George Arison(ジョージ・アリソン)氏、元ゼネラルモーターズCEOのRick Wagoner(リック・ワゴナー)氏、元ブリヂストン上級幹部のNed Aguilar(ネッド・アギラール)氏などだ。

さらに重要なのは、AutoLeapの創業者たちが以前にも一緒に、退屈な事業に活気を取り戻すために働いていた経験があるということだ。AutoLeapを立ち上げる前、共同CEOのRameez Ansari(ラミーズ・アンサリ)氏とSteve Lau(スティーブ・ラウ)氏は、スモールビジネスの経営を支援するSaaS企業、FieldEdge(フィールドエッジ)の共同CEOとして4年間を過ごした。

トロント大学で出会った大学時代の友人である2人が、この会社を立ち上げたわけではない。ラウ氏がウォートンで、アンサリ氏がスタンフォードで、それぞれMBAを取得した後、2人はいわゆるサーチファンド(個人投資家から支援を受けたチームが会社を探して買収し、一定期間それを経営した後、売却してさらに多くの利益を得るという仕組み)を利用して放置されていたビジネスを買収し、成長させるために力を合わせた。

それは関係者全員にとって生産的な経験だった。ソフトウェアがすでに30年前から存在していたFieldEdgeを2000万ドル(約20.7億円)で買収した後、ラウ氏とアンサリ氏は同社の製品を劇的に改善したため「この会社が従来の製品で得ていた金額の7倍も請求することができるようになった」とラウ氏は言っている。

その後、彼らは2018年に投資会業のAdvent(アドヴェント)に、会社を「1億ドル(約103.5億円)より多い金額」で売却(Adventリリース)したとラウ氏。

それは堅実な退陣だった。その2000万ドル(約2070億円)の投資を差し引いても、チームはFieldEdgeの売却益のうち30%を得て、残りはサーチファンドの投資家に回った。

それでもラウ氏によると、「資金調達に夢中になった」ライバルのServiceTitan(サービスタイタン)がいなかったら、彼とアンサリ氏は続けていたかもしれないという。7年前に設立された同社は、投資家から合計4億ドル(約414億円)を調達している。

ServiceTitan の膨大な軍資金と「これが私たちにとって最初の退陣になる」ことを考え、「私たちは撤退しました」とラウ氏は語る。

今日では、ラウ氏もアンサリ氏も、このシナリオをAutoLeapで繰り返したくないと考えている。実際、ラウ氏によると、同社はシード資金を確保した今、「頭を下げて」おり、投資家との話し合いは「一切していない」とのことだが、この状況が変わるまでにはそう時間は掛からないと想像する向きもある。

投資家が資金を提供するのは、紙のチラシやぼろぼろになったファックス機や請求書の山をなくすことを目的とした、急成長中のソフトウェアプラットフォームだ。そのためには修理業者にこのソフトウェアを十分に時間を掛けて試すように説得しなければならない。

だが、そうなるのは当然のことだとラウ氏は認めている。「それはオンボーディングに向けた取り組みになります。なぜなら、それが彼らのビジネスの生命線になるからです」とラウ氏は述べた。AutoLeapの販売プロセスでは、修理業者に既存のデータを共有させ、時間を掛けてその使い方を学ぶように説得しなければならない。

その説得力がラウ氏にあることは明らかだ。同氏によると、新規顧客がオンボーディングするまでの期間は1~2週間で、「顧客が価値を見出し始めると、『ああ』という瞬間が訪れる」とのこと。実際、AutoLeapはトロントの数店舗、ラスベガスの1店舗、ボストンの1店舗など、すでにいくつかの業者と提携しているという。

同社の拡大計画について、ラウ氏によると、シード資金の一部はデジタルマーケティングに使われる予定だが、口コミにも大きく依存しているという。修理業者の工場は一部の地理的なエリアに集中していることが多く、これがAutoLeapの迅速な普及を可能にすると彼は考えている。

その仮定を裏付ける「多くのデータ」はありません、とラウ氏は言う。しかし、AutoLeapがこのままやり方を貫けば、普及するまで長い時間は掛からないだろう。

写真はAutoLeapの共同CEOのラミーズ・アンサリ氏(左)とスティーブ・ラウ氏(右)。新型コロナウイルス流行のため、ラウ氏自らフォトショップで合成したものを提供してくれた。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:資金調達、自動車

画像クレジット:AutoLeap

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Facebookが一度消えた「Instagram Lite」アプリをリニューアル、インドでテスト開始

Facebookが世界的にInstagram Liteアプリの提供を終了したのは数ヶ月前になるが、同社はこのライト版アプリを復活させる取り組みを続けている。

ソーシャルメディアのコングロマリットである同社は、 後々アプリの 「グローバル展開 」が起こる前に、新サービスについての 「貴重な洞察を得ること」を期待しているインド市場で、刷新されたInstagram Liteアプリをテストしていると水曜日に述べた。

