【レビュー】アップルStudio DisplayのNano-textureガラスは効果大、Windowsでも使ってみた

Mac Studioと「Studio Display」。セットだとやっぱりかなりバランスのいい組み合わせだ

Mac Studioと「Studio Display」。セットだとやっぱりかなりバランスのいい組み合わせだ

3月18日、Mac Studioとともに発売されるのが「Studio Display」だ。

Mac Studioと組み合わせることを強く意識した商品だが、もちろんほかのMacと組み合わせて使うこともできる。

各種機能のクオリティはどうなっているのか、Mac Studioとの組み合わせだけでなく、Windows PCにつないで使ったときの動作も含めて検証してみた。

Nano-textureガラスは効果大、5Kを生かすなら有用

Studioディスプレイにはいくつかのモデルがあり、購入時にカスタマイズするのが基本となっている。ディスプレイとしての仕様は表面加工以外同じで、スタンドなどの仕様変更が中心だ。

基本はアンチグレア加工の「標準ガラス」で、傾きを変えられるスタンドが付いている。

そこに、より微細な表面加工で反射を防ぐ「Nano-textureガラス」を使ったモデルがあり、さらに「傾きと高さを変えられるスタンド」、そして「VESAマウント」から選ぶ。

Appleの購入ページより。スタンドは3種類から選ぶ

Appleの購入ページより。スタンドは3種類から選ぶ

今回テストしているのは「Nano-textureガラス」を使い、スタンドは傾きだけを変更できるタイプのもの。これでも価格は24万2800円なので、相当に高価なディススプレイである。

今回使っている「Nano-textureガラス」採用モデル。かなり強く光を当てても、反射はこのくらい

今回使っている「Nano-textureガラス」採用モデル。かなり強く光を当てても、反射はこのくらい

サイズは27インチ。解像度は5K(5120×2880ドット)だが、ミニLEDなどを使った「ローカルディミング」は行なっていない。トップ輝度は600nitsで、いわゆる10ビットカラー対応となっている。

27インチなのでパッケージサイズはかなり大きい。上に置いているiPad Air(10.9インチ)と比較するとイメージが湧きやすいだろう

27インチなのでパッケージサイズはかなり大きい。上に置いているiPad Air(10.9インチ)と比較するとイメージが湧きやすいだろう

パッケージから取り出すのも一苦労。この辺はiMacにも通じる

パッケージから取り出すのも一苦労。この辺はiMacにも通じる

まず使って感じたのは、Nano-textureガラスの効果の高さだ。

いわゆるアンチグレアだと色が拡散する効果が出てしまい、精彩感と発色が落ちやすい。そのため、テレビにしろディスプレイにしろ、「光沢仕上げ+薄膜の反射低減コーティング」というものが多いのだが、仕事で使う場合、反射はない方が疲れにくい。

Nano-textureガラスによるコーティングは、精彩感・発色を落とすことなく反射をほぼ感じられないレベルへと軽減してくれる。

MacBook Pro 14インチと並べて。光沢仕上げのMacBook Proとは、映り込みの状況が全く違う

MacBook Pro 14インチと並べて。光沢仕上げのMacBook Proとは、映り込みの状況が全く違う

実のところ、輝度の突き上げを含めたHDR感では、ミニLEDを使っている14インチMacBook Proのディスプレイの方がいい。発色は同等だと思う。

だが、どこから見ても反射がない、画面が消えてもおっさんが映り込まないという点では、圧倒的に快適だ。

画面を表示した上で、斜めから。Studio Displayは映り込みなくすっきり見えるが、MacBook Proだとそうはいかない

画面を表示した上で、斜めから。Studio Displayは映り込みなくすっきり見えるが、MacBook Proだとそうはいかない

このコーティングは汚れがあると効果が落ちる。一方、表面に傷をつけても効果が落ちるため、柔らかく、汚れが落ちやすいもので拭く必要がある。

そのため、このモデルには「Apple ポリッシングクロス」が付属する。1980円と高価であることから「しんじゃのぬの」なんて皮肉で呼ばれたりもする、あれだ。Appleはこの布で拭くことを強く推奨している。

付属の「Apple ポリッシングクロス」。ネタにされがちだが、とても使いやすく、品質が良いクロスだ

付属の「Apple ポリッシングクロス」。ネタにされがちだが、とても使いやすく、品質が良いクロスだ

今回初めて使ってみたが、確かに非常に使いやすく、手触りも良かった。

とはいえ、同様のマイクロポリッシングクロスはもっと安く売られているので、追加で買うのは好き好きかと思う。まあ、Nano-textureガラス版のStudio Displayを使っているなら、積極的に使っていくべきなのだろう。なにしろ付属していて、サポート対象なのだから。

カメラやマイクを内蔵、接続は「USBデバイス」として

Studio Displayはただのディスプレイではない。昨今のビジネス向けディスプレイのトレンドを反映し、「多機能化」している。

上部・下部にはスピーカーが内蔵され、上部中央にはカメラとマイクが入っている。

上部・下部にはスピーカーのための穴が。音はかなり良い

上部・下部にはスピーカーのための穴が。音はかなり良い

上部中央には12メガピクセルのカメラとマイクが。ノッチはない

上部中央には12メガピクセルのカメラとマイクが。ノッチはない

インターフェースはThunderbolt 4の入力が1つだが、そこからUSB Type-Cが3つつなげられる。入力のためにつないだ端子からは96Wでの電源供給も行える。すなわち、MacBook Proなら電源ケーブルを接続する必要がないわけだ。

本体を横から。電源は本体中央につながる

本体を横から。電源は本体中央につながる

3つのUSB Type-C端子と、Thunberbolt 4端子がある。ディスプレイに接続するときにはThunberbolt 4端子を使うので、1入力になる

3つのUSB Type-C端子と、Thunberbolt 4端子がある。ディスプレイに接続するときにはThunberbolt 4端子を使うので、1入力になる

重要なのはカメラやマイク、スピーカーの存在。macOS側から見るとわかりやすい。

カメラやスピーカー、マイクはそれぞれ「USBデバイス」として接続され、OS側から利用可能になっている。だから、色々なアプリから特に意識することなく使える。

macOSのサウンド設定から。マイクやスピーカーはUSBデバイスになっているのがわかる

macOSのサウンド設定から。マイクやスピーカーはUSBデバイスになっているのがわかる

macOSのサウンド設定から。マイクやスピーカーはUSBデバイスになっているのがわかる

以下の動画は、Mac版のZoomから「センターステージ」を使ってみたものである。自分の動きに合わせ、きちんとフレーミングが追従しているのがわかるだろう。

これらの制御には「A13 Bionic」が使われており、実質的に、ディスプレイの中に独立したデバイスが組み込まれているような構造になっている。A13 Bionicが入っているといってもiPhoneやApple TVの機能を持っているわけではなく、各デバイスの制御用SoCとして使っている形のようだ。

音もいい。空間オーディオ楽曲を再生すると「広がり」をしっかり楽しめる。ただし、低音は強いがちょっと響きすぎるところもあり、その辺は好みが分かれるかも、と感じた。

Windowsにもつながるが、フル機能は生かせず

と、ここで気になる点が一つ。

USBデバイスとしてつながっているということは、Mac以外につないだらどうなるのだろうか? AppleがサポートしているのはMacとiPadだが、Windows PCをつないだらどうなるのだろう?

答えは「意外と普通に動く」。

Thunderbolt 4端子でつなげば、Windows PCでも普通にディスプレイとしては使える

Thunderbolt 4端子でつなげば、Windows PCでも普通にディスプレイとしては使える

デバイスマネージャーから見ると「デバイス方向センサー」が動いていないが、カメラもマイクもスピーカーも、一般的なデバイスとしてつながり、利用できる。表示ももちろん問題ない。

デバイスマネージャーを表示してみた。カメラやマイク、スピーカーはUSBデバイスでつながっているが、「デバイス方向センサー」が動いていない

デバイスマネージャーを表示してみた。カメラやマイク、スピーカーはUSBデバイスでつながっているが、「デバイス方向センサー」が動いていない

Windows版のZoomでもカメラとして認識できた。ただし、「センターステージ」は動かない

Windows版のZoomでもカメラとして認識できた。ただし、「センターステージ」は動かない

すべての機能が動いているわけではない。

「センターステージ」はWindowsでは動いていないし、Siri連動も当然使えない。また、今後ファームウエアのアップデートがあっても、サポート外のWindows PCからアップデートできるとは限らない。

サポート外なので、このくらい動けば御の字……というところではないだろうか。

HDMI非対応で「1入力」をどう見るか

全体的にみて、Studio Displayは好ましい製品だ。画質も良く、音もいい。デザインも、Mac Studioと合わせて使うのにちょうどいい。

一方で、今のPCディスプレイのトレンドを考えると、ちょっと不満な点もある。

入力が実質1系統である、という点がまず気になる。特に、HDMI入力がない点だ。

PCディスプレイやテレビだと、複数のデバイスをつないで切り替えて使ったり、同時に2出力で画面を分割したり、という機能があるが、それはできない。

輝度は高く発色もいいが、HDRには弱い。そもそもの想定として、HDR編集には、より高価な「Pro Display XDR」や、ミニLED搭載のMacBook Pro、iPad Proを……ということなのかもしれないが、これだけ高価な製品なので、ちょっともったいない。

HDRや複数入力にこだわらなければ、Studio Displayはとてもいい製品だと思う。ただし、この価格を許容するなら、だが。もちろん、この価格相応に、長く使えるディスプレイではある。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)

【レビュー】Apple Studio Display、発売と同時に注文することにためらいはなかった

Apple(アップル)は同社の3月イベントで、Studio Displayを発表した。27インチの外部モニターで、価格は1599ドル(日本での価格は税込19万9800円)からと、これまで同社唯一のモニターだった、Pro Display XDR(5000ドル[税込58万2780円]から)から大きく引き下げられた。

Studio Displayの発表は、Appleが10年以上前に発売し、ディスプレイ事業を完全撤退した2016年に販売が中止された人気のThunderbolt Displayの後継機を待ちわびていた多くの人たちにとってビッグニュースだった。テック業界では多くのプロダクトデザイナーが、限られた解像度と時代遅れのポートにもかかわらずThunderbolt Displayを手放すことを拒み、いつかAppleが後継機を出すことを期待して使い続けていることを私は知っている。

AppleがThunderbolt Displayの販売を中止したとき、市場に大きなギャップを残した。当時、ウェブカム、マイクロホン、スピーカー、(プラス)USBポートをすべて備えたオールインワンのディスプレイは、事実上ゼロだった。LG(エルジー)のUltrafineは1つのソリューションとしてAppleも推奨していたが、製造品質、信頼性、接続性ともにThunderbolt Displayと比べて劣っていた。新しいUSB-Cポートを備えてはいたが。

2020年、パンデミックのためにテック業界がフルタイムのリモートワークに切り替えた時、新しいモニターを物色していた私は、オールインワン外部ディスプレイの選択肢が少ないことに驚かされた。ほとんどの新しいコンピューターにUSB-Cが装備され、高速通信とディスプレイ接続と充電が1本のケーブルでできるようになり、私はモニターメーカー各社がThunder Displayの成功の再現を狙うだろうと予測していた。しかし、私が探したなかで選択肢はごくわずかしかなく、結局単なる4Kモニターと、Logitech(ロジテック、日本ではロジクール)のウェブカム、USBハブ、マイクロフォンを別々に買うことになった。

Appleの新しいStudio Displayはその答えであり、10年待たされた結果の仕様はあらゆる期待に答えるものだった。5Kディスプレイ(5120×2880ピクセル)はリフレッシュレート60Hz、P3ワイドカラーガムートで、12メガピクセルのウェブカムと、あらゆる周辺機器をつなげるUSB-Cポートを3基備えている。MacBookと1本のThunderbolt 3 USB-Cケーブルで接続可能で、(さらに)使用中に充電もできる。

画像クレジット:Apple

ライバルとの差を際立たせているのは、現在購入可能な5K解像度の数少ない選択肢の1つであるからだけでなく、AppleがA13プロセッサーを搭載して、室内の周囲の照明に基づいて色温度を調整するTrue Toneや、人物の動きに合わせてウェブカムが被写体を追跡するセンターフレームなどの機能を付加していることだ。ありふれたことと思うかもしれないが、他にも輝度、音量、その他の機能はMacのキーボードからホットキーで直接制御可能であり、モニターに組み込まれた謎めいたオンスクリーンメニューをたどらなくてすむのは、クオリティー・オブ・ライフの大きな向上である。

ネットで最もよくみかけるこの新型モニターに対する不満は、最新のコンピューターに見られるApple ProMotionテクノロジーに対応しておらず、バターのようなとしか表現できない高い最大リフレッシュレート(120hz)が利用できないことだ。しかしこれは今後もサポートされる見込みはない、なぜならこの能力を引き出すために必要なポート・スループットがまだ存在していないからだ。5K解像度を120 hzでリフレッシュするには53.08Gbpsが必要だが、Thunderbolt 3/4は1本のケーブルで40Gpsしか扱えない。このレベルのスピードは、Thunderbolt 5標準に採用されるといわれているが、公式発表はされておらず、どのコンピューターにも搭載されていない。


1599ドルの基本価格にたじろぐ人も多いが、高解像度で忠実な色再現のディスプレイが必要で、一日のほとんどを画面の前で過ごす人、特に在宅勤務の人たちにとって十分な価値があると私は言いたい。私を含め、プロダクトデザインに携わる者にとっては特にそうだが、一日中オンライン・ミーティングに出席し、余計なアクセサリーを手放したい人にもおすすめだ。

ケーブル1本でつなげて、ビデオ通話のためにウェブカムとマイクロフォンとスピーカーの準備ができていることは、ノートパソコンを取り外すたびにあちこちいじりまわすのと比べて大きな改善だ。組み込み型マイクロフォンはノイズキャンセリングに最適化されているので、多人数のビデオ会議でスピーカーを使うのにもうれしい。リモートワークの社員を雇う会社にとって、買うべきアクセサリーが全部ついているモニターを1台送ればすむので、企業ユーザーにとっても人気の選択肢になる可能性が高い。

Studio Displayは高いか?そのとおり。しかしこれは1日中使う可能性の高い道具への投資であり、Thunderbolt Displayの歴史が参考になるとすれば、今後長らく使うことになるだろう。私も1599ドルを「スクリーン」につぎ込むことなど考えたことがなかったが、発売と同時に注文することにためらいはなかった。できの悪いスクリーンの上にウェブカムを不安定にとまらせ続けるには人生は短すぎる。

Read more about the Apple March 2022 event on TechCrunch

画像クレジット:Apple

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(文:Owen Williams、翻訳:Nob Takahashi / facebook

なぜ27インチの新Studio DisplayはApple TVではないのか?