リニューアルされたInstagram Liteアプリは、容量2MB未満ながらソーシャルサービスの「速く、確実で、反応性の良い」体験を提供するという。Androidアプリは、バングラ語,、グジャラート語、ヒンディー語、カンナダ語、マラヤーラム語、マラーティー語、パンジャブ語、タミル語とテルグ語に対応しているが、現在のところ、リール(Reels)やショッピング、IGTVを含むInstagramのコア機能をいくつか欠いている。

Facebookは今年初め、Instagram Liteの前バージョンを静かに終了している。7月に、Instagramのプロダクト担当副社長Vishal Shah(ヴィシャール・シャー)氏がTechCrunchに語ったところによると、同社はアプリ内のいくつかの問題を特定し、それらの解決に取り組んでいるとのことだった。9月には、Facebookはそれを認めなかったが、新しいLiteアプリが野放しになっているのが目撃された

ライト版アプリは、大多数のユーザーが高機能のスマートフォンや高速で安価なモバイルデータにアクセスできない新興市場で特に人気がある。TechCrunchの取材に答えた業界幹部がモバイルデータ分析企業のApp Annieから得たデータによると、例えば、Facebook Liteアプリは先月インドで約4000万人の月間アクティブユーザー、Messengerのライト版アプリは約1300万人の月間アクティブユーザーに達したという。(Instagramアプリのユーザー数は約1億6400万人だった。)

マーク・ザッカーバーグ氏やインド事業を担当する副社長Ajit Mohan(アジト・モーハン)氏を含むFacebookの幹部が揃って、世界第2位のインターネット市場のために同社が取り組んでいる他のプログラムの数々を概説した水曜日のイベント「Facebook Fuel for India」で、シャー氏は刷新されたInstagram Liteアプリについて発表した。

Instagramはまた、コンテンツ制作者が互いに協力し、マネタイズの機会を探り、理解・活用するため1年前に構築されたプログラム「Born on Instagram」の第2弾を発表した。

Instagram Liteのテストと次世代の「Born on Instagram」で、インドのより多くの人々のために表現と創造性を民主化することを目指しています」とシャー氏は述べた。

イベントでは、WhatsAppインド代表のAbhijit Bose(アビジット・ボーズ)氏が、同社は今月中に、インドのユーザーにミニ健康保険の提供を開始するよう取り組んでいると述べた。WhatsAppは7月、同メッセージングアプリの最大市場であるインドにおいて、今後1年半の間にクレジット、保険、年金サービスを試験的に開始する準備を進めていることを明らかにしていた

「WhatsAppは、すべての成人がモバイルデバイスを通じ、最も基本的で重要な金融・生活サービスにアクセスできるようにするため、いくつかのパイロット事業に積極的に取り組んできました。今年末までには、人々がWhatsAppを通じて手頃な小額の健康保険を購入できるようになることを期待しています」とボーズ氏は述べた。保険の補償のため、WhatsAppはSBI General社と提携し、年金分野では、HDFC Pensionと提携するという。

ユーザー数からするとインドを最大の市場と認識するFacebookは、また、数千万に及ぶ中小企業のオンラインプレゼンスを確立し、デジタル販売を支援するために、通信大手のJio Platformsと提携している。Facebookは今年、Jio Platformsに57億ドル(約5900億円)を投資し、Jio Platformsが提供するeコマースサービス「JioMart」をWhatsAppで利用できるようにするため協力している。同イベントでFacebookとRelianceの幹部は、いくつかの新機能がJioMartのWhatsAppチャンネルに「近日中に」登場する予定だとほのめかした。

関連記事:TikTok対抗機能のInstagram Reelsでショッピングも可能に

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Facebook Instagram SNS

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(翻訳:Nakazato)

オムニチャネル小売ソフトウェアのBrightpearlが業務拡大で34億円調達

小売業者が売上アップを図るために業務を合理化することができるようサポートするオムニチャネル小売ソフトウェアBrightpearl(ブライトパール)が業務拡大のために3300万ドル(約34億円)を調達した。このシリーズCラウンドはSageがリードし、Brightpearlに2300万ドル(約24億円)を投資した。既存投資家のCipio Partners、Notion Capital、そしてVerdaneも参加し、計1000万ドル(約10億円)を投じた。

英国ブリストル拠点のスタートアップBrightpearlは財務管理、CRM、フルフィルメント、在庫・受注管理、購買・サプライヤー管理、倉庫管理、ロジスティックのためのプラットフォームを展開している。

Sageは今回、Brightpearlに役員1人を送り込んだ。声明文の中で同社は以下のように述べている。「SageとBrightpearlはともに、小売とeコマースの顧客がクラウドファイナンスや小売管理ソリューションのベスト・オブ・ブリード(最適なものの組み合わせのこと)を最大限活用できるようにしてデジタル化をサポートします。Brightpearlとの提携は、Sageの高成長中のクラウドベースのソフトウェアアプリケーションに補完的に投資するための広範な戦略に合ったものです」。BrightpearlはShopify、eBay、Amazon(アマゾン)とも提携している。