Apple(アップル)はついに、熱狂的なAppleファンのコミュニティの多くの人が求めていたもの、つまり最低価格が5000ドル(約58万円)もしない純正のディスプレイを発表した。新しい27インチのStudio Displayは1600ドル(日本での価格は税込19万9800円)で、これはまだ多くの人がモニターに払える金額よりもずっと高いものだが、それでも大半の人にとっては歓迎すべき新製品だろう。Appleは、現在4K Apple TVを動かしているチップよりもずっと強力なA13チップを丸ごと1つ搭載しさえしている。

そこで疑問が生じる。なぜStudio DisplayはApple TVではないのだろうか?

Studio Displayはすでにチップを搭載している。オンボードストレージは欠けているかもしれないが、それを追加するのは、tvOSといくつかのメディアアプリを実行するのに必要な量としてはかなりの作業になる。また、すでにこのようなことを行っている他企業の例もある。Samsung(サムスン)のMシリーズのSmart MonitorにはスマートTVモードがあり、ひどい自家製ソフトウェアが搭載されている。

筆者がTechCrunchのSlackで上記の疑問を投げかけたところ、それがなぜ意味をなさないのか、いくつかの穏やかな見解が返ってきた。例えば表向きはApple TVのすべての機能を持ち、他にも多くのことができるMacにStudio Displayをつなげているからというものだ。

しかしながら、実際のところmacOSのネイティブApple TVアプリは、ちょっとダメだ。Netflix、Disney+、Amazon Prime Videoなどを利用するには、ブラウザを使ってそれぞれのサイトに個別にアクセスする必要があり、簡素化されたホーム画面にアプリをインストールするよりもはるかに不便で、エレガントでもない。繰り返しになるが、Samsungがハイブリッド型スマートTVモニターのラインナップを作り、さらに時間をかけてモデルを追加していったのには理由がある。

加えて、Studio Displayは実際、テレビ単体としてかなり魅力的な買い物になることは間違いないだろう。そのデザインは際立っており、大半のモダンなテレビのデザインをはるかにしのぎ、たとえばSamsungのFrameやSerifのラインナップのように、リビングに置くと映える高価格帯のテレビの中でも群を抜くものだ。

これはストレッチゴールのようなものだが、Studio Displayはウェブカメラ、スピーカー、マイクを内蔵しているため「Apple TV殺し」にもなり得る。ゆったりと座って行うビデオ会議のための、すばらしいヘッドレスのZoom(またはそれに相当するもの)マシンになるかもしれない。

しかし、それは少し先の話だ。tvOSと、どんな種のアプリやサービスをサポートするかで再アーキテクチャを必要とするだろう。Appleは、興味深いA13チップの搭載により、このモニターに基本的に追加コストなしでApple TVの機能を追加し、消費者はそれを利用することも、ただ通常のモニターとして使うこともできたはずだ。

完璧な世界では、将来のファームウェアの更新はtvOSを含め、購入後にこれを実現する。現状では、Studio DisplayはApple TV用のOSやアプリを合理的に実行するためのストレージをまったく(あるいは十分?)搭載していないと思われる。少し惜しい気がする。

画像クレジット:Apple

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルが「Peek Performance」で発表した最大のニュースまとめ

Apple(アップル)イベントの日がやってきた!Appleが(再びリモート / バーチャル)ステージに立ち、最近舞台裏で取り組んでいたことのすべてを明らかにする日だ。

ライブ配信を見る時間がなかった?大丈夫、我々がいる。今日の最大のニュースをすべて取り上げ、サラッと流し読みできるよう1つのパッケージにまとめた。気になる話題があればリンクをたどってさらに深く掘り下げ、それ以外は読み飛ばせばいい。エンジョイ!

新型iPhoneSE(第3世代)

画像クレジット:Apple

Appleのお財布に優しいiPhone、iPhone SEがアップグレードされた。A15 Bionic(iPhone13と同じチップ)を搭載し、ライブテキスト(カメラの画像から現実世界の文字をコピーする機能)のような処理ができるようになるとのこと。5Gに対応し、バッテリーの持ちも「向上」した。主に昔のiPhoneが懐かしいと思う人たちのために、4.7インチのディスプレイで(iPhone 13と同じ、より耐久性の高いガラスにアップグレードされた)、まだホームボタンがある(指紋リーダー付き)。

価格は429ドル(日本での価格は税込5万7800円)からで、3月18日に発売予定。

画像クレジット:Apple

関連記事:iPhone SEが税込5万7800円で再登場、クラシックなデザインはそのままTouch ID搭載

新型iPad Air

画像クレジット:Apple

Appleがノートパソコン製品ラインに最初に搭載した特注チップがこの最新世代に採用され、iPad AirがM1になる。また、広角の前面カメラが部屋の中をパンして、ビデオ通話中に自動的にユーザーの顔をフレームの中心に保つセンターフレーム機能もAirに搭載されている。

この最新世代のiPad Airは599ドル(日本での価格は税込7万4800円)からで、3月18日に出荷開始される予定だ。新しいiPad Airに関する詳しい記事はこちら

関連記事:アップルが「M1チップ」搭載のiPad Air 5を発表、ノートパソコンの代わりに

M1 Ultra

画像クレジット:Apple

Appleがまた新しいシリコンを手に入れた!ただしM1からM2へのジャンプではなく「M1 Ultra」でM1ラインを拡張した。つまり現在、M1、M1 Pro、M1 Max、M1 Ultraがある。基本的には2つのM1 Maxをブリッジして、OSからは1つのチップに見えるようにしたもので、超高効率でとんでもないパフォーマンスをもたらす。

M1 Ultraについての詳しい記事はこちら。しかし、Appleはこれをどこに入れるのだろうか?まず、M1 Ultraは新型の……..

関連記事:アップルがM1シリーズ最上位版「M1 Ultra」を発表

Mac Studio

画像クレジット:Apple

7.7×7.7×3.7インチ(19.7×19.7×9.4cm)という大きさのMac Studioは、まるでMac Miniが……そんなにMiniでなくなったようなデザインだ。Appleによれば、この新しいマシンはM1 Ultraのおかげで、CPUの処理速度が最速の27インチiMacの2.5倍、16コアXeonプロセッサを搭載したMac Proよりも50%速くなっているとのこと。

背面には、4つのThunderbolt 4 / USB-Cポート、10Gbイーサネットポート、HDMIポート、2つのUSB-Aポート、オーディオジャックを備えている。前面にはさらに2つのUSB-Cポート、SDスロットがある。

M1 Max搭載のMac Studioは1999ドル(日本での価格は税込24万9800円)から、ピカピカの新しいM1 Ultra搭載の場合は3999ドル(日本での価格は税込49万9800円)から。3月18日に出荷を開始する。詳しい記事はこちら

画像クレジット:Apple

関連記事:アップル、まったく新しいMac「Mac Studio」を発表

Studio Display

画像クレジット:Apple

新しいAppleディスプレイを待っていた方には朗報。Studio Displayと名付けられた最新モデルは、27インチの5Kディスプレイだ。12MP超広角カメラ(センターフレーム対応)内蔵、3マイクアレイ、空間オーディオに対応した6スピーカーサウンドシステムを搭載している。背面には3つのUSB-Cポートに加え、Thunderboltポートを1つ搭載している。Appleによると、傾斜スタンド、傾斜 / 高さ調整可能なスタンド、VESAマウントオプションと、複数の異なるマウントオプションが用意されるとのこと。

Studio Displayの価格は1599ドル(日本での価格は税込19万9800円)から。他の製品同様、3月18日に出荷開始予定だ。Studio Displayの詳細については、こちらの記事で読んでいただける。

画像クレジット:Apple

関連記事:アップルの新27インチStudio Displayはほぼ本体のないiMac

その他の発表

画像クレジット:Apple

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Den Nakano)

アップルの新27インチStudio Displayはほぼ本体のないiMac

Apple(アップル)は米国時間3月8日、プロセッサー、高品質スピーカー、マイクアレイ、高品質カメラ、3つのUSB-Cポート、Thunderboltによる96W給電機能を詰め込んだ1599ドル(日本での価格は税込19万9800円)のディスプレイを発表した。そう、もちろんディスプレイもついている。

同社はこれまで、ディスプレイに関しては、発表しては一連のオプションを忘れるという、不思議で波瀾万丈な歴史を歩んできた。Apple Cinema DisplayThunderbolt Displayはどちらも発表されたものの、非常に遅い更新サイクルと圧倒的なスペック、法外な価格でもってすぐに端に追いやられた。AppleのPro Display XDRは数年前に発売され、32インチのRetina 6K解像度と超高コントラストというとんでもないスペックを有していたが、標準のガラスバージョンで4999ドル(日本での価格は税込58万2780円)、反射を抑えるナノテクスチャガラスバージョンで5999ドル(同65万9780円)と目を疑う値段だ。

Apple Studio Displayは、まったく異なるユーザー向けのもので、1599ドルという価格も決して安いものではないが、実に重要なことを行っている。発表されたばかりのMac Studioと組み合わせることで、スクリーンとコンピュータを切り離すことができる。環境問題に熱心に取り組む企業にとって、これは願ってもないことだ。画面はまだ完璧な状態なのに、プロセッサが冬の糖蜜のように遅いという理由で筆者が手放した数々のiMacは、果てしないフラストレーションの源だった。Appleのエコシステムの中にいながら、スクリーンだけ、あるいはワークステーションの頭脳だけをアップグレードできるというのは、長い間待ち望まれていたことだ。

新ディスプレイは、発表内容を見る限りとても印象的だ。12メガピクセルの超広角カメラを搭載し、センターフレームに対応している。つまり、あなたがスティーブ・ジョブス氏のような基調講演をしながら歩き回るのを、このカメラは部屋の中で追いかけ回すことができる。これは、AppleがiPadに搭載しているカメラと同じものだ。3つのマイクアレイを内蔵し、これまで以上にクリアな音質を実現していて、フィルタリング技術を使って入れたくない音声を減らすこともできる。そして、これまで出荷した中で最高のスピーカーと同社が表現する、6つのスピーカーによるサウンドシステムを搭載している。チップがスクリーンに内蔵されていて、ディスプレイがマルチチャンネルのサラウンドサウンドを分割し、ステレオスピーカーのセットを接続した場合よりも没入感のある体験を生み出すことができる。また、Dolby Atmosによる音声や音楽の空間オーディオにも対応している。

ディスプレイには10Gps通信に対応する3つのUSB-Cポートが搭載されていて、ハードドライブや録画機器などの高速アクセサリーを取り付けることができる。また、96Wで給電できるThunderboltポートがあり、Appleのノートパソコン全機種をディスプレイから直接充電することが可能だ。

そして、そう、画面もついている。輝度600ニト、広色域の27インチ5K retinaディスプレイを搭載している。そのスペックは、現行モデルのiMacに搭載されているものと疑わしいほど似通っている。スクリーンは全アルミニウム製の躯体で、反射を抑えるNano-textureガラスもオプションで用意されている他、VESAマウントなど各種スタンドやマウントのオプションもある。

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画像クレジット:Apple

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi

重量76g・動画視聴に特化のARグラス「Nreal Air」、ドコモとauから3月4日発売

重量76g・動画視聴に特化のARグラス「Nreal Air」、ドコモとauから3月4日発売

Nreal

メガネ型ディスプレイのNrealが、新モデル「Nreal Air」(エンリアル エアー)を3月4日にNTTドコモとKDDIから発売すると発表しました。メーカー希望小売価格は4万9800円ですが、ドコモでは3万9800円、auでも3万9799円で予約を受付中。なお、Nreal Airの一般販売は、日本が世界初になるとのことです。

Nreal Airは、2021年10月に発表されていたもの。動画の視聴に特化したARグラスで、見た目は通常のサングラスにかなり近い印象です。カメラ機能などを排し、シンプルな機能となったため、約76gと軽量になったのも特徴です。

映像は、ARグラス越しに4mで130インチ、6mで201インチに相当で表示されます。また、ツルの部分にスピーカーも搭載しており、「低音強調アルゴリズムとノイズキャンセリングにより、まるで仮想の専用 IMAXシアターにいるかのように、エンターテインメントの臨場感を高めます」と説明されています。

スタンドアロン型ではなく、スマートフォンとUSB Type-Cで接続して利用します。このため、利用するには、USB-Cポートを備え、Display Port(Alternate mode)に対応していることが条件となります。ただ、拡張性を高めるアクセサリとして、「Nreal Streaming Box」も発売され、これを利用すれば、Miracastに対応したスマートフォンならNreal Airを利用可能となります。

重量76g・動画視聴に特化のARグラス「Nreal Air」、ドコモとauから3月4日発売

Nreal

Nreal AirとNreal Streaming BoxをUSBで接続。スマートフォンはNreal Streaming Boxとワイヤレス(Miracast)で接続することで、スマートフォン上のコンテンツをNreal Airにミラーリングできます。

(Source:USB-IFNreal(PR Times)ドコモauEngadget日本版より転載)

NICTのホログラムプリント技術を応用、多人数がフォトリアルな画像を裸眼立体視できる透明ARディスプレイ開発

NICTのホログラムプリント技術を応用、多人数がフォトリアルな画像を裸眼立体視できる透明ARディスプレイ開発

透明ARディスプレイ(左)とモデル本人(右)

情報通信研究機構(NICT)は1月31日、ホログラフィックフィルム1枚と複数のプロジェクターのみで構成される簡便な透明ARディスプレイで、フォトリアルな顔の3D表示を実現させたと発表した。これはNICTのホログラムプリント技術を応用したシステムで、3Dメガネを使わず裸眼で3D画像を見ることができる。

NICTは、2016年にすでに透明スクリーンに3D画像を投影する技術を開発している。コンピューターで設計した光の波面をホログラムとして記録できるNICT独自のホログラムプリンター「HOPTEC」で光学スクリーンを製作し、大型のプロジェクターで映像を投影するというシステムだったが、今回はそれよりもずっと簡素な構造になった。

ホログラムプリント技術(HOPTEC)

ホログラムプリント技術(HOPTEC)。NICTが開発している、計算機合成ホログラムを光学的に再生し、再生された波面をホログラム記録材料に物体光としてタイリング記録するホログラム露光技術。HOPTECにより、デジタルに設計した光学機能をホログラフィック光学素子として透明なフィルムにプリントできる

透明AR(Augmented Reality)ディスプレイシステム

透明AR(Augmented Reality)ディスプレイシステム

透明ARディスプレイは、対角35cm、水平視野角60度、垂直視野角10度というもので、3Dメガネなどを用いることなく、多人数が裸眼で立体映像を見ることができる。投影は、安価な小型プロジェクターを30台を使って行われ、フルカラーでの表示が可能。投影される画像は、凸版印刷が所有する高精度の人体測定が可能な装置「ライトステージ」(南カリフォルニア大学開発)で作られた。

高精細な顔計測データから成る映像を透明ARディスプレイ上に3D表示した様子

高精細な顔計測データから成る映像を透明ARディスプレイ上に3D表示した様子

このNICTと凸版印刷の共同研究は、NICTが3D投影技術を、凸版印刷が人体の高精細な計測によって生み出されるデジタルコンテンツを提供するという形で今後も進められる。そもそも、「3Dコンテンツを使用した新しいコミュニケーションの可能性」を目指して行われてきた研究だが、デジタルツインや仮想キャラクターといった使い方だけでなく、「人体を3D表示させた手術トレーニングや手術支援」など、医療をはじめとする様々な分野での適用を進めてゆくという。さらに、3Dコンテンツの高精細化、システムの簡素化、柔軟性を高め、CAD、BIM、点群データなど各種3Dデータに対応させることにより、建設や教育分野にも貢献できる技術開発を目指すとしている。

中国のコンピューター革命で徹底した改造が行われた経緯、常に「アルファベット」という限界に挑戦してきた中国の技術者たち

前回のエッセイでは、何万という中国語の漢字を、それよりはるかに小さいアルファベット記号システムを処理するために設計されたメモリシステムに収めようとするコンピューターエンジニアたちの前に立ちはだかったさまざまな奥深い問題について説明した。

今回は、漢字の出力、つまり、モニター、プリンター、および関連周辺機器に関する問題に目を向ける。欧米で製造されたパソコンやコンピューター周辺機器に中国語のテキストを表示させようとするエンジニアの前にさらなる問題が立ちはだかった。

関連記事:中国語パソコン1号機を実現した技術者魂、限られたメモリに数千の漢字を詰め込むためSinotype IIIの発明者は限界に挑む

「周辺機器」というと一種の脇役的な機能を提供するものと思われがちだが、実は中国では、周辺機器はコンピューティングの中心的な存在であり続けた。それは、1970~80年代に中国語コンピューティングが直面した厳しい制約の時代から、1990年代以降の大幅な進歩と成功の時代まで、すべての時代に当てはまる。

1980年代に消費者向けPCが普及し始めた頃には、欧米製のPC、プリンター、モニター、オペレーティングシステム、その他の周辺機器は、少なくともそのままでは、漢字での入出力を処理できなかった。それどころか、筆者が行った別の調査によると、こうしたすべての装置には、初期の頃の電信符号や機械式タイプライターなどに見られるような英語とラテン語のアルファベットを偏重する傾向があった。

その後、1980年代後半には、中国および中国語を話す地域では、徹底的にハッキングと改造が行われた。中国およびその他の地域のエンジニアたちは、欧米で製造されたコンピューティングハードウェアおよびソフトウェアを要素ごとに中国語対応に改造した。この時期は、誰かが管理するでもなく乱雑に、そして多くの場合すばらしい実験とイノベーションが行われた。

中国語コンピューティングシリーズの第2回である本稿では、広範なコンピューティング環境、すなわち、プリンター、モニター、その他コンピューティングを機能させるために必要なあらゆるモノに注目しつつ、次の2点にスポットを当てる。

1つは、アルファベットを基盤としたコンピューティング(これを「アルファベット様式」と呼ぶことにする)の優位性は、キーボードやメモリなどの問題に留まらず、極めて広範に及んでいたという点だ。コンピューターが登場する前のタイプライターと同じように、コンピューティングに使用される装置、言語、プロトコルは大体、最初に英語のコンテキストで発明され、その後、他の言語およびラテン語アルファベット以外の書記体系に「拡張」される。中国のエンジニアたちは、基本的な機能を実現する場合でさえ、市販のコンピューティング周辺機器、ハードウェア、ソフトウェアの境界を押し広げる必要があった。

次に、1970年代後半から1980年代の重要な時期に、中国のコンピューティングに関して欧米で支配的だった「模造」や「海賊行為」といったワンパターン思考(これは今でも変わらない)を解体してみる。「中国語DOS」などのプログラムに出くわすと、欧米では条件反射的にまた「中国製コピーだな」と片付けられてきた。しかし、この単純な反応は重要な事実を見落としている。それは、本稿で説明するこうした「偽造品」が存在していなかったら、欧米で設計されたどのソフトウェアスイートも漢字コンピューティングのコンテキストではまったく動作しなかっただろうという点だ。

ドットマトリックス印刷と冶金レベルで実装されていたアルファベット様式

最初に取り上げる周辺機器はプリンター、具体的には、ドットマトリックスプリンターだ。中国語コンピューティングの観点からすると、ドットマトリックスプリンターで当時支配的だった業界標準のプリンターヘッドの構成がすでに問題だった。1970年代に大量生産された事実上すべてのドットマトリックスプリンターには9ピンのプリンターヘッドが搭載されていたのだ。

これらの市販のドットマトリックスプリンターは、低解像度のラテン語アルファベットのビットマップをプリンターヘッドを1回通過させるだけで印刷できた。これはもちろん、偶然ではない。9ピンのヘッドは、低解像度のラテン語アルファベットを印刷するというニーズに合わせて「調整」されたものだった。

しかし、9ピンのプリンターヘッドでは、ヘッドを2回通過させても低解像度の漢字ビットマップさえ印刷できなかった。ヘッドを2回通過させると英語に比べて中国語の印刷スピードが著しく低下するだけでなく、印刷された文字も不正確だった。これはローラーの進み具合の不安定さ、インクの重ね合わせの不均等、紙詰まりなどが原因と考えられる。

見た目の美しさという点でも、ヘッドを2回通過させると、文字の上半分と下半分でインクの濃度が異なるという結果を招くことがあった。さらに悪いことに、欧米製プリンターを改造せずにそのまま使用すると、フォントサイズに関係なく、すべての漢字の高さが英単語の2倍以上になってしまう。このため、印刷結果は、英単語が簡素で効率的であるのに対して漢字は大き過ぎてグロテスクに感じられ、ゆがんだ滑稽なものになってしまう。このような印刷出力では多くの紙が無駄になり、すべての文書が文字の大きな児童書のような不格好な見栄えになってしまう。

これらのプリンターヘッドの動作の仕組みを説明する動画(本記事の筆者のご厚意により掲載)

ラテン語アルファベット中心主義は一般に想像されているよりも根深い、と初期の漢字コンピューティングのパイオニアであるChan Yeh(チャン・イエ)氏はその著作で述べている。漢字のデジタル化と、18×22のビットマップグリッドを基盤とするシステムの開発に乗り出したイエ氏の当初の考えは、ピンの直径サイズを小さくして、プリンターヘッドに収容できるピン数を増やすという単純なものだった。しかし、同氏は、この解決策はそう簡単ではないことに気づくことになる。

チャン・イエ氏とIdeographix Corporationによって発明されたIPXマシンのインターフェイス(画像クレジット:Thomas S. Mullaney、スタンフォード大学東アジアIT歴史コレクション)

イエ氏は、インパクト印刷におけるラテン語アルファベットへの偏重は、プリンター部品の冶金学的特性に組み込まれていることに気づいた。簡単にいうと、プリンターピンの製造に使用されている金属合金自体が、9ピンのラテン語アルファベットの印刷に合わせてキャリブレーションされていたのだ。このため、中国語に必要なサイズに合わせてピンの直径を小さくすると、ピンの変形や破損を招くことになる。

そうした影響をなくすため、エンジニアたちは欧米製プリンターに手を入れて、通常の9ドット間隔と同じ縦スペース内に18ドットが収まるように改造を施した。

この手法は独創的でシンプルなものだった。標準の2 Pass印刷に従い、1列目の各ドットはヘッドの1回目の通過時に沈着する。しかし、2列目のドットを1列目の下に沈着させるのではなく、プリンターをうまくだまして、あたかもファスナーが噛み合うように最初の9ドットの間に入れるようにしたのだ。

この効果を実現するため、エンジニアたちはプリンターのドライバーを書き換えて、プリンターの用紙送りのメカニズムをハッキングし、(1インチの216分の1という)極めて小さな間隔でローラーを回転させるよう調整した。

難しいのはピンの構成だけではなかった。市販されているドットマトリクスプリンターはASCII文字エンコード体系にも合わせて調整されていたため、漢字のテキストをテキストとして処理することができなかった。英単語を印刷する場合には、ラスターイメージをプリンターに送っているわけではなく、英語のテキストをプリンタードライバーを介してASCIIコードとして直接送っている。これにより、印刷速度が格段に速くなる。

しかし、欧米製のドットマトリクスプリンターで漢字を印刷するには、こうしたプリンターの「テキスト」モードを使うことはできない。そこで、プリンターを再度だまして、今度は、通常ラスターイメージ用に予約されているグラフィックモードを使用して漢字を印刷する必要がある。

これが、中国語を学ぶ学生たちにとって皮肉であることは明らかだ。欧米で製造された初期のドットマトリックスプリンターで漢字を処理させるには、漢字を絵または象形文字として扱う必要があったからだ。実際、欧米人は長い間、漢字を象形文字とみなしてきた。実際にはそうではないが(ただし例外はある)。しかし、ドットマトリックスプリンターのコンテキストでは、象形文字として扱うしかなかったのだ。