BrightpearlのCEOであるDerek O’Carroll(デレック・オキャロール)氏は以下のような声明文を出した。「小売業の顧客を一層サポートし、SageとBrightpearlが英国と米国で持つ強固な基盤をさらに確固たるものにするために、Sageと新たな提携を結ぶことをうれしく思います。Brightpearlのソリューションは、小売プロセスを自動化することで大きなメリットをもたらし、世界中の業者は時間を節約し、実に優れた、そして迅速なエンド・トゥー・エンドの顧客エクスペリエンスを提供することができます」。

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タグ:Brightpearl資金調達

画像クレジット:George Frey / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

GoogleがKubernetesのインフラ運営の資金としてCNCFにさらに3.1億円提供

2018年にGoogle(グーグル)は、Google Cloud Platformのクレジット900万ドル(約9億3000万円)の3年分割でCloud Native Computing Foundation(CNCF)に提供し、同団体によるKubernetesプロジェクトのためのインフラストラクチャの開発と配布を支援していくと発表した。それまでGoogleがそれらのリソースを保有し、コミュニティのために管理していた。米国時間12月17日、両組織はGoogleがCNCFへの2020年の提供を300万ドル(約3億1000万円)増額して、「Kubernetesとそのエコシステムの長期的な健在と質と安定性を支えていく」と発表している。

Googleによると、調達した資金はKubernetesプロジェクトのテストとインフラに充てられ、Kubernetesには現在、月間2300のプルリクエストがあり、約40万の統合テストが実行され、そのすべてがGCP上で約30万時間のコアタイムを消費している。

「投資を継続できることを嬉しく思っている。それがKubernetesとそのコミュニティの長期的な健全性と質と安定性にとって極めて重要であることを、我々も知っており、Cloud Native Computing Foundationとのパートナーシップがずっと続いていることも喜ばしい。結局のところ、究極の目標はデベロッパーが自由に開発できることと、いうまでもなく誰にとっても重要なKubernetesがそのための優れた、堅固な、安定したスタンダードであり続けることだ」とGoogleのプロダクト管理ディレクターで、CNCFの統轄委員会の議長を務めるAparna Sinha(アパルナ・シンハ)氏は語っている。

シンハ氏によると、Googleはこのプロジェクトに大量のコードも寄贈しており、それは過去12カ月だけでも12万8000行に達する。また、そういう技術的な貢献だけでなく、チームはコミュニティへのエンゲージメントとメンタリングを通じて現物的な貢献も行っている。12月17日に行ったような、財政的貢献だけがすべてではない。

CNCFのゼネラルマネージャーであるPriyanka Sharma(プリヤンカー・シャルマ)氏は、次のように語っている。「Kubernetesプロジェクトは急速に成長してきた。次から次とリリースがある。そして大きな変化もあり、それらがいろんなところで動いている。この300万ドルの寄贈も、そんな動きの1つだ。このようにKubernetesのプロジェクトはストレスと無縁であり、1年中いつでも使えるクレジットがある。またセキュリティも重要で、現状で未知の時間である来月に、どんな環境で動いてもよいようなコードでなければならない。プロジェクトのデベロッパーとコントリビューターは、確信をもって機能の集合にフォーカスし、絶えず進化を続けるKubernetesを開発していかなければならない」。

なお、GoogleとCNCFの協力関係はこのように歩調が揃っているが、サービスメッシュのプロジェクトであるIstioに関してはGoogleの管理に若干の疑問がある。それはGoogleとIBMが数年前に孵化したプロジェクトだが、2017年のある時点でCNCFの傘の下に入れるべきという提案があった。その提案は結局流れたが、2020年になってIstioは、Open Usage Commonsの創設プロジェクトの一員になった。しかしそのプロジェクトはもっぱら商標の問題に関心があり、プロジェクトの統轄を目指していない。そして、こういったことのすべてが内輪ネタにすぎないようであり、確かにそうなのだが、オープンソースのコミュニティの一部は、CNCFのような団体へのGoogleの深入りを疑問視している。

これについてシンハ氏「Googleは、たくさんのオープンソースプロジェクトに貢献している。しかもそれらの多くはLinux Foundation傘下のオープンソースのファンデーションであり、またそうでないものも多い。それは特に新しいことではなく、改めて報告すべきことでもない。今回の議論の主題であるCNCFへのGoogleのフォーカスは、あくまでもKubernetesが軸だ。それは私の考えでは、他のプロジェクトに比べて圧倒的に多くの貢献と時間とコミットメントを注入しているプロジェクトだ」と答えている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:GoogleKubernetesCNCF

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

データ統合APIを開発するStepZenが約8.3億円のシード資金を調達

StepZenは、2016年にGoogleに6億2500万ドル(約646億9000万円)で買収(未訳記事)されたApigeeのメンバーが立ち上げた新しいスタートアップで、Apigeeとは違うビジョンを持っていた。StepZenは別々のソースからデータを取り出す単一のAPIを開発し、開発者が複雑なカスタマーエクスペリエンスをオンラインで提供できるようにしている。