結局、新しいタイプのインパクトプリンターが商業市場に出回り始めた。ピンの直径が0.2ミリの24ピンドットマトリックスプリンターだ(9ピンタイプでは0.34ミリだった)。当然ながら、これらの新しいタイプのプリンターの主なメーカーの大半は、パナソニック、NEC、東芝、沖データなどの日本の企業だった。日本語に必要な文字を印刷するというニーズに応えるため、日本のエンジニアも中国のエンジニアと同じような問題を解決する必要があったのだ。

近代化されたポップアップ:漢字モニター

漢字のビットマップラスターへの変換を説明する特許文書の画像(画像クレジット:Thomas S. Mullaney、スタンフォード大学東アジアIT歴史コレクション)

中国語コンピューティング環境におけるもう1つの領域として、量産型のコンピューターモニターがある。ある意味、モニターの方向性はプリンターと似ている。特に、文字のひずみの問題はプリンターと同じだ。仕方のないことだが、漢字のビットマップは低解像度であっても縦横のサイズがラテン語文字と比較して2倍以上になる。このため、アルファベットと漢字が混在するテキストでは、漢字のサイズが大き過ぎて不格好になる(本記事の冒頭の画像をご覧いただきたい)。

標準の欧米製コンピューターモニターでは、行長(行あたりの文字数)と行高(画面あたりの行数)の両方において、ラテン文字にくらべて漢字のほうが表示可能な文字数ははるかに少なくなる。このため中国語を使う人は、一度に画面に表示できるテキストの量が非常に少なくなる。

それだけではない。漢字ディスプレイ特有の問題としてポップアップメニューがある。漢字の入力プロセスは本質的に対話型で行われるため(ユーザーが叩いたキーに応じて漢字が次々に表示される)、中国語コンピューティングにはユーザーが漢字の候補を確認するための「ウィンドウ」(ソフトウェアベースのものとハードウェアベースのものがある)が欠かせない。

ポップアップメニューは、1980年代以降、中国語コンピューティングの至るところで目にする機能となっているが、このフィードバック手法の起源は1940年代に遡る。1947年、Lin Yutang(リン・ユタン)氏によって設計された中国語タイプライターの試作機には、同氏が「マジックアイ」と呼んだ重要な部品があった。これこそ、歴史上最初の「ポップアップメニュー」だ(もちろん機械式ではあったが)。

パソコンの出現にともない、MingKwai、Sinotype、Sinowriterなどの中文タイプライターの機械式ウインドウはコンピューターのメインディスプレイに組み込まれた。別個の物理的な装置ではなく、画面上でソフトウェアによって制御される「ウィンドウ」(またはバー)となったのだ。

ところが、このポップアップメニューのせいで、ただでさえ貴重なモニター画面のスペースにさらなる制約が課されることになった。いわゆる「ポップアップメニューデザイン」は、中国語パソコンが登場したときから研究およびイノベーションの対象として極めて重要な分野となった。各社がさまざまなスタイル、形式、動作を試して、入力、画面サイズ、ユーザーの好みの各要件のバランスを取ろうと試みた。

しかし、これらの各要件はトレードオフの関係にあった。より多くの漢字候補を一度にメニューに表示すると、目的の文字が早く見つかる可能性が高くなるが、貴重な画面スペースを消費することになる。ウィンドウを小さくすると、画面スペースは節約できるが、使いたい文字が最初の候補群の中に見つからないと、文字候補ページをスクロールする必要がある。

こうした厳しい制約があるため、中国のエンジニアと企業は常に次世代モニターを求めていた。こうした動きはおそらく中国に限らずグローバルな市場でも同じだった。というのは、高解像度モニターは消費者にとって「本質的に良いこと」だからだ。それでも、高解像度を強く求める動機は中国語市場では大きく異なっていた。

結論:改造しか道はなかった

雑誌「Chinese Computing」創刊号(画像クレジット:Thomas S. Mullaney、スタンフォード大学東アジアIT歴史コレクション)

こうした改造はそれぞれにすばらしいものだったが、所詮修正に過ぎない。結局、オリジナルのシステム(つまり、後で修正する必要があるシステム)を作成する自律性と信頼性のあるところにパワーは集中した。

改造の慣習により幅広いシステムが実現される傾向はあるものの、改造によって互換性が犠牲になることが多かった。その上、改造後も常に変更に目を光らせておく必要があった。「一度設定すればそれで終わり」というソリューションは不可能だった。

新しいコンピュータープログラムがリリースされるたびに、またプログラムがバージョンアップされるたびに、中国のプログラマーは行単位のデバッグを行う必要があった。プログラム自体にコンピューターモニターのパラメーターを設定またはリセットする可能性のあるコードが含まれていたからだ。

大半の英語のワープロソフトでは、プログラムに基本的な前提として25×80の文字表示フォーマットが固定で埋め込まれていた(zifu fangshi xianshi)。このフォーマットは漢字ディスプレイでは使えなかったため、エンジニアたちはこの25×80のフォーマットが設定されているプログラム内のすべてのカ所を手動で変更する必要があった。彼らは、この作業を標準仕様の「DEBUG」ソフトウェアを使って効率的に行った。そして、経験を積み重ねるうち、主要なプログラムのアセンブリコードの中身まで着実に覚えてしまった。

また、改造したとしても、基盤となるオペレーティング・システムとプログラムは常に変更される可能性がある。例えばCCDOSやその他のシステムを開発してまもなく、IBMは新しいオペレーティング・システムPS/2への移行を発表した。「中国と中国語は混乱に陥る」と題する1987年のある記事には、台湾であれ中国本土であれ既存の中国語システムはまだ新システムに対応していないと説明し「IBMのMS/DOSと相性の良いやり方を考える開発者たちのレースが始まった」と書かれている。

歴史的観点からすると、改造者たちは間違って認識されたり、存在自体を消し去られたりしがちだ。彼らの活躍した時代と場所では、その仕事は単なる窃盗または海賊行為として認識されることが多かった。中国語非互換のマシンを中国語互換マシンにするために必要なリエンジニアリング行為とはみなされなかった。例えばPC Magazineの1987年1月号では、ある漫画家が中国化されたオペレーティング・システムを風刺している。その漫画のキャプションには「MSG-DOS上で動くんだ」とある。

欧米のメーカーは、こうした中国語対応(および日本語やその他の非欧米言語対応)の修正の多くを自社システムのアーキテクチャーのコア部分に徐々に組み込んでいった。そのため、こうした変更が実は中国や非欧米諸国のエンジニアたちの仕事に触発されたものであることは忘れ去られがちである。要するに、欧米製のコンピューターは、昔から、常に言語に依存せず、中立的で、あらゆる人たちを歓迎してきたと(その影に非ラテン語圏のエンジニアたちの苦労があったことなど忘れて)考えてしまいがちだということだ。

コンピューティングの歴史上重要なこの時期はまったく文書に残されていない。その理由は簡単だ。米国、およびより広く西側世界では、こうした改造が「実験」、ましてや「イノベーション」として理解されることは皆無だった。その代わりに彼らの仕事に対して使われたのは、今でもそうだが「コピー行為」「模倣」「海賊行為」といった言葉だった。中国のエンジニアたちが欧米製のドットマトリックスプリンターをリバースエンジニアリングして漢字を印刷できるようにしたり、欧米で設計されたオペレーティング・システムを中国語入力方式エディターが使えるように改良しても、大半の欧米人のオブザーバーの目には単なる「窃盗行為」としか映らなかった。

画像クレジット:Louis Rosenblum Papers, Stanford University Special Collections

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(文:Tom Mullaney、翻訳:Dragonfly)

【コラム】アップルがMacBook Proにノッチを付けてしまった

Apple(アップル)は次期MacBook Proで、長年疑問視されていたデザインを撤回し、誰からも嫌われていたTouch Barをこっそり廃止するとともに、ユーザーが切望していたポートとMagSafeを復活させた。しかしiPhoneとの奇妙なつながりに固執するあまり、同社はその「世界最良のノートブックのディスプレイ」に大きな醜いノッチを設けている。

虚勢を張っているようにも見えるが、Appleは、同社のデザイン的なイノベーションはあまりにも長い間、ユーザーに評価されていないことを認めざるを得なかった屈辱的な瞬間だっただろう。このMacBook Proを待ち望んでいた人は、そもそもなぜ自分がそうだったのかを忘れてはならない。Appleはおしゃれな宣伝を追求して合理化しよう見当違いをしていたのだ。

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Touch Barは理論的にはおもしろいが、有力なユースケースがないため結局は邪魔になり、多く人があらゆるケースで、デフォルトのキーを求めた。重要な機能を、何も手がかりのないタッチスクリーン上に廃するという点もアクセシビリティにおいて過ちだった。

USB-Cの全面的な採用もやはり、現実性を欠く理想主義の1つだった。それはドングル業界を活気づけただけに終わり、多くの人が長い間で溜まってまったさまざまなデバイスやドライブを持ち歩くために、多数の2インチケーブルを持ち歩いた。

キーボードは、バタフライスイッチの悲惨な失敗を受けて「メカニカルタッチ」に戻った。わずか1mmにこだわってタイピングがしづらくなり、頻繁に壊れるような設計のキーは歓迎されない。

あれやこれやの改良を撤回したり失敗した挙げ句、Appleはそれらをまるで新しいアイデアであるかのように復活させた。コマーシャルはM1 Pro Maxのパワーを謳っているが、断面図で見えるSDカードリーダーの組み立てはとても厚くて、一見の価値はある(皮肉)。

そしてその後、Appleの悪いクセがまた出てしまった。

ノッチをつけた

ノッチは好きじゃないが、そうではない人もいる。しかし、パソコンのようなフルスクリーンのメディアを毎日使う者には、とにかく邪魔だ。穴はもっとひどいが、ノッチならいいとはいえない。新しいiPhoneは以前ほど醜くはないが、あのノッチはSE 2からだから、私にとっては長い。ご冥福を祈るばかりの最初のSEが、また戻ってくるだろう。

何がどうなったのかというと、Appleはディスプレイを上へ広げてベゼルに狭くしたが、そのためにカメラのサイズを十分小さくすることができなかった(Face IDのようなものはない)。まり、ある意味ではスペースを確保したことになる。長年のApple擁護派である私の同僚は、そう自分を納得させている。

しかし、メニューバーのセンター部分で一体何をするのか?Appleは何と言っているのか?それはメディアの中に置かれた郵便受けか?それは16:9や2:1、21:9など、よくあるサイズよりも高い新しいアスペクトレシオか?また、フルスクリーンアプリを使ってるときはノッチのどちらかは黒くなり、せっかく増えたスペースが消える。それを画面スペースにとって純然たるプラスだと同社はいう。

しかし、それにしても醜い。

ほら、見えないでしょう?もちろん、上の4分の1インチすべてが見えない(画像クレジット:Apple)

質問は単純で、ノッチのある画面が欲しいか、ないのが欲しいかだ。答えは常に「ノッチのない方」だろう。ノッチは、スクリーンの基本的な用途、すなわちモノを見ることの邪魔になるからだ。ユーザーが求めるこの大きな矩形の邪魔をするものは、それがどのようなものであり邪魔だから邪魔物だ。スペースをフルに利用できない。画面にノッチがあるとしたら、それは表示物にとって意味のあるノッチか、要らないノッチかのどちらかだ。

気にしない人もいる。何も気にしない人は、幸せ者だ。でも世の中には、テレビのモーションスムージングを常有効にして、どんな番組でもメロドラマのような表示にしてテレビを見る人もいる。同じ部屋に冷たいLEDと温かい白熱電球の両方がある人もいる。本を、背の色で揃えない人もいる。何をいいたいかというと、人はさまざまであり、私のように美に関して神経質な人間が極端な意見をいって構わないのだ。

技術は、できるだけ目立たない方が良い。すべての産業がワイヤレス化と自動化とスマート化を求め、自分たちのプロダクトが空気のように遍在的で見えないことを目指してきた。テニスボールほどの小さな球体(今では5色ある)が、ユーザーのデジタル世界の全体を制御できる。ちっちゃなイヤーバッドが「手品」のように自分で自分を充電し、自動的に接続し、ユーザーの耳の特性に合わせて音量を調節するなどなど。

そういう意味では、ディスプレイは魔法の窓であるべきだ。鮮明なRetinaディスプレイは本当に窓みたいだし、120Hzのリフレッシュレートは遅延やぼけを防ぎ、デジタルとフィジカルの差をなくす。ベゼルが最小になれば、この2つの世界の「境界」も最小化する。つまりディスプレイの進歩はそのすべてが、魔法の窓の実現を目指してきた。だから、ノッチは進歩ではなく退歩だ。そういう単純な事実だ。それは魔法から遠く、リアルから遠く、邪魔物であり、人工的であり、フィジカルに妥協しているデジタルだ。

あなたにとっては、どうでもいいことかもしれないが、これが真実だ。そしてAppleは、可能になればすぐに、このノッチを取り去るだろう。彼らと私たちにわかっていることは、画面はノッチがない方が良いということ。それがわかっているなら、彼らは車輪を再発明したかのように振る舞うだろう。今日彼らが、誰が頼んだわけでもないのに古い機能を復活してそれを今度の新製品の新機能と謳っているように。

画像クレジット:Apple

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

iPadをPCのディスプレイとして使える「Luna Display」が(ようやく)Windowsに対応

Astropad(アストロパッド)の「Luna Display(ルナ・ディスプレイ)」は、iPadをセカンドディスプレイとして使用できる優れたプロダクトだ。当初はMac向けに発売されたが、Apple(アップル)自身がこれに競合する機能を導入したため、Astropadはこの2年ほど危機に瀕していた。しかし、米国時間10月13日、ついにLuna DisplayがWindowsマシンにも対応し、Astropadはマルチプラットフォームプロダクトへの転換を成し遂げた。

Astropadがプロダクトを市場に送り出すためにしてきた苦労は、並大抵のものではない。TechCrunchでは、同社とそのプロダクトの長く困難な道のりを追い続けてきた。同社が最初のプロダクトを発売したのは5年ほど前のこと。2018年には無線モジュールを追加して、厄介な配線を排除した。その急速なスターダムへの上昇は、しかし2019年にアップルが「Sidecar(サイドカー)」を発表したことで水の泡となる。Luna Displayというプロダクトは事実上意味を失い、同社は危機的状況に陥った。

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もうアップルのSidecarが手放せない

名誉のために言っておくと、同社とその創業者たちは、提供するプロダクトの透明性を保つことに長けていた。アップルに打ちのめされた後も、創業者たちは明かりを絶やさず、1年前にはWindowsプロダクトの開発に軸足を移すことを発表。クラウドファンディングのKickstarter(キックスターター)で40万ドル(約4540万円)を集め、プロダクト開発に拍車をかけた。

ノートPCの左側に差し込まれた赤いドングルがLuna Display。ここでは、セカンドディスプレイとして動作しているiPadに無線で接続されている(画像クレジット:Astropad)

Kickstarterプロジェクトの中で、Astropadは当初、2021年5月の発売を約束していたものの、プロダクト開発の世界ではよくあることだが、同社と6000人のKickstarter支援者は、途中で何度も遅れを受容することになった。長い間待たされたが、ついにそのWindows対応版が、Luna Displayバージョン5.0とともに登場した。少なくとも資料を見た限りでは、このプロダクトは期待が持てそうだ。

Luna Displayのドングルは、パソコンに接続するとMacやWindowsのOSと通信し、iPadのジェスチャー、Apple Pencil、外付けキーボードの使用を可能にする。遅延はわずか16msとのこと。アップルがSidecarで謳っている9msという遅延時間には及ばないものの、リアルタイムの入力を必要としないほとんどのユースケースでは十分な速さだ。言い換えれば、このディスプレイを負荷の高いデザイン作業やゲームに使うことは期待できないが、Chrome(クローム)のタブやWord(ワード)の文書を表示するにはまったく問題ないはずだ。

同社によれば、Windowsへの対応を熱望する顧客は多く、現在までに合計8000件の予約が入っているという。辛抱強く忠誠心が高いフォロワーたちは、待ち望んでいたプロダクトをようやく手にすることができ、歓喜に震えるに違いない。

このソリューションには、いくつかの異なるモードが用意されており、iPadをセカンダリーディスプレイとして使用したり、他のMac(旧いモデルも含む)をセカンダリーディスプレイとして使用したり、あるいはモニターを持たないデスクトップ機を「ヘッドレス・モード」で動作させることができる。つまり、iPadをMac Miniのメインディスプレイとしても使用することができるわけだ。

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Astropadは、このソリューションを実現するためのソフトウェアスタックの構築に、プログラミング言語「Rust(ラスト)」を採用した。AstropadのCEOであるMatt Ronge(マット・ロンゲ)氏は、低遅延ソリューションを構築するために比較的新しい言語を使用することの長所と短所について、興味深い考察を行っている

「Rustによって、Mac、iOS、Linux、Android、Windows上で簡単に動作させることができる、高性能でポータブルなプラットフォームが実現します」と、ロンゲ氏はいう。「これにより、潜在的な市場規模が飛躍的に拡大するだけでなく、当社のLIQUID技術(低遅延、高品質のビデオストリーミング技術)に多くの興味深い新用途を見出し、Rustベースのプラットフォームを追求していくことができます」。

Luna Displayは接続方式によって、USB-C(Mac&Windows対応)、Mini DisplayPort(Mac対応)、HDMI(Windows対応)の3タイプが用意されており、価格はいずれも129ドル(約1万4600円)。現在、Astropadから直接購入することが可能だ

画像クレジット:Luna Display under a Luna Display license.

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

裸眼で立体的に見える3Dディスプレイ第2世代モデルをLooking Glass Factoryが発表

ブルックリンに拠点を置くLooking Glass Factory(ルッキング・グラス・ファクトリー)は米国時間7月13日、新型ホログラフィックディスプレイ(裸眼3Dディスプレイ)2機種を発表した。2020年末に発売されたエントリーモデル「Looking Glass Portrait(ルッキング・グラス・ポートレイト)」に続き、今回発表されたのは15.6インチの「Looking Glass 4K」と、32インチの「Looking Glass 8K」の第2世代モデルだ。

これらのモデルには、サイズだけでなく価格にも大きな差がある。7.9インチの「Portrait」が299ドル(約3万3000円)であるのに対し「4K」が3000ドル(約33万円)、そして「8K」は1万7500ドル(約193万円)。裸眼で立体的に見ることができる3Dコンテンツを映し出すための基本的な技術が同じであることを考えると、この価格差はより顕著に感じられる。

画像クレジット:Looking Glass

「生産規模も価格差の要因の1つです」と、同社のShawn Frayne(ショーン・フレイン)CEOはTechCrunchに語った。「人々が使っているこのサイズの8Kディスプレイは、実際にはほとんどありません。今後数年で8Kディスプレイの販売は大きく伸びると我々は予想していますが、現在の初期段階にPortraitと同じ規模で製品を生産することはできません」。

Looking Glassでは、Portraitを自社技術のアンバサダーのようなものと考えている。特に2020年までは、同社のシステムを潜在的なバイヤーに見せることは、ほとんどできなかった。実際に同社の古いシステムをいくつか見たことがある筆者は、Zoom(ズーム)を通して見るのとは効果が全然違うということを証言できる。Looking Glassによると、同社はこれまで約1万1000台の製品を販売しており、需要を満たすために、世界的なサプライチェーンの問題を切り抜けながら、毎月「数千台」を出荷しているという。

画像クレジット:Looking Glass

「当社のPortraitは、上司から承認を得る必要なしに、自分のホログラフィックディスプレイを手に入れることができる最初の機会になると思います」とフレイン氏はいう。「興味を持って購入したものが、期待通り、あるいは期待以上のものであれば、その先に進もうと思うでしょう。Portraitの品質レベルは非常に高く、より大きな製品はその品質をより大きな画面で実現しています」。

画像クレジット:Looking Glass

今回発表された2つの新モデルは、一般消費者向けというよりも事実上の開発者向け製品であった従来のモデルの後継に当たる(ただし、旧モデルのサポートは引き続き提供される)。これら第2世代の製品は、価格が抑えられたことに加え、大幅に軽量化されており、さらに映像の再現度も、特にホログラフィックディスプレイで問題となりやすいエッジ部分において、先代モデルより改善されている。

なお、日本においては、第2世代の4Kと8KおよびPortraitの3モデルとも、クラウドファンディングサイトのMakuakeで、7月21日14時より注文受付が開始される。日本向けの販売価格もそこで発表される予定だ。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Looking Glass Factoryディスプレイ3Dホログラム

画像クレジット:Looking Glass Factory

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

任天堂が有機ELディスプレイSwitchを10月8日発売、価格は3万7980円

E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)で発表するには大きすぎるニュースだ。世界最大のゲーム見本市が終了して数週間、任天堂がとうとう広く人気を博しているハイブリッドのゲームコンソールの最新版を発表した。Nintendo Switch 有機ELモデルは10月8日に350ドル(日本では税込3万7980円)で発売される。また、手短な発表によると、待望の最新ソフト「Metroid Dread(メトロイド ドレッド) 」も同日発売する。

6.2インチの有機ELディスプレイを搭載する本モデルはオーディオが向上し、内部ストレージも64GBになった。ハイブリッドなドックは有線LAN端子を搭載し、テーブルモードでプレイするための調整可能なスタンドもついてくる。シャープな黒白のモデルがあるが、その他の部分は前モデルにそっくりで、価格上昇はディスプレイ分だろう。任天堂はまた、本体とは別にキャリーケースも販売する。誰だって350ドルもするすてきなスクリーンに傷を付けたくないだろう。

状況からすると、既存のモデルは低価格商品として展開される。2つの既存モデルはそれぞれ299ドル(日本では税込3万2978円)と199ドル(税込2万1978円)だが、新モデルがホリデーシーズン前に発売されるため、いくらかの値下がりを予想するのは合理的なようだ。

「新しいNintendo Switch(有機ELディスプレイモデル)は、手に持って、あるいはテーブルモードでプレイするときに鮮やかなスクリーンを楽しみたいプレイヤーにうってつけの選択肢です」と米国任天堂の社長Doug Bowser(ダグ・バウザー)氏はプレスリリースで述べた。「Nintendo Switchファミリーへの新モデルの追加で、有機ELディスプレイモデル、Nintendo Switch、Nintendo Switch Liteと、希望するゲーミングエクスペリエンスに最適なシステムの選択肢が1つ増えました」。

有機ELディスプレイモデルは2色展開となる。任天堂によると

  • ホワイトはJoy-Conが白色、本体は黒色、ドックは白色
  • ネオンレッドとネオンブルーのセットはJoy-Conがネオンレッドとネオンブルー、本体は黒色、ドックは白色

発売から4年経つNintendo Switchのアップグレードバージョンは、断然すっきりしている「Switch Pro」という名称とともにこのところ噂されていた。Sony(ソニー)とMicrosoft(マイクロソフト)は2020年次世代コンソールを発表しており、今回の刷新は明らかにいいタイミングだったようだ。標準のSwitchの刷新バージョンは2019年7月に発売され、オリジナルのバッテリー駆動時間の問題を解決した。オリジナルは概ね好評だったが、バッテリーが最大の不満だった。

もちろん、発売から年数を重ねているにもかかわらず、SwitchはPlayStation 5とXbox One Xの発売前、売上を引き続き独占した。初期にサプライチェーン不足はあったものの、パンデミックの間は任天堂の1人勝ちだった。この成功には、パンデミックの間にかなり求められたソーシャルゲーミングという要素を提供した新どうぶつの森が少なからず貢献していた。潜在的なサプライチェーン不足と相まり、そうした成功はスイッチ発売の延期を決めたという憶測につながった。

新しいハードウェアがなかったにもかかわらず、任天堂は「Metroid」を発表する前、6月に開催されたE3でいくつかのメジャーなゲームに関するニュースを発表した。断然期待が高いのは2022年発売予定の、ゼルダシリーズで最も人気のゲームの1つでSwitchのベストセラーでもある「Breath of the Wild」の続編だ。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:任天堂Nintendo SwitchOLEDディスプレイ

画像クレジット:Nintendo

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

市の現実的な問題を解決するオハイオ州コロンバスを「スマートシティ」に変えたテクノロジーたち

2015年、米国運輸省はSmart City Challenge(スマートシティ・チャレンジ)を主催した。米国全土の中規模都市から、データとテクノロジーを活用したスマートモビリティシステムに関する先進的な構想を募集するコンテストだ。全米から78の都市が応募し、オハイオ州コロンバス市が優勝した。

2016年、人口100万人弱のコロンバス市は、その構想を実現するための資金となる連邦助成金5000万ドル(約55億8000万円)を優勝賞金として受け取った。そのうち4000万ドル(約44億6000万円)は米運輸省、1000万ドル(約11億2000万円)はPaul G Allen Family Foundation(ポール・G・アレン・ファミリー財団)が出資している。

構想を実現するためのこのプログラムは2021年6月中旬に終了したが、コロンバス市は今後も同市の財源を使ってテクノロジーの統合を進めて「協働イノベーションの実験都市」としての役割を続け、社会問題に取り組んでいくことを発表した。とはいえ、これは具体的にはどういうことなのだろうか。

コロンバス市の「スマートシティ」は、トヨタが富士山麓で建設を急ピッチで進めている実証実験の街「ウーブン・シティ」とはまったく異なるものだ。そもそも、コロンバス市はウーブン・シティのようなものを目指しているのではない。