米国時間12月22日、StepZenはステルスから出現し、Neotribe VenturesWing Venture Capitalから800万ドル(約8億3000万円)のシード資金を調達したと発表した。

CEOで共同創業者のAnant Jhingran(アナント・ジングラン)氏は、創業者たちはAPIに取り組んできた長年の経験からさらに前進したいと考えていたという。「StepZenは、フロントエンドの開発者がバックエンドにある必要なデータをすべて扱える1つのAPIを簡単に作り利用できるようにするプロダクトです」と同氏は説明する。

これはスムーズで一貫性のあるカスタマーエクスペリエンスを提供するためのサービスだ。eコマースのサイトで注文履歴を見るにしても、バンキングアプリで現在の残高を調べるにしても、さまざまなバックエンドのデータリソースからデータを取り出す必要がある。こうしたリソースに接続するのは手間のかかるタスクであり、StepZenは開発者がシンプルに接続できるようにすることを目指している。

「開発者は、バックエンドにアクセスするコードをデプロイし管理するのに膨大な時間を費やしています。StepZenはその時間を取り戻したいのです」とジングラン氏はいう。

手でコードを書いてデータを引き出すのではなく、StepZenを使えば開発者は構成と認証の情報を設定するだけでバックエンドのデータソースに接続できる。その後、必要な時にデータを取り出して表示するという大変な作業をすべて扱う1つのAPIが作成される。

ジングラン氏は顧客に未処理の注文のリストを提示する例を挙げて説明する。単純なことのように思えるが、データがCRMシステム、注文システム、配送業者にあるとすると、少なくとも3つのまったく異なるシステムにアクセスすることになる。StepZenのAPIはこうしたデータをまとめて引き出し、スムーズにユーザーに提示する。

StepZenには現在、創業者の3人を含め11人の従業員がいる。2021年中には8人程度を新たに雇用する予定だ。CBOで共同創業者のHelen Whelan(ヘレン・ウェラン)氏は、新たな雇用を通じて多様でインクルーシブな企業にしたいと述べる。創業チーム自体が多様だが、さまざまなバックグラウンドや考え方を持つ従業員を雇用して完璧なプロダクトと企業を作りたいと考えている。

ウェラン氏は次のように語る。「最初の10人ほどの従業員は、一緒に働いた人のネットワークを活用して、素晴らしい仕事ができる人を雇用しました。その後は意図を持って拡大し、意図を持って候補者を見つけるルートを探り幅を広げる時間を取る必要があると考えています」。

StepZenは創業してまだ9カ月で、2020年の大半はソリューションを構築してプレアルファユーザーに使ってもらうことに費やしてきた。現在のプロダクトはアルファ版で、2021年前半にソフトウェアサービスとしてリリースする計画だ。

ステルスから出現した同社は、プロダクトの開発を継続し、できるだけ複雑さを取り除こうとしている。ウェラン氏は「我々はバックエンドで難しいことをする方法は知っています。データベースの技術とAPIの技術をメインにすることは止め、開発者が外部で簡単に使えるようにシンプルにしようとしています」と述べた。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:StepZen資金調達

画像クレジット:Andrey Suslov / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

非営利団体向けボード管理ソフトのBoardableが8.3億円を調達

インディアナポリスのBoardableは、非営利団体が役員会や理事会などを管理するためのソフトウェアツールを提供している。同社はこのほど、新たに800万ドル(約8億3000万円)の資金を調達した。

メインの投資家はBase10 Partnersで、これに同社のシード段階を支援したインディアナポリスのエンタープライズ投資企業であるHigh Alphaが参加した。

Boardableのソフトウェアは組織化のためのツールで、非営利団体が役員たちの会議などさまざまな行事を管理し、団体としての運営を日々無事に維持できるようにする。

非営利団体をサポートするソフトウェアやサービスの開発者は、最近投資家たちの関心を集めつつある。これまでテクノロジー企業があまり関心を向けなかったという意味では、新しい業種だ。2020年初めにはニューオーリンズのResiliaが、非営利団体やチャリティ組織のための同社独自のサービスに、800万ドルを調達した。

Boardableは声明で、今回の資金でチームを増員し、非営利団体の運営のためのワンストップショップになるために新しいツールを開発したい、と述べている。

「非営利団体の多くが、デジタルのガムテープを使って役員会を管理している。それは主に、エンドレスなメールのスレッドや、ファイル共有サービスであり、役員とスタッフを消耗させるひどい体験だ。Boardableはこの問題を解決することを目的として、非営利団体の創立者たちのために開発したソフトウェアだ。効率とエンゲージメントの両方をアップするだろう」とBoardableのCEOであるJeb Banner(ジェブバナー)氏は、声明でこう述べている。

現在、YMCAや更生保護団体Big Brothers Big Sisters of America(BBBS)、インディアナ州ガールスカウトといった組織が役員会の管理に、現在このペーパーレスのツールを利用している。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Boardable資金調達

画像クレジット:tinbee / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

TikTokがユーザーそれぞれの2020年を振り返る初の機能「Year on TikTok」提供開始

Spotify(スポティファイ)ユーザーにはWrappedがあり、Instagram(インスタグラム)ユーザーにはTop Nineがある(CNN記事)。そして、TikTok(ティックトック)ユーザーにも独自の今年1年を振り返る機能が提供されることになった。TikTokは米国時間12月21日、「Year on TikTok」と呼ばれる個人の年間振り返り機能を初めて提供すると発表した(TikTokリリース)。これは各ユーザーのTikTokで最高の瞬間を紹介するハイライト動画で、自分がTikTokを利用していた時間、よく見た動画、お気に入りのトラックやエフェクト、コメントや動画の共有頻度などのメトリクスも含まれている。

この機能はまた、ユーザーのお気に入りの「vibes(バイブス)」を識別する。これはつまりクラフト、料理、動物、旅行、コテージコア、またはこのソーシャルビデオプラットフォーム上に現在誕生している多数のコミュニティのいずれかなど、あなたが最も好きな動画の種類のことだ。

ユーザーが独自の「バイブス」を生成するほどTikTokを使っていない場合は、代わりに「Year on TikTok:トップ100(TikTokリリース)」の中で上位にある動画が、Year on TikTokとして表示されるという。

画像クレジット:TikTok

この1年をまとめたコンテンツは、おなじみの方法で表示される。縦にスクロールすると、あなたの2020年の関心事や活動を表す動画が表示され、その動画を自分のTikTokプロフィールに直接シェアすると、プロフィール写真の上に「2020」の文字が入った特別なプロフィールバッジを受け取ることができる。

アプリの「Year on TikTok」ページではトップミーム、トップクリエイター、トップバイラルビデオ、最もインパクトのあるクリエイター、トップセレブ、トップソング、その他年末のトレンドなど、他のTikTokのハイライトを閲覧できる。

TikTokユーザーはアプリの「For You(おすすめ)」フィードでアイコン(目立つ位置にある)をタップするか、「Discover(トレンド)」ページの上部にあるバナーまでスクロールすることで、自分の「Year on TikTok」にアクセスすることができる。

ただし、TikTokによる1年のまとめの精度には議論の余地がある。たとえば筆者の場合、For You(おすすめ)フィードにある動画がすべて政治やニュースに関連しているにもかかわらず、(どういうわけか)TikTokは私のトップ「バイブス」が、家庭、旅行、動物に関するものだと教えてくれた。それは不完全なリストで、過去に私が「お気に入り」登録したビデオの大半とは一致していない。TikTokは、よりポジティブな「バイブス」に絞ってユーザーの体験をキュレートしているらしい。そして政治的なビデオやテーマは選ばれないようだ。

このように空回りすることもあるにせよ、ユーザーが1年間にソーシャルアプリとどのように関わったかをパーソナライズする振り返り機能は、かなり人気があることが証明されている。そしてこれは、よくできたマーケティングの仕かけでもある。

たとえばSpotifyのWrapped(まとめ)は、あまりにも人気が高いため、年末になると人々の共有した「まとめ」が、ソーシャルフィードを埋め尽くしてしまうという不満がユーザーから出始めた。Spotifyは2020年、この問題に部分的に対処するため(未訳記事)、2020年のWrappedに新しいカスタマイズオプションを提供し、ユーザーが共有する前にWrappedカードの色を調整できるようにした。こうすれば、共有Wrappedの洪水は、例年のような均質なものにはならず、それほど迷惑ではないと認識されるかもしれない。

調べるのは難しいが、「Year on TikTok」機能もうまくいくだろう。ハッシュタグ #YearOnTikTok は、より多くの視聴者に自分の動画を薦めたり、「おすすめ」ページに掲載されることを期待してこのタグを使うユーザーのおかげで、54億ビューに達している。2020年バッジをプロフィールに貼るクリエイターがどれだけいるかが、今後の試金石となるだろう。

TikTokの機能は楽しいが、少し物足りないと感じた場合は、サードパーティ製の代替機能がある。

その1つであるRetroplayというアプリは2020年12月、独自の2020年TikTok Year in Reviewを発表した。このアプリは、自分の統計やメトリクスをまとめるだけではない。ユーザーは、Retroplayの「Superlatives」賞を通して、お気に入りのクリエイターや動画に投票したり、お気に入りのクリエイターからカードを集めたり、自分のハイライトリールをカスタマイズすることもできる。しかし、このアプリはまったく新しいものであり、バグに悩まされている。たとえばハイライトリールは現在修正中のためにダウンしており、文字ではなくピリオドで始まるユーザー名に対処できないこともわかった。