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Smart Columbus(スマート・コロンバス)構想の担当者であるMandy Bishop(マンディ・ビショップ)氏は、TechCrunchに次のように説明する。「私たちは、単にテクノロジーの実用化を目指してテクノロジーを導入しているのではありません。モビリティや交通についてコロンバス市が抱えている問題に注目し、それらの問題の一部に集中して取り組むためにコンテストの賞金を使っています」。

同市が抱える問題には、各種モビリティへのアクセシビリティの欠如、公共交通機関では十分にカバーされていないエリアがあること、駐車スペースに関する課題、運転マナーの悪さのせいで衝突事故が多発していることなどが挙げられる。ご推察のとおり、多くのスタートアップがこれらの問題を解決すべく取り組んでいる。本稿では、そのようなスタートアップが提供しているソリューションについて紹介する。

Etchによる「Pivot」アプリ

Etch(エッチ)は、コロンバス市を拠点とし、地理空間ソリューションを提供するスタートアップである。2018年に創業したばかりの同社にとって、スマート・コロンバス構想への参加は本格的な経験を積む機会となった。同社は、バス、配車サービス、カープール、マイクロモビリティ、個人用の乗り物を組み合わせてオハイオ州の中心部を移動するルートを検索するためのマルチモーダル交通アプリ「Pivot」を開発した。

EtchのCEO兼共同創業者のDarlene Magold(ダーリーン・マゴールド)氏はTechCrunchに次のように説明する。「コミュニティのみなさんに、どんな交通手段が使えるのかを伝えること、そして、コストや他の条件に応じてその手段を並び替えるオプションを提供することは、当社のミッションの一部でした」。

Pivotアプリは、OpenStreetMapやOpenTripPlannerなどのオープンソースツールを基に構築されている。EtchはOpenStreetMapを使って、特定のエリアの現在状況に関してコミュニティからクラウド経由で集まる最新情報を取得する。これは、Wazeに似た仕組みだ。OpenTripPlannerは、異なるモビリティ別にルートを組み立てるのに使われる。

「当社のアプリはオープンソースであるため、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)をはじめとする他のモビリティサービスと統合することによって、個人用の乗り物(所有している場合)以外にどんな交通手段が使えるのかを可視化する点で、ユーザーに多くのオプションを提供できます。このアプリによって、バスの現在地やスクーターの場所をリアルタイムで把握できるため、移動することや複数の交通手段を使うこと、Uberの利用、自転車やスクーターのレンタルにまつわる心配事を減らすことができます」。

前述の連邦助成金のうち125万ドル(約1億4000万円)が投じられたPivotアプリは、現在までに3849回ダウンロードされている。コロンバス市はPivotアプリの開発と利用促進のための資金を引き続き提供していく予定だ。

Pillar Technologyによる「スマート・コロンバス運用システム」

コロンバス市は、スマート・コロンバス構想の既存の運用システムをさらに発展させるために、スマート化向けの組み込みソフトウェアを提供するPillar Technology(ピラー・テクノロジー)を採用した。同社は2018年にAccenture(アクセンチュア)によって買収されている。2019年4月には、コロンバス市のモビリティ関連データ(2000のデータセットと209のビジュアルデータを含む)をホストするために1590万ドル(約17億7000万円)をかけて開発されたオープンソースプラットフォームが始動した。

「このプロジェクトは最低でも2022年1月まで続く予定です。コロンバス市は今後も、モビリティや交通に関する事例を積み上げて、運用システムの価値と活用方法をさらに明確にしていきます」とビショップ氏は語る。

スマート・コロンバス運用システムは、既存のデータセットに新たなデータを追加するよう他の企業を招待している。また、衝突率を低下させる方法や、駐車スペースを最適化する方法などの課題に関するソリューションをクラウドソーシングで募集している。

ParkMobileによるイベント駐車場管理アプリ「Park Columbus」

ParkMobile(パークモバイル)は、スマートパーキングのソリューションを提供するアトランタ拠点のスタートアップだ。スマート・コロンバス構想では、駐車スペースを探し回ることを防ぐことによって渋滞と大気汚染の軽減を目指すイベント駐車場管理アプリ「Park Columbus(パーク・コロンバス)」を開発した。ユーザーは駐車場の検索、予約、支払すべてをアプリ内で完結できる。

コロンバス市の広報担当者によると、スマート・コロンバス構想のイベント駐車場管理アプリは、ParkMobileの既存ソリューションを強化する形で開発されたという。130万ドル(約1億5000万円)が費やされたこのアプリは、2020年10月から2021年3月までの期間に3万回以上ダウンロードされた。同アプリには今後、予測分析テクノロジーによって路上駐車スペースを表示する機能が追加される予定で、コロンバス市は引き続き同アプリに資金を提供していく予定だ。

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Orange Barrel Mediaによる「Smart Mobility Hubs」キオスク

Smart Mobility Hubs(スマート・モビリティ・ハブ)は、都市の風景になじむメディアディスプレイを開発するOrange Barrel Media(オレンジ・バレル・メディア)が設計したインタラクティブなデジタルキオスク端末だ。コロンバス市内で使える交通手段のオプションを1か所に集めて表示するこのキオスクは、Pivotアプリを物理的な端末にしたようなもので、キオスクから操作することも可能だ。無料Wi-Fiを提供したり、レストラン、店舗、アクティビティの一覧を表示したりするこのキオスク端末の開発にも、連邦助成金のうち130万ドル(約1億5000万円)が投じられた。

Orage Barrel Mediaは、コミュニティの情報を表示するこのようなキオスク端末から、広告やアートを表示するものまで、さまざまなディスプレイを提供している。スマート・コロンバス構想によると、同社のキオスク端末は6か所に配置され、2020年7月から2021年3月までの期間に6万5000回以上利用されたとのことだ。同市はまた、パンデミック後には利用回数が劇的に増加すると見込んでいる。このキオスク端末には、同市が展開する自転車シェアプログラム「CoGo(コーゴー)」も組み込まれている。CoGoでは、ペダル自転車、電動自転車、駐輪スタンド、ドックレススクーターシェアサービスと自転車シェアサービス専用の駐輪スペース、配車サービスの乗降車エリア、カーシェア用駐車場、EV充電ステーションに関する情報を入手できる。

Siemensとの提携による「コネクテッド・ビークル環境」

オハイオ州には他州に比べて運転マナーが悪いドライバーが多い。オハイオ州の高速道路パトロール隊が2021年発表した、州内における不注意運転に関するデータによると、2016年以降、不注意運転に起因する衝突事故が7万件発生しており、そのうち2000件以上が重傷事故もしくは死亡事故だという。コロンバス市は、2019年にとある保険会社が発表した、全米で運転マナーが悪い都市ランキングで第4位にランクインしたことがある。

コロンバス市がコネクテッド・ビークルの実証実験を行ってみたくなったのは、それが原因かもしれない。2020年10月から2021年3月にかけて、コロンバス市は、ビークルツーインフラストラクチャー(自動車と路上の通信設備との間で情報をやり取りすること、V2I)およびビークルツービークル(異なる自動車間で情報をやり取りすること、V2V)を実現するための車内用および路上設置用ユニットを提供するSiemens(シーメンス)と提携した。また、Kapsch(カプシュ)とDanlaw(ダンロー)といった企業も路上設置用ユニットを提供した。コネクテッド・ビークルは他の自動車および85か所の交差点(このうち7か所はオハイオ州中心部で衝突率が非常に高い交差点)に設置されたユニットに対して「話す」ことができる。このプロジェクトには、1130万ドル(約12億6000万円)が投じられた。

「このコネクテッド・ビークル環境の応用方法として、赤信号による警告、スクールゾーンの通知、交差点内での衝突警告、貨物車両や公共交通車両の信号優先通過など、11種類のさまざまな機能を考えました」とビショップ氏は説明する。

「住民が100万人あまりの地域に1100台の自動車を配置しました。そのため、衝突率が下がることは期待していませんでしたが、コネクテッド・ビークル環境から発信される信号無視防止のための警告をドライバーが活用しているのを見ることはできました。その結果、運転マナーの向上が見られており、長期的には路上の安全性を効果的に改善することにつながると期待しています」とビショップ氏は語る。

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Easy Mileによる自律運転シャトルバス「Linden LEAP」

スマート・コロンバス構想の自律運転車によるシャトルバスサービス「Linden LEAP(リンデン・リープ)」には230万ドル(約2億6000万円)が投じられ、2020年2月から2021年3月まで数回の休止期間をはさみながら運用された。開始当初は、リンデン地区の4つの停留所を2台のシャトルバスが運行して、公共交通機関によって十分にカバーされていないコミュニティに交通サービスを提供した。開始からわずか2週間後に、時速25マイル(約40キロメートル)ほどで走行していた自律運転バスが急停止して、乗客が何らかの原因により座席から投げ出されてしまったため、運行は停止された。そうこうしているうちにパンデミックが発生し、人を運ぶサービスの需要がなくなってしまったため、Linden LEAPは、2020年7月から2021年3月までの期間に、3598件の食材配達と13万件の出前サービスをこなした。

コロンバス市は、連邦助成金が終了した今、この自律運転シャトルバスサービスに資金を出し続ける予定はないという。

ビショップ氏は次のように説明する。「コロンバス市には、公共交通機関を運用してきた実績があまりありません。そのため、コネクテッド環境、自律運転、電気自動車に関する技術を公共交通機関に今後どのように組み込んでいくのか、中央オハイオ交通局(CoTa)の計画を注意深く見守りたいと思います。コロンバス市としては、次の取り組みは民間企業によるものになること、そして、最終的には交通局の主導へと切り替わっていくことを期待しています」。

フランス発のスタートアップであるEasy Mile(イージー・マイル)の広報担当者は、同社が前述の自律運転シャトルバスにレベル3の自律運転技術を提供したと発表している。Society of Automobile Engineers(米国自動車技術者協会)によると、レベル3の自律運転は、運転席に人間のドライバーが座ることが依然として求められるレベルだという。

コロンバス市と自律運転技術との中途半端な関係はもともと、2018年末にスマート・コロンバス構想がDriveOhio(ドライブオハイオ)およびMay Mobility(メイ・モビリティ)と提携して、同市初の自律運転シャトルバスサービスであるSmart Circuit(スマート・サーキット)を開始したときに始まった。シオトマイル地区の中心部に設けられた全長1.5マイル(約2.4キロメートル)のルートを走るSmart Circuitは、2019年9月までの期間に、特定の文化的な名所への無料乗車サービスを1万6000回提供した。

Smart Circuitにかかった費用はわずか50万ドル(約5600万円)ほどだったが、コロンバス市は、自律運転シャトルバスプログラム全体を総合的に開発するために、さらに追加で40万ドル(約4500万円)を投じた。

Kaizen Healthによる妊婦向け移動サポートアプリ「Prenatal Trip Assistance」

女性が創業したテック企業であるKaizen Health(カイゼン・ヘルス)が最初のアプリケーションを開発したのは、健康上の問題で治療に通う必要がある人々が利用できる交通手段が少ないことへの不満がきっかけだった。シカゴを拠点とする同社は、妊婦とその家族が救急時以外のときに利用できるマルチモーダルな病院搬送サービスを簡単に手配できる同社のモデルを応用してアプリを開発した。

2019年6月から2021年の1月の期間にスマート・コロンバス構想の助成金から130万ドル(約1億5000万円)が投じられたこのアプリの利用者は、パンデミックのせいでわずか143人にとどまったが、病院への移動に利用された回数は800回以上、薬局、食料品店、他のサービスを受けるために利用された回数は300回以上にのぼった。このアプリが導入された年にオハイオ州で生まれた新生児1000人あたり平均6.9人が死亡したことを考えると、スマート・コロンバス構想に参加しているメディケイド対象医療機関が、このようなモバイルアプリの導入を含め、非救急時の病院搬送サービスを近代化しようとしていることは、良い傾向だ。

Wayfinderとの提携による、認知障がい者へのモビリティ支援アプリ

最後に挙げるプロジェクトでコロンバス市が手を組んだテック企業はAbleLink(エイブルリンク・テクノロジー)のWayFinder(ウェイファインダー)という、デンバー発の企業だ。どこで曲がるかを非常に詳細に指示してくれるナビゲーションアプリを、特に認知障がいを持つ人々向けに開発するために、Mobility Assistance for People with Cognitive Disabilities(認知障がい者へのモビリティ支援、MAPCD)に関する研究がWayfinderと共同で実施され、認知障がい者がさらに安全に自立行動の範囲を広げられるようになった。

このパイロットプロジェクトには、2019年4月から2020年4月の期間に約50万ドル(約5600万円)が投じられた。31人がこのアプリを実際に使って、公共交通機関の使い勝手が向上するのを感じた。コロンバス市の広報担当者によると、同市は現在、パートナー企業各社とともに、このアプリプロジェクトを継続していく方法を探っているとのことだ。