「私たちは、コンテンツクリエイターのための1年を振り返る機能にもっと力を入れたいと考えています。この2週間にわたってクリエイターたちと一緒にアイデアを出し合ってきました。フィードバックに基づき、ハイライトリール機能を一時的に無効にしました」と、Retroplayの開発者はTechCrunchにメールで回答した。彼らによると、クリエイターは今週末にリリースされる新機能を通じて、トップ4やトップ9の動画コンピレーションを作成できるようになるとのことだ。

画像クレジット:Retroplay

TikTokはAPIを提供していないため、Retroplayは公開されているユーザーの動画へのアクセスや統計情報の取得ができず、データの取得にも苦労してきた。

しかし、このアプリのデザインはキャッチーで、インタラクティブな機能は魅力的だ。開発者がなるべく早く、年内には問題を解決できることを期待したい。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TikTok

画像クレジット:Nur Photo / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

マッチングアプリのBumbleがIPOに向けて動き出したとの報道

米国時間12月19日、人気のあるマッチングアプリスタートアップであるBumble(バンブル)が、非公開でIPOの書類を提出したとブルームバーグが報じた

バンブルがIPOを目指しているというニュースは驚きではない。TechCrunchは9月にこのニュースを取り上げ、ライバルのTinderが巨額の収益を上げていることに注目し、この2つのプレイヤーがビジネスを行うのに十分な規模の市場がありうることを示した。

バンブルが非公開で申請したということは、暗号資産のCoinbase(コインベース)と同じく、彼らもIPOの道を歩んでいることを示している。この2社がS-1申告書を公開した際には、市場は彼らの財務結果を目にすることになるだろう。

バンブルとCoinbaseは、Roblox、Affirm、Poshmarkに先んじてS-1申告書を公開する。今後数か月の間に、この5社はIPOを目指した手続きに進むことになるだろう。

GGVのハンス・タン氏(AffirmやAirbnbなどへの投資で有名な投資家)との最近のインタビューによると、2021年の第1四半期、第3四半期、第4四半期はIPOの活発な時期になる可能性がある。2020年の最終週にバンブルが参入することで、公開市場が史上最高値近くで取引される中、流動性を求める高価格の非公開企業にとって、年明けがいかに活発な年になるかが焦点となる。

TechCrunchは、今回の申請に関するコメントを求めてバンブルに連絡を取ったが、同社はコメントを拒否している。

ブルームバーグの報道によると、バンブルの評価額は60億ドルから80億ドルになる可能性があるという。これは事前の予想通りだ。この評価額に到達するために、市場がバンブルにどの程度の収益を求め、どの程度のペースで成長することを求めているのかは分からない。

しかし、同社は2020年初めに1億人のユーザーに到達したことを考えると、その評価額に達する可能性は大いにあるのだろう。

関連記事:恋人・友達探し、キャリア形成特化SNSのBumbleは「女性がいる限り存在する」とCEOが語る

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Bumble マッチングアプリ IPO

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(翻訳:TechCrunch)

Apple、アプリのプライバシーラベルを全App Storeで公開

6月に開催された世界開発者会議(WWDC)でApple(アップル)は、App Storeのアプリの製品ページにプライバシーに関する情報を分かりやすく簡潔に表示する機能を新たに導入し、まもなく開発者にアプリのプライバシー方針を顧客へ開示するようを求めることを明らかにした。このアプリの新しいプライバシーラベルは、iOS、iPadOS、macOS、watchOS、tvOSを含むアップルのApp Storeすべてで米国時間12月15日より公開されている。

同社はすでに開発者に対して、新規アプリおよびアプリのアップデートを提出する際にプライバシー方針を提供する義務付けを始めていたが、今日までこの情報をApp Storeで公開していなかった。

新しいラベルは、アプリがどのような種類の情報を収集しているかをアップルの顧客が容易に確認できるようにすることを目的としたものだ。情報は「ユーザーのトラッキングに使用されるデータ」「ユーザーに関連付けられたデータ」「ユーザーに関連付けられないデータ」の3つのカテゴリーに分類されている。アップルの説明によれば、トラッキングとは、ターゲット広告や広告効果測定を目的としてアプリで収集したユーザーやデバイスに関するデータを他社のアプリ、Webサイト、またはオフラインのプロパティ(小売売上高を集計したデータのようなもの)から収集されたユーザーやデバイスに関するデータに関連付ける行為を指す。また、ユーザーやデバイスに関するデータをデータブローカーに共有することもトラッキングに該当するとしている。

この側面だけでも、サードパーティのアドテクやアナリティクスのSDK(ソフトウェア開発キット)が形成する業界が、基本的に開発者は外部ベンダーのコードをアプリに追加して収益を増加させていることが浮き彫りとなるだろう。

なお、「ユーザーに関連付けられたデータ」とは、アプリ上のユーザーアカウント、デバイス、その他の詳細情報を通じて、ユーザーのIDに関連付けられた個人情報である。

画像クレジット:Apple

アプリがユーザーから収集するデータの種類は多数あり、その内訳は「個人の連絡先情報(住所、Eメールアドレス、電話番号など)」「ヘルスケアとフィットネス情報(Clinical Health Records API、HealthKit API、MovementDisorderAPIからのデータ、人を対象とする健康に関する研究・調査からのデータなど)」「財務情報(支払い・クレジット情報など)」「位置情報(詳細な位置情報またはおおよその場所)」「連絡先」「ユーザーコンテンツ(Eメール、オーディオ、テキスト、ゲームプレイ、カスタマサポートなど)」「閲覧・検索履歴」「購入」「ユーザーIDやデバイスIDなどの識別子」「使用状況と診断情報」などだ。

開発者は、アプリが収集するデータだけでなく、それが最終的にどのように使われるかを把握することが求められる。

たとえば、アプリがサードパーティパートナーとユーザーデータを共有する場合、開発者はパートナーがどのデータをどのような目的で使用しているかを知る必要がある。アプリ内のターゲット広告の表示、データブローカーへの位置情報データやEメールリストの共有、他のアプリで同一ユーザーをリターゲティングする目的でのデータの使用、広告の効率測定などだ。ただし、開発者はアップルのフレームワークやサービスからデータを収集する際には公開する必要があるが、アップル自身が収集したデータを公開する責任は負わない。

新しい開示要件には、任意のフィードバックフォームやカスタマーサービスへのリクエストを通じて回収されるデータなど、いくつかの例外がある。しかし概して、アプリから収集するデータのほとんどを公開しなくてはならない。App Storeで提供されていないアップル独自のアプリでさえ、ウェブ上にプライバシーラベルが公開される。

また、アプリには一般に公開されているプライバシーポリシーへのリンクを含める必要がある。ユーザーがアプリのデータを管理したり、削除を要求したりできるページなど、プライバシーに関する選択肢をより詳細に説明するページへのリンクをオプションで含めることもできる。

プライバシー情報自体については、「ユーザーのトラッキングに使用されるデータ」から始まり、各カテゴリーでどのようなデータが収集されているかを読みやすく表示するタブが、アプリの製品一覧ページの画面上に表示される。

アップルは、このプライバシー情報が含まれていないアプリをApp Storeから削除しないとしているが、プライバシー情報が表示されるまでアプリのアップデートを許可しないことになった。つまり、最終的には、放棄されたアプリ以外、すべてのアプリにこうした詳細情報が含まれることになる。

アップルのプライバシーラベル導入の決定は、消費者のプライバシーにとって大きな進展であり、各種アプリストアがデータを開示する方法の新たな基準を確立する可能性がある。

しかし同時に、アップルがプライバシー先進企業としての存在を旗印に、独自のアドテク戦略を推し進めようとしているとも言える。アップルはアドテク業界に、識別子IDFAから自社のSKAdNetworkへの移行を強制しようとしている。これは同社がこの移行を2020年から2021年へ延ばすほど議論を呼んできた大刷新である。延期の決定は、同社が述べたように、収益性への相当の打撃に動揺するマーケターに適応する時間を与えるためだったかもしれない。しかしアップルは当然のことながら、App Storeがサードパーティーに対して反競争的に振る舞っていたかどうか規制当局が慎重に検討していたことを強く認識している。

その意識を反映する例がある。モバイルアプリ広告のインストールキャンペーンからパーソナライゼーションを排除する変更の結果、FacebookはiOS上のAudience Networkの収益が50%減少すると広告主に警告していた

一方アップルは、年間収益が100万ドル未満の開発者に対するApp Storeの手数料率を15%に削減し、規制当局の懸念を緩和している。

消費者のプライバシーに関するこれらすべての変更が進行する中、アップル自身もApp StoreやApple Newsなどの自社アプリで広告をパーソナライズするために顧客データの使用を続けている。デフォルトで有効になっているこれらの設定は、iPhoneの設定でオフに切り替えることができる。一方で、アプリのパブリッシャーはユーザーにトラッキングを許可するよう求めなければならなくなる。アップルは現在、将来的に広告を拡大する可能性のあるサービスを数多く扱っている。

新しいプライバシーラベルが公開されるにあたり、消費者がどう反応するか見るのは興味深い。大量のデータを収集しているアプリは、慎重なユーザーから避けられ、ダウンロードに影響が出るかもしれない。あるいは、消費者は新しいソフトウェアをインストールするときに「同意する」ような他のポリシーや利用規約と同様に、ラベルを無視することになるかもしれない。

アップルのプライバシー方針に関する詳細は本日、新しいウェブサイトApple.com/jp/privacyでも公開された。App Storeの変更だけでなく、同社が消費者のプライバシーを保護するその他すべての分野のリストも含まれている。

App Storeのアップデートは米国時間12月15日の、iOS 14.3、iPadOS 14.3およびmacOS Big Sur 11.1のリリースに合わせて配信された。新しいOSは、プライバシーラベルに加えて、Apple Fitness+、AirPods Max、新しいProRAWフォーマットなどに対応する。