今後の展望

スマート・コロンバス構想が注力したもう1つの分野は、電気自動車(EV)の導入と充電インフラストラクチャーだった。ポール・G・アレン・ファミリー財団と、オハイオ州の電力会社AEP Ohio(AEPオハイオ)が拠出した資金がインセンティブとして使われて、集合住宅、職場、公共の場所への充電ステーション設置が進んだ。その結果、900か所のEV用充電ステーションを設置するというスマート・コロンバス構想の目標が達成され、同時に、新車販売台数に占めるEVの割合が2019年11月に2.34%に達し、その割合を1.8%にするという目標も達成された。

「将来的には、今後も継続していくテクノロジーやサービスにより、住民が直面している問題がコミュニティにとって理にかなった仕方で解決されていくと思う」とビショップ氏は語った。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:オハイオスマートシティ駐車場ディスプレイSiemens自動運転バス

画像クレジット:Smart Columbus

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

普通のスクリーンをホログラフィックディスプレイに変えるVividQ

旧来のスクリーンにホログラムを描画する技術を持つ英国のディープテック企業VividQ(ヴィヴィッドQ)は、次世代のデジタルディスプレイやデバイスに向けた技術を開発するために、1500万ドル(約16億7000万円)の資金調達を行った。同社はすでに米国、中国、日本の製造パートナーを確保している。

シード延長ラウンドとなった今回の資金調達は、東京大学のベンチャー投資部門である東大IPC(東京大学協創プラットフォーム開発株式会社)が主導し、Foresight Group(フォーサイト・グループ)とWilliams Advanced Engineering(ウィリアムス・アドバンスト・エンジニアリング)の共同出資会社であるForesight Williams Technology(フォーサイト・ウィリアムス・テクノロジー)、日本のみやこキャピタル、オーストリアのAPEX Ventures(エイペックス・ベンチャーズ)、スタンフォードのベンチャーキャピタルであるR42 Group VC(R42グループ)が参加。以前から投資していた東京大学エッジキャピタル、Sure Valley Ventures(シュア・バレー・ベンチャーズ)、Essex Innovation(エセックス・イノベーション)も加わった。

今回の資金は、VividQのHoloLCD技術をスケールアップするために使用される予定だ。同社の主張によれば、この技術は一般的な民生機器のスクリーンを、ホログラフィックディスプレイに変えることができるという。

2017年に設立されたVividQは、すでにArm(アーム)をはじめ、Compound Photonics(コンパウンド・フォトニックス)、Himax Technologies(ハイマックス・テクノロジーズ)、iView Displays(アイビュー・ディスプレイズ)などのパートナー企業と協力して開発に取り組んでいる。

VividQの技術は、コンピューター生成ホログラフィによって「真の被写界深度を持つ本当の3D画像をディスプレイに投影し、ユーザーにとって自然で没入感のあるものにする」ことができるという。同社ではこの技術を、自動車用HUD(ヘッドアップディスプレイ)、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、スマートグラスなどで活用することを目指している。同社はまた、通常の液晶画面をホログラフィックディスプレイに変える方法を発見したとも述べている。

「『アイアンマン』や『スター・トレック』のような映画でおなじみのシーンが、これまで以上に現実に近づいています」と、VividQの共同設立者でCEOを務めるDarran Milne(ダラン・ミルン)氏は語っている。「VividQでは、ホログラフィックディスプレイを世界に初めて提供することをミッションとしています。当社のソリューションは、自動車業界に革新的なディスプレイ製品を投入し、AR体験を向上させることに役立ちます。近い将来には、ノートPCや携帯電話など、パーソナルデバイスとの関わり方も変えるでしょう」。

画像クレジット:VividQ

東大IPCの最高投資責任者である河原三紀郎氏は「ディスプレイの未来はホログラフィです。現実世界と同じ様に見える3D画像を求める声は、ディスプレイ業界全体で高まっています。VividQの製品は、多くのコンシューマーエレクトロニクス事業者が将来に向けて抱く野心を、現実のものとするでしょう」と語っている。

APEX Venturesのアドバイザーであり、Armの共同設立者であるHermann Hauser(ヘルマン・ハウザー)氏は「コンピューター生成ホログラフィは、私たちの周りの世界と同じ3D情報を持つ没入型の投影像を再現します。VividQは人間のデジタル情報への接し方を変える可能性を秘めています」と述べている。

筆者による電話インタビューで、ミルン氏は次のように付け加えた。「私たちはこの技術をゲーミングノートPCに搭載し、標準的な液晶画面でホログラフィックディスプレイを利用できるようにしました。スクリーンの中で、実際に画像が奥行きを持って広がっているのです。光学的なトリックは使用していません」。

「ホログラムとはつまり、基本的に光がどのように振る舞うかを指示する命令セットのことです。その効果をアルゴリズムで計算し、それを目に見せることで、本物の物体と見分けがつかなくなります。それはまったく自然に見えます。現実と同じ情報を、文字通り目に与えているので、人間の脳や視覚システムは現実のものと区別することができません。だから、通常の意味でいうところのトリックは一切ありません」。

もしこれがうまく機能すれば、確かに変革をもたらす可能性がある。UltraLeapのような「バーチャル触感」技術とうまく融合させることも期待できそうだ。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:VividQ資金調達ホログラムイギリス東大IPC3Dディスプレイ

画像クレジット:VividQ founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「マンダロリアン」シーズン2撮影用のリアル空間を創り出す巨大な高解像度LEDディスプレイをILMが公開

2020年の「The Mandalorian(マンダロリアン)」シーズン1は、すばらしいテレビドラマであっただけでなく、映画およびテレビ制作のまったく新しいパラダイムの成果でもあった。ILMが「マンダロリアン」シーズン1の撮影に使用した巨大なLEDウォールStagecraft(ステージクラフト)は、その後、サイズが大きくなり、アップデートされ、より良く、より早く、より簡単に使えるようになった。

メイキング動画では、ILMの監督やその他のスタッフが、それによって何もかもが楽になったと語り、バージョン2.0の改良点を数え上げている。

Stagecraftで最も目につくのは、その「大きさ」だ。それは2階建ての高さの壁と天上を構成する高解像度LEDディスプレイだ。それに囲まれた中に実際のセットが組まれるのだが、そこに生み出される大きな空間は実にリアルだ。正しい方法で撮影を行えば、その仮想背景と本物の景色との見分けはつかなくなる。

とにかく巨大なため、ロケと精密なセットをかけ合わせた撮影が可能になる(しかも天候や移動スケジュールを気にせずに済む)のだが、何よりも数十年間、役者がその前に立たされ続けてきた音響スタジオや移動式のグリーンバックよりもずっと優雅だ。それだけではない。制作上の性質が異なる数多くの作業工程を、1本にまとめてくれる。

「みんなが同じページに立てるようになったことが、このシステムのすばらしいところです」と、ILMで「マンダロリアン」のエピソードを(それに映画も)数多く制作した監督Robert Rodriguez(ロバート・ロドリゲス)氏は話す。「それは役者をインスパイヤーし、制作スタッフをインスパイヤーし、さらに今何を撮っているのかが、わかるようになりました。まあ、ついにライトを点けて絵を描けるようになったという感じです」。

Stagecraftは大成功という以外にないように思われるが、それでもまだまだ開発の途上にある。エンド・ツー・エンドのシステムとして、それには何十ものレンダラー、カラーコレクション・システム、カメラ、プリプロダクションおよびポストプロダクション用ソフトウェア、そしてもちろんLEDウォールそのものが必要となり、それらは常に進化している。

画像クレジット:ILM

「シーズン2までに、ILMはこの技術とこのハードウェアの機能のための専用ソフトウェアをいくつも開発しました」と、同番組のエグゼクティブプロデューサーであり、映画制作用新技術の不屈の後援者であるJon Favreau(ジョン・ファヴロー)氏はいう。

制作チームからは、具体的な要望が数多く寄せられていた。加えて通常のバグ修正と性能向上の作業が、ワークフォローの改善につながっていった。さらに、ディスプレイのサイズも大きくなり、画質も向上した。

「より効率的なワークフロー作りにも力を入れるよう促されました。プリプロダクション、ポストプロダクション、メインの制作を1本のパイプラインにつなげたのです」とファブロー氏は話す。通常のロケやグリーンバック技術よりも自然で美しい上に、1日に消化できる台本のページ数が30〜50パーセント多くなった。これはどのプロデューサーに聞いても、信じられないと驚くだだろう。

ILM、Disney(ディズニー)、Unreal(アンリアル)その他の企業が力を合わせて実現したこの技術とパイプラインの改良の様子は、さらに深く追いかけていく。それまでは、下のメイキング動画を楽しんでいただきたい。

 

カテゴリー:ハードウェア
タグ:ILMThe Mandalorianディスプレイ映画Disney+

画像クレジット:ILM

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(文:Devin Coldewey、翻訳:金井哲夫)

東京農工大が目が自然にピントを合わせられる「ホログラフィック・コンタクトレンズディスプレイ」開発

東京農工大が目が自然にピントを合わせられる「ホログラフィック・コンタクトレンズディスプレイ」開発

実物体にホログラムで発生した画像を重ねてAR表示している様子

東京農工大学の高木康博教授の研究グループが「ホログラフィック・コンタクトレンズディスプレイ」を開発しました。ホログラフィー技術を応用し、コンタクトレンズ内に表示した画像に対して、目が自然にピントを合わせられるようになります。

コンタクトレンズディスプレイは、ヘッドマウントディスプレイや専用メガネを装着することなく、目の中にコンタクトレンズを入れるだけで、現実世界にデジタル情報を重ねて表示できる『究極のディスプレイ技術』として期待されています。その一方で、表示した画像に対して目がピントを合わせられない課題があります。

この課題を解決するために、コンタクトレンズ内のLEDにマイクロレンズを取り付けて、網膜に光を集光する方法が提案されていますが、目が外界の物体にピントを合わせると目の焦点距離が変化し、集光がうまくいかなくなる問題がありました。

そこで、同研究グループでは、物体が発する光の波面を再現して立体表示を行う「ホログラフィー」技術を活用。目から離れた位置にある物体からの波面を、コンタクトレンズ内の表示デバイスで再現することで、目は実物に対するのと同様に自然にピントを合わせられるようになります。また、同技術を使うことで、さまざまな画像なども表示できるとのこと。

なお、コンタクトレンズは一般的に0.1mm程度と薄いため、この薄さに内蔵できる構造にする必要があります。研究グループによると、光の波面を制御する「位相型空間光変調器」や、光の偏光を制御する「偏光子」は数マイクロメートルの厚さで実現できるといい、「位相型空間光変調器」にレーザー照明するバックライトの厚さを0.1mm程度とすることで、コンタクトレンズ搭載が可能になりました。

東京農工大が目が自然にピントを合わせられる「ホログラフィック・コンタクトレンズディスプレイ」開発

この「ホログラフィック・コンタクトレンズディスプレイ」はコンタクトレンズディスプレイの光学技術に関する課題を解決するものだといい、同研究グループでは今後、表示デバイスや通信デバイスの研究者、および眼科の医師などと協力して、コンタクトレンズディスプレイの実用化に向けて研究を進める予定です。

(Source:東京農工大学Engadget日本版より転載)

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タグ:ウェアラブル(用語)拡張現実 / AR(用語)コンタクトレンズ(用語)ディスプレイ(用語)東京農工大学(組織)ヘッドマウントディスプレイ / HMD(用語)日本(国・地域)

Dellの40インチ曲面モニターはホームオフィスのコマンドセンターに最適

Dell(デル)は2021年のキックオフを、さまざまなスイートスポットに狙いを定めた新しいディスプレイのラインアップで飾った。Dell UltraSharp(ウルトラシャープ)40曲面WUHDモニターは、39.7インチの画面領域があり、解像度は5120×2160ピクセル。これは通常の32インチワイドスクリーンディスプレイでは4K解像度の画素密度に相当する。画像とデータの接続はThunderbolt 3に対応。互換性のあるコンピューターに90Wの電力供給、ネットワークには10Gbps Ethernetでの有線接続が可能。要するに、Dellの最新(1月28日発売)は、ホームオフィスの最適化を考えている人にとって「1台ですべてを賄う」手段の有力候補となる。

基本性能

Dell UltraSharp 40は、60Hz、アスペクト比21:9、WUHD解像度の(本当の5Kではないが、このサイズの曲面ディスプレイにしては卓越している)39.7インチディスプレイだ。色再現性はRGBが100%、P3が98%。高さ、傾き、左右角度の調整ができ、ケーブルをきれいに隠せる溝を備えたスタンドが一体になっている。内蔵スピーカーは出力9Wが2つなので、外部スピーカーを接続する必要もない。

画像クレジット:Darrell Etherington

有線接続用ポートはThnderbolt 3、RJ45 Ethernet、USB 10Gbps(背面に3つ、正面に1つ)、さらに正面にはUSB-Cポートが1つあって使いやすい。また、3.5mmの音声ライン出力(ただしヘッドフォンには対応しないので注意)と、HDMIポート2つ、Thunderboltを使わず古いタイプのディスプレイを接続したいときのためのディスプレイポート1つがある。さらに、共有環境でのディスプレイの盗難を防ぐ標準のセキュリティロック用スロットも備わっている。