関連記事:2020年のアプリ消費額は過去最多の約12兆円、ダウンロードは1300億回

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Apple App Store

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(翻訳:Dragonfly)

Appboxoが110万ドルのシード資金を獲得、開発者に向けたミニアプリのエコシステム構築を目指す

ほぼ4年前にWeChatによって開拓されたミニアプリは、今や中国とインドでよく知られた存在となり、他の市場でも勢いを増している。ミニアプリ、すなわちホストアプリに統合するように設計された軽量アプリは、スマートフォンユーザーが1つのアプリから複数のサービスにアクセスできるようにし、データとストレージ容量を節約する。また、ホストアプリの収益に役立つより多くの方法を提供する。しかし、ミニアプリのエコシステムは現在、ほとんどが特定のアプリや企業と結びついている。シンガポールを拠点とするスタートアップAppboxoは、開発者が自分のアプリを「スーパーアプリ」に変えられるようにすることで、ミニアプリへのアクセスを容易にしたいと考えている。

Appboxoは本日、シード資金で110万ドル(約1億1400万円)を獲得したことを発表した。主導するのは、Founders FundのスカウトファンドのFF APAC Scout、500 Startupsの東南アジアに特化したファンドである500 Durians fund、Plug and Play Ventures、およびAntlerである。今回調達した資金は、製品開発や、Appboxoのエコシステムにミニアプリを追加するために使用される。

同スタートアップは現在、Booking.com、Klook、Zaloraなど約10のホストアプリに対応しており、プラットフォーム上には約80のミニアプリを保有している。ホストアプリがどのようにミニアプリを使ってきたかの例としては、ホテル、レストラン、アクティビティの予約機能を追加した旅行アプリや、保険購入とEコマースサービスを統合したモバイルウォレットなどが挙げられる。

Appboxoは2019年、CEOのKaniyet Rayev(カニェット・レイエフ)氏とCTOのNursultan Keneshbekov(ナスルタン・ケネシュベコフ)氏が、Antler主催のシンガポールインキュベータープログラムに参加して設立した。ラエフ氏がTechCrunchに語ったところによると、両氏は当初、様々な旅行関連サービスを1つのプラットフォームに統合したオールインワンの旅行アプリの開発を考えていたという。

「しかし実際に開発を開始してみると、サードパーティのサービスをプラグインする簡単な方法はないことがわかりました」とレイエフ氏は説明する。そして、開発者がプラグアンドプレイソリューションとしてミニアプリを作成し提供する方法を考え始めた。

ミニアプリ経済は現在サイロ化しており、WeChat、ByteDance、Meituan、Paytm、PhonePe、Grab、Go-jekのようなアプリや企業は、自分たちが使うためのミニアプリを開発するか、ユーザーのためのミニアプリ市場を運営している。しかし昨年、W3CのChinese Web Interest Groupは、ミニアプリを標準化する方法を検討し始めた。Alibaba(アリババ)、Baidu(百度)、Huawei(ファーウェイ)、Intel(インテル)、Xiaomi(シャオミ)、China Mobile(中国移動通信)らから成るこのグループは、プラットフォームを超えて動作するミニアプリを作成する方法に関する白書の最初のワーキングドラフトを2019年9月に発表した。

「この白書をまさに完璧なタイミングで読みました。ちょうどプラットフォームを立ち上げた頃だったのです」とレイエフ氏は続ける。

ミニアプリを追加すると、ユーザーがアプリを通じて様々なサービスにアクセスできる場合、アプリをより頻繁に開くため、エンゲージメントを高めることができる。また、アプリ開発者は、アフィリエイトパートナーシップ、コミッション、取引手数料を通じて収入を得る方法を増やすことができる。

しかし、ネイティブアプリ開発者の多くは、自分自身のミニアプリを開発するためのリソースを持っていない。そこでAppboxoは、SDKを使ってプロセスを簡素化し、プラットフォームのミニアプリを統合できるようにしている。多くのアプリ開発者にとってのもう1つの障壁は、ミニアプリとのビジネスおよび開発パートナーシップ契約を結ぶことであるが、AppBoxoはそのプロセスをガイドすることにも貢献する。

Appboxoはシンガポールを拠点としているため、現在のユーザーの多くは東南アジアにおり、インドもターゲットにする計画だ。ミニアプリは欧州や米国ではそれほど一般的ではなく、大半のスマートフォン所有者は依然として1つのコアサービスを提供するアプリを使用しているが、レイエフ氏は状況は変わりつつあると指摘する。たとえば、Uberは昨年、配車サービスとフードデリバリーサービスのUber Eatsを1つのアプリに統合することを表明し、Snapは数か月前にMinisを発表した。

AppBoxoはすでに欧州にパートナーを有しており、「スーパーアプリのコンセプトが西洋にも浸透しつつあります」とレイエフ氏は付け加えた。「世界の他の地域でも新しいパートナーを確保できたらと考えています」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:資金調達

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(翻訳:Dragonfly)