画面自体は明るく鮮明で、広い角度から見ることができる。マット加工されているので、さまざまな照明の状況下でも画像が見やすい。メニューやピクチャー・イン・ピクチャーなどの内蔵機能の操作は、ジョイスティック型のボタンで楽に行うことができる。

デザインと機能

何よりもまず、Dell UltraSharp 40の画質が素晴らしくいい。特にこのサイズのディスプレイ、またこの解像度の曲面フォームファクターにしては、会議やスプレッドシートの作業などを中心的に行うテレワーカーも、色の正確な再現性や細部までクリアに見える精細な解像度を要求するプロの映像作家も、誰もが満足する画質を誇っている。

WUHD解像度ということは、表示領域をどのように使いたいか、またその必要性に応じて、さまざまな設定が可能であることを意味している。たとえば私は5160×2160で使っていたが、たくさんのウィンドウを縦横に並べて仕事をする際に十分なスペースが確保できた。普段の仕事では、ディスプレイを3つ使っているが(タブやらブラウザーのウィンドウをたくさん表示している)、Dell UltraSharp 40では、それをたった1台で実に快適にこなしてくれる。Apple(アップル)の最近のMacに備わっているHiDPI(高画素密度)モードにも対応しているので、画面全体を使う必要がないときは、細部までクリアでクッキリなまま、画像を大写しにできる。

Dellのディスプレイ一体型のスタンドは、シンプルで効率的だ。いろいろな動かし方ができ、高さ調整の幅は驚くほど広い。このディスプレイの場合は、画面を完全に縦にしてポートレート表示をさせることはできないが、高さに対して横幅の大きさを思えば無理もない。必要ならば、画面を傾けることができる。好みに応じて上下角度の変更は自由だ。結論として、非常に大きなディスプレイながら、ごく簡単に快適な位置や角度に調整できる。

画像クレジット:Darrell Etherington

箱から出した時点で、すでにキャリブレーションはできているが、コントラストや明るさなど、豊富な調整項目を内蔵メニューから操作することもできる。複数のデバイスを接続して使えるのも大変に便利だ。複数の入力をピクチャー・イン・ピクチャーで表示したり、画面を左右に二等分して異なるソースからの画像を表示させることもできる。複数のコンピュータを接続したときに便利な機能として、ディスプレイ本体にキーボードとマウスを接続すれば、接続されているパソコンを識別して自動的に入力先を切り替えてくれるというものもある。

画面の大きさと解像度以外にも、UltraSharp 40がホームオフィスの中心に相応しいと思わせる機能がある。内蔵スピーカーだ。オーディオマニアから表彰される程のものではないまでも、ノートパソコンの内蔵スピーカーなどよりはずっと上質で、外部スピーカーを使う必要性を排除してくれる。机が狭くて困っている人には助かる。Thunderboltに対応した比較的新しいMacなら、UltraSharp 40は、なんとケーブル1本だけで接続ができる。これには文句の付けようがない。

まとめ

画像クレジット:Darrell Etherington

このUltraSharp 40においても、高性能な製品をお手頃価格で提供するというDellの伝統が貫かれている。2100ドル(約22万円)という価格は高いように感じるだろうが、そこから得られる恩恵を思えば極めて適正だ。またDellのディスプレイは耐久性も高いため、一度投資すれば、今後数年間は満足が続くはずだ(私のホームオフィスのディスプレイのうち2台はDellの初期の4Kモデルだが、5年間しっかり働いてくれた)。

横に広いアスペクト比と湾曲した画面により、このディスプレイはほとんどの用途において、比較的小さい4Kディスプレイ2台に取って代わることができる。そう考えるとコスト的にはさらに納得がいくものとなる。まとめるに、DellのUltraSharp 40は、幅広いホームワーカーのさまざまなスイートスポットを押さえた、ホームオフィスの立役者といえる。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Dellディスプレイ

画像クレジット:Darrell Etherington

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(翻訳:金井哲夫)

レノボの最新オールインワンデスクトップは縦横回転モニター付き

縦横回転ディスプレイ付き一体型パソコンを世に出すのはLenovo(レノボ)に任せておこう。それがこの会社のやり方だ。必ずしも必要不可欠でも実用的でもないが、決しておもしろくないわけではない。この手のかなり安定した製品カテゴリーでの、少々風変わりなことをチャレンジは大賛成だ。それに、このコンバーチブルや2in1の世界で、大きくて重たいオールインワンは抵抗を続けていた。

まずは、なぜ?から始めよう。

私が思うに、世の中には縦型ディスプレイをほしがる理由が片手にあまる程度にはある。たとえばニュースフィードを永久にスクロールし続けているジャーナリスト。とはいえ、正直なところ27インチ縦型4KモニターでTwitter(ツイッター)を見ているところを想像すると冷や汗が出る。以前のSamsung(サムスン)の回転式テレビと同じく、この形状ならコンテンツを携帯端末と同じ縦型モードで見ることができる。

そして(老舗シャツブランドの)SERO(セロ)と同じく、そんな機能が必要だと判断するユーザーがたくさんいるとは到底考えられない。私なら年に1度か2度使うだろうか。大掃除の時もちょっとうれしいかもしれない。もちろん、新しい画面の使い方を選べることが、あなたのワークフローに役立つ可能性は常に存在する。

おそらく。

まあ、このオールインワンの見た目は悪くない。この4Kスクリーンは確かなカラー機能を備えている、とLenovoは述べている。

Yoga AIO 7の他に類を見ない4Kビジュアルは、これまで画面で見たことのない正真正銘の色を、99%のAdobe RGB色域と超現実的なDCI-03 99%色空間によって再現します。また、DC調光の採用、フリッカーフリー、TUV Rheinland(テュフ・ラインランド)で2種類の認定を受けたブルーライト低減機能、およびディスプレイ設定を行うオンスクリーンディスプレイを備えています

モバイル端末の画面を直接デスクトップに映し出すことが可能で、これが回転式モニターの最も多い使い方かもしれない。RAMは16または32 GB、SSDは256 GB~1 TBの間で選べる。1または2TBのハードディスクも搭載している。

現在中国で販売中で、2021年2月から他の地域でも1599ドル(約16万6000円)で登場する。北米がその中に入るかどうかはわかっていない。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:LenovoCES 2021ディスプレイ

画像クレジット:Lenovo

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Dellの新型ディスプレイは飛び出すカメラとTeamsボタンでビデオ会議に対応

Dell(デル)の新型ディスプレイは、ビデオ会議に対応したシンプルだが頼りになるソリューションを求める声の高まりに応じるものとなった。スマートな飛び出し式のカメラと、さらにあまりスマートではないTeamsボタンを備えている。この新型ディスプレイにはいくつもの進歩的な機能が盛り込まれているが、それでもオフィスでの使用をしっかり念頭に置いて作られている。

Dellの新しい24インチ、27インチ、34インチのVideo Conferencing Monitor(ビデオカンファレンスモニター)は、大枚を投じることなく、スイッチ1つで簡単に会社をビデオ対応体制にしてくれるソリューションという、多くの企業の願いを叶える目的で作られたことは明白だ。

なかでもおもしろい機能は、上部に取りつけられた飛び出し式のカメラだ。これは世界初というわけではなく(数年前に見たことがある)、Dellにとっても最初ではない。しかしオールインワンシステムとは別のディスプレイ単体製品としては初であり、おそらくこれまでで最高のものだ。

画像クレジット:Dell

カメラは5メガピクセル(1080pをやや上回る、ほぼ3K)という平凡な解像度であるため、光学的に背景をぼかしたいとか、照明をよくしたいと思うなら、自分でカメラをセッティングすべきだ。だが、仕事の通話ならまったく問題ない。使わないときは本体に格納されるため、プライバシーを気にする人にも安心だ。

もう1つ気づきにくいことだが、この方式が好ましい理由として、ディスプレイ本体のベゼルに制限されないという点がある。これなら、高性能なレンズや大きなセンサーを組み込むことも可能だ。私はカメラの詳細情報をDellに求めた。ずば抜けた性能は期待できないが、画面の余白にカメラモジュールを詰め込むよりは、スペースに余裕があるほうがいいに決まっている。

画面の下には、感じのいいフェルトで覆われたスピーカーバーがある。出力は、激しい音楽には向かないが、ビデオ通話の音声をクリアに聞くには十分だ。

そのスピーカーバーの左端にはちょっとおもしろい、実用的かどうかはわからない、いくつかボタンが並んでいる。通話、音量、ミュートの他に、Microsoft(マイクロソフト)のTeamsのためのボタンが目につく。

画像クレジット:Dell

みなさんがどう感じるかわからないが、私には無用の存在だ。その理由は、単にTeamsを使わないからではない。

これは私だけのことかも知れないが、ちょうどいい位置に調整して置いたディスプレイに、音量を変えたりビデオ通話に出たりするたびに、わざわざ手を伸ばして操作するという考え方が好きになれない。よくよく気を遣ってそっと操作しても、その度に画面が揺れる。これらのボタンを使うとしても、特定のブランドのビデオ会議システムのためだけのボタンはほしくない。ビデオ会議プラットフォームは山ほどあるのに、使用を限定されている感じがする。

むしろ、アイスホッケーのパックぐらいなものに、それらのボタンと会話用のモノラルスピーカーとマイクが内蔵されていたなら、そっちに喜んで金を払いたい。ところで、ノイズキャンセリングはソフトウェアに任せておいたほうがいいだろう。大抵のビデオ通話アプリにはノイズキャンセリング機能がある。それと内蔵のノイズ対策機能が干渉し合わないとも限らないからだ。

もちろん、これは間違いなく製品としてもっともシンプルなソリューションだ。またおそらく、マイクロソフトとDellが共同で作り上げたものだ。飛び出すウェブカメラには赤外線カメラも含まれており、つい最近までその存在に気づかなかった顔認証ログイン技術のWindows Hello(ウィンドウズ・ハロー)に対応している。

これは明らかに、Dellとマイクロソフトがすでにそのエコシステムの中にいる企業顧客を意識したものだ。だが、Dellのディスプレイを愛する私からすれば、飛び出すカメラはいいが、サウンドバーとTeamsボタンはいらない。Dellよ、お前の愛はどこに?

この新型ビデオ会議用ディスプレイは2021年2月から発売される。価格は24インチタイプの520ドル(約53000円)から、27インチタイプの720ドル(約7万4000円)、さらに画面が湾曲した34インチタイプの1150ドル(約11万8000円)までとなっている。

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(翻訳:金井哲夫)

Looking Glassの次期製品はホログラフィック・デジタルフォトフレーム、写真はiPhoneで撮影

Looking Glassのテクノロジーは非常にクールだが、これまでの製品は600ドル(約6万3000円)の8.9インチディスプレイから6000ドル(約62万7000円)の15インチディスプレイ(32インチの8Kディスプレイの価格は公表されていない)までと、とても高価だ。一方でPortraitはブルックリン拠点のスタートアップである同社が生み出した製品の中で、最も技術的に野心的で汎用性の高いものではないかもしれないが、最も入手しやすい製品だ。

349ドル(約3万6000円)という価格は決して安くはない(Kickstarterで早期購入すれば199ドル、約2万1000円)が、市場で最も手頃なホログラフィックディスプレイの1つであることは間違いない。また価格に加えて、Looking Glassは機能面でもより大衆的なアプローチをとっており、基本的には非常に高度なデジタルフォトフレームとして利用できる。このシステムはSony(ソニー)の新しい3Dディスプレイのような製品とは異なり、3D画像に対して最大100カ所の異なる視点を提供し、一度に複数の人が見ることができる。

画像クレジット:Looking Glass

製品はコンピュータに接続しなくても利用できる。スタンドアローンモードでは、内蔵コンピュータを使って60fpsのホログラフィック画像を再生する。これらの写真はiPhoneで撮影し、付属のHoloPlay Studioソフトウェアを使って3D画像に編集できる。ホログラフィックビデオは、Azure KinectやIntel RealSenseのカメラでも撮影できる。

「これはホログラフィックなビデオ通話への最初の一歩です」とLooking Glassは述べており、将来の計画について少し触れている。

「小さな子供の頃から、自分のホログラムディスプレイを作ることを夢見ていました」と、CEOのShawn Frayne(ショーン・フレイン)氏はリリースで述べている。「誰かにホログラムの誕生日メッセージを送ったり、私のひいひいひい孫娘にホログラムで挨拶するのはどんなものか想像しました。『Looking Glass Portrait』 はブルックリンと香港を拠点とするチームによる6年間の活動の集大成であり、これまで以上に多くの人々の夢を実現します」。

Portraitは米国時間12月2日よりKickstarterに登場し、早期支援者には199ドルで提供される。

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter